06/05/29 第13回医師の需給に関する検討会議事録 第13回医師の需給に関する検討会議事録 日時 平成18年5月29日(月)                15:00〜                       場所 厚生労働省専用第15会議室 ○矢崎座長 定刻になりましたので、「第13回医師需給に関する検討会」をこれから 開かせていただきます。各委員の皆様方にはご多忙のところご出席いただきまして、あ りがとうございます。  初めに委員の交代がありましたので、事務局から紹介してください。 ○宮本補佐 まず、委員の交代がありましたので、紹介させていただきます。社団法人 日本医師会常任理事内田健夫委員でございます。 ○内田委員 内田です。よろしくお願いいたします。 ○矢崎座長 それでは、事務局から本日の委員の出欠状況をお願いします。 ○宮本補佐 本日ですが、池田委員、泉委員、江上委員、川崎委員、山本委員が、ご都 合により欠席とのご連絡をいただいております。 ○矢崎座長 まだ水田委員がいらっしゃいませんが、時間になりますので始めさせてい ただきたいと思います。まず、事務局から資料の確認をお願いします。 ○宮本補佐 本日は資料1〜3までお配りしています。資料1が「各診療科別の医師需 給について」、資料2が「臨床研修に関する調査」、資料3が「長谷川委員からの提出 資料」ということです。ご確認をお願いいたします。 ○矢崎座長 それでは、資料1の「各診療科別の医師需給について」、説明をお願いし ます。 ○宮本補佐 資料1の1頁目から順次紹介させていただきます。現在国会において健康 保険法及び医療法等に関する改正の審議を行っているところです。その審議の議論の中 で、医師の確保の問題がずいぶんと取り上げられている状況です。その中で初期におい ては、全体の医師数の確保の状況がどのようであるかということが議論になっていたと ころですが、議論が進むにしたがいまして、各診療科別、また診療所と病院における医 師の確保、そういった各論というか細かい点について、議論が起こってきました。  1頁目にあるのは、4月28日の民主党柚木議員より質問をいただいた際の質疑です が、議員からは「小児、産科、麻酔科といったところでもかまわないので、診療科ごと の医師の必要性について求めるべきではないか」という質問に対して、川崎大臣より「そ ういった検討というのが出せるのかどうか、なかなか難しい点ではあるけれども、これ は一度医師需給検討会において検討させる」という回答をしています。  2頁目、同じく民主党の議員の山井議員から5月10日に質問をいただきましたのは、 同じく小児科、産科などの診療科別の必要数ということと、小児科医の増幅傾向という ような現状があります。そういったものを踏まえて、開業医と勤務医に分けて、それぞ れ必要数と不足数を求めるべきではないのかというご質問をいただきまして、これにつ いても川崎大臣より「医師需給の検討会において、そういったことが可能なのかどうか 検討させる」という回答をしているところです。したがいまして、皆様方にはこういっ た各診療科別、さらに診療所と病院との間の比率といった関係において、議論ができる かどうかというところを、ご検討いただきたいということです。その後ろにあるのは小 児科と産科ですが、代表的な統計資料を付けています。  3枚目にあるのは、小児科医に関する動向です。小児科医師数については棒グラフで ありますように、平成6年から16年にかけて、2年ごとの調査の中で順調に増加して いる。また、小児人口も少子化で減少傾向は続いていますので、その中で小児人口当た りの医師数を見ていきますと、同じく増加の傾向が見られるといった図になっています。  4枚目は、産婦人科医師数と出生1,000人当たり産婦人科医師数の推移です。先ほ どの小児科と意味としては同様の解析を行っていますが、こちらは産婦人科の医師数に ついては、ご案内のとおり減少の傾向がありまして、徐々に低下の傾向が棒グラフで見 てとれます。一方で出生数のほうは少子化の影響により減少していますので、出生 1,000人当たりを見ていくと、ほぼ横ばいの形に推移しているところです。  5頁は、いま2つ見ていただいたものを総括している表になるかと思います。真ん中 の棒グラフが医師数の推移で、こちらのほうは年々増加している傾向という中で、上の 折線グラフ、小児科については増加をしている。一方で、産婦人科については低下して いる、こういったものを一覧で見ている表になっています。  6頁の各診療科の人数とそれを男性、女性で分けた数になっています。小児科につい ては全体で31.2%が女性である。産婦人科についても21.8%が女性であるといった状 況です。資料としては以上です。 ○矢崎座長 ただいまの説明で、何かご質問はございますか。 ○水田委員 遅れましてすみません。伺いたいのは産科の件ですが、これは純粋に産科 のみでしょうか?それとも婦人科の医師数も入っているのでしょうか?と言いますのは 現状では「がん疾患」などを扱う婦人科の志望者は多いと聞いておりますが、そのよう な方々は産科にはタッチしませんので、現実には産科が不足していても、産婦人科でく くってしまいますと現れてきません。 ○宮本補佐 診療科の分類の中では産婦人科、産科、婦人科と3つの診療科が関連する ものとして、統計が取られています。ただ、その中で圧倒的に多くの方は産婦人科とし て回答されますので、そこの中心の数を取っているということになります。  ご指摘のとおり、その中で産科だけ取っておられる方、婦人科だけ取っておられる方 が混在している可能性はありますが、ちょっとその点は統計上はなかなか分からないで す。 ○小山田委員 産科も小児科もそうですが、診療所と病院と、施設数と人の数、医師数 が出ないと、これだけからするとこれはいいのではないかという形になるのですが、実 は小児、産科のワーキンググループのときは、いま私が言いましたようなデータを両方 の学会から出してあるのです。あれを使わないと、非常に誤解されるのではないかとい う感じがするのですが。  小児科は確かに数は増えているのですが、病院の勤務医は減っている。診療科として もなくなっている所が非常に多いというような数で、産科についても同じことが言えま す。その数字を出さないと、いま小児科、産科が何が問題なのかということが出ないの だろうと思います。是非あれを、2枚くらいで、あのときのデータでいいのですが、出 していただきたいと思います。この場はよろしいのですが、公の場で。 ○矢崎座長 いまの件について、何かありますか。 ○宮本補佐 全体の動向からしますと小児科については、まず診療所と病院の関係です が、それぞれの人数は、それぞれ増加していたかと存じます。ただ、平成14年から16 年にかけて、小児科については勤務医の方については横ばいというか、若干低下をして いる動向です。これは小児科だけに限らず、全体の診療科において一般的な動向として ありまして、1つは平成16年に始まった臨床研修の影響により、専門診療科に進む人 の数が一旦止まった形になっていますので、そういった影響が見えると。少なくともそ れ以前については、順調に病院についても増加していたというように記憶しています。 産婦人科については全体に減少している中で、それぞれ減少の傾向があったというよう に存じています。 ○吉村委員 2週間ほど前に全国医学部長病院長会議の総会があったのですが、そのと きのデータでは、少なくとも大学に関しては、制度直前の平成14年に比べて小児科が 28.1%に減っている。産婦人科は18.5%減っていると。一見、大学の医者の数は減っ ていないのではないかと言われたのですが、そのとき議論がありましたのは、昔は無給 医がたくさんいたそうです、かなり私大とか。それが今回有給の人が入ってきたという ことで、いままでの無給医もかなり人数に数え始めたので、一見減っていないようです が、実際には数は増えてるが意外に減っているのだというような意見がありまして、一 面だけの数字だけでいいとか悪いとかは、なかなか難しいと思います。 ○矢崎座長 そのほか、いかがでしょうか。特に国公立の大学が独法化してきたので、 医師数というのがより実態のある医師数になりつつあるということだと思いますが、そ のほかにはいかがでしょうか。  そうしますと、事務局から話されたものといま吉村委員から話されたデータでは相違 がありますが、これは直近の平成16年以降の話が大学で統計を。特にその時点のあれ ですか。それはおそらく直近のデータですね。 ○宮本補佐 よろしいでしょうか。各診療科の今年度の選択の状況については後ほど紹 介させていただきますが、昨年度の3月ですから今年の3月に、研修医に対して行った 調査の結果を中間報告としてまとめてありますので、そういった中である程度の方向と いうか動向を見ていただけると思います。 ○矢崎座長 そうしますと、資料2を説明していただいて、いま臨床研修をしている人 たちが直近にどういう動向をとっているかということを説明いただけるかと思いますの で、「臨床研修に関する調査」の動向についての説明を、よろしくお願いします。 ○宮本補佐 引き続きまして、資料2のほうで説明します。これは先週まとまりまして 報告させていただいた資料です。概要ですが、臨床研修制度の効果等を検証・分析する ための基礎データとして、臨床研修病院、それから臨床研修病院で研修されている研修 医に対して、調査を行ったものです。対象としてはそれぞれの病院と、1年次、2年次 の研修医すべてに対して行い、2年次生7,344名の方を対象とした調査を、この度中 間報告ということで回収途中ではありますが、まとめたものです。  調査時期は今年の3月で、4月11日時点で回収できた2,500の回答数について、 2年次生の研修修了後の進路に関する項目について、集計を行ったものです。男女比に ついてはほぼ3分の1が女性ということですので、ほぼ全体の形を代表しております。  