07/02/15 第7回研修・技能実習制度研究会議事録 第7回 研修・技能実習制度研究会 日時 平成19年2月15日(木) 10:00〜 場所 専用第21会議室17階 ○今野座長 ただいまより、第7回研修・技能実習制度研究会を開催いたします。本日は、 北浦委員、樋口委員、森永委員、丹野委員がお休みです。  これまでいろいろ議論してきたのですが、一度、これまでの議論を整理して、論点漏れが ないかを確認し、さらに議論を深めていきたいと考えております。したがって、今日は全体 の総括的な議論をお願いできればと思います。事務局にそのための資料を用意していた だきましたので、まず資料の説明からお願いいたします。 ○外国人研修推進室長 これまでは、主に規制改革会議で指摘されている3点の柱を中 心にご議論いただきました。当然、論点がいろいろ多岐にわたっておりましたので、再度改 めて、この制度の問題点や課題を再整理いたしました。中身の資料については繰り返しに なる部分が多くなりますが、おさらいも兼ねてお聞きいただければと思っておりますので、よ ろしくお願いします。  大きくIとIIに分けております。Iで制度の現状、総論的な部分をご説明します。II以下 で研修、技能実習、それぞれの問題点、課題について説明いたします。  1頁は制度の現状です。非常に研修生・技能実習生の数は増えております。これは速報 値で若干数字は未確定ですが、平成18年は9万2,000人強の研修生が入国しており、約 1万人の増加をみております。したがって、技能実習移行者数はまだ出ておりませんが、18 年の数も相当増えているのではないかと考えられます。国籍別では中国からの実習生が8 割を超えております。業種・職種では、圧倒的に繊維・衣服、いわゆる縫製が多く、1万 4,000人を超えております。次いで機械・金属関係、食料品製造、農業、プラスチック成形、 建設といったところです。近年は農業の増加も目立っております。研修生・実習生の年齢 は20代という若い方が中心です。  2頁は受入れ企業の規模です。これは中小が中心です。都道府県別では、ご案内のとお りかなり偏在しており、職種もかなり偏っております。多い所では、岐阜の縫製、愛知の機 械・金属、茨城の農業、広島の機械・金属といったところが多くなっており、かなりバラつき、 偏在がある状況にあります。  この制度はいろいろ問題が報告されております。3頁、法務省入国管理局が不正行為、 入管法違反、あるいは基準法違反、人権上の問題といったものを認定した不正行為の認 定件数をみますと、過去3年で482件です。内容的には緑でお示ししておりますが、例えば 研修・技能実習計画との齟齬、計画どおりの研修が行われていない、職種が研修計画と 違うといったものが、第一次で33件となっております。二次受入れ機関、受入れ企業のほ うを見ますと、名義貸しということで実習場所が違う、あるいは、所定時間外活動、いわゆ る研修中の残業がこれに当たるかと思いますが、そういったものがかなり高い割合になっ ております。  また、労働基準法の関係で、労働基準局に訴えがあったもの、特に申告の形で基準法に 基づいて正式に救済を求めた者の数は、平成16年は48件であったものが平成17年は 126件と相当の伸びになっております。また監督署が、こちらから積極的に指導に当たった ものについても、平成17年906件のうち731件が違反の事業場で、違反率は80%を超え ている状況です。この違反率については、一般の全体的な平均としても70%ぐらい。監督 署が入るのは問題があるであろうという所に行くということもあって、一般事業場でも7割ぐ らいですので、そういった数字になっております。  4頁の左側、JITCO(国際研修協力機構)においても巡回指導を実施しております。平成 17年は約6,000件、そのうち実際に訪問指導したものが4,770企業、87団体ですが、この 中でも賃金の協定がない中で控除を行っている例、割増賃金の未払い、健康診断の未実 施、社会保険の未加入といったような事例が指摘されています。  また、失踪者もマスコミ等で取り上げられましたが、技能実習生の失踪者数は、平成17 年は1,236人と4桁で、その数としては少なくはないわけですが、全体としてみれば、過去5 年間の失踪率は約4.1%という形で、逆に言えば96%の実習生がちゃんと帰国していると いう状況です。制度として3年間で帰すという点は、ほぼ実現されているのではないかと認 識しております。以上が全体的なざっとした状況です。  5、6頁は、特に当研究会でも議論になりました団体監理型と企業単独型についての比 較をしております。実習生の受入れ企業は95.4%が団体監理型による受入れです。団体 の中でも事業協同組合が8割を占めております。下のほうに、企業単独型と団体監理型の 研修生の受入れの要件について、改めて入念的に掲げております。最大の違いは、企業 単独型については、送出し国の現地法人や子会社、あるいは取引先といったところの従業 員を受け入れるというものである一方、団体監理型については、そうした現地法人等では なくても受け入れられるという大きな違いです。  6頁は、繰り返しになりますが不正行為の認定件数です。過去3年の数字のうち団体監 理型が98%を占めております。不正行為の問題、失踪の問題は、企業単独型は1.5%に 対して団体監理型は4%と、こちらも団体監理型のほうが多い状況にあります。  さらに下の所ですが、JITCOが巡回指導において何らかの指摘をした企業は4,141件あ りますが、これはほとんどが団体監理型ですから、特に異業種と思われる協同組合が4割 以上を占めるという状況です。あと、データ的な裏付けがないのでここには掲げませんでし たが、いわゆる広域、県を跨るような広範囲の企業を会員とする団体についても、問題が あるというような話を聞くことがよくあります。ここまででIの総論とさせていただきます。  7頁以降は具体的な研修・技能実習の問題点です。7頁は「研修」中の問題点です。これ は規制改革会議でも指摘されているように、「実務研修」中の研修生が、実質的低賃金労 働者として扱われ、残業までさせられている等の問題が生じている状況にあります。  そこに、ここ1、2年に新聞報道等で報じられたものの中からある程度抜粋をしております が、いわゆる研修中に残業をさせているケース、いわゆる座学が基準以下であったケース、 残業という名の下に時給100円とか300円で働かせていたケースが報じられております。 後ほどブローカー対策の所で説明いたしますが、送出し機関が多額の保証金を徴収して いて、それを没収されるのを恐れて研修生が企業の言いなりになっている、という報道のさ れ方もありました。  またJITCOで、研修生・実習生から直接の電話によるトラブル相談をやっておりますが、 ここでも研修手当の未払いとか、時間外研修といった点についての相談が多いという状況 にあります。  8頁は研修手当の問題です。これは入管局の指針により「生活する上で必要と認められ る実費の支給」という位置づけになっていて、賃金ではないということです。水準について の基準もないし、法令上の支払い義務もないということです。平均すると月6万6,000円が 相場という状況になっております。また、受入れ機関の意識としては、研修生ではあるわけ ですが、研修生の受入れのきっかけとしては、「人手不足」等を理由とするところが多いと いうのが実態としてあります。  