07/12/03 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」第5回議事録 第5回これからの地域福祉のあり方に関する研究会議事録            開催日:平成19年12月3日(月)14:00〜16:00            場 所:厚生労働省5階 共用第7会議室    ○大橋座長  定刻になりましたので、ただいまから第5回これからの地域福祉のあり方に 関する研究会を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まりいただき まして、ありがとうございました。とりわけ第一生命経済研究所の鈴木征男さ んと大阪ボランティア協会の早瀬事務局長はどうもありがとうございました。 後ほどご報告をいただきたいと思います。それでは、委員の出席の状況等を事 務局からよろしくお願いいたします。 ○事務局  本日は今田委員、金井委員、清原委員がご欠席です。 ○大橋座長   本日のねらい、進め方等につきまして、事務局の千田補佐から説明をお願い したいと思います。よろしくお願いします。 ○千田課長補佐  資料1、資料2、資料3に沿ってご説明を申し上げますけれども、本日のね らいの前に、これまでの研究会で地域を取り巻く課題等につきましてご意見を いただいておりますので、今日のご議論に資するという形で骨子をまとめさせ ていただいたのでご紹介させていただきます。  地域福祉が取り組むべき課題といたしまして、地域の要支援者像として孤立 の問題。  地域の問題として取り上げられたこととして、制度のはざまにある方々への 対応。ごみ出しや電球の取りかえ等の既存の施策で応え切れないニーズの存在 があるということ。地域社会の偏見や無理解といった問題から生まれる問題が あるということでございます。複合的な課題、要介護者の親とその子どもをト ータルに生活支援ができないといった総合的な対応の不十分さから生まれる 問題があるといったことが議論に挙げられておりました。  地域の要支援者への支援のあり方におきまして、地域での自立とは何である か、これを明らかにするべきであると。そもそも支援が必要な状態像とは何か といったことでございます。生活リスクマネジメント、ケイパビリティ、アビ リティですけれども、自立生活能力の支援の問題。また、一人一人のつながり をみると。近隣・家族のつながりを切らないように関係性を丁寧にみていく必 要があるといったご意見をいただいています。  支援の具体的な方法につきましては、早期発見・予防、助けを求める力のな い人に対する生活全体をみていくといった支援が必要である。福祉アクセシビ リティの支援が必要である。生活の総合性、そもそもその人の生活全体をみる ような支援が必要であるということ。要支援者であっても社会に役立つような ボランティアとして参加する形が必要であるということ。フォーマルを利用す るとインフォーマルのサービスが切れてしまうといった現象が起きてしまう けれども、そういったことがないようなネットワークづくりが必要であるとい ったことです。  要支援者を含む地域の人々に対する働きかけ、地域活動のあり方につきまし ては、早期発見・早期予防の観点が必要であるということでございます。  第4回の研究会では、地域福祉を進めるためのシステムのあり方についてと いうことで、地域の範囲のあり方。ネットワークにつきまして、ニーズの把握、 情報交換等の会議の開催が必要である。また、見つけにくいニーズの発見とい うこと。既存の専門職や事業者との連携、関係が必要である。場の問題ですが、 活動の拠点といたしまして、住民が気軽に集まり、問題の共有ができるといっ た場が必要であるということ。地域福祉のさらなる発展の方策といたしまして、 コーディネーターの専門性の強化やソーシャル・キャピタルの循環性の必要性 といった問題。地域福祉の役割について、制度外ニーズへの取り組みが必要で あるといったご意見をいただいております。  詳しくは資料2の方でこれまでの意見の整理をさせていただいております ので、参照していただければと思います。  3ページ目に今回のテーマにつきまして、住民参加の推進について事務局と して5つの骨子を挙げさせていただきました。1つ目として、なぜ地域福祉に 住民参加が必要なのかということ。そして住民参加の担い手はどういう人たち なのか。住民が力を発揮するためにはどういった方策、仕組みが必要なのか。 計画や社会福祉協議会、共同募金、民生委員・児童委員、地区活動等における 住民参加はどうあるべきか。住民と行政との関係をどう考えるかという視点を 今回出させていただきました。  具体的には資料3に例示させていただいております。1ページ目で、住民参 加の論点といたしまして、なぜ地域福祉に住民参加が必要なのかということで、 地域における問題発見ですとか、問題提起、合意形成、サービスの評価の問題。 それぞれの場面に応じた担い手の方々をどうするのか。  また、住民参加の担い手とはどういう方々なのか。まず町内会・自治会など の地縁組織、そして民生委員・児童委員などの行政委嘱員、社協や施設、医療 機関などの専門の組織の方々、そしてNPO、ボランティアなどの市民活動組 織、農協や生協などの相互扶助の協同組織、商店街、企業などの社会貢献を行 っているような経済組織など。そして退職した団塊世代や子育て世代などの新 たな担い手、都市部のマンション等に見られる集合住宅の住民の参加をどう促 すかという問題がございます。  地域福祉において住民が力を発揮するためにはどのような方策や仕組みが 必要なのかといたしまして、場づくりの問題、ネットワークづくりの問題、新 たな世代の参入。これは団塊の世代はもちろんのこと、新たな視点といたしま して、若者なども民生委員・児童委員の委嘱ができるかどうかといった視点も ございます。専門職の配置、既存の社会福祉の方々等の配置や支援のあり方。  これは少し視点が違いますが、計画や社協、共同募金、民生委員・児童委員、 地区活動等における住民参加はどうあるべきか。いわゆる制度意思形成決定へ の住民の参画のあり方といった視点でございますが、選定過程への参加、活動 における参加等の視点がございます。  住民と行政との関係をどう考えるかといたしまして、政策決定への参加、協 働。行政の安価な下請けになってしまうのではないかといったご議論もござい ます。そうした現象をどう考えるかということでございます。  1ページめくっていただきますと、行政における住民参加といたしまして、 バブルの崩壊後、社会参加の意識をもった市民の方々が、今まで行政が行って いた領域に進出してきている動きがございます。特に福祉やまちづくりの分野 でその動きが顕著になってきていると。  背景には行政上の財政上の理由ということと、行政が提供するサービスに画 一性があって多様なニーズになかなか対応し切れないといった問題がござい ます。平成10年以降、NPO法や介護保険法の施行、地方分権一括法等によ りまして、制度的に住民参加の条件整備が進んできていると言えるのではない かと思われます。  行政における住民参加の具体的対応といたしましては、政策形成段階におけ る住民参加。政策実施段階における住民参加。政策の評価といったものがこれ から重要になってくると言われておりますけれども、政策評価への意見提出、 外部評価委員会への市民の参加等が言われているところでございます。  3ページ目は地域福祉における住民参加の制度的な仕組みをまとめさせて いただきました。それぞれ根拠法、通知等を入れさせていただいておりますが、 主に社会福祉法では地域福祉の増進に努めると規定されておりますが、その他 は計画づくりへの参加といったものが各条文に記載されているところでござ います。  なお、ここでご留意いただきたいのは、民生委員・児童委員の委嘱手続です とか、共同募金の配分の手続については、住民参加の制度的な仕組みといった ものは規定されていないところでございます。  4ページ目、データ編でございますが、住民参加の主体といたしまして町内 会・自治会が挙げられるわけですが、町内会・自治会、合わせますと全国で約 30万の地縁団体が存在するところでございます。  ただ、この中でどういった活動をしているかということでございますが、主 に区域の環境美化ですとか、イベント活動という活動が顕著でありますが、地 域福祉や介護・保健・医療活動といった活動につきましては、その表の下から 5番目にございますが、36.8%という活動状況になっているということでござ います。  住民参加の主体としてNPOが挙げられるわけでございますけれども、現在、 NPO法人は認証数3万を超えております。その中で約4割、約1万2,000法 人になりますが、保健・医療または福祉の増進を図る活動を行っているところ でございます。  6ページ目でございますが、住民参加の主体として農協、あるいは生活協同 組合といった相互扶助、あるいは共助を基本とする団体の参加がみられます。 農協ですが、活動といたしまして、全国で954組織、これらがミニデイや安否確 認・ふれあい訪問、家事援助などを行っています。また、360を超える農協組織 が在宅を中心とした介護事業を行っています。生活協同組合に至りましても、 助け合い活動、介護保険事業を行っています。生活協同組合は在宅事業の2% ぐらいシェアを占めているところでございます。  7ページ目といたしまして、住民の参加頻度の現状でございますが、町内会・ 自治会への参加といったものは年数回程度といったものが大半でございまして、 NPOやボランティア、市民活動への参加というものはかなり少ない。参加し ない理由といたしましては、活動する時間がない、あるいはきっかけがないと いったことが挙げられているところでございます。  住民の参加意識を8ページ目に表でまとめさせていただいておりますが、こ の中では地域活動を通じて社会に貢献したいと考えている人が多く、社会福祉 に関する活動を通じて社会に貢献したいと考えている人が3分の1を超えてい るところでございます。また、今後は参加していきたいと考えている方が51.6%、 5割を超えているという状況でございます。  以下、参照条文を参考のためにつけさせていただいたので、ご参照いただけ ればと思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。今日の第5回の研究会は、2つの大きな課題を考 えておりまして、一つが住民参加の推進についてということでございます。も う一つが既存施策のレビューということで、ボランティア問題について話をし たいと思っております。  今、1番目の住民参加の推進について千田補佐から資料をご説明いただきま した。このことにつきまして、今日は第一生命経済研究所の主席研究員の鈴木 征男さんにお忙しい中来ていただいておりますので、これからいろいろな調査 に基づいたご報告をいただきたいと思います。鈴木さん、よろしくお願いいた します。 ○鈴木氏  鈴木と申します。私は今、第一生命経済研究所に属しているのですが、この 経済研究所の中に私が行っているライフデザイン研究本部というのがあります。 ライフデザイン研究本部というのは、実は昔はライフデザイン研究所という研 究所だったのですが、第一生命のお金がなくなったので経済研究所と統合して 合併されてしまったということで、その中の1つの部門に、ライフデザイン研 究本部というところに格下げになったのです。  やっている内容は同じなのですが、第一生命の社会貢献活動としていろいろ な社会政策に役に立つような様々な調査研究をして、それを情報発信して世の 中の政策に役に立っていくような研究をして欲しいということで自主的な研究 を任されまして、各人が自分で役に立つような研究をしてくださいということ です。私、実は十何年前にこちらに来て、その前は三菱総研というところにい たのですが、その後にライフデザイン研究所というところに入って高齢者の福 祉をずっと研究してまいりました。残りの研究員というと、子育ての研究とか、 障害者の社会活動の研究とか、あるいはワークライフバランスとか、いろいろ な研究をしているのですが、それぞれが自分たちの好きな研究をさせていただ いているということです。  今回私が発表させていただきます「退職後の地域活動・社会的活動の意義」 ということで、私は長い間、高齢者の退職者のヒアリングをずっと調査してま いったところ、大きく分かれるのは非常に積極的に社会に参加している方と、 そうでなくて引きこもってほとんど地域に出ていかない、家庭の中に閉じこも るという高齢者、退職者、これは男性に限らせていただきますが、そういう方 が見られます。そういった地域の中に入っていかない、引きこもってしまうと いうことは問題ではないかということで、この人たちに地域の中にどういうふ うに参加してもらうことがいいのかということでいろいろな政策を研究してい るということです。  