06/06/29 次期治験活性化計画策定に係る検討会第1回議事録            第1回次期治験活性化計画策定に係る検討会 議事録                     日時 平成18年6月29日(木)                        10:00〜12:00                     場所 九段会館瑠璃の間 ○事務局(廣田) ただいまから「次期治験活性化計画策定に係る検討会」を始めさせ ていただきます。本日は、皆様ご多忙中のところお集まりいただき、ありがとうござい ます。議事に入る前に、医政局長の松谷より一言ご挨拶をさせていただきます。 ○医政局長(松谷) おはようございます。厚生労働省医政局長の松谷と申します。大 変お忙しい中、本検討会の委員をお引き受けいただき、また、本日ご出席いただきまし て厚く御礼を申し上げたいと思います。また、常日頃から医療行政について一方ならぬ ご理解、ご協力を賜っており、重ねて御礼申し上げる次第です。  ご存じのとおり、平成15年4月に、治験の空洞化といったことが指摘をされる中で、 我が国の治験を活性化させることを目的に文部科学省と厚生労働省とが協同して策定し た「全国治験活性化3カ年計画」の計画期間をもう1年延長させていただく運びとなり ました。過去3年間、関係者のご尽力により、大規模治験ネットワークの構築、医療機 関における治験実施体制の整備、国民・被験者に対する普及・啓発、医療機器GCPの 施行、医師主導治験の施行など一定の成果が得られ、大変危機的に減少しておりました 我が国における治験の届出数も、平成15年を底として上昇に転じたところです。これも 3カ年計画を着実にやってきた成果ではないかと思っておりますが、治験に関してはま だまだ、これから更なる活性化を目指していかなければならないという状況にございま す。  国民の関心も、かつてよりもずっと高まっております。また、メーカーはもちろん、 諸外国と比較していろいろな議論もされており、改めて言うまでもなく、画期的な医薬 品や医療機器を我が国の医療現場に速やかに導入して世界最高水準の医療を提供するた めに、治験は必要不可欠なプロセスであるわけです。平成18年度におきまして、厚生労 働省としては、文部科学省とともに更なる治験環境の整備に向けて、次期治験活性化計 画の策定に向けて取り組んでいきたいと考える次第です。本検討会は、まさに、それに 向けての検討をいただくということで、治験に関係するさまざまな立場の有識者の先生 方にお集まりをいただいたところです。次期治験活性化計画の策定に向けて、是非、そ れぞれのお立場から忌憚のないご意見を頂戴するようお願いを申し上げて私からの冒頭 の挨拶といたします。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ○事務局 「次期治験活性化計画策定に係る検討会構成員名簿」に基づいて、本検討会 の構成員の方々を、五十音順にご紹介申し上げます。東京大学医学部助教授・附属病院 臨床試験部副部長の荒川義弘様。日本CRO協会理事の一木龍彦様。独立行政法人国立 病院機構本部医療部研究課長の伊藤澄信様。日本大学医学部附属板橋病院治験管理室主 任の榎本有希子様。日本SMO協会特別顧問の尾芝一郎様。独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター副院長の楠岡英雄様。(社)日本医師会治験促進センター科学技術部薬 事担当部長の小林史明様。北里大学薬学部臨床統計部門教授の竹内正弘様。慶應義塾大 学医学部衛生学公衆衛生学教授の武林亨様。川崎医療福祉大学客員教授の塚本泰司様。 日本製薬工業協会医薬品評価委員会委員長の中島和彦様。日本医療機器産業連合会GC P委員会委員長の安田晃様。国立がんセンター情報研究部予防・検診情報評価室長の山 本精一郎様。国立循環器病センター臨床試験室長の山本晴子様。また、本日ご欠席のN PO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の辻本好子様にも構成員として参 加していただくこととしております。  なお、本日は事務局側として、医政局研究開発振興課長の鈴木、医薬食品局審査管理 課長の川原、文部科学省高等教育局医学教育課長の栗山が出席させていただいておりま す。また、医政局経済課長の二川は他用によって若干遅れておりますが、後ほど参加さ せていただく予定にしております。また、座長選出までは事務局で司会を務めさせてい ただきます。  次に、配付資料について説明と確認をさせていただきます。まず「第1回次期治験活 性化計画策定に係る検討会議事次第」と座席表があります。資料は1〜5まであります が、資料1は、次期治験活性化計画策定に係る検討会開催要綱。資料2は、次期治験活 性化計画に係る検討会構成員名簿。資料3は、全国治験活性化3カ年計画に係るこれま での取り組み。資料4は、次期治験活性化計画策定に係る検討会の今後の進め方。資料 5は、次期治験活性化計画策定に向けた論点です。また、参考資料1として、全国治験 活性化3カ年計画の概要。参考資料2として、全国治験活性化3カ年計画の本文。参考 資料3として、全国治験活性化3カ年計画の進捗状況。参考資料4として、フォローア ップのアンケート結果。参考資料5として、治験を含む臨床研究基盤整備に係る専門作 業班報告書骨子。そして参考資料6として、この報告書の全体版を配付しております。 なお、当日配付資料という形で、治験環境変化(2)をお配りしております。以上が本 日配付の資料ですが、過不足等がありましたら事務局までお知らせいただきますようお 願い申し上げます。  本検討会の運営等について説明いたします。資料1は「次期治験活性化計画策定にか かる検討会開催要綱」となっており、目的等が1〜5まで書いてありますので簡単に説 明いたします。  1はこの検討会の目的ですが、全国治験活性化3カ年計画の成果を検証し、その結果 を踏まえて次期全国治験活性化計画を策定することとなっています。2が検討事項で、 治験を円滑に実施するために必要な環境整備について、医療機関の治験実施体制の充実、 関係する職員等の養成並びに確保、患者等の治験参加の促進、治験実施企業における取 り組みの促進、医薬品・医療機器の開発に係る研究開発の促進等について検討すること としております。3は構成です。検討会は、医薬品・医療機器の治験に関係する各分野 の有識者と行政担当部局を含む形で構成され、検討会は、構成員のうちの1名を座長と して選出するという形になっております。4は運営です。検討会は大体月1回を目途に 開催したいと存じますが、必要に応じて随時開催することができる形とさせていただき ます。また、検討会は、知的財産等に係る事項を除いて、原則公開とさせていただきた いと思います。その上で議事要旨を作成し、公表させていただきます。さらに、検討会 は必要に応じて、個別の検討事項に係る専門家を参考人として出席することを要請でき るものという形にさせていただきます。  開催要綱に基づきますと、座長は構成員のうちからどなたかをお願いするという形に なっておりますので、座長の選出を行いたいと思います。もし特段の自薦や推薦がない ようでしたら、事務局といたしましては楠岡英雄先生にお願いしたいと考えております が、いかがでしょうか。                (拍手により賛同) ○事務局 ご賛同いただきましたので、楠岡先生は座長席にお移りいただき、以降の議 事は座長にお願いしたいと思います。 ○楠岡座長 座長に選任された楠岡です。非常にハードスケジュールで、課題の多い検 討会ですが、ご協力をよろしくお願いしたいと思います。  早速、議題3「次期治験活性化計画策定に係る検討会の今後の進め方について」に移 りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。 ○研究開発振興課長 資料3は「全国治験活性化3カ年計画に係るこれまでの取り組み」 という題になっております。2頁に、過去10年の初回の届出数が赤い棒グラフに、治験 届出数が青い線グラフで示されております。  全国治験活性化3カ年計画は2003年から行われているのですが、その3カ年間で、初 回の届出数も全体の治験届出数も少しずつ増えてまいりました。初回の届出数だけを比 較しますと、ちょうど10年ぐらい前の水準まで何とか回復してきました。1998年に、 治験を実施する際の省令上の基準である新GCPが施行され、ICHという国際的なハ ーモナイゼーションの動きを通じて外国データを受け入れるということがあって随分件 数が減りましたが、何とかここ2、3年盛り返しているという現状です。  そうした当初の日本の治験の問題点は、3頁の左側に書いてあるように、治験のスピ ードが遅い、質が良くない、そして費用が高いということがよく指摘をされておりまし た。最近、質は必ずしも低くはないのではないかと言われていますが、遅い、費用が高 いというのは、一医療機関当たりの患者の集積性も含めて、事実ではないかと言われて おります。その理由としては、右側に書いてあるように、1.患者側のインセンティブ、 2.研究する側のインセンティブ、3.治験の実施体制の弱さ、4.供給量や供給不足が指 摘されておりました。  そういう指摘を踏まえて、平成15年4月に「全国治験活性化3カ年計画」を文部科学 省と厚生労働省で定め、4頁に書いてある5本の柱を設けました。まず、治験のネット ワーク化を推進するということで、「大規模治験ネットワーク」には現在1,170医療機関 が入っております。医師主導の治験については、12件採択され、そのうち6件は、すで に治験届も出ております。  2番目は実施体制で、特に5,000人を目途にCRC(治験コーディネーター)を養成 してまいりました。3番目は患者に対する啓発です。4番目は企業に対する負担軽減と して、書式の統一や電子化等々を行うこと。5番目は、臨床研究全体を支えるものを推 進しなければいけないということで、基盤づくりも含めた研究事業を推進することが挙 げられています。  