07/04/20 治験のあり方に関する検討会 第13回議事録 第13回治験のあり方に関する検討会 開催日: 平成19年4月20日(金) 場 所: 弘済会館4階「梅菊」 ○ 中垣審査管理課長  それでは定刻となりましたので、ただいまより「治験のあり方に関する検討会」を開 催させていただきたいと存じます。  委員の出欠について御報告させていただきます。本日は生駒委員、桐野委員から御欠 席という御連絡をいただいております。藤原委員、北田委員につきましては今、着席さ れておりませんが、恐らく何らかの事情でおくれておられるんだろうと推察していると ころでございます。  本日は参考人としまして、独立行政法人国立病院機構本部医療部研究課長の伊藤様、 北里大学東病院臨床薬理試験研究室長の熊谷様、日本製薬工業協会医薬品臨床評価委員 会委員長の中島様の御三名に御出席いただいておりますので、御紹介させていただきま す。  また事務局のメンバーに追加がございますので紹介させていただきたいと思います。 厚生労働省の医政局に4月1日付で研究開発振興課の中に治験推進室というのが設けら れました。本日、治験推進室長の林が参加させていただいておりますので御紹介申し上 げます。   ○ 林治験推進室長  林です。よろしくお願いします。   ○ 中垣審査管理課長  本日の議題としましては、治験の契約に関する規定について御議論いただくというこ とを考えているところでございまして、最初に事務局からGCP省令とICH−GCP の治験契約に関する規定の相違点について御説明させていただきまして、その後に熊谷 参考人、景山委員よりプレゼンテーションをお願いし、最後に伊藤参考人より国立病院 機構本部における医師のインセンティブの確保策について御紹介いただくということを 考えているところでございます。よろしくお願い申し上げます。なお、出席させていた だいております大臣官房審議官の黒川でございますが、用務のために途中で失礼させて いただくことをお許しいただきますようお願い申し上げます。  それでは座長の池田先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○ 池田座長  池田でございます。おはようございます。本日もよろしくお願いします。  それでは、まず事務局から配布資料の確認をお願いします。   ○ 事務局  それでは事務局から配布資料の確認をさせていただきます。本日、机の上にお配りし た資料でございますが、まず本検討会の座席表、議事次第、その後からが資料になりま す。配布資料一覧をごらんください。  資料1としまして、治験依頼者と治験責任医師との契約についてがございます。資料 2としまして、治験における契約の形を考える(熊谷参考人説明資料)がございます。 資料3としまして、治験依頼者と治験責任医師との直接契約について(景山委員説明資 料)がございます。資料4としまして、国立病院機構における治験・臨床研究の実績評 価と研究助成金への反映(伊藤参考人説明資料)がございます。資料5としまして、G CP運用改善(必須文書の取扱い等)に係る専門作業班委員名簿がございます。  また参考資料として、ドッチファイルの資料をお配りしております。このファイルは 各回共通資料でございますので、お持ち帰りにならず、お帰りの際には机の上にお残し いただきますようお願いします。  当該参考資料は傍聴の皆様にはお配りしておりませんが、厚生労働省のホームページ の当該検討会サイトに資料を掲載いたしますので、そちらをごらんいただきますようお 願い申し上げます。また委員の先生方のみに配布させていただいております調査報告書 については、社団法人日本医師会治験促進センターのホームページでごらんいただくこ とができます。  以上、配布資料の説明ですが、過不足等がありましたら事務局までお知らせいただき ますよう、よろしくお願いします。   ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。先生方に資料は届いておりますでしょうか。よろし いでしょうか。もしなければ事務局の方にお申し出いただきたいと思います。  冒頭に中垣課長から説明がありましたように、本日は治験の契約に関する規定につい て先生方に御議論いただきたいというように思います。最初に事務局からまずGCP省 令とICH−GCPとの治験の契約に関する規定の相違点、それについて簡単に説明し ていただきまして、その後に先ほどありましたように、熊谷参考人、景山委員より治験 依頼者と治験責任医師との直接契約についてそれぞれの視点からプレゼンテーションを していただきたいというように思っております。最後に伊藤参考人より国立病院機構本 部における治験における医師のインセンティブの確保でいろいろ工夫をされておられま すので、それを御紹介いただきたいというように思っております。それぞれの説明が終 わった後で質疑の時間を取りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日の 議事の進め方はそのようでよろしいですか。はい、ありがとうございます。  それでは、まず事務局から説明をお願いします。 ○ 事務局  資料1に基づきまして、本日検討すべきポイントでございます治験依頼者と治験責任 医師との契約について資料で説明させていただきます。前回、3点ほどICH−GCP とGCP省令の異なる点があるということは御指摘させていただきましたけれど、その 1点目ということで契約の部分についてでございます。  一つ目の「○」ですが、GCP省令とICH−GCPとの相違点ということで、GC P省令では13条におきまして「治験依頼者と治験医療機関が契約しなければならない」 というように規定されております。ICH−GCPでは「治験依頼者と治験責任医師、 または治験実施医療機関が契約しなければならない」というように規定されております。  その経緯でございますが、前回紹介しましたように資金の流れの透明性などがあった のではないかというように指摘されております。今回、議論のポイントとしましては、 薬事法に基づくGCP省令として、治験依頼者と治験責任医師との直接契約が認められ ない理由があるのか、というところが検討のポイントになろうかというように考えてご ざいます。以上でございます。   ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。失礼しました。その前にこの参考資料の説明もお願 いできますか。前回のこの検討会の宿題で、景山委員からの質問で、次期治験活性化計 画策定に係る検討会の調査班報告書について御質問があったと思いますが、それについ て簡単に御説明いただけますか。   ○ 新木研究開発振興課長  参考資料をもとに景山委員からの前回の御質問について御説明申し上げます。  まず、御指摘の内容でありますが、平成16年度に実施された「治験の実施におけるG CPの運用改善に関する研究」、これと比べますと今回、医政局でまとめました報告書の 中でのIRB、特にセントラルIRBの取扱いというのが少し違ってきているという御 趣旨の御指摘だったと思います。  まず平成16年度に調査されました「治験の実施におけるGCPの運用改善に関する研 究」、これは主任研究者は上田先生にお願いしましてまとめていただいたものですが、こ れは434の医療機関を対象に行ったものでして、参考資料の方には載せておりませんが、 「多施設共同治験の場合に、施設のIRB審査をセントラルIRBに委託するか」とい う質問に対しまして、「セントラルIRBに委託したい」という希望が18%と、「希望し ない」というのが22%、55%が「ケースバイケース」ということで、希望するという数 が2割に満たないというデータが出ております。  それに対しまして今回まとめたものでありますが、これは参考資料の一枚紙にも載せ ておりますが、この問14を見ていただきますと、IRB委員選任に伴う課題、これは院 内IRBをつくるときの課題でありますが、「特に問題ない」というのは下の方にありま す25%でして、「いろいろな問題を抱える」というのが、回答があった無回答を除く9 割を母数に考えますと、7割以上が問題を抱えていると。例えば、毎回出席できる委員 を探すのが困難というのが40%、一般市民の立場で発言できる委員を探すのが難しいと いうような御意見。さらに、GCPや倫理指針についての知識を持つ委員を探すのが困 難、治験の科学的側面を審査できる委員を探すのが困難というようなことで、全体とし ては回答した人のうち7割以上が困難を抱えているというような現状がございます。  平成16年度と今回まとめました平成18年の調査での結果としての差について、この 背景としては幾つかの要因があると思いますが、実際にIRBの活動が活発になってき たという背景も一つかと思っておりますが、具体的に今回の平成18年の日本医師会で行 われました調査においては、「セントラルIRB」ということを前提として比較できるよ うな調査をしておりませんので、その解釈や解析には少し限界がございまして、この点 の御説明しかできないということでございます。以上でございます。 ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。何か委員の先生方からただいまの参考資料に基づく 説明について御質問はございますか。 ○ 吉村委員  ちょっと一つだけ。今のセントラルIRBの必要性の質問のときに、セントラルIR Bというのがそもそもどういう役回りをきちんと果たしてくれるのかということについ ての十分な説明があったんでしょうか。 ○ 新木研究開発振興課長  それは16年度当時のことですか。当時の詳しい資料が手元にございませんので、どの 程度のイントロがあった上での説明になっているかというのは申し訳ございません。 ○ 池田座長  よろしいですか。そのほか、よろしいでしょうか。ありがとうございました。それで は先ほど資料1に基づいて治験依頼者と治験責任医師との契約についてということで、 GCP省令とICH−GCPとの相違点について簡単に御説明いただきましたが、何か この点について御質問はございますか。本日の中心議題になって、これから参考人の方々 からいろいろプレゼンテーションをいただきますが、よろしいでしょうか。特に御質問 がなければ、これから参考人の方々のプレゼンテーションをお聞きしたいと思いますが、 よろしいですか。ありがとうございました。  それでは、初めに熊谷参考人から資料2について説明をお願いしたいと思います。よ ろしくお願いします。 ○ 熊谷参考人  北里大学東病院の熊谷でございます。きょうは治験における契約のお話ということで、 責任医師との契約、その考え方から若干お話をさせていただきたいと思います。  先ほど来、御説明がありましたように、現状治験の契約は日本では医療機関と実施契 約を締結していると。その理由というのは、一つは治験は医療機関で行われる作業であ るということ。そのことに対して支払われる研究費と経済的な面、そのものに関しては 流れを透明化する上でも、個人ではなく施設に支払われることが望ましいという考え方 が一つあるようですし、また責任医師等の責任の面から考えますと、治験を行う際に生 じたトラブル、事故等の責任を個人が負うということは困難であるということが一つ挙 げられると思います。  