06/09/07 第2回 市町村保健活動の再構築に関する検討会議事録 第2回市町村保健活動の再構築に関する検討会 議事録 日時:平成18年9月7日(木)10:00〜12:00 場所:厚生労働省 17階 専用18〜20会議室 照会先:健康局総務課保健指導室(内線2398) ○出席構成員(50音順・敬称略)  有原一江、伊藤雅治、大橋範秀、佐伯和子、迫和子、曽根智史、田尾雅夫、藤内修二、 長谷部裕子、藤山明美、本田栄子、山野井尚美 ○厚生労働省関係出席者  上家大臣官房参事官、勝又保健指導室長、清野栄養専門官、加藤主査 ○次第 1.開会 2.議題 (1) 地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について (2) 分散配置における活動体制と専門技術職員の人材育成体制のあり方について (3) その他 3.閉会 1.開会  加藤主査  おはようございます。定刻より少し早い時間ではございますが、構成員の先生方がお そろいになりましたので、ただいまから第2回市町村保健活動の再構築に関する検討会 を開会いたします。  本日は、井伊構成員、尾島構成員、鏡構成員、田上構成員からは御欠席の連絡をいた だいております。  続きまして、9月1日に人事異動がございましたので、御紹介いたします。中島健康 局長にかわり外口健康局長が着任いたしましたが、本日は所用により欠席させていただ きます。  大臣官房梅田参事官にかわり、上家参事官でございます。  上家参事官  上家でございます。よろしくお願いいたします。  加藤主査  保健指導室、野村室長にかわり勝又室長でございます。  勝又室長  勝又でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  加藤主査  続きまして、資料の御確認をお願いいたします。  座席票  構成員名簿  議事次第  資料1−1.地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について (田尾構成員作成資料)  資料1−2.地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について (大橋構成員作成資料)  資料1−3.地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について (佐伯構成員作成資料)  資料1−4.地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について (田上構成員作成資料)  資料2.分散配置における活動体制及び専門技術職員の人材育成体制に関する調査 (案)  資料3.検討会の今後の進め方(修正案)  以上でございます。不足、落丁等がございましたら事務局までお申し出ください。 よろしいでしょうか。  それでは、この後の進行は伊藤座長にお願いいたします。 2.議題 (1) 地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について  伊藤座長  皆さん、おはようございます。  それでは、早速議事に入らせていただきます。本日の議題の第1は、「地域保健にお ける行政主体としての市町村の役割の明確化について」というテーマでございます。こ のテーマは、この市町村の保健活動の再構築に関する検討会の最も重要なものです。ご 案内のように人口構成の変化等に伴い、地域保健の課題が変わってきている。さらに財 政状況、市町村合併、それから今回の医療制度改革等により、地域保健を取り巻く状況 は大きく変わってきており、そういう中で地域保健の行政主体としての市町村の役割を 明確化していくことが、今、根本的に問われている課題ではないかと思います。  そういうことから今回は、第1回目の検討会の最後に私から申し上げましたが、事務 局と座長がこの議論のたたき台となるような資料の作成について相談し、4人の構成員 の方にプレゼンテーションをお願いすることになっています。そこで、きょうは4名の 構成員の方に資料を提出していただいており、このあと、御発表をお願いしたいと思い ます。そして、4名の方の発表が終わったあとで一括して討論をさせていただきたいと 思います。  それでは、最初に田尾構成員からお願いいたします。  田尾構成員  私の場合は資料1−1の1ページにありますが、非常に雑駁な議論で申しわけありま せん。ほかの方々が具体的で詳しい議論をされるようなので、私の場合は雑駁な議論し かできないという負い目がありますけれども、学問の専門が経営学ですので、その辺の 議論からさせていただきたいということであります。  2ページをあけていただきたいと思います。こういったテーマをいただいて何がいえ るのかということですけれども、今般、行政サービスの効率化といわれております。そ れは、ある意味では仕方のないというか、方向づけとしては正しいのでしょうけれども、 どのような効率化であるかということは、ほとんど議論されていないという不毛を、私 は感じております。それは、単に行政は人を減らすだけが問題ではないのであろう。今 ある人を活かす、適材適所に向かう、適正配置こそが問題であると私は考えております。  今後の問題として、この場合では、地域保健における人的資源管理ということであり ますが、これに当たる人たちの技能として恐らく問題発見とサービス能力の向上が多分 大事であろう。それは人を減らすだけではなくて、人を減らすことはむしろ二次的な問 題なのであって、あるいはニーズが大きくなればむしろ人を減らすべきではないともい えるわけです。逆に、今ある人材、サービスに向けての陣容といいますか、地域社会の 中での保健師、さらに広く地域保健に関わるさまざまな人材がまだ、十分活用されてい ないのではないか、であれば、人材として生かすための方策を考えるべきであろうとい うのが私の基本的な立場であります。  その議論の延長でいきますと、技能の向上と適正な資源の配分にかかわる議論がなさ れているようには見えないので、今はむしろ、今ある人員をいかに活用するかというこ とを考えるべきではないかというのが問題の提起であります。その議論は、経営学にお ける人的資源管理とつながっていきます。人的資源管理というのは、人員の採用、適正 配置、教育訓練、一切合切を含みます。そういった議論をこの場に持ち込んで議論して もいいのであろうということが提案であります。  その場合、何をするのか・しないのか、あるいはすべきであるか・すべきでないかと いう人的資源としての地域保健における人材についての詳細な論点整理が非常に重要に なってくる。突き詰めていえば、保健師は何をするのかということを考えていただきた い。これまで、この研究会、あるいはその前の研究会で私も幾つもの論文を読ませてい ただいて、あるにはあるというか、かなりあるようなのですが、それをもっともっと総 合的に議論すべきではないかと考えております。そして、資源として人を生かすべきで あろう。生かすための方策を経営管理として、採用、研修、適性配置、昇進昇格などの 管理を一切合切まとめて保健師、あるいは保健師も含めた地域保健を支える人的資源の 管理に適用すべきではないかというのが私の当面の問題提起であります。  具体的な問題としていえば、今、行政の役割が問われている。それは当然そうでしょ うけれども、行政がどこまでするのか、あるいはしないのかという議論について、私も 言いたいことはかなりあるのですが、この場合、専門技術職員は何をどこまで仕事とす るのかということを明確にしたい。さらに大きな問題としていえば、今、格差社会とか いわれている。格差は、私はある程度仕方がないと思っておりますが、格差を少しでも 少なくするのが行政の役割なのであって、格差を少なくするために地域社会の中では保 健師の役割はかなり重要ではないかと思っております。  そういった大きな枠組みの中で地域保健を位置づけ、保健師ないしは保健師を含めた 広い地域社会にかかわる人材育成を、人的資源管理のなかで位置づけていただきたいと 考えます。  そして、これまでにも書かせていただきましたけれども、保健師という役割が単にサ ービスにかかわるだけではなくて、地域のさまざまな政策立案にかかわるような仕事に 関与していただくためには、保健師は何をするのかという議論を煮詰めていただきたい。 保健師の方々が地域社会の構築に積極的に関わるような仕事に、その役割を見つけてい くのも一つの、そしてもっとも有力な一策ではないかと思っております。  以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  それでは、続きまして大橋構成員からお願いいたします。  大橋構成員  ただいま、田尾先生から大きな視点からの問題提起がされました。そこからいきなり、 では保健師は何をするのかということを議論する前に、我々、いわゆる地方公共団体、 行政が置かれている流れというか立場というか、頭の隅に置いておかなければいけない ところを少しお話しさせていただきたいと思っております。ただ私は、言いわけをする ようですが、県職員を23年間やっておりますが、実際に地域保健行政そのものに関わっ たことはございませんので、ひょっとすると的外れのことを発言するかもしれませんが、 お許しいただきたいと思います。  まず、我々地方自治体を取り巻く一番大きな流れは、今、行財政改革というものがご ざいます。これは、平成18年6月に施行されました行政改革推進法でも、簡素で効率的 な行政改革ということで、必要性の減少した事務・事業は民間にゆだねて行政機構の整 理・合理化を行うということになっております。そこで、集中改革プラン等でも出され ておりますが平成17年度から5年間で4.6%以上の定員削減ということで、集中改革プ ランでは都道府県がマイナス4.6%、市町村に至っては8%という数字が、これは全国 の市町村から計画として出されております。  これだけではなく、そのあとを受けた骨太の改革2006の中で、国に準じて地方公務員 も5年間で5.7%の定員削減を行い、かつ地域の民間賃金の反映等を受けて給与構造改 革も行うべきとされております。5年間で5.7%以上、集中改革プランに8%となって おりますが、こうなると、従来の一律削減とか我慢や単純な、単純なといったら怒られ ますが、努力のレベルではちょっと対応できないのではないか。