06/09/21 第12回 医薬品・医療機器等対策部会 議事録 第12回医薬品・医療機器等対策部会                             日時 平成18年9月21日(木) 14:00〜16:00               場所 厚生労働省17階専用第18〜2 0会議室 ○事務局  開会に先立ちまして傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりましては、既 にお配りしております注意事項をお守りくださいますようお願い申し上げます。  定刻になりましたので、ただいまから第12回「医薬品・医療機器等対策部会」を開 会させていただきます。本日の部会につきましては、従来の取扱いと同様、公開で行 うことといたしております。カメラ撮り等は議事に入る前までとさせていただきますので、 関係の方におかれましては、ご理解とご協力をお願い申し上げます。  本日ご出席の委員の先生方におかれましては、ご多忙のところをご出席いただき まして誠にありがとうございます。本日は、本部会委員14名のうち、4名欠席で10名 の出席をもちまして部会を開催させていただいております。  また、前回の部会以降、3名の委員に変更がございましたので、ご紹介させていた だきます。まず日本歯科医師会の奥村委員に代わりまして稲垣明広委員、日本薬 剤師会の井上委員に代わりまして岩月進委員、日本医師会の野中委員に代わりま して木下勝之委員です。  それから事務局に人事異動がありましたので、ご紹介させていただきます。医薬食 品局安全対策課長の伏見、医政局総務課医療安全推進室長の佐原です。よろしく お願いいたします。それでは、以後の議事進行は桜井部会長にお願いいたします。 ○桜井部会長  それでは最初に資料の確認からお願いします。   ○事務局  本日配布いたしました資料の確認をさせていただきます。本日の「議事次第」「配 布資料一覧」「座席表」「委員名簿」に続きまして、資料1は「医薬品・医療機器等対 策部会設置要綱」と、厚生労働省医療安全対策検討会議組織図を添付した4項の 資料です。本部会は、医療安全対策検討会議の下に、医薬品・医療機器の物の要 因に係る安全管理の対策を行うものです。資料2は「第15・16回ヒヤリ・ハット事例収 集結果」について」です。最初の3枚をめくりますと別添1-1、最終項は別添4-7まで となっています。資料3は「医療事故情報収集等事業報告書(第6回)」です。委員の 先生方におかれましては、本日お手元に印刷したものをお配りしております。なお、傍 聴の皆様へは本日お配りいたしておりませんが、この報告書は、財団法人日本医療 機能評価機構のホームページに公表を掲載されておりますので、そちらでご覧いただ きたいと思います。  資料4−1は、9月15日付で通知いたしました「医療用医薬品へのバーコード表示 の実施について」です。資料4−2はパブリックコメントに寄せられた御意見で、ホーム ページで公表した内容についてです。資料5は「医療安全管理者の質の向上に関す る検討作業部会」で、開催要綱と委員の一覧が付いています。資料6は「集中治療 室における安全管理指針検討作業部会」の検討スケジュールとなっています。以上 が本日の資料となります。お手元の資料のご確認をお願いいただき、過不足等がご ざいましたら、事務局までお申しつけください。 ○桜井部会長  資料はお揃いでしょうか。それでは、議事に従いまして、議題1「第15回・第16回ヒ ヤリ・ハット事例収集結果について」、事務局からご説明をお願いします。   ○事務局  議題1「第15回・第16回ヒヤリ・ハット事例収集結果について」、概要を資料2でご 説明いたします。本報告書は、平成18年3月8日に財団法人日本医療機能評価機 構がホームページで公表いたしました医療事故情報等収集事業の第4回報告書の 中のヒヤリ・ハット事例記述情報を、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が調 査し、検討した結果として報告したものです。  次の頁ですが、第4回報告書には、平成17年2月15日から平成17年8月15日 までに日本医療機能評価機構に報告のあった、医薬品及び医療機器に関する第15 回、第16回のヒヤリ・ハット事例記述情報が掲載されておりまして、医薬品・医療機 器のものに起因する事例について、医薬品医療機器総合機構において、医薬品・医 療機器としての観点から専門的な評価・対策の検討を加えたものです。  今回のヒヤリ・ハット記述事例総数は、医薬品関連情報が93件、医療機器関連 情報が60件となっています。公表情報を基としておりますので、事例の検討結果に ついて、製造販売業者等による対策が必要又は可能と思われる事例としては、医薬 品関連情報としては14件を別添1に付けています。また医療機器関連情報では15 件を別添3に検討結果を加えて載せてあります。  検討の結果、ヒューマンエラーやヒューマンファクター等のみに起因すると考えられ る事例、既に十分な対策がとられると考えられている事例及び詳しい情報が不足の ため、検討が困難と考えられる事例等については、医薬品関連情報では79件を別 添2に、医療機器関連情報としては45件を別添4に、影響を与えた薬剤及び関与し た機器の種類を加えて掲載してあります。医薬品に関連するヒヤリ・ハット事例は別 添1、別添2に誤り又は影響を与えた薬剤の薬効分類順に示してあります。  また医療機器に関連するヒヤリ・ハット事例の検討結果は、今回この収集ごとに定 められた記述情報のテーマが人工呼吸器に関する事例ですので別添3、別添4に人 工呼吸器に関するヒヤリ・ハットの事例の発生を分類し、電源に関する事例、酸素供 給に関する事例、回路に関する事例、加温加湿器に関する事例等の事例に区分し て検討結果を掲載しています。医薬品と医療機器の個々の事例についての検討結 果は、ヒヤリ・ハット検討会の委員でもある土屋委員と目黒委員からご説明をお願い したいと思います。 ○土屋委員  それでは、医薬品についてご説明いたします。以前と違って、今回から細かな情報 がこなくなったということもあって、全体的に見ますと、先ほどの報告件数の中で、特 に目新しいエラーはありませんでした。ただ、何点か気になる点がありましたので、今 からお話いたします。  別添1−1の事例3です。これは溶解液を本当の薬と思って、間違えて投与したと いうヒヤリ・ハットです。これについては、以前も溶解液を本薬と勘違いしたという事例 があります。しかし、溶解液というのは、医療現場においては供給形態のときに溶解 液を本当に使うのか使わないのか、その溶解液のラベルに本薬の名前も一緒に書い てあるとか、間違いやすい要素はかなりあるのだろうと思います。したがって、今回ま たこういうことが起きたことから、溶解液の表示のあり方、あるいは溶解液のそもそも の基本ルールなどを検討することが必要かと思います。  続いて別添1−2の事例4及び5、あるいは別添2−4で多数ありますが、インスリ ンについての事例です。インスリンについては表示が平成16年6月2日の通知で、 全量を表示するということで、例えばアンプル1本が2%、5mlだったら、100mg/5ml という表記をするという、全量が1本でいくつなのだということが、すぐわかるような表 記があります。インスリンについては以前、40単位と100単位の切換えがうまくいくの かどうかがすごく重要だったものですから、そちらに重きを置いた対策が立てられてお りました。  しかし、40から100については、幸いなことに大きな事故もなく、うまく切り換えられ たと思いますが、今度は100のものが100と書いてあるために1本が100なのかと。 ほかのものがだんだん全量表示などが出てくると、実際は10ccありますが1000単位 なので、そこが100と勘違いされるということも起きているようです。この辺の表示を変 えるときには、単に表示を変えるだけではなく、関係の所でいろいろ相談しながら、方 法論を含めて、注射薬で既に通知が出ているような表記の方法に変えていくための 手段として、表示を大きく変えるときには医師、薬剤師、看護師、患者というさまざま な使用する方がおられますので、そういったところの合意をとりながらやっていく必要 があるのかという気がいたします。  別添1−3の事例7及び8で、2層式のものがまだ未開通というのがありますが、こ の情報が収集された時期を見ますと、最初の対策で例外にしたものがあります。それ は明らかに2層だということがわかるものについては、真ん中の隔壁の所に赤い線を 引いて、ここが隔壁になっていますよ、あるいは開通を確認してくださいというところが、 明らかに2層だから、それはわかるだろうということで、例外的に表示をしなくていいよ うな形になっていたのです。その後、そういうものについてもヒヤリ・ハット報告がされ たことによって、今はすべてのものがそのようにするということになっています。報告時 期から見ますと、これはまだその対策がとられていないことですので、今回のヒヤリ・ ハットでは報告が上がっていますが、今後は大幅に減るものと思われます。  別添2−10あたりから麻薬について、特にデュロテップパッチについて多数の報告 があります。本来ですと麻薬ですので、通常に比べてかなり厳しい管理をしているの ですが、そういう意味では医療機関においても注意が払われているとは思いますけれ ども、現実としてデュロテップパッチというのは3日間ぐらい貼っておくものですから、そ こに今日貼ったということで日にちを書く人もいれば、剥がす日を書く人がいたり、施 設によっていろいろルールが違ったりします。そうすると、異動があったりするときには、 そういうことが起きるのかなということもあります。  しかし、現在は企業のほうで貼った日と剥がす日という違ったシールが供給されて いたり、そういう対策がとられておりますので、今後はだんだん終息していくかと思い ます。デュロテップについては、前回報告したと思いますが、シールを剥がさずに、薬 液が皮膚に面せずに、シールが付いたまま貼られることもありまして、それについても 注意喚起がなされたところです。今回のこの対策を見ますと、そういうことが防げれば、 だんだん終息してくるのかという気はします。  