07/03/22 第5回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第5回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 日時:平成19(2007)年3月22日(金) 18:00〜20:40 場所:厚生労働省省議室(9階) 出席者:  委員   柏女座長、奥山委員、庄司委員、松風委員、山縣委員、吉田委員  事務局   香取総務課長、藤井家庭福祉課長、佐藤家庭福祉課専門官   鈴木家庭福祉課措置費係長 議題:  1. 関係者ヒアリング     ○全国児童家庭支援センター協議会        会 長  岩城 満氏        副会長  長縄 良樹氏        副会長  藤井 美憲氏     ○全国児童相談所長会        八王子児童相談所    所長  江角 義男氏        神奈川県中央児童相談所 所長  小林 秀次氏     ○全国母子生活支援施設協議会        会 長  村田 巧氏        副会長  兜森 和夫氏        副会長  大塩 孝江氏     ○児童養護における当事者参加推進団体 日向ぼっこ        代 表  廣瀬 さゆり氏        顧 問  市川 太郎氏             冨塚 正子氏             今井 博氏  2. その他 資料:  資料1 「全国児童家庭支援センター協議会」  「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」への意見書  資料2 「全国児童相談所長会」 「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」ヒアリング要 旨  資料3 「全国母子生活支援施設協議会」 今後目指すべき児童の社会的養護体制についての意見  資料4 「児童養護における当事者参加推進団体 日向ぼっこ」 「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」 ○鈴木家庭福祉課係長  定刻となりましたので、ただ今から第5回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に 関する構想検討会」を開催させていただきます。委員およびヒアリング関係者の皆さま 方におかれましては、お忙しい中お集まりいただき厚く御礼申し上げます。  本日の検討会の委員の出席者は6名です。榊原委員、西澤委員は欠席と伺っています。 なお、松風委員は、所用のため20時ごろに退席の予定です。  また、本日は関係者ヒアリングということで「全国児童家庭支援センター協議会」、「全 国児童相談所長会」、「全国母子生活支援施設協議会」、「児童養護における当事者参加推 進団体」の四つの団体から代表の方が出席されており、各団体のご意見をいただくこと にしていますので、ご紹介させていただきます。  まず、全国児童家庭支援センター協議会の岩城会長です。 ○岩城氏  こんにちは。岩城です。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、長繩副会長です。 ○長繩氏  よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、全国母子生活支援施設協議会より、村田会長です。 ○村田氏  よろしくお願いいたします。 ○鈴木家庭福祉課係長  兜森副会長です。 ○兜森氏  お世話になります。よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  大塩副会長です。 ○大塩氏  どうぞよろしくお願いいたします。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、全国児童相談所長会を通じまして八王子児童相談所の江角所長です。 ○江角氏  よろしくお願いいたします。 ○鈴木家庭福祉課係長  神奈川県中央児童相談所の小林所長です。 ○小林氏  よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、児童養護における当事者参加推進団体、「日向ぼっこ」の廣瀬代表です。 ○廣瀬氏  よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  市川顧問です。 ○市川氏  市川です。よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  冨塚さんです。 ○冨塚氏  よろしくお願いいたします。 ○鈴木家庭福祉課係長  今井さんです。 ○今井氏  よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは、議事に入りたいと思います。柏女座長、よろしくお願いします。 ○柏女座長  年度末のお忙しいところ、委員の皆さま方またヒアリングの団体の方々には、お集ま りいただきましてありがとうございました。  3回にわたって関係団体からヒアリングをさせていただくということで、今日は3回 目、最終日ということで、4団体の方々にお忙しい中をおいでいただいております。よ ろしくお願いします。  まず始めに、お手元にお配りしている資料についての確認を事務局よりお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは、資料の確認をさせていただきます。上から順番に「第5回議事次第」、そ れから「配付資料一覧」。その資料1として、全国児童家庭支援センター協議会からの 『「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」への意見書』です。資料 2として、全国児童相談所長会からの『「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する 構想検討会」ヒアリング要旨』です。資料3として、全国母子生活支援施設協議会から の「今後目指すべき児童の社会的養護体制についての意見」。資料4として、児童養護 における当事者参加推進団体・日向ぼっこからの『「今後目指すべき児童の社会的養護体 制に関する構想検討会」への意見』となっています。お手元に資料がない場合はお知ら せください。事務局よりお渡しします。資料の確認は以上です。 ○柏女座長  これは何ですか。 ○鈴木家庭福祉課係長  それは、先ほど全国母子生活支援施設協議会からいただいて配布させていただいた冊 子です。よろしくお願いします。 ○柏女座長  それでは、ヒアリングに移りたいと思います。今日は4団体ということで、ぜひご協 力を賜り効率よく、内容濃く行いたいと思いますので、よろしくお願いします。各団体 から約15分ご意見をいただいた後に、質疑応答の時間を約15分取らせていただきます。 一つの団体で約30分をめどにさせていただきたいと思っています。その後、全体で補 足の質問等を15分ほどいただいて、20時20分ぐらいまでをめどに進めていきたいと 思いますので、ぜひご協力をお願いしたいと思います。過去2回の経験から申しますと、 ご説明の後に各委員からの質問が結構多いので、恐縮ですけれども、ご報告の時間につ いては15分を厳守でお願いできればと思います。  最初に、「全国児童家庭支援センター協議会」からご意見をいただきたいと思います。 どうぞ前の方へお願いします。よろしくお願いします。 ○岩城氏  皆さん、こんばんは。全国児童家庭支援センター協議会の会長をしています山口県か らまいりました岩城と申します。どうぞよろしくお願いします。  児童家庭支援センターが設置されましたのが平成10年です。このときの一番のポイ ントとして、早速手が挙がった児童養護施設から始まりました。手が挙がる施設は、や はり積極的に地域社会の要保護児童に関することについて、それまでも施設内で相談を 受け付けていて、そういうことを初めからやっている、養育相談所のような形で自ら看 板を掲げてやっているという所が結構ありました。しかしながら、なかなか増えていか ない。これは都道府県の問題があります。  ご存じのように「子ども・子育て応援プラン」の中で、平成21年までに100カ所に するということでありますけれど、なかなか増えていかないという状況にあり、現在64 カ所です。やはり、インパクトが弱いということがあります。しかし、それぞれのセン ターは大変、一生懸命頑張っており、民間型ですので、本当に24時間体制で行う部分、 そして24時間をセンターの職員だけで電話を転送してきちんとやる所もありますし、 児童入所施設に付置されているということで、児童養護施設の方で相談を受ける。相談 を受け付けたりすることになると児童相談所と組んで、どのように電話相談を受ければ よいのかという勉強会をしたりということもあります。私は「家庭支援に関する課題に ついて」の1ページと裏の1ページの要点だけご説明して後は副会長に補足してもらお うと思っています。  それでは、後で最後のページを見ていただければと思いますが、相談受付件数は着実 に増えているということも事実ですし、虐待に関する相談については、当然のことです が25条の通告で児童相談所へきちんと報告をしていくということで、児童相談所との 連携がきちんと取れているということがあります。民間という意味では、小さな相談か ら入ってきますが、長期にわたる長いものは1年かかる相談もあります。そういう相談 にもきちんと乗る。それから面接に来ていただく。定期的に来ていただいて相談を受け る体制にもしています。  全体的な話をして申し訳ないのですけれど、中でも今回は、要保護児童対策地域協議 会が設置されるということで、要保護児童対策地域協議会、そして市町村に相談窓口、 児童相談所そして私ども児童家庭支援センター、これがどのようにきちんと明確に位置 付けされるのかということは大変不安に思っています。しかし、民間としては先ほど言 いましたように、民間型としてしっかりと相談の数も増えていますし、きちんとそれを やっているのですが、何しろ数が少ないというところが一番大きな問題であります。  少しポイントを言いますと、児童家庭支援センターの役割がだんだん明確になってい るわけですが、相談だけではなく具体的なサービスを提供する。あるいは問題解決の必 要な方策、対応を相談者と一緒に進めていくということ。それから、サービスに関する 具体的なプログラムを立てて対応するということ。ここの最後のところに書いています けれども、児童家庭支援センターの職員は、専門的な資格あるいはしっかりした経験が ないと採用されない。誰でもよい、学校を卒業したばかりの人を相談員にする所はどこ にもないわけで、そういう意味では、かなりの経験と専門的な資格を持っているという ことです。「センターの位置付けと役割を明確にし、予算と人員配置の充実を図ることで 家庭支援に対応する専門機関として、その内容は確実に向上していくものと思われま す。」と締めています。  次の「社会的養護に関する地域ネットワークに対する考え方」です。ここでは、要保 護児童対策地域協議会の設置が進んできたけれども、これは私どもの地域の話ですが、 今まで市の相談機関として家庭児童相談室があったのですけれど、なかなかうまくいっ ていないのが現状です。よくやっている所もあるようですが、家庭児童相談室が弱い。 そして、それに少し専門家を増やしたものが、保健師が就いて動いているようなことで、 なかなかそこのところが難しい。そういう意味では、児童相談所がしっかりバックアッ プするということについては、私どもの市もしっかりやっているわけですけれど、そう いう中で、要保護児童対策地域協議会には私が代表者で入っています。それから実務者 の方にも私どもの職員が入るわけですけれど、やはりもっと具体的にサポートできる、 施設を抱えていることを含めて、ショートステイ・トワイライトステイ等を含めて具体 的な支援ができるという意味では、もう少し私どもの方に力を持たせてもらってもよい のではないかという思いです。  もう一つは、児童相談所の方もお見えのようですが、指導委託の件数が大変少ないと いうこと。地元の所長たちと話すのですが、「本当にやっていただけますか。大変ではな いですか」と児童相談所が気がねをするといいますか、申し訳ないという感じがあって。 そうではなく、「どんどん使ってください」と。「忙しいでしょうから、フォローしてく れと言われれば幾らでもやるから」と言うのですが、それには予算も何もないまま指導 委託という形になるので、その辺のこともあるのかなという気がしています。  里親については、ここにも書いていますが、養育里親・専門里親という形で里親制度 も変わってきました。社会的養護としての里親ということになりますと、里親の孤立化 も起こり得る。里親との連携や里親自身の自己研修等について連携して、一緒になって その辺を進めていけるのではないか。児童家庭支援センターでは、児童相談所との連携 により里親の研修やレスパイトケア等もやろうと言っているのですが、なかなか上がっ てきていません。育児支援などの具体的なかかわりもやっています。里親に委託された 後のフォローや悩みについて、きちんと受け止めるところがこの児童家庭支援センター ではないかと。そういう意味では、里親たちにも児童家庭支援センターの役割をご理解 いただくことが大事なのかなと。それから、里親開拓の話は、児童相談所にも専門の職 員が配置されましたが、私どもでも、幾らでも里親開拓・支援・連携等について業務内 容を明確に位置付けることができるのではないかと思っています。  「児童家庭支援センターの役割と体制を中心とした施設の在宅支援機能等地域の拠点 としての機能のあり方について」ということですが、当然のことですが、地域に根ざし ておりまして、問題の早期発見・早期予防、あるいは虐待の発見・予防という意味では、 民間型で地域にもっと数が増えれば存在意義は大きいだろうと思います。緊急一時保護 あるいは短期支援事業は当然しているわけですから、本体施設でやっている所と児童家 庭支援センターそのものでやっている所があります。緊急一時保護・短期支援事業・シ ョートステイ・トワイライトステイ等はかなりの数字で挙がっています。市町村が行う 相談援助事業・相談室のような形が出来上がってきていますが、それに対しても十分に スーパーバイザー的な役割が果たせるのではないかと思っています。そういう意味では、 これからより専門性の高いソーシャルワークができるのかなと。  