07/12/18 第6回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会 第6回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会             開催日:平成19年12月18日(火)            場 所:はあといん乃木坂(フルール) 照会先:医薬食品局審査管理課  医療機器審査管理室 担当:広瀬・田中 電話:03-5253-1111(内2912,2787) ○北村座長 それではただいまから「第6回医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に 関する検討会」を始めさせていただきたいと思います。本日は先生方、ワーキンググル ープの専門家並びに参考人の方々、お忙しい中をお集まりいただきまして、まことにあ りがとうございます。  本日は大きな二つの懸案課題の審査をさせていただきますが、まず出席確認と配布資 料確認を事務局の方からお願いいたします。 ○事務局 本日は飯沼委員、加納委員、佐藤委員が御欠席でございます。  続きまして本日の検討にあわせまして、ワーキンググループの専門家といたしまして、 近畿大学医学部教授附属病院整形外科部長の浜西千秋先生、国立がんセンター中央病院 放射線診療部長の荒井保明先生、参考人といたしまして、石川県立中央病院放射線科診 療部長の小林健先生、福島県立医科大学附属病院内視鏡診療部長の小原勝敏先生に御出 席いただいておりますので、御紹介させていただきます。よろしくお願いいたします。  続きまして配布資料の確認をさせていただきます。お手元にございます資料ですが、 まず議事次第、座席表、資料1として、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関す る検討会開催要旨、資料2として、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検 討会委員名簿、資料3として、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会 の進め方、資料4として、ワーキンググループの設置について、続きまして資料5−1 として、血管塞栓物質としての「ヒストアクリル」の臨床使用成績について、資料5− 2として、第4回検討会提出のワーキンググループ報告書、これは胃静脈瘤の部分だけ を抜粋させていただいております。続きまして資料5−3として、ワーキンググループ 追加報告書、血管塞栓物質の部分でございます。資料6−1として、有痛性椎体腫瘍に 対する経皮的椎体形成術についての臨床試験結果報告書、資料6−2として、第5回検 討会提出のワーキンググループ報告書、骨セメントの部分でございます。続きまして資 料6−3として、ワーキンググループ追加報告書、骨セメントの部分でございます。次 に資料7として、今後の検討会の進め方について(案)でございます。続きまして資料 8は今後の検討会スケジュールイメージでございます。続きまして資料9として、対象 品目の現状でございます。  なお、本日は参考資料を御用意させていただいております。参考1として、骨セメン ト使用時における重篤な健康被害について、参考2として、食道、胃静脈瘤治療ガイド ライン、参考3として、適応外使用に係る医家向け医療機器の取扱いについての通知で す。続きまして参考4として、食道静脈瘤及び胃基底部静脈瘤出血の治療に対するヒス トアクリルの資料でございます。参考5として、ASGEガイドライン、以上が資料で ございます。なお、先生方のお手元には前回の議事録も配布させていただいております。 過不足等ございましたらお知らせ等いただければ幸いでございます。以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。それでは早速議事に入りたいと思いますが、懸 案2課題の御審議を賜りたいと思います。議事に入るに当たりまして、まず確認事項等 を事務局の方からお願いいたします。 ○俵木室長 それではまず本日の検討に当たりまして、関与、利害関係の確認をさせて いだたきたいと思います。お手元資料の4でございますが、第1回目の検討会で検討会 の委員の検討品目についての関与、利害関係についての取扱いを決めていただいており ます。資料4の一番下にございます。  検討会の委員は、検討品目に関しまして関与または特別の利害関係を有する場合は検 討会の座長に申し出ることとし、関与等がある場合は当該品目について発言することが できないというふうにお決めいただいたところでございます。今回は骨セメント、血管 塞栓物質についての検討をお願いすることになっておりますが、ワーキンググループ委 員の荒井先生から骨セメント関連企業との関与について御報告をいだたいておりますの で、本日御報告させていただきます。骨セメントの御審議、御議論には荒井先生は御発 言をいただけないということでございます。よろしくお願いいたします。その他、本日 検討の品目に関連のある企業との利害関係を有する先生がおられましたら、今申し出を いただければと思います。  次に本日の議題についてでございますが、これまでに検討を実施いたしました優先的 に検討すべき13品目中、2品目宿題が残っていたものがございます。その2品目につい て御審議をいただく予定でございます。一つは胃静脈瘤の使用する塞栓物質でございま すが、第4回の検討会で御議論いただきましたが、国内外の公開文献の選定基準に偏り があるなど、十分な科学的なエビデンスにはなっていないのではないかということで御 指摘がございまして、それに対して宿題が残っておりました。  またもう一つは骨セメントでございまして、有痛性の椎体腫瘍に対して骨セメントを 椎体内に注入して使用する除痛の治療でございますが、これについては前回の御議論で は情報がほとんどございませんでしたので、検討会の場でそれへの公的な研究も行われ ているということで、その結果を報告するようにという宿題があったものでございます。  それぞれの関連学会から報告書をそれぞれいただいておりまして、それについてのワ ーキングの担当委員の先生に追加報告書を提出いただきましたので、その内容を踏まえ まして、この2品目についての方向性について本日は御審議をお願いしたいと思います。  なお、議題の順番でございますが、骨セメントを御担当いただきましたワーキングの 浜西先生のこの後の御予定の関係で少し順番を入れかえさせていただきまして、骨セメ ントの議論を先に進めていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○北村座長 それでは早速議事に入りたいと思います。ただいま室長の方からございま したように、骨セメントの方を先にやらせていただきたいと思います。日本腫瘍IVR 研究グループがまとめられました報告書が新たに今回提出されましたので、専門家でご ざいます小林参考人より報告書の御説明をお願いしたいと思います。 ○小林参考人 それでは私の方から説明させていただきたいと思います。資料6−1に なります。この資料を読むような形で報告させていただきますので、よろしくお願いい たします。  日本腫瘍IVR研究グループ、以下JIVROSGというふうに訳せさせていただきますが、 これは平成16年4月に発足しました研究グループでありまして、代表は荒井先生がやっ ておられます。現在までの間に日本IVR学会認定専門医が所属する52施設が参加して いて、腫瘍IVRに関する多施設共同研究組織であります。活動資金は主に研究費を使 われておりまして、企業等の利害を示す団体からの援助は受けておりません。この JIVROSGの中におきまして、有痛性椎体腫瘍に対しての経皮的椎体形成術について第I /II相臨床試験をJIVROSG−0202と称し、立案、施行いたしました。その概略にいてこ れから御報告させていただきます。  試験の背景ですが、原発性、転移性を問わず、有痛性の椎体腫瘍は著しい疼痛ならび に日常生活の制限をきたす原因となり、このため、この症状の軽減は当該症例のQOL 向上に極めて重要な臨床的課題であると考えております。  既存の治療法としましては、さまざまな手術療法や放射線治療、薬物鎮痛療法があり ますが、現時点で緩和段階である症例に対する手術療法の適用は比較的狭く、多くは薬 物療法や放射線治療により対応されております。放射線治療におきましては、疼痛緩和 までに2〜6週という時間がかかること、さらに疼痛緩和の効果が不確実であるという ことが欠点として知られており、また骨強度の回復に関してもにわかには起こらないと いうことが欠点としてあげられます。  また、薬物療法は非常に普及しておりますが、これにおきましても副作用の点で十分 な除痛に至らないことが少なくありませんし、骨強度には影響を与えないため骨折の危 険性が常に問題となってきております。  こういう背景のもとで椎体形成術でありますが、これは画像誘導下に経皮的椎体病巣 を穿刺して骨セメント製剤を注入する治療法であります。比較的少ない侵襲で疼痛緩和 に加え、脆弱した椎体の補強が得られることから、欧米で既に一般的な医療行為として 施行されております。しかし欧米においてもprospectiveな臨床試験の報告はなされて おりません。以上のような背景から有痛性椎体腫瘍例に対して、骨セメント注入術の安 全性及び有効性についての臨床試験による評価が必要と判断し、我々は本試験を実施い たしました。試験の概要を説明いたします。研究組織でありますが、私は石川県立中央 病院に行く前には金沢大学におりまして、1997年からこの治療に携わってまいりました。 その関係でこの研究の代表及び事務局を任させていただきまして、本試験に関しまして は参加可能であったJIVROSGに属する10施設の参加により行われております。データセ ンターの方はJIVROSGデータセンター、これは国立がんセンターの中にありますが、そ こで行われ、症例登録に関しましてはUMINのネットワーク内に研究者限定サイトを おいて行っております。また、効果安全性評価委員会に関しましては、そこに名前があ がっております3名の方にお願いして、ある程度外部団体の方からも評価していただく という体制をとっております。  試験の目的としましては、今まで述べましたようにプライマリーのエンドポイントと して安全性の評価を、セカンダリーのエンドポイントとして臨床的有効性の評価及び有 害事象の発現頻度と程度ということにあげさせてもらいました。  試験の方法ですが、これは有害事象の発現頻度が30%を超えた場合に早期に試験が中 止できるように、初めの9例までを3例ずつ3段階で登録するもので、各段階の3例の 登録が終わった後、4週間の登録停止期間を設け、有害事象の発現が許容範囲内である ことを逐次確認して症例を蓄積するという方法をフェーズIとしてとりました。そのフ ェーズIが終了した後は、フェーズII試験として登録停止期間を設けることもなく、目 標症例、これは33例としたわけですが、そこまでやったということであります。  患者の選択基準といたしましては、今回は悪性腫瘍の転移あるいは原発性の椎体腫瘍 による胸椎または腰椎の症例というふうに出しました。上記に伴う疼痛が強く、日常生 活の行動に制限が生じている患者、あるいは圧迫骨折の危険性から運動制限を医師から 指示されている患者さんということにしまして、椎体の腫瘍が脊柱管に露出していない 症例で、腫瘍臓器の機能が温存され、PSが0〜3、4週間以上の生存が見込め、本人 からの文書による同意が得られているものというふうにいたしております。  除外条件は12項目あげさせていただきましたが、基本的にはシンシッコウが困難であ る、あるいは安全性の担保が困難となる事項について、その資料に述べてある12項目に ついて除外条件をつけております。  治療方法ですが、これは一般的なやり方が書いてありますが、基本的には前処置をし て、治療を行うCTやX線透視の台に患者さんに寝ていただき、モニターをした上で画 像で穿刺経路を決定し、その決定経路にちゃんとあったような形で針が進むのをCT透 視あるいはX線透視を見ながら、しっかりと金属の針をセメント注入予定部位まで刺入 する。刺入したメトルメタクリレート系のセメント製剤を作成し、特にX線透視下でや る場合にはその視認性が現状のセメント製剤では不十分なことが欧米より報告されてお りましたので、滅菌したバリウムを作成して、それを30%まで混和するということを推 奨する形で行いました。  このPMM製剤は国内で整形外科で手術的に承認されている症例はどれでも使ってよ ろしいという形でやっております。注入可能な硬度に達した後に、X線透視、あるいは CT透視のもとに最新の注意を払いながらセメントを注入し、最終的に十分な分布が得 られた時点で終了する。