06/11/20 第3回医療施設体系のあり方に関する検討会の議事録について        第3回 医療施設体系のあり方に関する検討会                    日時 平成18年11月20日       15:00〜      場所 厚生労働省専用第15会議室 ○企画官 それでは、ほぼ定刻になりましたので、第3回「医療施設体系のあ り方に関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、 ご多忙中のところ、当検討会にご出席をいただき、誠にありがとうございます。  初めに本日の委員の出欠状況についてご報告を申し上げます。本日は、学習 院大学経済学部教授遠藤久夫座長代理、千葉大学医学部附属病院院長の齋藤康 委員、順天堂大学医学部附属順天堂医院院長梁井皎委員からご欠席とのご連絡 をいただいております。  また私は前回の検討会のあと、異動でまいりました企画官の中村と申します。 どうぞよろしくお願いいたします。  次に、お手元の資料の確認をいたします。「議事次第」「座席表」「委員名簿」 等を配付しております。本日の資料として資料1「特定機能病院制度について」、 資料2「特定機能病院の承認状況」、資料3「専門医について」、資料4「広告 可能な医師・歯科医師の専門性を認定している学会について」という4種類の 資料をお配りしております。最後の参考資料は本検討会の第1回目に出した検 討課題及び検討会の名簿等です。  それでは、以下の進行について、座長にお願い申し上げたいと思います。 ○座長 皆さんこんにちは。本日はお集まりいただきまして、どうもありがと うございました。毎回のことですが、本検討会においては、委員欠席の際に代 わりに出席される方に関して、当日の検討会で毎回承認を得ることによって、 参考人として参加し、発言をいただくことについて許可をすることになってお ります。  本日の会議につきましては、いま事務局から案内がありましたように、千葉 大学の齋藤先生、順天堂大学の梁井先生がご欠席です。齋藤先生の代理として 東大医学部附属病院院長の永井良三先生にご出席いただきます。後ほどお見え になると思います。また梁井先生の代理として、同じく順天堂大学医学部附属 順天堂医院院長補佐の新井一先生にご出席いただいております。お二人の参加 とご発言をお認めいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。異議 なしということで進めさせていただきます。  また本日は、文部科学省より三浦公嗣医学教育課長、赤塚義英大学病院支援 室長にオブザーバーとしてご参加いただくことにしたいと思います。こちらに ついてもよろしゅうございますか。オブザーバーの二人も発言していただいて 結構でございます。  早速ですが、議事に入ります。本日の議題は「特定病院制度について」及び 「専門医について」の2つです。初めに事務局よりこれらを資料に沿って説明 いただき、そのあと私たちで自由に意見交換をしてまいりたいと思います。で は、事務局より説明をお願いいたします。 ○企画官 それでは、資料の説明をいたします。まず、資料1「特定機能病院 制度について」ご説明いたします。1頁です。第1回目の検討会でも提出した 資料をベースに作成した資料です。特定機能病院制度について、改めてここで 趣旨と書きましたが、良質な医療を効率的に提供するためには、機能・特質に 応じた施設の体系化を進めるということで、平成4年の医療法改正において、 特定機能病院制度が制度化されたということです。  2の役割として3つ書いておりますが、高度医療の提供、高度医療技術の開 発・評価、高度医療に関する研修ということで、こうした機能を果たしていた だく医療機関として医療法上位置づけられています。  承認要件ですが、いま申し上げた3つの役割を果たす実施する能力を有する こと。紹介率30%以上ということがあります。病床数については400床以上 となっています。人員配置については、通常の病院よりも手厚い配置となって います。  2頁です。平成16年に承認要件の一部見直しが行われました。もともと病 床数については500床以上になっていましたが、平成16年から400床に緩和 されています。  高度医療に関する要件は、それまでの努力義務から義務に変わっており、そ の点については(2)の2つ目の○に書いています。今年の7月現在で申し上 げますと、81の病院が承認を受けており、大学病院が78病院、国立がんセン ター、国立循環器病センター、大阪府立成人病センターで、計81病院となっ ています。  3頁以下は、いま申し上げた承認の基準について、少し細かな項目も含めて 整理した資料ですので、お目通しいただければと思います。  6頁です。1回目の検討会においては、この検討会でご議論いただきたい課 題について、全体的な議論をお願いしたわけですが、その中の特定機能病院に 関する部分について抜粋しました。特定機能病院について外来に主力を削がな くても病院が十分やっていけるような診療報酬の設定が必要ではないかとい う話、本来の目的は高度な医療の提供になっているので、その役割に見合った 資源を集中していくべきということで、同じように外来患者の対応について意 見がありました。  特定機能病院の責務として、高度な医療のほかに重症患者の受け入れ、研修 医の教育、生涯教育、卒業後にいろいろな新しい医療が出たときに、それに対 する教育などが大事ではないかという意見をいただきました。  7頁です。特定機能病院について、社会保障審議会の医療部会で議論をした ときの意見の概要を改めて示しています。1点目としては、患者の期待と特定 機能病院の役割のずれですが、特定機能病院という名前から受ける一般の国民 の印象というか期待と、実際の機能にずれがあるのではないかというご指摘で あったかと思います。最善の医療、最高の質を期待している中で、実際には医 学部生や研修医が多く医療に従事しているということで、その辺りのずれをど う考えていくかというご指摘だろうと思っています。  現在承認されている特定機能病院が大学病院と、その当時はがんセンター、 循環器病センターのみであったということで、これらの病院以外にも高度な機 能を持った病院があるのではないかというご指摘だったかと思います。  「特定機能病院本来のあり方について」という見出しを付けましたが、大学 の独法化によってその機能が大きく変わったのではないかというご指摘で、独 法化によって医療経営まで考えなければいけなくなり、実際には市中の病院で も実施できるような手術がかなり行われており、そうした手術については地域 に出ていって行えばいいのではないか、という指摘がありました。特定機能病 院は本来どうあるべきかという基本から考え直す必要があるというご指摘だ ったかと思います。  8頁です。特定機能病院が持っている高度な医療技術は非常に大きな財産で あり、その確保が必要だということで診療報酬面、財政面で支援が必要だ、と いう指摘が1点目です。  先ほどの意見とはちょっと方向が違うのかもしれませんが、大学病院以外に ナショナルセンターが承認されていることで、この制度がわかりづらくなって いるのではないかということで、そこの整理が必要なのではないか、というご 指摘も一方ではありました。  研修というときに、本来は一定以上の能力を持った人の能力を高めるという 意味だとすると、大学が担われている学生や研修医に対する教育研修機能と違 うのではないかという観点からのご指摘がありました。  こうしたご意見、ご指摘があって、最終的に昨年12月8日にまとまった医 療部会の意見書の中では、特定機能病院について、9頁に4つほど○がありま すが、このような形で集約されました。1つには、地域の医療連携体制の構築 という観点で、「医療連携体制を支える高度な医療機能を有する病院」が必要 であるということで、特定機能病院にそうした役割を期待して、それを医療法 上も明記すべきではないか。2点目は、高度先進医療が見直される中で、特定 機能病院の要件の1つである「高度の医療」の範囲について、どう考えていく のか。3点目は、医療安全の推進を図る観点から特定機能病院に係る入院患者 数にかかる基準を引き上げる。4点目は、本検討会で検討している所以ですが、 専門医の育成のあり方、あるいは機能分化と連携等に係る論点といったものを 踏まえて、特定機能病院に本来求められる機能なり承認要件、あるいは名称等 の特定機能病院制度のあり方について、どのように考えていくのかを検討して はどうかということです。これが医療部会のまとめでした。  10頁です。これはいまの医療部会のまとめを受けて見直された今回の医療 制度改革の中での特定機能病院に関係する部分を整理したものです。1点目は、 「医療連携体制を支える病院」ということで、新たに「医療計画に定められた 医療連携体制が適切に構築されるように配慮する」ことを、特定機能病院の管 理者の義務として、医療法上位置づけております。これは来年4月から施行に なる部分です。  特定機能病院から毎年厚生労働大臣宛に業務報告をしていただいているわ けですが、これを来年度からは公表が制度上位置づけられております。  看護職員の人員配置標準については、2.5対1から2対1ということで、今 年の4月から改正が行われて実施されている状況です。  11頁です。診療報酬改定の部分で関連する部分です。まず「紹介外来加算」 が廃止され、特定機能病院についてもその部分が廃止されています。特定機能 病院における入院医療について評価を行う「特定機能病院入院基本料の(一般 病棟の場合)」ですが、14日以内の入院期間に係る加算の引き上げが行われて います。(参考)で書いているように、その他の部分はかかっていませんが、 14日以内の期間の、例えば特定機能病院入院基本料の下から2段目の652点 が引き上げになった部分です。  12頁以降です。1回目の検討会でも示した業務報告書の分析をしたデータ を、直近の業務報告に基づいて整理をし直しました。病床数でいいますと、基 準400床以上が平均で865.7床になっています。