06/07/28 第4回振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会議事録 振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会(第4回)          日時 平成18年7月28日(金)          15:00〜          場所 厚生労働省専用第15会議室 ○副主任中央労働衛生専門官 本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。 当課課長はちょっと遅れて参りますが、定刻ですので、ただいまから第4回目の振動障害 等の防止に係る作業管理のあり方検討会を開催させていただきます。  まず出席の状況ですが、鉄道総合技術研究所の鈴木委員は欠席です。それと、先ほどお 電話がありまして首都大学東京の吉村委員も欠席ということです。ほかの委員の先生方は 皆様出席いただいております。  本日は振動工具の騒音等につきまして、メーカーの立場でお話をいただくということで、 私ども事務局より、日立工機株式会社の大津主管研究員様にお願いしましたところ、快く お引受けいただいてご出席賜っております。議事に入ります前に大津様より一言いただけ ればと思います。 ○大津委員 日立工機の大津です。当社は電動工具を多くつくっておりまして、私はその 中で電動工具の改良・開発をいままで行ってまいりました。今回、その中で振動というの も入っておりまして、そういった関係で呼ばれたものかと思います。また最近は、JIS の作成等にも参加しております。今日はよろしくお願いいたします。 ○副主任中央労働衛生専門官 どうもありがとうございました。では、お手元にお配りし ている資料を念のために確認させていただきます。まず議事次第1枚物があります。その 次に配付資料一覧があります。大きく4つに分けた資料が付いていまして、まず資料4− 1が米国の標準規格の和文訳で、これは畝山委員から提供していただいております。資料 4−2が大津様から提出していただいた資料で、6枚で構成されております。資料4−3 は事務局で準備したもので3枚物です。資料4−4も事務局で用意したもので1枚物です。 それとは別に委員の先生方の名簿を付けております。これは座長を務めていただいている 相澤先生が、7月1日付で北里大学の医学部長にご就任になったということで、役職名を 書き替えた紙です。資料については以上です。  以前に差し上げた会議案内はちょっと古いバージョンで、議事次第の(3)が「その他」 となっていたのを変更して、「今後の対策のあり方」としております。ご了承をよろしくお 願いいたします。  事務局からのご案内は以上です。座長、よろしくお願いいたします。 ○相澤座長 第4回目の振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会を始めさせてい ただきたいと思います。お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。 それでは前回の議事の要旨の報告を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願い します。 ○副主任中央労働衛生専門官 前回は6月19日に開催いたしました。概要を申し上げます。  まず最初に事務局から欧州数カ国での、振動に係る法令の制定状況を説明しました。ポ イントとしては、暴露対策値が2.5メートル毎秒毎秒(2.5m/s^2)、暴露限界値が5m /s^2ということで、各国同じ値を採用しているということでした。続いて前田委員から、 チェーンソー作業での振動レベルを現場で測定した結果のご紹介がありました。数値がい ろいろあったわけですが、その後のやり取りで、大きなチェーンソーよりも小さいチェー ンソーのほうが高い振動値を示したということで、これについて議論があり、畝山委員か ら、排気量40cc以上のチェーンソーだと林野庁の認定を取らないといけないので、設計段 階から非常に細かく配慮が行き届いている。そういう要素と、小さい物であると振動機具 の、振動の原因のところのフローティング機構などの組み込みが困難である。こういうの が要因ではないかというご発言がありました。  続いて前田委員から、欧州の規制に関して更なる詳細なご説明がありました。ポイント だけ申し上げますと、エミッションレベルを表示するという制度が導入された後、メーカ ーが振動低減努力を払うようになってきたということと、手腕振動は先ほどの数値ですが、 全身振動では0.5m/s^2が対策値、1.15m/s^2が限界値だというようなご紹介があり ました。騒音については、対策値が80〜85dBぐらいに設定されていて、限界値が87dBと いう状況になっている。そして英国の事例の報告があり、レンタル業者が、工具の振動レ ベルに応じて色分けをして一目でわかるようにしている。ご意見としては、そのラベリン グが振動工具の振動の低減に有効ではないかというご発言があり、これに対して畝山委員 から、日本では工具についてはユーザーが買い取るというのが一般的であって、レンタル というのはほとんど普及していないというような実状のご紹介がありました。  続いて畝山委員から、メーカーの立場で振動工具の現状等についてご説明がありました。 その内容は、欧州輸出用の機具についてはEU規格をすべて満たしている。欧州では規格 が多く設定されていて、そういうものを基礎として機械指令が成り立っているという背景 の説明がありました。そして欧州向けについては機械への表示、あるいは取扱説明書に振 動レベルを記載している。カタログへの表示を行うことは不当競争をあおるというような ことで、できない状態である。そしてメーカーとして、3軸の測定値を情報としてもプー ルしていて、欧州向けにはそれをほとんど表示している。もし国内もそれと同じものでよ ければ、国内向けにも開示することは差し支えがない。現に労働局等からの照会に対して も数値を開示しているというようなことでした。そして、電動であったり空気圧であった りエンジンであったり、動力源によって欧州の規格で多少測定手法が異なっているものが あり、これは統一することが望ましいと考えているというようなご趣旨でした。  実際に会社内で測定するときに、その工具を使う方の習熟度によって随分値が違うとい うようなことで、会社として専門の試験担当者を養成しているということ。日本国内の工 具メーカーで、工具ネットワークという非公式の組織があり、それらに加盟している会社 であれば測定することは可能である。ただ、国内には300社ぐらいメーカーがあって、中 には測定ということに直ちには対応することができない所もあろう。製造業者全体に、一 律に網をかけるということには、かなり困難な面があるのではないかという実状のご紹介 がありました。  その後のやり取りですが、その測定を行うために要した費用として、設備費が7,000〜 8,000万円いった、そして年間約200万円の運営費をかけているというご紹介がありまし た。  欧州の騒音規制についてということで、屋外で使用する機器については上限が設定され ていて、物によってはもう販売ができない状況にある。そして、騒音というのは労働者等 が保護具を使えば防げるが、振動というのはなかなかそうはいかない、だからメーカーと しては本来振動を重視して、騒音よりも対策に注力すべきだろうということはわかるが、 実際上、お客は騒音のほうに注目しがちであるということで、騒音にちょっとシフトして いるかなという観測のご意見がありました。ほかに細かいことですが、実際に測定すると きには騒音と振動を一挙に測ってしまうというようなご紹介がありました。以上が畝山委 員のご説明です。  続いて、前回臨時で来ていただいたリオンの吉川委員から、振動と騒音の測定機器につ いてのご説明がありました。その内容は、現在、JISで振動レベル計、手持ち工具振動 レベル計が規定されているが、前者については、環境測定という観点で定められたもので あり未だにデシベル表示である。後者の手持ち工具振動レベル計というのは、エミッショ ンを測るということで決められているというようなことでした。ISO規格と整合性が取 れたようなJISの改正原案、あるいは新規原案がすでに用意されているというご紹介が ありました。そういう改正後の規格に合わせてメーカーとして、周波数補正係数等を組み 込んだ測定器をもうすでにつくって市場に出しているという説明をいただきました。それ と、振動の測定にあたってはピックアップが非常に重要なポイントであり、会社としては 標準表をつくって売っているが振動工具、物によってはその標準のピックアップが適用で きないということがある。しかしいかんせん、市場規模はまだ小さいから、各種バラエテ ィーに富んだものを供給するまでには至っていないということでした。メーカーの構成と しては、日本と米国のメーカーが主であって、欧州でも最近少し出てきたというような状 況のご説明がありました。  一方騒音について、自動車の騒音測定で需要が大きかったというようなことで、騒音計 については国際的に共通化が随分進んでいるという実状のご紹介がありました。今後どう 考えるかということでは、単に振動を測定するというだけではなくて、管理と申しますか、 その暴露されている量そのものを測れるような測定器を開発していく必要があると考える が、現時点ではまだ具体的に着手はしていないというご紹介がありました。以上が吉川先 生からのご説明です。  最後に次回、つまり第4回目は、米国の規格についての報告と、もう一度振動工具メー カーからのお話を聞こうというようなことで概略すんだわけです。あと、前田委員から、 説明した部分で若干補足的なご発言があると聞いております。よろしくお願いいたします。 ○前田委員 私が作らせていただいた資料3−4の中で、英国の工具メーカーがトラフィ ックライトシステムということで色分け分類している、A(8)としてこうしていますと いうお話をしたのですが、ちょっとわかりにくいので。