07/06/26 企業年金研究会第9回議事録 第9回 企業年金研究会議事録(案) 日時 平成19年6月26日(火) 10:00〜12:00 場所 全国都市会館第2会議室(3階) ○森戸座長 定刻になりましたので、ただいまより第9回「企業年金研究会」を開催い たします。前回から、本研究会の委員に就任していただいております、王子製紙株式会 社人事本部労政部長の岩本泰志委員をご紹介いたします。まず、事務局から資料の確認 をお願いいたします。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 本日は資料が3種類あります。資料1は「企業年金 制度の施行状況の検証結果骨子(案)」です。資料2は参考資料です。A4判の横長の「骨 太2007」を参考資料として配付しております。なお、委員、オブザーバー限りというこ とで「企業年金制度の施行状況の検証結果(案)」も併せて配付しております。 ○森戸座長 平成19年6月19日に「経済財政改革の基本方針2007」が閣議決定され、 前回の研究会で事務局より説明のあった成長力加速プログラムの内容が反映されており ますので参考資料として配付してもらっております。  本研究会は、企業年金の抱える論点について一通り議論を行い、前回の研究会におい て検証結果の整理に入ることといたしました。その検証結果の整理のたたき台の作成に ついて事務局にお願いしていたところですので、まず事務局から説明をお願いしたいと 思います。整理案については、いまお話がありましたように委員、オブザーバー限りの 配付とさせていただき、研究会終了後事務局に回収していただくことにいたしますので、 よろしくお願いいたします。なお、公開資料としては資料1の骨子(案)を配付してお ります。それでは、説明をお願いいたします。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 委員の皆様方は検証結果案、その他の方々は骨子案 をご覧ください。1枚めくりますと目次があります。これは、公開資料の骨子案と同じ ものです。全体の構成として、まず「はじめに」ということで今回の研究会の発足の経 緯等について記述いたしました。2番目は「企業年金の性格」ということで、制定の経 緯、法律上の位置付け、近年の企業年金の動向、今回の研究会でプレゼンテーションし ていただきました諸外国の動向、それらを踏まえた今後の企業年金制度の方向です。3 番目は「企業年金に対する税制」ということで、これは第4回に性格論を議論していた だいた中身として現行の仕組み、特別法人税のあり方、今後の企業年金に対する税制の あり方です。以上が共通の課題です。  4番、5番は個別制度の課題です。4番は「確定拠出年金の課題」、5番は「確定給付 企業年金の課題」です。6番は共通の論点として「審査の効率化・標準化等」です。  7番は第8回で議論していただきました企業年金のリスク管理です。1枚めくりまし て、その中で責任分担、関係者の行為準則のあり方、それらを踏まえた今後の企業年金 における権限・責任分担のあり方、受給権の保護、積立金の運用のあり方。最後に「お わりに」ということで、研究会の今後の役割等です。  4頁の「はじめに」については背景等ですので省略させていただきます。かつては厚 生年金基金が中心であったわけですが、社会経済情勢の変化、あるいは企業会計基準の 見直し等の制度の変化等で企業年金が変化してきているということです。下から2つ目 のパラグラフで、本研究会はこうした状況を踏まえ、確定拠出年金、確定給付企業年金 を中心に企業年金制度の施行状況の検証を行うことを目的として、厚生労働省年金局長 の下に設置されたということです。  6頁で、企業年金制度の制定の経緯です。これは第4回のときに資料でお出ししたも のの整理です。退職一時金との関係ということで、厚生年金基金制度や、適格退職年金 制度が制定された経緯や、あるいは確定給付企業年金、確定拠出年金も含めて退職一時 金を原資として、それと密接な関係がある。実態としては退職一時金と非常に密接な関 係があるという趣旨です。  (2)は公的年金との関係です。かつては厚生年金基金が企業年金中心、しかも創設当時 は厚生年金保険と同一の給付設計で、選択一時金がない代行型が中心ということで、従 来は公的年金の代替・補完としての性格が企業年金としては非常に強いものであったと いうことです。その後、企業における雇用慣行の変化・多様化等に伴い、企業年金に対 するニーズも変化してきたということで、厚生年金基金について見ても、上乗せ部分が 企業独自の給付設計である加算型が中心になってまいりましたし、公的年金の代行部分 がない企業年金である確定拠出年金、確定給付企業年金が創設されるなど、企業年金は 企業における退職給付制度の一方策であることを踏まえた柔軟な制度設計へと変化して きたという歴史的経緯があります。  (2)は法律上の位置付けということで、主に目的規定なり、制度設計を見ますと、 厚生年金基金制度については、厚生年金保険の一部を代行しておりますので、公的年金 の代替としての性格を有していることは明確であるということです。  また、厚生年金基金制度の給付水準については、沿革的には国家公務員共済組合の長 期給付の水準を沿革としておりますが、公的年金の給付と合わせて、退職前の所得の6 割を確保することを目的とする望ましい水準が努力目標として設定されておりますし、 給付内容についても、公的年金の一定割合以上の厚みがある給付、また加算部分の一定 割合以上が終身年金であることが求められていて、厚生年金基金については最終給与か ら公的年金額を控除して給付額を算定する、いわゆる諸外国のインテグレーション制度 ではありませんけれども、公的年金を補完するという性格が強いものとなっているとい うことです。  一方で新しくできました確定拠出年金、確定給付企業年金については、公的年金の代 行部分を有しない企業年金制度で、公的年金の代替としての性格はないということです。  他方、それぞれの法律の目的規定においては、国民の高齢期における所得の確保に係 る自主的な努力の支援をもって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向 上に寄与するとされております。公的年金と一定の関係を有することは明確であろうと いうことです。ただし、給付に係る規制は厚生年金基金ほど終身年金原則といったもの はありませんし、厚生年金基金より緩やかなものとなっておりまして、厚生年金基金ほ ど公的年金を補完するという性格が強いとは言えないということです。  (3)は、近年の企業年金の動向です。これは第1回にお出しいたしました近年の企 業年金の制度改正の歴史の主だったものを抜き出したものです。非継続基準の導入、免 除保険料率の凍結。それから、企業年金でも非常にインパクトを与えた退職給付会計の 導入。これは、企業年金を含めた退職給付制度がバランスシートに負債として計上され るということで、母体企業の財務に大きな影響を与えることとなったということが、後 の代行返上、あるいは確定拠出年金制度の導入といった契機になってきたということで す。  (4)は確定拠出年金、確定給付企業年金制度の導入です。退職給付企業会計の導入、あ るいはアメリカにおける401(K)プランの導入が株式市場の活性化に大きな影響があっ たということを踏まえた、貯蓄から投資への動きと、それへの期待ということを背景と して確定拠出年金制度が創設されたということです。  また、確定給付企業年金制度についても、退職給付会計の導入、あるいはバブル崩壊 後の株価の低迷など運用環境の悪化といったことを背景として、代行部分における企業 負担が非常に重いということで、経済界から代行部分のない新たな確定給付企業年金制 度への期待が高まったということで導入されたという契機があります。  また、この確定給付企業年金制度の導入の際に、併せて受給権の保護ということで、 いわゆる受託者責任に関する規定も確定給付企業年金制度の中で盛り込まれ、併せて厚 生年金基金についても同様の措置がとられたということがあります。  (5)は企業年金の現状ということです。確定拠出年金、確定給付企業年金制度が導入さ れ、特に確定拠出年金制度については堅実な伸びを示している状況です。確定拠出年金 については、特に中小企業を中心として約4割が新規導入ということでそこが特徴的で す。一方で確定給付企業年金制度については代行返上、あるいは適年からの移行が約8 割ということで、そういった代行返上等の受け皿という性格が実態的には強いものとな っています。  また、平成24年3月末に移行期限を迎える適年については、いわゆる企業年金制度、 あるいは中退協への移行が合わせても4割程度ということで、残りは生命保険商品など への移行又は単純解約となっております。平成18年度末現在で、まだ3万9,000件、 506万人が加入している状況にあります。一方で厚生年金基金については3期連続のマ イナス、あるいは退職給付会計制度の導入などに伴い、代行返上、解散が進み、現在で は647ということでピーク時の3分の1という状況にあります。最近は運用環境の向上 等もあり、代行返上等は落ち着いた状況になっております。  諸外国の動向ということで、プレゼンテーション等をしていただいた中身です。アメ リカ、オランダ、ドイツです。アメリカについては、退職給付企業会計の導入、あるい は積立基準の強化、支払保証の保険料の引上げ等により、確定給付企業年金から確定拠 出年金への移行が進んできている状況があります。また、産業構造の変化との関連にお いても、確定給付企業年金実施企業の縮小ということも、確定拠出年金への移行が進ん だ背景ということです。  今後においても、退職給付会計についてはますます即時認識といいますか、リアルタ イムで債務を認識するという方向になる見直しも見込まれていて、こういうことも確定 給付企業年金の減少傾向に拍車をかけるのではないかという指摘もあります。  一方で受給者の立場ということについて見ますと、アメリカにおいては終身年金原則 ということですし、積立基準の強化も図られていて、個人ベースで見ても過去期間に係 る減額は認められていない、いわゆる「ベスティング」という措置がとられているとい うことです。その一方でいまの話とは裏腹ですが、確定拠出年金については401(K)プラ ンの普及が進んでいるということです。日本でいいますと、個人型に相当するIRAにつ いても、当初は日本と同様職場に年金プランのない従業員を対象としたものでありまし たけれども、その後、企業年金がある方々も幅広く利用可能となるといったこともあり、 いまでは401(K)を上回るような状況で、非常に普及が進んでいるという状況があります。  オランダにおいても、新会計基準の導入などにより、給付設計が最終給与比例型から、 全期間の平均給与比例型へ変更されています。あるいは、保険会社のソルベンシーマー ジン規制に似たようなFTKという基準が導入されるといったことがあります。全般的 には積立基準厳格、積立状況も安定したものとなっているわけですが、こういう環境の 変化も踏まえ、母体企業への影響が軽微なプランに対するニーズが高まり、いわゆるコ レクティブ確定拠出年金の導入も進んでいるという状況があります。  ドイツにおいても、基本的には公的年金で老後を支えるというのが柱であることは変 わりはませんが、過大な保険料負担を課さない、給付水準抑制といったことが背景にあ ります。公的年金、企業年金、個人年金の三層構造で老後を支えるといったことが明確 にされているということです。ドイツでは、いわゆる自社年金相当のものから、外部積 立てのものまで幅広く年金の種類があります。2001年の公的年金の改革で、所得代替率 が下がった部分の代替措置として、中小企業の事業者等に対し、年金を普及させること を目的として、いわゆるリースター年金、元本保証、60歳からの支給、原則終身年金と いった要件を満たす確定拠出型の企業年金に対する公的助成を行うリースター年金が実 施されています。  諸外国の状況は以上のようなことですが、続いて今後の企業年金制度の方向です。企 業年金の近年の動向、諸外国の動向を踏まえた論点ということで、大きく2つの切り口 から論点を掲げております。1つは諸外国、特にアメリカにおいては退職給付会計、あ るいは確定拠出年金の累次の規制緩和等を契機として、確定給付企業年金から確定拠出 年金へのシフトが起きているという状況があるわけです。我が国においては、依然とし て確定給付企業年金の企業年金に占める割合が高い一方、確定拠出年金の伸びも著しい 状況にあります。今後の確定拠出年金型の企業年金と、確定給付企業年金型の企業年金 の役割分担についてどのように考えるか、ということが論点としてあろうかと思います。  また、オランダのコレクティブ確定拠出年金、あるいは確定給付型の企業年金におけ るキャッシュバランスプランなど、従業員か企業かという二者択一ではなくて、リスク を幅広く分散するような形のプランが出てきているわけですが、こういう新たな仕組み についてどのように評価するかといった論点があろうかと思います。  次の、年金の受給権のあり方とも関連しますけれども、確定給付企業年金の中で現状 では中小企業が集まって設立する総合型が中心となってきました。厚生年金基金の位置 付けをどのように考えるか、ということも大きな論点としてはあろうかということです。 1つはこういった論点かと思います。これは、規制緩和の流れの中で、企業年金の自由 化なり個人責任の方向の流れということです。  一方で諸外国を見ましても、さはさりながら長寿命化リスク、長生きリスクに対する ヘッジ機能が高い終身年金が中心です。また、公的年金と企業年金とで現役世代の所得 に対する一定の比率の所得を確保するインテグレーション制度のある国もあります。  そういった中で個人の立場に立ってみますと、長生きリスクを公的、あるいは企業が ヘッジするという軸があるわけです。我が国では、規制緩和の流れの中で、公的年金と の補完関係が強く、終身年金が義務づけられている厚生年金基金から、有期年金が中心 の確定拠出年金及び確定給付企業年金が企業年金の中心となってきていますが、この現 状をどのように評価するかということが1つあろうかと思います。