医師数、薬剤師数、看護師数 それぞれ平均どの程度基準に比べてスタッフが配置されているかというデー タです。  13頁には、先進医療の関係で平均3.7件実施されています、特定疾患治療 は年間2,000人を超える患者を診ていることが、データとして見てとれる状況 です。  その次は実際の高度先進医療のリストが付いています。16頁を見ますと、 論文発表の件数で、年間100件以上という基準に対して平均185件強。専門的 な研修を受ける医師は30人以上という基準に対して、平均95人。紹介率につ いて30%以上という基準に対して平均64.9%という状況です。  資料2については、特定機能病院の実際に承認を受けている81病院のリス トですので、お目通しをいただければと思います。  専門医についてご説明いたします。資料3の1頁です。専門医の仕組みにつ いては、現在公的なかかわりとしては、広告の中で特定の学術団体が設けられ ている専門性に関する資格について広告できるという形で関与が行われてお り、平成14年4月より一定の基準を満たす学術団体が、厚生労働大臣に対し て届出が行われた場合には、当該団体が医師及び歯科医師の専門性に対して認 定する資格名について広告可能となっています。  具体的には、その下に四角の囲みで書いていますが、特に四角の囲みの下の ほうの平成14年3月29日の159号告示で具体的な要件を定めており、法人格 を有している、あるいは会員数が1,000人以上、一定の活動・実績等々を要件 として定めています。これが満たされた場合には専門医として広告が可能にな るのが現在のスキームです。  2頁にこの基準が満たされている実際の資格名、現段階で45の資格があり、 団体の数で47です。右側の欄の※1が、同一の学会が複数の専門医を認定し ているケースで、※の2は、逆に複数の学会が合同で専門医を認定しているケ ースです。あとは各学会1資格ということで運用されていると承知しています。  3頁です。ここも以前出した資料ですが、アメリカにおける専門医制度につ いて、簡単にまとめています。アメリカでは200の学会が独自に専門医を認定 していますが、実際にはそのうち24ぐらいの資格が実質的に、社会的に認知 されて意味があるといわれています。専門医資格というのは医業のために法的 に必要とされるものではないということですが、実際には89%の医師は何ら かの資格を持っており、認定レジデントプログラムを修了した上で、試験を受 けて合格ということになります。このレジデントプログラムには定員があると いうことで、各学会は実質的に全米の専門医数を規定しており、効果があると いうことです。  レジデントプログラムですが、その下にACGMEと書かれていますが、こうい う民間の団体が、このプログラムについて認証しているということで、チェッ ク機能を果たさせているということで承知しています。こうして得られた専門 医資格については7年から10年おきに再認定を受けているという状況で承知 しておりますので、参考までにご報告いたします。  4頁です。これは第1回目の検討会において、専門医に関してご意見等をい ただいた部分について、ここでまとめました。まず専門医制度は学会によって 非常にばらつきがあるということで、地域別あるいは全国規模でどのぐらい専 門医が必要なのか、あるいはどのぐらいの配置をすればよいのかといった点に ついて検討が必要ではないか、というご指摘がありました。  第三者的な公平な立場での認定制度を、各学会の統一基準みたいな形で設け ていく必要があるのではないかということです。一部広告可能となっているの で、既にメリットはあるということで診療報酬による差別化が必要ではないか、 というご意見でした。  2つ目の○ですが、いま現にある専門医制度が臓器別、疾患別が一般的だと いう中で、プライマリケアの専門医を今後は検討していく必要があるのではな いかということで、医療に貢献することを評価していくシステムが必要ではな いか、というご指摘があったかと思います。  医療従事者が働く環境をどのように良くしていくかも、専門医と絡めて議論 が必要ではないかというご指摘ではなかったかと思います。  5頁です。ここは先ほどの特定機能病院と同様で医療部会が開かれたときに、 どのようなご意見が専門医に関してあったかを整理した部分です。1つ目の○ は、安心・安全で質の高い医療を推進するためには、十分に経験を積んでトレ ーニングを受けた専門医が是非必要ということですが、レベルや名称に統一性 がないという現状にあるということで、その専門医にかかれば安心ということ で、質の担保ができるようなシステムを作るように、専門医を抱えている医療 機関や医師会の代表に加えて学会の代表にも参加していただいて、認定基準や 専門医のあり方等について検討する仕組みを作っていくべきではないか、とい うご指摘でした。  そうした中で2つ目ですが、国の関与も必要ではないかということで、最低 限の基準を定めるなど、マイルドな関与ができると専門医全体のレベルアップ につながるのではないか、というご指摘であったかと思います。3つ目の○も 同様かと思いますが、国などの第三者的なものの関与が必要ということです。  4つ目はちょっと視点が違っており、専門医という広告が先行すると、患者 側が混乱するのではないかということで、専門医に関する情報を標準化して、 患者の立場でも読み解くことができる方向へ持っていく必要があるのではな いかということです。  専門医志向が非常に高まっている状況の中で、トータルに患者を診ていく医 師が、本当に増えていくのかどうかは、このままでは非常に疑問というか案じ ているということで、専門医の認定や更新という辺りについて、高い精度の仕 組みが生まれていくことが必要ではないか、というご指摘がありました。  6頁ですが、医療部会での最後のまとめです。最初のほうは現状が書いてあ りますが、最初の○の3行目辺りに、「専門医の質の確保に当たり、国あるい は公的な第三者機関が、一定の関与を行う仕組みとすることを含め、医療の質 の向上と医療安全のさらなる推進を図る上での専門医の育成のあり方につい て検討すべき」。それから心臓外科や血管外科等、特に専門性が高いと求めら れる一定の領域について、こうした専門医の養成・確保あるいは専門的医療を 行う病院の位置づけを通じて、専門性を評価する仕組みとすることも考えられ るのではないか、といったとりまとめになっているのが現状です。  資料4です。これは前回参考資料として出して、説明を省略した分を少し修 正する形で、今回改めて提示しております。先ほど45の資格があると言いま したが、各学会の各専門医資格ごとにその実情を整理したものです。中身の説 明は省略します。例えば、最初にある日本整形外科学会のケースで言いますと、 整形外科専門医という形で名称が決まり、会員数に対して専門医がこの程度お られ、その割合は74%。専門医を取得するのに必要な研修期間は6年で、認 定施設で3年の研修期間が要ります。認定施設の要件は、(主なもの)と書い ていますが、その中に○で書いているものです。実際に研修を経て専門医の認 定を受けるまでに必要となる要件、提出すべき資料等が次の欄です。最終的な 試験としては、日本整形外科学会のケースでいえば、筆記と口頭の試験があり、 資格の更新年限は5年である、というように資料をご覧いただければと思いま す。こうした形で現在ある45の専門医資格についてまとめたのがこの資料で す。私からの説明は以上です。 ○座長 テーマは2つありますので、2つに分けて討議してまいりたいと思い ます。その前に、前回欠席の山崎委員から、地域医療支援病院について、一言 ご発言したいということですので、お願いいたします。 ○山崎委員 前回の地域医療支援病院の件ですが、前回の資料を拝見しますと、 地域医療支援病院において、精神科の医療にどのようにかかわってあげるかと いうのが全然見えていないのです。したがって、事務局にお願いですが、地域 医療支援病院に指定されている病院の中で精神科病床を持っているか持って いないか。精神科が外来をしているか、していないか。地域の精神科救急医療 システムに参画しているか、していないかという件についての一覧表を作って ほしいと思います。  地域の精神科の救急を、各地域の精神科病院が担当しているのですが、最近、 一般の身体疾患に精神症状を合併したもの、あるいは認知症の周辺症状で不眠 があったり、といった症例があったりすると、単科の精神病院で救急で診るの は非常に難しいわけです。したがって、きちんと一般診療ができる地域医療支 援病院が合併症があって、精神症状を持った患者に対応するシステムを作って いただきたいと思っています。 ○座長 その点ご検討ください。それでは早速ですが、特定機能病院制度につ いての説明に対する質問でも結構ですし、意見でも結構ですのでお願いいたし ます。 ○山崎委員 特定機能病院はこの資料で見ますと、大学病院と国立のセンター、 しかも400床以上の病床を有する病院という規定が付いていますが、特定機能 と先進医療というのは違うのですか。あとは特定機能に限れば、病床数に限ら なくても50床の病院であっても前立腺がんの最新の治療ができる、あるいは 甲状腺疾患については、きちんとできるという機能を持っていれば特定機能病 院と認定しても構わないのではないでしょうか。  大学病院については、大学病院全部を特定機能病院として認定するのか。例 えば外科にしても第一外科、第二外科、第三外科とあった場合、第一外科、第 二外科、第三外科のすべての外科が特定機能を持っているとは思えないのです。 したがって、全部包括で指定するのではなく、どこそこ病院の何科について特 定機能を指定するという科別の指定にすべきだと思います。 ○座長 最初はいろいろなご意見を伺ってまいりたいと思います。 ○藤川委員 資料1の13頁に、平成17年度の高度医療の提供の実績が載って おり、平均3.7件となっていますが、特定機能病院の最も期待されているとこ ろは、まさに高度先進医療をどれだけやっているかということではないかと思 います。