これは実際の工具の測定した値、 ahwを基本にして、それが5を超えていく値のときに赤い色を付けて、その値が2〜5の 範囲にある工具だとだいだい色、2よりも小さい場合はみどり色を付けるということで、 A(8)という言葉の表現がちょっとややこしかった。その部分を工具の実際の振動レベ ル、振動の加速度の値、ahwで見ていただくと分類がわかりやすいので、表の(8)を(a hw)に直しておいていただければと思います。よろしくお願いします。 ○相澤座長 今回、資料はありませんので、あとで直しておいてください。ありがとうご ざいました。  議事概要については畝山委員から何か。いまの内容でよろしいでしょうか。追加がござ いますか。 ○畝山委員 私のほうは結構です。 ○相澤座長 それでは議題の1に入らせていただきます。「米国の規格・基準について」で す。これについては畝山委員からご説明いただけるということですので、よろしくお願い いたします。 ○畝山委員 このANSIの規格に関しては、6月のこの検討会で、前田先生からもご紹 介がありました。その内容自身は、読んでいただければわかりますようにISO5349のパ ート1とパート2及び欧州の振動指令、これをそのまま取り込んで米国の規格にしたとい う内容ですので、説明は簡単にさせていただこうと思っていますが、規格そのものはこう いうものです。  実は、メーカーとしてアメリカでの振動問題というのは、はっきり言って、大して重要 視されていない、特に市場では。そういう認識でおりました。だから我々が一昨年から去 年にかけて、低振動を謳い文句にした工具を何機種か発売したのですが、欧州では我々も びっくりするぐらいの反応があり、ある部分ではいままでのシェアを逆転するというよう な状況まで起きていました。しかしアメリカの場合は同じ物を同じような謳い文句、超低 振動ですよということで市場に持っていっても、ある一部の取扱いのグループと言います か、そういった所からは、技術力に関しては相当な評価をいただくのですが、それが低振 動工具だからどうなるというところに関しては、あまり市場の反応は、私もあれ以来、2、 3回アメリカの市場ものぞいてきているのですが、かんばしくないのかなという感じを持 ちました。そのような感じがしていたところへ、6月にアメリカで行われた第1回のアメ リカの人体振動会議。その中でネヴァダ大のレイノルズ教授から忽然と、こういうものが もう出ちゃったよという報告があって、すぐ取り寄せて中身を見てちょっと腰を抜かした というか、びっくりしたような次第なのですが、市場規模や市場の動向が、欧州とは本当 に対極的というぐらい、振動問題に関しては非常に鷹揚な感じだったとこへもってきて、 ANSIというアメリカの標準規格で、ボンとこういうものが出てきてしまった。しかも、 ANSIというと日本ではJISに相当すると言われているのですが、この規格の中でも はっきりと2.5mの対策値、5mの限度値までもはっきり謳い込んでおり、なおかつアネ ックスのほうでヘルスリスクゾーン、ハイリスクゾーンという、はっきりと仕分けまでや ったこういう絵が出てきている。  そういうことでアメリカも、従来はあまり手腕振動、振動障害ということに関して、メ ーカーのほうがかなり突っついても、あまりいい反応が出てこなかったのが、ある意味で、 もう国レベルで本格的な対策が動き始めているのだなと。しかもそれが出てきたのが1年 かかっていないのですね。そういう超スピードでボンとこういうものが出てきたというこ とで、メーカーとしても今度は、アメリカでこういうものが出てくれば、次にメーカーと してどういう対応を取っていくかということを、いま社内でもいろいろ議論はしておりま す。内容そのものは、読んでいただいたらそのとおりということですが、泡食って焦って 訳したので、訳がこなれていないのと、誤字、脱字、間違い翻訳がしょっちゅうあると思 います。その辺はご勘弁願います。  まず基本的な考え方としてはISO5349と一緒で、ISOの場合は8〜1,000Hz、6.3〜 1,250Hzという1/3オクターブ値をカバーするもの。これはその1/3のオクターブ値 の6.3〜1,250Hzというのを、そのオクターブ枠内での上限を広げて5.6〜1,100Hzという ところまで。表現しているところは表現上でちょっと違うのかなという感じなのですが、 原則は手腕振動が人体にいちばん影響を与えるところ、8〜1,000Hzぐらいまでのところ を押さえていこうという基本的な方針は、ISOをそのまま持ってきています。したがい まして、1頁の適応範囲の所に出ていますが、要は手腕振動の人体へのリスクをどうやっ て抑えていくか、それに対する測定方法、評価方法、限度値、そういったものをこの規格 で決めてしまうよというのが、このANSIの規格です。  あと、引用規格のほうも、ISO5349のパート1が当然引用されていますし、パート2 も引用されている。ISO5805、8041という人体振動に対する基本的なISOの規格が引 用規格になっています。用語及び定義、これもISO5349そのままです。ただ、唯一表現 が違うのが欧州指令、振動指令ではELV(Exposure Limit Value)、EAV(Exposure … …Value)という言い方ですが、これは頭にDが付いています日暴露対策値、日暴露限度値 ということで、Dを頭に付けてDEAV、DELVとしたのが多少、欧州とは変わってい るかなというところです。  概論のほうも手腕振動に関しては、強さとスペクトル、それから方向、日振動暴露量、 A(8)ですね。これが重要ですと。それから当然累積暴露。これらを重要視するという ことをはっきり謳ってあります。この概論はISOのアネックスと欧州振動指令の内容を そのまま持ち込んだもので、注意事項も基本的には一緒です。特に5.2のほうは振動指令 の内容をそのまま持ってきている。ただ、ここで例えば女性の場合、妊娠期間がどうのと いうことは欧州指令にも謳っていなかったと思います。手腕振動、そのhwの考え方や振 動スペクトル、測定器の規格であるISO8041、この辺もそのままです。特に5頁の補正 係数。これはISO5349のパート1そのままです。次の頁の支持面座標系、生体力学的座 標系の取り方、その基本概念もそのまま引っ張ってきています。そういう意味合いでいき ますと、最後に出ている振動の方向と暴露量A(8)の、これもahv√T/T0のTがTv という表現になっているところが違うぐらいで、この辺はISOをそのまま持ってきてい るという感じです。  ちょっとドキッとしたのが、アネックス、附属書のAで、ここではっきり2.5mの対策値、 5mの限度値ということを、これは本文でも謳っていますが、ここではっきり謳い込んで いる。そしてそれに対して、要するに、対策値未満は問題ない、対策値を超えて限度値未 満であるとヘルスリスクゾーンで、限度値を超えたらハイリスクゾーン、非常に危険領域 ですということをここに、グレハムで使って明確に表してきているというところが、その 方針を非常に明確に出しているなという感じがいたします。リスクアセスメントをどうす るかとか、附属書Bのほうのリスクアセスメント、どうやって緩和するかという辺りに関 しては、これは当然、ここにいる委員の皆さん方もご存じの内容、ISOでも謳っている、 欧州の振動指令でも謳っていることをきちんと列記しているという内容ですので、頁数は 結構あるのですが、いちいち項目を出して説明するほどの内容ではないと思いますので、 説明としてはその辺までにして、あとは、申し訳ありませんが誤字、脱字、誤訳を探しな がら読んでいただければいいと思います。  とにかくアメリカの第1回の振動会議で、もうこういうものが出たよという報告があっ って、その内容は、いままさにこの場で我々が、今後どうやっていくかということを検討 しているものを、ある意味で先取りした形で、アメリカの国家規格としてボンと、1年足 らずのうちに出してきたというところが、ある意味でメーカーにとっては相当なショック でした。おそらくこれはJISと一緒で、これ自身が法的な拘束力を持つ規格ではないで すから、最初は欧州辺りがこういったものをバックにして、実際の労働管理をどうするの かということをまずやってくるでしょうし、そういったものが浸透してくれば、当然ユー ザーサイドも、いまの欧州のユーザーがそうであるように、振動をどうするのか、お前の 所の振動はどうなっているんだと。それで当然のことながら、振動値の開示をしろと。そ れに対してメーカーはどういう方針なのか、ということを要求してくるのが順番になるだ ろう。  この規格で1つ問題なのは基本をA(8)、日振動暴露量で評価するとは言っているので すが、実際にこの規格及びこの規格の関連規格で、具体的な振動測定方法がまだ規定され ていないことです。本文の中で、対応する国際規格もしくはそういった規格があればそれ を使用すると謳っているのですが、国際規格となるとISO8662のパート1からパート14、 エンジンのチェーンソーと刈払機を規定したISO規格ぐらいのものが国際規格としては あるぐらいで、欧州指令が準拠しているENのように、例えば、細かい電動工具であれば どうだというようなものが、まだアメリカでは、これから動き出すのだろうとは思ってい ます。  当面、これはアメリカの現地の販売法人とも話をして、出せと言われればメーカーとし て当然出すべきなのだけど、どういう数値を出せばいいのだろうか。いま我々がプールし ている振動データというのは、このあいだもお話しましたように、一応EN、欧州規格に 基づいた振動値、EN50144もしくは60745に基づいた測定値はプールしていますが、例 えばISO8662に準拠したデータというのはごく一部しか持っておりません。測定すると いっても現状、生きているというか、カタログに載っている工具だけでも数百種類ありま すので、それを再度測定するとなると、またとんでもない時間と労力を要する。いずれに せよそれは、いずれ測定せざるを得ないとは思っていますが、そういう中で例えばアメリ カのユーザーから、この工具の振動はどのくらいか、このアメリカで規格されている対策 値、限度値に対してどうなのかというような問いかけをされた場合、どの数字を持ってい くのだろうと。