07/12/14 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」第6回議事録 第6回これからの地域福祉のあり方に関する研究会             開催日:平成19年12月14日(金)16:30〜18:30             場 所:全国社会福祉協議会 第3・4・5会議室   ○大橋座長  それでは定刻となりましたので、第6回これからの地域福祉のあり方に関する研究会を始めさせて いただきます。地域福祉の既存制度の課題、現状についてずっとレビューをしてまいりましたけれど も、今日は最後でございまして、地域福祉活動を支える財源について話を進めてまいりたいと思いま す。次回以降はこれからの地域福祉のあり方そのものについての検討を深めたいと思っておりますの でよろしくお願いいたします。  今日は地域福祉活動を支える財源についてということで3人の方にお忙しい中をお越しいただきま した。後ほど詳しくご紹介があるかと思いますが、株式会社花王のコーポレートコミュニケーション 部門の社会貢献部長の嶋田実名子さんに来ていただきました。ありがとうございます。それからお2 人目で、共同募金のレビューということで中央共同募金会の企画広報部長の島村糸子さんに来ていた だきました。ありがとうございます。それから同じく既存施策のレビューということで、生活福祉資 金の貸付の現状ということで北海道社協の生活支援課長の亀川さんに来ていただきました。ありがと うございました。  それでは事務局から出席状況の確認をお願いします。   ○事務局  本日は長谷川委員がご欠席でございます。それから清原委員、榊原委員からは遅れて来るという連 絡が入っています。以上です。 ○大橋座長  ありがとうございました。金井委員が今日は所用で途中で退席しますので、あらかじめご了承いた だきたいと思います。それでは中村企画官の方から、今日の研究会のねらい等についてご説明いただ きたいと思います。座ったままでどうぞよろしくお願いいたします。 ○中村企画官  では、まず本日のねらい等についてご説明をさせていただきます。本日は局長及び総務課長、審議 官が伺えないかもしれないということにつきまして、まずもってお詫びを申し上げたいと思います。  これまでこの研究会におきましては、地域で取り組むべき課題や対象者、取り組みの視点や方法、 システムのあり方などについてご議論いただきまして、前回は地域福祉を進めるカギとして住民参加 についてご議論をいただいたわけでございます。今回は、前半部分においてまず地域福祉を進めるに 当たってやはり重要な要素でございます財源について、特に寄附についてご議論をいただければと存 じます。後半部分につきましては、先ほど大橋座長からございましたように共同募金及び生活福祉資 金についてレビューをいただければと存じます。  まず前半部分でございますが、資料1の4ページ目をお開きいただきたいと存じます。本日のテー マは「地域福祉活動を支える財源について」でございます。私ども事務局で考えてみました論点とし ては、まず地域福祉活動を支える財源をどのように確保するか、どのようにしたら寄附意識が根づく か、寄附を促すためには共同募金などの既存の仕組みをどのように工夫すればよいのか、という論点 を提示させていただきました。  続きまして、資料3に基づきまして地域福祉活動を支える財源についてご報告申し上げたいと思い ます。まず1ページ目をお開きください。ごくごく大ざっぱに現在の地域福祉活動を支える財源には どんなものがあるかというのをお示ししております。  まず主な公的財源といたしまして、高齢者福祉分野においては地域支援事業交付金。例えば介護予 防のための訪問活動であるとか、あるいは地域の関係機関とのネットワークづくり、あるいはサービ スへのつなぎをするというような事業に対する交付金でございます。障害者福祉分野におきましては、 地域生活支援事業費、約800億円。障害者サービス利用のための相談であるとか、あるいは視覚障害 者、聴覚障害者の方々のためのコミュニケーション支援ですとか、日常生活用具の給付などがここに 含まれます。また児童福祉分野におきましては、次世代育成支援対策交付金ということで、育児支援 のための例えば家庭訪問ですとか、保育園あるいは幼稚園のお迎え、あるいは預かりというような事 業に対する交付金でございます。  右側が主な民間財源でございまして、1つは共同募金の配分金。平成17年度実績で約188億円でご ざいます。また助成財団による助成といたしましては、日本の上位20財団の年間助成額平成12年度 決算でいきますと、約233億円という数字が出ております。なお、平成17年度決算でいきますと259 億円という数字が出ているようでございます。  次に寄附をめぐる現状について簡単にご説明させていただきます。まず4ページ目をお開きくださ い。左上の表をご覧いただきますと、日本の寄附金総額の推計が出ております。7,281億円。参考ま でにアメリカの数字を並べてございますが、24兆5,174億円という数字が出ております。日本とアメ リカを比べますと、まず合計額が大きく異なる。また日本は個人寄附の割合が低いということがここ から言えると思います。  右上の数字で見てみましても、家計調査から見た寄附金の額、個人でございますと、家計ごとに計 算してみると、日本は年間2,575円、それに対してアメリカは1,620ドルという数字が出てございま す。  5ページ目をお開きください。日本、アメリカ、イギリスのそれぞれ代表的な募金団体の実績等を 並べてございます。日本は共同募金会でございますが、これは若干資料が古いものですから1995年度 で266億円の募金実績額と出ておりますが、先ほど申し上げましたように直近の数字は217億円でご ざいます。戸別募金が一番割合が高くなっているという状況でございます。アメリカはユナイテッド・ ウェイというのが一番代表的な募金団体でございますが、31.7億ドル。直近の数字でいきますと約40 億ドルという数字でございます。先ほど対比いたしました日本とアメリカの寄附金総額の差というの が、ここにもやはり反映しておるのかなという状況でございます。  寄附をする1つの理由といたしまして税制上の優遇措置があるわけでございますが、6ページ目に 簡単にそれをまとめてございます。日本においてでございますが、国・地方公共団体に対する寄附金、 あるいは指定寄附金、これは赤い羽根共同募金を含みます。また特定公益増進法人に対する寄附金、 例えば日本赤十字社あるいは社会福祉法人といったところに対する寄附金。また認定NPO法人に対 する寄附金も一定の税制上の優遇措置がございます。  こういった制度について現在どのように考えられているかという点につきまして、2ページ目をお 開きいただきたいと存じます。これは平成17年6月に政府税制調査会のワーキンググループが示した ものでございます。「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」とい う文書でございます。  その中で、近時、我が国経済社会は大きく変容しつつある、少子・高齢化の進展、右肩上がり経済 の終焉、社会の多様化の進行といった構造変化が進み、きめ細かな社会ニーズに対応し得る柔軟で厚 みのある社会システムを構築することが求められている、これまでになく「民間が担う公共」の領域 の役割が重要となっている、という状況でございます。  その主たる担い手が公益的な非営利法人であり、その活動を資金面で支えるのが寄附金である。3 ページ目に移りまして、税制面において欧米諸国並みに寄附文化を育んでいくためのインフラ整備に 積極的に寄与するとの視点が重要となる。かかる視点に立って、寄附金税制についての従来の考え方 を抜本的に見直し、より一層その充実を図る方向を目指すべきである。こういうふうに言われてござ います。  引き続きまして寄附を促す仕組みについてということで、7ページ以下に沿って1つの考え方の枠 組みを示させていただきたいと存じます。これはあくまでも1つの枠組みでございまして、議論の材 料にしていただければという趣旨でございます。  寄附する動機、人はなぜ寄附するのか。人は限られた予算の中で自分の満足度を最大化しようとす るという前提を置きます。その一方で、寄附は経済的な対価を得る行為ではないにもかかわらず、寄 附が行われているという状況がございます。  それは一体なぜか。8ページ目をお開きいただきたいと存じます。例えば10のお金を使って15の 満足度を得られる商品と5の満足度を得られる商品を比べた場合、人は15の満足度を得られる商品を 選択するというのが一般的でございますが、寄附は他者に対し金品を贈る行為であるため、一見直接 の満足度が低いものに対してお金を使うかのように思えるが、違うのではないか。寄附を選択する場 合、お金の使い道として最大の満足度を得られる使い道として考えているのではないか。そういたし ますと、寄附をするという選択をすることは、自分のお金を使って最大の満足度を得られる寄附とい う商品を買うことではないだろうか。  9ページ目に移りまして、では、どうしたら人は寄附という商品を選択するかというのを考えるべ きではないか。また寄附を魅力ある商品として受けとめてもらうためにはどのような方策が考えられ るのか。そこで浮かび上がってくる課題といたしまして、長期的には、寄附に価値があるという意識 をどのように根づかせることができるか。短期的には、共同募金など既にある寄附の仕組みにどのよ うな工夫を加えることができるのか。  10ページ目をお開きいただきまして、全体の国民の中で寄附意識のある人に対しては、実際に寄附 行為に結びついていない場合には寄附に誘導すべく現行制度を工夫するという努力が必要であり、寄 附意識がまだないという人に対しては寄附意識そのものを根づかせる取り組みが必要ではないかと考 えられます。  11ページ目をお開きください。日本における寄附の現状ですが、キリスト教が文化として根づいて いるような諸外国、特に米国に比べて、寄附をするという機運が低いと言われる日本においても、共 同募金のほかに積極的に行われている寄附がございます。ここでは3つ掲げてございます。1つはユ ニセフの日本分でございますが、168億円。あるいはナショナルトラスト「トトロのふるさと基金」 というのが3.3億円。これは宮崎駿監督が映画「となりのトトロ」の構想を練った狭山丘陵を開発か ら守るため、土地の買い取りの資金を寄附によって集めているというものでございます。3つ目に寄 附条例。これは条例において提示したまちづくりなどの複数メニューに対して、市民がみずから望む 政策メニューに寄附することで政策の実現を図るものでございます。全国27市町村において既に制定 されている状況でございます。  12ページ目をお開きください。これらに共通しているのは、自分の行った寄附が具体的にどのよう に役立つのかわかりやすく表現されていて、商品としての寄附という位置づけが確立されているとい うことではないか。例えばユニセフでいうと、3,000円のご支援で10人の子供にスケッチブックと8 色のクレヨンセットを提供することができますとか、あるいは「トトロのふるさと基金」ですと、1 人が3,000円寄附していただけたら、はがきサイズから畳半分ぐらいの土地を購入して「トトロの森」 として永久に残すことができるとか、寄附条例にも具体的なメニューが提示されているわけでござい ます。  13ページ目でございます。したがいまして、自分の寄附したものがどのように使われるのか実感で き、それがみずからの喜びとなるのであれば、寄附の満足度は高まり、人がみずからのお金の使い道 として寄附を選択しようという気持ちを起こさせるのではないだろうかということで、以上、考え方 の1つの枠組みとしてお示しさせていただきました。 ○大橋座長  ありがとうございました。それでは続きまして、花王株式会社コーポレートコミュニケーション部 門社会貢献部長の嶋田さんから15分ほど話題提供をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願い いたします。 ○嶋田氏  ただいまご紹介にあずかりました花王のCSR推進及び社会貢献を担当しております嶋田と申しま す。私は日本経団連の社会貢献担当者懇談会の座長もしておりますので、その関係で今日お声をかけ ていただいたのだろうと思いますけれども、非常に重いテーマなので、どのようなお話をすればいい かここのテーブルに着きながら少し悩んでいる次第です。地域福祉活動を支える財源として企業の役 割はどの程度はたせるのか、お話を伺いながら悩んだ次第です。今日15分の短い中で私が主に皆様に ご説明したいのは、1つはレジュメにもございますとおり、企業がどれぐらい寄附活動を行っている かということを数字だけですけれども現状をご説明した後に、花王の社会貢献活動についてお話いた します。