06/06/28 第2回臓器移植に係る普及啓発に関する作業班議事録 第2回臓器移植に係る普及啓発に関する作業班 日時:平成18年6月28日(水) 場所:経済産業省別館1014会議室 ○矢野補佐 それでは定刻になりましたので、ただいまより第2回臓器移植に係る普及 啓発に関する作業班を開催いたします。  初めに委員の交代をお知らせいたします。貫井委員より辞任の申し出がありまして、 後任として東京慈恵会医科大学の阿部俊昭教授にお願いすることになりましたが、阿部 委員は本日御都合がつかず、欠席をされております。  また、本日は議事に即しまして、藤田保健衛生大学の神野哲夫名誉教授、九州大学の 杉谷篤助教授に参考人として御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいた します。  次に資料の確認をさせていただきます。  資料1は臓器移植と普及啓発の施策の現状等について。  資料2はネットワークにおける普及啓発に関する取り組み。  資料3は藤田保健衛生大学における献腎等に関する取り組み。  資料4は福岡県における臓器移植に係る普及啓発に関する取り組み。  資料5は新潟県における普及啓発。  また、参考資料を1枚添付しております。途中、不備等がございましたら、事務局ま でお申しつけください。  それでは議事の以後の進行について、大島班長にお願いしたいと思います。 ○大島班長 おはようございます。この作業班は、もともと平成13年に立ち上げられま して、そこで幾つかの問題点を議論したのですが、きちんとした成果というものを出す というところまではいかずに、今日まで至っています。  その間、実際の臓器提供を含めた移植の状況はどういう経過だったのかということに ついては、皆さんもよく御存じかと思いますけれども、それなりと言っていいのか、数 としてはそれなりに多少増えてきてはおりますが、実際に移植を待っていられる患者さ んを中心に考えますと、とても十分な形で進んでいるとは言えないというのが実態かと 思います。  臓器の移植に関する法律の第2条の理念に、臓器の提供をしたい、あるいは提供する という本人の意思は尊重されなければならないということがきちんと法律の中にうたっ てありますけれども、実際にはその意思が無視される、あるいは実現されない状態で亡 くなられる方が非常に多いという実態が一方でございます。  こういったことを総合的に考えまして、日本の中で、何としても、ある一定のきちん とした、法律の精神を全うできるような形の臓器移植の体制というものをつくっていく ためには、やはり臓器を提供したいという生前の意思というものが尊重される体制をき ちんとつくっていくということが非常に重要であろうというようなことから、この作業 班では、3回から4回くらいの議論を一応考えておりまして、最終的には、都道府県に は一体どういうことをやっていただくのか、ネットワークにはどういった役割をしても らうのかという具体的な提言まで踏み込んだものを出していただくということを目標に いたしまして、今日は実際の実態が一体どうなっているかというような、先進的に取り 組んでおられるところからのお話をいただきまして、それから具体的な都道府県の活動 の状況、あるいは支援状況、あるいは臓器提供病院の活動の状況、あるいはそれに対す る支援の状況、あるいはドナー及びその家族に対する支援だとか、施策というものをど ういうふうにしていったらいいのかということをまとめていきたいというふうに思って おります。  それでは議事次第に沿いまして、議事を進めていきたいと思います。最初に臓器移植 と普及啓発施策の現状等について、事務局の方から御説明をお願いします。 ○矢野補佐 それでは資料1に沿いまして、臓器移植と普及啓発施策の現状等について 事務局から御説明させていただきたいと思います。  まず資料1の1ページの上の表ですけれども、脳死下での臓器提供者数の推移という ことで、法律が施行されてから18年3月までの年度ごとの推移を掲載しております。  平成17年度は8例となっております。  その下の表が臓器移植の実施状況でございますけれども、臓器ごとに、臓器提供者数、 移植実施件数、待機患者数を記載しております。  次のページは年次別の腎移植の患者数です。これは学会とネットワークの資料を参考 にしたもので、1970年からの生体腎移植、死体腎移植、それから法律施行後の脳死腎移 植を含めたデータでございます。  右下が2004年、2005年の数値となっておりまして、2004年は心停止下での死体腎移 植については167件、2005年については144件という状況になっております。  その下の表は、各国の死体からの移植の実施数で、2004年のものです。人口100万人 当たりの件数として、グラフの左から、日本、アメリカ、イギリス、ドイツについて、 臓器ごとにグラフ化をしております。  その下の※は、人口100万人当たりの臓器提供者数ということで数値を出しておりま して、日本は0.7、アメリカは24.4、イギリスが13.6、ドイツが12.8という状況にな っております。  3ページは生体肝移植の状況でございます。左手の青い棒が生体の移植で、右手の赤 い棒が死体の移植です。図1、2、3で、腎臓、肝臓、肺移植について、それぞれグラ フ化をしております。生体の移植が増加傾向にあるということがおわかりいただけるか と思います。  その下の表は、海外への渡航の心臓移植の実施数です。これは1988年から2005年末 までの総数103名ということでグラフ化をしております。2005年は15名という状況で ございまして、近年、また増加傾向にあるという状況でございます。  4ページは海外の渡航移植者の状況です。これは、今年の3月に、厚生労働科学研究 で公表された資料ですけれども、肝臓、腎臓について、それぞれ渡航移植者の状況が出 ております。  肝臓につきましては、上から三つ目の○ですけれども、渡航移植を受けて通院してい る患者数が221名です。渡航先の国別人数は、アメリカ、オーストラリア、中国など、 ごらんのような状況になっております。  腎臓につきましても三つ目の○になりますが、渡航移植を受けて通院している患者数 が198名、渡航先の国別のデータは、中国、フィリピン、アメリカ、韓国など、ごらん のような状況となっております。  5ページは都道府県別の腎臓提供件数と移植件数の推移、それから移植希望登録者数 です。色分けしている部分が、それぞれ2002年、2005年の都道府県別の人口100万人 当たりの年間の提供件数を掲載しております。  色分けについては次のページに分類がありますが、白が人口100万人当たりゼロ件で、 0.5件までが緑色、1.0件までが黄色、1.5件までが赤、1.5件以上を青として色分けを しております。  6ページは、今、御紹介した腎臓提供件数100万人当たりのものについて、地図で色 分けをしたものでございます。  7ページは提供件数ごとの腎臓提供施設の分類でございます。表の左側が腎臓の提供 件数、右側が施設数となっておりまして、これは現在のレシピエント選択基準ができた 2002年1月から2005年12月までの約4年間の腎臓提供件数をお示ししたものです。  これまでに16件の提供件数があった施設が1施設、12件あった施設が1施設という ことで、1件あった施設は全国で115施設という状況になっております。  8ページは脳死下での臓器提供の件数を都道府県別に色分けしております。法律が施 行されてから18年6月25日までの累計は現在47例となっておりますけれども、そのう ち、病院の所在地が公表されていないものを除いた件数を地図で色分けしたものです。  次に9ページの移植医療に関する普及啓発の取り組み状況について簡単に御説明をさ せていただきます。まず国民に対する普及啓発としましては、臓器提供意思表示カード ・シールの配布が挙げられますけれども、これは昨年の秋に、カードとシールの配布枚 数が1億枚を突破したということで、10月からカードのデザインを一新しております。  また、関係団体等による移植医療に関する普及啓発としまして、毎年10月の臓器移植 推進月間を中心としまして、ネットワーク、都道府県、移植の患者団体、腎バンク等、 関係団体による普及啓発活動、移植患者団体やドナー家族の団体等によるドナーの記念 祭、それから公共広告機構によるCMの展開、それからネットワークにおける移植医療 に関するリストバンドの配布などが行われております。リストバンドについては、机の 上に配付しておりますので御参照ください。  教育における普及啓発としましては、16年度より全国の中学3年生にパンフレットを 配布しております。  また、臓器を提供する意思を登録できるシステムの整備ということで、現在、ネット ワークにおいて整備を進めておりまして、今年中に運用が開始される予定となっており ます。  また、医療保険の被保険者証への意思表示記入欄の記載ですけれども、これは平成15 年に健康保健法の施行規則が改正されまして、被保険者証の余白は、各保険者の判断に よって、臓器提供の意思表示の記入欄などに使うこととして差し支えないというふうに されました。これに伴いまして、資料にございます、国保と二つの健保組合で既に導入 しているところでございます。  また、政府管掌の健康保険につきましては、この4月から5月までの間に、意思表示 欄の導入についてパブリックコメントを実施したところでございます。  10ページは医療機関等関係者への普及啓発・支援でございます。1点目として、都道 府県による医療機関への協力要請ということで、院内コーディネーターの設置の支援、 2点目としまして、医療関係者、医療機関等の体制整備等の支援ということで、医療関 係者に対する研修、マニュアル作成の協力、シミュレーションの支援、それからネット ワークによる脳死判定に関するDVDの作成・配布、それから日本移植学会による意思 表示を確認する院内システムの整備支援、医療機能評価における臓器提供体制の評価、 それから臓器移植対策推進功労団体への厚生労働大臣感謝状の贈呈などを実施しており ます。  ネットワークのDVDについては、お手元に配付しておりますので、お持ち帰りいた だいて、ぜひごらんいただければと思っております。  3点目に、臓器提供事例が発生したときの提供病院に対する支援でございます。1点 目として、メディカルコンサルタント医師の派遣、2点目として、日本脳神経外科学会 による脳波検査の支援、3点目として、ネットワークによる臓器提供病院への交付金の 給付、4点目として、これは18年4月からですけれども、脳死判定やドナー管理に関す る診療報酬上の評価が新たに行われることになりました。  4点目は医学部生に対する臓器移植に関する教育ということですけれども、まず医学 教育ということでは、全国の医科大学の教育プログラムの指針となります医学教育モデ ル・コア・カリキュラム、これは文部科学省の委員会で策定しているものですが、その カリキュラムの中で、植物状態と脳死の違いを説明できるということですとか、臓器移 植の種類と適応を説明できるといった到達目標が掲げられております。  また、医師の国家試験につきましては、必修の基本的事項として、臓器移植と脳死が 挙げられておりまして、臓器移植法、それから脳死、脳死判定基準、臓器・組織移植に ついても医師国家資格試験出題基準に定められているところでございます。  最後になりますけれども、移植医療の社会的基盤整備に関する研究ということで、こ れは厚生労働科学研究として大島班長がかかわっておられるものですけれども、現在、 スペイン等における取り組みなどを参考としまして、臓器提供病院におけるスタッフの 意識調査、それから病院の医療記録に基づく臓器提供プロセスの障害要因の分析等によ る体制構築支援モデルの開発、それからコーディネーターの教育プログラムの開発など が行われているところでございます。  以上で資料1の説明を終わります。 ○大島班長 ありがとうございました。何か御質問等はございますか。 ○田中班員 最後の医療機関等への普及啓発支援の3番の提供病院への派遣ということ で、日本救急学会の方も先般、提供に関するプロセスの際に、JOTの方に、必要であ れば救急学会から医師を派遣するということを決定しまして、恐らく230名くらいの専 門医が登録できるような形になっております。既に学会の方ではその名簿をJOTの方 に渡しております。  また、救急医が行って何をするのかということですが、諸事のコントロール、あるい は現場での状態の把握、あるいはアドバイス等という形になるかと思います。そういう 形で救急学会の方も御協力させていただきます。 ○大島班長 ほかに何かございますか。 ○秋山班員 人口100万当たりの集計のところですが、新潟の努力がなかなか出てこな くて、大変残念なことだと思います。今年に入りましても、月1例程度のペースで出て おりまして、現在も抱えておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。 ○大島班長 2002年と2005年は、ちょうど新潟は空白のときではないですか。 ○秋山班員 2005年は頑張っております。 ○大島班長 2005年が頑張っているとすれば、こちらの表に出てこなくてはいけません が、ゼロになっていますね。 ○秋山班員 資料ではゼロになっています。 ○大島班長 どちらかが間違っているということですね。 ○秋山班員 集計の問題だと思います。 ○大島班長 わかりました。新潟が頑張っているのに、ゼロでは立場がないというお話 でした。  ほかに何かございますか。  それでは先へ進ませていただきたいと思います。議題2、日本臓器移植ネットワーク における普及啓発に関する取り組みについてということで、菊地班員の方からお願いし ます。 ○菊地班員 それではネットワークにおける普及啓発の取り組みということで、主に本 部で行われている普及啓発の取り組みについて説明をさせていただきます。スライドを お願いします。  まず臓器提供意思表示カードの配布ですけれども、意思表示カードの設置場所としま して、役所、保健所、郵便局等の公的機関、それから病院、薬局等の医療機関、コンビ ニ、スーパー等の店舗に配置をさせていただいております。  また、先ほども御説明がございましたように、現在、健康保険証への意思表示欄の設 置に力を入れているところで、健康保険関係機関に関して、被保険者証への意思表示欄 の設置、また更新時の際の意思表示シール等の配布等の協力依頼を進めているところで す。大企業、都道府県、協力を得られているところが徐々に大きくなってきております。  全国の成人式においては、いつもかなりの請求がございまして、数多くの意思表示カ ードを配布させていただいております。平成17年10月よりカードのデザインを一新い たしました。次のスライドをお願いします。  後の山は意思表示カードの配布枚数を示しています。総計で1億3000万枚のカード、 シール等を既に配布しておりますけれども、所持率は10.5%です。  前面の棒グラフは、提供いただいた臓器の数を示しております。提供件数は先ほど説 明がございましたので割愛させていただきます。次のスライドをお願いします。  右側の上下が新しくデザインしました意思表示カードです。2枚同じデザインで色の 違うカードを作成しまして、1枚は御本人に持っていただいて、1枚は御家族に渡して いただくという2枚キャンペーンを現在進めているところでございます。次のスライド をお願いします。  続きまして、普及推進月間の主な活動です。毎年10月が普及推進月間ですので、都道 府県、バンクと協同したカード配布、ポスターの掲示、風船等のグッズをネットワーク で準備しまして、それぞれの地域で活用していただいております。  臓器移植普及推進全国大会の主催も行っておりまして、昨年は神戸、今年は福島で行 われる予定です。  次にthink transplantキャンペーンですが、全国の、主に若年層の無関心層に対して の臓器移植に関するアプローチを目的に行っております。現在、有名FM局のラジオイ ベントでありますとか、先ほど御紹介がございましたリストバンドの配布等を行ってお ります。これは企業の協力を得まして、このようなキャンペーンを行っているところで ございます。このリストバンドにつきましては、昨年のある一定期間に、ヤフーのアク セス件数第2位という記録をしたこともございます。  続きまして、全国小中学生へのカラー百科の掲示ですが、小中学校の掲示板に、臓器 移植についての説明を掲示させていただいております。次のスライドをお願いします。  これは一昨年のthink transplantキャンペーンに協力いただきました北島康介選手の 新聞でのキャンペーンです。次のスライドをお願いします。  次のスライドをお願いします。  公共広告機構のCMにも取り組んでいます。テレビCMとして、15秒と30秒、ラジ オCMは20秒と40秒を作成しています。ポスターにつきましては、B2縦、B3横の ポスターを作成して、鉄道会社等の協力によって、各駅、それから電飾等にポスターを 張っていただくという御協力をいただいております。次のスライドをお願いします。  昨年のポスター、それからテレビCMでは、実際に臓器移植を受けられた方に登場い ただいて、移植を受けた年齢を前面に出して、テレビ、ラジオ等で流させていたく取り 組みを行いました。次のスライドをお願いします。  2006年度は、「それは生命を咲かせるカード」というキャッチコピーで、枯れた桜の 木が咲く、枯れた川に水が流れるといったところを、「生命を咲かせるカード」という ところにかけてCMを打っていく予定です。次のスライドをお願いします。  次は学校教育への取り組みです。全国の中学3年生に、厚生労働省と協力してつくっ たパンフレットを配布しております。  また、先ほども説明いたしましたが、全国の小中学校に移植に関するカラー百科を送 付して、掲示していただいております。  学生のネットワークの訪問、受け入れにつきましては、自由学習等でネットワークを 訪問する学生が徐々にふえてきておりまして、最近では1週間に2日くらいはネットワ ークに学生が訪問して、臓器移植の勉強をして帰られています。また、日本の移植事情 というCDつき解説セットを作成して配布してございます。  日本循環器学会に協力いただいておりまして、大学ですとか、短期大学、大学病院等 に循環器学会の方からも、こういったカード、ポスターの配布等の協力をいただいてお ります。次のスライドをお願いします。  これが全国の中学3年生に配られている「いのちの贈りもの」というパンフレットで す。右側にございますように、「当院は、ご本人やご家族の臓器提供に関する意思を尊 重し、対応いたします。ご相談ください」という設置箱ですけれども、救急病院からの 要請でつくられたもので、この箱の請求が最近多くなっているというのが現状です。次 のスライドをお願いします。  これは先ほど説明いたしました全国1万8000の小中学校に掲載されておりますカラ ー百科です。次のスライドをお願いします。  日本の移植事情が簡単に解説できるようにということで、このようにCDをつけまし た。このCDセットについても評判がよく、学校の先生方、看護学校の先生方等からの 請求が多いグッズです。これについては無料で配布させていただいております。次のス ライドをお願いします。  臓器提供の意思登録システムの整備です。これは今年度に整備をするように進めてい るものですが、その目的は、インターネット等の活用によりまして、カードの普及、カ ード所持者の増加を図るものです。  インターネット、または携帯電話からのアクセスもできます。簡単に意思表示カード の請求、意思表示の登録ができるというようなシステムになります。  また、臓器提供に関する意思の登録をしていただくことによって、臓器提供に関する 意思の確実な確認ができるようなシステムを目指しております。次のスライドをお願い します。  脳死判定DVDの作成についてです。ネットワークに新たに設置いたしました臓器提 供施設委員会で作成していただいたものです。こちらにおられます田中班員にも御協力 をいただいて作成したDVDです。  内容は、臓器提供の選択肢の提示、主治医にしかできないことと題して、選択肢提示 の必要性と留意点等をドラマ化してDVDにおさめています。また、脳死判定の方法、 手順、解説等もDVDにおさめています。大学の授業で使うから送ってほしいとの依頼 や、救急学会、脳神経学会、集中治療学会、麻酔科学会等で紹介いただけるというお話 をいただいております。次のスライドをお願いします。  このスライドの中ほどの折れ線グラフですが、左側の下のブルーのラインが御家族の 申し出で御提供いただいたパーセンテージを示しています。  上の赤いグラフは、臓器提供の選択肢の提示から、腎臓提供に結びついたパーセンテ ージを示しています。  後ろの棒グラフは腎臓提供の数を示しています。1995年は御家族の申し出が約30%、 選択肢の提示が70%ですが、1999年に逆転しまして、2002年には選択肢の提示が少な く、ほとんどが御家族の申し出からの提供でありましたが、2003年、2004年、2005年 と、選択肢の提示からの臓器提供の件数がふえてまいりまして、2005年ではフィフティ ー・フィフティーになってございます。次のスライドをお願いします。  7番目は、脳死下臓器提供関連費用交付金についてです。脳死下臓器提供の際に、提 供施設に関して交付金の対象となる業務を行った場合は交付金から支払わせていただい ています。  臓器提供施設が行った報道機関への対応、情報公開にかかわる費用、御家族の支援に かかわる費用、あっせん業務と密接にかかわる費用などが交付金の対象となって、200 万円を上限にお支払いさせていただくことになります。次のスライドをお願いします。  最後になりますが、こちらは請求がございました交付金の請求金額と、交付額になっ てございます。直近9件の平均では56万4105円の請求がございまして、実際の交付額 としては、平均で39万4884円が支払われているという現状でございます。  以上です。 ○大島班長 ありがとうございました。何か御質問、御意見等はございますか。 ○田中班員 ネットワークで大変広範囲にわたって普及活動されていることについて は、日ごろからすばらしいと思っているのですが、一般普及と、いわゆる医師、研修医 に向けての普及という二つの方策があると思います。一般普及の中で、特に私たちが感 じているのは、学生や生徒さん、中高生あたりの学年に、何かしらのアクションがあっ てもいいのではないかと思っています。  中高生の保健体育の教科書を見ますと、臓器提供に関しては1ページが割かれて書か れてはいるのですが、それを教える人が全然わかっていません。いわゆる保健体育を教 えているのは体育教師ですが、私はちょうど今、体育学部がある学部にいるので、実態 調査といいますか、現地調査をすることがあるのですが、この内容については、彼らは 全くわかっていない状況で、教えるノウハウもありません。そういう状況で、物だけが 行っても、なかなか子供たちの理解が進まない。  あわせて心肺蘇生法の普及などもやっているのですが、高校の保健体育の教科書の内 容には挙げられていますけれども、それを教える側に意識がないということは問題だと 思います。  どうすればいいかというと、やはり教職の課程、特に保健体育を教える教職課程にあ る人たちに、具体的に授業の中で教え込んで、こういうノウハウで教えるということを していかないと、本当の意味での普及にはならない。  ですから、今やっているのは、やっと高校生たちの目に入るところまではいっていま すが、命を吹き込むところまでは残念ながら届いていないというのが現状ではないかと 思います。  また、医学生と看護学生を含めたパラメディカルへの教育ですが、私たちのところで はもう何年も前からやっていますけれども、医学生は、頭では理解できますし、国家試 験の基準に入りますと、確かにそれに対しては理解するのですが、そこから先はどうか というと、今度は医学部の中で、そういう移植ということについて、きちんとカリキュ ラムを話せる人がいない。あるいはカリキュラム自体ができていないということがあり ます。  ですから、例えばこういったDVDができてきますと、確かにツールができてきます ので教えやすい。  ですから、もう少し突っ込んで、1時間のこまで、このくらいの講義でこういう内容 をやってほしいというような具体的な講義の内容をつくって、それを全国の医学部の中 で考えてください、内容については各学部、あるいは教える人によって多少の味つけは あると思いますが、コアカリキュラムとしては1時間でこのくらいのことをやってくだ さいというようなスライドのベースをつくってしまえば、非常にやりやすいと思います し、看護学部、あるいはほかのパラメディカルの学科に関しても同じようにアプローチ ができるように思います。  コアカリキュラムをつくるということは結構大事ですし、脳死のところというのは、 せいぜい1こまくらいの時間しかいただけないことが多いですから、そうしますと、ど こかの脳外科や救急医学といった科目の中で触れていただくように、こういうものでや っていただけませんかというものをつくってしまった方が、むしろ普及が早いかという ふうに思います。 ○大島班長 ありがとうございました。ほかに何か御意見はございますか。 ○土方班員 私は秋田の医学部の5年生に講義をさせていただいているのですが、移植 側の講義ではなく、救急の講座の中で、救急医療における臓器提供の現状ということで、 臓器移植法例の内容ですとか、症例の紹介ですとか、法的脳死判定に触れて、お人形を 使って学生さんにさせるというようなことをしています。  やはり移植側の先生からの移植の講義もあるのですが、そちらからではやはり移植側 の講義になってしまっていて、臓器提供の側の現状についての話がされていないという ことを学生さんがおっしゃっていましたので、秋田は、救急の教員の御協力、御支援に よって講義をさせていただいておりますが、他県ではなかなかそれもできないというこ とがあるようですので、そういう講義の内容などを、恐らく他県でもされているところ があると思いますので、そういった内容をまとめて、こういう講義をする必要性がある と思います。  秋田でもやっていますが、学生からの講義の評価、アンケート調査をとりまして、講 義の内容ですとか、どのようなことが理解できたかというような結果を調査しておりま すので、そういうことも含めて、全国的にどういう動きがあるのか、現状をどこかで把 握していただいて、その内容をもってカリキュラムの方に提示させていくということも 可能なのではないかというふうに考えました。 ○大島班長 ありがとうございます。ほかには何かありますか。新潟の方でも何か似た ようなことをやっていたと思いますが、いかがですか。 ○秋山班員 新潟の現状ですが、5年前から医学部の臨床講義として6年生の試験項目 に入っておりまして、やらせていただいております。どのようにしているかといいます と、2日間をかけまして、一つは心停止下の臓器提供、もう一つは脳死の臓器提供で、 それぞれ症例をもとに、あなたが主治医だったらオプション提示はどうしますか、ある いは承諾について、だれとチームワークを組んで提供まで持っていくのかという具体的 なことを、臨床講義の中で、試験もあわせながらずっと続けています。  もう一つは、看護師ないしは検査技師、あるいは作業療法士、理学療法士等の医療専 門の4大がございますが、ここでも開校時、つまり5年前から同じ講義をさせていただ いております。看護学校でも当然しております。  私の場合はベースが心理ですので、特に家族ケア、グリーフケアなども含めながら、 移植医療プラス、そもそも医療現場、救急現場になくてはならないようなケアも同時に お話し申し上げて、そういった形でつくっています。  最近、研修医などが提供現場、救急のところに出てきているときに、講義を聞きまし たといったことがポツポツと聞かれるようになってきておりますので、地道な活動では ありますが、やはり田中先生を含め、土方さんがおっしゃったような話については総合 的に考える必要があるというふうに思っております。 ○大島班長 ありがとうございました。こういう教育の話というのは、いろいろな事例 を参考にしながら、ゲリラ的にいろいろな形でやっていくしかないかと思います。  しかも、そこで価値があるというようなツールだとか、あるいは方法というものをい ろいろと紹介し合いながら参考にして、草の根的に広げていくということだろうという ふうに思います。  そのためには、できるだけいい事例をどんどん紹介していただいて、そういったもの をいろいろな形で紹介したり、広げたりということが大事かと思います。  ほかに何か御意見はございますか。  特にないようであれば先へ進ませていただきたいと思います。今日は、最初に事務局 の方からも御紹介がありましたように、藤田保健衛生大学病院の神野名誉教授に参考人 として御出席をいただいております。  移植の関係の方ですので、改めて御紹介することもないかと思いますけれども、症例 数も含めて、提供がダントツに多い大学病院でありまして、その中心におられるのが神 野先生ということです。今日は、その先進的な取り組みということでお話を伺いたいと 思います。  それでは神野先生、よろしくお願いいたします。 ○神野参考人 御紹介をいただきました神野でございます。別に先進的という感じでは ないのですが、約30年前に名古屋に移りまして、そのときはちょうど日本に救命救急セ ンターができたころでございました。  私は40年間、脳外科医をやっている者ですので、失礼かもしれませんけれども、余り 移植のことに直接関心があるというわけではありません。  名古屋に移ったときに、藤田院長にお会いしまして、名古屋のグループの腎移植の先 生方は非常にアクティブだということを知りまして、その先生方に引っ張られてきたよ うな感じがいたします。その元締めが大島先生であるということは御存じかと思います。  これは私どもの病院ですが、なぜこういうものをお見せするかといいますと、現在、 1505床ありまして、そのうちの150床を脳外科で使っておりますので、約10%を使って おります。そういう病院であるということをお示ししただけでございます。次のスライ ドをお願いします。  こちらはビデオですけれども、私どもの本業はこういった脳外科の手術でございまし て、本音を言いますと、脳外科医というのはこういうことに夢中でございまして、臓器 移植ということは基本的に余り頭にない種族であるということはまず理解していただい た方がいいかと思います。  ですから、先ほどからいろいろな御提案等がございますけれども、学会に行けば何と かなるというような集団ではございません。こちらの方がおもしろくて仕方がないわけ です。  そして、直接命がかかっているといいますか、脳外科というのは死に際の科でござい ますので、そういうものを相手にしているということを片隅に入れていただきたいと思 います。次のスライドをお願いします。  これは私が出したデータではなく、うちの腎移植の方々からお見せいただいたデータ で、このくらいの数だということです。これがどの程度なのか、全国の中でどういう比 較をするのかということはよくわかりません。次のスライドをお願いします。  これ以外にも2例ほど、何回でも臓器移植をしてもいいという方がおられたのですが、 結局は2例ともなりませんでした。1例は鼓膜損傷があって、カロリックテストができ ませんでした。2番目は、鎮静剤の血中濃度をはかっていなかったという例です。それ 以後、私どもでは、とにかく脳死段階での臓器移植は敬遠するというのが率直なところ です。  鼓膜が損傷されて、脳の髄液が外に出ているような症例ですから、カロリックテスト ができるわけがありません。  また、血中濃度も、投与した後に何時間もたっていて、なおかつ調べなければならな いということで、マスコミの方も随分来られましたが、松井が、本当に完璧なフォーム で打って、ライトの上段に入ったホームランだけがホームランであって、片手打ちでバ ランスが崩れたような状態でフェンスを越えただけのようなものはホームランではない ということかと考えます。そう完璧なホームランばかりはないということですけれども、 我々から見れば、ホームランはホームランではないかというふうに思います。このあた りのところは、今はどうなったのかよくわかりませんが、その当時のマスコミの姿勢は、 非常にその後に悪影響を及ぼしました。  いろいろな御議論があるのは当然で、そんなことは全く構わないのですが、私どもか ら見ますと、マスコミのスタンスが決まっていないといいますか、一体、今後、臓器移 植というものを応援していくのか、足を引っ張るのか、どちらなのか、どちらでも結構 ですが、それをきちんと決めていただきたいと常々思っております。余談でございます。 次のスライドをお願いします。  これも本当かどうかは知りませんが、藤田保健衛生大学からの献腎は、我が国の献腎 の10%で、愛知県の約50%だというふうに彼らのデータでは出ております。次のスライ ドをお願いします。  ただ最近は、承諾率と献腎数が減ってきています。減っているのは全国的な傾向だと は思います。次のスライドをお願いします。  献腎の方々のほとんどの症例が、いわゆる脳卒中でございます。これも後で少し関係 してくると思います。次のスライドをお願いします。  献腎の承諾と拒否ということですが、これはうちのコーディネーターさんがアンケー トをとって、なぜ承諾したのか、なぜ拒否したのかということを御家族に聞いているも のです。承諾した理由のほとんどは、何か他人の役に立つのであればということです。 または本人の意思ということで、ドナーカードを持っていなくても、例えばテレビを見 ていてこういう話題があったときなどに、おれが死んだらあげてくれと言っていたとか、 そういうことがあります。次のスライドをお願いします。  多くは博愛主義的なもので、キリスト教的な考え方です。次のスライドをお願いしま す。  拒否の理由は、やはり傷つけたくないということが多くなっています。それから、ま だ脳死というものを死として容認していないというような理由で、いろいろとあると思 いますが、傷つけたくないという理由が非常に多いようです。次のスライドをお願いし ます。  拒否のほとんどは、死生観だとか宗教観に源があって、御家族が拒否をしているとい うことです。次のスライドをお願いします。  提供していただいた御家族に、その後、提供してよかったですかということを聞きま したら、多くの方は提供してよかったというふうに言われたのですが、中には、承諾な どしてけしからんということをしゅうとめに言われているといった話があって、二度と したくないという方もおられます。次のスライドをお願いします。  非常に否定的な方も何人かおられます。次のスライドをお願いします。  もう一度同じような経験をしたら拒否するという方が中にはおられます。わからない という人も31%いるということです。次のスライドをお願いします。  最近は、腎臓だけではなく、京大の田中さんが神戸市民に行ったものですから、そこ から2人、うちの大学に来られまして、膵臓の、今は細胞移植というのでしょうか、や られ始めました。次のスライドをお願いします。  これが本題というと申しわけないのですが、なぜ腎提供が多かったかといいますと、 一つは、別に自慢しているわけではないのですが、うちの大学は全国で脳外科の手術が 一番多い病院でございまして、今年はもう1000例を超えておりますので、基本的に脳外 科の患者さんが多いところでなければ話にならないというふうに思っております。  ですから、先ほどからいろいろな方からお話があって、いろいろなことに細々と手を 打たれているということはよくわかるのですが、救急病院にしても、脳外科の病院にし ても、もう神経外科を通じてですとか、そういった活動も非常に大事だということはよ くわかりますけれども、一方、やはりターゲットが絞られませんと、全国で500例以上 ある病院などは10もありませんから、恐らくそこだけをきちんと押さえれば、随分と話 が進んでいくだろうというふうに私は思っています。  やはり脳卒中がなければだめです。脳腫瘍はなかなか提供者になり得ません。病態が 長いものですから、御家族にもそれぞれ、ある程度の固定観念がきちんとできてしまい まして、御承諾をいただくということがなかなか難しいような気がいたします。  ということは、逆に言えば、日本の脳外科の関係では、国立大学は主として脳腫瘍で すから、今後、今の日本の医学界がよほど変わらない限り、国立大学から御提供いただ く数がふえるという感じはいたしません。次のスライドをお願いします。  これは救命の回診の模様です。一番こちらにいるのは、泌尿器科の星長教授です。な ぜこれをお見せしたかといいますと、朝の回診のときというのは、脳外科というのは朝 の4時半とか6時から仕事をしている人間がごろごろいるわけでございまして、毎朝の 回診に、彼とコーディネーターの方がずっとついてこられます。  脳外科の回診などにつかれても、本職ではないですし、おもしろくないだろうと思う のですが、30年近くよく我慢して、毎朝来られているわけです。  最初は藤田先生などが毎朝早く回診に来られて、この人たちは何をしに来ているのか と我々は思いましたけれども、やがて情にほだされまして、何とか協力しなくてはいけ ないということで今日まで続いております。  ですから、啓発運動の一つのキーは、厚生労働省の方も言われたように、組織的な展 開ということも当然大事だと思いますが、それ以外に、やはりゲリラ的な展開というも のが一つの側面として必要で、ゲリラ的な展開というのは何かというと、一つは施設を 絞るということです。ターゲットを絞る。全国の細々とした病院にまで手を広げるとい うことは、僕は無駄だと思います。  