06/11/20 労災医療専門家会議(アフターケアの基本的考え方に関する検討部会) 第3回議事録 第3回 アフターケアの基本的考え方に関する検討部会 日時 平成18年11月20日(月) 14:00〜         場所 中央合同庁舎第5号館労働基準局第1会議室 ○笹川係長 ただいまから、第3回「アフターケアの基本的考え方に関する検討部会」 を開催いたします。なお、本日、保原先生におかれましては、ご都合によりご欠席です。 配付資料の確認をさせていただきます。資料1と資料2、参考資料1と参考資料2です。 それでは、柳澤座長、進行をお願いいたします。 ○柳澤座長 本日は、前2回の検討結果を踏まえ、取りまとめのご審議をいただきます。 取りまとめに先立ち、前回までの検討内容に関して、確認等の必要のある事項があると いうことですので、それを事務局から説明していただきます。 ○長嶋医療監察官 前回の検討内容で、ご確認いただきたい事項が2つあります。1つ 目は、「アフターケアと社会復帰の促進との関連をいかに整理するか」についてです。 まず、「対象傷病の定義」について、前回の検討をまとめますと、「医学的に法の趣旨 に合致する対象者が出てくることを否定できないので、法の趣旨に沿って認めていくこ とが適当であり、定義の内容を変えることはない。」というもの。  また、「社会復帰の要件」について、前回の検討をまとめますと、「職場復帰に限定 することはないこと。治ゆ後であるから、療養を必要としないこと。日常生活を続けら れること。再発でないから、治ゆ時点の生活機能が維持されていること。必ずしも自立 を条件とするものではないこと。社会生活とか、社会という言葉と結び付けること。」 というものでした。  これらの検討内容から、「アフターケアと社会復帰の促進との関連」を事務局におい て整理したものが参考資料1です。アフターケアの対象傷病については、現行の実施要 領から2つの要件を取り出し、(1)「後遺症状に動揺をきたすおそれがある傷病」又は「後 遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがある傷病」であって、(2)「予防その他の保 健上の措置」を講じることによって、「後遺症状の動揺」又は「後遺障害に付随する疾 病の発症」を予防することができる傷病とする。  また、アフターケアにおける社会復帰については、少なくとも(1)治ゆ後であり、再発 とならないことから、療養を必要としないこと、(2)社会生活を続けること、(3)治ゆ時点 の生活機能が維持されていること、の3つを満たすことができるものとします。よって、 アフターケアは、被災労働者が自立や職場復帰に至らない場合であっても、円滑な社会 復帰を促進するために必要なものということができる、と取りまとめてよろしいでしょ うか。  2つ目は、「アフターケアの実施期間の更新に関する診断書」についてです。「実施 期間の更新に関する診断書」については、前回の検討をまとめますと、「アフターケア を必要とする状態について、現状よりもう少し詳しい診断書を出してもらう。そのため には、診断書の記載内容を充実させる必要がある。理想的なものは、ひな形に○を付け て手軽に書き込みながら、更新の適否を判断できるもの。行政において必要項目を考え て、診断書を作ることがよい。」というものでした。  これを受けて、参考資料2として、診断書の例を作成してみました。診断書の記載内 容としては、アフターケアの「対象傷病名」、「診察実施回数」、「後遺症状の状態」、 「実施期間の更新の必要性」とし、「具体的な後遺症状の状態」及び「実施期間の更新 を必要とする理由」を除き、該当するものを○で囲む形にしております。  診断書の内容については、この場で決定していただくものではありませんが、今後の 作成の参考として、更新の必要性を判断するために必要な項目等について、ご意見をお 願いいたします。 ○柳澤座長 以上の2点ですが、まず社会復帰の促進について、参考資料1の内容はい かがでしょうか。 ○山口先生 法律と多少関係がありますので、少し意見を言わせていただきます。ここ で何回も問題になっておりますように、アフターケアの基になっているのは、労災保険 法第29条第1項第1号にある労働福祉事業の規定であり、文言が「被災労働者の円滑な 社会復帰を促進するために必要な事業」ということになっておりますから、この枠に収 まっていることが必要になるだろうということです。  従来、厚生労働省では、この事業を実施するために、アフターケアの実施要領を作っ ております。これが、参考資料のいちばん上に出ております、平成元年の行政通達であ るわけです。これを、実際に事業を行うために展開をしていかなければいけませんので、 ここに書いてあるような「症状が固定した後においても、後遺症状に動揺をきたしたり、 後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがある場合に、予防その他の保健上の措置 を講じ、被災労働者の労働能力を維持回復し、円滑な社会復帰を促進するために実施す るもの」ということになっています。  これを見ますと、目標が「円滑な社会復帰の促進」ということで、直接の目的は「被 災労働者の労働能力を維持回復する」ということになっています。後のほうとの結び付 きでは、単に「回復」だけではなくて、「維持」という言葉が入っているというのが重 要だと思います。  内容といいますか、手段としては「予防その他の保健上の措置を講じる」ということ になっています。そして、どういう場合にこの措置を講じるかというと、「後遺症状に 動揺をきたしたり、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがある場合」となって います。したがって、アフターケアの対象というのは何かというと、ここに整理されて おりますように、2つの条件といいますか、対象の傷病ということで、「後遺症状に動 揺をきたすおそれがある傷病又は後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがある傷 病」と限定して、予防その他の保健上の措置を講じることによってこれが実現できる、 というのがこの要件だと思います。  社会復帰のためということになると、これは基本にある目標ですが、それとの関係で 療養を必要としないということです。治ゆ後であって、再発ではないということです。 それから、社会生活を続けているということと、治ゆ時点の生活機能が維持されている ということが社会復帰として考えられている内容だと思います。  したがって、この結果として、実施要領で言われているのをもう少しパラフレーズし た格好になりますけれども、被災労働者が自立や職場復帰に直接は至らない場合であっ ても、社会復帰の促進のためというのに含んで事業を展開してもいいということになる のではないかと思います。したがって、私はこの整理で非常にいいのではないかと思い ます。 ○柳澤座長 山口先生の話にありましたように、現行法の趣旨に則った形での整理とし てはこれでよろしいだろうということでよろしければ次に行きます。次は、問題の診断 書です。診断書の方式を、21傷病一つひとつについて細かい診断書を作るか、それとも 全体としてまとめた診断書として、ここに示されるような例の診断書を基本として、も し必要ならばそれに付属して何かコメントを書いてもらおうということだろうと思いま す。  要は、このような形式の診断書で、アフターケアの更新を必要とするかどうかという ことを判断できるかどうかという問題になるだろうと思います。実際に現場でその仕事 をされている立場から、馬杉先生はどうですか。 ○馬杉先生 2つの意味で私が提案したのは、更新の時期にきちんとした診断なり、そ ういう意見をもらうことがいいというのが最初の発案です。  ただ、今度は逆に労働者がこれを書いてもらう立場に立ちますと、医者もいままでは 簡単に済んでいたものが、見ると結構煩雑に見える。内容を読むと○を付ければいいわ けですけれども、煩雑になると労働者が出しにくくなる、という懸念は多少あるかもし れません。ただ、いつまでもズルズルとやっているのではなくて、きちんとした対応を するには、このような内容の診断書はあるべきだと思います。  ただ、いま柳澤座長がおっしゃったような意味ですと、これに○を付けてもらって、 判断をする監督署長が、これだから更新の必要性があるというのはなかなか難しいとこ ろがあると思います。医学的に言えば、1が「対象傷病名」で、3に「後遺症状の状態」 というところがあって、大体皆様方こういう線のあるところは面倒くさくてなかなか書 きづらいのです。本来は、何らかの形でここにきちんと書いていただければ、判断する のは非常に楽になると思うのです。  あとは全部○で、最後の「実施期間の更新を必要とする理由」のところが適正に引用 されれば、これは判断するほうは十分ではないかと思います。私が、これを現場でもら うと、結構面倒くさいなと思うかもしれないというのが懸念の材料です。 ○柳澤座長 下線のあるところに、具体的に診断医に書いてもらうということなのです が、問題は、大変だからといって、ここを書かないで○だけ付けたものが出てきたとき に事務的にどうするか。やはり、もう少し内容を書いてください、というふうにして差 し戻しするかということですけれども、いままでの議論の経過からいくと、漫然と繰り 返してアフターケアを更新する、ということはしないという立場からいくと、ある程度 詳しい情報をきちんと書いていただくことは当然ではないかと思うのです。  こういう形の診断書を書いていただくときには、できるだけ具体的に後遺症の状態、 あるいは更新を必要とする理由についてはきちんと書いてください、ということを一緒 に付けて指導してあげることが必要かと思います。そのようにしていただければよろし いでしょうか。  各傷病ごとということになると、今度は書く側の大変さということもありますが、診 断書を作る側の大変さということがかなり出てくるだろうと思います。