06/11/21 次期治験活性化計画策定に係る検討会 第6回議事録 第6回次期治験活性化計画策定に係る検討会 日時 平成18年11月21日(火) 14:00〜 場所 厚生労働省7階専用第15会議室 ○楠岡座長 定刻となりましたので、「第6回次期治験活性化計画策定に係る検討会」を 始めたいと思います。本日はご多忙中のところをお集まりいただき、ありがとうござい ます。まず、事務局より、本日の出席の確認をお願いします。 ○研究開発振興課課長補佐(佐藤) お手元の資料2、「次期治験活性化計画策定に係る 検討会構成員名簿」をご覧いただきたいと思います。安田構成員の退職に伴い、今回か ら日本医療機器産業連合会、GCP委員会副委員長の新井茂鉄氏に構成員としてご参加 いただいています。また、本日は塚本構成員、辻本構成員がご欠席です。  事務局としては厚生労働省、文部科学省の関係課より出席しています。本日のところ は、全関係課が出席しております。 ○楠岡座長 ありがとうございました。引続き、配付資料の確認をお願いします。 ○研究開発振興課課長補佐 資料の確認をいたします。最初に「議事次第」、「座席表」、 それから資料1、資料2、資料3、資料4までが資料番号が付いた資料です。これに引 続き、荒川義弘構成員による当日配付資料、新井茂鉄構成員による当日配付資料があり ます。参考資料として、「新たな治験活性化5カ年計画(素案)概要」が配付されていま す。  なお、構成員の皆様の机上にのみ、前回、第5回の議事録(案)をお配りしています。 また、第1回から第4回までの議事録は参考資料7として配付しています。紙ファイル とともに綴じています。前回お配りした、各調査班の報告書概要等も参考資料のファイ ルとしてお配りしています。  前回の繰返しになって恐縮ですが、お手元の黄色いファイルは各回共通に使用してい る資料です。お持ち帰りにならないよう、お願いいたします。また、構成員の方々のフ ァイルにしまわれている資料については、傍聴の皆様にはお配りしていませんが、厚生 労働省、当検討会のホームページにてご覧いただけるようになっていますのでご案内申 し上げます。以上、資料に過不足がありましたら事務局までお知らせいただきますよう、 お願いいたします。 ○楠岡座長 ありがとうございました。早速、議事に入りたいと思います。本日は「次 期治験活性化計画の素案」に関する討論を予定しています。まず、これまでの検討会で 出された主な意見を事務局よりご説明いただきたいと思います。 ○研究開発振興課課長補佐 資料3をお開きください。「次期治験活性化計画策定に係る 検討会第1回〜第5回の主な意見」という資料です。前回の審議の中で、「これまでの検 討会で出された主な意見について、もう1回レビューをしたほうがいいのではないか」 と構成員からご指摘があり、今回資料3を提出しています。ここでは項目ごとに、私ど も事務局で座長とご相談させていただき、主要な意見をリストアップしています。  最初に「次期治験計画への提案」という、比較的大きな話、特に数値目標、ロードマ ップ、マイルストーン等を設定すべしというご意見をいただいています。「臨床研究と治 験との関係」では、治験の質的向上に関する臨床試験の基盤整備を推進する観点で、こ こに書いているようなご意見をいただいています。「ネットワークのあり方」ということ で、治験の中核拠点を整備し、治験の活性化、臨床研究支援機能の集約化が必要という ことで下に書いてあるようなご意見をいただいています。  2頁目、今度は「中核病院に望まれること」、また「拠点医療機関に望まれること」と して、中核病院においては臨床研究が実施できる人材確保と人材養成及びノウハウの蓄 積、提供。拠点病院においては中核病院と協働して治験や臨床研究を効率的に実施でき る体制を取る。いただいたご意見としては、このリストに書かれているようなものがあ りました。  「人材関連」ということで、研究者と支援人材の確保と育成、医師に関する部分、C RCに関する部分、データマネージャーに関する部分、生物統計家に関する部分、その 他事務職員といった方が代替する部分でのご意見が書かれています。次に「IRB」、審 査委員の教育やIRBのあり方の見直し、IRBの充実を図る観点でのご意見をいただ きました。あと、治験の事務の「効率化、費用」という点で事務手続きの効率化、被験 者集積性を向上し、スピードアップとコスト削減を図る上でのご意見をいただいていま す。「啓発」関係では、効果的な啓発活動等により、患者の治験参加を支援するという観 点でのご意見をいただいています。  4頁、「他課・他省庁との調整が必要な事項」においては治験相談等、審査に関する部 分とか、その他制度に関する部分、GCP等に関する部分についてのご意見をいただい ています。「医療機器」に関する部分では、医療機器の特徴を踏まえた上で実施する上で の問題点を解決し、機器治験を推進するという観点のご意見がありました。あと、「医師 主導治験の推進」、治験の際に必要なノウハウや情報を共有し、推進するという観点での ご意見を伺っています。「その他」、研究費のあり方というような点で頂戴しています。 少し、事務局で整理しましたが、このような意見をいただいています。  また、のちほど、資料4において、次期治験活性化5カ年計画の素案についてご審議 いただく際、資料3もご参照いただければと思います。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。ただいままとめていただいたものは、いままで 1回から5回までいろいろ発言があったものを抜き出して整理した結果です。この中の かなりの部分に関しては、次期治験活性化計画の中に取り入れられるものは取り入れる ようにして、活かしていくつもりです。ただ、内容によっては、先ほどありましたよう に他省庁との協議等が必要で、今回の計画に直ちに盛り込むことができない内容もあり ます。その辺を勘案してお読みいただければと思います。  次の議題に入りたいと思います。まず、本日、お2人の構成員の方から資料を提出い ただいています。本日は議題も多いので、この件に関して手短かに発表をお願いしたい と思います。まず、荒川構成員からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○荒川構成員 これらの資料を見せていただいて、多くのことはもう述べられていると 思います。結果として、治験に関する整備項目が多いということで、臨床研究に関して はこの検討会を除いては現在のところないこともあり、直ちに実行はできなくても今後 のためにしっかりと意識づけをしていただいて、誰がどのように解決していくべきかを もう少し整理して議論できたら、そこだけでもと思ってこのようなイラストを使った資 料を作りました。もう1度、皆さんに意識づけという意味で挙げました。  まず、日本の創薬・育薬研究の現状ですが、右に向かって「基礎研究」、「臨床研究」、 「育薬研究」、実施者としては企業、研究者・医師があります。ご覧のように、「臨床研 究」は非常に手薄になっています。あるいは、育薬研究もそうだと思います。そういう 中で治験においては海外先行、日本外しという状況がある。研究者主導においては、特 にトランスレーショナル・リサーチの制度的な整備が非常に遅れている。さらには、臨 床研究の基盤に関しての整備が遅れている。こういったことをここの中で議論してきた わけです。もう1つ付け加えると、育薬研究も非常に遅れている状況にあります。  次の頁、臨床試験の枠組ですが、医師主導の治験という制度が入り、いろいろな開発 ストラテジーができるようになった中で、はっきり言って自主臨床試験というものが相 変わらず認知されていない状況にあります。実際、大学病院等では自主臨床試験から医 師主導の治験、あるいは企業主導の治験という流れで商品開発に向かっているものがた くさんあります。こういう流れの中で、自主臨床試験の品質を確保していかないと効率 的な研究開発、あるいは大学病院での基礎研究が活かされてこない状況にあると思いま す。  そういう中で、規制という点に関して、日本においては臨床研究に関する倫理指針が ようやく出たという段階です。いわゆる、臨床試験の標準化というものがまだまだ出来 ていない。品質管理という点でこれから課題かと思います。世界に伍した臨床研究の成 果を発信していくという観点からも、やはりICH-GCP等を準用した臨床試験が必要にな ってくると思います。  次の頁は「臨床研究の基盤」、こういった図もよくあるかと思いますのでご説明いたし ます。いちばん上には直接の関係者である被験者、研究者がいますが、大学医療機関の 中には臨床情報基盤、研究支援をするデータセンター、あるいはコーディネーターがあ る。それから、監視に相当する倫理委員会、こういったものが整備されていなければな りません。倫理委員会等はあるものの、実施状況管理等もまだ十分にされていない。教 育・臨床情報基盤に関してもまだまだほとんどないという状況だと思います。研究支援 に関しても、コーディネーターはまだ治験にしか関わっていないケースが多い中で、こ ういった臨床研究も支援していかなければいけない、データセンターも整備していかな ければいけない。この部分も、まだまだほとんど出来ていない状況です。  さらに底辺にある行政、学会、産業界、国民・マスコミを見ていくと、左から「研究 者の動機付け」、これは学会認定とか業績評価、もちろん経済的なインセンティブもある かもしれません。そういったところもやっていかなければいけない問題です。真ん中の ところは産学官の連携、先ほどの育薬研究等がまだまだ十分にできていない点がありま す。  「行政支援」は是非、行政側に頑張っていただきたいところです。臨床研究費の充実、 規制緩和、薬事法や健康保険の問題、それから補償制度の問題、こういったものを誰が 今後やっていくべきかを是非この検討会の中でも考えていただきたい。すぐに解決方法 が見つからないまでも、その辺を明確にしていかないと、今後5年間にこのことが全く 進まないという状況では日本の臨床研究の未来はないと思います。ですから、ここを置 いておかないでいただきたいということです。  次の頁、これは「治験のあり方検討会」の下に設けられた作業班で、楠岡先生が班長 をされていました。その中で、いくつかのグループに分けて課題がありました。臨床開 発の推進においてどうしていったらいいかを検討した中で出てきた1つの案です。ここ の中で整理されているので、この図を借りてきました。上に国があり、下に産業界、左 側に大学や医療機関がある。右側のいくつか細かい四角で囲ったところは、行政側が今 後整備していただかないとなかなか臨床研究は進まないという領域です。  まず、右のほうをお話します。「臨床情報基盤センター」というのは、これだけ電子カ ルテその他、いろいろなものが導入されているにもかかわらず、有効に診療情報が研究、 あるいは医療行政に活用されていないという問題です。その次は薬事法、これは試験薬 にかかわる品質、安全性の問題です。「IND制度」と書いてありますが、これはアメリ カやヨーロッパにあるような未承認薬、あるいは適応外で使う医薬品等を使った試験の 場合は登録が必要であるという制度です。ICH-GCPを準用した質の高い試験を義務づけ ること、IRBの強化や登録、いま現在は「保険外併用療養費」となっていますけれど も、それを適応拡大していただきたい。