07/07/11 第5回医療費の将来見通しに関する検討会議事録 第5回医療費の将来見通しに関する検討会議事録 日時 平成19年7月11日(水) 10:00〜11:15   場所 厚生労働省専用第17会議室 ○飯野座長 ただいまより第5回医療費の将来見通しに関する検討会を開催いたします。最初に、 メンバーの出欠状況ですが、本日は橋本先生と松山先生がご欠席です。それでは、議題に入りたい と思います。本日は、前回までにいただいた意見を基に議論の整理を行いたいと考えています。事 務局で整理していただきましたので、事務局から説明をお願いいたします。 ○真鍋数理企画官 資料1が議論の整理案でございます。文章編、参考資料、先生方のメンバー表 という構成にしてありまして、これで1セットです。文章編ですが、前回、これまでにいただいた 主な意見をお出ししてご議論いただいたわけですが、それをベースに、若干、修正したり追加した りして用意いたしました。  最初に前文を入れさせていただいていまして、この検討会自体、医療費の将来見通しについての 関心の高まりを背景にご参集をお願いしたのですが、昨年の12月27日から5回にわたってという ことで、そういった前文を入れております。  次が医療費の将来見通しの必要性という所です。これは前回のものを文章的に膨らませただけで ありまして中身としては同じですが、「将来見通しは、国民皆保険制度下において必要な財源確保な ど制度のあり方を検討するための議論の素材」という必要性を書いております。  その次が医療費の将来見通しの現在の手法についての記述です。現行制度の将来見通しの手法は 将来推計人口を基に過去の一定期間の1人当たり医療費の伸び率、要するに過去のトレンドを将来 に投影したものであるということです。2つ目の○で、今、その前提として1人当たり医療費の伸び 率の設定にあたっては、平成7年度から平成11年度の実績を算定基礎期間としています。ただ、そ の実績をそのまま使うのではなくて、実績の伸び率は人口の高齢化の影響や制度改正の影響を受け ていますが、まず人口の高齢化の影響につきましては推計人口を外から別途入れていますので、そ こは取り除きます。次に制度改革の影響を入れてしまうと、将来、断続的にその改革と同じことを していくみたいな形になってしまいますので、現行制度における見通しではそれを取り除きます。 つまり、今の制度のままだったらどうなるかというものを出すという意味において、算定基礎期間 における人口の高齢化の影響や制度改正効果を除いたものにしているということです。2頁目ですが、 これは先生方からいただいたご意見が書いてあるわけですが、1人当たり医療費の伸び率の設定方法 など、前提の置き方に検討すべき点はあるものの、大枠としては基本となるその方法であろうと。 つまり、過去のトレンドを将来に伸ばすということ自体は基本だろうということで書いております。  その次が医療費の将来見通しの改善の方向ということで、ここは○が多くて長いのですが、1つ目 の○は、この検討会でご指摘があったというよりは、むしろ世の中一般で指摘されていることを書 いております。そういう意味で、今日またご議論いただきたいと思っているのですが、1人当たり医 療費の伸び率の設定にあたっての算定基礎期間が平成7年度から平成11年度ということなのですが、 これが最近の期間ではないということと、将来見通しを見直す都度将来の医療費の名目額が小さく なっていることなどが問題点として世間から指摘されていることを書いております。それに対して、 2つ目の○では、まず、算定基礎期間が最近の期間ではないことについてですが、平成12年度以降、 断続的に制度改革があったということから、先ほど申し上げましたように、自然体の伸び率をつく るときに制度改正効果を除かなければいけないのですが、その制度改正効果を測定することが難し いということで最近の期間ではないところを使っているところです。そうはいってもできる限り最 近の期間とすることが適当ということです。3つ目の○で、将来の医療費の名目額は推計を見直す都 度小さくなっているという、いわゆる下方修正と呼ばれていることに関してですが、第一の要因は、 その算定基礎期間の1人当たり医療費の伸び率は過去のトレンドを伸ばしていますので、その取っ てきたところが高かったために前提が高くなって、将来の名目額が高くなったということです。第 二の要因は、もともと出発点の足元の医療費自体が、例えば介護が抜けていったとか、過去の制度 改革があったことによって小さくなっている。その2つの要因があります。2つ目の○と3つ目の○ は、一応、初回にご説明は申し上げていて、そんなに取り立てて問題だという形でご指摘いただい ていないのですが、世間一般で言われているので書かせていただいたところです。ここは今日ご議 論いただければありがたいと思います。  2頁の最後の○ですが、いずれにしても、医療費の将来見通しにおいては、名目額よりも経済規模 との対比で論ずる必要があるということで、この意味では過去に行ってきたものにつきまして経済 規模との対比で見た場合にほぼ同じ結果となっているということで、そういう意味ではおおむね妥 当ではないかというご意見をいただいているところです。3頁目ですが、名目額の持つ意味に関して 誤解があるとか、あるいはその名目額だけではなく経済規模との対比を示してきてはいますが、そ ういうところで説明などの丁寧さが足りないのではないか、あるいは提示方法も少し工夫すべきで はないか、というご意見をいただいていまして、そこを書いております。   その次ですが、経済規模との対比で提示する場合には、間接税等が考慮されていないNI比ではな く、GDP比で提示することが適当ではないかというご意見をいただいております。  その次の○ですが、将来、医療保険制度に必要な財源確保を安定的、公平に行うための仕組みを 検討するための議論の素材ということですから、より長期にわたる公費負担や保険料収入などの財 源内訳や将来の保険料率を提示することが大事なのではないか。一応、ある程度の年度までの財源 はお示ししているのですが、より長期にわたって必要ではないかというご意見をいただいています ので、それを書いております。  その次ですが、先ほど申し上げた医療費の伸び率の設定に関してです。実績から人口の高齢化の 影響と制度改正効果を除いたものを基礎としているということは、医療の高度化などに伴う自然増 と、算定基礎期間における診療報酬改定率が含まれたものになっているということです。ここで3 回目に分析結果をお示ししましたが、確かに、診療報酬改定率は政策的に決定されるわけですが、 長期に分析してみるとタイムラグはあるものの、経済動向との間に一定の関係が見られるというこ とですから、医療費の伸び率を設定するにあたってはそこの自然増分と診療報酬改定分を区分して、 将来見通しの前提となる診療報酬改定率は、経済との関係を勘案して設定することも考えられるの ではないかというご意見をいただいていまして、それを書いております。  