おそらく、個々 の傷病ごとに、アフターケアを必要とする状況というのは、アフターケアということで すから急性期の病気のことについて書いても、それで十分な情報が得られるわけではな いものですから、逆に個別の傷病を問題にして作ろうとすると、非常に難しい問題がま た出てくる点があります。  したがって、アフターケアの趣旨に従った形で、後遺症の状態がどうかということと、 更新を必要とする状態がどうかということと、主治医が文章として書いていただくとい うことが、プラクティカルにはいちばんいいのではないかと思います。 ○馬杉先生 いちばん下の「実施期間の更新の必要性」の「(2)必要とする期間」の ところで、「1年、2年、3年、その他」と書いてあります。これでちょっと解せない のは、アフターケアの更新の期間というのは各傷病で決まっています。  実例を出しますと、外傷性てんかんなどというのは10年でも20年でも、その他のと ころに10年と書かれたときにはどう判断するのか。医師が、勝手にここのところに何年 というのを書いてもいいものでしょうか、ということが疑問なのです。事務局はどう考 えているのですか。 ○長嶋医療監察官 10年という年数を想定して作ったものではないのですが、ただ、健 康管理手帳の更新の期間というのは、アフターケアのそれぞれの傷病の実施期間ですか ら、これは現行2年なら2年、3年なら3年となりますが、その都度、確認するように なっていくことになります。ここに10年と書かれたからといって、それで10年みまし ょうというものではないということです。 ○馬杉先生 決まっているのだったら、ここは書く必要がないのではないですか。 ○長嶋医療監察官 実施期間の更新の必要性のところでは、現行の実施期間が3年とな っているものであっても、実際の今後の見込みとして、1年ぐらいのアフターケアがあ れば十分ですよ、というような場合については1年としていただきます。2年で足りる ものであれば2年。丸々3年必要であれば3年としていただきたい、という意図で選択 肢を作っております。 ○馬杉先生 意味ないと思うのです。これを書く立場に立ちますと、私は大体2年ごと で更新しているのが多いけれども、例えば3回目ぐらいになったとします。そうすると、 6年みてきたものを、あと1年でという判断はなかなか難しいです。そうなれば、自動 的に更新の期間の2年に○を付ける人が圧倒的に多いだろうし、それだったらあまり意 味がない。  先ほど私が言ったように、理屈を言えば外傷性てんかんというのは治ゆしないもので すから、アフターケアの期間を決めるなどというのはおかしなものだから10年と書いて も医学的にはおかしくないと思います。それを署長がどう判断するかです。 ○長嶋医療監察官 いまでも実施期間の定めのないものはありますので、それはそれで そのような取扱い、そのような判断になると思います。ただし、現行3年というものの 中には、健康管理手帳の更新をした場合に、次に3年の期間は必要でないというものが あるとすれば、それは実際に2年であれば2年に、1年であれば1年に○を付けていた だきたいという趣旨です。 ○柳澤座長 この内容では、「必要とする期間」という表現が少し曖昧かもしれないで す。例えば「実施期間の更新」というような表現からいいますと、2番を「実施期間」 としたらどうなりますか。そして「その他」をやめてしまう。更新をして、その更新さ れたものが有効である期間を、医学的な判断から選んでください。それは1年ですか、 2年ですか、3年ですかという意味なのだろうと思います。法律的に、従来のそういう 規則などと兼ね合わせるとですね。 ○馬杉先生 現実的には、3年以上、4年、5年などという取り決めはないですね。 ○柳澤座長 ないです。 ○馬杉先生 「その他」というのがよくわからないのです。 ○長嶋医療監察官 現行で期間のあるものは3年が長いものですけれども、健康管理手 帳の更新は1回分になります。それが、例えば6年と書かれれば、それを出した時点で は2回分の更新が必要となるのかと。 ○柳澤座長 なるほど、そういう意味ですか。 ○馬杉先生 そういう意味ですか。 ○長嶋医療監察官 その時点だけではなくて、もう1回先の更新の状況をみるために。 ○柳澤座長 それは、法律的にはどうですかね。 ○山口先生 それはおかしいです。野球の日程が決まっていないのに、1年分の切符を 買い占めるようなのはおかしいです。それは、3年のときにもう一度更新をするという ことです。 ○馬杉先生 それは、そうとは思わなかったです。 ○長嶋医療監察官 再度更新するときには、そのときの状況をまた確認するのですが、 その前の更新のときに、例えば、あと2年ぐらいのアフターケアで十分ですといった場 合に、さらにまた3年という診断をいただいたときには、それで主治医の先生にお話を 聞くとか、次の更新の確認資料として使えるのではないかと。 ○柳澤座長 それはどうでしょうか。 ○山口先生 それは、実際上不可能ではないですか。 ○柳澤座長 アフターケアが必要である、というふうに医師が判断します。その期間に ついて、その時点では、あと2年ぐらいでもう一遍見直しをするのが適当であろうと判 断して、2年経ったときにその状態で、医師は、いまの状態だったら3年必要かもしれ ないと判断するかもしれない。  でも、最初に遡って5年必要だと書いてあることが、2年経ったときに判断すること と整合性があるかないか、ということはほとんど意味がないわけです。2年経ったとき に判断する先生の判断がいちばん大事なのであって、その前に2年経ったら大丈夫だと 思いますよと言ったか言わないかということは、その2年目のときの判断に対して、実 際にはほとんど何の意味も持たない。医師が、被災者の状態を見て診断するときは、そ の時点その時点でどう判断するか、ということがいちばん大事なのです。前のときの予 測というのは、ほとんど意味がないのだと思います。 ○長嶋医療監察官 有効期間いっぱいの3年と書かれているものは、たぶんその期間い っぱいかかっても更新が必要ということだと思うのです。診断を書かれたときに、あと 1年もあれば十分でしょうという先生の判断があったとすれば、前の更新の段階ではア フターケアが1年で十分の状態であったものが、さらに3年必要な状態になったという ことであれば、そこにどのような状況があるのでしょうかと。 ○柳澤座長 なるほど、特別なことがなければ。 ○長嶋医療監察官 今回、実施期間そのものを見直していただいて、基本的にはその間 に収まるところを実施期間の原則としましょうと。ですから、原則3年になっているも のを、今回労災医療専門家会議で見直しいただいて、期間の設定をし直すというのが前 提にあって、その原則とする期間をさらに超えての更新ということなので、丸々3年間 の更新を繰り返すということではなくて、という意味合いで、年数をこのように1年、 2年、3年としてみたのです。 ○馬杉先生 例えば、1年のところに○が付いているとすると、1年経ったあかつきに は、もう一回こういう診断書を提出いただくように意見を求めるということですか。 ○長嶋医療監察官 現状では、そういうところまでは考えておりません。健康管理手帳 の有効期間は3年であれば3年間あるわけです。1年で不要になって手帳を返される方 もいますので、そういう方は返していただければ結構なのです。 ○馬杉先生 別にそんなことは関係ないですよ。私が診ている患者でも、途中で返して しまう人はいくらでもいますよ。 ○長嶋医療監察官 ただ、更新ということに関して、アフターケアが必要な状況を確認 するための項目として、こういう設定をしたということです。 ○柳澤座長 つまり、更新の診断書を補強するようなインフォメーションという意味合 いなのでしょうか。 ○長嶋医療監察官 現状は、例えば、ここで記述になっている部分で、いまの症状がこ ういう症状で、更新の必要性がありますというような診断を書いていただいていると。 それだけでは判断としてわからないということで、それを補うというようなことを事務 局としては考えて、○付けをする項目を設定しました。  その中で、いまの項目については更新としては必要性があるのだけれども、それは原 則を超える期間になるので、丸々の更新までは必要ない状況ですというようなことがあ れば、もし先生が診ていて、この方のアフターケアは丸々3年の期間ではなくて、2年 ぐらいですねということがあれば、そこに○を付けていただければということです。 ○柳澤座長 問題は、医師がこの次の更新の判断は2年後にするのが適切であると判断 し、診断書を出しても制度的には、この病気については3年後に更新することになって いるということがあるわけですよね。しかし、それは診断書を出す側にしてみると非常 に奇異な感じがします。自分たちの書いた診断書は、例えば、2年間アフターケアが必 要であるとして、2年間という診断書を書いたら、その診断書というのは2年間しか有 効ではない、というのが普通我々が病気について診断書を書くときの法律的な根拠なの です。それにもかかわらず、別の法律であるということになると、それこそ馬杉先生が 言うように、そんなものは○など付けても意味がないではないかという議論が出てくる だろうと思います。 ○山口先生 私が理解しているのでは、診断書でアフターケアが2年間必要であると医 師が判断すると、アフターケアは2年間になるのでしょう。そこで更新するかどうかと いう問題を判断すると。 ○柳澤座長 それならいいのですけれども、いまの事務局の話はそうではないのです。 ○山口先生 傷病ごとに3年と決まっているから、それは上限というか最大限というの ではなくて、みんな3年になってしまうでしょう。 ○長嶋医療監察官 交付した健康管理手帳の有効期間が3年と決まっているものについ ては3年になります。ただ、使われないというようなこともありますので、それは。 ○山口先生 使われないは別なのです。そこがおかしいのです。実要のないのに、上限 というか、医師判断は、アフターケア2年ということになっていたら、仮に3年までは できるというのは上限でないと意味がない。いま伺っていると、医師の診断とは関係な く3年間アフターケアをやることになっているわけでしょう。 ○長嶋医療監察官 仕組み的には3年間実施できる状況になっています。 ○山口先生 そこがおかしいのではないですか。アフターケアが必要だと判断された時 点で、この更新が必要かどうかという判断をしないと、実態は伴わないです。そう思い ますけれども、それは素人が外から見た判断です。 ○長嶋医療監察官 いまのお話ですと、原則の期間は、例えば3年なら3年に定めると。 更新のときに2年の診断をいただいて、次に必要な期間が2年ということであれば、そ の方のアフターケアの実施期間は3年ではなくて2年でアフターケアを認めると。 ○山口先生 なぜそういうややこしいことをしなければいけないのか。医師が書かれた 診断書を基にして、それが1年とか2年となったら、その時点で、さらに更新が必要か どうかという判断をなぜしないのかということです。 ○柳澤座長 つまり、この2回の議論の中で言われてきたことは、傷病によって、その アフターケアの期間が自動的に決まるわけではない。それは一人ひとりの状況によって 決まるのだということが原則としてあるために、更新ということが必要である場合には 更新をしましょうということだったわけです。  その更新というのは、極端に言うと、一人ひとりある時点を取ってみたときに、アフ ターケアが必要な期間という見通しが、それこそ極端に言うと、5年とか10年の人もあ るかもしれないけれどもそれは別として、一応1年でアフターケアが必要となるかもし れないし、2年必要なこともあり得る。でも、この人の場合はどうしても3年間は必要 だろうとこの時点で認めたら、その診断書の時点で再認定の手続をするということかと 考えるのです。片方で、病気ごとに法律で決まっているのだったら、いままでの議論は ちょっと難しいですね。 ○奥平先生 従来、アフターケアの年限が2年とか3年ある場合には、2年あるいは3 年を限度とする、というような精神ではないのですか。 ○長嶋医療監察官 実施期間については、それぞれ傷病ごとの実施要綱において、2年 なり3年なりが定められています。それに対応するような形でアフターケアを受けるた めの健康管理手帳を交付する。手帳の有効期限として、2年あるいは3年というものが 定められています。傷病そのものと基本的には対応する形になっているのですけれども、 手帳そのものの有効期間が2年、3年と決まっていて、一度交付したものに対して、そ れを返すというような取扱いはしていない。その結果、手帳を一度更新してもらった場 合については、2年、3年なりのアフターケアを受ける状況があるということです。  今回のご検討について、もともとの実施期間については、原則として必要な期間とし て検討し直すべきだというご意見はいただいていたのですけれども、更新の期間につい て、原則として定めた期間より短い期間というところまでの話ではなかったと理解して おります。ですから、更新の期間について、実際に更新が必要な期間を把握するという 意味合いから、個々の必要とする期間を記載させていただいているということです。 ○柳澤座長 わかりました。わかりましたというのは、そういうことであるならば、必 要とする期間の項目は削ってしまうということと、それから、必要とする診察というの は、何か月ごとに行うかということで、トータル実施期間で何回行うかということを記 入することはおそらく意味がないだろうということです。  つまり、2年又は3年で更新しているわけです。それは、原則としてそのシステムは 守るということであるならば、更新のときに医師に求められる診断は、この患者はアフ ターケアをここの時点で終了することは不適切だから更新しましょうということだけで あって、その期間というのは別に定められているのだから、その医師が判断する必要は ないということになるのではないかと思います。もし、その医師がアフターケアの期間 として、これだけの期間必要ですと判断させるならば、その診断書に従って更新してい かなければいけない、という理屈が片方では成り立ちます。  もし、今回の診断書を作って、それから全体の部会で議論していただくときに、いま ある21傷病についてのアフターケアの期間の見直しということが含まれないというこ とであるならば、自動的に更新が必要かどうかということだけで、期間は別に定めると いうことになってしまうのかと思うのですがどうでしょうか。 ○山口先生 そうなりますね。 ○柳澤座長 そうすると、この項目は要らないと、更新は必要だと。いまの時点で終了 することは不適切だということになります。 ○長嶋医療監察官 更新の必要性については、その有無と、その理由を聞けば足りると いう意味ですか。 ○山口先生 期間は決まっているのだから。 ○柳澤座長 傷病によって、期間は決まっている。 ○山口先生 その間に状況が良くなれば、ただ患者が来なくなるというだけの話です。 ○柳澤座長 もし、期間についてこれから先、変えるなり何なり議論するのだったら、 事務局として、例えばこの障害のアフターケアは、結局更新をしても50%以上の人は、 いまは3年間となっていても、2年以内に全部終わってしまうということであるならば、 そういうデータを基にして、3年を2年に縮めましょうということを全体の会議で議論 して、そのようにしていったらという手続がいいだろうと思います。その辺のデータを 集めていただかないと、障害のアフターケアはどのぐらいが適当ですかということを言 ったときに、データを基にして再吟味することはなかなかできないです。 ○長嶋医療監察官 アフターケアの健康管理手帳そのものについては、2年なり3年な りの有効期間がありますから、その期間の終了時において、更新の必要性を検討すると いうのは現状であるし、そのことについて変えるという議論もいただいておりません。  いま、診断書の例として、その診断書をいただくときの項目としては、その実施期間 の更新の必要性については、有無と理由であって、期間、その後の診察の回数などとい うのは制限するような話になってきてしまうというようなことになるので、それは適当 ではないというご意見ということで承ればよろしいでしょうか。 ○柳澤座長 それでよろしいですか。 ○山口先生 私は、聞いても無意味だと思います。 ○奥平先生 こういうのが出てくるのは、診断をした医師が、どのような予後の判断を しているか、という見通しを行政として持ちたいということではないかと思うのです。 ○長嶋医療監察官 はい、そういうことです。 ○柳澤座長 馬杉先生よろしいですか。 ○馬杉先生 先ほどから言っているように、百歩譲って、そちらが提案してきたような ことをやって、この方はあと1年と○を付けた方に関しては、その時点でいかがなもの でしょうかと。先生の前の診断書では1年経った時点でというけれども、そこできちん ともう一回意見を求めるのは、それはそれで何らかの意味があるのかもしれないと思い ます。でも、先ほど聞いたところでは、それはしないというのだったら、何のために付 けるのかわからないです。それとも、何か言うに言われぬメリットがあるのなら、それ を言っていただければ私も納得しないわけではないです。 ○長嶋医療監察官 考えていたところは、奥平先生が言われたように、今後の見通しと いうことをある程度立てるための項目として必要ではないかということです。一度更新 を認めて、その段階では認めたとしても、もう一度更新となる。一度の更新で終わる場 合だけとは限りません。診断書を出していただいても、繰り返される状況になってしま うと、せっかく診断書について検討したにもかかわらず、効果は一緒だということにな らないために、ある程度の見通しを立てるということに役立つのではないかと思ったも のです。 ○柳澤座長 最初にこれを見直して、こういうのを書いたほうがいいのではないかとい うのは、いままで更新に関してあまりにも唯々諾々というか、いま議論しているよりも、 もっと昔の時点だと思うのです。こういう制度というのは、きちんと運用して、初めて きちんとできるものなのであるというのが趣旨ですから、アフターケアの更新のときに、 こういう診断書を出していただくことによって、ドクターたちの認識をもう一回新たに して、きちんと対応しようというところでやれば十分なのであって、いまおっしゃるよ うなことまでやる必要はさらさらないと思います。 ○明治補償課長 実務的に考えても、健康管理手帳の更新の事務量があるわけですけれ ども、そこをいままで有効期間3年ということでやってきた。こういう形でまた診断書 をお出しいただいて、実際は更新したとしても、向こう1年です、2年ですという診断 書が出たとしても、それを管理してやれるかというと、手帳の管理自体が実務的にはな かなか大変だろうというところがあります。  手帳の有効期間というのは、更新したら初回と同じように、例えば3年なら3年有効 ですと。ただ、主治医の判断で、例えば1年半して、症状も相当軽快したし、これ以上 アフターケアを続けてもという判断があって、患者が納得すれば、当然その後はアフタ ーケアの実施をやめられるでしょう。そのときには、手帳に有効期間は残っております けれども、そこで中断されるのではないかという考え方でいいのかという気がします。 ○奥平先生 先ほど、年限が決まっているときに、それを限度とするという発言をいた しましたけれども、限度とするというのではなくて、その年限で大部分の人がアフター ケアの必要はなくなるだろうという年限なのです。だから、むしろこういうものが出て くるのは例外的なので、だから、その例外的な場合に、先ほど馬杉先生はこのような枠 では面倒だとおっしゃいましたけれども、もっと細かく書いていただいてもいいのでは ないかと思うのです。 ○馬杉先生 これは規定の期間というのがあって、原則として延長を認めるということ です。最初に提出してもらった資料を見ると、アフターケアはどこかでちゃんと終了し ていて、また新たにできてくる。そのようなきちんとしたものがあって、原則としてと いうことで、いままではそんなに無茶苦茶に野放図に広がっていないので、きちんとし たところにもう一回見直すということであれば、このぐらいのことはドクターも書いて くれていいかなと思います。先ほど言った、期間のことだけ除けば、わりとよくできて いる診断書だと思っています。 ○山口先生 しかし、なんとなく変な制度ですね。