07/04/16 第7回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第7回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 日時:平成19(2007)年4月16日(月) 18:00〜20:20 場所:厚生労働省共用第8会議室(6階) 出席者:  委員   柏女座長、奥山委員、榊原委員、庄司委員、西澤委員、松風委員、山縣委員、   吉田委員  事務局   藤井家庭福祉課長、川並家庭福祉課専門官、鈴木家庭福祉課措置費係長 議題:  1. 各論点に関する討議  2. その他 資料:  資料1 具体的論点(案) ○鈴木家庭福祉課係長  ただ今から、第7回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」を 開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただ き厚く御礼申し上げます。本日の検討会の委員の出席者は8名で全員出席です。吉田委 員が若干遅れておられますが、まもなく見えると思います。なお、榊原委員は所用のた め19時ごろ退席の予定です。  それでは、議事に入りたいと思います。柏女座長、よろしくお願いします。 ○柏女座長  非常にタイトな日程で、皆さま方には月に何度もお集まりいただきありがとうござい ます。それでは、これから第7回の検討会を始めたいと思いますが、まずお手元にお配 りしている資料について、事務局から確認をお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  資料の確認をさせていただきます。上から順番に「第7回議事次第」、次に「配布資 料一覧」、配布資料として「資料1具体的論点(案)」です。お手元に資料がない場合はお 知らせください。事務局よりお渡しします。  なお、委員から四つほど資料をご提供いただいております。一つ目は「社会的養護を 必要とする子どもたちのために〜千葉県における社会的資源のあり方について 答申 〜」の概要版です。これは柏女座長が委員をしておられる千葉県の社会的養護の報告書 です。それからもう一つは緑色の「施設入所児童の援助プログラム〜被虐待児童のケア と家族再統合へのアクションプラン」、これは松風委員からの提供資料です。もう一つの 水色の「平成18年度アクションプラン推進プロジェクト報告書」も松風委員からの提 供資料です。最後にもう一つ、これも同じく水色の報告書ですが「平成18年度厚生労 働科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業『子どものライフステージにおける社会的 養護サービスのあり方に関する研究』」、これは庄司委員からの提供資料です。資料の確 認は以上です。 ○柏女座長  ありがとうございます。それぞれ皆さま方から貴重な資料をご提供いただきありがと うございます。一つ一つについての説明は時間の関係で省略させていただきたいと思い ますが、ぜひ読んでいただいて議論の参考にしていただければと思います。また他の委 員もかかわっていらっしゃる研究報告等がありましたら、ぜひご提供いただければ幸い に思います。  今日は前回の続きということになります。今日で一当たり具体的論点については討議 を終えたいと思っています。3枚目の具体的論点(案)の「3.養護ニーズの多様化・高度化 を踏まえた、社会的養護の質の向上に向けた具体的施策」についての(4)「施設機能の拡 充」からの議論ということになると思います。よろしいでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  冒頭に一言だけ。前回、私どもの方に引き取らせていただいた形になっていた要保護 児童数の将来推計の関係ですが、事務局としてもどのようなことが可能なのかいろいろ 議論をしてみたのですが、正直言ってなかなか難しいと思います。減少要因・増加要因 はかなりいろいろなものが複雑に絡み合っていますので、将来推計という形は現時点で 難しいのではないかと思うに至っています。従いまして、申し訳ありませんが今日は特 段何も資料等を出すことができませんでした。  ただできるとすれば、前回委員から「日本全国が全部新潟だったら」という話もあっ たと思うのですが、自治体ごとに見たとき、地域における虐待対応なども比較的やって いて、例えば1万人当たりの要保護児童数、要保護児童発生率と言ってもいいのかもし れませんが、それが高い自治体をピックアップして、そのレベルまで養護の体制を整備 するとすれば大体どれぐらいの量が必要となるのかというやり方であれば、数字が出る かもしれないと思っています。もしよろしければ、そのような考え方の下でやってみて 有用な、役に立つような数字が出てくるのであれば中間取りまとめ(たたき台)の中に盛 り込んで、いずれにしても次回までの間にそれぞれ委員の先生方にたたき台として事前 にご覧いただくつもりではありますが、その中に盛り込んでみようかと思っています。 いかがでしょうか。 ○柏女座長  今の藤井家庭福祉課長からの話を簡単に繰り返しますと、将来推計は難しいが、人口 1万人当たりの保護率が高い自治体、一番高いか上位群かわかりませんが、他の自治体 もそのレベルにまでなったときに一体どのくらいの子どもたちになるのだろうか。今は 大体4万人ぐらいですが、それを出すことは可能だろうから、それで少し試算をしてみ たいということでしたが、いかがでしょうか。奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  中間取りまとめまで急いでいるということがあるので、いまある情報で考えるしかな いということがあると思うのですが、1年間というか少し長期的に何らかの調査までし て推計するということを考えるのかというのが一つと、もう一つは、前回言うべきだっ たのに何となく私もうっかりしていたのですが、同じ要保護児童でも、非常にケアを必 要としている子どもと比較的そうではない子どもの両方がいるわけです。その辺をどの ように推計するのかということも問題があるのではないかと思っています。 ○柏女座長  確かにその辺は少し宿題として、しかし当面は、奥山委員にも賛同いただいたように、 こうした推計をしてみることは必要だろうが、長期的なスパンでそうした研究などをや らなければいけないということも踏まえておくべきだという意見だったと思います。貴 重なご意見だったと思います。いかがでしょう。 ○藤井家庭福祉課長  長期的にどのような調査の下にどのようなことができるのかというのは、引き続きご 議論いただきたいと思いますし、私どもも考えなければいけないと思います。あと、奥 山委員がおっしゃった、どのようなニーズの子どもがどれぐらいいるのかという問題は 難しいところなのですが、そもそもどのようにニーズを分類すればよいのかということ も議論のあるところだと思います。幾つに分かれるのかわかりませんが、その辺も踏ま えて整理してみたいと思います。ただ、当座できることという意味ではやはり先ほど申 し上げたようなところが精いっぱいだと思っています。 ○柏女座長  何かありますか。 ○奥山委員  前に、確か才村先生の研究でしたか、今の児童養護施設で抱えきれているのかという 調査はあったような気がします。ですから本来なら児童養護施設では無理な子どもが大 体どのぐらい児童養護施設に行っているのか、というデータくらいはケアの程度として、 割合として出せるのではないかと思います。 ○柏女座長  それには庄司委員もかかわった平成14年度の子ども家庭総合研究事業で、児童養護 施設に入所している子どもたちの調査なども行っていますので、すぐにそれを適用でき ないかもしれませんが、それも含めて検討・研究していけば出てくる可能性が高いと考 えています。そういう意味では、今後の中長期的な課題になると思います。山縣委員、 どうぞ。 ○山縣委員  中長期的に検討するということについては全く同感なのですが、最初から「将来推計」 という項目立てになっていますが、現行政策を前提にして将来推計をする場合、今の制 度でさえ十分に把握できていないのではないかということをまず押さえなければ、現場 の方に持ち帰っても二重に飛躍した議論になる可能性があると思っています。例えば児 童虐待防止法等の改正で立ち入り調査等が強化されてくると、恐らく大変な量の緊急一 時保護が起こってくる可能性があると思うのです。ですから、それだけでも恐らくずい ぶん推計し難くなっていて、さらにそれに将来というのを掛けていくともっと難しい話 になるので、とりあえず今の状況で制度をこう変えたらこれくらい幅が広がってくると か、県単位の違いというのは恐らく県が持っている資源の違いによっても生じているは ずだとか、その辺をまず見なければなかなか将来のところまでは行きつかないのかなと 個人的には思います。 ○柏女座長  そういう意味では、藤井家庭福祉課長からご提案のあった、現行制度の枠内において 入所児童数の割合が高い所を中心に議論をしてみたら何人ぐらいになるだろうかという 試算は一定の有効性を持ち得るのではないかということでよろしいでしょうか。 ○山縣委員  市町村でやれば、もっと高くなると思います。県でやれば低くなる。 ○柏女座長  確かに。では、奥山委員あるいは山縣委員がおっしゃったような将来推計のための研 究については課題として残しつつも、現状の枠内においてどのくらいになるだろうかと いう試算を厚生労働省にお願いするということでよろしいでしょうか。できましたら、 ぜひその根拠を明示していただいて中間取りまとめの案の中に入れていただければあり がたいと思います。また、これについては委員の方からも、こういう視点で将来推計を 考えることができるのではないかといったようなご意見がありましたら、とても大切な テーマではないかと思いますので、ぜひ事務局の方までお寄せいただきたいと思います。  それでは、藤井家庭福祉課長、そういうことで推計の試算をしていただければと思い ます。 ○藤井家庭福祉課長  やってみますが、もしお送りしたたたき台に入っていなければうまくいかなかったと 思っていただきたいと思います。エクスキューズばかりで申し訳ありません。 ○柏女座長  何らかの数字を出していくことはとても大切なことだと思います。例えば保育の分野 ではどの程度その数字が根拠があるものかわかりませんが、待機児童解消のために15 万人増とするといった試算というか目標値が出されて、それに向けて制度の充実が図ら れているわけですから、社会的養護の分野もある程度の数値目標を提示して、それに向 かった戦略を考えていくということはとても大切だと思いますので、ぜひ試算について 検討をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは続けて3ページの「(4)施設機能の拡充」というところにつきまして、これも 全体のバランスを考えますと大体15分か最大20分という限られた時間になってしまう と思いますが、ご意見を出していただければと思います。どなたからでも結構です。 ○奥山委員  「施設機能の拡充」もそうですが、やはり基本的に2番目の「施設機能と施設体系の あり方」を考えないといけないと思います。施設機能も含めて、この二つを一緒に議論 しなければならないのではないかと思うのです。先ほど、どのぐらいのケアを必要とし ているかという話をしたのは、例えば今は情緒障害児短期治療施設と児童自立支援施設 が一応治療的ケアをしているという部類に入っていることになっているのですが、現状 だったらそちらの方向の施設をどのぐらい増やすのかという考えになると思うし、もし 現状を全くないものとして何か新しいシステムを考えるのだとすれば、それはそれでま た考えていかなければいけない問題です。この辺をどのように考えるか、施設体系をど うするかということが大きいのではないかと思います。 ○柏女座長  施設体系の議論についてはいかがでしょう。中間取りまとめまでにやるというのはな かなか難しいかもしれませんが、そうしたことが必要だという提言を出していくことは 可能だと思います。いかがでしょうか。 ○西澤委員  施設体系というのは、今の施設の分類をもう一度見直すという意味ですか。見直そう とするときに、今の施設、例えば情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施設がうまく やれているかどうかという評価を抜きに体系だけを見直してもどうかと思う。一時、治 療型施設と居住型施設を分けた気がするのですが、あれは雲散霧消したのですか。要は 現状として情緒障害児短期治療施設にしても児童自立支援施設にしてもうまくやれてい ないということをベースに考えると、体系をいじるよりもその中身をどう充実していく かということを考えなければ駄目なのではないか。