06/10/17 第3回市町村保健活動の再構築に関する検討会議事録  第3回 市町村保健活動の再構築に関する検討会 議事録   日時:平成18年10月17日(火)14:00〜16:00 場所:厚生労働省 7階 専用第15会議室 照会先:健康局総務課保健指導室(内線2398) ○出席構成員(50音順・敬称略)  有原一江、井伊久美子、伊藤雅治、大橋範秀、尾島俊之、鏡諭、佐伯和子、迫和子、 曽根智史、田尾雅夫、田上豊資、藤内修二、長谷部裕子、本田栄子 ○厚生労働省関係出席者  上家大臣官房参事官、勝又保健指導室長、清野栄養専門官、加藤主査 ○次第 1.開会 2.議題 (1)市町村保健活動を強化するための連携・協働の在り方について (2)分散配置(保健・福祉・介護・医療等)における活動体制の在り方について (3)その他 3.閉会 1.開会  加藤主査  定刻となりましたので、ただいまより第3回市町村保健活動の再構築に関する検討会 を開催いたします。本日、藤山構成員、山野井構成員からは御欠席の御連絡をちょうだ いしております。  続きまして資料の御確認をお願いいたします。お手元にお配りしました資料でござい ますが、座席表、構成名簿、議事次第の後に資料1、市町村保健活動を強化するための 連携・協働のあり方について(構成員作成資料)。  資料2、分散配置における活動体制のあり方について(構成員作成資料)。  資料3、分散配置における活動体制及び専門技術職員の人材育成体制に関する調査 (案)。  以上でございます。不足、落丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。そ れではこの後の進行は、伊藤座長にお願いいたします。 2.議題 (1)市町村保健活動を強化するための連携・協働の在り方について  伊藤座長  それでは議事に入らせていただきます。きょうは2つの議題があります。初めに議題 の1、市町村保健活動を強化するための連携・協働のあり方についてです。第2回の検 討会の最後に申し上げましたように、このことにつきましては、議題の2の分散配置に おける活動体制のあり方についてと合わせて、座長と事務局がこの議論のたたき台とな るような資料の作成について相談をし、5人の構成員の方に作成をお願いいたしました。 担当していただいた構成員の皆様には、御多忙のところ大変ありがとうございました。  それでは資料の順で御説明をお願いします。すべての5人の説明が終わった後で質疑 討論を行います。時間が限られておりますので、申しわけございませんが、1つのテー マにつき、構成員の方から御発表は5分間ということでお願いします。それでは有原さ んからお願いします。  有原構成員  狭山市の有原でございます。枚数の多さでカバーしようと思い作成したものです。ま ず事務職と専門職の連携・協働のあり方につきまして、(1)としまして、保健センタ ーと本庁の間に距離があり、それは、物理的ではなく、心理的な距離があると書かせて いただきました。これは単に保健センターと、本庁が離れているからということでなく、 本庁の中においても各課の間には距離があるわけで、最後に書きましたけれども、出先 機関であることの特性とは言えないかもしれませんが、物理的な距離は心理的な距離を 増幅させるものだ私自身は考えています。  結論は、2ページ目に書きましたが、face to faceでお互いに顔を突き合わせて意見 交換をする場が、ほとんど少ない。それゆえに意見交換、コミュニケーションがとれな くなり、連携の希薄とか情報の共有の不足という事態が生じているのではないかと思い ます。このことに関しまして私どもは、関係課との協議の場に積極的に参加するという ことと、それから協働事業におきましては、リーダーがいますので、徹底的な確認作業 をしてもらう。そして一つ一つ丁寧にやっていくよう心がけております。ワーキンググ ループがある場合には、積極的に参加してもいらい、結果報告をするようにしておりま す。  保健師の定例会というものを年に3回から4回やっていますが、機能という面では別 としましても、まず形式でも場を設けて、それを自分たちで機能させていくという方向 性が大切なんだと考えております。  次に保健センターサイドについては、4〜7ページになりますが、1点目は保健セン ターの中にも心理的な距離があること。もう1点は保健センターは若手が支える専門的 集団であるという2点に絞って書かせていただいたところです。保健センターの中にも 心理的な距離があると書きましたのは、センターの中でも、業務担当制になっていた場 合には、その業務担当の間にやはり距離があるのではないかと感じられるところがある からです。  それゆえに事務職、それから専門職との間に若干の距離がある。それも情報の共有を するような話し合いが解決していくことなのでしょうが、なかなかそれがうまくいかな いというところがあるのではないでしょうか。  二重の四角で囲みましたけれども、広く見回して考えて評価ができにくくなっている。 中堅というか、プリセプターというのでしょうか。中堅の人間がいなくなっております。  それで、現有人材の中でリーダーを探し、育成していくことが必要と考えているもの ですから、事業担当制のグループ制の形で、3年ぐらいに1回、業務を変えていくこと をしております。事務職とは、立案の段階から、事業のことについての話し合いに参画 してもらうとか、心理的な距離を縮めるように努力をしております。  次に若手が支える専門的集団であるという点ですが、OJTを実施するにしても、な かなかそれを引っ張っていく人間がいません。原因は、中堅が子育て支援課とか介護保 険課とか障害課とかに分散配置されておりますので、若い専門職が多くなります。この 状況でOJTを効果的にということについては、なかなか難しいと思います。そこでO JTの活性化と隠れたリーダーを発掘するシステムとして、グループ制を採用し、専門 職の平準化を図りつつ、そして考える集団をつくるということが必要なのではないかな と思っているところです。そうした努力をしなくてはいけないのではないでしょうか。  7ページに書かせていただきましたけれども、リーダーの不足は、統括する人材の不 足をひきおこしております。それゆえにOJTが不備で、保健センター内や他の課との 情報共有不足をきたしているのではないかと考えている次第です。  次に保健所との連携が希薄であるという現状です。これにつきましては、埼玉県だけ かもしれないですけれども、保健所の再編と統合が進んでおります。本来目指すものは、 行革という視点はあるにしましても、現在のニーズに対応できるような体制をつくると いうことが目的であったと思うのです。ところが現実にはそういう状況にはないのでは ないでしょうか。  9ページを見ていただきますと、統廃合によりまして管轄地区が拡大し、拡大したこ とによりまして、対象となっています市町村の状況の把握が、非常に難しくなっている。 対人援助の機会も減少している。個別支援の機会も減少している。それが、保健センタ ーと保健所との接点を非常に少なくしている。結果、情報の共有化を少なくしている。 なおかつ県庁と保健所という二重構造の中で、その中でも情報の共有がなされているの か、どうか、不安な部分があります。  こうした現状から、情報の発信源にはなかなかなり得ない状況に、今保健所があるの ではないかと感じております。市町村は一番身近な相談相手として保健所が存在し、頼 れる存在であってほしいという希望を持っております。そうなるためにはどうしたらい いか、お互いの役割分担は、どういう役割を担うかということをきちんと明確にしてい く。事業をやるに当たりまして、一つ一つ丁寧にやっていく。その中でお互いどのよう にしていったらいいかということを詰めて、共有していく作業をしていかないと、これ から後うまくいかないのではないかと考える次第です。以上駆け足でございますけれど も、発表を終わらせていただきます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは井伊構成員、お願いいたします。  井伊構成員  それでは私の資料は10ページ、11ページです。申しわけございません。連携・協働の あり方と分散配置における活動体制のあり方を、別々に議論をするという認識がなかっ たものですので、少しごっちゃに書かせていただいております。10ページ目の方に主に 文書で書いているのですが、私はこの2つともの課題に、これを大きく担う保健師の資 質ですとかあるいは力量の問題というのが、非常にかかわるだろうというふうな立場で、 現在の職業も保健師教育の方にかかわっている者です。そういう観点で、提起をさせて いただいております。  まず10ページの上の方に、自治体に働く保健師の特質ということで、住民が主体的に みずからの健康問題を解決していけるよう支援することを中心に、地域の中で健康問題 をとらえ、予防を意図した組織的取り組みと行政施策への反映をするという公共性を志 向しているというところで整理をさせていただきました。  いろいろ文言を並べているのですが、ここで押さえたいポイントといたしましては、 保健サービスを提供することに保健師の労力というのは、かなり割かれているというの が実際のところです。しかしその保健師が動いていく大もとのところは、ただ単にサー ビスを提供するだけではなく、サービスを提供しながら実態も把握していく。あるいは 保健ニーズを発掘していくというような機能が大きいのではないだろうかというふうに 思うところです。ですのでサービスを提供しながら同時にニーズを把握するという、双 方向性のある保健活動が地域を基盤にした保健師の活動の大きな特徴だろうということ で、整理をさせていただきました。  こういうことを前提にして連携・協働ということを考えたときに、何ゆえに連携をし なくてはいけないのか。何ゆえに協働しなくてはいけないのかというところの目的の明 確化。それから自分たちが今やっている協働活動なり連携の状況というものが、どの段 階のものなのか。ニーズを把握しようとしているのか。あるいは企画をしなくてはいけ ないのか。それからサービスを提供するために連携をするのかというような整理が不十 分なのではないかなというふうに思うところです。  そういうことの原因として連携ということに関連する技術が非常に未成熟であったり、 あるいは保健事業そのものがサービス提供ということを中心に組み立てられている場合 が多いですので、提供すればそれで終わるという自己完結的なあり方になっていたり、 そもそも協働活動のイメージが希薄なところがあるのではないかというふうに考えまし た。  11ページをごらんいただいて、ちょっとイラストで書かせていただいたのですが。こ れは1つの具体例として、地域に展開していく場合、保健師がどのように展開するのか ということのプロセスを表現させていただきました。例えば一番上の具体例の横に、子 供が騒いで困るというような、これは育児相談であったり、あるいは1歳半の健診のフ ォローであったり、乳幼児訪問であったり、そういうところからお母さんたちから不安 なり、それから悩みなりというのを聞いてきます。  子供が騒ぐと何で困るのか。どうしてそうなるのといったときに、おうちの中が散ら かるしとか、あるいは夫が帰ってくるのが遅いからとかそういう状況が出てきます。こ こで終わって、単なる育児指導に終わってしまうとそれで終わりなわけですけれども、 なぜ外に出ないのかといったときに、交通量が多いとか、遊び場がないとか、ここは麻 薬の売人とか書いていますが、例えば不審者がいるとか。それから公園の手入れがして いないとか、心配だというようなことが出てきます。  その出てきた問題は、一家庭内だけで済むことだろうかといったときに、この問題の 社会化といいますか、それがだれがかかわる問題かというようなことが見えてくるとい う、こういうふうな展開が実は保健師の活動の特徴であります。保健事業を活用して、 保健ニーズをアセスメントしていって、そしてその保健ニーズに関連する人々がだれに なるのかというようなことを広げていく。そういうことが地域の中で期待されている活 動の展開なんだろうということで、書かせていただきました。  