07/03/06 第7回 市町村保健活動の再構築に関する検討会議事録 第7回市町村保健活動の再構築に関する検討会 議事録 日時:平成19年3月6日(火)9:30〜11:30 場所:東京厚生年金会館 曙の間 照会先:健康局総務課保健指導室(内線2398) ○出席構成員(五十音順・敬称略)  井伊久美子、伊藤雅治、大橋範秀、尾島俊之、佐伯和子、迫和子、曽根智史、 田上豊資、藤内修二 長谷部裕子、藤山明美、本田栄子、山野井尚美 ○オブザーバー(発言順・敬称略)  有馬 富子、福原 円、椿本 美栄子、日隈 桂子、水沼 一子   ○厚生労働省関係出席者  上家大臣官房参事官(健康、医政担当)、勝又健康局総務課保健指導室長、清野健康局 総務課生活習慣病対策室栄養専門官、溝口健康局総務課生活習慣病対策室栄養調査係長、 加藤健康局総務課保健指導室主査 ○次第 1.開会 2.議題 (1)事例紹介 (2)市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書骨子(案)について (3)その他 3.閉会 1.開会  加藤主査  それでは定刻となりましたので、ただいまより第7回市町村保健活動の再構築に関す る検討会を開会いたします。  本日、長谷部構成員は御都合によりおくれて御出席となります。また有原構成員、鏡 構成員、田尾構成員からは御欠席の連絡をいただいております。  なお、本日はオブザーバーといたしまして、兵庫県加古川市・有馬様、栃木県小山市・ 福原様、埼玉県蓮田市・椿本様、大分県玖珠町・日隈様、宮城県丸森町・水沼様にも御 出席をいただいております。  続きまして、資料の御確認をお願いいたします。お手元にお配りしました資料でござ いますが、座席表、構成員名簿、議事次第のあとに資料1「専門技術職員の配置のあり 方について」、この資料につきましては、加古川市資料、小山市資料、蓮田市資料、安来 市資料、玖珠町資料、丸森町資料、伊勢原市資料の順序で用意させていただいておりま す。資料2「市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書骨子(案)」、以上でござい ます。不足、落丁等ございましたら事務局までお願いいたします。  それでは、この後の進行は伊藤座長にお願いいたします。  伊藤座長  皆さん、おはようございます。それでは議事に入らせていただきます。  きょうはまず議題として大きく2つ用意しております。最初の1時間程度をかけまし て「専門技術職員配置のあり方」の事例として各自治体から御報告をいただき、その後、 「市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書骨子(案)」について、御意見をいただ きたいと思います。  2.議題 (1)事例紹介  まず、それぞれの自治体から御出席いただいている方々に、それぞれの事例について 御説明をお願いしたいと思います。まことに恐縮ですが、時間が限られておりますので、 御説明は各自治体6分とさせていただきます。5分30秒でチンと鳴るそうでございます ので、ひとつよろしくお願いいたします。  それでは、まず加古川市の事例につきまして、有馬様の方からお願いいたします。  有馬オブザーバー  加古川市の保健師の有馬と申します。よろしくお願いいたします。私は健康課の担当 副課長という職にございます。  資料の1ページをごらんください。加古川市は人口が266,350人、高齢化率17.3%で、 保健師は27名、保健師1人当たりの受け持ち人口は9,864.8人となっています。  自治体の組織なのですが、その下に書いてございます。保健師は福祉部、市民部、総 務部におりまして、総務部では、職員の健康管理としまして職員厚生課に2名おります。 市民部の方では市民生活局の市民センターが本庁以外で市民の窓口として9センターあ り、そのうち正規職員が4カ所に、それ以外は嘱託等の保健師で、それぞれ1名ずつお ります。福祉部健康政策局の障害福祉課に1名、高齢者健康支援局の介護保険課に4名、 健康課に9名、こども局こども課に7名の保健師が配置となっております。分散配置が 進んできましたが、最初は平成15年、市民センターに3カ所配置しまして、その後17 年度にこども課へと分散化が進んでまいりました。  保健活動のデータに関する方は、資料の5ページを御参照ください。住民健診の受診 率は50%を少し超えております。母子保健の乳幼児健診でも90%を超える受診率となっ ております。国保の医療費もその下の表のようになっています。  自治体の健康課題といたしまして、6ページに示しておりますように母子保健では育 児不安やストレスが非常に高まり保護者のフォローが大切となりますので、家庭訪問な どを行い虐待予防対策を中心にしております。  成人老人保健では健診は50%の受診率がございますが、64歳以下の受診率向上に向け た活動や生活習慣病予防対策の活動に重点をおいて取り組んでおります。  特に加古川市の場合は人口が26万もございますので、住民に身近なところでの保健活 動がなかなかしにくい状況になってまいりました。その中で、より身近なところで保健 活動ができるようにと考え、市民センター、生活圏9カ所に保健師を配置するようにな りました。  市民センターに配置するにつきましては、市民センターの活動としては、ポピュレー ションアプローチを中心とした妊婦から老人までの健康教育、健康相談を中心にしてい ます。「地域の課題を解決する」という形で、参事級の行政職員と技術関係の土木職員と 保健師がセットになりまして、各市民センターに配置されております。  このような市民センターでの活動をすることになりまして、本庁から身近な市民セン ターに出向くことによりまして、より身近なところで保健活動をするという形で、住民 からはそれぞれ「身近なところでいつでも相談ができる」「家庭訪問をしてもらいやすく なった」という声が出てまいりました。特に「わが町の保健師」という意識で、地域の 健康問題などを相談しに住民が市民センターまで出向いてくれることが非常に多くなっ てまいりました。   特に本庁等と市民センター連携をするようになった中で、市民センターでは先ほど申 し上げましたようなポピュレーションを中心とした活動と同時に、地域にありますいろ いろな各組織との連携をとりまして保健活動をやっていくというところに中心をおきま した。本庁の方はそれぞれの市民センターで課題としてつかんだものを、いろいろと検 討しながら地域と連携をして企画調整を行うという活動をしております。  市民センターに保健師が出て、このような活動をする中で、若い保健師が出ることで 地域との連携の仕方や、また住民とともに保健活動をするということを経験することが でき、非常に大きな人材の育成となっております。その他、本庁では課題をまとめ、ど のように保健活動を組み立てていくかという連携等の活動ができるようになっています。  今後、市民センターへのジョブローテーションをできるだけ2年ごとぐらいにし、た くさんの保健師が各センターに出向き活動を続けていきたいと思っています。  以上が加古川市の活動でございます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。続きまして小山市の事例につきまして福原さんから お願いいたします。  福原オブザーバー  小山市の福原でございます。よろしくお願いいたします。主査という職位ですが、き ょうは課長の猿山が議会対応のため、代理として出席させていただきました。  資料の13ページをごらんください。小山市の人口は161,113人になります。高齢化率 は2月1日現在、最新のもので16.9%です。保健師は現在28名で1人当たりの受け持 ち人口は5,754名となっております。  小山市に事例につきましては、「住民の協働」のところをキーワードにしまして、大き く2つ御紹介したいと思います。  1つ目は高齢者施策として展開しております、「いきいきふれあい事業」というもので すが、市内16カ所の地域で自治会を中心に民生委員、健康推進員、ボランティアととも に運営委員会を立ち上げまして介護予防事業を実施しております。まず介護予防の必要 性というのを、何度も地域に足を運び住民の方に理解していただいて、ある程度理解が 得られたところで設立準備委員会を立ち上げ、開所に向けて検討を行っております。開 所後は運営委員会で実施していきますけれど、2カ月に1回の企画会議に職員が入り、 必要があれば調整を行っていくという形で事業を運営しております。高齢者の方がすご く生き生きとして参加している様子、車いすでいらしていた方が歩いて来られるように なったなどの反応を見て、支援側である住民がエンパワメントされて地域がすごく活性 化しているという事業になっております。  また徐々に開催地区もふえ、地域性はありますけれども、小学校区単位ぐらいで、こ の事業が立ち上がってきております。立ち上がっていない地区からは「うちの地区にも 欲しい」「今までなくて肩身が狭かった」というような声が聞かれております。今年度の 半年間で約16,000人の延べ参加者と8,000人弱のスタッフ、支援者側の協力が得られて おりまして、こういったところに地区担当の保健師もかかわれているという現状です。  2つ目は健康増進計画にからんでのものなのですが、計画が策定された後に、市民が そのままボランティアとして残りまして、また行政の庁内20課の行政協力員とともに、 進行管理していくサポーターの会というものが立ち上がりました。立ち上がるまでの細 かい経過等につきましては、資料の19から20ページに詳細が載っておりますので、後 でごらんいただければと思います。  この動きが出てきた原因としましては、1つは「計画をつくる」という1つの大きな 目標を共有して協働作業をすることで、保健師自身も学びながら、行政とか市民とかと いう枠を超えて人としてつながれたということが大きかったと思います。また必要な情 報を行政協力員が随時公開していくことで行政への理解が深まり、単なる行政への要望 やクレームというものではなくて、一緒につくり上げていこうという市民の意識が育っ ていったということが大きかったと思います。最終的にはこの計画をつくることが目的 ではなかったということに、みんなが気づきまして、健康なまちづくりに向けて市民を 中心に、動き出したというのが大きかったと思います。  