07/07/13 第5回診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会の議事録について 第5回診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会          日時 平成19年7月13日(金)          14:00〜          場所 都道府県会館101大会議室 ○医療安全推進室長  それでは定刻になりましたので、第5回の「診療行為に関連した死亡に係る死因究明 等の在り方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方には、ご多用のところ当 検討会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。まず、初めに本日の委員 の出欠状況についてご報告いたします。若干遅れている方はいらっしゃいますが、全員 ご出席いただけると伺っております。また、本日は法務省刑事局の甲斐刑事課長の代理 で、山元裕史参事官にご出席いただいております。  次にお手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿の ほかに、資料1として「これまでの主な議論」と題するもの、そして参考資料集、以上 でございますが、資料の欠落等ございましたら、ご指摘いただきますようお願いいたし ます。もしないようでしたら、以降の議事進行につきましては、座長によろしくお願い いたします。 ○前田座長   本日もお集まりいただきまして、ありがとうございました。早速議事に入らせていた だきたいと思います。これまで、この検討会では厚労省と法務省、警察庁が協議されて まとめられた試案である「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する課題 と検討の方向性」、いわゆる試案と呼んできたものですが、これをたたき台としてパブリ ックコメントを行って、それを参照し、それから何人かの方のヒアリングを行ってまい りました。  今回は前回の最後にも事務局に皆さんの前でお願いしたわけですが、これまでの検討 会での主なご指摘・ご提言について、試案に沿った形で整理した資料を用意いただきた いということで、資料1を用意していただきました。進め方としては、この順にいまま での議論をさらに深めていくということなのですが、初めに事務局より、作っていただ きました資料を、試案の1〜6の論点についてのいままでのご意見を整理したものですが、 これを説明いただいた上で、試案の1〜6の順に議論してまいりたいと思います。それで は室長からでよろしいですね。お願いいたします。 ○医療安全推進室長  20分ばかりお時間をいただきまして、ご説明をしたいと思います。資料1の「これま での主な議論」をご参照いただきたいと思います。1頁、頁の構成ですが、「策定の背景」 として、試案に書いてあったものが上に書いてあります。(1)(2)(3)、これが策定の背 景で試案の中で示したものですが、その下に、これまでの主な議論ということで、この 検討会でご議論いただいたものの、主なご意見を記載しております。なお、その下に小 見出しが書いてありますが、これは事務局の判断で適宜付けさせていただいております。  まず、「医療事故被害者の願い」ということで、医療事故被害者の願いである反省・謝 罪、責任の追及、被害者の救済、再発防止のすべてのベースになるものが真相究明であ るというようなご意見がありました。また「医療界のあり方」ということで、我が国の 医療は、上下の風通しが悪く、自由活発な議論ができない風潮があり、事故の隠蔽、患 者に説明しない、謝らない傾向があった。国民の信頼が得られるような調査組織を創設 するためには、従来の傾向・風潮を打破していく必要があるといったご意見もありまし た。  2頁、「国民と医療者の医療に関する認識の齟齬」ということで、a)のほうですが、 医療の進歩に伴って、国民は最先端の水準の医療と確実かつ最善の結果を期待している。 こうした国民の医療に対する認識が医療紛争の根底にあると思う。患者さんが自分の受 けた医療について、最善の結果を求めることは当然であるが、現実との折り合いをどう つけていくかが問題であるというご指摘もありました。その一方で、医療事故が発生し た際に、医学的知識を持ち合わせていない遺族が、診療行為に関する疑問や不信感を持 つのは当然だと理解することから始める必要がある。医療事故の後、遺族がすぐには最 愛の家族の死を受け止めることができない。次に医療についての疑問や不信感が湧いて きて、真実を知りたいと思う。再発防止を願うのは時間が経ってからであるというよう なご意見もありました。  また、「現行の司法制度に関する医療紛争処理の限界」ということでは、遺族が死因究 明を望んでも、司法解剖においては、結果をスムーズに開示できず、裁判となると時間 もかかるといったようなことでありますとか、b)の現在の民事訴訟においても、本来の 目的は、当事者間の権利義務関係を法的な立場から確定することにある。これに付随し て、死因究明等がなされることはあるが、制度の本来的な限界があって、被害者の望み や思いを訴訟の中でどれだけ拾えるかは疑問であるといったようなご指摘もありました。  次に大きな2番目ですが、「診療関連死の死因究明を行う組織について」ということで、 ここから以降の資料の構成は左側に試案に書きました文言があります。右側にこれまで の主な意見があります。(1)では組織のあり方ということについて、試案では書きまし た。右側の主な議論につきましては、まず「中立性・公平性等」ということで、a)国民・ 遺族と医療従事者、さらには司法・行政機関の立場から見て、中立性、公平性が明らか で、信頼のおける組織にしていくことが肝要である。あるいはc)になりますが、こう いった点が確保されていなければ、遺族に不満が残り、結果として従前どおり医療従事 者の刑事処分が求められ、調査組織の機能が十分果たされていないということになりか ねない。  d)ですが、どこまでの事実がどういう手続で、誰が関与して、その解明が進められる かというプロセスの開示、さらには情報提供の促進や専門家と国民、患者と医療従事者 との対話の促進が図られるような組織であってほしいという意見がありました。  また「調査組織の目的」としては真相究明を目的とし、ひいてはそれが再発防止につ ながっていくという位置付けが必要であろう。b)調査組織の目的は、真相究明をした上 で同じ事故の再発防止を図ることにあるといったこと、あるいはc)でこの調査組織を 設置して、医療従事者が自らの手で医療事故の真相究明を行うことは、患者側の真相を 知りたいという要求に応えるもので、両者の信頼回復にも有用であるといったようなご 議論がありました。  「調査組織の法的位置付け」ということに関しましては、ある程度強制力のある調査 機能を有した組織とし、行政機関内に設置することを望む。調査組織においては、人員 及び予算の十分な確保を行うとともに、法的根拠に基づいて、専門的な調査を行うこと のできる体制を確保する必要がある。また、今回考えようとする制度は、できるだけ柔 軟に変更可能なものにしてほしいというご意見もありました。  次に(2)は組織の設置単位についての項目ですが、a)全国的に統一した方針、方法 の下に調査を行うべく、調査組織は全国単位にしてはどうか。また調査に当たっては全 国に8つの支部を置いてはどうかといったようなご議論がありました。いちばん下にな りますが、調査組織の中央組織として、事例収集・分析センターを設け、事例を類型化 し、積極的な再発防止策を提言し、一般に公開する。こういったようなことも必要なの ではないかということでありました。  5頁、(3)として、調査組織の構成についてということで、試案では書いています。 この関連の事項としては、「調査組織を構成する人材」ということで、a)医療従事者と 遺族をつなぐという面で、看護師が大きな役割を果たせるのではないかと思う。調査組 織における看護師の役割を明確にしていく必要があるのではないか。b)医療従事者以外 の者が評価委員会に参加することは、専門的な話はわからなくとも、議論の監視役とし て必要である。また、専門用語について質問したりすることで、遺族にとってわかりや すい報告書をまとめる上で重要な役割を果たせるのではないかといったようなご意見も ありました。この調査組織への「遺族の参加」ということにつきましては、遺族が参加 するという形が望ましいというご意見と、その一方で、遺族が参加することで、専門家 が十分な議論をしにくい状況が生まれることも考えられる。例えば、リスクマネージャ ー等の第三者を介して、議論の中身について詳細に報告を受けるというような方法もあ るのではないかということでありました。  また、この調査組織における「医師の確保」ということにつきましては、現在モデル 事業をやっておりますが、人材の充足したモデル事業実施地域と同様の体制での実施が 可能か否かについての検討が必要である。現行のモデル事業における評価委員会より人 数を絞った評価体制についても検討していく必要があるのではないか。  b)調査組織において、いつ発生するかわからない事例に常時対応し、評価を行うため には、専任で業務を担当する医師の確保が必要である。そのような確保に当たっては、 臨床医が調査組織専任を何年か経験し、また医療機関に戻るといったローテーションの 仕組みも考えられるのではないか。d)になりますが、このような体制を作るためには関 係学会、あるいは医療関係団体その他の職能団体等の幅広い協力が必要であるといった ようなご議論がありました。  この試案ではこうした実務を担うための人材育成のあり方という項目でありますが、 ご意見としては、a)調査組織において、解剖担当医である病理医・法医学関係者の協力 が不可欠であり、その役割については、社会的に高い評価が与えられる必要があるので はないか。また、へき地医師確保対策と同様の措置を執る等、政策的な誘導が必要なの ではないかといったようなご意見、また、c)では評価を行う臨床医の育成も重要である。 そしてd)では事故発生後、調査組織により科学的な調査が実施されていく一方で、遺 族はその結果を待ちながら、多大な不安や不信感を抱いている。調査の進行状況等を遺 族に伝えるとともに遺族の感情を受け止め、それを調査組織や更には医療機関と共有し ていく役割を担う人たちが必要であるといったご意見もございました。  