06/05/19 第10回投資ファンド等により買収された企業の労使関係に関する研究会議事録 第10回 投資ファンド等により買収された企業の労使関係に関する研究会     日時 平成18年5月19日(金)    16:00〜     場所 経済産業省別館10階1012会議室 ○ 西村座長  ただいまから第10回投資ファンド等により買収された企業の労使関係に 関する研究会を開催いたします。本日は神作先生、毛塚先生、宍戸先生が、 所用により欠席されています。  前回は報告書案のたたき台についてご議論をいただき、各委員からご意 見をいただきました。それらを踏まえまして、事務局で報告書案を作成し ていただきましたので、まずその報告書案について、事務局より説明をお 願いします。 ○ 金谷参事官補佐  ただいま座長からご案内いただきましたとおり、前回報告書のたたき台 についてお出しさせていただきました。その際に各先生方からいただいた 意見を踏まえて、事務局で修正をさせていただいています。お手元の資料 です。前回から修正させていただいた部分については下線を引いています ので、その点を中心にご説明をさせていただきます。  1頁目です。「はじめに」ということで、本研究会を開催するに至った 問題意識や経緯、あるいは4回にわたってヒアリングを行って聞きました こと、アメリカにおける調査などについて簡単に書いています。ここの箇 所については特に修正はありません。  大きな2番です。「投資ファンド等による被買収企業の労働条件決定へ の関与等労使関係の実態」ということで、ここでは本研究会で行ってきた ヒアリングの結果、それからアメリカの調査などについて、簡単にまとめ ています。(1)で本研究会でのヒアリングの結果をまとめていますが、 その中では、アの投資ファンド等からのヒアリングの結果のところで1箇 所修正しています。最後のパラグラフで、「また、買収を行う際、被買収 企業の労使関係の安定を重要視していることについての言及があった」と 書いています。ここについては、前回お出ししたときには、被買収企業の 労使関係の安定を重要視しているとするものもあった、としていましたが、 ここについて、その書き振りですと被買収企業の労使関係の安定を重要視 していないものもあったのではないかと読まれてしまう恐れもありました ので、そうしたことではないということで、このような整理をいたしまし た。  1頁の最後から2頁にかけては、被買収企業からのヒアリング結果につ いて簡単にまとめているところです。ここについても特に大きな変更はし ていません。  ウの被買収企業の労働組合からのヒアリング結果についても、特に大き な修正はしていません。  (2)は「アメリカでの実態」ということで、こちらはJILPTのほ うから調査をしたものですが、アメリカにおける使用者性の考え方とか、 あるいは実際に投資ファンド等が問題になった例がないかといったことに ついて、ヒアリングを行ってきた結果についてまとめているところです。 ここについても修正はしていません。  3頁です。大きな3番として「投資ファンド等の使用者性について」と いうことで、投資ファンド等の使用者性について検討しています。(1) は本研究会で行ったヒアリングを基として、簡単に考え方をまとめていま す。ここについても大きな修正はありません。  (2)は使用者性のこれまでの考え方ということで、平成7年の朝日放 送事件など、過去の労働組合法上の使用者性について、裁判例あるいは労 働委員会の命令例などについて、簡単にまとめているところです。ここで は、過去の裁判例、命令例を見ると、親子会社間の親会社の使用者性など について、基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視で きる程度に現実的かつ具体的に決定することができる地位にあるかどうか を、個別具体的な事実に基づいて判断されているというようなことについ て書いています。  5頁です。(3)で「投資ファンド等の使用者性について」ということ で、考え方をまとめています。ここについて、真ん中の辺りで、「同様に、 株主としての権利を背景に」のパラグラフのところで一部修正しています。 ここでは、前回、投資ファンド等の目的は必ずしも一律ではなくて、投資 目的のものもありますし、投資ファンドとはいえ事業に近いようなものも あるのではないかということでしたが、前回にたたき台で出したときは「 投資ファンド等の目的は必ずしも一律ではなく、具体的な経営に関与する こともあり得る」と書いていましたが、目的と経営に関与することはパラ レルであろうということもありまして、この辺を少しわかりやすく書こう ということで、「投資ファンド等の目的は必ずしも一律ではなく、また、 経営への関わりの度合いもその目的から当然に定まるものではない」と整 理しています。  その次のパラグラフです。ここは本研究会を開催するに至った問題意識、 被買収企業が短期間で収益を上げようとしているのではないか、あるいは 労働条件に積極的に関与しているのではないかという2点の問題意識があ ったところです。たたき台の時点では、そこの2つの問題意識について、 ヒアリングの結果を見ると必ずしも当たっていなかった、ということを書 いていたのですが、その2点がそれぞれどのように当たっていなかったの かということを整理して、今回出しています。