体系をいくら変えても仕方がない気 がするのです。 ○奥山委員  それはどちらでもよいと思います。どちらでもよいという意味は、体系の問題がある から中身がうまくいっていないのか、その辺の議論だと思うのです。つまり、もともと それぞれの施設が設置された目的があるわけで、その目的から児童養護施設も含めてみ んな変わってきているわけです。だから、それに対して本当に今のニーズに合った体系 なのかということは考えてもよいのではないかと思っています。 ○柏女座長  いかがでしょうか。 ○松風委員  そういう場合、今一番課題として考えなければならないのは、児童養護施設の機能と してどうかということです。機能をどう考えるかというところから出発してはどうかと 思うわけです。その中で、児童のニーズとしては、例えば以前から議論になっています が、医療を必要とする子どもが児童養護施設の中に増えている。この子どもたちのケア の充実をすべての児童養護施設に分散する形にするのか。それとも、そういう特性を持 った施設として強化していくようなものを作っていくのかということについては議論の 余地があるだろうと思います。乳児院も、全国乳児福祉協議会からお話がありましたが、 いろいろな障害を持った子どもたちや医療を必要とする子どもたちについて乳児院とし ては今までになかったケアも含めてどう考えていくべきなのか。  それと、ノーマライゼーションといいますか、いわゆる地域の生活に一番近い所で育 てていくという乳幼児養育の考え方をどのように整理していくのかといったことについ ての議論が必要ではないかと思います。 ○柏女座長  施設種別から議論していくのではなく機能論から入っていく必要がある。つまり家庭 的な養育を必要とする子どもたちもいるし、一方では、そうではなく治療的あるいは医 学的なケアを必要とする子どもたちもいる。その中間形態の子どもたちももしかしたら いるかもしれない。そういう意味では、そうした機能論の方から出発して一度整理して、 その上でそれに合うような施設体系が生まれるのかどうか、そちらの方向からいくべき だというご意見ですね。大事なご意見だと思います。  私もそれに近い考えです。例えば児童養護施設でも児童自立支援施設でも情緒障害児 短期治療施設でも、すべて子ども側から見て必要とされ満たされるべきニーズというの は割と同じになってきているのに、施設体系そのものが年齢によって分けられてしまっ たり、あるいは子どもの行動や症状によって分けられてしまったりとなっている現状は 少し考え直していかなければならないのかということも思っています。そういう意味で は、子どもに何が必要とされているのかというところから出発していくということがあ らためて大事だと思っています。山縣委員、どうぞ。 ○山縣委員  その点は私も同感なのですが。それを考えたときに、今は3の(4)についてですが、こ の論点整理の構成が、3の(1)に「家庭的養護の拡充」があって、2番目に「家庭支援の 拡充・強化」がある。「家庭支援の拡充・強化」は、今まで議論した中では三つの視点が あって、一つは「発生予防」という入り口論をやっています。それからもう一つは「再 統合支援」で、いったん保護したあとの話で、そこに家庭支援が要るのだということで す。三つ目は再発予防的な意味合い、見守りのような家庭支援という話をしていると思 います。その次に「地域ネットワーク」がきて、そこまではある種つながっているので すが、4番目に「施設機能」を持ってきたことによって、何か社会的養護と施設機能が 切り離されているというか、別の次元で議論をしている。庄司委員がよく言われている ように、本当は1番と4番をくっつけた議論をしなければいけないのではないか。その 延長上で議論しなければいけないのですが、間にいろいろなものが入ってくると施設養 護だけ独立して議論のような誤解を受けるかも知れません。 ○柏女座長  それはおっしゃる通りですね。というのは、今思い出したのですが、前回の議論の最 後のところ、つまり3の(1)の議論のときに、施設機能の再編のような議論を実はしてい るのですね。そういう意味では、(4)については、上の○は(2)か(3)の中に溶け込むだろ うし、下の二つ目の○は(1)の方に溶け込んでいくのだろうと思います。そのような整理 の仕方が必要かもしれません。ありがとうございます。  他にはいかがでしょう。では、奥山委員の次に西澤委員。 ○奥山委員  実は前回の「社会的養護のあり方に関する専門委員会」でも主張して、なかなかそう いう視点でものを見るのは検討会では難しいのかもしれないのですが、一度は子どもの 側に立ってプロセスを考えて、問題点を整理する必要があると思います。例えば家庭か ら一時保護があって、アセスメントを受けて施設で生活して、再統合になったりならな かったりというような、そういうプロセスで少し考えてみないといけないと思うのです。 このまとめかたは、どうしても社会資源側からのものの見方ですよね。ですから、ケア を受ける子どもの側から見るとどういうプロセスになるのか一度整理した方がよいので はないかと思っています。例えば、この子どもはどこへ行くのだということを、どこで どのように決められるのかとかを含めて考えないと、どこかが抜け落ちていくような気 がします。 ○柏女座長  ありがとうございます。西澤委員どうぞ。 ○西澤委員  議論の連続性という点ではこういう話をするのは少しどうかと思いますが、児童養護 施設や情緒障害児短期治療施設の現場で子どもとかかわっている人間として、やはり施 設の機能の問題は非常に重要で、情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施設であると いうのは度外視して、今日本のすべての施設に何が欠けているかというと、生活の中で 子どもが出す問題にどう応えるかという生活レベルのケアの技術の貧困さが全体に共通 しています。ですから、例えば児童養護施設が居住型施設的だと言いながら、なかなか 子どもの問題を受け止めきれないとか、あるいは情緒障害児短期治療施設に「治療」と 付いても心理療法士がいるだけだったり、あるいは児童自立支援施設では施設によって 違うとは思いますが、おおかた矯正教育の矯正プログラムを中心にやっているから、子 どもを2年以上おけないというような実態があるわけです。そこに何が欠けているかと いうと、生活の中で子どもとかかわっていく治療技術なのです。治療というのは精神科 の治療とか心理療法の治療というものとは違った、セラピューティックな生活をどう確 立していくかが一番大事だと思います。そうなるとケアプログラムやケアプランという 問題と関係してくるかと思うのです。私はアメリカの施設で2年程働いていたのですが、 あちらの施設では大ざっぱな分け方をしていて、ここにある高度な治療的な生活ができ る施設というものと、そうではない施設に分かれていて、サブアキュート(subacute)と いって準急性期の子どもたちが入る施設などでも、ここの施設ではこのようなプログラ ム、あちらの施設では全く違うプログラムをやっていますと分かれていて、その子ども にあったプログラムをやっている所に措置をする。施設群ではなくてそれぞれの施設が 独自のケアプランを提唱していて、それに応じた子どもの措置が行われているというこ とを考えると、群で分けて考えるよりも別の考え方をした方がいいのかもしれません。 アメリカでは、それによって措置費が変わってきます。日本がそこまでなるにはどれく らいかかるかわかりませんが、そのプログラムを行うコストがどれくらいかかるのかと いう算定で措置費が変わってくるというシステムが一つの参考になるかと思いました。 ○柏女座長  ありがとうございました。榊原委員、どうぞ。 ○榊原委員  論点整理をされた順番から超えた議論が出てきたので、続けて発言をさせていただき たかったのですが、どこで申し上げればいいのか迷っていました。奥山委員からもお話 がありましたが、私はこの検討会の中で一番の素人として今の要保護の子どもたちの状 況を見ていて、子どもを中心にしたケアをどう組み立てていくのかという視点が一番抜 け落ちていると感じました。子どもの選択権というものを大事にしてケアを組み立てて いく、その子どもの状況を記録し、その子どものケアがどうなっていったのかというこ とを後できちんと検証されるような記録も残して見ていくということが全くなく、例え ば高齢者の方ではケアプランをこれだけきちんとするようになっているのに、子どもの 方では全くないというのは遅れているのではないかと思います。そこを組み込んでいく ということが一つの課題になっていると思います。  もう一つが家族のケアのことです。今回2ページ目の一番下の「(2)家庭支援の拡充・ 強化」のところでも一度出てきて、今の「(4)施設機能の拡充」の中でも二つ目の○の二 つ目のポチのところに「施設による家庭に対する支援機能をどうするか」とあって、議 論があちこちで出ています。例えば子どもたちが施設のような受け皿の中で育ったあと どうするかというときに、数年間離れていたから親も反省しただろうという推測の基で 家庭に帰すと結局また失敗するとか、でもそのときには施設に入れてもらえる年齢では ないので結局社会を放浪してしまって様々な困難にぶつかるというような話が、あちら こちらの施設の方から出てくるということは、やはり家族の方のケアをきちんとしてあ げることで子どもたちが戻っていく場所を確保できたり、社会にきちんと巣立っていく 足場になるのではないかと思います。家族のケアをきちんとする機能がなくて、今はそ れが施設に委ねられていても、施設は手いっぱいでできていないというところをどうす るのかということが非常に大きな課題になっていると、私の目にも見えています。例え ば、この中には詳しい先生がいらっしゃると思いますが、アメリカのある州では行政が そこをきちんと見て、家族が一定のプログラムを1年、2年かけて達成してここまでの トレーニングを受けた、また子どもとも関係作りについてこれだけの学習をしたという ことが証明されれば、子どもをもう一度受け入れることを認めてもらえるというような ことを、行政の責任でやっている所もあるという話を聞きます。親教育プログラムとい う言い方もあるようですが、そういった取り組みを日本でも一部の自治体では試験的に 始めているようですが、子どもの受け皿の議論をするときには、その隣にある家族の方 のケアをして再統合ということを議論していかないといけないので、恐らく今のように 施設の中に追加の機能のように入れ込まれているままでは不十分なのだろうと思います。 ○柏女座長  ありがとうございました。松風委員、どうぞ。 ○松風委員  今日お配りした緑色の冊子とブルーの冊子は大阪府内の子ども家庭センターと児童養 護施設が共同で取り組んでいるプログラムです。今お話がありましたような、経緯を見 て評価し、且つ課題を双方で見出し、方針を共有して実施・実践していくということを やっています。まずは児童相談所の役割として、例えばどうして施設入所しなければな らなかったのか、実の親との間ではどういう了解になっているのか、どういう対応が必 要なのか、それから子どもたちにはどのような説明をして、子どもたちはそれをどのよ うに受け止めたのかというようなことと、子どもたちの過去の生活から今後の援助計画 をシートにして、施設に提供します。施設の方では、それを基に自立支援計画を作るま でに、ある程度の試験期間をおいて子どもたちをアセスメントする。そして自立支援計 画を立てたあと、具体的にどのように子どもたちに接していくのかということをアクシ ョンプランとして具体化していくというものです。大体3カ月に一度見直し、子どもへ の指導とともに親へのプログラムをどうしていくかということも、児童相談所と施設が 一緒になって目標とアプローチの仕方を共有していこうというものです。3年ほど前か らやってきましたが、その中で子どもたちへのアプローチについては共有しながら前向 きに進んできたのですが、親へのプログラムについてはなかなか難しいということがあ り、進みにくいということが見えてきましたので、昨年度のブルーの冊子の前半には施 設と児童相談所がどのようにそれを広めてきたかということを書いておりますが、2部 では親支援プロジェクト報告として様々な親のタイプや問題についての認識状況等に合 わせてどのようなプログラムを組んでいくのがいいのかということを、カンファレンス をしながら見つけてカテゴリー化するということを始めています。このようなことをし ていくためには、西澤委員がおっしゃったように日常生活の中で表れてくる子どもの問 題にどのように対応していくのかということと、日常的に親から電話がかかってきたり 酔って施設を訪問するというようなことにどうかかわっていくのかということと、児童 相談所での家庭復帰へのプログラムを実際にどのように組み合わせて実施していくのか という取り組みを始めているという報告です。