07/06/26 第16回がん検診に関する検討会議事録 第16回がん検診に関する検討会 議 事 録 厚生労働省老健局老人保健課 第16回がん検診に関する検討会議事次第                   日 時:平成19年6月26日(火) 10:00〜12:08                     場 所:全国都市会館 第1会議室 1.開  会 2.議  題  (1)肺がん検診の実施状況等について  (2)肺がん検診の有効性の評価について  (3)CT検査等について  (4)その他 3.閉  会 ○古元課長補佐 おはようございます。定刻となりましたので、第16回がん検診に関する検討会を開催させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず初めに、鈴木老人保健課長からごあいさつ申し上げます。 ○鈴木老人保健課長 おはようございます。厚生労働省老人保健課長の鈴木でございます。今日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。  本日は第16回のがん検診に関する検討会ということで、経緯も含めて申し上げますと、今まで乳がん、大腸がん、子宮頸がん、それから昨年は胃がんということで、4つのがんについて検診の実施方法について御検討をいただいてきたわけでして、今年は最後ということで肺がんについて御検討いただきたいと思っております。  今年から来年にかけまして、去年も含めまして、がんについてはかなり大きな進展が見られたわけです。1つはこちらの武田室長のところの関係ですけれども、対策基本法が施行されて基本計画というものがつくられました。もう一つは、私どももちょっと関わっておりましたか、内閣府で策定されました新健康フロンティアという安倍総理の肝いりで始められた計画ですが、その中でがんが一つの大きな柱として位置付けられておりまして、特にその中でも検診の受診率等で数値目標を掲げてということになっております。  最後は、私ごとでございますが、平成19年、私は実は10年ほど前に老人保健課におりましたけれども、平成19年で老人保健法の傘の下にあるさまざまな事業が一応終わるということで、がん検診は法律的に言うと法の真下ではないですけれども、それに伴いまして20年以降はこちらの武田室長のところに所管が移行されるということでございます。  最後は、立つ鳥跡を濁さずということもございますので、肺がんだけではなくて今、抱えているさまざまな課題についてきちんと整理をさせていただいて、今どこまでわかっていて、これから何をやらなければいけないのかということについてしっかりまとめさせていただきたいと思っております。  本日は、よろしくお願い申し上げます。 ○古元課長補佐 ただいま老人保健課長より御説明させていただきましたとおり、本検討会におきましては肺がんの検診に関する検討を実施したいと考えております。  新たに御参加いただいた委員の方もいらっしゃいますので、ここで改めて委員の御紹介をさせていただきたいと存じます。  まず、座長でいらっしゃいます垣添国立がんセンター名誉総長でございます。  続きまして、内田日本医師会常任理事でございます。  続きまして、大内東北大学大学院医学系研究科・医学部外科病態学講座腫瘍外科学分野教授でございます。  続きまして、今回から新たに委員をお願いいたしました金子国立がんセンター中央病院内視鏡部長でございます。  続きまして、斎藤国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部長でございます。  続きまして、祖父江国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部長でございます。  続きまして、坪野東北大学公共政策大学院教授でございます。  続きまして、森山国立がんセンターがん予防・検診研究センター長でございます。なお、本日新たに委員をお願いいたしました佐川金沢医科大学呼吸機能治療学・呼吸器外科教授及び西井岡山県健康づくり財団付属病院院長におかれましては御欠席の御連絡をいただいております。  また、本日は中山大阪府立成人病センター調査部疫学課長を参考人でお呼びしておりまして、後ほど低線量CTを用いた肺がん検診の有効性評価研究の現状について御説明をいただくことといたしております。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、垣添座長に本日の進行をよろしくお願いいたします。 ○垣添座長 それでは、よろしくお願いします。これから、肺がんの検診の検討を始めたいと思います。  同じフロアで株主総会をやっておりますので、もし中座などをされたときは部屋をお間違えになりませんように。  冗談ですが、それではまずお手元の資料の確認からまいりたいと思います。事務局、よろしくお願いします。 ○古元課長補佐 ありがとうございます。それでは、お手元の資料の御確認をお願いいたしたく存じます。  座席図及び議事次第の後に「検討会資料一覧」という資料一覧がございます。本日の資料は大部になっておりまして、実際に議論に用います資料1から8及び参考資料1から8ということで、トータル16種類の資料を御用意させていただいております。  まず資料1が、「がん対策推進基本計画」。  資料2が、「肺がん検診の現状等」。  資料3が、「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」、それぞれホチキス留めをさせていただいております。  資料4が、「CT検査の現状について」。  資料5が、「低線量CTを用いた肺癌検診の有効性評価研究の状況」。  資料6が、「平成20年度以降の各種保健事業について」。  資料7が、「結核予防法及び労働安全衛生法における結核検診の状況について」。  最後に資料8が、「今後のスケジュール(案)について」でございます。  委員のお手元の左側に参考資料を8種類配布させていただいております。抜け等がございましたら、事務局の方に後ほどで結構でございますので御指摘いただければ幸いでございます。  なお、本日の議論には主に資料1から8を用いる予定でございまして、参考資料の配布につきましては委員限りとさせていただいておりますことを御了解いただければと存じます。以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。  それでは、議事に移らせていただきます。まず議題の1の「肺がん検診の実施状況等について」ということで事務局から説明をお願いいたします。 ○古元課長補佐 それでは、資料1及び資料2を用いて御説明させていただきたく存じます。  まず現状といたしまして、資料1の「がん対策推進基本計画」について御説明させていただきます。  1ページおめくりいただきまして、1ページが横のポンチ絵でございます。平成18年に成立いたしましたがん対策基本法の中で、その第9条に「厚生労働大臣はがん対策推進基本計画を策定しなければならない」という規定がございます。その計画を策定しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、がん対策推進協議会の意見を聞くものとするという規定ががん対策基本法の中にございます。この図の左側にございますのが、がん対策推進協議会でございます。こちらの意見を聞いた上で、厚生労働大臣ががん対策推進基本計画を策定いたしまして閣議決定をするというプロセスを経ることになっております。  おめくりください。2ページ目はがん対策推進協議会委員名簿でございます。こちらは、本検討会の座長でもいらっしゃいます垣添先生が会長となられまして御尽力いただいた上で、つい先日閣議決定まで取りまとめられたという内容がございます。  その内容につきまして、3ページをごらんいただければと存じます。こちらが、今年6月にまとめられましたがん対策推進基本計画の大きなフレームでございます。大きな目標といたしましては、一番上のがんによる死亡者の減少、20%の減及びすべてのがん患者・家族の苦痛の軽減・療養生活の質の向上、この2つを10年に以内に実現しようといったことが大きな柱となっておりまして、それに対するさまざまな取り組みが下の表になっております。その中の左側の上を見ていただきますと、がんの早期発見という観点からがん検診の受診率を50%に上げるということが目標として掲げられております。  続きまして、4ページ、5ページをごらんいただきますと、こちらが「がん対策推進基本計画の概要」ということになっております。この中で、がんの検診に関しましては5ページの5番の「分野別施策及びその成果や達成度を計るための主な個別目標」ということでございまして、(6)の「がんの早期発見」で「がん検診の受診率を50%以上とすること」、これを5年以内に達成することを計画の中でうたっております。今回、がん検診の議論をいただくに当たりましては、こういった背景があるということを御理解いただければ幸いでございます。  続きまして、6ページ、7ページはがん対策推進基本計画の本文からの抜粋でございまして、がん検診にかかる部分についての記載でございます。ごらんいただきたいのは7ページでございます。先ほど概要の中でも申し上げましたとおり、7ページの下の方を見ていただきますと、早期発見に関する個別目標といたしまして、1つ目にまず5年以内にがんの受診率を50%以上にすることを目標とする。「また」以降でございますが、精度管理・事業評価についてもきちんと実施をしていくということが個別目標としてうたわれております。  最後に8ページでございます。本計画の20%削減ということで、10年後に20%の削減という目標の根拠となる数字でございます。こちらは、年齢調整死亡率を20%削減しようという基本的な考え方の中で、現在2005年から2015年のタームで考えておりますが、まず現在でも毎年1%程度年齢調整死亡率が減少しているということから、10年後にはまず10%減少するであろう。それに加えてがんの予防、がん検診、がん医療の均てん化、そういったところを進めることにより更に10%減をする。トータルとして20%の削減という考え方に立っております。こういった中でも、がん検診の重要性というものがうたわれているということを御理解いただければと思います。  資料1につきましては以上でございまして、続きまして資料2に移りたいと思います。資料2をお手元に御用意いただければと思います。  1ページおめくりいただきまして、「がん検診について」です。現在行っている市町村事業のがん検診の概要が1ページ目でございます。昭和57年度に老人保健事業におけるがん検診としてスタートいたしました。こちらは御承知のとおりのことでございまして、平成10年度に一般財源化されたという流れがございます。  現在、5つのがんが2番に書かれております。胃がん、子宮がん、肺がん、乳がん、大腸がんを位置付けておりまして、肺がん検診の内容といたしましては問診、胸部X線検査及び喀痰細胞診、対象者としては40歳以上、年に1回といった形で指針をお示ししているところでございます。本検討会においては、この内容などにつきまして御議論いただければと考えております。  続きまして、2ページでございます。ここからは、罹患率等のデータについて現状を御説明したいと存じます。  まず、2ページは男性の肺がん罹患率の推移でございます。1975年、約30年前からの推移でございますが、肺がんはここ数年横ばいといった状況です。  続きまして、3ページは女性でございます。女性の罹患率そのものは、男性に比べると3分の1くらいといったところでございますが、これも横ばいから若干上昇傾向にあるという状況でございます。  続きまして、4ページ目でございます。こちらは死亡率の推移でございます。まず4ページ目は男性でございますが、1993年ころに胃がんを抜いて死亡率という意味では上位に立って一番高い率になっているということでございます。  また、5ページ目を見ていただきますと、女性につきましては死亡率は胃がん、大腸がんに次いで3位といった状況でございます。  続きまして、6ページ目でございます。「肺がんの罹患率と死亡率」です。これは先ほどお示ししたデータを一つのグラフに並べたものでございまして、ここ20年くらい余り差が広がっているようには見えない。罹患率と死亡率がパラレルに動いているようにごらんいただけると思います。  7ページ目は、女性でございます。こちらも若干でこぼこはございますが、余り大きな広がりは見られないということも言えると思います。  続きまして、8ページです。こちらは参考でございますが、「胃がんの罹患率と死亡率」のグラフでございます。