07/03/19 第19回 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録 第19回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する 検討会議事録 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室 第19回 内分泌かく乱化学物質の健康影響評価に関する検討会 日 時:平成19年3月19日(月) 14:00〜16:26 場 所:厚生労働省専用第15会議室 議事次第 1.開 会 2.前回議事録の確認 3.内分泌かく乱化学物質の試験・評価に係る国際的取組について  (1)ウェイブリッジ会議  (2)OECD・VMG−NA 4.平成18年度における子どもへの健康影響に関する調査・研究成果について 5.その他 6.閉 会 出席者 〔委員〕青山委員、井口委員、井上委員、岩本委員、押尾委員、菅野 委員、櫻井委員、紫芝委員、鈴木(勝)委員、鈴木(継)委員、高杉 委員、武谷委員、津金委員、中澤委員、西原委員、藤原委員、安田委 員、和田委員 〔招聘者〕武吉正博先生、江馬眞先生、牧野恒久先生、渋谷淳先生、 岸玲子先生 〔事務局〕高橋医薬安全局長、佐々木化学物質安全対策室長他 ○事務局 それでは、定刻となりましたので、第19回「内分泌かく乱化学物質の健康影響 に関する検討」を開催したいと思います。 本日は、御多忙中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。まず、 事務局より連絡等をさせていただきます。 本日は、阿部委員、酒井委員、眞柄委員の3名の委員から御欠席の連絡をいただいてお ります。 また、本日の会合では、関係する厚生労働科学研究班から御発表をいただくため、事前 に座長とも相談いたして、委員の先生方以外に、各研究班の研究者の方々にも御出席をお 願いしておりますので、お名前だけ御紹介いたします。 武吉正博先生。 江馬眞先生。 牧野恒久先生。 渋谷淳先生。 岸玲子先生 以上です。 また、事務局でございますが、2月から担当することになりました吉田と申します。よ ろしくお願いいたします。 それでは、開会に先立ちまして、医薬食品局長の高橋より一言ごあいさつを申し上げま す。 ○高橋医薬食品局長 医薬食品局長の高橋でございます。先生方におかれましては、日ご ろから化学物質の安全対策に御高配を賜わりまして、改めてこの場をお借りいたしまして、 御礼申し上げます。 内分泌かく乱物質問題につきましては、その取組みが国際的に本格化するきっかけとな ったものは、ウェイブリッジ会議でございますが、これから既に10年が経過をいたしたと ころでございます。 この検討会は、それに合わせて翌年発足いたしたわけでございますが、それから9年と いう月日が流れているわけでございます。 この間、私どもでは、委員の先生方の御指導の下、内分泌でかく乱作用の健康影響に関 するさまざまな調査研究を進めてまいったところでございます。 振り返りますと、身の周りにある化学物質が生体の内分泌系を通して、大変有害な影響 を及ぼすのではないかという強い心配の声も聞かれたわけでございますけれども、その後 の着実な研究の積み重ねによって、少しずついろんなことが解明されてきたのではないか と考えております。 さはさりながら、この問題につきましては、科学的にまだ未解明な部分が数多く残され ているところでございます。 本日は、平成18年度の特に子どもへの健康影響に関します調査研究の成果。具体的には 化学物質が胎児や乳幼児の発達に及ぼす影響を評価する実験、あるいは化学物質の暴露と 先天異常との関連を調べる疫学調査の結果につきまして、研究者の方々より御報告いただ くと聞いております。 私どもといたしましては、これらの調査研究の成果などを踏まえまして、国民の健康的 な生活を確保するための施策に着実につなげていく所存でございます。引き続き、御協力、 御指導を賜わりたいとお願い申し上げます。 ○事務局 ありがとうございました。それでは、座長の櫻井先生、よろしくお願いします。 ○櫻井座長 議事進行を努めさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。 ただいまから第19回「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」を開催いたし ます。 まず、事務局の方から配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料の確認をしたいと思います。 資料は、各委員並びに関係の先生方に、事前に郵送させていただいておりますが、一部 事前配付資料には含まれていない資料もございます。また、一部改定もございます。した がって、一通り説明させていただきます。 まず、資料1−1は、配付資料一覧でございます。 資料1−2は、本日の議事次第でございます。 資料1−3改とあるもの、これが本日の検討会の委員名簿でございます。 資料1−4は、本日の座席表でございます。 資料2は、前回の第18回の本検討会の議事録案でございます。 資料3は、本日の研究成果の発表予定表でございます。 資料4−1は、本日、井上先生から説明いただく、ウェイブリッジ会議についての資料 でございます。 資料4−2は、本日、武吉先生の方から説明いただく資料でございます。 資料5−1は、本日、江馬先生の方から発表いただく資料でございます。 資料5−2は、牧野先生から発表いただく資料でございます。また、5−2につきまし ては、資料番号を振っておりませんが、追加資料ということで、A4の一枚紙の「研究成 果の刊行に関する一覧表」という表を配付しております。 資料5−3は、渋谷先生の発表資料です。 資料5−4は、水上先生の発表資料ですが、本日は、御出席の岸先生の方から御発表い ただきます。 また、資料番号を振っておりませんが、研究発表のプレゼンファイル配付資料というこ とで、これは本日の委員の方々、また先生方のみに配付ということで調整させております。 事務局からは以上です。 もし、資料の不備等がございましたら、挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。 ○櫻井座長 よろしいようですね。それでは、次に今日の予定につきまして、事務局から 説明してください。 ○事務局 それでは、資料1−2の議事次第をごらんください。 本日は、この後、議題の2といたしまして、前回議事録の確認をさせていただきます。 次に議題の3ですが「内分泌かく乱化学物質の試験・評価に係る国際的取組について」と いたしまして、ウェイブリッジ会議からについて、また、OECDのVMG−NAについ て御発表いただきます。 次に議題4としまして「平成18年度における子どもへの健康影響に関する調査・研究成 果について」として、今年度の研究成果について、厚生労働科学研究の研究者の先生方か ら御発表いただきたいと思います。 その後「5.その他」となっております。 ○櫻井座長 という予定でございます。よろしゅうございますか。時間がタイトなので大 変かと思いますが、よろしくお願いいたします。 それでは、議題の2の「前回議事録の確認」です。事務局から説明してください。 ○事務局 それでは、資料2の前回第18回の議事録案をごらんください。 前回の検討会の議事録は、速記録を元に作成しまして、事前に委員の方々には内容を御 確認いただいております。したがいまして、特段の問題がなければ、この内容で確定し、 公開の手続に入らせていただきたいと思います。いかがでございましょうか。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。各委員におかれましては、既に容を確認していただいて いるということですので、この内容で前回の議事録として確定したいと思います。よろし ゅうございますでしょうか。 (「はい」と声あり) ○櫻井座長 それでは、この内容で確定とさせていただきました。確定したものにつきま しては、厚生労働省ホームページ、これは事務局の方ということでございますね。 ○事務局 はい。どうもありがとうございました。この議事録が確定したということで、 厚生労働省ホームページの掲載など、正式な公開の手続に入らせていただきます。ありが とうございます。 ○櫻井座長 それでは、次に議題3です。「内分泌かく乱化学物質の試験評価に係る国際 的取組について」に移りたいと思います。 事務局の方から説明をお願いいたします。 ○事務局 まず、議題の3の「(1)ウェイブリッジ会議」につきましては、国立医薬品 食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長で、本会議の委員でございます、井上先生 より20分程度、また「(2)OECD・VMG−NA」につきましては、財団法人化学物 質評価研究機構安全性評価技術研究所の武吉課長より、15分程度、それぞれ御発表いただ き、その後、御発表に関して、10分程度の御議論をいただきたいと思っております。 また、本発表の資料は、それぞれ資料4−1及び資料4−2となっております。 以上です。 ○櫻井座長 それでは、早速発表を始めてください。 まず、資料4−1について、井上先生、よろしくお願いします。 ○井上委員 それでは、時間も限られているようですので、ごく端折った形になるかと思 いますが、お話をさせていただきます。 資料4−1を十分この時間に御説明することはできないと思うんですけれども、また、 少し言い足りない点とか、リファレンスなどがあるんですけれども、それをちゃんと引用 しておりませんので、いずれ整理したいと思っているところでございます。本日の発表は、 とりあえず、この形で進めたいと思います。 1996年の12月ロンドン郊外のウェイブリッジで、内分泌かく乱化学物質問題の国際ワ ークショップが開催されて以来、昨年の12月で10年間が経過した形になります。 そのころ、内分泌機能に支障を来す化学物質、エンドクリン様作用物質ということで、 ヒトを含む家畜や野生生物全般に深刻な影響が与えられているという指摘がありまして、 その如何を巡って、議論が既に始まっておりました。 シーア・コルボンらの『アワー・ストールン・フューチャー』の出版もこの時期に当た ります。 もとより、30年前にレイチェル・カーソンが『サイレント・スプリング』でDDTやB HCを始めとする、有機塩素系殺虫剤の蓄積性による環境生物への影響に警告を発してお りましたので、ここで取り上げられた五大湖やフロリダのアポプカレイク、あるいは北海 沿岸などでの事例は、そのままヒトに対する影響に直結するものとの危惧をもって受け止 められ、各地で話題になったところでした。 このとき、まだ『アワー・ストールン・フューチャー』は、本邦で訳されておりません ので、本邦で大きな話題になってくるのは、更にその後のことでありますけれども、時あ たかも北海沿岸の各国であるとか、バルト海沿岸のスカンジナビア諸国では、この時期に 盛んに、この問題に関する局地的な会議が重ねられておりました。 欧州委員会は、このときノランさんなどを中心にしまして、世界保健機構化学物質安全 計画と経済開発協力機構に、この問題に対する対応を呼びかけたと言われております。 かくしてウェイブリッジで内分泌かく乱物質のヒトの健康や野生生物に対する影響に関 するワークショップが開催されました。 以降、ウェイブリッジ会議と略述いたしますけれども、この問題に関するこの会議が最 初の国際会議になりました。この会議には、本邦からは、当時、この検討会のメンバー、 委員でもいらっしゃった松尾先生も出席しておられましたので、この席を借りて個人的に も御冥福をお祈りしたいと思いますが、先ほど昨年の議事録を見ますと、松尾先生の御発 言が中に入っておりましたので、昨年の検討会のころには、お元気だったんだということ を改めて感じました。 (PP) あとは、この内容については復唱しませんけれども、一番左がウェイブリッジ会議の抄 録集です。 それから真ん中が、それから約5年後に作成されたWTO/IPCSのグローバル・ア セスメントであります。 一番右が、昨年12月のヘルシンキの会議の抄録であります。EUは、アメリカや本邦に おける内分泌かく乱問題に対する取組みに比べて、出足は非常におっとりと始まりました けれども、最近の5年間は、円に直して、150 〜160 億円/年ぐらいの総額をこの研究に 支出しております。かなり大きなお金だと思いますけれども、それを反映いたしまして、 5年前に出た研究費からの成果などを始めとして、続々と報告が出ているところでござい ます。 したがって、今回のフィンランドにおける会議も、そういった成果の上に立って、EU としての将来方向に、かなりの自信を持って提起してきているという印象を受けました。 