07/09/28 第3回義肢等補装具専門家会議議事録 第3回 義肢等補装具専門家会議 日時 平成19年9月28日(金)15:00〜 場所 厚生労働省専用第12会議室(5階) ○中村医事係長 これより「第3回義肢等補装具専門家会議」を開催いたします。まず、 資料のご確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1「第2回義肢等補装具専門家 会議の検討概要」、資料2「義肢等補装具支給制度の意義及び役割(案)」、資料3「義 肢等補装具支給制度の法的整理について」、資料4「体幹装具について」、資料5「医 学的・工学的観点からの見直しに係る検討」、資料6「兵庫県立総合リハビリテーショ ンセンターにおける症例」、資料7「兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおけ る筋電電動義手の訓練状況」、資料8「筋電義手用ADL評価表」、資料9「労災保険 における両上肢切断者に係る筋電電動義手支給後の状況について」、資料10「海外に おける筋電電動義手の現状と問題点(抄)」、資料11「車いすの支給対象者に係る検 討」、参考資料となっております。資料に不足のある方はいらっしゃいませんでしょう か。それでは、盛合座長、進行をお願いします。 ○盛合座長 議事に入る前に、前回の会議において検討した内容を確認いたします。事 務局より第2回義肢等補装具専門家会議の検討概要について説明をお願いいたします。 ○中村医療専門官 それでは、資料1「第2回義肢等補装具専門家会議の検討概要」を ご覧ください。第1回会議の継続検討事項が2点ありました。  1つ目の「重度障害者用意思伝達装置」については、支給基準をどのように定めるか 検討しました。検討の結果、支給対象者は、前回会議の意見を踏まえ、「両上下肢の用 を全廃又は両上下肢を亡失し、かつ、言語機能を廃したことにより、障害(補償)給付 の支給を受けた者又は受けると見込まれる者で、重度障害者用意思伝達装置によらなけ れば、意思の伝達が困難な者」とすることでよいが、使用する被災労働者が意思決定能 力を明らかに有することが必要であることを明確にした方がよいということになりまし た。  次に、新たに追加する車いす及び電動車いすの付属品の支給要件について検討しまし た。検討の結果、屋外用キャスターについては、「屋外、不整地、段差の多い場所など で車いすを使用することが多い被災労働者、又は、腰痛等の症状があり、車いす又は電 動車いすの振動により当該症状が悪化するおそれがある被災労働者で、屋外用キャスタ ーに取り替える必要がある場合」に支給することでよい。その他の付属品については、 前回会議の資料の支給例に記載された要件のとおりでよいということになりました。  次に、新規の検討事項として3点ありました。  最初に、浣腸器付排便剤の支給対象者を拡大すべきか、防衛医科大学病院の望月先生 にご意見をいただき、その意見を参考に検討しました。検討の結果、浣腸器付排便剤の 支給対象者については、せき髄損傷に限定せず、排便障害を有する者に対して支給すべ きである。支給対象者については、「せき髄損傷又は排便反射を支配する神経の損傷に より、用手摘便を要する状態又は恒常的に1週間に排便が2回以下の高度な便秘を残す ことにより、障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者であっ て、医師が浣腸器付排便剤の使用の必要があると認めた者」が適当である。ということ になりました。  次に、ストマ用装具の支給対象者を拡大すべきか検討しました。この点についても、 防衛医科大学病院の望月先生にご意見をいただき、その意見を参考に検討しました。検 討の結果、大腸又は小腸に人工肛門を造設した者、大腸皮膚瘻又は小腸皮膚瘻から腸内 容が漏出する者に対して支給すべきである。ストマ用装具の支給対象者については、「大 腸及び小腸に人工肛門を造設したことにより、障害(補償)給付の支給決定を受けた者 又は受けると見込まれる者」、「大腸又は小腸に皮膚瘻を残し、腸内容の全部又は大部 分が漏出する者並びにおおむね1日に100ミリリットル以上の漏出のあることにより、 障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者」、 「大腸又は小 腸に皮膚瘻を残し、腸内容が1日に100ミリリットル未満の漏出のあることにより、障 害(補償)給付の支給決定を受けた者であっても、特に医師がストマ用装具の使用の必 要があると認める者」とするべきであるということになりました。  最後に、体幹装具について、「せき柱に常に体幹装具の装着を必要とする程度の荷重 障害を残すことにより、障害等級第8級以上」の被災労働者に対し、軟性装具や骨盤帯 を必要とするのか、金属枠及び硬性装具のみを支給することでよいか検討しました。検 討の結果、日常の診療では、硬性装具を処方することは少なく、体幹装具については、 軟らかく動きに馴染むものを作るのが基本である。恒常的に硬性装具のようにがっちり した補装具が使われることは少なくなっている。現行の支給対象者に、金属枠、硬性装 具のみを支給するというのは問題であるということで、再度、検討することとなりまし た。以上です。 ○盛合座長 前回の会議において検討した4項目について、事務局から説明がありまし た。この中で、4の「体幹装具の支給を金属枠及び硬性に限定すべきか」については、 今回も検討することとなっています。  それでは、本日の議事に入ります。まず、議事1「義肢等補装具支給制度の意義及び 役割について」です。前回会議では、上智大学の山口名誉教授のご意見を紹介しました が、京都大学の西村教授からもご意見をいただきましたので、まず、西村先生のご意見 について、事務局から説明してください。また、事務局において、2人の先生のご意見 を踏まえ、義肢等補装具支給制度の意義及び役割についてまとめていますので、併せて、 説明をお願いします。 ○中村医療専門官 義肢等補装具支給制度の意義及び役割については、前回、上智大学 の山口名誉教授の意見を紹介しましたが、京都大学の西村教授からの意見も届きました ので紹介いたします。資料3をご覧ください。西村先生の意見は、労災保険制度の意義、 労災保険と被災者の社会復帰、比較法的な観点からみた義肢等補装具支給制度、障害者 自立支援法による補装具等の支給と労災保険の大きく4点で整理してまとめています。 特に西村先生は、ドイツの状況をお書きになっており、3ページ上から7行目ですが、 「わが国で、義肢等補装具の支給とされているものが、ドイツでは労災保険の本体給付」 としており、さらに、同じページ下から12行目に「労災保険制度が存在する以上、労 災保険で義肢等補装具の支給を行うことは当然というべきであろう。」としています。  4ページ以降にまとめが記載されていますので紹介します。