そこで本当に行政が担 うべき業務を洗い出していかなければいけないのではないかということが考えられます。  行政が担うべき分野、業務の洗い出しの中で頭に入れておかなければいけないのが、 「新しい時代の公(おおやけ)」と三重県では呼んでおりますが、官と民の役割分担の 考え方が少し変わってきたなということでございます。今までは官か民かという二分区 別の議論が多くなっておりましたが、今、公共、公は、官か民の二分ではなくて、多様 な主体がそれぞれの役割分担でお互いに担っていく、共同で公共領域を担っていくとい うことでございます。図式化しますと、従来の官民の概念は、官と民、五つの箱があり ますが、この縦の線が右にいくか左にいくか、それぞれの事業で分けておりましたが、 新しい今の考え方は、ある事業はこの部分は官、この部分は民というように、一つの事 業の中に官と民が共同で役割分担、目的、地域資源、目標設定、責任の所在等で役割分 担をともに担っていくという考え方が出てきております。  それと、民間ノウハウ導入のフレームが今、大きく三つあると思います。これは皆さ ん、十分御存じだと思うのですが、一つは独立行政法人。大学、病院、試験研究機関等 が対象となり、国立大は全部ですが、地域においても地方独立行政法人法が施行されて 徐々に独立行政法人化されてきている。それと、地方自治法244条の規定に定める公の 施設につきましては、この管理運営を指定管理者、これは民間、NPO法人、外郭団体 等にその管理を行わせるということで、公園や交流施設、福祉施設等が指定管理者制度 に乗っているところでございます。  一番新しい流れとしては市場化テストでございます。これは「競争の導入による公共 サービスの改革に関する法律」、市場化テスト法とも呼ばれておりますが、民ができる ことは民に任せてしまいましょうということで、官と民が一つの事業でともに入札に参 加するというようなものでございますが、地方公共団体に関しての第一弾は、戸籍とか 印鑑登録とかその交付や請求、受け付け、引き渡しという業務なのです。が、気をつけ ておかなければいけないのは、これは民間からの意見募集もしますので、今まではどち らかというと独立行政法人や指定管理者制度は、行政サイドから「ここを民間のノウハ ウを」、といっていたのが、市場化テストになると民間の方から「ここできるよ」とい ってくるということも考えられますので、そういう意味で民間ノウハウの導入が加速化 することも考えられるのかなと思っております。  それらの流れを受けて、では地域保健なり保健福祉が抱えている重要事業においてど んな課題があるかということでございます。介護、障害者自立支援法関係では、例えば 包括支援センターは直営がいいのか委託部分がいいのか。直営か委託かの二分ではなく て、直営としつつもある部分は委託も考えていかなければいけない、こういう整理が必 要になってくるのではないかと。また介護予防も、今までは介護予防は福祉サイドの介 護予防でしたが、それに医療制度改革等も伴いまして健康づくり活動と介護予防との再 整理も必要になっている。介護予防は、一旦ケアマネジャーさんに傾いた介護予防の流 れを、今度は地域保健の方にも引き入れていくのかというようなことも課題になってく ると思います。  それで、一番大きな流れである医療制度改革でございますが、検診・保健指導が医療 保険者での実施、これは平成20年度目標となっておりますが、こうなってくると、例え ばポピュレーションアプローチとハイリスク対策のあり方の整理というものが問題にな ってくると思います。それで市町村においては、国民健康保険では、ある意味、保険者 である面と健康づくり、健康指導等を行っていく面の二面性を持つことからこの整理が 必要になると思います。乳幼児や母子事業、介護予防という縦糸と健康づくり生活習慣 病対策という横糸で地域の保健衛生活動を織っていくことになるのですが、全部これを 行政がやることになると検診・相談業務が忙しくなって、結局薄くやってしまうことに なるのではないかと。そうなると、人の一生のうちの乳幼児、母子対策がもし不十分に なると、その後の成人病予防や軽度の発達障害児の早期対策がおくれていく。となると、 介護でも成人病予防でも、すべての事業がもぐらたたき化になっていく危険性があると いうことだと思います。  そこで、田尾先生の政策立案というのもございましたが、検診や保健指導事業の企画・ 立案・評価の能力が問われるとともに個別ハイリスク対策の能力も問われていく。先ほ ど言いましたように両方追っていっては忙しくなりすぎる。かといって、両方の能力が 求められてくる。これをどうするのかというのが大きな課題になってくると思います。  これらのことを解決する一つの流れが、市町村合併なのかと思います。これは産みの 苦しみというものもある一方で、地域の実情や課題に根ざした保健事業の再構築、事業 整理のチャンスでもございます。しかし実態を見てみると、これはあくまでも三重県内 のことだけかもしれませんが、企画や再構築ということではなくて、単純な足し算また は平均値を取った事業が並べられているという実態もあると聞いております。  私が一番気にしていることは、実は県が今まで歩んできた道というものは、1次サー ビスがどんどん市町村へ権限委譲されていったということで、2次サービスや広域支援 へシフトしていった。そして、1次サービスのフィールドを失いながら高度専門的サー ビスを担うということで、人材育成に大変大きな課題が今、県の保健衛生業務では出て きております。とともに外部から、外部というのは健康福祉部門以外ということですが、 何と言われるかというと、「市町村との二重行政ではないのか」、「いつまで市町村を 支援するのですか」、「本当の意味で県が担うべき公はどこなんですか」、ということ でございます。  この声には、保健福祉事業制度を、特に重層的な制度設計ですね、二重行政では決し てないのですが、そういうところに対しての無理解の部分もありますが、ある意味、本 質を突いている部分もあるのかなと思っております。そこで、先ほど言いましたように どんどん市町村に事業の責任が移管されていくと、市町村が歩むかもしれない道は、直 接サービスが民間や保険者にいくとなると、一体どこを市町村が本来担うべきなのか。 一つの例として、健診事業では、県から市町村保健センターへ、今度は保険者へという ことになりますが、この流れの中で、私は先ほど4番目の医療制度改革のところで、健 康保健指導事業の企画・立案・評価の能力とハイリスク対策の両方の能力がいると言い ましたが、「両方全部できるの」、ということがあり、一方で県が今、外部から、外部 といっても実は総務部系なのですが、から受けている声は、市町村内部でもやはり大き くなってくるのではないかと思います。こういった、今後一層の厳しさを増す行財政改 革の流れの中で、公的領域の開放、民間ノウハウの導入という波をかぶりながら本当の 意味で市町村で担うべき公とは何なのか、ということを考えていかなければいけないの かなということでございます。  以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  それでは、引き続きまして佐伯構成員からお願いいたします。  佐伯構成員  私は、地域保健に従事する専門職の立場から地域保健における行政主体としての市町 村の役割について述べたいと思います。  第1に、地域保健が担当する健康課題とその特性についてです。市町村は、住民の健 康と生活権の保障を行い、妊娠・出産から介護に至るまで、ライフサイクルに伴う健康 課題に対応しています。  対応する健康課題は多問題化し、医学だけでは解決困難な家族や社会を背景とする問 題、健康危機管理など、複雑化しており、専門技術職員には高度な知識と技術が求めら れています。  また、解決のためには住民参加による住民との共同や関係機関との連携が必要な健康 課題がほとんどで、関係機関によるネットワーク対応が求められています。  さらに疾病の罹患率や死亡率の改善など、地域の健康課題解決には長い期間を要し、 短期間の評価だけでは適正な評価が難しい課題です。  第2に、行政が現在担当している業務の実態をみておきたいと思います。地域保健の 業務は、平時の業務と健康危機対応の行政に分けて考えることができます。平時の業務 は、地域住民への対応として、健康づくりやすこやか親子21のような健康増進、予防 接種などの1次予防、成人期の基本健康診査のような早期発見を目的とする2次予防、 障害者の機能訓練や社会復帰などの3次予防の業務を担当しています。さらに、地域包 括支援センターの立ち上げやその調整など、地域のケアシステムの構築と調整も役割と して担っています。  健康危機対応の業務は、個人や家族への対応と地域全体への対応があります。危機が 起こらないようにリスクマネジメントをし、未然に防ぐような予防活動をしています。 また、危機状態が発生した場合は、その危機への対応を行います。  現在実施している対人保健サービス活動の具体例を、11ページの表1に示しています。 「母子保健」「成人保健」「高齢者保健」「介護保険」「障害者福祉」「感染症対策」 「まちづくり」別に1次予防、2次予防、3次予防の活動内容を例示しています。  12ページの表2は、個人、家族、人々の集まりである集団、地区、組織、自治体を単 位とするコミュニティなど、対象システムのレベル別に地域保健福祉活動を示していま す。それぞれの活動をPDCAサイクルごとに「計画」「実施」「評価」「改善」、さ らに「管理」としてどのような活動をしているのか、その活動をだれが「担当」してい るのかを一覧にしています。  戻りまして、地域保健において重要なことは、個人・家族への個別アプローチとコミ ュニティへのアプローチが連動して行われていることです。自治体での施策の具体策と して、個人・家族への相談や訪問活動、集団への健康教育として実施されています。  地域保健活動の大半は健康な人であり、リスク事例と合わせて地域全体をみることが できます。また、表1に示したように、さまざまな実践を通してあらゆる人々、組織と かかわることでネットワークを構築する基盤を形成しています。地域保健活動は、非常 に総合的なダイナミックな活動といえます。  では、第3に行政が担うべき保健福祉とは何かを考えたいと思います。市町村行政の 使命は住民の健康権を保障することです。