諸外国では、公的年 金、企業年金、個人年金の役割分担が明確にされている国もありますが、我が国におけ るこの役割分担についてどのように考えるかということもあろうかと思います。  仮に目標設定する場合ということになりますが、さらにということで、現在は厚生年 金基金の望ましい水準、あるいは確定拠出年金の拠出限度額の設定の考え方の基本とな っている退職前の所得の6割という水準のあり方についてどのように考えるか、という ことも大きな論点としてあろうかということです。  企業年金の性格を踏まえた論点というのは、同じことを違う切り口でということにな ろうかと思いますが、企業年金の性格・役割に着目した場合には次のような論点がある のではないかということです。  企業年金というのは、もともと給与やボーナスや給与などの処遇と並び、従業員の老 後の所得保障を図り、勤労意欲を高め、よりよい人材を採用する際に効果を発揮すると いうことで、企業にとっては、企業の活性化にも寄与する重要な方策ということです。 このような観点からしますと、企業年金の設計については、企業の従業員の実情に応じ、 各企業の労使合意に委ねられるべきものと言えるのではないかということです。  他方、企業年金については公的年金と相まって、企業の従業員の老後の所得に係る自 助努力を支援するというものでもあります。この観点から積立基準、行為準則などの受 給権の保護のための規制が必要となります。このように純粋な自社年金については、先 ほどの企業の活性化のための方策というのが目的の1つです。法律に基づく制度として 規制・支援を行う企業年金については、給与や賞与の処遇と並んで、よりよい人材を集 めることを通じた企業の活性化のための方策という側面と、公的年金と相まって、企業 の従業員の老後の所得の確保に係る自助努力を支援する方策という側面、この2つの性 格・役割を併せ持っていますが、いずれの性格・役割を重視すべきかというのが論点と してあろうかと思います。先ほどの、諸外国の動向の2つの論点と、これは言い方は変 えておりますが裏腹の関係で、同じことの見方を変えたということだと思います。  今後の企業年金制度の方向ということですが、こういった企業年金の近年の動向、諸 外国の動向、あるいは企業年金の性格・役割を考慮した場合には、大きく分けてという ことで2つの方向が今後の企業年金制度の方向としてあるのではないかということです。 1つは、企業の活性化のための方策を重視したということです。労使合意を基本とした、 企業や従業員の実情及びニーズを踏まえた、できる限り自由な制度を目指すという方向 があろうかと思います。  具体的な制度設計でいいますと、例えば確定給付企業年金制度における選択一時金の 上限額の緩和をするとか、確定拠出年金制度における中途脱退要件を緩和するなど、退 職金として使われているような性格を踏まえた、自由な制度設計という方向が1つあろ うかと思います。  もう一方の方向として、公的年金との関係を重視した、従業員の老後の所得保障をよ り強化した制度ということがあろうかと思います。公的年金の所得代替率の低下を踏ま え、厚生年金基金について、その望ましい上乗せ水準は厚くなっているわけですけれど も、そういうことも踏まえて企業年金全体について給付水準の目標を設定するとか、あ るいは長生きリスクについては、企業がリスクをヘッジするということで終身年金を原 則化する。あるいは年金性を重視するということで、選択一時金を廃止するといった方 向性があるのではないかということです。  今後の方向として、まず労使合意を基本とした自由な制度とする方向で一層の規制緩 和をすることとした場合には、企業及び従業員の実態及びニーズにより即した制度とす ることが可能であるということです。他方で従業員の老後の所得保障機能が低下するお それがあるという論点があります。また、現行の企業年金制度における公的支援、特に 税制上の措置ですが、企業年金が年金として給付されることを前提に、退職一時金制度 とは異なる措置がなされてきており、企業年金に係る支援措置のあり方が課題になろう かと思います。  公的年金との関係を重視し、従業員の老後の所得保障をより強化した制度とする方向 で規制強化をした場合です。企業の従業員の老後の所得保障が確実となる一方で、事実 上企業年金制度を企業の退職給付制度として活用することが難しいという企業が多くな るということで、それ自体が活用されなくなる可能性が出て、結果として企業の退職給 付制度の実施率が低下するおそれがあるという論点があろうかと思います。  企業年金については、その果たす役割が大きくなってきたということに鑑み、これま での公的年金との関係を重視した制度中心から、労使合意を基本とした自由な制度中心 へと変化してきた歴史があるわけです。企業年金の今後の方向として、さらにどのよう な方向を目指すかということについては、現時点では関係者間でコンセンサスがあると いう状況にはないということです。  今後の方向としては、企業年金全体についてさらなる自由化を図り、企業年金のメニ ューとして公的年金との関係において、さらに多様な選択肢を設ける。企業年金全体に ついて、公的年金との関係を重視する方向に転換するといったさまざまな方向が考えら れるわけです。これは、企業年金の本質に関わる問題ですし、後述する税制の抜本的検 討と併せて検討が必要ではないかということです。  3番は、企業年金に対する税制です。基本的な仕組み、厚生年金基金等の税制、確定 拠出年金、確定給付企業年金の税制というところは現行制度を記述したものです。(2) の特別法人税についても、資料等でお出しした考え方を記述したものです。  15頁の(2)は特別法人税の現状です。昭和37年から導入されておりますけれども、平 成11年度からずっと凍結されてきていて、平成19年度末でその期限を迎えるというの が現状です。特別法人税の今後のあり方の中で、撤廃という議論があります。企業年金 の関係者から強い撤廃要望があるということです。他方、平成17年度の税制改正大綱 においては、「年金課税については特別法人税のあり方を含め、拠出・運用・給付を通ず る負担の適正化に向けた抜本的な検討を行う」とされております。  仮に、こういう税制大綱の考え方で特別法人税を撤廃するとすればですけれども、現 行の確定拠出年金に係る税制の考え方、即ち従業員の所得税については、企業の掛金拠 出時に給与所得として課税すべきとの考え方に立ちつつ、課税を給付時まで繰り延べる という考え方から、年金の受給時に所得税を厳格に課すべきという考え方に変えること が考えられるということです。これは、経団連等からの要望としても出ております。具 体的には、特別法人税を撤廃する一方で、公的年金に準じた企業年金以外の、企業年金 に適用されている控除の見直しを図ることにより、拠出・運用・給付を通ずる負担の適 正化を図ることが考えられるわけです。  しかしながらこの場合の論点として、現行の特別法人税では資産を運用する金融機関 が、運用段階で納税する仕組みになっていて、少なくとも確定給付型の企業年金制度に おいては、最終的な負担は企業が負うケースが多いものと考えられます。給付時課税を 徹底する仕組みとする場合には、受給者の手取り額が減少することになりますので、一 義的には受給者の負担となるという問題があるということです。  企業年金については、年金払いと一時金払いを選択できるものが多いわけです。現在 でも、年金払いに適用される公的年金等控除と一時金払いに適用される退職所得控除の 間では一時金払いが有利であるという不均衡があるとの指摘があります。こういう控除 の見直しの方法如何によっては、この不均衡が拡大するおそれがあるということです。  さらにということで、経過措置的なものとして、税制の切り替え時においては、過去 に年金払いを選択した者については課税が強化される一方で、一時金払いを選択した者 については遡って課税強化されないといった問題を生じるおそれがあるのではないかと いうことです。  特別法人の非課税という議論もあります。特別法人税の負担軽減の観点から撤廃のほ かに非課税とする方法もあるということです。具体的には厚生年金基金のように、公的 年金との関係に着目し、そういった公的年金と関連のある、一定の基準を満たした企業 年金については特別法人税を非課税とする方法です。  この観点から、確定拠出年金については、拠出限度額が望ましい水準に依拠して設定 されていることから、厚生年金基金と同様に特別法人税を非課税とするという考え方も 可能性としては取り得るのではないかということです。ただ、現行の厚生年金基金等に おいては、給付基準として、加算部分の半分以上が終身年金であること等の要件を課し ていて、これが非課税の基準にもなっているわけです。仮に確定拠出年金等に非課税基 準を設ける場合には、その具体的基準を明確にする必要があります。この場合、具体的 基準の内容如何によっては特法税が非課税となる企業年金が少数にとどまる一方で、多 数の企業年金が課税となり、企業年金の普及促進に支障を来すおそれがあるのではない かということです。  特別法人税が課税された場合の問題点です。確定拠出年金、確定給付企業年金につい ては制度上特法税は課税となっておりますけれども、制度創設以来特法税は凍結されて いて、現実に課税された実績はないわけです。今後、仮に特法税が課税となった場合に はいくつか問題があるのではないかということです。  確定拠出年金については、個人別管理資産で、個人が管理資産運用をしているわけで すが、いまだ厳しい市場の環境、あるいは現在個人が元本確保型で全体の6割を運用し ている状況に鑑みますと、年金資産の元本割れを来す者が多数となるおそれがあるので はないかという論点があります。また、個人別管理資産が、本人の指図で運用されると いう法律の前提になっておりますので、課税される場合には特別法人税納税のために運 用商品を解約するなどの手続が必要になりますので、制度の運営においても大きな影響 があるのではないかということです。  確定給付企業年金についても、従来の適年とは異なり、受給権保護のためのさまざま な規制が行われていて、企業の負担は適年と比べると重いという状況があるわけですし、 運用関係は必ずしも地に足が着いたというところまでいっておりませんので、特法税の 負担は将来的には企業にとって相当負担になるということもあろうかと思います。適年 の廃止期限が平成24年3月に迫っている中で、特法税の課税ということになると、適 年からの円滑な移行を阻害するおそれもあるのではないかということです。  そういうことも踏まえた、今後の企業年金に対する税制のあり方ということですが、 特法税については企業年金の普及促進の観点のみを考えますと、給付時課税の強化とセ ットではなくて、単純に撤廃されるべきということだろうと思います。しかしながら、 特法税を年金課税全体の問題として捉える場合には、企業年金の今後の方向とも密接に 関連するのではないかということです。  即ち企業年金の今後の方向として、企業年金全体で自由化するという方向を目指す場 合には、非課税の取扱が認められるために様々な規制が求められることとなり、企業年 金を自由に設計する上で阻害要因となる特別法人税は撤廃の方向を目指すべきではない かということです。この場合には、企業年金に適用されている控除の見直しを行うこと となると考えられますけれども、その際には企業年金の加入者及び受給者の理解を得る 必要があるということだろうと思います。あるいは、企業年金に係る年金払いと一時金 払いの税制上の公正性の確保についての検討が必要ということです。  企業年金全体で、公的年金との関係を重視した、企業の従業員の老後の所得保障を強 化する制度を目指す場合、あるいは企業年金において多様な選択肢を目指す場合には、 特法税は存置しつつ、一定の基準を満たした企業年金について非課税の方向を目指すべ きということだろうということです。ただ、その際には非課税に関する具体的基準の策 定に当たり、企業年金の実態を踏まえるなど、非課税措置が実効性のあるものとなるよ う配慮することが必要ではないかということです。  こういう企業年金に対する税制のあり方については、企業年金制度の今後の方向とも 表裏一体ではないかということで、これと併せて検討ということです。特法税について は、こういった整理、あるいは企業年金の整理をした上でのいずれかの措置がとられる までの間、あるいは企業年金を取り巻く諸状況を踏まえて、現在の凍結措置を継続すべ きということです。  以上が共通の課題と税制の議論でした。引き続きまして、個別制度の課題ということ で確定拠出年金についてです。いくつかの項目に分けてですが、加入対象者からです。 まず三号ですが、これも第5回でお出しした資料の中身を基本として整理しているもの です。三号については、公的年金制度における三号被保険者について、導入時点で総合 的な検討が行われているということなどを踏まえ、今後の検討課題とされていたわけで す。その後、平成16年度の改正において、三号被保険者期間について厚生年金の分割 が認められ、その中で被扶養配偶者を有する被保険者が負担した保険料については、夫 婦で共同負担したものであることを基本的認識とする、というような旨の規定が創設さ れております。仮に確定拠出年金の掛金についても、公的年金のこういう考え方と同様 の考え方に立った場合に、従業員の所得から納付される掛金は、配偶者の分も含め、そ の一定の負担により納付されたものとして、配偶者も一定のメリットを享受するという ふうに考えることもできるということではないかということです。  言い換えますと、企業型確定拠出年金の拠出限度額は、厚生年金基金の望ましい水準 を勘案して設定されておりますけれども、その算出根拠は世帯の年金額を前提としてお りますので、そういう意味では現行制度においても、拠出限度額の設定の中において、 三号被保険者の老後の所得保障を考慮されている制度設計が行われているというふうに 考えることもできるのではないかということです。しかしながら、三号被保険者のあり 方については、公的年金制度においても、なお継続的な検討課題とされておりますので、 そういう状況も踏まえながら引き続き検討するべきではないかということです。  公務員については、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金と2つあるわけです。 