06/11/29 医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会 第2回議事録        第2回 医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会 日時 平成18年11月29日(水) 15:00〜 場所 厚生労働省共用第7会議室 ○医療安全対策専門官   時間になりましたので傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお 配りしております注意事項をお守りくださるようにお願いします。 ○医療安全推進室長   定刻になりましたので、ただいまから「医療安全管理者の質の向上に関する検討作業 部会」を開催いたします。委員の皆様方にはお忙しい中をご出席いただきまして、誠に ありがとうございます。本日は鮎澤委員、木下委員につきましては欠席のご連絡をいた だいております。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をお願いします。資料が1〜4と参考資料 が1〜5となっております。不足等はありませんでしょうか。もし問題ないようであれ ば議事に入ります。福永部会長、議事進行をよろしくお願いします。 ○福永部会長   皆さんこんにちは。よろしくお願いします。それでは、早速ですが、議事に入らせて いただきます。まず議事の1「医療安全管理者の業務指針(案)」について、事務局から 説明をお願いします。 ○医療安全推進室長   本日は2回目の作業部会になりますが、第1回の作業部会のあと、各委員の方々から のご意見をいただきながら、第1回の作業部会において示した資料2にあるような検討 事項を含むものとして、資料3、医療安全管理者の業務指針の案を事務局で作成しまし た。仮の題として「医療安全管理者の業務指針及び研修プログラム作成のための指針に ついて(医療安全管理者の質の向上のために)(案)」と、いたしました。  2頁の目次にありますように、項目はIからIIIまでを案として作成しました。IVにつ いては次回以降の検討内容だと思います。  Iの「はじめに」の中では、これまでの厚生労働省における医療安全対策の経緯等に ついて述べてあります。IIの「安全管理者の業務指針」では、本指針の位置づけ、医療 安全管理者の行うべき業務を具体的に記載しております。IIIは「医療安全管理者が備え ることが望ましい知識・能力について」という項目を立てています。各項目間の書きぶ りの濃淡、表現の整合性が取り切れていないところがあると思いますので、内容ととも に、その点についてもご議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたしま す。 ○福永部会長   検討の進め方ですが、いま説明がありましたように、内容は3項目に分かれています ので、それぞれの項目についてご検討いただきたいと思います。  委員の方々には事前に指針をお送りしてあるかと思いますので、ここで再度読み上げ ませんので、ご了解ください。まずIの「はじめに」の部分について、ご議論、ご意見 をお願いいたします。 ○飯田委員   「はじめに」にあるリスクマネジメントという言葉は誤解を招くので、セーフティマ ネジメントときちんと使い分けるべきだと前回、話をしたと思います。たたき台の案に 対する私の意見としては、そこをきちんと明記しておいたのですが、削除されています ので、それに関してはきちんと議論をして書き込んでいただきたいと思います。  と申しますのは、リスクマネジメントは重要ですが、セーフティマネジメントと分け て考えなければいけないからです。セーフティマネジメントをリスクマネジメントとい う意味で使っている病院がいまだに多いので、指摘しておきたいと思います。  もう1つは、セーフティマネジメントとリスクマネジメントは違った業務だとはっき りしないとあやふやになりますから、そこはきちんと初めに書いていただきたい。本文 の中でもはっきりそれを区分して明記してください。 ○福永部会長   いま飯田委員からお話がありましたが、いかがでしょうか。 ○嶋森委員   リスクマネジメントとセーフティマネジメントの区別は、はっきりしているようでし ていない部分があると思います。先生がおっしゃっているリスクマネジメントとセーフ ティマネジメントをどう書き分けるかが難しいのではないかと思います。 ○飯田委員   全然難しくありません。いまのお話に関しては、前回、私がそういう発言をしまして、 鮎澤委員も同じ趣旨の発言をしていると思います。リスクマネジメントは必要ではない と言っているのではなく、非常に重要ですが、組織防衛としてのリスクマネジメントは 全然違った概念でなければいけません。諸外国を全部調べたわけではありませんが、少 なくとも日本みたいに混乱して使っている所は少ないだろうと思います。やはりこれは 明記してセーフティマネジメントとリスクマネジメントをはっきり分ける。もちろんオ ーバーラップする部分がないわけではありません。それはあるにしても、はっきり違っ た業務であることを明記しておかなければ、これからますます混乱が多くなります。こ の検討会できちんとしたことを明記しておかない限り、混乱が続きます。これは指針で すから、保険も含めて、そういうものとは全然違うのだと明記すべきです。もちろん医 療紛争があれば保険の話になっていきますが、そこの業務はセーフティマネージャーの 仕事ではないということをはっきりしておかないといけません。どこまでそうなのかと いう話になってきますから、是非区別してください。オーバーラップする分に関しては、 またそこで議論する必要があると思います。 ○福永部会長   ほかにいかがでしょうか。 ○河野委員   私はリスクマネジメントを操作的に定義すれば混乱は起こらないような気がします。 なぜかというと、私の考えではセーフティというのは存在しないからです。リスクしか ありません。私は事故が起こらないことも全部リスクマネジメントに入ると思っていま すので、言葉を操作的に定義すれば混乱はなくて、ここではこのような意味で使います よと定義すればいいのではないかという気がしますが、いかがですか。 ○福永部会長   「はじめに」の最後の数行、この前の飯田委員の議論を踏まえた上で、事務局として 書かれたと思いますが、この部分はあとの業務指針の中で医療安全管理者が、例えば事 故後の対応をどこまでするのかという部分とリンクする話になるのではないかと思いま す。  飯田委員の言われることはよくわかります。現実には医療安全管理者は事故後の直接 的な訴訟などの対応はしません。今日皆さんはお読みになったかと思いますが、業務指 針に示された部分は現状では一応やっているのではないだろうかと思っています。その 辺りはいかがでしょうか。  たしか「はじめに」の部分は、前は少し使い分けて書いてありましたね。それが今回 はまた曖昧にしたというか、書き方が違ってきたように思います。 ○医療安全対策専門官   委員のお話を伺う中で、この内容について、福永部会長からお話があったように、現 状ではしている医療機関がほとんどです。そのため、内容として書き込む必要があって 書いたということが1つあります。  リスクマネジメントとか、その定義もアメリカのようにはっきり区分けすることは日 本ではされていませんし、いま現実に使える業務指針としたらこういう形だろうという ことで、このような書き方にしたという経緯があります。 ○福永部会長   飯田委員のお考えとしては、あくまでもこれは指針なのだから、セーフティマネジメ ントとリスクマネジメントの違いをきちんと「はじめに」の部分で書いたほうが、混乱 が起きないということですか。 ○飯田委員   書くべきだと思います。というのは、河野委員が言われたこととはちょっと違ってお りまして、必ずしもリスクの低減がセーフティではないわけです。リスクとは確率の概 念であり、確かに確率の議論があります。私は、リスクの低減ということはセーフティ に関してはかなり重要で、マイナスをなくす、減らすという話も大事ですが、質を向上 して安全を確保するプラスの面を増やすことが重要であるという話を前回もしたと思い ます。リスクマネジメントにはそういう概念はないのです。  ですから、きちんと分けなくてはいけません。リスクマネジメントをもっと別の観点 から組識防衛を含めて事後対策、セーフティという観点も大事です。リスクマネジメン トは、マイナスをいかになくすかということです。それは患者に対しても組織に対して も従業員に対しても、どれだけ損失を減らすかという概念でやっていくわけですから、 大事ですが、別のテーブルで議論しなければいけません。セーフティとリスクの関係は 多少ありますが、違った概念ですから、はっきり分けて書かなければ混乱します。いま 既に日本の中で混乱しているから、あえて言っているわけです。リスクマネジメントが 必要でないということは言っていません。大事です。ですから、それは別のテーブルで やりましょうという話をしています。もちろんセーフティのためにはリスクを縮小する という概念も必要ですが、それだけでは足りないわけです。むしろプラスを増やそうと いう概念から行かない限りは安全を確保できません。そういう観点から、是非区別すべ きだと考えています。 ○福永部会長   いかがでしょうか。 ○河野委員   セーフティマネジメントという言葉そのものを、私はあまり聞いたことがないのです。 例えば、ISOの定義だと、安全はfreedom「from unacceptable risk」と書いてありま す。ですからセーフティマネジメントという言葉が私はピンとこないのです。もしかし たら医療業界ではあるのかもしれません。少なくとも企業ではあまり聞きません。逆に 社内ではリスクマネジメントのほうがいいのではないかと思い始めているところです。 なぜかというと、安全はISOの定義みたいに絶対に存在しませんから、そういった意味 では常にそういうリスクを下げる努力をするというエンドレスの戦いだというイメージ を持たせるには、どちらかというとリスクのほうがより直接的ではないかという感じが したのです。 ○福永部会長   皆さんいかがでしょうか。