07/07/25 医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用のための検討会 第1回議事録 第1回 医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報の活用に関する検討会議事録 平成19年7月25日(水) 厚生労働省 講堂(2階) ○ 藤澤室長   開会に当たりまして白石審議官よりごあいさつ申し上げます。 ○ 白石審議官   お忙しいところ、きょうは御参集いただきましてありがとうございます。   ちょっと広い会場になりまして恐縮でございますけれども、「医療サービスの質の 向 上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会」の開催に当たりまして一言ごあ いさつを申し上げます。  本来であれば局長からと思っておりましたが、局長はちょっと都合がございまして、 私がかわってお話をさせていただきます。   御案内のように来年の4月1日から高齢者の医療の確保に関する法律が施行されま すが、その中で医療費適正化計画の作成、実施、評価のために、国は医療費に関する 調査分析を行い、その結果を公表しますということになっておりまして、そのために 必要な情報を保険者等の方々から厚生労働大臣の方に提出していただくことになって いるのは御案内のとおりでございます。   具体的にはレセプト情報と特定健診情報の提供といったことを私どもは想定してお るわけでございますけれども、このことから提供いただきますレセプト情報等々をこ の新しい法律に基づきまして医療費適正化計画の作成に活用することも含めまして、 医療サービスの質の向上ということが究極の目的でございます。  そのためにどう活用すべきかを検討しようということになっておりまして、暑いさ なかではございますが皆様方に御参集をお願いしたところでございます。   20年度からの法律の施行と申し上げましたが、21年度から具体的に収集・分析が行 われるように、来年度中に具体的な体制の構築を考えておりまして、急ぎ足で大変恐 縮でございますけれども、今年のうちには御意見をとりまとめていただきたく私ども は考えております。   さりながら、いわばこういう情報の取り扱いは切れ味のいい抗生物質である一方で 用法・用量を間違いますといろいろな副作用の方が大きくなって懸念もあるものでご ざいますので、そこら辺も含めまして、忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、よ りよい制度、安全・安定的な制度をつくりたいというふうに考えております。   簡単でございますけれども、皆様方のお知恵を拝借したく、このような会合を持た せていただきました。よろしくお願いいたします。 ○ 藤澤室長   きょうお集まりいただきました検討会のメンバーの方々につきましては、お配りし ております資料1の2枚目の別紙にリストをおつけしております。今回第1回目とい うことで、名簿に沿って皆様について簡単に御紹介させていただきたいと思っており ます。   この座席も五十音順にお座りいただいておりますので、その順番で御紹介させてい ただきたいと思います。   まず私から向かって正面の左側のお席に座っていらっしゃいますのは、日本労働組 合総連合会総合政策局部長の飯倉様です。お隣が日本歯科医師会常務理事の稲垣様で す。健康保険組合連合会常務理事の稲垣様です。杏林大学医学部総合医療学非常勤講 師の井原様です。滋賀医科大学社会医学講座教授の上島様です。国際医療福祉大学大 学院教授の大熊様です。それからお隣が国立保健医療科学院経営科学部経営管理室室 長の岡本様です。弁護士の尾崎様です。国際医療福祉大学大学院院長の開原様です。 国民健康保険中央会常務理事の櫻井様です。日本経済団体連合会社会保障委員会医療 改革部会医療制度改革検討ワーキング委員の砂原様です。それから社会保険診療報酬 支払基金専務理事の角田様です。日本医師会常任理事の中川様です。国立社会保障人 口問題研究所・少子化対策室長の野口様です。東京大学大学院医学系研究科教授の橋 本様です。東京大学法学部教授の樋口様です。それから、今ちょっとお席にいらっし ゃいませんが、30分ほどおくれていらっしゃるという御連絡をいただいております、 産業医科大学医学部公衆衛生学教授の松田様です。それから日本薬剤師会常務理事の 森様でございます。あともう1人、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授の 廣松先生ですが、きょうは御欠席という御連絡をいただいております。   続きまして事務局の紹介をさせていただきたいと思います。唐澤総務課長です。岩 淵保険課長です。石原調査課長です。矢島生活習慣病対策室長です。それからちょっ と席を外してしまいましたけれども、企画官の大島が隣におります。それから私が保 険システム高度化推進室の藤澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   次に、この検討会を進行しいただく座長の選出をしていただきたいと思います。  事務局からの御提案でございますが、座長にはぜひ開原先生にお願いしたいと考え ておりますが、皆様の御賛同をいただけますでしょうか。  (拍手)   ありがとうございました。それでは、開原先生には座長をお願いしたいと思います ので、申しわけありませんが、お席の御移動お願いいたします。   済みません。以後の議事運営をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたしま す。○ 座長(開原委員)   開原でございます。ただいま座長に選んでいただきまして大変ありがとうございま した。  私もこの医療情報の分野を30年以上やっておりますが、こういうことが検討できる ようになったということはこの医療情報の技術というものが医療全体にいわば広まっ てきたということで大変うれしく思っているところでございます。  ただ、しかし、この分野は何分にも日本では初めてのことでございますので、先ほ ど審議官もおっしゃいましたが、十分に考えて実行しなければいけない分野であろう かと思っております。  幸い各方面から御専門の方々が委員に御就任でいらっしゃいますので、委員の方々 の御意見を伺いながら、何とか職責を務めさせていただきたいと思っております。ど うぞよろしくお願いをいたします。   それでは、まずこの議題を審議するわけでございますけれども、その議題に移る前 にこの検討会の開催につきまして、事務局より御説明をいただきたいと思います。ど うぞよろしくお願いいたします。 ○ 藤澤室長   では、資料が1から10までございます。インデックスを張らせていただいています が、資料1に開催要綱と、今御紹介申し上げたメンバーの方々の名簿がついておりま すので、まず資料1について簡単に御説明させていただきたいと思います。   こちらに検討会の目的をお書きしております。先ほど審議官のごあいさつの方でも 御説明をさせていただきましたが、20年の4月から施行されます高齢者の医療の確保 に関する法律におきまして、医療費適正化計画の実施、それから作成・評価のために 国が調査・分析をする。それのために必要な情報を保険者から国に提出をいただくこ とになっております。  その一環として私どもとしてはレセプト情報の提供、それから特定健診情報の提供 を想定しているところでありまして、提供いただきました情報を医療サービスの質の 向上のためにどう活用すべきかということを御検討いただくために皆様の御参集を得 て、保険局長の私的懇談会としてこちらを開催させていただきたいということでござ います。  2番目の「検討事項」のところに大きく4つ書いてございますが、まず情報の収集 方法のあり方。それから分析に当たっての方法・用途のあり方、国以外による情報の 活用のあり方ということで、詳細はまた資料9の方で御説明をさせていただきたいと 思っております。  3番目が「検討会の構成」ということで、先ほど皆様に御紹介をさせていただいた とおりでございます。   それから4番「検討会の運営」ということで、先ほど皆様に検討会を進行していた だく座長を御選任いただいたところでございます。庶務は保険システム高度化推進室 で行います。それから、きょうも多くの傍聴の方がいらっしゃっておりますが、議事 は別に検討会において申し合わせた場合を除きまして、原則公開としたいと思ってお ります。  それから最後ですが、検討会の運営に関してここに定めているもののほか必要な事 項は皆様方で定めていただきたいと思っております。以上です。 ○ 座長(開原委員)   どうもありがとうございました。いかがでございましょうか。今御説明がありまし たように、今後はこの資料1に沿って運営をしていきたいということでございますが、 特に御異議はございませんでしょうか。  どうもありがとうございました。では、そのようにさせていただきたいと思います。   ただ1つ私の方からお願いがございます。この資料の4の(5)に「この要綱に定 めるもののほか、検討会の運営に関し必要な事項は、検討会において定める」という ことがございます。実はこの委員会は大変大事な委員会でございますが、私は医療系 の人間でございますので、できれば特に個人情報関係で詳しい方に副座長になってい ただきたいというふうに思っておりまして、私から御提案させていただきたいのでご ざいますが、樋口先生に副座長をお願いすることにいたしたいと思うのでございます けれども、いかがでございましょうか。 (拍手)   それでは大変恐縮でございますが、樋口先生、よろしくお願いいたします。   では、樋口先生、もしよろしければ一言ごあいさつをお願いいたします。 ○ 樋口委員   樋口でございますけれども、こういう医療の情報化あるいは情報活用の側面に関す る委員会に参加させていただいて光栄だと思っております。よろしくお願いいたしま す。 ○ 座長   それでは早速議事に入らせていただきたいと思いますが、その前に資料の確認をお 願いいたします。事務局の方よろしく。 ○ 藤澤室長   では、資料の御説明をさせていただきたいと思います。今、資料1は御説明させて いただいたので資料2から資料10まで御説明させていただきたいと思います。    資料2は1枚だけのものですが、先ほど開催要綱でも触れました高齢者の医療の確 保に関する法律の条文の抜粋でございます。その16条のところで、「大臣は全国医療 費適正化計画及び都道府県医療費適正化計画の作成、実施、評価に資するために調査 ・分析を行い、その結果を公表する」と定められておりますが、ここで言っておりま す全国医療費適正化計画、それから都道府県医療費適正化計画とはどういうイメージ のものかというものを御参考にしていただくために、資料3に現段階での「全国医療 費適正化計画(案)」をおつけしております。この計画自体は法律が施行されます来 年の4月に策定する予定でございますが、現時点での案ということでもう既に公表し ているものなので、御参考にしていただければと思います。この中で医療費適正化の ために重要な政策として、生活習慣病の予防対策と入院期間の短縮対策が重要だとし て、その達成に向けて取り組むべき施策を示すものです。  そして、資料2に戻っていただきまして、16条の1項の1号でございます。国がど ういう事項について調査・分析を行うかというのがそこに書いてございます。1号の ところで、「医療に要する費用に関する地域別、年齢別、疾病別の状況その他省令で 定める事項」としておりますが、ここで医療に要する費用ということで医療費を見る 情報としてはやはりレセプトが必要になってくると思っております。