07/04/03 第6回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第6回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」 日時:平成19(2007)年4月3日(火) 18:00〜20:10 場所:厚生労働省共用第8会議室(6階) 出席者:  委員   柏女座長、奥山委員、榊原委員、庄司委員、松風委員、西澤委員、山縣委員  事務局   藤井家庭福祉課長、川並家庭福祉課専門官、鈴木家庭福祉課措置費係長 議題:  1. 各論点に関する討議  2. その他 資料:  資料1 具体的論点(案)  資料2 第1回〜第5回における委員からの主な意見 ○鈴木家庭福祉課係長  定刻となりましたので、ただ今から第6回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に 関する構想検討会」を開催させていただきます。委員の皆さま方におかれましてはお忙 しい中お集まりいただき厚く御礼申し上げます。  本日の検討会にご出席の委員は7名です。吉田委員は欠席と伺っています。また榊原 委員は、所用のため約30分遅れる予定です。  なお、西澤委員は4月から所属先が大阪大学大学院から山梨県立大学人間福祉学部へ と変更になりましたのでお知らせします。  また、事務局におきましても人事異動がありましたのでお知らせします。佐藤の後任 の川並児童福祉専門官です。 ○川並児童福祉専門官  家庭福祉課の児童福祉専門官の川並です。大阪府より派遣されて参りました。よろし くお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは議事に入りたいと思います。柏女座長よろしくお願いします。 ○柏女座長  年度当初の慌ただしい時期にお集まりいただきまして本当にありがとうございます。 ヒアリングを続けてきましたが、いよいよヒアリングの意見なども踏まえて少し具体的 な議論に入っていかなければならない時期に入っています。そういう意味では、今日の 議論も大切な議論になると思います。どうぞよろしくお願いします。  それでは議事に入る前に、お手元にお配りしている資料についての確認を事務局から お願いしたいと思います。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは資料の確認をさせていただきます。上から順番に「第6回議事次第」、「配付 資料一覧」、資料1として「具体的論点(案)」。それから資料2として「第1回〜第5回 における委員からの主な意見」となっています。お手元に資料がない場合はお知らせく ださい。事務局よりお渡しします。なお、委員の皆さま方には、庄司委員からの英語の 資料を配布しています。資料の確認は以上です。 ○柏女座長  資料はありますでしょうか。庄司委員にはあとでまた説明をしていただくことにしま す。よろしいでしょうか。  それでは議事に入っていきたいと思いますが、その前に藤井家庭福祉課長から資料の 説明をしていただいて、その後討議に入っていきたいと思います。よろしくお願いしま す。 ○藤井家庭福祉課長  それでは、お手元の資料1について説明させていただきます。これは「具体的論点(案)」 ということで、これまでの委員のご意見、それからヒアリングで出されたいろいろな論 点を踏まえて、あらためて第2回にご議論いただいた「検討課題(案)」をさらにブレー クダウンした論点で整理したものです。もちろん案ですので、不足がある場合はご意見 をいただければと思います。事務局としては、基本的にはこの論点に沿ってご議論いた だければありがたいと思っています。  ざっと説明させていただきます。論点によってはコンセンサスにかなり近いものもあ りますが、今回からが本格的な議論ということですので、まだ論点という形で整えてい ることをご容赦いただきたいと思います。  「具体的論点(案)」の1番「今後の社会的養護の基本的方向」ですが、少し項目立て を変えています。「子どもの『養育』のあり方」と大上段の項目を掲げていますが、そも そも家庭で子どもを養育するというのはどういうことなのだろうということを、可能な 限り整理する必要があるのではないかということで立てさせていただいています。  前回「日向ぼっこ」の廣瀬さんが、施設退所者の傾向としてコミュニケーションが難 しいなどいろいろな傾向を幾つか挙げておられましたが、これを裏返せば、家庭におけ る本来の養育の機能のようなものが見えてくるのかもしれません。またこれまでの委員 の意見としてもありました。委員の方々の意見は資料2でまとめていますが、そこにも ありましたように、子どもの個人としての生活の主体性や個別性の確保、あるいは子ど もが心身ともに健康に育つ権利の保障、あるいは個々の子どもの個別ニーズに応じたオ ーダーメードの自立支援などのご意見もいただきましたが、そういったご意見も養育の あり方を考える上で参考になるのではないかと思います。  そこを整理した上で、次が、表裏の関係だとは思いますが、家庭における適切な養育 を受けられない子どもに対する社会的養護の目指すものということになろうかと思いま す。そして次は、それを実現するための現行の社会的養護体制で何が足りないのかとい う観点からの課題で、総論としてはその課題を克服するための社会的養護拡充の基本的 方向へと続いていくと思います。この辺りについては第2回で一度ご議論いただいては いますが、さらに必要なキーワードや方向性についてあらためてご意見をいただければ と思います。  それから2番ですが「要保護児童の増加に対応した社会的養護体制の拡充方策」とし て、要保護児童数の将来予測の中で「現在の社会的養護のキャパシティーについてどの ように考えるか」とありますが、この不足しているというニュアンスの意見が先生方か らは相当強かったと思います。そういう意味で、今さらではありますがこういった論点 を出させていただいています。それから「将来の要保護児童数についてどのように考え るか」も、増加が予想されるということはご意見として大勢だったと思いますので、今 さらですが掲げさせていただいています。続いての論点としては「要保護児童数の将来 予測が可能か。可能とすればどのような方法が考えられるか」ということが挙げられる と思います。それから「将来予測を踏まえた社会的養護体制の整備のあり方」というこ とで、「増加する要保護児童のニーズを満たすために、どのような社会的養護を提供する ことを目指すべきか」とありますが、もう少し具体的に申しますと、これまでの施設中 心のやり方なのか、あるいは家庭的養護中心でいくのか。施設にしても大舎のような大 きな施設でいくのか、あるいは小規模なのか、そういった議論だろうと思います。それ から「里親、施設等の計画的整備を進めるために、どのような手法が考えられるか」。こ れまでも整備計画を自治体で作ったらどうかというご意見をいただいていたと思います が、国であれ県であれどのようなやり方をすればよいのかといった論点です。  大きな3番「養護ニーズの多様化・高度化を踏まえた、社会的養護の質の向上に向け た具体的施策」としてまず「(1)家庭的養護の拡充」の「里親制度の拡充方策」です。幾 つも論点を掲げていますが、「そもそも我が国において里親が普及しない原因はどこにあ るのか」、「その原因を前提に考えれば、里親委託を推進するためにはどのような施策が 必要なのか」。2ページに移りまして、里親の職業化といったご意見もあったのですが、 これについてどのように考えるのか。それから「里親と里子のマッチングや里親支援の 主体をどのように考えるか」、これは、これまでも何人かの委員からご意見をいただいて います。児童相談所からこの機能を分離して民間に任せればよいというご意見もありま したし、あるいは里親支援センターを創設すべきだとのご意見もありましたが、その辺 りをどのように考えるのかということです。それから「里親と施設の連携をどのように 考えるか」、「里親研修をどのように拡充するか」、「レスパイトケア等のサポートプログ ラムをどのように充実させるか」、「里親手当の水準をどのように考えるか」。ここは、養 子縁組前提の場合とそうでない場合で少し違いもあると思いますので、そういったこと も含めてご議論いただければと思います。それから「障害児を里親に委託する場合の手 当等についてどのように考えるか」、「専門里親や親族里親についてどのように見直すべ きか」、「里親の名称についてどのように考えるか」といったご意見もあります。それか ら「普及、啓発について、どのような広報を行うべきか。また、どのような層に広報の ターゲットを定めるべきか」とありますが、広報のターゲットという点については、こ れまでも例えば退職団塊世代や、あるいは主任児童委員の経験者などを活用してはどう かという意見があったと思います。  それから「グループホームのあり方」として、まず「いわゆる里親ファミリーホーム を含め、小規模ケアの形態として『グループホーム』をどのように位置付けるか」。これ ももう少し申しますと、要は現在の地域小規模施設だけではなく、独立した小規模施設 の形態として新たなものを作るべきかという論点かと思います。それから「自立援助ホ ームとグループホームとの関係をどのように考えるか」。退所児童に限定されているとは いえ、自立援助ホームも実態としてはかなりグループホームに近いものになっていると いう話がありましたが、これとの関係をどう考えるかということです。それから「グル ープホームの運営主体をどのように考えるか」。仮にこれを社会福祉事業として位置付け たときに、社会福祉法人・NPO法人はもちろんですが、その他に例えば里親などの運営 主体があり得るのかという論点です。それから「グループホームの運営形態(夫婦による ケア、施設職員による交代制等)をどのように考えるか」、それから「グループホームに 対するバックアップ体制」は、誰がどのように行うのかという点についてどう考えるか、 ということです。  それから「施設におけるケア形態の小規模化の推進方策」とあります。「児童養護施設 等において小規模化が大きく進まない理由は何か」それを踏まえて「小規模化を推進す るためにはどのような方策が必要か」とあります。  (2)が「家庭支援の拡充・強化」ですが、ここは2回目に出した検討課題(案)ではもう 少し小項目に分かれていたのですが、論点を小項目ごとに分けづらかったので一つにま とめています。初めに「家庭支援の拡充・強化のために、どのような制度的手当が必要 か」、ここも家族再統合の取り組みに出てこない親や、あるいはうまくいかない場合の対 応について何がしかの制度的な手当が必要かといった論点だと思います。それから「家 庭支援の実施主体についてどのように考えるか」。これも児童相談所や施設、児童家庭支 援センターなど幾つか選択肢があると思います。それから施設に配置されている「家庭 支援専門相談員の役割についてどのように考えるか」。そして「アフターケアの実施主体 についてどのように考えるか。またどのようにしてその拡充を図るのか」、つまり誰がど の程度やればよいのかということだろうと思います。それから「家族再統合に母子生活 支援施設の活用を図るべきではないか」という論点もあると思います。  3ページの「(3)社会的養護に関する地域ネットワークの構築」ですが、地域における 児童相談所、児童養護施設、児童家庭支援センター等の役割分担と連携のあり方という ことで、「個々の児童のアセスメント、ケースマネジメントはどの機関がどのようにして 担うべきか」ということで、児童相談所や児童養護施設、児童家庭支援センターなのか、 あるいは市町村なのかという議論ではないかと思います。それから「措置後のミスマッ チに対応するための柔軟性をどのようにして確保するのか」。それからもっと広くアフタ ーケアなども含めて「児童相談所と市町村の役割分担をどのように考えるか」、「児童家 庭支援センターの役割をどのように考えるか」。それから「学校等関連分野との連携のあ り方」では「学校との連携について、どのような問題があり、どのような対策が必要か」 ということです。  「(4)施設機能の拡充」とあります。