06/04/06 平成18年4月6日先進医療専門家会議議事録 06/04/06 第9回先進医療専門家会議 議事録 (1)日時  平成18年4月6日(木)15:00〜 (2)場所  厚生労働省17階 専用第18会議室 (3)出席者 猿田享男座長 吉田英機座長代理        越智隆弘構成員 金子剛構成員 佐伯守洋構成員 笹子充構成員        竹中洋構成員 田中憲一構成員 田中良明構成員 寺岡暉構成員        樋口輝彦構成員 福井次矢構成員 渡邊清明構成員 <事務局> 企画官 歯科医療管理官 薬剤管理官 他 (4)議題 ○先進医療の科学的評価(2月受付分)について       ○先進医療の届出状況(3月受付分)について       ○その他 (5)議事内容 ○猿田座長  年度始まりでお忙しいところを第9回の先進医療専門家会議にお集まりいただきまして、 どうもありがとうございました。  早速、会を始めさせていただきたいと思いますが、その前に本日の構成員の出欠状況で ございます。片山構成員、北村構成員、谷川原構成員、辻構成員、坪田構成員、永井構成 員が御欠席でございます。  まず、2月に届け出がありました新規技術に関しまして先生方から事務局の方に御意見 も来て事前評価がされておりますので、そこから入らせていただきたいと思います。それ では、御説明をよろしくお願いいたします。 ○医療課企画官  それでは、御説明させていただきます。お手元の資料の先−1をごらんいただきたいと 思います。  まず、1ページでございます。先進医療の届け出状況について、2月受け付け分という ことで先ほど座長からお話がございましたが、2月分の受け付けを一覧表にしたのがこの 1ページにお示ししたものでございます。整理番号がいろいろついてございますが、2月 受け付け分といたしましては、こちらにお示しをしてございます7件でございます。  これらの技術につきまして、事前評価結果等についてその概要を2ページにお示しをし てございます。こちらの表を用いまして、簡単に概要を御説明させていただきたいと思い ます。  まず、整理番号8の先進医療名といたしましては「強度変調放射線治療」でございます。 こちらは事前評価につきまして担当構成員田中先生にお願いいたしまして評価をしていた だいてございます。詳しい内容につきましては、後ほど田中構成員の方から御説明があろ うかと思いますので、省略をさせていただきますが、総評といたしましては「適」という ことでございます。適応症は「固形悪性腫瘍」でございます。評価の詳細は別紙というこ とで、こちらは後ほど田中先生からお願いいたしたいと思います。  整理番号の22番でございますが、「自家新鮮非分離骨髄細胞導入コラーゲンマトリック スによる組織再生療法」でございます。こちらはその他のところをごらんいただければと 思いますが、当該技術に係る材料、これは真皮欠損用のグラフトの使用方法が薬事法上の 適用外使用に該当するということでございます。具体的には、真皮欠損用のグラフトとい うのが、基本的には欠損部の皮膚のところをきれいにしてから、そこにそのままお使いい ただくという形の使用法になってございまして、一方、22番で提案されているものについ ては、このグラフトを骨髄液の方に一旦浸して使うというところで、そういったところで この使用方法が薬事法上の適用外使用に該当するという判断になっているということでご ざいます。  23番の「伝送心電図による発作性不整脈および狭心症の在宅先進医療」でございますが、 こちらは既に保険適用されている技術であるということを確認いたしてございます。これ は心電図の検査のところに携帯型の発作時心電図記憶伝送装置を用いた場合のものがござ いまして、そこに該当するということで、既に適用済みのものであるということでござい ます。  24番の「笹田式屈曲生検鉗子(ATAF)を用いた経気管支生検法」でございますが、 こちらも既に保険適用されている技術であると。経気管支の肺の生検法というものに具体 的には該当するものということでございます。  25番の「難治性自己免疫疾患における抗CD20抗体療法」でございます。これは当該技 術で使用しますリツキサン(rituximab)が薬事法上の適用外使用に該当ということで、こ のリツキサンにつきましては、御承知のように、CD20陽性のB細胞性非ホジキンのリン パ腫に対する薬ということでありまして、適応外になってしまうということでの判断でご ざいます。  26番の「骨髄由来幹細胞を用いた歯槽骨再生療法」につきましては、書類記載不備のた めに返戻をしている状況であるということでございます。  27番の「顕微鏡統合型手術支援システムによる脳神経外科手術」でございますが、これ は現行、高度先進医療の画像支援ナビゲーション手術と同一技術であるということで、高 度先進医療の方にその適応を申請してくださいということで、届け出をしたところについ ては説明をして了解をいただいているということでございます。  届け出状況と事前評価結果の概要につきましては、以上でございます。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。  構成員の先生方、何か御意見はございますでしょうか。今、全体的な御説明をいただき ましたけれど、2月はかなり出していただきましたが、保険外適用の問題とか、あるいは 薬事法の問題が引っかかるとところがあります。もう少し全体的な理解を出される方がし ていただくとこういうことはなくなると思うのですが、なれてくるまでは仕方ないかと思 いますけれど、今、御説明いただきましたように、8番だけはきょう特に審議させていた だきますが、22番、23番、24番、25番、26番、27番の6件に関しましては、1つのものは 記載上の不備ということでこの次に出てくると思いますけれど、あとは高度先進の方にあ るものと、既に保険適用になっているということでここに該当しないということでござい ます。