9頁は、この「研修」中の問題点について、これまで当研究会でご議論いただいた論点、 あるいは主だった意見を箇条書きですが整理しております。その中で、やはり手当の位置 づけの問題が大きな議論の1つになっております。その水準について基準がない、あるい は法令上の支払い義務もないといった現行制度においてどう考えていくか。また、手当とい う概念が非常に曖昧である。水準としては、6、7万ということで最低賃金を下回るわけです が、一方で、研修中は無償で住居の確保、これは要件になっておりますので住居は確保さ れております。あるいは、企業によっては食事も無償で提供しているケースもあります。そう いう中で、いわゆる研修生が受け取る手取りベースでは、研修中と実習中の金額に差がな いといったケースもあるというご指摘もあります。この水準の考え方が難しいのではないか というご議論だったと思います。  3つ目、4つ目ですが、「研修」、特に「実務研修」中においては、いわゆる生産現場に実 際に入って、仕事をしながら技術を覚えるということですので、外見上それが「研修」なのか、 あるいは「労働」なのか、明確に区別はできないだろう。特に、業務の中で仕事を覚えてい くというOJT訓練との区別という意味では、本当に明確にならないのではないかというご議 論もありました。  中小零細においては、「研修」と「労働」とを区別する労務管理体制もなかなか脆弱では ないかという話もありました。  他方、そうはいっても「実務研修」は「研修」であるわけですので、本来の「研修」が適正に 実施されるよう受入れ企業に対する研修実施に係る動機づけを高めていくとか、あるいは 指導の徹底をしていくといったことも考えるべきではないか、というようなご意見もあったとこ ろです。  事務局で判例や労働基準法の解釈を踏まえて整理をしてみますと、「研修」と「労働」の 区別の指標として、ここに書いてあるようなことも1つのメルクマールとして考えられるかと 思っております。労使からのヒアリングの中でもお話がありましたが、団体監理型の「研修」 中において特に問題が多いのではないかという指摘もありました。以上が「研修」中の問題 点として整理した点です。  10頁以降は技能実習中の点で、労働条件の確保の観点で整理しております。技能実習 移行後においても、マスコミ等を見てもあるわけですが、賃金の未払い、36協定の不締結 といった、労働基準法や最低賃金法違反といった問題もみられるところです。そこにありま すように、最低賃金未満や時間外割増賃金の未払いといった点があります。  また、これはちょっと特殊というか、むしろ人権上の問題ということで、セクハラを受けたと して提訴しているケースもあります。  改めてこの1、2年の報道を振り返ってみますと、かなりの数が労働基準監督署に申告を してきて顕在化しているということがあります。そういう意味で、研修生・実習生の方も労働 基準監督署と救済機関に対し、特に実習移行後は出てくるケースが増えているのではない かと思われます。  11頁は賃金の水準の問題です。法務省の指針上、技能実習受入れ機関においては日 本人と同等報酬の支払いをしなければいけないとなっています。ただ、支給予定の賃金水 準をみますと11万から12万ということで、概ね最低賃金を若干上回る程度の水準となって おります。また、JITCOの自主点検結果から日本人との比較を取っておりますが、職種や 経験年数などは当然違ってくるわけで単純な比較はできかねますが、数字だけを見ると日 本人の平均を下回っているという状況にあります。  12頁、(3)として実習体制、あるいは実習の実効性の確保の観点で整理しております。左 側に現行制度の受入れ人数枠の基準を書いてあります。例えば50人以下であれば3人ま で研修生を受け入れられます。日本人従業員3人いますと、最大、研修生・実習生を合わ せて9名まで受入れが可能です。企業によっては、研修生・実習生の数が日本人従業員を 上回っていたり、ほとんどが研修生・実習生だというような事例もあります。  右のほうはJITCOの自主点検結果から人数を単純に計算したもので、研修生・実習生 合計で全体の日本人従業員数に占める割合を取ってみました。Aは占める割合が3割以 下、Bは5割以下という状況です。おしなべて3割から5割の範囲が多いわけですが、例え ば縫製の関係でみますと、5割超え、7割超えといった受入れ企業が多いという状況です。 また、農業も多いです。農業の場合は、そもそも事業規模が個人事業主という形で非常に 小さいということもあります。そういう形で研修生・実習生の数が多い受入れ企業がみられ るわけですが、いわゆる実習指導の体制として、これが十分かどうかというご議論があった と思います。  13頁、技能移転の実効性の問題です。そもそもこの制度は、技能の移転を通じた国際協 力という目的ですが、そこの移転効果が十分把握されていないというご指摘がありました。 実習終了時の評価試験、技能検定3級レベル試験でみますと、これは任意の受験というこ ともあり、受験率は非常に低い状況です。また、帰国後の実習生の技能の移転状況は、こ れもJITCOで定期的に現地に調査に赴きフォローアップをしているわけですが、アンケート 調査により把握している状況で、当然、全数把握にはなっていない状況です。  14頁、(5)で受入れ機関・送出し機関のあり方、ブローカー対策も含めてのご議論です。こ こは技能実習に係る制度全体の問題でもあると思いますが、送出し機関・受入れ機関に 対する管理費の支払いが受入れ企業にとって大きな負担となっている状況であります。こ れが実習生の賃金水準の低下や拘束的な労働の原因になっているのではないかという指 摘もあります。  経済産業省の調査によりましても、これは3年間トータルの金額ですが、平均でみまして も、送出し管理費、受入れ管理費を合わせて3年間で160万円ほどですので、月4万円ぐ らいの管理費用を企業が負担しているという状況にあります。私ども先生方にご協力をい ただいて行った現地調査でも、やはり受入れ管理費、送出し管理費ともに、月1人当たり1、 2万とか、多いものでは5万円という実際の事例です。また、受入れ機関の問題としては、 研修生・実習生の受入れのみを目的として事業協同組合を設立し、いわゆるブローカー的 なことを行っているケースもあるという報告もあります。  15頁は送出し側の問題です。前回の研究会でも山川委員からご指摘がありましたし、本 日ご欠席の丹野委員からもメールで、送出し側が多額の保証金を取っている問題は一度 議論しないといけないのではないか、というご指摘もいただいております。その対策としてど こまで何ができるかという問題はあるわけですが、1つ数値として先ほどのフォローアップ の調査の中で、63人のアンケート対象に「保証金を納めていますか」と聞いている項目が ありますが、それを引用しております。63人のうち49人が保証金を納めており、派遣元企 業あるいは送出し機関に「納めています」と回答しております。それはちゃんと返ってきてい ますかという質問に対しては、ほぼ9割以上が「返還された」と答えている状況です。  