一方、医療機関の長と契約した場合に現在生じている問題点としまして、書類が増加 するというのが一つございます。特にSMOが関与しましてクリニックで行う試験では、 院長等がそのまま責任者になることが多い。その場合には、院長である自分に対して提 出する書類等が多く存在するということも発生しておりますし、一方、大規模・中規模 の病院等では、非常に治験関連の書類が多いわけですが、その書類を医療機関の長、院 長が本当に吟味して処理しているのかというところに問題があるように思われます。  また、治験に関しては担当医師のインセンティブが非常に問題であるということを以 前から言われているんですが、このインセンティブがそがれている一つの問題点として、 医療機関に支払われる研究費のあり方、使い方というものが一つインセンティブをそぐ 要因になっているように思われます。  では、医師と直接契約を結んだ時にどのような問題が起きるかというのを考えてみま すと、まず一番問題なのは、例えばセントラルIRBを通った治験で、医師個人が契約 を結んだ時に医療機関が知らないで治験を行うということがあり得るのではないかとい うことも一つ考えられます。それから先ほど来からお話をしております個人に係る責任 の増大がありますし、それから何よりも問題になってきますのは、企業との利益相反の 問題です。また、施設内において雇用されている医師と施設との間の経済的なかかわり の問題が出てくると考えられます。  まず医療機関の長と責任医師の関係を考えてみますと、責任医師と直接契約を行うと 治験の流れは当然変わります。この治験の流れが変わって手続きが変わるということは 問題かと言いますと、これは単に手続きを変えればいいだけの問題ですから、労働力、 作業量の問題でして、これはもう大きな問題にはならないと思います。また現在の治験 というのはCRC等のバックアップがなければ絶対に行うことはできない状況にありま すから、医療機関が知らないで治験を行うということは現実的には不可能です。  それで先ほども申し上げましたが、むしろ機関の長が本来責任を負うべき書類等に対 して十分に吟味が行われていない方が問題ではないかと考えます。また治験責任医師は、 これはもちろん責任医師ですから当然、治験に対して責任を負うことは当たり前のこと ですし、そのような責任を負うのであればそれなりのメリットを持つということも重要 だと思います。そこでインセンティブの問題が出てくるわけです。  現在まで治験責任医師に対しては、いろいろなインセンティブを持たせようというこ とでいろいろな試みがなされております。例えば、臨床試験に参加することによって得 られる学術的な業績・評価ですが、まず学会発表・論文による評価が行われれば、これ が一番望ましいことではあるんです。確かに試験によってはきちんとした学術論文が書 けることもあります。それで現状でも評価されることもありますが、多くは治験論文と いう形で評価されて、余り学問的な評価は高くないというのが現状であります。また論 文を書こうという時に、これは本来あってはならないことですが、依頼者との関係で発 表の時期がおくらされてしまうということ、それから多施設共同試験で非常によい結果 が出たとしても、執筆者の数等に制限があり自分の名前が検索されないという問題もい ろいろございます。したがいまして、現実的には学問的な面で言いますと、責任医師等 はむしろ自分の学術的興味から試験を行っているというのが現状だろうと私は考えてお ります。  もう一つ、これは施設内での問題ではあるんですが、治験を行ったことによる医師の 評価、これを高めなければなりませんが、現在のところ治験というのは昔に比べると随 分環境がよくなったんですが、まだまだ臨床・診療の片手間で行うものであり、学内あ るいは施設内で評価するものではないという考え方が強いところが多いように思われま す。それらの部分を経済的・社会的な評価という意味で高めていかなければいけない。 この2つの点は直接契約とは関係のない点ではあります。  それで直接契約で出てくるものとして、今、赤字で書いております研究費の問題、そ れから医師個人に対する報酬という形が直接契約で出てくる問題かと思います。この研 究費、報酬の問題ですが、現時点で例えば大学病院におきましては多くの大学病院で得 られる研究費は講座に入ります。したがいまして、現実に治験を担当する責任医師、こ れが講座の長ではない場合には、みずからがある程度自由度を持って研究費を使うとい う状況にないのが現状です。これはその施設、学内等の問題であると言えばそれまでで あるんですが、現実的には非常に使いにくい状態であります。  また一般病院の担当医師に関して考えてみますと、実際に研究費という形で入ってき た時に研究を行っていないところもあるわけですね。そういうところでどのように使っ ていいかという問題も出てきているということを聞いております。現実的には大学病院 等の医師に以前我々もアンケートをとったことがあるんですが、個人的な報酬を求めて いない人たちが多いというのが明らかです。個人的な報酬を必ずしも求めてはおりませ ん。しかし、責任医師等は勤務時間外にも、あるいは休日等にもこの治験にかかわって 非常に多くの労力を払っております。そのような労力を払っていることは何らかの形で 評価されるべきであります。これを経済的であるのか、それとも学内での位置、学問的 なものであるのか、それはいろいろな問題があるかと思いますが、何らかの形で評価さ れるべきであると。また経済的に評価されるということは、責任医師等にとってはそれ だけの責任を有するということ、その自覚を促す一つのポイントであるというように私 は考えております。そのことは、その自覚が高まるということは、試験自体、研究自体 の質も高まるものであると思います。  このような研究費・報酬を前提とした治験責任医師等との直接契約を行う場合には、 最低条件は金銭の流れが透明であること。今以上に透明でなければいけません。また、 その内容は治験審査委員会等で必ず利益相反の問題として審議されなければいけません。 現在でも審議はされておりますが、利益相反が審査委員会の審査項目に入っている委員 会はそれほど多くはありません。  ですから、まとめですが、責任医師と直接契約を結ぶという場合には、まず医療機関 側の実施体制を変更する必要があります。これは施設の中でどのように責任医師へのイ ンセンティブというか、研究費の裁量等をどれぐらいの枠で認めるか等の手続きが必要 になると思います。また、責任医師を選ぶ側では、これは依頼者の側ですが、真に責任 を持てる医師を選ばなければいけない。ということは、これは以前から言われておりま すが、責任医師等を行うための資格制の考慮が必要な時期に来ていると思われます。ま た研究費等の流れは今以上に明確、かつ透明にする必要がございますし、利益相反に関 する審査は当然必須です。  このように考慮すべき点は複数存在しますが、契約形態に関して考え直す時期が来て いるのではないかというのが私の意見です。以上です。 ○ 池田座長  ありがとうございました。ただいま治験依頼者が実施医療機関の長、あるいは治験責 任医師、それぞれと契約を結んだ時の問題点というものを具体的に解説していただいた わけですが、特にここでのテーマであります治験責任医師との直接契約を結ぶ場合のや はり考慮しなければいけない点というものを明確に御指摘していただいたと思いますが、 まずこの点について少し委員の先生方の御議論を伺いたいと思います。 ○ 木村委員  大変わかりやすい御説明だったんですが、最後の責任医師との直接契約の場合には研 究費の流れを今以上に明確かつ透明にする必要がある、というようにおっしゃいました が、今以上に明確かつ透明というのは、具体的に今どんな問題があるというように考え ていらっしゃるか教えていただきたいんですが。 ○ 熊谷参考人  現在、研究費の流れ等は治験審査委員会でどれだけの根拠を持って病院に研究費とし て支払われると。それ以外の事務局経費もそれも出ているわけですが、現在は幾ら幾ら の研究費が病院というか、講座に入りますということが示されております。それで今度、 もし治験責任医師等と契約を結んでその研究費の配分等が出てくるのであれば、その配 分の比率も当然出てこなければいけませんし、その研究費がどのように使うことができ るのかという内規等を明らかにしておく必要があると思います。  つまり、大学等で使うことのできる受託研究費というのはある程度制限がありまして、 個人等に入った場合に例えば人件費の支払いが可能であるのか、まずあり得ないことで すが、交際費等の使用は可能であるのかとか、そういうようなことを明らかにした研究 費の枠組みを公表するべきで、これは各施設で公表すべきであると思います。 ○ 池田座長  よろしいでしょうか。そのほかにいかがでしょうか。  これは責任医師と直接契約をする場合の、トラブルが生じた時の責任を個人で負うこ とが難しいので医療機関と結ぶということで今まで一つで来ていたと思いますが、実際 に最後の先生のまとめのところで、そこのところについてはどのように先生は御理解さ れておりますか。   ○ 熊谷参考人  これは法的に御存じの方がおられたらお伺いしたいんですが、現実に医師が所属する 機関の中でIRB等の審査を経た治験を行った場合に、その責任医師だけに責任が問わ れるということは恐らくないのではないかと。当然のことながら、所属する科長、院長 等へ責任を訴求して求めるというか、そういうことが現在は多分普通なのではないかと 思っています。ですから契約が個人であるからといって、個人だけで負わなければいけ ないということは多分ないというように考えております。   ○ 池田座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。   ○ 吉村委員  この6枚目に医師個人に対する報酬というのがありまして、これに対して先ほど確か、 個人に対する報酬は求めていない人が多いというようなことをおっしゃったと思います が、それは何か根拠があるんですか。   ○ 熊谷参考人  はい、これは以前、医師のインセンティブに関するアンケート等をうちでも行ったこ とがありまして、ほかでも行われております。それで小規模なアンケート等ですが、各 いろいろな施設で見る限りでは個人的な報酬を求めている人は多くないというのが出て きております。むしろ学問的な評価を高めてほしいというのが一番多いと思います。今、 具体的にこの報告でお示しすることができませんが、複数ございます。   ○ 池田座長  そのほかいかがですか。   ○ 中垣審査管理課長  7ページの一番上の研究費は講座に、医局員自身が研究費を自由に使える体制でない というところについて参考までに教えていただきたいんですが、これは例えば目薬の治 験をする場合を考えてみると、眼科に属されている第一線の方々が実際には治験をする。 それで研究費が入ってくる。それは「眼科」という一つの講座に入ってきて、それをど ういう研究に使うかというのは、いわば眼科の教授というか、講座の主というのが差配 をする。