そのために行政は健康課題に対する施策化を 行い、効率的、効果的な保健事業を実施し、地域資源を活用、育成してコミュニティの 活性化を図り、その行政評価を行います。保健事業の実施とは、住民にとってはサービ スの利用であり、選択の幅が豊富で安価で利便性があることが求められます。一方、行 政にとってはサービスの質の保証が重要です。そのためには、地域の実態やニーズが把 握できる情報収集ルートの確保と情報管理、サービス提供からリスクマネジメントまで ができること、サービス提供機関の評価が可能なシステムが必要となります。  効率的、効果的な保健事業の実施を考えるに当たり、健康課題の委託の可能性の検討 が必要です。委託が可能な健康課題とは、服薬管理のような治療が必要で保健福祉より も医療の範疇の問題といえるもの、生活習慣病の早期発見のための健康審査のように技 術化された対応手段があり、有料化されているか、または可能な健康課題、育児への悩 みの対応のように家族機能、近隣機能が果たしてきた専門性の低い健康課題が考えられ ます。  委託が不可能または不適切な健康課題とは、行政が権限と責任を持つものとして施策、 保健計画策定とその評価、コスト面からは民間では担えない不採算業務、技術面では住 民だけでは対処できない調整課題、医学、保健学、看護学、福祉学、心理学などの専門 的知識や技術を必要とする健康課題、倫理面では個人情報の保護に関する課題が挙げら れます。これらの要素を複合する課題として、虐待などの複雑かつ困難な個別事例、コ ミュニティレベルでの関係機関調整等の調整、マネジメントを具体例として挙げること ができます。  第4に、保健事業の委託における課題を考えておきたいと思います。この表は、鳩野 氏の調査研究からの引用です。「保健事業としての機能維持に関すること」「委託先の 質の確保に関すること」「委託料・委託費に関すること」「委託先との関係について」 「プライバシーについて」「行政内での体制」「保健師に関することについて」「その 他」と課題が挙げられています。  第5に、行政で働く地域保健従事者の専門性と機能について述べます。行政機関に働 く地域保健従事者の特性とは、対人支援の実践能力を備えた行政職であるということで す。対人支援の技術職ですから、日常活動として育児相談で、育児に不安をもつ母親の 相談にのることや家庭訪問を行います。実際に地域の住民と接することで、統計データ だけではわからない目と手と足を使い肌で感じることができる住民の生の声から、地域 の健康課題を拾い出すことができます。  さらに、疫学を基盤にした地域の保健データを収集し、分析することができます。事 務職とは異なる視点で地域の実態に基づいた施策の提案ができます。  また、地域保健では特にヘルスプロモーション、健康増進や予防という視点で地域住 民の健康な生活の支援を行います。予防にまさる治療はなしといわれるように、医療保 険や介護保険の対象にならないように保健指導を行っています。  健康審査などでアウトソーシングを行っている場合でも、リスクの高いケースのフォ ローアップは行政担当者が把握しておく必要があります。地震などの自然災害、大規模 な事故などの人為的災害時には、まず住民の安否確認を行い、災害弱者の把握と健康管 理を行います。災害時の活動は平時の活動を反映するといわれ、災害時に住民の健康状 態を素早く把握するためには、日常的に住民への直接サービスを実施担当することや関 係機関との連携を密にしていることが必要です。  住民参加によるコミュニティによるケア力の育成や地域のケア資源の育成と調整は、 地域保健分野が得意としてきたところです。コミュニティへの支援は、個人、家族、集 団、組織への支援を関連させながら実施されてこそ一連の活動として機能します。  評価に関しては、実践能力に基づいているからこそ報告書の数量にとどまらず、対人 支援の質として健康審査の質や介護保険で提供されるサービスの質を専門的に評価する ことができます。  最後に、地域保健における行政主体としての市町村の役割を3点にまとめます。  1点目は、平時の効果的な住民への保健福祉サービスの提供と健康管理を行うことで す。2点目は、健康危機の予防及び危機発生時の円滑な情報の把握と住民への対応を行 うことです。3点目は、人材育成の観点から実務業務を行うからこそ地域保健に従事す る専門職として育つのであり、地域活動と管理業務のバランスを充分に検討する必要が あると考えます。  以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  それでは最後の4点目でございますが、本日は御欠席ですが、田上構成員の作成した 資料につきまして事務局から御説明をお願いします。  皆様に一つだけ申し上げておきますが、発言をするときはマイクのボタンを押してい ただいて、発言が終わったらマイクのボタンを再度押してスイッチオフにしていただけ るようお願いいたします。  では、お願いします。  加藤主査  それでは、田上構成員からいただいております資料の説明をさせていただきたいと思 います。  まず初めに、「行政主体として担うべき役割の明確化が求められている背景」とござ います。この中では、介護予防、生活習慣病など、近年の法改正により専門技術職員の 分散配置やサービスのアウトソーシング化が進んでいるということ。もう1点は、市町 村合併や行財政改革が進む中で、行政組織内での保健師の分散配置や人員の見直しが加 速化している。こういった背景がございまして、行政主体として担うべき役割の明確化 が求められている。ということが書かれております。  次に「過去の地域保健における役割分担の反省」でございますが、まず1点目に地域 保健法のことが書かれておりまして、この地域保健法により保健所、市町村の関係が希 薄化、分断されたことと、もう一つは、直接的なサービス業務が市町村に委譲されるこ とにより、健康課題を把握する機能が弱まり、保健所による市町村支援に関する企画調 整機能も十分に発揮することができなくなってきている。  一方、市町村保健師も日々の業務に忙殺され、地域ニーズの把握から企画、実施、評 価に至るプロセスを十分踏めないまま、身近なサービス提供者としての役割機能に埋没 する傾向がある、といった状況が書かれております。  こういった問題の本質でございますが、地域保健行政としてのコア的役割機能の議論 が不十分であるということが書かれておりまして、このことがまさに今回の議題になっ ていると考えております。  地域保健行政として担うべき役割、機能は何か、それを担保するためにどのような条 件整備や環境整備をすべきかといった観点からの議論が十分なかったのではないだろう かというお考えを示されております。  続きまして、それでは「行政として担うべき役割とは」ということが書かれておりま す。そもそも地域住民の健康を守るために必要な公的責任を果たすこと、と考えていら っしゃるということです。その公的責任とはということでその定義が書いてありますが、 個々人の努力、自助では守ることができない。また、潜在化しやすい健康課題を把握し 公助や共助としての公共サービスにつなげること。そういった責任を果たすことが行政 の担うべき役割ではないかということです。  その公的責任でございますが、一つ目に、公助としての公共サービスは、行政職員に よる直接的なサービス環境と民間によるサービス環境がありますけれども、いずれも最 小の費用で最大の効果をあげ、地域住民の満足度をあげることが求められます。  公的責任のもう一つである共助としてのサービスですが、地域住民の気づきと組織化 の支援や環境づくりを行うこと、こういったことが行政として担うべき役割なのではな いかという御提案をいただいております。  続きまして、「市町村の行政保健師としての役割、機能のコア部分とその課題」でご ざいます。  まず、市町村の専門職員の担うべき役割、機能のコア部分を明確にするには、地域保 健行政がどんな役割を持つのか、機能を持つのか、といった役割機能を明確にすること が必要であろうという御提案です。地域保健行政の役割、機能というのは二つ、キーワ ードが出ておりまして、「気づき」というキーワード、「つなぎ」というキーワードで す。  「気づき」は、健康に関する公共サービスの潜在ニーズを顕在化することで行政目的 を明確化することであり、住民の満足度をキャッチして公共サービスの評価をすること。 この気づきのアンテナ機能とありますが、アセスメント機能を発揮するには、総合性、 密着性、専門性という三つの機能が重要であると書いてあります。  1点目の総合性ですけれども、生活者として健康課題を全人的にとらえ、家族、近隣、 生活環境や職場環境、こういったものを含めて総合的にとらえる視点。  密着性でございますが、行政職員であるがゆえに個々人との契約がなくても家庭訪問 や職場訪問をすることが国民的に理解されている。そういった利点を生かして潜在ニー ズを把握することや、地域住民と関係性を持つことにより、地域住民が気づいている健 康課題を把握することができる。こういった地域住民と密接な関係を構築する中でアセ スメント機能を発揮することが、専門職員の固有の機能なのではないか。  専門性は、健康問題の本質を掘り下げて見極めていく力。そして、サービスが個々の ニーズにマッチしているか見極める、こういった力が必要だろうとおっしゃっておりま す。  しかしながら、こういった「気づき」の機能については低下していることが予測され る、と書かれております。その原因は、余りにもサービスという事業に振り回されたこ とにあるのではないか、ということが記載されております。  二つ目の「つなぎ」ですけれども、公共サービスにつなぐということで、日々の業務 の中で把握した健康課題を市町村の健康政策につなぎ、行政組織としての目的につなぐ こと。この段階で企画・立案・評価といった機能が求められますが、そのためには、ま ず先ほどの「気づき」の機能が必要であり、現場の気づきなしには真の企画・立案・評 価は成り立たないのではないかと書いてあります。しかしながら、往々にしてこの「気 づき」という機能と「つなぎ」という機能は行政の組織の中で分断され、机上の企画・ 立案・評価だけがひとり歩きする傾向にあるのではないか。  また、こうした「つなぎ」の機能は、一つ目は行政による直接的なサービス業務への つなぎで、二つ目が保健制度等による民間サービスのつなぎ、三つ目が地域住民の主体 的かつ組織的な活動へのつなぎとしております。  