「ヒアリング結果を見ると、 次の二点においてすべての投資ファンド等にこのような問題意識が当ては まるものではないことが明らかとなった」として、第一に、投資期間を中 長期とするものがあったという点で、第二に、収益を挙げるための具体的 な経営についても、被買収企業の経営陣に任せることが適当であるとの考 え方が示されたことから、全ての投資ファンド等が、被買収企業の労働条 件に積極的にかかわることになるわけではないと判断されるという点で、 この2点において、必ずしも問題意識が当たっていなかったということを 整理しました。  5頁のいちばん下のパラグラフです。「以上を踏まえると」のところで す。ここについては、具体的に投資ファンド等の使用者性についての判断 をしています。投資ファンド等の使用者性については、前回たたき台の時 点では、投資ファンド等が被買収企業の株式を保有する目的や当該目的に 基づいて株主としての権利を背景にどのように影響力を行使するかが一律 ではないということからすぐに、親子会社間の親会社あるいは純粋持主会 社の使用者性が当てはまる、と書いていたところですが、論理的に飛躍も ありましたので、少し丁寧に書いています。「投資ファンド等の「使用者 性」については、投資ファンド等が被買収企業の労働条件を実質的に決定 しているといえるか否かに着目して判断することが適当」と。この点を考 慮しますと同様に、親子会社間の親会社や純粋持主株会社に係るこれまで の使用者性に関する考え方が基本的には該当するのではないかと考えられ ます。即ち投資ファンド等の使用者性につきましても、「基本的な労働条 件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体 的に支配、決定することができる地位にあるかどうかにより判断すべきで ある」という整理をしています。  その次のパラグラフで、「使用者に当たることになるかを」のところで アンダーラインを引いています。ここは前回は朝日放送事件の判例で、「 基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に、 現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある」というとこ ろを引いていたのですが、それを前段落で記述しましたので、ここについ ては「使用者に当たることになるかを」ということで簡単に書いています。 これを整理したということです。  それから「なお、本研究会においてヒアリングを行った投資ファンド等 は」のパラグラフです。ここでは法人格を有さない投資ファンド等につい て記述をしています。前回のたたき台の時点では、法人格を有さない投資 ファンド等の記述については、3の(1)で、ヒアリング結果について簡 単にまとめたところでも触れていましたが、内容が重なっていましたので、 ここは1箇所に整理しました。「本研究会においてヒアリングを行った投 資ファンド等は、すべて法人格を有するものであるが、投資ファンド等の 中には法人格を有さない民法上の組合等の形態をとるものも多いと考えら れる」という形で整理をしました。  また、前回お出ししたときは、法人格を有さない投資ファンド等の意思 決定プロセスが不明確である、といった記述もあったところですが、これ については「必ずしも不明確とは言えないだろう」というご意見もいただ きましたので、そこについては記述を控えています。  大きな4番です。「企業買収の際に良好な労使関係を構築するための留 意点」、「留意点」のところにアンダーラインを引きましたが、これは前 回は「ポイント」と書いていましたが、報告書用に語句を修正したという ことです。  留意点としては3つ書いています。1つ目が「投資ファンド等の使用者 性」で、これは投資ファンド等であっても使用者であることを認識してい ただく必要があるということです。  7頁です。(2)で「被買収企業における誠実な団体交渉及び労働協約 の効力」ということです。ここでは、まず前段のところは、被買収企業に おける労使交渉がきちんと行われることが必要であるということです。「 また、労働条件決定プロセスの一環として」のパラグラフですが、こちら は前回お出ししたときは、被買収企業が団体交渉を行うことが重要、と書 いていたつもりだったのですが、読み方によっては投資ファンド等が団体 交渉を行うようにも読めてしまうということでしたので、ここについては 文章を整理しました。「労働条件決定プロセスの一環として団体交渉が重 要であり、被買収企業が労働組合からの団体交渉の申し入れに対し誠実に 対応する必要があることは言うまでもない」と整理をしまして、その上で 「投資ファンド等もそのことを認識する必要がある」という書き振りにし たいと考えています。  (3)です。「事前説明、意見交換の場の設定」ということです。こち らについては、ヒアリングの中で労働組合から、「投資ファンドが入って くることに対して不安がある」ということもあったことを踏まえて記述し ています。  「このため、投資ファンド等による」のパラグラフの後段で、「その際、 労働者や労働組合への説明をすみやかに行うことが望ましい」とあり、こ こについては前回は「インサイダー取引に結び付かないよう買収計画又は 買収事実の公表後すみやかに行うことが望ましい」と書いていたところで すが、ここで言いたいことは、なるべくすみやかに労働者や労働組合への 説明を行うことが望ましいということですので、こちらを前面に出して、 但し書きとして、「インサイダー取引に結び付かないように」という記述 にしたいと考えています。以上、修正点を中心にご説明させていただきま した。 ○ 西村座長  いまの報告書案について、ご意見、ご質問がありましたらお願いします。  