06/09/26 がん検診に関する検討会 第13回議事録 第13回がん検診に関する検討会 議事録         厚生労働省老健局老人保健課 第13回がん検診に関する検討会 議事次第   日  時  平成18年9月26日(火) 10:00〜11:54     場  所  国立がんセンター 管理棟1階特別会議室 1.開  会 2.議  題   (1)第12回の論点メモについて   (2)委員、参考人によるプレゼンテーション     (1)胃がん検診の対象年齢、受診間隔について     (2)検診受診率の高い自治体の取り組みについて     (3)胃がん検診に内視鏡検査を実施している自治体の取り組みについて   (3)その他 3.閉  会 ○大澤課長補佐 それでは、定刻となりましたので、第13回がん検診に関する検討会を開催さ せていただきます。  まず初めに、事務局に人事異動がございましたので御紹介申し上げます。9月1日付でまい りました鈴木康裕老人保健課長でございます。 ○鈴木老人保健課長 おはようございます。9月1日付で三浦課長の後任で老人保健課長を 拝命いたしました鈴木と申します。よろしくお願いいたします。  実は私は、この課は出戻りでございまして、1997年、1998年、ちょうど平成9年、平成10年ぐ らいだったと思いますが、今、医政局長をしておられます当時の松谷課長のもとで課長補佐を しておりました。実は大変申し上げにくいことですが、そのときにがん検診の一般財源化という 課題がございまして、やむなくそこに踏み切らざるを得なかった。そのときに受診率の話とか精 度管理の話、今日まさに話題になっておられるような件について、負のインセンティブが生じな いように、いろいろ手だては講じたつもりでございますが、去年まで県の部長もしていましたけ れども、なかなか自治体単位では入札という制度もあって、なかなかそちらの方に目が向いて おられないところもございますので、是非、日本全体の検診受診率、精度管理を高めるために 先生方のお力を貸していただければと思います。  また、今日お手元にあると思いますが、胃がん検診のガイドラインというものもできております ので、それに基づいてなるべく早い形にきちんとした指針を示したいと思っておりますので、先 生方の御支援をよろしくお願い申し上げます。  本日はどうもありがとうございました。 ○大澤課長補佐 続きまして、8月24日付でまいりました私、大澤と申します。どうぞよろしくお 願いいたします。  今回は、胃がん検診についてプレゼンテーションしていただく予定としておりますので、プレゼ ンテーションしていただく参考人を御紹介申し上げます。  まず、山形県健康福祉部保健薬務課健康やまがた推進室の大類参考人でございます。  続いて、鳥取県福祉保健部次長、西田参考人でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。  また、本日は、委員の方におかれましては全員御出席ということで、ありがとうございました。  それでは、垣添座長に本日の進行をお願いいたします。 ○垣添座長 皆さんおはようございます。朝早くから、また、遠路お集まりいただきまして、誠に ありがとうございます。  今日は、胃がん検診に関する検討会の2回目になりますが、参考人の先生方にはおいでい ただきまして、誠にありがとうございました。  それでは、約2時間十分な御議論をいただければと思います。よろしくお願いいたします。  まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○大澤課長補佐 それでは、座って失礼させていただきます。  議事次第がございます。それから、がん検診に関する委員会の名簿、第13回がん検診に関 する検討会資料の一覧。  資料1といたしまして「胃X線検査による胃がん検診の性別・年代別・受診間隔別の有効性に 関する検討」という資料。  資料2といたしまして「胃がん検診の受診率向上の取組」。  資料3といたしまして「鳥取県の胃がん検診」。  参考資料といたしまして「前回の委員からのご意見(論点メモ)」ということでございます。  また、委員の方々におかれましては『鳥取県がん検診実績報告書』という冊子を配付させて いただいております。資料等に不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。 ○垣添座長 よろしいでしょうか。  それでは、議事に移らせていただきますが、まず、事務局に委員の皆さんから前回いただい た御意見を取りまとめてもらいましたので、参考資料の論点メモの説明をしてもらえますか。 ○大澤課長補佐 それでは、参考資料ということで1枚おめくりいただきまして、前回の御意見 をまとめたものでございます。  まず、データの把握でございますが、市町村におけるデータ把握について、例えば、職域等の 把握をすべきではないかという御意見。それから、市町村等によって把握方法に差があるので はないかといった意見。それから、罹患率等も重要というような意見等が出てございます。  それから、検診の質の確保ということで入札額だけで決めますと、質の問題という御意見をい ただいております。  続いて、対策型検診と任意型検診のそれぞれの特徴についてまとめられてございます。  それから、胃X線検査についてでございますが、これに関しては死亡率減少効果を示す直接 的な証拠を認めたということで、胃がん検診については死亡率減少効果を示す相応な証拠が あるということで、対策型及び任意型検診として実施することを勧めるというような御意見をい ただいております。  続いて、胃内視鏡検査でございますが、これに関しては間接的な証拠はあるということですが、 死亡率減少効果を示す直接的な証拠が判定できる可能な研究がないということで、2つ目の 「○」以下から研究の範囲で行うことが望ましいといったこと、それから、最後の「○」にあります ように、エビデンスを出すような研究が必要というようなところが言われております。  それから、ペプシノゲン、ヘリコバクター関係でございますが、これにつきましても、死亡率減 少効果を示す直接的な証拠としての判定が可能な研究がなかったということで、これについて も2つ目の「○」にありますが、有効性評価を目的とした研究の範囲内で行うことが望ましいと いったこと。それから、最後の「○」のところで、胃X線検査の対象の絞り込みに有効であるか否 かについても評価研究を実施していくことが望ましいということで、研究をしていくことが望まし いというような御意見をいただいております。  続いて、検診間隔でありますが、胃がんの死亡率減少効果を認めているのは40歳以上、そ れから、逐年の検診ということが言われております。一方で、3年以内に80%が一度でも胃が ん検診を受けている者は死亡のリスクが減少するという報告もありますが、4つ目の「○」にあ るように、実際のデータに基づいて議論する価値があるのではないかというようなことが言われ ております。  それから、検診従事者のところでございます。現在、読影する医師が高齢化しているというこ とで、若手の医師の養成が必要であるという御意見。また、国立がんセンターが中心となって 取り組むことが望ましいといったような意見。それから、4つ目の「○」ですが、乳がんの方では マンモグラフィの中央委員会という組織で実務の試験があるというようなことが述べられており ます。また、胃X線検査の関係では、良質の胃透視撮影ができる技師の確保というような御意 見をいただいております。  最後に、検診の普及ということで、胃がんの偽陰性率の関係で2年から3年続けて受診しても らう必要があるのではないかというような御意見。それから、国立がんセンターを中心として、が ん検診に関する普及啓発を推進する必要があるというような御意見が出ております。  以上、こういった御意見を踏まえまして、本日はプレゼンテーションの関係ですが、1つ目は胃 がん検診の対象年齢、受診間隔について、それから、2つ目は受診率の高い自治体の取り組 みについて、3つ目は胃がん検診、内視鏡の検査を実施している自治体の取り組みについてヒ アリングをするというような流れとなっております。  以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。前回の議論の内容を思い起こしていただけたかと思いま すが、先に進んでよろしいでしょうか。何か今のメモに関して御発言ありますか。  それでは、予定に従いまして、まず、坪野委員から「胃X線検査による胃がん検診の性別・年 代別・受診間隔別の有効性に関する検討」ということで、プレゼンテーションをお願いいたしま す。 ○坪野委員 よろしくお願いします。  事務局から、胃がん検診の対象年齢と受診間隔について報告するよう依頼がありましたので、 文献のレビューを行いました。資料1に基づいてお話しします。  まず、1ページをご覧ください。対象と方法ですけれども、「有効性評価に基づく胃がん検診ガ イドライン」で引用されている本邦の症例対照研究が6件ありますので、これを対象にしまして、 その中の性別・年代別・受診間隔別の死亡率減少効果等に関するオッズ比を抽出して比較し ました。年代別とか受診間隔別の有効性を検討するには、幾つかアプローチがありますが、最 も重要なのは、やはり死亡率減少効果があるかどうかということを確認することだと思いますの で、とりあえず症例対照研究6件のデータをまとめてみました。  結果と考察のまとめが最初に書いてありますが、2枚めくっていただいて表に基づいて説明し たいと思います。資料の3ページの表1から順に説明させていただきます。  表1は、6件の症例対照研究の概要です。左から3列目と4列目をご覧いただきたいと思いま す。大きく2種類の研究があります。1つは、地域住民を対象として、胃がん死亡を予防できる かどうかを調べた研究、これが4つあります。下の2つは、地域住民全体ではなくて、一度検診 を受けた人たちを基本集団にして、その中から進行胃がんとして発見されることのリスクを調べ た研究です。両者若干リサーチクエスチョンが違いますけれども、まとめて検討の対象といたし ました。  まず、死亡率減少効果をエンドポイントにした4件の研究の中から、性別・年代別・受診間隔 別の数値を抜き出して整理しました。表2は性別のオッズ比を並べているものですけれども、ま ず男性について、Oshima、Fukao、阿部と3つの研究があり、それぞれオッズ比が出ております。 これは受診歴なしの人と比べて受診歴ありの人の胃がん死亡のリスクを比べたものです。3件 のデータはそれぞれ対象者数が違いまして、誤差の程度も違いますので、その誤差を考慮して 3件のオッズ比を加重平均したものが要約オッズ比というものです。それで見てみますと、男性 は0.39になります。これは要するに、検診の受診歴のない人と比べて受診歴のある人では、胃 がん死亡のリスクが0.39倍になるという意味です。ですから、1−0.39で61%の死亡率減少効 果があるということを意味しております。  それから、女性についても同様に3件の加重平均の要約オッズ比を出しますと0.50ですから、 胃がん死亡率が半分になるということです。  表2の一番下に、私の研究を出しておきました。