こちらもパラレルに動いているようには見えますが、全体の罹患率が減少しているということから言えば、罹患全体に占める死亡率というのは減ってきているのではないかと読めると思います。女性についても、同様の傾向があるかと思います。 10ページ目でございます。「大腸がんの罹患率と死亡率」で、罹患とその死亡率のギャップというものが目に見えて大きくなっているということが見てとれます。こちらは、11ページの女性についても同様かと思います。  12ページ、13ページは子宮がん、乳がんの罹患率と死亡率ということでございまして、12ページについては罹患率は上下ででこぼこしている。死亡率に関しては低下傾向であり、ここ数年はややフラットの状況にあるということです。  13ページの乳がんでございますが、罹患率は上昇傾向にございます。死亡率は、横ばいか若干上昇傾向にあるといったトレンドが見てとれます。  ここまでが、罹患率及び死亡率に関する基本的なデータでございます。  14ページは若干細かい数字でございますが、年齢階級別のがん罹患率でございます。  まず男性でございますが、数字を書いてございますのが肺がんでございます。40代は数人から20人、10万単位です。やはり60代後半から70代にかけて罹患率はぐっと伸びるというのが肺がんの特徴かと思います。  15ページにまいりまして、女性の年齢階級別がん罹患率でございます。こちらは男性ほど急激なカーブで伸びているようには見えませんが、やはり70代になるころに伸びのピークがあると見てとれると思います。  続きまして16ページ、男性の年齢階級率がん死亡率でございます。こちらにつきましては、死亡率は70代に大きな伸びが見てとれます。  続きまして、17ページは女性の死亡率でございますが、こちらは80代に大きな伸び、傾きが見られます。  18ページにつきましては、年齢階級別の罹患率を数字でもお示しさせていただいているものでございまして、こちらは御参考にごらんいただければと存じます。19ページも同様でございます。  20ページをごらんいただきたいと思います。「肺がんの年齢階級別死亡率の推移」ということでございまして、これは幾つかの軸が入ってわかりづらくて申し訳ございませんが、年齢階級別死亡率を過去30年追いかけるとどうなるかということでございます。黒い四角の線が2005年、最新のデータでございまして、一番右の方に伸びていっているものでございます。御参考までに、例えば1985年のものは黒いひし形のグラフになりますが、これと見比べていただきますと、ここ20年間で80代の方の死亡率がぐっと高くなっているということが見てとれると思います。逆に、70代前半くらいまでの死亡率についてはそれほど大きな乖離はこの20年間ないというふうに見てとれると思います。  21ページでございますが、女性に関しましても同様に80代以上の方々につきまして、死亡率の大きな伸びが過去20年間、30年間で見られるといったトレンドがございます。ここまでが死亡率で、これは全国ベースでございます。  続きまして、22ページでございます。ここからは、都道府県別のような形で少し分析をさせていただいたものでございます。まず、都道府県別の標準化死亡比、肺がんでございます。一番上のものが平成16年、真ん中のものが平成15年、一番下が平成14年でございまして、直近のデータでは肺がんの標準化死亡比が最も高いのは長崎県でございます。逆に一番低いのは長野県ということになっております。  23ページが女性でございまして、同様に標準化死亡比が最も高いのが大阪府、最も低いのが島根県となっております。  ちなみに、大阪府は女性に関していいますと3年連続でトップという状況でございまして、男性におかれても比較的高いところにある。それ以外の都道府県では、長崎県なども高いところに位置しているということが見てとれると思います。  ここまでが基本的な罹患率、死亡率の関係でございまして、24ページからはがん検診の受診率等の基本的なデータをお示しさせていただきたいと思います。  まず24ページでございます。こちらは、地域保健・老人保健事業報告から得られましたデータでございます。平成17年度のがん検診受診率、肺がんにつきましては男性が18.8%、女性が25%、男女合わせますと22.3%が受診率でございます。他のがんに比べますと、高い位置にあると見てとれると思います。  続きまして25ページでございますが、「がん検診受診率の国際比較」です。こちらは新健康フロンティア戦略の中に提出された資料でございまして、左側のがん検診受診状況、この受診率は国民生活基礎調査という先ほどとはまた異なるデータを用いた数字でございまして、肺がんにつきましては男性が16.7%、女性が13.5%ということでございまして、先ほどの老人保健事業報告に比べますと若干低目の数字が得られている状況でございます。 米国・英国のものが右側にございますが、肺がんに関するデータはこちらはございませんので割愛させていただきます。  続きまして、26ページでございます。肺がん検診の実施状況で、受診率の推移でございます。過去20年程度を追いかけておりますが、現在の22.3%に比べまして、例えば20年前は8.7 %ということでございましたので、80年代後半から90年代中ごろにかけて伸びまして、それ以降はフラットのようなトレンドが見てとれます。  これが全国ベースの数字でございまして、27ページが都道府県別の肺がん検診の受診率でございます。最も高いところが大分県の64.8%、逆に最も低いところは奈良県の5.7%ということになっております。全国平均値は、先ほど申しました22.3%ということでございます。  続きまして、28ページでございます。「がん検診別実績」ということでございまして、胃がん、大腸がん、子宮がん、乳がん、肺がん、それぞれについての基本的なデータをこちらにおまとめしております。受診率は先ほど申し上げましたとおりでございまして、あとは要精検査率、精検受診率、陽性反応的中度及びがん発見率のデータをお示ししております。がん発見率につきましては、肺がんは0.05%となかなか低い数値が得られております。  続きまして、29ページ、30ページ、31ページにつきましては若干細かい肺がんに関するデータでございますので、後ほどごらんいただければと存じます。大変重要なデータではございますが、時間の関係上、御参考に見ていただければと思います。  32ページをごらんいただきたいと存じます。都道府県別の要精検率でございます。先ほどは都道府県別のがん検診の受診率でございましたが、こちらは要精検率ということで精度管理等の一つの指標になり得るものだと考えておりますが、最も高いのは広島県、最も低いのが数字としてございます県としては大分県ということになっております。  続きまして、33ページはがん発見率の都道府県別の数字でございまして、最も高いのが三重県の0.24%、最も低いところで数字がございますのは大分県の0.006 %ということになっております。  34ページにつきましては、先ほどグラフにしたものを数値としてまとめたものを御参考に記載させていただいております。  続きまして、35ページをごらんいただきたいと思います。今、がん検診の受診率度について御説明をさせていただきましたが、それでは全国の市町村、市で実際にどのような検診が実施されているかというのがこちらに書いたグラフでございます。こちらは、町村は除きましてすべての市を対象に18年度に調査をいたしましたので、回答率が77.7%、607の市を対象にした調査でございます。うち肺がん検診未実施である自治体は4%、胸部X線検査をされているのは93.9%、喀痰細胞診をされている市が84.2%、以下CT検査が0.5%、ヘリカルCTが4.9%ということでございまして、おおむね8割以上、9割の市において指針に沿ったような形の検診が行われている。片やヘリカルCTも5%の市で行われておりまして、未実施の市も4%あるということでございます。  続きまして、36ページでございます。こちらはまた先ほどとは違うデータでございますが、平成18年1月にすべての市町村を対象にしたデータでございまして、回収率100%で実施いたしました。国の指針どおり実施している市町村につきましては、肺がん検診についてはやはり先ほどと同様に9割程度、指針どおり実施していない市町村が226、9.9%肺がんについてはございます。  その理由について、次のページに記載いたしております。37ページをごらんください。226市町村のうち上半分、109の市町村は肺がん検診を実施していないと回答されております。残り117については、何らかの形では実施をしているということです。109の肺がん検診を実施していない理由としては、「他に優先すべき事業があるため」、「有効性が不十分であるため」、「予算を確保できないため」、この3つの理由がトップスリーに挙がっております。  続きまして、下の117、何らかの形で実施している市町村につきましては、X線のみを実施している、もしくはヘルカルCT等を実施しているといったところが大部分を占めるという現状でございます。  続きまして、38ページでございます。「国の指針以外の方法」ということで、やや重複しますが、やはり肺がん検診につきましては上から4つ目のCT、ヘリカルCT検査を実施している市町村があるということでございます。  39ページでございます。「受診時の費用負担額」、実際に市町村事業で肺がん検診を受けられる方々がいかほどの費用負担をされているかということでございますが、おおむね1,000円程度までの額に9割方の方々が入るというふうに見てとれると思います。無料というところも3割から4割程度ございます。  最後に、諸外国との比較をお示ししたいと思います。40ページで「諸外国のがん検診の制度について」ということでございます。これは、平成18年5月に調査をいたしました。その結果、国が関与をしてがん検診をしている項目についてでございますが、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、前立腺がんについては、例えばドイツなどではいずれもやっている。胃がん、肺がんについては、私どもがこの7か国を調査した限りでは実施しているところはないという結果でございました。  続きまして、41ページでございます。同様の7か国を調査いたしましたが、こちらは地方の自治体が関与しているがん検診制度についてでございます。こちらについては前立腺がん、胃がん、肺がんについては実施している国はなかったという結果でございました。 以上、大変長くなりましたが、資料を御説明させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添座長 ありがとうございました。我が国のがんの罹患率と死亡率の状況と、それに関連して各種のがん検診、特に肺がん検診に関して一通りのことを説明いただきました。何か御質問がありましたらお受けしたいと思います。  では、森山委員どうぞ。 ○森山委員 35ページは市と書いてありますね。781市です。それで、行っていないのが4%となっておりますね。一方、37ページは市町村におけると書いてあって、これで行っていないというのが226中109というと50%弱、四十数%で10倍の開きがあるんですけれども。 ○古元課長補佐 申し訳ございません。説明が不十分でございました。  35ページの調査は全国の市を対象にしたもので、おっしゃるとおりでございまして、4%が未実施であったという結果でございます。  まず36ページからごらんいただきたいと思います。これが全体像でございまして、これは35ページとは違う市町村全体を対象にした調査でございますが、国の指針どおりにしているところが2,273市町村のうち2,047、国の指針どおりに実施していないのが226というのが肺がんについでございまして、つまり10%は国の指針どおりに実施していない。  その内訳が37ページでございます。226のうち109が肺がん検診を実施していないということですので、おおむね5%程度がやはり実施していないというふうに全体では読めると思います。 ○森山委員 わかりました。 ○古元課長補佐 御説明が不十分で申し訳ございませんでした。 ○垣添座長 ほかにいかがでしょうか。大分県は68%と突出して高いですね。これは何か特別の施策を展開しているんですか。 ○古元課長補佐 これについては、調査そのものが例えば調査対象者の方であるとか、そういった自治体ごとにお考えの上で登録をされるというデータでもございまして、大分県の方にも確認をしてみたのですが、はっきりとした理由はなかなかわからないと。  ただ、経年を見ましても、例年とも大分県は割と高いレベルに過去3年とも位置しておりますので、受診率そのものも高いというところもあるのかなと。 ○垣添座長 受診率の計算自体がいろいろ問題であるということはかねてから議論されていますけれども、六十何%と五・何%では10倍の差がありますから。  では、大内委員どうぞ。 ○大内委員 この大分の件は大変重要かと思います。34ページの表で下から4行目が大分のデータになっていますが、確かに受診率は65%近くと高く、第1位です。要精検率の低いのは結構なのですが、1.7%で、これも全国平均からするとかなり低いです。問題は、がん発見率が右端にありますが、0.006、これは全国最下位だったはずです。これは大変重要なことでして、どのような検診をされているかということを具体的に示していただかないとわからないと思います。受診率は高いけれども、がんは発見されていないということになりますので。 ○垣添座長 これは確かに非常に問題ですね。がん対策基本法が決まって、先ほど事務局から御説明いただいたように5年以内に例えば受診率の50%を実現するというようなことでは、それ自体かなり大きなハードルでありますが、その内容は今日の午後、特に精度管理とか、そういう問題も議論されるかと思いますけれども、そういうことを考えますと今の大内委員の御指摘の点というのは非常に重要なポイントの一つではないかと思います。 ○大内委員 33ページに戻って大変恐縮ですけれども、ここでは全国の都道府県別のがん発見率がありまして、中ほどに全国平均が0.083となっています。大分県は計算されている中では最下位なのですが、0.006ということは、全国平均の10分の1以下の肺がん発見率ということになります。  何を申し上げているかといいますと、受診率が上がればいいということではなくて、やはりきちんとした精度指標というものを明確にして、それを達成すべきだと思います。 ○垣添座長 ありがとうございます。何かございますか。 ○古元課長補佐 大分県の状況につきましては、事務局の方でもう少し情報をきちんと取らせていただいて、次回にまた御報告をさせていただければと存じます。 ○垣添座長 これも、検診に関わる通奏低音のような問題だと思います。  それでは、時間の関係もありますので、2番目の議題の「肺がん検診の有効性の評価について」ということでよろしくお願いいたします。 ○祖父江委員 それでは、祖父江の方から報告させていただきます。  資料3と、それからお手元に緑の本が配布されていると思いますけれども、資料3はこの緑の本から適切な箇所を抜粋したものとして資料を作成しております。  資料3をめくっていただきまして「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」、厚生労働省のがん研究助成金の総合研究の班としてこの課題に取り組んでいます。最初にガイドラインの作成手順というものを決めて、今までに大腸がん、胃がんについて作成してまいりまして、これが3つ目のガイドラインであります。  ページをめくっていただきまして、2ページが目次ですけれども、全体の目次の中の枠で囲んだところを今回抜粋して参考資料として提示しています。図表に関してもそのような抜粋の仕方をしておりまして、4ページを見ていただきますと研究班の構成です。主任は私が担当しておりまして、分担、教育研究者、顧問、事務局とありまして、ガイドラインを作成する部位ごとに作成委員会というものを設定しております。  5ページ目に書いておりますようなメンバーで、肺がん検診の場合には佐川先生に委員長になっていただいています。ですから、今日御欠席ですけれども、本来は佐川先生の方から御報告いただくのが適切だったかと思います。佐川先生、中山先生、遠藤先生に主なライターになっていただいているというところです。  レビュー委員会というのは文献検索、システマティックレビューをする担当の者で、この程度の人数でやっています。肺がん検診の場合、多少問題のある点が3番目のところに書いてあります。ガイドライン作成委員の中で証拠として採用する論文の筆者でもある人がいる。特に肺がん検診の場合はその割合が多くて、ここの4人の筆者である論文をこの程度、採用しています。この点に関しては、また後で問題として論じます。  それから、研究費の支援というようなものをディスクロージャーとして記述をするということをしています。  ページをめくっていただいて、6ページ目が外部委員として作成したガイドラインを評価していただいて、それに基づいて修正をしました。肺がん関係は4名、関連する医療職種で5名、それから放射線被曝に関しては2名の先生方に外部委員となって評価をしていただいております。  7ページ目が「要旨」です。「背景」は今、古元補佐の方から説明があったとおりです。このガイドラインの「目的」ですけれども、検診に関与するすべての人々へ有効性評価に関する適切な情報を提供するということであります。死亡減少効果ということに重点を置いて、関連文献の系統的な総括を行って、レビューを行って、死亡率減少と不利益に関する科学的根拠を示して、我が国における対策型・任意型検診としての実施の可否を推奨として総括する。  対策型・任意型ということについては、21ページの表1にまとめています。対策型検診というのは対象者全体、対象集団全体の死亡率を下げることを目的として行われるもので、具体例としては老人保健事業における市町村の住民検診、任意型検診というのは個人の死亡リスクを下げるという目的で行われるもので、具体的な例としては人間ドッグ等が考えられる。それぞれ、定義、特徴、具体例というものを書いています。  また7ページに戻っていただきまして「対象及び方法」のところです。検診というのは、無症状である人に検査を行って標的とする疾患を発見し、死亡率減少に持っていくということですので、検診の対象は無症状である。更に、その方法として現在行われているものとしては、非高危険群に対する胸部X線及び高危険群に対する胸部X線と喀痰細胞診の併用法、それから、低線量CTを評価の対象としました。X線、喀痰、単独の有効性については付随的に検討しました。通常線量によるCTについては、評価の対象とはしていません。  評価するやり方として18ページの図1を見ていただくと、アナリティックフレームワークというものを作成して、論理的なつながりを図式化します。今回は胸部X線と喀痰細胞診の併用法と、低線量CTとの2つの検査を評価対象として、受診者がその検診を受けて、最終的に肺がん死亡減少につながるという「1」で囲った研究が直接的な証拠と言われるものです。  ただ、そういうものが不十分な場合には、検診を受けて肺がんが発見され、治療を受けて死亡減少という過程に対応するいろいろな文献を、中間的なといいますか、間接的な証拠として採用することを系統的に行うために、アナリティックフレームワークというものを設定し、それぞれにリサーチクエスチョンを設定して文献検索をするというやり方でを行っています。AF1からAF8というのは、そういうような形でのリサーチクエスチョンの設定をしたということを示しています。  実際には、また7ページに戻っていただきますと、文献としてはMEDLINE、それから医学中央雑誌等を中心に、1985年から2005年7月に至る関連文献を抽出しました。その過程が、20ページの図2に示してあります。MEDLINEで1,038文献、医学中央雑誌等で約600文献を抽出し、抄録をチェックするという段階、それからフルの論文をレビューするという段階。更に、これらのものは2人1組でやっていますので、不一致例を委員会全体で判断をして、最終的に英文として採用された文献が40プラス10、和文としては17プラス5、これらに基づいて証拠のレベル、更には推奨のレベルを検討したということです。  この証拠のレベルですけれども、これが表2で22ページです。証拠のレベルというのは主には2つのファクターで決めます。1つが研究のデザインです。システマティックレビュー及RCTというのが1の分類、それから、2は観察的な研究、症例対照研究、あるいはコホート研究などです。もう1つのファクターは研究の質であり、それらの質を考えてプラス印がまた3段階にそれぞれ分かれている。あとは、アナリティックフレームワークの中でどのように考えるかという組合せでもって1+あるいは2+、2−のところもありますけれども、そういうグレードの証拠として採用するということも考慮しています。  この証拠のレベルが全部で8段階ありますけれども、それに基づいて23ページ目の表3で「推奨のレベル」というものを決定します。証拠のレベルが一番右端に書いていますけれども、証拠のレベルとして1++あるいは1+をA、2++あるいは2+をB、これが十分な証拠あるいは相応の証拠があるのでこれを勧めるというものです。  Cが、証拠のレベルとしては1あるいは2++というようなものですけれども、無視できない不利益があるということで、推奨としては対策型検診として実施することは進められず、任意型として実施する場合にはこういう条件の下に限り実施することができるとするものです。不利益を勘案して、Cを区別しています。  Dは、これは死亡率減少効果がないとする証拠があるということで、推奨はしない。  Iは、死亡率減少効果を判断する証拠が不十分であるということで、対策型としては勧めない。任意型としては、個人の判断に基づく受診を妨げない。推奨のレベルについては、証拠のレベルと不利益の大きさと両方のファクターから判断をして決めていく。これが推奨のレベルであります。  そのような判断をした結果を、最終的に肺がん検診については8ページのような表としてまとめました。検査方法として非高危険群に対する胸部X線検査及び高危険群に対する胸部X線検査、喀痰細胞診の併用法については、証拠のレベルが2+、推奨としてはBと判断しまして、表現としてはかなり長いですが、「死亡率減少効果を示す相応な証拠があるので、対策型検診及び任意型検診として、非高危険群に対する胸部X線検査及び」、これを併用法といいますと、「併用法による肺がん検診を実施することを勧める。ただし、死亡率減少効果を認めるのは、二重読影、比較読影などを含む標準的な方法」、脚注に書いてある「肺癌取扱い規約」の集団検診の手引きに規定されているような方法であったもの、こういうものを標準的な方法として、これを行った場合に限定される。さらに、「標準的な方法が行われていない場合には、死亡率減少効果の根拠があるとはいえず、肺がん検診としては勧められない。また、事前に不利益に関する十分な説明が必要である」。標準的な方法ということを強調して、精度管理等をきちんとした検診でないと、むしろ死亡率減少効果は認めらないということを示すために、表現のところはあえてこのような長文を含めたということであります。  低線量CTについては、証拠のレベルとしては2−、質のよろしくない間接的な研究があるというレベルでありまして、死亡率減少効果の有無を判断する証拠としては不十分である。したがって、対策型検診として実施することは進められない。任意型として実施する場合には効果が不明であることと、不利益について適切に説明する必要がある。臨床の現場での撮影条件を用いた低線量でない非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用いるべきではない。これが、ガイドラインの結論であります。  この結論に至った過程を、以下で説明いたします。9ページですけれども、これを行う前の久道班報告書第3版での国内的な評価は、その下線に書いてありますところによりますと、日本における肺がん検診は相応の根拠がある。欧米における肺がん検診はないとする相応の根拠がある。らせんCTに関しては、判定する適正な証拠はないという状態でありました。  あとはガイドラインの本文からの抽出、抜粋ですけれども、「結果」のところの非高危険群に対する併用法と略しますが、併用法に関しては、不利益としては放射線被曝があります。ただ、ほかの検査に比べて非常に低いレベルですので、人体への影響は極めて小さいと考えられます。過剰診断についても、メイヨー・ラング・プロジェクト等で指摘はされていますけれども、臨床病期I期の非切除例での自然史を見ても、検診発見でも生存率は余り高いものではないので、過剰診断ということは余り大きくないのではないかと推察されます。  「その他の要因」、10ページですけれども、証拠のレベルとは順番が逆になっていますけれども、効果が認められているのは40から79歳男女の逐年検診であって、毎年受診でないと十分な効果は得られないということが示唆されています。  「証拠のレベル」で、なぜ2+でBという判定をしたかというロジックのところですけれども、24ページ、25ページの表7、表8が実際のデータです。24ページの表7の方がRCT、25ページの表8の方が主に症例対照研究の結果が載っています。それらに示された、最近の日本からの4つの症例対照研究が、表8の方の金子班の宮城、新潟、岡山の研究というものですけれども、それらによって有意な肺がん死亡減少効果が認められている。