公務員の企業型確定拠出年金の実施ということになると、まさに公務員の三階の年金の あり方ということになるわけです。公務員の三階年金については、現行の公的年金とし ての職域部分を廃止し、新三階年金を設けることとされておりますが、現在そのあり方 について関係省庁等によって検討が行われているということです。基本的にはそういっ た検討結果を注視する必要があるということです。  公務員の個人型確定拠出年金への加入については、公務員の新三階年金の具体的な制 度のあり方、あるいはその実施状況を勘案する必要があるということです。今後の民間 における個人型確定拠出年金の普及状況等も踏まえる必要があるのではないかというこ とです。  (3)は以上に比べましてやや小ぶりな中身ですが、他の企業年金制度、確定給付企業年 金を実施している企業に雇用される二号被保険者、サラリーマンの扱いです。現在、個 人型については企業年金が全くない、いわば制度の谷間にある方についてのみ加入が認 められているわけです。一方で、確定給付企業年金のみ実施している企業であっても、 企業型確定拠出年金については半額を限度として実施することができるわけですが、こ の企業型確定拠出年金を実施するか否かは各企業の判断に委ねられているということで す。  このため、確定給付企業年金を実施している企業の従業員について見ますと、制度的 には企業型確定拠出年金を併せて上積みで実施している企業の従業員と、企業型確定拠 出年金を実施していない企業の従業員との間では、当然企業型確定拠出年金を実施して いない従業員の老後の所得保障水準は制度的には低いという状況になっています。  個人型確定拠出年金の導入の趣旨が、企業年金がある方とない方との公平さの確保と いうことですので、この考え方を徹底いたしますと、確定給付企業年金を実施している 企業の従業員の間の公平性を確保する観点から、確定給付企業年金実施企業のうち、企 業型確定拠出年金を実施していない企業の従業員については、個人型確定拠出年金への 加入を認めることにより、自助努力による老後の備えを認める方向で検討すべきではな いかということです。  掛金拠出の関係です。拠出限度額についてですが、(イ)の企業型確定拠出年金の拠出 限度額で、他の企業年金制度がない場合の扱いです。現行の企業型確定拠出年金の拠出 限度額は、退職前所得の6割を確保するという望ましい水準を勘案して設定ということ です。現行制度と同様に、退職前所得の6割の確保を目標とするための拠出限度額の設 定を前提といたしますと、その設定の考え方としては妥当ではないかということです。 具体的な水準については、これまでの公的年金の水準の動向等を踏まえて改定されてき ていて、今後ともそういう動向等を踏まえて改定を検討すべきではないかということで す。  なお、その拠出限度額の設定自体は、税制上の措置と密接不可分の関係にあるわけで すが、現行制度は拠出限度額について、厚生年金基金における特法税の非課税水準を勘 案して設定しつつ、一方で特法税は課税扱いとなっているということがあります。仮に 企業年金に対する税制において、給付時課税の徹底により、特法税の撤廃等の抜本的な 見直しが行われた場合には、高所得者優遇にならないよう配慮しつつですけれども、拠 出限度額の撤廃を含めた検討が必要ではないかということです。  21頁で、他の企業年金制度がある場合の限度額です。現行制度において各企業が実施 する他の企業年金における個人ごとの掛金額を明確に区分することが難しい、特に積立 不足分の掛金が含まれているということで、そういう実務上の観点も考慮し、一律に4 万6,000円の半分の2万3,000円となっております。こういう基本的な考え方自体は適 当ではないかということです。また、他の企業年金で企業が拠出する掛金額を控除する ということは、実際に企業ごとに見て控除することが実務的に難しいということを踏ま えれば、現状の取扱いはやむを得ない措置ではないかということです。なお、そのきめ 細かい対応ができるのかどうか、実務上の対応の可能性を含めて引き続き検討が必要で はないかということです。  個人型確定拠出年金の拠出限度額です。現行制度は厚生年金基金の掛金の状況を勘案 して設定ということです。下から2つ目のパラグラフで、加入対象者の考え方を拠出限 度額の設定についても採用するとすれば、確定拠出年金のみを実施している企業に係る 拠出限度額と同水準まで、個人の自助努力による老後の所得保障を認めることが望まし いのではないか。現在、企業型確定拠出年金では4万6,000円までの老後の所得保障が できるわけですが、個人型の場合は1万8,000円ということで低いわけです。そういう ことを考えると、望ましくは同じ額までということです。  しかしながら、現行の拠出限度額の考え方を維持する、つまり現行は企業年金の実際 の掛金水準ということで、厚生年金基金の実際の掛金水準を勘案して1万8,000円と設 定しているわけです。実は、確定拠出年金制度を創設時は、厚生年金基金しか企業年金 は制度的になかったわけですが、現在では確定給付企業年金もありますし、企業型確定 拠出年金もありますので、厚生年金基金は中小企業を中心とした総合型に偏在している という状況を考えますと、個人型の拠出限度額を設定する際には、確定給付企業年金あ るいは企業型確定拠出年金の掛金の実態をも考慮して設定されるべきではないかという ことです。また、その際には企業型確定拠出年金における個人拠出との均衡も考慮すべ きではないかということです。  22頁は、企業型における個人拠出、いわゆるマッチング拠出です。マッチング拠出に ついては、制度導入時においては貯蓄と変わらないということで、今後の検討課題とさ れているところです。しかしながら企業年金制度においては適年、厚生年金基金、確定 給付企業年金のいずれにおいても個人拠出が認められているように、事業主拠出が基本 ではありますけれども、労使合意の下、従業員が希望する場合には、従業員にも掛金の 拠出を認めて、従業員の老後の所特保障をより充実することを可能とする仕組みが一般 的で、企業型確定拠出年金についても他の企業年金同様、従業員の自助努力による老後 の所得保障の充実を認める必要があるのではないかということです。  実態として見ても、いわゆる残枠ですが、若い方を中心に企業の掛金が拠出限度額よ り低い水準となっているので、そういう意味でも個人の拠出による老後の所得の確保を 支援する必要性は高いのではないか。さらに、政府においては「貯蓄から投資へ」とい う政策の方向性が示されているわけですが、それを加速する方策の一環として確定拠出 年金を捉えることもできますが、本人拠出の導入により、本人の投資意欲が高まるとい う効果も期待できるのではないかということです。その際に、一定の要件ということが 貯蓄性の排除等を勘案して必要ではないか。それによって貯蓄性の排除も可能ではない のかということです。  具体的要件として、個人拠出を認める場合の拠出限度額ですが、枠内と枠外と2つ考 え方があろうかと思います。枠内とする場合には、退職時の所得の6割を企業拠出と個 人拠出で賄うという考え方であろう。他方、枠外とする場合には、退職前の所得の6割 を公的年金と企業拠出で賄って、個人拠出はその上乗せ部分を賄うことになろうかと思 います。23頁で、個人拠出も現行制度と同様、退職前所得の6割の確保を目標とするこ とを前提といたしますと、枠内での拠出が適当ではないかということです。  なお、現行の拠出限度額は、枠外で一定の上限を設けて個人拠出を認めるべきという 意見がありましたけれども、この場合には6割を超える所得確保の望ましい水準を6割 ではなくてどこまでを目指すのかということ、あるいはそれを企業拠出で賄うのか、個 人拠出で賄うのか、その役割分担について検討が必要であるということで、今後の検討 課題とすべきではないかということです。  個人拠出自体の限度額ですが、企業型の拠出限度額の範囲内で自由に認めるという考 え方と、労使折半までという考え方と2つあります。自由にした場合には、個人の選択 による拠出限度額まで拠出することが可能ということで、老後の所得保障を高めること にはつながるということにメリットがあるということです。しかしながら、企業型確定 拠出年金も事業主拠出を基本とする企業年金制度の1つであるということ、他の企業年 金制度である厚生年金基金、確定給付企業年金においても本人拠出は事業主拠出までと されていることとの均衡などを考慮しますと、本人拠出額は事業主拠出額の範囲内とす べきではないかということです。税制については、現行の企業型確定拠出年金、あるい は個人型確定拠出年金との均衡を考慮した、同等の所得控除の対象とすべきではないか ということです。  その他ということで投資教育です。23頁の下のほうは現行制度です。24頁からが当 面の課題です。1つはイの継続教育の明確化です。継続教育の実施状況は非常に低く3 割にとどまっているということです。現行の確定拠出年金法においては、投資教育にお いて継続教育を行うことが明確化されておりませんので、事業主の努力義務の中にこれ が含まれているものを明確化する必要があるのではないかということです。  投資教育に係るガイドラインの策定ということでは、アンケート調査を見ても、基本 的な説明のほかに主な金融商品の種類の説明、リスク・リターンなり資産配分の見直し のタイミングと見直しの内容といったものがあり、そういうニーズが少なくはないので はないかということです。こういうことから、継続教育も含め、投資教育を充実した内 容として、加入者のニーズに応じたものが企業から提供されるように、まず投資教育の 実態の把握が必要ではないか。また、必要に応じ、確定拠出年金を現に実施している、 又はこれから実施していく企業が活用できるような、要はそのガイドラインの策定等に ついても検討すべきではないかということです。  いまの話とも関連しますが、投資アドバイスサービス等の振興ということで、1つは 加入者が、自分が選定した運用商品の状況はどうなっているか、他の従業員と比較して 資産配分はどうなっているか、といったような比較情報も得た上で、自分の運用の方針、 見直し等の検討が行われることが可能となるようなことが重要ではないかということで す。現在は、このような取組が浸透しているような状況にはないわけです。そういうサ ービスのモデルの構築をした上で、加入者等が将来の年金給付を充実することが可能と なるようなサービスの振興に努めるべきではないかということです。  アメリカにおいてはこれにとどまらず、具体的な運用商品への投資比率をどの程度に するかという、投資そのものに対する投資アドバイスサービスについても振興が図られ ているわけです。日本においても、投資アドバイスのサービス提供主体と運営管理機関 との関係の整理、運用に係る勧奨行為との関係に留意しつつ、その振興に努めるべきで はないかということです。  運用商品の除外についてつらつら書いてありますけれども、真ん中ほどに「一方」と 書いてありまして、金融市場の動向などにより、運用商品の除外を可能とすることが加 入者にとって利益となる事態が生じることが想定されるとの指摘もあります。また、除 外しませんと、多数の運用方法が加入者に提示され、それが並存することになります。 これが、加入者等に混乱を来すおそれがあるということがあります。一方でそういう状 況もあるわけですが、現在では個別の同意が必要ということで、運用商品の除外が事実 上困難な状況があるわけで、こういうことについては緩和措置を講じるということです。  ただ、その場合には規約において、運用商品を除外するということを明記する。個別 の除外に当たっても労使合意を必要とするといった手続、あるいは十分な説明、周知と いった加入者等の保護のための十分な配慮はすべきではないかということです。  26頁は、あらかじめ定められた運用方法による運用、いわゆるデフォルトファンドと 言っておりますけれども、こういうものについての扱いです。現在においては、加入者 が自分の運用商品を選別するのに時間を要するということで、運用指図が間に合わない 場合もあるということで、こういうことを想定して、規約において運用指図が行われる までの間のファンド、デフォルトファンドを決めている事例が現にあります。  現在、どのような商品をデフォルトファンドにするかについては、基本的には労使合 意の問題であり、明確な法的規制はありません。しかしながら、事業主の責任が問われ るリスクもありますので、元本確保型に限定されているのが実態です。  これに対し、投資信託等の運用方法をデフォルトファンドとしても、事業主が責任を 問われないことを明確にすべきではないかという指摘があります。また、運用に関する 知識・経験が乏しい加入者等を想定し、恒久的な運用方法としてデフォルトファンドを 活用すべきではないかという指摘もあります。  こういうことに関しては、投資教育が基本ではないかという考え方がある一方で、長 い歴史があるアメリカにおいても、近年は加入者が望めば運用指図の作業を専門家に任 せることも認められているということもあります。こういうことを踏まえると、加入者 等のニーズも見極めながら、デフォルトファンドを設定する際の一定のあり方等につい て検討する必要があるのではないかということです。  アメリカにおける個人運用指図のない確定拠出年金制度、オランダのコレクティブ確 定拠出年金のように、あらかじめ定められた運用方法による運用ではなくて、個人が資 産運用を事業主に全面委任する仕組みについては、こういうデフォルトファンドの検討 状況も踏まえた上で今後の検討課題とすべきではないかということです。  次は、中途脱退要件です。真ん中ほどの(ア)の企業型からの中途脱退については、 現在厳しく規制されているわけですが、緩和に対する制度改正に対する要望は強いわけ です。しかしながら、(ア)のいちばん最後のパラグラフで、こういう中途脱退要件の緩 和については、公的年金と相まって老後の所得保障を図るという確定拠出年金の本来の 目的と、確定拠出年金が退職給付制度として活用されているという制度の実態が矛盾と して端的に表面化するということではないかということで、確定拠出年金を含めた企業 年金の今後の方向を整理する中での、大きな整理の中での検討課題ではないかというこ とです。  