これは症例数が少なくて男女別の解析をして いませんので、男女合わせたオッズ比をに参考値として出ています。男女別の結果を報告して いる3件の研究の要約オッズ比は、男性で0.39、女性で0.50ですので、性差はほぼない。どち らにも胃がんの死亡率をほぼ半減させるくらいの効果があるということで良いのではないかと 思います。  続いて、表3をご覧ください。これは同じ死亡率減少効果に関する研究の中で、年代別の結 果が示されている2つの研究のデータを示したものです。左に阿部、右にFukaoとそれぞれ研 究があります。阿部の方を見ますと、症例とあってORというのはオッズ比です。症例というのは、 それぞれの年代別の解析に使われた胃がん死亡例の人数であります。年代によって数が大き いところと少ないところがあります。それぞれのオッズ比に下線が引いてあるものと引いていな いものがありますけれども、下線の引いてあるものは、95%信頼区間が1を挟まず、統計的に 有意なリスクの減少を示しているという意味です。阿部を見ますと、30代を例外として年齢層の 低い40代ではオッズ比が0.105、50代では0.250ということで、若い人の方が死亡率減少効果 が高くて、高齢になるにつれて1に近づいていく、つまり効果が小さくなっているというような傾 向が男性で見られます。女性でも、30代、40代は数が少ないのではっきり言えませんが、50代 の方が60代より死亡率減少効果が大きいという結果になっています。  一方、隣のFukaoの研究を見ますと、逆にむしろ若い方がオッズ比が高い、つまり効果が小さ くて、高齢になるにしたがってオッズ比が小さい、つまり効果が大きいということになります。で すから、今のところこの2つの研究で見る限りは、一方では若年の方が効果が大きいように見 えて、一方ではむしろ若年の方が効果が小さいように見えます。したがって、年代による効果の 差ということに関しては、はっきりした傾向がないのではないかと思われます。  続きまして、表4をご覧ください。同じく死亡率減少効果に関する研究の中で、受診間隔別の オッズ比を出しているものです。受診間隔別のオッズ比というのはどういうことかといいますと、 一番左に1年前、2年前とありますが、胃がんで死亡した症例が胃がんと診断されるどのくらい 前に検診を受けていたか、診断される1年以内に受診していたら死亡率減少効果はどのくらい で、1年前には受診がなくて2年前に受診していたら死亡率の低下はどのくらいになるか等を、 直近の受診間隔ごとに調べたデータであります。  この解析は、阿部、Fukaoと、Oshimaは男女を分けて行っています。まず左の阿部を見ますと、 1年前は0.382、2年前は0.434、3年前は0.330となっていて、この3年前までが有意なリスクの 低下を認めています。隣のFukaoに関しては、1年前が0.45で有意差があり、2年前も0.45で すが、症例が少なくて有意差はなく、3年前は0.22で有意差がある。それから、Oshimaについ ては男女ともに1年前までが有意差があって、それ以外のものは数が少ないこともあって有意 差はないという結果になっております。  続きまして、表5ですけれども、これは受診間隔ではなくて受診回数別にオッズ比を調べてい るものです。つまり、症例対照研究では過去にさかのぼって受診歴を調べるわけですけれども、 調査期間中に1回も受診歴がない場合と比べて、調査期間中に1回だけ受けた、あるいは2回 受けた、3回、4回以上受けた場合のリスクを示しています。一番左の阿部を見ますと、調査期 間中に1回でも受けていると0.532と有意なリスクの低下があって、2回、3回以上と回数が増 えるとリスクも少しずつ下がっていきますが、それほど大きな変化ではありません。  Fukaoについては1回でも有意なリスクの低下があって、2回以上でもリスクの低下がありま す。一番右のOshimaに関しては対象者数が少ないこともあって、有意なリスクの低下は認めて おりません。  表6をご覧ください。今までのところはエンドポイントが胃がん死亡の減少に関する研究のまと めですけれども、この表は、進行がんの発見をエンドポイントにして、検診受診者を基本集団に 行った2つの研究について、受診間隔別のオッズ比を示したものです。上が1993年の私の研 究で、下が1991年の大阪の山崎先生の研究です。私のものは一番左がすべてのサンプルを 使った解析で、それを男・女あるいは年齢階級別に分けています。一番左の男女合わせた結 果を見ていますと、1年前と2年前がそれぞれ0.25と0.44ということで有意なリスクの低下を認 めていますが、3年前からは有意差がありません。それから、山崎の研究でもほぼ同様に、2年 前までは有意なリスクの低下があって、3年前以降は有意差がない。男女とか年代別に分けた 研究でも、それほど大きな変動はありませんでした。  表7をご覧ください。以上の症例対照研究における受診間隔別のオッズ比をまとめたもので す。表の上段が死亡率減少効果に関する研究で、下段が進行がんの減少効果に関する研究 です。有意なリスク低下が見られるのが、阿部とFukaoの研究では3年前までということになり ます。坪野と山崎の研究では2年前まで、Oshimaの研究は1年前までということになります。こ れらのデータから推測する限りにおいては、X線検査の検診の有効性というのは2年から3年 程度持続する可能性があるということが示唆されました。  資料の1ページ目に戻っていただきたいのですが、以上が、症例対照研究のレビューに基づ く性別、年代別、受診間隔別の結果のまとめです。次の2ページをごらんください。ここでは参 考といたしまして、逐年検診と隔年検診という受診間隔の違いが、我が国の胃がん医療費にど のくらいの影響を及ぼすかを大雑把に推計してみました。この検討を行った理由を最初に説明 します。がん検診を公的な施策として行う場合の目的は、検診を受けた個人が利益を受けるこ とに留まるのではなくて、標的集団全体の死亡率を下げることが最も本来的であると考えられ ます。この場合の標的集団というのは、対象年代の日本人全体ということになります。  このことを実現するためには、国民の大多数が定期的に受診する態勢を整備することが必要 になるわけですけれども、もしそういうことを本当にやったら一体費用が幾ら掛かるのか、更に、 受診間隔が費用にどのくらいの影響を及ぼすのかを調べてみようと思い、以下の推計を行いま した。2ページの表にまとめを示していますけれども、一番左の「現行」というところは、受診率 が12.9%。ただし、分母は40歳以上の全人口6,800万人ではありませんで、その約半分の老 健事業の対象者です。現行では、438万人が老健事業としての検診を受けている。これが大体 一人単価5,000円としますと、費用が220億円になります。一方で、胃がんの医療費、これは検 診以外の診断とか治療に掛かる費用を国民医療費から推計したものですけれども、これが大 体3,300億円掛かっています。両者を合計すると、今日本では胃がんの検診と医療のために大 体3,600億円ぐらいのお金を使っていることになります。ただし、人間ドックや職場で受ける検診 の費用は計上していないので、検診に関する費用は過小評価になっていますが、大体このぐら いの値だろうと推測されます。3,600億円使って、毎年胃がん死亡というのが約5万人という現 状です。  今、仮に、逐年検診の形で40歳以上の国民の8割が毎年受けたらどうなるかを考えてみまし た。そうすると、受診者の数は5,459万人になります。それに伴う費用は検診だけで2,750億円 必要になります。その場合の医療費は2,257億円で、大体3分の2ぐらいに減る可能性がある という推計になりました。この推計を詳細は簡単に説明します。同じページの「推計の根拠」の 真ん中辺に、「胃がん医療費」という欄があります。検診群と非検診群の医療費の比が0.51と いうのは、受診率が100%の集団と受診率が0%の集団での検査も含めた医療費の比をとると、 大体このくらいになるというシミュレーション分析の結果を引用した数値です。次に、現在の胃 がんに占める検診発見がんの割合ですが、老人保健事業の12.9%以外にドックなどの受診者 がいるので、ここでは2割と仮定しました。この2割が8割になると、胃がん医療費は0.67ぐらい、 3分の2ぐらいになるというラフな推計です。そうすると、また表の「逐年」の個所に戻っていただ きたいのですが、胃がん検診の費用が2,700億円、医療費が2,200億円ぐらいなので、合計が 5,000億円と推計されます。「現行」と比べて1,500億円ぐらい余分に費用が掛かります。その一 方で、胃がん検診の効果が死亡率を半減させる程度のものであるとすると、今の5万人の胃が んの死亡が1万6,000人ぐらい減少する可能性があるということです。  表の一番右は「隔年検診」です。2年に一遍、8割の人が受けることになるので、毎年に直す と4割の人が受けれることになります。そうすると、受診者の数が「逐年」と比べ半減して2,729 万人、費用も半減します。検診と医療費の合計は約3,600億円で、「現行」の場合とほぼ等しい という結果です。一方、検診の効果が仮に「逐年」と同じだとすると、救命できる人数も1万 6,000人ということになります。  以上の結果はラフな推計ですので、幾つかのことが前提になっています。1番目としては、逐 年検診と隔年検診で効果に差がないということです。2番目は、対象年代の80%の人が定期 的に受診する態勢を整備するというのは、恐らく現行制度の延長では不可能と思われます。今 の医療制度改革のメタボリック症候群の検診のように保険者に義務化するような措置をとらな いと、多分到達できないだろうと思います。  あと、資料2ページの下半分に細々書きました、推計の根拠になっているデータの妥当性とい うことも当然問題になってきます。しかし、今回の推計から1つ言えそうなのは、仮に、現行の 3,600億円というコストを上限としてそれ以上増やさないと考えたとしても、その使い道を大きく 変えることによって、つまり胃がん検診の受診率を飛躍的に向上させて、検診に重点的に投資 することによって、非常に多人数を救命する効果があるという可能性が示唆されています。この 1万6,000人という胃がん死亡数の減少が過大評価だったとして、実際の効果が3分の1だった としても、5,000人くらいは余分に救命できることになります。現行と同額の費用でこれだけの効 果を期待できる可能性があるということになろうかと思います。これは本当にラフな推計ですけ れども、そういう視点から全体的な制度設計を考えてみるということも重要ではないかと思いま して、少し計算してみた結果を報告させて頂きました。  以上です。 ○垣添座長 坪野先生、どうもありがとうございました。  隔年検診のことが前回議論されましたが、それに端を発しまして今のような御報告をいただい たわけでありますが、今の御報告に何か御質問等ありましたらどうぞ。 ○祖父江委員 ちょっと確認なんですが、この受診間隔の検討についてですけれども、例えば 表7に出てきている受診間隔の分け方として1年前、2年前等々5年以上前とありますね。