今日のテーマにあう活動といえば、私どもが2004年から始めております社員による寄附組織 のお話を中心にいたしまして、そして最近の企業の寄附活動の変化について最後に触れたいと思って おります。  皆様のお手元に2005年度の社会貢献活動の実施調査結果があると思います。残念ながら2006年度に ついては、この12月18日に記者発表するので今日はまだ発表できません。少し前の資料になるのです けれども、基本的な数字だけ出してまいりました。  主要408社、これは例年約1,400社に経団連と1%クラブに加入している企業にお声をかけているの ですけれども、大体回答率が30%前後なのですね。活動しているところは必ず回答されると思います ので、大体日本の上位400社前後の実情だと見ていただければよろしいと思います。社会貢献活動の 総額が05年度ですと1,444億円だったのですけれども、だんだん景気が上向いてまいりまして、06年 度になりますと大体1,786億円というふうに数字が上がっております。  そのうち、我々が様々な社会貢献活動をプランニングして行う以外の純粋な寄附となりますと1,013 億円ですけれども、これが06年度になりますと1,353億円ということで、やはり景気が上向いてまいり ますとこういった費用も上がってくるわけです。1社平均も示しましたけれども、大体経常 利益の1.38%で、06年度あたりですと2.18%になっております。  この社会貢献の活動費というのは、あまり平均を出しても意味がないのですね。例えばトヨタのよ うにものすごくやっているところとあまりやっていないところの差が大きいので、平均というのはあ まり意味がないと思いますが、大体サイズとして見ていただくために出しました。  それからどんな分野に支出しているのかというところですけれども、2000年ごろですと4番目に書 いてあります環境の比率が一番高かったのです。ただ昨今は教育の問題というのが新聞紙上でも非常 に大きな問題として取り上げられるようになった関係もありまして、一番が教育・社会教育、2番が 文化・芸術、3番が学術・研究、4番が環境という金額順になっています。これが2006年度になりま すと1番が学術・研究になっております。それはなぜかといいますと、昨年、一昨年、今年、来年に かけて、大学の周年行事が増えておりまして、億あるいは千万単位の寄附を大企業の場合はいたして おりますので、勢い1番目が学術・研究になったという状況で、やはり少し社会情勢と合わせて寄附 金の配分比率というのは変わってくるというのが現状でございます。  1%クラブの成りたちは以下の通りです。1980年代の後半あたりから日本の企業は欧米に進出し、 ボランティア活動等の理解がなかったために現地の従業員の方々といろいろとトラブルがあったと聞 いています。それで経団連の方で視察団を出しまして、米国の寄附文化あるいはボランティアの現状 を視察したのです。そのときに米国では、営業利益の1%、3%、あるいは個人でしたら可処分所得 の1%以上は社会のために寄附する文化があるということがわかり、日本でも1990年から1%クラブ というものをつくって、企業の啓発それから個人の啓発をしてまいりました。  現在法人会員が271社、個人会員は1,026名と聞いています。先ほどの社会貢献の支出総額も、1% クラブの会員企業になりますと例えば1社平均で見ても6億円から7億円になるということで、やは り意識の高い会社が1%クラブにも加盟しているということが言えると思います。  最近、日本経団連が共同募金様とご一緒に手がけておりますのは、災害支援のあり方を企業の連合 体とNPO、NGO、日本経団連等々で効果的なものを考えていこうという取組みです。いろいろと 今検討を進めていまして、実際の活動を行いながらそれぞれの異なった立場の者たちが集まって効果 的な災害支援のあり方等々を話し合ったり意見を出し合うテーブルができたというのは、非常に意義 があることではないかと思っております。  次に、花王の社会貢献活動についてちょっと触れたいと思います。私どもはメーカーでございまし て、地域ということに限定いたしますと、むしろ地域貢献が熱心なのは保険会社とか金融機関とか、 あるいは流通とか、地域の方々と密接につながった事業活動をしている企業の方々だと思います。私 どもの場合は工場が立地されている地域では地域貢献の活動に注力していますけれども、それ以外は 東京の本社の中に私どものようなセクションがある関係で、どちらかというと東京発の活動が多くな っております。  活動の位置づけですけれども、社員の行動倫理規定「花王ビジネスコンダクトライン」の中に「社 会・文化活動を通じて豊かな社会の実現に貢献すること」ということをうたっております。それから、 ここ3〜4年前から経営会議の中でも、1年間の活動報告とか、寄附をどういったところにどういう 形でやったかというような発表をする機会が設けられるようになりました。  2004年から始めております社員による寄附組織のお話をしたいと思います。これはもともと10年 以上の実績のある富士ゼロックスの端数クラブという組織を参考に作りました。  これは全く上意下達ではありません。まさに私の発想で始めました。私は企業人になってから30年 以上たつのですけれども、年々一人一人の社員に課せられる労働状況が厳しくなっているのですね。 一方ではボランティア休暇云々ということを言っても、実質的には活用されていないが現状です。気 持ちはあってもなかなか地域の中でボランティアをしていくのは難しいですし、当社の場合は子育て 支援が徹底しているせいか、結婚している女子社員の場合は、ほとんどの方がお子を持って働いてい ます。そうしますと、そのだんな様もやはり家事支援をするということで、土日は1週間子育てをす るための様々な準備、おかずを冷凍したり掃除をしたりということになってしまって、気持ちはあっ てもボランティアに出かけるというのは、40代ぐらいまでの方々は実質上だんだん無理になってきて おります。  そういう背景の中で社会性の感度を高めるにはどうしたらいいか。自分の金を出せばいやが応でも 社会で起きている様々なことが耳に入ってくるのではないかと思ったわけです。当社は生活に密着し た製品を出している関係で、やはり社会がどうなっているかという感度がないとそれは業績にもだん だん関わってくるということで幹部を説得しまして、社員による寄附組織を立ち上げました。  これは1口50円〜5,000円まで月々の天引き額を社員が任意でイントラネット上で毎月の希望額を 申請します。それをプールして、会員からの寄付申請に従って、これも会員からなる運営委員が決裁 する組織です。大体グループ企業も含めますと1万2,000名から1万3,000名の社員数に対して、現 在1,700名の参加です。ですから年間600万から700万ぐらいのお金が集まります。基本的には社員か らの申請というのを一番大事にしている。あるいは社員が活動しているところにお金を出すというの を大事にしているのですけれども、これが年々数百万円ずつ使えずに残ってしまっているのが現状で す。  やはり社員から寄附先を申請するというのはなかなか難しい。そういう情報がないということもあ ります。残したものが積み上がっていてはもったいない。04年から現在までで災害支援も含めて1,500 万円ほどの寄附をしたのですけれども、年々残してしまうというのは寄附の趣旨からも反するであろ うということで、今年からトライアルで工場等がある地区のNPO中間管理支援組織のご協力をいた だいて、そのエリアの活動をしている小さな団体にある枠をつくって支援をするしくみを検討してい ます。まず私どもがフォローしやすいエリアとして、事業所がある栃木を考えています。栃木にある 中間支援組織を中心に花王の簡単なファンドという形で地域の活動を募集して、そして私どものハー トポケット倶楽部の選考委員が栃木の事業所にもおりますから、まだちょっとスキームは全部固まっ ていないのですけれども、彼らが選考にも加わって寄附先を決めていこうという活動をこれから始め ようと。  それが成功したら、まずは事業所のあるエリア。そしてそれができていきましたら、きちっとした 中間支援組織がある例えば仙台とか福岡とか広島とか、そういったところのNPOの中間支援組織と 一緒にやっていこうということを今考えております。実現に向けてはまだまだ時間がかかると思いま す。  次に3番目に、企業の寄附活動の変化について触れます。CSR元年というのは2003年と言われて おりますけれども、今まで企業は寄附のある枠を持っておりまして、様々なところから申請があった ときに透明度合いとかいろいろ見極めて決めていました。CSRということがいわれ出してから思い つきから戦略性へということになりまして寄付の有り方も随分変化してきていると思います。事業領 域を意識した寄附を行っていこうじゃないか。それから寄附額の予算化も行っていこう。それから、 透明性の確保ということで、自社や自社にかかわるグループ企業で社会貢献委員会みたいなものを立 ち上げてそれで寄附先を決めていくとか。  私どもの場合は透明性を高めるために寄附のガイドラインを策定しました。花王はどういう分野の どういう活動に寄附をしましょうというガイドラインをつくりまして、おつき合いや習慣的寄附につ いては削減する傾向にあります。  なぜそういうことになるかと申しますと、例えば海外からの様々な企業評価調査などというのは、 寄附金額のみ聞いてくるケースが多いのですが、国内ではCSRレポートのようなものを策定したと きに、かなり戦略性がそこに表現できていないと評価されない時代となってきました。そういう意味 で今我々社会貢献に携わる者が危惧しているのは、本当は小さな金額でもやってこられた小さな団体 に対する寄附というものがどんどん削られていったり、この赤い羽根共同募金もまさにそうだと思い ますが、過去からきちっと日本を形づくってきた歴史のある団体の会の運営費に対する寄附というの はカットされがちになってくるだろうと思っております。  それから新しい仕組みづくりといたしましては、先ほど申し上げました社員による寄附組織の設置 というのは、これから増えていく傾向にあるでしょう。  それ以外に特定非営利活動法人「市民社会創造ファンド」の活動にもふれたいと思います。それは 企業のお金を本当に必要な社会的な活動に回していこうという目的でつくられたと聞いておりますけ れども、そういった組織とコラボレイトする形で企業が、例えば製薬会社でしたらヘルスケア、それ から電機産業だったら子供、金融機関ですとNPOの基盤づくりとして、そこで働く若者たちの教育 支援とか、そういった自分たちの事業領域でもっと社会的に活性化したいところにファンドを組むよ うなスタイルが、これからの新しい方向性としては出てきております。  ちなみに私どもも花王コミュニティミュージアム助成というのを今年から始めました。ミュージア ムを核にして集まっているNPOの活動を応援する新しい助成制度をこの「市民社会創造ファンド」 と一緒に作りました。  それから基本的に企業の方向性として、寄附というよりは自主プログラムの比重を高めていきたい。 しかし自主プログラムをするには人が必要ですので、その人の確保というのがお金以上に難しいので すね。それで寄附の比重が現状では高くなっている。しかし、できれば寄附を依頼される方々もその 企業にあったようなスキームをつくってくださると、非常に協力しやすいというのが現状です。  以上、簡単ですけれどもご報告させていただきました。   ○大橋座長  ありがとうございました。それでは少し時間をとって、先ほどの中村企画官の説明と今の嶋田さん の話題提供を含めて意見交換をいただければと思います。まず、嶋田さんなり中村企画官の報告に質 問がある方、どうぞ。 ○木原委員  今最後に言われたことに非常に興味があるのですけれども、要するに地域のNPOの中間支援組織 をうまく活用している。私もそれにかかわったことがあるのですけれども、生命保険会社の財団がN POにNPOへの助成事業をそっくり委託したんです。そのNPOは非常にうまいことやった。助成 を求めるNPOを公募してプレゼンテーションをやらせて、自分たちで人気投票をさせてね。しかし、 ただもらったもらわないではなくて、互いに情報交換しノウハウを提供し合うということにした。こ ういう方法というのは、これから広がりそうなのかどうかをお伺いしたい。 ○嶋田氏  やはりNPOの中間支援組織の実力が問われてしまうのですね。中間支援組織が日本にたくさんで きつつあるのですけれども、どこでもできるというわけではないような気がいたします。ですから私 どももいろいろと下準備に1年近く議論を重ねていますし、幸いなことに栃木の中間支援組織の中に 私どもの社員が会員として関わっているのです。