その次ですが、そもそも、将来見通しに幅を持たせて、あるいは前提も複数置いてという意味で すが、それに対しては複数の将来見通し案を提示することも必要ではないかということです。あと は、手法とか前提及び結果について分かり易く提示することと、例えばどこかにまとめて「ここを 見ればわかる」という形で、アクセスしやすい方法で情報の提供をしていくべきではないかという ご意見をいただいております。  4頁が医療費の分析についてでありまして、1つ目は、これは前回とほとんど同じなのですが、医 療費の分析、特に自然増の分析は大事だということで、今後レセプトの電子化も進展するというこ とですから、そういうものを活用して分析を深めるべきだというご意見です。  その次の○ですが、前回、自然増というのは人口の高齢化の影響、診療報酬改定の影響、制度改 正効果を除いたものを自然増と呼んでいるわけですが、その中にも技術進歩や看護体制の充実など により医療の質が向上し、必然的に医療費が増加する部分とそうではない部分があるというご議論 がありましたので、そこを書き加えております。そういうものを分解して分析していくべきではな いかと。また、ここで少し書かせていただいた趣旨として、もともと、技術進歩などがあると世の 中では単価が安くなっていく。例えば、パソコンも性能が良くなるけれども安くなるということが あるわけですが、医療の場合は必ずしもそうではなくて、技術進歩があり、それで医療費が増加す るというところもありますので、皆さんが必然的に増加することを納得する部分とそれ以外の部分 とを分けられないかというご議論がありましたので、2つ目の○を書き加えております。  あとの2つは前回とほぼ同じですが、1つは診療報酬改定について予算でセットしたというか、例 えば平成18年度で言うと3.16%のマイナスということですが、それが実際には医療機関の行動が変 化して結果が違うこともあり得るので、想定通りだったかどうかについての分析も必要ではないか ということです。  最後につきましては、西村先生からいただいているご意見でありまして、医療費物価指数を作成 することを検討したらどうかということです。ただ、正確な概念整理はなかなか難しいなというこ とで、あるいは難しいけれどもそういうことをすることによって、将来見通し自体も、名目額では なくて実質額で提示することも可能になるのではないかということで書かせていただいております。  参考資料につきましてはいろいろ資料をお出ししたわけですが、あまりたくさんになってもいけ ないので、この書いてある文章に対して参考までに見ていただければいいかなというものをピック アップして付けております。説明は以上でございます。 ○飯野座長 この資料につきましてご意見をお願いいたします。 ○権丈氏 最終的にこれが報告書の形になっていくのですか。 ○真鍋数理企画官 議論の整理ということで案をとらせていただきます。 ○権丈氏 この報告書のようなものの持久力を高めていただくために、1頁目で「我が国の国民医療 費は30兆円を上回る規模」というところを、冒頭から経済規模で論じたらどうかなと思います。初 めから兆円という名目額を出さない。出してもいいのですが、ここで初めから経済規模で論じる。 国民所得に占める何割とかGDPに占める何割というような形で論じ、基本的には医療費の議論はそ ういう形でするのだよという姿勢を示していけばどうかなと思います。  もう1つは、3頁の所で「国際比較の観点から、経済規模との対比で提示する場合には、間接税が 考慮されていないNI比ではなく、GDP比で提示することが適当」とあるのですが、これはずっとわ かっている話なんですよね。ずっとわかっているのだけれどもNI比からGDP比にすると値が小さく なるわけで、そうなると世間から、何か作為があるのではないかと勘ぐられるおそれがあるので、 行政側は今まで怖がってNI比のままでずっとやっていると思います。10年ぐらいは併記するという 形で少し慣れてもらってGDP比にしていくようにしていけばどうかなというのが、以前からいだい ていた感想です。  もう1つは、4頁の2つ目の○です。先ほど少し話されていた医療技術の特性は少し加えておいて いただければと思います。普通の医療技術、技術進歩が進んでいくと医療費が高くなっていくこと があるというか、一般的な技術革新とは違うというようなことが前回のこの検討会で議論されて、 これはここにいらっしゃる方はそう思っているのですが、世間はそう思っていないので。 ○真鍋数理企画官 そうなのです。それでこの中に「技術進歩などにより必然的に医療費が増加す る部分」として意味を込めたつもりです。 ○権丈氏 医療技術が進歩すると医療費が下がるというか、イノベーションが起こると医療費が下 がっていくと考えている人たちがあまりにも多すぎるので、その辺りのところをもう少しニュアン スとしてダイレクトに書いていただきたい。医療技術は特性があって、普通の生産工程におけるイ ノベーションみたいなものとは違って、質が高まる方向に作用していてコストがかかっていく方向 に向かっていくというのを医療を論じる人には分かってもらいたい。クォリティが一定のまま生産 コストが下がるという医療技術の進歩というのは、あまり例が思いつかないのですね。ですから、 毎回説明しなければいけないところなので、その辺りのところをもう少し明記していただければ、 あとあと面倒がなくていいなと思います。以上3つです。 ○西村氏 いまの最初の話以外は全く賛成です。最初の話は、そこまで神経質にならなくてもいい かなという気はするので。ですから、私はどっちでもいいです。それで、別に2つぐらいあります。 3頁のいちばん上ですが、「過去厚生労働省が行ってきた将来見通しは、経済規模との対比で見た場 合ほぼ同じ結果となっており」という、この意味は、いま補足で言われたことから推測すると、要 するに長い目で見ると大体対応しているのではないかという趣旨に聞こえたのです。 ○真鍋数理企画官 すみません、今日の資料では2頁のいちばん下です。これは資料の11頁を見て いただいて。 ○西村氏 いまいただいた図ではそういうことですよね。 ○真鍋数理企画官 まず、9頁ですが、ここで言いたかったのは、確かに、平成6年に141兆円と出 していますが、対国民所得比で言うと10 1/2〜14%の間ということを出しておりまして、81兆、65 兆と名目額は下がってきていますが、12 1/2とか12〜13.2%とNI比で見るとほとんど変わってい ないということで、こういうご意見をいただいたということです。 ○西村氏 ですから、経済規模との対比で見て云々というのはわかるのですが、今回の将来見通し というのは短期の話と長期の話があっちに行ったり、こっちに行ったりと。もちろん、両方やって いるわけですね。特に、長期に関してはいまおっしゃったのでいいと思うのですが、短期的には結 構乖離することがあると思うので、もしここへ入れるのであれば、「長期的に見た場合は」という言 葉を補っていただいたら、私はいいと思うのです。どうしてそういうことを言うかというと、少し 余談で恐縮なのですが、介護給付に関してかなり抑えている関係で、景気がわりとよくなってきた ら介護従事者の需給市場がタイトになってきて、結構やめていった。