この 1年前、2年前の意味合いですけれども、2年前といったときに1年後から2年前までの受診の みを意味するのか、1年以内でもいい2年以内であれば受診していたとするのか、その累積の 受診で言っているのか……。 ○坪野委員 前者です。累積ではなくて、1年前に受けていないけれども2年前に受けた、とい うのが「2年前」の意味です。 ○祖父江委員 ということは、解析対象がどんどん減っていって、1年前に受けた人を除いた上 で1年から2年前までに受けた人を受診歴ありとして計算すると。 ○坪野委員 これらの研究では、受診間隔の延長に従って解析対象を減らすという形の解析 は行っていません。少しテクニカルな話ですけれども、受診歴なしのグループを基準群にして、 直近の受診間隔ごとにダミー変数を設けて解析されています。 ○斎藤委員 ということは、1年前に受診歴があった人は2年の解析のときには省いていない んですね。 ○坪野委員 省いているんです。 ○斎藤委員 省いているんですか。いわゆるmost recency解析でいいんですか。 ○坪野委員 そうです。ただ、受けた人を解析対象から除外するのではなくて、受診歴のない グループを基準群として、直近の受診間隔ごとにダミー変数を置いて、一遍に全部同じサンプ ルで解析しているという違いです。 ○垣添座長 先生の調査で、要するに毎年検診することに関してはデータがあるけれども、2 年に一度ということに関して結論をできますか。 ○坪野委員 表7から見る限りは、1年前に受けていても2年前に受けていても有意なリスクの 低下があって、恐らく肺がんなどのように1年前は有意だけれども、2年経ってしまうと効果が見 られないというようなことはありません。その観点から見る限りは、2年前でも有意なリスク低下 があると推測されるということです。  祖父江先生、肺がんはどうでしたか。 ○祖父江委員 肺がんの場合は、1年以内にしか効果が見られないというところなので、こうい う受診間隔別の検討をしても1年前しか有意でなくて、あとはもう有意ではないということで割と 簡単なんですよ。ところが、効果が割と続くような検診の場合に、1年から2年の受診だけの効 果、2年から3年だけの受診の効果というのを分けて解析するやり方が、結構いろいろなバイア スが入りがちで難しいところがあるので、結局、累積の受診で解析をするというのが一番単純 でよかろうというようなことが、たしか何年か前のケースコントロールスタディの標準的な解析法 に関する総括論文の結論だったと思いますけれども。ちょっとこれがいいか悪いかというのは 的確に指摘できないんですが、いろいろな方法がこれにはあるということは考慮しておくべきだ と思います。 ○垣添座長 ただ、この検診の検討会としては、胃がんの検診の間隔というのは、一つの結論 としてうまく盛り込めれば非常に重要な項目ですが、今の坪野先生の御発表に対してもう少し 御意見はありましょうか。  今、先生が引いていただいた幾つかの論文からすると、一応1年に一度でも2年に一度でも 差はないということは信頼してよろしいということですか。 ○坪野委員 差がないとまで言えるかどうか分かりませんが、これは今回のガイドラインに引用 されている研究をそのまま持ってきておりますので、ガイドラインではこれらのデータに基づいて、 総体として胃がん検診は有用であるという結論になっています。もし有用と結論するのであれ ば、このデータから見る限り、1年前は有効だけれども2年前は有効でないということを言う根 拠はないのではないかと思います。 ○垣添座長 わかりました。  それから、参考に計算された2ページの医療費に及ぶ影響というのもやはり非常に重要な話 だと思いますが、何か御意見ありましょうか。  これはもっと詳細な分析は可能なんですか。今日は非常に大雑把な計算をされたとおっしゃ っていますが。 ○坪野委員 私自身は経済分析の専門家ではないので、ごく簡単な推計に留めました。もう少 しパラメーターを精緻化するとか、いろいろ重要な変数を動かして感度分析をするということは 可能だと思います。しかし、最後に言いましたけれども、胃がん検診の医療費に対する効果は 結構大きいという印象を持ちました。だから、コストを上げない前提で、受診率を飛躍的に向上 させても、十分効果が期待できる可能性があるのではないかという感触を持ったということで す。 ○垣添座長 我が国全体として考える検診の方向性という意味では、非常に重要な御報告だ と思いますが。 ○大内委員 検診間隔について議論した方がよろしいのではないかと前回申し上げたのです が、私の考えの中にも坪野先生が出されました総額の医療費が根本にあります。つまり、多く の受診者に有効な検診をすることによって全体の死亡率を下げると。そうすると、医療費も下 がるわけです。ですから、総体で考えていただきたいというのが私の意見です。胃がん検診を 逐年にやった場合は相当の医療費が膨らむということがこれで見えてきます。やはり妥当な検 診方法があって、その間隔が今日の議論のように1年が2年であっても、その有効性に大きな 差はないとするのであれば、これは2年ごとの検診というのが妥当ではないかと思います。この ような議論は、肺がんは除いて乳がんとかほかのがん検診についても言えることかと思います。 乳がん検診において、検診間隔を2年にしたのも、一定のデータを確認した上で、また、乳がん 検診の検討においては諸外国のデータも確認しました。諸外国においては、ほとんどの国で2 年から3年に1回という検診をやっていますし、日本においてもマンモグラフィ検診によって発見 されてくる早期乳がんのパーセンテージを確認して、このようにコストの計算、シミュレーション 分析も行っています。したがって、私はこの坪野先生の出されたデータについては賛成でありま す。 ○垣添座長 ありがとうございました。  それでは、時間の関係で先に進みます。この検診間隔とそれを基にした検診に要する医療費 及び総医療費の関係というのは、もう一度どこかで戻ってきて議論する必要があるのではない かと考えていますが、ここはこれまでとさせていただきまして、続きまして、大類参考人から胃が ん検診の受診率の向上の取り組みについてお願いいたします。 ○大類参考人 山形県の大類と申します。よろしくお願いいたします。  今回は山形県における胃がん検診の受診率向上の取り組みということで説明させていただき ます。資料をめくっていただきまして1ページになります。  まず、山形県の取り組みとしまして、がん検診の一次検診の受診率・精密検査の受診率向上 事業ということで、これは胃がん検診に特定した事業ではなかったんですけれども、各市町村 におけるがん検診の一次検診の受診率、あとは精密検査の受診率を向上するために、まずは 市町村でどういったがん検診の方法をやっているかというような状況把握を行いました。  目的といたしましては、一次検診及び精密検査の受診者を増加させるために、積極的に工夫 しながら取り組んでいる市町村の実態把握及び分析を行いまして、その結果をほかの市町村 に情報提供を行い、また、指導を行うことによって受診率の向上を図るということでやらせてい ただきました。  内容といたしましては、まず、一次検診の実態把握といたしまして、市町村が実施している一 次検診の受診率向上のために取り組んでいる事例の情報を収集いたしました。まずは、住民 に対してどのような方法で検診の周知を行っているか。具体的に言いますと、検診の申込書を 住民に配布しているか、それとも郵送で配布しているのか、あるいは地域に保健推進委員とい うのがいらっしゃいますが、そういった方を通じて個別に配付していくか、あるいは希望者が直 接市町村の担当課に電話して申し込みをするかといったようないろいろな方法がありますけれ ども、そういった方法について情報を収集いたしました。  続きましては、検診の実施体制ということで、どのような方法で実施しているか、あと集団検 診でやっているのか、個別検診でやっているのか、あとは住民の都合のよいような最寄りの医 療機関で実施しているかどうかということについて情報を収集いたしました。  続きまして、精密検査の実態把握ということで、一次検診と同じようにいろいろ事例を収集い たしました。まずは、精密検査の周知方法、どのように要精検となりまして、その後精密検査を 受けてくださいというようなことを周知しているのか、情報を伝えているのかということについて 情報収集いたしまして、あとは精検を受診していない未受診者のフォローの仕方について情報 を収集しました。  最後に、山形県内でがん検診の受診率が高い市町村をモデルといたしまして、その市町村が どのような方法で検診を実施しているかということを各市町村に情報提供いたしまして、参考に していただくということにしました。  まず、結果ですけれども、一次検診の実態把握といたしましては、県内の多くの市町村にお いて、各世帯にがん検診の申込用紙を配布し、希望者を募る方法をとっておりました。したがっ て、市報なりそういったものでこの日はがん検診がありますということだけをお知らせして、がん 検診を受けたい人が市町村の担当のところに電話をして申し込みするという形ではなくて、各 世帯ごとに申込書が配布されて、その申込書を提出するだけで次の年のがん検診を受けられ るというような仕組みをとっている市町村がほとんどでした。ただ、配布の方法が郵送であった り、あとは地域の保健推進委員の方が各世帯を回って申込書を配付しているといった方法の 違いはありましたけれども、基本的には各世帯に検診の申込書が行くような形になっておりまし た。  その一方、市報や検診によってカレンダーのみ送付して、受診希望者が自ら市町村の担当 課へ電話をし申し込みを行う方法をとっているのもありますが、この方法をとっている市町村は 一次検診の受診率が非常に低いという結果もありました。ちなみに後者の方でやっている市町 村というのは、昨年度は2市町村ございました。山形県は当時44市町村ございましたけれども、 42が前者の方で申込用紙を各世帯に配布している方で、自ら担当課へ電話して申し込みとい う形をとっているのは2市町村のみでした。  あとは受診者に対する利便性の向上の要因としましては、山形県ですとかなり交通機関の発 達していない地域でありますので、そういった地域のために専用バスを運行しまして、検診会場 まで移動の足を確保するといったようなこともございました。  あとは、総合検診、ミニドックと称しまして基本健康診査やほかのがんと一緒に同じ日にすべ て受けられるような日にちをとっている市町村もございました。  あとは、前年度受診していない方に対して受診勧奨の文書を送付したり、あとは終了時刻の 目安を記載して受診者の予定を立てやすくしたり、あとは、町内の防災無線を使いまして受診 勧奨を行っているということがございました。  逆に、受診率、受診行動を抑制させる要因といたしましては、自己負担額が年々増加してい るというのがございまして、それで受診率が下がっているということもございました。  あとは、市町村で実施している胃がん検診よりは、初めからかかりつけ医の先生のところに 行って、胃内視鏡にて定期的にフォローしているということがあって、それによって胃がん検診 の受診率が下がってしまうというところもございました。  