07/01/31 「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に関する研究会 第4回議事録 第4回「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に関する研究会 議事録 日時:2007年1月31日(水) 14:00〜16:00 場所:女性と仕事の未来館 第1セミナー室 出席者:  委員   柳澤座長、朝倉委員、今村委員、岩田委員、瀧本委員、堤委員   鱒渕委員、宮下委員、向井委員、山城委員、吉池委員  事務局   千村母子保健課長、関谷母子保健課長補佐、齋藤母子保健課長補佐、   當山母子保健課主査、河野母子保健課栄養専門官 議事:  1.開会  2.議事   (1)授乳・離乳の支援ガイド(案)について   (2)その他 資料:   授乳・離乳の支援ガイド(案) ○柳澤座長  定刻となりましたので、ただ今から第4回「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)」策定に 関する研究会を開催したいと思います。本日は大変お忙しい中お集まりいただきまして ありがとうございました。  まず、本日の出席状況について事務局から報告をお願いします。 ○関谷母子保健課長補佐  本日は全員出席ですが、向井委員と今村委員が1時間ほど遅れるという連絡が入って います。以上です。 ○柳澤座長  ありがとうございました。それでは早速議事に入ります。本日は「授乳・離乳の支援 ガイド(案)が、これまでの委員の方々のご発言を踏まえて提示されていますので、これ を基に順を追って議論をお願いしたいと思います。  まず「策定のねらい」および「授乳編」について議論を進めたいと思います。資料を めくっていただくと、目次が出ていますけれども、そのうちの「策定のねらい」と「授 乳編」に関して、事務局から説明をお願いします。 ○河野母子保健課栄養専門官  まず、目次(案)をご覧いただきたいと思います。本日の資料のページの振り方ですが、 わかりやすいようにということで便宜上、各章ごとにI-1あるいはII-1といった形でペ ージを振らせていただいております。その点だけご了解いただければと思います。  まず「授乳・離乳の支援ガイド」策定のねらいについて、前回との変更点および今回 新たに書き起こした点を中心にこれから説明していきたいと考えています。まず策定の ねらいについては、前回誰向けのものとして作成するのかというご意見がありましたの で、保健医療従事者向けということで、下から二つ目の段落ですが「この『授乳・離乳 の支援ガイド』は、妊産婦や子ども、その家族にかかわる保健医療従事者が、所属する 施設や専門領域が異なっても、基本的事項を共有化し、支援を進めていくことができる よう、保健医療従事者向けに作成するものである」という形で記述しています。策定の ねらいについては以上です。  続きまして「授乳編」の方に移らせていただきます。I-1からの「1 授乳に関する 現状」の部分ですが、前回提示した図表に解説を加えた形になっています。また、対策 の方向性についてもこの中に書き込むのかというご意見がありましたが、ここでは現状 ということで、結果のみの記載ということで整理しています。なお、1カ所変更点があ りますので、I-5ページを開いていただけますでしょうか。5に「子どもの出生状況と 栄養方法、授乳に対する不安」というところがあります。前回は「子どもの出生状況と 栄養方法」ということで、「在胎週数別」、「出生時の体重別」の栄養方法の表を作成して いましたが、それらについては本論から若干外れるのではないかとのご意見がありまし たので、その部分は削除しました。表4の「出生順位別栄養方法」だけはそのまま生か して、さらに「出生順位別 授乳や食事について不安な時期」という形で、特に第1子 の場合は第2子以上に比べて不安だとする割合が高いというデータがありますので、そ の辺りについてはデータとして示すということで整理を行っています。  続きまして「6 自治体における母乳育児支援の取組状況」、さらにI-7ページ以降の、 「7 産科施設における母乳育児の支援状況」については、前回のデータに解説を加え る形になっています。  それでは、I-10、I-11ページの「授乳の支援に関する基本的考え方」に移らせてい ただきます。前回、この部分については母乳育児の記載が前面に出ている点についてい かがなものかというご意見を複数いただきましたので、二つ目の段落になりますが「多 くの母親にとっては」という部分で、授乳が初めての体験であり、それゆえ不安・トラ ブルが多く適切な支援が必要という授乳の支援の必要性を明記した上で、さらに二つ目 の大きなパラグラフで「授乳の支援にあたっては、母子の健康の維持とともに、健やか な母子・親子関係の形成を促し、育児に自信をもたせることを基本とする」とし、「また」 以下にねらいとなる事項を書いた上で「授乳については、妊娠中から」という母乳育児 についての記載をそのまま生かす形の構成にしています。なお、一番下の「一方で」と いう部分ですが、低出生体重児の割合などが増加している部分については、個別の支援 が必要ということで付記させていただいています。  続きましてI-12ページ以降の、3の「授乳の支援のポイント」に移らせていただき ます。大きな変更点としては、前回は「母乳育児を進める5つのポイント」となってい たところを「授乳の支援を進める5つのポイント」という整理をし、その中に、I-13 ページにゴシック体で書いていますが、「母乳育児を進めるポイント」として、前回提示 した母乳育児を進める五つのポイントを含める構成にしています。具体的な構成として はI-14ページをご覧いただくと、「授乳の支援を進める5つのポイント」ということで、 「妊娠中から」という(1)の部分から(5)の「授乳で困ったときに気軽に相談でき」という 五つの事項を追記し、その後に「母乳育児の支援を進めるポイント」ということで、前 回提示したものを含める形でわかりやすく整理を行っています。この内容に関して、1 枚戻っていただいてI-12、13ページに説明文を付けています。「授乳の支援を進める5 つのポイント」として、まず二つ目の段落になりますが、「授乳の支援は、妊娠中からス タートし、妊娠中から、妊婦自身のからだの変化や赤ちゃんの存在をイメージできるよ うに、支援を行う。また、妊娠中の栄養状態は、母子の健康状態や乳汁分泌にも関連が あるので、『妊産婦のための食生活指針』を踏まえた支援を行う」とし、矢印で→(1)と示 しています。二つ目として「出産後は」さらに授乳のかかわりとして(3)。さらにI-13 ページに移りまして、家族や身近な人への情報提供ということで(4)、さらに、授乳で困 ったときに気軽に相談できる、あるいは環境整備という観点で(5)ということで、それぞ れの事項に対する解説を加えています。また「母乳育児を進めるポイント」という点に ついては前回の内容を生かす形です。ただ一点だけ、「退院後には」というI-13ページ の一番下の2行になりますが、この部分が母親やその家族の育児力を育てられるように 社会全体で支援しましょうという表現になっていて、非常に曖昧ではないかというご指 摘をいただいていましたので、(5)として「母乳育児を継続するために、困ったときに相 談できる場所づくりや仲間づくりなど、社会全体で支援しましょう」ということで、こ の部分だけ若干説明を加える形で書き直しを行っています。  続きまして、I-15ページに「2 授乳支援の実践に向けてのポイント」ということで、 前回は、この中で申し上げると事例2のみやした助産院ならびに事例5の真岡氏市の事 例のみを提示していましたが、今回は、前回の議論を踏まえて全体で九つの事例につい て最終的に整理をさせていただきました。また、説明文の後段に書いていますが、「各機 関では、すでに多くの取組が進められており、ここに紹介したのはその一部にすぎない。 今後は、それぞれの機関からこうした取組の状況が数多く発信され、情報の共有化が進 み、連携が広がり、効果的な取組が推進されていくことが期待される」ということで、 あくまでもここでご紹介するのは幾つかの事例に限ってである、ということをお断わり させていただいています。そしてI-16ページ以降に具体的な事例について掲載してい ます。事例については、1事例当たり1〜2ページの整理ということで、事例提供をいた だいた各施設名・自治体名については、右下に括弧書きで(事例提供:○○)という形で 記載し、統一して整理させていただきました。  まず事例1は「妊娠中から退院後までのきめ細かな支援」ということで、I-16、17 ページに日本赤十字社医療センターから事例提供いただいた、妊娠中、入院中さらには 退院後の具体的な取り組み内容が網羅された例を示しています。  続きまして、I-18、19ページの事例2は、前回ご提示いただいたみやした助産院の 事例で、末尾に「生後1か月、7か月の栄養方法」ならびに「連携病院内における母乳 外来受診者の内訳」というデータを加えさせていただいています。  続きまして、I-20、I-21ページには医療施設内における、特に退院後の支援につい て充実した内容ということで、事例3は「母乳外来や2週間健診を通した退院後のお母 さんと赤ちゃんへの安心サポート」ということで、山形市立病院済生館からご提供いた だいた内容です。特に2週間健診については、受診者のうちにかなりの割合で不安や心 配があり、その中身は育児や自分の体など多岐にわたっている。