したがって今回、目立ったものについては、いまご報告したとおりですが、どちらか というと、物としての対策は既にとられているのですが、医療機関の中で徹底がまだ されていないのかということがありますので、今後は医療機関内における徹底の仕方 を考えなければいけないのかというのが全体的な話です。 ○目黒委員  医療機器については別添3にほぼまとまっていますので、別添3を中心に説明いた します。今回は事例項目の右側に、例えば電源に関する事例、酸素供給に関する事 例と同様の事例をまとめて、大きな項目を付けていただいていますので、その辺を中 心にお話していきたいと思います。  事例1と事例2ですが、これはバッテリーの問題です。事例1については、外出する ためにバッテリーを装着して外に出る際にローバッテリーなので交換した。ただし、交 換したバッテリーも劣化して使えなかったという事例です。事例2については、AC電 源使用時にバッテリーランプが点灯したもので、背景・要因と具体的内容に書いてあ りますが、定期点検のときにバッテリー交換をしていなかったことが要因としてあると いうことになっています。  バッテリーに関しては、古い装置の場合にはバッテリー交換をいつするという記載 はない場合もあるし、バッテリーに具体的にいつが交換時期ですよという書き方がな いものもあります。最近の新しいもの、常にバッテリーを使うような装置に関しては、 輸液ポンプやポータブルで動くようなものについては、何年ごと、一般的には2年ごと のバッテリー交換をしてくださいという書き方がされているものもあります。そういうこと で検討の中では、メーカーからバッテリーの交換時期、点検項目の中へのバッテリー の追加に対する情報提供が必要なのではないかという話が出ていました。  バッテリーについては、最近は呼吸器の安全が騒がれてきており、先に荒川の高 架線停電事故がありましたが、当院においても瞬時非常用電源ということで、電源が 切れたときにバッテリーがきちんと動いていたかが問題になりましたが、きちんと動い ていたということで安堵しています。  事例3ですが、背景・要因に「電源元を間違えた」とありますが、この内容について も、通常人工呼吸器の運用に当たっては、確実に電源を取ることは当然ですが、急 激に電源が途絶えたときに、きちんとバッテリーで動かすようなバックアップ機能が付 いていることが非常に重要だということで、そういう機能がきちんと働いているかという ことだったのです。  荒川の停電事故について言えば、私たちもメーカーの人に、いろいろ問題はなかっ たかと聞きましたら、今回はあまり大きな混乱はなかったと。随分前に航空自衛隊の 高圧電線の事故が埼玉かどこかの河川敷であって、そのときは少し混乱があったみ たいな話は聞きました。ただニュースソースの中では、自宅で非常用電源がない所で は混乱が起きていますので、病院の中でも電源コンセント、機械がつながっている先 までも注意をしていかなければいけないという議論がありました。つなぐ場合にコンセ ントあるいは電源コード自体に、人工呼吸器のものであるとか、つなぐ先は非常用電 源でなければならない、という表示をしなければいけないのではないかという議論が 出ていました。  酸素供給に関する事例ですが、検討結果の中に「非侵襲型人工呼吸器とあるの で」とあって、マスク換気用の人工呼吸器になっています。マスクを使う人工呼吸器の 場合には、患者が比較的意識があって、自分で呼吸ができる場合に使うケースです ので、この場合にも酸素供給がなくても、ある時期までは安定した呼吸ができていた のかという感じです。ここで問題になったのは、アラームが鳴らなかったことが非常に 大きな問題で、壊れていたのか、それとも警報設定のミスがあったのかが、大きな検 討の問題点となっていました。  回路に関する事例で、中材(中央材料室)は、具体的内容の6の項目ですが、中 央材料室で回路の設定された呼吸器が払い出されたということです。きちんと回路を つないで出したのですが、背景・要因にありますが、気道内圧チューブとネブライザー チューブが間違えて接続されていた。呼吸器は自己診断システムがあって、点検時 に自己診断でオーケーを出したので、すべてオーケーと思ったということになっていま す。  この自己診断ですが、一般的に普通の医療機械でもそうなのかもしれませんが、 電気的な機械におのずと備わっている部分は自己診断で対応できるのですが、人が 加わった部分まで全部自己診断で対応できるかというと、そういうことはありません。 この場合の大きな問題は、自己診断が機械で何をやっているかをきちんと理解して 人工呼吸器を使わないと、間違いが起きてしまうことがあるので、今後はその辺をき ちんと教育するなり、注意しなければいけないのではないかと思います。  事例7ですが、前にもいろいろ出ていましたので、人工呼吸器に関する現物を持っ てきました。人工呼吸器の場合には気管カニューレを口の中あるいは鼻から挿管し て、ここに風船があります。この風船で人工呼吸器から送られた空気が漏れないよう になっています。  この書き方で問題だったのは、この風船は空気が漏れないためのもので、具体的 内容では「カニューレを気管内で固定するためのバルーンの大きさが異なっていた」と 書いてあります。これを読めばわかるのですが、検討結果では、カニューレを別のサ イズを使ってしまったということで、それ自身は単なるヒューマンエラーですが、風船を 固定のために使っているというのは大きな間違いです。この風船をあまり強く膨らま せてしまうと、気管の組織の中に常に強い力がかかるために組織が壊れてしまったり、 気管の組織に炎症を起こしてしまったりするという問題点があります。これは人工呼 吸器の基本的な取扱い、あるいは人工呼吸器に関するカニューレ全体を含めた部分 についての教育や、知識が不足していることが考えられます。  事例8です。背景・要因に、加温加湿器用蒸留水にビソルボンという痰を切りやす くする去痰剤を入れていた。投与量を間違ったというのもヒューマンエラーですが、実 質的に加温加湿器、先ほど言いましたが気管カニューレを人工呼吸をする場合、人 間の場合は鼻や口を通っていく間に加湿をきちんとしていきます。この長さの分だけ で適当な水分を与える。肺の中に行くと絶対湿度が100%になるわけですが、そのよ うに加湿されるのです。この管を付けることによって、気道からの加湿ができません。 そのために乾いた空気を送るわけにいかないので、乾いてしまい痰も取れなくなりま すので、人工呼吸器には加湿器が付いています。その加湿器に本来は薬品等は入 れないことになっているのですが、そこに去痰剤を入れているのです。  ここで私が問題にしたいのは、背景・要因の中に「ビソルボン10mlを加える指示が 出ていたが」とあります。指示はたぶん先生が出されていたのかという気がします。で すから、先生方も呼吸器治療の取扱いに関しては、まだ十分な周知がされていない、 あるいは知らない部分があるのではないかという気がしております。  事例9は、ベッドの上げ下げによって、この先に人工呼吸器があるわけですが、人 工呼吸をする場合には、一般的には吸気側と呼気側の管があります。その管には加 湿器を通しますと、外の空気が冷たいものですから、ガラスが結露するように水が溜 ります。左側ですが、これを人工鼻といいます。人工鼻は吐いた息に含まれている水 が、フィルターみたいな繊維の中でトラップされ、息を吸うときにまたトラップされた水 分が肺の中に入っていく。気管あるいは口の中で行っている加湿と蒸発させて肺の 中に水分を取り込むのを、人工鼻を使って行っているわけです。  人工鼻の場合にはやってはいけないことがあります。例えば加湿器を付けてしまう と、これに過剰な水分が溜ってしまい、水浸しになってしまいます。そうなると単なる呼 吸抵抗にしかなりません。場合によってはほとんど呼吸できず、すごく高い抵抗になっ てしまいます。そういうことがありますので大変だということで、ここにヒヤリ・ハット事 例で載っています。  ただこの書き方を見ると、最近の詳細な情報がわからないのですが、検討結果に 「ぬれると閉塞するおそれがあり」と書いてありますが、人工鼻を付けて蛇管がそんな に濡れるということはあまり考えられないので、これは場合によっては加湿器を付けて いたのかなという気もいたします。そういうことで検討結果の中では、そのような人工 鼻を使ったときの注意あるいは蛇管に溜った水をどのようにするか、まめにきちんと 取ってあげることが大事だということで検討されています。  あとは項目としてまとめた事例10、11、12までが設定・操作に関する部分です。こ の辺で大事な部分は、事例10に書いてある「換気量が1000mlと高値になっていた」 と。これはこのままで普通の人工呼吸器に使うと、非常に大変なことになるのですが、 背景・要因に、マスクの人工呼吸器を使っていたと書いてあります。マスクの場合に は漏れを計算に入れた人工呼吸が行われるので、そのままの空気が全部入っていく わけではありません。ただ、この事例に関しては、検討結果で「アラームランプが点滅 しただけでアラームが鳴っていないことが問題である」ということになっています。ここ に書かれているように、基本的にはアラームがきちんと鳴るように設定されていなけ ればいけないことになっていますので、その辺がきちんとなされていたかどうかが大き な議論になりました。  事例11です。これはちょっと重要な問題で、機械の構造と絡んできます。またこれ で説明しますが、通常一般的には、こういうカニューレを入れて人工呼吸をしますと、 痰が取れません。我々は普通は繊毛上皮があって、一般には飲み込んでいる場合 が多いのですが、カニューレを入れてしまうと痰が出せません。カニューレを呼吸器か ら外して細い管を入れて痰を吸引するという操作をします。  一般的に人工呼吸器は息を吸ったり吐いたりする、息を吸うときの陰圧。人間が 息を吸う圧力には限界があって、20mmHgとか30mmHgという陰圧がかかっても機械 は大丈夫なようにしてあるのですが、この中にものすごく強い陰圧、吸引の圧力を加 えてしまうと、痰を引く場合には300mmHgとか400mmHgの吸引圧で引くことがありま す。