07/04/10 地域医療支援中央会議 平成19年度第1回議事録         平成19年度 第1回地域医療支援中央会議 日時 平成19年4月10日(火) 17:30〜 場所 厚生労働省「省議室」9階 ○佐藤課長  ただいまから平成19年度第1回「地域医療支援中央会議」を開催させていただきま す。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。委員全 員にご出席いただいております。  会議の開催に当たって、この中央会議の位置づけ、今回の位置づけ等についてご説 明させていただきます。委員の先生方にはご案内のとおり、昨年12月21日に、準備 会的な位置づけとして、この中央会議は開催させていただいたわけですが、平成19 年度予算成立後初めての会議ということで、正式に平成19年度第1回の会議というこ とで、整理をさせていただきました。  12月21日の時点で委員の皆様のご紹介をいたしましたので、割愛をさせていただ きます。ただし、前回ご欠席の委員、役職名に変更のあった委員について、ご紹介さ せていただきます。  まず、独立行政法人国立病院機構理事長の矢崎義雄委員です。座長でございまして、 前回は宮城県病院事業管理者としてご出席いただいた久道茂委員ですが、今般は財団 法人宮城県対がん協会会長としてのご出席です。  引き続き、この中央会議の参考人ということでご紹介いたします。まず、社団法人 日本小児科学会副会長の藤村正哲参考人です。社団法人日本病院会地域医療委員会委 員長の林雅人参考人でございます。オブザーバーですが、今回全国衛生部長会の五十 里明会長にご出席いただいております。同じくオブザーバーで、総務省ですが人事異 動があったということですので、ご紹介いたします。自治財政局地域企業経営企画室 長の浜田省司室長です。  事務局でも異動がありました。参事官小林桂雄です。同じく参事官の岡本浩二です。 会議に当たりまして、資料の確認をさせていただきます。 ○伊東指導官  本日の資料の構成ですが、資料1「わが国の小児医療・救急医療提供体制の改革に 向けて」、資料2「医師確保に係る調査報告書、勤務医に関する意識調査報告書」、資 料3「厚生労働省の取組」、資料4「地域医療支援中央会議の幹事会」、資料5「地域医 療アドバイザー派遣事業」、資料6「小児科・産科における集約化・重点化の検討結果」、 資料7「地域医療に従事する勤務医の勤務体制の改善について」です。また、参考資 料として、参考資料1「地域医療支援中央会議について」、参考資料2「その他」とな っています。 ○久道座長  それでは会議の開催に当たって、柳澤厚生労働大臣からご挨拶をお願いいたします。 ○柳澤厚生労働大臣  地域医療支援中央会議の発足に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思いま す。まず、委員の皆様、参考人の皆様あるいはお役所からのオブザーバーの皆様方に は、それぞれご多用のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 特に委員の先生方におかれましては、今度の中央会議におきます委員としてのご就任 をご快諾いただきまして、この会を充実したものにしていただくために、大変お骨折 りをいただくことになりましたことを、心から感謝を申し上げたいと思います。  国民が、地域で安心して必要な医療を受けられるようにするためには、医師の確保 というのが、極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。すでに、 委員各位、ご案内のとおりでございまして、医師の総数につきましては、毎年3,500 ないし4,000名の先生方が増加しているという認識なのでございますけれども、最近 におきましては勤務医師の厳しい環境等によりまして、一定の地域や、あるいは産科・ 小児科など、特定の診療科では、必要なお医者様が必ずしも確保できないという状況 が生じていることにつきまして、我々は大変率直に言って危機感を持っているわけで ございます。  どうしてこういうような状況が生じたかということにつきましての、私どもの認識 でございますけれども、これまで病院勤務医師の配置の調整を担ってきた大学医学部 の医局の医師派遣機能というものが、力が低下しているということが挙げられるかと 思います。  第2番目には、地域におきまして、複数の病院に、お医者様が広く薄く配置されて いる状況があることであるとか、あるいは病院への外来患者の集中などによって、病 院の勤務医の労働条件が悪化しているということが挙げられるかと思います。  第3番目には、開業医の先生方と、病院の勤務医の先生との間で、勤務状況等につ いて不均衡な状況に陥っているということがあろうかと思います。  第4番目には、産科等における医療事故や訴訟のリスクの高まりによりまして、産 科等の医療の萎縮が生じているのではないかということを挙げたいと思います。  5番目に、女性のお医者さんの出産や子育て等のための離職に伴う、いわゆる「M 字カーブ」の問題が存在するということがあるのではないか。このようなことどもが、 今般の医師不足問題の主要な要因になっているのではないかと認識をいたしておりま す。  これに対しまして、私どもの役所といたしましては、第1に大学病院の医局の医師 派遣機能を代替・補完するために、いわゆる地域医療対策協議会、この機関等を通じ まして、都道府県や国が地域に必要な医師の配置を調整する仕組みを構築するという ことを考えて、これを進めているわけでございます。  第2番目に、病院の集約化・重点化による拠点病院づくりなど、地域の医療資源の 効率的な活用を促しますとともに、都道府県による医療計画の策定等を通じまして、 病院や診療所の役割を明確化するなど、医療機関相互のネットワークを構築すること、 このことを考えているわけでございます。  第3番目に、夜間・休日等の診療等につきまして、開業医の先生方に一層のご活躍 をお願いしたいということです。第4番目に、医療事故等につきましては、中立的な 原因究明を行う、いわゆる死因の究明制度であるとか、あるいは産科の医療補償制度 の創設を検討するということでございます。  第5番目に、女性のお医者様が引き続き医療に従事できるよう、院内保育所等の環 境整備や、一旦離職された女性の先生が再就職できるシステムとして、女性医師バン クを設立する。それから、最後に、通常分娩については、お医者様との協働による助 産師外来、あるいは院内助産所を活用する。これらの施策に鋭意取り組むこととして いる次第でございます。  このために、平成19年度予算では医師確保対策として、前年度のほぼ倍増だったか と思いますけれども、100億円の予算を確保し、地域のマグネットホスピタルが医師 派遣を行う際の助成などについて、都道府県の取組に対する財政面からの支援を行う。  2番目として、本日開催の地域医療支援中央会議等を通じまして、医師確保に係る 先駆的な事例の収集であるとか、あるいは各都道府県の地域医療対策協議会からのご 要望、ご意見を受け止めること、それから必要に応じて都道府県、市町村への助言を 行うなど、内容面の支援も行おうと考えているところでございます。  また、中長期的な対策といたしましては、特に医師不足が深刻な10の都道府県に対 して、暫定的な大学医学部の定員増を行うこととするとともに、大学医学部に、地域 に医師を定着させるための、いわゆる地域枠の設定を促すことなどを推進していると ころでございます。  