恐らく保健事業でサービス提供を一生懸命やっているわけですけれども、その反面、 ここにイラストで書かせていただきましたようなニーズの集約とか、ニーズを育ててい くとか、そういうことが少しおろそかになり、その結果、連携・協働を何のためにやる のかという部分が強化されないという、そういう悪循環があるのではないかなというふ うに思いまして、このように整理をさせていただきました。以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは続きまして、鏡構成員の方からお願いしま す。    鏡構成員  鏡でございます。私は自治体の高齢者支援課という福祉事務所の担当所管課におりま す。表題にありますとおり、市町村の福祉現場から見た保健と福祉の連携の課題という ことで、若干的外れかもしれませんけれども、問題提起をさせていただきたいと思いま す。  まず1つは冒頭に書きましたとおり、連携の必要があることは現実に対応しなければ ならない問題として、現在起きているわけでございます。ここにあるとおり、例えば一 人暮らしの認知症とか精神的な疾患があって、近隣とトラブルを起こしている例とか。 虐待とか医療依存度の高い人に対する生活支援であるとか、悪徳リフォームの問題、そ れからリストラ後の親の年金によって生活をしている者の課題とか、それから介護予防 と生活習慣病、元気で生き生きと生活するための地域のネットワークづくり等々が、自 治体の現場で、現実の問題として課題なわけであります。  これらがすべてそれぞれの所管課にあわせてきれいに整理されているかというと、実 は問題がクロスオーバーしているわけです。既に組織と問題がクロスオーバーしている ということが、まず1つの大きな問題であると。それに対して(1)から(4)にあり ますとおり、こういう新たな問題に対応する場合に、職に対しての業務の責任範囲が明 確でない。大体問題があった後に対応する場合に、その問題については初めて対応する ケースとか、非常にレアなケースの場合に、明確に役割が決められていないわけです。  そうすると往々にして、不明確さが組織を後押しして、自治体でいうところの「おら 方の仕事じゃない」とか「おまえの方だろう」という押しつけ合いがある。  それから2番目の問題として職員間の果たすべき役割が不明確である。職位や職種の 中でも、例えば課長と係長、それから現場での保健師と看護師とか、管理栄養士である とか理学療法士。それぞれの職で果たすべき役割というのが、明確にされていないがた めに、問題が出たときにあたふたしてしまうという状況があります。これは先ほどの縄 張り意識の問題でありますが、組織間、職種間の役割の中でも、それぞれの職の果たす べき機能の中でも不明確な面があるということが2点目です。  それから3点目としてはこれも大きな問題ですが、能力の問題があるということです。 担当者のやる気の問題、担当者の知識の差、職員の人生観、価値観、家族の健康、それ から自分の健康、家族が病気がちでということにより、個人の能力の違いとして表れて きます。「先に帰る」というのが恒常化しているような人とか。「一生懸命やりたい」 ともともと思っていないというような職員とか、それぞれの個人で抱えている問題に差 がある中での組織をつくるということが、ひとつ難しい点になっているということです。  それからもともと人が足りない組織があるなど、問題に対応する職員や組織づけがさ れていない。特に最近の例では、人事とか財政とか組織部門での締めつけというのがか なり厳しいですから、なかなか十分な人員を配置するとか、新たな組織を起こすという ことが難しい状況になっているのが前提としてあるわけです。  特に事務職と技術職の連携のあり方です。1に関連しますが、考えなければならない のは、ニーズがあって仕事があるわけですから、仕事があってニーズがあるわけではな いわけです。地域の中で果たすべき役割では、これまでの保健政策とは、求める市民に よって随分変わってきています。これは都市や農山村など地域によって大きな差があり ますし、それから、例えば所得であるとか、個人のニーズであるとか、組織であるとか 人員とかというところに大きな差があるのです。  特に都市における圧倒的多数は、職域保健対象者であります。特に成人男子について は、地域保健の対象者となっているため、地域保健の対象外になっているというような 実態があるわけです。  そういうことで考えれば、老人保健事業が立ち上がったころの環境と、現在の環境と いうのは随分違います。特に医療の近接性という問題では、埼玉県の場合だと医療機関 が多いという状況であります。特に所沢市の場合ですと、いわゆる療養型病床が、おそ らく日本で一番多いのではないかと思われます。  そういう医療近接性による健康志向というのが、まず1つあります。何か問題があれ ば医療機関に駆け込めるというようなことがあるわけです。  また、あわせてここにも書きましたけれども、テレビ番組では「あるある大辞典」と か健康食品の流行とかフィットネスとか、自ら健康を求めて、その機会を得ようとする ことが比較的容易になっている。これは都市部の特徴かもしれませんけれども、そのよ うな状況があるわけです。その中で例えば啓発につながる保健情報を提供するというこ とが、公的な必要性として問われているわけです。  それからもう1つは、2番目にBとして書きましたが、日本における労働風土におけ る雇用機会の不均等。女性蔑視と書きましたけれども、例えば管理職で女性の方が1割 に満たないというような状況があったり、それから保健師の方が管理職試験、課長試験 を受けられないとかそういうような状況があります。  もう1つはいわゆる専門職間のヒエラルキーとして、保健師は看護師より上である、 医療職は福祉より上であるという、もともと染みついた序列があるように見受けられる わけです。加えて先ほどの昇任試験との関係もありますけれども、事務職と専門職の相 互不信感がある。管理するのは事務職、現場は医療職というように分かれています。こ れは例えばCとも関係するんですけれども、例えば企画とか立案、折衝、実行、評価と いうPDCAサイクルで見ていきますと、企画実行するのは圧倒的に事務方が多いわけ です。提案する場合には保健師とか専門職がやりますけれども、なかなか予算どりをす るとか、内部の折衝をするとか、予算を獲得し、起案をし、伝票を起票し評価するとい う、具体的な事務を行うということが課せられていないがために、保健師はただ単に現 場労働をするだけというような位置づけが往々にしてあるわけです。  行政内部の評価というのは、そういう事務能力を高く評価する部分がありますので、 その意味ではいつまでたっても保健師たる地位が、組織内での評価が上がっていかない ということがあります。  そういうことから考えれば、現行自治体における保健部門を独立したサービス部門と して位置づけて実施をしていますけれども、1つはそういうやり方を継承するという地 域もあるでしょうし、もう1つは、自治体行政全体を企画する保健師になるということ も、考えていかなければいけないのではないか。  自治体の任用としては事務職か専門職かという位置づけになるわけですけれども、ケ ースワーカーは事務職で、保健師は医療職というもともとの任用とは違って、役割が異 なるわけです。この後一般職で任用される保健師がいてもいいのではないか。つまり環 境政策とか交通政策、建設政策、あるいは教育政策、農業政策、商工政策と自治体行政 すべてに保健の視点が入って、政策立案をし、実行するという保健師がいてもいいので はないかというふうに思うわけです。  そのためには、保健師が政策を立案する能力を持つ、いわゆるスペシャリストからゼ ネラリストへシフト転換するというのも、果たすべき役割の1つではないかというふう に思います。  それから2点目の市町村と保健所との連携については、ここに書きましたように、大 胆な権限委譲によって、役割の見直しをしていく必要がある。基本的には市町村が担う べき課題が中心になるのではないかというように考えています。  3番目については資料のとおりでございます。以上でございます。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは、迫構成員、お願いいたします。  迫構成員  秦野保健福祉事務所の迫でございます。私は現場の専門職としまして、このいただい たテーマ、連携とか協働のあり方ということについて、具体的に考えさせていただきま した。そういう中で連携とか協働ということを一体どういうふうに考えていくのかとい うところから入らせていただきたいのですが、連携ができてこその協働であろうという ふうに考えています。  実際に現場の中で連携方法として、会議を定期的に開催するとか、情報交換をすると いう、そういう方法論がいろいろと示されるわけですが、その一方で会議ばかりをして いてという批判を耳にすることも結構あります。そういう言葉というのは実際に結果が 得られていないとき、つまり成果が得られなかったときに、そう表現されるのであって、 逆に言えば成果が得られたときにこそ、その連携が評価されるものだろう。そういうこ とになりますと、連携とか協働というのは、成果を得るためのプロセスというふうに考 えていけばいいのではないかと思ったわけです。  実際に事務職と技術職というか、専門職の連携・協働のあり方というところで、昨年 の検討会での問題点というのが示されました。真の問題はやはり保健活動が理解されて いないというところにあるのではないか。保健活動の理解を進めるための幾つかのポイ ントといいますと、やはり論理的にきちんと説明できる能力を持たなければいけないの ではないかということです。これを専門職がきちんと持つことが大事なのではないか。 一生懸命やっているのにわかってくれない。そういう言葉もよく聞くわけですが、熱意 だけではだめでして、論理的な説明ができる。これは事業根拠を持つとか、ニーズを把 握するという問題になりますけれども、それがひとつ大事な要点だろうと思います。  それからもう1点、専門用語、業界用語を使わなくても説明ができる能力を私どもは 持つべきではないか。実際私は神奈川県庁で、健康増進法施行時に条例や県規則の改正 を行ったわけですが、そのとき担当する法務の事務の方から、中学生がわかる言葉です べて説明してください。中学生なら辞書が引けるということで、つまり辞書に出ている 言葉で説明ができなければ、業務は理解されないということを言われた覚えがあります。  そういう経験の中で、やはり専門職がついつい専門用語、業界用語を使ってしまうと いうところがありますけれども、それは避けるべきであって、共通言語、普通の日本語 で説明ができるということを求められているというふうに思っております。  一方専門職間の連携というところでは、これは業務遂行のための連携であって、成果 を上げるための連携。そこにポイントが書いてありますけれども、専門職同士の連携の 中で、同一職種。それから他職種、たくさんの職種、いろんな連携があるかと思います。 それぞれ先ほどからお話がありますように、課題の共有化が重要です。自分の業務に関 係することだという、そういう理念をきちんと持つこと。それにはさまざまな段階での 話し合いがあり、得られた成果について一体感、達成感を持つということが大事になっ てこようかと思います。考えようによっては、ここは、専門用語、業界用語の世界とい うふうに言いかえてもいいかと思います。  市町村と保健所の連携というところでは、実際に求められる支援、その実際について、 私どもが現実に行っているような内容をそこに書かせていただきました。管理栄養士は 市町村も保健所も、どちらも少数職種であります。そういう中で少数同士がきちんと連 携をして、取り組んでいくというふうに、実際の場面で動いているところであります。  次のページに移りますが、連携・協働のレベルには職種間、多職種の連携。そして組 織体としての連携というさまざまなレベルがあろうかと思います。日常的な連携、これ が重要なものでありまして、小さな連携があってこそ、大きな連携に進んでいくのでは ないかということ。  