3頁は、臨床研修修了後の進路を大きく大学と市中病院と分かれるかと存じますが、 大学で勤務・研修する方が48.6%、臨床系大学院の方は3.5%、基礎・社会系大学院 の方は0.6%ということで、およそ半分の方が大学、38.2%ということで4割の方が市 中病院で研修をされる、こういった動向でした。ただし、調査表の大学からの回収がや や少ないという偏りがありますので、こういったものを勘案しますと、もう少し大学の 割合が増加するのかなと見ています。  大学病院と臨床研修病院、それ以外の病院というように分けて見ていくと、大学病院 のほうでは大学で勤務・研修、それから大学院の方を合わせて、およそ8割の方が大学 での研修・勤務を続けるという状況でした。臨床研修病院については、大学で勤務・研 修をするという方が、合わせて3割ぐらいの方、市中病院で勤務・研修をされるという 方が6割ほどの方という状況でした。全体として見ていきますと、大学を離れた方が大 学のほうに戻る方というのは、比較的限られた割合になると。そういった中で、そうは 言っても大学の割合というのは、少なくとも半分以上はあるということですので、減少 しているという声が確かにありますが、全体としてはまだまだ大きな力を持っていると いう状況です。  4頁の臨床研修後の研修先を選択した理由を見ていきますと、複数回答として「専門 医取得につながる」というのが最も多く40.4%、続いて「優れた指導者がいる」、「現 在研修している」、「出身大学である」、こういった項目が多くの回答を占めていまし た。  大学病院と市中病院とに研修先を分けて集計しますと、市中病院の方では最も多いの は「現在研修している」ということ、「専門医取得につながる」、「優れた指導者がい る」、こういった順番で、理由が選択されております。大学病院については、「出身大 学である」というのが48.8%と最も多く、続いて「専門取得につながる」、「優れた 指導者がいる」といった順で、回答が多くなっていました。  5頁の「専門としたい診療科」ですが、この調査の時点で診療科を決めているかどう かについては、86.2%の方が診療科を決めているということでした。この方を対象にど のような診療科なのかということを尋ねていて、いちばん多いのが内科で14.4%、続 いて外科で8.5%、小児科8.4%というように続いています。産婦人科についても4.8 %という割合になっています。ここで内科の割合は、数字だけを見ると非常に少ないよ うに見えるわけですが、その下の消化器科や循環器科といった各内科の専門分野の診療 科がありますので、合わせるとおよそ3割ぐらいの方が内科系を選択されているという 状況です。比較のために、9頁に平成14年の20代の方の診療科別の割合というのを 付けていますので、こちらのほうと見比べていただくことがよろしいか思っています。  全体としては、小児科や産婦人科についても、それ以前の方の割合とあまり変わって いないという印象を受けます。研修制度の前後によって大幅に選択が変わった形跡は見 られないというのが、総括的な内容になっています。この点は、後ほどもう少しデータ を紹介します。  6頁の診療科を選んだ理由としては、「学問的に興味がある」というのがいちばん多 くて63.0%、「やりがいがある」が59.7%、「その科の対象が好き」、例えば小児科 ですと、お子さんが好きというのはそういった意味であると思っていますが47.6%で、 「いい指導医がいた」というのが27.3%というように続いています。  専門としたい診療科の変化と理由ということで、臨床研修の前後で進みたい診療科を 変えたかどうかを聞いた中で35.8%の方は、臨床研修の前に思っていた診療科を最終 的に変えたと言っています。ですから、変わっていくということが比較的一般的である のかなという結果だろうと思います。その理由としては、「研修して興味がわいた」か らというのが最も多く71.4%、「研修して大変だと思った」というのが18.4%で、比 較的限られた数になっていました。  7頁は、性別にみた場合の診療科ということで、上から女性の割合が高いものを並べ ているわけですが、リハビリ科、リウマチ科が1、2位を占めています。ただし、それ ぞれn数がリハビリ科については9、リウマチ科は4ということで限られていますが、 特徴的なのは3つ目にある産婦人科で、これについてはn数が103に対して女性の割 合が71.8%ということで、非常に高い結果となっていました。  8頁は、専門としたい診療科別にみた臨床研修修了後の進路ということで、先ほど見 ていただいた大学なのか市中病院かといった結果を、診療科ごとにみたものです。全体 の傾向としてみていきますと、眼科、皮膚科、形成外科、耳鼻科といった診療科につい ては、大学で勤務・研修する割合というのが非常に高い傾向です。  一方で産婦人科、小児科、外科といった診療科については、相対的にみて大学で勤務 ・研修する割合が低下をして、その分、市中病院で勤務・研修するという方の割合が高 くなっています。先ほどご紹介いただきました大学のほうで、特定の診療科の研修する 人数が以前より減っているというのは、こういった動向を反映しているのかなというよ うに推察しています。  9頁以降にあるのが、全体の報告書です。この中からいくつか紹介させていただこう と思います。16頁に診療科を選んだ理由の中で、すべての診療科ではなくて特徴的な 診療科を小児科、産婦人科、麻酔科、皮膚科として取っているものですが、これを見て いくと小児科については、いちばん多い理由としては「やりがいがある」、「その科の 対象が好き」という対象が、比較的多くなっています。産婦人科については、「やりが いがある」というのが最も多くて、続いて「学問的に興味がある」という順番で選択さ れています。麻酔科についてはほぼ同様ですが、「自由な時間が多い」という回答も、 比較的多く選択されています。皮膚科については、「学問的に興味がある」というのが 最も多く、続いて「その科の対象が好き」ということと、「自由な時間が多い」という ことが、比較的多く選択されています。  18頁については、以前進もうと思っていた科を変えたというところを診療科ごとに 分析したもので、上のグラフが変更前の診療科が小児科、産科、麻酔科、皮膚科であっ た方についてで、下のほうが変更後の診療科が小児科、産科、麻酔科、皮膚科であった 方についての集計になっています。  上のほうで見ていきますと、いちばん多いのはどの診療科についても、「現在進もう とする科を研修してみて興味がわいたから」というのが多くなっていまして、「以前進 もうと思っていた科を研修して大変だと思ったから」という方は、小児科については 30.6%、産婦人科については13.0%ほど確かにいらっしゃることはいらっしゃるので すが、いちばん多い答えではないという状況になっています。下のほうにその科に変え た理由があります。こちらのほうでも最も多い方は、「研修してみて興味がわいたから」 という方になっていまして、特徴的なのは皮膚科の中で「以前進もうと思っていた科を 研修してみたら大変だから」と回答された方が、比較的多くなっています。  19頁の今後の資格の取得の希望ですが、専門医・認定医については92.1%が取りた いというお答えで、そうは思わないという方が1.6%に限られるかと思いますと、ちょ っと言いすぎかもしれませんが、ほとんどの方は専門医・認定医という資格が必要であ るとお考えになっているようです。一方で医学博士号の取得の希望については、その下 で「そう思う」方は3分の1、「そう思わない」方が3分の1、「決めてない」方が3 分の1という分布になっています。  20頁の将来進みたい分野としては、「臨床」に進みたいという方が87.9%、「教育」 が1.4%、「研究」が3%という内容になっていまして、臨床に進みたいという方が圧 倒的に多い割合になっています。  21頁は、仕事と生活のバランスについてという質問を起こしてあります。「仕事と 生活も同じぐらい大切」というのがおよそ半分で、残りの半分を「全力を傾ける」、「ど ちらかというと仕事を大切にする」という方が4分の1、「どちらかというと生活を大 切にする」という方が4分の1という形で分けています。ここを診療科別に分けていま して、34頁に集計しています。上の診療科ほど仕事を重視する方の割合が高いという 形になっています。心臓外科や脳神経外科といった診療科が上のほうにきています。下 のほうでは産婦人科から始まり麻酔科、形成外科、放射線科等々、このような順番で並 んでいます。示唆される点としては、診療科に進まれる方ごとに要望される点が違って いるというように想像されますので、そういった要望や希望に対応した取組みが必要な のかと思っています。調査の概要は以上です。 ○矢崎座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。医学部長病院長会議で発表 されている内容と少し違うような気がしますが、どうなのでしょうね。これは研修医か ら聞いた調査で、先ほど補足説明がありましたように、大学の研修の先生方の返事、回 収率が悪いということで、出されないとまずいのではないかと思います。要するに回収 率が、本当に偏ったデータになるとまずいので、是非大学のご協力をお願いしたいので す。 ○水田委員 32ページの医学博士の項目ですが、博士号は取得しなくても良いという ような考え方になっていると思いますが、これは研修1−2年が終わった時点でその意 味が分かっているのでしょうか?研究は博士号取得だけが目的ではなく、人生の一時期 において物事を深く研究すると言うことが大切であって、その結果を論文にすることの 喜びはかけがえのない経験になると言うことが若いときは理解できていない状態で、学 位が必要かどうかを聞くのは可笑しいと思います。 ○矢崎座長 はい、どうぞ。 ○本田委員 いま水田委員がおっしゃった件で、私はずっと思っていたことがあるので す。取材というよりは患者さんの間とか、あと若い先生方で私の年代の友だちのお医者 さんに聞くと、医学博士を取りに行っていらっしゃる方もほとんど取りに行ってはいら っしゃったのですが、結局そこで臨床がプツンと切れてしまうイメージが私たち患者に とっても強くて、素人考えかもしれませんが、医学博士になってしまうと中に閉じこも って研究することと診ることは違うのではないか、せっかくいろいろそうやって臨床を 頑張るとおっしゃっている先生が、研究が臨床につながるのかもしれないのですが素人 的に見ると、何かどっちつかずに見えてしまって、一方で医学博士のほうでは臨床技術 を伸ばすような臨床研究に日本は弱いと聞くし、その辺が若い先生にはこう見えるのか と思うのと、患者ももっと患者を診る技術を磨いてほしいと思ってしまうので、そこが 医学博士のいまのあり方と何かミスマッチがあるのかなと私は思って納得したのです が、これは医者ではないのでその辺の科学的なところはわからないのですが、私は納得 しました。 ○水田委員 では日本の医学の進歩発展はどうなっていくかと言うことも考えるべきで す。研究が有ってこそ医学・医療は進んでいくのです。研究する楽しみも教えるべきで はないでしょうか? ○小山田委員 私どもの時代は、専門医というのはなかったのです。特に病院に勤務す る、あるいは専門を選ぶということになると、やはり研究ということです。それで、学 位ということになる。学位が目的ではなかったのですが、しかし今度は病院に勤めると いうことになると、学位があるのとないのでは違う。昔は号級が2号ぐらい違うのです。 それから部長になれないということがあったのです。ところがそれはだんだんなくなっ てきました。それで専門医というのが出てきたのではっきりと、ただ若い人たちに聞け ば、いま水田委員がおっしゃったように、ある時期でもっと深いところに進みたいとい う意思はあるのですが、ただこれが直接学位と直結していないということですから、学 位を取りたいかというと、ちょっと我々はこの取り方によって違うのではないですか。 ○吉新委員 私どもがやっている研修病院は4つあるのですが、いま研修は60人、専 任の指導医が4名でやっていますが、そのうち今年は3年目のいわゆる後期ローテーシ ョンを経験していない方が、10年目の麻酔科の専門医や外科の専門医を持っている方 が、3年目のシニアの1年目として入ってきました。要するに大学や大病院にいると専 門医にしかなれないと。自分はそれこそ僻地、離島のジェネラリストになりたいのでも う一度勉強したいと言って、給料はずいぶん減ってしまうのですが、それで結構だとい うことでいま頑張っています。いろいろ経験をさせるととても楽しいという、医者であ ることがとっても楽しいというか、専門医とはまた違う魅力を感じているのだというこ とを実感しているのです。  また同じ話をして先生方に怒られるかもしれませんが、日本の医療という形を考える とスペシャリストが全部ではなくて、ジェネラルに診るドクターというのは、どこの国 にも大体半分ぐらいいるはずです。そういう医師訓練を日本はしなくてはいけないので はないか。総合医とかジェネラリストの部分というのはとっても居心地が悪い。開業医 の先生ももとは結構なスーパースペシャリストが多いわけですが、ジェネラルな部分を ちゃんと研修していかないと、時間外の診療をしない、受け入れないといったことにな ります。この間僕は日本の医療にはコンビニがないのが問題だと。幅広く浅くて結構で すので、とりあえず24時間とは言いませんが、可能な限り救急や日常病に対応するよ うな仕組み。昭和30年代、40年代の日本にはあったと思いますが、いまはその辺が もうなくなっている。とにかく我々の所にはいま小児科医が12名いるのですが、この 5月の連休は一晩に100人ぐらい小児科に来るのです。ほかの近くの医療機関は一切 もう診ないのです。その状況は相当異常なことが起こっているのではないか。極端なこ とになると、みんな5時になると産婦人科も小児科ももう診療所を閉めてしまって一切 診ないというような状況になっていて、ドクターの数もいいですが、診療科としてどの ようなドクターのプロポーションを作るのかということをやらないと、小児科や産婦人 科を山ほど量産してもうまくいかないのではないかと思うのですが、その辺の議論はし なくていいのですか。単に数だけではまずいと思うのです。 ○矢崎座長 そうですね。どうぞ。 ○内田委員 これは私の立場よりはむしろ臨床研修をやっていらっしゃる病院の先生方 のお話を伺うほうが適切かと思うのですが、いまの水田委員のお話で考えますと、新医 師臨床研修制度の影響というのが非常に大きいのではないか。我々がドクターになった ときには、もう臨床も基礎も全部徒弟制度みたいに親分がいてオーベンがいて、1日24 時間、1週間、1カ月も何年か付きっきりで非常に濃密な人間関係があったわけですが、 いまの新医師臨床制度になってからは臨床重視というのはもちろんありますが、勤務医 といっては悪いのですが、臨床研修のデューティをやればそれでおしまいというような 感覚が非常に強くなってきているような印象がある意味ではあるので、その辺の感覚的 なものが少し学問というか、あるいは医学を追究するというようなものと、少しずれて きている印象を持っているのです。ですから、むしろこれから研修制度が終わって、専 門医を目指すなり医局に入ってくるなりした段階で、新たにそういう意欲というのが出 てくるのではないかという感じを持っています。 ○矢崎座長 その他いかがでしょうか。 ○本田委員 学問を追究するというお医者さんも当然日本の医療の発展や、これから世 界的に貢献していくためには必要なのだとは思います。  先ほど吉新委員がおっしゃったような有りようというか、患者を診る技術に長けた人 を教育するというか、単に数というよりはそういう人をもっと育てていくというところ がないから、余計こうなっているのではないかと思ったので、医学研究を否定している わけでは全然ないのですが、違うルートというものがあってもいいのではないかと、ち ょっと思っています。 ○水田委員 それでしたら、戦時中の医専ですか、あれと同じような考えになるのです ね。私は医師という者は全人的な教育を受けるべきだと思います。ですから、研究ばか りになる必要は有りませんが、人生の1−2年間研究に没頭し、物事を深く探索すると いう経験はすべての医師に持って欲しいと思います。若い方々は「手術をさせてもらえ るから良い病院である」と考えるようです。私は研修医に「君たちのご両親が手術が必 要な病気になったとき、何の経験もない君たちと同じ研修医に手術をしてもらいたいと 思いますか?」と質問します。外科医として自分で手術できるようになるには10年は かかります。その間、指導者は前立ちして指導します。前立ちしなくても一人でも大丈 夫と思うまで、部屋の外で見守ったり、呼ばれたらすぐに飛んでいけるようにして、若 い医師達を大切に育てます。徒弟制度と何と言われようとこのような積み重ねが必要な のです。ですから、大学は手術もさせてくれないなどと言われるのは情けないと思いま す。長くなりましたが、私が言いたいことは、2年間の研修が終わった時点で、学位が 欲しいかと言う質問をしても、研究の大切さも分かっていないのですからきちんとした 答えは期待できませんということです。 ○矢崎座長 そうですね。医学博士ということではなくて、臨床の大学院をどういうふ うに取るかという本田委員の話は、そこではないかと思うのです。いま大学も臨床の大 学院を昔のようにプツッと4年間臨床から切って、基礎的な動物実験をやって、論文を 出してということ、そういうコースもあります。  先ほど臨床研究に基盤を置いた医学博士はいかがなものかというお話がありました が、大学もいろいろ工夫をされているのですが、その情報発信が十分いっていないので はないでしょうか。吉村委員、いかがですか。 ○吉村委員 いまご指摘がありましたように、大学院というと本当に何か研究室に閉じ こもっていると思っていらっしゃるかもしれませんが、これは臨床研究もありますし、 いろいろな臨床データを解析したり、新しいプランを作って社会の中でコホート研究の ようなものをやることもあります。必ずしも大学院がすべて試験管を振っていると思っ たら、ちょっと違います。いまは臨床もやりながらという大学院もありますので、是非 いま水田委員がおっしゃるように、明日の医療を考えた場合にみんながみんなそういう 気持がなくなってしまうようでは困る。もちろん、必ずしも全員がそんなことする必要 はないかと思います。バランスの問題だと思います。 ○矢崎座長 そういう意味では3分の1も医学博士の取得を目指している。4年間ビッ チリ研究するというコースを皆さんそういうふうに描いていると思うのですが、それで も3分の1もいれば、すごく見方を変えれば、研究志向は続いているとも考えられます が。 ○吉村委員 1つ追加します。実は2年間のいまの方々のアンケートを、大変私も興味 深く拝見しました。この人たちがこれから先一般病院でずっと続けられたときに、どん なプランを描いていらっしゃるのか。というのが、医師の養成は1箇所にずっといると いうのは必ずしもいいことではなくて、いろいろな所にローテーションしたり海外に行 ったり留学したり、いろいろな道をしながら、もちろん大学も入ると思うのですが、い いお医者さんが深みのあるお医者さんに育つと思いますので、いま吉新委員がおっしゃ ったように、本当のプライマリーに深く、幅広く総合診療をやれる方はもちろん必要で す。いま興味のある方も増えていますので、そういう方はそれでまたいいでしょう。  