あとは精密検査の方ですけれども、精密検査はどのような方法でお知らせしたかといいます と、直接一次検診の結果が終わったら説明会を開きまして、そのとき本人に直接受診勧奨をし たりとか、あとは文章で受診勧奨を行っている市町村が多かったです。  それでも受診しない場合については、本人に直接電話を掛けてフォローしている市町村も結 構ございました。  精密検査の受診率向上の利便性を上げる要因といたしましては、胃がん検診のみ検診の自 己負担額を病院で補助している、これは町立病院とか町で建てている病院を持っているような 市町村ですと、その病院で胃がん検診を受ければ無料ですといった仕組みをとっているところ もございました。  あとは、逆に抑制されてしまう要因としましては、やはり毎年連続して要精検と判定されてしま いますと、どうしても受診を抑制されてしまうという意見もございました。  3番目に、県内でがん検診の受診率が最も高い山形県大蔵村という人口4,200人ほどの小さ な村なんですけれども、そこでの取り組みについて簡単に説明させていただきます。この村の 取り組みといたしましては、検診の申込用紙を個人情報に配慮しつつ、案内パンフレットともに 保健衛生推進委員を通して各世帯に配付しておりました。それ以外にも村で発行している「健 康だより」等にて検診のPRを実施したり、あとは村主催の健康の集いなどあらゆる機会に検診 受診を勧奨したりとか、あとはきっかけ検診といいまして、初回の受診者に対して費用を負担す るといった検診を設けたりとか、あとは節目検診で何年に1回は検診の費用を補助したりとか、 あとは自己負担額を増額する際には負担を感じない程度に徐々に上げるといったようなことを やっておりました。  精密検査についても、一次検診の結果が出ましたら説明会を行いまして、その都度直接本人 に結果を手渡しして、精密検査への受診勧奨を行っておりました。あとは、3か月か4か月以内 に受診しない場合については、電話や文章なりで受診勧奨を行っておりました。  こういった大蔵村の取り組みとして、結果としてはがん検診の受診率がトップクラスで、平成 16年に胃がん検診は82.3%とかなり高い状況です。平成14年の老人の一人当たりの医療費 は県平均よりも16万5,000円ほど低くて、県内の44市町村の中では1番低いという状況でし た。平成15年の精密検査の受診率も91.1%とかなり高いような状況です。  ここの大蔵村というのは人口が少ないこともありまして、村には1つしか診療所がないんです けれども、その診療所の先生と村の保健師さんとがかなり連携をしまして、各住民にかなり強く 呼び掛けることができるということがございまして、こういった状況であるようでした。  こういったことを各保健所管内で行っている老人保健事業検討会にて、各市町村の取り組み 状況と意見を出し合ってもらいながら、最後にこういった大蔵村のモデルを紹介させていただき ました。  最後、まとめになりますけれども、やはり一次検診の受診率を向上させる要因として考えられ るものは、受診希望者を募る方法は希望者が直接担当課に連絡して申し込む方法よりは、各 世帯に申込用紙が配付されて、それを用いまして検診を申し込みした方が受診率が向上する ということがございました。先ほども言いましたけれども、直接希望者が担当の課に御連絡する 方法をとっていた2つの市の胃がん検診受診率というのは、県平均の受診率が41.8%のところ、 そういった各世帯に申込用紙を配布していない市町村受診率というのは20%に満たない状況 で、やはりここでもかなりの差が出てきているようでした。  あとは、受診者の利便性の向上のために基本健康診査やほかのがん検診と併せて受診でき るような方法が確立されていることや、あとは検診会場までの移動手段を確保するといったこと が受診率向上の要因として考えられるのではないかと思いました。  続きまして、こちらは山形県で胃がん検診の方法が全く違っていたというか、鶴岡市と酒田市 という日本海に面した、人口それぞれ10万人ぐらいの市なんですけれども、実は先ほど言って いたがん検診の申し込みを希望者が担当課に直接電話して申し込みをとって希望しているとい うような市町村は実はこちらの酒田市がそうでして、逆に鶴岡市というのは各世帯に申込用紙 を配布されてやっているようなところでした。どうしてこの2つの市町村が挙がっているかといい ますと、鶴岡、酒田があるのは庄内地域というところなんですけれども、以前から胃がん検診の 死亡率が高いということで、いろいろ検討しましたところ、胃がん検診の方法がちょっと違うので はないかという話がなりまして、よくよく話を聞いてみますと、鶴岡市は申込用紙を各世帯に配 布している、酒田市の方はそうではなくて、市報などを見て胃がん検診を受けたい人は直接電 話して申し込むというような方法をとっていた、そういったところに差が出てきたのではないかと いうことで、いろいろ検討させていただきました。  やはり鶴岡市、酒田市いずれもSMR、胃がん死亡の標準化死亡比は全国を100といたしま すと、いずれの市も高いのですけれども、最近では特に酒田市が138.6ということで高くなって いるようでした。  続いて、胃がん検診の受診者数ですが、受診率が高い鶴岡市の方では男性、女性ともに 3,800と5,600。逆に、酒田市の方は1,500と2,700ということで、同じ人口規模の市であるにも かかわらず、かなり受診者の開きがございました。したがって、胃がん検診で発見される患者 数の数も、酒田市と鶴岡市では大きな開きがあったということです。  これを受けまして酒田市は、今まで挙げたような検討会なり、あとはこういった分析の結果か ら、酒田市も昨年度から検診の申し込み方法を変えまして、今までは希望者が直接担当課に 電話して申し込みをしていたところ、各世帯に申込用紙を配布しまして、胃がん検診の受診者 を募ったところ、前年度と比べまして胃がん検診の申し込みが2倍になったというような、これが 新聞記事になったものですけれども、やはりそういったきめ細かなサービスというか、希望者か ら募る電話をもらった段階で受診の申し込みをするというのではなくて、やはり各世帯にそうい った意思確認の申込用紙を配るということで、かなり申し込みが変わったという事例になってお ります。  最後になりますけれども、山形県の胃がん検診の受診率がかなり高いということで、分母の 対象者がちょっと違うのではないかという意見がございまして、うちの県ですと職域検診も大体 ここに挙げた検診機関でやっている場合が多く、勿論ほかの県の検診機関や直接医療機関で 検診している場合があるんですけれども、一応今ここに挙げた6つの検診機関で職域検診をや ることが割と多かったですので、住民検診とここの6つの検診機関でやっている職域検診の受 診者を合わせまして、分母は40歳以上の人口で割りましたところ、住民検診と職域検診を合わ せた仮の受診率ですけれども、それでもやはり30%近くは山形県の場合ですといっているとい うような状況でした。  以上で、説明を終わらせていただきます。 ○垣添座長 どうもありがとうございました。  ただいまの大類参考人の御発表に対して、何か御質問等ありましたら。 ○内田委員 私は神奈川県にいたときにがん検診を担当していたんですけれども、そのときに 藤沢市という人口45万人ぐらいのところで基本検診、がん検診を合わせて大体平均して毎年 40%を超えているという非常に受診率が高くて成績のいいところでございました。そこのケース では検診は年間を通して実施していて、誕生月に検診の案内を出すということをやっています。 それから、行政の方から連絡も行きますけれども、医療機関の方からの受診勧奨というものが 非常に盛んでして、その辺が受診率の向上に役立っているのかなという感じがしております。そ れから、基本検診とがん検診を一括して同じ日に受けるということができるというのも同じシス テムです。その辺のところが、受診率が高いというところに非常に役立っていたのかなという感 じがしています。  ここには藤沢市民病院というのがありまして、ここが地域医療支援病院とがん診療拠点病院 の両方の指定を受けていまして、そこがセンターになって二次検診をしっかりやるというシステ ムで、二次検診も非常に充実していると思っています。 ○垣添座長 ありがとうございました。  先ほどの大類参考人の御発表、今の内田委員の御発表、要するに受診勧奨が受診率を向 上させる上で非常に重要だということでございますが、ほかにどうぞ。 ○笹子委員 質問です。鶴岡市と酒田市の比較というのはなかなか面白い比較ですが、理屈 でいくと早期胃がんの比率というのが絶対に違うはずなんですけれども、そのデータはあります か。 ○大類参考人 済みません、そこまで持ち合わせていませんでした。 ○垣添座長 ちなみに、がん検診受診率は県内でもトップクラスという大蔵村の話ですけれど も、がん検診というのは何と何を指しているんですか。 ○大類参考人 これは胃がん、肺がん、子宮がん、乳がん全部高いです。基本健康診査もす べて高くて、全部の検診について受診率が一番高くなっております。 ○垣添座長 それから、前のページで移動手段の確保のために地区単位で専用バスを運行す るという、このバス運行の費用はどこが負担しているんですか。 ○大類参考人 それは検診機関の方がバスを出してやっております。 ○森山委員 この中できっかけ検診と節目検診とありますけれども、このきっかけの方で費用 負担をというのは全額なのかということと、それから、節目の場合には補助と書いてあるんです けれども、どの程度の補助なんでしょうか。 ○大類参考人 済みません、額まではちょっと把握していなかったのであれなんですけれども、 ただ、かなりの金額をこの大蔵村というのはがん検診に対して持ち出しているという話は聞いて おりますが、詳細な額までは聞いておりませんでした。 ○丸山委員 私はこの鶴岡市出身でありまして、非常に興味を持って話を聞きました。それで、 大蔵村のことを知りたいのですが、人口の構成はどのようになっておりますか。 ○大類参考人 かなり高齢者人口割合が高く、30%くらいはいるような、かなり過疎化の進ん だ村になっております。割と65歳以上の方が多いということと、そういったところで町の保健師 さんとか医療機関とのネットワークで把握しやすいというか、そういった要因があるのかと思い ます。 ○丸山委員 検診の対象について年齢で差別するというのは、もしかしたら非難を受けるよう な内容になってしまうんのですが、結局死亡率を低下させるという国の方針ですよね。それから 考えますと、大げさなことを言うと国の生産的な行為というか、GNPに対する貢献度がどのくら いあるかというところで考えなくてはならないというのが国の方針の一つだと私は思いますし、 それから、家庭の中で言えば、例えば一家の主が胃がんで亡くなってしまったら家族が路頭に 迷うという世代が、実は一番検診の対象として重要と考えなくてはならないと思います。  また、私の個人的なことに関して言うので申し訳ないのですけれども、私はちょうど還暦の誕 生日に腎臓のがんで手術を受けました。そして、その3年後には食道のがんになりました。60 歳のときに考えたのは、それまで無症状だったからといってう検診を受けなかった、のは自分の 責任であると痛感しました。