また、ここに「そ の他省令で定める事項」と書いてございますが、私どもとしては特定健診の実施状況 ですとか、特定保健指導の実施状況も調査・分析を行いたいと思っておりますので、 そういう意味では特定健診のデータあるいは特定保健指導のデータも必要になってま いります。  特定健診ですとか特定保健指導というのは、もう皆様十分御承知だとは思いますが、 高齢者の医療の確保に関する法律に定められておりまして、生活習慣病に関する健診 を、保険者に対して40歳以上の加入者に実施することが義務づけられているのが特定 健診です。その結果一定の人たちに指導が必要だということになった場合に行うもの を特定保健指導と言っております。   そうした調査・分析を行うために、繰り返しになりますがレセプト情報、それから 特定健診の情報、特定保健指導の情報が必要だと考えておりまして、ここから私ども はそうした情報を収集したいというふうに考えているところです。   具体的にその情報はどうやって国に提供していただくかというのが16条の2項に 書いてございます。「保険者は大臣に対して必要な情報を省令で定める方法により提 供しなければならない」ということになっておりまして、今私どもで考えている案が 資料4でございます。上がレセプトで、下が特定健診です。   レセプトにつきましては医療機関から審査支払機関、それから保険者というふうに 流れていくわけで、保険者からレセプトを国に提供していただくのですが、提出して いただき収集するために、真ん中の審査支払機関のところを出口として、矢印の先で あります入り口(国の情報管理サーバー)にレセプトデータを提供いただくというこ とでいかがかと考えております。そのサーバーの先はまた皆様に御議論をいただくこ とになると思いますが、どういうふうな活用をするかということに応じてデータベー ス化をしていくことになります。   同じように下は特定健診情報でございますが、特定健診機関からその情報が保険者 に行きます。後期高齢者の医療支援金の加算とか減算の関係で、保険者から社会保険 診療報酬支払基金にデータがまいります。そこから高齢者の医療の確保に関する法律 の16条を根拠に国にその情報を提供いただくという形でいかがかと考えております。   次の資料5と6は、そのレセプト情報あるいは特定健診の情報とはどういうものか というのを見ていただくための資料です。皆様はよく御存じだと思いますが、資料5 はレセプトの情報です。これは紙ベースのものですが、レセプトにはここにコピーし てお示ししましたような情報が入ることになります。5種類、医科の入院と医科の入 院外、歯科、調剤、それからいわゆるDPCのレセプトをおつけしておりますが、患 者様の氏名、生年月日、性別、傷病名、どのような投薬をしたか、というような情報 がここでわかることになります。   それから資料6が特定健診・特定保健指導に係る情報でございまして、特定健診の 関係では最初の2枚で受診結果通知表という形にしておりますが、このような情報が 集まることになります。こちらも特定健診を受診された方のお名前、生年月日、性別 のほか、既往歴、服薬歴等、それから身体計測、血圧等の情報が盛り込まれます。  それから3枚目、4枚目、5枚目が特定保健指導の関係で収集できる情報をお示し したものです。  それから資料7に入りまして、収集分析対象としては電子データの情報を前提にして 考えたいと思っております。御参考までにレセプトについて今電子データがどうなっ ているかという状況をお示ししたものです。まずレセプトの件数がそもそもどのぐら いかというのを見てみますと、これは月間で見たものですが、左下、1億4300万です。 医科、歯科、調剤それぞれ8500万、1600万、4200万ぐらいで、年間にしますと全体 で17億件になります。それぞれに対してレセ電と書きましたが、電子媒体で診療報酬 の請求をしていただいている率をレセプト件数ベースで見た場合の数字をそれぞれお 示ししております。医科につきましては大体24%、調剤につきましては79%ぐらいで、 その2つを平均しますと37%程度になります。歯科はバーを引いておりますが、今ま さにレセ電を進めるためのシステムを構築しているところでございまして、バーにし ております。   それから同じものをもう少し詳しく見たものが2枚目です。特に右のグラフを見て いだくとおわかりいただけると思うのですけれども、例えば平成13年、15年あたり は、病院でのレセ電の普及率を見ましても本当に1ケタ台の非常に低い割合だったの ですが、今病院では約半分近くまでレセ電が普及している、つまり電子レセプトがあ るということになります。   それから資料8は、皆様にこれから御検討いただきますレセプト情報や健診情報の 収集・分析に関しまして指摘を受けた事項、あるいは私どもが申し上げた事項を表の 形でまとめました。古いものから並べております。それからレセプトに関しての指摘、 健診情報に関しての指摘をあわせて並べてございます。   1枚目はいずれもIT戦略本部の関係でございまして、IT新改革戦略におきまし ては、レセプトについてはナショナルデータベースの整備・制度的対応を平成22年度 までに実施するというふうに言われております。健康情報につきましても収集された 健康情報の活用方策を平成22年度までに確立するという指摘をいただいております。   同じ年の「重点計画−2006」というIT戦略本部で決定されましたものにおきまし ても、レセプトについては全国規模でデータ収集を行うための方策について検討を進 め、平成20年度までに収集・解析のための体制を構築するということが言われており ます。   健康情報に関しましても、全国規模で収集・分析すべき情報、それからその仕組み ・利用のあり方について今年度より検討を進めるという指摘をいただいております。   2枚目の上の方は厚生労働省私どもでまとめました情報化グランドデザインにおけ る記述です。レセプトにつきましては20年度末までに全国規模で収集・分析するため の体制を構築する。21年度から段階的に収集・分析を実施して、23年度からは全国規 模での事業を行うということを言っております。それから健康情報に関しましても全 国的にデータ収集をする検討を進めるということを言っております。   最後ですが、規制改革3カ年計画です。これにおきましてはレセプトについて、平 成20年度末までにデータの収集・分析体制を構築し、23年度以降は全国のレセプト データを収集・蓄積・活用できる体制を構築・運用するとなっております。  外から私どもが指摘を受けていること、あるいは私どももお示ししたことではあり ますが、スケジュールとしては平成23年度からできるだけ全体的な形で収集・分析を したいと思っており、21年度からまず段階的に実施するために20年度にはその体制 を構築する。そうすると平成19年度つまり今年度に体制を構築するための基本構想を 考えなくてはいけないということになりますので、後の検討スケジュールにも関連し てきますが、そのために今回皆様にお集まりいただいて御検討いただくことをお願い しております。   それから資料9です。これは主な検討事項ということで、先ほど最初の資料1の開 催要綱にも項目でその他も含めて4つ書いてございましたが、それをもう少し項目に 分けて整理したものです。   まず1番目が「レセプト情報・健診情報の収集のあり方」ということで、収集する 情報の範囲、個人情報の匿名化、情報の保存方法と3つ挙げてございます。   まず、「収集する情報の範囲」です。先ほど高齢者の医療の確保に関する法律との 関係もありまして、レセプトデータ、それから特定健診・特定保健指導の情報を収集 したいというふうに申し上げましたが、例えばレセプトでありましたら、レセ電の率 も申し上げましたけれども、そういう電子化されたデータについては、レセプトはす べて集めたいというふうに考えておりますが、それでよろしいのか。また、特定健診 も義務化されております40歳から75歳未満の方々のデータがございますので、それ をすべて集めてもよろしいのかどうかということなどを含めて御議論いただきたい論 点になるかと思います。   次の「個人情報の匿名化」ということで、資料の5とか6でレセプトの様式ですと か特定健診・特定保健指導に係る情報ではこういうものが盛り込まれますということ をお示ししましたが、この中には当然特定健診でいうと受診者、レセプトでいうと患 者様の例えば氏名、性別とか、そういうものが含まれているわけでございます。ただ、 国の分析に当たっては必ずしも個人が特定される形での分析というのは必要ないと考 えておりまして、このため個人情報保護を十分確保するという観点から、どの人物の ものかということがわからない形、特定されない形での収集をしたいというふうに考 えております。   ただ、レセプトは御承知のとおり現在月に1回請求していただくもので、同じ患者 さんのものであっても月が変わってしまうと別のものが出てくるのですけれども、先 ほど申し上げたように、どなたのものかというのが特定されない形で収集して、みん な匿名化したいと考えておりますが、同じ月をまたいだ場合について、やはり同じ人 が、例えばどういう疾患についてどういう経過をたどっていったかというのを追跡す ることも必要ではないかと考えていまして、そのためには同じ人のレセプトには同じ 匿名化されたというか、ランダムな整理番号をつけるなりして、追跡することはでき るようにしたらいかがかというふうには思っております。  3番目の「情報の保存方法」ということで、レセプトデータ、それから特定健診デ ータ、冒頭の「収集する情報の範囲」にもかかわってきますけれども、例えば電子レ セプトデータをすべて収集するとした場合、毎月毎月たくさんの情報が集まってくる わけで、それをずっと保存しておくというのも実際上困難ではあります。例えばどの ぐらいの年数保存するのか等を含めての保存方法ということでございます。  それから大きな2番で、「レセプト情報・健診情報の分析方法・用途のあり方」で す。最初の丸は先ほど御説明したようにもともとレセプト情報あるいは特定健診・ 特定保 健指導情報を収集する目的であります、「全国医療費適正化計画、都道府県医療費適 正 化計画の作成・実施・評価」にあたって収集する情報を使うというのがまず当然あり ま す。   そのほかに例えばこういうものも考えられるのではないかというものを次の2つの 丸で書いてございます。2つ目の丸は、「診療報酬改定時の基礎資料」ということで、 現在は社会医療診療行為別調査と言いまして、毎年6月という特定の月に審査支払機 関で審査したレセプトについて、しかもそれは全数ということではなくて、一定の抽 出率を掛けた上で一部のレセプトを抽出し、どういう診療行為が行われているかとい う調査をおり、改定時の基礎資料として使っております。この調査も、例えばこちら で収集した全レセプトデータを使えば、そのかわりには当然なると思います。今以上 の、要するに全国ベースでより実態を反映したより多くのデータが収集できるという ことになりますので、より正確な分析もできるということになるかと思います。   それから3つ目の丸ですが、「学術的な活用」、疫学的な活用と言ってもいいのか もしれませんが、それも考えられると思います。そこに4つほどコメントさせていた だきましたが、「疾患の情報」ということで、さまざまな疾患ごとに全国でどのぐら いの患者さんがいらっしゃるのかというそれぞれの疾患に関しての全国ベースでの正 確なデータをとることはできると思います。   それから次の「感染症の状況」ということで、例えばインフルエンザが全国ベース でどのぐらい流行しているか、罹患している人たちがいるかというのを見ることがで きます。   