一方、半分以上の人が大学以外でやりたいということですが、いま大学院に行きたい という人がおられたというのは、何かその裏返しのような、やはり自分はもうちょっと ここでもやってみたいなということを、いっぱい希望を持っていらっしゃるのかなと。 私はいまむしろ希望的に拝見したのです。 ○矢崎座長 水田委員が言われるように、1年か2年研究したいという人は、どっぷり 研究したいというのが3分の1もいるのですから、そういう方を入れると、結構多いの ではないか。ですから、そういう方のニーズに応えるように大学なり研究所がナショナ ルセンターを含めて、そういう希望に付託できるようなキャパシティを持っていただく ことが重要だと思います。あまりコースをきちきちに定めないで、例えば医師臨床研修 が終わったあとに大学と交流して、1年間ぐらい大学でいろいろ勉強するとか、そうい うプログラムを十分考えてやっていただければ、水田委員の言われるような悲観的なこ とにならないかもしれません。 ○吉村委員 実は先日の会で問題になりましたのは、いま大学が存亡の危機というか、 大変な時代になっています。本務である教育や研究も非常に、特に地方の大学ではこの 制度が入ったためというご意見なのですが、ご承知のように半分以上は、前は7、8割 近くは大学の母校に入ってやっていたのですが、こういう状況になりましたので、さら に診療科の偏在が起こっていますので、いいところはいいのですが、非常に厳しい診療 科もたくさん出ておりまして、本当に前回の総会では悲鳴に近いような、このままでは もう成り立たないというところまできていますので、これを何とか研修の配分と言いま すか、これも是非考えていただけるとありがたいと思っています。 ○矢崎座長 ちょっと私が発言するのはいかがかと思いますが、臨床研修必修化の制度 設計の委員会があって私はそのまとめ役をやったので、制度そのものは医師法に基づい て行われたものであって、私自身はそれに関してはきっちりした制度を作るという意味 でまとめたわけです。臨床研修が必修化ということではなくて、プログラムに自由に応 募して、要するに出身大学にとらわれずにというシステムと言いますか、マッチングの システムを導入したことによって、大学が魅力あるプログラムを提供できなかったり、 いろいろな複合的な要因で医師確保が非常に厳しい大学とそうでもない大学というの が、それこそ医師の地域の偏在と同じようなことが大学で起こっているのではないかと いう感じがします。必修化によってそうなったのではなくて、いままで大学の命令で全 部動いていたものが、制度的に自由化になったことによってなったようなとらえ方を私 はしています。 ○水田委員 私は最初の2年間の初期研修制度というのはとても良い制度だと思いま す。研修医にとっては自分で病院を選ぶ事ができますし、また、マッチングによって自 分もその良い病院から選ばれるわけですから。ただ、大学側が予期しなかったのは、市 中の研修病院が専門研修まで計画していることです。初期研修の2年間大学以外の病院 で、他大学出身者達と切磋琢磨しながら研修することは大変有意義な制度であると思い ますが、専門研修は研究の期間も含めて大学を中心として行うことが良いのではないか と思います。その点を見直していただきたいと思います。大学の専門研修制度も大学だ けで全部行うのではなく、地域の関連病院と全部一緒のプログラムですから、関連病院 もローテーションしますので、地域の医師不足もなくなるわけです。現在、九州大学で は関連病院と一緒のプログラムで上手く行っております。 ○古橋委員 私も医師臨床研修が動き始めまして、医療を受ける状況の中で何が起きて 何をもたらしたかという辺りが、大変関心があるわけです。2年過ぎて、今日のいまま でのお話は、新人医師たちが、どういう意識があるかという話なのですが、いま世の中 で起きているのは医師が足りない、特に4つの領域で足りないというようなことから、 社会不安も、見えないお化けのような形かもしれないが起きている。私はそういう中で、 医師臨床研修の結果、新たな医師たちはどのように自分たちの医師としての仕事をどの 場所で始められていくのかというのと併せて、いま大きな問題になっている医師不足と いうものが、そこに対して問題解決型で機能するのかどうかという辺りの議論があって もいいのではないかという気がしているのです。  1ついまお話がありましたが、医師が足りませんから研修医として受け入れた医療機 関は、当然のごとく市場原理も働いて、自分の病院へ引き寄せたいという意識は医師確 保という視点から発生するのです。ですから、そういう中で新たにお出になる医師たち 8,000人が、どういうふうに動いていくかを完全に新人の意思決定だけでいくというよ うな形でいくのか、これから伸びる、まだある意味で未熟な要素もある新人たちに、以 前のような医局制度で有無を言わさぬコントロールで配置が決まるということは、ゆめ ゆめあってはいけないと思うのですが、2年終えた人たちがどういうふうに自分の医師 としての仕事場を決めていくのかという辺りで、大学は何をサジェスチョンし、助言し てある意味で導かれるのかということと、あと地域にある病院が、医師もある意味で争 奪戦は起きつつあるわけですので、それに対して何らかの指導的というか、指針ある導 きがないと、やはり医師奪い合いの混乱が起きるでしょうし、若い先生たちは自分の熟 さない考えで選んでいかれることもあるという気がするのです。  もう1つ、いま起きている医師不足と言われている社会問題は、医師の供給と同時に 医療計画と非常に連帯している要素があると思いますので、ある意味で地域の包括ケア、 あるいは医師の集約化と言われている医療計画と医師需給の問題は、しっかりスクラム を組んで取り組んでいただくことがないと、医師だけ個に焦点を当てましても、人々が 受ける医療の方向付けはなかなか出てこないのではないかという気がしているのです。 何しろ2年終わったあとの新人医師たちを、どのように教育、あるいは臨床の場面がサ ジェスチョンし導いていくかという1つの方向も要るのではないか。医療界のコンセン サスをちゃんと作っていく必要があるのではないかという気がしています。 ○矢崎座長 全くその通りだと思います。ですから、それぞれの研修病院、あるいは大 学病院が、それぞれ臨床研修が終わった直後の、卒後3年目の人に、どういう情報を与 えて選択してもらうかということを、適切に情報提供して、考えられるような環境を作 ってほしいというような趣旨のご発言だと思います。  いま古橋委員からまとめのようなお話をいただいたので、この議論はまた次にもう少 し議論を深めていきたいと思いますが、とりあえず今日は長谷川委員から「医師需給の モデル」について資料をまとめていただきましたので、長谷川委員からまず説明をお聞 きしたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○長谷川委員 それでは、パワーポイントを使いながら説明します。「医師需給のモデ ル」について報告せよということで、ほぼ1年近くかけてやってまいりました研究の最 終的な結果をご提案をして、またご意見をいただいて、これでいいのかどうかを私のほ うで考えて、さらに良い予測モデルにしていきたいと思っています。  実は国際的にはいくつかのモデルがありまして、最近、アメリカを中心に医師数が足 りないので医師を増やすべきだという急先鋒をやっておられるウィスコンシン医科大学 の教授で、元学長のクーパー先生の理論によりますと、疾病があるから医者が必要とい うのではない。国民は、国民所得によって医者を何人雇いたいかということによって決 まる。少なくともアメリカのデータを見ると、国民所得、GNPと医師数とは連動して いるということを繰り返し主張されている方で、それを国が規制したりするのはナンセ ンスである。市場経済に任せてGNPが増えれば医者が増えればいいのだという考え方 で、大変過激な意見を持っておられます。  それで私もGNPと医師数の環境を少し調べてみました。日本の場合は必ずしもその ようにきれいになっていませんで、1990年のバブルの崩壊以降、国民所得、GNPは 伸びていませんが、医師数は増えているという構造になっています。しかし、一方で1 %の成長の仮定を置きますと、比較的きれいに医師数は増えるということでありまして、 どう考えればいいかなかなか難しいところですが、少なくともクーパー仮説は日本の過 去のデータからはあまり検証できないことになっています。  OECDも現在、医師の需給については議論が進んでいて、ヨーロッパ諸国も不足感 が漂っているわけですが、OECDは大変大ざっぱな、死亡数がほぼその国の医師需要 を表わすという大変乱暴な考えの下に分析していますが、日本の場合はこんな感じにな りまして、予測数から見ると比較的対応したような形になっているのかなと思われます。 この荒っぽいのではあまりにもできないということでありますので、だいぶ前に私とし てはご提案申し上げて、医師需給の場合には個々の診療科から積み上げることはかなり 難しい。難しい理由は2つありまして、過去に何度もアメリカも含めていろいろな国が 試みて全部失敗したというのがありますし、よく考えてみると診療科や地域の選定とい うのは個人がすることですので、それをモデル化するのは大変難しい。精々病院、診療 所ぐらいの大きな括り、あるいは内科、外科ぐらいになってくると意味があるのかなと 思いますが、細かい診療科まで下りますと大きな枠の中での医師決定となるので、むし ろ国全体ということで需要と供給を見ていこう。あとで詳しく申し上げますが、主に外 来と入院、そして診療所と病院とを合わせたモデルを考えました。  供給は、数を増やすか生産性を向上するかのどちらかです。供給は、医学部定員を増 やすか外国から来ていただくかということですが、両方ともいろいろと問題がある。そ してオールタナティブは生産性を向上する。医療システム全体を効率化するということ でしょうし、ほかの職種との役割分担も考えていくということも重要かなと思われます。  