それからそれとは別に、非日常のいわゆる危機管理としての連携の部分は、これは体 制整備を別途設ける必要があると思っています。  住民組織等との連携でございますけれども、これは私どももいろんな住民組織を抱え ていますが、その組織の特性というものをきちんと把握していくことが必要であろうと 思っています。私どもが直接養成している組織、それから自主的な活動をなさって、地 域で生まれている組織、いろいろあろうかと思います。多様な目的を持っていろいろな 人たちが活動していらっしゃる。その活動内容もさまざまだと思います。それぞれの特 性をきちんと理解して、課題を共有認識し、プロセスを共有化していくこと。パートナ ーシップとか、対等な関係が築けることというのが目標になってこようかと思います。  それが住民主体という言葉になるわけですが、その一方で、住民主体を目指していな がらの行政主体。住民参加の行政主体ということもあり得るのではないか。現実の場面 では、こういうことが多々あるかと思います。こういう部分をきちんと戒めとして持っ ておくことと。そういう戒めを持った上で住民主体への移行のプロセスとして、こうい う段階も一つあるのかなというふうに考えるところです。以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは最後ですが、藤内さん、お願いします。  藤内構成員  まず事務職と技術職の連携と協働のためにということで、問題提起をさせていただき ます。鏡構成員の指摘にもありましたように、技術職が専門職としての能力に加え行政 能力、すなわち、政策立案、予算編成、議会対応、他部局との交渉といった能力を獲得 することが必要だろうと思います。こうしたことを研修会等で学ぶことも困難で、昨年 度の現地調査でも、技術職員に対する行政能力の研修を計画的に組んでいる自治体とい うのは非常に少のうございました。こうした研修機会をふやすということも必要だろう と思います。  一方、技術職ではなく、保健部門を統括する職位にある職員、これは多くは事務職で あることが多いわけですが、こうした職位にある職員が、国や県の政策についての説明 を聞く機会はあっても、地域保健活動の本質について学ぶ機会がなかなかない。保健セ ンター長をしながら、「私は保健のことが全くわかりません」と公言する職員もいらっ しゃる状況です。こうした研修の機会を、県あるいは国がしっかり持っていくことが必 要かと思われます。  それから市町村と保健所との協働ですが、地域保健法で保健所は市町村の求めに応じ ということが明記されていることもあって、保健所と市町村の支援におけるスタンスと いうのが、都道府県によっても少し異なっている状況です。  保健所と市町村との協働を考えるときに重要なのは、本庁の果たす役割です。大分県 では、本庁の主管課が、毎年、保健所に当該年度の市町村支援計画というのを提出させ ています。市町村支援計画を提出させられるからという訳ではないのですが、保健所は 必ず年度初めに市町村と保健事業についての協議を行い、市町村の保健事業に保健所が どういう関わりができるかを検討しています。それを支える本庁の支援といいますか、 仕組みが重要かと考えます。  それから県型保健所には、特に市町村の保健活動の企画とか評価における支援が必要 です。しかし、これができる保健所、あるいは保健所職員が少ないというのも、残念な がら事実です。こうした市町村の保健活動をスーパーバイズする機能というのは多分に 人によるといますか、属人的な部分が多ございます。人が異動するとなかなかそれが続 かないという問題もあります。  そうした意味で保健所の圏域を超えた支援体制という、柔軟な対応も必要かと思いま すし、これから少なくとも各保健所に一人はこういう市町村の保健活動をスーパーバイ ズできる職員を養成するということも必要です。またそういう保健所職員で対応できな い場合に、大学とか研究機関といった外部のスーパーバイザーを活用することも、推奨 すべきと考えます。  次に住民組織、NPOとの協働ですけれども、今まで長いこと住民組織やNPOに対 して行政は、保健サービスを効率よくといいますか、少ない予算で提供できることを狙 って、いわば、行政の手足的な役割を期待している部分も少なくなかったのではないか と思います。しかし、井伊委員が御指摘になったように、住民と専門職との関わりは、 住民の主体性であったり、あるいは、エンパワーという言葉を使わせていただきますが、 地域住民が自分たちの地域の問題を解決する力を取り戻していく、そうした支援が重要 だろうと思います。  官から民へというスローガンの中で、保健サービスの民営化ということもこれから拍 車がかかりそうです。保健指導が、民間の健診機関等から行われることになりますと、 住民は本当にお客さんになってしまいます。住民がお客さんになってしまえば、行政と 協働で地域の健康づくりを進める、主体的な取り組みを地域で展開するということが、 難しくなるのではないかと思います。そうした意味で、今住民組織やNPOの活動の意 義というのを再確認することも必要かと考えます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。それでは5人の方から、連携・協働のあり方という テーマで発表していただきました。市町村の保健活動ということを前提として、事務職 と技術職、それから県の保健所、それ以外のいろいろな機関との連携について発表して いただきました。井伊さんがおっしゃったように、かつては連携のことはあまり強調さ れなかったということは、保健師1人が保健サイドだけで解決する問題が多かったんだ と思うんです。それが近年問題が多様化し、介護だとか福祉だとか、保健のサービスだ け、保健センターの中だけでは、解決しないような問題がふえてきたために、いろんな ところと連携していかなければいけないということです。そういうことから、連携が先 にあるのではなく、住民や問題を抱えている人の問題を解決するために、どういう仕組 みをつくっていかなければいけないのか、そういう立場に立って議論をしていくテーマ と思います。  そういう中に最近は住民との関係についても、かつての地区衛生組織のような行政の 代行をするような形から、住民みずからが力をつけていって、例えば最近問題になって いる、患者による患者の教育のように、新しい動きも視野に入れて、連携・協働の問題 を議論していくべきと思います。  したがって、連携・協働の目的は何か。そういう前提で考えていくと、今保健センタ ーの中にどういう問題点があるのか。それを解決していくためには、どのように職員を 教育し、他との連携の仕組みをつくっていく必要があるのかがテーマです。  最近、医療の分野については、連携パスといってかなり定型的なものについては、病 院や診療所が、患者の流れに沿ってこういう手順で仕事をしていきましょうと、あらか じめ一定のパターンに沿って、行程表を作ることが一般的になっています。そういう医 療におけるモデルも念頭において、保健センターなり保健サービスのサイドから、その 辺はどうしたらいいのかということも、1つの論点ではないかと思います。私が余りし ゃべり過ぎてもいけません。  この問題につきまして、そんな観点から20分ほどディスカッションをしたいと思いま す。どなたからでも結構です。御発表された方に対する質問でも結構ですが、いかがで しょうか。    田上構成員  高知の田上です。私が思いますに、連携という言葉は使っているうちは、だめなのか なというようなことを以前から思っています。保健医療福祉の連携、市町村と保健所の 連携、あちこちで連携という言葉を使い、そのあり方の論議をしてきましたけれども、 どうもいまひとつうまくいかない。連携という言葉を使っているうちはだめなんだなと いうことを日頃から思っております。  では連携という言葉を使わずにということの答えは何だろうということを考える中で、 やはり一番大きいのは、役所の仕事は、どうしても事業から入ってしまう。事業起点の 仕事の仕方から、生活者起点の仕事の仕方に、いかに変えていくのかということに尽き るのではないかなと思います。そのことは、生活者のニーズがどこにあって、何が必要 なのか。目的を確認する作業、これがすべての出発点になるように思います。  このことは別に健康福祉分野に限らず、他の分野も全部、住民の方から見れば常にク ロスオーバーをしているわけです。その前提に立って仕事をしていくことかと思います。  抽象論を言っていてもしょうがありませんので、一応私が具体的にどんなことをやり 始めたかということお話させていただきます。このたびの特定健診等のことについて、 市町村が国保とヘルスに分かれてやる。その分散配置がどうこう言う以前に、目的の共 有化ということを、国保とヘルスの関係者、また介護の関係者が一緒に共有化できるに はどうしたらいいんだろうということです。今提案をさせていただいているのは、介護 保険の認定のときに新規で認定されていたケースの情報を、これまでは給付のためにし か使っていない。認定に入ってきた人の半分以上は、生活習慣病、メタボリックが原因 ですし、残りは介護予防的なものであります。すべてとは言いませんけれども、そのケ ースを過去にさかのぼってきちんと検証していく。その検証する作業に、介護のスタッ フと国保のスタッフとヘルスのスタッフが一緒になって検討していく。そのことで地域 住民の顔の見える形で、何が課題なのかをみんなが共有していく。そういったことを全 ての出発点にすれば、ここはこんなことができる。介護はこんなことができるという。 お互い何ができるかという議論に行けるのではないかと思っています。  そういうことで国保の担当の課長さんとヘルスの方の担当の課長さん、介護の方の担 当の医療課長さんにお話しをさせていただいて、そういう取り組みをやろうじゃないか ということを私の方から提案させていただいており、まもなくその作業がスタートする ところでございます。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。  田尾構成員  教科書的なことを申して、場違いなことになるかもしれませんが、今、協働・連携と いう言葉が、語弊のある言い方になりますけれども、氾濫しているようなので、差し当 り定義に限っての議論だけさせていただきたいのですけれども。協働と連携、これは結 果論ではないかと考えております。最近、今現在もですが、非常によく使われている言 葉であります。経営学的に申しますと、これは、可能性としては議論されますけれども、 その協働とか連携という言葉が持っているような麗しい結果に至るような例はそれほど 多くはない、と考えております。  なぜかと申しますと、2つ以上の関係者が、いわば契約を取り交わして何かをする、 しかし、だれが責任をとるのか、だれがその結果を出すべきなのか、その所在が明らか ではない場合は、失敗することが多い。要するに協働とか連携と、お互いがない資源を 持ち合って協働するという関係は、キチンとした、それを担う経営者、または担当者が いないと、できない相談です。協働とか連携とかいいながら、だれもが責任をとらない、 言いたいことを言うだけでは何もできない。組織論の観点からは、協働とか連携とかは、 信用できないところがある。結果がでれば、信用しょうかという立場であります。  制度的にキチンと支えられて、すぐれた経営者がいて、彼あるいは彼女が手腕を発揮 して、あるいは責任の所在が明確になってはじめてできそうなのが協働とか連携であり ます。それでもできないことがある。話が逆ではないか、それでは困るなというのが率 直な感想です。  大橋構成員  関連しまして、私はNPOと行政の協働の検討会に2年間ほど入っておりました。そ こでまさに田尾委員がおっしゃったとおり、振り返りの結果は、協働すればするほどお 互いの不信感が深まるという結論だったんです。それは、NPOさん側も行政側も一緒 の意見でした。  それは主に3つの要因が原因でしょうと。1つ目がお互いの目的、自分の目的はわか っているんですけれども、お互いの目的、ニーズがまず理解し合えなかった。