一つ目の行政による直接的なサービス業務へのつなぎは、その多くはみずからの業務 の見直しにつないでいくこと。二つ目の民間サービスのつなぎについては、例えば介護 保険事業の見直しや介護保険事業計画の反映といったこと。20年度から生活習慣病の健 診・保健指導は医療保険者が行うことになりますが、こういった民間へのアウトソース が進めばますますこの機能の強化が求められていくのではないかということです。  三つ目に地域住民の主体的かつ組織的な活動へのつなぎであり、地域資源をマネジメ ントしていくこと、と書かれております。ただ、こういった機能ですが、最初に述べま した「気づき」の機能が次第に弱体化しているといえるということがあったかと思いま すが、弱体化するにつれて理念的には重要視されながらも現実的には十分に機能を発揮 できなくなりつつあるということが書いてあります。  以上のように、地域住民の健康課題や資源に関する「気づき」と「つなぎ」の機能を 一連の機能として発揮できるようにすることが行政保健師、管理栄養士と地域保健従事 者の役割機能を発揮する上で最も重要なことであるとされております。  最後に、「行政保健師のコア的な役割機能を発揮するための条件整備、環境整備」と いうことでは、具体的な方策が四つ挙げられております。  一つ目には、特に若い専門技術職員については、対象を絞った事例の徹底的なかかわ り、徹底したOJTの仕組みづくり、指導体制をつくっていくこと。  二つに、日々の地域活動を通した「気づき」の機能を徹底し発揮させることが企画・ 立案・評価の前提条件になるということ、そういった仕組みをつくること。  三つ目に、日々の地域活動を通して把握した健康課題を客観的なデータとして検証し、 保健計画に反映させることにより、組織内、地域住民等とのコンセンサスを得ること。  四つ目に、今後、分散配置等が進むことから、ジョブローテーションを行うこと。  こういったことが方策として考えられるのではないか、このような内容でのペーパー をいただきました。以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  地域保健における行政主体としての市町村役割の明確化についてということで、四つ の発表をしていただいたわけでございますが、これからフリーディスカッションに入り たいと思います。なかなかこの問題は論点整理が難しいと思いますが、ぜひ活発に御意 見をいただきたいと思います。  基本的には、役割の明確化といったときに、法律によって市町村に事業を義務づける かどうかという一つの論点があると思います。そういう中で、かつては県の仕事だった ものが基礎自治体である市町村に、かなり仕事の法律上の義務主体が変わっていったと いう過去の経緯がございまして、さらに今回の医療制度改革では生活習慣病について一 部が保険者の義務になった、そういう問題があります。  もう一つの論点としては、法律上の義務を持ちながら、直接やるのかそれとも直接で はなくて民間の事業主体等にアウトソーシングというか委託をするのかどうか。その中 で、御発表にもございましたように、委託することが適切でないもの、委託してもいい もの、その辺の考え方をどうするかという論点が一つあろうかと思います。  最後に、御発表にございましたが、そういう整理をする上で自助、公助、共助という 根拠となる論理といいますか、そこをどのように整理をしていくか。  いろいろな観点があろうかと思いますが、余りそれにとらわれないで御自由に、「市 町村の役割の明確化について」ということを今後どのように整理をしていったらいいか という観点から御発言いただきたいと思います。どなたからでも結構でございますが、 きょうは4人の発表の方の中に市町村の立場の方がどなたもいらっしゃらなかったので、 もし市町村の立場からこの4人の御発表を聞いて御意見がありましたら、例えば有原さ んなり長谷部さんなり藤山さん、いかがでしょうか。  有原構成員  狭山市から参りました有原でございます。  最初の田尾先生のお話を聞きまして、行政にある資源は人しかないのだなというのを 改めて感じています。そうした条件下では、人の品質管理を行っていかないと専門職と して立ち行かなくなるのではないかなという思いを深くします。  それから、行財政改革が一律に人を減らしていくという作業にどうしてもみられがち なのですが、本来そうではないはずだとも。お金の払いがいのあるところはどこなのか というようなことを、私たち自身も当事者として、考えていかなければならないと考え ます。今回の医療制度改革はそこのところにあるのではないでしょうか。老人保健事業 の中で使っていたお金を、全部、保険者としてきちんと入るところと出るところを管理 しなさい、としているのではないのかという思いを強くしているのが現在なのです。  ただ、そういう場面だからこそ保健師も、今までのように法令遵守でやっていればい いという考え方ではなくて、その中で何を選択し、何に集中させていくかということを 考えていかなくてはいけないと痛感をしているところです。アウトソーシングというの は避けられないことだと思っておりますし、分散配置も避けられないと思っております。 ただ、分散配置の中でいかに自分たちの品質管理をしていくかということは課せられた 問題だと思いますが、その中では適正にジョブローテーションが行われない限り、私は 母子、私は成人、私は精神、といったそこだけに固執してしまっては何も見えてこない ことに繋がるのではないかなと。それが、佐伯先生がおっしゃるように地域が見えない ことにつながっていくのだと思っているところなのです。  顧客が住民であるということを考えれば、我々は、そこに目を向けていかなくてはい けないということを最近、真摯に受け止めています。元来、その視点で動いていなけれ ばいけなかったのですけれど。その中で本当に自分たちが担わなくてはいけないところ はどこなのだということを、今回の改革の準備として検討しているところですが、例え ば、アウトソーシングできる部分はどこだと考えるときに、行政しかできない部分とい うのはあるのだなということはつくづく感じています。  例えば、40代、50代の男性の受診率が大変低いのです。その原因等を考えて、できて いないところをどうするかということは、アウトソーシングでは無理であると思いつつ、 そこをどのように担保していくかということを少ない人員の中で考えていかなくてはい けません。それが私たちの今後の一つの課題かなと。それが結局、本来的な保健師の予 防というところに軸足を置いた活動につながっていくのではないかと思っているところ なのです。  伊藤座長  どうもありがとうございました。そのほかの方、いかがでしょうか。  藤山構成員  神戸市から参りました藤山です。  神戸市は、保健所と市町村機能をあわせもって保健活動をやっておりますけれども、 二つ目の提案がありました三重県の大橋構成員の御発言の中で、神戸市はまさに県型と 市町村型を持っておりますし、実際に神戸市の中でもかなり阪神・淡路大震災による財 政危機もありまして、現実的な人員削減の問題が提示されていて、保健師や管理栄養士 もまさにその人員削減の提案の中に入っております。ですので、活動のあり方論議の前 にそういった行政の中での役割が非常に求められている状況であります。  特に市町村の中でも都市部に所属する神戸市などでは、官と民の役割と、民の役割を 果たせる人材が非常に多く育っている。既に介護保険などでは訪問活動などでも決して 保健師の活動の領域ではなくなっているというあたりから、官と民の役割が非常に近く なってきておりますし、中でも行政内部でも民の役割と行政の役割はほとんど、特に保 健活動などでは委託はできないものはないのではないかという議論もされている中での 検討をいたしているところです。ただ、逆に神戸市などでは介護保険が100%委託の中 で、民の機能をどうチェックしていくか、質の担保をしていくかというあたりについて は行政の役割は残っているのですけれども、実際に100%委託をしてしまえば、外から 見えるだけで中の問題が見えてこない。質をチェックしていくことの機能と、それから 提案にもされていましたが、今まで持ってきたノウハウや蓄積、一定の中堅の者たちは そういったノウハウを蓄えておりますけれども、若い職員がどう人材育成をしていくか というのは非常に大きな課題になっております。  また、分散配置も当然のようにしておりますし、ジョブローテーションも一定の中で 検討してやっておりますけれども、ただ、今は保健と福祉が組織的に一本になっている 中で福祉の領域は3次予防、セーフティネットの中と予防の部分を同じ部署の中にいて どうすみ分けをやっていくのかというところが非常に大きな課題になっておりますので、 その中での保健師や管理栄養士の役割をもっと明確にしていく必要があるのではないか と思っています。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかにいかがでしょう。  藤内構成員  今までの議論の中で地域保健サービスという言葉と地域保健活動という言葉が両方出 てきました。田上構成員の報告の中にもその違いについて記載した部分がありますが、 今までの地域保健活動がいつの間にか地域保健サービスというふうに矮小化されている ことが、いろいろな弊害を生んでいるのではないかと私も思います。例えば分散配置が 進んでくると、保健師にしろ、栄養士にしろ、それぞれの領域で自分のもてる専門性を フルに発揮してサービスを提供しようとします。しかし、そうして分散配置された技術 職が例えば月に1回集まって議論しても、議論にならないというのです。これは昨年、 現地調査でも実際にそういうのを聞いたのですけれども、なぜ技術職が集まって議論し ても議論にならないか、それは共通の課題がないというのです。  つまり、サービスを提供する分においては、そこでいろいろな悩みがあってもそれは 共有できないのです。しかし、サービスを提供する中で、地域の問題は何なのかを一緒 に考えると状況は違ってきます。例えば、介護の領域にいる保健師が気づく高齢者の虐 待の問題、母子保健をやっている保健師が気づく児童の虐待問題、そして中高年の生活 習慣対策をやっている保健師が気づく健康問題の背景には、家族の機能であったり、そ の家族を支える地域の機能が低下しているという共通の問題があることに気づかれると 思います。