そうしたことを解決す るために実施していることがわかる内容です。  事例4は、妊娠中や入院中という病院内でのケアから退院後の支援へということで、 母乳育児サークルを立ち上げた事例です。また「育児サークルの成長」ということで、 I-21ページの下に枠で囲んでありますように、現在では「ふたごのつどい」やNICU を卒業した母子を対象としたものが開催されているということで、母親自身の力もかな りあってそうしたサークルを展開している事例となっています。  続きまして、I-22ページの事例5は、前回ご提示された真岡市の「保健センターを 中心とした支援の推進」ということになっています。  事例6は板橋区の事例で、「退院後も安心して子育てができる」ように、産後の育児 支援ということで沐浴サービスや乳房の手当てを行っている事例です。利用者の多くが 初めての出産で核家族であるというところが特徴的で、ここにグラフで示してある通り、 さまざまな不安・心配を解決するのに効果的であるというデータも含めて掲示していま す。また右側には、乳幼児がいても安心して外出できる「赤ちゃんの駅」ということで、 区立の施設を中心に「赤ちゃんの駅」に指定して、親子、特に母子が家に引きこもるよ うなことがないように、自由に外出できるようにということで環境整備を図っている事 例です。  続きましてI-24、I-25ページは、事例7「働き始めたお母さんと保育所での生活が 始まった子どもへの支援」ということで、保育所での実践例を示しています。川崎市立 平保育園ならびに戸手保育園からご提供いただいている内容で、まずI-24ページには 基本的な対応の方針を記載しています。また「入所当初の授乳に対する支援の実践」と いうことで、子ども自身が保育所という新たな環境に慣れていく、また保護者が仕事と の両立の中で新たな生活に対応していく過程での、授乳を通した支援の例ということで、 両ページの下段に入園後の経過について、必ずしも当初の考え通りに進まない部分も含 めてどう支援していくかということを、すでに『保育の友』という雑誌で事例紹介して いる部分を今回整理して掲載しています。また、保育所における食育に関する指針とい うものが出ているのですが、その中で「6カ月未満児の食育のねらい及び内容」がどう いうものになっているかということもI-25ページの上の部分にあわせて記載していま す。  続きましてI-26、I-27ページに移らせていただきます。この二つの事例は、自治体 のネットワークづくりを中心に進めている事例で、事例8は、光市から事例提供いただ いている「『おっぱい都市宣言』:子育て支援としてふれあいを大切にする子育て(おっぱ い育児)の推進」です。ピンクの囲みの部分にありますように、「おっぱい都市宣言」と いうものを行っていて、左側の黄色い囲みの部分にあります「おっぱい育児10か条」 という形で誰もがわかるような形で推進している。さらに母子保健施策の柱の中で「お っぱい育児」を推進しているということで、下の「おっぱい育児支援の具体的活動例」 というところに(1)〜(9)の主な活動内容を示しています。例えば(5)の「保健師による妊 産婦、乳児訪問指導」、そして(6)の「母子保健推進員による新生児訪問指導、乳児訪問 指導」については、「妊娠中から乳幼児にかけて1世帯あたり約10回以上の訪問活動を 実施」ということで、「おっぱい育児」という支援を通して母子保健の中でもこうした手 厚い支援がなされているという事例です。  続きまして、次ページの事例9は、富山県から事例提供いただいた「母乳育児推進連 絡協議会を中心としたネットワークで広がる支援」というもので、市町村単位での取り 組みから県全体の協議会の設立へと至った活動です。特に富山県の場合は、右側の囲み の部分にありますが、女性の就業率が51.5%、共働き率が58.3%、あるいは文中にあり ます通り、20〜50歳代の年齢層において全国平均の就業率を上回る中にあって母乳栄養 の割合は高い水準を保っているということで、ここにデータが掲載されていますが、生 後1か月で60%、3か月で54.3%という実態です。そして図の右側上に、母乳育児推進 連絡協議会の事業概要を示しています。「妊産婦に対する母乳育児の啓発・普及活動」に 始まり、下から3番目には「関係病院、医院等との連携による新生児期における母乳育 児推進」、さらには「事業所等に対する母乳育児の重要性の啓発」ということで、かなり 多方面にわたって情報提供や活動を実施している事例です。「授乳編」については、以上 です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。それではご意見を伺います。まず「策定のねらい」 というところについて、前回、誰向けのガイドかというご指摘があり、それについて下 から2番目のパラグラフのような書き加えを行ったということですけれども、何かご意 見ございますか。よろしいでしょうか。それでは、この「策定のねらい」に関しては一 応これで良いということで、先に進めたいと思います。  続いて「授乳編」についてご意見を伺います。 ○朝倉委員  授乳を推進するガイドラインですので、母乳栄養の重要性をたくさん書いていただい ているのは当然のことだと思うのですが、この前も少し話をしたことがあると思うので すが、これだけ母乳が良いということになりますと、母乳が出ない人や母乳をあげられ ない人が覚える不安感やストレスなどに対する対処というのが、一生懸命見てみたので すが、とても少ないような気がします。例えばI-13ページに「母乳育児を進めるポイ ント」の中になお、育児用ミルクで『育てる』ことも、その目的は赤ちゃんを健やかに 『育てる』ことにあり、『母乳不足』など気がかりなことがあったり」、と3行くらい書 いてあり、当然その通りだと思いますけれども、これだけしかありません。それから、 I-14ページの下のポイントの中で2行くらい書いてありますが、「育児用ミルクで『育 てる』ことも同じように、時には母乳で育てること以上に、支援は必要です」というこ とだけで片付けてしまってよいのか。もう少し言葉を足したり、あるいはここでうたっ ている母子関係を良くするためには、おっぱいで育てられない母親たちがどういうやり 方をすればよいかという具体的なところを、例えば項を改めるなりしてどこかに入れら れないでしょうか。これでは「おっぱいが出なければ駄目だ」という感じがなんとなく してしまう印象です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。今のご意見に対して、あるいは他の点に関して、何か ご意見ございますか。 ○朝倉委員  もう一つ、どうしても言いたいことがあるのですが、これも授乳に関する方法論と言 いますか、方法論ではカンガルーケアが良いということで、事例の中にはカンガルーケ アが入っていますし、それから、授乳を推進するためには、30分以内にとは書いていま せんけれども、できるだけ早く授乳をするようにと書いてあります。それは具体的には カンガルーケアを想定して書いていらっしゃるかどうかです。カンガルーケアは、確か に非常に理想的なやり方だと思うのですが、ただどうも安全性というものがまだ確立さ れていないし、有効性もまだ確立されていないようなのです。というのは、産婦人科医 会で医会報というものが出ていますけれども、1月の医会報でカンガルーケアに対する 警鐘の記事が出ました。私自身は検証していないのでわかりませんが、そういうことが あるので、この事例の中でカンガルーケアについて書くということは、厚生労働省がお 墨付きを出したように取られないか。やってはいけないということではないですけれど も、安全面で非常に注意してやることが必要だと、どこかにそういう警鐘を鳴らしてお かないといけない。国がこぞって勧めているという印象で取られるのは、少し時期尚早 という感じがしたのです。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。ただ今のご意見に対して他の委員の方からはどうでし ょうか。今村委員、どうぞ。 ○今村委員  私も、朝倉委員と同じ懸念を非常に強く持っています。といいますのも、もう10年 も前になりますが、新生児にうつ伏せ寝させるのが、非常に短期間ではありますけれど も一時推奨された時期があり、全国の産科医療機関でそれを多くの者が見習ったのです が、突然死症候群というのが言われてきて、今ではほとんど「やめなさい」ということ になっています。カンガルーケアが同じような経緯をたどるとは思いませんけれども、 こういうものを勧めるときには、よほどの注意が必要だろうと思います。実際に、本当 にカンガルーケアが原因なのかどうかはわかりませんが、事故例が報告されているとい うことを考えてみましても、やはり相当の注意というのが必要なのではないかと思いま す。 ○柳澤座長  ありがとうございます。他にございませんか。どうぞ、宮下委員。 ○宮下委員  私も、カンガルーケアの利点、それからデメリットについても、赤ちゃんが静かに休 むということなのですが呼吸状態に異常を起こすという症例も報告を受けています。た だ、そういった中で、カンガルーケアをすることによって、赤ちゃんがとても安心した り、体温の上昇につながったりというメリットもとても大きいので、肌と肌の触れ合い の部分で、言葉の使い方を変えて載せられるとよいのではないかと思います。そして母 親と赤ちゃんが一緒にいるときは、必ず医療者がそばにいるなどの注意書きを入れると か、もしくはこういう状態になったらきちんと連絡するとか、そういうものを附帯する というのはいかがでしょうか。 ○柳澤座長  他にございますか。今ご指摘があったように、ここではカンガルーケアという言葉は 使っていませんけれども、生まれたらすぐに母親と肌を接するということに関しては、 もちろんメリットも大きいと私自身も思っていますが、注意すべき点もあるということ をこのガイドにも何らかの形で記載する必要があるというご意見だったと思います。ど うでしょうか。他に何かございますか。 ○鱒渕委員  資料のI-12ページの「授乳の支援を進める五つのポイント」というところで、前回 検討され結果としてこれらが挙がってきたということでは、母乳に限らず人工のミルク にも対応するような、母親が安心して授乳ができるというポイントが整理されていると は思うのですけれども、(2)につきまして母親が産後不安になっている状況ということは、 子どもを中心とした視点でまとめられていると思うのです。(2)の1行上のところに「産 後の回復状態や」と書いているのは、母親の心身の回復にも触れていると思うのですが、 ミルク栄養にしても母乳にしても、産後病院から自宅に帰ってからの母親の心の不安と いいますか、精神的な大きな不安をしっかり支えてあげることが授乳をうまく進める第 一かと思いますので、この中の表現は母親の体や心の不安を支えるという内容を色濃く 出していただいた方がよいと私は思いました。うまく説明できないのですが、授乳方法 や赤ちゃんの状態に関する疑問や不安というよりは、むしろ母親の心身の不安をしっか り支えた上で子育ての不安を支えていこうという視点でまとめていただけるといいと思 います。何よりも母親の最初の精神状態を支えることが、その後に大きく影響をするの かなと思います。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。先ほど朝倉委員が指摘された最初の点、つまり母乳で 育児ができない場合、ミルクで育てるときの問題や支援に関してもう少し具体的にとい うことに、今の鱒渕委員からのご指摘も多少関連したことだと思います。他に何かござ いますか。 ○吉池委員  私もその点についての配慮が必要だと思います。先ほど朝倉委員が指摘された部分が I-13ページの母乳育児を進めるポイントの中に少し触れてありますが、ここだけでは なくて、I-10ページに授乳支援全般や基本的な考え方があり、下から2番目のパラグ ラフで、授乳については妊娠中から母乳で育てたい割合がというところがありますので、 この流れの中に、「しかしながらいろいろな理由で人工栄養」という配慮をきちんと書き 込めばいいと思います。 ○山城委員  同じような視点なのですが、例えばI-12ページの「授乳の支援のポイント」の一番 下のパラグラフで、授乳は母子のスキンシップに重要な役割を果たしているとあります。 これはそうなのですが、どうも文脈からは母乳保育の印象を受けるので、人工栄養それ から母乳栄養にかかわらず母子のスキンシップが重要であるという言葉を入れていただ きたい。  それから(3)、下から2行目ですが、授乳のときにはできるだけ静かな環境、という言 葉を入れる。具体的に言いますと。テレビを見ながら授乳をする母親が最近非常に増え ている。これはとんでもない話なのですが、しかし今はそれが普通です。本当はテレビ のスイッチを切ってと言いたいですが、できるだけ静かなところで、くらいでいいと思 います。 ○柳澤座長  今山城委員が指摘した母子のスキンシップというのは、I-12ページの下から5行目 ですか。ここで言っている授乳は母乳だけではなくミルクによる場合も含めているわけ ですけれども、もう少しその点追加した方がよいということですか。 ○山城委員  母乳栄養が次に出てきますけれども、先ほどもありましたが人工栄養のときにはどう するか、はないのですね。ですからせめてこういうことも入れていただきたい。母乳が 出なかったときにどうするかについて、一つ項目を設けなければいけないと思います。 ○柳澤座長  他に何かございますか。どうぞ。 ○今村委員  先ほどの朝倉委員のご発言も山城委員のご発言も、非常に当を得た発言だと思います。 ここにありますように96%の方ができれば母乳で育てたいということなのです。きわめ て非常によく行き渡った情報かなと思います。ただ96%ということは、逆に母乳神話と 言ってもいいくらいのパーセンテージです。誰もがそう思っているのに自分は出ないと いうときの母親の心理的な負担、こういうものを考えますと、そうでない母親のための 配慮を十分に書き込んでいただきたいと思います。 ○柳澤座長  関連することに関していろいろとご意見を伺いました。他に何かございますか。事例 について、どうぞ。 ○岩田委員  事例というところで、よろしいですか。 ○柳澤座長  私も、続いて事例として事例1から事例9まで挙げられていますけれども、それにつ いて何かご意見があればと伺いたかったところです。どうぞ。 ○岩田委員  本質論でなくて申し訳ないのですが、こういう支援例というのも事例という言葉でく くるのでしょうか。具体的には、例えば支援の例1とする。そうしますと事例提供とい うのは提供だけで済むのかなと思うのです。というのは事例という言葉はいろいろなと ころで使われますが、多くの場合は、例えば医学分野では症例という言葉、心理的な問 題の話のときには事例という言葉が使われ、個人を念頭に置いた言葉のイメージが非常 に強いのかなと思いました。そうしますと自治体とかがやることも事例という言葉でい いのかという気持ちがしたのです。 ○柳澤座長  この辺事務局としてはどのようにとらえたのでしょうか。 ○河野母子保健課栄養専門官  言葉の使い方につきましては、この場で1番適切な表現を選んでいただけたらと思い ます。ここで事例1と表現したのは、あくまでも実践例で、恐らく各施設の条件によっ てできることとできないことがあるだろうということで、一つ一つにお墨付きを与えて こうしましょうということではなく、見る側が自分自身が所属している施設の状況等を 勘案して、取り組めるところについては取り組んでいただく、そのための例示だという ことが誤解のないように伝わるように、ということでこの表現をしているだけですので、 今ご意見があったように他に適切な表現があればそういった表現で構わないと考えてい ます。 ○柳澤座長  I-15ページには、医療機関あるいは地域を中心とした実践例とありますよね。実践 例と言えば、そういう機関、施設あるいは地域でこういう取り組みをしているというこ とを、実際に例を挙げて紹介しているという意味に取れると思います。ですからもし私 から提案させていただくとすれば、非常に短絡的ですけれども実践例の1、2、3、4と いうことであれば、事例という言葉ではなくなります。  言葉はそうするとして、ここで取り上げた実践例について何か気が付いたところなど はありませんか。岩田委員、どうぞ。 ○岩田委員  かなり細かなことで恐縮ですが、事例6は板橋区提供ということで「赤ちゃんの駅」 とありますが、実は私は現在勤務先が板橋区にありまして、東京家政大学の中に幼稚園 と保育室があるのですが、そういう私立の施設に対しても「赤ちゃんの駅」を受け入れ るかという問い合わせが区の方から来ました。内容的には要するに道を歩いている母親 が授乳の必要を感じたとき、あるいはオムツを交換したいときに、通りがかった幼稚園・ 保育園に入って、授乳あるいはオムツを換えていいだろうかということで、それを受け 入れるかどうかという問い合わせなのです。そうしますと、個々の園において状況も非 常に違いますし、多くの園では日中は戸をきちんと締めて鍵をかけているところも多い のですが、これが国家的に出てしまいますとちょっとどうかなという気がしました。個 別のことで申し訳ございません。 ○柳澤座長  今のようなご意見を受けてどうするかということは、考えていただかなければいけま せん。 ○河野母子保健課栄養専門官  今のご発言の内容については板橋区の担当者の方からも情報提供いただいており、各 施設では防犯の観点から非常に留意をしている点と、あとはいろいろな方が出入りする ということで、場合によっては感染症等の心配がありますので、衛生面あるいはそうい った予防の観点からも充分配慮をしているということがありました。紙面は若干限られ ていますが、やる以上はそういったリスクに対しての配慮も当然必要になってきますの で、あわせてそういったことも書き込むような形で、両面あるということで整理したい と考えますが、いかがでしょうか。 ○岩田委員  いろいろなご配慮をいただく方がよいと思いますけれども、現実の流れとしては、こ の「赤ちゃんの駅」をやるかという問い合わせが1枚の紙で来て、趣旨に賛同してやり たくても、今おっしゃったような状況から現実にはなかなか難しいところがありました。 実際に幾つかこの「赤ちゃんの駅」を実践されている保育園があるのですが、それは例 えば団地の中の保育園だとか、お互い地域で気心が知れているところのようでした。そ ういうことを少し表現していただければと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。他に実践例についてありますか。朝倉委員、どうぞ。 ○朝倉委員  非常に細かいところですけれども、I-18ページの事例2の言葉の問題で、2番目の ステップの四角の下の、最初のところですが「赤ちゃんのからだを拭いて母親の腹部に 乗せ、母親の体温をタオルで保温された状態で、母親と一緒に」というところの母親の 体温をタオルで保温された状態で、というのはタイプミスだと思います。 ○柳澤座長  何ページでしょうか。 ○朝倉委員  I-18ページです。ステップ2の下のところがおかしいので訂正した方がよいのでは ないかと思います。 ○柳澤座長  「赤ちゃんのからだを拭いて母親の腹部に乗せ、母親の体温をタオルで保温された状 態で、母親と一緒」というところですか。 ○朝倉委員  体温をタオルで保温されて、ですね。すみません。おかしくないかもしれません。 ○柳澤座長  これはみやした助産院からのご提供ですけども、この点に関していかがですか。 ○宮下委員  これは「赤ちゃんの体温」の間違いかもしれません。申し訳ございません。赤ちゃん の体温をタオルで保温された状態で、ぬれている状態をふき取って、その後母親の上に 赤ちゃんが乗るようにして、タオルで包むようにして体温を保持するということで書き ました。 ○山城委員  赤ちゃんの体温を母親の体温でキープするということですか。 ○宮下委員  そうです。 ○柳澤座長  同じ実践例の、I-19ページの左下のグラフで、「生後1か月、7か月の栄養方法」と あって、7か月の栄養方法では母乳栄養が84.4%ですが、これは7か月の時点で乳汁と して与えているものが母乳だけの人が84.4%という意味でしょうか。 ○宮下委員  乳汁は母乳だけです。育児サークルがあって、そこで母親たちと一緒にとったデータ です。 ○柳澤座長  この時期であれば当然離乳食も食べているのですね。  事例・実践例として1から9までざっと見ていただいて、何かご意見があればお願い します。細かく見ていくと漢字がおかしいとか「てにおは」とかあると思います。私も 気が付くところがあるのですが、その辺はあらためて事務局の方できちんと整理をして いただきたい。 ○吉池委員  先ほどのいろいろな議論ともかかわるのですが、例を見ますとかなりの部分が母乳育 児推奨というコンテンツで構成されていますが、集団としての母乳の割合を高めること が最終的なゴールなのか、それともいろいろな状況の中で一人一人に合った支援をする ことなのかというと、後者の部分も非常に大事だと思います。例えばI-22ページの真 岡市の例をとりますと、タイトルは母乳ということは触れず健やかな親子関係の確立と なっています。中ほどの囲みは、母乳のことが中心ではありますが、例えば離乳食教室 とかその他いろいろな形での支援をしているのですが、ここをまとめたときに「母乳育 児支援の推進例」というタイトルにするのか。こういう表現をできるだけ幅広にとらえ られるような記述にした方がいいのかなと思うのです。保育所の例でも母乳のことは中 心としながらも食育という広い枠でされているように思いますので、同じ中身でも表現 を変えると大分見え方も違ってきますのでその辺の整理をお願いします。 ○柳澤座長  大変適切なご意見だと思います。それでは授乳編に関して今さまざまなご意見をいた だきましたが、それに沿ってもう1度検討していただくということにしたいと思います。 よろしいでしょうか。  それでは次に、離乳編について議論を進めたいと思います。これについても事務局の 方から内容の説明をお願いします ○河野母子保健課栄養専門官  それでは離乳編のII-1ページですが、離乳に関する状況について、この部分は先ほど の授乳の部分と同様に前回載せた図表に解説ということで説明を加えています。  「1 離乳食の開始および完了」、1ページめくっていただいて「2 離乳食の進め方」、 II-3ページに「3 子どもの離乳食で困ったこと、わからないこと」、さらにベビーフー ドの使用状況ということで、II-4ページに図2、図3を掲載し、図4は「ベビーフード の使用状況別 離乳食で困ったこと」です。さらにII-5ページに「5 子どもの食事で 困ったこと」という文章を加えています。  続きまして2の「離乳の支援に関する基本的な考え方」ということで、II-6ページの 方に移らせていただきます。この部分につきましては、授乳と合わせる形で二つ目の大 きなパラグラフの中の、「一方、多くの母親や家族にとっては」という部分を追加してい ます。ここの文章の趣旨も、初めて離乳食を準備し、与え、子どもの反応を見ながら進 めることを体験するということで、授乳と同様にこの時期も非常に母子、親子関係の関 係作りの上で重要な時期でもあるので、そうした不安やトラブルに対して適切な支援を 行う必要性について記載しています。  また同様に「離乳の支援にあたっては」という部分につきましても、「子どもの健康を 維持し、発達を促すよう支援するとともに、授乳の支援と同様、健やかな母子・親子関 係の形成を促し、育児に自信を持たせることを基本とする」ということで、こちらの基 本的考え方についても授乳と同様に整理しています。  続きまして3の「離乳の支援のポイント」ということで、II-7ページ以降に移らせて いただきます。変更点としては「1 離乳の開始」のところで、なお書きの部分ですが、 「離乳の開始前の乳児にとって、最適な栄養源は乳汁である」ということで、文献等も 引用して整理をすべきという前回のご意見を踏まえて、離乳の開始前に果汁を与える必 要はないということで整理しています。栄養学的に意義が認められていないということ で、幾つかの文献を例示するとともに、「咀しゃく機能の発達の視点から」ということで、 いわゆるスプーン慣れといった観点からも必要性がないという記載をしています。  また「3 離乳の完了」の注意書きのところで二点変更があります。「1歳以降は牛乳 または育児用ミルクもしくはフォローアップミルク」ということで、前回は「牛乳また はミルク」という表現になっていましたが、ミルクといった表現について具体的に記載 すべきではないかということで表現を変更しております。そしてその前の、「母乳は自然 にやめるようになる」という一文ですが、卒乳のことを踏まえた記載という議論がかな りありまして、前回は「母乳はこの間に自然にやめるようになる」という表現でしたが、 「この間に」という言葉をとる形で整理しました。  続きましてII-8ページ、II-9ページについては、「離乳食の進め方の目安」の一覧表 に基づいて解説を加えました。一覧表につきましては、II-10ページに「離乳食の進め 方の目安」とあります。この部分については前回一点のみ、調味料・油脂・砂糖につい て細かい表示は必要ないのではないかというご意見がありましたので、その部分だけは 削除し、あとは細かい表記の変更として修正を加えている点だけで、大きな変更点はあ りません。この「離乳食の進め方の目安」について、1枚戻りましてII-8およびII-9ペ ージに、解説文を加える形で整理をしています。  まずII-8ページ「4 離乳食の進め方の目安」の「(1)食べ方の目安」ということで、 「食欲を育み、規則的な食事のリズムで生活リズムを整え、食べる楽しさを体験してい くことを目標とする」とし、「離乳の開始では、子どもの様子をみながら1さじずつ始 め、母乳やミルクは飲みたいだけ飲ませる。そして「離乳が進むにつれ、1日2回食、3 回食へと食事のリズムをつけ、生活リズムを整えていくようにする」。「また」というこ とで、食べる楽しさの体験を増やしていく具体的事項について記載しています。  「(2)食事の目安」では、まず「ア 食品の種類と組合せ」として食品の種類について 「(1)離乳の開始では」、「(2)離乳が進むにつれ」、「(3)9か月以降は」ということで、順次 段階を追って説明しています。また9カ月以降の部分につきましては、先ほどミルクの ところでフォローアップミルクと記載した関係で、フォローアップミルクは母乳または 育児用ミルクの代替品ではなく、使用するのは9カ月以降とするという文言を加えまし た。また前回適切なベビーフードの使用について、これだけベビーフードの使用が増え ている現状を踏まえて情報提供すべきというご意見もありましたので、「このほか、離乳 の進行状況に応じた適切なベビーフードを利用することもできる」ということで、後ほ どご説明しますが注6にありますように、参考5の方に利用法について簡単に記載した 資料を付けています。  また「イ 調理形態・調理方法」については、衛生面の配慮も記載すべきではないか というご意見がありましたので、「子どもは細菌への抵抗力が弱いので、調理を行う際に は衛生面に十分に配慮する」という文言を加えています。また、(1)から(3)の調味につい ての部分では、表の方からは調味料についての記載を外しましたので、文章の方で基本 的な考え方を示しています。  「(3)成長の目安」としては「食事の量の評価は、成長の経過で評価する」という基本 的な事項を、成長曲線のカーブに沿っているかどうかを確認するといったことを記載し た上で「体重増加がみられず成長曲線からはずれている場合や、成長曲線から大きくは ずれるような急速な体重増加がある場合は、医師に相談して、その後の変化を観察しな がら適切に対応する」という記載にしています。  さらにII-11ページ以降につきましては、注釈を付けた部分の解説について、主に文 献を用いて整理を行っています。この部分については後ほど各専門の先生方からご説明 いただけると思いますので、私の方からは簡単に説明をさせていただきます。  II-11ページの「<参考1>乳児期の栄養と肥満、生活習慣病との関わりについて」は、 文献を踏まえた上での整理です。また和食のすすめについて記載をしてはどうかという ご意見がありましたので、右端に「バランスの良い食事のすすめ」ということで、日本 における多目的コホート研究という、1990年から継続実施されているものがありますの で、ここでは2006年までの成果を踏まえて代表的なものを記載して整理しています。  