先日来、医薬品産業ビジョンも含めて、現在の治験の実施環境について様々な関係団 体の方から指摘をいただいており、それを5頁の左側に「意見」として載せてあります。 人材の話、インセンティブや情報提供の話、実施率等の話や全体的な研究の推進体制の 話等さまざまな意見がありますが、平成18年度には、さまざまなご指摘に対応する事業 として右のような施策を展開しており、19年度以降に向けて、更にこういったものを加 速して実施したいと思っております。  先ほど申し上げた全国治験活性化3カ年計画のいろいろなものについて、では事実関 係はどうなのだというところを見たものが6頁以降のグラフです。まず、大規模治験ネ ットワークに登録している医療機関の数が、平成15年の273から始まり、1170まで増 えてまいりました。これらは既に担当の方と電子的につながっており、将来的にはもう 少し双方向性の高いものにしていきたいと思っています。  7頁は、医師主導の治験について書かれています。青い所が私どもが厚労科研費で支 援している部分、赤い所がそれ以外の部分ですが、実際に治験届出が出て実施されてい るものの累計で、今14ございます。実際に我々は6件すでに治験届を出したわけですが、 それ以外に6件、全体として今プロトコールづくりをしています。  8頁は、現在治験届が出ている14件について、適応外を目的としているのか、未承認 の医薬品・医療機器なのかということを見たグラフです。青い所が「適応外」、赤い所が 「未承認」ですが、適応外のほうが多くなっていることがわかります。  9頁が毎年のCRCの養成数です。私どもは5,000人を目的としたCRCの養成とい うことで努力をしてまいりましたが、平成17年度は5,000人には届かず、4,500人養成 を終わったということが示されています。  問題は10頁です。これはCRC研修を実施した後どこに実際所属しているのかを見た ものなのですが、赤い所がCRCとして勤務、オレンジの所が治験事務局です。赤とオ レンジの所は研修を受けていただいた方がまさに研究の目的とするような業務に関わっ ているということですが、それ以外の所、つまり治験以外の業務であったり無職であっ たりするということは、結局は異動したり辞めたりしたということですので、これから は単に養成した数だけではなくて、実際に医療機関で稼働している数もよく見ていかな ければいけないと思います。  11頁は、私どもで所管している医薬品・医療機器の研究開発に関する研究費の推移で す。棒グラフが総額で、ここ3年間ぐらい増えています。線グラフは、その中のそれぞ れの研究費の割合ですが、臨床研究が黄色、TR(Translational Research)、つまり基 礎研究から臨床研究への橋渡しとなるものが赤色、それ以外の研究が紺色です。本来我々 は、厚生労働省の科研費であれば臨床研究を重点的に支援すべきではないかと思います ので、黄色の部分をもう少し増やしていきたいと思います。  12頁と今日当日配付した1枚を使って、いままでのところ、厚生労働省が集めた統計 ばかりで信用できないと言う方もおられるかもしれないので、少し客観的なデータをお 示ししたいと思って、いろいろな所にご協力をいただきました。  12頁はEFPIA(欧州製薬団体連合会)のデータです。下に注釈が書いてあります が、治験環境の変化を、前回は2002〜2003年、今回は2004〜2005年ということで比較 したものが左と右の数字です。そして黄色の所が、まあ評価できるであろうと連合会の ほうで考えている所です。  まずいちばん上。例えば申請手続きの郵送が認められている、これは手続きの簡素化、 簡略化の指標となるところですが、それが増えている。それから、申請から契約締結ま での日数も早くなっている。また、最初の訪問日から契約締結までの訪問回数が5回以 下であれば早いわけですが、これが43.1%と増えている。さらにSDV(Source Data Verification)の手続きに要した期間が当日又は7日以内という所も増えている。治験 終了後に、カルテがどこにあるのか分からないというのではなくて、必須文書がきちっ と治験事務局に保管されているものが増えている。最後に、我々の研修の成果もあるの かもしれませんが、CRCがいる施設が3分の2からほぼすべてということで増えてい る。こういうことで、ここ2、3年のうちに、実施環境としてはかなりいろいろな面で の改善が見られているというのが連合会の分析です。  ただ課題がございます。下に書いてあるように、契約書式もしくは関連の書式で独特 の書式を使っていたり又は特有の加工を求められる。これは多分、依頼者側からすれば 負担になるということですが、こういうものが大きな病院で非常に多いということがあ ります。  2番目、これは小さい医療機関に多いようですが、IRBでの説明をモニターに求め られる。本来これはおかしいのではないかということですが、こういう課題があるわけ です。  それから、調査全体にしても、2002〜2003年で実施していた治験と2004〜2005年で 実施していた治験は全く一緒ではないので、中身が違うのではないかという指摘はもち ろんあるかもしれません。  もう1つ。当日配付資料のうち上のほうが製薬工業協会提供のデータです。これは 2003〜2004年の治験期間の比較ということで、依頼から治験薬の交付まで、交付からC RFのクリーンまでということで、若干課題の数も変わっておりますが、555日から526 日と期間が短くなっていることがわかります。  下のほうは竹内先生にもご協力いただいているR&D Head Clubのデータですが、これ も2004〜2005年にかけて、申請から症例報告書の確定までが622から558。コストにつ いても下がっているということで、客観的にもいろいろな変化が最近見られます。  資料3に戻り、13頁で2点ほど新たな動きを紹介したいと思います。1つは、臨床研 究基盤の整備推進事業です。これは医療機関の実施体制や人材づくりがなかなかうまく いっていないのではないかという指摘を受けて、平成18年度から厚生労働省で実施して いるものですが、左のほうが特に人件費も含めた実際の拠点づくり、右のほうがプログ ラム、プロトコールづくりを支援する所です。  採択課題は下に書いてあるとおりですが、特にこの事業で強化したいと思っておりま すのは14頁にある3角形の3点、つまり人材の養成、第三者による全体の審査、それか らデータの管理、これらをきちっと強化して、日本でもきちっとした治験臨床試験の拠 点をつくっていくべきではないかということで実施をしています。  15頁は臨床研究の登録制度についてです。これはInternational Conference of Medical Journal Editorという『ランセット』や『ニューイングランド』等欧米の一流 医学雑誌の編集長の委員会ですが、私の記憶では昨年の9月以降、そこでアクセプトす る新しい論文については、臨床試験を開始する前にきちっと登録していたものでないと 受け付けないと。これは俗に言うパブリケーションバイアス、つまりネガティブな結果 のものを公表しないというバイアスを防ぐための手だてだと聞いています。  そういうことが世界的にもありまして、いまWHOでも同様の動きがありますし、日 本でも、この真ん中に緑のマルで示されているUMIN、医師会の治験促進センター、 それからJAPICと3つシステムが動いております。そして、現在のところ700件ぐ らい既に登録が日本国内で行われているということですが、私ども行政の視点としまし ては、それぞれに国民あるいは患者が見に行かないといけないというのは少し煩雑です ので、いわば横串ポータルのようなもの、1つキーワードを入れて検索をかけると、そ の後リンクでポンとそこに飛べるようなものを今、国立保健医療科学院で考えていただ いており、来年度ぐらいから実施できればと思っております。  最後に、臨床研究倫理指針というものがあります。先ほどGCP省令の話をいたしま したが、薬事法に基づくGCPについてはGCPというきちっとした基準があるわけで すが、それ以外の臨床試験あるいは臨床研究については何もないのではないかという指 摘を踏まえて、平成15年に臨床研究倫理指針を策定いたしました。  中身は16頁の3.「内容」をご覧いただければよろしいかと思いますが、きちっとし たインフォームド・コンセントを取ってもらう、個人情報の保護にも気をつけてもらう、 第三者から倫理的あるいは科学的な観点からの検証もきちっとしてもらおうということ ですが、これはあくまでもガイドライン・レベルであり、これがどの程度遵守されてい るのかは今後の課題でして、実は平成18年度に、遵守状況について我々のほうで少し調 べさせていただこうと思っております。  最後の17頁は、臨床研究倫理指針がどこをカバーしているかを図示したものです。ゲ ノムの指針等、茶色で書いてあって文科省等いろいろな省庁と一緒に運用しているもの 等独自に抜いている部分もございます。治験自体は実際にGCP省令で所掌しているわ けですが、それ以外のところで、臨床研究倫理指針が今ガイドラインとして働いていま す。私ども事務局からの説明は以上です。 ○楠岡座長 資料4もご説明いただけますか。 ○研究開発振興課長 資料4は「次期治験活性化計画策定に係る検討会今後の進め方」 です。2頁にスケジュール的なことが書いてありますが、局長のご挨拶にもありました ように、3カ年であった平成15年からの現行の治験活性化計画を1年延長して次年度か らとし、その間の1年間、この検討会で次期の長期活性化計画に向けて検討をしていた だくということを考えております。  3頁ですが、治験についても様々な側面があると思うのです。左と右に分かれており ますが、右のほうが、いわば法的な治験の承認・審査等に関わる制度に関するもので、 これは医薬食品局で所管するわけです。左側の治験を含む臨床研究の基盤、実施環境の 整備については医政局で所管しておりまして、本検討会は左側、実施環境のほうの検討 をお願いしたいと思います。  