5ページ上から3行目で すが、「補装具等の支給は、本体給付とは別に、社会復帰促進等事業の一環として行わ れてきたが、労災保険の給付手続きの中で、被災者の個別の必要に応じて給付と一体的 なものとして、被災者側の経済的事情に関係なく行われてきており、従来どおりこの点 を維持・踏襲することが「労働者の社会復帰の促進」という労災保険の目的に最も適合 的であると思われる。また、労災保険が、総合的な労災保険制度として維持・発展して いることを考えると、必要・不可欠な措置であると思われる。」としています。また、 下から12行目に記載されていますが、「国の統一した基準に基づいて、どの被災者に ついても不公平なく行われる。こうした点を踏まえると、障害者自立支援法により補装 具が支給されるとしても、やはり従来どおり障害者自立支援法の給付に先行・優先して 労災保険法の補装具等の支給が行われるべきである」としています。  前回の会議で紹介しました山口先生の意見と今回の西村先生の意見を、資料2のとお り取りまとめました。今回提出しました案については、山口先生、西村先生の御両名に 内容をご了解いただき提出する予定でした。山口先生にはご了解いただきましたが、西 村先生のご了解はまだ取れていません。次回会議までには、西村先生にもご了解いただ きたいと考えています。  それでは、簡単に説明します。1の義肢等補装具支給制度の意義、(1)の義肢等補装具 支給制度における社会復帰では、1ページ下から10行目に「労災保険の義肢等補装具 の支給は、社会復帰促進等事業として実施しているものであり、労災保険給付と一体的 なものとして、被災者側の経済的事情に関係なく、障害の状況に応じて行われており、 労災保険法第1条の「被災労働者の社会復帰の促進」という労災保険の目的に資するも のである。」としています。(2)の比較法的観点からみた労災保険法における義肢等補装 具制度の必要性では、ドイツの状況、ILO121号条約の内容を踏まえ、2ページ下 から6行目ですが、「労災保険制度が存在する以上、労災保険で義肢等補装具の支給を 行うことは当然であり、また、比較法的観点からみても労災保険で義肢等補装具を支給 することは当然のことである」としています。(3)の障害者自立支援法の補装具費支給制 度との関係では、3ページ10行目に、「義肢等補装具の支給を、障害者自立支援法と は別に労災保険法に基づき実施することにより、産業災害や職業病の実情に応じた新た な支給種目等について、被災労働者の社会復帰を促進するために必要があれば、障害者 自立支援法に先行し、機動的に支給することが可能である。また、義肢等補装具の支給 に関し、被災労働者に支給される義肢等補装具の費用負担をさせず、全国統一した支給 制度を運用できるものである」としています。  2の義肢等補装具支給制度の役割については、「労働災害又は通勤災害により被災し、 一定の後遺障害を残した労働者に対し、傷病の治ゆに当たって、全国統一的な制度とし て、身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完、代替するなどの義肢その他の補装具を、 被災労働者に当該補装具の費用負担をさせずに支給することにより、日常生活における 自立を促進し、又は、効果的に社会活動、職業活動への回帰を図り、もって社会復帰の 促進に資するものである」としています。  最後に、被災労働者の社会復帰を促進するという労災保険法の目的を達成するために は、産業災害及び職業病の実情に対応すべく、制度の運営に当たって、障害者自立支援 法の補装具費支給制度を参考にしつつも、今後も労災保険独自の制度として運用してい く必要があるとしています。以上です。 ○盛合座長 我々は労災保険における義肢等補装具支給制度の意義を今まであまり考え たことがなかったのですが、これは非常に大切です。資料2の「義肢等補装具支給制度 の意義及び役割(案)」について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○徳弘先生 西村先生の資料を今日初めて拝見したのですが、労災保険法と障害者自立 支援法の目的の違いがはっきり書かれていますので、誰が見てもわかると思います。ド クターの中には障害者自立支援法の補装具と、労災保険の義肢等補装具の区別がよくわ からないと言う人がいるので、このようにはっきり書かれたことは非常に意義があり、 よくわかるのではないかと思います。 ○木村先生 徳弘先生と同様の意見です。 ○盛合座長 それでは、義肢等補装具支給制度の意義及び役割については、次回報告書 と一緒に検討することとしますが、本日の検討においても、この義肢等補装具支給制度 の意義及び役割を踏まえるということでよろしいですか。 (了承) ○盛合座長 では、次に進みます。議事2「体幹装具の支給基準について」です。事務 局から説明をお願いいたします。 ○中村医療専門官 資料4「体幹装具について」をご覧ください。前回の会議での議論 を踏まえ、住田先生、徳弘先生に体幹装具の支給基準についてのご意見をお聞きし、取 りまとめました。支給基準については、現行と同じですが、体幹を支持するため医師が 必要と認める「金属枠、硬性、軟性、骨盤帯」のいずれかを支給することとしてはどう かと考えています。前回会議では、金属枠、硬性装具に限定するのはいかがなものかと いう意見がほとんどであり、実態を踏まえ、このような案としました。  一方、障害認定基準との整合性の考え方については、体幹装具の支給対象者である障 害等級第8級以上の荷重障害は、硬性装具を常に必要とする者であり、体幹を十分に支 持するために硬性装具の装着を常時必要とする者が該当しますが、被災労働者にとって は、現実的には、硬性装具を常時装着していることは身体的に大変厳しいことから、本 来必要な体幹の支持効果を見込むことができないものの、軟性装具の装着を行わざるを 得ないことも多いので、そのような場合には軟性装具等を認めても差し支えないと考え ています。以上です。 ○盛合座長 資料4の「体幹装具について」について、何かご質問、ご意見等はござい ますでしょうか。臨床の実務にも即していますので、問題はないと思いますがどうでし ょう。  それでは、資料4の「体幹装具について」の(1)の「支給基準(案)」を支給基準と することでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 では、次に進みます。次は、議事3「医学的・工学的観点からの見直しに 係る検討について」です。3項目ありますが、まずは、1の「褥瘡予防用敷ふとん」につ いて、事務局から説明をお願いいたします。 ○中村医療専門官 資料5「医学的・工学的観点からの見直しに係る検討」の1褥瘡予 防用敷ふとんをご覧ください。褥瘡予防用敷ふとんの支給対象者については、「傷病(補 償)年金又は障害(補償)給付を受けているせき髄損傷者のうち、常時介護に係る介護 補償給付又は介護給付を受けているもの」でありますが、褥瘡の発生のおそれは、せき 髄損傷者に限定されるものではなく、脳の損傷により高度の四肢の麻痺が認められる者 や両上下肢の亡失又は機能を全廃した者についても、褥瘡の発生のおそれがあると考え られます。  