それで、おそらく、次の報酬 改定ではこの手当を何とかしないと大変なことになるということで、私の予想ですが、おそらく上 がると思うのです。  実は、同じことは医療費についても、いわゆるバブルのときに同じような経験があったのです。 つまり、世の中の景気がよくなったけれども、診療報酬は少し遅れて上がるということで、病院や 医療機関は非常に経営的に苦しくなった。それを後で追い駆けるように診療報酬を上げてというこ とがあった。ですから、長期的には経済の動向とある程度対応することになるというのは、ここで 書かれた意味で私も賛成なのですが、短期的には非常にいろいろな問題が起きるのですね。それは どうしたらいいかという話はまた別で、私はここで即座に診療報酬を変えろというつもりはありま せんが、他方、いま言ったように、給料が上がってくると社会保険の収入が上がってきて、それで 遅れて診療報酬が上がるという対応だと思うのです。この分析もそのことを語っているのでいいの ですが、短期についてもこれでよしとするようなニュアンスでとらえてしまうという点が気になり ます。  もう1つは、いま権丈さんが言われた技術進歩の話ですが、これは今まで検討会では言葉が出な かったのですが、できたら「生産性」という言葉を入れておいていただけないか。つまり、おっし ゃるように、世の中は誤解があって、ほかの分野は技術進歩があるとコストが下がるとおっしゃる けれども、実は、私、いろいろ調べたけれども、あまりないですよ。パソコンは性能が上がって同 じ値段だということはある。すごく安いものも売っているけれども、もっと新しいものができて質 が上がって同じ値段だということがある。例えば、IT化をやってコスト削減をしろと、医療界では すごく言われているのですが、たくさんお金をいただく形で質をあげることはほかの産業でもほと んど成功していない。つまり、ただひたすら安くしたという業界はあまりない。ゼロとは言いませ んよ。  他方で、日本では医療界だけがサービス業の生産性が低いという議論をする。それは考えたら当 たり前で、診療報酬を抑えているからサービス業の生産性が上がらないのです。もちろん、これは 少し別で、個々の医療機関についてはギリギリきちんとやっておられて、それを例えばもっと集約 化して、患者さんを1カ所に集めて手術の頻度を上げたら生産性が上がる等々はあります。ですか ら、トータルの話は少し別ですが、技術進歩に関するこの表現は私は全く賛成です。ですから、真 鍋さんは技術進歩があっても費用は下がらないとおっしゃったけれども、それはほかもそうだとい うことを言いたいのですが、それは文章に書いてありませんから文章には何も異論はないのですが、 特に私が異論を申し上げているのは真鍋さんの発言に異論を申し上げているのですが、できたら「生 産性」という言葉を一緒に入れておいたほうがいいと。医療だけは技術進歩があってサービスの向 上はできるけれども費用は下がらないのだという決めつけも言い過ぎだし、ほかは下がっているの に医療だけは生産性が上がらないとか、技術進歩があっても費用が下がらないということも決めつ けすぎるということで、できたら「生産性」を。すみません、これはこれから経済諮問会議等です ごく言われると思うのでという、そういう意味です。 ○権丈氏 技術進歩が進んでも労働生産性が上がるわけではないのですよね。いや、計算していく と上がる形になるのか。要するに医療費が上がるのだから、医療費が上がったら生産性が上がる話 になりますね。コストが下がるわけではなくなってくる。 ○井原氏 後でまとめは言いたいのですが、いまの西村先生の関連のお話で、私、急に思いついた ことですが、ここの「技術進歩」と書いてある所は「医療」という言葉を入れて「医療技術の進歩」 としたほうがいいと思います。  もう1点は、この表現は鎌形先生たちに教えていただきたいのですが、私は医療技術のある意味 の特殊性というものがあろうかと思うのです。ということは、医療技術というのは、新しい機器の 使用、新しい手術法であるための新しい材料とか新しい薬剤とか、新しいものは、当初、ある程度 の開発の費用がかかるとか、医療技術というのは一気に広まることがあまりないのです。先進医療 なども、ある程度、特殊技術を皆がマスターした上で広まっていく。したがって、最初は生産する のに非常にコストがかかるのです。  ですから、医療技術の進歩というのは、テレビやパソコンみたいに、新しい良い液晶ができると それがみんなきれいに見えるからサッと大量生産して売れ始めるということではなくて、非常に特 殊な所でスタートしますから、最初は医療技術の進歩の持っている特殊性というものが、かえって 医療費を上げてしまう、高額なものができてしまうのです。  これがごくオーソドックスな技術になって、多くの医師がその技術を修得して広く使われるよう になってくると、たくさんの量を生産するようになるとコストが下がるというのは、飯野先生も中 医協で経験なさっていると思うのです。最初はどうしてこんなに高いのかというのは、生産数が非 常に少ない特殊なものなのですよね。それが何年も経って当たり前の技術になると、初めてある程 度下げられている。ですから、医療技術の進歩にはそういった特別な事情があるので、医療技術の 進歩がほかの分野と違ってコスト面では上がってしまう結果になりやすいのだというのが私たちの 印象なのですが、西村先生、そういうニュアンスでいいですか。 ○西村氏 ここは学会ではないので、別にいいです。いまの結論は全く賛成です。ただ、実際は、 テレビだって最初はすごく高い値段でマーケットに出て、高いのですよ。それを金持が買って、大 量生産できたらだんだん安くなってということは、別に、医療だけではなくて、研究開発のウェイ トがすごく高い分野はみんなそうだと思うのです。だけど、医療との違いは、いま言ったように、 お金持が最初に使ってという仕組みを日本は採用していないので、それがいちばん大きい。ですか ら、結論は全く同じだと思います。 ○井原氏 おっしゃるとおり、確かに、プラズマテレビはすごく高かったのですが、いまは安い。 ですから、そこら辺のニュアンス、医療技術の進歩というのは最初から安価にはいかないというニ ュアンスがここに書かれていると、権丈先生がおっしゃるとおり、医療技術の進歩が即生産性につ ながって、安くて良い医療を提供できるというわけにはいかないのだということを表現すべきなの かなと思います。文章的には具体的に名文が浮かばないのですが。 ○西村氏 「医療技術の進歩や看護体制の充実」という。 ○権丈氏 ちょっと度忘れしているのですが、川上武先生『技術進歩と医療費』の中で技術進歩を2 種類ぐらいの形で定義されていたと思います。コストを下げていく方向で働く技術進歩と、アウト カムを上げる形で発達していく技術進歩と、言葉が2つできていたと思います。 ○真鍋数理企画官 生産性という言葉を入れるという話に関しては、イメージとしてはどういった 形でしょうか。