07/08/03 第2回医療機関の未収金問題に関する検討会議事録について 第2回医療機関の未収金問題に関する検討会    日時:平成19年8月3日(金)16時00分〜18時00分    場所:全国町村会館(2階)  座長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第2回「医療機関の未収金問題 に関する検討会」を開催させていただきます。  本日はお忙しい中、また暑い中をお集まりいただきましてまことにありがとうござい ます。今回は、第1回検討会を欠席されました国民健康保険中央会理事の田中委員が御 出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。  田中委員 田中でございます。よろしくお願いいたします。  座長 どうぞよろしくお願いいたします。  また本日は、実際の現場での未収金の実態や回収の取り組みにつきまして、東京都の 病院経営本部、厚生労働省の医政局国立病院課の方から御報告をいただくということで ございます。東京都病院経営本部サービス推進部患者サービス課の中野課長それから国 立病院課の古川室長補佐に御出席いただいております。よろしくお願いをいたします。  それでは最初に、本日の資料の確認をお願いいたします。  神田課長 それでは資料の確認をさせていただきます。お手元の資料でございますが、 一番上に議事次第がございます。それから座席図。  資料1−1から1−2、1−3というのが未収金の実態についての資料でございます。  資料2として、保険診療契約について。  資料3として、応招義務の関係の資料がございます。  最後に参考資料がございます。本日の資料は以上でございます。足りないもの等があ りましたら事務局に言っていただければと思います。  座長 資料はよろしいでしょうか。それでは議事次第に沿いまして、最初に木村委員 から御提出をいただきました資料につきまして御説明をいただきたいと思います。よろ しくお願いいたします。  木村委員 それでは資料1−1をつくってまいりましたので、これを見ながら御説明 をしたいと思います。  未収金発生原因として幾つか考えられるものを、うちの医事課の課長と相談してつく りました。実際にどのくらい症例あるかということについては、カウントはしておりま せんのでどれが何でということははっきりとは言えません。  まず幾つかに分けられます原因として1番目は会計時の現金不足による不払い。例え ば急な検査、急に退院が決まったということで、持ち合わせがなくて当日の支払いがで きないケースです。会計時に非常に高額な支払いがあって、その支払いのめどが立たな いということで、それが何カ月にわたって分割の支払いになるというケースです。  あとは救急診療時の保険証、所持金がないというケースです。金額は1回、1回少な くともケースとしてはこれが一番多いのではないかと考えております。  2番目は、治療内容の不満による不払いということです。自分の希望する検査をして もらえなかった、薬を出してもらえなかった、病気が治らないといった不満で「治療費 は払わない」と言って払わない患者がいるということです。  3番目としては、初めから払う気がない。既に未収金が幾つかあって、氏名や生年月 日をすべて虚偽の申告をして診察を受けようとする患者がいるわけです。しかもそのと きに当然保険証は持っていませんし、身分証明書、現金も全くないということで、特に 時間外に来て全くうその申し立をして何らかの診察を受けて、もちろんお金を払わない でそのままというケースです。それから時間外に来院をして生活保護を受けていると申 し立てて現金はないと言われるわけです。当然次の日に福祉事務所に問い合わせをする のですが、その人は実際には受給資格がない。もちろん後で連絡がとれない。生活保護 だと言っていても実際は生活保護ではなかったということで、これは最初から払う気が ないということです。  4番目ですが、算定の変更や追加修正による未収があります。会計が終了してから医 師から追加オーダーが出て、当然その分については未収になるわけです。外来の場合と 特に入院の場合がよくあります。その後全然来院がなくて、後から払ってもらうことが できないということで未収金が発生する。  次のケースはたまたまですが、細菌検査というものがあります。細菌の検査はどの抗 生物質が効くかというもので感受性検査といいます。それについては細菌がいるかどう かの検査を行って、その細菌が見つかってから初めてその感受性はどういう菌に効くか と行くわけです。後日来院がないと、最初は細菌がいるかどうかの検査についてのお金 しかもらっておりませんので、その後細菌が見つかって菌に対する感受性検査が追加に なるわけです。来なければそれについては未収になってしまう。結構こういうケースも あります。  2ページ目をごらんください。5番目として第三者行為による支払い方法の未決定。 特に交通事故や障害事件などで健康保険使用の適応外の疾病で支払い方法が決まってい ないで未収金になるケースがある。これは支払い方法が決まっていないという例になる ケースです。特に被害者自身による支払い拒否。相手側に支払い意思があればいいので すが、両方が払わないと言っていて、その話し合いに医療機関が立ち入ることはできま せん。支払い者の決定までの間に時間がかかる。時間がかかるだけでなく、結局折り合 いがつかなくてどちらからも支払われないということが起きてくるということです。  次は保険会社が「いったん支払いますよ」と約束をするわけですが、これは当然口約 束の場合も多いわけです。診療をしてかなり時間がたってから、保険会社が事故調査を 行います。その結果、患者の過失割合が高いと、例えば赤信号を横断したとか、患者側 が飛び出していったということでかなり患者側にも過失割合が高くて、結局は保険金の 支払いができないと保険会社が申し出てくるケースです。  6番目としては、休日退院による会計不可ということです。時間外や休日などの急な 退院決定になったりしますと、休日や夜間には、特に中小病院においては会計ができな い医療機関も結構あります。体制上の問題もありますがとりあえず退院をしていただく と、その後連絡がとれなくなって未収金となる。これは急な退院決定もありますし、逆 に患者さんが勝手に帰ってしまうというか、いつの間にか帰ってしまう、許可なく帰っ てしまうという自己退院という場合もあります。  7番目は、待ち時間が長いことによる帰宅です。診察後会計までの時間が待てなくて 支払いをしないまま帰ってしまう。もちろんその後支払いをしてくれるケースも多いで すが、そのまま連絡がとれなくなる。「その時に払った」と言ってトラブルになるケース もあるということです。  8番目としては、保険資格喪失後の受診です。保険の資格を喪失しても保険証を返還 しないで、全く違う病院に持っていてその保険証を使用するということです。こちらと しては保険証の確認ができません。写真がついていなければ何もついていませんので、 出されれば本人だとするしか仕方がないわけです。そういうことでそれを悪用されてし まうというケースです。  9番目としては、老人の公費負担割合変更後の保険未提出による差額未収です。これ は差額の未収です。老人受給者証の負担割合というのは毎年8月に前年度の所得によっ て変更されるわけです。旧証を回収しない保険者も多いわけです。つまり患者が3割負 担になっているにもかかわらず、1割負担のままの保険証を呈示し続けてしまう。何カ 月か後に返戻レセプトで初めてわかるということで、そこで未収金が発生することがあ ります。  10番目ですが、生活保護者でも一部負担金が出ることがあります。それが連絡遅延に よって払われない。一部負担金のある患者の手持ちがなくて支払われない。福祉事務所 からの連絡遅延による一部負担金回収遅延や回収不能のケースがある。生活保護資格を 喪失しているにもかかわらず受診して未収金となる。これも連絡が来ないことによって、 こういうことが発生してくるということです。  11番目としては、死亡退院です。亡くなられた場合に債権者が不明や身寄りがない。 救急車や時間外外来によって身元不明のまま亡くなられるケースもありますので、そう いった場合全くわからない。債権者や家族不明で亡くなられてしまうということで、こ れも未収金になるということです。  件数としましては、先ほど申し上げましたようにカウントはしておりませんが、多い のは1番にあります救急関係です。救急診療時の保険証、所持金がないというのは件数 としては非常に多いということです。金額的にどこが多いかというのははっきりわかり ませんが、多いのは救急で高額になった場合や交通事故で5番目の第三者行為による支 払い方法の未決定です。この辺のところでかなり高額になったときに余計もめてしまう。 以上が多いのではないかと考えております。以上でございます。  座長 ありがとうございました。それでは引き続きまして国立病院課の方から御提出 をいただいております資料について、古川室長補佐に御説明をいただきたいと思います。 よろしくお願いいたします。  古川室長補佐 それでは資料1−2によりまして、国立病院機構におけます医業未収 金の状況について御説明申し上げます。  まず未収金債権の残高でございますが、19年1月末現在で申し上げれば146病院で約 46億円となっております。その内訳といいますか区分といたしましては、破産更生債権 というのが27億、これは2年以上になる古いものということでございます。そして医業 未収金、1年くらいの新しいものということで19億ということになっております。1病 院当たりに換算しますと約3,200万となっております。  経緯につきましては下の括弧にございます。17年度末で約9億の貸し倒れ処理をいた しまして、新たに18年度で約11億が発生いたしました。一方回収に努力をいたしまし て2億7,000万ほど回収しましたが、依然として19年1月末で46億円の未収金債権が ある。結果として約300万円の減少となっております。なお、破産更生債権の過去3カ 年の推移につきましては、その下に参考でございますが約3年で2億7,000万円ほどの 減になっております。  次に新規発生状況について、でございます。大体当年度で発生する額が11億前後とな ってございます。その発生理由としましては、少し粗い見方かもしれませんが下にあり ますように生活困窮というのがほとんどでございます。あと、保険未加入者あるいは診 療上のトラブル、住所不定者などとなっております。また新規発生につきましては若干 微増となっております。これにつきましては、例えば高額療養費の現物給付化あるいは 出産育児一時金の受領代理制度といったものを活用しまして発生防止に努めているとこ ろでございます。  法的措置等の実施状況についてでございます。機構病院といたしましても、医業未収 金というのは病院運営に多大な影響がございます関係上、昨年の2月ぐらいに回収のマ ニュアルをつくり配付し、実施しているというところです。もちろん発生防止というの が一番努力すべきことだと思います。例えば退院時精算の徹底あるいは先ほど申し上げ ましたように高額療養費の関係、出産育児一時金の関係で努力するとともに、独立行政 法人化後にカード支払いの検討をしまして、それを拡大してきたところでございます。 