例えば今ですと、それは協力いただける医療機関にお願いをして、どのぐらいイン フルエンザに罹患した方がいらっしゃるかというのを報告していただく形をとってい るのですけれども、そういう定点的な観測ではなくて、全国ベースでその状況を押さ えることが可能にはなります。   次の「がんの状況」ということですが、がんにつきましてもいろいろながんについ て全国的な、より正確な状況がわかるということで、どういうがんの方が全国でどの ぐらいいらっしゃるのか、それからその方々についてどういう経過をたどっているの か、例えば5年後の生存率はどういう状況なのかとか、そういうことに使うことも可 能にはなります。   それから「その他随時の調査」ということで、例えば一時期いろいろ話題になりま したが、内科なり小児科なりでタミフルを処方された患者さんが例えば1カ月以内に 骨折などをして外科に行ったりしていないか、タミフル処方後、あまり期間をおかず に外科に行った人がどのぐらいいるかというのを見ることによって、タミフルと骨折 との関係なども見ることが可能になります。ほかにも当然皆様御専門の方が大勢いら っしゃるので、いろいろなことが考えられるかと思いますが、そういう学術的な活用 もできるということでございます。   最後の丸は「分析結果の公表方法」で、どのような集計項目というか、内容につい てどういう形で公表していくかということでございます。あと、細かい話ですけれど も、出していくときの集計表の1つ1つのマスといいますか、カラムの数字が例えば 非常に少ない場合、そのまま公表すると、これがどなたなのかというのが結果的にわ かってしまう可能性があることも考えられるかもしれません。そういう場合も考えつ つ、どういう公表方法が適切かということが検討事項の1つでございます。   それから3番が、「国以外の主体によるレセプト情報・健診情報の活用のあり方」 ということでございまして、まず活用していただくとした場合、「活用できるものの 範囲」です。「国以外の主体」ということで「医療関係者、学術研究機関等」と書き ましたが、医療関係者としては当然医療機関の方、それから保険者側等が考えられる と思います。それから「活用する場合のルール」ということで、これもどなたに活用 していただけるかという、「活用できるものの範囲」の論点と密接に関連すると思い ますし、またどういう情報について活用する場合なのか、何か集計表のような形にな ったものを活用する場合なのか、あるいは個票ベースで活用いただく場合のルールな のかという、いろいろな考え方があると思うのですけれども、そこのルールも非常に 重要な論点であると思っております。   それから、「その他」が4番です。   最後になりますが、資料10で「検討スケジュール」です。これは審議官のごあいさ つのところでもコメントさせていただきましたが、資料8のこれまでスケジュールに 関して指摘をいろいろ受けておりますことから、今年度中に基本的な考え方というか、 構想をまとめたいと思っております。そこで時間的にはそれほど長くはないのですけ れども、できましたら、皆様にお忙しいところ恐縮ですが、年内にとりまとめをいた だきたいと思っております。   きょうは自由に御議論いただくということにしまして、あとは大体月1回程度のペ ースで、まず2回目には論点をこちらから整理させていただいて、その上で、その論 点をどういうふうにまとめるかにもよるかもしれませんが、その個々の論点について 2回程度、あるいは3回ぐらいになるかもしれませんが、皆様に御議論をいただき、 最後は年内にとりまとめという形でお願いできれば大変ありがたいと思っておりま す。  私からは以上です。 ○ 大島企画官   続きまして、資料3の説明を補足させていただきたいと思います。  医療費適正化推進室企画官の大島と申します。  資料3「全国医療費適正化計画」の関連でございます。これは、来年の4月から作 りますので、まだ案の段階でありますけれども、高齢者の医療の確保に関する法律に 基づきまして、今こういう計画をつくろうとしております。  実は都道府県でも今同様の作業を始めております。  2枚ほどおめくりいただきまして、1ページ「計画の位置づけ」というところがあ りますが、この計画は国民皆保険を堅持し、国民の生活の質の維持・向上を確保しな がら、2つのポイント、国民の健康の保持という観点と医療の効率的な提供という2 つの観点を立てまして、それぞれに政策目標を定め、その政策目標の実現結果として 適切な医療費の伸びの抑制が図られるという組み立てになっております。  医療費そのものを目的にするというよりは、健康の保持と医療の効率的な提供に着 目して、その政策を実現していこう。その結果としての医療費という位置づけにして おります。5年計画でありまして、20年4月が第1期のスタートということになりま す。  2枚おめくりいただきまして、3ページからは関連するデータが載っております。 医療費の動向ですとか、その次の4ページですと平均在院日数の動向、5ページは都 道府県ごとの比較があります。それから療養病床の現状。6ページは生活習慣病の数 あるいは死亡率というデータが載っております。7ページにはメタボリックシンドロ ームの該当者の状況が載っております。  それから8ページに、そういったデータを踏まえまして基本的理念がございまして、 9ページから目標という形になっております。この医療費適正化の目標は、今申し上 げましたとおり2つの視点があります。国民の健康の保持ということで、それに関連 するものは文章の「以上のことから」というところでございます。「医療費の増加を 抑えていくために重要な政策は、1つは若いときからの生活習慣病の予防対策である」 ということでありまして、「生活習慣病の境界域段階でとどめることができれば、通 院患者を減らすことができ、さらには重症化や合併症の発症を抑え、入院患者を減ら すこともできる」ということで、国民の健康の保持の対策として、この生活習慣病の 予防に具体的に取り組もうとしております。   もう1つは入院期間の短縮対策ということで、平均在院日数と言われる指標を短く していこうという目標を設定しております。そのために第1期では、療養病床のうち 医療の必要性の低い方が入院されている病床を介護保険施設に転換しようというよう なことを掲げているところであります。その具体的な数値の目標としまして、その下 ですけれども、健康の保持に関する目標としましては、20年から始まります医療保険 者にやっていただきます健診、特定健康診査と呼んでおりますが、その特定健康診査 の受診率ですとか、それを踏まえた保健指導の実施率、あるいはメタボリックシンド ロームの該当者及び予備軍の減少率につきまして具体的な数値目標を定めておりま す。   数値目標を申し上げますと、特定健診に関しましては、9ページの(1)ですけれども、 5年後であります平成24年度におきまして、健診の対象者になります40歳から74 歳までの方のうち70%以上という目標にしております。それから保健指導。これは健 診のうち境界領域として引っかかった方に対して個別にお医者さんなり管理栄養士さ ん、あるいは保健師さんがプログラムをつくりまして、健康に向けた指導を行う。と もに考えて取り組むわけですけれども、そういう保健指導を受ける方の割合が、必要 と判定された方のうちの45%以上というのを5年後の目標に設定しております。   それから3番目は、こういった取り組みを通じましてメタボリックシンドロームの 該当者及び予備軍を減らしていこうということになるわけですけれども、その減少率 が20年度と24年度と比較しまして、10%以上減少している。そういうものを全国的 な目標にしたいと思っております。今、これを都道府県レベルでも目標値を設定する 取り組みをお願いしておりますし、各医療保険者でも保険事業を通じてこういった目 標値を設定する作業をお願いしております。   10ページは、もう1つの柱であります医療の効率的な提供に関する目標であります けれども、2つの目標がありまして、1つは療養病床の病床数であります。これは今、 各都道府県にそれぞれ目標数を設定する作業をお願いしておりまして、それを踏まえ て秋をめどに設定する予定にしております。(2)の方は平均在院日数ですけれども、平 均在院日数につきましても新しいデータが今年の12月ごろ出ますので、それを踏まえ まして何日という具体的な目標を定める予定にしております。こういう2つの目標を 達成することによって医療費の効果が期待されるところであります。   11ページは、その目標を達成するために国としてどういう取り組みを行っていくの かというものを書いたものであります。(1)の国民の健康の保持に関しましては、 特定健診・特定保健指導の役割が重要になります。この実施主体は医療保険者という ことになっておりますので、その医療保険者の取り組みをどのようにバックアップし ていくのかということを中心にして国の政策を書いてあります。   12ページに移りまして、こちらは医療の効率的な提供に関する施策でありまして、 3つ柱があります。1つは「療養病床の再編成」ということであります。これは今各 都道府県でいろいろな具体的なアンケート調査をしていただいていますが、国として は環境整備を行おうということで、受け皿の機能の強化ですとか経過措置とか、そう いうことを定めております。   13ページは、2つ目の柱「医療機関の機能分化・連携」ということであります。こ ちらは医療計画と重なる部分がございますが、入院から退院まで切れ目なく必要な医 療が提供される、そして早期に自宅に帰られることにして、患者の生活の質を高めな がら全体としての入院期間を短縮していこうという考え方でありまして、医療機関ご とに今都道府県が医療計画のもとで具体的な医療機関の機能分化と連携の姿を描くと いう作業を始めております。そういった取り組みを推進していくことが国の役割と考 えております。   3点目としまして、「在宅医療・地域ケアの推進」ということを掲げておりまして、 こちらも医療計画やその他の計画と関連いたします地域ケア整備構想という他の計画 とも関連いたします。在宅医療、あるいは在宅のための訪問看護あるいは訪問介護サ ービスといったこととの連携の推進ですとか、自宅以外の多様な居住の場を拡大して いく。そういうことによりまして、なるべく看取りの体制を病院以外でもとれるよう にというようなことを深く考えているところであります。   こういう取り組みを5年間の計画でやるわけですけれども、評価をする規定が14 ページにございますが、中間段階でも評価をやろうということになっています。PD CAサイクルに基づいた取り組みを考えておりまして、計画の真ん中の1に「進捗状 況の評価」として中間評価を行いまして、それを公表しようとしております。国にお いても行いますし、各都道府県においても行うことにしております。その結果を踏ま え、必要に応じた見直しへの活用なり次期の計画の策定に生かす予定にしております。 それから5年たった時点では、実績評価を行うことにしておりまして、計画が終わっ た年の翌年度に、こちらも全国でも行いますし、各都道府県でもその目標の達成状況 はどうであったかということにつきまして、調査・分析を行いまして、それに基づい た実績評価を行いたいというふうに考えております。そういう計画の内容になってお ります。  以上でございます。 ○ 座長   どうもありがとうございました。それでは、今資料の確認をしつつ御説明をいただ いたわけでございますが、いよいよ審議に入る前に、ちょうど松田先生がお見えにな りましたので、ちょっと御紹介をいたしたいと思います。 ○ 松田委員   産業医大の松田でございます。よろしくお願いいたします。 ○ 座長   それでは、きょうは先ほどお話がありましたように第1回でございますので、フリ ーディスカッションをしていただくということが一番メインでございますが、その前 に今資料をいろいろ御説明いただきましたので、まずは御質問があるのではないかと 思います。