それが各施設当たりの平均で3.7件というのは、機能の集積という初 期の目的は達成されているとは言い難いのではないかと思いました。 ○座長 いまのは特段事務局の答えというわけではなくて。 ○藤川委員 そのように感じました。それをさらに1歩進めると、そもそも特 定機能病院の承認要件が、先ほどのご意見にもありますように、病床数、ある いは診療科数が10以上とか、高度先進医療の件数等々を見ますと、本来記載 されている承認要件とが必ずしも合っていないのではないかということです。 ○座長 山崎委員と共通のご指摘ですね。高度と先進との違いは何か、考えよ うという指摘をいただきました。 ○永井参考人 今日は齋藤国立千葉大学病院の院長が欠席ですので、その代理 で出席いたしました東大病院の永井です。例えば、いまの高度先進医療の件も、 かつては非常に承認が難しく、最近は増えてきましたが、年によってはゼロ件 しか認定されない。これは全くゼロから開発してきた医療ですので、そう簡単 に認める姿勢ではなかったのです。しかし、今度先進医療と高度先進医療が合 併した結果、すべて薬事を通さなければいけないことになりました。そうする と、またバリアが高くなる。つまり、3.7件であっても、相当難しい高いハー ドルを越えている。もう少し先進医療の認可が緩和されるのであればもっと増 えるだろうと思います。  それから専門病院なら小さくてもよいのかといったときに、それでは、がん の患者が消化管出血をしたときに本当に対応できるのか。そういう総合性が特 定機能病院の1つの特徴ではないかと思います。その辺の評価も行っていただ きたいと思います。 ○永井参考人 今がんと申しましたが、例えば循環器で消化管出血を起こした り、がんで心筋梗塞になったときに、特定の小さい病院では対応できないので す。そういう意味で専門病院的な小さなスケールの専門病院というよりも、む しろ日本における総合病院の1つの代表として大学病院を始めとする特定機 能病院があるのではないかという意味です。 ○山崎委員 特定機能病院の81病院のうちの78病院は大学病院ということで すが、特定機能病院のスタッフで大学病院で診療もして、教育もして、研究も するというときに、このスタッフで足りるのかどうかは非常に疑問なのです。 大学病院というのは、本来は教育と診療は別立てで考えなければいけないと思 います。したがって人を付けるのだったら、診療に付ける人間と、教育に付け る人間と別立てできちんとカウントして病院につけていかないと、診療しなが ら教育もするという現在のシステムは限界にきていると思います。 ○永井参考人 ご指摘のとおりだと思います。結局人が少ないので、1人で何 役ということになってしまっているので、これから近代化していく中では診療 要員と教育・研究要員を分けなければいけないと思います。そのためにはかな り増員も必要になってくると思います。 ○古橋委員 既にいろいろ議論が出て繰り返しになると思いますが、私も医師 の基礎教育をする、いわゆる医育教育病院がイコール特定機能病院であること は、この辺りで変更していく必要があると思います。  今回医療法が大きく変わる中では、国民にわかる病院という形が大きく出て いるわけで、特定機能病院という名前を持って、国民にここの病院がそういう 病院であるということが見えるためには、大学病院がすなわち特定機能病院で あるという位置づけになると、国民はみんな大学病院へ行きたくなってしまう 部分もあるので、ここは高度医療を提供する高度先進医療の拠点的病院である ということをしっかり整理すること。  もう1つは、このたび医療計画に定められた医療連携体制が適切に提供され ていく病院なのだという点では、在院日数の短縮とか、高度医療をやる病院だ ったら、なおのこと医療連携、特に退院調整機能、退院時支援機能を特定機能 病院はしっかり構築していくという辺りで、承認要件の中には、新たにこうい うことを独立して起こしていくこと。  過去の特定機能病院の不幸な経験からいくと、医療安全対策が非常に求めら れることを痛感したわけです。こうした点で医療安全に関しては、特に高度医 療を行う機関であるならば、なおのこと明確に、かつ確実な体制を採っている ことが確かめられることが非常に重要だと思っています。大学病院イコール特 定機能病院という関係は、もう終えてよろしいのではないかと思います。 ○座長 特定機能病院の機能を、医療機能だけではなく、退院時支援とか、医 療安全についても含めて考えようとのご指摘でした。 ○武藤委員 資料1の5頁ですが、例えば先ほどから出ている高度医療の提供 というところで、高度先進医療、特定疾患治療研究事業だけで規定するのでは なく、いまご指摘のあったような高度の医療、例えば難治性の疾患をどれだけ 診ることができるとか、高度な治療技術を必要とした疾患をどれだけ診ること ができるかということも、少し整理して特定機能病院の性格づけてはいかがで しょうか。また、これはいまDPCで逆に評価することができますので、そうし た性格づけ、それでできれば特定機能病院の地域医療計画の中において、疾患 別の特性を持たせたような評価方法があればいいのではないかと思います。  2番目に、高度医療開発及び評価ですが、年間の論文数が100件以上などと 書いてありますが、例えば治験の件数は評価の対象になっているのでしょうか。 大学病院としてあるべき治験の問題なども評価の対象ではないかと思います。  それから高度な医療研修は私が思うに、大学病院は初期研修よりは、後期研 修に力を注いでいただく。ですから、後期研修のプログラムも評価の対象にな るのではないかと思います。  次の諸記録ですが、例えば大学病院で、いま診療管理の問題がときどき指摘 されるのは、例えばカルテが未だに一元化されていないなどということも耳に しますので、診療管理の整備というか、そうしたことも評価の対象にすべきだ と思います。  その他の努力目標で、先ほどお話のあった地域医療連携とか、退院時調整、 安全の問題などを性格づけていくことが重要ではないかと思っています。 ○座長 1つだけ治験についての質問がありましたが、いかがでしょうか。 ○企画官 治験については、現在承認の要件には入っておりません。 ○永井参考人 高度というのをどのように考えるかですね。ですから、普通の がんであっても心筋梗塞を合併すれば高度になるわけです。ですから、心筋梗 塞だけ、がんだけという切売り的な見方ではなくて、複合的な疾患に対して対 応できるかというのは、非常に高度な医療機関だと思います。そこを是非強調 しておきたいと思います。 ○武藤委員 是非ともそうした評価を、疾病・疾患を事後的にDPCデータで検 証する仕組みが必要ではないかと思います。 ○五十里委員 特定機能病院と都道府県の関与をいろいろ考えたときに、医療 連携体制が重要になってくるわけです。先ほど事務局から説明があったように、 資料1の10頁に特定機能病院の管理者の義務に新たに医療計画に定められた 医療連携体制が適切に構築されるように配慮することが位置づけられたとい うことで、これは私どもも大いに期待したいと思います。  愛知県の場合を例に挙げて申し上げますと、4つの大学病院があって、医療 連携体制を構築した場合、特に一般医療の部分では救命救急医療、災害医療が ネットワークの中に入ってきますが、その一部の、例えば周産期医療などのネ ットワークは別格になっています。したがって、都道府県が国立大学へ話に行 くと、今まではなかなか協力が得られなかったという面もいろいろあります。 最近の独立行政法人化が非常に大きく影響しているのかわかりませんが、例え ば、がん診療拠点病院に名乗りを上げてくるとか、そういう動きもいろいろあ ります。したがって、他の県内の基幹病院と同様の役割を果たす面もあります。  私ども医療計画を策定する立場から考えますと、特定機能病院の高度医療の 範囲を一層明確にしていただくことと、地域において提供できる高度医療の内 容を特定機能病院から明示するとか、その部分をこれから医療計画を策定する 場合の資料とするために都道府県に報告するなどの制度にしていただけない かと考えています。 ○座長 今まで項目をより細かくする、はっきりさせるというご意見でしたが、 そういうテクニカルなことではなく、もっと広い視点からのご発言でも結構で す。 ○鈴木委員 私は山崎委員が最初におっしゃったようなことを考えてきまし た。部門別というか、先ほどは第一外科から第三外科まであれば、その一部で 高度専門医療を提供し得るのであれば、トータルではなくて、部分的に該当さ せることを考えてきました。  その理由は、いま臨床研修制度を新たにやっており、今までの特定機能病院 の概念とはちょっとずれ込んできているのが1つあります。  それから保険外併用療養費ということで、医療が手上げ方式でいろいろなこ とができるようになりましたので、そういう意味では大学病院の従来の定義と はだいぶ変わらなければいけないと考えております。そういう部分適用が1つ です。  もう1つは、実績評価を何らかの方法でされるべきではないかと思います。 資料1の13頁ですが、資料の読み方を事務局に教えていただきたいのです。 ゼロ件というのが13ぐらいありますが、ゼロというのはどういう意味でしょ うか。 ○企画官 13頁の承認状況の表ですが、これは平成17年度の実績を取ったも のですので、承認は受けているが、実績はなかったということでゼロ件になっ ています。 ○鈴木委員 中医協などでも、あまりゼロが多いと取消しの申請がありまして ね。ですから、3.7件というのは実績なのか、特別の高度医療の部分を3.7件 大学があるのかわかりませんが、そこは相当曖昧な部分があると思います。 ○座長 事務局が相談していますので、しばらくお待ちください。3.7件とい うのは承認の件数なのか実績なのかです。 ○企画官 先ほどの質問について訂正をさせていただきます。まず13頁です が、高度先進医療は件数で書いている左上の表は、各特定機能病院において、 それぞれ何件の高度先進医療について承認を受けているかというグラフです。 下の承認状況についても、各特定機能病院が承認を受けている医療技術の数で、 先ほど申し上げた実績というのは誤りでしたので、訂正いたします。