06/08/08 第3回臓器移植に係る普及啓発に関する作業班議事録 第3回 臓器移植に係る普及啓発に関する作業班 平成18年8月8日(火) 航空会館 504会議室 ○矢野補佐 それでは定刻になりましたので、ただいまより第3回臓器移植に係る普及 啓発に関する作業班を開催いたします。本日は阿部委員と土方委員から欠席の御連絡を 受けております。また、本日は議事の即しまして、NPO法人日本移植者協議会の大久 保通方理事長を参考人としてお呼びしております。また、近畿大学医学部堺病院の秋山 隆弘委員長も後ほどお越しいただく予定になっております。  それでは資料の確認をさせていただきます。議事次第に続きまして、資料1、移植関 連患者団体の臓器移植普及啓発活動と問題点。資料2、学会における臓器移植に係る普 及啓発に関する取り組み。資料3、海外における臓器提供への取り組み。資料4、移植 医療の普及啓発に関する取り組みについての都道府県へのアンケート調査の集計結果に ついて。参考資料が、臓器移植の現状等について。以上でございます。  それでは議事の進行を大島班長にお願いしたいと思います。 ○大島班長 それでは第3回臓器移植に係る普及啓発に関する作業班を開催させていた だきます。前回の作業班では日本臓器移植ネットワークにおける普及啓発に関する取り 組みについて、臓器移植に係る普及啓発に関する先進的な取り組みについてということ で、藤田保健衛生大学の神野先生、福岡からは杉谷先生、新潟県の秋山さんから報告を いただきました。本日は患者団体における普及啓発に関する取り組みについて、学会に おける取り組みについて、海外における普及啓発に関する取り組みについてヒアリング をしまして、その後、厚生労働省で前回行うと言っていた調査の結果が出ましたので、 都道府県における臓器移植に係る取り組みについての説明をいただきたいと思います。  それでは議事に入りたいと思いますけれども、まず最初に、患者団体における普及啓 発に関する取り組みについてということで、大久保参考人から説明をお願いしたいと思 います。よろしくお願いします。 ○大久保参考人 皆さん御存じだと思いますが、うちの会はこういった会だということ を簡単に。発足して15年、移植を受けた方が中心になって活動している会で、1600人 の会員です。目的としては臓器移植の推進と移植者の社会的地位向上ということでやっ ております。  我が国における移植医療の課題ということで、どういうことが必要かということで私 たちの考えていることを列挙させていただきました。一番問題になっていますのは現行 法の改正ということで、これは署名を必要としない家族同意での改正ということで、全 面改正という要求をやっております。健康保険カードや運転免許証に意思表示欄を設け るということも含まれています。そのほかにも、意思表示確認システム化ということで、 今年度からインターネットによる登録も始まるということですので、一歩前進かなと思 っています。普及啓発については、国民の理解を得て臓器提供を増やす運動ということ で、このためには広報はちゃんとした戦略を立てて、なおかつ継続的に行う必要がある。 日本ではこれが一番欠けていたのではないかと私は思っています。提供病院の啓発と環 境整備、施設指定の緩和ということも必要だと思っています。移植医療に対する保険適 用については今年度より実施されましたので、あと残っているのは生体の肺と膵臓くら いということで、これについては大きく前進したと思っております。移植適用者の術前 術後のフォローということで、移植医療には成績向上というのが欠かせませんので、こ れも大きな課題だと思います。それと臓器提供者家族へのフォロー、こういった問題が 日本の移植医療にはあるのではないかと思っています。  移植関連患者団体ということで、1994年に臓器移植にかかわる患者6団体が協力して 国会議員との懇談会を開催して、そこから臓器移植の必要性と法案の早期成立というこ とを要望し、そこから今までいろいろな形で活動しています。2002年末までは臓器移植 関連患者6団体、臓器移植推進連絡会という形で活動していまして、当時は支援団体も 含めてかなり広い活動になっていたんですけれども、2003年4月に改組しまして、患者 団体だけでの臓器移植患者団体連絡会というのを新たにつくりまして、そこで法改正と 普及啓発活動をやっております。活動の中心は臓器移植法の改正になっております。  移植関連患者団体の活動としては、マスコミを通して一般の意識を換気する啓発活動。 余り大きなことはやっていません。シンポジウムをやったり、毎年やっていますパレー ドとか、そういった取り組みをやっているだけで、活動としてはかなり小さいものです。 大きな活動としては、法律の改正ということで国会請願を4回やりまして、各50万人ず つの署名を集めて、総計200万人の請願署名を集めて国会に提出しています。国会議員 へのロビー活動として、特に2004年9月から国会議員への直接面談による陳情を行っ て、既に300人近い方との面談をやって法改正への理解を得ています。そういう意味で は今の活動の中心は法改正だと思っています。厚生労働省への要望と折衝というのもず っと続けてやっております。  我々日本移植者協議会としてはそれだけにはとどまりませんので、普及啓発の活動と いうのを大きな活動の中心に置いています。我々はそれほどたくさんのお金を持ってい るわけではありませんので、どういう形で普及啓発活動に寄与できるかということで考 えて、最初に始めたのが全国移植者スポーツ大会というもので、1991年発足の年から始 めています。その後毎年都道府県を巡回して開催していまして、これについてはかなり マスコミ等に大きく取り上げられていますので、普及啓発効果としては非常に高いと思 います。金額的にもそんなにすごい金額がかかるわけでもないので、非常に効果がある ものだと思っています。2001年に第13回世界移植者スポーツ大会を開催しまして、こ のときは2年近く準備をして、予算も2億円くらいの運営予算が必要でしたけども、そ れをやって、ある広告代理店にモニタリングをお願いしましたが、そこの概算で広告費 に換算すると約30億円くらいの効果があるという話を聞きました。スポーツ大会という のはそういう意味でかなり普及啓発のツールとして有効ではないかと思っています。  1994年に国際移植学会が京都であったときに初めてやりました、「ギフト・オブ・ラ イフ 移植を受けた子供たちの作品展」というのを毎年全国を巡回して行っていまして、 年間50カ所以上で必ず開催しています。新たに作品等も募集して、常時開催するという 形で続けております。昨年度から原画展というのも年5、6回は開催するということで、 これについては費用が非常に少なく、なおかつ動員は毎年万単位の方がいらっしゃると 思いますので、そういう意味ではツールとして費用対効果が高くて、有効なツールだと 思っております。いかに安いお金で高い効果を上げるかということを考えてやっており ますので、そういう意味ではこれも非常に大きな効果のあるツールだと思っています。  「生命・きずなの日」というのがありまして、日本記念日協会に5月17日として登録 されているんですけれども、この日にドナー・ドナー家族への感謝の集いというのを毎 年開催しています。特に今年からは私たち移植者が主体ということで、お金集めからす べて我々がさせていただきました。移植者としては当然のことなんですけれども、臓器 移植が社会的な認知を受けるためにはドナー家族に対するフォロー・顕彰というのをき ちんとしないと、なかなか広がっていかないのではないかと思います。ヨーロッパやア メリカ、オーストラリアなどを見ていますと、ドナーに対するいろんな催しなり顕彰な りが盛んに行われていますので、こういうものを日本でももっと定着させる必要がある と思っています。それ以外にも、同じ5月に名古屋で臓器提供者慰霊祭というのを日泰 寺という、仏教ですけど無宗派のお寺で毎年開催していまして、こちらにも毎年200人 くらい参加していただいて、ドナーファミリーの方にも来ていただいております。お金 がない中でどういうふうにやるべきかということで、こういう形でやらせていただいて います。  患者団体の活動の問題点として、12万とか13万人くらいいるんですけど、会員が多 い割には活動する人が非常に少ない。各団体とも人材不足に悩んでいます。当事者とし ては社会と向き合って訴えていく責任があると思うんですけれども、なかなかそれが果 たせていないと思っています。一部の団体は非常にお金を持っていますけれども、それ 以外の団体は活動資金が少なくて、うちの会も会員の寄附や会費ではとても賄い切れな くて、一般企業等からも寄附をいただいて活動しているのが実状で、資金的なものが難 しいとは思っています。また、ほとんどが素人の集団ですので、広報などの専門家がい ませんので、有効な活動になっていくのかというのが難しいところです。そういった専 門家の参画がこれから必要ではないかと思います。患者団体としてはもう少し活動自体 を単純化するべきだと思っていまして、理解しやすいスローガンなりが必要ではないか と思っています。今後の問題としては、資金・人材の負担をだれがするのかということ が一番大きな問題だと思っています。  日本移植者協議会の活動の問題点として、私たちはお金がないので、何とかマスコミ の方たちと仲よくやって、そういう方たちと常に交流を持って、マスコミの人たちから も情報を得る、こちらも情報を提供するという形で、少ない投資効果で高いリターンを 生むためにはマスコミの方たちに協力をいただかなきゃいけないということで、特に私 たちはこれを前から考えてやってきています。そのためにマスコミ懇談会というのを春 と秋に2回やりまして、意見交換などをやっています。その中でマスコミの方に理解し ていただき、一般の方に理解していただくためには、短いメッセージが必要だと。長々 しいメッセージを言っても全然伝わらないので、短いメッセージで的確に相手に伝える ということが大事ではないかと思います。移植シンポジウムとか「臓器移植」と名のつ くものをいろいろやってもなかなか動員がなくて、実際にはほとんど関係者ばかりとい うのがどこでも同じだと思うので、これを変えていかない限りは広がっていかないんだ と思います。今後は一般の方の目を引くようなアイキャッチャーをつくって、ターゲッ トをどこに置くのかということをきちっとして一般人を動員する必要があると思いま す。昨年は9月に東京フォーラムにおいて、全国骨髄バンク推進連絡協議会と一緒に市 民フォーラムを開催したんですけど、これはすごいお金をかけたものですから、知らせ るということにおいてはかなり広く知らせることができたので、600人の人を動員する ことができました。ある程度お金をかけて広く知らせればこれだけの人間が集まるとい うことだと思います。今後については、新しい切り口の活動が必要だと思います。今ま でと同じようなことをやっていたのではなかなか一般の方の関心は得られないと思いま すので、糖尿病とか肝臓病とか、健康フェスティバルとか、移植とは一見関係ないよう なところから入っていった方がいいのではないかと思っています。  