現在は、いろいろな人とつながるのが大切だということで、市民みずからが自分たち のネットワークを使いながら、PTAや商工会議所などを巻き込んだアプローチが始ま ってきたところです。  もう1つ、地域の行動計画を既存の健康推進員さんがつくってくださったのですけれ ども、この策定を転機にトップダウンの意識が強く、やらされ感も強かった健康推進員 さんがみずから地域の健康問題を考えるようになりまして、地区の健康課題を話し合っ たり、データの読み取りから必要な取り組みを行っております。また活動成果をまとめ て、健康推進のPRを兼ねた「健康だより」というものを推進員さん自身が原稿からつ くるようになり、地区に回覧なども行っております。「健康だより」の方も資料で添付し ていますので御参考になさってください。  また、年度末には活動の目標がどのぐらい達成できたか、地区の担当の保健師ととも に一緒に評価をすることで、活動の継続性が図れ、次の課題を明らかにしております。  最後に組織体制と人材育成についてです。保健部門では業務分担制とあわせまして地 区分担制をとっており、先ほどの「いきいきふれあい事業」の組織、健康推進員さん組 織などの地区組織と地区担当の保健師がうまく連携できていると思います。分散配置に つきましては、結構早くから進みまして、現在7部署に分かれております。配置につき ましては、法や制度の改正に伴って各部署から申し入れがありましたけれども、この部 署からの申し入れの裏には、それまでの保健師活動が、地域の事業や訪問を通じて庁内 や住民に浸透していたということがあると思います。また同時に保健師間では検討を行 いながら、それぞれの部署での役割を明確にするような話し合いを行ってまいりました。  統括者としては保健部門の課長がその役割を担っておりますが、領域を超えて保健活 動全体を見渡して、課題と思われる部分から改善した方がいいところ、調整が必要なと ころなどを担当や他課に配置されている保健師にも投げかけ、気づきを持たせ、助言し ていく役目を担っております。  小山市の方は以上です。ありがとうござました。  伊藤座長  14ページの保健福祉部というところと総務部、全部本庁に配置されているのですか、 先ほどの地区分担というのと、どういう関係になるのですか。  福原オブザーバー 14ページで申し上げますと本庁は一番上の職員活性課のみにな りまして、保健福祉部は、本庁の向かい側にある保健福祉センターの建物に福祉部5課 が入っております。  伊藤座長  保健福祉センターというのは1カ所ですか。  福原オブザーバー  1カ所です。  伊藤座長  例えばこども課にいる人たちは、それぞれ……、こどもや高齢者生きがい、健康増進 という専門の縦割り課と地区分担の関係はどうなっているのですか。  福原オブザーバー  地区分担に関しましては、基本的に一番下の健康増進課の保健衛生部門のところの保 健師が各地区の分担ということで地区分担を持っておりまして、ケース支援につきまし ては他課と連携しながらやっているというところです。  伊藤座長  全部終わったところで、また質問があればお願いします。ありがとうございました。 次、蓮田市の椿本さん、お願いします。  椿本オブザーバー  埼玉県蓮田市の椿本です。どうぞ、よろしくお願いします。資料は29ページからです ので、ごらんいただきたいと思います。私は課長という職位にあります。  蓮田市の人口は64,233人、高齢化率18.3%、保健師数が12名でございます。保健師 1人当たりの受け持ち人口は5,352名です。  自治体の組織ですが、保健師は健康福祉部の中の健康増進課、介護保険課、地域包括 支援センターにいまして、総括している保健師が健康増進課におります。総括業務の分 掌事務への記載はございません。20歳代の保健師が4名、30歳代が5名、40歳代が2 名、50歳代が1名の構成になっております。  また保健活動に関するデータですが、国民健康保険の1人当たりの医療、基本健診の 受診率、生活習慣病予防教室の改善率、乳児健診の受診率については31ページをごらん いただきたいと思います。  蓮田市では効果的な保健活動により、基本健診の受診率や乳幼児健診の受診率も上が っていますけれども、このような結果を出すことができましたのは、1つには健康課題 を明確にしているからです。現在、蓮田市には国民健康保険の1人当たりの総医療費が 埼玉県内の市の中でもトップとなっております。疾病別に見ますと、循環器疾患による 医療費が高額です。基本健康診査の結果を分析すると、要指導領域の方々が31.4%、そ の内訳につきましては、高血圧、高脂血症、貧血、糖尿病が大半を占めております。基 本健康診査の結果分析や、毎年作成する年報で経年的な事業概要とこれらの効果につい て、状況についてまとめています。また、各種団体への積極的な出前健康相談、出前健 康教育を通じまして、地域のニーズの把握を継続的に行っております。  蓮田市の特徴としまして地区組織活動が活発であることです。保健師が支援していま す地区組織活動は、母子愛育会、食生活改善推進協議会、介護ボランティア、やすらぎ 会、これはアートセラピーを使った認知症予防事業を行っているグループですが、その 他自主グループがあります。  この中で特徴ある組織活動としましては、50年の歴史を持つ母子愛育会活動です。蓮 田市では母子愛育会の連絡員全員に母子保健推進員を委嘱しています。母子保健推進員 は子育て中の若い母親が中心に活動しておりまして、市内で1歳未満の子育てをしてい る御家庭に声かけ訪問をしたり、乳幼児健診の未受診児の御家庭を地区担当の保健師と 一緒に訪問しております。  また平成18年度は、国保年金課と共催事業で、国保ヘルスアップ事業に取り組んでお ります。  また基本健診後の要指導者へのフォロー事業としまして、教室の終了後も継続して生 活習慣の改善ができるような仲間づくりとして、栄養運動を中心とした自主グループ化 を進めております。  平成19年度に市町村健康増進計画の策定を契機に健康づくり推進員を育成し、市民主 導型の健康づくり事業を市内で現在展開しております。「健康はすだ21」は、平成13年 度から14年度にかけまして、住民参加による健康づくりの検討会議を設置して策定しま した。  検討会議では健康をテーマに住民とともに話し合いを進めていくうちに、健康のとら え方が、体だけでなく心も含めて健康であることが重要だと、住民みずから気づき、そ のために、笑顔や地域での声かけ、あいさつも積極的に進めていきたい、そして、何よ りも1人ひとりの思いやりと、助け合ってともに生きることの大切さを計画の中に盛り 込みたいという意見が検討委員さんの中から出ました。  健康づくり行動の実態とニーズの把握をするために、アンケートによる健康実態調査 をしました。また検討委員さんからは、「数字だけのデータでは見えない、生の声を聞き たい」という声が出まして、保健師、栄養士、それから市民である検討委員さんと手分 けをして、生の声インタビューをしました。そんな中から「健康より美容」といった女 子中学生の声、「健康管理と食事づくりは女房任せだ」といった中年男性、「小さい子供 がいるから、自分のことには構えない」といった若い母親の生の声が聞こえてきました。  このように見えてきた実態をもとに、1人ひとりの市民さんが、自分なら何ができる のかについて話し合ってまとめてできました「健康はすだ21」で、市民の声をそのまま 計画書に載せたわけです。この計画書ができまして2年間の会議を終了することになっ たときに、1人の委員さんが、「この計画書は我々がつくったのだから、我々が広告塔に なって地域にすすめるよ」と言ってくださいました。これが健康づくり推進員さん誕生 のきっかけでした。住民とともに、どんな地域に住みたいのかを考え、どんなサービス が必要なのかをともに話し合う過程から、住民参加から住民主導型への健康づくりに転 換することができました。  第一次公共空間が行政で、第二次公共空間が民間事業者とするならば、地域住民は第 三次公共空間であると考え、今後行政とともに車の両輪のごとく健康づくり施策を展開 していきたいと考えております。  蓮田市では保健師は地区分担制をとっております。生活圏を重視した母子愛育会の地 区分担7班に基づいた地区割りが特徴です。  統括者の役割ですが、平成20年度からスタートします医療制度改革に向けまして、体 制づくりに力を注いでいきたいと考えております。  また財政状況が大変難しい中ではありますが、保健・医療・介護が連携しつつ、横断 的に専門職の確保に向けて努力していきたいと思っています。また、保健師の異動につ きましては、新任保健師は衛生部門に必ず配属し、異動については中堅以上の保健師の 3年から5年のスパンでのローテーションを現在も組んでおります。  蓮田市の状況につきましては以上でございます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは安来市の事例については事務局からですか。  加藤主査  安来市の方から資料をいただいておりますので、説明いたします。資料は31ページか らになります。  安来市は、人口44,437人、高齢化率28.1%、保健師数は行政に13名、で 保健師1人あたりの受け持ち人口は3,418.2人です。この他、市立病院に2名配 置されています。自治体の組織ですが、保健師は保健予防(20歳代1名、30歳代3 名、40歳代3名)、福祉(30歳代1名、40歳代1名)、包括支援センター(20歳 代1名、40歳代1名)、市民生活(戸籍等窓口に50歳代1名)、支所(50歳代1名) におりまして、統括している保健師が支所にいます。(病院配置保健師は、30歳代1名、 50歳代1名)安来市の国保の医療費総額は、年々増加していますが、増加率は、県よ り下回っています。(国保加入率約35%、そのうち老人割合約34%。)  特に、重点課題として取り組んでいます糖尿病に関しては、糖尿病費用額が上昇する 中、当市では抑制されています。(件数は微増しているが、1件あたりの費用額が微減) 安来市の基本健診受診率は平成17年度49.3%となっています。  このような結果を出すことができているのは、1つは、健康課題を明確にしているこ とです。現在、安来市には、糖尿病の増加、それに係る専門医が少ない、合併症による 医療費の増加がありますが、これらは次のような方法で明らかにしています。   