06/07/21 第6回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会議事録 第6回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会          日時 平成18年7月21日(金)          15:00〜          場所 経済産業省別館944号会議室 ○労働衛生課長 定刻になりましたので、「第6回労働安全衛生法における胸部エックス線 検査等のあり方検討会」を開催いたします。本日は、相澤委員、坂谷委員、西村委員がご 欠席というご報告を受けております。土肥委員と及川委員はまだですが、追々お見えにな ると思います。  まず、委員の交代がありましたので、ご紹介いたします。日本医師会からの委員ですが、 藤村常任理事から今村聡常任理事に交代しております。今村委員、よろしくお願い申し上 げます。 ○今村委員 はじめまして、日本医師会の今村でございます。4月から産業保健担当理事 に就任しております。よろしくお願いいたします。 ○労働衛生課長 それでは、以後の進行を工藤座長によろしくお願いいたします。 ○工藤座長 議事に入る前に、前回の会議は昨年の12月でしたが、矢野委員から全衛連で 実施されたアンケート調査について、明確な利害団体が調査を行ったことから、バイアス を起こしている可能性が大いにあるということで、意志決定の材料として使うことはでき ない資料ではないか、というご発言があったかと思います。座長としましては、1つは科 学的な治験に基づきつつ、2つ目はさまざまな立場の関係者のご意見を十分伺って、3つ 目に労働者の健康確保のために、どのような健診のあり方が現時点で行政的に最良である かを検討するという認識に立っておりますので、これまでもさまざまな立場の方々のご意 見を積極的に聴取してきたところです。そのため、さまざまなご意見や提出された資料を 使えないと排除するのではなく、議論を深めていくようにお願いしたいと考えております。 この件について、矢野委員から何かご発言があればお願いします。 ○矢野委員 いまご指摘の、前回の私の発言「利害とバイアス」についてですが、これは 冨田先生のエックス線を含めての健康診断を行っている全衛連からの資料について申し上 げたわけです。第2回検討会で制度が改正されると、全衛連全体として74億8,600万円減 収になるということを踏まえて申し上げたわけですが、座長がご指摘のように、こういう 検討会は、1つは調査された方の立場をよく考える必要がある。もう一つは、いろいろな 立場の方々のご意見を十分尊重する必要があるということで、そういう観点で今後もいろ いろな立場の方々のご意見を十分尊重し、私も議論に臨んでいきたいと考えております。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。いまご発言のように、それぞれの立場、そ れぞれの分野の方々から、それぞれご意見を頂戴しております。大切なご意見ですので、 それを踏まえて今後の議論を進めていくことにしたいと思います。どうかよろしくお願い いたします。それでは、本日の議題に入ります。 ○柚木委員 いま矢野委員に釈明していただいたのですが、我々全衛連としては、利害団 体という団体ではありません。きっちりとした真面目な団体で、先だっても傍聴席にだい ぶ来ていただいたのですが、非常に立腹をされておりました。やはり検討会という立場で、 いい所はいい、悪い所は悪いでいいのですが、認め合ってやっていたと。この件で蒸し返 してどうこう言うつもりはないのですが、やはり釈然としないものが残りますが、検討会 の議事を優先したいと思います。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。そのような立場で進めたいと思いますので、 どうかよろしくお願いします。  それでは、事務局から資料の確認をお願いします。 ○中央労働衛生専門官 まず議事次第、参集者名簿、座席表があります。そのあとに資料 が6種類あります。右肩に資料1とついている横長の資料が1つ、各委員からの提出資料、 参考資料1〜5が資料となっております。お手元にございますか。よろしければ議事に戻 ります。よろしくお願いいたします。 ○工藤座長 ありがとうございました。前回までの議論の概要について、事務局で整理し ていただいておりますので、資料1の説明をお願いします。 ○労働衛生課長 資料1は、前回までの議論の内容で、各委員の意見を取りまとめたもの です。これを全部読んでも、おそらく委員の皆様はほとんどお分かりのことと思います。 前回から少し時間が経っておりますので、この検討会で合意した部分から簡単に申し上げ ます。  雇入時の健康診断における胸部エックス線検査は、従来どおり実施するということで合 意がされていたと思います。  次に、海外派遣労働者に対する健康診断における胸部エックス線検査ですが、これも従 来どおり胸部エックス線検査を一律に実施すべきであるというところで合意をいただいた かと思います。  結核健康診断における胸部エックス線検査は、改正された結核予防法において結核発病 のおそれがあると診断された方は、従来であれば6カ月後の胸部エックス線検査の実施を 事業者に義務づけていましたが、改正結核予防法で、そういう場合はすでに医療機関への 受診が前提になるということで、当該規定が廃止されたので、労働安全衛生法においても 同趣旨の検査を廃止するということで合意をいただいたかと思います。  じん肺法に基づく健康診断における胸部エックス線検査は、現行どおり毎年実施という ことですが、実は安全衛生法ですべて毎年やることになっておりますので、じん肺法で3 年に1回の部分においても、残った2年は安全衛生法で保証されている仕組みということ で合意をいただいているかと思います。  最後に、いま現在議論の中心になっているのは、定期健康診断における胸部エックス線 検査をいかにするかです。これについては、肺がん検査の有効性について、あるいは結核 の状況について、喫煙との関係等各委員からご意見が出ております。肺がんも含めて、胸 部エックス線検査をすべての年代に毎年1回やることについて、いろいろな有効性に関す る文献等があり、まだ完全に合意は見ていないというところであろうかと思います。  大体前回までのところは以上ですが、参考意見として連合の代表者の方のご意見と、日 本経団連の方のご意見を伺っております。連合からは、ここにありますように、参考意見 として労働者の希望がある場合の事業主負担による健康診断の実施をしてくれたら、ある いは40歳以上の一定年齢を超える労働者への実施を義務づける形にしてはどうか、喫煙経 験者にはリスクがあるので、健康診断を毎年エックス線でやるということを実施したらど うか、というご意見が出されました。経団連からは、現行の一律的な義務づけではなく、 医師の判断、これはほとんど産業医の方々によることになると思いますが、胸部エックス 線を実施できる方向で見直しを行うのが適当である、というご意見をいただいております。 いままでの議論は、そういうところかと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。ただいまご説明いただきましたように、資料1の 2頁目の雇入時の健康診断、海外派遣労働者の健康診断の胸部エックス線検査はこれまで どおり実施する。安衛規則第46号の結核健康診断における結核発病のおそれのあるものに 対する6カ月後の胸部エックス線検査の実施については、結核予防法の改正を踏まえて必 要はないと、検討会の議論が取りまとめられたと考えております。また、じん肺法に基づ く健康診断は、具体的な方法についてはさらに詳細を詰める必要があるかもしれませんが、 基本的にはいままでどおり実施していくということで、議論が取りまとめられていたと理 解しております。  そこで最後に論点として残っているのが、定期健康診断における胸部エックス線検査の あり方です。本日はこの論点の整理をするために議論をしていきたいと思っておりますが、 議論の進め方として最初に東京商工会議所からご意見を伺い、次に第5回の積残しがあり ますので、江口委員、加藤委員にその事項についてのご説明をお願いします。さらに、柚 木委員、矢野委員から資料を提出していただいておりますので、順次ご説明をいただくと いうことで考えております。各委員のご説明のあとで、まとめて定期健康診断での胸部エ ックス線検査のあり方について、本日議論をしたいと考えておりますが、そのような進め 方でよろしいでしょうか。 (異議なし) ○工藤座長 どうもありがとうございました。それでは、最初に東京商工会議所労働委員 会幹事会座長の河井隆参考人から意見陳述を受けたいと思います。よろしくお願いします。 ○河井参考人 ただいまご紹介いただきました、東京商工会議所労働委員会幹事会座長を 務めておりますオーデリック株式会社の河井と申します。本日はよろしくお願いいたしま す。