2つ目が スタート時に協働するルール、持ち合う資源、責任が不明確だった。3つ目に定期的な 意見交換、振り返りの場がなかった。この3つが大体共通しておりました。  ここからは県の保健所と、市町村の保健センターの連携のあり方についてですが、私 が気にしているのは、人材育成です。先ほどの3つの問題点というのは、結局県と市町 村の関係でも一緒だと思うんです。県として一次サービスのフィールドをなくして、で も市町村から求められるのは高度で専門的なスーパーバイズ。これは恐らく今はまだ40 代以上の保健師さんがいらっしゃるときはできると思うのですが、保健師さんの数が県 と市町村でもう逆転している現状で、10年後にそれができるのかということがあります。  となるとそれは県の保健所の役割だと認識するならば、その人材育成において、市町 村が今度は県を支えるシステムなども考えていかないと、お互いのニーズというものを 考えていかないと、今後の協働、市町村の保健活動のあり方も、その屋台骨が崩れてい くのではないかという感想を今持っています。  田尾構成員  同意見でありまして、協働とか連携をつくり出せる人材をいかに育成するかというこ とが重要であると考えております。協働と連携の関係を構築できるような保健師さんが 多く育成できるかどうかによって、これからの保健行政が変わってくるのではないかと 考えます。  伊藤座長  最初の御発言、田尾先生、大橋先生の御発言をそのまま受け取ると、この検討会とし てNPOとの連携・協働というのは、絶望的だという形になるのかなと思ったのですが、 そういうことではなさそうです。つまりNPOがやっていることをかわりにやるという こと、それから行政がやっていることをかわりにやるということではなく、両先生がさ っきおっしゃったようなことを、検討しその結果をこの検討会の報告書にきちんと書き 込むべきと考えていますので、ひとつよろしくお願いします。  そのほかいかがでしょうか。  有原構成員  NPOではないのですが、私どものは、未受診者の100%把握を実施しようと決めたの が平成15年でした。そのときに、もしこれを行政以外の方と一緒にやろうとした場合、 失敗したとしても全部行政がカバーできるかを、事業の開始にあたり前提として話し合 いをしました。  そしてそれをやるとしたら、中・長期的に何が目的であるかということを自分たち自 身がしっかり認識していなければならないということも十分に協議して出発しました。 そして事業開始にあたり、事前に3カ月ほど委員とも話し合い、その後も1か月に1回 の協議の場をもって、2年半になってようやくお互いが知り合えたなという状況にあり ます。そのぐらい時間がかかるものだという思いを強くしています。  小さなことでも、1つずつ保健師なりが経験していかないと、恐らく他部署と連携し ていくとか、考えていくという作業は、無理なのではと思います。1人の元気な保健師 がいれば、地域が変わるとかいうようなことが、どこかのフレーズでありましたが、私 はそうではないと思います。少なくとも平準化、最低レベルが上がっていかないと、変 わっていかないなと思います。そのために組織の中でいかに人材を育成していくか。O JTをやっていくか。知識を生かしていくというか、使えるようになるためには、どう したらいいかということを、現場サイドで考えていかないと無理な時代になってきたの ではないかと思っております。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。    田上構成員  前回欠席した、保健師のコア機能というんですか、それとの関係のことにもつながる んですが。私は思うに生活者起点に変えていくということの出発点は、井伊さんもおっ しゃったように、地域を基盤とする活動を通じて、地域の健康課題をいかに保健師が把 握するか。住民の本当のニーズ、住民の声というもの。それがとても大事だし、それが 一番強いものだと思うんです。  問題は、それが保健師のレベルで止まっていることが多い。それを政策にきちんとつ ないでいく説明力のところが弱いということ。それからもう1つは、住民組織活動にう まくつないでいくところもあると思うんですけれども、どちらかというと、つなぐとこ ろの機能が、まだまだ弱いのではないか。そこを相当強化していかないと、本当の意味 の連携・協働していく目的の出発点なるものを、お互いが確認できないのではないかと いうふうに思います。  別件ですが、先だっても自立支援法のことについて、市町村の課長さん方に、事業ベ ースで説明しているとなかなか理解されなかったのですが、家族会とか関係する人たち に集まっていただき、課長さんも一緒に加わっていただいて、住民の生の声を聞いてい ただいたら、これはしんどいけれど何とかしないといけないなという話に変わるような 場面を経験しました。  やはり一番大事なのは、住民の声を、本当のニーズを、いかにつないでいくのかとい ったところになるのではないかというように思います。  伊藤座長  ありがとうございました。ちょっと私から藤内さんにお聞きしたいのですが。17ペー ジ、市町村と保健所の連携・協働のところで、市町村の求めに応じ、市町村を援助する ことになっている。こういう規定の仕方が、保健課と保健所と市町村の協働を低調なも のにしているという、ここは余り御説明がなかったのですが、もともとこれは保健所法 の改正をしたとき、市町村の側から、頼みもしないことを県の保健所からいちいち口を 出されるのが嫌だという議論があり、そういう経緯の中で、あのような規定になってい ます。そのような経緯を考えれば、市町村の保健センターの側から、県に対してもっと こういうことをきちんとやってくれという注文、要望が出されてしかるべきではないか なと思います。先ほどの有原さんのお話の中にも、そういうことをきちんと、市町村の 側から、市町村の保健センターでできないことについて、県の保健所で、体制を整えて くれるというよう積極的な要望を県に対してすべきと考えますが、その辺はいかがでし ょうか。  藤内構成員  実際に市町村と保健所の関係で、市町村が明確に保健所にこういうことをしてくれと いうように、自分たちの地域の問題を明確にとらえ、そのために保健所にこういう役割 なり、こういう支援をというようにきちんと考えられる自治体というのは、かなり力の ある、数少ない自治体ではないのかなと思います。  大分県で毎年保健所が、所長以下一個連隊で自治体に赴いて、まずそこですることは、 1年間の市町村の保健活動の報告を受けた後、保健所が把握している保健統計のデータ 等から地域の健康課題をこのように保健所では把握しているのですが、いかがでしょう かと提示します。そうした潜在化しているニーズを明確にするという作業は、毎日業務 に追われていると、市町村ではなかなかできません。保健統計などから潜在化したニー ズを保健所が明確にする、あるいは市町村が頑張った成果がここに出ていますねと示す ことも重要です。あら探しをするのではなく、市町村がこれだけ頑張った成果が出てい ますという評価をすることも保健所の重要な役割だと思います。  そうした中で、地域の問題の明確化、さらには自分たちの保健活動の強化という部分 で、保健所がこういう支援ができるのだということがわかってくると、市町村は保健所 に対して、いろんな支援を求めやすくなります。  実は、「市町村の求めに応じ」というのをうのみにして、保健所がじっとひたすら待 っていると、市町村は保健所が何をできるのかが見えないがために、結果的にだんだん 疎遠になってきたという例が多かったのではないでしょうか。保健所がこういうことが できますよということを提示することで、市町村もより利用しやすくなるのではないか と思います。  それからもう1つ言わせていただくと、「支援」という言葉を使っていると、保健所 の中でも、あるいは本庁からも、いつまで支援するのか、本来、市町村の業務ではない かという声が聞こえてきます。市町村の業務をなぜ県の保健所がするかという議論にな ってしまうので、これは県民のための事業ですと言えることが大切だと思います。つま り、県民の健康のための事業を、市町村と一緒にやっている。そういう協働という視点 がないと、市町村を支援をするというスタンスをずっと続けるのも、少し無理があるの かなと考えます。  伊藤座長  有原さん、保健所との連携が希薄であるという報告があったのですが、その辺は、市 の方からはどういうふうに対応されているわけでしょうか。  有原構成員  『保健センター内にも心理的距離がある』という中でお話すべきだったかもしれませ んが、老人保健法にしても、事業主体で計画され、事業の提供を行い、1年が終われば それでよしとするという状況があったことは否めません。  実際に振り返り、評価というプロセスまで目が行かなかったと思います。ただ事業の 実績については、毎年県に報告をしているわけですから、現状を分析し、今の状況を一 緒に考える体制があったら、また違う方向になっていけたのかもと思います。要はそう いうところまで、市町村として考えていく視点が、非常に薄かったなというのが、反省 点です。  もう1点は、余りにも保健所が専門家的になり過ぎまして、例えば、「母子担当です」、 「精神担当です」となった場合、その部分でしか指導がされない、支援がないという状 況であり、こちらが求めている部分と若干の乖離がある場合もあります。そうなると頼 りにならないと判断をしてしまいがちではないでしょうか。  それから老人保健事業のウェイトが市町村では非常に大きいのですが、県はほとんど 関与しなかったということもあり、同じ土俵ではなかった点も、またひとつ遠ざけた理 由であるかもしれないと思っています。  ただ私たち自身も、県や保健所に、問いかけをして、一緒に話し合いをして共有して いく環境づくりをすべきだったというのが、今になっての反省です。以上です。  鏡構成員  先ほどの県と市町村の関係でなんですけれども、恐らく政策的には、主体となるべき は市町村だというふうに思います。というのは実際に住民と協働し、情報を提供し、実 際の業務を行うわけですから、その中心となるのは市町村であるべきだと思います。  そういう意味からすれば、県が持っている業務の中で、保健所が持っている業務の中 で、市町村ができないものはない。能力的にもできないものはない。ただ組織とか人材 という位置づけが不明確であるから、今のところは権限委譲されていないというふうに 思います。  その部分で、現場では恐らく市町村に下ろすべきというふうな意見がありますが、管 理する立場からすれば、これ以上業務がふえるのは好ましいことではないと言われます。 それに見合うような財源がついてくるのかということが問題となるからです。ですから 恐らく現場と管理部門の考え方というのは、若干ずれているのではないかというふうに 思います。  そういう意味では、具体的な連携との関係でありますけれども、結局誰が労務を担う か、あるいは誰が時間を費やすかというところに最終的に行き着くわけですから、そこ はもし市町村にするのであれば、地方分権の視点を持ってきちんとした財源と役割とい うのを明確化していく必要があるのではないかというふうに思います。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。 (2)分散配置(保健・福祉・介護・医療等)における活動体制の在り方について  伊藤座長  それではまだいろいろ議論をすべき論点があろうかと思いますが、時間の関係で議題 の2の方に移らせていただきたいと思います。それでは分散配置、保健福祉、介護医療 等に分散配置をされているわけですが、分散配置における活動体制のあり方についてで ございます。このことについてもペーパーを作成していただいている構成員の方に、順 に御説明をお願いしたいと思います。それでは有原構成員からお願いいたします。  有原構成員  すいません。この資料は、まとまりがつかなくて申しわけないと思っています。ただ 述べたかったのは、分散配置の方向というものを否定するのではなく、分散配置の中で 保健師がどういうふうに考えていかなくてはいけないかというところをお話ししたいと いうことです。  