一方、かつて欧米で行われたRCT、これが表7の方の上に2つ、メイヨーとチェコのデータですが、それらでは肺がん死亡減少効果は認められていない。  症例対照研究は観察研究であることから、セルフセレクション・バイアスを始めとするバイアスを完全には制御できないけれども、欧米でRCTが行われているといっても非常に古い報告であり、医療水準が今のレベルとは異なっている。あるいはコンプライアンス、コンタミネーションの制御が不十分であるということも指摘されている。また、人種の差異というものもある。  こういったことをかんがみて、我が国からの5報の症例対照研究がおおむね同じ傾向を示している。そのうち4報が有意な結果であるということを考え、更にそれぞれの研究がさまざまなバイアスの影響を除こうということを試みていて、その結果を見ても肺がん死亡減少効果の傾向としては失われていないということから、現在の日本におけるがん検診のガイドラインとして用いるべき証拠としては、むしろ最近の我が国からの症例対照研究の結果を重視するということが妥当であろうと判断をしました。質としては、中等度から高い、高度というふうに判断されたので、2++という評価が妥当であるというふうに考えましたけれども、過去の欧米でのRCTの結果が否定的であるということから、証拠のレベルを1段下げて2+と判断しましたというのが、2+と判断された過程のロジックであります。  それから、「低線量CT」については、まず「不利益」について、スクリーニング段階においての不利益としては放射線被曝が単純にX線よりもかなり高い。実効線量で20から40倍相当になるということ。要精密検査率が高いということ。それから、過剰診断の問題もあります。  ただ、要精検率についても各報告で相当ばらつきがあります。それから、過剰診断についてはきちんとした証拠というのはまだ示されていないというのが現状だと思います。証拠のレベルについては、26ページの表12にまとめられています。この26ページの幾つかの研究の中の上から2番目のスエンセン、メイヨーのデータが死亡率減少について言及した唯一の研究です。ただ、これもヒストリカルコントロールといいますか、メイヨー・ラング・プロジェクトのデータをコントロールとして使った比較群ということで、質としてはそれほど高くはない。現段階としてはやはり2−、証拠のレベルとしては不十分であるというような判断になるかと思います。その結果、推奨のレベルとしてはIということになったわけです。  「考察」のところですけれども、「他のガイドライン等との比較」ということで見ますと、表の18、28ページです。祖父江班と書いてあるのが我々の判断で推奨(B)、推奨(I)というものですけれども、USプリベンティブ・サービス・タクスフォースの判断は、いずれの検査に対しても推奨(I)、インサフィシャント・エビデンスという判断になっています。  ただ、これは昔、1996年の段階では、胸部X線については推奨(D)ということで、実施すべきでないという判断でした。それが2004年の段階ではI、CTを含めての判断でありますけれども、インサフィシャント・エビデンスだというような判断に変わっています。  それから、カナダのCTFPHCというところでも胸部単純X線に関しては推奨しない、Dという判断であります。  それから、コクランレビューにおいても推奨しないという判断になっていますけれども、これらのシステマティックレビューが採用しているデータはかなり古いものが多く、1960年代に行われた結果が採用されているということで、必ずしも我々の見た年代の研究をきちんとレビューしているとは言えないかもしれません。  久道さんの報告は先ほど言ったとおりですけれども、国内的にも福井班の報告あるいは日本肺がん学会が編集した肺がん診療ガイドラインの中での検診の推奨というものもあります。福井班の方は有効性を支持する研究はなし、あるいは肺癌学会の方は現時点では有効性は証明されておらず、行うよう勧めるだけの証拠が明確でないという記述がされていますけれども、先ほど示しました我々のところでの研究の取りまとめ、それからそのロジックを見ていただきますと、我々の立場は70年代に行われた方法論的に問題の残る無作為化比較対照試験よりも、90年代の検診を評価した国内の複数の症例対照研究の結果を重視した判断であるということで、そのような差異が出ていると判断しています。  14ページ目ですけれども、「精度管理」についてです。この症例対照研究が行われた地域が、神奈川はちょっと違う体制かもしれませんが、新潟、宮城、岡山ではかなり精度の高い検診が実施されてきたということが想像されます。本ガイドラインが有効であるとした併用法は、上記4地区のような肺がん検診精度管理システムを構築し、高い精度が保証されるという要件を満たす検診のことであって、それ以外のものに無条件に有効であるということを結論するものではないということを付記しています。  「今後の研究課題」ですけれども、15ページです。先ほど古元補佐の方で提示していただいた死亡率、罹患率の年次推移ですけれども、女性の方はちょっと乖離しているようなところもありましたけれども、男性の方は少なくとも並行に推移しています。これは、検診による死亡率減少が達成されていないということを示すもので、精度管理、受診率向上等の課題が未解決であることを示しています。  そういうことに関連して、やはり精度管理を更に推し進めるということで感度・特異度を測定する、あるいは即時的な精度管理指標との比較を行うというようなことが必要であろうということを考えます。  それから、喀痰細胞診については単独の効果というものを今回きちんとは評価できませんでした。研究がやはり少ないためであります。ただ、喀痰細胞診がターゲットとする肺門部の扁平上皮がん、これの発生動向を見ると、これもがん登録の方できちんと組織型別の、あるいは部位ごとの罹患率というものを計測ができていないので正確な動向はわかりませんけれども、たばこ等の動向に従って肺門部扁平上皮がんは減っているということが想像され、ターゲットとする病気が減っているということで、対象とする疾患が減っている検査は推奨すべきでないというような判断も出てくるかもしれません。  それから、胸部CTに関しては今日議論があると思いますけれども、死亡率減少効果をエンドポイントとした研究が不十分であるということで、国内的にもそうしたものを進めていく必要があろうということであります。  最後に17ページですけれども、本ガイドラインで採用した多くの論文は作成委員自らが書いた論文である。やはり自分の論文、自分の評価研究を自分でまたレビューをするというようなことは余り望ましいことではないということで、将来的には委員会の構成を第三者的なものにしていくべきである。  ただ、現時点では人材不足ということもあり、このような評価方法になりましたというのがひとつ反省点であります。以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。  大変膨大な作業を進められた結果として、我が国の4つのケースコントロールスタディに基づいて併用法は、肺がんの検診を実施することによって肺がん死を減少させる効果があるということで推奨するという結論を得られたという経緯を御説明いただきました。何か今の祖父江委員の御説明に対して御質問あるいは御発言がありましたらお受けしたいと思います。  海外では古い文献以外に、最近は肺がんは検診をやってもだめだというようなことで新たな研究はされていないということですか。 ○祖父江委員 胸部X線、単純X線、喀痰細胞診についてはそうですね。やはり興味の中心は低線量CTの方に移っていったんだと思います。  あとは、PLCOで胸部X線の効果というのはいまだに評価し続けていますけれども。 ○垣添座長 あれは、結論か出るのはいつごろでしたか。 ○祖父江委員 予定では2015年です。 ○垣添座長 では、森山委員どうぞ。 ○森山委員 非常によくまとまっていて、これを基本にやっていけば理論的にもいいと思いました。  そこで一つ質問ですが、海外で推奨しないといっていたのが保留みたいになっていたんですね。それは、日本からの発信というものがかなり影響を与えていると考えてよいんでしょうか。 ○祖父江委員 そうです。USプリベンティブ・サービス・タクスフォースの2004年のバージョンアップのときに、日本からのケースコントロールスタディが4つほど参照されていて、それがかなり大きな影響を与えていたと思います。特に性別の解析をされていますけれども、女性においてどうも効果が大きいというような、それを示唆するような表を作成していて、その中では日本のデータというのはかなり重要視されていました。  ただ、それでも最終的にはインサフィシャント・エビデンス、観察的な研究なので今までの結論を覆すまでには至らないという判断でございます。 ○森山委員 逆に言うと、日本はある程度そういう意味で注目されたので、こちらでちゃんとしたスタディなりを今後組めれば、非常に影響力は考えてよろしいですか。 ○祖父江委員 もちろんそれはRCT等が行えれば、日本に限らず世界に発信する重要なデータになると思います。 ○森山委員 どうもありがとうございました。 ○垣添座長 よろしゅうございますか。では、大変御苦労様でした。今後の非常に重要なガイドラインかと思います。  続きまして「CT検査等について」ということで、まず金子委員からCTによる肺がん検診の現状について資料4に基づいて御説明をいただき、その後、中山参考人から「低線量CTを用いた肺がん検診の有効性評価研究の状況」について、資料5に基づいて御説明いたしたいと思います。  では、まず金子委員からお願いいたします。 ○金子委員 今回、初めて参加したので、どういうものかよくわからなかったので、かなり散文的な発表になってしまうことを御容赦ください。  まず復習で、皆さん改めて言うことはないかもしれませんけれども、先ほどから問題になっている胸部のレントゲン写真です。今、話題になっている間接写真、これは実は間接ではなくて直接写真なんですけれども、大きさが違うだけですから。主に普通、間接写真で見つかってくる大きさは3センチと言われています。このくらいのものが普通です。そうしますと、半分ぐらいがリンパ節転位があったりして進行がんになってしまいます。限界としては1.5センチくらいで、このくらいになってくるとかろうじて見つかるということですけれども、これ以下ですとなかなか見つかりません。このくらいで見つかりますとかなり早い時期なんですけれども、なかなかそれが難しいという状況があります。  例えば、こういう症例ですね。この写真は、ほとんど正常というふうに読まれています。  ところが、正面だけでははっきりわかりませんけれども、側面を取りますとこの辺に腫瘤があるんですが、なかなかこれも指摘できません。  ところが、CTですね。ここのところの断層写真、輪切りをしてみますとこんな大きな腫瘤があるわけです。このくらいのものがあっても、これはちょうど心臓に隠れてしまう。ちょうどこの辺に入ってくるのでわからないということで、この単純写真は一見非常によく見えるんですけれども、かなり盲点が多いということです。こういうところにも実はかなりの肺が隠れているんですけれども、こういったところにあるとこんなに大きなものがあっても見つからないことがあるということです。  ですから、肺のこういうところにあれば1.5センチくらいでも見つかりますけれども、このくらいになると5センチでも見つからないことがあるというわけです。  一方、これもほとんどわからない。正常例だと思うんですけれども、これも断層、CTを撮ってみますと、ここの辺りですね。後から見ると、もやっとした影があるんですけれども、こういうもやもやとした影があります。胸部レントゲン写真は濃度分解能ということで、白黒の差がなかなかわかりません。特に最近の高圧撮影となりますと、全体がよくわかる割にはフラットになりますから、なかなか見つからなくなってきています。ところが、CTの場合は濃度の差が非常によくわかりますので、淡いもやもやとした影もよくわかるというわけです。  そういうことで、このレントゲン写真とCTを比べてみますと、通常CTというのは普通の病院で撮っているCTですね。この場合ですとこの盲点、つまり心臓ですと横隔膜に隠れるところが普通のレントゲンではかなりありますけれども、通常のCTでは全くないわけではないですね。やはりどうしても見えにくいところがありますけれども、少ないですね。先ほど言ったような淡いもやもやしたような影、こういったものがなかなかレントゲン、普通のX線ではわかりませんけれども、通常のCTでは非常にわかりやすいということです。  