死亡状況、健診受診率、医療費分析、健康実態調査、地区活動における住民の声など を整理し課題に取り組んでいます。また、地域住民や関係機関と次のような協働した活 動をしています。  健康増進計画をもとに健康づくり活動を展開してきており、その推進母体として住民、 各関係団体をもって「安来市健康推進会議」を設立しています。ここには、ライフステ ージごとに部会を持ち、具体的事業展開をすすめています。また、地区健康会議をもち、 各地区計画のもと活動の推進に取り組んでいます。私たちは、これを基盤とし、活動を 行っています。  健康課題別には、「安来能義地域糖尿病管理協議会」「8020推進会議」を設立し、 関係団体等と活動をすすめています。特に糖尿病対策においては、基盤整備から健康づ くり、発症予防、疾病管理対策までをとらえ、医師会、歯科医師会、栄養士会、看護協 会、糖尿病友の会等々と協議会を立ち上げ、負担金形式で運営、活動を展開しています。 疾病管理対策では、管理マニュアルを作成に医療機関での診療がなされ、糖尿病手帳を もって関係者がかかわっています。また患者登録によるデータ管理と還元、初期教育に より適正コントロールにつながっています。その結果、医療費に影響が現れました。  このような活動を展開するための組織体制ですが、健康増進計画の推進母体として住 民、各関係団体をもって「安来市健康推進会議」を設立しています。ここには、ライフ ステージごとに部会を持ち、具体的事業展開をすすめています。また、24地区の23 地区には地区健康会議をもち、ここに各自治会ごとに健康委員を配置し、地区内への普 及啓発等すすめられるようなしくみをもって活動の推進に取り組んでいます。これらの 地区活動を通じて、地域の健康課題を明確にすることや他の部署の業務を理解するなど して分散配置における課題に対応しています。  統括者の役割ですが、行政における保健師の役割、配置への要望や、各配置業務の情 報交換から課題整理等行うものとしています。保健活動における総合的見方をするもの とします。  人材育成については、基本的には、市における「人材育成基本方針」に基づきます。 主任級は3年ごと、主幹級は4〜6年程度の異動基準が設けられています。専門能力向 上のためには、各配置保健師との情報交換、研修会等を開催し、また外部研修にも参加 しています。新人育成研修には、県の研修の機会を利用し、生かしていけるようスタッ フ間で連絡会を定期開催する中で、声かけをするようにしています。行政能力向上のた めには、職員研修、各職位に応じた研修会へ参加しています。  以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。ちょっと質問で申しわけないのですが、例えば、37ページ に、保健部門に7人、障害福祉部門に2名、地域包括支援センター2名となっています が、42ページに業務分担、地区分担というところで、例えば地区分担で1人4地区、業 務分担で母子保健、予防接種、老人保健となっていますが、保健部門の7人がそれぞれ 地区分担をしていて、例えば、障害福祉部門の2人というのは全市を対象にした障害福 祉をし、地域包括支援センターの人も全市を対象にしているのか。地区分担と縦割りの 仕事の関係がどうなっているかというのが、いまひとつよくわからないのですけれども、 そこはどうなんでしょう。  勝又室長  安来市にヒヤリングをしたときには保健部門の方たちが地区分担をされておりまして、 障害とか地域包括センターは全市を対象にして1人ないし2人の方が受け持っておられ るという、そういった状況です。  伊藤座長  そういった形になっているのですね。  勝又室長  はい。  伊藤座長  それでは次に玖珠町の日隈さん、お願いします。  日隈オブザーバー  おはようございます。大分県玖珠町からまいりました日隈です。  私の方は49ページからです。玖珠町は人口は18,694人、高齢人口が28.3%、保健師 は現在6名おります。介護保険と保健部門にそれぞれ5人と1人、1人当たりの人口は 3,115.8人ということです。  この6人になった経緯と、うちの活動が重なりますので、少し申し上げます。第二次 の国民健康づくりの始まりが昭和63年だったのですが、そのころに健康づくりの住民組 織を立ち上げ、そこで皆さんと一緒に、先ほどから出されておりました市と同じように 住民と協働の事業を展開してまいり、町の主な計画から、さまざまな小さな協議会の計 画まで、すべての計画を住民と一緒にしようということで始まりました。  その中で、計画に、「保健師を地区別に必ず1人はふやす」という項目を入れて議会を 通しましたおかげで、徐々にふえてきた経緯があります。この間、私どもの教室だとか 出前講座など、次のページの効果的な展開のところにもありますが、住民さんと行った 教室についてはそれが自主的に運営できるようにサークル化やボランティア化をして、 現在700数十名の方たちが支援をできる体制をつくってきております。  この間に活動してきたことは、今回の市町村合併ではうちは合併をしておりませんが、 それに関しまして、どのように自治体を再構築するかということになりましたときに、 コミュニティの再編成ということが重大な課題になって、そこに健康づくりの組織がき ちんと入り込んでいたところが目にとまって、それを生かせないだろうかということで、 今再編成の最中なのです。今まで取り組んだ企画から推進、そして評価をして、皆さん にプレゼンテーションしてという過程が、今、町のほかの部署や部局にも広がって、改 めて組織をつくり、健康を窓口にしたというところで、住民みんなのコンセプトを統一 した共通課題になってきたのではないかということを感じます。  これからのことなのですが、社会体育とか社会教育も一緒に手がけてきましたが、間 近に迫った法改正の国保の問題、医療費介護、保健のところの分野が、すべて予防で統 一できるのではないかというところで、町全体が予防、体力づくりというところをコン セプトに展開すべきではないかというところまできています。  その際、先日も夜に出前講座でまいりましたが、保健師の先輩と後輩、それから行政 職の先輩、後輩が対になって各地域に出向いて、ここの地域の問題はどうなっているの かというお話を、プレゼンテーションの後に展開して、隣の町と比べてなぜ保険料が100 円安いのか、全国と比べた医療費は、なぜうちは高齢者は低いのに若年者は高いのかと いう話とか、そういうのを積み重ねまして、現在は企業体、事業所の若い人たち向けに ちょうど法の改正とマッチすると思うのですが、そちらの方向へ若い人たちの健康づく りということに大きくシフトしているところです。  それが今までの活動と、これからの課題です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは次、丸森町の水沼様、お願いいたします。  水沼オブザーバー  おはようございます。私は宮城県丸森町の水沼と申します。現在の職位は保健福祉課 参事ということですが、17年は保健センター所長でございました。組織再編になりまし て、現在の職位でありますが、一応名前をつけていただきまして、保健医療福祉連携担 当参事という形になっております。  丸森町は宮城県の一番南で人口16,904名、高齢化率が31.7%、保健師は私を含めて 現在9名で活動しております。受け持ち人口は、一応この数で割りますと、1,883人と いう形でございますが、包括あるいは国保丸森病院にというところに保健師が出向いて いっておりますので、実際には受け持ちは5,000人ぐらいかなと思われます。  私どもの町は平成16年、1市1町の合併協議をいたしましたが、やはり自立の道を選 ぶという形になり、平成17年は長期総合計画から始め、自立のまちづくりのための組織 再編ということについて、いろいろな検討がされていきました。この中で保健・医療・ 福祉のやり方ということについても関係者と協議をしながら進めてまいりました。  町の組織でございますが、60ページにございますように、18年4月は保健福祉のとこ ろだけ先行いたしまして、保険企画、社会福祉というふうな形のところの中で保健師が それぞれ分散配置ということになっております。あとの部署については19年4月から実 施という形でございます。  保健活動の概要の中で、基本健康診査は現在60%台キープで、この指導率については 文書指導等も含まれておりませんので、このような数になっております。  1人当たりの医療費については、高齢者の医療費については低いのですが、一般の方 が高いという状況になっています。特に循環器系疾患による医療費が高く、1人当たり の医療費が高くなっているということでございます。  現在、町の健康課題ということですが、いろいろなことを考えたときに、まず先ほど お話ししいたました組織再編をしないと、保健センターで保健師だけでやっていたので は他課との連携が、保健センター完結型の事業というのはなかなかできない時代になっ てきているというようなこともございましたので、問題を整理したときに、組織の問題、 それから環境的な問題、人の問題をどうクリアしていくかということで、このような形 にまとめさせていただきました。  そういうふうな課題の中から、町としての対策としては高血圧、高脂血症住民の対策、 骨粗鬆症の対策、あるいは障害者ということが出ておりますが、このような形で明確に やっているのを、どう具現化していくかというあたりについては、基本的には各種計画、 長期総合計画から下りた部門計画をどういうふうに実践していくのかというあたりが問 題なのかなというふうに考えております。  私どもの方では地区組織というのは、昭和30年代に職階が、それから40年代に保健 推進員が、それから50年代に運動推進員がそれぞれできています。そういった中でヘル スリーダーさんがいっぱいいるわけですが、この増進法の前、健康増進計画をどういう ふうにしようかというときに、平成12年から計画策定を3年かけて住民と一緒にやりま した。住民と一緒にやった、そこの中から得たものは、この計画はやはり私たちが回し ていきたい、計画を実際にコーディネートしていきたいということができまして、「げん まる推進員」という、この「げんまる」というのは健康現役丸森大作戦21という名前で、 「げんまる」だけで通るようなことになりまして、毎週広報誌などは担当の推進委員さ んが広報に寄稿しております。