井原先生がおっしゃったような流れでということでしょうか。 ○井原氏 これをどういうふうに表現するのですか。すごく上手に書かれている。 ○西村氏 「技術進歩」の前に「医療」という言葉を入れるわけです。「医療技術の進歩や看護体制 の充実などにより、医療の質が向上し必然的に医療費が増加する部分とそれ以外の部分が含まれて いる」と。その後に「それを分解して示すことにより、生産性などについても考慮しつつ、医療の あり方についての生産性についての議論も考慮しつつ」という。解説的にはそれ以上は要らないと 思うけれども、ちょっと一言。当たり前なのですが、びっくりするぐらい経済界の人が医療の生産 性は低いと言うのです。それは値段が上がったら上がるのですよという、当たり前のことをわかっ て言っているのかしらという。たくさん儲かるような仕組みにしたら上がるのです。それが医療費 を全体として上げることになりますから、例えば1例として、ジェネリックを採用したら生産性は 下がるのですよと。私は意識していますよということだけ、要するに、いま言ったようなことを説 明的にくどくど書くことは必要ないと思いますが、「生産性についての議論も進めつつ」とか「考慮 しつつ」とか、お前たちはわかっているのかね、というニュアンスを入れてほしいのですが、駄目 でしょうか。今まで議論をしていないので、却下だったらそれで引き下がります。 ○真鍋数理企画官 今日も議論の場ですから。 ○井原氏 いま西村先生がおっしゃった文章が入っても、文章の流れとしては全くおかしくなくて、 私は悪くないと思います。 ○権丈氏 この辺りのところは、西村先生が欠席されていた前回の検討会の際、医療技術のことに ついてその日の日経新聞の朝刊で財政諮問会議の見解が報じられているということを切っ掛けとし て、そこからパァーッと医療技術の話しが盛り上がったのですよね。ここの文章は前回の議論のこ とを反映しているのですから、入れなければいけないところなので、それを少し改善するのは大い にやっていただきたいと思います。 ○井原氏 いまの文章が入ると素晴らしくよくなると思います。 ○西村氏 深い意味はないです。 ○権丈氏 必ずここが議論になるという意味では、ポイントは医療費分析の○2つですよね。 ○西村氏 必ずこれから議論をされます。 ○井原氏 ここから始まると思いますね。 ○権丈氏 レセプトの電子化に対してものすごい期待がある。だけど、レセプトをいくら触ったり 眺めてみたりしてもそんなにアウトカムというのはね。 ○井原氏 私も、先日、某所に呼ばれていろいろ聞かれたのですが、オンラインになる、電子化さ れる、それが即素晴らしい、まるで切り札のように言われていることに対して、私は非常に忸怩た るものがありまして、これは医療全体の総合的なこと、日本人が医療に期待しているものや日本人 の医療に対する特殊性、点数表のあり方、いろいろなことが総合的に組み合わさってはじめてITの 効果も出てくるのです。IT化するというのは、紙で運ばれてくるものが回線を通じてくるというだ けのことでして、それが即何かというのは、目に見えてというのは。 ○西村氏 年金をIT化したから大変になる。 ○井原氏 ですから、私はそこのところはあまり性急な議論は難しいという意見を話しています。 ○権丈氏 少し兆しがあるというか、少し予測できるのは、レセプトをデータとして何万件もらっ たのでという、それを使うことができるということで研究者が今ドッと取りかかっていますよね。 だけど、レセプトの枚数をいくら増やしても医療のアウトカムは大して研究できないのです。だか ら、いくらレセプトを電子化していっても、研究そのものも大したことができておらず、昔と変わ らないようなことしか分かっていないような状況で、これを国レベルでやったからといっても、レ セプトはインプット情報ですから、そこでアウトカムがわかるわけでもない。インプットとアウト カムとの兼ね合いとして定義される効率性みたいなものを論じるのはなかなか難しいものがある。 医療経済研究の中では、レセプトを大量に扱った研究が飛躍的に何か進んだ研究になっているわけ ではないという状況があるので、あまりレセプトの電算化に全体的に期待するのもちょっと何だな というのがあります。ただ、これから先、ここがものすごく議論されるところになるのはあるので、 先ほど西村先生がおっしゃったような言葉はどうしても入れていただきたいと思いますので、よろ しくお願いします。 ○鎌形氏 私の意見ですが、あまり言うことはありません。これでよろしいのではないか。それか ら、いままでに出てきた先生方の議論も反対ということではありません。参考資料についても、こ の程度の参考資料でちょうどいいぐらいではないかという感じがいたします。  それで、1点だけなのですが、2頁目の今までの将来推計というのが名目値がだんだん小さくなっ てしまった。やる度に小さくなってきた。その原因が2つあって、1つは医療費の伸びが低くなった のと、発射台が低くなったのだということなのですが、医療費の伸びが低くなったというのはこの 資料の中で読み取れるのですが、発射台が低くなったということを読める所はないような気もする のです。無理にとは言いませんが、それが入れられるようならば入れていただきたいと思います。 ○真鍋数理企画官 一応、説明用の資料としては10頁で、第1回目に西村先生から粗いではないか というご指摘をいただいた資料なのですが、これは平成6年のときに141兆円という推計をしまし たと。平成18年の1月には65兆円と出しましたと。これを分解して、伸び率の低下分と制度改革 等の影響を大ざっぱに分けると8割・2割で、8割分は伸び率が高かったせいで2割分は制度改革な どによって発射台が小さくなったということなのだという意味でお出しした資料で、そこに対応し てこれを付けているつもりです。 ○鎌形氏 どのように読めばいいのですか。発射台が低くなったというのはこの資料からはよくわ からない。 ○真鍋数理企画官 この四角の中の下のほうの「制度改正等により足元の医療費の実績の低下分」 というところです。 ○鎌形氏 わかりました。 ○井原氏 私もこれでいいと思います。ただ、鎌形先生のおっしゃったことをより強調するには、 最初のときに年次ごとのどういう制度改正があったというものがありましたよね。資料が1枚増え てしまう話なのですが、直近10年ぐらいの間に介護保険が導入されたり、どういう改定があったり ということが経時的に分かる資料が出してありましたね。 ○鎌形氏 私は勘違いをしていましたので、この資料でよろしいかと思います。 ○井原氏 あれが入ると、足元が下がったのはこういう制度改正があったとか介護のほうに移行し た部分もあるとか。 ○真鍋数理企画官 この下に書いてあるものですね。 ○井原氏 資料が増えてしまいますが、あれを増やしたからといってわかりにくくなるわけではな いですよね。あれは最近の傾向が一見してわかる良い表だと思うのです。 ○真鍋数理企画官 では、これは付け加えさせていただきます。 ○井原氏 そうすると、いま鎌形先生がおっしゃった足元の低下分というのがより見やすいかなと いう気がします。 ○真鍋数理企画官 そうですね。そういう制度改正が断続的にあったと。 ○鎌形氏 矢印が離れて出発していればわかりますが、同じ所から出ているからアレッと思っただ けなのです。 ○西村氏 これも要望ですが、4頁の医療費の分析の最初の所ですが、見通しを蓋然性の高いものと するための話がいろいろと書いてあって、それは全く賛成なのです。しかし、これは率直な話、い ろいろな所でいろいろな話をして、厚労省が陰謀を企てることはないという話をするのですが、直 近のデータが、例えば国民医療費に関しては平成17年度のものがもうすぐ発表になるのですね。と ころが、もう1つメディアスのものもあります。その2つの対応性です。特に、難しいのはわかり ますが、国民医療費の推計にあたっては例えば生活保護とか、そういう辺りのものを考慮して、プ ラスして最終的な国民医療費にされるわけですね。 ○真鍋数理企画官 メディアスにも公費負担医療は入っています。 ○西村氏 だけど、あのメディアスの数字は最終的に報告されるものと乖離が相当ありますよ。 ○真鍋数理企画官 メディアスというのは実績ですので。 ○西村氏 実績で出しても、最終的に国民医療費推計になったときの値と違いますよ。 ○真鍋数理企画官 2%ぐらいは違います。それは範囲が違うので。生活保護などは入っているので すが、入っていないものもあります。例えば、国民医療費の中には全額自費とか労災とかが入って います。 ○西村氏 その部分ですね。とにかく、少し乖離があるのです。私が何を言いたいかというと、速 報性。つまり、メディアスのデータで結構ですから、それを少し加工して国民医療費相当のものを 出していただけないかと。それは大変ですかね。本当にわずかですから。 ○真鍋数理企画官 機械的に2%乗せるとかやれば簡単にできますけれども。 ○西村氏 とにかく、私が言いたいのは速報性を高めていただくことができないか。見通しの蓋然 性と、もう1つ言うと、メディアスから医療費の計算をするのはすごくやりにくいですよ。 ○真鍋数理企画官 総額でいいますと、メディアスを見ていただければ、あるいは診療種別とか、 傾向も大体わかりますのでそれで足りるのですが、財源とか、そういう話になると国民医療費ベー スでないということはあります。 ○西村氏 大変だったらいいですけれども、とにかく、精神論として速報性を高めるというのは駄 目ですか。 ○真鍋数理企画官 それはこの分析の所にということですか。 ○西村氏 そうですね。 ○真鍋数理企画官 これは、要するに分析をきちんとしろということを書いてあるのですが、そこ の話ですか。 ○西村氏 はい、そこで結構です。 ○飯野座長 それでは、私から少し言わせていただきます。従来からこの医療費の将来見通しで名 目額が非常に違っているということはよく指摘されるのですが、対NI比あるいはGDP比で見るとそ んなに違ってないのだという反論をしたくなるというのはよくわかるのですが、そうすると何が間 違っていたのかということが問題となります。名目値だけを別に計算したから間違ったのか。いち ばん意地悪く考えれば、GDPが予測より違ったから、結果的にその割合が一緒になったという言い方 もできないわけではないのでありまして、そこのところを弁解したい気持はわかるのですが、それ をあまり全面に出すと、GDPの予測が間違っていたのですよということを言わないといけなくなるか もしれません。 ○権丈氏 それです。基本はGDPの伸びの予測を、社会全体でインプリシットな形で間違えていた からそうなったのであって、GDPと医療費の伸びがリンクしているからそうなるわけです。だから、 141兆円になったからといって、GDPをそんなに高く見越していいのかではなくて、そのときは最初 の原因はGDPの伸びにあり、そこに医療費の伸びが乗る形になる。だから、昔から言っているのが、 医療費の名目値を予測するためにはGDPの伸びと政策スタンスというその2つを正確に予測しない とできないと言っているのがそのことなのですね。 ○飯野座長 それもまた極端な言い方をすると、だったら医療費の見通しなんかやめてGDPの正し い見通しを出せば大体わかるという話になる。 ○権丈氏 費用負担の割合とか税率とか、いろいろなことを考えるときには相対規模が必要になっ てくるのでその辺りをやりましょうというのが、この検討会のいちばん最初の問題意識になるので はないかと思うのです。だから、GDPの伸びを与件として考えていくことになるわけですが、そこか ら先の費用負担とか、将来的な政策スタンスをどうとらえていくかということを考えていくために は、医療費の見通しというものを独立にここの省、厚労省の中でやっていかなければいけないので はないか、という話はここに書いてあると思うのです。 ○飯野座長 中医協の仕事は、以前は新薬の保険採用とか新しい技術の保険採用というようなこと もやっていたのですが、最近は診療報酬の部分だけしかやらないというふうに変わったと伺ってい ます。そこで医療技術の進歩のお話なのですが、従来は医療技術が進歩してもそれを保険に採用し ないと普及しなかったのですね。新薬もそうだったのです。ところが、世間の人たちは、アメリカ で認められた薬は自動的に認めろとか、いろいろなことを言って、新薬とか新しい技術の保険採用 が増えてまいりました。そうすると、医療技術の進歩というのは、本当に効くか効かないかは別に して、医療費が上がっていくというのはやむを得ないことだと思うのです。  中医協で一生懸命医療費の節約のためにやっていたのは何かというと、保険に採用した新しい薬 が予想よりたくさん売れると薬価を下げていくという、経済の理論から言うと合わないことをやっ ておりました。先ほどから出ていた技術進歩のお話を、民間のそういうものと比べて議論するのは 少し難しいのは、実は、診療報酬も薬価も中医協が決めてしまっているということで、必ずしも需 要と供給で決まるわけではないということなのです。ですから民間経済のことをイメージして比較 して言われると困りますので、そこはまた考慮していただきたいと思います。  あと、外国の医療費見通しを見ていると医療の供給側の話が必ずあるのですが、日本の場合は需 要側ですべて決まってしまう。つまり、需要があれば必ずお医者さんが診てしまうという仕組みに なっているので供給側があまり問題になりませんが、お医者さんの数というのは将来の医療費にあ る程度の影響を与えるのではないかという意味では、少し入れてやってもいいのかなと思います。 どうでしょうか。 ○石原調査課長 座長から言われた医師の数の話、医療供給体制と医療費の関係というのは1つの 論点だと思っているのですが、過去は医師が増えたりベッドが増えたりして、医療費も増えている という連動性が確かにあったのですが、最近の傾向でいちばん注目しているのは患者数が増えない。 患者数が増えないというのは、入院患者はベッドを規制しているから増えないのは当たり前なので すが、最近は外来患者も増えていないのです。  制度改正、例えば被用者本人3割負担とかで減ったりするのは当然だとしても、それ以外の自然 体の年でもあまり増えない。