07/10/19 生活扶助基準に関する検討会(第1回)議事要旨 生活扶助基準に関する検討会(第1回)議事要旨 1 日時   平成19年10月19日(金) 19:00〜20:30 2 場所   厚生労働省5階専用第12会議室 3 出席者  (1) 委員(敬称略、五十音順、◎は座長)      岡部  卓(首都大学東京都市教養学部教授)      菊池 馨実(早稲田大学法学学術院教授)      駒村 康平(慶應義塾大学経済学部教授)      根本 嘉昭(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授)     ◎樋口 美雄(慶應義塾大学商学部教授)  (2) 行政      中村社会・援護局長、木内大臣官房審議官、藤木社会・援護局総務課長、     伊奈川社会・援護局保護課長他 4 議事(○:委員の発言、●:事務局の発言) (事務局より資料説明) ○ まず今、説明いただいた資料等々について、質問があればお受けしたい。あるいは 資料についての要望等も併せてお受けしたい。 ○ 本論には必ずしも関係ないが、資料2の1ページの生活保護制度の目的について、 その最低生活保障の1で、一般に補足性の原理と言われる部分だが、資産能力の活用 については保護の前提であるということに対して、扶養義務の履行というのは保護の 方が優先という、ここのところは解釈にも関わってくるので、どういう理解をすれば よいのか確認したい。 ● 扶養義務者による扶養ということに対しては、優先だという理解をしている。 ○ 前提と優先という関係性というか、特にいずれも保護開始に当たっての前提である ということでは変わらないという理解でよいか。 ● この前段に書いている保護の前提については、言葉を変えれば保護の要件である。 後段のその扶養が保護に優先されるということについては、今の言葉で言えば要件で はないという意味合いである。 ○ 資料の6ページ、かなりの部分が高齢者世帯である。この高齢者世帯というのは、 世帯主が高齢者であって、その家族構成はどうなっているのかというのは、また別だ と思っていいのか。ここで言う定義を一応確認させていただきたい。   更に人員別で見ると1人世帯が74%となっているが、世帯類型別で見ると、高齢者 世帯も単身が圧倒的に多いのか。高齢者世帯の中では単身が7割以上を占めているの か。類型別の方も教えていただきたい。   これは級地の問題や地域の問題、次回以降の議論になってくると思うが、9ページ でエリア別で見ているわけだが、これも世帯類型が地域によってかなりの差があるの か、もともとそんなに差はないのか。級地というかこのエリア、その他地域、都道府 県、政令・中核都市、東京都23区で、世帯類型に非常に大きな差があるのか、それ ほど差がないのか。これを基本的な事項として教えていただきたい。   最後は確認だが、資料の全消の分析の中で、生活扶助基準額が計算されているが、 級地についてはどういう考えになっているのか、そこを教えていただきたい。 ● まず高齢世帯の定義については、これは現在の私どもの統計では、男女とも65歳以 上の方で構成されている世帯で、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯を言う ということになっている。これが直近の定義であるが、この定義は6ページの注に書 いているように、平成17年度からの定義であり、それより前の定義は男子65歳以上、 女子60歳ということで、年齢がずれている。そういったことで、こちらの方は前の 統計との整合性を保つために、あえて平成16年のデータを使っている。   この高齢世帯のうち、単身の方がどの程度占めているかということについては、後 ほど数字は説明いたしたい。   3点目については、これはそれぞれの全消のサンプルとなった世帯の級地に合わせ て、この生活保護の基準の方も算定している。年齢構成についても反映している。つ まり、全消のサンプルに合わせた扶助基準と理解いただきたい。 ● 高齢者世帯は88.4%である。 ○ 確認だが、第1点の高齢者世帯のところは、高齢者のみからなる世帯ということで よいか。   例えば、世帯主は若い60歳以下で、おじいちゃんとおばあちゃんが一緒に住んでい るという人は、これに入っていないということか。 ● 入っていない。 ○ 資料の8ページの年齢階層別の被保護人員の年次推移について、60あるいは70代 の増加率が高いということであるが、これを見ると圧倒的に更にそれより大きいのが 30代のところであり、30代についてはどういう評価をしているのか。   これはこの検討会の進め方とも絡むことだが、11ページのいわゆる骨太の方針2006 では、確かに生活扶助基準についてと級地の見直しということがあり、更に一番下に 現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られている。   早急に総合的な検討に着手改革を実施するということで、今、世の中の動きという のは、昨年11月の財政制度等審議会の中でもその話があったと思うが、相当大きく この制度全体を見直した方がよいのではないかとか、見直す必要があるのではないか という話がある中で、今回はここの部分だけであると、ある意味から言うと全体の見 直しのスケジュールというか、プログラムがある中のここの部分を今回やるんだとい う、位置づけのようなものがあった方がいいのではないかと思い、その辺についての 事務局の考えを教えていただきたい。 ● 御指摘のあった8ページの表の30代は、確かに平成17年から18年にかけて、 121.9%と大きな伸びを示している。   これはいわゆるベビーブーム世代のジュニアの世代の方がここの年代に入っている。 そういったことで年齢区分の中でそれらの方の占める割合が非常に大きく、その辺り の影響が反映している。それ以外の要素もあろうかと思うが、顕著なのはそういった 点が1つあると思っている。 ○ 今の第1点と関連して、結局、被保護人員数の変化率を見ても、それぞれの年齢構 成のもともとの人口の変化がここに反映してくるということか。第2次ベビーブーム あるいはジュニア、団塊の世代という者がどこにいるかとか、あるいは長寿社会にな ってきているから高齢者のところは増えてきていると。   これは人口の移動そのものと関連して、ここは増えているという話だと思われる。 そうであれば、例えば人口1万人あたりについて見たときにこれが増えているのか、 この被保護人員がその年齢層で増えているということはどうなのか。 ● 次回、資料をお出ししたいと思うが、まず資料2の6ページをご覧いただきたい。   例えば高齢者世帯を見ると、資料6の真ん中のグラフの中で平成7年から平成16 年にかけて、83.1%高齢者世帯の増加率があると出ている。ただ、高齢者世帯の保護 率、すなわち高齢者世帯を分母にして、その被保護世帯を見ると、実はこの平成7年 から16年にかけて、保護率がほとんど変化していないのが高齢者世帯である。   つまりこれは、増えているのは、その世帯類型の分母が増えていることによるもの だと思われる。母子世帯とかその他世帯の保護率がその世帯類型で見ると、平成7年 から16年にかけて上がっている。   したがって、1つはやはり7年から16年にかけて、絶対数で言えば高齢者世帯が増 えているが、言わば経済変動的な要素を考える、あるいはその世帯類型の中の保護率 の上昇を見ると、母子世帯あるいは傷病世帯などの保護率が上がっており、先ほどの 30代が増えているから増えているというのは、やや説明不足ではないかと思うので、 次回に検証できるように資料を、御指摘のあった1万人あたりでの率の変化などを工 夫してお出ししたい。 ○ では、その点をよろしくお願いする。   第2点目についてはどうか。 ● 生活保護をめぐっては、さまざまな御意見が寄せられている。例えば11ページに現 行の生活保護制度は抜本的な改革が迫られており、早急に総合的な検討に着手し、改 革を実施するということが骨太方針でも指摘されているところである。   この前3年間にわたって、国と地方の役割分担、財政の見直しをするということで、 三位一体の改革があったが、これも三位一体改革は3年間議論があったわけだが、3 年間を通じて生活保護の在り方が問題になっている。   