4頁をご覧いただきたいと思います。実は、臨床研究基盤の整備に関する専門作業班 を昨年から今年の頭にかけて、楠岡座長にお願いをして検討していただいたわけですが、 その結論を1月にご報告いただきました。  それが黄・青・赤の3つの事項に腑分けされているわけですが、それぞれ申しますと、 左の黄の所が18年度に調査をしなさいというもので、1〜5まであります。左の下の青 い所が引き続き着実に取り組んでくださいというもので、これは私どもと文部科学省と 関係の機関で着実に、3カ年計画に則ってこれから、18年度もやっていくものです。右 の赤い所は、こちらの検討会で是非検討していただきたい、次期19年度からの活性化計 画に向けて検討していただきたいというものです。  5頁は前の頁と一緒にご覧いただいたほうがいいかもしれません。実は、前の頁の黄 色い所は1〜5までありますが、5の臨床研究倫理指針については、既に行政的に遵守 状況を調べることにしました。そこで、1.実施体制について、2.人材について、3. 啓発について、4.負担軽減に向けたさまざまな取り組みについて、この検討会の先生方 にも随分入っていただいて検討班をつくりました。  6頁をご覧いただきます。先ほども座長からお話がありましたが、期間のない中を精 力的にご検討をお願いして恐縮なのですが、左側から2番目のコラムがこの検討会の議 事の進め方の我々の案です。今月6月に当初の論点整理等を行って、それから順次さま ざまな課題について検討をお願いするということです。右側の調査班、先ほど申した黄 色の4つの班それぞれにすでに調査を開始していただいておりますので、ここから出た さまざまなデータ、さまざまな解析をこの検討会に持ち込んでいただくなり送っていた だくなりして、それぞれ検討していただく。もちろん最終的には年度内に取りまとめて いただくわけですが、できれば9月の終わりか10月ぐらいには、中間的に骨子のような ものをまとめていただければと思います。  最後は我々のほうのポンチ絵のようなものですが、黄色いマル下4つが、まさに調査 をしている所です。体制を整備し、人材を育成し、きちっと啓発・情報提供した上で、 負担も軽減し、臨床研究全体を賦活化することによって、治験の実施について、今より 以上に活性化した環境としたいということです。以上が資料4の説明です。 ○楠岡座長 全国治験活性化3カ年計画に関わるこれまでの取り組みと本検討会の今後 の進め方の2点についてご説明いただいたわけですが、この点に関して、何かご質問等 ございましたらお願いいたします。 ○山本(晴)構成員 資料に関して指摘をさせていただきます。資料3の17頁の図です が、「臨床研究倫理指針」と「疫学研究等に関する倫理指針」2つがかぶっている所に「投 薬等を伴う介入研究等」というのが入っているのです。しかし「投薬等を伴う介入研究」 は、どちらかというと治験に非常に近いものですので、「疫学研究に関する倫理指針」の 範疇には絶対に入らないと思うので、これは外に出していただいたほうがいいのではな いかと思いました。 ○研究開発振興課長 「投薬等を伴う介入研究等」が、これでは「臨床研究倫理指針」 の中に入っていますが、形として疫学研究であっても、投薬等を伴う介入研究は「臨床 研究倫理指針」で見るということですので、書き方を少し工夫させていただきます。 ○楠岡座長 同じことが逆にも言えて、臨床研究の中でも、介入的な要素がなくて、ど ちらかというと「疫学研究に関する倫理指針」のほうで行われているものもある。また、 灰色に塗ってある所にも一部臨床研究の部分が入り込んでいる所がある。ここは非常に グレーゾーン的な所が結構あると思います。  資料3の2頁目、治験届出数の推移のところで、1996年から1999年にかけて、初回 の届出が減ったり治験届出数そのものが減少していますが、そのことが新GCPの実施 よりも前に既に起き出している。今までいろいろな所で、新GCPだけが減った原因で はない、むしろ製薬メーカーのほうが従来たくさん「うちもあれが欲しい、これが欲し い」と何でもかんでも創っていたのだが、ある程度そこが整理されてきた。そういう意 味でゾロ新のようなものが無くなってきたのでこの届出が減ってきた、そういう話がず っと今まであったと思うのですが、今回戻ってきたのはゾロ新が復活したのか、それと もピカ新が増えたのか、この辺りはいかがなのでしょうか。 ○審査管理課長 それは申請を受けている審査の担当ではわからないので、製薬協の中 島さん辺りからお答えいただくのがよいかと思います。おそらくゲノムとかあの辺の基 礎研究がだんだん臨床応用の段階に入ってきた成果かなという感じは持っておりますが。 ○中島構成員 ゾロ新のようなものが増えてきているというよりも、先達て、ある大手 製薬企業の開発幹部の方のお話ですと、全く新しいという薬もあるけれども、最近は適 用拡大の課題が増えているということでしたが。 ○楠岡座長 そうすると、ここでは増えてきているが、ある意味望ましい方向で、薬と して新しくはないが適用を拡大して新しいことを付け加えると。 ○中島構成員 はい、ゾロ新のようなものについての取り組みは大分下がってきている のではないかとは思います。 ○安田構成員 いま座長にご指摘いただいた治験届出数の推移等に関して少しだけ。こ れはいわゆる医薬品の治験届だと思いますが、医療機器に関しては今般の薬事法の改正 によりまして、分類と申しますか、管理区分も変わりました。それにより、治験の要・ 不要の判断もまだできてないこともございます。また、その後新GCPが施行されまし たので、その辺の影響は非常に大きいのではないかと思います。その辺の分析は、いま 座長が言われたように、企業側の考え方の問題なのか、それとも環境の整備が必要なの か。その辺を分析するために、これは医薬品ですが、医療機器、以前は医療用具と言っ ておりましたが、その治験届の推移、薬事法の改正、新GCPの施行、その辺と合わせ てどういう状況かということを是非行政のほうでお示しいただければ、データとしては 非常に有用ではないかと思っております。 ○小林構成員 資料3の7頁について、薬物の医師主導治験のこれまでの治験届の数字 がこうして報道されたのは、私の知る限りはじめてで大変ありがたいのですが、この中 には、実際届は出されたのだが実施に至っていない、あるいは取り下げられたというよ うなものも、おそらく含まれていると思うのです。実際に動いているものの数の公表を してはいただけないでしょうか。 ○研究開発振興課長 事務局によりますと、3つが動いていないが、それ以外のところ は動いているということです。 ○楠岡座長 いまのお話は、具体的にはどの部分を言っているのですか。 ○小林構成員 治験推進研究事業6個は6個とも動いておりますので、それ以外の8個 のうちの3個が実際には動いていないと思うのですが。 ○中島構成員 今後のこの会の進め方で確認させていただきたいことが1つ、もう1つ はお願いです。今年度4つのフレームで調査がなされるわけですが、その結果もこの会 議の場で検討されるということでよろしいわけですか。 ○研究開発振興課長 はい。 ○中島構成員 資料3の3頁にある「我が国の治験の問題点」こういったところがかな り重要だと思っておりますが、それが資料4の4頁の「この会議で検討する事項」に入 っていなかったものですから、ちょっと確認させていただきました。  もう1点はお願いといいますか、これは当然含まれているのかもしれませんが。この 会議で検討され、解決すべき課題が示された場合、厚生労働省あるいは文部科学省、そ ういった省庁レベルでは解決できないような課題も出てくる可能性があると思うのです が、そういったものについても、是非この会で明確にしていただくことをお願いしたい と思います。 ○荒川構成員 いまのご指摘にも関係しておりますが、資料4の3頁に、左側が基盤の 整備、右側が制度の整備ということです。基本的には医政局と医薬食品局ということに なると思うのですが、制度の問題も基盤の1つだと私は思うのです。制度的な隘路につ いても昨今いろいろな所で調査が進んでいるようです。そういうことが進まないと、つ まり1カ所でもクリティカルなパスがあると進まないということがありますので、それ も是非一緒にやれるような環境づくりをしていただきたいと思います。もちろん省庁間 の問題もあると思いますが、いろいろなライフサイエンスの仕組みが動いていますので、 そういう中でも連携をとれるような体制を是非とっていただきたいと思います。 ○研究開発振興課長 いまのご指摘で1点だけ申し上げます。この検討会のほかに、治 験のあり方に関する検討会を医薬食品局でやっていただいており、まさにいまご指摘い ただいた右側の、制度的な側面についてご検討いただいておりますので、そこと密接に 連携をとりながら、我々のほうの情報も提供しますし、逆も真なりということで進めて いきたいと思います。 ○山本(精)構成員 資料4の4頁左側の黄色の所、臨床研究倫理指針については何か 進んでいるというお話でしたが、それの結果もここで議論されるのですか。 ○研究開発振興課長 時期的にいつフィードインされるかということはありますが、実 は臨床研究倫理指針だけではなく、先ほど山本晴子先生からも指摘されたようないろい ろな指針がございますので、いま厚生科学課と相談をして、いろいろな指針の遵守状況 をまとめて今年調べようと。その上で、少なくとも臨床研究倫理指針は平成20年を目途 に改定することになっていますので、例えば遵守状況はどうなのか、個人情報はきちっ と保護されているのか、被験者のほうのレベルはこれで適当なのかというところを議論 した上で、我々として適切と思われる手段をとりたいと思っております。この検討会の 中で最後まで行けるかどうかは、時期的な問題がありますので分かりませんが、パラレ ルで行われている遵守状況のチェック結果についてはご報告したいと思います。 ○楠岡座長 資料4の4頁で鈴木課長からも説明があったように、調査、引き続き取り 組むべき事項、検討する事項と3つに分かれておりますが、検討事項の中に、現状が分 からないと検討案のつくりようもないというものもあります。