06/12/13 第4回中小企業における障害者の雇用の促進に関する研究会議事録 第4回「中小企業における障害者の雇用の促進に関する研究会」議事録 1 日時    平成18年12月13日(水)10:00〜12:00 2 場所    厚生労働省専用第21会議室 3 出席者  ○参集者    今野委員、小川委員、金子委員、小林委員、原川委員、藤原委員    堀江委員、村上委員、森戸委員、輪島委員                        (五十音順、敬称略)  ○事務局    岡崎高齢・障害者雇用対策部長、    土屋障害者雇用対策課長、浜島障害者雇用対策課調査官、    白兼障害者雇用対策課主任障害者雇用専門官、手倉森障害者雇用対策課長補佐、    澤口障害者雇用対策課障害者雇用専門官 4 議題 (1) 関係者からのヒアリング   ○ A氏  E株式会社   ○ B氏  株式会社F   ○ C氏  株式会社G   ○ D氏  株式会社H  ※ 議事非公開(個人に関する情報を保護する必要があるため)  ※ 議事録公開 ○今野座長  ただいまから、「第4回中小企業における障害者の雇用の促進に関する研究会」を開 催します。本日の出欠状況ですが、倉知委員、佐藤委員がご欠席です。堀江委員は遅れ ていらっしゃいます。また、岡崎部長が所用により途中で退席される予定です。  今回、委員の交代がありましたのでご紹介します。末永委員に替わり、日本労働組合 総連合会総合労働局雇用法制対策局部長の村上委員です。ご挨拶いただけますか。 ○村上委員  ただいまご紹介いただきました、連合の雇用法制対策局の村上でございます。委員が 交代して、不勉強ですがこれから勉強して参加させていただきたいと思います。よろし くお願いいたします。 ○今野座長  本日は関係者の方からヒアリングすることになっています。障害のある方で、中小企 業に勤務されている方の立場からお話をいただくために、今日は4名の方にご出席いた だいています。ご紹介はそれぞれご報告いただく際にさせていただければと思います。  また、本日の会議の公開の取扱いについてですが、第1回の研究会において申し合わ せいただいたとおり、「厚生労働省における審議会等会合の公開に関する指針」におけ る「個人に関する情報を保護する必要がある」場合に当たると考えますので、非公開と することとし、議事録については議事の最後にご議論いただき、差支えがないというこ とでしたら個人名を伏せた上で公開をしたいと考えています。公開についてはそのよう なことでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○今野座長  それでは、本日の議事に入りたいと思います。先ほど申し上げたように、議題1は 「関係者からのヒアリング」です。また、本日、時間に余裕があるようでしたら、お手 元の議事次第にあるように議事2として、これまでの議論を踏まえて委員の間で意見交 換を行いたいと思っています。  まず、今日のヒアリングの進め方について、事務局から説明いただければと思います。 ○障害者雇用専門官  説明させていただきます。ヒアリングの進め方ですけれども、今日は4名の方にお越 しいただいていますので、お1人、それぞれ5分程度お話をいただいて、その後質疑を 10分程度ということで進めさせていただければと思います。本日、ヒアリングにかかる 資料として、お手元に非公開資料1から5を用意しています。ご確認いただき、もし乱 丁等がありましたら教えていただければと思います。また、今日、支援者の方にご随行 いただいていらっしゃる方もいますので、質疑の際は支援者の方から適宜ご発言をいた だくことも可能とさせていただきたいと思います。  ヒアリングの順番ですが、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの順番でお願いしたいと 思います。よろしくお願いいたします。 ○今野座長  早速、ヒアリングに入りたいと思います。最初はE株式会社(情報通信業)にお勤め のAさんです。よろしくお願いします。 ○A氏(E株式会社)  E株式会社で採用を担当しているAと申します。おはようございます。  早速、お話していきたいと思います。まず、簡単に自己紹介をします。私はAと申し まして、現在39歳です。中途、全盲の視覚障害でございます。主に今やっている内容と しては、うちはIT系の会社なのですが、そちらで採用の業務をメインに遂行していま す。基本的にはパソコンを使いながらの作業になっていきますので、そのように思って いただければと思います。  これから3つのこと、具体的にどのような仕事をしているか、あと会社に対しての配 慮、最後に障害者雇用をどうやってこれから広げていくか。その辺をお話ししていけれ ばと思います。  仕事内容からですが、お手元に事前にお配りした採用のフロー表、タイトルを忘れて しまって申し訳ありません。非公開資料をまず簡単に参照いただければと思います。こ ちらの表を説明させていただきます。  こちらの表は主に採用業務、弊社といいますか、一般的な採用フローが書いてありま す。その中で、具体的にどういうことを私がやっているかを示した表です。いちばん右 の「実績」に○が付いているかと思うのですが、そちらが実際に私が携わった仕事でそ ちらをやっています。具体的にかいつまんでお話すると、採用の企画から実際の運用の 細部まで私がやっています。例えば、採用計画などについて「年間で何人採ります」な ど、年間スケジュールをパソコンを使いながら提案書、企画書を作り上げていきます。 そして、実際に経営役員に稟議を上げる仕事をやっています。  予算についても、その出所というか、予算の数値のデータを外部の媒体の業者であっ たり、外部の企業からいろいろ情報を得たり、あと、今までの事から予算を立てたりし ています。こちらも実際にはExcelを使いながら仕事をしています。  会社説明会や面接ですが、会社説明会については、例えばいま私のセクションである 採用担当には私を含めて3名います。その部内でいろいろ議論しながら企画、コンテン ツを作り上げていくことをやっています。面接については、実際に私のほうで面接を行 っているのですが、当日はパソコンを持込み、応募者といろいろヒアリングをしながら パソコンでメモをとっています。その他、内定などの話になりますと、実際に給与とか 稟議ということもパソコンを使いながらやっているという現状です。  次に、どのような会社の配慮があればいいかという点をお話します。全盲なので、会 社がやっている事としてはパソコンの支給です。ただ、弊社は社員1台ずつパソコンを 支給していますので、特に障害者だからどうということではないのですが、一応パソコ ンの支給があります。あと、画面を音声化するソフト、大体3万円前後のものでWordや Excelが使えますので、そのようなものを支給していただいてやっています。  それ以外に、弊社のかなり特質的なことではあるのですが、自社開発のグループウェ ア、社内ネットワークというものをこの間、つい1年前に入換えを行いました。そのと き、音声化にならないかということで役員と対応してもらった結果、結局1,000万ぐら いかけてもらい、実際にグループウェアを作ってもらうなど配慮をしてもらいました。 そういう面では良い会社だなと感じています。  今後の障害者の拡大といった辺りの話をさせていただきます。採用の担当をしている ものですから、障害者採用という立場でちょっとお話をします。私どももそうなのです が、障害者採用でネックになっているのが配属先とのコンセンサスがいちばん問題にな っています。例えば、人事のほうで実際に「この人、いいのだけど」という人がいても、 なかなか配属先では「うん」と言ってくれないことが多々ある状況です。その辺をうま く緩和できるようなツールがあるといいかなと思います。例えば、今日お渡しした先ほ ど見ていただいた採用の資料、こちらは他社の視覚障害者の人事職ということで実際に 考えているという話がありました。このように作業内容をいろいろ見せたところ、人事 の担当の方も「これなら障害者採用で採ってもいいだろう」という話がありました。で すから、こういうように具体的に作業内容があると、障害者採用というのはもっと広が っていくのではないかと思います。  障害者当事者としてお話すると、視覚障害の場合、作業でやる仕事というのはなかな か時間的にも、晴眼の方に比べるとどうしても時間的に追いつかないことがあります。 やはり、障害者採用と言うとどうしても作業中心が多いのですが、そういう面では視覚 障害者という意味ではなかなか厳しいかと思います。ただ、実際、私のように企画する ようなところ、考えるようなところについては視力に関係なく、企画力が問われるよう な仕事ですので、そういう面では実は視覚障害には、実は向いているのではないかと思 います。  私のヒアリングは以上とさせていただきます。ありがとうございました。 ○今野座長  ありがとうございました。ご質問等がありましたらよろしくお願いいたします。 ○藤原氏  私は知的障害者の団体のリーダーです。通勤途上などの配慮、ご苦労がありましたら お願いします。 ○A氏  通勤途上については、実は視覚障害者はあまり関係ないのが現状です。1つの例とし て、ニュースとかで障害者に何か事故があったかというと、ほとんど聞かないと思いま す。皆さん、多分先入観で、「障害があるから通勤は駄目だろう」と思っていらっしゃ る方がいるかと思います。実際にはそのようなことはないというのが現状ですので、そ のようにお感じいただければよろしいかと思います。 ○小林委員  私もAさんと一緒の視覚障害、全盲です。いまのお話をお聞きしていると、Aさんの ケースは特殊なのか、あるいは今後第2、第3のAさんが生まれてくる可能性は大なの か。その点についてお伺いしたいと思います。聞くところによると、Aさんの場合には パソコンの操作で相当努力されて、結局採用の決め手になったとお伺いしています。そ の辺、いかがでしょうか。 ○A氏  実際にはレアケースではないと思っています。実は私も「タートルの会」という団体 に所属しています。こちらは中途視覚障害者の復職、再就職を考える会なのですが、こ ちらで何人か支援をしたことがあります。実際にあったこととして、普通にWord、Excel がそこそこ使えるぐらいの方と何人かお話をして、その人たちがまだ仕事を探している という状況でした。その方たちは実際に私がいろいろ、どのようなことが出来るのか、 どのようなアピールをすればいいのかを指導しました。その人たちは、契約社員か正社 員かは確認していませんが、今はもう社員になっています。採用担当や人事担当になっ ている事例があります。そういう面で、私はレアケースというわけではないと思ってい ただければいいかなと思います。 ○小林委員  この情報についてですが、Aさんの場合にはどちらから情報を得たのでしょうか。 ○A氏  実は、視力障害になってからWindowsなどを使っているのですが、基本的には独学で やってしまいました。最初は東京都盲人福祉協会の方が「音声でやるとパソコンができ ますよ」ということを教えてくれたのがきっかけです。ただ、実際には独学です。  多分、晴眼の皆様もそうだと思うのですが、パソコンをスクールで習ったというよう な話はそれほどないと思います。それと同じで、実は視覚障害でも使い出せば実際には 使えるというのが現状だと思います。「パソコンが音声で使える」という情報があれば、 もしかしたらそれほど苦もなく、同じ視覚障害でも使えるのではないかというのが私の 想いです。このような回答でよろしいでしょうか。 ○小林委員  いや、私が聞きたいのは、情報というのは就職の際の情報です。就職に当たって、ど ちらからそういうお話を入手されたのか。どこで採用してくれるのかというお話です。 ○A氏  どこで採用というと就職活動の話ですか。 ○小林委員  そうです。 ○A氏  就職活動については、私自身はハローワークを通して紹介してもらいました。私の場 合、父親に目の代わりになってもらって、障害者求人の求人票を見てもらいながら活動 しました。ハローワークの窓口で紹介してもらって、面接を受けに行ったという流れで す。このような感じでよろしいですか。 ○小林委員  1人でたくさん質問して申し訳ありません。先ほどのお話をお聞きしていると、人事 では「この人ほしいのだが」という場合でも、実際の配属先では「ちょっと」というケ ースがあって思うように採用が進まないケースがあるとお聞きしたわけです。この場合、 最近よく言われているジョブコーチ制度を活用することによって、この辺がかなりクリ アできるのではないかと思うわけです。いかがでしょうか。 ○A氏  具体的に、ジョブコーチの定義を簡単にもう1回教えてもらえますか。 ○小林委員  私もその辺のことは詳しくないのですが、いわゆる障害を補っていただいて、アシス タント的な役目を果たしていただく。具体的には、会社と障害当事者の間のパイプ役、 あるいは障害者当事者と社員とのコミュニケーションのパイプ役ということをやってい ただけるような方だと聞いています。特に、知的や精神の方の間ではこのことがかなり 話題になっているようですので、詳しくはそちらの関係者からお話いただければと思い ます。いかがでしょうか。 ○藤原氏  その説明でいいと思います。 ○小林委員  そういう制度を十分活用することによって、たとえ視覚障害者であっても、就職した 場合に定着が図られることが考えられると思います。どうでしょうか。 ○A氏  そうですね、そこまで行けば多分定着はすると思います。ただ、いちばん最初のきっ かけ、例えば配属先への持っていき方だと思っています。要するに、なぜそのようなこ とが起きるかというと、配属先の承認者、部長やマネージャーが障害に対してどのよう な仕事が実際にできるかを認識していないところが問題なのです。それをクリアできる ような方法を取る。私は先ほど、「何かそのようなツールを」と言ったのですが、それ が例えばジョブコーチであれば担当の方が実際に配属先となるマネージャー、部長への ある意味説得という感じではないかと思います。そういうことで実際、このようなこと ができますよ、とか補っていければ、障害者の配属という面で見れば成功する可能性は あるのかなと思います。ただ、専門的ではないので、あまり細かい回答にはなりません。 そのようなことでもよろしいでしょうか。 ○小林委員  もう1点だけお願いします。Aさんのケースとはちょっと外れるかと思うのですが、 特に大企業での間ではヘルスキーパーということで、社員の健康管理を行う。視覚障害 者の場合にはたまたま、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師という資格を持っ ている方が非常に多い。それらの人たちの就職口ということで、企業の中に診療室のよ うなものを設けて、そこで社員の健康管理、あん摩マッサージ指圧、あるいははり、き ゅうを活かしてやっていくということが試みられています。  ちょっと下火になっていたものが、ここに来てまた盛り返したような状況にあるよう です。中小企業の場合、なかなかそこまでの力量というのは難しいと思うのですが、こ れが1社なら難しいけれども、2社、3社、4社とか、グループを組めば視覚障害者が 得意とする分野での仕事も確保できて、働く場が確保できるのではないかと考えていま す。Aさん、ご自分の職場とはちょっと違うお話ですが、いかがでしょうか。 ○A氏  実は、私の家内がヘルスキーパーとして実際に働いています。家内の話をしてしまっ て恐縮なのですが、実は家内はそれなりの大きい企業で、利用者もかなり多いという話 は聞いています。そういう意味では、やはりヘルスキーパーを置くという前提としては、 利用者の数を確保するというところがネックらしいという話は聞いています。その意味 ではいまお話されたような、何社か合同でやるということ、それなりに利用者を増やし ていこうという考えについては、このケースでは多分成功するのではないかとは思いま す。利用者の数が確保できればという観点で見ているのかと思いますので、そのような 面では多分良い話ではないかと思います。ちょっと、個人的な意見ですが以上です。 ○金子委員  伺っていて思ったのは、目のご不自由な方に対し配慮が必要な点は、精神とか、ほか の障害とは違うなということでした。やはり、障害の種類によって違うのかなと思いま した。目のご不自由な方については、特に配置先のご理解という点では共通の面がある と思います。お仕事をなさっていけば適宜いろいろなことがお出来になる、集中力があ るということで優れている面があると思います。導入部分についてジョブコーチ的な理 解者を増やすという意味での役割が、本当はあったほうがやりいいのだろうと思いまし た。以上です。 ○今野座長  私から1つだけ質問させていただけますか。採用にかかわる業務リスト、仕事リスト が非公開資料にあります。この中で、Aさんはこれとこれを担当していますという表が あります。これがもし、Aさんの会社の現場の業務でこういうリストが全部あって、全 盲の方がいらしたときにはこことここ、こういう対応ができるというリストみたいなも のがあったら、現場との折衝が大変やりやすいという趣旨で、先ほどの話、配属先との コンセンサスを考えたとき、採用のような作業リストがあるといいなとおっしゃられた のではないかと思いました。その点についていかがですか。 ○A氏  まさにそのとおりです。よくホームページなどで、例えば「障害者が実際こういう仕 事をやっています」というメッセージみたいなものがあるのですが、具体的にこの人は どのような作業をしているのかが見えにくいということがあります。そういう資料を現 場に持っていっても、「うーん」と悩んでしまうのが現状なのです。  先ほども言ったとおり、ここまで作業ベースにブレイクダウンすると「このようなと ころが出来る」と説得ができる。結論としては、大まかなやっていることというよりは、 実際に、この作業とこの作業ができる、というところがないと逆になかなか現場も「う ん」と言ってくれないのが現状です。  とは言っても、うちの会社もそこまでできていないものですから恐縮しています。現 場との溝を埋めるという面では、きちんと作業ベースに落としていくことが必要かなと 思います。 ○今野座長  ありがとうございます。