したがって、実際に治験をやっている方というのは自由に研究費を使えないと いうことを示していると考えればいいのかということ。大ざっぱに大学という機関に入 る研究費の何割ぐらいがこの講座に戻されるというか、研究費として使えるような状態 になるのか、そこについていろいろな額の大小とか機関によって違うのかもしれません が、大ざっぱにどれぐらいと考えればいいのかというのを教えていただければありがた いと思います。   ○ 熊谷参考人  医局で自由に使えないというのは、今まさに御指摘のあったとおりです。古い体質の ところではなおさらなんですが、上からの指示で余りよくわからない人が治験をやって いるところも結構あるんです。何かよくわからないけれど働かされて、それで働かされ た研究費というのは医局に入ってほかの研究に使われるということはよくあることです。 まさに私がお示ししたのはそのことです。  その研究費が医局にどれぐらい入るかというのは施設によって異なると思いますが、 基本的にポイント制で算出された研究費に、管理のための金額、一定の比率を掛けたも のが入ると思います。機関によって違うでしょうけれど、恐らくポイントで算出された 研究費の8割から9割ぐらいは医局に入っているんじゃないかと思います。   ○ 池田座長  恐らく施設によって「管理費」という形で施設が15〜20%ぐらい取って、残りを恐ら く医局なり教室なりで使えるという格好になると思いますが、問題は先生が御指摘され たように、実際に治験に関与した人がどれぐらいそれを自由に使うことができるかとい うことだと思います。これは一般の研究費でもそうなんですが、今は間接経費というも のを役所でつけていただいて、高額の研究費の場合には間接経費が大学に入って、その 当該の研究をやりやすいように研究者にフィードバックするということですけれど、そ の間接経費が大学全体に入って実際には余りフィードバックされないというような例も あるやに聞きますので、そういうのとちょっと似たようなことがあるなという気がいた します。それはそれぞれの施設でやはり工夫をしないとなかなかそちらの方に戻ってこ ないのかなという気がしますけれど。そのほかいかがでしょうか。  この最後のパワーポイントで、責任医師の資格制も考慮するということは、恐らくこ れからの考え方の一つだろうと思いますが、これについて具体的にどういうことをお考 えになっていて、実際にそういう資格を持っていない先生はこれからは治験に参加でき ないのか、そういうところは施設の長と結ぶのかとか、その辺のところは何かお考えは ございますか。   ○ 熊谷参考人  そこまではちょっと考えていませんでした。ただ、責任医師を選ぶのは依頼者の責務 ですから、その時に少なくとも例えば当該疾患を含む分野の認定医、専門医を選ぶとか、 あるいは例えば我々の臨床薬理学会では「臨床薬理学会認定医」というのがございまし て、そちらの資格がないと例えば比較的早期の健常人試験を行えないとか、それがある 程度の縛りは必要だと思いますが、それを法的にやるかどうかというのは全然別問題だ と思います。   ○ 池田座長  ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。 ○ 望月委員  教えていただきたいんですが、5ページの医療機関の長と責任医師の一つ目のポツの 2つ目のポツで、医療機関の長ではなく責任医師と契約を結ぶことになるといろいろな 手続き上の流れも変わる、体制も変わるということで最後に御説明があったんですが、 この2つ目にCRC等のかかわらない治験は考えられないので何らかの施設からの援助 は必要であり、院長の知らないところでの治験実施は不可能であると。それで一応、医 療機関の長は何らかの形である医師が治験を実施していることを把握できる仕組みとい うのは確保できるだろうという意味だと思いますが、具体的にどういう形の流れ・体制 というのを想定されているかというのを教えていただきたいと思います。   ○ 熊谷参考人  ここに書いたのは最悪のシナリオで、セントラルIRBで審査してもらって、それで 自分のところで治験をやってしまって、こっそりやってしまうというのは最悪の場合で すが、実際にはこういうことは起こり得ない。当然、治験を行う場合には院長への届出 が必要な仕組みを一つつくらなければいけない。それから所属する診療科長への届出も 必要である。それから治験を管理する部門との前もっての協議、それから場合によって は契約になるかもしれませんが、話し合いが必要であるというようなことは一つあると 思います。ですから基本的には余り変わらないんだと思います。   ○ 池田座長  ありがとうございました。続きまして同じ問題を景山委員からも少しまとめて、特に 治験依頼者が治験責任医師と直接契約をするということを前提にした場合の問題点とい うものを整理していただきましたので、御意見を伺って、そしてまた先生方の議論を続 けたいと思いますので、景山委員、よろしくお願いします。 ○ 景山委員  それでは治験依頼者と治験責任医師との直接契約についてお話をさせていただきます。  まず、治験依頼者と治験責任医師の直接契約というのは、治験依頼者側からの御提案 だと思いますが、まずこの治験依頼者側は現在の治験責任医師をどういうように見てお られるかという治験依頼者の認識です。治験責任医師、principal investigator、以下 「PI」と略しますが、これの治験におけるインセンティブは低く、またPIの治験に 対する理解、責任感は不足している。そしてこの原因、あるいはこの原因の一つは、現 行のGCPに定められた治験の契約形態にある。そこで治験の契約を、依頼者とPIと の直接契約に変更することによってこれらの点が改善するのではないかというような認 識を持っておられると思います。  さて、まず初めに医療機関の状況について申し上げたいと思います。とりわけ我々が 自主的に行う研究と受託研究との違いという点です。確かに我々は医療機関ではその活 動に比較的大きな自由度を持っていると思います。例えば研究面を取り上げますと、当 該医療機関において通院中・加療中の患者さんを対象として、みずからの発案で臨床研 究を行うことは倫理審査委員会の承認、あるいは被験者となってくれる患者さんからの 同意の取得といった手続きを踏むことによって可能で、こういう臨床研究は我が国では 欧米に比べておくれておりますし、また我が国の中では基礎研究に比べておくれている 領域ですので、今後さらに推進されるべき領域であるというように思います。  しかしながら、製薬企業から依頼された治験を医師個人として受託する、そういう形 で行うことができるほどの自由度、あるいは責任能力を我々は持っているとは考えられ ないわけであります。まずこのことを申し上げたいと思います。  次に、直接契約を結んだ場合にどんなことが起き得るかということで、まず初めにP Iの選定ということを考えたいと思います。GCPの第6条は治験依頼者に治験実施医 療機関、及びPIを選定する責務を定めております。現在は治験の実施を予定している 診療科の長、名称は科長であったり、部長であったり、教授であったりさまざまで、そ れは施設によると思いますが、まず診療科の長に当該治験を紹介して、診療科の長の意 向でPIが決まるというのが通例だと思います。このような中で契約を形式的に依頼者 とPIとの直接契約にしても、このような過程を経て選任されたPIに従来とは異なる 意識をどれほど期待することができるか私は疑問に思います。  次に、仮に依頼者がPIとしてふさわしい医師をみずから選定した場合について考え たいと思います。依頼者の選定したPIと診療科の長が考えているPIとが同一人物と は限りません。この場合には依頼者により選定されたPIと、診療科の長との関係が気 まずいものになるということが懸念されます。それから、依頼者の選定したPIと診療 科の長が想定したPIとが同一人物であっても、診療科の長が選定する前に依頼者がP Iを選定した場合には、診療科の長、依頼者、PIとの間に微妙な関係が感情的に生ま れるのではないでしょうか。こういう心情的に好ましくない状況が生じることがあれば、 治験の実施は促進されるどころか、むしろ阻害されかねないということが懸念されます。 さらに言えば、PIになることを躊躇するということすら起きてくるのではないかと想 像されます。  次に、治験の契約に関する診療科及び医療機関の長の責任と権限ということについて 述べたいと思います。仮に依頼者とPIが直接契約を結ぶにしても、当該診療科の長は 当然そのことは知っておくことはもとより、その是非についても権限を有しているべき であろうと思います。治験を受託するか否かは診療科の状況を総合的に判断して決める べきことであって、単に依頼者と依頼者により選定されたPIが決められることではな いと思います。診療科のその時の診療に関する状況、あるいは研究に関する状況等々さ まざまな状況を斟酌しなければいけないと思います。また同様に、医療機関の長もこの ことを知っておく、ないしは許可の権限を有しているべきであると思います。ただし、 大規模医療機関の場合には医療機関の長の役割は形式的にならざるを得ません。  次に、直接契約を結んだ場合に考えられる状況に戻りますが、一つは重篤な有害事象 に対する対処です。有害事象が生じた場合には、治験実施医療機関が適切に対処すると いうことは当然です。しかし、果たして治験を実施している診療科、あるいは他の診療 科の医師の積極的な協力と理解を得られるかどうかが多少気になるところです。周囲の ヒトからはPIの個人的な事柄というようにとられることが懸念されるわけです。  次に直接契約に生じる経費の支払いの変更ということについて申し上げたいと思いま す。依頼者とPIとが直接契約を結ぶ場合には、解決すべき金銭にかかわる問題が生じ ると思います。現行の依頼者と医療機関の長との契約の場合には、治験にかかわる主な 経費は直接経費、間接経費、治験コーディネーター導入経費、及び研究費であると思い ます。これは施設によって名称はそれぞれ異なると思いますが、まず考え方は大体こう いうものだろうと思います。依頼者とPIとが直接契約を行っても、これらの直接経費、 間接経費、及び治験コーディネーター導入経費の扱いは現在と大きく変わることはない と思いますが、研究費の取扱いには大きな変更が生じるであろうと思います。現在では 研究費は、当該診療科の口座に振り込まれるなどの方法によって、当該診療科あるいは 大学においては講座で研究目的に限定して使われております。PIに直接支払われる場 合、これらは非課税の研究費なのか、PIの個人所得なのか、等々さまざまな意見・見 解があると思います。当該医療機関が研究機関か否かによっても異なってくるのかもし れません。依頼者とPIとの直接契約の場合、医療機関と医師との雇用形態、あるいは 雇用条件にまで影響する非常に大きな課題であると思います。  次に直接契約に生じる利益相反、conflict of interestについて申し上げたいと思い ます。依頼者とPIとの直接契約を行えば、利益相反がさまざまな状況で生じ得ると思 います。