したがっ て、ゼロ件というのは特定機能病院の中で、医療技術の承認を受けているケー スがないという意味でのゼロですので、特定機能病院の中でこの技術をやって いないということでご理解いただければと思います。 ○鈴木委員 これは保険診療になれば、生体間移植とか、高度先進医療ではな くなるわけで、そういう意味で消えていっているものもあるということも考え る必要があるかと思います。 ○内田委員 基本的な確認ですが、資料1の1頁の3にある承認要件ですが、 承認要件すべてを満たさなければいけないということですね。 ○企画官 はい、そうです。 ○内田委員 そうすると、承認要件すべてを満たさなければいけないというの は、一般病院、いわゆる大学病院、センター病院と違う病院からの申請はこれ までにあったのでしょうか。 ○企画官 現実には大阪府立成人病センターが、既に承認を受けていますが、 ここ以外はなかったようです。 ○内田委員 これは当然見直しが必要だとは思いますが、今後これらの承認要 件を満たす所からの申請があれば承認される余地があるということですか。 ○企画官 検討いただくことになると思います。 ○内田委員 もう1つ質問ですが、いま承認に関する見直しが問題になってお り、先ほどゼロがあったという話がありました。評価見直しについての要件に ついて、先ほどから話が出ている地域医療連携体制なども、当然組み込んだ再 評価が今後必要になって、それをこの場で議論することになると思います。現 状での評価見直しに関して、これまで事故が起きて、何らかのトラブルがあっ た所だけしか取消しにはなっていません。しかし、承認要件の中で、承認要件 を満たさなくなっている部分に関しての取消し、あるいは何らかの指導が行わ れた事実はあるのでしょうか。 ○企画官 いまのところ、そうしたケースはありません。 ○内田委員 今後もないということですか。 ○企画官 まず昨年まで議論していただいた医療部会において、部会としての コンセンサスが得られた分については、今回の医療制度改革の中でとりまとめ を踏まえて改正を行ったのが今の状況で、それ以上の見直しの必要性について は、あるかないかも含めてご議論いただくというのがこの検討会の趣旨ですの で、現時点で私どもが、ここをこう直したいということを事務局の案として持 っている状況ではありませんので、今後このようなケースがあるかないかを含 めて、今後の議論に委ねたいと思います。 ○島崎委員 前回の地域医療支援病院もそうだったのですが、こういう議論を していくときに重要なことは、そもそも、どういう目的なり趣旨なり役割を担 わせるのかという目的論が最初にあって、その次にそのためにはどういう要件 を満たせばよいのかという要件論があり、最後にそのことによってどういう法 的効果を発生させるかという効果論の順番で議論していくべきではないかと いうことです。例えば、特定機能病院を認定するというか承認をすることによ ってどういう効果が発生するのかというと、診療報酬において入院基本料など の点で特別の配慮がされている以外に、医療法上、あるいは保険局ではなくて 医政局の所管の法令体系上といったほうがよいのかもしれませんが、何かそれ 以外の特別な効果があるのでしょうか。例えば、医療法上、高度な医療を担う ためのものだから、地域医療計画の中で病床過剰地域であっても作れるとか、 特定機能病院であることによる特別の効果は認められるのかという議論はあ るのでしょうか。なぜそんなことを言っているかというと、地域医療と全く無 関係な病院はあり得ませんが、例えば国立がんセンターは、ナショナルセンタ ーとして地域というよりオールジャパンのことを見ているわけですから、そう いう議論はあってもおかしくはない。  逆にいうと、特定機能病病院であることの意味やそれについて議論する実益 がはっきりしない。つまり、どういう目的のためにこういう病院を承認するの かという議論をまずした上で、どういう効果を持たせるのかを結び付けて検討 する必要があるのだろうと思いますが、ざっと考えると、診療報酬を別にする と特別な効果として重要なものとしてはあまりないのではないかと思います。 これは事務局に確認をしてみたいと思います。  その上で申し上げると、資料1の8頁の「大学病院以外の病院を特定機能病 院として承認することについて」にあるように、大学病院以外に2つのナショ ナルセンターが入っていることが話を混乱させているという議論があります が、三位一体論に立てばおかしくはない。そもそもナショナルセンターという のは、厚生労働省設置法上どのように規定されているかというと、特定の疾患、 その他の事項、「その他の事項」というのは例えば国際協力などを指しますが、 がんとか循環器病といった疾患に関して、高度な医療を提供するとともに、研 究をし、教育研修をするという、この3つが文字通り三位一体になることによ って国全体のレベルアップを図っていきましょうというのが設置目的なわけ ですから、三位一体論に立つ限り不合理ではない。  私が申し上げたい趣旨は、高度な医療の提供、研究、教育あるいは研修の3 つを一緒に行うことに意義があると考えるのか、そうではなくて高度な医療だ けやっていても、それをもって特定機能病院として承認していこうという方向 なのかということです。これは基本論です。  もし前者だとすると、特定機能病院と大学病院や医育機関と何が違うのか。 もし大学病院イコール特定機能病院であれば、医療法上、わざわざ特定機能病 院という概念を作らないで大学病院だけでいいわけです。後者だとするともっ と数は増えるはずですが、せいぜい県に1つか2つぐらいのレベルの高次機能 を持たせる必要があるのだということであれば、それに見合った承認要件を吟 味していくという議論の順番になっていくのではないかという気がします。 ○座長 この辺りでそもそも論をどなたか言ってくれないかと思って期待し ていました。そもそも医育大学病院と何が違うかとか、医政上、用法上、特定 機能病院が持つ意味は何かということの問い掛けがありました。診療報酬以外 に、医政局の担当上、何か特別な事柄はありますか。 ○企画官 医療法上は、要件を満たして承認を得たら、特定機能病院と称する ことができるという書き方になっていますので、まさに特定機能病院という冠 を掲げることができるというのは、医療法上の位置づけということになってお ります。先ほど申し上げましたように、特定機能病院の承認を受けられた場合 には、先ほどの地域の医療連携体制等の構築等に協力するような義務が出てく るとか、そういう効果は別の観点からのはありますが、メリットということで 明確に医療法上位置づけられたものは、ほかにはないと理解しております。 ○座長 となると、島崎委員の言われたそもそもの質問は、大変意味があって、 この検討会でほかの方の意見も伺いたいところですね。 ○島村委員 実は今日12時半から国際フォーラムで健保連全国大会を行って、 柳澤厚生労働大臣にもおいでいただき、ご挨拶をいただきました、連合、経団 連のご挨拶をいただいて感じたこと。併せて健保連の常任理事のメンバー10 人で9月30日から10月9日まで社会保険制度を採っている国のオランダとド イツを視察しました。そのとき私がずっと感じたことは、その中でいつも出て くるのは透明性とか、国民の合意という言葉です。  私自身の印象で申しますと、前回の地域支援病院のときも申し上げたし、今 回の特定機能病院についても、何のためにあるのか。なかったらどういう支障 があるのかということが明確ではない。そういうことで少なくとも国民(患者) がどう思っているか。今日もどなたの挨拶でも、患者本意の医療と言いながら、 国民なり患者が本当にそのことを理解しているかと。私は大学病院といえば、 それで済むことを特定機能病院ということで、かえってわかりにくくなってい ます。あとでハッと思ったのですが、そこにみんなが行ってしまうから高度医 療と特化しなければいけないということなのです。  何が言いたいかというと、もう少し国民なり患者が理解できることが大事だ ろうと、ただ、どの視点から議論するかがはっきりしないかもしれませんが、 いずれにしても国民なり患者がもっと理解できる仕組みにすべきだと全体的 に思います。ちょっと的を外しているかもしれませんが、自分ではそのように。 ○永井参考人 おっしゃるとおりで、患者集中の問題は医療全体のシステムの 話で特定機能病院のところだけをいじっても、なかなか難しいのではないかと いう気がします。  私もなぜ特定機能病院という名前になったのかという経緯はよく存じませ んが、大学病院の位置づけがきっちり議論されてきていないように思います。 これは昭和33年に国民皆保険制度が導入されるときに、文部省の高等学術局 長と厚生省の保険局長の間で大学病院の教育診療研究にあまり影響が出ない ようにする、あるいは必要であれば然るべき省令改正を含めて措置を講ずると いう文書が交わされているのですが、そのあと、それがしっかり実行されてこ なかったことが混乱の原因だろうと私は思っています。 ○武藤委員 そもそも論といいますのは、我々がイメージしている大学病院は、 これからは疾患センターであるべきだと思います。難治性疾患などを治療して いくセンターであるというのは、非常にわかりやすいのではないかと思います。  それに加えて研究開発型の、いろいろな新たなエビデンスを生み出す機能と か、専門医を養成する機能などというイメージなら、すごくわかりやすいと思 います。現状の大学病院は教育と研究と病院の診療機能がごちゃごちゃなので す。大学病院のことをよそから言うのはおこがましいのですが、そうしたもの を機能分化していくと、よりわかりやすくなりますし、地域の中においては疾 患センターであるべきだと思います。 ○古橋委員 大学病院は大学病院という名称でよろしいのであって、特定機能 病院というのも、いわゆる医療法に規定する病院の1つの形、機能です。この たびの医療法は大きな流れとしては、機能分化と地域連携がかなりクローズア ップされ、浮上してきました。