そのようになってしまうと、いま私はこれを取り外してと言いましたが、取り外すこ となく、ここにもう1つアダプターを付けてつながったまま吸引することができるようなシ ステムがカニューレでできています。そういう物があって機械のほうに予想しない、機 械が想定し得なかった吸引圧がかかるために、機械のほうがおかしくなってしまうこと があります。検討結果に事細かくいろいろ書いてありますが、この辺の注意喚起をメ ーカーあるいはユーザーに対してもしていかなくてはいけないのではないかと書かれ ています。  事例12です。新生児用の人工呼吸器ですが、これも保守点検がおざなりになって いることもあって、表示部分がバッテリーがなくなって表示できなくなってしまった。こ れも定期的な保守点検が行われることがいちばん大事であると、検討の結果になっ ています。  いろいろ物を使って長くなりました。今回は人工呼吸器ということで別添3を使って 説明しましたが、全体を通して思われるのは、人工呼吸に関しては、先生方を含めて、 看護師たちにも適切な教育をする。人工呼吸器というのはツマミがいっぱいあって、 操作しなければいけない部分、その前に呼吸生理部分もきちんと理解していないとで きない部分が多々ありますが、その辺が理解、周知徹底がされていません。アメリカ みたいに呼吸療法士のような方々が専門にやることが本当はいいのではないかと感 じています。日本でも最近の学会等で聞いていますと、理学療法、看護、臨床工学 等を含めた呼吸療法を専門に行うチームを作っている所がありますが、各病院で呼 吸療法、人工呼吸を使う場合には、そのようなシステムを構築していかないと、この 類の内容は今後ともなくならないのではないかという感じを受けます。 ○桜井部会長  それでは、両先生のただいまのご報告について、何かご意見、ご質問はございま すか。   ○石川委員  いま目黒委員から懇切丁寧に説明をしていただき、わかりやすかったと思います。 ありがとうございました。私もこれを全部読んで検討結果のところを一生懸命見てい たのですが、まず最初にわかったことは、目黒委員が言われたように、判断するのに 非常に情報が足りないので、ここから検討結果まで導くのは、かなり大変なことでは ないかと思いました。まずは情報量がどうなのかということは、あとで少し議論された らいいのかなという気がしました。  私は1件1件に関してコメントを書いてきましたが、大体目黒委員がおっしゃってく ださったのであまりないのですが、簡単に言うと、目黒委員のお答から見ても、物の 改善をしろということよりも、使う方の教育とか、理解度のほうが原因になっていること が多いのではないかと私は捉えました。  同じように検討結果の中で、メーカーのサイドですから、少しでも減るようにするた めには何をしたらいいのかという目で一生懸命見るのですが、どう見ても使用者のほ うで十分できることではないかとか、保守点検をやればいいではないかとか、先ほど の電源のところでも、本来取ってはいけない電源から取っていることまでメーカーに何 とかしろと言うのも、どうなのかなというところが結構ありました。  添付文書のほうで少し書いておいたらいいのではないかという提案もあるのですが、 それはそのことで確かに効果があるのなら、両方で注意喚起をしたほうがいいと思い ます。これは目黒委員が言われるように、メーカーのほうの添付文書で若干の注意を 加えることだけでは意味をなさなくて、使用する側の体制の中で、どのように情報を共 有していくかというほうが、ものすごく大きいのではないかという気がしました。  検討結果を見ると、言葉は悪いかもしれませんが、これは物の部会だと思うので、 物のほうを何とかしなくてはと読めるのですが、「13年通知だって、ちゃんとしてないじ ゃない」と逆に私は反論をしたいぐらいで、検討結果に非常に無理があるかなと記述 は思いました。逆にいうと、目黒委員のいまのお話のほうがものすごくよくわかって、 なるほどなという気がしました。情報が足りないことによって、私のほうも何かをしなけ ればいけない、と考えるためのヒントが少ないのではないかと思うのですが、その辺は いかがでしょうか。 ○目黒委員  情報が足りないということに関して言えば、私はいつもほかの会議でも言うのです が、組織がない。薬は薬剤部門があって、いろいろなことが末端まで行きます。ところ が、医療機器に関しては臨床工学技士ができたのですが、例えば公的な機関におい て医薬部、検査部という部門組織がないために、情報が組織の中から末端まで行く ルートがきちんと出来上がってないということがあると思います。  いずれにせよ、臨床工学の人工呼吸器の運用に関する部分においても、実はスタ ッフが少ない。当センターでもそうなのですが、これを端的に表しているのが資料3の 12の事例です。背景・要因の中の12のNICUの事例で、「一般病棟の呼吸器の組み 立てや点検は、MEが行っているが、NICUの人工呼吸器の組み立ては、看護師が 行っている」とありますが、実はうちも同じです。機器管理が1.5人で、私と臨床の業 務をやりながら手伝ってくれる人しかいないという実態があります。  最近は大きな大学病院では充実してきている部分もありますが、まだまだ多かれ 少なかれこのような状況が多々ありますので、政策としてというか、ここの場の意見が もう少し医政局のほうに動いていくよう何とか。病院の中に、医療機器というのはもの すごく数が多くて多様ですから、それらをきちんと運用するような、対応できる部署を きちんと置くのがいちばんいいことだと思います。 ○石川委員  この記述の中で、今回、人工呼吸器だけが挙げられているので、多かったのかと 思うのですが、少なくとも私たちが知りたい情報としては、その機械・機器が置かれて いる環境、どのように使用されていたかという条件、使用している方の状態、例えば 夜勤明けだったのか、そうではないのかなど。保守管理はされていたかの記録、その 機械はいつ買われて、どのように使われていたのかという使用期間、ヒヤリ・ハットが 起きるまでに至る前後の行動みたいなことが全部わかっていないと、次のステップとし て分析して結論を出すことは非常に難しいのかと思っています。この情報の元が深け れば、ここでももう少しできるのではないかと思っていますが、情報源の問題があると 思います。   ○寺井委員  情報源のことについては個別テーマを決めて、例えば人工呼吸器に関するテーマ をご報告くださいということを、義務病院、参加病院に投げかけていますが、収集して 入力する際に、必須で入力しなければならないという項目を作っていただけるといい かもしれません。医療事故情報のときには必須項目が決まっていて、これを入力しな いと次に進めないとなっているので、そのようにしていただかないと現場のほうでは事 故が起きたときの状況を詳しく把握することがかなり大変です。事故が起きている背 景には、きちんとした適正な管理ができないがゆえにこのようになっていて、どういうこ とが分かっていればいいかも分かっていないがゆえに起きている場合が多いので、必 要な情報を入力形式に盛り込んでいただくなり、コメントをしていただくと、その情報が 集めやすくなるのではないかと思いました。  もう1つは、目黒委員がおっしゃったように、現場からとしては、専門チームを作るこ とによって、かなり違う部分があるので、CE看護師、呼吸療法士、医師を含めた多 職種で院内をラウンドするような体制にしていくための政策が私も必要かと思いま す。  もう1つ、当面の課題としては、これらのヒヤリ・ハット情報を是非現場にフィードバ ックするようなルートを作っていただきたいと思います。例えば、人工鼻や、最近主流 になっていますが、正しい加湿器を使っているときには不適だということが、現場に伝 わっているかどうかは非常に微妙な問題だと思うので、それがしっかりヒヤリ・ハット情 報として伝わるようにお願いしたいと思います。 ○桜井部会長  ほかに何かございますか。   ○土屋委員  医薬品のほうも細かい情報がもう来なくなってしまいました。少なくても以前のよう な個別の検討ではなく、既に医療機能評価機構のほうで集められて発表されたデー タしか来なくなったものですから、先ほど申し上げたような全体的な話はそれでもでき るのです。医療機器ですと型番などがわからない限り物の対策などは取れないとか、 そういうこともあるでしょうし、この辺の情報が以前よりも減ってしまったことはちょっと 残念です。  これはあとからご説明があるのかもしれませんが、例えば、第6回報告書の68頁 や69頁でも、「ほか何件」などとまとめられてしまっておりますので、個別の事例という のは、今はもう見えなくなっていることも現実です。これを集める所は医療機能評価 機構なので、評価機構の話だとは思いますが、物についてというと、どうしてもそうい ったところもやっておかないと、特殊なものが同じ類でまとめられてしまって、個別は 実はあったという話があると、最近はこういうことを研究している人もいますので、そう いうことからいくと、何らかの格好でその情報がきちんと公開される。以前ここで公開 されていたような情報があると便利なのではないかと思います。ただし、それが対策 が取れないのではなく、もちろん先ほどのような対策は言えることは言えるのですが、 個別の話になると、ちょっと弱くなってしまうのかなということがあります。ここの方法が 大きく変わったことはある意味ではちょっと残念なところもございます。 ○桜井部会長  ほかに何かございますか。   ○石川委員  私はここでの情報というのは、非常に大きな情報源だと思っております。皆さんご 存じのようにハインリッヒの法則があるように、これだけたくさんの情報の中から、これ はたまたま1件しか起きていないかもしれません。たまたまその1件しかレポートに挙 がってないのかもしれませんが、そこから何か見出そうということがあるわけです。そ のときに対象になっている機器が、ごく最近出ていったもので起きているのか、それと も随分長く使われていて起きているのかということで対策の仕方が全然違ってくるわ けです。  これからの開発に役立てるための情報であるわけですが、一方では現実に起きる ことを防がなければいけないとすると、どこまで古い機械をやればいいのかということ は問題になってきます。