健康被害の補償制度も何らかの形で整備する必 要がある。こういったことはお金という問題ではなくて、国の制度として解決を図って いただきたいと思います。  左としては教育、実践、いろいろなレベルで産学官の連携が必要になってくると思い ます。こういうものは大学や医療機関が中心になって整備する。それに国、あるいは産 業界から支援をいただくといった構図ではないかと思っています。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。質問等ありましたらのちほどまとめて、討論の ところでお願いしたいと思います。引続き、新井構成員からお願いしたいと思います。 ○新井構成員 よろしくお願いします。医療機器の治験に関し、医薬品と比べて特殊と 言ったらおかしいのですが、いろいろ問題があると思いますので、その点をまとめまし た。  1つとして、医薬品に比べて、医療機器の場合は治験数がかなり少ない。それから、 治験に関する分野が循環器から大型医療機器と幅広くて、専門家がいない。できれば、 今回、中核病院や拠点医療機関を設けようということになっていますので、そこで医療 機器治験ができるような体制を整えていただきたい。  例えば、これが良いかどうかはわかりませんが、循環器病だったらここのところに行 けば大体治験が進みます、関節であればこういうところに行けば進みますというような ものをイメージした、治験の専門病院化を図ったらどうかと思います。  医療機器の場合は医薬品とは違って、改良とか、留置部位を変えた場合に流通品でま た治験をするのかどうか。中核病院、拠点医療機関では最新の治験をすることに目が行 って、こういったゾロ品の治験、前回も安田構成員から発言がありましたが、その辺の 治験をどこもやってくれなくなるような可能性もあると思います。その辺も配慮してい ただきたい。  あと、これは審査にかかる話なのですが、改良等の治験に関しては本体部分の治験が 終わっているので、例えば症例数を半分とか3分の1にして、あとは市販後臨床など、 市販後の対策を利用することにして、企業側の負担を軽減してはどうかと思います。  「治験相談制度の充実」なのですが、医療機器の場合は中小メーカーが多いのと、ベ ンチャーが今後出てくると予想され、常に治験を走らせているような会社というのはほ んの一握りである。普通だったら2、3年に1回治験するとか、ときどき治験する会社 が多い。治験をする場合、会社に専門家がいないという話にもなる。できれば行政とか 中核病院とか、医療機器治験の相談制度を是非充実させてほしいと思います。  もう1点、先ほど荒川構成員からありましたが、臨床研究制度の整備はいいと思いま す。ただ、ここで使われる医療機器をどのようにしてメーカーが提供するのか、その辺 のルール決めがない。きちんとルール決めをしておかないと、のちのち問題になってく ると思います。インプラントにした場合、臨床研究が終わったあともインプラントで完 全に残ってしまう。その辺のルール決めもないと思います。この辺は今後の課題として 検討していただきたいと思います。  医療機器治験制度に関する法的な面は、GCPが1年ほど前に初めて省令化になった。 まだ一部、通知等が出ていないし、医薬品のGCP省令の改正で中央IRBの扱いが出 てきたのですが、医療機器のほうはそういった改正が遅れている。共通事項については 今後速やかに改正してもらうとか、制度上の整備も必要ではないかと思っています。以 上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。お二人の発表に関したご質問がありましたらお 願いします、何かございますか。よろしいでしょうか。 ○山本(精)構成員 荒川構成員のお話の補足です。自主臨床試験とか、アカデミック 発のものが薬になっていかない1つの理由は、アカデミック畑の人たちがどうやったら 薬になるかがわからない。実際、プレクリニカルからクリニカルに持っていくときに何 をしたらいいかわからない。企業の人はたくさんノウハウを持っているのですが、その ようなものをこれから蓄積していくことが必要ではないか。臨床試験に詳しい私たちに 相談されても、プレクリニカルからクリニカルに進めるために実際に必要な手順が何か についてはわからないところがたくさんあります。具体的にアカデミック発の候補物質 を臨床開発に持っていくにはどうすればいいかということも、是非みんなが共有し、勉 強できるようにしたらいいのではないかと思います。 ○荒川構成員 おっしゃるとおりです。人材交流というのは非常に重要です。東大病院 には少し企業出身の方もいますので、そういう方も含めていろいろなノウハウを持ち合 ってやってはいます。そういったことを今後、仕組みとして作っていかなくてはいけな いと思っています。 ○楠岡座長 他にありますでしょうか。 ○山本(晴)構成員 医療機器の治験に関して発言します。うちの病院は医療機器の治 験をたくさんやっている、数少ない病院の中の1つだと思います。企業の方たちが非常 に困っていらっしゃることもよくわかるのですが、治験を実施する医療機関側も、機器 は薬に比べて治験のプライスが非常に低く付いています。その割に非常に手のかかる、 特に循環器に持ち込まれるものは非常に手のかかるものが多く、我々も困っています。 ですから、企業の方が楽になるだけではなくて、治験をやる側、病院のほうも楽になる ような形で考えていただければと思います。 ○楠岡座長 他にありますか、よろしいでしょうか。それでは、事務局より、本日の議 題である「計画素案」についてご説明をお願いしたいと思います。 ○研究開発振興課課長補佐 お手元の資料4、「新たな治験活性化5カ年計画(仮称)(素 案)」について簡単にご説明申し上げます。本資料については、事前に各構成員の先生方 に案の段階のバージョンをお送りしていますので、そういったものがあることを前提に ご説明したいと思っています。  まず、1頁目に「目次」があります。今回の素案は一応、大きく3つの部分から構成 されています。最初が「はじめに」ということで活性化計画の経緯、新たな活性化計画 に向けての部分です。2番目が「治験・臨床研究の活性化の課題」、治験のみならず、共 通する臨床研究の課題についてもここで整理をしています。ここでの課題として大きく 中核・拠点の医療機関の体制整備、人材の問題、普及啓発、効率化、企業の負担の軽減、 その他と大きく4つプラス1という構成になっています。  ここまでの課題を受け、次の頁、IIIで「アクションプラン」があります。このアクシ ョンプランで今後5年間に、どの関係する主体の方が何をやっていくかを決めていこう というアイデアの構成になっています。このアクションプランについては課題をじっく りご審議いただいて、その上でご覧いただければと思っています。また、本日提出のア クションプランについては、数値目標などはまだ入っておりません。本日のご審議も踏 まえて、次回の検討会の資料にするべく、これに数値目標の案なども入れていきたいと 思っています。全体の構成はそのようになります。  3頁から「はじめに」、前書きがあります。3頁の「治験活性化計画の経緯」について は、構成員の皆様方はよくご承知の部分で、改めてご案内することはないかと思います。 これまでのGCP省令の成立から今に至る、これまでの「全国治験活性化3カ年計画」 の概要・成果という部分が書かれています。  4頁、これまでの実績を踏まえ、「新たな治験活性化計画に向けて」ということで、現 治験活性化計画の評価が下に書かれています。ここではこれまで本検討会でもご審議い ただいた専門作業班での結果、そこにおいて構成された4つの調査班における調査の実 施という部分が書かれていました。5頁の上段に全体の総括が書かれています。基本的 には大規模治験ネットワーク等が構築され、CRCの養成がなされるなど、治験の実施 体制は改善されつつある。しかし、治験スタッフの量的、質的不足は十分には解消され ていない。治験事務の効率化が不十分である。また、医療機関のネットワークについて、 さらなる充実活用の方策が必要であることなど、まだ環境整備においては引続き課題が あるという認識がこの部分に書かれているわけです。  (2)新たな治験活性化計画を作る上での方向性です。前提として、日本はこれまで 世界の中で新薬を開発できリードしてきた国である。そのような、日本の特性を十分に 活かしていけるような治験の体制が必要である。アジアでの開発競争の激化という環境 の中でも、そこを強化していかなければならない。  また、当然のことですが、日本国内における治験・臨床研究の推進により、最新の医 療が1日も早く患者の皆さんに提供される。そうした医療の上での目的が達成される、 という点が当然必要な方向である。  その上で、日本から治験・臨床研究を通じてイノベーションを世界に発信することも、 安倍総理の「イノベーション」を受けてということにもなってまいります。やはり、次 の目標として考えていきたいということが5頁から6頁に書いています。  7頁、今度は具体的に「治験・臨床研究の活性化の課題」という部分で、4つプラス 1の項目についてご紹介いたします。最初に「中核病院・拠点医療機関の体制整備」で す。1の(1)既存の治験ネットワークの評価です。現在のネットワーク化の体制とい うもの、またそのネットワークに求められるものということで整理しています。医療機 関の治験実施体制にかかる現状調査班の結果を踏まえ、現在あるネットワークで期待さ れている機能が必ずしも十分に発揮されているとは言い難い状況ということは前回もご 紹介いたしました。一方、うまく成功しているネットワークという部分においては、熱 意があり、周囲との協力関係を構築し、指導的なコアとなる個人、組織が存在していた り、目的意識が明確に共有されていたり、インセンティブが維持されるような体制が十 分に機能されているものであるということがわかってきたわけです。やはり、ネットワ ークを活用していくためにはそれなりの体制も整備していかなければならないし、動機、 意義を共有していくことが求められてくるということであったかと思います。  そこで、(2)ネットワークに求められるものと書いています。やはり、ネットワークが 形成されるだけでは活性化につながらないわけです。それを動かす計画性、中核となる 人物や組織、また支援体制というものがあって、その中に有機的に連携して初めて達成 されるものではないか。  これまでに構築された大規模治験ネットワーク、現在1,215施設ありますが、そうい ったものの上に専門とする領域、医療機関連携の特色を有するなど、中核的に治験・臨 床研究を企画立案して指導的な役割を果たす病院を選定する。また、治験・臨床研究へ の実施意欲があり、十分な実施支援体制を有する医療機関が連携して、効率的かつ効果 的に機能するシステムを構築していくことが求められるのではないかということが書か れています。また、「地域におけるネットワークの構築はなされたものの」と書いていま すが、ネットワーク化をされた部分については事務的な手続きの共有化、一元化といっ た課題についても取り組んでいく必要があります。  8頁は前回使ったポンチ絵をそのまま使っております。中核病院・拠点医療機関の整 備ということで、我が国の治験の効率、質、コストの改善、臨床研究推進を考え、中核 病院や拠点医療機関の機能と体制強化が必要である。