そういった中で、生活保護の実施機関になっている実施機関の団体である全国知事 会あるいは市長会の方から、生活保護の見直しでは、知事会、市長会とよく協議をし て進めてほしいという注文は、三位一体改革の最後の年を検討された川崎厚生労働省 大臣にあててもそういう話があったし、三位一体改革が終わった後、1年後にもまた 知事会、市長会の代表が大臣に会って、そういう話をしている。   今、全体のスケジュールをという話があったが、我々としては川崎大臣もお答えし ており、現大臣なども知事会などとの対話を深めていくということになっているので、 そういった意味では検討に着手したいと思っているが、まず知事会、市長会との検討 の場を持つことが最優先ではないかと思い、今そういったお願いをし、働きかけをし ているところである。   したがって、言わば相手もある話であるので、具体的にどういうスケジュールで全 体の改革を進めるか、全体の改革について議論をし、実施できるかということについ ては、我々の方で何年までにとか、そういうスケジュールは今お示しできない状況に あるというのが率直なところである。 ○ その意味で、確認するまでもないと思うが、近い将来というか、中長期的か短期的 か分からないが、いずれにしても抜本的な見直しを行うけれども、そこに行くまでの 間のある意味から言うと、当面の見直しというか、当面の検証を行うという性格をこ の検討会は持っているという理解でよろしいか。 ● 抜本改革のスケジュールなり、抜本改革というのも人によって認識が異なり、それ 自体の議論もあると思うが、今、現に150万人を超える方が生活保護の対象になって おり、生活扶助も受給されている方が多くいらっしゃるということで、そういった中 でこの基準は、そういう意味で制度の基本であり、その基本について5年ごとに検証 すべきだという方針が示されているので、我々は現行制度を前提にしながら、今回は まずその検証作業をしていただきたいと考えている。 ○ そうすると我々の検討会に課せられたミッションというのは、生活扶助基準につい て、先ほど説明があったような低所得世帯の消費実態等と比較し検討を行う、ここに まず着手するという理解でよろしいか。 ● そのとおりである。 ○ 資料3の2ページの「2 生活扶助基準の水準の評価・検証方法について」の説明 をいただきたい。   生活扶助基準は水準均衡方式で算定されており、これは相対化した考え方である。 これは一つの例えだが、消費水準が非常に低下した場合、基準が低下するという考え 方が出てくる。   そうなったときに、もう一つの考え方としては、国民にとって健康で文化的な最低 限度の生活の保障をするということで、これが低下した場合について、これだけは譲 れない、容認しなければいけないという絶対的な基準というものがあると考える。そ ういう絶対的な基準への配慮というものが、この水準均衡方式の方でどのように担保 されているのかという点について、説明をいただきたい。 ● 非常に難しい質問で、答えになっているかわからないが、とりあえず今日の資料に 関連して申し上げると、現在の水準均衡方式というのは、一般国民の生活水準との関 連でとらえていこうということである。   そういった点でいうと、今、指摘のあった資料3の、例えば5ページで、国民の平 均というべき第3・五分位との比較で、第1・五分位あるいは第1・十分位の方がど の程度の消費支出が確保されているのかということで、7割程度を確保されていると いうことが出てくる。この辺りをどう考えるのかということが一つあると思う。   そして、もう一点、仮に7割こういう形で支出をしているといった場合に、例えば 他に必要な耐久消費財が買えていないのではないか、あるいは一般の方が購入してい るようなものが十分買えていないのではないかといった懸念が生ずる可能性がある。 そういった点については、参考資料でお示ししている耐久消費財等の購入頻度である とか普及率といったところで検討していくというのが、ご質問に対するアプローチの 仕方なのではないかと思っている。 ● 少し敷衍(ふえん)させていただくと、生活保護基準の決め方、あるいは改定の仕方というの は、かなり歴史の間で時代の変遷に伴って努力してきたと申し上げた。例えば1951 年から高度成長が始まる1960年くらいまでは、いわゆるマーケットバスケット方式 ということで、本当に生きていくために必要なものを決めて、それを買うためにどれ だけお金がいるかということでやってきた。   