一方で個人型確定拠出年金からの中途脱退については、現在は三号被保険者など、資 格がない方に限定されておりますけれども、掛金の負担能力が実態的にないような方も いるということがありますので、一定要件の下で中途脱退要件の緩和を図るべきではな いかということです。  関連で、28頁の自動移換者への対応ということです。累積で8万5,000人にも上って おりまして、個人型確定拠出年金の加入者8万人を上回っている状況にあります。これ は、確定拠出年金制度本来の趣旨にそぐわない方で、基本的にはその減少に努めるべき ではないかということです。入口と出口があるわけですが、未然防止という観点から、 事業主、運管、国基連で連携しながら各加入者に対する効果的な周知の具体的な方策に ついて検討すべきではないかということです。  出口ですが、現に存在する自動移換者の減少ということで、国基連からの自動指図の 働きかけを継続的に実施するとともに、掛金を拠出する余裕がない方であって、かつそ の資産額が低額の方については、正規に移換手続を経るなどの要件を課した上で中途脱 退を可能とすべきではないかということです。  また、70歳になった際の年金の受給権が曖昧な状態になっておりますけれども、自動 移換者についても70歳に達した時点で受給権が裁定されるというような法的措置を講 ずるべきではないかということです。  高齢者雇用安定法で65歳までの雇用確保措置が企業に義務付けられております。企 業型確定拠出年金においても、現在は60歳までですが、60歳以上も企業の判断により、 引き続き雇用される方については企業が掛金を拠出することを可能とすべきではないか ということです。  29頁は確定給付企業年金で3点あります。1点は、老齢給付金の支給要件です。これ も、資料で説明した中身が基本です。現在60歳から65歳の年齢支給、50代の退職時 という2点です。65歳までの雇用確保措置がとられたことを考えると、60代での退職 支給というのも制度上明確に位置付けるべきではないかということです。また、65歳以 上の老齢年金の給付の支給、70歳からというのも要望としてありますけれども、この点 については高齢者雇用政策の動向などを踏まえた上での検討ということではないかとい うことです。  選択一時金の上限額ですが、金利の動向によって退職一時金と同額の一時金が貰えな い状況が生じるというような上限の規制についてです。詳細は省略いたしますけれども、 30頁の真ん中ぐらいのパラグラフで、この選択一時金の問題についても突き詰めますと、 企業型確定拠出年金における中途脱退要件の緩和と同様、公的年金と相まって老後の所 得の確保を図るという確定給付企業年金の本来の目的と、確定給付企業年金が退職金制 度として活用されている制度の実態が矛盾として端的に表面化しているということでは ないかということで、これも全体の方向を整理する中での検討課題ではないかというこ とです。  キャッシュバランスプランについては、現在は定率、国債の利回り、CPI、賃金指数 などを用いるということにされているわけです。要望としては、オランダのコレクティ ブ確定拠出年金を参考にし、市場インデックスとか、あるいは運用実績そのものを用い たプランを認めることについての要望があります。この点、確定拠出年金におけるデフ ォルトファンドとも関連するわけですが、我が国におけるニーズの把握や、こういう制 度については確定給付型なのか、確定拠出型なのか、そういうことは国際的にもいまは 整理されていない段階ですので、そういうことも踏まえた上での今後の検討課題ではな いかということです。  31頁は審査の効率化・標準化です。この点についての問題点は、共通認識ということ です。結論ですが、(1)の下から2つ目のパラグラフの「したがって」というところで すが、各地方厚生局における審査の標準化が図られるよう審査マニュアルを作成する。 承認・認可事項は必要最小限に限ることとし、届出事項の拡大を図る。年金数理人の活 用も含めた地方厚生局における審査体制の拡充を図るなどの措置を講ずることにより、 行政の審査により企業年金の円滑な実施が阻害されることのないようにすべきであると いうことです。  なお、厚生年金基金においては代行部分を持っておりますので、公的年金制度の改正 に伴い、代行関係の事務が煩雑化している状況にありますが、行政においてはこうした 状況も勘案して企業年金の円滑な実施が図られるよう努めるべきではないかということ です。  適年については冒頭に申し上げましたが、現段階で約3万9,000が残存している状況 にあります。今後、大量の規約の承認・認可の申請が提出される可能性が高いわけです けれども、引き続き移行期限に関する周知徹底を行い、適年からの移行を促すとともに、 関係団体、受託機関を通じ、いまだ移行していない理由、あるいは阻害要因などの把握・ 分析が必要ではないかということです。  先ほど申し上げました審査の効率化・標準化等の措置を講ずるほか、例えば適年から 確定給付企業年金に移行する際の一括拠出の容認を検討するなど、円滑に移行が図られ るようなことをすべきではないかということです。  32頁は、企業年金のリスク管理の関係です。(1)企業年金の創設、運営における権限・ 責任分担のあり方というのは、第8回に資料でお出ししたとおりです。最後のパラグラ フで、企業年金については関係者が多く存在し、責任の所在が不明瞭な仕組みである。 あるいは企業年金に対して大きな責任を持つ事業主についても、企業年金の創設者・運 営者としての立場と、企業の経営者という立場と2つの側面を有し、利益相反があると の指摘もあります。  行為準則において、規約型においては法人としての事業主ということで、権限・責任 の所在は明確ですが、意思決定が企業の内部で行われているということで、必ずしも透 明性が確保されていないという指摘があります。  33頁は基金型です。代議委員会が組織として決定して、基金がそれを忠実に執行する ということで、法律上は責任の所在・権限は明確ですが、実態としてはその母体企業に おいて労使で決定し、それを追認するといった場合もあり、権限が形骸化しているので はないかという指摘もあります。  資産管理運用機関については、運用指針の作成に資産管理運用機関が関与して、意思 決定の主体が曖昧となっている場合があるのではないか。責任の所在が不明確となって いる場合があるという指摘があります。  それから、関連しますが、基金の管理運用担当理事の要件としましては、現状では基 金の積立金の管理運用業務を適正に執行できる者であって熱意を有する者という要件が ありまして、要件としては必ずしも重い責任に伴うような高い専門性は要求されていな いという状況があります。こういったことを踏まえて理事の要件を強化すべきとの指摘 がある一方で、人件費等の負担能力も勘案すべきだという指摘もあります。  さらに、理事の専門性の確保の観点から、いまの定数の枠外で外部の運用担当理事を 選任できる制度改正に対する要望もありますが、一方で代議員の構成は労使同数とされ ていますので労使自治の原則に抵触するのではないかという指摘もあります。なお、専 門家の雇用という観点から、現行制度におきましても各厚生年金基金等におきまして定 数そのものを増やしまして、労使同数を確保しつつ、事業主代表または加入者代表とし て運用担当の専門理事を選任することは現行制度でも可能であるということです。  こういったさまざまな指摘があるわけですが、今後の企業年金における権限・責任の 分担のあり方については大きく分けて2つありました。実態上問題が生じているわけで はない、あるいはリスクの大半は事業主の負うものであることから、ことさら問題とす べきではなく、規制強化は避けるべきと。他方で、企業年金の責任・権限分担のあり方 については、問題はあるけれども表面化していないだけではないか。あるいは、潜在的 な問題はあるけれども、関係者の努力により問題化していないだけであり、詳細な検討 が必要という指摘もあります。  いずれにしましても、実態が十分に把握できていないという状況もありますので、例 えば具体的にどのようなケースについて利益相反の問題が生じうるのかなど、実態や事 例の把握・研究をまず行うべきではないか。その上で企業年金の運営に係る適正性の確 保とその普及のバランスを考慮して、検討すべきではないかということです。また、確 定拠出年金についても、特に運管の選定等で同様の問題があるのではないかというご指 摘もありました。確かにそのとおりでありまして、確定拠出年金についても実態・事例 の把握・研究を行い、その上で検討対象にすべきではないかということです。  (4)受給権の保護ですが、(2)受給権の付与のあり方ということで、現行の仕組みを つらつらと書いております。結論ですが、35頁の真ん中ほどで、「このような」という 下から4つ目のパラグラフです。このような我が国の受給権の付与の仕組みについては、 労使合意を前提としてさらに柔軟に減額を認めるべきとの指摘がある一方で、企業年金 は賃金の後払いとしての性格を有するとの考え方の下で、少なくとも過去勤務期間につ いては減額すべきではないという指摘もあります。また、加入者の利益で見ましても、 できる限り受給権の保護がなされるのが望ましい一方で、より強化して企業年金の維持 そのものが困難となるおそれがあるという問題もあります。結論といたしましては、受 給権のあり方については企業年金の給付の性格、普及とのバランスにも関係する問題で ありますが、現行の仕組みは我が国の労働法制や慣行にも適合した仕組みとなっており、 当面、現行の仕組みを維持すべきではないかということです。  積立基準のあり方ですが、36頁です。これも諸外国での積立規制の強化等々の状況を 記述しておりますが、我が国におきましては企業年金で給付減額が認められていること との整合性、継続基準、非継続基準に基づく財政検証で、比較的現在は財政状況が安定 しているということを考慮すれば、当面、現行の仕組みを維持すべきではないかという ことです。また、その100%以上の積増しを余裕があるときに認めるということにつき ましては、これにより企業年金の安定性が増すこととなりますが、税制上の公平性の観 点ということも踏まえた検討が必要ではないかということです。  支払保証制度については、これもすでにご議論いただいた点ですが、厚年基金につい ては、現在、共済事業として行っているということです。確定給付企業年金につきまし ては公的年金の代替としての性格を有しておりませんので、確定給付企業年金と厚年基 金は同列に論じることはできないのではないか。また、その支払保証事業については受 給権の付与とセットではありませんが、受給権のあり方も含めての議論が必要ではない かということです。等々いろいろ問題もあります。ということで、結論といたしまして は、その導入必要性、性格、受給権との関連、モラルハザードの回避方策など、整理す べき課題が多々見られるということで、引き続き検討すべきではないかということです。  それから、積立金の運用のあり方ということですが、(2)の今後の運用のあり方という ことで、現在は、体制といたしましては資産の運用について基本ポートフォリオの作成、 専門的知識・経験を有する者の配置は努力義務ですが、運用方法の多様化等を踏まえま して、配置の義務付けを図るべきとの指摘がある一方で、小規模な企業年金に対する事 務負担の増加、専門家を確保できるのかという問題があるという指摘もあることから、 まずは現行の運用実態について十分に把握した上での検討ということではないかという ことです。  また、そのデリバティブ等の活用につきましても、いちばん下ですが、規制緩和の声 がありますが、これもデリバティブによる運用の実態も把握した上で企業年金における 取扱いについては専門的な観点から別途検討ということです。必ずしも実態を踏まえた 検討が十分にできなかったということで、別途検討ということではないかと。38頁です が、以上に加えまして、民間では企業については格付けなどもあるわけですが、例えば 運用受託機関の選任・管理、運用実績の評価などの企業年金の資産運用状況については 現在その評価が十分になされているとは言えない状況にあるわけですが、今後、企業年 金の資産運用の評価のあり方についても検討が必要ではないかということです。  最後のパラグラフですが、「おわりに」ということで、こういったご指摘ですが、一部、 今回の一元化法案で措置がとられているものもありますが、残された課題も多いという ことです。行政あるいは関係者の責任、役割が果たされることを期待するということで す。また、研究会につきましては、今回、施行5年後の企業年金制度の検証はこれで終 えるということですが、必要に応じ検証結果のフォローアップを行うこととしていると ころです。少し長くなりましたが、以上でございます。 ○森戸座長 早速、本たたき台に基づいて議論を進めていきたいと思います。すべての 論点を網羅した非常に内容の多いものですので、1から3までと4から6までと7及び 8の3つに区切って議論をしていきたいと思います。最初に1の「はじめに」、2「企業 年金の性格」、3「企業年金に対する税制」、この1〜3の所について皆様からご意見をい ただきたいと思います。 ○企業年金連合会 2番の所が中心ですが、我が国の企業年金はこれまで厚生年金基金 が中心であったものが、いろいろと対応できなくなって確定給付企業年金や確定拠出年 金が入ってきたということで事務局からご説明がありました。その意味でいくと、私ど もといたしましては、いろいろな選択肢が出てきたという形で、いろいろなニーズに対 応できるようになったというふうに理解しております。その意味で、いちばん最初に事 務局からお話しをいただいたときには、厚生年金基金中心から確定給付企業年金、確定 拠出年金中心へというニュアンスもあったのですが、そこは今回のものではだいぶ直し ていただいてよかったのかなと思っています。少し気になっているのは、これでいくと 12頁辺りですが、今後の企業年金制度の方向という中で、確かに、企業年金について今 はできる限り自由な制度であることと老後所得保障機能をより強化させること、おそら く、この2つの要請が企業年金にあって、両方の中で実際上はバランスをとって、そこ をどうやっていくかという形になるのではないかと思っています。その中で、イの中の 例として例えば選択一時金の廃止というのがあります。