特に、被験者の全国規模での協力 なしには実施が困難であるようなもの、高度に専門的な知識・経験が要求されるような 難しいもの、実施が困難な治験・臨床研究を迅速かつ円滑に実施する。そのような、非 常にニーズが高い部分については、やはり国の行政機関は中核拠点の整備に対してサポ ートしてはどうか。また、中核拠点医療機関は地域においても、ネットワーク内の医療 関係者等に対し、治験の質的向上に資するような機能を発揮していくことが必要なので はないか。具体的には、高度な治験・臨床研究を実施できる中核病院の育成、(1)の部分 以下、中核病院としてどのような機能が期待されているかを記載しています。  8頁の下、(ア)で自主的にプロトコール等が作成できる、統計的な解析、データマネ ージメントができる等々、またその他の臨床研究を行う医療機関に対していろいろなサ ポートができる。ネットワークにおいて、手続き等が円滑に実施できるような体制を目 標にするわけです。現状から見て、表1に書いていますが人材の観点、機能の観点、患 者対応の観点、事務・IRBの観点等から細かく書いています。ここに書かれているよ うな、それぞれ機能の強化という部分が課題ではないかということを9頁から10頁の表 で示しています。  同様に10頁の(2)拠点医療機関の整備においても、拠点医療機関としては中核や他の拠 点医療機関、地域の医療機関とも連携して、治験・臨床研究を円滑に実施できる体制を 有する。症例の集積性が良い、他と連携して着実に治験・臨床研究が実施できる。また、 モデル的な医療機関として、研修等を提供できるような水準であるということが求めら れるという姿です。そこに行くに当たっての体制・機能の強化という課題が10頁から 11頁にかけての表2、人材、機能、患者対応、事務・IRB等の観点から記載していま す。この表はこれまで、当検討会でご意見いただいた部分を可能な限り集約して記載し たものです。ご議論はまたのちほどいただければと思っています。  12頁から、今度は「人材の育成と確保」という部分です。これまでの評価では、調査 班の報告によると、特に医師等においては養成は必ずしも機会が多くない。また、質の 高い治験を実施するに当たって、専門知識を有するスタッフのさらなる質的向上を図る 上では、医師等を含む治験スタッフの専門的な養成、キャリアパスといったもの、また インセンティブを向上させる等の対応を至急取っていかなければならないという現状が 示されてきたわけです。  まず、この章については各職種別に、人材養成確保の課題を書いているわけです。最 初、(2)が医師の課題です。まずは養成過程での教育という点、臨床研究のことなど習 ったことがないというご意見もありました。養成過程での部分、ガイドラインで何とか そこを充実できないかというご意見でした。  あとは中核病院・拠点医療機関を活用した人材育成のプログラムの提供があります。 特に(3)、「動機付け」、インセンティブは非常に重要だという認識はこれまでの検討会で も出てきました。医師にとっては治験・臨床研究に非常に時間がかかり、業績としての 高い評価が得られにくい。昇進につながらず、労力に対する見返りが少ない等で敬遠さ れている状況を解決するに当たり、13頁に表がありますが、業績評価として、またその 研修として、研究費の適正な配分等において、少しでも臨床研究に対する動機付けがで きれば対応が取れないかというのが表3の提案となっています。その他、臨床研究に関 する倫理指針をよく踏まえて、遵守していただくような姿勢も当然重要であろう。  (3)はCRCの課題に移ります。CRCのこれまでの評価としては、なかなか常勤 雇用としにくい等の処遇の問題とか、被験者に対面する業務から一般事務に至るまで、 多様な業務を1人でこなしている。そういう部分での資質における差にどう対応してい くか。また、円滑な実施において不可欠な存在とはいえ、やはり解決すべき問題がある だろう。(1)が養成過程での教育等の資質の向上、養成過程においての課題を14頁に書い ています。これまでのご指摘にもありましたように、各専門職としての養成過程での治 験に対する教育というベースの部分もありますし、医療における専門職としての一層の 資質向上もある。養成カリキュラムにおいて、医療職としての専門性を考慮していく。 また、医療人として、医療免許を持たないような方に対しても、医療免許を有し職務権 限を有する方から研修を受けるなど、医療人としての知識や技能を持てるようにする。 認定CRC、一定の職務経験を有するCRCが継続的に研修するような事業を実施する べきではないかという課題も示されています。  (2)中核病院・拠点医療機関を活用した人材育成、(3)職業としてのCRCのインセンテ ィブ、特に15頁、安定雇用の確保、キャリアパスと活動領域ということで、CRCの方 のキャリアパスや活動領域が広まるように処遇等に各医療機関でも努めていく努力が必 要なのではないか。  (4)は生物統計家の課題に移ってきます。臨床統計をやっていく上で、生物統計家 の存在というのは非常に重要、切実な問題である。生物統計家の活用と雇用の促進をい かに図っていくかという課題があります。  (5)データマネージャーの課題、現場では少なからず、CRCにデータマネージメ ントの業務を依存している部分があります。治験のデータの質的向上と効率を上げる観 点から、データマネージャーの養成研修も今後取り入れていかなければならないのでは ないかといった課題が書かれています。16頁は、その他治験・臨床研究支援スタッフの 養成の課題です。IRBの委員に対する研修、治験の事務にかかわる方に対する基礎的 な制度などを含めた知識を付与していくことも必要なのではないかということで書いて います。  3.「普及啓発・参加促進」です。これまでの現状調査の評価においては、被験者の治 験に対する前向きな認識が増加している。ただ、一方で説明を受ける機会、また治験に 対する一般国民や患者からの要請に応えて、啓発等について一層充実を図っていく必要 があるということであります。  (2)患者の治験・臨床研究への参加しやすさの向上、(1)一般情報の入手の機会を増 やしていく。(2)ですが、臨床研究登録データベースを一般の方にも活用しやすい形、例 えばポータルサイトを作るなどのご議論もありました。そういうものの一元的な検索サ イトを整備したり、中核拠点病院のネットワークを核としたような紹介システムなどを 利用して、治験に参加しやすい状況を作っていくことが必要であろう。  17頁、治験・臨床研究における社会貢献の意識です。治験というものは皆さんで支え 合って、それによって治療薬が出てくる。そういう認識を広く持っていただくためにど うするかという提案が書かれています。患者の治験・臨床研究参加へのインセンティブ の向上という部分、治験を受ける際の患者予約、待ち時間解消など、いわゆる手続き上 の便利さのようなもの、あとは治験参加後の情報提供、薬剤の提供等に関する対応も課 題となっています。  4.「治験・臨床研究の効率化及び企業負担の軽減」、(1)は事務の効率化の課題です。 まだ様式、手続き、IT化という部分に対して、新たな活性化計画、中核・拠点医療機 関の活用を含めて検討していく課題である。18頁、医療機関の治験契約の窓口機能の一 層の強化と効率化への課題、窓口契約様式、支払い、電子化という部分での具体的課題、 着手すべき内容がここに書いています。  医療機関と企業の業務の明確化、本検討会でも何度もご指摘いただきましたが、コス トや効率を評価する上で本来医療機関が行うべき業務の整備を行う。また、業務効率が らみで依頼者と企業が役割分担を明確化すべきものという点で、本来の業務主体のあり 方、役割分担する上でのフォーマット、協議を進めていくべきである。  19頁、症例集積性を高める等によるモニタリングの向上においては、HL7と電子カ ルテの情報システムに対応するようなCDISCの整備を図っていく。その他患者照会の部 分、また「オーバークオリティー」の発生を防止する対策を製薬会社によって進めてい く必要があるだろう。さらに、治験実施体制の情報を積極的に公開していく必要がある という点が課題として挙がっています。  その他、4プラスアルファの5つ目の部分ですが、まず1つ目は国際共同治験・臨床 研究の推進における障害の解消ということで、GCPの手続きの問題、治験責任医師の 方々が外国からの信用を得ていくためにも国際的な成果を発表できるような取組みも一 方で必要である。(2)臨床研究届出の導入の検討、臨床研究に関する倫理指針の見直し です。先ほど、荒川構成員からもご指摘がありましたように、この計画の素案の中では 実施体制については治験と臨床研究をあまり区別せずに、相互に共通する問題として、 課題として挙げています。一方で臨床研究の制度的な部分については、ここに書いてい るように引続き今後も検討していく課題として整理しています。20頁に続きます。一応、 平成20年に運用実態等を踏まえて、見直しに向けて検討を進めることが書かれています。  (3)GCP省令の見直し、この検討会でもたびたびご指摘いただいていますが必須 文書の問題、治験事務の効率化等の観点から、もう少し国際的に整合する部分でのGC Pの省令の改正についてのご意見もここに書かれています。  大きく、ここまでが現状の課題です。21頁以降はアクションプランということで、こ こまでご説明申し上げた事項を21頁は行政機関から見た形でのアクションプランとし て、主語を行政機関として書いています。22頁からは中核病院・拠点医療機関が主語に なって、項目ごとに取り組むべき課題として整理をしたもの、24頁が製薬企業・医療機 器企業という主語で整理した課題です。25頁が日本医師会治験促進センター、各学術団 体等、また「中核病院・拠点医療機関で実施課題を可能な限り実施していく」と書いて います。基本的には、各医療機関全体に対して取り組んでいくべき課題ということで整 理をしています。  26頁以降はこれまで使用してきた用語集を参考として付けています。少し冗長になり ましたが、素案についての説明は以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。先ほど、事務局からもありましたように、数値 目標に関しては次回の検討会で議論していきたいと思います。本日はこの資料4、3頁 のはじめから25頁の終わりに関して順番に議論を進めていきたいと思います。よろしく お願いします。  まず、「はじめに」の1.「治験活性化計画の経緯」、2.「新たな治験活性化計画に向 けて」のうち、(1)現治験活性化計画の評価の点に関してはいままでの報告にもあった 点だと思うので特に問題ないかと思います。この点に関して、何か特にご指摘等ありま すでしょうか。よろしいでしょうか。  そうしたら(2)新たな治験活性化計画の方向、これが今回新たに策定する治験活性 化計画のいちばん根幹にかかわる部分かと思います。個別にこれから議論いたしますが、 まずここまで、目標設定等に関して何かご議論はありますか。6頁にあるような、「新た な治験活性化5カ年計画(仮称)の目標として」というような形で、こういう流れを書 いています。こういうようなものでよろしいでしょうか。