もし万が一椎体以外にセメントが漏出した場合には、特に危険 性が高いと判断した場合、速やかにセメント注入を中止するということを徹底いたしま した。  セメントの分布を最終的に確認し、止血消毒をして終わるわけなんですが、治療椎体 が複数ある場合にはこれを繰り返すという形にしております。治療後は2時間のベッド 上の安静のみ指示することで治療を終えております。  評価方法ですが、有害事象に関しましては、NCI−CTC、当時のバージョン2を 用いております。疼痛の評価にはVAS値を用いまして、治療有効性に関しましては治 療後の1週間目のVASの値の変化に基づいて、下記の基準で著効、有効、無効という 形で評価しております。併用療法や支持療法に関しましては、資料のごとく患者さんの 実際の臨床面で不利益にならないように配慮をして、支持療法あるいは併用療法につい て規定いたしました。  結果について御報告させていただきます。登録は2003年2月に第1例が登録されまし て、第1相部分において有害事象の発生はなく、そのまま第2相に移行し、最終的には 2006年5月までの間に参加10施設から予定症例33例の登録が終了いたしました。内訳 は男性16例、女性17例で、平均年齢は62歳、PSが0が1例、1が7例、2が12例、 3が13例と、比較的PSの悪い方がかなりおります。  原因疾患では転移性の腫瘍が30例、原発性は資料のごとくでありまして、原発性の椎 体腫瘍としては骨髄腫が3例ありました。治療対象は42椎体が対象になりましたが、胸 椎が19椎体、腰椎が23椎体でありました。治療する椎体の圧潰率、つぶれている平均 は大体75%のつぶれが認められておりました。  治療の内容ですが、誘導装置として何を使ったかということに関しましては、CT透 視が15例、X線透視が15例、CTとX線透視の併用が3例ありました。治療に関して かかった時間ですが、1症例としますと平均49分、1椎体としますと平均39分で治療 が終了しております。使用された骨セメント製剤は、ブリストル・マイヤーズ・スクイ ブ(株)からのOsteobondが22例、日本ストライカ社のSimplexが10例、Zimmer社の Bonecementが1例でありました。  骨セメントの注入量は平均は3.5mlで、一番多い症例で8mlでありました。手技的な 成功率は100%であり、手技の中止はありませんでした。  次に安全性の方ですが、治療中の有害事象に関しましては、穿刺部位からの出血が1 例で針を抜いた段階であったということが報告されておりますが、これは用手的な圧迫 によって止血可能であり、手技が中止になるというものはありませんでした。また、治 療後30日以内の死亡が2例報告されておりましたが、いずれも原疾患の増悪によるもの と判断されましたし、NCI−CTCグレード3〜4が12例、グレード2が2例認めら れましたが、これらのうち治療との因果関係が否定できないとされた有害事象はグレー ド2の血清アルブミンの低下1例のみであり、治療との関連性はないというふうに判断 されました。また治療に伴うNCI−CTCグレード4以上の、あるいはそれに該当す るような有害な事象の発生は認めませんでした。これらに関しましてはいずれも効果安 全性評価委員会において承認が得られております。  次に有効性の方ですが、有効性は著効が20例、有効が4例であり、有効率としては 73%、95%信頼区間で56〜85%を得ました。治療前後のVAS値の変化はこの資料の後 ろから2枚目にあるかと思いますが、図1に一応グラフとして載せてありますが、除痛 効果発現までの期間が平均2.4日で、中央値は1日ということで、観察期間における疼 痛でありました。観察期間における疼痛再発は24例の有効例のうち、5例において認め られております。また治療後1週間目の評価で無効であった9例中3例では、それ以降 に有効以上の除痛が得られておりますが、今回の有効率にはそれは含まれておりません。  登録終了後4カ月時点において追跡調査を行いました。この時点で生存者は14名、死 亡者は18名、不明は1名であり、生存期間としては平均は270日ですが、中央値は194 日でありました。また、疼痛緩和生存期間におきましては、平均は230日で、中央値は 73日という結果でありました。  まとめの方を資料にそってお話をさせていただきたいと思います。まず有痛性椎体腫 瘍に対するより有効な治療法の導入は臨床現場、特にがん終末期の症例を対象とする領 域で渇望されており、既に欧米で容認、施行されている経皮的骨セメント注入術の本邦 への導入は早急に検討される項目であろうと我々は考えております。  反面、本治療に対する欧米のデータはいずれもレトロスペクティブなものであり、ま た文献的には肺血栓塞栓症や脊髄障害、心原性ショックなどの重篤な合併症、あるいは これらに伴う死亡例も報告されており、本邦への導入に当たっては本治療の安全性に関 する科学的な根拠が必要と考えられます。  これに対して本研究結果は対象とした33例で重篤な有害事象の発生はありませんで した。信頼区間としては0〜8.7%ということを示しておりまして、本試験と同等の条件 下で行う限りにおいて、本治療の安全性が本邦への導入に当たり容認可能な範疇である ことを示したのではないかというふうに考えております。  具体的には患者選択基準に心不全の症例やアレルギー歴を有する症例、脊柱管内腫瘍 が露出した症例を含めなかったことや、IVR治療に慣れた専門医がCT透視や、ある いは精度の高いX線透視を用い、かつ視認性の高いセメント製剤を用いることによって 画像観察下にセメントの注入を行ったことなどが有害事象発生の防止に寄与したものと 推定しております。  他方、本治療法の有効性は文献的には70〜90%とされており、本研究結果における有 効性73%は本邦においてもこの成績が再現可能であることを示したと考えております。 また本研究は治療後1週間後におけるVAS値により評価を行いましたが、それ以降に 疼痛が改善した3症例も含めれば、1カ月後の有効率は83%であり、臨床的にも十分な 意味を持つ有効率であるというふうに考えております。  特に疼痛軽減効果発現までの時期が中央値1日であったということは、本治療法が即 効性をもつということを如実に示しておりまして、当該症例の予後は極めて厳しいとい う点を鑑みれば、臨床的意義は極めて大きいのではないかというふうに考えます。  なお、本治療の施行に当たりましては、その安全性を担保する観点から、IVRに精 通した医師による画像誘導下での施行、整形外科医、麻酔科医などによる緊急時の対応 が可能な体制下での施行、本試験の適格条件に準拠する症例を対象とするなどの実施基 準を関係各学会との協力のもとに整備することが必要であろうというふうに思っており ます。  ただし、本治療法の承認における適応において、詳細な規定を設けることは、もとも とこういう治療を受ける患者さんの病態というのは非常に複雑でありますし、臨床症状 も多彩でありますので、その判断が現場ではなかなか容易ではないということや、かつ 規定する科学的な根拠も乏しいことから、悪性腫瘍による椎体の病的骨折や不安定性に よる疼痛とし、適応の詳細については上述の関係学会による実施基準に委ねるべきでは ないかというふうに思っております。  また、使用するセメント製剤につきましては、今後もしも承認された場合には、X線 透視下で行われる施設がふえることが予想されますし、今回のスタディでもそういうふ うに指導したということもありますので、ぜひ視認性の高いセメント製剤の承認が望ま れるのではないかというふうに考えております。報告は以上であります。 ○北村座長 小林先生、ありがとうございました。ワーキンググループの方の浜西先生 の方から追加の報告をしていただくことになっておりますので、浜西先生、よろしくお 願いします。 ○浜西WG委員 前回の第5回の時に配布させていただきました報告書でありますが、 資料の6−2の5ページをごらんになっていただきたいと思います。そこで適応とすべ き疾患ということで、3に脊椎腫瘍による有痛性椎体骨折というものに関しては、既に 今回の御報告が前に学会発表された時の詳録をいただいておりましたから、非常に有効 なものであるだろうという気持ちのもとに、その3の部分は書いております。  ただ、そこにございますように、やはり痛みのよってたつところ、腫瘍のエクスパン ジョン、あるいは浸潤による痛みに対して本当に有効性があるのかどうか、今回の御発 表にありましたように、症例の椎体の悪化率は大体76%でありまして、中には100%を 超えるというような症例もあった、これはまさに腫瘍そのものがエクスパンジョンして おるということで、決して圧潰しておるという状況ではない。ただ、そういったものに 対しても有効性があるのかどうかということがやはり懸念でございました。  それから胃の部分でありますが、整形外科、あるいはそういったところでこれまで椎 体形成術で使っておりますHAブロックやCPCというものは発熱いたしません。そう いったものが注入された場合には、じゃあどうなるんだろうかというふうな疑問がござ いました。  それからやっぱり一番気になるのがウでございます。悪性腫瘍が充満している椎体へ の、例えばそういった圧入ということによって、腫瘍細胞の静脈系への播種、あるいは そういったものが全身に播種されることによる生命予後などに関して、厳重なインフォ ームドコンセントがなくてはならないんじゃないかというふうなことを意見として述べ ております。  それで今回の追加の資料6−3でありますが、今6−1の御説明をいただきました。 そこに本当にすばらしい内容が書かれてありますので、私としては原則としてこれは早 急に認めるべきであろうというふうな意識でおります。ただ、そこのこの前の御報告で 懸念を呈しましたことに関して、まだやはり解決されてないというか、明らかにされて ない部分があるんだろうなというふうには考えております。  それでは資料6−3に関しまして概略を述べさせていただきます。第5回検討会で報 告しましたように、がん末期の患者さんに限って、その短い余命を本当に痛みとともに 過ごすということは看過しがたいことでありますし、私たちの身の回りにもそういった 患者さん方はおられます。親族にも家族にもおりますので、やはり何かいい除痛という ものを求めたい。しかし本当に末期になれば手術をするということはほとんど許されな いということであります。またはモルヒネとか、そういった類による鎮痛薬によるコン トロールには限界というものもありましょうし、その量を減らすことができればなおい いわけでありますから、こういった治療法というのは非常に有効ではないかというふう に考えております。  ただ、そこにございますように、もちろん腫瘍組織内への高圧をもってセメント注入 ということは、椎体骨折の場合と同じような、やはり血圧低下とかショック状態という ふうなことが起こり得る、これは日本の医薬機器安全性情報No.216あるいはFDAのそ ういったものにも載っております。ですからやはり危険を伴う手技であるということは はっきりとインフォームドコンセントされて、その上で施行されるべきであろうという ふうに考えます。  ですから安全性対象患者を適切に選定するということはやはり重要なことであって、 がんの転移のある患者さんも、何でもとにかくやってみて、よくならなきゃあ仕方ない、 よくなったらもうけもんだという意味で適用されてはいけないだろうというふうに考え ております。  そのことに関しまして、●の2でありますが、今回の椎体腫瘍に対する適用について、 今回の日本腫瘍IVR研究グループにより経皮的椎体形成術についての第I/II臨床試 験研究の結果が新たに報告されました。本報告は前向きに行われた臨床試験であり、そ の試験結果を積極的に評価するならば、本手技は新たな治験を行うことなしにすぐに認 めてもよい、緊急性を有すると思われるというふうにワーキンググループとしては考え ております。  ただ、例えば先ほど申しましたように、同意文書における余命に関する説明内容が明 らかにされているかどうかということがわかりませんでした。今伺いますと、やはりそ の手技の危険性という説明はしておられますけれども、悪性腫瘍のど真ん中にそういっ たものを圧入することによる播種あるいはその余命に関する影響ということに関しては、 どうも最初の説明には含まれてないというふうに伺いました。  それから33例中9例、とりあえず有効じゃなかった例がある、最終的には6例の無効 例というものがどのような腫瘍の患者さんに注入されて、無効であったのかということ は非常に重要な情報であります。そういった無作為にどんどん入れられてしまうという ことではなくて、やはり無効な例はこういう例なんだということはきちっと把握してい なければ、やはり医師も患者さんに説明義務を免れませんので、そういった時にあなた の場合は無効である可能性がある、あるいは余命を縮める可能性があるということで、 やはり説明する必要があるんじゃないかということであります。  