先月にはまた、医師不足の問題について、地域ごとに問題状況が異なっていること を踏まえまして、よりきめ細かな医師確保対策を講じられるようにするために、文部 科学省や総務省とも協力し、全国の5つの地域ブロックごとに担当チームを立ち上げ まして、そして国と地方で問題状況の認識の共有化を図りながら、解決方策を講じま すと同時に、また各都道府県の「地域医療対策協議会」に、必要に応じて参画をさせ ていただくなどの、そういう対応を行うこととしているわけでございます。本日、文 科省や総務省の役人の皆様にも、オブザーバーとして参加していただいているという のは、そういう全体の枠組みの中から出てきているということでございます。  こうした取組によりまして、今後とも関係省庁と密接に連絡しながら、これまでに も増して、都道府県の医師確保に係る取組を積極的かつ具体的に支援していく所存で あります。本日は、私も時間の許す限り委員の皆様方の忌憚のない意見を拝聴させて いただきまして、今後の施策に結び付けていきたいと考えている次第です。どうぞ、 よろしくお願い申し上げます。以上で、実質発足に当たりましての私からのご挨拶に させていただきます。どうもありがとうございました。 ○久道座長  議題に入ります。議題1「医師確保に関する取組等の紹介について」ですが、まず は日本小児科学会における「わが国の小児医療・救急医療提供体制の改革に向けて」 について、藤村参考人からご説明をお願いいたします。 ○藤村参考人  資料1に基づいて説明します。日本小児科学会では小児医療、医師確保あるいは小 児救急の問題等について、過去3年間、特別チームを設けて検討してまいりました。 同時に、全国の医師組織、地方会で、その課題を都道府県ごとに、具体的に検討して まいりました。問題点が明らかになってきていますので、解説します。  2頁で、何が問題かということです。3頁で、いまもご指摘のあった小児科医が病 院をやめていく、小児科医勤務医不足がテーマに挙がっていますが、これは4年前に 大阪で、勤務医109名にアンケートをしたときの結果で、右上にあるように97%は救 急の翌日も通常勤務をしています。下にあるように、「限界」「大変疲れる」というこ とです。  4頁で、休日が1カ月に4日までの方々がほとんどで、55大学の859名という小児 科医は、このような勤務を強いられているというのが厚生労働科学研究で明らかにな っています。  5頁で、日本小児科学会では、一昨年から「病院小児科・医師現状調査」というも のを実施してきましたが、合計4,325名の日本小児科学会会員のうち、20歳代は平均 週労働時間68時間、30歳になっても62.9時間ということで、非常に長時間の労働を 強いられていることが実際の調査でも明らかになりました。  6頁です。医師の偏在ということがしばしば言われるのですが、一体偏在とは何な のか。ここにあるのは小児科の欠員について、1,224病院を調べたものです。欠員の 比率の高い都道府県から並べました。上のほうにあるのは、ほとんどが大都市圏です。 すなわち愛知県では欠員が43%の病院に見られ、東京都では27%、大阪府では25%、 神奈川では22%です。すなわち偏在とは何なのかというと、次の頁ですが、横軸が病 床数です。病床数が多い小児科ほど、欠員を抱える小児科が多いのです。過疎の地域 は病床数は少ない所が多いです、そこは欠員は少ないのです。偏在しているとすれば、 むしろ大都会の大きな小児科から、非常に医師が少なくなっているというのが、1,224 の病院で調査をして明らかにしたところです。  8頁ですが、医師はどのような勤務をしているのか、日本小児科学会では昨年、ラ ンダムサンプリングで非常に統計的に根拠のある会員調査をいたしました。それで、 年齢別の疲労度を見たところ、一目で明らかなように「かなり疲れる」というのが4、 5、「非常に疲れる」というのが、疲労度6、7ですが、若いほど疲労度が大きいです。 9頁にいくと、若いほど仕事の満足度が低いとなっています。労働関係の満足度尺度 に基づいて、会員948名の調査をしたところ、若い人ほど満足度が低いということで、 非常に問題があります。  続いて10頁では、仕事の満足度と離職意思の関係をみたところ、これは当然なこと ではありますが、満足度が低いほど真剣に離職を考えています。先ほどの年齢構成か ら見て、若い人ほど離職意思の高いことは想像に難くありません。  11頁でそれをまとめると、病院小児科勤務医の長時間労働は顕著です。良質な医療、 医療の安全が損なわれているのは明らかで、燃え尽き症候群で困難な職場から離脱す る。若手医師の疲労度が高く、仕事の満足度は低い。満足度の低い群では離職意思が 大きいのは決して想像ではなく、948名の小児科医がそのような意思表明をしている わけです。多くの病院小児科では急速な小児科志望者数の減少が認められ、困難な職 場へ医師を派遣してきた医局セーフティ・ネットは破綻しています。一般病院小児科 の医師空席について、充足困難な状況が常態化しつつあるわけです。  12頁をご覧いただきますと、我が国の病院小児科はどうなっているのか。医師定員 1人が284病院、2人が238病院、合わせて49%の小児科は1人か2人の小児科医し か定数がないのです。そもそも病院小児科当たりの定数が少なすぎるわけです。  週に1回の当直、休日月1回の当直を保障しようとすれば、少なくとも7名の医師 が要るはずで、それは全国の病院の16%にしかありません。これも日本小児科学会の 「病院小児科・医師現状調査」から明らかになったもので、これは大学病院も含めた 数です。  13頁では国際比較をしてみましたが、縦軸は病院小児科ですが、我が国はブルーの 棒で、3人以下の医師の病院小児科の数がいちばん多いわけです。次が4人から9人 です。英国では、そのような病院小児科というのは、ほとんどないということです。 日本の常識は世界の常識ではありません。病院というものの考え方を、ここで改めて 位置づける必要があるというのが、日本小児科学会の医師の勤務実態と病院のあり方 から考えたものです。  それを14頁にまとめました。1病院当たりの小児科医数が少なすぎる。当然ながら、 「今、なすべきこと」は、いろいろなことに配慮しながらですが、ゴールは入院でき る小児科は地域に必要な最少数にまとめるということ。次に、外来診療をする病院小 児科はいままでどおり維持することです。これによって、アクセスを維持しつつ、入 院というケア、これは当直医が要りますが、そういうものは集約化していくことが、 日本小児科学会の3年前からの提案で、それを15頁に2004年に提言しています。  改革ビジョンとして、効率的な小児医療提供体制に向けての構造改革としては、入 院小児医療提供体制の集約化、身近な小児医療の提供は継続、さらに広くいろいろな 小児医療を充実する。次に広域医療圏における小児救急医療体制の整備を進め、小児 時間外診療は、24時間365日を地域の小児科医、これは標榜小児科です。小児領域に おける3次救命救急、これは諸外国に比べて我が国は非常に劣っています。それを進 めようということです。3番、医師確保にいちばん結び付く満足度の高い環境、労基 法に準拠した小児科医勤務環境の実現を目指そう。