07/03/23 第5回医療施設体系のあり方に関する検討会の議事録について 第5回医療施設体系のあり方に関する検討会         日時 平成19年3月23日(金)         15:00〜         場所 厚生労働省9階省議室 ○企画官 定刻になりましたので、「第5回医療施設体系のあり方に関する 検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のと ころ当検討会にご出席いただき、誠にありがとうございます。  初めに、本日の委員の出欠状況についてご報告します。本日は、五十里明 委員及び武藤正樹委員からご欠席とのご連絡をいただいています。また、遠 藤座長代理からは、遅れていらっしゃるとのご連絡をいただいています。あ と何名かの委員の方がお見えになっていないようですが、前の会議の関係か と思いますので、始めたいと思います。  次に、お手元の資料の確認です。議事次第、座席表及び委員名簿のほか、 資料1、資料2、参考資料を用意しております。資料1が「医療連携体制・ かかりつけ医、医師確保との関係について」、資料2が「医療法に基づく人 員配置標準について」、参考資料としては、これまでこの検討会でご議論い ただいてきた検討課題についてです。それでは、以下の進行は田中座長にお 願いします。 ○座長 本日は、お集まりいただきましてどうもありがとうございました。  いつものように、議事に入る前に参考人の出席と発言についてお諮りしま す。この検討会においては、委員欠席の際に代わりに出席される方について は、当日の検討会ごとに承認を得て、参考人として参加し、また発言をいた だくことを認めることにしております。本日は、五十里明委員の代理として、 川崎市健康福祉局医務監の坂元昇参考人、武藤正樹委員の代理としては、特 定非営利活動法人日本医療マネジメント学会評議員の池田俊也参考人にご出 席いただいております。お二人のご出席と発言をお認めいただきたいと思い ますが、よろしいでしょうか。               (異議なし) ○座長 それでは、異議なしということで、お二人ともご発言ください。  議事に入ります。本日の議題は、大きく分けて2つあります。1つは、検 討課題のうち残されていた「医療連携体制・かかりつけ医、医師確保の関係」、 もう1つは「医療法に基づく人員配置標準について」です。テーマが大きく 2つあるので、別々に議題とします。初めに、医療連携体制・かかりつけ医、 医師確保との関係について事務局より説明をいただき、その後皆様方と意見 交換をしたいと思います。それでは、資料1の説明をお願いします。 ○企画官 1頁ですが、平成17年12月に取りまとめられた社会保障審議会 の医療部会で関連する部分のまとめの部分で、医療機能の分化連携の推進で す。2つ目の○で、医療計画制度の見直しと書いておりますが、今回の医療 法改正で、これまで主として病床規制が中心であった医療計画の内容を大幅 に見直すということで、医療計画の記載事項に主要な事業、4疾病5事業に 係る医療連携体制を追加し、しっかり書き込んでいく見直しを行いました。 併せて、地域の医療機能の適切な分化・連携を進め、急性期から回復期、慢 性期を経て在宅医療への切れ目のない医療の流れを作っていくということで、 見直しを行いました。  2頁です。在宅医療の推進ということで、乳幼児から高齢者まで全世代を 対象として、その推進がなされるべきものであるとのまとめがなされており ます。  4−3は、かかりつけ医等の役割等です。かかりつけ医について国民が身 近な地域で日常的な医療を受けたり健康の相談等ができる医師として、国民 にわかりやすくその普及・定着を図る必要があるとされています。併せて、 かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師についても、同様に普及・定着を図る 必要があるということです。  今日の検討課題の項目とも密接に関連してきますが、主要な事業ごとの医 療連携体制を構築し、地域において実際に連携がなされるためには、かかり つけ医が、患者の病状に応じて適切な医療機関を紹介することをはじめ、常 に患者を支える立場に立って重要な役割を担うこと、また、診療時間外にお いても患者の病態に応じて患者又はその家族と連絡がとれるようにするなど 適切に対応することが求められる、というまとめになっております。そうし たことから、どのようなかかりつけ医の役割が期待されるか、またその機能 を発揮するために、サポート体制を含め何が必要か等々、かかりつけ医のあ り方について引き続き検討していく必要があるとなっています。  3頁です。ここは、いま申し上げた医療部会のまとめを受けて、医療法の 改正を行った部分の医療計画の関連です。左側の箱の部分ですが、医療機能 の分化・連携の推進による切れ目のない医療の提供を行っていくということ で、繰返しになりますが、事業別に地域の医療連携体制を医療計画の中にし っかり位置づけていくこと、地域連携クリティカルパスの普及等を通じて、 切れ目のない医療を提供していくことを謳っております。  具体的には、医療法の中に基本方針というスキームを設け、各都道府県が 医療計画を作成するにあたってよすがとなるべき基本方針を示す。さらには、 医療計画の中でわかりやすい指標と数値目標をしっかり明示をしていくこと、 事業ごとに医療連携体制を具体的に位置づけていくことを今回見直したとこ ろです。  4頁です。ここはイメージ図ですが、これまでの階層型構造の医療提供体 制から、住民・患者の視点に立った医療連携体制への転換ということで、地 域ごとに医療機能に着目した医療連携体制を考えていくことを、イメージと して図に示したものです。  5頁ですが、4疾病5事業の中で、脳卒中の場合の医療連携体制のイメー ジを示したものです。何度かご覧になったことのある資料かとは思いますが、 急性期から回復期、在宅へという一連の切れ目のない医療提供を行っていく ということで、それぞれの医療機関の役割、機能をしっかり位置づけていく。 そのときに、かかりつけ医機能をどう考えていくのかも、本日ご議論いただ きたいと思います。  6頁は救急医療の体系図ですが、初期救急医療、入院を要する程度の救急 医療、救命救急医療と、救急医療の関係ではすでに体系はこのような形で成 り立っているわけですが、そうした中で、病院に休日や夜間に患者が集中し ている実状等から、病院勤務医の方々の勤務状況は非常に厳しいとの指摘を 受けております。そうした中で、地域の開業医の方々に交替で詰めていただ く休日夜間急患センター、在宅当番医制といった取組みを進めておりますが、 さらにこうした取組みを進めていく必要があるのではないかと考えておりま す。  右下に「小児救急電話相談事業」とありますが、いわゆる♯8000番という ことで、病院に行かなくとも、電話相談によって軽症の方の相談等に応じる ことによって、様子を見ていただくなり助言をする取組みを進めております。  7頁ですが、へき地保健医療対策の鳥瞰図です。へき地医療対策について は、すでに第10次の計画を策定しております。各都道府県に設置されている へき地医療支援機構、へき地医療拠点病院を中心としてへき地医療対策を進 めていて、各地域に応じてへき地診療所の設置、巡回診療、患者輸送のため の車の整備等々を進めております。  8頁以降は、本日のテーマに関して過去の検討会でいただいたご意見を整 理した部分です。かかりつけ医の機能がきちんと整理され、国民に周知され なければならないとのご指摘があります。4つ目の○ですが、なぜ患者が大 病院に流れるのかを議論していく必要がある、地域医療の専門医等プライマ リケアの専門医を育成していくことを考えた上で、この制度を考えていく必 要があるなどのご指摘をいただいております。いちばん下ですが、医療機関 の機能分化、連携が重要ということで、それぞれの医療機関に求められる役 割を明確にし、その役割に集中できる体制の整備が必要であるとのご指摘で す。  次の頁も、ご指摘を並べています。1つ目の○でかかりつけ医の役割を患 者の視点でどう構築していくのかを検討する必要がある。連携のアウトカム 評価の話、あるいは地域連携クリティカルパスが非常に有効で効果的だとい ったご指摘もいただいています。病院、診療所の受入体制がどうなっている かの情報が欠けているのではないかとの指摘もいただいております。  10頁は、医師不足問題に関連してのご発言をいただいている部分です。  12頁は、これまでの検討会で求められた資料を用意したものです。各国の かかりつけ医制度について、私どもが把握できた限りで整理しております。 イギリスでは、ご案内のようにあらかじめ登録した診療所で診療を受けるこ とになっていますが、登録は自由に変更できる形になっております。  フランスは、2005年7月からかかりつけ医制が導入されたと伺っておりま す。そうしたかかりつけ医にかからない場合には、金銭的な負担が増化する と承知しております。ドイツも同様で、家庭医というものが制度的にはない ようですが、事実上ゲートキーパーの役割を果たしているということです。 紹介状を持たずに受診した場合には、10ユーロ余計にお金がかかることにな っています。  13頁以降は、先ほど医療計画の見直しに関連して申し上げた基本方針につ いて、現在予定している全文を参考までにつけているものです。 ○座長 ありがとうございました。ただいまの説明に対して、ご質問、ご意 見をお願いします。 ○山崎委員 2頁の4−3のかかりつけ医等の役割の2つ目の○なのですが、 「診療時間外においても患者の病態に応じて患者又はその家族と連絡がとれ るようにするなど適切に対応することが求められる」とありますが、最近、 開業医の先生方がビル診、あるいは自宅と診療所を分離して作られて、9時 5時の診療が非常に多くなっているわけです。その中で、昼間受診した患者 が、主治医に連絡がつかない、あるいは普段からかかりつけ医と称してかか っている先生に、急変・増悪時に連絡がつかないことがあるわけです。  