大きな3ですが、「診療関連死の届出制度のあり方について」ということです。まず「届 出先」につきましては、a)届出先としては、警察ではなく、医療を担当している厚生労 働関係のところが望ましい。また「届出の義務化」につきましては、a)正確な調査を行 うためには、まず正確な届出が必要であり、届出を義務化することが必要なのではない か。「医師法21条」の関係では、a)に医師法21条を改正し、診療関連死に限っては、 調査組織に届け出ることとしてはどうかといったようなご意見の一方で、医師法21条か ら、診療関連死を除外すると、過去に刑事処分の対象となったような事例まで抜け落ち てしまい、適当ではない。医師法21条の改正が先行することではないだろう。まず調査 組織の設立の前提として、医療事故の届出制度を整備した上で、21条をどうするかにつ いて検討するのが妥当ではないかといったようなご意見がありました。  「届出に係る警察との関係」に関しましては、a)警察としては、調査組織を作ること には賛成である。しかしながら、明らかに刑事事件としての追及が必要である事例につ いては、調査組織経由ではなく医師法21条に基づいて警察に届け出るとともに、警察に おける証拠保全、調査が必要と考える。b)「明らかな過失」が認められる事例が刑事司 法の対象になっているという前提で考えれば、そういったものに関してまで、調査組織 が解剖し、死因調査まで全部終了しなければ警察が捜査できないとなると、遺族側から 大きな反発が出るのではないかといったご意見がありました。  その一方で、f)ですが、診療関連死については、専門的な調査・評価を行う必要性が きわめて高く、犯罪の取扱いを主たる業務とする警察・検察機関ではなく、調査組織に おいて、まず届出を受け、調査が開始されることが望ましい。g)誤投薬等のミスは死亡 との因果関係は必ずしも明らかではなく、「明らかな過失」というのは何かについては、 その例を挙げるのも容易ではないといったような議論がありました。  最後の「証拠保全」に関しましては、a)透明性の原点は、適切な証拠保全が図られる ということにある。b)証拠保全が図られないまま、紛争が拡大した後に初めて刑事司法 の場に原因究明が委ねられるというようなことになれば、原因究明そのものが困難とな る。このような問題が生じないようにするためには、医療事故が発生した直後の段階に おいて、証拠保全が実現されるような仕組みにしなければならないというご意見があり ました。  大きな4番目ですが、「調査組織における調査のあり方について」という項目です。こ ちらは試案では、まず(1)としまして、調査組織における調査の手順としては、現行モ デル事業の実績も踏まえて、例えば以下のようなものが考えられるといって、(1)〜(5)ま で示しております。これに関連しまして、主な議論としては、まず「解剖の重要性」と いうことで、診療関連死の根っこには、高度な医療が行われる時代に生まれた医療不信 がある。これは同時に、病死における病理解剖の減少という形でも現われている。医療 不信という氷山を砕くには、診療関連死の問題に取り組むと同時に病理解剖、CPCなど を充実させることも重要であり、こうした点での政策的な誘導も必要であるといったご 意見。b)で診療関連死においては、解剖だけで死因が究明できるかというと、必ずしも そうではない。解剖所見を基盤にして、標準的な基準にしたがって、臨床評価をするこ とが重要であるといったご意見がありました。  10頁、(3)で、これは解剖報告書、臨床経過の調査結果等を評価委員会によって評価す る段階のことでありますが、a)として診療関連死については、個々の医療従事者の診療 行為だけではなく、背景要因を含めたいろいろな視点からの評価をすることが重要であ る。c)では現行のモデル事業では、事例ごとにいろいろな領域の専門医に評価を依頼し ているため、同じ専門医が引き続いて評価をしているとは限らない。このため評価の基 準がきっちり定まるところまでには達していない。全国すべての地域において、継続し て適切な評価を行うためには、評価視点・判断基準についての指針を作成する等が必要 なのではないかというご意見がありました。  11頁、試案では大きな4番目の(2)として、なお今後の調査のあり方の具体化に当 たっては、例えば以下のような詳細な論点についても検討していく必要があるというこ とで、7つの論点を提示しております。まず死亡に至らない事例を届出及び調査の対象 とするか否か、ということに関しましては、a)調査対象は予期しない診療関連死だけで はなく、予期しない重大な医療事故も加えるものとするのが望ましいのではないか。  b)では、より正確な調査・評価を確保するためには、原則として、全事例について解 剖を実施することが望ましいのではないか。c)では死因を究明するためには、解剖の専 門家の数や財政基盤が大事な要素であるが、これらは、調査件数の予測が一体どの程度 になるかによって大きく左右される問題であるといったご意見がありました。  詳細な論点の(2)として、ご遺族からの申出による調査開始の可否というのがあります が、これについては、ご遺族からの申出による調査を行うべきであるというご意見であ りました。(3)で、解剖の必要性の判断基準という論点につきましては、a)より正確な調 査・評価を確保するためには、原則として、全事例について解剖を実施することが望ま しい。しかし我が国の文化的背景を考慮すると、遺族の意思を尊重し、承諾を得て解剖 を行うという、現在のモデル事業におけるスタイルが基本となるのではないかといった ご議論がありました。   詳細な論点の(6)になりますが、院内の事故調査委員会等との関係といったことにつき ましては、a)調査組織において、迅速に適切な評価を行うためには、院内事故調査委員 会における調査・評価は、きわめて重要になると考えられるというご指摘がありました。 b)調査組織に医療機関が調査を丸投げするようなことがあってはならない。まず向き合 うべきは、当事者の医療従事者や医療機関と患者であり、当該医療機関で解決できるこ とについては、そこで解決していく必要がある。院内事故調査委員会を通じて、各医療 機関に医療安全に関するきちんとした実力がついていかない限り、再発防止につながら ないのではないかというご意見がありました。  次の頁のc)ですが、医療機関が自ら内部調査を行い、原因を解明するという自浄作 用が最も期待されているのではないか。医療機関に内部調査を義務づける必要がある。 医療機関側に事実関係の調査を相当程度担当させることによって、調査組織との連携の 道が開けてくるのではないか。d)では、例えば、大学病院等の大規模な医療機関では、 重大な事故が発生したときには、外部委員を加えた事故調査委員会を作ることを義務づ けるというようなご意見もありました。  詳細な論点の(7)で、調査過程、調査報告における遺族等に対する配慮ということでは、 まず「遺族に分かりやすい手続き等」ということで、a)遺族にとっては、司法解剖・行 政解剖の違いは分かりにくい。また、これまでの司法解剖・行政解剖においては、その 報告書等の遺族への開示が十分ではなく、真相を知りたいという遺族の希望に十分応え られていない。調査組織においては、遺族や医療機関が調査組織にアプローチしやすい ように、真相究明の内容、手続が分かりやすいということが肝要である。「調査過程にお けるご遺族への配慮」ということでは、a)迅速に評価結果を取りまとめるとともに、進 捗状況を遺族、医療機関へ逐次報告することが重要である。b)調査の進行状況を遺族に 伝えるとともに、遺族の感情を受け止め、それを調査組織、さらには医療機関と共有し ていく役割を担う人たちが必要である。  14頁、「調査報告書の説明における遺族への配慮」ということにつきまして、a)調査 結果については、遺族に調査組織からの十分な説明が行われることが必要。それなくし ては、不満を持った遺族側がかえって司法制度に訴える例を増加させることになりかね ない。c)として、調査機関の報告書を懇切に遺族に説明する医学アドバイザーを配置し てはどうかといったようなご意見もありました。  続きまして、大きな5番ですが、「再発防止のための更なる取組」ということで、a) 調査報告書は、医療従事者にとって、医療の質を向上させていくに当たっての貴重な資 料となる可能性がある。診療中の予期せぬ事故により亡くなられた患者、その遺族にと っても、同じ事態の再発防止は重要な願いの1つであるため、それを積極的に活用し、 医療の安全の向上に役立てていく必要があるのではないかといったご意見がありました。  15頁、大きな6番で、「行政処分、民事紛争及び刑事手続との関係」ということです。 試案では(1)(2)(3)とありますが、(1)は行政処分との関係、(2)が民事紛争との関係、(3)が刑 事訴訟との関係ということになっております。まず(1)の行政処分との関係ということに 関しまして、これまでの議論としては、a)行政処分・民事責任・刑事処分の対象となる 事例について、そのバランスを見直す必要がある。b)事故責任としては、損害賠償責任 や行政処分を基本とし、明らかな過失のあった事例については、刑事処分を検討すると いう方向が望ましい。c)行政処分が刑事処分に連動しているという現在のあり方は非常 に不自然であり、不起訴になると行政処分も一切なく、再教育を受ける機会もない。行 政当局が自らの判断で行政処分を行うべきではないかといったご議論でありました。  16頁、「調査報告書の活用・行政処分のあり方」につきましては、a)調査報告書は、 行政処分で活用することも可能とすべき。c)でありますが、調査組織において行政処分 や紛争解決等をすべて行うというのは、スペクトルが広すぎるのではないかといったよ うなご意見があり、d)として、システムエラーにつきましては、個人を処分すべきでは なく、医療機関に対する指導改善処分が重要ではないかということでありました。  (2)ですが、民事紛争解決の仕組みとの関係で、まず「調査報告書の活用」ということ では、調査報告書は、民事訴訟で活用することも可能とすべき。それから「対話の必要 性」ということとに関しましては、a)調査結果を踏まえて、改めて遺族と医療従事者及 び医療機関が話し合いを持つことにより、当事者間の信頼回復の回復が図れるのではな いかといったご意見がある一方で、調査組織による死因究明が直ちに遺族と医療従事者 及び医療機関の信頼回復に結びつくわけではなく、診療期間中からの十分な対話等が必 要なのではないか。