確かに言葉の定義が非常に混乱している部分もあって、昔 はリスクマネジメントと言っていましたが、途中からセーフティマネジメントというか、 医療安全管理と置き換えられてきました。ただ業務は実際問題として、私たちがいろい ろな所の先生、いろいろな病院のことで見聞きしたりしている限りにおいては、専任の 医療安全管理者の人たちが、事故後の対応というか、もちろん直接的な対応はしないわ けですが、先ほど私が言ったところまでは現実にやっているという事実もあります。そ ういう意味からいうと、あとの議論にもリンクするのでしょうが、医療安全管理者の仕 事がセーフティだけということにはならないのではないでしょうか。 ○飯田委員   ですから、安全に関するリスクの縮減は必要です。それはやります。それは否定して いないのです。それで終わってはいけない。質の向上ということに観点が行かないこと には安全は確保できないのです。  安全は管理できるかと言ったらできません。ですから、河野委員が言われたことはあ る意味では正しいのです。安全は毎日でもできるかと言ったらできません。しかしプラ スの思考をとにかく持っていただきたい。マイナスをなくす。リスクマネージャーはマ イナスをなくそう、少なくしようという考え方なのです。だから今まではうまくいかな かったのでしょう。  それも必要ですが、その次のステップとして、あるいは並行してもいいのですが、質 を向上してプラスを増やそうということから行かない限りは、結果として質の向上もな いし、安全の確保もできないのです。ここがはっきりしない限りは絶対無理なのです。 マイナスをなくそうと言っても、マイナスがなくなったらそれで終わりなのです。日進 月歩の中で状況は変わったわけです。患者の要求も変わるし、常に要求水準は上がって いるわけです。それに対応していくためには、次々に上を向いていかなければいけない わけで、後ろを向いてはいけないのです。リスクマネジメントは、あくまでも後ろを向 いているのです。確かに将来のためにやっています。将来のマイナスをなくすためにや っているのです。それだけでは絶対に安全は確保できません。  品質管理の世界でも、質の獲得という言葉も使っています。質なんか獲得できないと いう人もいますが、厳密にはそうです。彼らも質の獲得という言葉を使っているわけで す。 ○河野委員   リスクを低減するという意味では標準化というのが絶対必要だと思いますが、それは 含まれないのですか。つまり、リスクを下げるためには標準化をする、言葉の統一化を する。それからコミュニケーション技術を身に付ける、改善する、そういうものは全部 リスクマネジメントの一環だと思っていますが、違うのですか。 ○石川委員   河野委員のおっしゃっているのは非常によくわかります。飯田委員が言われているセ ーフティの概念を多少含めて、大きな意味でのリスクマネジメントということをおっし ゃっているのだというのは非常によくわかります。  飯田委員がおっしゃったことも非常によくわかって、何か起きたことに対して対処す るというリスク、それにプラス未然防止というか、これから少なくともリスクが起きな いようにするための仕組みを作っていくということで、その意味でマイナスをゼロにす るのではなく、ゼロをプラスにするのであれば、未然防止のほうを安全管理者の仕事に していかないと、なかなか難しいのかなと思います。 ○河野委員   それは100%いいですね、それは完璧にそうです。 ○石川委員   おっしゃるようにリスクマネジメントというのは、企業防衛という意味で使う場合と、 広く安全管理を含めて使う場合の2つがあります。全部それを定義すると、またこれに 対して、そうではないという異論が結構出てくると思います。その辺は「はじめに」に 入れるかどうかというのは別の問題になると思います。米国でもペーシェントセーフテ ィということで、リスクマネジメントというのはセーフティという言葉がほとんど普通 に使われているので、安全管理、セーフティマネジメントという言葉のほうが多少いい のかなという感じがします。 ○嶋森委員  私もセーフティマネジメントと最初のときに話をしたのですが、アメリカ等ではペー シェントセーフティということで、そのための業務の改善や質を担保していくという活 動がセーフティマネジメント活動だと思います。  ここではリスクマネジメントという言葉を使っていなくて、最後の5行目にあります が、高度化で国民の権利意識の高揚により、医療の質と安全の確保がセーフティマネジ メントということですよね。 ○飯田委員   そうです。 ○嶋森委員   ですから、ここで「大きく期待される今日、医療安全管理者の業務を明確にする必要 がある」ということで、医療安全管理者は、医療の質と安全の確保のための活動を行う と理解して、この中でセーフティマネジメントという意味を言っているのではないかと、 一応理解しているのですが、これではまだ足りない感じですか。 ○飯田委員   足りないのではなくて、その前の何行目かにリスクマネジメントという言葉が出てき ているわけです。ここではかなり間違った表現をしているわけです。こういうことは未 だに残っているのですから、違うのだとはっきり書いておかないと混乱するわけです。 既にもう混乱しているわけです。ここに間違ったことが書かれているから、違うのだと いうことをはっきり書いてほしいのです。このときにはそういう認識をしている人は少 なかったかもしれませんが。 ○福永部会長   ここの書きぶりとしては、いま飯田委員の言われた意味を解しながら書いたのだと思 いますが、直接的な表現としてセーフティマネジメント、リスクマネジメントという言 葉の区別を書いていないわけです。そういうのを少し書いておいた文言がありましたよ ね。 ○医療安全推進室長   検討の段階で書いてみたことがあったのですが、片仮名の何とかマネジメントと書く と、思っていることが随分人によって違うようなので、あえて片仮名で定義してしまう のではなく、日本語で医療の質と安全の確保は重要であるという形で書いたほうがいい のではないかと判断して書いたという経緯があります。 ○福永部会長   これは、飯田委員のそういう意味を解しながら書いた文章だと理解したのです。直接 的な言い方として、確かに定義していないわけですが、その辺りの言葉はどうでしょう か。 ○飯田委員   ここで議論している人はわかるわけですが、大多数の医療従事者はわからないので困 っているのです。それを私は言っているわけです。ここにいる人たちは、いま議論して いるわけですから、「こういうことを伝えましょう」と言うのはいいのです。これを読ん だ人がわかりますか。わからないから世の中は困っているのです。私たちのためにある わけではなく、全国の病院職員のためにあるわけですから、これでは区別がわからない のです。 ○福永部会長   あとの議論の実際の業務指針のところになるのですが、業務指針の中で事故後の対応 について何項目か書いてありましたが、先生のお考えでは、あれもいわゆる医療安全管 理者の業務からは外れるという意味も含めての今の議論なのでしょうか。 ○飯田委員   最新版ではかなり外れていますので、クエスチョンマーク、△のものがありますが、 絶対おかしいというのはありません。クエスチョンマークは△の部分があります。これ はどちらで見ようかという話はあります。 ○福永部会長   あとの議論にもなりますが、事故後の対応は、医療安全管理者が現実にやっている対 応を含めた上で、先生のお話のセーフティマネジメントで、そこの間だったら理解でき るのです。医療安全対策で事故後の対応を全然タッチしていないのだという議論になる と、現状と非常に乖離するのではないか。理想はセーフティなのかもしれませんが。 ○飯田委員   理想を言っているのではなく、現実を言っているのです。違った業務を同じ人がやっ てはいけないとは一言も言っていないのです。皆さん誤解しているわけです。セーフテ ィマネージャーが、リスクマネジメントをしてはいけないとは言っていません。余裕が あればやっても結構です。違った業務なのです。安全という切り口からリスクを縮減す るという話はありますから、それはセーフティマネージャーの仕事だと思います。そこ から先の家族の対応とか、保険の対応などの話はリスクマネージャーの仕事なのです。 セーフティマネージャーとリスクマネージャーが兼任してもいいという話ならそれでも 結構です。業務は違うのです。私は病院長として臨床もちょっとやり、病院管理もやっ ています。そういうことがあるのです。どちらがメインですかという話をしているわけ です。診療行為と病院管理は違った業務だという話をしているわけです。これははっき り分けてくださらないと、ごっちゃになっています。 ○嶋森委員   それはかなり皆さん了解していると思いますが、書きぶりがどのようになるのだろう というのがあると思います。 ○医療安全対策専門官   いまお聞きしていて、平成12年に国立病院の指針作成で、リスクマネジメントマニュ アルの指針を作ったときには、そのような考え方も含まれていたというところがあった のですが、今回、医療の質と安全の確保という考え方をメインとして、また理解が得ら れやすい様に日本語で表現することを考慮したところこういう書きぶりになったのです が、さらに、この中にしっかり明記していくことが求められているのかと、いま飯田委 員のお話を伺っていて思ったのですが、いかがでしょうか。 ○福永部会長   言葉の使い方・定義の歴史的な経緯についても少し書いていましたよね。あそこをま た復活というか、触れるような形で明確にしたらどうでしょうか。 ○医療安全対策専門官   平成12年のときよりも、今はこのような考え方でということを書くと良いのでしょう か。 ○福永部会長   そのときは組織防衛という考え方だったが、いまは。 ○医療安全対策専門官   今はこういう考え方ですという書き方ですね。 ○福永部会長   そういう形にもう少し明確にするということではどうでしょうか。 ○寺井委員   いまお話を伺っていて、確かにリスクマネージャーと言っているところもあれば、セ ーフティマネージャーと言っているところもあって、担当している医療安全管理者もか なり混乱しているところがあるかもしれません。