したがって、365日、24時間患者に対応しろということではないのですが、 少なくとも、9時5時で1日の3分の1の時間しか患者に対応していない状 態が、かかりつけ医と言えるのかどうかということがある気がします。少な くとも、准夜帯までは、患者あるいは患者の家族が、昼間診たドクターに携 帯電話なりで連絡がつく状態をつくらないといけないと。ユーザーサイドに 立ってみれば、是非必要だし、当然義務づけなければいけないと思っていま す。 ○座長 ありがとうございました。かかりつけ医の条件には、連絡がつくこ とも必要であるとのご意見でした。テーマが医療連携体制・かかりつけ医、 医師確保であれば、この資料の中身だけに議論を限る必要はないと思います ので、ご意見をお願いします。 ○古橋委員 医療部会でもかなり議論になったのですが、日本でかかりつけ 医の定義や、国民がかかりつけ医をどう捉えるかが曖昧だったと思います。 日本の制度の中で、かかりつけ医を国民にわかりやすく説明するとしたら、 どういう人たちなのかが明解になる必要があると思っております。  そういう点では、いま12頁で説明がなされたイギリス、フランス、ドイツ 等のところに書かれている「かかりつけ医」や「登録診療所」というのはど ういう制度で、どのように位置づけられて、どのような定義を受けている人 なのかがわかれば、参考までに知りたいと思います。 ○企画官 私どもも、既存の研究会の報告書や出版物から整理をした状況で、 厳密な定義まではいまの状態では把握できていないのが実情です。 ○古橋委員 紹介はしていただきましたが、実態はよく把握されていないと 思ってよろしいのでしょうか。 ○企画官 この国まで自ら調べに行ったわけではないということです。 ○島崎委員 この点に関して率直に言うといろいろ問題がある。12頁の資料 ですが、例えばフランスを見ると、制度の概要としてかかりつけ医にかから ない場合には負担金が増額するとある。その後に、「主治医の選択は自由で あるが、98%は一般医から選ばれている」と書いてあって、そのあとに「か かりつけ医」という言葉が出てくるわけです。失礼な言い方をすれば、「か かりつけ医」、「一般医」、「主治医」という用語を混同しているのではな いかと思います。  フランスの場合、いわゆるかかりつけ医制度を導入したときに、一般医だ けではなく、専門医から選択することも結果的には認めた形になっていて、 実際、ここの意味は1%か2%は専門医の中から選ばれている。逆に言えば、 多くは一般医の中から選ばれている。つまり、ほかの国の体系上は、各診療 科目別の専門医とは別に、総合医あるいはジェネラルな医師を養成するとい う教育体系があって、それを前提としながら、いわゆるかかりつけ医制度が 設けられている。こういうことは、折角このような資料を作るのであれば、 きちんと把握し、整理されるべきことではないかと思います。 ○座長 ありがとうございました。用語法などはまだ完全ではないというこ とです。かかりつけ医の機能についてどうなっているか、ご意見だけでも結 構です。 ○鈴木委員 これは、アメリカは載っていなかったですね。私の理解では、 アメリカの医師は2ランクに分かれていて、いわゆるかかりつけ医は下と受 け止めております。病院に患者を連れていって、自分で手術したり診察した りすることは、かかりつけ医はできないという理解なのです。事実、そうい う状況でいま運営されていると思います。そういうかかりつけ医制は反対で、 日本の開業医は、ある程度専門性を持った上に付加して、総合判断をもって 当たったので、非常に医療の質の担保がされた結果、世界一というアウトカ ムが出ていると理解しております。 ○座長 かかりつけ医と病院との関係ですね。病院まで行けるかどうかとい うことです。 ○坂元参考人 かかりつけ医に関して、我々は実際市町村業務で住民の方と 日々接して、老人保健法に基づく基本健診をやっております。住民にはがき を出して基本健診を受けてくださいと言うと、住民の方は大体どこで受けた らいいのかと聞いてきます。「かかりつけの先生で受けて下さい」と言うと、 「かかりつけって何ですか」という質問が半分ぐらい返ってきます。  我々としては、健診を受けられる医療機関の名簿を見せて、こういう所で 受けてくださいと言って、住民の方にかかりつけ医を定着させるよう努めて おります。非常に重要なのは、かかりつけ医の機能の中には健診のことが特 に書かれておらず、今後の事業の中で特定高齢者、特定健診を進める中で、 健診を契機にしてかかりつけ医が決まり、その後いろいろな介護予防事業に なっていくので、その項目をかかりつけ医機能の中に入れたほうが、より現 実的ではないかと思います。 ○座長 ありがとうございました。書かれていない健診についてですね。 ○島崎委員 かかりつけ医に関しては、いろいろ意見があります。例えば5 頁の真ん中に「かかりつけ医機能」とありますが、※がついていて、下を見 ると「急性期、回復期、療養期等各機能を担う医療機関それぞれにかかりつ け医がいることも考えられるが…」と注が書いてあります。そうすると、大 病院、例えば東大病院かかりつけ医とか慶應大学病院かかりつけ医という概 念をここでは認めている形になるわけです。かかりつけ医というのは「そこ の医師にかかっているという」概念なのだから、その言葉自体はおかしくな いわけですが、ここで議論しようとしているのはそういうことなのかという と、そうではないと思うのです。つまり、医療機関の機能分化が進んでいく 中で、診療所は本来どういう患者本意の医療を実現していくためにどのよう な機能・役割を果たしていく必要があるのか、そのために必要なリクワイア メントは何なのかが問題なわけです。先ほど申し上げたように、日本の場合 には、大学教育の中でそういう教育がきちんと行われてきていない実態がこ れまではあったわけですが、そうした状況の中で必要な「かかりつけ医」を どう養成していくのか、それが議論の本質だろうと思います。これが問題提 起です。  その上で意見を申し上げれば、機能分化が進んでいくということは、患者 の側から見ればいる診療の場所が変わるということです。また、患者と医師 との関係がその都度「切断」されていくことになるわけです。だからこそ、 切断されていく関係を、患者の立場に立ってつなぎ止める役割がどうしても 必要になってくると思います。そういう観点から、私は「かかりつけ医」で はなく「家庭医」とか「総合医」と言ったほうがいいと思いますが、そうい うものが必要なのだという認識を持たないとまずいのではないかと思います。 ○座長 特定の疾患で大学病院に半年かかるときに、世話をしてくれるドク ターはここで言うかかりつけ医ではないと。むしろ、機能分化が進んだとき の間をコーディネートすることこそが機能ではないかということです。 ○山崎委員 そもそも、「かかりつけ医」という表現、言葉がどうもしっく りこないのです。昔、家庭医とかホームドクターという言葉がありましたが、 ホームドクターという言葉がなくなって、いつのまにか「かかりつけ医」と いう表現に変わってきてしまっています。少なくとも、30〜40年前の第一線 で頑張っていた開業医の先生方は、専門医ではなかったはずです。開業する 看板も、内科、外科、小児科、皮膚科と4つぐらいくっついて、そこでトリ アージュをきちんとできていて、自分の専門でない患者は専門の先生を紹介 したり専門の病院を紹介する形があって、それでそれなりの機能を果たして きたと思います。  一方、診療所と自宅をくっつけて頑張っている先生が少なくなったし、応 診をする先生も少なくなって、患者が病院にシフトを始めてしまったのと、 国民のほうでも専門医指向が強くなってきて、例えば内科の先生が小児科の 当番をしていると、先生は小児科の先生なのですかなどと言われると、そこ でその先生は診療ができなくなってしまうわけです。  したがって、専門医のあり方も含めて、国民のニーズといまの医療提供体 制の間に大きな乖離が生じてきているのが問題だと思います。この問題は、 その辺りをきちんと解決していかないと、いつまで経っても同じ議論をして いるのではないかと思います。来年の4月から後期高齢者保健制度が始まっ たときに、また同じ問題が出てくるような気がするので、その辺りも含めて、 きちんと整理していかなければいけないと思います。 ○座長 医療側が考える機能だけでなく、患者側のニーズとのずれも考えな くてはならないし、名称についても「かかりつけ医」でいいかどうかという ことですね。 ○太田委員 いま山崎委員がおっしゃったように、私もここ最近の議論を見 ていると、ああいった後期高齢者の医療制度の中に出てくるかかりつけ医の 言葉がダブってしまうのです。本来この会議でずっと議論してきた一般医と 専門医の関係ではなしに、診療所と病院の関係。そうすると、今日出されて いる意見の中には、最初は病院ではなく診療所だと、今度の後期高齢者の国 保中央会や健保連では、いわゆるかかりつけ医を通らないと病院の公的保険 が受けられない方向へダブってしまうのです。ここで、資料の12頁にあるよ うな諸外国の例は、一般医と専門医がかなりの部分を占めているように思う ので、そういう議論なのか、診療所と病院の機能をどう分化するかなのか、 もう一度きちんと分けたほうがいいのではないかと思います。 ○島村委員 ……の会で、かかりつけ医の概念なり、みんなが言っているの がバラバラで、私は特にこの仕事に入って1年何カ月しか経っていないので、 どれがかかりつけ医なのかよくわからないので、その整理をということで資 料を提出いただきたいと言って、出てきたのがこれかなと思うのですが、先 ほど島崎委員がおっしゃったように少しわかりにくいと思います。  先ほど、国保連や健保連からかかりつけ医を通らないと専門医にいけない と、国保のほうはよくわかりませんが、健保連が集中して討議をして、自民 党の公聴会、公明党、社保審の医療保険部会、私が出ている医療部会につい ても資料を提出していますが、健保連がいま主張しているいちばん大事なと ころは、まず総合診療医としての医者を育成しようというのが第1番目です。  