07/07/27 第1回議事録 第1回義肢等補装具専門家会議 日時 平成19年7月27日(金)14:00〜    場所 厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16階) ○中村医事係長 定刻となりましたので会議を開催したいと思います。会議を開催する 前に傍聴されている方に何点かお願いがあります。これからはカメラの撮影はできませ ん。事務局の指定した場所以外に立ち入ることはできません。携帯電話やポケットベル などの電源は必ず切ってください。会場における言論に対しては賛否を表明したり拍手 をすることはできません。傍聴中に飲食や喫煙はご遠慮ください。静粛を旨としまして 審議の妨害になるような行為は慎んでください。審議中の入室は慎んでください。危険 物を持っている方、酒気を帯びている方、その他会議の秩序維持のため退室の必要があ ると認められる方の傍聴はお断わりいたします。以上の事項に違反したときは退場して いただくこともありますので、よろしくお願いいたします。  では、これより第1回義肢等補装具専門家会議を開催いたします。最初に、資料のご 確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1「義肢等補装具支給制度の問題点及び 検討事項」、資料2「義肢等補装具専門家会議開催予定」、資料3「義肢等補装具支給制 度の概要」、資料4「補装具及び日常生活用具の範囲の見直し等に関する検討」、資料5 「重度障害者用意思伝達装置について」、資料6「車いす及び電動車いすの付属品につ いて」、資料7「義肢等補装具専門家会議の開催要綱」、資料8「義肢等補装具専門家会 議参集者名簿」、参考資料、パンフレット『義肢等補装具支給制度について』となって おります。  次に、本専門家会議にご参集を賜りました先生方を五十音順にご紹介申し上げます。 資料8の義肢等補装具専門家会議参集者名簿をご覧ください。国立身体障害者リハビリ テーションセンター病院副院長・同研究所運動機能系障害研究部長赤居正美先生、医療 法人大和会日下病院名誉院長・元大阪労災病院リハビリテーション科部長川村次郎先生、 慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター所長木村彰男先生、関西労災病院リハ ビリテーション科部長住田幹男先生、日本医療福祉専門学校非常勤講師・株式会社松本 義肢製作所顧問・元労災リハビリテーション工学センター人間工学研究部長高見健二先 生、吉備高原医療リハビリテーションセンター院長徳弘昭博先生、国立身体障害者リハ ビリテーションセンター学院長・同研究所感覚器機能系障害研究部長中島八十一先生、 総合南東北病院リハビリテーション科顧問・元東北文化学園大学医療福祉学部リハビリ テーション学科教授・元東北労災病院リハビリテーション科部長盛合徳夫先生。続きま して事務局を紹介いたします。補償課長明治、補償課長補佐西井、補償課長補佐神保、 労災医療専門官中村、職業病認定調査官上村、中央労災医療監察官長嶋、私は座長選出 までの間司会進行を担当させていただきます医事係長の中村でございます。よろしくお 願いいたします。それでは、会議の開催にあたりまして補償課長より挨拶を申し上げま す。 ○明治補償課長 改めまして、補償課長の明治でございます。各先生方におかれまして は、日ごろから労災補償行政の推進につきましてご理解とご協力を賜っているところで ございます。厚く御礼を申し上げます。また、本日は大変ご多忙のところ、本専門家会 議にご出席をいただき誠にありがとうございます。さて、労災保険におきましては、制 度発足以来、被災労働者の喪失した身体機能を補完、代替するものとして義肢その他の 補装具を無料で支給しているところでございます。  そういう中で、この専門家会議は、被災労働者の円滑な社会復帰の実効を期するとい うために、リハビリテーション医療及び義肢等補装具の開発、進歩の実情に即して、労 災保険における義肢等補装具の支給制度のあり方につきまして、専門的見地から検討を 行うことを目的として、昭和53年に設置されたのが始まりでございます。それ以来、本 専門家会議ではリハビリテーション医療及びリハビリテーション工学をご専門とする先 生方にお集まりいただきまして、随時ご検討をお願いしてきたところでございます。  ただ、平成12年4月に義肢等補装具の併給に関する一部改正を行っておりますが、そ れ以降はこの会議は開催されておりませんでした。しかしながら、周囲を見渡しますと、 その一方で昨年10月には障害者自立支援法が施行され、従来の補装具給付制度から補装 具費支給制度に移行しておりますし、また、平成14年から平成18年にかけましては、 この義肢等補装具の支給にあたっての大事な要件である障害等級認定基準が大幅に改正 されてきたところでございます。  そういう中で、今回先生方にお集まりいただきました目的ですが、こうした状況を踏 まえながら、労災保険における義肢等補装具支給制度の措置内容が最新の医学及び技術 水準に適合したものとなるように、また、制度全体の整合性が図られるように全般的な 見直しを行っていただくということにございます。具体的な検討事項等の詳細につきま しては、後ほど担当者から説明いたしますが、その概略を申し上げますと大きく3点ご ざいます。  1点目は、障害保健福祉施策の補装具及び日常生活用具の範囲の見直し等に伴う検討 でございます。その主な内容といたしましては、障害者自立支援法の施行に伴い、障害 保健福祉施策としての補装具及び日常生活用具の範囲の見直しが行われております。そ の中で、補装具から日常生活用具に整理されたもの、あるいは逆に日常生活用具から補 装具に整理されたもの等がございます。それらの整理された種目につきまして、労災保 険において支給対象とする必要があるかどうかということでございます。2点目は、障 害等級認定基準との整合性を図るための検討でございます。その主な内容といたしまし ては、障害等級認定基準の改正内容を踏まえながら、体幹装具、浣腸器付排便剤、スト マ用装具、この3つにつきまして、支給基準の変更を行う必要があるかどうかというこ とでございます。3点目は、医学的及び工学的観点から必要な見直しを行うための検討 でございます。その主な内容といたしましては、褥瘡予防用敷ふとん、電動車いすにつ いて、その支給対象者を拡大すべきかどうかということ、また、筋電電動義手について、 現行の基準価格が妥当であるかどうか、その支給のあり方について、でございます。  それから、スケジュールでございますが、私どもとしては、本専門家会議の検討結果 を踏まえまして、来年4月から義肢等補装具支給制度の改正を行いたいと考えておりま す。したがいまして、先生方には短期間に集中してご検討を賜ることになり、誠に恐縮 ではございますが、本年の10月下旬を目途に検討結果の取りまとめをお願いできればと 考えております。ご多忙のところとは存じますが、重ねてご理解、ご協力を賜りますよ うお願い申し上げまして、開催にあたりましての挨拶とさせていただきます。では、よ ろしくお願い申し上げます。 ○中村医事係長 それでは、早速検討に入るわけですが、その前に本会議の座長を選出 願いたいと思います。座長の選出につきまして先生方からご意見がございますか。 (意見なし) ○中村医事係長 ご意見がないようですので、僭越ではございますが、事務局では座長 を盛合先生にお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。 (了承) ○中村医事係長 ありがとうございます。先生方のご了承がいただけましたので盛合先 生に座長をお願いすることといたします。大変恐縮ではございますが、盛合先生には座 長席にお移りいただきますようお願いいたします。また、盛合先生には以後の進行をお 願いいたします。 ○盛合座長 座長を仰せ付かった盛合でございます。以前、専門家会議の委員の末席に おりましたけれども、座長という大役を仰せ付かって恐縮しております。土屋先生や澤 村先生、大先輩が座長をやっていたポストでございます。補償課長も話されたように、 平成11年度に会議を行って以来、ずっと開催されていないということで、時間が経過し、 会議に出席できる旧メンバーが少なくなり、そのために私に回ってきたのだと思います。 ご迷惑をかけないように精一杯努力するつもりでありますのでよろしくお願いします。  最初に、私から提案させていただきたいのですが、開催要綱に規定がありませんが、 円滑に本会議を進めていくために、実行上、副座長を置きたいと考えておりますが、い かがでしょうか。 (了承) ○盛合座長 ありがとうございます。それでは、副座長の選出にご意見がなければ、私 から指名させていただきたいと思います。                  (了承) ○盛合座長 住田先生に副座長をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○住田先生 わかりました。 ○盛合座長 それでは、本日は第1回ということですので、この専門家会議の開催目的、 検討内容について確認した上で議題に入りたいと思います。先ほど補償課長からも少し 説明がありましたが、事務局から改めて簡単に説明をお願いいたします。 ○中村医療専門官 義肢等補装具専門家会議の開催要綱について説明させていただきま す。資料7をご覧ください。開催目的ですが、平成18年10月から障害者自立支援法が 施行され、補装具給付制度が補装具費の支給制度に改正されたところであり、また、労 災保険における義肢等補装具支給制度については、平成12年4月に改正を行って以降、 労災保険の障害認定基準の改正が行われたところであり、さらに医学、技術の進歩によ り既存の義肢等補装具の改良・改善がなされている。上記のような状況を踏まえ、医学 的・専門的見地から義肢等補装具の支給制度の見直しの検討を行うために義肢等補装具 専門家会議を開催し、平成19年度中に検討結果を取りまとめると開催目的が記載されて おります。検討内容につきましては、労災保険における義肢等補装具支給制度について 検討することとしておりまして、その他として、1本会議は、厚生労働省労働基準局労 災補償部長が学識経験者の参集を求めて開催する。2本会議には、座長を置き、座長が 会議の議事を行う。3本会議においては、必要に応じ、本会議参集者以外の学識経験者 の出席、または意見書の提出を求めることがある。4本会議は公開とする。5本会議の庶 務は、厚生労働省労働基準局労災補償部補償課において行うとしております。以上でご ざいます。 ○盛合座長 それでは、議題に入りたいと思います。最初に、義肢等補装具支給制度の 問題点及び検討事項並びに検討スケジュールについて説明をお願いいたします。 ○中村医療専門官 義肢等補装具支給制度の問題点及び検討事項並びに本会議の検討ス ケジュールについて説明いたします。資料1をご覧ください。大きな1点目の問題点と 検討事項につきましては、補装具及び日常生活用具の範囲の見直し等です。昨年10月に 障害者自立支援法が施行され、それに伴い障害保健福祉施策としての補装具、日常生活 用具の範囲の見直しがされました。労災保険の義肢等補装具支給制度の支給種目である 点字器、人工喉頭、収尿器、ストマ用装具、歩行補助つえ(1本つえのみ)につきまし ては、補装具から日常生活用具に整理されました。また、労災保険の義肢等補装具支給 制度の支給種目ではない重度障害者用意思伝達装置につきましては、日常生活用具から 補装具に整理されました。補装具から日常生活用具に整理された点字器、人工喉頭、収 尿器、ストマ用装具、歩行補助つえ(1本つえのみ)を今後も支給対象種目とすること でよいのか。また、新たに補装具に整理された重度障害者用意思伝達装置を労災保険の 義肢等補装具支給制度の支給種目とするのか検討を行っていただきたいと考えておりま す。  さらに、本年7月1日から障害者自立支援法の補装具の車いす及び電動車いすの付属 品にステッキホルダー、泥よけなど14品が追加されました。この追加された14品につ きまして、労災保険の義肢等補装具支給制度の車いす、電動車いすの付属品とするのか 検討を行っていただきたいと考えております。この大きな1点目の項目につきましては 本日の検討課題でありますので、後ほどこの事項の議論の際にはもう少し詳しく説明さ せていただきます。  次に、大きな2点目の問題点と検討事項については、障害等級認定基準の整合性につ いてです。体幹装具ですが、義肢等補装具支給制度では、せき柱に常に体幹装具の装着 を必要とする程度の荷重障害を残すことにより、障害等級第8級以上の障害補償給付の 支給決定を受けた者、また、受けると見込まれる者に支給することとしており、金属枠、 硬性、軟性、骨盤帯の支給を行っております。一方、障害等級認定基準では荷重機能の 障害については頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、すでに硬性補装具を必 要とする者を第8級に準ずる運動障害として取り扱うとしております。障害等級認定基 準と義肢等補装具の支給基準との整合性がとれていない状況があるかと考えています。 そのため、体幹装具につきまして、金属枠、硬性以外の体幹装具を認めないとすること でよいのかという検討を行っていただきたいと考えております。  次に、浣腸器付排便剤ですが、現行制度では支給対象者を障害等級第3級以上のせき 髄損傷者に限定しておりますが、排便障害につきましては、せき髄損傷者に限定される ものではなく、胸腹部臓器の障害、さらに、障害等級第4級以下のせき髄損傷者におき ましても発生するおそれもあるわけです。そういう観点から、支給対象者を広げるべき か検討していただきたいと考えております。ストマ用装具についてですが、現行では直 腸摘出者だけを対象にしておりますが、人工肛門の造設につきましては、小腸の障害、 大腸の障害においても行われることがありますので、支給対象者を拡大すべきか検討し ていただきたいと考えております。  大きな3点目の問題点と検討事項については、医学的・工学的観点からの見直しにか かる検討です。褥瘡予防用敷ふとんにつきましては、支給対象者をせき髄損傷者に限定 しておりますが、脳の損傷により高度の四肢麻痺が認められる等の他の障害におきまし ても褥瘡の発生のおそれがあることから、支給対象者を拡大すべきか検討していただき たいと考えております。電動車いすにつきましては、四肢麻痺等の障害のため車いすの 使用が著しく困難な者を支給対象者としておりますが、障害者自立支援法の補装具費支 給制度におきましては、呼吸機能障害、心臓機能障害によって歩行に著しい制限を受け る者も支給対象者としており、呼吸機能障害、心臓機能障害により歩行が著しく制限を 受ける者についても、労災保険の義肢等補装具の支給制度の支給対象者とすべきか検討 していただきたいと考えております。