それから方法論を絞るということですが、これは何を絞るかというと、移植医、ある いはコーディネーターが、ばからしいかもしれないけれども、毎朝の回診に一緒に回る とか、 そのように何度も空振りを重ねるというような、そういう方法論のターゲットを 絞るということも非常に大事ではないかと私は思います。  また、今まで総論的なことをいろいろと言われましたけれども、私が見ている限りで は、そういうことが余り実を結んでいるような気がしないものですからこんなことを申 し上げているわけでございますが、朝の回診に移植医やコーディネーターがつくという ことは、こういう班活動を通じて、あるいは厚生労働省からでも、まず各学会に正式に 依頼するということが必要であると思います。  恐らく正式に依頼しても実を結ばないと思いますが、その後は個人的な交渉で、毎朝 行くけれども、邪魔かもしれないが勘弁してくれというような感じで行かれるといいの ではないかと思います。  特に最近は機能評価の受診が盛んでございまして、機能評価の中で、他部署間のカン ファレンスというのは絶対的に必要だということが項目に入っておりますので、各病院 とも、機能評価をとるためには他部署間のカンファレンスというのはしょっちゅうやら なくてはいけませんので、一つの追い風にはなっているかと思います。ですから、朝の 回診、あるいは脳外科のカンファレンスのどちらかに出られてはいかがでしょうか。  それから救急学会と脳外科学会の話が先ほどありましたけれども、僕も救急センター のセンター長をやっていましたが、脳外科と救急医学会というのは、内情は同じではあ りません。  脳死の患者さんは、やはり脳外科医が診ています。もしそれを救急医学教室の中で診 ているとすれば、脳外科の教室から派遣した脳外科医が救急医学教室にいて、ローテー ションが回って診ているというのがほとんどです。  そうすると、自分の本業でもないことを一生懸命やるということですが、救急医学に いても、本来は脳外科医ですから、親方は脳外科の主任教授であって救急医学講座の主 任教授ではないという気持ちが腹の中にありますので、教授に言われれば、はいと言っ てやりますけれども、本当の親方から言わないと、本気になってはやりません。  ですから、日本の医学界の基本的な問題なのですが、救急医学会はいろいろと立て直 しをしなくてはいけないと思うのは、頭部外傷などだから救急医学でやってもいいとい うことをよく言われます。脳卒中や脳腫瘍は救急医学会の人たちはやりませんが、頭部 外傷だからいいだろうということです。  頭部外傷というのは応用問題の積み重ねですから、本当は一番難しいのです。ですか ら、回った連中はそっちで手いっぱいでございまして、多分回っているのは卒業後6、 7年の若手です。ですから、とても臓器移植までは時間も気も回らないだろうというこ とです。  そういうことは余り表に出してはいけないのですが、実のところは脳外科にターゲッ トを絞られた方がいいかと思います。  ただ、脳神経外科学会などにもいろいろな提言をされていると言われましたけれども、 口では幾らでも言いますが、多分本気にはなりません。もっとおもしろいことがたくさ んあるというのが彼らの実情でございます。  今日はこういう会でございますので、ざっくばらんに言わせていただきましたけれど も、ポイントとしては、これからやることの総論的なことは厚生労働省などにお任せし て、少しゲリラ的にターゲットを絞った活動こそ大事ではないかと思います。  以上です。 ○大島班長 ありがとうございました。余り公式の場では聞けないような本当のところ のお話をいただきました。私たちは時々、名古屋で酒などを飲みながら、本当のところ のお話を伺っていますが、今日はそのような普通ではなかなか聞けないようなお話を神 野先生にしていただきました。  何か御質問はございますか。 ○金井班員 多数例の提供を先生が獲得されましたけれども、例えば先生の場所ですと、 心停止で提供を受けられていますが、角膜は全く提供されていないようですけれども、 いかがですか。 ○神野参考人 このデータは腎移植の人たちにいただいたデータで、僕が自分でつくっ たわけではないですが、毎日回診している中には角膜もございました。そんなに少ない 数ではなく、あると思います。 ○大島班長 ドナーが発生する場所については、条件というものを十分にリサーチして、 調査をした上で、限られた資源といいますか、人材も含めて、マンパワーを限られたと ころに集中的に導入すべきである。一方で、理屈などはいろいろとあるにしても、結局、 人が人を動かすのは、最終的には熱意だというようなお話で、それがない限り、余り言 葉がよくないかもしれませんが、だれが本職以外のところに頭を突っ込むかと。しかも 十分に時間などのゆとりを持ってやっているわけではなく、ぎりぎりのところで勝負を しているのに、さらに余分なことを言われて、余分なことに実際に協力しようというに は、よほどの熱意が伝わらない限りはあり得ないといったお話だったかと思います。  ほかにはいかがですか。 ○田中班員 今、先生がおっしゃったことは、まさに必要だと私も思っています。特に 最後に先生がお示しいただいた重要なスライド、日本の脳外科手術のトップテンのほと んどが、やはり私立病院を含めた私立大学の病院に集まっています。  また、もう一つは、この大学はやはり都市部にあるということで、東京、名古屋、京 都、福岡、または恐らく札幌も入ってくると思いますが、私たちも救急医学の中で感じ るのはまさにそこで、ドナーアクションプログラムが広がって、確かにルーラルエリア といいますか、言い方は悪いですが、大都市部ではない部分のドナーアクションという ものが進んできているように思いますけれども、東京、大阪は本当に手つかずの状態で、 各病院の先生方の判断に任されている。  それはやはり症例数が非常に多いために、先生が言われるように、日常の手術や、そ ういったことをこなすのに手いっぱいであるという中で、どういうふうにこのような臓 器提供を組み込んでいくかということが、まさにこの班の中で一番考えていくべき命題 ではないかと思っていますが、なかなかここ10年以上の中では、効果的な策が打ててい ないといいますか、得られないまま経過してきたように思います。  この中では、やはり今言われたように、ある一定の頻度で、単発的には出てきても、 それ以上の手術件数に見合っただけのものが出てこないということをどう崩していくか ということがポイントだと思います。  私が思っていますのは、救急医にしても脳外科医にしても、やはり患者さんの命を救 おうというスタンスがまず前面にあり、そのための医療を展開するわけですから、そう いった延長線上に、いわゆる臓器提供のオプション提示というものが出てこなければい けない。  最初から臓器提供ありきということになりますと、どうしても救急医全体が背を向け てしまうという難しいところをどのようにアプローチしていくかというところだと思い ます。  今年度にぜひ行いたいと思っていますのは、こういった都市部の救命センターを中心 にして、臨死患者といいますか、脳死患者に関してどのようにアプローチするか。これ は何も臓器提供だけではなく、そういった患者さんに対して、どのように家族に説明す るか、あるいは看護師たちがどのようにアプローチするかといったものを、センターと して包括的に取り組むやり方を何かしら明示してあげないと、非常に臓器提供に対して 協力的な先生がおられるときは、そこの施設からはたくさんドネーションが出ますが、 例えば杏林などでもそうですが、そういった先生がリタイアされてしまうと途端に数が 減ってしまう。やはりこういうことを繰り返していてはいけないのではないかと思って おります。  まとまりのない話ですが、これをどうするかということが次のポイントになるように 思いますけれども、いかがでしょうか。 ○神野参考人 例えば医学部の学生の教育、脳外科、救急医学などの講義に出るという のはだれもが考えることで、やられることだと思いますが、問題は、やはり現場でいか にこういうことの意義を刻み込むかというところだと思います。  恐らく教室での授業では、国家試験は通るかもしれないけれども、刻み込まれていな いと思います。ですから、やはり現場で教えなくてはならないということと、現場で教 える人を1人か2人はつかまえるということに尽きるだろうと思います。  先ほど、組織的な展開とゲリラ的な展開がほぼフィフティー・フィフティーのように 申し上げましたが、今のフェーズにおいては、ゲリラ的なところに比重を置くところに 日本の臓器移植は来ているのではないかと思います。  先ほどもカードの配布が1億を超えたという話がありましたし、そういう組織的な展 開はほぼ終わっていて、なおかつ伸びない。だったら基本的に戦略を変えなければなら ないところに来ているのではないかというふうに思います。それには現場で教えないと 意味がないように私は思います。 ○秋山班員 神野先生のお話を、つくづくごもっともという感じで聞いていました。実 は新潟は同じような手法だったというふうに思ったのですが、最初は病院開発だとかド ナーアクションだとか、何個の病院がどれだけ協力してくれたかということに集中した 時期がありました。でも、やはり通り一遍で、だめです。そこで方針を変えまして、や る気のあるところだけとやろうということで、結果として、兵糧攻めではないですが、 全然声もかけていない病院から急にドネーションがあるというようなことで、つまり、 その作業をするには、地域の脳外科の教授と一緒に作業をしたのですが、そういうとこ ろからの波及効果で、後で御紹介申し上げますが、今や13病院を網羅しました。  現場ではどうかということは、私は救命なり脳外科のカンファレンスに、週1回ない しは月1回は必ず行って、死亡症例検討とともに、先ほど回診の模様の御紹介がありま したが、ああいうふうなものと同じようにさせていただくことが現状をつくってきたと いうふうに感じています。 ○神野参考人 現場で教え込みまして、それがどこかのローテーションで回りますと、 うちで教えた者が静岡県へ行っていますが、静岡県で少し出てきているのではないです か。  それは谷君という人が中心となっていたものですが、そのようにだんだん増えていく と思います。  小沢一郎さんではないですが、どぶ板戦略で、やはりジャパニーズですから、具体的 には1杯飲まなければだめです。それがいいか悪いかは別として、ジャパニーズはそう いうものだと僕は思っています。そういう戦略をとらなくてはうまくいかないと思いま す。 ○大島班長 ありがとうございました。同じ愛知県で、神野先生には本当にお世話にな っている立場ですけれども、スライドにもありましたように、愛知県の腎提供の約50% が藤田保健衛生大学病院で、余りにも保健衛生大学が飛び抜けているためにかすんでし まっているのですが、保健衛生大学を除いた残り50%の2番目、3番目の提供病院を見 てみると、これも日本の中で恐らく2番目か、3番目に提供の多い病院で、要するに数 十例くらいのドネーションをやっている病院が、愛知県の中には幾つかあります。  病院といっても、必ずしも神野先生のところのように1000例も脳外科の手術があると いう状況ではありませんから、毎日、毎朝、回診につくというような状況は、それぞれ の病院によってはないですし、移植医がいないという病院もありますので、対応の仕方 は違いますけれども、少し漏らされましたように、日本人だから酒でも飲まなくてはだ めだというようなことに象徴されるような関係というのは、やはり提供の多い病院の脳 外科医、あるいは救急医と移植医、あるいはコーディネーターとの間にそのような関係 があるというのは間違いないことのように思います。  今日は普段では全く出てこないような話になってしまっていますが、ほかに御意見は ございますか。 ○金井班員 今の神野先生の御意見はもっともだと思います。実際に我々がアイバンク をやっておりましても、やはり熱心な方のところに提供者が多いです。  例えばアイバンクの場合にはライオンズクラブの方が相当サポートしていますが、ラ イオンズの方々がサポートしてくれるところが一番提供者が多いということで、特に感 じたのは、眼科の場合、アイバンク協会の会員になっておられる眼科医の先生を実際に 調べてみますと数%です。ということは、いかに眼科の中でも角膜移植に余り興味を持 っていないかということで、白内障の手術とか、そちら側の方にどうも目を向けられて いるのではないかと思います。  ですから、やはり医者の教育で、それにはやはり学生から、学校の生徒からの教育と いうことが大事ではないかと思っております。 ○神野参考人 教育して、いろいろなことをコーポレートするというのはまさに理想で すけれども、一つ気をつけなければいけないのは、脳外科医の場合は、極めて積極的に 一緒にやろうではないかというグループと、無関心のグループ、それから極めて強い反 対者も結構いるということです。  これはなぜかというと、先ほど申し上げたように、やはり死に際の科で何十年もやっ ているということですので、うまくいかないというか、患者さんが亡くなる症例が随分 あるので、そうすると、不思議なことに、そういうことを経験すればするほど、脳外科 医が比叡山や高野山に行く回数がふえてきます。そういう回数が増えれば増えるほど、 極めて強い反対者になっていきます。著名な脳外科医で、極めて強い臓器移植反対者が 何人もおられます。  だから脳外科学会がアプローチするときにも、話せばわかるということではなく、話 してもわからない人がたくさんいるということを一応頭に入れてアプローチされた方が いいかと思います。 ○大島班長 ほかにはいかがですか。  それでは時間にも限りがありますので、続きまして、福岡県の取り組みということで、 九州大学の杉谷参考人からお話を伺いたいと思います。杉谷先生、そして秋山さんには 続けてお話をお願いします。 ○杉谷参考人 ただいま御紹介にあずかりました九州大学の杉谷です。今までのお話や ディスカッションを、私も本当にそのとおりだと思いながら聞いていました。  先ほども話に出ていましたが、私のいる九州大学というのは国立大学です。症例数が 少ない。また、脳腫瘍に偏っている。我々が脳外科の先生のところに行って、回診に一 緒についていけるかというと、そういう状況ではない。実際にドナーが出てきていると ころというのは、九州大学とは全く関係のないところです。そういった事情の中で、キ ーワードにあったゲリラ的というところで、今まで草の根的に地道にやってきたことが ありますので、それを御紹介したいと思います。  救急の脳外科の先生には本職があって、臓器移植はある意味で負担かもしれませんが、 それは我々移植医にも言えることです。移植をしている移植医というのは、例えば消化 器外科、肝臓外科、あるいは腎臓外科、腫瘍の外科をしている間に移植があることに対 して、それほど情熱があるかというと、そうではない場合も多いです。それを移植の立 場から考えてみたいということで、今日はお話をさせていただきます。  例えばドナーカードを持っている、あるいは、本当は提供したいという意思があった けれども、それが満たされていないことをいかにして取り上げていくかということで、 腎臓移植の件数を増やすということではない目的で、今日はお話をしたいと思います。 次のスライドをお願いします。  心停止下で腎臓を提供してもらって、それを移植するときの構成要素を挙げました。 実は脳死下で多機能を提供してもらうときの今の日本のシステムと、都道府県単位で主 にやっている心停止下の献腎移植は全く違うということに私は数年前に気がつきまし て、それを増やすためには、こういう要素が並びます。  まず慢性腎不全の患者さん、移植患者さんたちですが、これは腎移植の対象となる人 たちですから、実はこの方たちが一番の主役です。  そして、それを勧めてくださるプロとして、腎臓内科の先生、あるいは透析医の先生 がいらっしゃいます。この方たちが勧めてくれなければ移植は増えてきません。  それから提供病院の救急の先生、脳外科の先生、そしてそれぞれの病院の院長先生、 あるいは教授といった、上の人たちの理解がないとできません。  そして、中を取り持つ今のシステムのネットワークのコーディネーター、それから各 県に配置された都道府県のコーディネーター、そして我々が新たに考えて設置してきた 院内コーディネーターといったコーディネーターの人たちです。  そして、実際に提供してもらった後の家族の気持ちです。ほかの先生のアンケートに も出ていましたが、この気持ちです。  そして実際に手を下す摘出医、移植医が、きちんとした結果を出すような移植医療を しているかどうか。そして、ある意味で、脳外科の先生たちが社会にその結果を返して いるかどうか。  それから、行政の担当官に、移植医療は必要だということを考えてサポートしてもら っているかどうか。  それからマスコミの人は、プラスなのかマイナスなのか、どちらを考えておられるの か。一般社会の人たちは、移植医療、献腎移植が必要だと思っているのかどうか。必要 ない医療をする必要はないわけです。  そして、法治国家というのなら、それをサポートする法律は整備されているのかどう か。  そういったことで、この構成要素のうちのどれか一つが不備であっても、律速段階に なってしまって、献腎移植というのは進みません。次のスライドをお願いします。  これを福岡県の中で考えてみますと、実はこのようになっています。提供できる施設 というのは、脳死下での多機能提供可能施設が14施設、国から認定されてございます。 しかし、心臓停止下で腎臓提供ができる施設は多数あります。それに対して、移植がで きる施設、心臓移植、肝臓移植、膵臓移植、小腸移植は九大病院があります。肺移植は 福大病院があります。  それに対して腎臓移植はこれだけで、今でも7施設あります。そしてドナーさんが出 ると、ネットワークに従って、この患者さんたちに配分されていくことになります。次 のスライドをお願いします。  2002年、4年前に、こちらの大島先生が日本移植学会でドナーアクションプログラム を広げていって、何とか献腎提供を増やすことにならないかとおっしゃいました。その ときに我々はコーディネーターとともに考えたのですが、少し福岡に当てはまらないと ころもあるということで、6項目をこのように考えてみました。  移植医が積極的に参加して、県コーディネーターを教育・指導してプログラムに具体 性と熱意を与えようということで、これは移植医の問題です。  それから、ネットワークコーディネーターと、県コーディネーターの役割というもの が不明確だから、それを明確にして、後者を活用して、提供病院に対して個票を回収し て、ポテンシャルドナーを把握しようということです。  それから、それぞれの病院に院内コーディネーターさんを置いてもらうけれども、こ れは脳外科の先生や院長先生ではなく、看護師さんや臨床工学士といったパラメディカ ルにお願いして、院内の事情がわかって、主治医の先生にかわって稼働しやすい人に考 えていこうということです。  それから、提供病院担当と院内コーディネーターを一堂に招いて、院内コーディネー ター連絡協議会と名づけたのですが、これを2カ月ごとに開催して、具体的事例を通し てどういう流れかを見てもらおうということ。  また、院内コーディネーターは、この病院の中で動きやすいように、県知事名の委嘱 状、あるいは委任状というものを発行してもらおうということ。  そして、実際の情報があったら、担当医、院内コーディネーター、県コーディネータ ーを通じて、早期から摘出移植医が稼働できるように疎通をよくしておきましょうとい ったことを考えました。次のスライドをお願いします。  最初に院内コーディネーター会議を始めたときには、四つの提供病院の先生たちと、 腎臓内科の先生と、県の担当官の人たちで始めました。次のスライドをお願いします。  院内コーディネーターというのは、福岡県の提供病院の先生1人に対して看護師が1 名から5名と、複数でいいので、このように院内コーディネーターとして指名していた だけませんかということを言いました。次のスライドをお願いします。  そして、指名していただいた院内コーディネーターは、提供者が発生したときの連絡 をする。それから主治医のサポートをする。そして移植のコーディネーターに協力する。 実際の提供者の家族のケアをする。院内でも、広報、それから企画説明をしていく。マ ニュアルを作成する。ドナーカードがなくなれば補充する。そして県コーディネーター と協力して個票を作成していく。こういった仕事をしてもらいたいということを、はっ きりと役割として言ってきました。次のスライドをお願いします。  その結果、幾つかの病院で、患者さんが搬送されてきたときに、ドナーカードを持っ ておられるかどうかということを、最初は非常に抵抗があったのですが、書いてもらえ ることになりました。次のスライドをお願いします。  さらに、「生きて活きる」という院内ポスター、それから、福岡県の名前が入った提 供のパンフレットがありますと、主治医の先生も院内コーディネーターも患者さんの家 族に見せやすいということがありまして、これをつくってもらうという県からの協力を 得られました。次のスライドをお願いします。  これは実際の個票です。ドナーアクションプログラムのデスカードをそのまま訳して 個票とつけたものですが、臨死、脳死に近い患者さんがいたときに、どういうことでし たかというアンケートを、ごく幾つかの病院で書いてもらうことができるようになりま した。次のスライドをお願いします。  このようにして、どのプロセスに問題があって、どこまで行ったのかということをみ んなで話し合おうということから始めていったのですが、2カ月に1回ごとにしている 院内コーディネーター会議で、こういった内容を取り上げるようにしていきました。  どなたかに講演を依頼して、例えば心臓移植を待つ患者さん、あるいは法学部の先生、 それから救命救急の先生、あるときは反対派の団体も招いて、意見を聞くようにしまし た。  同時に、症例検討ということで、この2カ月間にあった提供事例と、その顛末がどう であったかというようなことを提供病院の先生にも見てもらおうということにしまし た。次のスライドをお願いします。  例えば、そのときの具体例として、症例検討としてこちらを挙げました。今年の3月 17日から22日の5日間をかけて、心臓がとまったドナーから腎臓を提供してもらって、 さらに移植となった事の顛末をこのように紹介しました。次のスライドをお願いします。  62歳の男性が、急性心不全、蘇生後脳症ということで、ある病院に来られました。2006 年3月16日にトイレで意識がなくなり、救急車要請となって、心マッサージをしながら 搬送されましたが、20分から1時間の心肺停止があり、頭部CTで低酸素脳症と診断さ れ、ドナーカードは持っておられなかったのですが、主治医の先生が、実は心停止下で も、ドナーカードなしで腎臓提供ができるということを言ってくださったところ、腎臓 提供に同意してくださって、提供になりました。次のスライドをお願いします。  3月16日、第一報は夜でした。県のコーディネーターより、血圧が下がっているとい う連絡がありました。我々は夜中に行って、その日はずっと一日、血圧が低いままで待 機するということになりました。  そして翌日の夜になり、脳波が平たんとなって、臨床的に脳死ということで、インサ イツカニュレーションをさせてもらいました。このときは、すぐにもとまりそうだとい うことでしたので、我々は待っていました。次のスライドをお願いします。  ところが患者さんはそこから持ちこたえられて、3月18日に、我々は一たん日常業務 に帰りました。3月19日、それから3月20日、この間、もうおしっこは出ていません。 こういう状況で、3月21日と日がたっていきました。次のスライドをお願いします。  そして3月22日の朝10時に、急に脈拍が40に下がりまして、ドナーチームは来てく ださいということでしたが、一度心停止となります。それに我々は何とか間にあって、 待っていますと、その午後、摘出手術となりました。  心臓がとまってすぐに体内かん流を開始しまして、温阻血が2分という状況でかん流 することができました。そして数分で手術室へ入りまして、手術を開始してから12分間 で、おなかから両側の腎臓を摘出させてもらっています。そして閉腹して、お見送りを した後、このときに我々はもう右の腎臓が当たるということがわかっていましたので、 持って帰りました。次のスライドをお願いします。  そしてそのまま我々は移植手術の方へ入って、右の腎臓を手術室では摘出しててくれ ました。そして午後から移植手術が始まりまして、結局、総虚血時間は4時間、ドナー の中で心臓がとまってからレシピエントの中で血流が流れ始めるまでが4時間という時 間で移植をすることができました。  そのときには少量の初尿も出まして、結局、手術は3時間弱で終わり、患者さんは帰 られました。次のスライドをお願いします。  提供病院の先生は、5日間ずっと、この部屋を我々に貸してくださって、待機させて くださいました。そのときの写真です。次のスライドをお願いします。  院内レストランと売店の写真ですが、こういうところで食事をしていました。これも 病院の先生が融通してくださって、割り引いてもらいました。