分散配置は決してマイナス、デメリットばかりではないということで、その中でどう 考え行動していくかを自分たち自身が考えていかなくてはいけません。平成10年から分 散配置が始まりまして、8年で3人ほどセンターに戻ってきております。3年ほどでセ ンターに帰ってくるというルートができてきていると思います。そこに至るまでには時 間も話し合いもありましたが、次は私が行く番と思ってもらえる状況になっているとい うところです。  戻ってきた3人と話をしましたのが、この○です。ここに書きましたが、事務的な手 続きを省略することはない。事務サイドのルールというものが本当にわかるようになっ た。明確なルールがあるわけではないのですが、保健センターのルールと事務サイドの ルールは、おのずと違っていたのではないかという認識で一致したところです。ですか ら起案にしても、文書化にしましても、それから事前の話し合いにしましても、事務作 業的な部分で、省略することはなくなったと、話をしたところです。  それから2番目ですが、法律に関係した仕事をしているわけですから、それを意識す るようになって、よく本を読むようになったと。今まで読まなかったのかと言われると 困るのですが、もう少し深くといいますか、法律の本も読み、何をもとにこの事業をや っているのか、これは何なんだということを考えるようになったということです。  その次に、他課を動かすにはどうしたらいいかという点です。はっきりとはわからな いけれども、おぼろげながら理解できるようになったということで、言いかえれば誰を 動かせば、そのことがうまくいくのかということがわかるようになったというのです。 やはり人が仕事をしているのだということが理解できたという話です。  それから高齢介護課とか、介護保険課に配属されておりました関係でしょうが、事業 者と話をすることが多く接点も多いわけです。その中で、事業のマネジメントという視 点から、なあなあのおつき合いではなく、やはり締めるところは締めてちゃんとお話を する。そういったところができるように、完全とまでは言わないまでも、できるように なってきたと思いますというのか意見でした。  それから、1人配置が多いものですから、何をしても縛られない。保健師ってああい う動き方をするのだなと見られている。ということは自分で責任をとって、自分が説明 できる行動しないと、本当にだめなのだということを自覚した面もある一方で、非常に 孤独であったとは思っております。  ただ、現在は、配属される人数も多くなりまして、1人配置のところには、できるだ け支援していきたいと、話をしているところです。  保健センターの実情ですが、成人担当等3グループに分けており、3年間隔位で仕事 のローテーションをしています。それは、中で縦割りになることをできるだけ避けたい 思いからです。そしてリーダーとサブリーダーを決めて、各スタッフがその中でまとめ、 それを課長補佐、それから、所長という段階を踏み文書化して、説明をするというプロ セスにしております。地区担当もそうしております。  そのほかに、多くの協働事業をやっておりますし、定例会も開いております。定例会 については、うまく機能しているかどうか評価の分かれるところですが、形から入って います。  21ページですが、現在配置されている保健師がもらした感想なのですが、専門性を理 解してくれないと言っております。保健師は百科事典のかわりだと思っている職員が多 くて、いろんなことについて聞けば、すぐに返事をしてくれると思っているみたいだと いっているわけです。でもそこを乗り越えて、事例を通していろいろ考え方を示してい けば、わかっていただけるのがほとんどですという前向きな発言をしてくれたので、安 心しています。  次は何をしていくのか明確に話をしてくれない。専門職だから話さなくてもわかるだ ろうということです。その点もよく話をする、検討を重ねていくという努力をしていき たいといった前向きな答えが出て、安心いたしました。  他の課の上司の感想ですが、『専門職であることを認識しているつもりだが、組織の 中の歯車であるのだから、その一員であるという認識はしてもらいたい』と。『専門職 だからそれだけというのではなく、周りを見て、手助けをするとか気配りしてもらいた い』ということが、意見として出ました。現状では、安心している状況です。以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは井伊さんお願いします。  井伊構成員  私は資料2の方には入る分がなくて、先ほどの資料1の10ページにもう一度戻ってい ただかないといけないのですが、すいません。今、有原構成員がおっしゃいましたとお りに私も思いますのは、まず分散配置が、悪い配置ではないと。分散配置自体が、よろ しくないという議論ではないだろうというふうに考えます。そしてうまくいっていると ころと、何か行ったきりで何の交流もなく、向こうは向こうで全然違う障害福祉課で、 保健師をやっていると、どうも仕事ができないみたいだから保健師はやっていないらし い、というような分断された状況のところと、そうではなく、うまくいっているところ というのは、少しポイントがあって、今、有原委員が、まさにおっしゃったとおり、実 家がはっきりしているというのが、非常にうまくいっているところの、1つの条件かな というふうに思ったりします。  ですので次は自分が行く番だと。それから違う課に配属されても、いつでも相談に戻 ってこられるというふうな条件があるところが、この分散配置を苦と思わずに、むしろ いい形で仕事を進めているというふうに見えます。  例えば宮崎県のある市ですけれども、もともと保健と福祉と教育委員会に、保健師が 老健法が入ったぐらいで配置が分かれて、そしてさらに介護保険が入り、国保が入り、 一時年配のベテランの保健師がいたときには企画のところにもいたというような、常に 5カ所ぐらいのところに保健師が配属されて、もう20年ぐらいたっているというような ところですと、そういう方から話を聞きますと、例えば教育委員会で、学童の生活習慣 病に関する検診等を学校養護教諭と一緒にやり、そしてその対策を考えるときに、親御 さん、家庭の方をどうするかということをまた保健の部門に持ち込み、そしてそこに共 通の検討の場の確保というふうに書いていますけれども、むしろそういう協働事業の必 要性をお互いに見出してやれているというような、分散配置のすばらしいなというふう な例も、見聞きをするところです。  そういう意味で分散配置というのは、決してこれを何とかするというよりも、そうい う配置の中でどういうふうに効果的な動きができるかというふうな観点なんだろうとい うふうに思っています。  そうすると、あちこち保健師が配置をされて、そして集まる会議だけで、今度は大変 な仕事量になって、会議の時間ばかりふえる。けれども何も決まっていかないというふ うなことも、昨年度のヒアリングの中では伺っています。ですので協働事業までどうい うふうに持っていけるかというのが、ポイントかなというふうに思ったりします。  それから統括保健師が欲しいというのは、やはり昨年のヒアリングの中で聞いたとこ ろです。片や統括部署に保健師を配置すると。縦割りの行政を横に横断的に見ていくよ うな企画調整部門にも保健師がいればいいではないかというようなことも、案としては 聞きました。行政の中で横断的な部署が、必ずしも機能しているわけではないという状 況もあるようですので、むしろ統括保健師のような立場を明確にしていくということが、 大事かなというふうに思いました。  何よりも保健師にとっては、どこに配置されることがよりよいことなのかということ を議論する。あるいは決定していくプロセスに入っていない場合が、非常に多いなとい うのも、昨年のヒアリングでの実感です。ですのであちらにやられてしまったというと ころでストップしているという現状があったというふうに思います。  最後に活動の効果性を上げるためのターゲットの設定と人員配置と書いてあるのです けれども、地域で起こってくる健康課題というのは、ありとあらゆるものがあって、現 在は生活習慣病予防が非常に焦点化されつつあるところだと思いますけれども、案外ど ういう活動の働きかけの方法論を使っていけば、より効果が上がるのかということの検 証は、余りなされていません。ですので子供の虐待の問題が出れば、個々のきめ細かな 支援をといい、生活習慣病の問題が出れば、生活習慣だからこれもまた個々のきめ細か な支援といいというふうなところで、そういう活動方法論と、どういう対象にはどうい う働きかけの技術を使っていけばということの検証が十分ではないんだなというふうに 感じているところです。以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは次に鏡さん、お願いします。  鏡構成員  資料について御説明させていただきます。まず分散配置につきましては、今好むと好 まざるとにかかわらず、問題提起されているように、介護とか福祉と医療とかに分かれ ているということでございます。自治体を振り返ると、自治体の中での異動というのは ごく当たり前で、3年から5年で普通の事務職であれば異動するわけですから、何がそ んなに問題かというふうな感じがするんですけれども、そういう意味では保健師が、他 の業務を知る機会としては、非常に効果的なものではないかというふうに思っています。 それぞれの業務をみずから体験し、実施をするという機会を得ることは、大切なことだ と思います。それによりそれぞれの課で行っている仕事の内容を理解することによって、 保健師の社会性も向上するのではないかというふうに思います。  しかし今お話にありましたけれども、異動させられてしまったという被害者意識を持 ちやすいということもあります。したがってその課で被害者意識を引きずったまま仕事 をしていますから、なかなか幸せな形にならないという状況が見受けられます。  そういう中ではやはり1つの課とか場所に事務所をまとめるのは、非常に大切なこと であろうというふうに思います。たとえ課が組織が分かれたとしても、それぞれの1つ のファミリーとして考えれば、遠距離恋愛とか別居家族よりは同居していた方がコミュ ニケーションがとりやすいということと同様に、やはり物理的にまとめるということが、 非常に大切なことではないかというふうに思います。  ここにありますとおり独立の館を持っていることが、不都合であり、融和を図れない。 つまり保健センターも保健センターとして分かれていて、福祉部門と別れているという ことも、余り好ましいことではないのではないかなと私は思っています。常時顔を合わ せる環境がベストではないかというふうに思います。  もしそういう物理的な環境が確保できないというふうになれば、やはりそれぞれのす ぐれた人的な能力、お互い顔の見えないところにいても、信頼感があるから、一生懸命 仲間として頑張っていこうという、そういう強い意志を持って協力ができる。そういう 人材をそろえていく必要があるのではないかというふうに思います。以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは、次に迫さん、お願いします。  迫構成員  私はそこにも書いてありますように、管理栄養士という立場から、管理栄養士の配置 状況。その他についてお話をさせていただきます。市町村における管理栄養士の配置状 況は67.2%というのが17年7月現在で出ている数字です。ただこれは市町村合併の影響 を受けまして、大きく変わっているだろうと思います。17年7月現在の人口規模別の配 置率内訳をそこに入れておきましたけれども、これが現在はかなり上がってきているの ではないかというふうに思うところです。  ただそれは、見かけ上配置率は上がるかもしれないのですが、実質的に一体何人管理 栄養士がそれぞれの市町村にいるのか。そこがきちんと機能できる形にあるのかという ところでは、まだまだ人材不足ということを感じているところでございます。  市町村管理栄養士、栄養士の配置部門と役割として、3部門を挙げさせていただきま した。