臓器移植の普及啓発に関することでどういうことが必要かということで、臓器移植と いうのは特別な医療であるということを皆さん感じていらっしゃいますので、一般医療 との垣根を何とか取り払うということが大事だと思います。一般の人が関心のあるよう なテーマを取り扱うということが大事です。予防医学〜治癒医療〜移植医療という一連 のプロセスの中で移植医療の認識を促すことが大事ではないかと思っています。糖尿病 の人は1370万人いるそうですし、肝臓病も800万人くらいいらっしゃるといいますから、 この話をすると皆さんすごく関心を持たれます。そういったところから移植への関心を 呼び込むような方法もこれからは必要ではないか。提供するだけではなくて、自分も受 けなきゃならない確率が高い、同じくらいの確率があるということを知っていただくよ うな切り口が大事ではないかと思っています。臓器移植の普及啓発活動というのは、き ちっとした戦略を立てて継続的に行わなければいけないので、ただ単発でやればいいと いうものではないので、政府や自治体なども積極的に戦略を立てて、連携して運動する ことが必要だと思います。臓器移植の普及啓発についてはネットワークが中心になって やるべきだと思っています。ただ、ネットワークもこのままの状態でできるかというと、 なかなか難しいと思います。ネットワークの中でドネーションの配分を行うようなとこ ろと、広報をやるところと2つに分けるとか、別の組織をつくるとかいう形で、今のネ ットワークの中で分けた形でもいいですし、別の組織で普及啓発をやらないとなかなか 難しいのではないかと思います。コーディネーターの方々が片手間にできるようなもの ではないと思っています。そのくらい広報活動というのは大変なことだと思います。そ のためには費用が当然かかってきます。そういった費用については国とか自治体が負担 すべきだと思っています。  臓器移植普及啓発の今後の課題として、現行法の改正、一般社会へ移植医療に関する 知識をどう広めていくかということ、一般の方に臓器移植に対する理解と、誤解を解消 するようなことが必要だと思います。一般へ移植医療が浸透することによって提供施設 の協力も得られると思います。提供施設に対してもプレッシャーになると思います。一 般の方が高い関心を抱くということは提供施設もそれだけ協力しやすくなるということ ですので、それが結果としてオプション提示の増加とか承諾率向上に寄与するのではな いかと思っています。移植医療の普及啓発は国の施策として行うべきものであって、そ のためにお金をかけるとか、政策的誘導を行うとか、国を挙げてやらない限りは日本の 臓器移植増加にはつながらないと思っています。なおかつ、普及啓発は素人がやるもの ではなくて、広報の専門家が入ってやらないとなかなか効果的な普及啓発はできないと 思います。そのためにはそれ相当の費用がかかってくるということで、それなりの予算 をつけないことにはだめだと思っています。  以上です。御清聴ありがとうございました。 ○大島班長 ありがとうございました。何か御質問、御意見、ございますでしょうか。  現在の臓器移植の社会的環境は以前と比べると、ネットワークが整備された、法律も できて一歩前へ進んだ、診療報酬はついた、地域中心にアロケーションも変えた、いろ いろ意味でそれなりの整備は着実に進んでいるか、少なくとも一歩一歩進んでいって、 その都度大きな問題とされたことについては整備されてきている。だけど、それに並行 して臓器の提供が増えてきているようには全然思えない。ぽつんぽつんとモグラたたき のように一つずつ解決しているだけの話であって、それが戦略的・継続的な形になって ないから増えてこないんだと、こういう理解でいいですか。 ○大久保参考人 我々は身近に移植の人ばかりいるので、移植医療というのを当たり前 みたいに思ってるかもしれないけど、実際に我々が10月にイベントをやろうということ で企業の方に話しても、ほとんど何も御存じないですね。まず関心もないし。その中で 企業の部長さんくらいの方たちに話をするときに、具体的に何でこういう話になるのか というところを、要するに糖尿病とか肝臓病というのはこのくらいいることを御存じで すかという話をしても、びっくりされるんですね。自分のこととしてだれも考えていな い、だれもそういうメッセージを送られてないんです。臓器移植という言葉はだれでも 知ってても、実際は自分のこととだれも思ってないから、何かあったときに自分が提供 するとか、提供を受けるとか、そういうものが頭の中に浮かんでこないんじゃないかと。 それをもう少し刷り込みをしないとだめだと。刷り込みをするためにはかなり継続的に やり続けないとなかなか刷り込みができないんじゃないかなと思うんですね。広くばー っとやることも大事かもしれないけども、あるターゲットをやって、このキャンペーン については30代、40代にするのか、いや20代の若い子にするのか、10代にするのか、 全部戦略が違うと思うんですね。きちっとその方向に向けてメッセージを送り続けない と伝わらないんです。それが行われてないんだと思います。 ○大島班長 ほかに御意見ございますか。  後で欧米の話も出てくるかと思いますけれども、欧米ではそれが行われていると。 ○大久保参考人 アメリカなんかは僕の見た感じとしては行われていると思います。 ○大島班長 直感的に思うのは、基本的なメンタリティとかベースの違いはあるのかも わからないけれども、自分が臓器提供するとかしないというようなことをふだんから刷 り込まれているという層が半分いるとか、3分の1いるとか、そんな状況というのは欧 米で本当にあるんだろうかという感じがするんですが、ある状況になったときにこれは 大変だということでは日本も欧米も同じことではないかと思うのですが、もちろん臓器 移植とか脳死とか、そういった極めて一般的なことについてはある程度頭の中にはあっ ても、具体的に自分とか家族が提供しなきゃいけないなんていうことを普段から考える ような状況というのは本当にあるんだろうかという感じはしますけどね。 ○大久保参考人 考えることはないと思うんですよ。それがどう意識の中に入ってるか です。自分は提供するとかしないとか毎日考えてるわけでも何でもないんですけど、そ ういうものがずっと流れてきてると無意識のうちにある程度感じているわけです。それ が自分の立場になったときに初めて思い出す。ふだんはそんなの思い出しもしないと思 います。 ○秋山班員 さっきの浸透するとかしないとかいうことで、新潟でのターゲットについ ては、高校生から20代、30代をねらった啓発を頑張ってるんですね。何をお手本にし ているかというと、エイズがイコール死だ、やばいという話に世の中がなったときに、 これを普及啓発しなきゃいけないということで学校教育から導入し、社会もそれを受け 入れるという格好があったわけですが、それをイメージしながら動いております。啓発 をしていて何が足りないんだろうという御意見からいうと、移植医療は人の命を助ける とかそういう一般的なことは御理解いただけたけども、移植医療って実際何やってるの というところが見えない。移植医療って何だろうということが見えないからこそ、した い、したくないの意思を表明する率が下がるんだと思うんです。つまり、いいものだと いうけれど、いざとなったらどういう手続がいるのか。いまだに提供後は御遺体がばら ばらになって袋にでも入って返ってくるんじゃないかと思われている方もいらっしゃ る。それでは正確な意思を表明していただくだけの情報提供ができてないと思います。 今の話の基本は、行政インフラとしては相当そろってきたと僕は思うわけです。その行 政インフラをどう有効に地域に根づかせていくか、その手法として私が取り組んでいる のは、若い世代、つまりHIVの問題を世の中に広めたのをイメージしながら新潟版と して何ができるんだろうと。第2のステップとしては、DAPを参考にするような医療 機関はどうだろうという二本立てでやっている。言いたいことは、行政インフラとして は不十分ながらもそろってきたろうと。これをどう有効に扱うかについて、私としては ターゲットは若い者で、そして、したい、したくないを表明してもらうための材料をど う提供するかという技術面をどうしようかと。ここがポイントじゃないかと僕は思って います。 ○大島班長 ほかに御意見ございますか。この問題はまとめるときにどうしても必要な 議論になりますので、また後でもお伺いしたいと思います。  先へ行きまして、学会における普及啓発に関する取り組みについてということで、秋 山参考人から説明をお願いしたいと思います。 ○秋山参考人 近畿大学の秋山です。今日は遅れて参りまして失礼しました。日本移植 学会としては、患者さん団体がいろいろやっていただき、あるいは行政の方でいろいろ やっていただき、我々移植に携わっている立場でもいろいろやっていかなきゃいけない だろうということで、臓器提供推進委員会というのができておりまして、初代委員長の 高橋公太委員長が主としてDAPを推進するというところから手がけて、それを引き継 いで野本理事長、大島先生からもいろいろ話をお聞きしてたんですけど、移植学会の中 では特に心停止下の献腎提供に的を絞ってやろうと。脳死下の多臓器提供ということが 学会の大目的なんですけど、まず心停止下の死体腎提供を増やすというのを数をたくさ ん積み重ねて、これで勢いをつけようということでそこに絞るということで引き続きや ってまいりました。  今2年ちょっとになりますけども、当初どういうことをやろうかということで、ここ に(1)から(6)まで並べたようないろいろな話が出てまいりました。まずDAPをそのまま 続けるということ。救急の方が主な提供ソースになってるんですけれども、近畿地区の データを見てますと、脳外科からの提供が非常に多いということで、脳外科の方へ絞っ て提供を働きかけようという話も出されました。レシピエント選定基準が途中で変わり まして、これでうまくいくはずだったのが、いろんな問題点が出てきたということで、 それをもう一回見直してもらえないかということを関係方面へ働きかけようじゃないか という話もありました。提供病院でのオプション提示というのをもう少しシステマティ ックに制度化されるともう少し献腎が増加するんじゃないかということで、オプション 提示を制度化しようということを行政へ働きかけると。この医療は国の政策医療である という話がありましたけれども、たくさん腎臓を提供した病院が病院評価につながって インセンティブを高めるようなことになると、もう少し歯車が回り出すんじゃないかと いうことで、行政への働きかけ。ドナーカードがどこまで活用されてるんだろうという のが話題になりまして、ドナーカードを持っている方がどういう流れでいってるんだろ うということを調べてみようという話がありました。  