次のスライドをお願いし ます。  提供病院の写真です。こちらで夜を迎えて、何泊かしました。次のスライドをお願い します。  そして、実際に当日、提供となって、氷を割って準備をしていたところです。次のス ライドをお願いします。  それをもらうことになったレシピエントさんです。36歳の女性で、透析を21年され ています。実は病気があって失明されていましたが、そのほかに既往歴がありました。 入院時の検査では全部オーケーで、既に翌日には入院されていましたので、5日間、免 疫抑制剤の内服をすることができました。次のスライドをお願いします。  これは実際に我々がいただいてきた腎臓です。動脈硬化はどうだったのか、かん流状 態はどうだったのか、周りの脂肪はどうか、そういったことをかんがみて、この腎臓を 移植して大丈夫だという判断をして移植をしましたということを提供病院の先生たちに 言いました。次のスライドをお願いします。  実際の移植の様子です。動脈、静脈を剥離して、このようにして移植しました。次の スライドをお願いします。  これは実際に我々が撮影した、摘出のベンチ・サージ、それから移植をする様子です。 大体10分間くらいに編集して、このように患者さんの手術が終わりましたということを 見てもらうようにしています。次のスライドをお願いします。  そして術後経過です。免疫抑制剤を四つ使って、だんだん減っていくという状況で、 免疫抑制療法をしました。そしてすぐにおしっこが出て、Cr値も下がり始め、術後透 析を1回もすることなく、経過がよくなって、約3週間で退院されました。次のスライ ドをお願いします。  そして、この患者さんがドナーの御家族へということで、サンクスレターというもの を書いてくださいました。これを、コーディネーターを通じて提供病院の先生方にも見 ていただけませんかということで、私たちは見てもらいました。これを院内コーディネ ーター会議の中で発表してきました。次のスライドをお願いします。  このようなことをしてきたときに、院内コーディネーター協議の効果として私は三つ を挙げます。一つは、院内コーディネーターの役割が現実的に明確になったということ です。先ほど、現場で言わないとわからないとおっしゃいました。これはシミュレーシ ョンができます。今度当たったときに、自分たちはどうするかというようなことをして、 実際に院内コーディネーターさんが稼働してくださいます。次のスライドをお願いしま す。  そのために、2番目として、院内コーディネーターが主治医へ的確に対応してくださ るようになりました。ここへ三つ挙げたのは実例です。  若い主治医の先生が、この人は年齢が72歳だから提供は無理でしょうと言われたので すが、ところが院内コーディネーターが、70歳前後でも腎機能に問題がなければ大丈夫 ですということを言って、提供になりました。  また、ある若い主治医の先生が、現在のCr値が6だから、提供してもだめでしょう ということを言われたのですが、現在の値よりも、入院したときのCr値が正常かどう かが重要で、7.0以上のCr値で摘出して生着した例もありますということを言って、 提供になりました。  また、主治医の先生が、丸1日無尿だからもうだめでしょう、提供は無理だからオプ ション提示をしなくてもいいでしょうと言われたのですが、院内コーディネーターが、 24時間無尿でも提供した事例は少なくありません、48時間無尿で生着した例の紹介もあ りましたと言ってくれて、提供になりました。  これらは実際に提供になっている事例です。ごらんいただくとおわかりいただけるよ うに、すべて厳しいマージナルドナーと言えますが、こういう状況でも我々はやってい くという熱意を持っていなくてはいけないと思います。次のスライドをお願いします。  これは三つの中で一番大きなところですが、主治医の先生、特に脳外科の先生のオプ ション提示を行うという意識が変わってきました。いつも脳外科の先生が本音として言 われていた、移植医やコーディネーターが提供のお願いに来るけれども、我々の患者さ んにやっているわけではないでしょう、ほかの人の役に立つと言われてもモチベーショ ンがないといったことがだんだんわかってきました。  ところが最近では、このように、もう手だてがない、蘇生不能といったときに、グリ ーフケア、残っている家族の悲しみをいやす方法、あるいは、もしかしたら患者さん自 身が、リビング・ウイル、提供したいということがあったかもしれないということで、 自分たちの眼前の患者さんのために行う行為であるということをわかってきてくださっ たといいますか、向こうからそのようにおっしゃってくださって、私たちが学びました。 次のスライドをお願いします。  2002年に出たドナーアクションプログラム、大島班の福岡版に対して、去年の段階で こうなりました。  移植医が積極的に参加して、確固たる協力関係ができてきました。そして、ネットワ ークコーディネーターと県コーディネーターの役割を明確にして、ポテンシャルドナー が把握できるようになりました。  院内コーディネーターは、確かにパラメディカルにちゃんと依頼することができるよ うになりました。  そして院内コーディネーター連絡協議会は、具体的に理解してもらって、実績が上が っていきました。  それから、県知事名の委嘱状が発行できました。  それから、実際に疎通ができるようになり、院内コーディネーターから各病院に的確 に指示をサポートして、県コーディネーターへ連絡してくださいました。  さらに、提供病院の個々の先生方に、社会に大きな貢献をしているという言葉をいた だけるようになりまして、そうすると、あとは移植の最終結果をよくしてフィードバッ クしてあげれば、増えてくるだろうということになりました。次のスライドをお願いし ます。  これは実際の実績のスライドです。最初は6名で院内コーディネーター協議会を始め ましたが、青で書いたようにだんだんと増えてきて、このようになっています。  また、主治医の先生がオプション提示をしてくださった数が黄色です。  その結果、実際の提供につながった数が赤です。  今年は半期までに7件がありまして、恐らく10例は超えると思いますが、これくらい まで増えてきました。次のスライドをお願いします。  さらに、院内コーディネーターの先生は、脳外科の先生たちに対して我々が何かして あげられることはないかと思って、論文にしてもらう、学会で発表してもらう、そして、 移植も通じた提供事例というもののデータをあげますから、業績にしていただけません かというふうに言っていきますと、出てきました。  これは病床が180床ある病院です。そこで、「院内移植コーディネーターの役割 〜 心停止後の献腎提供の症例を通して〜」ということで紹介がありまして、院長先生も、 自分の病院を宣伝してこい、こういうことをやっていると言えばいいということで後押 ししてくださって、旅費も出るという状況になります。次のスライドをお願いします。  さらに、これは福岡市内の病院ですが、院内意識調査(HAS)についての検証をす るということで、発表論文までになってきました。次のスライドをお願いします。  これは2004年3月と2004年の12月に、9カ月を置いて病院の意識調査をされて、そ の結果、この救急病院がどういうふうに変わったかということを、お医者さん、看護師 さん87名を対象にしてまとめられました。次のスライドをお願いします。  その結果です。臓器提供に賛成ですかという質問には、3月のときも12月のときも変 わりません。  あなたが死んだ後に臓器提供をしますかという質問も、3月と12月で変わりません。  個人の意識はこうだということがわかります。次のスライドをお願いします。  次は、当院は移植施設ですかという質問です。実は、提供できる施設ですけれども、 移植をする施設ではありません。そのことについて3月に正解していた人は70%です が、12月は83%に増えています。  そして、当院は脳死下臓器提供ができる4類型病院ですかという質問ですが、これは 言葉自体が難しいです。4類型病院というのは何のことかということになると思います。 3月の時点で正解した人は46%しかいませんでしたが、9カ月後には95%に増えていま す。  そうすると、院内で、少なくとも救急に関与する部署の人たちの意識がこのように上 がってきて、自分たちがどういう立場にいるのか、自分たちの実情はどうなのかという ことをわかってもらうと提供につながっていきます。  個人の考え方はさほど変わらなくても、これは増えていきます。次のスライドをお願 いします。  さらに、実際に二つの病院で、ある期間、MRRのカルテを全部とらせていただきま して、入院された救急患者さんたちの年齢分布はどうだったのか、入院時の診断はどう だったのか、そして各段階で臓器提供へつながったかどうかということを調べさせても らったのですが、どちらの病院も、このように高齢の人が結構多く、65歳以下の人は30 人しかいませんでした。しかも、死因は脳血管障害で厳しい。  そして全症例の中から、年齢、医学的に適応があるか、呼吸器の使用はどうかという ふうに絞っていったら、家族へのオプション提示ができたのは1人だけで、提供はゼロ でした。  しかし、こういう過程に協力してもらえるようになりますと、この結果もまた論文に なりますし、増えていくということになっていくわけです。  このような形で、提供病院の方々へのフィードバックということができるようになっ て、ふえています。次のスライドをお願いします。  最後のスライドです。日本の現状においては、心停止下の献腎提供というのは、脳死 下の多臓器提供と異なります。したがって、システムもプロセスも困難ですが、今まで に言葉で出てきている、ゲリラ的にやるということ、ターゲットを絞るということ、脳 外科の先生から信頼を得るように努力するといったことが必ず必要になります。  そして、たまたま出てきた病院が4類型病院であって、ドナーがたまたまドナーカー ドを持っていれば、それは多機能提供につながるという考え方で、こちらを増やすとい うふうに力を注いでいます。  さらにドナーアクションプログラムの福岡版、それから今、紹介しました2カ月ごと の院内コーディネーター協議会によって院内コーディネーターの役割が明確になり、主 治医の負担が減ったということ。  提供病院の主治医と院内コーディネーターの連携が非常にスムーズになって、ああい うポテンシャルドナーというものがすくい上げられるようになったこと。  それから主治医のオプション提示の意味ということで、これも自分たちの患者さんの ためにするサービスであり、医療であるというふうに思ってもらえるようになったこと。  HASとMMRの解析によって病院全体の意識が高まったということ。  これらのことが献腎提供増加につながっていきまして、我々も続けていきたいと思っ ています。  以上です。 ○大島班長 ありがとうございました。御質問は後で受けるということで、続いて秋山 さんお願いします。 ○秋山班員 それでは新潟の紹介をします。新潟は、ドナーアクション、あるいは病院 開発ということでいろいろとしてきておりますが、結論から先に申し上げますと、移植 医療と書いてありますけれども、ポリシーとしては、そのほとんどが社会活動であると いうことです。  先ほどの神野先生のお話にもありましたけれども、なるほど移植医療はそんなにいい ものか、そんなにいいものだったら、おれができる範囲で協力しようではないかという 気持ちになってもらわないと、いろいろなシステムがあっても難しいのではないかとい うことが基本的なベースであります。次のスライドをお願いします。  次のスライドをお願いします。  これは新潟県の、この活動をする前までの動きであります。緑色は新潟県から出した 腎臓ですが、黄色は東京からもらった腎臓で、東京から助けられていたと言っても過言 ではない県であったということです。次のスライドをお願いします。  次のスライドをお願いします。  そして、いわゆる研究班ないしは日本移植学会で通信簿をつけたところ、新潟は1で、 献腎の行うためのシステムがない、家族からの申し出のみで対応しているということで したが、現在では3、一定の手法のもとに安定して献腎が得られるというところに上が ってきました。そのことについてこれから申し上げたいと思います。次のスライドをお 願いします。  新潟県の献腎増のスタンスですが、臓器提供について提供施設に自主的・主体的な取 り組みを行ってもらうこと、そういうことができる地域を目指すということが新潟県の スローガンであります。  取り組みの問題としては、病院開発、ドナーアクションプログラムといった手法を定 着させることです。