健康づくり部門、ここにしか現実にはほとんどいないといってもいいかもしれま せん。庁内連携の要として、やはり管理栄養士をここにはすべての市町村で置いていた だきたい。特に今回の保健指導の関係、それから介護予防の関係、そういう中で、ハイ リスク・アプローチと同時にポピュレーション・アプローチをきちんと地域で繰り広げ ていく。それを連動して実施していくということが必要になってきています。  そういう中で、やはりボランティア団体等の地域団体の育成等も含めて、これは地域 づくり、街づくりという観点からきちんと機能できるような、団体に対する支援という ものを行っていきたい。そうしますとやはり健康づくり部門が、系統立ってといいまし ょうか、一貫してといいましょうか、そういう形できちんとかかわっていくことが望ま しいのではないかというふうに思っております。  それから国保部門への配置、これは今現実に、多分これから調査をしてもほとんど今 のところではないであろうと思われます。実際これから先ハイリスク・アプローチを展 開していくに当たって、そのアウトソーシングの比較評価等も含めまして、食の部分と いうのは非常に大きな分野を占めますので、やはりここにはそれを担う管理栄養士の配 置という、そういう人材配置が必要であると思っています。  介護予防部門でございますけれども、これは地域支援事業の企画、実施、評価。それ から、関係機関との連携調整とか対象者との調整とかさまざまな業務が、今現実には生 まれてきております。  私どもは昨年度介護予防の栄養改善事業を先駆的に保健所と市町村の協働という形で 実施をしました。そういう情報を管内の管理栄養士に流していたわけですけれども、そ ういう情報を受けてと言い切っていいかどうかわからないのですが。私たちの管内では 介護予防部門に、管理栄養士または栄養士を配置していただきました。  実際に管理栄養士が配置された市では、高齢者の栄養問題がこんなに大きいものだと は思わなかったという発言があり、それからスタート時期の諸問題を調整したり、軌道 に乗せていく役割、こういうふうなものは従来の健康づくり部門にいてはとても考えら れなかったことだ。それを介護予防に配置されたことによって、実感として実際のケー スを通じてそういうものが把握できたということで、活動がこれからますます活発にさ れていくだろうというふうに思っております。  やはりキーとなる人材がそれぞれのところに、たとえ1人でも配置されることによっ てそこでの業務。これは住民のニーズに直結した業務というものができてくるのではな いかというふうに思っております。  この3部門、健康づくり部門、国保部門、介護予防部門、この3つの部門に確実に管 理栄養士を配置していただくという方向性。そしてこれは本当に分散配置という、先ほ ど保健師さんの方の話では、大変うらやましいようなお話をいっぱい伺っているわけで すが、もとの人数がいない中で、最低それぞれの部門に配置していただけるような、そ ういう方向性というものを示していければというふうに思っております。以上でござい ます。  伊藤座長  ありがとうございました。それでは、藤内さんお願いします。  藤内構成員  まず分散配置において、効果的な保健活動ができるために必要なことを指摘させてい ただきたいと思います。  まず課題の共有ということです。確かに分散配置になりますと、それぞれ担当する業 務がばらばらになってしまいまして、定期的に集まるということもないと、本当に孤立 してしまいます。そういう意味で定期的に集まり、日ごろの活動の課題について共有す る機会を持つということ。あるいはそうした話し合いが、先ほど井伊構成員からも指摘 があったように、協働事業という1つの形になっていくためには、議論の統括といいま すか、まとめてそれを施策化できるような、技術職の統括者が必要であろうと考えます。  昨年の現地調査で、こうした分散配置をしている自治体で、技術職が定期的に集まっ ていたのだが、それがなくなったという実態がいくつかありました。なぜ、定期的な集 まりをやめたかというと、一緒に集まっても話題がないというのです。確かに、それぞ れ担当している業務の表面的な部分だけに着目すると、確かに共通する部分がないんで す。しかし、その背景にある家族や地域の問題ということに目を向けると、当然共通す る部分が出てくるのですが、そこまでなかなか議論ができていなかったのです。そうい う表面的な課題の後ろに潜む地域の問題について考察できる力というものが、必要だろ うと思います。  それから先ほど分散配置されていると共通の話題が乏しいと申しましたが、そのもう 1つの理由は、方法論が異なるからです。福祉、健康づくり、子育て支援というのは、 当然アプローチがそれぞれあるわけですが、方法論だけにとらわれると、共通の話題が 乏しいということになってしまいます。実際に自分たちがこの活動を通して何を目指し ているのか。その活動の目的や行動目標を明確にすることが必要だと思います。  こうした活動の目的や行動目標を明確にする作業は、保健計画の策定にほかなりませ ん。、自分たちの活動が何のためか、その目的を議論していくことで、それぞれ分散配 置されている立場においても、結果的に地域で目指すのはこういうことだねということ が確認できれば、そのために協働ですべきことは何かということも、議論されやすいの ではないかなと思います。  毎年のように、いろんな保健計画の策定が市町村に義務づけられるものですから、一 生懸命計画策定はするのですが、せっかくの計画策定を通して、自分たちが目指してい るもの、その活動の目的を共有できていないということが問題であろうかと思います。  それから常に効果的なジョブローテーションと研修の機会についてですが、先ほど有 原構成員の方から3年おきにローテーションを行っているということをおっしゃいまし たが、3年でもいいし、できればもうちょっと長い方がいいのかなと、個人的には感じ ています。特に新任からの5年間は、地域住民と直接接することができるような保健セ ンターに配置する。地域の担当として、幅広い地域の健康問題に接する機会は不可欠だ と思います。  その後は本庁であったり、行政能力を獲得できるようなポストに、5年、さらにその 後には福祉の領域であったり、教育委員会であったり、自分たちの活動の幅をさらに広 げられるようなローテーションが、人材育成という視点で、望ましいのではないかと思 います。  それともう1つ大事なことは、市町村合併等において、複数の保健センターが市町村 に配置された自治体がふえたわけです。そうすると1人配置、もちろん、本庁の関係各 課も1人配置のことが多いわけですが、その場合にどうしても研修機会が減るというこ とが指摘されています。分散配置で1人職種の職場において、いかに研修機会を確保す るのかということも、重要な課題だと考えます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。5人の方に発表していただきました。この問題につ き、また20分ほど討論をしていただきます。  きょうはいずれの方も分散配置は、そのこと自体はそれを受け入れていかなければい けない。保健師、栄養士の方が関与する業務が非常に多様化していますから、配置の面 で分散していくのは必然だと。しかしながらそれを例えば1人配置の場合、支援の体制 なり、教育の体制なり、分散配置を前提としてどういう課題がありどのような対応が求 められているのかということが基本的なテーマと思います。  そんなことでこの問題につきまして、論点が明確になってきていると思いますが、御 質問、御意見ございましたら、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。  本田構成員  今いろんな御意見をお聞きしたんですけれども、まず管理栄養士、栄養士につきまし ては、保健師と異なって、完全に100%配置の状況ではありません。そういった中で分散 配置ができるか、また分散配置となった場合にコアになるところをどこに置くかという ことも、議論のところでやっていただくのがいいのかなと思います。  例えば市町村合併に伴いまして、市町村によっては、6名の複数配属になったとして も、ほとんど支所的なところで、ほとんどヘルス部門の業務が多いと思います。今、迫 委員が、管理栄養士、栄養士でも3つの部門では分散配置が必要だということの意見が 出されました。そうしたときにどこの部署にコア的なものを置いて、きちんと人材育成 をやっていくかということも必要であり、そのあたりも議論していただければと思って います。  伊藤座長  この辺の実態はどうなっているのでしょうか。先ほど迫さんの御発表の中で、配置が まだ十分ではないということを強調されておりました。健康づくり部門、国保部門、介 護予防部門に分散配置をされることによって、保健師の場合に指摘されているような問 題が起きているのか、起きていないのか。起きていなければ、議論をする必要はないと いうふうに考えていいのか。その辺はいかがでしょうか。  迫構成員  起きているか、起きていないかという二者択一の答えで求められれば、起きていない。 それはなぜかといえば、今現実にいないからというお答えにならざるを得ないだろうと 思います。  実際には先ほども言いましたように、管理栄養士の配置はほとんどが健康づくり部門 に、ヘルスの部門にいる。そこに先ほど本田構成員が言われましたように、合併等があ って、そこに集約されているというふうな状況はあるかと思います。国保部門には全く いないであろうというのが、今の推測でございます。介護予防部門には若干置かれ始め ている。  そういう中で分散配置の問題点は、今のところは発生しようがないんだけれども、逆 にここで分散配置という形で進めていかない限り、業務そのものが停滞していってしま う。やはり国保での保健指導の部門、それから介護予防での部門への配置が必要です。 これは先ほど申し上げた私どもの管内で、新たに介護予防に配置されたことで。プラス の評価をしておりますけれども、今後そういう形で動いていってほしいということ。  それからもともとが少数職種でありますので、それが分散配置をされてそれぞれ1と いうふうになったときに、やはり保健所がそこで機能していって、地域全体の中での核 となる役割を、当分の間は持たざるを得ないのかなというふうに思っております。  伊藤座長  ありがとうございました。本田さんよろしいですか。いかがですか。  本田構成員  今、迫委員が出されたように、保健所の連携機能というところに返ってくると思いま す。保健所の連携機能として企画調整部門に、専門技術職を置くということが、地域保 健法の中で議論されたかと思います。その部門にきちんと管理栄養士なり、保健師がい て、体制整備の役割として支援できれば、効果は出てくるのかなと思います。併せて、 市町村栄養士の配置促進のことも重要視されてくるのではないかと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。  長谷川構成員  山梨の南アルプスの現状をちょっと紹介させていただきたいのですが。うちも分散配 置ということで、平成15年の4月に6町村が合併いたしまして、7万2,000人の市になっ たわけです。現在保健師、栄養士の配置は、ヘルスの部門に保健師が16名、栄養士は2 名おりますけれども、これもヘルスの部門のみです。あと保健師はそれ以外に福祉の分 野で、子育て支援課という虐待ネットであるとか、保育園関係の課、あと障害福祉、介 護認定、包括支援センターというところで、そういった分散配置をされております。  先ほど先生方からもお話があった分散配置がデメリットばかりではなくというのは本 当に私も感じております。地域の中で複雑なケースがふえている中では、非常に分散し た配置。福祉の方に行った保健師と、ヘルスの保健師は地区担当制をとっておりますの で、地区担当でチームというかそういう形で、一緒にケースを見ていくというような体 制が徐々にでき上がっております。そういった意味合いでは、ヘルスの保健師が1人で 背負ったりということは少なくなってきているかなというふうに思います。  