本日皆様にお届けいたしました資料は、構成としましては、2ページ目の下のところにま で序文の形になっておりまして、大体総括的に、この間の仕事がどういうふうに進んだか ということを、ここに掲げたEUの第1回の会議、それからグローバル・アセスメント、 それから昨年の、これもEUの会議で、(彼らは意識的に同じタイトルを付けております けれども、)3つの時期に、それぞれどういうふうな考え方で、エンドクライン・ディス ラプターの仕事をまとめてきたのかということについて述べています。実を言いますと、 事務局の吉田補佐から、それをまとめるように御示唆をいただきまして、(それがきっと この10年間を見る上で、非常に役立つだろうという御指摘いただきまして、)急遽、それ らをここにまとめた次第でございます。 したがいまして、この3つの集会がどのような形で提起されて行われたのかということ を「はじめに」のところで書いてございます。 それ以降は、野生生物が2ページ目の下で、4ページ目の上の方に生物影響とメカニズ ムに関するもの、それから5ページ目の真ん中付近にヒトへの影響についての記述をして ございます。 それぞれウェイブリッジ会議、それからグローバル・アセスメント、そしてヘルシンキ 会議というふうに3つずつ各時点でどういうことが討議されたり、どういう認識であった のかということを書いてございます。 例えば、野生生物についてはウェイブリッジ会議では、蓋然的に指摘されているのみで、 野生生物への影響の具体的事象については、ほとんど記載はされておりません。 そこでは、(これは読みませんけれども、)以下のような7項目が差し当たって必要と 合意されております。 それを読んでいただくと、おわかりいただけると思いますけれども、まず、とにかく調 査確認ということで、一体どうなっているのかを調べようというような視点でありました。 それが、グローバル・アセスメントに行きますと、細かい点が野生生物に関しても入手 し得た限りの時点での文献がすべて通覧されております。ピアレビュー段階で追加された り、あるいはパブコメの段階で追加されたりして、充実されました。 そして、水生生物での影響が最も顕著であること、そして、食物連鎖の頂点にある動物 での影響が強いということ、が総則的に、(当たり前と言えば、当たり前かもしれません けれども、)指摘されました。 このときには、水生生物で比較的強い影響が出る傾向があるということが指摘されただ けでしたけれども、フィンランドでは、更にヒトに対する暴露は極めて少ない。それは、 ヒトが摂取している水であるとか、食品にこれらのものがコンタミネーションすることが 極めて少ないので、事故のような形で油症であるとか、ミシガンレイクの問題であるとか、 そういうような形で暴露されない限りヒトでは発生しないということを確認しつつ、ヒト に蓋然性がないということではないということも確認いたしました。 したがって、ちょっと注意深さを失うと、ヒトに対しても同じことが起こるであろうと いうことを確認したところでございます。 それでは、野生生物についてはそういうことですけれども、いつもその当時に出してい たものを見ていただきたいと思いますが、こんなことで影響がありそうだということにな りました。 (PP) フィンランドの会議では、これらの問題について提案をして、一つひとつ検証してまい りました。 (PP) 1つは胎生期、新生時期のウィンドー低用量問題として環境エストロゲンであるとか、 早発性腟開口であるとか、低用量影響、無閾値なのか、非連続性なのか、あるいは発がん の蓋然性はどうなのかといったようなことが議論されましたが、こういったものは、ほと んど現段階で複数以上の研究者によって検証されております。 (PP) 次の問題は、内分泌かく乱と遺伝子発現ですけれども、井口先生から資料を拝借したり いたしましたけれども、用量相関性のバイオマーカーが端的に見ると、『ない』というこ とがあります。 いろいろな作用を通じて内分泌かく乱の影響が起こるということが、遺伝子プロファイ リングの動きの方からわかってきたということであるとか、それから内分泌かく乱に対す る一般的なプロファイルがない。それから加算効果については、メカニズムが同じである 場合には、ほとんど加算効果があるということが複数以上の研究者から確認されました。 膜受容体の発見に関連して、さまざまな反応時間との関係などが検証されてまいりました し、また、反応の組織特異性という問題も大きくクローズ・アップされました。 すなわち、従来のまとめを見ていただきますと、ウェイブリッジ会議では、ほとんど精 巣と卵巣のこと以外は議論がされておりません。 ところが、当然のことながら、グローバル・アセスメントでは高次生命系であるとか、 そういうところまで広がりました。 しかしながら、対象がヘルシンキの会議では、カロリンスカの研究者などを含む複数の 研究者から、高次生命系のみならず、エンドクライン・オルガンとして従来認識されてい なかったような臓器、例えば肝臓のような臓器では、子宮卵巣系では、エストラジオール に比べて、はるかに反応性が弱いノニルフェノールのようなものが肝臓では、むしろ逆転 して、強い影響があるというようなことあることが明らかになったとしております。これ はカロリンスカの研究者からも、また井口先生の研究室からも出ておりまして、期せずし て、肝臓というのは、エンドクライン・オルガンである、というような冗句が出るほどの 状態でありました。 したがって、このまま検討を続けていきますと、いわゆる内分泌かく乱化学物質でもっ て、かく乱され得る臓器というのは、生殖器に限らず、体の中のエストロゲン受容体、核 内受容体を持つ臓器は、ほとんどかく乱を受ける可能性があるということが確認されてお ります。そしてその延長線上として、従来から言われておりました、アロマターゼ産生能 のある脂肪組織との関係で、メタボリック症候群のようなものも内分泌かく乱との関係を 十分に検討する必要があるであろうという意見が、これも複数の研究者から出ております。 したがいまして、これは明らかに当初のウェイブリッジ会議のときに想定していたこと 以上の広がりをもって、内分泌臓器についての大きな拡張が、現在、起こっているという ことであろうかと思います。 (PP) また、高次生命系についての研究は、日本の研究者の方たちには、厚生労働省が呼びか けて、総合的な研究を大いに進めていただいたところでございますが、これについては、 私から解説するまでもなく、AhRとERのシグナルの交差性であるとか、AhRの結合 性、内在性リガンドに関する研究であるとか、免疫学的なパラメータにおける、かなり低 い用量でのビスフェノールAの反応性が指摘されております。ちなみにウェイブリッジ会 議でもグローバル・アセスメントでもエンドクライン・ディスラプターには免疫学的な低 用量作用はないというふうに結論づけられておりました。 しかしながら、これらについても、また神経行動学的な広範な影響についても、いずれ も我が国の研究者がリード研究者として役割を果たして『Nature』を含む高水準の 雑誌に公表されたものでございます。 これらのテーマについては、ヘルシンキの会議では、これらの報告に対して確認される と同時に、賛同するデータを持った研究者が付議を付けてくれました。 (PP) この後は、お手元のメモでは各論的に低用量問題等の記述がずっと列記されているんで すけれども、時間は、もうそれほどありませんので、お話はこの辺で終わらせていただこ うと思っておりますけれども、ちょっと先ほどに言い落としたことの中には、これは福島 班員が研究されたことですけれども、こういったU字系の反応性については、非常に多岐 にわたってデータが今は出ておりまして、米国EPAにおきましては、ウェブサイトでも ってそのことを公表して、解説しているところでございます。 そういう意味では、発がんの蓋然性としましては、ビスフェノールAの、これはハフと いう御名前の人のナショナル・トキシコロジー・プログラムからのデータですけれども、 こういった生残曲線を出します。これは、同形の無処置の動物の生残曲線に比べますと、 明らかに傾きの大きな促進老化の形を取っております。 したがいまして、エンドクライン・ディスラプターの生体影響については、加齢の影響 というものを念頭に置いて研究することが必要だ、これもカロリンスカの研究者を含む複 数の研究者から指示された状況でございます。加齢の影響、発がん蓋然性、こういったこ の間、10年間に一つひとつ、班員の方たちから提案を受けて、厚生労働科学研究で取り上 げたことごとくの研究が、現在、十分注意してかかっていかなければならない事柄である ということが明らかになってきたということを最後に申し上げて、また、ヒトに関する暴 露に関しては、幸いなことに、食事であるとか、そういったものにについては、日本で言 えば、差し詰め厚生医療行政によって安全性がある程度支えられているんだ、ということ とを申し上げて御報告といたしたいと思います。 以上でございます。 ○櫻井座長 ありがとうございました。引き続きまして、財団法人化学物質評価研究機構 の安全性評価技術研究所の吉武課長から資料4−2を御説明いただいて、その後、少し討 議の時間を取りたいと思います。 ○武吉氏 化評研の武吉といいます。よろしくお願いいたします。 (PP) 今日、私がお話をするのは、OECDの中の会議の1つであります。VMG−NAグル ープという会議の報告でございます。この会議自体は、内分泌かく乱試験法の中でも動物 を使わないin vitroの実験を中心としたグループでございまして、非常に限られた分野で ございます。 内分泌かく乱問題というのが話題になった、1998年当時と比べますと、現在、大きな違 いというのは、さまざまな試験法が開発されて、かなり正確に内分泌系への影響というの がとらえられるようになったということになるかと思います。 また、その活動の中で、特に日本人の研究者が果たした役割というのは、非常に大きな ものがあります。 (PP) VMG−NAという会議の位置づけでございますが、まず、OECDのテストガイドラ インプログラムの下に、エンドクライン・ディスラプター・テスティング・アンド・アセ スメントという会議がございます。この下にVMG−mammalian 、これは哺乳動物を使っ た実験法での試験法検証グループ、それとVMG−eco、これは生態影響です。そして、も う一つ2002年に設立されましたVMG−NAというグループがあるわけです。このグルー プの中では、先ほど申しましたように、動物を使わない実験方法を中心とした試験法の検 証というのが行われておりまして、OECDの中でもEDTAの方で、コンセプチュアル ・フレームワークといって、内分泌かく乱に関わる数々の試験法の中で、レベル1からレ ベル5までに区分した多くの試験方法がリストされています。 レベル1につきましては、既存データが中心とありますけれども、レベル2に相当する ものが、VMG−NAの対象試験でございまして、ER、AR、TRなどのレセプター・ バインディング・アッセイ、そしてトランス・アクティベーション・アッセイ、そしてア ルマターゼ等のステロイドジェネシス、QSARであるとか、そういったin vitroの実験 法を中心に、このグループで検討をしております。 ちなみに、レベル3では、動物を使ったスクリーニング試験、子宮増殖試験であるとか、 ハーシュバーガー試験、これらについても日本人の研究者というのが非常に多大な貢献を しております。 また、レベル4としましては、正常動物でのマルチプルなエンドクライン・メカニズム の検出試験ということで、TG407 試験等が挙げられます。 また、レベル5は、最も重い試験でございますが、確定試験に相当する多世代試験など が、このレベル5に当たります。 まず、VMG−NAの会議というのは、昨年の12月に我が国日本で開催されました。そ の中での主な議題について、今日、御報告させていただきます。 数々のin vitro試験があるんですけれども、その中で、特に検証が進んでいるものとし まして、レポーター遺伝子アッセイ。本日は特にHeLa−9903細胞、これは日本で開発 された方法です。その検証状況について、そして受容体結合試験、そしてステロイドジェ ネシス試験、それとの話題提供としまして、OECDでのQSARグループの在り方につ いて。 最後に、ECVAM、欧州のバリデーション・マネージメント・グループ、それとIC CVAM、米国のバリデーションの団体です。こういったところが主導しているアッセイ についての話題を提供したいと思います。 (PP) まず、レポーター遺伝子アッセイについてですが、ホルモンというのを生体内でホルモ ン応答遺伝子に作用しまして、タンパク質をつくることによって、そのタンパク質が生物 活性を発現するというメカニズムがあります。 (PP) ホルモン応答遺伝子には、タンパク質をコードしたORFの前に、ホルモン応答配列と いう部分がございまして、ここにホルモンとレセプターが結合したものが作用することに よってタンパク質が発現するという機序をたどります。 レポーター遺伝子アッセイというのは、ホルモン応答遺伝子とタンパク質部分、ORF にマーカーの遺伝子としまして、例えばルシフェラーゼ、これはホタルの発光遺伝子です。 