それで作業班では、調査 した上で検討を加えましょうという形で作っておりますので、ここの黄色の部分と赤の 部分は、かなりリンクした形になっております。このことは参考資料の中に作業班の報 告書がありますので、それを見ていただいたらわかると思います。したがって、6頁の 予定表にもあるように、調査を今から始めて、かなり精力的にやっていただいても、各 調査班の結果がある程度出てくるのは10月ぐらいになってきますので、それまでの間、 それぞれの項目についてあらかじめ議論をしていただきながら、最後にその調査データ を見て実際的な5年計画へ盛り込んでいくものを考えていくような形にならざるを得な いかとは思っております。調査結果が出ないと全く進められないというものばかりでは ありませんので、そこは並行して進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願 いします。  この議題については、疑問点が出たらそのときにご質問いただくことにしまして、次 の議題である「次期治験活性化計画策定に向けた論点」について進めていきたいと思い ます。まず、この点について事務局から説明をお願いいたします。 ○研究開発振興課長 資料4の4頁に黄色と赤と青の図がありましたが、これから説明 する資料5は、この赤の所を敷衍化したもの、少し膨らませたもの、調査の結果に基づ いてこの検討会でご検討いただくものですが、これについて説明を申し上げます。  題は「次期治験活性化計画策定に向けた論点」となっているのですが、最初が医療機 関の治験実施体制の充実です。(1)が治験ネットワークです。先ほど1,170医療機関とい うことがありましたが、このネットワークを更に強化し、単に電子的につながっている ということだけではなく、ある意味できちっと治験を実施できる体制をより強化してい くべきではないか、そのためには治験の事務局の機能強化も必要である。それから、大 学のネットワーク等これ以外にもいくつかネットワークがありますので、そういう異な るネットワーク間をどうつなげていくのかということも課題になろうかと思います。  (2)の業務の支援機関については、CRO、SMOとがあるわけですが、CROのほう はむしろ医薬食品局、それから新GCPなど実施省令の世界で整理されると我々のほう では考えております。SMOについては、特に今後、医療機関の実施業務を支援してい ただく中で、どのような形で支援していったらいいかを一緒に検討させていただければ と思います。  (3)は「患者パネル」です。これは(1)の大規模治験ネットワークとも関連がありますが、 先ほどちょっと申し上げた、一医療機関当たりの患者の集積性が低いということであれ ば、多施設で共同で、しかも電子的にうまくつながって治験を実施できるような体制を つくっていくべきだろうと思いますが、そういう場合の患者パネルをどうつくっていく のか。ただし、それには患者の個人情報が入ってきますので、どのような配慮を確保し たらいいのかということです。  (4)は、今年の3月に中央治験審査委員会についても認めるということで省令改正をし ていただきましたので、法的な制度は変わったが、特にIRBに入っている臨床の委員 ではない先生をどういう形で支援していけばいいのかということがございます。  2の人材の養成・確保については、実施していただく研究者だけではなく、生物統計 やデータマネジメント、CRCの方、IRBの委員の方、それから治験事務局の委員の 方について、今どういう手だてがあって、どこが制度的隘路になっているのかというこ とも考えていかなければいけないと思います。  例えば医師ですと、次の「業務のあり方」にも関係しますが、非常に多忙な医師で、 どういうインセンティブを提供すれば治験なり臨床試験なりをしていただけるのかとい うことがあります。我々の関係の調査でも、医師の70%以上が週に200時間以上残業し ておりますし、治験を実施している医師でも、治験関係の業務は全業務のうちの8%と いうことですので、これをもう少し余裕を持って、きちっと取り組めるようにしていか なければいけないと思います。それから、学会だけではなく、いろいろな形で治験や臨 床試験に関わっていただくことが業務評価の上できちっと行われることがインセンティ ブになっていくと思いますので、そういうことも検討していかなければいけないと思い ます。  3は啓発・情報提供のあり方ですが、これは一般の方もしくは被験者になる可能性の ある患者の方、それ以外の方等あると思います。ある調査によりますと、実際に治験に 参加した患者の方のうち64%は、それ以前は治験ということを知らなかったと言ってい ますので、まだまだ治験について広報・啓発する余地があります。逆に、一旦治験に入 ると、94%は「また治験に参加したい」と言っています。きちっと説明も受けられるし、 時間も取っていただけるということで、治験についてご理解をいただければ、いろいろ な協力を得られるのではないかと思っておりますので、そういうものについても考えて いきたいと思います。  4は負担の軽減です。これについてはいろいろとあると思いますが、1つ、これは依 頼者側から指摘のあったことですが、本来は医療機関で実施すべきことを、やむを得ず 依頼者が代替して行っている場合があり、そこをきちっとしてもらわないと負担も増え る。また、ある所では肩代わりをさせられるが、ある所ではそうではないということに なると大変ですので、そこをはっきりさせてほしいということもあります。それから関 係の書式についても、同じ系列の中でも書式が違うということになると、特に多施設共 同治験のような場合になると、かなり手間がかかりますので、その標準化、それからE DCも含めたIT導入ということでモニターの負担、企業側の負担を少しでも減らして いければと思います。  最後は臨床研究倫理指針の遵守状況、それから平成18年度に開始した基盤整備、こう いうものを通じて、日本でもクリティカルマスといいますか、最低限の治験を実施でき るような拠点を整備していかなければいけないと思っています。これら5点が現行の3 カ年計画をある程度評価した上で次期の計画に向けて論点になるのではないかと、事務 局では考えているところです。以上です。 ○楠岡座長 いま昨年度の作業班の結果を踏まえた上で、大きく分けて5つの論点を出 していただきました。必ずしもこの論点に縛られるというわけではなくて、もし作業班 で見落としていたようなものがあれば指摘していただいて付け加えていきたいと思いま す。本日はまだ1回目ということで、委員の方々も初めてこの資料等に目を通された方 も多いかと思いますので、いまの論点を中心として、自由にご意見を伺いたいと思いま す。どなたでも結構ですので、挙手してご発言をお願いしたいと思います。 ○山本(晴)構成員 小さいことなのですが、論点1の(3)、被験者候補登録システムと 個人情報への配慮というところです。実は、この調査班には先週1回出させていただい て、そのときに荒川先生からご指摘があって私もそうだと思ったのですが、「患者パネル」 という言葉は誤解を招きやすい用語ではないか。あくまで患者はボランティアとして参 加されるので、「患者パネル」というのはどちらかというと、治験を生業とする側が商品 のような形での言葉だというご指摘があります。こういう論点で使うのはいかがかと思 いますので、内容としてどういう形があり得るのかということを含めて、適切な用語を 使っていくべきではないかと思います。 ○楠岡座長 いまのご意見について何か付け加えることはありますか。 ○荒川構成員 被験者調査については大学病院等でもやっていかなくてはいけないのだ ろうと思っております。いまのご指摘にもかかわるのですが、個人情報保護法が出て1 年余になります。これを、どこまで拡大解釈するか。これが、人によって解釈が随分違 うという現実の問題があります。この辺も、具体的なところを是非示していただくよう な方向で、ここまではいいんだ、あるいはこういうことをすればいいんだ、ということ を是非検討していただき、被験者調査のやりやすい環境をつくっていただくしかないと 思います。 ○楠岡座長 「患者パネル」に関しては、もともとの作業班の経緯の中では、いま山本 先生が指摘されたような形の、いわゆる患者のソースを作るという意味でのパネルとい うのがある中で、そのあり方に少し問題点もあるのではないか。その点は検討する必要 があるであろうというところでした。  その後、いろいろな所で集積性の問題が出てきて、日本では患者集積度を上げようと すると、いちばんいいのは病院を集約することなのでしょうけれども、それは現実にす ぐできる話ではありませんので、情報的に少し集積度を上げなければいけない。そうす ると、いま荒川先生が言われたような大きな病院の患者の情報を、少し連携して集めて いくようなものも必要になってくるのではないか。  「患者パネル」というのは括弧付きなのですけれども二重の意味があって、それがこ こに同時に紛れ込んでいるので難しいことがあるかもしれないです。前者の、一般的な 意味の「患者パネル」に関して尾芝さんは何かご意見はありませんか。 ○尾芝構成員 山本先生がおっしゃったみたいに、用語についてはSMOサイド、適正 なのかどうなのか。いちばん多くかかわる業態なのですが、そういう反省やクエスチョ ンが出ています。非常に誤解を招いてしまう、まさに患者を商品のように扱う、一部に そういう動きもないことはないので、それを牽制してそのようにしておかないと、治験 の後ろ暗いというところがまたフォーカスされるようなところがあります。そこには、 ある一定の基準なり目標を検討していただきたいです。  一般的に我々のSMOがかかわっているパネルといいますと、ある業者、ある医療機 関のパネルという感じになっております。いま楠岡先生がおっしゃったように、その中 に集積させるとか、効率を上げるというところとかかわってくると思います。