昨年度の研究が退職後の高齢者の研究。特に団塊世代が、ご案内のように 2007年から大きな問題になりますので、団塊世代の大量退職した人たちをどう いうふうに地域に引き戻していくかという研究を昨年のテーマといたしまして、 それを研究した結果を今年の3月にまとめて、私が所属しております老年社会 科学会という学会がありますが、これはそちらの方で発表したものですけれど も、その発表したものを今日はまとめて報告させていただきたいと思います。  まず研究の背景ということで、今申しましたように大量退職が始まりました。 2007年問題です。大量退職といっても、ご案内のように改正高齢者雇用安定法 で、そんなに大きな退職者が出ていない。現状ですと、労働力について78%ぐ らいが60歳から64歳で労働力になっているということで、予想された以上に無 職の人が多くないという状況なので、私はむしろ65歳からの2012年問題の方が 大きいだろうということは言えるのではないかと思います。これはちょっと別 問題です。  リタイアということを社会学的にいろいろと研究してきたわけですが、職業 からのリタイアというのは大きく5つのポイントがあります。これはアメリカ のハヴィガーストという人が1960年代に言っていることなのですが、サラリー マンにとって仕事というのは生活を維持するために所得をもたらすもの。会社 に毎日行くとか、毎日の生活行動の秩序を立てる。それから、個人のアイデン ティティ。私はどこの研究員、どこの社員ですというアイデンティティを与え る。社会的な関係の基礎、つまりネットワーク。職場の同僚とか、取引先とか、 いろいろな形の社会関係のネットワークの基礎。それから、仕事自体が有意義 な人生体験。 こういった5つの非常によいポジティブな面が仕事にはあるわ けです。それが定年退職ということでバッサリ切られてしまう。それによって 大きな人生上の問題、我々はライフイベントと言いますが、ライフイベントに よってネガティブなマイナスの生活に入っていくのではないかということが心 配されるわけです。それをどういうふうにポジティブな形に持っていくかとい うのが退職者のリタイア後の生活設計ということで研究のテーマになっている わけです。  第3番目の背景といたしましては社会的行動・活動の重要性。今ご案内のよ うに、住民参加のいろいろなポイントが出ていましたが、社会で生活する、社 会で活動するということは生きがいにつながります。職業で失った社会的ネッ トワークを新たに構築するというネットワークの重要性、自分自身が培ってき た能力を生かす、そういった3つのポイントが社会活動の重要性にはあると思 います。こういったものを活かして退職後の生活設計をしていくことが非常に 重要ではないだろうかと我々は申しているわけです。  研究の背景の4番目に、リタイア直後の準備行動が、その後の活動の方向性 を決める。これが今回の私のメインのテーマなのですが、いわゆるインプリン ティング理論といって、これは動物学者のローレンツという人が言っているの です。アヒルの子が生まれたときに、見た動物を自分の親と認識して、その後 くっついていくという有名な話がありますが、孵化したばかりのひな鳥が見た ものをあたかも親鳥のように追いかけるということ。  ここで重要なのは、学習内容によっては、その時期に行われないとそれ以降 は成立しにくい時期、これを臨界期というのですが、この臨界期があるんだと いうことで、定年退職者も1年間に何らかの社会的な行動をしないと、その後 の社会的な活動をしていかないのではないかと。私もいろいろな調査で仲間と か先輩諸氏を見ていると、ほとんどやっていないです。私は実は定年退職して 2年たっているものですから、同僚には退職している人が結構いるのですが、 みんな遊んでいるというか、やることがなくてぶらぶらしているというか、せ っかくいい能力を持っているのにもったいないなと思います。  1年間にこういった社会的活動をしなかったツケが、その後10年、20年とつ ながって、結局、生きがいのない生活に入っていくのではないだろうかという ことで、その1年間にどういうことをしたらいいかということを調査研究した ということです。  研究のフローといたしましては、リタイア直後の行動、特にリタイア直後の 探索行動、そういったものが現在の社会活動の中の地域活動・ボランティア活 動、クラブ・サークルの活動を促進して、それが友人・知人満足度としてサク セスフル・エイジング。サクセスフル・エイジングというのは学問的な用語で すが、幸福なる老いという、要するに幸福に年をとっていくといったところに つながるのではないだろうかと。このLSIKというのは生活の満足感という ことですが、そういったところにつながる。  こういったリタイア直後の行動が現在の社会的活動を通して幸福的な老いに つながるのではないだろうかというモデルをつくったわけです。そのモデルに 基づいてアンケート調査を行いました。私どものモニターさんがおりまして、 その中から60〜79歳の無職の男性に調査いたしました。791名のうち497名の有 効回答を分析した結果です。  ここでポイントですが、図表2でおもしろいと思ったのはリタイア年齢です。 定年退職した年齢ではなくて、完全に職業からリタイアした年齢はいくつです かという調査をずっとフォローして聞いていたのですが、例えば59歳以下でリ タイアした人は8.5%。60歳の定年退職が28.4%。66歳以上でリタイアしたとい う人、この人たちは大体サラリーマンなのですが、20%。要するに、66歳以上 でも何らかの仕事を持ってリタイアするという人がたくさんいるということが わかりました。60歳が定年だと思うのは間違いではないかということがこれで もおわかりになるのではないかと思います。  次の2ページですが、そういった方たちが職業からリタイアしたとき、要す るに完全にリタイアすると、さっき言ったハヴィガーストの、定年退職という のはネガティブなイメージではないかと思ったのですが、リタイアしたときの 評価を聞いてみたのが図表3です。ここでは【人間関係】から【自己実現】ま で8つの分野で、それぞれの領域でのプラスの面とマイナスの面を聞いてみま した。例えば【人間関係】ですと、「煩わしい人間関係から解放される」、こ れはプラスです。もう一方で、「これまで築き上げてきた人間関係が失われる」、 これはマイナスです。要するに、仕事を失うことによって、こういったプラス の面とマイナスの面の両方がある。  それぞれを8つの領域ごとにプラスの面とマイナスの面で全部、これは複数 回答で評価してもらいました。結果として一番高かったのが、【自由時間】の 中で「自由な時間が増え、好きなことができる」、これは74%の人がこう感じ たと。それに対して「自由時間をもてあますようになる」というのがわずか17% ということで、これはプラスとマイナスで大きく評価が違っています。  プラスの方が大体多いです。例えば【人間関係】ですと、「煩わしい人間関 係から解放される」が40%で、「これまで築き上げてきた人間関係が失われる」 というのは10%です。【帰属意識】も、「所属する組織や肩書きから解放され る」というのは22%で、「所属する組織や肩書きがなくなる」というのは15%。  こういうふうに見ていきますと、例えば【目標設定】もプラスの方が多いで すし、その下の【社会との関わり】、「社会に積極的に関わっていける」がプ ラス、【自己実現】もプラスです。マイナスの方が高かったのが、ここにあり ます【経済生活】です。「経済的に苦しくなる」というマイナスが多くなりま すし、【情報接触】、「新しい情報や人と接触できる」が21%ですが、「接触 する人や情報が減る」というのはマイナスです。  総じてみて、意外にも職業からのリタイアというのは皆さん非常にポジティ ブに理解している。そういうことがわかったということです。  今回の大きなテーマですが、現在、ではどういった地域活動をしていますか という、いろいろな調査の中の流れの一つですが、ここで「地域の生活環境を 守る活動」をしている、これは無職の人ですが27%。「地域のイベントや地域 興しの活動」をしているのが27%、「趣味、スポーツ、学習グループのリーダ ー・世話役」が32%ということで、皆さんは結構、リタイアした後もこういっ た地域活動、ボランティア活動をやっているということがわかりました。  これはモニターだから特殊ではないかと思ったのですが、内閣府の平成15年 の調査で60歳以上の人に対しての調査があります。これは有名な調査ですが、 これは出ていないので口頭で発表します。これを見ますと、グループ活動の参 加率というのが、男性だけで見ますと、例えば一番多いのが健康・スポーツの グループ活動をしているのが28%で、地域行事に取り組んでいるというのが24 %。要するに、こういったいろいろなグループ活動をしている人で何らかやっ ているというのが57%いたのです。何もやっていないというのが42%ですから、 6割近くが何らかの地域活動、グループ活動をやっているということがわかり ました。  ですから、私のこの調査も、必ずしもモニターだから偏っているというので はなくて、これだけの活動を皆さんやっているということがわかりました。  3ページにいきます。図表5はそういった活動はどういった人たちがやって いるかということで、いろいろな切り口があるのですが、ここでは出身企業、 要するにリタイアする前に自分が勤めていた企業で一番長く勤めていた企業 はどこですかという調査をして、企業か官公庁かということで、企業だったら 何人以上ですかという従業員規模別に見たのですが、100人未満の企業、101人 〜1,000人、1,000人以上の企業、3つぐらいに分けました。これはサンプルが 少なかったのでこれぐらいの切り口だと。  これでみても、これは黒くしてあるのが一番高い割合ですが、それほど出身 企業によって差がない、要するに大企業だからみんな社会的活動をやるという ような傾向はみられなかったと、むしろそういうふうに読んでいます。出身企 業、母体にはあまり関係なく、別な要因によってボランティア活動をやってい るということがわかってきたわけです。  その次がリタイア直後の準備活動。「市町村が発行している広報誌やお知ら せ等を詳細にチェックした」、これは皆さん、ご存じですか。市報や区報とい うので、毎月一回ずつ必ず出ます。それが例えばどこどこの地域センターで何 をやっています、ケアプラザで何をやっていますという、詳細にイベントの情 報が載っているという区報があるのですが、1年以内にやった活動の中でこれ をちゃんと詳細に読んだという、これを挙げた人が27%いました。  区報とか市報というのは実は非常に重要な情報で、私は今、座間市というと ころで別の調査のお手伝いをしているのですが、そのときに市政だよりという のをどのくらい読んでいるかという調査をしたら、90%読んでいる。だから、 こういった広報媒体というのは非常に重要だということがそこでわかりまし た。しかも高齢者は非常に詳細にそれを見ているという人が27%いるというこ とです。  「公民館、地区センターなどの各種イベント」、例えば太極拳とか、スポー ツ教室とか、いろいろなイベントが公民館でありますが、それに参加したとい うのが22%。「市民大学、老人大学などの生涯学習講座」、これは21%。「市 政モニター、県政モニターなどに応募した」が22%。初年度にこういった地域 活動の取っかかり、皆さんは結構こういったものをやっているということがわ かってきたわけです。  実際にこういった活動をした後、OB会を開くというケースが多いのですが、 私が取材をした中でも、例えば市政モニターというのは年6回か、多い市では 10回開くというのですが、そうするとグループができて、それで終わってから 翌年にOB会を開いて、それが地域の核になると言っている人が多かったです。 だからこういった活動が非常に多かったということです。  こういった活動をしたか、していなかったかというのが次の図表7です。何 らかのこういった準備活動をしたという人としていなかった人で現在のボラ ンティア活動の参加率をみてみますと、例えば「地域の生活環境を守る活動」 というのは、準備行動があった人が35%、なかった人が18%。最も多いのが 「趣味、スポーツ、学習グループのリーダー・世話役」というので、準備活動 があった人が44%、なかった人が18%。いろいろな活動ごとにみても、すべ てこういった準備活動をしたことが現在の社会的活動、地域活動の割合を高め ているということがわかりました。  4ページにまいります。今ここに挙げました地域の生活環境を守る活動とか、 地域のイベントとか、こういったすべての活動の中で何らかの活動に参加した ことがある人の割合をみてみました。地域活動をしているのは、例えば経済的 に余裕があるからやっているのではないかとか、いろいろなファクターがあっ て、差をみてみたのです。