07/05/18 第9回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 第9回 今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会 議事録 日時:平成19(2007)年5月18日(金) 18:00〜20:10 場所:厚生労働省共用第6会議室(2階) 出席者:  委員   柏女座長、奥山委員、榊原委員、庄司委員、西澤委員、松風委員、山縣委員   吉田委員  事務局   藤井家庭福祉課長、川並家庭福祉課専門官、鈴木家庭福祉課措置費係長 議題:  1. 中間とりまとめについて  2. その他 資料:  資料1「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」中間とりまとめ 案 ○鈴木家庭福祉課係長  ただ今から、第9回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」を 開催させていただきます。委員の皆さま方におかれましては、お忙しい中お集まりいた だき、厚くお礼申し上げます。  本日の検討会の委員の出席者は8名です。庄司委員は所用により19時30分ごろに退 席の予定です。また西澤委員は電車の人身事故により若干遅れています。  それでは議事に入りたいと思います。柏女座長よろしくお願いいたします。 ○柏女座長  皆さま、こんばんは。2月からこの検討会が始まって、4カ月の間に9回も会議を開 いて、2週間に1回ぐらいの強行軍でしたが、ご協力をいただきまして本当にありがと うございました。ほぼ毎回、全員に近い方にご出席をいただいて、この問題に対する委 員の皆さま方の関心の高さと、それからこの会の重要性をひしひしと感じております。 今日は中間とりまとめについて、できれば今日ご意見をいただいて、そして今日のご意 見を基に中間とりまとめをさせていただければと思っています。ぜひご協力をよろしく お願いしたいと思います。  それではまず初めに今日お手元にお配りしています資料につきましての確認を事務局 からお願いいたします。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは資料の確認をさせていただきます。最初に「第9回議事次第」、次に「配布 資料一覧」、それから資料1として「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構 想検討会中間とりまとめ案(たたき台)」となっています。お手元に資料がない場合はお 知らせください。事務局よりお渡しします。資料は以上です。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。それでは早速議題の1「中間とりまとめについて」ということ で、事務局から資料1「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会中間 とりまとめ案(たたき台)」について説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○川並専門官  それでは「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会中間とりまとめ 案(たたき台)」につきまして、本日のご議論を踏まえて仕上げに入っていきたいと考え ています。本日はこれから各委員の皆さま方のご意見を盛り込んだとりまとめに関しま して、最初から資料1の本文を通して読ませていただき、その後改めて表現や語句の厳 しいチェックをお願いしたいと存じます。委員の皆さまには昨日午後にいったんメール で送らせていただきましたが、その後、誤字脱字がありまして、また夜に1回送らせて いただいています。その点はご了承いただきたいと思います。  それでは、読み上げます。  「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会中間とりまとめ案(たたき 台) 「はじめに」  現在の社会的養護を担う体制は戦後の孤児対策以来、その時代の社会的状況を反映し た形で構築されてきた。  しかしながら、近年、社会構造やライフスタイルの変化等により、児童相談所におけ る虐待相談対応件数や一時保護を必要とする子どもが増加し、結果として社会的養護を 必要とする子どもの数が増えていること、虐待等子どもの抱える背景が多様化している ことなどその社会的状況は大きく変化してきており、このような状況に対応できる体制 にすることが強く求められている。  このため、平成15年に社会保障審議会児童部会『社会的養護のあり方に関する専門 委員会』が設置され、厚生労働省においては、同年10月にとりまとめられた同委員会 の報告に基づき施策を展開してきた。  しかしながら、未だ現行の社会的養護に関する体制は、近年の状況に十分対応できる だけの質・量を備えているとは言い難く、危機的な状況にあり、その抜本的な見直しと 本格的な社会的資源の投入が求められている。  本検討会は、このような状況に早急に対応し、今後の目指すべき児童の社会的養護体 制に関する構想とともに、その実現のための具体的施策について検討するため、平成19 年2月に設置された。今日(5月18日)まで9回の議論を行ってきたところであるが、以 下はその中間的なとりまとめである。  なお、『社会的養護』とは、狭義には、里親や施設における養護の提供を意味するが、 広義には、レスパイトケアや一時保護、治療的デイケアや家庭支援など、地域における 子どもの養育を支える体制を含めて幅広く捉えることができる。本とりまとめにおいて は、基本的には、狭義の社会的養護を中心としつつも、広義の意味も視野に入れ、要保 護児童とその家族を支える体制全体について議論を行うこととする。 1.今後の社会的養護の基本的方向 (1)社会的養護の必要性  子どもは次世代を担う社会の宝であり、国連の児童権利宣言や児童の権利に関する条 約にもあるように、子どもは心身ともに健全に育つ権利を保障されるべきものである。  子どもの養育とは、この権利を実現するため、子どもが安全で安心して暮らすことの できる環境の中で、親を中心とする大人との愛着関係の形成を基本とし、年齢に応じて 子どもの自己決定を尊重しつつ、個々の子どもの状態に配慮しながら、生活支援・自立 支援を行っていくものである。  子どもは、このような養育を適切に受けていくことにより、生きていくために必要な 意欲や良き人間関係を築くための社会性を獲得し、社会の一員として責任と自覚を持ち、 また、親をはじめとする頼ることのできる人の存在を通して、適切な自己イメージとと もに生きるための自信を得ていくものである。  こうした『養育』は、家庭を中心として行われてきたが、虐待をはじめとして様々な 理由により家庭において適切な養育を受けることのできない子どもについては、子ども の権利擁護とともに、次世代育成支援という観点からも、『子どもは家庭だけではなく地 域社会の中で育つ』という認識の下、地域社会が家庭の機能を補いながら、協働して子 どもの養育を支え保護していくとともに、家庭の支援を行っていくことが必要である。  ここに、社会的に子どもを養育し保護する『社会的養護』の意義と重要性が存在する。  また、虐待を受けた子どもが十分な支援を受けられないまま親となったときに、自分 の子どもを虐待する事例が多いという指摘もあり、このような世代間連鎖を断ち切るた めにも、子どもが受けた傷を回復し、良き人生へのスタートを切ることができるよう、 社会的養護は十分な機能を果たす必要がある。  なお、社会的養護は、家庭や地域で適切な養育を受けることができない子どもに提供 されるものであることから、引き続き、公的責任の下で行われるべきものであるが、従 来の供給者主体の発想から、子ども主体の支援体制の構築へと発想の転換を図ることに 加え、保護者の状況を踏まえ、国、都道府県、児童相談所、市町村、里親や施設、関係 団体等の関係主体が、それぞれの責任を適切に果たすとともに、関係主体間の連携と協 働を緊密なものとすることが必要である。 (2)社会的養護の目指すもの  社会的養護は子どもが心身ともに健全に発達することを保障し、安定した人格形成の 場を提供することにより、自立した社会人として生活できるようにすることが最大の目 的であり、社会へ巣立つ際には、社会的養護の下で育った子どもも、他の子どもたちと 公平なスタートを切ることができるようにすることが必要である。  『社会的養護』を(1)のようにとらえ、その提供体制を検討するに際し、その目指すも の、すなわち社会的養護が子どもに対して提供すべき支援を整理すると、以下の二つの 機能となると考えられる。 (1)子どもの育ちを保障するための養育機能  基本的にはどの子どもも必ず必要とする生活支援・自立支援の機能であり、すべての 子どもに保障されるべきものである。  (1)に述べた『養育』の意義にかんがみれば、家庭的な養育環境の中で特定の支援者と の継続的で安定した愛着関係の下、年齢に応じて子どもの自己決定権を尊重しつつ、親 子分離に伴う不安等個々の子どもの状態に配慮しながら、生活支援・自立支援を行うこ とが重要となる。 (2)適切な養育が提供されなかったこと等により、受けた傷を回復する心理的ケア等の機 能  虐待、発達障害などの様々な背景の下で、適切な養育が受けられないことにより子ど もが心身に受けたダメージを癒す機能や、障害等のある子どもの状態に応じて必要な専 門的ケアを行う機能である。  社会的養護を必要とする子どもたちは、子どもの発達の状態や抱える課題によって、 その必要性の度合いが異なるものの、それぞれに愛着の問題やこころの傷を抱えており、 子どもが適切な愛着関係に基づき他者に対する基本的信頼を獲得し、安定した人格を形 成する等の発達を保障するため、専門的な知識や技術を有する者によるケアが必要とな る。このようなケアのニーズへの対応は、近年の虐待の増加等により、ますますその必 要性が増しているものである。  また、家庭において適切な養育が提供されなかったため、心理的ケア等が必要となる ことや、一定の専門的ケアが必要となる障害等があるにもかかわらず、これが提供され なかったこと等により、結果として、家庭における愛着形成等がうまくいかず、適切な 養育がなされないことがあることから、(1)と(2)の機能は密接に関連している。  このため、社会的養護を必要とする子どもに対しては、(1)を基本に、(2)を個々の子ど もの状態に応じて適切に組み合わせながら、両者が一体的に提供される必要がある。  その提供に当たっては、社会的養護を必要とする子どもがそれぞれに抱える愛着の問 題やこころの傷に対するケアを行うため、個々の子どもの状態に応じて、研修等による 一定の専門性や高度の専門性が求められる」  下記イメージ図をご覧ください。「子どもの状態と支援体制のイメージ」です。  まず左からAの状態の子どもです。「親子分離に伴う不安等個々の子どもの状態に配 慮しながら、生活支援・自立支援の提供を基本とした対応が必要な子ども」。支援体制と しては下に行きまして「家庭的な形態(里親又は小規模なグループ形態)の住居・施設で 生活」「必要に応じ、心理的なケア等のスタッフを有する施設から支援を受ける」  次はBの状態の子どもです。「精神的不安等が落ち着くまでの一定期間心理的なケア 等が必要な子ども」「被虐待や障害等により、一定の心理的なケア等が必要な子ども」。 その場合の支援体制としては下に行きまして「一定の専門的なケアを受けることができ る施設で生活」「施設において可能な限り、小規模な単位でのケアを受ける」「必要に応 じ、より治療的な機能を持つ施設から支援を受ける」「一定程度落ち着き、心理的ケア等 のニーズが減じられた場合は、里親等のもとで生活し、支援を受ける」  Cの状態の子どもです。「発達障害や被虐待、情緒機能の障害、非行等の行動化が著し いなど、高度な治療的・専門的な対応が必要な子ども」。その必要な支援体制は下に行き まして「専門施設において心理療法などの高度な治療的・専門的ケアを集中的に受ける」 「状態が落ち着いたら、左記の施設や、里親などのもとで生活し、支援を受ける」  本文に参ります。