また、c)で医療事故が起きた際には、事実をありのままに伝えるこ とが重要である。また過失がある場合や期待に添えなかったことを謝罪する場合には、 真摯な態度が伝わらなければ謝罪したことにはならない。d)では紛争の解決については、 調査組織とは別のシステムを作り、両者は連携していくべきだ。そのシステムでは、遺 族側と医療従事者側との対話をケアしていくような形がなければ、当事者たちが正直な 気持を話すことはできないのではないかというようなご議論でした。  「裁判外紛争処理の可能性」ということに関しましては、医療事故の直後に調査組織 が事実の解明に当たり、その結果が出ることは、仮に再発防止を目的とした制度であっ たとしても、民事訴訟のあり方を相当程度変えるものになるだろう。第三者的な原因究 明機関があり、それに基づいて訴訟制度とは別の紛争解決の仕組みが出来ていくことは、 医療事故の紛争解決システムを考える上で望ましいといったご議論がありました。  最後に刑事訴追との関係であります。まず「調査結果の取り扱いに関する留意点」と いうことで、a)調査報告書は、刑事訴訟で活用することも可能とすべき。また、c)で ありますが、診療行為の評価を行う際には、事案発生時点において、診療行為が適切で あったか否かという評価と、再発防止に向けて、臨床経過を振り返ってすべての可能性 を洗い出して評価する方法の2通りがある。いちばん下ですが、将来、調査報告書が過 失責任追及に使用される可能性を考慮すると、両者を明確に区別する必要があるのでは ないかというご議論がありました。  「刑事責任を問うべきか」ということにつきましては、a)業務上過失致死傷は医療を はじめとするあらゆる専門分野に適用すべきではないと考える。業務上過失致死傷を適 用するとすれば、かなり明確な定義が必要で、こういう判断については、それが明確に なった時点で、調査組織での調査を中止して、検察に引き継ぐのがよいのではないかと いう議論があった一方で、故意と過失の境界というのはクリアカットではなく、明確に 線が引けるような絶対的な差はない。刑事で扱わなければならない重大なものと、そう でないものの線の引き方が重要になってくると思う。また、c)では、今日の刑事処分へ の方向性に対してはある程度歯止めをかけて、真剣に取り組んでいる医師が安心して診 療ができる環境にすることが望ましい。しかし、調査の結果、明らかな過失が認められ る事例についてまで刑事免責をと言っているわけではないといったようなご議論があり ました。  最後に「刑事捜査との関係」では、a)医療事故調査は再発防止のためにも、専門機関 による調査が必要なので、過失が明らかな場合であっても航空・鉄道事故調査委員会の ように、刑事司法における捜査と調査組織の調査を同時並行で進めるというのが現実的 ではないかといったようなご意見と、b)警察の捜査は個人の責任を追及しがちであり、 直ちに警察が捜査に入るとなると、再発防止・医療安全の推進の観点から行う院内事故 調査とは趣旨が異なるため、この2つを同時並行というのは、きわめて困難なのではな いかといったようなご議論がありました。長くなりましたが、以上でございます。 ○前田座長   多くの論点をうまくというか、忠実にまとめていただけていると思うのですが、いま ご説明いただいたこと、先ほど申し上げましたように、1、2、3、4、5、6の順に従って 今日はご議論をいただきたいと思います。そして、だんだんまとめの段階に入ってまい りますので、この会の構成員全員の方の意見をなるべく出していただけるようにしてま いりたいと思います。  まず1の策定の背景です。これはただいまのご説明、資料も含めてある程度議論はい ただいていると思いますが、特に激しい議論とかがあったわけではないと思うのです。 更に追加する点がございましたら、ご発言をいただければと思いますが、いかがでしょ うか。特によろしいでしょうか、医療事故被害者の側からのご発言もいちばん最初に載 せてありますが、あと医療界の問題点、逆に医療の側からの危機感といいますか、両面 あるのだと思うのですが、それは両論として全部。これ、どちらが策定の背景として決 定的なものである、どちらかだけということはあり得ないわけですが、この書き方で。 また、これを次の段階では更に洗練させた形で絞り込んでいきたいと思うのですが、こ れに加えて特にご指摘いただきたいと思います。 ○鮎澤委員   医療が安全・安心であることは、医療従事者も願っています。「患者・家族の期待に医 療従事者が応える」というかたちで第1行目に打ち出されていますが、安全・安心であ ることは医療従事者にとっても共通する願いであって、その共通する願いに向かって動 いていくのだという書きぶりにしていただけたらと思います。 ○前田座長  はい、事務局のほう、よろしいですね。 ○医療安全推進室長  これはいままでのご議論をまとめたものなので、そういう議論を今回も積み上げてい っていただければと思います。 ○前田座長  ですから、いまのご趣旨をあえて言えば、被害者の願いも入れてというのはもちろん 大事なのですが、医療従事者の願いとしてもやはり。これは試案の1行目に最大限努力 を講じることが求められるということが文章の中に入っているわけですが、この場の議 論として医療従事者の側としても、そういうご発言があったということを加えておいて いただければということです。 ○樋口委員  これは私も前に申し上げたことの繰り返しで恐縮ですが、これまでの主な議論の最初 の所にまずこの1行がありますね。「医療事故の被害者の願いである」で、いくつか並ん でいて、「全てのベースになるものが真相究明である」と。問題は真相究明という言葉の 意味がそれぞれに違うということで、あとですぐに第三者組織を立ち上げた場合の目的 というところへすぐリンクする話なので、後で申し上げてもあるいは兼ねて申し上げて いることなので繰り返しになるだけなのですが、例えばこの責任の追求で刑事責任の追 求における真相の追求というのは何かというと、刑事責任というのは疑わしきは罰せず ですから、疑わしい場合には罰しないというのが刑事責任です。それからここにおられ る刑事責任の担当者の方も「刑事責任は謙抑的に追求しているに過ぎません」というこ とを前の回でも、何度も繰り返しおっしゃってくださった。そうあるべきものなのです ね。だから、真相の究明について非常に限定的な、しかし、重要な役割を果たすという ことになりますが、これが被害者の救済とか民事的な話になると、それほどでなくても 疑わしき場合にはやはり救済に重点を置いたらいいではないかという話になって、少し 真相の意味がずれてきます。  再発防止ということになると、これも後でこの文章の中にもありますが、その時点で はどうしようもなかったかもしれないけれども、それから1年経って、この報告書がま とめられるときには、いまから考えると、まあ1年でなくてもいいのですが、3カ月で も、1カ月でもいいのですが、当事者だって、あのとき本当はもう少し、こういう選択 肢が実はあって、このときの専門家的判断ではこちらを取ったのだけれども、本当はこ ちらだったらどうだったのだろうかということをお考えになるに決まっているわけです。 そういうようなことまで考えた上での真相という話が出てくるので、実はこの「真相究 明」というのはキーワードなのだけれども、極めて多義的なものなので、これらが被害 者の願いをすべて、あるいは、あらゆる意味の真相究明を第三者機関がやれるかという と、何でもやらせると、何でもやれなくなるというのですか、全部曖昧な形になって、 一体何のための第三者機関なのかという話になるので、いちばん初めに真相究明という ことの意味の難しさというのですか、そういう認識だけは我々で確認するというか、共 有しておいたほうがいいような感じがするのです。 ○前田座長   おっしゃるとおりにどこかに出てくると思うのですが、ただ、ここでの真相究明だか ら、刑事・民事と一切、切り離して再発防止だけでやるというわけにもいかないし、ま た、そこで出てきたものが後で出てきますが、民事・刑事にどう使えるかという議論の ところの側から使ったほうが。初めここのところで、ここで言う「真相究明」とはこう であるというように大上段にやってしまうと、要するに止まってしまうというか、刑事 は全く別にやるということになってしまうとあれで、やはり、ある程度リンクする。こ こでやったら原則もう刑事にいかないよというか、先行してここで判断がある程度でき るようなところもなければいけないし、民事も有効に使わなければいけない。そこをど うするか難しいのですが、おっしゃるとおり真相究明というのがマジックワードといい ますか、キーワードなのだけれども、複雑な構成をとっているということです。そこの ところ、策定の背景のところとしては、ここの中に新たに今日のご意見を加えて、真相 の究明というのは多元的なというか、輻湊的なものであるということは、もう1回ご指 摘いただいたほうがいいと思います。  この真相究明がどうなるから届出にどういうふうに響くかとか、あと出てきたものの データをどう使うかということにつながってきますので、まさに今日だけでは議論はま とまらないと思うので、あとのところでご議論をいただきます。広い意味で真相究明を 更に進めたいということの願いから、これを作ろうという動きが出ているということは 間違いないと思うのです。 ○高本委員  先ほどの鮎澤委員に私も少し付け加えたいのですが、ここでは患者・家族、それから 片方で医療従事者がいて、患者・家族がその医療を受ける側として、双方が完全に2つ に分離しています、私は医療というのは医療従事者と患者・家族とが共に作り上げる事 業だと思うのです。患者と医療従事者がお互いに協力をして患者の病気を治すという1 つの事業だと思うものですから、こうやって2つに分けるのではなくて、ともに協力し て、この安全・安心な医療を作り上げるというコンセプトのほうがいいのではないかと 思うのです。そういうコンセプトですと、患者に十分説明しないといけないし、患者も それなりに医療について責任をもたなければいけません。そういう形で医療が進めば医 療は今よりももっといい形で進むのではないかと思います。だから、こういうふうに2 つに分けてしまうよりは、双方がいい医療を求めて共に協力し合うというコンセプトを 入れるほうがいいのではないかと思うのです。 ○前田座長  わかりました。これは先ほど室長からご説明のありましたように、委員の方とか参考 人の方のご意見を、そのままかなり忠実にまとめたものなので、これを次の段階に整理 をして、この委員会の討議の結果として、ある程度のところでまとめを作るときに、並 べ方とか、どういうふうにつなげるかということで、またご議論をいただきます。