年齢別にみたところ、やっている人の割合というの は年齢にはほとんど関係なかった。先ほど言った勤務先ですと、官公庁の方が 多かった。企業規模には全く関係なかった。健康度はやや健康の人が高い。当 然ですね。ゆとりは10%、これは有意差なしです。お金の問題ではなかった。  ここでリタイア後の準備活動というのをやっていたか、やっていないかで非 常に大きな差が出てきたと。これが一番重要だったんです。そういったものを 捨象するために、専門的ですけれども、ロジスティック分析というのをやって みて、こういった社会的準備活動をしたという人がやらなかった人の何倍、活 動率に差があるかということで、オッズ比というのですが、これは5.545とい う割合が出ました。要するに、やらなかった人の5.5倍の割合で参加率が高か ったということがわかりました。これは健康とか、経済的ゆとりとか、そうい ったものを全部統制した上での結果であります。要するに、こういった準備活 動が非常に重要だったと。  次に、こういった準備活動をした後、こういった地域活動をすることによっ てネットワークの満足度が高まるということで、この図表10がネットワーク の活動に参加したか、参加していなかったかという人によって、例えば地域の 生活環境を守る活動に参加した人は友人・知人満足度が5.5点、やらなかった 人が5.01で、要するに差が大きかったということで、こういった社会的活動 をしていることでネットワークの満足度を高めるという結果が得られたわけ です。  5ページ目にまいりまして、同じようにボランティア活動をやった頻度によ っても、ほぼ毎日、週に2〜3回ということで、やっている頻度が多い人ほど、 このネットワークの活動の友人・知人満足度が高かったという結果が得られて います。  先ほど言ったモデルでいえば、準備活動をすることによって地域活動・ボラ ンティア活動をやる。そのやることが非常にネットワーク活動の満足度、友人 ・知人満足度を高めるという結果が得られたわけです。  それと同時に、最後の図表12ですが、友人・知人満足度が得られると、老後 の生活の満足度が高まる。当然ですね。社会的ネットワークが広がることによっ てクオリティオブライフ、QOLが高まると結論づけたわけです。  1ページに戻りますが、調査研究のフローでリタイア直後の探索行動が現在 の社会的活動を高めて、それが友人・知人満足度を高めて、最終的にはサクセ スフル・エイジングに結びつくというモデルを検証したということでございま す。  その後はインプリケーションなのですが、8章のところは、「地域政策研究」 という雑誌がありまして、今年の2007年6月にそちらの方に寄稿させていた だいた点で、どういうふうにリタイア後の高齢者に対して自治体がアプローチ すべきかということを、この結果をもとに8つばかり記述したものです。  1番目は生涯学習の視点ということが必要ではないでしょうかということで、 仕事からリタイアしても前向きに生きていくような態度を身につけたいという ことで、こういった定年退職後の活動というのは生涯学習として位置づける。 だから学習というのは、何も学問分野でなくても、趣味、運動、スポーツ、ゲ ームといった、そういったあらゆる分野で学習していくという態度が必要では ないでしょうかということで、そういう提案をしています。  6ページ目に高齢者が地域で活動できる能力を高める視点ということで、私 がヒアリングした中でも、博物館とか美術館で説明するボランティアというの は結構いましたし、福祉施設のボランティアも多いです。こういった地域活動 できるような能力。何もなくて、さらでボランティアというのはなかなか難し いので、それはある程度能力をつけていくというような視点が必要ではないで しょうかということです。  3番目が仲間づくりを支援する視点ということで、先ほど申しましたように、 市民大学とか、モニターとか、そういった講座の後、OB会をつくるというこ とで、そういった仲間づくりを支援していくといったことが必要ではないでし ょうかということです。  地域資源の有効活用ということで、図書館とか博物館、あるいは大学。私の 近くに短大があるのですが、そちらの公開講座も市の高齢者向けの事業として 位置づけています。そういった地域の資源の有効活用というのも必要ではない でしょうかということです。  企画に住民、とりわけ高齢者を参加させるということで、取材した中でも、 結構まじめにボランティア活動をしていく中で、市の企画の中に取り込まれて いろいろとこういった委員会に入っていくという人がいます。そういった方た ちは高齢者の視点で企画ができるという点で非常にいい企画をつくっているよ うです。  達成感を与える視点ということで、それぞれの講座を終えたときに修了証と いうようなものを与える。こういった視点も必要ではないでしょうか。  インターネットを活用する。  最後にソーシャル・キャピタルということで、これはアメリカのパットナム という研究者が言っているソーシャル・キャピタル、社会関係資本ということ ですが、こういったネットワークが充実して地域が安全・安心になることによ って経済活動が非常に向上するという理論です。ソーシャル・キャピタルとい うのは地域力とか、ご近所の底力。私は実は今年、この地域力、ご近所の底力 を研究テーマにしているのですが、こういったソーシャル・キャピタルという 視点が必要ではないでしょうかということ。  最後に、これだけ書かなかったのですが、介護予防の視点というのが必要で はないかと思いました。そういった点が実は非常に重要だということで、こう いった提案をさせていただきました。 ○大橋座長  ありがとうございました。鈴木征男様にご報告いただきました。大変興味深 い調査研究の報告ですが、全体的にみましては資料1の3ページにございます 第5回の研究会の論点、住民参加の推進ということで5項目挙げてございます から、このことも少し視野に入れながら、フリートーキングをいただければと 思います。いかがでしょうか。 ○木原委員  鈴木さんにお伺いしたいのですが、最初の図ですね。リタイア直後、探索行 動、次が現在の社会活動の参加。この間のことをお聞きしたいのですが、退職 直後に始めた人は非常に参加率がいい、これはいいのですが、現役のときに社 会参加をしていた人は退職したらすぐに動く。ところが、していなかった人は かなりかかっていて、10年ぐらいかかっている人もいるんです。もしかしたら 現役のときに社会参加していたというのも意外と大きい要素かなと思うのです がどうでしょうか。これが1番目。  次がリタイア直後の探索行動。僕はよくこういう方の講座に伺うのですが、 どうして来たかというと、10人のうち9人は、カミさんに尻を叩かれて来てい るんです。広報誌をじっくりみる人というのも確かに多いです。こういう探索 行動をするのに影響を与える要因が何かあるのではないか。僕はカミさんと思 っているんです。だからカミさんが諦めたらおしまいと。  もう一つが、埼玉の羽生市で盛年式というのをやっているんです。60になっ た人を行政が招く。退職したらすぐに呼び出す。僕は講演に招かれて行ったけ れども、700人の該当者のうち450人ぐらい来ていました。こういうふうに何か 仕掛けがあって探索行動を始めたのではないかと。それが何であるかというこ とです。  3番目ですが、現在の社会活動に行くにも何らかの働きかけがないとかなり 難しい。活動を始めた人には何があったのか。彼等は講座は出るんですが、終 わったらおしまい。また引きこもってしまう。老人大学も卒業したらみんな引 きこもってしまう。男は活動を見つけるのが非常に下手なわけです。例えば講 座でも、今おっしゃったOB会をつくるというのはよくわかる。よく都内で仕 掛けたのですが、とにかく講座をつくったら、そのまま別れないで「とりあえ ずグループをつくれ」と言ったんです。とりあえずとにかく集まる。1年たっ たら、みんなどこかに行き場が決まっているんです。  それから、講座をやっている間にも活動対象と結びつける。そういうふうに 結びつけてあげないと、現在の活動へも到達しない。  たしか北九州の老人大学だったと思うのですが、ボランティアコーディネー ターが中に入っている。卒業までにはどこかの活動に入れてしまおうと。その 働きかけがあることがもしかしたら大きく影響しているのではないかという感 じがするのですが、そのあたりはいかがですか。 ○鈴木氏  ありがとうございます。私とほとんど同じ意見ですが、それは全然反対する ものではないのですが、まず現役時代の活動というのは、実はもっと前にやっ たことがあるのですが、すごく重要です。一つは遊びですね。例えばテニスと か、スキーとか、あるいはいろいろなゲームとか、何らかの技術を持っている と定年退職後も出ていくんです。別の研究ですが、若い内に技術を高めておく と、それが非常に退職後に生きてくるということがわかっています。それも本 当は言いたいのですが、今回は焦点を定年退職後ということに絞ったので。そ れも多分重要だと思います。ですから、それもあるし、また現役1年後の退職 後の活動も大事だという、そういう2つがあるということはご理解いただきた いと思います。  2番目に奥さんの働きかけとか、何らかの仕掛けとおっしゃいました。奥さ んの働きかけは、私も非常に重要だと思うんです。一番端的に出てくるのは、 濡れ落ち葉になりたくないというんです。1990年代に「濡れ落ち葉」とか「わ し族」という非常に流行った言葉があります。要するに、掃いても掃いても後 からくっついてくるという濡れ落ち葉です。奥さんの行くところに後からくっ ついてくるのが、わし族。わしもついていくと。  90年代にその言葉がすごく流行って、退職後、奥さんの後ばかりくっついて いくのはどうも惨めじゃないかということが反面教師としてありまして、必ず しも奥さんの後にくっついて、尻を叩かれてこういった講座に行くというのは、 そうとは限らないと思うのですが、そういった奥さんの働きかけは非常に重要 だということがわかります。  盛年式というのは非常におもしろい仕掛けですね。僕は自治体のケースは知 らないのですが、確かにそういった1年後の仕掛けというのは重要だと思いま す。  手前みそになるのですが、僕らのライフデザイン研究本部で退職前教育とい う講座をやっています。今日、その担当者に話を聞いたら、こういう資料、タ イムデザイン編という中に、定年退職後の活動を充実しなさいという5つの仕 掛けを書いているのですが、そういった定年退職前の教育も必要だと思います。  4番目には働きかけ。この1と2の間に働きかけというのは確かに重要だと 思うのですが、講座の間にグループをつくりなさいというのは非常に重要です ね。ここに書いてあるのですが、6ページの(3)に仲間づくりを支援する視 点ということで、市民大学、生涯学習講座などが終わった後でグループをつく るということで、僕は世田谷区でこれをやっているのを見たのですが、40人ぐ らいの生涯学習の講座の中に、1つ8人ぐらいのグループを5つぐらいつくら せて、そこへずっといろいろな取り組みを各会ごとにやらせているみたいです。  それによって、それが終わってからOB会ができていくというプロセスが非 常に多いみたいなので、漫然と市民大学とかという形をやっているよりも、ち ゃんと仕掛けてグループをつくってあげるという、そういう仕掛けがおっしゃ るとおりだと私も思います。それはいろいろな手法があるのではないだろうか と。ボランティアコーディネーターというのはそういう面では非常に斬新とい うか、いいアイデアではないかと思います。 ○大橋座長  今日は欠席している清原委員と一緒に、東京都の生涯学習審議会で、自己充 足型生涯学習から社会参加・社会還元型生涯学習へ転換ということを言ってい ます。だから定年退職後の人が介護予防的にいろいろな活動をするというのは いいんだけれども、今回のテーマは地域福祉を推進する上で住民がどういうふ うに関わっていくかということも少し意識しながらご質問なり、ご発言をいた だければありがたいということです。ぜひその辺は少し意識していただければ ということでございます。 ○小林委員  2つ質問があったのですが、1つは今、木原委員が聞いてくださったので結 構です。もうちょっと広く言うと、子どものときの遊びをどのくらいやったか というのがかなり老後生活に大きな影響があるのではないかと思います。年を とってから、遊ぶというのはなかなか難しいですね。小さいときに遊んだ方が 多分、年をとっても遊ぶのはうまいのではないか。これは余計なことですけれ ども。  3ページのリタイア直後の社会的準備行動ですが、この調査はリタイア直後 に準備行動をしたということですね。オッズ比で5倍の違いがあるということ です。 ○鈴木氏  はい。 ○小林委員  男性についてですね。 ○鈴木氏  男性です。 ○小林委員  準備行動の有無でかなり違いがあるということですが、5の準備行動ですと、 これはほとんどが広報誌や一般の情報を手に入れるというところから始まると いうことでよろしいのでしょうか。今の大橋座長のお話で言いますと、例えば 自治会などの地域の福祉関係の活動という視点からみると、これはどう読める のだろうか。それはほとんどこの中にないような気がしますので、その辺につ きまして何か情報がありましたら教えていただければと思います。 ○大橋座長  たぶんそこが一番大きな問題ですね。ご報告があったことは、生涯学習の分 野とか、社会教育の分野でほとんど言われているような状況の中で、どうして も自己充足型になっていくんですね。社会教育行政の分野の人たちはよくやっ ているとは言うんだけれども、今求められているソーシャル・キャピタルとか、 介護予防とか、あるいは地域福祉推進に求められているエネルギーとかという ことに必ずしもうまくつながっていない。東京都は今から10年ぐらい前に自己 充足型生涯学習から社会参画・社会還元型生涯学習と。自分だけ学んだのでは だめなのではないかと。学んだものを、それはそれで大事なんだけれども、そ れを否定することではないけれども、それはある意味では個人でいいのであっ て、行政が仕掛ける以上はもう少し社会還元型の部分というのが求められてい ないかという、こういう話になったときに、そこら辺の視点が今小林委員が質 問されたようなことなのですが、その辺がわかればということでございます。 ○鈴木氏  一つは、例えば3ページの下の図表7で、ボランティア活動というのはある 意味で社会還元的な活動だと私は認識しているんです。例えば地域の生活環境 を守るとか。ここには福祉的な、介護予防とか、一人暮らしの見守りとか、そ ういった具体的なところは出ていないのですが、いろいろな社会的な問題を解 決するための活動というのをボランティア活動、地域活動というふうにこちら は定義しておりますので、こういった活動自体が自己充足的ではなくて社会に 対する効果のあるような活動だと認識しております。こういった活動は、意識 するか、しないかは別として、こういった準備活動が何らかの形で社会還元活 動に結びつく。ボランティア活動ということ自体が社会還元活動だと私は申し ているのです。  だから、いろいろな調査でも、そういった社会的な活動をしたいという調査 はいっぱい出ているんです。私の調査もそうです。今回いただいた資料でもそ ういうふうに書いてあります。潜在的なニーズはあるので、それをどう顕在化 するかということが重要だと思います。  自治会の活動については、今回、あまり取り入れていなかったので、その視 点はご勘弁願いたいと思います。 ○和田委員  実際の地域の話をいろいろみていると、高齢者の人でリタイアしてこられた 方の相談の話を聞いていると、このところの経済状況が非常に厳しかったとい うこともあると思うのですが、何かちょっとした収入につながる活動や仕事が ないかという相談が相当多いです。  例えばシルバーサービスの活動というのは比較的皆さん関心を持たれると。 その中には、今お話があったような介護とか、子育ての支援とか、いろいろな ものが入っているわけです。ですから、全く無償の活動に行くまでには、かな り体力的にも自信があったり、ちょっと収入が欲しかったりということもあっ て、これは今後リタイアした人が社会参加するという場合の一つの可能性をつ くっていく上での大事な点かなと思っています。  お話があったように、いろいろなものをみて参加する人というのは恐らく極 めて特殊な人で、1%か2%ぐらいしかいないのではないかとずっと思ってい るんです。この調査はどういう方を対象に選定されたのかよくわからないので すが、恐らくそういう気持ちがあって、参加している人に聞いてみると大体頼 まれたとか、誘われたという人が圧倒的ですね。だからそういう意味では、今 ご指摘があったように、潜在的なものがあると。そこをどうやって活動の中に 入ってもらうようにするかという点では相当アナログ的な方法をとっていかな いと実際にはなかなか結びついていかないのかなと。  ですから、ご指摘があったように、これからリタイアする人たちが地域の中 で新しい社会関係をつくっていったり、いきいき暮らせるようにするというこ とについて、ご本人達もそういう気持ちをお持ちだと思うのですが、そこをど うやって現実化させるかというところは、今のご指摘も踏まえて相当検討が必 要なのではないかと思っています。 ○大橋座長  今回、研究所の生活調査モニターを既にやっている方が対象だから、生活調 査モニターになっていること自体、かなり意識が高いと考えるかどうかという ことがありますね。その中でなおかつ有効回答された方という、その辺のこと をどうみるかというのが一つありますが、それは今日の論題ではないので、そ ういう意見があったということ。他には。 ○佐藤委員  皆さんが言われていることとかなり近いのですが、現実にやっていまして思 うのは、価値がすごく多様化しているので、みんな具体的にそういうボランテ ィアをやりたいと思われているだけではなくて、趣味の活動がしたいとか、そ ういういろいろな幅広いニーズがあります。入り口のところでみると、奉仕活 動をするとか、自治会の役員を引き受けるとかという、そういう活動に行くイ ンセンティブが働いているかというと、決してそうではなくて、自分の興味・ 関心があったり、やりたいことをやるというところが強いような気がします。  そういう意味で言うと、そういうところの中で今言われているような社会的 な意味とか、やっている活動の中でそういう意味づけができるような具体的な 例示とかをしていかないと、興味・関心のある活動だけに集中されるというこ とになるのではないかと思います。  もう一つは、仕事社会のロジックをそのまま地域活動に持ち込まれるケース が非常にあります。地域活動の中やボランティアの活動の中にもかなり男性の 皆さんが入ってこられるようになりました。これはもう10年前と比べると、か なり比率が変わってきていると思います。  ただ、その中で注意をしないといけないのは、わりとフラットな関係で、会 社のような縦社会でないところで皆さん活動されています。そういうところに 入ってこられる前段階で、そういうところに馴染むようなところを理解してか ら入ってこないと、今やっている人たちになかなかうまく受け入れていただけ ないということが現実にあるので、そこで少し仕掛けが要るのかなと思います。  もう一つ、言われていた中で非常に大事だというのが、企画に参加するとい うことです。社会参加ということがテーマなのですが、今の話を聞いていても、 参加というと枠を誰かが用意して、その枠の中に引っ張り込んでくるという議 論になってしまうのですが、本来から言うと、皆さんがご自分たちで考えて、 主導的にご自分たちでやるということにどういうふうに支援していけるかと いうことを考えないと、形の決まったところへ引っ張り込んでくるという議論 になってしまうような気がします。そこは少し気をつけておかないといけない ところで、企画に参加されるというところをどういうふうに担保するかが重要 だと思います。  逆の視点で言うと、そういう活動の中に参加されてきた方が、今度は次の人 たちをどういうふうにリクルートしてくるかというところにアイデアを出して いっていただくというようなところが大事なのかなと思いました。 ○大橋座長  ご質問というよりご意見ということでよろしゅうございますか。 ○榊原委員  私も感想なのですが、先ほどのご指摘があった、地域で活動している人ほど 友人・知人の満足度が高くて、生活の満足度も高い、つまり目指すべきはここ であるということですね。そのとおりだと思いますし、確かにサラリーマンの 占める率が日本は非常に先進国の中でも高くて、その人たちが一斉に退職する この問題をどうするかというのは地域福祉にもつながっているテーマだと思う のですが、ただ、どうやって地域にうまく戻していってあげるかという視点で 議論している限り、実はいつまでたってもイタチの追いかけっこではないかと いう気がするんです。  むしろ、退職した途端に地域で迷子になるような人をつくらない社会にどう していくかという視点こそが大事で、悪いですけれども、団塊の世代の後ろを 行っている私たちの世代からみると、ああいう世代のライフコースをほかの続 く世代が歩まないで済むような社会に一刻も早く変えていくと。つまり、現役 時代からのご指摘が先ほどありましたが、非常にそこが大事。  でも20代、30代の人は、ああはなりたくないといって、実は上の世代を既 にもう冷めた目でみているのに、上の世代のいろいろな決定権を持っている人 たちが気づかないから、続いてこいと言っている気がするんです。  ですから、退職年齢にある方たちは、自分たちが今旅立とうとしている職場、 社会の中の戦後につくり上げたライフコースを解体するというところをまず やってから地域に出ていく必要があるだろうと思うし、地域に出ていくときも、 戻るというような姿勢ではなくて、初めて参加させていただくという姿勢が必 要なんだろうなと感じます。  というのは、私自身、仕事大好きなサラリーマンをやっていて、35歳のとき に初めて出産で、嫌々というか、強制的に一次リタイアという形の育休を経験 して、ものすごく地域の中で戸惑ったんです。でもおかげで、あの段階で、地 域の中でどうやって付き合いを持っていくのかという試行錯誤があったおかげ で、今、ちょっと違うサラリーマン人生をやっている。言いかえれば、両生類 になったような気がするんです。サラリーマンの人たちは陸の中でしか住んで いない。逆かもしれませんけれども。というようなところを意識して、今言わ れているワークライフバランスであるとか、もっといろいろな活動に時間が持 てるようなサラリーマンライフをしていくべきであるというような研究にさら に深めていっていただけたら余計ありがたいなという気がします。  先ほど、ではどうやって地域に出ていくかというところのお話で、ご意見が あったのですが、私も地域に対して出ていくときに、自分はもっと勉強、自分 が向上しようと。とてもすばらしい向上意識だし、生命力があっていいことだ と思うのですが、そこにさらに、これまでさんざんいろいろな人にお世話にな って人生ここまでやってきたんだから、どうお返しをしていくかという視点を ぜひ持ってもらいたいなという気がします。  福井県の子育て支援、次世代育成が地域を挙げてなかなかうまく回っている というので取材に行ったときに、シルバーボランティアとか、シニアの人たち の活動が非常によかったんです。どうやって子育て支援にうまく上の世代の人 たちが入ってきているのかと聞きましたら、頭を一回リセットする。講座のよ うなこと、例えば福井市のシルバーボランティアをやっている。まだ元気もあ る、時間も若干ある、生かそうとも力はあるんだけれども、実は若い人たちの 生活の仕方は、あなたたちの時代とは全く違うんですよ、今の時代はこういう ふうに変わっているから、あなたたちの力はこう求められているんですよとい うことをちゃんと通訳・翻訳して、社会にもう一回導き入れてあげるという、 講座のような、教育のような手引きをボランティアセンターの方がやっていた と。ああいうことが多分必要で、それがないと世代間のギャップ、男女間のギ ャップというのがなかなか乗り越えにくいままになって、迷子が続いてしまう ということかなという気がします。 ○大橋座長  ありがとうございました。また後でボランティア活動のことを聞いてから総 括的な論議をしたいと思います。一つ、今榊原委員が言われたことは特に子育 て分野のボランティアなどはかなりそうですね。自分が子育てで苦しんで、そ の経験を生かしてあげたいという、そこの一種のリレー方式みたいな形で随分 進んできていると思うんです。だから年をとって時間が完全に余ってからとい うのではなくて、ちょっとした先輩が後の人につなげるというのは、全国各地 でNPOになって頑張っているというのは結構あるので、その辺のことは励ま してあげたらいいかなと思います。  もう一つは、先ほど和田委員が言われたことですが、今回、シルバー人材セ ンターのことはあまり触れられないのですが、シルバー人材センターの機能と いうのも、最近ではすき間産業的な意味で非常に重要になってきているのかな と思うんです。  そうすると、少々経済的に余裕がないけれども、一石二鳥どころか三鳥も考 えてやるという人もいるのかもしれない。そういう住民参加のきっかけという こともあるのかなということと、専門職を生かした福祉コミュニティビジネス の動きが随分ありますね。だから従来のものと全く切り離して何か新しいもの という部分もありますが、自分が培ってきたものを生かした福祉コミュニティ ビジネスというのは結構動き始めたなと。これは実感として、ここ数年相当動 き始めたと思うので、こういうことがうまく地域福祉の推進につながってくれ ばと思います。