ほかにございますか。 ○金子委員  このリストを拝見したのですが、このようにご自分で出来ることはあると思います。 そうすると、導入の部分で情報交換などの援助が必要なのではないか。その辺、どうい う援助がどの期間あればいいということがわかるといいと思いました。 ○今野座長  よろしゅうございますか。一応、この辺でAさんのヒアリングは終わりにさせていた だきます。Aさん、ありがとうございました。 ○A氏  どうもありがとうございました。 ○今野座長  次のヒアリングに入りたいと思います。ご紹介いたします。株式会社F(製造業)に お勤めのBさんです。よろしくお願いします。 ○B氏(株式会社F)  おはようございます、株式会社FのBです。説明させていただきます。私はいま42歳 です。平成4年11月、仕事中の墜落の影響で脊髄損傷で車椅子になりました。そのあと、 治療とリハビリということで、平成6年4月まで入院しておりました。自宅に帰ってき て、仕事が決まっていませんでした。半年間、スポーツということで、車椅子バスケッ トをしたのが唯一外出するような形でした。  いまの会社の社長に会い、「うちに来ないか」と誘われて、平成7年1月から入社の 運びになりました。入社に際しては、車椅子、障害者がその会社に誰もいなかったとい うことで、会社の受入れ側としてもどうなのかという点が実際あったと思います。私の ほうが現地に行って、トイレは改造していただくこともなく何とか使えるだろう。それ で「よし、やってみようかな」という気持ちになったのが1つです。  この会社とは障害になる前からお付き合いさせていただいていました。事務所の半分 ぐらいは顔見知りで、よく遊びに行ったということがあり、入社するのに抵抗なく良か ったと思っています。  仕事内容としては、私の部署は顧客先、大手の製造工場なのですが、そこの建設や土 木、営繕、製造設備、物品の販売などということで、あらゆるものを顧客先の工場にサ ービスとして行っていました。私の担当というのは、この部署の管理をしてくれと言わ れました。最初は管理、のちに物品の販売も担当となりました。  また、パソコンのWindows95がちょうど普及しだした時期に重なり、会社もパソコン を取り入れるということで、私はパソコンの担当になりました。その中でネットワーク を組んだり、自社のソフトを開発したりという担当になりました。自分がそのシステム の担当になったということで、会社の中に自分の居場所ができたかな、認めてもらった かなという感じがしました。  あと、車椅子に対する会社の配慮ということでは駐車場の問題があります。私は自動 車通勤しています。他の社員の方は少し離れた所なのですが、私は玄関の横に専用のス ペースをいただき、そこに止めさせていただいています。会社の社屋は2階建てという ことで、階段しかなかったのですが、助成金を利用してエレベーターを設置していただ きました。慰安旅行や研修旅行でバスを使う機会があるのですが、そのときは「なるべ くならリフト付きのバスを手配してください」ということを担当の方にお願いしていま す。宿泊のほうも、車椅子で宿泊可能な部屋をお願いしています。  就職をして10年たって私が思うところは、やはり会社ですから人間同士、仕事は1人 ではできませんので、人間と人間との関係がうまく築けなければいくら技術を持ってい ても仕事にならない。その面では、社会性がいちばん大事なのかなと思います。簡単に 言うと、仕事は会社に入ってから覚えればいいかと感じています。以上です。 ○今野座長  ありがとうございました。ご質問がありましたらお願いします。 ○小川委員  「車椅子バスケット」という言葉が出ましたが、あなたの場合、脊損されてからスポ ーツとの出会いは障害を受けてからですか。 ○B氏  はい。スポーツに関して言えば、最初は車椅子の仲間に誘われて、「バスケットをや ってみないか」ということでやってみた。バスケットがどのようなものか見たことがな いですから、最初は見学して、それから車椅子を貸していただいて一緒にやることにな りました。そこで思ったのが情報交換というか、車椅子の仲間がいますので、その中で お互い、いろいろなことを教えていただきました。  いま、車椅子バスケットはやっていないのですが、車椅子テニスをやっています。車 椅子テニスでも全国の大会に出ていくと、いろいろな仲間がいます。そこで人間関係も 広がりますし、障害のこともいろいろ知ります。やはり、仲間という形のつながりが出 来るのがいちばん良かったと思っています。 ○小川委員  特に、脊損の方々が非常に希望に燃えて、ちっとも「耐えて、耐えて」という状態は 感じられない。仲間意識というのは非常に素晴らしいものを持っている。それはやはり、 社会参加をするための行程の中で、いま移動される状態をBさんはおっしゃいましたが、 今日では地方公共団体も仲間も、車椅子がちっとも不自由なく生活できる、そういうバ リアフリーの体制を望まれていると思います。  いま、日身連という組織の中で、車椅子の方々の移動の場合にスロープ、エレベータ ーはだいぶ多くなりました。ただ、橋状の横断歩道などで、そこにエレベーターがあっ たらいいかどうかという考えはありませんか。 ○B氏  大きい駅の周りにはかなり整備が進んできています。そういう所を使っていると非常 に良いなとは感じます。ただ、私の住んでいる所はそういうものがないものですから、 都会へ行くと便利だなというのはすごく感じます。 ○小川委員  もう1つだけ質問します。まだ若さがありまして、先ほどのAさんとは対象的なお考 えをお持ちになっているような感じを受けました。Bさんの場合、いわゆる設計関係、 それから販売関係とおっしゃいましたが、それについてはどのようなことを。 ○B氏  車椅子ですのでデスクワークが基本となります。私は物品の販売ということで、基本 的にはパソコンで注文を受けたり、電話をかけたりというのが主な仕事になっています。 商品ですので、客先へ納品という作業が出るのですが、それは他の方を付けていただい て、仕事の分担という形でさせてもらっています。  私は建築士なのですが、実際には設計の仕事はほとんどこの会社では行っておりませ ん。設計業務が出ることもあるのですが、そのときには時間的なものもあり、外注に出 しているという状況です。ただ、私から考えたことは、CADを使えばパソコン上で図 面を描くというのはかなり容易になってきていますので、車椅子の方であればCADオ ペレーターとして、描くだけという仕事であればかなりできるのではないかと思ってい ます。 ○藤原委員  就労が継続するための条件として、当事者としては技術とともに社会性が必要である というように言われました。企業側がもう少し、ハードの面と同時にソフトの面で、こ ういうことに気がついたら障害のある人の就労が継続しやすいということがあったらお 願いします。 ○B氏  先ほど、「人間関係」を1つキーワードとして挙げました。私の感じたところ、中小 ですと経営者の意識の問題がいちばん大きいのではないかと思っています。やはり、会 社の経営のトップが障害者を就労させてあげよう、みんな協力しなさいという形で進め ば、あとは本人の問題もあるのですが、そこがいちばん重要なところかなと感じていま す。 ○藤原委員  ありがとうございました。 ○小林委員  いまのお話に関連して、これは感想ということでお聞きいただきたいと思います。先 ほどのお話だと、旅行に行く際もリフトバスを用意してくれとか、あるいは宿泊先は何 とか車椅子対応にしてもらいたい。そういう希望が当事者にとっては当然のことなので すが、なかなか言いにくいのが現実だと思います。それが言えるということはやはり会 社の理解もあったり、あるいは同僚の理解があるからこそ、そのような希望がはっきり 外に出せると思っているわけです。その辺のご努力もされたわけでしょうか。 ○B氏  先ほど言われたとおり、なかなか最初は言い出しにくかったです。例えば、リフト付 きのバスであれば本当に台数が少ない。私の住んでいる所は地方なのですが、数年前ま では観光用のリフト付きのバスというのはなかったのです。地元で3台入れていただい たことをきちんとつかんでいます。「こういう所にバスがあるから、これを使ってくだ さい」という、具体的な提案をさせていただきました。また、東京都であればいくつか バス会社がありますので、その中から選択してもらうという形でお願いしています。確 かに言いづらいですね、予算は少しはかかりますので。 ○藤原委員  いまのお話を聞いて、企業側や一般の人にとっては障害者が思っている情報が少ない わけですから、こちらから提供しなければいけないと思いました。ありがとうございま す。 ○今野座長  ほかにございますか。それではBさん、どうもありがとうございました。 ○B氏  どうもありがとうございました。 ○今野座長  次のヒアリングをさせていただきます。まず、ご紹介いたします。株式会社G(和洋 菓子製造販売)にお勤めのCさんです。グループホームJのIホーム長にもお見えいた だいています。よろしくお願いします。 ○C氏(株式会社G)  おはようございます。私はCと申します。47歳の独身です。知的障害があります。