最初にいろいろ質問をしていただいて、質問の中でいろいろコメントされ ても結構かと思いますが、どうぞ、どなたからでも結構でございますので、御自由に 御発言をいただければありがたいと思っております。ただいまの資料でいろいろな問 題が全部出てきていると思います。ただ、どう料理していくかということがこれから の問題でございますので、どうぞどなたからでもいかがでございましょうか。はい、 どうぞ。 ○ 尾崎委員   では、口火を切る形で発言させていただきます。私は、弁護士なのですが、実は理 科系出身でして、大学の学部では数学をやっていました。修士は海外でDiploma of Computer Scienceをとりましたので、もともとはコンピュータ技術者です。その後司 法試験を受かっていますので、弁護士です。そして、現在は日医総研におりまして、 医療法務を研究しています。法律・コンピュータ技術・医療の3つの視点をもってお りますので、検討の口火に、これらの視点から、まずは、3つの論点を申し上げたい と思います。   まず第1は、国家がレセプト情報を収集するというのは「重大な基本的人権の侵害 行為である」ということです。これがまず検討の出発点になります。国民にはプライ バシー権という基本的人権が認められており、「国家権力にプライバシー情報を知ら れない権利」が保障されています。そして、病歴がプライバシーであるということは、 全く争いがありません。それを国家機関が集めるということは原則的にはやってはい けないことだということですね。「基本的人権の侵害」というときつい語感になりま すが、法律学者の用語で言えば「基本的人権の制限」ということになります。   基本的人権といっても絶対無制約ではありませんので、ある一定の基準のもとに基 本的人権は制約することはできます。とはいえ、基本的人権の制約は、憲法違反にな る可能性が高い。憲法違反か否かを裁判所が審理するため、いろいろな憲法審査基準 がありますが、基本形は比較衡量です。この基本的人権、患者のプライバシー権とい うものを制限しても、なおかつ得られる「法的」利益は何かということが審査されま す。  しかもプライバシー権は精神的自由権ですから、経済的利益では駄目で精神的自由 権に匹敵する、例えば生命、身体とか、まさに医療のサービスの質の向上によって何 か得られる「法的」利益というものが明確に論証できない限り違憲です。「経済効率 性が向上する」というレベルでは基本的人権を制約する事由になりません。  ということで、まず議論の出発点として、基本的人権、プライバシー権に関して重 大な制約を加えようとしている、ということを十分意識する必要があります。これは ピュアに法律家としての論点です。   次に2番目。コンピュータサイエンスを交えた法律の視点です。IT法務という言 い方もされますが、むしろ、情報セキュリティと言った方がいいかもしれません。法 律を使って様々な社会の問題を弁護士として解決しているのですが、私のもともとの 専門分野であるコンピュータサイエンスの分野での最大の問題は、ネットワーク上の 情報流出ですね。匿名掲示板に書かれる、あるいはサーバーが海外に置かれてしまっ て訴訟ができない、あるいはウイニーなどのピアtoピアというもので情報を消すこと ができない。   つまり、プライバシー情報がネット上に流出したときに、もはや手が打てないとい う状態です。   個人情報保護法というのはやや古い法律で、まだ「ハードな媒体」に情報が固定さ れていた時代に如何にコントロールするかという法律です。ネットワークに情報が放 流されるような事態はほとんど想定されていません。  現実問題、私にこのような被害で相談に来る方々のほとんどは泣き寝入りです。泣 き寝入り。だれが放流したかもわからないし、サーバーも特定できない。特定できて も海外にある。あるいはウイニーなどのピアtoピアで流されてしまうと自分の個人情 報がたれ流しになっても、それを消すこともできないということですね。   だから、仮に病歴データをデータベース化してしまうと、デジタルデータというの は確実に流出します。つまり、「自分の病歴データがネット上にプカプカと浮遊して いて、消すことすらできないという、そういう社会をつくっていいのか?」という問 題です。   かような論点を法律家ばかりで議論すると、セキュリティポリシーとか委託契約が とか、あるいは罰則を強化とか出てくるのですが、そんなものではもう防げない段階 に技術が来ているということです。技術的知見に基づいて、如何に情報流出の問題を 解決していくのかということをきちんと整理する必要があります。これは非常に難し い問題です。    3点目。医療と法律という観点からしますと、ドクターの方々というのは極めて人 権意識が低いと言わざるを得ないと思います。基本的人権は「権利」ですから、権利 行使しなければ国は何も困らないわけです。もちろん、厚労省と日本医師会は政策面 ではいろいろ論争していますが、こと人権問題・憲法問題については争いになること はほとんどないです。たとえば、保健師助産師看護師法問題というものがあります。 罪刑法定主義が遵守されず、厚労省の課長の通達で犯罪構成要件を決めてしまうとい う憲法31条違反、罪刑法定主義違反、国会軽視というのがまかり通っています。これ に対して、「実務上何とかしてくださいよ」という要望はドクター側も出すのですが、 ドクター側が厚労省を相手どって人権侵害とか憲法問題を争うということはないわけ ですね。それでドクター自身がひどい目に遭っているというのは自業自得なので、ド クターのレベルはそれでいいのかもしれませんが、こと患者の情報に関してそのレベ ルでおさめてはいただきたくはないということです。患者のプライバシー情報なのだ から、もう一歩高い位置でプライバシー権という人権を守らなければいけないという ことです。   まとめますと、1点目は、基本的人権を侵害又は制約するようなプロジェクトであ るので、その点について、きちんとした「法的」メリットを明らかにすること。これ は、経済的メリットではだめですね。経済的自由権は精神的自由権よりはるかに価値 の低い権利ですから。経済的利益や効率性ではなく、具体的な医療サービスの質の向 上ということ、要するに国民の生命・身体にどういうメリットがあるのかということ を明確に示さなければいけないということ。   2番目として情報技術。ネットワーク技術は、罰則だの委託契約だのセキュリティ ポリシーを超えるところに行ってしまっている。その前提で技術面からも情報流出の 危険性をきちんと詰めなくてはいけないということ。   第3点目として、通常のドクターと厚労省さんとの人権意識・憲法意識レベルでこ れを仕切っていただくと、道を誤るということ。国民の「病歴」というプライバシー 情報が出てしまう可能性が高いということに関して慎重に検討する必要があると思い ます。 ○ 座長   どうもありがとうございました。きょうはできるだけたくさんの方に御発言をいた だきたいと思いますので、恐縮でございますが、なるべく短く要点を御発言いただけ ればありがたいと思います。どうぞ。ただいま大変大事な問題を最初に御提起いただ いたわけでございますが、いかがでございましょうか。はい、どうぞ。 ○ 稲垣(恵)委員   健保連から参っております稲垣でございます。私どもの考え方というか、今回のレ セプト情報活用への期待ということと、それから検討を進めるにあたって特に考慮い ただきたい事項を4点ほど申し上げたいと思います。   まず1点は、先ほどの得られる利益ということではございませんが、健保組合にと りましても、このレセプト情報の活用というのは非常に重要なテーマでございまして、 特定健診・保健指導の実効性を上げるという意味でももちろんございますし、広い意 味では、この検討会のテーマであります「医療サービスの質の向上」ということもあ ります。   そういう意味では我々健保組合にとって保険者機能を強化する上でみずから取り組 んでいかなければならない重要な課題というふうに思っておりますし、またさらに国 家レベルでより高く、またより広い視点で取り組んでいただくということは非常に我 々としても期待しているということでございます。   検討に当たって特に考慮いただきたいということで、我々もいろいろレセプトにつ いて勉強しているところでございますが、1つは参考にすべき事例として、よく挙げ られますけれども、韓国の事例ですね。相当電子化が進んでいて、単に医療保険事務 の効率化ということだけではなくて、医療の質の向上という観点で相当いろいろな成 果を上げておられるということで、国内でも発表されているようですから、そういっ た点は非常に我々にとって意味があるのかなと思っております。   2点目として、これは時間との関係もございますが、せっかくここまでやるのであ ればレセプト情報をより有効に活用するという観点で、いろいろな条件整備というこ とについて少しでも検討を加えていただきたいということでございます。   よく出てくる例としまして、レセプト様式の問題で現行の様式のままで調査・分析 を行うのかということでございますが、例えば傷病名と診療行為のひもつけの問題で あり、現状のレセプトではそれがなかなか読めないということで、なかなか精緻な分 析に至らないといった問題もございます。これまで健保連としても様式の見直し等い ろいろ提言させていただいておりますが、そういったところについて少しでも前に進 むようなことを期待したいと思っております。   それから、データ量も相当膨大なものになるということで、ある意味では費用的な 問題というか、そういう意味ではコストパフォーマンスということが重要になってく ると思います。ITに関してはいろいろな諸施策が議論されているわけで、健康IT カードとか、そういったものもございますので、それらとの整合というか、そういっ た点についてもいろいろ御配慮いただきたいと思っております。   それから4点目ですが、保険者としてもこのデータの活用については、いわゆるデ ータへのアクセスができるようにしていただきたいと思っています。 ○ 上島委員   12年ほど前から滋賀県の国保連合会が主導して委員会をつくりまして、健診データ とレセプト情報を結合しながらやってきた経過をお話ししたいと思います。   この滋賀県国保連合会では、まず私たちに県民の健康づくりという視点から委員会 を立ち上げて、国保連合会を支援してほしいという話がございました。それで公的な 委員会を立ち上げまして、私に「委員長をしてくれ」と言われて、県からの代表者、 市町村、国保連合会の方々を入れまして10人ぐらいで委員会をつくって、12年前は 当初県民の健康づくりに役立つような情報をいかに提供するか。私たちの持っている 疫学的なノウハウを生かしながら被保険者の方に有効な情報を提供するということで 活動を続けて、毎年最終的には大きなレポートをまとめながら、「健康づくり虎の巻」 と称してレポートを作成してまいりました。   その中にはもちろん当時、老人保健法の中で基本健診の後の事後指導等にいかに国 民の健康づくりを支援していくか、この場合は滋賀県の県民ですが、をやってまいり ました。   これはモデルケース的であったのです。なぜかといいますと、私たちが日常大学の 研究室として疫学調査をしているフィールドで実施してまいりました。その後半にな りまして、「レセプトを活用した健康づくりに生かせるものはないか」という視点に なりまして、もう5年以上経過しましたが、今回の企画のある前に、結果的には先行 的になったのですが、国保のレセプト情報と健診のデータとの突合を国保連合会でや りまして、それを無名化する形で私たちが分析し、そして被保険者に例えば「血圧が 高いとどれぐらい医療費を使いますよ」と。