また福祉の方に行っている保健師の中では、やはり子育て支援の方の虐待のケースで あるとか、障害の方の福祉の方の障害者手帳のケースであるとか。介護保険の方では在 宅のケースの状況とか、介護認定の原疾患というようなところの分析などをする中で、 やはり予防の部分というところに帰る。そこが見えてきたというふうに分散というか、 福祉の方に行った保健師からは、意見があります。  そのデータをやはりヘルスの方に持ち帰るというか、私たちが受けて、では虐待予防 のためにはどういう視点で乳幼児健診に向き合えばいいのかとか、生活習慣病の予防の 部分では今の段階からどういったところを伝えていけばいいのかとか、非常に材料とし て使わせていただいているような形ができているかなと思っています やはり分散配置されたことで、物理的には離れていますので、先ほどからも出ていま すように、お互いの活動が見えやすくするというような努力が必要になってきています。 今までは隣にいて、何となくこの話の中であったわけですが、明文化していく。自分た ちの活動とか地区の把握した情報を文書化、明文化していく力を、私たちは何となくや ってきたところを形にしていく力量も必要かなというふうに思っています。  先ほどの連携という視点も含めてなんですが、先ほども出ていた生活者、地域の住民 の人が真ん中にいるということがみんなの中にあれば、おのずとよい連携が出てくるの かなというふうに思います。  またお互いに分散配置されている中でも、それぞれみんな地域の住民を中心にしてつ ながっているという意識があるということが、それが職員の視点というところもあるか と思いますが、その視点があるのとないのとでは、その先のサービスの質が、市役所の サービスの質が全然違ってくる。一枚岩になれるかどうかというところかなというふう に思っています。  やはり分散配置の中でも、それは私の仕事ではないと言ってしまった瞬間に、もうそ こでぷつんと切れてしまう。住民の人も、それは俺のことではないと思った瞬間に、も う地域のつながりはなくなるということを考えると、いかに地域の中で起こっているこ と、職場の中で起こっていることを自分の問題として考えられるかというような、そう いう土台を私たちがつくれたらいいのかなというふうに感じています。以上です。    伊藤座長  ありがとうございました。有原さんのところの保健センターに17名の方がいらっしゃ って、3名が分散配置から保健センターに戻った職員の発表をしていただきました。ち ょっとたとえが悪いんですが。例えば自治医大の卒業生が、2年間病院で臨床研修をし て、僻地の診療所へ一人で行った場合、拠点の県立中央病院などからいろいろな支援の 仕組みがあります。困ったときに相談をする仕組みです。例えばそういう形で、有原さ んのところは、この分散配置に出した3名の方について、どの程度のレベルであれば、 1人で置いておいてもいいのかという判断の目安と支援の仕組みがどのようになってい るでしょうか。その辺のところをお聞かせください。  有原構成員  それは帰ってきた人間の感想でしょうか。  伊藤座長  感想というか、市の保健センターの仕組みとして。  尾島構成員  関連で伺いたいと思っていたのですが、心理的な面でつながりを持っておくという支 援と。あと専門的に何か疑問点とか助けが必要になったときにどうするかという点で、 他の課に行っている方に対してどんなことをされていたのか、ぜひ伺いたいと思ってい たんですが。  有原構成員  分散配置が始まった時から、庁内の保健師の連絡会というのを立ち上げました。今後、 必ず保健師が分散配置されるであろうという考えのもとです。それを勤務時間内に開催 するということを前提としました。時間内に集まって、とにかく年に3回でも4回でも 話をする。現状はどうなっているのか、お互いに話し合うということから始めましょう ということが、定例会の始まりでした。  その次には、事業開始にあたり、それが保健センターと関係があるのであれば、共同 の作業としてやっていくことにし、作業については一緒に話し合いをしましょう。こう した協議はできるだけ実施しております。  それが現在うまく機能しているかと言われると困る部分もありますが、そのおかげで 他の課主催の協議の場に、保健センターから必ず参加できております。こうした形での サポートがあると考えているのですが、それでお答えになるでしょうか。  伊藤座長  いえ、例えば必ずこの人に相談したら、必ず助けてやるという。そういう仕組みにな っているかどうかということです。常に定期的に集まるとか、心理的なつながりという ことではなく、実際に困った問題に遭遇したときに、その人をサポートしていく仕組み が、保健センターの内部に、きちんとシステムとしてあるのかどうかということです。  有原構成員  それを言われると、正直、すごく困ります。すべて私のところに集中しているという のが実態です(笑)。  伊藤座長  そうだとすれば、携帯電話でも何でも常に連絡をとっていいですよという形なのかど うか。  有原構成員  ええ。何か問題が起こったときには電話をして、話をしましょう。それらを一緒に解 決していきましょうということは、常に言っています。システム的にどうなってくるか というと、非常に危ういものがあります。それは痛いところです。  伊藤座長  それから、例えば人事の面で、経験年数など、到達レベルを考慮した考え方があるの でしょうか。  有原構成員  それはあります。一応主任以上が異動している実態があります。ですから少なくとも 約9年位経験を積んだ保健師が配置されております。ただ、人事的にどうしようもなく て、新人が配属された例もありましたけれども、いずれにしても経験を積んだ専門職を ということでは、認識されていると思っています。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかにいかがでしょうか。尾島先生、よろしいですか。  曽根構成員  先ほど藤内構成員がおっしゃったことに関連してなんですけれども、私も時間内、時 間外を問わず、研修会とか研究会に呼ばれてお話をさせていただいたり、あるいは議論 に加わったりすることがあります。やはり議論が、形式的だったり、あるいは議論にな らなかったり、もうちょっと本質的な議論をしたいとこちらが願っていても、そういう ものにつながっていかなかったりするようなところがあります。  あるいはすぐ役に立つ情報というものを求められることが多いのです。私は常々、う ちの学生には言っているんです。すぐに役に立つものは、すぐに役立たなくなるよと。 今我々が置かれているような状況を考えるときには、もう少し本質的な議論であるとか、 中長期的な視野で、より幅広い興味をつくっていくような、そういう研修システムであ ったり、あるいは研修内容であったり、人材育成システムというのが、必要であると思 います。  そうしないとついつい制度とか方法論に振り回されて、守りの議論に入ってしまう。 そこからは地域保健を発展させていくという議論は、なかなか生まれづらいと思います。  ニーズから一貫して政策に結びつけていくような能力をつけるには、どうしたらいい か。1〜2割の方はどの技術職でもそういう能力がもう備わっていて、1〜2割の方は どうやっても難しい。残りの6〜7割の方が、やはり教育や研修によって、伸びていく というところがある。そこをどう伸ばしてつなげていくのかということを、議論してい ただく、あるいはこれから考えていただくことが必要かなと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかに。  井伊構成員  分散配置に関する昨年度のヒアリングからの問題点は、大きく2つあったと思います。 1つは、新任の方が、保健のベースなく、例えば介護保険の調査のところにぽんと置か れるとか。全く違うところで、上司が直接事務職であって、ロールモデルがないとかと いうそういうことの問題点が1つある。それは先ほどから、藤内先生のペーパーでも、 新任の方の配置ということで、お書きいただいているところだというふうに思います。  もう1つ大きい問題は、あちこちに分かれていることによって、自分が見えている領 域に関しては見えるけれども、それぞれ保健師なり栄養士なり専門職として、地域の保 健全体のことにかかわっているはずなのに、全体の向上に、自分たちの活動あるいは事 業がつながっているのかどうか。その配分がこれでいいのかということが見えないとい うことが、本当にベテランの保健師からも非常にそれが悩みであると、悩ましいという ことが語られています。  むしろ新任の方についてはちょっと、それもいろいろあるんですけれども、ベテラン の方の、地域全体のが見えなくなることについての方略はどうすればよかろうかという ことが、問題だったというふうに思います。  有原構成員がとにかく会議を持つと。それから顔を合わせてみるというようなお話で した。それでかなり日々の一つ一つの事柄に関しては、対応していけるんだと思うんで すけれども、それで全体の評価をどうしていくかというところについては、ちょっとま だ見えてこないなというふうに思います。  伊藤座長  ありがとうございました。では、田尾先生。  田尾構成員  お聞きしていて分かってきたことも多いのですが、分散配置なるものは、私たちの議 論でいえば、マトリックス組織の話ではないかと思いました。いわゆる保健センターに 所属しながら、他の部署にも所属をするわけですね。二重配置ではありませんけれども、 本家は福祉センターで、それでいわゆる大所高所からものを見るために、分散配置をさ せると理解してよろしいですか。専門性を生かして、センター以外の部署についてとい うことですね。  その場合、私たちの議論では、マトリックス組織に近いのではないかなと思って聞い ておりました。そこで問題が起こるかもしれないのは、自分の帰属がどこにあるのかな くなってしまうことです。つまり自分は一体どこの人間だろうということがわからなく なってしまう。先ほども御説明があった中で気がついたのですが、自分が所属をしてい るのは保健センターで、そこの専門的なプロフェッショナルであるということがはっき りしていないと、そういう分散配置は、その人にとってよくないことがあるのかもしれ ないと思いました。  つまり、その人たちは、自分で役割葛藤を起こしてしまって、つまり自分は何だとい うことがあいまいになる、分からなくなる、それは困ったことで、それをなくするため には自分の所属性をはっきりできるような、自分を生かせるような、というか、自分の 帰属しているエリアに安心して所属し、帰属できるような部分がないと本人も周囲も困 ってしまうのではないか。ご指摘があったように、何も知らない新人を配属すべきとこ ろではないのではないかと思いました。  伊藤座長  恐らく分散配置の問題は、保健師を例にとれば、保健センターに所属し、心理的にも 本籍地になっている。いろいろな分野で保健師がかかわる業務が出てきたので、同一市 町村の中で、保健センター以外の部署に働いていても本籍地である保健センターのつな がりが必要だ。そういう理解でよろしいでしょうか。藤内さん。  藤内構成員  先ほど井伊構成員が実家という言葉をお使いになったのですが、いろんな出先であっ たり、あるいは本庁の関係課であったり、そういうところに分散配置されていても、結 局困ったときに相談できる実家や実母のような存在が必要ではないかと思います。多分、 狭山市では、有原さんがその役割を果たしているんだと思うんですけれども、困ったと きにこの技術職に相談すれば、自分の悩みについて聞いてもらえる。それはもちろん1 人ではなく、複数でもいいわけです。そうした実家がどこなのかという議論も、ある程 度必要なのではないかと思います。  これから国保部門と衛生部門と保健師の配置をどうするかということが、各自治体で 検討されることになるのですが、その際に保健師にとっての実家に当たる部分はどこな のかという視点が重要だと思います。  もう1点はそういう精神的なというか、心理的なよりどころだけでなく、実際に自分 たちが目指している保健活動のゴールが明確になっており、今こういう状況でここまで 達成できているとか、その達成に向けて、この辺がまだできていないというような全体 像の把握が必要だと思います。