この作業部会で、いま飯田委員がおっ しゃったように、そして皆さんがうなずかれたように、リスクマネージャーとセーフテ ィマネージャーのやる仕事は、もし2人いるとしたら業務範囲が少し違って、両方を1 人の人がやることはあるが、この度はセーフティマネジメントのほうに力を入れて、質・ 安全の向上を図るための指針であることを少し書いておいてはいかがかと思います。飯 田委員がおっしゃったのはそういうことでしょうか。 ○飯田委員   そうです。 ○寺井委員   漠然とした医療安全管理の概念を言うよりも、明らかにリスクマネジメントとセーフ ティマネジメントは業務範囲が違う。1人の人が兼ねることは構わないが、この部会と しては、質を向上するためにセーフティマネジメントにも力を入れた指針を作成すると いう明確な方針を打ち出すみたいなことをしていただけると、現場で担当する者も、ど ちらに力を入れればいいのか、どちらかをやらねばならない状況でも、どちらにより力 を入れるべきかが見えるのではないかと思います。 ○福永部会長   そうですね、いま寺井委員が言われたことでどうでしょうか。 ○嶋森委員   私も賛成です。 ○福永部会長   議論としてはもともとそういうことだったのだと思います。 ○寺井委員   具体的に「業務が」とか、そういう言葉を使っていただくと、たぶんはっきりするの だと思います。言葉の概念をここに載せるよりも、業務が違うという飯田委員がおっし ゃっていたことを反映させていただけると、実際の業務を担当している者によくわかり ます。 ○福永部会長   それはあとの内容でだいぶ反映されているのではないだろうかと思います。 ○寺井委員   「はじめに」に書いておくことに、かなり意味があるということもあると思います。 ここの指針では、この部会では質を向上するために、よりセーフティマネジメントに力 を入れるということです。 ○福永部会長   わかりました。「はじめに」の部分の特に最後の辺りの表現を、より具体的にしていた だくということでよろしいでしょうか。 ○医療安全推進室長   確認ですが、リスクマネジメントとは何か、あるいはセーフティマネジメントとはと いうのを、再度提起し直すということではなくて、業務の中身を書いていく形で、いま の考え方の変化を日本語で書いていくという理解でいいのでしょうか。それともそれぞ れの言葉をちゃんと定義し直したほうがいいということでしょうか。 ○飯田委員   短いか長いかは別ですが、きちんと書かないとわからないです。リスクマネージャー とセーフティマネージャーは、今までこういう考え方があったでもいいし、諸外国はこ うでもいいのです。それはいろいろあると思いますが、どういう切り口でものを見るか によって違うということを書いておかないといけません。それが結局どういう業務かに つながっていき、ほとんどニアリーイコールですが、一言書いておかないとわからない と思います。私は片仮名が嫌いですから、本当は嫌なのですが、リスクマネージャーと いう言葉が出ていますから、それは我々の視点とは違うということをきちんと書いてい ただかないとわからないと思います。 ○嶋森委員   医療の質と安全の確保というセーフティマネージャーの仕事は、比較的患者の安全を 高めるというか、安全を確保するための役割であると、言い方としてははっきりしてい るのです。リスクマネジメントという言葉をどう説明するかがなかなか難しくて、組織 防衛的な活動だけとも言えないかなと思います。この書きぶりが非常に難しいのです。 ○飯田委員   患者の防衛もあるし、職員の防衛も組織の防衛もあります。すべて防衛なのです。そ れを書いてほしいわけです。リスクマネジメントというのは、マイナスをなくそうと、 減らそうという仕組みなのです。 ○嶋森委員   そういう定義で皆さんいいですか。 ○飯田委員   リスクの定義がそうですから、それでいいのです。 ○嶋森委員   危険を回避して事故が起こることを防ぐことが主な役割だという意味で、それによる 損害もしくは損害を防ぐことがもともとのリスクという言葉の定議だと思いますが、そ ういう定義の仕方なのです。患者の安全を含めて、危険が生じたことによる損害を防ぐ ことが主として行われたリスクマネジメントという言葉ですか。ここはなかなか難しい と思います。  ここで書くときに、リスクという言葉の定義が、つまりリスクマネジメントがどうい う言葉なのか、ということの書きぶりが問題になっていて、いろいろな人のいろいろな 意見があるので、結局書き切れない。 ○飯田委員   そんな意見はないのです。それをどう考えるか、だけの話なのです。簡単にいうとリ スクとは、マイナスのことが起こる確率です。それしかないのです。それをどう縮減す るかという話の中で、組織のマイナスに関する要素はかなり大きいものがありますが、 それに関しては別に話をしましょうと。そういう意味では健康に関する患者のリスク、 職員の配置・措置も含めて、リスクを縮減しようという話はセーフティマネジメントに 入れてもいいのではないのですかと言っているのです。それがごっちゃになってしまっ ているから問題だと言っているのです。 ○嶋森委員   そのことはわかっているつもりですが、どのように書くか非常に難しいなという話で、 いい書きぶりがないだろうかということに私としては関心があるわけです。 ○石川委員   嶋森委員がおっしゃっていることはよくわかります。結構オーバーラップしていて、 狭義のリスクマネジメントと広義のリスクマネジメントがあります。リスクマネジメン トの中にセーフティマネジメントも入ってしまうこともあります。先ほど言われたよう に、片仮名でいきますと定義がかなり難しくなるのではないでしょうか。そうすると、 それだけで別の委員会で「リスクマネジメントとは何か」とか「セーフティマネジメン トとは何か」を最初から議論しないとなかなか難しくなるので、定義をここに入れるの は相当時間がかかります。時間がかかってもいいのですが、果たしてそれがいいことな のかということです。  第2点は、セーフティマネージャーとリスクマネージャーは大きな病院なら2人で分 けていますが、ほとんど1人で2つの業務を行っている所のほうが多いのが現状です。 この指針ができたときに、自分がセーフティマネージャーなのかリスクマネージャーな のかを考えてしまったりしますし、そこのところを明確に分けるべきなのかということ をちょっと疑問に思いました。 ○福永部会長   その辺りがあったものですから、こういう書きぶりになったのだと思います。という のは、セーフティと言われると、リスクマネージャーが担っている部分はしなくてもい いのかとか、逆の立場もあるわけです。飯田委員が言われることは本当によくわかるの ですが、「はじめに」の書き方として、表現として意味を持たせるというのは、非常に難 しいことは事実です。ただ最初のときに定義していましたから、ああいう形を取り入れ て、もう少しはっきりさせた形の表現でどうでしょうか。これを議論していったら、そ れこそこれだけで終わってしまいそうですので、また委員の先生方とそれぞれ相談しな がら書き改めてもらうということで、「はじめに」の部分は終わりたいと思いますが、よ ろしいでしょうか。                   (異議なし) ○福永部会長   ありがとうございました。次にIIの「医療安全管理者の業務指針」で、まさに業務指 針なのですが、この部分は量的にも非常に多いですので分けて議論していただきたいと 思います。まず1の医療機関における医療安全管理者の位置づけはいかがでしょうか。 ○佐藤委員   これは1つ非常に気になることがあります。病院の管理者が医療安全管理者に権限の 委譲をしているということです。そういう中で、「管理者の指示の下」、と命令形ですね。 その中での業務を行うというと、権限が委譲されていて、かつ管理者の指示の下で業務 を遂行しなければならないことになると、いざ実行に移すときに、なかなかスムーズに 行かないのではないかという気がしてならないのです。  組織というのは基本的には管理者の指示・命令がなければ、なかなかスムーズに動か ないのが現実だと思います。だからこそ、この文章はそのままにしておいて、例えば、 管理者は医療安全管理者の意見を尊重しなければならない、といった医療安全管理者の 業務がある程度スムーズに遂行できるような位置づけのための言葉を付け足すのもいい のではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。 ○福永部会長   萎縮してしまう。ほかにご意見いかがでしょうか。それは付け加えるというか、いま 言われたようなことを配慮するのは。 ○飯田委員   私が書いたわけではないのですが、私は「指示の下」でいいと思います。むしろ病院 管理者が全責任を負うわけですから、当然指示の下で、何かをするのにいちいち手取り 足取り全部命令するという話ではないので、そんなに違和感はないだろうと思います。 病院の中で病院長の指示を受けなくてやれるのは防火管理者ぐらいだと思います。 ○佐藤委員   当然病院の組織というものは管理者の指示がなければスムーズに動かないし、ほとん ど動かないに近いと思います。ただ、あくまでもそういう病院だけとは限らないという ことです。雇用関係とか、いろいろな問題がその背景にあるとすると、医療安全管理者 の意見をある程度保護するためのちょっとした文章を1行入れておくとスムーズかなと いう気がしたのです。「指示」というのは非常に重要な言葉だと思います。 ○飯田委員   むしろ逆で、セーフティマネージャーの言ってきたことを院長が聞くようにしなけれ ばいけないといったら、間違ったことも提案するかもしれませんから、それは無理です。 ○佐藤委員   意見を尊重する。 ○飯田委員   そこに書いてあって、必要な権限を委譲しているということですから、そういうこと はそこに含まれているのではありませんか。特別書く必要はないと思います。権限を委 譲すると、どこまでやっていいということはきちんと決めてあるわけですから。 ○佐藤委員   よくわかりません。権限を委譲しているならば管理者の指示の下に行動する必要はな いのではないかと思います。 ○飯田委員   違います。権限は全権限ではありませんから。全権利だったらおっしゃるとおりです が、限られた権利です。 ○佐藤委員   そういう安全対策を実施すると。 ○飯田委員   安全対策も、病院の中のほかのどういう組織に、どういう影響を及ぼすか全体を見な ければいけませんから、全体を見た中で、セーフティマネージャーが立てた対策がいい かどうかは、全体を見る人が判断しなければいけないのです。ですから、きちんと病院 管理者の指示の下にやらなければいけない。例えば、簡単な事故対策でもRCA(root cause analysis)を回すにしても、対策を練ったときにそれを実施していいかどうか。緊急避 難は別です、これは当然やります。そうではないときには病院の責任者の許可の下に動 くわけです。指示はどこからもしていないのです。どこまでやっていいかということは きちんと決めますが、すべての対策を全部自分でやっていいというわけではないのです。 それはどこの社会でも同じです。 ○佐藤委員   なぜこんなにこだわるかというと、手前味噌な話で大変申し訳ないのですが、極端な 話、薬局における経営者と管理者の関係なのです。適正な薬品管理を管理者が決めなけ ればならない。しかし、開設者、管理者が「いや、それはお金がかかるから」とか、「そ れはちょっと無理があるから」とか、本来は患者のために必要と判断されたことが、若 干そういうので曲がる可能性はないのかなという不安があるということです。素晴らし い管理者の先生だけだったら全然問題ないと思いますが、同じバランスということは、 折角医療安全管理者という位置づけを明確にしているのですから、それなら対等とまで はいきませんが、ある程度バランスをとった意見が管理者のほうに提言できる、あるい はきちんと意見を伺う、それを話し合える環境を、ある程度の文章として残しておいた ほうがいいのかなと私は考えたのです。 ○嶋森委員   権限の委譲ということ自体が、そもそも管理者の指示があって、権限を委譲されて、 権限が委譲された範囲の中では主体的に動くことを保証されていると私は思っています。 実際にやるときには病院経営者は経済などをいろいろ考えて実践可能なところで判断を するのだと思います。  議論がほかの所でもあったのです。全部委譲されたら困るという医療安全管理者もい ます。つまり、上が「あなたに委譲したのだから、全部やりなさいよ」みたいな形にな るので、管理者の指示も責任は管理者にあるのだというのを入れておいたほうがいいの ではないかという議論もあったのです。 ○佐藤委員   これは消したら駄目で、入れるのは大賛成です。管理者の指示の下でその業務を行う ということは大賛成です。ただし、そのフォロー、片方だけが上で医療安全管理者が最 終的に何もないというのではなくて、ある程度直接的に管理者のほうに「やはりこちら のほうがいいですよ、ああですよ、こうですよ」という意見が述べられるような対等の 関係を文章に残しておいたほうが、後々いいのかもしれません。 ○福永部会長   いい書きぶりがあったら是非お願いいたします。すべてを表現するには、やはりこの ような文章の中では非常に難しいところがあります。1つ書けば逆の立場がありますし、 先生の意を汲んだような意見でするのだったらと思います。 ○石川委員   佐藤委員がおっしゃったことは非常に重要なことです。そのように管理者にいろいろ な意見を述べられる権限を委譲されているということで、この中には含まれているよう な気もするのです。最終的には飯田委員がおっしゃったように、管理者が責任を取らな ければならないので、「指示の下」という表現は組織のありかたとしては適切だと思いま す。  また職種横断的に動いたり、他人の意見を聞いたり、患者と話したりという権限を委 譲されているということで、もちろん副院長や院長にも進言できますし、その意見が採 用されるかどうかは別として、そういう権限が委譲されているということです。 ○楠本委員   位置づけというよりは体制の構築とか、どこか違うところに機能として入れておいた らどうか、という気はします。 ○佐藤委員   これを読んでいて指示の下、指示の下とあって、これはよくよく考えたら必要なので す。例えば、「体制の構築」の指示の下ですが、これはどう考えても必要なのです。ほか の文章では「指示の下」が全部で4カ所ありますが、4カ所とも全部必要です。そうす ると、では医療安全管理者を業務指針としてバックアップする言葉がどこで入れられる かなと思ったときに、「位置づけ」の中の付帯項目として1行入れたほうがいいのかなと 思ったのです。 ○河野委員   気持はすごくよくわかります。なぜかというと、いろいろな病院へ行きますと、あま り熱心ではない院長がいるのです。飯田委員のようにやる気のあるきちんとしている人 ばかりではないのです。下はものすごく苦労しながら何とかして改善したいと思いなが ら、その病院長は全然関心がないのでどうしようもない。そこを何とかしたいのです。 それをうまい具合に表現できないかということです。 ○佐藤委員   そういうことです。 ○福永部会長   そうしたら、そういう意向を多少入れるような言葉があったら、また考えましょうか。 次の「本指針の位置づけ」というのは、たった3行なのですが、いかがでしょうか。 ○飯田委員   これも第1回目に発言しましたが、1行目の安全管理者の業務に従事しているか否か にかかわらずということを書きました。ここで書くかどうかはいろいろあると思います。 ここに書いてある以上、専従とか、専任とかきちんとしていただかないと、何のために 専従とさせているのかという意味がわからなくなります。セーフティマネジメントはみ んな共通だと言い、確かに共通なのですが、そうであれば、リスクマネジメントもどう するかという話も含めて、私がこだわるのはそこなのです。  法的な、あるいは診療報酬上のと、言ったほうがいいのかもしれませんが、それ等に 専従という記載があり、ICUの検討会で専従という言葉を使っておきながら、実際は専 従はやっていないという話になっているわけです。本当にそうすべきだと思うのであれ ば、なぜそうなのかをきちんと書いていただかなければいけない。なぜ専従でなければ いけないのか、なぜ専任ではいけないのか。専任は専門の専と選ぶ選がありますが、そ こをはっきりしないとうやむやで、専従の必要はないという話になってくるように思い ますので、その辺も議論をしていただきたいと思います。 ○福永部会長   これも1回目の会議であった議論ですが、これについては事務局で何かありますか。 ○医療安全推進室長   2の本指針の位置づけの2段落目に、「本指針は、安全管理以外の業務に従事している か否かに拘わらず、安全管理者として行うべき業務を明確にするものである」と、とり あえず書きましたが、指針の中で、きちんとやるべきことを、きちんと書いてあります ので、重要なことはそこができているかどうかです。極端な話、非常に能力の高い方で あれば、こういう業務をやりながら、それ以外の業務をやる管理者もおられるでしょう し、ここで手一杯という方もおられるでしょうし、この業務をやったらほかの業務をや ってはいけないとか、専任であるべきとか、専従であるべきということは、それぞれの 施設で考えてはどうかということで、このような書きぶりにしています。 ○福永部会長   いかがでしょうか。ここも議論になるところだと認識しているのですが。 ○嶋森委員   たしか専従という言葉は診療報酬上で出ていて、診療報酬の加算をするときには専従 にしなさいということだと思います。加算はいいから、安全をやろうという所は、専任 とか兼任でもいいと思います。ですから、この業務指針がそこにこだわる必要はないと 私自身は思っています。 ○福永部会長   ここは書いたら書いたで、逆の議論が当然起こってきそうなところですが、そこもは っきりすべきかどうかは非常に難しいところだと思います。専従と専任の違いですが、 私の病院では、例えば専従だったら夜勤はできないのではないだろうか。だから夜勤か ら外すという議論もあったらしいのです。ですから、いろいろな施設で診療報酬との関 係を含めて書くのは、ある意味では非常に難しいのではないでしょうか。簡単に書ける のかなと思います。 ○飯田委員   むしろ逆で、専従は何かという問題提起をしているわけです。私は専従である必要は ないと思っており、むしろ専従ではないほうがいいと思います。日常業務が忙しくてセ ーフティマネジメントができないというのは話が別ですが、ある程度現場のことがわか っていないと、専従で、そればかりで何年も経ってしまうと浦島太郎になってしまい、 はっきり言うと使いものにならなくなってしまうわけです。  ですから、多少現場を見ながら、あるいはセーフティマネジメント、リスクマネジメ ントをどこまでやるかというのがあります。表現のそこが重要なのです。専従の意味が わからないのです。診療報酬の話だからいいではないかということではなくて、診療報 酬で付けたからには意味があるわけです。なぜそんな要件を付けるのかという話になる のです。ここでけしからんという話をしているのではなくて、それに意味があるのなら、 きちんとそれを考えなければいけない。私は専従である必要はないと思います。 ○福永部会長   ここは事務局を含めて苦心の書きぶりになったのではないかと思います。あえて専従、 専任という言葉を使わなかったのかなと思います。 ○石川委員   たしかに専従と専任の選別は重要かとは思います。ただ、専従と専任で分けた場合に、 業務指針の内容が変わるかというと、どうかな、と考えます。もちろん細かくいえば、 次回の議論でもあるトレーニングの話になると、研修内容の項目に違いがあるかもしれ ません。  ただ、専従の医療安全管理者を配置できる病院はそれほど多くもなく、専任でやって いる所も非常に多いと思います。ここで分けてしまうと、専従と専任の業務内容を、分 けて考えていかなければならないような気がしますので、あえて分ける必要はないと思 います。 ○福永部会長   だから、専従はこれ、専任はこれと細かく書いてしまうと、非常に難しくなるところ なのです。そういうことであえて仕事の内容でこういう人たちが位置づけとして書かれ たのではないかと思います。 ○石川委員   飯田委員がおっしゃることは非常に重要なことで、この次の段階で、もし必要だった ら分けて考えてもいいと思います。今回の検討では両方に使えるようにしておいて、あ えて分ける必要はないのかと思います。 ○寺井委員   いまの現場の問題は、専従、専任ということもありますが、兼任している専従ではな い人が十分業務を行えていないことにあるのだと思います。