全体的なところとして、治験 と臨床研究の両方があるわけですが、この辺に関して現在、臨床研究整備の基盤事業を 担当されている施設の1つである慶應大学の武林構成員から、もしご意見があればお願 いしたいと思います。 ○武林構成員 全体的な方向に関しては議論が十分踏まえられていると思います。我々 がいま準備している中で、大学の中で議論している方向としても当然持つべき方向だろ うと考えています。全体としての方向については我々の議論と同じですし、日本全体を 議論していく中でもこの線に沿っていただくのがいいのではないかと思っています。 ○楠岡座長 特に、臨床研究等を実施していく医師の立場としていかがなものでしょう か。 ○武林構成員 少し各論に入っていきますが、臨床研究を現場で実施する医師にとって、 ずっと出てきましたが治験と切り分けをせずに全体としてのサポートの体制を整える。 特に、日本での現場の医師の仕事の現状を考えると、きちんとしたサポート、これには コーディネーションもありますしデータ管理もあります。いままではどうしても、全て を医師が担うことにより、かえって全ての質が低く終わってしまうことが1つ大きな問 題でした。まず、体制整備という観点で、さまざまな支援の体制が整備されてくるとい うことが1つ大きな方向だろうと思います。  それに合わせる形で医師自身のインセンティブ、まず教育の中でのインセンティブの 持ち方は自分の将来を見据えた形になると思います。それから、実際に卒後研修の中で、 あるいは日本では学位ということも1つのインセンティブになります。将来のキャリア パスについて、人材交流も含めるという点も今回触れられていますので、現場で臨床研 究をこれからやろうという医師にとって重要な点はかなり含まれていると思います。  もう1つ付け加えるとすれば研究費のあり方です。また各論になりますが、今回の中 では各医療機関の中で研究費のあり方を十分検討しようということが出てきます。もし 公的研究費を考えた場合、国のサポートとしての研究費の使い道という点について、ど うしてもいまの研究費の枠組みは基礎研究がどう進むかという観点で、費目の分け方や 使い方が決まっています。逆に、臨床研究という実態に合った形での資金を考えた場合 には、使い道、裁量について是非加えていただいて、ご検討いただきたいということが 1点気になった点です。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。同じく臨床研究基盤の事業、がんセンターで担 当されている山本精一郎構成員、特に医師以外の立場からの見方も加えてコメントをい ただければと思います。お願いいたします。 ○山本(精)構成員 全体の流れとしては賛成です。これから議論になると思いますが、 拠点と中核も良いアイデアだと思います。事前に資料を拝見したときに気が付いて言え ればよかったのですが、いまのお話を聞いて思ったことは、医療職以外のポストが病院 にないという問題です。研究所などがあればいいかもしれませんが、そうでないような 場合には、国立の機関などでは医療職以外のポストがないために結局臨床試験に関連す る専門職が雇えないということとなっているわけです。それは生物統計家だけではなく てほかの職種もそうなのですが、実は医師もそうなのです。要するに、医療をやらない で雇われる医師の存在があり得ないので、臨床試験の運営に携わっていると、医療職で 雇われているのに患者さんを診ないのかということを言われてしまう。病院の責務とし て患者を診ないといけない。患者さんを診ない専門職種、医療者であって患者さんを診 ずに多施設共同の臨床試験の運営に携わることを病院としてはオーソライズできない。 そのために病院としては、臨床試験を推進するのではなく、臨床試験なんかしないで目 の前の患者さんのためになることをやれということになってしまうと思います。  自施設の臨床試験をするための研究費として国立がんセンターが頂いた基盤のお金が 続く数年間に、臨床試験関係職種の安定雇用をがんセンターとして確保できるようにす ることは現実問題として大変です。中核病院は自施設だけでなく、他の施設を含めた多 施設のための整備をするために雇用を確保しなければならないのでさらに大変でしょう。 それに対して、がんセンターが中心となっている多施設共同臨床グループであるJCOG では、長年の交渉の結果、データマネージャーなどの関係職者の安定雇用をがんセンタ ーに期待することはあきらめてNPOを設立しました。このように、中核病院ではない多 施設の枠組み、例えば大学の人たちが医療職ではなく、教育職のポストとして中核機能 を担うということもあり得ると思います。あるいはNPOやAROが中核機能を担うと いうこともあると思います。雇用を病院中心にと考えること、もしこれが可能なら全く 賛成なのですが、それ以外にもより現実的な形として、病院ではないものが中核を担う という形の臨床試験実施のあり方もあったらいいのではないかと思いました。いままで、 そういうことが十分議論できず申し訳ありません。 ○楠岡座長 ありがとうございました。やはり、同じく研究基盤にかかわっている山本 晴子構成員、よろしくお願いいたします。 ○山本(晴)構成員   全体の流れとしては私も、既にいろいろ議論がなされた上での書きぶりであると思っ ています。いままでの議論を十分包括していると思います。  これは個別の人材のところでもう少し議論が必要だと思いますが、ここに集まってい る構成員が想像できる職種についてはかなり具体的に書き込まれています。特に生物統 計家はある程度確立した地位があると思いますが、データマネージャーは業務の輪郭が 全体の中でもはっきりしていないし、多分施設によっても位置づけがぼんやりとしてい る。しかも医療職でもない、いちばん位置づけの難しい業種であると思います。そこの ところがどうしても書きにくいのがちょっと気になるところです。  それから、どうしても治験と臨床研究を並列して書いているところがあります。ちょ っとわかりにくくなるのですが、中核・拠点についてはほかの病院に比べて臨床研究を 進めていく。つまり、先ほどの話もそうですが、治験はある程度病院の中で、収入につ ながる面があります。臨床研究については、研究機関では業績ということがありますが、 病院としての観点から見たときに全く経営上の良いところがないことになってしまう。 逆に言うと、中核拠点として機能になったところは、本来の病院としての収入を十分取 れないはずの臨床研究にある程度、人材を割いていくことを宣言してやっていくべきだ ろうと思います。  武林構成員がおっしゃった公的研究費の使い道ですが、これは基盤整備事業のお金を もらってさらに感じていることですので、これからの臨床研究に適合した費目というか、 使い方を考えていただければと思います。 ○楠岡座長 やはり研究基盤事業で、医療機関ではなく国立病院機構という、ちょっと 特殊な形でされておられる伊藤構成員からもご意見をお願いいたします。 ○伊藤構成員 ちょっと外れるかもしれませんが、1点気になっていることがあります。 大学などで基礎研究をやって、それをフェーズIに持っていく段階でGMPの基準を満 たすのは相当大変です。トランスレーショナル・リサーチの活性化を最終的に念頭に置 くのであれば、その点も考えなければいけないのではないか。その論点が今後の治験の 活性化という視点で抜けているかな、ということが気になっている点です。  私は順天堂の仕事もしています。武林構成員も強く感じることだと思うことですが、 臨床研究のサポート、すなわち多くの若い人たちに「こういう研究をやりたいのだけれ どもどうすればいいのか」というサポートをしています。私どもが使っている時間の割 には評価されないことがあります。基盤研究のような形で評価されているのだからいい ではないかと言われればそうなのですが、私たちより若い人たちでサポートしている人 たちも評価してあげたいと思います。そこを少し考えていただきたいのです。  研究費に関しては、私たち臨床研究をやっている、公的研究を受けているということ が医療機関や大学などにメリットがあることを見せる形にしていただきたい。研究費を 受けている研究者がたくさんいることが大学、医療機関にとって迷惑なのではなくて、 メリットがある。それが外来を少ししかやらないとか、入院患者を持たないというデメ リットを帳消しにして余りあるメリットを、医療機関にもたらすという形に間接経費を していただくように、厚労科研費なり文科研費の枠組みを変えていただけると、大変あ りがたいと思っているところです。  もう1つ、医療技術者という意味ではないのですが、現在、電子化を進めて行く上で はIT技術者のサポートがどうしても必要で、医療系のIT技術者が統計家と同じぐら いに数が限られている点もあります。ただ、ITの技術者を常時雇用することは非常に 効率が悪いことも承知はしているのですが、どこかでサポートが得られるような、リソ ースにつながる窓口のようなものがあるといいと思っています。 ○楠岡座長 IT技術者に関しては、日本医療情報学会が医療情報技師という制度を作 っており、そういう形で資格があると病院の中でも認識されます。それが必ず給与に結 び付くというわけではないですが、職種として認識されると、まさにCRCが職種とし て認定されていったと同じような経過をたどれるのではないかと思います。そういうと ころとのタイアップについて、特に治験に関してのITということは結構重要であるこ とは認識されながら、実際、日本でもそれができる所は非常に限られているのも事実だ と思います。これはまた後ほどの個別のところに入ると思います。  若干、個別課題にも入っていますが、この5カ年計画の目標の設定に関して、ほかの 構成員から何かご意見はございますか。大体、この目標で5年というところでよろしい ですか。 ○中島構成員 (2)新たな治験活性化計画の方向 のところは大変よくまとまってい るのではないかと思います。あえて申し上げるとすれば6頁に図がありますが、その下 のところで日本の医療水準の向上というキーワードが出ています。これを(2)の文章 の中に入れていただくと、よりはっきりしてくるのではないか。もちろん、ここで最新 の医療が1日も早く云々とか、最新医療の標準化という言葉になっていますが、いま申 し上げたようなものを入れていただければ、より鮮明になると思います。  ここの場でなくてもいいし、この後のところで出てもいいと思いますが、臨床研究基 盤の整備という意味では、臨床研究全体の実施体制を国家施策として、アジアと同じよ うに大規模かつ迅速に整備していくということを示すことが必要ではないかと思ってい ます。 ○楠岡座長 他にございますか。よろしければ少し個別の課題に入っていきたいと思い ます。7頁の「中核病院と拠点医療機関の体制整備」の点に関し、いくつか既にご意見 が出ていますけれども、7頁から11頁にわたってボリュームがありますし、内容もいろ いろ含んでいますが、この5カ年計画の1つの目玉のような点になると思いますので、 これに関してご意見がありましたらお願いします。 ○山本(精)構成員 前回の検討会で、ネットワークがうまく動いていないのに中核と か拠点の整備というのは論理の飛躍ではないかと話し、せっかく一生懸命考えて報告書 を作ってくれた事務局の人にずいぶんショックを与えたと思いますが、今回、ずいぶん 尽力していただいて、ロジカルというか論理的な必然として中核や拠点が必要だと理解 できるようになったと思います。