そして、自分の家族のことを考えると、それぞれみんな自立してい るから、まあ自分が死んでしまっても家族は悲しいかもしれないけれども、家族の実際の暮らし 向きは余り変わらないのではないかと。それは確かに遺産をどうするとか、先行き家族の暮らし がどうなるかという心配はありましたが、家族が路頭に迷うという歳ではありません。そこで、私 が主張したいのは、年齢層が高い人たちを検診すればがんがたくさん見つかる、また、費用も 安くて済み効率的です。しかし、実は1人を見つけるのに費用は掛かるけれども、がんになった ら国も困るし家族も困るという世代に、受診の対象を集約していくべきだと思います。 ○笹子委員 いいですか。幾つの人も死ぬまでに医療費とか介護でもいいんですけれども、と もかく公的なお金を何らかの形で医療にしろ、介護にしろ使ってしまいますよね。ということは、 そこの部分でお金か掛からない、つまり胃がんの場合もT1で見つければ一番安いのは明らか です。今は、ステージ2以上は補助化学療法をすることがスタンダードとガイドラインも多分すぐ 変わりますので、そうすると、やはり医療費は半分ぐらいになると思われます。だとしたら、年齢 が70歳だから、この人はもうそういうことはしなくていいというわけにはいかないわけですよね。 ○丸山委員 それは、あくまでも医療費を削減するという立場からの議論ですよね。 ○笹子委員 検診の効果としてはあると。 ○垣添座長 丸山委員の御指摘は、要するに働き盛りの年代に対する検診を勧奨することが 差別につながるかと、そういうことは別にないと思いますが、課長、何か追加でありますか。 ○鈴木老人保健課長 恐らく今、未受診の方もしくは精検を受けておられない方の中で、全部 に等しく当たるというのはなかなか難しいかもしれません。ですから、丸山先生のおっしゃるよう に、まずどこから始めるのか、どこから注力していくかというのは、恐らく市町村の高齢化具合と か、それから、どれくらい都市化が進んでいて、職域でどれくらいやっているかというようなとこ ろとも絡めて、市町村単位で個別に考えていかなければいけないと思いますね。 ○丸山委員 先ほど最初に問題になった受診間隔にも関係することですが、高齢者でがんが 見つかった場合に、内視鏡的切除で済むような分化型のがんが結構見つかってということにな りますと、それはそれでいいんです。私どもの施設のように職域の健診を主として行っていると ころでは、精検受診率が60%に満たないんです。すると、残りの40%というのは潜在的に胃が んを持っている群になってしまう場合がしばしばあります。どのくらいの正確な診断ができるか わかりませんけれども。この鶴岡市と酒田市のデータを見ると、単純に受診者数が多ければが んも多く見つかるという極めて明快なデータからすると、やはり私は働き盛りの人たちの受診率 と精検受診率を上げることが急務なような気がしたものですから、ちょっと回りくどい質問をさせ ていただきました。 ○垣添座長 ありがとうございました。 ○鈴木老人保健課長 今の丸山先生の御指摘にも関係すると思うんですが、山形県で分析さ れる際に、実際に検診を実施される時間帯とか曜日も検討されていますよね。例えば、職域の 方であれば恐らく6時以降に検診ができるとか、土・日ができるとか、そういうことが割と影響す るような気もするんですが、それがどうだったかというのが1点。  それから、もう一つは、山形県ではほとんどないのかもしれませんが、医療機関の個別方式と 集団方式の違いを分析されているかの2点を教えてください。 ○大類参考人 まず、検診の受診の日時等ですけれども、土曜日は検診機関も開いておりま すので、かなり土曜日で受診される方も多いです。ただ、時間帯についてなんですが、市町村 で実施している住民検診については、ほとんど午前中のところが多いです。夕方でやっている ところはほとんどないと思われます。  あと、個別なんですけれども、胃がん検診の場合ですとほとんど集団検診になっているので、 個別の情報については持ち合わせておりませんでした。 ○垣添座長 ありがとうございました。  それでは、まだいろいろ御発言あるかと思いますが、時間の関係もありますので先に進ませ ていただきます。  続きまして、西田参考人から鳥取県のがん検診とがん登録について、プレゼンテーションをお 願いいたします。 ○西田参考人 御紹介いただきました鳥取県の福祉保健部次長兼健康対策課長をしておりま す西田と申します。本日は、鳥取県の胃がん検診についてプレゼンテーションをさせていただく 機会をいただきましたこと、誠にありがとうございます。  私は、昨年までは厚生労働省の国立病院課におりまして、出向人事で去年から鳥取におりま す。鳥取県はこれから御紹介してまいりますけれども、県知事の片山知事が国の言っているこ とをそのとおり県政でやるというのを非常に嫌う方で、国はこれがよいと言っていて本当にいい かどうかお前は考えたのかと必ず言われますので、そういうバックグラウンドがありまして、そう いう意味ではちょっと異例なといいますか、内視鏡検診を一次検診からやるという取り組みを平 成12年からしておりますので、それについて御説明させていただきたいと思います。 (パワーポイント使用)  鳥取県の概況でございますけれども、東西に長い県でございまして、東西差し渡し大体 100kmぐらいございます。南北は非常に短くて、一番長いところでも30〜40kmくらいしかありま せんが、人口が60万人ちょっとでございまして、全国47都道府県の中で最も少ない県でござ います。高齢化率が23.6%で、これは全国でも非常に高い部類です。ちなみに高齢化率でござ いますが、平成17年のデータで23.6%ということで、将来推計を追い掛けていっても全国より は少しずつ先に高齢化が進んでいくという県でございます。  がんの死亡でございますけれども、胃がんの死亡が直近数字で男性157、女性が110という 数字でございます。死因順位が直近でいきますと、男性だと多いのが肺がんの次が胃がん、女 性の場合は大腸がんと胃がんが年によって入れ替わるんですが、直近の数字では110と105 ですから胃がんの方といった状況にございます。  胃がん検診の状況でございますけれども、昭和42年度からX線検査で胃がん検診を始めて います。平成12年度から内視鏡検査を開始いたしました。近年の状況でございますけれども、 内視鏡検査がだんだん増えてきています。平成17年度では42.9%、11万9,000人余の方が内 視鏡検査を受けていただいています。内視鏡検査とX線検査を比べますと、がんの発見率は後 で見ていただきますが、内視鏡の方が高いものですから、それに応じてがん発見率が上がって きているという状況にございます。  実施体制でございますが、実施主体は市町村なのですが、昭和46年から鳥取県健康対策 協議会というものをつくっています。略称、健対協と言っておりますが、県の医師会と鳥取大学 さんの方でそれぞれメンバーを出して協議会をやって、その中で胃がんの部会というのがござ います。胃がん検診の読影は健対協の読影委員の方が必ず二重読影するというようなルール をつくっております。また、市町村ごとの受診率とか要精検率、精検受診率、がん発見率といっ たものは毎年集計して、健対協の会議の胃がん部会に掛けまして評価をいただいて、精度管 理を行っているところでございます。  一次検診としての内視鏡検診の導入の状況でございますが、平成12年度から導入しまして、 当時は39市町村ございました。今は町村合併がありまして19まで減っていますけれども、当時 39市町村のうちの14市町村で始めたところ、今は19市町村の15市町村ですから、大分普及 してきたということでございます。  内視鏡検診を採用している市町村では、全員内視鏡検査をやっているのかというと、そうでは ありません。集団検診、いわゆる車検診では当然ながら内視鏡はできませんので、従来どおり のX線検査を行っております。医療機関検診におきましても、一律に内視鏡検査とするわけで はありません。これは、市によってもやり方が違います。鳥取市とか米子市、倉吉市、これが県 内三大都市なんですが、その3市では受診者の意向に応じてX線か内視鏡検査を選んでいた だくというやり方で、医療機関の対応でやっております。ほかに岩美町というのがあるんですが、 そこは基本的に全部内視鏡検診をやるという方針の町もございます。ただ、そういった町におき ましても車検診の分がございますので、100%内視鏡検診をやっているという町はございませ ん。  内視鏡検診を実施する機関ですが、鳥取県胃がん検診精密検査医療機関登録基準というも のがございます。どの医療機関でも内視鏡検査をやれるわけではなくて、健対協の方で登録基 準をクリアして健対協でお墨付きを与えた医療機関でのみ内視鏡検査をやるというルールにし ています。これは3年間の更新制でございます。胃・食道の内視鏡検査の臨床例が年間50例 以上といったことで制限を掛けておりますので、そういう意味では医療機関はかなり絞っている ということは言えると思います。ほかに当然、内視鏡がやれるのは当たり前ですが、あと、事後 調査に協力するとか読影委員会がやる症例検討会に出るとか、講習会の受講義務とかそうい ったものが、これを実施する医療機関には掛かってまいります。  これが平成12年に導入してからの受診者数の推移です。済みません、数字がちょっと見にく いかもしれませんが、お手元のペーパーにも出ておりますので、それを見ていただければと思 いますが、大体トータル4万人弱の受診者がございます。平成12年に導入したときは3万6,000 と3,651ということでしたが、だんだん内視鏡が増えてX線が減っていくということでございまして、 今大体6対4ぐらいの割合になってきています。  こらちが受診率でございますが、受診率はX線と内視鏡合わせたもので表示してございます。 対象者に対して大体20%台の受診率になっています。X線検査につきましては、要精検率がお おむね10%台で大体来ています。内視鏡検診については要精検率が出てまいりませんので、 こちらには入れてございませんが、要精検になる方が10%台で、X線で精検受診率が、これも もうちょっと上げたいんですけれども、70%台後半ぐらいという状況でございます。  胃がん発見率です。これが平成12年からデータをとってまいりまして、年によって結構変動が ありまして、最初はX線検診から内視鏡検診への移行時期ということもありまして、なかなか一 定化するには至っていないのではないかという見方をしていますけれども、年にもよりますけれ ども内視鏡検診の場合0.6〜0.8ぐらいの胃がん発見率が得られると。X線検診の場合は0.2前 後でございますので、年によっても違いますが、3〜4倍胃がんが見つかるというデータでござ います。この部分については、また後ほどいろいろ御意見・御助言をいただければと思います。  がん発見率、内視鏡とX線両方合わせたものの発見率でございますが、0.2台から0.3の間ぐ らいでだんだん右上がりに平成12年から上がってきている。これは今申しましたように、X線検 診がだんだん内視鏡検診に置き換えられているという状況にありまして、右上がりの発見率に なっているということでございます。  受診者数と受診率の推移です。ちょっと字が小さくなりますので、大体今お話ししましたような ものが数字で入れてございます。