そういったこともあって何とか形になりつつあるの ですけれども。大阪のボランティアセンターなどは非常にうまい形でやっていまして、そういう情報 が中間支援組織にも流れるようになっていく仕組みを今NPOセンターなども中心になって考えてい ると思いますが、結局は人なのですね。だから、まだまだ時間はかかると思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。イギリスなどでは中間助成団体の格付がかなり厳しくされるようになっ ていて、どこの中間支援団体に寄附をしたらそれが有効に活用されるかという、中間支援団体それ自 体が格付の対象になっているんですね。もちろん助成金をいただいた個々の団体も評価を受けますけ れども。だからそういう時代が今来ているのかもしれないですね。先ほど出てきた中村さんのCAF との関係ではかなりそこのところが意識されて出てきているということでしょうかね。  他には。はい、どうぞ。   ○金井委員  大変興味深いお話を伺えたと思いますが、嶋田さんのお話で、分野別でいろいろ環境に動いたり、 大学がお金を欲しがると大学の方に行くとか、我々も責任があるのかなと思うのですが、特に福祉の 分野がなかなか上がってこないというのは、寄附では社会福祉関係は出しにくいという企業側からの 感じのようなものがあるのでしょうか。   ○嶋田氏  いえ。これは金額別なのですよ。ですから件数別でいったら福祉が一番高いと思います。福祉の寄 附というのは比較的小さいものが多いので、金額でいうと順位が下がってしまうということです。大 学の場合は例えば1億円出す企業もあるりますが、福祉の場合は5万円からありますので、その差が こういうふうに出ているので、今私はそこまでの調査データを手元に持っておりませんが、件数で見 れば福祉に対する寄附は一番多いと思います。 ○中村企画官  参考までに、最初に私の方から説明いたしました日本の寄附金総額の中で、出典でございますが、 ディスカッションペーパーに分野別も一応出ているのですけれども、その中に社会サービス、これは 福祉関係及び災害支援を含むとされておりますが、福祉サービスに633億円という数字がございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。件数も見ておく必要があるかもしれませんね、額が小さいから。だけど トヨタのように大きいところは学術研究とかで出すものだから、金額からいけばそっちの方がずっと 大きく見えてしまうということでしょうかね。とても大事な質問をありがとうございました。 ○嶋田氏  社会福祉の一番の問題点は、どなたも反対する方はいないのですけれども、社内では興味が薄いの です。ですのでやはりそこが問題というか、もっとソーシャル・フォー・オールになれば違うのでし ょうけれども、その辺の意識がちょっとまだ日本の場合は低い。 ○木原委員  なぜ薄いのでしょうか。 ○嶋田氏  それは交流の機会が少ないからだと思います。もちろん社員としていろんな障害のある方を受け入 れたりしているのですけれども、総体的に接する機会が学生の時代から少ないのですよね。一度接す るとそこからまたいろんな発想や想像力が広がっていくのですけれども。かなりソーシャルにいろん な方が交わるようにはなったのですけれども、もう少し時間が必要かなという気はいたします。 ○清原委員  三鷹市長の清原です。私は自治体で市民の皆様からのご寄附をいただくときに、個人の市民もいら っしゃいますが、市内の企業とか団体から寄附をいただくことがあるんですね。そのときは一般的に は第一義的に社会福祉に使ってくださいという目的が多いんです。それは企業の規模が違うのでしょ うか。地域に根づいた地域産業、中小企業の場合はそういうことが多くて、たまたま私が市長になっ た年に環境基金というのをつくりまして、それまでの健康福祉基金と加えて新たな環境というテーマ があったので、ようやく環境基金にもご寄附をいただける気運が出てきたぐらいでございまして、今 伺っていて、大規模な企業の場合のご寄附の対象のイメージと、小規模の自治体の企業のイメージに 少し違いがあるのかなということを感じました。 ○今田委員  今田ですが、いいお話をありがとうございました。寄附するというので今まで一番おもしろかった のは、手間暇かからないで寄附している、かつそれが証拠として残るというので、国際ボランティア 貯金というのがありましたよね。利子のうちの5%を自動的に引き落としてくれる。あれは手間がか からずなかなかいいアイデアだなと。その使われ方は、外国のNGOとかいろいろでしょうけれども、 ちょっとその辺がどう透明性があるかというのは問題だと思いますが。  嶋田さんがおっしゃっていた、いい戦略を練って忙しい人でも気軽にやれて、それがお金をどこか に渡してしまったというのではなくて、手帳に残るという仕組みがうまくいくといいと思うのですけ れども。  問題は中間集団、NPOとかボランティア団体とどうパートナーシップを組むか。行政とボランテ ィア団体のパートナーシップの問題、それから企業とパートナーシップの問題で、ここが日本の場合 はまだしっかりできていないという感じがしますね。だから先ほどのNPOの格付はとても大事で、 それをきちんとしてここは安心して任せられるNPOというのができると、ボランティアの失敗もあ まりなくなるだろうから、そちらはきちんと進める。このボランティア団体は人手ではあるけれども 資金や資源がないというのが悩みなんです。だから、そこへ企業もうまく関係をつくって、その人手 で頑張ってやっていただくという仕組みをどううまくつくるかというのが1つの大きな課題ではない か。今後の課題だろうという気がします。 ○大橋座長  資料3の5ページで、今の今田委員の話でいけば、イギリスがCAFとやっている給与天引き寄附 が10.8%とか、コベナントは24.7%とか、こういう自分の申告に基づいて継続的、定期的な寄附をし ているんですね。こういうのがあると随分いい。わざわざ郵便局とか銀行に行くという手間暇が大変 だというのが結構あるので、こんなことを考えてみる必要があるかなと思いましたね。 ○和田委員  先ほどのお話の中で、今皆さんからいくつか議論があったのですけれども、戦略的な寄附というこ とで、企業はこれからますます企業そのものの評価との関係でそちらに動いていくのはないかと思い ますが、そのときに社会福祉は今のところ反対はないけれども積極的に応援するところにつながって いないのではないかというお話があって、ここのところがこれから私どもが考えていく非常に大事な ところなのかなと思うのですけれども、むしろ逆に現象的には、事業領域を意識した寄附が強まって いくと福祉から離れていかないのかというのが1つの点です。  もう一つは、いい中間支援組織を育てていくためには、どうしても寄附というと直接役に立てたい というところに非常に中心が行ってしまって、いい企画を立てるところをサポートすることが少ない のではないかと思いますが、この辺は企業としてはどういうふうに全体に考えていらっしゃるのか。 必要だったらそういうこともやっていいんだと考えていらっしゃるのかどうかというあたり。  それから企業の今の端数募金というのは、これが社会に広がっていくと新しい可能性が生まれるの ではないかと私は思っているのですが、これは広がっていくと考えていらっしゃるかどうかですね。 もし広がるとすれば、どんな条件がつくられると広がるかというあたりを教えていただければと思い ます。   ○嶋田氏  1番目の質問はちょっと大きな質問なので簡単に答えられる方からお話します。中間支援組織の基 盤のところですが、そこは私も考えたのです。社員のお金を使う場合、その社員というのは何であれ 実質的に見えないと嫌なのです。まさにさっきスキームでおっしゃったとおり、何かをするにはそれ にかかわる人の人件費も必要だけれども、それに使われるのはよしとしないです。  ですから今回栃木でやる場合は、私はちょっと悩んだのですけれども、それを運営するための基盤 費は花王から寄附することにいたしました。だけど、社員からのお金にマッチングというスタイルは とらずに、社員のものはそのまま地域に行き、運営基盤のお金は花王から出せば運営が可能なのでは ないかということで、当面はちょっと上乗せしますが、運営費は寄附金の大体20%というふうによく 代理店などと仕事をしますと総経費の2割というのが運営費にとられるというところからの、あまり 意図的なものはない係数ですけれども、そういうことでお約束して進めようとしています。  それから社員の寄附組織ですが、実は端数というのは給与計算上大変な手間がかかるのです。です から私どもでは、一口50円という形にしました。それにしても、給与引きのプログラムも数百万以 上かけて構築しなければならないのですよ。そういう仕組みやイントラ上の専用ページなども含めて、 かなり会社のいろいろなリソースを使わなければできないので、トップの理解がないと難しいという ことです。  ただ、これがまたCSR時代のよさで、もちろん社員のボランティアとかいろいろやったり、社員 が自発的に寄附をした場合のマッチングという制度を持っている会社はあるのですけれども、実質的 にはそれほど、マッチング制度は使われていないそうなのです。ですからこうした自動的に寄付金が 集められるような制度的は、非常に合理的であると考えられます。例えば、会社の業績が非常に悪化 して、社会貢献活動どころではなくなっても、お金を出す社員がいる限りこの活動は続けられるので す。  ということをいろいろ考えますと、この制度はこれから少しずつでありますけれども、増えてくる と思います。米国のユナイテッド・ウェイはいいやり方で、当社も海外の会社、アメリカのグループ 企業はこのユナイテッド・ウェイに加盟しているのですけれども、分野を指定して寄付できるのが良 いですね。例えばその会社はビューティーケアの製品をつくっている会社なので、女性を応援する活 動に寄付をしたいという注文を出し、人事部が窓口になって社員の寄附を給与から集めて寄附して、 それでこういうところに寄附しましたという報告が来るわけです。  日本にはそういうスキームの組織がないので企業毎になってしまいます。、本来であればこの社員 寄附組織なんていうのもどこかのNPOが一括してやって、日本中すべて一つにするというのは無理 だとしても、エリアごとでもいいのですけれども、お金だけでなく物も含めて、そういった形で動い ていくような組織があれば、もっと有効に活用できると思います。  それから最初の福祉のところはちょっと誤解がありました。福祉が減っているわけではないのです。 福祉というのは一番身近ですし、やりやすいですから、福祉というのは決して減ってはいないです。 ただ、一件一件が少ない金額であるがゆえにこういう金額順位で出てしまったということと、例えば 私どものハートポケット倶楽部で最初に入会するときに、どの分野に寄附したいかというアンケート をとっていますけれども、環境と福祉と国際貢献と教育という4つの分野では、やはり福祉は50%以 上の希望があり、皆さんそういう思いはあります。  ただ、あえて言わせていただくと、福祉の分野で寄附をご依頼されてくる団体の皆様のプランはス キームが古いのですね。ですから、正直申し上げてあまりおもしろいものがないのです。やはり新し い社会の風や仕組みを起こしていきたいということを考えると、新たに始めるとなれば、どうしても もう少しアイデアのおもしろいところに行ってしまうというのはあるのかもしれないです。 ○大橋座長  ありがとうございました。1つ大事なことかなと思ったのですけれども、イギリスでもそうですけ れども、コアファンディングとプロジェクトファンディングで、コアファンディングをどこが負担す るかがすごく大事な問題なんです。これをやらないとNPOが育たないということがあるので、寄附 する方はプロジェクトファンディングだったら寄附するという、この辺のずれをどうするかというの が1つ非常に大きな問題ですね。  それからもう一つは、やはり社会福祉が非常に救貧的なイメージで、もう少し新しい社会福祉の置 かれている状況の中でソーシャルインクルージョン的な考え方とかを出していかないと、確かにプロ グラムが古いかもしれませんね。 ○嶋田氏  失礼な言い方ですみません。 ○大橋座長  いえいえ、とても大事な問題をされたなと思いました。はい、どうぞ。 ○榊原委員  興味深いお話をありがとうございました。1つ政府税調の資料の中でアメリカと日本の寄附文化の 違いのご説明があったのですけれども、印象として相当違うということはわかったのですが、恐らく 個人の平均額を出してもあまり意味がないだろうという感じがしました。