東京商工会議所労働委員会幹事会の中で、今回の定期健康診断についていろいろ検討 してきましたが、その検討経緯と、全体的な結論に至るまでの内容についてご報告いたし ます。  毎年5月に、東京商工会議所では労働政策に関するアンケート調査を実施しております。 その中で、今年はただいまの議題にもあります定期健康診断等の胸部エックス線検査をテ ーマとして、アンケート調査を行いました。それらの調査結果を踏まえ、当労働委員会幹 事会において各委員の中で討議し、意見を集約してきました。  全体的なアンケートの内容から申し上げますと、結核対策としての一律的な実施義務づ けについては、不要だろうというご意見が、各企業から多く挙げられておりました。アン ケートの切り口がいろいろありまして、そのほか副次的な意味合いでの例えば肺がんなど の疾病予防策にも一部は貢献しているので、場合によっては一定年齢以上について検討の 余地はあるのではないかというご意見もありました。  それらを踏まえて、企業の実務担当者の中で意見集約を行い、東京商工会議所としては、 今回は定期健康診断における胸部エックス線検査がテーマですので、この件については現 行の一律的な義務づけは廃止すべきではないかということで、現時点での考え方としてま とめております。簡単ですが、ここまでの経緯と結論について述べさせていただきました。 ○工藤座長 大変貴重なご意見をありがとうございました。質問は特にしないことになっ ておりますが、そういうことでよろしいですか。 ○労働衛生課長 アンケートでいろいろな企業さんから意見があると思いますが、代表的 な意見が2、3あったら聞かせていただけますか。 ○河井参考人 大きく分けて2つだったのですが、1つは質問の切り口として、定期健康 診断での胸部エックス線検査が必要かどうかという質問だったものですから、それについ ては反対意見が多かったということです。もう1つは、ほかの意味合いでエックス線の効 果はどうなのだろうという質問をしまして、その中では、結核にこだわらなければ、ほか の疾病等についての予防的な対応もできるのではないかということで、それについては一 方的に反対するのはどうかというご意見がありました。今回の話合いのテーマについては、 結核をメインとして、結核対策としての胸部エックス線が法律として必要かどうかだった ので、会議所の意見としては、それは廃止すべきではないかという意見になりました。 ○工藤座長 結核対策としての一律義務づけに関しては、不要ではないか。しかし、レン トゲンで写ってくる呼吸器や心肺の疾患の早期発見等の視点で考えた場合には、それなり に意義は存在しているかもしれないという理解でよろしいですか。 ○河井参考人 そうです。現時点で、罰則規定が平行してついているかと思いますので、 効果があるから副次的な意味合いでやれと言われたときには、また反対意見が出てくる可 能性はあるかと思います。結核以外の部分でも効果があるのだから、エックス線検査を定 期健康診断の中に入れておいたほうがよろしいのではないかという意見に対しては、もし 罰則規定がイコールで、やらなければ罰則を課せられる、義務づけであれば、その場合は おそらく反対意見が出るだろうと想定されます。 ○工藤座長 ご承知のように、現在の労働安全衛生法の定期健康診断は、事業者側に罰則 規定がついておりますので、そういうものに付けたものとしては賛成はできないというご 意見ですね。この点については、この委員会の役割を少し超えたところですので、その辺 りの議論についてまでは踏み込みはしないほうがいいのではないかと思っております。確 かに、現行の労働安全衛生法の定期健康診断はそういうものであるということを知った上 で、その枠組みの中で我々は議論していくことになろうと思います。よろしいですね。ど うもありがとうございました。  本日、4人の委員から資料を提出していただいております。まず参考資料1について、 江口委員には直接撮影と間接撮影の撮影法による効果の違いについてご説明をいただきま す。 ○江口委員 東海大の江口です。「参考資料1」について、簡単にご説明します。  前回までの宿題のところですが、肺がんの検診などで使う「間接写真」と「直接写真」 はどのような違いがあるのか、あるいは優劣があるのかについて、何か客観的なエビデン スのペーパーがあるかということが宿題だったかと思います。これについては、特に最近 のペーパーはほとんどなくて、医学中央雑誌などの文献検索で拾い上げたところ、参考資 料にある2片が引っかかってきました。それ以外は会議録などで、論文の形態をなしてい なかったので、この2つを代表的なものとして取り上げました。どちらもレトロスペクテ ィブな後ろ向きの検討をしているもので、実際的には症例数なども60例ぐらいの、比較的 小さな研究と言えるものです。  最初の福島県立医大の森谷先生のペーパーですが、これは昭和57年〜62年の間に森谷 先生の病院で肺がんとして治療された患者さんの中で、それ以前の健診のときに胸部の間 接写真がある症例を拾い上げ、特に間接の場合に70ミリと100ミリの2種類の間接写真が あるのですが、それについてどのくらいの大きさであれば発見されるのか、毎年健診をや っていて落とした場所はどんな場所だったか、厳密な比較ではないのですが間接写真の有 効性みたいなもの、あるいは限界みたいなものを検討した報告です。  結論から言いますと、70ミリの間接フィルムよりも100ミリの間接フィルムのほうが、 肺がんについてはよりよく発見しやすい、見落としたり拾い上げたりの限界の所は、大体 1cmぐらいの所であるということが述べられています。ですから、これは直接写真と間 接写真を実際に比較したというよりも、間接写真の限界はどこかをまとめたペーパーだと 考えられます。  2本目のペーパーは、参考資料1の12頁からです。これも全く関係はないと思いますが、 森谷先生という先生が出されたものです。この場合は広島の健診で、60例ぐらいの肺がん だった症例について間接写真と、病院に来て撮った直接写真、いろいろな検査のときにC Tをやって、同じ患者さんについての3種類の写真をいろいろ検討したということです。  実際にはこれも厳密な比較ではなく、むしろ場所がわかった患者さんについて、資料を あとから合わせて再読影して検討しているのですが、それでいきますと、間接写真は同じ 患者さんの直接写真に比べると、見やすい所、見にくい所、技術的な限界があるというこ とです。ただし、そうは言うけれど、間接写真でも大体1cmぐらい以上の陰影について は、発見するチャンスがかなりある。この論文は、結論からいきますと、やはり直接写真 のほうが望ましいというニュアンスで書かれています。 ○工藤座長 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、何かご質問等ありま すか。大変当然のような結論なのですが。 ○江口委員 健康に携わっている人たちから見れば、当然の結論だと思います。 ○工藤座長 直接と間接の被ばく量の差は、どのくらいあるのですか。 ○村田委員 間接のほうが2倍ぐらいです。 ○矢野委員 最近の資料では、間接のほうが同じぐらいに改善されてきていると、前の会 でデータでもお示しましたね。 ○労働衛生課長 柚木委員、もしおわかりだったら教えていただきたいのですが、事務局 で間接の調査をしましたら、間接撮影機器は現在デジタル化が急速な勢いで進んでおりま す。間接のミラーカメラを造っている会社は1社しかなくて、ここは近い将来製造を廃止 する意向であると聞いております。フィルム会社も、なるべく間接フィルムの製造等から 手を引いていきたいという意向を聞いておりまして、現在労働安全衛生法に基づく胸部エ ックス線検査を行っている健診機関で、デジタルの機械を導入している所はどのくらいあ るのか、大体わかりますか。 ○柚木委員 試験的にやっている健診機関が2割ぐらいではないかと聞いているのですが、 いずれデジタルの方向に進んでいくのだろうと思いますので、その対策に全衛連としても 取り組んでいきたいと思っております。 ○矢野委員 デジタルの被ばく量はどうなのでしょうか。 ○村田委員 画質をどのぐらいにするかによりますが、多くはならないですね。減らせる 方向にあると思います。画像処理でつくれない。 ○工藤座長 全体の趨勢として、後々過去の写真がすぐ検索して出せるとか、いろいろな メリットもありますので、比較ができるということがあると思いますが、全体としては今 日デジタル化の方向へ進んでいるという理解でよろしいでしょうか。 ○加藤委員 ご指摘のように、新規更新ができないので、デジタルの方向にいくと思いま す。ただし、機器自体の価格が非常に高いこともありますし、フィルムを使わないので、 大量に撮ってある程度年が経ってくるとペイするような要素なのです。方向としては、そ ちらへいくだろうと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかにありますか。  それでは、どうもありがとうござしまた。