直近が平成17年度でございますが、胃がん検診を受けられ た方の追跡をやっています。その分については平成16年のデータしかございませんので、この 際平成16年度で御説明したいと思います。約17万人の対象者に対して受診者数が5万人弱 と。X線と内視鏡が3万人弱と1万7,000余ということでございます。がん発見率が今申しました ように、この年で言えばX線だと0.20、内視鏡だと0.59という数字でございます。  確定調査の報告、平成16年度胃がんまたは胃がんの疑いのある方が、X線で58名、内視鏡 で105名、合わせて163名でした。この方々を追跡したところ、確定がん数がX線では51名、 内視鏡で87名、計138名です。つまり、内視鏡であれば105のうち87が確定がんですから、 その差であるところの18については疑陽性、がんと確定しなかったということになります。  そのうちの早期がんでございますが、X線で発見されたものでは33、内視鏡で発見されたもの が57です。発見がん総数に対する早期がんの比率は大体65%くらいで差がございません。  それから、進行がんでございますが、58見つかったうちのX線では18が進行がん、内視鏡で は87見つかったうちの30が進行がんですから、これも35%ぐらいで余り差がないという数字で ございます。  切除例と非切除例ですが、138見つかりまして、そのうち125については切除例になっていま す。この分について、また次のスライドで御説明いたします。  早期がんの肉眼分類でございます。90例ございまして、不明分を落としましたのでちょっと数 字が合いませんが、90例のうちピークはIIc型のものが多くて、この分で内視鏡の方がかなり 多いですから、トータル33と57ですけれども、この分が押し上げているのかなという感じは受け ると思います。  進行がんの部分でございますが、カテゴリー1、2、3、4、5に分けたところ、内視鏡では3のも のがよく見つかっているということが言えると思います。  切除例の進達度でございます。T1の赤が内視鏡でございまして、T1のうちMのものが割と多 く見つかっておるということが言えると思います。これもX線49例、内視鏡83例の検討です。  切除例の大きさで見ていきますと、これは大体似たような傾向かなと思いますが、10mm以下 のものがかなり内視鏡で見つかってきているということは言えるのではないかと思っています。  早期がんの占拠部位です。これはグラフになっていませんで申し訳ありませんが、X線と内視 鏡それぞれ早期がんの31例と54例についての分析ですが、大きな差はないのかなと私は思 っております。ちょっと違っていましたら御指摘いただきたいと思いますが、占拠部位についても こういう感じでございまして、特に目立ったものはないのかなと思っております。  これは進行がんの占拠部位です。これも同じような傾向かなと思います。16例と30例の分析 でございます。  ここが、いろいろ御批判・御助言を仰ぎたい紙なのでございますが、X線検診と内視鏡検診と いうことで、生命擁護についてのエビデンスがないということは自分も鳥取県の関係者も理解し ております。理解しております上であえて申し上げますが、がん発見率は今見ていただきました ように、X線に比べて2004年ですと大体3倍、年によっては4倍近いものが出てきます。冒頭申 しましたように、高齢者比率が全国より先駆けて高く高く走る県でございますので、やはり高齢 者対策ということは考えなければいけないのかなという認識があります。65歳以上で0.25と0.7 ぐらいの差があります。  バリウムによる副作用でイレウスを起こすという危険がないというのが内視鏡の特徴かなと。 それを言えば、勿論、内視鏡は穿孔を起こすじゃないかという御指摘があると思いますが、そう いうことが一つある。高齢者では反射が鈍くなっているので入りやすいと言っているドクターもお られます。  リスクのところについては、今のところ私が昨年7月に鳥取に行きましたけれども、実は事故 事例を全部報告するというシステムができていなくて、慌ててつくりつつあるんですが、バリウム が詰まって入院加療が必要だったケースが去年7月からで2例既に経験しています。当然、下 剤を十分飲まさなかったんじゃないかとか、水を十分飲まさなかったんじゃないかということはあ りまして、そこは今指導を徹底しているところですけれども、そういうリスクはあるのかなと。では、 内視鏡の有害事象はどうかというのはペーパーをつくらなかったんですけれども、平成12年か らやっておりまして、穿孔した例はないと聞いています。きれいに全部精査したわけではないの で、そういう報告制度がないものですからあれですけれども、咽頭痛が残ったみたいなものが 何例かあったと聞いています。少なくとも大事には至っていないという認識をしています。  次が、コストでございますけれども、これは統一単価を一応健対協の方で決めるというやり方 をしています。当然、市町村の事業でございますので、市町村の事業によって若干高い・安い は出てくるんですが、一応県と県医師会と大学が一緒になってお示しした統一単価というのが ございます。これが車検診の場合は9,300円プラス自己負担を幾ら取るかは市町村の裁量に なっています。医療機関で受診した倍のX線検診が1万1,625円で、内視鏡検診の場合もそれ に単価を合わせるというルールにしています。当然、医療機関にしてみれば内視鏡の方がコス トが掛かるわけですけれども、そこは医療機関の方も同じ値段で内視鏡検診を進めようという 御意見が強うございまして、こういう数字にしております。これは基本的には診療報酬点数表で X線検診を積み上げた金額に合わせておるということでございます。  以上でございます。どうもありがとうございました。今付け足しましたように、キーワードは多分 高齢者に向けてということがかなり大きいんじゃないかと思っています。バリウムが詰まった例、 有害事象が出た例というのはやはり80歳代でしたので、その辺はちょっと考えていかなければ いけないのかなと思っております。  以上でございます。どうもありがとうございました。 ○垣添座長 どうもありがとうございました。  ただいまの西田参考人の御発表に対して何かございますか。 ○斎藤委員 内視鏡検診に変えて発見率が高いというお話でしたが、そもそも恐らく胃がん検 診受診率が全国平均より多分低いでよすね、4万ぐらいですから。それを切り替えてきている わけですが、内視鏡検診を受けた人がそれまで受けていなかった、つまり初回受診者が多いと いうことはないですか。と言いますのは、内視鏡の検診にしては早期がんの比率が65%と低い のと、それから、大きながんが多いですよね。X線発見がんと早期がんの割合や大きさの分布 がほとんど同じだということで、つまり言いたいことは、内視鏡によって新しい受診者のポピュレ ーションが掘り起こされていて、そういう集団は有病率が高いのでたとえ発見率が高いと言って もX線と単純に比較できるかどうかということをお聞きしたいんです。初回受診者の割合がどう か。 ○西田参考人 個別の事例で初回検診かどうかということは基本的にとっていないので、おっ しゃっているようなことはあり得ると思いますが、ちょっとそれを御説明できるだけのデータを持 ち合わせておりません。がんが発見された例で前の年はどういう検診を受けていたのという追 い掛けは多少やっていますが、それでいきますと、内視鏡で見つかって前はX線でパスをして、 次の年に内視鏡で見つかったケースというのが5例ぐらいはありますが、先生が御指摘された ような、今まで全然受けていなくていきなり内視鏡で見つかったケースがあるかどうかはちょっと わかりません。 ○垣添座長 斎藤委員の御指摘はもっともな感じがしますけど、残念ながらデータが必ずしも 十分ではないということですね。  ところで、内視鏡検診を導入された理由は何ですか。 ○西田参考人 健対協の方でいろいろ議論されておったんですが、1つには、新しい取り組み として、受診者の便という意味で要精検になってしまうともう一遍行かなくてはいけなくるなるの が1回で済むという考え方と、あと、やはりバリウムの問題等も多少考えたようだと聞いておりま す。いずれにしても、高齢者向きというところは議論の対象になって、そういう判断をされたよう に理解しております。 ○芳野委員 10ページの内視鏡検査とX線検査で発見した胃がんとを比較しますと、胃がんの 発見の占拠部位のところが小弯、大弯、前壁、後壁といきますと、後壁ではX線検査が11例、 内視鏡検査が10例とほぼ同じですね。一方、後壁以外の部位では内視鏡検査で発見した胃 がんが多い。従来から言われていることですけれども、内視鏡検査は後壁が弱い、と思いま す。  それと、先ほどの斎藤委員のお話ですけれども、先生のおっしゃられる前回の検診がどの様 に行われているかという点ですが、これまでの発表を見ていますと、そういう発表が余りありま せん。内視鏡検査による早期胃がんの発見率というのをX線検査と比較しますと2〜3倍くらい 多いとの報告がされていますが、確かに先生のおっしゃられるような前回の検診方法について 言及されていることはないと私も思います。  それから、X線検査と内視鏡検査を比較しますと、内視鏡検査では医師を確保することが非 常に難しい。鳥取県では多くの数をやっておられて、そのうち、4割の方が内視鏡検査を選択さ れるということになりますと、検査する医師の資質といいますか、精度といったことをどういうふ うに管理していくかということが問題になると思います。内視鏡検査を行う医師は年間50例以 上の検査を行っているとのことですが、月に3例か4例やっておられれば入られることになりま す。そうしますと、施設ごとでの差がみられるとかの問題が生じたことはないでしょうか。 ○西田参考人 ありがとうございます。医師の確保ということなんですが、御指摘のように、集 団検診ができないというところで全部医療機関検診でやっております。医療機関が4ページ目 の紙でご説明したクライテリアに合致する医療機関が200ちょっと切れているぐらい、190ぐらい だったと思いましたが、それぐらい県内にございます。認定基準はこれですから、基本的にこの 基準をクリアしておられれば医療機関に登録ができます。ただ、割と顔の見えたコミュニティと いいますか、医師会の先生が健対協の委員に入っておられまして、大体見てこられて新規の 開業をされる先生のデータが上がってきますと、大体大丈夫かねということは見ておられるよう ではございました。ただ、役所の立場ですので、立ち入ったことはなかなか申し上げられません が。  医療機関ごとのデータの差があるかということなんですが、個別の医療機関ではとっておりま せん。市町村別あるいは最初の地図で見ていただいたように、東・中・西という3エリアでものを 考える習慣がついておりまして、東・中・西別のデータを比較して、特に目立った数字が出てく ると、その理由について議論していくという会議を年に2回やっています。したがって、その中で 胃がんについては過去2回私が出た感じでは、ここにすごく問題があるという医療機関が抽出 されたということはないです。そういう状況です。 ○森山委員 先ほどの斎藤先生の意見ともダブるんですけれども、やはりこういうようなまだエ ビデンスとして有効でないとはっきりわかっていないわけですね。