医学上の判断と、行政上の判断と、 判断する時点が違っていて、医師にしてみれば2回判断しなければいけなくなる。 ○馬杉先生 そうですね。 ○長嶋医療監察官 現状は、更新のときに何年間というような聞き方をしておりません ので、更新の必要性があるということであれば、その期間の必要性ということで、主治 医に書いていただいているということです。 ○馬杉先生 最初の会で私が言ったと思うのですけれども、これを何年もやっていると、 いちばん最初は何もなしでアフターケアの更新というのは、監督署長がポンと出してく れれば、ほとんどそのままどんどん出ていました。そこに去年だったか一昨年から、規 定がない診断書を出しなさいということで少し歯止めがかかりました。さらに、どうせ やるならというのでこういうのが出てきた。そういう歴史的なことがありますから、昔 に比べればきちんとしたアフターケア制度が運用できるのではないかと思いますので、 これで期間さえなければよろしいと思います。 ○柳澤座長 たぶん、ほかの福祉関係だと、身体障害者福祉法などでは、例えば1年に 1回とか、ちゃんと更新が決まっているわけです。そうすると、医師は患者が来たとき にその状態を見て、それでどのぐらいの等級かということを付ければ、自動的にそれで 1年間延長されるということで、良くなったらどんどん等級が下がっていってしまう。 あるいは、福祉法の適用外だということでやめてしまうことがあります。病気の種類な どによって、認定の期間を変える制度がないので、医師としてはいまのような議論にな ると、従来のというか、ほかの制度との違いというのは違和感があると思うのです。  馬杉先生がおっしゃったように、必要とする期間と、その回数だけ削って、実際に被 災者の状況がどうであって、アフターケアをさらに必要とするかどうかということにつ いて、きちんと判断できるだけの内容を書いていただくということがあればよろしいで すね。 ○馬杉先生 奥平先生がおっしゃったことは、逆にいいと思うのです。先ほどおっしゃ ったように、ほかの診断書というのはものすごく大変なのです。身体障害者の診断書な どというのは、来た途端に辟易するぐらいです。いままで、あまりに簡単すぎたから、 本来これを判断するには詳しく書いてくれなければいけないのです。それはわかるので すけれども、いままで1行だったものが、一遍にこうなったので、そこまでやってしま うと現場が少し混乱するかと思うので、これぐらいでいいのかと思っています。 ○柳澤座長 次の段階としてもし必要ならばまたやると。 ○奥平先生 いまの、実施期間の更新の必要性のほうの、期間や回数は削除する、とい う方向に行っているかもしれませんけれども、これは2番の診療実施回数のところを、 現在までの診療実施期間として明記していただければ、これは将来の予測のために生き てくる。このままであっても生きると思うのです。判断の資料にはなると思います。 ○明治補償課長 これとは直接関係しないかもしれないのですけれども、これから設定 する実施期間について、2年とか3年とか現行どおりになるかもしれませんが、傷病に よっては、いままで2年のものが3年に延びたり、考え方としてはこの傷病の大体8割、 9割方はその期間内に収まるという大原則というか、基本的な考え方を示した上で、し たがって更新するというのは、原則に反して例外的に出てくるものというような考え方 を主治医に認識していただけるものならば、なぜこういう診断書が更新のときに必要な のかということと、記述内容についてもおよそイメージが湧いてくるのかという気がし ます。 ○柳澤座長 健康管理手帳の問題にまで踏み入ってしまう可能性があるので、これは全 体の会議で議論しなければいけないかもしれませんが、もしアフターケアの基本的な考 え方が、1年、2年、3年とあって、その間に大部分の被災者の方はアフターケアを終 了して、一定の状態でアフターケアを必要としない状態になる、ということが予測され るのであれば、更新というのは例外的な事項になるわけです。  例外的な事項だったら、更新の場合には1年ごとに診断する。例えば、更新は1年ご とに行う、というようなことにしても、決して煩わしいことにはならないわけです。3 年間で終わると予測しているものについて、更新したら、その次は3年でなければいけ ないなどという理由は全く存在しないわけです。最初に3年と決めたのは、アフターケ アの期間が3年あれば十分だろうという推測なのだから、それをさらに更新するときに、 それが3年だったら、次も3年でなければいけないなどという議論は全く成り立たない です。その辺が、更新の場合の問題点としては残るだろうと思います。 ○山口先生 法律家として疑問があるのだけれども、ここには「更新」という言葉しか 出ていなくて、「延長」という言葉が出ていないというのは、延長ということはあり得 ないということですね。 ○長嶋医療監察官 有効期間を満了して、終了してということになります。 ○山口先生 いま柳澤先生がおっしゃったように、3年で一回アフターケアの期間が終 わります。それで、そのままもう一回繰り返すというのが法律の意味での更新なのです。 だから、必要もないのに3年やることになるわけです。 ○柳澤座長 そうか、更新と言ったからにはそうなるんですね。 ○山口先生 延長というのがあれば、1年必要だから、1年だけ認めましょうというこ とが可能になるのだけれども、その言葉が出ていないので、ちょっと変な感じはあった のですが、医学上のそういう扱いかと思っていたのです。 ○長嶋医療監察官 現状は山口先生が言われるように更新ですから、同じ期間というこ とになります。 ○柳澤座長 同じ期間でやるわけですね。なるほどそうか、法律的にいうとそうなる。 ○馬杉先生 法律的には、最初の期間をまた同じようにですか。 ○山口先生 更新だと同じように。 ○馬杉先生 免許証などもそうですね。最初は更新ということで、その次も同じ期間が 自動的に決まって、それを更新といいますね。 ○山口先生 だから、法律の言葉でいうと、「反復更新」と表現します。延ばすのは延 長なのです。 ○馬杉先生 先ほどの1年というのは延長になるわけですね。同じ期間なら更新になっ てしまうわけですね。皆さんの意見を聞いていただければ、もう言うことはありません。 ○柳澤座長 この問題はどういたしましょうか。 ○長嶋医療監察官 ここは診断書例ということで、今後作成する上での参考のご意見を いただければということです。項目として、いまの検討ですと、「必要とする期間」に ついいては不要だろうというところだと思うのです。2の項目は奥平先生が言われるよ うに、現在診察を実施している回数を書いていただくということで設定しております。  これとの対比で、4の(3)の「必要とする診察の期間、回数」についても残してお いて差し支えないということであれば、診断書の項目としてこのような項目を入れ込む ように考えていきたいと思います。 ○柳澤座長 わかりました。これは、確かにそういう点があれば(2)の必要とする期 間を消した場合でもどのくらいごとに診察はしてくださいと。そして、何回ぐらいそれ が必要になると予想されますよ、という意味だったら確かに1つの目安になるかもしれ ないですね。 ○馬杉先生 また、これも実際に診断書をつくって出すまでにはいろいろ猶余もある。 ○長嶋医療監察官 はい、この場で決定するということではありませんので、あくまで も更新の必要性を判断する項目として確認いただけたと思います。 ○明治補償課長 それと、山口先生からお話のあった期間の更新ということなのか、あ るいは更新をした後においては、取扱いとしては1年の延長、2年の延長という形で整 理をするのか。そこは事務量とはあまり関係のない、整理すべきものならばきちんと整 理すべきところかと思いますので、その辺は事務的にさらに詰めさせていただきます。 ○柳澤座長 そうですね。ここは更新というふうに使っているから、延長が認められな いような話ではないと思います。その点はご検討ください。 ○明治補償課長 はい。 ○柳澤座長 この点についてはよろしいでしょうか。基本的には、全体として従来より は少し詳しく状況について主治医に記載していただくということでこのような形の診断 書を提案するということだろうと思います。それでは、本題というか、検討結果の取り まとめということで、どのように整理していったらいいかということですが、事務局か ら説明をしていただいて、それからご議論いただきたいと思います。 ○長嶋医療監察官 本検討部会の取りまとめについて、ご説明いたします。資料1をご 覧ください。前回のご検討の概要につきましては、第1回の検討概要と同様に、それぞ れの検討項目ごとに取りまとめ、「カ 検討概要(第2回検討部会)」として記載して おります。予定いたしましたそれぞれの検討項目につきましては、ひととおりの検討が 終了いたしましたので、検討結果を取りまとめて、第2回の労災医療専門家会議に報告 することとなります。 資料2をご覧ください。本日は、その取りまとめについてのご検討をお願いいたします。 検討項目は大きく2つありまして、1つは「取りまとめ資料の構成」について、もう1 つは「検討結果の取りまとめ内容」についてです。まず、「取りまとめ資料の構成」に つきましては、「第1 検討の背景等」として、今回、本検討部会を設けた背景等につ いて記述しております。労災医療専門家会議の中に、このような検討部会を設けて、ア フターケアの基本的考え方を整理することなど、これまで行っていなかったことを今回 実施したところの理由を明らかにするために、検討結果の前に検討の背景等を記述する ことは必要ではないかと考えております。  そして、「第2 検討結果」を記述しております。検討結果につきましては、これま での本検討部会における検討がそうであったように、対象傷病、対象者、措置範囲、実 施期間の大きな検討項目ごとに取りまとめております。そして、それぞれの検討項目ご とに、検討の前提であるアフターケアの現状を簡単に記載し、その後に検討結果を記載 しております。  なお、検討結果については、検討内容ごとに見出しを付けて整理しております。まず、 取りまとめ資料について、このような構成でよろしいか、ご意見をお願いいたします。 ○柳澤座長 いかがでしょうか。いまのような検討結果について全体の専門家会議へ提 案する内容ですが、検討の背景について説明をして、それから、検討の結果として、対 象傷病については現状と検討結果、それから対象者、検討結果、さらに措置範囲は現状 がどうか、検討結果。実施期間は現状がどうか、検討結果。そして、更新の問題という ところですが、こういう構成でよろしいでしょうか。 ○山口先生 結構だと思いますが、言葉の問題で、第2が「検討結果」となっていて、 第1が「検討の背景等」となって「等」が入っているのですが、これは要るのですか。 ○長嶋医療監察官 労働福祉事業の見直しということが背景なのですが、そのほかの要 素も入っていますので「等」を付けたということです。 ○山口先生 それでは、これは消したらどうですか。 ○柳澤座長 そうすると、「検討の背景」だけでよろしいですか。そのほうがスッキリ しますね。わかりました、「等」を削りましょう。それでは、構成はこのような構成で よろしいということで、内容について少し説明していただいて議論をしましょう。 ○長嶋医療監察官 「検討結果の取りまとめ内容」について、ご説明いたします。これ まで、資料1の検討概要については、検討状況を思い起こすという意味合いもありまし て、先生方からいただいた意見の形をできるだけ残して記載しておりますが、この検討 結果の記述は、これまでご検討いただいた内容を検討項目に合わせて要約する形で取り まとめております。確認のため、順次読み上げたいと思います。  資料の3頁をご覧ください。「1 対象傷病」の「ア 対象傷病の追加、変更、削除 について」は、現在の21傷病が一つひとつ追加・変更されてきた経過には、それなりの 理由があるが、21という数に理論的な意味があるわけではない。労働福祉事業の見直し が行われているところであるが、アフターケアの対象傷病を21に限定し、今後一切追加 ・変更を認めないという取扱いは、21傷病のみを特別扱いすることとなり、不適当であ る。必要に応じて対象傷病を追加・変更していくのは当然のことだが、医学の進歩によ って、既にアフターケアが必要ないと認められるものがあれば、対象傷病から除外しな ければならない。従来の制度の運用において、不自然なことや不平等で妥当でないこと などがなければ、制度の基本線を変える必要はない。よって、対象傷病については、専 門家会議において、現行のアフターケアは適当であるか、という観点から、その必要性 を検討した上で、追加・変更及び削除について判断していくことが適当である。 「イ  アフターケアが必要な対象傷病について」は、アフターケアは、実施要領において、症 状が固定した後においても、後遺症状に動揺をきたしたり、後遺障害に付随する疾病を 発症させるおそれがある場合に、予防その他の保健上の措置を講じ、被災労働者の労働 能力を維持回復し、円滑な社会復帰を促進するために実施するものとされている。この 実施要領の規定からは、アフターケアの対象は、次の二つの要件を満たす傷病と解する ことができる。(1)「後遺症状に動揺をきたすおそれがある傷病」又は「後遺障害に付随 する疾病を発症させるおそれがある傷病」。(2)「予防その他の保健上の措置」を講じる ことによって、「後遺症状の動揺」又は「後遺障害に付随する疾病の発症」を予防する ことができる傷病。対象傷病について、医学的には、一般論として、もっと細かく限定 的な内容を記載して条件を付けることは難しい。アフターケアの趣旨に合致した対象者 が出てくる可能性を医学的に否定することはできないので、ケース・バイ・ケースで、 法の趣旨に沿ってアフターケアが必要である傷病を認定することが適当である。一方、 アフターケアは、労働福祉事業として行われるものであることから、円滑な社会復帰を 促進するために必要とされなければならない。そして、ここでいうアフターケアにおけ る社会復帰については、少なくとも次の三つを満たすことが必要である。(1)療養を必要 としないこと(治ゆ後であり、再発とならない)。(2)社会生活を続けること。(3)治ゆ時 点の生活機能が維持されていること。現在のアフターケアは、上記のとおり、予防その 他の保健上の措置を講じることによって、後遺症状の動揺又は後遺障害に付随する疾病 の発症を予防するものであることから、(1)から(3)を満たすものである。よって、アフタ ーケアは、被災労働者が自立や職場復帰に至らない場合であっても、円滑な社会復帰を 促進するために必要なものということができる。  資料の5頁をご覧ください。次に、「2 対象者」については、次のア及びイにより、 基本的には障害等級を指標として、また、円滑な社会復帰ということも考慮して判断す ることが適当である。「ア 障害等級を対象者の要件とすることについて」は、一般的 には、障害等級が高い方がアフターケアを必要とする度合いが高くなることは理解され る。対象者の適否を判断するのに障害等級を用いることは、極めて常識的なやり方であ り、おかしいという感じはしない。それを理屈で根拠付けるとなると少し難しいが、だ からといって不適当ということにはならない。障害等級を対象者の判断の要件とする方 法以外に妥当な方法がないのであるから、障害等級を対象者の要件とすることは適当で ある。  「イ 円滑な社会復帰ということを考慮することについて」は、いたずらに治療を続 け、いつまで経っても「治ゆ」とならないということがないように、的確な時期に「治 ゆ」とし、アフターケアに切り替えることには、その者の社会復帰を促し援助するとい う意味も十分にある。また、患者は、医療機関から離れてしまうことについて非常に不 安を感じるので、治ゆとする場合に、アフターケアは、患者が精神的安定を得る一つの 大きな力となる。アフターケア制度をうまく利用すれば、労働者の社会復帰に資するこ とができる。そのような場合には、必ずしも障害等級によって限定しなくてもよい。ア フターケアの規定が周知され、趣旨に沿った一定の基準できちんと利用されれば、同じ ような傷病でも、あるいは同じ傷病の同じ等級であっても、アフターケアが必要な人と そうでない人が出てきても、一定の基準内で必要とする者は措置し、不要の者に対して 措置しないことは、当然のことである。障害等級が低くても、社会復帰のためにアフタ ーケアが必要なものについては、今までも「所轄労働局長が、医学的に特に必要と認め るもの」として運用してきている。対象者とする障害等級の原則を定め、その例外とし て、それより等級の低い者であっても、アフターケアが必要か否か個別に検討すること が適当である。  次に「3 措置範囲」については、まず「ア 進歩する医学技術への適応について」、 仮に医学の著しい進歩による新しい治療法に係るアフターケアの見直しが2年後であ り、その見直しに1年間を要するとした場合、その3年間について、新しいアフターケ アの措置を適用できないと対象者にとって不利になるという考え方はある。しかし、こ れまで労災補償行政は、医学技術の進歩を比較的よく取り入れてきている。医学技術の 進歩に適応するため、新しい治療法がでてアフターケアを必要とする対象傷病の措置範 囲等を見直さなければならないのであれば、2年から3年に1回程度の割合で、労災医 療専門家会議を開催し、検討・見直しすることが適当である。  「イ 「治療行為」と「予防その他の保健上の措置」の区分について」は、医学的な 見知から、「治療行為」と「予防その他の保健上の措置」を明らかに分けることはほと んど不可能であるが、それを、アフターケアの制度上、整理する場合に、現在、アフタ ーケアの範囲として掲げられている「理学療法」とか「注射」とかいう措置は、本来、 明らかに治療法として把握されるべきものであり、このような形で列挙されているのは 不適切である。これらの項目が入ると、治療とどう区別するのか、言葉の上でも抵触し てしまうことになる。また、「注射」は、以前、アフターケアに入っていなかったもの であり、治療とどこで線を引くかは非常に難しい。アフターケアは治療ではないとして いるのであるから、実態として行われる医療行為に重なりはあるにしても、それを制度 における文言上明らかにするために、治療行為に含まれると理解されるような違和感の ある項目(理学療法、注射、検査、精神療法・カウンセリング等、保健のための薬剤の 支給)については削除することが適当である。また、削除する項目として、これまで実 施してきた措置については、診察、保健指導、保健のための処置に含めて実施すること が適当である。なお、対象者に自立する心構えと具体的な活動を要求することは、最近、 様々な福祉分野で随分議論されているところであり、労災の場合も当然に必要と考える。 傷病者自身の生活についての努力をできるだけ重視し、そういうもので社会復帰に結び 付けるようなことは大変大事である。そのようなことから、積極的な医学の関与だけで なく、対象者に対する保健上の要望とか注意(受益者の態度、教育、生活指導等)とい うものを追加することが望ましい。  資料の8頁をご覧ください。次に、「4 実施期間」については、まず「ア 対象傷 病ごとに実施期間を定めることについて」、アフターケアの実施期間については、これ まで、対象傷病ごとに「2年」、「3年」、「制限なし」としてきたものであり、対象 傷病ごとに実施期間を定めることを改める特段の理由はない。対象傷病ごとに実施期間 を定めることは、一定の期間ごとにアフターケアの必要性を見直し、場合によってはア フターケアを終了するということを手続的に行うという観点からも適当であり、すべて の傷病について適切と考える。特定の傷病を除き、アフターケアに実施期間の定めがな いというのは不適当であり、実施期間の定めについては、対象傷病ごとにみていかなけ ればいけない。「イ 実施期間の見直しについて」は、アフターケアの実施期間は、医 学的検討によって定めるべきものであり、実施期間に制限がない対象傷病も含め、21傷 病の全てについて、現在の医学技術の進歩を念頭に置いた上で、その病態を検討し、実 施期間を見直すことは適当である。見直しの結果、実施期間は、原則として対象傷病ご とにアフターケアを必要とする期間(その期間の終了をもってほとんどの事例がアフタ ーケアを終了することができる期間)とすることが適当である。