そうすると、古い機械には耐用年数の書いてないものもある でしょうし、使っている方も含めて、長く使いたいだろうしというと、そこの間で対策はど こで線を引けばいいのかということも出てきます。具体的に何をということの前に、全 体の流れとして、この情報をどのように使っていくのかをうまくしていかないと。  確かに使用者に対してのプリベントのための情報を出すための仕組みも作らなけ ればいけませんが、逆にメーカーのほうとしては、どのようにその情報を吸い上げてい って次に役立てるのか、それとも今あることを防がなければいけないのかということと、 それこそ不具合報告書のレベルに入ってしまうわけですが、その1歩手前の話をして いるので非常に難しいかなと思っています。そういう意味で体制を少し考えなければ いけないのかという気がします。 ○桜井部会長  ほかによろしゅうございますか。これは前から議論になっているのですが、2つ問題 があると思います。1つは迅速にフィードバックしてほしい、その仕組みを作ってほしい というご要望があります。これは数回前からそういうご意見があります。私はリスク管 理というのは、なるたけ安く、なるたけ速く、なるたけ効果があるようにやらなければい けないと思っておりますが、そうすると迅速さということで、これだけご意見が出ている のに、何か手を打ってほしいという気がします。  2番目は、検討結果という欄があって、私もこれを拝見したのですが、「複合汚染」 という言葉が昔あったように思います。こういう事故なりヒヤリ・ハットなりというのは、 やはり複合的な要因がそこに積み重なっているという気がいたします。分析的に何と 何と何がある。その中で何がいちばん重要かというプライオリティです。機械がいけな いのか、教育がいけないのか、医療費が安すぎるのかといったいろいろな問題がある と思いますが、そういう項目をきちんと立てて、それを分析的に引出しを作って、そこ へ放り込めるようにしておかなければいけません。あとでヒヤリ・ハットの報告があると 思いますが、非常に労作で、作る方は非常に大変だと思います。それが生きてこない、 エフェクティブではないということではいけないので、なるたけ労が少なくて、エフェクテ ィブに効果がある方向を考えないといけないと思います。それには分析的ないくつか の引出しを作っておくことが必要で、その中でプライオリティを考え、これからやってい こうということをすれば事故も減るのだろうと思います。  ちょうど1週間前の新聞に「医療事故で死亡85件、16%の増」という記事が出てい ました。安全対策会議を6、7年前からやっているかと思いますが、なかなか事故が 減らないのが現実で、エフェクティブなことをスピーディにやるということが欠けている のではないか。何かそういう対策を考えていただきたいという気がします。事務局から お答なり感想をいただければと思います。 ○事務局  ただいまのご指摘をお聞きして、まず情報の点です。これはいまご指摘がありまし たように、医療機能評価機構で集めて分析した情報をいただいているということで、 私どもからも今ご指摘いただいたような点は、医政局を通じて申入れを若干している ところもありますが、当部会のご意見もあったということで、改めてもう少し情報の細 かい点、必要な情報がいただけるように検討いただくということを申し入れたいと思っ ております。特に医療機器においては、メーカー名、型番なども重要な情報だと思い ますので、それがない場合にはできるだけ出していただけるようにということで、申入 れをしたいと思っております。  フィードバックということですが、ヒヤリ・ハット事例全般については医療機能評価機 構から公表されており、評価機構のホームページにも公表と同時にアップをされてい るということです。今回こちらで議論した結果についても、こちらは医薬品医療機器総 合機構のホームページに速やかに掲載するようにということで、今までもやってきてお りますし、今回のものについても同様に考えております。  個別のものについて、例えば、添付文書を改訂する、あるいは使用者に情報提供 が必要だとされたものについては、それぞれ関係の企業に指導して、速やかな情報 提供をお願いしているところです。今までもこのようなことで情報提供に努めてきたと 思いますが、また部会長からご指摘があったような点について、今後改善できるとこ ろは検討させていただきたいと思います。 ○桜井部会長  是非よろしくお願いします。ほかに何かご意見があればお願いいたします。   ○岩月委員  別添2−1で医薬品の規格間違いや名称類似のことが出ているわけですが、これ は医薬品・医療機器部会だけではなく、背景・要因にもありますように、思い込み、間 違いは明らかにヒューマンエラーだろうと思われますが、両方に報告されているかどう かを確認させていただければと思います。先ほどの部会長のお話のように、原因を追 求するという観点では、幅広く理由を確認することが重要だろうと思いますので、こち らだけではなく、ヒューマンファクターのほうにも、そういった報告がなされているのか どうかを教えていただきたいと思います。   ○事務局  ただいまこちらにヒヤリ・ハット事例として載せているものは、いわゆる評価機構が 報告書としてまとめた中のヒヤリ・ハット事例の記述情報を抜き出しているものです。 ですから、ヒューマンファクターのほうに報告されているかということよりも、その報告 書を基に、こちらとしては物の起因かどうかを検討しているところです。   ○岩月委員  ということは振分けの段階で、ヒューマンエラーはないということになってしまうので しょうか。   ○事務局  いいえ、そういうことではありません。医療機能評価機構の報告書自体は、医薬食 品局と医政局に同時に、同じように報告をされております。ヒューマンエラーのファクタ ーについては、当然医療機能評価機構でもいろいろ分析を行っておりますし、必要な 対策については、その都度医政局のほうで検討をされていると理解しています。   ○岩月委員  区分けの問題ではなく、原因が幅広に検討されていることが確認されれば、それで よろしいかと思います。   ○桜井部会長  これは3年ぐらい前から私が申し上げているのですが、医療事故というのは、一貫 してどこが悪いというものではなく、連鎖のどこが悪くてもなるわけです。したがって、こ こは物の安全対策部会である、片方は人のヒューマンエラーであるということで、両方 合同で1度やっていただきたい。そうするとお互いにあちらでは何を議論しているのか と、答も明確ではないようなことが起こるわけです。それを是非お願いしたいと思って いますが、なかなか実現しませんね。やはり医政局と医薬食品局と喧嘩しているので すか。近くそういう機会があれば是非お願いしたいと思います。   ○菊地委員  少し前に戻りまして、医療機器の場合は使用者側の問題も大きいというお話だっ たと思います。事例の記述情報が不足している中で、専門家の目から事例の内容や 問題状況を補足され、またわずかの記述から明らかに間違った知識の部分を指摘さ れてのご説明をいただきましたので、大変よくわかりました。使用者側にある問題も浮 き彫りになったと思います。そこで確認させていただきたいのですが、これらのことが どんな形で現場にフィードバックされるのかということです。例えば、バルーンの知識 が明らかに間違いであるというのは現場にどうフィードバックできるのかという問題が あります。医療機能評価機構に報告された事例としてこの記載のまま紹介されますと、 新卒看護師などには、エラーの部分と知識の誤りの部分が区別されないでしまうおそ れがあります。このことに対する現場へのフィードバックについて、情報の流れを含め て教えていただければと思います。   ○事務局  事務局からお答えいたします。ただいま委員からご意見がありましたとおり、いわゆ る医療機能評価機構に報告されたものを分析されたのが報告書に載っておりますが、 それが薬剤もしくは医療機器というものが付いていれば、そういう記述情報として公 表されております。それをさらにこちらでは、医薬品医療機器総合機構のほうで、今 回のように、果たして本当に物の問題があって改善が必要なのか、それとも本当はヒ ューマンエラーなのかと。つまり使い方が、教育もしくは知識が足りないなどという理 由でそうなっているのかということを分けて、なおかつ今回このようにヒヤリ・ハット事 例を報告されたものについては、先ほど当室長から申しましたとおり、医薬品医療機 器総合機構のホームページで公表させていただくことになりますので、そちらで情報を 見ていただくということかと思います。さらに医療機器・医薬品としての観点から、専 門的な評価対策検討を加えたものを総合機構のほうで公表していくということです。   ○菊地委員  ヒヤリ・ハット事例として分類され公表される際、事例がここに記載されているよう な形で出されますと、ヒヤリ・ハットとは別の問題として区別された、知識の誤りの部 分や機器の機能に関する理解不足の部分が隠されてしまい、結果として誤解を生む ことが多々あるのではないかと思います。事例のフィードバックの仕方をどう考えたら いいかという観点も大事ではないかと思いました。   ○桜井部会長  私が申し上げるのも僭越ですが、前回でしたか目黒委員から、アメリカでは人工呼 吸士という専門の職があるというお話がありました。だから、今の菊地委員のお話に 対する答としては、そういうものが必要なのではないかと思います。看護師も非常に 忙しいし、医者もやることがいっぱいあって、100点満点で全部カバーできるとは私に はとても思えないのです。今日のご報告にもあったように、人工呼吸器の問題はその ような事故が起こりやすい1つのカテゴリーですから、それに対する専門家がいるとい うことで、そういう受け皿を迅速に作ればこういう問題は起こらないのではないかと、 そういう気が私はいたします。   ○菊地委員  迅速な対応が望まれるところですが、並行して考えるのが必要かなと思います。看 護職の立場で申しますと、毎年多くの新卒看護師が臨床の場に出て行きます。