最後に、筋電電動義手ですが、現在、労災保険の 義肢等補装具支給制度におきましては、研究用で支給を認めているところです。しかし ながら、その筋電電動義手の基準価格につきましては、63万円以下にしておりまして、 その基準価格の妥当性について検討していただきたいと考えております。さらに、筋電 電動義手を支給することが可能かどうか。また、言い方を換えれば、支給のあり方につ いて検討をしていただければと考えております。  次に、義肢等補装具専門家会議のスケジュールについて説明いたします。資料2をご 覧ください。本日は第1回会議ですので、最初に説明いたしました大きな1点目の補装 具及び日常生活用具の範囲の見直し等について検討を行っていただきたいと考えており ます。第2回は8月23日の木曜日に開催いたしまして、障害等級認定基準との整合性の 検討を予定しております。第3回は9月下旬ごろに開催し、医学的・工学的観点からの 見直しについて検討を予定しております。第4回は10月下旬ごろに開催し、検討報告書 の取りまとめを予定しております。10月下旬までの予定であり、さまざまな分野の検討 を短い期間に行うことになりますが、よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○盛合座長 それでは、義肢等補装具支給制度の問題点及び検討事項並びに検討スケジ ュールについて説明がありましたが、ご質問、ご意見はございませんか。 ○住田先生 障害者自立支援法と整合性を持つ方向で行くのか、独自にやっていくのか ということに関してはどうなのでしょうか。 ○神保課長補佐 基本的には、労災独自の理屈が立つということであれば労災独自で支 給するという考えです。障害者自立支援法で整理している内容を参考にしながら、私ど もで社会復帰のために必要だと整理したものにつきましては、労災独自で支給すること として構わないだろうと思っております。 ○住田先生 わかりました。もう1つは、今日参集しているメンバーは整形出身、ない しは義肢装具とかのリハ関係のメンバーが多いのですが、例えば、私たちも日常よく遭 遇するのですが、排便の問題とかストマの問題に関しては、我々のほうではあまりやっ ていないので、消化器系統の専門家の先生たち、ないしはWOCとかの専門の看護師の 人たちの意見を聞くというか、そういうことがあれば議論としてもやっていけるのでは ないかと思うのですが、その点について事務局のほうで何かありますか。 ○神保課長補佐 先生のご指摘を踏まえまして、本会議で消化器外科を専門とする先生 等の意見書が必要だということであれば用意させていただきたいと思っております。 ○住田先生 座長はどうですか。 ○盛合座長 住田先生がおっしゃるとおりだと思います。次回、浣腸器付排便剤、スト マ用装具について議論することとなっておりますので、先生の選定は事務局にお任せし て、次回の会議まで消化器科を専門とする先生から意見書を用意してください。お願い します。そういうことでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 その他に、ご意見、ご質問はありますか。よろしいでしょうか。では、本 日の検討事項の議題に入っていきたいと思います。事務局、よろしくお願いいたします。 ○中村医療専門官 労災保険の義肢等補装具支給制度について、簡単ではありますが、 ご説明いたします。資料3をご覧ください。義肢等補装具支給制度につきましては、資 料の趣旨にも記載しておりますが、業務災害または通勤災害により傷病を被った者にあ って四肢の亡失、機能障害等により義肢その他の補装具等を必要とすることがあること に鑑み、これらの者の社会復帰の促進を図るため義肢等を支給するものとしておりまし て、労災保険の社会復帰促進等事業として実施しているものです。支給種目につきまし ては、2の支給種目に書いてありますが、義肢、上肢装具及び下肢装具、体幹装具、座 位保持装置、盲人安全つえなど、全部で22種目となっているところです。社会復帰促進 等事業につきましては、3の根拠条文に書いてありますが、労災保険法29条に規定され ており、義肢等補装具支給制度は、第1号の円滑な社会復帰を促進するために必要な事 業として実施するものです。義肢等補装具支給制度の各支給基準につきましては、今回 の資料として配付している「義肢等補装具の支給制度について」という青いパンフレッ トがあります。そのパンフレットに義肢からギャッチベッドまで全22種目の支給基準 が記載されておりますので、議論の参考にしていただければと思っております。義肢等 補装具制度の概要について説明を終わらせていただきます。 ○盛合座長 それでは、検討事項に入りたいと思いますが、補装具、日常生活用具の範 囲の見直し等に対する検討ですが、1から3までの項目があります。第1項目について、 事務局から説明をお願いします。 ○中村医療専門官 検討項目の1つ目について説明いたします。補装具から日常生活用 具に整理された項目について、労災保険の義肢等補装具支給制度の支給対象種目とする べきかということです。これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、障害保健 福祉施策としての補装具及び日常生活用具が整理されまして、点字器、人工喉頭、収尿 器、ストマ用装具及び歩行補助つえ(1本つえのみ)につきましては、補装具から日常 生活用具に整理されました。今後とも、これら5種目を支給とするべきかということが 1点目の検討事項です。  第1回義肢等補装具専門家会議の参考資料の1頁「障害保健福祉施策の補装具及び日 常生活用具の範囲の見直し」をご覧ください。資料に記載しているとおり、補装具及び 日常生活用具の定義が明確化されまして、それに伴い、点字器、人工喉頭、収尿器、ス トマ用装具及び歩行補助つえ(1本つえのみ)が、さらに、労災保険の義肢等補装具支 給制度の支給対象でない頭部保護帽の6種目が補装具から日常生活用具に整理されてお ります。一方、重度障害者用意思伝達装置は日常生活用具から補装具に整理されており ます。障害者自立支援法の補装具の定義につきましては、「障害者等の身体機能を補完 し、又は代替し、かつその身体への適合を図るように製作されたものであること」、「障 害者等の身体に装着することにより、その日常生活において又は就労若しくは就学のた めに、同一の製品につき長期間に渡り継続して使用されるものであること」、「医師等 による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるもの であること」でございます。この定義に基づいて補装具の見直しがされております。  それから、参考資料の2頁「義肢等補装具支給制度の支給種目と障害者自立支援法に おける整理」をご覧ください。ここに示しております種目につきましては、重度障害者 用意思伝達装置を除き、労災保険の義肢等補装具支給制度の支給対象種目である全22 種目になります。網掛の所が障害者自立支援法の整理の見直しによりまして補装具から 日常生活用具に、又は、日常生活用具から補装具に整理された種目になります。  