これは同時に医師の臨床研修、卒 前・卒後教育に必要十分な場を提供することになるだろうと。  16頁で、そういうことで日本小児科学会が、1つのコンセプトとして提言しており ますのが、二次医療圏に「地域小児科センター」を整備し、これを地域における小児 専門医療の中心に育てる必要がある。下のほうですが、既存の病院小児科と「地域小 児科センター」をグループ、ネットワークという形で位置づけて、病院小児科医師や 研修医はセンターとの交流を図りつつ、外来診療を中心とした身近な小児医療を提供 することとする。入院医療はオンコールで対応可能な形を考えないといけないという ことです。  それを具体的に17、18頁に示しました。17頁で見ると、都会のモデルでは、そこ にあるのは病院の数が7つぐらいあって、最大でも15床の病院で6人の小児科医、3 つ、4つの病院で当直、救急をやっている。それを右側にすると、目指す方向ですが、 50床の地域小児科センターですが、14人の勤務医でこれをつくって、当直を夜勤2 人で行って、周辺の病院小児科はすべてオンコールで当直はやめようというのが、1 つの目指す方向です。これによって医療支援は変えずに、病床数も変えずに、地域の アクセスも変えずに、モデルが変わるということです。次の頁は省略します。さらに 次の頁も、いまお話をしたことを、一次時間外診療は、地域の先生方が、地域小児科 センターにみんなで協力して維持しようということす。  20頁は、今までの日本小児科学会の取り組みをまとめたものです。次の21頁を見 ていただきます。これが日本小児科学会の各支部が作成している二次医療圏における 病院のネットワークの例です。これは地域小児科センター1つに、右上の病院小児科、 過疎小児科、この場合は6つと4つがネットワークを組んで、この数字だけで、どの ような医療を提供しているかがわかる。これを次の頁では地図ですが、こういうもの を各都道府県で作りまして、23頁にあるように、まだ47県には至っていませんが、 全国の1,507病院、病床数2万5,000余、医師数6,200で、このような1つの設計図 を学会では作ってきました。それは地域の先生方が自ら作られたというところが、学 会として根拠を持っているところです。  そこに8,200人という数を書いていますが、比例配分すると、現在の医師数からす ると1,000人以上足りないことになります。  次の頁からは、そうした各地方会での作業をどの程度各地方会ごとに、正しいデー タが出されているのかベンチマークをしておりますのが、これも省略いたします。米 国の小児科医数とも比較して、大体似たような数が出ています。  27頁です。現在我が国における病院小児科は10床未満あるいは10〜20床という病 院が非常に多いです。それは次の頁のように、構造改革で40床ないし50床の地域小 児科センターを育てよう。これによって、N=910という病院数は変えずに、しかし10 床未満の外来型小児科ということで、変えていこうということです。29頁は現況調査 をしましたが、省略します。  31頁で、いままでにどのような問題点が生じているかです。実際に各地方会では集 約化の努力は始めているわけですが、自治体、医師会、病院、住民、医師不足、それ ぞれ問題があります。  32頁です。日本小児科学会が提言する、また考えている集約化のためにいま必要な 対応というのは、「地域医療計画−小児医療」というものを実体的に確立する戦略づく りが必要だということです。まず、知事に地域小児科センター、すなわち連携強化病 院といわれているものを指定する権限を付与することが必要と考えます。  次に、国の診療報酬で、特定小児入院医療管理料を追加して、地域小児科センター を育成すべきです。この2つは大体考えることができるのです。次の、地域で医師が 病院間を移動・異動できる枠組みづくり、これがいま非常に問題になっています。い ろいろな設立主体がありますので、その間を医師は異動できません。こういうものの 配慮なしに、集約化ということを掛け声だけで言うのは非常に難しいというのが、す でに地方会からどんどん上がってきておりまして、どうせよというのかとなるわけで す。  次に、病院同士も経営面で連携する何の根拠もありませんので、収益と経費をどう 按分するのかが全く方向が見えておりません。この2つの根本的なインフラができて いないので、集約化は理念的なもの、あるいはできる範囲のものに留まっていると言 わざるを得ないわけです。  できました場合に期待できる効果としては、医師と入院患者の集約化、研修体制の 向上、経営改善→医療の質の向上、医療安全性向上→患者満足度の改善です。医師確 保という面では、医師労働条件と満足度を改善し、小児科医の参入を増やすことがで きるのではないか。日本小児科学会からの説明は以上です。 ○久道座長  ただいまの説明に、ご意見、ご質問はございますか。 ○内田委員  病院のほうを、入院に特化した施設と外来機能を重視する施設に整理するという話 で、この話は私も大変いいとは思うのですが、外来に特化したほうの病院に関して、 病院の本来持つ外来機能をどう考えるかを整理したほうがいいと思います。  もう1つは、24時間、休日、夜間の救急体制について、一次救急は開業の先生方、 診療所の先生方にお願いするというプランでしたが、そこは外来に特化した小児科病 院の先生たちにも、一緒に担っていただくことが必要だと思います。 ○藤村参考人  病院というものが外来機能をどのようにするかというのは、我々の枠を超えた問題 ですので議論しておりません。ただ、アクセスの問題から、いま大きな機構変革をす るのは日本小児科学会の能力を超えているので、いまある小児科を温存する。それ以 降は、さらに上の議論になると思います。  それから、24時間の時間外診療の提供は、いまご指摘のとおりで、地域の開業医、 病院小児科医、すべてが参加して、集約化した場所でやろうということです。 ○久道座長  次に、日本病院会における「医師確保に係る調査報告書、勤務医に関する意識調査 報告書」について、林参考人からご説明をお願いいいたします。 ○林参考人  「勤務医に関する意識調査」と「医師確保に係る調査」の2つのコンパートメント に分けてありますが、最初に意識調査のほうの話をします。以前からあった問題です が、近年になって急激に勤務医不足が進行した理由をさぐり、その対策を考える資料 として「勤務医に関する意識調査」「医師確保に係る調査」を、日本病院会勤務医、病 院管理者を対象として、平成18年7月7日から、7月28日にわたって行いました。  回答は、勤務医5,635人(勤務先病院の21.1%)、病院管理者は576人(22.7%) です。その結果をまとめましたので、今後医師にかかわる方向を考える資料としてい ただければ、幸いと思います。  意識調査の3頁をご覧ください。背景が、性別、満年齢、主たる勤務先、勤務先の 種類が書いてあって、病床数も書いてあります。開設主体の地域は、回答状況から言 うと東北、中部が多いのですが、実数からいうと関東、中部になって、回答者の数で 割るので、背景としてそういうことが影響してくる可能性があると思います。  Q7です。これは現在の勤務先がどこか、どういう地位かということなのですが、「院 長、副院長、診療部長クラス」というのは15.9%で、「科長・医長クラス」が51%、 「医師、医員」が24%で、回答されている方が、医師の中で役職の方が多いことを表 していますので、回答されたものを分析するときに、そういうことも念頭に入れて考 える必要があるかと思います。  