福祉の分野というのは結構、ニッチの部分がありますので、ニ ッチの産業としてこういうビジネスが生まれてくればというようなこともぜひ 今後少し深めておく必要があるかなと思います。  後でまたひととおり終わってからということで。とりあえず第1の柱でござ います住民参加の推進について、鈴木征男さんからご報告いただいたことを中 心に論議をしたということにさせていただきたいと思います。  それでは、施策のレビューということで千田補佐の方からよろしくお願いし ます。 ○千田課長補佐  これまでのご議論、事務局の方でつくらせていただいたのが議論と若干齟齬 を来すような文言になっている部分があるかと思いますが、ボランティアにつ いてということで概要を事務局としてつくらせていただいております。  まず位置づけでございますが、定義は大変難しいものでございますが、活動 の性格といたしましては、自主性、あるいは連帯性、そして無償性が挙げられ るというように言われております。  ただ、ボランティア活動を通じまして、実費程度、あるいはそれ以上という ことになりますけれども、住民参加型福祉サービスの家事援助とか、あるいは NPOとか、ワーカーズコレクティブというような活動形態を通しまして有償 ボランティアというような形態も出てきているところでございます。  平成4年の社会福祉事業法の一部改正におきまして、告示でございますが、 「国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本 的な指針」、これを策定させていただいておりますが、その中で活動の自主性、 自発性及び創造性が尊重されなければいけないと。また、支援策が国民の自己 実現や社会参加への意欲に沿い、これらに寄与すると。そして公的サービスで は対応しがたい福祉需要、ニーズについて柔軟かつ多様なサービスを提供する ことが期待されると規定されております。  こうした取り組みでございますが、具体的には国といたしまして先駆的な取 り組みへの助成、または表彰によって社会的評価を行っているところでござい ます。  3ページ目で現状でございますが、ボランティア活動、福祉分野のみならず、 環境問題、あるいは文化の継承、芸術の普及、そして国際的な支援活動、様々 な分野にその力が発揮されておりまして、農協や生協、NPO、企業等の社会 貢献活動が活発化していると。  特に平成7年の阪神・淡路の震災の際に災害ボランティアといたしまして、 改めてボランティア活動の関心が高まったところでございます。  また、国民の6割がボランティアに積極的に参加したい、または、どちらか と言えば積極的に参加したいという結果がございます。年齢が上がるとともに 参加意欲というものが高まっておりますけれども、これは過去から実はその割 合はあまり変わっていないという状況でもございます。  団塊の世代の大量退職に際しまして、ボランティア活動にそのパワーが期待 されているところでございます。  現在、社会福祉協議会にボランティアセンターが設置されておりますが、ボ ランティア活動に対しまして、相談、あるいは広報啓発、研修等を実施してお ります。  そのボランティアセンターに登録しているボランティアの方、これは福祉分 野でございますが、現在、740万人を数えるに至っているところでございます。  その登録されている方々の実態調査の概要を4ページ目のところに記載させ ていただいておりますが、担い手の中心が60歳以上の方。特に高齢者の介護、 あるいは障害児・者、あるいはその家族への対処を対象にしている。  具体的な活動としては、制度のすき間へのニーズの対応ということが多くて、 話し相手、あるいは配食・会食、レクリエーションサービス・支援等を行って います。活動の頻度としては月に2〜3回程度。個人の活動時間としては20時 間前後が多かったということ。  団体を立ち上げたメンバーの共通点といたしましては、何らかで集まった。 先ほどの議論でございましたけれども、講習等で一緒に学んだ仲間たちでの立 ち上げ、共通した意識のある仲間としての立ち上げが多いという結果が出てお ります。  ボランティア活動を通じてよかったことというのが、効果といたしまして仲 間が多くできたと。自己実現型といったものが多いようでございました。  NPO法人でございますが、現在、3万2,000団体がございまして、その4 割が保健・医療・福祉活動を主な活動といたしております。また、住民参加型 のホーム増えるプサービスを行っている団体も増加しておりまして、2,000団 体。そのうち約4割が介護保険の事業を行っています。  効果でございますが、5ページ目でございます。配食・会食、移送サービス といった既存制度では対応できないニーズへの対応と、相互扶助・共助といっ た仲間関係が醸成されやすい。そして担い手のすそ野が広がっているという状 況がみえますけれども、課題といたしましては、要支援者のニーズが十分に意 識されていないとか、男性の参加が3割にとどまっていると。そして、これは 私どもの方の課題でございますが、厚生労働省といたしまして国民に対して明 確なメッセージが提供できていないのではないか、提示できていないのではな いかといった課題がございます。  今後の課題といたしましては、要支援者のニーズ、はざまのニーズにつきま して、多種多様なニーズといろいろなボランティアとを結びつけるような仕組 みが必要ではないかということ。そしてボランティア活動に参加しやすくする 仕組み。情報提供、支援を行う仕組み。そして改めて厚生労働省としてメッセ ージを示す必要があるのではないかということを今後の課題としてとらえてい るところでございます。  以下、参考の資料等でございますので、ご参照いただければと思います。 ○大橋座長  ありがとうございます。それでは早瀬さん、よろしくお願いします。 ○早瀬氏  大阪ボランティア協会で事務局長をしております早瀬と申します。私は、一 方で日本NPOセンターという団体の副代表理事をしているのですが、実は一 昨日から今日まで大阪でNPOメッセという集会を主催していまして、その準 備に追われて、いったん資料6の資料をお送りしたのですが、議事録を拝見し ていましたら、これではだめだなと思って、当日配付資料というもう一つのセ ットを作りました。こちらの方をベースにしてお話しさせていただいた上で、 時々資料6という方も使うという形にしたいと思います。  私ども大阪ボランティア協会は、1965年、昭和40年に発足した団体でござい まして、そこに書いてあるようなことをいろいろやってきた団体でございます。 今は大阪府認可の社会福祉法人でございます。  今日はまず確認しておかないといけないかなと思ったので、ボランティアと かNPOというのはなぜ評価されているのかということを再確認しておきた いと思います。  この「自発性ゆえの“強み”」という文の中ポツの2つ目の話ですが、2つ 目以降ずっと“強み”を書いているつもりなのですが、ボランティアというと、 奉仕というか、非常に禁欲的なイメージがあるわけです。  私は、実はもともと大学が理科系で電子工学の勉強をしていたのですが、ボ ランティア協会に勤めると言ったら、うちの母親が非常に怒っているおやじに 対して説得するんですね。「あいつ、何を考えているんだ」と言うので、「諦 めなさい。お地蔵さんになったと思って」と言ったんです。これは事実でござ いますが、そういうイメージがあるんです。ボランティアというのはお地蔵さ んなんです。  実際は阪神・淡路大震災の現実をみればわかりますように、あれは大変な規 模のものでしたが、募金に協力した人が国民の85%に達したという事実がある わけです。1,488億円の募金が集まりました。なぜそんなことが起こったか。 あの人たちは我慢したのではないです。我慢できなかったんです。ほうってお けない。もともとそういう特性がベーシックに私たちの中にあるんだと思うん です。そういう活力がある。  かつ、私発というか、自分から始める活動というのは非常におもしろい特徴 があって、全ての課題にかかわることはできませんから特定のテーマを選ぶわ けです。根本的には公平じゃないという部分があるのですが、公平でないとい うことが温かさの本質です。温かいということは不公平なことです。公平な温 かさなんていうのはあり得ないです。「他ならぬあなたのために」という関わ りができる。これがボランティアのかなり特徴的な部分です。  それぞれがそれぞれにいろいろな取り組みをなさいますから、大変多彩にな る。この点も行政の公平原理を超える部分があるわけですが、それぞれの価値 観を持って、同じ価値観を共有する人たちとの間の深いかかわりができる。  例えばホスピスやビハーラといった施設は宗教的な基盤を持っていますが、 なぜそういうことになるかというと、末期がんの患者さんたちのサポートには、 もちろん緩和医療のようないろいろなケアがありますが、それとともに非常に スピリチュアルなケアがなされている。子どもが小さいのに、余命あと半年だ というような立場に立った人たちの精神的な支えということが非常に重要に なる。そのときに、宗教的な共感を持った仲間が、ホスピスならホスピスでサ ポートするわけです。しかし、宗教というのは行政はタッチできないです。で も民間はできるんです。そのような特定の価値観を共有した人たちのコミュニ ティをつくり得るということも含めた多彩さでございます。  あとはいろいろ書いてありますが、これは読んでいただいたらと思いますが、 そういったことが、どうしてできるか。それが中ポツの一番上です。行政の場 合の公共性というのは多分、全体性だと思います。全体の福利を考えるという のが行政の公共性の本質だと思いますが、民間は何せ全部できません。では、 民間の場合に公共的であるとは何かというと、要は開いていることだと思うん です。  例えば私立の美術館がありますが、私立の美術館というのは、美術館という 以上は公共施設ですが、あれはもともとコレクションです。個人のコレクショ ンです。コレクションである段階では、「随分たくさんありますね。美術館み たいに多いですね」と言われても、美術館ではなくてコレクションです。しか し、その美術品を自分だけではなくて、他の人にもみてもらおうと公開した途 端に美術館になります。  企業が自分の会社の社員のために整備した福利厚生施設としてのグラウン ドを近所の少年サッカーチームに開放すると、企業の社会貢献と言います。私 が自分の子どもをハイキングに連れて行く。そのときに、たまには近所の子ど もも連れていった方がにぎやかでいいと。これを定期的にすると、子供会とい うんです。  要は開けば公共的になる。このことは英語で読むとよくわかるわけで、公共 性というのは英語でパブリックと言いますが、パブリックのもともとの原義は、 誰にでも近づける、開かれているという意味です。これの一番わかりやすいの はパブという、パブリックからつくられた言葉です。パブというのは、もちろ んこれはパブリックハウスの略ですが、要は会員制ではない飲み屋さんのこと です。誰でも飲みに行ける。  なぜこういう話をしているかというと、先ほどの社会参加の話ではないです が、市民が公共的な活動に入るというのは、いかに開くかなんです。自分たち の周りだけのライフスタイルをいかに開くように持っていけるか。そこが多分、 大きなポイントなんだろうと思います。  そういった中で先ほどの自発性ということが、様々なボランティア、あるい はNPOの強みを生み出すのであって、言いたいのは、無償の活動だから意味 があるということではなくて、行政の公共性を超えた…。超えたというと失礼 ですが、もう一つの、オルタナティブな公共活動が展開できる点で、この活動 が注目されている。ノンプロフィットオーガニゼーションのことをニューパブ リックオーガニゼーションと言う人もいるわけですが、それはこのような意味 ではないかと思っています。  2ページにいきます。ただ、このボランティア、あるいはNPOには、本質 的な弱点がある。その本質的な弱点とは、実は今言いました自発的であるとい うことです。これが弱点の本質になります。  まず、全体をみずとも動けますから、独善化ということがつきまといやすい わけです。  救援物資の問題はもうよく知られた話なので今さらでございますが、救援物 資というのは必ずトラブルを起こします。100%、起こします。なぜかといえ ば、余ったものを返せないからです。余ったものが返せない中での需給調節と いうのは不可能です。もともとそういう問題を内在しているのですが、それだ けだとまだいいのですが、救援物資で私どもが阪神・淡路大震災のときに苦労 したのは、被災地の中には店舗もいっぱいあるわけで、それこそパン屋さんは 泣いていました。冷たいパンは全然売れません。でもパン屋さんも被災者です ね。でも救援物資は無償で配っているんです。  その辺のバランスをとるのがとても難しい。