こういったものを人為的に組み込みまして、同じ実験系といいますか、同じメカニズムで ホルモンが入ってきた場合に、今度はルシフェラーゼを化学発光でとらえて、ホルモン活 性を推定するという方法です。 (PP) 方法の概略ですが、細胞を増やしまして、それをマイクロプレートに播いて、化学物質 を暴露します。そうして、24時間ほどルシフェラーゼを誘導しますと、右にあるのが典型 的な例ですが、例えば17β-エストラジオール等を作用させますと、100 ピコほどで、ほ ぼマキシマムの誘導が起こるという実験系です。 (PP) 日本で開発されましたHeLa−9903細胞を使った方法ですが、この細胞は住友化学で 開発されたもので、ホストセルはHeLa細胞を使っています。 その細胞にヒトのERαの発現遺伝子、そしてレポーターのコンストラクトを人為的に 組み込んだものです。 そして、この細胞では、元来ERα、β、AR、TR、TRβというホルモンレセプタ ーについては機能的な発現がないということを確認されております。 (PP) この実験系につきましては、日本、特に化評研がリードラボを務めておりまして、開発 以降、2003年に行われましたVMG−NAの第1回の会議でアッセイの開発状況、そして プレバリデーションのデータについての報告をしております。 その後、第2回の会議で、国内の4施設で行った、インター・ラボラトリー、施設間の 再現性実験について報告をしまして、第3回のVMG会議にバリデーションレポートを提 出しております。 そのときに、このバリデーションレポートが実際にバリデーションレポートとして認め られるものかどうかということをアドバイスするといいますか、検討する目的で、プレリ ミナリー・バリデーション・アセスメント・パネルというグループが設置されて、そこで 議論が行われています。 その後、バリデーションレポート自体は非常によくできたもので、バリデーションピュ アレビューに十分耐え得るものであるということが報告されまして、現在、国際的にOE CDの下で、国際的なピュアレビューが進行中でございます。 予定どおりに行きますと、今月にはピュアレビュワーの方から報告が上がってきまして、 その内、OECDでのテストガイドライン化の方に進むということが報告されています。 これは、現在、HeLa−9903細胞を使ったレポーター遺伝子アッセイのピュアレビュ ーに当たっている方々です。 このOECDの下で、イギリスのドクタースーバローという方がコンサルタントを務め まして、下に示しました7名のピュアレビュアーの方がピュアレビューに当たっておりま す。 日本からは、生物統計の専門家といたしまして、東京理科大の吉村先生がピュアレビュ アーとして参加しております。 (PP) また、HeLa−9903細胞を使いましたバリデーションレポートとOECDのテストガ イドラインのドラフトは、現在、OECDのウェブサイトで公開されております。だれで も自由に見ることができるという状況にございます。 (PP) 次に受容体結合試験ですが、受容体結合試験は、エストロゲン・レセプタータンパクと 調べようとする化学物質として、放射ラベルをしたエストラジオールを反応させます。そ して、反応しなかったフリーのエストラジオールをDCC処理して取り除いて、レセプタ ーに結合した放射活性を持ったエストラジオールをシンチレーションカウンターで測定を するという実験でございます。これによって、化学物質のレセプターへの相対的な親和性 を見ることができます。 (PP) 受容体結合試験につきましては、これもVMG−NAの方でバリデーションが進められ ておりまして、こちらの方法は、US−EPA、アメリカの環境保護庁がリードラボを務 めております。 現在、FWAプロトコルというもの、これはパンベラという市販のエストロゲン・レセ プターを使った実験系とCERIで開発しましたGSTフュージョンのERを使った2つ の手法について、現在、バリデーションが進められています。 昨年の会議では、今年の1月に最終的なインター・ラボラトリーのバリデーションの参 加施設を選定して、2月にはインター・ラボラトリーのバリデーションを開始するという 予定になっているんですけれども、現在のところ、まだ、開始されていないということで、 若干遅れが出ているようです。 (PP) 次にステロイドホルモン生合成への影響評価、ステロイドジェネシスについての実験系 ですが、性ホルモンというのは、ここに示しましたような非常に複雑な生合成経路をたど りますし、その過程にいろんなCYPが関与しています。 これらの性ホルモンを生合成する酵素類というのに影響があると、やはり内分泌系にも 影響を与える可能性があるということで、これらへの合成系への影響について、調べよう というのがステロイドジェネシス・アッセイの目的です。 (PP) 現在、OECDの方で検証が進められているのが、H295R細胞を使った実験系ですが、 この細胞は、ヒト副腎由来で性ホルモン生合成に関するいろんな酵素を発現しております。 この細胞を増やしまして、24well plateに播きます。そして、被験物質を暴露して、48 時間培養しまして、培地中の各ホルモン、先ほどの赤で示したホルモンですが、これらを 測定することによって、その生合成過程にある生合成系の酵素への影響を見るという実験 系です。 (PP) この方法は、アメリカのEPAがリードラボを務めておりまして、現在、CERIを含 む6施設で検証を進めております。 現状としましては、細胞数、暴露時間以外は各参加施設のプロトコルを用いて、プレバ リデーション、バリデーションの前の段階ですけれども、各施設で実験を行ったところ、 結果が非常にばらついた、結果の不一致もあったということで、現在、SOPの改良も行 って、更にプレバリデーションを行った後に、マルチラボラトリーのバリデーションに進 むという予定になっています。 昨年の会議では、2007年、今年のファーストクオーターで改良SOPを用いたプレバリ デーションが開始されるという予定になっていたんですが、現時点では、まだ開始されて いないということで、こちらのアッセイ系についても若干遅れが出ているという状況です。 (PP) ここで、今まで御紹介しました3つの実験系、受容体結合試験、ステロイドジェネシス ・アッセイ、そしてレセプター遺伝子アッセイ、この3つの試験が国際標準化の過程でど の位置にあるかということを示したものです。 OECDでのテストガイドライン化というのは、アッセイを開発しますと、まず、プレ バリデーション、これは開発施設を中心に行われますが、その後に複数のラボラトリーで の技術移転難易度等を評価するためのインター・ラボラトリーのバリデーションが実施さ れて、バリデーションレポートが作成され、そして、それがピュアレビューを受けた後に、 その結果に基づいてガイドライン化に進むといったプロセスをたどります。 この過程でいきますと、我が国で開発されました、HeLa-9903細胞を使ったレセプ ター遺伝子アッセイというのは、テストガイドライン化の一歩手前のところまで来ている ということで、最も標準化のプロセスが進んだ試験法の1つになります。 また、受容体結合、ステロイドジェネシスについては、現在、プレバリデーションの段 階で、まだ若干の時間が必要だろうという状況にございます。 (PP) 次にOECD QSARアドホックグループとED QSARタスクグループの関係と いうことですが、これはちょっとわかりにくい話かもしれませんが、実はOECDの中に QSAR、構造活性相関のアドホックグループというのが2003年に設立されています。 また、EDTA、内分泌かく乱のグループの、特にVMG−NAの下にEDQSARタ スクグループというのが、2004年、2回目のVMGのときに設立されたわけです。 ところが、QSARのアドホックグループの活動については、ジョイントミーティング、 これはQSARのアドホックグループの上位にある会議ですけれども、そちらで昨年の11 月、OECDとしてはQSARのバリデーションには余り関わるべきではないという決定 がされているわけです。非常に上位の会議の中で、そういった決定がされているわけです が、EDTAのVMG−NA、その下にあるEDQSARタスクグループというのが存在 しますと、それはジョイントミーティングとは若干矛盾が生じてくるということで、ここ はどうするかという話が出てきたわけです。 そこでVMG−NAとしては、ED QSARのタスクグループについては、特に情報 交換の目的として存続させるという決定がされています。 この話題につきましては、特に技術的なものというよりも、手続的な話が中心でござい ます。 (PP) その他の動向としまして、ECVAM、これは欧州の代替法検証センターというところ が、どういった活動をしているかということについて報告がされまして、現在、リプトテ クトプロジェクトというのが、現在、ECVAMの下で行われております。 そこで、現在は、ERα、ARの受容体結合試験、そしてERのレポーター遺伝子アッ セイ、アゴニスト/アンタゴニスト系、MELNという系と、あとはER−CALUXと いう系、そしてARのレポーター遺伝子アッセイ、これはPALMセル、AR−CALU Xといった6つの実験系について、現在、検討を進めているという報告がされています。 (PP) またICCVAM、これはアメリカの代替法検証センターですが、こちらではレポータ ー遺伝子アッセイの中で、LUMIセルという細胞を用いた実験系について、国際的なバ リデーションを進めようということで、現在、その計画が進行中です。 これにつきましては、現在、ICCVAMがリードを務めておりまして、ECVAM、 そして日本の代替法検証センターであるJACVAM、その3つの機関が国際的なコラボ レーションを行って、現在、検証作業を進めているという状況にあります。 (PP) これは、最後になりますが、次回VMG−NAの会議につきましては、今年の10月ある いは11月にホストとしてはEC、ECVAMが務めて、恐らくイタリアで行われるだろう ということになっています。 また、これらのこの会議につきましては、過去3年間、スティーブ・ブラッドバリーと いうEPAの方が非常にすばらしい議長を務めていただいたんですが、次回から、今度は コ・チェアマンシップということで、スティーブ・ブラッドバリーとダニエル・ディート リッヒ、ECVAMの方が務められるということが報告されております。 (PP) これが最後ですが、これらの研究につきましては、厚生労働科学研究費補助金化学物質 リスク研究事業の「生体作用点、特に核内受容体及び関連転写因子群に着目した化学物質 の毒性発現機構の解明や毒性予測法の開発を行う研究(H17−化学−一般−007 )」及び 経済産業省の内分泌かく乱物質関連事業の補助によって行われたということを報告させて いただきます。 以上で発表を終わります。 ○櫻井座長 ありがとうございました。お二人から最近の国際的な取組みについて御説明 がありましたが、何か御質問とかコメントがありましたら、どうぞ。 よろしゅうございますか。どうぞ。 ○岩本委員 井上委員にお伺いしたいんでが、ヘルシンキ会議の中で、ヒトへの影響につ いて、今後、疫学調査等を進めていく方針なのかどうか、先生、出席されていて、どのよ うな印象だったんでしょうか。 というのは、先生のレポートの中に、ヒトの暴露が、事故のような大量被爆がない限り、 因果関係の特定も困難なことが少なくないと記載されておりますが、今後、我々の疫学調 査等、どのような位置づけになっていくか伺いたい。 ○井上委員 直接のお答えができる内容はございません。この会議は、レギュラトリーの ニュアンスはほとんどなくて、研究成果、ステート・オブ・アーツの交換ということが中 心でしたので、ここに岩本先生が読み上げられた私の文章は、あくまでもヒトのデータが こういう事情によって、採取しにくい状況にあるということ、現在、そういうデータが十 分にないということを関係した発表者がお話になったということで、したがって、そうし た今後の研究が行われるべきでないとか、更に推進すべきだとかということは、どちらも 特に意味していなかったように思います。 ○岩本委員 どうもありがとうございます。 ○櫻井座長 よろしゅうございますか。 それでは、次の議題に移りたいと思います。議事次第4の「平成18年度における子ども への健康影響に関する調査・研究成果について」でございます。 事務局の方から説明をお願いいたします。 ○事務局 発表につきましては、先生方の御都合をお伺いいたしまして、資料3の研究発 表予定表がございますので、これに従って、順番にお願いいたしております。 また、発表につきましては、それぞれ15分程度を目安にしていただきまして、具体的に は発表時間に10分程度、質疑応答は5分程度ということで考えております。 事前に作成いただきましたレジュメと、追加配付資料につきましては、資料5−1から 資料5−4として配付いたしております。 以上です。 ○櫻井座長 多分、研究成果の量から考えますと、それぞれ御発表10分というのは、かな り酷でございますが、最善を尽くして内容を御説明いただき、5分ほど討議ということで、 4時目標でございますが、少し伸びても15分ぐらい、余り十分な時間はございませんので、 それも頭に入れて進めていただくよう、お願いいたします。 それでは、最初に江馬先生、どうぞ。 ○江馬先生 国立衛研の江馬です。よろしくお願いします。我々は「化学物質による子ど もへの健康影響に関する研究−恒常性維持機構発達の過渡特性に立脚したリスク評価研究 −」ということで研究をやらせていただいております。 (PP) 本研究は「子どもは小さな大人ではない」という観点に立ち、出生、離乳、性成熟など の外的・内的な大変動を経て成人に至る過程で、子どもが経験する脳神経系、免疫系、内 分泌系などにおける高次恒常性維持機構の過渡的なアンバランスの特性を踏まえ、子ども における化学物質の有害健康影響発現の特異性を解明し、リスク評価に役立てることを目 的としております。 (PP) 本研究班では、恒常性維持機構発達解析の部分、中でも発生発育、神経、免疫、内分泌 系に関する研究を行っております。 また、外層問題解析の部分では、実験動物からヒト外挿問題、大人から子どもへの外挿 問題について研究をしております。 (PP) これは、あらかじめレジュメに出していただいた、途中経過の流れ図で、この部分につ いて過去分野について若干これよりもう少し詳しく御説明したいと思います。 (PP) まず、発生発育につきましては、紫外線吸収剤で通常反復投与毒性に用いる6週齢のラ ットを用いた28日間試験では、ここでは肝臓重量で示しておりますが、雄だけに肝臓への 影響が認められておりますが、離乳前の4日から21日のラットに強制経口投与しますと、 雄・雌とも、用いました投与量では同様な影響が認められて、性差があったことがわかり ました。 また、もう一つの紫外線吸収剤、これは上の紫外線吸収剤のクロルが取れたものですが、 これも5週齢のラットで反復投与実験をしますと、雄で非常に強い毒性が見られるものが、 新生児、離乳前のラットでは雄で若干毒性が弱まりますが、毒性の雌雄差は著しく弱くな ります。 次に、神経肝細胞系譜制御における化学物質の影響については、化学物質の神経肝細胞 系譜制御における影響の分子基盤の解明を目的として行っております。 (PP) 用いました化学物質はレチノイン酸でありまして、ES細胞から神経肝細胞への分化誘 導系を確立しまして、ES細胞をレチノイン酸処理することで、通常アストロサイトへの 分化能を持たない時期にアストロサイト誘導性のサイトカインに対応した早期アストロサ イト分化能が獲得されることを見出しております。 また、バルプロ酸につきましては、成体神経肝細胞だけでなく胎生期神経肝細胞のニュ ーロン分化を促進するとともに、グリア細胞への分化を抑制することを見出しております。 (PP) 脳形成・発達過程における神経伝達物質シグナルの外因性かく乱による脳障害につきま しては、グルタミン酸受容体を過剰刺激する化学物質を用いて、マウス胎生及び幼若期暴 露による不可逆的な脳機能発達障害について検討を行っております。 用いました物質は、貝毒のドーモイ酸であります。これは海馬ニューロンのグルタミン 酸受容体を刺激することにより興奮・死滅させることがわかっております。 (PP) これを妊娠マウスに投与して、その子どもの構造変化、脳の形態学的変化を検討したも ので、妊娠中にドーモイ酸を投与したマウスの子どもでは、情動−認知行動に著しい変化 が観察されております。 同時に、大脳皮質及び海馬におきましては、神経細胞突起発育不全が確認されておりま す。 (PP) 免疫系につきましては、自然免疫系の子どもの成長に応じた発達の分子基盤について研 究しております。種を超えて保存された自然免疫系の子どもの成長に応じた発達機構を明 らかにして、化学物質などの子どもの健康に影響を与える危険に対し、生体のホメオスタ シスを保つために必要な生体防御機構を明らかにすることを目的としております。 (PP) 8週齢と2週齢のマウスの腹腔内マクロファージの機能を比較しましたところ、サイト カイン産生能につきましては、8週齢、2週齢のマウスで差は認められませんでしたが、 自然免疫系の最も基本的な機能である貪食能は、2週齢では低いことで、週齢によって差 があることがわかりました。 内分泌系につきましては、子どもに対する化学物質暴露影響の内分泌的観点からの解明 をしております。具体的には、マウスの新生児期のホルモン影響を解明して、長期的な悪 影響に至る過程を解明するまでの実験を行っております。 新生児期に、エストロゲン暴露、この場合、DESを投与したところ、特定の遺伝子群 は恒常的に発現変化が持続していることがわかりましたが、マウス自身におけるメチル化 されているゲノムDNAについて同定しましたところ、新生児期に暴露対象群との間での DNAのメチル化のパターンに差は見られませんでした。 (PP) 大人から子どもへの外挿問題につきましては、まずガルシニアによる精巣障害性の子ど も期感受性に関する研究を行いました。ガルシニアは、柑橘系あるいは常緑樹で、その果 実や果皮に含まれる香辛料でありまして、精巣毒性がわかっております。 離乳直後のマウス3週齢ですが、暴露した場合は成長の成熟した固体に暴露するよりも 強い精巣毒性が発現することがわかりました。 (PP) また、先ほど申し上げましたドーモイ酸による神経行動影響の子ども期感受性に関する 研究では、10週齢のマウス、これは右のスライドの赤線で示しておりますが、暴露による 行動試験の変化は、場所連想記憶の低下のみにとどまりましたが、2週齢、緑の線ですが、 暴露して10週齢で検査したところ、これに加えまして、音連想記憶の低下、多種多動性、 及び適応性に関する所見の変化が認められました。 子ども期の一過性のドーモイ酸暴露により、生体暴露では認められない行動変化と、そ れに関連すると思われる、グルタミン酸受容体過剰刺激による下流シグナルの持続的亢進 が誘発されることが示唆されました。 (PP) 実験動物からヒトへの外挿問題につきましては、細胞を用いたin vitroにおける化学物 質・薬物の影響を解析しております。 (PP) バルプロ酸添加によりまして、ES細胞は内胚葉、中胚葉に特異的な分子マーカーの発 現量は、用量依存的に抑制されておりましたが、外胚葉特異的な分子マーカーは用量依存 的に発現が増加していることが明らかになりました。 また、マウス神経芽腫由来細胞にバルプロ酸を添加したところ、細胞の神経突起を伸長 させることがわかりました。 (PP) 今後の予定でありますが、紫外線吸収剤の毒性発現に対する紫外線吸収剤につきまして は、毒性発現に対する性ホルモンの影響を調べるために、虚勢ラットでの実験を現在行っ ております。また、薬物代謝動態について検討するつもりでおります。 レチノイン酸によるES細胞におけるアストロサイトの特異的遺伝子プロモーターの脱 メチル化誘導のメカニズムを検討し、バルプロ酸による神経幹細胞からオリゴデンドロサ イトへの分化抑制の分子基盤について研究を行います。 ドーモイ酸投与後の脳構造形成過程へ及ぼす影響について比較検討を行います。情動− 認知機能と脳構造形成不全との相関について検討する予定でおります。 免疫系につきましては、2−12週齢での自然免疫系の機能を更に解析するつもりであり ます。自然免疫系に属するマクロファージの週齢に応じた機能が更に明らかになるものと 思われます。 また、ホルモンにつきましては、マウスの成長の各時期にDESを投与した地質の変化 について、引き続き検討を進めるつもりでおります。 (PP) ヒドロキシクエン酸によるマウスにおける精巣毒性につきましては、網羅的遺伝子発現 解析結果を基に、幼若、成体の感受性の差の原因の解明を進めるつもりでおります。また、 ドーモイ酸等による行動異常につきましては、脳構造形成過程へ及ぼす影響、情動−認知 機能の行動解析を行い、脳構造形成不全との相関について検討する予定でおります。 また、マウスES細胞の分化システムによる、化学物質の毒性評価を行い、メカニズム 解析を行う。また、組織肝細胞、株化細胞における毒性評価と毒性発現機構の解明を行う つもりでおります。 どうもありがとうございました。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。何か御質問ございますか。それから、研究者の方々も相 互に自由に御討議いただきたいということでございますので、もし何かございましたら御 発言いただきたいと思います。 どうぞ。 ○渋谷先生 ドーモイ酸の胎児期暴露によりまして行動異常が出ているということですけ れども、海馬のCA領域に選択的な毒性というのは、確認されておるんでしょうか。 ○江馬先生 そこのところを、今年度も引き続いてもうちょっと詳しくやろうと思ってお ります。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。どうぞ。 ○渋谷先生 新生児期のエストロゲン暴露によって、ゲノムのメチレーションを観察され ております。これは、どのような方法で観察されておりますか。マイクロアレイとかを用 いているんですか。 ○江馬先生 今、詳しい資料がありません。済みません。報告書には書いてあります。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。どうぞ。 ○鈴木(勝)委員 獣医大の鈴木です。UV吸収剤の実験について教えていただきたいん ですけれども、これは肝臓の重量変化について、毒性であると言っておられたんですが、 どういう根拠ですか。 ○江馬先生 肝臓の変化をお示ししたのは、ほかの毒性も出ているんですが、特徴的に図 に示したかったからということです。クロルの付いている方は、それほど毒性が強くない んですが、肝臓だけに生化学的な変化が認められました。クロルの付いてない方は、非常 に毒性が強いです。 ○鈴木(勝)委員 肝臓の重量の増加だけしか示されてないので、よく理解できなかった んですけれども、適用的な変化なのか、本当に毒性変化なのかという点について、どこま で御確認されたのかと思ってお聞きしました。 ○江馬先生 今、詳しいデータがありませんのですが、先ほど言いましたように、肝臓の 毒性を肝臓重量でお示ししたというところです。生化学的な変化、あるいは病理学的な検 査もしておりまして、肝臓の重量が徴証的だったので、それでスライドにはお示ししたと いうことです。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。どうぞ。 ○井上委員 恒常性維持機構発達の過渡特性に立脚したという、この過渡特性というのは、 一言で言うと結局、どういうことになるんでしょうか。 例えばよく我々がコメントを突き付けられるのですが、小児あるいは胎児というのは、 毒性に強いのか弱いのかという形でよく問題提起されます。それはいろいろ見る目によっ て違うように思いますけれども、先生は、どういう考え方でいらっしゃいますか。 ○江馬先生 胎児期あるいは新生児期に毒性に強いか弱いかは、その化学物質の持つ特性 によって違うと思います。 一般的には、強いというふうに考えるのが普通かもしれませんが、紫外線吸収剤でお示 ししましたように、雌雄差がなくなるけれども、雄の方では毒性は弱くなるということも ありますので、両面を考えていく必要があると思います。 ○櫻井座長 ほかに、大人から子どもへの外挿問題というところ、このドーモイ酸という 1つのモデルで調べていらっしゃいますが、何か定量的に出ているんでしょうか。どの程 度感受性が高いかとか。ごく簡単にシンプルに考えると、どうなっているのかという感じ がします。 ドーモイ酸に対して、大人と子どもを比べた場合です。 ○江馬先生 スライドでお示ししたものでは、2週齢に投与して10週齢に行動検査を調べ たところ、10週齢に投与して行動異常を調べたよりも、はるかにいろんなところに異常が 出てくることがありますので、恐らく幼児期に投与した方が強く毒性が出るとは思ってい ます。 ○櫻井座長 定量的な数字が数字がそのうち出てくるんだろうとは思いますけれども、ド ーモイ酸というモデルには、どういう意味があるのかなという点もわからないんです。 ○江馬先生 ドーモイ酸は貝毒でして、海馬に作用することがわかっているということで、 それを用いております。 ○櫻井座長 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。それでは、時間もあります ので、これで次に移らせていただきます。 それでは、2番目に、牧野さん、よろしくお願いします。 ○牧野先生 東海大学の牧野です。どうぞよろしくお願いします。 私どもの研究題目でございますが「化学物質による子どもへの健康影響に関する研究」 ということで報告を申し上げます。 研究班の構成は、このスライドを以て代えさせていただきたいと思います。 (PP) 本年度、私どもが検討いたしました物質を、まず最初に掲げてございますが、パート2 と書いてございますのは、平成16年度までに、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フ タル酸について検討いたしましたので、その先の物質ということで、検討物質をここに6 種類掲げてございます。