例えば、専従ではないこと によって、ほかの部分に属していることによって視野がすごく限局されてしまい、「あな たはあそこの病棟の師長だから、そんなことを言う権限はない」と言われてみたり、時 間的な問題もあったりします。  前回の資料の中にもありましたが、兼任者は専任者に比べて、業務を全然やっていな いということが現れているのです。それをどうするかということのほうが、本当に現場 に反映される指針になると思いますので、そこを議論していただいてはどうかと思いま す。 ○福永部会長   いかがでしょうか。 ○佐藤委員   これは私の個人的な意見ですが、今日は医療安全管理者の業務指針ということなので、 専従、専任、兼任という立場はあると思いますが、それは各病院にとって業務の問題と 非常に絡みが出てくると思います。それでできる、できないというのではなく、「はじめ に」に書いてあるように、医療安全管理者はこういう業務をするという指針を作るので あって、あえてここでそのような内容を記載しないほうがいいのではないかと思います。 ○福永部会長   そういうことでよろしいでしょうか。一応そういうことで進めていきたいと思います。 それでは、3の医療安全管理者の業務ですが、これは非常に長く8頁まであります。個 別に議論していきたいのですが、時間的な制約もありますので、全体として問題になる 箇所を議論していただきたいと思っています。まず全体を通して、何かご意見を自由に お願いしたいと思います。どこの部分からでも結構ですが、いかがでしょうか。 ○河野委員   6頁の「事例の分析」ですが、指針の中に例が付いているのがどうも理解できないの です。方法論は今後いろいろ新しいものが出てくるだろうし、書かないほうがいいので はないかという気がするのです。それはあとのほうのどういうものをやらなければいけ ないかの後ろのほうに付ければいいのではないか、というのが私の個人的な考えです。 ○福永部会長   先生のメールでも、そういう意見を踏まえた上で残したと思うのですが、いかがでし ょうか。 ○医療安全対策専門官   ご意見をいただければと思いまして、一応残してありますが、皆様でご検討いただけ ればと思います。 ○河野委員   いろいろ変わるので、例で出すと、それに縛られそうなのです。例えば、4M-4Eなど を使っている所はもうないと思います。元文献などは聞いたことがありません。   4M-4Eなどのモデルは不完全だなというのがすぐわかりますね。例えば、 Engineering,Education,Example,Enforcementで、手順を作るなどというのはどこに入 るのですかというと、入らないわけです。だから、そういうフレームワーク型のもので 縛ってしまうと、逆にいろいろな問題が起こるので、私は取ってしまったほうがすっき りしていいのではないかと思います。 ○福永部会長   ほかの委員はいかがでしょうか。 ○嶋森委員   いま4M-4Eを残すかどうかは別として、日本ではわりとRCAが導入されてきていて、 アメリカのVAの病院でもやっています。 ○河野委員   アメリカがやっているからでしょう。 ○嶋森委員   そういう意味ではなくて、たぶんRCAが根本原因と科学的な意味での分析手法かどう かは別として、いま日本では、どうしても個人の問題に行きすぎる傾向があって、私は VAの話も直接聞いていませんが、それを防ぐための方法として使っているのではないか と考えています。つまり、組織の問題に広げて考えられるということです。なぜなぜ分 析を通してチームで問題を考えるということの材料として使えると考えています。RCA の手法を学ぶではなくて。 ○河野委員   要するに、医療従事者のものの考え方の教育が個人に行きすぎるので、そのためのツ ールとしてこれを使うということですね。ツールですね。 ○嶋森委員   ええ、ツールです。 ○河野委員   ツールはいっぱいあるので、何もこのツールではなくてもいいということです。 ○嶋森委員   ほかのツール、つまり、これも医療事故のときに、そのようなことを考えないで、す ぐ目に見える個人の問題に帰結している形が比較的多かったのです。 ○河野委員   教育の問題であって、方法論の問題ではないのではないですか。 ○嶋森委員   方法を通して教育をしていかないと、いま教育の中でそれを全部やるのは難しいと思 います。 ○河野委員   残してしまうと、方法論というのはどんどん変わりますから、こんなのは古くさくな りますよ。 ○嶋森委員   新しくすればいいのではありませんか。 ○河野委員   アメリカの医療業界では、RCAというのがやられているようですが、それを本格的な 事故調査でNTSB(国家安全運輸委員会)などがやっているかと言ったら、やっていませ んよ。だから、本格的に分析することをやらずに、ツールとしてこれを使っているだけ であって、ヨーロッパでは全く別の方法です。 ○嶋森委員   たぶん例えばということで、私は少なくともRCAは残したほうがいいのかと思いま す。 ○飯田委員   河野委員の意見に賛成の部分は、私もSHELモデルと4M-4Eは要らないと思います。こ れをまともにやった文献はありません。 ○河野委員   文献はいいのです。SHELモデルなどというのはフレームワークを作っているだけで説 明モデルですから、分析に使っても何でもないですよ。 ○飯田委員   組織の内部で分析をやっているかもしれませんけれども、私はかなり調べましたが、 公表されたものは1つもありません。あるのはいい加減なものしかありません。たぶん 河野委員もそういう意味だと思います。私もあえてこれを削除しなかったのです。私が 提案したのは、RCAというのは不明だということです。RCAは別にアメリカを真似してや っているわけではなくて、良い方法が他にあれば何でもいいのですが、ほかにいい手法 が世の中にないからRCAを選択するのです。品質管理の専門家が行う方法として、例え ばFTA(fault tree analysis)はもっといい手法ですが、医療界の中でデータが取れない からなかなか使いにくいので、FTAに類似の手法としてRCAをたまたまやっているだ けです。RCAは実績もありましてこの4年間、4病協で医療安全管理者養成研修をやり、 もう1,000人以上の受講者が出て全国展開しているわけです。医療機能評価機構でもこ のRCAの分析の研修も始めています。石川委員の所でもやっていらっしゃると思います し、看護協会でもこれを取り入れてやっていくことがもう始まっています。  やっとここへきて、日本の医療界の中でこれが一般的な手法として、いま動いている わけです。それを知らない医療従事者が多いので、ここできちっと強調するという意味 では大事です。もしほかにもっといい手法が出ればそれを追加すればいいのであって、 現在取り得るいちばんいい手法は、私はFMEAとRCAしかないと思います。実際にやって いますし、教育もやっており、実績がありますし、いま全国展開を急速にやっておりま す。是非これは入れてほしい。場所はここでもいいし、別の場所でも結構です。  それから、一般産業界でやっていないというのは、それは違います。原子力関係もい ま一生懸命RCAの勉強を始めました、実際に研修をやるというのです。これは間違いあ りません。東電もそれに入っていると思います。 ○河野委員   すみません、うちは違います。RCAという名前なのですが、実際の方法は全然違って います。もともとRCAの前身はHPESですが、 Human Performance Enhancement System の簡略バージョンが医療業界で行われているRCAで、アメリカでやっているからと言っ て日本が真似してやったと思うのですが、原子力業界はもともとHPESです。HPESはも っともっと厳密で、ある意味では専門家でないと使えない方法です。それをものすごく 簡易バージョンにしてRCAを作ったと、私は歴史的に見ているのです。文献はあります よ。 ○飯田委員   だからいいのです。私も品質管理の専門家とお付合いしていろいろやっていますし、 RCAではなくてFTAのほうが厳密にできるとわかっています。だけど医療界、医療従事 者には無理なのです。簡易バージョンが必要なのです。アメリカでもちろん実績はあり ます。アメリカを真似したのではなく、もちろんあそこでもやっていますが、我々も何 年かいろいろなことをやってきて、これが医療界には打ってつけだと考えています。原 子力関係でやっていることも間違いありません。これ以上お話すると差し障るので。 ○河野委員   それはどこの原子力業界ですか。私は一応原子力業界にいますが、少なくともうちの 会社では、RCAと名前はついていますが内容は全然違っています。 ○飯田委員   河野委員が知らないだけで、いま原子力の団体の中で、それを研修会としてやろうと しています。私は頼まれて講師に行きました。私は講師でしゃべってきましたから間違 いありません、証拠はあります。これからやろうと言っているわけです。 ○福永部会長   意見もいろいろありますが、具体的に、このRCAだけ残します。何か寂しくなります けれども。 ○石川委員   SHELと4M-4Eは、日本看護協会のホームページにも出ていますし、現場での知名度は こちらがかなり高いですね。 ○河野委員   どこに出ているのですか。 ○石川委員   たしか看護協会のホームページに。 ○河野委員   それは看護協会ですよね。 ○石川委員   実は、SHELももともと航空業界ですよね。 ○石川委員   これらの方法は、事例分析として使えるだけでなく、コミュニケーションツールとし ても使えるし、理論的な考え方のトレーニングとしても使えます。要因が例えば環境に よるものなのか人によるものなのか、ソフトウェアによるものなのかハードウェアによ るものなのかということを考えていく、そのプロセスとしては非常にいい方法だと思い ます。実はRCAも分析するだけではなくて、RCAで対策を立てた後に検証する場合に、 このSHELや4M-4Eの考え方を用いることができます。危惧されているのは、ただ分類す るだけで終わってしまうのではないかということなのですが、実は、全然馬鹿にしたも のではなくて、SHELも4M-4Eも分類した後に根本の原因を抽出すれば、とてもいい方法 になると思います。