たぶん日立さんも一緒だと思うのですが、例えば英国の、もしくはヨーロ ッパのEU圏の基準で測るとこういうデータになりますよと。しかしアメリカはこう測れ という基準をまだ出していないので、それに対するデータは出せないけれど、一応、世界 的に通用するEU、もしくはISOの基準で測ったらこういうデータになりますというこ としか、当面は出せないのかなということは考えています。  それは同時に日本でも全く一緒だと思うのです。現状、ISO8662全14部のJIS化 がまさに、このあいだ最終審議が終わって修正原案を、つい2、3日前に出したところで す。それがJISとして制定されれば、ISO8662とIDT規格であるJISに基づいて 測定したら、こういう数値ですということになるのですが、現状、資料4Cの最後に付い ているもの,これは数年前に我々工具メーカネットワークのほうから、厚生労働省の依頼 で提出させていただいたデータを基にしているのではないかと思うのですが、これも基本 的にはEN50144に準拠したデータを、当時は提出しております。  そういうことで、いまこの検討会でまとめるにあたっては、日本として測定方法をどう するのかと。だから、測定の概念や評価、基準値、そういったものはこのANSIの規格 が謳っているように、ISOなりEUの精神をそのまま持ってくれば、まず十分であろう とは考えているのですが、例えば、ここにこういうドリルがある、このドリルの振動値は いくらかと言われた場合に、何を基準に測るのか。このあいだもちょっと説明しましたが、 EN60745とISO8662、これは微妙に測定条件が変わってきます。それから、いまどん どん改定が進んでいますが、EN60745と現行のISO8662、これがある工具に対しては 測定法がまるっきり違うこういうのも現実に現れつつあります。EN60745というのは電 動工具であり、ISO8662というのはエアーもしくは油圧工具をベースにしたものだとい うこともあるのですが、ISO8662自身が大体1990年代、92年とか86年とかその辺に作 られた規格ですので、その後どんどん進歩し変化してきているいわゆる振動工具というも のに、規格自身が追随しきれていないという面があります。逆にEN規格のほうは、ある 意味で非常に身軽に、特に50144から6074に変わるのだから、変わる以上は現状に合った ものに変えていこうという姿勢があるようです。実は私どものイギリスの現地のマネージ ャーがある程度絡んでいるのですが、もうISOでは駄目だと判断されるものに関しては ISO8662無視で、ENで新しい規格を作るんだというようなことも表に出していますか ら、その意味で、日本でどういう基準をもっていくか。  日本に現状唯一あるのは基発の第11号、これは測定方法自身も古いですし、概念的にも A(8)とか、メーター・パー・スクェアセカンドという概念ではなくて、デシベルであ り、どうのこうの。それから、補正の係数の考え方も違うのですが、唯一、基発第11号で は具体的に、こういう方法で測るのだと。例えば、圧縮強度いくらのコンクリートに関し てはこういう鑚孔をやると。もしくは、こういうような工程を踏んだときに測るというこ とをやっていますから。それも1つの方法であろうとは思うのですが、最初に申しました ように我々としては、測る段になればどういう方法でも測りますが、いちばん困るのがダ ブルスタンダードもしくはトリプルスタンダード。ISOはこうだ、欧州へ出す製品に関 してはこういう測り方をする、日本に対してはまた別な測り方をする必要があるというこ とになりますと、時間、費用の問題ではなくて、実際にその振動値自身を、我々がどう判 断すればいいのかという、非常に悩ましい状況が起こりますので、ある意味で国際的に整 合性が取れる。ある1つの規格に則って測ればそれが国際的にも、アメリカにもヨーロッ パにも適用できるというような形での測定方法の規格が、そろそろ話題にされてもいいの ではないかという感じはしております。  ただ、間違いなくアメリカが、はっきり言ってすごいのは、これだけのANSI規格を バサッと1年以内で出してきて、これが出た以上はもう基準がありますから、あとは、ア メリカでいけばOSHAにしてもユーザーにしても販売店にしても、こういったものを振 りかざして、ここはどうなっているか、メーカーはどうするつもりだというような形で、 メーカーに当然プレッシャーがかかってきますし。となれば、日本も早いところこの検討 会の結論を出して、日本としてどうする、振動障害防止のために何をすべきかということ は、早急に詰めていかなければならないのではないかという感じはしております。簡単で すが、以上です。 ○相澤座長 ありがとうございました。米国の標準規格について、最新の情報をまとめて いただきました。何かご質問とかコメントがございますか。 ○榊原委員 これは発効の日にちはわかりますか。 ○畝山委員 2006年5月19日発効になっています。ですから振動会議の直前です。 ○宮下委員 急にまとめられたという、そのバックグラウンドと言いますか、アメリカの 事情というのは何かあるのですか。 ○畝山委員 アメリカが全体的にどう動いているのかは我々としてもつかみようがないの ですが、例えば、これでチェアをやっているのがネヴァダ大のレイノルズ教授、サブチェ アがNIOSHのDr. Ren G Dong。この人たち、私も何回か話はしたことがあるのですが、 こういった人たちが中心になってアメリカでも、人体振動問題を相当取り上げている。特 に前田委員も共同研究をされていますが、NIOSH辺りではとんでもない研究が進んで いる。そういった中で、これはうちの営業もつかんでいるのですが、現実にワシントン州 ではもうすでにかなり、振動障害というのが問題になりつつあるというのを、もう過ぎて しまっている。そのほかのアメリカの州でも、結構、振動障害という言葉を出すだけで反 応が返ってくる部分があるというような話は、うちの営業のほうからも聞いております。 そういった中で、ずっといままで手腕振動、全身振動を研究してきた学者なりNIOSH なり、そういうところの研究者が、そろそろ機は熟したと。このアメリカの第1回の人体 振動会議が行われたのもそれだと思うのですが、そういう中で、もうモタモタしていられ ない、アメリカとして一応規格を作って、スタンダードを作らなければ駄目だという判断 の上で、こういったものがまとめられたのではないかと私は考えています。この辺の事情 は前田委員のほうが詳しいのではないですか。 ○前田委員 何年か前にアメリカとしての振動問題の研究への予算が付かなくなった、国 としても問題ないと言って、止まっていた時期があるのですが、やはりアメリカ全土でそ ういう研究、例えばワシントン大学ですと、あの近所の森林で3万人ぐらい調査した中で、 振動障害があるという研究結果が出ていますし、炭坑の中で工具を使ったときの問題が、 あちこちのマイニングでいろいろ出ているというのが、アメリカでもあったわけです。ず っと続いていて、やっぱり問題だというのがずっとあって、それに対してNIOSH自身 が5年前ぐらいに、放っておけないということで、アメリカのモーガンタウンの研究所に 振動の研究をする部門をつくるということで、プロジェクトができました。  その中には約12人の研究者をドンと据えて、手腕振動障害の原因をはっきりさせて、N IOSHですから、Occupational Safety and Healthという考え方で振動障害を減らすた めのプロジェクトが動き出したということが現実にあります。それに向けてアメリカとし てその基準を作る。NIOSH自身もいままで手腕振動のガイドラインとかいろいろ出し てきていたのですが、内容的に、世界中の基準と比べるとちょっと古いということで、そ の見直しがなされてその中で、医者が中心になって、今回のこれをまとめるということで 去年ぐらいからスタート。いままとめているという話が去年ぐらいからきていました。や はりアメリカとして、こういうものを作って現場へ向けて、障害を減らすための基準を出 さなければいけないという動きが、去年ぐらいから急に出てきて動き出した。やはりアメ リカとして、問題が残っていたと言いますね。放っておけなかったということで、これに 至ったというのが現実だと思います。すごく早い。私も驚いたのですが。  あとは、そのNIOSH自身が工具の開発等で、低振動工具の開発などに対して助成金 を付けて研究をするということで、大学あるいは企業へも予算を出しているということを この間から聞いています。 ○相澤座長 ほかに何かありますか。 ○榊原委員 附属書のABCという内容が付いたということは、この報告を聞いていて、 びっくりしたと言いますか、この内容自身がやはりEUの振動指令そのものの内容もその ままバッサリと取り入れているような感じですね ○前田委員 これ全部、フォーマティブの規定なので、全体の中の、完全にこれを守って いかなければいけないと言いますか、こういう評価をしなければいけないというのを謳っ ていますので、いままでのISOなどのインフォーマティブとは違った意味での強い位置 づけですね。 ○相澤座長 ほかにはありませんでしょうか。よろしければ、議題2に移らせていただき ます。「振動工具の騒音と重量表示について」で、大津委員からお願いします。 ○大津委員 資料に基づいて説明させていただきます。資料のタイトルは「電動工具の振 動測定と重量表示」です。「振動工具」という題をいただいたのですが、振動工具という規 定が社内にはないものですから、「電動工具」とあえてかえさせていただきました。全体を 申しますと、日立工機はマキタさんと同じように、現在進められている欧州の規格に従っ てすべて測定するとしております。ですから、それについては資料にしたがって簡単に説 明させていただきます。  1.電動工具の騒音測定についてということですが、現在、電動工具の騒音に関する指 令というのは欧州にあって、それに従って測定していますということで、下のほうにその 指令の内容と概要を示しています。