しかしながら未収金が発生してしまったということにつきましては、その裏のページに 業務実施のフロー図がございます。  基本的には発生いたしましたら電話あるいは文書等によりまして複数回、しかも継続 的に督促をするというのが原則でございます。そして場合によっては法的措置等も講ず るとなっています。そういったことで、法的措置ではどのようなことをしているかとい うのが資料にございます。例えば《支払督促制度》、これにつきましては5病院で延べ 56件を実施しております。回収率で申し上げれば58.9%となっております。また《小額 訴訟》60万円以下の訴訟につきましては、3病院で延べ11件の実施をしておりまして、 回収率が35.5%となっております。《訴訟》につきましては4病院で19件実施しており まして、これは回収率が少し高くて86.8%となっております。また最近ですが《債権回 収業者》へ集金代行業務の委託ということで3病院で174件を実施しております。これ については回収率が6.7%と、まだ成果が上がっていない状況ですがまだ期間が浅いと いうこともありましょうし、居どころが不明という債権をお願いしている関係上なかな か難しいのかなということでございます。以上でございます。  座長 ありがとうございました。それではさらに引き続いて、東京都病院経営本部か ら資料を御提出いただいております、それにつきまして中野課長から御説明をいただき たいと思います。よろしくお願いいたします。  中野課長 個人未収金について御説明をさせていただきます。概況を書けばよかった のですが、都立病院は全体で11病院ございます。大体ベッド数で5,500、外来が大体7,000 という規模でございます。入・外の収益が今現在で900億円弱というところでございま す。  個人未収金の過去5年の推移でございます。14年度10億2,800万円から毎年伸びて きまして17年度は13億円にまでいきました。18年度につきましては9億2,700万と減 っているところでございます。個人未収金の定義でございますが、入院・外来・特別室・ 文書料のうち、発生日から1年以上を経過した未収金という定義をさせていただいてお ります。17から18にかけまして大きく落ちた理由ですが、不納欠損が公立病院の診療 費の消滅時効、従前は地方自治法を使っていたのですが民法にするということで、最高 裁の判決が出まして5年から3年に改められましたがために、18年度末に3年分処理し たということで、これで3億5,000万ほど減りました。それから我々も前から発生防止 策、回収強化策をある程度やっておりますので、そういった効果があるのか3,000万ほ ど減ったというところでございます。  次に未収金となった主な理由でございます。正直、統計的にとっていないものですか ら、主に担当者の実感に近いもので大変恐縮ですが上から下に多いであろうと思われる ものを記載していただいております。やはり一番多いのは経済的な困窮者の方であろう と。例としましては生活保護を現在は受給しているのだけれど、受給開始前の部分が未 収金になっているという人。それから自己破産を申し立てて免責決定を受けたというよ うな人。それから一括支払いが困難なため、分割で納入を続けていらっしゃる方の未収 金。患者さんの居どころがそもそも不明になってしまっているもの。それから外国人の 方で帰国してしまって音信不通になったケース。それから交通事故の被害者で加害者と の示談がまとまらずになかなか払っていただけないというケース。分娩で出産の一時金 がしばらくすると35万円出ますが、それで支払うと約束したのですが結局受領した金銭 を支払いに回していただけないケース。お亡くなりなった患者さんで、相続人が不存在 であること、あるいは相続を放棄されているというケース。それから支払いを拒否して いる。支払い能力があるにもかかわらず支払っていただけないといったケース、こんな ところが主な理由かと思っております。  回収方法を列挙させていただいておりますが、フロー図を載せておりますのでそこで 説明をさせていただきます。フロー図が下になりますが、上に発生防止策と回収強化策 を現時点で進めていることを簡単に御説明させていただきます。  まず発生の防止策としましては、高額療養費の現物給付制度ですとか高額医療費の貸 付制度、出産育児一時金の受取代理制度、こういったものを、MSW等を通じて患者さ んの方に利用を勧めるということ。それから医療相談への早期介入、クレジットカード 決済の活用。クレジットカードすべて入っておりまして、現時点では大体15%程度御利 用いただいているところでございます。それからいろいろな制度がございます。1番に 挙げたような制度、こういった公費負担の制度ですとか医療費の助成制度といったパン フレットを置くということ、これはまだ置いていませんが現在検討しているというとこ ろでございます。  それから回収強化策として、初動体制の強化ということで電話催告、文書催告をなる べく早くやるということ。後ほど説明させていただきますが、東京都の中に主税局とい う徴税部門がございます。こちらとの連携を強化しまして、例えば研修をしてもらう。 それから実際に徴収業務まで入ってもらっています。それから困難案件、各病院での困 難案件を一元的な管理、私のところに未収金担当を置きましてそこで一元的な管理を一 部始めたところでございます。それからサービサーの活用ということです。サービサー 法で、業務委託では範囲が狭まってしまうものですから現時点では人材派遣でサービサ ーの人を置きたいと思っております。早ければ年度内、できれば秋くらいからトライア ルを始めていきたいと思っております。それから入院申込書、支払猶予申請書等の各種 様式の見直し。それからこれは病院の職員向けの相談窓口、マニュアルの作成というこ とをやっているところでございます。  次に《未収金の回収フロー》でございます。下の真ん中に未収金発生と書いてありま す。未収金が発生した場合にまず支払猶予申請、何週間か何カ月か後に払ってもらうと いうことをお約束していただく、もしくは下に分割申請、例えば月1万円ずつ払ってい ただくというような申請をしてもらいます。そうした場合でとりあえずやっていくとい うことです。それからそのままいなくなってしまうというケースもあります。そうした 方に関しては電話催告をして文書催告をして、真ん中の督促状の発行・送付というとこ ろになります。これは当然支払猶予とか分割申請がお約束を守っていただけない方も督 促状をさせていただきます。  その後調査に入っていくのですが、上の不達返戻、督促状を送ったにもかかわらず戻 ってきてしまったものについては住所を照会して再度督促状の発行にまいります。住所 を照会してわからなかったものに関しては現地調査をします。現地調査をしてもなおか つわからないとなりますとどうしようもありませんので、回収不能債権という形になり ます。  督促状を発行した後、連絡がない場合については現地調査ですとか資料収集を行って まいります。連絡があった場合は、また猶予ですとか分割の方に入ってまいります。ま た履行監視をしていきます。こういったものがまた不履行になりますと現地調査、資料 収集となります。その後調査した結果手がかりがない、どうしようもないというものに ついては回収不能債権になります。調査を終えたものにつきましては、先ほど申し上げ ましたように主税局という部門に、今現在回収を依頼しまして法的措置の検討をします。 大きく分けまして簡易裁判所に支払い督促の申し立てを行うというケースがございます。 それから数としては少ないのですが、強制執行の申し立てによりまして給料を差し押さ えたケースもございます。  最後3ページ目でございます。主税局への依頼の実績でございます。上の表が金額の 実績でございまして、下の表が人数の実績でございます。平成16年度から開始いたしま して、現在4年目に入っておりますが、過去3年間の推移でございます。合計で3億 6,700万円の依頼したところでございます。結局、任意の支払い等、法的措置までいき まして、最終的な回収の実績としては約6,000万円を回収できたというところでござい ます。人数につきましては、1,229名の債権をお願いしたのですが督促が166件、強制 執行いわゆる給料の差し押さえまでいったケースが5名、完納していただいたケースが 254人というところでございます。以上でございます。  座長 どうもありがとうございました。それでは今まで御説明をいただきました資料 1−1から1−3につきまして、御質問あるいは御意見がございましたらお願いをした いと思います。崎原委員どうぞ。  崎原委員 未収金の原因で制度的なもので追加というわけではありませんが、2つあ るということを御紹介させていただきます。  1つは外国人未払いの問題でございます。調べましたら都道府県の単位で対応が随分 違います。東京都の場合は、ここに持ってまいりましたが、外国人未払い医療費補てん 金申請の手続をすることとなっています。ただ算定した医療費の7割しか支払いがない ということで、3割分がいわゆる未払いで病院の負担になるということでございます。  もう1つはホームレスの問題です。路上生活者に対して救急車で外来に来る場合、支 払わないことがもちろん圧倒的に多いものですので支払いの規定がありませんが、これ も都道府県によって違います。東京都では消防庁によりまして救急疾患者による損失保 障制度というものがございます。この消防庁の制度を利用しまして補てんを受けるわけ でございます。これも全額というわけではございません。年度ごとの予算が決まってい るということで、その予算の範囲の中で各病院が分配するということで、大まかこれも 6割から7割ぐらいでございます。3割から4割は未収金になっているということを御 承知いただきたいと思います。  座長 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。小森委員どうぞ。  小森委員 質問をさせていただきたいと思います。国立病院機構の医療未収金の中で 破産更生債権という言葉が出ています。我々の一般民間病院では使わない言葉ですので、 御説明をお願いしたいと思います。それから平成18年度から平成19年度に当たって、 1年間未収金が発生しているにもかかわらず、未収金の債権の総額が変わらないという ことは、多分以前に発生した未収金を何らかの形で償却していると思われます。その償 却方法を教えてください。それから5月21日に、厚生労働省と国立病院機構との間に分 科会が開かれています。その中でもお話しされているようですが、生活困窮者が92%を 占めている。これはかなりの率でパーセンテージでは多すぎるのではないか、件数にし たら45,000件ほど未収金があって、その総額が46億円という話です。45,000件に対し て法的処置等が余りに少なすぎるのではないかと思っております。以上のことにコメン トをいただきたいと思います。よろしくお願いします。  古川室長補佐 まず1つ目の破産更生債権は、簡単に申し上げますと独立行政法人の 会計基準それと企業会計原則に基づく考え方でございます。これは病院機構独自のもの ではございません。  償却の方法としましては、事務要領を定めております。それに基づいて処理している ということです。