この送出し機関の適正化に向けた対応としては、やはり外交ルート等を通じた申入れを やっているわけですが、政府間としては、この研修・技能実習制度だけではないですが、幅 広い外交間の問題を「領事当局間協議」という形で定期的にやっており、この中で、この制 度の適正化についての申入れをしているケースがあるという状況です。また、JITCOにお いても、送出し国と研修・技能実習制度の実施についてのRDを結んでおり、定期的な協 議をほぼ毎年やっております。この中でも、最近の例ではフィリピン、中国との協議の中で 送出し事業の適正化についての申入れを、こちらからしているという状況にあります。  16頁、(6)として「チェック機能の強化」という表現にしておりますが、いわゆる制度全体を 管理・チェックする体制の問題です。現在、国際研修教育機構において適正化のための取 組みを強化しております。1つは、先ほど来ご紹介しております自主点検を9月に実施して おり、全受入れ企業、受入れ団体に対して行いました。回答率74%で、それを踏まえて回 答のなかった所、あるいは、回答の中でも明らかに、例えば基準法に違反しているようなこ とが窺えるケースといったものを重点的に、いま巡回指導をしております。その結果につい ては労働基準監督機関に提供することにしております。また、19年度においても、巡回指 導の件数を増加する予定です。また、労働基準監督機関においても、重点的な監督指導 を実施しておりますし、入管との情報提供、相互通報制度を運用して、相互に点検に努め ているという状況です。そのチェック体制として更に必要な強化をすべき点等について、こ れからご議論をいただければと思っております。  17頁、受入れ団体、あるいは労使からのヒアリングの中で具体的な要望事項が出ており ます。1つは、より高度なレベルの技能実習ということで、再技能実習、再度入国して実習 を要望する企業が出ております。  (8)の「対象職種のあり方・技能評価のあり方」として、現在、対象職種は62職種ですが、 評価制度が整備されている職種・作業に限定されております。基本的には対象職種・作業 をやらなければならない。若干、関連する作業はできますが、別の職種はできないという制 度になっております。幅広い技能の習得という形には対応できていません。また、評価試験 の整備については時間と手間を要することもあり、見直しを要望する声も強くあります。  18頁、年末の第5回の研究会でかなり突っ込んだ議論をしていただきました。受入れ企 業や産業分野のそもそもの構造といいますか、産業構造の問題も含めて、こういった点も 考えて実習としての体制としてどうかという点です。一部の受入れ企業の中には、コスト削 減のために悪用しているケースとか、事業高度化や労働環境の改善を怠って、研修生・実 習生に安易に頼っているケースもあるのではないか。他方、悪意はなくても、産業構造上、 日本人が確保できないという状況の中で、研修生・実習生を実態として労働力として活用 しているケースもあると考えられるわけです。こういった産業構造等を念頭に、受入れ企 業・産業分野をパターン化して検討していくべきではないか、というご議論をしていただきま した。  19・20頁に、前回お示しした資料を再度付けております。A、B、Cとタイプ分けしておりま す。Aとしては現地法人、あるいは海外進出のきっかけとしてこの制度を活用するという本 来の趣旨に則っているものです。逆にCタイプは、いわゆる低賃金労働力として悪用してい るケース、悪質なケースということになります。そうではなくてBタイプが実際には多いので はないかということで、実習という形で適正にやっておりますが、やはり労働力としての補 完という面も強いというケースです。  20頁にありますように、いくつかのパターンがあるのではないか。B1はほぼ問題ないパ ターンです。B2は、いわゆる3K職場等で、求人を出してもなかなか若い労働力が集まら ないということから、研修生・実習生を労働力として活用しているパターンです。B3は、コス トダウンを図るために低賃金労働力として大いに活用している。B4は、産業構造上、そも そも日本人が確保できない、日本人が求める賃金を払えないというケースです。こういった パターンもあるのではないかということで、それぞれ技能実習制度の適正化と合わせて、 産業構造上のこういった面について、何らかの政策的な課題を解決していかないと、真の 実習としての体制がなかなか確保できないのではないかという視点です。  21頁は、主に適正化についての論点を整理したものです。1つ、制度として、技能実習中 については、受入れ団体に監理責任がないという問題があり、そこをどう考えていくか。同 等報酬要件の議論をかなりしていただきましたが、年齢、職種、技能が異なる労働者につ いて何をもって同一労働とみなすかが難しい。例えば、その企業においての初任給といっ たものを1つのメルクマールにする手はどうか、あるいは、給与水準の決定方法を情報開 示させるといった方法は考えられないかというご意見です。  受入れ人数、実習体制の問題ですが、最大3人の従業員でも9人まで受け入れられます が、技能移転、実習指導という体制を考えた場合に、それが適正かどうか、労働災害を防 ぐという観点からも、人数枠について見直しが必要ではないかというご意見。  先ほど説明した技能移転のフォローアップがしっかりできていない。これをしっかりフォロ ーアップする仕組み、あるいは実習終了時の評価をしっかり取る仕組みが必要ではないか というような点です。具体的に、終了時の評価試験3級の受験率向上のためには、受けろ というだけではなくてインセンティブも考えていく必要はないか、というご指摘もありました。  ブローカー対策も含めた受入れ団体等の問は題については、優良な所は積極的に評価 する一方で、当然、悪質な所にはペナルティを強化するという方向であろうと。ヒアリングの 中でも、適正な運用を行っている団体については、まず優良な送出し機関を選定して、研 修生の選抜も現地に直接行って、しっかり行っているという例が報告されていました。  また、いわゆるブローカー的に受入れのみを目的として設立しているであろう団体がみら れることから、例えば団体設立後の協同組合等としての活動実績といったものを1つの指 標にして適正を判断してはどうか、というご意見もあったところです。また、ブローカー問題 に絡み、送出し機関の保証金の問題、送出し機関をコントロールする方法を検討すべきで はないかといった点。また、研修生・実習生の救済システムをしっかりと構築すべきだという ご意見もあったところです。  少し繰り返しの部分が多くて恐縮ですが、これまでの問題点・課題を整理しておりますが、 漏れている論点等はないかを確認いただいて、ご議論いただければと思います。  最後に1枚紙を付けております。規制改革・民間開放の推進会議で、18年12月に3次答 申が出ました。この研修・技能実習制度に係る部分についても、内容的にはそう変わって おりませんが、措置時期について改定されております。これまでは、それぞれの3項目につ いて18年度中検討結論となっておりましたが、今回、3次答申においては、遅くとも21年通 常国会までに関係法案を提出ということで、実務研修中の研修生の法的保護を制度的に 図るという結論はもう決めて、遅くとも21年通常国会というお尻を決められたところですの で、これに向けて具体的な検討を進めていくという状況です。 ○今野座長 今日の資料の1枚目に目次がありますが、そこに「総論」「研修」「技能実習」 の3段構えになっているので、順番にやっていきたいと思います。まず「総論」の部分につ いてご意見を伺えればと思います。資料は最初の6頁までです。ここは論点というよりは、 現状の把握ということだと思いますが。この辺はよろしいでしょうか。  では、7頁から「研修」の問題に入ります。特に9頁に研修についての議論の整理とありま すが、この点を踏まえて研修についてご意見をいただければと思います。論点にもあるの ですが、OJTと労働をどうやって区別するのかというのは、どうするのでしょうか。難しいで すね。研修目的とは全く関係のない仕事をやってみたり、外形的にはっきりしている場合は いいのですけれども。 ○山川委員 難しいですけれども、何か問題が起きた場合に、特に「労働」と「研修」の区 別をする必要があるのか、すべてについて区別する必要があるのか。問題になっているの は、やはり残業問題が多いみたいなので。総合判断なので、そういうことだけでというわけ にはいかないかもしれませんが。どういう場合に問題になるか、というのに着目して区別を していくということはあり得るのかなという気はします。  もう1つは、先ほども若干お話があったと思いますが、制度的には技能実習生ですが、場 合によっては労働基準監督署に相談に行ったりしている。つまり、自分が労働者なのかど うなのかをある程度わかるようにといいますか、例えば入管法の条件ではこうなっています と、これでは労働者ではないと。それ以外のことは、例えば残業を本人がしたいと言えば難 しいのですが、拒否できますと。それにもかかわらず何か言われた場合には監督署に行け る。それが労働者になって、そこで労基法違反があった場合に、初めて監督署としては手 が出せるということなのでしょうけれども。端的にはなかなか難しい。必要な場合に何か工 夫をするということも1つあるのかなと思います。 ○今野座長 いま出た中では、問題点があったとき、要するにこういう問題があったときに はOJTではないと、そういうように考えるわけですよね。こういう問題というので、いま出た のは残業をさせる。それしかないですかね。そこが問題だね。 ○山川委員 あとは別の作業をやるという。 ○今野座長 ああ、常時の作業をするというのがありますね。 ○外国人研修推進室長 おっしゃるとおりです。マスコミ等の事例などを見ても、残業という のは明らかに時間外の研修で、社会活動として把握しやすいということで、不正行為の認 定を受けているケースは多いだろうと思います。また、不正行為認定の内訳の中で、3頁で すが、研修・技能実習計画との齟齬というのが比較的高い、それも明らかに指摘がしやす いということで、ここで研修計画にないような、例えば本当に単純作業をやっていた場合と いうのは、明らかに研修ではないということで、行政機関としても認定がしやすいということ ではあると思う。 ○今野座長 技能実習計画との齟齬といっても、結局は、こういう順番でこういう作業を経 験させますよという計画になっているわけですね。 ○外国人研修推進室長 はい。 ○今野座長 そのとおりやっているからと。 ○外国人研修推進室長 いちばん分かりやすいのは、プレス工で入れているのに、そもそ もプレスの機械がなくて、そのことができない、そういうケースになります。 ○今野座長 プレスはずっとやっているけれどOJTではなかったというのは、もう諦める。 そこは区別できないですね。 ○渡邊委員 区別するのは難しいですよね。 ○今野座長 本当はOJTだったら、ずっとプレスをやっていても、簡単なプレスから難しい プレスへとか、ほかの製品のプレスへとか、こうやって拡大しているわけだけれど。 ○渡邊委員 よく言う単純な反復作業といっても、プレスの場合はいろいろな例があります から、どこまでがという何か資料がないと難しいですね。事後的に判断するというのがある のではないですかね。 ○今野座長 ドイツのデュアルシステムで、企業研修のときに、ずっと昔から低賃金労働の 活用に使っているのではないかという批判がありましたが、それに対して、いやOJTだとい うことを担保する何か工夫はしているのでしょうか。あまり聞いたことはないですね。 ○山川委員 学校に行っているから。 ○今野座長 行っているから、それでいいということなのでしょうか。 ○山川委員 教育機関との連携が取りやすいのでないですか。 ○今野座長 研修について、ほかにありますか。ご意見がないということは、よく整理され ているということですかね。 ○渡邊委員 7頁の「不当な管理」という所で、後ろにもちょっと書いてあるのですが、強制 貯金、罰金、帰国脅迫とか、あとパスポートとかを預かるというのか、管理するというような 例もあるので、少し詳しく書いておいてもいいのではないかと思います。 ○外国人研修推進室長 その点、受入れ機関のヒアリングのところからすると、失踪防止 のためなのだということを言われるのですが、そこをどう考えるかというのも1つあるのかな と思います。 ○渡邊委員 我々は、聴取りをやって言うのは、失踪を防ぐためにパスポートとかを管理す る。それから、外部の人といいますか、ブローカーとか、そういう人たちと接触を取らせない ために携帯の所持を制限するということはよく聞きますが。そこの判断がまた難しいところ ですね。 ○今野座長 パスポートを管理するというのは、これこれの法律に見合って違反というのは あるのですか。 ○山川委員 それは、おそらく入管法の問題。人権侵害というのももちろんあるのですが、 労働法とは直接関係はなく、しかも労働者性があった場合ですから、何か不当な管理を行 っていた場合に、それが入管法上問題になれば、在留資格とか、そういった面で問題にな り得る。常に問題になるかどうかはちょっと分かりません。 ○上林委員 JITCOはパスポートを取り上げてはいけないという指導はしています。 ○今野座長 それはガイドラインに。 ○上林委員 いや、ちゃんとそう伝えているのですが、それが罰則を持つとか、そういうよう にはしていない。 ○今野座長 JITCOはそういうのはいいけれど、法的強制力はあるのですか。 ○渡邊委員 それはないのではないですか。 ○今野座長 ないのでしょう。 ○事務局 パスポートの関係は入管法上で、いわゆる外国人本人がパスポートの常時携 帯を、あるいは提示を、必要があれば提示しなければならないというのは義務づけられて います。 ○今野座長 そこで引っ掛かる。 ○事務局 ただし、いわゆる外国人登録証明書を所持しておれば、パスポートの所持義務 を免除されております。これは外国人本人に対する義務づけですので、その補完関係は別 の話になるのだろうと思います。 ○今野座長 例えば強制貯金はどうなりますか。労働者ではないから、基準法とは関係な いから、どうなるわけですか。 ○外国人研修推進室長 法令上、研修生であれば規制はない。 ○山川委員 脅迫とか恐喝というような場合は別でしょうけれども。 ○今野座長 これは既に出ているのですが、「生活する上で必要と認められる実費の支 給」というのは、どう考えても曖昧ですね。 ○上林委員 いちばん最後のほうに、そう書いてありますね。 ○今野座長 すごく善意の団体だったらいいのですけれど。「生活する上で必要と認められ る実費の支給」のブレークダウンについては、ちゃんとしたガイドラインみたいなのはあるの ですか。