そこで、褥瘡予防用敷ふとんについて、脳の損傷により高度の四肢の麻痺が認められ る者や両上下肢の亡失又は機能を全廃した者について、支給対象とすべきか検討をお願 いします。  検討の参考となるように、検討の方向性(案)を作成しました。検討の方向性(案) では、褥瘡の発生を防止する必要があると認められる脳の損傷による高度の四肢の麻痺 を有する者、両上下肢の亡失又は機能を全廃した者に対しても支給することとしてはど うかとしています。また、褥瘡予防用敷ふとんの支給対象者については、「傷病(補償) 年金又は障害(補償)給付を受けているせき髄損傷者、脳の損傷による高度の四肢の麻 痺が認められる者又は両上下肢の亡失若しくは機能を全廃した者のうち、常時介護に係 る介護補償給付又は介護給付を受けている者」としてはどうかとしています。検討をお 願いします。 ○盛合座長 1の「褥瘡予防用敷ふとん」について、何かご質問、ご意見はございます でしょうか。 ○住田先生 せき髄損傷以外に重度の障害の方に支給することは賛成ですが、せき髄損 傷についても、例えば高位の頸損の人たちの場合、車いすとの併給はできないですね。 「常時介護に係る」という所が問題なのです。例えば電動車いすなどを使って移乗など は介助されても、後は少し動けるようなCの4のレベルなどの場合、従来はベッドと車 いすの併給はできないというシステムがあったのです。 ○中村医療専門官 車いすでも手押し型車いすならば、ギャッチベッドとの併給は可能 です。褥瘡予防敷ふとんには特に併給規定はないので、それぞれの支給基準により支給 を行うことになります。 ○住田先生 「常時介護に係る介護補償給付」の「常時」の内容を脳の損傷による四肢 麻痺に拡大するのは賛成です。 ○盛合座長 要するに、どのようにするということでしょうか。 ○住田先生 全廃した者であれば常時介護、障害等級第1級以外はどうするのですか。 ○西井課長補佐 介護補償給付の支給の考え方は、労災保険法施行規則別表第1表「障 害等級表」の障害等級号及び別表2「傷病等級」の傷病等級号により行うこととしてい ます。例えば、せき髄損傷によって障害等級第1級と認定されている方、脳の損傷によ って障害等級第1級と認定されている方、両上肢及び両下肢の用を全廃によって障害等 級第1級と認定されている方で、介護を受けているならば、介護補償給付は、常時介護 という取扱いになっております。障害等級第1級と認定されていても、常時介護ではな く随時介護という状態の方もおります。あくまでも、介護補償給付は、介護の状態がど うこうではなく、あくまでも障害の状態に着目して支給することとしております。 ○住田先生 褥瘡予防用敷ふとんの支給対象者に関しては、今回は基本的に障害の状況 により拡大したと理解すればいいわけですね。 ○西井課長補佐 そうです。 ○神保課長補佐 いまの件ですが、せき損や脳でいくと、規定は常時介護に区分されま すので、このように書いてあっても、実態として常時介護であることが求められている のではないかというのが住田先生のご懸念ではないかと思います。先ほど西井から説明 があったように、この介護補償給付をつくるときに、1つの割切りとして脳の1級、せ き損の1級については常時介護で区分されるということになっているので、心配は要ら ないのです。先ほど先生が言われたように、同じように寝たきりの状況にある方につい て、前回お諮りしたのもそうだったのですが、いまは障害の状態というよりは原因で規 定しているので、そこを本来に立ち返り、原因をもう少し幅広く、脳に損傷を受けたと きも認めましょうということを提案したということです。よろしければ、これでお願い したいと思っております。 ○木村先生 いまの説明はよくわかったのですが、両下肢の亡失で障害等級第1級にな るということですね。ここでは両上下肢となっていますが、せき損と同じように考える と、両下肢だけではまずいのですか。 ○神保課長補佐 両下肢だけですと、介護補償給付は随時介護となります。 ○木村先生 障害等級第1級にはならないのですか。 ○神保課長補佐 障害等級第1級ではあるのです。 ○西井課長補佐 両下肢の亡失は、障害等級第1級ですが、介護補償給付では随時介護 となります。 ○木村先生 住田先生が言われたせき損の場合と、この辺の1級の場合とでは整合性が 取れない可能性がありますね。 ○神保課長補佐 いま先生が言われたのはせき髄の損傷の部位、頸椎が損傷を受ければ 四肢麻痺になるが、腰髄や胸髄ですと、下肢の麻痺になります。そういった場合、常時 介護になるのかどうかということだと思います。せき損の方については、単に下肢が麻 痺するだけではなく、いろいろな症状が出るので、介護補償給付をつくったときに、神 経系統の機能に異常を有するのは1級、すべからくすべて常時介護という整理をしてお りますので、その点では胸髄、腰髄の方も、ここで言う常時介護に区分されますから、 ご心配は要らないのではないかと思います。 ○盛合座長 住田先生、よろしいですか。 ○住田先生 結構です。 ○盛合座長 それでは、1の「褥瘡予防用敷ふとん」について、支給対象者を傷病(補 償)年金又は障害(補償)給付を受けているせき髄損傷者、脳の損傷による高度の四肢 の麻痺が認められる者又は両上下肢の亡失若しくは機能を全廃した者のうち、常時介護 に係る介護(補償)給付を受けている者とすることでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 次に、2の「電動車いす」について、事務局から説明してください。 ○中村医療専門官 資料5「医学的・観点からの見直しに係る検討」の1ページの2電 動車いすをご覧ください。現行制度では、「両下肢及び両上肢に著しい障害を残すこと により、障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者であって、 車いすの使用が著しく困難である者」等を支給対象者としていますが、障害者自立支援 法の補装具費支給制度においては、呼吸器機能障害、心臓機能障害によって歩行に著し い制限を受ける者であって、医学的所見から適応が可能な者も支給対象者としています。 そこで、現行制度の支給対象者のほか、呼吸器機能障害、心臓機能障害により歩行に著 しい制限を受ける者ついても支給対象者とすべきか検討をお願いします。  検討の参考となるように、検討の方向性(案)を作成しました。検討の方向性(案) では、被災労働者の中には、呼吸器機能障害、心臓機能障害により歩行が困難な者が認 められることから、呼吸器又は循環器の障害を持つ者に対し、電動車いすを支給するこ ととしてはどうかとしています。