例えば費用の貸し倒れ処理の計上につきましては、過去3年の実績に 基づいて計上しまして、その額に対して毎年度事務要領に基づきまして各病院が理事長 の許可を得たものについて償却していくと、その事務要領で認められているのが何種類 かございます。例えば3年以上過ぎたもの、住所不明のものなど回収が非常に難しいと 判断されるものについて、承認して許可をもらって償却するという制度になってござい ます。18年から19年が余り変わらないというのは、19億くらい発生するところに対し て約9億の償却と、2億から3億の回収ということですので恐らく変わらないというこ とになっているかと思います。  それと生活困窮が非常に多いではないかということでございます。本当はもっと詳細 に理由を突き詰めれば資料1−1のようになるかもしれませんが、そこまでの調査等は 行っていません。なるべく近いところに当てはめれば、生活困窮のところになるという ことだと思います。  小森委員 その中で、3年以上するとほぼ全額償却できているように思うのですが、 通常税法では、そう簡単に償却を認めていないと思うのです。償却できているわけです か。  古川室長補佐 必ずしも全部償却しているということではないと思います。一生懸命 努力して、分割やいろいろ連絡をとりながらやっているというところも当然あろうかと 思います。その辺は理事長申請のときにもっと努力しなさいといったことで、全部が全 部償却しているということではないと認識しております。  崎原委員 この点につきまして、民間病院は貸し倒れになった場合は損金や必要経費 ということで一応処理ができるということになっています。これは4病協の方で、公認 会計士でおられる田中委員がおられまして、その方の御意見でございますが、その場合、 所得税法の基本通達及び法人税法基本通達によってある程度厳重な基準が設けられてい るということでございます。回収不能の金銭債権の共倒れに当たることの認定が非常に 厳しいと、資産状況を調べたり、支払い能力を調べたり、各年度に税務署に申告すると いうようなことでございます。それが認定されるのが非常に難しい。時効が3年でござ いますが、3年になったら自動的に損金に算入される、税金の特典を受けられるという わけではありません。時効が成立した場合に、債権者から時効の援用つまり消滅時効の 利益を受けるという意思表示があって初めて債権と認めるということがございまして、 民間の病院としては少しでも損害をとどめたいというふうに思っていますが、国立病院 機構は会計上税金とは余り関係ないということもございまして、そのような処理で済ん でいるのかと思っております。  座長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょう、対馬委員どうぞ。  対馬委員 都立病院の方にお伺いしたいと思います。2ページ目のところに未収金の 発生防止策で、最初に高額療養費制度ですとか出産育児一時金等が書いてあります。例 えば出産育児一時金については、昨年の10月から受取代理制度になりました。ですから 数字的には効果は見えにくいと思います。高額療養費制度も70歳未満がことしの4月か らです。このあたりの効果というのは、今足元の状況ですが実際日々いろいろな御苦労 をされていながらどんな状況か、もしおわかりになればほかの国立病院機構さんであり ますとか、全日病さんなども今の足元の状況をお伺いしたいと思います。  座長 最初に都立病院からお答えいただいて、もしお答えがあれば国立病院それから 病院会からお伺いできればと思います。  中野課長 制度が始まったばかりということもございまして、それから定量的にとら えるのが極めて難しいものですから、これでどのくらい防げているかというのはわから ないところであります。当然患者さんの方から申し込んでいただくという一つのアクシ ョンをしていただかないといけないということですので、とりあえず少しでも未収金の 額を小さくしていこうということでこれをなるべく進めていこうということです。こと しはとりあえず設けていくというところです。済みません、お答えになっておりません。  古川室長補佐 国立病院も同様にまだ調査等しておりません。  座長 病院会はいかがでしょうか、崎原委員、何かコメントがあればお願いします。  崎原委員 今言われましたように、私どもの病院でも厳密な調査をしているわけでは ありませんが、従来高額医療制度は非常によく利用しておりました。私ども患者さんが 入院したときに必ずその旨を申しておりましたので、この新しい制度ができたのは非常 に進歩だと思いますが、病院自体にとりましては、それほど大きな問題ではないような 印象を持っております。  対馬委員 私ども保険者としては、本来ですとやはり本人がお支払いをしてそれから 我々の方に請求が来るというのが筋だろうと思うのですが、恐らくこういった問題を含 めて全体的には患者さんのためになるであろうということで賛成をしたわけです。今後 とも、ここの効果がどれだけ出るかですが、ぜひ関心を持って眺めていただいてまたそ の結果を教えていただけましたら大変ありがたいと思います。  座長 ありがとうございます。先ほど山崎委員からお手が挙がっていました。どうぞ。  山崎委員 国立病院課にお聞きしたいと思います。未収金債権の総額は、独立行政法 人化は平成16年からだと思いますが、その前の国立病院のときの各病院の総合での債権 というのを引き継いでいて46億円ということでしょうか。  古川室長補佐 承継いたしましてその額だということでございます。  山崎委員 総額ですか。  古川室長 はい。引き継いだときとは額が変わっていると思いますが、これがその額 のものでございます。  山崎委員 金額としては非常に少ないと思うのですが、これを単年度で貸し倒れで落 としていくという処理した結果、この程度の数字で落ち着いているということでしょう か。  古川室長補佐 過去3年、大体このような額で償却しております。  原委員 都立病院における個人未収金についてお聞きしたいと思います。主税局に回 収依頼ということで367,368,000円ですか、回収実績が59,486,000円で16年度からと いうお話を先ほどされていました。その辺の関係で、都立病院と主税局との契約等結ん でやっているのかどうかお聞きしたいと思います。  中野課長 この事業につきましては、我々だけでなく例えばほかの都庁の中に中小企 業への貸付金ですとかいろいろな債権がございます。その債権回収がうまくいかないと いうことで、一番こういったノウハウを持っている主税局の方から「よかったらやりま すよ」ということでお声がかりがあってやったものでございます。今の契約というお話 でしたが、主税局の職員を3人ほどですが、我々病院経営本部に兼務をさせております。 病院経営本部の人間という身分も兼務した上で債権の回収に当たっていただいていると ころでございます。  座長 原委員よろしいでしょうか。島崎委員どうぞ。 島崎委員 木村委員は、未収金発生原因について個別列挙された上で、感じとしては救 急診療時の保険証、所持金なしというのが多いのではないかということでした。確かに、 救急などの場合に保険証を持っていないということはあるでしょうし、相当の金額が未 収金として発生するだろうというのはわかるような気がしますが、そのことと、資料1 −3の東京都の病院経営本部さんの先ほどのお話、あるいは国立病院機構さんのお話と はどういうふうに整合するのか、どのように頭の整理をしておけばよろしいでしょうか。 つまり、例えば国立病院機構さんの発生理由のところでいいますと、救急診療時の保険 証、所持金なしというのはどこに該当するのか、生活困窮のところに入っているという ふうに考えるべきなのでしょうか。また、都立病院における個人未収金について、未収 金となった主な理由について定量的に分析したわけではないけれども、だいたいこの順 番で多いのではないかというお話がありました。そうすると、救急診療時の保険証、所 持金なしというのはどこのところに該当すると考えればよろしいのでしょうか。  古川室長補佐 国立病院の方は、個別に見ないとわからないということで御勘弁いた だければと思います。  座長 都立病院の方何かありますか。  中野課長 今、救急のお話がございましたが、ここでいきますと未収金となっている 主な理由の上から3番目です。患者の居所不明、これなどがかなり多いのかなと思いま す。結局、例えば住所なり保険証なりを、「持ってきます」ということだったのですが実 際連絡をしてみたらいなかったとかこういったケースがかなり多かったように思います。  木村委員 救急診察時の保険証、所持金なしということで、当然所持金がないという ことは生活困窮者というように……ある程度所持金を持っている人であれば生活困窮で ない。そういうときにお金を持っていないと、持ち合わせが非常に少なくて足りないと いうことで、そういう方はやはり生活困窮者の方が多いと考えていいと思います。  座長 ありがとうございます。そのほか、この件につきまして御意見、御質問ござい ますでしょうか。小森委員どうぞ。  小森委員 これですと非常にぼやっとしている部分があって、前回のお話の中でも、 やはり救急をやって一生懸命にやる病院の未収金率が非常に高くて、厳しい状況に置か れるという話になっておりました。都立病院さんの場合は、18病院でこれだけの未収金、 国立病院機構で言いますと146病院で、これだけの未収金といいますと相当差があるわ けです。ほかの文章を見ますと、やはり国立さんの場合は結核病床や余り未収金が発生 しにくい、金額も小さいものが含まれていてはっきりしないところがあるので、次回ま でにできたら、どこに大きな未収金が発生しやすいのかということをもう少し明確にし た方がいいのではないかと思います。その点よろしくお願いいたします。  座長 国立病院機構の方でも御検討いただければと思いますが、そもそもそういう原 データがあるかどうか自体が問題だと思います。御検討の方はお願いしたいと思います。 今村委員どうぞ。 今村委員 前回のこの委員会で申し上げましたが、きょうは直接都の方からお見えにな っているのですが、都立病院の中でも相当病院間の差があって、均一な額ではない。や はり実施している医療内容によって、相当大きな未収金の発生の差があると伺っている ので、その辺もできましたらこの場で御紹介いただければいいと思います。  中野課長 先ほど11病院で9億2,700万と言いましたが、当然病院間の差が相当あり ます。11病院といいましても総合病院が6、精神病院2、小児科病院2、神経難病を扱 っています神経病院があります。やはり当然総合病院が多うございます。特に東京ER というのを今3つの病院で展開しているところでございます。額を言うのが恥ずかしい くらいですが、墨東病院という錦糸町にある病院が3億円ほどございます。次に広尾病 院が1億円ほどの未収金になっております。府中の場合は土地柄があるのかもしれませ んが、7,500万円程度の未収金でございます。そういうことでかなりの差はございます。  座長 ありがとうございます。そうしますと救急を扱っているところがどうしても未 収が発生しやすいという傾向があるということ自体は大まかですけれども言えるという 感じでしょうか。  中野課長 おっしゃるとおりだと思います。今申し上げた3つの病院、すべて救急が メインの病院でございます。