画質の安定というのは普通のレントゲン写真、今CRというものがありますけれども、いまだにやはりX線のフィルム、銀粒子を使ったX線が多いと思いますが、この場合は一発勝負といいますか、撮影したところで終わりですから、どうしても少し白っぽい写真が出る、黒っぽい写真が出るというような不安定さがありますけれども、CTの場合はコンピュータ処理しますのでかなり安定した状態ですべて表示することができるということです。  あとは診断支援、コンピュータを使った診断支援ですね。これもX線での診断支援はいろいろ研究されていますけれども、まだ市販されているもので十分なものはないわけです。通常のCTはもともとデジタルデータですので、こういったコンピュータでの処理とか診断支援が非常に容易で、まだ完全に市販しているものはありませんけれども、既に幾つかのグループがほとんど医師の診断以上にうまく小さいものを診断するという装置ができています。こういう診断装置ができるだろうということです。  ただ、値段はやはりX線は安いですけれども、CTは高いです。これは装置の値段あるいは撮影の値段を含めての話です。  被曝ですけれども、先ほど問題になりましたように、X線単純写真はほとんどないに等しいぐらいと思ってよろしいかと思います。なかなか単純写真と通常の被曝の比べ方は難しいんですけれども、大ざっぱに100倍というふうに我々は考えています。1枚と1回を全部肺腺からおなかの辺りを撮るのを比べてですね。  撮影時間は、X線の場合は1秒以下というか、本当に0.0何秒というところですからほんの一瞬ですね。ところが、CTの場合は1枚だけ撮るわけにはいきませんので全部撮りますとかなりの量になります。特に通常CTといいますか、病院で撮るような場合は造影剤を入れるとかいろいろありますからかなりの時間がかかります。読影も同じように、X線の場合は慣れてくれば本当にちらっと見るくらいで数秒で、病気に関しての診断は難しいかもしれませんけれども、病変があるかないかに関しては本当に1、2秒で診断ができると思いますが、CTの場合は特に枚数が多いですから時間がかかります。  更に検診CTあるいは低線量CTという状態になりますと、盲点に関してはほとんどないです。画質に関しては、やはり濃度分解能はこちらに比べればX線の量が大分減りますから劣りますけれども、読影できない量ではないと思っています。安定性に関しては全く同じです。診断支援に関しても全く同じです。値段も同じ装置ですから高いですけれども、通常のCTは今どんどんマルチスライスとか高性能化していますが、検診CTに関してはそこまで高性能は要らないということを考えれば多少安くなるのかもしれません。  被曝に関しては、これも今、話題になりましたけれども、大ざっぱに10倍くらいというふうに考えています。これは、上部消化管の間接撮影の被曝とほとんど同じです。ですから、通常の10分の1くらいですから普通のX線に比べれば10倍くらいという開きがあるだろうということです。  撮影時間に関しては、大体肺尖、日本人の場合は肺のてっぺんから横隔膜まで30センチくらいありますから、1秒間に2センチ移動ぐらいで撮影していきますので、およそ15秒以内に撮影が可能だと考えます。ですから、ほとんど健常人に関しては1回の息止めの間に全部撮影できてしまいます。  ただ、こちらの数秒、0.0何秒に比べるとかなり長いです。ただ、実際には処理能力等を考えますと、15秒ごとにどんどん撮れるわけではありませんので、撮影者の入れ替えなどを考えますとそんなに変わらないかなと思います。  読影時間は、こちらの場合は1センチごとに撮りますと大体30枚の絵が出てくるわけです。最近ですと、機械が更によくなりまして何百枚というものが出てきますので、かなりかかります。慣れてきますと1分前後で読めるという人もいますけれども、10分、20分かけて読んでいるところもありますので、かなりいろいろです。  そういうことで、検診CTは通常のCTに持っているメリットに加えて、被曝を下げるとか、こういったメリットもありますので、X線に比べるとかなりいいだろうということが言えると思うわけです。  これは東京から肺がんをなくす会で、CT検診を世界で最初に始めた団体というふうに認定されているわけなのですけれども、もちろんCTはそのころないですが、1975年から始めました。それまでは胸部の検診といいますとX線が中心だったわけですけれども、そこに喀痰細胞診を導入して始めたわけです。それで、1993年から先ほど言ったような低線量CTを導入してみました。延べ検診した数が2万人くらいでしょうか。  それで、これは会員制でして、会員登録しますと年2回検診を行っています。この導入前が年間3万円くらいで、導入後は年間5万円で年2回の検診をしております。要精検率が先ほども高いか低いということが話題になっていましたけれども、導入前が大体5%、導入後が10%ということで、かなり普通の住民検診などに比べると高いです。これは1つには会員制ということで、ヘビースモーカーの男性が多いですね。ですから、どうしても高くなるのはやむを得ないかということになっています。  その中から発見された肺がんですけれども、導入前のレントゲン写真と喀痰細胞診では43名発見されまして、10万対163という値です。これも、普通の住民検診が10万対50から80くらいですからかなり高いわけですけれども、男性が多いということを考えるとそれほどびっくりする値ではないかもしれません。  ところが、導入をしますとほとんどメンバー的には同じなんですけれども、421ということで約3倍にふくれ上がっています。それで、I期というリンパ腺に転移がないという比較的早い時期、肺がんに関しては早期がんという定義がまだ明確になっていませんので、とりあえずこのI期ということで見ますと大体半数はI期ですね。実際に今日お示しされたデータには住民検診の中のI期率というのはありませんけれども、垣添先生が理事長をされています対がん協会の方がやっています検診のデータを見ますと、全国平均でたしかI期率がまだ30%くらいですね。ですから、かなりこれはこの当時から精度のいい検診をやっていたということがわかると思います。導入後は、それが80%くらいに上がっています。これは、ほかの各地の検診もほぼ同じようなデータです。  更にこれを導入前、導入後の初回の検診と複数回の検診でどのぐらい精度が違うかというのを見てみました。そうしますと、2,500あるいは2,900、これが要するに母数、初回に受けた人で、その人たちが2万3,000回ですから平均10回くらい受けているということになりましょうか。こちらも同じくらいの回数を受けていますから、かなりの人がリピーターで受けているわけですけれども、初回で見ますと最初のところではレントゲンと喀痰細胞診で大体10万対率で392とかなり高い値です。  ところが、複数回になってきますとこれがかなり落ちてきまして139人ですね。ところが、CT導入後ですと、これは実は同じメンバーがずっと引き続いているんですね。もちろんCTが出たということで宣伝されて少し増えていますので、全く今まで全然検診を受けていなかった人が突然スクリーニングをしたわけではないんですけれども、CTを加えますとこれが904に跳ね上がるということになります。ところが、繰り返していきますと340に落ち着いてくるということです。  I期の例を見ますと数は少ないですけれども、導入前の初回はやはり少なくて40%ぐらいしかいっていないんですが、複数回いきますと60%近くなります。更にCTを導入しますと最初はやはり3分の2くらいですけれども、複数回で見ていきますと88%ということで、かなりが複数回定期的に受けていると早期に見つかるということがわかります。  一方、これは要するにオーバーダイアグノーシスとかいろいろありますから、幾らI期が多いと言ってもこれだけでいいとは言えないわけですね。むしろ進行がんが少なくなるということが重要だ。つまり、早期がんというのは皆、長生きするのに決まっているわけですから、むしろ足を引っ張るのは非I期ですね。進行がんが減ることが重要なわけです。  ですから、これを見てみますと、CT導入前はこの非I期の10万対率が235とかなり多くて、複数回繰り返していますと59とかなり下がってきます。それで、CTを導入しますと非I期で最初は301と上がるのですが、複数回繰り返しても39です。これに統計的な有意差があるかどうかの検討が間に合わなかったんですけれども、見掛け上はやはりCTを繰り返していくと進行がんがその集団から減っていくだろうということがあります。  しかも、この東京から肺がんをなくす会は会員制で年2回の検診をやっていますから、この中での途中で発見される肺がんというのは、覚えている範囲ではCT導入後はわずか1例です。導入前はたしか2例くらいありましたけれども、ほとんどない。あるいは、全部把握できているということが言えるかと思います。  これは、導入後のものです。一般的な普通の検診で発見された人は大体5年生存率32%、症状でいくと10%くらいしか生きられないということです。  もう一つ、非常に大規模にやっている日立の健康センターを拝見しますと、やはりベースラインで見つかるのは82%くらいですけれども、ここは社員の検診ですから、必ずきちんと受けています。もちろん間の検診の落ちもありません。そうしますと、2回目、3回目になりますと、数も少ないんですけれども、100%実施して途中から進行がんが全くないということが出てきます。  一方、肺がんをなくす会でどうしてもI期が見つからなかったのはどういうのがいるかというと、まずちゃんと半年ごとに来なかった人、それから誤判定、誤診断がどうしてもあります。これは、初期のときにこういうものが早期がんだと思わなかったということが1つあります。あるいは、精検機関でせっかく病院に送ったんですが、そこですとなかなかがんという診断がつかなくて、もたもたしているうちに進行がんになってしまったということはあります。  あとは、小細胞がんとか、非常にがん自体の悪性度が高くてみるみる育ってしまったということもありますので、こういうのはどうしてもしようがないんですけれども、この辺に対していろいろと今後対策をしますと、ほとんど見落としがなくなるということになります。  そういうことで、日本CT検診学会というのではこういう見つけたものに対してどういうようなフローチャートで見つけていけば失敗がないかというものもつくっております。  あとは、先ほどもちょっと言いました自動診断ですね。これは徳島大学の仁木教授のグループでつくっているものですけれども、こういったもので自動的にCT、画像から異常を見つけていく。  この例ですと、1年前、半年前はなくて、突然ここに小さい影が出てくるんですけれども、医者はここのところに気付かなかったのですが、コンピュータの方はここを指摘しているというようなことで、こういう小さいものも確実に指摘しますと、先ほど各県によって随分違うということもありましたけれども、このように非常に安定して全国どこでもできるだろうということになります。 こういったソフトでできるわけです。  まとめですけれども、X線からCT検診を行いますと発見率が明らかに向上する。これはどこでも認めてもらえることだと思います。その中の病気のI期の率も高い。これも確かだと思います。  これはまだ本当にそうかはわかりませんけれども、繰り返して検診を行っていきますとその中での進行がんの数が減少していくだろうということですね。あとは、機器の進歩によって被曝の低減はまだまだ図れるんじゃないかと思います。  一方、医師側の基準としまして、診断基準とか指導区分も完成してきますので、こういったものが普及していけば全国レベルも安定してくるだろう。そしてまた、全国どこでも均一な画像を得ることができるということがCTの特徴として挙げられるかと思います。 診断精度の診断支援装置が普及すれば、医者のレベルの安定化というのはなかなか難しいと思いますけれども、機械に関してはかなり普及を図れるだろう。  あとは、これは今日は言いませんでしたけれども、肺がん以外の肺気腫ですとか、ほかの部分のがんも見つかりますし、それを使っての禁煙指導の効果も高いということが言われております。  ただ、全国的に展開するに当たっては、この精度管理をきちんとするということが非常に重要ではないかと考えております。以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。  では、続きまして中山参考人から御発表いただきたいと思います。 ○中山参考人 大阪府立成人病センターから参りました中山でございます。時間がございませんので、資料5を用いまして御説明させていただきたいと思います。  私の資料の流れですが、国内の研究、国外の研究という形に分けまして、低線量肺がんCT検診の有効性評価の研究をまとめさせていただいております。  