ものすごい莫大なお金持ち がいて、その人たちが、例えばIT長者と言われるような方が世界でニュースになるような寄附をし ているような国の平均額を出してもしょうがなく、かつ社会保障、公的な生活のセーフティネットを つくっていない国が、例えば大金持ちが自分のセーフティ、セキュリティのために結構寄附をしてそ れを公表するという文化のある国とはちょっと引き比べにくいので、むしろある程度日本の社会福祉 のシステムに近いヨーロッパの国の寄附文化がどうであるのか、個人がどういうところでどれぐらい 出せるのか、法人はどうなのかといった比較をした方が参考になるような気がしました。  それから議論の中で、日本はあまり寄附をしないので、どうしたら寄附文化が育つかという流れが あるような気がするのですけれども、私は寄附文化とか地域貢献マインドみたいなものが日本人には 全くないとは実は思えないんですね。最近ないだろうとは思うのですけれども。というのは、例えば 近江商人の昔からの言い方で「三方一両よし」でしたか。「買い手よし、売り手よし、世間よし」と いうふうに、誰かだけが得するのではなくて、世間も含めてみんなに利益が行ったときに自分の商売 だっていいんだというような、社会貢献マインドですよね。そういうものが地域で広く知られていて、 それをみんなが尊重していたような価値観が日本の中にはもともとあって、例えば神社がお祭りを運 営するときにも寄附する人たちがいて、そのお名前がだーっと張り出されるようなことが今でもあり ますよね。  というように、土着の寄附文化というものが実はあって、神社であるとか商店街であるというよう な、昔ながらのコミュニティが残っているところには今もそれは残っている。だけども都市化された 生活の中で生きている人たちの中になくなっているところを、どう構築するかという課題のような気 がするんです。  土着のところの、要するに日本人にとって違和感のある行動形式ではなくて、もともと私たちがい ろんな形でやってきたものをもう一回今の生活様式の中でつくり上げるにはどうしたらいいかという アプローチの仕方がある方が、外国のものをいきなり持ってきて違和感のあるものを着なければいけ ないという寄附の議論の仕方よりはいいであろうという感じがしました。  それから、ユニセフとか「トトロのふるさと基金」とか、日本の寄附の実例を挙げていただいてふ と思ったのですけれども、個人的な話で恐縮ですけれども、私がカトリックの信者でもあるので教会 に寄附していたり、いくつか寄附しているところがそういえばあったんですね。実は、一番継続して やっているのが国境なき医師団なんです。取材で関わってすばらしい活動をしているなと思って、思 わずほれ込んで寄附しているところがいくつかあるのですけれども、何で毎年ここに必ずやっている のかというと、ものすごくPRが上手なんです。  ものすごく細かくお手紙が来て、活動報告がとても具体的。そこで活動している人の顔と名前を出 して、日本のどういう出身の人がアフリカのどこに行ってこんな活動をしたというのが全部レポート されてくる。要するにどう生かされているのかということが、離れたところにいても実感できるんで す。あと寄附の仕方もとても細かくて、年回でもできるし、思いついたときに振り込めるという寄附 の仕方もあるし、具体的なこのプロジェクト、子供のこのプロジェクトに入れたいという入れ方もで きる。そういうことが全部チェックするだけで済むような簡単な用紙と一緒に送られてきて、振り込 み方も簡単。  たぶんあれはフランスのアソシエーションなので、フランスのNPO活動の文化だと思いますが、 すごく上手なんです。そういうことをしてくれない、本当にいい活動をしているのだけれども地味な アプローチしかしてこないような福祉活動の方は、ついついこちらも忘れがちになってしまう、みた いなことが起きているときに、やはりコーディネーターとかマッチングをする人たちの力がものすご く大事になっているなと。  日本でネットがこれだけ普及してきていますし、若い人たちって結構お役に立ちたいという気持ち を持っている方が多かったりするなと。中年以上に案外ナチュラルなお役に立ちたいという気持ちを 持っている人が、若い人に多いなという感触もしているので、そういう人たちの参加しやすさを考え たような取り次ぎ方を考えていくことも大事だろう。  そのときやはり一つ反省しなければいけないのは、福祉活動の人たちの閉ざされた印象というとこ ろがあると思うんです。とてもいい活動をなさっていたり、本当に頑張っている方たちがたくさんい らっしゃるのに、それが公開されていない、他者の評価を受けていない、報告をしていないというよ うな、たぶん手が回っていない、そういう発想がないというところがあると思うのですけれども、ち ょっと文化が古いところが外からの支援を取りつけにくくしている。そこのところの改善がちょっと 必要かなと思いました。 ○大橋座長  ありがとうございました。次の議題に移りたいと思います。今の問題でいくと、先ほど嶋田さんが 言われた使途指定寄附のあり方をどう考えるかというのがありますね、今の国境なき医師団の問題な どもそうですが。あるいは日本の場合には、見える関係の寄附というのは今言われたように結構豊か にあるんです。だけど見えない世界への寄附というか、ここの部分が非常に弱いのではないかという ので、たぶん寄附の文化ということで事務局はつくってくれたのではないか。見える関係の寄附と、 見えない世界への社会的な貢献というか、そういう意味での寄附をどう考えていくかということもこ れからの課題かなと思いました。嶋田さん、ありがとうございました。  それでは共同募金の話に移りたいと思います。それでは事務局の方から既存制度の説明をお願いし ます。   ○中村企画官  では簡単に資料5に基づいてご説明させていただきます。1ページ目をお開きください。共同募金 の位置づけでございます。共同募金は戦後間もないころ昭和22年にスタートしてございまして、それ から60年でございます。その実施主体でございますが、各都道府県に設立された社会福祉法人共同募 金会でございます。共同募金事業の公正性を担保するため各都道府県の共同募金会には配分委員会が 設置されております。  2ページ目をお開きください。各都道府県の共同募金会の連合会といたしまして、中央に社会福祉 法人中央共同募金会が設置されて連絡調整などを行っており、一方、各都道府県の共同募金会には市 町村ごとに内部組織、支会とか分会という名称で呼ばれていて90%以上が社会福祉協議会に設置され ているのですが、そういった内部組織が置かれ、自治会・町内会などの協力のもと募金活動を実施し ている状況でございます。  制度発足以来実績額を伸ばしてきたわけでございますが、平成7年度以降は減少傾向にあるという ことで、3ページ目をお開きください。上の折れ線グラフで丸の連なったものが共同募金の実績額の 推移でございます。募金額の70%以上を戸別募金、自治会・町内会等の協力による世帯ごとの募金が 占めているという状況でございます。  5ページ目をお開きください。配分状況でございます。配分額全体の約60%が社会福祉協議会、約 20%が団体・グループ、約10%が福祉施設に配分されている状況でございます。対象となる事業でご ざいますが、地域の住民全般を対象にした事業、例えば福祉サービスに関する相談援助などが約30%。 高齢者を対象にした事業、例えば見守りとか配食サービスなどが約25%という状況でございます。  課題といたしましては、先ほど申し上げましたように、募金の実績額が平成7年度をピークに減少 しているという問題。また共同募金がどこにどのように使われているのかがわかりにくい。また都道 府県ごとに寄附金を集めて原則として県内で配分するというのが現行の仕組みですが、その仕組みの ままで十分かどうかという課題があるのではないかと認識しております。  今後でございますが、新しい寄附の文化を形成する推進役としての役割を期待しておるところでご ざいます。以上でございます。   ○大橋座長  ありがとうございました。では今の報告を踏まえて中央共同募金会の島村さんからご報告いただき たいと思います。よろしくお願いします。 ○島村氏  ご紹介いただきました中央共同募金会の島村でございます。よろしくお願いいたします。ただいま 厚生労働省の方から制度や募金状況についてお話をいただきましたので、私からは資料6の全国の共 同募金関係者が取り組んでおります共同募金改革、ピンクの冊子の資料がございますが、テーマが 「地域をつくる市民を応援する共同募金への転換」ということでございます。この内容や状況など事 例を含めてご報告させていただきます。具体的にはナンバー6の資料にてご説明させていただきます。  それでは2ページからですが、外部の関係者の皆様方から今後の共同募金のあり方について今年の 5月に答申を受けまして、現在、全国の共同募金関係者が取り組んでいるわけでございます。2ペー ジの枠にございますが、社会的な孤立、福祉的な課題が非常に増えて、地域固有の多様な課題が顕在 化している。今回のこの研究会の視点でもあるわけでございます。そういう中で下の枠ですが、公的 な施策だけでなく市民参加の活動を創出することが求められる。  こういった考え方のもと、3ページでございますが、共同募金に関する課題認識を4点設定してお ります。1つは今お話にございましたように、募金の実績が大変低減しているわけでございます。し かし今後地域の資金ニーズの増加に対応していくためには、募金を増額するということが第一義的な 課題と認識しております。  2番目は、市民参加により地域福祉を進める活動が増加するということです。こういう状況の中で 改めて地域福祉推進のための募金であるということを鮮明にし、国民に共同募金のイメージを持って もらうということです。  もう一つは、今後多様なニーズが地域には出てまいります。NPOなどいろいろな担い手も登場し てきております。そういった方々との協働の中で地域福祉活動を広げていく、こういった対応を進め たいと思っております。助成を希望する団体を公募するとか、あるいはプレゼンテーションを行う中 でその評価を広く市民の方に理解していただくような取り組みを後ほどご紹介したいと思っておりま す。  それから最後4番目に、これからは市町村で具体的な活動をしていく時代でございます。また市町 村のさらに小地域でという議論があるわけでございますが、市町村組織は、今は支会・分会という形 になっております。どこが共同募金を実施しているか主体が見えないというご意見もあるわけですが、 市町村組織の運営の基盤を整備するという、この4点の課題認識に立って、次の4ページでございま すが、社会的な公器としての共同募金を目指すということでございます。  ご紹介にありましたように、60年以上にわたって共同募金は国民の信頼を得て赤い羽根というイメ ージが定着してまいりました。しかしいくつかの課題もあるわけでございます。下の枠でございます。 そういう中で今後必要とされる取り組みとして、先ほども触れましたが、市民参加の保障、それから 透明性の確保。この透明性の確保はいろいろな視点があると思いますが、特に募金の趣旨とか目的と いった設定がどういうふうに行われるのか。あるいは使途の決定がどういうふうに決められていくの かというようなこと。これも市民からのニーズであると思います。こういったものを明確にしていき たいと思っております。  それから、募金の主体組織を位置づける。これは市町村共同募金委員会というものの設置を計画し ております。そして最後にこれは寄附の文化にも通じますが、市民に寄附というものに対する啓発、 具体的な提案をしていく。こういった取り組みを通して右の枠でございますが、地域における市民の 共有財産として共同募金を発展させていきたいという認識に立っております。  ではどういう共同募金の役割をしていこうかということで3点ございます。1つは、地域をつくる 市民を応援する共同募金。共同募金というのはコミュニティチェストと英訳されるわけですけれども、 まさに地域活動のための募金というのが1つでございます。それから地域の活動募金だけでなくて、 全国の共通的な統一的なテーマに取り組むということで、全国規模の活動を今後も展開していきたい と思っております。そして最後に3番目でございますが、不時の災害に対応できるような災害時対応 の募金であります。この3点を基軸に新しい共同募金の役割を進めていきたい。そのことによって社 会的な公器としての役割を発展させたいというのが、私ども関係者の今目指すべきところでございま す。  そういう中で6ページ、特に組織的には市町村の共同募金委員会を改組するということでございま す。また都道府県が実施主体になっておりますが、そこにおける組織の機能を強化する。そして私ど もの中央共同募金会も全国センターとしての機能を高めたいと考えております。  それでは今から具体的な内容についてご紹介させていただきます。