その後、エンゲル方式というエンゲル係数に着目した方式で5年程行い、1965年か ら85年くらいの20年くらいの間は格差縮小方式ということで、高度成長が始まり、 高度成長の成果で国民の方々の生活水準が上がる中で、マーケットバスケット方式や エンゲル方式では、やはり健康で文化的な最低限度の生活を考えるには、まずいので はないか、むしろ格差を縮小していかなければならないというのが80年代の半ばま で続いて、ある程度格差縮小は終わって、後はもう水準均衡だということで、水準均 衡方式でここ20年くらい推移してきた。   そういう歴史的な背景なり、我が国の生活保護基準の歩みの中で水準均衡と言って いるので、水準均衡方式の下で大幅に国民の生活水準が、例えば高度成長の前まで一 気に下がったときに、同じように下げるのかということについては、理論的には水準 均衡方式は、水準均衡だから下げることについて歯止めがないということになるのだ と思うが、実際に90年代半ば以降の非常にデフレが続いた時期に一般の方々の消費 水準が増えなかった、あるいは下がったという時期に、保護基準の方を下げるという ことはしないという配慮をしたこともある。   逆に、格差縮小方式と言っていたが、オイルショックのときなどは、扶助基準もそ のときには追い付かなければだめだということで、政治的な配慮もあって、どんどん 引き上げたということもある。   理論的な答えにはならないが、水準均衡方式からは出てこないが、やはり生活水準 を下げるということについては、かなり下方硬直性があると理解している。 ○ 確かに90年代の消費水準のデータに即して生活保護基準が対応していたかどうか については、一定の配慮をされていたことはデータからもわかる。そういう配慮が今 後どの程度の幅で考えられるか。純然たる計算式だけではなくて、この間の基準算定 のときのように考えられるのかどうか。政策的な判断が必要だと考える。政策的には あり得る話なので、お尋ねした。   また、生活保護の扶助基準の上げ幅は、事務局が言っていたように、以前だと3割 4割のレベルからどんどん上がってきている。今、第3・五分位階層の7割という水 準を目安にしているということであるが、7割という尺度をどのように考えたらいい のか。   データから見ると、費目別に7割より低いところもあれば、高いところもある。そ この幅みたいなものは、これもいろんな判断があるかと思うが、これはどういうふう に考えたらいいのか。答えにくいことであれば、今回は結構だが、そこのところは確 認をしておきたい。   耐久消費財も7割が1つの目安になっているかと思うが、それ以外にも7割という のを第3・五分位を100とすると、その前後で考えられているということについての 考え方をお尋ねしたい。 ● 先ほど7割とか、あるいは6割弱ぐらいということでお示しした点であるが、ここ はまさに今回議論いただければと思っていた点であるので、必ずしも明確な答えを今、 示せる状態ではない。 ○ 結局、昔から議論のある相対的貧困の話とか絶対的貧困という話、OECDを始め、 我々の間でもずっとやってきているわけで、どちらに基づいて生活保護を決めておく べきかというところまで話があると。   絶対的貧困と相対的貧困の問題に触れるというような問題提起だろうと思うが、こ れは平成15年から16年の中間とりまとめのときに、お2人の先生方が参加いただい ているので、質問はここまでにして、議論に入りたいと思うが、それでよろしいか。 もしこの点は聞いておきたいという質問があれば、お受けしたい。 ○ 中身に入るかもしれないが、資料2の4ページの第1類の考え方。12歳から19歳 が一番高い。これは素人考えで、この時期は一番よく食べる時期ということで、積み 上げ方式の考え方が残っているというか、その中でも生活の基礎的な部分を特に反映 した積み上げ的なものが反映されている、あるいは残っているというような捉え方で よろしいか。 ● この点に関しては、御指摘のとおりの面がある。これは次回の体系論のところで少 し議論をいただこうと思っていた点であるが、こういった未成年の方の栄養所要量と いうものに基づいて、そして今、御指摘にあったような育ち盛りの方は、それなりに 食べ物も必要だということを勘案して、こういった基準を設定しているところである。 ○ 資料3の4ページで、夫婦子1人で、この後の「(有業者あり)」と限定しているの はどういう説明だったか。 ● 「有業者あり」は、無職世帯を除いてあるという意味である。 ● 補足すると3人世帯において、共稼ぎの場合もあろうかと思うし、1人だけ働いて いる場合もあろうかと思うが、今、ご説明したように、誰か働いている世帯だと理解 いただきたい。 ○ 簡単な話が、失業者世帯を基準にしたのでは生活保護があまりにも低くなり過ぎる だろうと理解してよろしいか。 ● はい。 ○ それで、有業者がいるところを基準に、まずは考えようということか。   では、議論に入らせていただくと、前回の専門委員会で資料2の12ページの中間と りまとめがなされたと聞いているが、そのときから引き続き検討に参加していただい た委員から、今回の印象も含め、考えをお示しいただきたい。 ○ では、私から最初に。非常に事務局が努力されて、興味深い資料を作っていただい たと思っている。   特に先ほど、指摘のあった7割というのをどう考えるかといったときに、例えば資 料3の先ほどあった5ページなどを見ると、大体7割程度である。   たしか私の理解では、昭和58年にそれまでの格差縮小から水準均衡に移行するとき に、時の審議会が検証して、現行の水準が妥当だったというときの一般の消費に対す る生活保護受給者の消費の割合がちょうど66〜67%ぐらいだったと思う。   大体これに類似していて、その意味では7割というのは今回においても、そして、 この部分が第1・十分位という、今回は低所得の定義をある程度、低所得というか、 一番の基準の根拠として、大体第1・十分位がいいのではないかということを前提に 資料を作っていただいているわけだが、それをうまく合致させたような形で、この数 字では見えるかと思う。   ただ、それがこの4ページにあるのは、あくまでも夫婦子1人の世帯であるが、単 身世帯になるとそこのところはもう少し低くなっている。   だから、そうするとやはりこれもよく言われていることであるが、今の生活保護基 準に関して、複数世帯というか多人数世帯においてはかなりの線を行っているけれど も、単身世帯においてはかなり厳しいということが一般的にも言われていると思うが、 そのことを若干裏づける資料になっていると思う。もう少しきちんと精査をしてみた いと思ったところが1つ。   いずれにしても、第1・十分位というものを一つの目安として、低所得あるいは生 活保護の基準を見るということについては、ある程度これも一つの根拠になるのでは ないかと思った次第である。 ○ 私も前回の専門委員会に出席させていただき、引き続き、この議論に参加させてい ただいている。   今回については、資料的に非常に精査した資料が出されてきて、この生活扶助の基 準に関する議論として、その前提となるデータ的なものは、よく整理されており、非 常にありがたく思っている。   もう一つ、基準の考え方は絶対的な貧困と相対的な貧困という形で、水準均衡方式 が相対化して考えるということ。この考え方は基本的には支持させていただくが、先 ほど意見が出たけれども、1類の考え方の中で、特に成長期にある児童については栄 養の所要量ということで額が多くなっている。これは消費の実態からもそうである。 もう一つはマーケットバスケットの理論生計費の中で、どういう費目を中心に考える かという話になってくると考える。   マーケットバスケット方式のように、理論的にこういうものが費目として必要であ ると割り切って考えた場合にどれくらいの金額になるのか。この1類の中でもそうい う考え方を取り入れると良いと思うが、その点について、要するに見合い的に、実態 的なものと理論的なものの組み合わせを考えたらよいのではないかという意見を持 っている。   7割水準は、私は違った見方をしており、国民の中で一定の支持する生活の構造と いうことで考えれば、6割ないし7割というのが一定支持される。だから、それを6 割にするか7割にするか、もっと高くするのかということも一つ議論になることでは ないかと思っている。 ○ ただいまの相対的貧困か絶対的貧困かということに関しては、その法解釈が最終的 には裁判所が判断するので、それらの公権解釈、行政解釈はともあれ、最終的には裁 判所の判断ということになる。   