減っている年も多い。要は、最近高齢化しているにもかかわらず患者 が減っている、医師の数が増えているのに減っているという形に変わっていまして、どちらかとい うと、医療供給が増えるということで患者が増える、要するに医師が増えることで患者さんをより 多く診ることができるという面が若干弱まっている。その辺は最近は少し変わってきていて、言わ れたように、そこは需要のほうが影響が強くなっているような気がするのです。 ○井原氏 課長がおっしゃったとおりで、以前、真鍋企画官から小児の入院のことでお話を聞いた ことがあるのですが、小児科は入院するお子さんがものすごく減っているのです。例えば、昔は喘 息のお子さんが発作を起こすと、とりあえず入院して点滴をしてというけれども、いまは外来での 管理とか、外来でやってスッと効果があれば、いいお薬ができていますとか、患者さんはそんなに 頻回に受診しなくても管理がすごく良くなっています。そういう点も、医師の数やベッドが増えて もそれに応じて患者さんが増えていないというのは、外来で非常にコントロールしやすくなった。 悪性腫瘍の化学療法でも、以前ならば入院しなければ絶対にできなかったようなものが、外来で無 菌室を用意して、そこで点滴をして患者さんはサッと帰っていく。その辺の提供側の進歩がかなり 進んできているのです。 ○西村氏 それだけ生産性が向上している。 ○井原氏 はい。いま課長が言われた、そのわりに伸びていないということには、そういう医療現 場の実態もあろうかと思います。 ○西村氏 飯野座長のお話は、いまのお話を含めて全く意見は一緒ですが、ここに書くかどうかに 関しては少し微妙で、看護体制は患者当りの看護サービスが増えて、それはコストを上げる。おそ らく、異論があるかもしれないけれども、場合によっては質が上がるという話で、わりと単純です よね。ですから、医師に関しては非常にデリケートな議論があって、私たち外部の人間から見ると、 別に、医師がやらなくてもいい仕事を随分たくさんやっているから今は医師不足で大変なのだとい う議論もあります。それで、ほかといろいろ代替するなどして、医療費を押し上げる要素と下げる 要素と両方あると思うのです。それをここに書いてしまうと非常に議論を呼ぶことになってしまう。 飯野座長 おっしゃるとおりです。ただ、外国の医療費見通しにはよく書いてあるということだけ のことを申し上げただけです。 ○西村氏 気持としては全く一緒です。 ○権丈氏 経済規模で議論しましょうというところの第1回目の原点に戻るわけなのですが、先ほ ど、将来の名目額を予測するためにはGDPの伸びと政策スタンスの2つを正確に予測しなければい けないという話をしました。ただ、経済規模で論じましょうというのは、GDPの伸びに関する与件と しての条件は議論の中から外しましょうという意味を持つのです。だから、将来は141兆円になる とか60兆円になるという議論で新聞などでは将来は大変なことになるという、そういう報道をどう にかしてなくしましょうという意味も確かにあるけれども、議論としてGDPの伸びに対する予測の ミスを捨象した議論をしましょうという意味を持つので、私は経済規模で論じるのは結構いいので はないかと思っています。そうすると議論すべき残りの部分は、政策スタンスというGDPに占める 割合の話になりますよね。この政策スタンスは何に依存するかというのは、第1回目でも言ってい るように、医療費を増やしたほうがいいとか医師数を増やしたほうがいいという、わたくしのよう な人間をいかに社会的に抹殺するかということに依存してくる話になってくるのです。その政策ス タンスに焦点を合わせて議論したほうが生産的なのではないかというのがあるので、第1回目から 経済規模で論じましょうという話をしております。経済成長の予測のミスみたいなところの議論を 捨象して話をしたほうが生産的になるのではないかということがあるので、ご考慮いただければと 思います。 ○西村氏 こういう30兆円から始まる報告書が多すぎるという。 ○権丈氏 社会保障すべてに関してそうなのですが、2025年度に141兆円になるという。去年、た またま、2025年の社会保障が141兆円になるというふうに推計されているわけですが、これはいま の1.6倍とか1.5倍になるというようなところから始まるのですよね。それは大変だというところ から全部が始まっているんですけど、もうそういう議論はやめようよと言いたい。将来の名目医療 費をみて、さあ大変だ、だからいまの水準を抑制しよう、引き下げようという議論になっていくの です。だから、そういう議論はもうやめましょうというのを込めて経済規模で議論をするというの があるのですが、もっと技術的に言うと、GDPの伸びなどのミスを捨象した議論をしましょうという ことも意味がありますので、よろしくお願いします。 ○井原氏 私は、いまご指摘の点も含めて、この報告書は大変良くできていると思っています。今 日傍聴に来ていらっしゃる皆さんにしても、国民の皆さんにしても、可能な限り正確な情報を知り たいのだと思うのです。そのためには、権丈先生、西村先生、飯野座長がおっしゃったように、経 済との関連性は非常に大切なことなのだということがきちんとわかるように書かれている。それか ら、どうなるとか、こうなるとか、数字だけが独り歩きするのが過去の実態だったと思うのですが、 そこに、わかりやすい丁寧な説明をして、それでも見出しにはそうされてしまうことがあるかもし れない。でも、今日来ていらっしゃる皆さんは、そこのところは数字だけを取り上げて議論するの ではなくて、それにはどういう条件が付くかというわかりやすい丁寧な説明がいちばん大切だと理 解したと思います。そういう意味では、場合によっては明確な条件を付けて推計に幅を持たせるこ とも考えていただければと思いますが、こうだという断定的な書き方はしにくくなるという点で、 科学の話にはこうした予測値に一定の誤差は織り込み済みであるはずなので、数字を出す際に何% の確率、何%の誤差がある、標準偏差はどのぐらいだという数字は付加して、いくらからいくらの 間と言ってしまうと幅が広すぎてしまうかもしれませんが、どのぐらいの正確性があるかというこ とを併記することも大事だと思います。  それから、先ほどは否定的に言ってしまったのですが、鎌形先生がおっしゃったように、本来、 自然増の解析というのは、困難だから自然増だと言うのだというのはよくわかりますが、それが必 然的に増えている部分と必ずしもそうではない部分が、今まで紙ベースでやったらなかなかわから なかったことが、ITを使えばわかるというおこがましいことではなくて、少しでもそういうことに 近づく努力をする。私たちも、今、別の所からの研究費などもありまして、いろいろなデータの解 析がこれから始まりますので、そういうデータも少しでも参考にしていただければいいと思います し、そういう新たな手法を加えてさらに進化した正確な予測を行っていただける能力が皆さんには ありますので、私はものすごく期待しておりますので、石原課長以下に頑張っていただいてそうい う正確な予想をしていただけたらいいと思います。  