そういった形で住民へのPRを行い、地域においては健 康課題解決のコーディネートということです。  「げんまる計画」の体系的なものは67ページにございますが、町のあるべき姿という のは、「心とからだを動かして健康好きの生涯現役、健康づくりの輪を広げ健康おせっか い族」という形のものができました。  そういった中で、この計画を策定し、実践し、住民の方々が達成感を得たことによっ て、実際には山間ですごく広い地区なものですから、「保健師も本当はもっといた方がい いんだよね」「もっときめ細やかなことも必要だよね」という声も住民側から出ておりま して、もっと保健師をふやすべきではないかというふうなことが出されており、現在、 人事の方と協議しているところです。  それぞれの組織については、それぞれ細かいところ、子育ての推進、健康推進に、社 会福祉の障害のところにという形になっていますが、地区担当制と業務分担制を導入し ており、地区健康推進の係長以下、子育て支援の係長以下、それから社会福祉のための 保健師も地区担当を導入して、そこの業務担当になっているところが一応いろいろな意 味で企画し、提案をします。やはり企画書が書けるというのが基本的にとても大事なこ とだということで、保健企画書を書けるためにはということで、大体5年ぐらいには、 それが書けるという状況を目指して一応OJTの方をやっております。ジョブローテー ションは今回18年からになりましたので、職員もいつか異動になるという点は了解して いるということで、終わらせていただきたいと思います。  以上でございます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは次に伊勢原市の事例につきまして、事務局 の方から説明をお願いします。  溝口栄養調査係長  それでは伊勢原市から資料をいただいておりますので、事務局から説明させていただ きます。資料は85ページをごらんください。  伊勢原市の人口は約97,000人、年齢区分としては年少人口14.5%、生産年齢人口 69.1%、老年人口が16.4%となっております。自治体の組織として管理栄養士・栄養士 の配置の配置状況といたしまして、介護高齢福祉課、健康管理課、保育課、学校教育課 にそれぞれ配置されております。組織を超えて統括する管理栄養士はおりませんが、庁 内栄養士連絡調整会議を開催し、その事務局を4つの課で毎年持ち回りにし、担当課が 中心となって連絡調整をしております。  保健活動の内容といたしましては、基本健康診査受診率として56.8%、基本健康診査 事後指導実施率が2.5%となっております。母子保健事業関係といたしましては以下の ようになっております。  地区組織活動の特徴です。食に関する活動といたしまして、伊勢原市食生活改善推進 団体が市内6地区に分かれ活動しております。会員数は109名、市からは活動補助金や 委託金を交付、各地域で講習会を実施しています。  市長村健康増進計画の策定経過といたしまして、平成14年度に「健康いせはら21計 画」を管理栄養士等も策定メンバーに加わり策定しており、平成19年度に中間評価を行 う予定となっております。  国保1人当たりの医療費については下の図表のとおりとなっております。  自治体の健康課題といたしまして、「健康いせはら21計画」より、幼児期の生活リズ ムや食生活の乱れ、学童から青年期の朝食欠食率、働き盛りの男性の肥満と、若い世代 の女性のやせの問題、50歳代以降の糖尿病とその予備軍の増加(特に男性)、高齢者の やせの問題等が上がっております。  伊勢原市の特徴といたしましては、介護高齢福祉課に常勤管理栄養士が配置されてお り、特定一般高齢者施策、福祉サービス、配食サービス等、栄養ケア・マネジメント業 務を進めていることが上げられると思います。具体的にはポピュレーションアプローチ といたしまして、老人会やミニサロンなど高齢者が集まる場への出前講座、講義ではな く実践的な内容で実施、例えば電子レンジやオーブントースター、炊飯器を集会所など に持ち込んで料理教室を行ったり、料理できない会場は体重計を持参し、参加高齢者の 栄養状態をその場で確認、今後は閉じこもりがちな高齢者が外出しやすいように、集ま る機会がない地域にも出向きサテライト的な事業を行っていく予定です。  また、高齢者を支える人材の養成、育成、連携として、民生委員やサロンボランティ ア、ヘルパーなどへの講座、今後は市ケアマネ協会等へもアプローチする予定です。  また高齢者の食に関するインフォーマルサービス、民間サービス情報、配食や食材、 介護宅配等の情報を収集し配布しております。  またハイリスクアプローチの取り組みとしまして、特定高齢者施策・栄養改善(通所 型・訪問型)、全国的には特定高齢者・栄養改善事業の実施率が少なく、また実施しても 参加者が少ないため、一般高齢者向け事業や運動・歯科と合同で開催しているところが 多い状況の中、伊勢原市では栄養改善だけで単独開催しております。  管理栄養士が地域に足を運び、特定高齢者に対し立ち寄り訪問を実施、事業へ直接誘 いかけることで通所や訪問型で継続できるケースが約45名になっています。また通所 型・訪問型に参加し管理栄養士がかかわることで体重増加が見られるケースが多く、事 業継続する必要性は高いと考えています。  また配食サービス導入時のアセスメントとして、市公費の配食サービスを希望するケ ースには管理栄養士が訪問しております。導入後も3カ月を目安にモニタリングを行い、 継続の必要の有無、現状の回数でよいか等をケアマネ等と連携をとりながら確認してい ます。今後は新規ケースだけでなく、以前から配食を導入しているケースにも、食の自 立、例えば調理や買い物ができるようになるなどに向けてアプローチしていく予定とし ております。  また、88ページ、連携状況についてですが、「市配食サービス献立作成担当者連絡調 整会」というものを開催しており、委託先の特別養護老人ホームや養護老人ホームの管 理栄養士・栄養士との調整や情報交換により連携を図っております。今後は配食だけで はなく、地域全体における高齢者への栄養ケア・マネジメント体制を確立するために、 他機関との連携が重要なものと位置づけています。  また、他職種との連携状況といたしましては、特定高齢者教室・訪問や離乳食教室等 には歯科衛生士との連携をしており、特に特定高齢者訪問では歯科衛生士と連携するこ とで低栄養が改善されたケースが見られております。また包括支援センター主催の栄養 教室や特定高齢者への同行訪問では、包括支援センター職員と連携をしており、包括支 援センターが地域活動の中で把握した高齢者に対して連携しながらかかわりが持てると いう状況になっています。  また配食サービス導入に向けてのアセスメントのため、担当ケアマネジャーとの訪問 においては居宅介護支援事業所ケアマネとも連携をしております。  最後に人材育成体制についてですが、市では、市で日々雇用している非常勤管理栄養 士・栄養士向けの研修会を予算化し、外来講師等により実施しております。また非常勤 栄養士連絡調整会は年6回程度開催し、スキルアップのためケース検討や勉強会を行っ ております。また市町村栄養士向けの研修として日本栄養士会や母子愛育会等の参加費 が予算化されている部署もあります。  県・保健所の研修としては、県による市町村栄養士向け研修、保健所による在宅栄養 士向け専門研修の開催、また管内市町村栄養士におる業務連絡会を保健所で実施、情報 交換だけでなく、より実践的な内容で随時助言を受けているという状況です。  以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。加古川市を初め各自治体から専門技術職員の配置の 実態等について御報告いただきました。  中身の議論は「検討会の報告書骨子(案)」の議論の中でお願いしたいと思いますが、 もし、各自治体の発表について御質問があれば、少しお受けしたいと思いますけれど、 いかがでしょうか。だれに対する質問かということをおっしゃってください。  尾島構成員  加古川市さんについてなのですが、市民センターに1人ずつ配置されているというこ とで、住民がふらっと相談に訪れたりするには便利だと思うのですが、一方で保健師同 士で相談したりということはなかなかしにくいかなと思います。  どこか1カ所に集中配置して地区分担して各地区に出かけていくという形と、こうい う市民センターに配置するという形と2つ考えられると思うのですが、そのあたり、ど ういう検討をされてこういう形に落ちついたのか教えていただければと思います。  有馬オブザーバー  加古川市も、市民センターに配置する前に各地区分担で、保健師が市内を分担してい たのです。そうしますと、事業などが中心になり、地域に出向いて訪問という形が少な くなっておりました。また地域からの健康教育の要望も、本庁まではなかなか行きにく いということがございまして、やはり身近なところに気軽に健康相談にも行けるしとい う形で市民センター、生活圏で歩いてでも行けるところへという形が出てきて、市民セ ンターに配置というふうになりました。  伊藤座長  市民センターというのは市町村保健センターの機能も備えていると理解してよろしい のですか、それは違うのですか。  有馬オブザーバー  全く備えておりません。市民センターというのは市民課等の出先の窓口の中に保健師 が同じようにいて、特に保健分野だけで市民の窓口はいたしません。  伊藤座長  市の保健センターというのは、市役所の中に1カ所あるんですか。  有馬オブザーバー  加古川市は人口が多いのですが、市の保健センターはございません。  伊藤座長  時間の関係で中身の議論の方は「検討会報告書骨子(案)」のナンバー5という課題の ところで、専門職員の配置の考え方というところで御議論いただきたいと思います。  まず議題2の「報告書骨子(案)」の説明をしていただき、そして御議論していただき たいと思いますので、事務局から説明をお願いします。 (2)市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書骨子(案)について  加藤主査  それでは資料2をごらんください。「市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書の 骨子(案)」になります。  