いま のご指摘は非常に重要なものとして次回につなげていきたいと思います。ほかにいかが でしょうか、もしよろしければ策定の背景のところはこのくらいにいたします。  第2番目の「診療関連死の死因究明を行う組織について」、資料の2頁目からについて 議論を進めてまいりたいと思います。1つはいまの高本先生のお話にもつながるのです が、調査・評価過程のご遺族の参加の問題です。患者側と一緒になってやるという話で す。もちろんある程度議論が出ているので、ほかの論点に比べますと遺族の方の調査・ 評価についての参加の可否について、もう一歩深まっていない部分があるような気がい たします。できればこの点についてご意見のある委員の方は、今日、是非ご発言をいた だければと思います。  あと監察医制度で参考人の方に来ていただいて、詳しい議論をしたのですが、これの 関係の整理について、まだ難しい面がありますので、今日のところは特に強いご意見が あれば出していただきますが、この問題は難しいので、強いご意見があれば出しておい ていただくということに止めさせていただければと思っています。どなたからでもよろ しいのですが、この組織については先ほど詳細にご説明をいただきましたが、いままで はこれだけの議論が出ているわけですが、これに加えていかがでしょうか。  参考人の方のご意見の中には、遺族が評価のところに加わらなければ駄目だと、強く 参加したいというご意見もあったわけです。ただ専門的な議論に、本当に痛みを持って おられる遺族の方が加わることが、先ほど言った広い意味で真相究明にむしろマイナス ではないかというご議論もあったわけです。  我々、裁判、刑事の人間だと、被害者の方が裁判に加わるということをだんだん入れ なければいけない方向で動いているのですが、それでも学者の世界というか、実務の世 界でも同じですが、非常に難しい問題がある。やはりご本人の意見を聞かないといけな いと同時に、客観的公正なジャッジをするために、それを無制限に入れていいのかとい う問題、全然違うと言えば違うし、つながっていると言えばつながっているのですが、 医療に関していかがでしょうか。これだといまのところはどちらの方向でもないという か、方向性を付ける必要は特にないわけですが、どなたか。 ○豊田委員  遺族の参加についてなのですが、ご遺族の中で調査の段階から参加したいという方は いらっしゃることはいらっしゃると思うのですが、実際に例えば解剖に立ち合ったりす ることは誰でもできることではないですし、ほとんどの遺族が解剖を一緒に見るという ことは、まずできないのではないかと思います。それでも調査や評価をする段階で参加 したいということの理由には、やはり医療関係者だけでは信頼できない、信用できない ということがあるかと思いますので、そういった中でも公平性が保たれて、きちんとし たところで調査していますよという姿勢が伝われば、必ずしも遺族がすべてに参加した いという意見ばかりにはならないと思います。調査を開始する段階で、例えば代理人の 弁護士に依頼している方は少ないのではないかと思いますので、遺族、身内以外の患者 側の立場の人に入っていただくというのは、非常に難しいかとも思いますが、ここに書 いてあるように、リスクマネージャーのような方がよいのか、遺族が信頼のおける立場 の方に、第三者的な形で入っていただくなり、患者側の気持を十分に汲み取ってくれる ような立場の人、医療関係者とは違う立場の人が入るということであれば、遺族のほう も納得や理解ができるのではないかと思います。  私も実際に息子の事故のときに、調査委員会が当該病院で立ち上がって、調査が行わ れたわけなのですが、遺族に事前の聴き取りが一切ありませんでした。ですから、きち んと聴き取りを行うことや、調査するのに必要なことがきちんとなされていれば、遺族 もそこまでの気持ちにはならないと思います。その調査委員会自体、調査組織自体が信 頼できないということから、こういった発言をされている遺族が多いかと思いますので、 その辺りをしっかり考慮した体制にし、そのことを遺族にきちんと伝えていれば、必ず しも遺族が入る必要はないと思います。 ○前田座長  非常に重要なご指摘だと思います。あとの議論とも共通するのですが、やはり調査組 織が信頼感を勝ち得ることができるか。特に遺族、ある意味では刑事の側からもという ことだと思うのですが、そこが最終的にはいちばん重要なこと。ここには組織として全 国に8つ作るとかいろいろ具体的なことも出されているわけですが、スタッフ、専門家 からどれだけ協力が得られるか、件数に対して人的なものがどれだけ得られるかという ことなのですが、やはりいちばん根底は公明・公正でフェアであるという、信頼の得ら れる組織ができれば、かなりの部分でほとんどが解決するといいますか、議論が変わっ てくるのだと思うのです。もちろんそれを目指して調査組織を作っていくということに なると思うのです。 ○樋口委員   いま豊田さんがおっしゃったことと同じことなのですが、たまたま私は英米法でイギ リスやアメリカの法律のことをやっています。イギリスで基本的な正義とは何かという 原則で、ナチュラル・ジャスティスというのがあるのです。自然的正義とそのまま訳し ているのですが、その第一原則は当事者が自分で裁判官にならないというのか、自分の 事件を自分で裁かないというのが大原則なのです。  これは調査・評価という話になると、当事者が入ってきて調査・評価というのは、そ れを正義というのかどうかはなかなか難しい問題ですが、どうなのだろうか。この第三 者機関というのは、客観的に第三者でという話から始まっているのだと思いますから、 やはりそこは、ちょっと遠慮していただくほかはないような気がします。もし遺族が参 加すればまた病院の代表が入ってくるという話になり、その辺りで見方がそれぞれ違う わけですから、やり取りがあってどうのこうのというものを、いま我々が欲しているの だろうかというと、そうではなくて第三者でやっていただく。その上に、この頁の上に ありますが、医療従事者以外の者が評価委員会に参加したり、かつてこういう経験をさ れた方が第三者組織の運営に深く関わっていただくようなことは、私はやはりあったら いいと思っているのです。しかし、まさにその当事者がその事件に関与するというのは ちょっと、どうなのだろうか。たとえご遺族の方が気丈にそれを望まれても、それは少 し違うのではないかなという感じがいたします。 ○前田座長  同じ法律家ですから全く同じ感想なのです。先ほど豊田委員がおっしゃったことは非 常に重くて、やはり遺族の側としては、ちゃんとしたヒアリングを受けていないと、だ からアンフェアというか、ちゃんとやっていただけていないのではないかということが 残ってしまったらまずいのだと思うのです。その意味での公平さ・公正さで、1つのや り方は、両当事者が出てきてガチンコの喧嘩をさせれば、いちばん真実が導きやすいと いう発想がありますが、この問題は客観的に、基本的には専門性があるものですから、 医師が冷静に判定する、ただしフェアに判定するというのが基本なのだと思うのです。 ほかの委員の方ご意見をお願いいたします。 ○鮎澤委員   私は樋口委員と同じ意見です。第三者ということであるならば、やはり当該事故に関 わるご遺族や被害に遭われた方、また同じく当該事故に関わる医療従事者が検討の場に おられるというのには違和感を持ちます。ただしこの調査機関が公正な機関であるため には、何を究明していくかによって、それぞれの立場の方々にきちんと事実確認をしな ければいけないときもあるでしょう。「ご遺族を入れない」ということは、公正であるこ とを妨げる、つまり事実を確認するためにそれぞれの話を聞くことを妨げるものではな いと思います。そこの切り分けをきちんとして、参加のあり方を考えていくべきなので はないかと思います。 ○前田座長   遺族のことに関してご意見をいただきましたが、やはり制度の問題ですね、ほかにも あると思うのですが。 ○辻本委員   遺族のところですが、公明・公正ということの努力は最大限、もちろんすべきだと思 うのですが、前回も申し上げたように中立性ということを客観的に見ると、非常に難し い問題だと思います。そこのところをどうしていくかということを大前提に、議論をも う少し深めていただきたいと思うのです。ただ、シャットアウトしてしまって本当にい いのかということは、少し皆さんの中でこれも併せて議論をしていただきたいと思うの です。  患者、特に遺族の方たちの世代交替ということで、60代、70代の方のニーズと、30 代、40代の方のニーズは明らかに違いますので、シャットアウトということだけではな く、先ほど豊田さんがおっしゃったように、事前の聞き取り調査も、本当に十分にする ことと、それから第三者的な方が議論の中身を詳細に逐一報告をしていったときに、一 方通行ではなくて、質問に答える権限とか役割をそういった方がどれぐらい持つかとい うこと、そして、その途中に発言の機会というか、質問の機会といったものが保証され ているということも参加ということでは必要ではないのかなと思います。  やはり患者、遺族の側は納得したいというところが基本にあると思います。理解はで きても納得ができないというその感情レベルのところは、こうしたプロセスのところで 柔らかなシステムを作っていきながら、仕掛けや仕組みで補足していかないといけない のではないかと思います。そういう中で遺族の側の思いも納得していただける方向に動 いていくという感じが私はするのです。 ○前田座長   いまのご指摘も非常に重要なのですが、ただ、先ほどのいくつかのご議論とは、私は ある程度つながるのだと思うのです。特に最終的評価とかの部分が、当事者が入るのは、 やはりどうしても違和感があるのです。ただ、その途中経過についての透明性、情報の 公開性とか、意見聴取の十分さというのは、やはり十分両立可能で、むしろそれ抜きの 手続きはアンフェアなのだと思うのです。ただ、始めに辻本委員がおっしゃった本当の 公平・公正、第三者制というのが、いままで医療過誤をずっとやってきて、我々議論を しているときには、医師は結局問題を起こした医師を庇うよねという議論がどうしても あるのです。  そこのところで第三者制をということなのですが、私はこういう議論をしたことによ って一歩前に出られるとすれば、医者以外の何か有識者が入る第三者制ではなくて、医 師の世界で、学会とかいろいろな所から出て来た人の代表として、いわば倫理として公 明正大にやるという規範ができてこないと、根本的な解決はできないのだと思います。 