しかしながら、我が国においては利益相反という考え方や概念はまだ社会に認 知されて定着しているとは言い難い状況だと思います。利益相反への適切な対処、これ は開示と管理だろうと思います。利益相反の開示という意味では、金銭面での開示、 financial disclosureが中心になると思います。利益相反への適切な対処には情報を開 示する側だけでなく、情報の受け手側、あるいはさらにその間に介在するメディア、こ の三者が利益相反を正しく理解することが必要で、これらの理解なしに一方的に利益相 反の開示だけを行うとやはり無用の混乱を起こすということが懸念されます。  そこで次に代替案を提案したいと思いますが、もしPIの治験に対する理解と責任感 が欠けていて、インセンティブが低く、そのことが治験の進捗に影響を与えているので あれば、治験の契約形態の変更という間接的な方法ではなく、それらを改善するより直 接的・具体的な方策を講ずるべきではないかと思います。  現在、GCP第42条ではPIの要件について3項目を定めております。一つは、治験 を適正に行うことができる十分な教育及び訓練を受け、かつ十分な臨床経験を有するこ と。そして2番目に、治験実施計画書、治験薬概要書、及び第16条第7項、または第 26条の2第7項に規定する文書、これらは治験薬の取扱いについて述べているわけです が、これに記載されている治験薬の適切な使用方法に精通していること。そして3番目 に、治験を行うのに必要な時間的余裕を有していること。この3項目をGCPは規定し ているわけです。  そこで、これらの3つの要件では不十分であるのであれば、PIにさらなる要件を求 めたらよいのではないでしょうか。一つは、最近は多くの学会が認定医、あるいは専門 医制度を設けておりますので、これを要件にするということです。これらを要件にする ことによって、その領域の専門性はある程度確保することができると思います。担保す ることができると思います。しかしながら、その領域の専門家であっても臨床試験につ いて、あるいは治験の場合には特にそれにまつわる法制度についての知識が十分にある とは言えませんので、治験に関する講習会を開催してその出席を義務づけるといったこ となども考えられるのではないかと思います。  次にPIのインセンティブについて述べたいと思いますが。PI、あるいは治験分担 医師が治験で得た研究費の使用に関しては必ずしも十分な裁量を有していないというこ とが、PIのインセンティブ低下の要因の一つになっている可能性はあると思います。 しかし、治験の契約形態を変更しなくても、医療機関に支払われる研究費はPIや分担 医師が当該治験における寄与の度合いに応じて使えるように指導することも一法ではな いかと思います。例えば、研究費の一部は診療科、あるいは講座がオーバーヘッドとし て取るとしても、残り、あるいはその大部分をcontributionに応じてPIや分担医師が 使えるようにする。そういう具体的な指導を行えば、こういう経済的なインセンティブ の面は解決するように思います。  次に、これと関連しましてPIや治験分担医師の選定が当該診療科の長であれ、ある いは依頼者であれ、今後、経済的なインセンティブが持たされる場合には、現在予想し ないような事態、これが何であるか私はわかりませんが、そういう可能性があるという ことはやはり考慮しておかなければいけないというように思います。  最後にまとめですが、PIは治験依頼者と直接契約を結ぶことができるほどの自由度 や責任能力を医療機関内で有してはいない、ということをまず申し上げたいと思います。  それから2番目に、治験依頼者とPIとの直接契約を結ぶことによる治験進捗への好 影響は仮にあるとしても、極めて限定的と予想され、またPIの選定にかかわる状況に よってはかえって進捗を阻害する要因にもなり得る可能性があるということを我々は予 想しておくべきではないかと思います。  それから3番目に、治験依頼者とPIとの直接契約を行う場合には、利益相反を適切 に扱えることが必要な条件だと思います。しかしながら、我が国の現状では利益相反に 関する理解度はまだ低いと言わざるを得ないと思います。  そして最後に、PIの治験に対する理解、責任感、及びインセンティブの向上には治 験の契約形態の変更という間接的な方法ではなく、より具体的な方策を考えることが望 ましいと考えます。具体的な方策の一例としては今申し上げましたとおりです。以上で ございます。 ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。治験依頼者が治験責任医師と直接契約を結ぶという ような方向を考えた場合の問題点というものを景山委員に示していただいたわけですが、 先ほどの議論も含めましてこの契約形態について先生方から御議論を続けていただきた いと思いますが、いかがでしょうか。   ○ 吉村委員  今の議論の中でよくわからなかったのは、個人を契約相手にするといった場合であっ ても、僕のイメージで純粋に個人ということは多分あり得ないだろうと思うんですね。 だから例えば非常に大きな病院で、例えば皮膚科で皮膚の治験をやるのに、皮膚科の責 任ある教授であったり、そういう人がやると。そういう時に大きな病院だと施設全体で はなく、いわば皮膚科という単位で施設としての契約ができればいいんだけれど、それ がしにくいから個人でやると。でも実際には皮膚科という単位で何かをやるという感じ になるんじゃないかと思うんですね。  そうした場合に、先ほどから言っている事件が起こった時に、何か問題が起こった時 の責任という問題は、これは例えば保険であったり、あるいは逆に大学、病院全体での 何とかということも当然そういう状況はつくっておかなければいけないにしても、実質 は個人にはならなくて、やはりある施設の機関的なものにはなるんじゃないかと思いま すが、いかがでしょうか。   ○ 景山委員  恐らくほとんどはそうなるでありましょうし、またそうなるべきだと思います。ただ、 実際にそうなるにしても、微妙な心理というか、重篤な事象が生じた場合に、その対処 に負担がかかる場合に、何でこんなことを受けてくれたのか、というような思いがふと 他科の医師の頭に浮かぶということもやはりあるのではないかということです。   ○ 池田座長  よろしいですか、そのほか。どうぞ課長。   ○ 中垣審査管理課長  景山先生から内情を含めて懇切丁寧なプレゼンテーションをいただいて随分理解が進 んだと思います。一つ先生にお聞きしたいと思っておりますのは、3ページでございま すが、3ページのところを見ると、みずからの発案でやる臨床研究というのと受託研究 というのは違うのではないかということを前提に出発されているように思いますが。例 えば臨床研究に補助金が足りないと、特にアメリカに比べると大幅に足りないという意 見があるわけでございますが、それは別問題として、厚生労働省であるとか文部科学省 であるとか補助金を出しておるわけでございますが、これはあくまで個人に対して出し ている。すなわち、個人が臨床研究をやるという前提のもとで出している。もちろんそ の申請書には医療機関の長の承諾をとっておりますから、医療機関内で一定の手続きを 踏んでいただくということが前提にあるんだろうと思いますが、そういう形でやってお られる。それと、この受託研究というのも法的な考え方からいったら基本的には変わり ないのではないかというのが一点。  それともう一つ、これは加藤先生にお聞きするのが一番いいのかもしれませんが、臨 床研究にしても治験にしても、いわゆる医療という枠の中でやっているのではないか。 いわゆる医療という世界があって、その上に成り立って研究というのがあるんだろうと いうように考えますと、そこで起きた有害事象であるとか事故であるとかそういうもの というのは、医療が患者個人と医療機関との契約ということを基本に成り立っているこ とを考えると、当然のことながらそこで個人で受託研究を受けた方というのは、その医 療機関の中でのルール・規約を守るというのが前提になってくると思いますが、あくま でもそこの責任関係というのは契約者が医療機関であろうと個人であろうと変わりない のではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。   ○ 景山委員  まず初めの第一の御質問の自主的な研究、例えば講座内の研究費で行うか、あるいは 公的な研究費をもらって行うかはともかくとしまして、そういう研究と治験のような受 託研究とでは両者の間には基本的には差がないのではないかということですが、やはり そこは違うのだろうと思います。やはり治験のような受託研究というのは、あくまでも 利益を追求する団体からの依頼ですから、どうしてもそういうものと我々が自主的なア カデミックインタレストから行う研究とではやはり目的が違うと思います。それに伴っ て先ほど申し上げましたさまざまな経済的な問題等が生じ得ますので、そこは両者は区 別して考えるべきだろうというように思います。  それから2番目の、いずれにしても自主研究であれ、受託の研究であれ、通常の医療 であれ、医療機関と患者さんとの契約の中で、医療の枠内で生じたことなので、有害事 象が生じた場合の対処は同じではないかという趣旨の御質問だと思いますが、これは法 的なことはよくわかりませんが、どうなんでしょうか。個々にはGCP等をもう一度読 み直さなければいけませんが、例えば重篤な有害事象が起きた場合に、法的なこと以前 にやはり先ほどプレゼンテーションの中でも申し上げましたように、ある重篤な有害事 象が起きた時に個人で外からの委託を請け負って起きた場合と、やはりその方が長年あ ることを目指して明らかにしようとして、極端に言えばライフワークとしてやっている ようなことでは、やはり医療機関内あるいは大学内でのそのことに対する評価というか、 判断というか、感情というか、そういう面は違うのではないかと思います。   ○ 池田座長  よろしいですか。加藤委員、何かその点についてコメントはありますか。   ○ 加藤委員  まず臨床研究であっても治験であっても、基本的には診療契約というものの中で行わ れているというように理解できると思います。ある意味では通常の日常的な診療に加え てと言いましょうか、特約的な意味合いを持って位置づけられる部分ですが、ベースは 診療契約を踏まえて展開されていると。倫理審査委員会の承認とかインフォームドコン セントの手続きとか、そういう意味で日常診療の一般のものからはみ出る部分があるの で特約的な意味合いをそこに持ち込むと。こういうことになるんですが、それは基本的 には医療機関と患者さん、被験者との関係で展開されるというように理解できるので、 もしそこで仮に過失的な問題があって賠償問題となれば医療機関が責任を負うと。これ は使用者責任とか、あるいはそうした構造も一つありますし、契約の当事者が医療機関 であるということで賠償問題になってくる可能性はあります。それで無過失補償の保険 の関係でも、それは医療契約ということから考えてみても、医療機関の長とした場合と 治験責任医師の間で行われたものとで差が出てくるとは私は思っていません。   ○ 岩砂委員  私は法律家ではございませんが、現場の医者としてそれは病院であろうと診療所であ ろうと複数のドクターがいらっしゃるところに患者さんが来られたということは、治療 を目的として訪れていらっしゃるわけですね、基本的には。そしてその中でことがあっ て、では治験にも参加しようという方も中にはいらっしゃるでしょうし、治験のために そこを訪れる方もいらっしゃるでしょう。それはもちろんあるでしょうが。  しかし病院内で起きたことに関して、それはそれを扱った先生の責任もありましょう が、やはりそういうことをしてもよろしいですよということを認めた院長さんというか、 部長さんというか、当然そこには一般的に言って責任問題が生じてくるというのは、こ れはごく常識的なことだと思いますね。やはり船の上で起きた場合は、すべての責任は 船長さんに一応来ますと。直接はその船員とかいろいろでしょうけれど、最終的には船 長さんに来るわけですから、やはり無関係ではないと思いますね。一般的な常識として。 ○ 池田座長  それは加藤先生、それでよろしいんですね。そういう御理解でね。 ○ 加藤委員  はい。 ○ 池田座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  今の岩砂委員、あるいは加藤委員の整理が論理的にまずはあって、その上で景山委員 のおっしゃった実情というのがあるんだろうと思っています。ただ、非常に難しいのは、 最初のプレゼンテーションでも申し上げましたとおり、薬事法の中でPI、治験責任医 師との契約を禁止する必要があるのか、禁止できるのかという点が一つ非常に難しい点 としてあるんだろうと思います。外国の実情をまた中島参考人、わかったら教えていた だければありがたいんですが、私がここ数カ月会った人ごとに聞いている範囲内で申し 上げますと、アメリカにおいてもルール上はどちらでもいいということになっているん だけれど、有名な病院というか、そうそうたる病院というか、治験を盛んにやっている 病院というのは院内規則があって、やはり機関で契約をしているというのが実情だと。 それは恐らく景山先生がおっしゃったような、院内でできるだけ円滑、かつ効率的、効 果的に治験をやっていくという上では、やはりそういうことが望ましいということがあ るのかなと。また、そういう医療機関の判断があるのかなと、こう考えているわけです が。あくまで禁止できるかというと、それは禁止していないというのが今のアメリカの 状況ではないかと私自身はそう考えているわけですが、またそのあたり先生方に情報が あれば教えていただければありがたいと思います。 ○ 池田座長  今の点に関していかがでしょうか。GCP省令では「しなければならない」と規定さ れているわけですね。日本の薬事法では。 ○ 中島参考人  私どもは切りかえてくれと申し上げているわけではなくて、やはり現状の医療機関と の契約に加えて、治験責任医師との契約という選択肢もふやしていただきたい。ICH −GCPにフィットさせていただきたいということを申し上げております。  それから先ほど中垣課長の御質問の中にございましたアメリカ等での契約の実態とい うことでございますが、私も直接見聞きしたわけではないんですが、調べた範囲では治 験責任医師との契約であるということでございます。もちろん、それ以外に医療機関と 何かの契約をしているということがあるのかもしれませんが、そこのところはちょっと わかっておりません。 ○ 池田座長  それは一つには、アメリカの医療のあり方というか、そういうことも関係しているん じゃないでしょうか。そうではないですか。例えば医師それぞれがオフィスを持って、 そして入院させて、そこで診療すると。そこにはオフィスを持っている医師と病院との 契約がございますよね。そういうような医療形態を踏まえた上でそういう格好になって いるという理解の方が合っているような気がするんですが。それは違いますか。要する に医療の形態が大分アメリカと日本では違うということも踏まえて、やはり治験を実施 する医師がどういう立場にあるかということもまた違ってくるのではないかと思います が。 ○ 岩砂委員  今言われましたように、アメリカ・ヨーロッパでもオフィスを持って開業している先 生が、診療とかいろいろな手術とかそういうことを大学病院に行ってやるとか、また私 立病院に行ってやるとか、そういうことは幾らでも行われておりますので、その辺のこ とを御考慮して考えていただきたいと思います。 ○ 木村委員  GCP省令というのは薬事法のもとにあるわけですね。それでGCP省令としては個 人契約ではなく、施設との契約ということになっているわけですが、実際に薬事法とか 日本のそういういろいろな法律で個人的な契約を特に妨げるということはないわけです ね。ここだけちょっとまず確認させていただきたいんですが。 ○ 池田座長  「契約しなければならない」と規定されている第13条のGCP省令、それの解釈の仕 方というのはどういうことになりますか。 ○ 中垣審査管理課長  先生がおっしゃるように、何かで妨げられているということであれば、今ここで議論 いただくことは全くないわけでございます。そうではないと我々は考えておりまして、 薬事法として先ほども申し上げましたが、岩砂委員あるいは加藤委員的な責任関係が整 理される中でこれが行われるということになると、果たして薬事法としてそれを個人と の契約を禁止する理屈が論理的にあるのかというのが悩んでいる理由でございます。 ○ 岩砂委員  私が言っているのは、そういうバックグラウンドがありますよと。だけれど、治験活 動を進めたいと。それにはこことここだけは認めながら、もうちょっといいものが運ぶ ようにしていただきたいという、私の考え方はそういう考え方で、がんじがらめではな く、そういうのがあるけれど、しかしながらもう少しうまく進むようにできないだろう かと、そこに気をつかっていただきたいということです。 ○ 木村委員  そういうことになりますと、先ほど景山委員からいろいろ御説明をいただきましたよ うな、確かに現場でもし個人契約した時のいろいろな問題点、心理的な葛藤も含めてい ろいろございましたが、これに関しては恐らくそれほど実際的な問題はないんじゃない かなと思うんですね。考え方の違いが現在はあるわけですが、そこら辺は例えばある一 つの診療科で治験が行われるとして、その診療科の中の一医師が契約したとしても、そ れを全く診療科の責任者が知らないところで行われるということはあり得ない。先ほど からありますように、病院長が知らないところで行われることはあり得ないと同時に、 診療科の責任者が知らないところで行われることも当然あり得ないわけですから、そこ ら辺は例えばその診療科の中の一医師がやるとしても、その診療科自体のコンセンサス があって、しかも診療科の中で行うということがその診療科の責任にもなるわけですし、 また病院の責任にもなるわけですから、そこら辺がきちんと整理されれば個人契約で行 われたことによる有害事象は関係ない、あるいはそんなことをやってけしからんという ようなことにならないんじゃないかなと、実際の現場では。そう思いますけれど。 ○ 池田座長  ありがとうございました。景山委員、何かございますか。 ○ 景山委員  そういうことがあっては困りますし、そういうことはあったとしてもそんなに頻繁な ことではない、まれな事象であろうと思いますが、やはりそういうことも考えておかな ければいけないという趣旨です。 ○ 加藤委員  GCPの13条のところで、治験の依頼をしようとする者と実施医療機関との間で治験 の契約を文書で締結するというように定めているのは、やはりそうでない治験責任医師 と個人的に契約するということを、まず治験の全体的な設計の中で予定していないのだ と思うんですね。それは例えば薬事法の中でも基本的に流れている考え方は、治験を行 う医療機関、要するに治験というのは医療機関で基本的に責任を持ってやっていくとい う、そういう設計で成立しているんだと私は理解しているんですね。そういう意味では、 「治験の契約を締結しなければならない」とした中のこの13条の読み方からすると、こ れは実施医療機関にきちんと治験の内容その他、こうした契約の中身を吟味した上で結 ばせて、そしてそのクオリティを確保しようと。そういう法の理念が中にはあるんじゃ ないかと。そう考えると、そう簡単に個人契約が可能なんだというようにはならないん じゃないかと、そういう気がしますが、いかがでしょうか。 ○ 池田座長  課長、何か御意見はありますか。 ○ 中垣審査管理課長  もう少し精査しなければいけませんが、加藤委員が御指摘された薬事法そのもの、今、 先生方のお手元にドッチファイルで参考資料3のところに薬事法の関係条文がございま す。参考資料3の4ページ目の下から10行目ぐらいでございますが、第80条の2、そ の上に「治験の取扱い」というのがございます。ここの80条の2から治験について薬事 法は述べておるわけでございますが、ここを考えていきますと法律自体は医療機関との 契約というのを想定した上で、それに伴って成り立っているということもないんじゃな かろうかと。どういう仕組みになっているかと申し上げますと、治験を依頼する者への 規制というのと、医師主導治験と言われるみずから治験を実施する者への規制というの を2つで成り立っておりますので、それともう一つは参考資料3の5ページの上から3 行目でございますが、「4.治験の依頼を受けた者、またはみずから治験を実施しようと する者は省令で定める基準に従って治験をしなければならない」。これがいわゆる治験責 任医師、あるいは「この者」というのをどこまで読むのかという議論があると思います が、そういう規定でございますから、先ほど申し上げましたように、法律自体が医療機 関との契約を想定した上で成り立っているということでもないのかなというように考え ております。それはもう少し精査させていただきます。 ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。問題点は資料1で冒頭に事務局の方からありました ように、治験依頼者と治験責任医師との直接契約が認められないという理由がどこに存 在するかというところを精査する、あるいは議論するということになるんだろうと思い ますが。これは実際に実施医療機関で今、契約は長と、言ってみれば病院長ですね。病 院長と契約を結ぶということに実際にはなっているわけですが、これからの治験のあり 方を考えると臨床研究センターとか治験センターのような別の組織があって、そこが専 門家をいろいろ育てて、人を育てて、それでそこが窓口になって治験を実際に実施して いく。その実施する場所が病院であるというような、そういう図式が描けるのかなとい う気がするんですが、そういう時に実際に契約者が「病院長でなければいけない」とい う、そういうことが少しこれから治験を活性化するという方向と少し相入れないのでは ないかなという考え方はあり得ると思いますが、その辺はいかがでしょうか。 ○ 吉村委員  この問題は基本的には、治験を推進するインセンティブが生じるかどうかということ が僕はポイントではないかと思っているんです。そうした場合に、私が過去に治験に関 係した時にいつも感じることは、やはり治験を実際に推進する部分が責任を持てるよう な、内容に関して、そういうシステムが一番インセンティブとして大きいような気がす るんです。