いろんな話が出たんですけど、我々ができるのはどの辺だろうということで、的を絞 って(6)、移植学会の評議員が所属する医療機関を対象として、そこの病院でドナーカー ドがどれだけ生かされているか、あるいはドナーカードに対して患者さん、患者さんの 家族、病院職員がどのような意識を持っているんだろうということを調べるという、非 常に地道なことですけれども、その辺から実勢調査をしていこうということで、我々の 委員は北海道から沖縄まで10数人の委員に入ってやってますけれども、このメンバーを 全国7地区に分けて、評議員のいる病院全部をしらみつぶしに調べようということでや りました。  そのデータが後ろについている円グラフです。調べた項目は、倫理委員会があるかど うか、臓器提供の実績があるか、ドナーカードを配布する場所が病院の中にあるかどう か、院内コーディネーターが配属されているか、職員が臓器移植に対して意思表示を確 認するシステムがあるかどうか、患者さんについてはどうなのか、というようなことを 昨年5月から7月にかけて、全評議員を対象にして192施設でやりました。回収率は半 分をやっと超えたところですけれども、その結果を見ていただきますと、倫理委員会が 設置されているかどうか、これは大学病院がほとんどになってきますので、さすがにこ れはほとんどのところがありました。提供実績も半分以上の施設で経験があったと。た だ、ドナーカードを院内に設置する場所がはっきりしているのがどれだけかというのを 見ますと、18%の施設では置く場所がないと。これだけ全国的にやられているにもかか わらず、いやしくも移植学会評議員が所属する施設で置いてないところがあるというの は全然話にならないじゃないかというデータが出ておりました。職員の意思表示確認シ ステムがある施設というのはわずか3%ということで、これはもうちょっとしっかりや らないといけないんじゃないかと。患者さんへの確認システムの整備が27%であります けども、これは救命センターとかICUだけで答えをいただいたところもあったので、 この数字はちょっと高目に出てるかもしれません。全病院でそういうシステムができて いるところはわずか12施設と少ない状況でありました。  こういう調査の教訓から、導入が不十分であるという結果を踏まえまして、各施設の 管理者へ働きかけようかという話もあったんですけれども、もう少し腰を据えてやって みることとして、職員のドナーカード所持に関するアンケートをしてみようという話に なりました。大阪大学と新潟大学ではそのデータが既にありましたので、それを調べる と職員の所持率は約30%であるというデータであります。我々委員の施設で調べてみる と、岡山医療センターと近畿大学堺病院で調べた結果、それぞれ26.1%、28.6%という ことで、阪大あるいは新潟大学のデータとよく似た状況だということ。ただ、それを常 時持っているかというと、その率は半分に減ってしまいます。職種別に見ると若干違い があるということで、これを全施設にお願いしてデータをとるようにしていただいて、 6、7施設の共同データということで学会で公表して皆さんに御批判いただこうという ところへいっております。ということで、中だけでやっていることで、余り外へ働きか けというのはなかなかできておりませんで、非常に地道なところでやっております。  これから考えていることということで、何をやったらいいんだろうというのが暗中模 索でして、秋山さんにも来ていただいたり、長谷川先生もメンバーに入っていただいて いろいろ話をお伺いしたり、DAPの非常に進んでいる県の方の話を聞いたりというこ とで、何ができるかいろいろ考えているんですけど、今のところはなかなか新しい方向 性が出てきていないと。いずれにしても、移植医がやっていくことに限界があるのかな と思っております。やはりこれは国の施策としてやっていくというところへいかないと なかなかしんどいかなと。行政インフラは整備されているという話がありましたけど、 もっともっと強力な、移植医療というのは社会医療ですから、一人の患者さんを治すと いうだけのあれじゃなしに、提供者がいるという普通の医療とは違う医療ですから、い ろいろな意味で行政がもっとしっかりと乗り出していただけるとうれしいなと思ってお ります。  以上で報告を終わります。 ○大島班長 ありがとうございました。何か御質問、御意見、ございますか。  前回のヒアリングのときの神野先生、杉谷先生の話をまとめてみると、神野先生が強 調されていたのは、結局は移植医の熱意が動かすんだと。日本の今の状況を考えると、 それが最も大きなモチベーションだということで、移植医の熱意が臓器提供につながる 部分は非常に大きなものがあると。杉谷さんのところもコーディネーターと移植医のコ ラボレーションが、院内コーディネーターという仕組みをうまく使いながら、その情熱 が具体的に臓器提供の増加につながっていくというようなお話だったと理解したんです けど、特に神野先生の話は自分の名古屋の状況なので、全く制度も何もない時期に、私 たちがまだ30代、40代という若いころなんですけど、あのころ私自身が院内コーディ ネーターみたいなことをやっていたわけです。数だけでいけば60腎ですから、全国の 20分の1だと考えれば、年間60腎出たということは1200腎、それは何の制度もないと きに若さと情熱だけで走りまくった結果です。システムも何もなしでそこまでいったと いう一つの成功神話につながるポテンシャリティは日本の中にあるということを証明で きた事例だろうと思うんですね。大阪もそれに近いような状況までいってたんですよね、 あのとき。 ○秋山参考人 大阪でも年間一番多かったとき55か56かですね。 ○大島班長 ですよね。ところがそれが軒並みつぶれてしまった。制度や何かができれ ばできるほど軒並みつぶれてしまったという非常におかしな状況につながっているわけ ですけれども。 ○秋山参考人 あのころからコーディネーターは、大阪腎臓バンクコーディネーターと いう形で移植医と一緒にやっていただいていて、我々の手足になってと言ったら失礼で すけど、やっていただいて、我々移植医が先頭に立ってたことは事実です。ただ、何の ルールもなかったから我々が好きなようにできた。我々が好きなようにやってることを 非常に批判されて、その最たるものがワンキープ、ワンシェアですか、それが批判され て、システムにもなってないような移植医が前面に立ってやってる活動がつぶされてし まって、そして法律ができ、ネットワークというシステムができて動き出して、移植医 が全然動かなくなって何もできなくなって、コーディネーターがせっかく一生懸命やっ てくださっているのに空回りになってしまってということで、火が消えたようになって るんですけども、今からまた移植医が靴の底をすり減らせて動けるかというと、一回消 えてしまった火をもう一回おこすのはなかなか難しくて、移植学会でこれだけのメンバ ーが集まって話していても、ああでもない、こうでもないということでなかなかエネル ギーが一つになって動いてこないんですけど、ワンキープ、ワンシェアというのは一つ の大きなモチベーションがあって、鼻面のニンジンを追いかけて我々はやってたんです けども、それにかわるようなモチベーションを上げるシステム、一つは、提供病院で救 急医あるいは脳外科医が自分たちの本来やってきた救急医療あるいは脳外科医療の結果 生じた脳死という患者さんに対して、もう一仕事頑張ろうかというモチベーションが上 がるためには、救急病院あるいは提供病院に御褒美を上げられるようなモチベーション、 システムができればと。病院機能評価のバージョン5の中にもちらっとは出てくるんで すけど、余り目に見える形になってない。これがもっとはっきり目に見えて、それが鼻 面のニンジンになるようなシステムまで強力になってくれると、それはそれで一ついけ るのかなと。確かに救急施設なんかでも、皮膚移植の皮膚とかいえば救急医療医も自分 らもらって、その皮膚を使って別の患者さんを助けられるというところがあるので、あ る意味、皮膚移植に関しては提供医であり、かつ移植医であるという立場になれるんで すけど、腎臓、肝臓、心臓でそうなれるかといったらなれないわけで、なかなかモチベ ーションが上がらない。モチベーションを上げるためにはその辺の御褒美、もう一つは ワンキープ、ワンシェアというのがレッドカードを出されたみたいな形になってしまっ ておりますけれども、何らかの形でそれに近い移植医にとってのモチベーションになる ようなものが出てこないといけないわけです。  それともう一つは、世の中の風潮そのものが、いろんなところを回っても全然だれも 知らないという大久保さんの話もありましたし、学校教育というところから話を広げて いくと、時間がかかるけど日本国民も脳の奥底で刷り込まれて、自分がその番になった ときには、そういえば小学校のときにこんなの習ったなという、そうしたら提供しよう かというところにいくのかなという話もありました。マスコミでのコマーシャルでいろ いろやられていますよね。臓器提供のCMが流れてますけど、社会の皆さんにそういう 世界があるんだということを意識してもらうというのも一つの方法かなというようなこ とを考えております。 ○大島班長 ほかに何かございますか。 ○金井班員 前回の会議の中でもお話しさせていただいたように、先生が言うように、 移植医が熱意があるときには提供がある、なくなるとだめになるというのは、実際僕も 30年アイバンクをやっていましてそういう感じを受けております。それと、病院全体が 熱意を持ってそれを理解してくれないとなかなか難しい。順天堂の場合ですと、病理解 剖のときに承諾書の中に臓器提供、アイバンクですけど、そういうものを承諾するとい うことが書いてあるんですけど、残念ながら病理解剖で提供がなくなってしまうという ことで、今度は入院のときにそういう承諾を聞いていただくということも考えたんです けど、病院サイドはなかなか理解してくれませんね。アイバンクの場合ですとライオン ズクラブの方がすごく御熱心なんですけど、ライオンズクラブの方が仏教会員になった ときになかなか提供がないという事実もあるんですね。ですからなかなか難しい問題だ と思います。若い人から教育していかないと無理じゃないかと。東南アジアですと仏教 関係の方が割合御熱心ということもあるんですけど、日本は仏教関係の方がもうちょっ と積極的に入っていただけてないのかなというのを感じました。 ○秋山参考人 確かに仏教関係の人は冷たいですね。余りわかってないというか、日本 の仏教はちょっと違うんでしょうね。 ○秋山班員 新潟の浄土真宗では2年連続坊主の会で臓器移植の講演を2時間ずつさせ ていただいて、大変関心を持っていただいていますが、先ほどの普及啓発ということに ついてちょっと誤解があったかもしれませんが、僕の言いたかったことは、僕が始めた ころにはほとんどツールがなかった。今はそういう材料ができている。ただ、地域でど うであるかといった場合に、そういうツールをちゃんと使える地方行政がいるかどうか ということを実は言いたかったので、国は保険制度ができましたとか、意思表示カード をもっと積極的に配りなさいとか、いろんな通知を出します。それに真剣に取り組む地 方自治があるかどうかという意味でのインフラはそろってきたので、あとはやり方だと いう意味合いで申し上げたんです。