住宅は1人当たり何畳以上とか、そういうのはないでしょう。 ○外国人研修推進室長 そこまではないです。 ○今野座長 食費は何カロリー以上とか。食費は1日いくら以上でもいいのですが、ないで すよね。 ○外国人研修推進室長 ヒアリングの中でも、むしろ研修生自身が食費を削ってしまうとい う問題を指摘している方もいらっしゃいます。 ○今野座長 例えば、シンガポールもそうですが、台湾とか香港などで家事労働を入れる ときに、給料は一応払いますが、それプラス生活上必要な住宅を何とか保障するとか、い ろいろあるじゃないですか。そういう非金銭的な報酬もちゃんと細かく規定してあるのです か。こういう条件でないといけないとか。そういうのはないですか。 ○上林委員 ないと思います。 ○今野座長 食事はこうしなければいけないとか、住宅はこうしなければいけないとか。や はりないですか。 ○上林委員 シンガポールの場合は、労働基準とは別枠で家事労働者を対象にしている ので、すごくゆるくなっております。 ○今野座長 住宅を保障したけれど本当にひどい住宅だったというケースがよくあるじゃな いですか。 ○山川委員 規制改革会議の中で、「研修手当が適切に支払われるよう、必要な措置を 講ずる」と。この読み方は二通りあるかもしれませんが、「適切な水準の研修手当が支払わ れるように」と読むのと、例えば管理費の不当な控除とか、額の問題はともかくとして、その 支払いが適切に行われるようにと。これはどちらなのでしょうか。あるいは、両方含むので しょうか。支払いの問題でしたら労働基準法はかからなくても、少なくとも明示といいますか、 どういう条件で払って、これは現物支給だとか、そこで計画どおり行われているかとか、あ るいは本人にきちんとそれが周知されていて、そこからその問題があれば分かっていくかと か、これはどちらを意味しているのでしょうか。 ○外国人研修推進室長 あまり明確ではないわけですが、問題意識として、いわゆる研修 生が実質的に低賃金労働者として扱われているということに着目しての議論ですので、水 準も当然念頭に置いた議論だったわけです。 ○山川委員 実質的に労働者でなければ、あまり問題はないということなのでしょうか。問 題は、水準についてはそれほど。本来、完全なる研修だったのを、お金を払って研修を受 けさせてもらうということなので。支払方法の問題は別かもしれませんが。 ○今野座長 これがもし研修手当をきちっと払ったとしても、管理費とか何かでガバッと取 られれば、結局、本人にとっては安いことと一緒ですよね。 ○外国人研修推進室長 研修手当から管理費等を控除してはならない、というのはガイド ラインで示していますので、研修手当そのものは本人に、必ず直接渡しなさいというのが原 則です。その後、本人がどこかに払い込んでいるケースなどはあるのかもしれませんが、 基本的には、研修手当は本人に6万なら6万は渡っています。ただ以前は、8万ぐらいの手 当のうち2万ぐらいを管理費として、受入れ企業なり団体が差し引いて送出し機関に送付 するという問題になったケースが多く発生しましたので、その後、ガイドラインを改正し、ちゃ んと手当は本人に渡しなさいとなっております。 ○今野座長 ここで言うと6万いくらもらって、研修生が直接送出し国の送出し機関に払っ ているというのは、もうないですか。それとも分からないですかね。 ○渡邊委員 分からないですね。 ○上林委員 システムとしては、まとめてもらうほうが向こうもいいですから、支払いの手間 は。 ○今野座長 チェクオフのほうがいいと。 ○上林委員 第一次受入れ団体がやっています。 ○山川委員 今でも、例えば研修手当から管理費を控除したりすると、どういう点で問題に なるかというと、入管法上の問題といいますか、不当。 ○外国人研修推進室長 取ってないです。 ○今野座長 それでは、次の「技能実習」にいきましょう。技能実習は10頁以降がいちば ん多いところですね。いちばん最後の頁のいちばん最初の論点ですが、これは技能実習 制度を作るときに受入れ団体に監理責任を外したのですが、意図は何かあったのでしたか ね。研修まではちゃんと責任を取らせているのに。 ○外国人研修推進室長 はっきりはあれですが、基本的な考え方として、雇用関係の下で の実習だということで実習実施機関である企業の責任においてそれは行う。逆に、責任を 持って二次の機関である受入れ企業が実施を行うという整理になっています。逆に言うと、 団体の責任が、そこはないという形になっております。 ○今野座長 それはベースなのですが、それが適正に行われるように監督する責任がある みたいなことは、全く考えなかったのですね。 ○外国人研修推進室長 ガイドラインの中では、研修期間中は、まさに受入れ団体が設計 者責任を負っていて、それが実習先に移っただけであるから、実習実施機関が、研修中は 第一次受入れ機関が、まさに研修の監理責任を持っていたということを、十分理解して活 動しなさいというようなことが書いてあります。 ○山川委員 いまの文章だと、受入れ団体に監理責任がなく、実習の実施責任は受入れ 企業に委ねられていると。ということは、監理責任と実施責任は別であるということで、実習 の監理責任という概念が論理的には出てきそうなのですが、それは特に、今のところはな いということでよろしいのでしょうか。 ○外国人研修推進室長 定期的な監査とか、入管に対する報告等を「監理責任」と一言で 書いてありますが、そういう意味では、制度上その義務が実習中はないということで、そこ はない状況です。 ○山川委員 技能実習計画などはさせるので、やろうと思えばできないことはないというこ とでしょうか。 ○外国人研修推進室長 その実習計画に則った実習をしているかどうかという、チェックす べき内容は当然あるわけですので、そこを誰がやるかという問題だと思います。 ○今野座長 この問題で、受入れ団体にも監理責任がありますよとルールを変えたときに は、実質上の内容はそういうことだということになりますか。 ○外国人研修推進室長 我々としてまず想定したのは、そういうことです。 ○今野座長 計画がいいかどうかから始まって、最後ちゃんとやっているかどうかというこ とですね。 ○外国人研修推進室長 研修中であれば3カ月に1回の監査と入会に対する報告がかか っているわけです。そこが切れてしまっている状況です。 ○今野座長 その場合のあれはどうなのですか。トラブルが起きて、基準法違反になったと きに、違反したのは企業。それはいいのですが、そのときに、受入れ団体には何か影響は あるのですか。 ○山川委員 受入れ団体自身が何か労協違反の……サキとかをやっていない限りは、な いのではないですか。 ○上林委員 そうしますと、失踪した場合のみ受入れ団体に責任がかかってくることになり ますか。 ○外国人研修推進室長 それは技能実習中はないですね。 ○今野座長 技能実習になったら、ルール上はもう受入れは関係ないのですか。技能実習 に対して、何か関係あるのですか。 ○上林委員 いまのところ、失踪の件数が高い団体については要注意ということです。 ○山川委員 あとは研修時点の問題ですが、技能実習に移行することが予定されている 場合は、受入れ団体が研修生を集めるときに職業紹介に当たる行為をした場合には、職 安法上の許可が必要になるという、時点が違うのですが、そういうことはあるかもしれませ ん。 ○上林委員 要は、そういう職安法は全然関係なく活動しているわけですか。 ○山川委員 職業紹介自体は、いまはたしか、JITCOは無料職業紹介をやっていて、それ だけになっているのではないですか。実態はわかりませんが。 ○外国人雇用対策課長 そういう形の職業紹介を受けて、研修生の段階から職業紹介と いう形で入ってきている人たちもいるのですが、大半は、最初はあくまでも研修生なので、 そのあっせんは職業紹介にはならないという整理です。実際には、全く職業安定法と関係 ないところで受け入れられています。 ○山川委員 ということは、採用内定みたいに、試験さえ受かれば前実習にしますよという ことは言ってない。 ○外国人雇用対策課長 ですから、フィクションの世界では、雇用予約のある研修生の受 入れということは考えられていないのです。 ○今野座長 ないということですね。1年経ったら、そう思ったということですね。 ○外国人雇用対策課長 当初、この制度を立ち上げるときに、技能実習に移行することが あらかじめ決まっているものは雇用予約があるという整理で、それはやはり職業紹介だと。 職業安定法の規制の下に置くべきだということをきちんと確立していたのですが、実際には そういうフィクションは取られず、雇用予約は最初はなかったと、あくまでも単なる研修生だ と言って、職業安定法の外から入って、事実上はほとんどが移行するという形になってしま っている。 ○外国人研修推進室長 先ほどお答えできなかったことですが、第一次受入れ機関は、や はり失踪の場合は、一定数を超えると、実習生であっても不正行為と認定される。逆に言う と、それ以外のケースは、実習中についてはないということです。 ○上林委員 現実には、第一次受入れ機関は失踪以外にはないのですが、研修生を受け 入れてほしいために一種商売をしますよね。ですから、フォローアップがあることはアピー ルとしてやっていて、現実には、全部賃金の支払い方から、管理から、通訳から、第一次 機関が、法律上はないのですが、実態は管理しています。 ○渡邊委員 研修生を次々に継続して受け入れると、やはりそこの区別は曖昧になってき ます。実習生がいて、そのあとから研修生が入ってきます。 ○今野座長 受入れ団体も、これだけ技能実習への移行が多いのだから、セットでも考え ているということでしょう。 ○上林委員 そうです。 ○今野座長 セットで考えて、受入れ企業と相談しながらやると。 ○上林委員 はい。学校と同じように、毎年受け入れては毎年帰っていくというのでしょうか、 その3年間については私どもの受入れ機関で責任を持ちますという形をとるのです。 ○外国人研修推進室長 その点はこの前のヒアリングでも、適正に実施していただいてい る団体は、むしろ入国から帰国するまで団体として指導や援助をしていただいている状況 だと思います。 ○山川委員 それはメリットにもなっているような気がします。私が前にどこかで聞いたの は、送出し機関そのものが、日本に駐在事務所を設けて、それでいろいろ巡回してメンタル ヘルス上の問題の世話もしているとか、そういうことはむしろプラス面もあるのかなと。送出 し機関でも、第一次の受入れ機関でも。 ○今野座長 今日のすごく難しい問題で、論点のいちばん下から2つ目ですが、送出し機 関をコントロールする方法。 ○上林委員 有料送出し機関のリストはあるのです。難しいですね。 ○外国人研修推進室長 丹野委員のメールでは、送出し機関は日本の受入れ機関のみ からその費用を徴収することを条件にして、研修生本人からは徴収しないことを条件づけ るべきであると。もちろん、そこをどう担保していくかという問題は残ってくるのですが。 ○今野座長 日本の受入れ機関がしっかりしていれば向こうはちゃんとするだろう、という シナリオですか。 ○上林委員 そうすると、形としては、個々の第一次受入れ機関ではなく、ある意味では政 府がそういう仕組みに則って送り出してほしいということを言わざるを得ないでしょう。 ○今野座長 例えば日本の受入れ機関から、現地の送出し機関に流しなさいというのは丹 野委員案でしょう。そうしますと、日本の受入れ機関の管理費とかについて日本でルール を作れば間接的に向こうに影響を与えることになるのですか。丹野委員はそういうことを考 えているのではないですか。 ○外国人研修推進室長 そこまではちょっと分かりませんが、とにかく、日本に渡ろうとする 本人から、送出し機関が金銭を徴収することを禁じて、それを条件として制度上の認定機 関にするとおっしゃっているのだと思います。これを言い出すとぶっちゃけた形になってしま いますが、例えばJITCOの職員の話を聞きますと、認定送出し機関はしっかりやっていて も、認定送出し機関に来る過程で、中国の地方のいろいろな段階で何かあるのではないか ということを、もちろん風の話として聞いたりはしますが。どこまで根っこを縛ればいいのか、 難しいかなという思いはあります。 ○上林委員 向こうの機関に対しては言えないので、日本の受入れ条件はこういうふうな 形でしかできませんよという制度をがちっと作るほか、コントロールの方法はないですよね。 この制度に則ってしか送出ししてくれるなというほかはないでしょう。 ○今野座長 例えば、ルール上丹野委員が言うように、研修生・技能実習生は、直接送出 し国の派遣機関には払ってはいけないとしても、向こうももらわないと動かせない。そうしま すと、技能実習生・研修生が日本の受入れ機関にお金を払って、その中の一部が向こうの 送出し機関に行くということになる。上林委員が言ったのはそういう流れでしょう。台湾では 管理費は、家事労働などは公定プライスで1人いくらと決まっています。 ○山川委員 管理費は入国してからというのはむしろ普通かもしれませんが、保証金の場 合は事前で、割とシソボシのような意味もなくはないのかなという気もします。 ○渡邊委員 機能としては、そういうふうにおっしゃっています。 ○山川委員 この情報開示がどの程度されているのか、よくわからないのです。入管当局 としても保証金は把握していない。いまおっしゃったように、どの段階で取っているかわから なければ把握しようがないということなのですか。 ○外国人研修推進室長 先ほどのフォローアップ調査では、1回帰って帰国しているからと いうこともあるのでしょうが、正直に「納めている」とアンケート調査に書いている例はありま す。実際には、存在は確かにすると思います。 ○山川委員 そういうことは事前に、例えば受入れ団体でもわかるとか、送出し機関がど のくらい保証金を取っているとか、少なくとも何か情報が開示されていたほうが、いろいろ 受入れ側にとっても判断の材料になるような気がします。 ○今野座長 中国にもいろいろな送出し機関があって、情報開示は難しいと思います。直 接開示するのを求めるのは、他国の話ですので難しいことは難しいのですが。先ほどのデ ータでは、保証金は帰国すればちゃんと返ってきているという話でしたが。 ○上林委員 はい、そうです。 ○今野座長 大体そうなのですか。つまり、逃亡の防止に限ってちゃんと取っていると。こう いうのは業者が逃げてしまう可能性もあるのではないですか。そういうことはあまりないとい うことですか。 ○渡邊委員 どうなのでしょうか。聞いたことはないと言うか、わからないです。 ○今野座長 これは、来ている研修生や技能実習生にとってはいちばん大きいリスクです よね。