そして、もっとも大事なこととして、7者一体の取り組みと書いて ありますが、臓器提供、あるいは臓器移植にかかわる地域に必要なインフラのすべてが 参加して物事をやらないといけないということです。  例えば、先ほどもマスコミのプラスマイナスといったことについていろいろなお話が ありましたが、新潟には、地域紙も含めまして18のマスコミがございます。私は月に一 度、マスコミとの懇談会、簡単に言えば飲み会ですが、担当者と毎月やっております。 18社のうち、必ず1社には臓器移植の話を取り上げてもらっています。そういうことで、 新潟の場合はプラスの問題としてつき合わせていただいているということです。  そして医療機関整備にばかり注目するのではなく、やはり県民がどうであるかという ことも同時に見ていかなくてはいけないということです。  総じて言えば、提供者とその家族、あるいはレシピエント、この人たち双方に意味を 持たせる環境づくり、具体的には、提供者、あるいはその家族にとっては、死を迎えよ うとしている人たちへの心理的ケアはどうであるか。あるいは、レシピエントはせっか く元気になったわけですから、どんどん社会参加をしていっていただかなくてはいけな い。そういう地域をつくっていくということが大切であると思います。次のスライドを お願いします。  次のスライドをお願いします。  これは御覧になったことがあるかと思いますが、臓器提供の承諾書であります。私は、 だれあてにこの承諾書を書いているのかというところにいつも注目しています。それは 各病院長です。何が言いたいかといいますと、これは、私は臓器提供をしたいので、何 々病院の何々病院長さん、その願いを叶えてくださいという書類です。その病院は、そ の意味を受けて、移植医療、あるいは提供の分野で不得意な部分について、初めて僕ら が一緒に3日間、あるいは10日間でもいいですが、同じ立場として一緒に仕事をできる ような環境が理想の環境でありまして、これを、どういうふうに社会、つまり新潟の地 域で組み立てていくかということもポイントに挙げておきたいと思います。次のスライ ドをお願いします。  そういったことで、いろいろと経過がありました。新潟は、インフラから何からゼロ の地域でありまして、これは99年からやりました。そして、これは我が国初ですが、県 の単独事業として、院内コーディネーター事業に予算を獲得できたということです。  そして、2002年からはベルギーの手法を用いて、新潟版をつくり上げているというこ とであります。  現在は、先ほどの神野先生への質問の中でも僕が言いましたが、最初は5病院で、そ の中でも3病院しかおつき合いがなかったのですが、現在、兵糧攻めで、勝手に、13病 院49名に県知事からの認定があるというところまで来ております。次のスライドをお願 いします。  これは何も細かいことを見てもらいたいわけではなく、新潟県が県の公的資料として 出している新潟県移植推進組織ということで、これは県全体の考え方です。  何が言いたいかというと、国、県、ネットワーク、あるいは各病院、患者、すべてが 財団法人臓器移植推進財団に集中して相互関係をつくっているということです。ですか ら、ここが情報発信、情報を受ける基地であるということを、行政とともにつくってお ります。ですから、現場的なことと社会のことを同時にさせていただけるというところ でございます。次のスライドをお願いします。  そういった活動の中での結論ですが、病院開発をやりました。そして、先ほども言い ましたように、広く一般に、公平、公正に整備をしていましても、なかなかそんなこと を取り上げてくれはしません。  そこでターゲットを絞りました。そして、その絞る最中に、ドナーアクションプログ ラムというものに出会いまして、その手法も同時に入れていきました。  そうしますと、どんどん情報が上がってくるわけでありまして、結果として、年間3 例から5例の献腎が、現在はルーチンでいただけているというところまで来ました。次 のスライドをお願いします。  次のスライドをお願いします。  病院開発のポイントは、国がカードに意思を書けと言ったけれども、それを拾うのは 各医師の裁量に任せていたわけです。ただでさえ忙しかったり、興味がなかったりとい う人がやるわけがありません。それをやっていただくために、うちの病院ではこうして いますということで、その人をサポートしながら、病院全体で取り組む必要があるだろ うというのが病院開発の考え方です。次のスライドをお願いします。  そしてドナーアクションですが、それを先進的に鑑みまして、先ほども御説明がござ いましたが、介護保険のケアプランと同じように、うちの病院ではどうしたらいいかと いうことをつくってもらいまして、そのポイントがこの五つです。  ドナーの識別、ドナー照会、家族ケア、ドナー管理、臓器摘出とありますけれども、 ドナー照会や家族ケアが重要であろうと。また、そのアセスメントとしては、患者の個 票や、働いている病院の職員さんはどういうふうな意識でいらっしゃるのかということ を把握した上でやっていこうということであります。次のスライドをお願いします。  職員の意識調査でもっとも僕が驚いたのは、あなたは日本国民の何%が移植医療を認 めていると思いますかという問いかけについて、新潟県では、総計を見ていただくと、 医療者の約42、43%が、国民の25%くらいしか、いいとは思っていないだろうと思って います。つまり、極めて遠い世界の話というふうに認識している職員さんが多い。そこ で移植医療がいいものだと言っても、なかなかうまく話が入らないということがわかり ました。  でも、平成12年に総務省が世論調査をやったところでは、国民の68%が尊重してい るわけでありまして、ここで医療者と一般国民の意識の乖離が相当にあるということに 気がついたわけです。次のスライドをお願いします。  もう一つは、先ほど杉谷先生も出しておられましたが、新潟県の個票でありまして、 比較的な表は出しておりませんが、死亡者の方が216人いらっしゃって、そのうちポテ ンシャルドナーは73、医学的適応外は143というところだけを見ていただきたいと思い ます。  何が言いたいかというと、救急の現場で、ポテンシャルドナーの選別が救急医の手で ある程度できるようになってきたということです。また、救急医が忙しいときには院内 コーディネーターがサポートしながら選別ができ始めているということです。  この赤線が院内のシステムです。これで、現場の先生、看護師さんをサポートしてい るということになるわけです。  結果として、献腎、献眼ということになっておりまして、大事なことは、この赤線が どうであるかということを地域で展開しなくてはいけないということです。次のスライ ドをお願いします。  今の話の写真ですが、私は週1回、月1回、必ず救命等々の死亡症例検討会で、カル テを一緒にめくりながら個票をつくりました。  先生、これは何でオプションができなかったの、いや、家族が相当悲嘆にくれていて、 というようなことをやっているわけでありまして、家族の心情を鑑みて治療を行ってい るかということを総合的にやっております。今ではばか話ができる中でやっております。  そして行政とは、地域のイベント、そして私はラジオ番組等をさせていただいていま すので、こういうこともやっています。次のスライドをお願いします。  そして、透析の苦悩をわかってもらうために、あるテレビ局で、腎不全の苦悩につい ての特集をやっていただくということもやっております。次のスライドをお願いします。  そして、有効な地域啓発ということで、いろいろなフォーラムなどをやりますが、本 当に移植医療の尊さが県民に伝わっているのかということも考えなくてはいけないと思 っています。  参加直後は好意的に見えているのですが、やはり具体的実感まで、本当に県民の方な いしは医療機関の方が感じていらっしゃるかということが問題だと思います。次をお願 いします。  具体的に実感を得ていくためにはどうしたらいいか。次をお願いします。  例えば、心臓、肝臓、肺等々の移植が終わった人たちと、一般の県民で、一緒にマラ ソン大会を開きました。300万くらいの赤字で、大変な思いをして、今でも首を絞めら れていますが、これは大成功です。次のスライドをお願いします。  次のスライドをお願いします。  そういった中で、もう一つのポイントとしては家族ケアですが、やはり移植医療に関 係なく、救急車がやってきたときに、さっきまで元気だった家族が死ぬか生きるかとい うことをやっていると、頭の中が真っ白になっている家族が当然いるわけでありまして、 サポートするのはやはり医療者です。次のスライドをお願いします。  そして家族が、頭が真っ白になった状態から、精神医学では自己を取り戻すといいま すが、正常な心に持っていくためには、やはり医療者のサポートが必要で、この体系的 なかかわりで、オプション提示、ないしは心のケア、それで私どもは支えの援助、その 中に移植医療の希望があれば、それを考えることができると言ってあげるだけで、違う 目的を見出していただける。  こういう考え方のもとに、私は今、現場で、ロールプレーとか、月1回ないしは2カ 月に1回、救急の先生、あるいは看護師さんと勉強会をしております。次をお願いしま す。  その中で、一番は喪の仕事と書いてありますが、死別というところについては、予後 不良診断をしたときと思ってください。そこから衝撃、否認、怒り、受容といった心理 的なプロセスの中で、おたくの救急施設は、こういうときにはどういったプランニング で患者さんの家族とつき合いますかということを段階的に勉強していただいているわけ です。次のスライドをお願いします。  そういった勉強会の中の一つの病院を御紹介して終わります。入院時に、どんなに重 症な方であろうが、予後が期待できようが、こういうパウチを供覧することでカードの 確認をして、それはちゃんと記録に残しましょうということで、カルテに書くというこ とです。次のスライドをお願いします。  次のスライドをお願いします。  実際にどういうふうにやるか。やはり信頼関係を結ぶには、救急車が来たときに、こ んにちはと言うところから始まるわけですが、プロがこんにちはと言うのですから、循 環動態等々の患者さんの状況を把握しながら言うということ。あるいは重篤な患者さん を目の前にしたときに、安心感を与えられる医療にはどういうことがあるかといったこ とをやっていただいています。次のスライドをお願いします。  仮にカードが確認された場合には、関係部署と共有することになっています。次のス ライドをお願いします。  そして実際に臓器提供の承諾があれば、御覧のように、信頼と安心感が与えられるよ うな医療展開の中で現場は進んでいくということです。次のスライドをお願いします。  そして家族支援については、支援の受容、あるいは臓器提供へのねぎらいということ も、病院の職員さんの立場でする必要があるだろうということです。  そして、臓器提供後の社会的な生活も、病院さんのソーシャルワーカーがサポートす るとか、そのようにプログラミングされております。次のスライドをお願いします。  最後に、お見送りなどいろいろとありますが、この病院では、提供していただいた臓 器に関する情報を、私以外に、病院さんの担当者ナースから必ず電話を入れています。 これも安心感を与える援助だということでございます。次のスライドをお願いします。  以上でございます。10分間という規定の中で話すのは大変困難だったのですが、何と かおさまりました。 ○大島班長 15分です。どうもありがとうございました。残り時間が少なくなりました けれども、杉谷先生、秋山さんのお話について、御質問、御意見がございましたらいた だきたいと思います。 ○田中班員 杉谷先生並びに秋山さん、大変貴重な講演をありがとうございました。今、 お話を聞きながら、最初の資料の5ページのところを見ていましたら、2002年から2005 年の間にドナー数が増加している県というのは、北海道、兵庫、福岡ということで、恐 らくこの3県は、何かしら急速にドナーアクションプランというものを取り入れて増え てきたのではないかと思います。  先ほどの神野先生のお話にもありましたように、ゲリラ的にやるということが非常に 重要で、兵庫ではやはり1人の先生が大変強力に推進されていますし、北海道でも、市 立病院のカノウ先生が、脳外科でありながら、臓器提供に力を入れて、かなりの御理解 を進めていると聞いております。  やはりこういったゲリラ的なことを、今後どのように広めていくかということが恐ら くきょうの最終的なディスカッションになると思いますが、システマチックなところは、 前半の議論であったように、幾つか押さえておかなくてはいけないところがあると思い ますけれども、最後に秋山先生が言われたアクションプランは、全国に広めることがで きるのでしょうか。  