続きましてII-12ページ、II-13ページです。まず「<参考2>咀しゃく機能の発達の目 安について」では、口腔機能も含めてということで、離乳食の開始から各時期に応じて、 口腔の発達の目安がどういったものかということを◆で、さらにそれぞれの「支援のポ イント」について、配慮すべき事項を記載しています。また左側に、「乳歯が生え始める」 といったように、どのくらいの時期に生え始め、生えそろうかということを簡単に、代 表的なものだけを記載する形で整理しています。  またII-13ページの「<参考3>手づかみ食べについて」は、その重要性と支援のポイ ントということで三点ほど例示しています。  続きましてII-14ページ、II-15ページでは、「<参考4>食物アレルギーについて」と して中ほどにあります「食物アレルゲン除去による予防効果」については、あくまでも アレルギー疾患の家族歴がある場合、乳幼児の早期の発症について予防効果が見られる が長期的な予防効果は見られない、またすべての乳児に対して予防的効果があるという 知見はないということを踏まえて、食物アレルギーへの対応の基本としては家族にアレ ルギー疾患の既往歴がある、またはすでに発症している子どもの場合は医師に相談して 予防的介入や治療を行う、またそうしたことを行う場合については必ず医師の指示を受 けるといったような基本的事項を整理しました。  II-16ページ以降は、この内容に関係する文献を整理したものです。  続きましてII-20、II-21ページは「<参考5>ベビーフードの利用について」です。II -20ページでは、「ベビーフードに関する基本的情報」ということで、今ベビーフードの 主流としてどれくらいの数のものがあり、どういった状態・形状のものがあるのか、ま た「ベビーフードの生産量・生産額の推移」ではどういうものが増加しているのか、さ らに「ベビーフードの品質」ということではどういった配慮があるかということを記載 しています。さらに「ベビーフードの賞味期間」ならびに「表示(例)」ということで基 本的情報を整理した上で、ベビーフードに対する意識がどうかということを踏まえ、II -21ページの下側枠内になりますが、べビ−フードを利用するときの留意点として四点 挙げました。「子どもの月齢や硬さのあったものを選び、与える前には一口食べて確認を」 する。また「用途に合わせて上手に選択を」ということで、かなりの種類のもの、さま ざまな形態のものがありますので、その用途に応じて使用するということ、さらに三つ 目としては「料理名や原材料が偏らないように」ということで、主食・副菜や果物、あ るいは主菜がそろう食事内容に配慮するという点、さらに「開封後の保存には注意して」 ということで、それぞれの食品によって配慮する事項が違いますので、そういったこと を簡単に記載しています。  最後はII-22ページ、II-23ページになりますが、「<参考6>1日の食事量の目安につ いて」ということで、書き出しの部分にありますが、1日の食事量に関してはエネルギ ーおよび各栄養素の摂取量の基準を示した「食事摂取基準」というものがあります。こ こでは食品・料理の組み合わせから、家族の食事量と比べて子ども自身の食事量がどれ くらいかということが理解できる範囲で整理してはどうかということで、下に図式化・ 整理したものを示しました。そして、このコマの形をした「食事バランスガイド」に、 紐の部分が少し見にくいのですが、菓子・嗜好飲料を楽しく適度にという部分がありま す。間食については離乳期の間は必要ないということも含めて、あくまでも食事の一つ だという整理を枠内にしています。II-23ページは「食事バランスガイド」の解説です。 以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。離乳編について今ご説明いただきました。最初に確 認したいのですが、授乳編・離乳編は同じ様式になっていますが、両方とも現状につい て前回は表とかグラフだけが提示され、今回は説明文が加えられています。その説明文 というのは、今は細かく目を通している時間的な余裕がないかと思いますが、乳幼児栄 養調査の報告書に書いてある説明文がそのまま転記されていると考えてよろしいですか。 ○河野母子保健課栄養専門官  平成17年度の乳児栄養調査のデータを用いている部分については、全く語句を変え ずに同一の文言・表現としています。堤委員が研究された報告書の引用の部分について は、説明の際に使用された文言をそのまま用いる形をとっています。 ○柳澤座長  ありがとうございます。それでは現状について何かご意見がなければ、離乳の支援に 関する基本的な考え方、続いて離乳の支援のポイント、そういったことについてお気付 きの点やご意見をお聞きしたいと思います。  この参考という部分に関しては、後ほど順を追ってそれぞれの委員の方にご説明をお 願いしたいと思います。その前の部分に関して、特に前回の研究会でのご意見に沿って 部分的に修正されていますので、その辺についてもしご意見・ご質問があればお願いし たいと思います。今村委員、どうぞ。 ○今村委員  細かいところで恐縮なのですが、II-8ページの下から2行目に「子どもは細菌への抵 抗力が弱い」と書いています。専門家でなくて申し訳ないのですが、ウィルスやその他 の病原体への抵抗というのは大人と同等と考えていいですか。細菌に対してだけ抵抗力 が弱いということなのでしょうか。 ○柳澤座長  この点は山城委員か岩田委員がご専門ですのでお願いします。 ○山城委員  ここでわざわざ細菌としたのは、調理・食品に伴う感染は細菌が多いということです。 ウィルスにももちろん同じように抵抗力は弱いのですけれども、例えばノロウィルスな どの例外を除いて、離乳食として摂取する場合、日本だとほとんどないのですが、あっ た場合は細菌だろうということで、ここでは細菌としたのだと思います。 ○今村委員  こういう表現が妥当であればそれでも結構ですが、少し気になりました。 ○柳澤座長  山城委員からも話が出ましたが、例えばノロウィルスやロタウイルスは経口感染する わけですよね。 ○山城委員  ここでは調理ケースや調理方法ですから、そこからうつるということはあまりないと 思うのです。もちろん汚染された手で触れば別ですが、通常の状態ではあまりないので これでいいのではないかと思います。 ○今村委員  了解しました。 ○山城委員  マイクを握ったついでに次のII-9ページですが、(3)の油脂類の中でバター、マーガリ ンとあります。マーガリンはとった方がいいのではないか。今話題になっているトラン ス脂肪酸を非常に多く含んでいますので、この場合はとった方がよい。 ○柳澤座長  とった方がよいですね。向井委員、どうぞ。 ○向井委員  遅れて申し訳ございません。7ページの上の離乳開始というところですが、「離乳の開 始とは、初めてドロドロした食べ物」という表現があるのですが、食品でドロドロとい うのはあまりおいしそうではない。全般にわたっているので、緩めのペーストとか、何 かもう少し食指の動くような言葉、例えば緩めのペーストというような言葉の方がいい のではないでしょうか。ドロドロというと泥を想像したりするので、せっかくこういう ものを作るのですから、もう少し「子どもに食べさせたいなあ」と思うような表現をし ていただければと思います。 ○柳澤座長  大変もっともなご指摘と私自身も感じますけれども、それに変わったうまい言い方が ありますか。緩めのペースト状など、どう表現したらよいのでしょうか。 ○山城委員  ご指摘はもっともなのですが、歴史的に、昭和30年くらいに九州大学の円城寺元教 授が案を出し、その後今村栄一先生がずっと使っている歴史的な言葉なのです。小児科 医は先輩の言葉として抵抗なく受け入れていましたが、確かに今のご指摘は少し考慮す べきかと思います。一般の国民にペーストと言ったら果たしてどのくらい理解できるの かという点はありますが、本当に表現は変えた方がいいと思います。 ○柳澤座長  資料のIII-1にある「改定 離乳の基本」でも「初めてドロドロ」とあり、確かに伝統 的に使われています。 ○吉池委員  ベビーフードについての記述としては、II-8ページの「このほか、離乳の進行状況に 応じた適切なベビーフードを利用することもできる」という表現はどちらかというと後 ろ向きな感じがします。役所的には適切な表現かもしれませんが、実際II-3ページを見 ますと、現実的な問題として作るのが面倒で、また次のページを見ると、その人たちが ベビーフードを多く使っているという現状があって、そこは面倒くさくても頑張ってや りなさいという話なのか、あるいは受け入れた上で上手に使いましょうという表現をす るのかということを考えなければいけないと思います。II-21ページの「<参考5>」を 見ますと、「ベビーフードを利用するときの留意点」として柔軟にいろいろ使いましょう と、実際に大変役に立つことが整理されていますので、本文についても後ろ向きという よりは、もう少し「うまく使ってもいいのではないですか」というニュアンスがあって もいいと思っています。 ○柳澤座長  今のベビーフードの使用について、後ろ向きととられないような記述の仕方の方がよ いのではないかと、そういうご指摘ですが、山城委員あるいは堤委員から何かあります か。 ○堤委員  確かにII-8ページのところで、「ベビーフードを利用することも」を、「ことが」に変 えるだけで随分ニュアンスが違うような気がするので、「が」でもいいのかなという気が します。 ○柳澤座長  非常に簡単な修正です。 ○吉池委員  あと「適切な」というと何か限定を付けるという感じなので、「ベビーフードを適切に 使用することも」とか、「適切な」の位置が少し違うだけでニュアンスが違ってくると思 います。 ○堤委員  今の吉池委員の意見に賛成で、現状の「適切なベビーフードを」となると、ベビーフ ードそのものが適切か否かですが、「ベビーフードを適切に利用」となると、ベビーフー ドそのものが適切な品物なのかということと、利用についても適切と両方にかかるので、 「ベビーフードを適切に利用することができる」としたらいいと思います。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。II-6ページからII-9、10までに関してどうぞ。 ○宮下委員  II-7ページの「2 離乳の進行」というところで、第2回目のときにも発言させてい ただいたのですが、「(1)離乳の開始後ほぼ1か月間は、離乳食は1日1回与える。母乳 または育児用ミルクは子どもの欲するままに与える」、そして2番目が「離乳を開始し て1か月を過ぎた頃から、離乳食を1日2回にしていく。生後7、8か月頃からは舌で つぶせる硬さのものを与える。母乳または育児用ミルクは離乳食の後の2回と、それと は別に3回程度与える」となっているのですが、調査では6〜7か月くらいのときに混 合栄養もしくは母乳の人たちが60%いるのです。そして授乳の回数を5回程度に限定し ている方は、私たちが見ている中ではほとんどいない。いないから継続ができる。赤ち ゃんが欲したときに飲ませていくことで体が反応して母乳を分泌していくので、この回 数を限定する表現をもう少し工夫していただければありがたいと思います。 ○柳澤座長  今おっしゃったのはもう少し具体的に言うと、(2)の「それとは別に3回程度」という のは少し限定のし過ぎではないかということですか。 ○宮下委員  そうです。母乳の場合はその限りではないし、「赤ちゃんが欲しがったときに与える」 とか、栄養としてだけの母乳だけではないという表現を付け加えていただきたいと思い ます。 ○柳澤座長  この点に関してどうでしょうか。母乳の場合は基本的に今おっしゃったように「欲し がったときに」ということでいいと思うのですが、育児用ミルクの場合もそれでいいか。 母乳と育児用ミルクを区別せず、「それとは別に」というのは「3回程度」ではなくて「欲 したときに与える」というニュアンスに変えた場合に問題ないでしょうか。山城委員、 何かご意見があればお願いします。 ○山城委員  人工乳の場合は過剰摂取が問題なのです。ですからここである程度ニュアンスを入れ たということですが、母乳はもちろん今のご意見で大変結構だと思いますけれども、人 工乳の場合は欲しいだけ飲ませてしまうと何らかの形で問題が出てくる可能性がありま す。 ○柳澤座長  私もその点を心配しました。そこは少し工夫を必要とすると思います。  それではII-11ページ以降の参考というところに関して、一つずつそれぞれその方面 を専門にしておられる委員の方から、何らかの説明あるいはご意見をいただきたいと思 います。「<参考1>乳児期の栄養と肥満、生活習慣病との関わりについて」で、記述とそ れから和食を中心とした食事のすすめ、文献が付けられていますが、山城委員はこの点 に関してどうでしょうか。 ○山城委員  この問題の結論は出たわけではありません。ただ現時点でわかっていることは、幼児 期の栄養について、肥満だった子どもが成人で肥満になる確立はかなり高い。アメリカ で去年「Pediatrics」という雑誌にも出ています。実は今は札幌赤十字看護大学、前は 旭川医科大学の助教授をされていた伊藤先生という方が調査した新潟の子どものデータ があります。一人の子どもをずっと追いかけたのではなく、6カ月、9カ月、12カ月、 1歳、2歳の時点での母乳と人工栄養を調べた結果なので、多少問題はあるのですが、 それでも幼児期に肥満の子どもは、小学校になると肥満の傾向が優位に出てくるという 結果が出ています。実は乳児と幼児ではどうかというと、これもまだ顕著なデータはあ りませんが、ヨーロッパでは幾つか出ています。ヨーロッパもアメリカも、子どもの肥 満率が大体20〜30%、イギリスでは35%が肥満傾向というように、ヨーロッパでもか なり高いデータがあり、そういう国では乳児期からの肥満対策を積極的に行っています。 データ的には生活習慣病まで出てくるというデータはありませんが、肥満はあり、一部 では生活習慣病になる傾向が高い。例えば脂肪細胞から出るアディポサイトカインとい う生活習慣病を促進する物質が高いとか、血圧が少し高くなるというデータがあります。 そういう意味では、特に日本人は生活習慣病になりやすい。西洋人ほどすごい肥満では なく、いわゆる小太りでも生活習慣病になりやすいという体質ですので、非常に気を付 けなければいけません。そういう意味で、乳児期の肥満は今後問題になってくる可能性 があるし、実は母乳栄養の子どもは肥満になりにくいのですが、人工栄養の子どもは高 タンパク質ということで肥満になる可能性があるというデータもかなり出ています。で すから脂肪ももちろんそうですが、高タンパク質にならないようにするということです。 例え母乳であっても肥満の子どもはいます。私も3人ほど今追いかけていますが、乳児 期に母乳であるにもかかわらず、今4歳ですが、肥満なのです。そういう子どもは母乳 栄養でも肥満になるという事を証明しています。この子ども達は3歳、4歳でインスリ ンが高いのです。そういう意味では非常に生活習慣病のリスクを持っている子どもです ので、母乳栄養でも肥満にならないようにする事が大事です。母乳栄養で肥満というこ とは、結局たくさん飲んでいる事になります。先ほどの話ではないけれども、母乳でも たくさん飲めば当然肥満になってくる。まだ確固たるエビデンスは出ていませんが、今 から注意しておかないと、これは実際は50年60年先ですが、10年20年先に「しまっ た」と思っても取り戻せないので、非常に重要だと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。吉池委員から何かありますか。 ○吉池委員  海外を中心にかなり疫学的データの蓄積がされてきており、それらを見ながら定量的 な表現ができるか検討したのですが、体重あるいは乳児期の体重増加率にしても集団内 における相対的な切り分けと、その後のリスクについても、相対的なリスクの上昇とい うことになりますので、どこまでが良い悪いという定量的な表現は非常にしにくい状況 です。また山城委員がおっしゃったように、特に日本人における確固たるエビデンスが まだ充分ではないということで、かなり記述的なことにとどまらざるを得ず、資料II-11 ページにあるように、「関連の大きさは必ずしも大きくなく、個々人にとって過度の心配 をするレベルのものではない」としています。この辺の表現は難しいのですが、集団で の相対的なリスクの上昇は、なかなか明示的に数値を示しにくいということで、公衆衛 生的な対策では医療従事者はこういう知見を知った上で、適切な個々人に対するアプロ ーチをすべきであって、あまり個人に対して「これ以上だとリスクがどうのこうの」と 言って過度の心配をさせることではないということで、こういう記述になっています。 ○柳澤座長  他の委員の方から何かありませんか。よろしければその次の「<参考2>咀しゃく機能 の発達の目安について」と「<参考3>手づかみ食べについて」、この辺に関して向井委員 から何かありましたらお願いします。 ○向井委員  今気が付いたのですが、ミスがありました。訂正をお願いしたいのが、乳歯が生え始 める時期が上と下が逆です。下の歯が男子で8カ月プラスマイナス1カ月、上の歯が男 女とも10カ月前後ということで、上下が逆になっています。私のチェックミスです。 申し訳ございません。参考資料の文献の2にありますように、1988年に文部科学省の 科学研究費を使って、多くの大学が参加して行った日本人の結果です。これまで母子手 帳を含めて、欧米人の歯の生える時期は6カ月ということが多く記述されていました。 それまでデータがなかったからですが、やっとここでまとまりまして、提示できるよう になって10年くらいだと思います。ここにありますように1カ月半くらい、約2カ月 近く日本人の方が歯が生え始めるのが遅いということで、ここがこれまでの「改定 離 乳の基本」や母子手帳と違うところだと思います。それから口の形が変わっていくに従 って処理できていく、いわゆる噛んで食べられるように様子が変わってくる。つまり発 達してくるということで、「3歳くらいまでかかるので少し気長に」というのが一つの提 示です。それから母親が迷ってしまう、4、5カ月で舌で押し出すとか、食べてくれない という問題ですが、不安の一つのピークですが、それは哺乳反射の問題があるだろうと いうことで、この反射自体が4、5カ月、私どもの研究では7カ月くらいで、これは< ボスマ>を始めとした欧米の研究でもほとんど同じです。ですからこの点に関しては歯 が生えるのとあまり関係なさそうで、同じような時期に文献的にも提示されております。 そこで離乳の開始を何とか5カ月から6カ月としていただきたいというお願いを最初に しましたが、そこが5、6カ月くらいからということで、離乳食の開始から順番に書か れています。これは「改定 離乳の基本」とほとんど同じで、今村委員と前の東京都立 母子保健院の院長二木武先生が提示された前のところと同じ形で縦に書き、今度は支援 のポイントをそれに対して挙げていったというのが実際のところで、特にこれはわかり やすく外から見て迷わないように、参考になりやすい形で提示してあります。  