「さらに、当然のことではあるが、これらの支援の提供に当たっては、 教育を受ける権利や必要な医療を受ける権利を含め、子どもにとって必要な権利とその 最善の利益が基本に置かれなければならない。  また、通常、どの家庭でも、潜在的には、多かれ少なかれ、子どもの養育に関し何ら かの課題を抱えているものであるが、それが顕在化している一つの例が、虐待であると 言える。近年、児童相談所における虐待相談対応件数の増加にかんがみれば、養育にお ける課題が顕在化しやすくなっているのではないかと考えられる。  このため、家庭において適切な養育を受けられない子どもに対し、里親や施設による 社会的養護を提供することが求められていることはもちろんであるが、同時に、養育に おける課題が顕在化した家庭に対し、子どもができるだけ家庭で生活を送ることができ るよう、家庭へ向けた支援を行うことも必要である。  また、家庭における課題が虐待等により顕在化する前に、早期発見・早期対応するた め、相談支援等、地域において家庭に対する様々な支援の充実を図り、家庭における潜 在的な問題に対応できる体制が必要となっている。 (3)現行の社会的養護の課題  近年、児童相談所において虐待相談対応件数や一時保護を必要とする子どもが増加し ていることは、家庭や地域において適切な養育を受けられていない子どもの数が増加し ていることの表れであり、発達障害等をはじめ様々な援助が必要な子どもへの社会的支 援の不足など様々な背景があると考えられる。  また、社会的養護に求められる機能についても、家庭的な環境で養護を提供すること はもちろんのこと、近年増加している虐待(身体的虐待だけではなくネグレクトや性的虐 待も含む)などによる心理的・情緒的・行動的課題のある子どもに対する支援、疾患や障 害のある子どもへの支援等、一定の専門性を必要とする支援など、対応すべき課題は多 様化・複雑化していると言うことができる。  社会的養護は、これを必要とする子どもに対し、個々の子どもの多様な課題を適切に アセスメントした上で、これに対応した支援を様々な手法で行い、社会に巣立つまでを 支援していくことがその最も重要な役割であるが、現在の社会的養護体制は、家庭的な 環境で養護を行っている里親委託が進んでいないこと、施設におけるケアの単位が大規 模であること等により、子どもに対して個別的な対応が十分にはできていないこと、と りわけ虐待を受けた子どもへのケアは愛着形成が重要であるにもかかわらず、密な信頼 関係が保障されるケアを行うことが困難であること、里親、施設、児童相談所、市町村 やその他の関係機関の連携が図られていないこと、発達障害や性的虐待等により特別な 心理的ケアや治療を必要とする子どもに対するケア等の専門機能や自立支援のための機 能が施設において十分機能していないこと、施設における職員の専門性が子どもの問題 の多様性に十分追いついていないこと等、子どもの多様かつ複雑なニーズに十分に適応 できるようなものになっていないと考えられる。また、昨今相次いで起こっている児童 養護施設職員による虐待事件については、子どもの抱える課題の複雑さに対応できてい ない職員の教育や施設におけるケアの体制の問題、自治体の監査体制の問題、施設運営 の不透明性等様々な要因によって、社会的養護が子どもの権利保障に十分な体制となっ ていないことが指摘されている。  加えて、虐待の増加にかんがみれば、早期発見・早期対応といった虐待防止等のため の相談支援や家庭に対する支援も十分ではないと考えられる。  さらに、適切な養育を受けられていない子どもの増加を踏まえると、社会的養護に関 する資源の提供量は不十分であり、危機的な状況にあると考えられる。  今後の社会的養護の提供体制を検討するに当たっては、これらの課題の一つ一つを解 決するために、制度全体のあり方を見直し、具体的な対応策を検討していくことが必要 である。 (4)社会的養護の充実のための基本的な方向  (3)で掲げる課題を踏まえれば、今後の社会的養護体制の充実のための基本的な方向は 以下のとおりである。  なお、具体的な施策の検討に際しては、支援を行う側からではなく子どもを中心に据 え、『子どもの権利を守る』という権利擁護の視点に立つことが重要である。 ・(1)で述べたところを踏まえれば、子どもの養育においては、家庭的な環境の下、地域 の中でその個別性を確保しながら、社会へ巣立っていくことができるよう支援していく という観点が重要であり、里親委託や小規模グループ形態の住居・施設、児童養護施設 等の施設におけるケア単位の小規模化・地域化をさらに推進する。 ・家庭支援の機能や地域における施設退所後の支援も含め、地域全体で子どもの養育を 支える社会的養護の地域ネットワークを確立する。 ・(2)で述べたような子どもの課題と支援体制のイメージを踏まえ、子どもの状態に応じ た支援体系のあり方について検討する。 ・児童相談所について、子どもの状態を的確に把握し、これに応じた支援を実施するた め、アセスメント機能の充実強化を図り、里親や施設に措置された後も、継続的なアセ スメントとこれに基づくケアを提供するための体制強化に向けて抜本的な対策が必要で ある。 ・多様化・複雑化する子どもの課題に的確に対応するため、治療・専門的ケア機能の強 化や家庭支援等を行う地域における拠点としての機能の強化等、施設機能を充実する。 ・社会的養護の質の向上を図るに当たっては、これを担う職員の確保及びその専門性の 確保のための施策が必要である。 ・社会的養護の最終的な目的は、子どもが自立して社会へ巣立っていくことができるよ うに支援することであり、就労や進学の支援等年長児童の自立支援のための取組を拡充 すべきである。 ・子どもに必要な支援に関するアセスメントの手法や支援の実践方法の確立が必要であ る。 ・施設における支援の質、職員の質や専門性の向上、支援に関する外部からの評価・検 証等による透明化を図ること等により、施設内虐待の防止等子どもの権利擁護を強化す べきである。 ・里親と施設からなる社会的養護の提供には、自治体間の格差が大きいほか、今後、虐 待の早期発見・早期対応により今まで見過ごされてきた虐待が発見される可能性が高い こと等にかんがみれば、適切な支援を行い得るだけの提供量が確保できているとは言え ず、社会的養護の提供体制を計画的に整備する仕組みの構築を検討することが必要であ る。 2.社会的養護の質の向上に向けた具体的施策 (1)家庭的養護の拡充  子どもの養育においては、家庭的な環境の下、地域の中でその個別性を確保しながら、 社会へ巣立っていくことができるよう支援していくという観点が重要であることにかん がみれば、里親制度や小規模なグループ形態の住居、施設の小規模化を拡充することが 必要である。 ア 里親制度の拡充について  家庭的な環境の中で養育する里親制度は、家庭的養護の有効な手段として、今後、さ らにその活用を図るべきものである。  しかしながら、里親制度については、社会的養護を必要とする子どものうち、9.1%(平 成18年3月31日現在)しか里親委託を利用していない。これは欧米に比して極端に低 い数字であり、未だその十分な活用が図られていないと言うことができるが、我が国に おいて里親制度が普及しない要因については、宗教的な背景を含む文化的要因のほか、 ・里親制度そのものが社会に十分に知られていないこと ・里親といえば養子縁組を前提としたものという印象が強いこと等から養育里親に関す る理解が進んでいないこと ・養育里親は、子どもがいずれは実親の元に戻ることも視野に入れて、子どもと適切な 距離を保ちながら、子どもに対する家庭的なケアを行うという難しい役割を担っている にもかかわらず、研修やレスパイトケアの提供等、子どもを預かる里親に対する支援が 不十分であること ・里親と子どものマッチングは児童相談所の業務になっているが、施設への委託措置と 比較して時間や手間がかかることや実親が里親委託を了解しないことが多いことから施 設委託措置が優先されることが多いこと  等が考えられる。  これらを踏まえ、今後、里親委託を促進するため、以下のような方策が必要である。 ・退職直後の世代をターゲットとしたPR、ファミリーサポート事業の登録会員や福祉 施設職員退職者等の児童福祉分野に関わっている者への啓発、福祉分野を学ぶ学生や福 祉関連の資格取得を目指す者への里親に関する教育、里親になることの不安等を軽減す るため、まず週末だけ子どもを預かり、子どもに少しずつなじんでいけるようにする、 いわゆる『週末里親』の活用等、里親制度の普及啓発を国民運動として進めるほか、里 親候補者の掘り起こしの業務を民間の主体が行うこともできるようにするなどにより、 里親を増やすための取組を進める。 ・養育里親と養子縁組を前提とした里親を明確に区別する。 ・里親手当や地域の身近な資源の活用等による研修・レスパイトの充実、通所機能の活 用等による専門機関の支援等里親に対する支援を拡充するとともに、里親が無理なく養 育できるような支援体制を整備する。 ・里親と子どものマッチングや里親家庭の支援については、施設入所の場合と比較して 時間や手間がかかることから、このための児童相談所の体制を確保すること、あるいは、 児童相談所だけではなく、民間の主体においても実施が可能となるようにすること等に より、円滑かつ実効性をもって行うことができるようにする。 ・障害児等専門性の高いケアが必要な子どもであっても、里親委託ができるよう、専門 里親の拡充を図る。その際、里親が通所機能の活用等による専門機関の支援を受けられ るようにする。  なお、里親候補者の掘り起こしの業務を住民に身近な市町村が実施すべきではないか という意見もあったが、その際には、里親認定を行う主体、委託をする主体との関係の 整理を行う必要があるとの意見もあった。 イ 小規模なグループ形態の住居・施設のあり方について  現在、4人から6人程度の子どもが里親家庭に委託されるいわゆる『里親ファミリー ホーム』がいくつかの地域に見られるが、子ども同士も相互に関係を築きつつ、里親に よる家庭的な環境の下で社会的養護を提供できる形態として注目される一方、一組の里 親が4人から6人の子どもを養育することに伴い、外部からの支援者の必要性等様々な 課題も指摘されている。  このような実態を踏まえつつ、小規模なグループ形態での住居・施設のあり方につい て制度的な位置づけを含め、検討する必要がある。 ウ 施設におけるケア単位の小規模化の推進方策  現行の児童養護施設等においても、適切な養育を受けられなかった子どもにとって必 要な愛着形成を行い、家庭的な環境で養護を行うとともに、専門的なケアをより個別性 を高めて実施するという観点から、以下のような課題の検討を進めた上で、ケア単位の 小規模化を進めるべきである。 ・小規模化することによって、子どもに対する個別的な対応が可能となり、個々の子ど もが抱えている課題を把握しやすくなる一方、密な人間関係の中で子どもの自己表現が 顕著になる。これらの子どものニーズに的確に対応できる職員の専門性の確保や職員を スーパーバイズするための仕組みが必要である。 ・個別的な対応となること等により、ケアの体制が従来と変わることから、これに伴う 職員配置やケアの手法についての研究とその成果の活用が必要である。 ・小規模化に伴い、ケアが実施される場所が密室化することがないよう、ケアの質の 向上や透明化を図るため、第二者評価や子どもが意見を言うことができるような権 利擁護体制の塾臨が必要である。 (2)社会的養護に関する地域資源の役割分担と機能強化及び地域ネットワークの確立  社会的養護を必要とする子ども、例えば、虐待等のケースにおいて、現行の制度の下 で、子どもがどのようなプロセスにより支援を受けるかについてイメージを整理すると、 下図のようなものとなる。(( )内は中心となる主体を記載) (1)虐待を予防するなどのための取組として、市町村や児童相談所、児童家庭支援センタ ー等による家庭における子育て支援や相談の実施(市町村) (2)子どもが適切な養育を受けられない場合における児童相談所の専門相談・通告・調査、 子どもの一時保護及び子どもを保護した後、児童相談所において子どもの課題を的確に 把握し、必要な支援を行うためのアセスメント・ケアプランの作成(児童相談所) (3)アセスメント・ケアプランに基づき、里親・施設への措置による養育・保護の提供(里 親、施設) (4)子どもに合った支援が行なわれているか適宜把握するため、措置中のフォロー、アセ スメントとケアの再検討(児童相談所、市町村) (5)施設退所をした後や子どもが独立した後、社会で自立した生活を継続して送るための 支援(市町村など)  このようなプロセスを見れば、社会的養護は、里親や施設だけが提供するものではな く、様々な主体が関わり合いながら提供されるものであり、これらの主体が各プロセス においてその役割を適切に果たしながら、有機的に連携をしつつ提供されるものである ことが認識される。  