引き続いて、加藤委員に健康診断における結 核の状況参考資料2についてご説明いただきます。 ○加藤委員 座長から、間接と直接について宿題をいただいたと思っておりますので、資 料4の結核予防会で、事業者健診で実施した直接撮影と間接撮影の実績の比較をしたもの が入れてあります。4〜6頁が直接撮影で、7頁以降が間接撮影になっています。全体の 実質数でいきますと、私のほうの中で間接が約170万、直接が12万弱ということで、だい ぶ違いがあります。  発見率ですが、間接が6頁、直接の結果が10頁にあります。肺がんでは間接が10万対 7.3、直接が10.9。疑いを見ますと、間接が9.7、直接が4.2と、合わせるとそれほど大き な違いはないということです。これは実際データがあるわけではないのですが、健診の現 場では、前年に何か異常があって疑われる人は直接に回されることもしばしばあります。 そういう意味では、対象が最初からバイアスがある可能性がありますので、この数だけで 直接優劣を比較することはおそらくできないと思います。したがって、先ほど江口委員か らお話がありましたように、実質上発見率ではそんなに差が出てこないのではないだろう かというのが、このデータの解釈だろうと考えております。  戻って最初の資料についてご説明します。いままで胸部エックス線検査の実施のあり方 について、結核を中心にご議論をいただいたのですが、健診のあり方となると、効率化と いうことでスクラップするほうの議論ばかり進んでしまうものですから、結核対策に関わ っているものとして、問題の捉え方としては患者発見のあり方の問題として捉えていただ きたいという趣旨から作ったものです。いままでの議論にもありましたが、日本の結核罹 患者は決して低くない。世界的には中蔓延国ですし、特に感染性が高い塗沫陽性患者はほ とんど減少していないということがあります。また、20歳台は新たな新規感染が起こって いることを示していますが、この健診は緩いということもありますし、事業者等、特に医 療機関等で集団感染事件が起きていますので、患者を早期発見することが事業所内におけ る結核感染を防ぎ、労働者の安全を守るために重要であることを、十分認識していただき たいと思っています。  今回の議論の基になっている1つの議論は、結核予防法改正に関わる議論をした厚生科 学審議会感染症分科会結核部会の報告ですが、この中では、患者発見については一律的な 定期健診から、リスクを評価した高リスク健診及び接触者健診を含めた有症状受診の充実 強化という考え方ですので、健診の効率化だけを議論すると偏った議論になり兼ねないと いうことを、是非ご理解いただきたいと思います。  職場健診では、20歳は23%、30歳で20%、特に若い年代ほどいままで健診発見が多い わけですから、この健診が行われなくて、なおかつ発見が遅れることになりますと、事業 所内での集団感染が増える懸念もあるわけです。そういった意味では、結核に対する知識 も含め、あるいは実際に症状がある場合に、早期の受診の勧奨をすることが対策上必要で す。  効率的な健診を行う対象となるハイリスク・デンジャーグループは、この報告書にも書 いていますし、そのあとにも書いていますが、すべてを例事するのはなかなか困難です。 昨日の報道でもあったのですが、北海道の学校で、修学旅行に行った添乗員が大量に排菌 していて、100数十人の健診をしなければいけなかったといったことがありました。こう いった意味では、こういう職種も結果的にはデンジャーグループになっているのでしょう が、そういったものをすべてここで挙げるのはなかなか難しいですが、事業所の中でリス クということを考えていただく必要があるのではないかという趣旨です。  実際健診が必要な場合は雇入時で、これは合意済みです。ハイリスクについては、病院、 社会福祉施設等が予防法で規定されています。もう1つ、特に強調したいのは高蔓延国か らの入国者で、日本の近くのアジアの国から多くの労働者が来ていると思いますし、今後 ますます外国人労働者が増えるのではないかと考えられますが、日本より罹患率が高いだ けではなく、こういう国ではまだ若い人の病気ですので、こういった人たちに対する健診 発見も必要ではないか。事実、イギリスでは新入国者の健診の強化政策をとっております ので、ほかの先進国の状況を見ても、その辺りはきちんとやっていく必要があるのではな いかということです。  健診の時期については、入国時もありますが、結核の感染から発病は非常に長いですか ら、実際は1年後、2年後ということも必要ですし、すでに外国人がいる事業所等で起こ っている健診は、終了したあとで発症した例もありますので、私どもの立場としては1年 後、2年後も必要ではないかと思っております。飯場では非常に罹患率が高い、発見率が 高いことがわかっていますし、今日の問題では、ホームヘルパーといった介護事業者は非 常に高齢者と近接した濃厚な接触をしますので、こういった人たちもデンジャーグループ ではなかろうかと思っています。  最後の頁は、まとめとして、患者発見対策として必要なことです。まず有症状者の早期 受診・早期診断ということで、大規模な集団感染事件にはほとんど受診における診断の遅 れが関係していますので、有症状者の早期受診の機会を確保することが大事です。若い人 は、特に結核に対する知識がないということですが、こういう人たちに対する知識の啓発・ 普及が大事だと思います。接触者健診は、これから有効な患者発見の方法になりますので、 事業所等でも行われておりますが、保健所が実施主体ですが、是非協力をしていただきた いと思います。結核健診については、受診のことも大事なのですが、結果の把握も大事と いうことで、健診で有症状があったのに放置しておいたために、集団感染事件ということ もよくありますので、そういった面にも配慮が必要ではないかということです。 ○工藤座長 ありがとうございました。ただいまのご説明に何かご質問、ご意見はありま すか。 ○村田委員 お伺いしたいのですが、有症状者の早期受診・早期診断が大事になるという のは、定期的な健診とはまた違って、職場の中で、産業医の先生ができるだけ早く医療の 場に持っていくことが必要だと言われているわけですね。 ○加藤委員 そうです。 ○村田委員 そうすると、1年に1回の定期健診とはまた別の意味なのですね。 ○加藤委員 基本的な考え方は、一律的な健診から有症状者を落とさず拾い上げることが 大事だということです。 ○工藤座長 この結核健診の立場で考えた場合には、50歳台までで切りますと、むしろ若 年者のほうが発見率が高いという理解でよろしいのですか。 ○加藤委員 健診発見の割合は高いです。ただ、実際罹患は高齢者のほうが多いですから。 ○工藤座長 高齢者というのは、60歳台以上、むしろ労働安全衛生法からは外れるグルー プということですか。 ○加藤委員 そうですね。 ○工藤座長 65歳以上とか、そういう方の発見率は、マスでやればずっと高くなるという ことですね。 ○加藤委員 65歳以上ということで、目安の年齢代が規定されています。 ○工藤座長 ただいまのご説明の中に込められている主張は、今回合意事項になっている 雇入時、海外赴任から帰国後の健康診断のほかに、ハイリスクグループ、デンジャーグル ープを明確にして、そこについては特別に扱ったほうがいいのではないかというご主張か と思いますが。 ○堀江委員 2点ほど、結核予防法の対象よりも年齢の低い50歳までにおいて、20代に 比べると定期健診の発見率が50まで下がるということの私なりの解釈は、おそらく年代が 高くなれば、その他の疾患の診療等でレントゲンを撮る機会があって、定期健診以外の機 会に結核が発見されてしまっている可能性があるのではないでしょうか。20歳台の方は、 定期健診以外にはなかなかレントゲンを撮る機会がないということで、定期健診の発見率 が高いという理解では矛盾しますでしょうか。 ○加藤委員 そういうこともありますが、年代の高い人と低い人の受診の遅れを比較しま すと、やはり低い年代のほうが多い。例えば、39〜60歳と60歳以上を比較しますと、若 い年代のほうが受診の遅れが多いのです。そこは、病気に対する関心や知識、受療行動が。 ○工藤座長 もともとの有病率の年齢分布、すなわち1年の新規発生の年齢分布と合致し ているということなのですか。要するに、20代がいちばん多くて、50歳以前については、 年齢がいくよりも若い20代の方に有病率が高いということですか。 ○加藤委員 有病率ではなくて、発見できる健診の。 ○工藤座長 有病率ではありませんね。これはあくまでも発見率ですから。 ○堀江委員 参考資料3の22頁に、有病率は右上がりで、年齢が高いほど高いわけですか ら。 ○工藤座長 有病率は高年齢ほど上がっていますから。 ○堀江委員 定期健診以外の機会に見つかっている、あるいは自分で受療しているという ことですね。 ○加藤委員 そうです。 ○工藤座長 定期健診が役立っている割合が、若年者のほうが役立っているという理解で すね。 ○加藤委員 そうですね。