06/10/27 労災医療専門家会議(アフターケアの基本的考え方に関する検討部会) 第2回議事録 第2回 アフターケアの基本的考え方に関する検討部会          日時 平成18年10月27日(金)             10:00〜          場所 中央合同庁舎第5号館 労働基準局第1会議室 ○笹川係長 定刻となりましたので、これより「第2回アフターケアの基本的考え方に 関する検討部会」を開催します。資料の確認をお願いします。資料1は「アフターケア の基本的考え方に関する検討事項」です。そのほか参考資料として1〜6まであります。  それでは柳澤座長、進行をお願いします。 ○柳澤座長 前回に引き続き検討事項は(1)〜(8)までということですが、早速、今日の会 議に入りたいと思います。事務局から第1回の検討事項について、いくつかの補足説明 があるということですので、そちらのほうをまず伺ってから審議を始めたいと思います。 事務局から説明していただけますか。 ○長嶋監察官 前回、ご検討いただきました事項のうちのいくつかについて、行政にお ける考え方を補足的にご説明申し上げます。参考資料1の「第1回検討部会における補 足説明事項」の2頁をご覧ください。問1として、療養を中止すると症状が悪化するも のは「治ゆ」と言えないのかということについて、「治ゆ」とは、療養によって症状が 安定し、一定の障害を残していても、医療効果がそれ以上期待し得ない「症状固定の状 態」ということです。療養を中止すると症状が悪化するものは、「症状固定の状態」に あるとは言えませんので、「治ゆ」とはならない。つまり療養を継続するということに なります。  参考資料2の「『症状の悪化』と『治ゆ』・『再発』の取扱いについて」、ここの1 の「治ゆ」のところに表を載せていますので、それをご覧いただきたいと思います。こ の表は(1)のア、イ、(2)のアを整理したもので、療養を継続し、症状が改善する ものは、治ゆしない(療養を継続する)。療養を継続しても症状が改善しないもので、 療養を中止すると症状が悪化するものも治ゆとしない(療養を継続する)。療養を継続 しても症状が改善しないもので、療養を中止しても症状が悪化しないものは治ゆすると いうことになります。  参考資料1の2頁に戻ってください。問2ですが、後遺症状により制限された生活を 送っているだけで症状が悪くなる状態を「治ゆ」とするのか、ということについては、 「治ゆ」前は、症状改善のために療養を行っているので、治ゆ前に「制限された日常生 活を送っているだけ」の状態はないと思われます。また、「治ゆ」後に、後遺症状によ り「制限された日常生活を送っているだけで症状が悪くなってしまう」ということにつ いては、治ゆの問題ではなく再発の問題であると思われます。  3頁をご覧ください。問3ですが、神経障害の場合、訓練を続ければ一定の機能が維 持されるが、廃用症候群や廃用性萎縮などは訓練をやめれば機能が低下していく。日常 生活の中で、機能を維持するために積極的に運動している人は、医者に行かなくても機 能が保たれるが、漫然と寝ていたら機能はどんどん悪くなる。対象者の生活の送り方に よって症状の経過が違うということを、どのように考えるのかについては、訓練によっ て機能の回復が期待できるものであれば、また訓練をやめることによって機能が悪化し てしまうものも同様ですが、療養を継続し、「治ゆ」とはならないということです。  廃用性の機能障害については、再び訓練を開始することによって機能の回復を期待で きるものもあるし、必ずしも後遺障害となるとは限らない。このような場合、障害等級 の認定においても、将来における障害の程度の軽減を踏えまて行うということになって います。また、「治ゆ」後の症状の悪化は再発の問題ということですが、自ら機能保持 に努める場合とそうでない場合とでは、アフターケアの実施期間等に差異が生じること が考えられます。  問4ですが、頭頸部外傷症候群とか、せき髄障害というもので、四肢麻痺を来したよ うな場合は、ほとんど治ゆとならないで療養が続くのかということについて、せき髄損 傷による「高度の四肢麻痺」については、現行、障害等級第1級に、「中等度の四肢麻 痺」は第2級に、「軽度の四肢麻痺」は第3級に認定することになっています。障害の 程度が高くても、症状が安定し、医療効果が期待できない状態であれば、「治ゆ」とな ります。  4頁をご覧ください。問5ですが、仕事で血圧が高くなった状態が続いていて、薬を 飲んでいる限り悪くならないが、薬をやめたらもっと悪くなるという場合、どこで「治 ゆ」となるのか。これについては、私病である「高血圧症」等の基礎疾患については、 労災補償(アフターケア)の対象とならないということです。「高血圧症」等の基礎疾 患のある方が、仕事が相対的に有力な原因となって脳血管疾患や虚血性心疾患を発症し た場合、その脳血管疾患や虚血性心疾患が労災補償の対象になるということです。  問6ですが、大腿骨頸部骨折の「治ゆ」後に発症するおそれがあるという大腿骨骨頭 壊死は、元々の大腿骨の骨折と相当因果関係にあるとみるのか、たまたま偶発的に起こ り得るとみるのか。大腿骨頸部骨折の「治ゆ」後に大腿骨骨頭壊死が起こった場合、労 災と考えるのか。それは、ケース・バイ・ケースで判断するのかについて、アフターケ アは、業務と相当因果関係のある傷病の発症を防止するものであり、業務と相当因果関 係のない「たまたま偶発的に起こった傷病」については対象としないということです。 大腿骨骨頭壊死が業務上の又は通勤による傷病(大腿骨頸部骨折)を基礎として発症し た場合には、業務との相当因果関係が認められるので、労災補償の対象となるというこ とです。なお、「治ゆ」後の症状の悪化については、再発の問題ということです。  参考資料2の「2 再発」のところをご覧ください。再発の3つの要件を線で囲んで いますが、(1)に、「後遺症状の悪化が当初の業務上の又は通勤による傷病と相当因果関 係があると認められること」となっていますので、(1)のア、症状の悪化が当初の業 務上の又は通勤による傷病と相当因果関係がないもの(私病、加齢等によるもの)につ いては再発とは認められないということになります。  次に参考資料3についてご説明申し上げます。前回、「予防その他の保健上の措置」 として認められる範囲はどこまでかについて、ご検討いただいた中で、精神疾患につい て治ゆがあるのか、ないのかというお話がありました。このことに関しては、平成15 年6月に取りまとめられた「精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書」があり ます。これは精神・神経の障害等級認定基準の見直しの根拠となった報告書です。これ については当時、馬杉先生にもご協力いただいたというものです。  その中で、非器質性精神障害の後遺障害の障害認定の時期について、検討結果が示さ れています。それによると、業務による心理的負荷を原因とする非器質性精神障害は、 業務による心理的負荷を取り除き、適切な治療を行えば、多くの場合概ね半年〜1年、 長くても2〜3年の治療により完治するのが一般的であって、業務に支障の出るような 後遺障害を残すケースは少ない。  しかし、症例によっては固体側要因も関係して2〜3年の治療によっては完治に至ら ず症状が改善しないまま推移することもまれにはある。  こうした非器質性精神障害の後遺障害の障害認定の時期、すなわち治ゆとする時期を いつの時点におくべきかであるが、原則として各種の日常生活動作がかなりの程度でき、 一定の就労が可能となる程度以上に症状がよくなった時期、換言すれば、もとの仕事に 復帰できる場合はもとより、職種制限が相当な程度あるためにもとの仕事には復帰でき ないが他の仕事には就き得る程度に症状が良くなった時期とすべきである。  ただし、上記の一般的・平均的な療養期間を大幅に超えて療養をしてもなお、それ以 上症状に改善の見込みがないと判断される場合であって、意欲の低下等により就労がか なわないものの日常生活はかなりの程度できる状態にまで回復している場合には、就労 がかなわなくてもその時期を治ゆ(症状固定)と判断し、後遺症状について障害認定す べきである。  なお、後述する各種の日常生活動作に係る複数の判断項目にわたって「できない」と 評価される等非器質性精神障害による症状が重篤で、日常生活にも大きな支障が生じ、 療養が必要と認められる場合には、非器質性精神障害の特質上、なお将来において大幅 に症状が改善する可能性が十分にあること等から、慎重に治ゆか否かを見極めるととも に、必要に応じて療養を継続すべきである、ということです。  精神障害の治ゆにつきましては、これが行政の認識する最新の医学的知見ということ になります。  参考資料4をご覧ください。行政においては、ただいまの医学的知見に基づき、脳の 器質的損傷を伴わない精神障害(非器質性精神障害)の障害等級認定基準を定めていて、 現在、全国斉一の取扱いをしているところです。