もう一つ、私が一番思っていることですが、児童家庭支援センターは、民間の児童養 護施設あるいは入所施設の母子生活支援施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設にも設 置されていますが、特に児童養護施設に付けることによって、地域とのかかわり・信頼 関係が持てて大変ありがたいことだと思っていますので、すべての児童入所施設にこれ を付置していただくことよって、施設がもっと積極的に地域社会の中で動けるというこ とも感じています。  「その他の意見」ということで、先ほどから何度も申していますが、児童家庭支援セ ンターの増設は、国が100カ所の設置目標を掲げていますが、先の表にも出ているよう に、まだまだ数字が上がってこない。そこのところは、都道府県の問題もあります。ま だ未設置の都道府県については、国からも言っていただいているのですが、どうにかこ れを都道府県に、そして全児童入所施設に付置していくことが望ましいのではないかと 思っています。とりあえずここに書いているのは、少なくとも児童相談所の数ぐらいは あってほしい。そして児童相談所と連携しながら進めていくという意味でも必要なので はないだろうかと思います。  最後に、何度も申しますが、これが有効に動いていく、実は今、予算的には一生懸命 頑張ってもらっていますが少しずつ下がっている。職員は10年になろうとしています ので年齢は上がっていく。そして相談件数も増えているという中で、予算が少なくなっ ていることについては本当に苦しい思いをしています。平成18年度に初めて家庭訪問 指導をするために車を配置していただいたことには、本当に感謝しています。この民間 型というところがポイントですので、その辺りのところで本当にきめ細かくこういうこ とができるのではないかと思っています。  あとのページは、ヒアリングの前に事前アンケートをやりましたが、64センターのう ち55センターから上がった回答について、副会長からポイントだけ説明してもらいま す。 ○藤井氏  アンケートについて説明させていただきます。このヒアリングに間に合うように3月 の初めぐらいからのアンケートでしたので、十分まとまっていない状況もありますが、 現在、全国の64センター中55センターが回答しています。「家庭支援に関する課題に ついて」等、意見書の四つの項目に従って、この中身についての意見を集めた結果が全 部まとまっています。出された意見をそのまま載せているので、かなりの量になってし まったことは申し訳なく思っていますが、各センターの感じている状況を、それぞれダ イレクトにまとめさせていただいています。  意見書にまとめられなかった部分で、後半の「6.一時保護委託、指導委託、ショート ステイ等の受け入れ状況について」があります。ページを付けていないので申し訳あり ませんが、後ろから3ページ目です。これについては、会長から少し話がありましたよ うに、児童相談所との連携を図るのに指導委託の状況を見ていくとよくわかると。全国 55センターで平均3名の子どもの指導委託を受けているという実績になっています。こ れは平成18年2月末までの状況ですので、3月で若干変動はあるかもしれませんけれど も、おおむねこの数字が現在の状況になっています。一時保護とショートステイの状況 についても、ここに書いてある通りです。それから、意見書内容をきちんと根拠付けよ うと、次のページの下の方にある「7.職員の資格について」ですが、現在257名の職員 がそれぞれの経験年数で勤務しているという状況が明らかになっています。それぞれ資 格を持って仕事をしているわけですが、この児童家庭支援センターの職員になる前に、 それぞれどのような資格でどのような仕事をしていましたかということを調査しました。 その結果が最後のページにある「前職の経験年数」です。「職員の資格」、「職員の前職」 と、ばらばらに書いてあるので、統計的には非常にわかりづらい表になっていますが3 分の1以上の方について30年以上の実務経験を持っているというデータが挙がってい ます。  そういう状況の中で、全国のアンケートをまとめた者として、やはり現状は、限られ た職員ですが限られた条件の中で、地域の中でしっかりとした相談体制を整えている状 況が明らかになっていると思っています。365日・24時間という状況を賄うだけでも相 当な体制です。3人の職員でそれをやるという状況もありますので、本体施設の協力な しにはできないのが児童家庭支援センターです。その本体との協力の中で、会長が言っ たように地域で信頼される施設を作ることも可能な条件が整っていくという意味では、 児童家庭支援センターは、施設や地域にとっても、また行政的な観点から見ても、いろ いろな意味で活用できる機能をたくさん備えているセンターなのではないかと思います。 簡単ですけれども以上です。 ○柏女座長  どうもありがとうございます。それでは、10分ほど時間がありますので、委員の方か らご質問等がありましたらお願いしたいと思います。 ○庄司委員  ただ今のご説明で、10年前に制度ができたときには、地域とのかかわりの積極的な施 設が手を挙げたと。その後、増えていかないのは都道府県のせいであるという話だった のですけれども、本体施設の意識の問題はないのでしょうか。都道府県に問題があるの はよくわかりますが。 ○長繩氏  本体、施設全体が児童家庭支援センターを持つことによって職員の意識も全く変わっ てきます。それから、副会長も申しましたけれども、あてにされるという部分を肌で感 じる。24時間、あそこへ行けば何とかなるという信頼度というのが、児童家庭支援セン ターを持つことによって、その施設が本当に住民のパートナーとしての意識付け、職員 自身も「何とかお手伝いできるところは」ということで、その辺の意識改革は、確かに 変わりますね。施設側の問題となると、ローテーションを組めない、要するに職員の一 部の者、主任や園長などに児童家庭支援センターのフォローが入るのです。そうすると、 夜の電話の対応は全職員が意識していないと、今、電話に出ているので風呂に入ってい る方はこちらへなど、現場の者が持つわけにはいかないので、主任クラス、園長クラス がすべて電話を持ち歩く。365日、24時間対応ですから、当然みんなその辺の意識は変 わります。 ○庄司委員  増えないことについて、施設側の意識ということの問題は。 ○長縄氏  そうです。県レベル、いろいろな施設が手を挙げるというのは、みんなやりたい部分 もあるのですが、県の予算的なことでその辺の抑えは多いです。 ○柏女座長  他は、いかがですか。はい、奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  ご説明どうもありがとうございました。一つ二つお伺いしたいと思います。資料の最 後のページでソーシャルワーカー方の資格が幼稚園教諭、保育士、教員免許になってい ます。なかなか社会福祉士が少ないということもあるかもしれませんが、先ほどからコ ーディネーターとしての役を担いたいとおっしゃっているので、ソーシャルワークをき ちんとわかった方を入れないとその辺が難しいのではないかと、少し気になったのでお 伺いしたいと思います。  もう一つは、先ほど協議会との関係ということをおっしゃっていたのですが、その辺 のところも本来なら要保護児童対策地域協議会がある方が連携しやすいのかと思ったの ですが、そこがかえってご心配という点をもう少しご説明いただきたいと思います。  三つ目は、要保護児童対策地域協議会も含めていろいろな連携の中で、NPOとの連携 やボランティアとの連携がどうなっているかをお聞かせいただきたいです。 ○岩城氏  はい。このことについては詳しくまだ調査ができていませんが、一つには今の地域と の連携があります。私自身が主任児童委員を平成6年1月1日からやっているもので、 児童委員やボランティアとのかかわりにおける一番の狙いは虐待予防や虐待防止です。 相談というところは要保護児童のポイントになるわけですが、そういう意味では子育て の孤立化が起こらないようにということで、何らかの形で未就園の乳幼児を抱えている 母と子どもたちが集うようなことを開催したり、その中でボランティアとのかかわりが 出たりしています。NPOでやっているところは、どこにあるかまだ私は調査をしていま せん。資格のことですが、これは藤井副会長から少しお願いできますか。 ○藤井氏  資格に関しては、保育士や指導員の資格で就いている人の方が多いのかもしれないで す。ただ現実的に、そういった方々で就いている方は、少なくとも現場経験5年ないし 10年という実務経験があるというのを前提にしています。保育士がソーシャルワーカー の資格としてふさわしくないという感想もあるかもしれませんが、現実的には児童養護 施設に配置される家庭支援専門相談員の方々は、指導員や保育士の資格を持って、実務 経験で具体的な家庭調整をできるという前提を持っている方であれば、申請を上げれば 承認されるという現状もあります。各市町村では、突然窓口に配属されてわけのわから ない状況の中で、いろいろな相談を受けていくという現状もあるようですから、実質的 には児童相談所との連携、具体的な調整というのは、経験している人の方がスムーズに いくという状況はあると思います。 ○岩城氏  もう一つの質問の要保護児童対策地域協議会とのかかわりですが、先ほど申しました ように要保護児童対策地域協議会には何らかの形で児童家庭支援センターがかかわって います。センター長や室長、私もそうなのですが代表者会議のメンバー、あるいはスタ ッフは実務者の担当で実務者会議に出てくるということでかかわっているのですが、こ こがどこまで地域の中でケースの共有化の部分もあるかと思うのです。その辺りのとこ ろがまだまだスムーズに行っていないです。市町村においては、失礼ですが、まだまだ よちよち歩きといいますか、まだわからないという、電話相談を受けたことがないのが 突然始まったというところがあって、そういう弱さが少しあるのかと私は心配していま す。私の市も作ったときには私が一番に大きな声を出して「本気でやってくれ」と「一 緒になってやる」ということは重々言ってあるのですが、その辺の弱さはまだあるのか、 いずれにせよしっかりしてくる時期は来るかと思います。児童相談所のバックアップに よって良くなっていくと思っています。そこで先ほど何度か言いましたが、要保護児童 対策地域協議会と児童家庭支援センターと児童相談所とのかかわりは、どのように持っ ていくのが一番望ましいのかということについても、これからあり方を検討していきた いと思っています。以上です。 ○柏女座長  よろしいですか。では、吉田委員と松風委員、お願いします。 ○吉田委員  どうもありがとうございました。2点あります。  一つは、児童相談所からの指導委託ですが、その中身はどういう内容の指導委託があ るのだろうかということです。言い換えれば、施設としてはどういうところは受けられ るがどういう点は難しいというのがあるか、教えていただきたいということです。  もう一つは、先ほど民間型の特徴を生かしてということで、地域に根ざしている、敷 居が低いことなどのメリットがあるということですが、反対に民間であることによって 難しくなっている点はどこなのだろうか、どこまで児童相談所をカバーできるのか、そ の2点を教えていただきたいと思います。 ○藤井氏  指導委託の具体的な内容ということですが、一番、児童相談所が安心して利用される ようなケースの場合は、児童養護施設を退所した子どものその後の見守りをしていただ きたいと、全面的にその家庭が安心して退所できる状況ではないと、そういう場合に指 導委託という形で、その後の見守りをお願いされるというケースが多いです。ただ地域 の中で、児童相談所の運営指針にもあるように、児童家庭支援センターの方の関係が密 接であると判断される場合には、指導委託という形になっていきます。児童相談所の大 枠の住み分けとしては、虐待のケースに関しては、児童相談所がきっちり抱えるという 方針を持っているように受け取っています。つまり、専門機関としての児童家庭支援セ ンターが、虐待のケースをそのままかかわっていく権限を持っていないという判断もあ るのではないかと思っています。それから、民間の難しさについては。 ○岩城氏  民間の難しさの部分ですが、当然のことですが私たちには法的な権限がないです。し かし、親から相談を受け、いい関係づくりをしながら家庭訪問までできる環境を作って いくというようなことしかないのかと。そういう意味では、「何の権限があって」と言わ れたら全然できなくなってきます。日ごろからの相談や地域の皆さんから信頼されて初 めてものができていくということでは、きめ細かいいろいろなイベントなどもやらなく ては育っていかないというところがあります。権限がすべてとは申しませんが、やはり きちんと言えるというところも必要なのではないかとは思っていますが、この辺は児童 相談所との連携かと思っています。以上です。 ○柏女座長  はい、ありがとうございます。時間が来ていますので、すみませんが手短にお願いし ます。 ○松風委員  64カ所で、目標を達成しても100カ所というところで、要するに地域的な守備範囲 をどう考えていくのかというところでは、お悩みのことが非常によくわかります。これ からのアイデンティティーとしては、どのように考えていらっしゃるのか、いわゆる広 域的な活動をするということなのか、それとも地域に根ざした各市をターゲットにした 活動をしていくとお考えなのか。もしそうであるとすれば、どのようなアウトリーチを されているのかといったことについて教えていただきたいと思うのですが。 ○岩城氏  最初に申し上げましたが、全国に64カ所、この数字では始まらないわけで、とりあ えず私のところの山口県を見ますと、人口150万人を切っている所で4カ所目という方 向で動いていて、私のところでは東部、西部、中部などとエリアをある程度分けながら 児童相談所と地域分けをしているのですが、全国的には本当にその施設に付いているも のですから、このエリアは私が守るというような話はありません。そこに来やすい、い ろいろな市広報を通したりリーフレットを配ったりしながら、民生委員、児童委員たち の口からここへ相談に来るという程度の地域に根ざした形が今のところは強いと。ご存 じかもしれませんが、もともと1万カ所という話があり中学校区に一つずつと。こうな れば最高だろうと思いますが、先ほどから何度も言いますが、少なくとも児童相談所の 数ぐらいにして児童相談所と同じようなエリアぐらいで動いていく、そのための反りと しては、職員の数の問題やいろいろ今回初めて車も付きましたがそういうこともあり、 四国でやっているようなサテライト方式という形で、福祉協議会に時々、相談窓口を移 すなどをやっている所もあります。