2番目は、自由標榜制の中で標榜科目の信頼性には大きな疑問があるので、 総合医をつくることと、そういう前提条件をきちんとクリアして、登録医と してのかかりつけ医の制度を作るべきだということです。そこについてはあ まり軽々に、拙速にしないでくれという考え方で、国保とだいぶ違うのです が、どうも一部の報道の中ではそうなっています。定義も含めて、もう少し 慎重にきちんと討議をして実施をする。ただ、将来の方向としては、かかり つけ医がたぶん有効な制度になるだろうということと、その結果として、あ る程度のフリーアクセスが制限されることがあっても、総合的に見れば、健 保連としてもこういう仕組みが保険者の立場から言うと有効だと考えている ことを申し上げます。 ○鈴木委員 いまネーミングはともかく、かかりつけ医というか一般医とい うか、主治医というか、開業医というか、よくわからない概念で確認をして いるわけですが、そういう定義は登録医とイコールであるとの考え方での議 論は避けていただきたいのです。別個にしていただかないと、話がおかしく なりますので。 ○座長 担うべき機能と制度上登録、つまりゲートキーピングをすることは 別の次元の話だから、別々にせよということですね。 ○和田委員 私は、いまちょうどかかりつけ医を探しています。というのは、 非常に個人的なことなのですが、2カ月ほど前に子どもが無事生まれて、家 の近くに小児科のかかりつけ医を見つけなければならなくなりました。これ まではこの会議に出ていても、いままで議論があったように、かかりつけ医 とは何なのかがよくわからなかったのです。しかし、ゼロからかかりつけ医 を探そうと思うと、やはり家の近くで365日、24時間いつでも連絡がついて、 安心して子どものことを相談できる小児科医を探したいと思っているのです。 そうすると、開業医の先生は先ほどの委員のご意見のように9時5時の診療 で、ビル診の所が多くて、365日、24時間いつでも不安なときに電話をすれ ば連絡がつくかかりつけ医は、家の周りには全く存在していません。  病院なら、救急車で行けば24時間いつでもなのかなと思いつつ、まだどこ も見つけられていないのです。1つ見つけた所に行ってみたら、ビル診なの で9時から5時で、しかも木曜日は休みで、土日は休みでした。いつは診れ ていつは診れないと、診療時間に関する○×の表があるかと思いますが、診 れないときにどこに連絡をしたらいいのかをきちんとパンフレットなり入口 なりに表示していてくれれば、私たちは先生が診られる時間はここでお世話 になり、診られないときはどうしたらいいのかがわかるのではないかと思い ました。  今日いただいた資料の6頁目のようなマップが、普通の一般市民の頭の中 には入っていなくて、母子手帳などの資料を見るとこういうことは書いてあ るのかもしれませんが、いっぱいもらう中でこの紙1枚に気づくことは難し く、やはりすぐに救急車を呼んでしまうのが母親の心境なのではないかと思 います。なので、できれば365日、24時間いつでも診てくれる、複数の先生 がグループ診療で診てくださるとか、システムを作っていかなければいけな いと思うのですが、できない場合には、少なくとも自分が診られない時間は どうしたらいいかを、○×の診療時間案内のところに必ず表記するとか、病 院のパンフレットには診られない時間はどうしたらいいかをきちんと表示す ることを推進するとか、そういった工夫が大事なのではないかと思いました。 ○座長 ありがとうございました。実体験に基づくお話で、すべての医者が 365日、24時間である必要はないけれど、自分が必要なときにはどこに行け ばいいかがわかる、連携のとれた形がかかりつけ機能であるということです ね。 ○藤川委員 名称はどういう形であれ、かかりつけ医はどういう人がなるの かと逆の立場で考えると、いままで論議されているように、どういう役割、 機能を持った人がかかりつけ医なのかという話になってくるわけです。どん なステージでも相談に乗れる、あるいはアドバイスをいただける人がかかり つけ医の資格要件を持っていると思うのです。  言い方を変えると、健診のフォローアップや疾病の初期段階におけるさば き、退院後のケアなど、各ステージで諸々相談なり適切な指導、ジャッジを していただけるのが、かかりつけ医の役割、機能なのではないかと思います。 そうなると、先ほど島崎委員がおっしゃったように、総合的に診られる人た ちがかかりつけ医であると。そうすると、かかりつけ医の要件として適切な 人をどのように選んでくるのかという問題が、次に出てくると思います。 ○齋藤委員 大学の立場としては、総合的に診る医師をどのように育てるか という課題があります。私の所も総合診療部があります。そこの教授、教室 員ともよくディスカッションをしますが、確かに総合診療医、専門家を育て て普通の医師を教育していく立場の人間は必要だけれど、一般の診療でどの 科の人でもどんな医者でも、やはり総合医であるべきであると。こういう教 育を大学で施していかなければならない。そのマインドとして、前期研修で 総合的に見ていくような教育に取り組んでいることは確かですが、そのレベ ルの医療ではおそらく国民は満足はしていないだろうと思うのです。ですか ら、終生にわたる総合医としてのマインドを教育の根幹に置かないと、いま 縷々お話のあるようなことはなかなか満足させられないのではないかと思い ます。  例えば、耳に虫が入ってたらい回しになったという話がありますが、総合 医に言わせると、どんな医者でも耳を見て取り出すことができなければなら ない。そういう教育は、いまの中では非常に欠陥として残っていると縷々言 っております。 ○古橋委員 今日いただいた資料の8頁には、かかりつけ医の機能がもっと きちんと整理されて、国民に周知されなければならないとあります。いまた くさん出た意見からしても、かかりつけ医との関係は、医療を受ける人たち が最も近い所にあるわけで、国民の側からかかりつけ医が実像として、ある いは実態、実存の状況で腑に落ちていなければ、5頁や4頁で掲げているか かりつけ医機能は、いくら紙の上で書かれても、実際提供される医療として は空虚なものに思えてきます。  ですから、いまここでは主として医療提供側の人たちが議論をしますが、 かかりつけ医機能やかかりつけ医という言葉があるならば、それをもう少し 具体的にして、国民がわかる、腑に落ちる状況にしていく義務があると思う のです。受療者としての国民が、かかりつけ医とは何ですかとおっしゃる、 あるいはある組織が調べるとかかりつけ医が7割いたとか、6割いたとか言 いますが、私はもう少し「かかりつけ医」と「かかりつけ医機能」について もっと実像が明らかに、どこにどういう形でいるのかを国民がわかるように する必要があると思えるのです。ですから、人によってかかりつけ医の定義 が違ったり、考え方によってぶれたりすることは、国民にとって非常に見え にくい、わかりにくいのです。したがって、私は4頁や5頁の絵柄を具体に 動かしていく必要があるならば、出発点のかかりつけ医機能をもっと明解に していく。いろいろ議論はありますが、この時期にどういうものかを集約し て、整理していく必要があると思えてなりません。 ○座長 利用者の視点からお話いただきました。 ○島崎委員 先ほど申し上げたかかりつけ医あるいはかかりつけ医機能とし てどういう役割が必要なのか、どのような条件が必要なのかに関して言えば、 スキルとしては一般的なコモンディジーズはきちんと診られることと、コモ ンディジーズではない稀な疾患、より専門的な治療が必要な疾患については、 専門の病院にちゃんとつなげることが必要だと思います。また、病院の専門 医等から逆紹介を受けたときに、そのあとのフォロー、術後管理も含めてき ちんとした対応ができることと、先ほどどなたかがおっしゃったとおり、日 常的な保健予防活動がしっかりできることが、必要なスキルだろうと思いま す。  マインドに関して言うと、特に高齢者の場合に当てはまるのですが、生活 の上に医療があるのであって、医療があって生活があるのではないわけです から、その人の生活を全人的に見ていくことがどうしても必要になる。そう すると、医療の周辺領域、患者さんの生活を支えるために必要な保険や介護、 福祉と連携をとり、患者さんを全人的に支えていくという気構えと、24時間 365日対応できる、もちろん学会や出張に行ってはいけないと言っているわけ ではなく、患者と連絡がとれて必要な指示ができるマインドを持っているこ とが必要だろうと思います。座長がどこかで「コンシェルジュ機能」という 言葉を使っておられたと思いますが、そういうマインドがどうしても必要に なってくると思います。  その上で申し上げれば、基本的に望ましい体系としては、家庭医なり総合 医なりが、患者さんを全人的に診て、より専門的なものについては専門医に つないでいくことが望ましいことは間違いないわけですが、先ほど鈴木委員 がおっしゃったように、それを登録医にするかどうかとか、さらに踏み込ん で、診療報酬の支払い方をどうするかといったことは別に置き、切り離して 議論しないと、話が非常に混乱すると思います。  なお、実際、地域の中で家庭医、かかりつけ医に対して、ある程度体系的 に養成研修をしたりすることが全く皆無であるかというと、そうではないの です。実践例もあるわけですから、その成果をきちんと踏まえた上でどうす ればいいのかをトライアルを重ねながらやっていくことが重要だと思います。  ただ、地域で試行錯誤的にやっていくことだけでよいかというと、それも 問題です。もし、国民が家庭医やかかりつけ医を求めているのだとすると、 それに対応して、大学医学部の医学教育の中でその教育・養成をどのように 位置づけていくかは非常に重要な課題だと思います。 ○遠藤委員 家庭医の資質の問題で、大学教育でもトレーニングする必要が あるだろうという議論だと思います。若い段階でGP的なことを試行している 人はそれほど多くないだろうと思われるわけですが、それはそれなりのイン センティブがないからだと私は思っているのです。例えば、非常に若い段階 で後期研修で全科を均等にやったと、専門医ではありませんという状況で、 キャリアパスはどうなるのかを当然考えるわけです。となると、総合診療科 のような勤務医としての場所がどれぐらいあるのかということにも、当然な ってくると思うのです。ですので、そういう整備も教育と同時に必要であろ うと思うのです。  したがって、公的病院や国公立病院には、必ず総合診療科を持って、紹介 状のない患者は必ずそこを通す形にすれば、そこに必ず働く場ができるわけ です。そこで卒後の教育を行えば、再生産をすることもできる。場合によっ て、いずれそういう人たちが開業されることもあるかもしれません。そうい うキャリアパスをある程度入れるものを作る必要もあると思います。  もっと言うと、これはまたいろいろ問題があるかもしれませんが、開業す る段階である種のプログラムを経ないと開業できないということも、加味し てもいいのではないかと思います。つまり、ある程度自分の専門としていな い領域を補完するプログラムを、むしろ開業する人はそういうものを学んだ ほうがリスクは少ないので、喜ぶのではないかと思うのです。そのようなも のをつけることによって、GP的要素を高めていけることが1つです。  もう1つは制度上の問題で、24時間対応やいないときの連絡先ということ も当然出てくるので、グループ診療をしているとか夜間やっているときに、 診療報酬上の優遇をするなり何らかのインセンティブを与える。そういうこ とを総合的にやらなければ、この専門医指向の世の中で、若い人がGPになり たいとドッと押し寄せるとはとても思えないので、大きな政策変更が必要で はないかと思っております。 ○山本委員 かかりつけ医の話でだいぶ議論しているので、かかりつけ医、 あるいはかかりつけ医機能は何となくイメージされてきているわけですが、 今回のご提案にあるのは医療提供体系をどうするかの問題と、地域の中でど う医療連携を組むかの大きなテーマがあります。4頁のように新しい概念で 医療計画を組んでいこうということになっているわけですが、2頁にはかか りつけ医と併せてかかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師と記載されています。 かかりつけ医は、自分の子どもの時代を考えてみても、先ほど島崎委員がお っしゃったようにいろいろな形の方々がおられたので、イメージ的には把握 できるのですが、自分の仕事のかかりつけ薬剤師をどう捉えるかというと、 なかなか議論が進まないので、こうした中での位置づけ、皆さん方の概念が なかなか定まらないのです。  「かかりつけ」という言い方がいいのか、どなたかがおっしゃっていたよ うに「いきつけ」という言い方がいいのか、「なじみ」と言ったほうがいい のか。そういう言い方からすれば、もともと薬局なり薬剤師が地域にいたの で、4頁の絵の中でかかりつけ医機能を中心にして、その周辺にある、例え ば薬の部分は無視できないわけで、高齢者で言えば薬は誰が供給するのかを 考えると、かかりつけ医の機能を議論しながら、かかりつけ歯科医もそうで すし、かかりつけ薬剤師、薬局等も同時に、どういう概念がいいのかを議論 していかないと、組み上がったときに、医科を中心に動くことについて私は 決して否定はしませんが、具体的な機能として地域連携を始めるときに、少 しトラブルが起きるのではないかと思います。我々自身がどう位置づけてい いか、まだ自分たち自身がこういう場で議論をしないので、イメージとして 湧かないのですが、少なくともかつては食住接近をしていた薬局が、ビル診 のようにビル薬局になりつつあることについては、多少の危機感を持ってお ります。我々も地域の中で動くためには、どれほどの間地域の方々に、少な くとも薬に対する問合せを受けられるか、24時間は難しいですが、そうした 体制を組むような議論をどこかでしていく必要があるのではないかと思いま す。そうしたことがないと、体系としてどこか手落ちが出てきてしまう気が するので、その辺りも何かの折に議論をしていただきたいと思います。 ○梁井委員 イメージ的には、かかりつけ医、あるいは理想的にはかかりつ け医と、いろいろなところが議論できると思うのですが、実際には全く意味 がない。なぜ意味がないかというと、先ほど遠藤委員がおっしゃったように、 かかりつけ医になりたくなるようなインセンティブが働かないと、そういう 人たちがいないことには、いくらかかりつけ医の話をしても意味がないわけ です。  実際に病院は非常にハードであることから、当直もハードだから開業する 場合、当然24時間体制では開業しないわけで、どうしても9時5時になりま す。24時間体制がいやだと、それも1週間に2回の24時間体制ですらいやだ という人たちが、かつては違ったかもしれませんが、最近病院からどんどん 開業されるところがまま見られることからすると、言葉でかかりつけ医と言 っても、そう簡単なものではないのです。  私も齋藤委員と同様に大学病院ですが、患者さんがいらっしゃると、大体 40%ぐらいが紹介で、あとの60%はかかりつけ、あるいは紹介ではありませ ん。そうすると、かかりつけ医ではない、かかりつけ病院として大学病院を 選んでいるのです。確かに救急病院でもあるし、いつでも診てくれるだろう と。だから、今後どうしたらいいかは、かかりつけ医としての質を上げるこ と。それには、診療報酬上、並びにいろいろな財政上のインセンティブを与 えるところに持っていかないといけないと思います。とりあえずどうするか というと、救急体制とのコンビネーションで、いまの9時5時の開業をして いる先生方とのコンビネーションをうまくやっていくという、救急体制の充 実のところに持っていくのが大事ではないかと思います。 ○座長 遠藤委員と同様に、インセンティブ、キャリアパスなり報酬なり、 救急体制を別に作るということもありました。 ○山崎委員 6頁の救急医療体系図について、かかりつけ医をサポートする のに救急医療が必要なことは非常によくわかるのですが、これに書いてある ように、当然救命救急センターあるいは新型救命救急センター、総合周産期 母子医療センターなどが健全に動いているという前提で考えるわけですが、 いまの医療体制の中で、救急医療体制自体が完全に崩壊してしまっています。  先日ある報道を読んでいたら、2,000万人の患者が救急車で搬送されるのに、 救急専門指定医は2,000人しかいないのです。先ほど和田委員がおっしゃっ たように、365日24時間小児科を診てくれる先生はいないわけですね。では、 小児科や出産を含めてそれだけの病院が担保されているかというと、いまど んどん診療閉鎖したり外来を止めたり、都立病院でさえ“新規分娩お断り” という状況になってきています。日本の中心部の東京でさえ、救急が完全に 崩壊しているわけです。  そういうことを論議するならば、次の検討会まででいいのですが、平成19 年3月31日現在で救急センターがきちんと稼働しているかどうかの調査の資 料を、是非ともいただきたいと思います。そうしないと、ここでかかりつけ 医ばかり議論しても、重篤な患者を送るところがなくなってしまっているわ けですから、話をしても意味がないのではないかという気がします。  また、新医師臨床制度を作って何が弊害かというと、現場を見てしまった から、大変なところにドクターが後期研修で入らなくなってしまっています。 昔は、大学を卒業して直接医局に入ったので、運動部の先輩、後輩という関 係で引っ張られて入って、とんでもない所に入ってしまったけれど、しよう がないから頑張ろうというドクターが多かったような気がします。前期研修 で大変な所を回ると、大変な所をみんな経験したから、当直がない、救急の 患者が来ない診療科に、新しい後期研修のドクターが集中しているわけです。 だから、その辺りの新しい供給体制の弊害を含めて、救急がきちんと稼働す るようなシステムを作らないと、一方でかかりつけ医ばかり整備をしても、 全然意味がない気がします。 ○島崎委員 私は、医療供給体制の問題は構造問題だと思うのです。構造問 題であるがゆえに、どこかを押さえるといろいろなところに波及してくる部 分があるはずです。そうすると、一種の「へそ」というか急所は何かという と、私はいま議論しているかかりつけ医とかプライマリケアの部分だと思う のです。同時に、梁井委員がおっしゃったように、そこの部分が立ち遅れて いるがゆえに、いろいろな問題が起きているのも事実だと思います。  例えば、前に申し上げた5頁の資料に、「かかりつけ医機能(診療所・一 般病院等)」と書いてあるわけです。なぜ一般病院が入っているかというと、 専門分化が進んでいく中で、あるいは診療所が職住分離してきた影響もある と思いますが、診療所が24時間・365日の対応が困難になってくると、現実に かかりつけ医の機能あるいはプライマリケアのかなりの部分について中小病 院がカバーしてきたことも実態としてあると思います。そういう中で、ある べき医療供給提供体制を考えるときに、このままでいいのかと言えば、私は よくないと思います。なぜかというと、機能分化が進んでいく中で、あるい は医療資源の有効な配分を考えていく上では機能分化は必要なわけですが、 そうすると、どうしても医師と患者の関係は「ぶつ切り」になるので、その 関係をつなぎ止めていくことがどうしても必要になってくるだろうと思いま す。したがって、全人的な医療を行う医師はできっこないと諦めるのではな く、何が問題でどういう機能が必要で、それを育てていくためにはどうすれ ばいいのかを真剣に考えていく必要があると強く思います。 ○内田委員 かかりつけ医の24時間対応の話題が出ていると伺いますが、か かりつけ医に何を求めるかがはっきりしないですね。