つまり、先ほど個人報酬のようなものはどうかと聞いたら、個人報酬ではな く、むしろ功績であったり、あるいはその内容が例えば、あの薬は俺たちが開発したん だ、というそういう種類のそういうことの方がどうも治験をやっていらっしゃる皆さん にとっては必要な関心事のような気がするんです。だとすると、先ほど言ったように、 純粋な個人ということはまず考えられないわけですから、今おっしゃったように施設全 体ではなく、その担当部門のようなところが契約できると。そのかわりに全部責任を持 ちます、という形の方がインセンティブとしては大きいのではないかというのが僕の感 じで。そうすると、そういう道のようなものが開かれてもいいのではないかなという感 じを持っています。 ○ 池田座長  ありがとうございました。ただ、今までの調査で治験を引き受ける側がアカデミック インタレストだけでやっていると。それが大部分だという話があるわけですが、これか らは少し状況が変わってくる可能性は十分にあると思います。要するに、治験というも のをもうちょっと積極的に展開しようということになると、先ほど言ったようにファイ ナンシャルの問題とconflict interestの問題、それをやはり避けては通れない議論に なってくるのではないかなというように思われるんですが。 ○ 新木研究開発振興課長  治験の医療機関側の環境整備を担当している立場から、冒頭の熊谷先生の資料につい て御質問をしたいのですが。  最後のページに「真に責任を持てる責任医師を選ぶ」ということで臨床薬理学会の医 師等という御指摘がありましたが、真に責任を持つという意味は、恐らく医療事故があ った時とかそういうことも含めてなのだと思いますが、例えば薬の話ですと多くの場合 に薬投与に伴う事故というのは投与現場で、すなわち現場の看護師とか、それを調剤す る段階とか、そういうところで起こっているというのがこれまで医療事故のさまざまな 分析で明らかになってきておりますが、そうすると「真に責任を持てる」というのは学 問的に高いということではなくて、例えば事故を起こした看護師の法的責任をどういう ように見るのか、そのような側面が。すなわち、これを突き詰めていくと、結局は院長 しかいないのではないかなという気がするのですが。 ○ 熊谷参考人  そういう意味ではありません。医師であれば自分がかかわった事故というか、医学上 の出来事に関して責任を持つのはこれは当然のことでして、ここで言っている「責任を 持てる」というのは試験に関して責任を持つという意味でして、試験の施行に関して責 任を持つ。品質のいいサイエンスとして耐え得るデータをきちんと責任を持って出すと いうことが、むしろそちらの方の意味が強いです。 ○ 新木研究開発振興課長  それはここでの責任医師という、医療機関側の責任という文脈の中での、ちょっと御 説明だと、大変重要な一部ではあると思いますが、全体の話には少し違うのかなと。部 分集合の話なのかなという感じがしてお聞きした次第です。 ○ 池田座長  今の話は、例えば病院全体がリスクマネジメントをしていかなければいけない、医療 の安全確保をしていかなければいけないということを今は多くが取り上げておりますよ ね。どこの施設でも、病院長のリーダーシップで。それと同時に、それぞれの診療科の 長の責任というのも安全確保ということで理解されていると。そこのところと一脈通じ る議論になるかなという気がしますが。 ○ 新木研究開発振興課長  リスクマネジメントの話ですと、基本的な責任は全部院長にあります。それを分担、 分掌している形で各科がやっていて、医療法上はあくまでも院長と医師しかおりません から、途中の段階というのは組織的には院長が自分の病院の形態に合わせて院長の権限 を委嘱というか、担当させているという整理になろうかと思います。 ○ 池田座長  そうですね。そうだとすると、結局は治験もその一部というように考えれば、そこに リスクマネジメントを、最終的な責任はあると。しかし、それぞれを分担する人たちの リスポンシビリティというのをどう考えるかという、そこにある程度の契約関係を結ば せるかどうかという、そういう議論になるんじゃないかと思いますが。 ○ 藤原委員  今の話とちょっと離れますが、全体の議論を聞いていて、先ほど中垣課長もおっしゃ いましたし、治験遂行上、医療機関の責任というのは最終的には院長にありますし、治 験の場合であれば治験審査委員会というのが有害事象報告の担保もしていますし、それ から治験に始まる前のプロトコルのチェックもしますから、個人で契約したとしても医 療機関のいろいろなところのチェック体制で機能が働くので、全然個人と契約しても問 題はないなというように私は思っていて。  皆さんが一番心配している金の流れについては、先ほど課長もおっしゃいましたが、 厚生科学研究費では個人契約で、その後に医療機関の長が承認して、それで会計はすべ て会計部門で管理し、医師個人が厚生科学研究費であってもいじることはないので、何 ら制約はないと思います。多分この後、伊藤参考人から国立病院機構の話が出てくると 思いますので、私どものナショナルセンターもそうなんですが、むしろ困るのは個人契 約に受託研究費がなった場合に、会計法とか会計加算とか非常に使い勝手の悪い会計の 中での運用をされる方がむしろ懸念していて、きょうお話になった先生方は私大学の先 生が多いんですが、国立病院機構とか私どものナショナルセンターの会計の運用という のはとても厳しいというか、それと間接経費もよくわからないところに流れていたり、 そちらの方がクリアになった方がより治験ははっきりするので、契約はだれとしてもい いというように思うんです。「or」「and」はどちらでもいいと思いますが、そういうので やっていただきたいというのが私の意見です。  それともう一つ、中島参考人にお聞きしたいのが、治験のあり方検討会でもずっとこ の議論が出てくる中で、もう一つ企業の本音として個人契約とすることのメリットは一 番何なのかと。私がパッと思うのに、多分必須文書がすごく減るんだろうなということ ぐらいしかないんですが、全くモニターさんの手間が減って人件費が削減できるのかな というのがメリットで。あともう一つ考えると、外資さんが、きょうはPhRMAさんとか EFPIAさんは来ておりませんが、外資さんのメリットとしては海外は全部こういう体制 でやっていますから、日本も同じようなICH−GCPの仕組みとそっくりですよと言 った方が企業が触手を動かすというか、日本で治験をしたくなるというメリットの2点 ぐらいかと思いますが。依頼者があっての治験なので、依頼者さんとしてはなぜ個人契 約もオプションに加えた方がいいかということをはっきり聞いておきたいなと思います。 ○ 中島参考人  まず、重複する必須文書の問題、これも大変大きなことですね。ただ、それだけでは ありません。やはり医師のインセンティブ、これは大変大きなものでして、これは5カ 年計画を策定する段階でもいろいろな意見が出てきたんですが、やはりインセンティブ を高める方策というのは多角的に取り組んでいかなければいけないものだと思いますね。 こっちがあるからいいとか、そういうものではない。この治験環境の改善という意味で も、やはり多角的に取り組んでいるわけですが、このインセンティブということについ ても可能な限り手を打っておくということが大変重要になります。それがやはり企業へ の負担というところにつながってくる部分がございます。例えば、先日、私どもの参考 人が述べたかと思いますが、私どもが本来しなければならないもの以外の資料の作成と いうこと、あるいはIRBへの立ち会いといった必須文書以外の負荷というものも大変 多くなっているというような実態がありますので、そういうことも避けることができる のではないかなというように思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。それではその点も、インセンティブの話も出ましたので、 次に伊藤参考人の方から国立病院機構における治験・臨床研究の実績評価と研究助成金 への反映ということで、病院機構でやられている工夫についてちょっと御紹介いただけ たらと思います。   ○ 伊藤参考人  国立病院機構本部の研究課の伊藤でございます。こういう機会でお話をさせていただ けることを光栄に存じております。  それで一枚目を見ていただきますと、国立病院機構というのは146の病院がございま して、8つの臨床研究センターと49の臨床研究部、53の院内標榜臨床研究部がありま す。法律で研究とか調査などを行うことということが書き込まれている、ある意味では 一般病院と大学病院とのちょうど中間的な組織でございます。したがいまして、私ども は治験も含めて臨床研究を業務として行っています。  その治験を業務として円滑に行うために治験が行われる施設には必ずCRCがおりま すが、3ページ目をごらんいただきますとおわかりになるとおり、治験ができる施設を 広く拡大していくために16年度に独立行政法人となりまして以来CRCを増員し、現在 は19年度には62施設に145名の専任の正職員としてのCRCがおります。いわゆる非 常勤のCRCを含めますと400名ぐらいの薬剤師・看護師などがCRCとして勤務して おります。  その結果、4ページ目をごらんいただきますとわかるとおりで、企業から順調に依頼 をいただきまして、受託研究の実績としまして図の17年度、18年度の数字がずれてお り申しわけありませんが、18年度実績は47億円を超える実績を持っているところでご ざいます。  こういう仕組みづくりをしていく中で幾つかの工夫をしておりますので、それを御紹 介させていただきたいと思っております。私がこういう仕組みをつくるに至りましたの は、東京医療センターの治験管理室長から順天堂大学の治験管理部門の責任者として移 った経緯がございます。それと過去と現在の国立病院機構、ナショナルセンター、私立 大学の状況を踏まえて、いかにすれば皆さんに治験を気持ちよくやっていただけるだろ うかということを考えてつくった代物でございます。  それで国立病院機構で現在、本部契約と自施設での契約と2つの契約形態があり両者 は多少違っておりますが、御紹介させていただきたいのは臨床試験研究経費と称してお ります従来からポイント制と言われている研究費の使い道でございます。ピンクの部分 の研究費の最低70%は実際に治験をやられた個人に研究費として、使えるようにお願い をしているところであります。この研究費の使い道がまだ使いやすくないということは 重々承知しているところでありますが、国立病院機構では、従来、治験とか臨床研究に 関係している学会でなければ交通費の支弁ができないといった制限を撤廃したり、交通 費以外にも学会の参加費にも使えるようにするとか、治験と直接関係のない海外の学会 にも行けるようにして、インセンティブの向上を図っています。  それで先ほど来、議論になっております個人の所得への還付の話についてですが内部 で議論はしておりますが、幾つかの意見があって現在のところ頓挫しております。