こ れから仕事のことについて話をさせていただきます。  私は昭和53年、L市立養護学校高等部を卒業して、和洋菓子製造・販売の株式会社G に入社しました。きっかけは株式会社Gが障害者を雇っている会社だったので、お父さ んが直接会社に話をして、実習させてもらいました。実習は失敗しなかったので、社員 として入社できました。  最初にもらった給料は4万円ぐらいでした。仕事は包装部で、洋菓子の折りや缶を段 ボールに詰めるラインの仕事でした。私がやっていたのはほとんどが最後の段ボールに 詰める仕事でした。最初は仕事が難しくて怒られてばかりいて、辞めたいなと思いまし た。仕事を覚えるには2年ぐらいかかりました。仕事では係長のMさんや係長補佐のN さんに面倒を見てもらいました。Mさんは現在部長さんです。  社員旅行やボーリング大会の行事はとても楽しみでした。最初のころは野球部にも入 っていました。会社では社員と仲良くしたいと思っていましたが、友だちになってくれ る人がいませんでした。でも、Oさんという配送の人がやさしくしてくれて、家が近か ったのでよく一緒に帰ったり食事をしました。いい人だなと思っていましたが、私が入 社してから5年ぐらいたったとき、仕事中に倒れて亡くなってしまいました。いまでも 命日にはお墓参りに行きます。  入社してからしばらくは、お父さんが私のことが心配で、ときどき会社に来て工場長 のPさんや係長のMさんと話をしていました。  仕事が終わるとつまらないので、すぐ家に帰らないで、Q駅前や駅ビルで時間をつぶ しました。そのとき、女性から声をかけられて仲良く話をしているうちに、150万円ぐ らいの指輪の契約をしてしまい、お父さんが取り消しました。その他にも絵や英会話の 契約もしてしまい、お父さんが取り消しました。  休みの日は月に2回ぐらい、養護学校OBのサッカーチームで活動していました。そ れ以外の休みには、友だちがいなかったのでほとんど家にいて楽しくなかったです。  平成16年2月にグループホームJに入居しました。グループホームに入ってから仲間 がたくさんできて、仕事が終わって帰るのが楽しみになりました。Q駅前や駅ビルの寄 り道もしなくなりました。グループホームでは自分で働いた給料を計算して生活をして いるので、無駄づかいをしなくなりました。声をかけられても、高い物は買いません。 働かないと生活ができないという気持になりました。  株式会社Gには19歳で入所して、今年で28年目です。いまは給料は月17万円から、多 いときで20万円ぐらいもらっています。定年まであと13年働きたいと思っています。  これからの夢はグループホームでいろいろなことを学んで、人付き合いもうまくなっ て、独り暮らしをしたいです。そして、いい人がいたら結婚してみたいです。以上です。 ○今野座長  ありがとうございました。ご質問等、お願いします。 ○藤原委員  彼とは、育成会の世界大会があり、海外に8日間行ってきました。多分、就労を継続 する場合、やはり孤独というものが知的障害者には非常に困ると思います。家庭で親が できないことが、グループホームという仲間でいろいろなことができるということだと 思います。  給料も上がっていったということで、知的障害者の場合、キャリアアップが少ないの ですが、会社の中で給料が上がるのは試験があるのですか。それとも、そうではなくて、 何となく上がっていったのですか。 ○C氏  今回から試験がありました。 ○藤原委員  試験があったのですか。それと、楽しみがあるから働けるのでしょうか。やはり、お 金というのは非常に大事だと思います。その辺、いかがでしょうか。 ○C氏  お金が大事だと思います。 ○藤原委員  支援者のIさんにお聞きします。いまと同じようなことですが、就労が継続する条件 として企業だけでしょうか、企業を取り巻く地域でしょうか。その辺、参考になる話は ありますか。 ○I氏(グループホームJ)  いま、うちのグループホームには6つの住居があり、26人の人が生活しています。か つて、7、8年ぐらい前までは、一般就労率が9割ぐらいを保っていたことがあります。 当時は就労援助のようなものがあまりなくて、私もグループホームの職員をやっている のだか、就労援助の仕事をやっているのだかわからないぐらいでした。本人たちの生活 を維持していくために、就労を継続するための関わりというものをやってきたわけです。  そういう経験の中で、いま藤原委員がおっしゃった中で感じることとしては、かなり 企業側に対して熱意を持って接するという部分です。あと、事業主の理解を得るという ことと、現場との関係性が第三者によって調整される。いわゆる、ジョブコーチ的なも のが非常に重要だと思います。  そういう中で、問題が大きくならないうちにいろいろ解決していく、調整していくこ とが重要かなと思います。何といっても重要なのは、職場の中にごく自然な会社の関係 性を超えた、人と人との暖かいかかわりと言うのでしょうか。先ほど、Cさんの話にも ありましたけれども。 ○藤原委員  個人の名前をたくさん出されましたが、そのような人の出会いが大変刺激になってい ると思います。 ○I氏  そうですね。それによって定着するか、しないかにかかわってくる感じがします。  後追い退職というように現場実感の中で感じていることがあります。そういう方が定 年退職を迎えられると、本人は途端に元気がなくなって、後を追うように仕事に足が向 かなくなって退職してしまう。本人にとっては給料をたくさんもらうとか、いままでの 仕事の生きがい、誇りというよりは、非常に大きな部分としては人と人とのつながりみ たいなものが重要である。その意味では、生活場面においてもそれ以外の仲間とか、い ろいろな人たちとのかかわりみたいなものがある意味では職場の定着を支えていくのか なと思います。 ○藤原委員  世界大会に行ったときは非常に大きなお金が要った。確か、参加費だけで31万か32万 かかったと思いますから、おこづかいとしては足して40万ぐらい要ったのではないかと 思います。いまそのような、大きな買い物はないでしょうか。そういう大きな買い物を するために毎月のお給料を貯めておられるのでしょうか。それが楽しみになって仕事を しようという意欲につながるのか、その辺をお話ください。何回、海外に行きましたか。 ○C氏  もう、10回近く行っています。 ○藤原委員  大きなお金でしょう、貯金がガサッと減るでしょう。惜しくないですか。 ○C氏  それは別に。 ○藤原委員  また、働いて貯めようという意欲が。 ○C氏  はい。 ○藤原委員  お金を使うことによって、また働く意欲が出るというのが知的障害の人の特色かもわ かりません。だけど、親はどうしてもお金を使わせないようにするのです。年金までみ んな貯めてしまうのですが、やはりお金を使う稽古もしないといけないなと思います。 以上です。 ○小川委員  Cさんは大変努力家のように見受けました。いまの仕事の給料も、最初は4万円から 16万円、20万円にも上がっている。この努力というのは素晴らしいと思います。それら に対して、自分で努力しているとお考えですか、上司が良かったですか。いま、藤原委 員からも海外まで出られたというお話を承りましたが、どうですか。 ○今野座長  上司が良かったですか。 ○C氏  はい、そうです。 ○小川委員  いま、上司の方から「自然」という状態を発言をしていただいて、非常に心打たれて います。社会という状態でどういうハンディ、世界大会の中で、いま障害を取り除こう という動きも出ています。ハンディを持っていても、持っていなくても、楽しく努力さ れていると思います。グループという状態ではどうか、仲間をどんどん増やしていただ いて、ハンディを持っていてもちっともつらくない。こういう思いですか。 ○C氏  はい。 ○小川委員  ありがとうございます。 ○金子委員  精神の方たちのグループホームですとなかなか、いま働いていらっしゃらない方が利 用者になっているケースが割合多い。そうすると、働いている人が足を引っぱられてし まって働くのをやめてしまうケースもあるのです。そういうことから言うと、グループ ホームですと同じような会社で働いているとか、あるいは違う企業だけど働いている人 たちだけのグループホームという形がある。そうすると、お互いに切磋琢磨して、いろ いろな仕事も教わったりして、仕事の定着がいいというケースがあります。  そういう点で、これから働くという場面だけではなくて、働いている人たちを対象に した、生活の支援を含めたいろいろな支援があることが仕事の定着につながると思いま す。それは知的障害の方も、精神の方も同じだろうという感じがします。 ○今野座長  折角ですから、Iさんにコメントをいただきたいと思います。いまのご意見について、 何かありましたらお願いします。 ○I氏  かつて、9割一般就労と申し上げましたが、いま実は5割を割っています。社会情勢 の変化というか、いろいろ面倒を見ていただいた中小企業が軒並み、経営的な問題で雇 用継続が難しいような状況にあります。そういう中で、年々一般就労率は低下をしてい る状況があります。ただ、委員がおっしゃったように働いている人たちから見ると、働 いていない人たちのことをある意味では羨ましく思ったりという傾向もありますが、そ の辺はうちのグループホームの場合は、お互いにかなり刺激し合いながら。