ですから、強制力は今のところないかもしれません が、それが必要だという地域があればそれを取り込まなければならないという地方行政 ができるわけで、今のところそれは靴の裏をすり減らすしか方法がないのかもしれない というのが僕の意見なんです。 ○菊地班員 関係団体や、コーディネーターも移植医も、問題点を発掘して、できるこ とに関してはほぼやっていると私は思っているんですけど、一つ秋山先生に質問があり ます。今腎臓の移植施設が160施設以上あるのですけれども、それらの施設で1名ずつ 腎臓の御提供いただければ160人の腎提供になるわけですね。隗より始めよじゃないで すけれども、1腎も提供いただいていない移植を実施している施設が余りにも多い。病 院別に分析すると限られた病院ということになっている。そこに一つ問題があって、自 分の施設の普及啓発は、移植の先生方ができる、靴をすり減らしてという話が出ていま すけれども、自施設であれば協力の依頼とか普及啓発とか、ターゲットを絞るというよ りも、そこの病院の医療従事者の方に協力をしていただくということですから、できる ところからやっていく必要があります。そこから実績が上がらなければなかなか近隣の 施設に波及していかないと思うんですけど、どうでしょうか。 ○秋山参考人 確かにそうでしょうね。ただ、腎移植施設160何施設、そこの施設で提 供する機能も持ってる施設というのはそのうちのかなりの数がある。そういうところか らは現在までに提供された実績というのは現実にあるだろうと思いますし、自分の所属 している近畿大学では救命センターから随分たくさん提供してもらいました。ただ、今 ちょっと状況が変わってますけども。できるところからはやってもらってるんじゃない でしょうかね。割とそれはできてるかなという気がしますけど。ただ、脳死での臓器提 供となってくると話が違ってくるかもわからない。 ○菊地班員 一度移植学会でも、移植病院からどれくらいの腎提供をいただいているか を調べていただいて、考えていただければと思います。 ○秋山参考人 移植医に対する脅迫……お前ら何してんねんと。 ○菊地班員 いえいえ、そうではないですけど。 ○篠崎班員 もう一つ大事なポイントだと思うんですが、ちょうど移植医療が始まって 軌道に乗ってから約50年近くだと思うんですね。世界的な動きとして、日本では法律に よって、移植の先生が夜中寝ずに頑張ったインセンティブが、いよいよ自分の患者さん が救えないということだというんですが、世界的に見て、第一線で頑張った移植の先生 方が世界中で今定年退職を迎えてるんです。じゃあ世界で何が起こってるのかというと、 やはりだめになっていく国が非常に多い。ただ、中には成功している国が幾つかある、 あるいはシステムに変えていった国がある。それはアメリカタイプとかヨーロッパとか あると思うんですね。そのあたりを意識しながら、どこの国でも移植の先生方の職人芸 で支えてきた医療でしかなかったんですね。これをいかにシステムに変えていったのか。 そのプロセスが国によって、文化によって全く違ってたんですが、そこに対する努力を するチャンスがなかった。突然法律ができた、国民はいきなり臓器提供に限って脳死み たいなことを知らされて混乱したということがあるので、これは増えないのは当たり前 だというところから議論をスタートすべきだと思うんですね。やってた先生にもう一回 頑張ってやってくれというのははっきり言って無理ですし、国民がそういう意識で医療 を受診していないと思うんです。そこのところで根本的にシステム化したものをいかに 提供できるか。逆に日本人に合った文化でできる部分って非常に大きいと思います。そ の辺を両立してどうやるか、これは戦略的にやらないと、どういう戦略に基づいて何を やってるのかというところを議論を深めていく、あるいは国民として何が必要なのか、 本当に国民に理解していただけてるのかどうか、理解していただくためには何が必要な のかというあたりが一番大きなやり方なのかなと感じております。 ○大島班長 ありがとうございました。篠崎先生には次ぎにプレゼンテーションしてい ただきますけれども、非常に大事なポイントをお話ししていただきました。移植医療と いうのは法律ができて、はっきりと国の中でも認知されましたし、制度的にも社会的に も認知されていると。一方では医療技術としてほぼ確立されているということも言える わけです。そういう状況の中で、実際に臓器不全になった人は一体どうすればいいのか。 そこに臓器がなければこの医療が完成しないという非常に大きなジレンマが生じるわけ ですけれども、その一番ポイントのところを正面から見詰めて、患者さんにとってはど うしたら一番いいのかという正面から見詰めた議論が徹底的にやられてきたような感じ がしないんですよね。周辺のところばっかり。最初は移植医療不信というところで、そ の振り子が逆の方に物すごく振れてしまって、今から考えてみると物すごい極端な世論 形成があって、徹底的に医療不信が高まった。移植医が何かちょっと動くと、あいつら 一体何をたくらんでるんだというような格好でがんじがらめにされてしまって、まるで 身動きできないような状況になってしまった。それが臓器提供にも物すごく大きな影響 を与えてきた。それがいいのか悪いのかという検証は全くされなくて、ある一定の世論 形成のようなものができてしまった。そのうちに移植医は年をとってくるし、やる気も なくなってくるしというような格好で、全体が落ち込んでくる。ところが臓器不全の患 者さんというのはその間どうなってるのかというと、完全に穴の中に落ち込んだような 形で宙ぶらりんになっている。しかし、臓器移植を受けないことには、生きるか死ぬか という状況になるわけですから、諸外国へ行ってたのがだんだん外国からも閉め出され てくる。受け入れる国が非常に少なくなってきて、東南アジアの国へ行く。東南アジア の国では臓器売買とすれすれじゃないか、あるいは臓器売買そのものじゃないかという ことが言われているような状況があるけれども、どうもそうらしいとは思っても、そこ を突くとややこしい話になるというのはよくわかっているので、みんな黙り込んじゃっ て一体どうなるのかなという状況をただ見てるにすぎない。又、先日もありましたが、 生まれたばかりの赤ちゃんがヒルシュスプルング病で小腸がだめだということになっ て、2カ月か3カ月で1億4000万も集めて米国へ送り出すと。これって何か変だなとい うふうにみんな思うんだけど、しかしそれを言い出すと日本の矛盾が一度に噴出してき そうだから、そこを突いちゃうとまずいぞというような感じがあるのかどうかわかりま せんけども、正面から徹底的にそれに対する目の向けたとか議論というのをやってこな かったような感じがするんですね。新たな問題がいろんなところで、国際的な問題にも なって出てきて、そのツケがみんな患者さんのところへ行ってるというのが今の状況じ ゃないかなという感じがしてるんですけども。  というようなことで、国際社会で一体どうなってるのかということを篠崎先生の方か らお話しいただきたいと思います。 ○篠崎班員 前回所用で欠席させていただきまして、流れがわからずに発言させていた だきます。今回は海外における臓器提供への取り組みを10分間ということなので、かな りかいつまんだ形でお話しさせていただきます。  まず普及啓発という言葉なんですが、明確に一般啓発活動(Public Education)と医 療従事者啓発活動(Professional Education)は分かれていると。特にメインでは日本 臓器移植ネットワークがやっておられる広報活動でやっておられて、一般の国民にいく と。ただ、これは実績が実証されていまして、一般啓発活動は文化をつくるのには有効 で、お金と時間はかかりますけども、臓器提供あるいは組織の提供などに直接ははね返 ってこないということで、時間のかかる作業であるということです。今回話題になるの は医療従事者啓発活動ということで、海外では病院開発(Hospital Development)とい うふうに考えられています。その中でも病院管理支援ということで、病院の中で何をす ればいいのかを明確に支援していくという作業が移植コーディネーターのメインの仕事 ということになります。提供の可能性のある方、ポテンシャルドナー・ディテクション ということで、臓器提供の可能性のある方をいかに見きわめられるか、それがわからな いのでは声のかけようもないでしょうということです。提供の可能性がある方で、ぎり ぎりになって御提供したいというときにできない、あるいは御家族のケアもできていな いという状況では、提供に結びつく確率が減るということが実証されていますので、グ リーフケアということも含めてドナーマネージメントということが非常に重要です。  これは「移植」に投稿させてもらったデータですが、100万人当たりのうち臓器提供 の数を見ますと、ヨーロッパが非常に高いということが見てとれると思います。スペイ ンを見ていただきますと、2003年で36人くらいになっています。日本は0.5、今は0.6 になっていると思いますが、このような状況です。  世界的なところを比較してみますと、米国型の提供システム、ヨーロッパ型と2つに 分けられるかなという感じがしています。米国型は看護師ベースの移植コーディネータ ーシステムを敷いている国、ヨーロッパ型は医師・看護師ベース、特に医師の力が買わ れている部分がありまして、Euro transplantであったり、スペインのような国々があ るということで、これは分けて対応する必要があるかなと考えております。  まずアメリカの紹介をさせていただきます。アメリカはHRSA(Health Resources and Service Administration)、これは政府機関でございまして、FDAが規制をかけ ます。パラレルでよくけんかをしていますCDCというのがありまして、CDCでは新 しい病気を見つけたり、それがどういうエビデメオロジーかを見つけたらFDAにこう いう規制をかけなさいというふうに命令するわけです。こちらは規制側です。今日お話 ししていますのは臓器提供のプロモーションの方の話で、これはアメリカの強いところ かなと思っている点は、このHRSAがありますので、HRSAは国の予算を持ってい まして、HRSAからOPOあるいはUNOSが使える研究費も出していますし、病院 の中で事業をやるとなるとお金も出せると。もう一つ大事なポイントは、HRSA自身 が全国レベルでのプロモーションを行っています。1つのプロモーションで数十億円規 模のプロモーションを行いますので、広報活動を行う上でだれがどういう役割で行うか、 規制をかける部分と推進する部分が明確に分かれている、これが強いところだと思いま す。  FDAは規制をかけていますので、これとは別個にHRSAがプロモーションをかけ ていまして、UNOSがあって、各リージョンのOPOが臓器提供を行っている。あっ せん、配分はこちらで管理しているというわけです。