ちな みに、その理由としまして、治験も臨床研究も本務としてやっておりますので、給与に 上乗せするのは困難ではないかという意見です。それからもう一つ、治験をやることで その他の診療業務がおろそかになるのではないか、治験だけに走ってしまう懸念が示さ れております。それについての解決法をきちんと説明できていないので給与としての支 払いは現在のところできておりません。今後議論を進めていくことになると思っており ます。  国立病院機構の研究者の中には治験を一生懸命にやって、1千万円近い契約額となる ほど患者さんに同意をいただいている者もおりますが、そういう者たちにとっては消耗 品で使えとか、学会に行けといっても研究費を使い切れるものではない。それよりも診 療の医療機器などに使えるようにしてほしいということでもあります。しかし国立病院 機構では会計のセクター管理の関係でできておりません。あとは仕事に応じた経費算定 ということについてでございますが、国立病院機構では本部契約につきましては契約時 の10万5千円を除いて、すべて出来高で算定いたしております。  経費の問題と別に、治験をやったことについての医師の業績評価ということの御紹介 を次の6ページからさせていただきたいと思います。臨床研究の活動実績と申しますの は、先ほど御紹介しました臨床研究センター、臨床研究部、それから院内標榜臨床研究 部についての活動の評価です。(1)の国立病院機構が推進している治験、EBM臨床研究 の項をご覧いただきます、治験の実施症例数では1症例当たり2.5ポイントとつけてお ります。これはどれぐらいのインパクトがあるのかと言いますと、例えば英文ペーパー を書いた時のインパクトファクター×2となっておりますが、普通の領域では高いイン パクトファクターでも「3」ぐらいですから、それを筆頭著者として書いた時に3×2 +英文原著の掲載で「3」というようなところで10ポイントですので、治験を4症例や るのと、英文の一流紙のファーストオーサーになるのとがほぼ同じぐらいの形で評価を しております。治験とか臨床研究で一生懸命に患者さんに説明し、そのフォローをする ということについての価値をこういう形で評価しております。  この結果をどういうように使っているかと言いますと、次の7ページをごらんいただ きますとおわかりになるかと思いますが、施設の名前は伏せさせていただいております が、17年度の臨床研究の活動実績の高い施設では3,000ポイントを超えるポイント数に なっております。実はAの施設は臨床研究センターと言われているところではございま せん。単一の臨床研究部がこれだけの実績を挙げている施設がございます。  こういう活動実績に対して私どもとしては、8ページにございますが、私どもの方か ら研究セクターに研究費、非常勤職員の人件費としてお配りしている費用のうちの研究 助成金、従来から言われている庁費と言われているものに相当しますが、その研究助成 金の3割を基礎部分、それから7割を実績分として配布しております。3割を基礎部分 としておりますのは、臨床研究をするというところには非常勤職員の事務職員一人ぐら いはいていただかないとだめだろう。その人件費の部分ぐらいは手当てをいたしたいと いう思いで3割の基礎部分を公平に配っております。9ページをごらんいただきますと、 先ほどの一番ポイントの高かった施設は約3,300万円、それでポイントがほぼゼロのと ころは168万円という形で配布しています。従来は臨床研究センターが幾ら、臨床研究 部は幾らという形で一律に研究助成金の配布をしていたものを、昨年度から変えており ます。これは18年度の配布実績でございます。ちなみに昨年度実績1ポイントが約8 千円ぐらいの庁費としてその施設に配分されている状況でございます。  臨床研究センターにおきましても同様に、10ページにあるように、臨床研究センター の活動度に応じて臨床研究センターの研究費の配分も、基本額3割、業績分が70%とい う形でさせていただいています。これが今の国立病院機構の研究セクターの評価でござ います。  ちなみに、こちらの評価票ですが、臨床研究部員の評価というのはまだ実施はしてお りませんが、実は私が順天堂大学にいる時にある教授選考委員会の委員長をやった時に 考えたものをたたき台にしていますので、基本的には個人の評価を積み上げたものでご ざいます。それで院長先生方には、将来的にはこういう評価票に基づいて研究者個人の 活動度ということを勘案した上で、しかるべきプロモーションを考えて欲しいとお願い をしています。ただ組織としてまだ強権を発動するには至っておりませんが、将来の視 野としてはこういう総合的評価に基づいていくということが従来のペーパーのインパク トファクターだけで評価するというところから比べれば、地道に患者さんにお話をして 研究などの同意を得る医師が評価されることになるのではないかというように思ってい るところでございます。  それで、あとは参考人として意見を述べさせていただければと思いますが、きょうの 議論を聞いておりますと幾つかのポイントがあるのかなと思います。先ほど藤原委員が お話をされたとおりでございますが、責任医師と契約することになると自分たちが頼ま れて治験にかかわるすべてのことを自分でアレンジをするという努力は大変なことにな るんだろうと思います。しかし、医師主導の治験を引き受けている先生方は事務局に対 して仕事をしてくれるようにアプローチしていただけていますし、治験をやる方々の意 欲は高くなるのではないかと思います。医師主導の治験に際しては、みずから受け、院 長に依頼し、治験事務局にも依頼されているのを見ますと、そういうのもいいのではな いかと思います。また、今までは関所の番人としてふんぞり返っていた治験事務局やC RCがいうことをきかなければSMOで外部のCRCを頼むぞということになりますか ら、SMOと治験セクターの良い意味での競合関係ができてスムーズな病院サービス運 用につながっていくのかなというように思っております。  医師との契約と言うことでは透明性が一番大切だというように思いますが、お金につ いては施設管理をすべき時期で、お金を個人管理にするというのは今の厚労科研費も含 めての研究費のあり方からいっても逆行するということではないかなと思います。契約 そのものとお金の管理を分ければ特に問題はないのかなというのが、きょう聞かせてい ただいた議論に対する国立病院機構の研究担当責任者としての感想でございます。以上 でございます。 ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。ただいま伊藤参考人から国立病院機構におけるイン センティブという問題を具体的に紹介していただいたんですが、委員の先生方からどう ぞ。 ○ 加藤委員  大変勉強になりました。きょうの熊谷参考人の6ページのところに、研究費の問題と 医師個人に対する報酬という問題が、治験責任医師のインセンティブ喪失ということで 報告されていたかと思うんですね。  それで中島参考人にも聞きたいんですが、インセンティブをきちんと持たせる必要が あるということで、個人契約という話が言われたと思いますが、そこで言うインセンテ ィブ、吉村委員もそういうことをおっしゃったかと思いますが、医師個人に対する報酬 の部分を含めてものをおっしゃっているのかどうか、その辺のところを少し補っていた だきたいと思いますが、いかがでしょうか。   ○ 中島参考人  まず、個人契約ということに関して言いますと、当該臨床試験に対する自覚というこ とでございます。それでお金の問題につきましてはやはりリンクするものであろうと思 いますが、これは各施設ごとに運用を定めてやっていただければよろしいというように 思います。 ○ 池田座長  よろしいですか。   ○ 加藤委員  私の質問は、要するにインセンティブという、個人への謝礼とかそういうことになら ないのかという、そういうことです。熊谷参考人もある意味では、研究費の部分と医師 個人に対する報酬の部分と御説明をされていたわけですね。両方を念頭に置いておられ るんだろうと思いますが、つまりは医師個人に対する報酬の部分というものがインセン ティブとして必要だとお考えですかという、端的な質問です。   ○ 中島参考人  必要だと思います。   ○ 加藤委員   吉村委員はいかがですか。   ○ 吉村委員  僕は余り必要ないような感じを持っているんですが。つまり、それが将来として、つ まり業績として今言われたようにポイントのようなもので評価されて、結果として将来 の地位の向上とか何かにつながるのであれば、多分それで皆さんは満足するのではない かなというように思っていますが。   ○ 加藤委員  それで今の伊藤参考人の中で、ある意味では国立病院機構本部がそれなりのいろいろ な問題が生じないように検討して配分するという形になっているわけですが、個々のお 医者さんが一生懸命に仕事をしていて、個人に対する報酬の部分にカウントしていくと いう直接的な形にはならないという理解でよろしいですね。   ○ 伊藤参考人  現在のところ、個人に報酬として支払うことについてはという検討を進めているとこ ろで、今は議論をしている最中でございます。先ほど御紹介したような幾つかの問題点 を私自身が回答できておりませんので、報酬にカウントするところまで至っておりませ ん。   ○ 加藤委員  本来、臨床の中で治験や研究があわせてなされていくということがあって、ある意味 では本来的な医師としての仕事をしているということに加えて、医師個人に対して報酬 の形で組み込むということについては、ある意味では勤務時間中にアルバイトをしてい ると。自分の報酬のために、あるいは研究費としても自分がほかの研究をしたい、その 研究費を稼ぐことをしているという構造になってきますよね。それは景山委員から9ペ ージのところで指摘されていたと思いますが。そういう本来の仕事をしている中で、そ ちらにおいしさがいっぱい出てくるとちょっとゆがんだものが生じないのかなという気 が一つするのと。  それから個人と契約した時の利益相反の問題というのは、やはりメーカーとのつなが りとか、直接的なやり取りの中で癒着とか、いろいろな問題が過去に不祥事がなかった わけではないわけで、そういうものも反省の上に立って設計しなければいけない。基本 的には利益相反という問題がいろいろな場面で出てくる、直接契約というものに対して いろいろなこういう仕組みをつくればいいんじゃないかというように、制度的に管理、 透明性、そういうようなことをやりながらやるというものの、本質的に利益相反という ものの危うさを持っているということについてはどのようにお考えですか。   ○ 伊藤参考人  先ほどからお話をさせていただいているように、お金に関しては直接研究者が扱うも のではない、企業からいただくお金を個人として扱わないということにすれば透明性が 保たれるのではないかなというように思っています。  加藤委員から御指摘された個人に対して研究費の一部を報奨金として支給するという ことについては内部で説明ができておりません。要するに業務としてやられている部分 ですから報奨金のような形になれば勤務時間内アルバイトとどこが違うんだという話に なるので、整理がついておりません。国立病院機構では未だに行っておりません。