ご議論の前提としていただきますよう、 お願いいたします。以上です。 ○柳澤座長 第1回でいろいろ議論されまして、そこで出た「治ゆ」の概念、「再発」 を、どういうふうな状態と理解するか、そして特に議論があった非器質性精神障害の後 遺障害はどこまで療養を必要とし、あるいはどこを治ゆとするかについて、特に最後の 問題については、平成15年6月の専門検討会の報告を基にして、現在、厚生労働省と して取り扱っている概念の定義、枠組みについてのご説明でした。大体、前回(第1回) の時に出た委員の皆さん方の発言内容と、ほぼ対応するというか一致した考え方だと思 います。こういったことを基礎にして議論を進めていくということで、よろしいですか。 ○馬杉先生 先ほど名前が出ましたので、私、このいちばん最後の問題の、非器質性精 神障害の後遺障害の治ゆの時期に関する会議に出ていました。こういう文言でよくまと めてくれたと思うのですが、これは非常に難しかったのです。たしか、いろいろな意見 が出まして、これをご覧になってわかるように、正直言いますといろいろな場合を想定 している文言であり、あまりクリアーにいっていないのです。これで平成15年から後は この条文に沿ってやっていると思いますが、その裏には大変難しいことがあったという ことだけは、認識しておいていただきたいと思います。 ○柳澤座長 わかりました。平成15年6月の検討部会の報告の内容を拝見すると、一応、 多くの場合はどういう経過をとり、まれにそれに当てはまらない場合がある。稀に当て はまらない場合についてはケース・バイ・ケースで、きちんと対応するという理解でよ ろしいわけですね。 ○馬杉先生 ですから、この間のディスカッションの中で、こういうケースもあるでは ないかというのは、いま先生が言われたように稀ではあるけれども、こういうのがある よということも包含しての結論だと思っていただきたいと思います。 ○柳澤座長 わかりました。ありがとうございました。よろしいですか。 ○保原先生 「通常の制限された日常生活を送っているだけ」というのは、具体的に例 えばどういうことでしょうか。 ○柳澤座長 事務局のほうでは、どうですか。 ○長嶋監察官 後遺症状があって、治療を行わない、アフターケアの場合は治ゆ後の話 ですので、特段の治療を行わずに、その障害があることによって制限のある生活を送っ ているという状況と理解しています。 ○柳澤座長 そうすると、治ゆ後の話ですか。 ○長嶋監察官 そういう状況があるものについては、たぶん治ゆ後であろうと。治ゆ前 については療養をされますので、そういう状況はないだろうということです。 ○保原先生 例えば非常に単純な話、労災で腕を1本失ったと。怪我というのは例とし てはよくないのかもしれないですが、そういう場合、「制限された日常生活」というと ころの関係でどう考えるのか。 ○山口先生 だから腕がなくなったという意味においては不自由な生活で、それが「制 限された」という表現になる。「通常の」というのは、それで日常生活を行っていれば と、そういう意味の通常だと。 ○長嶋監察官 はい。 ○柳澤座長 ですから、その理解の中には、必ずしも対象となる被災者の方が自立した 生活を送っているということは要件としては含まれないわけですよね。 ○長嶋監察官 はい。 ○柳澤座長 その点が、前回もちょっと議論されたのだと思います。 ○保原先生 なるほど。 ○柳澤座長 例えば、完全なせき髄の横断性の障害があって下半身完全麻痺になります と、それは何らかの形の介護を受けなければ日常生活は営めないけれども、それから手 が片方、特に利き手が1本なくなったという場合もそうかもしれませんが、それに対し ては、その障害に対しての認定で重症度に応じた認定はされるということであるけれど も、一応、治ゆということで状態が固定されていれば、それは生活機能がどのようなも のであっても、治ゆは治ゆというふうに理解するということのようです。 ○保原先生 ありがとうございました。 ○山口先生 もし問題があるとすると、その中身でなくて日本語の使い方で、制限され た生活を通常の生活と呼ぶのかどうかということです。そこに違和感があるだけではな いですか。 ○柳澤座長 そうですね。 ○園田課長補佐 せめてもう一言、わかりやすくというと、後遺障害による制限とか、 そういう感じです。 ○柳澤座長 なるほど。後遺症はあっても治ゆは治ゆという理解だということですね。  よろしいですか。では今日の検討議題に入りたいと思います。まず対象疾病を限定す ることが適当かということと、どのような疾病を対象とするかということです。まず事 務局からの説明を伺って、それからご議論いただこうと思います。 ○長嶋監察官 資料1の1頁をご覧ください。「対象傷病について」の(1)の「対象傷 病を限定することは適当か。」ですが、前回の検討部会における検討の内容をまとめる と、エの検討概要に記載しているとおり、「対象傷病を限定することは適当か。」とい う基本的な問題は、今回の検討の趣旨いかんによる。アフターケア制度全体を見直して、 制度を再構築するのであれば、この検討は必須だと思うが、現在労働福祉事業の見直し の時期にあって、必要のない制度の見直しや廃止をするというだけであるならば、今ま での運用において、「不自然であること」、「不平等で妥当でないこと」がなければ、 アフターケア制度の基本線まで変える必要はないのではないか。対象傷病を現在の21 傷病に限定すると21傷病を特別に扱うことになり、新たにアフターケアが必要と認めら れる傷病の取扱いをどうするのか、問題となる。「アフターケアを限定することは適当 か。」については、すぐに答えはでないので、検討事項の全体を検討した上で、適当か どうかを判断するほうがよい。というものでした。  この検討内容を踏まえ、2頁のオに今回の検討の留意点を書いています。対象傷病の 追加・変更については、これまで労災医療専門家会議において検討し、その検討結果を 踏まえて実施要領の改正を行ってきているところであり、行政としては、それを不自然 であるとか不平等で妥当でないとか考えているものではありません。労働福祉事業の見 直しの動きもあるが、アフターケアの対象を現在の21傷病に限定し、今後一切追加・変 更を認めないという取扱い、これはご検討のように21傷病のみを特別扱いすることにな りますので、不適当と考えています。よって、対象傷病については、労災医療専門家会 議において、アフターケアの必要性を検討した上で、その追加・変更、さらには削除に ついて判断していくことが適当かということです。  資料1の3頁をご覧ください。(2)は、どのような傷病をアフターケアの対象とする かについてですが、同様に前回の検討部会における検討内容をまとめると、新たな医学 の進歩によって、治療やその後の経過(予後)が変わってきているような傷病であって、 「完全に治った」、「アフターケアを必要とする状態ではなくなった」など、アフター ケアの対象傷病から外せるものはあるのか。現在21となっている対象傷病の見直しとい うことには、これまで様々な要素によって決められてきた経過から、バラバラになって いる個々の対象傷病を一応まとめて、一定の基準に従った形でガイドラインを作る、と いう方向ではないか。アフターケア制度の根本は、「社会復帰を促進する」という条文 を基にしていることにあるので、アフターケアに係る経費が労災保険から支出されるた めには、「社会復帰」という言葉と結びついていなければいけない。「社会復帰」との 結びつきを何かアフターケアでうまく説明できるようなものが基準としてあると、制度 として維持しやすい。というものでした。  この検討内容を踏まえ、今回の検討の留意点としては、アフターケアは、「社会復帰 を促進する」という条文を基にしていることから、アフターケアと社会復帰との関連を 示す基準として、どのような事項を掲げることができるかということです。これらにつ いてご検討をお願い申し上げます。 ○柳澤座長 このアフターケアの基本的な考え方に関する検討部会として、我々に託さ れている作業としては、基本的に対象傷病が現在21あるわけですが、それが適当である とか、あるいは追加すべき障害があるということではなくて、現在、そういう傷病の追 加・削除については専門家会議が行う。したがって、現在私どもがこの部会で行わなけ ればいけないのは、今までの医学の進歩などに鑑みた形でアフターケアについて、例え ばそれが必要であるか。あるいは削除してもいいのか、アフターケアということを認め るとすれば、どういうふうなプロセスでそれを認めたり、更新する条件を付ければいい か、そういう具体的な事柄の検討だろうと理解しています。大体、そういう理解でよろ しいですね。  そうすると、事務局のほうで今回の検討として提案されているのが、資料1の4頁に ある「社会復帰を促進する」という趣旨があるということなので、社会復帰の促進とい うことに関連した基準として、どのような事項を掲げることができるか。