恐らく裁判所、最高裁を含めて、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかとい うことは、その時代時代の経済的・文化的な諸状況などとの関係で変わり得るもので あるという理解であり、各時代を超えた絶対額、憲法25条1項の絶対的な基準があ って、それを1円でも下回れば直ちに憲法違反になるという理解には立っていないと 思う。   保護基準とか生活保護をめぐるさまざまな取扱いについて、それが憲法に違反する か、あるいは生活保護法に違反するかというのは、やはりその時々の社会通念と全く 切り離しては判断できないという、やはりそれとの関係で相対的に決まってくる部分 もあるというのが裁判所の理解であると思われる。   私の問題関心からすると、生活保護法の目的というのは、最低生活の保障と並んで 自立助長がある。必ずしも健康で文化的な最低限度の生活水準というのは絶対的な線 ではない。それより1円でも下回ると憲法違反になるとか、1円でも上回ってはいけ ないというようなものではないと考えており、ある程度は幅のあり得る基準である。   それとの関係で、自立の助長をもっと見込んで組み込んだ保護基準にしていけるの ではないかという方向性が考えられるし、例えば勤労控除などの在り方などについて も、何らかの議論ができればと思っている。 ○ 先ほども話があったように、生活保護は多くの問題を抱えているわけであるから、 抜本的というか大きな改革はやはり必要なのではないかということは私も思ってい る。社会保険との関係、あるいは雇用との関係も非常に難しくなってきていると思う。   今回は水準の話であるが、これは当然ほかにもカバレッジや機能の問題がどれだけ の困難な方をカバーできているのか。あるいは機能は今までどおり、先ほど話があっ た自立助長の部分がきちんと機能しているのかといった点も大きな課題だと思う。   先ほどから話があった絶対と相対というところであるが、先進国であるので、絶対 貧困ラインを超えているのは当たり前の話であるが、相対はどこがいいのかというの は、経済学的にはなかなか言いづらいところがあり、最終的にはその幅の中で国民の 公平感というか、適正感というもので決められていくものであると思っている。   今後の議論の中では、今日の資料でもいろいろと調べているという感じがするし、 今後の課題としては先ほどもあった1類、2類のバランスの問題。資料の方を見ると、 1類の方を0.95をかけたり0.99をかけるなどして、これまでいろいろと難しい調整 をされてきた跡が見られるが、本格的に1類と2類のバランスをどう考えるべきなの か、世帯の人数が増えた場合にどういうふうに調整を行うべきなのか。この辺は家計 の規模の経済みたいな話なので、経済学的な発想で話ができるのではないかと思う。   級地に関連して、今日の資料の中で全消のデータ分析で7割というところがあった が、これも全国のデータであるので、もう少し細かく見ていくと何か特性が、つまり 級地別で見ていくと何か特殊な特性が出てくるのかもしれないし、その級地区分の間 隔をどうするのかということも統計的なもので考えていきたい。 ○ これまで所得格差の問題を主に労働経済学の視点からずっとやってきており、やは り世の中がすごく変わってきたというような実態感を常に持っている。   その中で、労働経済学で言えば雇用形態の多様化と並んで、その世帯構成の多様化 といったものが今の所得格差の問題の見方に関して、大きな影響を与えているのでは ないかと思う。   かつては、ここでも議論をされてきたかと思うが、標準世帯をどう考えるかといっ たときに、夫婦プラス子ども1人が標準世帯で、そこを基準に基準を決めたというよ うな経緯があるかと思うが、今やそれだけではなく、例えば母子家庭が増えていると いうようなこともあり、あるいは単身で生涯を通すという人たちも増えてきている。 そういった中で、やはり幾つかの形態について基準を考えていかなければいけないの ではないかと考えている。   