ただ、 そういう方向性も踏まえて議論を内部でしているということだと思っております。   ○ 加藤委員  これは治験や臨床研究をやるのは、今、伊藤参考人が言われたように、アルバイト的 な位置づけをしているわけではないんでしょう。明らかに本務ですよね。   ○ 伊藤参考人  はい、本務です。   ○ 加藤委員  この理解が、要するに病院に勤務している医師というのは、患者の診療に当たると。 これを治験というと企業が依頼してやるものですが、これも一つの本務であるという認 識は病院機構では当然確立していると。そういうことでよろしいんですか。   ○ 伊藤参考人  はい、そのとおりでございます。   ○ 加藤委員  それがもし仮に本務だということであれば、一生懸命に治験に参加したお医者さんに 個人に対する報酬の問題をどうするんだということを議論すること自体おかしいという ことになりませんか。   ○ 池田座長  それはいかがですか。例えば能力給とか、いろいろな考え方があり得ると思いますが。   ○ 伊藤参考人  そのとおりでございまして、過去に実績があった方に対して実績ベースで、例えば治 験とかの本務をたくさんやった人に対してはそれなりの給与を支給しなければいけない という議論が進んでいるところで、この研究費の一部を一時金のような形で渡すという ことについていかがなものかと言われているのが現在の状況でありまして、多分、今後 の議論にもよりますが、例えばこういうポイントの高い医師についてはより早く昇進し ていくというような形でのインセンティブの返し方になる可能性もあるかと思っており ます。本務でございますから能力が高い人が昇進していくということの整理になるのか なというのが現状でございます。   ○ 池田座長  よろしいですか。はい、どうぞ。   ○ 吉村委員  金の流れということに関しては契約とはかなり異質だと僕は思っているんです。とい うのは現在、厚生労働科学研究費とか文科省の研究費が全部そうですし、私自身が寄付 講座ですから寄付をかなりいただいているんですが、全部それはそっくり管理は大学が やっておりまして、したがって私の懐には一銭も入らないんですね。つまり、他人に依 頼したりする時にはちゃんと払うんだけど、自分が仕事をしている分には一銭ももらえ なくて、そしてそれはやはり今おっしゃったように、最終的には研究業績であったり、 やっぱりそれなりに。例えば、うちの大学であれば大学の宣伝にもなっていますよとい うことで、大学の方からいろいろな表彰を受けるとか、一般の人なら地位の向上がある とか、学会なんかでそれなりの仕事をしているという評価になるというようにいってい るのであって、多分それで十分なんじゃないかと僕個人は思っているんですが。  それで問題になるのは、本務の中で云々ということがありましたけれど、最近の厚生 労働科学研究なんかはエフォート率が何%を超えてはいけないとかそういうことが条件 になっていますから、同じ研究であっても本務的なものとよそから入ってくるものとの 割合というのはある意味では大学でもコントロールしていますから、それさえきちんと やれば今のような問題は起こらないんじゃないかという気がするんですが。   ○ 池田座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。どうぞ。   ○ 中島参考人  いまさら申すまでもなく、GCPのねらいとするところは倫理性と科学性、科学性と いうことで言いますと、データの信頼性というところがかなり大きなものだと思うんで す。この新GCP、今のGCP、これは10年以上前に制定されたんですけれど、先ほど 加藤先生がおっしゃられたように、やはりいろいろな不祥事があって信頼性というもの が損なわれるということも懸念されるということで、この第13条がこういう形になった という話も伺っております。それで10年以上前と現在の治験現場というのはかなり変わ ってきていると思うんですね。一つはやはりCRCの登場、それからSDV、直接閲覧 という行為、こういうことで第三者性とか透明性、ひいては信頼性というものが相当確 保されるようになってきているということは大きなことでございまして、そういう意味 ではデータの信頼性ということが損なわれるということは起きにくいようになっている。 10年以上前とは大分変わってきているということは言えるのではないかなと思います。   ○ 池田座長  ありがとうございました。そのほかよろしいでしょうか。ちなみに、伊藤先生、4ペ ージの病院機構で受託している研究実績の年次推移のうちで、これは47億ということで 18年度あるんですが、この中での治験の割合は何%ぐらいなんでしょうか。これは受託 研究、あるいは競争的資金等を含めたすべてですよね。   ○ 伊藤参考人  いいえ、これは競争的資金ではなくて、これは治験と受託研究だけでございます。   ○ 池田座長  それだけですか。ポイントに関してはすべてのものは入れるけれど。 ○ 伊藤参考人  この実績(4ページ)は治験と受託研究、製造販売後臨床試験とか製造販売後の調査 だけでございます。いわゆる研究費は入っておりません。   ○ 池田座長  ポイントに関しては研究費も入れてポイントしているということ。   ○ 伊藤参考人  ポイントに関してはそこに書いてあるように公的研究費なども含めてありますが、4 ページはほとんどが企業の方からの受託した研究費の総額でございます。   ○ 藤原委員  伊藤参考人にちょっと一つだけ御質問なんですが。8ページと5ページで、国立病院 機構の場合に治験で入ってくる受託研究経費を施設のいろいろな整備費、備品の購入に 充てることはシステムとして可能なのかということをお伺いしたいんですが。   ○ 伊藤参考人  ここのところの算定経費をつくっておりますが、そこの施設管理費と書きました緑色 の部分、ナショナルセンターであればこの30%は財務省に天引きされている部分ですが、 現在は、独立行政法人化とともに国立病院機構に戻ってきております。その施設管理費 の部分につきましては院長裁量でどういう形で使っても構わないという形にしておりま す。これは施設整備費を含めて、例えば診療機器などの購入にも使えます。   ○ 藤原委員  医師のインセンティブを先ほどから話になっていますが、個人契約を絡めて私の考え を述べさせていただきますと、個人の報酬というのはそもそも日本では合わない話なの で、個人の報酬をこういう治験のお金の中に書き込まれるというのはやっぱりおかしい と思うんですね。米国は受託研究以外のNIHから出る研究費もすべて研究者がサラリ ーに使いますから、そういう仕組みがある中で受託のこういう製薬企業との医師受託契 約の中で発生する研究経費を報酬に載せるということが可能だと思いますが、日本では そういう給与に関しては全然、研究費とは別体系というのが多分日本人の論理だと思い ますので、個人の報酬を入れると多分、複雑なことになってよくないと考えます。ただ、 例外はクリニックさんですね。クリニックさんの場合においてはそこはある程度インセ ンティブとして医院の医業の報酬というのは上がった方がいいのかもしれないので、そ こは医師会の先生方の意見を聞いてみたいなと思います。  それで治験をたくさんやっている医師の立場から言うと、医師のインセンティブとい うのはむしろ自分の懐ということではなく、病院全体が潤う方が治験がスムーズに行く ことが実態で、私どもの病院でも一番抵抗勢力になるのは臨床検査部、放射線診断部、 薬剤部、看護部というところのその人たちが、私たちは治験のどこでメリットを受けて いるんですか、というのが余り見えないんですね。ですから、そういう人たちに例えば 臨床検査部のこういう機械は今回の治験を通じて整備されましたとか、放射線診断部で あれば最近はMRIとかいろいろなタイミングでいろいろな検査をしますから、例えば 診療放射線技士さんが受託研究費で2名さらに雇用されましたとか、臨床検査部であれ ば臨床検査技師さんが何名雇用されましたというインセンティブが病院全体に行く方が 非常に活性化するので、個人契約云々よりもインセンティブを考える時には病院全体が 治験によってどう整備されるかと。悲しいことにナショナルセンターであっても調費と か整備費というのは非常に足りなくて、機械はぼろぼろで、人もいないという状態なの で、そういうところに何かやっていけば医療のレベルも向上するし、患者もハッピーに なるし、私ども医師もいろいろな部署の人たちから協力的な援助を治験あるいは臨床研 究で受けられるということになりますので、インセンティブの場合にはそういう観点で 使いやすいお金の流れをつくっていただくのが一番だと考えます。   ○ 池田座長  ありがとうございました。本日、委員の先生方に非常にいろいろな角度から御意見を お伺いさせていただきまして本当にありがとうございます。本日のこの議論を踏まえて 治験の契約に関する考え方について一度事務局の方できょうの議論のまとめ、あるいは 今後の方向性、考え方を整理していただけますでしょうか。それでまた先生方の御意見 を伺うというような格好にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。一度、事務局の 方で治験の契約に関する考え方について整理をお願いしたいと思います。一応、きょう 用意した議題はこの点でございますので、事務局から最後に連絡事項等をお願いしたい と思います。 ○ 事務局  資料5でございますが、前回GCP運用改善に係る専門作業班の設置について御了解 いただいたところでございますが、委員につきまして法律・倫理の関係の先生が決まっ ていなかったということで、今回決まりましたので御報告させていただきます。法律関 係の委員としまして獨協大学の法学部法律学科の磯部助教授、倫理関係の委員としまし て国立成育医療センター研究所室長の掛江先生にお願いしております。これで合理化の 方を進めさせていただきたいと考えております。   ○ 池田座長  いかがでしょうか。今の事務局の説明はよろしいでしょうか。これはGCP運用改善 については専門の作業班をつくって作業していただくということをこれまでの委員会で 先生方にお認めいただきましたので、そのようにお願いしたいと思います。  事務局の方からそのほか何か追加することはございますか。 ○ 中垣審査管理課長  本日は活発な御議論・御検討をありがとうございました。座長の整理に基づいて次回 資料を提出させていただきたいと思います。  次回の日程でございますが、事前に先生方の御都合をお伺いさせていただいておりま すが、5月18日(金)の10時〜12時ということでお願いしたいと考えておりますので、 よろしく御協力をお願い申し上げます。場所につきましては追って御連絡させていただ きます。ありがとうございました。   ○ 池田座長  はい、ありがとうございました。先生方には非常に活発に御意見を伺わせていただき ましてありがとうございました。それでは本日の検討会をこれで閉めさせていただきた いと思います。どうもお忙しいところありがとうございました。 (終了) 照会先: 厚生労働省医薬食品局審査管理課 TEL 03-5253-1111(内線2745) 担当者 森岡、山脇