その支給対象者については、アの「呼吸器又は循環器 の障害により、傷病(補償)年金第1級の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる 者」、イの「呼吸器の障害により、障害(補償)給付第1級の支給決定を受けた者又は 受けると見込まれる者で、次のいずれかの要件に該当する者」として、(ア) の「動脈血 酸素分圧が50Torr以下であること」、(イ)の「動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr 以下であり、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にないこと」、(ウ)の「高度の呼吸困難が 認められ、かつ、%1秒量が35以下又は%肺活量が40以下であること」としてはどう かとしています。これらの方は、障害認定基準で第1級に該当する方になります。検討 をお願いします。 ○盛合座長 2の「電動車いす」について、何かご質問、ご意見等はございますでしょ うか。 ○住田先生 心臓の障害により障害(補償)給付を受けている者は、対象ではないので すが、何か理由があるのですか。 ○神保課長補佐 基本的には障害等級第1級の方に支給しようという考え方になってお りまして、循環器の障害については、第1級がありません。なぜかと言いますと、障害 認定基準を検討したときに、第9級よりも重い方については症状が安定せず、どんどん 悪くなってしまい、予後が非常に悪いので、療養が終わって治ゆにならないと障害補償 給付を支給しないことになっているからです。つまり、一定以上悪いと、ずっと療養と いうことですので、そういった方については、非常に悪ければ傷病補償年金を支給する ということで、障害補償給付では呼吸器の障害だけになっています。呼吸器の障害につ いても多くはなかなか安定しないのですが、稀に非常に悪くても安定している方がいら っしゃいます。障害認定に関する検討会でそのような結論をいただいたので、循環器の 障害で一定以上悪ければずっと療養をしていただき、悪くなった状態が続けば、傷病補 償年金で傷病等級第1級の支給をするため、循環器の障害はないということになってお ります。実際は傷病補償年金で支給しますので困らないと思います。 ○盛合座長 住田先生、よろしいですか。その他、質問、ご意見等は、よろしいでしょ うか。それでは、資料5の2の(3)検討の方向性(案)のア又はイの者を支給対象者 に追加することでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 次に、議題3の「筋電電動義手」についてです。まず、事務局から、(1) 現状、(2)検討の視点を説明してください。 ○中村医療専門官 資料5「医学的・観点からの見直しに係る検討」の2ページの3筋 電電動義手をご覧ください。筋電電動義手については、昭和54年から研究に資するため 限定的に支給を行っています。支給対象者は、原則として両上肢を腕関節以上で失った 者又はこれと同等の者であり、支給本数は1人につき1本とし、支給価額はソケット代 を含み63万円以下としています。筋電電動義手は、修理等の体制や当該義肢の適合性を 計る体制が確立されていないものの、両上肢の切断者にとりその必要性は高いと考えら れます。  その一方で、筋電電動義手は通常120万円程度するため、現行制度の63万円以下とい う基準価格では支給が困難であるという状況にあります。したがいまして、研究用で支 給を認めている筋電電動義手について、支給対象とすることが可能かどうか。また、基 準価格についてはどの程度の額が適当であるのか検討をしていただきたいと考えていま す。 ○盛合座長 前回会議において、川村先生から意見がありました兵庫県立総合リハビリ テーションセンター整形外科部長兼リハビリテーション科部長である陳先生をこの会議 にお呼びしてはどうかと提案がありましたが、事務局に対し、陳先生とお会いし、筋電 電動義手の症例を聞くようお願いしました。事務局から報告をお願いします ○中村医療専門官 兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおいて、陳先生にお会 いし、同センターの筋電電動義手の症例等をご紹介いただきました。資料6「兵庫県立 総合リハビリテーションセンターにおける症例」をご覧ください。兵庫県立総合リハビ リテーションセンターの2件の症例は、ともに労働災害により、片側前腕を切断された 方であり、筋電電動義手により職場復帰されたものです。  症例1は、右前腕切断の症例であり、その切断肢の状態は、断端長12.5cm、ダ ニエルの徒手筋力検査5レベルであり、ADLについては、片手動作で自立していまし た。筋電電動義手の使用により、職場復帰をし、フォークリフトの運転や商品の管理な どを行うなど、職場生活において有効に活用されています。症例2についても、右前腕 切断の症例であり、切断肢の状態は、断端長22cm、ダニエルの徒手筋力検査5レベ ルであり、ADLについては、片手動作で自立していました。筋電電動義手の使用によ り、職場復帰をし、布団などを取り扱うような両手をいっぱいに広げる動作が可能とな っています。この2件の症例では、筋電電動義手の使用により、職場復帰を果たし、そ の後も使用を続けている例であり、また、この症例では、労災保険の義肢等補装具支給 制度での支給を受けたものではなく、旧身体障害者福祉法の補装具給付制度において給 付を受けたものだそうです。  資料7「兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおける筋電電動義手の訓練状況」 をご覧ください。これは、兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおいて、平成1 1年4月から平成19年7月に筋電電動義手の適合判定や訓練を行った件数です。片側 の前腕を切断した方に対しては、40件中30件が適合し、30件中25件が職場に復 帰したというデータとなっています。適合しなかった10件については、平成11年か ら14年までがほとんどであり、最近では適合しない方はいないそうです。両側の腕を 切断された方に対しては、4件の適合判定をし4件とも適合しています。2件が職場復 帰し、家事、ADLに使用している方が1件ずつという状況です。  次に、資料8「筋電義手用ADL評価表」をご覧ください。これは、兵庫県立総合リ ハビリテーションセンターにおいて、筋電電動義手の訓練後に実施しているADL評 価のための表です。スムーズに動作可能を2点、動作可能を1点とし、これらの項目 の得点の合計が満点の70%以上であれば、筋電電動義手の使用が実用的であるとい う評価をしているそうです。また、兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおい ては、筋電電動義手とともに、能動フックについても併せて評価を行うこととしてい るそうです。  次に、赤居先生にお願いして、国立身体障害者リハビリテーションセンターの状況に ついてもお聞きしました。