かかりつけ医の24時間 対応といっても、時間外はかかりつけ医が1人でいるわけです。スタッフも いない、機械も動いていない、薬も出せない状況が、都市部の開業医の先生 ではほとんどだと思います。  その場合に、救急や診療をかかりつけ医に求めることは、かなり厳しい条 件がかかってくるのではないかと思います。実際には、普段かかっている患 者からこういう状況になったとの相談は、私が知っている限りの先生は受け ています。ただ、相談を受けて、その状態であれば薬を飲みなさいとか、救 急車を呼びなさいという対応であって、自分の所に来て、診療して、最後ま で完結するような医療の提供をなさっている先生は、まずいません。ですか ら何を求めるのか、本当の医療、完結するような医療を求めるのであれば都 市部においてのかかりつけ医の役割とは少し外れるのではないかと思います。  先ほど梁井先生もおっしゃいましたが、病院の先生がどんどんやめて開業 していくというのは病院の給料が安いとか、経済的なものではないと認識し ています。これは、勤務があまりにも過重だからであるということだと思い ます。かかりつけ医は先ほど言ったように、急変した場合の対応というのが 非常に困難であるし、ましてや普段診ていないような患者が急に状態が悪く なったから診てくれと言われる対応に関しては患者との信頼関係もないです し、非常に厳しいものがあると思いますので、こういうものを救急で対応す る。先ほど山崎委員もおっしゃったような救急体制のバックアップをしっか りする。機能分担と連携をしっかりするというところが、本当のポイントで はないかと思います。ですから、かかりつけ医はあくまでも時間外に関して は相談機能であって、振り分け機能であって、そこのところでしっかり対応 することが大事ではないかと考えています。 ○指導課長 6頁の救急医療体系のところで、山崎委員からかなり過激なご 指摘が出ましたが、議事が公開されている件もありまして事実関係だけをお 伝えしておきたいと思います。6頁のいちばん左の上に救命救急センターを 含めて、こうしたセンターがきちんと動いているのか、完璧に崩壊している のではないかということをおっしゃったので、完璧にの定義はなかなか難し いところですが、私どもは必ずしもそうは思っていません。救命救急センタ ーは数の問題からいいますと、人口10万あたりで100万ぐらいを1カ所、あ るいは県庁所在地程度と考えています。そう考えますと現在201カ所ありま して、数的にはまあまあそれなりのところに来たのだろうと思っています。 もちろん、北海道や東北の一部のように非常に面積が広くて、十分にカバー できていない地域はあるものの、量的な面ではそれなりに全国レベルではカ バーできている。  総合周産期母子医療センターもそうですが、救命救急センターについては 診療報酬上、点数をここで申し上げるのも何ですが、1日あたりの点数が相 当評価されていまして、むしろ設備整備の補助金は要らないから、救命救急 センターに指定してほしいという医療機関が私どもの所にも連絡があるぐら い、わかりやすく言うと人気があると言っていいと思います。ただ、そこに おられる先生方が、もしかしたら疲弊されているかもしれないとか、総合周 産期母子医療センターのように人員もあるし設備も整っているけれども、た またまNICのベッドが塞がっているケースはあるやに聞いていますが、診療 報酬の面でもいまの数の面でも、それなりには評価を受けていると思ってい ます。また、救命救急センター自体の稼働状況については外部評価の形で評 価をして、A、B、Cのような形でランキングを付けていただいて、かつてはB ランクのところもあったわけですが、現時点では最低線に相当するAランク のところは全部いただいてやっています。昨年度は198カ所で行いましたが、 すべてAで、今後この指標がいいかどうかは別ですが、救命救急センターに ついては今後も外部評価を含めて評価をしていきたいと思っています。  このほかは時間がありませんので申し上げませんが、中段から上の救急の 拠点病院とか輪番病院については、去る平成18年4月の診療報酬改定で24 時間365日、救急に従事する医療機関については相当に診療報酬上の評価が ありました。例えば、非常に有名な大阪の豊能。人口100万人ぐらいを相手 に24時間365日に近いような形で、実際には平日はやっていないですが、夜 間、深夜帯も含めてやっている豊能のような所でも、もう少しで十分ペイす るところにまで診療報酬上も評価されたと聞いています。そういう意味でお 言葉ではあったのですが、真ん中より上については相当の実績も上げている し、それぞれの病院もモチベーション、モラール高くやっていただいている ものと認識しています。以上です。 ○坂元参考人 住民の方でかかりつけ医というイメージとしては、最初に予 防接種がどこでできますかということから年齢的には大体始まります。それ で、その予防接種協力医の名簿をお渡しすると、ほとんどの方がご自分で選 んで決めています。予防接種の場合は継続的にやっていかなければならない ので大体1カ所に決めてやられている。あとは、先ほど言った40歳から始ま る老健の健診をどこで受けたらいいかという相談を受けて、それを紹介する とそこで定期的に受けていくことになります。あとは介護保険の認定とか在 宅医療とか、その辺で行政的にはかかりつけ医を紹介してくださいというこ とがあります。先ほど内田委員も言いましたように救急というかたちでかか りつけ医を紹介してほしいというのはあまり来ていないのです。行政として は、大体どこでも救急情報センターは24時間やっていまして、住民がそこに 電話をかければ24時間、いまこの病院がやっていますという救急の当番を決 めていますので、そういう所に紹介するシステムがほとんどの自治体ではで きているのではないかと思います。  ただ問題は、病院のベッドの空き状況がリアルタイムで乗ってこないので、 そこの病院に行ったらベッドが全部塞がってしまって他へ行ってくださいと いうことで、しばしばたらい回しになって苦情というのは来ますが、その辺 のリアルタイムでのベッドの状況をどうしていくかを自治体ではいま課題に しています。 ○座長 ほかに医師確保の関係はよろしいですか。 ○山崎委員 先週の国会答弁で、厚生労働大臣が医師は偏在であって、不足 はしていないという答弁がありました。あれは平成9年6月に、橋本内閣の ときに新しい医師を増やすことは医療費の拡大を招くということで、これ以 上医師は増やさないという閣議決定をしています。その閣議決定に縛られて、 ずっと厚生労働省は医師は間違っても足りていないということを言えないま まで今日まで来ています。実際に現場でどうかというと、先ほどからお話が 出ているように勤務医がやめて開業するということで、絶対的な勤務医の数 がここ1年ぐらいで大幅に少なくなっています。勤務医が少なくなって残っ た勤務医がハードになるから、またその勤務医がやめてしまうという負の循 環が繰り返されているわけです。  先週も、友達というか30歳代のドクターと会って話をしていたら、8人で 病院の当直を回していたのが12月で4人やめてしまった。いまは4人のドク ターで30日の当直を回す。しかも、当直明けに朝1で心カテか何か入ってい て、これで失敗したらどうするのだと思いながら心カテをしているのが現実 だと。万一そこで失敗したら、先ほどまで先生と呼ばれていたのが次の日は 囚人何号と呼ばれてしまうようなことになる現実があって、非常に勤務医が 怖がっています。びくついているということがあります。したがって、医師 が不足していることをきちんと国がもう1回認めてくれないと、この勤務医 の話というのはいつまで経っても解決していかないのではないかと思ってい ます。 ○座長 事例を引いて、問題をご指摘いただきました。時間がありますので、 いつでも前段の問題に戻っていただいて結構です。連携体制、かかりつけ医 確保の話をしていただいても結構ですが、ここで一応2に移ります。資料2 について、事務局から説明をお願いします。 ○企画官 資料2についてご説明申し上げます。本日のもう1つのテーマ「医 療法に基づく人員配置標準について」です。1頁をご覧ください。いま、病 院等の医療スタッフの配置は、医療法の施行規則に基づきまして人員配置標 準を定めていますが、この仕組みについて非常に古い制度であることもあっ て、その必要性等々についてこれまでさまざまなご議論があったものです。 医師についてご覧いただくと、一般病院でいえば入院患者16人に対して1人、 外来でいえば40人対1人で定められているのが現状です。2頁は、この人員 配置標準で適正な医療を実施するためには、一定水準以上の人員を確保する 必要があるということで、医療機関が有するべき人員の標準として示してい るものです。ただ、実際にこれを満たさない場合であっても、その病院で受 けられている患者の傷病の程度や医療従事者間の連携等によっては、望まし い医療水準を確保することは十分可能ということで、最低基準という位置づ けにはなっていない状況です。注3で、こうした医療法における人員配置標 準を踏まえて特に著しくそれを下回るような場合には、減算のようなことも 診療報酬上されている状況にあります。  3頁です。この人員配置標準については、毎年病院に立入検査、医療監視 が入るわけですが、その際に標欠があった場合には指導の対象になっている というのがあります。それから、前回の第4次医療法改正において、医療従 事者の数が著しく下回って適正な医療の提供に著しい支障が生じるような場 合は、都道府県知事が人員増員命令や業務停止命令を行うことというのが権 限上可能になっている。ただ、特定機能病院に関して申し上げれば員数がま さに承認要件になっていますので、それに違反があれば特定機能病院と称す ることの承認の取消もできることになっています。4頁です。平成16年にま とめられています医療分野における規制改革に関する検討会報告書の中でも、 医療機関の人員配置についてご議論がありました。