先生がおっしゃったように1種類ではなくて、現在もいろいろ種類 がありますし、今後も新たに出てくると思います。ここに「例えば次のような方法があ る」と書いてあるので、複数の例を提示しておいてもよいと思います。 ○石川委員   飯田委員が先ほどおっしゃいましたが、それを簡略化して、簡単にして1時間や2時 間でできるようにしたのがRRCAという方法もあります。医療業界は品質管理と言っても、 物ではなく人を相手にするので、かなり状況は変わってきますね。FMEAはRCAのよ うに、にどんどん、なぜなぜ分析をやっていくわけではなくて、もっと簡単なHFMEAと いう方法もあります。 ○福永部会長   議論はまだたくさんあるかと思いますが、どうしましょうか。全部削除するのか、あ るいはRCAだけ残すのか。あるいはいま言ったSHELとかも全部、例えばということで残 していくのか。どちらのほうが実際問題として、医療安全管理者にとってメリットが大 きいのだろうか。例えば実際問題、現実にはいま言われるように、SHELとか4M-4Eとい う所も結構多い。問題があるかどうかは別として、現実にやっているわけですよね。だ から1つだけ、RCAだけ残してあとは削るというのも。削るのだったら一緒に全部削る。 だから、実際に医療安全管理者に自分がなったとして、これを読みながら、こういう方 法もあるのだなあということを勉強する意味でも削るデメリットはないのではなかろう か。一応残しておいたほうが。河野委員、どうでしょうか。 ○河野委員   私は反対ですから、一応、反対という議事録だけは残してください。いずれ問題にな る。 ○福永部会長   そのときにバージョンで。 ○嶋森委員   医療安全管理者が1つの事例を完全にRCAで分析するには時間も技量も足りなくて、 実際に事故が発生したときは事故調査委員会などで、要するに病気そのもので、どうい う問題があったかということをRCAで分析する。 ○河野委員   いや、事故調査にはRCAは使わないです。 ○嶋森委員   違いますよね。原因分析をする。私はやはり全体を見られるための会の手法として、 現在は現場で原因を探る方法としてこういうものが使われており、今後新しい方法が出 てきたら取り入れていく必要があるというような言い方にしておいたらどうでしょうか。 RCAを1つしか入れないと、それをやらなければいけないというように、また勘違いす る人がいるので。 ○河野委員   そう思ってしまうのですよ。 ○福永部会長   一応全部残すということで。ほかに何かご意見。 ○楠本委員   6頁に情報収集の内容がずっと書いてあるのですが、情報収集をして、いきなり事例 分析になっています。情報の確認といいますか、情報の事実確認が入っていないのでは ないかという気がします。医療機能評価機構が時系列に並べて、情報をちゃんと整理す るようにというようなことを言っていますが、ああいうことは入れなくていいのでしょ うか。収集する内容があって、いきなり事例の分析となっているので、そこに情報の確 認整理みたいなことが要るのではないかと。それは分析の手法の中に入るのでしょうか。 事実確認というか、時系列に並べることはとてもいいと思っていまして。 ○河野委員   RCAにはまさにそれがないです。だから非常に困ってしまう。事実把握がない。 ○楠本委員   はい、事実把握のところがないと思うのです。 ○河野委員   だから、書いてしまうとまずいなあと思います。 ○福永部会長   それは付加するということでよろしいでしょうか。 ○医療安全推進室長   それは(2)の事例の分析の前に入れるということでしょうか。それとも、この事例 の分析の中に。 ○楠本委員   中で。 ○医療安全推進室長   例えば1行目で、収集した事例の確認等を行うとともに、次に分析等を行う。そうい うような書き方がよろしいでしょうか。あと、このRCA等の具体例は全部残しておいて、 6頁のいちばん下の所に、「事例の分析については、例えば次のような方法がある」とあ りますので、事例の分析については「現時点では」というような言葉を入れたらどうか、 と思いますが。 ○福永部会長   ほかにいかがでしょうか。 ○飯田委員   先ほどの話に関連するのですが、6頁の医療機関外の情報の(4)「医療安全に関する専 門家、弁護士、損害保険会社からの情報」で、リスクマネジメントに関してはかなり重 要な話ですが、セーフティマネジメントを考えたときにこの2つは要らないと思います。 ○福永部会長   そうですね。これは削除しましょうか。それから、7頁の(1)から(9)。小さな項目をず っと挙げています。これは文章として整理したほうがいいかどうかという意見もあった のですが、これでよろしいでしょうか。 ○寺井委員   これについては一つひとつの項目に賛否両論があると思うので、このまま載せている ことはよくないのではないかと思うのです。例えば「管理者や職員が受け入れ可能であ ること」。受け入れ可能であるように調整はするのですが、できないという場合にもやっ たほうがよくて、病院管理者が提案することもあると思うのです。そうした一つひとつ には賛否両論があると思うので、これをこのまま載せるより、文章として整理するほう がいいと思います。 ○福永部会長   私もそのほうが、全体的な整合性も取れそうな気がします。ここはそうしましょうか。 ○飯田委員   これは私が書いたのではないのですが、必要だと思います。できないことを提案して もしょうがない。実現可能性というのが大事なのです。やはり全体のことを考えて。多 少無理なところはありますが、例えば電子カルテにするとよくなります、と言われても、 とても財政負担に耐えられない病院にいくらそんな提案をしても困るわけです。やはり 実現可能なことを提案してくれなくては困ります。そういう能力が求められますので、 これは必要と思います。絵にかいた餅では安全確保できないからです。 ○福永部会長   具体的に項目をずっと羅列したほうがよろしいというご意見ですね。 ○飯田委員   そのほうがわかりやすいと思います。ベタ読みの文章だと何を言いたいかわからなく なってしまいます。これは、つなげたら長い文章になりますね。わかりやすいことが大 事ですから。やるべきことを箇条書きにするのがいちばんいいと思います。内容がいい かどうかはまた議論しなければなりませんが。 ○嶋森委員   文章に集合できますかね。それと、いま寺井委員がおっしゃったような言い方、書き 方、つまり、受け入れ可能であるということの中には、受け入れられないから嫌だとい うのではなくて、必要に応じて、それを説得して受け入れてもらうという活動も、安全 管理者の非常に重要な仕事だというような言いぶりに、ちょっとまとめて書いたらどう か、という気がします。折衷案ですみません。私、折衷案を言っているみたいですけど。 でも、ちょっと細かすぎるような感じもあるので。 ○福永部会長   ちょっと細かすぎる感じもしますね。 ○嶋森委員   ただ、まとめてしまうとわかりにくいということもあるので、いくつかに分けて。つ まり、安全管理者として、どうしてもやらなければいけないことはやらなければいけな いよということ。それと、しかし、その医療機関の規模や持っている資源に応じて、配 慮した対策を立てなければいけないということはそうだと思いますから、そういう書き ぶりにまとめられるのかなと思うのですが。 ○福永部会長   同じような部分で、5頁の研修の対象者、研修内容の例、研修時間とプログラム。こ れも非常に小さな項目で書いているのですが、これもこういう形のほうがいいでしょう か。皆さんのご意見を伺いたいのですが。 ○石川委員   まず、7頁の対応策のほうですが、これは私も飯田委員の意見に賛成ではあります。 おそらく、対応策を出してもこれ全部、(1)から(9)まで満足する対応策というのは、おそ らくないかもしれません。(8)有効な解決策があるかどうかなどはやってみないとわから ないし、(9)結果が評価、測定可能であること、これは非常に難しいですね。しかし、そ れを意識して、そういうものをやろうということで箇条書きに書いたというのは非常に わかりやすいのかなと思いました。嶋森委員がおっしゃったように、さらにもう少し具 体的な表現にして、わかりやすくするということで、現場の人が使いやすくなるように 出来上がるかもしれません。結構厳しいことを書いてありますが、例えば、これらをチ ェックリスト的に考えて、これくらいのことに注意をして対応策を立案すれば、よりク ォリティの高い内容が出てくるのではないかという意味では、いいのかなと思います。 ○福永部会長   というご意見ですが、どうしましょうか。一応(1)から(9)を尊重するということで、少 し書きぶりを工夫してもらいましょうか。 ○医療安全対策専門官   いま、いくつかにまとめたらどうかというご意見と、内容を検討しましょうというこ とがありましたので、そこのところをまたご意見を伺いながら、業務指針に盛り込む事 項を、実現可能性も含めながら考えていきたいと思います。 ○福永部会長   先ほどの5頁の(1)から(3)も細かく書いてありますが、これでよろしいでしょうか。教 育・研修実施の部分です。このほうが実際の医療安全管理者にとってわかりやすいのか もしれませんが。それでは、一応これはこのままの形で残しましょうか。あとほかに、 この業務指針の実際の業務の部分で、どこでも結構です。 ○飯田委員   8頁の事故発生時の対応策では、かなりリスクマネジメントの内容が入っている。△ だというお話をしたのはここなのです。まず、(1)からです。現場に赴いてデータなど保 全を行う。これはセーフティマネージャーの役割ではないです。これは明らかにリスク マネジメントです。(3)の「所属長への連絡」は、セーフティマネージャーがやらなくて も、病院の中のマニュアルにでも書いておけば自動的にできるはずのことです。(4)「家 族への連絡と説明を要請する」は、セーフティマネージャーがいちいち指示する必要は ないと思います。それから(6)、特に(6)に関しては、これもセーフティマネージャーの仕 事ではありません。(7)も△で、むしろこれはリスクマネジメントに近いだろうと思いま すので、ここに書くのは適切ではないと考えます。  ここの(1)から(7)まではもう1回よく検討しないと、かなりごっちゃになっています。 