そもそも救援物資というのは社 会主義的分配システムでありまして、100人いるところに80個あったら配らな いです。要らないと思える人たちも、なぜか知らないけれども欲しがります。 本当にそういう点では市場経済システムというのは合理的だなと思いましたが、 市場経済システムの根本的な欠点はお金がないとだめだ。だから行政のシステ ムも重要で、行政と市場と市民活動の三者のバランスが重要なのでしょうが、 これが一つあります。  もう一つは、特に外部評価を受けにくいというか、自分で動いていますから、 外部評価がなくても動くんです。だからマンネリになりやすいという問題もあ ります。  しかも市民活動の評価というのは大変難しい。いろいろなことをする人がい まして、全く対立する対応、例えば政党というのもNPOの一つですから、自 由民主党も日本共産党もNPOです。でも違う方向を向いていますね。これは どちらがいいかということは評価できないわけで、そういう難しさがある。今 の話はマンネリの話とはまた違いますが、ボランティアグループレベルでいう とマンネリというのはよく起こる話です。  そして最も重大な本質的弱点は、「自発性パラドックス」と慶応大学の金子 先生がおっしゃった問題です。何が問題かというと、自発的な活動というのは 言われなくてもすることですが、これは逆に言うと、言われてもしないという ことがあります。言われなくてもするけれども、言われてもしないんですね。 自分が納得していなかったらしない。するか、しないか、自由なのです。  その自由さには2つあって、一つはテーマをどう選ぶかが自由ですが、もう 一つ重大な自由さはペースです。どんなペースでするか自由です。そのことが 大変大きなポイントになるわけで、例えばそれこそ今年、韓国の方がアフガニ スタンで拉致された事件がありましたが、あのアフガニスタンには、例えばシ ャンティボランティア会やペシャワール会など、たくさんの日本人が活動して います。たくさんの日本人のボランティアが活動しています。そういう人もい ます。一方で何もしない、ボランティアなんかするから役所がサボるんだと言 う人もいるわけで、その差たるや大変なものです。  その中で自分はどの位置をとるかというと、これが自由です。これはいい点 のようにみえますが、現実に課題に向き合うときに、ここはとても大変です。 つまり、自分はどこまでの活動をすればいいのかという本来的な基準がないで す。行政の場合は、基本的には全体の合意の範囲で動くわけです。議会が了解 することで動かれる。企業の場合はどうか。基本的には自由ですが、大きな制 約として損をしてはいけないというルールがあります。どんなに社会的に褒め られても、そのことによって仮に利益が損なわれたら、これは背任です。  ところが、ボランティアやNPOというのは、損をするからしないという理 屈がないのです。中越沖地震があったから行かなければいけないという時、「そ れで、いくらもうかるか」という話はしないわけです。ともかく行くわけです。 基準がない中で自分で決めないといけない。自分で決めないといけないと何が 起こるかというと、「やるよ」と言えば喜ばれるけれども、どんどんやってい くと疲れてくるから、結局その中で誰が頑張るかというと、相手のしんどさが よくわかる人ほど、問題意識のしっかりしている人ほど、責任感の強い人ほど 頑張るんです。  頑張ると、やはり疲れてきます。疲れているとどうなるかというと、休まな いといけないわけですが、休むと何と言われるかというと、「それだからボラ ンティアは当てにならない」と言われるわけです。そんなことを言っても、と いうことはあるわけです。  ボランティアは、実際にやっているといろいろ苦労することがあるわけで、 一番大変なのが、ボランティアというのは実は邪魔する人がたくさんいます。 どこに一番多いかというと、身内です。「世界の平和、家庭の不和」という言 葉があります。私は学生時代からこういう活動をしていましたが、「自分のこ ともできないくせに」といくら言われたかわかりません。「たまには家のボラ ンティアをしなさい」と言われるわけです。そんなことが頻繁にあるわけです。 そんな中で頑張っているわけですから、「私のことはしてくれないのか」と言 われても、「厚かましいよ」と言えるんです。  言えるのですが、「そうですか、私はお宅ぐらいしかお願いできるところが ないかと思って来たんですが…」という思いが相手から伝わってきて、「これ は何とかしないといけないな」と思うとまた頑張るんです。すると、また疲れ るんですね。また休みたくなる。これを「疲労と不信の悪循環」と私は呼んで いるわけですが、本当に頑張る人は疲れるわけです。  市民活動の世界でよく言うのですが、何か人にものを頼むときに、誰に頼ん だらいいか。一番頼んだらいいのは忙しい人です。暇な人に頼んだらだめです。 なぜか。暇な人に頼んでもしないです。だから暇なんです。誰が暇な人に頼み ますか。そうすると、忙しい人はどんどん忙しくなる。先生方も皆さん忙しそ うですからよくわかられると思いますが、そういうことです。  つまり「頑張る人が疲れる問題」というのはとても大変で、これはNPOも 同じことです。交換関係を超えてやるわけですから、やればやるほど、だんだ ん消耗してくるわけです。ここをどうするかというのが大変重大な市民活動を 活発にさせるときのポイントですが、このことが一つ大きな問題としてありま す。  もう一つ大きな問題としてあるのが、ボランティアというのは対等な協働関 係を築くことが実は結構難しい。非常に端的に言えば、私どもはボランティア コーディネーションを現場でしているわけですが、ボランティア活動をしたい という人とボランティアに来て欲しい人の両方がいらっしゃいますが、現実に は数的にいうとボランティア活動をしたい人の方が多いです。ボランティアに 来て欲しいという依頼の方が少ない。  例えば阪神・淡路大震災で私どもの事務所には4カ月に2万1,000人のボラ ンティア志願者がいらっしゃいましたが、ボランティアの依頼は4,800件です。 圧倒的に来て欲しい人の買い手市場でしたが、このマッチングが大変難しかっ た。なぜか。依頼してくる方が、本当はボランティアに来て欲しくないからで す。ここが難しい。本当は家族に来て欲しいのです。本当は行政の制度を利用 したいのです。本当は企業の商品を買いたいのです。赤の他人に、権利として 要求できないことを、お礼も払わずに援助を受けたい人は少ないのです。よく ボランティアというと「いいですね」と言うけれども、では皆さんはボランテ ィアの援助を受けたいですか。そういう人はすごく少ないです。  これは僕の言葉で言うと依存力の話です。人にうまく頼める力というのは大 切ですが、それがなかなか出てこないのです。震災のときなどは特にそうです。 昨日までサラリーマンだった人が突然被災者になりますから。障害者福祉の世 界では、彼らは慣れているというか、うまいです。ボランティアに依存するの がうまいです。彼らはインデペンデンス・バイ・ディペンデンス、依存による 自立だと言っています。そういう人たちはいいのですが、一般の人は大変です。 そこのところをどうするかということがあります。  実は依存力の話はボランティアの方にもあるわけで、ボランティア自身も自 分だけで抱え込むから駄目なんです。いかに周りにSOSを出せるかというこ とが重要なことになります。  そんな中で政策的に考えていくときに大変必要だと思われますのはボラン ティアコーディネーターだと思います。私は日本ボランティアコーディネータ ー協会という団体の理事もしているのですが、ボランティアコーディネーター という存在がこのボランティア活動を活発にさせる。ボランティアがどうのこ うのということよりも、ボランティアコーディネーターの体制をどう強化する かということが政策的には最も重要なことだと思います。  どういうことかというと、まず何かしたいという人たちを具体的な活動に結 び付ける役割がある。この点は、レジュメには詳しく書いていませんでしたが、 従来、私たちボランティアセンターでよくやっていたのが、ボランティア活動 のメニューをつくることです。このときに、高齢者のためにこんな活動があり ますよ、障害者のためにこんな活動がありますよ、お子さんのためにこんな活 動がありますよという、こういうタイプのメニューをつくります。これは普通 に正直に真面目につくるように思いますが、このようなものをつくっても、な かなか役に立たないのです。  なぜかというと、特に最近は、「何かしたいけれども何をしたらいいかわか らない」人が来ます。昔は手話講座を教えてくださいという依頼も結構ありま したが、とても減った。ネットでわかりますから。我々のところに来るのは、 何かしたいけれども何をしたらいいかわからない人たちが来ます。何をしたら いいかわからない人たちに、例えば「高齢者のためにこんな活動がありますよ」 と言っても、「いろいろありますね」とおっしゃるのですが、「他にありませ んか」ときます。「では障害者の方のためにこんな活動がありますよ」、「ま たいろいろありますね。他にありませんか」となかなか決まらない。  そうすると、そのような人のことを昔は何と言っていたかというと、「問題 意識が低い」といって、「もうちょっと勉強してから来てください」などと、 せっかく来てくれた人に帰ってもらうわけです。実際にはボランティア活動を したい人の意欲は来たときが最も高いのです。自発性は揮発性です。基本的に 下がってきます。その日にうまくつなげないと、何か手がかりをつけないと、 来週には「あんなときもあったな」という感じになります。  だから、そこでどうするかなのですが、今私どもがやっているのは、その人 にピンポイントで当たるような活動紹介、例えばその人が二種免許を持ってい たら、二種免許の生かせる活動はないか。写真が得意だったら、写真が生かせ る活動はないか。実はこういうことはコンピューターを使ったら簡単にできる わけです。つまり、その人は自分の写真の技術が生かしたいわけであって、そ の活動が高齢者のためであろうと、子どものためであろうと、国際交流のため であろうと、自分が生かされたら、何でもいいんです。そういうことです。  ただし、今、このシステムをうちは運用していますが、ものすごく大変です。 何が大変か。ボランティア情報は生ものです。毎日毎日、ボランティア情報を 集めて、毎日毎日、情報を更新しています。そのために専任のスタッフを1人 置いていますが、そういうことがあります。  もう一つは、いかにボランティア依頼者とボランティア志願者をつなぐかけ 橋になるかという話ですが、対等な協働関係ということでいうと、仕方なく選 ばれる関係を超えるための方法としてよく言われるのが有償化であります。私、 有償化自体は否定はしていません。有償の活動そのものはあってもいい。「有 償ボランティア」という言い方にはかなりネガティブですが、有償の活動その ものはあっていいと思いますが、有償化というのは一見いいようにみえますが、 これは誰にとっていいかというと、利用する人です。当たり前です。安いんだ から、いいに決まっています。「有償ボランティア」とは安いわけですから。  ところが、活動する側の人が本当にそんなにいいか。例えば、1時間500円 なり、300円で活動している人が1カ月単位で精算すると数万円になります。 そうすると、払う人は雇っている側になります。活動している人は雇われてい る側になります。別の言い方をすると、商品化するんです。Aさんは500円で これだけしてくれる。Bさんは500円でこれだけしかしてくれない。そういう 関係が起こってくる。商品化による疎外ですね。そういうことがあるから、単 純にそれはいいというわけではない。  では、対等な協働関係を築くために何をするかといえば、まさにボランティ アコーディネーションの肝でございますが、ここで肝の話をするのは無理だと 思います。  一言で言うと、ボランティアの依頼者自身が、なぜボランティアに応援を依 頼してくるか。普通、あきらめるわけです。なのに、なぜあきらめないのか。 それは、例えば親御さんが自閉症の子どもを何とか地域で伸びやかに育てたい という思いを持っているからです。施設長さんが、何とか風通しのいい施設、 いろいろな住民が入れる施設にしたいという願いを持っているからです。そう いう夢や願いを持って施設や家を開きます。つまり依頼者もボランティアなん です。だから協働が成立するんです。依頼者自身にボランタリーの部分があり ます。そこに着目して両者をつなぐのがコーディネーターです。  ということなのですが、残念ながらコーディネーションに関して、ここでよ うやく資料6の5ページ。かなり危機的な状況です。どう危機的な状況かとい うと、5ページの上の図です。これは全社協から公表されているデータでござ いますが、ボランティアコーディネーターがどんどん減っています。