弁護士の先生とかジャーナリストの代表とかという第三者制を入れてやるのはいままで のやり方で、それも維持するのはいいと思うのですが、やはりここの議論が高まったと ころで、医師の倫理として、こういう組織としては絶対に公平にやる。それを信頼して、 そこにまず投げられるかどうか。それがあと質、量ともに揃うかどうかというところが、 いちばん重要なところになってくると思うのです。  そういう中で遺族の側の思いも納得していただける方向に、私は動いていくという感 じもするのです。司会が話し過ぎてもまずいのですが、ほかにございませんか。 ○山口委員   第三者機関の組織が死因究明ということになっているのですが、実際、いまモデル事 業をやっていて、やはり十分踏み込めていないところがあると思うのは、医学的な死因 究明という話題と、例えばご遺族にある不満とかのかなりの部分は、医学的な原因究明 のその真実がわからないということもあるのですが、あのときこういう説明があったけ れども、事実は違う、あのときにこういう話があったけれども実際のその後の対応は違 っていた、あるいは後から聞かされたという、医学的な直接な死因の原因、結果という 関係とはちょっと違う、ご遺族にその医学的な事実がどう伝わったかという話の行き違 いにあります。あるいはその辺のご遺族のご要望のかなりの部分がそういうところにあ って、そのときに輸血をしたのが正しかったかとか、あるいはそのときにここを切る判 断は是か非かという、純粋に医学的な話とはちょっと違うレベルのお話だと思うのです。  そういう意味でこのモデル事業の目指しているものは、やはりその原因究明で再発防 止というふうに睨んでいるところが、どこにピントが合っているかというと、まずいち ばんでは医学的な事実関係、医学的な再発予防というところにいちばんのピントがある と思うのですが、そこのところについては、当事者が関わらないで純粋に医学的に議論 されるのがよろしいと思うのです。  もう1つ、この事実が、ではどういうインフォームド・コンセントを中心としたよう なお話、また違う立場で、ここは本当にご遺族なりまた更に違う人が入って議論をされ なければいけないのではないかと思うのです。その原因究明を幅広く捉えて、全部そこ まで含めてしまうと、ご遺族がというような話も出てくると思うのですが、純粋な医学 的な原因と結果の関係に関しては、純粋に医学的な話だけでよろしいのではないか。た だ、それだけでは、きちんとした報告書を受けても、必ずしも、皆さん納得して満足度 がすごく上がったかということとは、また別の問題だということがありますので、その ことに対する対応策はまた別に考える必要があると思います。いちばん肝心の死因究明 のところに関しては、純粋に医学的な専門家が集まって議論をするということでよろし いのではないかと思います。 ○辻本委員   基本的に私は遺族の参加はB)の意見を申し上げた人間ですから、そこは全く変わっ ていないのですが、モデル事業を通していま言われたように、議論のプロセスの中で、 インフォームド・コンセント、例えば医療側はこう言っているけれども、患者側、遺族 の側はどう受け止めていたのだろうという確認作業が、問題解決を進めていくときのポ イントになることがままございました。そういった意味で機会の提供ということを先ほ ど申し上げたということを追加させていただきます。 ○前田座長   いま山口委員が言われたことは、先ほどの樋口委員の話ともつながって重要なポイン トですが、この委員会の射程と言いますか、目標を純粋に医学的に客観的に、再発防止 につながるものを積み上げていくだけに絞るか、医療紛争を解決する上で患者、遺族の 合意形成、納得といったことは非常に重いわけですから、そのことに役立つような活動 がこの委員会に入り得るかどうかだと思います。先ほど少し述べた医師が信頼されると いうことは、この委員会をつくる問題の背景として、社会の中における医師の有り様で あり、逆に医師のセルフイメージの中で一方的に指弾されているのではないか。そうい ったものを超えていく意味からも、このような組織の中でプロフェッションとしての医 師集団というのは自立しており、倫理が高いわけで、そこが代表する組織としての調査 委員会というのは、科学的にきちっと究明するだけでなく、医師のフィールドで起こっ たことの経緯の説明の仕方といったことについてもある程度公平な判断をし、それが裁 判でも通用する重要な資料になっていくことを目指すかどうかです。  これはそう簡単に結論を出せることではなく、難しいと思いますが、特に遺族側はそ こを期待しています。ただ、それをやれるだけのキャパがあるかどうかという問題はあ ります。余分なことを申し上げましたが、その他に何かあればお願いいたします。  この問題については、先ほど述べた監察医制度の問題も含めてまだ課題が残っており ますが、予定した時間をだいぶ過ぎていますので組織の問題はこのぐらいにさせていた だきます。3の診療関連死の届出制度については、かなり議論してきましたので論点は はっきりしております。もちろん、それぞれの立場で議論は変わっていないと思います が、あとで残されたものとの関係があり、もしいままでの議論から特に付け加えて新し い主張があれば承りますが、そうでなければ次の調査のあり方の問題に移りたいと思い ます。第21条の届出制度について、何かご意見があればお願いいたします。こちらにい ままでの議論をまとめておりますが、不満というか、片方の意見が強かっただろうとい ったようないろいろな評価の問題はあると思いますし、私個人としても、言い出せばま だいくらでもあるのですが、今日のところは、届出制度についてはこのぐらいにさせて いただき、資料9頁からの調査のあり方について議論していただきたいと思います。  特に、先ほど詳しい説明が室長からありましたが、死亡に至らない事例の届出の問題 は、これがホームページなどに載る中で、おそらく議論の1つのポイントになると思い ます。死亡に至らない事例を届出調査の対象にするかどうかで、前回鮎澤委員からちょ っとsuggestionをいただいたのですが、特に4の「調査組織における調査のあり方につ いて」、ご意見があればお願いいたします。もちろん、死亡に至らない事例について、そ こに挙げたような議論が全くなかったわけではありません。 ○堺委員   樋口委員が冒頭に言われた真相究明とは何かという部分と、2の死因究明を行う組織 についてのさまざまな議論が4に集約されているように思うのです。山口委員が指摘さ れましたが、つまり純粋に医学的な解析だけを行うのか、それとも病院の家族等に対す る対応等も含めて解析するのかということは、真相を求める先がいろいろあるというこ とだと思います。まず遺族がおりますし、その他に刑事・民事、行政、再発防止などさ まざまな切り口があります。この調査組織がどれに対応することを目指すかということ は、いちばんの根幹だと思いますが、純粋に医学的なことだけで済ませてしまうことは、 それはそれで1つのやり方ですが、かなりいろいろな問題があとに残ると思います。医 学的な解析と並行して、例えば病院と家族の対応その他といった医学以外の部分も調査 することが必要ではないかと思われます。  ちょっと非科学的な言い方かもしれませんが、いちばん大事なのは、やはり常識では ないかと思うのです。最後のところでいちばん大事になるのは常識で、調査組織の中に、 そのような方はいらっしゃるはずですが、医療関係でもなく、法律関係でもなく、しか し世間で広く良識がある、常識があると皆が認めるような方に入っていただき、そのよ うな方から見て純粋に医学的なもの以外で運ばれたやり方がどのように見えたかという ことを示していただくことが可能であれば、いわゆる真相究明を広い範囲から答えるこ とができるのではないか。実現できるかどうかは難しいですが、そのように思いました。 ○前田座長   いまの点は調査報告書をどう書くかで指摘されたことともつながって、やはり専門家 だけにというよりは、遺族も含めて理解できるような調査報告書をという指摘はあるわ けです。ただ、先ほどの山口委員の話にも関連して、この調査委員会の目標である真相 究明のどの部分までどのようにやっていくかということは相当難しいし、いまの段階で はいいやという結論は出せない。ただ、委員が言われるように、純粋に医学的なものに 絞ってしまうと、今回の医師会側での気持などを発展させていくことが非常に難しくな ってしまうような感じがするし、法律や紛争解決の問題は全く別個のところでやっても らうという形になり過ぎてもいけないですから、どうしても最後はファジーな部分が残 ってしまうのだと思います。  当面は数の問題もあり、死体の解剖の問題ともつながって議論してきたということも あって、モデル事業もそうですが、亡くなられた方を前提としております。しかし、非 常に重大な障害が残った場合は全くこの会ではやってもらえないのかという気持は、お そらく必ず出てくると思います。 ○鮎澤委員   この調査機関に対する期待は非常に大きく、だからこそでしょうが、特に一般国民か らのパブリックコメントや関心を持っておられる方から個人的なお話を伺うと、「えっ! 死亡しないと検討してもらえないのですか?」という素朴な齟齬があることに気づきま す。改めて「死亡していないが傷害が残った場合」をどのように今回の検討会やこれか らつくっていこうとしている調査機関に位置づけるかということは、やはりきちんと議 論しておかなければいけないと思い、座長にも少しお話をした次第です。どなたのご意 見だったかわかりませんが、11頁のa)の「予期しない診療関連死だけでなく、予期し ない重大な医療事故も加えるものとするのが望ましいのではないか」、やはりこれが国民 の期待だと個人的には思います。ただ、いますぐこれが全部できるような仕組みをつく り上げることができるかと言えば、これもどなたかの意見にあったと思いますが、これ からきちんと育っていくことができるような仕組みをつくっていくための議論をしてい く、そのために確実なところから進められるような仕組みをつくっていくことが、私ど もが当面取り組んでいく課題だろうと思います。そうであるならば、「将来的には死亡に 至らない場合も含んで」ということになるのでしょうが、いまつくり上げていく形とし てはまず死亡事例から始めていこうというのが現実的なスタンスではないかと個人的に は考えています。 ○山口委員   私も同じように考えます。