1として機械指令と屋外使用機器騒音指令とがありま す。1.1の機械指令。これは取扱説明書に振動の値と騒音の値を記入しなさいということ で、取扱説明書に記述するに際して電動工具メーカーはEN60745、現在はこれを使って騒 音測定をしていまして、その測定した結果を取扱説明書に記載ということになっておりま す。次の1.2の屋外使用機器騒音指令。これは特に屋外で使うものに対して、本体と取扱 説明書に騒音の値を記述するということです。屋外で使うものに対して特に、きちんとど ういう装置ということが書いてあって、下に(1)騒音値の表示義務だけの機械と、(2) 騒音値の表示義務と限度値により騒音規制される機械とありますが、きちんと機械の種類 が分類されております。当社においてはこの(2)の中に含まれる限度値のある機械があ りまして、それにつきましては欧州指令に基づいて測定値を取扱説明書及び本体に表示し ております。  2頁は騒音の測定方法ということで書いたものですが、これはすべてEN規格に基づい て記述しております。2.1は、機械指令に基づく騒音測定方法ということでEN60745。以 前は50144という規格だったのですが、いまは60745になって、図1のようなマイクロフ ォンの配置、1mに5方向をセットして、この中心の所で電動工具を動かして騒音測定す る。電動工具の条件の中に、無負荷で動かすものと負荷で動かすものがあり、実際に使用 しているときではないこともあるということです。これがタイプテストということで、そ ういうことになっております。その2.1.2に、無負荷で騒音測定する例としてディスクグ ラインダの例を示しております。このようなディスクグラインダに対して、この場合には 最高回転速度で無負荷運転。無負荷ですので、そんなにばらつきもないということで、3 回測定してその平均値を求めるということで、その平均値を表示するようにしております。  3頁へいって、(3)取扱説明書への騒音に関する表示です。これは騒音についてのみ抜 粋したものです。この中にEN60745に従ってこういう数値を測定して、ISO4871に従 って宣言しているということで、測定の騒音値について数値を記載し、不確かさについて も記載しております。2.1.3に実負荷において騒音測定する例ということで、ハンマード リルを例に挙げて説明しております。マイクロフォンの位置等はすべて同じなのですが、 この場合には負荷条件としてきちんと決められております。工具ごとにきちんと負荷条件 が決められているというのがEN60745です。負荷条件の場合には、5回測定してその平 均値を求めるということが決められております。  4頁には、この測定した結果について取扱説明書に書いてある内容を記述しております。 無負荷も負荷もどちらも同じようなこと、どの規格に従って測定しているか、どの規格に 従って表示しているかということで騒音を表示しております。  次に2.2、屋外使用機器騒音指令に基づく騒音測定方法について説明します。屋外使用 機器騒音指令というのは、メインは建設機械で、その中に一部こういった電動工具のピッ クとかハンマーも含まれるということです。測定方法は工具とか製品ごとにきちんと決め られております。5頁にその絵がありますのでご覧ください。マイクロフォンの位置はそ の製品の質量の大きさによって、4mの距離あるいは2mの距離に分かれておりまして、 負荷装置においても図9に示すように、コンクリートのブロックを地面の下に埋めるよう にして、そこでエネルギーを吸収して負荷を与えるというものです。ただ、この測定その ものが第三者機関による認証が必要で、このものについてはヨーロッパの認定機関に出し て測定値を表示しております。その結果が5頁の(3)取扱説明書および機体への騒音に 関する表示ということで書いてあります。先ほどの機械指令による表示と違って、この場 合には、規格の番号も違いますが、製品重量、認証機関等もきちんと書くようになってお ります。ですから、先ほどとは違って、これはどこで測定したのかということまで書くよ うな格好になっていまして、どこの電動工具メーカーも同じようなことで進めております。  6頁は本体へ表示するラベル。これは本体の見やすい所にこのラベルだけを貼ります。 ですから、いろいろな銘板に製品の型式と定格出力など書いてありますが、それ以外の所 に本体の騒音値だけをラベルとして表示するものです。ですから表示すると言ってもほか のものとはちょっと違うという格好になります。騒音については以上です。  次に、私に与えられたもう1つの課題として重量表示というのがありまして、それにつ いて説明させていただきます。6頁のIIの所です。現在、重量についてはカタログや取扱 説明書に、私どももきちんと表示をしております。ただ、本体には場所の関係等もあって 表示していませんが、この数値はインターネットを見てもすぐにわかるようになっており ます。重量表示の課題ということで1つ書きましたが、見やすい箇所、例えば機体の銘板 にもし重量表示をするとなると、いままで出している製品の数が多くありますので、その 印刷版の変更に膨大な時間とコストがかかるというのが課題かなと考えます。以上です。 ○相澤座長 ありがとうございました。振動工具の騒音と重量の表示についてお話をいた だきました。何かご質問、コメントがございますか。 ○榊原委員 1頁の所で、騒音値の表示義務だけの機械と、表示義務と限度値によって騒 音規制される機械と2種類に分かれているみたいですが、これは、分かれる理由と言いま すか何かあるわけですか。 ○大津委員 全部読んでいないのでわからないのですが、あまり大きくない機械が表示義 務のある機械で、レベルの大きなものが限度値によって規定されているのかなと考えます。 うちの会社ではハンマーしか関係ないものですから。ほかの建設機械等がメインですので、 全体の把握はまだしておりません。 ○相澤座長 機械指令というのは屋内で使うものということではないのですか。 ○大津委員 機械指令は機械全般です。 ○畝山委員 機械工具というのは、全部カバーします。 ○相澤座長 屋外で使うものは両方……なければいけない。そうすると屋外。 ○大津委員 機械指令が全般の機械に対してそういう数値を表示するというのがあるので すが、その中で、屋外で使うものの中に特に指示された41種類とか22種類とか、そうい う指示された機械がありまして、その機械の中に。ですから、屋外で使っても指示されな い機械については特に問題はない、機械指令に従って表示するということになります。で すから私どもの製品でハンマーについては、騒音値はこの屋外騒音指令に従って書いてあ りますが、機械指令に従うところには書いておりません、振動値だけ書いてあります。要 するにダブる。測定方法が2方向になって、2つの数字は出せませんから。 ○畝山委員 それと、例えばハンマーでいきますと、この重量、ここまでの、必要範囲の ハンマーに対しては、これ以上の騒音値を出すものは、要するにCEマークは打てないわ けです。欧州圏内では売れないわけです。 ○大津委員 かなり厳しい。 ○畝山委員 かなり厳しい。これが出た時分は、日立さんもそうでしょうが、うちもかな り。それで、認定機関での測定が必要になりますから、うちの場合ですとBSIへ持って いって測定を依頼するとか、1カ月以上かかりましたか。それに費用もかかりますしね。 その意味でこの屋外指令というのはちょっと厳しいですね。 ○榊原委員 この1頁の表を見て、チェーンソーは表示義務だけで、刈払機は、下に入っ ていたものか、なんでかなとちょっと思いましたので。 ○大津委員 芝刈り機、アメリカやヨーロッパでは大きな機械が多いですよね。そういっ た機械がメインだと思うのです、日本語に訳すと芝刈り機になってしまうのですが。 ○相澤座長 公害というか、周りの人に迷惑をかけるとか、そういう配慮でしょうかね。 ○大津委員 そういう配慮だと思います。 ○相澤座長 ほかにはございませんか。よろしいでしょうか。それでは次に3番の「今後 の対策のあり方」についてご審議いただきたいと思いますが、事務局から報告書の目次案 がありますので、事務局からお願いいたします。 ○副主任中央労働衛生専門官 当方で粗いものとして用意した目次案ということです。そ の構成をご説明するとともに、内容についても多少コメントを添えさせていただこうと思 っております。  まず「はじめに」ということで、この委員会の設立の経緯や委員の先生方の名簿、開催 記録、そういうものを書いてはどうかと思っております。最初の項目としては、現在どの ようになっているか。通達等がたくさん出ているわけですが、そういうものを記述しては どうかと思っております。2として振動リスクの考え方。これはエンジニアリングの面か らと医学的な面からと、双方が必要ではないかと思っております。次の頁あたりに2枚付 けているのですが、Aの2乗×時間で評価するというようなことが、いままであまり私ど もの中ではなかったものですから、その辺の事情説明みたいなものが必要ではないか、脚 注なりあるいは後ろの説明なりであったほうがいいかなと思っております。振動が人体に 及ぼす影響、医学的知見で、この辺に入れば、あるいは4番あたりに入ればどうかなと思 っているところです。3番については縷々調べてまいりました欧州の事情、あるいは今日 ご説明いただいた米国の事情等を述べる。4番は先日お話にあった産衛学会の勧告を書い てはどうか。以上がこの情報に関するようなことで、5番は、これはご議論いただきたい と思っているわけですが、今後どういう方向に進むべきか。その内容としては、既成値と 言いますか、どういう値でどうすべきかというようなことが1つと、表示についてはどの ようにするか。ほかには、その他事業者なりが講ずべき内容等について、今後の方向が示 せれば望ましいかなと思っております  課題としては測定の手法について、今日もお話がありましたように、測定するときの基 準であるとか、それと、欧州でもあるようですが猶予措置。