それを始めるというのは、いつ か始めないとエビデンスができないから始めるのはいいんですけれども、やはり今言ったように 初回検診であればかなりの確率でがんが見つかってきますから、こういうはっきりエビデンスの ないものを始めるときには、最低限そういうエビデンスになるような形で始めていただかないと、 例えば、鳥取県で発見率が高かったと。それが生存につながるかどうかわからないのに、それ だけがマスコミや何かで独り歩きして、非常に世の中に混乱を招くということもあるので、やはり これはよかろうと思って始めるということのほかに、責任の一端を持っているということを自覚し ていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。だから、今までのはしようがないとしても、 来年からでも是非そういうデータをとるようにした方がよろしいのではないかと思います。 ○西田参考人 データも元の分を当たれば、多分初回受診例とそうでない例を分けられると思 いますので、その分はちょっと御指摘いただきましたので、帰ってみて初回受診例の発見率と そうでない例の発見率といったものは調べてみたいと思います。そういう意味では、1年後のフ ォローで見つかった分がそれぐらいですから、そんなに偽陰性出ているとは思いにくいんですが、 前回御議論のありましたように、偽陰性の問題が内視鏡は非常に指摘されていると伺っており ますので、その分については今後データができる限りとれるようなものを考えていきたいと思い ます。 ○垣添座長 やはりエビデンスがないものを導入するに関して、それが得られるような仕掛けを つくってやってほしいという要望だと思いますが、是非お願いいたします。 ○丸山委員 西田参考人に聞くのはちょっと酷なのかもしれませんけれども、例えば、具体的 なことですが、生検はその場ではしないということですか。 ○西田参考人 内視鏡の場合ですか。内視鏡の場合は当然、病変が見つかってくればその場 で切除するようなケースはあり得ます。検診でどこまで見るかという部分については、保険で見 るような方法をとっていたと思います。 ○丸山委員 それから、1人の検査時間は大体どれくらいですか。 ○西田参考人 検診だけでやっていないケースが多いんです。いろいろな医療機関があります からあれですけれども、中山間地で割と中規模の病院ぐらいになれば標準的なイメージですと、 午前中8時半から昼過ぎまでで大体10人ぐらいですか。当然、検診の方だけではなくて、違和 があって受診されて医療の一環として内視鏡検診を受けられる方もごっちゃになってきますか ら……。 ○丸山委員 混在しているということですか。 ○西田参考人 ええ。ですから、当然切除しなければいけないかどうかというのもありますし、 一律には言えませんけれども、感覚としては午前中3〜4時間で10人ぐらいが標準的と聞いて います。 ○丸山委員 そういった内容については、実は詳しく公表した方がいいと思います。  それから、もう一つは、先ほど内視鏡検査の精度が高いとおっしゃったんですけれども、森山 委員と同じような意見ですが、ここにはマスメディアの方も傍聴人としておられると思うので、内 視鏡がすぐれているという話になってしまうと誤解をまねくおそれがあります。同時に、むしろ逆 に、X線の読影精度が落ちているということで相対的な評価として強調されるべきです。  それから、最低限年間25人の内視鏡検査をクリアするということについてですが、私はかつ て内視鏡ではありませんけれども、レントゲンのとき放射線技師に何例経験したら最小限検査 を任せることが可能かというのを理論的に計算させたことがあります。その結果によると、最小 限200人検査しないとだめだということになりました。ですから、年間25人というのは……、50 人ですか。50人というのは、私はやはりハードルが低過ぎると思いますね。  それから、先ほど治療されると言いましたけれども、内視鏡的治療は胃の場合には外来では ちょっと無理ではありませんか。 ○西田参考人 精検が無理だということです。組織をとるという。 ○丸山委員 生検に関しても、私は高齢者の場合には危険だと思います。というのは、本人も 自覚していないで最近は抗凝固剤とか抗血小板薬などを飲んでいる人が非常に多いですから、 出血が止まらなくなってしまって死亡事故につながったりする場合があるからです。検診で生検 をするというのは危険な行為です。  それから、もう一つは、10mm以下のがんがレントゲン検査に比べてとても多かったですね。 内視鏡検査で発見されたものの中で。これは費用効果のところでも問題にされるべきだと思い ますし、年齢構成にも関係すると思いますが、10mm以下の早期胃がんというのは、病理学的 にがんかどうかということが問題になります。また、がんであっても、放っておいてももしかしたら 10年ぐらいは早期胃がんでいる可能性もあります。高齢者の場合には他病死する場合も結構 ありますから、内視鏡検査のメリットと本当に言えるかどうかということも検討する必要があると 思います。むしろ、本当に死亡率の低下に関与しているものは、進行がんでもかなりステージ の上のものじゃないかと思います。  大腸がんのスクリーニングの場合のミネソタスタディと胃がんの検診を同じに論ずることはで きないと思いますけれども、ミネソタスタディで死亡率の差が出たのはステージDといって、遠隔 転移がある大腸がんの数が、逐年検診群とコントロール群との間の千人に対して2.1人であっ たことが33%の死亡率の差を引き起こしたと記憶しています。ですから、胃がんだって死亡率 低下を云々するためには、進行がんが内視鏡検査では一体どれだけ見逃されるかということが カギになると考えられます。したがって、10mm以下のがんを検診で問題にしてもあまり意味が ないと思います。そうではないと言う方もいらっしゃると思いますので、御意見を伺いたいと思い ます。 ○西田参考人 ありがとうございます。まず、X線読影の評価が落ちているのではないかという 御指摘なんですが、県としても健対協としても全部内視鏡に変えようということは勿論思ってい ませんし、最初の絵で見ただけでも非常に中山間地を抱えているエリアでございますので、車 でやる集団検診は受診者の利便のため必須のものだと思っていますから、検診に対する評価 としてX線のものが県としても医師会としても評価を下げているということは必ずしもないので、 そこは御理解いただきたいと思っています。  年間何人診ればいいかというところは、私もとっさに意見が申し上げられませんので申し訳ご ざいません。  あと、内視鏡をやって精検をやるかどうかというところなんですが、すみません、私も実行上ど ういうふうにやっておるのか、つぶさに把握しているわけではないので申し訳ないのですが、御 指摘のようなことは出血の危険があるというようなことは考えなければいけないだろうとは思っ ております。実際にそれをやっているかどうかというのは確認をする必要があります、申し訳ご ざいません。  あとは、10mm以下の群につきましては、私の方でコメントするよりは皆さんの御意見をいただ ければと思いますが。 ○垣添座長 ありがとうございました。 ○内田委員 内視鏡併用の検診というのは、やはりエビデンスを積み重ねるという点で、先ほ ど森山委員とか丸山委員の方からも御発言がありましたけれども、それをしっかり取り組んで いただきたいというのは勿論あります。  それから、もう一つは、私の近隣では最近、透視の施設を入れないで内視鏡で開業するとい う消化器専門医が結構増えているんです。スペースの関係もありますし、多分初期投資をいか に減らすかという点での話もあると思うんですけれども、そういう先生方から内視鏡検診を導入 しろというプレッシャーが結構出ています。その辺についても今の時点でそれはちょっと認めら れないという話にはなっていますが、今後それを検討していかなくてはいけない時代になってき ているのではないかと思いますので、その点に関してもやはりしっかりやっていただきたいと感 じます。 ○斎藤委員 森山委員の繰り返しになりますけれども、鳥取県の話もいいんですが、これから 全国でこういう内視鏡検診をやるところで、どういうふうにすればいいかということで、一言コメン トしたいと思います。それは、まずエビデンスがないということを説明することが基本で、あと、問 題になる偶発症のサーベイを積極的にやるシステムも併せてつくることが必要です。もう一つは 偽陰性の把握も含めてですけれども、研究として行うことが重要で、実際に研究ができるような 体制も構築する必要があります。  細かい話はさておいて、例えば平成12年に始まっていますよね。そのときの検診開始時に内 視鏡検診をオファーしたグループをきっちり把握しておくとか、それから、さっきと同じことですが、 内視鏡検診をやったところのデータはとりわけ踏み込んで、一般の事業よりは一歩踏み込んだ レベルで精度管理、フォローアップするといったことを具体的におやりになることが必要だと思 います。 ○垣添座長 ありがとうございました。  では、最後に祖父江委員、ガイドラインをまとめられた立場で、今の西田参考人の発表に対し て何か御意見ありますか。 ○祖父江委員 皆さんの意見でまとめられると思いますけれども、ガイドラインで言っていること と、現実やられている施策との乖離があるということは珍しいことではなくて、しばしばあり得る ことなんですけれども、それは日本だけではなくて海外でもガイドラインと現実との乖離というの がある。これをいかに埋めていくかということなんですが、それには正しくガイドラインを理解して いただくということがまず大前提にあって、そのためのいろいろなノウハウとかツールということ も同時に開発していかなくてはいけない。特に、専門家の方に対してガイドラインの持つ意味と いうものをきちんと理解していただく。一般の方も含めてですけれども、そういった取り組みをき ちんとそれ自体を研究としてやっていく必要があると思っています。 ○垣添座長 ありがとうございました。  一応、今日は坪野委員と大類参考人、西田参考人からいろいろ御意見をいただきました。あ りがとうございます。  残り約20分ありますが、全体を通じまして、今日プレゼンテーションしていただいたお話も含 めて総合討論といいましょうか、時間いっぱい議論いただければと思います。 ○祖父江委員 坪野委員の検診間隔の問題ですけれども、乳がん、子宮頸がんのときも検診 間隔というのが問題になって、特に子宮頸がんに関しては、間を開けても同等の有効性が認め られるというようなことで1年を2年に開けたというようなことがあったと思います。検診間隔を開 けるというロジックですけれども、これが個人を対象とした検診といいますか、任意型検診と対 策型検診とはロジックがちょっと違うんじゃないかと今思いました。というのは、個人を対象とし た場合には、有効性の程度が1年でもあるいは2年開けても同じだから2年開けるというのが 理屈としてはわかりやすいですけれども、対策型検診として行う場合には、仮に1年しか有効性 がなくて、2年、3年で有効性がなくてもやればそれだけの検診効果があるんですから、10年開 けて実施したとしても集団全体としての死亡率はある一定程度下がるわけです。