以上です。 ○藤井氏  会長、よろしいですか。児童家庭支援センターによって若干、守備範囲は違うと思い ますが、基本的には各市町村を守備範囲とするというのは、どの児童家庭支援センター でもやっていることで、基本的にそれはもうクリアしていることだと思うのです。ただ、 私の所であれば、隣接の市町村、4カ所はそのエリアとして十分に今のところ機能して います。3名の職員配置ということを考えると、そこまでが限界かという感じがします。 毎月1回、乳幼児健診に職員の派遣依頼が来て、3カ所に職員が派遣されていくわけで す。そうすると365日の半分は、それで仕事が埋まってしまうという状況になってしま います。隣接の市町村辺りは賄えるというのが、実態だと思います。 ○柏女座長  はい、どうもありがとうございました。時間を過ぎていますので、以上を持ちまして ヒアリングを終了させていただきたいと思います。もし、お時間の都合が可能でしたら、 最後までいていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。  では、続きまして全国児童相談所長会の方からご意見を賜りたいと思います。よろし くお願いします。15分でご報告を賜りまして、15分の意見交換ということでお願いし たいと思います。 ○江角氏  東京都八王子児童相談所長の江角です。当初、厚生労働省担当者の方からは、全国児 童相談所長会としての意見を求められましたが、この示された質問項目への回答につい ては、そういう分析結果、統一見解というものではないということをあらかじめご了解 お願いします。  早速、(1)から話します。「各措置対象施設、里親における需給の状況」ですが、虐待相 談の増加に伴って保護を要する子どもは増加傾向にあります。東京都ではここ数年、年 末になると施設側に空きがあるかどうかということがまず問題となり、その子どもに合 った施設を選べるような状況ではないことが生じています。また乳児院についても、満 床状態が長期化し、深刻な入所難がここ2年続いています。乳児は一時保護や里親への 一時保護委託も困難であり、各乳児院の暫定定員を外すなどの対応が必要な状況です。  「(2)里親委託が増えない理由(一部里親委託率が高い地域との比較を含む)」里親につ いては、東京都では養子縁組を目的としないで一定期間子どもを養育する家庭を養育家 庭と呼んでいて、ここで言う里親は養育家庭のことを指しています。中黒の一つ目です が、施設入所より里親委託は、実親からの承諾が困難な状況があります。また、被虐待 児・知的障害・ADHD等、特別な養育を必要とする児童の増加で、里親には非常に過大 な養育負担をかけることが懸念される事例、また施設機能を生かして支援する事例の場 合は、施設の方に委託することを選択している状況です。実親がいる子どもが多いわけ で、実親との交流が必要な事例の里親委託の困難性があります。実親との交流を実施す る子どもに対して、子どもの方は揺れ動いて、その対応に悩む里親の心理的負担は少な くありません。当然、児童相談所は、そうした事例については里親からの相談に対して、 助言や子どもへのフォローを行いながら里親を支援していますが、里親委託の困難性が あります。あと、「施設入所児童の里親委託促進の困難性」ですが、施設で安定して生活 している子どもの施設変更については、個別の自立支援計画で児童相談所と施設とは毎 年度意思疎通を図りながら方針を計画していますが、今、子どもにとって施設継続か、 あるいは里親が適当かについて施設と意思疎通を十分に図って促進していかなければな らないと考えています。あと、いろいろと機能のある施設と比較して、里親委託は一般 の家庭ですので、委託後の支援がより重要であります。児童相談所がそれを十分してい くためには、それなりの余裕が児童相談所にないと駄目な状況ですので、東京都の場合 では里親担当の児童福祉司を各所の工夫で配置している状況です。  「(3)里親委託推進のための方策」です。里親キャンペーンなど国を挙げて啓発をやっ ていただきたいと、テレビコマーシャル等もできると思っています。今年度、東京都は 2月下旬の1週間、俳優によるテレビコマーシャルを実施していますが、国の方でもこ うした啓発が必要ではないかと考えています。あと、「里親委託の承諾が得られなくても、 同意があったものとみなす根拠規定の提示」を国の方で示していただければと思ってい ます。いつまでも実親の意向を待っていては、タイミングを逸してしまうと思われるも のは養育委託してよいとするなど、保護者の意向がなくても里親宅に変更できる指針の 提示が必要です。少し話は違うかもしれませが、私の体験では児童福祉法第28条の申 し立ての際に、必要と判断される事例については、児童養護施設および里親が適当との 申し立てを家庭裁判所に、以前2件行ったことがありまして、家庭裁判所に里親につい て説明に行ったこともあります。そのような工夫もしているところです。「専門養育家庭 への委託人数の緩和」は、東京都の方でも国のほうに要望していることでありますが、 現在2人という枠ですが、養育家庭と同じにすべきであり、専門養育家庭の資格を持つ 養育家庭は経験も実績も豊富なため、既に2人以上の子どもを養育している、委託して いる場合が多いのです。このような実情から委託人数の緩和が必要であると考えていま す。次の「児童相談所に地域担当児童福祉司とは別の里親(親担当)専任児童福祉司の配 置」これは先ほど言いましたように、養育家庭担当の児童福祉司の配置が必要でありま す。これについても、国の方の指導もお願いしたいと思っています。「乳幼児期からの委 託」。施設の生活を経験した子どもを途中から委託された里親の養育の困難さをよく聞く わけですが、児童の発達期においては乳幼児期の愛着関係の形成が重要であるとは周知 のことであります。こうしたことが必要と思っています。  「(4)里親等に対する支援のあり方(里親支援事業等の拡充方策を含む)」です。「児相、 区市町村、及び里親の会との協働・連携強化」ということで、児童相談所と里親の会と 八王子児童相談所で言うならば、各市の育児相談を受ける子ども家庭支援センターとい うものを東京都は各自治体に設置していますが、それを担当する各市の職員と啓発事業、 相談支援体制、広報への掲載など、市も巻き込んだ形での里親制度の浸透を図っている ところです。里親が地域に周知され、幅広い協力を得られるように、積極的にこの3者 で働きかけていく必要があると考えています。  そこにいろいろと挙げていて見出しには入れなかったのですが、里親のファミリーホ ームを国で制度化してほしいという里親からの強い声があります。家庭で子どもが助け 合い、育ち合っていくことができる体験は、掛け替えのないものです。東京都も、1982 年度に制度化していまして、東京都では現在11家庭あります。八王子児童相談所はそ のうち6家庭あり、いずれもベテランの方で養育力に長けています。家庭的養護を一層 推進するために、委託児童を常時4人以上預かる養育里親をファミリーホームとして制 度化し、この里親に対する里親手当の増額と一定額の住まいの維持管理費の補助を行っ ていただく必要が、ぜひあると思っています。東京都も(国に)要望していますが、こ の制度化についても検討をよろしくお願いしたいと思っています。  「(5)グループホームのあり方」の「本園との円滑な連絡体制(あまり遠くない場所)」、 「適切な児童構成と職員構成」というところで、グループホームの効果としては、家庭 的な雰囲気という他に、施設とは違って地域にある家ということで友達との行き来など があり動きが違う、社会性が身に付く等あると聞いています。どのグループホームを選 ぶかは、施設としては親との面接等の交流がない子どもを選ぶ理由の一つにしていると 聞いています。職員については住み込みが究極の形になるのかと思いますが、突き詰め ると里親のファミリーホームの方がいいと思いますが、ただ施設型は、施設の支援があ るというところが違うと思っています。グループホームについても里親ファミリーホー ムの制度化と併せて検討していかないといけないと思っています。  (6)について「施設の小規模化が進まない理由と推進するための方策」。そこに掲げてい ますが、三つ目の「職員の確保」については、利用者支援の向上や設置促進を図るため に、職員の配置基準の改善が必要であると考えています。  「(7)家庭支援のあり方」東京都では家庭復帰支援員を配置していますが、施設の家庭 支援専門相談員との連携も必要と思っています。  「(8)社会的養護に関する地域ネットワークに対する考え方」で、児童福祉司が個別の 事例を通しながら市町村への助言をすることはできますが、全体のネットワークづくり までは困難であります。平成18年度からは東京都では東京都でいう係長級の児童福祉 司を配置して、地域における関係機関とのネットワークづくりの支援、区市町村の体制 づくりと対応力向上のための支援、養育家庭への支援、家庭復帰の支援の四つの役割を 持って今、当たっているところです。  「(9)児童福祉施設における治療機能等専門的支援機能の拡充に関する考え方」ですが、 そこに三つ挙げています。東京都の方では出張医療相談という形で、常勤の精神科医が 6カ所の施設に月1回のペースで訪問し、担当職員や心理職への子どもに関する相談へ の精神医学的助言や子どもの診察を行っています。子どもの抱える暴力、衝動行為、非 行行動、不安・恐怖症、気分が変わりやすいなどの問題の背後にPTSDや解離などの虐 待が考えられる症状や発達障害の問題を有していることが多いということで、早期に問 題点を把握して、精神科医療につなげることが必要ではないかということです。  「(10)児童福祉施設の在宅支援機能等地域の拠点としての機能のあり方」はそこに挙げ ておきました。  「(11)子どものニーズに対応するあるべき施設体系に関する考え方」では、身体的にま だ病弱だったりする乳児も少なくありませんので、病院附属の乳児院の設置などが必要 と考えています。  「(12)専門性のある人材の確保と資質の向上に関する考え方」ですが、資格があっても イコール即戦力ではなく、人材育成・資質向上には指導・助言者の下での経験の積み重 ねが必要と考えていますが、職員が長く続けられる職場での支援体制などの条件整備が 必要と考えています。  「(13)入所児童の権利擁護の強化に向けた具体的施策」の「子どもの権利ノート」は配 布していますが、里子には今、東京都で渡していないので、里子に渡す点については検 討しなければならないと考えています。  「(14)自立援助ホームの拡充に向けた課題」。児童対応のノウハウを含めて施設同士の横 の情報交換、情報共有が少ないと私の経験からは思われるので、この辺の活性化が必要 ではないかと思っています。また、子どもの意志が定まっていない自立援助ホームの対 象にはなりにくい、かつ自立援助ホームよりも支援が必要な青少年の居住場所の確保も 必要でないかと思っています。  「(15)年長の子どもへの支援のあり方」は、自立に失敗した子どもの再チャレンジを受 け入れる施設が必要と。  「(16)非行相談への対応のあり方(現状や課題等について)」は、中黒の二つ目ですが、「非 行相談に不慣れな区市町村への事例を通した理解促進」が必要と思っています。  「(17)一時保護のあり方(乳児院における一時保護の現状や施設との連携など)」につい ては、「産後うつ、強い育児不安の母親が子どもと一緒に宿泊・通所しケアできる施設」 ということで、子どもだけを預かるというのではなくて、母親が子どもと一緒に宿泊・ 通所できる施設が必要ではないかということを考えています。また「母子分離が一時的 (数時間)に必要な乳児を預かるサービスの充実」ということで、「自分の赤ん坊の顔を見 たくない」と一時的に言う母親に対して、短時間預かるだけで母親の方でまた赤ん坊へ の愛着が湧き、関係形成の改善につながることがあります。そうした母親に対してのサ ービスは身近な市町村におけるサービスの仕組みの需要が多いのではないかと考えてい ます。以上です。 ○小林氏  よろしいですか。 ○柏女座長  はい。 ○小林氏  私の資料は、平成19年3月22日、神奈川県中央児童相談所の小林と書いてあるもの です。私のレポートは、あくまでも神奈川県の取り組みを念頭に置いてまとめたもので すが、参考にしていただければ大変ありがたいと思っています。実態は、先ほど東京都 の方からも話がありましたが、特に大都市部においては、いずれの児童福祉施設も満床 の状態の中で、施設不足自体が、児童相談所の援助の前提になってしまうという実態さ え出てきており、社会的な虐待を引き起こしかねないという厳しい実態があります。児 童福祉施設自体も受け入れている児童に占める被虐待児童の割合が多くなったために、 まさに何が起きてもおかしくない厳しい実態であることを付け加えておきたいと思いま す。  その中で私の資料の2ページのところを見ていただければと思うのですが、一番下の 所に「児童福祉施設と児童相談所の連携の強化」ということが書いてあります。私は気 が付いたことからやれることをきちんとやっていくということが大事だと考えています。 私は児童福祉施設と児童相談所の連携が、いかに強化するかということが大事になって くると思っています。施設長と所長が日常的にどうつながっていくのかということで神 奈川県がこの7年間、連携の仕組みづくりで、具体的に取り組んできたことの成果を、 エの部分の(ア)(イ)(ウ)という形で、まとめてありますので参考にしていただけたらと思 っています。  それから少し飛びますが、「家庭支援のあり方」のところで少しコメントしておきます。 全国児童相談所長会議の幹事会があったのですが、全国の状況を把握しますと、家族再 統合の支援の取り組みが遅々として進んでないことがわかりました。その中で、神奈川 県の場合は、「(2)具体的な対応策」にも幾つか書いてありますが、施設と児童相談所の 連携の中で「再統合プログラム」を「児童自立支援計画」の一部として位置付けるとい う形の中で、どのように取り組んでいるかということをまとめておきましたので、参考 にしていただけたらと思っています。  それから、6ページの小規模化がなぜ進まないのかということも、施設長と所長の連 絡会の中でも度々話題になって、できれば各施設が1地域小規模児童養護施設を造ろう ということで、話し合いが進んでいるという経過があるわけですが、小規模化自体を否 定する意見はほとんどないと思うのです。