最近OPO内でのあっせん、特に 腎臓などは近隣の方が成績がいいということもありまして、いわゆる地域あっせんとい うのがメインになりつつありますけど、OPOのリージョンの中でマッチングの患者さ んが見つからない場合にはUNOSを介してほかの病院に分配されます。  HRSAは政府のお金で動いているわけですが、ホームページを見てもこんな形にな っていまして、臓器提供についていろいろな情報が得られる。日本とちょっと違うとこ ろは、政府広報みたいな形で政府がお金を出してコマーシャルを買っちゃいますので、 そういったお金も出している。日本臓器移植ネットワークも公共広告なんかやりますけ れども、当たり外れという問題じゃなくて、もともと予算を持って時間を買って、広報 で流すという形でやっていますので、非常に効果的に、いい時間に流れるということで、 しかもターゲットを絞れますので、平日の日中には主婦がターゲットであったり、朝の 早い時間には子供さんがターゲットであったり、いろいろなことができます。あと、疑 問に対してもQ&Aで、一般の方が考えるようなこともちゃんと答えてくださるという ことです。  ヨーロッパ型です。ヨーロッパもいろいろシステムがありますので、数カ国はEuro transplant、これはオランダに本部がありまして、ドイツなどはそれに基づいて臓器の あっせん、配分などを行っているわけですけれども、ドイツ国内においてもDSOがあ りまして、Euro transplant管轄国の中ではこういった推進をするところがあって、こ れは各国の政府がお金を出している。幾つかの国をまたいだところがEuro transplant があっせんをし、逆に各国の中では各国の政府がある程度援助をして、国からの資金に よって推進をしていくという形になっています。  スペインです。スペインが世界でも一番臓器提供が多い国ということです。10年前は スペインもヨーロッパの平均と全く変わりませんでした。ところがこの10年間で急激に 世界のナンバーワンに躍り出たということで、このシステムが非常に参考になるのでは ないかということで、厚生科研のDAPの一部として、スペインで成功したモデルのT PM(Transplant Procurement Management)というのがありますので、これを参考にさ せていただくということで、私自身もマスターコースまで修了しておりまして、このT PMをどうやったら日本のシステムに入れられるのかという研究を続けております。本 年度も2名ほど行っていただく予定になっております。スペインの中にONTという、 日本でいう日本臓器移植ネットワークがあるわけですけれども、そこから個々の提供病 院にTPMのスタッフを配備するということでいきます。ONTからTPMのコーディ ネーターを派遣している部分もあるんですが、提供病院のスタッフもTPMとして認め るということになります。提供があった場合の保険点数でインセンティブが働くような システムをつくっているということで、これがますます上がっていくということになり ます。一番上がっている原因は、ここで動いているTPMコーディネーターの半分が医 師、半分がナーシングスタッフということで、医師と看護師の両輪で動いている。病院 も派遣される方もそのように動いているということが非常に大きいと思います。10年前 に始まったときは紆余曲折あったわけです。救急と脳外科の問題とかいろいろありまし たが、スペインはそれもこの10年間で解決してきた。特に麻酔科の先生方がコーディネ ーターで動くということを利用したり、その現場現場で対応して、その文化の中に入り 込めるような方策を練ってきたというところがすばらしいことで、そういった作戦を練 っていたのがONTとTPMの母体ということで、共同作業が行われたということにな っています。  スペインがこれです。ほかのヨーロッパ諸国と比べていただきますと、93年にはスペ インもさほど差がなかった。それがこの10年間でこれだけの差がついてしまったという ことで、ヨーロッパの中でもかなり優秀なシステムであるということが最近評価されて おります。  これがTPMのコースなんですけれども、5日間集中コースで、ほとんど寝かせてく れずに、かなりの内容をやります。初級コース、中級コース、上級コースと上がってい けるんですけれども、最近5番目のコースをつくろうということで動いております。コ ーディネーターとして必要な能力、知識、技術等を教育してくれるということでござい ます。ヨーロッパ諸国が、TPMがグローバルスタンダードになったということで委託 をしまして、スペインに教育をお願いしているという国も出てきております。  一つの例がイタリアですけれども、コーディネーターとはどういうものか。ローカル コーディネーターという言い方をしていまして、院内コーディネーターという言い方は しません。なぜかというと、余り人口の多くない地域で各病院に置くというのは、イタ リアもさほど臓器提供は高くありませんので効率的でないということで、ローカルコー ディネーターという言い方をして、ある程度大きい病院ですと複数のコーディネーター、 小さな病院がたくさんある地域ですと、その幾つかの病院をまとめた1人のコーディネ ーターという形でやっています。イタリア政府は、Spain is global reference model ということを名言しておりまして、スペインが成功してるんだからそのとおりやりまし ょうということが国の方針として決まっておりますので、国からの命令でコーディネー ターをスペインに送って、教育を受けて帰ってくるという形になります。  これはベネズエラの論文なんですけれども、こちらを見てもコーディネーターの教育 が非常に大きいということで、こちらで同じようなシステムをとったところ、もともと のベースが低かったということを差し引いてお考えいただきたいんですが、フォローア ップしたところ1年間で7倍の提供者が出ているということです。ちゃんとしたコーデ ィネーターの方がちゃんとしたシステムをインストールすれば数は増えるという可能性 があるということです。ただ、この場合非常に重要なのは、文化に合ったものを入れら れるかどうか。システムがあるから入れればいいというのは大間違いだと考えておりま すので、その文化に適したものにアレンジできるコーディネーターの資質があるかどう かというあたりが非常に重要で、これを全国にやってくださいというのはかなり危険性 が高いのではないかと思います。  ことしもTPMコースがありまして、院内に提供する可能性のある方がいるかどうか ということと、死の判定がちゃんとコーディネーターができる状況かどうかというよう な、病院の先生方の中でもし判断に迷ったりしたときに、すぐ助言ができるレベルかど うか、ドナーのマネージメント、臓器や組織のバイアビリティの研究ができる、次が大 事で、御家族への話がしっかりできるかどうかということで、このコースを受けると、 20分間御家族役のコーディネーターと話をして全部ビデオに撮られまして、次の部屋に 行くと経験あるコーディネーターから臨床心理士までごそっといる前で自分の一挙手一 投足を解析され、そのときどういう気持ちで何をしたのか、こういう行動はとれなかっ たのかということをたたき込まれますので、かなりストレスが高いかなと思います。あ と、Organ sharing and allocationといいまして、これはネットワークで配分する場合 に、どういう基準で何をどこに配分するか、どの先生と連絡をとる、救急車なりヘリコ プターをどうやって手配するかという細かいところまで、いろいろ勉強させられるとい うことです。詳細はホームページを御覧ください。  組織と機能ということで、日本とどう違うかということを書いてみました。日本臓器 移植ネットワークは一般啓発並びにあっせんと、ただ、全体を見ましても20数名のコー ディネーターがいまして、全部仰せつかっているわけですから、ヨーロッパの大都市よ りも小さい規模ですから、その状態で全部をやるというのは不可能でございまして、現 行行われている支部がありますので、今の状態で今の規模で、今の人材・予算規模で行 っていくのはこの上の部分くらいかなという気がします。もう一つ大事なところは、各 病院内で動いてくださる院内コーディネーター、ヨーロッパでいうTPMと、それを指 導する地域のTPMの支部、これは毎日のマネージメントが大事なものですから、ここ の関係は非常に重要で、これは新たにつくらなければ現状の日本にはないシステムだと 思います。都道府県コーディネーターが動いてくださるんですが、それは都道府県の中 で動いていますので、1人で動かれるというのは厳しい問題があるので、これが機能と して動くようになれば新たなシステムになる、これに近いシステムになろうかなと思い ます。  そこで、こうなったらどうなのかなということでこれは一つの案なんですが、ネット ワークとしては今の規模でやること、その中の抜けている部分をどうやってシステム化 していくのかというので、これは今後検討の余地がある部分で、そこから各都道府県に おられるコーディネーター、あるいは院内コーディネーターというラインは徐々に見え つつあるので、これをシステム化するということがすごく大事かと思います。  これが先ほど言った、ある程度分けていかなきゃいけないのかなという感じです。日 本の場合大変おつらい立場なんだと思うんですが、厚生労働省臓器移植対策室1つしか ありませんので、アメリカのようにFDAで規制をかける部分と、HRSAのように推 進する部分が別々の機関、別々の予算で動いていればいいんですが、規制をかけながら 推進しろと、これは自分でアメとムチを用意しておいて、食べながらおしりをはたきな さいと言っているわけで、これは不可能なんですね。モデルとしてもこれは分けるべき かと考えますので、あっせん、推進の部分に関してはネットワークが全部担うとか、明 確な線引きが必要なのかなと。それに予算執行が相当かかりますので、その辺について は新しいアイデアが必要なのではないかなと。いずれにしても、必要なのは下の部分で、 ヨーロッパモデルのように院内で動く方、あるいはそれを支援する地域の支部、幾つか の都道府県を統括する地域本部、よく見ると日本もこれに似たシステムになりつつある んじゃないかと思うんですね。特に新潟の例を見ますと、ちゃんと地域支部というのは 秋山さん個人が担っていて、地域本部というのが秋山さんのいらっしゃる県庁なりなん なりの机なんだと思うんですね。そこには予算措置も多少なりともあるということです。 日本の都道府県別でいうと、そこである程度きっちりした予算規模が必要と。1つのT PM地域支部がスペインなんかの場合ですと10億単位で動いてますので、そういったレ ベルの支援がないとイニシャルとして動かない。いつまで国のお金を使うのかとかなん とかという問題はまた別で、現状では多くの臓器提供があればインセンティブが働く形 になっていますので、3年なり5年なりの期限で動き出せば独立採算でいけるというと ころもあります。逆にいけなければそれでおしまいと。その地域の方が非常に不幸にな るということで、責任も重大になってくるということになりますので、本当に茨の道だ とは思うんですが、TPMのコーディネーターの半分の方々が医師であるということも 重要なポイントかと思います。  