発見の中では、定期健診のほうが割合が高いということです。 ○堀江委員 もう一つ、ただいまご指摘の有症者の把握、あるいは接触者健診を事業所で やるべきだという議論がありましたが、実際産業医の活動をしておりまして、小規模であ ろうが大規模であろうが、産業医が個々の労働者にそれほど頻繁に会う機会が実際にはあ りません。ですから、やはり健診の機会に産業医がそういう目できちんと見ることが、結 果的には対策になってくるのかなと思います。それ以外のことを考えるのであれば、事業 所と産業医が連絡を密に取って、何かあればすぐ報告をもらって調査するという活動を考 えなければいけないのかなと思います。いずれにしても、産業医がそこをきちんと責任を 持って判断する仕組みがないといけないと感じました。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかに何かご意見はありますか。  よろしいですか。それでは、続いて柚木委員が提出されている参考資料3について、ご 説明をお願いします。 ○柚木委員 意見としては、過去5回の検討会で十分把握できたわけですが、第5回の検 討会が昨年12月と、非常に時間が経っておりますので、本日はこれらの意見の中で整理す ることが1つと、2つ目に重要な内容のものを挙げました。3つ目は、最近入手した資料 に基づいて、定期健康診断における胸部レントゲンの廃止、あるいは縮小する根拠がある かどうかという観点からまとめてみました。  前回、冨田先生から第4回当検討会で発表していただいたこと、また私の意見も十分審 議されなかったものですから、工藤座長、是非今回は進行をよろしくお願いします。  2頁ですが、労働安全衛生法に基づく健康診断のいままでの流れを書いています。2004 年6月に結核予防法がこうなったと。12月に見直しの案が提起され、2005年には、それを 受けて全衛連が胸部エックス線検討対策委員会を作って、全衛連の中で意見を集約した。 厚生労働省も、2005年4月から12月まで、現在も続いておりますが検討会を開いている ところです。  3頁です。労働安全衛生法に基づく定期健康診断における胸部エックス線検査の意義と 有用性ですが、スクリーニング検査としての条件を備えていることが重要だということで、 1番目に教育現場で医師にちゃんと浸透しているか、2番目には妥当性や信頼性、簡便性、 永年にわたって労働安全衛生法上のすべての対象労働者に対して、健康診断とその事後措 置の実施に用いられていて、その意義と有用性については国民的な合意が得られているも のであるということです。  4頁、目的ですが、医師のほうに書いてありますように、一般の健康診断は、その対象 疾患が業務起因性であるとか、作業関連性疾患に限られたものでなく、広く労働者の健康 保持増進を図るために実施されていることが大事であろうと思います。また、第1回目の 相澤委員、第2回の村田委員の意見でもありましたように、未規制物質に曝露される労働 者から胸部疾患が一般健康診断で発見され、規制化されてきた歴史がありますので、定期 健康診断の目的としては、そういうことも非常に重要なものであろうということです。  5頁ですが、健康診断項目の有効性評価で、やはりグレーゾーンの医療があるというこ とです。これは、やはりコンセンサスの形成が重要であろうと思われています。このとこ ろに関しては、のちほど26頁で出てきておりまして、関連性がありますので、そこでも説 明したいと思います。  6頁です。エビデンスですが、偏った意見を採択して誤った結論に至ることを避けるた めに、より多くの有識者の意見を求めています。また、その結果に基づいてどのようにす るかが検討されているわけですが、我々全衛連として1,000人のアンケート調査を実施し、 その必要性と結論の導き方をどうするかも検討しております。  7頁では、有識者1,000人のアンケート調査があり、回答率が全体で38%、呼吸器内科 の教授は53.5%と、民間団体としては回収率は非常にいい成績であると自負しております。  8頁ですが、定期健康診断における胸部エックス線の目的は、結核予防法が改正された が、それ以外にどんな疾患が対象になるかということで、胸部X線検査、肺結核だけの予 防を目的としたものと思いますか、という問いに対して、「そうは思わない」という人が9 割と、肺結核だけが目的疾患と思っている人はわずかであるということです。  9頁です。胸部X線検査は役立っているかどうかということで、「役立っている」と答え た人は80.4%、「異常なしの診断に、また確認に役立っている」と答えた方もいます。こ れは重複の回答者を1人として計上しておりますので、こういう結果が出ております。  10頁ですが、胸部レントゲンは肺がんの診断に役立つと思いますか、ということですが、 役立っていると思われる方はほぼ7割、役立っていない方が2割ぐらいです。特にこの中 で、2番目に書いておりますように、一般にがん検診には集団健診のような対策型健診と 人間ドックのように任意型健診があって、対策型健診では特異度を重視し、任意型健診で は感度を重視している。3番目の最新の労働省の研究班の祖父江先生の研究報告ですが、 これは6月26日に公表されたものです。胸部X線検査は、対策型労働安全衛生法に基づく 集団健診において、肺がん検診の診断に役立っているという報告がされています。詳しい ことは、また25頁のところでも触れたいと思います。  11頁です。胸部X線検査は、定期健康診断で役立っているかどうか。循環器疾患の診断 に役立つかどうかですが、「役立っている」と答えた方が6割。ですから、心肥大などの循 環器疾患や呼吸器疾患以外のものでも、臨床医や産業医にとっては非常に当てにした胸部 レントゲンの健診結果を取られているようです。  12頁ですが、安衛法に基づく定期健康診断における胸部エックス線検査の診断上の効果 と、放射線の被ばく等の有益性ですが、有害なほうが大きいのと有益性のほうが多いとい うことで、明らかに有益性のほうが大きいという結果を見ております。  13頁です。胸部エックス線検査と放射線被ばくですが、間接、直接、自然放射線とあり、 間接写真の被ばく線量は自然放射線の10分の1程度に抑えられているという報告があり ます。  14頁です。定期健康診断において、胸部レントゲン検査がもしも廃止された場合の影響 を考えて、1から順番にアンケートを見てみますと、健康管理の面から見ると、やめた場 合には産業医等の責任が重くなる、また疾病の早期発見ができなくなるというところを、 アンケートでは不安に思っております。特に1番に、胸部疾患、呼吸器疾患が問診と聴打 診のみに委ねられることになると不適切であると。ですから、やはり胸部レントゲンは必 要ではないかということが指摘されております。  15頁です。肺がんから見たらどうかということですが、2番目に仕事を休んで出向いて までは受診しない。いまは労働安全衛生法に守られて、定期健康診断の中で胸部レントゲ ンがあるのですが、これをわざわざ行ってまでやるだろうかというときに、仕事を休んで まで、また仕事に合わせてやるかどうかですが、受診しない人は73.9%出てくるだろうと 危惧されております。  16頁ですが、これは結核等についての項目から見た場合に、やめても特に支障がないの はわずか5.9%で、雇入後の発病があって、雇入時健診だけでは対応できないということ が7割近くあります。注釈に書いておりますように、重複回答も含めると、約86.3%の人 が雇入時健診だけでは対応できないと答えております。  17頁ですが、定期健康診断は日本独特の巡回健診システムというシステムによって行わ れているのですが、これをやめてしまうと、2番目の「再構築は容易でない」が70%あり ます。やはり労働安全衛生法で働く人の健康を守り続けてきた定期健康診断における胸部 レントゲン検査を支えてきたのが、この巡回健診システムそのものだというアンケート結 果が出ております。  18頁です。さらに、このアンケートは労働安全衛生法における定期健康診断の胸部エッ クス線検査の存否について、現時点ではどのように考えておられるかという問いに対して、 現行どおり存続すべきであるということと、結論を先送りにして科学的根拠についてさら に検討すべきだというものを合わせると、87.1%、約9割近い数値が存続すべきであると 出ています。  アンケートはこのぐらいにして、次に19頁に移ります。最近、アスベストの問題が非常 にやかましく言われておりますが、やっと厚生労働省が、ほぼ審議をするようなところで す。平成16年9月から11月、また平成17年9月、11月に、都内のA健診センターで調 査したところによると、平成18年度上半期には約4倍になっているということで、アスベ スト健診については、多くの受診者が現行制度の胸部レントゲン検査を受けることを強く 望んでいる。不安があるので、また受診率も非常に増えている。ですから、胸部レントゲ ン検査が必要であるという方向に向かって、世の中が動いているのではないかということ を暗示させてくれる数字だと思います。  