どちらかが担うということではなくて、 両方とも必要だということをお話ししたかったのでご説明させていただきました。 ○柏女座長  ありがとうございました。ここにあるのは被虐待児童を中心としていますので施設と 児童相談所が中心になっているかと思いますが、そうではないすべての子どもたちを視 野に入れると、山縣委員がおっしゃるように市町村も入ったり、あるいは虐待のシビア な例ですと家庭裁判所も入ったり、子どもたちの意見も聞きながらケアプラン・自立支 援計画をもう少し発展させたものを作っていくことが大事だというご指摘だと思います。 吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  施設機能のあり方のところで先ほど奥山委員がおっしゃったのは子どものニーズ、子 どもの視点からということでしたが、言い換えれば子どもの権利をどう実現するかとい う表現も可能だと思うのです。むしろそれが施設の果たすべき役割ではないでしょうか。 種々権利条約の中に規定されている権利であり、国の責務というところからもう一度施 設機能をきちんと洗い出すことが必要だろうということが一般的なことです。  もう一つは個別の話になりますが、今の施設の状況でかなり一時保護委託が増えてい ます。これが施設の本来の役割に何らかの支障をきたしているのではないだろうかとい うことを見ていくと、これと切り離した議論はできないでしょうし、同時に一時保護所 の拡充の問題も絡んでくることだと思います。また一時保護を経ないでダイレクトに来 る子どももいると聞いていますので、そうなってくると機能を発揮したくても発揮でき ないという状況を考えると、一時保護所とセットで考えてみてはどうかと思います。 ○柏女座長  とても大切なご指摘です。ともすると抜けがちな一時保護の機能を含めて考えなくて はならないだろうというご指摘だと思います。ありがとうございました。この部分につ いて、またご意見があれば後ほど出していただければと思います。  私の方から一つ、治療的・専門的支援機能の他に子どもたちが社会に出たあとに就職 して、就職に失敗して再チャレンジするということが政府の検討課題になっていますが、 そんなときに一度戻ってきて羽を休められるようなとして施設が機能していく。里親も そうですが、再チャレンジのエネルギーを蓄える場としても機能していけるといいかと 思いました。  それでは、(5)に進みますがよろしいでしょうか。「人材の確保と資質」の向上という 点ですが、これについてはいかがでしょうか。 ○奥山委員  先ほどの点なのですが、松風委員がおっしゃったように養護施設をベースに置くと考 えるのはいいとして、養護施設がベースにあって、プラス何かがあるのが情緒障害児短 期治療施設であり児童自立支援施設であるという考え方でいいのですか。もともとの設 置の目的はそうではなかったと思います。この委員会の位置として、養護施設がベース であり、プラスアルファの機能があるのが情緒障害児短期治療施設であり児童自立支援 施設であるという考え方で合意なのかどうかです。つまり体系を考えるためにある程度 ベースを考えておかなければならないのではないかと思います。 ○柏女座長  基本的に言えば、歴史的には児童自立支援施設や情緒障害児短期治療施設は児童養護 施設の機能とは全然別のところから生まれてきているということですが、今の松風委員 のご意見に従うならば、いわば家庭に恵まれない子どもたちに家庭的な環境を用意する というのが児童養護施設であり乳児院であり、里親であるということです。そこをベー スにして子どもたちに特別なケアが必要な場合にはそのケアの度合いに応じてそういう 機能を持った施設群、施設群としてまとめてしまうのがいいのか、まとめてしまって施 設を作った方がいいのか。あるいはそういうものに加算をしたり、あるいは庄司委員が おっしゃっているようにそういう子どもたちが通所するようなデイトリートメントの場 を確保していくのがいいのか、いずれにしてもそういう論の組み立て方になるのかとい う奥山委員のご意見だと思いますが、いかがでしょうか。松風委員、どうぞ。 ○松風委員  私は情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施設が、養護施設の上に機能を重ねた施 設だとは思わないのです。それは情緒障害児短期治療施設の中での教育の問題、要する に施設内で教育と心理的ケアと生活が行われているということと、児童自立支援施設も そうですが、やはり目的からすると家庭に恵まれない子どもたちが生活する所という範 ちゅうではないのではないかと思いますし、加えて児童養護施設は家庭に恵まれないた めという概念も歴史的に少し変わってきているのかと思います。 ○西澤委員  この問題はとても大事な問題で、2〜3分で決めることではないような気がします。 ○柏女座長  おっしゃる通りです。 ○西澤委員  できれば合宿でもして皆で議論を尽くすということが必要なのではないかと思うので すが、今の松風委員の意見でも、私はむしろ情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施 設を見ていても家庭養育の機能低下を起こした所で育っている子どもたちが大半である と思っているので、ベースとしては奥山委員の意見に近いのではないかと思います。そ れぞれの特徴として、例えばここは非行の子どもに強い施設であるとか、あるいは引き こもりなどの非社会的な部分に強い施設であるとかいう色分けはすべきだろうと思いま す。ただ、それを情緒障害児短期治療施設や児童自立支援施設と言ってしまうと、今の ものを追認することになる。つまり情緒障害児短期治療施設ならば心理療法をしていま す、あるいは児童自立支援施設であれば矯正教育プログラムをしていますというように 追認してしまうので、そこはとても微妙で難しい問題があると思います。デイトリート メントというか通所機能に関してもこの間の聞き取りのときにはやっているとおっしゃ っていましたが、どうして情緒障害児短期治療施設に院内学級があるかというと、不登 校の子どもたちだから学校に行かないので院内学級を作った、つまり施設の中に単に教 育プログラムを持ち込んだというのが発祥です。それが今どれだけモディファイされて いるかということは詳しくないのですが、本当の意味でのデイトリートメントではなく あくまでもインケア・エデュケーションなのです。そういったものを変えていくという ことを考えると、今あるものをベースに考えているとすべてそれに足を引っ張られてし まうと思います。一度帳消しにして考える、そのためにはもっと集中した議論が必要で あると考えます。 ○柏女座長  ありがとうございました。奥山委員のご質問についてはいかがでしょうか。 ○山縣委員  西澤委員がおっしゃったように議論し始めるときりがないというか、自説をまず述べ るところから始まるのであまり長くはしゃべりたくないのですが、前回私が言ったこと と基本的なスタンスは変わっていません。施設があるというよりも機能群がある、西澤 委員は治療プログラムの話を、こういうプログラムの特徴を持った施設ですと言われま したが、それを機能という言葉に置き換えてしまうと私のイメージに非常に近くなりま す。治療的なものを得意にしているホームがあり、デイケア型のホームがあり、ただ共 通しているのはとにかく居住機能をどこかで与えなくてはいけないということで、それ がグループホームなのか施設なのか里親なのかは別にして、居住機能プラス何の機能が その子どもに求められているかというセット群を持つものを施設と呼びましょうという のが、前回言った私のイメージです。 ○柏女座長  わかりました。 ○山縣委員  全部が同じようなことをやっているのではなくて、一つ一つが違う機能を備えている というイメージができないかと思っています。 ○柏女座長  とりあえずは中間取りまとめというものがありますので、そこの中では今奥山委員が おっしゃったことも含めて、皆が既存の施設体系そのものでいいとは必ずしも思っては いない、つまり施設の再編成が結果として視野に入る。そのためには、今の子どもたち がどのようなニーズを抱えているか、そこからもう一度出発して帰納論で考えていくべ きではないだろうかという話をこの検討会の中間取りまとめの中で方向性を出すだけで も大きな意義があるのではないでしょうか。施設再編そのものは政府の検討会でこれま で述べたことがありませんので、そういう意味ではとても意義のあることではないかと 思うので、その辺の具合の確認にしておきませんか。そして、今西澤委員がおっしゃっ たようにこの議論を本当にやっていくとすれば中間取りまとめ以降ということになりま すので、そのときには合宿等も視野に入れて根本的な課題として取り上げていくという ことでよろしいでしょうか。では、そのようにさせていただきます。  では、(5)に移ります。これについてはいかがでしょうか。この部分についてはこれま でに委員から出していただいた書類の中にも多様な見解が上がっておりましたし、よろ しいでしょうか。庄司委員、どうぞ。 ○庄司委員  人材の確保ということですが、それが施設職員に置き換わってしまっているようなと ころがあって、この問題は里親を支援する立場や児童相談所の職員も含めて考える必要 があるのではないかと思います。   ○柏女座長  ありがとうございました。吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  「施設職員の確保方策」のところで「人事交流や交換研修」とありますが、いろいろ 聞いていると一つの法人の中に幾つも施設がある場合、その法人の内部でどれくらい交 流が行われているのだろうかというと、必ずしも多くはなさそうで、それはなぜなのか。 それぞれの分野ごとの専門性なのか、それとも人事配置の独自の考え方によるものなの か、まずその段階がクリアできていないと思うのです。もう一つは児童福祉施設相互の 交流としても、あまりにも給与格差があると果たしてやっていけるのでしょうか。それ から処遇内容が違いすぎるとせっかく研修で学んできたことが生かせないということも あると思うのです。今お話ししたように給与等の点も考えると、これをやるのであれば それなりの財政的な支援とか人の支援がなければ怖くて出せないと思います。そういう 条件整備も合わせて、こうした交流・研修ということを考えていく必要があると思いま す。 ○柏女座長  ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。山縣委員のあと奥山委員、どう ぞ。 ○山縣委員  今、吉田委員が言われた部分で交換研修についての意見はないのですが、人事交流と いう言葉を出すと、今の民間施設では交流に値するほど長く勤めることのできる職場で なければ、交流以前に短期で辞めていくことの方が課題ではないかと思います。特に児 童養護施設などで複数の保育所を持っていても交流をしない理由の一つは、私たちは安 定した親子関係を求めていますから、いろいろな考え方をしておられる施設があって長 く同じ関係を持つ方がいいということになれば当然人事交流というのは少なくなります。 だから、そこに対しての考え方はまとめないと非常に提案しにくいと思いました。2点 目は、私は社会福祉士養成にかかわっているのですが、今、社会福祉士の改革が進めら れています。出来上がったときから賛成と反対の両側面があって、社会的な認知を得ら れるということはいい話だけれども、一方でどういう認知を得ようとしたかというと、 当初から高齢者のための社会福祉士という方向で位置付けられてきて、今度の改正案を 見ても今でも介護概論は必要だが児童養護原理というものは要らないのです。高齢者を 中心にイメージされている社会福祉士というのはいかがなものかということと、3点目 は社会的養護の現場では保育士という非常に大きな資格があり国家資格になったけれど も、介護福祉士が卒業認定ではなく試験制度を全体に導入しようとしているときに、国 家資格ではなかったが早めに社会的に認知された保育士が、今何となく国家資格の中で やや遅れを取った部分があるのではないか。その辺に関してどう考えるのかということ を議論したいと思います。 ○柏女座長  ありがとうございました。まさに社会福祉士や保育士資格のあり方そのものについて 切り込んでいかないとどうしようもない状況になっているということは言えるかと思い ます。奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  同じようなポイントになるのかもしれないのですが、普通の保育園の保育士になる教 育だけ受けてきて、施設の保育士をやるというのは難しいものがあるだろうと思います。 やはり施設なり、生活を長時間共にするような保育士のあり方、ピアノは弾けなくてい いが生活をきちんと見られるという保育士の資格が本来考えられるべきだと思うのです。 