最近、筋電電動義手の試用評価を行ったのは9名で、4名が 筋電電動義手を使わない、5名が筋電電動義手を使いたいという状況だったそうです。 使いたいという5名のうち、2名が両前腕切断で、2名が片側上腕切断、1名が片側前 腕切断でした。使用しないとした4名は、3名が片側前腕切断、1名が片側上腕切断で した。以上です。 ○盛合座長 川村先生、何かコメントはありませんか。 ○川村先生 いま国立身体障害者リハビリテーションセンターでは5名が使っているわ けですね。 ○赤居先生 少なくとも私が赴任してからは、片側切断者も含めて適用があると思われ る人に対して必ず筋電電動義手を見せてあげてくださいと言っております。その上で本 人に使うかどうかを確認しますから、実際にある期間、間違いなく使っているというの が6割ぐらいになってしまったわけです。とにかく知らないで過ぎてしまうのはやめよ うと、一応料理の味見はしていただき、食べますという方は保証しましょうという感じ です。やはり、重いというのが使わない最大の理由です。また、メンテナンスも結構大 変で、故障するとその都度持ってきていただいて交換とかチェックなどをします。修理 している間は能動義手を使っていただいているなどいろいろ問題はありますが、先程の 5名は間違いなく使っております。ただ、ここ4年前後の話なので、さらに過去までさ かのぼればもっといると思います。 ○川村先生 5名は使っているわけですね。 ○赤居先生 使っています。ですから、我々が言うきちんとしたユーザーだろうとは思 います。 ○盛合座長 それについては、また後程検討するということで、まずは議事を進めたい と思います。  次に、資料5の「筋電電動義手」の(3)の「検討の方向性(案)」について、事務局か ら説明してください。 ○中村医療専門官 検討の方向性(案)について説明します。その前に、資料9「労災 保険における両上肢切断に係る筋電電動義手装着後の状況について」をご覧ください。 過去に筋電電動義手の研究用支給を行った方に対しアンケートを行った結果です。9名 の回答者に対し、(5)にありますように、7名の方が現在も筋電電動義手を装着してお り、2名の方が装着していないという回答でした。この2名は故障により使用できない 等により装着していないようです。また、2ページ目の(9)にありますように、今後 も筋電電動義手を必要とするかという問いに対し、故障して使用していないという方を 含め8人が必要であると答えています。つまり、ほとんどの方が必要としているという 結果になりました。  このように、両上肢を失った方やそれに準ずる方については、研究用支給の結果を見 ても、筋電電動義手の必要性は明らかであります。一方、片上肢を失った方につきまし ては、兵庫県立総合リハビリテーションセンターの症例のように、筋電電動義手の効果 は明らかですが、片上肢を失った方は、健側の上肢でADLが自立しているという現状 もあるようです。この点については、資料10「海外における筋電電動義手の現状の問 題点(抄)」をご覧ください。これは、文献調査研究の内容ですが、この中にあるよう に、「一側切断では健側あるいは口を使うことで、ほとんどの場合、ADLは自立する。 したがって、IADL、職場での手作業、趣味といった内容でのニードをチェックしな ければならない。」としており、海外でも同様の考えであると思われます。  次に、筋電電動義手をめぐる環境について考えますと、十分な医学的管理が可能であ る医療機関が非常に少ないこと、必要な機器のメンテナンスを行うことが可能である義 肢製作業者が少ないことという問題もあります。さらに、この点については、先ほど紹 介した義肢等補装具支給制度の役割の全国統一的な制度という観点からも問題があるの ではないかと考えます。  これらの状況を踏まえ、検討の参考になるように、検討の方向性(案)を作成しまし た。1点目として、筋電電動義手については、十分な医学的管理が可能である医療機関 が非常に少ないこと、必要な機器のメンテナンスを行うことが可能である義肢製作業者 が少ないことから、全国において統一的な制度運営が困難であり、本支給とすることは できないのではないか。しかしながら、過去の支給状況等を踏まえ、両上肢を手関節以 上で失った方に対する効果が明らかであることから、両上肢を手関節以上で失った方に 対しては、現行の研究用支給ではなく、基準外として支給することとしてはどうか。2 点目として、基準外支給であっても、適正な支給を実施するため、支給対象者、基準価 格を定めてはどうか。  さらに、3点目の具体的な支給対象者については、1つが、両上肢を手関節以上で失 ったことにより、障害(補償)給付を受けた者又は受けると見込まれる者で、(1)の「手 先装置の開閉操作に必要な強さの筋電信号を検出できる者であること」、(2)の「筋電電 動義手を使用するに足る判断力を有している者であること」、(3)の「筋電電動義手を使 用するに足る十分な筋力を有すること」、(4)の「装具を装着することができる断端長を 有する者であること」の4要件を全て満たす者としたはどうか。2つが、1上肢を手関 節以上で失うとともに、他上肢の機能が全廃又はこれに準じた状態になったことにより、 障害(補償)給付を受けた者又は受けると見込まれる者で、上記の4要件全てを満たす 者としたはどうか。  4点目の価格については、現状のソケット代を含む1本当たりの価格63万円では、 購入が困難であると思われます。また、適正に支給を行うためには、基準価格等をしっ かり設定する必要があると考えています。したがって、4点目の価格については、ソケ ット代を含む1本当たりの価格を設定するのではなく、基準価格として、基本価格、製 作要素価格、部品価格を決定することしてはどうかとしております。検討をお願いしま す。 ○盛合座長 では、筋電電動義手の検討に入ります。何かご質問、ご意見等はございま すでしょうか。 ○住田先生 澤村先生が主任研究者になっておられる平成11年度の災害科学研究の「筋 電電動義手の普及に当たっての問題点と対策に関する研究」において言われていること は、すでにいま話された問題点と同時に、復帰を前提とした制度の検討というところま で述べられていて、1つは適用する切断部位は前腕切断で、片側、両側を問わない、第2 番目には、3年間という期間に、国立身体障害者リハビリテーションセンター、兵庫県 立総合リハビリテーションセンターなどの主要な施設を指定し、そこで一定数の義手部 品を準備して、きちんと処方をする。そこで筋電電動義手の研修等を行って、3年間の 研修を終了した人については、処方できるようにするということを述べているわけです。 これについてはどうなのでしょうか。というのは前腕切断は圧倒的に労災の可能性が多 いのです。多くはプレス等で上肢を切断してしまう。上腕か前腕かということであれば、 前腕がかなり多い。この状況の中で、片側切断者に関してADLが充実しているからと いうことはある意味では障害者自立支援法とはあまり変わらないのではないかと思いま す。