例えば、新潟には秋山さんがいるからこういうアクションプランができる、あるいは 福岡にはイワタさんがいるということですが、イワタさんや秋山さんをどんどん増やし ていかない限り、増殖しない限りは、各県に広がっていかないと思います。こういうこ とを具体的に考えていかなくてはいけないと思います。  それと、アクションプランをどれだけユニバーサルに持っていけるか。例えば秋山さ んが実行しなくても、ほかの県でアクションプランをどうやれるか。例えば移植医に対 する普及啓発にどれだけ取り組んでいくのか、あるいは病院職員に対する啓発や、院内 コーディネーターの設置が全部の県でできるのか。また、家族支援のロールプレーを含 めたことをだれがどうやるのかということを考えていかないと、次のステップ、全国的 な普及にならないと思いますが、このあたりはいかがでしょうか。 ○大島班長 杉谷先生、秋山さんから何か御意見はありますか。 ○杉谷参考人 田中先生の御指摘のとおりだと思います。ゲリラ的にやっていくという 御意見のとおりですが、その必要条件というのは、熱心な移植医がいるということと、 もう一つは、秋山さん、岩田さんのようなコーディネーターがいるということが絶対条 件になります。それをいかにして育てるかと言われると、即座には答えを持ち合わせて いませんが、そのことは間違いないと思います。  また、神野先生がおっしゃったように、脳外科の先生たちもやはり変わっていかなく てはいけません。しかし、札幌に行かれたカノウ先生や、それから我々のところで御紹 介したように、臓器提供に賛成してくださる脳外科の先生が増えてきますと、その方た ちがその病院の若い人たちを教育してくださいます。  その若い先生たちが、またどこかへ行かれたときに、実は思いも寄らぬところから増 えてきて、そういう病院が福岡県内にも今、大分出てきていますので、やはり現場で信 頼してもらえる、味方になってもらえる脳外科の先生を増やすということが必然かと思 います。 ○大島班長 田中先生がおっしゃったことは全くそのとおりで、ドナーアクションプロ グラムに至るまでには随分長いプロセスがありまして、最初は病院開発プログラムとい うことで、ドナーアクションもどきのようなことから始まりました。  それは何かというと、臓器提供に至るキーは臓器提供の意思確認とオプション提示に ある、そこがすべてである。そして、ドネーションが行われるのは病院だから、ドネー ションというものをどう理解していただくのかということも含めて、病院開発をどうす るのかというような考え方から、厚生労働省の科学研究のプログラムが始まりました。  その過程の中で、病院開発をやるためには、院内コーディネーターというものがどう しても必要だということで、静岡でそういった試みがあって、それとドッキングして、 具体的にそういう作業がやれる人間をどう養成するのかということは非常に大きな問題 だということをやっているうちに、やっている手法が、もどきではあったのですが、ド ナーアクションプログラムに非常によく似ているということで、ドナーアクションプロ グラムというものを改めて一度検証してみようではないかということで検証してみた ら、問題の解決の手法を一つ一つのプロセスに合わせて、きちんと分けて、問題が一体 どこにあるのかということや、その問題を見つけたらどういうふうに次の対策を考えて いったらいいのかというようなことが、極めてサイエンティフィックにといいますか、 市場で言えばマーケティングといいますか、そういった物の考え方が非常にきちんとさ れていて、今まで自分たちがやってきたようなことの具体的なわかりやすい形が一気に 見えてきました。  ところが、ドナーアクションプログラムを進めようと思うと、その権利はヨーロッパ にあるものですから、簡単な話ではないということで、厚生労働省にお願いをして、科 学研究費の一部を使わせていただいて、その権利を使わせてもらうということで、正式 にドナーアクションプログラムを展開することができるようになりました。  その結果として、最初は手挙げ方式で、こういったプログラムをやるということで興 味を示してくれた県が幾つかあって、新潟などは最初の病院開発から入っていたのです が、杉谷先生のところは、それはおもしろそうだということで、手挙げ方式で入っても らって、先ほどのような形になってきたということです。  これはまだ研究段階で、今は私はこの研究会の班長から外れていますが、日本の実情 から見たときに、この手法というのは非常にいいというか、効果があるというか、ある いはほかにはちょっと見当たらないというようなやり方で、こういうものを日本の中で きちんと正式に定着させていく方向で考えていこうということを、例えばこの委員会の 提言としてまとめることができれば、今度は、先生がおっしゃったように、このプログ ラムをどう進めていくのか、どこが責任を持って、どういう形で展開してくのかという ようなことをきちんとしていかないと、それこそ、これがあるということを言うだけで、 散発的に終わってしまう話です。だから、そのあたりのところを、次の展開として、こ こで御議論いただくことになるかというふうに考えています。  ほかに何かございますか。 ○神野参考人 今、総合的な手法として、さっきから繰り返すように、片方で正規軍が 出ていく闘いと、片方でゲリラが出ていく闘いと二つがあって、上にはEBMの戦略が あって、下には1杯飲みながらやる戦略があるという四つのフェーズごとのどこに基準 を置いていくかということを決めるのが恐らく班長さんのお仕事で、しかも今はどのフ ェーズなのかと。  今のお話を聞いていると、まず、最初の半年に、その4極のどこに行くかというよう なことを示していただければ、皆さんが働きやすくなるのではないかという感じがして おりました。  ついでに申し上げますが、いわゆるエモーショナルの部分では、先ほどから1杯飲む というようなお話がありまして、それも非常に大事ですが、私個人の経験では、藤田先 生に、悪い患者さんを診てくれと言われて、病棟に診にいきました。そうしたら、おし っこが全然出ていなくて、からからの管がありました。それが移植した後には、本当に きれいなおしっこが流れていまして、感動しました。  ですから、いかに提供者側に立つ医者に感動を与えるかということは、移植医側に立 たれる方のお役目ではないかと思います。これが最初の出発点で、余り論理的にいって もいけないというふうに僕などは感じます。  また、今の京大の先生も非常に情熱的で、先ほどおっしゃったように、こういう方を いかに生かすかということだと思います。  しょせんは情熱だけです。やる気があるかどうか。それが見えますと、提供者側の医 者はついていきます。最近の若い研修医なども、本当にたらたらしているとお思いでし ょうけれども、こんなことを言っていいのかどうかはわかりませんが、例えば東大の幕 内教授のところには150何人かの研修医が今、応募しているでしょう。やり方はすごい です。朝の6時から回診、毎週日曜日の朝7時から症例検討会をやります。これは全員 集合です。今の普通の若い人たちが大嫌いなやり方です。だけど、そういうところに人 が集まる。  それから、脳外科の中でも、世界一の脳外科医は、週1回、寝ない日をつくっていま す。僕はどんなに短くても毎日寝るものだと思っていたけれども、やはり1週間に1回、 寝ない日をつくりながら、何十年やっている人がいます。そういうところには、世界中 から若い人が集まるでしょう。  そういう情熱は、この話でも同じなのではないかと常々思っています。 ○大島班長 ありがとうございます。片方でエビデンス、サイエンスということが最近 の流行ですけれども、その軸と、縦軸に、人の感性というか、情熱といいますか、その 縦軸と横軸の中のどの座標軸に現在の状況があるのかという視点をきちんとつかまえて おくというお話かと思います。  ほかに何かございますか。 ○秋山班員 時間がないので1点だけ申し上げます。今の神野先生のお話もそうですが、 地域の提供医に感動を与えるにはどうしたらいいのかということも、僕は駆け出しのこ ろからやっています。  最大の啓発としては、一例があることですが、やはりドナーの御家族がお帰りになる ときに、治療の皆さんありがとう、提供の皆さんありがとうという二つのありがとうを 言わせるというようなことが、もっとも基本的に大切なことだと思っております。  それにはどうしたらいいかというプロセスの中で、救急、あるいは脳外科の先生たち とおつき合いをしています。  そこに、先ほどの、おしっこがきれいで感動したというような意味合い、ですからコ ーディネーターからすると、提供の先生方にも、御家族にも、両方に感動を与えるプロ グラムを現場で組むという技術も必要だと思っています。  そういったどぶ板も含めながら勧めていって、よさをわかってもらって、そしてシス テマチックなものに当てはめた場合に、そんなにいいものなら、おれもできる範囲で協 力しようと、これが基本中の基本だと思って歩かせていただいていますし、多分そうい うことだから僕には若い人が集まってくれるのかとも思いますが、僕の給料も払うのが 大変なところでございますから、集まらないというのが現状かと思っています。 ○田中班員 私が先ほどから言っていることは、神野先生がおっしゃっていることと同 じことを、少し切り口を変えて言っているのだと思いますが、やはり対象を幾つかに分 けてアプローチをするということが非常に大事ですし、その中心にあるのが、脳外科や 救急といった提供側にある医師を、どう重点的に開発していくかというところだと思い ます。  先ほどから何度も言いますが、5ページの表が非常に興味深くて、赤字になっている ところ、人口100万人当たりの提供数が多くなっているところが確かにあるのですが、 逆に数で見ていくと、10以上出ているところは、やはり都市部が多いです。都市部が多 いところというのは、逆に黄色になっています。すなわち人口比当たりでは、提供の数 が少ない。  神野先生と同じというのはそこでして、こういったところは、やはり仕事が非常に忙 しい地域であり、そういった人たちに対してどうアプローチをするかということを考え ることが戦略的に非常に大事だと思います。  数の多い地域で赤くなっているのは、北海道と福岡、兵庫で、これがまさにドナーア クションがうまくいっているところだと思います。  ですから、都市の規模のサイズと、そこに投下されているコーディネーターの数とい うものをきちんと分析して、しかもこの地域でどうやって救急医や脳外科医に協力をし てもらえるような体制をつくるかということを考えていくことがすごく大事だと思いま す。  ドナーアクションの効果というのは、私はこの数年で目の前で見て十分にわかってお りますし、非常に重要だと思いますが、ドナーアクションの手法が、今、適用されてい るところが、どうしても人口で見ると、大都市であっても、福岡や北海道が非常に効果 を示してきているのですが、東京、もっと言えば大阪はどうなのだろうかというと、大 阪は、今はむしろ少し冷え込んできている傾向があります。  こういったところの分析をしつつ、ドナーアクションを大都市部にどのように応用し ていくかという戦略を考えた方いいのではないかと思います。 ○大島班長 ありがとうございました。ほかにはよろしいですか。  それでは時間も過ぎているようですので、第1回普及啓発に関する作業班を終わりた いと思います。神野先生、杉谷さん、きょうはどうもありがとうございました。  最後に、室長の方から、今後の予定などがありましたらお願いいたします。 ○片岡室長 本日はお忙しい中をありがとうございました。少し時間が足りなかったと ころもありますが、また議論を深めていただければと思います。  次回におきましても、いろいろな新しい取り組みといいますか、いろいろと取り組ん でいらっしゃる方の御意見等をお聞きしたいと思っております。  移植学会の取り組み、あるいは患者団体からの御意見などをヒアリングさせていただ きたいと思っております。また、こういう方からのご意見等が聞きたいということがあ れば、またこちらの方で調整させていただきたいと思いますので、御連絡をいただけれ ばと思います。  日程につきましては、改めて調整をさせていただいた上で御連絡いたしますので、お 忙しいとは思いますけれども、御協力のほどよろしくお願いいたします。 ○大島班長 今日は本当にありがとうございました。それではこれで終了いたします。 了 照会先:健康局疾病対策課臓器移植対策室 担当 :矢野(内線2366)