御承知のように、ポリ臭素化ジフェニルエーテルにつきましては、 その化学構造が内分泌かく乱化学物質に似ているほかに、環境汚染物質としても指定され ております。いわゆる合成樹脂の難燃剤でありますが、近年北欧を中心に母乳への汚染が 報告されておりまして、我が国に関しましては、この種の報告がございません。 2番目の有機フッ素系の化合物と申しますのは、御承知のように、衣類等の撥水剤に使 われている物質でございますが、非常に汚染が広がっている。私どもの血中の検査をいた しますと、90%以上の方でこういう物質が血中に存在する。理由といたしましては、血中 の半減期が約8年という物質がございまして、子どもの健康に対する影響の報告が我が国 では非常に少なくほとんどありません。 ピレスロイド系の農薬、これにつきましては家庭で用いる殺虫剤の90%はこの薬剤でご ざいます。 有機リン系の農薬、これも御存じのように、農業で広く用いられる農薬の50〜60%は、 この有機リン系の農薬でございまして、近年メキシコの農業地帯で、子どもの体力低下等 の報告が相次いでおります。 ニコチンとその代謝産物のコチニンについては、御承知のとおりであります。 フタル酸につきましては、私どもは引き続き検討いたしてまいりました。 (PP) 研究の取組み方でございますが、いずれも今、申し上げた物質については、いわゆるガ イドラインに値するような測定法はございません。したがいまして、私ども自身でこの測 定法を開発しないといけない。 2番目の目的といたしましては、その測定法に基づいて実践的な検討、これは動物実験 ではございませんので、ヒトで、日本人で、子どもと母親、そこにこういう物質があるか ないかという、極めて泥臭いことでございますが、研究目的がそういうことでございます ので、そういう信頼性に基づく測定法で検討する。 そして3番目には、新規の評価法の模索でございます。 最初の測定法の開発でございますが、それぞれの物質を分担で研究いたしまして、これ を私どもの東海大学でまとめまして、倫理委員会を通したヒトの試料を、勿論分析するわ けでございますが、同時に公的な機関に同じ方法で測定を依頼いたしまして、改良評価を 受ける。 そのほかに、分析企業にも同じような方法を投げまして、同じ試料を測定している。い わゆるクロスチェック、精度管理いたしまして、得られた数字というのは、真に信頼し得 るヒトの暴露量ということで、これからの数字をお示しいたしたいと思います。 (PP) その測定結果でございますが、子どもというのは、御承知のように大人と違いまして、 その生活空間の高さが違うということで、いわゆるハウスダストについて、私どもは検討 いたしてまいりました。幾つかのフィルターを用いまして、ハウスダストを集めて検討い たしますと、ポリ臭素化ジフェニルエーテルはppm のオーダーで測定されてまいりました。 同時に、これは市販の食用油のポリ臭素化ジフェニルエーテルを分析いたしますと、ng /gのかなりの濃度で食用油の中にもこういうものが含まれているということを本年度は 見出しました。 (PP) 続きまして、有機フッ素系の化合物でございますが、申し上げましたように、PFOS に関しましては、かなりのヒトの中に存在するということですが、その暴露源がはっきり いたしません。飲食物、水、空気等で測定いたしますと、確かに測定はされてくるわけで ありますが、濃度は低い。別の暴露源を子どもの検討という観点から検討いたしまして、 これはハウスダストの実際の結果でございますが、ヒトの生体資料ではPFOSが有意で ありますが、ハウスダストではその挙動が違う。パーフルオロオクタノイックアシッド(P FOA)がほとんど100 %に測定されまして、子どもの健康影響を考えるときは、ハウス ダストというのはヒトの暴露源の1つとして考えてよかろうという結論でございます。 同時に、ヒトの母体の血中と臍帯血の中の濃度勾配の報告から、母乳で日本の母親で、 このPFOSがどのぐらい存在するか、しないかという検討をいたしました。分離の良好 なクロマトグラムの下で初めて我が国で出たデータでございますが、日本人の母乳中には PFOSは60ng/mL で存在することを見出しました。 ただし、2つ前のスライドにありますように、血中と比較するとその量は大きいもので はない。 (PP) 続きまして、農薬でございますが、家庭で使うもの、あるいは農業で使うもの、さまざ まございますが、無数の農薬の中で、分析いたしましたのは、共通するような代謝産物、 ここでは、3−フェノキシベンゾイックアシッドを分析しておりますが、こういう良好な クロマトで測定法を開発いたしまして分析いたしますと、尿中ではフリーの形ではほとん ど農薬、あるいは家庭の殺虫剤に対する汚染はない。ただし、いわゆる抱合型では0.58pp m レベルで測定されたということであります。 (PP) タバコにつきましては、御承知のように約4,000 種類の物質が煙の中に含まれまして、 そのうち200 種類は有害であろうと言われております。40〜60種類は発がんにも関係する ということでありまして、すべての物質が子どもについて検討されたわけではございませ ん。 (PP) そこで私どもは、ニコチンとその代謝産物であるコチニンを同時に測定できるという測 定方法を開発いたしまして分析いたしました。そういたしますと、これは51人の母親でご ざいますが、やはり喫煙する母親には14ppb 以上のレベルで高濃度に測定されてまいりま すが、注目すべきことは臍帯血の中で、母親がタバコを吸わない例でも、少数例にコチニ ンが測定されてくるということで、これは家庭環境と子どもの健康というものをもう一度 分析する必要があるのではなかろうかと思います。 (PP) フタル酸につきましては、確かにプラスチックの可塑剤として多用されておりまして、 例えばこの部屋の床敷にしても、壁にしても多用されておりますが、この床剤、壁紙に使 われるフタル酸は、血中に入りますと速やかに分解されまして、ジエチル型、モノエチル 型、同時にヘキサノールとヘキサナールに分解されますので、私どもは平成11年度から分 析を開始いたしまして、本年度はこのモノエステル型について分析いたしますと、モノエ ステル型の中のモノブチル型のフタル酸、あるいはモノエチルヘキチル型のフタル酸で測 定ができるということでありますが、本年度最も注目すべきことは、38人の母親でござい ますが、ヘキサノールについて測定いたしますと、ごらんになっていただきたい平均値で ありますが、58.3ng/mL 、いわゆるシックハウスの患者さんの測定値は、1ng/mL 以下で ありますので、58と極めて高い濃度に測定されてまいりまして、今後の1つの課題だと思 います。 (PP) もう一つの課題は、胎脂です。胎脂を測定いたしますと、いわゆるジエチルヘキシル型 のフタル酸が、これも非常に高濃度ngの量で測定されまして、胎脂という生理的な意義を 含めて、今後検討の課題だろうと思います。 いずれにいたしましても、今、申し上げたような測定法を確立いたしまして、来年度は 周産期の資料を、いわゆる統計的な評価に値するような数で分析いたす予定でございます。 (PP) 最後に、新の評価法でございますが、井上先生、あるいは武吉先生からいろいろお話が ございましたが、ちょっとスライドが薄くて恐縮ですが、今までの化学物質の評価という のは、いわゆる生体暴露量、エストロゲンに関係する。あるいは動物、またはvitro で、 しかもファーマコロジカルな用量で影響があるかないかということでありますが、実際に 真の健康影響を検討するときに、いわゆる暴露量で、あるいは常用量で、しかも鋭敏な方 法で検討しないと、真の健康影響という評価ができないということで、私どもはエピジェ ネティックという方法論を取りました。この方法につきましては、少しジャンプいたしま すので、1、2分説明申し上げます。 ヒトの受精卵は1個から約200 種類の細胞に分解いたします。それから、再生医療で用 いられますES細胞もしかりであります。しかしながら、DNAの構造を見ますと、ほと んど代わりがない、しかるに細胞の機能が違うというのは、そのDNAのシークエンスの 中のメチル化される場所が違うわけでありまして、こういうところを検討するのが、御承 知のようにエピジェネティックスということであります。 (PP) 私どもは、子どもの健康、子どもならばその上流にいきますと、1個の細胞から発生い たしますので、受精卵のところで何の物質に暴露されるかということを考えますと、凍結 に用いるいわゆるジメチルスルフォキシド(DMSO)について検討いたしました。 (PP) これはいわゆる4日目の胚葉体でありますが、DMSOを使う量によって、形態的にも 違いますし、発現してくるものが違うということで、1つの結論といたしましては、こう いう物質はエピジェネテックなレベルでは、初期胚に影響を及ぼす、私どもの研究の目的 は、何もこの初期胚ではございませんで、今、申し上げた6種類の物質について、エピジ ェネテックなレベルで検討できないか。そういうことで、研究の目的といたしましては、 こういう測定のツールといいますか、キットを開発することでありまして、いわゆるオク ト4というマーカー遺伝子を持った細胞、蛍光を発する、あるいは消えるという、オン・ オフのメカニズムをこういう多結的なプレートで簡単にできる方法を開発いたして、この エピジェネテックこそが今後、健康の真の影響を検討する方法の1つではないかと。 この種のことにつきましては、井上先生が先ほど、いわゆるウェイブリッジの会議でさ らっとおっしゃいましたけれども、ビスフェノールAの発がん性については、エピジェネ テックな方法で始めてわかったと。武吉先生がおっしゃったように、このOECDのVM Gのカンファレンスは、恐らくこのエピジェネテックの検討というのは、レベル4、5に 値する検討方法でございまして、是非この方法で日本からこういう物質に対する影響を発 信いたしたいと思っている次第でございます。 以上であります。 ○櫻井座長 それでは、何か御質問、御討議がありましたら、どうぞ。 ○井上委員 牧野先生から取り上げていただきましたので、ちょっとコメントを申し上げ たいと思うんですけれども、この問題は御指摘のようにエピジェネテックスの問題なわけ なんですけれども、発生期というのは、非常にプログラミングが、ある意味ではきちっと しているわけですね。 当然のことながら、成獣でもエピジェネテックスの変化として、メチレーションなどが 起こっているわけです。それなのに、なぜ成長期のエピジェネテックスと違うのかという ところにポイントがあるんだろうと思うんです。先生御専門だからおこがましい発言にな りますけれども。 それで、エピジェネテックスだから、簡単に何かが起こるかというと、この新生児期な どでは本当は起こらないわけです。それが、一旦起こるとエピジェネテックスのくせに戻 らないで、時間差でどんどんずれていって、そしてはじめて不可逆性を生むわけです。 だから、エピジェネテックスの可塑性と不可逆性とが同時に、どちらが優先になって起 こるかによって、障害が出たりすることのメカニズムがあるというふうに、ある意味でだ れでも考えるわけです。そこのところのストラテジーを、何かツールとして備えないと、 ただ、エピジェネテックスをつかまえただけでは、どういう意味があるかわからないとい うところが、今、一番の悩みの点だろうと思うんです。 その点、何かお考えがおありかどうか。その辺が面白いところではないかと思います。 ○牧野先生 先生のおっしゃるとおりで、いわゆるエピジェネテックをもっと具体的に申 しますと、シトシンのところがメチル化、されるか、されないか、これがオン・オフであ りますが、同じ物質をこのようなキットで検討いたしましても、オフになるものもあれば、 先生おっしゃったようにオンになるものもある。その両方のバランスを、どうこの化学物 質が健康に与える影響と結び付くかというところは、非常に難しいところでありますが、 しかしながら、もういわゆる細胞の上にばら巻くような実験では、なかなかこの物質に対 する影響が出てきませんで、国際会議等でヒトの輪が集まるのはこういう発表のところに 集まるということは、グローバルに見ましても、注目する評価法の1つして、エピジェネ テックなところへ移動しつつあるのではないかということで、検討せざるを得ないという ことで検討し続けていくということを御理解いただければと思います。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。どうぞ。 ○津金委員 この研究課題が、化学物質による子どもへの健康影響に関する研究というこ とで、一番最初のスライドでも、いろんな化学物質が子どもたちにどのぐらい暴露してい るかということを評価するということはよくわかったんですけれども、最終的には疾病と の因果関係を解明されるというふうに書かれているんですけれども、そこの因果関係を解 明するための研究デザイン的なものが、今日の御説明の中ではよくわからなかったんです けれども、この研究班の中でそれは何らかの研究デザインに基づいてやるのか。