むしろ労災では社会復帰促進という観点から言えば、積極的に支給してもいいので はないかと思います。高見先生はどうですか。 ○高見先生 先生がおっしゃるとおりで、これも7年前に一度たぶんこの会議で議論し ていると思うのですが、それから全然進展がなくて、世の中はどんどん変わっているの に、障害者自立支援法ができたというようなことも含めて、やはり後ろ向きではなくて、 労災が何かのきっかけになるような方向性を見い出すべきだと思います。そういう意味 では平成12年にこの筋電電動義手の意識調査をやりました。対象はPOですが、やはり 試験給付は外すべきだという意見でした。値段のことは63万円が云々というのは、あま り言及していませんが、とにかく、対象者を見直すべきだという意見でした。 ○盛合座長 まず、研究支給を基準外支給にしようということとか、片手切断者でもも う一方に障害がある場合は一応支給しようかということを、まず検討しましょう。 ○住田先生 原則的には研究ではなくて、基準外で一歩進めましょうということはいい と思います。 ○盛合座長 この件に関して、一歩進めるのは、まずよろしいですね。 ○住田先生 はい、問題ないと思います。 ○盛合座長 これは別に反対をする理由はないと思っていました。ここで、ひとつひと つ可能なことから整理したいと思います。まず、ア、イ、ウに関しては別に問題ないこ とかと思います。 ○川村先生 (3)の検討の方向性で、十分な医学的管理が可能である医療機関が非常に 少ないと書いてありますが、これは何を根拠に、いくつぐらいあったらいいと思われて いるのですか。 ○中村医療専門官 支給ということであれば、我々としては全国どこでも支給できる状 況にあるということが前提であると思っています。労災保険は、全国統一的な制度であ り、可能な限り全国広くという意味です。我々が確認している範囲では、十分な医学的 管理が可能である医療機関はそれほどたくさんはないだろうと思っています。そう考え ればあまり全国規模にはないという状況にあると考えます。 ○川村先生 しかし十分な医学的管理、能力を備えるためには、実際にはずっと継続的 に経験していないと、そういう人は育たないと思います。ですから、1つの医療機関当 たり、大体年間5例以上は必要であると思います。それがないとある時点ではそういう 能力があったとしても、そういう能力が続いていかないと思います。だから日本の労災 での上肢切断者のことを考えて、そういう能力を継続しようとすると、それほどたくさ ん医療機関を指定してみても、薄まってしまって結局そういう能力がなくなってしまう わけです。ですから5例から10例ぐらいを毎年経験させようとして、全国に割り振りす ると、そんなに医療機関は要らないわけです。絶対数が限られているわけですから、少 ないから筋電電動義手はいまの状態では支給できないという結論に持っていくのは危険 だと思います。ですから絶対数が少ない症例ですから、少ない症例での実現可能な体制 を考える必要があると思います。 ○中村医療専門官 今回の考え方というものは、筋電電動義手に対する十分な医療管理 が可能な医療機関が少ないことから全国規模、統一的でないので、本支給でなく、基準 外として支給しましょうということです。整理上本支給ではなく、基準外の支給になり ますといったことですので、その点を先生、理解していただければと思いますが。 ○川村先生 わかります。 ○盛合座長 今日のスケジュールは、まず、そちらを決めて、川村先生がおっしゃった ことをディスカッションする予定になっていたので、両側切断者に対する試験的支給は、 基準外の支給にする。それから、支給対象者は、両側切断でなくとも、片側切断者でも う一方の上肢の機能が全廃している場合も、それに準じて支給しようということを了解 していただけますかということです。  それでは、(3)検討の方向性(案)のウの支給対象者について、過去の支給状況等 を踏まえ、現行の試験給付から、基準外として支給することで、よろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 次は、片側切断者に対して支給するのかです。 ○赤居先生 多少前向きにというと、先ほどの澤村先生の研究のお話が、相当実現可能 ですよね。 ○神保課長補佐 先ほどご紹介した文献調査の所でもそうなのですが、やはり両上肢切 断の方は、物を掴む機能が失われている。そういう方は、やはりどうしても必要に迫ら れて、お使いになるということで、非常に切実だと思います。やはり物を掴む機能、こ れは非常に重要な機能でありますので、両側をひじ関節以上で切断した方の介護補償給 付は、常時介護ということで考えておりますので、そこは非常に重要であるし、それで その試験給付はやめさせていただこうということなのです。片側切断者でももう一方が 健常だという場合につきましては、赤居先生にご紹介いただいたように、あるいはアン ケートでも「重いのです」ということがございまして、かつまだまた単機能で開閉にす ぎないということがございまして、40%ぐらいの人が使わなくなる実態があり、公費で 全額支給させていただいたものが使われなくなると、問題があると考えています。先ほ ど事務局で方向性(案)として、ご提案させていただいたのは、障害の状態でそのニー ズが非常にあるのは判断できる。逆に片側切断者で、もう一方が健常な方は障害の状態 だけでは、真のニーズがなかなか掴みにくいという状況です。もしもっといい案がある ということであれば、先生方からご提案、ご指示いただければありがたいなと思います。 ○赤居先生 問題は片側切断者で、もう一方の上肢はあまり問題がない人たちをどうす るかなのです。先ほどの折角お金を出して作っても、使わなかったらどうするというこ とですが、それは確かに私たちが調べても歩留りがあるというのはわかっております。 ですから仮義足、本義足、仮義手、本義手というのがあるのです。門前払いはやめたほ うがいいのかなというのが、どうも現場の意見なのです。ですからトライアルはさせて もらって、多少にそれに関わるソケットなどの費用を捻出するということで、少しでも 前向きの解決にはならないでしょうか。結局患者さんに判断の材料を得られる機会だけ は与えていただけないでしょうかという感じなのです。筋電電動義手を見た上で、重く てやはり使えないというのだったら、その人を掴まえて「使え」と言う必要はないとは 思うのですが、全く知らない間に、装飾義手しか目の前を通らなかったというのはまず いので、片側切断者にも味見はさせていただけませんかという感じなのです。そういう 現場の意向はかなりありました。 ○徳弘先生 私の意見を言わせていただいてよろしいでしょうか。陳先生のレポートは 確かに要件を備えていて、性格、意欲などの心理面、ADLの見込み、職業における活用、 そういう年齢などを読み取らなければいけないのだろうと思うのですが、我々の役割と いうのは、やはり素晴らしい筋電電動義手というものが実際に役に立つ方がいらっしゃ るので、赤居先生が言われたようにその方をいつまでも門前払いというか、支給する制 度がないので今のところは駄目ですよというよりも、先に進めていかねばいけないと思 うのです。