後は松沢病院という精神科の非常に大きな病院があります が、ここもかなり大きくて7,500万円ほどございます。  座長 そこはやはり生活困窮の方になる感じですか。  中野課長 ええ、それもありますし、いわゆる精神科救急という事業もかなりやって おりますので、両方当たるかと思います。  座長 ありがとうございました。畔柳委員どうぞ。  畔柳委員 国立病院の関係でお伺いしたいのですが、今の話題と関係します。国立病 院の対象になっている病院で、救急をやっているところはどのくらいあるかというのを 明らかにしていただいた方がよろしいのではないかと思います。  座長 今お答えいただけますでしょうか、もし無理であれば次回以降ということでも 結構です。  古川室長補佐 救命救急センターにつきましては17病院ございます。二次救急という のはもっとあるとは思います。ちょっと答えられる範囲で言えばそのくらいです。  畔柳委員 この中の内訳がわかったら恐らくさっきの議論と関係すると思いますので、 ぜひ調べていただきたいと思います。  もう一つは、債権回収の実施状況というので3番目のところに回収率が出ています。 これを見ますと、私は別に医療に関係なくて、債権回収もする弁護士としての経験とし て前提を考えるとえらく回収率がいいのです。こんなにすごい回収率だということが前 提になって世の中に広がっていくとかなり問題でないかと思うのです。この数字につい ては気をつけていただきたいと思います。実は何でこんなに回収率がいいのかをお伺い したいということです。数が非常に少ないから、本当はこれから余りものを言わない方 がいいのかなと思っているのですが。  座長 今この回収率でおっしゃったのは3の国立病院の全体ということでしょうか。  畔柳委員 特に法的手続を経てということですね。例えば督促手続をしたとか、小額 訴訟をやったとか訴訟をやったと出ています。支払いの督促制度を使って、と言います のは実際に全然違うあれでやってもこんな率は出したことないので、ちょっとびっくり しているのです。  座長 国立病院機構、何かその点についてコメントがございますか。  古川室長補佐 実施している件数あるいはその病院が少ないので、そういう結果にた またまなっているのではないかと思います。  座長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか、特段なければ次の議題 に移りたいと思います。よろしゅうございましょうか。  はい。それでは次の議題でございます保険診療について、これについても先ほど御紹 介ありましたように事務局から資料を御提出いただいております。御説明をちょうだい したいと思います。よろしくお願いいたします。  神田課長 それでは資料2の保険診療契約についての御説明をさせていただきます。  資料をおめくりいただきまして、最初に書いてございますのは保険者と保険医療機関 との法律関係についてということです。前回御説明をさせていただいたわけですが、5 ページをごらんください。保険者と保険医療機関との関係について法律の解釈では、「公 法上の契約」とされております。基本的に5ページの解釈のところに書いてございます ように、一定の療養の給付の担当方針等に従い、療養担当規則に従って療養の給付を被 保険者に対してしていただきますと、その対価として診療報酬を請求してその支払いを 受けるという双務契約だという解釈になってございます。  条文で言いますと、1ページの六十三条三項というところで、被保険者の方は、自分 の選定する保険医療機関から療養の給付という現物給付を受けると書いてございます。 六十五条により厚生労働大臣の指定を受けた病院、診療所というふうに六十三条の三項 でございますけれども、六十五条のところで指定というのは、病院、診療所、薬局の申 請によって行いますよということが書いてございます。七十条は、一定の基準に従って、 療養の給付を担当しなければならないとなっております。  一部負担金につきましては、七十四条のところで、一部負担金を保険医療機関に対し て療養の給付を受ける者は支払わなければならないということで、七十六条で一部負担 金を差し引いた額を診療報酬としてお支払いするというようなことが法律上書かれてい るということでございます。  そういう保険者と保険医療機関との間の公法上の関係ということを前提にしまして、 6ページ以降でございますが、保険診療契約についてその当事者がどのようになるのか ということについての判例ですとか学説について、文献等で整理したものを出させてい ただいております。最初に書いてございますのが、被保険者と保険医療機関が保険医療 診療契約の当事者であるという説で、判例とか通説と位置づけられております。基本的 には下のポンチ絵をごらんいただきますと、被保険者と保険医療機関との間に診療に関 して直接診療契約が締結されると見るべきである。これは民法で申します準委任契約、 法律行為でない事務を委任するという準委任契約に該当する。それから保険医療機関が 保険者に対して、先ほど御説明申し上げましたような公法上の義務を負担するといった ことですとか、被保険者と保険者の間に公法上の法律関係、例えば保険料を納めるとか 保険給付を行うということになろうかと思いますが、そういう関係が存在するというこ とと被保険者と保険医療機関との間に直接の診療契約があるということとは矛盾するも のではないというのが基本的な考え方ということになっております。理由としてはそこ にございますように、先ほどの条文でも見ていただきましたが被保険者たる患者は自分 で保険医療機関を選んで診療を受けることになっているということですとか、一部負担 金は直接保険医療機関に支払う義務があることになっている。また診療の内容というの は保険者と保険医療機関が決めてしまうということではなくて、個々の診療内容という のは、医師と被保険者とによって順番に中身が決まっていくというようなことからこの ような説が唱えられているということでございます。  判例でございますが、その下にございます。ある医療機関で受診をして容態が悪化し たため別の病院に搬送したのですが、そこで亡くなられたということで損害賠償を請求 したところ医療機関側から、契約の相手方は患者さんではなく保険者と、この場合は国 民健康保険ですが、保険者と契約しているので直接の義務を負っていないという医療機 関側の反論がなされたものです。判決の中では、判旨のところに書いてございますが上 から2行目でございます。先ほどの事由に掲げてございますように、平成6年ぐらいま で国保の方は療養取扱機関と言っていましたが、今は保険医療機関と統一されておりま すので保険医療機関を自由に選択できるというようなことですとか、一部負担金を直接 払うといったこと、何行か飛ばしていただきますと、途中で保険診療から自由診療への 切りかえもできるということから、基本的には保険者と保険医療機関との間にどのよう な公法上の権利関係が生ずるかとはかかわりなく、被保険者と療養取扱機関との間に直 接診療契約があるのだというような判決でございます。同旨の判例が地裁レベルでその ほかにも出ております。  その次、8ページでございます。保険診療契約の当事者は保険者と保険医療機関であ るという説、第三者のためにする契約説と書いてございますが、その保険診療契約とい うのは、保険者と保険医療機関との間で成立して患者たる被保険者の意思表示によって 治療が行われるということになっております。後で出てまいりますが、患者さんが被保 険者証を提示することによって、受益の意思表示をすることによってその保険者と保険 医療機関で定められた契約内容に従って給付が受けられるのだという考え方でございま す。そういう考え方ですが、患者と保険医療機関との間に私法上の契約があるというこ ともこれと矛盾するものではないということで、それぞれ患者と保険医療機関との間の 契約というものと一般的、基本的な契約である第三者のためにする契約というのは両立 し得るというような考え方でございます。理由としまして、保険医療機関は療養担当規 則に従って担当しなければならないとか、厚生労働大臣とか都道府県知事の指導・監督 を受けるといったもろもろの義務がかかっているということを、この考え方であると説 明がしやすいということが書かれております。これは判例で第三者のためにする契約と いう考え方をとった判例がそこに書いてございます。  9ページですが、これは最初に交通事故で診療いたしまして16日間、かなりたったと ころで保険証を提示して保険診療に切りかえたいと言ったところ、病院側は自由診療だ といって自由診療を前提にしてお金を払えということが争いになったということです。 診療契約はやはり最初のところに線が引いてありますが、患者と医療機関との間に締結 される諾成、双務、有償契約だと書いてあります。したがって患者さんにおいて交通事 故ですので自由診療から始まっております。保険診療によって治療を受けるという意思 表示がされない限りは患者とお医者さんとの間に原則として自由診療契約を締結された と理解されますよ。保険診療の契約当事者は保険者と医師等であって、被保険者は受益 者というふうに目されて、受益の意思表示を被保険者証の提出によって行わなければな らないとされています。  下の方にまいりまして、保険医療機関の指定ということに関係についてですが、国こ れは療養取扱機関のときには知事が行っていたということですが、今は厚生労働大臣が 指定をするという関係ですが、そのような指定をするとどうなるのかということについ てですが下線を引いてあるところの2行目ぐらいから、そうすることによって保険者と 医師等との間に、医師等においては被保険者のために国保法に定められた療養の給付と いう現物給付を行う義務を有し、保険者においては保険医に対してその対価、診療報酬 になろうかと思いますが支払う義務を負うことを内容とする、被保険者のためにする契 約、第三者のためにする契約というのが成立しているものと解される。ということで、 被保険者証を提出する行為は、その受益の意思表示だというようなことが判旨されてお ります。その下の方ですが、この場合は自由診療契約を解除していなくて途中で被保険 者証を出したということですが、被保険者証の提出があったからといってそのことで自 由診療契約が消滅するというわけではないということで、法的には医師の患者に対する 療養の給付というものは自由診療と保険診療の両側面をあわせて持っているのだという ことが判旨されております。  10ページですが、前回病院団体の委員の方からお話があったところですが、この第三 者のためにする契約という考え方に立ちまして、あくまでも保険診療契約の当事者は保 険者と医療機関だということで、したがって保険者が医療機関に対して全額診療報酬の 支払い義務があると、それを前提にそうであるにもかかわらず保険者が7割、患者が3 割を負担するという法律関係について理解をすると、本来は診療報酬全額を払うべきと ころ3割部分については、本来は保険者が患者に対して持っている一部負担金の債権と いうものを診療報酬にかえて払う代物弁済だという考え方で、それが未収金になって不 良債権化したということは、その債権の価値がなくなったので、代物弁済が無効だから 改めて保険者に全額払えということが言えるのだという考え方を弁護士さんが書いてお られるものがございますので、紹介をさせていただいております。  