この「どのよ うな事項」というのは、具体的には社会復帰を促進するということで、傷病を持つ労災 の患者さんのアフターケアを認定する上での要件とか、あるいはアフターケアを実施す ることによって何を目指すべきであるのか、そういったようなことを一応まとめて議論 した上で、先のアフターケアとしての傷病の包括というか、リストアップということに なると思います。この検討事項の中の「対象傷病を限定することは適当か」というのは、 ちょっと変な話で、この部会で議論することではなさそうですが、奥平先生、いかがで すか。これが掲げられたというのは、何か我々の部会としても限定することについて議 論が必要だということなのでしょうか。 ○奥平先生 もしこれを議論の対象とすれば限定しないで、今後、対応するほうがいい ということになるのではないかと思います。 ○柳澤座長 なるほど。そうすると労災傷病すべてについて、アフターケアの必要な患 者さんについては然るべき審査を行って、アフターケアを認める。 ○奥平先生 専門検討会でご提言があればということで、提言がなければする必要はな いでしょうし、ただ、限定してしまうことが適当かどうかという設問であれば、限定す べきではないと思います。 ○山口先生 それは、なぜ21傷病になったのかというのは理論的なものでなくて、いろ いろな経緯があってそうなっているだけです。 ○柳澤座長 一つひとつ追加されていって、その一つひとつ追加された経過には、それ なりの理由があるわけですが、結果として現在の段階では21傷病が残った。 ○山口先生 21というのに何か理論的な意味があるわけではないでしょうから。 ○柳澤座長 22以上はいけないとか、そういうことではないですよね。 ○山口先生 ただ、ここで書いてあるので私が重要かなと思ったのは、21に限定するの は誰が考えてもおかしい。だから必要に応じて追加をしていくというのは当然のことだ と思いますが、片方で、医学の進歩でもう必要がないというのを落としていかないと、 大学の授業と一緒で誰も聞いていない時間割を組んでという感じになりますから。 ○柳澤座長 わかりました。そうすると、それは限定すべきではないということで、よ ろしいでしょうかね。それでは結構です。そうすると社会復帰との関連を示す基準とし て、どのような事項を掲げることができるか、この点についてはいかがですか。これは 設問がやや抽象的な感じで議論するのが難しそうですが、どういうところですか。 ○長嶋監察官 もともとの検討につきましては、対象とする傷病として、これこれ、こ ういう傷病をアフターケアの対象とすると個々にはあるのですが、それを全体にまとめ たようなものを概念的に整理できないかというのが一つです。ですからアフターケアの 対象となる傷病はこういう傷病をいう、とまとめていただくのが本来の目的であったの ですが、前回の検討の中で、アフターケアと社会復帰との関連性というところの検討が ありましたので、アフターケアが社会復帰とどのような形で関連できるかという、その 考え方の整理を一つ追加でお願いしたいということです。 ○柳澤座長 それは、「アフターケアを行うことによって社会復帰が期待される」とい う表現では駄目なのですか。 ○長嶋監察官 前回の検討の中では、社会復帰というものについて、職場に復帰すると いう発言もありましたし、そういうところに限定するのではなく、もう少し広くという 発言もありましたので、その社会復帰をどのように捉えるかというのが、ひとつのポイ ントかなとは考えています。 ○柳澤座長 社会復帰の範囲というか、その概念ですね。それは前回議論して大体一致 したと思いますが、必ずしも職場復帰に限定することではなくて、家庭生活であれ、あ るいは家庭生活から少し広がった社会生活であれ、その傷病者にとっての家庭生活も含 めた社会的な活動の改善に、より近づけるのに資するようなサービスが提供されるとい うことであれば、それはアフターケアというふうに理解していいという、大体そんな理 解かと思います。それでよろしいでしょうか。 ○奥平先生 労働者災害補償保険法のいちばんの眼目が、労働者の福祉の増進に寄与す るということですから、その線に沿った社会復帰の促進ということで、必ずしも職場に 復帰ということをうたわなくてもいいのではないかと思います。純粋に寄与すればいい と。その寄与したものがうまく奏功すれば復帰してもらうという観点で捉えたら、いか がかと思ったのです。 ○柳澤座長 いまのお話で福祉という言葉が出てきましたけれども、福祉ということを 考えると、前回議論したアフターケアのサービスの内容について、7つか8つあったの を4つに整理し、そこに全部包括しようということで議論されたわけです。あの範囲を 超えるサービスが必要であるとかないとか、そういう議論が出てくる可能性はあまり考 えなくてよろしいですか。福祉と言うと何でもかんでも入ってくるという印象がありま す。 ○奥平先生 最後のいろいろなものを一括するときに、「保健上の措置」という言葉に なったと思います。 ○柳澤座長 はい、そうですね。 ○奥平先生 保健上の措置のところに傷病者の生活指導などをはっきりうたっていけば いいのではないかと思ったのです。例えば先ほど先生からお話がありましたように、日 本のプロ野球選手がタバコを吸っている、とんでもない話だ、アメリカの人はそう考え るというように、呼吸器疾患の人がタバコを吸っている、じん肺の人がタバコを吸って いるというのは、やはりそれは止めていくようにはっきり指導しなければいけないこと だと思います。肝疾患の人はアルコールを飲み過ぎてはいけませんよとか、そういう医 学的に根拠のある生活指導というものを、きちんと打ち出していけばいいのではないか と思います。 ○柳澤座長 そういった保健上の措置ということの中に、生活指導というのを入れてい く。確かにそれは他の身体障害福祉法とか障害者自立支援でもみんなそうなのですが、 そういうふうな、要するに対象者の側の自立する心構えと具体的な活動ということを要 求するというのは、最近のこういった社会保障関係の法律では、ずいぶん議論されてい ますので、それは労災の場合も当然必要だろうと思います。それは何らかの形で文言と して、一応、この検討会からの答申に入れておくようにしていただけますか。従来は本 当に受け身の形でしか傷病を持った人たちがサービスを受けていなかったという傾向 が、ともすればあったのではないかと思います。そうではなくて、そういった傷病者自 身の生活についての努力をできるだけ重視して、そういうもので社会復帰に結び付ける ような努力が必要であるということは大変大事だと思います。 ○山口先生 私もその考えに賛成です。ただ、この経緯を申しますと、「福祉」という 言葉は「福祉事業」という言葉を導き出すために、たぶん置いたのだと思います。厚生 労働省で厚生省方がやってきた社会福祉というのが、かなり中身が違っているのだろう と思います。もともとは保険施設というので、施設と言うといかにも建物くさいですけ れども、実際の施策のことを、横文字からの翻訳で保険施設と呼んでいたのです。保険 というのは健康のほうではなくて社会保険の保険です。それは本体の保険の給付ではな いけれども、保険の運営を全般として円滑にしていくというものを、そこでやってよろ しいということになっていましたから、例えばタバコを吸うなどという広告をテレビに 出すとか、健康保険だったら誰でももらっていると思いますが、家庭医学百科なんてい うのを大体くれますね。ああいうのはみんな保険施設でやっていたのだと思いますから、 社会復帰というのを労働福祉事業でやるときには、必ずしも、もと働いていた現場に戻 るということにとらわれなくてもいいのだろうと思います。 ○保原先生 法律の条文では、福祉というのと社会復帰というのは、どういう表現にな っているのですか。 ○山口先生 社会福祉というのは、法律の目次で1条に書いてあるのです。 ○保原先生 社会福祉事業のところには書いてないのですか。 ○山口先生 社会復帰は保険施設というか、そこの根拠条文なのです。 ○長嶋監察官 もともとは、労災保険法の目的に「社会復帰の促進」という言葉と、「労 働者の福祉の増進に寄与する」という言葉があります。それから労働福祉事業は労災保 険法の第29条ですが、そこの第1項1号に「円滑な社会復帰を促進するために必要な事 業を行う」という言葉が入っています。 ○保原先生 そうですか。そこでは「福祉」という言葉は出ていない。 ○長嶋監察官 もともとの条文の見出しというのが、「労働福祉事業」ということで「福 祉」という言葉は入っていますが、特段、「福祉」という言葉だけを。 ○保原先生 条文の文言にはないと。 ○長嶋監察官 29条の1項に、「政府はこの保険の適用事業に係る労働者及びその遺族 の福祉の増進を図るため」ということで入っています。 ○明治補償課長 29条の条文の中に書いてあります。 ○保原先生 条文の中にあるのですね。 ○明治補償課長 はい。 ○柳澤座長 よろしいですか。 ○明治補償課長 第1条の目的の中にも、いわゆる社会福復帰の促進等を例示した後、 それらを括った形で、「労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする」と規定され、 29条の労働福祉事業の条文の中にも「労働者等の福祉の増進を図るため」という目的が 掲げられています。 ○長嶋監察官 第1回の全体会のときの資料5に、根拠条文としてその関係の条文を載 せていますので、ご参照いただけたらと思います。 ○柳澤座長 先に進みましょうか。いまの生活指導とかは4とか5のほうに入り込んで しまった感じがありますけれども、一応、(1)の「対象傷病を限定することは適当か。」 は、適当であろうと思います。(2)の「どのような傷病を対象とすべきか。」は、「医 学の進歩によってアフターケアが必要ないと認められる傷病については、外す方向で検 討する」という抽象的な言葉になってしまうわけです。個々のものについては、検討し ないということですから、それは21傷病の中で外せるものがあるかどうかを検討してく ださいということが、この検討部会からの提案ということで、よろしいでしょうか。 ○長嶋監察官 社会復帰の関係について、職場復帰ではなくてもう少し広くというご議 論でしたが、いまの対象傷病の部分については、座長が言われるように具体的な規定と いうのは難しいというところです。現在、アフターケアの実施要領においては、後遺症 状に動揺を来したり、後遺障害に付髄する疾病を発症させるおそれがある場合に、予防 その他の保健上の措置を講じ、としている、これが抽象的ではないかということから、 もう少し具体的な形での基準を示せないか、ということで提案しているところです。こ れ以上具体的なものを規定するのは難しいということでしょうか。 ○柳澤座長 医学的な立場からいくと、一般論として、もっと細かく限定的な内容を記 載して条件を付けるというのは、ちょっと難しいような気がしますが、いかがでしょう か。 ○奥平先生 対象傷病で外すものがあるかという議論よりは、いまのアフターケアが医 学の進歩から見て、適当かどうかということを検討していただくという表現等がよろし いかもしれません。 ○柳澤座長 よろしいと思います。いま事務局から言われたのは、アフターケアの対象 者についての定義というか範囲を、もう少し具体的な条項を入れて絞れるかということ ですね。それは本当にケース・バイ・ケースで、例えば白内障で全部手術して眼内レン ズを入れたら、ほとんどアフターケアを必要としない。でも放射線障害による白内障な どの場合に、ケースによってはそういった手術をしても、あるいはできなかった場合に、 ずっとアフターケアをしなければいけない、この法の趣旨に合致した被災者の人が出て くる可能性を、医学的に否定することはできないのです。  ですから、前回議論したように、ケース・バイ・ケースできちんとした基準というか、 法の趣旨に沿ってこの人はアフターケアが必要であるということを、何らかの形で診断 書なり意見書として出してもらって、それを認定するということではないかと思います。 それは器質性精神障害の場合も同じことで、大部分は2年なら2年ぐらいの経過で治り ますよと、しかし治らない人も当然いるわけです。そういう人の場合には、どういう状 況であるかということをきちんと意見書として出してもらって、それによって法の趣旨 に沿った形でアフターケアを認定するかどうか判断する。そういうプロセスではないか と思います。したがって、一般論としてあまり定義の内容を変えるということは、ちょ っと私はうまい知恵はないのではないかと思いますが、馬杉先生、いかがですか。 ○馬杉先生 おっしゃるとおりで、これを読んでみると難しいですね。 ○山口先生 事務局が考えておられるのは、先回、いろいろな議論が出たと思います。 生産活動に従事できるという状態には制限しないというのは、かなり皆さんの同意があ った意見だと思います。日常的な最低限の能力が維持・回復した状態であるとか、いろ いろな意見が出ました。  そうすると、社会復帰についてというのはいくつかの要素というか、法律の言葉でよ く「要件」というものですけれども、治ゆ後ですから「療養を必要としない」というの が1つです。職業生活への復帰というふうに狭く限定しないということですから、「日 常生活を続けられる」というのが1つの水準になると思います。3番目は、再発でない ということですから、「治ゆ時の生活機能が維持できる」。こういう要素を考えると、 文章の表現としては「療養なしに日常生活を続けていく機能が維持される状態」、これ を社会復帰と呼んでいいのではないかと思います。そういうところで事務局のほうで少 し文章を考えてくださって、根拠条文に結び付けるようにしてくださればいい。根拠条 文に結び付いていないと、法律上の根拠をと言われると困りますから。 ○柳澤座長 わかりました。おっしゃるとおりだと思います。確かに、いまここで議論 していても、現場の人たちは、必ずしもそういう議論の内容を知った上で意見書などを 書くわけではないので、なるべく明記してあげたほうがいい。そういう趣旨であれば、 それはいま山口先生の言われたような形で、文言をできるだけ加えたほうがいいと思い ます。  社会復帰というものが、必ずしも職場復帰ではなくて日常生活を維持できるというこ とですが、その日常生活の維持も必ずしも自立ということを条件とするわけではないと ころです。その辺のこともわかるような形で事務局のほうで文言を整理していただきた いと思います。 ○長嶋監察官 わかりました。 ○柳澤座長 よろしいですか。 ○山口先生 健康保険のほうでやっている、昔のあれでやっているのはどんなものがあ るのか、ちょっと見てご覧になったらどうですか。たぶん加入者に家庭医学百科を配っ ているのは保険施設で配っているのだと思いますけど、ああいうのまで入っていて、あ れは何も健康の増進に寄与しないです。あれを読んだら気分が悪くなるだけです。 ○柳澤座長 いまの件は、資料が来たらまた見ていただくということで、先に進ませて いただいてよろしいですか。次は「対象者の適否を障害等級によって判断することは適 当か。」ということですが、これは現実にアフターケアが、個々の疾病によっては何級 以上ということが決まっているわけですね。 ○長嶋監察官 はい、「原則として」と「必要に応じて」という形です。 ○柳澤座長 それは事務的にいろいろな申請をある程度整理する上で、「原則として」 という言葉があるなら、私は残しておいてもよろしいかと思いますが、いかがでしょう か。 ○奥平先生 従来のやり方で何か問題が出てきていますかね。それがいちばん問題です。 ○長嶋監察官 今回は考え方を整理するという意味合いの検討であり、そういう見方だ けではないのではないかということから、ご検討をお願いしたということで、特段支障 があるということではありません。 ○柳澤座長 一般的には、障害等級が重いほうがアフターケアを必要とする度合いは多 くなるだろうということは理解されますので、それを外してしまうと、軽症の人が我も 我もと申請してきたときに、どちらかというと事務上の処理が煩わしいということがあ りますので、「原則として」ということを付けておけば、例外として等級の軽い人であ っても、この人はアフターケアが必要ですと申請されてきたら、それを検討すればいい。 そういうプラクティカルな意味からも障害等級を設けるということは、よろしいでしょ うか。そのまま続けるということです。 ○長嶋監察官 そうしますと、資料の7頁のオの「留意点」で掲げていますけれども、 基本的には障害等級を指標として、また、円滑な社会復帰ということを考慮して対象者 を判断するということで、現行の取扱いについて適当とご判断いただけたということで、 よろしいでしょうか。 ○柳澤座長 はい。それでよろしいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。 ○奥平先生 労災疾病の場合に、特定の専門医でなくて診断書が書けるとか意見書を出 すことができる、いま、そういうシステムになっていると思います。そうすると障害等 級を判断する人を、もう少し限定することを考えたほうがいいのではないかという気が しています。 ○柳澤座長 そうですね。 ○長嶋監察官 アフターケアの障害等級何級以上というのは、労災医療専門家会議にお いて決定していただいているところですので。 ○奥平先生 でもその等級の判断をする人が、医師であれば誰でも判断できるというの でなくて。 ○柳澤座長 むしろ労災の認定の場合ということ。 ○長嶋監察官 通常、障害等級を認定する場合については、まず主治医の意見を聞き、 さらに医局医なり専門医の意見を聞いてという形で認定しています。 ○奥平先生 ダブルチェックになっている。 ○明治補償課長 障害補償の認定を前提として、そうしたチェックが働くということで す。 ○山口先生 最後は、障害等級というのは役所が認定するのですね。ドイツはお医者さ んがやるようになっている。 ○馬杉先生 前回申し上げましたので、もう申し上げませんけれども、頭頸部外傷症候 群で12級ぐらいでも、社会復帰するためにはアフターケアが必要かなというのは、い ままでの制度でも意見書を書けばアフターケア手帳は交付されていますので、先ほど言 われたように、いまのままで運用には私は支障はないのではないかと思います。むしろ、 あまりいじると。 ○柳澤座長 そうですね。 ○馬杉先生 このままでよろしいと私は思います。 ○柳澤座長 わかりました。よろしいでしょうか。次は「措置内容を限定列挙すること は適当か。」ですが、これは事務局から説明をしていただいて議論しましょうか。 ○長嶋監察官 資料1の8頁をご覧ください。措置範囲についての(1)の「措置内容を 限定列挙することは適当か。」についてですが、前回の検討部会における検討の内容を まとめると、医学の著しい進歩によって新しい治療法がでてくるが、仮にそれに係るア フターケアの見直しが2年後であり、見直しに1年間を要するのであれば、その3年間 について、新しいアフターケアを適用できないと労働者にとって著しく不利になるとい う考え方はある。しかし、これまで労災補償行政は、それを取り入れることを比較的よ くしてきている。新しい治療法がでてアフターケアの見直しをしなければならないとい うのであれば、2〜3年に1度でも労災医療専門家会議を開催し、検討すれば足りるの ではないか。という検討でした。  この検討内容を踏まえ、今回の検討の留意点としては、医療技術への適応については、 2年から3年に1度程度の割合で労災医療専門家会議において検討・見直しすることで 適当か、ということでお諮りしたいと思います。  資料1の9頁をご覧ください。(2)は「『予防その他の保健上の措置』として認めら れる範囲はどこまでか。」についてですが、これについては前回の検討部会においてよ く検討していただいています。  その内容ですが、医学的な見地に立つと、「治療行為」と「保健上の措置(機能を保持 するための保健上の措置)」をクリアに分けることはほとんど不可能ではないか。  それを、アフターケアの制度上で、ほぼ統一的な考え方に従って整理できるのか。  アフターケアの範囲として、「理学療法」とか「注射」とかいう言葉が表立って上が っている。  「理学療法」とか「注射」とかいうのは、明らかに治療法として本来把握されるべき ものであり、こういう形で列挙されているのは不適切である。  これらの項目が入ると、「治療」とどう区別するのか、言葉上でも抵触してしまうこ とは確かにある。  昔は、「注射」はアフターケアに入っていなかったもので、「治療」とどこで線を引 くかは非常に難しい。  アフターケアは治療ではないわけだから、アフターケアの範囲については、「診察」 「保健指導」「保健のための処置」の3つを項目立てし、「理学療法」「注射」「検査」 「精神療法、カウンセリング等」「保健のための薬剤の支給」で必要なものは「保健の ための処置」の中に入れて、項目からは外したほうがよい。  そうすると、アフターケアを「予防その他の保健上の措置」としている精神が生きて くるのではないか。  疼痛は症状固定した状態であっても、時として現れてくるので、疼痛対策としての措 置は、「注射」であってもアフターケアの対象にするということならば、「保健のため の処置」に含めても、そんなに違和感はない。  「理学療法」等も含め、実際に行われているものはそのままでよいのではないか。  なお、「保健のための処置」として、積極的な医学の関与だけでなく、アフターケア を受ける人に対する保健上の要望とか注意(受益者の態度、教育、保健指導)というよう なものも入れてよいのではないか。  「精神療法、カウンセリング等」についても「保健のための処置」の項目の中に入れ るが、精神障害の場合、カウンセリングは治療そのものではないか。  精神障害については、アフターケアの本来の概念の中で整理することが簡単にはでき ないのではないか。  精神疾患には「治ゆ」があるのかないのか、一度かかると、いつでもぶり返す可能性 があるから「治ゆ」はないという見方をするのか。  行政では、器質的損傷を伴わない精神障害についても治ゆとなる状態はあるとして障 害等級を設定している。  医学的用語としての「治ゆ」ではなく、労災保険上の「治ゆ」の概念をもう少し明確 にして、精神科の医師に意見を求める必要があるか。というものでした。  この検討の内容を踏まえ、今回の検討の留意点としては2つあります。(1)はアフター ケアが「治療」ではないことを文言上も明らかにするために、違和感のある項目(具体 的には理学療法、注射、検査、精神療法・カウンセリング等、保健のための薬剤の支給) については、これを削除することが適当かということです。(2)は、削除する項目として これまで実施してきた措置については、診察、保健指導、保健のための処置に含めて実 施することは適当かということです。これらについてご検討をお願いします。 ○柳澤座長 前回の議論の内容を踏まえて整理していただいたわけですが、1つは新し い医療技術の進歩によって、アフターケアを必要とする対象疾患を検討するべきかどう かについては、一応、2年から3年に1回程度、労災医療専門家会議において検討、見 直しをするということでカバーできるだろうということです。これはよろしいですか。 では検討部会としてはそういう結論とします。 ○奥平先生 その問題ですが、従来、労基法施行規則35条の定期的検討委員会というの がありました。それと同じように、この問題についてもアフターケアについての定期的 検討委員会を常置するということにすれば、より見落しがなく割合に早く対応できる。 新しい問題が出たときに早く対応できるのではないかと思ったのですが、どうなのでし ょうか。 ○長嶋監察官 現行、こういう会をセットする場合については、常設ということは難し い状況にあります。必要のたびに、必要な先生方にお集まりいただいてという形をとっ ているということです。ですから、2年から3年という場合であっても、そのときには また先生方にお声を掛けさせていただいて、お集まりいただくというやり方をさせてい ただくことになると思います。 ○馬杉先生 あの見直し委員会というのは定期的に開催されていたではないですか。 ○天野職業病認定対策室長補佐 常設委員会として定期的にやっていたのですが、その 都度開催という形に変わりました。 ○明治補償課長 常設の委員会は審議会等ごく一部に限られて、それ以外は必要に応じ 不定期に開催することとされています。 ○山口先生 それは8条のほうになってしまうのですか。 ○明治補償課長 はい。先生からお話のあった点についても、実質的に2、3年に1度 を目安に検討を加えることは、別に問題ないと考えています。 ○馬杉先生 その都度ということですね。 ○明治補償課長 はい。 ○柳澤座長 2番目の、治療行為とアフターケアのまぎらわしさ、オーバーラップを避 けるために、文言の上で「診察」「保健指導」「保健のための処置」と整理しようとい うことですが、これも前回のご議論では、それでいいだろうということだったと思いま す。ただ、その場合にただその形でボンと出してしまうと、では注射とか、いろいろな ことは切られたのかと現場で考えられると困るので、これも補足の文言をきちんと入れ ておく必要がありますよね。  補足の文言としては、実際に治療行為と考えられるような「注射」であるとか、「理 学療法」であるということも入れないといけませんかね。つまり、いままでのものを削 るということではないのだということがありますので、それに加えて、先ほどからご議 論になった生活指導の問題とか、受益者の態度、教育、保健指導といったものも是非い れるようにして。それは事務局で文言の整理はできそうですか。 ○長嶋監察官 前回のご議論でも、現行あるものについて否定して、削ってしまうとい う話ではなかったと理解しているので、それは今回の留意点として、削る項目の措置に ついては実施することが適当、とまとめていただければ。 ○柳澤座長 適当であり、さらにこういうことが追加されるのが望ましいということで、 従来からの文言になかった教育とか、生活指導というものを加えるのであれば。 ○長嶋監察官 それはまとめさせていただきたいと思います。 ○柳澤座長 よろしいでしょうか。措置については、10頁の留意点として、第2回の検 討部会としてどうしますかということで、文言の上では、ここに書かれたような医療行 為に含まれると理解されるようなものについては削除する。そして、「診察」「保健指 導」「保健のための処置」というふうに含めて実施するということで、その具体的な内 容については、アフターケアについての具体的なサービス内容は別途定められるとか、 そういう形の理解でよろしいですかね。 ○長嶋監察官 はい。 ○柳澤座長 文言としては何か上の。 ○長嶋監察官 具体的には、現在も各傷病ごとに実施要綱で定めていますので、実施要 領の項目から削られたもの、そこは削るわけですが、要綱の中にそれぞれの傷病で入れ る形になります。 ○柳澤座長 そうすると、基本的なここでの議論の内容に沿った形で、事務局に処理を していただくということでよろしいですかね。 ○長嶋監察官 はい。 ○柳澤座長 ここはよろしいでしょうか。 ○山口先生 この表現で、「診察」「保健指導」はいいですが、いまやっている「検査」 とか、「薬剤の支給」は入りますか。 ○長嶋監察官 3つ目の「保健のための処置」というところで、全部包括的にまとめた いと思います。 ○山口先生 それは本来治療に当たる可能性の高い、注射とか、カウンセリングという のを必要な限度において含ませるというのはいいかと思いますが、検査というのはもと もと治療ではないのだから、独立であってもよさそうな気もしますが、それはおかしい のですか。 ○長嶋監察官 前回のご議論で、アフターケアが治療でないことを明確にするという意 味から、そのようなまとめ方が適当というお話だったものですから、項目については3 項目、内容についてはそちらに埋め込むことにしています。言われるように、検査その ものを残すということも考え方としてあるのですが、あくまでも考え方を整理する上か らは、3項目としたほうがよりいいのではないかということだと思います。 ○柳澤座長 わかりました。似たような議論は、いま介護保険と医療保険の住み分けの ところであるのです。医療保険でも、介護保険でも、同じような診療行為というのはカ バーできるようになっていますので、それをなるべく分けて整理してこうという話で、 ここもおそらく療養とアフターケアを形の上で分けようということで、実態として行わ れる医療行為も重なりはあるにしても、制度的には分けておくと、そういう理解ですね。 ○長嶋監察官 はい。 ○柳澤座長 よろしゅうございますか。そうしますと、5までが終わりました。次に6 の「傷病ごとにアフターケアの実施期間を定めることは必要か。」というものですが、 この現状の問題点について事務局から説明してください。 ○長嶋監察官 資料1の11頁をご覧ください。実施期間の(1)「実施期間を定めるこ とは必要か。」についてです。前回の検討部会における検討内容をまとめると、アフタ ーケアに実施期間の定めがないというのはおかしい。一定の期間ごとにアフターケアの 必要性を見直し、場合によってはアフターケアを終了するということを手続き的に行う ことは、すべての傷病について適切と考える。実施期間を定めるとすれば、対象傷病ご とに見ていかなければいけない。こういうものでした。この検討内容を踏まえて、今回 の検討の留意点としては、「アフターケアに実施期間を定めることは、その必要性を見 直すという観点からも適当であるか」ということです。  資料1の13ページをご覧ください。(2)「実施期間はどのように設定すればよい か。」についてです。前回の検討部会における検討内容をまとめると、実施期間の設定 は、医学専門家の検討によって決めることになる。実施期間に制限がない対象傷病であ っても、最近の人工関節などは非常によくできていて、社会生活に全く支障がない人も いる。現在、2年、3年、無期限となっているアフターケアの実施期間については、全 ての対象傷病について、その病態を検討し、実施期間を見直す必要がある。見直しの結 果、原則とした期間の中に対象傷病のほとんどが収まるというのが実施期間についての 考え方ということでした。この検討内容を踏まえて、今回の検討の留意点としては、1 つは「実施期間は医学的検討によって定めることが適当であるか」、2つは「実施期間 は対象傷病ごとにアフターケアを必要とする期間、その期間の終了をもって、ほとんど の事例がアフターケアを終了することができる期間を定めることが適当か」、3つは「現 在の21対象傷病の全てについて、病態を検討し、実施期間を見直すことは適当か」とい うものです。  資料1の14頁をご覧ください。(3)「実施期間の更新に制限は必要ないか。」につ いてです。前回の検討部会における検討内容をまとめると、実施期間を定めた以上、更 新が緩やかに無制限にできるのであれば、実施期間を定めたことと矛盾する。無制限に 更新が繰り返されるのはアフターケア本来の趣旨とは違う。2年経つと終了するとか、 3年経つと終了するというように決められるのは白内障くらいか、あとはみんな継続し 得るアフターケアを必要とするような対象者が出てくる可能性があるのではないか。健 康管理手帳の更新時に医師の診断書を出させるようになって更新件数は減ったか。健康 管理手帳の更新時にアフターケアの必要性をきちんと見直せば、いたずらに実施期間が 長引くことを防げるのではないか。アフターケアを受けている者にもアフターケアは有 限であること、アフターケアを継続するためには一定の条件を満たすことが必要である と自覚してもらうことが必要ではないか。健康管理手帳の更新時にはアフターケアの趣 旨に従った形で、きちんとした診断書を提出することを条件とするようなシステム的な ものが必要ではないか。健康管理手帳の更新時に主治医から求める診断書には何を記載 していただくか。現在、現場では主治医に対して、今後のアフターケアの必要性等、難 しいことを記載することは求めていない。無制限に更新を認めることにならないために は、こういう特殊な状態がまだ残っているとか、アフターケアで措置していかないとい けないこととか、更新の必要性がわかるような診断書を出してもらう必要がある。診断 書については、労災病院の医師等専門医の意見を取ることも考えてよいのではないか。 加齢の問題については運用上、できるだけ適切に対応してもらうということか。という ものでした。  検討内容を踏まえて、今回の検討の留意点としては、(1)実施期間を定める以上、無制 限に更新を認めることは適当ではないのではないか。(2)更新の制限規定を定めることは 適当か。(3)実施期間の更新に当たっては、医師にアフターケアの必要性を確認するため の診断書、意見書の記載内容の充実が必要か。(4)対象者に対しアフターケアが無制限で ないことを自覚させるための取組は必要かということです。  なお、参考資料5として、「健康管理手帳の更新の必要性の確認に関する事務連絡」、 参考資料6として、平成15年度から平成17年度の3年間ではありますが、健康管理手 帳の更新をしなかった方の数の推移の表をお配りしています。以上についてご検討をお 願い申し上げます。 ○柳澤座長 健康管理手帳の更新というのは、何年ごとに行われるのですか。 ○長嶋監察官 2年のものと3年のものがあります。 ○柳澤座長 それはアフターケアの実施期間が、従来2年ないし3年となっていますが、 それと大体一致しているのですか。 ○長嶋監察官 2年になっているものについては2年でと。 ○柳澤座長 そうすると、アフターケアの更新と健康管理手帳の更新は大体一致してい るということですか。 ○長嶋監察官 制限のないものについては、3年更新ということです。 ○柳澤座長 それでは以上の点についてご議論いただきたいと思います。まず、「実施 期間について」ということの中で、「傷病ごとにアフターケアの実施期間を定めること が必要か。」ということですが、いままで、2年、3年、無制限となっていたので、そ れを改めて変更する特段の理由はないように思いますが、よろしゅうございますか。実 施期間を定めることは必要であると、その場合の趣旨としては、必要性の見直しも含ま れると。 (了承の声あり) ○柳澤座長 次は「実施期間は、どのように設定すればよいか。」ということで、これ はだいぶ議論されたところです。これは実施期間の設定は医学的検討によって行われる べきであると、これもよろしゅうございますね。 (了承の声あり) ○柳澤座長 対象傷病ごとにアフターケアを必要とする期間を定めることは適当かとい うことですが、これは適当であるということでよろしいでしょうか。現行の21傷病につ いて病態を検討して、現在の医療技術の進歩も念頭に置いた上で、病態を検討して、実 施期間を見直すことは適当であろう、その作業は必要であるということで、よろしゅう ございますか。 (了承の声あり) ○柳澤座長 次は14頁で、「更新に制限は必要ないか。」ということで、これはアフタ ーケアを必要とする状態がどのくらい続くのかということを、傷病名ごとに一律に決め ることは、いまの段階では難しいと思うので、傷病ごとに更新の制限をすることは、あ まり適切ではないということだろうと思います。  15頁の留意点のところに、第1回の検討内容を基にして検討すべきこととして整理さ れていますが、無制限に更新を認めることは適当ではないというのは、更新の趣旨とし ては無制限に更新を認めることは適切ではない。