まず2ページ目をごらんいただきます。「国内の研究」として、評価指標として発見率、腫瘍径、生存率などの中間指標のみとしている研究を列記しました。これは今、金子委員の方から少し御解説がありましたから、時間の関係上、省略させていただきますが、発見率だけを最初の方に御発表がありました老人保健事業からの今の通常の肺がん検診の発見率を比較しますと10倍程度の高い割合となっていますが、これは全く対象集団が違っているためでして、一般的に行われている検診は女性が2対1と、女性が多く受けておられるのに比べまして、国内で行われておりますCT検診は男性のヘビースモーカーを重点的にリクルートして、男性が2、女性が1という形で受診させておりますのでこのような形になったということですから、実際に発見率としてはおおむね3倍から5倍程度、従来の検診より高いというふうに御理解いただければと思います。  次の3ページ目に「評価指標に不利益を含めた研究」をアップさせていただきました。これは当院の児玉が報告したものでございますが、CTで発見されまして高分解能CTという精密検査で陰影のほぼ100%がすりガラス状陰影と判断される。これは臨床的には非常に進行速度が遅いものというふうに判断されるわけでございますが、これを何らかの理由で2年以上フォローアップしたものを映像プロスペクティブに解析いたしますと、確かに2年以上たちますと半数は増大しますが、半数は大きさは変わらない。変わらないけれども、患者さんの希望等々もございまして切除したのが3例ありますと、その3例中1例は肺がんだったということで、肺がんであっても少なくとも2年以上は大きさが変わらないものが存在するというわけでございます。  なお、増大するものでありましても最長は10年間フォローしているのですが、8ミリから25ミリに増大された方がおられました。10年でこのくらいに大きくなられましたけれども、実際に切除してその半年後に別の病気で亡くなられたということがありまして、この患者さんも実は放っておいてもこの病気自体では亡くならなかったのではないかと考えられますから、このpureGGOと呼ばれるものに関してはある程度の割合で過剰診断、放っておいても命には別状のないがんであるという可能性があると考えるべきかと思います。 次のページをめくっていただきますと、「評価手法に肺癌死亡率を含めた研究」でございます。国内のものとしましては、私が現在主任研究者をやらせていただいていますジャパン・ラング・スクリーニング・スタディというものがございます。CT肺がん検診に関しましては、平成11年度に研究計画を立案する班というものが単年度で行われまして、この時点でランダム化比較試験等々に関しても研究計画を立てさせていただきました。しかし、なかなか当時はランダム化比較試験がかなり金額がかかる。それから、時間がかかるということで、実際には予算がつかなかったということで、平成13年度よりコホート研究という形で研究がスタートしております。スタートから昨年までは鈴木隆一郎が主任研究者をし、今年から私が主任研究者を担当しております。  その下は研究デザインでございますが、低線量CTを40歳以上でいつでも受診したものをCT検診群とし、一方、同時期に今までの従来型のレントゲン検診を受診してCT検診を受けていない者を通常検診群としてそれを登録し、受診者全体を追跡し、死亡を把握するというのがこの研究のデザインでございます。  次のページを見ていただきますと、全国9地区でCT検診、通常検診群を登録して、CT検診群では4万7,000、通常検診群で9万1,000という非常に大規模の受診者を登録しております。  現在までの進捗状況ですが、昨年度までのところでほぼ千葉から岡山に至るまでは追跡調査が終了しておりますけれども、今のところ新潟、愛媛に関しましては個人情報保護に関するいろいろな抵抗がございまして、なかなか研究、追跡調査がうまくいっていないというところですので、まだ論文として発表する段階にはございません。そういうところで、これから出すデータに関しましてはまだまだ修正がかかりますので、その取扱いは慎重にしていただきたいと思います。  その下は、図3です。この研究には少し問題がありまして、非常に初期の検診のデータということもございまして、研究自体、検診自体が単年度で行われたところが多々ございます。そこで、毎年検診を受診したという方がそれなりに多くはなくて、1回だけCT検診を受けたという方がかなり多いという集団でございますから、繰り返し検診の効果を見ているわけではございませんで、少なくとも1回受けたら一体どのくらい効果があるのかということしか見られない可能性があるという研究でございます。  その次のページをめくっていただきますと、現在のところまでの「異動状況」でございます。新潟、愛媛に関しましては途中までの追跡になっておりますので、2002年の12月31日までの追跡になっておりまして、残り7地区に関しましては2005年12月31日までの追跡調査となっております。  死亡に関しましても、追跡年数として大体CT検診5.4年、通常検診7.0年という形になりましたので、すべての病気を含めた死亡率に関しましても結構な大きさになっていると思います。  その下が、年齢等々を加味しなかった「粗死亡率」でございます。男女に分けておりまして、CT検診群と通常検診群とを比較しておりますが、当初の予想ですとCT検診群をたとえ1回でも受診するとかなり肺がん死亡が減るのではないかということが期待されたわけですが、実際のところ男性で115名、粗死亡率で10万対70.0という形になります。これは、横にあります通常検診群の男性の111.5に比べると見た目上、下がっていることでCT検診群の効果があるようには見えますが、肺がんも含め、すべての死因を含めた全死亡で比較しましても、CT検診群と通常検診群の粗死亡率を比べますと、CT検診群の方が全死因死亡率が低いという傾向がございますので、CT検診の方が通常検診群に比べて死亡しにくい集団であるということがわかると思います。  相対死亡率といいますのは、通常検診の死亡率を1として、CT検診ではどのぐらいなのかという形でございますが、そういう形で見ますと全死因が0.54、肺がん死亡が0.63になりますので、この比を取ってみますと1.17という形になりますから、男性に関しては粗死亡率で見ますと肺がん死亡は余り減っていないという形になります。  女性に関してはどうかというと、女性に関しては肺がんの粗死亡率が15.4と、通常検診32.0から見ると半分に減っております。同じようなことをしてみますと、相対死亡率は肺がんで0.48、全死因で0.54という形になりますので、ちょっと女性の方がCT検診の分がいいかなという形になっております。  その下に、「期待死亡数と実測死亡数」ということを出しました。これは、両群の年齢構成が非常にばらついております。CT検診の方が若干若い人が多いということがございますので、年齢で調整して期待死亡数というものを計算し、その比を出したものでございます。そうしますと、男性のCT検診群で実測期待比、O/Eと書いてありますが、その下の数字が0.72、通常検診は0.73という形ですので、男性においては余り差が出ていないという形でございますが、女性においては実測期待比が肺がんで0.54、通常検診で0.85ということでございます。全死因でも女性は若干差が出ていますが、どうも肺がんの差の方が大きいような形が出ていますので、このデータだけから解析してみますと男性にはちょっと効果が少ないのではないか。女性に対しては効果が大きいのではないかというようなことが推察されるわけでございます。  次のページに結論を出しておりますが、5年強という平均追跡期間においてCT検診群、通常検診群とも基本的には一般集団に比べて全死因において死亡しにくい。いわゆるセレフ・セレクション・バイアスというものが働いているわけでございます。その辺を補正するいろいろなテクニックはあるとは思いますけれども、少なくとも今のところではCT検診をたった1度受診しただけでは肺がん死亡率が極端に減少するということは期待できないというわけでございます。  女性においては、CT検診の受診により肺がん死亡率が減少することが示唆されているわけでございますが、今まで過剰診断のところでも申しましたけれども、CT検診で発見される大半のすりガラス状陰影というのは非常に進行速度がゆっくりとしたがんでございますので、5年という追跡期間でいいのかどうかという問題もございますから、今後この研究は更に延長して追跡をしていきたいと思っております。  次のページからが「国外の研究」でございます。国外の研究として「評価指標として発見率・腫瘍径・生存率などの中間指標のみとしている研究」を4つ挙げさせていただきました。ELCAPといいますのが一番有名なコーネル大学のヘンシュケなどかやっているスタディでございます。その隣のI−ELCAPというのは、同じプロトコールで世界のデータを集めた形ですので、インターナショナルELCAPというデータでございます。隣がLung Screening Studyという研究でございまして、これは今、動いている大規模RCTの前に患者さんが本当に登録していただけるのかどうかを調べた実行可能性試験でございまして、1,600人程度のミニRCTでございます。それから、Mayoの研究は祖父江委員からも説明がございましたが、シングルアームでCTを受診した者のみの研究でございます。  発見率等々に関しましては日本のデータよりもけたが1つ大きいわけでございますが、これは非喫煙者を含まない研究になっておりまして、いずれも喫煙者、それも重喫煙者が大半を占める研究であるということと、それから日本人と欧米人の肺がんの罹患率の差というものが非常に大きく効いていると思います。これを見ますと気付きますことは、ELCAPとI−ELCAPというのはI期率等々に関しましては日本のデータと変わりませんが、Lung Screening Studyという研究に関しましてはI期割合が53%、繰り返し検診が何と25%ということで、非常に成績が悪いという形で、日本の単純レントゲンの検診と余り変わらないような研究成果が得られております。Mayoの研究等におきましても、繰り返し検診でI期割合が50%ということで同じような悪い成績が出ております。  それから、「評価指標に不利益を含めた研究」ですか、昨年『New England Journal of Medicine』に発表されましたI−ELCAPの場合ですと、手術関連死亡というものが0.5%という形で報告されています。それから、Mayoの研究では腫瘍体積の倍加速度というものをコンピュータ上で計算しまして、平均813日というふうに計算されました。これによると、大体3ミリの腫瘍が15ミリになるまでに16年かかる。では、これらを見つける意義があるのかという形で主任研究者が述べておるわけでございます。  次のページをお願いいたします。次に「評価指標に肺癌死亡率を含めた研究」で、現在動いている2つの研究を御報告いたします。  アメリカではNational Lung Screening TrialということでNLSTというものが現在スタートしておりまして、2002年に開始され、もう2004年に登録は終了しております。5万3,500人という非常に大規模な研究でございまして、肺がん死亡率はレントゲン検診群に比べて20%の減少を予想しているということでございます。CT検診は3回行いまして、追跡年数は4.5年と非常に短い期間でございまして、最終解析予定は2009年でございますが、中間解析に関しましてはひょっとすると来年の後半くらいには出されるのではないかという形であります。  それから、オランダ・ベルギーで行われておりますNelson studyというものがございます。これは2003年に開始されまして、2万8,000人規模の研究でございます。28%の死亡減少で検出力は80%を想定しておりまして、これもCT検診は4年、3回行います。それで、対照群は無検診、検診を行わないという形になっております。追跡年数は10年という形でございますので、今のところは登録は進行中という形ですから、これは多分2016、2017年くらいにデータが報告される形になると思います。  それから、祖父江委員からも御報告がありましたが、実際に死亡率を計算したというのは先ほどのスエンソンのMayo Clinicの研究でございますが、大体5年未満の追跡と書いておりますけれども、基本的には4年間の追跡によりまして、実際の死亡率は1970年代に行われたMayo Lung Projectの死亡率と変わらないという形で報告されております。  そういうことで、手短に国内外の研究をご紹介させていただきましたが、今後のCT検診に関する提言ということを次のページに述べさせていただきました。