こうした議論ができると、いろいろな領域に分散配置された技術職の議論が 施策化への議論につながっていくのです。サービスの提供が自分たちの仕事だと思い込 んでしまうと、「地域が見えない」ということを先ほどおっしゃられましたが、まさに 地域が見えないという状況につながっていきます。  今、藤山構成員もおっしゃられたように、サービスの提供ということに関していえば、 民間と行政の差はどんどん小さくなってきている。でも、そのサービスを提供するのが 民間であれ行政であれ、そのサービスの提供を通して地域の問題をどれだけキャッチで きるかが重要だと思います。サービスの提供を委託している部分まで、地域の課題をキ ャッチできるかどうかということも重要な問題だと思いますが、少なくとも行政が直営 でサービスを提供する中で地域の課題を把握できること、それが地域のニーズを明確に し、潜在化している健康課題や、あるいは地域の資源を掘り起こして、それをうまくつ なげることで地域の健康課題を解決する力を、行政だけではなくて地域がつけていく、 そういう役割こそ保健活動のコア的な機能であると思います。その点を確認することが とても重要ではないかと考えます。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  曽根構成員  今のお話を聞きながら思ったのですけど、先ほど田尾構成員、あるいは大橋構成員も おっしゃいましたけども、効率化ということが今、どんどん進められている。でも現状 においては効率化といった場合、地域保健サービスにおける見かけの効率化がどんどん 進められていて、先ほどお話に出た地域保健活動の方の質の担保が置き去りにされてい ると思います。でも効率化は私たち行政の中では一つの概念・方針としてどんどん進め られているわけです。では私たちの地域保健活動における効率化というのは何なのか、 どのようにしてそれを計るのか。私たちの活動も効率化に反対するわけにはいかないの で、地域保健活動の効率化をどのように考えるのかというところについて、できればほ かの構成員の御意見を聞いてみたいと思います。  伊藤座長  今の点について、いかがでしょうか。  藤内構成員  まさに効率化という意味で、領域は違いますが耐震構造の偽装は、建築確認を委託し たことによって、結果には行政は耐震構造を偽装した危険のマンションの撤去等に財政 負担を強いられるようになった。この例のように、行政が、これは民間に委託できるだ ろうということで任せたことで、結果的にはより多くの財政支出を求められる事態に至 れば、効率化という意味ではかえって非効率になってしまいます。保健サービスをより 効率的にできるように委託したつもりが、それが予防につながらなければ、結果的に医 療費がふくらみ、さらにその後の二次予防、三次予防、特に三次予防の部分での支援が 必要になってくれば効率は悪くなります。そういう意味で、曽根先生がおっしゃられた ような本当の意味での効率化は何なのかということはとても大事な視点だと思います。  伊藤座長  長谷部さん、例えば南アルプス市で市の事業を委託しているものがあるかどうか。も しあったとしたら質の担保なり、単に直接サービスではなくて保健活動として必要な情 報収集なり次年度の計画に対する評価なり、そういうものをどういう形で担保されてい るのか、もし御説明いただけるようだったらお願いしたいと思います。  長谷部構成員  南アルプス市の長谷部です。  うちの市は、まだそんなに委託というのは進んでいないかと思います。主に成人の健 診などは業者委託にはなっているのですが、その中には担当の市の保健師と民間の事業 所の保健師の間での打合せもかなりもっていますし、評価的なものも含めてやっており ます。そういった意味では進捗管理も含めて連携を取りながらやっていますので、比較 的うちの市はうまくいっているのかなと思っております。しかし財政的な部門の方から は、予算の時期になると委託という言葉がかなり出てきている状況ですので、今後、事 業をどうしていくかというところが今、ちょうど転換期になっているかなと思っていま す。  実質的には、先ほどの報告の中にもあったように、私たち自身の日々の動きを考えて みますと、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ、また事業の企画運営 を全部一緒にして動いています。そして業務分担制と地区分担制を併用していますが、 非常に多忙です。スケジュールか真っ黒です。それは表面に出ているスケジュールを入 れただけで真っ黒になるので、そこに見えてこないハイリスクの方たちへのアプローチ は、へたをすると1日がかりとか何週間がかりの中で見えてこない部分もありつつやっ ているので非常に多忙で、そういう状況です。  ただ、では業務分担制にすればいいのかということもあるのですが、地域全体を見て いくという充実感、責任感もありながらやっているので、一律業務分担にすればいいと いうところにはいっていないのですけども、ただ、事業を精査していく上では民間に何 を委託していくのかというのは今からまた議論されるところかなと思います。  伊藤座長  どうもありがとうございました。引き続きこの論点について議論していただきたいと 思いますが、いかがでしょうか。  迫構成員  秦野保健福祉事務所の迫でございます。管理栄養士の立場から少しお話をさせていた だきます。  行政の管理栄養士は、市町村、保健所、もちろん政令市も含めていろいろなところに 配置はされておりますが、未配置のところもまだまだかなりありまして、約30数%は未 配置という状況です。そういう中で先ほど藤内先生もおっしゃいましたように保健サー ビスの部分が業務の中心となっていましてやらざるを得ないというか、そこを中心に動 いてきている。ひとりで追いまくられているといったら変な言い方なのですが、それを 一生懸命こなして動いています。  今、子供の食の問題が生活習慣病予防の一番基礎になっていく問題であろうし、そし てその次の年代としての生活習慣病予防対策、そして介護予防という一連のライフステ ージの中でのさまざまな分野での活動をしなければいけないのですけれども、その全体 を担う管理栄養士の人数的なもの、配置の状況としては非常に寂しいものがあって、し かもサービスに追われているという状況にあります。  そうすると、先生方がおっしゃいましたように、アウトソーシングという問題をどう しても考えざるを得ないでしょうし、アウトソーシングできるようにするにはそれと同 時進行で地域の中での人材育成をどのようにしていくのか、考え、実施していかなけれ ばなりません。その地域の中での人材育成の核になる行政栄養士としての役割があろう かと思うのです。これは都道府県を始めいろいろな分野でできると思うのですが、それ をきちんと位置づけていかないとやりきれないのではないかと思っております。  また、現場を知らずに人材育成ができるかという問題が先ほどから出ておりましたが、 直接のサービスを展開していく中で人材育成ができていくという部分は大きいものだと 思いますし、そういう意味では直営のサービスという部分をすべて切り離すことはでき ないものですから、核になるものをきっちり絞り込んで組み立てをしていかなくてはい けないのだろうなと思っております。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。  山野井構成員  岡山県の山野井と申します。  委託先の問題が幾つか出されておりまして、これに関しましては、岡山県の地方では、 アウトソーシングすればいいというけれど、委託先がない状況があります。介護保険が 始まりましたときにも、在宅福祉サービスを掘り起こして事業者として指定していきま した際に、社会資源のなさということで非常に皆さん、苦慮されました。  事業者の指定の際には、ある程度人員配置、施設配置基準が設けられて、質の管理、 最低限のレベルが確保できましたが、これからも、保健サービスを提供するアウトソー シング先の人員配置基準、施設配置基準が必要で、質の確保をするためには何と何の配 置があって、どんな人員があって、ではどこにアウトソーシングするのか、そこまでき ちんと考えた上で行う必要があると思います。  先ほど曽根先生がおっしゃられました地域保健活動の担保というのは一番だれにもわ かりにくい、説明しにくい部分で、私たち保健所の職員、市町村の保健活動を担ってい る者が公衆衛生を大事にし、疫学を大事にして活動してきたところですね、だけど、今、 目の前にあるサービスだけでそれに振り回されて忙しいという全国の市町村の流れから いくと、委託することイコール効率化で、市町村がすべて効率化、民活化されていって しまう。何か本末転倒のような懸念も感じるので、どうすればいいのかなと思っていま す。  もう1点、人材育成は非常に大事だと考えていまして、効果的なジョブローテーショ ンも重要なので、組織的に体制的に行わなくてはいけないのですが、従来、うまくマネ ジメントをされてきた保健師さんとか、今、合併後はプラス志向でどんどん地域の住民 のためにこうあったらいいなと考えている保健師さんたちのノウハウを集めて、それを 科学的なデータにして示せるものがあれば、これからリーダーになるべき者、それから 新人たちにも役立つのかなとちょっと考えました。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。田尾構成員、どうぞ。それ から、田尾先生に私からもお聞きしたいことがあるのですが、昨年度、研究班で先生に 担当していただいて、ニューパブリックマネジメントを御執筆いただいているのですが、 あれを書かれた立場から、きょう御発表していただきました例えば田上先生のペーパー をごらんになって御意見が承れればと思ったのですが、その点もあわせてお願いします。  田尾構成員  最初の委員長の言われた議論なのですけど、私は田上先生のこの資料については非常 に感心いたしました。佐伯構成員の資料も合わせてなのですが、私がこれまで漠然と考 えてきたことを裏付けしていただくような資料でありまして、私の研究には、今後非常 に役立つように思います。これによりながら論点を整理させていただきたいと思います。  ここで今、議論させていただきたいのは、今、藤内構成員が言われましたサービスと 活動とを分けるべきである、これは大賛成であります。