そのときに医療計画でいう新たに出てきた機能 分化の点での拠点病院、いま武藤委員のおっしゃった疾患のセンター的なもの と言えば、拠点病院もそうであろうかと思います。そうしますと、この度医療 法が大きく変更されようとしている中で、特定機能病院や地域医療支援病院と、 新たに概念化されてきた拠点病院について、1回整理がないと、国民はわかり にくいという気がするのです。過去の医療法で先行的に、特定機能病院、地域 医療支援病院というものができてまいりましたが、今度また拠点病院というの ができてきて、それも承認を受けています。ですから、そういう相互関係をも うちょっと整理する必要があるのではないでしょうか。後発の拠点病院と、前 からあった特定機能病院というのは、どういう機能なのかという辺りは、もう 少し整理が要ります。  ただ私も、もし特定機能病院というものが存続するならば、ご意見にもあり ましたように、総合機能というものが要るだろうと思います。特化された小規 模のものをもって承認されていくのではなく、非常に複雑に錯綜していく疾患 のかかわり方について、総合的機能というものがやはり要るのではないかと思 っております。 ○座長 いろいろな名称や承認要件が排他的であったり、重なって指定される ことがあったりして、ますます分からなくなるのではないかということですね。 使う立場からすると、和田委員、是非調べてください。提供する側でないご発 言もあったら是非していただければと思います。 ○山崎委員 私の意見は、特定機能病院をやるにしても、地域医療支援病院を やるにしてもそうですが、急性期の治療が済んで、そこを退院した患者の動態 がどういうように動いているかというのを知りたいのです。というのは治療が 済んでも、そのまま特定機能病院の外来に行っているのか、あるいは地域医療 支援病院の外来にかかってしまっているのかということです。当然紹介があっ て中核病院、あるいは開業医の診療所の先生方のほうにその患者が戻っている というのが、本来の形だと思うのですが、地域医療支援病院や特定機能病院の 外来に残ると、どんどん、どんどんそこの外来だけが膨れてしまって、本来の 病院の診療機能ができなくなってしまいます。患者の動態についての調査とい うのは、したことがあるのかというのが1点です。  もう1つは全然違う話で、先ほどの大学病院の診療と教育の部分についてで す。今日、折角医学教育課長が来ているので、現在の大学病院のスタッフの数 で、十分な教育体制を持っているのか、ご発言がほしいと思います。 ○企画官 1点目については、どういったものがあるのか調べてみたいと思い ます。 ○三浦医学教育課長 大学病院については、いままでもご指摘がありましたよ うに、診療と教育研究という総合的な体制を取って業務に当たっています。当 然のことながら、従前から卒前教育の場でもあり、また卒後の臨床研修、さら には後期研修、いわゆる専門医の研修も受けてきました。その中で例えば関連 病院との連携を図り、必要な症例の確保などを行ってきました。したがって多 くの大学が大学附属病院1つで、すべての機能を果たしているというよりも、 もうすでにご指摘があるように、地域との連携、とりわけ関連病院との連携と いう形で進めてきたわけです。  さらに先ほど来ご指摘があるように、新しい医療制度改革の中で、それを地 域に根ざした形で発展させていくようにというのが、ご指摘だろうと思います。 大学にいま求められているのは、まさに地域に密着した教育、あるいは地域へ の貢献ということがいわれております。そういう点でも大学病院が地域との連 携を深めながら医療を提供していくということは、研究、研修、教育について も同じだと考えています。 ○山崎委員 非常に官僚的な名答弁ですが、いま地域で混乱していることは、 後期研修で大学病院に残るドクターが非常に少なくなってしまって、大学病院 の診療機能が低下してしまっているために、大学病院が地域の関連病院から派 遣しているドクターを、どんどん、どんどん引き上げてしまっているというこ とです。そういう現状があって、いま話したような大学病院と地域の中核病院 との連携が取れると考えているのですか。 ○三浦医学教育課長 地域の中核病院というご指摘でしたが、地域の中核病院 という所は、逆にいうと今回の臨床研修で、相当研修を受け入れている場だと 思います。そういう点でいうと、スタッフがいて、かつ研修を受け入れるとい う体制を取っているわけで、地域の中核病院からどんどん、医師を大学病院に 引き戻すようなことが行われているということでは、必ずしもないのではない かという認識を持っております。 ○座長 病院の求められる機能、必要な要件、認定された結果についてもう少 し。 ○内田委員 1頁に戻って承認要件を見ますと、これはまさに大学病院のこれ までの役割というものを、追認するような承認要件なのです。ですから今後の 医療提供体制というものを考えるときに、同じように大学に教育、研修、臨床 というこの3つの柱を、続けて役割として果たしていただくのか、あるいはい けるのかというところが、先ほどからの承認案件の中で問題になっていると思 うのです。高度先進医療だけに限れば、まさに臨床と研修と教育とが絡んでい るのですが、いちばん大きなものは、やはり臨床と研修というところで、それ がきちんと提供できるかというのが問われると思うのです。  ですから、単にこれまでの大学のあり方を追認するような承認要件でいいの かどうかというのは、非常に大きな問題だと思います。これを分化させて、果 たしてそれが今後の医療提供体制の中で、分化させた役割をそれぞれ担うよう なものが新たに構築されなければいけないのか、それとも今の体制の中で大学 がこの3つを提供して、さらに発展させていくような体制が必要なのかどうか、 という議論になってくるのではないでしょうか。 ○鈴木委員 どうも今の皆さんのお話を伺っていると、診療報酬で大学にどう いう優遇をするかというのが端的な目的で、その理由づけみたいな感じがして まいりました。それにはこれからの後期研修で、大学が果たす役割といいまし ょうか、後期研修で大学のほうに戻らずに、指定病院に残って日本の医療が成 り立てば、それはそれでいいと思います。そういう状況が日本の医療の進歩と いいましょうか、新医療という展開に非常に問題が出てくれば、また一つ問題 とはなると思いますが、現時点で従来の特定機能病院をどう優遇するかという のは、結論が出ないのではないでしょうか。 ○座長 そんなに急ぐ結論というよりは、いろいろな意見を伺って。 ○鈴木委員 私の理解では、卒前教育は文科省、卒後教育は厚労省みたいなこ とになっていますが、実は教育費など厚労省にはないですから、それは保険料 で出しているわけでしょう。ですから、そこのところをいかに改めてアプルー ブするのか、あるいは積むかという話に聞こえるのです。 ○座長 保険局マターになってまいりました。 ○永井参考人 私は大学病院という存在は、常に必要だと思っています。いろ いろな問題があるとしたら、ある意味でサポートが少ないから問題を起こして いるという視点も、非常に重要ではないかと思うのです。少ない人で予算の中 でやっていくと、いろいろな問題が起こり得ます。そういうところは逆にきち んとサポートして、診療、教育、研究をやっていくというスタンスは、私たち としても守っていきたいと思っています。 ○和田委員 複数の委員からご意見が出ていますが、医療を受ける側としては、 「大学病院」という言葉は「大学病院志向」といわれるように、かなり多くの 国民に浸透していると思います。しかし「特定機能病院」という言葉を知って いる方は、やはりまだかなり少ないのではないかと思います。先ほど内田委員 も言われていたように、医療事故の問題で特定機能病院の認定が取り消された というような記事を読んで、特定機能病院というものもあったのかというぐら いには知っているのですが、大学病院と何が違うのかということを知っている 人は、ほとんどいないと思います。先ほどから意見が出ていますが、違いがな いのだったら、そういう名称は複数必要ないのではないか、かえって混乱を招 くのではないかと思います。  あと、どちらかというと大学病院志向というのが否定されているというか、 高度な医療の必要がない人も、そこに行っているという現状があります。しか し医療を受ける側からすると、自分の病気が高度な医療を受けるべきものなの か、そうでないのかということは分からないと思います。ここに書かれている ように、「高度な医療を提供する施設」といわれたら、誰しもそこに行きたく なるのは当然だと思います。やはり役割が明確になっていないのです。どこに 行けば自分に適切なレベルの医療が受けられるのかが分かるような基準が必 要です。  例えばがんに関しては、がんセンターに行けばいいのか、大学病院に行けば いいのか、マスコミが出しているいろいろなランキング本の症例件数の多い所 に行けばいいのか、がん診療拠点病院に行けばいいのか、どういうように選ん だらいいのか分からないということがあります。ですから、がんだったらここ ならある程度のクオリティーの治療を受けることができるというような、分か りやすい役割というか、名称というか、そういうものをつくることが必要では ないかと思います。 ○座長 名称についても考えよということですね。それぞれの方から、大変い いご議論をいただきました。もう少し続けたいのですが、もう1つのテーマに ついてもご意見をいただかなくてはなりません。どうしてもご発言なさりたけ れば、後刻戻っていただいても結構ですが、差し当たり次の専門医について、 配られた資料に対するご質問でも結構ですし、専門医のあり方に関するご意見 でも結構です。お願いいたします。 ○山崎委員 この資料に、専門医の数が入っていないのです。例えば本年度の 10月末現在でもいいのですが、各学会の専門医の数がどれぐらいいるかとい う一覧表を。 ○企画官 資料4をご覧いただくと、各学会での会員数と専門医数の割合の一 覧表をお付けしております。 ○山崎委員 わかりました。 ○内田委員 専門医については、この前の検討会で検討された内容で、かなり よくまとめられていると思うのです。