国家資格なのか学会資格なのかはともかくとして、何らかの資格というのは目指す方向 性としてあってもいいのではないかと思います。もっと言えば、例えば施設内虐待に陥 ってしまった保育士に関しては、研修をきちんと受けないと資格が戻らないというよう な形をとるとか、保育士の資格というのは今後考えてもいいのではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございました。この辺は全員一致した意見だと思います。西澤委員、どう ぞ。 ○西澤委員  基本的な議論は同じだと思います。私も社会福祉士の養成校に行って、やはり山縣委 員がおっしゃったようなことは強く感じていて、その部分で子どもをケアするケアワー カーであったり、あるいは庄司委員がおっしゃったような児童相談所のソーシャルワー カーであったり、そういう人たちの専門性を養成するカリキュラムを作っていく必要が あるだろうと思います。私の知る限りでは、保育士などでも虐待を受けた子どもたちの ための養育などの授業を組み込んだような特色を持った大学もしくは大学院が既に少し ずつ動き始めているのです。その辺の社会福祉士なり保育士なりの養成課程にかかわっ ている人たちで、そういう考えのある人たちが集まってカリキュラムを議論してみると いうことが必要なのではないでしょうか。それを大学のカリキュラムにするのか大学院 のカリキュラムにするのか、大学のプログラムとして精神保健福祉士と同じような感じ の並立でいくのか。  もう一つは、それとは違う観点では保育士なり社会福祉士をベースにしてその上に重 ねるプログラムというのが一番すっきりするのです。そうすると、保育士は2年間だが 社会福祉士はそうはいかないのでそこは不調整があるのですが、幾つかの資格があるよ りも、例えば保育士をベースにしてその上で施設での養育の技術を専門的に学ぶ、ある いは社会福祉士をベースにしてその上にという形で統一していく方向の方がいいのでは ないかと思っているのですが、この辺は皆さんと議論したいところです。 ○柏女座長  ありがとうございました。松風委員、どうぞ。 ○松風委員  生活を見ていく施設の職員の養成ということになりますと、OJTが非常に重要だと思 います。それとキャリアをどう評価するかということは、何年どこに勤めたというだけ ではなく、先ほどの西澤委員のお話に絡むかもしれませんが、仕事をしながらOJTを受 け、どういうキャリアアップを図ってきたのかということを評価するシステムがいるの ではないでしょうか。それから施設の規模によって職員の数に差がありますので、OJT をするにしても職員の特性によって様々な傾向が出てくる可能性があるので、共通した OJTのあり方をどうやって組織的に保障していくのかということも検討する必要があ るのではないかと思います。 ○柏女座長  榊原委員、退席されますが、何かおっしゃっておくことはありませんか。よろしいで すか。わかりました。ありがとうございました。それでは庄司委員の次に奥山委員。 ○庄司委員  議論の方向は賛成ですが、これを実現するためにはやはりそういった学歴の高い人を 雇えるだけの費用が施設にいかなければ、若い人を短期間だけ使うことに終わってしま うのではないかと思います。 ○柏女座長  大事なことです。奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  松風委員がおっしゃったOJTは非常に重要なものだと思います。ただ、本当によいケ アをしている所でのOJTが必要なのであって、よいケアができていない所でOJTをや ってしまったらもっと大変になってしまうという問題があるので、その辺を担保してい くことも考えなくてはいけないと思います。 ○柏女座長  吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  先ほどの資格のことと関連して、例えば施設の中で子どもの権利侵害をするような職 員がいて解雇された。ところがその情報がきちんと行き渡っていないと、また別の施設 で雇われて同じようなことを繰り返す。特に性的な問題であれば深刻な事態になり、も っと大変になります。これをクリアするのが先ほどの資格の問題で、研修や質の向上以 前の問題として、何らかの形でそういう人がもう二度と子どもの養護に携わらない、ま た携わることができないというセーフガードを作っておくことも必要だと思います。 ○柏女座長  ありがとうございました。保育士や社会福祉士であれば登録の取り消しという制度が あります。 ○山縣委員  若干やじ馬的な関心ですが、実際に、柏女座長が言われた取り消し処分を受けた人が いるのですか。現場ではそれに相当する事実が起こっていますよね。新聞等で明らかに なりますが、それに相当する処分が実際にされたことはあるのですか。 ○藤井家庭福祉課長  数を今持っているわけではありませんが、幾つかの事例はあります。 ○山縣委員  あるのですか。 ○柏女座長  もう起こってきているでしょうね。ありがとうございました。  いろいろな意見が出ました。この議論一つをしただけでも2、3回たってしまうので、 項目だけを申し上げたいと思います。いわゆる資格の再編成の問題が出ていました。保 育士の問題あるいは社会福祉士に対して、もう少し子どもの科目を必修にするような働 きかけをするべきではないかといった資格に関連しての意見があったと思います。  それから2点目としてキャリアアップのシステムです。これについて何らかの視点で 考える必要があるだろうという意見がありました。例えば介護福祉士の場合だと制度的 にも介護福祉士を何年かやると介護支援専門員の受験資格が得られる。あるいは専門介 護福祉士というのは仮称だと思いますが、そうしたキャリアアップの資格の検討も行わ れているようです。そういう意味では保育士は保育士の資格を取ったら一生保育士とい う状況がありますので、キャリアアップについて目標が持てるような仕組みを考えるべ きではないだろうかということも意見としてあったと思います。  3点目としては庄司委員から出ていましたが、処遇のあり方、待遇のあり方。これは 費用がかかってくる話ですが、待遇の問題を何とか考えないと何も始まらないのではな いかという意見が出ていました。  さらに他にも法人の話が出ていたでしょうか。法人も今の児童養護施設などはいわゆ る一法人一施設が結構多く、小さな法人が多いので、そういう意味では社会福祉法人の 統合というか大規模化も視野に入れていかないと、スムーズな人事交流も生まれないの かなということは少し感じています。  これらの項目の他に何かありましたら出していただきたいと思います。奥山委員、ど うぞ。 ○奥山委員  最初に、実はスーパーバイザーの資格などが必要ではないかということで、いろいろ な方と議論しましたが、今それを取り入れてしまうと、先ほどのOJTと同じで今の施設 指導員がスーパーバイザーという形になる。それがうまくいっている所はいいですが、 逆にうまくいっていない所は危険性もあるという議論がありました。確かにそうだと思 います。最終的には先ほどのキャリアアップの中でスーパーバイズの資格が取れるシス テム作って、そのスーパーバイザーの資格を取ったら、ある程度給料も上がるような方 向性が必要だと思いますが、今すぐ全部にそれをやるのはかえってよくないのかなと思 います。 ○柏女座長  わかりました。ありがとうございます。専門性の確保の方策というところで、ご意見 の中にスーパーバイザー資格の導入が必要とありますが、それについてのご意見という ことですね。  もう一つは施設の小規模化を今後この検討会で進めていく形になりますと、職員にも いわば家計管理というのか、今までの大舎制養護施設に必要とされる養護技術とは違う 養護技術が必要になってきますし、そのためのカリキュラムの改正など、そうしたこと も資格関連では必要になるということが言えるのでしょうか。  それでは、続きまして「(6)科学的根拠に基づくケアモデルの構築」のところですが、 ここについてはいかがでしょうか。先ほど松風委員から、どのようなケアモデルの策定 が必要かということで、現在大阪府で実施されていることについて貴重なご紹介があり ましたが、研究体制・支援体制についてはいかがでしょうか。あるいはもっとこれ以外 のケアモデルの提示が必要ではないかということについていかがでしょうか。吉田委員、 どうぞ。 ○吉田委員  今日いただいたアクションプランの、プロジェクト報告書の後ろの方にプログラム一 覧が付いています。とても参考になりますが、私のような素人からしますとこうしたプ ログラムがどういう場合に有効なのか、これをすることによって何がどう変わっていく のだろうかということが見える形で教えていただければ、部外者に説得力があるのです。 この問題は単に施設の中でどうするかだけではなくて、例えば再統合の問題を考えれば、 家庭裁判所に対して説得力のある材料を出せるかということにもなってきますし、また これを基にしてどうお金を出してくるかと言えば、これは財務省に対する材料にもなる わけです。ですから、こういうプログラムがあるということに加えて、これはこういう 実効性がある、こういう場合にはこれがよい、さらにこのためにはこういう養成プログ ラムも必要だし、こういうカリキュラムが必要だ、というところまで研究レベルとして お願いしたいという話です。 ○柏女座長  ありがとうございます。松風委員。 ○松風委員  成果について全然自信はないのですが、これの発展系として、本年度は親の分析とそ の後のプログラムの導入と評価をして、どういうタイプの方にはどういうことが効果が あったのかということを2年間かけて検証することを予算化しており実施する予定です。 ○柏女座長  西澤委員、どうぞ。 ○西澤委員  かつて確か庄司委員と話したときに、こういういろいろなプログラムが出ていても総 合的な研究がないという話で、一度それをやろうという話になりましたが、その後の折 り合いがうまく付かなくて断念した経過があったと記憶しています。ですから実際に今、 松風委員が言われたように、効果測定まで含めてどのようなタイプの適用があるかとい うのは、やはりじっくりと研究対象にしていかなくてはならないと思います。  もう一つ、それと関連して、2年目の方が予算が少なくなったのはいいのですが、1 年目の方がすごいのか。同じようなものが子どもにはないのです。 ○松風委員  子どもについても同時に進めています。 ○西澤委員  子どもの方に同じようなプログラムがないのです。つまり親の方は心理教育的なプロ グラムが、実際に援助されているのかどうかは別としてたくさん出ていますが、子ども の場合には生活していればよいというのがどこかにバイアスとしてあるのかもしれませ ん。子どものプログラムは私もほとんど聞いたことがない。子どもの心理教育のプログ ラムは海外ではたくさん取り組まれているので、そういうものを導入してきて日本での 効果測定をするようなことも、ある程度中長期になりますが、必要な研究のあり方では ないか。要するに基本的にはアクションリサーチです。実際にやっていながらそれをリ サーチしていくといったようなことを今後2〜3年かけてやるのが一番いいと思います。 ○柏女座長  私から一つ言わせていただいてよろしいでしょうか。研究体制という点で幾つか検討 をお願いしたいことがあります。一つは今、厚生労働省で5年ごとに養護児童等実態調 査を行っています。あれはあれで粛々と続けていただきたいと思いますが、その他に今 ここで出ている奥山委員がおっしゃったような要保護児童についての研究というか調査 を国でできないだろうか。統計情報部が主体になって児童等実態調査を5年ごとにやっ ていますが、もう一つぐらいそうした調査を組むことができないだろうか。例えば養護 児童についてのコーホート調査をやっていく。そういう点を提言できればと思います。  もう一つは、例えば養護児童等実態調査などは厚生労働省で活用されるのですが、そ れを研究者に開放していただいて、研究者がその生のデータを使っていろいろなクロス 集計ができるようにしていく。目的外使用との関係や総務省との関係でいろいろと難し い点があるということは重々承知していますが、ぜひ厚生労働省が行ったそうした調査 の有効活用にもう少し門戸を開いていただくことが必要ではないかと思っています。  もう一点は子ども家庭総合研究事業で今、要保護児童についての研究が行われていま すが、この分野が前に庄司委員がおっしゃったEBM(Evidence-based Medicine)重視の 研究にだんだんとシフトしていっているようで、そうではない問題についても、もう少 しその研究枠が広がるようなことが必要ではないかと思います。  もう一つ言えば民間の研究資金ですが、こども未来財団の児童関連サービスの調査研 究事業でこの分野の研究が行われており、国の財源を基金にして助成しているものです が、こうしたものをもう少し要保護児童の分野に振り向けられてもいいと思いました。 