07/10/30 交通労働災害防止専門家検討会(第1回)議事録 第1回交通労働災害防止専門家検討会        日時 平成19年10月30日(火)         10:00〜 場所 経済産業省別館1031会議室(10階) 照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 電話 03-5253-1111(内線5487) ○高橋副主任中央産業安全専門官 本日は、朝早くからお集まりいただきまして、大変ありがとうご ざいます。開催に先立ちまして、配付資料の確認をさせていただきます。まず、資料1、本検討会の 「開催要綱」があります。表裏になっていて表が要綱、裏側に専門家の先生方の名簿が付けてありま す。続いて資料2、「交通労働災害の発生状況」、資料3、「トラック事業者及び運転者に対する調査 結果概要」、資料4、「新たな交通労働災害防止対策のための検討事項」、そのほか専門家の先生方の ところに、関係資料をいくつか配付しています。すべてお揃いでしょうか。よろしいようでしたら、 ただいまから第1回交通労働災害防止専門家検討会を開催いたします。初めに、厚生労働省安全衛生 部の鶴田部長からご挨拶を申し上げます。 ○鶴田安全衛生部長 おはようございます。ただいまご紹介いただきました、安全衛生部長の鶴田で ございます。委員の先生方におかれましては、大変ご多用中のところ本検討会にご出席いただきまし て誠にありがとうございます。また、日頃から労働安全衛生行政にご協力を賜っておりますことに関 しましても、重ねて感謝を申し上げたいと思います。  本検討会は、最近の知見を踏まえて、交通労働災害防止対策を検討していただくということで開催 したものでありますが、近年の交通労働災害の状況を見てみますと、死亡災害については減少傾向に あるものの、死傷災害については増加の傾向があり、全災害に占める割合も上昇傾向にあります。さ らに、一度に3人以上の方が被災される重大災害については、ここ20年で約2倍に増加している状況に あります。  このような状況を踏まえて、昨年調査、研究をしていますが、中身はトラックドライバーの勤務状 況、事業場の安全管理状況とその労働災害発生状況の関連について、労働安全衛生総合研究所のご助 力をいただきまして、疫学調査を行ったところであります。その結果、走行計画の遵守、点呼の実施 等の状況と災害発生の関連性について、明らかになったところであります。  本日はこれらの調査結果を踏まえて、新たな発想で交通労働災害防止対策を検討していただきたい ということであります。今後、数回開催して皆様方のご意見を賜りながら、来年1月を目途に検討結果 をまとめたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 続きまして、お集まりの専門家の方々のご紹介をさせていただき ます。お手元の資料1の2頁に、名簿がありますので併せてご覧ください。最初に、独立行政法人労働 安全衛生総合研究所国際情報・労働衛生研究振興センター、高橋正也上席研究員です。一橋大学大学 院商学研究科、根本敏則教授です。次に独立行政法人自動車事故対策機構安全指導部、平川君男マネ ージャーですが、本日は代理で飯塚純アシスタントマネージャーがおいでです。  次に株式会社日通総合研究所、三浦明取締役。警察庁科学警察研究所交通科学部交通科学第二研究 室、三井達郎室長です。陸上貨物運送事業労働災害防止協会、安本伸行労働災害防止対策委員です。 本日は、独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループの中村隆宏主任研 究員は、所用により欠席をされています。  続いて、本検討会の座長を選出したいと思います。専門家の皆様方からご推薦をいただければと思 いますが、いかがでしょうか。 ○高橋委員 根本教授にお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 根本教授をということで、高橋委員からご推薦がありましたけれ ども、いかがでしょうか。 (異議なし) ○高橋副主任中央産業安全専門官 ありがとうございました。それでは根本委員に座長をお願いいた します。それでは座長、これ以降の進行をよろしくお願いします。 ○根本座長 ただいま座長を仰せつかりました根本でございます。初めてお会いする方も多いので、 すこしだけ自己紹介いたします。私は商学研究科の交通経済学のグループに属しておりまして、ロジ スティックスマネジメントを担当しております。過去、トラック事業者の情報化の支援など、デジタ ルタコグラフとかドライビングレコーダーとかを使って効率的な運行管理、安全性の向上ができない か、みたいなことを少しお手伝いさせていただきました。  今回、厚生労働省の仕事ですが、交通労働災害に関わる専門家の皆さんがお集まりいただいていま す。是非、交通労働災害の防止に向けて、効果的な対策の取りまとめということで、いい成果を皆さ んの協力のもと出していければと思っております。よろしくお願いいたします。  それでは議事次第に従って進めていきたいと思います。最初に、本検討会の開催要綱について事務 局からご説明をよろしくお願いします。 ○安井技術審査官 事務局から資料1の説明をいたします。「交通労働災害防止専門家検討会」開催要 綱。目的については、先ほど部長が申し上げたところですが、自動車運転者の運転の状況、睡眠の状 況、そういうものと交通労働災害発生との関連性に関する最近の知見を踏まえながら、効率的、効果 的な交通労働災害防止対策のあり方について検討することを目的にしています。この検討項目につい ては、(1)〜(9)までということで事務局で準備をしていますが、これは後ほどの議論で付け加え るべきものがありましたらご意見をいただければと思います。  それから細かなことですが、本検討会は安全衛生部長が招集ということです。それから(6)です が、必要に応じて関係者からヒアリングを行うということで、場合によっては事業者に対するヒアリ ングということも行っていきたいと考えています。以上です。 ○根本座長 よろしいでしょうか。それでは議事に入りたいと思います。初めに、議事の1番目、「新 たな交通労働災害防止対策の検討について」です。資料2、資料3について事務局から説明をよろしく お願いいたします。 ○安井技術審査官 資料2、3と続けてご説明いたします。まず、資料2の交通労働災害発生状況からご 説明します。  資料2-1ですが、これは国土交通省からの統計です。まず、件数については長期的には増加傾向、最 近、近年については横這いという状況です。一方、死亡者数、重傷者数については減少している状況 です。次に資料2-2、これはバス、ハイタク、トラックという業態別に出た数字ですが、これも同じよ うな傾向で、死亡者数については減少傾向、件数あるいは死傷者数については横這いもしくは若干の 増加傾向、そういう状況です。  次に資料2-3ですが、これは交通労働災害で、労働者の方がけがをされる、あるいは亡くなっている ような災害を集めている統計です。まず、資料2-3が死傷災害で、いちばん上の黒い折れ線グラフは、 交通労働災害に限らないすべての労働災害を示していますが、横這いであります。交通労働災害の死 傷者の割合は棒グラフで示されていますが、この割合については増加の傾向にあります。  次は、資料2-4、これは死亡災害については全死亡災害が折れ線グラフで示されていますが、その中 に占める交通労働災害の割合については、横這いもしくは若干の減という状況です。資料2-5、これは 交通労働災害に関します死亡災害と死傷災害の業種別の分類を見ているものです。まず、死亡災害に ついては、やはり陸上貨物運送業が30%でいちばん多く、その次に商業が占める、次に建設業という 順番になっています。一方、死傷災害になるとだいぶ様相が変わって、件数からいうと通信業が20% でいちばん多い。次に陸上貨物が13%、それから交通運輸が10%で、重篤な災害を起こしやすい業種 とそうでない業種があるということです。  次に資料2-6、発生時刻別の交通労働災害発生状況です。まず死傷災害については、いわゆる昼間の 事故が多いということで、これは基本的に交通量に比例してこのような形になっているのではないか と推察されます。次は資料2-7、発生時刻別の死亡災害です。これについては明らかに明け方がピーク となっていて、重篤な災害についてはやはり深夜から明け方が多いという状況です。  次は資料2-8、業種別の重大災害発生件数の推移です。我々が重大災害と申しますのは、一度に3人 以上の労働者の方が被災される事故で、それなりに大規模な事故と考えていただければと思います。 全産業の重大災害発生状況については、このように上昇傾向になっていて、昭和61年から比較すると 約2倍以上の増加をしています。件数的には建設業がいちばん多くなっていて、増加傾向が見て取れる 状況です。死亡災害、死傷災害それぞれ特徴があるという形です。資料2については以上です。  続いて資料3についてご説明します。資料3は、表紙の1枚目にありますように、2つの調査結果を取 りまとめたものです。まず1つ目の調査が、労働安全衛生総合研究所に委託して行ったもので、対象と してはトラックドライバーを対象にしています。分析の内容については、運転中のヒヤリハット、居 眠り運転、交通事故、このようないわゆる発生状況と、それぞれのドライバーの勤務条件の関連性 を、疫学的な手法を用いて調べたものです。