その中で何をベースに考えていくべきかということを考えると、やはり前回の中間 とりまとめで提示されたような内容について、これをベースにして、これが妥当であ るのかどうかというようなことを一つのたたき台という形で考えさせていただきた いと思っており、これが示されていたのが12ページの資料2のところにあったかと 思う。   1つは生活扶助基準の水準に関すること。更には生活扶助基準の体系に関すること。 そして、級地に関することということが前回とりまとめられ、この視点からは今回、 消費実態の詳細な分析が出てきたので見させていただくと、まず一番最初の生活扶助 基準の水準に関することは大体まさに委員がおっしゃったとおりの数字が出てきて いるというようなことだろうと思う。   2番目の雇用形態の多様化に伴う単身世帯についてどう考えるかということについ ては、前回は一般低所得世帯との均衡を踏まえて、別途の基準の設定を検討する必要 があるということで、これが別途の基準とはどう考えたらいいのかということで、先 ほど来、委員から御指摘があったように、単身世帯では第1・十分位の消費水準が第 3・五分位の消費水準の5割強しかなく、低くなっている。これが3人世帯の7割に 比べて低すぎるということが問題として指摘されている。   ここのところは最近のワーキングプアの問題等も含めて関連しているところで、ま さにこの単身世帯の別途の基準の設定をどう設定するのかというのが今回は大きな テーマになってくるのではないかと思っている。   級地に関するところについては、これも委員がおっしゃったところと関連してくる が、今、提示されている資料2に基づく限りにおいては、消費実態に照らし合わせて みると、地域差は縮小する傾向が見られたというのが前回のところの話であるが、こ このところはまだ私は十分に消化し切っていないので、今回の統計からこの全国消費 実態から同じようなことが言えるのかどうか。特に地域格差の問題というのが、これ は社会的にも大きな問題として注目されているので、もう少し時間をいただいて、こ の点については考えてみたい。まだ結論を私自身は出せる状態ではないと感じている。   私も全消は20年来マイクロデータで分析をやってきており、これをこれだけまとめ るのは大変な作業だったなという実感を持って見ているが、やはり1つは年齢と地域 とのクロス。委員が先ほどからおっしゃっているところで、これがかなり相関してき て、地方で高齢化が更に急ピッチで進んできて、そこで単身世帯が増えてきていると いうようなこともあるとすれば、これはクロスで取ってくるのは難しいのか。 ● その辺りの点もどこまでできるか、これからの課題であるが、御指摘も踏まえて作 業を進めたい。 ○ 生活扶助基準ということで、制度の説明のときに制度の体系が入っているが、これ は1類と2類という経常的な最低生活費の基準のほかに、加算もそうだが、経常的な もの以外にも臨時的なものもあり、生活扶助基準の算定方式といったときに、どこま で議論をこの場ですべきなのか。そこのところだけ確認をさせていただきたい。 ● 生活扶助基準のベースの部分ということはお願いしたい。他の実費相当という部分 ではなくして、主に1類2類、冬季の加算というような部分をメインということでお 願いしたい。 ○ 要するに在宅ベースでと考えていいか。 ● はい。 ○ 次回にお願いをしたいところであるが、1つは、これはもう一度頭の整理をしたい ので、これまでの1類と2類のバランスというか、考え方についてのこれまでの経緯 の資料をいただきたい。   先ほど生活扶助基準額が既に級地レベルでウエートづけが終わっているということ は、このデータは級地コードが打ち込まれていると加工していただいているようなの で、級地別にこういう集計を見ると、級地間の差をどう付けるかという参考になると 思うので、6種類もやるとかなりのことになるが、3種類ぐらいだったら何とか大丈 夫かどうか、級地別にやる場合はそれを見てもいいかなとは思う。 ● 次回になるか、その次になるかわからないが、級地について議論をいただく機会が あるので、そのときに出せるように検討したい。 ○ 宿題も多々出させていただいたが、是非、次回に資料の提出をお願いしたい。 (了) 【照会先】 〔生活扶助基準に関する検討会事務局〕   厚生労働省社会・援護局保護課   TEL 03-5253-1111(内線2827)