モデル事業が始まってここ1年半、かなり純粋に医学的な 判断をすること、大勢の人が集まって医学的な判断をするというスキームを動かすだけ でも相当大変だったわけです。それを考えると、解剖もしている、データも十分あるが、 それでも皆さんの議論が一致するところまでいかないのは、決して珍しいことではない。 そのようなことを踏まえると、解剖もない、現在重症の障害は残ったが、それ以上のデ ータはないというところでどこまで十分な検討ができるかは、検討すべき1つのスキー ムができ、それなりに慣れた人たちが集まり、そのような組織ができれば、将来はその ようなこともしなければいけないだろうと思います。いまの時点で組織を立ち上げるの であれば、まず全国でこのようなことが同じように、同じレベルで行えることを当面の 目標として考えなければいけないと思いますから、組織としては少し限定して死亡例、 やはり解剖した結果、間違いなく死因はこうだと決まった例について、さらに先ほどの 医学的な話、あるいはそれだけに留めず、もう少し広い範囲で原因と結果の関係を評価 する組織を立ち上げることが先決ではないかと思います。 ○前田座長   いまの点ではなくても、4の調査のあり方全般について、何かご意見があればお願い いたします。 ○児玉委員  最初の目的の所に、医療不信に対して対応していきたいということを掲げているわけ ですが、不信というのは高度な専門性ということだけで、ここでは「氷山を砕く」とい う気になる表現がありますが、氷山が本当に高度な専門性で砕けるのだろうか。むしろ 氷山が溶けるような、氷が溶けるようなことが望ましいのではないか。もちろん、高度 な専門性も大事ですし、公正・中立性も極めて大事ですし、それに対してモデル事業の 中でも大変な努力をはらってきたわけですが、もう1つ、普通の人の問いにわかりやす く答えるという要素が非常に大切ではないかと思います。  ここには解剖の必要性について書いてありますが、医者の言うことのわかりにくさの 1つの原因は、かもしれない、かもしれないという言葉が多いし、言うことがコロコロ 変わることに不信を持つことが多いのではないかと思うのですが、結局、医療というの は次々と仮説を立てながら暗闇の中を進んでいくような作業ですし、そのような医療の 技術の特質に由来をしている医者の、かもしれない、かもしれない、何でも断定できな い、何でも否定できないといった話の投げかけ方が出てくるのではないか。  ただ、亡くなられた後、解剖をすると、かもしれない、かもしれないという話は随分 と減ります。遺体にメスを入れるという遺族にとっては精神的に辛いところのある決断 を乗り越えた向こうに何があると医療界の側が言えるかといえば、わかりやすさ、もう 少しわかりやすい話ができるかもしれないということだと思います。解剖したほうが、 もう少しわかりやすくなるかもしれない。ああかもしれない、こうかもしれないとグラ グラ揺れ動く話ではなく、少なくとも解剖してすべてを見尽くしたら、ここまで言える というわかりやすさが出てくるかもしれない。そういう意味で、審査のプロセスそのも のも、解剖の位置づけそのものも、普通の人へのわかりやすさというところからメッセ ージを発していきたいという思いがあります。 ○前田座長  先ほどの堺委員の意見ともかなりつながる話だったと思います。そうすると、調査委 員会の構成などにもつながった議論になっていくわけですね。 ○児玉委員  判断をする人の構成についてはいろいろ議論があると思います。例えば調査委員会の 報告書等をまとめるときには、中間まとめを作って遺族にお見せし、質問を出していた だき、質疑の記録を合わせ、問いと答が合ったときにようやく調査というのは終了する のだといった調査委員会をこれまで何度もやってきた経験があります。具体的な有り様 はいろいろ議論があると思いますが、問いにわかりやすく答えなくてはいけないのだと いうことは思います。 ○前田座長  9頁以降の調査のあり方のところで、特にご指摘いただくこと、付け加えてご発言い ただくことはないでしょうか。 ○高本委員  10頁のところで、少しこれは末梢のことになるのだろうと思うのですが、「その他の 検査等の必要性」とあって、b)にビデオのことが書いてあります。確かにビデオがあれ ば、それを見るというのもいいと思いますが、ビデオがないといけないということにな ると、多くの手術場はビデオがある施設が多いにしても、全部にはない。きちんとした ビデオを撮るためには、専属の若い医師がいて、相当注意しないといけない。大体頭の 上から撮るわけですが、手術は4人、ナースも入れて5人で行うので、頭や手が邪魔を してほとんど見えないことが多いのです。ですから、これが必須ということになると、 現場としてはなかなか難しいということがあります。必要があれば提出することはやぶ さかではありませんが、これを必須にすると現場はちょっと混乱するのではないか。し かも、そうするためにはそれだけの投資も人材も必要ですから、あればこれを使う程度 のことでよろしいのではないかと思います。内視鏡の手術などはずっとビデオで撮って いますから見ることができますし、頭が邪魔になることはありませんが、普通の手術は 頭や手が邪魔になります。  私は一度非常に嫌な思いをしたことがあるのですが、ビデオというのは手術の間撮り っ放しにします。我々の手術は10時間ぐらいかかりますから、10時間撮りっ放しとい うことになるわけです。その間のことは、やはり編集するのです。編集も悪意がある編 集をすれば、どのような形にもできるわけです。10時間の間には冗談も言いますし、笑 いもするわけで、ある意味ではプライベートなところがあったりするわけです。笑いの ところだけをピックアップされて、こんなに笑って不真面目な手術をしているというよ うにテレビで放映されたことがあり、ビデオというのは余程注意しないといけないだろ うと感じておりますので、必須にするのは良くないだろうと思います。 ○前田座長  こちらの言い方で述べてはいけないのですが、刑事の人間としては捜査を可視化して ビデオに全部撮っておけという議論が強いわけです。しかし、同じような問題はあるし、 テレビ局に、ビデオに撮ってAだと言っているのにBだというところだけ、Bでもある がAだと言っているのに、前田はB説であると出されてしまったこともあります。マス コミの委員の方々には申し訳ありませんが、マスコミというのはあまり信用できません ので、そこは注意しないといけないと思います。 ○辻本委員  11頁の(2)のa)に「遺族からの申出による調査開始を行うべきである」と単純明快に 1行書いてありますが、そうなってくると、受付窓口の、いわゆる相談機能というか能 力といったことも非常に重要なポイントではないかと思うので、少し加味することをお 願いしたいと思います。 ○前田座長  おっしゃるとおりだと思います。室長、いまの点は大丈夫ですね。その他何かあれば お願いいたします。 ○加藤委員  13頁の(6)の院内事故調査に関連して、d)に「外部委員にはできれば調査組織の代表 を加えることが望まれる」という文言が入っていますが、どのような意味合いなのか、 少し事務局から補足していただけますか。 ○医療安全推進室長   事務局から補足とのことですが、このような発言があったということですので、正直 言って聞かれても困るというところがあります。 ○前田座長  どなたが発言したからその方にというのは、あまり好ましくないわけですね。 ○医療安全推進室長  そうです。ヒアリングの中でこのような発言があったということです。 ○前田座長  ヒアリングの中で参考人からこのような指摘があって、長いものをまとめたからとい うことですね。判断するときに、調査組織の代表も入っていたほうがいいという指摘が あったということだと思います。 ○加藤委員  いまのは前後が少し端折られているかもしれません。もし再現できるのであれば、前 後関係を少し紹介していただけませんか。 ○医療推進室長  前後を読みますと、「調査の一極集中を避けて分散化を図るために特定機能病院、国立 病院、大学病院、500床以上の病院には重大な医療事故が発生したときに、過半数の外 部委員を加えた独自の調査委員会をつくることを義務づける。外部委員には、できれば 国レベルの医療事故調査委員会の代表を加えることが望まれる。重大な医療事故が発生 した際には特定機能病院、国立病院、大学病院、500床以上の病院は過半数を外部委員 とする独自の調査委員会をつくり、その他の病院については医療事故調査委員会が当該 病院と一体となって調査するのが良いのではないか」といった発言でした。 ○加藤委員  これからが私の意見ですが、一定規模の医療機関は、医療事故が起きたときに内部の 事故調査委員会を設けることは、制度的にきちっと義務づけをしていく必要があるだろ うと思っております。事故調査委員会の外部委員には、基本的には日ごろから患者側で 医療過誤訴訟などを扱っている弁護士が参加することが望まれるし、かなり重要な位置 を占めるだろうと思います。外部委員としてどのような人を入れるかということは、何 のためにという部分やどのような役割を期待するかといったことなどいろいろあります が、院内で医療事故調査をやってきた経験から、公正さという意味では非常に大事な役 割を果たすだろうし、いくつかの論点を深めていく上でも、他の委員の評価も高い状況 が生まれていると考えております。  ここで出てくる調査組織の言葉の意味合いですが、国の行政機関の中に、例えば航空・ 鉄道事故調査委員会の場合だと、委員会の設置法というものができているわけで、その 組織はある意味では運営に責任を負う組織になってくると思います。また、個別の地域 ごとにある程度の調査をする、つまり地方できちっと調査をする組織体が別途できると いうことになるのだと思います。ヒアリングで発言した参考人は、調査の専門家がいろ いろな形で参画するようなことを想定したのではないかと読みました。何のための調査 かという意味で、やはり再発防止につながっていくためには、根本原因に遡って調査を していくという姿勢が非常に重要になってくると思うのです。医学的なところでの真相 の究明だけではなく、再発防止のためには、例えばその病院のシステム的な弱点、ある いはスタッフの配置の問題など、さらには厚生労働行政上、施策を求めなければいけな いことなどいろいろ出てくるに違いないと思っております。  いま我々が検討している第三者機関というのは、そのようなところまで担うべきもの であろうと考えています。調査の役割というか、本来どのようなところまでやるかによ って、第三者機関の個別の調査のときのメンバーがどのように構成されていくのかが決 まってくるだろうと思います。