検討の参考として、参考資料の3頁に点字器、人工喉頭、収尿器、ストマ用装具、歩 行補助つえの支給対象者についての基準を比較しております。障害者自立支援法の支給 対象者につきましては、各市町村で決定できることから市町村の例を括弧書で記載して おります。参考資料の4頁から10頁につきましては、点字器、人工喉頭、収尿器、スト マ用装具、歩行補助つえの概要、労災保険における対応を記載しておりますので、検討 の参考としていただきたいと考えております。  資料4に戻っていただきまして、1の(2)に「検討の視点」を記載しております。労 災保険の義肢等補装具支給制度の趣旨と照らしまして、点字器、人工喉頭、収尿器、ス トマ用装具、歩行補助つえ(1本つえのみ)が身体の欠損、または損なわれた身体機能 を補完、代替するものでその効果が確実であるか。また、被災労働者の日常生活または 就労において、必要不可欠なものであるかといったことを視点として、検討していただ ければと考えております。1の(3)に検討にあたっての参考として「検討の方向性(案)」 を記載しておりますので、ご参考にしていただければと思っております。医学的・専門 的な見地から検討をお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○盛合座長 ただいまの説明について、ご質問、ご意見はありますか。旧身体障害者福 祉法から障害者自立支援法に変更になって5つが補装具から外されたということです が、要するに労災保険の義肢等補装具制度において、それをそのまま認めるかというこ とになるかと思うのです。補装具というのは、旧身体障害者福祉法によると判定や意見 が必要なのですが、日常生活用具となるとその必要がなくなるということで理解してお りました。 ○中村医療専門官 障害者自立支援法につきましては、参考資料1頁のとおり、補装具 の定義というものが明確化され、種目の変更を行っております。旧身体障害者福祉法に おける補装具の考え方は、参考資料1頁のとおり、障害者等の身体機能を補完し、又は 代替し、又は長期間にわたり継続使用されるものという考え方でしたので、盲人安全つ え、義眼、眼鏡、補聴器などと、今回、日常生活用具に変わった歩行補助つえ、点字器、 人工喉頭などが入っていました。障害保健福祉施策において定義を明確化すべきという ことで、補装具の定義が3点、日常生活用具の定義が3点と定められましてた。その定 義と照らして、補装具または日常生活用具がどちらとすべきか分けたと思います。した がって、今の障害者自立支援法の補装具については、3つの定義で判断されているかと 思います。 ○赤居先生 補装具と日常生活用具の違いは、ある程度個別対応を前提とすべきものか、 あるいは、汎用性のもので問題ないかといった判断ではないかと考えています。そうい うニュアンスで私たちは、学生に教えるし理解しているわけです。だから、補装具につ いては、ケース・バイ・ケースというものをある程度前提としています。したがって、 当然、患者のサイズや太さ、曲がり方、麻痺の状態というものを考えなければいけない ものは、補装具に入れます。それは誰が考えるかといったら、医者やセラピストが考え ることなのです。日常生活用具は、そこまでは要らないということになります。ある意 味では大量生産的なものに馴染むかどうかということと、一つひとつをその状況に合わ せてつくっていけるかどうかということが、ある意味では非常にわかりやすい線引きだ と思うのです。 ○盛合座長 今回の提案は、労災保険としては、障害者自立支援法の補装具と日常生活 用具にならえではなくて、補装具として支給いたしましょうという考え方なのですね。 ○中村医療専門官 過去の支給実績を見ても支給されている方はいらっしゃいます。た だ、それが、今回、障害者自立支援法において日常生活用具に変わったからといって支 給としないということでいいのかどうかというところが問題だと思います。その点で先 生方のご意見をいただければと思っております。 ○川村先生 補装具として支給するか日常生活用具として支給するかという問題がある のですね。それは、確かに、役所的には大事なことなのかもしれませんが、大ざっぱに 考えると、障害者自身にとってはとにかく支給してくれればそれでいいと思うのですよ。 ○神保課長補佐 確かに、川村先生のおっしゃるように障害者自立支援法では補装具が 9割支給で、日常生活用具は現物給付となり、いずれも支給となります。しかしながら、 労災保険におきましては、今までの整理では、基本的には旧身体障害者福祉法に言う補 装具を労災保険の義肢等補装具として支給対象にしてきました。すなわち、日常生活用 具につきましては、基本的には支給の対象外としてきたということがあります。今回、 この理屈をそのまま踏襲すると、障害者自立支援法で日常生活用具として整理されたも のについては、今後、労災として支給しなくなるというのが今までの考え方になります。 それでいいのだろうかと。例えば、収尿器にしても収便器にしても、蓄尿なり蓄便とい う機能が損なわれている方につきまして、社会的に活動するには蓄尿や蓄便の機能が失 われているものを補完するものとして、収尿器やストマ用具を支給させていただいたほ うが社会復帰がより円滑になるのではなかろうかと。あるいは、人工喉頭にしましても、 付ければ呼吸がきちんとできます。あるいは、場合によっては、不完全ではありますが 一定の音声が出るようになる。これも社会復帰の円滑な促進という意味では非常に役に 立つのではないかと考えています。実は、蓄尿なり蓄便の機能障害は、障害認定基準で は、社会に参加するという意味では大変だろうということでかなり高く評価させていた だいたということもあります。したがいまして、今後とも私どもとしては、支給させて いただいたらどうだろうかと。これは私どもで決める話ではありませんので、検討の方 向性案ということで出させていただいたということなのですが、いかがでございますか。 ○盛合座長 よくわかります。要するに、そのままにしてやらないと非常に不利益にな るのではないかということです。 ○徳弘先生 ここの検討の視点に書いてあるとおり、その効果が確実か、あるいは日常 生活において、就労において必要不可欠なものであるかといったら、これは必要不可欠 なものだろうと思うのです。点字器、人工喉頭というのは私は経験ありませんが、(財) 労災年金福祉協会では、労災患者の家を巡回して健康相談をするのですが、その実施結 果をみると、収尿器とかストマ用装具は立派に役立っております。こういうものをいた だけるのは非常にありがたいという意見があるのです。だから、実際に役に立っている。 それから、ここの最後のところで「今後も支給対象としてはどうか」というのは、これ は私は大賛成です。ただ、点字器及び人工喉頭については実際に使っておられるのを見 た経験がありませんので、何とも言えないのです。 ○盛合座長 おっしゃるとおりです。それで、いまここで支給してよろしいと決めてい いか、もう少し練り直したほうがよろしいか、ということになると思うのですが、いか がいたしましょうか。 ○徳弘先生 労災保険で支給するということであれば、患者さんの立場からすると助か りますよね。 ○木村先生 用語はどうなるのですか。仮に全部含めてみるとなった場合に、ほかの法 律との関係で用語の使い方には何か考えはあるのですか。基本的な姿勢はいいと思うの ですが、用語の使い方で混乱を来すことがあると思うので、その場合に派生する問題は どう解決するつもりなのでしょうか。 ○盛合座長 確かにそのとおりで、私も悩んだのです。補装具というのは、今までは旧 身体障害者福祉法の補装具と労災保険の補装具は大体一致していたのですが、今後は、 労災補装具とかにしないとややこしくなってしまうのです。こっちはこれが入って、障 害者自立支援法の補装具は抜けているとか、それは現実的にわかりやすくする必要があ ると思います。 ○中村医療専門官 従前から、義肢等補装具支給制度では、旧身体障害者福祉法におけ る日常生活用具の一部の種目についても支給しています。旧身体障害者福祉法の支給種 目でいうと、特殊寝台、特殊マット、移動用リフトです。義肢等補装具支給制度の支給 種目では、名称が異なり、ギャッチベッド、褥瘡予防用敷ふとん、介助用リフターにな ります。したがって、旧身体障害者福祉法の日常生活用具でも、義肢等補装具支給制度 では支給しているということを理解していただければと思います。 ○盛合座長 確かにそうなのです。労災保険の補装具と旧身体障害者福祉法の補装具と いうのは、障害者自立支援法の補装具とは異なっているのです。いままでは同じだから 補装具と言っていた。補装具という言葉は、もともと行政用語なのです。これは一応、 支給対象とするということでよろしいですか。 (了承) ○盛合座長 よろしいということなので、次の議題に入ります。 ○中村医療専門官 2点目の議題について説明いたします。資料4の2頁をご覧くださ い。重度障害者用意思伝達装置につきましては、両上下肢の機能を全廃し、かつ、言語 機能を喪失した者のまばたき等の残存機能による反応をセンサーにより感知して、ディ スプレイに表示すること等により、その者の意思を伝達する機能を有するものですが、 現在、労災保険の義肢等補装具支給制度の支給対象種目ではありません。  一方、障害者自立支援法の施行に当たり、障害保健福祉施策としての補装具及び日常 生活用具の範囲の見直しがされ、重度障害者用意思伝達装置が、日常生活用具から補装 具に整理されたところです。  この重度障害者用意思伝達装置を労災保険の義肢等補装具支給制度の支給対象種目と すべきか、という点が今回の検討事項です。これについても、先ほどの議論と同様に、 身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完、代替するもので、その効果は確実であるか、 また、被災労働者の日常生活において、必要不可欠なものであるかといった点を踏まえ て検討していただければと考えております。さらに、全国どこにおいても入手、修理が 可能かといった点も検討が必要かと考えております。  参考資料の11頁に、重度障害者用意思伝達装置の機種別の機能、私どもで調べた販売 価格をまとめております。これらの機種のうち基本機能は意思を伝達するものですが、 機種において様々な機能があり、価格も様々です。12頁に、障害者自立支援法における 重度障害者用意思伝達装置の支給基準を記載しています。  資料4の2の(3)については、検討するに当たっての参考として、検討の方向性(案) を記載しております。支給対象とすることとした場合に、支給基準を検討していただく に当たっての参考として、資料5を作成しております。重度障害者用意思伝達装置につ いて、支給種目とするのか。もし、支給種目とする場合、その支給基準についてどうす るのかという点について、医学的・専門的な見地から検討をお願いします。 ○盛合座長 重度障害者用意思伝達装置を支給対象とすべきかどうか、検討していただ きたいと思います。 ○川村先生 重度障害者用意思伝達装置を労災保険の支給対象にするのはもちろん大賛 成ですが、誰がその意見を言うのかなということです。更正相談所はある程度経験があ りますが、労災の場合は、労災の関係者で誰がしっかりした意見が言えるのか。普通は、 そういう時、どういう施設、どういう人の意見を聞くつもりなのかお聞きしたいのです。 ○中村医療専門官 我々としては支給とした場合、また、どのように支給すべきかとい う仕方もいろいろあると思います。そこは今回の会議でどういうことをしたほうがいい のかという定義をしていただければと思います。まず、支給種目とするか、支給種目と するとした場合、実際に支給するときには誰の意見を聞くべきだとか、そういうことを お話ししていただければと思います。 ○赤居先生 支給することは悪くはないと思いますが、その内容の絞り込みが非常に難 しいと思います。そこに値段が書いてあるだけでも100万円のものと、20万円のものか らありますよね。中島先生の所の人たちがやっているようなブレーンコンピューター・ インターフェースとかいろいろあります。その妥当性は誰が決められるかという話にな ってくるので、これは非常に難しいです。ですから、当面はこの範囲内までを対象とす るというのでないと、これは次から次へと日進月歩の業界ですので、非常に難しい話に なってくると思います。 ○中村医療専門官 障害者自立支援法では、参考資料12頁に記載しているとおり、型式、 価格等については、本体価格で45万円です。その他、修理基準の中から加算することが できるということで、入力装置とか、いろいろな形でプラスしていくものになっていま す。これはあくまで障害者自立支援法の基準です。 ○中島先生 私はこのメンバーの中では、唯一の神経内科の人間でございまして、ALS を3桁ぐらいは自分自身で診察した経験がある人間なのです。まず、重度障害者用意思 伝達装置を支給するということについては、私は全く問題はないと思っております。  機能ということですが、対象者の範囲にかかわってくるのですが、ALSも含めて、ど こも動かない人というのは極めて少数しかおりません。必ずどこか動くのです。したが いまして、ここに列挙されている重度障害者用意思伝達装置というものは、基本的には どこか動くものをセンサーで拾って入力するという形式のものが大部分です。それはそ れで非常に簡便で、かつ、正確度が非常に高いです。したがって、私は支給対象として これを運用することはほとんど問題がないと思っています。ただ、今日的には、一部記 載がありますが、脳血流量を測定してというのは発展途上にあります。もちろん、使え る方について、しかも価格が見合えば、それを取り入れることも構わないし、将来的に はこれは脳から直接ブレーンコンピューター・インターフェースという形で信号を取り 出して自分の意思どおりにいろいろなことをするということが、おそらく数年のうちに は可能になってくると思います。しかし、現段階ではそんなに正確なものではありませ んし、時間もかかる。1つのイエス・ノーを言うのに8秒ぐらいかかってきます。  ただ、ある程度実用化されているという現況を踏まえれば、実際に使える方がいれば、 それを使うことについては差し支えないと思います。現状を見ますと、そのようなハイ テク機器を用いたものは、必ずしも使い勝手がよくなくて、ユーザーの側で、別にこれ だったならばいいやというケースも相当あります。旧来型のいろいろなセンサーを使っ て入力を試みるというタイプの重度障害者用意思伝達装置が実際には市場の大部分を占 めているということで、それを前提に支給対象にすべきかということについては、その とおりだとしてよろしいと思いますし、支給対象者の範囲もここに記されているとおり でよろしいかと思います。 ○盛合座長 いまの説明で、ご質問、ご意見はありませんか。 ○赤居先生 90万円のものを支給するとしてよいですか。 ○神保課長補佐 先生方に教えていただきたいのが、45万円で対応できる症状と、90 万円でないと対応できない症状はどのようなものかということでございます。また、私 ども労災保険を所掌しておりますから、先ほど中島先生がおっしゃったように、通常業 務上となることが想定しがたいものは基本的に俎上に上らないということですので、外 傷なり、あるいは脳血管疾患となった場合、45万円で対応できない症状が現れるものな のかどうか。これらについて教えていただければ、私どもも判断をしやすいといいます か、労災として支給しなければいけないのであれば、支給する必要があると思います。  逆に、そういった症状は、私病としてあったとしても、業務上として認定されること はまずないということになれば、45万円の中で、あるいはプラスセンサーの中の価格で やらせていただきたいと思っております。 ○中島先生 その点につきましては、視線入力式が90万円で、筋電センサーを使って入 れたら45万円以内で済むだろうという議論において、視線入力でなくては絶対いけない かどうかということが、この場ではデータが不足しております。これはまだいくらか会 議が持たれるわけですので、宿題にしていただければそこは解決できると思います。  ただし、私どもの研究所でも考えただけで数秒内にイエス・ノーの反応をできるとい う装置が出来上がります。そういったものが、おそらく世界中でも2カ所か3カ所で作 っている現況から考えれば、市販化されたものが数年来に出てくるだろうと思います。 そのときにはたぶん45万円では済まないだろう。高く出せば、使い勝手のいいものがで きるという時代は来るとは思うのです。ただ、本日の時点での議論の俎上には上らない ものだと思っております。 ○川村先生 労災の場合は、外傷等が入るでしょうが、そうすると今度はALSとか、そ ういう内科的な病気とは違って知能低下とか、意識障害がある患者が結構います。そう いうときの取り扱いをどうするのか。それはどうなのですか。 ○中島先生 まず、意識障害があったら、これは意思伝達そのものの前提が失われてい るわけですから、考える必要は全くない議論だと思います。 ○川村先生 それは完全に意識がなかったら、そうでしょうけれども。少なからずある ときがありますよね。 ○中島先生 意識というのは必ず数週間内には覚醒してくるものだと。頭部外傷では数 カ月という例ももちろんあるのですが、いまこの補装具というようなレベルで考えると きには、そういう朦朧状態にあるときに、そういったものを考える必要はあるかという と、それはないのではないか。慢性意識障害という概念は、そういったものに使われる 概念ではあります。  ただ、知能低下については対応する必要があるかと思います。したがいまして、それ はそれに向けて、例えば、センサーをいくら工夫しても難しいワープロを使えと言われ ても、そもそも困難であるには違いないわけですから、それはそのためのソフトウエア とセンサーを組み合わせるという形での対応かなと思います。 ○住田先生 重度脳性麻痺の人の場合でも、結構意思伝達装置が使われていますよね。 頭部外傷の場合でも同様の症状が起こってくる場合はあると思います。  そのような方に対し、、既存の45万円ぐらいの中で収まるようなものなのか、どうな のかというのが、イメージとしてわからないのですが。 ○中島先生 先生がおっしゃる頭部外傷は、例えばどのような症状をお持ちの方を想定 されますか。 ○住田先生 例えば、言語障害があって、四肢麻痺があって、何とか意識ははっきりし ているという状態の人です。我々は、視線センサー装置を使う場合があることはあるの ですが。 ○中島先生 その点に議論が来ますと、少し話を整理する必要があるかと思います。ま ず、現在、この時点で既存のものとしてある重度障害者用意思伝達装置というものは、 すべてのものに対応し得ないのです。これからより開発しなければいけないものがたく さんあるかと思います。  いま私個人は、ここで支給対象とすべきかということに関しては、既存の買うことの できる機器でしか議論の対象にならないと思います。頭部外傷で四肢麻痺で言語も失わ れ、そしてこの人に対してイエスかノーかということを取り出すということになります と、基本的には私はこの既存の装置では頭部は無理だと思います。開発を待たなければ いけないものだと思っております。  それを念頭に置いて支給対象とすべきかどうかということは、私は難しいと思います。 いまの重度障害者用意思伝達装置は、そこまでの能力は持ちません。ですから、それは 将来の議論の対象としては重要だと思いますが、今日において、支給対象とすべきかと いうことについては、やや困難を伴うのではないかと考えます。 ○赤居先生 重度障害者用意思伝達装置は大体50万円でカバーされているのですか。 ○中村医療専門官 参考資料、11頁をご覧ください。販売価格については、メーカーを 言うことができませんが、販売価格の欄に書いているとおりです。 ○木村先生 話が少し違ってしまうかもしれませんが、義肢の価格がさまざまですよね。 1つの膝のパーツだけで何百万円。それこそ全体を作れば3〜400万円のものもある一方、 いちばん安いもので作れば、数十万円から4〜50万円でできてしまう。この辺はもちろ んオプションのためだと思いますが、これだけ幅ができてしまうので、ものによりうん と値段が変わってくると思います。もちろん、支給するということは賛成です。ただ、 その価格まで規定することは、いまの段階では非常に無理ですし、日進月歩で、耐用年 数の5年が経ったときには、逆に同じものが数十万円で提供できる。コンピュータと同 じく、安く提供できる。これがいまの時代の制度に合っているかどうか。その辺の問題 もあると思うのです。より高いものを出せばいいとも限りません。その時代になれば、 50万円でもっと高性能のものができているかもしれない。そういう面で価格と両方を規 定するというのは、非常に無理な話だと思います。義肢がそれで大混乱していると思う のですが、そういう面で、これをやるのかやらないのか。イエスかノーなのかは大きな 問題であると思います。これを出すのはいいのですが、いくらがスタンダードなのか決 められないと思います。それを決めても2、3年後にそれが果たして標準になっているか どうか。その辺は非常に難しい議論で、この場で答えを出すことは非常に難しいと思い ます。ただし、将来的にそういう方向で検討する必要があるとか、そういうような提言 事項を盛り込むような形にしたら良いのではないかと思います。 ○盛合座長 要するに、支給は了承すると。ただし、その基準については再検討すると いうことでいかがですか。 (了承) ○盛合座長 それでは次の検討事項にいきたいと思います。 ○中村医療専門官 検討項目の3点目について説明いたします。本年の6月29日、補装 具の種別・購入又は修理に要する費用の額の算定等に関する基準の一部を改正する告示 がされ、7月1日から障害者自立支援法の補装具の車いす及び電動車いすの付属品が追 加されました。  参考資料の13頁をご覧ください。障害者自立支援法の補装具費支給制度において、追 加されました車いす、電動車いすの付属品を記載しております。