それはま た別の話なんでしょうか。 ○牧野先生 限られた時間で、なかなか全部言い切るのは大変難しいことでありますが、 すべての研究は一研究班でできることではございませんが、少なくとも私どもが目標とし たストラテジーというのは、今までいろいろ暴露されている、されてないという社会的、 医学的な不安を信頼する測定法で払拭しないといけない。その辺からスタートいたしまし て、いわゆる今まで暴露されたものを、そうでないと否定してきました。 2番目のステップとしては、先ほどのデータにもありますように、意外なところに高濃 度であるという指摘をすることも2番目の目的だと思います。 3番目には、先生がおっしゃったように、それをどのように健康影響に結び付けるかと いう方法論は、過去には動物、あるいはvitro でしましたけれども、行き着くところは、 現在ではエピジェネテックな検討が1つの方法かということで、そういう流れにデザイン ではしているつもりでございます。 ○櫻井座長 どうぞ。 ○青山委員 今のところで少しお伺いしますが、私はES細胞を使ったことがありません ので、わからないんですが、少なくともマウス等の実験動物モデルで胚を使って実験して いきますと、生殖系の発生にしろ、種々の指の発生にしろ、ある遺伝子はほんの数時間し か発現しなくて、その発現があったお陰で次々と引用されていることがたくさんございま す。 ES細胞の場合、何にでも分化できるということですが、極めてスペシフィックな動き というのは、私はたくさんあるんではないかと思うんですが、そういったものをどの遺伝 子について、どの場所が、どのようにメチル化されるか、あるいは脱メチル化されるかと いうことを、個々に見ていかないと、たくさんの遺伝子についてメチル化の割合がどれぐ らいというだけでは、ちょっと本当に何が起こっているか難しいと思いますが、その辺り はいかがでしょうか。 ○牧野先生 幾つかの項目が先生の中に含まれていると思うんですが、まず最後の方から 申し上げますと、細胞はESでなくても何でもいいわけですが、上流にたどっていけば、 やはり発生のところではESだろうと。勿論これはヒトで使えば一番いいんですが、ヒト のES細胞は今、倫理的なことで、この問題は簡単に扱えませんので、こういうモデルで しか使わざるを得ない。 2番目には、先生がおっしゃったように、遺伝子の発現の時間でありますけれども、こ のエピジェネティックで変化したものはその変化した形でその細胞は恒常的に発生をし続 けますので、そういう意味では意味があろうかと思っている次第であります。 もう一つ御質問にあった、確かに電気泳動的にスキャンすると、先生がおっしゃるよう に、無数の、どの場所ということはもう試験管を振るとすぐわかるわけでありますが、今、 先生おっしゃるのは、リアルタイムのPCRで増幅したり、映像でやるとそういう膨大な エリアの、どこか変化するというのはなかなか分析しにくいと思いますが、恐らくこうい うキット化ができますと、かなりロガリゼーションというものは絞れるのではなかろうか という期待がありますので、もう少しこの方法で検討してまいりたいと思っております。 ○青山委員 ありがとうございました。 ○櫻井座長 時間の制約がございますので、次に進ませていただきます。ありがとうござ いました。 3番目の御発表、渋谷先生、よろしくお願いいたします。 ○渋谷委員 国立医薬品食品衛生研究所の渋谷です。  私の研究班は「胎児期・新生児期化学物質暴露による新たな毒性評価手法の確立とその 高度化に関する研究」でございます。 (PP)  まず研究の目的ですけれども、難分解・高蓄積性の化学物質は、既存の一般毒性試験で は影響が検出されにくいんですけれども、発達期暴露によりまして、影響の検出事例が報 告されるようになってきております。  そこで本研究の目的といたしましては、標準化可能な発達期暴露評価系の確立を1つの 目的といたしまして、げっ歯類を用いたモデル化合物の包括的な実験研究を行います。  もう一つは、国際的に通用し得るようなリスク評価手法の策定・提案を目的といたしま して、国際機関あるいは欧米等の諸外国のリスク管理情報を解析いたしまして、さきに得 られた用量反応性評価に適用して高度化を図るということであります。 (PP)  まず最初に紹介させていただきますのは、発達期暴露影響評価手法の確立に関する研究 でございます。モデル化合物といたしましては、先ほど、牧野先生がお話されたうちの1 つであります、臭素化難燃剤を選びました。これらの多くは難分解・高蓄積性でありまし て、候補物質といたしましては、DBDE、HBCD、TBBPAというものを選びまし た。これらは成熟後の動物を用いた既存評価系では、比較的低毒性であることが知られて います。  そういった臭素化難燃剤を発達期暴露いたしますと、発達期での持続する甲状腺機能低 下が懸念されておりまして、それによりまして、更に神経の発達障害、免疫障害、性分化 障害、あるいは発がん性といったことが懸念されるわけでありますけれども、それにつき まして、甲状腺機能低下モデル、抗甲状腺剤の暴露量を陽性対照といたしまして、評価手 法の確立を図りたいということであります。  エンドポイントと検索の経過でありますけれども、脳発達障害及び神経機能・行動障害、 免疫感染影響に関しては、17年度は抗甲状腺剤の評価とDBDEの評価を行いました。発 がん性におきましては、DBDEの評価を行いまして、18年度は発がん性以外の評価系で はHBCDの評価、あるいは19年度に評価する予定でありますTBBPAの評価も続けて 行っています。  発がん性におきましては、18年度は抗甲状腺剤とHBCDの評価、19年度にTBBPA の評価を行うということになります。 (PP)  実験デザインですけれども、ラットないしマウスを用いて、対照群を含む4〜5用量を 設定いたしまして、脳発達神経機能・行動障害、免疫あるいは感染影響に関しましては、 妊娠10日目から出産後、離乳時まで被験物質を暴露いたします。  臭素化難燃剤につきましては、餌に混ぜて投与いたしました。  発がん性におきましては、出生時から5週間暴露いたしまして、その後に発がん物質投 与を行っています。 (PP)  脳発達のかく乱影響評価でありますけれども、抗甲状腺剤は飲水暴露でありまして、プ ロピルチオウラシルのほかにメチマゾールも用いております。臭素化難燃剤の方は、混餌 投与で3用量ずつ振って行っています。  甲状腺関連ホルモンへの影響を見たところ、抗甲状腺剤では当然、暴露終了時にはT3、 T4が低下し、TSHが上昇し、性成熟後においてはT3の低下が若干残る程度でありまし た。  臭素化難燃剤におきましては、DBDEとHBCDは暴露終了時に、用量依存性が強く 出ているわけではありませんけれども、一応、T3の用量依存的な低値を示して、TBB PAにつきましては、中間用量のみで下がっているというような値です。また、HBCD におきましは、TSHの用量依存的な上昇も示されております。  性成熟後におきましては、DBDEでT4、HBCDでT3の用量依存的な低値を示して います。  解析項目ですけれども、抗甲状腺剤DBDEでは、脳部位特異的なマイクロアレイ解析 を暴露終了時に行いまして、その発達期の甲状腺機能低下の標的細胞でありますニューロ ン・オリゴデンドロサイトの解析を行い、それぞれの影響指標の探索を行うということで あります。またそれぞれの化学物質暴露のすべての例について脳部位特異的な形態計測を 性成熟後に行っています。また、各種性分化指標の検討を行って、不可逆的な影響評価指 標の探索を進めております。 (PP)  暴露終了時におきまして、子どもの脳を取り出しまして、海馬CA1あるいは白質領域 特異的なマイクロアレイ解析を行いまして、ニューロンのマイグレーションの異常、ある いは分化の抑制を示すような遺伝子を海馬から、また白質からもグリアの分化抑制、アポ トーシスの増加というような遺伝子を得ております。赤で示したのが抗甲状腺剤とDBD Eに共通で、青で示したのがDBDEで認めた発現変動であります。  性成熟後の白質での形態計測ですけれども、脳梁の面積を測定し、あるいはCNPase陽性 のオリゴデンドロサイトの数を測定しました。  海馬での形態計測は、マイグレーションの異常を主に検出できるような測定を行いまし た。それで見てみますと、DBDE、HBCDともに白質の低形成を示すような形態所見 を得ております。  ニューロンのマイグレーションの異常の方の検索は、HBCD、TBBPAでは行って おりませんけれども、DBDEでは一応変化がないということを見出しております。 (PP)  次に、神経機能・行動影響評価ですが、一般行動観察、不安関連行動、中枢性薬物に対 する反応性を見まして、異常行動に関連する脳部位でのモノアミン含量を検討いたしてお ります。  それでPTUとDBDEについて検討いたしましたところ、メタンフェタミン誘発報酬 効果が抑制されまして、それは側坐核でのドーパミン遊離量の低下によるということ、つ まりPTU、DBDEともにドーパミン神経発達障害を誘発することを確認しております。  HBCDにつきましては、同様の検索を行いましたけれども、特筆すべき異常を認めて おりません。 (PP)  免疫機能評価ですが、胸腺、脾臓の病理組織観察及びリンパ球サブセットの測定解析、 末梢血におきましてもリンパ球サブセットの解析と更に抗体産生への影響も検討しており ます。  結果ですけれども、抗甲状腺剤におきましては、暴露終了時には胸腺、脾臓の重量低値 を認めまして、そのリンパ球サブセットの変動を認めておりますけれども、成熟後には臓 器重量の低値は残っているんですけれども、ほとんど回復しております。  DBDEあるいはHBCDともに、その高用量群におきまして、暴露終了時に甲状腺機 能低下に起因するであろう活性化T細胞の低下を認め、HBCDでは抗体産生能の低値も 見られております。  また、成熟後では、DBDEの方ではNK細胞の割合の低下が観察されております。 (PP)  感染影響評価でありますが、これはマウスを用いまして、親に難燃剤を暴露いたしまし て、子どもに対してRSウイルスを経鼻感染し、一定時間後に肺あるいは肺胞洗浄液につ きまして、ウイルス学的あるいは生化学的な解析を行いました。  DBDEの暴露影響を検討したところ、用量依存的に感染価の上昇することが確認され まして、また1,000ppmで肺胞洗浄液中のインターフェロン−γが高値を示しました。また、 肺ではケモカインの1つであるRANTESのメッセージレベルが100ppm以上で有意に 上昇しているという結果を得ております。  HBCDにつきましては、一応今、検討中でありますけれども、1,000ppmでは影響はな いことを確認しております。 (PP)  発がん性評価ですが、被験物質の暴露後に乳腺、肝臓、腎臓、肺、甲状腺を標的とした 発がん物質処理を行って、40あるいは46週後に動物をと殺して、発がん性を検討してい ます。  その結果ですけれども、肝臓腫瘍は発生頻度、発生数ともに投与による影響はなかった んですけれども、ここに示した甲状腺の濾胞腫瘍につきましては、発生頻度、発生数とも に減少を示しました。これは雌です。  また、HBCD等の発がん性については、実験を検討中であります。 (PP)  次に、耐容量等の設定に関する調査研究ですが、先ほど申し上げましたように、国際的 な評価機関、あるいは欧米の評価機関での各物質の評価文書から定量評価手法の抽出を行 いました。それで情報収集整理の結果、近年ではベンチマークドーズ法の利用や種差、個 体差の係数の設定に関しまして、デフォルトである10以外に体内動態等を考慮した数値に よる置き換えが行われていることが示唆されました。 (PP)  先ほどの動物実験系の評価系の確立に関しまして、投与したものが子どもにどれだけ入 っているかどうかというのは、やはり調べないといけないということでありまして、現在、 東北大の菱沼先生という先生と共同研究で、子どもの各臓器での分布を検討しているとこ ろであります。 (PP)  今後の予定ですけれども、発達期暴露影響期評価手法の確立に関する研究では、19年度 が最終年度ですので、TBBPAの評価を行って、総括といたしましては、そのエンドポ イントごとに検索に必須なパラメーターを整理し、影響の可逆性の検索を含む標準化可能 な評価手法の確立を図ります。  将来的にはOECD等で策定中の発生神経毒性ガイドラインとのすり合わせを行って、 多用な発達神経毒性に対応可能なパラメーターの開発、あるいはバリデーション、より普 遍的な評価系の構築を行いたいと思っております。  また、耐容量等の設定に関する評価研究では、本年度までに集積したデータのデータベ ース化を行い、検索ソフトを開発いたしまして、評価に使用された情報のパターンを表示、 あるいは適切なパターンを提示できるようなソフトにしたいと思っております。  