だから、高血圧の指導にはいろいろな指 導のポイントがありますが、前半は生活習慣の改善等々をやってきたわけですが、そ の資料の最後の一環として「皆様の保険の貴重な医療費をこれだけ使いますよ」とい うふうな形でも情報を提供し、生活習慣の改善に役立ててまいりました。そういった ことで先行する研究ではそういったことが注意深くやれば可能であったというふうに 考えております。以上です。 ○ 座長   どうもありがとうございました。今のお話のように、できれば片一方で最初に尾崎 先生が言われたように理念的に非常に大事な問題は詰めていかなければいけないと思 うのですが、一方で事例的なものも積み重ねていくと、そこからどうすればいいのか という知恵が出てくるのではないかというふうにも思っておりますので、この中には いろんな事例をお持ちの方もあるのではないかと思いますが、適当な機会にまた御紹 介いただければありがたいと思っております。  どうぞ、どなたでもほかにいかがでございましょうか。できればぜひ最初でもござ いますので、皆様のお考えを少しでもお聞かせいただければ、後の議論が大変やりや すくなるのではないかと思います。はい、どうぞ。 ○ 飯倉委員   連合の飯倉でございます。まず基本的な考え方といいますか、今回、医療情報のI T化を促進していくということで進めているわけでありますけれども、紙による書類 管理などにかかっていた経費の削減という部分もありますが、そのこと以上に結果と して医療サービスの質の向上につながるということであれば、このレセプト情報を初 めとするIT化についてはやはり関係各位の皆さんに引き続き積極的に取り組んでい ただきたいというふうに考えているところでございます。   その上で今回のレセプトデータをいわゆる国といいますか、そういう意味では第三 者が分析をするというような作業をどう考えるかということでありますけれども、最 初に尾崎先生の方からも御発言がありましたように、診療報酬明細書の情報というの はいわば究極の個人情報ということになりますので、その取り扱いは最大限慎重であ るべきだというふうに考えてございます。   そうした大変重要な個人データを国も含めて、第三者が取り扱う場合にはやはりそ の前段で実際にデータを保管する保険者なり、そういったところが基本的にはどこま でできるかという、その専門的なところは存じかねますけれども、完全に匿名化をす るなどの一般情報として提供していくことをやはり基本としていく必要があるだろう と考えております。   そういう意味では今後議論を進めるに当たって、少し情報の質というか中身といい ますか、いわゆる統計的なデータとして使う部分は情報を匿名化して一般化した情報 ということで使っていくことができるでしょうけれども、学術的なデータですとか研 究に扱うようなデータについては仮に氏名なりを匿名化したとしても、そのデータの 突合などで個人が特定できる場合も考えられるでしょうから、そういう場合にはやは り本人に対する同意ですとか、そういったものも含めてどうなのかという検討の視点 が必要になってくるのではないか。それともう1つはやはり保険者が被保険者に対し てさらに健康づくり等に活用するデータの使い方。こういったところで少し視点を分 けた議論が必要なのではないかなと思ってございます。以上です。 ○ 座長   どうもありがとうございました。どうぞ御自由に。はい、どうぞ。 ○ 井原委員   井原でございます。今いろいろな問題が出ておりまして、私は長年審査に携わって まいりまして、現在も現職の審査委員として審査をしていて、実はきょうもまだ審査 委員会の最中であります。そういう立場からちょっとだけ御意見を言わせていただき ます。   全体的な総論的なことは皆さんがおっしゃったとおりですが、私は現在の仕事の立 場から言わせていただきますと、レセプトとは一体何かということが非常に重大なポ イントになると思うのです。これはレセプトに載っているデータというものが、どう もいろいろな論調を見ていますと非常にスーパーなもの、その内容を見るといろいろ な分析ができて何でもできるかのごとくよく言われるのでありますが、私の立場から 申しますと、正確性とかレセプトを読み取るときの公平性というのは非常に難しい点 があります。   ということは、現行の点数表は、皆さん御存じのようにある部分は出来高と言いま して、すべての内容が書かれますが、ある部分は包括制度と混在した形になっていま す。   したがいまして、今一番有名なところではDPCでしょうか。あとは療養病床とか、 それから今思いつくだけでも救命救急医療とかICUやNICU、それから先ほどち ょっと室長の方からタミフルの話も出ましたが、3歳未満の方ですと小児外来診療料 ということになりますと、この項目を算定すると医療行為はほぼ包括でありますから、 ここは全く分析できない。   つまり、レセプトデータを収集することに関して全く異論はないのですが、そこか ら読み取れるものにはかなり医療機関やこうした包括をどう算定しているかによって ばらつきが出てくるはずなので、それを分析し、そこから何かものを言う、学術的に 研究するときにレセプトから見えているものだけでものを言うのか、あるいはDPC のように7月分から12月分までの出来高のE、Fファイルというものが厚労省に送ら れてきているわけですから、その内容の分析までしないとDPCレセプトは、特に内 科系で見えるものはほとんどないと言いますか、ごく特殊な医師の技術を要する検査 や処置、あとは手術、麻酔、あるいは医学管理や在宅医療といったものに限定されて くるわけですね。ですから、ここのところをどう公平に扱うのかなということが1つ 私には問題に思えるのです。   もう1点は、これはこういう場で発言するのに適正かどうかわかりませんが、医療 機関はやはりレセプトを提出する以上、我々の審査あるいは保険者さんの審査をクリ アするという高いハードルがあるわけでありますから、そのためには、あっていいか 悪いかの議論はこちらに置きますが、レセプトにはいろいろな病名やいろいろなこと が書き込まれてきております。こういったものをすべて正しい情報としてキャッチし てしまうのかどうか。つまりレセプトに書き込まれているもの、例えばもう1つの例 を言えば、今IT化されて来ていますけれども、未コード化された傷病名もございま す。これは最初からこちらが提供したレセプト電算の病名で来れば、それはきちんと チェックできますが、アスタリスクつきの未コードの病名でありますと、これは集計 上落ちてしまうといった問題もございますし、果たしてレセプトの情報をどれだけ正 確に公平に判断するかどうかということ。レセプトとは何か、何がわかるのか、そこ から何ができるのかということを私の立場としては御検討の材料に入れていただきた いというふうに考えております。以上です。 ○ 座長   どうも大変ありがとうございました。非常に実際的な御意見でございます。はい、 どうぞ、大熊委員。 ○ 大熊委員   今の井原委員のお話を伺えば伺うほど、レセプトを御本人が受け取ったら多くの場 合チンプンカンプンであろうとはおもいます。そのことは踏まえつつ、しかしやはり、 資料4のレセプト情報収集経路(案)の図に被保険者が全く登場していないというの はおかしいのではないかというふうに思います。この検討会の目的は被保険者のため になるということ、質の向上になるということですから、質の向上になるためにはそ のデータが正しいかどうかということが大切で、この中に水増し請求、架空請求など が紛れ込んでいると結果は全く意味が薄れてしまう。そのためには、やはり同時に被 保険者の方にもその情報が行くということが必要かと思います。ただ、受け取っても 迷惑という人もいるでしょうから、あらかじめ自分は受け取りたいと言っている人に は同時に行くというようなシステムが必要ではないか。要するに、御本人が見る可能 性があるということを医療機関の皆さんに知ってもらうことによって架空・水増しが できないという抑制効果が働くという結果になるのではないかと思います。   今コムスンの問題が話題になり、厚労省は「こういうふうになってしまったのは私 どもが性善説に基づいてコムスンといえども正しく請求していると信じていたからで ございます」的なことをおっしゃっているわけですけれども、実際はそうではなかっ たわけで、いくら井原先生たちが目をさらのようにしてもわからないのは、水増し、 架空請求です。これは、患者さん御本人にしかわからないことではないかというふう に思います。 ○ 座長   どうもありがとうございました。それでは森委員。 ○ 森委員   日本薬剤師会の森でございます。先ほど健保連の稲垣委員の方からお話がありまし たが、韓国等でレセプト情報を活用する取り組みが進んでいるようです。その他の国 でも、医療安全対策等にレセプト情報の収集・分析をしている国があると聞いており ます。開原座長から、日本で初めてのこのような検討だというお話がありました。尾 崎委員からも幾つかの課題も挙げられました。ぜひ、事務局で諸外国の情報を収集し ていただき、それらを踏まえて今後収集する情報の範囲、公表方法等を慎重に検討し ていくべきではないかと思っております。 ○ 座長   どうもありがとうございました。ただいまの御提案はどこかで一度事務局でまとめ ていただくといいのではないかと、そんなふうに思っております。いかがでございま しょうか。どなたでも。はい、どうぞ。 ○ 稲垣(明)委員   日本歯科医師会の稲垣明弘でございます。資料7をごらんになっていただきたいと 思うのですけれども、まだ歯科におきましてはレセプト電算処理が完成してございま せん。   今検討中ということですが、いわゆるレセプト電算処理がまだ終わっていなくて、 しかもレセ電もない。当然オンラインもないのですね。今の検討はオンラインという 検討だと思うのですが、基本的にこのレセプトの情報というのは、我々は医療保険の 診療報酬の請求のためにレセプト情報を出しておりまして、基本的にはこれがうまく これからの電子媒体によって医療費が請求できて、一番大事なのは国民に混乱なく医 療が提供できるかどうかということが今非常に大事なのだと。そういう意味ではまだ 我が国の医療保険制度の中できちんと電子媒体により請求、あるいはオンラインによ る請求がまだ行われていない状態でこのような討議をすること自体が1段も2段も先 のような気がします。   基本的に現状においてレセプト情報の活用というのは、やはり医療保険制度におい てこれからのレセプトの電子化した情報をどのように活用して、それがうまく国民に 医療が提供できるか、そういうことが一番大事だと思います。そこをきちんとクリア して、そこに先ほどから出ていますような患者さんの受診の権利、あるいはプライバ シーの保護というものがきちんと担保できて、医療保険制度がレセプトのオンライン 等の電子媒体による請求というものがきちんと確立した後で、その情報をまたほかに どういうことがあるかということを検討すべきであり、余り早急な検討は非常に早い と思います。一度情報というものは栓を切れば、もう限りなく出て行くと思いますの で、この検討会はそういう意味では非常に制限的に何をすれば今きちんと国民にこの レセプトの電子化によって医療が提供できるか、そのためにどういうふうに活用する かということを検討すべきだと思っております。以上です。 ○ 座長   どうもありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。はい、どうぞ。 ○ 砂原委員   日本経団連の砂原でございます。先ほど座長の開原先生からもお話がございました ように、レセプト情報をこのような形で活用できるのではないか、それによって医療 サービスの質を向上させていけるのではないかというような検討会が始まったことを 非常にいいことだと思っておりまして、個人情報への対応が十分なされるという前提 のもとに積極的に検討が進めばと思っております。   