更新を必要とするという条件について、 きちんと規定して、それを実施するということになると思うので、更新の制限というの は回数の制限ではなくて、要件の規定というか、アフターケアを必要とするという状態 について、もう少し詳しくきちんとした意見書を出してもらって、それの審査をする必 要があるだろうと。  そうすると、実施期間の更新に当たっては、(3)の医師にアフターケアの必要性を確認 するための診断書の記載内容を充実させることが必要であろうと、これは前回も議論さ れましたが、そういう方向で意見はまとまっていったと思います。  (4)の、対象者に対してアフターケアが無制限でないことを自覚させるための取組、こ れは(3)の意見書、診断書を書くときに、対象者に対していろいろ説明されるわけなので、 こういう要件が満たされなければアフターケアは受けられませんという教育にもなると 理解できますので、改めて別の形でいろいろ教育をすることは、特段に必要ないと思い ますが、もし必要であるとすれば、それはアフターケアの制度というのはどういうもの だということを対象者に、健康管理手帳を配付するときにパンフレットのようなもので 記載したものをあげて、よく読んでくださいというようなところだと思いますが、それ はやっていますか。 ○笹川係長 それはやっております。 ○柳澤座長 そうしますと、今回の検討を加えて、全体の会議としてまとまった結果に ついて、そういうパンフレットならパンフレットの内容の見直しをしていただくという ことでよろしいかと思います。  問題は実施期間の更新に当たって、意見書をきちんと記載してもらうことが適切であ ろうと、この検討会としては意見はまとまると思うのですが、その実施上の問題として、 予算的な裏付の問題は前回少し出ていたような気がするのですが、それはいかがですか。 ○明治補償課長 そこは特段気にしていただく必要はないと思います。ただ、いずれに しても主治医から出された意見書、これはこれから要件を設定するのだと思いますが、 それを出されて、どういったケースのときにレアケースとして更新を認めていくかとい う判断基準もこちら側にないと。 ○柳澤座長 そうですね。 ○明治補償課長 大方は実施期間内にアフターケアの措置は終わるであろうと。例外的 に認めるレアケースについては、こういう要件を満たせば更新してもいいという基準を 行政サイドにも持てればありがたいということです。 ○柳澤座長 そうすると、それは更新の場合でも、身体障害者福祉法の場合の意見書あ るいは診断書と同じような形で、個々の傷病について、アフターケアについての意見書 の様式をきちんと作らないといけないのでしょうね。それは大変な作業になるかもしれ ませんが、どうですか。全体に共通するような意見書ができる可能性はありますか。い まはごく簡単な意見書なので、それが可能なのだとは思いますが。 ○奥平先生 各傷病の専門家の方に、検討項目をお願いすればできるのではないかと思 います。例えば、ウイルス性慢性肝炎の場合には、別にまれなケースではなくて、かな り多くのものがずっとチェックしていかないと、肝硬変、肝癌になる可能性があるわけ ですから、傷病によっては必ずしもまれとは思われないのです。  でも、それは例えば肝炎であれば戸田先生とか、そういう専門の方に、どういう要件 があれば、引き続きアフターケアをしていく必要があるという表のようなもの、あるい はチェック表のようなものを、各疾患ごとに作っていだたくことは可能ではないかと思 います。 ○柳澤座長 各疾患ごとに、そういった意見書の様式についての項目をきちんと決めて、 意見書を書いていただくべきだというご意見です。  ちなみに、最初にアフターケアが必要だと認定する場合には、そういった意見書は出 してもらっているのですか。 ○笹川係長 出してもらっています。 ○柳澤座長 それはかなり細かいことが書かれているのですか。 ○笹川係長 そうです、病状をかなり細かく書いていただいています。 ○柳澤座長 身体障害者の等級認定の意見書と似たような感じですか。 ○笹川係長 障害等級の認定と併せてやりますので、そこの内容と合わせて判断してい ます。 ○柳澤座長 わかりました。そうすると、すでにその21傷病についてはそういった書式 があるわけですから、そういった書式を参考にして。 ○笹川係長 傷病ごとにはないです。 ○柳澤座長 傷病ごとにはないのですか。 ○西井課長補佐 障害等級の認定の意見書はフリーで、主治医に必要な項目を書いてい ただく形になっていまして、傷病ごとに作成するものではありません。 ○柳澤座長 そうすると、アフターケアの場合に必要であるならば、従来からの議論で は意見書をきちんと書いていただく必要があるということで、傷病ごとに意見書の内容 についてのひな形を専門家に検討していただいて、作成すると。  その場合には、どういった項目が必要かということは、従来のアフターケアの健康管 理手帳を発給するときに、作られた要件を参考にして、各疾病ごとの必要な条項を入れ てということで、数形を作って、然るべく専門家会議で承認していただくという手続き になるかと思います。ここでは、とりあえず21傷病ごとに意見書を作成し、それを審査 をする形で更新を行うことが適切であるということで、まとめることになると思います。 ○馬杉先生 今回考えているのは、いたずらに不必要なのにいつまでもアフターケアを やるというのをきちんとしようという趣旨だと思います。参考資料6を拝見すると、平 成15年度、平成16年度、平成17年度の健康管理手帳を更新しなかった者の数の推移が 書いてあります。このバックグランドはいくつぐらいあるのでしょうか、それを見ない と。 ○西井課長補佐 前回の第1回の資料の別添に、平成17年度の数字が。参考資料No.2の 2頁です。 ○馬杉先生 1枚紙ですね。 ○西井課長補佐 はい。 ○馬杉先生 パーセンテージでいうとどうなるのですか。 ○山口先生 この3番の頭頸部外傷性症候群というのは、どういう事故が多いのですか。 これだけ目立って駄目と言われている。 ○馬杉先生 それは私が担当のところですから、いつも言うのですが、これは頭頸部外 傷ですからあらゆるものが入っていて、絶対に必要なもののトップは外傷性てんかんで す。てんかんはずっと投薬しなければいけません。しかし、内容的にはいろいろと分析 してもらわなければわからないのだろうけれども、あとはむちうち症のようなものです。 絶対に必要なものは、外傷性てんかんだと思っています。  それほど外傷性てんかんは多くないわけですので、先ほど指摘されましたように、い ちばん多いのですかね。何でこんなに多いのですか。 ○長嶋監察官 頭頸部外傷症候群の他に、頸肩腕症候群、炭鉱によらない一酸化炭素中 毒症、腰痛などを含めて、等でまとめているので、件数的には多くなるのです。 ○馬杉先生 問題は、前回申し上げましたように、絶対に必要なものと、腰痛や頸肩腕 症候群のような痛みを主にするものです。そうすると、これに関してはなかなか難しい と思います。  ただ、これを見ると、平成15年が1,226で、毎年ある程度、1割以上の数が更新して いないのですね。それをどう考えるか、難しいことだと思いますが。 ○柳澤座長 単純に考えれば、アフターケアを必要としなくなったので更新していない。 それから、例えば炭鉱災害だとか、機械的にまとめているのですから、死亡したために 更新しなかった人も含まれているわけですよね。 ○笹川係長 入っています。 ○柳澤座長 炭鉱災害は死亡者も含まれるのでしょうけれども、他はどちらかというと 必要とされなくなったということでしょうかね。 ○馬杉先生 もう1つ聞きたいのは、数は平成15年度からとなっていますが、この間に お聞きしたところでは、通達があって、更新するに当たっては、こういうようなことで、 少し制度が変わったわけなので、それの前と後とで、健康管理手帳の支給が減っている かどうか。 ○長嶋監察官 前回そういうお話があったわけですが、平成12年の事務連絡を本日の参 考資料で出しています。これを契機に効果があるかということで言うと、明らかな効果 は認められていません。傷病によっては、平成12年度に減っているものがあるのですが、 その翌年、翌々年で、その傾向が続いているかというと、必ずしもそうではありません。 その辺は現在取っている診断書の記載内容が、必要性がありますという穏やかなものに なっている関係からということもあって、事務連絡を出して効果があったかというと、 そういうことです。 ○馬杉先生 その辺を知りたかったのです。前回も申し上げたように、問題はそういう 通達を出して、診断書を提出させても、その前と全然変わりがないとすれば、本当にき ちんとアフターケア制度を見直すならば、いたずらに長引くのをチェックするなら、一 つひとつの項目で、この辺はもう少し細かいものを出さないと、いまのように1行書い て、これはアフターケアはそのままで通ってしまうのです。