まず「はじめに」ということで、項立てといたしましては「市町村保健活動に関する 背景」、それから昨年の検討会も含めた「市町村保健活動に関するこれまでの検討の経緯」 と「本検討会の検討課題」の3本立てとしております。  次に「I 市町村保健活動の再構築に関する検討会の趣旨」ということで、今なぜこ の検討会を立ち上げたのか、なぜ議論するのかといった必要性について書き込むという イメージでおります。具体的な内容についてですが、今4つほど上げておりまして、こ れはこれまでの検討結果をまとめさせていただいたものです。  1つ目には、背景といたしまして、国民の健康に対するニーズの多様化、健康課題の 複雑化、多様化、介護保険制度や医療制度改革、市町村合併や行財政構造改革が進めら れているという背景です。  そして、そういった結果から市町村においては保健サービスのアウトソーシングや保 健活動に従事する技術職の分散配置が進み、個別のサービスを中心とした活動にシフト している方向にある。  このような状況の中で市町村保健活動が本来担うべき役割が不明確になった。  そのために本検討会ではということで、現在の市町村保健活動のニーズや課題を踏ま えた上で公の責任として市町村保健活動が担うべき役割、つまり個人を支援するだけで はなく、個人を取り巻く環境を改善するということを通して、地域の健康水準を向上さ せていく、こういった重要性を明確にしていくとともに、次の点につきましては、前回 検討会の中で出た御意見ですけれど、市町村長及び関係者に対して、20年度からの医療 制度改革を踏まえ、これからの保健活動を再構築していくための推進方策について理解 を求めていく、こういったことを目的としています。  「II 市町村保健活動のあるべき姿」ということです。  ここでは「1 市町村保健活動のコア機能」です。具体的な内容につきましては、(1) から(5)までをイメージしております。ヘルスプロモーションに基づく活動をすることと か、3番目の直接的なサービスである地域保健サービスにとどまらず、保健サービスの 提供を通して、地域の健康課題を把握し、地域の資源の開発や施策につないでいく、こ のような地域保健活動を推進すること、施策課にかかわること、予防活動を実施すると いった御意見も出ております。  「2 市町村における専門技術職員の役割について」ということで5つほど出ており ます。生活者の視点で健康課題をとらえ、ニーズを把握すること、特に潜在化している ニーズや課題を把握して、公助や共助としての公共サービスにつなげること、把握され たニーズや課題を施策つないでいくこと、健康増進計画の進行管理をすること、今後は 民間サービスを含めた地域保健にかかわるサービスの質を評価すること。  こういった保健活動を実施できるような活動体制や人材育成を推進していくことが求 められるのではないかと述べさせていただきました。  続きまして、「III 市町村保健活動の再構築」です。  「1 保健活動体制の強化」です。  「現状と課題」、検討会の中でも、「分散配置は決してデメリットだけでない、資質の 向上、体制づくりという点からメリットもある」という御意見が多数出ていたかと思い ます。また、複数の部署に経験年数の少ない職員が配置されており、固有の機能が発揮 されていない状況ですとか、3番目については、本年度実施しました調査の方からも明 らかになったことでございますが、ほかの部署の業務内容を理解することが困難であっ たり、調整に時間がかかる、地域全体をとらえることが困難な状況になっている、配置 を決定するプロセスに専門技術職員が参加できていないことが多いため、適正配置がさ れていないというような課題が出されております。  「推進方策」につきましては、組織横断的に取り組みができるようなポストに専門技 術職員の統括者を配置するとともに分掌事務に明記することが必要ではないか。分散配 置されている部署と共同事業を行うことも必要ではないか。専門技術職員の定例会を開 催し、日ごろの課題について共有することが必要ではないか。具体的な方法になります が、事例を通してニーズや課題を共有し、活動の目的を共有することが必要ではないか といったような御意見がございました。  「2 PDCAサイクルに基づく活動体制の構築」です。  「現状と課題」は実態把握の機能が弱くなっていること、施策につなげることができ ない、目的に基づいた評価が十分できていないというものです。  「推進方策」ですが、生活者起点の仕事へ転換するということで、まずは現場の実態 把握をすることが必要ではないか、具体的には生活の場に入り、個別支援を通して地域 ニーズを把握すること、そしてそこで把握したニーズや課題を掘り下げていくというこ とが必要ではないか。3つ目に目標設定とその手段あるいは評価については、住民の満 足度をきちんととって、公共サービスの評価をすることも必要ではないか。4つ目にア ウトソーシングする際にも地域の健康課題を把握したり評価するためには、対人サービ スをすべてなくしてしまうのではなく、一部残すことが必要なのではないかという御意 見が出ております。  「3 地域住民がNPOとの協働」です。  「現状と課題」ですが、これまでの保健活動は行政が中心となってサービスを提供し てきましたが、今後は地域住民や民間組織と協働する体制を構築することが求められて きている。特に介護予防の分野では企業の参入があるほか、今後20年度からの特定健 診・保健指導の実施に向けて、この分野にも企業が参入するということが推察されます。 行政機関とNPOの連携が困難な要因として、この検討会でも先生方からの御報告があ りましたように、連携するに当たりお互いの目的、ニーズが理解し合えなかった、スタ ート時に共通するルール、資源、責任が不明確であった、定期的な意見交換の場がなか った、こういったことが連携の困難な要因として上げられています。  「推進方策」ですが、今後は協働しながらも地域の健康づくりを実施すべきだという ことで、特に重要なのは市町村保健サービスを効果的・効率的に検討することだけを目 指すのではなく、地域住民、NPO等がみずから健康課題を解決する能力を獲得できる、 そういった支援が必要なのではないかということです。地域住民、NPO等が施策決定 のプロセスにかかわる、特に企画の段階からかかわることが重要ではないか。地域住民 に関しましては、今後団塊の世代が地域に戻ってくること、住民が主体的に健康課題を 解決できるような支援が必要ではないか。組織体制につきましては、市町村の中に首長 初め、それぞれ領域の担当者、地域住民やNPOが入る、こういった組織をつくること、 そして役割分担をすることが必要ではないか。さらに行政機関の役割としましては、地 域住民の組織やNPOを掘り起こし、そして育成していくということが、今後ますます 求められるのではないかということが意見として出されています。  「4 都道府県保健所との協働」です。  「現状と課題」では、保健所が実施する支援と、市町村が求める支援に乖離があると いうことですが、理由が幾つか出されております。市町村においては対人援助の機会が 減少しているために、保健所とともに援助する機会自体が少なくなっていることですと か、保健所側からの市町村の状況把握が困難になり、さらに情報の共有化もない、こう いった理由が上げられております。一方、市町村からは、一番身近な相談相手として都 道府県保健所が存在し、頼れる存在であってほしいと思っているという意見が出されて おります。  「推進方策」といたしましては、市町村も保健所も都道府県民のためにということで、 健康の保持増進にかかわる姿勢を持つことが、まず必要ではないか。都道府県保健所に は市町村を支援する役割と、それぞれの機能に応じて実施する役割の2つを持っている。 例えば医療提供体制の整備など、広域的な専門的業務や健康づくりの対応として、理美 容や食品関係の環境衛生に関する組合などとの協働は保健所が担うことが期待されるの ではないか。市町村と都道府県本庁及び保健所がともに考えられる体制をとることが必 要なのではないか。例えば岡山県の保健福祉課は市町村の保健師及び保健所の保健師を 統括する役割があるということで、都道府県本庁が市町村に行う具体的な支援の例です。 また都道府県本庁が行うもう1つの例といたしましては、岡山県では市町村が縦割り行 政になっているために、保健所が市町村に出向き、市町村にどんな問題があるか話し合 う場を設けています。これは大分県の事例でもあったかと思います。大分県では市町村 で潜在化している問題を顕在化するために所長以下関係職員が市町村に出向いて、保健 活動の報告を受けて評価をしていくといった事例もありました。  「5 専門技術職員の配置の考え方」です。  「現状と課題」で、現在の保健師数ですが、総数25,088名で、内訳は以下のようにな っております。管理栄養士・栄養士は3,469名となっております。3つ目に分散配置を 進めるために、保健衛生部門に中堅の職員が不在であるという現状、また調査の結果で はほかの業務の内容を理解することが困難であることや地域全体をとらえることが困難 だ、こういった状況にございます。  「今後の対応」として出された御意見ですけれども、十分なマンパワーを計画的に確 保すること、特に管理栄養士の配置については、未設置の市町村は必ず1名配置するこ と、単数配置の市町村は複数配置することが望ましいのではないか。組織横断的に統括 する専門技術職員を必ず統括することが必要ではないか、またその場合は、一般衛生部 門に配置することが望ましいのではないか。地区活動を実施する際には地区の健康課題 を明確にできる地区分担をとることが必要ではないのか。人材育成の観点からも新任者 は対人サービスを経験できる部署に配置することが望ましいのではないか。  最後に「6 専門技術職員の人材育成」です。  「現状と課題」では、人件費削減だけの効率化ではなく適正配置していくことが課題 であるということ、団塊世代が退職することから技術の伝承という観点からも体制を整 えることが必要である、実践現場で資質が向上がされるような体制が構築されていない ことや、調査からもOJTが困難になってきている状況、また基礎教育の到達レベルが 非常に未熟だということ、中堅者、管理者が必要な能力を十分獲得できていない、OJ Tをするためのリーダー、責任者が不在だ、こういった現状と課題が出されております。  「推進方策」については、市町村職員資質向上というものは本来、市町村がみずから 努力するものであるということが、この検討会で話されていたと思います。