まず「治療機能等専門的支援機能のあり方」です が「具体的にどのような機能の拡充が必要か」。それから「通所機能の拡充についてどの ように考えるか」という点については、そもそも通所機能とはどういったものなのかと いうことも議論になっていたと思いますので、そういった点も含めてご意見をいただけ ればと思います。それから現行の情緒障害児短期治療施設の機能についてどのように考 えるのか。それから「施設機能と施設体系のあり方」ですが、ここも2回目の検討課題 (案)は幾つかの小項目に分かれていましたが、小項目ごとに論点を分けにくくなりまし たので一つにしてこのような項目を付け加えています。「施設による里親やグループホー ムへの支援機能をどのように考えるか」、「施設による地域(家庭)に対する支援機能をど のように考えるか」、「それらの論点も踏まえて、施設体系についてどのように考えるか」 とありますが、この施設体系についてとりあえず私どもとしては、3年前の社会保障審 議会児童部会の「社会的養護のあり方に関する専門委員会」の報告書で一定の議論が行 われておりますので、その辺も参考にしつつご議論いただければと思います。それから 施設体系的な意味では、これまで出てきた議論としては「児童養護施設と乳児院の役割 分担についてどのように考えるか」、「措置費のあり方についてどのように考えるか」。そ れから情緒障害児短期治療施設と児童自立支援施設の位置付け、あるいは機能について どのように考えるかということかと思います。  (5)が「人材の確保と資質の向上」です。まず「施設職員の確保方策」ということで、 施設相互、施設と児童相談所等の間において人事交流や交換研修を実施する等、職員の モチベーションを高める方策を検討するべきではないかということです。それから「専 門性の確保方策」として「社会的養護に関する専門職や資格のあり方」とありますが、 資格のあり方についてはこれまで委員の先生方から、スーパーバイザー的な資格あるい は保育士資格の再編成、養育福祉司の制度化、施設保育士などのご意見もいただいてい ますが、これについてあらためてご意見をいただければと思います。また、「大学等にお けるカリキュラムや施設等におけるOJTのあり方についてどのように考えるか」、それ から「施設長や施設職員の資格要件についてどのように考えるか」、「施設職員等の研修 のあり方、研修体制についてどのように考えるか」とあります。  (6)が「科学的根拠に基づくケアモデルの構築」です。ここは当然のことながらケアモ デルそのものをここでご議論いただくということではなく、そもそも「どのようなケア モデルの策定が必要なのか」、あるいは「ケアモデル構築のための研究体制や支援体制に ついてどのように考えるか」が本検討会の論点かと思います。  それから「(7)年長児童の自立支援」ですが、「自立援助ホームの拡充をどのようにし て推進するか」、「現行制度で20歳までとなっている措置解除年齢についてどのように 考えるか」、「現行制度で18歳までとなっている措置年齢についてどのように考えるか」。 それから「施設退所後のアフターケア、実家機能についてどのように考えるか」、これは (2)の家庭支援と重なるところもあります。それから「施設退所児童等の就労支援につい てどのように考えるか」、「大学、専門学校等への就学支援についてどのように考えるか」 といった論点だと思います。  それから大きな4番として「児童の権利擁護の強化とケアの質の確保に向けた具体的 施策」です。まず「児童の権利擁護を強化するために具体的にどのような制度的手当が 必要か」、それから「措置内容に関する児童に対する説明のあり方をどのように考えるか」、 「施設等に関する児童の選択権をどのように考えるか」、「ケアの質の確保を図るために 具体的にどのような施策が必要か」、こういったところが論点かと思います。  最後に5ページ目は「5.その他」ですが、「社会的養護の重要性に関する啓発をどのよ うにして進めていくのか」、また「社会的養護の自治体間格差、施設等間格差についてど のように考えるか」ということで、これまでの議論を踏まえつつあらためて整理します とこのようなところかと思っています。 ○柏女座長  ありがとうございます。我々の意見あるいはヒアリングの中で出た意見などを踏まえ ながら、事務局の方で具体的な論点として「〜ではないか」といったような視点で全体 をまとめていただきました。ありがとうございました。  それで、これに基づいてディスカッションをしていくことになるわけですが、最初に お話がありましたように、連休明けの5月には中間とりまとめというスケジュールを考 えますと、連休に入る前までの2回で荒ごなしといいますか具体的論点について一度ざ っと洗いたいと思います。それを踏まえた上で、連休明けになると思いますが、事務局 の方から中間とりまとめの案のようなものを出していただいて議論をするというスケジ ュールで考えたらどうかと思いました。そのようなことでよろしいでしょうか。  では、今日と4月16日の2回で全体を少し洗うということになりますと、今日は大 体半分くらいという感じで、ページ数の半分ということではないのですが、例えば3ペ ージの(3)辺りまでか、入っても「(4)施設機能の拡充」の辺りまでを論点として詰めてい きたいと思います。そうすると一つのカテゴリーが大体20分ぐらいになるので、あま り時間はないのですがご意見をいただいていければと思っています。  どこで区切るかを考えたのですが、まず1ページ目の「今後の社会的養護の基本的方 向」はしっかりやらなければいけないので、1番を一つに切ってご意見をいただく。そ れから2番でまた切って20分くらい意見をいただく。そして3番の(1)で切って、(2) と(3)は一緒にして20分くらい議論する。そして時間があれば(4)に入るというスケジュ ールで考えてみました。もちろん行ったり来たりしても構いませんし、延びるというこ とであればそれでも構わないのですが、一応の目安としてそのように考えていきたいと 思います。よろしいでしょうか。  それでは、早速1番の「今後の社会的養護の基本的方向」というところで、これまで の1番にあった小項目を少し整理した上で「子どもの養育のあり方」という少し漠然と した形で出されていますので、今後の社会的養護の基本的方向をどこに求めていくべき なのかということについて、ご意見をいただければと思います。  それからもう一つ皆さまにお諮りしたいのですが、ここで行われる議論ではできれば 「どのように考えるか」というのに「こう考えます」というご意見をいただくのが一番 よいのですが、すべてについてやっている時間がないのではないかと思うので、前提と して、先ほど藤井家庭福祉課長からお話がありましたように、3年前の社会保障審議会 の児童部会や社会的養護についての専門委員会に参加しておられた委員も複数いらっし ゃいますので、そこで出されたものは基本的な方向として概ね合意を得ているというこ とにさせていただき、それから少し発展させた具体的なシステムをどう作っていくかな どについてのご意見を中心にいただければと思うのですが、よろしいでしょうか。もち ろんあのときの意見には賛成しないという部分はあるかもしれませんが、基本的には社 会保障審議会の児童部会の報告をベースにしながらその発展形として考えていく方が議 論しやすいと思いますので、そのような形で進めさせていただきたいと思います。  それでは1番についてはいかがでしょうか。はいどうぞ。 ○奥山委員  先ほど藤井家庭福祉課長が「キーワード」とおっしゃったので、キーワードの点で申 し上げます。「社会的養護」というのは非常にわかりづらいので、わかりやすい言葉を入 れていくのが必要かと思っています。「社会的養護の目指すもの」というのは基本的に、 「広がりのあるものだ」という話も出ましたし、いうならば「養育のセーフティーネッ ト」であり、かつそのセーフティーネットが弾力を持って抱えてはね返すぐらいのネッ トで、そこでケアされて回復しなければならない場所なのだというイメージの持てる言 葉を使用した方がよいのではないかと思います。「社会的養護」をイメージしやすく、理 解しやすくする努力は必要ではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。私も今奥山委員の言われたことに賛成です。社会的養護が、 いわば家庭的な養育が得られない子ども、あるいはそこで傷ついた子どもたちに対する 社会が用意するシステムだということにすると、大きく二つの機能があって、一つは家 庭的な養育を代替する機能、それからもう一つはそこで傷ついた親と子どもたちの心を ケアしていく専門的な機能です。つまり家庭的なケアと専門的なケア、そして奥山委員 がおっしゃったもう一つは、最終的にそこが担っていくというセーフティーネットとし ての機能、こういうものがあると思います。そうすると基本的な方向としてはその両方 を拡充していかなければならないということになってくると思いました。 ○西澤委員  私は心理から福祉に変わったので、福祉の大原則のような話をしてしまいそうですが、 基本的には、一つは少子化の中での位置付けだと思います。子どもの数が減っている、 つまり将来の納税者の数が減っている中で生まれた子どもたちをきちんと適切に養育す ることで、健康的な納税する市民を確保しなければいけない。それが一つ大前提にある と思います。もう一つは、山縣委員がおられてこういうことを言うのも何ですが、やは り今までの子ども家庭福祉というのは、私はずっと接木型と言っているのですがリレー 型でした。「家庭で頑張れ」とやっておいて、駄目だとなったら「家庭はもういいから後 は社会が育てます」というリレー方式でやった。これはかなり旧態依然としたやり方で、 社会的養護という言葉がよいかどうかわかりませんが、目的は子どもが適切な養育を受 けられることですから、それを目指すために例えば家庭でできない部分を補うという形 で、もともとは協働・コラボレーションだということです。福祉というのは決して質が 違うものではなく、みんなが福祉の対象だというスタンスをきちんと持つことで、最終 的には子どもの権利条約にある「子どもが適切な養育を受けられる権利」を保障するの が社会的養護の使命だという大原則の部分をしっかりと確認していただければと思いま す。 ○柏女座長  ありがとうございました。とても貴重なご指摘です。他にはいかがでしょうか。そう したことを踏まえて「現行の社会的養護体制の課題」というところに入っていただいて も構いません。  先ほど私が申し上げた家庭的なケアと専門的なケアということで言うと課題としては、 家庭的なケアについて、今現在キャパシティーが少なすぎるという施設でも大集団が7 割、小規模が3割、里親委託されている子どもたちは8%ということを考えると、まだ 拡充が必要になってくるということが課題として挙げられるかと思います。専門的なケ アということでは施設機能をどう考えるか、施設の再編ともかかわってくることではな いかと思います。  山縣委員、どうぞ。 ○山縣委員  前回、私が「あなたの思っている大規模というのはどれくらいの人数ですか」と質問 したときに、「15人です」と言った廣瀬さんの言葉は結構重くて、今我々が社会的養護 を語るときに、少なくとも私のイメージでは、大規模というのは50人くらいのイメー ジなのです。3番のところに絡んでくるのですが、この言葉を一貫して使う場合に、ど れくらいのものをイメージしているかというのは、世の中の人と我々との間、あるいは 我々委員の間でも相当ずれているのではないかと思います。「社会的養護」となんとなく 共通言語のように言ってはいますが、同じことを言っているのかということが気になっ ているのです。例えば15人が小規模だとイメージしている方もいらっしゃるでしょう し、入り口を整理しておかないと、家庭的養護の拡充とか施設をどうするかといった3 番目の課題が語れないと思います。1番でイメージしている施設が何なのかによって大 分ずれるのではないかということが1点です。  また西澤委員が言われたように、突然変わるのではなく連続した仕組みが当然必要で はないかということには同意します。 ○柏女座長  前者の方について山縣委員はどう考えられますか。 ○山縣委員  私は社会的養護の施設というのは今までの制度を前提に考えていますので、正直に言 うと50人くらいが大規模だというイメージでとらえていました。 ○柏女座長  それは子どもの生活単位ではなくて、施設の定員ということですか。 ○山縣委員  そうです。それをどれくらいまで定員を下げるか。生活単位というよりも、マンショ ン形式でもいいのですが、どれくらいの子ども集団にするかという単位だと10人前後 というのが小規模のイメージです。だから50人の定員でもいいが、10人単位ずつがい ろいろな所で、あるいはワンフロアーで生活しているというイメージで語ろうとしてい ます。そして、施設というのはそういう方向を目指すべきではないか、さらに家庭的あ るいはグループホームということになればさらにもう少し下を狙っているというイメー ジです。今、国が持っている施策ですと6人ですし、あるいは現場で実践されている一 番小さい単位ですと旭児童ホームの4人や6人がグループホームであり、そのグループ ホームの一番下のライン辺りが里親型グループホームと呼ばれるものです。そのさらに 下に1〜2人くらいの一般の里親があるというイメージです。定員は最大50人くらいで、 それを分化した小規模型という、この前に社会的養護委員会で出た提案をイメージして 語ろうとしていたのですが、どうもこれが違うのかもしれない。ずれているような気も します。 ○柏女座長  皆さんいかがでしょうか。 ○山縣委員  ただ、廣瀬さんの「形態にこだわるな」という話もありましたから、「何をするか」で あって形態ではないということもあります。 ○柏女座長  その辺についてはいかがですか。つまり、社会的養護体制の課題を拡充していくため の基本的な方向として、どういうものを拡充していくべきなのかということです。 ○西澤委員  私のイメージも今の山縣委員のイメージもある程度共通しているのではないかと思い ます。要するに制度と実態があってそこからイメージが作られ、全くの夢の世界を描く わけにはいかないので、関係者の間では共通したイメージになるのではないかと思いま す。今言われたのは、当事者の子どもたちがどう思っているのかという話を、我々は視 点として持っていないということだと思います。私が実際に小規模の施設で働いた経験 から言うと、6〜7人と8〜9人では全然違うのです。これは全くの経験主義ですが、子 どもたちの動きを一度に把握できるのは6〜7人なのです。例えば措置が増えて一部屋 に8人になったらもう駄目なのです。2〜3人のことを見落としてしまいます。そういう ことを考えると、小規模というのか中規模というのかは別にして、それくらいがぎりぎ り大人が目配りできる単位だと思います。  もう一つは規模よりもむしろ大人の人数だと思います。例えば12人の子どもたちを5 〜6人で見ているのと、1〜2人で見ているのとは大違いですから、そちらの方にウエー トを置いた方がいいのではないかという気もします。 ○庄司委員  今は社会的養護の話をしているのに、聞いていると施設養護の話ばかりしているよう に思います。初回に言ったかもしれませんし少し現実から外れるかもしれませんが、理 念というものを明確にすべきではないかと思います。 ○柏女座長  それは、庄司委員だとどういう理念ですか。 ○庄司委員  家庭的養護優先の原則です。 ○奥山委員  またキーワードですが、「家庭的養護とは」と問われているので、その辺を考えると安 全で安心して安定した生活というのがあり、その中で適切な刺激が与えられている。そ れから先ほど出た切れ目のないケアがある。その中で人間的な発達が保障されていく。 それから、適切な愛着関係・愛着形成が行われて、それが良い人間関係に結びついてい く。さらに、養育のあり方だけだとケアの方は入らないのですが、社会的養護になると、 傷ついた子どもたちが入ってくるので回復のケアが必要になるということです。頭に浮 かんだキーワードを挙げてみるとそういうことなのかと思います。今、理念とおっしゃ った部分を担保するためには、何がどれくらい必要なのかということかと思います。 ○柏女座長  大事な視点だと思います。家庭的養育を奪われた子どもたちに最初に何が必要なのか ということで、奥山委員がおっしゃられた保障されなければいけない幾つかのことをし っかりと書き込んでいった上で、それを保障する形態としては何があるのか。今、庄司 委員がおっしゃった家庭的養護には施設養護も入るでしょうし、施設養護の中にも家庭 的養護が入る。また本当の里親や里親ファミリーホームもあるという形態が出てくるで しょう。もう一つは、奥山委員がおっしゃった専門的なケアが行われるための専門性と いうものは、一体どうやって担保していけばいいのか。そういう書き方にしていくとい いのではないかと、お話を伺いながら思いました。 ○藤井家庭福祉課長  さらに、庄司委員がおっしゃったように家庭的養護の原則ということで、今日の資料 の中に「子どもの『養育』のあり方」と頭に付け加えたのは、なぜ家庭的養護がいいの かというところを固めなくてはいけないのではないかという問題意識があるのです。そ れは取りも直さず家庭における養育で何が子どもたちに与えられていくのかということ を、必ずしも網羅的ではないにせよある程度明らかにすることがスタートで、それを社 会的養護の中でどのようにすれば与えていけるのか、提供していけるのかという整理の 仕方をするのかということなので、そこも含めてご議論いただければと思います。 ○柏女座長  そういう意味では、今、奥山委員がおっしゃられた幾つかの保障すべきことというの が全体にくるのだろうと思います。他にはいかがでしょうか。よろしければ、2番のそ の方向を確認した上で、将来的にキャパシティーの問題をどう考えていけばいいのかと いうことについてのご意見をいただければと思います。 ○奥山委員  以前の議論で出ていたと思うのですけれども、頂点の施設や里親だけではなく少しす そ野も広げて、レスパイトケアのようなものも含め、また一番下には保育園や家庭での ベビーシッターも入るのかもしれませんが、そういう大きな流れの中で少しずつ家庭と 相互乗り入れしながら頂点をどうやって少なくしていくのかという論点もやはり必要で はないのかと思います。 ○山縣委員  先ほど言いかけてやめたのですが、連続という意味では、今までここで議論してきた 部分あるいは資料を提供いただいた部分のほとんどがサービス提供側の仕組みで、事業 メニューをやっていないのです。例えば施設がやる在宅サービスという議論はしたけれ ども、施設をはずした在宅サービス論はしていないわけです。そこが家庭と施設の間を 埋める事業で、それをどこがやるかということになるかと思うのですが、そこまで含め た議論をするのかどうか。要保護児童数の将来予測とかという話になると、当然全部入 り込んでくるので、最後はどこまでなのかという線引きだと思うのです。その線引きの 幅は、限りなく家庭に近いところまで線を引いてニーズと見ていく発想でいくのか、そ こまでやったら大変だという現実論で一定のところで切ってしまうのか。そこが一つの 分かれ目ではないかと思います。 ○奥山委員  私が言いたかったのは、決してここで全部を議論しましょうというのではなく、そう いう背景を持っている中で、その頂点の部分を中心に議論をしているのだという意識を 持っていないと、そこだけが他と途切れて議論されていくことになりがちなのではない かという意味で、全体として考えて頂点について議論するけれども、この下も大切だと いうことなのです。 ○山縣委員  私は逆に、頂点は皆さん当然議論していると思うのです。むしろその隙間について、 これまで歴史的にも我々は議論してこなくて放置したままになっているのではないでし ょうか。そこをきちんと入れていく、例えばショートステイにしても施設がするという 発想をはずしてしまえばもっといろいろなメニューの展開が考えられると思うのです。 一回議論してそれは現実的に無理だということになればそれはやめればいいのです。 ○奥山委員  それはその通りだと思います。私は保育園のところまではいいだろうと思っているの です。 ○柏女座長  ショートステイを施設ではない他のところで行ったり、一時保育もコンビニエンスス トアが始めたりしていますが、その議論は各論の中ではもちろん触れるとして、ここの ところではやはり社会的養護を中心に議論していって需要予測を立てたり、1番の今後 の基本方向のところですが、それを考えるに当たっても在宅サービスそのものをどうす るかとか、それらを念頭に置いておかなければいけませんというところにとどめておき ませんか。庄司委員、どうぞ。 ○庄司委員  それでいいと思うのですが、ただ奥山委員、山縣委員、柏女座長の言われていること はそれほど違っていなくて、いわゆる狭義の社会的養護、つまりその三角の頂点と、そ れ以外が切り離されて考えられがちだが、そこは続けてセーフティーネットになるのだ ということと、サービスといった場合も家庭で見ていく場合の支援が少ないので、前に 西澤委員が言ったデイトリートメント・通所型のサービスなどもきっと必要になると思 うのです。だから別々のものではなく、その三角形の全体を頭の中に入れておく必要が あると思います。 ○柏女座長  わかりました。大体の合意ができたかと思います。松風委員、どうぞ。 ○松風委員  すそ野を広くして全体を考えるということについては基本的には賛成なのですが、公 的責任において何をするのかということを抜きに考えることは非常に難しいのではない かと思います。それは法律でどのように枠組みを作るのかということもあるでしょうし、 事業者についてどのように公的責任の範囲内で考えていくのかということもあるでしょ う。それから子どもに対してどこまで公的責任を果たしていくのかというところがない と、いわゆる親による利用と、親による利害対立が起こっていて公的に責任を持たなけ ればならない子どもたち、これは二つに分けてしまうことではないのかもしれませんが、 そこにおいては何が違いになるのか、または何をしていかなければならないのかという ところを議論しなくてはならないのではないかと思います。 ○柏女座長  ここの議論に入っていきますと、職権保護のシステムをどうしたらいいかとか、ある いは子育て支援は市町村、狭義の社会的養護は県というように断絶している事実をどう するかという議論になってしまうので、そこまでやるのは今回はなかなか難しいのでは ないかと思います。庄司委員がおっしゃった連続性を持ってケアサービスを作っていか なければならないということや、松風委員のおっしゃったこともとても大事なことです ので、その両方を念頭に置いておかなければならないということで先に進んでいきたい と思います。よろしいでしょうか。 ○西澤委員  もちろんいいと思うのですが、先ほど山縣委員が言われたような隙間の部分を議論し ていなかったということで、一つのファクターとして、頂点の部分があまりにも悲惨な 状況だというのがあると思うのです。解消したかもしれませんが、ある都道府県の要保 護待機児童数が3月末で大体90人という数字が出ていたと思うのですが、そこから死 亡事例が出てくる可能性があるような事態で、今の保護の機能というのは十分に果たさ れていない。ここで要保護児童への将来予測とかが出てきても、一時保護と施設入所は 切り離して考えるべきだろうと思います。私の認識では、多分乳児のために作られた一 時保護委託制度が流用されて、養護施設でも民間に一時保護委託としてどんどん来てし まうけれども、一時保護というのは本来行政の責任だろうと思っていますので、そこの 部分は分けて考えるべきだと思います。また今の危機状態を見ると、ある程度の需要予 測というと変な言い方ですが、予測に基づいた整備計画を出す方がいいのではないかと いう気がします。今までこの社会的養護の中では整備計画という話にはなっていなかっ たでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  そうです。これまであまりそういう議論はありませんでしたし、ご案内のように同じ 福祉の世界の中でも高齢者、障害者の方がそういう発想もあったと思いますが、社会的 養護についてはこれまではありませんでした。 ○西澤委員  手法としてはいろいろあると思いますし、柏女座長も地域でやられたということもあ るかもしれませんが、何らかの方法で国として全体的な整備目標を出すためには、やは りある程度の客観性を持った将来予測はしておかなければいけない。その際に社会的養 護の範囲を広げてしまうとどんどん拡充するわけですが、一つの考え方としては今施設 に入所して社会的養護の対象になっている、あるいは里親家庭にいる子どもたちと同程 度の環境に育っている子どもや、同程度の問題を持っている子どもがどの程度いるのか という潜在数の把握というのも一つの考え方ではないかと思います。要するに、これは あくまでも個人的意見ですが、今の保護のレベルを潜在的な部分についても広げようと したらどの程度になるのかというところが現実的な見方ではないかと思っています。   ○柏女座長  そういう意味では、ご指摘にありましたように、すそ野を広げていくことによって社 会的養護の頂点のところを減らしていくということも必要だが、さりながら待機児童問 題が発生しないシステムが措置制度だと思っていますが、その状況の中で、今西澤委員 がおっしゃったようにある程度の予測を立てて整備計画を作っていくということが必要 なのではないかという理解でよろしいでしょうか。  では、その将来の要保護児童数についてどう考えるのかということではいかがでしょ うか。何かご意見がありますか。一つの考え方としてイギリスの例ですが、今人口が 5,000〜6,000万人くらいで、里親や小規模なケアの社会的養護の下にある子どもたちが 約5万人と聞きました。もし日本がイギリスのレベルになるとすると、人口5,500万人 として5万人ということであれば、日本の人口が1億2千数百万人ですから、そのまま 当てはめると要保護児童が12万人になる計算になります。今、日本の社会的養護のキ ャパシティーは4万人くらいですから、あと3倍ということになります。3倍までの整 備計画を立てる必要はないと思いますが、そういう予測も成り立つわけです。もう一つ は、社会的養護を受けている子どもたちの近年の増加率です。千葉県でやったときには、 ここ2年くらいの社会的養護に入所している子どもたちの増加率が2.8%でした。そう いうことを考えるとそれがどの程度続くのか。子どもの数は平成18年12月の将来人口 推計を基に毎年何%か減っていくと考えると、増加率と減少率を掛け合わせていくとそ こそこの予測はできるかと思います。それに人と人とのつながりが切れてきていること や、あるいは今日の赤ちゃん事業などで家庭訪問をして社会的養護が見つかれば増加要 因になるだろう。それから家族再統合その他が進んでいけば、それは減少要因になるだ ろう。しかし大学進学率を増やせば大きな増加要因になるというように、増加要因と減 少要因をにらみながら将来どのくらいまで増えていくかという将来的なきちんとした推 計ではなくても、将来これくらい足りなくなるというぐらいの予測はできるかもしれま せん。 ○庄司委員  今柏女座長が日本での現状増加傾向とイギリスの例を出されましたが、イギリスはケ アに入る期間が非常に短期で、日本とは保護レベルが違うのかもしれません。そういっ た意味では、日本の虐待など社会的養護に入る子どもの増加要因と、それから少子化な どの減少要因を見ていく方がうまく当てはまるのではないかと思います。   ○柏女座長  ありがとうございました。その他はいかがでしょうか。増やしていかなければいけな いというところでは、大方の合意は得られているのでしょうか。もしそうならば、二つ 目の○の社会的養護体制の整備のあり方などについてご意見はありますか。どのような 形態の提供を増やしていくか、あるいはどんな手法でというようなことはありますか。 ○庄司委員  増えた部分を全部現行の里親と施設で見ていく必要があるかということがあって、先 ほどの三角形やくびれの部分ともかかわりますが、例えばデイトリートメントを充実す れば、それほど施設を増やさなくても、施設入所児が増えなくても済むのではないかと 思いますので、それこそどういうケアのあり方にするかということが大事なのかと思い ます。   ○柏女座長  そうすると、施設体系というか社会的養護の提供の仕方ともかかわってくるというこ とですね。他にはいかがでしょうか。 ○山縣委員  今、柏女座長がまとめられた通りだと思っておりまして、体系とウエートだと思いま す。どこにウエートを置いているかで、恐らく変わってくるのではないか。ベースはあ くまでも子どもたちにとって適切な養育環境を保障し、保障されていない部分をより強 化しなければいけないという発想だと思うのですが、単に量の議論と今の施設を結び付 けて考えると、ハードを作るという発想になってしまっていったん作ってしまうとつぶ せないというところに陥っていくのです。だからいかに柔軟なものにするかというのが 理想なのです。高齢者のものも小さなものがいいと言いながら、都市部ではだんだん大 きなものができあがってきていて、いずれは高齢者が減るからどうやって埋めるかとい う顧客確保対策を必死でやり始めています。お金を払ってくれる客をどう確保するかな ど、社会的養護がそういう発想になってしまってはいけないわけで、今までの大規模施 設が持っていた悪循環の一つはそこだと思うのです。定員は50人でもいいから小さく して、いつでも社会的に対応できるようにという私のイメージがそこにあったわけです。 ○奥山委員  同じようなことを考えていたのですが、基本的には、恐らく今は緊急的に増やさなく てはならない。でも将来的には希望的観測ですけれども減ってほしいわけです。恐らく 本当に緊急的に増えて、真ん中辺りが充実してくることによって減っていくのだろうと 思うのですが、そうだとすると山縣委員がおっしゃったように、そういう変化に耐え得 るような構造でないと難しいだろうと思います。そういう意味で言えば、おっしゃる通 り、大型施設をこれからそれに充てていくというのは非常に非現実的で、グループホー ムでもいいですが小規模単位のものがあって、そして減っていったときに、必要であれ ば治療を行うデイケアなどに切り替えていけるようなことも意識しながら考えていって もいいのかと思います。 ○柏女座長  一つ伺いたいのですが、それは私も非常に賛成なのですが、例えば東京都などの都市 部は児童養護施設が足りませんが、他は余っている所が結構あります。しかし施設・キ ャパシティーがあればあるほど里親が伸びていないという形があるのです。今のような 施設体系をそのままにした段階で小規模ケアをフレキシブルにやっていくと、それがい わば調整弁になってしまう。つまり本体は残ったままで、今の里親が調整弁の役割を今 果たしていると思いますが、それでいいのだろうかという気がするのです。少しそこの ご意見を伺えればと思いますが、そうすると本体にまで切り込まないとならなくなって しまう。 ○奥山委員  全体の小規模化が大前提だと思います。この前の社会的養護のあり方に関する専門委 員会でも出てきていたように、山縣委員の話だと何が大規模で何が中規模かとなります が、やはり大規模をできるだけ小さな単位のケアに切り替えていくのは、もう大きな流 れとしては大前提として考えておくということではないかと思います。 ○柏女座長  全体をそうしていくということですね。はい、どうぞ。 ○松風委員  生活単位を小さくしていくということには非常に賛成です。しかし今社会的養護に求 められているものとしては、今までの議論にもありましたように、子どもや家族へのケ ア、それから職員の専門性のいわゆる補完といいますか、個人の専門性だけには委ねな い組織的補完のようなものがいるといったことになりますと、それなりの人的キャパシ ティーがいるだろうと思います。ですからそこの組み合わせをどうしていくのかという ことが非常に重要になってくるのではないかと思います。 ○柏女座長  わかりました。忘れてはいけない大切な視点だと思います。 ○西澤委員  それに関連していいですか。 ○柏女座長  はい、どうぞ。 ○西澤委員  恐らく一部の施設は先行的にその方向に向いていると思います。要するに施設の本体 はセンター機能化して、そこにグループホームなり里親ファミリーホームなりがサテラ イト的に付いている。だからそういった人的キャパシティーはセンターに集約して、そ こに子どものレジデンシャルケアがあり、ソーシャルワーカーなりサイコロジストなり がそこへ行くようなスタイルです。規模を小さくすれば、それこそ奥山委員が言ったよ うに入所人数が減ればその一部を使ってデイトリートメントにしていけばいい。これは オーストラリア型ですよね。そういう方向性は松風委員のおっしゃる点も含めて一つの 回答ではないか。実際にそれを目指している施設が既にあるということは、全体をそこ に底上げしていくという方向になるのではないかと思います。 ○柏女座長  わかりました。はいどうぞ。 ○藤井家庭福祉課長  いろいろなご意見をいただきましてありがとうございます。今の議論の中で要保護児 童数の将来予測のところについては、いろいろな議論があったと思います。まだ収れん していない感じもあるとは思いますが、私もこの検討会でどのような求めになるかとい うことと併せて、フィージビリティーといいますか、本当にできるのかというのは難し い話だと思いますので、少し私ども事務局でも少し頭の整理をさせていただいて、また 何か次回にお話しできるところがあれば、あらためて議論していただくような形にして いただければと思います。 ○西澤委員  それに関連してもう一つ。これはやはり非常に重要な問題なので、例えばいろいろな 手法が考えられると思いますし、国として事務局の方でどのような形でいくかというの は検討いただく必要があるかと思います。私もこの前からずっと予測のために前の大学 の学生に手伝ってもらいながらいろいろとやっていますが、今手元にあるデータでは今 の段階である程度の需要予測はできますが、ただどうしてもやはり小規模でもいいので 調査もする必要があるかもしれません。だから手元にあるデータだけで物を言おうとす るとやはりわからなくなる部分があるとしても、ある程度キャッチメントエリアを区切 って調査をするという方法も考えられるかと思いました。 ○柏女座長  はい。中間とりまとめで調査を行っていく必要があるといったような提言でもいいの ではと思います。 ○藤井家庭福祉課長  フィージビリティーという意味では、どのような調査をしたらどのようなことが可能 なのか。つまり実際にやろうとして踏み出したはいいが結局うまくいかないということ では正直我々も少し困ってしまいますので、もう少し実際にどのようなやり方が可能な のかというところも議論していただければありがたいと思います。 ○柏女座長  あとは非常にラフな議論ですけれども、例えば今の状況ですと要保護児童、つまり施 設や里親に委託されている子どもたちの数は、全国で4倍ないし5倍の開きがあるわけ です。一番少ない所は新潟だったでしょうか。そこで、もし全国が新潟だったとしたら 何人になるのか。それから全国で一番多いのはどこか覚えていませんが、そこだったと したら何人になるのかというようなことも考えられるわけですよね。そういう計算の仕 方や、あるいは外国の例などいろいろなものを用いながら、少しデータとして出してい ただけると、議論としてはあり得るかと思います。  では3番の方に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。「家庭的養護の拡充」 というところですけれども、これについてどう考えたらいいのかということでご意見を いただければと思います。 ○庄司委員  どう話したらいいですか。項目ごとに言っていきますか。 ○柏女座長  まず庄司委員がおっしゃっていただいて構いません。 ○庄司委員  「普及しない原因」は三つあると思いますが、一つが宗教的な背景も含めて文化的な 要因。二つ目が行政や児童相談所の体制の問題。三つ目が里親自身の問題だと思います。 里親自身の問題はやはり里親が語ってこなかったということがありますが、語り得ない、 語れない状況であったということもあると思います。そして「里親委託を推進するため には」ということでは啓発などを含めて、広い意味での教育だと思います。