特に分析の対象・目的などをマクロ・ミクロに分けてきちんと整理をしながら検討 していくことが大切ではないかと思っております。例えばマクロでは地域ごとの医療 の水準の把握・分析ということであったり、ミクロでは例えば疾病ごとの分析なども 考えるべきであろうと思います。またそういうことをすることで医療サービスの質が 向上していくということで個人の方々、患者さんに対するフィードバックにつながっ ていくという形になれば非常に良い循環になるのかなと考えております。  また情報収集のあり方という観点でいきますと、先ほど稲垣委員もお話しされてお りましたとおり現在のレセプトの様式についても、傷病名の問題があったりいろいろ、 議論して整理をしていくことが大切ではないかなと考えております。  またその中で、これは今後のことなのか、今回の検討にはなかなか入らないのかも しれませんが、介護の給付でございますとか生活保護における医療扶助の給付との関 係をあわせて検討していくような場になってくるのかどうか。そのようになればいい と考えております。  それから、今回のレセプトの分析の根幹には医療をより透明なものにして、受ける 患者さんが自分の受けた医療がよくわかるという形にしていくことがあると考えてお りますので、広く国民に開示して活用していただけるような形をうまく作っていく、 匿名化とかプライバシーの保護ということに充分配慮しながら何とか併存していけれ ばいいと思っております。特に先ほど健保連の稲垣さんからも話が出ておりましたよ うに保険者としてはぜひ収集した情報が利活用できるように体制を構築していくこと が必要だと思っております。   最後に診療報酬の改定等でもこのような情報をもとにエビデンスに基づく改定の議 論ができる形になってくることが大切だと思いますので、そのような観点も踏まえて いただければと思っております。以上でございます。 ○ 座長   どうもありがとうございました。はい、どうぞ。 ○ 岡本委員   保健医療科学院の岡本と申します。私は医師ですけれども、医療経済とかレセプト の分析の方法論あるいは厚生統計などを主に研究しておりまして、できる限り客観的 に事実を皆さんにしゃべっていきたいと思います。   まず冒頭に尾崎委員の方から、レセプトというものを国が収集するということは人 権に関係するというかなり強い御意見が出されたので、恐らくそれだけ聞くと「何か とてつもないことがこれから始まるのか」と、知らない人はちょっとびっくりされる かもしれないので、コメントしたい。全数ではなしに抽出したレセプトの情報を調査 として集めることは決して新しいことではなくて実は50年も前から毎年1回行われ ております。   冒頭に事務局の方から説明がありましたけれども、社会医療診療行為別調査という、 長たらしい名称ですけれども、人を対象にした国勢調査とは違い、レセプトを対象に した調査があります。ここで検討されていることと違うのは、抽出調査であるという ことと、年に1回1月分だけしか調査されないということに過ぎないわけです。   これから行われることの理解としましては、その社会医療診療行為別調査という抽 出調査を全数調査としてよりちょっと詳細に、しかもオンライン化されることによっ て今まで手で紙に入力していたものを合理化するというふうに考えれば、そんなに心 配することはないと思います。   もう1つそのメリットの件ですが、ちなみに私は厚生統計などもやっておりまして、 OECD(経済協力開発機構)という国際機関が国ごとの医療の質の指標を出そうと いうプロジェクトを進めており、その委員を数年前からやっております。厚生統計や レセプト統計を見ていて、正直に言わせてもらいまして、特にこのプロジェクトに参 加して日本の医療の質の現状に非常に深刻な懸念を抱くようになりました。例えば「心 筋梗塞を起こして入院して30日以内に何%が死亡するか」という率があります。大体 死亡率は平均すると10%ぐらいですけれども、それは国によっても、また地域によっ ても違います。これが医療の質の指標になります。幸い、心筋梗塞の薬とか治療法が 進歩しまして、ここ5年間、10年間でも非常に各国とも改善しています。   ところがまず第1に、今日本で心筋梗塞で入院して死亡退院する割合が何%なのか というと、全国の公式データはありません。どうやってそれをOECDに出したかと 言いますと、患者調査、これも毎年ではなく3年に1回の抽出調査なのですが、それ を特別の手続きを経まして集計をし直して、99年のデータで10.3%であったという数 値を出しました。だけど、この数値もそんなにめちゃくちゃ悪いわけではないのです けれども、アメリカや韓国の数字に比べると実は劣っておりまして、それからもう既 に6年たっております。この6年間の死亡率は各国とも低下しているので当然日本も ある程度は下がっているはずであろうと思っておりましたが、つい先日改めて最新 (2005年)のデータを集計し直しましたら、改善しないどころか10.5%と、わずかで すが悪化しているという数値が得られました。人口の高齢化も考える必要があるので、 そのままでは比較できないのですけれども・・・。あともうひとつ、ひどい地域差が あるようです。この心筋梗塞の死亡率に関しても今度の医療計画見直しの一環として 全国で調査が行われているのですけれども、とりあえず先行的に国が委託して愛知県 と新潟県の死亡率を調査しましたが、愛知県は10%ぐらいでほぼ平均的ですけれど も、新潟県の数値は20%を超える数値で、関係者の間にも衝撃があったわけです。   1つの例ですけれども、世界的に見ても日本の医療の質というのは、最悪とまでは 言わないまでも改善が非常に遅れているのではないか。だけど、より重要な点は、そ れが3年に1回の、しかも抽出された非常に誤差の大きい数値でなくてはわからない ということ。これはやはり国民にとっても非常に知りたいところだろうと思います。 正確な数値を出すためには3年に1回100人に1人という抽出された調査ではなく て、やはり毎月コンスタントに正確にわかる全数調査を出すことが必要なのではない か。   OECD加盟国としては「単に医師数が足りています、医療費が足りています」と いう指標だけではなしに、「今、心筋梗塞で入院したら生きて帰られる確率は何%で すよ」という医療の質、指標を国民に提供していくことが義務である、そのために十 分な情報システムや統計を整備すべきである、と、大臣会合でも合意されております。 その意味でも、レセプト情報の活用というのは、ややもすると医療費や事務費の削減 という経済問題に行きやすいのですけれども、もちろんそれだけのメリットではなく て、より重要な医療の質の向上というメリットに役立つのだということを強調したい。 ○ 座長   どうもありがとうございました。では、上島先生。 ○ 上島委員   岡本先生の中身に対して1つだけ、私の立場、技術の問題について補足しておきま す。まず日本の心筋梗塞の罹患率、発症、死亡率は最も先進国の中で低い。この事 実を踏 まえなければなりません。これはもう厳然たる事実です。例えばモニカというWHO の 発症登録の調査と我々日本の疫学調査の発症登録を6集団比べます。35歳から64歳 の 年齢調整の発症率、1990年前後です。フィンランドが10万人当たり750を超えてい る のに対して、我々のところは50前後です。もう15倍から違います。アメリカとでも 数 倍違います。したがって、日本は先進工業国の中でまれに見る心疾患、特に心筋梗塞 の 罹患率及び死亡率が最も少ない国である。それから日本で死亡率が改善しない中に、 今 ちょっと言われましたが年齢の問題があります。発症年齢が高齢者です。アメリカと 平 均年齢の発症を比べますとかなり違います。例えば男女でも違います。我々の日本の デ ータでは女性と男性の心筋梗塞の発症年齢は7歳から8歳ぐらい違います。平均寿命 ぐ らい違います。したがって死亡率が高いと言う場合に、今ちょっと言われました年齢 の 問題を考慮しないと間違った結論と判断を導きます。追加します。以上です。 ○ 座長   どうもありがとうございました。いずれにしてもこうしたことをきちんと議論する 基礎が必要だということは当然だと思いますので、このデータがそういう基礎になり 得るのかどうなのかという、そういう問題ではないかなというふうには思っています。 はい、どうぞ、中川先生。 ○ 中川委員   日本医師会の中川でございます。IT化も、このレセプト情報の活用ということも、 私は医療の質の向上に結びつかないと意味がないと思うのです。  今の委員の方々の御意見を聞いていて、どうも医療の質の向上に結びつく議論とは 思えないのです。   例えば心筋梗塞の成績といったことだとか、資料の2にあります16条に対応したも のとして、どうしてこれがレセプト情報の活用になるのかなと。井原委員がおっしゃ ったようにレセプト情報から一体どういうことがわかるのか。社会医療診療行為別調 査で抽出である時期だけだと。では、これを拡大することでどうなのかということも ありますし、ただ究極的な、きょうはフリーディスカッションということでしょうけ れども、一番の論点は事務局で整理された資料9のところの3だと思うのですよ。国 以外の主体によるレセプト情報と健診情報の活用のあり方です。   大熊委員がおっしゃいましたけれども、医療・介護といった社会保障の部分におい て営利企業が参入することの危険性は心配しておりました。   コムスンの事例でもわかるように、心配したとおりこういうことになってしまった ということです。この医療分野には、事後検証ではなく、事前に危険な部分は察知し て防止しなければいけないと思うのです。やはり問題が生じるリスクの高いところは、 起こる前にだめだと、これはきちんとしたルールを作るという議論が必要だと思うの で、資料9の3のところをぜひ委員の先生方も含めて今後何回かの検討会があるでし ょうから、具体的にどういうことが想定されるのか、安易なものにならないように私 は希望しております。 ○ 座長   どうもありがとうございました。今御指摘がありましたように、この資料の9が今 後いろいろディスカッションを進めていく上での、ある意味で項目になっております ので、この資料9は、その意味では今後いろいろなところで使われていくことになる のではないかと思います。この資料9のところについてもこういう点が足りないので はないかとか、こういう点はもう少し深く議論をするべきではないかとか、そんなコ メントもございましたらば、同時にお考えいただけると今後の参考になるのではない かと思っております。今までの中にいろいろ御指摘があったことはみんなここと関係 はございますけれども、何か視点として抜けているものがないのか、というようなこ ともお考えいただければありがたいと思います。ほかにいかがでございましょうか。 それでは、松田委員どうぞ。 ○ 松田委員   諸外国の事例も少し踏まえてお話ししたいと思うのですけれども、基本的には医療 費の適正規模とか、医療の診療プロセスを検討する。  質の観点ですけれども、そのデータソースとしてやはりレセプトは非常に重要なも のだろうと思います。しかし、それをどのように分析していくかということですけれ ども、1つには少しステップを分けて考える必要があろうかと思います。   例えば個々の保険者が保険者機能を発揮するためにその診療内容の検討を行うとい うことは保険者機能としてやはりやるべきことだろうと思います。実際に私たちもあ る保険者のデータを分析させていただいたことがありますけれども、横でつないでい きますと、例えば糖尿病の患者さんなどで、糖尿病の診療ガイドラインとは少し離れ たような診療を行っている事例がかなりあることがわかります。