非常に高い値を出しているよ うなものについて直ちには適用できないので、猶予措置も必要であろうかというようなこ とが、この辺に書ければなと思っております。7番としてその他。上に述べなかったよう なことで書くべき事項を一括で入れてはどうかというように、素案として提出させていた だいた次第です。僭越ですが、目次がこれでいかがなものかというご検討とともに、中身 として5番の今後をどういう方向に進むべきかということで、ご議論を賜ればと思ってお ります。 ○相澤座長 それでは、目次全体の流れとしては、項目としてこれでよろしいかどうかで すが、足りないところはございますか。よろしいですか。振動障害防止対策の現状、振動 リスクの考え方、欧州、米国の事情、日本産業衛生学会の勧告、今後の対策の方向、今後 の課題、その他については、よろしいですか。  それでは、今後の対策の方向は非常に大事な所ですので、ご意見をいただければと思い ますが、いかがでしょうか。前田委員、いかがですか。 ○前田委員 いままで振動に対して「2時間規制」がずっと取られてきていたのですが、 その中にはどんな工具の振動レベルであっても2時間使えるような感じのイメージがあり まして、工具のレベルと時間との関係が見えてなかったと思うのです。  今回はEUやアメリカが取り入れましたように、振動のレベルと時間との関係で、工具 のレベルとの関係で使用時間が変わるということ。これがいままで日本で考えられていな かった内容ですので、その考え方を入れ込んで、規制値としてはEUで言われている暴露 限界値の5m/s^2RMSを基準にして、それに対してどれぐらいの工具の使用が可能か というような考え方を持ち込めればなという気持はあります。それを入れることによって、 日本としてもEU諸国やアメリカ等々の考え方と同じ整合性を取ることができるであろう と。メーカー自身もいまそれに合わせまして、ヨーロッパへの輸出やアメリカへの輸出も いま取られていますので、それを日本へ取り入れたとしても、メーカーに対してのしんど い仕事が増えるわけではないのではないかという気はしているのです。 ○畝山委員 例えば先ほど言いましたように、いま現在我々が持っているデータをそのま ま流用できるということであればそう大した労力ではないのですが、おそらくうちの方針 としては、日本国内でそういう1つの方針が出るよとなれば、それではもう一遍きちんと 測り直そうかという話になるので、実はその下準備を進めてはいるのですが、その辺で楽 な仕事ではないです。ただ、これはメーカーとしても絶対やっていかないと、手腕振動の 元凶と言われながら何もやってないのかと言われたらたまりませんので、それはやるべき だと思います。  表示にしてもラベリングにするのか、その他の方法を取るのかにしても、どっちみちメ ーカーとしては、これはやっていく義務があると認識しています。ただ、問題はどういう 規制値を取るか。基本的には人体に影響を及ぼす1つの指針としてのA(8)はこれは基 準になると思うのですが、そのA(8)値を、例えばアメリカは2.5と5.0で持って来た と。産業衛生学会は2.8を持って来ているというところで、それをどこをどう取るのかと いうのが1つの問題になると思うのです。  私がいまいちばん気になるのは、5の(3)に該当すると思うのですが、そういったA (8)なり何なりの新しい概念をどうやって広めていくかと。例えばイギリスの例で、H SEのバイブレーションホームページを見ると、膨大な量の資料がずらっと揃っています。 例えば工具の振動がこれだけだよと、それがわかればバイブレーションカリキュレーター というのがあって、そこへポンと数値を放り込めばどれだけの時間使ってもいいよとか。 それが工具が4種類あって、それでどうだよと、それを何時間使ったよというのを打ち込 めば、それならこれは超えてる、超えてないというのがすぐ出るというのも出ています。 別個にパンフレット、いわゆるフリーレットも私がいま手元に持っているだけで10数種類 あります。1冊数ポンドで、5ポンド、7ポンドから高いので10数ポンドになりますが、 それもバンバン出ています。  そういったものを下地にして、一応HSEのアプルーバルを取って、各メーカーがホー ムページへその内容を転記する、もしくはモデファイして載せることもやっているので、 そういった情報提供をどのように。本来はメーカーがやるべきですが、はっきり言ってメ ーカーができることは高が知れています。それをどうやっていくかと。  数年前に、私は振動、振動と言っているので、一遍イギリスの現状を見に来いよという 話がありまして、4年前にイギリスへ行って、いろいろユーザーさんやハイヤーと話をし たのですが、その当時はまだ、いわゆるA(8)と振動値の区別がつかないと。両方とも 単位が一緒で、m/s^2ですから。だからこの工具は5.0m/s^2の振動があるよと。こ れはもう限度値を超えているではないかという説明を、しょっ中やらなければいけなかっ た状況が、現実にあるのです。それは去年行って、セールスマンとあちこち歩いたり、ハ イヤーの団体と話したりして、いまは全然ありません。はっきりと工具振動値がこれだけ ならA(8)でいくらになる、何時間使ったらいいということは、もうほぼユーザーさん は理解しているので、その意味で例の3色のトラフィックシステムのラベリングも有効に なっているのではないかと思うのです。  まずは日本のユーザーさん、もしくは事業者のほうに、そういった概念をどうやって広 めていくかと。これは当然メーカーのほうも行政のほうも協調してやっていかなければ駄 目だろうと思いますが、我々メーカーとしてやるとなると、読みやすいパンフレットを作 って製品の中へ同梱しておくとか、ホームページで紹介することぐらいしかできないと思 うのですが、例えばパンフレット1つにしても、どういったものを基準に持っていくのか。 要するに原典、出典は何であると。だからこの出典にこういうことを謳っていると、これ はこういうことなのですよと。だからこういう部分に注意して使ってください、このよう な規制がありますよという形でお客さんに紹介していかないと、メーカーが勝手に、これ はこうだから1時間以上使ってはいけないよなんてことを言っていると、お客さんのほう が「何だそれは」という話になりますので、その辺が実際に日本でそういう規制を作って いく場合に、いちばん障害というか、しんどい面ではないかなと思っています。  実は、ついこの間、私どもの会社も似たようなケースがありまして、ドイツの子会社で つくらせているエンジンチェーンソーの小さいものをいま日本に持って来て、日本で再検 査をやっています。ちょうどそこへ労働基準局のほうの視察が入りまして、試験をやって いると毎日回していますから見て、先ほどの話ではないですが、「何でこれ2時間以上やる の」と。実際に1台当たりほぼ30秒、1日に120台ぐらいこなしています。当然我々とし ても、最初にアイドリング、フルスロットルの振動を測って、そのぐらいであれば一応A (8)が2.5はいかないなと。そのぐらいならやってもいいが、2時間規制だから気を付 けなければいけないということを製造部長とも話していたのですが、やはり基準局のほう が、そういう難があって、説明してもわかってもらえなかったと。とにかく当面は2時間 があるのだから2時間以上やってはいけないから、4人検査員を用意してこれをやろうか ということになったのです。  手腕振動暴露、これは暴露による障害ということを考えると、何を基準にして考えるの だということを、まずきっちりとユーザーさんだけではなくて事業者のほうにも理解して いただくことが、まず肝要かなと。それをやっていく中で、例えばヨーロッパのように、 この工具の振動値はと言われたらピンと、これならもう反射的にこれは1時間半しか使え ないではないかとか、これは20分しか使えないからこれはよくないなということに自然に なってくるとは思うので、それまでに。  もう1つ面白い例で、実は私の所はいま工場の建て替えをやっていまして、いろいろ職 人さんが入っています。ちょうど床面のちょっとごつい所を、どこかハンマーを使ってい たのでいろいろ話していて、「こんなごついやつをそんな長い時間使ったら白蝋病になる よ」なんて話していたら、「俺、ハンマー使っとるのに何で白蝋病になるんだ。俺、チェー ンソーを使ってるわけじゃねえぞ」っておっしゃるわけですよ。だからいわゆる手腕振動 障害という考え方が、どこかでチェーンソーとピシャッと、日本の場合は直結している面 もあるのかなと思って。よくあるでしょう、職人さんでも「違うよそれ、チェーンソーも 振動なんでしょうが」という話はしたのですが、そういうところから入って、手腕振動と いうのはこういうことがあって振動障害を起こすよと。それに対しては、ここまでの限度 なら健康に影響はないよと、そういったことがきちんと出せるような、いちばんベーシッ クな資料がまず必要かなと、私は考えています。 ○相澤座長 大変大事なご指摘をいただきました。こういう規制をするのであれば初めて のことで、一般的な労働衛生の上ではあり得ないことで、厚生労働省のほうもそういった ところを中災防などをお使いになって、いろいろ知らせることは非常に大事だと思います。 前田委員のご提案に、大体企業のほうも多少は能力を使うけれど、大丈夫そうだというこ とですが、宮下委員はいかがですか。 ○宮下委員 これはまだ先の話というか、各論的な話になるのかもしれませんが、そもそ も振動工具というものが何であるかということですよね。だから表示をかける、あるいは そういうルールを作って、どの範囲に適用するか。いまは、たしか振動工具の範囲は、通 達か何かで出していますね。ですから、ああいうものとリンクはもちろんするのでしょう が、こういう作業管理の中で、そもそも手持ち振動工具というのは何かというところも、 少し議論しておいたほうがいいのではないかと思うのです。 ○相澤座長 そうですね。先ほどのチェーンソーの話とオーバーラップしますが、確かに どうなのですか、加速度がある一定以上だったら振動工具とするとか、そういうことでし ょうか。 ○宮下委員 なかなか難しいですね。 ○畝山委員 いま大津委員も言われましたが、我々メーカーとしては振動工具という概念 はないのです。ただ、工具である以上は、仕事をするために振動を発生するものがありま す。例えば1つの例として、いわゆる手腕振動障害を訴えられたと労働基準局のほうにい ろいろ問合せがくるのですが、この前きた中に、我が社のこれこれの工具を使って手腕振 動障害を起こしたという申請がありましたが、マキタとしてはその工具を振動工具と認識 しているかどうかという問合せがありました。確かに基発で、振動工具とはこういうもの であると書いてあって、それからいくと確かに振動工具ですし、確かに振動は出ますよと。 ただ、それを認識しているかどうかと言われても、ちょっと返事に困ることもありました。 ○相澤座長 そうですね、根本的なことですが、何か。 ○榊原委員 そういった点でこの間前田委員のほうからも紹介していただいた機械に表示 してラベリングすることが、少し使うほうも注意することにつながってくると思いますし、 メーカーのほうも少しそういう点で、振動障害を意識する動機付けになってくるのではな いかと思うのです。  前回前田委員のほうからラベリング、表示に関して、いろいろ状況や課題も少し提案し ていただいたと思いますが、そういったことを少し。いまの宮下委員のご意見とも関連す るのですが、どのレベルを表示の対象にするかとか、測定する方法をどのように検討会と して考えるか、そういった前回の前田委員のものを基にしながら、もう少し具体的に進め る上で、どのようにしたらいいかという検討を、もう少し進めたらどうかと思いますが、 前田委員はどうですか。 ○前田委員 あのシステムをイギリスの工具のレンタル会社が取り入れて、ユーザーや事 業主の人がわかりやすく、最初工具を見た時点で、これは2時間使えるとか、これは30 分以内という判断ができて、それなりに使う側、あるいは使わせる側で、わかるようにな っています。そういう意味でのラベリングは、日本でも必要ではないかなと思います。そ の線引きをどこでするかが、日本としてどうするかという問題でもありますので、それは もうちょっと考えなければいけないかもしれません。先ほどもちょっと言いましたように、 EUの流れがありますので、それを取り入れながらわかりやすくしていく必要があると思 います。 ○相澤座長 色を分けるのはレンタルだけでしたね、あれは確か。 ○前田委員 レンタル会社がやっているシステムで、個人で買われる人がどうなっている かはちょっと。 ○畝山委員 イギリスの場合は、大体レンタルされる工具がほぼ8割以上と言われてます。 私が知っている範囲では、建築会社で自分の所で工具を買っているという所は、知ってい るだけで2社、振動測定器を持っていました。自分の所で測ってやっていました。 ○前田委員 昨日までイギリスにおりまして、そういうテスコや一般的な所で売られてい る工具の展示も見てきたのですが、そういうものにはラベリングはされていなかったです。 レンタル会社が自分の所で扱っていて、貸すものに対してのラベリングは行き届いている ような印象を受けたのですが、それに乗らなくて売られているものがあって、それには一 切なしで出ている現実があります。  例えば日本としてもラベリングをするのだとなったときに、国内のメーカーだけに限る のか、あるいは入って来る工具に対してもどうするのかを考える必要があるかもしれない です。 ○畝山委員 それと、イギリスの場合はHSEなどもはっきりと、プロ仕様のツールは相 手にするよと。DIY用というのはどんな使い方をしても、暴露量でいくとそう大したこ とはないから、そんなに気にしなくてもいいということが書いてあるパンフレットもあり ます。確かにプロですと、本当に明けても暮れても使っています。いわゆるホームセンタ ーで買ってきてちょっと日曜大工をやろうかというぐらいの方で、確かに1日やったら手 がピリピリしてしまってねという話は聞くのですが、「本当、それあなたどのぐらいやって いるの」と言ったら、「土日でね、2週間もやったかね」と。「その後は」と言うと「その 後はもうやらないよ」というレベルですので、ここでいちばん問題にすべきは、職業性の オキュペーショナルな、振動に曝されているユーザーの方が、どういう対応ができるかと いうことに尽きるのではないかと思うのです。 ○相澤座長 いまの議論について、大津委員はいかがでしょうか。 ○大津委員 まず1つは、先ほど振動工具の種別という非常に難しい問題、同じ名前が付 いていても、例えばチェーンソーでも非常に振動の小さいものもあります。しかし振動工 具だという範疇もありますので、振動工具とは一体何ぞやというのは、かなり難しい感じ がします。  もう1つラベリングの件ですが、いま特にイギリスのレンタル業界だけがやっているも のを日本に取り入れようとした場合に、いま日本の市場にはヨーロッパやアメリカ、ある いは中国などのいろいろな所から製品も入ってきています。メーカーとしては規格、基準 に従っていろいろな表示、測定をすることが前提条件ですので、それが決まればそうなる かなとは思うのですが、たぶん他の所から「どうして日本だけが」となるのかなと、そう いう気もします。アメリカもほとんどEUと同じ方向で入ってきていますが、世界の動き を見て決めるのがいいのかなと考えています。  あと、国内の製品で、私どももヨーロッパに出している製品は全て数値を持っているの ですが、国内専用という製品もありますので、こういう基準が決まるようでしたら、それ については少しデータを蓄えることをしませんと、結構時間がかかるのかなと思います。 以上です。 ○相澤座長 日本の対応が必要だというのは、考え方や規制の仕方が外国と日本と同じで あればいいわけですね。 ○大津委員 日本と外国が同じであれば、それに従って我々は測るのですが、ただ、いま 日本国内専用という製品もあるのですが、それはデータがないので、それについてはちょ っと。  もう1つ、その製品が新製品ではなくて従来から売られている製品で、あまり測ったこ とがないというものがありますので、いま市場に流している製品全てに対して、そういう 数値表示を全部して、取扱説明書を直してという事務的な作業時間が必要になるのかなと 思います。 ○畝山委員 それとEN60745にしてもISO8662にしても、メーカーは非常に製品カタ ログが限定されています。特に電動工具の場合、いまはどんどん新しいジャンルの新製品 を出していますから、どこに入れるのだろう、入るところはないではないかという製品も 出てきますので、逆にいまの基発のように製品群もしくは製品名で。例えばチェーンソー でありピックハンマーでありという限定をかけてしまうと、そこから漏れるものをどうす るのか。  類似機構ではあっても用途、目的が全く違うというものがどんどん出てきています。実 はISOでもそれが問題になっていまして、機構的には類似なのですが、用途、目的はま るっきり違う。その用途に対して使うのであれば、はっきり言って2.5なんかとてもそん な振動は出やしないと言うのですが、ISOの現行のカテゴリーで測ると、それは振動を 出しているというものが、現実に存在するわけです。そういった面からいっても、緩い枠 で製品群として振動工具を縛ることもいいのかもしれませんが、実際に想定する、もしく は設計段階で想定した使用方法における振動が、どのぐらいであれば振動表示が必要、そ れ以下なら不要というぐらいの括りでやったほうが、メーカーとしては楽なのですが。 ○相澤座長 井奈波先生、いかがですか。 ○井奈波委員 大体ほかの先生方も言われたことなのですが、ちょっと違う観点です。結 局いまは2時間規制がありますが、この会議というのはほとんどの時間規制8時間という 時間規制を外すような話になるのです。  ただ、ちょっと問題点があります。例えば4時間以上や5時間でも使ってもいいという ことになってしまうと、結局いわゆる手腕振動の障害だけでなくて、頸や肩に障害が起こ ってくるので広範性が出てきますので、それだけはあまり長時間に。規制は外すのですが、 5時間も、6時間も使うことはやめてくださいということを言っておかないと、いわゆる 頸腕症候群など、変なことを言う可能性がありますので、その辺だけは注意したほうがい いのではないかということも、加えたほうがいいのではないかと思っています。それは前 に調査したときにも、そんなことは長時間使っている所からいっぱい出ていました。手に 多少はレイノー現象は起こらないのですが、頸とか肩に結構障害が、肩こりや頸が痛とい うのが出ていましたので、その辺のところをしっかり注意しながらやってもらわないとい けないということではないでしょうか。 ○相澤座長 それは作業休止時間とか、そういう対応でいいのですか。 ○井奈波委員 はい。だからあまり長く連続でやってはいけない。例えば4、5時間やれ ば大体肩や頸に障害が起こってくるので、いくら振動が少ないといっても、同じ作業をや っていたらということになりますので、その辺のところを注意点として上げておかないと、 いけないのではないかと思います。 ○相澤座長 そうですね。大事なご指摘をありがとうございました。規制の方法は、いま の日本の現状よりは国際的なやり方に直したほうがいいというのは、皆さん一致した意見 だと思います。ただ、振動工具という定義、これがなかなか難しいということがわかりま した。  表示についてはなるべくわかりやすくということで、色のこともあります。そうすると、 国際的にはちょっと違うわけですが、これも1つの方法であると。  リスクコミュニケーションのことが非常に重要であるというご指摘がありましたので、 これも「その他」という所で強調しなければいけない。あまり機具のほうの加速度ばかり になると、作業管理のほうがおろそかになるというご指摘が最後にありましたので、大変 重要なご指摘をいただいたと思うのですが、これ以外に何か委員の方から、強調しておく べきことはございますでしょうか。この委員会は、何回やるのでしたか。 ○副主任中央労働衛生専門官 予定では、あと2回です。 ○相澤座長 そうすると、いま出てきた問題、いままではほとんど資料が出てきたと思う のですが、今後の対策としてどのようにするかという具体的なところを、あと1回ぐらい でやりますか。 ○副主任中央労働衛生専門官 課長からですが、予定は2回ですが、必要に応じてまた回 数を増やすことは考えるということで。あと、行政としての対策というのは、また盛り込 む等いろいろありますが、直ちにそれが適用可能かどうかもありますので、方向性をお示 しいただくことでよろしいかと思います。 ○相澤座長 いまご意見をいただいたような内容でよろしいですかね。あと、規制値は決 めなくていいのですか。 ○副主任中央労働衛生専門官 委員会としての知見として、お示しいただくことでよろし いのかなとは思うのですが。 ○相澤座長 そうすると、どうしましょうか。今日やるか、もう一度やりますか。 ○副主任中央労働衛生専門官 ちょっとお時間をいただきまして、私どものほうで多少何 か準備をしまして、可能でしたら1度委員の先生方にお配りしてご意見をいただいて、ま た集約してその後委員会を開くことができればと思っています。 ○相澤座長 では、今日は方向性についてまとめることでよろしいということですので、 何かこれ以外に追加することがありましたら、よろしくお願いします。 ○労働衛生課長 こちらの技術的な問題とはちょっと違うのですが、アメリカン・スタン ダードをEU支援に基づいてつくったという背景なのですが、現実に米国で、振動障害が 増えている、訴訟が増えているという実態はあるのですか。 ○畝山委員 そこまでは私は、把握していないです。ただ、先ほど言いましたように、う ちの販売陣のセールスマンなどに話をするのですが、ほんの2、3年前までは、要するに 電動工具で人体振動があると。何の話をしているのだと。アメリカではそんなことは全然 関係ないという雰囲気だったのが、振動がときどき話に出てくるね、どこそこで振動障害 があったという話を聞いたとか、そういう話はセールスマンレベルでも耳にしているよう ですので。 ○労働衛生課長 まだ企業として訴訟にさらされて、結構訴訟対応が大変だという状況に はなっていないということですか。 ○畝山委員 それは、現状ではございません。 ○労働衛生課長 この間のじん肺訴訟で規制権限行使と言われたものですから、ちょっと いろいろ大変なのです。規制権限はわかっていてしなかっただろうと。それで振動障害に なったと。原告団が結成されたら大変だなと思って。いま全部通知でやっているものです から、これがちょっと。下手すればまた、そういう問題も出る。 ○畝山委員 飛び火が。 ○労働衛生課長 老婆心です。規制が必要なら本格的に考えなければいけません。 ○相澤座長 機具の問題の場合は、ISO、日本の場合はJISですね。 ○畝山委員 はい。 ○相澤座長 その辺とのすり合わせは、よろしいのですか。 ○畝山委員 ISOの関連規格のJIS化はもう相当進んでありますので、5349パート1、 パート2、8041測定器、それから8662、個別の測定方法、この辺はもう半分以上はJIS になっています。おそらく本年度中には、必要なものはすべて出揃うのではないかと思っ ています。 ○相澤座長 ありがとうございました。まだ少し時間がありますが、よろしいですか。 ○畝山委員 あとラベリングは、いま大津委員がいまおっしゃったように、要するに日本 以外のメーカーに対してどうするかという件に関しては、例えば屋外機器に関しては、こ れはEUのほうが、これを貼らねば売らせんぞと言って、日本のメーカーもアメリカのメ ーカーもラベルを貼っているわけですから、その意味で日本で国内法として整備されれば、 それに従ってくださいよということは、言えるはずですよね。だからその辺はいいと思い ます。  ただ問題は、いわゆる名前の通った一流メーカーならいいのですが、いまホームセンタ ーなどへ行きますと、見たことも聞いたこともない、ただひたすらメイド・イン・チャイ ナとだけ書いてあって、どこが扱っているのか、誰がやっているのかわからない工具が、 山ほどあります。 ○相澤座長 そうですね、安くてね。 ○畝山委員 だからその辺を手が伸ばせるのかどうかというのは、気になるところなので す。 ○榊原委員 そういう意味で、もしこの会議がまた2回ぐらい持てるようでしたら、次回 ぐらいに、日本でもし表示制度をやるとしたら、具体的にどのような形でやるのか。また、 そこでの課題といったことを、もう少し整理することを1回やるといいのではないかと思 うのですが、いかがでしょうか。 ○相澤座長 ユーザーの人ですね、それは。どなたか、ユーザー側から何か意見をいただ いたほうがいいのですか。どういうような表示があれば、いちばんわかりやすいとかね。 ○榊原委員 それと畝山委員からも出ていますが、測定方法の問題も少し出ていましたし、 いまのお話で海外のメーカーにどうするかという課題。あと、企業で測定機器を持ってい ない所にどうするかとか、いろいろ課題が意見としては出てきていると思うのですが、そ の辺を少し整理しておくと、今後の資料になるのではないかと思います。 ○前田委員 外国から入って来る工具等に関しては、チェーンソーで構造規格はあります。 あれは三次規制でずっと昔に作られたものですが、現時点でも外国から入って来る工具の ほうは、筑波のほうであれに乗っかってテストされていますので、それをパスするかしな いかで、持ち込めるかどうかが決まってくるように思いますので、工具に関してもそうい うことができれば、国内外の、入って来るもの、あるいは国内で作っているものに対して も、ある程度値を出してもらうとか、あるいは基準に達しているかどうかを見れるような 形になるかなとは思うのです。  もう1つは、ラベリングがはっきりできますと、この間も現場に行ったときに、そこの 安全管理の人と話をしますと、いま工具自身に国内では何にも値がないと。ですから、実 際入って来られる業者の人に、どれを使いなさいとかどうしなさいという指導も何もでき ないと言われた。そういう意味では何かはっきりそういうことが決まって出てきますと、 例えばメーカーさんでグリーン、あるいはだいだい色が付いていると。これはイギリスの 場合ですが、そういう意味でのものがきっちりしていれば、こういうものを使いなさいと いう指導ができるので、そういう意味でのわかりやすいものがあるといいなという話は、 前にされていたのです。ですから、色分けしなくても数値だけでも示されるようなラベリ ングがあれば、それを見てそれなりの指導はできるようになるだろうと思います。  それと、どの工具自身がどれだけのハザード、あるいはリスクを持っているかというこ とも判断できて、その中で最初に使う工具としてはこれが安全、比較的ハザードが少ない のでこれを使用するようにという指導もできると思いますので、そういう意味でラベリン グは、早い意味での必要性があるだろうと思うのです。 ○相澤座長 測定機器というのは、かなり高いですね。 ○畝山委員 はっきり言ってピンキリです。安いといっても数十万しますが、ただ単に3 軸値を出すだけであれば、その程度のポータブルでやりますし、生データをきっちり押さ えて1/3オクターブ分析をやって、そのデータを基にしてということになると、ある程 度のシステムを揃える必要がありますから、やはり1本、2本という金額にはなってしま います。 ○相澤座長 測定方法も何か、先ほど何もやらないで負荷をかけないものと、かけてやる ものがありますね。それは両方やらなければいけないのですか。 ○畝山委員 これはあまり深く考えずに、要するにそういう規格だからそういう測り方を しているというのはあるのですが、一応規格を深読みすると、ある種の負荷部分に関して は、負荷をかけたほうが振動が少なくなるであろうと。極端に言うと、例えばグラインダ ーですと、負荷をかけるとグンと回転は落ちますから。  例えば、ハンマーの場合は、無負荷で回したら全然振動がありません。これは負荷をか けないと打撃しません。だから、そういうところでの違いはあるのかなと。  ただ、古いEN50144でいきますと、何でこんなものがというのが出てきます。例えば スプレーガンですが、こんなもので何で振動を測らなければならないのという工具が出て きていますので、その辺もたぶん何かがあって、泡を食って作ったのでしょうが、60745 で消えています。先ほど宮下委員が指摘されたように、どの部分を取り上げるのかという ことできっちり謳っていかないと。 ○相澤座長 騒音については、負荷をかけることがあるわけですね。 ○大津委員 振動と同じようにEN規格で、この工具については負荷をかけなさいとか、 この工具については無負荷でとか、そういったものが決められていて、ある意味でのタイ プテスト、型式テストなわけです。実際、要するにそれは工具を比較するため、ユーザー が選択をするのに比較するための方法と考えています。  メーカー同士を比較するときに全然違う方法でやった場合には、数値も何も全然バラバ ラになってしまいますので、そういうタイプテストに従って測らないと、ユーザーが比較 できないという問題があるので、タイプテストをきちんと規定してやっていく、というよ うに考えています。 ○相澤座長 タイプテストというのは、どういうことですか。 ○大津委員 型式、要するにこの場合にはこの負荷を何キロの荷重をかけてやりなさいと。 例えば、すごく大きな力をかけてギューっと押せば、もう工具は振動しなくなるわけです ね。例えば2、3人で押したり。でも普通使うときには、例えば15キロぐらいで押すとい うと、その荷重をきちんと規定して、それで測定することがタイプテストの1つの内容で すので、そういったことをきちんと決めないと、メーカー間の競争に対して障害になると 考えています。ですから、きちんとしたタイプテストを何にするかを、きちんと決めない とまずいと考えています。測定のバラつきの少なくなる方法です。それが先ほど畝山委員 がおっしゃったように、50144と60745で少し変わっていますし、前の1振動ですと1軸 から今度3軸になってきたことで方法も違います。あとはディスクグラインダーの回転数 の指示も違います。