医療 現場がますます複雑高度になる状況で、いま新卒看護師の臨床研修の制度化が必 要ではないかと検討しているところです。当分の間はいろいろな面からの現場へのフ ィードバックが求められるように思います。   ○原田委員  先ほど来のお話にちょっと共通する問題として上がっているのが、新しい技術が出 てきたときに新しいリスクが出てきている。その新しいリスク情報がなかなかうまく広ま っていないために事故あるいはヒヤリ・ハットにつながっている、という問題があるかと 思います。  とりわけ私自身が気になったのはデュロテップパッチです。医療関係の方はわかっ ていても、使っている患者さんにはその危険性が伝わっていない。その結果として、 剥がれていても気にしなかったといったことが起きてきています。こうしたリスク情報を どのように共有していくか。ヒヤリ・ハット情報等の分析から出てきて、ここは危ないと 思ったものを伝えていく先が医療従事者だけではない可能性もあると思います。その 辺りをどこまで、どのような形でフィードバックしていくか。厚生労働省からということに なると、どうしても通達という形で、隅々まで必ず正しい形で伝わるように、という形が 中心になりますが、もう少し広報的と言いますか、一般の方に、「ああ、ああいう貼る 薬でも危ないのがあるんだな」、といったことが伝わるような、PR、広報的な方法も必 要なのではないかと感じました。  それは新しい形での情報共有になるので、なかなか難しいとは思いますが、医薬 関係でも医療品関係でもこれから在宅のものがどんどん増えていくときに、出てきた 情報をいちばん最後のユーザーのところまでどのように広げるかという点は、あらかじ め考えていく必要があるのではないかと感じます。コメントですが。 ○石川委員  ものすごく気になることを先ほどおっしゃっていたので。この検討結果というところの 主語が、誰が何をすると書いてないのでよくわからないのです。私の頭からするとこれ は何となく、被害妄想かもしれませんが、メーカー側という主語が、と読んでしまうので す。これはこのまま公表されますか。とすると、先ほどのように、電源を取る所が間違 っているのだけれどもこういう表示をするように考えろ、とメーカーに言っていると捉え ていいですか。私からすると、これを載せるより前にちゃんと使う側の設備基準を守っ てくださいと言わなければいけないのですが、それでもこれは公表されますか。  そういう目でこれを見ていくと、先ほどからおっしゃっていたように、使用者のほうの 問題とか教育が足りないということをこの物部会として公表しますか。もしこれが本当 にこのまま出されるとするならば、もう1回レビューをしていただかないと、趣旨と違う のではないかという気がしてしょうがないのです。本当に物を直せ、または直すために こうしなければいけないという検討結果であったら、それだけに限っていただかないと。 それから、桜井部会長がおっしゃっているように、合同部会で一緒にやっていて、これ はこういう問題があるねとしていただかないと。これがそのまま出てしまうと、それこそ 混乱を生じるのではないかと思うのです。これは事務局に聞いたほうがよろしいので すか。どうでしょうか。 ○事務局  検討結果につきましては、その検討会の結果でもありますし、こちらでご確認をい ただいた上で、基本的にこのままの公表をする考えでおります。   ○石川委員  逆に厚生労働省は、設備基準を守らないで病院で使っているのだけれども、それ はそれでいいのだけれども、メーカーはそれがわかるようにコードに全部名前を書け、 と言っているように私には聞こえるのですが、それでいいですか。それ、ものすごい間 違いだと思うのですが。   ○事務局  ご意見があればもちろんご相談させていただきますけれども。   ○石川委員  申し訳ありませんが、ここはほとんどが、先ほどから皆さんがおっしゃったように、使 用者側の問題がいっぱい書いてあるのです。本当にこれが物のテーマとしての検討 結果として、例えばここは、いま業界でも、組合せになった場合に何か起きるといけな いということで一生懸命に調べて、それを添付文書に記載するといった努力をしてい ます。そういう目で見た場合、添付文書を改訂したほうがいいねと言われたら、それ はそうだと思って取り上げますが、ほかのところをこのまま出されて、業界やっていな いのかと言われると、ちょっと辛いなというところがあるのです。どうなのでしょうか。明 らかに、少なくとも明らかに表現からして、物の改善とか改良に当たるような結果では ないところは、ちょっと表現を変えていただければと思うのです。   ○桜井部会長  この資料2の2頁目に、「製造販売業者等による対策が必要又は可能とされたも の」が医療機器の場合ですと25%という。ええ、15件ですね。   ○石川委員  それがこの15件ですか。   ○桜井部会長  はい。ですから、そこのところを何かの形で、15件のところに◎か何かを付けていた だければいいのではないでしょうか。   ○石川委員  こちらのほうがですか。   ○桜井部会長  ええ。   ○石川委員  もしそれでよければそうさせていただきたいのですが。この中で申し上げたものは2 件ぐらいしかないのです、実際にやってみたら。ほとんどは、申し訳ないですが、教育 の問題、知識の問題、保守点検の問題に大体集約してしまっていると思うのです。で すから、そういうことで本当にいいのかどうかとものすごく疑問です。先生がおっしゃれ ば、そのようにいたしますか。   ○桜井部会長  そのようなことで、いろいろな意見があると思いますので。   ○事務局  細かい表現について問題があるようであれば、ご相談させていただきます。ここで 記載されているものは、一応ここの2頁目に書いてあるように対策が必要又は可能で はないかということで、最大限、物の側で何ができるだろうかということから検討をい ただいたものだと理解しております。したがって、ここに書いてあるからといって、必ず すべてやらなければいけないということではないと思います。   ○石川委員  聞く人は、そうはとらないと思いますよ。   ○目黒委員  メーカーの立場としてはきちんと守っていないということが言われるのですが、1つ、 その保守点検のことについて言わせていただきます。これは前にも言っているのです が。添付文書なり取扱説明書に書かれたとおりの保守点検は、医療機関では実際 にできないものが多々あります。私はたぶんできていないと思うのです。1カ月ごとに 何をやり、2カ月ごとに何をやりということは、実際にその添付文書どおりのものはで きていません。ですから、メーカー側からユーザー側に対して、書かれたとおりのこと をやっていないから使えない状況が起きたと言われれば、もうそれしかないのです。  しかし、その取扱説明書に無理なことが多々書いてあることもあります。私はいろ いろな所で言っているのですが、要するに、本当にそのユーザー側でやるべきものは 何か。メーカーとしては何か起きたときのために、担保のためにいろいろな事細かい 点検項目をいっぱい書きます。しかし、実はやらなくてもいいこと、インターバルがもっ と延びてもいいことがたくさんあるわけです。  添付文書への記載はたしか17年からやっていますが、いまはまだ混沌とした状況 の中にあります。ですから、保守点検でメーカーに指定された項目について、医療機 関ができているかと言えば、できていません。ましてや、このマンパワーの中でできる わけがないのです。皆さん、そこの点だけは了承して議論してほしいと、私はいつも思 っています。ユーザー側に「やっていますね」と言いますが、「できていません」というこ とも一言言えます。以上、これだけは言わせてもらいます。 ○原田委員  では手短に。先ほど来のお話でやはり共通しているのが、ここの場は、物の要因に かかる安全管理対策の検討をする場ではありますが、その情報を開示する、あるい はそれに対する対策を打つのは、医薬品・医療機器関係だけではないと思います。 医療機器関係、医薬品に関する不安全の情報があったときには、それを「伝える先」 はすべてに対して開くべきであり、現在のところ、その回路が弱いということを、石川 委員はおっしゃりたいのだと思います。そういう目で今後の情報開示の仕方、あるい は報告書の書き方等を見直していただきたいということかと思います。  私の立場、心理学の立場から見ると、ここであがるような事例では物だけが悪い、 あるいは人だけが悪いとは言えません。「物のここに気をつけてほしい」ということを使 う人は知っておいてね、ということをどうやって伝えるかという回路が、現時点では薄 い。先ほどの広報(PR)的な情報共有が必要との発言も同じことです。すみません、 ちょっと冗長になりました。失礼しました。 ○桜井部会長  ですから、そういう各要因を列挙して、それにプライオリティを付けるということが大 事なので、この委員会としては、そういうことを行政に申し上げることが大事かなと私 は思うのです。いろいろご議論もあると思うのですが、時間も迫ってきましたので、申 し訳ありませんが、次の報告事項に移らせていただきます。   ○事務局  資料3、報告事項です。資料3は、財団法人日本医療機能評価機構が公表した 第6回の報告書です。こちらは皆さんご存じかと思いますが、平成18年9月13日に 評価機構から公表されています。中身については割愛させていただきますが、今回 は、平成18年4月から6月までの医療事故情報と平成17年10月から12月に発 生したヒヤリ・ハット事例の報告がとりまとめられています。こちらのヒヤリ・ハット事例 の記述情報につきましては、医薬品・医療機器の物に起因する情報の検討として、 引き続き医薬品医療機器総合機構において調査・検討をし、その結果報告を次回 以降のこの部会で行うこととしております。   ○桜井部会長  ただいまのご報告について、何かご質問はございませんか。また、後ほどでも結構 ですので。   ○事務局  資料4−1についてご説明します。平成18年9月15日、「医療用医薬品へのバー コード表示の実施について」通知させていただきました。また、資料4−2では、その 際、今年3月24日から6月18日までパブリックコメントを行っておりましたが、そちら に寄せられたご意見について回答等を公表させていただいております。