11ページですが、これは保険者と被保険者が当事者だという考え方です。保険者が現 物給付として患者さんに療養の給付を提供するのに対しまして、保険医療機関は履行補 助者の立場に立つという考え方でございます。ここの理由も基本的には現物給付が原則 的な形態であって、先ほどの説と同じように療養担当規則による診療内容の制限ですと か指導・監督を受けるというようなことが説明をしやすいということからこのような説 がとられているということでございます。主な学説と判例について整理をさせていただ いたものでございます。以上でございます。  座長 ありがとうございました。ただいま保険診療契約につきまして事務局から資料 に基づいて御説明をいただきました。これにつきまして御質問、御意見があればお願い したいと思います。小森委員どうぞ。  小森委員 まさに未収金がふえていくのには大きな問題があって、一つは今病院のほ とんどが経営危機に差しかかっていますので、それでこの未収金が非常に痛手になって いると。昔であれば未収金くらいある程度吸収できたものが吸収できなくなってきてい る。もう一つはモラルハザードの問題です。払わなくてもいいではないかという国民が ふえてきた。それによって未収金がふえたという問題です。ほかにあるのは、保険証の ない人が非常にふえていて、そういう人たちを病院は診なければならないそこに未収金 が発生してしまう。要するに保険証をない人を診れば当然高額になるわけですから、高 額な金額は払いきれないという未収金。それから今お話がありましたが、そういう中で 実は10割の保険証が今保険組合の方から出ていると思うのです。10割負担という保険 証を持ってこられる患者さんがいます。要するに証明書として発行されているのだと思 いますが、10割負担というのが存在します。資格証明書になります。それを保険証だと いって持ってくる方がおられます。  それからこれは医療の問題だと思いますが、昔は1割負担だったものが今3割負担ま できました。これによる病院の未収金、当然金額の負担がふえているわけですから。そ の中に特定療養費というものがありまして食事代、部屋代といって昔は余りかからなか ったものが10割負担で当然患者さん負担になりました。そういうものもふえていますの で、患者さんが窓口で支払う金額が大変高額になった。それが払いきれなくなって、先 ほど国立機構の方から出ましたが生活困窮者という中ですべて払えなくなって、一部負 担金を丸ごと支払わなくなることによって病院の未収金がどんどんふえている。そうい うふうに認識しております。  そういう中で先ほど我々病院会が言っていたのは、保険証のない人等全部含めてこの 辺はこの契約にはありませんが、3割負担になってどんどん負担がふえた中で支払わな い者に対して、木ノ元弁護士が言ったように契約が履行されない場合は非常に厳しいの で、ぜひ見ていただきたいというふうなことが出てきたのだと思います。以上です。  座長 ありがとうございます。崎原委員、どうぞ。  崎原委員 私どもとしては、木ノ元弁護士の第三者のための契約説ということが一番 わかりやすいと思っているのですが、私ども法律の専門家ではございませんので、この 場で法律の専門の先生がたくさんおられますのでいろいろ教えていただきたいと思って います。ただ、この説に立ちますと健康保険とか国保で未払い者に対する処分がござい ます。いろいろな状況や条件がついてはいますが、保険者が被保険者に対して未払いに よって処分できるというその条項は、やはり第三者のための契約説に立つと僕らにとっ てはわかりやすいと思うのです。そこら辺、法律の専門家としてはいかがでしょうか。  座長 法律の方の御意見もあろうかと思いますが、その前にほかの御意見もあればと 思います。今村委員どうぞ。  今村委員 意見ではなくて、教えていただきたいと思います。先ほど大変詳しく御説 明いただいてありがとうございました。2ページの七十四条のところで、2項に書いて ある、保険医療機関が注意をもって支払いを受けることに努めたけれどもだめだった場 合に保険者は云々という記載は、先ほどの3つの説を説明していただいたポンチ絵の中 で太い矢印関係がそれぞれあったかと思うのですが、どの場所にそれが位置づけられる のか、ないのか、あるとすればどの説なのか、少しわからなかったものですから教えて いただければと思います。  座長 今の御質問について事務局からお答えいただければと思います。  神田課長 この部分に関して言いますと、どの説に立つかということではなくて実定 法としてこのように定まっているということでありますので、基本的に学説いかんにか かわらず、先般1回目に申し上げましたように、一時的にはまず医療機関の方で御努力 をいただいて例えば配達証明で請求をしていただくとか、来たときに何回も請求をして いただくとかそういう努力を尽くしていただいた上で、それでもなお払わない人がいる ときには、これは前回つけさせていただいた解釈ですが、お手元の同じ資料の14ページ に解説書でありますので、役所側の解説だと受け取っていただいて結構だと思いますが、 基本的には昭和33年に窓口払いに統一をしました。そのときに市町村は自分の債権とし て取るわけではなくて、あくまでも人の債権ですが強制徴収をしてそれをお渡しすると いう趣旨でそのような規定ができた。14ページの1段落目の最後の方ですが、保険者の 処分関係も債権債務関係の当事者、債権者として取るということではなくて、取ってお 渡しするということになっております。窓口払いに統一したわけですので14ページの3 段落目のところにありますが、療養取扱機関、これは保険医療機関になりますが、保険 医療機関にも公法上一部負担金を取っていただくという義務を遂行してもらうというこ ととして、保険者としてもできることはするということでそのような規定が設けられた ものだというふうに理解しております。  今村委員 そうすると、この文言は3つの中の矢印関係ではないという理解でよろし いということですか。  神田課長 特段どの説に立っても、法律にそう書いてありますので、そういうことか と思います。  座長 矢印がないというか、どの説でもそこには矢印があるというふうに、言った方 がいいのだと思います。  今村委員 すべてにあるということですね。  座長 はい、その方が多分一番適切だろうと思います。  先ほどの崎原委員の御質問ですが、ここは多分法律学同士で余り議論してもしょうが ないということはあるのでしょうが、余り学説的な議論ということではなくて、恐らく ごく一般的に理解すると、どんな感じになるのかということを法律の先生でどなたでも 結構ですが、お話をいただければと思います。  河上委員 これは幾つか考え方があるということで、きちんと整理されていると思い ます。条文の書きぶりからあるいは言葉の選び方から言いますと、これは明らかに法形 式としては現物給付を行うということで、その給付の機関を御指定して、そして指定さ れた医療機関がその給付を行うという形で、いわゆる第三者のためにする契約という形 の法形式をとっているのではないかというふうに通常は理解されます。ただ、裁判例な どでいろいろ出てくる中で一番問題になるのは、むしろ医療機関と患者さんとの間での いわばこういう診療を求めていたのにきちんとやってくれていないではないかといった、 医療事故に関する裁判例などではむしろ医師と患者の間での準委任契約を前提とした注 意義務を尽くしているか、尽くしていないかという争いになることが多くてその限りで は判例など出てくるときは、患者と医療機関との間の契約関係というものを前提とした 争いになってくるケースが多いということです。  したがって先ほど整理の中で判例通説として出てきました最初のケースは、これはむ しろ医療機関と患者との間での診療契約の中身をめぐる争いになってしまっているので、 こうなっているのではないかと。  もう一つは自由診療というのがございます。その自由診療の部分というのは明らかに 保険とは別の形で契約を考えないと説明がつかない部分であります。その意味では保険 契約的な部分と自由診療の部分と二面性があるという、大阪の判決、先ほど2つ目です か9ページの下のところに出てきまして、下から3行目医師の患者に対する医療給付は 自由診療と保険診療の両側面をあわせて有しているのだという部分が出てくるのではな いかと思います。ただ、患者さんの目から見ますと、これはどうでもいいことです。要 するにお医者さんを自分で選んで、その人に自分の診療を依頼してそして診療に対して 代金を払うのだけれども、その代金の一部は保険から払ってもらっているという意識が 患者さんは普通に持っていることでございます。ですからその意味では一般的な理解か ら言えば、むしろ私法上のお医者さんとの契約に保険金が払われていて、それは支払い 手段としては保険が使われているのだという理解が広く受け入れられている場面が多い ということだろうと思うのです。  法形式をどちらにとるかによって、恐らく当初の債権の帰属が決まってくることがわ かるわけです。そこがかなり微妙な問題になってくると思います。当初の債権としては 保険機関がそもそも持つのだということで、その債権の回収の代行を医療機関がやって いて、そして最終的には費用としてそこを相殺してしまうという形をとっているのだと いうふうに考えれば、これは第三者のためにする契約で説明がついて、しかも焦げつき に関しては善良なる管理者としての回収代行をやったのだけれども取れなかったわけで すから、やはりきちんとした形でまだ費用が払われていないという議論になじみやすい ということになります。  最終的にどの構成をとるかということは確かに大きな問題であろうと思いますが、現 段階では私は法律上の文言からいえば、書きぶりからいえばこれは第三者のためにする 契約という形での書きぶりで書かれているのではないかという印象は持っておりまして、 他方で自由診療との混合契約になっているという理解をしております。これは私の個人 的な理解です。ほかにもいろいろな考え方があるかもしれません。  島崎委員 私が法律家がどうかは別にしまして、第三者のためにする契約だという考 え方をとりますと、たしか座長もどこかで指摘をされていたような気がいたしますが、 被保険者が保険医療機関に対してなぜ一部金を支払うのかという問題であるとか、診療 契約の実態に合っているかという問題がある。被保険者と保険医療機関との間でどうや って具体的に診療の契約内容が決まっていくのかといえば、現実問題としては「普通の 契約とは違って」というと少し言いすぎかもしれませんが、最初から決まっているわけ ではなく、患者の症状等に応じて具体的な診療内容が決まり契約が発生するというふう に考えられるべきだと思うのです。そうしたことと第三者のためにする契約ということ とうまくマッチングするかどうかというのは、今日はそういうことを検討する場ではな いと思いますが、いろいろな議論ができるのだろうと思います。  私自身は、先ほどの整理の分類で言えば、1番目の被保険者・保険医療機関当事者説 というのが一番素直だろうと思っていますが、そもそもこの検討会で何でこういう議論 をするのかといえば、実際に保険医療機関で一部負担金の取りはぐれが生じたときに、 その処理つまりだれがどのように負担すべきなのかを論じる前提条件として、どういう 法律関係なのかということを紹介されたと思うのです。