逆に、一度 一般就労を経験した人に関しては一時的に作業所や施設に通いますが、「いまはストレ スがない暮らし、数に追われない仕事でホッとした」と言っていますが、半年もしない うちに働きたいという形で再就職を希望する傾向があります。ですから、働いている人 も働いていない人も、仲間の中でいろいろと刺激し合ったり、影響し合う力が非常に大 きいのかなと思います。 ○藤原委員  Cさんにお尋ねします。養護学校の高等部を卒業された同級生で、就労されていない 方も多いと思いますが、就労に興味を持っていないこともある親に対して、こうしたほ うが就労できるだろうということと、それと同じことで企業側にこんなふうにしていた だいたら、いまは同級生は就労していないけれども、これからも就労が進むだろうとい うことで、何かコメントはありますか。後ほど、Iさんにも同じことをお聞きします。 ○C氏  ちょっとわからないです。 ○藤原委員  同級生で何パーセントぐらい就労していますか。同窓会はしませんか。 ○C氏  しますが、あまり来ないです。 ○藤原委員  Iさんは、その辺はどうでしょうか。いま、3つほど質問しましたが。 ○I氏  先ほどの話ではないですが、どうしても一般就労ではなくて作業所や通所授産施設に 通っている人たちは、その生活がだんだん当たり前になってしまう傾向があります。先 ほども申し上げましたように、なにがしか働いている人たちとの交流とか、ある意味で は一旦親元を離れて、いちばん重要なのは自分で働いたお金を自由に使う生活を何らか の形で体験できることがとても重要なのかなと思います。もちろん、働いている人の中 にも最低賃金除外の申請をしている重度の人もいますので、給料の額は少ないですが、 そういったものを生活保護で補ったりしながら自分の毎月の収入において、どう生活す るかを考えていくようなきっかけ。これは、かなり障害が重い人においてもサポートが あれば、そういったものが生活の実感につながっていって、働こうという気持につなが っていくのかなと感じます。 ○今野座長  ほかにありますか。それではCさん、Iさん、ありがとうございました。  次のヒアリングに入ります。ご紹介します。株式会社Hにお勤めのDさん、今日は代 表取締役のKさんにもお見えいただいています。それでは、よろしくお願いします。 ○D氏(株式会社H)  お手元にある非公開資料を少し簡単にまとめた形で発表します。  中小企業で働いて感じることとしまして、株式会社Hで働かせてもらうことで社長か ら、「病気を隠さないように。通院もあるし、隠すことより周囲から理解と協力を得る ことが大事」と言われました。精神病に対する人々の偏見があるのだということを常々 両親から聞いていましたので、会社の皆さんにも知られたくないという気持でおりまし た。  そんな中、採用が決まり、朝礼で社長から皆さんへ紹介されました。「人工透析を受 けながら働いている人もいる。心臓にペースメーカーを入れながら働いている人もいる。 精神に障害を持ちながら働いている人もいる。みんな病気と闘いながら頑張っている。 この尊さを一緒に働く仲間がいちばん理解し、適応できるように支えていかなければい けない。現代社会では、誰だって病気になる可能性がある」という話を交えて紹介して くれました。私は、人々の偏見が薄れていくのではないかという気持ちが芽生えたよう に思いました。そして、それは現実に日々仕事をしている上で、周囲の人たちの私に対 する対応からも伺えるようになっていきました。病気をオープンにすることによって気 が楽になりますし、隠すことに神経を使うのではなく、逆に周囲から理解や協力を得る ことができるようになっていくのだなと実感しています。  株式会社Hでの皆さんからの扱われ方は、健常者に対する対応と変わらず、冗談を交 えながら話してくれ、その接し方が病人さを思い起こさせず、とても嬉しく感じていま す。病気を持っているという重苦しい気持ちに押しつぶされずに働けるのも、周りの人 々、一緒に働く社員、理解ある環境で働いているからだと思っています。私の場合、株 式会社Hという会社、社長のご理解の下に正社員として雇用してもらっているので、精 神障害者であっても思ったとおりの収入ある生活を送ることができております。  統合失調症などの精神的な病気に対して理解ある会社で働くということは、とても幸 せなことだと思います。精神障害者に仕事は無理なことだと決めつけられることが、精 神障害者にとっての就職活動のネックになっていると思います。また、社会の受入れの 悪さからも、就労へのチャレンジが少ないと思います。私は社長と同伴して、当事者の 立場で就労体験を発表しているので、全国各地で社長の講演を何度か聞いております。 社長は働ける可能性があるのに、就労へチャレンジしないことは一種の諦めであり、人 としてそれ以上進歩しない、発展しない、成長しない、自己満足というぬるま湯にドッ プリ浸かっていることであり、惰性で人生を送っているようなもの。人は何に対しても 可能性がある限り、チャレンジ精神を持つことが非常に大切であると語っておられます。 私も、職場の皆さんの親切丁寧な指導の下、訓練を重ねていき、仕事を覚えることによ り仕事の仕方に慣れていくことから自信を付けていきました。仕事は、訓練すれば働け るようになっていくので、自信を持つことが大切なのではないかと思います。まさに、 「やってみなけりゃわからない。やってみよう、就職の精神」です。これらの実現には、 正規社員として雇用されている私たち精神障害当事者が、もっともっと声を大きくして 働ける実態を社会にアピールすることが必要と思います。  精神障害者であっても、健常者と変わりなく仕事ができるということを広く社会に伝 えていかなければならないと思っています。正規雇用されている精神障害者の踏ん張り どころであり、正規雇用されている私の課題です。そして、ある精神障害者は語ります。 「障害も1つの個性として、普通に認められる社会になることを望む」と。私も、その 意見に共感しました。病気を持っているからといって、見捨てられず雇用してもらって いる私は、社長にも会社の人たちにもすごく感謝しています。自分でも精神的に強くな り、職場定着できたと思います。会社では、精神障害を中心に正規雇用が8名、雇用を 目指して社会適応訓練中の方が6名の合計14名が、毎日休まず頑張って働いています。 社員として会社に入って7年目になります。これからも頑張ります。ありがとうござい ました。 ○今野座長  ありがとうございました。それでは、ご質問等がありましたらどうぞ。 ○藤原委員  現在、労働時間は正職員ですから週40時間でしょうか。それと、学生時代はどんな 生活だったのか。現在との環境の差の2つです。 ○D氏  週40時間、普通に1日8時間を働いています。学校を終えて東京に出てきて就職した のですが、長続きせずにすぐに辞めてしまって、地元で東京の仕事を探してまた出てき たのですが、それも長く続かず、そうこうしているうちに地元に戻って仕事をしたので すが、それも長く続かず、そしてまた東京に出てきてパートやアルバイト的な仕事を探 して寮に入ることを中心に生活していたのですが、そこでも探しては辞め、探しては辞 めの繰り返しで長く続きませんでした。そうしているうちに病気にかかって入院しまし て、地元の小規模作業所で働いて、そこで保健師さんに株式会社Hで働くようにと勧め られて働いております。 ○小林委員  失礼な質問かもわかりませんので、答えたくなければ答えなくて結構です。現在の生 活は、薬を常用しての生活でしょうか。 ○D氏  薬は夜に2錠、病気を治す薬と副作用止めを飲んでいます。 ○小林委員  それによって、安定はしているということでよろしいですか。 ○D氏  薬を飲むことによって安定していると考えています。 ○藤原委員  企業ではなしに、いまの暮らし、自宅通勤あるいはグループホームかアパートという ことと、アフター5、夜とか休日の過ごし方、それからお仲間についてお話ください。 ○D氏  自宅から通っていますが、父と母と暮らしています。休日は特に何もすることがなく、 家の中でブラブラしているような状態です。 ○藤原委員  友達が欲しいですね。 ○D氏  そうですね。時には同級生と会いますが、夜に飲むことが多い集まりなので、あまり 私とは接点がなく、そんなに友達というかグループでの活動はないです。 ○藤原委員  お金が貯まって仕方がないのではないですか。何かお金を使う趣味とか旅行とかをお 話いただきましょうか。 ○D氏  いま現在、大きな目標があるので、それに向かってコツコツ貯めている時点です。 ○小川委員  Dさんは、車の免許証を取るのにだいぶ苦心されたようですが、いまは車で通勤され ていますか。また、会社との距離はどのくらいあるのか。もう1つは、社長との信頼関 係。非常にK社長を信頼されている記事が載せられていますが、仕事の内容も併せてお 聞かせいただければと思います。 ○D氏  自動車の免許を取ったのは大変苦心して取ったのですが、いま現在は会社に車で15 分程度で通っています。でも私の運転がちょっと遅いのか、20分ぐらいかかったりもし ます。  