ですからその2でありますが、無効例の詳細な分析がぜひいただきたいということで あります。  それから3に関しまして、どうしてこのセメントを悪性腫瘍椎体の中に入れるとそれ ほど著効し、あるいは有効率が80%を超えるというふうなことになるのかということで、 いろんな可能性は考えられると思います。御専門の先生方がたくさんおられますので、 一つ考えますのは、やはりその熱効果であります。ですから熱によって神経終末、神経 端末の壊死、あるいは熱によって腫瘍そのものが壊死に陥って除圧されるというふうな 効果、そしてやはり椎体がしっかりしたものかその中に入るということによる安定性と いうようなこと、さまざまな可能性は考えられます。  ですから一点重合熱を発しないものを現実にございます。それを我々は使っておりま すので、本当に患者さんに対してこういった治験はおかしいのかもしれません。効くと わかっているものしか使ってはいけないのかもしれませんが、安定性を保つ、あるいは 椎体の圧潰を防ぐために有効であるというのであれば、そういった発熱しないハイドロ シアアパタイトペーストというふうなものが使われた場合の一体余命がどうなんだろう か、あるいはその有効性はどうなんだろうかというはぜひ知りたいという点でございま す。  今回の御報告にありましたように、平均余命が270日であるという点であります。無 痛の期間が230日あるということは、これはすばらしいことですが、ただ平均生存期間 が270日というものが、今回のこの手技によっての結果であることは間違いありません。 ですからそれが縮んだのか、あるいはむしろ痛みが楽になって平均余命が延びたのか、 そのあたりの検討というのをこれからやるべきではないかなというふうに考えておりま す。  それから●の3ですか、やはり本手技の導入に当たっては、IVRに精通した医師に よる画像誘導下での施行がもちろん必要でありますし、緊急事態が起こった時に脊椎を 扱うことのできる整形外科医、あるいは麻酔をかける必要がございましょう、そういっ た体制が必要であろうということであります。  IVRに精通した医師ということでありますが、放射線科医には限らないと思います。 我々整形外科医の脊髄病院にとっては、こういった末期の転移の患者さんをほとんど一 手に引き受けるという状況がございますので、我々もそういったものをぜひやらせてい ただきたいというふうに考えております。  やはり適切な症例を対象としていただきたいということ、やはり無効例というものを 追跡した結果、そういったものが出てくるのではないかと考えております。そしてやは りこれは許されることかどうかわかりません、しかしあなたの余命としてはこれぐらい である、こういった処置によって全身播種というような可能性が、今回のデータからは それは明らかにされておりませんでしたので、やはりインフォームドコンセントにはそ こまで述べる必要があるのかどうか、それは私はそういった余命が縮む可能性はあるけ れども、痛みのない期間ができるということはすばらしいことだというふうな意味での、 やはり一応告知はしておくべきではないかと理解しております。  それから技術修練が必要であるということです。そして関連学会がそういったものを つくらねばならないということであります。以上であります。 ○北村座長 ありがとうございました。浜西先生は小林参考人の報告を本質的には大変 評価されておられます。それに加えて幾つかの懸念も述べていただいたわけですが、室 長の方から追加を、今までの健康被害のような、参考1のことでもちょっとお願いいた します。 ○俵木室長 それでは本日お机にお配りさせていただきました参考1でございます。骨 セメント使用時における重篤な健康被害についてということで、医薬品医療機器安全性 情報に掲載された記事でございます。  この記事自体は大腿骨頸部骨折等に使われる大腿置換術等に使用された骨セメント、 それにあわせて起こりました不具合についての報告がメインでございますが、一番後ろ のページをごらんいただきますと、(6)といたしまして、脊椎圧迫骨折への使用につい てという項を設けまして、薬事法上承認されている骨セメントの効能効果、これは関節 置換術における骨とインプラント材料の固定ということでありますが、骨粗鬆症による 脊椎の圧迫骨折等に対する経皮的椎体形成術、その際にも骨セメントが注入される報告 がございまして、国内で血圧低下、ショック症状に陥り死亡した事例が1例報告された ということで、適用外の使用ではありますが、報告をして注意喚起をしたものでござい ます。これは2005年8月の安全性情報でございます。  あわせてその際に米国FDA等での同様の椎体への適用による不具合の注意喚起につ いて、その下に情報提供をしているところでございます。これが適用外の使用でござい ますので、ここで薬事法上に基づく安全性情報報告のお願いをしておりますが、アンダ ーレポーティングになっている症例がどのぐらいあるかわかりませんが、したがって正 確に日本でどのぐらい椎体への適用でこういった不具合が起きているかは、数字として はなかなかはっきりしたものはございませんが、実際に報告があるということでござい ます。  ただ、ここで報告されているのは、報告事例としては脊椎圧迫骨折に対する椎体形成 術に使用された事例での死亡例ということのようでございます。以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。それでは委員の方々から御意見を伺いたいと思 いますが、まず一つだけ、小林先生の方でやられたセメントの材料ですが、これはオス テオボンドとシンプレックスと、それからボーンセメントという三つが使われています よね。これは従来から大腿骨の方には用いられていたもので、いわば適用拡大というか、 そちらの方に応用されているんですね。  ところが今回の申請が出ている3種類については、スパインプレックスとオステオパ ルと、それからバルーンを使うボーンタンプというのがあるのですが、先生のところで 大腿骨で用いられたものを椎体の方に使えるようにするのか、もしこの新たな方が椎体 として承認された場合には、オステオボンドとかシンプレックスとか、どう扱われるこ とになるんですかね。 ○小林参考人 この臨床試験をやった時には、要するに日本国内で使えるセメント製剤 はそういう大腿骨に使えるセメント製剤しかない状態で、今回申請にあがっているもの は全く使えない状況で、この試験は行っております。  その中で我々はちょっと特殊でCT透視というものを使っておりました関係で、これ は非常にセメントがよく見える、そういう画像診断装置、誘導装置でありますので、特 にバリウムの添加とか、そういうふうに視認性をあげる必要はないというふうに初期の 症例で判断してやってきたんですが、やはりX線透視でありますと、これは欧米の方の 報告でもそうなんですが、そのままのセメント製剤を使うと、まあ見えないことはない かもしれないんだけれども、少量でもセメントが漏れた時の発見は非常に難しいという ことで、とにかくバリウム、何でもいいんでしょうか、視認性をあげるという処置をす べきだということが初期の欧米からのペーパーでも出ておりまして、我々がやる時にで もすべての施設がCT透視があるわけではないですし、今後おそらくX線透視下がメイ ンになってくるだろうということで、今のままの日本で使うことが可能であるセメント 製剤が、そのままの状態で使うと、欧米の方向からでもやっぱりちょっと視認性が悪い、 ですのでとにかく医者の自主的な責任のもとに滅菌バリウム、これも売ってないんです ね。これも自作でつくり出して、それを混ぜてやる。  それをなぜやらなきゃあいけないかというと、やはり漏れるということがすべての合 併症の一番の根本になりますので、とにかく画像の誘導化で漏れないように入れるとい うことが極めて大事だというふうに判断して、この試験を組む時にそういうふうなお願 い指導をしたということがあります。  ですから今回三つの製品が参考になってくるかと思いますが、少なくても二つの製剤 はスパインプレックスとオステオパルに関しましては、視認性はそのバリウム30%相当 にやるものでありますから、もしこれがアベーラブルになれば、あえてオステオボンド であるとか、そういうものを使う必要性はまずないだろうというふうに思います。  ただ、カイフプラスティは基本的に我々は全く別の手技というふうに考えております。 というのは骨粗鬆症に関しましては、その椎体コウを戻すとか、いろんないい手がある かとは思うんですが、やはり悪性腫瘍の中で腫瘍の中でバルーンを膨らませて、椎体コ ウを保つというのは、基本的には全く想像できませんし、実際問題ほとんど報告も皆無 に近いと思いますし、日本でも余り行われてないと思いますし、我々もこれに関しては 全く別の手技と考えていますので、今回の三つのものがどうかと言われた時には、ちょ っとこのカイフプラスティに関してはちょっと私のデータからは何も言えないというふ うに思います。  ですが今のお話を聞くと、スパインプレックスとオステオパルに関しましては、もし もこれが通ってきたならば、試験で使っていたようなセメント製剤をおそらく椎体には 使わないことになるのではないかというふうに予想します。 ○北村座長 わかりました。それで明快になりました。それでは御意見を賜りたいと思 います。 ○四宮委員 小林先生のすばらしい研究ありがとうございました。浜西委員がお話にな ったように、やっぱり無効例、多分非常に進行が早いとか、やっぱりこれによって初め からこのセレクトを本当にできるかどうかはわからないですけれども、やはり腫瘍の種 類によって絶対に違うはずですので、その辺のところがわかると使いやすいという点が 一点ですね。  それから二点目は、それによって大体これはメタというのはグローブですけれども、 予後は大体これだけ転移があるって、この疾患でというのは出てますよね。どのぐらい 生きるというのは。それに関してどのぐらい縮めたのか、あるいは延ばしたのかという ことですね。その辺のところはどうですか。  あとはもう一つ意見としては、施設基準を非常に厳しくやるべきだという感じはしま す。 ○小林参考人 先ほどから浜西先生の方からも出ておりますが、9例の無効例に関して 少し指摘もありましたので、詳細を説明させていただきます。9例中3例は2週間から 4週間の範囲で実は有効の範疇に入ってくる効果を得ております。残りの6例ですが、 これは最終的に無効というふうに判断されるような状態だったんですが、そのうちの3 例は2カ月以内に死亡されております。やはり非常に進行が早かったのか、状態として も治療した時がもう遅かったのかということであろうかと思います。  残りの3例ですが、残り2例は1人は15カ月後、1人は27カ月後に亡くなられてお りますが、いずれも鎮痛剤の増量等で対応していたようでありますが、疼痛は全くとれ なかったようでございます。最終的に残った1例に関しましては、予後の確認をしまし たのが治療から15カ月後だったのですか、その時点では御存命でありましたが、やはり 鎮痛剤の増量が行われていました。  前もってこういう無効例がわからないかということで、我々も無効例に対して、例え ばセメントの入れ方だとか、製剤の種類だとか、あるいは椎体のつぶれ方だとか、いろ いろとサブパラメーターを調べてみたのですが、残念ながら必ずこれというものは有意 差をもったものはなかった、ある意味非常に残念なんですが、それはなかったというこ とであります。  強いて言えば、パフォーマンスステータスの悪い方が数としては多くて、今の最後に 残った6例のうちの5例がパフォーマンスステータスがもう3という状態で受けておら れます。ただ、この治療はもともと動けないような方が多いですから、そういう意味で パフォーマンスの悪い方が多いので、だからといってパフォーマンスステータスを全部 捨ててしまうと、またこれはこれで問題だと思いますが、そういう傾向はありました。 ○四宮委員 腫瘍の種類によって多分何か違うことはないんでしょうか。 ○小林参考人 今回原発そうに関しても少し調べてみたんですが、資料にあるような原 発そうは非常に多彩な原発そうがこの中には含まれておりますが、原発そうによる、例 えば肺がんは効くとか、乳がんは効くとかということは残念ながらなかったと言われま す。 ○北村座長 他に御意見はありませんか。 ○千葉委員 資料6−1の5ページに、欧米のデータでは重篤な合併症や死亡例がある ということを触れておられますね。こちらの先生のデータではそういうことはほとんど なかった。その理由として心不全とかアレルギー歴を有する症例、あるいは脊柱管内に 腫瘍が露出した症例を含めなかったということを一つの理由としてお考えですけれども、 欧米でこのような合併症が起きた症例というのは、そういったアレルギー歴、心不全、 あるいは脊柱管内に出ていた、そういう症例がこのような合併症を起こしたということ なんでしょうか。 ○小林参考人 最新のデータは知らないのですが、FDAでたしか8例ぐらい死亡例が 報告されていたかと思うんですが、そのうちたしか2例は心原性ショックということに なっておりましたし、あとは肺塞栓症で亡くなられた方も報告はされております。もと もとアクリル性の骨セメント製剤は心臓に対するアレルギー性の反応があるという話と か、投与によって心原性ショックを起こす可能性がある、それは肺塞栓なのか、シボウ 塞栓なのかわかりませんが、そういう話はありまして、一応そういう原因のはっきりわ かったものでそういうものが報告はされておりました。ですので当初からこういう心不 全になるような症例とかは我々ははずす、アレルギーがある方ははずすという形にさせ てもらって、一つはこういう結果になったんだろうと思っています。  また今言いましたように8例の死亡例がありますが、この背景は3万例ぐらいの治療 の中で8例なんですね。ですからベースが物すごくアメリカでたくさんの方にやられて いる中でそれだけだったということなので、我々33例の治療経験ですから、完全に我々 の数で出なかったから絶対に出ないとはもちろん言えないのですが、ただ、欧米でこう いう方に死亡例があるということがわかっている項目についてはずしたことは、やはり プラスに働いたのではないかと我々は推定しています。 ○千葉委員 ありがとうございました。そうしますと例えばこの治療は導入すべきだと 私は思っておりますが、インフォームドコンセントにはこういった合併症あるいは死亡 例があったこともつけ加えられる御予定でしょうか。 ○小林参考人 当然事実があれば、それについてはインフォームドコンセントになるべ く含めるべきだろうというふうには思います。先ほど浜西先生の方からも予後の話とか もありましたが、当然通常の病態の説明は我々この同意書の中でさせてもらっておるの ですが、先ほど報告でも述べましたように、予後というのは、特にがんの末期の患者さ んは非常に難しいですし、またデリケートでもありますので、それはなかなか含まれな い。少ない頻度のものでも、そういう死亡例が欧米であったことに関しては、もしもこ れが使えるようになった時には伝えるような方向でインフォームドコンセントの文章が できるべきではないかと私は思っておりますが。 ○千葉委員 わかりました。 ○吉田(純)委員 私もこの治療法は進めるべきだと思うのですが、やはり実施基準と 施設基準というのはきちっとしておくべきだと思うんですね。もう一つ確認したいのは、 この場合に整形外科医、麻酔医などとなっておりますが、私の専門の脳神経外科も脊椎 の学会をもっておりますし、この治療法に非常に関心をもっております。そこで実施基 準の関連学会にぜひ脳神経外科医も入れていただきたいと思いますので、よろしくお願 いします。 ○北村座長 それでは今ワーキンググループの新たな報告並びに参考人の御意見を踏ま えまして、悪性腫瘍による椎体浸潤による疼痛に対しましては、早期に患者さんのため にも導入すべきであろうという考え方が成り立つのではないか。そしてそれを根拠づけ るものとして今回の前向きの33例のデータは、今後PMDAとの話合いにおいても大変 重要な基本資料になると考えておりますが、さて、この申請されている3種類、このう ち1と2のスパインプレックスとオステオパルVというのは成分的にも技術的にも非常 に似た点がありますが、カイフォXの方がかなり手技が違うということもございます。 この三つを今後PMDAの方で相談してもらうのか、ここから特に推薦順位を決めてい くのかという問題もありますが、その辺、浜西先生はどうですか。 ○浜西WG委員 前回のこの部会で検討いたしましたように、治験という意味では椎体 圧迫骨折に対する治験という意味ではカイフォンはもうほぼ終了している、これも知り たいことはいっぱいあるので、まだわからないのですが、オステオパロは全くそういっ た治験の予定はない、スパインプレックスに関しては治験の予定が計画中であるという ことでありました。  ただ、この悪性腫瘍に対する注入に関しましては、先ほど小林先生がおっしゃいまし たように、今ある現存の骨セメント、それにバリウムを加えて行うということで、すぐ にでも対応は可能なわけですね。ですからこういった新たなものを入れる必要は、ちょ っと今別に私は考えたいと思っております。また新たなものを導入する、しかもこれは 椎体圧迫骨折に対しては、まだこの前かなりの疑問符を呈したわけでありますので、こ の脊椎悪性腫瘍に対することだけにこの二つあるいは三つを導入するということは考え ないでいったらどうなんだろうかというふうに思います。ただ、この手技自体は早く認 めてあげたいけれども、その使うセメントというのは今まであるもので十分じゃないか というふうには考えております。 ○北村座長 室長の方から、その3品目の今まで企業の姿勢もいろいろ違いましたよね。 それを踏まえてちょっと取扱いを均一化できるのかどうか、複雑だなと思うんですが。 ○俵木室長 浜西先生のお話で若干フォローしきれなかったところがあるのですが、前 回の御議論で、骨粗鬆症からきます圧迫骨折への適用については、これはきちんとした 既存療法または十分な保存療法を行った後に行うことというのではなかったのかと。 ○北村座長 今回は基本的資料、データがそろっているのは悪性腫瘍の部分だけですの で、骨粗鬆症等に基づく、良性のものに基づくような圧迫骨折に対しての治療法には、 今回はデータ不足ということで、それへの使用というのは治験とか正式な形を踏んでい ただいて、早期導入は今回は待つべきであろうというふうに思っています。参考人並び に専門家の方の御意見もそうで、とにかく悪性腫瘍に対して早期に導入せよという御意 見だと思いますが。あとこの三つをどうするかということですが。 ○俵木室長 きょう御議論いただきました悪性腫瘍への適用については、浜西先生の御 報告にもありますように、この手技自体は早期に導入を進めるべき手技ということで、 きょうの検討会の御結論をいただいたんだと思います。  その既存の大腿骨用のセメントにバリウムを先生方が混和していただいて使うという こともあり得るわけですが、それはもちろんあくまでも適用外の手法でございますので、 今回御審議いただいておりますのは、その適用外ではなくて、きちんと承認をとって、 この有用な治療法に使用できる製剤を日本に導入しようということでございますので、 この3品目のうちの、導入に向けて協力いただける企業の御意向も確認しつつ、また先 ほども御議論がありましたが、3製剤のうちカイフォンの製剤は注入の手技自体も違い ますので、先ほど小林先生からお話がありましたように、このデータ自体がダイレクト には扱えないということですので、カイフォンの製品については申請するとなると、ど ういったデータが他にあるかということになりますので、企業の御意向も確認をさせて いただきたいと思います。  あと2社のものについては、先ほどの小林先生のお話では、この結果が使えるだろう ということでありますが、製品自体が違いますので、例えば製品の物性であるとか、そ の他の非臨床のデータ等で、今回のこの小林先生たちのデータをつくった製品、製剤と いいますか、それとの同等性を確認をさせていただいて、このデータが使えるのか、ま たはそれらの製剤でのこれまでの文献または外国での使用実態もあるでしょうから、そ ういったデータも含めて、2社についてはこのデータを活用しつつ、PMDAの方で新 たなさらに加えた情報が必要かどうかも含めて、御相談をさせていただければいいので はないかと思います。  したがいまして3製剤それぞれ会社の御意向もあると思いますので、御協力いただけ る会社があれば、この手技自体について日本へ早期導入を図るという方向で、どういっ た取組みができるかはPMDAと個別に御相談をさせていただければと思います。 ○北村座長 この注入物質と技術とを一体化して承認するという形になりますので、今 室長が申されたように特殊なバルーンを使うというのは少し違った技術が入ってくると いうので、注射器等で注入するものと少し用いる取扱いになる可能性が高いということ だと思います。そうしますとこの悪性腫瘍による椎体転移あるいは椎体腫瘍による疼痛 緩和のための骨セメントの、特に2品目について優先的にPMDAと相談していただい て利用できるように、そしてカイフォンXの方につきましては、技術の違いの点等々を 踏まえて、治験をするのか、あるいは技術講習を徹底することでカバーできるのかも含 めて検討していただくという形で、御了承いただけますでしょうか。 ○吉田(茂)委員 考え方の整理だけなんですが、これは前回のワーキンググループの 報告があって、骨セメントに関しては緊急性はないというふうに一応報告されて了承さ れたんですが、だけれども悪性腫瘍の部分と、その悪性腫瘍の部分にかかるものについ ては、今回みんなで検討して、それでよければ例外扱いにしましょうという話だったの で、ですからそういう確認でいいんじゃないかと思うんですけど。  ですからPMDAと治験と相談してくださいとか、早期導入に向けて努力してくださ いとかということを我々が言えばいいのですよね。ですから承認するとかしないとかと いう話じゃないし、だからそういう意味で一応その骨セメント全体は一回はネガティブ だけど、除いた部分は生き返ったと、こういう話でいいんですよね。 ○北村座長 よろしゅうございますか。ありがとうございました。 ○平岡委員 この骨転移に関することは結構だと思うんですが、二点だけお願いしたい のですが、一つは非常に全身化学療法がいま進歩していまして、骨転移の方でも、例え ば乳がんであれば、5年生存率が多分4年ぐらいあるということなので、もう少し長期 的なことも視野に入れてガイドラインをつくっていただきたいということと、多分これ は治療法としては放射線治療との関係が一番出てくるので、そのあたりを少し御考慮し ていただきたいということでございます。 ○北村座長 今もう一つは、PMDAの承認に当たってはどういう施設で、どういう医 師たちがチームワークを整えて行うのか、どういう適用に絞るのか、あるいは先ほどあ りましたように有痛性の椎体腫瘍ということでしばっていくのか、その辺の細かい施行 細則的なところはまた学会と相談してよろしくお願い申し上げたいと思いますし、IV Rだけではなくて、整形外科、あるいは脊髄を扱う脳神経外科、あるいは放射線治療科 等々の集学的なものがやっぱり入ってくるんだろうと思いますので、ぜひよろしくお願 い申し上げます。  それでは次はもう一つの懸案の課題ですが、血管塞栓物質のアロンα様物質の胃静脈 癌への応用ということでありまして、本日は日本消化器内視鏡学会の小原勝敏参考人を 専門家としてお招きしておりますので、御説明をお願いしたいと思います。 ○小原参考人 小原でございます。資料5−1をごらんいただきたいと思います。ここ に国内外のデータを記載させていただきました。それでこの胃の静脈瘤に対する cyanoacrylate注入法は20年の歴史がございますので、参考資料としましてスライドで 委員の先生方にお示ししたいと思います。  この胃の静脈瘤の治療なんですが、実は食道静脈瘤治療から10年をおくれて研究がス タートしました。食道静脈瘤は1978年に開始されたんですが、それから10年後、鈴木 博昭先生によってヒストアクリルが導入されました。私どもはαcyanoacrylate monomer、 アロンαAを導入いたしております。ただ、この10年間、胃静脈瘤出血に対する効果的 な治療法は確立されておりませんでした。  それでこれはcyanoacrylate導入前の治療法なんですが、結局は頼るのは食道静脈瘤 の効果療法に使うエタノールアミンオレートという硬化剤がございますが、これで対応 する他はございませんでした。しかしながらほとんど止血できないか、あるいは一時止 血が得られても永続性がないということで、また出血を繰り返す、そのうちに亡くなら れてしまうわけでございます。いろいろ剖検させていただきましたが、結局は胃からこ の硬化剤を入れても血栓形成がないということがわかりました。  つまりこの医療法の効果は全くなくて、結局は多くの患者さんが出血死または二次性 の肝不全の転帰をとっておりました。そこで私どもはこれは何とかしなきゃあならない ということで、1988年に動物実験を開始いたしました。約1年かけてやったわけなんで すが、この50%のCAを非静脈に注入しまして、これは半年間経過を見ました。  その組織学的な変化を見たのですが、24時間後には軽度の好中球浸潤がCAを注入し た周囲血管に認められております。1週間後はその炎症細胞が減少しまして、そのあと セイガ細胞が少し出てきているということを確認しております。1カ月後にはそのセイ ガ細胞が増加しまして、3カ月後には炎症性細胞浸潤が全くなくなりまして、血管周囲 の線維化のみが認められております。