同じ程度の有 効性が確保できるから開けるのではなくて、むしろ提供できる検診のキャパシティが一定程度し かないとか、あるいはコストをある一定程度にしか確保できない、そこのところが条件となって 間隔を決めるという方が、対策型検診の持つある一定の資源のもとに効果を最大化するという ロジックとは合致するように思います。  ですから、何が言いたいかというと、1年で有効性があり、2年間隔にした場合に有効性が同 程度保たれなくても2年間隔にするということは、対策型検診の場合は選択肢としてあり得ると いうようなロジックがあるんじゃないかと思いました。 ○垣添座長 非常に重要な問題定義だと思いますが、坪野委員、何かございますか。 ○坪野委員 基本的にはそうだと思いますけれども、受診間隔の問題を検討する場合に、アセ スメントとしてどのくらい死亡率減少効果があるかという話と、限られた資源をいかに有効に使 って受診率を確保するかというようなマネージメントの観点と、二種類があると思います。ただ、 それは議論としては分けた方がいいと思っています。今まで子宮頸がんの受診間隔を1年から 2年に延長したのは、主にアセスメントの観点からやっているわけですから、ロジックを一貫させ るという意味では、アセスメントとしての死亡率減少効果の観点でどう受診間隔を延長できるか という話が、まず最初に来るべきだと思います。マネージメントの問題についてですが、今回私 が出したコストの資料は、現状の延長では到底実現できないような形で検診の仕組みそのもの を抜本的に変え、例えば保険者にやっていただくことで受診率を8割にするという前提で計算を しています。その意味では非現実的な状態を想定しての推計になります。ただし、内閣も変わり ましたし、もしかすると世の中変わってくると思うので、現行のマネージメントの前提になってい る制約条件が、場合によっては我々が予想しているよりも早く変わる可能性もあると思います。 とりあえずこの検討会では科学的根拠に基づいて検討するという意味からは、まずはアセスメ ントの観点から、ほかの検診と整合性を持った論理で受診間隔を決めていくことが重要ではな いかと思います。 ○笹子委員 坪野先生が出した表は、受診率がすごく高くなって同じぐらいの死亡減少効果と いうことですから、受診率が高くなるという前提がありますよね。そのためにどうするかというこ とは何も議論が入っていない。丸山先生がおっしゃったようなことからいくと、つまり、保険を負 担している年代の人に関しては、2年ごとですか、決められた間隔で受診していたのに見つか ったときは、今の医療費の30%という個人負担を10%にするとか、そういうインセンティブをつ ける形の差別化はどうか。 ○丸山委員 余り大事な問題じゃないかもしれませんけれども、検診の受診率が横ばいないし はほんの少し上がったぐらいで2年間でも有効と言われますと、検診機関が立ち行かないとい う現実問題も考えていただかないと。ほかの検診は知りませんけれども、胃がん検診というの はそうでなくても値引き競争がどんどん始まっています。それから、余り知られていない問題と して、今バリウムの原材料が高騰しています。そういう意味からも、受診率を上げるためにいろ いろな努力をしていただいた上での2年間隔ならいいんですが、そうじゃないと胃がん検診は大 変困難な状況に陥ると私自身は心配しています。 ○垣添座長 それは実際に検診を担当しておられる方の、あるいは対がん協会の支部の皆さ んなどがいつも言われることですが、前に乳がん検診をあるいは子宮がん検診を2年に一遍に したときに、頭の中ではきちんと受診者を管理すれば、機械的に考えれば倍に受診者数が増 えるはずなのに、実際にはかなり減ってきている支部のお話もいろいろありますので、今の御 指摘は現状のままでいこうとするといろいろな問題が出てくるのではないかと思います。 ○内田委員 今回の医療法改正で特定健康診査・特定保健指導というのが保険者に義務化 されましたよね。受診率の飛躍的な向上というのをうたっていますけれども、がんの受診率の向 上に関しましても、やはりそういう形でのシステムの組み替えというか、新しく治療から予防へと いう動きの中で、いかに受診率を上げるかというところが非常に重要になってくると思うんです。 そういう動きを見ていますと、これは保険者の義務化という話に持っていくのが一番手っ取り早 い話ではないか。要するに、受診する側にインセンティブを働かせようとしてもなかなか難しいと いうことで、保険者の方に何らかのインセンティブを与えて受診率を向上させることを義務化す るということが、現実的には一番効果があるのかなという印象をちょっと持っております。 ○垣添座長 ありがとうございました。  課長、何か御意見ありますか。 ○鈴木老人保健課長 私の理解したのは、今回、特定検診について義務化をするときにいろ いろな議論があって、今で言う基本検診だけではなくてがん検診も含めたらどうだという御意見 も確かにあったようなんです。ただ、問題は先ほど坪野先生が指摘しておられましたが、実際に がん検診に資本を投下して、将来的な医療費へのはね返りとしてきちんと保険者としてペイを するのかというところについて、私の理解する限りは、どうもなかなかお金を出す方を説得でき なかったという経緯が当時はあったようなので、これからもしそちらに向かって歩んでいくという ことであれば、その辺もきちんとデータを積み重ねて、これだから、やはりがん検診をきちんとや ってもらう必要があるという議論を展開していく必要があるのではないかと思います。 ○大内委員 平成10年度のがん検診費用の一般財源化のときに、同時にこの会の前身にな りますけれども、久道班ががん検診の有効性評価を行ったわけですね。私たちはがん検診の 有効性評価をして勧告したと同時期に、一方では、突然がん検診の一般財源化が決まって、 我々はすごくつらい思いをしたのですが、報告書ではがん検診を進めるべきだという結論なの に、一方では検診費用の一般財源化で、その後、大幅に受診率が下がっているということで、 大変な状況になっていると思います。いろいろ議論はありますけれども、その1つのターニング ポイントが平成10年度にあったということと、それから、今回がん対策基本法が成立して来年4 月から施行される、その中に、がんの予防についてかなり詳しく書いてあって、しかも、私たちも 努めなければいけないが、国民の責務としてがん検診を受けるように推奨されていますね。た だし、検診費用が市町村財政任せであるということ、これでは受診率が上がるはずがない。例 えば、マンモ検診を入れた場合に、検診費は少なくとも2倍になる。検診間隔を1年から2年に したとしても限度があって、ある市区町村では定数を設けて、それ以上絶対に受け付けないと いうのが多々起こっているわけです。そういう状況において、受診率向上はあり得ないと思うの です。ですから、内田委員のお話にもありますように、私は国としてがん検診費用のあり方につ いて、方向性を議論していただきたい。この委員会ではないかもしれませんが、一定の提言を 出していただければ先に進むだろうと考えます。今回の医療法改正では、がん検診の費用負 担について保険者負担を見送ったということになっていますけれども、それでいいのかというこ とをもう一度真剣に議論していただきたいのですが、いかがでしょうか。 ○鈴木老人保健課長 私も個人的には絶対にそれが必要だと思います。  あとは、今大きな地方の分権推進の流れの中で、一度一般財源化したものを国に補助金とし て戻すのは実務的にほとんど不可能だと思いますけれども、1つは、国として科学的に必ずこう いうことをやる、それは単に精度管理の話だけではなくて受診率向上のためですね。もう一つ は、私が部長をある県でやっていたときに思ったんですが、県の中でも非常に頑張っておられ るところとそうでないところがあって、それは、個々の保健師さんなり課長なり首長さんの意思に もよるんですけれども、それをお互い横に比較的わかっていないことが多いので、それはやはり 公表なり何なりという手段を通じて、よくやっているところと、そうでないところが自ら住民の方も 含めて体験できるということが必要なんじゃないかと思います。ただ、先生御指摘の議論自体 は是非データを積み上げてやらせていただきたいと思います。 ○坪野委員 その前提として、良いことだからお金を増やしてやるべきだという議論は今はなか なか通らないと思うので、コストを上げないで何ができるかということを具体的に考えていく必要 があるかと思います。私は経済分析の専門家ではありませんが、今回躊躇しながらもあえてデ ータを出させて頂いたのは、そういう観点のデータがもっと必要ではないかと考えたゆえです。 総額を固定した形で、お金の使い方を変えるとどれだけ効果があり得るのか定量的に示すこと が重要ではないかと思いました。 ○鈴木老人保健課長 今日の今までの御議論をお伺いしていて、少なくとも2つは絶対に必要 だと思いました。1つは、特に受診間隔の関係も含めて、総体的な検診費用、それから、医療 費へのはね返りを含めて、もう少しかちっとした、いろいろ突っ込む人がいますので、ある程度 の突っ込みに耐えられるようなデータを蓄積して、それをもって議論すると。そのために国として やることがあるだろうというのが1つです。  もう一つは、先ほどの西田参考人からあった内視鏡を直接やるという方式について、このガイ ドラインには、どうも中国で1つしかケースコントロールがないということですけれども、今やられ ていて恐らく数年以内には内視鏡の方が多くなるような勢いのようですので、恐らく市町村によ っては内視鏡しかやっていないというところもあるかもしれません。ですから、そういうところで単 に鳥取県だけにお願いするのではなくて、全体としてきちんと整合性のある形でエビデンスを蓄 積して、1年、2年ですぐ出るとは思いませんけれども、きちんと今から協力してデータを先生方 と御相談しながら蓄積していきたいと思います。 ○垣添座長 今、鈴木課長に今日の議論を大変きれいにまとめていただきまして、まさにそれ が私も結論だと思っています。胃がん検診ということを離れて、かなり検診の本質論にかかわっ た議論をたくさんいただいて、大変いい会だったと思いますが、そろそろ予定された時間になり ましたので、今日はこれで終了させていただきたいと思います。  これで2回やりまして、全体として予定では4回としていますから、次回ぐらいに報告書の案を 一応事務局でつくっていただけますでしょうか。それから、更にまだヒアリングを予定しているこ とはありましたか。 ○大澤課長補佐 読影に当たる医師あるいは撮影に関する技師に関するテーマ、それから、も う一つは、精度管理あるいは事業評価に関するテーマ2件を予定しています。 ○垣添座長 わかりました。いずれも重要ですので、次回お二人の方の意見をお聞きしながら、 更に議論を深めていただいて最終回4回目で一応まとめると。  それから、国策としての検診に関しては、また別途検討するということにさせていただきます。  本日は、どうもありがとうございました。 照会先:老健局老人保健課 連絡先:03-5253-1111 担当者:課長補佐 鈴木(内線3941)      主査   森川(内線3947)