初めに申し上げたとおり、ここはセーフティマネジメントに限定して書いていただいて、 もしリスクマネジメントに関して触れるのであれば、リスクを縮小して、安全を確保す る方向に持っていくということに限って書いていただきたいと思います。 ○福永部会長   いまのご意見ですが、いかがでしょうか。 ○嶋森委員   いま当院のリスク・安全管理者は医師が専任しているということもあると思いますが、 実際は現場に行って使った機材などをちゃんと保全する、医療安全管理者が保全すると いうことはないですが、保全するようにきちんと指導を実際にやらないと、いまのとこ ろ現場の人はわかっていないので、なんでも捨ててしまってあとでわからなくなる、と いうことがあるのですね。だからそういう意味では、セーフティマネジメントとリスク マネジメントをいまは兼任してやっているような形なので、全然要らないということで はないかなと思います。だからそれをどの程度書くかということは、たぶんその規模と か、誰がリスクマネージャーか、誰が安全管理者かによってかなり違うとは思います。  先ほど飯田委員がおっしゃった所属長への連絡というのはなくしてもいいかなとは思 いますが、もう少し議論していただいたほうがいいかなと私も思います。私としては、 現場に行って必要な情報をきちんと、なくさないようにしていたり、記録をきちんとし ておきなさいというような指導などはやっているし、リスクマネージャーが別につくら れない限りはそういうことを、役割としてはやってほしいと思っています。 ○福永部会長   現状はそういう病院が多いのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。確か に(3)や(4)はマニュアルを作っておけば済むことで、ここに改めて書く必要はないのかも しれませんが。 ○飯田委員   先ほど申し上げたことの繰り返しになるのですが、これはそこの所属長がやるべきで あって、それを今度安全の観点からどう検討するか、分析するかは、安全管理者の仕事 です。リスクマネジメントの仕事をしてはいかんと言っているのではなくて、組織の中 でセーフティマネジメントとリスクマネジメントは別の仕事です、違いますと考えない といけないということです。保全ということは、むしろリスクマネジメントに近い形な のです。もちろん、原因を追究するためには、現状とか証拠を保全しなくてはいけない、 それはわかります。それは、何か事故が起ったらそういうことをしなさいということで 教育しておけばいいわけです。教育すること自体は、いろいろな切り口でやるべきです からそれは否定しませんが、セーフティマネージャーが現場へ行って保全するところま では、ちょっと違うのではないかと思うのです。  現場に赴いてというと、夜中でも行くのですかという話になってしまいます。時間外 でも行くのですか。むしろ時間外の方が、事故が起こりやすいわけです。それはそのと きの当直責任者なりが管理責任者としてきちんと指示すべきであって、日中だったら、 病棟なら病棟の師長、あるいは医師が、セーフティマネージャーと相談をしていろいろ なことをやるのだろうと思います。それを分けないといけない、と先ほどから言ってい るわけです。だから、兼任してはいけないとは言ってないのです。兼任するのは結構だ けど業務が違うのだ、と明確にしないとわからなくなってしまうのです。 ○嶋森委員   当院の現状を言うと、休みでも出てきてやっていますね。休みの日は特に夜なども、 実際にそういうことが起きてしまったら、現場には、ほかに何十人も患者がいるわけで すから、対処する人がいません。安全管理の面から、現場で情報を得ておかなければい けないことは、指示して済む問題も確かにありますが、ほとんどが報告を受けて必要に 応じて行ったり指示をしたりしていますので、分けて書かなくていいのではないかと思 います。現実に多くの病院のリスクマネージャーは、それは、指示の段階で終わってい るかもわかりませんが、リスクマネジメントの視点から、こういうこともやらなければ ならない場合があるという書き方でもいいですので、書いておいたほうがいいと私は思 います。 ○福永部会長   現状を反映はしているのですね。これを全部抜いてしまうと、さて、何を誰がやるの かということになります。では、その表現等を少し工夫していただいて、全体としては やはり残すということで了解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。 ○楠本委員   いいと思います。実態はそうですし、飯田委員の、セーフティマネージャーなのだか らやらないでいいという、その切り分けも大事だと思いつつも、やはり現場的には。夜 勤などは、たぶん夜勤管理師長がリスクマネージャーに連絡して、指示を受けて動いた りするのだと思うのですね。指示を受けて、また指示をして動かすという。ですからこ れは残しておいたほうがいいと思います。 ○石川委員   私もそう思います。データの保全の関係もそうですが、いくらマニュアルを作ってい ても、そのときになれば動転して当事者たちは忘れてしまうこともあるし、事故発生時 の初動をする権限を移譲されていると受け止めて、現場ではやっているのではないかな と思います。安全管理は極めて重要なのですが、現実には事故発生時の初動を安全管理 者に任せている病院が結構多いと思いますので。確かに(6)の精神的ケアとかマネジメン トというのはかなり難しいかもしれません。もう少し整理するのは構わないと思います が、事故発生時に対応する、初動ということで、あったほうがいいのかなと思います。 ○寺井委員   初動という言葉を入れて、「行う」というよりも、「行われているか確認する」とか、 そういうように少し表現を変えて。相談を受たり、自分がやるかどうかは置いておいて、 現実にサポートみたいな役割はとてもしていると思うので、そこを反映させていただく といいと思います。 ○石川委員   確かにおっしゃったとおり、この中には事務職員の方が分担できることもあるとおも いますし、そうすればだいぶ医療安全管理者の業務も減ってきますので、必ずしも医療 安全管理者が、これらの内容の全てを実施するのではなくて、確認やチェックなどでも よろしいのかと思います。 ○福永部会長   病院によると思うのですが、機構で、専門職というのを事務職がやるようになってか ら、そういう部分の仕分けというか、医療安全管理者の負担が少なくなっていますね。 だから、それぞれ違うと思うのですが、一応全体として、いま言われたことを配慮して やりましょうか。 ○飯田委員   8頁「安全文化の醸成」の(2)の1行目、「意識的に」というのはちょっと違和感が ある表現です。(3)の2行目、「医療従事者とともに患者家族が参加することで」とい うのは、私は前からいろいろ疑問がありまして、プラスの意味は非常にいいことだと認 めた上ですが、医療安全に“患者の参加”などは逃げ言葉であって、むしろ私たちの責 任放棄と受け止められかねない表現です。言い方によっては、安全文化の醸成には患者 の教育が大事だ、患者も参加してくれ、と受け止められかねないので、私はこの「患者 の参加」ということは好ましくない表現と思います。そういう本があるのを全部知った 上で話をしています。私たちの仕事は安全を確保することであって、患者が安全なのは 当たり前なのですよ。患者や家族が参加することを教育だ、云々だという話は、ちょっ と違和感があります。 ○福永部会長   そういうご意見ですが、いかがでしょうか。 ○飯田委員   産業界でもそういう表現をしますか。安全のためにあなたたちが注意しなさい、交通 事故が起こらないようにしなさいなんて、普通は言わないでしょう、航空機でも。安全 確保は私たちの仕事なのです。 ○嶋森委員   一般企業でも、最近パロマの事故の問題では、買った人にああいう事故が起きている という情報を提供しておけば事故を防げたということで、亡くなった方は大変怒ってい ると思うのです。やはり患者や家族が参加する。参加するという言い方が適切ではない かもしれないのですが、医療を受ける際には自分の意見をきちんという、自分の病気の ことをよく知り、どんな治療をされているか、どんなことが安全か、どんなことが危険 なのかということがよくわかって、医療安全に参加するというのは必要だと思うのです。 社会全体の文化を高めないと、病院の文化も高まらないと思いますけど。 ○飯田委員   別に否定しているわけではなくて、そういう趣旨の言葉だったら、別の項を立てて、 患者参加という言葉ではなくて書くべきだと思います。 ○嶋森委員   安全文化の醸成の所に触れるような中味ではないというご意見ですか。 ○飯田委員   そうです。要するに、私たちは、医療とはどういうものだと情報発信をする、説明責 任がある、それは当然なのです。患者さんも理解してください。それも当然なのです。 それをここで書くべきですかと言っているのです。それが一緒くたになって、患者参加 ということになっているのです。最近の風潮がそうなので、あえてここで発言している わけです。 ○福永部会長   いかがでしょうか。これも現実には患者や家族が、例えば点滴や薬を最終的にチェッ クしてくれて、事なきを得た部分は非常に多いのですね。参加という言葉自体はちょっ と問題があるのかもしれませんが、どこかでちょっと表現を入れておくのはいいのかな と思いますが。 ○医療安全推進室長   この患者の参加ということについては昨年度の医療安全対策会議という、厚生労働省 の医療安全対策において、いちばん上に位置づけられている対策会議の中で、今後の3 本柱の1つになっております「患者・国民との情報供有と患者・国民の主体的参加の促 進」といったようなことで、患者の参加が重要だということがありましたので書いてい るという背景があります。 ○嶋森委員   飯田委員がおっしゃったのはたぶん、そのことが重要なことは十分承知の上で、この 項目に書くのではなくてという言い方だと思います。 ○飯田委員   私もそうだし、主体的参加などするはずがない。患者は、安全は当たり前だと思って いるわけです。好んで参加するのではないわけです。 ○嶋森委員   いや、それは先生。 ○飯田委員   私が患者ならそうです。安全は当たり前だろうと思います。