仕事の内容は、ワイヤーハーネスと言われるトラクターの電機系統の製品の導通検査 と言いまして、配線に間違いがないかどうか、部品が間違いなく取り付けられているか どうかをコンピュータで検出する仕事をしています。 ○今野座長  一人前になったなというぐらいまでは、どのぐらいかかりましたか。自分の評価で。 ○D氏  一人前になったなというのは、ある程度皆さんと同じペースで働けるようになってか らということになりますので、1年か2年くらいはかかったかなと思います。 ○藤原委員  K社長にお聞きします。他の障害のある人がいらっしゃるかどうか。それと社員に対 する配慮は、朝礼でDさんに関しては言われたようですが、全体の配慮についてお願い します。 ○K氏  現在は、知的障害が2名います。これは、ハローワークにごり押しされた経緯があり ますが、正規雇用でいます。あとは、去年まで身体障害者が1名いました。この方は脳 性麻痺で片麻痺の方ですが、元々施設で仕事をしたいという人だったので、見付かるま ではうちの会社で社員として働くことを勧めて、去年に見付かって円満に話し合って、 彼女が次に行きたい職場ということで温かく送り出した経緯があります。それ以外は大 体、精神主体です。 ○藤原委員  何人ですか。 ○K氏  現在、雇用しているのが8名ですが、そのほか訓練中の6名のうち雇用目前が2名く らいいます。来週に保健所、市の担当課、ハローワークの担当課と来て、雇用するかど うかを検討して結論を出そうということで、決して企業側だけではなくて働いている実 績を皆さんで同一テーブルで評価し合って決める予定です。若干問題があるようでした ら、ハローワークからトライアルの雇用の3カ月を利用したほうがいいのではないかと いうことなので、とりあえずは皆さんに合意を得て雇用を検討する予定にしています。  もう1点。私は精神障害に限らず、ハンディを持っている方々が職場で働くことに関 して、環境醸成は非常に重要だと思います。そういった意味では、障害を持つ方々を職 場に入れることは何よりも社員教育になると思っています。ですから、うちではハンデ ィを持った人の支援を管理者の役割に入れています。精神障害の方は、うちに来るケー スのほとんどは訓練から来ますが、せいぜい2時間ぐらいからのスタートです。人によ っては非常に時間がかかったり、隣にいるDさんのような方に関してはそんなに時間は かからなくて雇用に結び付けられるのですが、それは個人によってかなりばらつきがあ るということで、日々仕事をする中で最初は働けないけれども、時間とともに働けるよ うにするのが管理者の役割の1つだということを会社では強化しています。  あとは、朝礼はしないので、朝は営業が外に出たりでメンバーが揃いにくい会社の状 況がありますから、いつもやるときは昼礼をメインにやっています。そこで、いつも強 調しているのは職場の雰囲気作りです。雰囲気作りの主役は、そこで働く社員、訓練生 も含めて一人ひとりが主役だと。いい雰囲気を作るには、基本的には対人関係をきちん と持つことが大事だということで、言葉を変えながら社員には話しています。 ○藤原委員  何年前から障害者雇用を始められたかということと、どの分野の障害のある方を雇わ れたのか。あと、きっかけを教えてください。 ○K氏  平成2年から雇用を始めました。雇用になるきっかけは社会適応訓練事業で、もとも と雇用が目的の制度ではないのですが、うちの地域は大変な田舎で、障害者雇用対策課 長も来てご存じだと思いますが、本当に会社の周りの環境は田んぼと民家と山しかない のです。本当に典型的な田舎の地域なので、訓練だけをやってそれが終わると、訓練を やった人たちというのは行く所がないのです。ですから、これでは訓練する意味がない し、折角働ける状態になりますから雇用しない手はないという部分が、私自身の雇用の 動機です。 ○今野座長  ほかにありますか。私から1つだけ。いまお話になったことで、ハンディキャップの ある人を働けるようにするのは管理者の仕事だとおっしゃられましたが、管理者をそう するためのノウハウみたいなのはありますか。ずっと言っているというのが1つですが、 そのほかに何か。 ○K氏  うちの会社は言葉が適切かどうかはわかりませんが、再生工場的な意味合いがありま す。1つは、母子家庭の人が非常に多いこと。もう1つは、前の職場でトラブルメーカ ーだったり浮いた存在の人たちが結構いるということです。それらを総合して、うちの 会社は典型的な下請企業で、大企業の影響が直撃する仕事をやっていますが、みんな一 致団結してきちんとした形で仕事をしないとというのは、当然会社は黒字経営ができま せんので、障害を持つ方も含めてきちんとした姿勢で、会社で働くことが大事だという 部分が私の根底にあります。 ○今野座長  ありがとうございます。ほかに何かありますか。よろしいですか。それでは、これで 終わります。ヒアリングにご協力いただいた方々は、ここで退室されます。ありがとう ございました。 ○今野座長  次の議題に入ります。今後の研究会は、年明けに論点整理を行う予定ですが、今日少 し時間がありますので、今日のヒアリングあるいは前回のヒアリング等を踏まえて、何 でも結構ですのでご意見を出していただいて、それも踏まえて来年以降に事務局には論 点を整理してもらいたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○森戸委員  今日のヒアリングで、感じたことはいろいろありますが、この研究会のフォーカスと いうかテーマに沿っていちばん思ったことは、最初のヒアリングの方(A氏)で出てき た非公開資料です。仕事の作業項目で仕事のフローが分かれていて、「ここはできる、 ここはできる」と○が付いている資料がありますよね。あれを拝見してやはりそうだな と思ったのは、結局仕事の流れを役割というか責任、分担を明確にして切り分けて、こ ういう障害を持った人あるいはこの人は、ここはできる、ここはできないと切り分けて おくということです。それができれば、障害を持った人でもこれはできるということが、 「じゃあ、ここはやってもらおう。これはあなたの責任だ」と任せられるのだなという ことが非常によくわかりました。それを今日、実際にやっていらっしゃる方のお話を伺 ったということで、たまたま視力障害の方でしたが、別に知的でも精神でも同じような ことはたぶんあるのではないかと。  障害者の雇用の話とは離れますが、ほかの政策課題としてのワーク・ライフ・バラン スがどうだとか、いろいろな話にも、仕事のどこからどこまでは誰ができるか。ここは、 ほかの人にやってもらおう、ここは臨時で誰かが替われるということができるのだなと いうのがわかりました。もちろん、これは非公開資料で、ある意味で会社の内部の重要 な資料ですが、こうやっていけばできるということを社会一般に宣伝というか、こうや っていけばいいのではないですかということを広めることは政策として必要だろうし、 中小企業における障害者雇用を考える上では、例えばこういう表を作る、こういう仕事 の切り分けをすることについて政策的に政府としてバックアップする何か方策、そうい う予算を付けることも1つの方向として考えられるのかなということを思いました。そ れが、いちばん思ったことです。  あとは感想めいた話になりますが、今回も前回も出ていたのは、障害を持った方の場 合は時間は確かにかかるけれども、逆に時間をかければできるようになるものであると いうことです。そのことも、いまの役割を分けるという話と非常に近いと思います。あ とは、さらに一般的になりますが特に中小の場合、経営トップの方の意識が大事という か、ある意味で大企業より一斉に企業全体の流れを作ることができる所だと思いますの で、その重要性。あとは、また少し離れますが、パソコンとかIT化の普及は障害者雇 用にも大きく寄与したのかなというのを今日のいろいろお話を伺っていて思いました。 長くて五月雨式でしたが、以上です。 ○今野座長  いまの点について、事務局として何かありますか。特に、最初の点は非常に具体的だ ったのですが、言ってみれば仕事分析をして仕事のカタログみたいなものをきちんと作 っておけという話だと思います。 ○障害者雇用対策課長  私どもがいまやっている施策の中では、今日のお話にも出していただきましたが、ジ ョブコーチの支援で現場に障害者を適応させていく中で、職務の分析をするような仕事 をやっていただいているわけで、あれを形にしたものがまさに今日いただいた資料では ないかと思っています。その意味では、ジョブコーチ支援のあり方というか特に中小企 業での雇用促進の中で、それをどう活かしていくかということではないかと思ったとこ ろです。併せて、私どもがいろいろな形でリーフレット類、パンフレット類を作ってい る好事例集みたいなものもあったりしますが、今日私も聞いていて感じたのは、そうい ったものを作るときにももう少し職務の細かいところに入って、具体的に提示をしてみ る工夫が必要かなと思った次第です。 ○今野座長  私の感想ですが、このAさんの非公開資料は、別にこの会社が特殊ではないですよね。 このフローは、基本的にはどこの会社でも一緒だと思います。 ○小林委員  いま、ジョブコーチの話が出ましたので、ちょっと触れたいと思います。ジョブコー チに関して言わせていただくと、それぞれの障害に対して十分知識なり理解のある人を 養成していく必要がある。そういう作業が今後、必要になってくるのではないかと思い ます。特にいまの段階では、精神障害とか知的の方々に対応したジョブコーチは用意さ れているようですが、視覚の障害になりますと果たしてどうなのかなという部分があり ますので、各障害に適切に対応できるようなジョブコーチを今後養成していくことが必 要ではないかと感じました。  それと、是非今日のヒアリングをお聞きしての企業の関係者の立場としてのコメント をいただければありがたいなと。日経団連の方もいらっしゃっておられるようですので、 もしよかったらお聞かせいただきたいと思います。 ○今野座長  輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  今日のヒアリングは、それぞれ障害種別に分かれているわけで、視覚障害からいえば、 1つは職域の開発をどうするか。小林委員のご質問のところで、Aさんは特別ではない というお答えだったのですが、本当のところはどういう感じなのかなというところがう まく採れているのかなというのをもう少し聞いてみたかったなと思いました。もう1つ は、在宅勤務との関係。委員もおっしゃったようにITの普及のところで、視覚障害の Aさんは通勤は問題がないとおっしゃっていましたが、在宅勤務のようなものをどう活 用するのかとか、ヘルスキーパーの活用にどういう観点があるのかなというところをも う少し研究する必要があるのだろうなと感じました。  Bさんは非常にノーマルな形だと思いますので、健全な就労のあり方というのをお示 しいただいたのではないかと思います。  知的障害のところは、いまは20万円まで給与が上がっている。やはり、長い時間をか けて育成をされているということだと思います。ご自身のご発言は60歳の定年まで働き たいという決意を述べられましたが、加齢との兼ね合いでどういうソフトランディング をするのかは別途課題があるのだろうなと。  精神障害のところで、株式会社HのK社長は有名な方で、平成2年からということで したが、ずっと精神障害の雇用をされています。平成16年から雇用率に入れられるわけ で、その前までは未達成企業だったわけですから、そういうところでいうと非常に先進 的な取組みをしていただいていますが、企業側のトップの理解だけでやってきた会社だ ろうなと思っていました。以上です。 ○今野座長  小林委員にお聞きします。Aさんの例で、これを見ると「こういうことが全部できる んだ」と思ってお聞きしていたのですが、人事ですから文書をたくさん作りますよね。 その趣旨の質問をされていましたが、こういう方は普通なのですか、特別なのですか。 あるいは訓練すれば、ここまで来ると考えればいいのか。 ○小林委員  むしろ後者で、訓練すればそこまでは誰しも到達できることだと思っています。そう いう意味では、特殊なケースということは言えないと思いますが、相当な努力が必要だ と。生半可な努力では、Aさんのような状況には至らないということは確かだと思いま す。その辺を周囲でどうサポートしていくかが今度は大事なことではないかと思ってい ます。目が見えないと何もできないのではないか、何もできないと言うと語弊がありま すが、できることは非常に限られていると見られがちですが、ちょっとした手助けとか、 最近ではハイテクも発達していますから、それらの機器をうまく活用することで相当健 常者と張り合っていけると思っています。環境が大事です。そういう環境を作っていく ということです。 ○今野座長  先ほど、使用者側のご意見をお聞きしたいということだったので、原川委員にも是非 ともご意見をいただければと思います。 ○原川委員  いま、いろいろ聞いていまして、本当に勉強になりました。私は中小企業の団体で中 央会と申しますが、今年に独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構から依頼されまして、 中小企業における障害者の雇用拡大のためにどういうことをしたらいいかを調査研究す る事業を委託されまして、今やっています。最終報告は来年に出すということですが、 全国の中小企業5,000社を対象にしまして9月に実態調査を実施しました。いま、その 結果をまとめているところですが、今年度に中間的な報告で、来年度に最終報告という ことで中小企業において、どういうやり方をすれば障害者の雇用が促進できるのかをや っていきたいと考えています。  4人の方のお話を伺っていまして、経営者の理解は非常に大きいものだなと痛感した 次第です。私どもは障害者の調査研究と同時に、次世代支援の調査研究もやっています。 これも同じようなことが言えまして、経営者の意識によって子育て支援がうまくいくと ころといかないところがあるということもありまして、これから中小企業においては周 知活動というものをもう少し重視しながらやっていく必要があると思います。同時に、 国とか地域の企業との連携あるいは企業へのサポートもしていただいて、総合的なネッ トワークの中でやっていくことが非常に重要ではないかと思いました。  もう1つは、先ほど複数の企業で力を合わせれば採用もしやすくなるし、働く仕事も 見出しやすいというお話がありましたが、企業の連携ということもこれから進めていく 必要があるのではないか。特に中小企業の場合は人の問題、お金の問題というのもあり ますので、こういった観点から協力し合いながら雇用を進めていくことも重要な課題に なってくると思います。以上です。 ○今野座長  いまおっしゃられたいちばん最後の件で、企業同士の連携が重要だとおっしゃられま したが、原川委員の組織は既に連携した組織なので、中小企業団体自身で頑張るぞと、 いろいろな事業共同組合でも商工会でもいいですが、そういうところがいま言われた連 携の実情の母体になるというのは、なかなか難しいものでしょうか。 ○原川委員  いま行われている所は少ないと思いますが、例えば雇用率の達成の問題とか個々の企 業が障害者を雇用する場合の支援とか、業界ぐるみの取組みといったことをやる上に中 小企業の事業主団体、共同組合等の組織というのは活用することが重要だという考え方 を私自身は持っています。 ○今野座長  先ほど小林委員が、大きい会社は規模があるからヘルスキーパーを自分の所で持てる けれども、中小企業は連携が必要だと言ったときに、そういう所が受皿になるのかなと お話をお聞きしていたのですが。 ○小林委員  例えば、5社なりで診療所、治療所のようなものを用意して、そこで視覚障害者が働 いていける。視覚障害者だけでなくて、そこに他の障害者も事務関係で働くというよう なことも可能ではないかと考えて、申し上げたわけです。 ○今野座長  ほかにご意見はありますか。一応、司会者としてはフリーディスカッションですから、 ディスカッションというのは言ったら誰かが言うというふうにしたいなと思いますが。 ○輪島委員  今後のスケジュールのことを少しお伺いしたいという点と、いま座長がおっしゃった 点で、結局この中小企業の雇用促進はどこに着目をするかが、いままでの分析と原川委 員のところで雇用促進の研究をされている報告のタイミングとがマッチングするのかど うかだと思います。1つ目は、中小企業の実雇用率がどうして落ちてきたかが実際には あまりよくわからないということが、本当にここの研究会の結論に導く上でわからない ままでいいのかどうか。2つ目は座長がおっしゃった点で、現実に56人以上の所が1人 雇用で、112人の所が2人ですよね。1人か2人の不足という状況を看過できないとする と、1人の職場を作らなければならないという現実にどう対応するかになるのだと思う のです。1人雇用する職を開発し、雇用の場を作ったときにどうやって受け入れて、ど うやって雇用の継続をさせていくのか。辞めないような仕組みをどうするかのサポート 自体は、まだあまり確立されていないわけなので、その点がないとうまく普及が進まな いのではないかと思っています。昨年の実雇用率の発表の中の3万8,000社の未達成企業 の中の2万社以上が1人不足、2人不足なわけですから、そこにどういう手立てを打つ かが重要なのではないかと思っています。どうもその辺の企業に対するインセンティブ、 サポート体制というか福祉との連携が、少し足りないのではないかという問題意識があ ります。以上です。 ○今野座長  いま輪島委員がおっしゃられたのは重要な論点ですが、論点として残していただいて、 次回以降の議論のテーマにさせていただければと思います。  あとからお話しようと思っていたのですが、いま輪島委員がおっしゃられた中小企業 の実雇用率がなぜ下がったかの分析は、前から宿題で出しています。6.1報告も新しく 出るようですので、そんなことも踏まえて、次回に事務局にきちんと資料を出していた だこうかなと考えていました。ほかに意見はありますか。 ○小林委員  是非考えていただきたいのは、視覚障害者の場合は先ほどからお話しているように、 古来あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうの仕事がいわば天職のようにされてきたため に、ほかの職種が伸びていないということがあります。