そういうデータを積 み上げることによって、それをフィードバックすることによって、その診療の質を高 めていくということは可能だろうと思います。実際にこれを組織的にやっているのが フランスのCNAMTSという保険者団体がそういうことをやっているわけですけれ ども、そういうものもできるだろうと思います。もちろんこれは電子化ができたとい うことがベースにありますので、そういうことでそういうやり方があるだろう。   もう1つは医療費の適正規模とか、これから行われるであろう健康づくり対策とい ったものの効果を評価したり医療費の適正規模を評価するためには、やはり傷病構造 の推計というものが必要だろうと思います。そうしますと傷病構造の推計をやる1つ の方法としてレセプトみたいなものがあるだろう。ただし、多くの国ではそういうも のをやる場合にいわゆる中立的な情報機構みたいなものをつくっております。これは イギリスであればインフォメーションオーソリティがありますし、ベルギーとかオラ ンダでもそれぞれINAMIとかいろいろとそういう情報機構をつくっております。 そういうところが情報を集めて、そこで匿名化して、先ほどの資料のうちの3番の論 点がございましたけれども、それぞれの団体が必要とする情報をそこで責任を持って 処理をして渡すという、個人情報の保護とそれからいわゆる分析することの目的です ね。そこの整合性を図りながらデータをつくって、それを提供するということをやっ ています。アメリカも同じようなことをやっていると思うのですけれども、そういう 意味では組織をどういうふうにやるのかということもあわせて考えるべきではないか というふうに考えます。以上でございます。 ○ 座長   どうもありがとうございました。それでは橋本先生もさっき手をお挙げになりまし たか。 ○ 橋本委員   それでは、各委員の御発言を伺いまして思いましたところで、今の松田先生の事例 とか、それから岡本先生と、もしかしたら野口先生に後でつけ足していただけたらと 思うのですが、諸外国の事例みたいなものとの対比で考えますと、こういうレセプト の巨大データセットを政策及び研究用に公開しているという点ではアメリカの事例み たいなものがございます。実はある意味先ほど飯倉委員からありましたように、幾ら 匿名化してもデータが高度で詳細になればなるほど、やろうと思えば個人は特定でき るようなデータセットもある。それはどういう目的で使うのかといったことを厳密な 審査をした上で貸し出している。   そうはいってもあれだけプライバシーだの自由だのがうるさい国でよくこんなもの が成立するなあと思いまして、実は向こうでそのデータを使っていた知人に「何でア メリカ人はこういうものをやってもプライバシー問題で議論が起こらないのだろう ね」というふうに聞いたことがございます。   そうしたら彼は、「わからないけれども、恐らくそれは」と言って答えてくれたの が、「政策は間違うものだという概念が多分あるからだよ。右へ行ったり左へ行った りするから、そのときにまた立ち戻ったり迷わないようにするために、かたい数字を 共有しているといったことが重要なのだ。それがちゃんとした保護がかけられている 上で一部プライバシーを提供することを上回った便益につながると思うから、それが 成立するんだ」と。これはまさに冒頭で尾崎委員がおっしゃられたように、「ただ国 がある権限で集められるから集めるというのではなくて、何を目的にしてどういう形 で国民の便益に資するのかということが、少なくとも名目上成り立っているから成り 立っていることなんだよ」というふうに答えてもらったことがございます。   ある意味この委員会では、どういうふうにやったらそういう名目的便益のために資 するシステムになるのか、そのために必要な要件は何なのか、といったことを恐らく 議論する場になるのだろうなという形である意味私自身、今先生方の御意見を伺いな がら少し緊張感を高めていたところでございます。よろしくお願いいたします。 ○ 座長   どうもありがとうございました。では、野口委員、お願いします。 ○ 野口委員   国立社会保障人口問題研究所の野口と言います。今橋本先生の方からもお話があり ましたように、ちょっと私はアメリカの事情を知っておりますのでお話ししますと、 アメリカはソーシャルセキュリティナンバー、今年金の方で国民にIT番号をつけよ うという話が出ていますが、アメリカはそれがソーシャルセキュリティナンバーとい う形でついております。したがって、データの先進国ですけれども、それが医療デー タから財務データあるいはいろいろな形で全部連結できるようになって、さまざまな 形で研究機関、学者その他国などが利用していろいろな政策を立てているということ です。   その際に今橋本先生からもお話がありましたけれども、やはり中立的な情報提供機 関というものがありまして、従来はヘクファーといいまして、今はCMSとなってい ますが、そこで研究者がどういう目的で使うのかという申請書を出しまして、そこで しっかりチェックをしている。1つ大きいのは、個人の番号は全部消されているので すけれども、1つ個人が特定される可能性があるとすれば、地域IDが入っているか、 あるいは医療機関IDが入っているかということが重要なんですね。ですから、その 部分を要求して提供してほしいという人たちに対しては非常に厳しい契約を結ぶ。プ ラスこれは罰則つきです。  というのは、私がちょっといじっていた研究所のマーク・マクレランという人がい るのですけれども、彼に冗談で「もし私たちがこのデータをだれかに売ったら、あな たは牢獄行きだね」という話をしたら、「そのときは君たちも全員僕と一緒に牢獄行 きだ」というような冗談を言ったのですが、それぐらい厳しい罰則がついております。 だからといって個人情報をただ集めればいいということではなくて、やはり政策を立 てる上で非常に重要であると。先ほどいろいろな先生方からお話がありましたが、ミ クロの意味で個々の患者さんに役立つこともそうなんでしょうが、マクロな意味で中 央値なり平均値なり、そこからどれぐらいばらついているかということが政策を立て る上で非常に重要だと思います。今厚生労働省さんの方からいろいろ目標値あるいは このぐらい改善するというようなメタボリックシンドローム10%というような数値 が上がったのですが、一体この数値が何を基本として、何をもとにこの数値が出され ているのか。実際それによって現場が縛られていくわけですね。例えば今医師や看護 師が非常にきつい状態にあるということもいろいろなところで言われておりますが、 そういった上で目標値をきちんとエビデンスに基づいて立てる。そのためにはやはり きちんとしたデータが必要であるということで、私はこの検討会が開かれたというこ とは非常によかったと思っております。 ○ 座長   どうもありがとうございました。せっかくの機会でございますから、どうぞ。 ○ 角田委員   支払基金でございますけれども、私どもはレセ電の普及に一生懸命努めてきたとい うふうに自負しております。そういった意味でIT化についてはいろいろ協力してい きたいと思っていまして、資料にあるように健診情報を保険者さんからいただいて、 それをデータベースに出すというような仕事以外にも御協力できることがあればした いというふうに思っています。   あと2、3申し上げますと、実は先ほど井原先生もちょっとおっしゃっていました けれども、要するにすべての国民のレセプトを集めて、あるいは健診データを集めて やる、しかもコンピュータでやるというと何でもできるような感じをもしお持ちでし たら、そこは相当限定があるのではないか。もちろん安全の問題もありますし、今ち ょっとお聞きして考えたのは、これから社会保障カードができる。そうすると国民に すべて番号がつくわけですね。表の番号がつきます。今度は匿名化といって、その患 者さんを追いかけるというのだから裏の番号もつくわけで、これも大したものだなと 思います。ただ、ここについては支払基金としてはどうという意見はさておき、個人 としては相当なことが行われるなあと。とすると、やはりそこは最初の方の意見があ ったように、個人の人権をどう考えるかとか、あとその活用ですね。だれが使えるの かということも非常に大きな問題になるのだろうなあというふうに思いました。   最後に申し上げたいのですが、1点めとして、レセプトを何らかの形でこういうも のに使おうとする場合にやはり限界があります。それは病名の問題でして、未コード 化病名というものがございますけれども、これがレセプト件数でいえば3割ぐらいあ るのですね。これを何とかしないと困るのではないか。私どもはワープロ病名と呼ん でいますけれども、そういうものは、特に大学病院では全部がワープロ病名というよ うな病院もありますので、ここはIT化だから、少しは開原先生がおつけになったコ ードでやっていくということが必要だろう。   2点めとしては、実は今医薬分業が5割進んでいますね。調剤レセが毎年毎年数% ふえていますけれども、そこの内容がどこの医療機関が出したかデータ処理がしずら いようになっていますから、これも調剤レセだけでは病名がわからないという大きな 問題があります。私が申し上げた2点ぐらいは直していかないと、せっかくやろうと 思っても相当うまくいかないのではないかというふうに思っております。とりあえず 以上でございます。 ○ 座長   はい、どうぞ。櫻井委員。 ○ 櫻井委員   国民健康保険中央会の櫻井でございます。先ほど滋賀県の国保連での実際の例のお 話がございましたけれども、ナショナルなベースで、しかもレセプトに基づいたデー タが集まってきますと、従来のいろんな調査とか統計がかなり様変わりしてきますの で、そういう意味では大変大きな可能性はあると思うのですが、同時に何人かの方か ら御指摘がありましたようにレセプトというのはあくまで診療報酬制度に基づいて、 診療報酬の体系に沿って必要な情報を出しているものですから、かなり大きな制約の ある情報だと思いますので、そこを十分踏まえた御議論が必要であると思います。   それから、今も御指摘がありましたけれども、未コード化傷病名の問題ですね。こ れは本来ICD10に準拠されたコードで、どうしても載らないものについてはワープ ロ入力でいいという趣旨だと思うのですけれども、現実には3割、4割のレベルでの 未コード化傷病が実際には電子レセプトに出てくるものの中にございますので、そこ はぜひ医療機関側の御協力、あるいは国側の御指導もお願いをしたいなと思っており ます。   それから、冒頭御質問ということだったのですが、質問が一切ないので、事務局の 方もちょっと手持ちぶさたではないかと思いますので、ちょっと質問をさせていただ きたいのですが、先ほどの表にありますように最終的には審査支払機関から情報を出 すということになりますので、私どもとしても十分きちんとした制度といいますか、 情報を御提供するのを正当な業務として制度化していただきたいと思うわけです。   そういった観点での質問ですが、今回の要綱で医療費適正化計画の作成なり分析以 外の目的も含めて幅広く医療サービスの質の向上に役立てたいということで、この医 療サービスの質の向上は本当に重要なことでございますので、そのこと自体は当然な んですけれども、あわせてそれを支える仕組みとして第16条の御説明があったわけで す。  16条は医療費適正化の計画の作成なり評価のために必要な情報を厚生労働省令で 定める方法によって保険者は提供しなければならないという規定なものですから、し たがって厚生労働省令も当然医療費適正化計画の作成なり評価に必要な情報を出せと いうことだろうと思うのですが、今回私どもが目的としている幅広い医療費適正化計 画以外のものも含めた目的とそこはどう整理をしていったらいいのかということが1 つでございます。   