それを主体的参加などと 書かれてしまうと、もし私が患者だったら怒りますよ、冗談じゃないと。安全なんて当 たり前ではないか、医療界の仕事だろう、逃げているのではないかと取られかねないの で、そういう表現ではなくて。内容は大事なのです。私は内容の否定はしないのです、 大事です。患者にも、これ大丈夫ですねと確認して。返事をしない人はどうしますかと いうことがあるにしても、です。点滴の度に患者と看護師と2人で合わせましょうなん て、患者は怒ります、いい加減にしてくれと。私だったら怒ります。 ○石川委員   それは非常によくわかるご意見ですが、ただ、実際に医療者だけでは、いわゆる安全 を推進するのはほぼ無理に近いということから考えると、先ほど室長がおっしゃったよ うな、昨年6月のワーキンググループの検討結果の「患者参加」というのを、是非入れ たほうがいいのではないかと思います。患者さんにも、医療安全を意識して協力して頂 ければと思います。もちろん、患者さんが医療に関しては医療者にすべてお任せしたい と考えるのはわかるのですが。 ○飯田委員   そんなことは言っていません。 ○石川委員   医療者が提供しなければならないというのはわかるのですが、患者の意識というか、 そういうことを少し喚起する面でも入れたほうがいいのかなと思います。 ○福永部会長   ほかの適当な所があればいいのですが、それをまた事務局に丸投げするのもちょっと。 この表現を入れる所はどこかありましたか。 ○飯田委員   あえて言うなら私たちが患者さんにお願いするわけです。「我々は不十分ですからお願 いします」とお願いすることだったらいいですが、主体的に参加しろ、なんてとんでも ない話で、これは患者の立場からいって怒ります。私はそういうことを言っているので す。内容は大事なのです。当院だってミスはあります。患者に確認してもらうことがあ るかもしれません。それがいけないとは言っていません。書くなら別の所できちんと、 お願いする立場で書かなければいけないと言っているのです。 ○石川委員   この(3)は、医療安全に関連する情報収集に、例えば患者や家族が参加することと いうように読めます。確かに患者満足度とか、患者のいろいろな意見を聞いて、病院の クォリティを上げるという面では、別にここに入っていても違和感はないのかなと思い ましたが、いかがでしょうか。 ○嶋森委員   私は、主体的に医療安全に参加することを患者が怒るとは思いません。専門家として やるべき注意義務を果たすことは大事ですが、自分がどんな治療を受けるか、どんな安 全な治療を受けるか、その選択権もあり、主体的に参加するということはあり得ると思 うのです。患者の意見に応じて治療も変えられたりすることもあり得ます。若干違うの ですが、乳がんの患者の主体的な参加というのも、だいぶ医療を変えてきたと思うので す。だから、医療安全をともに。主体的にというより、患者とともに、医療者の不十分 なところも含めてきちんと説明をして、患者に参加してもらって、例えば医療安全にお 金がかかるわけですから、そういうこともよく理解していただいて、一緒に医療安全を 考えるというところを6ぐらいに立てて、1つ言ってしまうというのがいいかもしれな いなと思いますね。 ○福永部会長  いま言った趣旨を汲んで新たにちょっとね。 ○医療安全推進室長   確認ですが、8頁の(2)の事故発生時の対応で、(1)は少し書き直す、(3)と(4)は削除 という理解でいいのでしょうか。 ○福永部会長   一応書いておいても。どうですか先生、やはり削除しないといけないですか。親切と 言えば親切。確かにこれはマニュアルができていれば、改めて書く必要もないという気 もしますし、具体的にはどうしましょう、削除しますか、それともこのまま。病院によ って要請、その伝達の方法などは違うと思うのですが、患者の家族への連絡を要請する、 こういう場合もあるのですか。実際はどうなのですか、寺井委員。 ○寺井委員   実際にはこの(2)と(3)は、何かあったという連絡があったときに、適切にマニュアルど おりにできているかどうか、マニュアルをもとにして確認をするので、ここに残してお くとしたら、「マニュアルをもとにして確認する」ということで初動の中に含めて、もし ここから削除するのであれば(1)の対応策に、「マニュアルを作成して事前に周知する」 と書いてあるので、そのマニュアルの中には初動対応として、「連絡や患者への対応等も 含める」みたいに書いておいていただきたいです。 ○福永部会長   それでいいですか、佐藤委員。 ○佐藤委員   先ほど飯田委員がお話になったように、事故というのはあくまでもリスク、要するに リスクが起きているのですよね。そうすると、この内容自体、セーフティというのとは ちょっとかけ離れてしまいますね。ということは、事故が起きた時点での対応というの は基本的にはリスク管理なので、そのマニュアルをいまここで改めて書いているという こと。それならばいまおっしゃったように、どこでも対応マニュアルを作成して、院内 各部署に周知する中に、(3)から(7)のことはおそらく基本的に記載されていると私は思う のです。それを誰がやるかどうかだけの問題なのですね。そうすると、事故発生時の対 応策として何が重要かとなったときに、いかにしてその事故の詳しい情報を収集し、そ の情報あるいはその事例の情報に基づいて適切な分析をして、二度とそういう事故が起 きないようにどうするかということが医療安全管理者の役割かなと、私は思うのです。 しかしこれを入れてしまうと、実際にその対応マニュアルに入れているもの、入れてい ないものが非常にごっちゃになってくるような気がするのですが、その辺はいかがなの でしょうか。 ○石川委員   言われたことは大変重要なことです。実際はマニュアルがない所もあるぐらいなので、 マニュアルを作るということも重要だと思います。実際、2日後に事故だったとか、3 日後に具合が悪くなったとか、最初は事故かどうか、インシデントかアクシデントかわ からないことかがあるのですね。静かに進行して、突然患者が亡くなるということがあ るので、その辺のセンスを持った安全管理者が、最初に保全していたりとか。例えばす ぐ亡くなったということだったら別ですが、ほかの場合は、静かに進行して急に具合が 悪くなって、振り返ってみると、そこが事故だったのかもしれない。こういうことがあ るので、この(1)から(7)のというのは、内容の検討が必要ですがとてもいいことかなと思 いますけどね。 ○福永部会長   一応ここは先ほど寺井委員が言われたことを入れながら、ちょっと整理をしてそのま ま残すことにしましょうか。そうしたら最後のIII、9頁と10頁ですが、この部分はどち らかと言うと、次の研修プログラムとの関係も大きいのではないかと思います。だから 研修プログラムの中にこの部分を入れて、全体としてまた次回に討議をするか。あるい は、新たな項としてこのIIIは残しておくか。研修プログラムとの関係で、議論はどうし ましょうか。嶋森委員、どうでしょうか。 ○嶋森委員   このIIIは、前段の業務指針の中の項目を挙げてきたというような状況で、こういう業 務をするために必要な能力という意味で、例えばコミュニケーション能力やリーダーシ ップ、情報収集能力、分析、問題解決能力というような切り口で書かれるほうがいいと 思うのです。例えば4の「情報収集に必要な知識・能力」の中にコミュニケーションと いうのが書いてありますが、全体に必要な能力だと思いますから、ちょっと切り口を変 えて指針案と一緒に、少し整理し直したほうがいいのではないかと思うのですが。 ○福永部会長   次回が研修プログラムについての議論になります。そして、最終になるかもわかりま せんが、4回目に全体についてもう1回改めてやるわけですから、そこでまた議論がで きると思います。だから、IIIの部分はペンディングにすることもできます。細かい内容 についてはここで議論しなくてもいいのではないかと思うのですが、どうですか。委員 の方で何かご意見がありましたらどうぞ。ここの部分も議論をして、医療安全管理者が 当然備えるべき知識・能力だというように言われてしまうと、いかがなものかという部 分も当然出てくるでしょうし、一つひとつの内容については、これもまた問題があると ころもあるかもしれません。だから、その研修プログラムの中でまた議論しましょうか。  そういうことで、全体として今日はこの指針の部分をやってきたわけですが、全体を 通して何かご意見、あるいは指針の中に反映させてほしいということがありましたらお 聞かせ願いたいと思います。もしあれでしたら、座長あるいは事務局に一任していただ いて、それをまた、メール等で委員の方々の意見を紹介しながら、まとめという形にな っていくのかなと思っておりますが、何か全体を通してご意見がありましたらどうぞ。  そうしたら、IIIの部分はそれでいいですか。次回、研修プログラムの中でまた議論し ますか。 ○医療安全対策専門官   この「医療安全管理者が備えることが必要な知識、能力」というところは、やはり研 修に関係するものなので、そこでご議論という形でいいと思います。委員の方の何人か からもやはりそのようなご意見がありましたので、それでいいかと思います。 ○福永部会長   それでは今後の日程とスケジュール等を、事務局からお願いします。 ○医療安全推進室長   次回は1月19日の午後3時から5時までということでお願いしたいと思います。今後 の検討スケジュールについては今日の資料4にあります。今日、業務指針について一通 りご議論いただきましたので、次回は研修プログラムの作成指針ということでご議論い ただきたいと思います。1月19日の前に事務局のほうで素案を作って、各委員の皆さん に事前にお送りさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上 です。 ○福永部会長   1月19日の15時から17時ですね。それまでの間にまたメール等々をして、原案が配 付されると思います。それでは、皆様方のご協力によって、ちょっと早く終わったので すが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。  (紹介先)  厚生労働省医政局総務課医療安全推進室   医療安全対策専門官 小林  03−5253−1111(2579)