皆さんが 共有できたり、良い医療機関を、ここでもう少し増やせれば効率がよく良いデータが取 れるといったときに、言い方ですけれども、お声がけをできるような、あるいは情報を 発信できるような仕組みにまで持っていく。  そうすると、そのタイプの字が大病院だとか、診療所だとか、その辺りでお互い相互 にヘルプができるようなところまで持っていけば、非常に集積性・効率、日本の治験の スピードにかかわってくるところが改善されるのではないだろうか。最終的には啓蒙の ところにつながってくるのではないか。テーマをいただいたときに、ここの部分につい ては効率を上げるという点で期待をしたいし、積極的に議論をしていきたいと思いまし た。 ○楠岡座長 個人情報の問題ですけれども、これは民間の個人情報保護法と、国や独立 行政法人の個人情報保護がかなり違っていて、しかも地方自治体になると、国よりもさ らに厳しい個人情報保護をかけているような所もあるので、病院の母体がどこかによっ てその問題がかなり効いてきます。一般であれば全然問題にならないようなことが、た またま独立行政法人であるために、非常に難しいことが出てくる。  現実はそうも言っていられないので、民間に準ずるぐらいのところでやっているので すけれども、厳密に判断されると、これは法律に反していると言われてしまうようなこ とも実際にはあり得ます。その辺をどのように解決していくかというのも難しいところ です。特に、現にこういう事柄を担当しているのが地方官公立の病院とか、あるいはそ れに準ずる病院が多いです。これは、どちらかというと、審査管理課のマターになるか もしれないのですけれども、それも考慮に入れておかないと、変なところで足をすくわ れるということがいままでもありましたので、検討していく必要があると思います。 ○安田構成員 被験者のインセンティブのあり方というところがありますけれども、逆 に保護の観点も少し加えていただけないでしょうか。医薬品の場合は飲む、注射をする という感じです。医療機器の場合は、いまマスコミでも話題の先端治療となると埋込品 が多いのです。例えば、ステントや人工関節などですけれども、そういたしますとイン フォームド・コンセントのときに、不具合が起きた場合はどうしますかという話をしま す。手術で取り出すのか取り出さないのか、その治療費という話はまだどこも触れてい ないわけです。そういうわからない状況を聞けば、患者は引いてしまうということがあ ります。  極論をしますと、不具合が起こったりして開発メーカー、小さなベンチャーがやめて しまいますと、被験者に埋め込まれたものはどうなるのか。もうちょっと言いますと、 治験終了届が終わってから承認まで患者は埋め込まれたままで生活しているわけですの で、その扱いはどうなるのか非常に微妙な問題があります。  それはさて置きまして、被験者の保護ということでは、健康保険で医療費を出せる部 分と出せない部分とか補償の問題をきっちり詰めていかないと、先端医療を日本でやろ うと思っても、見えないところの足枷になってしまうかなと。ここでの議論としてはち ょっと重いかもしれませんけれども、そういうものがあるということを頭に置いていた だいて、いずれそのときに若干議論させていただきたいと思います。 ○楠岡座長 医療機器の治験に関しては、薬とは非常に違うところがあるのと、実際に 現場で担当する山本先生などはよくご承知だと思うのですが、結局器具ごとに全部違い ますので、その器具ごとに何か対応を考えていかないといけない。その辺りも、薬です と1つのルールで全部いけるところがそうはいかなくて、コンタクトレンズと人工心臓 では全然レベルが違う話になってしまいますので、そこは非常に難しいところだと思い ます。  そこを、法律や規則に書くことは非常に難しいところで、全部をカバーしようとする と、一部には非常に不都合なことになってしまいます。その辺をどのようにしていくか というのは、現場でも非常に困っている問題であります。また、その点のご指摘をして いただければありがたいと思います。 ○荒川構成員 今回は、治験ということにかなりフォーカスが合っています。以前、3 カ年計画でもあったように、治験を含む臨床研究基盤ということで、鈴木課長もおっし ゃっていたように、治験だけにフォーカスを当てても、なかなか全体は活性化してこな い。研究開発という点からすると、いまの医療機器の問題もそうですし、トランスレー ショナル・リサーチもそうです。本当に探索研究の基盤はあっても、それを活かすとこ ろがいまはなかなか付いてこないので、そこをやっていかなくてはいけない。それは単 に治験だけではなくて、医療機関と一緒になって開発するシステムづくりというのは必 要だと思います。  失礼ですけれども、あまりに治験の細かいところにフォーカスを当てすぎているので はないかという気がしています。そういう意味で、制度的な問題も、トランスレーショ ナル・リサーチをやろうとすると、薬事法の問題や保険の問題などいろいろなものが引 っかかってきます。そういうものを一緒になってやっていただかないと、本当に全体の 研究開発の活性化にはなかなかつながってこないと思います。  もう1つの大きなフォーカスは、医師のインセンティブや患者のインセンティブです ので、そこにフォーカスをちゃんと当てて、それぞれ具体化していかなくてはいけない のだろうと思います。やはり、どこに問題があるかということをより明確にした形で、 皆さん実施計画に結び付けていかなくてはいけないのだろうと思います。 ○榎本構成員 私は、全国に4,500人いると言われているCRCの代弁者として参加さ せていただいています。資料5の2番の関係職員等の養成・確保のところで、いちばん 初めの実施者養成のあり方のところです。CRC(治験コーディネーター)と、いちば ん最後の治験事務局員はいろいろな形で平成10年から研修を受けさせていただいてい て、かなりレベルもアップしてきています。  皆さんご存じのとおり、「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」が毎年10月ごろ に行われて、昨年は約2,400人ぐらいの参加者がありました。私は本年度のプログラム 委員をやらせていただいていますが、非常に高度なディスカッションができるようにな ってきました。私たちコーディネーターが感じるのは、医師が私たちと同じところまで 来てくれていないというか、失礼ですけれどもそれを非常に感じています。私たちが通 常の業務を行っていても、医師の啓蒙や教育が仕事の大半を占めています。先生方に、 GCPとはなんぞやとか、重篤な有害事象が起きるとこれをしなければいけないという ことを説明した上で、一緒に書類などを作らせていただいています。  そういう現状がありますので、ここにあります治験実施医師への教育は是非お願いし たいと思っています。先ほどお話がありましたように医師は非常に忙しいのでなかなか 教育は難しいということはありますが、以前の5カ年計画のときに医師向けの研修会が ありまして、当院の医師も参加させていただきました。私は、病院に約100人程いる治 験担当医師全員に案内を配りました。研修会のご案内の最後に、厚生労働省から修了書 が出ますと書いてありますと、そのうちの10人ぐらいの医師から、「これを持っていな いと今後治験ができなくなるのか」という問い合わせを受けました。「いまのところはそ うは言っていませんけれども、将来的にはそうなると思います」と言いますと、7人か ら10人の医師が毎回研修会に参加されました。やはり、先生方も学びたいという気持が 非常にあるのだと思います。  新GCPが施行された以降、医師に対して治験やGCPに関してきちんとご説明いた だく研修会がなかったと思います。今回の活性化計画の中には、是非それを入れていた だければと思いますのでよろしくお願いします。 ○楠岡座長 医師のジョブトレーニングをコーディネーターにお願いしているような現 状は否めないので、非常に耳の痛い話でした。医師に限らず、すべての医療職にかかわ るのですけれども、臨床試験とか治験というものがカリキュラムの中に必ずしもない。 薬剤師には必ずこれが入っているのですけれども、検討会の作業班で調べてみますと、 意外と入っていない。  それから、医師国家試験には、かつて試験委員をされていた伊藤先生のご努力でそう いう傾向が少し出たので、いまは医学生も勉強はしています。しかし、かなり濃厚なと いうのではなくて、一応上っ面的なことになってしまいます。そういうもの自身に関し ての教育をどこかに入れる必要があるということです。次の5カ年計画は文部科学省も 一緒に入っていただいているので、そこのところは是非一緒に考えていかなければいけ ないと考えております。  もう1つは、同じく人材養成に関して、いままでは極端に言うと、医師とCRCばか りに焦点があったようなところがありました。それ以外に、治験を進めていく中で必要 な人たちがあるのに、いままでは十分養成が考えられていなかった。その辺も、今回の 中にはきちんと取り入れていこうという方向を考えてもよろしいのではないか。 ○武林構成員 医師を育てる立場からなのですが、既に前回の3カ年計画の中にも含ま れていますが、もう一度今回の計画を考えていく中で、卒前それから卒後の比較的早い 時期、生涯教育という階層に分けて、まず1つ医師を取ったとしてももう一度考えなけ ればいけないと思っております。  その教育ということを前提にして、おそらくインセンティブという議論ができると思 っております。そのインセンティブも、基本的にはここにありますような学術的な評価 ということも大事だと思いますが、もう1つ是非議論をしていただきたいと思いますの は、経済的なインセンティブも、日本の社会としてこういうことをやるときに、治験を する側がどこまで許されるのか。これは我々が考えるだけではなくて、社会全体として、 日本の中ではどこまで考えていくのかということも全体の議論で是非していただいて、 全体の医師側のインセンティブということをトータルで考える機会にしていただければ と思います。 ○山本(精)構成員 先ほどの、医師とCRC以外という話で、活性化していくことに 関しては行け行けドンドンで活性化していっていいと思うのです。その代わりしっかり とそれをIRBなどで監視していく。  私の少ないサンプルサイズですけれども、日本のいくつかの施設と、アメリカのいく つかの施設のIRBを見ると、IRB自体のあり方についての考え方が全然違うのです。 委員の教育とかサポートというようなことになっていますけれども、私はここでは若い ほうだからこう思うのかもしれませんが、がんセンターのIRBの先生を教育すること は不可能です。そんな偉い人を私が教育することは不可能です。  アメリカでは、そんな偉い人はなっていないのです。もっと軽く、見ることを決めて、 ポイントを決めて、例えばガイドラインに沿っているかどうかなどというのは、そんな 偉い人が見なくてもわかることなのです。いまの臨床研究の倫理指針や支援体制を作っ ても、教育プログラムを作ってもおそらく教育にはならないと思うのです。それを受け ないとIRBになってはいけませんというような体制にしないと、あるいはIRBの資 質はこうですみたいな人がなればいいみたいな、だから忙しい人がなるのではないよう なシステムにしないと、IRBの教育システムや養成をしても、その人が病院の中でI RBにしてもらえなかったらあまり意味がないです。教育だけではなくて、法というこ とはないかもしれませんけれども、ガイドラインでIRBのあり方みたいなものを決め ていかないと、そこはなかなか動かないと思います。 ○楠岡座長 IRBのことが出ましたが、これに関してご意見はございますか。 ○榎本構成員 現在、私はIRBの事務局もやらせていただいております。いま山本先 生がおっしゃったように、本当に偉い先生がIRBの委員になられたり、忙しい先生が なられたり、実質的な審査がなかなかできない状況にあります。  現在、当院ではIRBの委員が20人いて、今回外部委員を2人増やして5人にしまし た。外部委員を探すのがなかなか大変なのと、病院の外部であり、専門外であるという ことで非常に気後れされて、こんな会議にはとても付いていけないという気持があられ るようです。いま山本先生がおっしゃったように、外部委員に対する最低限の教育とい うか、「これを受けなければ委員になれない」とか、「委員になって1年以内にはこれを 受けてください」というものがあると、外部委員の方も安心してくださると思います。 私たちコーディネーターがIRBの委員の方に、「GCPとはこういうものです」のよう なご説明を一生懸命させていただいていますが,コーディネーターの役割としてはとて も無理ですので、是非IRB委員に対する研修制度を作っていただきたいと思います。  SMOがすごく普及されてきて、IRB委員の確保や教育が難しいと聞いていますの で、その観点からも是非お願いしたいと思います。 ○中島構成員 IRBの、医療機関外の委員のことですけれども、私どもの委員会の臨 床評価部会のメンバーが地区の治験推進協議会でいろいろ話をさせていただきます。そ ういう場でニーズとして出ているのは、そういう方々から、そういう所に参加しても専 門的なバックグラウンドを獲得できないで参加してるということで非常に悩んでいると いう話があります。そういう方々への教育は重要だろうと思っています。 ○塚本構成員 私は、初めてこの席に来たものですから、それこそIRBに外部から来 たような気がして聞いていました。私は医者なのですけれども、外部臨床を離れたりし ていました。そういう立場からこういうのを聞いていると、1つは医者に対する動機付 けが非常にポイントになるかと思います。  昔、倫理委員会をやっていたことがあるのですけれども、その辺の業績が1つ、それ から時間がないということがあるのですが、医師にとってメリットがあるようなこと、 業績というのがいちばん大きいかと思います。器具についても、何か思いついたときに サポートがある、どういう基準でやったらいいかということがはっきりしていること。 いまはコーディネーターは専門職としておられるのでしょうか。どのぐらいの規模の病 院から、その専任の人がいるのでしょうか。 ○榎本構成員 規模はいろいろですが、看護師と薬剤師が45%ぐらいで、あとは検査技 師とかそれ以外の職種の方が兼任でやられています。 ○塚本構成員 中等度の病院ですと、兼任でやるのは大変なことです。その辺は予算的 なこともあるだろうし、現在の医療に対する締め付けということもあると思うのですけ れども、その辺が専任として置けるような環境が1つ必要なのかという気がします。医 者については、動機付けということを考えていただきたいと思います。そんな感想だけ 申し上げておきます。 ○楠岡座長 CRCは治験だけではなくて、病院によっては臨床研究一般にもかかわっ てくるところもあります。どの程度のボリュームをやっているかというところにかかわ ってきて、ある程度ボリュームがある所は専任の方がいないととても無理です。あまり ボリュームがなければ、専任を雇うと経済的な問題も出てきますので、その場合は併任 であったり、あるいはSMOのような外部から入ってきていただくような形でいってい る所がいまはほとんどだと思います。  現に日本でどれだけの病院、診療所が治験をやっていて、そこでCRCの方がどれぐ らいかかわっているかというのは、意外ときっちりしたデータがないので、これは今回 の調査の中でいちばんベースになるデータですので、いろいろな団体の協力を得て少し 集めていこうという方向でいま考えています。 ○塚本構成員 もちろん治験のために置くのは無理でしょうけれども、私の所は400人 ぐらいのベッドでしたけれども、1人がいろいろな会に関与してやっていました。結局 のところは、人員に対する人件費の問題なのだと思います。もう少し余裕がないと苦し いというところがある病院が多いのではないかという気がいたします。 ○楠岡座長 IRBの委員の教育の問題ですけれども、山本先生が指摘された点は非常 に大事な点で、実際にIRBの、特に専門外の外部の委員の方々は、いま自分がやって いることがそれでいいのかどうかというところが非常に不安であるということ。何か、 そういうもののガイドライン的なものがあれば、自分はそれに則ってというところがあ ります。  別の意味からいうと、外部委員の方には一般の方の目線で見てほしい、ということが 基本にあるところを専門化させてしまうというのは、かえってマイナス要因になってし まうのではないかということも危惧されるということで、ここはどういうのがいいのか、 この検討会でもしそういうものが出てくるのであればいろいろお伺いしたいと思います。 ○山本(精)構成員 いまの点に関して私が日ごろ思っているのは、3つのポイントで 審査すべきだろうと思っています。1つは、サイエンティフィックに意味があって正し いか、悪いかという部分。それから、倫理的に大丈夫か。つまり、それは倫理指針に則 っているかという部分。それから、リスクベネフィットバランスが大丈夫か。要は、そ の初めの部分はサイエンティストが見るべきことで、2番目はガイドラインに沿ってい るかどうかを見ればいいところで、3つ目のところに外部委員や一般の方の意見が入れ ばいいので、そこを審査してほしいのです。  だから、ガイドラインに沿っているかとか、サイエンスがどうかなどということは、 その前に議論しておいて、IRBのところでは、一般的な目からリスクベネフィットバ ランスを議論するようにすれば役割もはっきりして、見るべきこともはっきりするので、 そういうことができるような体制になっていけばいいのではないかと思っています。 ○研究開発振興課長 塚本構成員ご質問の、CRCの配置についてですが、参考資料4、 アンケート集計結果の12頁で、上に円グラフが2つ、下が棒グラフになっていますが、 これがCRCがどのような配置状況になっているかをアンケート結果で見たものです。  下に書いてありますが、Nが1,280ですので、1,280名の方に聞きました。施設数が 222です。左上の内部のCRCで、最初の2つが薬剤師で19%と書いてあるほうが専任、 18%と書いてあるほうが兼任です。次が看護師で、薄い黄色のところの46%が専任、そ の次の8%が兼任です。次が臨床検査技師で4%が専任、その次の色が兼任です。ざっ と計算しますと、大体71%が専任です。  1,280人の71%ですので800人強いるのではないか、ということがこの調査結果では わかります。もちろん大きい所と小さい所といろいろあると思いますが、222の医療機 関の平均で3〜4人ぐらいということです。少なくとも、この調査に応じていただいた 所には専任がおられるということです。 ○山本(晴)構成員 IRBのことも含めてですが、この論点は具体的にどうやって治 験を活性化させるかという話になっていますので、どうしても治験をやっている人たち の話になっています。実際には阻害要因というのはいろいろな所にあって、最近は新薬 の開発では、治験に慣れた先生はやりたがることが多いのです。例えば、薬剤溶出型ス テントの1発目、2発目などはとにかく早く使ってみたいので、治験でもいいからやり たいと。ですから、医師側はわりと治験をしたい気持ちがあって、治験をしなければ新 しいものを使っていけないというところがあります。  特に、ピカ新については、いまはナショナルセンターとか治験をやり慣れている病院 では、この治験をやって承認されれば臨床でもっと使えるようになるという意識は、あ る程度医師の中ではできている。また、CRCもすごく頑張っている。問題は、医師や CRCで、医療機関全体としては、治験はどこかほかの所でやっているものだと思って いる人が多いということです。治験事務局の事務員は一生懸命やっているけれども、そ れ以外の事務員は知らん顔をしている。病棟の中でもCRCだけが頑張っていて、病棟 の看護師はややっこしいから考えたくない。  放射線科にしても、検査部門にしても、知識のある人は少し手伝ってくれるけれども、 ほかの人はやらない。なぜ治験をしなければいけないかということをはっきりさせない といけないと思うのです。