7頁です。勤務先では、赴任か大学からの出張かという質問に対しては、58.8%が 「赴任」ですが、「大学からの1年以上の予定での出張」が26.9%で、1年目も含め ると、29%で、3割近くが出張になります。人事は、「大学人事」が66.3%で、「自分 の意志」というのは30%になります。  9頁のQ10ですが、自分の意思が尊重されたかということに対して、「尊重された」 が20%、「ある程度尊重された」が26%で、「全くされない」という方が11.4%あり ました。無回答が41.8%ありますが、記名式で答えてありますので、答えにくくて無 回答が41.8%あるのではないかと考えています。  12頁です。勤務先での1週間の勤務時間ですが、「40時間未満」という人は非常に 少なくて、4.1%です。それに対して、48時間以上が70.1%、さらに56時間以上は 44%、56時間以上働いている人が44%で、かなりハードに働いています。勤務時間は 5年前と比べてという質問がありますが、「減った」方が16.1%、「増えた」方が35.8%、 「変わらない」方が39.7%で、増えた方のほうがやや多いようです。  増えた人に理由を聞いたところ、「患者数および診療時間が増えたほど医師が増えて いない」というのが65.8%で。これは重複回答ですので、1つの回答ではありません。 「書類を書く時間が増えた」が54.7%、「IT化」が23%、「会議その他が増えた」が 45.8%で、この辺りが忙しくなった理由になります。  Q15です。どうしたらその対策はいいかということですが、「医師を増やす」が76.9%、 「医師以外の職員に業務を移す」ということで、例えば事務、クラークを使って、医 師の書類作りとか、患者を診ること以外の仕事を減らすというのが65%、「IT化など 組織の効率化を図る」が24.7%になっています。  Q16です。夜間当直をするかという質問に対して、回答者は管理者が多かったので すが、71.6%の方が当直をされていて、院長も、最近は教授もなさっている大学もあ り、当直をされる方が増えています。月に何回かに関しては、月に平均で「2回以内」 は41.9%、3回以上が57.9%で、結構な回数の当直をやっているということです。  Q18です。当直の翌日はどうされているかということですが、「忙しさと無関係に翌 日は普通勤務をせざるをえない」というのが88.7%で、非常に高くなってまいす。Q19 ですが、週休2日制が実施されている病院が61.6%ですから、3分の1が「4週8休 未満」になっていますが、週休2日制になっていないところで消化されているかを尋 ねたところ、「代休も含めればほぼ全部消化」というのが24%ありますが、「時々返上」、 これは半分以下ということですが、36.8%、半分以上の「しばしば返上」が20.8%、 「殆ど返上」が16.1%で、73.7%が返上しているということで、全部はとても消化で きていないということです。  Q21です。どういうことで医療過誤が起こるかを聞きました。「過剰な業務のために 慢性的に疲労している」が71%、「患者が多く一人当たりの診療時間、密度が不足が ちである」が62%、「医療技術の高度化、医療情報の増加のために医師の負担が急増 している」が57.8%で、いずれも半数以上です。これは複数回答ですが、このように 医師の数は毎年増えているわけですが、医師のやる仕事が非常に増えているという回 答が目立っております。  医事紛争があるかどうかに関しては、訴訟になっていないけれどもあるという方を 含めると、「ある」という方は4人に1人となっています。その人たちがどういう対応 をしているかがQ23にありまして、「防御的、萎縮医療になりがちである」が70.3%、 「安全意識が高まる」が14.4%、これも非常に大変なことだと思うのですが、高度医 療をやるときの支障になるのであろうと思われます。Q24です。平成16年度から開始 された臨床研修医制度の必須化についてはどう思われますかということですが、これ は文書になっておりますので割愛させていただきます。  Q26で、へき地医療についてです。へき地にはなかなか行かないわけですが、「へき 地病院に勤務したい」というのは2.2%で、「条件が合えばへき地に勤務したい」とい うのが30.3%、「へき地病院には勤務したくない」というのが40.2%です。したがっ て、条件が整ってさえすれば行っていいというのは、32.5%いるわけで、どういう条 件が整えば行ってもらえるかという質問をしました。Q27です。「当直回数や休日の確 保」が49.9%、「子どもの教育等家庭の問題」が45%、「勤務する期間」がある一定の 期間であるという条件が44.6%、「各種学会への参加等研修機会の充実」が42%で、 何らかの方法を考えれば行ってもいいという方は、こういう考え方を持っているので、 工夫をすればもう少しへき地に行ってくれる人が増えるのではないかと思われます。  Q28です。医師不足の要因についてです。その原因については「過酷な労働環境」 を挙げている人が61%、「新臨床研修医制度」になって、大学の研修医が減っている ので、そういうことも含めて減ったというのが44.6%、「国民・マスコミの医療に対 する過度な安全要求」が42.1%ありました。  32頁が、その対策として、「国が医学部の定員増、前期研修を含め医師の適正配置 に責任を持つべきである」が47%で、非常に国に対する期待が強いということになり ます。  Q29です。あなたは将来開業を志向するかに関しては、「開業しないつもり」が42%、 「状況によっては開業することを考えている」「開業を志向しているが予定は立ってい ない」「近い将来に開業する予定」という、開業志向の人に次の質問をしました。Q30、 なぜ開業をするかという尋ねに対する答えは、「病院勤務が過酷」が48.2%、「給与が 安い」が33%、「住宅地の問題、家庭の事情」が26.8%、「老後の対策」が24.5%と いう順序になっています。  勤務医の地域偏在はなぜ起こるかという質問に対しては、「大病院の都市部集中」が 63%、「医療行政の貧困による医師の不適正配置」が59.1%、「子どもの教育、文化的 環境の地域格差」が52.9%、「新臨床研修医制度」も46%となっています。  医師確保のほうに移ります。要約すると、数は研修制度が始まる平成15年と、終わ った平成18年との比較で、全体と各科について、増えたか減ったかについて質問して います。大まかにいうと総医師数は減っていることはなく、増えているところも減っ ているところもあります。先ほど出た小児科は5頁のQ4にありますが、「増えた」と ころが25%、「減った」ところが20.4%で、増減で見るとそれほど変わっていません。 特に、どういうところが増えて、どういうところが減っているかについては、大きな 特徴は見られませんでした。  地域においては、北海道、中国、四国が増加傾向ですが、回答施設が少ないのでは っきりしたことは申し上げられません。  産科については、「変わらない」が63.9%と最も多いのですが、「減った」が21.7% で、非常に興味があるのは、病床数400床以上の施設では減少より増加が上回ったと いうことで、大きな病院は増えていて、200〜400床の施設では減少が増加を上回って います。200床以下の施設においては、増加しているところは1つも見られませんで した。