このような観点から見れば、各プロセスにおいて、以下のような課題を解決する必要 がある。 (1)(子育て支援・相談)については、市町村単位で設置される要保護児童対策地域協議会 などによる関係機関の連携により虐待等の早期発見・早期対応の体制作りを一層進める とともに、デイケアやレスパイトケア等を含んだ具体的な支援方法の確立などが必要で ある。 (2)(専門相談等、アセスメント、一時保護)については、社会的養護を必要とする子ども たちが家庭を離れ、最初に保護される場所である一時保護所において、その養育環境の 改善等の適切なケアの確保が必要である。また今後の子どもの支援の方向性を決めるこ ととなる児童相談所におけるアセスメントやケアプランの作成は特に重要であり、子ど もの課題を的確に把握し、これに応じた支援を提供するため、児童相談所及び一時保護 所におけるアセスメント機能の充実強化を図る必要がある。 (3)(里親、施設等への措置)及び(4)(措置後のフォロー・ケアの再検討)については、児童相 談所において、現に里親や施設等に措置された子どもに対してその子どもに合った適切 なケアが行われているかを適時把握し、関係者によるケア会議等の開催、これに基づく 里親や施設における子どもの支援計画の見直し等を適切に実施できるよう、子どものア セスメントやフォローに関する機能の充実強化を図る必要がある。  また、里親や施設へ措置された子どもと家族のかかわりを構築し、子どもが家庭に戻 って生活を送ることができる可能性を高めるため、虐待等を行った保護者に対する支援 についてもその標準化作業と併せて、民間団体の活用等を含めた体制整備を図る必要が ある。  これに加え、市町村と里親、施設についても、子どもがいずれは地域で暮らすことを 見据えて、連携を図ることが重要である。  さらに、里親や施設等に措置された子どもも、学校に通いながら、地域で生活を送る 中で、必要に応じて様々な主体から支援を受けることとなるため、地域における関係機 関の連携体制を強化することが必要である。特に、学校教育との連携に関しては、地域 の学校に通う際の支援に際して、福祉関係の主体や施設などと学校において適切な情報 共有を図るなどの連携強化等が必要である。  なお、同じ施設の子どもが全て同じ学校に通うことの弊害も指摘されていることから、 小規模グループ形態の住居や地域小規模児童養護施設の活用等により、別の学校へ分散 して通えるようにすることも検討が必要ではないか。 (5)(退所後の支援)については、社会的養護の下にいる間から、子どもが社会で自立して 生活していけるよう、その社会性の獲得や自立に向けた支援を念頭において支援を行う ことは当然であるが、社会的養護を必要とする子どもたちは、施設等を退所した後も、 社会で自立していくに当たって、様々な課題を抱えることとなることから、その就職や 進学に当たり、また、就職後や進学した後も、地域で様々な主体が連携を図りながらそ の支援を行う体制が必要である。  このように、それぞれの支援プロセスにおいては、様々な主体が関わりながら子ども の支援を行うことから、児童相談所、施設、市町村、児童家庭支援センターなどの社会 的養護に関する各主体の役割分担を明確化し、各主体がそれぞれの役割の充実強化を図 るとともに、子どもの自立支援に向け、そのニーズに応じて、互いの連携の強化を図る 必要がある。  また、社会的養護の責任主体としては、現在は都道府県(児童相談所)が中心となって いるが、虐待の予防等、より身近な実施主体が行った方が適切な支援については、市町 村が行うこととなっている等を踏まえ、都道府県と市町村も含めて支援プロセスに応じ た各主体の役割分担と協働のあり方を検討する必要がある。  さらに、国においても、制度的な対応を含め、関係主体の役割分担の明確化とその充 実、連携強化を図るための体制作りを進めるべきである。 (3)施設機能の見直し  社会的養護を必要とする子どもの持つ課題は様々であり、これに対応するため、施設 は様々な役割を有しているが、その役割を整理すると、 (1)生活支援、自立支援や一定の心理的ケア等のどの施設も有している役割、 (2)(1)に加えて、さらに専門的・特化したもの(現行の施設で言えば、情緒障害児短期治療 施設については特に治療的なケアを必要とする子どもに対する支援、児童自立支援施設 については、特に非行等の行動化が著しい子どもに対する支援) となる。  今後、家庭的養護の拡充を進めていく中で、個々の子どもの課題を的確に捉えて子ど もに対して最も適切な支援を提供できるような施設体系のあり方についてあらためて検 討する必要がある。  また施設体系のあり方の見直しを踏まえ、職員の配置基準はもとより、設備基準を含 めた児童福祉施設最低基準についても必要な見直しを行う必要がある。  なお、当面の対応として、以下のような取組を進める必要があるのではないか。 ・児童養護施設、乳児院等については、家庭的なケアの実施及び多様化・複雑化する子 どもの課題に対応するため、ケア単位を小規模化するとともに、現在は施設に入所して いる子どもが可能な限り家庭に戻って生活できるよう、家族の抱えている課題を解決す るため、子どもの家庭に対する支援を強化することが重要であるほか、家庭や里親等に 対する支援を行うためのネットワーク作りのための働きかけを積極的に行うべきである。 ・情緒障害児短期治療施設については、心理療法やグループ療法などの治療的なケアを 必要とする子どもを支援する施設として、高度な専門的支援を実施するため、入所機能 だけではなく、通所・外来機能の充実などを図り、その施設に入所する子どもに限らず、 家庭や児童養護施設等の子どもを含めた治療的・専門的な支援を行うべきである。また、 乳幼児期から思春期まで、治療が必要な子どものケアに対応できる体制とすべきである。 ・児童自立支援施設については、行為の問題の背景としての被虐待経験や発達障害があ る子ども等の特性に応じた教育的・治療的な支援を行うため、職員の専門性を高めるこ とや、その支援方法の研究・確立を行うことが必要である。また、少年院等との交流研 修の推進などにより、関係機関との連携を進める必要がある。 ・国立の児童自立支援施設では、社会的養護のケアのあり方に関する研究や先進事例の 普及等の取組を進め、児童自立支援施設のみならず、職員の養成・研修機能を強化し、 社会的養護の研修センターとして役割を果たすことができるように機能強化を図る必要 がある。 ・母子生活支援施設については、母子ともに地域で家庭生活を営むことができるように 支援するという観点から、DV被害者である母親とその子どもや虐待の危険性が高い母 子など、様々な課題を抱える母子に対し、母親の就労支援等に加え、母親の養育機能の 回復などの専門的プログラムに基づく支援を行うことができるような体制整備とそのケ アのあり方の確立を図る必要がある。 ・児童福祉施設における子どもの居住環境の改善について、引き続き進めていく必要が ある。 (4)年長児童の自立支援  社会的養護の最終的な目標は、子どもが自立して社会へ巣立ち、一人前の社会人とし て責任を持って人生を送ることができるようになることであるが、社会的養護の下で支 援を受けた子どもたちが社会へ巣立つに当たって、子どもたちができるだけ円滑に自立 できるよう、里親や施設等の社会的養護を担う者は、子どもを養護している全期間を通 じて、子どもが社会性を獲得し、自立することを念頭に置いて、適切な支援を提供して いくことが必要である。  さらに、社会的養護の下で育った子どもは、施設等を退所し自立するに当たって、保 護者等から支援を受けられないこと等により、様々な困難を抱えている。  このため、以下のような対策を図る必要がある。 ・施設における自立支援計画を充実させる必要があるほか、子どもが自立するための進 路選択に当たっては、学校と施設等が緊密に連携を図るとともに、就職に当たっては、 子どもがハローワークや職業訓練機関等の関係機関において円滑に支援を受けられるよ う、施設等において必要な支援や関係機関との連携を図る等、就労支援の充実を図る。 ・また、身元保証人の確保対策や就職、進学の際の支度金など自立した生活を始める際 に必要な支援策の充実を図るほか、奨学金制度を積極的に活用する。 ・さらに、自立援助ホームは、中学校を卒業後、施設を退所して、就職している子ども のほか、高校を中退した子どもなど施設退所後、すぐに自立することが困難な年長児等 を対象に、子どもの住まいの場を確保するとともに相談支援・生活支援を行う場である が、施設退所後、すぐに自立することが困難な年長児童等に対する支援をどのような形 で担うことが適切であるかを含め、そのあり方について検討する必要がある。 ・施設を退所した後も、結婚・出産・育児等に関して自信を持つことができず、相談す る相手がいないことも多く、このような際の相談先として、児童養護施設等がいわゆる 『実家機能』の役割を果たす必要がある。 ・里親や児童福祉施設に措置されている子どもについては、現行制度においても、満20 歳に達するまで措置を継続できる仕組みとなっているが、子どもの状況を踏まえつつ、 積極的に活用すべきである。  このほか、現在の措置の解除年齢の上限(20歳)については、これを引き上げるべきと の意見がある一方で、漫然と措置を延長するのでは意味がなく、むしろ子どもの社会的 自立に向けた支援の強化について検討すべきではないか、という意見もあり、これらを 踏まえて今後さらに慎重な検討が必要である。 (5)社会的養護を担う人材の確保とその質の向上  社会的養護の質の向上を図るために何よりも重要であるのは、子どもとの愛着関係・ 信頼関係を形成することができ、子どもの将来の自立までを視野に入れたケアを行うこ とができる人材の確保であり、その質のさらなる向上である。  このため、以下のような方策が必要である。 ・児童福祉施設の施設長や施設職員等の資格要件の明確化とともに、職員の質の向上を 図るため、社会的養護に関する専門職や資格のあり方等について検討する必要がある。 ・人材の育成に関しては、他の社会福祉の分野についても人材育成の主体となっている 都道府県が主体となって行うべきであり、そのための体制整備を図るべきである。 ・福祉分野の教育を行う大学や専門学校等においては、ケアワーク、ソーシャルワーク を内容に加えるなど、社会的養護を担う人材の育成にも資するような教育内容とすべき である。 ・児童福祉施設の職員による子どもの支援に関し、専門性を持って支援プログラムをマ ネージメントできる基幹的な職員の育成等を図るほか、キャリア形成やOJTのあり方等 を、個人の資質だけによるのではなく、組織的に担保する仕組みが必要である。  このため、施設と児童相談所等の間において交換研修を実施する等の方策の検討や国 立の児童自立支援施設や子どもの虹研修情報センター(日本虐待・思春期問題情報研修セ ンター)等における養成・研修、研究機能の拡充を図るべきである。 ・また、職員が長く勤められるよう環境の整備を図るとともに、児童福祉分野だけでは なく、他の社会福祉に関する分野も経験できるようにする等の工夫も検討する必要があ る。 (6)科学的根拠に基づくケアの方法論の構築  社会的養護を必要とする子どもにとって、個々の子どもの抱える課題や発達段階に応 じた支援を行うことやそれぞれの家庭が抱える課題に応じて家庭支援を行うことが重要 であることは論を待たないが、このような支援を確立していくためには、子どもや家庭 の抱える課題やそれぞれに対して必要とされる具体的な支援策に対するアセスメント方 法を確立するとともに、これに基づいた支援の実践方法を確立し、これを広めることが 必要である。  また、今後、ケア単位を小規模にした新しいケアを実践していくに当たっても、科学 的な評価に基づく、アセスメント手法や支援の方法論の確立が必要である。  