全部年金にするのだというのは 1つの方向としてはあるのではないかと思うのですが、今の厚生年金基金でも選択一時 金について認めてあるのですが、ここまでいくというのは例としては少し極端な部分に なっているのではないかという感じがいたしまして、ふさわしい例なのかなというのが 少し気になっているところです。 ○森戸座長 いまおっしゃったように、あくまで例ですので、結局はその両方のバラン スをとるということで、極端な話を両方出しているその例だと思うのです。でも、例で も過激なことを言うなという感じでしょうか。事務局から何かコメントはありますか。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 座長のおっしゃるとおりでありまして、議論の軸を はっきりさせるという意味では、少し極端ですが、明確な例として挙げたほうがわかり やすいのではないかということです。 ○森戸座長 いずれにせよ、そういうご意見をいただいたということはきちんと考慮し て最終案にはまた検討したいと思います。 ○藤井委員 いまお聞きしながら改めて気づいた点がいくつかあって、つまらないこと も含まれますが、6頁で「適格年金が我が国ではじめての企業年金」という表現があり ます。いろいろな記録によれば、それ以前から、戦前でも企業年金制度がなくはなかっ たということもあるようなので、これは法律に基づく企業年金制度という意味でははじ めてだったという表現のほうがより正確なのではないかという気がします。8頁ですが、 企業年金の現状という所で、確定拠出年金の導入の基はどういうものであるかというま とまったところですが、これは資料が元来出てきたときにも発言したことを思い出しま して、中小企業で約4割が新規で確定拠出年金を導入しているというふうにありますが、 ここで言っている新規というのは過去分の移行がない場合をそのように分類しておられ るように思うのです。実態は将来分について退職金などから移行しているのが大半では ないかと思いますので、移行という言葉遣いとか導入というのは非常に難しい言葉なの ですが、実態は退職金の移行が大半だというふうに私は理解しています。そこのところ はどうかというのがあろうかと思います。  それから、細かいことはまた後で言うとして、11頁です。アメリカなどにおける現状 分析の所ですが、先ほど発言のあった選択一時金との関係が重要かと思うのですが、(5) の(1)のイで、諸外国では長寿化リスクに対するヘッジ機能が高い終身年金が中心になる ということがありまして、この中心という意味は、現状で多数がそうであります。ある いは原則的にそういうことがあるということについて言うと確かにそのとおりだと思う のですが、アにも触れてありますように、キャッシュバランスプランなど新たな仕組み が生じてきていると。キャッシュバランスプランの真の特徴は選択一時金があるという ことでありまして、さらに言えばペンション・エクイティ・プランというのも出てきて いますが、むしろ、我が国と例えば米国などの動きはちょうど歴史が逆向きに動いてい るような感じがいたしまして、終身年金から一時金へという大きな流れが生じているよ うな感じがいたします。単純に諸外国の例をとるにあたって、終身年金が中心であると いうのは伝統的には確かにそうなのですが、必ずしも足下の動き、方向感としてそうと も言えないというようなこともあるので、一時金であれ年金であれ、とにかく老後に備 えられれば、法制上どちらであるかについては重大にこだわっているようには感じられ ない。ただ、伝統的あるいは社会システムとして好みが変わってきているということで はないかという気がいたします。第2項に関しては以上です。 ○森戸座長 いまのいずれのご指摘も、基本的にはもう少し正確に書けということかと 思いますが、特に最後の点などは、諸外国のことをどう短く書くか、評価するか、とい うことにかかわるので、確かに慎重な書き方が必要かと思います。いずれにしても少し 検討をさせていただいて、基本的には藤井委員のご指摘のとおりではないかと思います ので、あまり端的な書き方はしないように修正を検討させていただくということでよろ しいですか。ほかにいかがでしょうか。 ○小島委員 9頁の諸外国の動向の所でアメリカの動向なのですが、ここで記載されて いるのは最近の確定拠出年金等の普及状況、あるいはIRAについて指摘をされている。 この確定拠出年金関係のところで、後ほど出てくる26頁の確定拠出年金のデフォルト ファンドとの関係で、アメリカなども26頁のいちばん下のパラグラフにあるアメリカ の個人運用指図のない確定拠出年金制度という、デフォルトファンドの検討というか、 そういうものについて少し検討すべきだという話になっているのですが、9頁のほうに は本来は自己責任で運用するというのが確定拠出年金で、アメリカでも実際はデフォル トファンドというのがあるのだということが、前の部分には何も指摘されていないでこ の26頁へいきなり持ってくるということなので、そこは、9頁のほうでも、確定拠出年 金は普及はしたけれども実際には個人指図をしていない、そのためのデフォルトファン ドがあるのだと少し指摘しておいたほうがいいのではないか。必ずしもすべてがアメリ カで確定拠出年金のほうが本来の趣旨のような運用がされているかどうかというところ についての問題指摘というのもあるのだと思います。 ○森戸座長 要するに、9頁のほうに、アメリカで自己責任だと言っても実際上は26 頁にあるような流れがあるということをもう少し書いてくれということでしょうか。事 務局、何かありますか。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 修正させていただきます。 ○森戸座長 わかりました。おそらく、デフォルトファンドの26頁の所は、一応、全 然選ばない場合にこれを選んだとみなすという話と、最後に「また」ということで個人 運用指図がない話も出ていますので、少し違う話になっているのですね。いずれにして も、9頁の確定拠出年金のアメリカの動向の所で少し言葉が足らないようであれば、ま た検討させていただくことにしたいと思います。 ○小野委員 3カ所です。最初は簡単なことで、7頁の(3)の(1)の「非継続基準の導入」 の所ですが、このパラグラフの最後に「非継続基準制度」と書いてありますが「制度」 は要らないのではないかということです。2つ目、3つ目は特法税の関係です。14頁か ら15頁にかけて、「これを拠出時には課税せず、運用時において、企業の拠出及びこれ に係る運用益について、繰り延べ利子税を含め課税する」という表現があるのですが、 とり方によっては、要するにみなし利子に対して限界税率をかけて課税するということ なので、元本そのものには課税していないわけですね。ということを考えると、とり方 で誤解が発生する可能性があるかなという懸念が少しあります。それで考えていきます と、特法税のあり方にも及ぶ話になってしまうかもしれないのですが、利子については 運用収入には課けないでみなし利子ということで課税している。利子について課税済み ということであれば、仮に給付時に課税するとした場合には給付の中におけるその利子 を除く部分について、元本相当分について課税するという考え方もあり得るのではない かという気がいたします。それが特法税の課税のあり方についてということです。  それから、特法税が課税された場合の問題点ということで16頁にご指摘があります が、特法税が凍結される前の状況というのは、基本的には予定利率が5.5%だったりす る時代だったわけで、これは免除保険料率と企業年金の掛金が大体パラレルに比較でき る状況であったわけです。現在は、例えば企業年金の予定利率が一律3.2%という状態 ではないわけです。そういうことになりますと、給付で比較するにしても掛金で比較す るにしても、課税の判定とか課税対象額を計算するときに、また別途の数理的な評価が 必要になってきてしまう。ということは、これはお金を取られるためにわざわざシステ ムなりの投資を行って、またお金をかけてその計算をしなければいけないということで、 企業年金の維持に関しては非常にネガティブな作業になってしまうので、そういうもの も指摘しておいたらよいのではないかという気がいたします。 ○森戸座長 1点目は単なる修正で、3点目はその辺のことも書き加えていただいたら よりよいかなと思います。2点目ですが、特法税の14頁から15頁の所も小野さんのご 指摘どおりでよろしいですか。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 必ずしも十分に理解できなかったのですが、現行の 特法税を存置したとしても給付時の課税のあり方はいまではないほうがいいというご指 摘でしょうか。 ○小野委員 前段は表現上の問題で、一旦損金算入して非課税となったかのように見え るのですが、これが積立金になった途端に企業の拠出金にかかる部分まで課税されてし まうかのような印象を受けてしまったものですから、それは遅延利子相当分について課 税がなされている状況であるということを、もう少し表現上考えたほうがいいのではな いかという気がしましたのでご指摘申し上げました。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 ただ、事実関係からですが、企業の損金算入として は損金として算入される。これは算入されるわけですが、若干捻れているのですが、特 別法人税自体は従業員の所得への所得税の課税という考え方で、それは特別法人税段階 で10%ないし12%の所得税、住民税の税率に遅延利子分課税して、それが積立金の1% ということになっています。ただ、一方で企業の損金算入としては、損金としては全額 算入されているという扱いで、その企業の損金算入をしながら、所得税としての遅延利 子も含めて特別法人税で取っているという、いわば、変則の形態になっているというの が事実でありまして、その上でどう修正するかということかと思います。 ○森戸座長 元本に課けているみたいに読めるということですけれども。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 掛金自体を給与所得とみなして、その例えば10%な らば10%を所得税としていただく分。それを掛金拠出時ではなくて、運用時に運用段階 で利子を課税するということです。 ○森戸座長 要するに、それを元本に課税していると言うかどうかという話ですよね。 ○小野委員 そうですね。私は例えば掛金を10万円出したとします。10万円を出した ら、その7%掛ける限界税率が特別法人税ですよね。その7%というのは何ですかとい った場合に、それは自分で所得を課税されないまま持っているので、持っていればお金 が増えるでしょうと。お金が増えたときにそれを7%とみなして、その増えた分につい て限界税率で課税しますよというのが特別法人税のメカニズムなのかなと思っていまし たので、そういう整理からいくと、その時点ではとりあえず元本には課税されていない のではないかと思っただけなのです。 ○藤井委員 私はそうではないかもしれないと思います。給付時にとにかく課税をする。 拠出時に損金にする。その間の残について課税しているという発想ではないですか。だ から、確かに利息で税額の計算をしているにはしているけれども、発想としては損金の 時期と個人の益金の時期がずれているので、その間の期間について課税しているという ことで、その計算式が確かに利息的概念が登場するけれども、それはその期間を埋めて いるということから事実上そういう数値が登場するということであって、ずっと帯で課 税しているのではないかと思います。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 小野委員のご指摘はわかりましたので、修文案を考 えてみます。 ○森戸座長 そうですね。いずれにしても制度の仕組みがもう少しわかりやすくなるよ うに。後で小野委員にもご相談をして、納得がいくような形で文章を直したいと思いま す。野村委員、どうぞ。 ○野村委員 私からの質問はわりと簡単です。8頁目の企業年金の現状の所ですが、上 から3つ目のパラグラフの適格退職年金からの移行の所で、確定給付企業年金への移行 が1割の後に、確定拠出年金の移行が3%程度とあります。他方、いただいた参考資料 の4頁目に企業年金等の状況の所で、適年からの移行、確定給付企業年金への矢印を見 ると916件となっています。同じく矢印で適年から確定拠出年金への移行だと3,265事 業主となっているので、ここの数字と、1割と3%との関係がよくわからないというの が質問です。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 恐縮ですが、パーセンテージは平成17年度末現在 の数字を母数にしています。結論から言いますと、少し古い数字でなっていますので、 ここは訂正させていただきます。 ○駒村委員 前半部分の注目したところは12頁から13頁の企業年金と公的年金の関係 の変化に関する整理であって、ここについてはコンセンサスが得られなかったわけです が、その後の所でも度々出てくるロジックとして、拠出限度額とか個人拠出の範囲とか に関連して公的年金と合わせて6割というロジックが出てくるわけです。これは、最初 にこれらの制度が導入された時点においては公的年金がマクロ経済スライドで下がって いくことが想定されていなかったわけですが、2004年の公的年金改革以降はそこが入っ てきたわけで、そこが全体を通じてくる1つの論理づけになってくるわけですね。だか ら、12頁から13頁の所で、2004年より公的年金の性格が少し変わってきたのだと感じ ております。そこを受けて企業年金の性格も見直さなければならないのだということが 少し強調されていたほうがいいのではないかと、このように思いました。具体的な文言 というよりは、全体を通じる考え方の整理ということです。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 公的年金の所得代替率が平成16年改正で下がりま して、定量的には企業年金の役割が高くなっているということはあると思います。