そういったことで、ヨーロッパのほうでは現場に近いようにというこ とで改善されている、というように考えています。 ○相澤座長 騒音の表示は、やはりやるべきですか。 ○前田委員 騒音性難聴の認定の数は右肩上がりで増えていますので、そういう意味では 工具を使うことによって、手腕振動障害と難聴と両方起こっている可能性もありますから、 音のほうも何らかの形で、この工具からこれぐらい出ているというのがわかるほうがいい のではないかという気はします。 ○相澤座長 今日6頁の。 ○畝山委員 それと騒音の場合は、もうここまで以上になったらイヤマフは絶対付けなけ ればいけないという基準も、1つできると思います。ヨーロッパの場合は、例えば屋外機 器の場合は、あくまでも環境騒音で、もう一本、騒音指令というのが出ています。これは 作業者の健康障害で、それもいわゆる長時間曝されることによる騒音性難聴と、もう1つ は鼓膜はく離です。ワンポイントでボーンと切ってというのと両方はっきりいっています から、その意味合いでも。  前にも申し上げましたが、振動と比べて騒音は、作業者に対してはまだ対策を打ちやす いのではないかと、私は考えています。ということでいうとイヤホンをする、耳栓をする ことでかなり軽減できるので、そういった1つの基準やガイドラインを作る上では、騒音 も表示すべきではないか。ほとんどの場合は振動と騒音を同時に測定できますので、測定 するほいにとってはあまり負担にはなりません。 ○相澤座長 そうですね。 ○宮下委員 現実問題として騒音の場合は、屋内の作業場はガイドライン等で、結構保護 具の着用は対応できていると思いますが、問題は屋外作業の方だと思います。実際の対策 というか、プロテクターの着用も含めて。  私はよく勉強していないのですが、例えばハンマーなどは割とパンパンという衝撃性で すね。 ○大津委員 はい。 ○宮下委員 その表示というのは、そういう衝撃騒音に対する測定のようなものも加味さ れているのですか。 ○大津委員 いや、これはもう普通の定常騒音として扱われています。 ○宮下委員 ですから、ある意味、衝撃的な振動を発するものは、当然騒音も衝撃的にな りますから、リスクは高くなりますね。そこまで言うと、なかなか対応は難しいと思いま すが。 ○大津委員 メーカーとしては私のほうにも書いてありますが、騒音の値を示すとともに そこのところにはイヤプロテクターを付けてくださいという指示、お願いをしております。 特に大きな製品に対しては、どこのメーカーもそういったことで、ユーザーのほうにイヤ プロテクターが必要ですという表示はしております。 ○相澤座長 宮下委員がおっしゃるのは、アベレージと。 ○宮下委員 そうです、ピークと。 ○相澤座長 最大のピーク値を示したほうがいいということですね。 ○宮下委員 はい。 ○相澤座長 それは相手にもよりますね。 ○宮下委員 そうですね。 ○前田委員 今年の5月に出ました騒音のEUダイレクティブのノイズの中では、ピーク 値、規制の値も出ています。それはどちらかというとエックスポージャということで実際 の作業環境で作業者に暴露される騒音に対しての基準が出ていますので、そちらではちゃ んと規制値が示されてきています。 ○畝山委員 ピーク音圧レベルと音圧とパワーレベル、これは2つ。特にピーク音圧の場 合はここでマイク持って来てということをやれば、衝撃音に関しても、かなりのところま では対応できるとは思います。 ○宮下委員 可能でというか、もし騒音も表示するということであれば、それほど技術的 あるいは手順として、複雑あるいはエネルギーを労さないのであれば、取り入れるべきだ と思います。 ○畝山委員 どちらにしてもマイク1本増やすというだけの話ですから、測定器のチャン ネルが空いていれば。 ○相澤座長 重量表示は、結局どうなったのですか。重量表示をやるのは大変だというこ とですか。 ○大津委員 現在、取扱説明書やカタログ等には書いているのですが、チェーンソーは本 体に表示するということで、本体に書けないかということですが、いま本体の銘板は、か なりデザイン等の関係で小さくなっているものもあり、すべての製品に全部書くとなると、 決まれば書きますが、ちょっと大変かなと思っているだけです。特に欧州等でも重量の問 題が大きいとは聞いていませんので、メーカーとしてはきちんとユーザーに知らせること に対しては積極的に行っていますので、インターネットを見てもすぐ、重さとパワーとす べて書いてあります。決してユーザーに提示をしないわけではなく、提示はするのですが、 それが本当に本体に必要かどうかということだけです。 ○相澤座長 軽いものは、確かに書く必要はないかもしれませんね。ある一定の重さ以上 のものはやるとか。それもまた大変ですか。 ○大津委員 それは基準が決まり次第、それを書くようにしたいと思います。 ○相澤座長 難しいですね。 ○畝山委員 ただ最近の製品は、いわゆるデザイン性もありますし、ラベルが貼れる位置 が少なくなっているのも事実なのです。 ○大津委員 特にメーカー名やいろいろな規格に従って規格マークなど、そういうことが いろいろありますので。 ○榊原委員 振動と騒音値のラベリングは、いいのですか。 ○大津委員 それもいまは、本体にはしておりません。本体にしているのは、屋外騒音指 令に書いてあるほんの一部の製品だけです。 ○畝山委員 どこか場所を考えてそこに貼るようにするか、多少金型をいじってというこ とまでやる必要があるかもしれません。 ○大津委員 やるとすると全製品になりますので、かなりコストと時間がかかると考えて いますが、決まれば対応はします。 ○相澤座長 前田委員、重量まで必要ですか。 ○前田委員 重いものをグリップ力、あるいはプッシュ力によって制限域は変わりますの で、そういう意味では要るかなという気はするのです。音と振動は、買う場合に、工具を 見たり持っただけではわからないですが、重量のほうは持ったときに重いか軽いかわかり ますから、振動と騒音のラベリングと同じようにするかどうかを考えたときには、別に重 量は落としてもいいかなという気はするのですが。 ○相澤座長 取説ぐらいで書けばいいのですか。 ○前田委員 ええ。 ○相澤座長 ということで、騒音と振動の強さが必須条件で、どうしてもということです ね。 ○大津委員 と思います。 ○相澤座長 それでよろしいですか。今日はそれぐらいでいいですか。事務局はいかがで しょうか。 ○副主任中央労働衛生専門官 ちょっと触れるのを忘れましたが、先ほど畝山委員がおっ しゃったとおり4−4は、当方で各メーカーさんにアンケート調査をして、それを取りま とめた表です。これで示したかったのは、ずいぶん高い加速度を発する機械があるという ことで、EU指令の中においても、各国に5年間の猶予措置を定める権限を与えており、 さらに農業及び林業については、その5年間プラス4年間、合計9年間の猶予措置を与え ているという事情がありますので、こういう大きな値を示すものについては直ちには対応 できかねるので、猶予措置も認めているのかなということを示したかった値です。したが いまして、EUが今後どのように動いていくかも、関心を呼ぶところではあります。正し いでしょうか。 ○畝山委員 資料4−4の数値で、我々が以前出したときは、まだEN50144で単軸値で お出ししているはずなのですが、これは計算して3軸換算された値ですか。 ○副主任中央労働衛生専門官 いえ、私どもでは手を加えてないものですから、いただい た値そのものです。 ○畝山委員 単軸値。 ○副主任中央労働衛生専門官 はい。 ○畝山委員 それは√3ですか。 ○副主任中央労働衛生専門官 まさに適用すれば数分間しか使えないというものも出てく るかと思います。 ○畝山委員 数秒ですね。 ○副主任中央労働衛生専門官 秒ですか。 ○大津委員 この表の中の3番にドリルと書いてありますが、これはたぶん振動ドリル。 ○副主任中央労働衛生専門官 振動ドリルですね。 ○大津委員 普通のドリルはこんなに大きくはないものですから、ここはドリルは振動ド リル。 ○副主任中央労働衛生専門官 この数値であれば、振動ドリルのはずです。 ○大津委員 というように思います。 ○副主任中央労働衛生専門官 私たちの正規の資料には訂正を入れておきますので、いま 皆様方は、手書きでお願いします。 ○相澤座長 このぐらいの値でよろしいですかね。 ○大津委員 振動ドリルですと10m前後出る可能性は、十分あります。 ○宮下委員 名前なのですが、6番のインパクトレンチと18番のインパルスレンチという のは、どのように。 ○畝山委員 それは構造が違います。インパクトレンチというのは、要するにハンマーで 金属をカチンと鳴らすような衝撃音ですし、インパルスというのは、間にオイルを介在さ せています。だから油を衝撃的に圧縮して、その反動で与えるような形。これはどう言う んですか、インパクトのダイレクトに金属をカチンと打ってやるのと比べて、相当数字上 は緩和されます。ただ、パワーはあまり出ません。 ○宮下委員 インパクトレンチは、まさに衝撃的なあれですね。 ○畝山委員 はい。あれはハンマーというのがありまして、それがアンビルをガンガンな ぐっているだけですから、これはかなりきついです。 ○宮下委員 そうですか。 ○相澤座長 5時5分前になりましたので、「その他」につきまして、何か事務局からござ いますか。 ○副主任中央労働衛生専門官 今日ご議論いただきましたことを私どもで取りまとめて書 いたものを作らないといけないことと、ご提案のあったユーザーサイド等からのヒアリン グも必要ではないか、あるいはその他いろいろ情報を集めることもありますので、次回は ちょっとお時間をいただきまして、10月にさせていただきたいと思います。日時等につい ては、この場ではまだ差し控えさせていただき、追ってご紹介申し上げますので、よろし くお願いします。 ○相澤座長 それでは、大変活発なご意見をいただきましてありがとうございました。だ いぶ今後の対策のあり方については、ある程度方向性が決まったと思います。今日はどう もありがとうございました。これで終わります。 照会先 労働基準局安全衛生部労働衛生課物理班(内線5496)