治験は、医師とCRCがいればできるわけではなくて、治験 は治験ですけれども医療行為なのです。ですから、病院全体がやらないとできないこと なのです。それをやらなければ、新しい治療が導入できないわけですから、医療機関と してやらざるを得ない話だと思うのです。  それを業務としてやらざるを得ないものであるということを、まず医療機関全体に周 知していくことが大事だと思います。インセンティブというよりは、これをやるのは業 務の一部であるということをまず確認していただきたい。ただ、いくら医療機関はやる 気があっても、被験者が入らなければできないわけです。被験者がなぜ入らないかとい うと、それはインセンティブがないということもあるし、人体実験ではないかというこ とがいちばん多いです。それは確かに人体実験なのです。人体実験だけれども、いろい ろ倫理的なことをちゃんとクリアしてやっているものであります。  逆に言うと、IRBがしっかりしていなければ、患者を守る最低限の仕組みがいちば ん脆弱なままで、ドライブばかりがかかっていくというのはおかしいことだと思います。 せめて、最低限IRBを登録制にして、年1回ぐらいチェックをかける。教育内容まで 全部機密に決める必要はないと思うのですけれども、医療機関とかネットワークとかそ れぞれの性質がありますから、チェックをかけていく必要はあると思いますし、あまり にひどい所は指導が入るべきだと思います。  あとは、治験が日本から逃げていくという問題があります。最近、私は「ナイロビの 蜂」という映画を見たのですが、あれは非常に端的な話です。要はアフリカの貧乏人を 治験に入れて、死んだら知らん顔をして、それで作った薬をヨーロッパやアメリカで享 受する。それで、お金が儲かるという話です。あれは完全に倫理大原則から外れている。 自分の知らない所で、関係ない人たちを使って実験して、要はリスクをほかの人に負わ せて、ベネフィットだけを自分たちが取る。  このままでいくと、経済的な話で治験がどんどん逃げて行っているのですけれども、 結局中国の山奥の人たちとか、アフリカとか、南アメリカとか勝手にやった治験のベネ フィットだけを日本が享受するという問題は倫理的にもおかしいと思います。現実的に は、利害関係とかいろいろ利益の話が出ると思いますけれども、まずはなぜ治験を日本 でやらなければいけないのか。そのために、医療機関はどういうことをしなければいけ ないのか。被験者には、どうやってその必要性を訴えていくのか、ということを考えな がらやっていただきたいと思います。 ○楠岡座長 いちばん最後の指摘は、治験の評価に係る非常に大きな問題ですので、こ の検討会だけでは難しいかもしれませんが、共通の認識としては非常に大事な点だと思 います。社会的にある一定のリスクを取らないままに、その利益だけを取るというのが 日本という国、というふうに国際的に見られてしまうと、日本という国そのものの問題 になるわけですが、意外とそこまで十分な認識ができていないところもあるので、すべ ての人たちに対する啓発活動の中の1つのポイントとしては考えていかなければいけな い点ではないかと思います。 ○竹内構成員 山本先生がご指摘されたことをフォローアップしますと、私が検討会で 感じておりますのは、あくまで治験を対象にやるということでしょうか、それとも臨床 研究を含めてやるということでしょうか。何を言いたいかというと、例えば、『ニューイ ングランド』『JAMA』『ランセット』といった所に載って発表された内容がFDAな どへ行く。ところが、GCP上の問題で、そこへ発表する内容でも、GCPはある程度 クリアしていれば、そこで結果を載せていただけます。  ところが、治験となりますと、いまの時点では行政側にデータを申請する。そのとき のクオリティはどれだけか。そういう目で治験のことを考えてみますと、先ほど課長が おっしゃっていましたように、日本から出てくるデータは世界一だと思っています。と ころが、同じ国際同時開発、又はGRスタディという観点で、これは医者のインセンテ ィブにも関係すると思うのですが、良い薬があった、医療器具があった、自分たちも一 緒にやりたい、ところが日本ではどうしてもこれは治験ですよという縛りが来てしまう と医師やCRCの方が、海外ではそこまで要求していないのに、日本は要求されるので すかということでスピードもリクルートもうんと遅くなってきてしまう。それに対して 発表する場合に、日本の医療関係者の名前が載ってこないということになってきます。 そうすると、どうしてもインセンティブが下がってきてしまいます。  私が考えておりましたのは、いわゆるクリティカルパスをこれからどのようにして臨 床研究で、日本の医療機関の研究者、又は医療従事者が良い医療を患者のために早く提 供していくか。それが、どのような形でしていけば、ある程度クオリティがあって、早 く世界に参加していけるかというところに焦点が当たるのかと思っております。  細かい話なのですけれども、治験を統計学的な側面からいうと、ランダミゼーション が、どうしても第三者機関ではいけないとなってくると、それは日本だけですので、ど うしても日本は入れなくなってしまいます。そういうことがありますので、そこは日本 でのGCPで、厚生労働省に申請することを考えるのか、それとも世界で一般に言われ ている一流ジャーナル誌に投稿できるまでそのデータがFDA等にサブミットできて、 申請を取りに行けるデータの確保をするのかというところがまだ曖昧ですので、そこを 教えてください。 ○研究開発振興課長 先ほど荒川構成員からご指摘がありましたけれども、紙面の問題 もあって「治験」と書いてあります。これはあくまで治験を含む臨床研究全体を考えて のことです。治験だけを進めようと思っても臨床研究の基盤、まさに欧米の一流誌に受 け入れられるような臨床研究がなければ、それは日本でも治験がしっかりできないと思 っています。我々としては、幅広い臨床研究全体について考えたいと思っております。  議論が行ったり来たりしてしまうのは、その中に治験があって、その中に実施症例と いうのがあって、そこに対するさまざまな議論もあります。議論を進めていく際に、こ れは全体についてのこういう指摘だと、これは治験だけに限った環境の問題だというふ うに詰めていただければ我々としても対応しやすいと思います。 ○一木構成員 話がCROの立場というと、モニタリングはCRCの方にお世話になり ます。先ほど、鈴木課長からCRCの方のいろいろな職種とか専任という話がありまし た。日本で、初めてCRCという言葉がいろいろな所で言われたのが1998年ぐらいだっ たと思います。1999年当時、私も製薬会社におりましたので、CRCのエデュケーショ ンセミナーとか、SOCRAの日本への導入などいろいろなものにかかわりました。特 にがん関係が多かったものですから、がん関係のCRCのSOCRAみたいなものをや っていました。  確かに、いろいろな病院でCRCとして勤務をしている、それから専任、看護師、薬 剤師がいます。ところが、実際に一緒に仕事をさせていただきますと、みんなパーマネ ントではなくて、非常に不安定な職種なのです。ある病院でよく存じ上げている所が、 突然4人ぐらい替わってしまう。「なんで」と聞くと、予算が付かなかったものですから、 職種がなくなってしまったのですというような県もあります。それから病院によっても あります。そういう意味で、もう1つ踏み込んで、実際に国立病院でどういうポジショ ンでCRCとして勤務しているのか。ちゃんとCRCというポジションがあるのだろう か。そこまで踏み込んでいって人を育てていかないと、人が定着しないということが1 つあるのだろうと思います。  もう1点は、IRBをアメリカでもやりましたし、ヨーロッパでもやりましたけれど も、1つは日本のIRBの場合には、IRBが審査をして責務を負わないといいますか、 逆に言うとIRBを通すということは、その病院のIRBの方たちはその試験に関する 責務を背負うということが片一方にあるわけです。承認したのですから、承認したこと に関しては責務を負うという立場があるのですが、どうもそこが希薄になってしまって、 書面上の審査をする傾向が強くなってきているような印象もあります。  例えば、承認をして自分の所でそのエマージェンシーをカバーできなければ、IRB が承認したらIRBの人たちは責務を背負うのですよと。やれるというふうに審査をし たんですよと。どうも、そこがまだまだ曖昧な状態で、IRBという形態だけが入って きたのではないかという気がしています。  先ほど山本先生からありましたけれども、国立がんセンターであれだけの治験をやっ ていて、国立がんセンターでCRCというきちんとしたポジションで働いている人は果 たして何人いるのだろうか、大きな病院で実際に何人いるのだろうか。みんな兼務、兼 務でテンポラリーでというような形で人を育てていくのは非常に難しいのではないか。  その辺をもう少し進めていって、例えば10年勤めて、ちゃんと下を育てられるような 人が上で育っていくような形にしないと、10年後に治験環境という形で成長していかな いのではないか。現状も、上をきれいにペンキで塗っただけで、白くなりましたと言っ ているだけに終わるのではないだろうかという感想があります。 ○伊藤構成員 黙っていたのですけれども、いろいろ言われたので言わなければいけな いのだろうと思います。行政のほうからの依頼もあり、国立病院機構は随分対応をさせ ていただいております。例えば、人については143名のCRCが常勤職として専任でお ります。非常勤の方たちを含めると約400名ぐらいのCRCを国立病院機構で抱えてお ります。確かに抱えるほうの立場から言うと、コンスタントに仕事がないと、そういう 人たちを雇用するのは難しいという、大変厳しい問題がありますので、その辺の協力関 係ができていかないと、人の問題というのはうまくいかないのだろうと思います。  IRBについて随分議論が出ておりましたが、IRBの最終的な責任というのは院長 の諮問機関ですので、IRBで通って、院長が承認したということになると病院が責任 を取る。