ただ、 厚生年金基金の望ましい水準自体は、昭和63年から退職前所得の6割という基準が設 けられていましてすので、そういう意味では定量的な変化としてはあっても、質的な変 化として企業年金の役割が平成16年改正で変わったということでは、必ずしもないの ではないかと認識しております。 ○森戸座長 いまの駒村委員のご指摘は確かに重要なことですけれども、いまのところ にというよりは、もっと全体として公的年金がマクロスライドで下がるとしたら、その 分、相対的に企業年金の役割は高くなりますよということがどこにもないので、入れる としたらもう少し全体的な所に入れるべきことかなと思ったのですが、いずれにしても、 そこも検討させていただくことにしたいと思います。 ○藤井委員 15頁辺りなのですが、これは私の意見なので、どこまで盛り込む必要があ るかどうかは別ですが、前から申し上げているように、ここでは特法税の撤廃と特法税 の非課税という2つの対立軸での記載となっているわけですが、特法税を撤廃する場合 であっても、自ずと上限という議論は出てくるのではないかと考えています。その上限 なく税がかからないシステムというのは外国にもないと思うのですが、全くの上限なし で撤廃を本当に要求している団体があるのかどうかよくわかりませんが、上限があると いうことが4番で言っているような非課税枠ということには必ずしもならないのだと思 うのです。上限があって撤廃となりますと、上限を超えるものを認めないシステムにな るわけでありまして、これは現在の確定拠出年金がそのような状態になっているわけで す。一方、上限がありながら上限を超えることを認め、上限を超えた部分について課税 するとなった場合、その課税は何なのかというときに「特別法人税だ」と言うことがあ るとすれば、それはいまの厚生年金基金のやり方ということになるのだと思います。そ して、上限を超えた場合には認めないと言っても、それならばそれとは全然別に課税さ れてもいいから実施するということはまたあり得るわけでありまして、米国でも行われ ていることです。したがって、特別法人税の撤廃ということと上限という概念は両立す るというか、むしろ並存することが普通ではないかという気がします。その点がどうか というか、要望という観点からはそこまでの要望ではないのではないかと思いますが、 議論をすると自ずとそういうところに行くのではないかという気がします。  それと、3番の中で、中央に「具体的には、特別法人税を撤廃する一方、公的年金に 準じた企業年金以外の企業年金に適用されている控除の見直し」と。この公的年金に準 じた企業年金以外の企業年金に適用されている控除、これは公的年金に準じた控除とい うのは公的年金等控除を指していると思われますが、それ以外の企業年金に適用されて いる控除というのは単的に言えば退職所得控除を指していると考えられるわけです。特 別法人税を撤廃する場合には退職所得控除を見直す、すなわち縮減または撤廃を指して いると考えられますが、そのことなどに関して考えられるとすれば、確かにそうである という感じがしないわけでもないわけですが、この場における議論が非常に不十分だと いう感じがするところでありまして、それ故に特別法人税に関する最終的な結論は、17 頁にも書いてあるように、十分な検討がなされていないとあります。この場でというこ ともさることながら、世間一般でも突き詰めた議論が行われていないということになっ ているかと思います。そのことを理由にして、どちらか白黒がはっきりつけられるまで の間は現在の凍結を継続するべきだということになっているわけですが、これで果たし て済むものなのかどうか。いま私の話は2点目に移っているわけですが、そういう感じ がしまして、今回、凍結期間は2年・2年と続いた後3年になっていて、非常に十分な 検討期間が与えられたという位置付けになっているのではないかということと、経済環 境も足下好転していることを考えると、十分な方向感が出ていないことから、やむなく 凍結を延長するということを主張していることになるわけですが、何となく弱いような 感じがします。それなら、どのように検討するとか、この会はそもそも検討をするため の会だったような気もするのですが、そこまでの役割があったのかどうかもあれなので すが、最終的なところが何となく弱いような感じがして、それも十分な議論をしないこ とには書こうにも書けないわけですが、そういう感想を持ったということです。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 1点、記述が曖昧というか、わかりづらかったかも しれませんが、15頁の「公的年金に準じた企業年金以外の企業年金に適用されている控 除の見直し」といいますのは、退職所得控除の見直しということではなくて、要は、有 り体に申しますと、厚生年金基金と特例適年は公的年金に準じた税制になっております ので、それ以外の企業年金にかかる控除の見直しという意味です。この点も少しわかり づらいので、表現としてはそれがわかるように修正させていただきたいと思います。 ○森戸座長 正確に言うと、その撤廃と非課税と、その間にもう1つ書いたほうがいい ということですかね。 ○藤井委員 例えば(3)で「強い要望がある」と書いた上で、ケースに応じた形で理論的 な考察を巡らせている表現だと思うのです。そういう中で特法税を撤廃するならば自ず と上限という議論も出てくるという、そういう流れかなと思います。別項ということで もないと思うのです。青天井で撤廃をするということが現実的かどうかという点が私は 非常に気になるということなのです。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 関係の方からまたご意見をいただければと思います が、要望としての撤廃論そのものは、特法税を残した上での一定の上限までの非課税と いうことではなくて、特法税そのものを撤廃した上で給付時の課税でそこをきっちり課 税強化するというのがセットではないかと理解しています。なおかつ、特法税を撤廃す るけれども上限と言ったときに、それは何税に対する何の上限なのかということになる のだと思いますが、特法税を撤廃した場合にはそれは給付時における各控除の上限とい うか、そういうものがあるかもしれませんが、少なくとも、特法税自体の上限云々とい うことにはならないのではないかと思います。 ○藤井委員 それはもちろんそうですね。特法税を撤廃しておきながら特法税の上限と いう議論は全く存在しないので、すなわち特法税を撤廃して上限を設けることになると 上限を超えたものを認めるかどうかということになる、あるいは、おっしゃるように、 上限を超えた制度をつくった場合に、例えば掛金の損金性についてどうかとか、給付時 の非課税枠についてどうかとか、そういう議論になるというのは自ずとそうだと思いま す。ただ、元来、いまの特法税を課けていることに全く理屈がないわけではないわけで すから、これを課けないこととするということは相当な優遇措置にあたると思うのです。 それでありながら上限がないということは、それはなければないにこしたことはないの ですが、要望としてはそれでもいいかもしれないのですが、事の成行きとしてそれで済 むかどうかということで、外国の例を見ても上限があると思うのです。上限がなしで特 別法人税を撤廃するというのは、要望という段階ではそうかもしれないのですが、ここ に書いてあるように、それならばこういうことがある、それならばこういうことがある、 というそのうちの1個という点ではそういうことも出てくるのではないかということを 申し上げているところです。 ○森戸座長 それは、撤廃をするとして何もなしということではなくて、藤井委員の言 う上限ということもあり得るだろうという話を、撤廃の所でもう少し書いたほうがいい ということになるのでしょう。 ○藤井委員 私はそういう気がいたします。給付時課税の徹底ということでそれは済ん でいると言ってしまえるかどうかでしょうね。要するに、掛金の損金性はいいのかどう かなどですね。特法税の撤廃というのは相当の優遇にあたると思うのですが、それの全 体としてのバランスと施策との関連ということを考えた場合に、やはり上限というのは 出てくると思うのです。そこで言う上限は4番で言う上限とは全く異質なものだと思っ ています。 ○森戸座長 そこは検討させていただきますが、いずれにしても、結局、藤井委員の最 後のご指摘で、全体として方向が弱いという話とつながっていて、じっくりと検討した ということがもっとわかるようにしたほうがいいというところにつながっていると思う ので、いま文章をつくることはできないのですが、撤廃の中の議論をもう少し細かく書 けるように事務局と検討します。その上で、より重大なのが、結局、凍結を継続すべき だという結論になっているのだけれども、それで大丈夫なのかというご指摘ですので、 そこは研究会として、もちろんあまり議論の時間はなかったのですが、少し考えておか なければいけないのではないかと思います。その点、ほかの委員の方、あるいは事務局 でも何かあれば伺いたいのですが、結局、この会ではこれ以上深い方向性は出せなかっ たのでこういう書き方になりました。しかし凍結を解除ということではないだろうとい うところで落ち着いて書いたのですが、何かありますか。 ○企業年金連合会 いまの藤井委員の議論で撤廃ということがありましたが、私どもも 要求をしていたところでございます。先ほどの条件との関係でいくと、私ども厚生年金 基金でも、確定給付企業年金も確定拠出年金もそうですが、一応、認可を受けた形での 制度ですので、勝手にやったものについて撤廃しろと言っているわけではないのではな いかと。しかるべき認可を受けたものについて特法税については撤廃という要求をした つもりでございます。そういう意味で言うと、今回、事務局からいただいた案について、 撤廃というといろいろな問題があるということですが、当方とすると、ともかく、特別 法人税が課かってしまうことは、ここにある理由の問題として特に確定給付企業年金、 確定拠出年金について根っこから課かってしまうことは制度にとって根幹にかかわる話 になるものですから、事務局のご判断として課からないという形でいろいろと書いたと いうことはそれなりに尊重するのかなという感じで受け取っています。もちろん、私ど もとしては撤廃するのがいちばんありがたいということで、そのことも書いていただい ているということで理解しております。 ○森戸座長 だから、前半を藤井委員のご指摘なども踏まえて細かく検討したのだとい うふうにする。そして最後、凍結継続すべきだという所も、凍結を継続すべきなのです が、これは前に検討したことの繰返しになる可能性もあるため、「今後こういう方向で検 討しますので」というような書き方をしたほうがよろしいのでしょうか。こういう方向 でという意味は、こういう論点がいろいろある、こういうことを潰して検討していかな ければいけないのでということを、もう一回強調するような形で書く。そのぐらいしか この場ではお約束できないかなという感じもするのですが、そこも、折角、研究会とし て凍結継続すべきという結論を言うため、あまり説得力がない形になるとおかしいので、 そこはもう一回検討したいと思います。ほかにいかがでしょうか。1〜3の所はよろしい ですか。時間もありませんので、また後でご意見をいただく機会も設けますが、次に4 〜6です。「確定拠出年金の課題」、「確定給付企業年金の課題」、「審査の効率化・標準化 等」の所に関してご意見をいただきたいと思います。 ○野村委員 いわゆるマッチング拠出の所です。22頁から23頁にかけて書いてありま すが、その中の具体的要件で、特に個人拠出の限度額の所です。考え方を2つ並べてい ただいて、基本的に(a)、(b)のうちの(b)にすべきであるというように結論づけておられ るのですが、研究会でこの点についてあまり明確なコンセンサス、この方向性でいきま しょうということがあったかという点を確認させていただきたいのが1つです。それか ら、加入者個人の視点に立ちますと、事業主が拠出してくれて、なおかつ自分で自主的 に拠出をしたいと考える場合は、おそらくは事業主があまりたくさん出してくれないの で、自助努力の観点から、まだ枠も残っているので自分で拠出して頑張りたい。そうい う趣旨であるとしますと、そういう趣旨であるにもかかわらず、事業主の拠出を個人の 自助努力でやりたいという考えの上限に据えてしまうというのは理屈として矛盾してい るといいますか、よくわからないという気がしました。例えば、1,000円しか出してく れない。自分は1,000円よりはいささか出せると思うときに、「いや、1,000円までしか 駄目なんですよ」と言われてしまう人はどうなのかと、簡単な例を申しますとそういう ことです。また、ほかの制度とのバランスは非常に重要な観点だとは思うのですが、こ の点も、よくよく考えてみますと、確定給付型年金への個人拠出は自分の口座があるわ けではないので、必ず自分の口座に入ってきて自分のものとして将来にわたりあります、 とは言えないと思うのです。積立不足がある場合はどうなのだといったことです。100% 自分の口座に入るという確定拠出年金の大きな特徴ですが、確定給付型の本人拠出とは そういう意味ではやや性格が違うのではないかという気がいたしまして、同じように扱 うのはよくわからないということです。 ○森戸座長 実は、個人的には野村委員と同じような意見なのですが、全体の法体系と いうか、そういうものからこういう表現になったのではないかと思うのですが、事務局 で補足いただけますか。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 第5回の中で、個人拠出を認める場合の事業主拠出 との関係ということで、確定給付企業年金や厚年基金が事業主拠出まで、労使折半まで という資料をお出ししましたが、確かにあまり議論がなかったので、たたき台はどうし ようかなというのは事務局で素案を作成してご議論いただこうということです。ただ、 個人拠出を認める場合に、極端な話ですが、例えば4万6,000円で、事業主が0円で、 4万6000円を本人が出す。それが企業年金と言えるのかと。個人型であれば別ですが、 企業年金と言えるのかと。そういうような企業年金としてのあり方というところは議論 になるのではないかということでこういう原案にさせていただいています。 ○森戸座長 そこは結構重要な話で、企業年金と言えるのかという話がありましたが、 マッチング拠出が出てきて、要するにこの6割までの枠をどうやって埋めようかという 話になった時点で、企業年金だけれども自助努力を加えてという話にはなってきている わけです。他方で、企業年金制度をベースにした制度だというところもあるので、ここ は検討させていただきますが、当然にこれだけではないという形で、もう少し書けたら いいなと、個人的にはそういう気がしています。 ○藤井委員 いまのことに関連するのですが、21頁のウの真ん中より下の所に「加入対 象者の考え方を拠出限度額の設定についても採用するならば、確定拠出年金のみを実施 している企業に係る拠出限度額(現行月額4万6,000円)と同水準まで、個人努力によ る老後の備えを認めることが望ましい」と。すなわち、企業が企業型の確定拠出年金を 実施していない場合には個人は勝手に個人型に加入することができて、かつその場合に は限度額満額の4万6,000円の拠出が可能とすることが望ましいというのはこの会で言 おうとしているわけです。そうすると、企業型があるばかりに、その限度が非常に抑え 込まれる、本人拠出が企業の掛金によって抑え込まれるという珍現象が起こるわけです が、これをどう考えるかということです。それから、個人型のその限度を企業型と満額 まで重ねた場合に、そもそも企業型と個人型というのは何なのかという大きな疑問が生 じまして、24頁のいちばん上を見ると、「投資教育は制度の根幹の1つである」と謳っ ているわけです。しかし、これが適用されるのは企業型に限られることでありまして、 個人型には適用されない。そういうものが根幹かどうかという、また大きな疑問がある わけです。そうすると、企業型であろうが個人型であろうが限度は一緒だということに なって、一方で企業型のみ投資教育を根幹として位置付けるというのは何やら妙な感じ で、全体としてのバランスとしてどうかという感じを読んでいて持ちました。ここは確 かに十分な議論がなかったような気がしますが、こう並べて書くと何か不思議なことを 言っているような感じがしてくるという気がします。 ○森戸座長 確かに、21頁の所の話と、そう書いているわりには労使折半までと言って いるのは少し調整が必要な感じがしますね。結局、マッチングを認めていない段階では 個人型、企業型というのは明確な区別があったわけですが、個人の拠出を認めようとい うことになるとその境目がだんだん曖昧になってきて、かつ投資教育みたいなものも、 個人が老後の6割までの保証を自分でやるのだったら、事業主はいないけれども、投資 に関してそういう教育と呼ばれるものが必要なのではないかという話まで及ぶことは及 びますね。そこは全体を見直して矛盾のないようにします。それで、もしあまり書けな いのであれば、そういう議論があるということをきちんと書く方向は出さなければいけ ないかなと思いました。事務局、何か補足がありますか。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 ご指摘のとおりのことがありまして、個人型の位置 付けそのものが企業年金がない方について補完的に自助努力を認めるという、いわば例 外的な位置付けになっているというところが制度としてそもそも具体的に整理されてい ないということもありました。おっしゃるとおり、投資教育についても、企業型の場合 には通常の企業年金と同じ範疇の中であり、一方で個人型については国基連が投資教育 を行うということで、いわば企業は関与しないという形になっているところがそもそも の論点かなと思います。そういうことも踏まえて整理させていただきたいと思います。 ただ、元に戻りますが、今回の企業型の個人拠出について、個人型的なものなのか企業 年金の一環なのかというところが根本かと思っております。今回の資料の中でも、個人 拠出の導入の契機といたしましては、企業年金制度は退職金そのものとは違って、そも そも、企業拠出と個人拠出と双方で成り立つというのが基本だというところから、そこ をベースに据えておりまして、その企業年金という整理を踏襲するとすると、先ほどの ような事業主拠出の関係を含めて整理が必要ではないかというのが事務局の案の考えで す。一方で、個人型を企業年金と全然別の整理にして、それを企業型の中に広げていく というアメリカのIRAのような形を考えるのであれば、それは全く別の体系があるので はないかという、それは制度論としてはそういう根本的な見直しもあるかと思いますが、 そういう意味では、今回のこの見直しは現行の基本を変えないで入れた場合にはこうで はないかという整理になっています。 ○森戸座長 そういうことをもう少しきちんと書くことにしましょう。企業年金という 体系を維持した上での話だと。ただ、その先には個人型との関係とか、老後の所得を確 保するという観点から、そこが違う考え方もあり得るし曖昧になってきていますという ことも書いたほうがいいと思います。そうすべきだと書くかどうかは別として、現行法 上はこういう整理になるだろうけれども、その先の議論はあるのだということは、折角、 議論をしたので書くようにしたいと思います。それはまた文章を考えます。ほかにいか がですか。 ○小島委員 いまの確定拠出の所、この21頁と22頁の所との関係で、いま課長が言わ れたようなことだと私も理解をしています。確定拠出年金ができたときの個人型の位置 付けは例外的な位置付けだということで、企業型の確定拠出がベースだというのが現行 法の基本だと思いますので、その際に企業型の個人拠出を認めるかどうか。これについ て私は今までは慎重な意見、どちらかというと反対という意見を述べてきたのですが、 もし仮にそれを認めるという形で今回のような整理をした場合に、個人型を認める理由 として考えるとすればこれは確定給付の厚年基金、あるいは適年、新しい確定給付企業 年金のほうにも個人拠出が認められているということとのバランスといいますか、その 並びで考えれば企業型の確定拠出年金においても個人拠出を認められるという、そうい う理屈になるのだろうと思います。22頁ではそれを1つの根拠にしていると思いますの で、そういう観点から言うと、企業拠出の限度額があるということになりますので、そ の枠内という形にならざるを得ないのだと思っています。その際に、個人拠出の掛金は 税制上どうするかということなのですが、ここは確定給付で認められているのは、厚年 基金は社会保険料控除に認められていますが、ほかのところは生命保険料控除しか位置 付けられていないということなのです。そこを今回の新しく本人拠出を認めたときに、 それもいまの個人型の拠出と同じような税制優遇というものがはたして整合性がとれる かということになる。しかし、そこは本人拠出を企業型で認めた場合に、それについて は生命保険料控除ということになると、その運用がまた複雑な話になってしまって、一 方は特法税がかかって一方はかからない個人拠出分だということが現実的にできるかど うかという話になりますので、そこは技術的な問題ということがありますので、その辺 のことについても少し整理が必要ではないかと思っております。それと、先ほど言った 21頁で指摘されている個人型の扱いを、今回は例外的な扱いをもう少しきちんと位置付 けるという形で、その限度額の引上げということをここでは指摘するということなので、 企業型のいまの確定拠出をベースとした法体系の中でこの個人型をどう位置付けるかと いうことの論議は必要なのだと。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 税制の件ですが、確かに均衡論で確定給付企業年金 の生命保険料控除との均衡論があるわけですが、23頁で税制で書いているのは、その確 定給付企業年金、適年については限度額とか、そういう水準そのものはないわけですが、 確定拠出年金については退職前所得の6割というキャップがはまっている中での個人拠 出なり企業拠出ですので、そういう意味では企業拠出として損金算入される、あるいは 個人型での実質所得控除があるということとの均衡を踏まえて、その枠内であれば同様 の税制上の措置が必要ではないかということです。 ○森戸座長 いまの点も議論をしていくといろいろとあるとは思うのですが、つまり確 定給付企業年金のほうにキャップがはまってないということとの全体の整合性の話もあ ると思うのですが、この整理としてはこの税制の所はそのように書かせていただいたと いうことです。実は、もう時間なのですが、私は時間を守るのだけで評価されている座 長だったのですが、今日はもう少し延長させていただいてよろしいでしょうか。労働法 学者としては心苦しいのですが、皆さんはイグゼンプションでしょうから、今日は最後 までやりたいと思いますので10分ぐらいいただければと思います。それでは、4〜6の 所でほかに何かありますか。 ○厚生年金連合会 私ども、先ほどの野村委員が言われたマッチングの関係と、ほかに 企業年金実施のところについてせめて半分とされているところについて、なかなか難し い点もあるかと思うのですが、私も少し問題点を感じております。もう1つは、今回、 20頁の退職前所得の6割の確保を目標とするという拠出限度額の問題です。これの考え 方については1つの妥当性はあるだろうと思うのですが、少し気になるのは、例えば定 率で掛金が設定されている場合があるものですから、若いうちは限度までいかなくて、 年をとるとすぐに上限に当たって、結局は6割をうまく達成できていないという話が随 分あるのではないだろうかと。ではどうすればいいのだという案の提示まではできない のですが、これでハッピーということではなくて、そういう問題もあるということも若 干念頭に置いていただいて触れていただいたほうがいいのではないかということがあり ます。 ○森戸座長 そうですね。前のほうで事務局と相談をして、この報告書全体が6割とい うところをベースに展開しているのですが、そもそも6割というところも考えなければ いけないということは一言入れてもらったのですが、それに加えて生涯にわたる問題と か、いずれにしても6割をベースに考える基本的なところ自体の妥当性といいますか、 そこにからむ議論もあるということも入れられれば入れたいと思います。それは検討さ せていただきます。 ○小野委員 確定給付企業年金の方ですが、29頁に選択一時金の話があります。これは 単なる感想ですが、あの場の議論はどちらかというと利率の大小関係で是か非かという 話に終始してしまったと思うのですが、私のプレゼンの中でご提案申し上げたのは、1 つは終身コストを含めた現在価値相当分を一時金として選択するという道はアメリカに おいてはあるので、それは検討の余地があるのではないかと。もう1点は、あまりにも 現在価値が少額な年金については一時金の清算は年金側からやってもいいのではないか と。その2つをご提案申し上げたのですが、前者に関して私が考えるのは、特別法人税 のことは意識しておかないといけないということです。特例適年、特例確定給付企業年 金等々の話になってきた場合に、企業が終身年金を設計するためのハードルは非常に低 くしておかなければいけないのではないかという観点から言うと、選択一時金が、保証 部分の一定の利率に基づく現在価値以下にしか設定できないということが、終身年金を 提供するということの高いハードルになっているという現実的な問題があります。特別 法人税のことまで考えると、日米で逆向きになっている規制が、ここで書かれているよ うな退職一時金制度と企業年金本来のあり方との矛盾ということで整理できる問題なの か少し疑問に思っております。 ○森戸座長 いまの点は小野委員にプレゼンをしていただいたところですので、いまの ご意見も反映してここの所をもう一回検討したいと思います。 ○藤井委員 いまの小野委員のお話は私も同感でありまして、若干付け加えると、我が 国の企業年金が退職金から由来しているということがここに大きく関係していると思う のです。退職金から由来しているからこそ保証期間という発想が生まれ、保証期間とい う発想があるからこそ保証期間終了後に終身部分があるという、そういう2段構えの発 想になっていると思うのです。米国でも英国でも、ヨーロッパの国はたいがいそうです が、年金から発想した国においては年金がもともとあるので、年金自体が保証になって いるので、そこにおいて保証という概念はあまりなく、それで一時金を設けるならばそ の終身部分を全体として、現価として一時金で払うということしか思いつかないわけで す。したがって、終身部分が全体として一時金になっているということかと思います。 すなわち、年金を基礎に置くと、選択一時金というのは自ずと終身部分込みの現価と発 想するものと思いますので、特別不思議なものではないと思います。保証部分に限定す ることがまさに退職金由来の発想であると思います。それが良いか悪いかの問題は別と しまして、終身部分込みを一時金原資とすることは特別異様なものとは言えないのでは ないかと思います。  それと、細かな点ですが、これは訂正をされたほうがいいと思うのですが、26頁のい ちばん下の「また」の所で「アメリカの個人運用指図のない確定拠出年金制度、オラン ダのコレクティブ確定拠出年金のように」と、2つの制度が並列に書かれていまして、 「あらかじめ定められた運用方法による運用ではなく」というこのフレーズがアメリカ の場合とオランダの場合の両方にかかっているように私には読めるのです。「個人が運用 を事業主に全面委任する仕組みになっている」アメリカの確定拠出年金は、ここで言っ ているデフォルトの運用はありますが、事業主に全面的に委任するわけでもなく、むし ろあらかじめ定められた運用方法による運用なわけなので、少し間違っているような感 じがします。すなわち、アメリカについてはこの「あらかじめ」以降が該当しないとい うことです。オランダについて言うと、これは細かな点ですが、事業主に全面委任する と書いてありますが、事業主ではなくて、私の知るところでは、基金の形をとって、労 使の代表が出て、そこに委任しているということなので、事業主にという点も誤りでは ないかと思います。 ○森戸座長 いまの2点とも基本的にご指摘どおりだと思いますので修正の方向で検討 したいと思います。 ○野村委員 短く補足させていただきますと、アメリカについては制度としては加入者 が運用の指図にコミットしない確定拠出年金もあるにはあると思います。