私は、こういう会を持っていただいて、今、情報というのは次々に新しいことが出てきますし、 この会議が今回で終了したとしても、いつでも皆さんと連絡を取り合って、曖昧なところがあれば 積極的にご意見を聞きながら、より正確なもの、より確かなものを出していただけたら本当にうれ しいと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。  それから、飯野座長は、私たちの言いたいことを全部言わせていただいて、名座長で本当にあり がとうございました。最後に飯野座長のご高説をお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。 ○飯野座長 いやいや、私は本当におしゃべりなので。ほかにはよろしいでしょうか。 ○真鍋数理企画官 最後に確認ですが、権丈先生からは30兆円だけではなくてNI比、GDP比という お話があって、西村先生からはどっちでもいいのではないかということなのですが。 ○権丈氏 国民医療費は国民所得比として何割、GDP比と何割、括弧をして何年現在では30兆円と か、そういうふうに書いてもらうのが希望なのです。だから、何年現在で30兆円であって、これが 10年経ったら30兆円はものすごく小さい額になっているかもしれないし、ここの中で、名目値では なくて相対規模で論じましょうと言っているのに、いきなり出だしで30兆円と言うのも何だよなと いうことで初めに言ったのです。 ○真鍋数理企画官 ご趣旨はよくわかります。 ○権丈氏 西村先生はそこまで気をつかうのはあれだということなので、これはお任せします。 ○真鍋数理企画官 わかりました。 ○井原氏 いまの権丈先生のご意見に反対ではないのです。むしろ逆で、この書き出しで30兆円の 所に括弧書で、そちらで加えるという皆さんのご意向があるならば、GDP比ではこれはこのぐらいに 相当しているというふうにしたほうがいいと。いままで皆さんには馴染みがないですから、いきな りそっちが出てくると何だろうということになりますから、これはこれとして括弧書でそういうも のを入れたらいかがでしょうか。 ○飯野座長 それを入れると、先ほど西村先生が言われたように、NI比とGDP比を両方入れないと。 ○権丈氏 いや、両方と言ったのです。ここ数年、両方出していますよね。 ○真鍋数理企画官 5頁を見ていただくと、これは経済財政諮問会議に出した資料なのですが、この ときに併記して記述しているということです。GDP比もNI比も。これは給付費なのですが。 ○井原氏 これを括弧書で明記するぐらいでいかがでしょうかね。 ○真鍋数理企画官 30兆円というのも、これは要するに上回る規模ということで雑駁に書いてある ので、その辺も含めて。 ○西村氏 いや、紋切型にほとんどのこういう報告書がこの文章から始まるのですね。冷静に読ん だら、別に、いかんとは書いてないのですが、何か、ここから始まると増えるのが良くないという ふうに皆が思ってしまうような状況を権丈先生は批判されているという感じがするのです。例えば、 「我が国の国民医療費は人口の高齢化や医療の高度化に伴い」という箇所を全部取ったら、別に、 30兆円と一生懸命に言う必要はない。 ○権丈氏 それも一案ですね。 ○西村氏 それから、人口の高齢化や医療の高度化に伴い今後とも増大するという、それはほぼ間 違いないと思うのです。むしろ、そういう言い方をしたら中立的で、増えてもいいしというニュア ンスを込められる。そして、国民経済に与える影響も、これも間違いなく大きくなっていますから、 それは誰も否定できない。 ○真鍋数理企画官 「我が国の国民医療費」から「となっており」までを削るということですね。 ○権丈氏 私はその方針で支持いたします。 ○西村氏 すみません、これは私も一案を提案しただけです。 ○井原氏 私はこのままで、括弧書ぐらいがいいと思います。 ○鎌形氏 私もそう思います。 ○井原氏 30兆円という金額は、我々みたいにこういう仕事をしている人たちにとってはわりと馴 染みのある数字なのですが、一般の方たちから見れば30兆円というのは何なのだと。普通の国の国 家予算よりはるかに多い金額ですし、GDP比、NI比というのも難しい言葉でしょうから、少しでも そういうことを入れておいてあげるのは説明上は丁寧ですね。 ○鎌形氏 将来の141兆円ではないのだから、現実30兆円なのですから。 ○井原氏 そうですね。だから、私はそのほうが丁寧さが加わるかなということで、括弧書ぐらい ならばどうかなと思います。 ○飯野座長 これを除いたとしても「人口の高齢化や医療の高度化に伴い今後とも増大すると見込 まれる」と書いてありますから、この文章だけでも医療費を抑えようという考え方になりますので、 ここがあろうがなかろうがあまり大きい影響を持つとは思えませんが、確かに、GDP比を入れてもい いのかなとは思います。 ○西村氏 座長一任でよろしくお願いします。 ○権丈氏 私も1つ提案します。「医療費は国民経済に与える影響も大きくなっている」ということ でいいのではないかという気がしないでもないです。最後はお任せいたします。 ○飯野座長 それでは、ただいまの皆さんの意見を踏まえまして、事務局のほうで文章を直してい ただきまして、皆様に再度確認していただくということでよろしいでしょうか。 (了承) ○飯野座長 ありがとうございます。それでは、せっかくですので、次に都道府県別医療費の動向 について事務局から説明をお願いいたします。 ○真鍋数理企画官 資料2ですが、せっかくの機会ですので都道府県別医療費について説明させて いただければと思います。都道府県別医療費につきましては、平成20年度から医療費適正化計画が 始まりまして、その中で各県が計画期間中の医療費の見通しなどを立てていただくということもあ りまして、今後さらにいろいろ分析していかなければいけないと思っているところですが、今回は 実績についてご報告いたします。  ここで言う都道府県別という意味ですが、これは医療機関の所在地で分けています。ですから、 東京都で言うならば、東京都に所在している医療機関分の医療費という意味でありまして、東京都 民の医療費という意味ではありません。実は、医療費適正化計画のほうでは、住民ベースといいま すか、東京都民の医療費みたいな見通しになろうかと思いますので、そこは変換がいるのですが、 今は実績で把握できるのは医療機関の所在地別しかないのです。都民の医療費はわからないわけで ありまして、そこは変換していく必要があるということです。  1頁が全体の医療費ですが、平成18年が12月までということですので、平成17年度を見ていた だくと全体では32兆円ということです。この資料で共通しているのが、いちばん高い所をピンクで 色塗りしておりまして、いちばん低い所が黄色にしてあります。もちろん、都民の医療費というこ とではありませんが、基本的には大体そこでかかっているということがベースになりますので、東 京は人口が1割弱、9.8%ぐらいなのですが、ここで言う東京のシェアがちょうど1割で、そういう 意味で人口が多い所はどうしても多くなるので東京がいちばん多くて、いちばん人口が少ない鳥取 が一番少なくて、シェアでは0.5%ぐらいということです。  