というのは、人材やノウハウ、手順の部分を1カ所に 集めるという意味において中核化は必要であり、そこに熱意を持った人を集めるという 意味でも必要だというふうに思いました。  ひとつ思ったのは、中核とか拠点の数をどのくらいにイメージしたらよいかというこ とです。例えば疾患別に考えるとすると、がんの場合、第I相、早期第II相は中核病院、 後期第II相や第III相は拠点病院も含めた多施設臨床試験をすることになると考えられま す。そうすると、拠点レベルでも、ある程度自分たちだけで第II相試験ができるイメー ジです。拠点には、自分たちは登録するだけという所から、自分たちも第II相くらいま では中心になってやるのだという所まであると思います。つまり、拠点もある程度自分 たちでイニシアチブをとって、中核と協力しながらやっていくぐらいのイメージもあり えることを含めたほうがいいのではないか。  また、ここの書きぶりでいくと、高度な治験・臨床研究を実施できる中核病院とあり ますが、高度でない臨床試験もあるので、それを例えば拠点でもどんどんやっていくみ たいなイメージがあるといいのではないか。そうすると、拠点の中にセントラル的な機 能が入ってもいいような書きぶりにしたほうがいいのではないかと思います。そういう ふうに考えるとだいたいの数も決まってくるのではないでしょうか。 ○楠岡座長 これは私個人の解釈ですが、ここに書かれている中核・拠点の内容は最低 限これだけをしなさいということで、拠点が中核領域に手を出してはいけないという話 では決してないと思います。数の問題とか、今後どうやっていくか、実際に予算面など の問題もあると思うので、この辺に関して事務局から何かコメントがありましたらお願 いします。 ○研究開発振興課課長補佐 中核・拠点についての数の問題とか、それを実際どのよう に動かしていくのかなど、山本構成員から貴重なご指摘をいただいたと思っています。 数については、いまの段階でいくつというのは申し上げられません。多ければいいとい うことでもないでしょうし、逆に少なければ駄目ということでもないでしょうし、そこ についてはおそらく1から100の範囲内だろうと考えています。いまの段階では予算等 について要求している状況で、なかなか明確な数字は出てきません。  ただ、実際に整備できる数というものが出てきたときには、その数をいかに有効に活 用していくかについて、またこの検討会の先生方のご意見もいただきながら、有効な対 応というものを考えていきたいと思っています。 ○楠岡座長 具体的に中核・拠点をどう選んでいくかという問題もあると思いますが、 前のネットワーク事業のときはネットワークを作りたいということで始めて、結果的に うまくできなかったという結果になっていると思います。今回はそういう名称はないに しろ、既に中核・拠点として実際的に動いている所に中核・拠点になっていただいて、 それをネットとしてつないでいく、そのつなぐところが行政をはじめ、いろいろなとこ ろが支援していくイメージで、既に草の根的にあるものをつないでいくという考え方で やっていこうと思うのですが、そういう解釈でよろしいですか。 ○研究開発振興課課長補佐 今回の素案の中に書いている拠点・中核の体制機能という ところをご覧いただくとわかりますように、全く何もない医療機関が公募という形をと ったにせよ、これにアプライして通るということはおそらく不可能だと思います。現実 的にかなりの実績を有する部分であって、それだけの体制機能を持っている所をさらに 強化していくというような視点で、おそらく公募内でアプライをしていただき、選考し ていくような形になるかと思います。 ○楠岡座長 他に何かご意見はございますか。 ○山本(精)構成員 今回の1つの目玉は、中核・拠点医療機関というヒエラルキーだ と思うのです。だから拠点は、どこを中核にするみたいなことをイメージしながらやっ ていただく。「うちは拠点だけど中核はどこなの」「それはわからない」ではなくて、一 応、この中で自分たちはこの役割だというのを担ってやっていただく、その絵を描くの が今回の特徴だと理解しています。 ○楠岡座長 これはヒエラルキーではなくて、ネットワークであると思います。中核の ほうが拠点よりも上だとかいうのではなくて、役割分担、機能分担であって、それでや っていく。ともすると今までは中核が拠点に「やれ」と命じて、なかなかできないとい うのが現実であったと思うのですが、今回はそうではなくて、拠点・中核がもともとや っていることで、手を延ばしながらやっていこうというところではないかと思います。 ○山本(晴)構成員 いまの中核と拠点のイメージは、中核は米国で言われているGC RCのような組織を持つ所だというふうに思います。拠点のほうは必ずしもそれはない けれども、ある程度研究のシーズを作って、それを中核にあるGCRCを利用していき ながら、自分たちでもある程度小規模のものは作れるし、中核病院が組み立てるところ もやっていける。そういう感じではないかと思います。  研究者が、中核・拠点のどちらに集積しなければならないというのは、あまりないと 思います。むしろ中核と拠点で差を付けておかなければいけないのはサポート人材のボ リュームです。サポートする人材は満遍なくまいてしまうと全く役に立たないと思うの で、例えばデータマネージャーを各拠点病院に1人付けるぐらいだったら、中核病院に 十数人付けるとか、ある程度そういう形でボリュームがないと効果を発揮しない業種に ついては、そのボリュームは中核に集める。その代わりそこは、そういう機能も持って 各拠点病院のニーズを満たす必要があるということだと思います。 ○荒川構成員 いまの山本晴子構成員の意見にも関係してくるのですが、要はそういう 支援施設をどうやって作り上げていくかということと、ネットワークがどういうふうに 絡んでくるかまだイメージできないところがあります。先ほどのGCRCはまさしくそ のとおりで、本当に治験とか臨床試験を進めようと思ったら、専任のスタッフをどれだ けそこに投入できるかに関わってきます。先ほど研究費の使い勝手ということがありま したが、そういうスタッフが雇えて、しかも、できればその何パーセントかはずっとい ることのできるポジションを作っていかないと、それは育ってこないのです。要するに 責任組織と言ったほうがいいかもしれませんが、そういう所を作っていかないとなかな か機能しないだろうと思います。少なくとも中核病院ではそういう責任組織を明確にし て、そこには臨床試験専任の医師も張り付けることをやっていかないと、ちょっと現実 的ではないような気がします。  そうしないと、お金の使い道が逆にないような気がします。例えば、私どもはいまの 研究費をもらっても、お金の使い道がないのが現状です。お金をインセンティブにネッ トワークづくりとお考えでしたら、それは無理だと思います。逆に言うと、公募しない 機関は中核医療機関になれないのということにもなってきます。 ○一木構成員 事務局にお聞きしたいのですが、イメージとして何となくこの「中核病 院」と「拠点医療機関」というのはアメリカでのイメージから枠組みのイメージを構築 することが出来ます。しかし、例えば今回の総括の中でも、CRCの人で何千人の方が 研修を受けたけれども、実際にパーマネントとして職種を得ている人たちが非常に少な いという反省が書かれています。もしも「中核」とか「拠点」を作ったときに、ちゃん としたそういう方々の定員枠を作る、例えば国立病院であれ国立がんセンターであれ、 きちんとした定員枠を作ることまで含んでのイメージなのかどうかが読み取れないので す。  例えば今のJCOGでしたら、実質上は定員枠ではないわけです。一応、形態は国の 組織ではありながら定員枠としては存在しない組織になってしまっていると思います。 その他のいろいろな研究組織を見ましても、例えば日本の場合ですと各先生方が非常に 苦労して、今NPOやいろいろなものにして形作りをしていますけれども、アドミニス トレーション・デパートメントのないような単なるグループ、ネットワークというのが 多くて、実際にそこにパーマネントとしてのポジションが存在しない。ですから、もし もこの中核とか拠点を作ったときに、果たしてデータマネージメントの人たちというの はどういうポジションが与えられるのか、CRCの人はどういうポジションが与えられ るのかを、もう少し具体的に示さないと、何となく絵に描いた餅のような気がして仕方 がないのです。いかがですか。 ○研究開発振興課課長補佐 いまのご質問ですが、治験に関するスタッフの常勤化とか、 特に医師だけでなく、その他CRC、薬剤師の方、看護師の方などは、臨床研究を支え るシステムとして大事なことだろうということは、我々も認識しています。  お金を付ければ、それでいいではないかということでは必ずしもなくて、それを支え るためにはいろいろな意味で処遇の問題なども当然絡んでくるわけです。例えばこの計 画ですと14頁から15頁ぐらいに、これはCRCに関して書いているところですけれど も、安定雇用について当然医療機関としても努力をしなければならない。そういう処遇 の改善に努めるということを書いています。こういうことを処遇としても安定雇用とし てやっていくことを考えていくと、単に国からお金が出るということでなく、それなり に受託研究をきちんと定常的に確保していったり、医療機関としてそれなりの体制とい うものを考えていただく必要があるわけです。それは実質的にこういう形で努めていた だきたいという願いも込めて、ここは、こういうような計画上の記載になっているとい うことかと思います。 ○楠岡座長 国立病院やナショナルセンターなどは、データマネージャーは職種として 位置づけるのがまだできていませんので定員化は難しいですが、それ以外の部分に関し ては定員化が進みつつあると思います。これは昨年度の作業班でも申し上げたのですが、 文部科学省にお願いしたいのは、国立大学病院が治験の中でCRC経費としてかなり高 いお金をとっている。これは製薬協から何度も指摘している事項ですが、その割にCR Cがあまり常勤化していなくて非常勤雇用のままになっている。その中で人材の流出み たいなことが起こって、せっかく大学病院の中で育ったCRCが、その職を継続できて いない実情もありますので、是非、これは文部科学省のほうでいろいろご検討いただき たいと思います。 ○大学病院支援室長 その点について、私どもも実態をよく把握して対応を考えてまい りたいと思います。 ○武林構成員 もう1点、全く別の観点なのですが、ここで議論すべきなのか、あとで 議論すべきか分かりませんけれども、いまのところはかなり中核あるいは拠点と称する 所に関して、かなり前向きというか、国全体としてもサポートしていただけるという議 論だったと思います。逆にいろいろな準備をしている中でプロセスの透明化というか、 これは被験者保護の問題でもありますけれども、8頁の絵がいちばん象徴的であろうか と思います。まさに中核とか拠点という所は、患者サイドと、治験で言えば製薬企業と の間に挟まるところですので、より今まで以上にいろいろなことを活性化していくと、 当然、利益相反に相当するようなことは非常に強く起こってくると思います。  これを何も書かないで、あまりにも厳密にやりすぎれば誰もやらなくなるし、しかし、 ここを蔑ろにすると、せっかく作った中核が活きないことになります。