もちろんCAはずっと停滞しております。それか ら半年後、CAの移動性は全くございませんで、軽度の線維化のみということで、この 安全性と停滞性の確認ができまして、ヒトに臨床を応用しております。  もう一つやった実験は血管の外に注入してみました。これはどうなるか、これは数日 後にすべて粘膜の脱落をきたしております。ということはこのcyanoacrylateは確実に 血管内に入れないと極めて危険であるということも確認しております。  それからcyanoacrylateが血液に接触した場合の重合開始時間を検討しました。水で すとそれぞれ200秒、180秒ですが、血液に触れた瞬間、ほとんど直後、せいぜい2〜 3秒、それで瞬時に重合しましてポリマーという形になります。このポリマーが血管内 を閉塞する、あるいは一部は血管破綻部から漏れて出血点を閉塞して、その結果確実な 止血硬化をもたらすということがわかりました。  それで油性の造影剤でありますリピオドールで希釈して血管内注入しているのですが、 この希釈濃度とその固まり具合といいますか、その移動性を検討しております。このC Aの濃度をいろいろ変えまして、そのヒストアクリルアロンαAでそれぞれ検討します と、安全な濃度はヒストアクリルは60%以上、アロンαAは50%以上ということが判明 しております。  そういうことでこういう基礎的なデータをもとに臨床に応用してきました。これは日 本内視鏡学会で出しております消化器内視鏡ガイドラインでございますが、第1版が 1990年5月に出ております。それから第2版、第3版と、第3版は昨年の10月に出て おりますが、第1版からこの治療法としてバルーンタンポナーデと、それから組織接着 剤注入法が記載されております。  それからもう一つ日本門脈圧亢進症学会で出しております門脈圧亢進症取扱規約とい うのがございます。これも第1版が1996年で、第2版が2004年ですが、ここの内視鏡 的治療の使用薬剤として、硬化剤、エタノールアミオレート、エトクシスクレロール、 これは食道静脈瘤の治療薬でございます。それから組織接着剤としてヒストアクリルと αcyanoacrylate monomerが記載されております。その他、無水エタノールでございま す。  このバルーンタンポナーデはこのような大きなバルーンを使って胃の中を内視鏡で確 認しながら圧迫して止血するわけですが、これは単に一時止血だけでありまして、永続 性はございません。それに対しましてこの組織接着剤を使いますと、永続性が得られる わけでございます。リピオドールと混ぜて、基礎的データからも62.5%と75%を使用す るようにしております。リピオドールをしって、それにcyanoacrylateをしって2.4cc とします。胃の静脈瘤に穿刺しまして、バックフローを確認して、それから逆流した血 液をフラッシュして、一気にこのCAとリピオドールの混合液2.4を入れますと、カテ ーテル内に1cc残りまして、結局1.4cc入ることになります。このように出血している ものが、瞬時に止血できるわけでございます。  出血例の場合には高濃度のcyanoacrylateを使います。このように出血点、あるいは 針を刺した穴をきちっとcyanoacrylateが塞いでくれるわけでございます。それで2000 年と2007年に内視鏡学会の付置研究会を中心としまして、大規模な全国アンケート調査 を行いました。2000年の時点では48施設でこのcyanoacrylateの注入法を施行されて おりました。トータルの数が467例です。これは出血例です。それに対して94.9%の止 血率でございます。この48施設はすべて症例をずっと蓄積してくださった施設でござい まして、すべてこれは信頼性のおけるデータでございます。  それから2007年、今年ですが、17施設、これも付置研究会の幹事のやっている先生 方にお願いしまして、データをとりました。過去5年間のデータでございますが、395 例のデータでございます。96.7%の止血率という結果をいただいております。  このように一時止血した後は、cyanoacrylateは異物でございますで、どんどん排出 されてまいります。大体半年から1年ですべて排出されてまいります。それでかなり前 からですが、この大気予防例に対する治療法として、cyanoacrylateとエタノールアミ オレートを使った治療法を実施しております。この方法は胃の急流部静脈瘤と、噴門部 から急流部に及ぶ大きないわゆるLg−cfと門脈の取扱い基準では述べておりますが、 上はLg−fでございます。こういう症例に対しまして、とにかく胃の静脈瘤をCAポ リマーで置換しておいて、供血路ソクをEOあるいはCAで閉塞する手技でございます。 この手技を行う前に必ずこのような3DCTあるいは超音波内視鏡によってその血行動 態を十分把握して、どこまで詰めるかというのをある程度把握した上で使用しておりま す。  例えばこの症例でございます。このLg−fの症例でございます。これは cyanoacrylateをまず2カ所に1.4ccずつ入れて、供血路にEOを入れて、これで治療 終了でございます。これは半年後、1年後と、cyanoacrylateが全部排出されて、全く 消失しております。  ところがLg−fの方は非常に単純な形なんですが、Lg−cfの場合には供血路が 3方向、左へコウイ、タンイ静脈瘤から来ておりますので、これらすべてを閉塞する必 要がございます。このようにまずCAで3カ所これは入れてますが、その後、供血路に 対してEOを入れて、コウイ静脈瘤とタンイ静脈瘤を詰めております。それで1年後で ございます。  このように胃の静脈瘤の形成に関するあらゆる供血路を閉塞することが再発防止に重 要であるというふうにだんだんわかってきております。このように、これは別の症例で すが、長期経過を見ていると、このようにcyanoacrylateというのは排出されますので、 非常に安全性もこれで確認できております。  そしてこの合併症はどのぐらいあるかということで、また全国アンケートなんですが、 症例数が1,039例、これは2000年でございます。合併症が7.2%、資料の方に詳細は記 載してございます。それから死亡率が1.25です。2007年には合併症死亡率がかなり減 少しております。死因は静脈瘤出血、止血できなかった、あるいは肝不全によるもので ございます。  ということでまとめなんですが、今回の大規模な全国アンケート調査、プロスペクテ ィブなスタディではございませんが、かなり良好な成績であった、また出血再発率も極 めて低いということでありまして、胃の静脈瘤出血の患者さんを救命できる唯一の治療 法というのは、この組織接着剤注入法しかないということでございます。以上でござい ます。 ○北村座長 ありがとうございました。それでは引き続きましてワーキンググループ専 門家の荒井保明先生からの追加報告をお願い申し上げます。 ○荒井WG委員 それでは資料5−3にしたがいましてワーキンググループからの追加 報告をさせていただきます。左の方に●が三つございます。まず一番上段ですが、これ は臨床的必要性についての確認ですが、これは今小原先生からお話がありましたように、 この疾患自体は極めて重篤でありますし、現時点では内視鏡的治療しかない、その中で も主としてこの接着剤を使ったものが最も良好な成績をあげている、実際に御報告でも ありましたが、膨大な症例数がこのアンケートに参加された施設だけでも使われている ということを見ましても、本血管塞栓材料が臨床的に非常に必要性が大きいという点に ついては疑いのない点というふうに言えると思います。  そういった背景に基づきまして、今回付置研究会の方から示されましたこのデータに つきまして、どう評価すべきかという点についてが二つ目の●であります。治療法とし ては広く行われているものであって、安全性、有効性についてのデータもかなりあるの ですが、今御発言もありましたように、実際には前向きの調査研究がない、それから大 変膨大な症例数ですし、大変すぐれた成績なんですが、残念ながらいわゆる後ろ向きの アンケート調査という形での集計であるという点を考えますと、内容的には極めて信頼 性の高いものと思いますが、これもむしろこういった新規医療機器の承認自体の姿勢の 問題かとも思いますが、信頼性が高い場合に後ろ向きの研究、あるいはアンケート報告 だけで承認ということに臨んでいいかといった、かなり根本的なところのスタンスとし て一応ワーキンググループといたしましては、このデータがピアレビューのある信頼で きる学術誌に投稿されて、いわゆるエビデンスとして活用可能なものになるか、あるい は短期間小規模であれ、前向きの臨床試験として評価されたものがあれば、それをもっ て承認すべきであって、今回のアンケート調査のみから十分安全性が担保されたという 観点でこれを採用するということはちょっと厳しいかなというふうな結論であります。  また今のお話にありましたように、ここで必ずこのcyanoacrylateにつきましては、 リピオドール・ウルトラフルイドとの併用が行われております。よって本塞栓材料を承 認する過程におきましては、単にこのヒストアクリルという接着剤のみならず、これと リピオドール・ウルトラフルイドを併用した形のものについての評価並びに、それに基 づく承認が必要であると考えます。  三つ目の●ですが、これは導入に当たって、前回の御報告でもしておりますが、大変 専門的な治療手技でありますので、こういった胃静脈瘤の病態並びにその治療法、使い 方について十分習熟した医師が行うこと、並びに使い方を間違えた場合には重篤な副作 用が発生するという可能性に鑑みまして、関連各学会の強力のもとに、やはりこれにつ きましても実施基準の作成が必要と考えられます。  幾つかの報告で胃静脈瘤あるいは胃底部静脈瘤といったことで、やや合意的な混乱が 前回の御報告の時にも指摘しておりますが、実際の臨床の状況としましては、胃底部あ るいは胃静脈瘤ということも結構混乱して使われている場合がありますので、むしろこ こでは妙に胃底部に限定しませんで、適用としては胃静脈瘤として一くくりとして、そ こで判断をしていくべきではないかと思います。以上です。 ○北村座長 ありがとうございました。俵木室長の方から何かございますか。 ○俵木室長 この品目の関連で参考資料を幾つか御用意しておりますので、御紹介だけ させていただきます。参考資料の2でございますが、これは先ほどスライドの中で小原 先生からも御紹介がありましたが、学会でおつくりいただいておりますガイドラインの 中の食道・胃静脈瘤内視鏡治療ガイドラインの部分を抜粋したものでございまして、こ の中の胃静脈瘤につきましては、225ページからが胃静脈瘤の内視鏡治療についてのガ イドラインということで、その中にその次の226ページの方ですが、cyanoacrylate系 組織接着剤注入法、その中にヒストアクリルまたはcyanoacrylate monomer、それから CA・EO併用法ということで、先ほど御紹介があったとおりですが、学会のガイドラ インの中での位置づけでございます。  それから参考資料の3でございますが、参考資料3は私どもが医政局研究開発振興課 とともに昨年5月に配出させていただいた通知でございまして、医療機器のうち適応外 に使用されている医療機器、今回のこのヒストアクリル、それから先ほどの骨セメント も実はそうでございますか、この適応外に使用されている医療機器、それが広く医療の 現場で使用されている場合に、かつ十分な科学的根拠のある場合には医療の中でより適 切に使用していただくために、適応外使用による使用目的、効能効果をその薬事の承認 を受けていただくべきであるということから、そういった学会からの適応外使用につい ての薬事承認の要望があった場合には医政局研究開発振興課より関係企業に申請に向け ての検討を行うよう要請をしていただき、その裏側にございますように、2の(1)(2)(3) と書いてあるような一定の治験がある場合、一定の情報がある場合には、新たな臨床試 験の全部または一部を新たに実施することなく、公知ということで認められる場合もあ るということで、既存のデータを使いながら、適応外の効能効果について承認をとって いく、その方策について昨年5月に通知したものでございますが、その考え方について きょうの御議論の中でもディスカッションをいただければと思います。  考え方といたしましては、この裏側にありますように、そういった医療の現場では適 応外で広く使われてきたものについては、一つとしては外国での承認があって、既に相 当の使用実績があり、その審査当局に対する承認申請に添付された資料が全部入手でき て、日本での審査にも使える場合。  また二つ目としては外国で承認されていて、相当の使用実績があり、国際的に信頼で きる学術雑誌に掲載された科学的根拠となる論文または国際機関で評価された総説等が あって、そういったものが評価できる。  