それで、資料は奇数頁が実数、偶数頁が伸び率という構成です。2頁が伸び率ですが、そういう意 味において医療費自体は人口増減の影響を受けますので、例えば沖縄は人口が増えていますので増 えていますが、東北などは人口が減っていますので、伸び率で見るとそういう色分けになっている ということです。  3頁が受診延日数です。受診延日数というのは、延患者数と思っていただければいいのですが、東 京が1割ぐらいで、これもその人口の規模が反映されます。また、埼玉から東京の医療機関にかか るということもありますので人口よりやや多いですが、そういう影響もありまして東京がいちばん 多くて鳥取がいちばん少ないということです。その受診延日数も、伸び率で見ると人口増減の伸び 率、高齢化の進展具合、受診行動なども受診延日数に影響を与えます。それから、医療機関数とい いますか、提供数の増減みたいなこととか、そういうものがあいまって4頁の伸び率になっており ます。岩手県の減り具合がかなり大きくて、沖縄は人口が増えていることもあって増えているとい うことです。  5頁が単価、1日当り医療費です。医療費を受診延日数と1日当り医療費ということで単価と数に 分けているわけです。5頁がその単価ということで、全体の合計ですから、入院も入院外も含めたも のということですが、北海道がいちばん高くて佐賀がいちばん低いという結果です。これは分けて 見ていったほうがいいと思います。7頁からが入院のデータです。入院についても、シェアは9%弱 ということですが、東京がいちばん多くて鳥取がいちばん少ないというのは、医療費ベースで見て も受診延日数で見ても同じです。  11頁が入院の単価ですが、入院の単価で見ると、いちばん高いのが東京になります。これは、東 京は急性期病院、特に大学病院が多いですから、どうしても単価が高くなるということです。いち ばん低いのが佐賀県で、2万円ちょっとということです。全体に、九州の単価が低めで、九州は療養 病床や精神病院が多いですから、どうしても単価的には低くなっている面があります。  13頁からが入院外+調剤です。これは入院外のレセプトと調剤レセプト分を足したものです。と いうのは、院外処方の進展具合が県によってすごく違っていまして、いちばん高い所は7割を超え ているような状況ですが、低い所は2割もいっていないので、足したもので見ているということで す。入院外+調剤ですが、これも医療費を見ると東京が多くて鳥取がいちばん少ないです。医療費 と受診延日数はピンクと黄色の関係だけを見ると人口だけで規定されるように受け取れますが、実 際には受診延日数は受診頻度の多い少ないという県の特徴みたいなものが反映されます。  単価でも、頻度が高ければ単価がやや低めになるとか、頻度が少ないと単価が高くなるという関 係はどうしてもありますので、17頁を見ていただくと、これは入院外+調剤の単価ですが、いちば ん高いのが北海道で、いちばん低いのが佐賀県です。北海道は、アクセスが悪いといいますか、広 いということもありまして受診頻度が少なめで、そういうこともあって単価が高いのではないか。 もちろん、別の要因でも高いという要素はあると思いますが、そういう傾向があります。沖縄も、 北海道ほど高くないのですが、アクセスが悪いので受診頻度が少なくて単価が高めである。ここで 言う受診頻度というのは、必ずしもこれに対応する人口がないので正確には出てこないのですが、 受診延日数と人口の関係などで見ていってということでご説明しております。佐賀県が単価がいち ばん低いということです。佐賀県の場合は受診頻度が少し高いこともあって単価が低い面があるの ではないかと考えられます。  19頁からが歯科です。歯科についても、医療費と受診延日数については東京がいちばん多くて鳥 取がいちばん少ないということですが、23頁の単価を見ていただくと、歯科についてはいちばん単 価が高いのが北海道ですが、いちばん低いのが群馬県ということです。群馬県は特に受診頻度が高 いわけでもないと思うのですが、経年的に低くなっているということです。さらに、これはなぜそ うなっているのかということを分析できていければいいのですが、徐々にという形でありまして、 そういったところでございます。 ○飯野座長 この説明について何かご質問、ご意見がありますか。 ○石原調査課長 4頁を見ていただきたいのですが、受診延日数、これは患者数ですが、先ほど申し 上げましたように14年度、15年度などは制度改正があってマイナスで、16年度は0.1で少しプラ スになりましたが、17年度トータルで0.3のマイナス。つまり、自然体ベースで17年、18年とマ イナス型が続いている状況が見ていただけると思います。県別に見ていただくと、沖縄が高い伸び で、これは人口なども増えているので高い伸びになっていまして、岩手が低いのは東北地方は人口 が減っているということで、人口要因がかなり影響しているのではないかという感じで見ています。  それに対して6頁を見ていただくと、これは1日当りなのですが、今回の検討会のテーマの自然 増について県別に見ていただくと、制度改正の影響がないという意味では17年度を見ていただきた いのですが、トータルで3.4%です。県別に見ていただいても、大きい所で4.4がありますが、どの 県でも大体3に近い数字で、低い所は2.7です。変動係数で見ていただいても0.37%ぐらいしかな いということで、県別に見てもそれほど自然増に違いがあるというわけではないかなと。そういう 意味では、今後、県別に医療費の推計等を出していく形になると思うのですが、ある程度評価でき るものがつくれる可能性があるのではないか。それから、自然増というのは、地域の特色というよ りは医療の本質的な部分、医療技術進歩がある程度進歩していくということで、そういう傾向が全 国的に見てとれるのだろうと思っております。 ○飯野座長 ほかにはよろしいですか。それでは、議論が尽きましたので本日はここまでにしたい と思います。今後の検討会のあり方につきまして、事務局から何かありますか。 ○石原調査課長 今回は議論の整理をしていただきましたので、今回で一区切りをつけさせていた だきまして本検討会は当面休憩とさせていただきたいと思います。必要に応じてまたご参集をお願 いしたいという形で考えております。先生方におかれましては、お忙しい中、当検討会にご参集く ださいまして本当にありがとうございました。 ○飯野座長 それでは、当検討会は今回で一区切りということにしたいと思います。どうもご協力 ありがとうございました。                                     (了)                     [照会先]厚生労働省保険局調査課                         電話(代表)03(5253)1111                           鎌田、高田(内線3295)