これは市 町村合併による社協の減少による減少なのですが、どんどん減ってきていると いうことがあります。  実は今のようなコーディネートな(対等な)関係をつくるのは、私どもは専 門性の要る仕事だと思っておりますが、この専門性が認知されていない。活動 したい人がつながればいいんだろうと。本当は非常に微妙なサービス供給の担 い手であるのに、そこがわかっていない。結果的に、異動のない嘱託職員がい わゆるベテランになっているわけですが、大変待遇が悪い。この辺のところは 大変大きな問題だと思います。  もう一つは、NPOとの関係でいうと、これはここで議論していただけるこ とかどうかわかりませんが、私は第三種社会福祉事業がなかったことが大変大 きな問題であったと思っています。今の社会福祉法では、第一種、第二種と社 会福祉事業を規定していますが、今みたようなボランティアコーディネーショ ンとか、社会福祉活動を広げるための活動を第三種とせずに、社会福祉協議会 と共同募金、別立てで二つだけ挙げたんです。そうすると、例えば私どものよ うな独立して事業をしているところは入らない。社会福祉協議会は、前々回の 委員会での説明で地域独占ですとおっしゃっていました。協議会が独占である ことは別にいいのですが、ボランティアセンターが実質的に独占になりやすい ことは問題です。  実際には、レジュメの5ページにありますように、民間のボランティアセン ターはいっぱいありますが、これらはそういう状況下で別枠で勝手にやってい る存在となってきたんですね。確かに社会福祉法の第2条第3号第13項に、 第二種社会福祉事業の「連結、助成を行う事業」も第二種社会福祉事業だとな っていますが、これで民間のボランティアセンターをカバーするのはちょっと きつい。少なくとも今は、第13項では認可してくれません。本当は第三種社 会福祉事業をつくって、社協や共募以外のそういう市民活動を推進する存在も 規定していくと、結果的に地域福祉にプラスになるのではないか。別に社協を 否定しているのではなくて、ボランティアセンターは複数あってもいいのでは ないかと思っています。大阪でも、大阪市老人クラブ連合会もボランティアセ ンターをつくっていますし、いろいろなパターンがあるというわけです。  もう一つ大きな問題は、NPOがどんどん出てきているわけですが、何が起 こっているかというと、NPOの台頭の陰で社協はずしが進んでいるというこ とです。これは今の資料6の6ページの下の図です。これは統計的に厳密な話 ではありません。全国にNPOセンター、市民活動センターというのはどんど ん増えているのですが、これは私が2004年頃に一度つくったきり、その後全然 手をつけていないので、更新していない。全国の市民活動センターを網羅する 名簿は、現在、ありません。そういうものが概念としてないからです。これは 一生懸命ネットで調べて、ここがまたできた、ここがまたできたといって調べ たものですから、自家製なので、2003年度以降は怪しいものですが、でもそれ までのところはかなり厳密に調べました。ここの上から3つ目、社協系はこれ だけしかないです。ほかは独立した、行政がつくったり、民間がつくったりと いうのがすごく多くなっている。だから1つの自治体に社協ボランティアセン ターとNPOセンターがあるという例がどんどん増えています。これがあまり いいことではないのではないかと思いました。  元の資料の3ページの話は重大な話だと思いますので、このことを話して終 わります。もう一つ、この地域福祉の関係で、多分どこかで今後、お話しなさ るだろうと思いますが、今私が言いましたボランティアとか、NPOの良さと いうのは、最初の資料の方の3ページに、「2つのコミュニティ間の確執」と いうタイトルの部分があります。先ほど私がボランティアとかNPOというの はこんな点がいいですと言った、そのいいですねというのは、この表でいうと ころの「テーマ型コミュニティ」の特性です。国民生活審議会に私は入ってい ますが、そこでこのことを指摘しているのですが、コミュニティには2つあっ て、地域社会を基盤にしたコミュニティと、テーマを基盤にしたコミュニティ がある。これは常識的な話です。  この2つのコミュニティ、同じ市民がつくっているのですが、かなり性格が 違います。なぜこの表に行政が入っているかというと、行政はエリア型コミュ ニティの拡大版とさえ言えるぐらい、非常に類似性が高いです。それに対して テーマ型コミュニティは特殊なのですが、この両者のリーダー間の思いに結構 ぶつかり合いがあります。エリア型のコミュニティのリーダーは大変です。全 然共通基盤のない人たちを一生懸命まとめようとするわけですから。その人た ちからすると、テーマ型のコミュニティの連中なんていうのは、好きな者が集 まっているわけです。「いいよな」という感じです。  一方、テーマ型の人はエリア型のコミュニティの皆さんが自治体との間に連 携関係を持っていますから、「補助金をもらっているらしい。いいですね」と いう話になって、どうもぶつかり合いがある。今後、この両者の連携がとても 大切だと思います。  ついでに、下の方にある図というのは内閣府が4年ほど前に自治体あてに調 査した、いわゆる有志型NPOというかテーマ型コミュニティとエリア型コミ ュニティ、当時、内閣府はテーマ型、エリア型という言い方をしていなかった のでNPOと地縁型になっていますが、その結果はこんな感じで、福祉とか子 どもの健全育成などは、有志型を自治体は期待しているなという話です。  あとは最後のページの企業の話とか有償の話は略します。 ○大橋座長  ありがとうございました。それでは、残り時間は自由にご質問を含めて論議 をいただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○木原委員  ちょっと変な話をしますが、先ほど、「たまにはうちのボランティアをしろ」 という、あれはすごく正解のような気がします。私が大学生を教えたとき、何 かやっている学生は話せと言ったら、ある学生が、「うちのぼけたおばあちゃ んのまずい料理を褒める」と言ったんです。ところが、他の学生が言い出した。 「先生、そういうのはボランティアと言わないんだよ」「なぜだめなんだ?」 と聞いたら、「身内だからだ」「身内はどうしてだめなんだ?」「どうしても だ」。アカの他人でなければいけないと。意外と足元がおろそかになっている んですね。  ある主婦が私の担当するボランティア講座に来た。「どうして来たの?」と 聞いたら、「実は私、20年間、両親の介護をしてきた」と言うんです。舅と姑。 「その間、ボランティアもしなければと思いました。でも、2人の介護が忙し くてなかなかボランティアができませんでした。ボランティアできない自分を 日々責めていました」と言うんです。「どうして今日は来たの?」と聞いたら、 「ようやく2人とも死にましたので」と。では、これから時間ができたからし なさいねと我々は言っていいのか。  先ほど定年退職者の話が出たけれども、カミさんは社会活動していますね。 その後方支援はしているんです。後方支援というのは今、日本のボランティア 活動者は認めないのではないか。一人一人、何らかの福祉的なことをやってい ると思う。そこのところがほとんど捨てられて、ボランティアセンターに来て、 グループをつくって、「今日から老人ホームに行くぞ」というのがボランティ アなのだと。住民もそういうイメージを描いているのではないか。だから「あ れはわしにはできない」と。非常にハードルが高くなってしまっている。  「そういうのはボランティアと言わないんですよ」と僕もよく言われます。 「木原さんの言っているのはボランティアじゃないのよ」と。ボランティアに は公共性の原則があるとか、どうも専門家が入るたびにだんだん難しくなって、 それだけハードルが高くなっている。もっと低くして、それぞれが既にやって いるんだと。「あなた、それはボランティアよ」と言ってやった方が、住民に 広がると思うんです。国が国民にメッセージを発するとしたら、「みんなボラ ンティアなんですよ」と言っていただきたい。こういうことも、こういうこと もいいんだよと。そういう救いのあるボランティアの考え方とか、普及の仕方 をした方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○大橋座長  今のは、早瀬さんの当日配付資料の3ページのテーマ型とエリア型というの をやや対立的にとらえがちですが、全社協が今から25年ぐらい前に、市民活動 とボランティア活動の関係をどういうふうに整理するのかというのがありまし たね。そこで論議されたことは、市民活動が活発になればボランティア活動と いうのはなくなるのかということでした。つまり、ボランティアというのは市 民活動を当たり前にみんながやれるようにするためにやる。ボランティア活動 をなくすためにボランティア活動をやるという逆説的なこともあるわけで、一 度それは市民活動、ボランティア活動の関係ということで少し論議をしておか ないといけない問題かもしれません。というように思うのですが、いかがです か。何かありますか。 ○木原委員  センターに引き寄せると、ボランティアのテーマが決まってしまうわけです。 住民の中に入っていって、「あなたのやっていることはボランティアですよ」 と言っている人を、この前、小平市で見つけました。コーディネーターをもっ と「住民化」していくということも必要ですね。 ○大橋座長  だから今の問題は、ボランティアセンターの名前が市民活動・ボランティア センターになっている意味とか、そういうことも含めて考えてみる必要がある でしょうね。 ○早瀬氏  一つは、今の木原委員の話も含めてですが、旧来、例えば家族がすごくしっ かりしていたときには、そんなことボランティアだと確かに言わなかったと思 うんです。そういうものがどんどん劣化してきている社会の中で、社会的有用 性があるということになるんだろうと思うのと、テーマ型とエリア型の対比の 話ですが、これから社会福祉協議会ボランティアセンターの大きなフロンティ アになるのは、この両者をつなげることではないかと思います。どちらにもあ る程度のパイプを持っているのは社協ボランティアセンターだと思うんです。 そこは今後の大きなテーマになると思います。 ○大橋座長  内閣府はテーマ型とエリア型と言いましたが、言葉をかえれば地域コミュニ ティ型組織とアソシエーション型組織との統合、あるいは有機化ということで すよね。従来言われてきたことかもしれません。あるいは、今の介護の問題で いくと、インフォーマルケアの中に家族とどう位置づけるのかというのは、こ れはヨーロッパ・アメリカと日本とちょっと違いがあるということでしょうか。 それも大きな論点の一つかもしれません。  お聞きしたいのですが、今日の当日資料の中で、大阪ボランティア協会は社 団法人の許可を得て社会福祉法人に組織変更ですね。その組織変更は、第二種 社会福祉相談事業の認可ですね。 ○早瀬氏  そうです。ものすごく拡大解釈を大阪府はしたんだと思います。 ○大橋座長  ボランティアセンターそのものではだめだと。 ○早瀬氏  というのは、第2項にはないですね。だから当協会の岡本理事長はずっと第 三種社会福祉事業が必要だと言っています。 ○三本松委員  何点かお聞きしたいと思うのですが、1点目はボランティアと呼ぶものの範 囲について、例えば有償型ボランティアに対しては否定的だとおっしゃってい ましたが、もう一つ、委嘱型ボランティアというのがありますね。それについ てどういうふうにお考えかということをお聞きしたいと思います。  先ほどのテーマ型、エリア型の関係ですが、テーマ型の場合に、地域への指 向性というのは出てくるのか。福祉の場合、地域との関係というのが重要だと 思うのですが、地域に対してのアイデンティティみたいな、そういうものは出 てくるのかというところをお聞きしたい。  3点目ですが、ボランティアをやりたいけれども、何をやっていいのかとい うお話がありましたが、そこのところで、ピンポイントで自分が生かされるよ うなものを生かしてあげることが大事だというお話だったと思うのですが、前 の鈴木さんのお話のところとも合わせてなのですが、鈴木さんの先ほどの3ペ ージのデータをみていると、かかわりを持っている分野で、大橋先生の方から ご指摘があったように、福祉領域へのかかわりというのは少なくて、障害とか、 児童とか、そういうところに関わりが少ないのですが、一方で、官公庁などの 人の率が出ているように思うんです。  逆に、1,000人以上のところの人は少ないというような数字も出ているので すが、この辺は、ある意味、支援の技術というようなことと関わって、支援の 技術というのも2つあるのではないかと思うのですが、一つは関わりのつけ方 みたいな、そういう技術を持っているのか。例えば障害者の人に関わるといっ たときに、どういうふうに関わっていいのかというのがわからない。