主に多重ロジスティック回帰分析という形で、いわゆる たくさんの項目を検討した上で、その有意差、統計上に有意があるかどうかを調べた統計結果です。 特に調査結果の中で、統計上有意、もしくは有意傾向というものについて抽出をしています。  この有意、または有意傾向というものですが、これは統計学上の用語であって、ある一定の関係が 偶然に得られた可能性が5%未満、まず考えられないというようなものを「有意」、5%〜10%未満 は、有意ではありませんが、ある程度偶然とはなかなか考えにくいものは「有意傾向」ということで す。この調査結果においては、この有意と有意傾向の結果だけを抽出しています。  もう1つの調査は、トラック事業者に対する自主点検です。これは行政から実際に交通労働災害を発 生させた道路貨物運送業の事業者に対して、自主点検表を送付して、それを回収して集計したもので す。集計のやり方については、上の調査と同様に疫学的な調査を行っています。具体的には走行計画 の策定、点呼の実施、運転教育の実施、そういうものと交通労働災害の発生状況の関連性について調 べたものです。  次に、具体的な項目について説明いたします。調査項目1、走行管理です。この資料については、ま ず事故の発生に「負」の関連、これは事故が発生しにくくなることと関連があったものということ で、事故を抑制する方向で効果があると見込まれるもの、それから次頁にあるように事故等の発生に 「正」の関連、どちらかと言うと事故を発生させやすくなることと関連があった、どちらかと言うと 事故を誘発するような要因として考えられるものという形で整理をしています。  まず走行管理に関しては、事故の発生に「負」の関連というものをまとめたのが2頁目です。大きく 3点ありまして、まず第1点については走行計画です。走行計画の作成については有意な関連はなかっ たわけですけれども、走行計画を遵守することについては、有意な負の関連がありました。オッズ比 がありますが、これは事故発生率を比較するためにある群の発生率を1として、そのほかの群の発生率 を相対的な比で表わしているものです。図1-1を見ますと、ほぼ毎回遵守していないというグループを 1として、それとほぼ毎回遵守しているグループを比較すると、事故の発生率が0.51もしくは0.37と半 分もしくは3割に減少するという意味です。  同様に休憩時間を走行計画に規定している場合、有意な負の関連があって、これもオッズ比で言う と0.49、約半分に災害が減ります。  次に3つ目、休憩時間が少なかった場合の事後措置。これについては措置の数を考えています。図1- 3では、まず休憩時間が計画より少ない際の措置の数が1個であるグループ、これを1とすると、2つ以 上の措置を執っているグループは0.48と約半分の災害発生率ということがわかっています。  次に3頁目、これは事故の発生に「正」の関連がある項目です。まず、(1)図1-4は拘束時間について 調べています。3日間の拘束時間に占める13時間以内のものの割合。ですから、この100%というのは3 日間ずっと一度も13時間以上になったことがないという事業場が100%です。一方、0%というのは、3 日間13時間以内のものが1つもなかったということで、ずっと13時間以上だったというグループです。 これを比較して災害の発生率でいうと約2倍の差があることがわかっています。  また、その拘束時間に、13時間以上の拘束時間の割合というものがどんどん減少していけばしてい くほど災害が増えるという、いわゆる線形的な傾向が見られます。  次の(2)、「8時間以上の勤務間隔」で、主には休息と思っていただければよいかと思います。資料1- 5、3日間における8時間以上の勤務間隔の回数が3回以上、これは要するに3日間8時間以上の休息を1日 1回以上与えているという優良な事業者ですが、0回というのは3日間で8時間以上の休息を1回も与えて いない、すべて8時間未満の休息しか与えていなかった事業場を比較すると、災害発生率に約2〜3倍の 差があります。この勤務間隔の回数が減少していくに連れて、災害の発生率は上昇していくという線 形的な傾向が見られるわけです。  次に(3)ですが、「9時間以上の運転業務」に有意傾向な正の関連、これは有意傾向ですのでグラフは 付けていませんが、運転業務時間が9時間以上になってくると、正の方向で1.9倍の災害発生率という ことがわかっています。次に(4)、「不規則な勤務」、これは図1-6の路線というように、毎日毎日近距 離を運転しているという方と、あるときは長距離あるときは近距離というように不定、決まっていな いという方を比較すると、やはり2倍程度災害発生率に差があることがわかります。  4頁、これも同じく事故の発生に「正」の関連があったものです。まず第1点、これは管理の関係 で、「走行管理実施上の困難」の個数、種類の数が多くなると事故等の発生に有意な正の関連が強く なることがわかっています。図1-7ですが、走行管理上の困難は全く感じていない0個のグループと、1 もしくは2個のグループを比較すると、やはり約2倍の災害発生率の違いがあります。それから(2)、こ れは図1-8ですけれども、走行計画に休憩の場所を指定する場合、定めていないグループを1とする と、定めているグループは2.4倍の災害発生率です。  先ほどちょうど説明いたしました2頁の図1-2によると、走行計画中の休憩時間の長さを定めたほう が災害が減るわけですけれども、この4頁の図1-8によると、場所を定めるとかえって増えるというこ とですので、走行の休憩場所を定めることについては、慎重な対応が必要です。  5頁、これは拘束時間についてより詳しい分析をした資料です。先ほど13時間のものだけをご紹介し ましたが、拘束時間11〜15時間についても調査をしています。まず、表1、3日間の拘束時間を時間 別、回数別に分類しています。13時間未満の拘束時間、拘束時間11時間以内、12時間以内については 統計上の有意差はほとんどないということですので、こういう短い拘束時間については、労働災害の 防止に明確な寄与は見られない。一方、13、14、15時間となってくると、先ほど説明いたしました が、3回以上のグループと0回のグループを比較すると、約2倍の程度の事故の発生率の差がありますの で、13時間以上のものは拘束時間が長くなればなるほど、事故が増えることがわかりますので、労働 災害防止上の効果がある、規制する意味があるということです。  表2は先ほど説明しましたグラフの数字ですが、回数ではなくてパーセントで分けているものです。 これも同様の傾向がありますが、パーセントで分けると拘束時間11、12時間についても有意差のある 数字が出てきますが、傾向としては13時間以上のものに、よりはっきりした統計上の有意差があるこ とが認められます。  次は6頁、休息時間について調べたものです。これについては、勤務時間6〜12時間というものがあ りますが、これもやはり6、7時間で見ると、労働災害防止効果という意味では明確なものはありませ ん。8、9時間と増えてきて、3回以上と0回以上を比較すると、かなりの程度の労働災害防止の効果が 認められることがわかってきます。  7頁、運転時間の限度、9時間ですが、これについてはヒヤリハットの発生率、居眠り運転の発生率 について、有意傾向ですが、若干の約2倍のオッズ比が出ます。  続いて8頁、これは走行前点呼に関して、事故等の発生に「負」の関連があったものを調べたもので す。図2-1で、普段の睡眠時間と事故等の発生率の関連を調べて、5時間未満のグループと5時間以上の グループを比較すると、5時間以上のグループが0.4、4割程度災害発生率が低くなっています。夜間走 行中に仮眠をとるかどうかという調査もしていて、夜間走行中に仮眠をとる頻度が100%であったもの と、0%であったものを比較すると、このような形で減少が見られます。  続いて9頁、走行前点呼のうち、走行前点呼項目が多いほど有意な負の関連が強まり、図2-3を見る と、走行前点呼のチェックの項目数が、増えれば増えるほど労働災害の発生率が減少しています。図 2-4は、運転に不適当な場合の措置。点呼の結果何らかの措置を講じなければならないとき、措置をき ちんと講じている措置の数が多ければ多いほど、災害は減っているという状況です。  10頁は睡眠関連です。勤務時間前24時間の総睡眠時間が6時間以上7時間未満を1としますと、5時間 以上6時間未満のグループは、2〜3倍災害の発生率が高くなっていることがおわかりいただけると思い ます。それから睡眠の関連では、不眠があると自覚されている方と不眠がないと自覚されている方を 比較しますと、約2倍の差があります。それから眠気です。眠気を測る点数があるのですが、眠気が多 ければ多いほど居眠り運転を起こす発生率が高くなることがわかっています。  次に荷役作業です。まず荷役作業をほぼ毎回実施していないグループを1とすると、毎回実施してい るグループは約3倍の事故発生率で、荷役作業は災害に一定の関係があるということがわかります。そ れから荷役の中程度以上の負荷、どれぐらいきつかったかというものについても調べていますが、こ れは有意傾向の関連しかありません。中程度以上の負荷、それなりにきつい作業を行うと、事故が増 える傾向は認められています。  12頁、運転者認定制度を導入しているグループと、導入していないグループを比較しますと、導入 しているグループのオッズ比は0.1、10分の1まで下がるということがわかっています。