遺族が参加するかなど先ほど来の議論のときに、運営組 織としての調査組織の中に、被害者代表的な人が入ってくるという意味合いであれば、 行政機関の中に置かれる委員会のメンバーとして大いに入ってくる必要があると思いま すし、個別の会合レベルなどといった真相究明の場面での参加はどうかといった議論と は分けて考えていく必要があるだろう、そのようなことを思いながら聞いておりました。 ○前田座長  これも非常に重要な指摘で、真相究明の個別の解決の問題よりもう1つ上と言います か、そこには当該遺族が加わるのではないが、やはり遺族のグループのようなもの、そ のような組織の方などが意見を言う場を加えていくことも重要だと思います。具体的な 制度設計の中でそのようなことを活かして行っていただきたいと思います。 ○南委員  いま加藤委員が言われたようなことは、おそらく国民というか患者が非常に求めてい ることだろうと思いますが、医学的な死因の究明とは作業として色彩が違ってくる部分 もある、完全に違うわけではないがかなり違うと思います。先ほど来皆さんが言われて いるように、この会議の役割はどこかということを、国民が望むところと言ってしまう と非常に広がってしまうと思います。医療版事故調のようなものをつくるのかというの と、この診療関連死の意味するところとはちょっと違うように思いますから、その辺の 共通認識が必要ではないかという印象があります。 ○加藤委員  まさにいまの指摘のとおりでして、今日の議論を聞いていて、少しどうだろうかと感 じている点は、死因を究明することとは再発防止につながる1つの材料を得ていくこと であり、トータルな診療の経過を検証するという営みの中に、当然再発防止につながる さまざまな要因分析ということが入ってこなければいけないものだということです。そ れを前提として、私はこの検討会に参加してきたつもりです。死因究明だけの話だとす れば、例えば監察医制度をいかに充実、発展させるかということをもっと真剣に考えな くてはいけないだろうと思います。そのことは座長の進行の中では少し置いてと言いま すか、監察医制度の問題には今日の力点をあまり置かないでその他の議論をと言われた ことも関係していると思われますが、調査組織を行政機関または行政機関の中に置かれ る委員会として組織論を考えるということになると、医療の安全に大きな役割を期待し ながら我々はここに集まっているのではないかと思うのです。間違っているでしょうか。 ○前田座長  再発防止につながる情報を取ることと、医学的に真相を究明することとの違いですね。 明らかに違うのは、遺族の納得を得るために説明の仕方と、純粋な医学的究明とは少し 違うということですが、真相を究明するために医学的な目で純粋に究明すれば、再発防 止につながる情報がかなり得られる場だと考えますし、モデル事業もそのようなものと して設定されていると思っております。  もちろん、解剖をもっときっちりやっていくことが重要なポイントという指摘である とすれば、先ほど私が方向をやや勝手に設定して、今回は解剖の問題をあまり深く議論 するための用意と言いますか、難しい面があるということを述べてしまったのは良くな かったかもしれません。いわば事故調的なものと言いますか、事件が起こったことに対 して、従来よりも医学的なきっちりとした解明をすることにより、再発防止につながる 情報を集めていくことを目指すためにこの委員会があることには間違いないと思ってお ります。南委員と加藤委員の言われるずれといった部分はそれほどないと思って議論し ております。 ○加藤委員  9頁に「解剖の重要性」が述べられていて、b)には解剖だけでいろいろなことが明ら かになるとは言えないとあり、臨床評価することが重要だとしています。もちろん、モ デル事業では臨床医療も参加して評価しているところです。10頁の(3)のa)に、「背景要 因を含めた様々な視点からの評価することが重要である」と。モデル事業で果たしてそ こまで十分にやり切れているかと言うと、いささか心許ないと私は見ております。本当 のことを言えば、根本原因を改善していくような大胆な提言ができないような調査機関 であっては、せっかく引き出せたものを医療の質、安全につないでいくことにおいて失 われる部分があるだろうと思うのです。我々が制度設計していくときには、根本原因に 遡って是正なり何なりを働きかけていくことができるような質、量を持ったものにして いかなければいけないだろう、それではどのようにするかということをディスカッショ ンするのがこの場だという認識をしているのですが、よろしいでしょうか。 ○前田座長  もちろんよろしいと思います。やや矛盾してしまったかもしれませんが、それと解剖 制度をどうしていくかという話と深くつながってくることもわかるのです。ただ時間の 関係もあるので、今日はそこを除いて議論しようとしたのです。真相を究明する中のい ちばんの核である医療的な原因をはっきりさせることは、再発防止につながると思うの ですが、それと解剖の問題を切り離せると思っているわけではないのです。 ○医療安全推進室長  いま議論いただいた再発防止のことは、次の5に「再発防止のための更なる取組」と して、15頁の(2)には調査報告書を通じて得られた診療関連死に関する知見や再発防止策 等の集積と還元」といったことで、いままであまり議論がなかったと思いますが、ここ に入るような議論をいただいたのではないかと思っております。 ○前田座長  私の仕切り方が悪くて申し訳ありません。次の再発防止の取組みに移ってもいいので すが、全部の論点がつながっていると言えばつながっているのでそうなってしまったの です。いま室長からも指摘があったように、14頁以下に「再発防止のための更なる取組」 として、いま加藤委員が言われたような原因究明、それを活かしていく組織づくりとい ったことについての議論は、量的には少ないですが行ってきたつもりです。 ○楠本委員  戻る話ですが、遺族からの申出による調査開始は行うべきだというのは私もそうだと 思っております。その関係で7頁には保健所が届出先に提案されておりますが、こちら で見ると、第21条関連のような感じで届出先は医療機関が書かれており、遺族側からの 届出なり申出先は調査機関直接なのかどうか。今度法律で規定された医療安全支援セン ターなども、遺族側からの届出先としてあってもいいのではないかと考えますが、その 辺りの届出と調査の関係はどうなっているのでしょうか。 ○前田座長  それは先ほど分けたつもりです。要するに、第21条の受け皿としてというか、異状死 をどうするかという問題とは別問題として、新しくできた組織が調査を開始する。我々 で言うところの端緒ですが、糸口として遺族からの申出も当然受けるわけで、制度設計 の細かいところはまだこれからだと思いますが、この場合の調査を行う、行わないとい うのは、おそらくこの組織が受けるということになるのではないかと思います。その問 題と異状死をどこに届け出るかというのは別問題で、異状死の問題全般は1つの提案と しては医師会側から保健所を受け皿にしてはどうかという提案があったということだと 思います。 ○楠本委員  遺族の届出先ということとはまた別ですか。 ○前田座長  別です。むしろ、異状死は医師が届ける義務があるわけで、その届出先をどこにする かという議論とこれは少し違う。これは遺族からどうしても真相究明してほしいという のを調査委員会が直接受けることがあるという趣旨だと思います。 ○楠本委員  わかりました。 ○前田座長  次に、5の再発防止のための更なる取組について、いままで出されたことに付け加え てのご指摘はありますか。 ○児玉委員  先ほど加藤委員が根本原因という言葉を使われましたが、ここ何年間か、医療界でも “root cause analysis”という言葉も使われてきて、事故には背景に必ず要因があって、 根本になっている本当の原因を追究しなくてはいけないというのは非常に大事なことだ と思います。1つの症例の医学的な解析から見えるものもあるし、事例の集積の中で見 えてくるものもあることを一例を挙げて指摘したいと思います。例えば誤注射の事故が ありました。外用薬、内服薬、消毒剤とたくさんの事故があって、一つひとつの事故の 背景要因分析をやっているとき、例えばナースの労働環境、作業中断など1つの事例を 一生懸命追求していく中でいろいろな原因分析や提言がされてきたわけですが、そこで たくさんの事例を見ていくと、結局のところ、事例がたくさん積み重なると病院にある あらゆる液体が静脈に誤注射されていることに気が付きます。  どうしてだろうと言って根本原因を探っていくと、結局、病院という所はあらゆる液 体の計量と運搬に注射器を使っている。注射してはいけない液体を注射で計量し、運搬 するから誤注射という事故が起こる。要するに、注射してはいけない毒薬はそれ専用の 計量器具を使って、患者の体に接続できないようにしていれば誤注射事故は起きない、 ここがroot causeだということが多数の例の蓄積から見つかってくるのです。  そのような意味で、一例の医学的分析は非常に重要で、解剖をやってわかることは中 毒死であるなど、死亡に至った経過はわかるわけですが、組織が行う根本原因の分析の 中でもう1つ大事な側面は、個別の責任追及を超えたところにある多数の事例の集積、 公表と、それを踏まえたroot cause analysis(根本原因分析)ではないか、そのよう な視点を入れるべきではないかと思います。 ○前田座長  それは先ほどの加藤委員の発言などにつながるということですね。そうだとすると、 私などはちょっとピントがずれていて、ぼけていた面もあると思います。誤注射がある なら、注射器以外のものを使ったほうがいいということが原因としてある。それはそれ でいいのですが、仮に個別具体的な誤注射で死んだ人がいたときに、その原因はシステ ムのせいで、注射を間違えた人にはないといった方向に行ってしまうと、それでまた遺 族側の問題、先ほど言っていた解決の問題がおこる。真相の究明はいろいろな段階があ ると思うので、誰々が具体的に重大なミスを冒して誤って別のものを注射してしまった というのは原因ではないという、もっと根本的な原因究明といった議論をし出すと、こ の調査委員会の機能、つまり患者側の納得がいくような、紛争解決のようなものとちょ っと離れていってしまうような感じがするのです。 ○加藤委員  いまの座長の問題意識も、私としては理解しがたい点があります。第三者機関で調査 するのは何のためか、ある意味では根本のところです。