これはドナーアクションでとったデータなんですけど、ヨーロッパと日本を比較した データです。5000人ずつの医療関係者、特にICUなりCCUをターゲットにやってま すけど、脳死に対する御理解とか、臓器提供の経験というトレーニングを日本では行っ ていないわけですから、そういったトレーニングを受けているかという質問に対して、 例えば脳死というのはどういう判定をするのか、脳死というのはどういう状態かという ことをトレーニングを受けたかというと、ヨーロッパでは26%の医療スタッフは受けて いると答えている。4人に1人ということは、4人いれば、そのうちの1人はかなりト レーニングされています。日本の場合は5%ということですので、20人に1人の確率に なります。こういったところも教育の必要性を感じる部分です。家族の悲嘆に対するト レーニング、これも16%に対して日本は2%しか受けていないということになります。 自信がないのでなかなか話を切り出せないというのはいたし方ない。  コンフィデンスレベル、自信がありますかという質問なんですが、これも同じように、 家族の悲嘆に対してケアができるかということに対して、ヨーロッパの平均が54%、2 人に1人以上の割合で御家族の悲しみに対してちゃんとカウンセリングできますという お答えですが、日本ですと12%ということになります。脳死についての説明、その他い ろいろありますけど、国家試験の問題にもなってない我が国ですので、教育を受けてい ないというのは当然のことで、国がそういうシステムにしてくれるのか、あるいは移植 の現場で我々ができる部分は何なのかというところで幾つかに分かれるのかなと思いま す。  これは私のいる病院で始めたことで、まだ1年しかたってないんですが、10年前から 取りかかっていまして、遅いと言われるとあれなんですが、やっと一昨年から、全死亡 患者についてアイバンクの方に連絡をいただくというシステムを始めました。赤い棒が 御家族に面談した数です。提供できない状況であったものを外して面談させていただい ていますので、面談した中でということなんですが、3カ月ごとで1病院なのでばらつ きがありますが、非常におもしろいデータです。下の青い部分が御提供いただいた方で、 一番低いところでも12%、一番高いところですと28%です。これは世界的にデータを収 集中ですが、インドでもイギリスでもブラジルでも、大体どこの国でも12〜14%くらい に年平均なりまして、すべての亡くなった方の家族に声をかけて、提供することができ ますがということでお話をすると、大体どこの世界でもどの人種でもどの宗教でも、10 %ちょっとの方が提供するというのが世界の常でございますので、宗教というのも大事 なキーワードかもしれませんが、文化以上に、もうちょっとシステムをつくると提供数 を増やせるのではないかと考えています。  今厚生科学研究事業でトライアルで、本年度から調査します。コンピューターシステ ムを今構築中でございまして、各都道府県のコーディネーターの方々に使っていただけ るような、あるいは必要なものがあったときに研究本部の方から御支援できるような、 リアルタイムで動けるようなシステムを構築中でございまして、1カ月以内にスタート できるかと思っています。各地域で院内コーディネーターがどう動いて何をやるか。例 えば講演会をやりたい、あるいはグリーフケアの講習会をやりたい。その前と後で病院 スタッフの考え方がどう変わったか、それで提供にどれほど結びつくのかということを もうちょっと具体的にやっていくという支援システムを考えておりまして、こういった システムをインストールしていくというのは非常に有効であり、将来的にはこういった ものをTPMの地域の指導者が各医療機関の中のコーディネーターの方に、これを毎日 やらなくちゃいけないというようなことになると思います。これはヨーロッパでも動い ているモデルなので、ぜひ日本も参考にして日本流にするということで、都道府県コー ディネーターを中心にこの構築に向けて御協力をいただいているところでございます。  最後に、医療整備のためにということで、一般普及啓発で脳死概念の普及。移植コー ディネーターの質・機能の向上、これは数を上げないといけないということもあると思 います。全体でのあっせんをするところと臓器提供をいただく機関をもうちょっと機能 を分けてやるべきなんではないかなと。公平性と公正性というのがありまして、臓器移 植法ができて、我々は公平性は無理ですね。数が少ないわけですから公平にできっこな いわけです。そこで、公正性を旨にやってきたのが過去8年の歴史だと思いますので、 公平にするためには臓器がなければ患者さんに公平に分配できるはずがないわけです ね。ですから、いかに公平になれるかということは、我々がいかに臓器提供する機会を 得るのかということにつながってくるんじゃないかなと考えています。その辺について の議論が進むということが非常に重要かと思います。  私個人の経験からいいまして、自分自身の病院で献眼でさえ、病院全体で入院時の提 供意思があるかどうかを調べるということをセットするのに5年かかりました。入院時 に全部、看護師さんが各個人に、白内障で入院しても意思表示をしてるかしてないかと いうのを病院のシステムとして、患者さんの権利として我々は知っていなきゃ医療がで きないという概念にしていくのに5年かかりました。それがまず第一歩。第二歩で、先 生方には教授会、部長会の承諾をもらって、全死亡症例を、これは患者さんの権利を生 かすということで必要だということを信じていただいて、全症例の連絡をいただくよう にしたと。次に看護師を中心にグリーフケア教育をしていくということ。次に全症例の 連絡をいただくと。そこにいくまでが10年かかったということですので、時間のかかる 仕事だと思うんですね。何をどうしていけばいいのかわからない。どういう心的変化が あるかわからないので、がむしゃらにやってもむだだということで、システムと同時に 戦術と戦略とを明確に分けて構築する必要があるのではないかという気がいたしまし た。  以上でございます。 ○大島班長 ありがとうございました。一般啓発活動と医療従事者啓発活動はきっちり と分けなければいけないということ、厚生科学研究をもとに世界の実態、日本の実態を 調査していただいて、一体何が問題なのかという問題抽出の中から、具体的には国民の 意識の問題、あるいは制度・仕組みの問題にまで触れていただいて、それを明らかにす ることによって日本的な解決の仕方として何があるのかというところまで提示していた だきました。かなり具体的に踏み込んだ提案ではありますけれども、これは大久保さん が最初に言われたこととよく似てるんですけど、戦略的・戦術的、あるいはシステム化 ということを十分考えた構築をしていかないと難しい、問題解決するためにはどういう 目的でどういう方向に行くのかという方向性を明快にすることと、資源には限りがあり ますから、資源は主に人、ツール、こういったものをどうのように選択的に有効に使っ ていくかということをしないと、ただ一生懸命やっているだけではむだになってしまう。 一生懸命やったという満足感だけが残って効果には全然つながらないというお話をいた だきました。  御意見、御質問があれば。 ○秋山参考人 スペインモデルの話を詳しくお話しいただいたんですけど、ちらっと聞 いた話では、例えばワンキープ、ワンシップみたいなものを中へ取り入れたみたいな話 を聞いたんですけど、そんなことはないんですか。 ○篠崎班員 具体的に提供があった病院がとかいうんじゃなくて、例えばバルセロナだ ったりマドリッドであったりということはあります。これを活発にやってる地域という のは、バルセロナの町の中だけでも年間300例くらいありますので、やるチームは決ま っていますので、活動が活発でさえあれば全然問題ないと。マドリッドの施策はちょっ と御不満があるようで、もう少し全国あっせんした方がいいというような意見がマドリ ッドからは出ているようです。どの辺をもって公平とするかというのは非常に難しい問 題ですが、ワンキープ、ワンシェアという概念ではなくて、エリアで…… ○秋山参考人 エリア単位でのキープができてるということですか。 ○篠崎班員 そうです。 ○秋山参考人 それに近いものは日本でも実際にあるんですよね。県境を越えるために は点数がぎょうさん要るというようなシステムは現にありますけど、なかなかわかって いらっしゃらないですよね。 ○菊地班員 8割はキープしてますよ。先生が言われてるワンキープ、ワンシェアとい うのは、施設にということですよね。 ○秋山参考人 県単位ででもキープできたら、それがモチベーションになってくれると いいんですけど、日本の場合それが働いているという実感がない。スペインではバルセ ロナでそういう実感があってこそ出てるんだろうと思うんですけれども。 ○秋山班員 今の話、実際に1月から6月までに12腎出てるんです。そのうち9腎が新 潟に落ちてるので、施設ということはあれですが、地域には十分貢献できてると思って います。 ○秋山参考人 新潟の場合は、新潟県即新潟大学みたいな感じでありますけど、大阪府 の場合は、大阪府即近畿大学、あるいは大阪大学、どこそこ病院というイメージになら ないので、もっとこれがたくさん出るとそういうイメージも出てくるんだろうと思うん ですけれども。 ○金井班員 ちょっと聞きたいんですけど、このスペイン型の場合、TPMの方はスペ インの病院全体の何%くらいのところにいられるんですか。 ○篠崎班員 TPMが特に進んでるのはカタロニア地区なので、カタロニアの大きな病 院はやってますが、日本の感覚でいうと500床以下のところは置いてないんです。効率 が悪いということで行ってなくて、そこはTPMの本部がありますので、万が一何かあ った場合には直接コーディネーターが出かけていくと。それ以外のところはTPMの部 屋をいただいているようなケースが多くて、ある程度の大きさの病院ですと1室置いて いただいてオフィスにしてるんですね。多いと数名なんですが、いわゆる院内コーディ ネーターとして、本部から行ったTPMの方が一緒に活動する部屋があるという状況で す。 ○金井班員 その方々の財源は国が出してるんですか。 ○篠崎班員 出だしはTPMが行ってお金はTPM持ちでやるわけです。ただ、TPM 自身もコースなので、私も学費を払って受験してるんですけど、TPM自体は学費で動 かしてますので、政府の補助も多少ありますが、8割は自前で動いていると。臓器提供 があった場合には政府が資金を出しますので、日本でいう保険点数ですけど、それで動 いていると。  もう一点、スペインは特殊で誤解を受けるといけないので言っておきます。スペイン だと何年目のお医者さんだと給料幾らと決まっちゃってます。ただ、TPMで働いてた 方というのは、その後必ずプロモーションを受けます。