これについ ては一つは高校の家庭科で扱うようにする。それから対人サービスというか、福祉・保 健・医療・教育・保育などの大学で、里親制度についてもっと話をしてもらう。それか ら社会福祉士の資格については福祉系の大学で「里親ソーシャルワーク論」という科目 を作ってもらい、大学にいるときから、里親制度が当たり前だという感覚をもつように してほしい。それから民生・児童委員の方も含めたいろいろな研修など広い意味での教 育と、それからやはりいろいろな支援体制が必要だろうと思います。いろいろとありま すが、他の人の意見を聞きたいと思います。 ○柏女座長  10個くらいある内の二つだけでしたがよろしいですか。里親の職業化の問題などはい かがですか。 ○庄司委員  職業化は少し考えたいと思います。次の二つの「マッチングや里親支援」は、今は児 童相談所が行うことが多いですが、むしろ施設など民間で行う方がいいのではないかと 思っています。それから「里親研修」は必修化をする。今、専門里親研修を行っていま すが、来た人の意見としても、これはどの里親も聞くべき研修だという意見が多くある ので、専門里親研修で行っている研修を養育里親にもして、研修受講を必修化すること が必要かと思います。それから「里親手当の水準」。この水準というのはなかなか難しい ですが、現行は乳児加算が数百円付いていますがこれはいらないと思います。そうでは なく、思春期の子ども、中高生をもっと高くする。外国では、中高生や思春期の子ども になるとケアが難しいということで里親手当が高くなっていますので、基本的には年齢 とともに高くするべきではないかと思います。以上です。 ○柏女座長  はい、松風委員どうぞ。 ○松風委員  一つは、実親との関係は避けて通れないと思います。長期で養育が必要だと思われる 養護性の高い児童についても、実親の里親委託についての同意がなかなか得られないと いったことが非常に里親委託を阻んでいる要因の一つだろうと思います。ですからどう いう段階で職権での委託ができるのかということも少し検討の余地があると思います。 また、帰すことができるということについての実親の実感が得られるようにする。要す るに取られてしまうのではないだろうか、それから愛着関係ができてしまって子どもの 心が離れてしまうのではないだろうかという不安が非常にあるのだろうと思うのです。 長期的に養育を保障していかなければならない子どもと、それからある一定期間里親委 託した後、実親に帰していくといった子どもへの対応とは一応区別しながら、実親の不 安に対してどのようにケアしていくのかということを考えなければならない。それにつ いては非常に技術もいりますし、それから手だてといいますか、いわゆる人的パワーも いるということになろうかと思います。  もう1点は里親を広げていこうと思うと、里親になっていただく方の門戸を広げる、 つまりすそ野を広げることが必要です。そのためには敷居を低くしてより簡単といいま すか、あまり難しく考えなくても里親はやれるのですというメッセージを送る。それか ら先ほど言いましたように、実親へのケアも含めて子どもと非常に密接になり距離が近 くなりますから、赤ちゃん返りや確かめ行動なども行うというさまざまな非常に難しい 養育をお願いするといった面もあります。要するに敷居を下げないといけないというこ とと、ケアとしては非常に高いものを求めてしまわざるを得ないという矛盾をどう解決 していくのかということが問題点としてあるのではないかと思います。そのためにはス テップアップをしていくシステムを考えてはどうか。今、短期里親は1カ月程度という ことですが、週末里親を里親としてどのように位置付けていくのかということになると、 これは二重措置になりますので里親委託はしていませんが、もう少し公的な手だてとし て位置付けていく必要があるのではないかと思っています。以上です。 ○柏女座長  ありがとうございます。はい、どうぞ。 ○庄司委員  実親との関係で言えば、同意の問題もありますけれども、もう一つは虐待ケースなど で親が非常に難しい人で、そのため家庭では無理というケースがあるかと思います。そ れから里親を増やすためにはということであれば、週末里親の話が出ましたけれども、 里親だけを増やすのは難しい。むしろ地域の中で支え合って子育てをしていくようにな っていかないといけない。その中で一番進んだ部分が里親制度という形で、そういった 意味では個人的にはファミリーサポートやセンター事業に期待していて、そこまでいけ ば週末里親や季節ごとの里親というのはあと一歩ですよね。だから地域で子育てをとい うところも大事だと思います。 ○柏女座長  他にはいかがですか。はい、どうぞ。 ○山縣委員  今までの議論については基本的には大きな反論はありません。その通りだと思ってい るという前提で少し別の議論をさせていただきたいのですが、新たなもう一つの視点は、 里親を都道府県で管轄していることが広げにくくしているのではないかと、個人的には 思っています。措置権を市町村に持っていくかどうかは少し別にして、とりあえず開拓 や日常的な支援は市町村まで持ってくることができるのではないか。そうすると、松風 委員が言われた、今の制度で門戸を広げたら里親の基準を緩やかにするのかということ ですが、今の基準のままでも市町村で開拓をしてもらえば増える可能性がまだあるので はないのか。そのどちらを選択するかですよね。私は都道府県でやる限りどうも限界が ありそうな気がしていて、市町村で開拓を積極的にやっていくと、前々回くらいに言い ました主任児童委員との関係でいろいろなことができる。ただ非常に住民に近い人にな りますから、いろいろな情報の管理の問題や難しい問題があろうかと思いますが、増や すという意味と実質化する、柔軟に活用するという意味では、市町村が窓口になってい く方がいいのではないかと思っています。  もう一つ、先ほどの社会的養護の全体との関係ですが、今の市町村が1,800カ所にな る前の、3,300カ所ぐらいのときに学生と一緒に数えたことがありますが、情緒障害児 短期治療施設、養護施設、乳児院、母子生活支援施設、児童自立支援施設などは、市町 村の数で言うと確か500カ所ぐらいしかないのです。施設の数で言うと1,000カ所にな りますが、市町村の数で言うと当時で500カ所ぐらい。今は合併して幾つかわかりませ んが、将来予測までやってニーズの予測までしたときに、やはり面を埋めていく作業を やっていかないといけない。面の中に入っていける小さな単位のものがいるのではない か。その最前線が恐らく里親で、柏女座長が先ほど調整弁と言われましたけれども、も う少し期待したいという気がするのです。その辺も少し議論の範囲に入ったらありがた いと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。とても貴重なご意見だと思います。児童相談が市町村に委譲 されていますが、それと同じように里親開拓あるいはそれらの業務も市町村に移譲する、 あるいは両方でやれるということを検討するのも非常に貴重なご意見です。 ○山縣委員  私は専門里親は都道府県でもいいのではないかと思っていますが、養育中心の里親や 短期の里親は、ある程度市町村化できるのではないか。養育の場合は両方が扱えばいい と思いますが、短期は、場合によっては市町村でショートステイを替わりに使うなど、 そういう方向を考えられるのではないかと思います。 ○柏女座長  はい、松風委員どうぞ。 ○松風委員  ステップアップや段階的な活用をどうするのかということで、山縣委員の専門里親に ついては、というお話がありましたけれども、そこをどのように考えるかというのは非 常に難しくて、里親委託は措置、委託で都道府県の責任ですから、いわゆる受け皿につ いても責任を問われるわけです。ですから措置の責任、委託の責任はどこが担うのかと いうことと、それからいわゆる保育所やファミリーサポートセンターのように親が責任 を持ってお願いするのとは非常に違うのではないかと思いますので、その辺りの線引き ですね。  それから里親の認定のあり方についても、区別があってしかるべきではないかと思い ます。 ○柏女座長  かなり議論を詰めていかなければなりませんが、児童相談所が委託する場合、児童委 員指導委託もありますので、県が全部認定しなければいけないということではない。つ まり認定機関と委託機関が別であっても大丈夫だと思いますが、そのやり方については やはり慎重に議論をしなければいけないとは思います。はい、西澤委員どうぞ。 ○西澤委員  私はあまり里親のことはかかわっていないのでよくわからないので、今のテクニカル な問題についてはなるほどと思いながら聞いていました。それは概ね賛成です。教えて いただきましてありがとうございました。ただ大本の、里親が増えないというのを庄司 委員が三つのレベルを出されましたが、ここをもう少し綿密に分析する必要があるので はないかと思います。  私の数少ない経験ですが、アメリカにいたときに里親の方に日本では里親が増えない という話をしたら、「あなたたちの国では誰から委託を受けて子どもを里親に委託をする のか」と言われて、私が「行政」と言ったら、「神だ」と言うのです。アメリカ人やヨー ロッパ系の人たちは、行政が自分の所に子どもを連れてくるかもしれませんが、その子 どもが家庭での養育が無理だと判断したのは神で、神が自分の所を選んで連れてきたと いう意識があるのです。その大きな違いがあると思いますが、そこを言い出してもしよ うがない。そうだとしたら、もっと市民感覚に訴えるというか、市民の責務としてそう いう子どもたちに対して適切な養育を提供していきましょう、あなたが社会の代表なの ですよ、というメッセージを発していかなければならない。しかし今まで社会的養護を 影に隠してきた業界体質があります。語れなかったとおっしゃっている里親もそうだと 思います。あるいは施設の子どもたちも自分たちのことを語れなかったわけです。施設 職員もどのような子どもが施設で養育を受けているのかということを語ってこなかった のです。我々は福祉の予算でやっているから大丈夫です、何の心配もありませんという メッセージばかりを社会に発してきたがために、養護施設と言っても今でも理解しても らえず、孤児院と言った方がわかりやすいような、わけのわからない現象が生じている わけです。その部分をきちんとスピークアウトしようとする、例えば虐待を受けた子ど もが施設にたくさんいると私たちが話そうとすると、施設にいる子どもはみんな虐待を 受けたと思われて周りから変な目で見られるからやめてくれと児童相談所から言われる。 あるいは里親に対して虐待を受けた子どもたちの愛着修復のためのプログラムを流そう としたら、やはり児童相談所からやめてくれと言われ、里親には虐待を受けた子どもは いませんと言うことになるわけです。施設にも里親にも虐待を受けた子どもはいない、 そもそも虐待なんて日本にはないのだというふりをしてきた結果がこれで、みんなでき ちんと事実を見ようというところからスタートすると少しは里親も増えるかもしれない。 全然テクニカルな問題ではないですが、スピリッツの問題で少し言いました。 ○柏女座長  はい、どうぞ。 ○榊原委員  皆さんの専門的な視点と少し違いますが、数年前から厚生労働省が里親をこれからも っと拡充していこうという方針を出したときから、親世代の1人の実感として日本では 少なくとも今の段階では無理だろうと思っていました。少子化の取材をしていても、経 済的に安定している夫婦ですら子どもを持てないと考えるカップルが珍しくない。親と なることに自信がないという人が増えているという面や、それから少子化の背景にもな っていますが、子どもを持ったらどこまでも親の責任として追求されてしまう、そんな 恐ろしい責任を引き受ける自信はないと言って、出産の前で立ちすくんでいる若い世代 が多い。1人や2人はようやく育ててはいるが手一杯だと言っている人が大勢いる中で、 里親までできるような余力がある人が果たしてどれ位いるのだろうかという素朴な疑問 があったわけです。里親を増やしていくという方向に私自身も異論はないですが、自分 の子ども、自分の家族さえ持つ自信がない人がこれだけ増えている中で手を挙げる人が 増えないのは当たり前と感じます。