「ウ 実施期間の更新 について」は、実施期間の更新が繰り返されるということは、実施期間を定めることと 矛盾するものであり、アフターケア制度の本来の趣旨とは違うものである。しかし、一 律に定めた実施期間を超えて、アフターケアを継続する必要のある対象者が出てくる可 能性がある。アフターケアを必要とする状態がどのくらい続くのかを、傷病名によって 一律に決めることは、今の段階では難しいので、対象傷病ごとに実施期間の更新の必要 性を十分に検討しなければならない。実施期間の更新については、回数による制限では なく、健康管理手帳の更新時に、アフターケアの更新を必要とする状態がわかるような、 現状よりもう少し詳しい診断書を提出してもらい、それを審査することが適当である。 主治医にアフターケアの必要性を確認するための診断書の記載内容を充実させることが 必要であり、例外的に実施期間の更新を認めるという要件を規定するならば、従来のア フターケアの健康管理手帳を交付するときの要件を参考として、どういう要件があれば、 引き続きアフターケアが必要か、をきちんと考えて、適切な意見が出るような形の診断 書をきちんと作ればよい。健康管理手帳の更新時に、アフターケアの必要性をきちんと 見直すことにより、いたずらに実施期間が長引くことを防ぐことができるものと考える。 また、いたずらに不必要なアフターケアをいつまでも続けるものをきちんとするのであ れば、問題は、腰痛や頸肩腕のような痛みを主にする傷病であり、そのような傷病をよ く見れば、不必要な更新はかなり減少するのではないか。アフターケアで実施する措置 範囲について、よく審査をして、本来のアフターケアの趣旨に合わないものは認めない ということを徹底することで、本来不要なアフターケアの更新が続くことは自然になく なると考える。なお、診断書を書く医師については、アフターケアの更新を必要とする 状態を正確に書ける専門医がいればよいが、現段階では、あまり条件を付けないで、む しろ診断書の提出を実施していく中で、だんだんと良い診断書が提出されるようになる と思われるものである。さらに、加齢等の問題については、運用上できるだけ適切に対 応することが必要である。以上、十分に取りまとめられていないところもあると思いま すが、記述の内容等について、ご意見をお願い申し上げます。 ○柳澤座長 それでは、この案に沿った形でご議論いただければと思います。最初に、 検討の背景ですが、いかがでしょうか。 ○長嶋医療監察官 本日ご欠席の保原先生からご意見をいただいていますので、そちら をご紹介したいと思います。1点目は、資料5頁の上から10行目、「2 対象者 (2) 検討結果」の「ア 障害等級を対象者の要件とすることについて」の箇所です。該当は、 「一般的には、障害等級が高い方がアフターケアを必要とする度合いが高くなることは 理解される。対象者の適否を判断するのに障害等級を用いることは、極めて常識的なや り方であり、おかしいという感じはしない。それを理屈で根拠付けるとなると少し難し いが、だからといって不適当ということにはならない。障害等級を対象者の判断の要件 とする方法以外に妥当な方法がないのであるから、障害等級を対象者の要件とすること は適当である。」というところにつきまして、医学的に非常識でなければ、という前提 ですが、「実施要領の規定から、アフターケアの対象は次の二つの要件を満たす傷病と 解される。(1)「後遺症状に動揺をきたすおそれがある傷病」又は「後遺障害に付随する 疾病を発症させるおそれのある傷病」。(2)「予防その他の保健上の措置」を講じること によって、「後遺症状の動揺」又は「後遺障害に付随する疾病の発症」を予防すること ができる傷病。そして、一般論としては、障害等級が高い程アフターケアを必要とする 度合いが高くなるものと解されるが、具体的にどんな種類の後遺症状や後遺障害につき アフターケアの必要性が高いかは、それらの後遺症状や後遺障害の種類によっておのず から異なり得るものと考えられ、各後遺症状や後遺障害に対する現行の障害等級の基準 は、上記の二つの要件を勘案して設定されているものというべきである。」のように修 正してはどうか、というものです。  2点目は、同じ資料5頁の「イ 円滑な社会復帰ということを考慮することについて」 の下から8行目になります。「アフターケア制度をうまく利用すれば、労働者の社会復 帰に資することができる。そのような場合には、必ずしも障害等級によって限定しなく てもよい。」というところについて、アフターケア制度自体が労働者の社会復帰を目的 としているのであるから、原案のように単に「労働者の社会復帰に資する」というだけ では、いかにも弱い感じがするので、「その上、アフターケア制度の目的にあった運用 をすることができれば、被災労働者の社会復帰により大きく貢献することができるもの と考えられる。すなわち、前述の障害等級の原則を維持しながら、例外的により弾力的 な運用を試みることである。」のように修正してはどうか、というものです。  3点目は、資料7頁の上から2行目の「3 措置範囲 (2)検討結果」の箇所です。 「イ 「治療行為」と「予防その他の保健上の措置」の区分について」、「医学的な見 知から、「治療行為」と「予防その他の保健上の措置」を明らかに分けることはほとん ど不可能であるが」の「明らかに分けることはほとんど不可能である」のところを「ほ とんど不可能」といってしまうと、事実上できないということになり、これを何とか分 けようという趣旨に反することになるので、「明らかに分けることは、かなり困難であ る」のように修正してはどうか、というものです。  4点目は、同じ資料7頁の上から20行目の「また、削除する項目としてこれまで実施 してきた措置については」というところを、「結論としては、以上のようなこれまで実 施してきた措置については」のように修正してはどうか、というものです。  5点目は、同じ資料7頁の下から11行目になります。「傷病者自身の生活についての 努力をできるだけ重視し、そういうもので社会復帰に結び付けるようなことは大変大事 である」の「大変大事である」を「極めて重要である」のように修正してはどうか、と いうものです。  6点目は、資料8頁の下から14行目の「3 実施期間 (2)検討結果」の「ア 対 象傷病ごとに実施期間を定めることについて」、「これまで、対象傷病ごとに「2年」、 「3年」、「制限なし」としてきたものであり、対象傷病ごとに実施期間を定めること を」というところを、「これまで、対象傷病ごとに「2年」、「3年」、「制限なし」 としてきたもので、合理性があり、対象傷病ごとに実施期間を定める現行の制度を」の ように修正してはどうか、というものです。以上でございます。 ○柳澤座長 それでは、最初からご検討いただく中で、いまの保原先生のご意見につい てもご審議いただきたいと思います。「検討の背景」ですが、これはよろしいですか。 その次は「検討結果」で、現状はどうかということの21傷病についての記載がありまし て、それについて、検討結果としては、傷病が指定されてきた経過は歴史的な経過とし てあるわけで、この21のものについて特に現在の段階でアフターケアの対象とすること が適切かどうかという検討は専門家会議でしてくださいということです。当然のことな がら、これから先も労災の傷病が増える可能性はあるわけですし、アフターケアについ ても加えられるもの、削られるものがあると思いますが、それはすべて専門家会議で検 討して決めていただくことになります。3頁のイの条件などは、法律的な記載があった という山口先生からの話があったところだと思いますが、これはこのようなまとめ方で よろしいでしょうか。 ○奥平先生 2頁の「対象傷病」なのですが、傷病名は慣用ということがあって理屈ど おりになっていないことは確かなのですが、例えば(1)の一酸化炭素中毒症に対して(14)の 有機溶剤中毒等と(17)のサリン中毒というこの下の2つには「症」が付いてないのです。 特にこれを問題にしたのは、検討結果としてこれが挙げてあるものですから、こういう 中毒について言葉を統一するほうがいいのではないかという感じがしたわけです。 ○柳澤座長 これはどういたしましょうか。医学用語としては「症」は付けませんよね。 言葉は不必要なものは削るというのが医学用語の改訂などの原則になっていますから、 病名は一酸化炭素中毒であって、一酸化炭素中毒症という言葉は一般には医学用語とし ては使われない。 ○長嶋医療監察官 このところは、現状、アフターケアの対象傷病がこの傷病名で運用 されているのを引いてきていますので、ご指摘の点はわかるのですが、現状の傷病名に なっております。 ○山口先生 だけど、それが医学上の呼称から見ると時代遅れになっているので、せめ て症は括弧の中に入れておいたほうがいいと思う。 ○奥平先生 医学辞書でも、慣用として使っても使わなくてもいいというときに括弧で 入れてあるのです。 ○明治補償課長 これは、昭和42年の特別措置法がありまして、「炭鉱災害による一酸 化炭素中毒症に関する特別措置法」という名称になっておりますので、それを引いてい るということだと思います。 ○山口先生 だけど、そこから医学はものすごく進歩しているわけだから。別に、その 法律が根拠になっているということがはっきりしていればいいのではないかと思います けれども。 ○奥平先生 法律でそうなっているのですね。検討結果として改めて挙げてあるもので すから、こうやって統一したほうがいいのではないかという気もします。 ○馬杉先生 括弧付けにすることはできないのですか。 ○明治補償課長 要綱ですから、それは可能だと思います。 ○馬杉先生 1967年ですから、40年経っている。 ○山口先生 炭鉱のCO中毒でつくったわけでしょう。 ○馬杉先生 そうですね。 ○柳澤座長 では、記載としては中毒症の「症」は括弧書にしましょうかね。 ○奥平先生 普通の丸い括弧ではなくて鍵括弧になっています。 ○柳澤座長 その点はよろしくお願いします。それから、対象者の4頁以降ですが、5 頁で保原先生のご意見がありましたが、これは山口先生は事前にご覧になっていますか。 ○山口先生 今日ちょっと拝見したのですが、イはそのとおりだと思います。アはもと もとの文章が何かみんな重複しているような感じですので、障害等級を決めているのは 医学的にもそれなりに十分の根拠があるということ、それ以外でほかに代替的で合理的 なやり方は何もないのではないかということ、かなり固定的につくられているから具体 的な場面では多少弾力的にやる必要が出てくるのではないかということ、この3つが書 かれていれば十分だと思います。保原先生の意見は、弾力的運用を後のほうで言ってい ますが、むしろそれは最初で書いたほうがいいのではないか。というのは、障害等級表 は、私は日本の場合は知りませんけれども、私たちは医者ではないから見てもわからな いのです。だけど、印象としてはかなり古くて、あれは帝国陸軍の兵隊さんのときの。 外国でも障害等級は利き腕と利き腕でないのと違っているところが多いのです。見たら、 何か、オルガンというか、機関中心のあれですから、新しいあれから言ったら少し弾力 的にやらないといけないような気がします。 ○柳澤座長 いかがでしょうか。私も、障害等級は非常に大事だというのはそれはそれ でいいと思うのですが、弾力的に対応する必要があるというのは初めの段階で入れてお かないと、最初の表現では障害等級を基にするのは大切ですと言っておいて後でそれを 引っくり返すような形になると論旨がわかりにくくなるということがある。最初の所か ら障害等級は大事なのだけれどもそれは原則なのであって、個々のケースについてはき ちんと個別に判断をするのが適切であるという、そういう趣旨の表現にされたほうがよ ろしいと思います。 ○馬杉先生 私もそう思います。 ○柳澤座長 いまの山口先生の話、保原先生のご意見などをまとめた形で整理できそう ですか。主として保原先生のご意見として出されたものについてですが、事務局として 気になる表現は何かありますか。特になければ、まとめることができそうだったらそれ で結構です。 ○長嶋医療監察官 取りまとめをさせていただきたいと思います。 ○山口先生 アは、障害等級表に十分に医学的な根拠があるということが出てこないの は少し変な気もします。 ○柳澤座長 そうですね。障害等級が高いほうのがアフターケアを必要とする度合が高 くなることは医学的な観点から十分に考えられるとか妥当なことであるとか、そういっ た類いの表現にすることはよろしいと思います。医学的にそういうことが妥当であると いう表現は入れておいたほうがいいのかもしれません。それでお願いします。次は6頁 の措置範囲ですが、検討結果として進歩する医学技術への適用についてという、これは 必要性ということがあって常に見直しは必要なのですが、6頁のいちばん下の行に「2 年か3年に1回の割合で労災医療専門家会議を開催して検討、見直しをすることが適当 である」というのは、その2年か3年に1回やることが適当だというところまで表現す ることは果たしてできるのかどうかというのが少し気になるのです。 ○奥平先生 「必要に応じて」ですか。 ○柳澤座長 「必要に応じて」ですよね。では、「2年か3年に1回の割合で」を「必 要に応じて」にしましょう。 ○奥平先生 あと、「医学技術」という言葉がずっと出てくるのですが、「医学・医療」 とか、医学と医療は必ずしも同じではないので。 ○柳澤座長 おっしゃるとおりだと思います。医学技術という言葉はありませんので。 ○長嶋医療監察官 真ん中に黒ポツを入れて。 ○柳澤座長 医療技術ですよね。では、「医学・医療」にしましょうか。そうすると、 その下の「これまでの労災補償行政は」のところの「医学技術の進歩に従って」は「医 療技術の進歩に従って」に変えたほうがよろしいです。でも、技術だけではないのです よね。医療そのものの進歩ですからね。例えば、薬が開発されるのは技術とは別の意味 です。 ○長嶋医療観察官 項目の見出しと同じように「医学技術」を「医学・医療」にします か。 ○柳澤座長 そうですね、それでいいと思います。 ○馬杉先生 統一したほうがいいと思います。 ○柳澤座長 その次の7頁のイです。「ほとんど不可能である」は、明らかに分けるの はかなり困難というよりは極めて困難です。どういう表現がいいのでしょうかね。 ○奥平先生 これをまとめたときに議事録をそのまま切り張りして持ってこられたとい う傾向があるのではないかと思うのです。ですから、議事録の話し言葉と正文で出した ものとの違いがあるので、話し言葉のようになっているところは文章として良い文章に なるように推こうしていただいたほうがいいのではないかと思います。 ○柳澤座長 それはそのとおりだと思います。例えば、この文言の流れから行ったら「ほ とんど不可能」を「困難」に置き換えても意味は通じるわけです。「分けることは困難 である」ということです。「かなり」とか「ほとんど」という表現は入れない。 ○山口先生 確かに、今日の保原先生のご意見のとおりで、「ほとんど不可能」と書い てあると、なぜそんなに難しいのかと。ですから、「明らかに分ける」の「明らかに」 を取って、「ほとんど不可能」は「分けることはかなり困難」とか「分けることは極め て困難」とかにしたらどうか。「極めて困難」も少し無理ですかね。 ○柳澤座長 どの程度にということを入れないでただ「困難」でもいいのではないか。 ○山口先生 そうすると、「明らかに」も残していいですね。 ○柳澤座長 はい。「明らかに分けることは困難である」と。 ○奥平先生 イの最後に、保健上の要望とか注意で括弧して挙げてあるのですが、これ は対象者に対する禁煙、節酒などの生活指導を含めた保健上の要望とか、そういうこと を明確に入れたほうがいいのではないかと思います。「受益者の態度、教育、生活指導 等」というと何となくはっきりしないのです。 ○柳澤座長 そうですね。禁煙、節酒とか、適正な生活習慣の指導とか。対象者にアク ティブにやってもらわなければいけませんというのが、制度の変更の流れの中のいちば んの核ですから。 ○馬杉先生 一つよろしいですか。保原先生の5頁の指摘ですが、「アフターケア制度 をうまく利用すれば」の下ですけれども、「社会復帰」というのをもう少し「社会復帰 により大きく貢献する」と書かれています。 ○柳澤座長 「資する」は少し軽すぎるということですか。 ○馬杉先生 そういうような意味みたいですね。 ○山口先生 それは保原先生が言われたように直すことで、大体落ち着いたように思い ます。 ○柳澤座長 よろしいですか。「というものを」という口語的なものは変えて整理して いただいたほうがよろしいと思います。それから、対象者に対しては「要望」より「指 導」のほうがいいのではないでしょうか。 ○長嶋医療監察官 いまの箇所の確認ですが、「対象者に対する禁煙、その他の適正な 生活習慣の指導を追加することが望ましい」ということですね。 ○柳澤座長 はい。また整理した上で皆さんに見ていただくわけですね。そのときにご 意見をください。基本的にはそういう趣旨だということでよろしいでしょうか。次の「実 施期間」は先ほど議論されたところですが、保原先生の「これまで対象傷病ごとに2年、 3年、制限なしとしてきたもので合理性があり」ということをいまの段階で言い切って しまえるでしょうか。 ○山口先生 いまの議論からすると、あまり合理性がないということになる。合理性と いう言葉を入れると私はちょっとひねりますね。 ○柳澤座長 合理性があるというところまで御墨付をあげるのは抵抗がありますね。原 文で行きましょう。「対象傷病ごとに実施期間を定めることを改める特段の理由はない」 と、いまの法律的なところですね。そうすると、8頁の下から5行目以下の「アフター ケアに実施期間の定めがないというのは不適当であり」と。「定めがないというのは」 という表現も「定めがないことは」ですね。法律用語では「適当」という言葉と「適切」 という言葉はどのように使い分けられているのですか。 ○山口先生 違いはありません。これは印象だけですが、昔は「適当」という言葉はあ まり使っていないのですが、最近は多いですよ。 ○柳澤座長 そうなのですか。我々は、言葉を選んでというか、こういった改まった所 では「適切」という言葉を使って、「適当」という言葉は何となく適当にやっていると いう印象があるので使わないのです。 ○山口先生 そういうことでしたら「適切」のほうがいいのではないですか。 ○柳澤座長 事務局の皆さんは「適当」という言葉を法律用語としてかなり使いますか。 ○長嶋医療監察官 使い分けはなかなか難しいと思います。 ○柳澤座長 「実施期間の定めについては対象傷病ごとに見ていかなければいけない」 というのは「実施期間については対象傷病ごとに定めることが必要である」とか「実施 期間については対象傷病ごとに定めることが適切である」という表現でしょうか、用語 を少し吟味してください。あと、実施期間の見直しについてということで、「医学的検 討によって定めるべきものであり」と。この9頁の上半分ぐらいはよろしいでしょうか。 ○馬杉先生 ここも「医学技術」となっていますね。 ○柳澤座長 それは「医学・医療の進歩によって」ということで変えてください。文章 としてはよろしいでしょうか。 ○山口先生 次のウの最初のパラグラフで「アフターケア制度の本来の趣旨とは違うも のである」となっていますが、「アフターケア制度の本来の趣旨にはそぐわないもので ある」という表現になると思います。 ○柳澤座長 そうですね、そのように直してください。確かに、実施期間は傷病ごとに 分かれているというのにそれを繰り返すのは基本的にはよくないということですね。 ○馬杉先生 9頁の下から6行目「いたずらに不必要なアフターケアをいつまでも続け る」というところで「問題は腰痛や頸肩腕のような痛みを主にする傷病であり」と、少 しきつすぎるような気がするのです。いろいろ言えば腰痛や頸肩腕症候群でもそれ相応 に痛みがあって、アフターケアが必要な症例もないわけではありません。何か、これだ と腰痛と頸肩腕が悪者のような印象を受けるのです。 ○柳澤座長 そうですね。そういう例示は不適切であるのと、「いたずらに不必要なア フターケアをいつまでも続ける」という、あまり直接的というか、どぎつい表現はやめ たほうがいいですね。 ○馬杉先生 この4行ぐらいは削除したほうがいいのではないかと思います。 ○柳澤座長 削除しますか。「不適切な更新はかなり減少する」と期待するのも。 ○明治補償課長 上の3行でほとんど同じことを言っていますから。 ○柳澤座長 はい、削除しましょう。 ○山口先生 削除するのには反対ではありませんが、書いてある内容自体が医学的に根 拠がないというのか、書くこと自体が問題を引き起こして悪いというのか、どちらなの ですか。 ○柳澤座長 後のほうではないでしょうか。 ○馬杉先生 後のほうです。 ○柳澤座長 そうであれば、何か表現を変えて書いて。 ○山口先生 いや、そんな難しいことを言っているのではないのです。 ○馬杉先生 医学的な危惧もありますけれども、何か、これだと腰痛と頸肩腕が特別な 感じを受けるので。 ○柳澤座長 これだけ取り上げるのは少し問題を受けるので、上の3行でいいのではな いかと思います。 ○山口先生 その上の3行の少し上に「きちんと」という言葉が何回か出てきますから、 これはあまりコロキュアルな表現ですから。 ○柳澤座長 これも直してください。それから、10頁の最後のパラグラフはどうでしょ うか。「なお、診断書を書く医師についてはアフターケアの更新を必要とする状態を正 確に書ける専門医がいればよいが、現段階ではあまり条件をつけない」と。そういう専 門医を養成して記載してもらうことが適切であるという、例えば検討部会としてはどち らかというとそのほうが望ましいという意見であるか。それはそうなのでしょうね。 ○馬杉先生 5年先、10年先を見据えて、本当はそういう専門の先生がいたほうがいい という。 ○柳澤座長 「なお、診断書を記載する医師についてはアフターケアの更新の必要性を 正確に診断できる専門医によることが望ましいが、現段階では条件を付けないで、むし ろ診断書の提出及びその内容を適切なものにしていく上で業務が出てくるようになるこ とを促していきたい」ということですね。この辺の文章も少し吟味しましょう。 ○馬杉先生 それから、最後の2行がものすごく大事なことを言っているのにサラッと 2行なので、ほかに言い様がなかったのか。加齢に関してはなかなか難しい問題が入っ て、これぐらいでサラッとしておいたほうがいいのかなとも思うのですが、大事なこと が2行だけになってしまったのはいかがなものか。さりとて、これを書けと言われると ものすごく難しいのですね。 ○山口先生 しかし、いままで加齢の問題はあまり議論していませんよね。 ○柳澤座長 この2行は外しますか。 ○馬杉先生 実際上は問題が多いのですか。我々はすごく難しいです。この間も話した けれども、加齢が入ってくると、どこまで加齢によるものかという。労災の考えでは加 齢によるものと実際の障害と引き算をして出せばいいと言うけれども、それは現場は難 しいですよね。だから、これは触れるならばもう少し詳しくしなければいけないし、触 れなくてもいいような気もする。 ○柳澤座長 触れなくてもいいような気もします。というのは、引き算をすることはほ とんど不可能ですよね。それと、引き算自体が意味があるかということもあるわけです。 例えば、障害があれば人間の体でそれによって老化が促進されることが実際にはあるわ けです。そうすると、因果関係の上で意味を持ってきてしまうわけですから、例えば頸 部の外傷があった場合はそう簡単に、老化の部分は引き算をしますよ、これは変形性脊 椎症だから違いますよ、というわけにはいかないのですね。 ○馬杉先生 これは非常に大事なことでこれから大変なことになると思うのですが、入 れなければいけない。 ○長嶋医療監察官 主とする検討の流れとは少し違うものであるとは思います。 ○山口先生 行政上適切に対応すべきだという結論は誰も言っていないから、書くとし たら「将来的に立ち入った検討が必要である」とか、そういうことならば。 ○馬杉先生 入れるならばですね。 ○山口先生 だけど、そんなことを書いたらまたやれという話になるから。 ○馬杉先生 これはすごく難しいですよね。いずれ高齢化社会になればやらなければい けない。 ○柳澤座長 アフターケアという観点からいってこの加齢の問題を議論するとしたら、 それこそ、エビデンスをデータとして集めるしかないわけですよ。例えば、同じ障害で アフターケアを必要とする期間が年齢によってどのように変わっていくのかということ が統計的なデータとして出てくれば、加齢の要素はどのぐらい関与しているだろうかと いうことを推測する根拠にもなる。ただ、いまデータが何もなくて一般論として議論し ても、本当に労災疾病の認定からアフターケアの必要性という、現実に困っている人た ちの認定をする上できちんとアフターケアの必要性云々を議論する上の根拠として使う ことはなかなか難しい。将来の課題。 ○長嶋医療監察官 前2回の検討の中で触れていただいたことがあったので載せました が、そのようなご意見であれば削除することでよろしいでしょうか。 ○馬杉先生 これを取扱うのは柳澤先生がおっしゃったとおりですが、今度は障害等級 の再認定とか、そういう問題がある。例えば、アフターケアは非常に長いものもあると 申し上げましたが、これは2、3年という非常に短いことを議論しているわけで、今後 高齢化社会になってきて例えば何かあった人のアフターケアが30年続くということに なったら、アフターケアの問題よりは後遺障害の再認定ですね。先ほど先生がおっしゃ ったように、障害があったから高齢化による障害の進行がより強くなったということな どとは別問題だと思いますから、ここは触れないでもよろしいでしょう。 ○柳澤座長 こういうところでよろしいでしょうか。事務局に特にお願いしたいのは、 文言の整理を是非やってください。 ○長嶋医療監察官 確認ですが、保原先生からご指摘いただいた5点目の指摘で「大変 大事」を「極めて重要」にするという文言の修正と、4点目の「削除する項目としてこ れまで実施してきた措置については」を「結論としては以上のようなこれまで実施した 措置については」と修正するのはそのままでよろしいでしょうか。 ○柳澤座長 だけど、「ついての努力をできるだけ重視し、そういうもので社会復帰に 結び付けるようなことは」という表現はもう少し変えたほうがいいと思います。「大変 大事」の代わりに「極めて重要」というのはいいです。 ○長嶋医療監察官 「そういうもので」という表現については見直しをさせていただき たいと思います。もう1つの「また、削除する項目としてこれまで実施してきた措置に ついては」を「結論としては、以上のようなこれまで実施してきた措置については」と 修正することはどうでしょうか。 ○柳澤座長 その点についてご議論いただきましょうか。「違和感のある項目について は削除することが適当である。それらの項目については、削除する項目としてこれまで 実施してきた措置については」ということですかね。だから、同じ言葉の繰り返しがス マートではない表現になってしまっているという面はあるかもしれませんから、前の文 章を受けて意味が明解であるならば「それらの」云々というような表現にしてもいいし ということですよね。 ○山口先生 「大変大事である」を「極めて重要である」というのは、要するに書き言 葉か話し言葉かということですから、内容的にはあまり変わらないような気がします。 書き言葉だと「極めて重要である」という表現になるのですかね。 ○柳澤座長 事務局は大変でしょうけれども、その辺は是非もう一遍整理してください。 そんなところでよろしいですか。事務局としては、以上のような検討を基にして文章と しての整理をもう一遍していただいて、先生方には、大変お忙しいところを申し訳あり ませんが、今回は全体の会議に出すことになりますので文言などを注意して直していた だければと思います。それはいつごろ先生方のところへ差し上げることになりますか。 ○園田課長補佐 いま柳澤先生のお話がありましたことについて、検討結果を修正した ものを各先生方にご確認いただきまして、その後にさらに修正したものを座長である柳 澤先生に最終確認をお願いするという段取りで本部会の最終検討結果として整理してい こうと思います。先生方には適宜お送りさせていただきたいと思います。 ○明治補償課長 それでは、基本的な考え方に関する検討部会は本日で一区切りという ことでございますので、簡単に一言だけごあいさつを申し上げます。このアフターケア の基本的考え方に関する検討部会につきましては、私ども労災補償行政としては異例か とも思いますが、本委員会から切り離した形で全体を通しての基本的な考え方あるいは 枠組みを医学的な面、法律学的な面の双方から整理、検討していただくというところで 設置させていただいたところです。今日で3回目になるわけですが、今日をもちまして 無事終了することができたわけでございます。これも一重に柳澤座長をはじめ各先生方 に大変お忙しい中また実に精力的にご議論いただいた結果であると考えております。こ れまでの各先生方のご尽力、ご協力に対しまして心から敬意を表しますとともに、深く 感謝申し上げる次第でございます。  先ほど係からもお話をさせていただきましたが、本日までにご議論いただいた中身に つきまして文言等の整理をした上で改めてお諮りをし本委員会にご報告させていただき たいと考えております。先生方には、引き続き専門家会議でまたご指導、ご協力を仰ぐ ことになるかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。本当にありがとうござ いました。 ○柳澤座長 どうもご苦労様でした。事務局から何か連絡はありますか。 ○笹川係長 第2回の医療専門家会議は12月15日金曜日の午後2時から、場所はこの 建物の16階の隣の第17会議室になりますので、よろしくお願いいたします。 ○柳澤座長 わかりました。どうもご苦労様でした。 (照会先) 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課福祉係 TEL 03(5253)1111(代)内線5566     03(3502)6796(夜間直通) FAX 03(3502)6488