あえて申し上げると、前回およ び今回、崎原委員が本日の資料の10ページにあります木ノ元先生のご意見を紹介され賛 意を示されましたが、私が違和感を覚えるのは、実定法で保険給付を受ける者は一部負 担金を支払うことが規定されているのに、なぜあえて第三者のための契約の当事者だか らという理由で保険者は医療機関に対し本来全額診療報酬支払義務があるということを 言う必要があるのだろうかということです。実定法で規定される以前であったらともか く、前回紹介されたように、昭和30年代に入って、被保険者の保険医療機関への一部金 の支払義務等が法令で明確に規定されたわけですから、そういう前提の下でものを考え ていくというのが一番素直だろうと思っております。  座長 今お二方の御意見もありましたように、理解の仕方としてはいろいろな局面が あるかと思います。ただ私自身の個人的な感じとしては、ここの保険診療契約の法的性 質をいろいろ議論しても、ここで主として議論の的になっている問題の解決には余り結 びつかないというように思っています。といいますのは、要するに法律上一部負担金と いうものが書かれてしまっていて、それを一定割合で患者が負担せよとなっています。 しかも他方で、保険者の方は保険医療機関には一部負担金を除いた分しか払いませんと 最初から書かれていますから、保険診療契約がどういう中身になっているかということ をいろいろ突っ込んで議論しても、この検討会でこれから考えていかなければいけない いろいろな方策というものとは、ちょっと直接的には結びついてこないのかなという印 象は持っております。  あと、法律家では畔柳先生がいらっしゃいますが何かございますか。  畔柳委員 まだよくわかっていないと言った方が間違いないわけです。さっきの矢印 がどうこうという話を聞いてよくわからなかったのですが、今の保険局といいますか、 その解釈としてはぎりぎりのところはどういうことになるのですか。つまり3割の負担 金が回収できなかったとします、回収できなかったらどういうことになるのですか。  座長 それは端的に申し上げると、現行法の枠組みからすれば基本的にはまず保険医 療機関の側で努力してくださいと。そして努力しても取れないのであれば健康保険法上 あるいは国民健康保険法上、保険者の方で徴収するということもありますというそうい う規定のつくりになっているというのが現状だと思います。問題はそこのところで一体 どういうことをすれば努力をしたというふうになるのか、あるいは今まで実際問題とし て保険者の方で病院に発生した未収金について、実際に徴収をするということが行われ ていないということもあって、「ではどうしますかね」ということだと御理解いただけれ ばと思います。  畔柳委員 つまりお聞きしたかったのはその点で、まず医療機関が努力するというと ころまではわかりますが、努力した結果取れないと。今度保険者の方にやることになる わけです。そうすると保険者に武器はあるわけですが、それでも取れなかったらどうす るのかという、そのあたりをどう考えているかということです。  座長 多分そこは最終的には取れないと、そこまでということだと思います。それで よろしいのでしょうか。  神田課長 あくまでも強制徴収ができるということで、債権者としてではありません ができる限り保険者としても最大限可能なことをするととって、基本的には取ったもの をお渡しするということですので、取れないということであればそれは医療機関の債権 がその分未収になるということかと思っております。  畔柳委員 わかりました。要するに取らなかったら払う義務はないということですね。  座長 最終的に保険者が負担する義務があるわけではない。単に徴収の事務を要件が 満たされていれば行うというだけだという理解だと思います。  畔柳委員 法律の解釈ではなくて、それが相当かどうかというのは別な問題としてあ るというふうに考えておけばいいわけですね。法律論ではなくて、これから先の問題と して。  座長 ですからまさにどういうふうにするのか、健康保険法なり何なりがこういう仕 組みをとっていること自体がいいのかどうか、あるいはさらにきょうの最初のテーマと 関係しますが、未収金が発生するメカニズムが幾つかあるので、その分析を通して未収 金が発生しないようにするにはどうしたらいいのかということがあって、恐らく一番考 えなければいけないのはどうやったら未収金が発生しなくなるだろうかと、そこなのか と思っています。それにもかかわらず発生した未収金をどうするかというのはまたもう 一つ別の問題だと思います。崎原委員どうぞ。  崎原委員 私も個人的に、法解釈がここで決められることは余り期待していません。 座長の言われるように余り意味のないことかもしれません。ただ私どもがこの問題を2 年前に提起いたしましたその背景は、先ほど小森先生が言われましたようにかなり病院 が苦しくなってきたということがありまして未収金対策をいろいろ考えました。この法 律の条文に基づきまして保険者に対して処分を要請したところ、保険者の方はそんなこ とは今まで前例がないとか、私たちがそれをやる必要があるのかといった門前払いです。 国会でも一部の議員が質問してくださったのですが、その当時、今から2年くらい前で は、やはり患者さんと病院側だけの問題で保険者は関与しないでいいという答弁が繰り 返しされたということがございました。その中で私たちはいろいろ考えて、やはりこれ は一つ法解釈の中で、法治国家でありますので法律上私どもは正しいことをやっている のだ、それによって答えてくださいというそういう運動を展開してきたという背景があ るということを御理解いただきたいと思います  座長 ありがとうございます。いろいろ議論があろうかと思いますが、もう一つテー マが残っております。特段御発言がなければ、最後のテーマに移りたいと思います。  (3)としまして、いわゆる医師の応招義務について、やはり事務局から資料を御提 出いただいております。これについて御説明をお願いいたします。  栗山医事課長 医事課長でございます。資料3で、いわゆる医師の応招義務に関する 規定というものを用意しておりますので、これに沿って説明させていただきたいと思い ます。  御承知のように医師法第19条では、ここにありますように正当な事由がなければ、診 察治療の求めがあった場合に、これを拒んではならない。という規定がございます。こ れにかかわる通知が出てございます。解釈のよりどころにもなるかと思います。この下 にありますように、この通知では診療の求めがあった場合には必要にして十分な診療を 与えるべきという基本的考え方を示しております。  具体的には記以下に書いてあります。一つには、患者に与えるべき必要にして十分な 診療とは医学的に見て適正なものいうものであるということ。それから二のアンダーラ インの部分ですが、何が正当な事由であるかは、それぞれの具体的な場合において社会 通念上健全と認められる道徳的な判断によるべきという、これが基本的な考え方だと思 います。例を挙げてございます。医業報酬が不払いであっても、直ちにこれを理由とし て拒むことはできない。そのほか、診療時間外のこと、これもこれを理由として拒むこ とは許されない。裏をめくっていただきますと、天候の不良あるいは専門外であるとい うことも、それだけでは拒む「正当な事由」には当たらないということでございます。  三では、事務系統の手続によって不当におくれたり、こういった面について適切な配 慮が必要であるということを念のために規制しているわけでございます。  このほか、応招義務に関してもう一つ通知があります。ここでは個々具体の例で別紙 略となっていますが、記の答えの1にありますが、これは疲労のために断った事例であ ります。1のアンダーラインの後ろをごらんいただきますと、「単に軽度の疲労の程度を もってこれを拒絶することは、義務違反を構成する。」としていますが、実際には1の最 後にありますように、「さらに具体的な状況を見なければ判定は困難である」と書いてご ざいます。  まとめますと、1枚目の記の二のアンダーラインにありますように、「正当な事由とい うものについての判断は具体的な場合において、社会通念上健全と認められる道徳的な 判断によるべき」と、こういうことで解釈していかなければいけないと考えております。 以上でございます。  座長 ありがとうございました。ただいま医師の応招義務につきまして、法律の規定 それから通達を参照しながら御説明いただきました。この点につきまして御意見あるい は御質問がありましたらお願いしたいと思います。小森委員どうぞ。  小森委員 実際この応招義務というのは、教育上厳しく医学部のときに教育すべき問 題なのかもしれませんが、現実は医療の細分化が進みまして特に小児科を見ていただけ ればわかりますように、昔は内科の医師も外科の医師も夜間当直で小児科を診ていまし た。現実何が一番の原因かといいますと訴訟です。総合診療科という科が実際存在すれ ばいいのですが、内科の専門医が泊まっていたり、外科の専門医であった場合は小児科 を診ることを今はほとんどの医師はしません。これが小児科の医師不足につながってい るわけです。とりあえず救急で診なさいといっても、診てその時間がむだな時間になっ て後で訴えられるというケースがありまして、病院ではほとんどの医師が拒否します。 そういうことが医師不足であり、これを応招義務違反とするのかしないのかというのは 大きなこれからの時代の問題点だと思っています。  また昔は自宅開業というのがたくさんありまして、お願いをすれば夜間先生が出てき て診療をするという行為がありましたが、今はビル診といいまして診療所と自宅が離れ ている。そうすればその時間はいないとなればどうしても患者が病院に集中する。その ときにここに書かれているように医師の過労が進むわけです。極端に医師に過労といい ますか過剰な仕事が集中する。そのようなときに果たして応招義務ということをどこま で言うのか。そして診てもらえなかったといって訴えられるケースが出てくると、もう 事前から拒否してしまうというケースが多発している。そういう中でこの応招義務とい うのを一度考え直していただきたいというのが一つです。  もう一つは、未収金にかんがみてここに出てきたというのは、毎回治療費を払わない、 払えそうなのに払わない人が来ても必ず診なければならない。今の病院は必ず診ます。 ほとんどの病院は頑張って診ていると思うのです。それが多額の未収金につながってい く場合、この応招義務というのはどこまで考えなければならないのかということをもう 一度考えていただきたいということで、ここに出てきていると思います。よろしくお願 いします。  木村委員 この記の二に書いてありますが、「何が正当な事由であるかはそれぞれの具 体的な場合において社会通念上健全と認められる道徳的な判断によるべき」とあります。 ここにいろいろな例が書いてありますが、こういうことは社会通念上ですから社会が変 わってくればいろいろ変わってくると、解釈も変わってくれば、この社会通念上という ことの出てくるものも当然変わっていくべきだと思うのです。これをつくった時代には、 これは昭和24年ですから、非常に医師もゆったりとしておりましたし社会もゆったりと していたという中でこういう幾つかの通達で出ていたと思います。