これらを推進するため、これまで国内外で行われた研究や効果的な取組について事例 の収集や適切な評価を行うとともに、継続的にこういった研究を支援する仕組み等、研 究助成のあり方について検討すべきである。 3.児童の権利擁護の強化とケアの質の確保に向けた具体的施策 昨今、相次いで児童養護施設職員による虐待事件が起こっているが、子どもの抱える課 題の複雑さに対応できていない職員の質や教育に問題があったこと、施設におけるケア を外部から評価・検証する仕組みがなく施設運営が不透明になっていること等がその要 因として指摘されている。関係者にはこのような問題が二度と起こらないようにするた めの真摯な努力が求められることはもちろんであるが、さらに、このような課題を解決 するため、制度的な対応も視野に入れて検討する必要がある。  また、施設に入所する子どもだけではなく、里親に委託された子どもも含めて子ども の権利擁護やケアの質の確保に向けた取組を検討する必要がある。 ・高齢者虐待防止法等他の分野の施策も参考として、施設内虐待等が発見された場合の 通告や施設に対する調査、指導・監督などの仕組みの創設これらについての責任主体の 明確化等、こうした事件の再発防止に有効な仕組みの導入を検討すべきである。 ・施設内虐待の事例について検証するとともに、虐待を受けた子どもに対する適切な対 応方法、再発防止のための方策等について調査・研究を行う必要がある。 ・第三者評価の義務づけ・情報開示、都道府県等における監査機能の強化、当事者であ る子どもが意見を表明する機会の担保等、施設・里親における子どもの権利擁護の強化 とケアの質を確保するための仕組みの拡充を図るべきである。 ・児童相談所における措置内容に関する児童に対する説明のあり方や措置委託先に関す る児童の選択権のあり方について検討する必要がある。  なお、一時保護所についても、養育環境の確保に加え、児童の権利擁護に関し、児童 養護施設等と同様の見直しを行うとともに、一時保護所の特性を踏まえた検討を行うこ とも必要である。 4.社会的養護を必要とする子どもの増加に対応した社会的養護体制の拡充方策  最近の児童相談所における虐待に関する相談件数の増加や、今後、虐待の早期発見・ 早期対応により今まで見過ごされてきた虐待が発見される可能性が高いことにかんがみ れば、今後も社会的養護を必要とする子どもは増加していく可能性がある。また、上記 に述べてきた課題等を踏まえれば、社会的養護を必要とする子どもに対する支援の拡充 は、できるだけ早急に計画的に取り組むことが必要である。  社会的養護の需要が増えることは、当然のことながら望ましいことではないが、支援 を総合的に進めるためには、その整備目標を定め、それに向かって計画的に整備するこ とが必要である。  具体的には、以下のような仕組みが必要である。 ・社会的養護に関しては、自治体間の格差が大きい現状なども踏まえると、国において 基本的な指針等を定め、これに基づき、都道府県などにおいて社会的養護の提供体制に 関する整備計画を立て、計画的に需要に応えられる体制を整備する必要がある。特に、 一部の児童相談所の一時保護所においては既に定員超過となっているが、これは、里親・ 施設等の社会的養護に関する資源が不足していること等によることから、早急に社会的 養護の提供体制の整備を進めるべきである。 ・整備に当たっては、社会的養護のあり方として、家庭的養護の推進を基本的な方向と することにかんがみれば、里親や小規模グループ形態の住居等を中心とした対応を目指 すべきである。  また、社会的養護の需要量に関しては、その需要量に影響を及ぼす要因は多様かつ複 雑であることから、現時点において、将来的な需要量について的確に把握することは困 難であるが、今後の課題として、その有効な手法を検討するべきである。  しかしながら、都道府県が整備目標を検討するに当たっては、現在の不足数に加え、 潜在的な需要も考慮することが必要であり、例えば、 ・社会的養護に関する資源が不足しているために、一時保護所で長期にわたって一時保 護されることを余儀なくされている児童数 (参考)平成18年度児童関連サービス調査研究等事業報告書「児童虐待防止制度改正後の 運用実態の把握・課題整備及び制度のあり方に関する調査研究」(主任研究者:才村純)に よれば、虐待を理由に一時保護された子どものうち、児童福祉施設が満床で入所できな かったという理由により一時保護所の入所日数が2か月を超えた子どもが約200人(平 成18年4月〜11月の8ヶ月間、調査の回答率約7割)となっており、これに基づいて、 年間の人数を推計すると、約400人となる。 ・現在策定作業が進められている一時保護施設等緊急整備計画に基づく今後の一時保護 児童数の見通し ・児童人口に占める里親・施設に措置された要保護児童数の他地域との比較 (参考)例えば一つの試算として、平成16年度における児童人口1万人当たりの里親・施 設に措置された要保護児童数上位10県の平均27.6人(平成16年社会福祉施設等調査) を全国の児童人口(平成19年)に乗じて試算すれば、約58,000人(平成17年度の里親・ 施設に措置された要保護児数は約40,000人)となる。 などを念頭において、必要量を見込むという方法もあると考えられる。 5.その他 (1)里親・児童福祉施設の施設長の監護権との関係や児童相談所の指導に従わない保護者 に対する対応の観点から、民法上の親権に係る制度の見直しについて検討を行う必要が ある。 (2)社会的養護の重要性に関する啓発についてどのように進めていくのか、さらに検討す る必要がある。 (3)人材育成やケアの質の向上を図り、施設間の格差を縮めることは、個々の施設等の努 力だけで限界があることから、社会的養護を担う里親や児童福祉施設等に係る関係団体 は、支援のためのノウハウなどの情報交換や交流研修等により、会員等に対する働きか けを強め、人材の育成やケアの質の向上に積極的に取り組むべきである」  以上です。 ○柏女座長  ありがとうございました。中間とりまとめをまとめる最後の検討会ということもあっ て、全体を読む形で説明していただきました。残りの時間が1時間ちょっとあります。 また同じように時間配分をして、例えば1のところが15分くらい。そして2のところ が20分。3、4が前回少なかったので20分くらい。大体の目安ですけれども、そのよ うな時間配分で進めていきたいと思います。その前に伺いたいのですが、二つ目の議題 の「その他」は結構あるのでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  いいえ。 ○柏女座長  わかりました。では、そのような時間配分で進めていきたいと思います。前回、たく さん出た意見をしっかりと入れ込んだために長文になってしまったり、西澤委員に怒ら れそうですが、「鑑みれば」がたくさん入ってしまったり。 ○西澤委員  「鑑みれば」が、ひらがなになっている。 ○柏女座長  皆さまの意見をしっかりと盛り込もうという事務局の苦労ということでお許しいただ ければと思いますが、ご意見をいただければと思います。「はじめに」を含めて「1.今後 の社会的養護の基本的方向」のところについて、何かご意見はありますでしょうか。奥 山委員どうぞ。 ○奥山委員  今伺っていて意図が通りづらいと思ったのが、3ページの図の上のところです。「その 提供に当たっては、社会的養護を必要とする子どもがそれぞれに抱える愛着の問題やこ ころの傷に対するケアを行うため、個々の子どもの状態に応じて、研修等による一定の 専門性や高度の専門性が求められる」は、少し意味が通じづらい文章ではないかと思い ます。言いたいことはわかるのですが、文章を変えた方がよいかもしれません。 ○柏女座長  どういう文章がよいでしょうか。 ○奥山委員  恐らくここは「個々の子どもの状態に応じて、専門的および高度専門的なケアが必要 である」ということを言って、それに対する研修が必要であると、二つに分けなければ 難しいかもしれない。 ○柏女座長  意図は共通として認識できるので、わかりやすく、ここは修文をしていただいてよろ しいでしょうか。そう難しい作業ではなくて、前のところと後ろのところが「そのため 研修等による一定の専門性や高度の専門性が求められる」という形になるような表現に 変えるということですね。 ○奥山委員  ついでに幾つか。本当にあとは細かいことで、4ページ目の(3)の2段落目の「障害の ある子どもへの支援等、一定の専門性を必要とする支援など」になっているので、この 最初の「等」は消してよいのではないか。 ○西澤委員  「等」と「など」はどこが違うのか。 ○奥山委員  それは漢字とひらがなの違いだと思いますが、前の「等」はいらないと思うのです。 もう一つは、その次の段落の半ばですが「里親、施設、児童相談所、市町村やその他の 関係機関の連携が図られていない」というと、まったくないような感じになってしまう と危惧します。もう少し不足しているとか、充実していないとか、その辺の方がよいと 思ったのと、そのすぐ後ですが、これも文言の問題で「ケア等の専門機能や自立支援の ための機能が施設において十分機能していない」の、機能が機能していないというのは 二重になると思います。以上です。 ○柏女座長  ありがとうございます。 ○西澤委員  そういうのもありですか。 ○柏女座長  それは後でくくることにしたら。 ○西澤委員  細かい表現。ただ悪文の極みがたくさんある。機能が機能していないとか 支援が支 援できていないとか、「発達障害等をはじめ」の「等」はいらないだろうなど、日本語を 愛するものにとっては、とても読み難い部分がたくさんあるので、推敲していただきた いと私は思いました。 ○柏女座長  では、それはそうすることにしていただくとして、中身の点についてはいかがですか。 松風委員、どうぞ。 ○松風委員  これも言葉かもしれません。このイメージ図でAとBは基本的には児童養護施設と里 親を表していると思うのですが、Cの下のところの一番下の・で「状態が落ち着いたら、 左記の施設や、里親などのもとで生活し、支援を受ける」とあります。この真ん中の「一 定程度落ち着き、心理的ケア等のニーズが減じられた場合は」という所も、同じように 「左記の施設や、里親などのもとで」というように入れた方が。 ○柏女座長  どこですか。 ○松風委員  真ん中の一番下の・です。 ○柏女座長  左記の小規模グループケアのことですね。 ○松風委員  そうです。「ニーズが減じられた場合は、左記の施設や」というのを「里親等」の前に 入れたら。 ○柏女座長  「左記」というは左側ですから、Aの中の「小規模なグループ形態」これは施設です から、それを指すということですか。それと地域小規模児童養護施設みたいな話ですか。 ○松風委員  地域小規模児童養護施設も、グループホームも含まれると思いますが。 ○柏女座長  「左記の施設」で大丈夫ですか。「左記」というのは左側です。左側には、あまり施設 のことが書かれていない。Aの所です。 ○松風委員  「家庭的な形態(里親又は小規模なグループ形態)の住居・施設で生活」 ○柏女座長  この施設のことですね。はい、わかりました。大丈夫だと思います。他には、いかが ですか。 ○西澤委員  これは文言ではなく、とらえ方の問題で、落としていたのですが、3ページ目の下の 方、最終段階の「子どもの養育に関し何らかの課題を抱えているものであるが、それが 顕在化している一つの例が、虐待である」と言ってよいのかと思います。その後の文章 は、今日の相談件数の増加は、そういう顕在化によるものだという見方を断じているわ けです。それは、そういう見方で果たして今の虐待のことがとらえられるのか。そうい う見方もあるのでしょうが、他の論点もあるのではと思ったので、こういう断言の仕方 が気になりました。 ○柏女座長  「一つの例」と書いてあります。違いますか。虐待は、そうなのだということになっ てしまうのか。 ○奥山委員  私も少し気になったところなのですが、「潜在的」や「顕在化」ということの意味なの だと思うのです。恐らく、ここで言っている「顕在化」というのは、あるものが見えた という意味ではなくて、見えるような状況にまで発展してきたという考え方だと思うの です。 ○西澤委員  要するに「深刻化」などという。スレッショルドを超えたような。 ○奥山委員  そういう意味なのだろうと解釈して、指摘しませんでしたが、私もかなり引っかかっ たところです。 ○柏女座長  そう言えば、今の「深刻化」でも大丈夫でしょうか。最後の方の需要量の予測に、潜 在的という話がありましたが、そことは直接リンクしないから、「深刻化した」という表 現で大丈夫ですね。ありがとうございます。他には、いかがですか。 ○川並専門官  すみません。今のところで「顕在化」が二つ出てくるのですが、前の「顕在化」を「深 刻化」とするのですね。 ○柏女座長  そうです。下の方はいいわけです。 ○川並専門官  下の方は、残してよろしいですね。 ○柏女座長  「虐待相談対応件数の増加にかんがみれば、養育における課題が顕在化しやすくなっ ている」はよろしいですか。ここは、「表面化」ですか。 ○奥山委員  そういう意味なのですか。ここで言いたいのが、どういうことなのかによるのですけ れども。要するに、もともと家庭の中で隠されてきたものが、表に見えるようになって きたのだという意味なのか、それとも、いろいろな問題があるのがだんだん深刻化して いって、表に出るようになってきたのだという見方なのかによって、違ってくると思い ます。 ○西澤委員  そうです。根本的な見方の問題です。 ○川並専門官  この場合は、そういったものが浮き彫りになってきたという意味で使っていると認識 しているのですが。 ○柏女座長  二つの側面があるわけでしょう。家庭の養育機能そのものが低下することによって、 家族が抱えている子どもの問題が浮き上がってくる。もう一つは、地域社会その他で、 今までは包含されていたけれども、それがなくなってしまったので、つまり顕在化する レベルが下がってしまったので、必然的に家庭の問題が浮き上がりやすくなったと。こ の二つの問題があるわけです。そのどちらをも、これは言っているのではないかと思う のですが。 ○奥山委員  付け焼き刃的かもしれませんが、最初の方を「深刻化」にして後の方を「課題が深刻 化し顕在化する」とするのはいかがでしょうか。問題が大きくもなっているし、見えや すくもなっているという形にした方がよいのではないでしょうか。 ○柏女座長  それでよろしいですか。 ○西澤委員  養育における課題が「深刻化かつ社会問題化」ということですか。「顕在化」というの は、社会がそれを問題として扱うという意味なのですか。柏女座長が先ほどおっしゃっ たのは、それまでは地域の中でプライベートな対応能力、対処機能、コーピング(coping) が働いて、解決できていたのが、そういう地域の力も減っているから、公的な問題とい うか、そういうものとして浮かび上がってくる。 ○柏女座長  公的に介入しなければいけない、援助しなければいけない問題として。それは「顕在 化」ということです。 ○西澤委員  それを「顕在化」と言うのであれば、それでもよいと思います。 ○柏女座長  「深刻化かつ顕在化しやすくなっている」という表現でよろしいですか。ありがとう ございます。それでは、そのようにさせていただきます。他には、いかがですか。  なければ、2番の方に移りたいと思います。5ページ以降ですが、ここは少し長いで す。具体的な施策というか方向性が入っている部分ですが、2番についてはいかがでし ょうか。庄司委員、どうぞ。 ○庄司委員  もうすぐ失礼しますので、少し先に。 ○柏女座長  そうですね。 ○庄司委員  6ページの三つ目の・の「養育里親は」というところで、3行目に「研修やレスパイ トケア」となっていますが、レスパイトケアだけというのは少しおかしいと思うので、 「研修や相談、レスパイトケア」と「相談」を入れたらどうか。それと同じことで、下 の方の「里親手当や」というところも、「研修・相談・レスパイトの充実」と。 ○柏女座長  すみません、どこですか。 ○庄司委員  イの上の、下から三つ目ぐらいの・です。  それから、その間の、ちょうど真ん中辺りの退職世代のところがあります。その4行 目で、「週末里親」の話が出ていますけれども、週末里親はあまり動いているかどうかわ かりませんので、4行目に「まず季節里親や、」で「週末里親」につなげたらいかがかと 思います。  それから、7ページの4行目、小規模グループ形態を「検討する必要がある」という ことですが、ここに「位置づけを含め、早急に」という文言を入れたらどうかと思いま す。  それから、8ページ中ほどから少し下の(2)の4行目を、「アセスメントやケアプランの 作成とケースマネージメント(ケースの進行管理)は特に重要であり」とする。プランを 作るだけでよいのかなと思いますので。同じことで、(3)の4行目も「支援計画の見直し 等ケースマネージメントを」としたらいかがかと。  次は、10ページです。最初の・の「情緒障害児短期治療施設」のところです。これは 前回言ったけれど直っていないのですが、最後の方で「また、乳幼児期から」とありま すが、ここは「就学前」の方が良いのではないかと思います。  次の「児童自立支援施設について」ですけれども、「行為の問題の背景」とありますが、 ここは「反社会的行為」ではないでしょうか。  最後に、同じ10ページの下から2行目の上に、新しく・を立てて、「親の不当な関与 を防ぐ仕組みの検討も必要である」というのが必要ではないかと思いました。 ○柏女座長  すみません。どこですか。 ○庄司委員  10ページの下から2行目の「さらに」の上に一つ・を立てて、「親の不当な関与を防 ぐ仕組みの検討も必要である。」18歳以後になっても、結構出てきたりすることがある からです。以上です。 ○柏女座長  ありがとうございます。その後ろの方でも結構ですが、よろしいですか。今、庄司委 員から幾つかご指摘がありましたが、それについて委員の方々。 ○川並専門官  「児童自立支援施設について」で、「反社会的行為」と言われましたが、メインは反社 会的行為ですが、中には非社会的行為もあります。 ○庄司委員  それはわかるのだけれども、一般には「行為の問題」という言い方はしないと思うの です。専門家には通じるでしょうが。 ○柏女座長  「子どもたちの行為の背景として」というのでは駄目ですか。 ○庄司委員  「行為」というのは、私たちのすることは何でも「行為」でしょう。 ○山縣委員  なくても良いのでは。迷ったら取る。 ○柏女座長  「子どもたちの」ということかな。「問題の背景として」ですね。他には大丈夫でしょ うか。 ○松風委員  庄司委員が言われたことについてではなく、里親の件で新たにでもよろしいのですか。 ○柏女座長  少しお待ちください。庄司委員のご指摘の点について、今、特に異論がなければこの 訂正ということにしたいのですが。 ○山縣委員  異論いうほどのことではないのですが、「季節里親」という言葉を使うかどうかについ ては、少しまだ微妙かなと。「週末里親」は何となく広まりつつあるので大丈夫だと思う のですが。 ○庄司委員  「季節里親」は、広まっていますが。 ○山縣委員  短期里親の変化の中で、少しずつ話題にはなっていると思います。 ○西澤委員  地方によって、呼び方が違うから。 ○山縣委員  ただ、「季節里親」というのは、こういう枠組みの中では本当に季節だけですよね。私 のイメージとしては、里親というのは、例え短期であろうと、週末であろうと、定期的 なもの。盆と正月という感じを社会的養護に積極的に位置付けするのは、難しいのでは ないかと思っています。あるならば、もう少しきちんと「季節里親」の制度を作る方が よいのではないかというのが、今の発言の趣旨です。 ○柏女座長  これは、よろしいですか。こだわりませんか。 ○庄司委員  結構です。 ○柏女座長  ありがとうございます。 ○松風委員  庄司委員の「親の不当な関与」というところで、おっしゃっている内容については、 私も共感するところがあるのですが、では具体的にどういう対応ができるのか、具体策 としてつなげることができるだろうかと考えるときに、少し唐突かなという印象を受け るのですが。 ○庄司委員  唐突だと思います。最近、いろいろ身近に経験したので。しかし、自立していくとき に必要かと。 ○吉田委員  それとの関係で、親の不当な関与を防ぐための親の権利制限と考えれば、13ページの 「その他」の「民法上の親権に係る制度の見直し」というところで、今おっしゃったも のをカバーするというのではいかがかなと思うのですが。 ○庄司委員  それも考えたのですが、民法の親権まで出てきてしまうと大変かと思い、親権の問題 とは別に何か工夫ができないかと思ったのです。できるならよいのですが。 ○西澤委員  そちらの方が、難しいのでは。 ○庄司委員  できるのなら、それでいいです。 ○柏女座長  よろしいですか。入れていただくことは可能だと思いますけれども、中間とりまとめ の後に具体的な施策として、うまくいければいいと思うのですが。 ○山縣委員  1点、いいですか。何が「不当」かについて現段階では明確にするのが難しい部分が あります。不当というのは、拡大解釈、お互いの立場でいろいろな解釈がされる可能性 があるので、入れる余地だけ残しておいて、もう少し議論した方がよいのかなと。対象 以外のいろいろなところで、現場では不当だと思われるような場面がたくさん出てきて いますから、私も共感できる部分はあります。良くないという意味ではなくて、逆に慎 重に考えると親の権利の問題もあるでしょうから。 ○庄司委員  わかりました。議論しないで入れたので、そういった扱いで。 ○柏女座長  わかりました。ありがとうございます。事務局の方で、何かありますか。 ○藤井家庭福祉課長  「季節里親」は、どうなったのですか。 ○柏女座長  「季節里親」は、削除でよろしいですね。 ○庄司委員  はい。 ○藤井家庭福祉課長  それと、庄司委員のご意見の中で、一つは、「情緒障害児短期治療施設」のところで、 「乳幼児期から思春期まで」と書いていましたが「就学前から思春期まで」というよう にということでした。「乳幼児期から」と入れたのは、確か委員の方々からのご意見だっ たと思うのです。実は私どももここは修正しようと思っていたのですが、意見が対立し ているのだと思って残したのです。「乳幼児期から」という意見も、これまでにあったと 思いますので。 ○西澤委員  「幼児期」とは言ったと思いますが、「乳」を入れましたか。0歳の子どもまで情緒障 害児短期治療施設でというのは、少し私は記憶がないのですが、幼児というのはお願い した。それを庄司委員は「就学前」と読み替えたのですが、「就学前」というと年長さん ぐらいに限定されてしまうような気がするので、「幼児期から」でよいのではないですか。 ○奥山委員  しかし、将来的には、どう考えるかです。乳児期の問題のある子どもも視野に入れて いくかどうかということがあると思うのです。 ○庄司委員  治療的養育が必要だということは、みんなそう思うけれど、情緒障害児短期治療施設 で考えるから。 ○西澤委員  治療機能を持った乳児院というのならわかるが、情緒障害児短期治療施設の枠に「乳」 を入れるというのはちょっと、と思いますが。 ○柏女座長  「通所・外来機能の充実を図り」ということもあるので、通所機能の強化ということ でデイトリートメントの話を考えていけば、乳児ということもあり得ないわけではない。 ○庄司委員  私が見てきたところは、デイトリートメントのイメージも、小・中学生です。あるい は小学校の高学年、中学生というものです。 ○西澤委員  例えば、愛着関係に問題がある赤ん坊と親のグループ療法というのは、考えられなく はないですが、かなり高度になってくると思います。 ○柏女座長  例えば先ほどの里親もそうですが、恐らくここの中では、里親に委託を受けながら、 そういうデイトリートメントの場に通えるようなことを考えるべきではないかという提 言というか方向性があるので、そういう場の一つとしてこの情緒障害児短期治療施設の 通所・外来機能の拡充ということは、念頭に入れてもよいのではないか。そうなると、 「乳」を外してしまうこともないかとも思うのです。今後具体化していく段階において は、それは削除されてしまうこともあるかもしれませんが。 ○庄司委員  それほど反対ではなくて、お任せします。一時保護のあり方が、あまり議論されてい ないような気がするのですが、乳児の一時保護をどう考えるかということともかかわっ てくると思います。 ○柏女座長  おっしゃるとおりです。