全体像が共有されないと、それぞれ分散配置されたとこ ろで、自分は一体何をしているのかが見えなくなる。上位の目標があって、さらに下位 の目標があって、さらにその下位の目標という、その目標というか評価指標の階層構造 といいますか、そうしたものがみんなで共有できていると、今、自分は、このポストで こういうかかわりをしており、そのことによって地域住民の健康やあるいはクオリティ オブライフの向上に貢献しているのだということ、その位置づけがはっきりできれば、 安心して仕事ができるのではないかと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。ちょっと時間の関係もありますので、尾島先生、最後にお 願いします。  尾島構成員  今の実家とか帰属という話ですが。今まで保健センターが実家でいろんなところへ出 ていくという話が多かったのですが、市町村合併のときには、自分の旧市町村が実家で、 そこからほかのところへ出ていくということが多いと思います。多分心理的には、いろ いろ回っても自分の実家に帰ると安心するということがあると思います。実家から中心 になる保健センター等に異動になった時に、心理面をどうやってサポートしながらやっ ていくかというのが、非常に大事だろうなというふうに思います。  それと合併後の体制について、今は合併して1〜2年、旧市町村単位で政策的なこと も、比較的それぞれ、独自性を持ってやっていこうというのが続いているところもある と思います。今後は、だんだん政策的には新市一本になり、旧市町村単位の保健センタ ー等は、かなり対人直接サービスを中心にやっていくことになるでしょう。政策をつく る場所と、対人サービスを行う場所が、本庁と出先にはっきり分かれてくるかもしれな い。そのときにどのようにそれをうまくつないでいくかというところは、これから難し いところかなというふうに思います。  伊藤座長  市町村合併のことまで入れると、実態の把握なり今後の方向等さらにいろいろ課題は 出てくると思うのですが、この問題につきましては、今後また御議論をいただくことに します。時間の関係で、一応これまでとさせていただきます。   (3)その他  伊藤座長  分散配置における活動体制及び専門技術職員の人材育成体制に関する調査につきまし て、9月19日にワーキンググループを開催して、調査書を作成していただきました。  この調査票は、構成員の皆さんに送付され、御意見をいただき作成されましたので、 ワーキンググループの責任者であります、曽根構成員の方から御報告をお願いします。  曽根構成員  資料3の分散配置における活動体制及び専門技術職員の人材育成体制に関する調査 (案)です。9月19日にワーキンググループを開きまして、その後私どもとあるいは各 ワーキンググループの委員と中身を検討いたしまして、それから先週各構成員の皆様に も御意見をいただきまして、最終案としてきょう上げさせていただきました。  28ページからずっとありますけれども。返送先はやはり回収率を上げるということで、 保健指導室ということになりました。それから調査内容に関する問い合わせとしては、 国立保健医療科学院が担当させていただきます。ただうちだけで答えられないものにつ いては、それぞれ適切なところに、振っていきたいと思います。  29ページから実際の調査なんですが、まず29ページは属性に関するところです。記入 者も含めて、市町村自治体の属性に関するところを調査いたします。  それから30ページから保健師に関する質問ということで、33ページまでになります。 配置とそれから人材育成に関して、保健師というくくりで、聞いております。特に分散 配置に関することにつきましては、9の4で聞いておりますけれども、これは別紙とい うことで、40ページにあります。横長のものですけれども、これにそれぞれに属する保 健師の所属部署であるとか。それから兼務の部署、出向の有無、職位、年代、それから 行政保健師としての経験年数、産休育休について、あるいは異動回数等について、一人 一人について、番号を記入していただくということです。これは点々となっていますけ れども、これは7〜10といって、また番号が10番台のもの、これを3枚添付するという ことで大体30人ぐらいを想定しています。それ以上あるときには、コピーをしていただ くというふうなことで、自治体の保健師さんすべての状況を把握することにいたしてお ります。  それから具体的に、距離的なものであるとか、あるいはさっきも問題になりましたが、 保健師間の連携についてきいてみたり、あるいは分散配置の問題点ということを31ペー ジのQ8等できいています。それから31ページの9からは、育成に関することです。こ れは特に新任、中堅、管理職というふうに分けて、いろいろ聞くようにしております。  特にQ13とかは企画能力の向上の仕組みとか、あるいは自己研鑽の仕組み等について 聞いておりまして、最後Q17では、課題について聞くようにしております。  それから34ページからは管理栄養士、栄養士に関することですけれども、これも基本 的には保健師のものを踏襲して、ただ先ほど言った少数配置の話があります。特にQ19 でも41ページの配置状況につきましては、同じような形の横長の紙で、自治体内の管理 栄養士、栄養士について、それぞれの属性をすべて聞くというふうな形にしました。こ れを分析することによって、分散配置の状況を、より具体的につかみたいと思います。  そして38ページからは、今後の組織体制につきまして、今後平成20年度までにどのよ うな組織体制、あるいは配置を予定しているのか。あるいは特定健診の保健指導に関す る保健指導の実施方法について聞くような項目を38ページ、39ページにつけております。  このような内容で、レイアウトに関しては、またこの検討会の後に具体的にもう少し 答えやすい形に調整する予定になっておりますけれども、内容的にはこのような形で進 めていきたいと思います。  次の第4回の検討会に、あらあらの結果を出すということですので、その辺は急いで やっていきます。多分次の検討会では、すべての回答をそろえるというのはなかなか難 しいかもしれませんけれども、集められるものについての解析結果を御報告できたらと 考えています。    伊藤座長  どうもありがとうございました。ただいま曽根構成員から御報告いただきましたが、 このことについて御質問等いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  藤内構成員  40ページの、それぞれの配置状況を記入する選択肢なんですけれども、この選択肢だ と所属部署が本庁なのか保健センターなのかというのがわかりません。例えば保健部門 で本庁の人もいれば、保健センターで保健部門に丸をつける人もいるので、その辺のと ころは、ある程度今回はわからなくていいのか。私は保健センターなのか本庁なのか、 少し区別がつくことが必要かなというふうに考えるんですけれども。  それからもう1点、管理栄養士の分も基本的に保健師と同じ設問の構造になっている のですが、特に一緒に集まって検討するかという部分で、34ページの問22にあるような 栄養士だけが集まって業務連絡会とか検討会をやっているかを尋ねるだけでなく、保健 師と一緒に共同でやっているかを尋ねることも必要だと思います。全く保健師と同じ構 成にしたために、保健師間との合同の検討会とか、業務連絡会のようなことが、尋ねに くくなっていると思います。それから曽根先生もおっしゃったとおりOJTの質問あた りは、ちょっと配置状況が大きく異なるので、このままだと出てきた答えの解釈という のが、難しいのではないかと思うのですが。  勝又室長  最初の40ページのところなんですけれども、もともとは、出向の有無の前か後のあた りに、役所にいるのか支所にいるのかみたいな、そういう項目があったんですけれども、 それを前の方のところに、例えば34ページの問の21のところにくくってしまったので、 それで本庁にいるのか支所にいるのかということが見えなくなってしまったというよう なことがあります。もう一度そういった視点で、検討をさせていただこうと思います。  それから栄養士さん、管理栄養士さんの分については、もう一度確認をした方がよろ しいでしょうか。  迫構成員  管理栄養士、栄養士間の連携について、私はちょっとここのQ22のところなんですが。 定期的な業務連絡会、検討会。これはうちの所管では、それぞれ市町村の中でやってい るものですから、疑問に思わず、このままの設問でいいかなというふうに思いました。  ただいま先生がおっしゃいましたように、保健師さんとの業務連絡会は、やっている のかどうかがちょっと明確ではないので、そこの情報をちょっと再度集めてみないとわ からないかなと思っています。市町村の中で、または保健所と市町村で、業務連絡会は 確実にやっておりますので。この設問で22はいけると思っております。  伊藤座長  いずれにしても、非常にもう時間は切迫しているので、ひとつよろしくお願いします。  尾島構成員  組織上統括する保健師とか管理栄養士という質問についてです。組織図上や事務分掌 上は統括しないが、心理的には統括していたり、人事に関して影響力があったりという 人がいた場合に、「統括する人はいない」というふうに、答えていただきたいという趣 旨になりますか。  伊藤座長  そこはもう約束というか、調査用の記入の仕方に記載するということでよろしいです ね。  有原構成員  中堅保健師の32ページのOJTですが、まさに中堅のところが私としては非常に悩ま しいところであります。そのOJTが(2)で事業評価と事業計画と予算書の作成と議会答 弁の資料作成で代表されております。このことで、中堅保健師のOJTを表現していっ ていいのかという思いがあります。中堅保健師というのは、統括して見るという状況に あることを考えるべきで、それが事業評価と事業計画に表されているのかもしれません が、それだけで、若い人たちを育てていく、広く見て育てていくという役割が、この項 目の中で見えるのかなという思いがあります。そういう役割を担っていただきたいとい う思いが強いのです。1〜4の項目だけが具体的に出て、その他は括弧だけですから、 他の分野を書こうとしても、余り書くことはないのかなと思ったりもするのですけれど も、そこら辺はいかがでしょうか。御意見としてお伺いしたいと思っていたのですが。  確か別の検討会でプリセプターの養成というのが、大きな問題として厚生労働省でも なっていたと思ったんですけれども。  伊藤座長  曽根先生、ちょっと検討していただけますか。  曽根構成員  はい。  伊藤座長  それでは今後この調査票を使いまして、調査を進めていくことにいたします。今出さ れた問題も含めて、時間が切迫しておりますけれども、曽根先生、ひとつよろしくお願 いいたします。  次に第4回の検討会のことでございますが、第4回の検討会では、新人時期の人材育 成ガイドラインやPDCAサイクルに基づく保健活動を推進するための体制整備につい て御議論をいただきたいと考えております。このことにつきまして今回と同じように、 座長と事務局で相談いたしまして、何人かの構成員の方に議論のたたき台となるペーパ ーを作成していただいて議論を進めたいと思いますが、いかがでしょうか。また事務局 と相談いたしましてお願いしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。  それでは終了の時間となりましたので、事務局から、今後のスケジュールについて御 説明をお願いいたします。 3.閉会  加藤主査  それでは今後のスケジュールについて、御説明いたします。第4回の検討会ですが11 月29日。14時から16時を予定しております。場所と詳細については、後日改めて別途御 案内をしますので、よろしくお願いいたします。  伊藤座長  それでは本日の検討会は、これで終了いたしたいと思います。長時間どうもありがと うございました。 (終了)