したがって、産科は大きな病院には集まっているが、小さな病院は減っていま す。  内科のはその逆で、400床以上の施設は減少傾向が顕著で、病床規模が小さくなる につれてその傾向は小さくなっており、逆に200床以下の施設では増加傾向が見られ ました。関東、中部に減少する割合が高かったという結果になっています。  放射線科、麻酔科も、そう大きくは変わっていませんが、小児科、産婦人科、麻酔 科などがいろいろと問題になっていますが、例えば麻酔科で見ると、400床以上の施 設においては減少傾向が大きくて、200床以下は増加傾向を示したということで、む しろ小さな病院のほうが増えて、大きな病院のほうが減っていることになります。  まとめますと、医師不足が深刻と考える代表的な科として、過去3年間どのような 増減が見られたのかを調査した結果、合計として「増えた」施設が284で、49.7%で、 「減った」施設は194で34%、「変わらない」は93で16%となっていますが、科別に 見ると小児科については特異な傾向は見られませんでした。産科は病床規模の大きな 施設で増加傾向が見られ、中小病院施設は減少傾向が見られました。内科は逆に病床 規模の大きな施設で減少傾向が顕著で、中小規模の施設では増加傾向が見られました。 外科、放射線科においては、一定の傾向は見られませんでした。麻酔科においては、 大規模病院において減少傾向が大きく、中小規模の施設では増加が見られました。病 理はあまり変わっていません。  医師数が減少した要因について、他の病院や大学に帰ったけれども補充されない、 開業したというのがほとんどの科で、外科、放射線科、麻酔科は、大学に戻ったけれ ども補充されていないというのが非常に多かったです。一般的には、いま言ったこと で、大きな病院へ行ったとか、他に行った後に補充されていないというのが要因にな っています。医師の確保のためにどういう働き掛けをしているかというと、「大学医局 に医師派遣をお願いしている」が92%で、圧倒的に多く、次いで「その他人材紹介業 者、インターネットによる募集」が41.5%、「知人、友人」が39.4%になっています。  医師確保が難しい主な理由として、「大学または他の病院から派遣できないと言われ ている」が76.2%で圧倒的に多いです。次いで「公募に対して応募がない」が33.9% でした。  管理者に対する医師の過不足に関する設問については、病院経営や医師定数等を考 慮しないで、地域の医療ニーズに対して、良質かつ適切な医療提供をする観点から、 どうなのかということを質問したところ、90.5%が医師数は「足りていない」という 回答で、いま話をしたように、医師数は決して減っていないのですが、管理者は地域 の医療ニーズとして医師数が「足りている」と思っているのは、9.5%に過ぎませんで した。  そのほかクロス集計として、大学病院のあるところは地域別に大きな都市のほうが 非常に有利なのではないかということをやってみたのですが、数字が少なくてクロス はうまくできませんでした。以上です。 ○久道座長  ただいまの説明に対して、ご質問はございますか。 ○内田委員  最初の勤務医に関する意識調査の15、16頁で、業務が増えた原因の中に「IT化」 が23.3%あります。次の頁で、この負担を減らすにはどうすればいいかという質問で、 「IT化など組織の効率化を図る」が24.7%とあります。これは最初のIT化を入れて 業務が増えたというところは、ほとんどの病院がIT化を入れているわけではないので、 IT化を入れたところで、現場の医師は業務が増えたと負担に感じているのではないか。 一方で、IT化などの効率化ということをおっしゃっている先生方は、おそらくIT化 を導入されていないところの先生がおっしゃっているのではないかということで、興 味深いデータだと思いました。  もう1点ですが、前回の会議のときに、「診療報酬体系が開業医に非常に厚くなって るので、これを変えない限り病院勤務医から開業指向がなかなかなくならないのでは ないか」という指摘が、お2人の委員から出たのです。私は医師会の担当として非常 に気になりまして、本当にそうなのかを検証しなくてはいけないということを検討し ました。  それで、これはたまたまだと思うのですが、開業医の診療報酬体系が厚いと言われ たのは、お2人ともドクターではなかったのです。それで、今回の厚労省の報告では、 医師の所定内給与というのは76.1万円で、これは勤務医も全部含めてです。一般労働 者の30.2万円と比べて倍以上ですが、学歴、企業規模等々を全く考慮しないデータと いうことで、大企業の大学、大病院卒の平均は45.1万円であると言われています。  基本給についても、航空機操縦士、大学教授、新聞記者、マスコミ関係者は、35歳 ぐらいの平均収入では、医師の平均よりも遥かに上にいっています。医師は、開業医、 勤務医の両方を含んでいます。  開業医に関して言いますと、大体可処分所得が年間1,000万ちょっとぐらいという ことで、普通に考えればかなり多いと思いますが、開業医は1人で、経営責任、運営 責任のすべてを負っていますから、医師、医療以外の業務も非常に繁忙であること、 事故あるいは病気のときの補償についても、手当は自分で考えなければいけない、ボ ーナスも退職金もないこともありますし、その辺からいくと、この所得が本当に適正 かあるいは多いのか、診療報酬が高いのかという議論は、また別になってくるのでは ないかと思います。  ちなみに、医学会総会で基調講演をなさったオザワ先生の話ですと、アメリカから 日本に東大の教授で帰って来たときに、給料が15分の1になった。アメリカにいると きは医者の給料は私の3倍だったとおっしゃっていますので、日本の大学の医学部の 教授も含めて、アメリカの医学部の教授と比べると45分の1という給与水準になると いうことで、これは開業医の診療報酬が厚すぎるという話ではなくて、日本の医療全 体にかけるお金があまりにも小さすぎるという議論から出発すべきではないかと思い ます。 ○林参考人  最初のIT化に関してはおっしゃるとおりですが、IT化するときに入力は医師がす るわけです。そうすると、当然仕事が増えていることは確かだと思います。ただ、IT 化していくのは世の中の趨勢なので、それをどううまくやっていくかを議論すべきで あって、知らない人がそう書いているというだけのことではなくて、IT化は必要なの だけれども、医師が全部入力しなければいけないかに関しては、もう少し考えるべき であるというのは、この議論の中にも出ていました。 ○梶井委員  先ほど産婦人科は大きな病院で増えている、内科は大きな病院では減っているとい う数値をお示しいただきましたが、産婦人科に関しては、すでに集約化が進んでいる と見てもよろしいのでしょうか。 ○林参考人  考え方としてはそういうことだったのかなと思っていますが、はっきりと検証した わけではないですが、そのように出ているということは集約化が進んでいるのではな いかと考えます。 ○梶井委員  前回の準備委員会のときにご質問したのですが、地域医療を支えている最前線の病 院で、内科医が減ってきているという話をしました。その数値をお示しできませんで したが、ここでは大きな病院で内科医が減っている、産婦人科とデータ的には対極に あると思うのですが、これは内科は例えば大学からの派遣に関しては、いろいろな科 がかかわっています。