車いすの付属品にステ ッキホルダー、泥よけ、屋外用キャスター、転倒防止用装置、滑り止めハンドリム、キ ャリパーブレーキ、フットブレーキ、携帯用会話補助装置搭載台、酸素ボンベ固定装置、 人工呼吸器搭載台、栄養パック取り付け用ガートル架、点滴ポールが追加され、また、 電動車いすの付属品にステッキホルダー、転倒防止用装置、クライマーセット、フロン トサブホイール、携帯用会話補助装置搭載台、酸素ボンベ固定装置、人工呼吸器搭載台、 栄養パック取り付け用ガートル架、点滴ポールが追加されました。  この追加された付属品を労災保険の義肢等補装具支給制度として追加すべきか、とい うことが今回の検討事項です。これら付属品が安全に安定して使用するために必要な付 属品であるかを検討の視点として検討していただければと考えています。  労災保険の義肢等補装具支給制度の車いす及び電動車いすの支給対象者ですが、これ については、参考資料の14頁に支給対象者の範囲をイメージ図にしています。車いす、 電動車いすの支給対象者は複雑で、イメージとしてこの図を作りました。つまり、車い すの中に手押し型車いすがあります。電動車いすを除く車いすと、手押し型車いすの支 給範囲は全く違います。当然ながら、支給対象者の範囲は、全く違うものです。車いす の支給対象者は、両下肢の全廃又は喪失し、義足及び下肢装具の使用が不可能なもので あり、手押型車いすは、傷病等級第1級の1号、2号、障害等級1級の3号、4号です。 傷病等級、障害等級の基準については、図の下に記載しております。さらに電動車いす については、両上下肢に著しい障害を残し、車いすの使用が著しく困難なものを支給対 象にしております。基本的には車いすとの併給はございませんが、ただし、自動車によ り移動する際、電動車いすの積載が不可能なものや、居住する家屋を移動する際に家屋 の構造等により電動車いすの使用が不可能な方に対しては、手押し型車いすについても 支給可能としています。症状に応じて車いす、電動車いすの支給がされているといった 状況をご留意の上、付属品の検討をお願いします。  また、資料4の3の(3)に検討するに当たっての参考として検討の方向性を記載して います。また、付属品ごとに検討するに当たって、参考となるように資料6を作成して いますので、付属品ごとに支給対象とすべきか、医学的・専門的な見地から検討をお願 いします。なお、携帯用会話補助装置については、参考資料の15頁に概要を記載してい ます。労災保険の義肢等補装具支給制度における支給される機器については、業務災害、 あるいは通勤災害により身体機能喪失、または低下した場合において、円滑な社会復帰 の促進を行うという観点から支給するものであります。したがいまして、日常生活の利 便性の向上を図るための携帯用会話補助装置については支給対象としておりません。  そのため、資料6の携帯用会話補助装置の搭載台の支給の考え方の欄については空白 にしております。以上です。 ○盛合座長 車いすの付属品についてご意見、ご議論をお願いします。 ○赤居先生 酸素ボンベと点滴ポールというのは、入院中の患者さんのイメージをもの すごく引きずっているのです。少なくとも、私たちは人工呼吸器を付けた患者さんが電 動車いすを使ったりするのを見ていますが、日常生活に戻って、点滴ポールを使ってい るとはあまり思わないのですが。 ○住田先生 しかし、結構います。特に脳性麻痺については、ほとんど点滴ポールを付 けたりとかしています。 ○赤居先生 ボンベも付けてやるのですか。 ○住田先生 肺の不全のある人の場合、ボンベは付けて作ることはあります。ですから、 あながちないことではないと思います。労災でそんなにたくさんいるかどうかはまた別 ですが。 ○赤居先生 栄養パックはいかがですか。 ○住田先生 栄養パックも労災の場合、非常に多いです。結構、最近は胃瘻とか作るこ とが多くて、外出の機会が多いと、結構外で注入するという機会も多いですから。 ○赤居先生 ないわけではないのですね。 ○住田先生 そうですね。せき損で言ったら、そんなにないですね。障害があって、胃 瘻を作ると言ったら、ほとんど稀に1、2回ですね。 ○徳弘先生 でも、ときどきありますね。高位の頚損の方で、もう少し障害が延髄のほ うまでいっている方は、胃瘻を作ってしまいます。 ○赤居先生 栄養パックは、時間をかけないと入らないので、外出のときにも入れてい るのはあるわけでしょう。 ○住田先生 あります。 ○徳弘先生 ときどきおられますね。酸素ボンベは、我々の病院では呼吸不全をやって いますので、じん肺の患者の中には、そういうものを利用して生活されている方はいら っしゃいます。外傷ではちょっと考えられないですね。 ○赤居先生 確かに労災だったら、じん肺も入れればそうかもしれません。事故などの 労災ですと、ちょっとないなという感じもしなくはないです。 ○神保課長補佐 実際、電動車いすについては、四肢麻痺の方しか支給していないとい うことがありますので、次回以降になると思いますが、呼吸器が低下している方につい て支給してよろしいかどうかご検討も踏まえた上で、先取り的で申し訳ないのですが、 こんなようなこともあり得るのかなということで書かせていただいたのです。 ○中村医療専門官 手押し型の場合は、胸腹部臓器の障害の方も対象になっているので、 手押し型の場合は、あり得ると思います。他の車いすの場合は、基本的に両下肢が動か ない方になります。 ○川村先生 これは普通に支給する対象にするというわけですか。電動車いすに乗って いるような人が原則的に普通に支給するのですか。 ○中村医療専門官 必要がある方についてです。 ○川村先生 例えば、昔の身体障害者の申請で、基準外交付というのがありましたが、 あのように特別な手続をしなくてもできるのですか。 ○中村医療専門官 そういうことです。 ○川村先生 その支給品として。 ○中村医療専門官 付属品の中に車いすの義肢等補装具の制度の支給基準がありますの で、その中に付属品としてこれを追加するということになります。 ○川村先生 障害者自身にとっては非常にありがたいということか。 ○中村医療専門官 そういうことです。 ○川村先生 利用しやすい制度なのですね。 ○中村医療専門官 そういうことです。 ○木村先生 最後の携帯用会話補助装置は基準外というのは、いま言った手続を踏まな ければいけないわけですね。 ○中村医療専門官 もし、携帯用会話補助装置を基準外とするのであれば。 ○木村先生 手続を踏めば、支給することができるということですね。 ○中村医療専門官 なぜ支給する必要があるかという理由が必要になります。 ○神保課長補佐 実は、支給例で書かせていただきましたが、私どもとしては、ドクタ ーにこういう傷病の状態ですかということをお伺いしたら、大体、支給していいかどう かがわかるような形で基準みたいなものが作れればと考えております。転倒防止用装置 であれば、支給例が書いてありますが、これは現実に相談があった事例で、いまは基準 外でやらせていただいたのですが、頚髄損傷の方で筋肉が非常に衰えていると、後ろに 背ったときに非常に危ないというような方。いまは労働局に本省まで上げてもらって、 要否を検討させていただいているのですが、お示ししたような形でお認めいただければ、 障害の状態を労働局で確認すれば支給できるようになるわけです。 ○盛合座長 ご意見はありませんか。携帯用会話補助装置を除いて、その他のものは加 えてよろしいということで、まとめてよろしいですか。