そういうことを前提に、何がいま小規模を阻 んでいるのかということで幾つかまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたら と思います。  7ページ、「入所児童の権利擁護の強化に向けた具体的な施策」ですが、これはどこの 県でも取り組んだことですが、平成10年度の児童福祉法の改正に合わせて、それぞれ の県で新しい子どもの人権を守る仕組みができたと理解しています。神奈川県もそこに 書いてある仕組みをつくりました。私はまさにこれを形骸化させることなく、取り組む ことが大事だと考えています。具体的な取り組みの方向性と手引きやマニュアルをまと め上げながら進めてきましたので、これについても参考にしていただけたらと思います。  最後になりますが、8ページの「11.専門性のある人材の確保と資質の向上」の(5)です が、まさに日常的に施設とつながりをもっている中で、今の施設があまりにも余裕のな い体制の中で仕事をしていることが、はっきりとわかってきます。そんな中で果たして 専門性の向上があるのかと考えますと、あり得るはずがないのではないかと考え込んで しまいます。帰するところ児童福祉施設の人的な体制の不備を解決することなく、専門 性のある人材の確保というのは難しいと思っています。児童相談所としては、施設職員 向けのいろいろな研修会を企画・立案しながら取り組んでいますが、それだけで間に合 うはずはないということです。以上です。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。ありがとうございました。10分ほど時間がございますので、委 員の方からご質問をお願いします。   ○山縣委員  どうもありがとうございました。一つ二つお伺いしたいのですが、先ほどの全国児童 家庭支援センターのお話で、2号指導が比較的少ないということの理由が一つ挙げられ ていましたけれども、その辺に対する見方が、今日のお話では再統合のプログラムのこ とを話されていましたが、児童相談所全体でも件数的には2号指導はほとんどやってい ないです。まして、全国児童家庭支援センターにいく割合は低くなると思うのですが、 なぜ、児童相談所は2号指導を使えないのかという辺りを指導いただいたらと思います。  2点目は、東京都の場合は単独事業で市町村レベルの子ども家庭支援センターをお持 ちですから、少し違うかもしれませんが、神奈川県のお話を聞いてみたいのですけれど も、今度の児童福祉法の改正で市町村化したことによって、児童相談所にとってはどう だったのかという辺りを、地元以外でも情報がありましたら、児童相談所ではどのよう な評価があるのかということを教えていただけたらと思います。 ○柏女座長  どうぞ、お願いいたします。 ○小林氏  児童福祉施設での2号指導がなぜ少ないかということですが、全体的に少ないのは事 実のようです。私は、結論的に言うと、もっと児童福祉指導を多く取り組むべきだと思 っていますけれども、どうしても継続指導に簡単に流れがちな傾向があるのではないで しょうか。それは文書で正式に児童福祉指導のことを相手方に通知するという辺りで、 どうしても、そうした傾向になりがちなのかと思います。再統合との問題を考えると、 むしろ児童相談所のスタンスを明確化するという意味で、児童福祉指導をもっと増やし ていく必要があると思います。  それから、市町村が一時的に相談窓口を開くという形になったのですが、私は昨年4 月に今のところに転勤してきて驚いたことが一つ再統合ということになれば、当然アセ スメントが不可欠になるわけであります。例えば、虐待の通報があったときに、すぐに 現地に駆けつけて子どもの安全の確認をするというのが、児童相談所にとっては原則で す。ところが、私どもの管内にはかなり大きな市もありますが、平成17年度を見てみ ますと、通報があっても安全確認がなされていないとか虐待の疑いがあることを明示し なかったり法に基づく介入であることも伝えていないということが多く見うけられまし た。その中で法による介入であることを明示して、事情を聞き子どもの安全を確認する ということは、一般的に初めてする仕事としてはハードルが高いということで、この一 年は、まさにその辺りの仕切り直しから始めざるを得ませんでした。  もう一つは、今、児童相談所においていえばネットワークミーティングなどで、個別 のケースについて検討会を開いて、その積み重ねの中で、より良い援助の方針を確定し ていくというようなことは当たり前ですけれども、こうした取り組みも市町村レベルで いうと相当ハードルが高いと思います。そういう意味では、相談窓口の設置も十分なさ れていないという中で、児童相談所としては市町村支援を活動の大きな柱として、要保 護児童対策地域協議会を軸にどのようにして、てこ入れができるのかということが私た ちに与えられた大きな課題だと思っています。 ○柏女座長  では、奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員  ご説明、ありがとうございました。お二方とも大きな地域から来ておられるので、恐 らく小さいところでは若干の違いがあるのかと思いながら伺っていました。児童相談所 の機能として一番重要なことの一つはケースのアセスメントと思います。この前、乳児 院の問題も出てきましたけれども、乳児院の場合にも、本来アセスメントは児童相談所 がやるのだろうと思うのですが、なかなかその辺ができない現状があります。一時保護 所に乳児が入れられないということもあって、できていない状況なのかと思います。そ ういう中で、重要なアセスメントをどういう形で、どこが担うべきなのかに関するご意 見を伺いたいと思います。本当に児童相談所がこれからも全部を担っていけるのか、い くべきなのか。その辺のところのご意見を伺えればと思います。 ○柏女座長  いかがでしょうか。 ○小林氏  なかなか難しい問題ですが、施設に措置するときに社会診断を立てています。それを 施設に持っていくわけですけれども、施設からは、これだけの社会診断では児童自立支 援計画を立てる上で参考にならないという意見が一時ありました。現在は、こうした施 設側の要求にこたえるため、社会診断を2本立てでそれに対応できるような形に改めた ということがございます。再統合の問題です。再統合といいましても、必ずしも家に帰 れる子どもだけのことではなくて、家に帰らない子どもの家族調整も含めて広く考えて いますが、その辺りの取り組みについては、児童相談所の現状では、施設とどれだけ連 携できるかにかかっていると思います。児童相談所のことだけの話をしますと、現在の 児童福祉司の多忙な業務の実態では、次々に起きてくる虐待相談に対応しながら再統合 に取り組むことは難しいわけです。やはり何らかの形で専任のチームを設置しないと難 しいと思います。私どもは、今年度から専任チーム設置して取り組んでいます。そのよ うな児童相談所側の体制の問題もあると思うのですが、それと合わせて施設には、ファ ミリーソーシャルワーカーが配置されていますので、この人たちがこの取り組みを担え るように育っていってくれるのか大切だと思います。それを児童相談所がどう支援でき るのかということも大変大事なことかと考えています。  それから、再統合ということになれば、当然アセスメントが不可欠になるわけですが、 私のところでは家族支援について、本県では、この5間年くらいの取り組みを冊子にま とめて全国に発信させていただきましたので、機会があれば参考にしていただければと 思います。 ○柏女座長  よろしいですか。では、吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  ご説明、どうもありがとうございました。権利擁護のことでお伺いしたいのですけれ ども、東京都の場合も児童相談センターの中に権利擁護の仕組みがあり、神奈川県も人 権審査会があるということですが、権利擁護の相談の中で、施設の子どもが直接相談し てくるということはどれくらいあるのでしょうか。私は実際に埼玉でそれに携わったこ とがありますけれど、ほとんどありませんでした。権利ノートの活用方法、それからそ うした独立した委員会の存在についての周知や、子どもに対する説明がどのように行わ れているのか、おわかりでしたら教えていただきたいと思います。 ○江角委員  私の経験で言うならば、児童相談所を4年やっていますけれども、1〜2年に1件はあ ります。その仕組みについては権利ノートを本人に渡して説明して、はがきも入ってお りますので、こういったことで意見表明をできるのだと説明しています。子どもからの 相談は、大体、年に1、2件はあります。 ○柏女座長  他にはいかがでしょうか。なければ、私から1点、よろしいでしょうか。  社会的養護体制ということで児童相談所となると、一時保護所の問題が大きな課題に なるかと思っているのですが、東京都にはカリヨン子どもセンターという民間の一時保 護施設がありますし、神奈川県にも横須賀市は、一時保護所はまだ神奈川県に借りてい るようですが、緊急の場合などのために横須賀市でグループホームなどを一カ所確保し て、そこで一時保護をしていくというような話も聞いたことがあるのですが、こういう 民間の一時保護所あるいは一時保護所の民営化など、こうしたことについてはどのよう にお考えでしょうか。 ○江角委員  一時保護所で働く職員の対応力というものも非常に重要だと思っておりますので、民 間の場合には対象児童をどういう子どもにするのか、職員はどういう資格でどのような 研修を積んでいくのか。いろいろな背景で突然入ってくる子どもを短期間見るわけです ので、民間の場合にも職員の対応力というのが、一つの課題だと思っております。民間 でもいいと思いますけれども、その辺のノウハウがなければいけないと思っております。 ○小林氏  二つほどよろしいでしょうか。民間に委託するということですけれども、今、一時保 護所は満杯です。ただ、虐待事案については断るわけにはいかないわけです。そのよう な実態で、まさに寝るところのないような中で過ごしているわけですが、児童福祉施設 も一杯という中で、民間に委託するということ自体がイメージとして浮かんでこないと いうことがあります。  もう一つは、一時保護所は児童相談所にとって、ある意味欠くことのできない施設で す。先ほどアセスメントという話が出ましたが、行動観察をすることによって子どもの 理解が進むわけですから、その部分について民間委託ということは考えにくいと思いま す。地方では児童養護施設が結構空いているので、例えば1〜2日児童相談所で預かれ ば施設の方に移してしまうというところがないわけではないようですけれども、私から するとそれは逆で、本当は1カ月で終えたいけれども終えられないほどの問題を子ども たちが抱えてくるわけですから、その辺りについてはなかなか厳しいかと思っておりま す。   ○柏女座長  わかりました。ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。よろしいでしょ うか。時間がまいっておりますので、これで全国児童相談所協会のヒアリングを終了さ せていただきたいと思います。ありがとうございました。もし時間の余裕がございまし たら、最後までお聞きいただければありがたいと思います。  それでは続きまして、全国母子生活支援施設協議会の方からご意見をいただきたいと 思います。それでは、15分のご意見をいただきまして、その後15分間質疑をさせてい ただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○村田氏  全国母子生活支援施設協議会長を仰せつかっております三重県の村田と申します。こ のたび、ヒアリングの場を与えていただきましてありがとうございます。  社会的養護体制についての意見の冊子を挟ませていただきましたが、ご存じの通り、 平成15年の厚生労働省の母子世帯調査では123万世帯ということで、全国母子生活支 援施設に入っている世帯は、その中の0.3%です。最近、DVで入所される世帯が非常に 多くなっておりますが、一応、全国の調査でも約半数がDVでの入所ということでござ います。ただ、DVで入ってこられる世帯は厳密にはほとんどが母子世帯ではないので、 一般の世帯から入所されてくる準母子世帯です。従来、本当の母子世帯を入所させて保 護・支援をしていた世帯が非常に少なくなっておりますので、利用する場所というのが 非常に狭められているのではないかと思います。非常に困難な問題を抱えて入ってくる 母親が多くなり、何らかの障害を持っている方、あるいは外国籍の母子の方、これらの 問題を抱えて、DVは母親への虐待でもあり子どもへの虐待でもありますが、そういう 問題プラス精神的な不安定さというようなものを大半の家庭が抱えて入ってきておりま す。したがって、母子家庭への支援ということでは、まずDV等で母子双方とも心の傷 を負って入ってこられる方に安定した生活の場および営みを与えるということが必要で あり、DV被害者はさらに何もなしで入ってこられますので、ゼロからの出発というこ とでは貧困問題等に重層的な問題としてかかわってきております。先ほども言いました ように、精神的に不安定な状態にある母親もおりますし、子どもたちはそういう虐待等 の場を見たり、あるいは自分自身も暴力を振るわれたり、性的虐待を受けたりというこ とで、それぞれが入所をして、それぞれその母と子どもが教室(施設)で自分のそうい うストレスを解消していく場になっております。昔の母子寮という時代から一般的には 母親がいるから何も心配はいらないという屋根対策的な考え方になりがちですが、むし ろ母親がいるために支援が大変であるということです。母子の場合は母親も子どももい ろいろな傷を負って入ってきますが、母親が自立をしていき、精神的に安定を保ってい けば、子どもはおのずと治癒していくという要素が強いです。しかし、PTSDあるいは ADHD等を抱えた子どももおりますので、遊戯療法等の心理療法を加味しながら母親と 子どもの安定を図っているというのが現状でございます。親がいるから安心であるとい うのは、反対に親がいるから安心ではないということでございまして、虐待というよう な子どもの問題で、今いろいろと国を挙げての対策を講じておられますが、現状では母 親自身が虐待を受けて大人になって、精神的に不安定で、キレて子どもを虐待している という世帯も入ってきております。そういう世帯は特に長く支援をしていかないと、短 絡的に「はい、それでは」というわけにはいかないところに難しさがあります。  