共同募金の実施主体は都道府県 の共同募金会でございます。そして内部組織として今支会・分会というのがあるわけで、支会・分会 が具体的な運動実践の機関になっているわけですが、今後市町村の組織を市町村共同募金委員会に改 組していきたい。  単に名前を変えるだけでなく、地域で活動する様々なメンバーに多く参加していただいて、市民に とっての共同募金という実感を持っていただけるような、そういう組織運営を図りたいと思っており ます。そして地域の課題解決のためにいろいろな活動をつくり出していく。またつくり出した活動を 支援する具体的な募金活動にも協力してもらう。それから有効な活動は、この市町村共同募金委員会 で助成先も決定していく。こういう仕組みをつくることによって、右側の下に循環という言葉が入っ てございますけれども、地域の問題を拾い上げながら共同募金という器を使って寄附をしたり助成を したり、新しい活動を開発したり、こういう形の共同募金委員会のイメージを考えているところでご ざいます。  そしてそれが8ページ、イメージ図でございますが、今までは募金をする人と募る人と使う人が、 ある意味では別々に働きかけておりましたけれども、1つの共同募金委員会というステージをつくり まして、この図には地縁のところの自治会とか学校教育関係とか商工会が省略されておりますけれど も、多様なメンバーがこの共同募金委員会に参画いただくということでございます。  既に神奈川県では、地域の配分事業に限られますけれども、支会委員会組織というのをつくってお りまして、配分計画とか審査なども決定しております。このメンバーには、やはり地域の地縁団体、 自治会、学校、募金ボランティア、助成団体、商工会、議会、あるいはNPO組織、ボランティア組 織等いろいろな方々が参画して、この共同募金委員会のような形で今進められているという状況でご ざいます。  次に9ページ、具体的なイメージでございますけれども、今までは個々の団体が共同募金委員会に 申請してそれに配分するという、個別で地域課題の全体が正直見えにくいという状況でございました。 今後は地域の課題についてみんなで考え、その課題解決のためにそれぞれの組織がどのようにかかわ るか。必要に応じてそういう組織活動も生み出していく。こういうイメージを共同募金委員会のステ ージとして考えております。  そういったイメージする事例を10ページでご紹介したいと思いますが、これは埼玉県の鶴ヶ島市社 協が実施しております。市民参加を徹底して、公の公開審査でプレゼンテーションを実施しておりま す。2002年までは限られた団体に一律5万円の募金をしていたということでございますが、この4月 公開で開いたときには10団体のプレゼンがあり、市民の方が60人も傍聴されて大変活気あふれる公 開審査委員会が開かれたそうですが、特に子供の参加ということが大変魅力的でございます。小中学 生が参加しております。また、その子供たちが、プレゼンをしていただいたグループに大変関心を持 ってボランティアとして参加されたり、あるいは赤い羽根共同募金の応援団ということで募金活動、 右の写真に載っておりますが、こういった取り組みも行われております。この動きはこの市だけでな く、愛知県や名古屋市など既にいろんなところで開かれているということでございます。  それから2番目の柱でございました全国キャンペーンでございます。共同募金は今まで配分におけ る統一テーマを設定いたしまして、子供の遊び場設置、小規模作業所への助成を行ってきています。 また、現在は安心・安全のまちづくり支援など、それぞれその時代に必要なテーマを設定いたしまし て全国的な配分事業をしております。しかし、都道府県にゆだねているということで必ずしも全国規 模での統一キャンペーンとなっていないところもございます。今後統一的なテーマを設定する中で、 例えば災害の問題、あるいは今回議論している社会的な支援を必要とする人々の問題も掲げるなど、 全国キャンペーンを展開していきたいと考えているところでございます。  次に社会福祉協議会との連携でございます。今まで共同募金は社会福祉協議会との協働の中で進め てまいりました。9割の支会・分会を担っていただいていることもあるわけですが、今後も社会福祉 協議会と緊密な連携を図りながら進めていきたいと考えておりますが、特に地域福祉活動計画との連 携ということが大変重要でございます。  イメージ的には次の14ページでございますが、資金面でのニーズ把握や掘り起こしは共同募金委員 会が、そして社会福祉協議会は地域の福祉のニーズや資源の把握、掘り起こし、また、市民や多様な 団体の参画をお願いしながら共同募金計画と地域福祉活動計画を連携させて、その地域の様々な課題 を解決に導きたいと思っております。  ペーパーは出しておりませんが、奈良県の橿原市などでは、市内の16小学校区の地域福祉推進委員 会というのをつくりまして、それぞれの地域福祉活動計画を立てております。共同募金からの240万 円の予算で学校区ごとに、防犯パトロールとか見守り活動とかクリーンキャンペーンなどいろいろな 事業を、計画に沿って取り組んでいる。こういった実例も出てきているところでございます。  時間の関係で次に進ませていただきますが、15ページでございます。社協と共同募金が小地域での 助成活動をしているということです。日南市の事例は、ふれあいのまちづくり事業の一環として地域 の小規模のネットワークをつくってきた。これは区の福祉推進会、これは自治会組織のイメージでご ざいますが、それから7地区の推進協議会、こういったものの整備をしてきたのですけれども、その 組織をさらに活性化したり定着化したりネットワーク化する。そういうために、次のページですが、 共同募金総額で300万円以上の額でそれぞれの小地域の活動を支援しているという事例でございます。  次に3本柱の1つでございますが、災害時における共同募金の役割でございます。共同募金は災害 が起こりますと義援金募集の受け皿としての役割を長年実施してまいりました。しかし、いろんな災 害が起きるたびにこの義援金対応だけでは十分でないという経験から、特に右側の黄色のところに書 いてございますが、阪神淡路大震災の教訓を得て具体的なボランティア活動の支援資金をつくってい こうということで、2000年には準備金制度を法制化していただきました。先の中越沖地震の災害にお きましても、これは関東ブロックで協働準備金から1億円を拠出しました。それぞれの県で3年間分 3%の枠内で積み立てることができますので、そこから準備金を確保いたしまして、ボランティア活 動の支援資金として既に利用しているということでございます。  これに関するものですが、18ページでございます。災害時のそういった準備金活用だけではなくて、 例えば防災のリーダー研修を行ったり、あるいは災害時のボランティア、あるいはリーダー研修、コ ーディネーター研修を行ったり、あるいは小規模災害のときの見舞金、また社会福祉施設も防災や災 害時の拠点となるわけでございますが、そういった防災設備の整備費などにおいても広く共同募金事 業が活用されているということでございます。  それから19ページでございます。先ほど嶋田さんから1%クラブのお話がございましたが、この企 業のところは経団連の1%クラブのご協力でございますが、災害ボランティア活動支援プロジェクト 会議で実施しておりまして、資金面それから物の支援、人的支援ということで、社会福祉協議会と協 働しながら中央共同募金が受け皿になってこういったプロジェクトを実施し、資金、物、人的という 形で実施している、いろんな意味で注目を得ているところでございます。以上が3本柱に沿った内容 でのお話でございました。  最後20ページです。そういう中で今回のテーマであります地域の要支援者に対する活動はどういっ たものが行われているかということで、少し項目ごとに事例を紹介いたします。  21ページをご覧いただきたいと思いますが、共同募金でこういった要支援に関する取り組みのイメ ージ図でございます。例えばDVの被害者への支援・防止などについても右の上の方にございます。 それから左の方には、フリースクールの支援、それから児童虐待防止、これはチャイルドラインが行 う電話相談への支援や、引きこもり、それから精神障害者へのセルフグループへの支援、あるいはホ ームレス、薬物の依存、非常に件数は限られておりますけれども多様な形で社会的な支援を必要とす る活動にも過去から助成しているところでございます。  また22ページは詳しく申し上げませんが、周辺分野との連携もございます。  23ページでございます。多様な活動を掘り起こしながら、先ほどから具体的なこういった募金なら ば募金したいというご意志が出ましたが、テーマを強調した募金を実施しようということで、福井県 共同募金会ではこういったものを公募いたしまして、特にDV被害者や自殺防止、それからシェルタ ーの整備とか、テーマをつくって募金を行いました。そして当事者同士が全体で集まりまして、協働 してどういう問題に対応し、活動していこうということで共通課題に関する交流なども実施している ということでございます。  また24ページは商工会との協働で、これはNPO法人でございますが、子育てサロンがなかなか常 設の場がないということで、商工会との協力で実施し、90万円の助成をいたしました。  それから25ページ、ホームレスへの支援。これもいろんなところで行われておりますが、特に大阪 では、大阪府の幹事会の委託事業として行われている府の事業のアフターケアということで、在宅生 活、居宅生活に戻ったホームレスの方に、次のページにございますけれども、安否確認の活動相談と かサロン、あるいはいろいろな通信を発行することによって支援を継続的に行っているという事例も ございます。  27ページです。戸別募金が大変多い共同募金でございますが、今後インターネット募金とかいろい ろな形で、募金がしやすいということが必要とのお話が先ほど出ましたが、自動販売機による募金、 あるいはドナーチョイスという方法で進められています。別途資料でお配りしておりますが、広島県 がテーマ別のこういった募金も実施し始めているところでございます。以上でございます。   ○大橋座長  ありがとうございました。それでは先ほどの中村企画官のご報告と今の島村さんの報告で、ご質問、 ご意見があればどうぞ。 ○清原委員  報告ありがとうございました。私も三鷹市では名称だけはすでに「募金委員会」という活動をして いるものですから、中身の面での拡充というか活性化というか、そういう具体的なことについてこの 企画推進委員会の答申を受けて活動をさらに進めていこうというお話に大変力をいただいたのです。 けれども、この企画推進員会での議論や今回のこのような取り組みが議論されている中で、三鷹市の 共同募金委員会の場合は、とにかく目標額を皆さんのご協力で集めるということを主たる機能として これまで運営してきたものですから、現状までは募金活動をしていただく町会・自治会、諸団体がや はり委員構成としては主たるものであるわけです。  それに新たに「審査委員会」とか、あるいは「テーマ別の募金」などを検討するような役割を付加 するとするならば、従来のお金を集めるという観点からの委員構成だけではなく、何かより専門性と か代表性とか信頼性とか、そういうものを得るような審査委員会の構成が求められます。そこで、そ れにはどのようなことが望ましいか、そういうガイドラインというか、そうしたものがご議論されて いましたらぜひ教えていただきたいと思います。私たちのように地域で共同募金の活動をしている者 としては、先ほどお配りいただいた広島の事例とかそういうのは大変力になると思うんです。  実は正直申し上げますと、今小学校や中学校で子どもたちも募金活動を熱心に進めてくれているの ですが、ユニセフ募金になりがちな傾向がありまして、共同募金ではないという現実を最近も子ども たちの活動報告の中で聞きました。募金活動は協調と共存が望ましいのであって、競争してはいけな いと思いながら、伝統ある歴史ある共同募金をもう少し新しい層、若い層にも浸透させたいという考 えもありまして、その辺でも何か今までのご議論の中で方向性がありましたら教えていただければと 思います。よろしくお願いします。   ○大橋座長  佐藤委員。それでまとめてもう1人。 ○佐藤委員  まず集まらなくなってきているという要因の中で、これは戸別募金の割合が大きいということです。 私どもでも集まらなくなっている中で、委員会で議論をやっている中で出てきているのですが、自治 会のお話とかも出ていましたけれども、自治会自体が力が弱くなってきているところへ、自治会の会 長さんはまだお話がわかっていただけて協力しようという人が出てくるにしても、お金を取り扱って 実際に募集活動をやるのは役員さんです。