課題抽出という点では、非常によくまと まっていると思います。今後の1つの課題は、先ほどの医療連携体制の中でも 話が出ましたし、それぞれの機能分化というところでも出ているように、プラ イマリケア、あるいはかかりつけ医というところを、どういうように専門分化 していくかです。それが医療を受ける際のとば口と言いますか、最初になると いうところに、非常に大きな意味があります。そこでの認定医、あるいは専門 医の検討というのが、必要になってくるのではないかと思っています。  日本医師会では学術推進会議というのがあり、高久先生が座長を務めていら っしゃって、これまでも何回かやってきています。今回の検討事項の中では、 かかりつけ医の認定医あるいは専門医制度をどうするかということを検討し ていただくということで、その制度の是非も含めて、検討を進めることになっ ています。医療提供体制を考える上で、これからの病院の外来機能というのは、 この会議の中でも再三出ています。そこのところをどう機能分化していくかと いうのが、非常に大きな課題になってくると思っています。 ○座長 大変大切な点だと、私も感じます。 ○山崎委員 専門医の検討ばかりしていると、一方で一般医というのがどんど ん少なくなってしまいます。最近の若い先生を見ていると、みんな自分は何々 の専門医だというような志向なのです。実際にその地域の患者が求めているの は、まずは風邪や、腹痛が診られる先生です。うちの病院に来ている若い先生 も、私は消化器の専門だから風邪はわかりませんとか、血圧の患者は勘弁して くれというように、どんどん専門化していくのです。  専門医をつくることも大事なのかもしれませんが、あまり専門医に特化する ことが、地域の医療連携体制を考えた場合、本当に必要なのかどうか。極端な 例ですと、どんどん専門屋おタクみたいになってしまう。今年も茨城県で、学 会が認定した専門医がとんでもない手術をして、患者が亡くなってしまったと いうケースがあるわけです。ああいうドクターを学会として認定したときに、 学会としてどういう責任が取れるかということも含めて、専門医の数の問題も そうですし、資格の問題や資質の問題も含めて、もうちょっときちんと限定し たほうがいいと思います。 ○座長 あまりご意見がないようでしたら、前の話題に戻っていただいても結 構です。 ○武藤委員 かかりつけ医の問題ですが、これも地域医療計画の例の疾患別、 事業別の医療連携体制の中で、かかりつけ医の先生方もどういう役割を担うか というのを考えなければいけないと思います。かかりつけ医の中でもある程度、 疾患別あるいは事業別の得意種目を掲げていただいたほうが、一般の国民も 我々病院にいる者もわかりやすいという考えでおります。もちろんプライマリ ケア全般を診るのですが、やはりある部分、例えば糖尿病を診ていただくとか、 これからは前立腺がんが増えますから、いままで前立腺がんを診ていなかった ような内科の先生も、前立腺がんのフォローをするとか、病診連携の中でがん のフォローをするとか、ある程度の疾患特性といいますか、そうしたサブスペ シャリティーを明確にしたようなあり方が必要ではないかと考えています。 ○座長 ここでも特定機能病院と同じように、専門医に期待される機能とは何 かという定義を、ちゃんとしなければいけないということですね。 ○武藤委員 かかりつけ医も1つの専門性の高い領域ですから、いま言ったよ うな形でプライマリケアの研修など、そうした意味での専門の認定が必要だと いう意味です。 ○座長 プライマリケアと違う専門性を持つという意味での専門と、同じ分野 の中で、能力が高い人を「専門」という縦の関係とが、議論でごっちゃになっ ている可能性はありますよね。これは座長よりも、一委員としての発言ですが、 アメリカの資料をご覧になると、アメリカの専門医は、上下関係の専門医では なくて、プライマリケア医以外の専門医の意味になります。ですから私たちは 分野別の話と、上下に分けて2階にいる人だけを「専門医」と呼ぶ話が、ごっ ちゃにならないようにしながら進めなければいけないと、いまのご発言を伺っ ていても感じます。どうぞ、ご意見をお願いします。 ○島崎委員 これは本来は資料説明の中で触れられて然るべきことだと私は 思いますが、いわゆる「認定機構」が、専門医の認定基準に関し、クオリティ ーアシュアランスというか質の担保を図るために、いろいろ議論しております よね。また、その流れとは少し違うのかもしれませんが、先ほど内田委員から、 いわゆるプライマリケアについても、議論の対象になっているというご紹介が ありました。  そもそも専門医について何が問題なのかというと、和田委員も山崎委員も指 摘されたように、「専門医」と名乗っていれば、専門性が非常に高くて信頼が おけるというように国民や患者は思っていたのに、実際に手術をやってみたら 初歩的なとんでもないミスをしている事例があった。しかも専門医の認定を受 けていたとなると、一体何をみて認定していたのだという不信が生まれている ということがある。  元々をたどってみると、専門医であることが広告できることになったが、専 門医の認定の基準が非常に甘い学会もあれば非常に厳格な学会もあってバラ バラなのです。そういう中で、本当に質の確保をどうしていけばいいかという ことが問われているわけですが、それぞれの学会の独自性があるから互いに調 整をすることはなかなかできないできた。そこのところを横断的に議論してみ ようというのが、「認定機構」の始まりだったと思うのですが、そこは今どう いう議論の状況になっているのか、おわかりになっている人からご説明いただ ければと思います。 ○内田委員 実は前期といいますか、今年3月までの期で、学術推進会議とい う日本医師会が立ち上げている委員会の中で、高久先生を座長にして、医師会 と日本医学会と各学会の代表からヒアリングをするという形で、専門医の認定 制度についてどういう方向性でいったらいいのかという検討をして、一応答申 もまとめております。現在の学会ごとのばら付きや専門医のレベルについても、 非常にさまざまですので、その辺についての整合性を付けていこうということ と、国民からわかりやすい、信頼される制度にしていかなくてはいけないとい うことで検討しており、その答申も一応出ております。ですから、それに基づ いて今後1年ぐらいの間に、はっきりしたシステムをつくり上げるという話に なっていると思います。 ○座長 その答申書は公表されているものですね。 ○内田委員 もちろん公表されています。 ○座長 それは別にこの委員会で配ることも可能ですか。 ○内田委員 では資料として、厚労省のほうにお出ししておきます。 ○座長 折角報告書があるなら、私たちの共通の討議の基盤としたいと思いま す。 ○新井参考人 私も、認定機構に少し関与しています。高久先生が座長でいら して、この3月に医師会が出された答申書に関して現認定機構の執行部は、医 師会1団体からの答申ということで、それ自体が認定機構の今後の方針を左右 するものではないという方式の見解を、いまの代表理事の藤原先生がお示しに なったというように認識しております。 ○内田委員 1つのたたき台としての提案だということで、認識していただけ ればと思います。医師会としてはそういう方向性で取り組んでいくということ で、答申を出したということです。 ○山崎委員 精神科の場合、精神保健福祉法で精神科の指定医制度というのが、 国家資格であります。そのほかに精神神経学会が最近つくった認定制度では、 当然その学会の認定ですから、学会員でないと専門医にはなれないとしていま す。学会員は応募するときにお金を取られ、受験料を取られ、認定証を発行す るお金を取られ、更新料を取られというように、お茶やお華の集金制度みたい な話なのです。学会はお金が非常に潤沢になるのでいいでしょうけれど、果た してそれが「専門医」といって、情報開示で公表できるような制度なのかどう か。少なくとも医師であって、医師会に入会しているぐらいが専門医の受験資 格だったらいいのですが、すべて学会に入っていないと専門医になれない、専 門医を標榜できないという制度はおかしいと思います。 ○藤川委員 もともと広告可能な基準ですから、専門医というのは医療提供側 にとって、大いなる意味があるのでしょうけれど、専門医を標榜されることに よって、いちばん享受するのは患者側だと思います。この専門医の基準にほと んど患者側の視点が入っていないというのは、大きな問題ではないでしょうか。 やはり現在の学会ごとにバラバラな基準を見直していく、ある基準に基づいて 決めていくという方向が望ましいと思うのです。その際には患者側の視点とい うものを、大いに取り入れるべきではないでしょうか。  もう1つは、差異はあるのですが、現在学会で決められているのは、かなり 外形標準的な視点での基準になっています。もう少し技術やアウトカムといっ たものを評価し得るような基準をつくっていくのが、望ましいのではないかと 考えています。 ○和田委員 いまのご意見に非常に賛成なのですが、例えば美容院に行くと、 「トップディレクター」とか「アートディレクター」などとランキングがされ ていて、アートディレクターにカットされたら1万5,000円とか、ディレクタ ーだと1万円とか、値段によって違いがあるので、クオリティーに差があると いうことがわかるのです。しかし「指定医」「認定医」「指導医」「専門医」と いわれたときに、どの先生にかかっても基本的に医療は同じ値段なので、どの 先生にかかったらいいのか分からないというのは、本当にそのとおりだと思い ます。学会によって一律にというのは難しいかもしれませんが、これぐらいの 症例をこなしている先生は専門医とか、この先生にかかれば安心だというよう な、もう少しわかりやすい情報提供が必要だろうと思います。 ○座長 利用者の立場からのですね。 ○永井参考人 それは医療の市場原理の話になります。美容院は市場原理で動 いているのでしょうけれども、医療はそうでないところがありますので、その 違いを踏まえてどうするかという問題になるのだろうと思います。 ○座長 しかも美容院は私的資格で、公的資格ではないですから、店の中のラ ンキングなのです。売上げの中の配分で変えることは可能だと思います。私は いつも言うのです。大学の中でゼミに属す際、教授と助教授と講師とで授業料 が違うことはない。つまり、違わないものもあるし、違うものもあり、よその 世界に全部違いがあるわけではないのです。 ○新井参考人 この専門医制度を突き詰めていきますと、先ほどお話が出まし たように、技術認定ということになると思います。技術を担保して、患者にわ かりやすいと。そうなりますと、いま奇しくも出た美容師の話ではないですけ れども、ドクター・フィー的なものを厚労省はどういうようにお考えになるの かということが、一つ出てくると思うのです。米国の専門医の例をお出しにな りましたが、明らかに日本とは医療システムが違うわけですから、やはりその 辺の議論がなされないと、医師に非常に厳しい基準を強いても、それに対して の報酬がなければ。特にいまは外科離れが非常に指摘されていますが、そうい ったことが解消されないのではないかと、私個人としては思います。 ○島崎委員 専門医を認定することによって、少なくともその医師がその領域 のスペシャリティーを持っているのだということはわかる。国民サイドあるい は患者サイドからしてみると、その医師の専門性なり質を担保するという意味 合いなり効果なりがあるのかもしれません。  もう1つは、アメリカの場合は専門医の資格というのが社会的な意味だけで はなく、民間保険の取扱いなどにおいても意味をもってくる。私はアメリカの 専門医の実状を、詳しくは知りませんが、アメリカの専門医というのは、業務 独占までいかないにしても一定の数の縛りがあって、一種の参入の規制という か総量規制的な機能を実際上持っていると考えています。それとの対比でいえ ば、日本の専門医制度というのは、そういう方向を目指していくのかどうかと いうことが議論されなければいけないように思います。  例えば医師の不足ということが言われますが、日本にはどのぐらい医師が必 要かといったときに、本来であればそれぞれの専門医の数を足し上げていくと、 その総和が必要数になるはずなのに、全然そうはならないですよね。つまり専 門医は何のためにつくるのかといったときに、患者にスペシャリティーを説明 するということ以外に、果たしてそういう数の絞り込み機能を持たせていくの かどうかということが、専門医制度を議論する際の重要な論点だと思います。 今日は意見は特に申し上げませんが、そこの議論が必要だということだけ申し 上げておきます。  また、プライマリケア、かかりつけ医、家庭医といった議論が出ましたが、 これをいかに考えるべきかという問題は、それ自体、1回十分に時間をとって 議論すべき価値のある問題です。武藤委員が先ほどおっしゃったことは総合医 という中にも何らかのスペシャリティーを持たせるというご趣旨だったと思 いますが、私は率直に言って、それについては必ずしも賛成ではありません。 プライマリケアの議論をするのであれば、1回きちんと時間を取って、プライ マリケアにおける専門性をどういうように考えるかということも検討すべき だと思います。 ○座長 和田委員の言われたように、専門医とは安心の指標であるというとら え方もあり得るし、実は参入障壁のツールにもなり得るし、診療報酬にも絡む かもしれないということで、さまざまな論点をご提示いただいております。今 日は論点をご提示いただくことで構わないと思います。 ○内田委員 専門医制度と診療報酬を絡めるという点で、先ほど新井参考人か らもご指摘がありましたが、医師会の立場としては医療において格差を付ける ということが、どういう意味を持つかということを考えてみる必要があります。 専門医の中でもアウトカムまで付けるとなると、アウトカム評価によって格付 けが行われるわけです。専門医という格付けだけではなくて、その中身につい ても格付けが進むのです。医療の格差を進めていって、それを国民の皆さんが 容認するかどうかですよね。  等しく保険料を払って、日本全国で同じレベルの医療、できるだけ良質の医 療を提供するというのが、日本のこれまでの医療のあり方であって、我々はそ れを守っていかなくてはいけないと思っているのです。そういう中で医療の技 術に関しては、特許というのが全く認められないのです。先進的な素晴らしい 医療がどこかで開発されたなら、誰もがそれを自分の所の医療に取り入れるこ とができるということが、いまは担保されているのです。医療の格差付けが行 き着くところは、そこまで行き着いてしまうわけです。要するに、医療技術に ついても治療法についても、特許が認められなくてはいけないという議論にな ってくると、非常に危険といいますか、国民にとっては不幸なことになるので はないでしょうか。あるいは非常にいい医療を提供しようと考えている医師に とっても、そういうものに手が出せなくなるという状況になってきます。最終 的にはそこまでつながっていくのだろうという議論になってくるのです。 ○新井参考人 私もいまの内田委員のご意見に全く賛成です。これまで学会が いろいろな形で自助努力で、認定医制度や専門医制度をつくってきたわけです が、これはやはり全国津々浦々、同じレベルの医療を提供するということを目 指して、皆さん頑張ってきたと思うのです。私もドクター・フィーをすぐに日 本で導入するということは、日本の文化に決してそぐわないことは十分承知し ています。ただ一方で専門医に対しての要求が非常に強くなりますと、外科離 れなどにもつながりかねないという危惧があるということを申し上げたかっ ただけです。 ○山崎委員 話は元に戻ってしまいますが、本当に専門医というものが必要な のでしょうか。患者というのは実は非常に賢くて、あの先生にかかればこの病 気はいいよというのを、人伝でみんな知るわけです。診療所の先生方を見てい ると、やはり流行っている先生というのは、別段専門医の肩書きを持っていな くても、1つの疾患について、そこには患者が集中しているのです。そういう ことで考えると、いまはインターネットやほかの情報も非常に進んでおります。 うちに来る患者も、かなりインターネットのホームページを見て受診している という受診行動があるわけです。したがって、専門医というものをどうしても つくってお墨付きをあげないと、患者が困るというような動機づけは、はっき りしないような気がするのです。 ○鈴木委員 患者の目から見て、自分はここが悪いのだからここだろうという ように、受診先を決める手段に専門医制度が使われるのであれば大賛成ですが、 専門医だから、今度は保険診療の値段が違うという根拠にされると、問題が右 と左ほど甚だ違います。やはりその辺の視点をきちんと決めていただきたいと 思います。 ○座長 誰彼は経済学が専門で、誰彼は法学が専門と分けるときのスペシャリ ティーをいっている話と、同じ経済学者の中で専門経済学者とは言わないにし ても、そういう上下の話とは違う、ましてやその料金を払うことは別であると のご指摘ですね。日本では「専門医」というときに、スペシャリティーとレベ ルの話との両方を「専門医」といっているような気がします。 ○鈴木委員 私も医師会の委員ですから、我田引水で聞いていただきたくはな いのですが、いま上で高齢者医療の診療報酬体系の検討会をやっていますね。 高齢者医療は生活を支える医療だという主張を、ある委員がされておりました が、それはどなたも反対がないと思うのです。ところが、そういう医療は大学 では教えてくれません。自分が開業しないとわからないわけです。しかし、そ れこそ本当の専門性に近いものではないかと思います。専門医を決めるという のは、とても難しいと思います。学会が認定したから専門医だというのは、私 は何となく抵抗があるのです。私はもう専門医の必要性もない年になっており ますので、そんなことをいっているのかもしれませんが。 ○島崎委員 私は「専門」とは一体何なのかということと関係すると思います。 やはり医学・医療の進歩、あるいは世界的なスタンダードに追い着け追い越せ ではないけれど、達成すべき1つの目標なりを示すということだと思います。 だからといって総合医あるいは一般医を決して否定しているわけではなく、 「総合」ということ自体、1つの専門性を持った領域だということを認めた上 で申し上げているのです。  私はメディカルドクターではありませんが、例えば脳外科だったら脳外科の こういう領域の専門家とか、泌尿器科の専門医というのは、その領域のクオリ ティーアシュアランスを図り、そのレベルを上げていくという意味で、日本の 医療全体の水準の向上という観点からみて必要なことだろうと思います。日本 の医療の質、アクセス、効率性という3つの医療政策の目標を考えてみたとき にも、医療の質が果たして本当に世界的にみてどういう水準になるのかという ことは重要です。  それに関して学会がどういう役割を果たすのかといえば、一義的にはその領 域の中での専門家が集まって、研究の水準なり技術の水準なりをクリティカル に批判して、学術的に適切な評価を行うことを通じ社会的に貢献をするという 重要な使命を帯びているわけです。私はそのこと自体、否定されるべきどころ か今後ますます重要になってくるのだと思います。ただ、その専門医の認定の 仕組みやその基準が果たしてそれでいいのかというところが、いまの専門医制 度に問われていることなのではないかと思っております。 ○永井参考人 私も全くいまのご意見に賛成です。専門医制度そのものを全部 見直すみたいな、ステップバックしないほうがいいのではないかと思います。 問題があるとしたら、資格認定や更新制の問題であって、やはりゆっくりでも 少しずつ、専門医というものを社会的に認知していかなければいけないのでは ないかと思います。 ○新井参考人 例えば内科の専門医があって、その上に2階建てで消化器内科 の専門医があるとか、外科でしたら外科の中で消化器外科といったような形で、 たぶんそういう方向で話が進んでいくのではないかと思っております。2階建 ての2階の部分に関しては、かなり厳密ないろいろな基準を設けて、例えば更 新にしてもある程度症例数を提示するとか、そういった方向が一つあるのでは ないかと私は思っております。 ○山崎委員 あまり医療を専門医に特化してしまうと、今度はいろいろな問題 が起きます。専門医が診療して事故があった場合と、専門医でないドクターが 診療して事故があった場合にどうなるのか。この前も関西のほうで、18病院 をたらい回しになったというのがありました。うちは専門家がいないから断り ますというように、病院の断る口実にも使われますし、福島のほうでは専門の 先生が取り上げて、1人でやって不幸な事故があると、もうその先生は前科者 になってしまうわけです。そうすると怖がってできなくなって、医療自体がど んどん萎縮していってしまうのです。したがって、いま医療に起こっている現 実を踏まえて、専門医制度というものをもうちょっと慎重に考えてほしいと思 います。 ○武藤委員 先ほどの診療報酬についても、専門医と非専門医を区別してはい けないという議論があったのですが、どの国でもといいますか、大体先進国は 医師の技術量、専門性の有無、患者のリスクの度合、要する時間などで相対的 にスケールを決めてやっているわけです。場合によっては行える診療行為も、 専門医でなければできないクリニカル・プレビレッジみたいな形でやっている 所もありますから、私としてはそれが当たり前ではないかという気がしたので すが、どうでしょうか。 ○内田委員 それは医療提供体制全般を考える上で、検討しなくてはいけない と思います。いまのシステムの中でそういうものを導入していくということが、 将来的にどういうものにつながっていくかということですよね。正当な評価を 受けたいという部分はあると思うのですが、医師会の立場としてはやはり公平 で、平等で、質の高い医療を提供するという意味からいって、専門性に対する 評価をあまり取り入れるということは、そこの線引きをどうするかということ もありますし、少なくともいまの専門医制度の中では、そういうものは時期尚 早であるといえると思います。今後、非常に高度な先進的な部分に対しては、 また別の評価をする必要があるとは思うのですが、私はやはりいい医療をあま ねく提供するという立場です。医療の質をみんなで上げていき、いいものはみ んなが取り入れることができるという点からいうと、専門医資格による診療報 酬の導入というのは、いまの時点で検討すべき課題ではないと思います。 ○座長 今日は別に論争をして、ここで結着をつけるための会ではありません ので、そういう論点もあるとのご意見ですね。それから同じ診療行為で専門医 だと高い形と、専門医しかできないから、その診療行為の点数が普通の点数よ り高いあり方は、また意味が違いますので、そういう観点からものを考えるこ ともしてみてはというように承ります。ほかにいかがですか。 ○古橋委員 「専門医」という3文字について、国民の専門医信仰というのは、 相当高くなっています。特に大都市ですね。先ほど、しかと見る目があって、 名実共に技術の高い医師の技量を見抜く力もあるというお話がありまして、私 もそれはあると思うのですが、大都市では「専門医」という名前で医師の技量 を評価して、安心しようということがあって、先ほど安心の問題が出たのです。 私も病院におりましたときは、主治医のあの方は専門医ですかとか、ここには 何科と何科の専門医がいらっしゃいますかと。  来年の4月から情報を提供するという中で、専門医についても一定の事項と して入ってこようとしております。そういう点でいままでの専門医に対する1 つの反省点があるとするならば、閉鎖的な学会の独自のルールで認定してきた というところにあります。ただ国民の受療行動調査などを見ても、良い悪いは 別として、知りたい情報の中に専門医志向というのが現実に上がってきている のです。私は今後、専門医という制度はあってもよろしいという気がしますし、 医師教育の中での後期研修等でも、その先は専門医教育だということで、大学 などもそこに力点を置いていらっしゃるという事実を見れば、今後は認定審査 というものに、質の担保という点での客観性を持たすことが非常に重要です。 ある意味では論文を登録して認定料を払えば、専門医として認定されてくると いう極端な例があるとするならば、そういうことに対しての認定審査の客観性 をきちんとしていくと。  看護職では今、認定制度を持っておりますが、高久先生を中心にして日本医 師会でやっておられる認定機構などが、客観的な判断を持とうとしておられる、 そこがどういう結論をお出しになるか、看護会としてもとても高い関心があり ます。ある意味でそれを全否定はできないのですが、学会が独自でということ だけでなく、やはり審査の客観性ということを、もう少し医学会全体で検討す ると。国民の専門医信仰は進んできてしまいましたから、そこを是正しながら も、そういう担保を目指すということは非常に重要ではないかと思います。 ○内田委員 実は、その問題で今いちばん困っているのは一次救急の現場です。 小児科の専門医でなければかからない、という若い母親たちが非常に多いので す。確かにそういう要求もわかりますが、一次救急の現場を担っている、例え ば実際に一次救急の休日急患診療所などを運営するに当たっては、小児科専門 医だけではとても賄えないという現状があるわけです。そういう中で小児科の 専門医を希望して受診されるということで、非常に運営に困っている所があり ます。東京都などでは内科の先生に対して、希望する先生には小児科の一次救 急に関する研修会というのを開催して、休日急患診療所の運営に当たっていた だくということをやっております。ですから専門医志向も良し悪しです。先ほ ど和田委員がおっしゃったように、がんだったらがんセンターに行くとか、風 邪をひいても心配だから大学病院に行くとか、そういう形での専門医志向とい うのは、ちょっと待ってくれよということだと思います。  病院の外来診療というのは、病院の医師の約4割の仕事が、外来に割かれて いるという調査もあります。この一般外来の病院の機能というのは、やはり見 直していかなくてはいけません。その仕事を分担するのが、地域のかかりつけ の先生で、そこを窓口にして振り分けるのです。これは専門的な医療が必要で ある、胸のCTを撮ったりといった、その辺までの検査も必要であるというよ うな判断を、地域のかかりつけの先生がやるというのが、これからの医療機能 分化の中で、非常に重要であるという認識です。 ○古橋委員 私も全く同じスタンスです。診療を受けようとする人たちの極度 の専門医信仰ですね。この先生は信頼できるのかどうかの唯一の尺度を、専門 医でいらっしゃるかどうかに頼ろうとしているのです。こういう辺りは国民的 に、ある意味での修正をかけることが要るのではないかと思います。「この先 生はそうですか」とか、「誰が専門医ですか」ということを、結構ナースにお 聞きになりますので、そういう専門医信仰、極度の専門医志向というのは、や はりどこかで軌道修正をするという動きこそ、養成や制度の中では要るのでは ないでしょうか。もう1つ、専門医を認定するならば、きちんとした客観性を 持つことです。この両方の意見があります。 ○山本委員 今までのお話を伺っていますと、お話の主旨は、病院の中では理 解され、通用するのではないかと思います。ところが、院外処方せんを受ける 薬剤師の立場からしますと、どなたが専門医なのか簡単には分かりません。総 合診療科というのは一体何をするのだろう、きっといろいろなことを知ってい らっしゃるのかなとか、片方では狭い範囲なのかなということを考えながら、 院外処方せんを受けるわけです。専門医の先生方がいることは、私も決してお かしくはないと思いますし、スペシャリティーがいることについても、いまの ご意見は全く賛成です。ただ、いざ病院の外に出たときのことを考えると、も し、患者が大変なスペシャリストを期待して病院にかかられて、そこで処方せ んを書いてもらって、それを保険薬局で調剤するときに、一体この薬剤師はど んな人なのだろうというように思われてしまうと、大変困ったことが起きるの ではないでしょうか。  地域連携の話もありましたが、そういった意味でいえば、十分に専門性を理 解しながら、内田委員がおっしゃったように、地域のかかりつけの先生が、そ れをどうケアしながらフォローアップするか、あるいは退院調整機能というも のも踏まえて、地域の中での専門性を持ちながら、かつ必要な医療を提供する かです。このような全体の体制の中でいきますと、これからはどういうものに 専門性があって、何をどうすればいいかということを、もう少し明確に示して いかないといけないのではないでしょうか。そういう論点も少しどこかに残し ていただかないと、実際に患者が困ってしまうことが起きるのではないかと、 そんな感じがいたしました。 ○座長 第1ラウンドとしては、大変参考になるご意見が出ました。専門医の 話、患者側の教育や理解の話、制度上どうするか、制度とは学会側の話ではな くて、医政局が担当する制度上の問題としてのこと等ですが、いずれにせよ多 岐にわたりました。今日は結論を求める会議ではありませんので、それぞれの ご意見を基に、さらに検討を進めてまいりたいと存じます。また今日資料の提 出の求めのあったもののうち、可能なものについては是非準備をお願いいたし ます。  会の進め方については、先ほど島崎委員から一つご提案がありましたので、 それらを踏まえて、今後の進め方について最後に説明をお願いします。 ○企画官 次回の日程ですが、委員の先生方と調整させていただいて、12月 27日の15時から17時までのお時間をいただいているかと思います。押し迫 った時期で大変恐縮ですが、何とぞよろしくお願い申し上げたいと思います。 開催場所等については、決定次第、追ってご連絡をさせていただきたいと思い ます。 ○座長 本当に暮れも押し迫って恐縮ですが、ご出席くださいませ。本日は貴 重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。これにて閉会いたし ます。 照会先 医政局総務課 小野田 柳田 連絡先:03−5253−1111(内線2519)