なぜかというと、御家族とちゃ んと話ができて、トラブルもなくTPMのコースを修了してというと、それだけクオリ ティが高くなるので、逆にTPMで5年回ってある程度の実績を出す、100例、200例と いう提供があって移植を仰せつかったということになるだけで、かなり大きな病院のい いポジションにつけるというインセンティブがあるので、その点は日本とは違うのかな という気がします。 ○大島班長 ほかにいかがですか。 ○秋山参考人 先ほど、日本の文化に合ったシステムという形で話をしていただいたん ですけど、この中のどの辺が日本人の文化、あるいは宗教観なんかに合ったところとい うのを教えてください。 ○篠崎班員 全体の仕組み自体は、これはシステムですので余り文化には関係ないのか なと思うんです。一点違うなと思うところは、ヨーロッパでもスイスがかなりこれに切 りかえて、お医者さんが病院に行って話す場合と、非医師が話す場合との違いというこ とで、非常に入りにくかったと。それをスペインモデルを使って、Swiss transplantも 移植医になりまして、彼が全病院を回ってやるというシステムに変えまして、スイスと いうとドイツ的な考えもあるんですけども、その文化に合った形でドイツ語圏に関して は医師がしていくという形で、コーディネーター医師と病院の医師という形でやります。 その辺の文化的な理解が必要なのかなと。なかなか病院に入り込めない。病院でほかの 先生が話してくれる場合と、我々が行ってお話しする場合と多分違うと思うんですね。 これってヨーロッパ的な考えだと思うんですね。アメリカだとそういうのがなくて、肩 書さえもらっておけばどこへ行っても話ができるんです。それは私が現場で実習したと きに明らかに感じた違いで、肩書をいただいてもヨーロッパではなかなか敷居が高くて、 実際いいよと口で言っても何も動かないというところがあったのかなと。日本にどうい うシステムがいいのか、システムも大事ですけど、文化に根づいたところというのと、 先ほどHRSAの話をさせてもらったんですが、HRSAでも小学校低学年用プログラ ム、高学年用プログラム、中学生用と分けて教科書ができてるんです。DVDもつくっ てお配りする、先生が教えられるマニュアルまでお送りすると、そういうふうに相当お 金をかけて毎年リバイズをかけてやってるんですね。そういったところも、もし本当に 広報をするのであれば必要なところかなというのが一つ。  もう一つ、これは僕自身の経験なんですが、ある日本の有名な飛行機会社のスポンサ ーシップをうちのアイバンクは受けてます。どういうことをやってもらうかというと、 教育で、それも宣伝部と広報部と両方に教育を受けています。最初僕は間違えて宣伝部 長に会いにいったのに広報部に行っちゃって、違いがわからなかったというところから 始まっていまして、アイバンクもずっと、何人の患者さんがお待ちになってますという ようなポスターを堂々と張ってたんですね。それを指摘されまして、君らがやってるこ とはPRをやってないんですよねと。あなた方がやってるのはCMをやってるんだと。 困ってる人がいるから助けてくださいと、これはだれも乗ってこないので、そこは明確 に分けましょうという御指導をいただいて、我々はPRマニュアルをつくって、コマー シャルをする場合とPRをする場合というのはポスターも分けて使わせてもらってま す。我々は宣伝をしてるのか広報をしてるのかというところも明確に分けなくちゃいけ ない。これは一般啓発の話のところですが、医療従事者啓発活動についてもそういった 概念を持って対応することが必要で、日本人だとお金お金と言うよりも、困ってる人が いるから助けましょう的なところで、私のところではそれでかなり協力を得られている ので、そういったノウハウを入れるところが日本流のアレンジなのかなと。まだ研究事 業中なので何がいいという結論は出ていないんですが、漠然と考えているのは大体そん なところでございます。 ○大久保参考人 一つだけ質問なんですけど、今HRSAの件で、アメリカはすごいお 金をかけてるのは私も存じ上げてるんですけど、ヨーロッパも同じような形で、パブリ ックリレーションとして、CMも含めてですけども、一般啓発については国が予算を出 してるということですか。 ○篠崎班員 国によってばらばらです。ドイツなんかは国で機関をつくってますが、余 りたくさんという感じではないですね。そのかわり南部の方、ミュンヘンあたりでは郡 がかなり力を入れていましてドナーアクションとか一緒にやらせてもらってるんですけ ど、そういうのもかなり研究費をつけたりしていますので、日本と同等レベルかなとい う感じがするんですけど、北部の方は余りないとか、スペインはこういったシステムが 動き出しちゃってますので、逆に最近になって盛り上がってきているというような感じ で、出足はTPMもつらい思いをしていたようです。 ○大島班長 ほかにいかがですか。 ○菊地班員 前回の話から今回の話まで続けて聞いてみて、何となく方向性というのが 見えてきたように思うんですが、前回はどちらかというと移植医が努力をしなきゃいけ ないということや、パブリックリレーションの方の方策がいろいろ出たと思うんですけ れども、今回はどちらかというとProfessional Educationという部分が出ましたので、 この両方と今のシステムをどう形を変えていくのかというのが今後の方策のような気が するんですね。最後のProfessional Educationのところに関しては、今厚生科研でやっ ている島崎班の中で私たちが、救急の先生方を集めて、TPMというものではないです が、実際に現場でどういうものが必要か、脳死患者の管理、診断の仕方、家族へのケア、 そういったものを提供する機会をつくろうということで10月くらいに第1回の会を開 こうと思ってるんですね。全国で10施設くらいの大きな救命センターとか、救急病院の 中の医療スタッフ、医師、看護師というワンセットで参加してもらうというようなこと ができればと思っているんですが、篠崎先生が発表されたようなものを取り入れながら、 概念導入の一歩になればなと思うんですけれども、プロフェッショナルな部分に関して はこれを地道に続けていって、救急施設の先生方、脳外科の先生を含めて、認識を少し ずつ変えていただくという方法しかないのではないかなと私は思っています。 ○篠崎班員 もう一つスペインで感動したのが、脳外科の先生用プログラムというのを ちゃんと国で考えていまして、救急の先生のプログラムと明確に分けてありまして、対 応してる人も全く違う人がやっていますし、その辺も文化に配慮された教育プログラム なのかなと思って、ちょっと気になったのは、同じフォーマットという形で動くんです が、そうはいっても、今回のようなチャレンジで一緒にできる部分で一緒に学べる場も あるでしょうし、各々の文化によって変えなければいけない部分もあると思うんですね。 その辺も戦略を考えて、どっちに行くじゃなくて、各々をちゃんとやっていけるくらい の教育システムが重要なのかなと、政府なりネットワークなりがこういった提供をでき るレクチャーコースなりなんなりというのが必要なのかなと。そういう具体例がないと、 幾ら言ってもなかなか動かずに、ターゲットを絞って、今言ってるのはたまたま思いつ きで言ってるだけで、こういった判断をする機能、戦略を練る機能というのがないとい けないと。それはネットワークのコーディネーターの方にあれもこれも任せて公正性で やってくれと言ったのが過去8年、ここから先どうするのかというのは、ちゃんと戦略 を練った上での戦術、セミナーであれ、ドナーアクションであれなんであれというのを 明確にグランドプランを書く時期にきてるのかなという気がします。 ○大島班長 ほかにいかがですか。 ○田中班員 ガバメントアプローチという言い方が正しいかどうかわからないですけ ど、国全体の取り組みとして一つのモデルになるのが、救急医療の関係でやっているメ ディカルコントロールというシステムなんですね。これは平成13年に総務省と厚生労働 省で同時に出した答申を着実に、15年くらいからシステムとしてつくってきてるんです が、これは全国の二次医療圏をブロックに分けて、その中で病院内での医療の質を高め るというシステムなんですね。今はまだできて5年弱なのでいろんなところに欠点もあ るんですが、何かこういうような形をつくっていくということが大事だと思います。今 はネットワークのブロックと県のブロックというものがあるんですが、これをもう少し 有機的にシステムとして形をつくることが必要なんだろうなと思ったんですが、そうい う形で全国システムの再構築をしなければいけないのかなと思いますが、いかがでしょ うか。 ○篠崎班員 非常に重要だと思うんですけれども、成功した国を見ると、システムは後 からできてるんですよね。日本も昔から国が何とかって言うのは簡単で、何かつくって いただいたときに、またそれに文句を言ってるようなことできたんですが、ある程度研 究事業で動いてきたことがあるので、それをモデルにビルトアップしていく。その先に システムがあるのかなという感じがするんですが、行き先は大体どこも一緒ですので、 機能的な区分、現状でのネットワークなり都道府県コーディネーターなり院内コーディ ネーターというのは、どこにどう位置するのか、それをどう形づくるのか、どのくらい のマンパワーが必要なのかというあたりは、多分これは戦略で練れる部分で、そこを目 標にどう上げていくかというのが一番難しいところで、出だしは研究事業なのか補助金 なのか知りませんけど、そういう形でやらざるを得ないのかなと。機能ができ上がって からネットワークの中にそういう流れをつくるという形にしていかないと、いきなりこ ういう機能で形をつくりましたというと、諸外国でもそういうので成功した例は余りな いので、できればある程度行き先を決め、今動いているものを生かすということでそれ を広げるというのがあるべき姿なのかなと思います。 ○大島班長 もともと欧米では、移植という医療技術が最初にあって、それが個別の現 場の努力によってどんどん増えていったと。しかし、増えていくうちに倫理問題とかい ろんな問題があって、公平・公正だとか、提供された臓器をどう扱ったらいいのかとい うようなことが大きな問題になって、これは国全体としてレギュレーションしないとえ らいことになるということでシステムがビルトアップされてきた経緯がありますよね。 日本の場合は最初にシステムありき、あるいは倫理ありき、制度ありきという形で、日 本の移植医療のスタートに非常に不幸な出来事があったということもありますけども、 そういったことがあって随分違った展開をしてきたということはありますよね。いろん な意味で振り子が右に左に非常に大きく振れて、今はもういろんなことに随分時間をか けたけれども議論はもう出尽くしたのかなという感じが私はしてまして、なぜこんな言 い方をするかというと、もしこれでだめだったら、もう日本で移植医療というのはあり 得ないのではないかというくらいの感じを実は持っていまして、ちょっと年をとったの かもわかりませんけども、30年以上このことをずっとやり続けてきてるものだから。