このバーコー ド表示の実施につきましては、経緯として、医療安全対策検討会議における医療安 全推進総合対策に関する報告が平成14年4月にあり、それらの報告を踏まえ、医 療事故防止等のための医薬品のコード表示の標準化を検討してきたところです。ま た、平成16年5月からコード表示標準化検討会においてコード体系等について議論 し、先ほど申しましたように、その体系が平成17年9月に提案され、平成18年3月 にパブリックコメントをして出したというものです。  医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項です。こちらは、医薬品の取り違え の事故の防止及びトレーサビリティの確保を推進するためにバーコード表示を付ける ための実施要項です。表示対象は医療用医薬品として、包装の形態として、調剤包 装単位、販売包装単位、販売包装単位及び医療用医薬品の種類として、特定生物 由来製品、生物由来製品、それらを除いた内用薬、注射薬、外用薬に、それぞれに 商品コード、有効期限、製造番号又は製造記号及び数量等を記載するというもので す。調剤包装単位とは、注射剤であればアンプルやバイアル1個1個、錠剤やカプセ ル剤であればPTPシート1枚やバラ包装の瓶などです。販売包装単位とは、通常、 100錠包装というようなものの包装単位です。それから、元梱包装単位とはその販売 包装単位が複数、10箱とかが入っているようなものを申します。  こちらの表で◎が付いているものについては、必ず表示するもの、必須表示として おります。また、○が付いているものについては、必ずしも表示しなくて差し支えないも の、任意表示としております。ご覧いただきますように、法律的にいわゆる必須とされ ている部分については、特定生物由来製品、生物由来製品のほうが法律的な規制、 義務等がありますので、必須とさせていただいているところです。それぞれの医薬品 につきまして、例えば(注6)につきましては、麻薬についてはどのように表示する、 (注7)につきましては、放射線遮へい用鉛容器についてはどのようにする、といった 注意書きが書いてあります。  2番目、「商品コード及びJANコードの付番」についてです。商品コードは個々の医 薬品の包装単位の種類ごとに付されていますが、現在、通常、販売包装単位に付い ているJANコードの先頭に先ほど申しました、調剤包装単位においては0、販売包装 単位においては1、元梱包装単位においては2を付けた14桁のコードを商品コードと しております。また、いわゆるJANコードの付番の仕方については、個々の医薬品の 包装単位の種類ごとに付すこととしており、いわゆる調剤包装では、10錠のPTPシー トと21錠のPTPシートは別の種類として取り扱うこととしております。過去に使用した JANコードにつきましては、当該JANコードを使用していた医薬品が販売を中止され てから、少なくとも10年間経過しなければ再使用してはならないとしております。ただ し、特定生物由来製品に使用したJANコードについては再使用してはならないとして おります。  3番目、「JANコードの変更」についてです。パブリックコメントを出させていただい た点から1点だけ異なった部分があります。4ですが、製剤の色、形状又は大きさを 変更したような場合について、調剤包装単位のJANコードは変更する必要があるとし ております。また、販売包装のJANコードにつきましては、JANコードは変更してはな らないとしております。  4番目、「バーコードシンボル体系」です。こちらは、いわゆる国際的な流通標準化 の機関であるGS1という所が定めた規定に従って行うということとしております。調剤 包装または販売包装については通常のバーコードでは表示できない場合が多々あり ますので、通常のバーコードを半分に切って重ねたような、いわゆるRSSスタックとい うもの、JANコードの高さを制限したRSSリミテッドというようなものを合成して、調剤 包装もしくは販売包装に付けるということにしております。また、元梱包装単位につき ましては、コード128を用いることにしております。  5番目、データ要素の表記順とアプリケーションです。こちらは、通常のバーコード の所にいわゆる商品コードとしては(01)を付けたあとにJANコードを付ける、有効期 限の場合は括弧して(17)を付けたあとに有効期限、同様に数量の場合は(30)、ロット の場合は(10)を付けたあとにそれぞれ番号を付けて表記するというものです。  「新バーコード表示の実施時期」については、特定生物由来製品、生物由来製品 もしくは注射薬のすべての包装単位又は内用薬もしくは外用薬の販売包装単位、こ れらについては平成20年9月以降に製造販売業者から出荷されるものについては、 すべて表示することとしております。また、内用薬、外用薬の調剤包装単位につきま しては、現在、その表示について関係業界等に検討をいただいているところですので、 3〜5年後の表示実施を目標に包装形態ごと、その実施時期については別途通知 するということとしております。  その他として。現在、既に販売包装単位として付いているJANコード等があります ので、それに今回新しく付けるバーコードの表記は併記していただくこととし、少なくと も5年間は付けていただきたいということが1点。バーコードで表示される情報のうち 医薬品を特定する商品コードにつきましては、医療機関等において円滑に利用され るよう、その管理運用が一元的に行われることが望ましいと考えられますので、商品 コードは、財団法人医療情報システム開発センターに登録していただき、同センター がその商品コードを管理し、データを医療機関等に提供するものとされています。ま た、先ほど必須表示、任意表示とありましたが、必ずしも表示しなくても差し支えない もの(任意表示とされているデータ)については、今後の表示状況及び利用状況を踏 まえて、その後の表示範囲の拡大について検討することとしております。  資料4−2、パブリックコメントに寄せられたご意見です。全部で約3カ月間、225件 のご意見をいただきましたが、こちらには、その中でお寄せいただいた主なご意見と 概要、それに対する厚労省の考え方について記載しております。51件の項目を載せ させていただいており、それぞれ実施要項の1番、「表示対象及び表示するデータ」と 並んだ順番に、それぞれご質問が並んでお答えをさせていただいているというところ です。 ○桜井部会長  ありがとうございました。土屋委員からコメントはございますか。   ○土屋委員  今回のものは国際標準でもあり、JANコードを変更するときの条件がきちんと決ま ったということは、いままでメーカー間によってかなりの差があったので利用者としては いろいろ困ったこともあったのですが、今回これが決まったので、今後はそういう意味 でも楽になる。あと、今日、業界の方がいらっしゃっていないのであれですが、2年とい うことで、なるべく早くやっていただきたいというところです。   ○桜井部会長  何かご意見、ご質問はございますか。   ○岩月委員  質問というよりはお願いみたいな話なのですが。いま医療安全の対策のためにコ ードが付いたということは、実際に使う医療機関や薬局は、読取りやその管理につい ても是非フォローをしていただきたいということでお願いがございますので、よろしくお 聞き届けいただければと思います。   ○桜井部会長  これはバーコードのリーダがないとまずいのでしょうね。   ○土屋委員  そうですね。   ○桜井部会長  そうすると、いくらぐらいするのですか。   ○土屋委員  商品コードだけですと、通常のリニアのコードになりますので。それだと、いまや1万 円を切っています。ただ、最高難度のものですと、まだ20万円ぐらいするものもありま す。それは各種いろいろなバーコードが読めるといった機能のあるもので、そこの差が 結構ありますが、これから普及すると、その値段は急激に下がっていくのではないか と思っています。   ○桜井部会長  これは病院に1台というわけにいきませんね、各部署にないといけないということ で。   ○土屋委員  いまいちばん広くやっている所では、患者さんとの間のマッチングに使っているとい う病院もあります。そうなると、各看護師さんが1台ずつお持ちだとか、そういう数にな ります。あと、薬剤部から出す薬を間違えないでおこうというチェックですと、薬剤部内 ということで言えば、10台もあれば大体何とかなるのかなというところがあります。そ の辺がいま岩月委員が言われたように、医療機関側も出費はかなり出てくるので、そ ういったことも含めて検討する。ただ、いま現実に自分たちでバーコードを発生させて 貼っているという所も結構ありますので、製薬企業がちゃんと付けてくるようになると いうのはすごく重要な基盤整備になるという気がいたします。   ○桜井部会長  これはなかなか、数百万円ぐらいの桁の出費が。   ○土屋委員  最終段階のその患者さんとの間でというチェックのところまでいくと。ただ、それをや ろうと思うと、病院情報システムがそれに耐え得る仕組みになっていないので、その 辺の変更もこれから必要になってくるだろうということ。要するに、通信ばかりが増える ものですから、そういうことに耐え得る病院情報システムということで、おそらくそちら のほうもいろいろ考えていかざるを得ないと。ただし、いま先進的な所でやっている自 分たちで貼ってということからいくと、その基盤整備ができるので、ここから先どうやっ てやっていくかということを医療機関が考えなくてはいけない、ということになってくると 思います。   ○桜井部会長  安全はタダではないというのは当然ですが、行政として何かお考えはあるのでしょ うか。   ○木下委員  このバーコードの問題は当然のことながら、安全管理だけでなく、在庫管理にもつ ながっていくものなのです。大学のときも同じ問題が検討されましたが、バーコード化 は難しいので、手術場から始めましたが、そう一筋縄ではいきませんでした。全国の すべての医療機関にこのシステムを導入するとなると、膨大な費用がかかるというの は現実です。そういうことも含めた対応をしなければ、医師会の立場から申します。