人材育成の ためのジョブローテーションを行うことが必要である。都道府県と市町村が人事交流を 行うこと、また都道府県保健所が市町村の新任者の保健師の教育を担ったり、あるいは 大学との協働も必要なのではないか。特に経験の浅い専門職員については対象者の個別 支援の事例に徹底的なかかわりが必要なのではないか。そうした経験がすべての保健活 動に通じる根幹となる。国レベルで新任者、常勤者、管理者が効果的な保健活動を推進 していけるような指針も必要である。さらに、そうした指針に基づき、市町村において も保健部門において、指針の作成や人材育成会議を設けること、こういったことも必要 なのではないかという御意見をいただいております。  この後に、「7 新任時期の人材育成プログラムガイドライン」、これは11月の検討会 のときにお示ししたものでございます。参考資料としまして、今年、この検討会の中で 行った調査、そして「おわりに」、こういった項立てを考えております。以上でございま す。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  それでは、これからこの検討会としての報告書をどのようにとりまとめていくかとい うことで、事務局から示されました「骨子(案)」に沿って御議論をお願いしたいと思い ます。  最初に、大きな「I 市町村保健活動の再構築に関する検討会の趣旨」「II 市町村保 健活動のあるべき姿」、このあたりを中心に御議論いただきたいと思います。いろいろな 文言の問題というよりは構成の仕方、基本的な「こういう事項はきちんと入れた方がい い」というあたりにつきまして、ぜひ御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。  大橋構成員  構成というよりも、一番大切な4番目の「そのため」のくだりのところなのですが、 細かい表現を言うつもりはないのですが、この文章を読むと、「つまり個人の行動変容を 支援するだけでなく、個人を取り巻く環境を改善することが重要だ」というふうになっ ているのですが、私の理解では、そうではなくて、「直接対人サービスをするだけでなく、 環境改善等を通じて、最終的に行動変容を行う」ということが目的になってくるのでは ないかと思っているのです。これだと「行動変容だけでなく」になっているので、そう なんですかという素朴な疑問を持ちました。構成ではなくて済みません。  伊藤座長  大変貴重な御指摘だと思います。その他、いかがでしょうか。尾島さん、どうぞ。  尾島構成員  今の点について、究極の目的が「健康」というところまでにとどまると、そういう言 い方もできるかなと思うのですが、「幸福」ということまで考えると、環境そのものが幸 福に直結するということもあり得るかなとも思いますので、この表現でもいいのではな いかと思いました。  伊藤座長  その他、いかがでしょうか。田上さん、どうぞ。  田上構成員  今、とても重要なことは、分散配置がされていて、これはいいことなのですが、包括 にしろ、障害部門にしろ、分散配置された保健師さんたちが一事業の担当になってしま って、保健師としての専門性をうまく生かすことができていない状況にある。そこが一 番問題だと思います。それができるようにすることが介護予防なり生活習慣病予防を効 果的に推進するために、とても大切なことですよ、ということを市町村長さんにわかり やすくお伝えをするといったところが、最も重要ではないかと私は思っております。  包括にしろ、国保にしろ、予防活動を推進してきた結果が、入院や要介護認定という 形に出てきます。ですから、結果に学んで予防対策につないでいくといったことがある と思いますし、もう1つは、予防対策としてやってきたことを結果のデータを見ること できちんと評価できるようにする。その予防対策と結果をどうつなぐのかというところ。 ここをわかりやすくお示しする必要があるのではないでしょうか。  結果に学ぶということの中には、例えばレセプトで脳卒中で新規に発症してきた、そ の事例を家庭訪問など保健師さんのプロフェッションでもって課題をつかまえてくる。 つかまえたことを総合的な予防対策につないでいく。そのときに、問題は国保の保健師 さんがその気づいたところで、国保だけでは解決できない部分をヘルス部門など、ほか の部門につないでいく必要があるわけです。そこが往々にしてできていないということ が大きい問題で、それができるようにするために組織的な体制整備が必要なのではない ですか、という話につながっていく必要があるのではないかと思います。  確かに、ヘルスプロモーション的な取り組みが必要ですよということはもちろんなの ですが、今言わなければいけないのは国保部門、介護部門。分散配置された保健師さん たちとヘルス部門がどうつながらなければいけないのかといったことであり、それをわ かりやすくお伝えすることが必要ではないかと思います。  伊藤座長  その他、いかがでしょうか。藤内さん、どうぞ。  藤内構成員  まず検討会の趣旨の4番目のところで、最後の2行ですが、「20年度からの医療制度 改革も踏まえ、これからの保健活動を再構築していくための推進方策を提示し」、あるい はそれを「首長など関係者に理解を求めることが目的だ」と明記されているのですが、 その際に、今、田上先生が言われたように医療制度改革あるいは介護予防なりが、効果 的に展開されるためにも、今言った再構築、保健師の配置、あるいは横断的な仕組みづ くりが必要だということを、これはあくまでも骨子ですから、本文のところでは、これ を読んでいただく市町村の関係者に、その辺、もう少しインパクトがあるような書き方 にすることが大事かなと思います。  伊藤座長  1から始まって「はじめに」というところに、算用数字の1、2、3がありますが、 ここのところで、地域保健法といいますか保健諸法の改正以来、いろいろな都道府県の 保健所が中心にやっていたものを市町村がやるという形で、その後いろいろ精神保健法 の改正、介護保険法、一連の制度改正によって、今どういう問題が市町村の保健活動と して検討課題になっているか、そこを少し整理した上で「検討会の趣旨」というところ につなげていくような書き方にするのかなと思っております。井伊さん。  井伊構成員  今、伊藤座長がおっしゃった「はじめに」のところの1に関することなのかなと思い つつなのですが、この検討会がスタートする前提では市町村の合併が非常に大きな事柄 であって、合併をすることによって地域住民の方々にとってもコミュニティの再編成が 起こってきているというのと、同時に保健センターが集約していくということにおいて サービスが不均衡になるとか、あるいは広域な活動範囲が生まれることによって、必要 なきちんとした健康ニーズが把握できなくなるということ、そういうことで結果的に十 分な健康支援ができなくなるのではないかという恐れが、この検討会の前提にあったか と思うのです。それは「はじめに」のうちの1の中に書かれるということでよろしいの でしょうか。確認をさせていただきたかったのです。  伊藤座長  勝又さん、いかがですか。  勝又室長  1のところに記載をする予定で進めているのですが、今までの地域保健の経過とかも 含めて、「検討の趣旨」という中に書いていった方がよければ、ローマ数字Iの方に取り 上げていった方がいいのかもしれないと思います。「はじめに」はもうちょっと簡単に書 いた方がいいのかなと考えています。  伊藤座長  よろしいですか。その他、いかがですか。はい、どうぞ。  佐伯構成員  「市町村保健活動のあるべき姿」の2点目の「市町村における専門技術職員の役割に ついて」です。今までの議論の中で、市町村保健活動はサービスだけではなくて、活動 のマネジメントをすることが重要だという話をしてきました。この中身はマネジメント のことは書かれているのですがサービスを提供するという中身が、役割として入ってい ないように読み取れます。ですから、サービスをすることと合わせてマネジメントをき ちんとしていくという内容で記載されたらどうでしょうか。  伊藤座長  ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。今の点に関連して、市町村の 保健センターが制度化されてから、サービスの提供主体としての市町村の役割というの が実際直接サービスを提供するんだと、その後いろいろアウトソーシングが進んできて、 アウトソーシングの流れというのはとめられないと思うのですが、アウトソーシングを しながら保健事業としての質を維持していくためにはどうしたらいいか、そういう問題 をきちんと指摘して、今のマネジメントの問題を含めて、この中に記述していくのかな と考えています。  それでは、「III 市町村保健活動の再構築」というところに移りたいと思うのです。こ れは7まであるのですが、「保健活動体制の強化」「PDCAサイクルに基づく活動体制 の構築」「地域住民やNPOとの協働」、全体というよりは、最初のこの3テーマぐらい についていかがでしょうか。  田上構成員  この統括者の配置、配属というところなのですが、ここではライン上の統括者なのか、 職種の統括者なのかということが重要なポイントになると思います。職種同士、保健師 さん同士が定期的に集まって、その保健師さんたちの活動全体を目配りする統括者がい た方がいいねと。それは私は否定しないのですけれど。でも、行政はラインで動いてお り、そればかりを強調しますと、事務方と一緒になって進めなければいけない部分に齟 齬を来してくることになります。  そういう意味では、部署を超えた横断的なプロジェクトチームみたいなものがあって、 そのチームには当然保健師だけではなくて、事務職も一緒になったプロジェクトチーム があって、それでライン上の縦割りになっていくところをうまくつないでいく。そうい うところに保健師がしっかり入っているといいですねということが、もう1つあると思 います。  ここで言う「統括者」というのはどういう意味なのか、今の観点で整理しておく必要 があるのではないかと思います。  伊藤座長  ありがとうございます。その点についていかがでしょうか。尾島さん、どうぞ。  尾島構成員  資質向上ということから考えると、技術職についてラインを超えて統括者が資質向上 のために働きかけるということはあってはいいのではないかと思います。