20頁ですが、最近の結核の実態と問題点です。「定期健康診断における患者発見率の低 下」とありますが、なるほど0.0いくらということで下がってきてはいるのですが、これ は長い間かかって胸部レントゲン検査を含めた定期健診が継続してきて、これを早い機会 に根を切ってしまうので、だんだんと発見率の低下になったのではないかと、これは私の 個人的な意見ですがそう考えております。特に日本の結核の罹患率は、先進国の中では際 だって高い。日本の地域性も考えると、私の住んでいる大阪では、西成区では200%近く 感染率が上がっていて、地域によっても差があるということです。  また、3番目にも書いてあります多剤耐性結核菌による結核の死亡率は、2年間に20% といわれ、感染症対策を侮っているとバイオテロが生じる危険があるのではないかという ことが危惧されております。  4番目ですが、結核の問題だけを見ても、結核予防法が改正されたから、労働安全衛生 法に基づく定期健康診断の胸部X線検査も廃止すべきという行政提案は国民の納得が得ら れないのではないかという疑問を持っています。21頁に結核罹患率の推移(全結核)があ ります。確かにこういう流れになってはいるのですが、平成11年に日本医師会から出され た結核緊急事態宣言は現在も解除されずに続いているということです。年齢別・階層別結 核罹患率。これも東京都の健康福祉局の発表ですが、就労者年齢階層の中心をなす20歳代 から60歳までを見ると、若年層の胸部レントゲン検査を省略してもいいというデータは、 ここからは出てこないということです。図で見ると、東京都では20歳代のほうが30歳代、 40歳代よりも罹患率が非常に高いということは一目瞭然です。  23頁の胸部エックス線検査の必要性について。これは結核についてですが、1番、2番 とあります。3番目に、第159回通常国会の参議院厚生労働委員会で決議された、結核予 防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議がありましたが、第4回検討会で冨田先生 から、また私からも行政見解を説明しているのですが、改めて安全衛生部長に、この附帯 決議についてどうお考えなのか、是非お聞きしたいと思います。これは手短で結構です。  続いて24頁です。胸部のレントゲン検査は肺がん検診に有効かどうかなのですが、これ も、厚生労働省研究班2001年12月の報告、藤村班2000年以降の報告、国立がんセンター の「肺がん検診の感度と特異度」を参考に付けておきました。  25頁には、「労働安全衛生法に基づく定期健康診断における胸部X線検査の有効性評価」 とあります。2006年6月26日に、最新の厚生労働省研究班、祖父江研究班の報告で、「が ん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」というタイトルがありまして、有 効性評価に基づく肺がん検診ガイドラインによって有効であるということで、労働安全衛 生法による法定検診の胸部エックス線検査の実施を推奨しています。これは祖父江研究班 ではいちばん新しいニュースではないかと思っています。  26頁は、先ほどのエビデンスの立場から見た健康診断項目の意義と有用性です。祖父江 研究班のエビデンスがある。安衛法の対象である都市部、また、就労年代の高い結核罹患 率。有識者の大多数の意見。存続すべきだというのが呼吸器内科教授では99.1%の率であ ると。それから、アスベストによる健康障害で胸部のレントゲンを望む人が増えている。 これも、受診者の意向を汲んで増えてきているのだと思います。それから、医師の技術と 判断が非常に上がってきているので、現時点では胸部エックス線検査は存続すべきであろ うと思われます。  ついで、簡単なまとめですが、これは、今日傍聴席におられる冨田先生がまとめられて、 我々全衛連の下位機関に拡大常任理事会で徹底してきた意見です。まず、胸部エックス線 検査は、1つの検査で胸部全体の概要を知りうる簡便で安価な方法として定着している完 成された検査法であり、健康診断において活用され、安全性、有効性の面でも国民の健康 の維持・増進に大きな役割を果たしてきている。2つ目に、全国の医学部の関連部門の教 授、全国の専属産業医に意見を求めたアンケートの結果、大多数の有識者は、安衛法定期 健康診断における胸部エックス線検査の役割を評価しており、現行どおり存続するという 意見が大多数であった。3つ目に、現時点では、結核予防法改正の影響を見定めることに よって、労働者の健康管理への影響に対応する総合的な施策を検討すること、新たに科学 的根拠を十分に検討すること等が肝要であり、それらは少なくともやはり5年ぐらいが必 要ではないだろうか。以上のことから、安衛法に定める定期健康診断の胸部エックス線検 査を、結核予防法の改正に伴って直ちに廃止すべきではない。規則の見直しは、労働安全 衛生規則第46条の結核健康診断にとどめるべきであろう、ということです。  最後ですが、WHOが報告した世界の15年後の疾患別死亡原因の予想では、1〜5位の 中に、3つの呼吸器疾患、慢性の閉塞性の肺疾患、肺炎、肺がんが含まれています。結核 も上位に入ります。今後とも胸部エックス線検査の役割は非常に大きいものと考えていま す。 ○工藤座長 ありがとうございました。ただいまの柚木委員のご説明に何かご質問等はあ りますか。 ○江口委員 文言の修正をお願いしたいと思います。13頁の被ばく線量のことなのですが、 ここに書かれている胸部CTというのは、おそらく低線量CTのことを言っておられるの だろうと思うのです。病院などで診断用に普通にやっているCTはもっと被爆線量は多い ので、これの10倍ぐらいです。通常に行っている診断用の胸部CTというのは、おそらく 20mSvとか30mSvの値になるのです。ここで書かれている胸部CTというのは低線量胸部 CTで、実際には例えば実験的にあちらこちらの肺がん検診で使われている低線量胸部C Tの場合の被爆線量だと思います。数字だけ一人歩きすると困りますので、訂正したいと 思います。  もう1つ、24頁の(2)に私の意見として「肺がん予防のためのスクリーニング」と書いて あるのですが、これは予防ではなくて肺がんの早期発見です。予防はできないものですか ら、早期発見です。この根拠は、上のスライドにありますようなことを指して言っていま す。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。ほかにありますか。 ○矢野委員 質問として申し上げますが前回、喫煙率の全国調査で、厚生労働省が行う国 民健康用調査とJTが行う調査でかなり差があるという例を挙げました。柚木委員は冨田 先生のものをかなり引用されましたが、それとは別に、例えば現在進行中の厚生労働科学 研究で産業医大の松田先生を座長とする委員会が同様の全国調査をされていると思います。 それについてご覧になっているでしょうか。 ○工藤座長 いまのはご質問ですね。厚生科学研究として行われている産業医大のマツダ 先生がおやりになっている調査についてご覧になっているかということですか。 ○矢野委員 はい。かなり比率も違うように思いますので、ご存じの上での発言かどうか。 ○工藤座長 お出しになった資料のアンケート調査の結果と違うということですか。 ○矢野委員 質問ですので、イエス、ノーだけをお答えいただければと思います。 ○工藤座長 質問の内容、おわかりですか。 ○矢野委員 松田先生の調査の結果をご存じですか。 ○柚木委員 存じ上げません。 ○工藤座長 どうもありがとうございます。矢野委員、いいですね。 ○矢野委員 はい。 ○堀江委員 スライドの3番に一般検診の目的が「労働者の健康保持増進」と書いてあり ますが、安衛法で事業者が責任を持って強制義務を課されて実施している範囲の健康増進 であろうと思います。具体的に言いますと、事業者が就業上の措置をすることによって健 康を確保することが期待されている、その範囲の健康増進とここは理解しておくべきだろ うと思いますので、確認のために意見を申し上げました。 ○工藤座長 ありがとうございました。よろしいですか。ただいまの柚木委員のご説明の 中で、資料の23頁にある結核予防法の一部を改正する法律案に対する附帯決議について、 改めて安全衛生部長にお答えいただきたいという要望が出ました。それについて、よろし くお願いします。 ○安全衛生部長 いま柚木委員のほうから、結核予防法の改正案の審議の際に、国会にお ける附帯決議の内容、その解釈についてお尋ねがありました。結核予防法の所管部局に確 認したところに従って、私のほうからご説明させていただきたいと思います。  まず、この結核予防法の改正においては、すでにご承知のとおり、一般の事業所に対し て結核健康診断を実施する意義が低いということで、一部のハイリスクな事業所を除いて 一般的な事業所は定期的な結核健康診断の対象とはなっていない、という改正が行われた ところです。