どうしましょうか。 ○奥山委員  この項目は、どちらかというと抜本的な施設の体制を変えるのではないので、「幼児期 から」でいいかと。 ○柏女座長  では、そうしましょう。 ○藤井家庭福祉課長  それから、これは整理の問題だと思うのですが、もう一つ、8ページで、庄司委員か ら上の方の(2)と下の方の(2)に「ケースマネージメント」を入れるというご意見だったの ですが、ケースマネージメントというのは何かというところなのだと思うのですが、整 理としては、(4)に入っているとも思いますし、ある意味ではケースマネージメントを広 くとらえると、(2)〜(4)の辺りすべてがケースマネージメントなので、(2)にケースマネー ジメントを入れるというのは、少し違和感があるのですけれど。 ○庄司委員  (2)といっても、上ではなく下の方です。既に入っているのならよいのですが、これだ けを見ると、何かケアプランを作成すればよいのかという感じなので、「プランを作るだ けでいいの」ということで言ったのですが、入っているのならそれで構いません。 ○柏女座長  庄司委員のご意見については、よろしいですか。よろしければ、それを採用させてい だたくことにして、次の意見に行きたいと思います。吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  7〜8ページで、地域ネットワークの確立のイメージ図がありますが、特にその中の「子 育て支援」の部分と「退所後の支援」のところかと思いますが、民間団体による支援と いうのがなくてよろしいかどうか。特に予防に関しては、いろいろなグループがこうし た対応をしている。「児童家庭支援センター等による」というところで、民間団体も入っ ているのだという意味であれば、それでよろしいかもしれませんが、一つ重要な柱かと 思いますので、その言葉を入れてみてはいかがかということ。あと、(5)の部分も同じよ うな見守りという面で、民間団体を入れることを検討してはどうだろうかというのが一 つです。  それから言葉の問題で、これは私だけがわからないのか、(3)の「アセスメント・ケア プラン」というのと下の方の(2)の「アセスメントやケアプラン」というのは、これは使 い分けているのですか。 ○柏女座長  いいえ、これは使い分けていないと思います。 ○吉田委員  そうですか。では、統一していただくとわかりやすい。 ○柏女座長  民間団体の件については、よろしいですか。 ○奥山委員  入れるのであれば、図の中にも入れた方がよいと思います。実際に要保護児童対策地 域協議会も民間団体を入れることを想定して考えているのですから。 ○柏女座長  制度化は、そうですから。 ○藤井家庭福祉課長  そうすると、(1)と(5)のところに四角が入ればよいというような感じですか。私もあま り把握していないのですが、退所後の支援などを民間団体で実際にやられていることは、 ありますか。 ○吉田委員  今後は、多くなってくると思うのです。特に要保護児童対策地域協議会の中で民間が 入ってくれば、これから力をつけた民間団体が、相当重要な役割を果たしていくだろう と思います。 ○藤井家庭福祉課長  実際、虐待防止の関係などでも民間団体でもやっていくべきだというような議論にな っているというか、議会でも当然違和感なく受け止められるということでよろしいです か。 ○柏女座長  そこは大丈夫だと思います。 ○吉田委員  ですから、図の方が変わるということになるのですね。そこに入れ込むということに なる。 ○藤井家庭福祉課長  8ページの本文の(1)のところも「等」で読み込むのではなくて、例としてさらに入れ ておくということですね。 ○吉田委員  同じように9ページの(5)の「退所後の支援」の「このように」というところの2行目 で、「児童家庭支援センターなど」という部分も、同様かと思います。  それから、これは新しい提案なのですが、11ページで「施設を退所した後も」という ことで支援の役割がありますけれども、これに一つ・を加えることで、「当事者による支 援」。ここで「日向ぼっこの会」の話が出ましたが、あのような経験者による支援という のは、大変有効だと考えられるとすると、一つ・を起こして、当事者による支援と、そ の支援グループに対する支援まで含めたものを入れるというのは、よろしいのではない かと思います。 ○柏女座長  ここはどうですか。異論はないということでよろしいですか。ありがとうございます。 では、それは新しく・を入れるということで、お願いします。  その他には。では奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  これまでにも何回か言ったので、どこかに入れてほしいと思うのが、「移行期のケアを 厚くしなければならない」ということです。入ってくるときの入所時ケアや一時保護所 でのケア、リービングケアといったところのケアを、理念的にでもよいのでどこかに入 れてほしいと思います。例えば8ページの上段の(5)までが終わって「このような観点か ら見れば、各プロセスにおいて」などと書いてある後に、「こういうプロセスの移行期に 関しては、特に子どもたちに注意したケアが必要である」の一文ぐらいをできれば入れ てほしいと思います。それから、これは文言になるのですが、9ページにいやに「様々」 が多いのでその辺は少し整理していただきたい。それから、これも文言なので指摘だけ なのですが、(3)の(2)の「専門的・特化したもの」ではなく、「特化した役割」というこ とだろうと思います。それから、その後ですけれども、ここが少し皆さまと議論になっ たと思うのですけれども、「児童養護施設、乳児院等については」という最後の・です。 「子どもが可能な限り家庭に戻って生活できるよう」と、どうしても可能な限り家庭に 戻すというところが、非常に強調されがちになっているのが少し気になるのです。とい うのは、家庭に戻れないのだったら家庭への支援はいらないという感じに聞こえてしま うのではないかと危惧します。やはり子どもと家族の関係性を再建するのだというとこ ろをどこかに入れた上で、さらに、もし必要であれば「帰れるものは帰す方向で」とい うことを入れてほしいと思います。  それから、大したことではないのですが、10ページの(4)の最初の3行目の「子ども たちが社会へ巣立つに当たって、子どもたちができるだけ」は、くどいかと思いました。  それから11ページで大きいのは、(5)のところの・の二つ目ですけれど、「人材育成」 は「都道府県が主体」だというところが、私はどうしてもぴんとこないのです。「人材育 成」というときには、やはりどちらかというとゼロからの育成という感じになりがちな ので、例えば「専門性の向上のための研修に関しては」など、研修のことを言っている のだということをもう少しわかりやすくした方がよいのではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。今の最後のご指摘は、よろしいですね。その方がわかりやす いかもしれません。それから、もう一つの手前の9ページの下のところはいかがですか。 ○藤井家庭福祉課長  そこは結構大事なところだと思うので、どう直せばよいか、もう少し具体的にご意見 を伺えればありがたいのですが。 ○奥山委員  私は送ったつもりでしたが、何と送ったのか忘れてしまいました。 ○柏女座長  下から4行目ですが「現在は施設に入所している子ども」とその家族との関係の、少 し硬い言葉で言えば「関係の再構築を支援する」など、そこが大事だということですか。 ○奥山委員  「関係の再構築を支援し」で、その後「できる限り」と続くのだったらまだいいかな と思います。 ○柏女座長  つまり、子どもたちの心の中の家族像のようなものを大事に扱おうということですね。 ○奥山委員  それも含めてなのですが、例えば家に帰れない子どもでも、やはり家族との関わりが とても大事なわけです。家族との再接触は当然大切ですが、この文章だと全員が帰るか 帰らないかのオールオアナッシングになると取られがちになるのではないかという危険 性を感じています。 ○柏女座長  物理的に家に帰すことが大事だととらえられてしまう危険性が高いということですね。 ○奥山委員  そうです。物理的に家に帰すことばかりが意識されすぎてしまう。 ○藤井家庭福祉課長  少し言い過ぎかもしれませんが、家に帰すことが重要なのではなくて、再建という言 葉でよいのかどうかわかりませんが、家族との関係を再建することが目的だというよう な考え方でよいですか。 ○奥山委員  私はそう思っています。先に再統合ありきというか、帰すありきで頑張るよりも、子 どもと家族の関係性を再構築して、そして帰す方向にいけたら帰すという感じです。 ○柏女座長  榊原委員どうぞ。 ○榊原委員  関連のところですが、前回までの議論を受けて、とてもきめ細かく汲んでいただいた と思います。ここにも関係する、家族の再統合や子どもが家庭に帰る前提になるのは、 親の方の問題の解決ということだと思います。子どもに問題があって虐待が起きたケー ス、発達障害などいろいろあるかもしれませんが、虐待は親の問題であるという認識に 立てば、親の行為の改善が行われない限り、子どもが一定程度育っても、家庭に戻って 生活をするような関係の構築は難しい。なのに、親に対してのきちんとした取り組みが 言及されていないままこういうくだりがあると、現実には幾つもケースがあるようです が、何年経ったからといって戻っても、結局、親は何の反省もしていないし、振る舞い も改まっていない。だから関係がまた壊れる。けれども、もう施設には戻れない年齢だ からと、社会に漂流して出て行くという事態を招きがちなのではないかと思います。  8ページの下から3段落目、「また、里親や施設へ措置された子どもと」と始まってい る段落ですが、「虐待等を行った保護者に対する支援についても」というのは、前回、私 も「ケア」という言い方をしたとは思いますが、虐待を行った保護者に対してはもう「支 援」ではないと思います。「支援」も必要ですが、不適切な行為を行ったことに対する自 覚と、適切な養育態度を身に付けるという努力、再発防止を含めたきちんとした指導や 対応が必要であるということが、もう少しきちんと入ってこなければ、ただサポートす るというだけでは、親と子の関係の再構築にはつながらないと思います。そこの虐待を 行った保護者に対する指導や対応というところを、もう少しきちんと書いていただかな ければ、9ページのところも現実問題として着陸しないような気がします。 ○柏女座長  ありがとうございます。大切なご指摘だと思います。 ○吉田委員  先ほどの奥山委員の発言で、文章としては、まず親との関係性の問題ですね。ですか ら文言としては「現在は施設に入所している子どもが親との関係を修復し、可能であれ ば」という内容であれば、意図は伝わるのではないでしょうか。いかんせん、ここは文 章が長いです。いろいろなものが入っています。 ○柏女座長  今の吉田委員のご指摘は大事だと思います。榊原委員のご意見をどこかで盛り込める か、必要があるかどうか、意見を伺いたいのですが。榊原委員のご意見では8ページの 「虐待等を行った保護者に対する支援」に、「指導・対応」ということでよろしいですか。 ○榊原委員  再発防止を含む。 ○柏女座長  再発防止を含む。 ○西澤委員  答えではありませんが、少しいいですか。それは、「指導」という言葉を今まで排して きたという経過もあります。「指導」すれば直るのかという話があり、「指導」だけでは 駄目だということで、出てきた言葉が軟着陸の「支援」という言葉なのです。それで今 度は逆に「サポート」とだけに読まれてしまううらみがあると思って聞いていました。 「指導」というと「指導して何とかなると思っているの」という指摘も当然されるので、 難しいです。かといって「治療」という言葉は、日本人にはアレルギーがあってなかな か使えない。そうすると適切な言葉は浮かばなくなってしまう、というのが現状です。 ○榊原委員  その場合、例えばNPO法人がやっている、マイツリーのような取り組みは何になる のですか。 ○西澤委員  日本の枠で言えば「支援」です。アメリカの枠で言えば「治療」です。 ○榊原委員  とか、「再教育」ですね。 ○西澤委員  「教育」という言葉を使えば、「心理教育」です。 ○柏女座長  「親教育」という言葉は使ってはいけないですか。 ○西澤委員  使ってはいけないのかどうか、よくわかりません。「教育」というと、日本なりの教育 のイメージがあります。よくわからないです。すみません、混乱させるだけです。 ○奥山委員  そうだとしたら、「支援」の前に「再発防止のための」と入れるかどうかです。 ○榊原委員  「支援」というと、情報提供であったり、相談であったり、カウンセリングであった り、今一般に「子育て支援」と言われているものの中に、親の学び直しのようなものは 入ってきません。行政がある程度の権限を持ってきちんと行動を取るというニュアンス と、サポートとは相当違うのではないかという気がして、引っかかるということです。 ○柏女座長  「再発防止のための親教育・支援」ではいけませんか。やはり違いますか。 ○松風委員  児童福祉司指導というものがありますから、「再発防止のための指導や支援」でも制度 上はあり得る話だと思います。 ○柏女座長  西澤委員は行政用語をできるだけ排せというご主張で、どうしようかと思っていまし た。 ○西澤委員  中を取って、それはありだと思います。 ○柏女座長  では「再発防止のための指導・支援」とさせていただきます。榊原委員よろしいです か。他にはいかかでしょうか。 ○松風委員  6ページに「里親と子どものマッチングや、里親家庭の支援については」とあります。 ○柏女座長  真ん中よりも少し下のところですね。 ○松風委員  この「マッチング」のイメージが非常に幅広いと思います。受け止め方に非常に差が 出てくるのではないでしょうか。それとともに「民間の主体においても実施が可能とな るように」というところにつながりますので。 ○柏女座長  何か良い言葉はありますか。 ○松風委員  「マッチング」に替わる言葉は、一言でどう替えられるか浮かんできませんが、「マッ チング」を使うとすれば、「民間の主体においても」というところを、「民間の主体との 協働で実施が可能となるように」として、その責任の部分を、児童相談所との協働とい ったところに残しておくかどうかということです。 ○柏女座長  その表現の方がよいかもしれません。「民間の主体においても実施が可能」というのは 措置権の問題に直結してくる話だということですね。ここは「協働」という言葉を使え ば大丈夫ですね。他にはいかがでしょうか。 ○西澤委員  内容面にかかわる部分で言えば、これは取り越し苦労かもしれませんが、6ページの 上から3分の1くらいの「里親と子どものマッチングは児童相談所の業務になっている が、施設への委託措置と比較して時間や手間がかかることや実親が里親委託を了解しな いことが多いことから施設委託措置が優先されることが多いこと」というところは「こ と」が多すぎますが、誤解されないでしょうか。実親が了解しないと里親委託はできな いのだと思っている児童相談所は、現にあります。けれども法制度からいうとそんなこ とはないはずで、誤解を促進するのではないですか。 ○松風委員  実親の了解は必要です。 ○西澤委員  制度的にはそうですか。 ○柏女座長  児童福祉法第27条第1項第3号措置についてはそうです。 ○西澤委員  同意措置の場合は、里親と施設を分けて同意を取るのですか。 ○柏女座長  実務上はそうしているのではないですか。 ○西澤委員  実務上ですよね。法律上は違いますか。 ○柏女座長  法律上は児童福祉法第27条第1項第3号措置をとるに当たってですから、いい意味 で言えば確かに、その中で例えばAという施設は嫌だけれども、Bという施設ならいい とか、あるいは里親ならいいけれども施設は嫌だという親の判断はあり得るのです。 ○西澤委員  それがないと里親には措置できませんか。施設は大丈夫でも里親には駄目というのは、 法制度で担保されていますか。 ○藤井家庭福祉課長  そういうことになります。 ○西澤委員  実際の実務でこの前、親が了解しないけれども里親になったケースがありますが。 ○柏女座長  それは児童福祉法第28条ではないですか。 ○西澤委員  いいえ。児童福祉法第27条の同意です。 ○山縣委員  それは書類不備ですか。 ○西澤委員  それはわかりませんが、そこは本当に間違いないですね。 ○藤井家庭福祉課長  そういう運用になっています。 ○西澤委員  親が預ける先まで指定できるということですね。 ○山縣委員  里親措置を。 ○西澤委員  里親措置というのは全く違う措置なのですか。私は臨床の人間なので、不勉強で申し 訳ありませんが、同じですよね。 ○松風委員  「施設の種別については」ということですから、里親も種別の一つだと思います。 ○西澤委員  そうですか。 ○松風委員  はい。 ○西澤委員  国の会議なので、本当に断言してよいですか。そういう話をあるところで出したら、 ある弁護士は「法的には親の同意は必要がないが、実務上はやはり混乱を防ぐためにそ うした方がよい」と意見を言われました。私自身の混乱をここで出してしまうのは問題 だと思うのですが。 ○柏女座長  今はそこの結論は出ないと思いますので、事務局で整理してみてください。 ○西澤委員  もし本当にそうならいいですが、里親委託に関して同意を取っていない児童相談所も あるので、そこはお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  確認はしますが、むしろここにこう書いてあるということは、そういう前提で書いて ありますか。 ○西澤委員  そうです。私は前提を持っていなかったものですから。  それからこれを教えてください。退職直後の世代をターゲットにして里親をPRした 場合、新しい退職世代に里親として参加していただくことを前提にしているわけですね。 今まで全く里親をしたことがない退職世代、つまり60代以降の世代です。里親に委託 するときに児童相談所は、初めての人で、もう少しで高齢者といわれる人たちに委託す ることがあるのでしょうか。 ○松風委員  養育里親でしたらあり得ると思います。短期里親もあります。 ○西澤委員  わかりました。この場合あるところで聞いたら、児童相談所では60代は無理ですと 言われたので。 ○柏女座長  そんなことはないでしょう。 ○西澤委員  わかりました。これは60代だからという理由で断られた人からの相談でした。  これからは文言ですので、軽く聞いてください。8ページの上の(1)〜(5)まで、もとも と文章で始まったものを体言止めにしないでください。体言止めにするのであったら、 体言止めにする文章構成があると思います。  それから、私は「主体」という言葉が非常に鼻につくのです。「責任主体」などという ならまだわかりますが、単独で出てくる「主体」とは何なのかと思います。ここでいう 「主体」とは哲学の概念ではないですね。 ○西澤委員  関係機関や関係団体などで良いのではないかと思えるところも「主体」になっている ものが多くあるような気がします。ちなみに辞書では「主体」は帝王の体のことをいう そうです。それはどうでもいいのですが、これはそういう言葉の問題です。  これも言葉の問題ですが、10ページ(4)の「年長児童の自立支援」で、「一人前の社会 人」という表現はこのような報告書ではあまりにも稚拙ではないかと思いました。 ○柏女座長  ありがとうございました。文言については、すべて変えられるかどうかわかりません ので検討させてください。  では、3、4、5に移りたいのですが、よろしいでしょうか。12ページ以降です。吉田 委員どうぞ。 ○吉田委員  12ページ3の「権利擁護」の最初のところです。「高齢者虐待防止法等」の部分です が、よろしいでしょうか。ここに「責任主体の明確化等」とありますが、これは前にこ の委員会で私が発言させていただいた、例の最高裁の事例を踏まえて、要するに施設の 使用者責任が否定された最高裁判決も視野に入れて責任主体の明確化を検討することを、 別個で入れておく必要があるのではないでしょうか。とても大きな意味を持っている判 例ですので、この報告書の中で一言触れておく必要があると思います。 ○柏女座長  はい。よろしいですか。 ○藤井家庭福祉課長  これはここがいいのでしょうか。「その他」に起こしますか。 ○吉田委員  「その他」に入れますか。むしろ中身としては「権利擁護」ではないかと思いますが、 もっと広くとらえますか。 ○藤井家庭福祉課長  私はあの判例はもっと大きくとらえた方がよいのではないかと思います。   ○吉田委員  私はどちらでも結構です。広げようと思えばいくらでも広がっていきますから、「その 他」でも結構です。 ○柏女座長  「権利擁護」のところではどこか座りが悪い感じがしないでもないです。 ○吉田委員  では「その他」のところで、判決を踏まえて見直すということです。 ○柏女座長  吉田委員はよろしいですか。では、松風委員。 ○松風委員  「高齢者虐待防止法等他の分野の施策」というところですが、私も高齢者虐待防止法 ではなくて、児童虐待防止法ではないかと思います。施設における虐待は児童虐待防止 法の対象ではないでしょうか。 ○吉田委員  これはこれでよいと私は思いますが。 ○西澤委員  最初に施設虐待を中心にやって、それから学んでという意味だと私は理解しました。 ○松風委員  経緯を学んでという意味ですか。 ○藤井家庭福祉課長  具体策で。児童虐待防止法は今実際に法律としてあり、家庭にいる子どもの虐待に対 していろいろな施策を講じているのですが、施設にいる子どもに対しては、さらに別の 施策を付け加えていかなくてはならないのではということだと思います。この検討会の 文脈の中で、これから考えなくてはいけないということです。そのための参考として、 施設にいるお年寄りに対する虐待についていろいろな施策を定めている高齢者虐待防止 法が参考になるのではないかという流れです。 ○松風委員  わかりました。もう一つあります。同じところで「こうした事件の再発防止に有効な 仕組み」となっていますが、「こうした事件への早期対応や再発防止に有効な」というこ とだと思います。 ○柏女座長  今のご意見は生かしましょう。では奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  今のところの次の・の「虐待を受けた子どもに対する適切な対応方法、再発防止のた めの方策」の真ん中に、「施設の再建方法」を入れてほしいと思います。虐待が明らかに なった施設はボロボロになり、そこを再建することがとても重要なことなので、それを 一つ入れてほしいと思います。 ○柏女座長  はい。これもあまりご異論のないところだと思います。よろしいですね。他にはいか がでしょうか。 ○松風委員  「再建」というと、経営の再建というようなイメージがありますが。 ○奥山委員  「改善」でもいいのですが、もう少し「改善」よりは強い言葉が欲しいです。 ○西澤委員  「建て直し」ですか。 ○奥山委員  「建て直し」と書いた方がいいですね。 ○西澤委員  「建て直し」だとハードかと思うかもしれないです。 ○柏女座長  この場合は「建て直し」をハードだとは取れないです。「建て直し」としても大丈夫で す。他にはよろしいでしょうか。 ○西澤委員  教えていただけますか。最後の社会的養護の需要量のところで、(参考)の才村先生の データの「8カ月で200人」を、「年間で推計すると400人」としたのがよくわからな かったのですが。 ○藤井家庭福祉課長  わかりにくいですか。回答率が7割で200人でしたので、10割に割り戻してさらに 12カ月で出しました。 ○西澤委員  10割に割り戻すのは駄目です。ちゃんとパーセンテージ計算をして10割と考えたと いうことですか。 ○藤井家庭福祉課長  はい。単純な話です。これは少しわかりにくいですか。 ○柏女座長  他にはいかがですか。榊原委員どうぞ。 ○榊原委員  小さい体裁の話ですが、できるだけ広く、一般の人にも読んでもらいたいという意図 でいくのでしたら、やはり長い文章が多いのが気になっています。こういった行政用語 はそもそも頭にすっと入りにくいので、最大でも4行までで一度「。」で切るとか、3行 くらいで一度切るという方向で考えていただくとか、ぜひ短めにお願いしたいと思いま す。あと言葉尻のことは省きますが、同じ一つのセンテンスの中で、同じ言葉が結構何 回も繰り返されているところも多かったので、そういうところも省略できることがある と思います。