モデルとしましては、前回の井形委員会の結果をそこにお示ししているように、いろ いろな条件仮説の下に2020年ごろに供給が需要を上回るという結論を出しまして、 10%の削減が必要という提言でありました。前回と今回のモデルについて、これも以前 に申し上げたかと思いますが、供給モデルはかなり違っています。井形モデルでは5歳 階級の生命表を使ったモデルです。我々のほうは、実測の就業率を1歳階級で分析して います。それによって、きめの細かい予測が可能となりました。本日は需要モデルです ので、その違いを申し上げれば井形モデルでは在院、つまり病院に入院している患者の 数が将来どうなっていくか。これは非常にトリッキーでして、平均在院日数が下がって まいりますと、在院の数が減ってくる。したがって、同じ入院の場合には将来は医師数 が少なくていいみたいな話になってきて、こういうことは矛盾したことになってまいり ますので、今回は退院、病床を通過していく患者の数で推計を出しました。  重み付けの課題がなかなか難しくて、例えば入院の数が変わらなくても高齢者が増え たり手術件数が増えたりしますと、負担が増えるわけです。これをどのように考えてい くか。一応2通りを想定しています。需給のモデルの最終的には、いろいろな可能性の 組み合わせを、前回は先ほどの図でお示ししたようないくつかのオプションがあります が、単純に紹介していろいろなシナリオを考えてみましたし、少し緩衝帯を考えてみた いと思います。次の図は、労働量と患者量というのをどうマッチさせるかということで、 タイムスタディを用いて考えるということで、去年の暮れから委員の先生方にも大変ご 協力いただいて、おかげさまで数百の病院からデータをいただいて今回計算しています。  まとめますと需給バランスでありまして、外来と入院の患者を推計をして、それに対 して診療所医師を推計するという方法で、供給のほうは前回にお示ししましたが今回タ イムスタディを用いて、オーバーワークの医師を制限するとすると、どれぐらいの供給 量が減るのか。実際に頭数がいても労働制限をしますので、働いている数が減るという ことですので、それも勘案してみました。また、入院と外来患者を人口当たりで将来の 推計数を出しまして、それも3つの方法で推計しておりますが、それだけでは先ほどか ら何度も申し上げましたように年齢階級や手術等の影響、負担が異なりますので、重み 付けを行う。いくつかの方法をやっています。そして、最終的には臨床医師の供給の部 分をマッチングさせる。前回の委員会では、かなり非臨床医師に関してきめの細かい議 論をされたようですが、実は1万5,000人ぐらいなので、全体の数から臨床医師を引 いた部分がそれに当たるのだろうという取扱いを今回はしています。  もう少し細かく申し上げますと、需要モデルの入院と書いていまして、回帰・固定・ 限定という手法で将来に対数を用いた推計をやっています。前回は在院で年齢調整をし て、ただ30%以内の変化にとどめたりして、今回もそれを使ってみたのですが、長期 と急性期、そして精神で時系列トレンドを推計して前回もやっておられたのですが、如 何せんその在院で横断的に何人入院しているかということで、重みを考えていました。 重み付けはほとんど考えずに、こちら側は時間配分法と医療費の重症度のサロゲートし て使うという方法を使っています。外来も、ほぼ同様な形でやっていまして、先ほど申 し上げた非臨床医師については、前回このようなかなりきめの細かい議論がなされてい ます。  実際にやってみました。推計の方法は、固定法と回帰法と限定法にしましたが、固定 法は2002年の患者調査の受療率をそのまま変動せずに将来も同じだと考えて、将来推 計人口に当てはめたものです。回帰法というのは、1984年から2002年までの間の 年齢階級別受療率を対数で回帰しまして引き伸ばしたものです。これによりますと、当 然高齢者はどんどん入院が増えていくということになっていくので、受療率が上がって くる一方、若者が減っています。特に若い女性は出産による入院が減っていますので、 極端な場合にはゼロ以下になってしまうこともあるので、全般的に言って若人の入院が 減って高齢者の入院が増える傾向になってしまいます。これは、常識的には使った年の 半分か精々70〜80%ぐらいまでしか伸ばせないことになっていますので、2015年か 2020年ぐらいまでしか本当は回帰できないものなので、今回は2040年までいって いますが、かなり無理をしているということで、後半部分は難しい側面があるというこ とです。最後に、限定法というのは前回にも使われた方法で、受療率の変化、回帰した 場合にもその変化を30%以内にとどめる。先ほども申し上げたように、出生等はゼロ までいってしまうという非常に過激な形になってしまうので、30%以内にとどめて将来 推計人口を考えて。これはかなり手間がかかりまして、これをやるだけで4、5時間か かった手法です。  実際にやってみますと、こうなります。固定法というのを年齢階級別にやりますと、 現時点で2002年の入院回数は、年間1,900万回入院しています。ちょっとくびれて いるのは、高齢者による負担が2000年以降に導入されまして、入院患者が高齢者を中 心に減っています。しかし全般には増えていまして、固定法というのは人口の構成に掛 け合わせてやるとこういう感じになって、大体2030年ごろにピークになる形で、これ を見てもかなりのものですが、やはり高齢入院が増えてくることが予言されます。限定 法というのは、次の頁の回帰法の中で変動を30%に抑える方法で、次の回帰法の変化 を少し緩和した形になっていまして、3つ合わせると限定法、固定法、回帰法という形 になって、当初は固定法がいちばん多いのですが、最後は固定法がいちばん最後に少な くなって限定法が真ん中、回帰法がずっと上がり続けることになります。しかし、2025 年ごろまではほぼ同じ値を示すということですので、逆に言いますと2025年ぐらいま での推計点はどんな方法を使っても、比較的に安定しているのかなというイメージがあ ります。  一方、外来のほうですが、1996年以降大幅に低下をしていまして、2つの理由が考 えられます。一部負担による高齢者の受療率が減ったことと、薬の長期投与が可能にな りまして、外来の患者が減った。したがって、それがモロに出ていまして、固定法では さすがに少し増えて2020年ごろにピークが来て下がるのですが、回帰をしますとすべ ての年齢階級で減少してしまう。限定法というのは、その減少を30%以内にとどめて います。しかし、回帰法を使いますと過激に下がってまいりまして、特に若年者ではほ とんど外来患者がいなくなるということで、今後の外来診療所は大変だなと。いずれに しても、固定法、限定法、回帰法の3つはこんな感じになりまして、これで皆さん方は お気付きになると思いますが、入院は明確に増加する。しかし、外来はあまり増えない ということがイメージとしておつかみいただけるのではないでしょうか。  さて、これでいいのか。例えば、過去に既に年齢階級別で高齢者が増えていますし、 患者調査から次の頁に手術推計を示していますが、かなり驚くべき高齢者の手術が増え ているということですが、手術自身も2025年ごろには800万件近い手術入院が見込 まれまして、その大半が65歳以上。若者の手術は少し減ってきて、ほとんどが高齢者 の手術になり、80歳以上だけでも200万件とすごいことになってきまして、医療界と してもこれをどう取り組むかという大きな課題ではなかろうかと存じますが、いずれに しても適用が増えるのは間違いないと思います。  そこで、これらのことを勘案して同じ1人の入院でも、高齢者の手術と若年者の検査 入院ではかなり重みが違いますので、どうしたらいいのだろう。1つは、入院と外来を うまく労働時間に重み付けをするというアプローチがあり得るのかなということで分析 しました。そうしますと、大体病院医師は入院に60%の時間、外来に40%の時間を使 っています。診療所の医師は、有床診療所の先生方がおられるのですが、有床診療所の 数は3,000ぐらいしかないのです。入院させている診療所です。ですので、2割イコ ールゼロと考えて、外来が100%で切られますと、日本の医師は大体入院に40%、外 来に60%の時間を使っていることが医師全体としてわかりましたので、この割合で掛 け合わせて入院と外来の重みを付けるという手法。しかし、疾病の重みは付いていませ んので、疾病の重症度は医療費を使ってみようかと。これは便利で、入院、外来が1つ の単位でできますので、そこで5歳階級ごとに1回渡しの医療費、国民医療費の年齢階 級別のものを退院回数で割り返すとか、外来回数で割り返して重みを付けるという手法 を考えてみました。やってみましたら、入院はお手元にありますような重みになります。  子供で小さくて、中年で上がってきて高年でこう上がってくる。外来については、15 歳前後と50歳前後のピークが2つありまして、間が下がっているということです。臨 床の先生方にお聞きしても、比較的にイメージとしては重みがまあまあかなと思われま したので、これを使ってみました。そうしますと、お手元にお示ししましたように、使 わない場合は、限定法、回帰法を使いますと重みがないと。これから35年間、需要は 横ばい。固定法で少し上がって、2030年ごろに下がってくる。医療費で重みを付けま すと、このような形になって固定法が最も高くなりまして、回帰法や限定法を使います とほぼ一緒の数で、大体30万人前後で上がって横ばいになるという結果になっていま す。だいぶ飛ばしてまいりましたが、この辺までよろしいでしょうか。  実感してもらうために、入院で実数の比較と重症度に重み付けをした比較を掲げてい ます。入院に関しては回帰法がいちばん高くて、最後は固定法がいちばん低いわけです。 限定法はその真ん中にある。