地域の実情や診療科ごと の特性などを勘案して、医療機関ができる限り自主的に判断することが望ま しいという考え方があるということで、情報公開を進めることによって患者 による選択に委ね、不十分だということであれば排除されるような仕組みに 変えていくことで、この規制そのものを弾力化するなり緩和する、あるいは 廃止することも可能ではないかというご指摘もありました。しかしながら3 つ目の○ですが、情報提供に基づく患者による選択のみでは、なかなか十分 な医療の質が確保されることにはならないのではないかということで、一定 の規制は必要と考えられるということで、平成16年の段階では、今後引き続 き検討していく必要があるようなまとめになっています。  5頁に参考データをお示ししています。いまも医師不足の議論がありまし たが、マクロで申し上げれば真ん中の段で100床当たり従業者数の推移とい うことで、医師の数は平成10年と平成17年を比べましても増えている状況 です。そうした中で、人員配置標準の遵守率ですが、医療法第25条に基づく 立入検査の結果で、平成10年の64.0%から見て83.8%と、20ポイント近く 遵守率は伸びてきている状況にあるわけです。  6頁以下は、これまで人員配置標準を巡って、医療部会なりこの検討会で ご指摘のあったことをまとめたものです。まず、人員配置標準の必要性のと ころですが、病院は全部違うことから標準みたいなものを決めておかないと、 どのような指導をしていくのかということになるのではないかというご指摘。 医療計画で、基準病床数や病床区分などがまだ残っている以上は人員配置標 準をすべて撤廃して、自由にというわけにはいかないのではないかというご 指摘もあります。一方で3つ目の○の2段目に書いていますが、標準がかな り現実離れしているので、今更必要ないのではないか。病院では、当然果た される医療機能なりに則して必要なスタッフ、現場に則した人間を採用して いるので、あまり人員配置標準にこだわる必要はない気がするというご指摘 をいただいています。情報公開との関係では、医師が何人いるかが患者には っきりわかるように公表することが大事だというご指摘もあります。  7頁も、さまざまなご指摘をいただいています。下から2つ目の配置標準 をもって標欠だというのは非常にナンセンスであるから、なくしてもいいと 思う。ただ、国民に対してどの病院に何人いるということは、きちんと知ら せる形を作るべきではないかというご指摘をいただいています。8頁も同様 に(4)をご覧いただきますと、昭和23年にこの制度ができているということで、 非常に古い仕組みであるということで、果たしてこれがいまの時代に合って いるのかというご指摘をいただいています。こうした議論を受けて、9頁に 医療部会の前回のまとめが書いてあります。上の2つは細かな制度の見直し の部分ですが、3つ目の○をご覧ください。病院における外来患者数に基づ く医師数の配置標準については、医師に応召義務があること等から、規定を 置く合理性が乏しいのではないかとの指摘があるということで、当該規定の 必要性については入院機能を求められる大学病院における外来診療のあり方、 あるいは患者への情報提供との関係も含めて本検討会において検討をしてい ただくことになっています。それから人員配置状況などの正確な情報を公開 するということで、そうした環境の整備が行われるのであればこれを緩和す るなど、廃止を求めた見直しも考えられるのではないか。しかし、平成17年 の段階ですが、現状においてはそうした環境が整っていないということで直 ちに人員配置標準を廃止したり、一律に緩和することは困難というまとめに なっていまして、医療の安全や質の確保を担保できる別の方策との組合せに より、何らかの見直しを行うことについて今後の検討が必要であるという結 論に至っています。  10頁は省略しまして、11頁は関連する制度として、ご紹介を申し上げてお きたいことがあります。医療機能情報提供制度が4月から始まります。これ は、各医療機関から都道府県に一定の報告を求めて、それを各都道府県にお いて集約していただいた上で、最終的にはインターネットで検索もできるよ うな形で公表していくものです。その中で病院、診療所それぞれですが、こ こに挙げているように医師数等々医療関係職種の方々の配置状況について、 情報が公開される仕組みがスタートすることになっています。この制度は平 成19年度から始まりますが、本格的に開始されるのは平成20年度中になっ ていますので、このような情報があと2年ほどすれば、すべての都道府県に おいて公開の対象になる状況です。  12頁は、1回目の全体のご議論でいただいたご指摘です。関連して13頁以 降はお求めいただいた資料です。人員配置基準ではありませんが施設基準の 関係で、医療施設について医療法以外の建築基準法、消防法等々によるさま ざまな規制や基準や適合が求められているということで、例示ですがそれを 少し整理したものを14頁にお付けしています。15頁は病室の広さと廊下の幅、 人員配置基準について各国の状況がどうかを既存の文献等から整理したもの です。人員配置基準に関して申し上げれば、日本のように国が一律に定めて いる所は調べた限りでは見当たらなかった状況にあります。以上です。 ○座長 ありがとうございました。残りの時間は、医療法に基づく人員配置 標準についてご質問、ご意見があればお願いします。 ○山崎委員 5頁の資料に「人員配置標準の遵守率」があります。平成17年 度に83.8%という数字が書いてありますが、正確にこの各ブロックの遵守率 をきちんと書いていただきませんと、多いブロックと少ないブロックがあり ます。例えば、東北、北海道は平成16年が61.6%、北陸が78.2%、反対に 近畿は93.4%と平均よりもかなり多いのです。平均して83.8%という数字を 出されますと日本全国全部が足りているように、標欠病院が少ないと誤解さ れると思います。  それと、東北大学の地域医療講座の助教授の実態調査というのが昨年発表 になっています。東北地方の671病院を対象に調査したのですが、青森県で クリアしている病院が39.3%、山形県が43.5%、秋田県が51.5%、岩手県が 56%と、この数字でいう83.8%とは、はるかに懸け離れたというのが実態な のです。どうしてこういう数字になるかというと、全体数の医師が少ないの と、医師を計算するときに決して常勤のドクターの数を計算しているのでは ないのです。常勤のドクターと1日来ているドクターは0.25で計算するとか、 非常勤の先生を含めた計算で、それを全部計算した数で医療法をクリアして いるかどうかをしているわけです。したがって、各病院が各地域において、 ものすごい苦労している実態があるわけです。その一方では、このデータの いちばん最後に付いているように、人員配置基準を一律に縛っている国は先 進国ではないわけです。しかも、昭和23年にGHQの統制下で作られた法律を、 60年近くそのままずっと引きずってきたこと自体が非常におかしいと思うの で、是非この人員配置基準については今回というか、次回の医療法の改正の ときに廃止をしていただきたいと思います。 ○座長 そういうご意見がありました。 ○藤川委員 いまご説明がありました15頁の資料ですが、先進各国では人員 配置基準が定められていない所が多いとなっていますが、これらの国々が人 員配置基準を持たなかった、あるいは持つに至らない背景事情にどういうも のがあるのかということがわからないと、人員配置基準がないから日本にお いてもなくて大丈夫だろうという話は少し飛躍するのではないかと思います ので、どういう経緯で、どういう歴史の中で持たないのかがわかると、さら に議論が多岐にわたるのではないかと思っています。  いまひとつは、確かにこの人員配置基準、標準というのは医療の安全確保 という視点で作られているということで、今後患者側に対して医療実績等が きちんと公開されて、患者がより良い医療機関を選択することが可能になっ てきますと、単に人員だけを定めた外形基準があまり必要ではないと思われ ます。しかし、少なくとも現段階においては安全が確保される、担保される ような環境にはなっていませんので、最少限度必要ではないかと考えていま す。また、戦後間もなく作られてきた配置基準なので、このあたりは実態に そぐわないということであるならば、実態に沿うように変えたらいかがかな と。まずは、そこからスタートすべきではないかと思います。 ○山崎委員 説明が足りなかったのですが、実際に人員配置基準というのは、 診療報酬上で決められています。したがって、その診療報酬上で人員配置基 準を決めているわけですから、医療法の本体で決めて、2つで縛る必要はな いのではないか。医療法で縛らなくても、その診療報酬に応じてこの人員配 置というのは決まっているわけですから、そちらで質というのは担保されて いるわけなので、医療法の本法で縛る必要はないのではないかと思っていま す。 ○坂元参考人 実際に医療監視をやっている立場からして、最近特に感じる のは病院外来の医師数の配置基準です。なぜかというと、私は川崎ですが東 京や横浜でも同様のようですが、病院が外来をそのまま外出しにしてきてい ることです。つまり外来部門を切り離してしまって、外に出してしまって診 療所とする。法律上は、外出しして公道に面していれば、もう別のものなの です。私たちの市内でも病院の外来外出しがだんだん増えてきて、診療所か らあれはフェアではないのではないかという苦情も来ております。外来診療 部門の外出しというのが現実にかなり起こってきているということで、外来 の医師数の標準が実態に合ってきていないのではないかという感じがしてい ます。 ○梁井委員 古い制度を見直す際に、古くてもいいものもある。したがって、 現在の問題点がどこにあるか。山崎委員が1つ例を挙げて、わかりやすく説 明してくださったと思いますが、実際にほかにどういう齟齬が現在の制度の 中にあるかということです。