いまご指摘の附帯決議の部分については、結核予防法改正以前に一般の事業 所において結核健康診断の実施率が低かった、いわゆる非正規労働者などであって、結核 の罹患率から勘案して、健康診断による患者発見率が高いと考えられる住民層が増加して いると。こういう状況について、改正結核予防法においても適切に対応することを期待し て決議されていると理解しているということです。そのために、担当部局においては、改 正後の結核予防法施行令、政令、告示において、こうした患者発見率が高いと考えられる 対象に対して健康診断やそのほかの措置を講ずるように市町村に対して示すことで、この 附帯決議の部分に対応しているということです。したがって、この附帯決議については結 核予防法における措置を求めているというものでして、労働安全衛生法における健康診断 について言及したものではないということだと考えています。 ○工藤座長 どうもありがとうございます。ほかに何かご意見、ご質問ございますか。な いようでしたら、矢野委員から資料4が出ていますので、ご説明いただきたいと思います。 ○矢野委員 参考資料4をご覧ください。この検討会は最初にEBMという考え方でいく ということでスタートしたと思いますが、EBMに多少ともかかわっている者にとっては、 ほとんどEBMの代名詞という形で語られるところのコクランについて出し落としていま したので、内容的にはいままでの資料とオーバーラップするところがありますが、ご紹介 しておきたいと思います。  まず、Cochrane Libraryとはどういうものか。イギリスのArchiebald Cochraneという 人の名前をとったものですが、診療所あるいは予防活動も含めていろいろな情報がある。 現在は毎日何千何万という医学論文が出てきて、その中には矛盾するような結論を導いて いるものもある中で、論文のそれぞれの持っている問題点を、できるだけ厳密かつ一定の 方式で整理していく。その前に、質の高い論文を、それぞれの論文の問題点を整理して拾 っていって、提供していく。例えば、風邪のときに抗生物質を使ったほうがいいのか、悪 いのかということについて、一人ひとりの臨床医が自分で何万とある論文を調べるのでは なく、そういうトレーニングを受けた高度の形式に則った人たちが、たくさんの論文を集 めた上で整理して、こうであったと、その元の論文や考慮、選択の基準も示しながら出す と。そういう形で、すでに1,000数百の一種の系統的なレビューが発表されている。これ がCochrane Libraryだと思います。  そのCochrane Libraryの1つの項目の中に肺がんのスクリーニングというのがありまし て、まさにこういういろいろな意見があることについて、なるべく新しくて、なるべく質 の高い論文を集めたらどうなるかということで示したのが、これです。最初は2001年に出 て、2、3回の更新を経て、最新のものは2005年1月のものになります。その具体的な内 容については、インターネットのアドレスを書いておきましたが、メッドラインなどで、 コクラン、肺がんのスクリーニングといっていただけると、ご自分でもたどり着くことが できると思います。  この要約を私が日本語にさせていただいたものが、下に書いてあります。要約自身は長 くはないわけですが、肺がんスクリーニングというのが実際に役に立つかどうか、肺がん の死亡を減らすかどうかということを判定することを目的として、電子媒体の上にある論 文、それ以外の肺がん関係の本なども漏らさないように拾った上で、一定の合理的な論文 を選ぶという形式に則って拾い出したわけです。拾うに当たっては、よかったとか、評価 が悪かったというのではなく、比較をしているということを最低限の条件にして拾ってい きました。  結果としては、胸部レントゲンをやらない群とやった群とを比較する研究はなかった。 代わりの手段として、頻回にやった群と、それほど頻回にしなかった群という比較の仕方 をしたわけです。先ほどの基準で7つの研究が選ばれて、その7つの研究で、頻回に肺が ん検診をやった群と、そうでもなかった群とでどちらが肺がんによる死亡が多いかという ことを追跡調査した結果を、オッズ比、相対危険度の近似値と考えられていますが、それ で見てみますと、オッズ比が1であれば、頻回にやったものと、たまにやったものとで全 く差がないということになるわけですが、出てきた結果は1.11、頻回に検診をやったほう が肺がんで死ぬ確率が11%高いという結果になった。これが、このCochrane Libraryの 結論になるわけです。そうしますと、いわゆるエビデンスの代名詞であるコクランにおい て、肺がん検診は有用でない、もしかすると害があるかもしれない、という報告がなされ ているわけです。  ちなみに、この要約には書いていませんが、なぜ害が多くなったかということについて は、いくつかの仮説を立てて中で議論しています。放射線被爆の量自身は個々人について は非常に低いので、それで肺がんが増えるというのは考えにくい。ただ、例えばラドンの 相乗作用ということが報告されていますので、同じように喫煙と放射線との相乗作用があ るのではないかとか、肺がん検診で所見があると言われて、まだ肺がんの治療成績は必ず しもよくないものですから、治療がうまくいかない中で、いろいろな検査、あるいは心理 的な負荷がある中で、かえって死期を早めてしまっているのではないか、ということが議 論されています。  それから、このコクランの中では議論されていませんが、私は、あとで討論のときに問 題提起させていただきたいと思うのですが、柚木委員が言われた特異度の問題と関連して、 フォールスポジティブに伴うさまざまな検診、検診で行う胸部レントゲンの被爆量そのも のはそれほど大きいものではありませんが、一旦有所見となりますと、いまの時代ですと CTそのほか、かなり被爆量の多い検査をせざるを得ない、そうなってきたときの被爆量 による影響ということもあり得るのではないかと思います。  とりあえず、全体の結論として、エビデンスというのは常に医学の進歩、研究の進歩、 調査の繰返しの中で変動していくわけですが、現在取り上げられているエビデンス、いわ ゆるエビデンスの代名詞であるコクランにおいては、頻回の胸部エックス線検査というの は有用でないどころか害を持つ可能性があるというのが結論である、ということをご紹介 させていただきます。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。ただいまの矢野委員のご説明に対して、何 かご意見ございますか。 ○村田委員 コクランレビューは私も読ませていただきました。コクランレビューそのも のはもちろん新しいのですが、そこで選ばれたRCTというのが、結局1970年代のRCT が中心となっていて、先ほどからの議論に出ていましたが、エックス線写真そのものの画 質も全然違うし、70年代のRCTに関しては方法論的にもいろいろと問題があるという疑 問も挙がっていて、もう一度見直そうという意見が出ているのだと思います。それと、日 本ではケース・コントロール・スタディでそれなりにエビデンスを出している。コクラン には入ってきませんが。アメリカでも今、PLCOスタディという形で5万人、5万人の 大規模な……のスタディも進行中ですし、2010年に結果が出るのを待っているところです。 ですから、古いRCTを見るとそういうデータになってしまう。まだこれで決め付けてし まわないほうがいいのではないかと私は考えます。 ○江口委員 私もコクランについては十分知っているのですが、これについて日本の中で は、いま村田委員が言われたような意見がかなり大勢を占めてきている。資料3の25頁に あったいちばん最近の厚生労働省の祖父江班でも、肺がん検診ガイドラインがついこの間 出されました。7月26日に、国立がんセンターの国際交流会館で、この検診ガイドライン についてのフォーラムがあって、一般の方々の意見も聞かせてもらうというアナウンスが インターネットに出ていましたが、ここにありますように、エビデンスベストの欧米の研 究報告だけで今の肺がん検診のアウトカムを判断するというのは若干問題があるというこ とは、かなり日本の中で大勢を占めている専門家の意見だと思います。  それでは、欧米ではどうか。国際的な研究団体で、メンヨークリニックの、前にRCT をやったグループの、もっと若い先生方とか、米国とか欧州の研究者の団体でスクリーニ ングの研究班があるのですが、そういうところでも、以前のレビューに関してのいろいろ なRCTの問題点というのはディスカッションされているところです。 ○矢野委員 言われた点についてだけ、簡単にコメントさせていただきます。このコクラ ンのレビューというのは、2002年の祖父江先生の研究までを含めて検討した上でのもので す。ケース・コントロール・スタディというデザインの持っている制約ということを考慮 して、選ぶ上ではRCTという限定でやっている。そのほうが新たなバイアスが限定的に は起こりにくいからということだと思います。