一 般の企業と違って医療界ではゆとりがありません。安全のためとはいえ在庫管理的 なことからすべてのIC化を導入することは、大変厳しい状況にあると思うのです。この 医療安全を具体化することは重要ですが、経済的な面を是非ご配慮いただいた上で ご提言願いたいと思います。   ○桜井部会長  おっしゃるとおりだと思いますが、何かありますか。これは医政局の問題ですか。日 本国中となると、相当なお金になりますね。   ○医療安全推進室長  そうですね。いま特にこれといった方針にはありませんが、ご意見をよく聞きながら 進めていきたいと思います。   ○桜井部会長  よろしくお願いいたします。ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。では、報 告3の医療安全管理者の問題です。よろしくお願いいたします。   ○医療安全推進室長  資料5についてご説明します。資料5は「医療安全管理者の質の向上に関する検 討作業部会」です。1枚おめくりをいただき、開催要綱を付けております。この検討作 業部会は、本部会とヒューマンエラー部会の下に設置するということで、9月8日に第 1回の作業部会を開催しております。具体的な内容については2にあります。1つ目と して、医療安全管理者の業務指針について、2つ目として、研修プログラムの作成指 針についてです。この2点についてご議論いただくということになっています。この2点 の項目につきましては、昨年度の医療安全対策検討会の会議報告書の中でこの2 点について議論をしていくべきということをご指摘いただき、この作業部会を開催して いるところです。  具体的な検討内容につきましては、1「医療安全管理者の業務指針」、2「医療安 全管理者の研修プログラムの作成指針」となっています。医療安全管理者につきまし ては、現在、医療法上は特定機能病院にだけ配置が義務付けられているという形に なっていますが、本年4月の診療報酬改定で安全管理者を配置した場合に加算が 付くというようなこともあり、現在、各医療機関で安全管理者の配置がかなり速いスピ ードで進んでいるという状況だと思います。改めて安全管理者の業務とはどういうも のであるのか、また、そういう業務をやっていただくに当たっての研修プログラムとは どういうものであるのか、ということを議論いただきたいと考えております。  最後の頁、今後の予定です。第1回目は9月8日に開催し、5回程度開催し、来年 の前半には報告書をとりまとめたいと考えております。   ○桜井部会長  ありがとうございました。これは、寺井先生も委員の1人として参加されているので、 何かコメントをいただけますでしょうか。   ○寺井委員  いまご説明があったように、4月の診療報酬改定に伴って加算が付いたこともあり、 多くの病院が配置を一斉に進める形になりました。これまで義務付けられた特定機 能病院と臨床研修病院が進めていた配置が一気に進んだという形で、こういった検 討が始まったのだと思います。大変期待しております。この機会に医療安全管理者 が何をしたら質が上がるのか、といったようなことを検討するような厚生労働省の大き な会議ができて、非常に期待しております。また、研修プログラムもたくさんされるよう になり、そちらの質といった面も随分懸念されており、どういったプログラムがいいの かということも考えるという意味では、非常に期待しております。   ○桜井部会長  これは何か受講者の資格が要るのですか、例えば看護師でなければいけないと か。   ○寺井委員  薬剤師、看護師となっています。職種における要件はその薬剤師か看護師です。 もう1つは、診療報酬上認めている研修プログラムを受講した者となっています。その ために研修がたくさん一斉にいろいろな所がされるようになり、その質が危ぶまれてい るという背景があるように聞いています。   ○桜井部会長  私、この委員のお名前を拝見して感じたのは、臨床工学技士が入っていないので す。これはどうなのでしょうか。数も少ないというか。   ○目黒委員  数も少ないので。私も資料を見せられたときに感じてはいたのですが、全体的な、 臨床工学技士の場合には設備、例えば水道、ガス、ライフラインから、実は臨床現場 では薬を多用することもある、特に生命維持管理装置を使うものですから。そういうも のも使う。それから、実を言うと意外な所で、検査やいろいろな所で働くものですから 客観的に各職種を見る。自分の部門で機械の講習等を行うこともあるので、できれ ばこの辺に誰か入れておいていただけたほうが助かったかなという気もしています。 感想ですが。   ○桜井部会長  これは、研修のカリキュラムなどもお作りになるわけですね。   ○寺井委員  はい。資料の2枚目に開催要綱ということで「検討事項」とありますが、医療安全管 理者の研修プログラムの作成指針ということで、病院の医療安全管理を担当する者 がどういうことを学んでおくべきかといった、研修プログラムを作成する予定となってい ます。   ○桜井部会長  そうすると、当然、医療機器についてもお忘れなくということ。   ○寺井委員  そうですね、はい。研修プログラムの案を拝見したところでは病院全体のそういう、 もちろん医療機器も関連した管理を検討することができるようなプログラムというよう なことも入っていたと思いますが、また詳しく見てみたいと思います。   ○桜井部会長  はい、是非、よろしくお願いいたします。何かご意見はございますか。アメリカには ヘルスケア・リスクマネジメント・アソシエーションですか、そういう学会がありますね。   ○寺井委員  はい。   ○桜井部会長  日本はありませんか。   ○寺井委員  日本はいまのところないのですが、病院のリスクマネジメントを検討する学会として は、医療の質安全学会や医療マネジメント学会などがそういった検討をされています。 ただ、アメリカではその学会がリスクマネジメントの研修プログラムをやっていて、認定 書を発行しているのですが、日本の学会ではまだそういうものがないので、それも今 後検討されていくと聞いています。   ○桜井部会長  たしかアメリカでは看護師、医者、薬剤師などのほかにロイヤー、弁護士も入って いたような感じがしたのですが。   ○寺井委員  はい。   ○桜井部会長  この件はよろしいですか。これは、範囲を大体どういうところを想定してやっていらっ しゃるのですか。範囲というのは要するに。   ○医療安全推進室長  これは患者さんの安全に関する部分ということで、この範囲をどこまでにするかとい うこともご議論いただかなければいけないことだと思いますが。いちばん大切なことは、 セーフティ・マネージャーという言葉もありますが、患者さんの安全を向上させていくた めにどうしたらいいかということです。それから、この医療安全管理者の業務の中に 入るかどうかと若干議論があったのは、例えば苦情対応、あるいは訴訟になったとき の対応。アメリカでリスクマネージャーと言うときは、病院の経営リスクをうまくマネー ジするというようなもともとの考え方もあるようです。そういうことも含めて医療安全管 理者と言うのかどうか、というのはこれからまさにご議論いただきたいと思っておりま す。   ○桜井部会長  どういう病院で働くか、というような想定は何かあるのですか。   ○医療安全推進室長  はい。どのような規模の病院で働くかということも第1回目の部会のときには、何か それを最初から決めてかかるのではなく、大きな病院の医療安全管理のあり方と小 さな病院の安全管理のあり方は違うので、そういう点も含めながら検討していこう、そ のようなご議論でした。   ○桜井部会長  アメリカ辺りですと、医療訴訟のインシュランスが低減されるかどうかというようなメ ルクマールがあって、リスクマネージャーを1人置くとこのくらい低減されるというような エスティメーションがされるようなのですが、日本の場合はそういうあれはないですね。   ○寺井委員  そのことも第1回目のときにも随分議論されたのですが、まずは、いまの段階では セーフティ・マネジメントに力点を置いて、焦点を置いて院内の安全対策、再発防止 策に力を入れるといったご議論でした。またそれは2回目以降、どの範囲を役割とす るかはこれから検討していくといった段階だと思います。   ○桜井部会長  ほかに何かございますか。それでは、報告事項4「集中治療室(ICU)における安 全管理指針検討作業部会」についてです。これは資料はありませんか。   ○医療安全推進室長  資料は、資料6という1枚紙の資料です。ICUにおける安全管理指針検討作業部 会につきましては、昨年度から作業部会をやっており、こちらにありますとおり、これま でに4回の作業部会を開催しております。前回の作業部会は7月20日で、このとき に安全管理指針の案を事務局で用意いたし、ご議論いただいたということです。5回 目が明日予定されており、このあと数回やり、今年度内にはこの議論を終わりにした いと考えております。   ○桜井部会長  これも医政局の総務課で。   ○医療安全推進室長  はい、やっております。   ○桜井部会長  何かご質問はございますか。   ○目黒委員  集中治療における安全管理指針検討作業部会は、医療現場でその医療内容を 区切りやすい場所でもあるのでということで進められたかと思うのですが、次に進める、 例えば手術室とか、特定の場所を考えたりということはあるのでしょうか。   ○医療安全推進室長  もともとこれは、「手術室及び集中治療室などにおける」ということです。この議論 の中でICUとはどの程度のものまでを言うのかといった議論、あるいは、診療報酬の 世界であるとハイケア・ユニットというものもありますが、そのようなものも含めて議論 すべきかどうかということで、実は何回か、この部会の最初の1、2、3回ぐらいはそう いう議論をさせていただきました。いま考えておりますのは、いわゆる高機能のICUと、 それほどのマンパワーあるいは設備はないけれども重症患者を受け入れているICU、 あるいはそれに準ずる部門と言いますか、そういうことも含めて今年度の中で議論を していきたいと考えております。   ○木下委員  全体のことでよろしいですか。   ○桜井部会長  どうぞ。   ○木下委員  今日の会議で私は大変ありがたいと思ったことがあり、あえて言わせていただきた いと思います。このヒヤリ・ハットの分析がどのような内容で、どういう場所や部位が 問題になっていることを、提示されていることは大変ありがたい有効な情報だと思い ます。先ほど来、いろいろ議論があったように、これを見たときに、メーカーサイドとし て考えるべきこと、使う側として考えるべきこと、それから、ヒューマンエラーとして一般 的に問題となるようなことをきれいに整理されるようになってくると、こういった情報を どう伝えていくかがやはり問題になります。国から出た情報を我々がどのように利用 していくかを、むしろ我々が考えるべきことです。  医療安全管理者は、独立行政法人の国の大病院や大規模病院には必要ですが、 実は、無床診療所でも、その内容は必要です。特にこのようなヒヤリ・ハット的なもの は、みんな思い当たることがあるわけです。この資料を是非使わせてもらいたいと思 います。  具体的に考えておりますことは、医師会雑誌で、各種診療内容のうち事故を起こし やすいものは何か、ヒヤリ・ハットを起こしやすい診療項目は何かを集めております。 この問題は看護師からり臨床工学技士等すべての領域にわたっているので、例えば 看護師協会であれば看護雑誌でこの問題を集中的に特集を組んでやっていくことも 可能です。現場で実際に働いている方たちにとって有用でなければ意味がないし、そ こまで伝えていくことが我々の役割だろうと思います。     ○桜井部会長  ありがとうございました。ほかに何かございますか。   ○土屋委員  実は名称の類似についてです。いま新しい医薬品については、システム的にそれ がもう発生しない仕組みが出来ています。後発品についても、昨年9月だったと思い ますが、今後、名称にはブランド名を入れないということになりました。しかし、駆込み ということがあります。非常に残念なのは、この7月に後発品の収載になったものの 中に、新薬であったなら到底認められない類似性のある名前が多数見られたというこ とです。これは、今日業界の方がいらっしゃっていないのでちょっとあれですが、やは り業界としても、そういうものまでも全部何でも規制するのかということに最後はなって しまいますので。ですから、自主的にこういう所で決まったことをみんなで守ろうよとい う文化を業界として、もう少しきちんとつくっておいていただかないといけないのかな と。  そういう意味で国が後発品を一生懸命に使おうと言っている中で、似た名前の薬 がまた増えてしまった。せっかく仕組みとして先発も後発も入口を断って、それがかな り厳しく守られているという中で、何か7月から9月までのその申請のうまい抜け穴と 言いますか、そこだけをポッと行ってやったというのは非常に残念なことだなと。後発 だからとか何とかということではないですが、やはりこの医療安全というのは先発とか 後発とか関係なく、すべて相互作用ですので、そういうことを意識したことを業界でき ちんとやっていただきたいという気はいたしました。   ○石川委員  全然別なこととして。先ほどのヒヤリ・ハットの情報は、先生もおっしゃったように非 常に有効な情報なので、これはちゃんと使いたいと思っているのです。例えば不具合 報告の場合ですと、どのぐらい起きているのかといった情報が入るのですが、このヒ ヤリ・ハットの場合でも、同じことがあちこちで起きているかどうかということがわかるよ うなデータになると、かなり集中してどれかということがわかると思うのです。ただ、今 回挙げられている人工呼吸器に関して見ると、ずっと同じことが何回も何回も挙がっ ている。でも、まだ挙がってくるということは、やはりどこかに何か原因があるのかなと 思いますので、そこはちゃんと分析をし、平成13年通知より前なのか後なのかとか、 何か区切りを、私、どこかで申し上げたと思いますが、それはやっていただきたいと思 っております。それをちょっとご検討願いたいということと。  いま医政局のほうからは2つほどの作業部会のご説明があったわけですが、もとも とのこちら側でもワーキンググループのことが、たしか薬と機械と両方あったと思うの です。そちらの活動報告というか、そちらはいまどのような状況かということはご報告 いただけないのでしょうか。   ○事務局  事務局からご報告します。いま石川委員からご質問のあった医療機器安全対策 検討ワーキンググループは、現在、第3回まで行われています。その中で検討してい ただいている事項については、人工呼吸器に関する事故防止対策についてです。先 生も委員でご出席いただいていますので、いわゆる人工呼吸器の操作パネル等の標 準化や保守・管理・メンテナンス、使用者に対する教育及び使用環境等について、ま たご相談させていただきたいと考えております。   ○桜井部会長  ほかは何かございますか。   ○事務局  もう1つ、医薬品類似性検討ワーキンググループがあります。こちらは平成17年度 以降開催はされていませんが、現在、土屋委員等からのご指摘等があります、名称 類似のデータベースとその評価フロー及び点滴用キシロカイン製剤の取扱い、また、 輸送バック、輸液製剤等についての検討をさせていただいております。こちらのほうも、 必要に応じて相談させていただきたいと考えております。   ○桜井部会長  先ほど木下委員から、こういうデータが出たあと、各利用者がそれをフィードバック するなり何なりするというご発言がありました。そういう体制づくりについては、何かご 腹案がおありでしょうか。   ○木下委員  各業界というか各専門職によって若干違うと思うのですが、病院全体としては、こ ういった事例がその末端まで行かないのです。医療安全というのは、どんなにマネー ジャーが立派であっても、医療事故は起こるわけです。実はその現場で患者さんに接 する人たち、看護師であれ医師であれ検査の方であれ、そういった方たちの問題意 識がないと、なかなか実行できないということがあります。ですから、このような問題を、 例えば医療安全管理者がそれを研修ノートにしておいて、みんなが一緒になって考え ていくといったことにまで持っていくシステムを、すべての医療機関に作ってもらいたい と思っています。  せっかく医療安全管理者が出来るようになるとするならば、その方たちを中心にな って各部門の方たちと、こういった情報を末端まで届けるような工夫をしていくことは 当然必要だろうと考えています。   ○桜井部会長  ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。   ○寺井委員  いまの木下委員のお話で、私も医療安全管理者としてこういったヒヤリ・ハット情報 からの、例えば複数起きている事例、先ほどの人工鼻の件、気管チューブの取扱い、 そういったことはすぐに現場にフィードバックできると思うので、そういったことを医療安 全管理者に届くように病院に届ける、ということも今後考えていっていただき、システ ムを作っていただきたいと思っています。  先ほどご説明のあったこの6回の医療事故防止センターからの報告書は、数回前 から共有すべき医療事故情報といった形で、何例かの本当に複数あった、広く医療 機関で共有し、それぞれの個々の施設で対策を検討したらいいというような事例がフ ィードバックされているのです。このようにまとめていただけると医療機関にも届き、そ して、届いた医療機関では、医療安全管理者がいれば、その人がベッドサイドの人に まで伝えるようにできると思うのです。そういったシステムづくりを何とかご検討いただ ければと思います。   ○桜井部会長  稲垣委員、何かご発言はございますか。   ○稲垣委員  今日はあまり発言がなかったので、わざわざご指名いただいたのだと思います。こ こに挙がっているものと比べると、歯科は医療事故としてはあまり大きくないものが多 いのでちょっと発言は控えていたのですが。歯科は、薬剤の使用は少ないのですが、 医療機器は非常に多いのです。いまでもおそらく、全国であっちこっちの歯科医療機 関でかなりの医療器具を使って治療していると思うのです。大きな医療事故は表に 出ていないのですが、小さい事故は非常に多く、しかも、最近それによって訴訟事例 も非常に多いのです。そういう意味でこの安全対策は、我々歯科医師会のほうでも 非常に注目しております。  やはりいちばん大事なのは、我々ができることは、安全の情報を提供するというこ となのです。まずそれが提供されないと、どうしようもないということです。歯科医師会 としては、各会員に対してホームページを使って情報を公開していこうという形で、そ の辺の充実化をしています。今日のこれがホームページでもリンクされているというこ となので、歯科医師会としてもこの辺はリンクしていきたいと思います。  ただ、困っているのは、すべての医療機関がいわゆるIT的に進んでいないというこ となのです。先ほど医薬品のバーコードというのもあったのですが、非常に悩ましいこ とは、今度、保険証の被保険者資格で二次元バーコードでやろうという形が進んでい るのですが、歯科は非常に零細な医療機関が多いのです。その中でたぶんバーコー ドが一定数は入っていくと思うのですが、あるところからはITに乗れない医療機関が あるのです。そういう所に対しても、やはり医療というのは同じ次元で提供されなけれ ばいけないので、そのような医療機関にもきちんと医療安全を担保していかなければ いけないので、この辺はやはり国のほうの援助をお願いしたいと、そういうことです。   ○桜井部会長  ありがとうございました。全体について、何かご発言はございますか。では、これで 本日の会を終わりにいたします。事務局から何かありますか。   ○事務局  次回の予定につきましては、委員の先生方の日程を調整しご連絡させていただき ます。また、本日の議事録につきましては、後日送付させていただきます。なお、修正 後は厚生労働省のホームページに掲載いたしますので、どうぞよろしくお願い申し上 げます。   ○桜井部会長  それでは、どうもありがとうございました。         照会先 医薬食品局安全対策課安全使用推進室 電話 03-5253-1111(内線2751)