子育て支援や少子化対策と言われていますが、やは りまず普通の親たちの力をきちんと支え、はぐくむような取り組みから始めることです そ野が広がり、その中で余力がある人たちが出てくるのではないかと思うのです。周囲 を見回していても、私も40代なので経済的には安定しているのに、自分も含め子ども を1人しか作らない人も多いのです。広い家に住んで子どもを大切にしているのに、1 人だけやめてしまっている。1人でもういっぱいいっぱいという人たちを、実は自分の この後の時間を里親として使いたいと思うように向けるためには何があればいいのかと いう視点も必要だろうと思います。それは少子化対策、子育て支援と結び付けてやって いくと虐待への対応にもなるだろうし、自然に余力がある人たちが里親になっていくと いう流れも出てくるかもしれない。そうした中で取り組んでいくことが、まずは必要だ ろうと思っています。  あとは不妊で悩む人を取材していると、40代になってから子どもが欲しいと思っても 持てないので何百万円もかけて不妊治療していると打ちあけられます。では、養子とい う考えはないのですかという質問をすることもあります。そうすると自分は考えるけれ ども、実家の親または夫の親が絶対に駄目だと言う、家族の中に別の血を入れることに 対する抵抗があると言うのです。夫婦はOKなのだけれどもその上の世代の人たちに抵 抗があるということで止まっているケースが実は多いと聞きます。養子を考えているケ ースは里親と直結しないにしても、社会的に子育てをしていくファミリーを増やしてい くといったときに、こういった価値観も随分ネックになっているのだろうという感じが しています。行政からの支援など今専門的にご指摘いただいたところも必要でしょうけ れども、子育てや次世代育成は、これからは社会的に支えながらやっていくものだとい う、大きな発想の転換も必要だと思うのです。高齢者福祉でも「介護の社会化」と言わ れましたが、子どもでもできないはずはないわけで、「子育ても社会化」という言い方は 確かに少し誤解を招くので言葉の使い方には配慮も必要だと思いますが、もっと社会全 体の中で子育てをしていこう、そのときには自分と血のつながっていない子どもも見て いけばいいし、必要なら社会から資源を持ってきてバックアップするという体制の中で 育てていこうという考えに転換しないと、里親のことだけを考えても普及は難しいだろ うという気がしています。 ○柏女座長  はい、ありがとうございます。とても大切な視点です。先ほど来出ていた子育て支援 などから連続で見ていかなければいけないということとも絡めて、貴重なご指摘をいた だいたと思います。 ○松風委員  里親の件で少しだけいいですか。 ○柏女座長  はい、どうぞ。 ○松風委員  今のお話と絡みますが、日本では里親はやはり養子里親から出発してきたというイメ ージが非常に強くて、それに縛られていると思います。発想の転換をするならば、どち らが主流かどうかという議論は無意味だと思いますが、もう少し養育里親をクローズア ップする必要があって、制度的に養子里親と養育里親を区別していくということは非常 に重要ではないかと思います。もちろん里親との養子縁組も社会的養護にとっては非常 に重要ではありますが、手順・手続やそれから覚悟のあり方というのは全く違いますの で、区別化していくという点を付け加えたいと思います。 ○柏女座長  この「里親手当の水準」をどう考えるかというところでも、例えば養子縁組前提里親 と養育里親で手当の額を変えるなども一つかもしれませんね。ありがとうございました。 それもテークノートしておいていただければと思います。  「グループホームのあり方」ということについてはいかがでしょうか。10分ほどそれ らについてご意見をいただきたいと思います。実は私は山縣委員がおっしゃったことが 少し気になっていまして、少し言わせていただいてもいいでしょうか。施設体系ともこ れは絡んできますが、今言った専門的なケアを行う施設がある市町村が500カ所という ことは、半分以上はないということですよね。 ○山縣委員  市町村自体が合併したので今はわからないのですが、恐らく半分はないと思います。 ○柏女座長  でも結構あるということですね。そうするとそういう所にいろいろな施設を作ってい くことは実は必要なのではないか。そして小規模で作っていくことが大事なのではない かと考えると、小規模ホーム、つまりグループホームを施設として認定したらどうか。 つまりそれを1単位にする。定員50人だったら10単位の施設が入った集合体というふ うに、グループホーム自体を施設にしたらどうか。地域小規模児童養護施設があります が、それを基本の施設体系にして、そしてあとは西澤委員がおっしゃったように基幹機 能が必要なので、施設というのかわかりませんがサポートする専門的基幹機能を持った 施設と、例えば4単位の施設を持った集合体を考えていく。そうすると例えば小規模の 所は1単位でいいわけです。支援機能はどこか他の所、つまり児童相談所や基幹機能を 持っている施設がやることも考えられるのではないか。そういう意味ではグループホー ムを基本の単位にしてしまったらいいのではないかと思っています。 ○松風委員  基本的に賛成なのですが、そのときのコスト、要するにグループホームを語るときに、 児童養育のグループホームと高齢者・障害者のグループホームとは機能として違うので はないかと思いますので、どれだけの職員配置をするのかが非常に重要になってくると 思います。従来グループホームとして先駆的にやっている所、それから児童自立支援施 設での夫婦小舎制もそうですけれども、そこに住み込んでいる方のボランタリー精神に 非常に依存して行ってきたということがあると思います。それは決して否定するもので はなく、非常に崇高で重要なものだと思いますが、それを期待してその社会的養護のい わゆるボリュームを、全体としてどれだけ保証することができるのかということについ て考えたときに、どういう仕組みにするのかについては非常に議論するべきだろうと思 います。 ○柏女座長  職員の配置基準も含めてですね。 ○松風委員  そういうことです。 ○柏女座長  わかりました。庄司委員。 ○庄司委員  今の柏女座長の話の中で、グループホームといった場合は施設の分園だけでなく、里 親型のグループホームも含めてということですか。 ○柏女座長  もちろんそうです。それを含めて例えば4人にするのか6人にするのかわかりません が、それを1単位として、基幹センターが里親型のファミリーホームを1単位として持 っている。それから施設は2単位持っている。そういうイメージで考えていってもいい のではないでしょうか。そのとき、今松風委員がおっしゃったように基準の問題はしっ かり考えていかなければならない。今、地域小規模児童養護施設の職員の配置基準は何 対何ぐらいですか。 ○藤井家庭福祉課長  地域小規模児童養護施設では今6人に対して常勤2人、非常勤2人です。2人のうち の1人が宿直要員です。 ○西澤委員  基本的に2.5と我々は理解しています。つまり6対2.5です。 ○柏女座長  6対2.5、そんなに少ないのですか。3くらいではないのですか。 ○西澤委員  宿直要員が入るので、そういう意味では2.5プラス0.5という感じになります。 ○柏女座長  2対1ぐらいという感じですね。他国のグループホームではどのくらいですか。 ○西澤委員  グループホームではなくて小舎なのですが、私の所は10人の子どもがいて、直接子 どもにかかわる職員は40人います。それが交替で勤務しています。夜間は1人が夜勤 で2人が宿直という体制をずっと組んでいます。 ○柏女座長  にわかには理解しがたい。 ○西澤委員  信じがたいですか。うちは治療施設なのでそうなのです。ただ、一般的に今のイギリ スでは2対1です。子ども1人に対して直接ケア職員が2人の配置ですから、10人い れば20人の直接ケアのスタッフが配置されているというのが普通だし、これは特別な 例ではない。この前ニュージーランドでも同じような話で、誰の話か忘れましたが、1 対3くらいでした。子ども1人に対して大人、ケアワーカーが3人配置されているとい うのが普通の基準だそうです。 ○柏女座長  2対1というのはどういうことですか。 ○西澤委員  子ども1人に対して職員が2人ということです。仮に6人の小規模だとしたら、そこ に12人の大人がかかわって交替勤務をしている。 ○柏女座長  それではグループホームのあり方についてはいかがでしょうか。 ○西澤委員  職員の配置はとても大事だと思います。地域小規模児童養護施設とかグループホーム をいろいろな施設でやっていますが、むちゃくちゃになっているところもあるのです。 2.5人なり3人のスタッフで何とか6人の子どもたちのケアをしていかなければならな いということで、休みも取れないし風通しが悪くなる、つまり本体施設との関係が悪く なるのです。そこが人的スタッフの配置の問題で、私の試算でぎりぎり適切な、いわゆ るバーンアウトにならないような宿直体制を組もうとしたら、大体子ども1人に対して 1.5人。できれば1対1なのですが、現実的に言えばぎりぎり1対1.5くらいの配置が ないとやっていけないし、そういう施設は小規模は無理だということで大規模に戻って いくというベクトルが働いているようなので、その辺が大きな問題だろうと思います。 ○柏女座長  はい。ありがとうございます。他にいかがでしょうか。グループホームの運営主体と いうことについてはいかがですか。今は運営主体は社会福祉法人ですか。限定ですか。 ○藤井家庭福祉課長  今のグループホームというのは地域小規模児童養護施設のことですか。 ○柏女座長  地域小規模児童養護施設や施設運営型のものを含めてです。 ○藤井家庭福祉課長  基本的に児童福祉施設ととらえれば、今は制度上は限定されていないです。 ○柏女座長  一種ですから社会福祉法人ですね。 ○藤井家庭福祉課長  児童福祉法上は、児童養護施設は児童福祉施設という格好になっています。児童福祉 施設は社会福祉法の特例というものですね。いわば児童福祉法特別法のような形になっ ていまして、児童福祉法上、児童福祉施設に対して社会福祉法にあるような限定がない という、そのような整理になっています。 ○柏女座長  そうですか。 ○藤井家庭福祉課長  法的な整理としては、です。ただ現実問題としてほとんど社会福祉法人がやっていま す。全部と言っていいほどですが、若干の例外があります。 ○西澤委員  例外があるのですか。 ○柏女座長  社会福祉法人と自治体以外で例があるのですか。 ○藤井家庭福祉課長  あります。ゼロではありません。 ○柏女座長  そうですか。 ○西澤委員  個人立、私立ですか。措置費はもらえるのですか。 ○山縣委員  第一種社会福祉事業は、原則社会福祉法人とすると確か書いていると思います。 ○柏女座長  第一種でも原則とするのですか。 ○山縣委員  確か直営もしくは社会福祉法人を原則とするで、イメージされているのは日赤とか特 別な法人です。でも実際には、パーセントにはなかなか出ませんが、宗教法人やいろい ろなものが例外的に存在する。 ○藤井家庭福祉課長  正確にというか児童福祉法上、都道府県の許可を得れば誰でもできるということです から、そういう意味で限定されているわけではないのですが、実際に許可を得て社会福 祉法人以外がやっている例というのはほとんど皆無に近いということです。 ○柏女座長  許可するかしないかは別にして、できるということですね。 ○藤井家庭福祉課長  制度的にはそうです。 ○柏女座長  わかりました。はい。では山縣委員。 ○山縣委員  先ほど松風委員が言われたコストの問題で、結局人配置の問題が基本的なコストの問 題と思っていますが、一人当たりの単価は確かに決して低くはないかもしれませんが、 高齢者問題に比べたら社会的養護の里親まで含めてもトータルコストは大したことはな い。特別養護老人ホームと介護老人保健施設と病院を入れただけで総費用がどれだけか かっているかと考えたとき、次世代の子どもたちに必要なものを提供するとして一人当 たりコスト論をやられると非常につらいけれども、トータルコスト論という形ならもっ と必要なのだと言えるのではないかと思うのです。