ただ、これは1984年に1,000あったものが2040年に は2,000を越す。ちょうど2倍になるわけですが、重みを付けますと2倍どころか3 倍になる。だから、回数は2倍に増えても高齢者が増えたり手術が増えたりするので、 入院は3倍近い負担になることになります。事実、OECDで見ますと日本は入院患者 が非常に少ない国で、日本の国民の健康は何かというのはいろいろ議論があって、診療 所でしっかり診ているので入院しなくても済んでいるとか、あるいはお薬をしっかり飲 んでいるので健康なのだという議論がありますが、国際平均と比べますと1.5倍ぐらい の入院回数、70%ぐらいということになりますので、今後入院が増えることは予想され るのかなと思われます。  さて、ここで需要をまとめますと、入院患者は今後増加する。回帰推計が最も増加す るという推計で、外来患者は今後は余り増加しない。逆に固定法というのがいちばん増 えて、回帰法を使うと減少してしまう。時間重み付け法では余り需要は増加しないが、 医療費によって重症度を勘案するとかなり増加する。3法のうち、固定法による推計が 最大となるが、3法とも2040年ごろには収斂して同じような値を示す。そして重み付 けをすると負担は増え、特に入院で著しい。推計のほうを少し復習しますと、これは以 前にお見せしましたが各種推計です。ピンクは、今回の私が1歳階級別で用いました推 計です。出発点は井形委員会と同じところから出発しますが、実は井形委員会では 2005年から医師の70歳定年制を導入するとなっていまして、6年前にはそういう議 論で、それを導入するとこの赤い線になって、かなり制限される。しかし、ピンクはす べての医師が働く時間ですので、この差が非臨床医師となりまして、約1万6,000人 から2万人ぐらいになります。黄色の部分が臨床医師です。ブルーが、その臨床の医師 を48時間以上働かせないと制限した場合の人口になります。  さて、供給のほうを今度は48時間以内に制限した上で、入学定員を5〜10%増加し たらどうかとなりますと、5と10では差があるのかないのか。いずれにしましても、 2025年、2030年ごろにならないと実質的な増加は認められないということになりま す。リマインドしますと10%という数字はなかなか面白い数字で、日本国が医者を年 間で生み出していた最大時期が8,400人でしたので、現在の約10%多い。だから、当 時から10%減になったわけですから、いまから15年ぐらい前に立ち戻れば、医学校 で10%増の定員は可能なのでしょうか。そして井形委員会がやっていた時代は、7,900 人ぐらいまで下がっていました。それが現在の5%増という数になります。  少し気になったので、定員増が病院と診療所にどういう影響を与えるのかを細かく分 析しました。大変興味深い結果が出てきました。いまある就業形態をそのまま踏襲する。 つまり、2040年前後ぐらいから少しずつ開業を始めて、病院から診療所に現在と同じ ようなパターンで就業形態が移行することを前提にしています。すると、こんな感じで、 5%定員増をしても、病院の医師に関しては結構インパクトがある。診療所の医師には あまりない。そして、診療所の医師は定員を増やそうが増やすまいが、増加し続ける。 医者の高齢化が進みますので、放っておいても増加してしまいます。  次の頁の最初は、病院医師の年齢階級別の構成ですが、ゼロ%は当然現在と変わらな い、もしくは若者が少し減ってまいります。これから10年間の間に若者が減ってまい る。5、6年前から定員が減ってまいりましたので、定員が減ってまいった分の影響が 出てきて、若者の病院への移行が減るのですが、5プロ増やしますと少しまた増えてく ることになって、意外と病院には影響することがわかりました。  結論。井形委員会の推計は、2005年では今回のとほぼ同数。かなり、みごとに集計 法がずいぶん違うのにほぼ同等でしたが、それ以降は70歳定年制のために我々の推計 とはだいぶ乖離があります。臨床医師は労働制限48時間では制限なしをかなり下回る。 当然ですが、定員増の影響は少なくて2030年ごろを待たねばならない。ただ、病院医 師数は比較的に早く影響があって、影響度も病院医のほうに大きい。診療所医師は大き く増加するという結論です。  さて、いよいよ需給の判定になってきます。先に全数のほうをご覧いただきますと、 需要に関しましては重み有の固定法、重み有の限定法、重み無の限定法の3つを考えま した。そうしますと下のほうの図ですが、重み無の限定法の需要は藤色です。つまり、 重み無と考えれば需要は増加しない。今後35年間、需要は一定であるということにな ります。それに対しまして、重み有の限定法、ブルーです。ガーッと上がっていって 2030年ごろがピークで、少し下がる。そして、重み有の限定法、30%に限定すると、 その間に来る。単純の回帰もこの間に入ってまいりますので、略しました。  そういう需要に対して供給側ですが、赤が我々の臨床の医師の総数です。48時間以 内に制限しますとイエローになりまして、さらに5%定員を増やしますとピンク。少し 拡大すると上の図になりまして、こちらがもう少し見やすいのかなと。上の図でいきま すと、濃いブルーと薄いブルーの間にこの需要が来て、赤い線とピンクの線の間に供給 が入る感じで、前回は1本の線で足りる足りないという議論をしましたが、こう考えて まいると2030年ごろにはわりとバランスが取れる。そういう意味でいうと、前回の結 論は2020年でしたが、10%削減した理由もあるのでしょうか、少しバランスが遅れ ているようですが、それまでは少し足らないが努力次第ではなんとかなる。そして、赤 の総数のほうにプラスマイナス5プロの帯を付けていますが、プラスマイナス5にはす べてが入るというのが大体今回の需給バランスの結論になっています。ただ、気になる のは病院医で、もし48時間に労働を制限した場合に総数としては足りないですが、そ れが特に病院に顕著だと。  次の図は、病院と診療所の推計を別途やってみましたが、ショッキングです。病院医 師を推計しますと、5プロ増やしてもなかなか増えない。5プロで、やっと20%増で しょうか。増やさなければ10%ぐらいにとどまっている。一方、入院の需要のほうは このような倍率で伸びる。最低30%、下手したら40〜50%伸びるという重み付けを しているということで、現在も厳しいし、将来も入院のバランスは厳しい。一方、診療 科医師ですが、入院の需要ぐらいのスピードで一挙に6倍まで伸びていく。しかし、外 来需要はどのような推計を見ても伸びない。あるいは、伸びても20%程度に下がって くることになっていまして、結局全体としてはなんとかなりそうだけれども、病院と診 療所のバランスは悪そうだという感じがここで出てまいります。  最後に、対策等も含めて外来のことを見てみたのですが、前回にご提案申し上げまし た。現在病院で外来を6億回、診療所で10億回診ていますが、入院に関連した外来に 限ってそれが前後7回ぐらいフォローするとすれば、病院で1億回、2億回の外来で済 む。4分の1に圧縮できる。労働時間は、24%が約18%の外来の時間が浮いてくる。 それを診療時間に回すと、かなり楽ではないか。ただ、病院から診療所に外来患者が移 る。診療所の負担が増えるのではないか。現在、都会が中心ですが一部の診療所はかな り競争が厳しくなっていますので、その意味では少しケア的に取り替えているのかなと いうところもありますが、ポイントは外来、間隔を延長すると患者が減る。事実、これ が外来患者の推移でありまして、全患者数は横ばいあるいは若干減っているのですが、 医者1人当たりにしますと、かなり減ってきている。処方箋の長期化や自己負担等によ って減ってきている。これが受診率の変化ですが、私が推計しましても生活習慣病、高 血圧、糖尿病等を現在平均間隔2週間弱ですが、これを60日に延ばしますと20%の 外来が減になるという、かなり大きな変化が考えられます。事実、日本の外来回数とい うのは世界で最も多くて、世界標準の約2倍の数の外来に来ていますが、ベンチマーキ ングの考え方からいうと、2分の1に圧縮できることになるのではないでしょうか。  まとめますと、臨床医師数は限定法による需要を考えた場合には2015年ごろまで、 固定法によって考えた場合でも2035年までは下回るけれども、逆に言いますとそれ以 降は上回る。そして、48時間以内の労働制限をすると確かに需要を下回るのですが、 一応5%の枠内にとどまっている。外来を減らしますと5%枠というのは達成できると 思われますが、医学部定員が5プロ増しても影響力は少ない。ここに書き忘れたでしょ うか。増やしますと、病院には少し影響はあるのでしょうか。したがって、ここ10年 間はいくら医学部定員を増やしても影響は全くなくて、医師の生産性を高めるか、専門 家チームとして医療システム全体の効率を高める政策を取らねばならないということで す。もちろん、諸外国の医師を招聘することはオプションとしてありますが、言葉の壁 とかブレン・ドレナジー、頭脳流出ということで国際的に欧米諸国に非難が高まってい る今日、日本がそういう施策を取るのがいいかどうかというのは検討委員会で議論する 必要があるのではないかと思います。  4つ目に入院需要の増加に対して、病院医師の数の増加があまりないと言ってもいい のではないか。外来需要が伸び悩む一方、診療所医師が急増する。したがって、今後医 師の配置、端的には病院と診療所の配分、開業を制限するとか。先日、県の衛生部長会 議から要望がありました。へき地勤務が開業の条件といったようなこととか、開業医の シートを決めるとか、いろいろな手法で病院にとどまる。病院でも一方、高齢医師の働 きやすい職場、タイムシェアリングとか、いろいろな工夫が必要なのかなと。あるいは、 開業医に病院の外来等を手伝っていただくというのが必要かなと。