というのは、この要保護児童分野はどこからも注目されず、研究資金がかなり限定され てしまっているということを如実に感じていますし、またそれもあって研究者自体が増 えていかないということも常々感じていることなので、そうしたことを提言に盛り込め ないかと思いました。奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  今おっしゃったことに少し補足すれば、恐らくミレニアムベビーでかなり似たような ことをやっているので、そのモデルが使えるのかもしれないと思います。また、実際に 厚生労働科学研究を皆さんやっておられますが、だいたい3年で終わります。この先要 保護児童の研究を研究デザインからしっかりとした研究を行って3年で終わらせるのは かなり難しい話なので、もう少し腰を据えた研究をしなくてはいけないと思います。そ うなってくると、競争的資金で毎回子ども家庭総合研究の中でやっていくのか、それと もどこか研究をする場をきちんと作ってその中でやっていくのか、その辺も少し検討し ていく必要があると思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。そうですね。子どもの虹情報センターでも少し研究が行われ ていますよね。しかしあそこも1年限りのような形で、まとまっていないというのか腰 を据えた研究がなかなかできにくいということはあると思います。  (6)についてはよろしいでしょうか。庄司委員、どうぞ。 ○庄司委員  研究については全く同感ですが、ケアモデルの部分については心理教育的プログラム というよりも、もう少し生活に近いところを意図していたのではなかったのですか。大 舎制で一括管理というような形ではなくて、小規模になったときにどのようにしたらよ いか。 ○西澤委員  確かにそうです。目指すところはいわゆるセラピューティックケアのモデルです。け れどもそれに入っていくのに、今の養育モデルからいきなりそれにいけるのかという問 題があると思います。その間に心理教育のようなプログラムをケアモデルとして持ち込 むことによって、生活がよりセラピューティックなものになっていくのではないかとい う期待もあります。もちろんそれを突っ切ってこういうケアモデルを出せと言われたら それはそれなりに考えますが、どれだけ適用の可能性があるかというところに少し引っ 掛かりがありました。 ○柏女座長  一つ聞きたいのですが、ケアモデルに関して、小規模・家庭的養護を推進していく際、 例えば里親に比較的援助が必要な子どもたちが入った場合には、それを支援していくよ うなモデルは、海外のものを含めてあるのでしょうか。海外の場合は里親委託の子ども たちが多いと思いますが、その子どもを支援していくようなものはありますか。庄司委 員。 ○庄司委員  海外のことはあまり詳しくないのですが、例えばアメリカのある州ではソーシャルワ ーカーは週に2回、2〜3時間家庭訪問して、その内1時間は子どもに会うなど、非常に インテンシブなかかわりをします。 ○西澤委員  加えていいですか。これもアメリカのある州のことですが、例えば、里親家庭に委託 されている子どもがいて、その子どもたちだけが通う学校があるのです。毎朝スクール バスが子どもたちを全員拾って、ある小規模の学校に行ってそこで心理教育のプログラ ムと個別学習援助あるいは心理療法を受ける、要するに通所モデルという形でやってい るので、多分里親にいようが施設にいようがケアモデルとしてはあまり変わらない。も ちろんそれに加えて個別の生活が入るので、その部分についてはソーシャルワーカーが きちんとサポートしていくという感じではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  今の話とは少しずれますが、どこに入れたらよいかと考えて、やはりここかなと思っ たのは、日本の統計のあり方なのですが、前回も虐待の問題で統計がきちんと取れてい ないということがありましたが、この施設の問題でも例えばケアリーバーの統計が取れ ていないという意見が最初に出ました。例えば最初に見せていただいたときに退所の理 由による統計の結果は出ていますが、ではこの退所された方たちはどういう入所理由の 方なのかという統計はないということなのですが、役に立つ統計の取り方をもう少し考 えてもよいと思います。今まで5年ごとにやっていたものは粛々とやっていただいて、 粛々プラスアルファを考えてもよいのではないかと思います。 ○柏女座長  貴重なご意見ありがとうございます。松風委員、どうぞ。 ○松風委員  生活の中でのケアモデルをどう作っていくかということで、実践的な活動および子ど もの生活をどう分析していくか、また評価していくかをやはりしてみた方がよいのでは ないか。例えばグループホームではどうだったのか、あるいは大舎制ではどうだったの か。それからその中で心理プログラムを取り入れている所ではどうだったのかといった ような、現実のケアについてどう分析し、どういう評価をし、何が足りないのか、どう いうことを付け加えなくてはならないのかということが必要ではないかと思います。 ○柏女座長  山縣委員、どうぞ。 ○山縣委員  大阪はいまだに大規模大舎制が多いのです。ケアモデルのところまで一気にいくまで に、ハードをベースにした革命的なモデルではなくて、どう改善していけばよいのか。 ケア以前の、きっと皆さま方が今イメージしている話ではないところも含めた受け取り やすいものを、こうやっていけば今のままでも小規模化に段階的にいけるということを、 ぜひ現場に提案したい。大規模否定になると反発も非常に多いと思いますので、現実を 踏まえて何をどうすればどこがどう変わるのか、その辺りが、自分の責任は放っておい て、ぜひ議論できたらと思います。 ○柏女座長  庄司委員、どうぞ。 ○庄司委員  そう思いますが、やはり施設の立場ではなくて、あくまでも子どもの視点に立たない と、何だかいつまでたっても変わらないような気がします。 ○山縣委員  子どもの視点で、そこの目標が見えているのです。目標の意味ではそこにいくのにこ ういうステップがあります、こういうステップを踏まないとそこにいけませんというこ とです。今は目標なしでやっている極端なところにいますから現場の人たちから非常に 強い抵抗があるだろうし、あるいは小規模化したり里親化した所の問題点が、逆に強調 されてくるのではないかと思っています。 ○柏女座長  ありがとうございます。この検討会のとても大事な根本的な問題で、いわばあるべき 論とそれから現実論にあまりにも乖離(かいり)があるためそれをどう埋めていくのかと いうところで、提言の仕方も中間まとめが出た段階で非常に苦労しなければいけないだ ろうと思うし、そこは覚悟しているわけです。今、山縣委員がおっしゃったことも大事 ですし、庄司委員がおっしゃることもとても大事なことではないかと思います。  私から一つ、研究に関連してですが、今の山縣委員がおっしゃったことに関連して、 研究費の取得は、研究者が申請しなければ出ない方式になっているのですが、実はそう ではなく現場の人たちに少額でも研究費があれば、しっかりまとめられる研究者がそこ で仲立ちすることでまとめられると思っています。今、私自身は全国社会福祉協議会が やっている植山つる児童福祉研究奨励基金の審査に参画させていただいているのですが、 これは現場の先生方の意欲的な研究に対して、1件20万円ほどのわずかな研究助成です が、それでも上がってくる研究報告を見ていますと、本当に真摯な、そしてオリジナリ ティのある研究報告が上がってきています。そういう意味では、現場の研究的な取り組 みを活性化していく試みもとても大事なのではないかと思いました。  それではあと40分になりましたので、続いて(7)と4番に少し精力的に向かっていき たいと思います。「(7)年長児童の自立支援」関係ですが、ここは非常に多くの意見がこ れまでにも出ていますが、何かありましたらお願いしたいと思います。庄司委員、どう ぞ。 ○庄司委員  松風委員に伺いたいのですが、この20歳までの措置延長は東京・神奈川・横浜・川 崎では非常に厳しい。実際には運用されていないに等しい状況だと思いますが、大阪府 では結構使っているという話を聞きます。その辺はいかがですか。 ○松風委員  措置延長を制限したことはありません。要するに入所している子どもについて必要で あれば、例えば大学に進学したということであれば延長している事例はあると思います。 しかしながら、今回の議論とも重なってくるかもしれませんが、全般的な年長の子ども に対しての生活の環境として児童養護施設がよいのかどうか、その人の自立支援にとっ て、どういう環境を用意してあげるのがよいのかというところで、例えば早い段階で自 立するとか、アルバイトをしたり奨学金を得ながら自立していくような環境整備をして いるという施設はたくさんあると思います。 ○庄司委員  そうすると、それでも制限しないということなら、多分自治体間格差が非常に大きい のかなと思います。一つの課題に挙がっていますよね。 ○柏女座長  専門学校への進学などの場合も、例えば美容師になりたいという子どもがいて、その 子どもが施設から専門学校に通うことについても措置延長しているということですね。 ○松風委員  制限はしていません。独立して通っている子どももいますし、施設から通っている子 どももいます。 ○柏女座長  施設から通えば措置が継続されて生活費が出ているということですね。 ○松風委員  そうです。 ○柏女座長  わかりました。 ○山縣委員  制限をしていないということと、実際にどれぐらいいますか。 ○柏女座長  積極的にすすめているのとは別ですけどね。 ○松風委員  すみません。数字は今持っていないです。 ○山縣委員  年間50、10、5など、大体の感覚で結構です。 ○松風委員  すみません。少し時間をいただけますか。持っている資料を探してみます。 ○山縣委員  感覚的にはそれほど多くないような気がするのです。 ○柏女座長  一般家庭では7割近くと見ています。 ○西澤委員  大学進学率ですか。 ○柏女座長  大学と専門学校、予備校なども入れてです。専門学校などは高卒すぐとは限らないの で厳密な計算ではありませんが・・・。 ○西澤委員  ですから大体措置の年齢が何歳までなのかは、社会的養護を受けようが家庭で養育さ れようが、同じ程度のサポートが受けられるのが基本的な考え方だと思うので、今の一 般の自立年齢と比較してみるのは一つの考え方です。ただ、それがあまりにも理想的す ぎると考えたときに、例えば今の子どもは少なくとも18歳までは適切な養育を受ける 権利がある。あるいはそれは20歳まで権利があると考えて、それが実際は守られてい ないという部分をもっと最初はやっておかなくてはいけないのではないか。例えば高校 に進学したが退学したので自動的に自立ですというのは、これこそ地域間格差がとても 激しいとは思いますが、施設職員あるいは児童相談所のスタッフですらそういうものだ と思っている人たちがかなりいるのも事実です。逆に18歳までに措置解除される場合 にはどうしてなのか、今とは逆で措置解除というともろ手を挙げて喜んでということで はなくて、そこにきちんとしたアセスメントが入って、措置解除が適当かということを きちんと審査しなければいけないのではないか。むしろ高校を中退しなければいけない 子どもの方が援助のニーズが高いと見るべきですから、まずはそういった仕組みをやっ て、その上でできれば20何歳といったような措置年限が決められていくようなことに なればよいと思っています。 ○柏女座長  わかりました。要するに18歳のときにしっかりアセスメントをやるということです ね。大事な視点だと思います。松風委員、どうぞ。 ○松風委員 すみません。数字が見つかりません。おっしゃるようにそんなに多くはないです。各施 設に1人か2人といったような単位だろうと思います。 ○庄司委員  2人もいれば多いですね。 ○西澤委員  各施設に2人もいればとても多いです。 ○松風委員  無責任な発言をしたのでしょうか。 ○西澤委員  例えば東京では、下手をすればブロックで1人いるか、2人いるかです。 ○庄司委員  そんなに多いのですか。 ○西澤委員  1人か2人はいる。今はさらに難しくなっている。子どもが土下座をしてお願いする というようなことを聞いています。 ○松風委員  そうですか。数字が不確かなので責任を持った発言はできませんが、子どもが土下座 をして頼まなければ、ということはありません。 ○西澤委員  子どもが直接お願いして説得をしないと措置延長は無理だが、それでも無理という場 合も多いです。 ○松風委員  そうですか。施設の人たちに聞きますと、例えば進学して大学に行く、それから専門 学校へ行って技術を身に付けるということが、入所中の子どもたちにとってモデルにな るので、そういう力、またはそういう希望はあるが、家庭でそれが全うできない子ども たちについては、自然に提供をしているということですが、数からするとそんなに多く はないと思います。 ○庄司委員  心強い言葉だと思うのですが、国の制度としてあっても、それが自治体によって違う ことは非常に大きな問題だと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。はい、山縣委員。 ○山縣委員  私はむしろ西澤委員が先ほど言われたことに関心を持っていまして、現実には長い間 中卒で終わっていたのです。それが18歳に事実上なっているのは結局は高校進学があ ったわけです。20歳までの措置延長制度も、制度の設計時は大学進学とか進学の話をし ていたと思うのです。今必要なのは進学ではなくて、十分自立のための芽が蓄積されて いない子どもたちに対して何ができるのかというときに、単純に措置延長だけの話をし ても、そこでニート・フリーターの子どもたちに何ができるのか。今施設の中にその機 能が十分ない中で単純に措置延長論をやっても意味がないのではないか。そこがポイン トと思います。 ○西澤委員  まさしくその通りでケアプランがないというか、例えば施設のケアワーカーからいう と、学校に行く時間帯に、中退した子どもが学校に行かないで仕事もしない。施設にい て何をしたらいいのか、どういう援助、働きかけをしたらいいのかが全くわからず困る ので退所というような、単に児童相談所の側の措置に関する考え方だけではなくて、子 どものケアニーズへ答えていくケア側の技術なりそういう問題が関連していると思いま す。そこを一緒に抱き合わせてやらないと意味がないというのはまさしくその通りだと 思います。 ○柏女座長  松風委員、関連してありますか。 ○松風委員  延長の問題だけではなくて、入所が18歳を越えてもできるかどうかについては検討 をする必要があるのではないかと思います。今の話の続きから言いますと、就労してう まく定着できなかった子どもたちへのケアをどうするかということを、措置という形態 でやるかどうかということだと思うのです。 ○柏女座長  はい。まさにそうです。定時制だと4年生で19歳になってしまうわけですから、そ ういう意味では一回中退したがもう一回復学したいという事例はあるので、そういう意 味では18歳を超えて措置ができるような仕組み、虐待対策でも言われていましたが、 それも考えなければいけないということですね。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  ちょっと視点が違うのですが、いいですか。 ○柏女座長  視点が違うのでしたら、その前に言わせてもらってもいいですか。  先ほどの18歳を越えてのケアプランの話ですが、こういうことも考えられないかと 思うのです。榊原委員の発言と松風委員の実践から考えて、18歳を越えて次の上級学校 に行く場合、例えばその子どもは18歳を過ぎているわけですから、その子どもと施設 側や児童相談所でしっかりとケアプランを作って、例えばその子どもについては、契約 で児童養護施設を利用する。今はそこにいてもいいがお金は出しませんよということに なっているわけですが、そういう場合には、契約で利用することができ、さらに措置費 になるのか、別の費用になるのかわかりませんが、そういう費用を子どもに支給すると いうことが考えられないかと思いました。そのためにはケアプランがあることが前提に なると思いますが、その方法も模索してもいいと思いました。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  私は施設への出入りで考えているから問題なのではないかと思います。例えば今我々 の方で発達障害が非常に問題になっていて、発達障害を持った方へのライフサイクル支 援が随分いろいろなところで課題になってきています。同様に養育上の問題があったお 子さんのライフサイクルという視点をどこかで持たなければいけないのではないかと思 います。例えば、要保護の方に子どもができたときの問題とか、いろいろな問題を抱え るわけで、そういう意味で例えば先ほど18歳までは少なくとも生活全体としても抱え ようという前提で、その後、例えばケアのところで就労支援もそうですし、ケアのあり 方を、ライフサイクルという形で見る中で出てくる問題ではないかと思うので、少しそ ういう視点も入れた方がいいと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。 ○山縣委員  理想的にはそう思うのですが現実論として考えたときに、進路保証としての機関であ るならゴールがはっきりしているわけです。例えば25歳からもう一度学校に行くにし ても、そこに入れたらいいだけです。しかし児童福祉法の責任範囲としてやるときに、 20歳で起こった養護問題に児童福祉法が責任を持つのかどうか。人間の生活は延々と続 いているから、やり始めたらきりがないような気がする。どこかで線を引くことが要る というのが今の法律の仕組みになっている。それを外してしまうのならば、場合によっ ては児童福祉法という言葉遣いをやめようということになる。そこをどう考えるかが非 常に難しい。 ○奥山委員  確かにがっちり生活として抱えるのは18歳もしくは20歳ということになると思うの ですが、進学があるから18歳・20歳という考え方ではなくて、ライフサイクルの中で 18歳・20歳を見据える。例えばそのとき必ずしも進学していなくても、就労に対して のケアのあり方もきちんと入れ込みながら、ライフサイクルという視点で見ていくこと で変わると思います。また、成人したら、何も生活全体を抱えろということではなくて、 例えば実家機能と言いましたが、どこかにそういう方々が戻ってきて実家として相談が できるような場所などが必要になるかもしれません。特に次世代を育てると言う段階で 必要になることもあります。相談してもらったときに何らかの手当てが出るなり何なり という豊作を考える必要がありますが、それは生活全体を抱えるという問題ではないケ アのあり方として考えて良いと思います。 ○山縣委員  そんなにずれていなくて、アフターケア機能としては何も問題がないわけです。しか し20歳で突然起こった養護的問題に関して児童福祉法という範囲でいくのかどうかが 言いたかったのです。 ○吉田委員  この点は、今の児童福祉法の中でも退所した児童に対して相談に応じるとなっていて、 その相談に対しては例えばハローワークと連携するなど、そういう機能を児童養護施設 が発揮すればいいだけの話で、必ずしもすべて丸抱えを意味しているわけではないので す。この問題は先ほどの施設機能の問題とセットで考える必要があると思います。 ○西澤委員  その点はおぼろげながら皆さんと一致すると思うのですが、現実でいくと、例えば養 護施設の問題になると児童相談所の問題があって、18歳を過ぎれば社会的養護で自立し た子どもが問題を抱えたときに彼らは児童相談所に相談にいくというイメージがあるの です。でも行くと門前払いで、18歳を過ぎれば何もできないからハローワークに行きな さいと言われる程度なのです。まずそこの問題なのです。例えば知的障害の場合には、 18歳以前に措置とかがかかわった場合継続してかかわれる。制度的なことはあまり知ら ないのですが、そういう形でやれるのに、社会的養護の場合はそうではないというのが 一つある。  18歳で起こる養護問題は何かと考えると、私は性虐待が一番頭に浮かんで、性虐待の 対応だが18歳だから養護施設は使えないと言われて困っている事例はたくさん抱えて いますが、実際にどんな事例があるかというのは分析が必要なのではないかと思います。 ○柏女座長  はい、松風委員。 ○松風委員  児童福祉ですのでセーフティネットだと思うのです。自立援助ホームの方のお話にも あったと思うのですが、18歳を超えても生活する場所がなく、またその自立支援もして もらえず自分で行き場所を探さなければならないといった今の現実がある。その現実に 対して何を提供していくのかも考えなければならないと思うのです。 ○山縣委員  西澤委員が言われたことで、私は性虐待は非常にわかりやすいし共感を得やすい例で、 共感を得にくい例としては漫画喫茶族があると思います。家で漫画喫茶生活を送ってい る人たちに対して、児童福祉法で、児童相談所がそこへ行って全部保護してくるのか。 漫画喫茶に行っている場合ではないですよ、自立支援プログラムで何とかしますよ、と いうことなのかと言われると、結構難しいと思います。その辺が頭にあって、補完的な 養護問題であれば行って了解が得られるかもしれないが、今現実に青少年が置かれてい る状況を考えたときに、短期にしかかかわれないのにそこまで児童福祉の範囲に積極的 に引き入れると、後が大変だと思う。 ○柏女座長  恐らく今山縣委員がおっしゃっていることと、松風委員、西澤委員がおっしゃるいわ ゆるセーフティネットとしての児童福祉というものと、もう少し幅広に考えて古典的な 児童福祉をどう考えるのかそこなのだろうと思うのです。もしその古典的な、要するに セーフティネットとしての児童福祉を考えてくると、専門学校進学や大学進学について 助成していくことはあり得ない話になるわけです。でも今現実にはそこも考えなければ いけない。  漫画喫茶という話もありましたが、そうしたことも考えていくと、自立支援あるいは 社会的養護を考えていくときには、本当にそのコアとなる部分と、もう少し広げていか なければいけない部分に、制度的にはどこかで分ける必要があるというのは山縣委員が おっしゃる通りだと思うので、それらを視野に入れて考えていかなければいけないと、 今議論を伺っていて思いました。それに関連して大学や専門学校への進学をできるだけ 保証していくことを考えると、先ほどそういう子どもたちについては契約で入所すると いうこともあり得ると申し上げたのですが、それ以外にも例えば公立の保育専門学院や 看護学校、あるいは県立大学に進学する場合には、都道府県で授業料を減免することが あってもいいと思います。  私は石川県の例を前にも出しましたが、石川県の場合には公立学校に進学する場合に は授業料の減免をすることを条例の中に盛り込むことができましたが、そうしたことを 周りが皆で応援していくことが大事なのではないかと思いました。他にはいかがでしょ うか。この自立支援ということについて、はいどうぞ。 ○奥山委員  そういうことを全体に考えていくときに、児童福祉がずっと抱えるわけにいかないと 考えると、大人の福祉との連携をどう取っていくかが非常に重要なポイントになってく ると思います。 ○吉田委員  そうですね。そういう点で児童福祉と大人の福祉との間の青少年自立支援という独自 の概念が必要なのかもしれない。18歳でいきなり大人になるわけではないので、特に今 の状況を考えるとその間をどうつないでいくのか。今の次世代育成との関係もあります が、25歳、26歳というのは何らかの形の就労支援等も含めて必要になってくるので、 そういう新しい枠組みというのも、見据えていいのではないか。 ○柏女座長  確かにイギリスだとそうです。 ○吉田委員  ドイツも同じです。 ○柏女座長  ドイツもそうですか。アフターケアまで含めたシステム化が検討されて、法改正があ ったと聞きました。 ○西澤委員  イメージ的にどうなのかわからないのですが、いつも思っているのは社会的養護を出 て年齢がどんどん上がっていく子どもたちに対するアフターケアというのか、もっとア クティブなケアというのか、そういうものをきちんと制度的に位置付けるというのが必 要なのではないかと思います。我々のところで今そういうものを使っているのは、精神 障害の方々のための地域サポートネットのようなソーシャルワークをやっているところ まで飛んでしまいます。飛んでしまうというのは変な言い方ですが、受け皿がないため に完全に他所の利用です。そのとき施設の出身者たちの活動も視野に入れて、実際に何 回か社会的養護で育った人たちが成人してセルフヘルプのグループを作ってきたのです が、何回もつぶれてきたという経過があった。その中でそういう人の声や参画を担保す ることも必要なのではないかと思います。 ○柏女座長  もう一点伺いたいのですが、これは山縣委員に伺った方がいいのかもしれませんが、 里親を支援するときに里親支援センターを民間で作っていって、児童相談所に依拠しな い、過剰に頼らないという、民間レベルのものを作っていく必要があるのではないかと いう意見があったと思うのです。自立支援の問題で自立援助ホームを充実していくこと は必要だとしても、例えば社会福祉法人大阪児童福祉事業協会のアフターケア事業部が 自立支援に向けてかなりやっているということを聞いたことがあるのですが、そうした ものを各県ごとに自立支援センターとして作っていくことについてはどのようにお考え でしょうか。機能しないでしょうか。 ○山縣委員  微妙な説明ですが、社会的養護の延長上で言うならば、なかなか機能しにくいと思い ますが、施設が措置延長、つまりアフターケアまで法律でもやろうということになって いますから、微妙な部分が出てくると思います。ただ青年期の一般的な問題まで対応し ようとするとそのニーズは大量で、ニート・フリーター問題まで含めていくと社会的養 護出身者が入り込んでいるというのも事実ですから、その形のものというのは恐らく 公・民含めて、大量に作らないといけないのではないか。社会的養護の延長上で作ると すると、今施設の持っている機能をどんどん拡充させていますから、そことの関係を調 整しなければいけない。要は我々のイメージでは選択肢があって子どもたちが必要に応 じて選べばいいという発想になるが、どうも制度運営者の側はそうは思わない。うちに なじむ子は来てほしいが、なじまない子はよそにいってほしいとか、極端に言うとそう いうことが起こり得ると思うのです。 ○柏女座長  わかりました。そういう各県1個自立支援センターを作っていくというよりは施設ご とで、ということでしょうか。 ○山縣委員  私は作った方がいいと思っているのですが、作るとすると施設との関係を調整してど ういう機能分担・役割分担をしているかを明確にしないと、お互いやりづらい。自立支 援のプログラムとしては、私は自立援助ホームを独立させるとか調整機関の独立ではな くて、一つの仕組みの中に一つのパートとして自立支援のプログラムを非常に強化した ホームがあって、そこを紹介できる仕組みというものがあれば非常にいいのではないか と思います。 ○柏女座長  施設を退所した個々の子どもの自立支援まで行うというのは、制度的にそうなってい ますが、あまり現実的でないような気もするので、そうした施設が集まって例えばジョ ブカフェと一緒になってやったらどうかと思ったのです。松風委員どうぞ。 ○松風委員  私は評価しています。自立支援のノウハウというのは児童養護施設がそれぞれで持つ よりも、ある程度集合して持つ方が、現実的なノウハウとして育っていくのではないか と思います。  今のアフターケア事業部の話ですが、施設入所中の子どもたちが高校3年生やその前 の夏休みなどに通って、例えば健康保険の作り方や銀行口座の作り方、またいろいろな 社会的な活動についての情報提供だとか訓練など、施設入所中から継続してやる。その 後卒業したあとのフォローアップ、もちろん何か困ったときに行く所という基地的な役 割も持っているという点では非常に評価していますし、それだけで機能するよりは、例 えば自立援助ホームのような施設機能、そういう特性を持った施設として活動していく ということは、非常に効果的だと私は考えています。 ○柏女座長  ありがとうございます。それでは、最後の4番、子どもの権利擁護の問題について入 っていきたいと思います。若干時間をオーバーしてもいいでしょうか。恐縮です。10分 か15ぐらいまでにとどめたいと思いますので、ご協力をお願いしたいと思いますが、4 番についてどうでしょうか。はい、どうぞ。 ○庄司委員  一点だけ指摘しておきたいのは、施設の場合には曲がりなりにも子どもの権利ノート とか第三者評価とか、苦情解決の仕組みがあるのですが、里親に委託されている子ども に対してはそういうものが非常に不十分です。 ○柏女座長  大切な視点です。 ○山縣委員  保育所は第三者評価を一定数受けてきているが、入所施設はそんなに受けていないの ではないですか。 ○柏女座長  施設によってというか、県によってでしょう。東京はかなり受けています。 ○吉田委員  それと関連して前にも意見が出ていますが、第三社評価を受けることを義務付けると いうのはどこのレベルにするか、例えば施設の最低基準の中に盛り込むか。それは必要 だと思うのです。施設の子どもの権利擁護を図る一番の有効策は、施設運営を透明化す ることですから、どうやって第三者の目を入れるか。そのための苦情処理の委員もそう ですが、システマティックにやるかです。それに要する費用をどう負担するかというこ とも一つ大事なのだろうと思います。  もう一つは第三者評価がインセンティブになるように、例えばその評価を受けた施設 は補助金で優遇されるとか、逆に受けなければ不利益になりますよとか、文言上義務化 するだけではなくて実質的にそれに向かうような仕組みを作った方がいいのではないか ということです。  それからもう一つ子どもの参加です。先ほども話が出ましたが自立援助計画を作ると きに子どもの意見を聞くというのですが、これをいかに適切に行うかだと思うのです。 ややもすれば形式的なのは目に見えているということで、「聞きました」で終わってしま うのですが、実質的に子どもの意見を聞き、これが反映されるようにしていく必要があ るだろう。そのためには、施設の人の力量もありますが、もう一つは子どものサポータ ーとして、先ほど出身者の話がありましたが、子どもはなかなか施設職員や児童相談所 の人に自分の置かれた状況を伝えにくいというので、例えば施設出身者からなるサポー ターを子どもに付けて言いやすい形に持っていく。またご承知かと思いますが、川崎市 や埼玉県や東京には子どもの権利擁護委員会があり、特に川崎・埼玉の場合には条例で 設置され、純粋な意味での独立行政委員会ではありませんが、ある程度独立性が担保さ れ勧告権限がある。その勧告を尊重しなければいけないということが条例で盛り込まれ ているのです。現にそれが機能しているというケースもありますので、こうした例など を見ながら、各都道府県・政令指定都市で、こういう独立性のある権利擁護委員会の設 置を促進していくのも有効ではないかと思うのです。運営適正化委員会が社会福祉協議 会に置かれていたり、施設長が任命する苦情処理委員というのは何らかの限界があると 見ると、一定の権限を持ったものを置くというのは考えてもいいのではないかというこ とです。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。では松風委員どうぞ。 ○松風委員  施設入所している子どもたちの状況を施設以外の人が聞くということを、年1回でも 必ずやるということを義務付ける。例えば大阪でも時々体罰事件とか、事件までいかな いがそういうことがある。または子ども同士の中でそういう暴力的なことがあることを 発見する。その発見の糸口が児童相談所のケースワーカーの施設訪問で、年1回は必ず するようにしており、また継続的に施設を訪問しているケースワーカーがキャッチする ことが多くあります。早い段階で見つけられるということが非常にメリットだと思って いますので、児童相談所のケースワーカーが施設の子どもたちからの聞き取りを定例的 に行うことを義務付けるとか、もう一つは先ほど吉田委員から都道府県に権限を持った 第三者委員をというお話がありましたが、条例でどういう委員会にするか非常に難しい のですが、監査権限と絡めるのが非常に実質的ではないか。いろいろなことが調査され てもそれをその権限と結びつけて効果として表せるかどうかが非常に重要になってきま すので、私は都道府県の監査の中にいわゆる業務監査といいますか、公務員だけではな く、専門家を参加させた監査システムを作る必要があるのではなかろうか。その中でも、 子どもたちからの直接の聴取、状況を把握することを必ず義務付けていくことを制度と して作った方がいいのではないかと思っています。 ○柏女座長  先ほど出した石川県の、いしかわ子ども総合条例の中で、それを弁護士等に委託をし て、年に一回必ず施設の子どもたちの意見を聞く。あるいは第三者委員の意見も聞くと いうことを条例で義務付ける制度化をちょうどしたところです。いしかわ子ども総合条 例はホームページで見られますので、事務局の方にも見ていただければと思います。で は奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  おっしゃる通りで子どもに聞くというのが一番重要だと思うのですが、ある種権利侵 害が起きれば虐待になるわけですが、今のところはどちらかというと発見が主になって います。しかし、発見されたあとのケアが重要です。そのときに、この前の最高裁のこ ともあるので、本来は自分たちのことだと県が考えなければいけないと思うのですが、 「それは法人のことでしょう」という感じで、法人が再建を全部やればいいという姿勢 の県が結構多いのです。県は知らないというか家庭で虐待が起きれば県のソーシャルワ ーカーや福祉司が対応するのですから、本来であれば同じように福祉司と心理士が施設 へ行って全部の子どもに聞き取りをするぐらいのことは県がやるべきと思っているので すが、それを法人に丸投げしてしまうようなことをさせない仕組みが必要なのではない かと思うのです。 ○西澤委員  関連して、私は社会福祉行政とか制度については素人なのですが、アメリカと比較し たときに、第三者評価とかアドボケーターとか、日本ではその議論が先行している。ど うしてかと考えたら理由は二つあって、一つは議事会がきちんと機能していない。アメ リカの場合は独立した議事会が全部しますが、日本では機能していないことと、リーグ も機能していない。アメリカの場合だとリーグという地域の福祉連盟が相互に監視し合 っているが、日本はある意味そういう団体があっても、児童養護施設の協会などがきち んと機能していない。そういうことの表れだと思っています。ただ、日本はそうなのだ ということでいくのか、あるいは理事会を正常化していくと考えるのかという問題はあ ると思います。  それからもう一つ、大変卑俗な話で恐縮なのですが、先日ある施設のケアワーカーと 話していて「そうなのか」と思って実際に子どもたちに聞いてみたのですが、18歳で自 立する子どもが「児童相談所」が何かをわかっていない、あるいは「施設」とは何かも わかっていないのです。何故かはわからないが自分たちを世話してくれている人という 程度なのです。知的には問題なく、これから社会的自立をする子どもでも児童相談所が 何となくしかわからないというのは、子どもの権利条約以前の問題です。ここに書いて いる「措置内容に関する児童に対する説明のあり方」という部分が、今は全くきちんと 説明されていなくて、自分たちが社会の中でどういう位置にいるのか彼らはわかってい ない。そこのところの問題もやはり考える必要があるのではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。山縣委員、どうぞ。 ○山縣委員  先ほどの松風委員と今の西澤委員の発言を心強く思っています。「こんにちは赤ちゃん 事業」ではなく「こんにちは児童福祉司事業」が要る。廣瀬さんも市川さんも「児童福 祉司を知りませんでした。自分の担当がどなたかわかりませんでした」とおっしゃって いました。今の話もそうですね。そこをやっていく作業が一つ要るのではないか。  それからもう一つは、西澤委員が言われた理事会と吉田委員が言われた第三者委員の 実質化ですね。そこにエネルギーを投入することが有効なのかどうか。私は有効にでき る方法があるのではないかと信じているのですが、ただ、今は有効でないということは 認めざるを得ない。形式的に置いているに過ぎない。そこをどうするかという話ですね。  実は私が関連している施設で新聞に載る出来事があって、その施設では一定年齢以上 の子どもが全員児童福祉司からヒアリングをされました。そこでいろいろな周辺の事実 もわかってきたのですが、その法人は理事会の下に、外部の第三者委員も入れて独自の 検証委員会を設置して、3月末に検証委員会から法人に対する提言をしたのですが、そ こには理事会が機能していない、古い体質のままで行われている理事会にも問題がある ということも書いてあるのです。そういうところをきちんとやるということも非常に重 要だと、奥山委員が言われた通りだと思いました。 ○奥山委員  私がかかわった所も同じようにきちんとやったのです。吉田委員がおっしゃっている ような権利委員会があって、権利委員会が行って県が諮問を受けて同じような形でやっ たのです。それで県に、児童相談所が児童福祉司を入れて全員に面接すべきだと要求し て、やっていただいた。再建委員会には精神科医も入って、子どもに全員面接するとい う形を取りました。ただ、それがその県でモデルになっていないのです。結構きちんと やったと思うのですが、その後に起きた事件では、そういう大変なことにしたくないと いう思いがあって、避けて通ってしまうということがどうしてもありました。まして先 ほどの入れる先がなく困っている県としては、なるべくそういうところでもたつかせた くないということもあると思うのですが、割と穏やかに何とかしていこうという方向に 流れがちであるということを危惧しています。 ○吉田委員  その関連で、他に使えないというのは、やはりきちんと公表されていない、報告され ていないからですね。