サービスは結果である。結果に して渡すためには、多分、公と私(し)が分けあう、あるいは私(し)にアウトソーシ ングしていくサービス領域はかなりあるだろう。ただし活動に関する、とくに行政活動 に関する部分は絶対私(し)に渡してはいけないだろうと私は考えております。それに ついてまとめると、保健サービスということと保健にかかわる行政活動は分けるべきで あるというその意見は大賛成でありまして、今、私が漠然と感じていたところをうまく 表現してくれたなという感じがしております。  そのことに関わる論点ですが、今、効率化という議論が言われましたが、組織が存立 するためには二つの効率性を達成していかなければいけない。一つは経済的合理性、二 つ目が社会的合理性です。これは教科書に書いていますので教科書的な平凡な議論にな りまして恐縮するのですが。  経済的合理性というのは、効率とか生産性とかいうことを含めます。それは、少ない 資源でたくさんの成果を出すこと。経済的合理性の実現が、どのような組織に課せられ た使命であります。企業はとくにこれで頑張ります。  社会的合理性と申しますのは、公正とか公平とかを実現をすることが組織の使命であ る。とくにこれは行政に求められている使命でもある。サービスに関する部分は経済的 合理性でかなりそのよしあしが分かるのですが、後者の方の議論は行政が絶対手放して はいけないと思っております。サービスの部分に関しては民間の協働、あるいはアウト ソーシング、さらに言えば民営化でも可能であろう領域は多くあります。しかし、後者 の方の行政活動については、これは社会的合理性を実現する組織のことでありますから、 絶対にといってしまうと極論でしょうが、政策の立案とか評価にかかわる部分は、本来、 行政が果たすことである、と私は考えております。その辺のことは議論を重ねていただ くとありがたいと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。少しずつ整理されてきているのではないかと思いますが、 そのほかの方、いかがでしょうか。  藤内構成員  サービスと活動という整理が少しされてよかったと思うのですが、実際に今までの現 場での保健活動がいつの間にかサービスを提供することにどんどんシフトしていった背 景には、ひょっとしたら昭和58年の老人保健法以後、4回にわたる保健事業計画が国か ら示されて、市町村はそれを忠実に実施することが求められたことが挙げられると思い ます。もちろん地域の裁量はもっともっと発揮できたと思うし、その裁量を発揮すべく 県や保健所の役割はとても重要だと思うのですが、それが結果的には国が示したものを どう忠実にやるかというところで、いつの間にか与えられたものを住民に提供すること にどんどん力がそそがれていったのではないかと思います。国が制度を変え、新しい法 律、新しい事業を地域に対して展開しようとするときに、理念であるとか、あるいはそ の事業によって達成しようと考えていることをより明確に示すことが必要だと思うので すが、余りに方法的な部分、ここで例を出していいかどうかわかりませんが、メタボリ ックシンドロームに対してこんなふうにやるということが余り細かに出てしまいますと、 今度はいかにそれを地域でやるかということになってしまう。  今回の生活習慣病対策の保健指導に関しては、まさにアウトソーシングということも 視野に入れているので、そのあたりはその流れがより顕著になってきたといえるのだと 思いますが、地域でこういうことを実現すべきだという理念なり目的なりの議論をしっ かりしていただき、その達成のためには、地域が今まで培ってきたノウハウや地域の資 源、今までの経験も含めて、どうそれを生かすかということはとても大事だと感じてい ます。  ことしの4月から地域新事業が始まったのですが、県内の市町村に話を聞いてみると、 この4月を契機に、今まで高齢者にやっていた骨粗鬆症教室とか転倒予防教室が随分な くなっているのです。つまり、地域支援事業が始まるので、この事業は介護予防だから そちらにというのでシフトしていったのです。そのために、今までやってこられた活動 の継続性とか、その活動を一緒にやってきたであろう住民組織であったりいろいろな関 係機関とのつながりも途切れてしまったのではないかと危惧するのです。制度の変更や 新しい事業の展開において、そのあたりの配慮が重要ではないのかなと考える次第です。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかに。  有原構成員  今の藤内先生のお考えを聞いて、いろいろ考えさせられましたことは、自分たちが今 まで何をしてきたか・何をしなかったか、ということで、それが目の前で明らかになっ てきたという思いです。確かに個別健康教育とか健康教室をたくさんやってきたのです けれども、それはあくまでも課題認識がありモチベーションが高くて、おいでになった 方々が対象であって、潜在的に隠れている人たちの掘り起こしの点では、結果的に非常 に難しい状況にあったと思うのです。  本来なら、そこに手をつけなくてはいけなかったのではないのかなという思いもあり ます。しかし、事業を何回やって何人参加しましたという報告をしていれば、それはそ れで済んでいたという状況がありました。健診の受診率にしても、60何%という受診率 があって、それはそれでいいと。だけども内容を見てみると、ここの部分は、未実施だ という部分があります。ですから、やってきた部分とやってこなかった部分が明確に見 えてきたのです。専門職として、大いに反省をしたところなのです。  その上で効率化という部分もあるのですけれども、確かに藤山構成員がおっしゃった ように、民間でできるところはあります。今回、介護予防事業の委託をする際、民間の 発想のすばらしさを目の当たりにしました。よく考えています。地域に展開をしていく 活動まで考えているし、そこまでお金に入っている。それを見た瞬間に、ああ、これは 習わなくてはいけない部分だなと思ったところなのです。しかし、例えば教室参加者の 行動変容という部分につきましては、私たちがノウハウを持っていないと仕様書は書け ないという事実はあるわけなのです。その仕様書も、事細かく書けるようにしないとい けない。そうでないと質の担保はできないなと。些細なことではありますが、実施場所 の状況だとか面接をするときの態度だとか、採血した後にどういう形で指導していくと か、そこまで目が配れるかというところは、恐らく専門職にかかっているのではないか という気がしています。  これらは、何気なくすぎる部分なのですけども、本当は目配りをしなくてはいけない ところでもあります。そのことを含めた上でアウトソーシングができるかできないか、 一にそれは専門職にかかっているのだなと感じているところなのです。そこまで考えて やることになりますと、すべてをアウトソーシングにはできない。なぜならば、一つぐ らい残しておかないと、後輩のための伝承というのでしょうか、スキルとかツールとい うものを学ぶ機会を全部なくしてしまうことになってしまうのですね。だから、何を残 し何を委託するかということを、私たちは今、考えなくてはいけないなと。それは、今 回の制度改革ということで大いに目の前に突きつけられた課題だと考えております。  藤山構成員  先ほどから、サービスと保健活動を分けるべきではないかというような議論が出てい ますけれども、今回の地域支援事業の中では、従来の保健活動の中にあった地域を核と してやってきた転倒予防教室であったりするものがサービスとして介護保険制度の中で 提供されて、どんどんサービスが明確化されていっているわけなのですけれど、サービ スの提供は明らかに提供者と対象者が非常に明確になっていく。我々保健活動は、対象 別ではなく地域を核としてやってきた。1次の方たちも2次の方たちも、高齢者も、若 い人たちもひっくるめた地域活動の中に転倒予防を入れてきたものが、それぞれの保健 制度の事業となっていくことによって分断をされていく。そこが、サービスを分けてい くことは対象個別のところではいい部分があるのですけれども、地域を核にしたときに はどのような整理ができていくのかなというのが、保健活動の明らかな課題ではないの かなと思っています。  迫構成員  今の有原構成員、そして藤山構成員と連続というか同じようなことを思いまして、先 ほど藤内先生がおっしゃいましたように介護予防事業が地域の中でスタートしていった ときに、従来の事業と分断されているところがかなりある。全部とは言いませんけれど もかなりの部分で分断されて、従来の保健活動の部分が停滞していって、年齢で、65歳 で区分しているような、ここから先は介護保険よ、というような区分をしているような 実態が多々見受けられるということがあります。  そういう中で、従来の保健活動を分断させていかないために、また継続していくため にどこに着目しなければいけないかというと、地域資源をどういうふうに考えていくか、 そこの把握ではないかと思っているのです。サービスをどのようにやっていくかという 問題は、これは民間活力の中でもかなりできていくものだと思うのですが、地域資源を どのようにつないでいって、どのように活用していくのか、地域住民が地域資源として の役割を果たせるような仕向け方をしていく。そこの部分を保健の分野が今までも担っ ていたし、これからも担っていかなければいけない。  それは、これから保健指導がアウトソーシングということも出てきていますけども、 そこでも同じようなことが起こらないように、きちっと担保しておくことが必要ではな いかと思っております。  伊藤座長  どうもありがとうございました。あと、いかがでしょうか。  本田構成員  先ほど、地域保健活動とサービスを明確にするという御意見がいろいろな構成員の方 から出ていましたけれども、市町村栄養士の配置促進がなぜ伸びなかったかという点で は、どうしてもサービス優先の業務が先行していくと、サービスの部分だけの業務の充 実になってしまっていることが、市町村栄養士配置が進まなかった原因になっているよ うな気がいたします。実際に保健活動とは何か、先ほど有原構成員がおっしゃったよう に、専門職種が地域保健活動として何をやっていかないといけないか、今、ここで明確 に出しておかないと、市町村栄養士の人員は伸びないのではないかと感じています。  