それから、外来患者 は先ほどからご提案で何度も申し上げますように、急務ではないでしょうか。診療所と 病院との間で外来を医薬紹介連携によって、病院から診療所のほうに移行していくこと を大々的に推進する必要があるのではないでしょうか。以上が今回の需給の分析の結果 です。 ○矢崎座長 どうもありがとうございました。貴重なデータを出していただきまして、 大変ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○小山田委員 大変膨大な資料で、本当に感謝しています。最後の需給総括のところで いままでのお話の2〜5は理解できるのですが、1の48時間内に労働制限すると5% の枠内というところをもう少しはっきりさせていただきたいのは、病院勤務医と診療所 と全然違うのです。というのは、この前先生のところから出していただいた週63.3時 間の労働時間だけを見ましても、5%どころではないのです。48時間に絞った場合に どの位医師数が不足かその数字はわかりませんか。5%は絶対ない。というのは、これ は病院の医師不足という実感からは、何とも納得できないのです。 ○長谷川委員 ちょっと誤解されています。これは全体の医師数で5%ですから、48 時間に、一応平均値ですけれども全年齢階級の診療所の先生方はすべてクリアしていま す。ですから、制限は引っかかりません。もちろん、中には一部の診療の先生方は働い ておられると思いますが、この間調査をした平均値では・・・。病院の医師に関しては、 特に若者を中心に引っかかりますので、先ほどお見せしましたようにそのままの数より も少し下がって見える。両方を合わせまして、全体として5%以内になっているという ことです。 ○小山田委員 それはわかりますが、63.3時間というのを48時間にした場合に、必 要な医師数は決まってきますね。それが大体どのぐらいでしょうか。 ○長谷川委員 この48時間という医師労働の定義は前回に申し上げましたように大変 難しくて、病院の先生方は結構アルバイトをしておられますので、65時間どころかあ と5、6時間働いておられますので、71、72時間が全国平均になっています。さらに、 もっと言えば週末のオンコールも、あれは働いていないかどうかの微妙なところがあり ますから、それをプラスしますとほぼ80時間に近いことになるかもしれません。一方、 外来と入院だけは法定内の40時間でした。ですので、医師の労働の定義が非常に哲学 的にも難しい課題になっていまして、私どもは外来と入院と、教育と会議、患者へのご 説明といったものを労働時間かなと考えていまして、研究や休憩などは入らないのかな と思っていて、65時間というのは私は病院に来て帰られるまでの間の時間なのかなと。 もちろん、我々の質問票では働いている時間と聞いたのですが、結果論的にはそうなの かなと。ただし、それを労働時間でないのかというのはまた哲学的な議論になりまして、 それは何らかの一種の待機状態になっているわけです。ですから、65時間というのを そのまま受け止めるかどうかはなかなか難しいところです。それで、先ほど申し上げた 教育と会議を合わせた時間で48時間を計算してみたのがこの結果です。ですから、65 時間ではありません。65時間を48時間にしようとすると、それは大変になってきま す。 ○小山田委員 それをどうするかは今後の問題で、まず大体の数字、それぞれに定義が ありますが、それを知ればいいのです。というのは、だから増やせというのではなくて、 労働時間を減らすにはどうするかなので、私は前からお願いしていたのですがその区分、 病院の区分、病院と診療所の48時間にした場合に、仮に何パーセントを増やさなけれ ばならないか。あとは、できたら内科系とか外科系とかで、どうなっているのかを是非 出してほしいと2カ月も前からお願いしていたのです。 ○長谷川委員 診療所は出ません。 ○小山田委員 ですから、勤務のものを48時間にするためには、現在の勤務医12万 人がいますね。それを何パーセント増やせば48時間を守れるか。 ○長谷川委員 働いているのは16万人います。 ○小山田委員 病院ですよ。 ○長谷川委員 病院です。 ○小山田委員 大学を入れないのが12万人ですか。 ○長谷川委員 そんな感じです。 ○小山田委員 勤務医だけを数字上63時間から48時間にした場合に、何パーセント 増やさなければいけないかという単純な計算は出ると思います。ただ、その中で果たし てそれだけ増やす必要があるかどうかというのはまた別の問題ですが。その数字だけで も示されれば医師の不足感覚がある程度納得できるのですが、これが5%ですよと言わ れますと理解出来ないのです。 ○長谷川委員 診療所の先生方に病院に帰ってきていただいて、病院で働いていただく ことをすれば大体治まる。 ○吉新委員 先ほど開業の制限とか、外来を中心とした診療所部分はなるべく制限すべ きだということは、今回の総括にはとても大事な部分だと思いますが、そうすると現在 数はよろしいけれども、診療所の医者が病院に戻れば、もしくは診療所を制限すること で需給はマッチするというふうに。 ○長谷川委員 それと病院内の効率が、比較的に公的病院の先生方はビジネスマインド がないので、時間単価の高い医師に伝票を書かせているのです。そういう時間が無駄で ある。だから、病院経営で大体バタバタ辞めている所は、院長に権限のない病院が多い です。40歳代の若い人が辞めていると前回申し上げましたが、そういうところに少し 給料を増やすとか迅速に対応する。現場の医師、看護師からリクエストが出たら、いち いち議会を通して1年経って予算を獲得してなんてしていたら、みんな辞めていくので す。ですから、院長に権限を与える必要があるのではないでしょうか。そして、これま での昭和23年にできた医療法の世界で、医師や看護師の権利や責任を規定してやって いる形というのを根本的に見直して、チームとしての生産性を向上させる。前回お見せ しましたように、日本の病院の医師の生産性は低いです。大体半分ぐらいです。ですか ら、諸外国に比べまして何かおかしい。  看護師もそうなのです。病床当たりの看護師投入量と平均在院日数を見ますと2倍ぐ らいなのです。何か、日本の病院経営はおかしい。多分、国立病院は病院管理の研究を いままでさぼったのでしょうね、病院のあり方について。要するに、この10年間で病 院に対して国民が期待するものと、院内での病院経営のミスマッチが起こっている。生 産性が遅れている。その生産性を解決することによって、不足感ならびに過重労働はか なり下がるのではないかと考えます。例えば、ドンと外来をやめてしまう。そうすると 病院経営がシンプルになるし、医者に対する負担はだいぶ減るとお聞きしています。 ○内田委員 いまのお話の中で出てきた、診療所の医師を病院に返すことは現実には非 常にあり得ない話で、むしろ病院からどんどん診療所のほうにシフトしていく流れが現 在の主流です。これは、先ほどの効率性の問題とか院内勤務が非常に過重な条件になっ ているとか、いろいろな条件があると思いますが、結論的に申し上げると医者を増やし ても2030年までは実効がほとんどないということであれば、入学定員を増やすという ことは政策的には全く意味がないと言ってもいいと思います。ですから、そこで検討す るのではなくて先ほどお話があった機能分化、連携を強めていく。要するに、私が言い たいのは病院の外来を見直す。それを診療所のほうにシフトするということが、いまの 政策の中ではいちばん実効性があるのではないかという気がします。これは、需給や偏 在などの話は置いておいて、病院と診療所の機能分化を進めるのがいちばん大きな政策 的な実効性があるものではないかというのをいまのお話の中で感じました。 ○長谷川委員 ただ、長期的にはかなり病院から診療所への流出を防ぐ、職業上の自由 選択が憲法で保障されているのですが、聞きましたら高校の先生は選択肢はない。例え ば、前教育課長とお話したときは東京都で教師を採用すると、八丈島と都内をグルグル 回しながらキャリアパスを積んでいただくというシステムにしてある。だから日本の場 合、私立では自分でお金を払う。そういうのも税金は出ていますが、国立の場合にはご 本人の選択なく、過疎地域に行っていただくのも考えるべきなのか。 ○内田委員 その点に関しては、抵抗が非常にあります。それは、むしろほかの面で対 策を考えるべきことではないかと思います。先ほどの話の中でも出ましたが、病院の定 年がいまは60歳とか65歳だと思いますが、そのあとでまだ働ける医師がたくさんい らっしゃるわけで、その辺の活力を利用することは十分にできると思います。大学とか、 そういうところは別としまして、一般病院においては少なくとも60歳定年というのは 早すぎる。そのあとのパワーを活用するというのは非常に意味があることだと思います し、それは手術をしろとか当直しろというところではなくて、病院の中の機能分化と効 率的な仕事という観点からいうと、そういうパワーを活用すればよい。あるいは、へき 地の医療を担当していただくことも、もちろんご本人の希望がありますが、そういう選 択肢を提供することがこれから重要になってくるのではないかと思います。 ○長谷川委員 私が聞き及んでいます例では、例えば救急のふれあい系外来等、長い間 お住まいになっていれば地域の実情もよくわかっておられるというので、若い医師を指 導しながら活躍していただくとか、あるいは東京都で始まったと聞いていますが、小児 科に関して医師が足りないということで、積極的に夕方の外来に来ていただいて、その 子供を診療所にお持ち帰りいただいて診療を続けていただくということを聞いていま す。 ○内田委員 小児科の一次救急に関しては、各地でずいぶんそういう取組みが進んでい ます。医師会の先生方が休日急患診療所あるいは休日夜間診療所で准夜帯を見るとか、 病院の救急外来へお手伝いに行くとか、そういう取組みがかなり進んでいますので、そ れを今後全国に広げると非常に有効な方策ではないかと思います。 ○吉新委員 自治体が、その音頭取りをやるべきだと思います。小児のドクターの診療 所と病院の兼務ですとか、8時から11時までやってもらったのですが、とても開業の 先生に来ていただいて、うまくいっていると思うので。 ○内田委員 病診連携は、そういう面では非常にいいですよね。 ○吉新委員 病院と医師会だけでは、ちょっと無理がある。行政がある程度絡まないと。 ○内田委員 これは、地域医療協議会みたいなところで取り組んでいただければいいと 思います。 ○矢崎座長 ちょっと一足飛びの話になりましたが、長谷川委員が提出された資料の全 体の需給の総括のときに、途中では病院と診療所を分けてお話になったのですが、最終 的な総括のときにも小山田委員から言われたように、それを分けていただかないと誤解 を招くのではないかということですが、委員会としてはそういう認識でよろしいでしょ うか。 ○長谷川委員 私の個人的な意見を申し上げるとすれば、現在の病院機能を前提に考え ると、逆にいろいろ誤解を招く側面もある。医療システム全体をどう受け止めていくか が必要である。今回のモデルはそうしました。 ○吉村委員 長谷川先生のは大変素晴らしいデータだと思います。いろいろなシステム を考えられるのはよろしいと思いますが、医者を誰がどのように育てていくかというと ころがないと、いままではほとんど大学を中心にしていろいろな連携で育てた方々がい ろいろな所に回っていたわけです。そこら辺の分配プラス養成するところを是非ここに 入れていただけるとよろしいかなと思います。 ○長谷川委員 大きな課題ですよね。どのプロフェショナルな集団でも後輩をどう育て ていくかがシステムの中に入っていないと駄目ですね。 ○吉村委員 というのは、各病院に若い人が行って、そのままそこできちんとした医師 が育つのであれば若い人をばら撒いて、そこで育てていけばいいのですが、医師という のは1カ所だけで育つわけでもなくて、プログラムの中で育っていきますので、その辺 も何か必要なのかなと思ったのです。 ○矢崎座長 医学部の定員を増やした場合でも2030年ごろまでは実効性がない。た だ、病院には医師が比較的早く増えるというのは、研修ということですか。卒後の人が まず病院で研修を積むので、病院は比較的に早く影響が出るということですね。 ○長谷川委員 前回に示しましたが、病院での年齢構成は若いのです。そして、40歳、 50歳を過ぎてくると、なかなか大変なところもあって、若手と中堅と老年とをどう組 み合わせるかは病院経営の今後の大きな課題ですが、まず増えた分は、若者から増えて きますので、意外とインパクトはあるということです。 ○矢崎座長 ただ、これは研修の医師が増えるということで、必ずしも全体的に病院の 医師が本当にアクティビティとして増えるかどうかというのは、なかなか難しいかもし れません。いかがでしょうか。いまの長谷川委員の需給のデータで、対策、方策という のは別にしまして、基本的なデータの認識はこういうことでよろしいでしょうか。何か ご意見はありますか。これは最終的な結論にも、高齢化社会で手術件数が極めて多くな って、それにかかる病院の業務負担も引っくるめた集計と理解してよろしいわけですね。 ○長谷川委員 年齢階級別の医療費の重みが、代替、サロゲートになるという前提で重 みを付けていますが、高齢者は重いものですから、かなり大きくなります。 ○矢崎座長 その場合に、医療費の負担が増えてくるわけですよね。 ○長谷川委員 そうです。 ○矢崎座長 重み付けというのが十分理解できないのですが、医療費が今後高まるのを 国民が納得していくのか。 ○長谷川委員 そういう意味ではありません。これは単に1人の患者を1人と言うので はなくて、高齢者でどれぐらい重いだろうというのを2002年の医療費を使って重みを 付けて、将来の高齢化とか手術件数の重みにこれを使ったということです。便利なのは、 外来も入院も同じ単位で計算できるので取らせてもらったのですが、あの重み付けのパ ターンがこの図でいいと皆さん方に納得していただけるのであれば。これが入院の重み で、年齢階級別の重みはこうなっていて、外来の重みはこうなっている。この重みにご 納得いただければ、比較的正確な将来の予測である。といいますのは何度も言いますが、 そのままの数を見ますとあまり増えない。フラットです。相殺して外来が減りますので。 ですから、入院の重みがかなりきついので、こういう形でこれに重み付けますと、将来 に上がってくる。 ○矢崎座長 医師の労力を医療費で換算すると、ということですね。 ○長谷川委員 医師の負担をそれで換算しているということになります。 ○吉村委員 アメリカの例を言って失礼かと思いますが、アメリカだと30%ぐらいの 方がジェネラル・フィジシャンとして行かれますよね。あと7割ぐらいの方がレジデン シィ・プログラム、24あると聞いていますが、そこでレジデントのプログラムを終え て、終えるところをバランスよく育てているわけです。さらに3年とか5年とか、その 上にまたサブスペシャリティがあると思います。数は確かに長谷川先生がおっしゃると おりだと思いますが、そこの辺をしないと医師の需給はなかなかうまく解決しないので はないかと思います。その辺はいかがでしょうか。 ○長谷川委員 年齢のバランスですね。なかなか難しい課題で。 ○吉村委員 ですから、レジデンシィ・プログラムのところにある程度お金とか強制力 をしていって育てていかないと、ただ診療所と病院と分けただけでは、なかなか解決が 難しいような気がします。 ○矢崎座長 お約束の時間がまいりました。今日は長谷川委員の現在の資料を網羅して、 将来の需給を推計していただいたというところで、いまのご議論でいくつかの課題があ ることが明確化されたのではないかと思います。さらに今後どうするかは、議論すべき かもしれませんが、検討委員会としては、需給の正確な我々の理解するものを提出する ということで、方策についてはフリーディスカッションの中で議論するというまとめで よろしいでしょうか。 ○医事課長 本日はありがとうございました。先生方ご承知のとおり、先々週に衆議院 を通過しまして、いまは参議院で議論をしているところですが、国会におけるいまの健 康保険法と医療法を併せてやっていますが、医師の不足、偏在に関する質問が非常に多 くて、大きな議論となっているところです。  冒頭にご紹介させていただきましたように、医師全体の数ではなくて、もう少し細か く見るべきではないかという意見もかなりありましたし、今日の各先生のご意見の中で も医師全体というよりは、むしろ病院と診療所の問題とかいろいろなご意見が出されま した。これまでの何回かの医師需給の推計については、医師全体の数でやっていたわけ です。したがいまして、本日の長谷川委員のプレゼンテーションの中では全体のことを ベースとしましていくつかあったわけですが、ここから先はあくまでもこの検討会でど うまとめるかです。当然、2030年にはどうなるかというのは非常に重要なことではあ りますが、いま現在はこういった診療科なり地域の医師の不足、偏在ということが言わ れていますので、そこについてこの委員会では何のコメントもしないというのは片手落 ちな気がします。  したがいまして、私どもとしましてはまた長谷川委員に手間を取らせることになるか もしれませんが、ベースとして需給の委員会というのは全体としてどうなるかというこ とですが、折角のこういった経験、学識のある先生方に集まっていただいているわけで すので、当面の問題に対する対処策や、これまではあまり触れてまいりませんでした今 日たくさん出ました病院、診療所の医師のあり方をどういった形で見ていくか。診療所 の医師が増えて病院の医師が増えないというのは、いまは40何歳かで開業している方 が非常に多いので、これから医師全体が高齢化していくので、その中で見るとこうなる ということなので、例えば開業されるベースの年齢が何歳か遅れれば、また違った形に なりますので、そういったところもいくつかご議論をいただいて、次回にそういったと ころも勘案したような資料を提出させていただきまして、もう一度ご議論いただければ と思います。 ○矢崎座長 いま、長谷川委員からトータルの話が出ましたが、地域診療科の偏在につ いて、今後の議論をどう進めるかは考えさせていただきたいと思います。それと、それ ではどうするかについては我々にどうするという権限はありませんが、折角いま言われ たように各医療界を代表した方々がお集まりなので、この中で国にどう要求すべきか。 あるいは、自治体にどう要求すべきか。我々としての主張と要望はきちんと書いて、今 後の政策のほうに是非活かしていただきたいということで、もうそろそろ結論づけない といけない時期ですので、そういうことを各委員の方々には十分に理解していただいて、 次回にご意見をお伺いしたいと思いますのでよろしくお願いします。  事務局から、今後の方針をお話ください。 ○宮本補佐 課長から申し上げましたとおり、議論の集約を検討とともに諮っていきた いと考えていますので、議論をまとめた叩き台になるようなものを作成してお示しした いと考えています。併せまして、必要なデータも追加して作業して、提出するような形 で進めてまいりたいと思います。日程のほうはまた調整させていただきますので、6月 中に開催したいと考えていますが、連絡させていただきます。 ○矢崎座長 本日は、どうもありがとうございました。 −了−                        照会先                        厚生労働省医政局医事課                        課長補佐 井内(2563)                        指導係長 丸尾(2568)                        代表 03-5253-1111