保証金をたくさん払ったのに、帰ったら業者がいなくなったとか、それは平気なのです か。それこそ現地政府が認定しているから、そんな送出し機関はないと。 ○上林委員 人材送出し事業というのは、いままで中国は全部政府がやっていたのですが、 いまは民間でもそういう商売ができるように変わってきているので、今後はそういう可能性 もあると思います。向こうもだいぶ制度を変えてきているみたいです。 ○外国人研修推進室長 具体的な事例は持っていませんが、当然、向こうで問題を起こせ ば、送出し機関としての認定を取り消されると思います。送出し国内でのチェックは最低限 あるのではないかと思われます。 ○今野座長 簡単に作れるようになると、只乗りでというか、当て逃げしてしまうことはあり 得ますね。こういう問題は別に技能実習生だけではなく、外国人労働者も一緒ですよね。フ ィリピンとかでも保証金を取っていますが、あれも平気なのですかね。 ○渡邊委員 フィリピンは国が決めているのではなかったですか。違いましたか。 ○外国人研修推進室長 国家が基金を管理しているのは建て前です。実際はいろいろあ るのかもしれませんが。 ○今野座長 人材を派遣しているのは、民間の会社ですよ。 ○外国人雇用対策課長 POEAのほうが、また送出しの業者を認定したりしているみたい です。 ○渡邊委員 そこはきちんとリストを情報開示していますから、それなりに移動する人もわ かるようにはなっていますが。 ○今野座長 それは心配する必要はないわけですね。 ○渡邊委員 建て前はね。 ○山川委員 他の国では、フィリピンではなかったと思いますが、去年か一昨年のソトミの 開示は、送出し国と受入れ国のどちらだったかわかりませんが、高い報酬と言いますか、 保証金に限らず、中間的な業者の報酬の取り方が非常に高いことを、割と指摘していた国 が多かったような気がします。 ○今野座長 少し話がずれますが、この前台湾へ行ったときに、建設業で外国人労働者を 受け入れている大きな団体の責任者が面白いことを言っていました。日本でもいいですが、 外国人労働者は、この場合は研修生ですから、賃金を高くするでしょう。同等報酬だと言っ て高くするではないですか。送出し国は、来たい人がたくさんいるわけで、本人は最低この 程度あればいいと思っているわけです。そうしますとこちらを高くすると、この程度だから余 りが増えて、中間搾取が増えるという理屈です。つまり、労働力の供給は無限にあるので、 最低限本人が欲しい金額というのは、いつもそちらで決まってしまうので、受入れ側が上げ ると中間搾取が増える、という理屈を言っていたのです。理屈としてはあり得るのかなと話 を聞いていたのです。業者だから、だから下げろと言うのですが。 ○上林委員 送出し機関のほうの仕事としては、要求水準の低い労働者をどうやって探し てくるか、というのが1つの仕事になっていますので。 ○今野座長 中間搾取がたくさん取れるように。 ○上林委員 行ったあとでもよく働くようにという意味です。例えば、大連から送り出したと しても、実際には農村まで行って、最も貧しい地域から探してくるような形になっているので す。これは難しいのではないですか。これを考えていたら、たぶん決められないと思いま す。 ○今野座長 これは論点に上がっていますが、これは諦めますか。 ○上林委員 できるとしたら、政府間で、こちらの政府として向こうの政府に言うほかはな いですよね。 ○外国人研修推進室長 いま取り組んでいるのをもう少し強化していくというか、申入れを しっかりしていくことは、当然やるべき課題としてあると思います。 ○上林委員 実際に送出し機関に対して受入れ一次機関というのは、どちらかというと、商 売させてもらっているというので、非常に弱い立場で交渉力があまりない形ですので、これ は日本の受入れ機関に対しての政府のバックアップみたいなものが要るのではないかと思 います。 ○山川委員 実態がわからない部分があるので、それをもう少し政府間でわかる形にして おけば、多少役に立つのではないかと思います。 ○今野座長 上から4つ目の、現行では3人の日本従業員がいれば、9人まで受け入れら れるというのは、OJTをしていくとか、労働災害の問題を考えたら、やはり一定数の日本人 に対して一定数の研修生・技能実習生ということになるのですけど、何かメドはあるのです か。大体、常識的に言ったら1対1がどうとか、1対2だぞとか。 ○上林委員 ここがいちばんポイントですか。 ○外国人研修推進室長 先般の受入れ団体の方も、むしろここは3対6とかおっしゃってい ました。受入れ団体の方でもそういう意識を持っておりました。 ○今野座長 3対6というのは、日本人1人に対して2人という意味ですね。 ○山川委員 12頁の左下と関連するお話ですか。 ○今野座長 そうです。 ○山川委員 日本人かどうかというのは、実は外国人で正社員がいる場合は、その人はカ ウントしてもいいと言いますか、国籍で差を付けてはいけないと思います。ただ、技能実習 生が線より上に入っているのは、技能実習生も技能取得の一過程だとすると、何となく制 度の趣旨に合わない気がします。 ○今野座長 日本人従業員3人に対して研修生・技能実習生が9人だとすると、資料の12 頁の比率ではDがみんなそうだということです。12人中9人が研修生、または技能実習生 なので、70%少しで、Dに当たる人たちがみんなそういう状況にあるので、かなり一般化し ているということです。特に繊維・縫製は。 ○審議官 極端に言うと、これは日本人がいなくてもいいのですね。実習生は分母に入る ので。実習生がいれば、日本人がゼロでもいいという形になってしまっています。 ○今野座長 この問題を考えるときに、こういうのは適正だというのは何かないのですか。 ○上林委員 12頁の「受入れ企業の常勤職員1/20と規定されている」というのは、最初 に作ったときのものです。20人に1人というのが、そもそもの考え方だったのです。それで 特例告示で50人以下は3人になったので、もとの考え方に則れば、決して技能実習生でも おかしいことにはならないのです。最後に変わったわけです。特例を廃止すると言えば、そ れで終わりなのですが、そうもいかないのです。法律上はそういうことですよね。 ○外国人研修推進室長 原則は5%ルールと。 ○上林委員 それがないわけではなく、まだあるのです。 ○外国人研修推進室長 あとは技能実習生を分母にカウントしてしまうという、運用の問 題もあります。ただ、実態を考えると、ここは影響も大きい点です。 ○今野座長 20分の1ルールだったら、日本人従業員20人以下の規模は1人になってし まいますね。 ○上林委員 いちばん最初に制度が考案されたときは、そこで制度が作られたのです。 ○今野座長 全部切り上げたとしてね。 ○上林委員 はい。 ○今野座長 また違う点ですが、「実習終了時の評価試験の受験率向上のインセンティブ 政策、グッドアイディア」というのは、この前のヒアリング先の社長さんは「再研修」と言って いましたね。これは再研修と言ったら、真面目に受ける人は増えるでしょうね。 ○上林委員 再研修と言ったときには、入管法の資格は何になりますか。 ○今野座長 それはまた別に考えなければいけないですが、技能実習ですか。 ○外国人研修推進室長 それはまさに制度設計を変えなければいけない。 ○上林委員 変えないといけない。 ○外国人研修推進室長 現行は再研修、いわゆる研修の在留資格の再入国、また研修 で入ってくるのは、一部更なるスキルアップが認められるとか、一定の技能研修成果が移 転されているのを個別に認定して、在留状況も入管が見て、問題がないケースについては 再度の研修を運用上認めています。それは一定のメルクマールも公表しています。 ○今野座長 そう考えますと、いままでの企業単独型やAOTSベースなど、そういう点では 再研修者はいくらでもいるわけです。 ○外国人研修推進室長 現状は、技能実習の再度の技能実習は制度的にもないですし、 入管としても認めていない。 ○今野座長 論理的に言うと、資格上は「再」なので、もとに戻るわけですね。 ○山川委員 「再」と呼ばないで、新たに技能実習に来るけれども、その条件として、過去 にどこかの別の企業も含めて技能実習をして、かつ、終了時に試験に受かった。その場合 は別個の技能実習ですよと言ってしまえば、また別かもしれません。研修は同じような話で すか。 ○外国人研修推進室長 再研修の場合、研修の必要性が認められれば、必ずしも同じ所 でなくてもいいという話です。研修内容も、前回の研修を更にスキルアップするとか、あるい は発展させるための研修であれば、全く同一の研修でなくてもいい。まあ真っ当です。再研 修なので、当然なのかもしれませんが、そういう整理になっています。 ○審議官 現実に認められるために、企業単独型の研修がほとんどのようです。やはり現 地法人があって、そこに帰って更にキャリアアップするというので、また来ているという例の ようです。 ○上林委員 新しく在留資格を作るのでなければ、技能実習生等の在留資格を新設して、 そこで再技能実習という形のカテゴリーに入れることになりますか。 ○外国人研修推進室長 まだ入管法上どう位置づけるかというのは。仮にそういう制度を 作るとしてどう考えていくかということで。特定活動として認めていく方法もあるかもしれませ ん。それは実際にやるとすれば、どう整理するかという話になると思います。 ○今野座長 いずれにしても、この前の研修受入れ団体の方が言っていたように、ここのイ ンセンティブだけに絞れば、インセンティブ効果は大きいということです。 ○上林委員 そうですね。 ○審議官 本当は難しいのですが、我々がよく言われているのは、研修・実習である以上、 その制度がうまく機能しているのか、それを評価する仕組みがなければいけないと。それを みるには、どの程度受かっているかということです。インセンティブを付ける考え方と、もとも とそんなのは当たり前ではないかという議論もあるわけで、それをどう考えるか。  再研修・実習については、自民党の先生方の中には、やはり定着という観点からどうだろ うかという議論があるのも事実です。アムネスティでは、5年以上いると家族を呼び寄せる とか、そういう権利が発生する。要するに定着という考えがありますので、一度帰るにしても、 全体の期間が長くなることをどう考えるか、という議論があることも事実です。そういう点を 総合的に考えていかなければいけないという気がします。 ○渡邊委員 この間の話では、一旦は帰ってもらうという話でしたので、そこを5年の中に どのように考えるかという問題があります。  もう1点、いまの話の中で、日本の受入れ側のメリットが中心になっていますが、例えば 送出し国の企業にとってのメリットも、日本で技能を習得してきたことによって何か評価して あげるシステムもあってもいいような気がします。日系企業では、そういう人をきちんと評価 しているのか。その辺のシステムも個々の企業で考えてもいいような気がします。 ○今野座長 この前のヒアリングでもあったように、ここで終了時の試験を受けて、受かっ て資格を取って、国へ帰ったら認められて、地位が上がるとか、給料が上がるということが あればインセンティブが働きますよね。そういう意味では、その資格は流通性があるかどう かです。 ○審議官 技能検定の技術移転もやっていまして、ですからそういう形で送出し国で技能 検定が広まれば、こちらで取れば向こうでもメリットが出てくるということがあります。基本的 には、技能検定の技術移転と技能実習を絡めて、技術協力として成果を挙げていくことは 正しい姿だと思います。  そういうものが広まると、逆に非常に圧力が高まる面もあるので、その辺をどう考えて書く のか、非常に難しい問題です。 ○今野座長 受験する研修生とか技能実習生からすると、そんなことしかインセンティブは 考えられませんよね。帰ることがわかっていて受けるのでしょう。あるいは多額の賞金を与 えるしかないですよね。 ○渡邊委員 ええ。 ○今野座長 そうしますと、向こうの公的資格との連携を考えていく。 ○渡邊委員 そうですね。そちらのほうが。多額のあれというのは。 ○今野座長 健全ですね。 ○審議官 そういうインセンティブ論でいくのか、もともと制度として、そういうことが分から なければおかしいではないか、という制度論もあるわけです。 ○今野座長 制度論があったとしても、受ける本人が何で受けるのか。強制的に受けさせ るのであれば落ちてもいいわけですから、取りあえず椅子に座って試験だけ受けて帰って しまう、というのでは意味がないですよね。 ○職業能力開発局長 もともとの技能実習制度の運営基本方針が労働大臣から公表され ています。それを読みますと、基本理念は、「技能実習制度は、我が国が先進国としての 役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、より実践的な技術、技能 等の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力す ることを目的とし」と書いてあります。ですから、現在の技能実習制度がある一定の期間運 用されてきたことによって、発展途上国の経済レベルが、現状では3級取得レベルの技能 者を養成することを日本国はやっているわけですが、対象として得た途上国の技能レベル というか、産業レベルが上がってくれば、そこの国づくりのために更により高いレベルの技 能者づくりに協力する、という基本理念には当たるのではないかと思うのです。ただ、その 際、定着の問題や在留期間が長くなることによる人権上の配慮も当然考慮しなければいけ ないと思います。  法律的にどうするかについては、勝れて法務省の判断が優先すると思います。いまの 「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」の中で、技能実習生に係る在留資格の 整備として、技能実習に係る在留資格を別表第一に、早急に整備するべきであるとなって います。それを考えますと、やはり、新しい技能実習に係る在留資格を定める中で、いまの 議論を考えることが自然の流れではないかと思います。 ○今野座長 中途で申し訳ないですが、私は時間がないもので、ここで終了にいたします がよろしいですか。今日は論点をきれいに整理していただきましたので、これから先は、こ れをベースに少し前へ進むことになると思います。私の都合で申し訳ないのですが、今日 はこの辺で終わりにさせていただきます。ありがとうございました。 (照会先) 職業能力開発局海外協力課外国人研修推進室 TEL:03-5253-1111(内線5952) 03-3502-6804(夜間直通) FAX:03-3502-8932 - 1 -