この表1の中に はIRBという議論の中で「審査の透明化」と書いていますが、もう少し全体的なプロ セスとしての透明化というか、そういったものをあまり各論には踏み込まない形で、し かし全体として非常に前提となることを強調することもあっていいと、準備をしながら 考えています。 ○新井構成員 中核・拠点病院ですが、ここには医療機器という文字が全然出てきてい ませんけれども、同じように想定するということで考えていいのですか。基本的に先ほ ど言ったように医療機器の場合は治験数が少ないので、どうしても拠点病院を中心に複 数でやるしか、ノウハウが溜まってこないのではないかと思うので、是非、拠点病院化 を医療機器についてもお願いしたいと思っています。 ○研究開発振興課課長補佐 医薬品、医療機器と書き分けていない部分は、すべて共通 ということです。先ほど新井構成員が言われたように、中核・拠点化をするひとつの眼 目としては、医療機器のようにかなり技能的にも集約性が必要であったり、症例数が少 ないものをいかに効率的に行える体制を作るかということですから、新井構成員からご 指摘いただいた点はまさしくもっともで、この治験中核・拠点によって真価を発揮する ものだと思っています。 ○楠岡座長 あまり時間がありませんので、さらにご意見がありましたら後ほどお願い したいと思います。2の12頁からの「治験・臨床研究を実施する人材の育成と確保」、 医師、CRC、その他、いろいろな職種を含めて16頁までの部分ですが、これに関して 既にデータマネージャー等、いくつかに関してご指摘をいただいていますけれども、さ らにご意見がございましたらお願いします。 ○山本(精)構成員 治験・臨床研究を実施する医師等の課題の(3)の動機付けと実施確 保ですが、この文章を読んでいるとそのとおりな気もしますけれども、医師にとって「治 験・臨床研究への関与が敬遠される傾向」という表現に関して何か腑に落ちないところ があったのはなぜかなと思っていたのです。というのは、がんセンターだからかもしれ ませんが、私の周りは研究したい人で溢れかえっているのです。インセンティブはたく さんあるのです。ただ、業績として高い評価が得られないし時間もかかる。昇進につな がりにくいし見返りが少ないというのは、そのとおりなのです。だから、「治験・臨床研 究の関与が敬遠される」のではなくて、「施設や周りから関与がエンカレッジされない」 ということだと思います。  要は施設側の問題として、そんなことをやっている暇があったら病院のために働けと いうようなことだと思うので、病院側に対して国としてエンカレッジしていくという方 向性を持たせることが大事であり、現状では「敬遠される」よりも「推奨されない」と いう表現のほうが、私の周りの実態には合っているのではないかと思いました。 ○楠岡座長 わかります。ただ、施設間の格差の問題もあると思います。ここでは敬遠 する主語が書かれていなくて、医師自身が敬遠する場合もあれば、設置者が敬遠する場 合もあるかもしれません。 ○山本(精)構成員 言葉に拘っているわけではなくて、先ほど指摘したのと同じ問題 を指摘したいのです。つまり、医療者以外の安定雇用の問題にしても医療者の医療職以 外のポストの問題にしても、結局は施設側にこれをエンカレッジしていくという方向性 を持たせることができなければ、国としていくら研究費を出しても、研究者のほうは臨 床試験をやりたいけれども、病院の上のほうの人が「お前ら、そんなことやるな」とな ってしまい、なかなか事態は改善しません。そういう施設側の問題をこの検討会で言っ ても仕方ないかもしれませんが、そういう雇用に関するハード面も併せて国全体として 活性化させていくような方向性を何とか出してはいけないでしょうか。 ○伊藤構成員 先ほど来お話をしているとおりで、例えば3割とか、極端なことを言う と5割ぐらいが病院の収益につながるとか、その収益から研究者の給与が支払えるとい うようにして、今の研究費の扱いの制限を解除していただき、アメリカと同じような形、 例えばハーバードとかは研究費をとってこない研究者は要らないと、切り捨てられるこ とになって競争や活性化されると思います。それと同じような仕組みづくりにしていく ほうが先なのではないかと思います。そうすれば病院経営者の幹部の人たちも、より研 究費を多くとってきてくれる研究者を大事にしてくれるのかなと思うところです。 ○楠岡座長 確かに今まで日本の研究費というのは、人件費を含んでいませんでした。 既に研究者がいて、研究をするための消耗品、サプライに関する費用という考え方だっ たのですが、最近はいろいろな所で、その中の研究者も雇用可能になるような形にはな ってきていますけれども、それではどうしても非常勤雇用になってしまうというのがひ とつの問題点だと思います。その辺は使い方のほうで、これは厚生科学研究費だけでな く文部科学研究費、それ以外の研究費も含めて、公的研究資金全体に関わる問題だと思 うので、是非、ご検討をお願いしたいと思います。他にございますか。 ○榎本構成員 12頁の人材育成のところで、(2)の(2)に中核病院・拠点医療機関を活 用した人材育成というところですが、特にいまでも拠点とか中核になるだろうという施 設は非常に教育システムが進んでいて、医師やIRBの委員の教育及び職員の啓発活動 に力を入れていると思います。そうでなくて、治験は頑張ってやっているけれど医師の 教育がなかなか進まない施設やSMOが入っているようなクリニックの先生方の教育に 関して、ここに「治験・臨床研究を実施する担当医師等の研修機会を増加させるために、 院内での研修以外に、こういった中核病院・拠点医療機関を活用した院外での研修機会 を提供する」と書いてありますが、たぶん中核・拠点に決まった施設の方は臨床研究を 含めてどんどんいろいろな事をやっていただくので大変忙しくなっていくと考えられま す。そうすると、他のもっと小さい施設の医師やIRBの委員に対する教育を、この中 核病院とか拠点医療機関だけにお願いすると非常に大変だと思います。  私たちコーディネーターの立場からお話しさせていただくと、自分たちの施設の医師 やIRBの委員たちと一緒にどんどん臨床研究や治験のことを学んでいきたいという希 望がありますが、こういった中核病院や拠点医療機関の方々がご提供くださる教育シス テムを待っていなければならないのかということで、少し疑問に感じます。もちろんこ ういう施設の教育システムも活用していきたいのですが、積極的に治験の研修をやって くださっている国際医療福祉大学等の学校法人、そして、厚生労働省や治験促進センタ ーなどが、公的な研修会や教育のシステムを作ってくださり、そこで医師なりIRB委 員なり、コーディネーター以外の関係者も学んでいけるような環境設定を是非していた だけたらと思います。その辺はいかがですか。 ○小林構成員 後ろのほうのアクションプランにも書いてあるとおり、その辺の個別の 中核とか拠点とかで、単体でなく横のつながりといった面では、いま榎本構成員も言わ れたように、私ども日本医師会治験促進センターとしてできることがたくさんあると思 いますので、その辺は協力なり指導力を発揮していきたいと思っています。 ○楠岡座長 あと実習は無理ですが、座学部分に関してはe-learningなども使えると思 うので、そういうシステムを日医の治験促進センターが中心になって開発していただく とか、そういうことがひとつ必要になってくると思います。 ○山本(晴)構成員 研修についてですが、CRCの認定も含めて1回の試験を受けて 通るというものよりは、ここにいる方はあまり知らないかもしれませんけれども、医師 会がやっておられる産業医の認定制度というのがあります。それはカリキュラムがあっ て、そのカリキュラムに沿って、これに対応する講義を何時間というふうにとっていく。 最初は少し多目にとり、その後は5年ごとに何単位とったらまた更新できるという制度 がありますから、必ずしも1回試験を受けないといけないというのではなく、どちらか というと永続的に単位制のようなもので、各拠点・中核病院が協力して行う。カリキュ ラムは例えば医師会の治験促進センターに組んでいただくとか、それはいろいろ考えて いけるのではないかと思います。 ○武林構成員 人材育成のところそれぞれは、よく書かれていると思いますが、是非こ の中にこそ、産官学の間の人材交流という点をきちっと書いていただきたい。特に施設 間の人材交流はここに書かれていると思いますが、それ以外の幅広い意味での交流も是 非書いていただきたいと思います。 ○楠岡座長 今回の中の人材育成の中で特に医師の点ですが、卒後の問題と卒前の教育 の問題です。これは文部科学省に是非お願いしたいのですが、医師は全員が基礎研究を するということはまずあり得なくて、卒業する人のごく一部だけが基礎研究に従事する わけです。臨床研究に関しては、勤務医であろうが開業医であろうが、あるいは施設の 開設者等の責任者になる人であろうが、すべてが何らかの形で関わることになる。これ が何回も指摘されているように、臨床研究とか臨床試験に関するシステマチックな教育 というのは、ごく一部の大学でやられているだけで、ほとんどの大学ではなされていな い現状があります。是非、臨床研究、臨床試験というものは医師である以上、必ず関わ らなければならないことであるという前提のもとで早期からすり込みをしておいていた だきたい。卒業してしまうとそういうことが難しくなってしまうので、是非、卒前教育 の中で臨床研究、臨床試験に関してお願いしたい。従来の大学教育ですと、それを担当 する講座がないとなかなかできないということがあったわけですが、いまは幸い、ほと んどの大学に臨床試験支援センターとか治験支援室ができていますので、そういう所に 是非担当していただいて特に医師の卒前教育をやっていただきたい。医師が動かないこ とにはどうにもならない問題ですので、医師の卒前教育のところに是非、そういうもの を入れていただきたい。  もともとこの治験活性化計画は文部科学省と厚生労働省の両方で建てたもので、大学 病院で治験をしているのが発端でした。いろいろ問題を突っ込んでいくと卒前教育も非 常に大きな問題ということなので、この機会に是非、こういう点に関して文部科学省の ほうにも積極的に動いていただければありがたいと思います。 ○文部科学省大学病院支援室長 ただいま医学教育の改善充実協力者会議というものが 動いていて、その中でこの臨床研究の在り方、あるいは治験の関連の人材養成といった ことの検討を始めるところですので、こちらのご意見なども踏まえながら進めてまいり たいと考えています。 ○楠岡座長 是非、よろしくお願いしたいと思います。人材育成に関して他によろしい ですか。 ○荒川構成員 私どもは学内にいろいろな講座があって、例えばクリニカルバイオイン フォマティックス研究ユニットという所が臨床試験の方法論を公開講座でやっています。 感じているのは、そういったまず指導する立場の人を教育しなければいけない段階なの です。実際、いま支援室の方がと言われましたが、まだまだ実は本当に片言レベルで、 これをちゃんとやっていかないといけない段階なのです。そこから始めなければいけな いので、一気に広げることはかえって混乱を招くような気がします。 ○楠岡座長 でも、それではなかなか出来上がらないのです。 ○荒川構成員 ですからモデルとしてどんどん広げて、私ども少なくとも東大の臨床試 験部では基本的にすべて公開するという立場でやっていますので、いろいろ議論を醸し ていますけれども、とにかくそういうことを公開することを原則にどんどんやっていく ことも必要ですし、基本的にそれを指導する立場の人が、まずコンセンサスを持ってい なければいけない。質の高い臨床研究、治験と治験以外の臨床試験をあまり区別しない ような体制で、これは例えばICH-GCPをできるだけ準用するとか、そういったコンセン サスをまず持っていないと混乱してしまうと思います。  ですから、そこのところをしっかりと決めた上で、モデルとなるものとして今回は中 核医療機関はその1つにはなると思いますが、それだけではないと思いますので、排他 的にはならないでいただきたいと思っています。そういった所がどんどんモデル研究と して外に公開していく。それと、そういった所の協議機関を持つことも重要なことだと 思います。ですからネットワークという感覚よりも、協議機関という感覚のほうがプラ クティカルのような気がしています。 ○中島構成員 15頁のいちばん上のところに安定雇用とあり、その下の○のところで医 療機関が安定した研究受託を確保しとなっていますが、これは少なくとも中核病院・拠 点医療機関については研究受託ということだけではなく、ある程度整備が進んだあかつ きには自主研究というものに対するファンドの確保という、自立的な運営がなされるよ うなイメージを持ちたいと思っています。そういう意味では拠点医療機関というものも アメリカのGCRCのようなイメージを持っていたいと思います。 ○楠岡座長 他にございますか。それでは3の「国民への普及啓発と治験・臨床研究へ の参画の促進」について、16頁から17頁ですが、この点に関して何かご意見がござい ますか。本日、辻本構成員が欠席なのですが、辻本構成員から何か伺っていますか。 ○研究開発振興課課長補佐 特に意見はいただいておりません。 ○楠岡座長 この点に関して何かありましたら後ほどお願いすることにして、4の「治 験・臨床研究実施の効率化及び企業負担の軽減」です。17頁から19頁までの部分です が、これに関してご意見はいかがでしょうか。 ○山本(晴)構成員 戻ってよろしいですか。人材のところでまたデータマネージャー のことに戻りたいのですが、15頁のデータマネージャーの課題というところで、先ほど も言いましたように業務自体が十分まだ輪郭を描けていないので、書きぶりをあまり具 体的に書き込むことは難しいと思いますけれども、モニタリングの効率を向上するとい うよりは、臨床研究全体のデータの品質管理を行うことを、はっきり書いておくべきで はないか。そうでないと、ちょっとこのままではデータマネージャーというのは何をす る人なのかよくわからない状況なので、ほかの職種と違うところは研究全体の品質管理 を行う業種であるということは明示していただければと思いました。 ○一木構成員 1ヵ所、事務局にお聞きしたいのですが、19頁の(4)の3つ目の○です。 製薬企業においても、モニタリング時のいわゆる「オーバークオリティー」を発生させ ない社内体制づくり等の努力を行うというのが、ここに挙げられています。これはどう いうイメージでこの文章をお書きになったのか教えていただけますか。というのは、確 かに私も製薬会社にいた時代もありますので申請作業をした時代もあります。どうして もここの部分というのは申請したときの指摘とのバランスシートで、いつもより安全な ほうにいきますので、重箱の隅を突つかれれば、隅を突つかれないように掃除しようと いう努力をするわけで、必ずこのイタチごっこの中にオーバークオリティーが存在して いるのですが、この文章を事務局がお書きになったときに、オーバークオリティーを発 生させない社内体制というのは何を意図して書かれたのか、お聞かせいただければと思 います。 ○中島構成員 確かに基本的に信頼性調査のところに課題があるのは、そのとおりなの ですが、製薬企業側も信頼性保証部とのやり取りの中で、オーバーリアクションをする ことによって、企業の中にはそういったことを専任としている職種もあるわけで、この 次はパーフェクトにいこうということで社内の基準を上げていく。そういう意味でのオ ーバーリアクションというのがあって、そういう意味で、企業においてもその辺は気を つけましょうという趣旨で書いていると思います。 ○荒川構成員 同じように医療機関にも実地調査があると、いろいろな記録が残ってい るか、例えばモニタリングの記録は残っているかとか、あるいは企業の方から聞いた話 ですけれども、安全性報告を郵送だけでは駄目で、ちゃんと医師に伝わったことを間違 いなく証拠を残すようにするとか、いろいろ指摘されていることが、皆さんにはいろい ろな形で負担になってきているのが事実です。 ○楠岡座長 審査管理課のほうは、いかがですか。 ○審査管理課課長補佐 信頼性調査のオーバークオリティーについては理解しています。 必須文書とも関連してくると思うのですが、必須文書を作成するために医療関係者がな かなか治験に係る診療に時間を割けないとか、そういうことがないようにしたいと思っ ています。信頼性調査の実効的かつ効率的あり方というものは、今後の検討課題だろう と考えています。 ○楠岡座長 今回、治験のあり方検討会とは別途、審査等に関する検討会がスタートし ていると聞いていますが、そういうところでも、こういう問題は引き続き検討していっ ていただけると思ってよろしいのでしょうか。 ○審査管理課課長補佐 そこについては今後の議論によるところですけれども、有効で 安全な医薬品を迅速に提供するための検討会の中では、ICH-GCPとJ-GCPの整合性につ いて検討することになっていますので、そこでの結果によりますが、治験のあり方に関 する検討会がありますから、その中でも議論していきたいと考えています。 ○楠岡座長 他にございますか。あと企業負担の軽減というよりは、むしろ実施医療機 関側の負担の問題になるのですが、治験の場合は保険外適用診療の、いわゆる旧の特定 療養制度の中に入っていたわけですが、臨床試験の場合はその制度がないことが問題で、 既に承認薬を組み合わせて行う臨床試験に関しては、さほど問題はないわけですけれど も、適応外が入っているようになると、結局、その負担は誰がするのか。厳密に言うと これは混合診療になるので、全額病院なり医療機関側で医療費を負担することになるの かが現場では今まで問題になっていますし、逆にもしそれがあるのであれば、そういう 臨床試験はしてはならないという、先ほどの病院側の規制みたいなものも実際に生じて いるという話も聞いています。  ただ、何でもかんでも臨床試験と名付けて無制限に適応外になってしまうと、これも いろいろな問題が出てくると思いますけれども、この辺を何らかの歯止めみたいなもの と組み合わせながら、今後、そういうものを混合診療でないにしても、特定療養制度の 枠内の中のどこかに位置づけるということは可能なのか、あるいはそういう検討が行わ れる可能性があるのかについて、もし医療課のほうで差し支えなければ教えていただき たいのですが、いかがですか。 ○医療課課長補佐 保険外併用療養費の枠組みにおいては、未承認あるいは適応外使用 の医薬品や医療機器を使用する臨床試験について、保険診療との併用を認めていません。 ただ、その枠組みについて今後、どういう方向で検討していくかという議論の余地はあ ると思います。研究開発振興課のほうで今後、予算要求ベースではあるのですが、そう いった早期承認などについて取り組むとお聞きしました。その結果があった上で、医療 保険制度下における臨床研究の方向性の議論があります。そういった新しい枠組みがす ぐに進むことはなかなか難しいと思いますが、できるだけ我々としても協力していきた いと思います。つまるところ、こうした臨床研究の成果の一部がより良い医療に翻って 効果をもたらしていることは否めませんので、そうした観点から少し考える余地はある かもしれませんが、現在の医療保険制度においては、検討課題としては残るにしても、 すぐにどうこうという形でアウトプットを出すというと、なかなか難しいということが 結論になるかと思います。 ○楠岡座長 是非、門前払いにはせずに、継続的な検討課題の中に入れておいていただ きたい。例えば医師主導治験でやればいいという考え方もあると思いますが、医師主導 治験の場合は検証的な研究という試験にどうしてもなってしまって、探索的な部分とい うのはなかなか医師主導治験に乗りにくいですし、いまの日本医師会治験促進センター が窓口になっているのも、探索的な試験というのは他のいろいろな検証的試験の中から 比較すると、どうしても採用されにくいという現状もあります。例えば厚生科研で行う ような探索的な研究に関しては、そういうような特例的なものを一部認めるとか、これ は厚生科研の採択段階である程度審査が行われているわけですし、ある意味、厚生労働 省の行政的な配慮も入っているものですから、今後、窓口だけはできるような方向を是 非ご検討いただきたいと思います。なかなか難しいのはわかっていますが、今後の継続 課題に是非置いておいていただきたいと思います。 ○研究開発振興課課長補佐 いま、ご指摘いただいた部分は保険局のみが攻められる問 題ではなくて、やはり研究費を付けるなり研究実施を支援している側のほうから、きち んとこういう枠組みでできるというものとか、そういう枠組みは提示していかなければ いけないと思っていますので、むしろ私どもの側で少しそういった部分について、どう いう形できちんとした臨床研究ができるかについて、検討を進めさせていただきたいと 思っています。 ○楠岡座長 よろしくお願いします。他にございますか。 ○新井構成員 いまの検討の中に、いま臨床研究は受け皿の病院のほうの問題を議論し ているのですが、臨床研究で物を提供する場合に、いま薬事法で未承認医療機器の提供 はできないので、薬事法の絡みも含めて議論していく必要があるのではないかと思って います。 ○研究開発振興課課長補佐 未承認薬、未承認医療機器というのはあくまで未承認のも のですので、これがある種無制限に使われるというのは、よろしくない状況だろうと思 います。それが一方で臨床研究という名を借りて不正に提供されることがあっては、薬 事行政上も非常にまずいことだろうというのは、厚生労働省としての基本的なスタンス だと思います。そういう中で新井構成員がご指摘のような医療機器の開発に即した提供 の仕方については、実際、医療機器のGCPについてもここで検討課題として20頁に書 いてありますが、そういう場で現状に即した対応を検討する必要性があるのだろうとは 認識しています。 ○新井構成員 私もある一定の制限をかけないと、いま事務局が言われたようになるの で、GCPで見るのかどこで見るのかを整理していく必要があるのではないかと思って いるのです。 ○榎本構成員 17頁に医療機関での出来高払いというコストの問題があります。いま治 験のコストはポイント制の規約がありますけれども、国立病院、国立大学病院、私立医 科大学病院のガイドラインが出され、それぞれ形が違って費用が違います。ガイドライ ンが出された当時、当院は私立医科大学協会に所属しているのでそちらに準拠している のですが、前払いで、契約症例数を実施できなくても研究費等は返さなくていいという ガイドラインでした。