伊藤座長  それでは、長谷部構成員、どうぞ。  長谷部構成員  先ほどの私の発言の補足という内容になるかと思うのですが、いろいろな現場の中で は保健師、栄養士、非常に忙しく動き回っているわけなのですけれども、だからといっ て事業委託という単純な話ではないなとは思っています。本来、市が何をするべきかと 見つめなおす時期だなと感じていまして、活動の転換期というか、新しい活動のあり方 を本当にしっかり考えていかなければならない時期かなと思っています。  私個人的には、合併前は500人の村の保健師でした。山梨県で下から数えて2番目に 小さい、世帯数が200ぐらいしかない小さな小さな村だったのですけども、そこで15 年間保健師をやってきていると、保健活動とはとか余りそんなことを考えなくても、冷 蔵庫の中身まで知っているみたいな、すべて村民の誕生日も知っていたりとか、そんな 環境の中で15年間いると余りそういうことを意識して活動してこなかったのだけれど も、多分そこが私にとっては土台になっているのだなと思っているのです。  今は合併して7万2000の市になって、ではそれが通用するかといったら、それは物理 的に無理な話であって、私自身の気持ちの中の切りかえシフトをしていなければいけな いなということと、昔ながらの保健師活動のよさも残しつつ、分散配置の中でどうして いこうかなと、今、そこに立っているという意識があります。  その中で今、現場で思うことは、分散配置とか業務の複雑化という中で、市役所の中 で保健活動をマネジメントする立場の人がすごく必要かなと思っています。いろいろな 問題が出てきていて、障害福祉、児童福祉に配置されたり、介護保険の調査の分野、あ と、包括支援センターにもいっていますし、健康増進の部分にいますけれども、そこの 保健師活動という業務分担ではなく、地域の中で活動していく保健師、栄養士も含め保 健活動をしていく職員がどう動いていったらいいかという全体を見渡す立場の人が、ど この町でも必要になってくるかなと思いますし、そういう視点を持つ職場であってほし いなと思っています。  あと、委託先の難しさというのが、先ほど委託先が余りないということで、山梨も田 舎ですので余りないのですけれども、一つの事例として、うちの市で3月まで、母子の 関係で「親子遊び教室」というのをやっていたのですけれども、地域の中で自主組織と いうか、山梨は母子愛育会というのが活発で、そこの組織の活動として委託契約を結ん でいるわけではないのですけれども、今まで市役所が主体でやってきた事業を一たんそ こで打ち切りまして、そのまま引き続き地域の方たちに担っていっていただいている。 委託で、さあやりなさいという状況ではないのですけれども、スムーズにそういうこと がいって地域の人材の活用という一つの事例でうまくいっているのかななどと思います し、そこの組織の育成はやはり保健師がやっているということで、そこへの保健活動を した組織の人たちの思いが地域の中で自分たちの活動としてうまくめぐっていく。結果 的に、先ほどの官と民とありましたけれども、そこの役割が担えている一つの事例かな と、民間業者に委託するだけではないのかなと思っています。  今、南アルプス市は合併4年目に入って、保健師、栄養士を含め、先ほども言ったス ケジュールが真っ黒な中で何かが違う、何かがおかしいと思い始めています。それは、 先ほどからも出ているように、合併のすり合わせの中で保健活動よりも保健サービスの すり合わせを重点に置いてきてしまった結果だと私は今、思っているので、もう一度原 点に戻る必要があるかなと。そうしないとなかなか前には進めなくなってきているのか なと思いますし、もう一度地域の実態を見つめ直そうという思いでいますし、住民の主 体的な取り組みを支えるために私たちがいるのだよね、というところは共有し始めてい ますので、そういうところを感じています。  最後に、その中でもうちは合併してすぐ健康増進計画というのをつくったのですけれ ども、それを推進していくに当たり、いろいろな事業の評価が私たちは苦手なのだとい うことがよくわかりました。旧町村の時代には保健計画をいっぱいつくってきましたけ れども、どうもつくりっぱなしでまた次の計画がやってくるという中で、保健活動を推 進していく進捗管理であるとかプロセス評価であるとか、事業の評価ということが旧町 村の時代に自分たちもできていなかった苦しさが今ここへきて出ています。住民といろ いろな意見を交わしているころはよかったのですけれども、それを継続してやっていく ことの技術的な不足のことを今思っていて、またそういうものもいろいろな分野の方た ちと一緒にやっていけたらいいのかなと思っています。  余談になってしまいましたが、済みません。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  では、時間の関係できょうの議題1はこの辺で打ち切らせていただきたいと思います。 大変活発な議論をいただきまして、「行政主体としての市町村の役割の明確化について」 ということは、きょうの議論を整理すればかなり論点が明確になってくるのではないか と思いますので、事務局と私の方で論点を整理させていただきまして、次回以降の議論 に役立てていきたいと思っております。また、4人の方に大変適切なプレゼンテーショ ンをしていただきましたことを御礼申し上げまして、次の議題2に入らせていただきた いと思います。 (2) 分散配置における活動体制と専門技術職員の人材育成体制のあり方について  伊藤座長  議題2は、「分散配置における活動体制及び専門技術職員の人材育成体制に関する調 査について」でございます。このことにつきましては、第1回の検討会の今後のスケジ ュールにおきまして事務局から説明がございましたが、調査を行うこととしてこの検討 会で御了解をいただいております。調査の概要につきまして、事務局から説明をお願い します。  加藤主査  それでは、資料2をごらんください。  まず21ページは、「分散配置における活動体制に関する調査(案)」でございます。  調査の目的ですが、近年、市町村において保健分野のみでなく、さまざまな分野への 配置が進んでおります。また、市町村合併等により人口規模の大きな自治体の増加から、 複数カ所の保健センターに保健従事者が分散配置されるということもあります。こうい った分散配置における活動の問題点、課題を明確にするために、活動体制、特に配置の 実態について調査を行うことを目的に考えております。  調査の対象でございますが、保健所設置市、特別区を除く市町村の全数調査を考えて おります。  調査としましては、2)にありますように地域保健部門を窓口といたしまして専門技 術職員が配置されている部門に対して調査を行う。  調査方法は、郵送によるアンケート調査。  調査期間は、ことし10月の1カ月間を予定しております。  調査の内容の主な項目は、保健技術専門職員が配置されています部門、人数、主な業 務、保健センター等の保健活動の分散状況、人数、年齢、経験年数、業務、保健技術職 員のトップの職位と役割、各部署での決済権と責任、分散配置における専門技術職員の 具体的な連携、分散配置における問題点、最後に今後取り組もうとしている体制におけ る課題、こういった内容を案として考えております。  続きまして22ページからは、専門技術職員の人材育成体制に関する調査です。  調査の目的ですが、急速な高齢化や少子化の進展、生活習慣病の増加、国民ニーズは 複雑化、多様化していることから、地域保健分野における保健活動の重要性は増大して いますが、専門技術職員においては、行政能力についての研修が対象とされていない自 治体や体系的な研修計画がない自治体などもあります。一方、現在では業務が多忙等の 理由から研修等に参加できないなど、資質の向上が十分図られていないということもあ ります。  国民ニーズに対応できる保健活動の展開には、自治体において計画的、体系的な専門 職員の育成に努めるとともに、みずからが自己研鑽を積むこと、専門的な知識、技術に 加え、行政能力の向上を図ることが非常に重要であると考えております。このことにつ いては、前回の御議論、今回の御議論にもあったことかなと思っております。  このため、人材育成の計画実施状況、人材育成上の課題など、市町村における人材育 成に関する実態について調査を行うことを目的としております。  対象でございますが、先ほどの配置の方と同じく市町村の全数調査を考えております。 地域保健部門を窓口として人材育成担当者に対して調査を行う。  調査方法、調査期間等も先ほどと同じ、アンケート調査は10月ということでございま す。  調査内容ですが、人材育成計画の有無と内容、OJTの体制、OJTの体制と内容、 ジョブローテーション、今後、強化すべき機能を育成するための研修の有無と内容、と いうことで、企画・評価、地域に根ざした活動、連携・協働という項目を出しました。  それらの能力を育成するための研修体制の有無と内容。保健所が企画・実施する研修、 新任者に対する研修、資質向上のための課題、今後、資質向上のために取り組むべき課 題、こういった項目を挙げております。  以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。今、事務局から二つの調査、分散配置における活動体制に 関する調査の案と、専門技術職員の人材育成体制に関する調査の内容について御説明い ただきましたが、この二つの調査につきまして、皆様方から御質問、御意見がございま したらお願いしたいと思います。どちらの調査についてでも結構でございます。いかが でしょうか。  曽根構成員  両方の調査に言えることだと思うのですが、この場合の専門技術職の範囲はどこまで 含むのかというのを御議論いただければと思います。  伊藤座長  その点は、事務局はどのように考えていますか。  勝又室長  専門技術職の市町村に配置されているのが、現在のところ、保健師と栄養士というこ とで考えております。  伊藤座長  よろしゅうございますか。  曽根構成員  はい。  伊藤座長  そのほか、いかがでしょうか。  田尾構成員  人的資源管理論の立場から多少意見を申し述べさせていただきたいのですけども、今 回の調査に入れるかどうかは、関係する方々で御判断いただいてよろしいのですけども、 2の1にいきますと、適性のない方はやめていくことが多いであろう。