田上先生が言 われたようにプロジェクトチームというのも大事だと思いますし、資質向上という意味 でも統括者は大事ではないかと思います。  伊藤座長  藤内さん、どうぞ。  藤内構成員  確かにこれは微妙な問題で、ライン上の統括者ということを、逆に余り強調すると、 またいろいろな問題、ポストの奪い合いみたいな形も起こってくるので、またこれも難 しい話になります。  ライン上の統括者というのは、ある程度高い職位を求められるというのは、どこかに 出てくるとは思うのですけれども、むしろ今回の報告書では、「ここでの統括者というの は余りライン上の統括者ということにこだわらない」というニュアンスも大事ではない かと思うのです。  伊藤座長  きょう自治体からの報告でも、最後の伊勢原市さんは保健師さんのことだけで、加古 川市さん、丸森町は全部保健師さんのことだけで、自治体としてどうなっているかとい う形がなかったわけです。  ここで恐らく「統括者」というのはライン上のというよりは、職種という、分散配置 されているスタッフに対する資質の向上のためという趣旨で議論してきたのではないか と思うのです。確かに書き方は配慮しなければいけないと思いますが、田上さん、よろ しいですか。  田上構成員  人材育成というOJTを進めていく、その際のリーダー的な役割としての統括者、こ れはぜひ必要ではないかと思います。ただ、それだけでは、縦割りの壁は超えられない ので、やはりライン上の縦割りの壁を超えるプロジェクトチーム的なものが必要ではな いかということは、もう一方で強調しておかなければいけないことだと思います。首長 さんに強いリーダーシップを持ってほしいということも強調すべきではないかと思いま す。  伊藤座長  両方を書き込むということですね。  田上構成員  両方です。  伊藤座長  どうぞ。  迫構成員  今、田上先生がおっしゃいましたように、両方書き込んでいただく、その場面の中で、 私ども管理栄養士・栄養士の立場からしますと、プロジェクトチームというところでは、 やはり他職種協働というところをきちんと盛り込んでいくべきではないかというふうに 思っております。そういう意味で統括者が他職種協働の中でどういうふうに機能してい っていただけるのか、その辺のところ、「どう機能していくべきなのか」ということを書 き込んでいくことが重要になってこようかと思います。  それから、それぞれ職種ごとの統括者という意味合いからすれば、これはジョブロー テーションの問題がからんでまいりますので、当然、分掌事務に記載されている、され ていないという部分はあろうかとは思いますけれども、やはりきちんとした位置づけが されるように、それぞれの職種の中で統括者があるべきであろうし、そのような書き込 みをしていただければというふうに思っております。  伊藤座長  ありがとうございました。その他、「PDCAサイクル」なり、「地域住民、NPOと の協働」のあたり、いかがでしょうか。  尾島構成員  統括者関係でもう1つだけなのですが、人材育成に近い方として、報告書にどこまで 書くか難しいのですが、燃え尽きを防止したりする相談機能というような機能も統括者 には重要だということは大きなものとしてあると思います。  伊藤座長  ありがとうございました。  大橋構成員  どこで書いていいのか、ちょっと自分でもよくわかっていないのですが、先ほどの佐 伯委員の質問とPDCAサイクルのところとNPOの協働と全部からむところなのです が、アウトソーシングしても、アウトソーシングする事業も、要は行政ではなく、公な のです、全部。ですから、「アウトソーシングしたものも含めて、きちんと評価に責任を 持つ」と、そういうことをどこかできちんと書いておく必要があるのかなと。往々にし て、新しい時代の公などで直接サービスが行政から切り離されて、アウトソーシングし たらそれで終わってしまっているような部門が見受けられますので、そこら辺きちんと、 PDCAというのはそれも全部含めてPDCAなんですよというところを、どこかで押 さえておく必要があるのかなと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。  田上構成員  PDCAのところが、一般論で終わらないようにしなければいけないと思います。そ ういう意味では、国保部門とか包括で把握されたさまざまな課題、それがヘルス部門に きちんとつながっていく。また住民、NPOとの協働といったところにつながっていく。 そのつながりの部分をこのPDCAのサイクルの中に具体的に入れ込んでおく方がわか りやすいのではないかと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。藤内さん。  藤内構成員  ちょっと話題が変わるのですが、地区担当制と業務分担制という話が幾つかの項目に またがって顔を出すのです。今回、御報告をいただいた事例の中にも、かなり明確に地 区分担制と業務分担制をどううまく併用しているか、そして地区担当の役割、業務担当 の役割というのが出ていたと思うのです。つまり地区担当は地域の健康課題をきちんと キャッチして、それを施策化する、あるいは個別の課題に対して、より深く掘り下げる ことによって、その課題をより明確にして施策化するのが業務担当だということを、ど こかのところにせっかくですから明記してもいいのかなと。「1 保健活動体制の強化」 「推進方策」に「(2)分散配置されている部署と共同事業を行うことが必要ではないか」 ということが出てきますが、何かこのあたりにそういう地区担当と業務担当のそれぞれ の役割分担や連携のありようについて触れるといいのかなと思います。  田上構成員  ただいまの件ですが、私は特に市町村の保健師さんは、地区担当が土台にあって、そ の土台の上に業務担当というのが上に乗っかってくる。並列的な関係ではないと考えて います。先ほど来、7つの事例の御報告をいただく中で、やはり地区担当で地域が見え る、地域の住民組織との協働ができるといったところ。これはとても大事なところだと 思いますし、それが保健師さんの活動のコアの部分です。ですから、もう少し土台部分 とそうでない部分に書き分けた方がいいのではないかと思うのです。  伊藤座長  地区担当、業務担当の基本的な問題というのは、どこか前の方に入れて、具体的な話 をどこに入れたらいいかというのは整理した方がいいと思います。  藤内構成員  ローマ数字の「III 市町村保健活動の再構築」の全体の構成にかかわるのですが、実 はきょう御報告いただいた事例は、このたたき台というのですか「骨子(案)」を見ます と、「5 専門技術職の配置の考え方」のところの「3)事例」とありますが、一応ここ できょう御報告いただいた7事例が紹介されるということになるのでしょうか。  ローマ数字IIIの「再構築」の中のそれぞれの項目ごとに、今回の事例の非常に学ぶべ き点、アピールすべき点というのを、うまく振り分けて紹介してもいいのかなと思い、 実はそれを提案したいのです。  勝又室長  専門職、技術職員の配置の考え方というのが、これまで議論がなされてこなかった部 分でして、そこを集中的にということでお願いをしていたのですが、基本的な考え方と して、皆さん、すごく保健事業が活発なところでして、それを見ていったときに、やは り「統括者がいる」「ジョブローテーションがきちんと組まれている」ということが事例 として出てきておりますので、それぞれのところで記載をしていきたいと考えておりま す。  伊藤座長  それでは「都道府県保健所との協働」「専門技術職員配置の考え方」「専門技術職員の 人材育成」の事項についても御議論いただきたいと思います。  大橋構成員  この報告書にどう記載するかというのは、また問題があるのですけれど、人事担当者 としての切実な願いというか思いですが、どうしても保健師さん、栄養士さんの人事配 置、人材確保を考えると、次世代育成支援、子育て支援、要は女性職員の比率が非常に 高いということを十分配慮した採用計画及び人材育成をしていく必要があるということ を、どこかで押さえていってほしいと思います。保健師1人当たり平均5,000人ですと いっても、そのうち30代40代が半分いたら、半分は産休、育休をとっているような実 情があるということは、どこかで押さえておいていただきたいと思います。  伊藤座長  その他、いかがでしょうか。田上さん、先にどうぞ。  田上構成員  推進方策の(2)のところは、私が発言した部分だと思いますが、少し表現を変えていた だきたいと思います。保健所の市町村を支援する役割の後に書いている「それぞれの機 関に応じて実施する」というところがわかりにくいのですが、これは「県の責任として 実施して、市町村と協働していく役割」という意味です。ここは「県固有の責務として やる部分です」というところですので、そういう趣旨で書いていただければと思います。  井伊構成員  「専門技術職員の人材育成」の(6)に「中堅者、管理者が必要な能力を十分に獲得でき ていない」ということで、そういう人たちの技術支援とか、そういう能力を獲得しても らうための支援が必要だということになると思うのですが、先ほどの統括者との関連で、 当初、統括者という言葉が出てきた背景には、何度もここで議論になっていますが、分 散配置が進んで地域全体が見えにくくなってくる、それぞれがそれぞれの範囲の中で把 握しているものをどう総合的に見ていって、何を優先的に専門職として手をつけていか なければいけないか、そういう判断に関して「統括者」という言葉が最初使われ始めた というふうに思います。  それはイコール管理者ではなかったり、あるいはイコール、リエゾン・ナーズのよう な精神的なサポートができる人ではなかったのではないかと思うのです。管理者の役割 もとり、地域診断等も十分できる、技術的にすぐれた能力も持ち、かつリエゾンもでき るなどというスーパー保健師のような、なかなかそういうことを簡単に人材育成すると いうのは難しいなというふうに思います。  そういう意味で、先ほど「統括者という内容を明確にする」ということがあったとい うふうに思うのですが、管理者は管理者としての必要な能力を獲得していただかないと いけませんし、それからここで言っている技術的にすぐれた実践家であるという統括者 は、やはりそういう育成が必要だということだと私は思うのです。