また、動物実験の方で得られたデータの定量解析を行いまして、その既存の評価事例を 加味したモデル的なリスク評価を行って、評価系の確立をはかりたいと思っております。  以上です。 ○櫻井座長 ありがとうございました。  それでは、御質問がありましたら、どうぞ。 ○江馬委員 前の方のスライドで、投与期間が妊娠10日から生後21日となっていたんで すが、動物を用いた行動試験を行った場合、器官形成期投与をした場合が子どもの行動変 化が多かったということが言われているんですが、10日だと器官形成期の前が省かれてい るんです。その点をどのようにお考えでしょうか。 ○渋谷委員 一応、神経系を例にしますと、器官形成期の後期の方をねらっている理由と いうのは、細胞の分化の方に重点を置いて検索し、異常を見てみたいということがあった んですけれども、OECDのガイドライン等では、妊娠6日の辺りからの暴露を推奨して おりますので、将来的にはそういう方向での検索も考えていきたいなと思っております。 ○櫻井座長 ほかにはございませんか。 ○江馬委員 標準可能な発達期暴露の評価系の確立というのは、具体的なことをお考えで したら、お教えいただきたいです。 ○渋谷委員 試験系ですから、今回、用いました様な各エンドポイントをできるだけ簡便 に、どういう施設でもできるような形に持っていけるかというのは、多分問題になってく ると思うんですけれども、最後のスライドで示しましたが、バリデーションを適切に進め ることで、導入したパラメーターのうち割と広く発達期の毒性を検出したのではないかと いうものを引っ張っていきたいなと考えています。  今、現在では、甲状腺機能低下作用にリンクしたような発達期毒性を指標にして検討し ているわけでありますけれども、もう少し広く影響を拾えるような普遍的な系にいずれは 持っていきたいなと考えている次第です。 ○菅野委員 発がんの系なんですけれども、これは甲状腺のがんが減りましたけれども、 これはPTUでもこのプロトコルだと減りますか。 ○渋谷委員 PTUは今、動物実験を継続中でありまして、まだ結果が出ておりません。 ○菅野委員 休薬を置いてしまうと、感受性がかえって落ちる可能性があるかなと拝見し たんですね。ですから、こういう系は2段階発がんで言うと、逆の順番の系ですね。なの で、もともと何がわかるかわからない系だとは思うんですけれども、休薬を置くこと自体 がまずいのではないか。その点については、いかがですか。 ○渋谷委員 先生がおっしゃるとおり、この系は普通の2段階とは逆の系でありまして、 何かの発がんが上がるであろうという目測で行ったところ、甲状腺腫瘍に関しては下がり ました。  それで1つ考えられるのは、今回用いたのはDBDEですけれども、DBDEで酵素誘 導等が起こって、後に投与する発がん物質の代謝不活性化が亢進することで、イニシエー ションが弱まるみたいなスキームも考えられるのかなと。そういうことからしますと、む しろ休薬を、更に2週とか3週延ばす手もあるのかなと考えております。 ○菅野委員 コメントですけれども、多分、関係ないと思います。代謝系ではないと思い ます。 ○渋谷先生 それで、一応、DBDEにつきまして、酵素誘導が起こるかどうかという文 献検索をしたところ、酵素誘導が起こらないという報告があることはあります。 ○櫻井座長 ほかにございますか。特にないようでしたら、先へ進みたいと思います。 これで最後でお願いいたします。 ○青山委員 申し訳ありません。 概念をお伺いしたいんですけれども、難分解・高蓄積性の物質をということであります と、私の単なるイメージの問題ですが、早い時期から暴露されると、それがどんどん蓄積 されて、加齢性の変化とか、かなり年をとってからのエンドポイントを見ていかれると、 異常が出やすいとか、何かあるかなという気がして見ていたんですが、比較的若いところ の治療が多いんですけれども、その辺りは、特にそのようなことを考えてということでは ないということでしょうか。 ○渋谷先生 一応、暴露終了時にまず発達期の障害はどういったものが起こっているかと いうことを見まして、それとは別に一応成熟後の、今回大体10週とか11週というポイン トで見ていますけれども、やはり加齢に対する影響は、十分ではないと思うんですが、そ ういったタイムポイントでも検討は加えているということではあります。 ○櫻井座長 それでは、議論すると幾らでもあると思いますが、これで次の話題に移りた いと思います。 最後は、岸先生よろしくお願いします。 ○岸先生 私はA4の縦でつくってしまいまして、ちょっと見づらいかもしれません。座 ったまま説明させていただきます。それでも見づらい場合は、恐れ入りますが、手元のパ ワーポイントの図をごらんください。 それでは、始めさせていただきます。 私どもは「前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣 のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明」ということで、主任研究者は北 海道大学大学院医学研究科産科・生殖医学分野の水上尚典に代わりまして、私、公衆衛生 学分野の岸が話させていただきます。 (PP) 私どもの研究の要旨、特に仮説と特色でございます。妊婦が内分泌かく乱化学物質など、 化学物質に暴露されることにより、胎児の先天異常、特に尿道下裂や口蓋裂、心奇性、停 留精巣などが引き起こされているのかどうか。それを胎児期からの暴露に焦点を当てまし て、地域の産婦人科医会と私どものような公衆衛生学・疫学専門家の協力で、前向き研究 を行っております。 器官形成期の母の血液や臍帯血などを用いまして、PCB、ダイオキシン類、あるいは PFOS、農薬などの化学物質濃度を直接測定することによりまして、次世代影響につい ての因果関係を評価しようするものでございます。 また、母の化学物質の代謝に関する酵素ですとか、ホルモン代謝あるいは受容体等に関 する遺伝的な多型によりまして、比較的低濃度の普通の妊婦さんが暴露しているようなバ ックグラウンドレベルでも、内分泌かく乱物質による感受性が異なりまして、その結果、 胎児への影響が表れてくる可能性があるかどうか。それも資料に入れております。 多種類の遺伝子多型をマイクロアレイを用いまして調べて、感受性素因を解明すること で、予防医学的なハイリスクグループの予知と健康障害の対策を目指すものでございます。 (PP) これが全体的なスキームでございます。妊娠12週プラス6日ぐらいまでの間に調査票を お示ししまして、ここでコンセントをちょうだいします。母体血を10mlいただきまして、 その後、妊娠後期にやはり10ml採血させていただき、出産の直後に臍帯血と母体血をいた だいております。 生後4か月に、特に妊娠後期のお母さんの喫煙状況、飲酒の状況等を調査票で確認して おります。 また、1歳時で停留精巣は特に自然に下降する症例が多うございますので、1歳時で改 めて停留精巣の有無を確認しております。 2歳半以降の調査票も、大きくなり始めている子が少しおりますので、準備をしている ところでございます。 「主要なアウトカム」は、55の疾患につきまして、マーカー奇形を調べます。これは出 生時に産科医の協力で先天異常を調べますものと、低出生体重、妊娠の期間、子宮内発育 遅延、羊水異常でございます。 改めてコンセントを取り直さなければいけないんですが、そのまま追跡を続けますとア レルギーや神経発達等についても、アウトカムとして取ることができる可能性があるとい うようなデザインでございます。 先ほど申しましたように、器官形成期の化学物質暴露と先天異常ですとか、子宮内発育 遅延等の関係がわかりますのと、妊婦さんの食事栄養、喫煙、あるいは生まれた後の家庭 内暴露と先天異常、子宮内発育遅延等の関係もわかります。ここのところは、今、申しま したので、省略いたします。 (PP) 「進捗状況」ですが、1月現在で参加妊婦は1万2,000人を超えました。こちらの方が 妊婦さんの同意を得てくださっているところです。12週プラスマイナス6日ということで 同意を得ておりますので、出産に至っている妊婦さんは、この数よりまだ少ないです。 この数字は、参加いただいている施設の数でございます。御承知のように、産科医療が 大変な状況でございますので、一時は40を超える施設が参加してくださいましたような時 期もあったんですが、現在は36病院が参加してくださっておりまして、北海道内の3大学 が共同でお願いをしておりますので、北海道大学のほかに、札幌医科大学、旭川医科大学 の関連病院がそれぞれ同じくらいの数で入ってくださっておりまして、札幌近辺が一番多 いんですが、稚内ですとか函館、あるいは釧路、根室など、北海道全域の一般病院の先生 方が協力してくださっているのが特徴でございます。 (PP) 先天異常で、昨年11月までに個票が上がってきている分について、集計をいたしました。 このカラムが北海道の中の出生率、出生1万対でございます。 こちらの方が、日本全体の産婦人科医会で、主として、基幹病院を対象でやっておられ ますところの発生率であります。 こちらの方から見ますと、先天性心疾患について、全体で28人なんですが、北海道の発 生率は、出生1万対33.5で、一部は産婦人科医会ではデータをとっておられないものがご ざいますが、それが「−」になっております。このような比較的似た数字になっています。 私どもの北海道の発生率の方がやや高いものもありますし、ほぼ似ているところではない かと思います。 ダウン症、口唇口蓋裂、無脳症、停留精巣。停留精巣は日本のデータが全くなかったも のですから、韓国の発生率0.7%を参考にあげましたが、これはやや高くて、参考にする には、恐らく定義ですとか、フォローが違うのだと思います。口蓋裂もこのぐらいの数で あります。尿道下裂は北海道では4.8でございます。全国で3.4ということでございます。 (PP) 今までに得られているデータを少しお話いたします。特に、平成18年は「児の出生体重 に及ぼす環境要因」について、お話したいと思います。 葉酸はDNAの合成に、補酵素としても重要でありますし、システィンをメチオニンに 転換するために必須でございますが、日本では、これまで二分脊椎の発生率が比較的低か ったことがございまして、十分な疫学調査が行われておりません。ところが、インターナ ショナル・クリアリングハウスで指摘されておりますのは、日本でも近年上昇が見られる のではないかということが指摘されておりまして、また、妊婦さんの食物摂取の個人差が 非常に大きくなっておりますので、葉酸に関して、十分見ておく必要があるのではないか と思います。 こちらの方で、多変量解析をした最終の表が載っておりますが、左側が血清葉酸値でご ざいます。7.1〜8.5ng/ mlをリファレンスにとっておりますのが、ちょうどここが中央値 だったからでございます。それよりも四分位に分けまして、一番低いところの2.5〜5.7ng /mlのところでは、明らかに出生体重が有意に低いという結果が得られました。これは在 胎週数ですとか、児の性別、出産歴、妊娠前のBMI、あるいは喫煙等を調整いたしまし ても、血清葉酸値が低い方では、児の出生時体重が低いことが日本のデータではっきりい たしました。 こちらは、血清葉酸値と子宮内発育遅延の関係をオッズ比で調べてみたものでございま すが、やはり同じように四分位で調べますと、一番低い2.5ng〜5.7ngのところは、リファ レンスの平均的なお母さんに比べますと、子宮内発育遅延が起こる割合がオッズ比が2.6 である。 また、その下の5.8〜7.0でも、リスクの上昇が認められました。 (PP) これは、喫煙と血清葉酸値の関係でございます。血清葉酸値の中央値を比較しますと、 これが非喫煙分です。これは途中で禁煙をされた、妊娠がわかってから禁煙をされたお母 さん。それから、妊娠がわかりましても、喫煙を続けたお母さんなんですが、明らかにも ともと全く吸っていなかった方に比べますと、血清葉酸値が低値という結果が得られてお ります。 この下の図は、葉酸代謝酵素でありますメチレンテトラハイドロフォレートリラクター ゼの遺伝子的な多型と血清葉酸値を調べておりますが、C677T多型との関係を図4で示し ています。 図5でA1298C多型と血清葉酸値を示しておりますが、ちょうど真ん中の図で示しますよ うに、野生型のホモ接合CCの妊婦さんと比較いたしまして、ここも小さくて恐縮ですが、 ヘテロ接合CTと変異型ホモ接合の妊婦さんでは、有意に血清葉酸値が低下しておりました。 今日、喫煙との関係の図を持ってこなくて恐縮ですが、喫煙と葉酸の代謝酵素のインタ ーラクションを見ますと、C677T多型では、遺伝子多型にかかわらず、喫煙群では、児の 出世時体重が低いというマイナス方向であることが得られておりまして、遺伝子多型より も、どちらかというと、喫煙が血清葉酸値に対して大きな影響を与えていることが明らか になりました。 (PP) こちらの方は、内分泌かく乱化学物質と言われております母体血中ダイオキシン類濃度 と出生体重の関係について調べたものをお示しします。 このデータは、福岡県環境保健研究所の梶原先生たちに分担研究で入っていただきまし て、そこで図っていただいたもので共同の研究でございます。 