ですから、もし現状の問題点としていまの制度 が厳しいのであれば多少柔らかくしたほうがいいし、柔らかすぎるのであれ ば厳しくしなければいけないし、その辺が今回の資料の中ではなかなか見え てこない。よその国がやっているからそうだというのは、全く理由にならな い。したがって、確かに医療法上縛ると、今度は医療監視等々をやったとき に、なぜあの病院をつぶさないのかという監視する側の首が絞まる。かえっ て病院の現場よりも、それを監督するほうが捕らわれていることがあれば、 それはそれとして現在の問題点がどういうことかを明らかにしないと先に進 まないと思います。私にはよくわからないのですが、やはり診療報酬上でし っかりやっておけばいい。ただし、どこか途中の資料にありましたが、駄目 なところは医療機関が淘汰される。淘汰される前に患者に迷惑がかかるとい うことがありますので、最低限のある一定の医療法上の縛りを持って、それ をクリアできない場合にはそれなりの処理をする。ただし、どうしても現状 に合わない部分については診療報酬上のところでの加減をするとか、現在の 問題点をもう少し明らかにする必要があろうかと思います。 ○島崎委員 私も同じ意見で、現状に合わない部分は見直しを前提に検討を 進めることが必要ではないかと思います。ただ、この問題は単に外来に対す る配置標準の問題にとどまらず、診療報酬の問題も絡んでおり、最初の回で も申し上げましたが、入院だけでやっていけるような病院の診療報酬という ものの手当が必要です。また、診療所も医学・医療の進歩に対応し病院が行 っている外来機能を引き受けるためのスキルアップも必要になりますし、患 者の側も病院の外来を安直には受診しないといった認識を持ってもらう必要 がありますし、いろいろな要素や条件が関わってきます。したがって、一概 にこれを全くなくしてしまう議論ではなくて、現状を踏まえつつ必要な見直 しを前提に検討すべきではないかと考えます。  病院の外来というのは、紹介外来、救急外来、特殊専門外来に特化してい くのが今後の方向性としては必要だと思いますが、その辺も含めて診療報酬 体系の裏付があって初めて実現することですから、それを前提に検討してい ただくことが必要ではないかと思います。 ○西澤委員 似たような意見ですが、外来でも機能というのがあると思いま す。ですから、病院でも専門外来だけをやっている所、あるいは中小病院の 場合だったら診療所と全く変わらない外来機能の病院もある。最近は、診療 所でも非常勤の先生が専門外来をやっている。そうであれば、機能に応じて の人員配置や報酬を考えるべきだ。その根底を抜きにして議論していても、 全く始まらないなと。それから、外来40人に1人というのがあるのが良いか 悪いかより、どうしてできたのかなと。どうしてもその理由がわからない。 そのあたりは既にあるから残すべきだではなくて、どうしてこれができたの かをもう1回説明していただいて議論する必要があるのかなと思っています。  事務局に質問です。5頁の参考データの100床当たりの従業員数で、例え ばドクターの数はジワジワ増えていますが、外来の数はどうなっていますか。 入院だけで見ているのか、外来を入院に換算してやっているのか、そのあた りを教えていただきたいと思います。 ○企画官 いま、手元にこれ以上のデータを持っていませんので、確認をさ せていただきたいと思います。 ○鈴木委員 こういう席で、医師が過剰であるという話題が出ているのでし たら配置基準はいらないと思いますが、足りない以上は必要な面があるので はないかと思います。 ○山崎委員 よくわからないのですが、足りないからどうして必要なのでし ょうか。 ○鈴木委員 質の担保という点では、必要ではないかという意味合いです。 ○山崎委員 先ほど問題の提起をしたのですが、医師が足りているというの を国では本当にそう思っているのでしょうか。というのは、OECDの平均でい うと人口1,000人に対してドクターが3人です。ところが、日本は1,000人 に対して2人しかいないわけです。そうすると、単純にOECDの平均値に合わ せるには1人追加しなければならない。3人にならない。5割増やすという ことは、いま医師が25万人から26万人として13万人を増やすと、初めてOECD の平均のドクターの数になる。一方で少子化があるわけだから、そんなに増 やしてしまったら大変だろうという議論はあるのですが、医師の養成という のは大学に入れてから普通に働けるまでに10年かかるわけです。いまの日本 の医療の状態を見ていると、イギリスのサッチャーがその医療制度をいじっ て、散々いじめて崩壊させてしまって、イギリスのドクターとか看護師がみ んな海外に出ていって、イギリス側の医療は完全に崩壊してしまいましたよ ね。2002年に慌ててブレア首相が向こう5年間で医療費を5割アップする。 それから医師も5割増やすということで、その年から医学部の定員を40%増 やしています。それだけの狭心剤を注射しても、イギリスの医療というのは 全く改善されていないわけで、ここでそろそろブレア改革をするようなとこ ろまできているのに、相変わらずいろいろな国会審議の中でも医師が足りて いると言われていると、本当に現場で頑張っているドクターが疲れてしまっ て、いい加減にしてくれということで、みんながストライキを始める寸前ま で来ているのではないかと思います。今日はマスコミの方もたくさん見えて いるので、そういうことをきちんと国民に知らせてほしいと思います。 ○内田委員 医師確保、医師不足の話に戻っているみたいですが、人員配置 標準について私の考えを申します。医療安全対策とか、そういうところを考 えますと、現状の中では全部をなくしてしまえという議論は乱暴であって、 先ほどから話が出ているように現状のままでは問題があるだろう。ですから、 今後の医療提供体制も踏まえた上で、どういう医師配置基準、人員配置基準 が適正なのかを検討していきましょうというところではないかと思います。 その中には、先ほど申し上げたような外来機能のあり方であるとか診療報酬 であるとか、そういうところの検討を併せてしなくては話が進まないのでは ないかということです。  いまの医師不足、医師確保の問題ですが、私は日本医師会でもOECDのデー タを出して、日本の医師は圧倒的に数が少ないということを発表しています。 医療というのは労働集約型の産業ですから、医師の数が増えれば増えるほど 良い医療が提供できるのはまず間違いないところで、ある程度のレベルまで はそういう議論ができるかと思いますし、なおかつ現状の医療が非常に高度 化してきているとか機能分化してきているとか、あるいは医療安全対策が非 常にうるさくなってきているとか、会議や書類も多い。おまけに、民間保険 の書類まで課されるといったようなことで忙殺されている中で、勤務医がや めていく現状があるわけです。  病院の現場は、確かに医師が足りない。これは間違いのない事実だと思い ます。特に、現状では産科が明らかに足りないです。今後は、おそらく救急 と外科の医師が非常に不足してくるのではないか。現状でも、ある大学で外 科系の医師が1人しか入らないとか、外科系の中では形成外科しか入らなく て、ほかの科はほとんど希望者はいないという現状が耳に入ってきています。 そういう点では危機的な状況にあることが一方でありますので、これに対す る対応というのは配置基準とはまた別にして、別の検討会で検討することに なっていますので、この場ではなくてそちらのほうで主張していきたいと思 います。医師を増やすという中長期的な対策もありますが、とにかく現状で 崩壊しかかっている病院の医療をどうするかが非常に重要な課題だと思って います。 ○座長 時間を十分に取って考えましょうということですね。 ○島崎委員 人員配置基準については、ほかの委員がおっしゃったことと変 わりはないですが、仮にもし本当に人員配置基準を廃止する場合には、それ に代わるべき担保をどうするかが出てくるだろうと思います。先ほど外国で はという話がありましたが、例えばすべて国営でやっている国の場合、自ら が直接コントロールしてしまえばよいわけですから、外国の例を引き合いに 出し直ちに日本の政策論に持ち込むことは多少乱暴なように思います。  外形的に医師が患者に対して何人配置されているとか、看護師が何人配置 されているかもさることながら、本当のことを言うと、そこでの質というか トータルとしての病院の質のようなものを本当に評価していかないと駄目だ と思います。それは、もちろん医療法上の話ではなくて診療報酬上の話だと 思いますが、外形上ストラクチャーとしてどうなのかという話ではなくて、 むしろプロセスさらに言うとアウトカムの評価が必要であり、そこはなかな か難しい面もありますが、少なくともそういう方向をあるべき姿としては目 指していくべきだろうと思います。  医師不足について言うと、私も特に地方の病院とか医療機関のヒヤリング をしており、かなり危機的な状態に陥っている所が多いという印象は抱きま す。ただ、この問題はきちんとしたデータで議論する必要がある。つまり日 本全体でトータルとしてどうなのかということと、その中で地域偏在をして いることに由来する部分がどの程度なのかとか、あるいはそもそもペーパー ワークが多いとか機能分化がきちんとされていないために医師の業務が過大 になっている分がどの程度あるのかなどが複合しており、これらはエビデン スベースで議論すべき問題だろうと思います。 ○山崎委員 医師の勤務時間の問題を検討してほしいと思います。医師需給 のあり方検討会は昨年の7月に最終報告書を提出したのですが、それは先ほ どお話したように平成9年の閣議決定がありますので足りているという報告 書を書くしかしょうがないということで、そういう報告書になっています。 そこの中で非常に気になっている点は、医師の必要数を48時間勤務で計算し ています。うちの病院でも労働基準監督署が来ると、一般職員は40時間の就 業を義務付けるというか、きちんとそうしなさいよという指導を受けるわけ です。