今まで私が報告しました日本の研究、それからMayoの研究等々を考えますと、低線量CTによる肺がん検診を現時点で普及させれば、容易に肺がん死亡率を大幅に減少させるということはそう簡単には期待できないと思います。現状の単純検診による肺がん検診に比べて、ある特定のリスクグループに対して特定の受診勧告を行えば肺がん死亡率を減少させることは可能になるかなということは想像できますが、確定的な証拠はないということ。それから、高頻度に発見される肺胞上皮置換型の高分化腺がんがどのくらい過剰診断というものを含んでいるかも定かではないということで、有効性評価の研究と不利益に関する研究の両方が必要だろうと思います。  もちろん欧米のデータを期待するというやり方もございますが、欧米の研究の場合はいわゆる肺胞上皮置換型の腺がん、今まで申しましたpureGGOと呼ばれるものが非常に少なくて充実型の低分化腺がんが多いというデータがございます。それから、Lung Screening Studyにおいては進行がんが多く、CT検診群で41%ということで、単純レントゲン検診の45%と余り変わらなかったというデータがございます。  読影の欧米の技術の差ばかりではなくて、人種や環境の差が存在する可能性がありますので、国外の研究経過を待っていて、もしネガティブなデータが場合には、国内の低線量CTの研究も含め、肺がん検診に関しまして致命的なダメージを与えることが懸念されますので、我が国がこのCT検診というものを開発した国でありますから、開発者として、開発国として、質の高い研究結果を世界に発信していく義務が存在すると私は考えます。  そこで、以下の研究計画を提言するわけですが、まず「有効性評価に関する研究」でございます。もちろん第3次対がん総合戦略研究事業におきましてJapan Lung Screening Studyは私を主任研究者としてやっておりますが、昨今、統計法改正ということがございまして、受診者の死因を把握する標準的な方法でございます人口動態調査死亡小票の閲覧による死因の把握というものが極めて困難な状況にございますので、是非関係各位の御協力をお願いしたいと思います。  そのほかの新たな研究計画としましては、前向きな研究計画としまして、やはりランダム化比較試験というものが期待されるわけであります。これは国際的にスタンダードな研究手法であり、最も偏りが混入しにくいということと、得られた結果が非常に理解しやすいということでございます。  研究のなぜ利点があるのかというと、本人から同意を得ていますので、異動や死因を把握する際に個人情報保護を理由に拒否される可能性が少ないというメリットはございます。それから、この研究で得られた成績は実際に事業化された場合の精度管理の基準値として利用できるなどの利点もございます。  我が国では今までこういうことをやってこなかったということですが、それ以外の研究手法をやってたとえ有効性があるという結果が得られたとしましても、信頼性に疑問があるというような批判を国内外から招きやすいところがございますので、大規模ランダム化比較試験がすぐにできないとしても、Lung Screening Studyのような研究の実施可能性を見極めるための小規模な比較試験を今すぐにでも開始するべきではないかと考えるわけであります。  それから、ランダム化割り付けというものが難しいということでありましたら「コホート研究」という手法もございます。この場合は、前向きにということで基本的には受診者にインフォームドコンセント、追跡をしますよ、あなたの死因を把握しますということを本人から得るという形でやると、研究としてはもう少し楽になるのではないかと考えております。  それから、「後ろ向き研究」として既に行われたデータを評価する形としましては、今までやってまいりました「症例対照研究」というものがございます。ただ、これはやるとしましても実施の条件としましては実施なり対象者名簿というものがきちんと存在し、それがきちんと保管されているかどうかということが重要でございます。昨今の個人情報の問題等で名簿等がどんどん廃棄されていくんですが、これが保管されていること、それから受診歴がすべて把握できること、それから喫煙歴や喫煙指数が把握されていることなどが必須でございます。実際に研究をやるとしましては、対象集団の受診率としてやはり50%くらいないとサンプルサイズが非常に大きくなってしまいますので、その辺ができるかどうかという問題がございます。  それから、「地域相関研究」というのもあるとは思いますけれども、この場合も受診率は非常に高くないとデータは出にくいのでございまして、今のところCT検診でそのくらい受診率の高い地域が存在するかどうかというのは難しいところではあると思います。それから、「不利益に関する研究」でございますが、先ほど御説明しました児玉の研究のように、すりガラス状陰影を呈する病巣は各病院で個別に追跡されているわけですが、これらを国内で全部登録して追跡調査を実施するという方法で、過剰診断の割合がある程度わかるのではないかと思います。こういうふうなものは、今すぐにでも是非全国規模で登録され、やられるべきではないかと思います。  そういうことで、私からの説明は以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。大変限られた時間の中でCT検診の現状と将来に関して御発表いただきました。時間が大変限られておりますが、今の金子先生と中山先生の御発表に対して何か御質問などありましたらどうぞ。  では、森山先生どうぞ。 ○森山委員 CT検診に関する規模の大きな研究は今まで全然日本でやられなかった。やろうとしなかったのではなくて、皆やろうとした。鈴木先生もそうだったと思うけれども、研究計画を出したんだけれども、研究費のことで皆けられちゃうんです。鈴木先生がたしか出したときは12億で出しているんだけれども、けられているのでこういう、この必要性というのは前からわかっていてやろうとしているんだけれども、それだけの理解が得られなかった。本当に先生の言うとおり今すぐにでも取り掛かるべきだと思います。  それからもう一つ、不利益の方なんだけれども、不利益というのは年代によって変わっていきます。それは先ほど金子先生が言った中での解釈でも必要なんだけれども、現状では結節の中にはがんではなかったものも入っていたと思うんです。はっきり言って、GGOの中にがんでないものも混じっています。これは、まず混じっていると思います。がんであるかについてはこれは病理が決めているので、人間が決めているので、どこか境界病変が入っている。今、GGOでは手術をして、その後、再発する人というのはいないわけです。そうすると、それはどこまで追っていいのか。今度はただ不利益が幾つだというのではなくて、不利益をなくすための研究も並行して始めなければいけないと思います。  いずれにしても、何か新しい班をつくってやらないと、現状ではとても有効性ということははっきり言えないので対策型には入れられないので、それを入れられるかどうかという結論も出すための何らかの組織づくりを是非お願いしたいと思います。以上です。 ○垣添座長 中山先生がさっき言われた小規模のランダム化比較試験を今すぐにでも開始すべきであるというのは、どのくらいのことを考えておられるんですか。 ○中山参考人 やはり基本的には、そういうことに受診者が参加してくれるかどうかということが一番疑問視されているわけです。検診という分野でくじで割り付けられることに一般の方が参加してくれるかどうかということにですね。ですからやはり2,000人程度のものを考えて、死亡率を見るのではなくて、ランダム化比較試験に一般の方が登録してもらえるかどうかということを検証する。それをやった上で、もう少し大規模にできるかどうかということを検討し、できるのであればもう少し大きな数でやるというスタンスを考えております。 ○垣添座長 ほかにいかがでしょうか。  では、金子委員どうぞ。 ○金子委員 もちろんRCTが一番いいのはわかり切っているんですけれども、なかなか現実は確かに費用点で難しい。それから、例えば薬などだったら患者さんが何を飲んでいるかわからないから、プラセボを飲んでいるか、本当の薬かわかりませんけれども、CTの場合は受けた、受けないというのがはっきりわかってしまうわけですから、本当の意味のRCTは逆に言えばできないのではないか。  本当に言えば、例えばCTは片方の人は撮るは撮るけれども読影しないというところまでしないと、例えば被曝の面まで考えたら片方は被曝しているわけですし、片方は被曝していない。それからまた逆に、今はCTもこれだけ普及していますから、あなたは受けてはいけないという人を無理やり受けさせないわけにもいきませんから、実際は難しいと思うんです。そうすると、実際に現実にかなりやられているデータをきちんと把握すれば、先ほどの対象というか、日本全国の実際の統計というのはかなり出てきているわけですから、その中の人たちも実際に検診を受けたり受けなかったりしているわけですけれども、ほとんど野放しになっている人たちを逆に言えば基準にして、きちんと検診を受けた人とを比べていくということでも、全日本人を対象にしてと、その検診を受けた人を比べていくというようなことでも、ある程度その有意差というのは出していけるのではないかと思うんですけれども、そういう研究というのはだめなんでしょうか。 ○中山参考人 全受診者、全一般住民といいますと、既に肺がんにかかっておられる方等々を含めたデータになります。では、その検診を受けた方がどうなっているかを組織だって把握する方法がこの国にはございません。ですから、例えばがん登録があるところであればいいかもしれませんけれども、それも限られていますし、あっても個人の照合が難しいということもございますから、先生がそう簡単におっしゃるようには実際はできないと思います。既存のデータを用いるとしても、その予後を把握するための組織づくりや枠組みが整備されていないという段階ですので、そんなに簡単にはできないと思います。 ○金子委員 もちろん簡単でないことはわかっているんですけれども、逆にがん登録ができていないことが一番の問題ですね。 ○中山参考人 がん登録もそうですし、それから一般で行われているCT検査の受診者の名簿に関しても照合して研究に用いるような形にはできていないと思います。 ○金子委員 だから、全国民あるいは一つの県でも府でもいいんですけれども、その中でもちろん検診を受けている人も受けていない人もいますが、逆にCT検診を受けている人というのは本当にごくわずかですね。その辺のところのバイアス、あるいは実際にがんに罹患している人がいても、全人口からすれば幾ら肺がんが多いと言ってもそんなに多いわけではないから、いろいろなバイアスを含めた上での日本人あるいは大阪府民なり全人口と、あるいはごく少数でもいいけれども、きちんとCT検診を受けている人との年齢階級で補正していけば出るんじゃないかと思うんですけれども。 ○中山参考人 Japan Lung Screening Studyのところで御説明しましたけれども、肺がん死亡率に関しては単純に比較しますと差が出ていますが、全死因死亡率でも明らかに差が出ています。それで、がん登録で照合したとしても、がん死亡に関してはわかりますけれども、それ以外の死亡をしているかどうかについてのデータはがん登録は持っていません。ですから、全死因死亡率で下がるかどうかということを集団で比較することができません。  ですから、肺がん死亡率だけを先生がおっしゃるように比較するのであればそういう研究も可能であるかもしれませんけれども、CT検診を受診した集団と日本国民全体を含めて全死因死亡率に差があるかどうかを評価する仕組みがありません。ですから、幾らその研究をやったとしても結論は出ません。 ○垣添座長 ここまでにしましょう。今日は肺がん検診の第1回目ですからここまでにしておいて、余り回数も多くないんですけれども、次回以降この問題はもう少し議論できるかと思います。  それでは、その他の部分で事務局から幾つか御報告いただけますでしょうか。 ○古元課長補佐 ありがとうございます。手短に資料6、7に沿って簡単に御報告をさせていただきたいと思います。  資料6でございます。おめくりいただきまして1ページ目、保健事業が平成20年度から大幅に改変になりますということを御報告させていただきます。左側がこれまでの取扱いということで、中ほどの真ん中辺りに「がん検診」とございます。こちらは昭和57年から老人保健事業、その後平成10年度に一般財源化した以降は、現在は法律に基づかない市町村事業という位置付けになっております。こちらが右側、平成20年度からは努力義務ということでございますが、健康増進法の中に位置付けられるという仕組みになる予定でございます。