その役員さんたちが本当にやろうというインセンティブが 働くのかどうかというところが非常に大きな問題で、そこに直結していないということをはっきり言 われています。  自治会長がいくらやれやれと言ってみたところで、個々の役員さんが集めてくるところをきっちり やってくれない限りは、募金としては成り立たないわけですから額が減少するのは当然のことですし、 その人たちがやろうというインセンティブが働くような働きかけをどういうふうにすればできるのか。  これは今回出ていますように、目に見えるところで使われたり、使われる中身にコミットできると いうことです。地域の中での困り事や地域の中での活動にどういうふうに配分していくかということ と、その配分にどういうふうにその人たちがコミットできるようにするかというところにかかってい るのではないかと思います。  そういう意味で、福祉の活動の原資としてはこれから有効になってくると思いますし、そこで考え ていかないときっと解決がつかない。社協に今6割配分されているということで、社協がそのお金を どんどん使っているように見えるのですが、現実的な配分の中身とすれば先ほど言われていたのです が、社協がそういう中間支援の役割を果たして、社協で一旦受けたものを地域活動の助成財源として お配りしている部分が非常に大きいと思うのです。しかし今言われたように社協が持っている中間支 援組織としての能力をもう少し全国的に高める必要がある。そこの力をもう少し出していく必要が一 方ではあるということだとお聞きしておりました。  もう一点は、先ほどの嶋田さんのお話の中にあった、要は社会参加活動をするのに時間がなくて、 労力では参加できないけれどもお金なら参加できるという人たちの、そのお金をどういうふうに参加 意識とうまく結びつけていけるか。前回の参加論も同じ話だと思いますが、そういう参加の1つのツ ールとして、こういう募金活動なり地域の中でお金を回す仕組みをどういうふうに提示していけるの かというところが非常に大事な話なのかなと、お2人の話をお聞きして思いました。以上です。 ○木原委員  島村さんにお伺いしたいのは、今のとちょっと関係しているのですけれども、3ページに4つ課題 がありますね。2、3、4はよくわかるんです。問題は1なんです。私も中央共同募金会に10年お世 話になったので、あのときはどうやって募金額を上げるか苦労したのですけれども、今こんなに下が っていると思いませんでした。そこで今のように組織も整備しますね。これと募金増強を図るのとは 別のメカニズムのような気がするんです。中村企画官の「インセンティブをどう与えるか」というこ とと関係します。国境なき医師団はものすごくうまいですよ。それは当事者募金だからなんです。共 同募金のような「第三者募金」はものすごく不利ですね。  ちょうど私が共同募金にいるときに、テリー・フォックス募金というのが行われました。テリー・ フォックスという青年が骨がんに侵されて、がんの研究基金のために血を流しながら大陸を横断した。 途中で倒れてしまったんですけど、それをマスコミが放映して全国民が観た。数十日で亡くなってし まったけれども200億円集まった。共同募金と同じ額がね。つまりものすごくインセンティブがある わけです。  今回まとめられた改善案でどういうふうに募金増強を図れるかというのをもう少し具体的に教えて いただけるといいのですが。そういうことです。 ○島村氏  先ほどの具体的な共同募金委員会のメンバーであるとか、そのメンバーをどういうふうに構成して 運営するかとか、選考の方法とか、今後その共同募金委員会をどういうふうに進めるかというところ は今検討しております。あり方としての方向性だけでなく実践例ですね。各地域をみますと結構いろ いろな取り組みを既にしておりまして、その事例を収集し、今その実現のためのアクションプランを つくっております。機会がございましたらご紹介したいと思います。  それからやはり先ほども佐藤さんがおっしゃいましたように、目に見えてわかる、そして参加する ということで、共同募金にかかわることによって自分たちのいろんな課題が解決することを実感でき る、そういう仕組みをこの共同募金委員会で実現したいと思っています。ただ市レベルだけでなく、 もう少し小地域の中で実現することが必要なのかという議論もしているところでございます。  それから最後のご質問の中で、確かに改革の中身と募金を具体的にどうやって上げるかという議論、 これも併せて私どもは大変議論があるわけでございます。そういう意味で最後に新しい募金のスタイ ルもご紹介いたしましたが、先ほどの福井や広島の中であるのはテーマ性のある、このことについて 募金をしてほしいという、ドナーチョイス募金というのを当面打ち出していく。当事者の募金とおっ しゃいましたけれども、まさに23ページの福井県のものは当事者の方々が具体的にその必要性を訴え られる。そして共通して、こういう問題に共同募金の公器としての受け皿があることによって社会的 な信用を得るといいましょうか、そういうやり方を構想しておりますので、ドナーチョイスであると か、あるいは最近は自動販売機で募金ができるという方法を進めております。あるいは寄附付募金と かですね。少し新しい方法で募金開発も実施したいと考えております。以上でございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。さっき佐藤委員が言ったように社協に60%というのが誤解になるので、 中間支援団体としてやっているということをどれだけもっとわかりやすくするか。そういう意味で21 ページのこういう新しいニーズに対応したものをやっているとか、こういうことがもっとわかりやす く出てこないとだめですね。  ということと、ボランティアと寄附と別々にしますが、イギリスの一番大きいボランティアは金銭 ボランティアなんです。寄附することもボランティアだという考え方をもっと大事にしていく必要が あると思いますし、木原委員が言われたインセンティブを働かせるというのは、心臓病の移植とかで アメリカとかいろんなところに行きますが、1億円ぐらい集まったりするわけでしょう。ああいう寄 附する力を持っているので、どう働きかけるかというのが本当に大事なことかなと思いました。あり がとうございました。 ○島村氏  一言だけよろしいでしょうか。先ほどもマンパワーの問題が出ておりました。やはりプログラムオ フィサーとかファンドレーザー養成が必要と考え、現在研究をしておりますが、人材の養成と運営経 費、先ほど20%というお話がございましたけれども、共同募金もユニセフや他のようにもっと広報し たいのですけれども、大変予算に対する社会的な認知といいましょうか、厳しいわけでございます。 こういったものもある程度の分野認められるような働きをすることが、寄附をさらに活性化できると 考えております。以上でございます。 ○大橋座長  災害への寄附も、これは災害が起きたときだけでなくて、復興住宅の生活支援なども使えるように していただくとか、もっとソーシャルワーク的なアプローチが必要なんですよね。   ○島村氏  今日ご紹介しませんでしたけれども、そういった災害の後の復興を継続的に支援する。これは企業 との協働で、マッチングギフトでやっているようなものもございます。さらに広めていきたいと思っ ております。 ○今田委員  募金の量が下がっているというお話でちょっと気になっているのですが、不況の前がピークになっ てそこから下がっているでしょう。その原因と、年齢による20代とかそのデータがないとね。たぶん、 若い人に感覚が合わない。赤い羽根をつけて格好悪いしね。町内会・自治会は義務で結構しょうがな いからというのでやって、それが廃れてくるとそっちが減って、若い人はうまくいっていないという 感じで、やはり若い人は格好よくないと嫌でしょう。だから、自動販売機でもこうやったら共同募金 のシールが出てくるとか、最後の工夫はとてもいいんじゃないかと思う。こういう系統の工夫をする ためにも、どの年齢層がどういうふうな寄附の量になっているかというのをきちっと把握された方が いいと思うのですが。データはあるのですか。 ○島村氏  年齢層までの分析は今日ご紹介しませんが、若い層への募金をどういうふうに活性化させるかとい うのは大変大きな課題と認識しております。それから赤い羽根をつけるのが恥ずかしいという部分も あるのですが、リボンであれば割としやすいということもありますので、そういう検討もこれからし ていきたいと思っているところでございます。 ○今田委員  何かつけるやつがあるじゃない。 ○島村氏  そうですね。 ○大橋座長  ありがとうございました。携帯電話にストラップでつけてもらうとか、いろいろあるかもしれませ んね。それではもう一つ議題がありますので、これで終わらせていただきます。ありがとうございま した。  それでは次が生活福祉資金の貸付制度ということで、中村企画官から説明をいただいて、後に北海 道社協の亀川さんからご報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。   ○中村企画官  それでは資料7に基づきまして生活福祉資金貸付制度についてご報告申し上げます。  1ページ目をお開きください。位置づけでございます。生活福祉資金貸付制度は低所得者、障害者 または高齢者に対し、資金の貸付と必要な援助指導を行うことにより、その経済的自立及び生活意欲 の助長促進並びに在宅福祉及び社会参加の促進を図り、安定した生活を送れるようにすることを目的 とする、とされております。  これは昭和30年に民生委員の指導援助の一環として資金貸付を行う世帯更生資金貸付制度がもと になってございます。その後時代の要請に応じまして、対象の拡大あるいは資金種類の拡充を行って きたところでございます。実施主体は都道府県社会福祉協議会でございまして、市町村社会福祉協議 会が借入窓口となっております。  2ページ目をお開きください。生活福祉資金の効果等でございます。大きく3つあげられるかと存 じます。1つは、世帯の生活基盤の確保と、生活保護受給に至らないようにする、または生活保護か ら脱却するようにする、という機能でございます。2つ目に、社会・経済問題に対して機動的あるい は即応的に対応するという機能。3つ目に、地域生活を継続するための支援の機能でございます。  3ページ目をお開きください。現状と課題でございます。平成18年度におきます貸付状況は、貸付 件数が1万1,034件、貸付金額が112億6,000万円となってございますが、近年は漸減傾向にあると ころでございます。4ページ目がその傾向のグラフでございます。折線が貸付決定件数、縦棒が貸付 の決定金額でございます。  減ってきている原因といたしまして3つ要因があるのではないか。1つは手続きが煩雑であるとい うこと。また2つ目に、市中における消費者金融が市民のニーズに即時に対応しているということで、 本制度の対象者である低所得者が消費者金融を利用していて、この生活福祉資金の貸付に至らないの ではないか。ちなみに現在生活福祉資金で貸付中の金額が978億円でございますが、一方消費者金融 の貸付残高が約12兆円という状況でございます。3つ目に、その他制度の運用上貸付審査基準を厳格 にしている。あるいは他法他施策の優先を徹底している。また、当該制度の活用を行っていない民生 委員もおられるということがあるのではないか。  一番下でございますが、都道府県別貸付件数にばらつきがあるところが問題であろうと考えており ます。近年、自治体の財政歳入不足に伴う対応策として、社会福祉協議会に対してこの貸付原資を返 還させるという動きも見受けられるところでございます。  6ページ目をお開きください。今後の対応でございますが、利用の促進と貸し倒れ抑制の両立が重 要であろう。低所得者の資金需要を踏まえまして、単なる貸付ではなくて専門職による自立生活プラ ン策定を行うなど、総合的相談支援機能と一体となった貸付事業に転換する必要がある。また資金種 類の新設なり簡素化、包括化、手続きの簡便化ということも図っていく必要がある。3つ目に、特に 多重債務の予防、悪化防止のため事前相談や事後モニタリングの充実なども必要であろうと考えてお ります。また何よりも制度内容の周知、積極的な活用が必要であると考えております。  一方貸し倒れ抑制という観点からは、償還指導の徹底、償還を促進するための社会福祉協議会の機 能の充実といったことを通じまして、確実な債権回収や、あるいは回収免除の対象となる債権の処理 という必要があろうかと存じます。以上でございます。   ○大橋座長  ありがとうございました。それでは亀川さんよろしくお願いします。 ○亀川氏  ただいまご紹介いただきました北海道社会福祉協議会で生活福祉資金の担当をさせていただいてお ります亀川と申します。今日は生活福祉資金の現状と課題ということで資金に携わる現場からご報告 させていただきたいと思います。