その冊子の4ページをご覧ください。そこに、「母子生活支援施設が有する地域ネッ トワーク」という図を指し示しております。「社会的養護に対する地域ネットワークへの 方向性」ということで、現状でかかわっている各社会資源が羅列されておりますが、そ の中に里親と入国管理事務所等が抜けているということで、書き加えていただければと 思います。母子生活支援施設は現実にはこれだけの社会資源を利用しないと母親の自立 が図れないようになっております。したがって、その母子の自立を極めて熱心にやって おられる施設は、それぞれ全部、かかわりがあると思っていただきたいのですが、例え ばここにアフターケア等の母親たち、あるいは地域の母子家庭等に対しての支援をも視 野に入れて、母子生活支援施設が少し広げていこうという場合には、まさしくファミリ ーソーシャルワーク的な職員の配置が必要になってくるのではないかと思います。今現 在では地域にまで目を通す職員のゆとりがなかなかないものですから、ただ、社会的養 護に対する各施設との連携も非常にやりたいと思っておりますし、里親等のことに対し ても例えば心理療法などはそれぞれの施設に受けにきて構わないと思いますし、ショー トステイやトワイライトをその時々によって利用していただいても構わないと思います ので、そういう意味では双方がネットワークを組んで前向きな考え方ができるのではな いかと思っております。このような機能を十分に生かして対応できれば、家族としての 機能がより発揮されて、一人でも二人でも母子という中での子どもが救われるのではな いかと考えております。  いろいろとレジュメには書かせていただきましたが、レジュメの最後に、厚生労働省 の福祉事務所における母子生活支援施設入所措置数というのを付け加えさせていただき ました。これを見ると地域間格差がいかに大きいかという、一つの良い統計であると思わ れます。したがって、DV等の発生に対しても、うちの県は全くそのようなものはない ということはおよそ考えられないわけであり、やはりそこに母子生活支援施設の対応の 仕方なり、件数なりによって、地域ごとのそういう母子の受ける権限が左右されてくる という実例です。それぞれの自治体によりまして、母子生活支援施設になかなかお金を 使えない、わからないなど、いろいろなことを言われますが、私どもはやはり子どもに とっては、たとえどんな母親でもその元で大きくなるのがより良いことだと思っており ますし、実際に私どもの施設でも夜な夜な子どもを連れて出歩いてホテルに泊まるなど、 どうしても施設のそういう規則を守れない母親がおります。よく話を聞いて、その母親 に何を支援したらいいのかということを考えたときには、やはりその方はうつ病である ということで、何とか説得をして精神科につなげていくという作業をしておりまして、 今まで一度も学校に行かせたことがないということで、児童相談所のほうとタイアップ してそういうことができるということもありますが、そういう非常に難しいケース等は 施設の職員にかなりのストレスがかかりますし、長い時間が必要です。人材育成とも関 連するのですが、母親は大人ですので、ただ単に学校で習ったソーシャルワークでは通 用しないところがありまして、母親と職員が同じ目線に立って話をして、主に話を聞く ということに通じないと、なかなか支援はできていきません。将来的には母子生活支援 施設はカウンセリングマインドを持った職員を養成するところまでいかないと、第二次 被害や苦情解決への訴えということへの歯止めがかからないのではないかと考えており ます。  要領の得ない説明で申し訳ございませんが、時間がまいりましたので、この辺で私の 説明を終わらせていただきます。 ○柏女座長  どうもありがとうございました。それでは、委員の方からご質問がございましたらお 願いいたします。 ○山縣委員  いろいろな情報をありがとうございました。話を聞くと、ますます頭が混乱してわか らなくなっているのですけれども、現在の実情としてDVのシェルター機能がどんどん 強くなっていると数字的にもはっきり表れています。50%くらいがそうであるという話 でした。もともと全国母子生活支援施設協議会が抱えておられた課題が、母親のさまざ まな障害に関する対応というのが求められて、非常に難しいのですが、その部分も数的 には結構残っています。世間的に見るとこれが児童福祉の社会的養護の枠組みの中にあ る理由というのが、場合によっては理解しづらい状況になってきているのではないかと いう部分もあるわけです。社会的養護としての全国母子生活支援施設が生きていく上で、 例えばDVシェルター機能というのは本来のDV法に基づいて単独で設置したほうがい いのだというようなことがあり得るのか、そうではなくて、社会的養護の枠組みの中で そこまで抱えていることに意味があるのか、そこはどのようにお考えでしょうか。 ○兜森氏  大変難しい質問だと思いますが、先ほど会長からお話しさせていただいたように、母 親がいるから安心ではなくて母親がいるから大変な事例が多いということから、だから こそ家庭的養護ということも踏まえながら、実際には社会的養護も必要だというような ことだと思うわけです。つまり先ほど出たような母親に養育をされている子どもそのも のが、やはり大きなリスクを背負って生きていく。そのことが将来、次の世代に反映さ れていくことを考えた場合に、それは母子生活支援施設では家庭的養護を家庭の中でし ながら、それを施設職員が今度は社会的養護という立場でそれぞれにケアしていくとい うことですので、そういう展開だろうと考えております。それからシェルター機能の件 についてですが、実は母子生活支援施設がシェルターと差別化されているところは、単 に保護にとどまらないということで、中長期的なスパンで支援をしていくことによって、 保護の時期を過ぎて、それから自立を支援していくというところまで行けるという機能 を持っているところだと考えております。 ○柏女座長  はいどうぞ。 ○大塩氏  それに付け加えてです。母子生活支援施設が社会的養護の枠組みに入るかどうかとい う非常に厳しい命題を突き付けられたわけですけれども、まさに母子生活支援施設の仕 事は社会的養護を担っていると自負しております。それは子どもたちが母親から離れる ことなく、生活を続けていくことができるところが母子生活支援施設であり、また母親 がさまざまな理由で子育ての力が落ちている、そこを施設の職員がケアしながら、それ から利用者間同士での子育てのあり方を見ながら、まさに子育てモデルを日々体得しな がら生活ができているというところが、母子生活支援施設であると思います。  それから先ほど児童相談所の方のお話の中にありましたけれども、産後のケアを実施 している母子生活支援施設もありますし、産後にうつになられた母親に対しての子育て 支援を行いながら、母自身にもケアをしていく。まさに児童虐待の予防の最前線という ところも母子生活支援施設では担っておりますので、その辺では本当に子どもたちの育 ちを保障するための施設であると自負しております。 ○柏女座長  はい。他にはいかがでしょうか。奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  どうもご説明ありがとうございました。私も母子生活支援施設の中でDVに関する調 査をさせていただいたときに、DVだけではなくて過去に虐待を受けた母親たちが非常 に多くて驚きました。DVそのものが子どもへの虐待ですが、そういう意味ではセーフ ティーネットとしての社会的養護として母子生活支援施設は非常に重要だろうと思って います。特に虐待への対応をやっている我々からすると、再統合のところで、もう少し 母子のケアというのを母子生活支援施設で担っていただけたら、良いのではないかと思 うことが多いのですけれども、その点で何かご意見があったらお聞かせいただきたいと 思います。 ○村田氏  それは本当にやりたいことなのですが、広域措置をやっておりますから、現状では部 屋が空くとすぐにDVが次々と舞い込んできまして、なかなかゆっくりとそういうこと をやっている暇がないというのが現状でございます。 ○柏女座長  他にはいかがでしょうか。はい、どうぞ。補足ということでよろしいですか。 ○兜森氏  そうは言いながらも、施設の偏在化や、要するにニーズにマッチした施設配置がなさ れていないというようなことがあります。実は私どもは公立施設と民間施設と大きく形 態が分かれますけれども、それぞれ力の差が歴然として存在しているという内部事情が あります。ですから、そういった部分をボトムアップして、そしてできる限り再統合を 含めた、そういったニーズにきちんと応えていくという方向は、我々に課された一つの 社会的使命だろうと思っております。 ○柏女座長  他にはいかがでしょうか。はい、松風委員どうぞ。 ○松風委員  入所と退所の数は比較的に均衡しているという数字のように見せていただいたのです けれども、その分、自立して退所していかれるご家庭があるということだと思います。 自立されていくときの支援の主体としては、例えば入所に絡んで責任を持っておられる 市町村との関係、それから今お話がありました施設としてそういう機能を担っていかな ければならないのではないかという、実態として市町村との連携はどの程度を行われて いるかどうかということを教えていただけますでしょうか。 ○大塩氏  市町村との連携ですね。入所に関しては、母子生活支援施設は他の児童福祉施設とは 異なり、福祉事務所が主体ですから福祉事務所との連携を図りながら入所になりますけ れども、退所に至っては、どこまでが自立というのはご本人の気持ちもありますし、職 員側が自立できたと思うところと、それからご本人ご自身が自立したいとの気持ちが強 く、まだ心配な部分はたくさんあるけれども退所されるというという方もありますので、 まだまだ課題を抱えたままの退所も事実あります。しかしながら、子どもを育てていく ことを主題に据えると、やはり関係機関ときちんと連携を取っていかなければ、その後 の地域での生活はなかなか困難になってくるということがあります。それから利用者の 方々は子どもたちの学校の校区の問題や職場の地域性からして、母子生活支援施設の割 と近くに退所される方が多いですから、その辺で市町村との関係や児童相談所や関係機 関とは、きちんと施設が間に入りながらつないでいくということを入所中からやってい きます。しかしながら資料の中でも退所期間が1年未満という方が増加していますけれ ども、入所期間が短くなっているということは、利用者の方だけの問題ではなくて、措 置機関である市町村が1年で退所してください、半年で退所してくださいというように 非常に温度差がありますし、入所を依頼される福祉事務所の予算の問題によって、退所 期間が早まっているということもありますので、自立が可能になって退所となっていな い現状もあります。 ○柏女座長  よろしいですか。はい庄司委員。 ○庄司委員  質問ではなく感想になりますが、今までのお話に出てこなかったこととして、利用者 間のグループダイナミックスの問題があると思います。多分うまく働く場合もあるでし ょうし、悪影響を受けることもあって、そのことをどう考えていくかということも一つ あるかなと思いました。 ○柏女座長  もし今の関係で何かありましたら。はい、どうぞ。 ○大塩氏  まさにおっしゃる通りです。利用者方同士で本当にエンパワーメントし合って、それ ぞれ受けた傷を癒し合っていくというところができるのは、やはり生活の場である施設 でかなり救われているところだと思います。しかし先ほど悪影響という言葉をおっしゃ いましたが、さまざまなことで影響を受けやすいという面もあります。部屋は別々です けれども生活を共にするということは、様々な状況に陥ってしまうということもありま すので、そのときにはきちんと職員が介入していきます。やはり良いところはきちんと 下支えをしながら、そして影響を受けやすいときには介入をしていきます。それぞれの 方々の個別の課題に対して支援をしていくということをやっていきますので、グループ としての支援とそれから個別支援をきちんとやっていくという両方の支援を行っていく ことができる施設だと思います。 ○柏女座長  はいどうぞ。 ○奥山委員  すみません。追加で一つ質問させていただきたいと思います。先ほども申しましたよ うに、かなりハイリスクの母子が入所されていますね。前にお母さんがお子さんを殺め てしまったという残念なケースもあったと思いますけれども、母子生活支援施設の中で 危機状態になったときに、その子どもを施設のどこかで預かって、母子生活支援施設の 中での分離を行うということは、あり得る状況なのでしょうか。その辺のところ少し伺 わせていただければと思います。 ○大塩氏  それはやっている施設はたくさんあります。虐待の場面に対して危機介入ができるの も生活を支えている母子生活支援施設の職員ならではなので、危ないときには母親と子 どもを分離して、施設内の宿直室などで、夜間のケアをしていく、支援をしていく。そ してまた母親が落ち着かれたときに、施設内で生活を見守っていくということもできま す。もちろん児童相談所と関係しながらやっていかなければ、かなりリスクが高いこと ですので、そこは間違いないようにやらないといけないと思っておりますけれども。それ はやっている施設がたくさんあります。 ○柏女座長  はい、どうぞ。 ○兜森氏  要は先ほども申しましたように、母子生活支援施設の中で、家庭生活が営まれている ということにつきまして、その中で起きている事柄については、もちろんプライバシー は十分守られるような仕組みになっていますけれども、虐待などは、よほど巧妙にされ ない限りは大体わかります。そうすると当然、宿直職員などが危機介入という形で介入 します。そして一時的に母子を施設の中で分離して、別々にケアしていくというようなこ とは日常行っています。 ○柏女座長  よろしいですか。もう時間も迫っておりますので、すみませんが最後に少し私の方か ら、もしあったらということで伺わせていただきたいと思うのですが、母子生活支援施 設は社会的養護の体系の中でも、いわばジェンダーの問題に非常に敏感さを持っていら っしゃる、唯一と言っていいのかわかりませんが、施設種別ではないかと思っておりま す。そんな中で他の社会的養護資源が全くジェンダーの視点を欠いているとは申しませ んが、よりジェンダーの視点を持っていくために、何かアドバイスあるいはこうした点 がもう少しあればよいのではないかといったことがありましたら、お聞きできればと思 っていますがいかがでしょうか。 ○大塩氏  もう一度、質問をお願いします。 ○柏女座長  母子生活支援施設の側から他の社会的養護資源に対して、ジェンダーの視点から、何 かもう少しこういう視点があればよいのではないかといったアドバイスなどがありまし たら、お聞きしたいのですが。 ○大塩氏  ありがとうございます。  まさに本当にジェンダーの視点で仕事をしていかなければいけない施設が母子生活支 援施設だと思います。やはりジェンダーの視点というか、一般的に「親」というくくり の中には、母親というイメージが非常に濃く出ていますので、やはり母子生活支援施設 の利用者だけではなくて、どの親の中でも親=母親ということが定着化している、この 日本の風土の中では子どもを育てていくということは、母親の仕事であると固定化され ている現状があります。子育てには親としてきちんと父親も参画することや、例えば家 族として見守っていくということがとても大切になってきますけれども、そこが親=母 親という読み込みがされているのではないかなと思っています。 ○柏女座長  はい、ありがとうございました。それでは、全国母子生活支援施設協議会のヒアリン グを終了とさせていただきたいと思います。時間がございましたら最後までお残りいた だければありがたいと思います。  それではお待たせいたしました。最後に、児童養護における当事者参加推進団体から ご意見をいただきたいと思います。どうぞ前の方にお願いします。それでは15分をめ どに意見の発表をお願いして、15分質疑応答をさせていただきたいと思います。よろし くお願いします。 ○廣瀬氏  児童養護における当事者参加推進団体「日向ぼっこ」の代表の廣瀬さゆりと申します。 私は母子生活支援施設で約1年、大舎の養護施設で約2年、グループホームの養護施設 で約7年生活をしていました。社会的養護体制が、良い状態か悪い状態かは、社会的養 護を受けた人が受けた措置で苦しまず、措置を受けられてよかったと思えるかどうかだ と思います。本日は社会的養護の対象だった者として意見をさせていただきます。  まず児童養護施設を退所した人は何に苦労しているかです。「(1)育ちの過程で育まれな かったコミュニケーションスキルや意欲・社会性また学歴の乏しさ」、「(2)親や頼れる人 の不在、また本来頼れる人であるはずの親などからの不適切な関わり」。措置されたから といって、頼れる人ができるわけではありません。また措置されたからといって親の状 態が良くなるわけでもなく、むしろ親は何ら支援を受けていないので状態が悪化してい る方が多いと思われます。『(3)「自分は人とは違う」人から世の中から受け入れてもらえ ない」という感覚』。これらが「1自分のことものことも信じられない」、「2自分の生き る価値を見出せない」、次に「親からの暴言」と書いてありますが、親や職員からの暴言・ 暴力、また不適切なかかわり、「3職場・学校・地域での孤立」これらを招いています。 しかし、「社会的養護の対象だった人で『どうしてそんな馬鹿なことを』と思われるよう な行動」、例えば向こう見ずな転職や自殺、「(自殺(未遂)、妊娠・養護の再生産・生きる ための売春・アルコール中毒・薬物中毒を取る人)も一生懸命生きている。そして苦し んでいる。そういった人たちのためのサポートが必要)です。  付け足しますと、この「どうしてと思われるかもしれない」の「どうして」というの は、職員の人にとっては、どうして相談してくれなかったのかという思いもあるかもし れません。でも、私たちにとっては、相談できるような関係性が築けていないというこ とがあります。あと売春のところで「生きるための売春」としました。実際に売春をし ている人たちは生きるためにやっている。女子高生たちがやっているのと一緒にしない でほしい。この方法でしか生きるすべがないという思いで苦しんでいます。 『2.児童養護における当事者参加推進団体「日向ぼっこ」の取り組み』。こういった人 たちにとってどういったサポートが必要か。その必要なサポートを私たちはしています。 第一に孤立防止の場を築こうとしています。ここに参考の資料として「日向ぼっこサロ ンの構想第2案」と書いてありますが、失礼いたしました。これは「第3案」でこの資 料4の一番後ろにあります。これは後で見ていただければと思っています。まず孤立防 止の場がどういう場かというと「(1)ありのままの自分が受け入れられる場」、「(2)サービ スの受け手ではない付き合いができる場」、「(3)似た生い立ちの先人の人生から自分の人 生を整理できる場」、「(4)自分や他人への信頼回復の場」です。逆に言うと、これらがな されてきていませんし、なされていません。行政や施設でなされていないので民間で取 り組まざるを得ません。民間ではこの他に学力サポートの取り組みが始まろうとしてい ます。私の知人の元教員の行方さんは大人の社会的責任として、先日、児童養護施設・ 自立援助ホーム・ひとり親家庭の子どものための無料塾を設立しました。児童養護施設で 学歴を培えなかったために起こる養護の連鎖を断ち切ることが狙いの一つのようです。 必要なのは私たちが取り組もうとしているサロンや学歴保障のための塾といった、子ど も・子どもだった人に直結するサポートだと思います。  次のページです。サロンに多くの人が集まれば、多くの意見が集まります。それで社 会的養護でつらかったことなどが繰り返されないよう、当事者の意見を政策に反映する 機会を築いていきたいと考えております。  サロン開催に当たり、私たちは今月3日に当事者座談会を行いました。そのときの貴 重な話し合いを意見表明文としてまとめたので、この度、発表させていただきます。こ の資料の3枚目の裏に意見表明があります。 ○冨塚氏  2007年3月3日に文京区シビックセンターにおいての第1回日向ぼっこ座談会意見 表明文を発表します。  私たち、児童養護の当事者活動推進勉強会「日向ぼっこ」が主催する「第1回 日向 ぼっこ座談会」に参加した児童養護施設生活経験者(当事者)7名とその開催趣旨に関 心を持ち参加した計16名、合計23名です。  『座談会は(1)児童養護施設等を退所した人たちの交流の場(孤立防止)(2)その多面的 ニーズを把握する(実施への還元)(3)開設準備を進めている「日向ぼっこ」サロン実施 につなげる(当事者参加活動推進)などを目的とし、今回は以下の議題について話し合 いました。  1.施設生活でいやだったこと:他児や職員との関係(暴力・ひいき)、管理的生活、当 事者特有の孤立感  2.施設生活でよかったこと:信頼できる人との出会い、生活の安定、独自の行事体験、 親身に話してくれた。  3.もっとこうして欲しかったこと:施設の選択権の保障、社会常識の習得、入居理由 等の説明、交流の機会  4.退所後、苦労したこと:帰る居場所・身元保障の不在、生活・対人関係の不安、孤 立感をどう解消するか  その結果、施設での暮らしの以下の面が明らかになりました。  1.施設生活の苦痛:他児や職員との軋轢、施設運営・生活課題のあり方、社会的理解 の乏しさ  2.施設生活の利点:生きる権利の回復、安定した生活の保障、行事・体験の保障、自 尊感情の回復  3.施設生活の課題:システムの見直し、よき援助者の養成、当事者視点でのニーズの 発掘  4.退所後の社会適用過程のニーズ:仕事や進学等の相談援助、居場所創り、偏見の解 消、孤立防止  以上のことから第1回日向ぼっこ座談会は関係機関や市民の皆様に対し次のような意 見を表明します。  1.施設生活には対人関係上の課題や施設運営・管理生活上の課題、学校・友人・社会 一般の当事者理解の乏しさ(施設での悩み等を話せる人がいない)などの課題による、苦 しさや悔しさがあります。  2.一方、施設生活は暮らしの安定や信頼できる人との出会いにより、奪われた権利を 取り戻すことのできる逆境からの回復の場でもあります。私たちには「施設があったか らこそ今の自分がいる」という感謝の想いもあります。  3.しかし、現状では措置される施設や出会う職員によって私たちの人生は大きく左右 されています。2で述べたような想いを抱きたくても抱けず苦しさを抱え続けている当 事者はたくさんいます。私たちは社会的養護の措置がそのもとで暮らすすべての子ども にとっての幸せ・希望に繋がるよう、以下の3点を求めます。(1)措置理由の説明が不充 分、人生の選択(施設・担当職員・進路等)に子ども自身があまり関われていない、な どのシステム上の課題の改善、(2)措置される施設によってラッキー・アンラッキーとい うことがなくなるよう施設間格差の是正、(3)子どもを押さえつけず、子どもの気持ちに 寄り添い、子どもの可能性を引き出すことのできる援助者の養成。  4.また、私たち「日向ぼっこ」は今後も当事者の退所後の孤立防止の為に、当事者へ の相談援助活動や当事者同士の支えあい、居場所創り活動、社会的差別・偏見の是正に 取り組みます。多くの当事者と共に歩む、児童養護における当事者参加の実現に努めま す。精一杯努めますが私たちだけでは本当に実現困難です。関係機関や市民の皆様のご 理解とご協力をよろしくお願い致します。』 日向ぼっこメンバー一同 ○廣瀬氏  今のが「意見表明文」です。求める点について繰り返し説明させていただきます。  「1)システムの整備を!システム間格差の是正を!子どもは親を選べない。そして、 何らかの理由で措置されることになった子どもたち。本来その措置はよりよい現状と未 来のため、しかしそれが更なる不幸につながってしまうのであればそれは悲劇である。」  「(1)まずは子どもや施設を退所した人の声を聴く取り組みを」してください。この下 のかっこの中にあるものは、私が養護施設を退所した人10名にインタビューした結果、 明らかになった施設の課題です。多かった順に取り上げています。後でじっくりと読ん でいただければと思いますが、こちらを読むと問われているのは、施設形態より、子ど もがいかに育まれるか、職員といい関係が築けるか、当たり前の暮らしが当たり前に営 まれるかということが求められているというのがわかります。よく言われている施設の 小規模、大舎や小舎など、そういったことは養護施設を退所した人からの意見としては 出ませんでした。座談会を行ったときも、小さい方が良かったなどということは聞きま せんでした。やはり出てきたのは、職員や一緒に暮らしていた子どもとの関係の話が多 かったです。  「(2)形ではなく、当事者の声を政策に本気で活かして」ください。先ほど、母子生活 支援施設の方々の発表で、母子寮で暮らしている母親も実際に虐待の被害に遭われた 方々だというご意見がありました。本当にその通りで、私の母親も実際にそうですし、 でもその人が虐待を受けたかどうかというのは変えられませんけれども、それが次の世 代につながらないような取り組みというのは、今やれば、だんだんこの先の未来に虐待 を受ける子どもが少なくなると思います  「(3)継続した関係性が築けるように、(いい職員が)長く働ける体制づくりを。職員増・ 職員の待遇見直し」、また資格の見直しが求められていると思います。  「2)職員の養成を!相談してもわかってもらいないなど、相談相手であるはずの職員 にその資質がない(人の痛みや苦しみへの理解が乏しい)。もしくは麻痺している」状態 があるかと思います。  「(1)プロ意識を持つ:子どもに必要は情報をきちんと学習する。子どものよりよい未 来に繋げるための援助ができる」、「(2)自分や他人と向き合う姿勢を持つ」その覚悟がな い人には施設職員にならないでほしいと思います。そういった職員をどのように養成す るかに関しては、今、一言ではとてもではないけれども言えません。やはり、まずは子 ども・子どもだった人の声、私たち以外の人にも多くの声を聞くことが第一だと思いま す。  レジュメに書ききれなかったのですけれども、3点目として、お願いしたいことがあ ります。社会的養護が多くの人に知られるように啓発活動をしてください。(1)として多 くの人に知ってもらい社会の問題として解決する機運を作り出すのが必要だと思います。 多くの人は社会的養護を知りません。でも国民が払っている税金で私たちは養われてい たわけで、国民は知る権利があります。現状では多くの人に知られていないし、子ども には選挙権がないということで、この問題に取り組もうとする政治家も出てきません。 そのことがずっと児童養護・社会的養護を良くしていない原因の一つだと思っています。  また(2)として、多くの人に知ってもらうことで、当事者自身が生きやすくなります。 信じられない話ですけれども、私たちが退所する前、退所してからでも国民健康保険を 作りに行きます。そうしたら市役所の人たちは「なぜ今までなかったのか」という感じ になります。「児童福祉施設で生活をしていたから」と説明しても、市役所の方が知らな いこともあります。あと私は自立援助ホームの非常勤をやっているのですけれども、本 当は働かなくても、全然まだまだのんびりしていたらいい年なのに、一生懸命に働こう として仕事を探す子どもたちで、15、16歳の求人などは全然ない中で、やっと見つけ出 した求人に電話したら、職場の人が何と言うかといえば、「なんで学校に行かないのだ。 君はフリーターなんてしていないで、きちんと働きなさい」と言います。この子どもは、 本当は高校に行きたくても行けない現状があるのに、そういうことを言われてしまって 苦しい思いをさせられているというのがあります。でも社会的養護が知られていたら、 もしかしたらそういう子どもなのかなと。逆に、私がこの子どもの面倒をみたいと思わ れる方もあるかと思います。そして多くの人に知ってもらうことによって、職員の質も 向上すると思います。社会全体で社会的養護を支えているというのがあれば、職員の人 もピシッと襟を正すと思います。  今日、日向ぼっこのメンバーが4人来ているのですが、1人白髪の方は、当事者の方 ではありません。わかりやすい表現でごめんなさい。今井さんはこの年齢になるまで、 あまり児童養護のことを知らなかったけれども、知って私たちの活動にすごく一生懸命 にかかわってくれています。知ることによって、能力がある人が社会的養護のバックア ップをするということもあると思います。社会の責任として、この問題を解決していこ うという機運づくりにぜひ取り組んでいただきたいと思います。  私の方からは以上で、顧問の市川が作った『「当事者理解」の重要性』と「当事者から 見た社会的養護の課題と展望」が3ページからあります。こちらもぜひ参考にしてくだ さい。  最後に失礼かもしれませんが、もし10年後にも同じような意見をしなくてもいいよ うに、ご尽力のほどよろしくお願いいたします。以上です。