こちらは御報告でございます。詳細は2ページにもございますが、こちらは後ほどごらんいただければと存じます。  次に資料7でございます。こちらも現状の御説明でございまして、市町村等で実施する際にこれまで結核予防法に基づく検診等とも肺がん検診は密接な関係があるだろうということで参考資料としてお出ししております。  おめくりいただきまして1ページ目でございます。平成17年4月、旧結核予防法の改正に伴いまして、それまでの一律のX線検診から高齢者等の結核を発症しやすい方などにX線の対象者が限定されたという経緯がございました。こちらについては後ほど3ページをごらんいただければと存じます。  また、2つ目のマルでございます。他方、労働安全衛生法におかれましては現時点においても常時使用する労働者に対し、年1回の胸部X線検査が義務付けられてございます。こちらについても、後の資料をごらんいただければと存じます。以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。何かございますか。  では、坪野委員どうぞ。 ○坪野委員 資料6について質問ですけれども、基本計画ができてがん検診の受診率50%という数値目標が導入されましたが、それをどういうふうに実施するかがこれからの課題だと思います。  その中で、がん検診は今まで法律の位置付けはなかったけれども、健康増進法の省令を改正することで市町村の努力義務にするというふうに整理されていますが、努力義務であっても市町村が各自の努力で現にやっている現状の維持ということにとどまるのではないか。ですから、そのスキームで受診率50%を達成するというのはなかなか困難ではないかと思います。質問は、資料の2ページに平成20年度以降の健康診査の改正のところで、右の下に健康増進法を括弧で点線でくくってあるところで、ここでがん検診などは同法19条、これは多分19条ではなくて9条の間違いだと思いますが、それに基づく省令に規定した場合というふうに書いてあります。この部分の省令の改正というのはもう既に行われたことなのでしょうか。あるいは、これから行うということなのでしょうか。そういう質問です。 ○古元課長補佐 これは、現在検討中ということでございます。 ○坪野委員 現在検討中で、これからやるということですか。 ○古元課長補佐 そういう方向でということでございます。 ○坪野委員 がん対策基本法ができて、がん検診を50%にするということで国民も関係者も非常に大きな期待をしていると思いますが、恐らく50%ということを達成するためには、この改正だと基本的に現状どおりということだと思います。それで今二十何%のものを50%に上げるというのはなかなか困難だと思います。  本来であれば、だれがこのがん検診をやるのかという問題も、どこかでアジェンダとして取り上げるべきだったのではないかと思っていますので、意見として述べさせていただきたいと思います。 ○垣添座長 私も大変それを危惧していまして、現状約20%を50%にするというのは容易なことではないですから、これは老人保健課長、次年度から手を離れると先ほどあいさつの中でおっしゃっていましたけれども、現状でどう考えておられるか。それから、それを引き継ぐ武田室長の方もこの50%の件に関して御発言をいただけませんか。 ○鈴木老人保健課長 まず1つは、私もやはりじくじたるものがあるんですけれども、先ほど10年前に老人保健課の補佐をしていたと言いましたが、そのときに資料1か2の説明にもありましたけれども、一般財源化ということをしまして、ここに書いてあるように今は法律に基づくものではない検診として市町村が実施しておられるわけですが、先ほど坪野先生から現状と新しい健康増進法の世界でも変わりはないじゃないかという御指摘がありましたが、少なくとも法律に基づく努力義務ではありますけれども、省令の事項の中にきちんと書き込むということは、法律の世界の中できちんとした位置付けができたということではあると思います。ただ、それがすぐ20%が50%にいくということではないというのはおっしゃるとおりだと思います。  それからもう一つは、確かに今20%のものを40%、50%と上げていく具体的な方法というのをこれから大車輪で少し午後の議論も含めて検討していただかないといけないと思いますが、今のまま市町村が努力義務ということできちんと上がっていくのか。それとも今、坪野先生が御指摘になったように、実施者のどこが主体となるべきか、どういうふうな実施者なり受診者のインセンティブを考えていくべきかということも含めて検討していくべきかというのは、今日の午後も含めてできるだけ早い段階で私たちもまとめなければいけないと思っております。  3つ目は、さっき大分県のお話がありまして、座長もおっしゃいましたが、単に受診率の問題だけではない、受けた人の数は決まっていますけれども、対象者をどういうふうに絞るのかとか、受けた後にどういうふうにがん発見率まで導いていくのかという、精度管理なり評価の指標というのは非常に大事だと思いますので、これは20年度から引き継いでいただく室長とともに、なるべく早くまとめさせていただきたいと思います。 ○垣添座長 どうぞ。 ○内田委員 今のことに関係してですけれども、私はこの20%から50%に上げるという問題に関しては、今回保険者に義務化された特定健診といかに連携させるかということが非常に重要な課題だと思っております。  その場合に、やはり金の問題が出てくるんですね。費用負担で、特定検診にしてもがん検診にしても初診料とか再診料という部分がありますから、そこの費用負担をどうするかということが非常に難しい問題ではないかと思います。  それで、特定検診の対象者に対してがん検診も一緒に連結して実施するというふうなことに持っていけば、市町村の責任のままでも実施率は大幅に上がると思います。検診受診率を上げるということを言っていますから。ただ、その費用負担を予算を付けて市町村が負担してもらうということが、本当は保険者はがん検診に関しての費用負担を絶対にイエスとは言わないというふうに思いますので、そこの調整が非常に厳しいかという感じがしますけれども、とりあえずがん検診に関しての費用負担の部分をしっかり行政の方で持てるというだけのものを持ってこないと、受診率の向上というのは看板だけに終わってしまうという感じがします。 ○垣添座長 今、内田委員が御指摘の点は非常に重要なポイントになってくるかと思います。もちろん今の段階で室長が答えられる話でないということはよく承知していますが、何か御発言いただけませんか。 ○武田がん対策推進室長 今、鈴木課長の方から現時点で考えられることということでお話いただいたことに尽きると思いますけれども、午後の検討会でも精度管理のお話がございますが、技術的な精度管理という狭義のもののみならず、がん検診全体のマーケットがどれくらいになるのか、どのように効果的なターゲッティングをしていくのかということも含めて、ただ単に受診率を向上させる事業に限らず、総体的に最終的なアウトカムに資する、死亡率減少に資するような事業評価の設定でありますとか、そういうところも含めまして、実際の事業行程のところも更にしっかりと検討していくことがまずは大事なのかなと思っております。  もちろんそのほかにも根本的なところでの位置付け等重要なところはあると思いますけれども、まずそのようなところも含め、総体的かつ系統的に検討してまいりたいと考えております。 ○坪野委員 今の点は大変難しい問題なので、すぐに答えが出るものではないと思いますが、私も委員として発言する責任があると思ったのであえて発言させていただきました。今回、せっかく50%という具体的な数値目標が出ましたので、それをだれがやるのか、どこから費用を出すのかというのが、非常に国民にとっても関係者にとっても重大な問題だと思います。ですから、それを今回健康増進法を省令で改正して市町村の努力義務にするという形のことが、私が知る限りでは公の場できちんと議論されてこなかったと思います。けれども、それに関しては国民に対する説明責任ということもあろうかと思うので、仮にそういう政策をとるにしても、相変わらずだれが幾ら費用を出してやるのかという問題が残ると思いますので、その点については今後検討をしていく必要があると思います。 ○垣添座長 がん対策基本計画ができて、あれを基にして今、都道府県の基本計画の作成が進んでいますけれども、結局今年の12月の平成20年度の予算要求に関してがん対策、特にがん検診の部分をどういうふうに要求していくかということに話が収れんしていくのではないかという感じがいたします。それで、やはり50%を実現するためには費用負担をどうしていくかというようなことをきちんと議論しないとどうにもならないというふうに私も思っています。  では、午後の議論もありますのでとりあえずここまでにして、あとは今後のスケジュールを事務局からお願いします。 ○古元課長補佐 それでは、資料8の「今後のスケジュール(案)について」をごらんいただきたいと存じます。  1ページおめくりいただきまして、1ページ目は「今後のスケジュール(案)について」で、第1回が本日でございます。第2回は8月から9月ごろを予定しておりますが、「胸部X線、喀痰診検査の現状について」、これは先ほどの結核予防法改正等に伴う市町村の現場での状況も含めていろいろ御議論いただければと思います。あとは事業評価・精度管理の在り方について、及び本日いろいろと御議論いただきました大分県の事項でございますとか、そういったことについて御報告もさせていただきたいと存じます。  その他、議論をいたしまして、第3回検討会で報告書の案のようなものをまとめさせていただき、それについての御議論をいただくというような進め方とさせていただければと考えております。以上でございます。 ○垣添座長 これだと、結局CT検診に関しては何か非常にあいまいな形になって終わってしまいそうな気配で、少なくとも私は研究計画だけでも提案できればと思っていたんですけれども、それも次回は難しいでしょうか。 ○古元課長補佐 本日は御議論が途中となりましたCT検査につきましては、まだ議論の内容が残っていると思っておりますので、それも含めて次回、できる限りさせていただきたいというふうには考えております。 ○垣添座長 祖父江委員を中心にした、現状の解析から併用法に関してはきちんとした結論が出せると思いますから、この肺がん検診に関しての一応の結論はまとまると思いますけれども、国民的関心事であるヘリカルCTの肺がん検診に導入する、特に対策型検診としてどう考えるかということに対して、この検討会が何も触れないというのは大変具合の悪い話だと思いますので。  では、大内委員どうぞ。 ○大内委員 先ほど中山参考人からもお話があったように、今後どうするかということが大変重要でして、過去20年、30年前のデータに基づいてがん検診の在り方をどうしますかという議論に終わっては、今後の21世紀の日本に対しての責任が不明確になると思いますので、是非肺がんに対するらせんCTの有用性、有効性についての検証を目指した提言というものですね。研究デザインまでいけるかどうか、先ほど来のデータを見ますと、例えば金子先生のデータで進行がんの比率がCT検診後の比率を見ますと、CT前とCT後では59対39です。これは単純に計算しますと、CT検診によって進行がんの比率が33%減る可能性があることを示します。そういったことも見えてきますので、是非検討していただきたいと思います。 ○垣添座長 どうぞ、鈴木課長。 ○鈴木老人保健課長 やはり国の責務としては市町村が実施責任者としてやっていただくにしても、科学的に何が妥当であればというのをお示しするというのがこの責務としてあると思います。その面で、併用法については今かなりおまとめいただいていますが、ヘリカルCTについては、例えば対象集団を何らかの形で、喫煙歴とか年齢とかということで絞っていって検証するというやり方があるのかないのか。その場合に、あと何を具体的にやればある程度の結論が出るのかということを先生方の合意としてお示しいただければ、あとは我々の方に投げ掛けていただいて、資源も有限ですからすぐできるとはなかなか言えないかもしれませんが、少なくとも今後やるべきことは明確になると思います。 ○垣添座長 わかりました。では、一応午前中のがん検診に関する検討会はこれで閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○古元課長補佐 次回検討会の日時、場所等についてはまた日程調整をさせていただきまして改めて御連絡をさせていただきたいと存じます。  どうもありがとうございました。 (終了)                     照会先:老健局老人保健課 連絡先:03-5253-1111 担当者:古元(内線3942) 大塚(内線3946)