資料8と私どもの4種類のパンフレットをご用意いただければと思 います。  早速ですが、初めに北海道における実施状況でございます。北海道における生活福祉資金貸付事業 は、北海道社協が実施主体となりまして、道内の全市町村社協に貸付相談や受付窓口等の事務を一部 委託して実施しております。また民生委員の皆さんに利用者への相談援助の関わりを持っていただく。 そういった連携協力を得まして、全道的なネットワークのもとに実施しております。  貸付状況でございますが、平成18年度の貸付決定状況は、生活福祉資金では735件、5億9,846万 6,000円、離職者支援資金では81件、7,328万円でございました。平成18年度末の貸付中件数は生活福 祉資金で1万2,777件、62億5,566万7,000円、離職者支援資金は722件で7億5,778万4,000円、長期生 活支援資金は17件で貸付決定額でいいますと2億1,247万9,000円となっております。  こういった状況の中で特に北海道の特徴と言えるものは、今灯油高騰の問題で非常に話題になって ございますけれども、やはり冬期の資金需要へどのように対応しているのかというところだと思いま す。ストーブが壊れて冬の生活ができないといったようなものが年間通じて数件ございますし、これ は先日あったケースですけれども、視覚障害の方が、自分の家の周りの雪かきをする際に、目が不自 由なものですから遠くまで雪を捨てにいくことができないために、自分の家の敷地内に融雪槽をつく りたいということで、その工事費用を貸付したというケースがございます。こういった除雪の需要に 対応しているというのも寒冷地の特徴ではないかと思います。  今年は灯油の問題がさらに大きな問題になってございますので、生活福祉資金の福祉費、突発的な 資金需要に対応するような資金の中で、灯油の一括購入等で対応させていただくものが増えてくるの ではないかと思っております。また北海道単独事業で特別生活資金といってこれは5万円限度ですけ れども、お貸しするものを今まで持っておりました。今年度はこれをさらに利用しやすいものにとい うことで、申込期間の延長とか償還期間を延長させていただくように要件を緩和したこともございま すので、そちらも生活福祉資金と併せて有効的に活用して、生活サポートを行っていきたいと考えて おります。  続きまして業務推進体制でございます。こちらの図で相談から受付から償還に至るまでの、借入申 込者、民生委員、市町村社協、道社協の関わりについて簡単に示しております。一つ一つのご説明は 省かせていただきますけれども、これらの役割といたしまして、北海道社協は実施主体として貸付相 談、それから貸付申込受付、貸付審査・決定、送金管理、償還相談、債権管理ということを行ってお ります。  北海道社協の中に貸付審査等運営委員会という委員会を設けまして、これはどういった委員会かと 申しますと、一部の貸付や、猶予・免除等について道社協会長に意見を述べる機関として設けており ます。  市町村社協につきましては、貸付相談・申込窓口、償還相談の一部を委託させていただいて、そう いった対応をしていただいている。  民生委員の関わりでございますけれども、民生委員には住民からの相談、それから申込に関する意 見書の作成、それから利用者の生活状況確認への協力という形で協力を得ております。私どもの生活 福祉資金では、貸付から償還までですと長い方では10年以上の関わりになってまいりますので、こう いった中で民生委員に関わっていただいて、生活状況の確認とか、そういったいろいろな部分で相談 援助をしていただきながらサポートをしているという状況でございます。  続きまして広報の方法でございます。資金パンフレットを作成いたしまして北海道社協それから市 町村社協の窓口に設置しております。これがお手元にございます4種類のパンフレットでございます。 要保護世帯向け生活支援資金という白黒の印刷のものですけれども、これは今年度からの事業でござ いますけれども、これにつきましては一般住民の方が対象ではなくて福祉事務所が要保護と認定した 方が対象でございますので、窓口には設置しておりませんで、実際に福祉事務所で社協が説明する際 に使っているパンフレットでございます。そのほか広報の方法といたしまして、道社協のホームペー ジに掲載、それから道庁のホームページにも掲載しております。また北海道庁の広報を利用して利用 案内を行うなどの広報活動をしております。  続きまして(2)の生活福祉資金申込世帯の状況や貸付ニーズでございます。借り受け申込世帯の 状況とニーズはどのようなものかということで、少しイメージを持っていただくために細かくご紹介 させていただきたいと思いますが、どのようなものがあるかといいますと、生活福祉資金の利用者と いうのは低所得世帯それから障害者世帯、高齢者世帯でありまして、これらの世帯が生活困窮等によ って臨時的な資金需要に対応できずに、生活福祉資金の利用に至っております。  利用される世帯として、もともと収入が少なく慢性的な困窮状態にある世帯。例えば高齢者世帯、 障害者世帯で年金収入のみの方、それから病気や障害等により仕事につけず稼働収入が少ない方。日 払い・月払いでの雇用、または小規模な自営業のために収入が不安定な方です。  次に世帯の生計を維持する基盤に不安定要素が多い世帯。これは世帯内に病気とか障害の方がいて、 看病や介護に追われる。安定した仕事もできないという方。それから、様々な事情で家族が離散する などして、世帯の対応力が弱いという場合。それから勤務先の倒産や会社都合による解雇により失業 された方。現金収入や貯金はないが、不動産を保有している。しかし、一般の金融機関等の不動産担 保融資の対象とはなりにくい方などであります。  それから、他のサービスや制度の利用が対象外のため、臨時の支出増に対応困難な世帯。これは高 齢といった年齢的条件等によって金融機関から借入ができない方。それから、生活保護受給世帯であ っても、保護費の支給対象外の需要が発生したために対応できないといった場合でございます。こう いった世帯が資金の利用に至っているという状況でございます。  そこで、例えば具体的にどのような借入相談に資金貸付で対応しているかについて例を挙げますと。 低所得で生活維持が精いっぱいで修学旅行費用が捻出できないというケースに、福祉資金の福祉費で 旅費を貸付して一時断念した修学旅行が実現したというものがございます。  また障害のある長女の就職が内定したが、収入が少なく通勤に必要な自動車が購入できないという ケースに、自動車購入費用を貸付いたしまして、順調に会社勤務ができるようになった。  それから、住宅が雨漏りするので修繕したいが、高齢のため他の金融機関から借入できないといっ たケースでは、住宅資金を貸付して工事をし、快適な生活に戻ることができた。  それから急な医療費の支払いが発生したので来月の給料日までの生活ができないというケースでは、 緊急小口資金にて生活費を貸付けて、一時的な生活困窮から回避できた。  生活保護世帯の長男が専門学校に合格したが、保護費では専門学校の学費が対象外であり出ないと いうケースに対して、修学資金で卒業までの学費を貸付けて、念願の専門学校に入学、就学すること ができた。  それから、会社都合で解雇されハローワークで求職活動を行っているのだけれども、妻のパート収 入だけでは生活できないというケースでは、離職者支援資金で生活費を貸付けて、この間に次の就職 先を得ることができた。  例を挙げますとこのようなニーズに対して資金を貸付けて、自立した生活が送れるように対応を図 っているという状況でございます。  さらに具体的事例として、全部はご紹介できませんけれども何ケースがご紹介させていただきたい と思います。事例1から事例8まででございますが、4ページから事例を載せさせていただいており ます。  この中で事例2をご覧いただけますでしょうか。これは障害者世帯の生活環境改善をサポートした ケースでございます。世帯構成といたしましては借受人の80代の方と妻の高齢者世帯です。この借受 人は身障手帳を持っている障害者の方であります。生活状況といたしましては、借受人夫婦は民宿を 経営しております。年金収入と合わせて年間120万円程度の収入で生活されている方でございます。  貸付までの経過でございますが、1階が民宿2階が住居となっておりましたが、借受人の右下肢機 能障害が悪化して介助なしでは2階への昇降が困難となった。この介護を妻がしていたのですけれど も、介助する妻の負担も大きいために、自力で階段昇降ができるよういす式階段昇降機を取りつけた いということで、生活福祉資金の申込になったケースでございます。貸付内容は、この昇降機の購入 費用として75万円を貸付ました。併せて介護保険を利用して手すり等の取りつけも併用しております。  貸付後の状況でございますが、この昇降機の設置により2階への移動が容易になって妻の身体的負 担が軽減いたしました。昇降機と手すりの設置によって、以前より生活しやすい環境が整えられたと 思われます。今後の関わりとしては、要介護の高齢者世帯であることから、この夫婦の健康状態や障 害の進行状況にも気配りをしつつ、定期的な民生委員の訪問などを通じて地元社協も含めて見守り活 動を行っていく予定でございます。  今度は事例4を見ていただけますでしょうか。これは自己破産による生計困難そして多子世帯をサ ポートしたケースでございます。世帯構成といたしましては、両親が自己破産し6人の子供を残して 行方不明となった。そのため祖父母が養育している8人世帯でございます。生活状況といたしまして は、祖父母の年金収入では8人の生活は賄えないため、生活保護を受給しております。  貸付までの経過でございます。精神的、経済的には厳しい状況下ではございましたが、子供たちの 向上心、自立心は強くて、高校さらにその上の専修学校などへの進学を希望されました。未成年者へ の貸付に当たっては親権者の同意というのが必ず必要なのですけれども、ご両親が不在のためこの祖 父を後見人とする手続きをとった上で貸付を実施したというケースでございます。貸付内容は、長女、 長男、次女の高校修学費用を貸付、さらに長女と長男につきましては卒業後専修学校進学費用も貸付 たというケースでございます。  貸付後の状況ですが、長女は福祉系専修学校を卒業して地元の福祉施設に就職しております。高校 貸付分は既に完済して、現在は専修学校分を償還しながら家計も助けているという生活状況でござい ます。長男は専修学校、次女は高校に就学中でございます。下にもまだお子さんがいらっしゃいます ので、修学資金の利用が今後も予想される世帯でございます。償還期間を含めてこの世帯との関わり はこれからまた長い期間となる。兄弟が協力して償還し自立につながるよう、民生委員や地元社協に よる定期的な訪問等の見守り支援を継続してまいりたいと考えてございます。  それから最後もう一点だけお願いいたします。事例8です。これは離職者支援資金で対応したケー スでございます。母子関係制度が適用外となった世帯をサポートしたケースとしてご紹介したいと思 います。世帯構成といたしましては、借受人30代の女性で、子供2人の3人世帯でございます。生活 状況として、借受人は失業中のため知人宅に母子で身を寄せている状況。生活費は借受人の父親から の援助に頼っている状態でございます。  貸付までの経過でございますが、借受人は以前スナックを経営しておりましたが、お子さんが精神 的な悩みから体調を崩して、その看病のためにこのスナックをやめたという状況がございました。子 供が回復してきたので、求職活動を行っているのだけれどもなかなか就職できない。知人宅に同居し ていることを理由に児童扶養手当も母子福祉資金も対象外と判断されました。そのため当面の生活費 に困ってこの離職者支援資金の申請に至ったケースでございます。  貸付内容といたしましては、月20万の3カ月分、60万円を貸付いたしました。その後の状況です が、ハローワークで求職活動を行ったり、また知人に就労先の紹介依頼をするなど努力しておりまし たが、当初の貸付期間内に就職先が決まらないで貸付期間の延長を申請し、その後2カ月間の延長貸 付をいたしました。その後はアルバイトが決まりまして、今は何とか生活をしている状況でございま す。  そのほかの事例につきましては、後ほどお目通しをいただきたいと思います。時間の関係で申しわ けございません。  最後に課題ということで何点かお話しさせていただきたいと思います。3ページに戻っていただき たいと思います。  まず1点目が、利用者の自立を支援する制度趣旨の徹底ということでございます。我々が貸付相談 を行う際には、利用者の生活全体をとらえて相談に応じることが重要であると考えております。貸付 相談はあくまで入り口であって、その背景にある生活困難の解消と自立支援に目を向けて社協内外の 社会資源の活用も含めて、生活全体を支援する制度運営を行っていく必要があると考えております。 