運転者教育に ついては、教育の項目の数を1個しか行っていないグループと、4個以上行っているグループを比較す ると、発生率は約0.5まで下がります。  事前の走行指導ですが、内容の個数が増えると、必ずしも事故の発生率が下がるということではな いという結果が出ています。これについてはより詳しい分析を行っていますけれども、安全走行指導 の中の走行経路を具体的に指示するというところで、正の有意関連が出ていることがわかっていま す。安全走行指導の内容については、慎重な検討が必要だということです。  それから安全衛生教育ですが、事故等の発生に「正」の関連があったものについては、教育に対す る困難が増えるに従って有意な正の関連が強まる。10〜19年のトラック運転歴については、10年未満 に比較して有意な正の関連が強まる。1日に飲む酒の量は、たくさん飲めば飲むに従って飲酒運転の事 故の発生率が強まっていく傾向がわかります。  14頁は、安全意識の高揚です。これはいろいろな活動があるわけですが、図の5-1にあるように、そ ういう活動の数を増やせば増やすほど、災害の発生率は下がってくるということがわかって、こうし た取組の効果があることが裏付けられたわけです。それからポスターを貼るといった注意喚起対策に ついても、たくさんやればやるほど災害は減るということがわかっています。安全に対する社内の態 度と事故発生率の関連については、平均未満のグループを1とすると、平均以上のグループは0.39で、 安全に対する社内の態度というものは非常に重要であることがわかります。  次は荷主との関係です。荷主からの要求の受容度を調べていて、これは荷主からの要求をどれぐら い受け入れるかという、受け入れ易さですが、低いグループを1としますと高いグループ、要求受け入 れが高いグループについてはオッズ比が2.4倍になっています。  最後が安全管理体制です。平均以上の安全に関する組織の関与ということで、図7-1を見ますと、平 均未満を1とすると平均以上は0.36で、安全に関する組織レベルの関与が重要であることがわかりま す。それから、労働安全衛生マネジメントシステムの導入状況ですが、導入しているグループを1とす ると、導入をしていないグループは1.96ですので、これは裏を返すと、労働安全衛生マネジメントシ ステムを導入すれば、半分程度に災害が下がるという有意傾向のデータがあるということです。  そのほか、労働災害防止規程、労働災害防止推進計画、あるいは災害防止担当管理者の選任につい ては、残念ながら有意な傾向は見られませんでした。説明は以上です。 ○根本座長 どうもありがとうございました。それでは、ここで一旦皆さんからの質問を受けつけた いと思います。資料2、3について何かありますか。 ○三井委員 2点ほど伺いたいのですが、事故の発生率やヒヤリハットの発生率というのがここにあり ますが、測定の期間は過去1年、あるいは2年、3年なのか、その辺りのことを1点教えていただきたい と思います。それから、ロジスティック回帰分析、私はあまり詳しくないのですが、おそらく従属変 数で0か1の値を与えていると思うのですね。それが、例えば事故ならば、事故が発生しないのを0とし たのか、事故を発生したのを1としたのか、あるいはヒヤリハットであれば、区切りの部分ですよね、 例えば0なのか1回未満を0としたのか、あるいは2回以上で0としたのか。その辺りのことが書いてない ものですから、教えていただければと思います。 ○安井技術審査官 調査は2つありますので、それぞれ若干違いますが、まずドライバー調査の災害に ついては、過去1年間の運転で事故があったかどうかをお聞きしています。 ○根本座長 ヒヤリハットも飲酒も、過去1年間ですか。 ○安井技術審査官 全部そうですね。それから、もう1つの自主点検ですが、過去3年間、平成15〜17 年の平均を取っています。この自主点検票については、事業場単位で聞いていますので、事業場で発 生した件数を労働者数で割って、災害発生率という形で行っています。 ○根本座長 この発生率が、比較対象になっているわけですね。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 発生率の高い所と低い所は、どのような要因で決まっているのでしょうか。 ○安井技術審査官 それをアウトカムとして比較をしています。 ○三井委員 その高いか低いかというのは、どこかで区分しているわけですよね。それとも、率でや っているのでしょうか。おそらく、区切りがあるわけですよね。 ○高橋委員 ええ、あります。 ○根本座長 高い事業所と、そうでない事業所ということでやっているわけですね。 ○三井委員 その区分を決めたのであれば、どうしてそう決めたのかがむしろわかれば。本質的な議 論ではないので、大してやる必要はないのですが。 ○高橋委員 先ほどの事故の件数を運転者の数で割った商が0であるかないかで、事故有り事業所、事 故無し事業所ということです。 ○三井委員 0であるかないかで、決めたということですね。わかりました。 ○三井委員 ヒヤリハットもすべてそうですね。すべて、ある、なしで。 ○高橋委員 はい。 ○三井委員 わかりました。 ○根本座長 この2番目の調査は、4日以上の労働災害を発生させた事業場がサンプルになっています から、すべての事業場が事故を起こしているのではないですか。 ○安井技術審査官 これについては、ドライバーが第1加害者や第1当事者である事故だけを抽出して いただいていますので、いわゆるもらい事故しか受けていない事業所は0で出てきます。 ○根本座長 0になるわけですね。わかりました。よろしいですか。 ○三井委員 はい。 ○安本委員 1つよろしいですか。運転者調査と事業者調査がありますが、813部回収、616部回収、こ れは即ち調査対象のロット数と理解してよろしいのですか。 ○安井技術審査官 そうですね。調査票の数で申しますと、運転者調査の場合は3,010部発送して813 部の回収、これは人数と思っていただければいいと思います。トラック事業者に関しては、937部発送 で616部回収です。これは、事業場数と思っていただければいいと思います。 ○根本座長 いかがでしょうか。説明の中で少し興味深い結果として、休憩時間は定めたほうがいい けれども、休憩場所を定めると事故が増えるというようなお話がありましたが、これは事業者のご経 験と合っていますか。 ○安井技術審査官 同様な結果が、安全走行指導のところでも個別具体的な走行経路を定めるとよろ しくないという結果も出ています。推測ですが、あまりきちんと決めてしまうと、道路状況等に柔軟 に対応できなくなって、かえって運転時間が延びたりなど、よくない結果が出るのではないかなとい うのが、1つ考えられる推論です。 ○根本座長 休憩場所をたくさん用意しておくというか、可能性のある休憩場所がたくさんあればい いのでしょうが、ある1箇所で休憩しなさいというと、その時間に行けなくて、つい、いらいらしてし まうのでしょうね。 ○安井技術審査官 そうですね、実際渋滞などになりますと、連続運転時間は4時間という決まりがあ りますが、その時間になってもたどり着かないこともあろうかと思いますので、運転時間が延びる可 能性があります。 ○根本座長 現場では、そのようなことはどのように対応しているのでしょうか。 ○三浦委員 現場のほうは、休憩場所は最初から決まっていますので、私もいまこの結果を見せてい ただいておもしろいなと思いまして、事業をするうえで参考になるのではないかと思っています。 ○根本座長 あと、私が個人的に興味をもったのは、資料3の15頁の「荷主との関係」という項目があ ります。これは、荷主の要求が高いと事故が起きるという話でした。たぶん時間指定などが該当する のかなと思います。ただ、最近は交通事故を起こしたときに、荷主の責任を問うというような話も出 てきています。重大事故は、荷主の名前も公表しますよ、というようなことが言われてきています。 そうすると、荷主としては時間どおり来てもらわなければいけないけれども、事故を起こされると、 もっと困るわけです。そんなことで名前が出ても困るわけです。ですから、これは荷主と運送事業者 との関係の中で、荷主が交通事故をできるだけ減らしてほしいという思いがうまく伝わってくるよう になれば、荷主の要求が強いほど事故が減ることにもなるわけです。荷主と事業者の間のそのような 協力して事故を減らすというような関係を作ることが大切です。ですから荷主との関係がプラスにも マイナスにも働き得ると考えることもできるのではないかと思います。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおり、いずれにしても荷主の要求は影響力が強いということがわか ったわけです。 ○根本座長 いかがですか。 ○三井委員 例えば、事故の内容がわかると、もっとおもしろいかなと思います。速度違反の事故 や、過労などはあるのかもしれませんが、もし先ほどの急いでいるというような状況があるとすれ ば、具体的な事故の内容のところまでわかると、もっと労働の管理と事故との関係がわかりやすくな るのかなと思うのですが、なかなか難しいのですかね。 ○根本座長 それぞれの事故の原因が、データに入っているかどうかですね。 ○安井技術審査官 いや、本当に数字しか押さえていませんので、内容については全く把握していま せん。 ○三井委員 わかりました。 ○根本座長 あと用語で教えていただきたいのは、資料3の4頁の「走行管理上の困難」です。この走 行管理上の困難というのは、具体的にいうと、どのような項目が列挙されているのですか。 ○安井技術審査官 実は、まさにそのまま、「走行管理を行うことで困難なことがありますか」と聞 いていますが、問いの項目としては7つほど挙げています。走行管理のやり方がわからない、走行管理 を担当する者がいない、あるいは自動車運転業務において目的地、時間等が一定でない、といった項 目です。委員の方には、この自主点検の結果を配付していますが、そのいちばん後ろに自主点検票の 質問票があります。その2頁目の真ん中辺りの黒いダイヤモンド印の項目が困難な項目です。 ○根本座長 ドライバーときちんとうまくコミュニケーションを取って指示しているかというような 感じですね。 ○安井技術審査官 そうですね。ですから、走行管理をしようとするときに、こういった事情でうま くいっていないという理由の数ですね。 ○根本座長 わかりました。ありがとうございます。大体、皆さんの直感と合うような答えが出てい るということなのでしょうか。 ○三井委員 走行計画作成に有意な関係がないとありますね。これは、走行計画の作成をしようがし まいが、事故とは関係ないということが、資料3の2頁になるのでしょうか。 ○根本座長 走行計画を作っても意味がない。 ○三井委員 そうです、これはどう解釈するのですか。 ○安井技術審査官 これは、走行計画を作るだけでは効果がなくて、遵守しないと意味がないという ことです。 ○三井委員 そういうことですか。 ○安井技術審査官 当然、走行計画を作成されていなければ遵守できませんので、走行計画の作成そ のものは当然必要なわけです。ただ、作成しっぱなしで遵守しなければ意味がないということを示し ているのではないかと思っています。 ○飯塚氏(平川委員代理) 資料3の13頁なのですが、こちらの図4-6で、1日の飲酒量と事故等発生率 との関連ということで、タイトルは「事故発生率」となっているのですが、実際にこの図は飲酒運転 の件数になってしまっているのですか。 ○高橋委員 飲酒運転を過去1年間にしたかどうかということです。 ○飯塚氏 では、事故発生の件数とは違いますか。 ○安井技術審査官 おっしゃるように、事故そのものではなくて、注意深く見ていただくと、必ず全 部事故等と「等」が付いているのですが、死亡災害とけがの災害、それから飲酒運転とヒヤリハット という4つの項目で調べています。事故はどうしても件数が少ないものですから、統計上の有意差がう まく出ない場合がありますので、そういった場合に備えてヒヤリハットと飲酒運転も聞いていまし た。この部分については、飲酒運転だけに有意差が出たということです。 ○飯塚氏 飲まない方は飲酒運転はされないのかなと思います。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおりです。ここでわかるのは、やはりたくさん飲めば飲むほど飲酒 運転が増えるというところですね。それがわかったということです。 ○飯塚氏 わかりました。 ○三井委員 飲酒運転は、いまものすごく問題なのですけれども、飲酒運転に関して私が見る限り、 どこのガイドラインにも特に書いていないような感じがします。点呼やそういう所で飲酒の有無をき ちんと調べてあれば、こういう関係にはならないわけですよね。ある意味では、飲んでもきちんとさ めた後運転するということが現実にやってあれば、普段飲む量と事故との関係はないはずなのです。 これは、まさに普段飲んでいる人は、場合によってはそのまま運転してしまうということを示してい る、内情の証拠なのだろうと思いますね。ということから見ると、やはり走行前点呼を飲酒の面から もしっかりやる必要があるのではないかなという感じはします。いまの実態はどうなのでしょうか。 ○三浦委員 多くの事業者が、アルコールチェッカーを走行管理、運行管理をするときに義務づけて います。それは、0が正としまして、数値を入れるように段々なっていますので、ほぼそういった予防 対策はできているのではないかと思います。ただ、これは分母が3杯未満とか3杯以上というのは、ど のぐらいの回答があったかをお聞きしたいと思います。 ○安井技術審査官 生の数字は、この自主点検票の回答にありますので、少しお待ちください。 ○根本座長 確かに、この場合は飲まないのが0に限りなく近いですから、これは比率論なら問題です ね。 ○安井技術審査官 配付しています参考資料の緑のほうの63頁に、7-3で「飲酒した後酔いがさめない うちに運転した」という質問があります。これについては、年に数回以上というのが14%ほどありま す。 ○三浦委員 かなり多い数字ですね。 ○高橋委員 6頁には、細かいデータがあります。 ○安井技術審査官 6頁のほうがいいですね。6頁に、グラフ、表の形で示しています。年に数回が13 %、月に1回になると0.9%と非常に低いということで、年に数回ぐらいされる方が10数パーセントお られるということです。 ○高橋委員 今回は酒酔い運転をしましたかという聞き方ではなくて、たぶんそういう聞き方をした ら仮に飲んでいても、飲んでないと答える可能性があることを懸念しまして、ここに書いてあるよう に「飲酒したあと酔いがさめないうちに運転」というのを飲酒運転と定義して問うたところ、こうい う回答が得られました。ただ、週に1回以上というのは2人ぐらいおられました。 ○山崎事故防止対策推進官(国土交通省) こちらの調査は、ドライバーの調査なので自主申告です よね。こういう実態だということだと思いますね。事業者のほうで調査すれば、当然アルコールチェ ッカーなどが入っていて、本来ないはずだという回答が出てくるのではないかと思います。実態との 乖離が問題ではありますが、少し興味深い結果だろうと思います。 ○高橋委員 乗る前の事前の点呼のときには、当然飲んでいない。ところが、仮眠を取るときに少 し、寝付きをよくするためにというのも聞くようですね。こういうのは、もちろん個人のモラル、運 転中に飲んではいけないというモラルの部分は第一ですが、やはり今回の調査では、飲酒運転をした かどうかを、飲酒運転を抑制するような働きが、社内の雰囲気や、安全に対してどう事業所単位で考 えているのかが効くということもわかりましたので、たぶん事業者と運転者が両方真剣に取り組まな ければいけない。これが、少なくとも飲んで運転したという方が14%ぐらいいるというのは、これは 必ず0にしなければいけないわけですよね。 ○安井技術審査官 いまの指摘と関連して、資料3の16頁の図7-1があります。これは、安全に関する 組織レベルの関与と、飲酒運転の発生率を調べています。やはり、社内が厳しく組織レベルで対応す れば、飲酒運転は減るということを示しているデータもあります。一に、事業者の態度だというとこ ろです。 ○根本座長 よろしいですか。一応、資料2、3は理解したということで、その次は資料4「新たな交通 労働災害防止対策のための検討事項」について、説明をお願いします。事務局との打ち合わせでは、 この資料のうち初めに項目1〜4を説明いただくということです。 ○安井技術審査官 資料4を説明させていただきます。まず構成ですが、検討項目ごとに表を分けてあ ります。それぞれの表のいちばん上には、先ほど説明しました調査の結果をダイジェストでまとめて います。その下に論点という形で、その検討項目についてどのような議論が考えられるのかを入れて あります。その次に参考資料という形で、これは現状厚生労働省の定めている交通労働災害防止のガ イドライン、あるいは条文の表題だけですが、国土交通省の貨物自動車運送事業輸送安全規則、ある いは関連するガイドラインといったものを入れています。項目としては、全部で8つ準備しています が、これについては事務局で仮に作ったものですので、これ以上更に検討する必要があるということ であれば、ご自由にご意見をいただければと考えています。  まず、資料4の1頁から説明させていただきます。これは、「走行管理」のうちの走行計画に関連す るものです。調査結果につきましては、先ほどご説明しましたように、走行計画の遵守が「負」の関 連がある、あるいは走行の管理が困難なものについては「正」の関連があるといった状況がございま す。  参考資料としまして、現状の厚生労働省の定めているガイドラインで、走行管理についてどういう ことが書いてあるかが書いてあります。現在においては、走行計画の策定という中で、走行経路の調 査、走行計画の作成、乗務記録による適正な走行管理といったものが、ガイドライン上は定められて います。  国交省の貨物自動車運送事業輸送安全規則によりますと、第8条に乗務等の記録、第9条に運行記録 計による記録、第9条の3に運行指示書による指示というものが義務づけられています。論点として は、第1回ですので白紙の状態ですが、仮に労働災害防止のために、走行計画をどのように位置づけて いくべきかという形で挙げています。  2頁です。「走行管理」の中の勤務条件関係です。事故等の発生に「負」の関連性のあるものについ て、拘束時間、勤務時間、運転時間といったものがあるわけですが、これについては、参考資料です が、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」というものがございます。