それからもう1点は、資料の4で特定健診の情報について出すポンチ絵がございま すが、こちらの方も高齢者の医療の確保に関する法律の16条に基づいて出していただ くという説明になっています。私は特定健診の別の検討会に参加をさせていただいて おりましたけれども、あの検討会では、私の記憶では高齢者の医療の確保に関する法 律の15条に基づいて健診情報を厚生労働大臣なり都道府県に出すというような御説 明だったように記憶をしています。16条というのはレセプトデータということになっ ているものですから、健診情報については15条でという御説明だったと思うのですけ れども、ただ15条は、読んでいただくとわかりますけれども、必要に応じて必要な資 料の提供を求めることができるという規定なものですから、このように常時提供する という制度とはちょっと違うような気もしています。いずれにしても今回16条という ことで御説明になっているので、そこがどういうことなのかというのを2点、条文と の関係で、実務的なことで恐縮ですが、私どもとしてはあくまできちんとした制度に のっとって情報を出すという形にしていただきたいものですから、御質問させていた だきました。 ○ 座長   ただいまの御質問でございますけれども、事務局の方からお答えいただけますか。 2点ございます。 ○ 事務局   法律の条文ですとちょっと細かくなりますが、16条のところの条文で、「医療費適 正化計画の作成、実施及び評価に資するため、次に掲げる事項に関する情報について」 となっておりまして、1号・2号となっておりますが、1号の方で「医療に要する費 用に関する地域別、年齢別または疾病別の状況その他の厚生労働省令で定める事項」 となっておりまして、ここと具体的な医療費適正化計画を当てはめてみますと、例え ば生活習慣病予防ですとか平均在院日数の短縮あるいは医療機関の機能分化・連携と いうことになりますので、こういったことをいかに評価し、あるいはその第1期・第 2期というときに常に作成立案、どういうところに具体的な標準を合わせて数字を見 ていくかということになりますので、例えば生活習慣病に関しましては地域別の発生 状況とか、年代別にどうなのか、男女別にどうなのかといったことのほか、例えば健 診結果による健康状態と、先ほど上島先生のお話がございましたが、疾病と医療費と の関係、あるいは保健指導の効果とか、そういったことがあろうかと思います。   同様に平均在院日数ですとか医療機関の機能連携といったことを考えた場合に、こ こから出てくる内容としてレセプトの項目及び特定健診の結果、特定保健指導の結果 の項目というふうに考えておりまして、たまたまその内容が疫学的な利用にも活用で きるのではないかとも考えております。いわば本来目的の範囲でレセプトの項目を考 えているところでございます。   もう1点目の特定健診の項目をどこからとるのかということですけれども、15条の 規定は、私どもがもともと考えておりましたのは都道府県がそのデータをどう活用す るかという場面で15条の規定があり得るのではないかという、15条の規定をもとに 考えるということを申し上げております。都道府県が自分の県として情報が欲しいと いった場合に15条の方では必要な資料の提供に関して協力を求めることができると いう規定がありまして、県から国に対して協力要請があれば、県に対する資料提供を 考える必要があるというふうに考えております。そもそものデータの収集につきまし ては、こちらの方につきましても16条を基本に考えていたところでございます。 ○ 座長   よろしゅうございますか。 ○ 櫻井委員   必ずしも釈然とはしませんけれども、一応御見解としては承っておきます。 ○ 尾崎委員  今の櫻井委員の質問に関連して、法律の専門家の立場から申し上げます。  保険者が厚生労働省にデータ提供する場合に被保険者に事前に個別に御了解をとっ ていればいいのでしょうけれども、無断で渡した場合に16条を根拠に正当業務行為を 構成するかというとかなり厳しいものがあるのではないかと思われます。個々の損害 賠償額 は民事の場合多分小さいと思うのですが、判例では住基基本4情報でも損害賠償額が 5000円とか1万円になりますから、病歴情報だとやはり10万、20万となるでしょう。 そうするとワッと火がついて「保険者を訴えれば10万もらえる」となれば世の中大 混 乱になりますよね。だから、その辺の法的な整理というのは慎重に検討された方がよ ろ しいのではないかと思います。 ○ 座長   どうもありがとうございました。それではひとあたり御意見を伺ったのでございま すが、樋口先生、何か。今までの議論を聞いてコメントでも結構です。 ○ 樋口委員   ありがとうございます。では、時間が限られているので短くとは思うのですが、し ゃべり始めるととまらないかもしれないのですけれども、私もきょう皆さんのコメン トを伺って非常におもしろかったです。勉強になりました。大熊さんが言われたよう に、この会に患者の代表はいるのだろうかという。これは患者のためのという話で始 まっていますから、「医療サービスの質の向上のため」というのは、これは大熊さん がやることだと思っていたのですが、伺っているうちに、よく考えたら私は患者なん ですね。だから、私はいろんなことを知らないので、きょうはいろいろなことを教え ていただいて非常にありがたかった。   後でちょっとだけ申し上げますが、長くなって申しわけないのですけれども、やは り韓国でも何かやっているのか。これも知らないので、本当はそういう話も聞いてみ たいし、あそこにアメリカの専門家がいるのなら、きょうはコメントぐらいの話です けれども、そこで一体どういう形のものが行われて、どういう問題点があり、しかし こういう形でクリアしているというのをもう少し聞きたいし、滋賀県ではもう既に先 進的な取り組みがあるのだったら、その中でやはりいろんな問題点も出てきておられ るかもしれないので、もう少しそういう話も聞きたい。   レセプトを全国レベルで集めるなんて、この資料を見ると1億何千万という数の情 報が毎月集まってくるということのようですから、これは大変なことだなと思ってい たら、レセプトではやはり限られた情報しかないんですよという話があり、逆にレセ プトのあり方についてもこの機会にもう少し様式であれ何であれ考えた方がいいとい うお話もあって、いろんなところへ膨らんでいくような、どこまで限られた回数の中 でやれるのかと思うのですけれども、私はきょう伺っていて、キャッチフレーズはや はりエビデンス・ベイストという話で、医療のところではエビデンス・ベイスト・メ ディシンというのがもう常識になっている。これはエビデンス・ベイスト・ポリシー をメディカルの分野で打ち立てようという話だと私は思いますので、その第一歩にな るということであれば非常によろしいのではないだろうかと思うのですね。   私の友達の1人がウィスコンシン州で、その人はお医者さんですけれども、厚生省 のトップツーをやっているのですね。ナンバーツーみたいな。で、この前会って、「日 本では医療安全が非常に大きな問題になっている。あなたのところの州政府は医療安 全で一体何をやっているんだ」と聞いたところ「情報化だ」と言うのです。彼がやっ ているのは政府のレベルで情報化という、情報を医療安全のためにどういう形で役立 てることができるかということをやっているという話で、そういう発想は日本にもあ ると思いますけれども、まだまだ情報の使い方についていろいろ考える必要がある。 で、注意も必要だということなんですけれども、最後にやはりこの検討会の役割は今 法律の16条の問題も出ていて、つまりちょっと言わずもがなのことを申し上げるのか もしれませんけれども、医療費適正化計画というのがこの法律に基づいて既にあって、 あるいはこれからあって、それをきちんとやっていくための手だてをとにかく専門家 を集めて考えてみようということなので、この法律のそもそも適正さとか医療費適正 化計画の適正さをここでは議論する場ではないような気がしておるんですね。だから、 その適正化計画というのは、しかし幅広であって、国民の健康の維持のための政策を つくるんだということが一番初めにうたってあるので、そうすると非常に幅広な、単 純にコスト削減というだけの話ではないというふうに理解もできますので、そのため に情報をプライバシーに配慮しつつどういう形で活用できるかということ。しかも限 られたレセプト情報とこれから始まる健診情報という範囲で何ができるかということ を学ばせていただき、あるいはここで議論していく機会になれば本当にありがたいと 思います。 ○ 座長   どうもありがとうございました。今樋口先生が見事に論点整理をしてくださったよ うなものでございますので、資料9が今の樋口先生のまとめで膨らんだのではないか と思います。その辺を含めて次回以降に議論をしていくことになるのではないか、そ んなふうに思っております。時間も迫っておりますので、次回以降のことについて、 事務局の方から少しお話をいただけますでしょうか。 ○ 藤澤室長   今後のスケジュールにつきましては資料の10で先ほど御説明をさせていただきま した。皆様、本当にたくさんの御意見をいろいろいただきまして、樋口先生にも最後 にとりまとめていただいた形になりましたが、こちらからもう一度整理した形でお示 しして議論をさせていただきたいと思っています。また何人かの先生方からいろいろ 具体的な事例の御紹介もいただきましたので、その関係でも2回目以降またいろいろ お知恵をお借りするかもしれませんので、どうぞよろしくお願いいたします。   次回は9月を予定しておりますが、また具体的な日程につきましては改めてご確認 をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 唐澤総務課長   最後に1つだけ。座長、恐縮です。いろいろな先生方から実際にもう既に取り組ま れている活動事例、あるいは現状の問題点についての御意見もございましたので、ち ょっと御相談でございますけれども、例えば1回の時間を多少長くしていただいて、 その事例の御発表をお願いするというようなことも御相談させていただきたいと考え ております。   それからもう1点申し上げたいと思いますけれども、樋口先生からお話がございま したように、実はこの問題がカバーする範囲というのは大変広い範囲の問題でござい まして、恐らく一度にすべての問題を解決することはできないと思っております。そ ういう意味ではステップを踏んでどういう方法で望ましいやり方に近づいていくかと いう御議論をお願いできればと思っております。以上でございます。 ○ 座長   それでは今の御相談をしたいということでございますけれども、その件については 何か御意見はございますか。それは大変結構なことなので、特に御異議もないのでは ないかと思いますが、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。  ほかに特に御発言はございませんでしょうか。もしなければ、ちょうど時間でござ いますので、きょうの第1回の「医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等 の活用に関する検討会」を終わらせていただいてよろしゅうございますでしょうか。  どうも大変ありがとうございました。 (閉) ※ 議事録中26ページ(岡本委員)及び27ページ(上島委員)において、死亡率に ついてのご発言がありますが、上島委員は「人口当たりの死亡率」についてご発言な さっています。   本検討会後に岡本委員より、ご自身の発言は「入院患者当たりの死亡率(裏返すと 救命率)」についてである旨の追加コメントを事務局にいただきました。 【照会先】  厚生労働省保険局総務課保険システム高度化推進室 巣内(すない)  03−5253−1111(内線)3269   1