恐らくここまでは、まず拾うという作業だったと思うので、これから削る 方でその辺りの整理をよろしくお願いします。 ○柏女座長  はい。難しい注文もあるかと思います。はい、奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  これは庄司委員からの伝言です。私も庄司委員の意図を適確に把握したかどうかわか りませんが、例えばNICUで重症化したような乳児を乳児院で引き取ることが時々あり ます。そういうことに関して、乳児院が対象になのかどうかということも含めて考えて いただきたいということです。私が前に障害ということを申し上げましたが、障害を持 った子どもを社会的養護でどう考えるかということも、考えておく必要があるのではな いかという話でした。 ○柏女座長  大切な視点だと思いますが、どこに入れるのがよいでしょうか。この社会的養護の中 には、障害児施設は別ですが医療型があまりないのです。ですから、その辺りを何か考 えなくてはいけないということです。どこかに入れられますか。「(3)施設機能の見直し」 の辺りでしょうか。医学的治療などを必要とする、あるいは医学的管理というか、集中 治療みたいなものですが。 ○奥山委員  医学的ケアでよいのはないでしょうか。 ○柏女座長  では、それを9ページの「最低基準についても必要な見直しを行う必要がある」の後 くらいに入れますか。乳児院だけに限定した問題でもないようですので、そこに「医学 的ケアを必要とする子どもたちに対する配慮」という点を入れておきましょう。  他にはいかがでしょうか。 ○山縣委員  1点、よろしいですか。中に書き込めないのではないかという前提ですが、この時期 に、やはり社会的養護体制に関する、国が主催で我々が参加して行った議論の中で気に なるのは、赤ちゃんポストの問題です。児童福祉法なり、児童の権利に関する条約なり、 民法なりとの連携を、ほとんど十分精査せずにスタートして、現に非常に難しい子ども に利用されてしまった。榊原委員にお伺いしますが、新聞社などでは、これが出たら、 そこにどうつながるのかというようには見ないですか。全く関係ないものですか。書き づらいのはわかっています。何か名前を持つ権利とか、今持っている戸籍とどうつない でいくのか。その辺りは匿名性を保って行ったために、戸籍にたどりつかない原則にし てしまっている。そうすると、0歳だったらまだしも3歳くらいなら、今回の場合は子 どもがしゃべるから、明らかに簡単に戸籍にたどりつきますね。そのときに、知らない という形でいったりすると、これも後々ややこしいです。中に書けないという前提です が。 ○西澤委員  議論がよくわからないのですが。 ○山縣委員  遺棄罪にも当たらないし、匿名性を担保していきましょう、その後でいろいろなとこ ろにつないでいきましょうと言ったのは、要は子どもの戸籍にはそう簡単にはたどりつ けないだろうと。他の国のようにたどりつくまでの期間を限定して、その間にたどりつ けなければ、新しい戸籍を作って、今日本で行う特別養子で、単独戸籍を作って次の戸 籍へつなぐ、と想定していたものが、明らかに目の前に子ども自身の戸籍が出てきてし まう状況になったのです。3カ月どころかその日のうちに戸籍へたどりつくわけです。 福岡に行って住所を調べたら子どもの戸籍が出てきて、親が出てきて、見つかったよう な見つかっていないような想定になっているけれども、現実的にはそんなに難しい探り 方ではない状況です。3年間続いている戸籍を、法律的には知らないふりはできないの ではないかと思います。では、そこで特別養子をしようとしたら、保護者の了解を得ず に除籍できるかというと、それも難しいのではないかと。前回少し発言をしたのですが、 今回はもう少し深刻な状況になってしまっています。 ○柏女座長  奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  基本的に、その辺は社会的養護という枠組みでとらえるよりソーシャルワークの問題 としてとらえた方がよいのではないかと思いました。もともと山縣委員がおっしゃるよ うな、親を知ることが良いのか悪いのかは、確かにソーシャルワークの中でも非常に大 きな課題だったと思います。アメリカでも一時は知らない方が良いのだという考え方を していた時期もありますが、やはりまずいという考え方になっていたりしています。で すからそこは相当議論のあるところだと思います。 ○山縣委員  私は、当然ソーシャルワークの問題でもあるけれども、もっと以前の法律の問題だと 思います。 ○奥山委員  それは社会的養護の中の問題としてとらえるべきかどうかというのが、少しわかりま せん。 ○山縣委員  赤ちゃんポストについては、そういう周辺にあるのではないかと思ったものですから。 書けないという前提で。 ○柏女座長  山縣委員のおっしゃることもわかりますが、書けないという前提だとおっしゃってい ます。この問題については、ここではこれまで議論をしてこなかったので、すみません が先送りということにさせていただきたいのですが。 ○山縣委員  結構です。もうじき終わるからあえて言いたかったのです。そういうことを気にして いるよということです。 ○柏女座長  終わっていません。この次にまた続いていきます。 ○西澤委員  終わるのではなく、まだ中間です。 ○柏女座長  ですから、そうした視点も大事だということはわかります。 ○吉田委員  書けないという前提で結構ですが、検討するとすれば、今回の中では養子縁組という 視点が抜けています。社会的養護としての養子縁組をどう位置付けるかという文脈が作 れれば、今山縣委員がおっしゃったものは入ってくるだろうと思うので、次のところで 入れると。 ○柏女座長  もし「その他」のところで全部拾っておくとすれば、特別養子縁組や無国籍の子ども の人権の問題や、あるいは今の赤ちゃんポストを書くかどうかは別にして、社会的養護 をめぐる倫理上の問題などについても視野に入れることを入れておくことは可能です。 確かに養子縁組についてはあまり議論をしてこなかったということがあります。そこは 事務局としてはいかがでしょうか。そういう問題に跳ねない方がよいですか。 ○藤井家庭福祉課長  そうですね、もちろんご議論いただく分にはいいのですが、なかなか厚生労働省だけ で整理ができるような話ではないというのは、当然皆さまもご存じだと思います。 ○柏女座長  それはおっしゃるとおりです。 ○藤井家庭福祉課長  その上で、検討会としてご議論いただく分には何ら差し支えはありません。 ○山縣委員  今、吉田委員が言われたように、私の中では特別養子縁組は、社会的養護の境界領域 もしくは中に入った近い領域と見るかどうかの分かれ目ではないかと思っています。個 人的にはそう見たいと思っているので、赤ちゃんポストという非常にわかりやすい例が 出たので少し議論してみたかったのです。 ○柏女座長  そういう意味で言えば、最後のところに、今回詰め切れなかった養子縁組制度その他 の課題についてもとりまとめ以降検討していく、必要に応じて視野に入れていくという 文言を入れておくことはよいかもしれません。 ○藤井家庭福祉課長  それはよいでしょう。 ○柏女座長  そのようにさせていただきましょうか。確かに特別養子縁組は大事なシステムだと思 います。よろしいでしょうか。 ○西澤委員  それと同じラインで、私の不勉強で先ほど本当に驚いた「第27条であれば養育者が 里親と施設を選べる」というのはとても不可解で、やはりこの子どもにとって里親が良 いのか、あるいは施設で対応できるのかというのは、子どもの状態に応じた措置権だと 思っているのです。こちらとしては里親を候補に考える子どもに対して、それは親が許 可しないからということを是認するようなシステムが現在あるとしたら、やはりこれは 大きな問題だと思いました。 ○柏女委員  それは少し調べていただけますか。この報告書に盛り込むかどうかは別にして、宿題 として持っておきたいと思います。 ○藤井家庭福祉課長  そこは確認して、もし必要ならば先ほどのところを修正します。私どもの認識では、 言わなければ駄目だということです。 ○柏女委員  わかりました。他はいかがでしょうか。よろしいですか。もう時間が参りました。無 理やり切るつもりはありませんけれども、予定のある方もいらっしゃると思いますので。 各委員の中でさらにご意見がある場合、先ほど文言上の問題のご指摘がありましたけれ ども、それらについては、またご意見をペーパーやメール等で出していただく時間はあ りますか。それともここで出てきた意見で出尽くしたということでよろしいでしょうか。 委員の方々はよろしいですか。 ○吉田委員  読み返せば、それだけまた出てくる。 ○柏女座長  それはもちろんまたお送りします。もし今日ここでご意見が出尽くしたということで あれば、それを基に事務局でご修正していただいて、そしてそれを各委員に送らせてい ただき、最終的なご確認をいただいた上で、そこでご意見があろうかと思いますけれど も、それについての最終的な意見の取りまとめについては、私にご一任いただいてもよ ろしいでしょうか。ありがとうございます。それではそのようにさせていただきたいと 思います。いずれにしても、一度皆さま方には送らせていただくということで、事務局 もよろしいでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  それはもう1回、各委員の意見を求めるという意味ですか。 ○柏女委員  最終的にお送りして。ご一任いただいてもよろしいですか。 ○西澤委員  何を一任したかを、見たいのは見たいです。 ○柏女座長  そうですよね。今日いただいたご意見を基に直したものを一度見てもらって。 ○山縣委員  もし誤字などがあれば、それぐらいにして。 ○柏女座長  そして何らかの文言の修正などがあれば、ほとんどその日のうちか、1〜2日のうちに 出していただいて、そして最終的な修正については私に一任していただく。私も全く見 ていただかないでというのは、少し自信がありませんので。 ○西澤委員  少し蛇足を言ってもいいですか。物書きはものを書くときに「ついては」「関しては」 と書こうとしたら、それが主語にならないかどうかをまず検討する。蛇足でした。 ○柏女座長  それでは、そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。そ れでは、今日はこの議題1についてはこれで終了させていただきます。「その他」につ いては何か事務局でございますか。ございませんか。委員からはございますか。なけれ ば今日は中間とりまとめの最後になりますので、最後に藤井家庭福祉課長から一言ごあ いさつをいただきたいと思います。 ○藤井家庭福祉課長  大変ありがとうございました。まだ中間とりまとめですので、今後まだ議論を続けて いくわけですけれども、とりあえずはここまでの間、大変忙しいスケジュールだったに もかかわらず、お付き合いをいただきまして本当にありがとうございました。また官邸 の戦略会議との関係、あるいは庶務の概算要求、その前には骨太方針などもありますが、 その辺りとの関係もこれから動いていくと思いますので、その辺りの様子も見ながら、 今後の議論再開の時期や、あるいは会議の持ち方、また多少相談をしながら各委員の方々 にお諮りをさせていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。 ○柏女座長  ありがとうございました。それでは、この検討会は一応中間とりまとめを出したとい うことで、その後については、また省の情勢を見ながら適宜再開させていただく形にさ せていただきたいと思います。藤井家庭福祉課長から今お話がありましたように、この 後いろいろな動きがあると思いますので、ぜひ委員の方々には側面的な支援をよろしく お願いします。また厚生労働省から皆さま方に個別にご意見を求めることもあると思い ますけれども、ぜひご協力をお願いしたいと思います。それでは今日の会議をこれで終 わりにしたいと思います。お忙しいところありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先 03−5253−1111(内線7888) 43