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。ありがとうございました。十数分時間がございますので、委員 の方からご質問がありましたらお願いします。はい、吉田委員。 ○吉田委員  どうも貴重なお話をありがとうございました。当事者の声をという大変大事な指摘を いただきましたけれども、やはり施設の中で暮らしていると、施設の人に対しては言い にくいこともたくさんあるし、それから施設から距離をおいた児童相談所の人に話す機 会が十分にあるかどうか。さらに言うと、話す気持ちになれるかどうか。今いろいろな 第三者の委員の人が入っていますが、なかなか子ども自身が話してくれないし、また話 そうという気にならないのではないかと思うのです。その辺りはどのようにしたら、施 設の子どもたちがもっと自分の言葉で語れるようになるのか、その辺りのお考えがあっ たらお聞かせください。 ○廣瀬氏  まず、施設の職員に話せないかというのは、もちろん話しにくいです。やはり私たち の生活を握っているのは施設の職員なので、できたら職員に話しやすい雰囲気があるの が一番いいのですけれども、現実には話しにくいです。  そして児童相談所の人に話すかどうかですが、私は施設に入所してから児童相談所の 人と多分1回も会っていません。権利ノートも職員の方から配られて読んだぐらいです。 だから児童相談所の人はそれほど近くに感じられる存在ではありませんでした。  3点目の話す気持ちになれるかどうかですけれども、実際に相談などをしますけれど も、話をしてもわかってもらえない。逆に何だか諭されるようなことを言われてしまう。 ただ問題解決をしてくれなくてもいいけれども、一緒に親身になって自分の苦しさや悲 しみを一緒に共有してくれたら、それだけでも子どもはすごく救われるのに、そういっ たことをしてもらえない。まず、その人がそういったことをわかる話し相手だったら別 だと思います。やはりこの人は仕事でやっているのかな、この人に言ってみてもこの人 は幸せな家庭で育ったから、みたいな思いを当事者は持っています。後は何かあります か。 ○吉田委員  それと関連して、そうすると今、「日向ぼっこ」の会がやろうとしている、当事者であ れば話しやすいということがあるけれども、それ以外に施設や児童相談所以外の人でこ ういう人だったら話しやすい、こういう場であったら、こういう仕組みだったらなどと いう提案はありますか。また、こういうサポートが必要であるなど。 ○廣瀬氏  今そういったサポートがなかったので、私どもはサロンを作るようになったのですけ れども、実際に先日、座談会をやってみて、座談会では養護施設を退所した人以外の人 で社会的排除を受けている方、発達障害と健常のボーダーで誰にも苦しみをなかなか言 えなかったり、夫が多重債務で自殺されて、それでご自身もうつ病になっている人がい らっしゃったり、そんな人たちが集まって、どういう状況になったかというのは想像し にくいかもしれませんが、心がけが効いたのかもしれないのですけれども、和やかな雰 囲気で自分たちの苦しみや悲しみも話せて、涙が出たりもしましたが笑いが出たりもし たのです。だからそのとき強く感じたのが、世の中の人が求めているのは、ただ単に学 校や職場でされるような、面白おかしい話やトレンドの話ではなくて、本当は、自分は こういう苦しみを抱えている、こういう悩みがあるというのを話して、それで何か諭さ れたりする場ではなくて受けとめてもらえて、応援してくれているな、これで頑張って みようかな、失敗してもこの人に話してみようかなと思える場が本当に世の中には少な くて、そういう場が必要だと今回の座談会をやってみて、ひしひしと感じた次第です。 ○柏女座長  他にはいかがでしょうか。はい、どうぞ。 ○山縣委員  ありがとうございました。昨年でしたか、廣瀬さんとお話をさせていただいたときも 同じような主張をされて、その中のポイントが施設の形態にこだわらずに、当たり外れ のない施設や、職員の質にこだわってほしいという主張をされて非常に痛かった部分で すが、あえてそのことを廣瀬さんの主張、あるいはこのグループもそう思っていますと いう主張を前提にした上で、全体としては先ほどの児童相談所のところでもありました けれども、何となく小規模化の方がいいのではないかという流れがある。もし今、廣瀬 さんの中で、小規模化の今抱えている問題、前回のお話をもう1回繰り返していただき たいのが1点と、もう一つはでは小規模化をしようとするときに、ぜひここは考えてい ただきたい。職員の質ときっと共通だと思うのです。小規模化としようと大規模化しよ うと質の問題で、結局形態ではありませんというお答えだったので、職員の質以外に我々 が考えないといけないことは、何かありますでしょうか。 ○廣瀬氏  すみません。1点目をもう一度。 ○山縣委員  1点目は。 ○廣瀬氏  小規模化にこだわらない理由ですか。 ○山縣委員  そうですね。はい。 ○廣瀬氏  私自身の話で申し訳ないのですけれども、実際に私は大舎で育って、グループホーム でも育って、大舎にいたのは2年程度だったのです。今から11年前ですけれども、昨 日も昔育った大舎の施設に行きましたが、あんなに大勢の子どもがいるのに、たった2 年しかいなかった私のことをしっかりと覚えていてくれて、今でも親身に接してくれる のです。私の悩みなどを聞いてくれて、一緒に泣いてくれます。その他に大舎の所に実 習に行って、大舎でしかできない児童養護の良さを最近ひしひしと感じています。だか ら、子どもの話をじっくりと聞く時間がなかったり、家庭的な生活ができなかったりす るのはすごくハンディなことで、それは解消しなくてはならないのですけれども、大舎 には大舎の良さがあるというのはこれからも大切にしてほしいと思います。  2点目の小規模化にする際の注意点ですが、子どもが逃げられる場を絶対に作ってほ しいと思います。本当に小規模でましてや職員が替わらない。職員が替わらないのが望 ましいのですけれども、職員との相性が悪いと、子どもはずっとつらい思いをして、ま してや2歳からずっと入って、2歳でグループホームは少ないかもしれないですけれど も、16年間ずっと苦しい思いをしなくてはならないという子どもが絶対に現れないよう にしていただきたいと思います。 ○山縣委員  答えてもらったのですけれども、今、廣瀬さんの持っておられる大舎(大規模)とい うのは何人ぐらいのイメージですか。50人や100人。どれぐらいが今、大舎という言 葉を使っておられる子どもの人数のイメージですか。 ○廣瀬氏  今の考え方だと、グループホームとそれ以外は大舎みたいな感じで話していました。 だからグループホームは家庭的な生活ができる場。大舎で15人以上は多いなという感 じはあります。 ○柏女座長  他にはいかがでしょうか。私から1点いいですか。  今、廣瀬さんのお話の中で、施設を退所した後の生活の中でいろいろとお世話になる のは市町村ですよね。生活する場のいろいろなことをしていこうとすると、市町村。け れども施設に入るときも出るときも、あるいは施設にいるときも、かかわりを持つのは 県になるのではないかと思いますが、そうしますと、入所のときから、あるいは入所中、 退所した後も、市町村と施設がもう少し最初からかかわりが持てるようなそういう体制 が必要なのではないか。そうすると市町村の施設理解が非常に深まるわけです。そうい うことを私自身は考えているのですけれども、そういう意味では市町村と施設との関係 と言いましょうか。そこはどのようにお考えになりますでしょうか。どなたでも結構で す。 ○廣瀬氏  持論ですけれども、私は社会的養護といっても、なるべく普通の関係や普通の状態で 育てられるのが好ましい。そして必要な子どもには心理のケアなどの必要なケアがなさ れるのがよいと思っているのです。先ほど発表した通り、社会全体で社会的養護に対し ての理解があったとしたら、私たちが退所した後に受け皿となる職場の人の理解が高い が故に、私たちが孤立しなくて済むということにつながると思いますし、そういったこ とがたくさんあるかと思います。友だちにもストンとわかってもらえる。あと私だけが 特殊ではないという思いは、すごく当事者の心を救います。ですから、あまり市町村だ からより良い理解、もちろん役所の人が知らないというのは少しショックですけれども、 そういったことがない状態であれば。すみません。私としてはこれと言ってあまり考え は浮かばないです。 ○柏女座長  すみません。では重ねて市川さんに伺いたいのですけれども、今の関係ですが、つま り児童相談所は県の機関ですが、そうではなく市町村が最初から最後まで、児童養護施 設についても入所や解除についても中心的な役割を、もちろん児童相談所の応援の下で 役割を果たしていく。そうすることが市町村と施設との結び付きを強め、施設を開いて いくことにつながるのではないかと思いますが、それについて市川さんはどうお考えに なりますでしょうか。 ○市川氏  全くそれは理想的な姿だと思います。例えば児童相談所は児童養護施設で暮らしてい る立場からすると、本当に遠い存在だったのです。最近になってかなりソーシャルワー クが進んできて、権利ノートも配りながら、子どもと顔と顔が一致するようになってき ました。けれども私も16年間の長い間、児童養護施設で生活して、実は自分の担当の 児童相談所がどこであるか、担当の福祉司は一度も会ったことがないです。それは、一 つの時代の流れかもしれませんけれども、しかし今となってはもうそんなことを言って いたらおかしいわけで、そういう状況でありながら、児童相談所と施設の子どもたちと の距離は、なおまだ十分でないところがあると思います。そういう状況の中で、これが 市区町村ですね。もっと身近な子どもたちとの距離の近い地区に、例えば児童相談所と 同じような機能がある、そういうセンター機能のようなものがあれば、児童家庭支援セ ンターみたいなものかもしれませんけれども、やはり広域というよりは、身近な所にそ ういう機関があった方がいいと思います。ただ近いというのは距離的な近さではないで す。やはりケースワーク的な本当にフェースツーフェースのそういう関係性が取れるよ うな、そういう仕組みが大事だと思います。 ○柏女座長  はい、わかりました。ありがとうございました。それでは時間がまいりましたので、 児童養護における当事者参加推進団体からのヒアリングを終了させていただきます。そ のままお座りになっていただければと思いますが、そして三つの団体の方、恐縮ですが、 席を移動していただいて、またお座りいただいてもよろしいでしょうか。  あと15分ほど時間が余りましたので、全体についてのご意見・ご質問をいただく時 間にさせていただきたいと思いますので、前の席が空いておりますので、恐縮ですが3 団体の方は席を移動していただければと思います。よろしいでしょうか。お願いします。  それでは最初にご発題をいただいた3団体の方には最後までお残りいただきまして、 本当にありがとうございます。残り15分ほどの短い時間になると思いますが、委員の 方から意見あるいは補足的に伺いたいこと等がありましたら、お願いしたいと思います。 いかがでしょうか。はい、庄司委員どうぞ。 ○庄司委員  では先ほど聞けなかったので、廣瀬さんに聞きたいのですけれども、とても大事なこ とを指摘していただいたと思います。ここで当事者というのが施設生活者あるいは施設 退所者となっていますが、今、施設に入所している人たちも、この中に入っておられる のか。あるいは当然入れていこうとお考えなのか、その辺りを少し。 ○廣瀬氏  メンバーの中にはいません。ただ、座談会や定期勉強会には参加していただいていま す。参加している現在高校生の子どもたちからは、私は施設にいたから「日向ぼっこ」 と出会えて、施設にいてよかったという声をいただいて、すごくうれしかったことがあ ります。私たちの考えとしては、まだ施設にいるというのは守られていると考えたいと 思っています。守られていない人たちに自分たちの居場所だと感じてもらえるような「日 向ぼっこ」でありたいと思っているので、前提としては養護施設を退所した人との関係 を作っていきたいと考えています。 ○庄司委員  もう1点。施設間格差でラッキーやアンラッキーという言葉が出ていますが、読めば 想像はつきますが、特に施設という制度をこれからより良いものしていくときに、参考 になるようなアンラッキーやラッキーなど、ここに書いていないようなことで何か言い たいことはありますか。 ○廣瀬氏  私自身は出会える人がラッキーかアンラッキーかを分けていると考えています。本当 に出会える人によって、人というのは幾らでも良くなれると思うので、私自身は本当に 人に尽きると感じています。 ○市川氏  補足ですけれども、今のご質問にもかかわるのですが、当事者についての理解です。 一つにはそこがとても大事なポイントで、3ページの私が書いた『「今後目指すべき社会 的養護体制に関する構想検討会」への意見』の冒頭に挙げたのは、まず社会的養護の下 で暮らす当事者がどんな思いで日々暮らしているのか、当事者についての理解。やはり これが一番大きなポイントだろうと思うのです。そのときに一般的に四つの苦痛がある と私は考えていまして、これを整理した表を用意してあります。この「入所前」、「入所 時」それから「施設生活」、「退所前後の社会適応過程」。ここの段階でそれぞれ起きてく る、さまざまな苦痛だけではなくて、実は大事な人と出会って自分の人生を回復すると いう要素もあるわけです。そういう当事者の抱えている問題とそこから立ち上がるとい うトータルな流れ、当事者のライフステージみたいなところを全体で見ていただきたい というのが一つあります。  それから補足ですけれども、山縣委員の質問で、小規模化についての話が出ました。 これについては5ページの「当事者から見た社会的養護の課題と展望」の(10)のところを 少し見てください。5ページの真ん中辺りに「ケア形態の小規模化・個別化は時代の要 望でもあり、必然でもあるが同時に『小規模化リスク』」。これは本当に実体的にありま すが、援助者の孤立化という問題が起きます。そして先ほども出ましたようにミスマッ チ・リスクがありますよね。これは援助者と子どもとの関係性です。さらに小規模化す ればするほど、労働強化という言い方が正しいかどうかわかりませんけれども、そうい う側面がぬぐえないということ。こういったことについての備え、支援をしっかりして おくことが大事だろうということだと思います。以上、補足をさせていただきました。 ○柏女座長  はい、他にはいかがでしょうか。 ○廣瀬氏  すみません。