また市町村や地域包括支援センターなどの関係機関とも制度の趣旨を共有して連携を図っていくこと が重要であると考えております。  今までの相談の中でこういった趣旨で他の機関につなげたり、貸付以外の方法で対応した事例につ いて簡単にご紹介させていただきたいと思います。  消費者金融から数百万円の借入がある多重債務者から資金の申込があったケースがございました。 けれども、現状の債務を整理しないままさらなる債務を負わせるということは適当でないと判断いた しまして、まず多重債務の整理縮減が優先と考えまして、法律相談を勧めて法テラスの利用につなげ たというケースがございました。  もう一つは、雇用保険の受給手続きをとらないまま離職者支援資金の申請がありましたけれども、 社協からハローワークに紹介したところ雇用保険受給が可能となったケースがございました。このと きに併せて、この雇用保険を終わった後も失業状態であれば離職者支援資金の受給が可能なので、そ ういった場合には相談に来るように案内したというケースがございます。  次に2番目でございます。貸付ニーズへの対応と適切な債権管理の両立ということでございます。 低所得世帯等の資金需要に対して貸付を行うことで、自立支援それから生活意欲の助長、制度の理念 や目的の達成につながっていくのですが、一方、貸付が自立につながらずに債務のみが残るというケ ースも現実にはございます。例えば生業費で事業の開業資金を貸付したけれども、商売がうまくいか ずに売り上げが計画通りに伸びないといったようなケースでございます。  生活福祉資金は経済的に不安定で信用力の低い利用者に対する貸付でありますので、償還困難な状 況は当然起きてくるわけでございます。それを踏まえた上で貸付ニーズへの積極的な対応をどのよう に進めるかということが課題でございまして、そういったジレンマを抱えながら日々対応していると いうのも現状でございます。  最後でございます。利用者にとってわかりやすい制度であることでございます。この制度は様々な ニーズの変化に対応するものとして様々に改善され、また資金の種類も多様化して増えてきたという 現状がございますけれども、その結果資金の内容自体が複雑化し、利用者にとってわかりにくくなっ ているのが現状と言えます。資金の種類など簡素化できるものは簡素化してもっとシンプルにして、 誰もがわかりやすい制度としていくことが必要ではないかということで考えております。  以上で私の報告を終わります。ありがとうございました。   ○大橋座長  ありがとうございました。どうぞ。   ○今田委員  ありがとうございました。ちょっと聞いていて1930年代か40年代のイギリスのベバリッジ報告の救 貧施策の社会保障みたいなイメージがしたのですが。もちろんきちんとするところはしないといけな いと思うけれども。  お聞きしたいのは、回収率はどれぐらいなのかということと、自立支援のためであることを前提に しているというのだけれども、自立といったって、個人とか単なる家庭に貸付けたら、できなければ やれないのではないか。どういう自立支援というのをプログラムとして持っておられるのかというの をちょっとお聞きしたいのですが。 ○中村企画官  償還率の方をちょっと。資料7の17ページ目をお開きください。平成18年度における償還率でござ います。これは償還計画額に対する償還済み額の割合。全体で約64%でございます。一番高いのが修 学資金で74.6%でございますが、離職者支援資金は38.2%という状況にございます。 ○今田委員  普通の銀行がやればつぶれますね。そういうことで公的なサービスということだろうと思うけれど も、グラミン銀行というバングラデシュのユヌスさんが考えた銀行ね。あれは個人には貸さなくて共 同体に貸すわけでしょう。そうすると、共同体の目でみんな頑張れと支えるから持ち逃げしないとい うか、トンずらしないようになっているという工夫で回収率99%ぐらいまで行っているわけだから、 何かそういう工夫をしないと、これだといつまでたっても救済というネガティブなイメージしかなく て、皆で前向きなポジティブなウエルフェアみたいなので支え合っていくという。こっちが自立支援 をやるというのではなくて、共同体みたいなものでやれるような仕組みをうまく考えた方がいい。で ないと、これはイメージが悪い。生活福祉資金貸付というのは何かイメージ的にとてもネガティブな 感じがするんだけど。  もちろん必要なんですよ。最低限の社会保障というのは国がちゃんとやっているわけでしょう、日 本は少ないけれども。そっちはまた別途に考えるべきで、もうちょっとポジティブな感じの貸付とい うのがあっていい感じがしました。 ○大橋座長  どういう自立支援をしているかということについては、亀川さんどうですか。なかなか難しいので しょうね。 ○亀川氏  なかなか難しいことではあるのですけれども、私の方で課題として入れさせていただいた1番目の ような形で、いろんなところと連携して相談援助体制をきちんと確立させて、社協の総合相談機能で すとか他の機関との調整能力といったものをフルに活用して、その方の生活総体をみていくという視 点で今後頑張っていきたいということでございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。 ○小林委員  最初の厚労省の問題提起は、商品としてのというところから始まったわけですね。商品というのは 非常におもしろい概念だと思いますが、今ずっと伺っていると、例えば企業の活動でも集めるところ からどう使うかというところが問題になってきて、それがどういう結果を生んでいるかというアウト カムのところが問題になってきている。さらにはどういうふうにプログラムをつくるかという、そこ まで考えないといけない時代になってきたのかなと。  そうしますと例えば共同募金の方も集めることだけでなく、どうやって使うか、評価をどうするか。 人をどう育てるかという、つまりファンドレーザーとかソーシャルワーカーとかいろんな言い方をし ますけれども、人に対するお金の出し方、要するに事業費補助ではなくて人件費補助という考えがど うして出てこないのかなと思います。  アメリカの場合はたしかかなり人件費に使っていいということになっていて、事業費補助ではない ですよね。そういうふうに私はいくつか事例をみたことがあるのですけれども。地域で人が出てきて、 地域をマネジメントする人を育てるような寄附金のあり方ですね。その辺を何か考えなければいけな いのかなというのが、何となく今日の印象ですけれども。   ○榊原委員  すみません、一言だけ。共同募金の話と生活福祉資金の話を聞いて感じたのは、福祉のマネジメン トの近代化というものが非常に遅れているのかなと。私はもちろんそんなに詳しいわけではありませ んが、実は直近でフランスに行って子供の福祉についてやっている人たちのいろんな話を聞いてきて、 それでそういう印象なんですね。  例えば共同募金の方では、シンクタンク機能が弱いのではないかという感じがします。この中に今 後の課題として強化すると書いていらっしゃるけれども、例えば私は寄附に割と前向きな気持ちを持 っているはずなのに、実は今共同募金に入れたいと思わなくなっているのはなぜなのかなと思いなが ら話を伺ったんです。それはやはり、何に使われているのか、お役立ちになったのかどうかという実 感がとても得られないというところなんです。  おつくりになっているパンフレットを見ても、なぜ改革が必要なのかが1行目のところに「寄附の 重要性はますます高まるだろう」と書いてあるんです。「だろう」って。じゃあ寄附のニーズはどこ にあるか把握していらっしゃらないのかしらという印象になるわけですよ。これだけのオールジャパ ンで歴史を持っている組織でいらしたら、社会的な福祉、募金のニーズはどこにあって、自分たちは どこをやる必要があり、実際にやったらどれぐらいの効果があったということぐらいは、当然把握し 分析し、それをきちっと公表する。それを例えばPRの広報なりいろんなキャッチフレーズの中にき ちっと入れる。そうでないと、地縁、血縁のないところでいろんな人を動かさなければいけないとき に、力にならないですよね。  例えば物すごい膨大な額の家族手当を集めているフランスの組織。国でない組織が集めているので すけれども、物すごいシンクタンク機能を持っているんです。取材に行ったら、ここは研究所かしら と思うぐらい出てきた国際部長さんがだーっと数字を上げて説明してくれる。これならみんな納得で きて、大臣も企業の経営者たちも説得しながらお金を集めてやれるという感じがしました。ぜひそう いうふうに発展していっていただきたいし、これだけの信頼があるのだからできるんじゃないかと思 います。  それから生活福祉資金の方は、目的は何なのか、自分たちがやっている事業は何なのかというゴー ルをもっと明確にして施策のパッケージをつくるという取り組み方が、社会福祉の作業全体の中で必 要なのではないか。例えば生活福祉資金だったら自立した生活ができなくなっているわけですよね。 自立した生活者に戻す。きちっとした納税者、保険をちゃんと納める人に戻すというところをきちっ とゴールとして設定したら、じゃあ一体どれぐらいの期間どれぐらいの援助をしてあげれば、もう一 回例えば収入の糧を得られるような状況に戻り、逆に貢献してくれる人に回ってくれるのかをきちっ と設計した上で、だからこの人にいくらやるんだ、その結果何年たったら戻ったというような取り組 み方が必要で、例えば1人親家庭の支援などでフランスは実際にやっているんです。  母子家庭になった人たちには自動的に1年間ばーんと1カ月暮らせるだけの日本でいう生活保護ぐ らいのお金をあげるのですけれども、1年きっかりで打ち切って、次からばんばん就職支援をするん です。本当に2〜3年で自立できるような家庭に戻っている人たちに私はお会いしてきたのですが、 その間ちゃんと精神カウンセリングまでやっていて、福祉がセットでやっているんですよ。本当にき ちっと家族全体が健全な状態に戻って、きちっとした社会人としての活動ができるようになるところ までちゃんとみているんです。  すごく計画的で近代的な福祉というのはこういうものなんだと納得したことがありまして、ぜひそ ういう中の1つとしてこの生活福祉資金も組み込むようなコーディネート力が必要なのかなと思いま した。   ○大橋座長  ありがとうございました。まだいろいろあろうかと思いますが、生活福祉資金のことでいけば、例 えばDVの生活援助をどうするのだろうかとか、あるいは在住外国人の方々の医療費の問題とか、結 構考えなければいけない部分があるわけですね。そのことが生活福祉資金になじむかどうかは別とし て、そういうことも考えないと世の中が安定しないという部分がありますし、一方で貸付する以上は どう対応するかということですが、今日の資料8の1ページのところは、ソーシャルワーク的な自立 支援のところはないんですね。これはお金のやりとりの図なんです。ただ相談だけ書いてあるんです よ。社会福祉協議会というのはソーシャルワーク的な援助をしないのかというイメージがこれだと出 てきてしまうんです。そういう意味で、今榊原委員や今田委員が言われたことはとても大事な問題か なと感じました。  全体をまとめる時間がありませんが、今日はこれでおしまいにしたいと思いますが、局長どうぞご あいさつをお願いいたします。 ○中村社会・援護局長  ばたばたしておりまして1時間ほど遅参しまして大変失礼いたしました。これからの地域福祉のあ り方に関するこの研究会ですが、大変時間がない2時間という中で盛りだくさんで、やや委員の皆様 には消化不良だというご感想も途中いただいたりして心苦しく思っておりますが、一応前半で考えま したメニューをひとあたりで恐縮でございますが、やっていただきましたので、これで材料は少なく とも出そろったということなので、これから消化作業に入っていただいて練り上げていただきたいと 思っております。  今年最後の研究会になりますので、今年6回やっていただいたということに感謝いたしますととも に、年明けまたよろしくお願いしたいということを申し上げてごあいさつとさせていただきます。ど うぞよろしくお願いします。   ○大橋座長  ありがとうございました。では事務局、今後の予定をどうぞ。 ○事務局  次回の研究会は、1月30日水曜日14時から16時でございます。場所は追ってご案内いたします。 以上です。 ○大橋座長  ありがとうございました。それではちょっと早いのですが、どうぞよいお年をお迎えいただければ と思います。本当にありがとうございました。嶋田さん、島村さん、亀川さん、どうもありがとうご ざいました。これで研究会をおしまいにいたします。ありがとうございます。 (終了) 1