それから参考資料の3の手づかみ食べというのは、文献は1個しか挙げておりません が、目、手、口の協調発達ということで、かなり文献的なものが大きい。海外の文献も 含めて、作業療法と一緒にやった研究の結果から、手づかみで食べるということは、自 分で食べていく動きの中で食に対しての意欲も引き出されるし、それから自立の第一歩 になるということで、口の動きと手の動きをここにあるような形で、スプーンやフォー クなどの道具を使わずに、最初から食の道具として手と口の動きを協調させて、三次元 的・空間的なことをしっかりと学んでから道具を使っていくと、道具の使い方も良くな ります。またこの手づかみ食べは、前歯でかじらせるということで、こんにゃくゼリー を含めて窒息の予防、押し込み食べや、流し込み、それから丸のみを防いでいく。こう した予防的な意味を含めてここに挙げたというのが今回の趣旨です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。歯の生え方は下の真ん中の歯から生えてくるのは常 識なのですけれども、ぼんやり見ていると気が付かないものです。第一臼歯については、 上の2本が先で下の2本が後からでよいですね。  「手づかみ食べについて」のところが、今回のこの「授乳・離乳の支援ガイド」でも ユニークなところだろうと思いますがいかがでしょうか。 ○山城委員  大変すばらしいご説明で参考になりました。小児科医からもう少し付け加えさせてい ただければ、自分で食べるというのは子どもの自我が初めて芽生えるときで、自分の意 思で好きな物を食べるという意思表示をするわけです。これは発達の上では非常に大事 です。  もう一つ、これには出てきませんけれども、離乳食で困ったことというアンケートの 答で、母親の訴えが偏食とあります。この偏食をどうとらえるかですけれども、実は自 分で手づかみで食べると当然好きな物を食べるようになるわけです。これを偏食と答え る母親が結構いらっしゃるのです。本当の意味での偏食というのは、栄養の極端な偏り を意味します。例えば野菜を食べないから偏食とは言えません。野菜を食べなくても、 単純に言えば、ビタミンCの摂取があれば、それでいいわけです。果物の摂取でもよい。 ですから総合的に考えて栄養バランスの判断が必要なのです。子どもが一時期そういう 一つのものにこだわることはよくあります。それを偏食で心配だと母親たちは実際に悩 んでいるわけですからどこかに、この手づかみのところでも結構ですが指導や説明も入 れた方がよいのではないかと思います。 ○柳澤座長  この参考の2、3の部分に関してはどうでしょうか。よろしいでしょうか。  それではその次、参考4の「食物アレルギーについて」、岩田委員からありますか。 ○岩田委員  II-14、II-15の2ページにわたってまとめていただきました。この基礎になったのが 国立成育医療センターの成田先生の研究報告ですが、これまで食物アレルギーに関しま しては大変膨大な文献があり、その中で除去食がアレルギー疾患の発症の予防になるの ではないかという観点からの研究もたくさんあります。なぜそのような研究が行われる かという一番の背景には、実は母乳を飲んでいても、食物アレルギーが引き起こされる ことがあり得るという経験的なことがありまして、その理由としては母乳の中には食物 抗原が明らかに検出されるということがあります。従って、母親の妊娠中から除去食に したらどうかという研究がもう20数年以上前から始まっています。それらをまとめる に当たって、II-14ページの真ん中辺りの「食物アレルゲン除去による予防効果」とい う大項目の中で、(1)、(2)、(3)という三つの視点における効果の見直しといいますか、分 類がされております。このガイドラインで問題になるのは、主として(2)と(3)の部分だと 思います。結論的には、文献によって適度な除去をするという方がいいというものもあ れば、結果的にあまりアレルギー疾患の予防に効果がなかったという文献、それぞれ入 り交じっています。先ほども専門家の方からのご説明にありましたように、あくまでも このガイドは一般の状況を念頭に置いたガイドです。従って育児あるいは医療にかかわ る人々が対象とはいえ、一般の乳児を対象にすることが一番大事だろうと思います。で すからこのガイドは「こうせよああせよ」という細かな指示はせずに作られているとい うスタンスの基に、食物アレルギーの説明がここでされています。  なお、食物アレルギーを引き起こす食品が、II-15ページの下に書いてありますけれ ども、これはあくまでも現在表示が義務づけられているものと、表示が推奨されるもの という通知がすでに出ていますので、それでここに一応の参考として挙げていると受け 取っていただければ結構かと思います。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。一般の赤ちゃんを念頭に置いて、離乳食における食物 アレルギーの予防をこのようにまとめたということですが、最後に「食物アレルギーを 引き起こす食品」という見出しがあるわけですけれども、これは「引き起こす恐れのあ る食品」ですよね。 ○岩田委員  実際にはそうなのですが、通知では確かこういう表現だったと思います。 ○柳澤座長  しかし食べても何でもない人が、子どもでも大人でも大部分です。 ○岩田委員  それはもちろん「恐れのある人」ということになります。 ○柳澤座長  文章の方には「特定のアレルギー体質をもつ場合に」と書いてあるわけですけれども、 下の方の見出しで「食物アレルギー起こす食品」となっているのは矛盾しませんか。 ○岩田委員  通知の文言を変えてよければ、「可能性のある」という一言を加えることは差し支えな いと思います。 ○吉池委員  食品の表示そのものについては大事なことですし、関心も強いところなので、ここの 部分はむしろ表示とのかかわりの中で、「こういうことが示されている」などと整理をす ればうまく落ち着くのではないかと思います。気になる人には「こういうところには情 報提供されている」という形で整理した方がよいように思います。 ○山城委員  それから今のII-15ページで、上から6行目の文章ですが、「生後6か月までの栄養を、 完全母乳、母乳以外に乳清部分分解乳」とあります。これは単に母乳の乳清部分とも取 れますから、「牛乳の」と入れていただきたい。それから分解乳というのは乳清部分だけ ではなく、カゼインの加水分解、あるいは乳清部分の加水分解の両方ありますので、「母 乳以外に牛乳のカゼインあるいは乳清部分分解」とした方がよいのではないですか。 ○岩田委員  文献のとても細かいところまで実は覚えていないのですが、恐らく引用した文献で乳 清部分分解乳となっていたのだと思います。 ○山城委員  これは文献を引いたということですね。わかりました。 ○岩田委員  すみません。あらかじめ申し上げておけば良かったのですが、今のII-15ページの9 行目に、「後者ではミルクアレルギーやアトピー性皮膚炎」と書いてありますが、これは 実際には「牛乳アレルギー」の方がこのガイドの流れとしてはより適切かと思います。 ○柳澤座長  「ミルクアレルギー」という言葉が使われているのはそこだけですね。 ○岩田委員  はい、確かそうだったと思います。 ○柳澤座長  この部分に関して何か他にご意見がございませんでしょうか。非常にたくさんの文献 が付けられています。  参考5の「ベビーフードの利用について」に関しては、堤委員、何かありますか。 ○堤委員  これは現状に即して上手に利用してくださいということで、II-21ページに留意点を 挙げてあり、この表現でよいのではないかと私は考えております。 ○柳澤座長  先ほどの議論の中にも一部出てきましたけれども、他に参考5としてII-20、II-21ペ ージに記載されていることに関して何かご意見はありますか。吉池委員もよろしいです か。  ではその次は参考6の「1日の食事量の目安について-『食事バランスガイド』を活用 して、家族(成人)の食事量から1日の食事量の目安を考える-」、これについて堤委員か ら何かありますか。 ○堤委員  II-3ページの表5「離乳食でわからないこと」というところで、「食べる適量がわから ない」と答えている方が46.4%と、2人に1人いらっしゃいます。ここの見出しにもあ りますが、やはり家族の食事の取り分けを考えたときに、子どもがどのくらい食べたら いいのか何か目安を示せないかということで、「成人の食事バランスガイド」を基に1 歳の子どもですとどのくらいの量になるか検討してみました。II-22ページに枠囲みで コマがあり、その下に説明文「成人の料理の組合せ例はおおよそ2,200kcal」とありま す。1歳の子どもの食事摂取基準を見ますと、男の子が1,050kcal、女の子ですと950kcal ですから、約1,000kcalが1歳の子どもの目安となります。そこで成人の約半分という ことがわかります。それでは主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物などコマの中のも のをすべて半分にすればいいかというと、そうではありません。この時期は成長期なの で、例えば牛乳・乳製品は半分ではなくて、大人と同量にした方がいいのではないかな ど、いろいろなことを勘案してエネルギーについて計算しました。すると、II-22ペー ジの枠囲みの中の、ちょうどコマとコマの間のところを見ていただきますと、主食と副 菜と主菜はそれぞれ大人の1/2弱程度になります。