やはり社会が変わっ てきて医師も変わってくる、社会通念が変わってくるわけですから、この応招義務につ いての通達の内容は当然変わっていくべきだと考えられます。この辺の内容については もう一度検討するべきであると思います。  今村委員 お二人の御意見について、お気持ちはもっともなことで、応招の義務とい うのは考えなければいけないことであることは事実ですが、ここで議論することではな いような気がするのです。ぜひ未収金の問題としてこれをどう考えるかということで考 えていただければと思います。  島崎委員 今、今村委員がおっしゃったことと重なりますが、何のために資料3が出 てきているのかということは、この会議の目的との関係で考えなければいけないと思い ます。その上で、一つだけ御質問したいと思います。実際に応招義務に反したときにど うなるのかといえば、その医師が医師として適切なのかどうなのか、要するに行政処分 の対象となるかどうか、医道審議会か何かで議論されることになっていると思いますが、 実際に応招義務違反を理由に処分を受けた例はあるのでしょうか。  栗山医事課長 ありません。  島崎委員 事実としてわかりました。結構です。  崎原委員 この問題を出したのは、今ほかの先生方も言われましたように私ども医師 もこの応招義務ということにつきましては、医師の自覚として十分自覚しております。 ただ私どもとしましては、対価というのはおかしいのですが、うちでも絶対診ますがや はり働いたということについての対価をお願いしたいと。どの世界でもそうだと思うの ですが、ただ働きというのは今ないわけです。この応招義務の局長でしたか、通達の中 で常習の未収者であるということがわかっていてもそれを拒んではならないという通達 がございました。今回これを出したのは、その通達に関して私ども医者であるのは求め られれば健康であれば診なければいけないということは十分わかっていますが、そこら 辺のところを討議していただきたいということでお出ししたということです。  座長 少し実態をお伺いできればと思うのですが、先ほど小森委員、崎原委員の御発 言にもありましたが、常習といいますか繰り返し未払いを繰り返すという方が、同一の 診療所とか病院に重ねて来られるということは頻繁にあることですか。といいますのは、 パッと思うのは、そういう方は病院を渡り歩くのではないかという気がするのです。そ ういう行動は余りとらないで、同じところに行くということがある。地域差もあるかも しれませんが、そういうことでしょうか。その辺事情を御存じであれば教えていただけ ればと思います。  崎原委員 二つございまして、一つは例えば薬の中毒者です。その中毒の方が一つの 病院で何回も時間外に来て多少お金を払うこともありますが、病院が「おまえ中毒にな るから来るな」というのです。そうするとまた次の病院へ行って、やってくれる病院を 探して歩くとそういうのが一つケースございます。あとは病院の近くに住んでいて幾つ かの理由でお金が払えないのだけれど夜中に来るといったケースがあると思います。  先ほど救急のときの未収金の話がございましたが、私どもはいつも応招義務で救急患 者さんをある意味では診ているわけです。それで救急の未払いがあるということは、こ の応招義務に関係して未払いがかなりあるということで、この問題を考えていただきた いと思っております。  小森委員 我々病院会の中での4病協、いろいろなところから注文がありますのは、 先ほどあった医療契約と応招義務の2つがセットになって、若い医師はこのセットがあ るから診なければならないのはなぜなのかと。そしてまだその上に未収金が発生するの に診なければならないのですかという疑問が非常に多いというのが一つです。そういう 中に、我々は当然患者さんが「動けない、立てない」あるいは「痛い」と言ったところ は痛いと信じるわけですから、そういう治療になるわけです。そうすれば病院の前で「動 けない、立てない」と言われれば前回お支払いがなくても当然その方が歩けるもしくは 動ける、痛みがなくなるまでは診なければならないということで、そういうケースは多 発しているはずです。そうでなかったらこんなに多額の未収金が出ることはありません。 ほかの文章にも出ていますが、結核病棟や難病センターの中での未収金もそういう意味 では多々あると思います。  畔柳委員 病院団体とは全く関係ない個人的な経験です。大学病院の顧問をずっとし ているのですが、実はこの解釈というのが末端では大きく響いています。実際にみんな 払わない患者さんを昔から抱えています。別に今問題になっているのではなくてあるわ けです。そういうときに、それを例えば断るとすぐ役所へ行く。役所からどういう対応 が来るかというと、この規定があるからということで指導を受けるわけです。これは結 構いろいろな施設で経験しているはずです。  ということでこの規定の解釈は、実は非常に表に出ない意味で重くのしかかっている のは事実としてございます。  辻本委員 確認といいますかお尋ねしたいことです。私どもの電話相談は患者さんや 家族のお話をお聞きすることを主体にしています。実は最近、病院側からも、非常に暴 れるあるいは病院の規則を守らない困った患者さんの対応をほかの病院ではどうしてい るのかという質問が届きます。昨年、初めての試みですが医療現場の本音や悩みを聞こ うということでドクターやナースから幾つかの相談が届きました。そのときの、電話の 対応は、私どもの活動を支えてくれているお医者さん、病院長体験者、事務長、弁護士 など。それぞれに電話対応してくれました。そのときに弁護士さんが、これは未収金で なく暴れる患者さんの場合ですが、当然にお金も払わないという話になっていきますが、 口頭で通告を何度かした後に内容証明郵便で病院の趣旨をはっきりと伝えるということ で対応してはいかがですかというアドバイスをなさったのです。これは今のお話を伺っ ていると、それをやる、やらないによっての拘束力というのは一切ないということです。 それで内容証明で暴れる患者さんのところに病院が「あなたは来てもらっては困ります」 という通達をしても、私がもしその当事者であった場合には無視してそれでも行けば応 招義務ということによって診察は可能なわけですか。  畔柳委員 つまりそういう使われ方をしているのです。みんな断れなくて困っている という実態はあります。それで役所へ行けば、役所は病院の対応が悪いという指導を受 けるということはあります。ただ、僕はこの条文のことを議論しても意味ないというの は賛成です。いまだにそういう古い昭和20年代の解釈がそのまま残っていて、非常に威 力を発揮していることだけは間違いない。私は聞かれれば、もともと法律は正当な事由 ということを言っているのだから、何回も払わない非常にたちの悪い人は診なくていい ですよと。私が幾ら言っても役所はだめだというからなかなかならないということです。  辻本委員 今、暴力行為の患者さんの対応の場合を例に挙げましたが、ここではお金 を払わない人ということを議論しなければいけないわけです。しかしその暴力行為とい うたぐいとお金を払わないその理由が調査によってまさに貧困ということで、払えない 状況の人ということも中にはいらっしゃるわけです。そうすると暴力行為の場合とそれ から貧困によるお金が払えない、そこがグレーゾーンになってしまって線引きが難しい とは思うのです。同じに扱って語ってしまっていいのかと、患者の立場ということでお 尋ねをします。  今村委員 例えば暴力行為をする方がいて、その患者に対応するために職員が何人も お相手をしなければいけないということになれば、ほかの患者さんに対するきちんとし た医療行為ができなくなってしまうということです。つまりお一人、お一人の契約だけ でなく多くの患者さんを病院は診ているわけです。一人の患者さんにかかわっているた めにほかの患者さんにいろいろな障害が出てくるということも当然考えられます。ただ 未収金もそれはもちろん積み重なっていって病院経営が成り立たなくなるのだから、そ うなればほかの患者さんにとっても困るという考えがあるかもしれませんが、一応瞬間 的には暴力行為をしたり暴れたり大きな声で騒ぐということは、お一人、お一人の問題 でなく全体の問題として困るからということで診療を拒まれるという意味で大分性質が 違うのではないかと個人的には思っています。  座長 恐らく今村委員がおっしゃったとおりで性質が違うということがあると思いま す。ただ、もし貧困なり経済的理由で払えないということであるとすれば、それはまた 本来別途の対応の仕方、要するに医師の応招義務でやるのか別の対応の仕方で考えるの かという問題の整理の仕方というのは別途議論する必要はあるかと思います。いずれに しても多分経済的理由でということになると、ちょっと暴力の場合とケースが違うと思 うのは認定そのものが結構難しいということもあり、逆に言うとなかなかそういうこと では先ほどの畔柳委員の御発言にもありましたが、拒否してはだめではないかという方 に傾きがちになるということはあるのかなという気はします。  田中委員 済みません、初会合で欠席しましたもので少しとんちんかんなことを言う かもしれません。未収金の問題ということを考えたときに、要するに未収金にどう対応 してどうやったら収納できるかという問題が一つあると思います。患者として医者にか かって払えない人、払わない人、取り立て不能な未収金、そういった問題、法律問題も 含めてみんなで知恵を出すことは非常に大事なことかもしれません。  それから未収金という問題は、皆保険体制を維持していくという視点で未収金問題と いうものをどう位置づけ整理するかという問題があろうかと思います。そうすると2点 整理した場合に、最初の1点で未収金をどうやったら収納できるかという、本当に払え ない状態の人、金があっても払わない人、それから行方不明になって取り立て不能の問 題。我々国保は常にそういった問題に遭遇している制度運営をしています。御承知の方 も多いかと思いますが、国保の保険料税の1割が未収金です。皆様方が今議論されてい る総医療費の中での患者から未収金と少し割合が違う、壮大な金額の未収金が発生して います。そこで国保は国保として、国保にも払えない人、払わない人、取り立て不能な 人、これに対してどういう対応をしているかということはひょっとしたら参考になるか もしれないということが一つです。  それと皆保険体制といいますか、医療保険体制を維持していく上で未収金をどう位置 づけるかという話で、私は患者さんが不払いという医療機関側から見た未収金の問題、 これはこれで一つあろうかと思います。ひょっとしたら幾つかあるかもしれませんが、 患者サイドから見た未収金。医療機関の請求を審査して減額査定になったときに、減額 査定されたものに対する患者に対しての返還がどうなっているのかです。要するに患者 から見た医療機関側からの不払い、未収金。この問題も医療保険制度全体を全くむだの ない世界をつくっていこうというのであれば、当然そういったことも視野に入れた議論 をすることも必要ではないかと思うわけです。  要するにここは未収金の問題だけの議論の場ですが、そういったことも視野に入れて この未収金問題の議論をするとき、そういう視点があってもいいのではないかと思って います。この問題は、本当は第1回目に言うべきだったかもしれませんが、一言だけ申 し上げさせていただきます。  