つまり、採用し て何年以内にやめていったか、まだやめていないとか、そういった調査があればよいよ うに思います。それは、適性のない方はやめていって別によいのです。よい人をとって いるかどうか。離職者が少ないということは適性のある方を採用しているのでしょう。 ということでいえば、やめる人を含めた人員異動の調査があればよいのではないでしょ うか。  それと同じことですけれども、人材育成に関する議論ですけれども、育成というのは 実は採用から始まる。よい人を採用しているかどうか。よい人を採用しているからこそ 人材育成の意味があるのです。つまり、コストをかける人材をとっても仕方がない。冷 たい言い方ですけど。ですから、そういう(採用の)努力をしているかどうかというこ とを問いたいという気が私はあります。  以上です。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。  藤内構成員  今の田尾構成員の御意見に反論するわけではないのですが、実際に昨年の現地調査の 中にも、この状況で採用された技術職はつらいだろうなという自治体もありました。そ ういう意味で、採用する際に適性がなかったから途中で退職するというのではなく、む しろその人が本当に技術職として成長していく環境あるいは専門能力をフルに発揮でき る環境が整わずに、不本意ながらやめざるを得ないという状況の自治体も少なくないと 思われます。  そういう意味で、今回、活動体制に関する調査か、その次の人材育成体制に関する調 査の中に、技術職に限らず保健活動領域のマネジメントというか最終的な統括を行う、 つまりは部長であったり保健福祉課長であったり、多分事務職ということが多いのでし ょうが、そういった保健領域の業務の統括を行う職員の研修の有無といいますか、そう したことも余り行われていないのが実情だと思うので、それを確認することも必要かと 思います。  前半の議論で私は、佐伯構成員が資料の10ページにお示しになったような、本当に行 政の地域保健従事者の専門性や機能という議論はかなり整理できていると思うのです。 もちろんこれを技術職の中で確認する、共有することが大事なのですが、それ以上に大 事なのは事務職、つまり自治体で保健業務に一番責任を持つ統括をする人たちが、こう いうことが保健活動、行政の役割として重要だということを認識していただくことが必 要だと思います。保健師や管理栄養士は保健指導をちゃんとやればいい、そういうサー ビスの提供が保健活動の中身だと理解されている方が少なくないので、そうした認識を 変えるというアプローチも非常に重要だと考えています。  伊藤座長  ありがとうございました。  田尾構成員  反論の反論ですけども(笑声)、通常、教科書的に申しますと、普通は新任の場合は、 よく言いますけど、3日、3カ月、3年ぐらい、あるいは、1日、1カ月1年という言 い方もありますが、それくらいでやめる方は大体適性はない。それを超えて3年以上、 あるいは1年を超えてやめられる方については、どこかマネジメントのほうに問題があ るのではないかと思うのです。やめる人を活かしきっていないということです。そうい った意味でいえば、きちんとなぜやめないのかその理由を聞けば、そのことでインタビ ューすればまた別の議論が出るかと思います。やめられない方についてその理由を問う 方がおもしろかろうという気がいたします。  私は人的資源管理論の立場から申しますと、やはりいい人をとって、彼らを人的資源 と生かすための方策は経営管理です。早めにやめてしまう人と、ある程度経ってからや める人、いつまでもやめない人、その人たちは分けて考えた方がよろしかろうと思いま す。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほか。  山野井構成員  1点だけ気になることは、調査をかけましたときにだれがこれを記入するかというこ とです。厚生労働省から市町村あてに調査が届くと、人事担当部門なのか総務課なのか、 いやいや、地域保健に携わる一番のリーダーを取っている保健師なのかで、結論という かアンケート集計が変わってくるのではないかなという懸念がありますが、どうでしょ うか。  伊藤座長  では私から、実はこの二つの調査につきましては、今後、この検討会の議論にも役立 てたいので、今日、構成員の皆さま方からいただいた御意見をどこまで取り入れられる か、事務局と、それからワーキンググループをつくっていただいてそこで検討していた だいたらどうかと思っております。したがいまして、例えば市町村のだれに記入してい ただくというようなことをアンケートを発送するときに書き込めるのか書き込めないの か、その辺のことも含めてワーキンググループで調査票の設計、集計のやり方などを検 討していただいたらどうかなと思っております。  そこで資料の2−3をごらんいただきたいと思いますが、24ページでございます。こ こで私の方で事務局と相談をさせていただき、このようなメンバーのワーキンググルー プを御提案させていただきたいと思っておるのですが、いかがでしょうか。ここに構成 員の方もいらっしゃいますし、構成員以外の方にも入っていただいて、ぜひ私も入りた いという人がおりましたら入っていただければ幸いだと思いますが……。では、このワ ーキンググループのメンバー、それから今後の進め方について、今申し上げたようなこ とで御了解いただけますでしょうか。では、よろしくお願いいたします。  それでは、後日、ワーキングメンバーとして御協力いただく皆さん方には、大変お忙 しい中を御苦労をおかけすると思いますが、御協力のほどをよろしくお願い申し上げま す。  それでは時間の関係もございますので、議題の「その他」に入らせていただきます。 ただいま、人材育成の調査について御検討いただいたわけですが、前回御報告いただき ました「新任時期の人材育成プログラム評価検討会報告書」は、内容としても大変充実 したいい報告書だと思います。そこで、本検討会におきまして、この報告書を今後市町 村で使用していただけるようなガイドラインとして作成して普及していきたいと考えて おります。つまり、これは検討会の報告書という形になっていますが、厚生労働省で市 町村あてにガイドラインとして示したいということで、端的に申し上げますとこの検討 会でそういうお墨つきをいただきたいということなのですが、そのことについていかが でしょうか。御了解いただけますでしょうか。  それでは、第4回の検討会までにガイドライン(案)として普及できる内容に少しこ の中身を改変したものを事務局につくっていただいて、そしてその内容を詰めていきた いと考えております。  次に、本検討会の今後の進め方につきまして、第1回目の検討会の資料の訂正がござ いますので、事務局から説明をお願いいたします。  加藤主査  では、資料3「検討会の今後の進め方」でございますが、第3回は平成18年10月12 日を予定しております。内容としては、前回お配りしたものでは、市町村保健活動を強 化するための連携・協働のあり方でしたが、分散配置における活動体制のあり方を一緒 に検討してまいりたいと思っております。第4回につきましては、今、皆様に御検討い ただき、これからワーキンググループを中心に調査を進めてまいりますが、分散配置に おける活動体制及び専門技術職員の人材育成に関する調査結果をここでお示しし、御議 論いただきたいと思っております。  あと、ただいま座長からも新任時期の人材育成ガイドラインを案として示すという御 提示もあったかと思いますが、第4回に「新任時期の人材育成ガイドライン(案)」とい うことで御議論いただきたいと思います。  以上です。  伊藤座長  ただいまの資料3につきまして、何か御質問等がございましたらどうぞ御発言いただ きたいと思います……。よろしゅうございますか。ありがとうございました。  それでは、ただいま事務局から説明かありましたように、第3回目の検討会は「市町 村保健活動を強化するための連携のあり方」、それから「分散配置における活動体制の あり方」について議題にしたいと思います。このことにつきまして今回と同じように座 長と事務局で相談させていただきまして、何人かの構成員の方に議論のたたき台となる ようなペーパーを作成していただきましてプレゼンテーションをしていただきたいと思 いますが、後ほど何人かの方にお願いしたいと思いますので、依頼されました構成員の 方は御協力をお願い申し上げたいと思います。  そのほか、実は二つのこれから実施する調査の中身についての議論の時間が少なかっ たのですが、もし構成員の方で調査の中身について御意見がある場合は、事務局に言っ ていただければワーキンググループでの検討の中に取り入れていただけるかとか、その 時間的なタイムリミットはどんなですか。  勝又室長  現在のところ、9月19日ぐらいにワーキンググループの第1回目を開催したいと考え ておりますので、できましたらそれ以前に事務局に御意見を入れていただけるとありが たいと思います。  伊藤座長  せっかく調査をやりますので、既存の調査で入手できる情報があるかないかというこ と、それから時期的なスケジュールの問題もあります。しかし、今後のこの検討会の議 論に必要なものは、この際、きちっと取った方がいいと思いますので、その辺のことを 含めて、今、勝又室長からお話がありました時期までに御意見のある方は事務局に出し ていただきたいと思います。 3.閉会  伊藤座長  それでは、若干時間は残っておりますが、これで議題については終わりました。事務 局から、今後のスケジュールについて御説明をお願いいたします。  加藤主査  それでは、今後のスケジュールについて御説明いたします。  前回、第1回目の検討会の後、皆様には第3回、第4回の検討会に向けて日程を調整 させていただきました。第3回の検討会は、10月17日、14時から16時。第4回の検討 会は、11月29日、同じく14時から16時を予定しております。場所等、詳細につきま しては、別途改めて御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。  事務局からは以上です。  伊藤座長  それでは若干早いですが、本日の検討会はこれで終了させていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。 (終了)