筋電電動義手が役立つものであるということは事実ですよね。実際問題とし ては、その患者さんが片側前腕切断者でしたら、装飾用義手1本あればADLは自立す る。実際に困らないではないかということはあると思うのですが、やはりそれではいけ ない。我々の専門家の役割というのは、筋電電動義手を普遍化して、どのような人に、 どのように使っていけば、その人がいわゆる労災補償として仕事の役に立つ、いままで の仕事が継続できるようにするなど、そういうことはやはり進めていかねばいけないと 思います。これはもう誰が聞かれても異存のないところだと思います。どのようにして 先に進めるかという議論はこれからです。やはり試験的に給付する制度を作って、実証 していかねば、エビデンスを我々は出していかねば、この話はこれから先には進まない と思います。具体的にどうするかは、将来実用化へ持っていけるという方向性を持った 専門的な研究目的の支給をやる方向性で、是非ともこの会議の意見を進めていったらど うかと思うのです。どうでしょうか。次の段階として、我々の意見を集約していかねば いけないと思うのです。もちろんそれは期限を切らなくてはいけないし、いまのところ できる施設も限られていると思います。その中で適合の判断ができて、訓練ができて、 メンテナンスができて、しかもそれらの結果を実用になるかどうかということを評価で きるというところが、やはりやらねばいけないと思うのです。そういうことを意見とし てまとめていただきたいと思います。 ○高見先生 周囲の環境を整えなければいけないということですね。 ○徳弘先生 そうです。ここの段階で全国一律に認めましょうというわけには絶対いか ないと思います。 ○木村先生 先生のご意見は、いまある研究用支給のような形で、片側切断者に支給す る。その研究の目的を明確にして出す。そういうご意見ということですか。 ○徳弘先生 そうです。どういう人に出せばいいのか、それがやはりわかってくると思 うのです。現場もわからなければ、このままでは情報が断片的ですし、先に進むことが ないから、それらの経験を集約して、ガイドラインのようなものを作る。何歳ぐらいの、 性格はこういう人で、就労の意欲があって、こういう場所でこういうようにしたら、例 えば職業にきちんと使ったとか、そのようなデータに従って将来支給していくべきだろ うと思うのです。そういうデータを集めるために、研究用支給という制度を作ってやっ ていかねば、この話もいつまで経っても同じことを繰り返していくと思います。 ○赤居先生 (社)日本義肢協会の会長さんに、製作業者でどのくらい出ているのです かということを聞いたら、年間30前後だろうという感じなのです。これは労災以外も含 めてです。だからあらゆる筋電電動義手の部品を作って、年間全部数えてもその程度だ という感じですから、それが一挙に数百出るというような感じでは全然ないのではない かとは思います。 ○住田先生 基本的には賛成なのですが、やはり時限立法というか、どのくらい期間を 置いて見るのか。そういうエビデンスを確認していくのに、どのような調査をしていく のかなど、そういうところはどうするのですか。 ○徳弘先生 それは作っていかねばいけないのではないかと思います。 ○住田先生 3年なり5年なり時限立法で、その間に研究をきちんとまとめる。そして 研究用と支給されたものが、被災労働者が復帰するに当たって、何パーセントぐらいが 使われているかということの調査をきちんと依頼すべきであり、医療機関に関しては、 きちんとレポートを求めることが必要です。 ○徳弘先生 そうですね。やはり3年ぐらいでしょうね。 ○住田先生 3年と思います。 ○徳弘先生 我々は、脊髄損傷者のデータベースを作成していますが、年によって多い 年もあるし、少ない年もある。そういうことから言うと、3年、4年ぐらい見ていただい たほうがいいかもしれません。しかしいつまでも待てないということで、やはり3年ぐ らいでしょうか。 ○住田先生 障害者自立支援法ではどうしているのですか。基準外交付で出していると 思いますが。 ○赤居先生 特例補装具ですよね。 ○住田先生 はい。 ○赤居先生 筋電電動義手の話はまだしていない、まだそこまでは行っていないです。 話をすることになっているのですが、前回の会議に私は出なかったので、わかりません。 ○川村先生 徳弘先生、住田先生の意見もかなりの前進だと思って賛成するのですが、 実際問題それをやるとしたら、基準外支給するのか、それとも研究用支給するのか、そ れはどうなのですか。 ○徳弘先生 するとしたら、事務局としてはどういうのでしょうかね。 ○神保課長補佐 効果をきちんと検証すると、基準外でいきましても、通常の給付と変 わりがございませんので、特別に効果を検証したりというのは、なかなかご協力いただ くのは難しいのだろうと思っております。もし先生方がいまおっしゃっていただいてい るような効果をきちんと検証するということであれば、研究用支給という形でやらざる を得ないのかなと考えております。 ○川村先生 いまは両側切断者が研究用支給ですね。 ○神保課長補佐 はい、そうです。 ○川村先生 いまの話は、さらに重要な話ですが、その研究用支給を片側切断者にも広 げるというように受け取ってもいいのですか。 ○神保課長補佐 いまの先生方のご議論を踏まえると、そのような基準外であれば、通 常も認めますよというだけで、ご協力をいただくという医療機関についても、申請者の 方についても、それは難しいだろうと。 ○住田先生 それは結構、新薬などでする場合、例えば講習会を必ず受けた医師がやる こと、事前に申請すること、結果報告することという前例調査をしているのです。そう いう意味ではきちんと本数を決めたり、期間を決めて、レポートをきちんと要求するこ とは、厚労省がやっていることですから別に矛盾しないと思いますから、きちんと前例 調査で支給された場合には、やはり追跡調査をきちんとされることはしてもらったほう がいいと思うのです。そうでないと何のために支給したのか、120万円、150万円も使っ てなどという形になりますから。 ○赤居先生 ですから先ほどのフォーマットを決めて、それに記入をすることを要件に すれば、集積していきますよね。ですから実際に、本当に30出たのか。その歩留りで翌 年には、15になっているというようなことはわかってくるのではないでしょうかという 気はします。 ○盛合座長 非常に貴重なご意見をいただいたので、この点は何か結論を出すよりは、 少しまとめていただいて、詰めるということでよろしいですか。 ○赤居先生 いちばん最後の基準価格としてそれぞれを決定するというのは、具体的に はどういう感じのイメージなのですか。 ○中村医療専門官 現在、義肢等補装具については、表にして基準価格を出しています。 それと同じように、この部品はいくらと明確にします。 ○赤居先生 わかりました。 ○中村医療専門官 きちんとしなければきちんとした支給、適正な支給にならないので、 そういう表をきちんと作ります。 ○高見先生 この63万円は、昔のワイムハンドの価格ですよね。あと、4頁目の4の(4) の「装具を装着することができる断端長を有する者であること」についてですが、大体 筋電が拾えるのは10cmです。しかし筋電電動義手という考え方をするのだったら、筋電 で信号を拾うのではなくて、例えばハーネススイッチなどという考え方があるわけです。 だからこれは4番の項目というのは、あまり意味がないのではないかとは思います。短 くて筋電が拾えないということが多分あると思うのですが、違うところで取れば済むわ けです。 ○川村先生 装着の関係はいいのですか。 ○高見先生 装着はソケットの上手い下手の問題だけですから。ここで問題になるのは、 やはり筋電位が取れるかどうかだと思います。 ○徳弘先生 言葉の上だけなら、装着することができる断端の意味するものであるので、 「長」は要らないわけですね。 ○高見先生 そうですね。 ○盛合座長 装着医療機関についての何かご意見はありますか。 ○川村先生 このような症例がそれほど多くないのだから、全国津々浦々に、装着医療 機関があっても、能力を維持できないのですから、ある程度センター的なものが全国に 何カ所かあればいいのかなと思います。普通の義肢や装具のように、全国津々浦々どこ でも少し電車に乗ったら、すぐ日帰りぐらいできる所でというのではなくて、少しぐら い離れていても、また、少なくて当たり前で、それほど施設数を増やすことの意味がな いし、実際問題としては増やせないと思うのです。実際に臨床というのはやはり経験が 必要です。現実的に全国で5つか10ぐらいあれば十分と思うのです。筋電電動義手は、 全ての患者さんに必ずしても適当なものであると言えないという気がします。欲しいと 思う患者さんもいます。最後は本人さんの意思です。できることはしてあげるという発 想は要ると思います。 ○盛合座長 それではいろいろあると思いますが、今日の意見を踏まえて、事務局でま とめてください。 ○中村医療専門官 はい、わかりました。 ○盛合座長 では、筋電電動義手に関する検討は、ここで終わらせていただきます。ス ケジュールでは、次回の会合において、報告書を議論する予定ですが、これまでの検討 内容を踏まえて、報告書の案を事務局にお願いしたいと思います。 ○中村医療専門官 わかりました。 ○盛合座長 そのほか追加、質問はありませんか。 ○徳弘先生 筋電電動義手のことがいちばん端的に現われていますが、現在の制度など を検討する期間があくと、アップツーデートの支給制度がなかなかできないということ で、できたら定期的にこのような会議を開催していただければと思います。我々の意見 ということで、検討報告に入れていただけたら嬉しいと思います。 ○盛合座長 それはもっともなことで、我々はこの会議がいつ開かれるのだろうと心待 ちにしていました。 ○木村先生 いまの徳弘先生の意見に本当に賛成で、こういうものを定期的にやらなけ ればいけないと思います。報告書を作られるのであれば、今後の問題としていまあるの が、医療全体が包括になっているのに、骨格義肢のほうは出来高というか、特に足など はいろいろなパーツがあり、下肢の骨格義足なども膝のパーツだけで本当に高い。果た してその機能を必要とする患者さんに作られているのかどうか。そういう問題も最近出 てきていると思います。是非、次の機会にはそういうようなことを検討する予定である というようなことを盛り込んだ報告書にしていただきたいと思います。 ○盛合座長 そのとおりだと思います。いまのことについて何かご意見はございますか。 ○徳弘先生 (財)労災年金福祉協会の巡回サービスをやっていますが、いろいろなこ とを聞きます。年金相談所でアンケートをとられている中に申請してもなかなかできな いという問題点があります。事務的な手続ももちろんあると思いますし、現場の技術、 POさんの、あるいは業者の方が、いわゆる時間的なことをあまり気にしないというか、 そのうちできるみたいな感じで申請者の方に待たせることがあるというようなことが大 きな問題点として挙がってきています。何とか解決されるように検討していただきたい というのが、現場のニュアンスをお伝えする、私の役目として、皆さんにわかっていた だきたいと思います。 ○盛合座長 それでは、いままでの意見をまとめると、木村先生からご意見があった義 足についての使用部品に関する基準の整備を課題とすること、徳弘先生からご意見があ ったこの会議を定期的に開催するということについて報告書に盛り込むことでよろしい でしょうか。 (了承) ○盛合座長 また、徳弘先生からご意見があった申請者になるべく義肢等補装具を早く 支給できるように改善を図ることについて、事務局において検討してください。以上で 今日の会議は終わりにしたいと思います。 ○神保課長補佐 本日は長時間ご議論いただきまして、長年の懸案のものについても一 定の取りまとめもいただき、誠にありがとうございました。次回の会議では検討報告書 について、中心的にご議論いただくことをお願いしたいと思っておりますが、議題とし て本日の資料11に載せております。車いすの支給対象者に係る検討を追加でお願いした いと考えております。資料に書いてあるように、療養(補償)給付を受けている方につ いては、3カ月以内に症状固定が見込まれる方に、限定して支給対象をしているという 現状があります。逆に言うと、3カ月以内に症状固定が見込まれない場合には、車いす の支給を行っていないということで、そういう制限、症状固定の見込みの期間を限定せ ず、支給するべきかという観点から、次回ご検討をお願いしたいと思っております。ま た先ほど座長からもご依頼がありました検討報告書の事務局案については、これまでの 検討内容と先ほど来の木村先生、徳弘先生のご意見を踏まえて、作成をさせていただけ ればと思います。作成する検討報告書の案については、先生方におかれましては大変お 忙しいところ申し訳ございませんが、事前に先生方にお送りいたしますので、ご意見等 をいただければ、ありがたいと思っております。わからないところが詰める過程である かと思いますので、お忙しいところ申し訳ございませんが、ご相談させていただくこと もあるかと思いますので、その際は是非よろしくお願いしたいと思っております。本日 は誠にありがとうございました。 ○中村医事係長 次回の日程は10月26日(金)、開始時間は午後3時、場所は18階の 会議室を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。本日はありがとうござい ました。 (照会先) 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課医事係 TEL 03−5253−1111(代)内線5565 FAX 03−3502−6488 - 1 -