島崎委員 応招義務の話から離れての意見でよろしいですか。  座長 いえ、田中委員は、第1回に御欠席されたということから少し御発言だった思 います。応招義務の関係ではないですか、では河上委員お願いします。  河上委員 応招義務の関係は、この問題とは直接に関係しないのではないかというお 話がありましたが、逆に関係しているという感じがしていました。水道とかガスの契約 の締約強制といいますが、やはり国民の生存を守るための職種に関してはある種の契約 の締結について強制力を働かせるということが求められていて、医療に関しても医師は 正当な理由がなければそれを拒めないという形でこれを医師法で強制したわけです。職 業上の義務づけをしたということによって、一定のコストが伴うということであれば、 それはやはりそのコストを回避するための別の手段というか、措置を講じていないとそ の義務づけそのものが空洞化してしまうという気がするわけです。  具体的に考えたときに、例えばカードを持っていない患者はお断りするとか、そうい うことができるかというとそれはできないわけです。契約強制がある以上は、診療報酬 債権というのは必ず発生するものです、後はそれをきちんと確保できるように考えるこ と。もし事実上不能であるリスクが非常に高いとなったら、そのリスクをきちんと分散 する仕組みを考えないとそこはお医者さんにとっては酷な話になるであろうと思います。  ですから未収金問題でどちらが最終的に焦げつきを負担するかということを考えると きでも、この契約強制の問題があるということはやはり考慮した上で最終的な落ち着き どころといいますか分担の仕方を考えるべきではないかと個人的に思います。  座長 ありがとうございました。では先に山崎委員、次に辻本委員でお願いいたしま す。  山崎委員 先ほども小森委員が指摘されていましたが、応招義務については保険診療 契約で、被保険者は一部負担金を保険医療機関に支払う義務があると義務規定が書いて あります。この義務規定を被保険者がきちんと果たさなかった場合においても応召の義 務が発生するのかどうかというのが1点です。  もう1点は、資料の3にある医師法19条の応招の義務は昭和23年です。既にもう60 年もたっています。医事課長と指導課長がおられますので、これの担当は総務課ですか、 医事課でしょうが60年前の通知をそのままずっと温存しているということではなく社 会通念上の常識は相当変わっているという事をしっかり認識して下さい。そして社会的 な背景の変化を考えた場合、通知あるいは医師法、十九条についても検討が必要だと思 います。  座長 ここの検討会は、あくまでも未収金の問題との関係です。ですから十九条全体 の解釈自体というのはこの検討会のやるべき範囲を超えるということは御理解いただき たいと思います。それから事実関係としては、昭和24年の通達ですので実は国民皆保険 が成立する前でございます。ですから健康保険加入者はともかく、それ以外の方々は事 実上このときはまだ保険がそれほど動いていないということもありまして、逆に言うと 不払いであっても直ちに拒否できないというのは、実はかなりの重みを持っていたとい うことも事実関係としては御理解いただいた方がよろしいかと思います。では、辻本委 員お願いします。  辻本委員 相談にも時々ありますが、預かり金というお話、ここで一切出てきていま せんが預かり金を出してもらわないと診療できませんということを言われたという相談 が届きます。これはどういうふうに理解したらよろしいでしょうか。  座長 私がお答えするのは適当かわかりませんが、恐らく例えば救急のような場合、 その他の場合において、不払いが生じないようにしたいという一種の担保みたいな意味 だろうと思います。  辻本委員 それは理解できますが、要するに応招義務違反ですね。これにならないの ですか。  座長 いえ、預かり金を持ってきてくださいということ自体が直ちに応招義務違反に なるとは思いません。  辻本委員 持ってこないと診ることができませんよと。  座長 持ってこないと、ということになると、直ちに応招義務違反になるかどうかは わかりません。いずれにしろ正当な事由との関係でもってケースバイケースの判断です から、すべてのケースが応招義務違反になるかどうかはわかりません。いずれにしろケ ースバイケースだと思います。病院側からお答えいただいた方がよろしいかと思います。  小森委員 多分すべての患者さんを診て、診た上で保証金をいただけますかという形 にほとんどの病院はなっていると思います。診るより前に、保証金がなかったら診ない ということを言う病院はないです。診た後で保証金か証明書のコピーを預かりさせてい ただけますかが100%に近いぐらいそういうケースです。それと入院の場合は、実はつ い最近まで保証金はいけませんでした。ですので、個室に入られる患者さんだけ個室料 の例えば10日分を預かり金としていただけますかというケースはありましたが、保険に 関して保証金を取るというのは基本的に認められていません。多くの病院は多分預かり 金をできなくて苦しんでいます。それが原因で実は未収金が多額発生するわけです。逆 に介護保険にいきますと、こういう話し合いがないのは保証金を取っているとことがほ とんどです。最初に保証金がなければ預かりませんというケースがあります。  我々応召義務を守っているように、基本的にまず診療第一です。その後で保険証がな い場合は、預かり金もしくは免許証とかそういうもののコピーをいただけませんかとい う話になっていると思います。以上です。  畔柳委員 これかなり歴史の変遷がいろいろあります。昔は例えば別に保険診療をや っていても入院するときに入院の保証金を取るとかそういうことをやっていた時期があ ります。そこで指導を受けてできなくなったのです。だからいろいろな形であって、最 終的に大きな整理されたのは、実は消費者契約法ができたときにかなり本格的に問題に なりました。河上先生はそのときの委員でした。私は医療側でそういうことをやったこ とがあります。そこでもう一度整理されました。整理されましたが、病院として苦しい 問題がありました。それから差額を取っていいとかいろいろなことがある中で、多分ま た出てきていてもおかしくないと思うのです。そこら辺非常に微妙な話で、本当は私は ある程度預かってもいいと思うのです。それが預かることによって病院に入れなくなる ということも問題です。ところが預からないために退院した後貸し倒れになる。これは 非常にふえているはずです。これもかなり時代によって動きがあるということだと思い ます。  小森委員 もう一つだけ御説明させていただきます。実は夜間の救急で1万円預かっ ても、保険証を持ってきてもらわなかったらすごく未収になります。逆に預かり金をも らうということは、非常に病院にとっては未収金が出る可能性があります。保険証を持 ってきていただくのが一番未収金が少ないわけです。3割で1万円では収まるはずがあ りません。そういうふうなことを国民がわかってないわけです。1万円も払ったのだか ら大丈夫だろうと、保険証を持っていかなくてもというところに救急病院の未収金が発 生します。  座長 どうも貴重なコメントをありがとうございました。よろしゅうございましょう か。それでは予定していた時刻を大分過ぎています。きょうの検討会はこのあたりで終 了させていただきたいと思います。島崎委員、最後に。  島崎委員 今後この検討会でどのように検討を進めていくのかということと関連する のですが、私が出席していて思っていることを率直に言いますと、第1に、実態がいま 一つよくわからないところがある。つまり、一口で未収金といっても、先ほどどなたか が言われましたように、払えるのに払わないというケースもあれば、支払いが困難なケ ースもある。国民健康保険法にも一部負担金の減免という規定がありますが、本来そう いう規定を発動すべきなのに発動していないケースもあるだろうと思います。いろいろ なケースが恐らくあるのだろうと思うのですが、どういうケースがどの程度あるという 「軽重」というか、割合の「分布」がどうなっているのか、という実態がいま一つよく わからない。例えば、先ほど未収金の発生原因についてそれぞれ資料が出されましたが、 捉え方や見ている感じは異なっており全体像がよくわからない。「ない物ねだり」をして も仕方がありませんが、できますならば、もう少し全体像がわかるようなものが欲しい と思います。  2つ目は、先ほど田中委員がおっしゃったことと関係するかもしれませんが、そもそ もこの未収金の議論をどういうふうに考えるかということです。未収金の発生は好まし いことではない。国民皆保険を支えていく上でもモラルハザードの発生という面からい っても決して好ましい話ではない。だから何とかしなければいけないわけですが、その 対応としては、大別すれば、払えるのに払わないタイプとそうでないタイプの2つ分か れ、払えるのに払わない中にも例えば救急とかそれぞれの場面への対応があるかもしれ ません。さらに言えば、保険者徴収という規定があるわけですが、現実に保険者を特定 できない場合の対応と、保険者が特定でき保険者から被保険者に言ってもらえば払って もらえるようなケースもあるかもしれません。つまり言いたいことは、実態と対策は非 常に密接に関係しているので、その辺を整理していくことが今後議論を効率的に進めて いく上で必要なのではないかということです。  座長 貴重な御示唆をありがとうございました。次回以降、その点も考慮しながら検 討したいと思います。私自身は問題の整理の仕方としては、一つは制度的な要因によっ て発生する問題とそれから大変恐縮ですが医療機関側の体制の問題として発生する未収 金の問題、あと個別問題、患者側の問題によって発生するものという幾つかの種類があ って、それぞれによって対応の仕方が違うのだろうと思うのです。さらに先ほど河上委 員が言われましたが最終的に取れなくなった部分について、だれがどういう形でリスク を負担するのか、何かそこをリスク分散のメカニズムなり何なりを考えるのかどうか、 これも難しくて余り安易につくると、みんながそれに寄りかかって結局また問題を大き くするということになってしまいます。いずれにしても今の島崎委員のお話もそうです が、もう少しデータがわかるようであれば、できるだけ病院会その他御協力をいただい てデータを御提供いただき、それをもとに分析の仕方を考えて、問題を検討していくと いうことが多分作業を進めていく上では有益であろうと思います。その点も含めてぜひ 御協力をいただければと思います。  きょうは予定していた時間を大分オーバーしておりますので、申しわけございません、 まだほかに御発言なさりたい方もいらっしゃろうかと思いますがここで終わらせていた だきたいと思います。次回の開催日程ですが、調整がつき次第事務局の方から御連絡を させていただくということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは私の不手際で時間をオーバーしてしまいました。大変申しわけございません でしたが、きょうの会議はこれで終了させていただきたいと思います。長時間にわたっ てどうもありがとうございました。 (終了) 照会先:保険局国民健康保険課 電 話:03-5253-1111内3254 1