細かいところなのですが、1の「はじめに」のところのいちばん最後の 段落ですが、「これらのヒアリングや調査を踏まえて、整理したところで あるので、ここに報告」と、「何々したところで」というのは上にもある ので、「整理したので」でいいのではないかと思うのですが。 ○ 金谷参事官補佐  わかりました。 ○ 西村座長  2頁のウのところで、「一組合がこれこれ、また一組合はこれこれ」と 出ていますが、ここの一組合というのは同じではありませんでしたか。 ○ 金谷参事官補佐  同じです。 ○ 西村座長  だから、「一組合はこれこれ申し入れたことがあるとしていた。また一 組合」とあったら、これはこれでいいのですかね。「その組合は」とか、 「同組合は」とか、これだけを読むと他の人は別の組合と思ったりするよ うな感じがしませんか。  5頁で、これも文章の問題で、(3)の2段落目の「同様に」というと ころですが、「同様に親子会社間の親会社や純粋持株会社があるが」、こ れ「が」できているのです。ずっときて、その4行下に「異なっていると 考えられるが」となっていて、「が」が2回続くというのは、あまり気持 がよくないので、2回目の「が」のところは、「異なっていると考えられ る」、こういったときに「しかし」でつなぐのはおかしいと言われるので すが、少し工夫があったほうがいいかと思います。荒木先生、いかがでし ょうか。 ○ 荒木先生  そうですね、「が」、「が」は続けないほうがいいですね。 ○ 西村座長  2つ目の「が」を取って句点にして、「しかし」か何か、「しかし」で 続いてもおかしくないですかね、また考えていただきたいと思います。私 が気が付いたのはその程度で、あとは非常にすっきりしたような感じがし ます。他にいかがでしょうか。 ○ 山川先生  これも表現上の問題ですが、2頁の「アメリカでの実態」の(2)の下 から2つ目の段落の2行目で、「使用者が交渉単位の過半数を代表する者」 という表現ですと、交渉単位が複数あってそれを代表するものみたいです が、「交渉単位の過半数労働者を代表する」とお直しいただければと思い ます。 ○ 西村座長  交渉単位の過半数労働者ですね。  6頁は前にもらったものでは、真ん中の辺りですが、「意思決定のプロ セスが外部から見て明確でない云々」という言葉がもう省かれています。 このほうがすっきりするのですが、これでいいですかね、実態が十分に把 握されていないということでということですね。このほうがすっきりはし ていますが、「実態が十分に把握されていない」と。前は、はっきりと「 外部から見て明確でない、どういう意思決定が行われているかわからない 」となっていて、これもいい文章だとは思うのですが。 ○ 荒木先生  その部分について、個別、具体的な事案に即して意思決定を行った者の 特定も含めて判断するということで受けているということなのでしょうね。 ○ 西村座長  確かに世上、いろいろ取沙汰されているのを見ていると、本当にどうい う形で意思決定が行われているのかがよくわからないようなケースがあり ます。かつては「ポイント」だったのが、4では「留意点」となっていま すが、これはこのほうがいいですか。 ○ 金谷参事官補佐  ここは語句を整理しました。 ○ 西村座長  他にございませんか、小畑先生はよろしいですか。 ○ 小畑先生  はい。 ○ 西村座長  柳川先生はいかがですか。 ○ 柳川先生  すっきりまとめていただいて、結構だと思います。 ○ 西村座長  非常に短い時間でしたが、ご意見が出尽くしたようですので、本日いた だいたご意見については、報告書案の修正が必要となるものについては、 若干の文言の整理等を行った上で報告書としたいと思いますが、よろしい でしょうか。 (異議なし) ○ 西村座長  ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。最後 に太田政策統括官よりご挨拶がございます。 ○ 太田政策統括官  本日は本研究会の報告書を取りまとめいただきまして、本当にありがと うございました。ちょうど1年前の昨年5月から、第1回研究会を開催さ せていただきまして、大変お忙しい中、10回にわたって、皆様方、精力的 にご議論をいただいた結果でございまして、本当に心から御礼申し上げる 次第でございます。  この報告書、最近注目されております投資ファンドにつきまして、その 使用者性の問題、あるいは企業買収の際に良好な労使関係を構築するため の留意点など、労働法とか会社法の観点などからご検討いただいた内容を 盛り込むことができまして、大変意義のあるものとなったと考えておりま す。私どもとしましては、本研究会報告書に沿いまして、良好な労使関係 が構築されますように、今後とも鋭意努力をさせていただきたいと思って おります。  また、この研究会の1つのきっかけになりました東急観光事件、これも こういう研究会があったということもあって、労使間でかなり話が進みま して、円滑に話が進んで、和解が成立して、取り下げたというような経緯 もございますので、合わせてご報告いたします。  今後とも、皆様方におかれまして、厚生労働行政につきまして、より一 層のご指導、ご協力を賜りますようにお願いを申し上げまして、御礼のご 挨拶とさせていただきます。どうも本当にありがとうございました。 ○ 西村座長  本日はこれで終わります。皆様、ご多忙の中、貴重なご意見をありがと うございました。 照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第三係 上野  TEL 03(5253)1111(内線7748)03(3502)6734(直通)