ただ、401(k) プランのような個人が拠出する行為と、個人が運用指図をするという行為が法律の規定 では別立てになっていて、個人が運用指図に関する権限を与えられていない場合は、そ の運用に関する責任は事業主のところに戻ってくる。個人が自分の口座資産に対して運 用指図の権限が与えられていればその点については事業主が何か問われることはないと いう制度になっているので、別に、事業主が責任を取ってもいいと思うのであれば、確 定拠出型であっても個人の運用指図のないものは可能ですし、ないかと言われると、極 めて少数派にはなっていると思いますが、制度としては認められていないわけではない と思います。オランダについては私も藤井委員と全く同じ理解をしております。 ○岩本委員 また確定拠出年金に戻ってしまって恐縮なのですが、先ほど配っていただ いた経済財政諮問会議の貯蓄から投資への加速、それによって日本の国内の成長をして いこうという話ですね。それに則ってこの22頁に書いていますが、企業型確定拠出年 金における個人拠出を認める方向で検討をすべきというのはまさにそのとおりなのだろ うと思います。そのときに、企業型に認められた拠出額に対してマッチングを容認する ということであれば、これは間違いなく枠外にしていかないと、先ほど言った投資への 加速というところとマッチしていかないと思うのです。だから、確かに、先ほどお話が あった税制上の問題、個人の拠出に対する税制上の問題ということはあるかもしれませ んが、だからといってその枠外を制限するものではないだろうと思います。 ○森戸座長 岩本委員のご指摘はある意味ではそのとおりなのですが、難しいのは、こ の基本方針のほうでは貯蓄から投資だ、確定拠出年金だ、ということになっていますが、 老後の所得保障の話ということで全体をまとめているので、確定拠出年金が投資だとい うのがあまり全面に出るのではなくて、ここはいろいろな事情があってこっちにも入れ ましたが、このぐらいのトーンでいいのかなという気はするのです。でも、そこは少し 検討させていただきます。4〜6についてはよろしいでしょうか。それでは、7と8もい ろいろな論点を含んでおりますので、最後の「リスク管理」と「おわりに」ですが、こ こに関して何かご意見があればいただきたいと思います。 ○藤井委員 修文の必要があるかどうかわからないのですが、35頁から36頁の辺りで、 受給権に関する時効の所なのですが、これは途中で発言したかどうか覚えてないのです が、請求権の順位との関係が重要だと私は思っておりまして、保証する保証しないとい う場合、あるいは社外に積立をする水準について云々という場合、それというのは全体 として企業が倒産したり経営が悪化した場合でも、約束した年金を受け取ることができ るかどうかということに関する準備だと思うのです。それについては3つの方法があっ て、1つは積み立てるという方法、2つ目は保証するシステムを設けること、3つ目は企 業が持っている資産に対する請求権にプライオリティを付けるかどうかという問題だと 思うのです。ある所でこれが議論になりまして、日本では、これは法令上の不明瞭な点 は若干あると思いますが、上位順位に置かれているという点が通例であるというか、普 通であるということから、それは1つのやり方ですねという議論をしたことがあります。 米国とか英国では、そもそも請求権の順位は通常と同じと聞いております。ただし、支 払保証制度を設けたことによって、支払保証をする範囲については政府機関が特別に後 位の請求権を持って積立不足については取りに行くということかと思います。ですから、 制度の根幹にかかわる議論という点で言うと、請求権の順位という点についても論点と しては出てくると思いますが、途中で発言していなかったかもしれないので新たな発言 かもしれませんが、そういうことを感じました。 ○森戸座長 いまの請求権というのは制度が母体に掛金の不足を取りにいく請求権とい う意味ですか。。 ○藤井委員 そこは言い方が悪かったですが、元来、日本の企業年金の場合、退職金の 内枠設定とかが多いので、退職金について支払いが年金制度から不十分な場合、その残 額に関して退職金としての請求権を本人が持つことが通例です。これについて、本人は 会社に対して退職金としての請求権を持つわけですが、その順位がどうかという問題で、 私はよくは知りませんが、労働法でも不十分な点もあるように聞いておりますが、そこ は座長のほうがお詳しいかもしれませんが、その関係。あるいは、おっしゃるように、 企業年金が未積立のまま終了した場合、未積立分に関する請求権の順位は特に強い順位 付けがされていないと思いますが、幸いにして、我が国では退職金の内枠なので、未払 いの分については退職金としての請求権を有するという点が現場での解決策の1つにな っていると思うのです。それと支払保証とか積立の基準という点は重要なかかわりがあ ると思います。 ○森戸座長 わかりました。いまの話は確かに重要ですが、たぶん、そうするともう1 つ別項目ですよね。島崎さんとか、小野さんもいらっしゃいましたが、別の所でやった 研究会でも検討したのですが、先取特権とか、そういう優先順位の話ですよね。だから、 それを書くとしたらもう1つどこかに設けることになると思いますが、ご意見が出たと いうことで検討をさせていただきます。 ○厚生年金連合会 2点あります。1点は受給権の保護の関係です。34と35の所に掲 載があって、これは委員会でかつて議論があったところで、いわば、日本の制度がそれ なりにいろいろな配慮をとってバランスのとれた制度があるというご議論があったかと 思います。これ自体は書いていただくのは非常に良いことだと思います。ただ、中身は 実際の運用で硬直的な運用がされているのではないかというような、私どもの企業年金 の側からのこともあるものですから、これの表現をどうするかはあるのですが、できれ ばこうした制度の仕組みを踏まえた形できちんと制度が運営されていくべきだというニ ュアンスを出していただければありがたいというのが当方からの要望でございます。  もう1点は、これもお願いですが、最後の「おわりに」の所に、これは今回の研究会 自身がもともと企業年金2法という形で、確定給付企業年金法、確定拠出年金法の関係 なので、2つの制度利用者が中心となることは当然なのですが、企業年金の中に、要は 厚生年金基金の関係者もありまして注目されているものですから、例えばこの中で、残 された課題の中に厚生年金基金の課題も含めというようなことも少し書いていただける と向こうも配慮として安心してくれるのかなということで、これはお願いでございます。 ○森戸座長 2点目は、中では総合型が多いとか、その他いろいろな基金のことも触れ られていますし、そういうことは入れられるのではないかと思います。1点目は、おっ しゃることはわかりますが、その前の段階を書かないで、このとおり運用しましょうと 書いても唐突なので難しいですけれども、それも検討をさせていただきます。 ○小野委員 1点だけですが、36頁の積立基準の件です。アメリカのPPAで150%ま での積立が可能であるということのご指摘を申し上げて、それを受けた件の所ですが、 これを日本でどうかというときに、給付減額が認められていることとの整合性というの は少しどうかなと。駄目だったら減額すればいいやというような形で受け取られないか という感じがして非常に気になるところです。150%といっても、おそらく、アメリカ でも終了したときの剰余があればリバージョンはありますけれども、それに関してはほ とんど課税されるということですし、日本の確定給付企業年金制度は企業に戻ってきま せんので、そういう意味では掛金の損金算入がソルベンシーをかなり取った積立という ことへのインセンティブには必ずしもならないのかもしれない、効果としてはあまり強 くないのかもしれません。そういった実態も踏まえつつ、少なくとも、給付減額云々と いうのは少しどうかなという気はいたします。 ○森戸座長 わかりましたが、まさに、おっしゃったようなことを思って書いてあるの です。ですから、そこも考えることにします。 ○藤井委員 いま小野委員がおっしゃったところと関係するのですが、「我が国において 積立比率100%を上回る積立を義務化するなど」というこの「義務化」という表現と、 上のほうのアメリカでは「150%までの掛金を損金として取り扱うことが認められ」と いうのは、これは全く別のことですよね。オランダではソルベンシーマージン基準が導 入されて、これはある種の強制判断なのです。同じようなことを言っていても「強制」 と「認める」というのは全く異なることだと思うのです。私がこれまで申し上げてきた のは、別に、義務化することを言っているわけではなくて許容するということだと思い ます。それは、結局、企業年金は企業がやっているので、より良い制度とより良いとは 言えない制度があり得るのはやむを得ないことなので、その場合にどのぐらいより良い ことを認めるかということだと思うのです。年金資産というのは市場環境によって揺れ 動くわけですから、そもそも、絶対的に100%ということに重大な意味があるわけでは なくて、時価というのは特に意味なく揺れ動く部分もあるわけですから、そういう意味 で、保険会社の経営にしても何にしてもソルベンシーマージンという基準があって、そ こぐらいまでは100%の範囲内という話で、若干幅を設けた概念になって、逆に言うと、 そうあってこそ、初めて100%満たされていると言えるのだということだと思うのです。 それと、前も申し上げたのですが、掛金の弾力的な拠出ということにつながるのですが、 固定的にすればするほど、中小におかれては将来ともに一定の掛金を拠出するという自 信が持てないことから、いきおい、全体として掛金水準を低く抑える可能性がある。そ うすると、制度全体としては低い積立水準が維持されることとなりかねないということ で、拠出ができるときにさらに余分に拠出するという範囲を設けるという観点で、目標 とする水準の100を少し上回る水準とするというのは合理性があるのではないかという、 そういう意味で申し上げてきたと思います。見て改めてそう思いました。 ○森戸座長 そうですね。義務化という話と、そこを柔軟に進めるようにしろという話 は違うと思います。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 いまの点は、いまの頁の(4)の上の「また」書きの所 が柔軟に上積みするという話を記述させていただきました。 ○森戸座長 一応書いてあるということですが、また全体の整合性も考えて。 ○藤井委員 おっしゃるとおりだと思うのですが、読者がそう読むかどうかという感じ だと思います。一旦「義務化」と言っているので、この義務化を言い替えて認めると言 っているようにも見えると思うのです。 ○森戸座長 そこは違いがわかるように書きます。 ○島崎座長代理 39頁の下から2段落目の「また」以下の所は、これは以前どことかで 座長がおっしゃった言い方を借りれば、個人の意思を共同の意思によって縛ってしまう わけですが、そこの労使合意がきちんとされていなければいけないのだという、趣旨ま で含めて書かれた文章なのですか。 ○濱谷企業年金国民年金基金課長 法令等に則ったというのは、労使合意をきっちりと 適切にやるということも含まれます。 ○島崎座長代理 そういうことですね。何が言いたいかというと、先ほどの岩本委員の 議論ではないですが、確定拠出型年金であれ、確定給付型年金であれ、何のために企業 年金を普及させていかなければいけないのかということを考えてみれば、それは老後の 所得保障ということが大きな方針というか大前提としていることは間違いなく、そうし た大義名分を外すことはできない。それから、企業年金の場合には拠出をしてから実際 に受給するまで非常に時間がかかるわけで、いわば「不確定な条件」の下での意思決定の 連続であるし、一口で労働者・従業員といっても、入社したての従業員と退職間際の従 業員では全然利害が違いますし、同じ加入者等といっても、現に現役で働いている人と 退職した人を一緒くたにすることはできないわけです。それだけに、私は前回、座長が 労使の合意形成が形骸化してはいけないと言われたことについては誠にそのとおりだと 思います。また、同時に、今回はコストの話が何も触れられていませんが、例えばマッ チング拠出をする場合にそのコストを誰がどういう形で負担していくのかという問題も あると思います。もちろん、確定拠出型年金については個人管理をしていかなければい けないわけで、当然、システム設計などある程度のコストが必要だし、まだ完全にこれ までのシステム設計のイニシアルコストの減価償却も終わってないのかもしれません。 何を申し上げたいかというと、企業年金の大義名分を考えれば、例えばそういうコスト が非常にかかるために老後の所得の保障額が実質的には減損されていくということにつ いては、それができるだけ目減りしないようにコストの問題についても関係者が努力を していくということが必要なのだと思います。そのことは今回の文章の中になかなか残 しにくいかもしれませんが、あえてそこのところは申し上げさせていただきたいと思い ます。 ○森戸座長 わかりました。ほかにはよろしいでしょうか。だいぶ時間が過ぎてしまっ て大変申し訳ありませんでした。時間がまいりましたので本日の議事はここで終了した いと思います。ただ、まだ追加でご意見があるかと思いますので、7月2日月曜日の17 時までに事務局にご連絡いただくようお願いいたします。その後、皆様のご意見等を踏 まえまして、私が事務局と相談をして企業年金制度の施行状況の検証結果の今日の案に 修正を加えて、次回の研究会にお示しして取りまとめを最終的に行いたいと考えており ますが、それでよろしいでしょうか。 (了承) ○ 森戸座長 ご了承いただいたということで、そのように進めていきたいと思います。 今日の資料は回収ということですので置いて行くのをお忘れなくお願いします。次 回の日程は事前に事務局でお知らせしておりますとおり、7月10日火曜日15時か ら17時、場所は本日と同じ全国都市会館において開催することとしておりますので、 よろしくお願いいたします。本日はこれで終了いたします。どうもありがとうござ いました。 (照会先) 厚生労働省 年金局 企業年金国民年金基金課 企画係 (代表)03-5253-1111(内線3320)