いままではそれでもよかったの ですが、近年は社会情勢からも、このあん摩マッサージ指圧、はり、きゅうの部門に健 常者がどんどんと進出しているわけです。リストラ等で職を失った人たちが筆頭になり ますが、そんなことでますます視覚障害者が圧迫される状況にある。働く場を失ってい る状況もありまして、いままでの視覚障害者が行ってきたこの仕事を伸ばす方策と同時 に、それとは別に新しい分野での職種の開拓にも力を入れていかないと、ますます視覚 障害者の働く場が狭まってしまうことにもなりますので、今後行政レベルでこの辺の研 究をしていただくとか、検討をしていただくことがないと、これからますます困ってく る事態が生じてくるのではないかと思っていますので、この辺も是非お考えいただきた いと思っています。 ○藤原委員  障害者雇用対策課のほうにお聞きします。研究会が3つか4つできていると思います が、他の研究会も3月までに1つのまとめが出て、これは政策になるのでしょうか、そ れとも制度にまで発展するのでしょうか。そのあたりをどういう目標にされているかな と。要するに、障害者雇用の促進をする研究会が他にもあるわけです。そのあたりの連 携とともに、結論はどうなるのかなと思いました。 ○障害者雇用対策課長  いまお尋ねのあった点ですが、こちらの研究会を含めて3つの研究会を開催していま す。こちらと、多様な雇用形態に対応する雇用率制度のあり方に関する研究会です。主 な内容は、派遣労働、短時間労働といった働き方の多様化に対応して、雇用率制度をど う考えるかというものです。もう1つの研究会は、福祉・教育との連携による就労支援 のあり方についての研究会です。こちらは名前のとおりですが、就労支援という動きが 福祉分野、教育分野にも広がっていく中で、どうやって連携を持ちながらやっていくか をご議論いただいています。  スケジュールと方向性ですが、基本的にはこちらを含めまして、どの研究会も来年の 夏を目処に報告書をまとめる見通しの中でご議論をいただいていて、中身的には法律の 改正に結び付くような制度改正が必要な部分についてもご提言をいただくことも含めま して、幅広にご議論をいただくことを考えています。その前提として、こちらの研究会 の次の回は1月31日で、その次は2月20日だったと思います。どれも2月になろうかと 思いますが、先ほど座長からもお話をいただきましたように、2月ぐらいに論点の整理 という形で、いままでヒアリング等々でいただいたご意見、私どもとしての内容の整理 といったことを踏まえた論点整理をいずれの研究会も2月の段階でやっていきたいと思 っています。内容的には、それぞれご検討いただいている部分が違うことはありますが、 ご議論いただいている中身はかなり重複している部分もありますし関連する部分もあろ うかと思っていますので、2月ぐらいに一旦の整理をするときにほかの研究会の状況な どもご参考にしていただきながら、ご議論を進めていただく形を取らせていただきたい と思います。よろしくお願いします。 ○金子委員  先ほどヒアリングを伺っていますと、障害者を雇うのは経営のトップの考えに大きく 左右されることは大企業はもちろんそうですし、中小企業もそうだと思います。そうい うことから言いますと中小企業の場合、それをどんな形で皆さんにわかっていただく対 策を取るかが大事ではないかと思います。うちは零細企業ですが、時間がなかなかかけ られないこともあると思います。そういうことのためにどんな手立て、あるいはその支 援者の養成もあるかもしれませんが、その辺でいままでとは違った形のものを考えない といけないのかなとどうしても感じられます。  特に、うつ病の関係の人で退職される方も増えて、また再就職したい人も最近は非常 に増えていますから、そういう方たちについても職場の環境を整備して早めに相談した り対策を打つ。早期発見、早期治療が大切だということも含めて、働く当事者もそうで すが、企業の方にそういうご配慮をいただくということ。それから、障害がある方たち の観点から見て、こういうことがあったらということをもっと掬い上げられるような方 法。それが、できれば企業にとっても役に立つこと。ただ、お世話をかけるだけではな い、プラスに活用するところを考えたらいいのではないかと思います。 ○今野座長  中小企業の経営者たちの意識を変えていただくということで、「これ」という良い方 法があるといいですよね。 ○金子委員  私どもは会社のほかにNPOもやっています。そこの中で、中小企業の商工会の方た ちに情報提供をしたりイベントをやったりして、一緒に交流してわかっていただくこと を増やそうということも考えていますが、何か実際に顔が見えるような状況報告といっ たことをやるよりしょうがないのではないかなと。 ○今野座長  それこそ違った意味での、先ほどお話にあった事業主たちの地域の連携みたいなもの ですね。 ○金子委員  これは同業者ではなくて、異業種で地域で結び付くみたいな感じです。 ○今野座長  原川委員の所の感じですね。 ○藤原委員  私も給食会社を経営していまして、現実に3人ほど雇用していましたが、息子が後継 しないということでチェーンの本部に営業譲渡をしてしまったのです。零細企業の場合 は、後継者育成がなかったら、私自身が障害者の親ですから雇用したいという思いがあ ったとしても、会社自身を持ち堪える力がなかなかないのです。それと同時に、自分の 子供を雇用した場合に、その当時はカウントしてくれないのです。20年前はカウントし なかった。けれども、親子であっても法人は人格が別だから、そうしてほしいです。そ の当時も審議会の委員をしていましたから言いましたが、これは雇用ですからそれは駄 目だとか、自営の場合は母子でお好み焼きとか小さい食堂をした場合も駄目だというこ とです。雇用促進にならないからということです。けれども、私どもが雇用といったら 雇用率を上げるよりも、当事者団体としては就労が進んだらいいわけです。その辺は霞 ヶ関の方のお考えと、私たち現場でやっている者とは違うなと思いました。だから、中 小企業が雇用を進めようと思ったら、経営者がそういう気持であってもなかなか進めに くいこともあったり、従業員は社長の息子がいるわけですから、わりあい理解が進んで いますが、現実は経営が苦しいというのが実態です。 ○今野座長  まだご意見があるかと思いますが、時間です。今日のような最後の20〜30分のような フリーディスカッションを次回ももう一度持ちたいと思います。今日で一応ヒアリング は終わりますので、そのヒアリングの結果を踏まえて、あるいは先ほど申しましたよう に次回は6.1報告もそうですが、それ以外の資料も事務局から出していただきますので、 それを踏まえてもう少しフリーディスカッションをしまして、論点整理に向けていきた いと考えています。そんな進め方でいきたいと思いますので、よろしくお願いします。  資料は大丈夫ですよね。宿題ですからね。 ○障害者雇用対策課長  できる限り、いろいろご用意してみたいと思います。 ○今野座長  できる限り、品質の良いものをお願いします。今日はこの辺で終わりにします。最後 に日程について、事務局からお願いします。 ○障害者雇用専門官  次回は、1月31日(水)13:30〜15:30までを予定しています。場所は厚生労働省内を予 定していますが、確定次第また改めてご案内をさせていただきたいと思います。  お手元に未定稿ですが、第3回研究会の議事録を配付しています。内容をご確認いた だいた上で、ホームページに公開したいと思っていますので、非常に年末のお忙しいと ころで恐縮ですが、来週の12月22日(金)までにご確認いただきまして、何かご意見等が ありましたら事務局までご連絡をお願いします。  本日のヒアリングの非公開資料を出しましたが、個人の情報や個別企業の情報が含ま れていますので、管理をご留意いただければと思いますが、取扱いに困るということで あれば机の上に置いていただければ当方事務局で回収したいと思いますので、よろしく お願いします。  座長からお話がありました、本年6月1日現在の障害者の雇用状況報告です。明日に 報道発表予定ということにしていまして、本日の研究会に間に合わせることが出来ず大 変恐縮でしたが、委員の皆様には改めて郵送させていただきます。次回の研究会におい てまたご報告をしたいと思いますので、よろしくお願いします。以上です。 ○今野座長  最後に、本日の議事は名前、所属会社等を伏せた上で議事録を公開するということで よろしいですか。 (異議なし) ○今野座長  それでは、そうさせていただきます。  本日は、これで終了します。ありがとうございました。 【問い合わせ先】  厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用対策部  障害者雇用対策課 雇用促進係  〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  TEL  03(5253)1111(内線5855)  FAX  03(3502)5394