刑事や民事の責任を負うべき人 の責任につながること限りでやる調査もあるかもしれませんが、第三者機関がやろうと している調査というのは、医療の安全なり、医療の質の向上なりにつながっていくため に、1つの尊い犠牲というか事例から引き出せるものは思い切り引き出していく、その 限りでは根本の原因にまで遡る営みをしなければいけない。そのような意味では、組織 的な弱点、制度上の問題点などといったところまで触れられる限り触れていくという姿 勢が、調査する者の基本的な立脚点にならなくてはいけないと思っております。私が院 内の事故調査に関わっていたときは、そのような気持で事例を見てきました。  これは国と言いますか、行政機関として第三者機関をつくろうとするわけですから、 根本のところはいま言ったような趣旨に立脚して設計していただきたい。その結果、行 為をしたAさんに責任を負わすとか、いやBさんだなどというレベルのことをそこから 直ちに引き出したいということは、事実の経過の中ではそれなりの評価はあるのでしょ うが、そこを目的にしていくものではなかろうと考えておりますが、いかがでしょうか。 ○前田座長  私の説明の仕方が悪かったのですが、そのような真相究明をする機関であることを否 定するつもりは全くないのです。ただ、最初にこの制度をつくるというところが、その ようなことだけを究明するというよりは、医療不信のようなものを取り除くためにいま 何が必要かといったとき、本当に二度と起こらないということだけが得られればいいの か。それだけではなく、個々の犠牲者、まさに被害者について遺族が納得するような解 明といったようなものも合わせて究明するのか。それは全部刑事でやればいいというこ とではないのではないかと。それは先ほど山口委員が言われた医学的な、客観的な真相 究明、プラス患者とのやり取りなどで解きほぐしていくことにもつながると思うのです。 純粋に医学的に再発が防止できるようなシステムさえ結論を得ることができればいいと いうだけでこの制度設計は必ずしもできていない。逆に言うと、要するに下手人捜しだ けをやればいいなどということを申し上げるつもりは全くないのです。併せて、それに よって医療不信と言いますか、医師に対しての不信感が取り除かれるといった問題解決 的機能も持たないといけないということだと思います。時間があまりなくなってきたの ですが、いまの点はいちばん大事なところと言えば大事なところです。 ○樋口委員  あまり役に立たない意見かもしれませんが、この議論を加藤委員が始めたのは、13頁 の院内調査委員会、つまり院内の事故調査委員会の話から発展しているわけですから、 そこをもう1回区別しなければいけないと思います。院内事故調査委員会と第三者によ る調査組織との関係というのは1つ難しい論点を提示していると思います。加藤委員と は違い、私自身は院内の事故調査委員会に加わったことがないので経験なしに申し上げ ることですが、印象では院内の事故調査委員会は何でもやらないといけないのではない か。つまり再発防止だけではなく、もし院内で解剖ができればその記録がありますから、 解剖の記録だけを見て医学的になどということは言っていられなくて、まさに自分の所 の問題になるのだと思います。  もちろん再発防止も大変ですが、やはり誰がミスしたか、同じような人がミスし続け ているようだったら、やはり院内でも責任を問われなくてはいけないでしょう。樋口ば かりミスしているのであれば、樋口は解雇だということだってあるかもしれないのです。 また、被害者救済や被害者対応というのも、やはり院内事故調査委員会で議論するに決 まっているような気がするのです。非常に総合的に判断してやらざるを得ないのが院内 の事故調査委員会で、それが客観的に信頼できるようなものになり、自分の病院では同 じことを繰り返さないし、同じ間違いはしないようにしようと皆で頑張っていかれれば いちばんいいと思うのです。他のところでいろいろなことを言われている所がいくら立 派であっても、それぞれの医療の現場が立派にならないと意味がないわけですから、そ こでできている医療事故調査委員会は、まさにいろいろな矛盾を抱えながらもたくさん の目的があるわけです。  しかし、この病院を良くし、患者のためになる病院にしようということで何とかしな いといけないのだから、ここだけを取り上げるわけにはなかなかいかないと思います。 第三者機関が何ができるかと言うと、同じようなことを何でもかんでもやれるかと言う と、ちょっと違うような気がします。解剖の結果だけ見て医学的なと言ったとしても、 第三者組織がいま必要とされているのは、何度も言われている医療不信というのが厳然 として存在しているからです。医療不信とは医学不信とは違いますから、医学的なとこ ろだけが解明されれば医療不信がなくなるかと言うとそうではなくて、座長も何度も言 われているように、それまでの説明の過程、臨床の過程などについて全体的な評価をし、 さらには、加藤委員が言われるようにroot cause、組織として本当はどのような問題が あるかというところまで目を向けることだと。  再発防止の点からはやったほうがいいが、一方では現実的な問題があるから、どれだ けのことがキャパシティとしてできるかと言うと、例えば説明を一方当事者はここまで しか受けていなかった、片方はここまで説明したという、第三者機関ができることは両 当事者に対して、本当にいろいろなことを一生懸命聞いてみましたが、このような点で 齟齬がありますということまでは言えると思うのです。調査報告書にきちんと書いて、 このような齟齬が発生しているということは、病院側で反省しなくてはいけないのだと 思いますが、こちらのほうが正しいことを言っていて、こちらは駄目だという話は簡単 には出てこないと思うのです。  先ほど児玉委員が言われたように、1件の事例だけでroot cause analysisが全部で きるかと言うと、そのようなタイプのものばかりではないですから、それだからこそ第 三者組織がいろいろな事例を集めることによって、こちらのほうが重要ではないかとい った話が出てくるかもしれないわけです。この件だけからでも、病院組織の運営の仕方 にはこのような問題があるのではなかろうかくらいのことは言えるかもしれない。しか し、root causeから説明責任のところまで全部責任を持ってやれますとは言えないので す。ただ、再発防止に絡む限り、また医療不信の払拭のためにはそのようなものにまで、 何と言ったらいいのでしょうか、手は伸ばすが、いちばん基本のところは解剖を中心と した、死体事例だけでないほうがいいと思いますが、取りあえず我々ができるところか らいくと、この範囲から少しずつ手を伸ばしていくことだけしかできないということに なるのではないかと思います。  しかし、再発防止という点では一致しているので、いろいろなところまで目配りをす るような話だと思います。その中には、この人は医学的に見てもあまり不適切なことを したとは思えないということははっきり書くべきで、その材料が後で刑事責任の追及、 刑事責任にはつながらないほうがいいとは思いますが、何らかの責任追及の話になった り、あるいは被害者救済のときに、原因としてこの病院のこの人に問題があったから病 院全体が責任を負うべきだという話は当然あって然るべきだと思いますが、第三者機関 が責任や被害者救済のところまで全部抱え込むと、結局何か曖昧なものにしてしまい、 却って本当の意味での医療不信を払拭できるような第三者機関にならない可能性のほう があるかもしれないと危惧しているのです。 ○前田座長  本当に白熱した話で、いちばん大事なところだと思います。まさに第三者機関がどこ までやれるか、医療の紛争解決の中のどこまでを切り取れるかです。紛争ですから、こ こで全部やれると言っても、残った部分が大きければ他の所でやることになるわけです。 また、最後の6の民事・刑事、行政処分の話になるわけで、山本委員には民事のことで 少しご案内いただこうと思っていたのですが、時間の関係で次回となります。次回の資 料には今日の部分を加えていただきますが、6の部分は次回にさせていただきたいと思 います。 ○山本委員  誠に申し訳ありませんが、次回は欠席いたしますので手短にお話したいと思います。 ○前田座長  是非ご発言をお願いいたします。 ○山本委員  民事紛争の解決の観点からすれば、おそらく裁判だけでは十分ではないし、話し合い による解決が可能な事件においては話し合いの解決を援助するようなスキームが必要で あることは、たぶん争いがないところだと思います。この機関がそれを担うべきかどう かについては、この4月に、いわゆるADR法が施行されて、民間で医療事故についての 紛争解決を担おうという機関がいくつか名乗りを上げ、活動を開始していると伺ってお ります。そのような機関がうまく機能していくようになれば、この機関と役割分担をし ながら、こちらの機関では純粋に医療的な問題、原因究明を取り扱い、それを基に民間 の機関で話し合いを促進していくということができれば、それは1つの理想かなと思っ ておりますが、果たしてそれらの機関が今後うまく活動していけるかどうかというのは、 現段階では確固たることがなかなか言えないような感じがしております。そのような意 味では、樋口委員の何でもかんでもこの機関がやるというのはどうかという発言もわか るのですが、現段階ではそのような機能を担う道も閉ざさないような形で、もちろん死 因究明に関する純粋な紛争もありましょうし、堺委員が言われた説明義務的な紛争もあ るでしょうから、どこまでを担うかという問題はあるだろうと思いますが、現実に可能 な範囲で、しかしそのような機能を担う道を残すことを是非考えていただきたいと思い ます。 ○前田座長  もっと時間を取って発言していただかなければいけなかったのですが、本当に申し訳 ありませんでした。不手際で予定時間となってしまいました。すべて私の責任で申し訳 ありません。次回はこの続きを議論する予定ですし、今日いただいた議論の部分は資料 にまとめていただき、合わせて整理するということで進めたいと思います。事務局から 次回について説明をお願いいたします。 ○医療安全推進室長  次回の検討会は7月26日(木)午後2時から4時を予定しております。詳細について は、決まり次第後日ご連絡いたします。本日はどうもありがとうございました。 ○前田座長  ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  医療安全推進室   03−5253−1111(2579) 1