行政だと内部資料として「こういう処分をしました」で終わって しまうのですが、これが他の施設に対する警鐘になるとか、ここまですると施設長がク ビになるのだというようなことがきちんと知らされるということも大事なのです。そう した意味では、検証や公表・報告まで含めた制度になるべきだろうと思います。  それから、施設の中での権利侵害が起きた場合には、まず県レベルでの検証委員会を きちんと機能させる。その前提として、まず国レベルで、今虐待でやっているような検 証委員会を作ってみて、こうやるのだというモデルを示してから自治体にやってもらう というスケジュールはどうでしょうか。 ○柏女座長  ここの意見にも載っていますので、その辺はぜひ強調していきたいと思います。はい、 西澤委員。 ○西澤委員  関連ですが、一つは吉田委員が言われることもとても大事ですが、もう一方で介入が あったあとの再建ですが、奥山委員も言われたように再建は大変難しい。再建のモデル も出ていない。各施設がどうなっているかは、それぞれかかわった人だけが知識を持っ ていて共有されていない。この部分を整理すべきだろうと思います。ある施設は、もう 閉所した方がいいのではないかと周りは思ったのですが、実際には子どもたちの意見で 続いているということもありますし、いろいろな考え方があるのでそこを整理すること が大事だと思います。  今、吉田委員が言われたようなものとしては、虐待死亡事例の検証委員会、虐待死だ けではなく重大事例ですが、あれが一つのモデルになるのではないか。どこの委員会で やるかは別として、施設内虐待の検証委員会を作って、ある程度何年間か国でその作業 をして、それを都道府県にモデルとして提示していくような形で、虐待死でやったモデ ルをそのまま施設内虐待にも使えるのではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。この部分についてはよろしいでしょうか。 ○吉田委員  施設内のことではなくてもいいですか。権利擁護の問題で、もう一つ大きいのは一時 保護所なのです。ご承知のような学習権の問題が一つありますが、もう一つは不必要な 権利制限がある。これは奥山班の研究の中で大分明らかになってきて、一時保護所によ っては子どもの私物を認める所もあれば、一切駄目という所もある。児童福祉法上、児 童の所持物の管理について条文がありますが、それは例えば非行とか薬物の持ち込みが 想定されているので、確かに施設の中で盗ったり盗られたりはあるかと思いますが、子 ども自身がなじんだ物まで持ち込んではいけないというのは、どうでしょうか。自分の 愛着のあるぬいぐるみくらいは持って行ってもよいのではないかと思うのです。ですか ら、この辺りの一時保護所における権利制限についてもう一度条文を見直して、認めら れるべきものとそうでないものをはっきり仕分けをしてほしい。  それ以外にも、施設と同じで一時保護所の中での苦情の問題を受け付ける場所がない のです。一時保護所の中は施設よりももっと閉鎖性が高いわけですから、職員による権 利侵害が大変起こりやすいし、逆にその権利侵害に対する反発として職員に対する攻撃 にもなっていくわけで、一時保護所をどうやって透明化していくのか。やはり施設と同 じような第三者委員やそういう評価を一時保護所もやるべきだろうと思うのです。ここ が少し谷間になっていますので、ぜひ光を当てるべきだと思います。 ○庄司委員  神奈川県では、初めて一時保護所の第三者評価を始めました。 ○柏女座長  一時保護所については制度上、児童養護施設に準拠するという形になっていますから、 基本方針はそれでいくということで整理してよろしいですね。 ○奥山委員  一時保護所のケアモデルもとても大切で、子ども達の生活の場の移行期になるわけで、 そこのケアは非常に大切なところだと思います。 ○柏女座長  おっしゃる通りですね。児童養護施設とはまた別の独自性もある。今言われた一時保 護所独自のケアモデルの開発もありますが、基本的には児童養護施設で実施されている ことについては一時保護所で実施するということを検討するということでよろしいです ね。ありがとうございました。  それでは「5.その他」というところですが、もし何かありましたらどうぞ。 ○庄司委員  議論されなかったこととして、最低基準の中で「人」については話されましたが、広 さ・空間のことについて「1居室15名以下、一人3.3平方メートル」はまだ生きている のですか。 ○西澤委員  生きています。 ○藤井家庭福祉課長  最低基準としてです。 ○庄司委員  居室について、本当に最低基準でよいのか。皆さま方はご存じないと思いますが、国 土交通省の「誘導居住水準」というものがあるのです。だから、居室の広さを3.3平方 メートルという何に基づいたかあまりはっきりしていないものよりも、もう少し明確な ものにしていったらどうかというのが私の提案です。誘導居住水準は先ほどの報告書の 80ページ前後に書いてあります。 ○山縣委員  「最低居住水準」と「誘導居住水準」。 ○西澤委員  「誘導」とは何ですか。 ○山縣委員  目標ですよ。 ○西澤委員  そこまで誘導するということですか。 ○庄司委員  7〜8割の家をそのようにする。 ○山縣委員  同和問題や地域改善対策が目指していたモデルが誘導居住水準です。 ○庄司委員  地域小規模児童養護施設になるとほぼそれを満たすのですが、大舎制ではそこまでい っていないようです。 ○柏女座長  そういう意味では、最低基準も人員の問題も実態に合わせて変えていくということは 必要かもしれませんね。最低基準の話は出ていなかったので、それを考えましょう。施 設設備については、誘導居住水準それから高齢者の方のユニットケアの面積基準も比較 しながら考えていくとよいのではないかと思います。それは議論しなければいけないで すね。ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  恐らくこの検討会が終わってからになると思うのですが、一時保護所が足りないとい うことで、緊急措置的に、各県が一時保護所をどうするかプランを示しなさいというこ とになっていますよね。何か一時保護所だけが飛び出してしまった感じがするのです。 本来は、もう少し要保護児童の体制をどうするのか、各県でプランを立ててほしい。こ こに自治体間格差と出ていますが、その辺は検討が終わってからになるのかもしれない ですが、県ごとの体制作りも必要なのではないかと思います。 ○柏女座長  中間取りまとめでも、県ごとに要保護児童の整備計画を作るということは盛り込んで いけると思います。それから、できれば一時保護所の計画作りということが言われてい て、その実態はどうなっているのか、各都道府県でその取り組みがあるのかというのが、 今でなくても結構ですが、もし事務局の方でわかればお願いします。 ○藤井家庭福祉課長  そこは多分、まだ今やっているところだと聞いていますので、ある程度整理ができれ ばこの検討会でもご紹介します。 ○柏女座長  ぜひよろしくお願いします。 ○山縣委員  一点だけいいですか。吉田委員の話で、委託一時保護がいろいろな問題を施設でも起 こしているという話になったときに、一時保護所が養護施設をベースにしているものだ から、乳児の一時保護に関してはアセスメント機能が果たせない状況でしか委託一時保 護ができない。その辺りもぜひ考えていただきたい。 ○柏女座長  これは全国乳児福祉協議会の方が強くおっしゃっていましたので、ぜひ考えなければ いけないと思います。 ○奥山委員  一時保護所の問題で言うのであれば、やはり一時保護所の中で子ども同士の問題は大 変多いのです。個室がない一時保護所も結構たくさんあるので、そこをどうするのかと いう辺りも権利保護の意味で大変重要ではないかと思います。 ○西澤委員  ここで一時保護の話ばかりになるのも変だと思います。例えば夜勤の体制なども全然 整備されていない。宿直者・夜勤者が学生のアルバイトや退職した公務員など全くの素 人でいろいろな問題も起こっている。それは全般的な問題ですが、もう一つは、自治体 間格差や施設間格差を問題にするのであれば、無理かもしれないですが全国児童養護施 設協議会がきちんとその問題を扱っていかなければいけないのではないか。要するに全 国児童養護施設協議会は横割りで全国をまたいでいろいろな施設が属しているわけです から、そこから出てくる要望や実態の報告はもっと必要だと思うのです。変な話ですが、 その辺りを全国児童養護施設協議会にもっと頑張ってもらいたいと思います。 ○奥山委員  児童養護施設だけではないと思います。乳児院もそうだし、もっと言えば情緒障害児 短期治療施設の問題つまり先ほど話が出たケアが大変な子どもが行くはずの施設の、自 治体間格差が激しいというのは非常に大きな問題だと思うので、情緒障害短期治療施設 や児童自立支援施設など、その辺も自治体間格差を考えていかなければいけない問題だ と思います。 ○柏女座長  そういう意味では、全国児童養護施設協議会その他の社会的養護の施設種別状況をヒ アリングさせていただきましたが、この検討会は政府向けの検討会ですがそういう所に 向けても発信していくことは大事かもしれません。  その他、それに関連して今挙がっていたことについて言えば、社会的養護の施設の主 要な供給主体となっている社会福祉法人のあり方についても幾つかの意見が出ていたよ うに思います。そういう意味では社会福祉法人の制度そのものについても、やはり今後 何らかの形で触れていかなければならないだろう。問題意識としては持っていなければ いけないということを「その他」で提言していくことが大事だと思いました。  また、その他自治体間格差・施設間格差については、供給者側の論理が優先している 社会的養護の構造的な特性に当たると思いますので、それをどうしていったらよいのか。 あるいは山縣委員が言われた市町村と社会的養護の施設との結びつきをどうしていけば よいのか。そのようなことを考えると、最初に申し上げた地方間分権の話や利用制度の あり方なども長期的な課題としてこの検討会の中で提言するかどうかは別にしてテーク ノートしておかなければいけないことだと思いました。奥山委員、最後にどうぞ。 ○奥山委員  これから外れる問題もたくさんあると思うのです。例えば思いつくことで言えば、外 国籍の方々が社会的養護を受けていて、また外国に戻るのか日本に住むのかなど、そう いういろいろな問題があります。ここで漏れている問題がたくさんあると思います。社 会がそれだけ変わってきているので、社会的養護を考えていく場というのは継続的に必 要ではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。とても大切なことだと思います。  最後の方は駆け足になってしまって申し訳なかったのですが、時間を15分オーバー していますので、論点の検討についてはこれで一通り流したということでよろしいでし ょうか。またご意見があればメールで結構ですのでぜひ事務局の方にいただければと思 います。それを踏まえて今後の議論を進めていくということになると思います。次回は、 これまでの2回の議論あるいはヒアリングを踏まえて、中間取りまとめのたたき台を事 務局の方から出していただいて、それについて議論をするということにしたいと思いま す。  次回の予定あるいは次回までの事務局での案についてお願いできればと思います。 ○鈴木家庭福祉課係長  次回の検討会を5月10日に予定していますが、そのときに中間まとめのたたき台を お示ししたいと考えています。  では、この場をお借りして、今後の予定をご説明します。次回の第8回は5月10日 木曜日。午後6時から8時まで。場所は同じくこの部屋です。共用第8会議室(6階)で す。  その次の第9回は、前回、5月18日金曜日の午後2時からと申し上げましたが、若 干時間の変更があります。委員の皆さまにメールでお知らせしましたが、5月18日金曜 日、時間は午後6時から8時まで。場所は2階の共用第6会議室です。正式なご依頼は 後日文書にて発送いたしますので、どうぞよろしくお願いします。以上です。 ○柏女座長  今2回と言われましたが、この2回の検討会で中間取りまとめについての議論をして いただければありがたいという事務局のお考えということでよろしいでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  もし足りなければあと1、2回開催しても、とは思いますが、できればそのようにし ていただければと思います。 ○柏女座長  わかりました。この論客ばかりの検討会を仕切るのは大変ですが、皆さまにご協力い ただきながら進めていきたいと思います。今日は時間を20分オーバーしてしまいまし て申し訳ありませんでした。以上をもちまして第7回の検討会を終わらせていただきま す。どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先 03−5253−1111(内線7888) 39