非常に長い時間を要する研究ですが、RC Tはそう易々できるわけではなくて、村田委員からご紹介があったように、PLCOなど の結果が非常に待たれているところではありますが、ともかく2002年までのすべてのエビ デンスは出しているのであって、決して70年のものに限ったわけではないということは、 確認させていただきたいと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。いままで大変長い時間をかけて活発なご討議をい ただいたわけですが、本日は第6回目ということですので、延べにしますと12時間ぐらい の討議を続けてきました。そろそろ集約の方向に入っていかなければならないと考えてい ます。この間のご議論は、最初のご説明にありましたように非常にさまざまなご意見が出 されて、それぞれのご主張の中身というのは必ずしもすべて一致できるということでもな いように思います。その中でも、ある一定の範囲においては一致を見ている、あるいは、 その辺のところであれば大体新しい対応ができるのではないかというところも少し見えて きているように思います。そういったところを中心にしながら、引き続いて事務局のほう で、取りまとめの方向についての骨子をまず提案させていただきたいと考えています。今 回は、その骨子について事務局のほうから説明をしていただいて、合わせて、今後の方向 という討議をして、最終的なまとめに入りたいと考えています。それでは、配付をお願い します。 ○労働衛生課長 事務局から「エックス線検査等のあり方検討会取りまとめ骨子(案)」を 配らせていただいています。この検討会も、前回から今日の検討会までだいぶ時間があき ましたので、事務局では、いろいろな先生方のご意見を伺いながら、一致できないところ もまだあるわけですが、検討会の報告書の内容としてはどういう辺りがよろしいかという ことを、工藤座長はじめいろいろな先生のいままでのご議論をまとめるとともに、特別に ご意見をいろいろお伺いしました。これは、一応案としてお出ししてみたいというもので す。  いま問題になっているのは、最後の「定期健康診断における胸部エックス線検査」の部 分です。その前に「じん肺法に基づく健康診断における胸部エックス線検査」というとこ ろがあります。これは、資料5でお配りしているものです。  この最後の頁をご覧ください。常時粉じん作業に従事している管理2の労働者、または 管理3の労働者は定期じん肺健康診断は1年に1回となっています。常時粉じん作業に従 事したことがあって、現在は非粉じん作業に従事している管理2の労働者については、実 際は3年に1回なのですが、間の2年は安衛法の定期健康診断で手当てされて、実質的に は毎年の検査になっているということです。これは現行どおり毎年実施することにすると いうことですので、間の2年を安衛法の定期健康診断でやっている分については、これも 他の部分と同じように省略なしで、現行のまま、じん肺の所見があるものについてはやる ということで対応させていただく、ということでお示ししているものです。ですから、実 質的には毎年、じん肺に基づく健康診断については現行どおりやるということになります。 ただ、実際には規則の制定ぶり等については私どもにお任せいただきたいと思っています。  次は、大事な「定期健康診断における胸部エックス線検査」です。いままでいろいろな ご意見をいただきました。全廃やむなしというところから、いままでと全く同じように全 部やったほうがいいというご意見まで、いろいろとありましたが、まず基本的には、40歳 以上を対象とする、40歳未満は医師の判断により省略可ということです。これは、あくま でも医師が判断した場合です。大方の場合は産業医の方々が判断するという条件が必要に なると考えるわけです。例えば有所見者等については省略不可と。ここに※がありますが、 労働安全衛生法における胸部エックス線検査では、肺がんを対象とはしていないものの、 肺がんそのものを目的としてやっているのではないということをお示しているわけです。 職場環境。これは受動喫煙の問題、あるいは結核、他の呼吸器疾患、循環器疾患について も、中高年の発症頻度が高い、また高くなってきているという事実を踏まえて、40歳以上 に呼吸器疾患等、これは循環器も含めますが、一般的な健康増進のためのスクリーニング 検査として胸部エックス線検査を実施することとすると。省略不可の対象者については、 有所見者の範囲、それから職場環境、これは受動喫煙等の問題も念頭に置いて、下記有効 性等と合わせて評価を行うこととするということです。  (3)の、それでは40歳未満は医者がすべて省略にしていいのかという話ですが、雇入 時検診の後5年ごとを目途に節目検診を行う。例えば18歳もしくは20歳前後で就職して、 40歳になるまで約20年間、全くレントゲンで呼吸器、循環器等をカバーしなくていいの かということがありますので、5年ごと程度に節目検診を行ってはいかがか、というご意 見をいただいたものです。  (4)の見直しの実施等についても、いろいろなご意見がありました。それらを事務局 と集約させていただいたものですが、まず定期健康診断として胸部エックス線検査はすで に国民の間に定着している。今回の見直しについては、仮に省略可、一種の条件というも のが付いたとしても、現在の健康診断制度の大きな変更になる。そのため、労働者に対し て健康確保に対する不安が生じないように、周知するための十分な期間が必要である、と いうことはきちんと示さなければならないということ。  それから、先ほどの議論にもありましたが、胸部エックス線検査による健康診断につい ては国内外で種々の評価があります。そのため、胸部エックス線検査の労働者の健康管理 に対する有効性、労働安全衛生法に基づく胸部エックス線検査の有効性は、もう一度私た ちとしてしっかりと評価する必要があるのではないか、というご意見が出されています。 そのようなことから、有効性の評価などを行った上で、必要な関係規則等の見直しを行う ことが適当である。以上の見直しを、定期健康診断における胸部エックス線検査の有効性 の評価がなされた段階で行うのが適当であるということです。  完全な見直し、評価がどのぐらいできるのかというのは、また問題があるかもしれませ んが、周知の期間が必要であるということから、その間を使いまして、私どもとして、も しご承諾いただければ、これらの労働安全衛生法における検診のきちんとした調査研究を 一度行い、それらを祭考にした上で、このような骨子案でやっていいのかどうか最終的に 判断をした上で、このような形で実施するということでご提案させていただいた次第です。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。いまの取りまとめ案の骨子について、ご質 問ございますか。1つは、一定の年齢層に線を引くと。それは40歳というのが1つの分岐 点ではなかろうかということと、実施に当たってはより慎重を期する必要があるというこ とで、それなりの有効性の調査、評価も同時に行っていくということだと思いますが。 ○堀江委員 3点ほどあります。1つは、今回、胸部エックス線検査の目的をどのように 考えるかについて、ここでいろいろな議論が出ましたので、それを整理していかれる方向 が出ていると思います。ただ、ここでの議論を聞いている人間はある程度わかるのですが、 私が気づく範囲では、先ほど加藤委員からもありましたように、雇用の多様化等において、 自分の事業所の労働者には問題がないのだけれども、ほかの事業所の方と非常に密接に接 して作業をしている人たちについては、これはハイリスクと考えるべきではないかという 意見もありましたし、相澤委員、村田委員のご意見で、新規化学物質等における肺線維症 のようなものは、稀ではありますが発見されますので、スクリーニングというよりはサー ベーランスのような意義も、事業所によってはあるということです。外国人労働者も、出 身国や年齢層を見極めた上でハイリスクと判断する必要もあるでしょう。さらに、今日の ご意見の中には、若い方々に大勢接する方というのは、本人の健康管理もあるのですが、 サービス対象者の健康確保、集団の健康確保という意味でも、検診は受けておくべきだと いうことがありました。  いろいろな観点でハイリスクを慎重に判断しなければいけないということがわかると思 います。  何が言いたいかといいますと、1つは、ここに書かれていることを少し具体的に、産業 医にもわかりやすいようにガイドラインのようなものを示していただく。柚木委員がおっ しゃっていたように、産業医の責任は重くなるという意見もありますし、私もそのように 感じますので、全国の産業医が目的をどのように捉えるかということをしっかり教育する 意味でも、ガイドライン等を示していただければと思います。  2点目ですが、医師の判断により省略可というのは、現行の一般検診においても、一般 の定期健康診断においてもこういった項目があるのですが、実態を申し上げますと、非常 に安易に判断されている。