それから、内科医の場合はかなり救急への関与が非常に大きい ということで、先ほどの話にあったように、大学からの派遣がなくなる、あるいは少 なくなると今度は個人に負担がかかって、だんだん1人去り、2人去りという、この スパイラルが起こりやすい科かと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。 ○林参考人  おっしゃるように思います。内科というのは1つの科から来ていないで、いろいろ な大学、科から来ている病院が、大病院では非常に多いです。小さな病院ではそうで はないかもしれませんが、したがって、そのようなファクターはかなりあると思いま す。 ○梶井委員  へき地医療支援機構というのが、9次のへき地保健医療計画で策定されて、いまい ろいろな県にできていると思います。そのときの支援病院群というのがあって、そこ から医師を派遣することになっていますが、支援病院群に入っているところ自体が大 変な医師不足で、なかなかへき地の第一線の医療機関のバックアップはできない状況 だと思うのですが、このデータの中で支援病院群に入っている病院についてピックア ップされていませんか。 ○林参考人  申し訳ございません、そのピックアップはしておりません。 ○久道座長  いま梶井委員から話のあった地域医療支援機構というのは、各都道府県にあるので すか。 ○佐藤課長  各都道府県が。 ○久道座長  全都道府県にありますか。 ○佐藤課長  手元に持っておりませんが、ほぼ都道府県にあると思います。 ○林参考人  実は、私も秋田県全部のまとめをやっているものですから、これはおっしゃるとお り、中核病院から出せないのでお願いしますと言われるところがありますので、おっ しゃることは他の県にもあるだろうと思います。 ○久道座長  他になければ次にいきます。議題2「今後の支援体制について」です。事務局から 説明をお願いいたします。 ○伊東指導官  「今後の支援体制について」で、資料3〜資料6まで、まとめて説明します。資料3 の「厚生労働省の取組」についてです。まず1点目の「医師確保等支援チームの設置 について」です。趣旨ですが、医師の偏在等により、産科等の医療提供体制について 問題が生じている地域について、地方厚生局とも連携し、当該地域を所管する都道府 県からヒアリング等を行い、問題状況の認識の共有化を図るとともに、解決方策の提 言、予算事業の活用方法などの具体的な助言を行うために、「地域医療に関する関係省 庁連絡会議」の下に、地域ごとに、関係省庁の担当者からなる「医師確保等支援チー ム」を設置しております。  具体的な活動内容としては、そこの3番目にあるように、地域における医師不足等 に関する問題状況の具体的な把握と助言、あるいは都道府県の行っている医師確保対 策の取組状況の具体的な把握と助言、都道府県による医師派遣システムの構築に向け た医師確保対策に対する具体的な助言、あるいは個別病院の医師不足など緊急的な対 応を要するケースに対する具体的な支援策の提示、特に、分娩を取り扱っている産科 病院、産科診療所、助産所などにおける医師の状況や分娩数などを把握し、助産師の 活用など必要な対策を協議しております。また、医師に加え、助産師をはじめとする 看護職員の確保についても、同様に取り組むということにしておりまして、メンバー といたしましては、次頁にあるように、厚生労働省をはじめ、総務省、文部科学省に も参加していただき、5ブロックに分けて現在ヒアリング等を行っている状況です。  次に、平成19年度の予算における医師確保対策の推進について説明いたします。こ れは12月21日の会議で示したものと同様ですが、医師確保に対する平成19年度の予 算は92億円で、以下にある「医師派遣についての都道府県等の役割の機能の強化」「開 業医の役割の強化」などの諸問題に関して予算を確保したものであり、これについて は報告です。  資料4は「地域医療支援中央会議の幹事会」についてです。次頁は概要ですが、都 道府県医療対策協議会等からの相談等に対して的確な助言・指導を行うため、地域医 療支援中央会議の下に「幹事会」を設置したいと考えております。幹事会は中央会議 における議論を補助するために設置するというもので、構成員については、中央会議 構成団体の代表あるいはそこに所属する組織の方々を考えております。また、これに ついては地域の実情を踏まえた個別的、具体的な審議を行うために、原則非公開とし、 適宜、中央会議に報告することを考えております。  検討内容は、大きく1点目として中央会議における審議に資するための基礎的な審 議・検討で、参考として好事例の収集・調査・紹介などの改善方策に関することや、 医師確保などを含め、地域医療の確保に関する助言・指導に関することなどを行うこ ととしております。都道府県医療対策協議会などから要請のあった特定地域に関する 地域医療の確保に関する審議・検討。後ほど説明する派遣する専門家(地域医療アド バイザー等)及び派遣方法などに関する審議・検討といったことを行う予定であり、 開催頻度は随時と考えております。次頁は同様の内容を図表化したもので、地域の実 情に応じた個別具体的な検討を行うということです。先ほど述べたとおり、中央会議 の委員が所属する組織の中からお願いする予定ですので、今後ご相談させていただき たいと思います。  資料5は「地域医療アドバイザー派遣事業」についてです。趣旨ですが、地域医療 の確保及び医師の確保などに取り組む都道府県を支援するため、都道府県からの要請 に基づき、厚生労働省が委嘱した地域医療アドバイザーを派遣するというものです。 アドバイザーの役割は医療機能の分化・連携の方策の助言・指導、集約化・重点化の 実施に関する助言・指導、あるいは医師確保対策に関する助言・指導といったものと しております。  3番目に手順が書いてありますが、私どもが都道府県医療対策協議会に紹介し、都 道府県から派遣要請書を提出してもらい、私どもと地方厚生局とが協力し、派遣要請 書の精査、確認をしたいと思っております。派遣が必要と認められた場合は派遣決定 書あるいは事業計画書を提出していただき、実際にアドバイザーとなる方、あるいは 地方厚生局の担当官を都道府県の医療対策協議会に派遣したいと考えております。そ の結果について事業計画書を提出していただき、3年以内に医療対策協議会から厚生 労働省に対し、事後報告書を提出してもらうということを考えております。  アドバイザーの位置づけですが、医療計画・医療経営・医療政策などに関して優れ た見識を有する者から厚生労働省において委嘱したいと考えており、当面の予定とし てアドバイザーの委嘱は10人程度、派遣は年12回程度と考えております。次頁はそ れを模式図化したもので、先ほど述べたとおり、これについても地方厚生局と連携を 取りながら、アドバイザーを派遣していきたいと思っております。アドバイザーのメ ンバーの選定についても、今後幹事会あるいは中央会議でご相談したいと思っており ます。よろしくお願いいたします。  資料6は「小児科・産科における集約化・重点化の検討結果」ですが、これについ て報告いたします。1枚目は「小児科における医療資源の集約化・重点化の推進に関 する検討結果の報告について」です。各都道府県に問い合わせたところ、集約化・重 点化の必要性があるという県・地域は24、検討中は18です。