その2つを明記して いただきたいと思います。  尾島構成員  今のお話を伺いまして、確かに統括者の持つべき資質をすべて持っている人というの はなかなか存在しないでしょうから、その場合には複数の人で統括者の機能を分担して 果たすということも重要なあり方かなと思いました。  伊藤座長  そのほか、いかがでしょうか。はい、どうぞ。  山野井構成員  この報告書を市町村の首長を含めた三役に、まず読んでいただき、「ああ、なるほど」 と思っていただくためにはどうすればいいのか、この報告書ができた後のことも考えな がら思っていたのです。文字がいっぱいあるものではいけないので、いかに訴えるか。 私たち専門職には共通する言葉なんですが、栄養士や保健師だけが保健活動を担ってい るわけではないので、まずは事務職にわかる言葉で、保健活動を担っている部署の事務 職に理解をしていただく、その上司に理解をしていただく、その方策を考えなければい けないのが1つです。  それから、先ほど一番わかりにくいPDCAサイクルの中で、田上先生から介護保険 と国保部門の話が出ましたけれど、その他にも虐待予防でPDCAサイクルを使って活 動している事例もたくさんありますし、精神保健福祉の関連業務も、すべてこのサイク ルに基づいて保健活動というのは担っているんだよという、国保部門だけがこのサイク ルを使っているようにとらえがちなので、いろいろな事例をいろいろなところにワンポ イントアドバイスかワンポイントのようなもので工夫して、いろいろないい市町村の活 動もたくさんあるので載せていけたらいいなと思って伺っておりました。  伊藤座長  その点はPDCAサイクルのところだけではなくて、きょうの案でも例えば岡山県と か具体的な事例を書き込んでありますので、いろいろ議論してきたいい事例について書 き込むような形で入れていったらどうかなと思っています。  その他、いかがでしょうか。  藤内構成員  「5 専門技術職員の配置の考え方」「今後の対応」の「(4)地区活動を実施する際には」 と、この「際には」というのがついているがために、何か地区活動がオプションのよう な印象を受けるのです。多分前の方を読めば、地区活動の重要性というのは随所に出て くるので大丈夫だと思うのですが、こういう表現をしてしまうとオプションのように感 じられます。済みません。  伊藤座長  田上さん、どうですか。  田上構成員  保健所のところですが、市町村が組織横断的にうまくいっているときはいいのですが、 そうでない場合、第三者として組織の縦割りを横でつないでいくアプローチを保健所の 重要な役割として担っていくべきだということを明確に書いた方がいいのではないかと 思います。  伊藤座長  尾島さん、どうぞ。  尾島構成員  先ほどの「首長さんなどにまず読んでいただける」というのは非常に重要なポイント だと思います。そうしますと、報告書本体に加えて概要版をどうつくるかということが ポイントかなと思います。いろいろ論点がたくさんありますので、その中で特に首長さ んなどに、現時点として余り御理解いただいていないかなと思う2、3の重要な論点に ついて、コンパクトな根拠と合わせて概要版をつくっていくということが必要かなと思 います。  伊藤座長  特に重要な論点というのは、具体的にどんなことを考えられますか。次回でも結構な のですが。その他に、長谷部さん、どうぞ。  長谷部構成員  ちょっと戻るのですが、2ページの「PDCAサイクルに基づく活動体制の構築」の ところの「1)現状と課題」が(1)から(3)までありますが、非常に端的に書いてあるので すが、弱くなっているという根拠みたいな、これは職員の力量の問題なのか、体制の問 題なのか、先ほど言った市町村の枠組みが変わってきたことによっての部分なのかとい うのが、(1)(2)(3)で少し膨らめるといいのかなと感じたところです。  あとは、「推進方策」の(2)で、先ほども出ていましたが、業務分担、地区分担というと ころの地区分担制を取り入れることが必要ではないかということで、これはすごく私も 賛成するところではあるのですが、現実問題、先ほどから出ている職員の数の配置とか、 地区を受け持つ保健師が減少しているということも加えるかどうかはありますが、現場 にいる保健師とすれば、やはり生活の場に入る個別支援を通して、地域ニーズを把握し たり、「(1)事業起点の仕事の仕方から生活者起点の仕事へ転換を図ることが求められる」 というのは、現場にいる者とすると「もうわかっているよ」みたいなところなんですが、 やはり、現場に出て行けるような体制整備みたいな部分も入れられるといいのかなとい う思いがあります。ちょっとバラバラしてしまいましたが、そんなことを思いました。  伊藤座長  ありがとうございました。その他、いかがでしょうか、はい、どうぞ。  本田構成員  「専門技術職員の配置の考え方」で、(1)のところですが、十分なマンパワーを計画的 に確保することということで、栄養士の部分が「1名ということで望ましい」と出てい るのですが、このあたりも、今回、事例を出していただきましたように、他職種と連携 しながら効果があるというようなところの中の事例を少し書き込んで、ぜひ1名の配置 が望ましいということで、少し事例を入れていただいた方がよろしいのではないか、そ の方が効果的ではないかというふうに考えます。  伊藤座長  その他、いかがでしょうか。  藤内構成員  「専門技術職員の人材育成」の「推進方策」の中にスーパーバイザーのことが触れら れていないのです。実態調査でも人材育成の課題として「スーパーバイザーの不在」を 上げた自治体が多分50%ぐらいでした。「時間がない」というのが1番だったのですが、 2番目に半分の自治体が「スーパーバイザーの不在」を上げていたのですが、このあた りのスーパーバイザーの養成とか確保といったような部分が「推進方策」のところに顔 を出してもいいとは思うのです。あえて上げなかったのは、何か、その辺の困難さとい うのがあるのでしょうか。  勝又室長  「推進方策」のところの、例えば「大学との協働」だとか、あるいは保健所との、一 番身近なところで人材育成を責任を持ってやるということで、岡山県の事例などを上げ させていただいているのですけれども、保健所と大学、県立の大学等がありますので、 そういったところからのスーパーバイズをうけるということを意識して、ここには書き 上げたところなのですけれども、いかがでしょうか。  藤内構成員  実際にそれが弱いというのが今回の実態調査でも出ているので、その辺の確保とか強 化というところが少し顔を出してもいいのかなと思ったのです。  伊藤座長  その他、いかがでしょうか。佐伯さん、どうぞ。  佐伯構成員  2点です。1点は「人材育成」の「推進方策」についてです。(3)のところで先ほど出 たように保健所のことが上がっているのですが、人材育成については、保健所の役割で はないのかもしれませんが、管内の保健活動の質の向上という点から積極的にかかわる、 人材育成そのものではなくても、そういう視点から、保健所がもっと積極的に役割を担 うという表現ができないかどうかということが1点です。  2点目については事例をどのように今後入れられるかによるのですが、人材育成にし ろ、人材配置にしろ、活動の仕方にしろ、大規模な市と小規模な町村では随分課題性も 違うと思います。そこをもう少し、前回の調査結果も出ていますので、その分析を踏ま えて事例を入れられるとよいと思いました。  伊藤座長  ありがとうございました。  勝又室長  専門職員の配置の考え方のところで、田上先生の方から「国は余計な口出しをするな」 と再三、委員会の中で御指摘をいただいているのですけれど、ここで書いているのは組 織横断的に統括する専門技術職員の配置ということと、もう1つは地区を担当する専門 技術職の配置ということで、数的なことも、地区を把握できるという数はこのぐらいだ ということが、およそ想像できるだろうということで書いてあるのです。  その他、配置の考え方のところでどうしてもこういうことは書いておいた方がいいと いうことがあれば、ぜひ御意見をいただきたいと思います。  伊藤座長  その他、いかがでしょうか。よく見ていただくといろいろお気づきの点は、まだあろ うかと思うのですが、一応、きょうは11時半までということなので、そろそろきょうの 議論を終了したいと思います。また、事務局の方から説明があると思いますが、次回に きょうの議論をもとに報告書の形で御議論いただきたいと思いますので、ひとつよろし くお願いいたします。一応、きょうの議論はこれで終了したいと思います。  田上構成員  済みません、1点だけ。今後の検討になると思うのですけれど、検討会として、首長 さん等に対しての発信をする。そこまではいいと思うのですが、それをだれがどのよう な方法で首長さんまで届けていくのかというところの、もう少し具体の戦略性というか、 それがあった方がいいと思います。多くの場合、こういう検討会の報告書が出て、国か ら報告書が市町村に届くのですけれども、結構、「つんどく」になってしまう場合が多い、 そういう意味で、「つんどく」にならないようにするための戦略性というか、そこもあわ せて検討しておいた方がいいのではないかと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは事務局の方から今後のスケジュール等について御 説明いただきたいと思います。  加藤主査  それでは今後のスケジュールについて御説明いたします。第8回検討会は3月13日 17時から19時を予定しております。議題の方は「報告書(案)について」ということ で検討予定です。場所は厚生労働省専用15会議室になります。構成委員の皆様には後日、 改めて御案内いたします。  なお、本日御議論いただきました「骨子(案)」について、追加の御意見等いただきた いと思います。御手数ですが来週の検討会ということで非常にショートなのですが、3 月9日金曜日の午前中までに事務局の方に御意見をいただければと思っております。ど うぞ、よろしくお願いいたします。  事務局からは以上です。 3.閉会  伊藤座長  それでは本日の検討会は、これで終了したいと思います。  最後になりましたが、加古川市を初め、オブザーバーで御出席いただきました皆様方 に御礼申し上げたいと思います。  それでは長時間、ありがとうございました。これで終了させていただきます。 (終了)