その辺をどう考えるか、こ れは補償でしょうけれども、それぐらいのお金を払っていてもいいというのであれば、 それはそれでしょうけれども、その辺のところは非常に難しいところだと思います。私 見です。 ○山口先生 これは問題のありそうなものは限定されているのではないですか。いま馬 杉先生がおっしゃった部分と、頭頸部も、頸肩腕症候群とか、腰痛とかが入っているわ けです。6の眼疾患というのは、白内障で、医学の進歩で必要あるかどうかが問題にな っているのです。振動障害も、もともと業務上の災害かどうかが問題になっているもの ですから、こういう人だけをきちんと見ることにすれば、かなり減るという感じがしま す。 ○柳澤座長 先ほどのように、傷病ごとにアフターケアを必要とすることの要件につい ての項目を挙げてもらって、チェックするということで、実際にアフターケアを必要と する人たちの申請にブレーキがかかることが出てくると、それは法の趣旨に反するわけ ですが、それはあまり考えなくてもよさそうですよね。 ○明治補償課長 どういう基準で更新を認めるのか、繰り返していくのかが明確になれ ば、自ずと適正な内容でアフターケアが実施できるのではないかと思います。 ○柳澤座長 おそらくアフターケアのときに、実際の医療行為が入ってくるわけですが、 その範囲については、行政側できちんと審査をして、本来のアフターケアの趣旨に合致 したもの以外は認めないということをやっていただければ、無駄なアフターケア更新が 続くことは自然になくて済むと思います。ですから、その両方の面で、アフターケアの 更新については、本来の法の趣旨に沿ったような形で運用されるように努力をしていく ということでよろしいでしょうね。  そうすると、更新のための診断書、または意見書を各傷病ごとにするということが必 要であるということが、この部会としての意見ということでよろしいでしょうか。 ○奥平先生 いまのことですが、行政の方ですが、言葉としてだけの問題ですが、専門 家によってそのような細かいものを書いてもらうことは、学問的に担保されるというこ とになるわけです。それが非常に大切なことだと思います。 ○柳澤座長 そうですね、それがおそらく、こういった職業性の災害というか、傷病の 経年的な経過がどうであるかということは、後になって調べるときのデータにもなりま すし、そういう点では非常に大事だと思います。  ただ、書く医師の立場を制限することは必要ないのでしょうね、どうなのでしょうか。 もともと労災でかかっていた、アフターケアでかかっている先生方というのは、ある程 度労災についての知識を持っている人たちにかかっていると理解していいのですか。 ○馬杉先生 難しいところですね。 ○柳澤座長 機械的に書いている先生もいますか。 ○馬杉先生 います。 ○明治補償課長 その辺の判断基準めいたものを委員会からいただければ、具体的に医 学的な審査をしていただくのは、各局に置いている局医の先生方ですので、適切に判断 できるのではないかと思います。 ○柳澤座長 身体障害者福祉法のように、いまは労災認定の専門医を養成しようという 段階ですから、あまりいまの時点で条件を付けないで、むしろ実施していく中で、そん なにいい加減なことを書いても駄目ですということをしていけば、だんだんきちんとし た意見書が出てくると。 ○馬杉先生 この間、労災の高次脳機能障害の意見書を作るときに、いろいろな方々の お役所なり、制度の診断書を見ました。見てまいすと、ああいうものも3年後とか、何 年後と変わってきて、進歩しまして、一般の医師でも判断をして、○を付ければ、判断 をする監督署長や何かが、できるようなものがよくなっていることは事実なのです。  ですから、労災の方でもいいでしょうし、理想的な姿というのは、簡単にいい意見書 のひな形を作って、それにうまく○さえ付けていけば、手軽に書き込みながら判断がで きるものを作るのが、いちばんいい方法だと思います。 ○柳澤座長 おっしゃるとおりだと思います。したがって、専門家が難しい意見書を作 らなくても、意見書の項目を選定する側で、きちんと考えて、適切な意見書が出るよう な形で、是非意見書を作っていただきたいと思います。よろしゅうございますか。  そうしますと、8番目の「実施期間の更新の要件」ところまで議論が済みました。事 務局から何かありますか。 ○保原先生 私の意見ですが、先ほどの社会復帰のことですが、条文の形からいうと、 社会復帰の要件を満たさなければいけません。「労働者の福祉」というのは一種の枕詞 のような感じです。そうすると、会計検査などの関係で、「日常生活」とか、「家庭生 活」という言葉まで入れると、何かよけいなものまでカバーしているのではないかと言 われるおそれがあります。だから、職場復帰に限定することはないですが、「社会生活 の改善」とか、そこは抽象的な表現のほうがいいと思います。実際の運用は、入浴する とか、「日常生活の改善」とかでいいと思いますが、表向きはそうでないほうがいいと いう気がします。 ○柳澤座長 おそらく法の趣旨からいって、あまり甘すぎると受け取られるようなこと は。 ○山口先生 「日常生活」ぐらいがいいですか。 ○保原先生 「社会生活」とか、「社会」というのを付けておいたほうがいいと思いま す。 ○山口先生 「職業生活」というように絞らなければいいのだと思います。 ○保原先生 「職場復帰」に絞らないことはいいと思います。 ○山口先生 これは1つは保険財政との関係もあります。保健施設というのは、保険財 政にゆとりがあるからやれるわけで、ゆとりがあればつまずいて危ないから眼鏡を配っ てくれとも言えなくなるのです。 ○柳澤座長 でも、労災保険はゆとりがあるのですよ。 ○保原先生 将来の積立てがあるだけですね。 ○長嶋監察官 その辺の言葉についても、整理をした上でご意見を伺わせていただきま す。 ○柳澤座長 そのようにお願いします。 ○山口先生 この21傷病のもので、こういうものを入れてほしいとか、喫緊問題になっ ているようなものはあるのですか。 ○長嶋監察官 今回お諮りするものではありません。 ○奥平先生 21傷病についての議論で上がってきたのは、障害認定の場合にいろいろ問 題があって、治ゆというものをきちんと提示した場合に、専門家の側からアフターケア が必要ではないかと上がってきたものが多いのです。 ○長嶋監察官 地方からの意見というのがあるのですが、地方からの意見であっても、 地方の局医の先生に相談した上で意見を上げているという状況ですので、専門家の医師 の意見を踏まえて、検討の場に上げているという状況です。 ○山口先生 ものは考えようで、死亡だってアフターケアがないことはないですよね。 遺族の救護があるのだから、お経を挙げるとか。だから、整理の仕方だと思います。  それよりも、大問題というのは基本問題で出てこないといじれないのですが、治ゆと いう概念です。いまの症状固定というのを消してしまう必要はないですが、どうしても 負傷に偏った定義ですから、疾病の場合にはこうだというものを並べて立てていかない と、困るのではないですかね。労災はもともと兵隊が戦争へ行って怪我をしたことに年 金を払っていましたから、それで工場で怪我をしたのはどうだということになってきた から、どうしても兵隊の怪我でやっているわけです。だから、疾病のほうに合うような ものを1つ立てて、並列ぐらいにはしていかないと、なかなか大変ですね。 ○柳澤座長 そうですね、確かにその問題は身体障害者福祉法の場合も、肢体不自由と か、ばっさり切られたとか、せき損とか、そういうのは非常に明快なのですが、内部障 害と言われる病気の場合は、非常に難しい問題がたくさんあるのです。 ○山口先生 しかも、障害等級の認定で、顔面の醜状でも男と女は違うとか、何か男の 顔はどうでもいいという。 ○柳澤座長 いかがでしょうか、大体ご検討事項については一通りご議論いただきまし たが、他に特別ご議論していただく内容はございますか。事務局のほうから何かありま すか。 ○園田課長補佐 熱心にご議論いただきまして、ありがとうございました。本日検討い ただいた内容につきましては、また今回と同じように事務局で取りまとめます。その上 で、次回の部会において提出させていただきます。  前回も同じだったのですが、本日の議論の内容を整理するに当たって、また次の部会 までの間に先生方にお尋ねすることもあろうかと思いますので、その際にはよろしくお 願いします。 ○柳澤座長 次の部会は決まっていますか。 ○笹川係長 次回の部会は11月20日(月)午後2時からで、場所は労働基準局第1会 議室で開催します。 ○柳澤座長 それでは終わります、ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課福祉係 TEL 03(5253)1111(代)内線5566     03(3502)6796(夜間直通) FAX 03(3502)6488