結局、そ れがボランティア活動につながっていかないということがあるのではないかと いうことです。  もう一つは、具体的な支援のノウハウみたいな技術を持っているかどうか。 それは先ほどお話があったような、何かその人が持っているものを生かしてあ げるとうまくつながっていくのかなというふうに聞きながら思ったのですが、 対象につなげていくとき、支援の技術みたいなものをどういうふうにお考えに なっているかということをお聞かせいただければと思います。 ○早瀬氏  ボランティアをどう定義づけるかは大変ややこしい話で、先ほど私、有償の ことについて若干否定的だと言ったのは、「有償ボランティア」という表現で、 例えばグループホームのナイトケアのスタッフを有償ボランティアだとか、あ るいは資格取得の実習になりますといって募集する動きがどんどん出ています。 それでいいのかと思うんですね。  これは非常にややこしいです。本人は喜んでいます。アルバイトと言われる よりいいように思えるんですね。雇う側も安く雇えます。だからお互いにハッ ピーです。局所的にはハッピーなんだけれども、福祉全体の状況を考えるとい いのかどうか。  ボランティアというふりかけがあって、ボランティアというふりかけをつけ ると良いことのように思わせるのですが、本当はボランティアといっても、ス ケベもいれば、うそつきもいるわけです。人間ですから。そうなのですが、名 前だけきれいにみせるということになっている。だから有償活動でいいじゃな いですか。あるいは、アメリカだったらコミュニティサービスというから、そ れでいいじゃないですかという感じがあって、ネガティブなのです。  委嘱型の話ですが、委嘱を受けても、本人が自発的であればいいいと思いま す。委嘱を受けながら自発的にやればいい。ボランタリーなもの、自発的なも のというのは根本的に心の中の話なので、これを規定するのはものすごく難し いと思っています。  2つ目のテーマ型の団体は地域の指向性があるかということですが、現実的 にはほとんどの団体、特に福祉系の場面で活動する人たちは地域との接点の多 い活動が圧倒的です。単にそれが地域全体の合意で生まれている組織ではなく て、この指とまれで生まれているというだけの話ですから、その点は十分に接 点がある。ただ、社協で地域の自治会と連携して小地域福祉化をきっちりやっ ている、後ろにいらっしゃいます豊中社協などは非常にちゃんとやっておられ ますが、そういうところだといいんだけれども、変に浮いている場合がある。 そこをどうしたらいいかという問題なんだろうと思います。  3点目の話ですが、関わりづけ方ですが、災害ボランティアというのは実は 大変に初心者向けなんです。だからたくさんの人が参加できる。単発です。1 日だけでいいです。かつ、ほとんど技術は要りません。水くみの講習会なんか 誰もしません。炊き出しするときに、おにぎりのにぎり方の講習会はしません。 そういうニーズが災害の場合、ものすごく多いから、多くの市民が参加しやす いのです。  ところが、阪神・淡路大震災のときでも一挙にボランティアが減ったのは、 仮設住宅に移ってからです。仮設住宅に移ると、話し相手という形になるので すが、話し相手というのはものすごく難しいです。もともと日常的な関係がな いと、「話し相手に来ました。今日は暑いですね」「そうか?」と言われたら 終わりですからね。本当にそうなんです。そういうものなんですね。そこで急 に東京から来た人が活動できなくなったから、ぐっと減ったんです。あれは意 欲が減ったというよりも、プログラムがなくなったということです。  それは災害の話でいいのですが、障害のある方に対してどうやるんだ、認知 症の人にどうするんだということは、当然、そういう講習会があるべきだと思 いますが、ただ、私の実感からすると、それは本当はそんなに大きなハードル はないんだけれども、あるように思っている人が多い。障害のある人でも、ど うしたらいいかを相手に聞けばいいんです。それでいいのに、なかなかそうは ならない。だからそういうことを講習することは大変重要だと思います。 ○和田委員  ボランティアをどう考えるかということに関連して、今までいろいろな発表 されているデータだと、ボランティアに参加していますかというと、7〜8% か10%ぐらい。 ○早瀬氏  大阪は一番低いです。 ○和田委員  実際に別の言い方、例えば社会活動に参加しているかとか、社会的な奉仕活 動に参加しているかとかいうと20〜30%ぐらいになりますね。だから聞き方に よって随分違う。要するに、ボランティアとは何か。私、こんなことをやって いるけどボランティアはやっていない。実際、それはボランティアじゃないで すかなんていうことがよくありますよね。  それが一つと、国際ボランティア年のときに、向こうで世界各国のボランテ ィア定義を集めて整理しましたね。あの4つの定義というのをみると、相互扶 助または自助と、他人に対する慈善行為または奉仕、参加、主張またはキャン ペーン。これにリズ・バーンズが来たときに、非公式なインフォーマルなボラ ンティアという形もあると。どの国でも全部それが行われていると。というこ とは、ボランティアということはどういうものかというふうにして形でとらえ ようとすると、何でもいいんだということに近いんだと思うのですが、しかし、 そこでボランティアというふうに言うときは一体何なのかというあたり、ぜひ 早瀬さんのご意見を伺いたいなと思ったのですが。 ○大橋委員  今の三本松さんの意見とも絡むのですが、早瀬さんに、消防団というのはボ ランティアに入るのか。そういうことも含めて。 ○早瀬氏  ピーター・ドラッカーは、日本は世界で最も古いNPOを持っている、それ は消防団だと言いましたからね。そうなんだと私は思っています。  僕自身は、ボランティアとか何とか言わずに、普通の市民の振る舞いとして、 そういう振る舞い方が普及すればいいのになというイメージがあります。それ がボランティアとわざわざ言わないといけないとなると、ボランティアという 言葉があるから有償ボランティアという言葉があるわけで、それは普通の市民 の振る舞いとしてどんな仕方をするんだというふうになればいいなと僕も思う のですが、困ったものですね。昔は奉仕だったので、奉仕のイメージに対抗し ようと思って使い出したというところはあると思います。 ○大橋座長  市民の社会貢献活動とかボランティアというと、和田委員が言われたように、 非常に抵抗感がある。だけど地域の清掃をしている人はみんな気楽に当たり前 にやっている。その限りだと市民活動だと。そこは少し意識化してやると市民 の社会貢献活動みたいな。先ほどの市民活動、ボランティアの関係をどうみる かなんていうのはやはり一つ考えないといけないですね。 ○小林委員  ボランティアをどこでとらえるかという話だと思うのですが、動機からとら えるのか、むしろ活動の種類というか、例えば先ほどの震災後の仮設の場合の 傾聴ボランティアみたいなものが最近出てきていますね。老人ホームとか、ホ スピスとか、いろいろな場での傾聴ボランティアもあります。これはある程度 トレーニングを受けないといけないし、それなりの使命感がないといけないと いう領域ですが、ボランティアを一つに括ってしまうのではなくて、いくつか に分けた方がいいだろうと思います。もう一つ、ボランティアコーディネータ ーなのですが、従来型のボランティアセンターが持っているマッチングの機能 が、今おっしゃったようにかなり変わってきている。私の学生も確かにそうい うことを言い出してきて、プログラムを変えないといけない。例えば同じ施設 でもきちんと方針を出さないと、すぐにいなくなってしまうなど、大分変わっ てきているという話を聞きます。そうしますと、コーディネーターという概念 をもうちょっと考えた方がいいのではないか。  また全然別の話なのですが、アメリカですと、ボランティアマネージャーで すね。あれはお金も集めてくるみたいなところまで含めてマネジメント。これ は日本とは全然違うところで、日本はお金を集める機能がないからコーディネ ーターにとどまっていると思うのですが。いずれにしても、もうちょっとコー ディネーターという概念を分けて考えた方がいいのではないかという印象を 今のお話を伺いながら考えました。 ○大橋座長  お金を集めてくるなんていうのは、ある意味ではソーシャルワーカーでもい いんですね。そういうことを含めて。 ○早瀬氏  動機からとらえ出すと、ボランティアという言葉そのものは動機から見た言 葉ですね。「Willの人」という意味の言葉ですから、そういう言葉なのです。 ただし、その動機の点だけで言い出すと多分入りにくくなるのが企業の社会貢 献と言われる活動で、企業の社会貢献活動というのは、実際上は絶対何らかの 長期的な投資でないとおかしいですね。そのときに、あれは動機が不純だと言 っていたら、社会貢献担当者は縛られてしまうわけです。  そうではなくて、種類という言葉もありましたが、動機の一方でみていけば いいと思うのは効果だと思うんです。つまり、企業の社会貢献というのは、動 機としては、うちの会社の評判がよくなったらいいなとか、社員が元気になっ たらいいなという動機、内向きのことも考えながらいろいろな取り組みをなさ るのですが、結果としてそれが社会的に大きなインパクトを持てばいいのでは ないか。  そもそも企業と我々の付き合い方というのは、動機をみるのではなくて効果 をみるんです。仮に私が朝、喫茶店でコーヒーを飲んで、「おいしいコーヒー を飲めた」という効果を得た。その時に「何でこのママさん、こんなおいしい コーヒーを飲ませてくれたんだろう」と、そこで動機を探ってはいけないです。 「ひょっとしたら、ここのママさんはおれに気があるんじゃないか」と。そん なことはないです。ママさんは、もちろん自分のお店を繁盛させたいからおい しいコーヒーを飲ませているだけです。だけど結果としておいしいコーヒーを 飲めたらいいじゃないですか。つまり、我々は企業とそうやって付き合ってい るんです。ところが、いきなり社会貢献になると動機がどうだと言い出すから いけないという話です。  ボランティアマネージャーの話で、もう一つ、福祉教育の世界でいうと、募 金教育というか、お金のことを扱う学習、これはJYVAの村上さんが今一生 懸命勉強していますが、そういうことも大切な話だと思います。 ○大橋座長  ファンドレイジングに関する部分がソーシャルワークの方に全く抜けちゃ っているので、これはすごく大事なことですね。  最後になりますが、早瀬さんの今日の当日資料の3ページの、自治体が協働 したい分野とパートナー、これは内閣府のデータだということですが、この一 番左のところで、連絡助言援助というここがNPOで、地縁型は少ないですね。 連絡と助言・援助はちょっと違うかもしれませんが、これはどう読まれていま すか。 ○早瀬氏  これはそもそも、この調査自身が変な調査で、要はこれはNPO法の目的に 合わせてつくったんです。NPO法別表の一番最後の目的の関係で、この「連 絡助言相談」が入った。地域の人たちはそんなことは考えていないです。NP Oでは声高らかに「私どもはサポートします」と言ってやっているところがあ るからこうなったというだけの話だと思います。 ○大橋座長  例えば、ある意味では回覧板の問題だとか、行政の資料を自治会が一番やっ てくれているとか、それがあるから自治会というものなので、これはこのまま 出て評価されるとちょっと困るなという質問だったのですが。  今日はこれでおしまいにしますが、局長、何かご意見はありましょうか。 ○中村局長  今日はどうもありがとうございました。先生方に熱心にご審議いただいてい ますが、あと1回で勉強編は一わたり終わることにして、それから集中的な議 論を年明けからお願いしたいと思いますので、年内はもう一度、先ほどファン ドレイジングの話がありましたけれども、共同募金がレビューのテーマになっ ておりますので、次回、よろしくお願いいたします。  毎回、これまでのご意見などを整理しておりますが、年内にそういうのを取 りまとめて、できれば年内に年明け以降の議論はこういうことをお願いしたい ということを配付させていただこうと思っております。年が明けてしまうかも しれませんが、とにかくよろしくお願いします。 ○大橋座長  12月は予算編成の最後で大変忙しいので、そういうことがあるかもしれませ んが、できるだけ早くということでございます。  それでは、今日はこれでおしまいにしますが、事務局、最後に何かございま しょうか。 ○事務局  次回、12月14日金曜日、16時30分から18時30分、場所は新霞が関ビル5階の 会議室になります。また地図等はご案内させていただきます。 ○大橋座長  今日は鈴木さん、早瀬さん、お忙しいところどうもありがとうございました。 これをもちまして今日の検討会をおしまいにいたします。どうもお疲れさまで した。ありがとうございました。 (了) 1