赤字で示しておりますように、上がトータルのPCDF、一番ポピュラーなPCDFと トータルダイオキシンをpg/g lipidで示しておりますが、トータルPCDFに関しまして、 βがマイナスの値をとっておりまして、ここがP値であります。出生体重がPは0.017で、 特に男の子で見られました。これがBoysです。これがGirlsです。男の方で有意に下がっ ているという結果が得られました。 これは98年のWHOのTQに換算いたしますと、やはりトータルPCDFのTQで、こ ちらも男の子の方で有意でございました。 本研究は、これまでは異性体レベルで調べていたものが世界的にはありませんでしたの で、詳しい異性体レベルで測定して、出生体重との関係を検討した初めての報告でありま す。今はまだ投稿をしておりません。ダイオキシン類異性体の中でもPCDF類は出生体 重と負の関連が見られまして、またその影響には性差が見られて、男子のみ有意でありま した。これは、現在、計算をしておりますが、甲状腺機能との関係を見ておりますが、や はり男の子でのみ、男女の性差が見られましたので、それと比較的対応のあるデータでな いかと思っております。 真ん中のところは、ダイオキシン類濃度を正規化するために、log変換して、その傾き を見ているものであります。非常にわずかですが、このような傾向が見られました。 (PP) 次は、母体の血中有機フッ素化合物濃度と出世時体重の関係をお示ししております。こ の測定は、星薬科大学の中澤教授の教室との共同研究でございます。 PFOS、PFOAは、有機フッ素化合物の最終の代謝物でありますが、この難分解性で 環境中への蓄積が問題にされ、またヒトへの影響が懸念されている物質でございます。こ れも最終の結果をお示しいたしました。 多年度解析で、このモデルはお母さんの年齢、分娩の回数、お母さんのBMI、分娩の 週数、母の喫煙歴、すべての方の収入がわかっておりませんので、ここは教育歴を社会経 済要因の1つとして調整要因に入れておりますが、PFOAでは差がいずれもβはマイナ スでしたけれども、有意ではありませんでしたが、PFOSの方でP値が0.03ということ で、出生体重を低める方向で有意でありました。 この結果でありますが、PFOSは胎盤透過性がPFOAより高いということが2004 年の我々のデータで出ておりますので、恐らくこの胎盤透過性の違いがあるのではないか と思います。 現在、甲状腺機能に関しましても解析中でございまして、比較的整合性のあるデータが 得られております。 この後、尿道下裂と遺伝的な感受性素因につきまして、更に症例を重ねた結果について お話をしたいと思います。 (PP) 尿道の形成はアンドロゲン依存性でございますので、エストロゲン活性を有する環境要 因暴露の増加や母の内因性エストロゲン、あるいは喫煙、そのほかの化学物質暴露と尿道 下裂との関連が疑われております。 しかしながら、これらの薬物代謝酵素の活性ですとか、お母さんのエストロゲン代謝に 影響を与えると示唆されております遺伝子多型との関連については、たくさんデータはあ りませんでした。 この図は、いろいろな酵素がステロイド代謝経路にコレステロールからテストステロン、 あるいはエストロンと関与してきておりますが、私どもが主として検討しましたのは、こ のCYP17とアロマターゼCYP19のところですので、それを示しました。 方法は症例対照研究を行っております。 母親について、環境化学物質やエストロゲンを代謝するCYP1A1Mspl部位、グルタチオン 抱合に関わるGSTM1、GSTT1遺伝子多型と尿道下裂との関係を、1つは患児のお母さんと停 留精巣、尿道下裂がなかったコントロールの男児を出産されたお母さんとの症例対照。 もう一つは、患児自身と健常な男児との間で調べる形をとりました。 (PP) この表は、患児の児自身の方です。 CYP17A1、CYP19A1、ESR1、ESR2遺伝子多型と尿道下裂の関係を調べたものでして、ここ が下が遺伝子のあれです。 それから、3つのところで遺伝的に、1つはリスクを上げる方向で、2つはリスクを下 げる方向で有意な関連が認められたことがわかります。 こちらの表は、更に非常に細かくなってくるんですが、遺伝子の組合せで尿道下裂の関 係を見たものです。 CYP19A1、R264Cの部位との間で関連が見られましたが、組合せでも関連が認められたと いうことで、全体をまとめますと、尿道下裂は胎生期の何らかのホルモン環境の変化でリ スクが上昇する可能性が示唆されている結果でございます。 (PP) こちらは、尿道下裂のお子さんを出産されたお母さんの方です。 このようなGSTM1とかGSTT1、CYP1A1を測定しましたのは、私どものかつてのデータで、 CYP1A1変異型とGSTの欠損型を持ち、かつスモーカーである母親から出生した児の体重や 出生児の身長が非常にはっきりと下がっているというデータがございましたので、こうい うことが尿道下裂でもあるのかどうかということを調べてみたいということでありました。 しかしながら、上段の2つでわかりますように、第2層の解毒に関係いたしますGSTM1、 GSTT1は、いずれもサンプルサイズが小さいせいもありますが、有意ではございませんで した。 それに対しまして、CYP1A1、Mspの多型で調べますと、このような結果が出まして、CYP 1A1はプロゲストロン、ヒドロキシエピアンドロステロンの水酸化にも関与していること が指摘されておりますので、ここで書きましたように、CYP1A1野生型と比較して、変異型 のヘテロ並びに変異型ヘテロ+ホモで有意に尿道下裂に対するオッズ比の上昇と書いてあ りますが、こちらで見ると下降ですが、逆さまな論理でしておりますので、この記述でよ ろしいんですが、上昇が見られます。 むしろCYP1A1によるエストロゲンの代謝の違いが、例えばこれは17βヒドロキシラー ゼのような、そちらの化学物質の代謝との絡みではなくて、むしろエストロゲンの代謝に 関わる方で、恐らく出てきているのではないかという結果でございました。 しかしながら、この研究はあくまで症例対照研究ですので、過去にさかのぼって器官形 成期の血液や臍帯血等を調べることができませんので、更に前向き研究を続けていくこと が必要だと思います。 (PP) 本日は、主として参加者が1万人レベルでできる事柄につきまして、特に出生児体重と 暴露要因との関連、出生児体重と葉酸とか喫煙の関係、出生児体重と遺伝的感受性素因の 関係についてお話しいたしました。 もう少し同意を得て参加してくださる方が増えますと、停留精巣あるいはその先天異常 全体につきまして、暴露要因との関連、あるいは遺伝的感受性素因との関係が解明するこ とができると思います。 サンプルサイズと発生率に関しましては、このような計算をしております。 尿道下裂は、例えばアメリカなどに比べますと、日本では一けた数が少のうございます ので、2万人でも相当少ない数ですので、とりあえずは停留精巣と尿道下裂という形でま とめて解析していくことが必要ではないかと考えております。 以上でございます。 ○櫻井座長 ありがとうございました。 何か質問いかがでしょうか。 どうぞ。 ○青山委員 遺伝子型多型と奇形との関係について、非常に興味を持っております。先生 のお仕事がますます進まれることを希望しておりますが、1つ教えていただきたいのは、 今回、使っておられますSNPマーカーは、アミノ酸置換を伴うようなものが入っておりま すでしょうか。それとも、すべてノンコーディングリジョンのものばかりでしょうか。 ○岸先生 マイクロアレイを開発したんですが、半分はよくできたんですが、半分が十分 できませんで、先生がおっしゃったアミノ酸置換というのは、具体的におっしゃるとどう いうことでしょうか。 ○青山委員 例えば先生のお仕事では、今回は部位をすべて見せていただいているわけで はないですが、例えばUSR1というものの多型はほとんどノンコーディングリジョンの多型 ですね。そうすると、私たちのような動物で実験をやっている者から見ると、アミノ酸配 列に何の変化もないのに、そこに多型があると、特定の奇形が増えるということを、メカ ニズムの面でどう考えればいいのかというのはいつもいつも疑問に思っています。 先生のデータも、すごく相関性が高くて、私は何かあると思うんですけれども、その辺 りが少しずつわかってくるとすごくありがたいなという、半分は感想です。 ○岸先生 今、進めたものに関しましては、資料5−4の2ページのところで、時間がか かり過ぎると思ってパワーポイントを持ってこなかったんですが、現在終わっております のは、その2ページのところでして、先生がおっしゃられている点についても、できれば やっていきたいと思っております。 ○櫻井座長 どうぞ。 ○津金委員 子どもへの健康影響ということを直接検討していて、とてもすばらしい研究 だと思います。なかなか歴史に残る大事な研究になるのではないかと思いました。 1万2,000人やっただけでもとてもすばらしいことだと思うんですけれども、2万人レ ベルまで到達していただくのと、やはり小児神経発達のところまできちっと評価できると、 本当にとても重要なデータベースになるのではないかと考えます。 ○岸先生 本当に産婦人科の先生方の献身的と言いますか、出生数が少し減ったんですけ れども、産婦人科の施設が集約化しているものですから、何とかほぼこういうふうに上が ってきておりますので、グラントを付けていただく限りは頑張りたいと思っております。 それから、子どもの発達に関しましては、かなりこれだけの数で詳しいことを見るのは非 常に難しいものですから、少ない数で200人ぐらいを海外で、特にオランダが初めにロッ テルダムスタディという非常に貴重な報告をされたものですから、それと対比できるよう な形でわずかな人数で、それは今、何とか続けております。 ○津金委員 グラントをたくさん付けていただき、小児科の研究チームなどと共同で、い ろいろきちっと大規模な形で神経発達との関連を見られると良いと思います。水銀との関 連で毛髪とかは取られていないんですか。 ○岸先生 水銀は、昨年報告させていただいたのではしょりましたが、実は水銀濃度が高 いほど、子どもの出生児体重は大きいという結果が得られまして、恐らく水銀濃度が高い ということは、魚をたくさん食べていらして、そのプラスの効果が出ているのだと考えま した。 ○津金委員 要するに、水銀の影響も評価できるという意味で、とても重要だと思います。 質問は、ダイオキシンと出生体重の関係の話なんです。何でフランだけが関係している のかなということと、調整のところに喫煙が入っていないようなんですけれども、喫煙と かがやはり出生体重に与える影響は大きいので、そこら辺も調整された方がいいのかなと 思います。 それから、体重自体を重回帰で直接やるのもいいかもしれないですけれども、例えば臨 床的に問題のあるような低出生体重というものをエンドポイントにして、それのリスクと いう観点からの評価というのをお願いします。 ○岸先生 IUGRでということですか。 ○津金委員 はい。 ○岸先生 その方向でやりたいと思っております。 それから、なぜPCDFだけかということなんですけれども、PCDFに関してはいろいろな データが出てきておりますので、それから考えると、最も子どもに影響があるということ では、こういうデータになってしまって、ある意味では、やはりそれだけ強力な作用なの かと考えておりますが、むしろ基礎的な研究をなさっている方からいろいろ知恵をいただ ければありがたいと思っております。 ○櫻井座長 時間がもうほとんどないので、最後1つだけです。 ○安田委員 広島の安田ですが、サンプルサイズをお増やしになっても、大きな異常のみ をとらえているのでは、停留精巣は別にしまして、なかなか難しいと思うんです。もう少 しマイナーな異常、例えば歯の異常のようなものですと、歯の健診などを利用して観察で きるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○岸先生 先生、そこは考えておりませんでした。 口唇口蓋裂は、結構化学物質代謝酵素との関係で出ていますので、そこは十分マーカー には入れたんですが、歯は入れておりません。 ○櫻井座長 それでは、残念ですが、これは本当に貴重な研究で頑張っていただきたいと 心から思っております。 それでは、最後、議題5その他ということですが、事務局の方、何かございますでしょ うか。 ○事務局 特に事務局の方からはございません。 ただ、連絡事項といたしまして、次回の検討会につきましては、また改めて調整させて いただきたいと思っております。 ○櫻井座長 それでは、今日の議題は以上でございます。長時間にわたりまして、どうも ありがとうございました。これで終了とさせていただきます。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局審査管理課 化学物質安全対策室 担当 廣田、古田、下位 電話 03-5253-1111(内線:2910、2426、2424) 9