医師だけ、どうして48時間勤務しなければいけないかということがわ からない。  それから、実態勤務の計算をしていると、先日の国会で厚生労働大臣が答 えていましたが、60数時間あっても実質勤務している時間は48時間で、自己 研修があったりウェイティングしている時間が勤務に入らないとか、あるい は当直している時間は勤務時間に計算していない。本来厚生労働省というの は、厚生省と労働省の両方があるわけですが、全然労働時間を守ろうともし ないで48時間働けること自体が、そもそもおかしいと思います。したがって、 若い医師が恋愛して結婚して子供を教育したいと考えたときに、いまの勤務 時間で健全な家庭生活がきちんと作れるかといったら、とてもではないけれ ども作れないような労働を強いて、日本の医業というのが成り立っていると したらとんでもない間違いであって、医師は40時間働けばいいのだとして欲 しい。また、週1日ぐらいの当直はしょうがないよというところぐらいまで 医師の数をきちんと担保してくれなければ、どんどん優秀な人材がほかの業 種に逃げていってしまうのではないかと思って心配しています。したがって、 医師の40時間勤務というのをきちんと厳守ができるような医師の数と診療報 酬の体系を国として作っていただきたいと思います。 ○坂元参考人 我々は、全国衛生部長会というところで二次医療圏ごとの救 急、小児救急、周産期プラスへき地医療という点で、全都道府県に医療圏ご とにどの程度の問題があるかを調査したデータがありますが、これを見ると 都市部は比較的充足されていて、地方は圧倒的に深刻な状態だと思います。 それから三年次目、つまり後期研修医が、いったいどういう診療科目を選ん でいるかという全部の都道府県の研修医の調査をすると、5県が産婦人科志 望ゼロというかなり深刻な状態なので、これを見る限り産科はかなり危機的 な状態にあるのではないかということです。全国衛生部長会の中では都道府 県の抱えている背景によって意見はさまざまですが、1つ集約すると自治医 大の定員枠を増やしてほしいことと、地元にある国立大学の地域枠を設定し てほしいとか、へき地におけるいろいろな診療加算等々をもっと見直してほ しいと、医師不足の起こっている都道府県からはそのような意見が出ていま す。以上です。 ○和田委員 医療を受ける側から、最近の新聞で特に医療に関して読んでい ますと、奈良の妊婦のたらい回しの事件から勤務医の6割の先生がやめたい と言っている調査とか、循環器病センターのICUの先生が全部やめたとか、 医療を受ける側からして、いまの医療はそれぞれの委員の先生と同じように、 かなり危機的な状況にあるのではないかという認識は多くの方が持っている と思います。しかし、一方で財源の問題があって、医療費の自己負担をどう するのかということも、もっと医療を受ける側が考えなければいけないので はないかなというのを今日お話を伺っていて、きっと医療を受ける側も同じ 意見なのだろうなと思います。  もう1つは配置基準に関してです。人員配置に関する情報提供は非常に重 要だと思いますが、一方で今日の資料にありますように外来の40対1という ものが適正であるということを知っていて、かつ1日平均外来数が何人だと いうことを知っている人であれば、医師の数が何人いるというのを見たら、 これは良い病院、悪い病院というのがもしかしたらわかるかもしれませんが、 一般的には40対1は誰も知らないですし、1日この病院の外来患者の平均は ということもわからないと思いますので、ただ単に情報提供をするというこ とでは意味がないと思います。また、東北のほうでは遵守率がかなり低いと いうお話もありましたので、医師の数を出すのであればそれが適正な数なの かどうかということが、一般の方にもわかるような情報提供のあり方を是非 考えていただきたいと思います。以上です。 ○座長 大体時間になりましたので、最後に島崎委員。 ○島崎委員 24時間365日の対応と勤務時間との関係についてコメントしま す。内田委員がおっしゃったように、例えばかかりつけ医が24時間いわばオ ン・コール体制で本当にピリピリしていなければいけないのかというと、そ こは少し違うと思います。それは、違う例で言えば、かかりつけ医あるいは 家庭医でも総合医でもいいのですが、それと在宅医の概念はどこが同じでど う違うのかを思考実験してみるとよいのではないかと思います。在宅医療を 担っている医師がかかりつけ医ではないということはあり得ないですよね。 相当重なり合うだろうと思います。それでは在宅医が24時間たえずピリピリ しているか、しょっちゅう夜間に呼び出されるかというと実はそうではない。  もう1つは、医療の密度が薄い所へのアクセスがよいことが果たしてどう いう意味を持つのかをよく考えてみなければいけないと思います。つまり、 自治体が病院を作り、医師の派遣を求める傾向がどんどん広がっていった。 でも、仮にそこで密度の薄い医療が行われているときに、住民にとって果た してそれがどういう意味を持つのか。例えば、ある程度集約化して、病院に 働いている勤務医も、その労働条件を改善していく。仮に5つ分散していた ときは、それぞれ1人ずつ配置されているとすれば、絶えず24時間365日ピ リピリした状態でいなければいけないわけですが、それをある程度集約化を すれば、医療の密度は濃くなり、また、少なくとも何人かは安息できる時間 が生まれるわけです。併せてそういうことも考えていかないと駄目だと思い ます。 ○古藤委員 いま、医師と看護師については非常な不足が社会的な問題にな っていると思います。散漫ですが、起きている現象の事実は、病院の医師は、 もう疲れきって開業していく。あるいは、女性医師はもう退職なさっていく。 看護師も、退職をしていく形が起きています。これは、大きな赤信号が何箇 月も何年もともっているわけで、取り返しがつかない事態が起きてくるので はないかと思います。厚労省はワークライフ・バランスというきれいな言葉 を使っていますが、医療界においてはこの赤信号を放置してはいけない。医 師が開業し看護師たちはやめていくところを注目して、抜本的な解決が要る と思います。医師も、病院は仕事の量が多すぎます。ナースも8時間勤務で すが、2時間も早く出てくるという実態があります。その中で、私は一般病 床がこの国は多すぎるのではないかという思いが、ずっと付き纏います。医 師の需給問題を検討するときもその問題は出てきましたが、どこか菰がかぶ さっていてタブーのような議論になったように思えております。外来患者が 1つの病院に3,000も5,000も来るというのも異様ですが、一般病床が多い のではないかというあたりも議論の土俵に乗せることが非常に重要ではない かと思っています。そのあたりも併せて、総体的な課題にする必要があるの ではないかという気がしています。 ○内田委員 いま、一般病床が多すぎるという発言がありましたが、今後の 高齢化社会を考えたときにどういう医療提供体制が必要なのかから出発しな いといけない。ただ単に欧米と比べてという水準でのお話では、この話はナ ンセンスだと思います。なぜ日本の医療が、ここまで高い水準で保ってこら れたかということもしっかり踏まえないといけない。ただ単に、欧米と比べ て数が多いだけの話では、この話はナンセンスです。 ○古橋委員 反論するようですが、病床というのは主に医療保険制度下で機 能します。ですから、私は国民が受ける医療サービスは、病院に入院だけを していくことでサービスが十分に受けられるということではなかろうかと思 います。我が国は介護保険も持っていますので、そういう点では医療という 括りの中で生活まで見ていくことに対して大いに議論が闘わされていいと思 っています。一般病床の適切規模について看護職としては一般病床が多いの ではないかという思いがあります。療養とか介護は別ですが、そこの議論は しっかりとなされていいだろうと思っています。 ○山崎委員 私事になりますが、昨年から年金をもらっていますが、まだ現 役で当直をやっています。当直をやった次の日に外来をやりますが、当直明 けの看護師は「先生さようなら」と言って帰れます。私は、そのあとに外来 をやって病棟の患者を見て、家族に会って6時半ごろまで当直明けでも勤務 しています。そこで、当直明けで「はい、さようなら」で帰れる看護師の苦 労と医師の苦労とでは全然違うような気がします。 ○座長 最後は、医師側と看護師側の対決みたいでまずいと思いますので、 そこはこの会の本筋ではないと思います。いろいろな意見が出まして、事務 局として整理すると大変いい材料になるような日本の医療の危機に関する発 言もありましたし、理論的整理もありましたので、今後の議論のために話が 出た順番ではなく、整理をお願いします。私どもも協力します。また、いく つか資料の要求もありましたので、可能なものについてはご準備をお願いし ます。  事務局から、次回以降の予定について簡単に説明をお願いします。 ○企画官 ありがとうございました。今回で一応、予定していました検討項 目について一通りご議論いただいた形になります。次回以降の進め方ですが、 まだ座長とも十分にご相談ができていないのですが、いまお話にありました ようにこれまでのご議論を少し事務局なりに整理をしまして、テーマごとに さらなるご議論をお願いできればと思います。  次回の日程は、現在調整をしている最中ですので、また改めてご連絡申し 上げたいと思いますが、我々としてはできれば4月中にもう一度お願いをで きればと考えています。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ○座長 本日は、これにて閉会したいと存じます。私としては、大変皆様方 から多岐にわたる議論をいただいて、メモしたものを整理するだけで相当考 えが進みそうな会でした。感謝します。ご出席いただきまして、ありがとう ございました。 照会先 医政局総務課 高島 柳田 連絡先:03−5253−1111(内線2519)