それを踏まえて、 交通労働災害防止ガイドラインの中で、その基準を遵守するという形で述べています。  同様の規制が、国交省の輸送安全規則にも、過労運転の防止というところで、同様の基準で管理を すべきということが義務づけられています。論点としましては、拘束時間、運転業務時間等と事故等 の関連について、どのように評価していくのかということです。  3頁です。検討事項2の「走行前点呼」です。調査結果については、睡眠関係、走行前点呼関係で、 「負」の関連性があるもの、「正」の関連性があるものがあるわけですが、これについてはガイドラ インにおいては、点呼については非常に簡単に、「点呼をしなさい」という程度の短い記載しかござ いません。輸送安全規則についても、点呼は義務づけられているところです。論点としまして、事故 等の防止のために、点呼をどのように位置づけるべきなのかということと、睡眠不足の問題がありま すので、睡眠不足と事故の関連をどのように評価するかということで論点を設定しています。  4頁です。検討事項3「荷役作業」です。調査結果については、荷役作業の実施あるいは中程度以上 の負荷について、「正」の関連があるという結果が出ています。  ガイドラインについては、荷積み作業についてはきちんと適正に積んでくださいということしか書 いていなくて、全く記載がない状態です。労働安全衛生規則という義務規定についても、荷の積載、 使用の制限についてはございますが、荷役作業をするドライバーに対する記載は現状ではありませ ん。論点としては、荷役作業と事故等の関連について、どう評価するかということで設定していま す。  5頁です。検討事項4「安全衛生教育」です。これについては運転者認定制度、運転者教育といった ものについて、「負」の関連、あるいは教育に関する困難、10〜19年のトラック運転歴について 「正」の関連があることがわかっています。  参考資料としては、ガイドラインには教育は非常に詳しく書いてありまして、交通労働災害防止管 理教育、雇入れ時等の教育、日常の教育、交通危険予知訓練(KYT)というものと、安全運転指導員制 度及び安全運転実技訓練、交通労働災害防止講習会といったものを列記しています。  運転者の認定制度等としまして、運転者認定制度、運転適性検査といったものについても、ガイド ライン上は記載がございます。輸送安全規則に関しても、従業員に対する指導及び監督ということ で、教育関係の規定がございます。論点としては、安全衛生教育等の事故防止効果について、どのよ うに評価するか。それから、運転者認定制度、こういった制度の事故等の防止効果について、どのよ うに評価するかということを論点としています。一旦ここでご意見をいただければと思います。 ○根本座長 1頁の走行管理、走行計画関係から議論をしていきます。先ほどの説明では、走行計画を 作っているか、作っていないかではなくて、それを遵守しているかの問題だという話でしたが、基本 的には作ることをガイドラインでは定めているのですね。 ○安井技術審査官 定めております。 ○根本座長 実際にどれぐらい定めていて、どれぐらいの記載項目、内容、充実度でやっているので しょうか。そこら辺の実態に関し情報共有が必要ですね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 資料はありますか。 ○安井技術審査官 まず、定めているかどうかにつきましては、数字がございます。自主点検結果報 告の7頁で、ここで走行計画を作成していますかという質問がありまして、「作成している」というの が約65%、「作成していない」は35%です。その中で、運転中の休憩、仮眠について定めている、作 成しているグループの中で約8割は、運転中の休憩時間、仮眠時間について「定めている」ということ です。  より詳しく見ていきますと、休憩場所を定めているのが23%、連続運転時間の限度を定めているの が44%、休憩時間の長さを定めているのが30%、その他の内容はいろいろありますが3.6%です。  関連のあります運転者の乗務の実態ですが、9頁です。運転者の乗務実態を把握しているのは99.3% で、ほぼ100%把握しています。把握の手段については、運転日報が86%、アナログタコグラフは56.9 %、デジタルタコグラフが31%、運転者の申告によるものが52%、IT等を使ったリアルタイムの運行 管理システムが9.9%です。 ○根本座長 推測では、結構定型業務が多い中で、ドライバーは、どこに行って、どういうふうに荷 物を積んで配達するかは頭に入っている。配車係も当然それを理解している。事後的に運転日報と か、タコグラフとか、いろいろなものでチェックもできる。そういった中で、定型業務を主にこなし ている人にしてみれば、あまり走行計画を作る意味がないということでしょうか。「いつも通りお願 いします」という感じで、作っていない3割強のところは、必要性がないから作っていないということ なのでしょうか。 ○三浦委員 おそらく中長距離のルート配送というのは必ず走行計画を作っていると思うのですが、 戸口配送の地場を回る車は、作りようがないと思うのです。朝に走行管理の点呼をするときに、どこ で休憩をするのだという念押しをしているところは別ですが、ドライバー任せのところが多いような 気がします。例えば中小ですね。 ○根本座長 運転手が適当に判断して、休憩を取りながらやってくださいということですね。 ○三浦委員 消費者に連結している、例えば宅配便の関係は、なかなか休憩場所を指定できないので はないかと思うのです。 ○根本座長 ときどき荷主から、「いま戻ったから配達しに来てくれ」と連絡が入り、ルートが途中 で変わってしまうかもしれません。 ○三浦委員 自分の配達区域というのは決められていますので、その区域内では、1日の荷物の量と場 所を見ながら、どのようなルートを通って集荷しようか、配達しようかというのをドライバーが決め ていきますので、そういった場合には休憩場所を決めにくいのではないかと思うのです。管理者のほ うで決めにくいと思います。 ○根本座長 両極端あるのでしょうか。路線トラックのように、定時でターミナルを回っていくのは もちろん計画どおりにやっていただかなければいけないだろうし、そういうものは計画を作るし、休 む場所も大体決まっているわけです。そういうタイプの業務と、そうではないものがあると。 ○安井技術審査官 参考情報として、先ほどの15頁で、走行経路の決定で実施するのに困難なことは ありますかと聞いていて、「走行管理の方法がわからない」というのは1.9%ですから、ほとんどあり ません。「走行管理を担当する者がいない」というのはほとんどなくて、「自動車運転業務において 目的地、時間等が一定でない」というのは約5割、「道路状況等の変動が激しく、走行管理がうまくい かない」というものが3割で、大きなところではそのような結論が出ています。 ○根本座長 目的地、時間が一定ではなくて、なかなか計画が定めにくいというのは業務の特性で、 ひょっとしたらこれは計画の作りにくい分野かもしれません。しかし「交通状況の変動が激しく走行 管理が的確にできない」というのは問題ではないでしょうか。混雑があったとしても、指示は出せる のではないでしょうか。もし混んでいたらどのようにしたらいいのかという意味で、計画は作ったほ うがいいと思います。こういう時代ですから、状況の変化に応じて、計画をリアルタイムで調整して あげるとか、そのようなことが走行管理についてはあり得ます。むしろ混雑に遭うようなときは、ど のように休むかに関して、的確な指示を与えたほうがいいですね。 ○安井技術審査官 戸別配送というのは、目的地などは出発時点では全くわからないのですか。 ○三浦委員 いや、オーダーを見ながら動きますので、それは出発時点でほぼ100%わかります。変更 があれば、その都度連絡を取りながらやりますが、出発時点ではほぼわかっていると思います。 ○安井技術審査官 そういう意味では、難しいけれども作れないことはないということですか。 ○高橋委員 一定時間休む、場合によっては仮眠を取るのが、交通労働災害の防止に効果的であり、 半減する傾向があります。先ほど場所と時間という議論がありましたが、今回のデータから見れば、 休む時間を確保するというのをうまく入れ込むとよいと思います。 ○根本座長 これはどちらかというと、長距離系でちゃんとやってもらわなければ困るという話なの ですかね。 ○安井技術審査官 もちろん長距離も必要なのですが、短距離であれば必要ないと言えるのかという と、データからは言えないのです。 ○根本座長 仮眠とか休憩の取り方とか、そういうものが事故の原因になっていますね。 ○安井技術審査官 おっしゃるとおり、仮眠は相当走ってのことだと思います。ただ、休憩は、2、3 時間しか走らないのはともかく、日勤であっても必要だと思いますので。 ○根本座長 走行計画で、どのルートを通るという細かいところまで全部決めるのか、少なくとも休 みを取る時間だけはしっかり管理するようにするのかというような、めりはりを付けるということで しょうか。このような状況の中で、全部定めなさいといっても、それは事業者も厳しいかもしれませ ん。しかし、休憩に関しては、もう少しきちんと書き込むようにしたらどうですかと、そこを重点的 に指導していくということはあってもよさそうですね。 ○高橋委員 優先化は必要でしょうね。 ○根本座長 定める項目の選び方に関し、時間のほうを重点に選んでもらうようにするわけですね。 ○高橋委員 あれも守りなさい、これも守りなさいで、現実的には守りきれないです。 ○安井技術審査官 データによりますと、あまり細かくルートを決めるとよろしくないという結果も 出ていますので、まさに時間をメインにするというのはあるかもしれないです。 ○根本座長 思い出したらまた後で言っていただくとして、2頁へいきます。勤務条件関係の話です が、これは時間との関係がかなりはっきり出てきたということがあるわけですね。 ○安井技術審査官 これはドライバーの時間に関係する勤務の状態と、事故の関係がわかったと。 ○根本座長 これは結構きれいに出ていましたね。そういう意味では、きちんと管理していきましょ うということになりますね。ただ、これはどの段階で管理できるのでしょうか。配車計画などを立て る段階で、事務所では、拘束時間などある程度わかるわけです。ですから、これはドライバーの責任 というより、むしろ事業者の責任として、こういうことをきちんと遵守してくださいよということで すね。 ○安井技術審査官 こういうものを守れる走行計画をいかに作るかということだと思います。あるい は、走行計画を作ったけれども、実際に走ったときに守れなかったときにどうするかということにな ってくると思います。 ○三井委員 守れなかった理由は何なのですか、計画が無理だったのか、あるいは突発的な事象が起 こって守れなかったのか、その辺の情報がほしいと思います。 ○根本座長 そうですね。 ○三井委員 守れ守れと言われても、守れなかった事情がわからないと改善のしようがないと思いま す。 ○根本座長 混雑などの確率的な現象なのでしょうけれども、それが2日に1回起こるのだと、問題が あると思います。ただ、1カ月に1回ぐらいだと、それはしょうがないかというのもあると思います。 1カ月に1度でも駄目だと厳しくやることは、かえって息苦しくなるような面もあると思うのです。  これはどうしましょうか。なぜこういうことが守れていないかの理由を探りながら、それについて どう対応するかを議論するということでしょうかね。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 何か資料を得られる可能性はあるのですか。 ○安井技術審査官 データとしては、先ほどご説明したとおり、15頁のものしかありませんので、そ れ以上の理由は数字の上では出てこないですね。走行計画と表裏一体ですので、走行計画を遵守でき ないのとほぼ同じですので。  あとは11頁にありますが、走行計画が守れなかった場合にどうするのですかという議論も、大事な ポイントではあります。本来はないほうがいいのですが、現実問題としてありますので。11頁であれ ば、「理由を聴取する」が4割ぐらい、「走行計画を見直す」が6割ぐらいで、「翌日の勤務の緩和」 はほとんどないです。13頁に、運転中の休憩時間が少なかった場合にどうしますかという質問につい ては、「理由を聞く」が6割、「走行計画を見直す」は4割弱、「翌日の勤務緩和」が5割ぐらいです。 このような対応でやっているようです。是正の対応の措置の数が多ければ多いほど、事故が減るとい うデータがありますので、効果があることはわかっています。 ○根本座長 そういう是正措置を取っていくことが、結果的に安全であって、結果的に費用削減にも つながるというか、そういうことを事業者に伝えて、そちらのほうが経済的に考えてもメリットがあ ることをわかってもらって、促すというか、そういうことですよね。 ○安井技術審査官 はい。 ○高橋委員 最近のシフトワークとかの研究によりますと、一直の長さよりも、オフの時間の確保、 勤務と勤務の間隔において、どのくらいきちんと休めたかというのが、安全や健康に効くという結果 が出ています。このデータからも、あまりにも長い連続運転は避けなければいけないわけですが、き ちんと休息もとって、準備のできた状態でトラックに乗るというのも、逆の視点ですが重要です。 ○根本座長 それはドライバーの責任ということも含めてですか、事業者が、時間を取ってもちゃん とドライバーに休んでもらわないと困るわけですが。 ○高橋委員 そのとおりです。 ○安井技術審査官 それについては、検討事項2の「走行前点呼」のところで睡眠時間の関係について は記載しております。 ○根本座長 時間の関係もありますから3頁にいきます。点呼も、先ほど点呼が多いほうが事故が減る というのはありました。その意味では、点呼は有意に効いてくるということですが、現実の点呼とい うのはどのようになされているのでしょうか。先ほど、4項目ある、5項目あるというのがありました が、点呼項目というのは、具体的にはどのようなものが含まれるのですか。 ○安井技術審査官 ガイドライン上は、服装、履き物の点検と体調ぐらいしかないのです。国交省の 運送安全規則ですと、疾病、疲労、飲酒、その他の理由により安全な運転をすることができない恐れ の有無と、ドライバーに関してはそのぐらいです。車の関係はまた別にあります。あまり明示的な規 定はないようです。 ○根本座長 体調のところに、休憩時間を取っているか、睡眠を取っているか、飲酒していないかと か、具体的な項目を挙げて、点呼の実を上げるというか、実際に書き込むことがあり得るのでしょう ね。 ○高橋委員 その点に関して、飲んだら乗るなということは誰でもわかっていることですが、ずっと 睡眠不足が続いていると、あたかもアルコールを飲んだぐらいに作業能力が下がることが証明されて います。ですので、飲んだら乗るなと同じように考えると、寝ていないなら乗るなとも言えるので す。ただ、アルコールに関してはきちんとチェックできますが、寝ているか寝ていないかはご自身の 申告だけではチェックできないですし、なおかつあまり寝ていないか寝ているかは、ここでは体調の チェックとしか書いていないように、きちんとは明示されていない現状です。 ○安井技術審査官 これについては、プライベートな側面がありますので、事業者はどこまで把握す べきなのか、介入すべきなのかという問題もあります。 ○根本座長 そうですね。お酒を飲んでいませんねというのは聞けても、昨日は何時間寝ましたかと いうのは聞きにくいですね。それもルール化していって、それが普通になれば何ともないのかもしれ ませんが、いまだと違和感がありそうですね。 ○高橋委員 そこは安全を確保するという意味では決定的な要因になる可能性があります。 ○根本座長 ですから、そこはきちんとデータで示して、そういうことがものすごく大事なことなの だということの理解を求めていく必要がありますね。何でそんなことをいちいち答えなければいけな いのかと反発されかねません。そこが先に出てしまうと、仕組みが普及していかないですよね。たし か睡眠時間は関係していましたね。 ○安井技術審査官 はい。普段の睡眠時間が5時間以上、5時間未満で差があります。それから、勤務 前の24時間の総睡眠時間が6時間未満になってくると、有意差が出てきます。 ○根本座長 普段から睡眠時間が短い人は、もっと取りなさいというのですかね。 ○安井技術審査官 点呼では勤務前24時間のものが確認対象としてはよいと思います。 ○根本座長 もし「3時間でした」と言われたときに、「あなたは今日は駄目です」と指導するのです か。基準を作るのが難しそうですね。 ○高橋委員 みんな6時間未満でしたら、乗る人がいなくなってしまう可能性があります。 ○根本座長 お酒の場合ははっきりしているけれども、睡眠時間は基準を作るのが難しいですね。そ うすると、点呼でどのようにそれを活かすか。科学的な根拠になるような研究、他の規制事例はない でしょうか。 ○高橋委員 何時間とまでははっきりはないですね。その人によって、要求する睡眠の量が違います ので、一概にというのは難しい面はあるのですが、正常に安全に運転するレベルを維持するための睡 眠量というのは、大体5、6時間と言えるようです。 ○根本座長 簡単に調べられる方法があるといいですね。睡眠時間が短いことなどによって、パフォ ーマンスが悪いというのがわかる方法はありますか。そういうのは難しいでしょうか。 ○高橋委員 いろいろな検査はあるのですが、はっきりとした関係は出てこないですね。 ○三井委員 フリッカーとか、点滅の反応時間とか。 ○根本座長 難しいですね。ここは奥が深そうです。 ○平野安全課長 時間だけではなくて、眠りの深さも関係していますか。 ○高橋委員 大きいですね。もし睡眠のご病気を持たれていると、横になっているのは6、7時間あっ ても、深く眠れなければ睡眠の効果は得られないです。 ○安井技術審査官 眠気に関する研究で、ESSとかありますが、ああいうものでは基準は難しいのでし ょうか。 ○高橋委員 自覚的な限界はあるし、睡眠不足が続いていると慣れてしまう部分があると思うので す。 ○三井委員 プライベートでやるのはしょうがないというか、例えば前日なりの状況を踏まえて、本 人の申告を受けて、走行計画で少し休みを多く取るとか、休憩時間を長く取るとか、そういう対応の 仕方しかないと思います。個別に勤務状況を見て対応する。決め手はなさそうですね。 ○根本座長 少しどんな対応ができそうか、いいチェックの方法があるかもう少し調べてみましょ う。ドライバーが「運転したい」といったときに、事業所で「やめときなさい」というやり取りは、 働く権利を奪うのかという話にもなりかねないわけだから、相当はっきりした論拠なり、根拠をもっ てやらないと、難しいですね。  次に進みます。3の「荷役作業」です。