また三番目としては、公的な研究事業の委託研究等により実施されるなど、その実施 にかかる倫理性、科学性、信頼性が確認し得る臨床試験の試験成績がある場合というこ とで、この(1)(2)(3)に該当するような場合には、その適応外について新たな治験を、少 なくともこういったものが公知の根拠ということで評価できる場合がありますというこ とで、できるだけ適応外について承認に向けて対応をいただけるように考えているもの でございまして、今回のこのヒストアクリルの件もこれとあわせて御議論をいただけれ ばと思っております。  それから参考資料の4でございますが、これはヒストアクリルの会社、Bブラウン社 から御提供いただきました企業としての専門家の報告書ということでございます。  それから参考資料5ですが、これはアメリカの米国消化器内視鏡学会のガイドライン でございまして、御参考にお配りさせていただいております。以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。御意見を伺いますと大変重篤な疾患に有用な効 果をもたらしてきたという反面、米国ではこのヒストアクリル、ヨーロッパでは使われ ているというこのスペャルレポートもありまして、資料5−1の中の人の名前、著者名 が書いた表もその中に含まれているものなんですね。  一方、米国の方は、その有効性を余り認めておりませんで、cyanoacrylateそのもの がFDA承認になっていない物質である。一方、我が国はこれは外用薬等には薬事法で 承認されているわけですね。それを食道静脈瘤に使って我が国の成績を出してきたんで ありますが、その成績がどうしてもワーキンググループの方に御意見にありましたよう に、大変有効性の高い結果を出しておられますが、アンケート調査に基づくだけのもの で、前向き試験等々がないというような状況が現在あるわけです。こうした取扱いにつ いて委員の方々の御意見はいろいろあろうかと思いますが、まずお聞きしてみたいと思 いますので、御意見のある方はどうぞ。 ○梅田委員 この胃静脈瘤からの出血に対する前向きの試験というのは、というのは、 症例的にまだ少ないですね。ですから問題点として前向きに試験をするというのは、極 めて困難を伴うということが第一です。それから、今のところ出ているデータは後ろ向 きなんですが、こちらの方としては指摘されると大変困るんですね。実際問題として。 それだけ症例数があるかと言えば、私の経験から言いましてもそれ程ありません。です から症例が特殊なセンターに集まってしまうのは事実なんですね。  それからこの方法にしても、例えばリピオドールを使う施設と使わない施設とがある のですね。東海大学などは使わないんですね。それでもいい成績を出している。ですか らそれを義務づけるのはちょっと無理があるかなというふうなこともあるので、それを 前向きにやるとすると、ではどちらにするんだということにもなるんですね。その点困 るところがあるなというふうに感じています。 ○北村座長 他に御意見はいかがですか。 ○吉田(茂)委員 症例数もそうなんですが、他に治療法がないということと、緊急性 を要するということだって、そうすると例えば症例数が少ないというバックグラウンド の中でやりますと、常に緊急状態と向き合っていて、例えば事務局に連絡したり何かす ると適格性とかチェックしながら前向き試験をやるというのは極めて現実的じゃないの と、他に治療法がないという状況から、患者さんとしてはできるだけ早く治療してほし いということがあります。そうするとこういった種類の治療法に関して前向きでなけれ ばだめだという根拠はかなり薄いんじゃないかというふうに思います。  もう一つは、荒井先生が今やっておられるTAEも初めはいろんな過去のデータを積 み重ねてTAEというのは塞栓するというのは、人間非常に危ないと当時は思われてい て、そういったことがあって、前向きではなくて、過去のデータで承認を受けていると いうデータもあります。それも結局他に治療法がない、緊急性があるということでクリ アしてきた課題じゃないかなと私は思いますので、そういう意味でいわゆる非常にフリ ークエントな病態であって、それでたくさん症例があって、ある程度落ち着いて対応が できる状況と、緊急性を帯びたこういった状況とはやっぱり考え方は分けて考えた方が いいし、もう一つはこれは逆輸入だということももう一つ理由になると思います。  ですから日本での成績が海外でも注視されているということもありますので、どこま でエビデンスを固めたらいいのか、じゃあワンアームで、例えばプロスペクティブでや るとして、じゃあ何例集めたらいいんだ、1,000例なら根拠があるのか、500例でいいの か、100例でいいのかというのは誰も何も言えないと思いますので、ですからそれはむ しろ薬の場合でもそうでしょうが、安全性の検討を学会がフォローしてやるとかの方が より現実的だと私も思います。 ○梅田委員 これはただいま吉田委員がおっしゃる通りで、緊急出血時にはコントロー ルを置くことが困難な場合が多いのが実情です。塞栓剤を投与しない群に入れられた患 者は死亡する危険性が高いですからこれを対象群とはしにくいと言う欠点があります。 では、他の方法としてはどのようにするのかと言うことになりますが、その場合は cyanoacrylate群と他の塞栓物質を用いた群とでは止血方法と比較・対照試験をするこ とになります。それは施行可能と思いますが、結局は同様な結果になるであろうと予想 されます。  胃静脈癌から緊急に出血した場合に行う場合の処置と、予防的に施行する場合とでは 条件が異なります。緊急出血時にはまず止血処理を優先するためにコントロールを設定 し難く、どうしても十分なデータが取り難くなってしまいます。新たに研究班を立ち上 げてデータを作ろうとすると非常に時間が掛かるだろうと予想されます。その点を厚生 労働省として、また、本委員会としてどのように考えるかについてお教え頂きたいと思 います。 ○笠貫委員 先ほどのワーキンググループからの報告があったこととも関連するのです が、臨床の現場としてはもう20年使っているという実績と、それから代替治療法がない、 緊急性を要する、逆輸入である、症例数が少ない、ことがあげられています。臨床の現 場で使われているという実績は大きいと思うのですが、基本的にはこういった長い歴史 で適応外使用でしていたものをどのように国として認めるかという意味では一つのモデ ルケースになると思います。  先ほどからちょっと誤解があるのは、レトロスペクティブ・コホートスタディと、プ ロスペクティブ・コホートスタディと、ランダマイズ・スタディと、アンケート調査は それぞれ違いがあるということですね。そういう意味でここに書かれているのがアンケ ート調査だとすれば、それと国として20年使われた実績で、許可できるかということが エビデンス・ベイスド・メディスンの時代に容認されるかということだと思います。  そういう意味で、このアンケート調査が、もしレトロスペクティブ・コホートスタデ ィであって、100%に近いエントリーで、少なくとも96%のフォローアップ率があった とすると、これは非常に精度の高いレトロスペクティブ・コホートスタディであり、プ ロスペクティブ・コホートスタディはほぼ同等に扱われるかもしれません。  多分2000年の時にはそういうデータではないんだろうと思うんですが、2007年のこ のデータが、先ほど言いましたクオリティの高いレトロスペクティブ・コホートスタデ ィとするのだったら、ピアレビューのある学会誌にそのデータをお出しして、それがピ アレビューで通るのだとしたら、このデータで認めることは可能だと思います。そうで なかった場合は、アンケート調査では、無理があると思います。  もしこれがレトロスペクティブ・コホートスタディに当たらないアンケート調査だと すると、私はこれからプロスペクティブコホートスタディを行えば、先ほどのようなク ロスオーバーもいらないですし、ランダマイズ・スタディもいらない、きちんと登録を しておいて、それを少なくとも96%以上のフォローアップをする、そのフォローアップ 期間は何年か、1年かというのなら、先ほどの再発性出血も大体1年以内ですから、そ の辺のところでプロスペクティブ・コホートスタディのプロトコールをつくれば、先ほ どの17施設で839例、5年間ですから、これをもし先ほどの1,000例のところの48施 設に広げてやれば、プロスペクティブなコホートスタディも可能だと思います。  現実的にやはり20年間やってきたという実績は非常に大きいわけですから、そこにこ の出血例と待機例と予防例を入れて、プロスペクティブ・コホートスタディでどう解析 をするかということも書いておけば、臨床の現場に負担をかけないで、患者さんの不利 益にならないようにエビデンスが出てくるんじゃないかと思います。  私はまず第一として、この2007年のデータが先ほどのレトロスペクティブなコホート スタディとして十分なものであるかどうか、それは一つの判断はピアレビュアーのとお るところのある学会誌に投稿する、第二に、それがだめな場合にはプロスペクティブな コホートスタディを行うということでいけば、私は臨床の現場の不利益というか、患者 にとっても医師側にとっても不利益なしでこの治療法を早期導入するということで、十 分ではないかという感じがいたします。 ○北村座長 はい、ありがとうございました。小原参考人何か御意見はありますか。 ○小原参考人 大変参考になりました。この2007年のデータがもしまとめ方によっては おそらくコホート研究になるんじゃないかと思います。ぜひそれをまとめて学会誌に出 してと思います。ありがとうございます。 ○北村座長 他に御意見はございませんか。この治療法がこの長い歴史をもって、我が 国では一つの治療体系の中に完全に組み込まれている、それがこの病気を扱っているす べての病院で行われているかどうかはわかりませんが、少なくとも今回のアンケートで も48施設で1,000例を超えるのが5年間で行われているとして、先ほどのプレゼンテー ションにありましたように有効であるという感覚は非常に強い。  しかし一方、こういう経験談だけで承認をしていくと、微妙なケースが幾らでも出て くる場合にどう取り扱うことも大きな日本の審査承認という過程に大きな問題で、ここ は早期導入をして、患者さんに役立てるというところではありますが、一方ではその安 全性、そしてその体制、誰がするのが一番安全なのかも含めてやろうという形をとって おります。  その中で委員会としてはアンケートをもって事実と判断してしまうということについ ての不安があるのは正直なところ事実でありまして、これだけの成績があれば、やはり こういった治療法にクリティカルな意見をもっている人たちの目を通しても、なおかつ 有効としてなるのかというような判断をしてもらいたいというのが本音です。そしてそ れを我が国からむしろ米国の方へそれを追承認をさせていく動きが出てくるのであれば、 それはそれですばらしいことだと思います。一方ヨーロッパではこうしてやっていると いうところもあるわけで、ぜひ我が国からのデータをレトロスペクティブでも結構なん ですが、コホートとしてのスタディという組み方をして、今からプロスペクティブにや るというのは大変時間がかかってしまうだろうと思いますので、何らかの形で反対の意 見を持つ人のコメントを踏まえてでもやはり承認するという姿勢を示したい。我が国で はこの治療法に強い反対者というのはいないんですかね。  限られた施設というのが、先ほどもお話に出ておりましたが、日本での反対者という のがあるのかないのかもちょっと私もわかりませんが明確にしたい。そういった面でも 最もよいのがやはり専門家で意見の違う人のピアレビューを見てなおかつ根拠ありと判 断していただく、その資料をもってこの委員会でもできるだけ早く認められるものなら ば認めた形で広く普及させていただきたいと願うわけなんですが、問題はその間どうす るのかということです。それは患者さんとの間で説明責任をもって医師たちの判断で行 う以外、今の状況ではないと思います。国として承認していくという形においてはもう 少し資料を確実なものにしていただきたいというのがあります。今、小原委員もその方 向で御検討いただけるというふうな御回答でございましたので、さらに少しエビデンス の形をもったものをもって改めて早期に導入したいという方向にしたいと思いますが。 ○吉田(茂)委員 そうするとこの委員会としてヒストアクリルに関しては特急列車に 乗せない、急がなくてもいいという判断になるんですね。 ○北村座長 急ぎたいんですが、もう少し最終段階の急ぎのために、もう一つ追加デー タがほしいということですね。 ○吉田(茂)委員 でもおそらくそれは決めるのは機構なり審査課なり、審議会の方だ と思うので、我々として考えなければいけないのは、これは急ぐべきか、普通でいいか ということの一点だと思うんですね。