難しいのはむしろ労働基準法、つま り働き方で、里親をボランティアでしているというのはまさに労働基準法がないからで、 労働基準法を適用した中での環境等必要なケアのあり方は、非常に折り合いを付けるの が難しい。単に数を増やせば労働基準法上はクリアするが、いいケアができるかはまた 別の話で、その折り合いの付け方はかなり難しいという実感があります。 ○柏女座長  現在大舎のところが多いわけですが、他の小規模化を推進していくための方策という 点ではいかがでしょうか。 ○山縣委員  そちらの方が先に言いたかったのですが言うのを忘れました。柏女座長が言われたイ メージですが、サテライトと呼ばずむしろそちらが核になって、何とか福祉グループと いうようなところが事務支援とか基本的な支援をするというのが私のイメージです。例 えば50人の定員だった社会福祉法人に五つの施設ができ、トータル管理などは本部が やるのです。あるいは人の補充といいますか、今ここは大変な状況だから少しスタッフ が応援しないといけないというようなゆとり部分、調整機能は本部が持つけれども、理 想的には一つ一つがきちんとした単位になっていく。責任のある単位になっていくとい うことです。 ○柏女座長  そこの1単位の長になる人は、児童福祉法による看護・教育・懲戒の権限を持つとい うイメージですか。施設長としてのイメージですね。 ○山縣委員  地域小規模児童養護施設ができたときに勝手に誤解をしていたのですが、地域小規模 児童養護施設というからそれが一つの施設だろうと思っていたら違っていて施設長がい なかったということです。施設長は本体にいました。 ○柏女座長  それを独立させていってその施設の集合体というふうに考えているということですか。 ○山縣委員  それが次の段階で、第一段階ではまず分けていく。次にそれが独立していくというス テップで、同じエリアの中で作るなら、分けるときに市町村を埋めていくという発想を 少し持っていく。 ○柏女座長  わかりました。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  ソフトの話で申し訳ないのですが、先ほど西澤委員がおっしゃった、グループホーム で煮詰まって大規模に戻っていくベクトルというのはできれば避けたいのです。私が思 うのは、大規模でのケアモデルしか持っていない所が小規模でやろうとすると、子ども との距離がすごく近くなるので煮詰まっていくというのは当然だと思うのです。だから 子どもと近い距離でケアをするということに施設があまりにも慣れていないということ があって、あとで出てくるケアモデルの構築は非常に重要なことなのではないかと思う のです。 ○柏女座長  わかりました。4ページの「科学的根拠に基づくケアモデルの構築」というところで すね。はいどうぞ。 ○西澤委員  幾つかのことを思ったのですが、一つはサテライトという言葉を使って申し訳ない。 プラネットと言い直してもいいと思いますが、イメージは全く一緒です。  今の奥山委員の話ですが、茨城のある施設では大規模から小規模に変更した途端に非 常にたくさんの問題が噴出して、どうにも対応できなくなった。つまり大規模であるが ゆえに子どもの問題が抑圧されている。それが小規模になって子どもとの人間関係が密 になってきたときにものすごく吹き上げてしまいお手上げになったということを実際に 聞いています。そういう意味ではケアモデルはしっかり作っていくということと、小規 模を促進するといっても、施設によってはそんな面倒くさいのは嫌だとか、今まで通り でいいとか、子どもがある程度ネグレクト状態に置かれていて、職員は皆職員室にいて 子どもたちが部屋で何をしているかわからないけれどもそれでいいという人も中にはい る。そういう人たちに対しても、こうやれば何かのインセンティブが用意されていて、 やっていかないといけない、やりたいと思わせるか、あるいはケア基準としてやってい かないと駄目だと思わせるようなことをやっていかなければならない。例えばアメリカ では、ケア基準はリーグ、つまり同一地域にある数箇所の施設で構成される施設連盟で 策定した。そしてこのリーグによる、つまり同僚による監視を行った。それでケア基準 を満たさない施設には、行政はもう子どもを送らないようにするという仕組みを作った のですが、そういったものを模索していく必要があるのではないか。いろいろな面から 小規模を促進していくということを考えていないといけないのではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。インセンティブが働く仕組みが必要だということですね。は い、奥山委員。 ○奥山委員  補足だけですが、そこで難しいのはどうやって評価するかということなのですが、子 どもの側もネグレクト状態の方が気楽だったりするわけです。そうすると子どもの側も 小規模がいいと言わない。ネグレクトされて好きなことをやっていた子どもが、身近な ところに人がいたらうっとうしくて仕方がないということになりかねませんが、長期的 に見ると距離の近い人の存在は重要です。アセスメントの際に短期の子どもの行動や意 見で判断することの危険もあります。その辺もきちんと見ていかないといけない問題だ と思います。 ○柏女座長  はい。非常にたくさんの議論が出てきて、もう少し続けないといけないと思うのです が、時間の関係もありますので、(2)と(3)、つまり家庭との連携・支援のあり方、あるい は地域ネットワークをどう組んでいくのか。これについてもう少し時間をいただいてご 意見をいただければと思います。 ○奥山委員  いわゆる在宅とか家庭支援に関してですが、実施主体は先ほど施設なのか児童相談所 なのか、それは当然必要だと思うのですが、もう一つ民間委託があります。NPOやいろ いろな開発をしていろいろな方策を出してきた団体に委託してやらせてみるとか、そう いうことも必要になってくるのではないかなと思います。 ○柏女座長  おっしゃる通りです。地域子育て支援の拠点事業も始まりますので、そうしたところ がうまくつながっていければいいと思います。この部分は、恐らく行政としては市町村 との結びつきがとても大事になってくるところだと思います。はい、どうぞ。 ○山縣委員  今奥山委員が言われたのは、どの辺の範囲までを民間委託と考えられていますか。今 児童相談所がやっている措置の基本の部分まで含めてという議論ですか。 ○奥山委員   そうではありません。 ○山縣委員  在宅サービス的なイメージのものという意味ですか。 ○奥山委員  そうです。例えば母親が家にいて施設に子どもがいて、その再統合にしても、支援の ときに民間の方々が入ってきて支援をしていくとか、母親の側に民間の方が行くとか、 あるいは施設と家との間をつなぐにしても、民間の人が一緒に帰っていくとか、そうい う支援があってもいいと思うのです。 ○山縣委員  入り口部分ですと、結構今の制度の中でも民間を十分活用できると思うのです。私の イメージだと、それを都道府県を中心にやっているから市町村レベルでは開発ができな い、あるいは市町村にいい団体があってもうまく利用できていない。ただ私は措置の部 分まで民営化、民間移管というのはまだ相当反対です。それは柏女座長と違うところな のですが、いったん社会的養護の枠に入った子どもたちに対して、出るときにここも一 気に民間でというのも少し危険が伴うかなと思います。共同でというのが第一段階では ないだろうかと個人的には思います。民間そのものは否定しませんが、レベルがあると いう感じがしています。 ○柏女座長  他はいかがでしょうか。少し戻っていただいて、グループホームのあり方のところで、 自立援助ホームをヒアリングさせていただきましたが、これについてはどう考えたらい いでしょうか。ご意見ありますか。 ○山縣委員  これも、私は単純だと思います。先の、プラネットと言い直されたけれどもサテライ トと考えていけば、一つの単位として認めていくことが当然できるのではないか。 ○柏女座長  いわば在宅サービスというか、自立生活援助事業ではなく、施設として考えた方がい いということですね。 ○西澤委員  現状から言えばそうなっていますからね。 ○柏女座長  わかりました。里親型の里親ファミリーホーム含めて小規模形態としてのグループホ ーム、里親のファミリーホームの制度化も今のような単位の一つとして考えるというこ とですね。 ○山縣委員  私の中ではそういうものがあってもいいと思っています。例えば施設退職者・退職職 員・児童相談所退職者・団塊世代とかそういう人たちがうまく入り込んで一緒にやって いくという仕組みがあり得るのではないか。全く純粋な民間の中から開拓していくとい うのは、当面はなかなか難しいと思う。既に子どもにかかわった人たちの中で関心があ る人たちを再雇用なり中間的な雇用形態で用いていくという可能性はあるのではないか。 ○柏女座長  その中に里親タイプのグループホームも入る。わかりました。少し戻ってしまって申 し訳ありませんでした。 ○藤井家庭福祉課長  今のお話に関連して、私が先ほどお答えしたところですが、グループホームの運営主 体というところで、里親ファミリーホームという話もありましたが、運営主体として里 親があり得るかは、論点としてはあると思います。先ほど申し上げたように制度上はど うであれ、実際には社会福祉法人あるいはせいぜいNPO法人くらいで、それ以外の社 会福祉事業についてはほとんど例外的にしか実際存在しない中で、里親によるこういっ たグループホーム的な運営が可能なのかどうか、認めてしかるべきかというところは論 点としてあろうかと思います。 ○柏女座長  いかがでしょうか。はい。どうぞ。 ○庄司委員  グループホームあるいは施設と認めなければいけないのですか。里親のままでグルー プホームということはできないですか。 ○藤井家庭福祉課長  里親として、5人なり6人なり努力していただいて、里親に対する支援としては里親 手当などいろいろな支援策がありますし、里親という枠の中で今まで通りやる分には特 段障害はないと思います。しかし里親ファミリーホームの皆さんが毎年要望されてこら れるように、さらに支援をもっと厚くすることになったときには、まさにグループホー ムとして今ご議論いただいているような新たな類型の中に組み入れるとなると思うので すが、組み入れるときに里親という立場で設置主体たり得るかという問題はあると思い ます。特に先ほども何人かからご意見いただいたように、児童福祉施設としてあり続け るということになりますと、これまでの児童福祉施設なり社会福祉施設の運営の実態と か、あるいは制度的な実態を考えると、里親が施設を運営・経営することが可能なのか というのは結構議論になってしかるべきと思います。 ○柏女座長  それについていかがでしょうか。松風委員どうぞ。 ○松風委員  里親やグループホームを施設として位置付けるということになりますと、労働基準法 の問題が出てくると思うのです。それと里親の私的生活をどれだけ重要視するかどうか が児童福祉施設との違いだろうと思うので、そこで明確な区別があってしかるべきです し、良さ・特性として残しておくべきではないかと思います。 ○柏女座長  はい。施設として位置付けるかどうかは別にして、里親型のいわばグループホームと いったものも、先ほどの藤井課長の話にもありましたが、施設ですから制度上は個人で やれないことはないわけです。それを考えると一定の原則は、例えば社会福祉法人とか NPOとかになったとしても、一定の基準を満たすような経験の深い里親がしている場合 には、施設として認めるのではなく個人としても認められる。施設として認めると、松 風委員がおっしゃったような労働基準法の問題が当然出てきますので、そういう形では なく、いわば制度的に施設と類似形態のタイプのものとして認めていくというようなこ とはあり得ると思います。それが1単位、2単位の中で施設としての単位と、それから 里親グループとしての単位というものの組み合わせで運営していくことはあると思いま す。よろしいでしょうか。  では、2番3番のところはいかがでしょうか。 ○山縣委員  特に3に絡むのですが、ここにある見出しからは要保護児童対策地域協議会をイメー ジするのですが、これは、先ほど言いましたように、その市町村内に施設がなかったら ほとんど入っていないのです。どこに行っても多数派は保育所が中心になる。その辺り の仕組みを変えるためにも、大きな3番のところとの関係で作っていくという発想にし なければいけない。単にネットワークを作りましょうといってそこで援助したものをど う引き受けていくのかという仕組みがないとそこのメンバーも大変だと思うのです。数 だけ来ても引き受け手がない。要保護児童対策地域協議会が期待をしているわけですが、 そこらあたりをどうやっていくのか。せめて前回来ておられた児童家庭支援センターあ たりが、本体併設型ではなくて、空いた市町村を埋めていくようなことをやっていただ けると、少しはよくなるのではないかと思います。 ○柏女座長  わかりました。つまり要保護児童対策地域協議会の活性化を図るためにも、自前の社 会的養護に関する社会資源が市町村内にあることが望ましい。 ○山縣委員  基本的にはそう思います。 ○柏女座長  そういう意味からも、今のような小規模型の施設をケア単位として作っていくべきだ ということですね。 ○山縣委員  児童家庭支援センターを作るというのが一番手っ取り早い方法で、小規模化するとい うのは時間がかかると思いますので、まず児童家庭支援センターにそういうところを期 待したい。この市町村は我々が面倒を見ますとか、そういった発想になってほしいと思 います。 ○柏女座長  ありがとうございます。他にはいかがですか。  それでは学校との連携なのですが、今基本は大きな施設で学校区がありますから、ほ とんどの子どもが同じ学校に通っています。それがさまざまな問題を引き起こしている わけですが、それ以外のことについて学校あるいは我々の報告書として、文部科学省や 教育委員会サイドに対して、こういうケアや制度を作ってほしいと働きかけていくこと について何かご提言はありませんか。私がよく聞くのは、トラウマを抱えた小学生が、 授業になかなかついていけなかったり座っていなかったりすると、施設の職員が、学校 が終わるまでついていなければならないということを聞くわけですが、それは本来教育 委員会の仕事であって、教育委員会が介助員を作るべきではないかということを強く思 って、理不尽だと思っていますが、共感は得られるでしょうか。 ○奥山委員  施設もそうなのですけれども、地域で在宅支援をしている子どもが学校に行ったとき に、介助の先生はいるのだけれども発達障害しかわからないので、こういう子どものこ とはわからないと言って介助がつかないということがあるのです。発達障害だけではな いと思うのですが、この4月から特別支援教育も始まることですし、その辺で発達障害 もこういう愛着の問題も両方含めて対応するということをきちんと位置付けてほしいと 思います。 ○柏女座長  はい、どうぞ西澤委員。 ○西澤委員  虐待を受けた子どもは、感情調整障害がある、学校で暴れる、だから出席停止になる という形で、教育のシステムからはじき出されているというのが現状です。そういう子 どもたちは施設でずっと1日過ごしているという状態ですので、まさしくそのことは大 きな問題だろうと思います。ただここでこのように提言する前に私もサボっていてやっ ていないのですが、校区に養護施設を持つ学校の連絡協議会のような私的なネットワー クがあるのです。3年ほど前に京都で誕生して、これらはインターネットでつながって います。そこで一体どういう議論がされているのかということをリサーチする必要があ るのではないか。全国に550カ所の児童養護施設があるということは、550校区の小学 校や中学校が児童養護施設を抱えているわけですから、そこでの先生たちの議論という のも、やはり私たちは知っておく必要があるのではないか。その中で提言を出していけ ばよいのではないかと思います。 ○柏女座長  中間とりまとめに間に合うかどうかは別にして、事務局の方で少しその辺は集められ るでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  努力してみます。 ○西澤委員  ちなみに中心になっているのは大阪教育大学の教育学の森実教授です。 ○柏女座長  それでは時間になりますが、何かありますか。 ○山縣委員  もう一点、学校のことで、先ほど柏女座長が教育委員会とおっしゃいましたが、教育 委員会だと公立学校しか視野に入らないですよね。幼児期の場合は社会的養護を利用し ている子どもはほとんど私立学校を利用しないわけですが、地域との関係ですと学校法 人の幼稚園、それから都市部ではもうどんどん小中学校も私学化・私立傾向が進んでい るという中で、教育委員会という発想自体をどうするか。教育委員会に言っておけばす べての家庭や子どもに伝わると思っているけれども、都市部ではもはやそうではないと いう状況がかなり起こってきている。その中で起こった問題が極端になった形で出てく るのです。教育委員会は児童相談所にしても公立学校とは結構つながりがあるのですが、 私立は、意外と公的機関・福祉部門とつながっていないですね。その辺りについて、教 育委員会が私立も含めて面倒を見るとか、少し触れるような提言になればよいと個人的 には思います。 ○柏女座長  文部科学省の方は、ちょうど今中央教育審議会でやっているところではないですか。 ○山縣委員  何か変だぞということですね。 ○西澤委員  私立は養護の世界でも考えたこともなかった。 ○柏女座長  奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  教育について言うとすれば、一時保護所の教育の問題など少し抜け落ちているところ があるのかなと思います。施設の種類によっては外の学校教育を受けていない施設があ るわけで、その辺の整理も必要です。それから幼児教育をどうするのかという部分もあ ると思います。  もう一つは、今社会的養護にいる子どもたちはかなり病気を抱えているのです。施設 の職員が病院通いでものすごく大変だという声も結構聞きます。医療との連携も、重要 だと思います。 ○柏女座長  西澤委員、どうぞ。 ○西澤委員  一つ思い出しました。いつも言っていることなのですが、学力保障です。社会的養護 の子どもたちは、知的な問題を持っていなくても環境要因で学力が遅滞するのは当然の 状況となっていますので、学力保障というのは、今のところ家庭教育だからということ で施設に担わされているのですが、私は本来的にすべての子どもの学力保障というのは やはり教育マターではないかと思っています。そういう意味では、学校教育がそういう 子どもたちに対してどうするのかは考えていただかなければいけないだろうし、もし今 度この話がつながれば、例えばデイトリートメントにも学校や教育委員会が参加するこ とが必要になってくるのではないかと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。教育分野はまだまだ考えなければいけないことがあると思い ます。特別支援教育についての個別のプランと、それから自立支援計画をどうつなげて いったらよいかなど考えなければいけないことがたくさんあるように思いますので、非 常に大事な論点として、また機会あるごとにご意見をいただければと思っています。ま た、最近あった例ですけれども、虐待のため児童福祉法28条で入所した子どもの施設 を知らせていなかったのですが、転校先の学校からわかってしまって子どもが誘拐され てしまい行方不明になってしまったという事例もありました。そういう意味では、守秘 義務の関係なども両所の連携について本当にしっかりしておかなければいけないと思い ました。  それから奥山委員がおっしゃった点では、今、特に乳児院などでは病気を抱えている 子どもたちが本当に多くて、付き添いだけでものすごい人手が取られてしまう。学校の 付き添いもあるし、病院に行くと何時間も待たされたりしますので、とにかく施設の職 員が疲弊してしまうということも強く指摘されていると思います。そういう意味では、 そのような付き添い問題についても考えていかなければならないと思いました。ありが とうございました。  まだその他さまざまなご意見があると思いますが、時間も来ましたので、今日の議論 はこのくらいにさせていただきたいと思います。次回につきましては、(4)の「施設機能 の拡充」から、最後まで一当たり流したいと思いますので、委員の方々には、これらの 3〜5ページについて少し意見をまとめていただければありがたいと思います。  それでは、次回の予定について事務局の方からご連絡をお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  次回、第7回ですが、4月16日月曜日、午後6時〜8時。場所は同じくここ、共用第 8会議室です。その次の第8回ですが、5月10日木曜日。時間が午後6時〜8時、場所 は未定ですので、追ってご連絡いたします。その次ですが、委員の皆さま方にメールで ご連絡はさせていただいていますが、第9回は、全員そろう日がなかなかない中で可能 な限り調整して、5月18日金曜日の午後2時〜4時ということで、場所は未定ですがセ ットさせていただきたいと思っています。場所につきましては、追ってご連絡させてい ただきたいと思います。今のところこの予定で考えています。以上です。 ○柏女座長  ありがとうございます。ということは、5月10日には中間とりまとめの素案を事務局 の方でご用意いただくことが可能ということでよろしいでしょうか。 ○藤井家庭福祉課長  頑張ります。それに絡むのですが、今日ご議論いただきました(3)までのところで、中 間とりまとめですから、いずれにしても基本的に方向性のようなことだと思いますが、 もし何か言い足りないことなどありましたら、いつでも結構ですからメールででもお寄 せいただければありがたいと思います。 ○柏女座長  わかりました。 ○藤井家庭福祉課長  それから、今日は庄司委員から資料をいただいています。 ○柏女座長  庄司委員、これを説明していただけますか。 ○庄司委員  では2、3分で説明します。これはケビン・ブラウンというイギリス人の調査報告で すが、ヨーロッパ33カ国で、日本の厚生労働省にあたる保健省に尋ねたオフィシャル なデータで、3歳未満の子どもの施設入所者数と里親委託数を示したものです。この表 の1をご覧いただくと、国がずらりと並んでいて、3歳未満の人口、それから3歳未満 の施設にいる子どもの人数、それから3歳未満の子ども1万人に対しての割合。その次 が里親にいる子ども、それから里親の所にいる子どもの人口1万人当たりの割合で、こ れは国によって随分違います。ヨーロッパでは、施設にいる子どもが2万3,000人ほど で、里親の元にいる子どもが、計算したのを忘れてしまったのですが、確か3万3,000 人か3万5,000人ぐらいという状況(注、正確には39,830人)で、国によって随分違 う。イギリスでは施設にいる子どもが65人で里親の元にいる子どもが7,700人。ドイ ツでは1,500人に対して4,500人が里親にいる。フランスでは約3,000人が施設にいて 里親の元にいる子どもが4,600人という状況です。3歳未満の子どものケアをどうした らよいかということを考えているということで3歳未満に限られていますが、最新のデ ータではないかと思います。  次のページがコストです。施設に委託した場合のコストで、単位はユーロです。それ から里親に委託した場合、それから右の方は施設と里親で、子どもに障害がある場合で、 これも国によって非常に幅が大きいのですが、里親の元にいる子どもは1人当たり年間 1万3,000ユーロ。1ユーロは150〜160円です。それから施設の場合には、その3倍 の4万1,000ユーロ。障害がある場合にはさらに高くなるということです。コストのこ となどもかかわってきますので、紹介しました。 ○柏女座長  貴重な資料をありがとうございました。  それでは、今日はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係  連絡先  03−5253−1111(内線7888) 37