除外することについては何かご 意見はありますか。それも含めてよろしいですか。 ○高見先生 携帯用会話補助装置については、基準外という扱いでよろしいのですね。 ○盛合座長 そういうことになります。 ○高見先生 そういうことですね。 ○中村医療専門官 資料6には、支給例としては書いているのですが、付属品を支給す るに当たってどういう点を基準とすべきかというところが、我々としてはご議論してい ただきたいと思っております。その点はどうでしょうか。 ○徳弘先生 支給例としては、やはり、患者さんの障害状態に応じて、支給品目を決め ておくと非常に決めやすいと思うのです。資料6を見ますと、やはり凸凹の多い道を日 常よく使うとか、脱輪しそうな所をよく走るとか、そのような個別性というのは、例え ば、これで診断書を書いてくれと言われた場合、医者のほうで判断するのは非常に難し いですよね。本当にそうなのかということになりますので、Aという機能障害があった ら、Bという品目が認められるということがあれば、非常にスムーズにいくと思うので すが、これを見ますと非常に難しいのではないかと思います。 ○赤居先生 ちょっと以前の旧身体障害者福祉法であったら、屋外用のキャスターで、 特にクッションキャスターは一般的には支給されませんでした。腰痛がかなり辛くて、 車いすに乗っていても痛いと言わないと通らなかったのです。 ○徳弘先生 でも、それは診断書を書くとしたら、こういうふうな訴えがあるのでと書 くしか、もう方法はないですよね。 ○赤居先生 書くしかないとは思いますけれどね。ただ、絶対脱輪防止装置を付けなけ ればいけないと言われても、先生方はわからないですからね。 ○徳弘先生 わからないですね。 ○赤居先生 一般的な普通型電動車いすで、転倒防止用装置というのはあまりイメージ がわきません。簡易型だったらわかるのですが。あの重いのが引っくり返るとは思えな いでしょう。したがって、1回1回、細かく言えば吟味はあるとは思います。しかし、 必要な方に支給するため入れておく分には誰も文句は言わないと思います。 ○盛合座長 そうしますと、支給はよろしいけれども、支給基準をもう少し検討する必 要はあるということでよろしいですか。 (了承) ○神保課長補佐 方向性としては、先ほど徳弘先生からご指摘いただいたような形で、 症状を踏まえた形で基準づくりができないかどうか、検討させていただくということで よろしいですか。 ○赤居先生 ですから、手が全然問題なければ、滑り止めのハンドリムなんて使うはず がないと思うわけです。ですから、頚損で手の握る力が弱いから、滑り止めを付けなけ ればいけないという判断になればいいのです。しかし、脱輪防止装置はどうやっても判 断できませんねという範囲です。 ○川村先生 医者として困るのは、患者さんの症状でこれならいくというのはわかるの ですが、環境ですよね。ケースワーカーとか、他の人がやればよいのですが、医者に責 任を負わせても困ることがあります。建前は、症状で決めておかないといけないですね。 ○徳弘先生 機能障害のレベルで決めれば、我々としてはいちばん気が楽なわけです。 ○川村先生 そうだと思います。 ○住田先生 例えば、悪い例としては、業者のほうでそういう誘導を、こういうのを書 き込んだら通りますよとかという感じの話が出てくることもあります。特に承認するよ うな場合などはそうなのです。旧身体障害者福祉法のほうですが、例えば、いろいろな 装置を入れるときに、こういう身体症状の所見がありますということを入れるようにな ったら通るとか。承認されるための文言や基準が、業者向けのサイドで作られてくると いうことがあってはならないと思うのです。 ○盛合座長 住田先生のご意見も貴重なので、その点も基準を検討するに当たって注意 しなくてはいけませんね。それでは、障害の状態を基本としつつ、次回までにもう少し 基準を検討したいと思いますがよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 この議題は終わりにいたします。本日予定した検討事項は終わりましたが、 その他、何かご意見はございますでしょうか。 ○徳弘先生 今日の議論でも、前提と言いますか、労災保険はどのような考え方で、ど のような意思でこのような基準を作っているのか。つまり、この制度の独自性だとか、 意義、あるいは目的、そういうことをもっとわかりやすく明文化していただいたほうが、 こういう議論をするときにも非常に参考になります。労災患者や、一般患者を処方する ドクターの方にも非常にわかりやすくなりますので、是非、そのようなものをまとめて 作っていただきたい。  例えば、病院の機能評価を今頃各病院が受けると思いますが、その病院は何のために、 どのような所で社会に役立っているのか、ということを明文化しろということがありま すよね。それに従って、その役回りを果たしているかどうかで病院の機能が評価される。  ISOでも製品をつくるときにはどのようなポリシーで、どのようなマネジメントをや って、顧客サービスを重視しているのか、ということはちゃんと謳っておりますので、 是非、そのようなものを明文化して、誰でもわかりやすいものを作っていただきたいと 思います。 ○盛合座長 本当に貴重なご意見です。私もそう思っておりました。やはり、労災保険 としては、1つの基準というか、それを考えて出してほしいと思います。事務局でいか がですか。 ○中村医療専門官 徳弘先生のおっしゃる点を本会議でまとめていただければと思いま す。私としては、大変ありがたいと思っております。よろしくお願いします。 ○盛合座長 可能であれば、次回の会議までに法律の専門家の意見を聞くなどして、事 務局でまとめておいていただくということでいかがですか。 (了承) ○盛合座長 あと事務局で何かございますか。 ○神保課長補佐 本日は長時間お忙しいところ、ご議論いただきまして誠にありがとう ございました。会議の中で先生方からご指摘がありました消化器外科を専門とする先生 の意見書、法律の専門家からの意見書につきましては、次回は8月23日ということで近 いものですから間に合うかどうかわかりませんが、可能な限り次回までに用意させてい ただいて、議論が円滑に進むようにさせていただければと思います。  重度障害者用意思伝達装置、あるいは車いす及び電動車いすの付属品については、支 給とすることについては概ねお認めいただいたと考えておりますが、支給基準につきま してさらに検討するというご指摘だったかと思います。重度障害者用意思伝達装置につ きましては、中島先生とご相談させていただきながら、車いす及び電動車いすの付属品 につきましては、住田先生とご相談させていただきながら、再度まとめた上で次回また お諮りをさせていただきたいと思っております。  次回の会議までに、いまお二人の先生のお名前を挙げましたが、他の先生方にも当然 いろいろとご相談をさせていただくこともあろうかと思いますがどうかよろしくお願い します。本日はどうもありがとうございました。 ○中村医事係長 次回の日程は8月23日(木)3時からを予定しています。よろしくお 願いします。本日は誠にありがとうございました。 (照会先)                          厚生労働省労働基準局労災補償部補償課医事係     TEL 03(5253)1111(代) 内線5565 FAX 03(3502)6488          - 1 -