そのガイドラインがそのまま今でも改定されていませんので、コ スト高ということになっています。その時に決めた契約書を今でも変えられない施設も 結構多いと聞いています。  また、コーディネーター費用に関しては今でも全く何の指針もなくて、各施設が独自 の費用設定で決めている現状です。製薬企業側からは安いほうがいいという比較もある のでしょうが、ある程度この時点での統一とか、そういう検討計画はないのかどうか確 認したいと思います。 ○楠岡座長 実は昨年度の作業班でも同じ問題がありました。ただ、あまり行政が指導 すると公定価格を作るような形になってしまうので、むしろ当事者が集まって話し合う ほうがいいだろうということでした。ただ、なかなか当事者の集まる場というのがない ので、場合によっては行政側がそういう場だけを提供し、その中身に関しては関係者で 決めるというアシストもしていただければありがたいかと思いますが、いかがですか。 ○研究開発振興課課長 ご指摘のとおり、我々もそこのところを勉強しまして、いま当 事者にどんなガイドラインが生きているのか、またそれを見直す気運にあるのかどうか、 直接医療機関と製薬企業の契約の問題に我々が手を入れるのはいかがかと思いますが、 そういう場で議論を深めていくことは可能ですから検討してまいります。 ○楠岡座長 あと昨年、厚生科研の特別研究でやったコストの研究で、慶應大学の中村 先生から、これは医療経済の面からの指摘なのですが、結局、ポイント表が逆に高コス ト相場を固定化してしまっていると。したがってポイント表をなくすのは難しいにして も、もっとフレキシブルなものにしないと競争が生まれない。競争が生じるとある程度 コストも下がっていく可能性はあるという指摘は受けています。 ○荒川構成員 やはり昨年の作業班の中でも議論がありましたように、現在のポイント 表はもともと文科省とか大学病院が中心になって作ったものだと認識していますが、実 態をなかなか反映していないということが業界からも指摘されている次第です。実労働 時間がCRCと医師は基本的に同じという点で換算してみると、いま私どもでやってい るので実に4、5倍の差が出るくらい実態と離れています。ですから現在のポイント表 は、長くてもいかに簡単でも、どの治験でも大体1症例当たり40から50ポイントに入 ってしまうのです。それは実態に合っていないので実態に合う形に直さなければいけな い。私どもはモデル的には作ってあります。ただ、それを全国的に広める立場でもない ので、様子を見ている次第ではあります。 ○楠岡座長 もともとポイント表ができた経緯が、実態どおりだと誰も引き受けないの で少し高めにするということでした。ただ、そのときに根拠は何かということで会計検 査院からかなり突っ込まれた話があります。その根拠が非常に難しいので、ポイント表 という形で少し逃げたような歴史的経緯もあるので、ポイント表というのは残さないと 実態的には難しいと思いますが、ポイント表の中身は考えていく必要があります。 ○荒川構成員 日本の治験が高いと言っていますが、先ほどのポイント表の問題もあり、 どの治験を比較するかによって大違いなのです。ですからその辺も踏まえて本当に正し いデータを出していかなければいけないだろうと思います。 ○楠岡座長 本論から外れていますので元へ戻ります。 ○尾芝構成員 患者さんへの啓発のところに戻りたいのですが、ここで今までの各方面 の皆さんの努力で認識が高まり、参加意欲が高まってきたので、より一層情報発信する ようにしようという流れは全くそのとおりなのですが、1つだけ怖いのは、情報の発信 を積極的にしようというときに誤解を招くような、あるいはバイアスをかけたようなリ クルーティングに走るものも発生してしまっています。もしこれが何か起こったときに は、営々と築いてきたものが一挙に崩れてしまうので、ある面予防的に牽制あるいは監 視と言うときついかもしれませんが、何らかの歯止めか目安を示して、こういったタイ プがいい、こういう法だったら積極的にやりましょうというところも、検討するべきな のかなと思います。今までよかった、このままどんどんやっていこうというと、読み方 によっては野放しになってしまう怖さが一部感じられるという感想を持っています。  ちょっと戻りますけれども、些末なところなのでいいかと思ったのですが、CRCの 待遇のところで15頁の安定雇用のところで、キャリアパスと活動領域の真ん中のところ です。SMO雇用と病院雇用の処遇の差は議論に出てきたので、やれることやいろいろ なことを改善していこうという趣旨ですからいいかなと思ったのですが、ずっと見てい くとここだけ特定のグループが対比されているので、雇用母体の差による差をなくすと か、そういったもっとジェネラルな表現のほうが刺激がないのかなと感じましたので、 個人的な見解ですがご検討をお願いしたい。 ○楠岡座長 わかりました。先ほどの啓発の点ですが、アクションプランのところに若 干具体的なことは入っていますけれども、尾芝構成員からのご指摘に関して事務局から 何かございますか。 ○研究開発振興課課長補佐 この啓発の関係の特に情報提供ですが、一般的な情報につ いては特定の治験を指しているわけではない部分がありますけれども、一方で特定の治 験を指すような広告や情報提供について、かなり薬事法の情報提供の内容に関する制限 というものがあり、そこはあまり広い意味でバイアスがかかったり顧客誘引的にならな いように工夫はされていると思います。いまのお話について、具体的にどういうところ が問題かというあたりは別途構成員からもお話を伺って、少しイメージを作っていけれ ばと思っています。 ○楠岡座長 他にございますか。時間がほとんどなくなってきましたが、19頁以降のそ の他の課題、あるいはこれまでの議論全部を含めて何かございますか。アクションプラ ンの内容は先ほど事務局から報告がありましたように、既に課題のところで出ているも のを担当者別に少し整理したところがありますので、それも含めてご議論いただければ と思います。 ○中島構成員 その他の課題に該当することになるかと思いますが、今まで私どもから 申し述べてこなかったのですけれども、試験データの品質保証のあり方の検討というこ とで、先ほど信頼性調査絡みについては、審査管理課のほうからICH-GCPに準拠という 中でやっていくということでしたが、それ以外のものとしては、例えば直接閲覧は日本 だけが100%の症例をやっているという実態があります。あるいは日本の審査データと しての受入れの考え方として、限りなくエラーがゼロになるという水準で物事を考えて きている。そうではなくて、データの受入れ可能性ですね、審査データとしての受入れ 可能性という観点から、物事を考えていく必要があるのではないか。  先ごろ私どもの委員会で協議した折に、新たな点として、海外との対比で日本固有の 部分で改善すべきということで、この部分がコストに大きい影響を与えてくるという問 題があります。是非、この辺を整理すべきではないかと思っています。 ○楠岡座長 ただいまの点で審査管理課から特に付け加えることはありますか。よろし いですか。他にございますか。 ○山本(晴)構成員 私も品質管理のことで言いたいのですが、治験のほうはGCPが あって品質管理されているということがまず土台にあります。現在の臨床研究に関する 倫理指針では、日本で欧米のように即臨床研究にもGCPを適用しましょうということ には、今のところまずならないと思いますので、おそらくは臨床研究に関する倫理指針 の見直しをして、その後、GCPにだんだん近づけていくのかなというイメージを持っ ています。少なくとも臨床研究についても、品質管理を何らかの形で行っていくような 指導をしていかないと、自主的臨床研究で日本開発のものがだんだん出てきていますし、 アメリカの場合はNIHのポリシーとしてモニタリングが入っていますが、日本にはそう いうものが全くありません。一部では疑問視されていることもあると思いますし、いず れは国際的に問題視されると思いますので、自主臨床研究についても品質管理という考 え方を是非入れていただきたいと思います。 ○楠岡座長 いまの点で、かなり自主的にやらざるを得ない点はまだありますね。 ○山本(晴)構成員 そうですね。ただ、NIHの系列の研究費では、データ・アンド・ セーフティ・モニタリング・ガイドラインというのが出て、既に研究費の審査のときに、 どういうモニタリングをするかということも審査の中に入れています。ですから一旦、 そういうフィルターがかかっているということです。日本の場合は全くないので、どこ かに書いていく必要があるのではないかと思います。 ○楠岡座長 他にございますか。 ○荒川構成員 いまアメリカとの比較ということもありましたが、研究費のあり方その ものだと思います。JCOGの福田先生など皆さんあちこちでお話になっていますが、 研究費にデータセンターの経費とか、医療機関の間接経費といったものがパッケージに なってこないと、実際にはなかなか動かないので、そういったものが臨床研究には必要 だと思います。ですから、データセンターへお支払いするお金、それから先ほどの信頼 性の保証に関わってくださる人へのお金とか、そういったことをきちんと枠取りをして いただけると非常に臨床研究用にはなってくると思います。 ○楠岡座長 他によろしいですか。予定の時間になっていますので、いろいろ活発なご 意見をいただきましたけれども、ここで本日の議論を終了とさせていただきたいと思い ます。本日のご意見では、事務局のほうで作っていただいた次期5ヵ年計画(素案)に 関して基本的にはご承認いただいて、本日議論があった部分に関して少し手直しをして いただく形になるかと思います。それでよろしいですか。ありがとうございました。今 日いただいた意見をもとに事務局で取りまとめ、次回の検討会に最終案を提示していた だく形にしたいと思います。次回は今回を含む各回の議論を含めて計画案を完成させる ことになりますので、よろしくお願いしたいと思います。最後に事務局から連絡事項が ありましたら、よろしくお願いします。 ○研究開発振興課課長補佐 次回の日程ですが、日程調整の結果を踏まえ、12月21日 (木)、16時から18時の予定で開催させていただきたいと思っています。場所はこの建 物、厚生労働省17階の専用18、19、20会議室です。本日の議事録については作成次第、 構成員の方々にご確認をお願いし、その後公開させていただきますので、併せてよろし くお願いします。前回の議事録については各構成員にご修正いただいたものを机上にお 配りしていますので、よろしければこれで公開させていただきたいと思います。次回は こちらの素案について、本日のご意見をいただいたものでアップデートして、新たな治 験活性化5ヵ年計画(案)という形で、ご提示させていただきます。次回の議論として は、本日まだ議論していなかったアクションプランの数値目標等について、より具体的 なご審議をお願いしたいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思っています。 ○楠岡座長 以上でよろしいですか。何か追加等ございますか。以上をもちまして第6 回次期治験活性化計画策定に係る検討会を終了したいと思います。本日はお忙しいなか、 ありがとうございました。 (照会先)   厚生労働省医政局研究開発振興課    (03)5253−1111(内線 2545)