制 度も整理され、医療技術もほぼ確立されて、あとはそれを必要としてる人に対して臓器 を提供したいという意思、権利、臓器を提供したくないという権利もありますけども、 移植を受けたいという権利、受けたくないという権利ももちろんあるわけで、その4つ の権利が透明でフェアな形で実現されるような社会をどうやってつくっていくのかとい うところで、限られた資源、ツールをいかにうまく使っていくかということを戦略的、 システム的につくり上げていく時期にきたのかなと思っています。  そろそろ時間になりましたので、最後にアンケート調査の結果について報告をいただ きたいと思います。 ○矢野補佐 それでは資料4を御覧いただきたいと思います。移植医療に関しましては、 国だけでなく地方公共団体でも国民の理解を深めるための必要な措置をすることが求め られております。このため、移植医療の普及啓発に関する取り組みについて、7月に都 道府県に対してアンケート調査を実施しました。その集計結果について概要を御報告さ せていただきます。  まず1点目、都道府県移植コーディネーターの状況です。都道府県移植コーディネー ターの人数は、全都道府県1人以上置いているということで、全国で51名都道府県移植 コーディネーターがおります。ほとんどの都道府県が1名ということで、愛知、鹿児島 は2名、静岡では3名置いているということでした。勤務形態は、常勤、非常勤、専任、 兼任、さまざまですけれども、多くが常勤、専任ということで、コーディネーターの所 属先としては、腎バンク等の関係法人が36名、その他行政機関所属と関係病院所属とい う結果でございました。  続きまして2ページになりますが、臓器提供施設の体制整備・活動に関する支援を行 っているかどうかという調査をいたしました。なお、調査票につきましては資料の13 ページ以降につけておりますので御参照いただければと思います。臓器提供施設を対象 とする研修会、講習会を実施しているかということにつきましては、33の都道府県で実 施しているということでした。その内容としましては、都道府県移植コーディネーター を講師とする研修会、症例検討会、ドナーアクションプログラムの講習会、臓器提供施 設間の意見交換会、施設連絡会議などがございました。  院内コーディネーター制度、これは各病院に所属して、その病院内で普及啓発活動、 調整を担当される方ですけれども、院内コーディネーターについてはこれまで実態が把 握されてこなかったんですけれども、今回の調査で39の都道府県で院内コーディネータ ーを設置しているということ、総数としては1247名いまして、コーディネーターを設定 している病院の総数は606施設あるということがわかりました。院内コーディネーター の職種別内訳については、半分くらいが看護師で、その他医師や技師、薬剤師等々、い ろいろな職種があるということでございました。  3ページに行きまして、臓器提供施設に対する助成金や感謝状を交付しているかとい う質問に対して、実施していると回答があった都道府県は10ございました。その内容と しましては、助成金制度があるというところが6ありまして、臓器提供1件について5 〜20万円助成しているというところが北海道、岩手、秋田、栃木、千葉。臓器を摘出し たけれども移植に至らなかった場合についても助成金を出しているというところが群馬 県ということでございました。感謝状を交付しているというところが4つございまして、 臓器提供施設に対して感謝状を交付しているところが愛知と長崎、一定以上のドナー情 報の提供があれば感謝状を交付しているというところが岡山県、実績のある医師や関係 団体などの臓器移植推進功労者に感謝状を交付しているというところが広島県というこ とでございました。  そのほかに何か提供施設に対して支援しているかどうかという質問でございますけれ ども、臓器提供マニュアルの作成支援というものが一番多かったです。そのほかに臓器 提供に関する意思を患者家族に確認する際に利用することができるリーフレットを作成 して配布しているというところが福岡県、岩手県、宮崎県とありました。福岡県のリー フレットについては資料の7ページに添付しております。「お知らせ」というパンフレ ットで、「ご確認させていただきたいこと」という説明がありまして、「右の用紙に記 入してスタッフにお渡しください」と。患者さん御本人が意思表示カードを持っていた かどうか、御本人が移植医療や臓器提供について何かお話しになっていたかどうか、県 の専門職員から臓器提供に関する話を聞いてみてもよいか、聞きたくないかといったこ とを記入することができるようになっております。提供する、しないによって不利益に なるようなことはありませんということを示していただいた上で、御希望される御家族 は9ページの資料を切り離してスタッフに渡すという仕組みになっているということで す。  岡山県で、臓器提供機関と連携して院内の啓発ポスターを作成しているということで す。これは資料の11ページにありますけれども、「あなたの“意思”をもう決めていま すか」ということで、こうしたポスターが提供病院に掲示されているということでござ います。  4ページに行きまして、移植医療の普及啓発に関して特徴的または重点的に取り組ん でいる事業があるかということで、いろいろ回答がありました。都道府県オリジナルの 意思表示カードを作成・配布している。県民を対象にカードの所持状況や意識調査を毎 年実施している。国民健康保険被保険者証への意思表示欄設置をしている。県の共済組 合のカードに臓器提供意思表示カードを持っていますということをシールで貼れるよう にして、意思表示カードを配布しているところなど、さまざまございました。  臓器提供者に対する感謝状の交付をしているところがあるかどうか。交付していると ころは18ありまして、都道府県によって、知事からであったり、腎バンク等の関係団体 の長からなど、さまざまございました。  5ページになりますけれども、臓器提供施設の体制整備とか普及啓発に関して、普段 感じていることを自由記入してもらいました。。1点目として、提供施設に対する普及 啓発に関しては、主治医や院内コーディネーターの心理的負担を軽減し、スムーズにオ プション提示ができるようにすることが必要である。患者や家族の臓器提供意思の確認 に関するリーフレットの作成などについて考え方を整理してほしい。医療機関の窓口担 当者を固定することが必要。体制整備に前提として、医師や看護師が学生のときに教育 を受けられることが大切であるという回答がありました。  2点目、一般への普及啓発としましては、健康保険被保険者証への臓器提供意思表示 記入欄の設定について、国における普及促進の取り組みが必要である。全国的なメディ アを活用した普及啓発が必要である。学校教育で臓器移植を学習するよう、厚生労働省 と文部科学省の連携が必要であるという意見がありました。  その他としまして、全国をブロック別に分けたブロック会議を開催して、国からの情 報提供や都道府県の情報交換をする場として活用することが必要であるということ。国 の財政支援が必要であるといった御意見がございました。  アンケート結果については以上でございます。もう一点、参考資料についてなんです けれども、前回御説明させていただいた資料なんですが、6ページをちょっと変更して おりまして、前回は都道府県別の臓器提供件数と移植件数の推移ということで、2002年 と2005年だけの数値を記載していたんですけれども、その間が抜けていたんですけれど も、この4年間の平均ということで、改めて集計して出させていただいております。  7ページは、新たに献眼者の数を都道府県別に集計したものを加えさせていただいて おります。8ページはそれを図で色分けしたものでございます。  以上でございます。 ○大島班長 ありがとうございました。何か御質問ございますか。 ○田中班員 最後のところに全国のブロック会議ということが書いてあったんですが、 これはすごく大事だなと思いましたのは、ネットワークの方でもブロック別で会議をす るんですね。東日本ブロックですと結構な数が来ますよね。あれだけの数の方々が来ら れながら、今回出たような各県の取り組みとか、先進的とかいい取り組みというのが余 り紹介されないんですね。進んで何かやっておられるところの情報をどんどんできてな いところにフィードバックするという意味では、私が言ったメディカルコントロールと いうのはまさにそういう役割があって、ブロックでも結構ですし、県ごとでも結構なん ですが、ブロックごととしても、そういうものをフィードバックして、こういう取り組 みをしてるよとか、そういう情報交換という形があってもいいのかなとは思いました。 ○大島班長 実際には全国腎バンク連絡協議会というのが毎年ありまして、あるんです が、毎年参加県がどんどん減ってきてるんですね。都道府県とイコールではないんです が、ほぼイコールと考えていいですね。もう5、6年以上前はほとんど全県出席してき たんですけど、今はもう半分くらい、お金がないって言うんです。出席するためのお金 もないという、それくらいの状況で。 ○田中班員 臓器移植法が改正された直後に、脳死判定とかそういったことでガイドラ インとかマニュアルをつくらせていただいたときに、説明会を厚生労働省に各ブロック ごとにやっていただいたんですが、あのときの各提供施設は真剣に聞かれていて、どう やって脳死判定したらいいんだとか、せっぱ詰まってた状況もあったと思うんですけれ ども、そういう現場の方からの強い要望があるだけではなくて、こういうようなものを 何か国の方で、ブロック別に分けるということで時々情報交換だけではなくて、どうい う方向に移植医療というのを持っていくんだとか、そういう説明会というのがあっても いいんじゃないかと思うんですね。 ○篠崎班員 それも含めて、これは教育問題だと思うんですね。都道府県移植コーディ ネーターのセミナーをやって委嘱状を出したり、自分の中の教育をやったり、かつ、提 供があった場合のすべてのやつをやってデータ管理までやるというのも、あの人数でや っていること自体まず奇跡だと思っていただきたいんですね。その中で今回教育問題い ろいろやりたいことあるし、世界的に成功している事例もあるからやろうというわけな ので、新しい仕組みをつくっていくという概念でやらない限り多分無理だと思うんです ね。ネットワークに付随するのか外でやるのか、分けられる部分もあるのかもしれませ んけども、いずれにしても、どういう機能が必要なのかということをある程度考え、そ れを継続的に考えるブレーンをつくると。それがある程度の機能として自立するという ことが新しい時代の一歩なんじゃないかなと考えているんですが。 ○大島班長 またお金のかかりそうな話ですね。時間も過ぎましたので、今日はこれく らいで終わりたいと思います。 ○矢野補佐 次回は都道府県担当者ですとか病院長、院内コーディネーターなどから具 体的な取り組みについてのヒアリングを行いまして、報告書の骨子について御議論いた だく予定にしております。日程は9月19日火曜日を予定しておりますので、どうぞよろ しくお願いします。 ○大島班長 それでは、ありがとうございました。 (終了) 照会先:健康局疾病対策課臓器移植対策室 担当 :矢野(内線2366)