ただし、医療圏によっ て集約化・重点化の必要ありとする圏域と必要なしとする圏域がありますので、合計 数は必ずしも47にはなりませんが、必要ありとした所は24といった状況です。2枚 目は産科についての同様の報告です。集約化・重点化の必要ありとした県は17、検討 中の県は19、必要なしとした県は11という状況です。 ○久道座長  資料3から6にかけて説明していただきましたが、何かご質問があればお願いいた します。 ○柳澤厚生労働大臣  役所に置く三省のチームとアドバイザーの関係はどうなるのですか。 ○佐藤課長  時系列的に述べますと、まず先に地域医療支援中央会議とアドバイザーを決めてい たわけで、こちらは外部の方によるアドバイス、それも学識経験者によるアドバイス という位置づけだろうと思います。それに対して内部に置くチームは文字どおり内部 でして、アドバイザーや幹事会の動きに呼応して、あるいは独自の動きをするかもし れませんが、できれば呼応し、外部と内部とで車の両輪のように活動していくのだろ うと考えております。 ○久道座長  他に何かあればお願いいたします。ただいま事務局より説明があったように、幹事 会のメンバーの選定については、事務局が案を作成し、座長に一任していただきたい と思います。また、アドバイザーのメンバーの選定についても、先ほど事務局から説 明があったように、事務局が作成し、本中央会議の幹事会に諮った上で決定するとい うことで、これも座長に一任していただければと思います。  次に、全国自治体病院協議会より資料が提出されておりますので、時間も限られて おりますが、小山田委員から資料7について簡単に説明をお願いいたします。 ○小山田委員  私は民間病院が少ない、あるいは無いような地域の医療を担っている施設を多く抱 えておりますが、そこでの問題点については、先ほど来の皆様方の意見に全く賛同す るところです。その中で特にお願いしたい、強調したい点については資料があります が、労働環境の改善といった1点に絞ってお話させていただきたいと思います。私ど も自治体病院の中では小児科、産科はもちろんのこと、内科総引き上げ、あるいは病 院から10数名の医師が一挙にいなくなるという状況が続いております。これは地域医 療がその日から崩壊するということであり、止めどない流れとなっております。その 原因は先ほどから多く出ておりますし、私どもでも大学の引き上げ、開業医との収入 の格差などいろいろと挙げられました。そうしたことや臨床研修制度といったことも あるかもしれませんが、労働環境、あるいは苛酷な労働に強いられ、それに耐えられ なくなって避難していくという事実がはっきりしてきました。  私ども協議会は全国の自治体病院の事務長会に頼み、勤務医の労働状況を調査し、 問題点を出してもらいました。さらに、全国にある7ブロックの病院の、中堅の勤務 医の代表に集まってもらいました。そこで私が直接お聞きした概要は資料にあります が、そこで訴えられたことは、せめて当直は月に2回以内にしてほしいということで す。また、例えば東北、北海道などでは、家族は大体県庁所在地にいるから、家族と 会ったり、一緒に泊る回数を月に2回は確保してもらえないだろうかとか24時間勤務 した後は休暇など取れない、患者はどうするのかと病院長に言われると、やらなくて はならない、これを何とかならないものだろうかといった切実な思い。また、1週間 に一度、2週間に一度でもいいから、夜は携帯電話をオフにさせてもらうことができ ないかという切実な声であります。  これは私のデータではないのですが、いま労働科学の研究グループのデータを見る と、開業医を志すというか念頭に置いている人と、開業が念頭にない人とでは画然と 違いがあることがわかります。病院を去っていくグループは労働時間が長い、疲労度 が高い、労働スコアが遥かに多いということです。時間外の労働時間が、労災認定の およその目安になっている月80時間よりも多くなると、家族団欒のチャンスが少なく なる、夫婦間の対話の回数が少なくなる、友人との交流が少なくなる、いままでやっ ていた趣味に費やす時間がなくなっていくといったことであります。また研修医につ いても同じようなデータが出ており、十分な睡眠を取らないとヒヤリハット事件が多 い、交通事故の加害者ではなく、被害者になる頻度が多いといったことであります。  そのようなことを考えると、特に地域条件の悪いような所で勤務を続けてもらうた めには、それが可能な労働環境の設定と管理者の責任というものをある程度明確にし ておく必要がある。そうでないと、いま働いている人たちが非常に不安を覚えている ことに私どもは応えることができない。労働基準法を守ってほしいというのは彼らの 切実な要望ですが、いまそれができない環境下にあるならば、せめて当直回数は月何 回以上はやらせてはいけないとか、24時間以上の勤務はさせてはいけないなどといっ た上限を、国でなくてもいい、こうした中央会議で提示してもらい、管理者に労働環 境をコントロールしてもらうような指針を出すことは、実効性はともかく、国も中央 会議もこのようなことを考えているということを明確にすることは、いま地域から去 ろうかと考えている人たちにとっての大きな歯止めになると思うのです。そのような ことを是非お願いしたいと考えております。 ○久道座長  いまのお話は小山田委員が第1回目に是非議論してほしいということで強調された 議題だと思いますが、この件に関して何かご意見があればお願いいたします。 ○内田委員  小山田委員の言われたとおりで、大賛成です。私は医師会の代表ですが、開業医を 代表しているわけではなく、病院関係者の方々も医師会に入っているので、そのよう な立場も踏まえてお話させていただきますが、いま勤務医が開業のほうに向かってい るという流れの中で、そのいちばん大きなファクターは過重な労働条件だと思います。 そのようなことを何とか回避したいということで開業するので、休日・夜間の一次救 急を担っていくことに関しては、いろいろな所で取組みが進められているわけですが、 勤務医を辞めて開業した先生は、そのようなことをやりたくないから開業したと言う 方が結構多いのです。医師会としてはその辺のところをこれからの生涯教育の中でも 積極的に取り組み、そのような体制を何とかつくっていきたいと思っておりますが、 地域によっては非常に厳しいところがあるということを認識しております。 ○久道座長  他に何かあればお願いいたします。 ○矢崎委員  病院における勤務医の過重労働の1つの原因は、我が国の病院の機能が入院に特化 されていないということです。外来に費やす時間を調べてみると、診療時間の3分の 1が外来に取られているのです。それでは病院において外来をやめればいいのではな いかということになりますが、そうできないのには2つの原因があるのです。1つは、 いま急性期の問題になっている病院の診療報酬が低いために、大学病院を含め、経営 を外来収入にも依存していること、もう1つは、やはり病院で診てもらいたいという 患者のニーズがあるということです。これを解決するために、単なる労働時間だけで なく、内容も見直せるような仕組みを是非考えていただければと思います。 ○松原委員  私もこれまでの委員の方々の発言に全く賛成です。要するに、医師が大変な疲弊状 況に陥っていることは、済生会病院のかなり経営も良く、一見医師が多くいるような 所であっても、各院長は強く心配しております。なぜ医師が疲弊するのか。