数字的にはちょうど0.4倍がいいの ですが、「0.4倍あげてください」というのも実際的ではないので、1/2弱程度という表 現になりました。また牛乳・乳製品につきましては、大人と同量を、果物は1/2程度を 与えると、ちょうどエネルギーは1歳の子どもの食事摂取基準を満たすようになりまし た。また、タンパク質の量についても加重成分平均値から計算しますと、ちょうど今申 し上げたように、主食、副菜、主菜がそれぞれ1/2弱、牛乳・乳製品は同量、果物は1/2 程度でほぼよいのではないかとなりました。ですから、これを目安にしていただくと、 大人の食事からの取り分けもしやすいのではないかと考えています。  間食についてですが、最近は間食というと、甘いお菓子やスナック菓子をイメージす る保護者も多いので、この時期の間食は食事の一部であるということを中央の四角の中 に入れ、「菓子類や嗜好飲料は離乳期を完了してから」と書いています。最近は離乳のか なり早い時期からお菓子的な間食を与える傾向が非常に強いので、そこに警鐘を鳴らし ています。そして間食というのは食事の一部ですので、食事で摂りきれない「おにぎり や、ふかしいも、牛乳、乳製品、果物などを間食としてあげてください」としています。 また時間を決めて与えないと本来の食事が取れなくなるので、「時間を決めて与えましょ う」という注意書きを加えてあります。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。大変工夫されてあると思いますけれども、どなたか ご意見はありますか。吉池委員、特に「食事バランスガイド」との関連ではどうですか。 ○吉池委員  「食事バランスガイド」自体があまり栄養素、エネルギーの指摘範囲についてストラ イクゾーンで目指しているものではなく、かなり大まかなものとなっています。家庭で の親の食事、子どもの食事を考えると、一方では、育児雑誌を見ながら細やかに塩や調 味料を測っている人がおり、一方では親も含めて食生活が大いに乱れているケースも多 いわけです。後者の方を考えると、ごく大まかな目安だとしても、やはり子どもだけで はなくて親の食事を見直しながら、大体このくらいというファーストステップを踏むに はこのくらいの単純な整理がよいのかなと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。離乳食を工夫して作るときに、家族全体の食事をよ く見直していただくのは非常に重要な点ではないかと思います。他にご意見はあります か。 ○山城委員  先ほどの偏食というところで、少し説明不足なのでもう一度説明をさせていただきま す。先ほどお話しした母親たちの悩みの中で偏食というのは2位にランクされているぐ らい、かなり母親たちは悩んでいる。けれども偏食というのは、赤ちゃんが食べるよう になって初めて自分で「嫌だ」という意思表示する。非常に大事な自我の芽生えだと、 むしろポジティブにとらえていただきたいのです。簡単に言うと、偏食といってもある 特定の食べ物は食べないかもしれないけれども全体的な栄養バランスが取れていれば、 それで十分であるということです。また、子どもが食べないことはあるかもしれないが、 それはずっと続くわけではなくて、1、2週間したらまた他のものも食べるようになる。 そういう傾向がどの子どももあるわけですから、偏食というとらえ方を何らかの形で支 援をするというのが、やはり大事なことだと思います。これだけ悩みを抱えていらっし ゃるわけですから、やはりそれに対する何らかの回答が必要だと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。何か全体を通じて、特に「離乳編」に関してご意見はござ いますか。  それでは最後に「関係資料」という部分に関して、事務局の方から説明がありますか。 ○河野母子保健課栄養専門官  それでは、お手元の資料の「III 関係資料」の部分ですが、資料1から4まで、四つ の資料を付けています。またIII-1ページの「資料1 改定 離乳の基本」ですが、記載 に一部誤りがあって、平成17年ではなく平成7年のものです。現行の通知文を参考と いうことで、資料で添付しています。  続いて、III-4ページからは、資料2の「妊産婦のための食生活指針」ということで、 昨年2月に公表した内容を資料も含めて整理をしています。  III-8ページは、資料3「楽しく食べる子どもに〜食からはじまる健やかガイド〜」と いうことで、これも私どもの局で平成16年2月に取りまとめた、いわゆる食育の視点 から発育・発達過程や、こういうものを食べる力をはぐくみましょうということを整理 したものが、III-8〜III-10ページまで、資料も含めて概要が添付されています。  最後に資料4として、食事摂取基準ということで、III-11〜III-14ページまで概要を載 せています。  この他、III-15ページはこの研究会の名簿、さらにIII-16ページは研究会の開催経緯と いうことで、最終回はまだ記入していませんが、報告書になるときにはここに日にちが 入った形を考えています。以上です。 ○柳澤座長  ありがとうございました。これで一通り、ガイド案の全体についての議論を終わった ところですが、何かございますか。 ○吉池委員  資料のIII-8ページですが、あまりページを費やせないとは思うのですが、今回母乳の 支援例として、いろいろな施設、地域がかかわっての例が幾つか挙げられています。「食 からはじまる健やかガイド」の中でも、いわゆる支援的環境をみんなで作っていこうと いう、いろいろな人たちのかかわりが示された図があったと思いますが、それと今回の 母乳の推進はつながると思いますので、その部分に1ページ割いていただければよいの ではないかと思いました。 ○柳澤座長  他にございますか。瀧本委員、何か用意していることがありますか。よろしいですか。 他にございますか。朝倉委員、どうぞ。 ○朝倉委員  ここの参考資料のIII-5ページからIII-6、III-7ページの参考というのはどういう意味で しょうか。食に関する項目があるので載せたということですか。あるいは授乳や離乳に 関してここは非常に関係するからという意味の参考なのでしょうか。 ○河野母子保健課栄養専門官  今ご指摘の部分については、本文中で申し上げますとI-12ページの部分に「授乳の 支援を進める5つのポイント」の「授乳の支援は」というところがありますが、基本的 に授乳の支援というのは乳房だけの管理といった支援をするわけではなく、そもそもの 母体への支援になります。ですから母子の健康状態や乳汁分泌にも関連があるので、「妊 産婦のための食生活指針」を踏まえた支援を行うということで、その参考資料として関 係資料2は付けています。 ○朝倉委員  何となくわかるのですが、この体重増加曲線をきちんと守っていけばおっぱいがたく さん出るというエビデンスは何もないだろうという気がするのです。体重の推奨体重増 加量を守ると、産科の疾患が少なくなる、あるいは分娩の混乱が少なくなるということ で、おっぱいがたくさん出るというのはなかったような気がします。 ○河野母子保健課栄養専門官  必ずしも乳汁の分泌だけを目的にしているわけではなく、母子の健康を目的にしてい ます。そういった観点からは低出生体重児の問題などさまざまな問題がありますので、 総論的かつこうした基本的な情報を踏まえた上で、支援を行っていただくということで 掲載しています。 ○朝倉委員  おっしゃることはその通りだと思うのですけれども、このガイドを渡されて、これを 見た医療保健関係者が、おっぱいを出すためにはこれを守っていかなければいけないと いうようなことで、妊婦に啓発をしていくことになると困ると思ったので、少し発言を させていただきました。 ○柳澤座長  どうでしょうか。他にありますか。  それでは時間も来ましたので、本日の検討については、ここまでにしたいと思います。 今後の日程について事務局の方からお願いします。 ○関谷母子保健課長補佐  本日いただきましたご意見を基に修正を加えていったん取りまとめさせていただき、 2月第2週目から2月末日頃まで、項目ごとにパブリックコメントという形で厚生労働 省のホームページ上で意見募集を行いたいと考えています。その結果も踏まえて、次回 は3月14日水曜日、14〜16時で最終会の開催を予定しています。会場が決まり次第、 また文書にてご案内いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○柳澤座長  本日たくさんのご意見をいただき、それに基づいて案を修正するわけですが、その修 正については、事務局で修正をしていただいたものを私の方で確認させていただくとい うことでよろしいでしょうか。もしご了解が得られれば、そうしたいと思います。よろ しいでしょうか。ありがとうございます。それではそのようにさせていただきたいと思 います。  時間は数分残っていますが、これをもちまして第4回の研究会を閉会させていただき ます。どうもありがとうございました。  それから、パブリックコメントは、修正を確認した上で募集するということですね。 それを忘れていました。どうもありがとうございました。 (了)                     (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 母子保健課 予算係(内線7936)     電話03−5253−1111(代)