これもガイドラインにはほとんど記載がなくて、しかも、荷 役作業が事故に影響するということですから、運行計画の中に、荷役作業をする、しないは書き込ん でもらって、それを休憩等の取り方に関連して考慮してもらうというのは、あり得る当面の施策です かね。出発前に荷役作業が伴うかどうかは、ある程度わかりますよね。 ○三浦委員 わかっている部分とわかっていない部分があると思います。契約上、荷役までやりなさ いという契約と、車上渡しという、車が入ったら客のほうで降ろしますという契約がありまして、そ の辺をきちんと結んでいるかどうかです。  例えば、恒常的に契約している荷主はそれで済むのですが、突発的に入った仕事については、そこ までの契約を確認できるかどうかといったら、できませんので、ドライバーが行って、これをフォー クで降ろしてくれとか、そういった作業が出てくる可能性はあると思います。本来は、最初からすべ て契約して仕事をしなければいけないのでしょうけれども、そこまではまだ進んでいないのが現状で す。 ○根本座長 そうすると、その中で荷役作業が生じたようなときは、その後の運行計画を見直すなり して対応していくことになりますね。 ○三井委員 疲労がでるということなのですね。 ○高橋委員 そうです。頻度と強さです。きついか緩いかという、両方に有意差または有意傾向は出 ていますので、肉体的な疲労が大きいのではないかとは思います。 ○安井技術審査官 そうですね。今日ご欠席された中村委員がその辺は詳しいのですが。 ○根本座長 荷役作業の時間と運転時間とを総合的に考えるというのは、また結構難しい話が出てき ます。だから、いまある運転時間などの時間管理は、それはそれで独立して考えておいたほうがいい でしょうね。4番に「安全衛生教育」というのがありますが、これについてはどんな議論が必要です か。 ○安井技術審査官 これは運転者認定制度という制度を導入したり、運転者教育の項目が増えるほ ど、事故は減るといった状態がございます。  関連する項目として、トラックの運転歴というのは、必ずしも長いから事故が少ないわけではない こともわかっております。 ○根本座長 運転者認定制度はどのぐらい普及しているのですか。 ○安井技術審査官 32頁のいちばん下です。表の3-4-1-5というのがありますが、16%ぐらいです。 ○三井委員 欠損値というのはデータがないという意味ですか。 ○安井技術審査官 欠損値というのは、デジタルでいうと「0」と「1」で、「0」だったという意味で すので、この分は実施していないという意味になります。これは複数回答になっておりますので、こ の部分は実施していないという意味になります。 ○根本座長 必ずしも、それぞれ実施しているとは限らないのですね。いろいろあって、それぞれあ る目的をもってやっているわけですね。これのどれが、特に今回の事故と関係あるとかないとか、そ ういうのはわかるのですか。 ○安井技術審査官 有意差が出ましたのは、認定制度だけです。あと一般論として、教育の項目が増 えれば増えるほどいいということはあります。 ○根本座長 他にも意味はあるのだろうけれども、認定制度は特に効果的です。いまは15%しか導入 していないけれども、これをもう少し前面に押し出したガイドラインにしていくというのは、このデ ータから浮かび上がることですかね。 ○安井技術審査官 そうですね。 ○根本座長 認定制度を取っているところが、どのようなメカニズムで効果を発揮しているのでしょ うか。認定制度でどのようなやり取りがあって、ドライバーにどのような技能上の向上とか、意識の 向上があって、事故が減ったかという、その辺の説明ができるといいですね。そうすると、それが1つ の説得材料になって、うちもやろうかというような話になってきます。統計の結果を裏づけるストー リーを調べていただければと思います。  検討5から検討8も教えてください。 ○安井技術審査官 それでは資料7頁の検討事項5「安全意識の高揚」です。これにつきましては、意 識の高揚活動の取組の数が増えるほど、事故の減少の傾向があります。注意喚起活動に関しても同様 です。一方、安全に対する会社の態度が平均以下であると、事故には「正」の関連があるということ です。  参考資料としては、ガイドラインの中には、労働災害防止に対する意識の高揚、危険マップの作 成、一般労働者に対する交通労働災害防止といった規定があります。論点としては、「安全に対する 会社の態度」、「災害防止への意識の高揚活動」、「注意喚起活動」の事故等に対する防止効果をど のように評価するかということをセットしています。  次に検討項目6「荷主との関係」です。これについては先ほどご説明しましたとおり、荷主からの要 求の受容度が高ければ「正」の関係があるということで、参考資料としては、国交省の委託事業で作 成された安全運行パートナーシップ・ガイドラインというものを載せています。荷主と運輸業者で、 パートナーとして協力し合っていこうというガイドラインです。  これも同じ国交省のガイドラインですが、国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン というものがありまして、コンテナが輸入された場合の情報のやり取りが決められているガイドライ ンです。論点としては、安全管理における荷主との関係はどうあるべきかということで設定させてい ただいています。  検討項目7「安全管理体制」です。これについては安全に対する組織の関与、マネジメントシステム の導入、こういったものについては「負」の関連があります。一方、労働災害防止規程、推進計画、 担当管理者の選任につきましては、有意な関連がなかったということです。  参考資料としては、現状のガイドラインでは、管理体制の確立、交通労働災害防止担当管理者の選 任、安全衛生委員会における調査審議、交通労働災害防止推進計画の作成と、かなり詳しく規定して います。健康管理についての規定もございます。  輸送安全規則には、同じく安全管理規定、統括管理者の選任、運行管理者の選任、運行管理者の業 務、運行管理規程と、かなり詳しい規定があるということです。  今回の論点としては、細かな規程等に有意差はなく、マネジメントシステムに効果があった関係か ら、自律的な安全衛生管理の仕組みはどのようにあるべきかということです。  検討項目8は、今日ご議論いただくのは難しいかと思いますが、交通労働災害防止の観点から申しま すと、いわゆるトラックドライバーの比率は減少していまして、一方、商業、通信業、建設業が増加 しています。したがって、必ずしも運転を主たる業務としていないドライバーの事故は増加していま して、そういった方に対してどこまでやらせるのかについてもご議論いただければと考えています。 現行の交通労働災害防止ガイドラインにつきましては、対象者の限定は一切していない状況です。  最後ですが、これは検討項目9で、我々が考えた以外に何か検討すべき点があれば、ご指摘いただけ ればということです。以上です。 ○根本座長 検討項目5です。事業所で安全について意識を高めることは、当然のことだと思うのです が、参考資料に「交通危険マップの作成」というものが具体的に書かれています。そういうものを配 って、事業者、ドライバーの注意喚起を促すというのはわかりやすい方法です。警察も最近はそうい う情報をどんどん出すようになって、ネットでも見られるようになってきているところだと思いま す。 ○安井技術審査官 これにつきましては、資料3の12頁に(3)として書いていますが、交通安全マップに 基づく危険箇所の教示というのは、有意な「負」の関連がございます。 ○根本座長 交通安全マップは現場で利活用されているのですか。 ○安井技術審査官 マップの作成につきましては、自主点検結果報告の38頁に5-2-2というのがありま して、作成している事業場は24.5%です。 ○根本座長 これは自分のところでオリジナルで作っているというイメージですね。大きな事業所だ と自分のところで作っているところがありますよね。 ○三浦委員 事業者が作るのと、あれは陸上貨物運送事業労働災害防止協会で作りませんでしたか。 そういうものを一部活用している事業者もあります。あれは全国のものでしたか。 ○安本委員 全国版で作ったと思います。 ○根本座長 その情報がほしいと思う人はもらえるというか、そのような形になっているわけです か。 ○安本委員 冊子にして配ったということです。 ○根本座長 そういう情報共有を促すというか、そういうやり方はこの中で書いておいたらいいかも しれませんね。国交省はITSで、走っている途中で危険を知らせるものも開発中なのでしょうけれど も、それはそれとして、地図というのは役に立つものではないかと思います。  荷主との関係というのは、先ほど申し上げたように荷主も安全に興味を持っています。荷主にとっ ても安全が大切であり、時間指定ばかり言うだけではありませんということで、うまい連携関係を作 っていくということですよね。  それを国交省の安全運行パートナーシップみたいな考え方を引き継いで、書き込めるものは書くと いうことですかね。 ○安井技術審査官 そうですね。特に、パートナーシップの中で、1番の「急に荷物の量を増やす」と か、4番に「積込み、積降しの遅延により予定時間に出発できない」とか、ドライバーには如何ともし がたい状態にどうするかというところが問題になってくると思います。 ○平野安全課長 それと今回の調査結果は荷主の状況というより、荷主の言いなりになっている事業 者で、交通労働災害が多いという結果になっているのです。ですから、荷主のほうの話もあるし、そ れがきたときの事業者側の対応の仕方と、両方があるのだと思います。 ○根本座長 そのときに安全に関しては、荷主ときちんと対等に議論させてほしい、と言うことで す。基本的な契約関係では発注者と受注者の立場は如何ともしがたいわけですが、安全に関しては対 等の立場で、パートナーシップでともに協力してやりませんかということで、意見が言えるような雰 囲気づくりが必要で、それをバックアップしたいですね。 ○安井技術審査官 要は走行計画上無理があるような発注をいかに控えていただくかだと思うので す。こういう発注がありますと、現状の体制では、運転時間上難しいということを荷主にご理解いた だけるかどうか。 ○根本座長 あと、先ほどの荷役作業みたいなものも突発的にお願いされてしまうと、運行管理上難 しいということが書かれていればいいのですかね。  次に検討事項7「安全管理体制」です。これもいくつかの規定があるわけですけれども、災害防止担 当者というのは選任率が高いですが、ここは有意な関連が見出せなかったのですか。 ○安井技術審査官 はい。 ○根本座長 ただ、安全に対する組織の関与があれば、「負」の関連はあるので、意味がないわけで はないということです。  それぞれこの規定には意味があって定められているものでしょうから、それは粛々と制度は守って もらいたいと思います。ただ、58%の労働災害防止推進計画の策定率が低いのは、少し気になるとこ ろです。これを高めることがどのような意味を持つか、そういうのは検討してみる必要がありそうで す。 ○安井技術審査官 マネジメントシステムが効果的だということはある程度わかっています。このマ ネジメントシステムと言いますのは、いわゆるPDCAサイクルで回していこうというシステムで、方針 があって、目標があって、計画があります。担当者も1人ではなくて、それぞれ役割分担が、それぞれ のレベルにおける管理者が、レベルに応じた管理権限を行使するという、事業場一体となっての管理 体制を構築しようというのが、このマネジメントシステムですので、それについてある程度効果があ ることがわかっていますので、ここに書いてある規定とか、管理担当者を一人選任すればいいとか、 そういったところがどこまで効果があるのだというところだと思うのです。 ○根本座長 メリハリを付けるという意味では、労働安全衛生マネジメントシステムというのを、是 非強調するような書き振りにするということですね。 ○安井技術審査官 論点としましては、「自律的な安全衛生管理」と書いてありますが、自らで律し ていく形なのです、自分で目標を定めて。 ○根本座長 これも成功事例、17%でうまく実を上げているケースみたいなものが紹介されて、それ をご覧になった事業者が、これはいいと、うちも是非入れましょうと、このような雰囲気が出てくる といいですね。  検討事項8はいままでと異なって、必ずしも運転を主たる業務としない人が運転をする場合の対策で すね。これはデータはあまりないわけですね。 ○安井技術審査官 今回はトラックドライバーを調査しているので、データはございません。ただ、 ここに調査結果がございますが、これは災害の統計の数字としまして、死傷災害が増加する中で、交 通運輸・貨物取扱業の比率というのは、33.8%から23.9%まで下がっておりまして、その分、商業、 通信業、建設業の割合が増加しています。死亡災害につきましては、運輸交通業、貨物取扱業の割合 は、4割程度で、これについては変わっておりません。先ほどご説明しました重大災害、1度に3人以上 の方が被災する大きな災害につきましても、増加しておりますが、これにつきましては、建設業が約 半数を占める状況で、運転を主たる業務としていないドライバーによる事故がかなり増えている状況 です。 ○根本座長 通信業で増えているというのがありましたが、通信業の中で車を運転するときに事故に 遭ってという方が多いわけですか。 ○安井技術審査官 そうです。 ○根本座長 特に増えているところに関しては、注意喚起というか、そういうことはトラック事業者 だけではなくて必要ですよね。いまは、ただその対策といったときに、そういうトラック事業者以外 には直接ガイドラインなどで対策を打ってはいなかったわけですか。 ○安井技術審査官 いや、ガイドラインの対象とする労働災害は、道路上及び事業場構内における自 動車等の交通事故すべてとなっていますので、すべて適用になっているのですが、現実問題として、 営業をするために車を運転される方に走行計画を立てろ、点呼をしろというのは、現実的でないとい う問題がございますので、このような運転を主たる業務としない人に対して、どういう対策が可能な のかという議論を、最終的に。まずは、運転を主たる業務とする者の対策が第一ですが、それが固ま った後、1度ご議論をいただければなと思います。 ○根本座長 トラック事業者に対して特に役に立つ、いまありましたマネジメントシステムとか、こ れは効くなというものは、他の通信業の人などにも教えてあげて、役に立ちますよと、対策を立てて みませんかと。全部同じに扱う必要はないだろうけれども、特に効きそうなものは、お願いして、採 用してもらうことはあってもいいかもしれませんね。 ○三井委員 安全運転管理者というのがありますよね。一般の何台か車がある事業所については、安 全運転管理者というものを置いて、その安全運転管理者が走行計画などを立てた上で安全の管理をし なければいけない。その安全運転管理者というのは年1回講習を受けなければいけないという仕組みが 一応あるわけなのです。警察のほうの立場としては、そういう制度の下に安全を働き掛けているとい うことなのです。  国交省のほうでも事業者について運行管理者というのがありますよね。そういったものとの関連、 事業者としては、いろいろなところから管理者を設けろと言われていると思うのですが、その辺の調 整というのは、運行管理者がここをやらなければならないとか決まりがあると思うのですが、その辺 はどうなっているのか私もよくわからないのですが、どこかで整理をする必要があるのではないかと 思うので、特に検討事項8については、全く野放しの状態で、全く何もやっていないということではな くて、警察の立場としては安全運転管理者制度ということで、働き掛けているということです。だか らといって、これをやる必要はないということではないと思うのですが。 ○根本座長 そうですね。今日、参考資料の中で、気にされていろいろと書かれていたと思うのです が、もう一遍整理してもらって、何とか管理者みたいなものはどのような種類があって、お互いどう いう機能を担うことが期待されているのか調べてみましょう。 ○飯塚氏 いまのお話の関連ですが、労働安全衛生マネジメントシステムの導入は有意義だという話 が出ていたのですが、国交省でも運輸安全マネジメント制度を昨年10月に立ち上げています。いまそ れに基づいた動きが、参考資料に書いていないものがたくさんあります。自動車運送事業者について はそちらでも動いております。 ○根本座長 それも調べた方がよいですね。それは目的が違う面もあるのでしょうけれども、交通事 故を減らすという意味では共通している部分もありますよね。両方採用している事業者もあるわけで しょうか、自分のところはこちらでいくと選んで入れているのですかね。 ○安井技術審査官 自動車運送事業ですと、国交省の監督下に入りますので、そちらの取扱いを守っ ていただいて。ただ、中には労働時間などは改善基準を引用して守っているところもあるかと思うの ですが。 ○根本座長 そこら辺の調整をうまくとったほうがいいですね。どういうマネジメントの意味の違い があって、どういうメリットがあるのか少し勉強しましょうか。 ○安井技術審査官 国交省と警察庁もオブザーバーとして来ていただいていますので、教えていただ きつつ検討したいと思います。 ○根本座長 それは次回までの宿題ということで、整理しましょう。検討事項9がありますが、今日の 段階で思いつくことはありますか。こういうことも検討したほうがいいのではないかということです が、いかがでしょうか。今日は調査結果の説明から、調査結果を踏まえて検討事項の論点を整理して きました。また持ち帰って、何か検討事項で気がついたことがあったら事務局までお知らせいただく ということでお願いします。事務局から今後のスケジュールをお知らせください。 ○安井技術審査官 第2回の日程につきましては、すでに決まっているところですが、第4回まで月に1 回ぐらいのペースでご検討いただきまして、1月中を目処に報告書を取りまとめるというスケジュール でいきたいと考えております。 ○根本座長 以上で議事を終了します。 ○高橋副主任中央産業安全専門官 ありがとうございました。次回の2回目の検討会ですが、すでにお 知らせしていますとおり、11月28日(水)の13時半から厚生労働省内の会議室で開催いたします。よ ろしくお願いいたします。いま安井から話がありましたが、第3回目以降の日程調整につきましては、 お手元に用紙が置いてありますので、ご記入の上、その場に置いていただくか、事務局にお渡しいた だきたいと思います。よろしくお願いいたします。そのご予定を拝見しまして、3回目以降の日程を調 整させていただきます。事務局からは以上です。長時間にわたりましてありがとうございました。 1 - -