一言で言 えば、医師の1人当たりの業務量が増えているからだと思います。それには多くの原 因があると思いますが、いちばんのきっかけになったのは臨床研修制度の実施であり、 大学の独立行政法人化でスタンスが経営重視に移ったことにより、医師を引き上げな ければならなくなったこと、あるいは在院日数の短縮化も大きな要素になっていると 思います。つまり、半分に短縮して同じ病床稼動率を維持しようとすると、理屈上は 業務量が2倍になるわけです。そんなに簡単にはいきませんが、何倍かに業務量が増 えたわりには診療報酬は伸びていないので、医師を増やすことができない。それは経 営の面からと、医師が絶対数不足しているから増やすことができないという面と、両 方あるわけです。  他にもさまざまな要因があるわけですが、ここ数年間でいろいろな診療報酬の改革、 医療法関係の改革などといったものが加重的に、同時に重なったことにより、急速な 舵取りを余儀なくされたということだと思っております。厚生労働省が制度改革をし て目指す方向として、病院の集約化・重点化というのは正しいと思いますが、あまり にも急速にきているために、本来地域に必要な医療機能が保持できなくなっている状 況ではないかと思っております。 ○久道座長  大学病院の関係で、大橋委員からご意見があればお願いいたします。 ○大橋委員  いままで話された形と同じだと思いますが、大学病院の診療報酬体制も、大機関の 病院と同じように行われているというところに1つの問題があると思いますし、ご指 摘のように、法人化によって、2%の経営努力をしておりますので、医師が結構いる中 でも、教官の疲弊化がかなり起こっており、大学から教員が辞めていくという事象は 同じような形で起こっております。  さらに、あえて言えば、これを解決するとともに、医療の質を確保していくという 視点から、大学の医師派遣機能が落ちると同時に、現状の医療が形として確保された としても、大学病院に疲弊化が起こると、新しい先端的な医療や難病などの対策につ いては、10年先、20年先に非常に重大な禍根を残すような問題が起こってくるのでは ないかと思いますから、質の問題についても別次元の議論が今後必要になってくるの ではないかと思います。 ○久道座長  病院事業管理者である近藤委員はいかがでしょうか。 ○近藤委員  小山田委員が言われた労働環境に対する指針を出すべきということですが、その結 果、いまより労働環境が良くなるということは、現在病院が持っている医療機能を賄 えなくなることが十分考えられます。一方、矢崎委員は病院が外来診療をしているこ とが問題であるということです。仮に外来がなくても経営できるということになった 場合、病院に来ていた外来患者は診療所に行くことになります。果たして診療所が外 来患者を受けられるのでしょうか。これが可能だということであれば、医師不足や地 域偏在でなくて、病院の医師が足りなくて診療所の医師が余っていることになります。 もしそのようなことであれば、供給の不足と過剰な部分を調整すれば、医師の偏在と いうか不足を解決することが出来ると思ったのですが、このように考えてよろしいで しょうか。  もう1つ、小山田委員が言われた、仮に労働環境を良くするということになると、 当然いまの機能は果たせないか、果たすためには医師をたくさん入れなければなりま せん。医師を入れても収入が増えないということになった場合、多くの公的病院、自 治体病院等は現在自治体の財政が厳しい状況で一般会計からの繰り入れ金が増えるの だろうかと心配します。小山田委員が言われたガイドラインを出していただくのはい いのですが、出された側の管理者及び自治体はどのように対応したらよいのかと思い ます。 ○久道座長  小山田委員から何かご意見があればお願いいたします。 ○小山田委員  近藤委員の言われることは全くそのとおりです。いま病院が抱えている患者への対 応はどうするか、病院の対応、経営はどうするかといった問題があります。これに対 して最終的には集約化、統合再編ということを考えるし、また医師に対するオーバー ワーク、ペーパーワークをなるべく減らす、外来を少し減らしていくなど病院の中で の業務の見直しが必要です。そのときに医療のクラークを置くということになってい くと思いますが、そうすると、当然病院の経営に関わってきます。最終的にそれらを 満足するような方向に診療報酬体系がなっていかなければいけないといった大きな問 題があることは十分承知しておりますが、いままさに、労働が苛酷だから出ていくと いう医師団を抱えているときに、集約化という前に、まず我々は労働環境を少しでも 良くする方向に動きますという姿勢を示してほしいというのが私の本音です。  毎日のように医師が病院から去っているのです。その人たちの過重労働だという声 に、私どもは少しでも応えたい。少しでもいいですから、国も中央会議も考えている ことをその人たちに伝えたい。難しい状況はわかりますが、その中でも管理者、開設 者、国がそのような事情を理解し、労働環境を改善する方向を、何らかの形で提示し ていただきたいと思っているわけです。 ○久道座長  予定の時間が来ましたが、あと5分ぐらい延長しようかと思っております。柳澤厚 生労働大臣は公務があるとの連絡が入っておりますので、ここでのご退室となります。 どうもありがとうございました。 ○柳澤厚生労働大臣  どうもありがとうございました。 (柳澤厚生労働大臣退室) ○久道座長  実質的には平成19年度の第1回目の中央会議でしたが、状況がかなりわかってきた のではないかという気がいたします。調査に基づいて参考人の方々から出された資料 で、実際の医師の数、増減、分布、偏在のあり方などいろいろなことがわかったと思 います。まだ調べなくてはならないデータもあろうかと思いますが、そのような意味 で今日はかなり具体的な、また医師の勤務状況、過重労働についてのかなり具体的な 話にも入ったと思います。この中央会議はいろいろ議論していくことになると思いま すが、ただ議論しているだけではどうにもなりませんので、今度できる幹事会が、メ ンバーを構成した上で、具体的にどのようなものをやるか、急ぐのはどれかといった ことを整理していただき、中央会議に出していただくという方向でいいのではないか と思っております。今日は十分尽くされたとは思いませんが、予定の時間が来ており ます。この辺で次の事務局の説明に入りますが、是非とも今日発言しておきたいとい う方はいらっしゃいますか。順番に全員の方々に発言してはいただけなかったのです が、よろしいでしょうか。ないようですので、事務局から他の資料について簡単に説 明をお願いいたします。 ○佐藤課長  参考資料を用意いたしましたが、時間も限られておりますので目を通していただけ ればと思います。 ○久道座長  本日は厚生労働大臣にも出席していただき、最後までお聞きいただきましたので、 皆様の意向というか本音がかなり伝わったのではないかと期待しております。以上で 本日の中央会議を終了いたします。どうもありがとうございました。 ○佐藤課長  申し遅れましたが、次回の日程はまだ決定しておりませんので、幹事会の人選、ア ドバイザーの人選を含めて座長と相談させていただき、後日事務局で調整し、連絡を 差し上げます。よろしくお願いいたします。 照会先:厚生労働省医政局指導課     計画係(桑原)、指導係(中根) 電話 :03-5253-1111(内線2557)