ここのニードで高いところで急いで入れるべきだ ということになれば、それなりにメーカーなり学会なり、対応してほしいという希望で すので、ここで見送るということになると、これがそのままいわゆる治験なり何なりの 普通のやり方で承認されるのを待つべきだという、こういう格好になってしまうんじゃ ないかということを恐れるんですが。 ○北村座長 座長と座長代理で意見が変わるといかんのでしょうが、いやそうではなく て、私も委員の人たちも現場の立場に立つとできるだけ早く承認して、あるいは必要で あれば保険承認にもっていくという形でやりたいと思うんです。ただ、ここの委員会か ら早期に導入すべしという判断をもって推薦するのには、もう少し意見がほしい、正確 なデータをつけたいというのがあり方ではないかというふうに考えておるわけなんです が。 ○千葉委員 御意見の分かれるところかと思いますが、最初の委員の方お二人がお話し したとおり、他に治療法がない、歴史がそれなりに長い、ただ笠貫先生のおっしゃるこ とも非常によく理解できることですので、例えばこの委員会として基本的に迅速導入に は賛成するけども、その早くピアレビューを経た雑誌に掲載するようにということを条 件として、そういう形はとれないものでしょうか。エビデンスが次のものが集まるまで はということをこの委員会の結論にするには、ちょっと時間がもったいないなという気 が私はしておりますが。 ○北村座長 千葉委員の言われたこと、微妙な裏表関係だと思うんですね。ですから原 則承認追加資料を求めるという形なのか、追加資料をもって承認するというのかという ことですね。どちらが早いのか。まあ皆さんの御意見を見ますと、原則承認して、あと ピアレビューを含めた意見を広く世界に通った資料を出してほしいという形で、私はそ ちらの方がニュアンスとしてよければそれでもいいんじゃないかと思うんですね。  だから早期導入の意見は大変強いであろうと思うし、長い歴史から我が国特有の方法、 有効性が、一方では副作用もありどのぐらい実際プロスペクティブにやった場合起こる のかわかりませんが、少なくとも助けられているという事実をもって、原則早期承認に もっていく、ただし、少し広い意見を求めた資料を確立させてほしいという姿勢で、千 葉委員の言われた形の方がよければいいんじゃないですかね。 ○梅田委員 今回2007年までのデータを集めて、これは論文にすることは非常に簡単な んですね。学会としても非常に強くプッシュしてますので、小原先生も幕内先生もぜひ 書いてのせたいということを言っておられますので、横文字にするのも難しいことでは ありません。ただそれを今のように後追いだと言われると困ってしまうのですね。その 点がどういう御意見なのかということを確認したいんですね。 ○笠貫委員 後追いというお話ししたのは、レトロスペクティブ・コホートスタディと してクオリティが高ければプロスペクティブ・コホートスタディとほぼ同等にみなすこ とができます。これはアンケート調査として書いてあるので、本当に単なるアンケート かということを確認したいんですね。このデータをレトロスペクティブ・コホートスタ ディだという形で、まとめていただければ、このデータはそのまま使えるだろうと思い ます。  これからのこういった事例は、いろいろ日本では医療機器については少なくないと思 います。その時の早期導入とは何かということであり、その位置づけだと思いますが、 20年使っていることをここで止めろということではなく、20年使っていることは、実績 として臨床の現場では続いていることであり、それを国が承認する時にはEBMとして 少なくともレトロスペクティブ・コホートスタディがきちんとできれば、私はプロスペ クティブ・コホートスタディは必ずしも必要ないだろうと思うのですが。  アンケートとして書いてあるので、通常のアンケートでは認めることはできないんじ ゃないかと思います。特にアメリカがそれを認めてないということは、逆にレトロスペ クティブ・コホートスタディで非常にいい結果が出たらアメリカも認めるようになるか もしれない。ただアンケートで認めたということになったら、絶対にアメリカは容認し ないでしょう。そういう国際的なEBMのレベルから考えても、ぜひその御検討をして いただいてからと思います。 ○吉田(茂)委員 アメリカに関しますとアメリカではそれほど静脈瘤の頻度がないの で、余りプライマリーな問題じゃないというのが一つですね。それから今のコホートの 話ですが、小原先生もおそらくアンケートといっても電話をかけて聞いたわけじゃない だろうし、CRFがちゃんと整っているはずですから、だからそのCRFをちゃんと整 ったやつを、こういうフォームでこういうふうにやったということで、エビデンスレベ ルは上げられると思うんですね。  いずれにしてもこの委員会というのは承認するとかしないとかの話しじゃないので、 ですからこれが整ってないから意味がないという議論ではなくて、これはやっぱり急ぐ べきだ、あるいは特急券をあげようというか、それは普通の審査でいいかというふうな 判断でやるべきではないかなというふうに思いますので、そういった意味で言いますと、 ちょっと料金足りないけど特急券をあげてもいいかなというふうには思いますけど。 ○梅田委員 今小原先生の発表の2007年までのと、それから2000年までのとちょっと 比較していただくとわかるんですが、例えば救命率というようなことも、今度のアンケ ートでは、こちらの注文で加えて調べて頂いているんですね。どれだけ助かったかとい うようなことも含めてやっているので、そのアンケートと言ってもやや意味が違います ので、その辺も含めて小原先生の方でまとめていただければ良いんじゃないかと思うん ですが・・・。 ○小原参考人 各施設それぞれ学会で発表して、各施設で論文としてまとめたデータも あるんですね。それを今回集めて一つにしたわけなんですね。ですからうちでも今英文 雑誌に投稿していますし、そのデータもここに入っています。そういう意味でアンケー ト調査ではありますが、もっと質のあるアンケートだと思うんです。もう少し書き直し た方がいいかなと、今お聞きして、コホートになるかなというふうに考えています。 ○北村座長 きょうは揉めるであろうと予測しておりまして、予想どおりいろいろ意見 が出ました。確かに難しいですね。何でこんな20年もやっているものを今上げてくるん だという、しかし上げるのがよいと皆さん思っておられるから上げてこられたんでしょ うね。やはり正式に承認して、そしてエビデンスのある医学として、普及をさせて保険 の承認を用いて人を助けていく、放っておけばそのまま今のままいってたかもしれませ んね。  しかし今先生方が学会としてあげるべきと判断したには、やはり広くこの医療がよい のであれば、普及して、保険医療にもっていくということで、できるだけ中止にならな いように、早期導入という形で上げてこられたということだと思います。一方ではこの 委員会は出せ出せと言われましても、先ほどの骨セメントの骨粗鬆症の場合を一応今は 出さないというふうに決断したように、それはエビデンスが乏しいところはそれを確実 にする方法を取り、少しでもエビデンスをもってPMDAに上げていかないと。これは 必要だから上げろというだけじゃなくて、やはり科学者と申しますか、医者たちの委員 会ですので、専門的な委員会ですので、医療としての客観性を持たせた証拠をあげる必 要が僕はあると思うのです。ここでやっている中で、このすばらしく見える医療をやは り少し形づくっていただいていく、それで先ほどの意見も含めまして、私としては本質 承認に向けて、アンケートではなくて、ピアレビューをしたもので、エビデンスのある ものとしての資料を御提出頂きたいという事でお願いできないか。幸い梅田先生も最終 的にはその方向でよいとおっしゃっていただきましたので、この委員会からは早期導入 承認、ただし最終的にそのエビデンスのところをもう少し形を整えていただくという形 で、事務局よろしいですかね。  ちょっとこだわっておられたのは、そのデータを出せ、それからもう一回審査だとい うのか、原則的には早く進めましょう、ただし最終段階の資料を提出してほしいという ことですが、後者をとりたいんですけど。どうですか。 ○俵木室長 先生方の御議論の御結論はそのようにお聞きいたしましたので、これから ピアレビューを受けられるような雑誌への投稿ということで、おまとめいただきまして、 最終的にはもちろんそれをもとに審査ができるかどうかということで、PMDAと最終 的には御相談ということではありますけれども、この手技自体はできるだけ早く導入し てほしいという、この検討会の御決定ということで結論いただいたということで記録し たいと思います。 ○北村座長 千葉先生、結局は一緒になると思うよ。ただ、言い回しのニュアンスがあ ると思いますけどね。やはりそのデータが出てきた時に、もう一回了解を得る必要が何 らかの形であるのかどうかだね。 ○千葉委員 この委員会ではもう一度ということですか。 ○北村座長 その新資料はもう一度通しますか。 ○俵木室長 もういらないというふうに今理解したんですけど。ここはその資料自体の 中身を御審査いただいたわけではございませんので、吉田先生のおっしゃるように、こ の手技自体は前に進める、早く進めるべきだということで御結論をいただいて、その審 査がおまとめいただいたデータでできるかどうかについては、またちょっと別の問題に なりますので、それは審査という中でやらせていただくということでよろしいでしょう か。ですから最終的にはその出口を出て行くのがいつになるかはちょっとまだ見えませ んけれども、この手技自体は前に早く進めるべきものということで御結論をいただいた ということだと思います。 ○北村座長 ということはこの委員会としては前向きに進めるように最終詰めを事務局 の方でお願いしたいということでよろしいですね。 ○笠貫委員 基本的にはそれでよろしいのですが、こういう長年やっていたものは、こ ういう形でオープンにして、そして国が認可する、非常に意味のあるモデルケースだと いう印象をもっていますが、その時に形を整えるという言い方では問題です。むしろこ れだけの長年のいいデータをもっている時には、レトロスペクティブ・コホートスタデ ィを求めるということだけここで決めておいていただいて、あとはレトロスペクティ ブ・コホートスタディとして認められるかどうかは、学会誌論文申請されたところでP MDAの方での判断にお任せするということです。きょう決めたことはアンケートでは ないということと、レトロスペクティブ・コホートスタディということが最低条件とい うことがここで決まっていただければ、あとはPMDAの方でよろしいかと思います。 そこの線引きは私は非常に大事だと思います。 ○北村座長 その時もレトロスペクティブでよいと言っていたものが、このような命が かかって分ける2種類のグループをつくり得ないというようなケースと、そうではなく て、この薬にこの薬を足した時の何とかという臨床研究の場合とまた大きく違うだろう と思うので、やはりランダムの成績が必要なエビデンスもあれば、逆にこのような場合 と同様にレトロスペクティブのスタディで十分というのも歴史的にはたくさんあります し、この場で一つこの方法でよいというよりも、やはり課題別にいろいろな場合があり 得るんじゃないでしょうかね。  ですから少なくともアンケートだけでハイ何でもOKということはいかないのは事実 だと思いますけれども、それは再生医療の場合、あるいは薬品の場合、それぞれのプロ ジェクトあるいは課題によってどこまでのエビデンスを求めるのかは一概には決めない 方がいいのかもしれませんね。と思われませんかね。私としてはやはりアンケート調査 というのはちょっとエビデンスとしては低すぎる、しかしこの場合ではレトロスペクテ ィブのコホートで十分である、しかし場合によってはそれよりより高いエビデンスが求 められる場合もあろうと思いますし、新しい薬品に当たっては完全な治験がいるわけで、 フェーズを全部1、2、3、4といるわけですし、そこを狂わせてこれを早期導入せよ ということはなかなか難しかろうと思いますね。 ○笠貫委員 私もこのケースの場合には、レトロスペクティブ・コホートスタディでい いということをこの検討会でお出しいただいたところであり、他のところに適用するか どうかは別問題だろうと思います。 ○北村座長 ありがとうございました。ではそれで小原先生よろしゅうございますか。 ありがとうございました。それではその方向で進めさせていただきたいと思います。本 日の議題は昨日からちょっと気が重かったのでございますが、案の定いろいろな意見が ありました。こういう非常に難しい微妙な問題をいっぱい含んでいますので、しかし要 は早くいいというのある治療は使えるように、そして広く保険の医療にもっていけるよ うにという観点で、各企業の方々も努力していただきまして、PMDAとの話合いでス ムーズにこれがその後進んでいくというふうにお願いしたいと思うわけであります。 ○俵木室長 それでは資料7、8で今後の進め方の方向性について御了解いただければ 進んでいきたいと思っております。資料7でございます。きょうまでのところで、昨年 の12月いっぱいで学会から集めました59種類の医療機器の御要望の中から13を選んで 今年何回かにわたって御評価をいただいてきまして、きょうの2品目が宿題になってお りましたが、これで13品目の評価をすべて終了いたしました。  次にこの検討会はどうするかということでございます。その方向性について御指示を いただければと思います。事務局の方で考えておりますのは、資料7の1と2という二 つのアプローチを考えております。一つ目は学会等から要望のあったこの59のうちの終 わった13以外がまだ残っておりますので、その以外の部分について、次に優先的にやる のはどれかというのを選んだらどうでしょうかということでございます。  もう一つは2にございますように、新たにもう一度学会から御要望を受け付けたらど うかという二つのやり方でございます。事務局といたしましては、資料8の方にござい ますが、イメージ図でございまして、このとおりに進んでいくかどうかはお約束の限り ではないのですが、本日19年度12月で一番左側のところでございますが、第6回検討 会、御了解をいただければ第一次募集品目という、59選んだうちの13が終わりました ので、その次に優先すべきものを次のランクのところから選んで選定ワーキングで選び、 公募で企業を募集して、今年と同じように品目ごとに評価ワーキングでレポートを書い ていく。  それからもう一方それと並行いたしまして、新しく学会からもう一度御要望を受けて、 次の選定を行っていくということ、ちょっと時期をずらしながら進めさせていただいた らどうかなというふうに考えております。特に新たな学会からの御要望につきましては、 昨年の要望が約1カ月ということで非常に短い期間で御要望を集めたこともありまして、 十分に学会の中で選定をいただけなかったものもありますし、また御要望を出しきれな かった学会もございますし、また十分なエビデンスを御確認いただかないまま御提案い ただいたようなものもございましたので、そういった御要望に当たっての要件などもも う一度明確にいたしまして、要望を若干長めに期間もおいて集めていきたいと思います。  上の段の方の残ったものからどれを選ぶかという問題でございますが、資料の7の方 に戻っていただきますと、13を選んでいただきましたのは致死的な病院で他に治療法が ない、またはQOLが極めて悪くなる病気で単に治療法がない、何しろ単に治療法がな いものについては13種類選んでいただいて、これはやったんですが、残っておりますの は、他に治療法があるんだけれども、それよりもすぐれているというものですね。これ が残っておりまして、資料7の四角に囲ってあります疾病の重篤性がAで、医療上の有 用性もA、疾病の重篤性がAというのは命にかかわる病気で、医療上の有用性がAとい うのは単に治療法がない、これはもうやりました、それから疾病の重篤性がB、これは QOLの問題でございますが、それに大きな影響を与える疾病で、医療上の有用性とし て他に変わるものがないというAだという、このAAとBAと終わりましたので、その 次に疾病の重篤性が命にかかわるA、医療上の有用性が他に治療法があるんだけれども、 こちらの方がすぐれているというB、このAB、それからBBになるものを次に選んで いきたいと思います。  このAB、それからBBになるものは、この資料7に後ろについておりますが、22技 術がございまして、この中から優先的に選んでいきたいというふうに考えております。 22を全部優先的な審査にいたしますと、どれも優先にならないということに結果的にな ってしまうのが現実でございまして、大変申しわけございませんか、13品目を優先的に 選ばせていただいたように、22の中からまた優先的に進めるものを選ばせていただけれ ばと思います。  その選定に当たりましては、疾病が重篤なA評価、致命的な疾患については品目その ものが未承認であるものというのをまずお選びした方がよろしいのではないでしょうか。 また疾病の重篤性がB評価、QOLの問題ですが、そういったものについては品目が未 承認であるとともに、欧米でかなり相当期間においても使用されてきて標準的になって いるというものを最優先したらどうでしょうかということで、具体的にこれとこれとい うことでまだあれですが、事務局としてはできましたら選定ワーキングでこの辺の御議 論をいただきながら22品目の中から選定を進めていただいて、次回の検討会にお諮りさ せていただければというふうに考えております。以上でございます。 ○北村座長 ありがとうございました。御意見はございますか。 ○四宮委員 選定する場合に、やっぱりある程度内容をわかっていただかないと、これ が本当に必要であるのかとか、その点だけなんです。だからやっぱり関係者がいかに本 来これが重要であって、どうしても入れてもらいたいからというふうなことを発言する ような機会をワーキングの中で与えていただけた方がいいと思います。 ○俵木室長 物理的にどうやるか、事務局の方でも検討しますが、御要望いただいてか らもう1年にもなりますので、学会の御意向といいますか、現状といいますかについて は、例えば学会の方に改めて事務局よりヒアリングをさせていただくとかということで、 どういう方法でやるか、今の御意見などを踏まえてやり方を考えさせていただければと 思っております。 ○北村座長 学会からの新たな二次募集の方が前の残っている22品目と重複しても、そ れはかまわないだろう。もしもう一度強調して出したいというのなら、出していただい てもいいのではないかなと僕は思っているのですが、こうしたちょっと時間をずらした 二本立てで行く方が、この1年間でさらにまた事情が変わった部分もあるかもしれない というので、この二本立て形式でワーキンググループの選定にかけていくという形で、 原則的にはよろしいですか。 ○笠貫委員 今年度は非常に短期間でしたので、来年度も各学会にニードの高いものが あるかどうかについてぜひ続けていただきたいことと、もう一つはここでの分類は疾患 の重篤性、医療上の有用性という二つの分類で検討されているのですが、これまでの1 年間の経験で、診療法としての早期導入というふうな意味合いのことと、それから既に もう医療機器というのは進歩が非常に早いですから、1年ごとに新製品が出てくるよう な場合の早期導入と、長年実績があるのに、まだ認められてない場合の早期導入という 臨床の現場としては大きく分けるのと三つのカテゴリーがあるという印象を持っていま す。今までここで議論されたことを踏まえて、どういうことにカテゴライズされるのか、 カテゴライズされていったら、そのカテゴリーごとにどのように早期導入の方策がある かということもあわせて検討していただきながら、この2年での新しいものについて対 応するということにすると、大体2年間で大きな方向性は見えてくるのではないかと思 います。各々のカテゴリーというものでの分類というものをやっていただけたらありが たいと思います。 ○北村座長 医療機器のカテゴリーってできてますよね、クラス1、2、3、4とか、 あれとはまた別に? ○俵木室長 今笠貫先生がおっしゃっているのは、いわゆるエビデンスでのレベルなり、 技術の新しさというからカテゴライズして、例えば先ほどのような適応外で長く使われ るものをどう早く入れるか、早く入れるためにはどういうエビデンスがあればいいのか、 また改良品についてはどういうふうにすれば早く導入できていくのかということも、そ のカテゴライズして少し頭の整理をしろということかと思いますので、ちょっと事務局 の方でまた考えてみたいと思います。 ○平岡委員 私が一つ心配するのは、今この医療機器の審査体制というのが必ずしも十 分ではないですよね。そうなりますとこのようにどんどん早期承認という品目をふやし ていきますと、本来のルートで申請しているものが遅くならないか、特に今審査してい るものはほとんど海外からのものですよね。やはり本来日本で開発された革新的なもの を早く承認して、早く医療に使っていくということも非常に大事だと思うんですけれど も、やっぱりそういうところにむしろブレーキがかかるんじゃないかというふうなこと を心配するんですが、そのあたりのことはといかがなんでしょうか。そのあたりのこと も推進しながら、これも推進するということが必要なんですが、そのあたりに対する対 応は十分できるんでしょうか。 ○俵木室長 実際に第1回に選んでいただいた13品目のうち、日本開発のものでも限ら れたものでございまして、多くが先生御指摘のように外国製品でございましたが、審査 の側から言いますと日本製でも外国製でも日本の患者さんのために早く導入すべきもの を早く審査していくということになるのでございますが、もちろんここで多くのものを 優先審査ということでお決めいだたければ、その分その他の審査のところに残念ながら 影響を及ぼすことは事実あるかもしれませんので、今日もお願いしましたようにこれを 優先的にやろうというものを厳選していきたいと思っておりますので、どれも早くして 早く承認をしたいのですが、ここで少し優先順位をつけさせていただきたいというのも そういう趣旨でございます。よろしく御理解をいただければと思います。 ○千葉委員 これまで1年間この会議で参加させていただいて感じたことは、迅速導入 を目指すというお話の流れには、一回2品目ですか、もうちょっと何かスピードをあげ る方法があるのであれば、次のこれから1年間ではそういうことも考えていいのかなと いう印象は一つもちました。  もう一つは、疾患の重篤性と医療上の有用性の二つを中心にして選んでおられますけ れども、やっぱり疾患の頻度、どれだけ一般的であるかということも、その次にくる一 つの判断要素かなと思っておりまして、そういったことをこれまで感じたということで ございます。 ○笠貫委員 私はこの早期導入に関する検討会は画期的だったと思っていますが、ここ では早期導入の目的は何で、優先するかについて、議論されている過程の中で、診療法 と、改良品と、今まで認められてなかったものをどういう方策でいけば早くなるのかと いうことと、それからそれに対して十分PMDAの方に人的にパワーがあるのか、もし ないのだとしたらもっと国に予算をとっていただいて、充実させる方向にもっていって いただきたい。  人的パワーが少ないために、早期導入が限られたものしかできないのか、もしそれ以 外の問題があるのだったらどこにあるのか、メーカーサイドか、あるいは学会サイドに あるか、その辺も含めて早期導入ができない障害になっているものについて、この検討 会の中で、こういう特殊例を扱うことによって多分出てくるんだろうと私は期待してお ります。障壁になっていることをここから出たものとして生かしていただきたいと思い ます。アメリカのFDAに比べて日本のPMDAはまだまだこれからもっと充実してい ただきたいというのが私の強い希望ですので、そういう意味でも頑張っていただけたら と思っています。 ○北村座長 よろしいでしょうか。手探りでスタートした委員会ですが、だんだんと問 題点、あるいは改良する点も明らかになってきて、できる範囲でその方向に向かって進 めていただくものと思っております。皆さん方の御意見で、それでも13品目を一応終了 しました。ちょっと懸案の課題が1〜2ありましたが、初めの考え方では年間最大10 個、それ以上は今のPMDAでは今さっきの既存のものに障害ができすぎる、ちゃんと した治験をやっているものがおくれていくというような懸念も出されております。次に また新しく積み残しと新たな分での10品目ぐらいでしょうかね、それを厳選して進めて いく中で、皆さん方の御意見を反映していくようにできればというふうに座長としても 思っている次第です。  それではあとは予定とか、その他のことで事務局の方からお願いして終了したいと思 います。 ○事務局 次回の日程でございますが、今後の進め方で御説明させていただきましたと おり、まず選定ワーキングで次の検討品目の項目の検討をお願いいたしたいと考えてお ります。その後、来年の2月頃に本検討会を開催させていただきたいと考えております が、後日事務局より日程調整の御連絡を各先生方に申し上げさせていただきます。開催 日等が確定しましたところで、あわせて御連絡を申し上げます。  また、本日の議事録につきましては、作成次第御確認のためまた御連絡を申し上げま すので、お手数でございますが、御確認のほどお願い申し上げます。その議事録に関し ましては、後日公開させていただきますので、あわせて御検討のほどよろしくお願いい たします。以上でございます。 ○北村座長 終了したいと思います。ありがとうございました。よいお年をお迎えくだ さい。 (終了)