本当に医師が判断したのかどうかはっきりしないまま省略され ている事例もあるように感じています。現行の制度では、血液検査とか心電図検査は39 歳であれば医師の判断により省略可なのですが、誰が、どのような根拠でこれを省略して いいと判断したかは、記録も何も残るような仕組みになっていません。ここでの議論をお 聞きしますと、これは非常に大きな改正にもなりますので、それはしかるべき医師、おそ らく産業医が、その事業所については責任を持って、これは省略していいと判断したから 省略するという制度をつくっていく必要があるのではないかと思います。これは実務を伴 いますので、いろいろ検討していただく必要もあるかと思いますが、できればこういうと ころできちんと事業者が産業医と話をして健康診断の項目を検討する。健康診断のあり方 を考えるのは本来産業医の職務ですが、これはなおざりにせずに、きちんとここはやると いう制度をつくっていただければありがたいと思います。  3点目は、3)の「雇入れ後5年ごと」という文言です。これは私見かもしれませんが、 対象者の呼出しをする場合、多くの施設では年齢で切っているのが多いのではないかと思 います。この書き方ですと、19歳で入ったら、24歳、29歳、34歳とやっていくことにな るのでしょうが、これはたぶん難しいと思いますので、実務的には、19歳で入ったら20 歳、25歳、30歳と、0と5にそろえていただくほうがやりやすいのではないかと思います。 これは柚木委員のほうがお詳しいと思いますが、いかがでしょうか。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかにありますか。ハイリスク、デンジャーとお っしゃいました。改正された結核予防法は、前回の通常国会で感染症法の中に統合される ということになって、現在継続審議になっているわけですが、その中でも、ハイリスクの グループというのはいくつか指定がありましたよね。あれは、感染症法の中にそのまま持 ち込まれていますね。 ○加藤委員 それは変わらないはずです。 ○工藤座長 したがって、労働安全衛生法と感染症法との関連でのハイリスクのグループ、 あるいは病院や学校という、排菌者が出たら感染させてしまうところの健診のあり方につ いては、労働安全衛生法でやっていくのか、感染症法の中でやるのかということは、まだ 詰まってはいないのですね。 ○労働衛生課長 感染症法に特定した部分からは感染症法が優先し、労働者の一般的な健 康確保のためには労働安全衛生法なのですが、職場環境でのウイルス感染のリスクであれ ば、労働安全衛生法の概念からしますと、実は特殊検診の世界に入っていくわけなのです。 しかし、特殊検診をするためには、常にターゲットが明らかになって、常時そのリスクに 晒されているという条件が必要になりますので、常時そのリスクに晒されていて、そのタ ーゲットが常に一定であるということがなければ、安衛法のほうでそちらのほうを担保し ていくというのは、ちょっと難しいのではなかろうかと思います。どこかでウイルスの研 究をしていて、常時そのウイルスに晒されて、それがきわめて危険だと。それを職業とし て何年も続けていくのであれば、特殊検診の世界として当然成り立ち得るわけですが、菌 核がどんどん変わり、ウイルスの種類もどんどん変わり、研究テーマが変わって、リスク の対象物が次々に変わるというようなことでは、一般的には安衛法の中で規定をして特殊 検診にそれを持ち込むというのはなかなかできません。化学物質であれば、工場などは基 本的にはやっていますが、少量の危険化学物質を多数、短時間ずつ変えて取り扱う、例え ば研究室とか研究分野のところは、そういう規制を一律的に入れるというのは技術的にか なり難しいのではなかろうかと思います。 ○工藤座長 これは結核予防法あるいは感染症法との関係の問題ですので、そちらのほう で指定されている項目といいますか、施設などの対象の中にも、いくつかのところが漏れ ているのではないかというご議論もあるのかもしれませんが、それはそれで、そちらのほ うで検討される案件かと思います。 ○堀江委員 ハイリスクが列挙されている職場以外に、各自治体で判断されて対象にする という文言が、結核予防法には入っていますよね。それに相応する関係からすれば、その 場を統括している医療職である産業医が判断すると。職場も千差万別です。先ほどガイド ラインとは言いましたが、これはあくまでもガイドラインだと思います。個々には、特殊 性を了解した方、医学についてよく知っている方が判断するということにならざるを得な いと思いますので、その部分が入っていればよろしいかと思います。 ○加藤委員 結核予防法の中でも、法律として規定されているものと、国の基本指針、大 臣告示ですから、法令ではない中に書き込まれているリスクの高いものというのがあるの です。それは法律の制定の技術の話なのかもしれませんが、何らかの形で結核予防法改正 本来の考え方である部分は盛り込んでいただく方法はないのかなと思う次第なのですが。 ○工藤座長 ありがとうございました。先ほど堀江委員のお話にありましたが、入職から 5年目というのは現場にいくと大変だと。いずれにしてもこれは40歳未満のターゲットの 話なのですが、20歳、25歳、30歳という誕生日健診的な発想のほうがいいのではないか、 というご提案もありました。ほかに何かご意見はありますか。 ○労働衛生課長 雇入れ時から約20年全然見なくていいのか、というご意見がありまして、 それで節目検診という話が出てきた。そのようにやっている住民検診もあるのですが、こ ういうものは、やりながらきちんとデータを積み上げていかなければいけないし、いまま での部分で、どの年代でどうかある程度調査は入れていかないといけないという条件は、 きちんと付けておかなければいけないのかなということで、調査研究もこの中に一応入れ てあるということです。 ○工藤座長 ほかにご意見はございますか。 ○今村委員 私は前5回出ていませんので、議事録等で皆さん専門の方たちの本当に多様 なご意見を見ました。その中で現実的な対応としてこういうものを事務局がまとめられた というのは、非常に状況もよくわかります。日本医師会も、先ほど堀江委員がおっしゃっ たように、認定産業医も6万人ほどいて、そういった現場の中で、もしこの骨子が実際に なっていくとすれば、対応を相当慎重に考えていかなければいけないとは思っています。 この骨子そのものについての意見というのは、特に今回はありません。皆さんがそれなり にお考えになって決められたということであれば、私どもも了解するところです。 ○工藤座長 ありがとうございました。 ○労働衛生課長 問題は、原則として全体としてこれはやるという考えなのか、というこ となのです。これは原則としてやるのだけれども、18歳、19歳で入ってきて、雇用時検診 は全く問題なく本当に元気だという人は結構いますが、それが、普段の状況から見て、例 えば産業医であれば1カ月に1回職場巡回等をやっているわけですので、いろいろな情報 を総合して、「まあ、いいでしょう」ということになったときに初めて省略できると。ほか にもいろいろな条件があると思いますが、そういうところで、本当はやるのだけれども、 医者が判断した場合に省略を可とすると。本当はやらなくてもいいのだけれども、医者が やれと言ってやらせるのではなくて、医者が省略を不可としてやらせるのだと。省略と判 断した場合に省略可ということで、その省略不可の条件というのを先ほどのリスク論から いくつか将来的に整理をするということなのだ、とおっしゃった先生がおられて、そうい うものを盛り込んでこのように取りまとめました。  ただ、これを規則に当てはめていくと、技術的に難しい面が相当あります。そのような ときは、ガイドラインとか、告示が可能かとか、そういうところでこのような条件につい てさらに専門家の先生方と詰めていかなければならないと思っています。そうなると、さ らに細かい内容について必要かと思います。 ○工藤座長 よろしいですか。まだいろいろご議論があるかもしれませんが、本日の討議 はこのぐらいにさせていただいて、今日までの6回にわたる議論と、いま提出してもらっ た取りまとめの骨子を中心にして、次回の検討会に検討会の報告書の案を作成して、事務 局から提案してもらい、最終的な取りまとめの議論を次回に行いたいと考えています。そ ういうことでよろしいですか。                   (異議なし) ○労働衛生課長 次回までにいろいろご意見がおありかと思いますので、よろしければ事 務局にお伝えください。 ○工藤座長 次回の検討会の予定について、お願いします。 ○中央労働衛生専門官 次回の検討会は、8月23日(水)の3時から5時を予定していま す。場所については現在選定中ですので、決まり次第ご連絡させていただくということに させていただきたいと思います。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5495,5181)