ですから、IRB側に責任があるというよりも、病院長が最終的な責任を取る という理解でおります。あまりIRBの責任ということになると、外部の先生に依頼す るのは難しいのだろうと思います。  いくつかのIRBをコントロールする立場にありますので、その立場で話をさせてい ただきますと、外部の先生は基本的に一般市民の立場で話を見ていただくという意味で、 逆にあまり専門化してしまいますと、そういう視点を取る方がいなくなるのではないか。 もちろん、治験はどういうものであるということを教えることは大切なことですが、専 門化することによって、被験者の立場を持たれなくなることのほうが危険ではないかと 思います。  IRBで、治験として称されるものは、最終的には医薬品医療機器総合機構で審査さ れるものですからコントロールされていると思うのです。それ以上に問題になるのは、 医師の自主研究と称するもののほうが、はるかにデザインも、プロトコルも、説明文書 もなっていなくて、そういう人たちをコントロールするほうがはるかに大変です。現実 的に、大学などで教える立場になりましたのでよくわかりますが、プロトコルを作って、 臨床研究をする医師を育てることがいまは大変なのではないか。そこができないと、治 験事務局とか倫理委員会の事務局で手を入れないと、大学として、もしくは病院として 責任を取れるような臨床研究はできないのがいまの現状です。  倫理委員会とかプロトコルのデザインのことを考えるのであれば、ある程度形ができ ている、公的なものではJCOGだとか、治験だとかというものと、それから病院独自 で行われるものとの分け方をしてあげないとどうしようもないのではないか。ひいては、 臨床研究のデザインをできる、もしくはデザインを指導できる人、それから生物統計家 も含めてでしょうけれども、そういう人材が日本では欠落しているのがいまの現状では ないかと思っております。 ○楠岡座長 いくつかの点を指摘していただきました。確かに、治験に関しては、依頼 者側の責任でプロトコルはかなり完璧なものが出来上がっているわけですから、デザイ ンの問題はあまりない。一方、医師主導で行われる臨床試験ですが医師主導の治験であ ればGCPが関わってきます。そうではなくて、いわゆる自主研究と言われているよう なものには、伊藤先生ご指摘のとおり、1つの大きな問題だと思います。これは、臨床 研究基盤ということがベースにありますので、当然そこも含めて考えていくところには なると思うのです。これは、非常に難しいところがあると思います。  各施設の体制によると思うのですけれども、治験はIRBで審査しているのだけれど も、いわゆる医師が自分で計画した研究というのは、IRBとは全く別個の倫理委員会 があって、そこで審査する。ところがその倫理委員会のメンバーというのは治験などを あまりよく知らない方、先ほど山本精一郎先生がおっしゃっていた、偉い先生がズラズ ラといるだけで、中身のこととか現実的なことをご存じなくて、ややもすると上っ面だ けの審査で終わってしまう。科学的に大事だからやりましょうみたいな形で終わってし まっていて、それが非常に問題になっているのも現実です。  この辺りは、先ほどの研究の登録という問題が出てきますと、最低限のところをクリ アしないと登録はできなくなってまいりますので、そのようなことと連動して、少しず つ進んでいくのではないかと思います。それも、テーマと論点の中に加えていく必要が あるかと思います。 ○山本(精)構成員 いまの議論ですが、治験とそれ以外の臨床研究を分けて、ダブル スタンダードにするのは非常によくなくて、例えば治験とか、私たちがやっているジェ ーコクではちゃんとやっている癖に、同じ人が別の研究だといい加減なことをやる。そ れは非常によくないと思います。  がんセンターでは、治験管理室があって、何人かの方が常勤でいます。CRC治験コ ーディネーターの人が10何人かいます。その人たちは、受託研究費で雇われていますの で、先ほどの話で常勤ではない。臨床試験ではなくて、治験の数が増えると増えるし、 減ると減る。しかも、受託で雇われているということになっているので、臨床研究の手 伝いはするな、出元が違うからということになる。CRCも治験コーディネーターとい う名前になっていて、臨床試験のコーディネーターではないみたいなことになってしま っています。どんどん差が開いていって、結局よくわからない人がやってしまう。  いろいろ教育を受けた人は、逆にスキルも上がっていくので、安い給料ではなかなか 雇えなくなってくるということで、どんどん差が開いていってしまうような状況があり ます。雇用のことは非常に難しい問題ですけれども、治験コーディネーターの人は、治 験と言わずに臨床試験、すべてのことをできるような体制でやっていかないとダブルス タンダードが開いていって、治験のほうは逆に高くなっていくことにもつながると思い ます。 ○武林構成員 いまの点ですが、私もこの半年以上倫理審査委員会、つまり治験ではな い研究が上がってくるプロトコルのチェックを事前に全部やり、デザインという観点か ら見てみました。  最初はきちんとした記述がなくて、治験というものと比べると相当レベルが低い。こ れをいろいろ考えてみたのですが、1つは倫理委員会に上がってくるフォームそのもの が、もともと倫理的な配慮を中心に書くようなデザインになっていました。それを数カ 月前にガラッと変え、デザインの部分を相当細かく分けて提出するようになると、それ だけで質はだいぶ変わってきます。わからないことがあると、逆に我々の所に質問が来 ます。今後の議論の中では両方一緒ということですので、そういう教育だけではなくて、 形という観点からも十分効果があると考えます。 ○荒川構成員 私ども東大病院で始めていることを少し紹介させていただきます。平成 14年から、薬物治療に関する臨床研究はすべて私どもでコンサルテーションを受けなけ ればいけないということにしました。それから、ICH-GCPを準用する形で指針、手 順書、実施計画書の手引きを作成し、基本的にGCPを準用する形でやっています。G CPというスタイルを適用することで、クオリティの向上を図っています。  問題は外部から来る多施設研究です。これは公的な研究も入っていますけれども、非 常にプロトコルの質の悪いのがあって困っています。そういうものに対して、私どもで は補遺を付けていただく、あるいは計画書そのものを東大バージョンに変えていただく ということをやっています。  倫理関係ですが、治験審査委員会の委員に新規になる方に関しては、私どもで1時間 半ほどかけてレクチャーをさせていただいております。また、すべての倫理委員会の申 請と、治験審査委員会の申請、すべての申請者に対して、2年に1回の講習会の受講義 務を課しています。新規の方は、大体2時間半かけています。更新の方は30分かけてい ます。そうやって義務化することにより、クオリティを上げていかなくてはいけないと いうことでやっています。  いまでは、私どもの所にプロトコルのことでコンサルテーションに来る方で文句を言 う人はほとんどいません。最初は説得しながらやっていました。手引きもその中で整備 していったという経緯があります。そういうことをやっていかないとなかなかうまくい きません。  私がしつこく臨床研究のことを申し上げておりますのは、大学病院にいるとわかるこ とですが、基礎研究を臨床開発に結び付けていくためには、自主臨床試験のクオリティ を上げていかないといけないということからです。なぜ日本だけ自主臨床試験にGCP が適用されていないのか。グローバルなレベルで見たらもはや遅れています。ですから、 これを適用しない理由はないのです。また、なぜ他ができないのかと言いたいところが あります。やっているのですからやれるのです。それを、どんどんやらなくてはいけな いと思うのです。 ○中島構成員 臨床研究のことで盛り上がっているときに申し訳ないのですけれども、 臨床研究の基盤整備が非常に重要だということは、私どももかねがね申し上げてきてお ります。それに反対ということではなくて、治験に関して申し上げます。  この会の目標といいますか、治験に関して言えば大きなビジョンといいますか、ゴー ルといいますか、そういうものを描く必要があるのではないか。例えば、3年後には国 際共同開発、あるいは世界同時開発というものに障害なく日本が参画できるという状況 がつくられている、というようなものを設定して検討していくことが必要なのではない か。  過去の、全国治験活性化3カ年計画ではかなり網羅的にいろいろなことを挙げて努力 してきていただいているのですけれども、必ずしも十分な成果が得られていないという のは、そういうところにも原因がありはしないかと思います。臨床試験についても同じ ようなことが言えるのではないかと思います。 ○楠岡座長 確かに、国際治験の大きなテーマに入っておりますので、それに向けての 基盤も考えるという形で進めていきたいと思います。活発なご意見をありがとうござい ました。この辺りで議論は終了させていただきます。次回は、関係職員の養成という観 点での議論を進めていくことにいたします。事務局から連絡事項と、後から来られた方 の紹介をお願いいたします。 ○事務局 活発なご意見、ご議論をありがとうございました。途中から議論に参加させ ていただきました、事務局側の人間を紹介させていただきます。医政局国立病院課高度 専門医療指導官の渡辺です。  次回は、平成18年7月25日(火)10〜12時に開催させていただきます。場所につい ては追ってご連絡させていただきます。3回目以降の日程調整は別途ご連絡させていた だきます。  本日の議事録については、作成次第先生方に配布いたしまして、ご確認をしていただ いた後に公開という形をとらせていただきます。 ○ 楠岡座長 以上をもちまして、第1回次期活性化計画策定に係る検討会を終了いた します。本日は、お忙しい中をどうもありがとうございました。 (照会先)   厚生労働省医政局研究開発振興課    (03)5253−1111(内線 2545) 1