アンラッキーに関してですが、このレジュメの2ページの大きなかっこ の中にある「(1)援助のあり方」など。これに全部打ち消しが付いている状態がアンラッ キーな状態で、ラッキーな状態というのはそれがなされた状態と考えていただけると。 ○柏女座長  はい、他にはいかがでしょうか。では、吉田委員の次に山縣委員、お願いします。 ○吉田委員  では若干手短に。全国母子生活支援施設協議会の方にお聞きしたいのですけれども、 資料の一番後ろにあります入所措置数は、先ほどお話にありましたけれども、自治体間 格差が非常に大きいですね。自治体の取り組みによる違いだということが説明にありま したけれども、1や3といったところでは、そうしたニーズはどうなっているのか、ど こが受け皿になっているのかということが一つと、あとこうした措置数の違いです。非 常に数が多いところ、少ないところ。これはずっとそうなのでしょうか。それともどん どんと自治体間格差が大きくなっているのでしょうか。この2点を教えていただきたい と思います。 ○村田氏  格差は広がっていくのではないかと思います。それから私どもは数値的に分析したわ けではないのですが、民間でよくやっている施設がこの県には何件ぐらいあると、そう いうものと照らし合わせて、この数値がすごくぴったりいくのです。だから県によりま して、公立施設において暫定でほとんど機能していないというところは、ここでも一け たぐらいの数値になっているので、実際にそこでDVなり虐待なりが発生した場合に、 母子をどのように入所させ対応されているのか、少し私どもは疑問ですけれども。 ○柏女座長  吉田委員いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では山縣委員お願いします。 ○山縣委員  全国児童家庭支援センター協議会の方に質問させてください。大体、福祉関係という のは資源があるところに新たな資源がどんどんと集まってくる。今の全国母子生活支援 施設協議会の方からもそうでしたけれども、熱心なところがあればいろいろな機能をど んどん付けていかれますから、どんどんと集まってくる傾向がある。今の児童家庭支援 センターは原則で付置制度を取っている。そうすると、もともと各種子ども関係の資源 が都市部であり、なおかつそういうものがそろっているところに新たに児童家庭支援セ ンターが付置されるというやり方が、今後児童家庭支援センターの展開を考えたときに 望ましいのか。100カ所を超える場合に、どんな施設併設型が望ましいのか。愛媛県の例 が若干出ておりましたけれども、養護施設、乳児院、母子生活支援施設等がない地域に、 むしろ積極的に独立のセンターを法人として設置されるという方が望ましいのか、その 辺の考え方というのは、今どのようにお考えでしょうか。 ○岩城氏  山縣委員もお感じのことだと思いますが、入所型の施設に付置するということは24 時間体制が取れると。でもそれは本体施設に負担がかかっているという話だけのことな のです。そうではなく24時間体制で施設のないところに置こうとするならば、それな りの人的、あるいは予算的なものも、かなり大きいものになってしまうだろうと。独立 センターを法人として設置することは望ましいかもしれません。そしてきちんと施設と の連携が取れていると。そこでは入所は一時保護なり緊急時保護ができなくても、施設 で24時間の対応できるシステムはあってもよいという気はします。いずれにせよ、付 置するというのはすぐその場でという部分と、愛媛県の例のようなサテライト方式もよ いということになっておりますけれども。 ○山縣委員  今、何カ所ぐらいありますか。福井県も確か独立分離していましたよね。 ○岩城氏  福井県と二つ。 ○山縣委員  福井県と愛媛県だけですか。 ○岩城氏  あとは児童相談所がやるような出張相談のような形でやっている所はあります。 ○山縣委員  ありがとうございました。 ○柏女座長  他にはいかがでしょうか。では奥山委員どうぞ。 ○奥山委員  「日向ぼっこ」の方々どなたでも構わないのですが質問させていただきます。施設に 入所された方にとって、一番つらい事象と考えられるのは施設内虐待、それから先ほど 危険性としておっしゃっていたミスマッチングの問題だと思います。それをなくすため に何が必要か。今、非常に大きな問題ですけれども、例えばその問題をどんどんとあぶ り出せばよいのか、それとも他にも何か手当の方法があるのか。きっとその辺は皆さん の方がよくお考えだと思うので、ぜひその辺を伺わせていただきたいと思います。 ○廣瀬氏  私が考えるのは当事者団体による権利擁護センターと申しますか相談できる場があれ ばいいと思います。必ず人間同士は相性の問題もあると思うので、職員の資質が悪いと いうわけではなく、子どもとその人の相性が合わないというのは、誰かに相談しないと 解決しない。子ども自身もそういった相性が合わない大人とうまく付き合えるようにな るというのは、成長の過程で必要なことだとも思われるので、相談できる機関があれば、 ミスマッチもだんだん解消される。必要であれば施設を変更するというのも、それを言 えるような機関があればいいと考えます。 ○市川氏  このミスマッチの問題は、もちろん施設だけではなくて、里親、グループホームでも 起こり得る。さらにもう少しはっきりと言ってしまうと、家庭養育の中でも親子関係の 中でも、もしかしたらあり得るかもしれないです。そういう意味では、完璧に解消する ということは、神のみぞ知る世界かなと思います。しかし問題なのは、一度マッチング で決められたものに柔軟性がなくて、それがあたかも徹底的に決められてしまうという、 その硬直性が大きな問題だと思います。だからといって、取っ換え引っ換えすることが よいとは思わないのですが、その辺りのデリケートな、しかし確実にここは駄目だとい うときの柔軟性と判断です。その仕組みを社会的に確立することが大事ではないかと思 います。以上です。 ○柏女座長  よろしいですか。はい。 ○小林氏  児童相談所はあまり旗色が良くない感じですが。ただ率直に言えば、各都道府県間でか なりの違いがあることは事実です。私も自治体にまたがって利用されている施設に行っ たときに、園長からやってくれる児童相談所(県)とやってくれない児童相談所(県) があるということで、それが際立っていると言っていました。かなり自治体によって違 うので、やはり良いところに標準を合わせて、そこに引っ張っていかないとどうにもな らないのかなと思っております。私は、職員の異動がありますと。異動して最初の仕事 は施設に入所する子どもに会うことからはじめるように言っています。担当であれば、 行くのが当たり前の話ですから、それは当然だと思っています。  後は再統合の問題を語るにしろ、子どもや保護者の意向を把握しないでプログラムも 何もないわけです。それも今の時代で言えば、ある意味では必須条件になってくるので はないでしょうか。その意味では神奈川県の場合には、今から10年前に、ある意味で あまり出したくない施設内虐待等の問題をどんどんと出したという経過があります。こ のことがある意味できっかけになって、児童相談所と施設のつながりを根本から見直す ことに繋がりました。対立ではなく、集まるなら、ひとつでも子どものためになる連携 と仕組みを造ろうということを施設長会で提案したわけです。子どものために、一つで も二つでも前進できるようなことを討議するような場にしないとまずいのではないかと いうことです。このようなことを考えてやっている所もあるのだということを理解して いただきたいと思います。 ○柏女座長  ありがとうございます。時間が。  はい、どうぞ。 ○奥山委員  地域間や施設間格差の問題が大きいということは、かなり問題だろうと思うのです。 ちょうどお三方がいらっしゃいますので、全国児童家庭支援センター協議会など、それ ぞれの協議会の中で、格差解消のために今どのようなことがなされているのかを、一言 ずつ教えていただければと思います。 ○柏女座長  それでは、団体の方からお願いします。手短にお願いできれば幸いです。特になけれ ばなくても結構です。 ○奥山委員  どのようなことをなされているかということと、どうしたらよいかということをお願 いします。 ○藤井氏  全国児童家庭支援センター協議会です。私どもでは格差を是正するというよりは、始 まって10年目を迎える事業ですから、その意味で実績の集計の仕方をしっかりと統一 してかかろうということで、一昨年に統一を図り厚生労働省ときちんとやりとりができ るような仕組みを作っています。 ○柏女座長  それでは、全国母子生活支援施設協議会の方、お願いします。 ○村田氏  格差というか、特に公私格差と言われていたのですけれども、昭和40年代半ばから、 その問題が延々と続いており、現状では母子生活支援施設の公立の施設は、その自治体 のお荷物のような形になっているので。 ○柏女座長  待ってください、公私格差の問題ではないですよね。 ○奥山委員  それも含めて。格差があるということが前提で。 ○柏女座長  わかりました。申し訳ありません。続けてお願いします。すみませんでした。 ○村田氏  最近は、公立の施設が指定管理者制度に移行しているというのが現実で、その移行す る指定管理者制度も母子生活支援施設にとっては、あまりなじまないということで調査 等をやりながら訴えているのが現状です。 ○柏女座長  児童相談所にもお聞きした方がいいですか。 ○奥山委員  児童相談所にも、いろいろ努力されている所とそうではない所がかなりあると思うの ですが、いかがでしょうか。 ○小林氏  とにかく忙殺されていますので。人がいなければ仕事ができないというのが結論です。 そういう中で、神奈川県の宣伝をするようですが、今年度は児童相談所のあり方検討を 児童福祉審議会の中で取り上げて、体制強化を図ることになりました。知事の記者発表 によると、児童相談所全体で20名の職員増を図ることになりました。昨年度を含める と27名になります。それでもやはり経過だと思っていますので、もっと国のあり方を 受けて児童相談所の体制強化を図らなければいけないと思います。必要なところには必 要な形でお金を使うべきだと思っています。しかし、全国の児童相談所の話を聞くと、 非常に財政が厳しい中で、なかなかそのようなスタンスに切り替わっていないのが実態 だと思います。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。 ○江角氏  八王子児童相談所です。一言だけ。格差解消に直接的なものではないかもしれません けれども、確かに前は児童養護施設に預けると、それで児童福祉司は安心してしまって というところがあって、そこは反省を踏まえて、問題があったら行くのではなくて、日 ごろからの施設との意思疎通が大事ということで、東京都の場合は10カ所の児童相談 所があるのですけれども、ブロックごとの児童養護施設が数カ所集まって定期連絡会、 あとは児童相談所の所長以下、個別に施設に行って、個別援助プログラムを検討・見直 しをする。全部の施設は回れませんけれども、10月ごろに行って普段からのつながりを 強める工夫をしているところです。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。ありがとうございます。 ○藤井氏  時間がないところ申し訳ないのですが、1点だけ。今「日向ぼっこ」の話などを聞き ながら、この本来のテーマが、「今後目指すべき児童の社会的養護体制」のあり方につい てですから、非常に初歩的なことかもしれませんが、根本的な問題として、18歳で児童 の年齢を区切ってしまうということを、どこかの機会で修正できないかと思うのです。 児童養護施設の子どもが18歳で放り出される状態。現実的に高校3年生でも年度の途 中で18歳になると措置延長願いを出さなければいけないという現状です。例えば、児 童養護施設の高校3年生が1月に統合失調症にかかってしまったと。その先進学が予定 されていても、どうにもならないですね。進学もできなくなるわけですが、18〜20歳ま での2年間のはざまを埋めてくれる、支援してくれる機関がどこにもないのです。これ が児童の問題に関しては、かなり不備があるという状況が見えているわけです。何とか その辺も検討いただければと思います。よろしくお願いします。 ○柏女座長  ありがとうございます。社会的養護の年齢枠については、この検討会の検討テーマに 入っています。何歳までにするかということも入っていますので、ぜひそれも、いただ いたご意見を基に検討していきたいと思います。  それでは時間になりましたので、今日の議論・ヒアリングは、これをもって終了させ ていただきたいと思います。率直な感想ですけれども、全国児童家庭支援センター協議 会、全国母子生活支援施設協議会は、地域によって偏りがあるということで、ある所と ない所をどう埋めていくのかということが大きな課題になると思いました。  また、児童養護における当事者参加推進団体の方には来ていただいて大変うれしく思 っています。ありがとうございます。私も退所された方々とお付き合いをさせていただ いていますが、実はこうした所になかなか出て来られないのだけれども、しっかりとし たネットワークを持っている。それは施設を退所してうまくいかない等、例えば水商売 ネットが職紹介をするというような、表には出てこない、いわばアンダーグラウンドな ネットワークができていて、そこがかなり施設退所児童を救済しているということも知 っています。そういう意味では、そうした方々と当事者団体がどのように手をつないで いけるのかということも、ぜひ模索していただければありがたいと思いました。  それでは、次回の予定について事務局からご連絡をお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  次回、第6回の検討会は、4月3日火曜日、時間は18〜20時まで。場所は、6階の共 用第8会議室です。それから、第7回検討会は4月16日月曜日、時間は同じく18〜20 時まで。場所も同じく6階の共用第8会議室です。第8回検討会が5月10日木曜日、 時間は18〜20時。場所は未定ですので、追ってご連絡させていただきます。よろしく お願いします。今後の予定については以上です。 ○柏女座長  それでは、今日はこれで終了させていただきます。各委員およびヒアリング関係者の 皆さまにおかれましては、年度末の大変お忙しい中、ご協力いただきまして本当にあり がとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先 03−5253−1111(内線7888) 41