よろしいでしょうか。 ○金子構成員  22番の事前審査を担当させていただきましたので、一言申し上げたいと思います。これ は私どもの方としては、名称と適応をちょっと変更して、「適」ではないかと御返事をさ せていただきました。そして、先ほど説明がございましたように、コラーゲンマトリック スの使用法は、薬事法あるいはこの能書きに書いてあることと多少違うということは確か で、それも検討させていただきました。それで、この正しい用法としては、コラーゲンス ポンジを層内に何も加工しない状態で置いて、貼付したり充てんしてきたりして固定する と。それが正しい用法であります。  それで、この提案された方法はそれに骨髄液を浸すということで、多少違うのですけれ ど、層内に置いてきても、結局は周囲から御自分の血液が当然出てきて、それで浸される わけでありますし、この場合は骨髄液を特別な加工をしたり何なりということはないわけ で、どちらかというとそのまま場所は移動してきたみたいな形になりますから、この程度 のことであれば、あるいはちゃんと説明をした上で使うということは可能ではないかとい うことで、全体としては「適」であると判断させていただいたということです。 ○猿田座長  ありがとうございました。  今、金子先生から御説明がありましたけれど、事務局の方、それに対する何か御意見は ございますでしょうか。 ○医療機器審査管理室長  今、金子先生から御指摘がありましたように、これはいわゆる効能書きとしては、熱傷、 外傷、手術創及び口蓋裂等の重度の皮膚の粘膜の欠損修復に用いるということで、こうい うものを骨髄細胞、スキャフォードのために使うということを想定していない状態でもっ て安全性・有効性を確認して承認したものでございますので、これに関しては効能追加を するというのがまず薬事法の上では有効性・安全性の立場からの原則ということで、その ような取り扱いとなっているものでございます。 ○猿田座長  ありがとうございました。なかなか厳しいところでございまして、今のようなことで一 応薬事法に触れるということなんですね。 ○金子構成員  まあ、そうかなと思うのですけれど(笑)。例えば、去年、医師会でも適応外使用でい ろいろなアンケートをとられて、こんなにございましたね。例えば、形成外科分野では、 植皮をするので皮膚をはがすときに、皮膚の皮脂をとるために、麻酔薬のエーテルをそう いう目的に使ったり、あるいは最近はエーテル自体がないので、院内でかき集めるとアセ トンがあるんですね。アセトンは院内で機械の洗浄などに使っているのですが、それ以外 にないので、それをちゃんと院内の書式に沿って適応外使用の御説明させていただいて使 っていると。  そういったことも現状としてはありますので、それと比べるとこれははるかにましでは ないかということで、これもだめだったら、あれもだめ、これもだめで、例えばこのコラ ーゲンマトリックスに関しては、βFGFといった製剤を途中から使うとか、それにかけ るみたいな形に使ったりとか、そういうことも一切だめということになってしまいますか ら、どの程度までよくて、どれがだめなのか。苦労していろいろな研究をされて療法を開 発して、非常に難しい症例に対して困っている患者さんに対して開発されてきたものです から、それもこれで門前払いというのでは余りにも厳し過ぎるのではないかと感じます。 ○猿田座長  ありがとうございました。確かにこのテクニックを読ませていただきますと非常に価値 ある方法なんですね。けれど、今のところは非常に重要な問題点でございますので、私の 方も事務局とよく対応させていただいて、こういった場合はどのように将来やっていった ら一番いいのかとか、実は今までも随分適応外の問題があってお断りしたのを、それを今 度はどのように直してやっていったらいいのだろうかということも相談させていただいた りしていますので、これはまた後ほどゆっくり議論させていただくということで、今のは 宿題ということにさせていただければ助かります。ありがとうございました。  今のはちょっと違う形で高度先進医療として末梢の循環不全そのほかに対しての移植で もやっていて、いろいろな形をとっていまして、方法は違いますけれど、そういうことで 非常に有力な方法ですから、これはちょっと検討させていただきたいと思います。  ほかにございますでしょうか。もしございませんようでしたら、それでは、最初の8番 でございますが、「強度変調放射線治療」に関しまして、田中先生の方から御説明いただ けますでしょうか。 ○田中(良)構成員  それでは、添付の別紙の資料をごらんください。先進医療の名称を「強度変調放射線治 療」と、これは欧米ではIntensity Modulated Radiation Therapy(IMRT)と言ってい ますが、概念的には、放射線治療というのはリニアックのような直線加速器から放射線が 扇のように放散されて出てくるわけですけれど、その中の放射線の強度(intensity)は従 来の方法では一定で、線束と言っておりますけれど、その中の放射線の強度を治療中に変 えるということで、そういう方法を駆使することによって、以下の内容に書いてあるよう な、これまでにないすぐれた線量分布が得られるということで、欧米などではかなり臨床 応用されております。  それで、適応症でありますが、これは固形悪性腫瘍となっておりますけれど、では、す べて適応になるかというと、より高精度の線量分布を与えることによって治療成績を上げ ようということですから、おのずからその形や大きさや広がりといったことが決まってく るわけですけれど、適応症としてはこのような固形悪性腫瘍という形で書かざるを得なか ったのではないかと思います。  先進性はどういうところにあるかですが、最初の専用の放射線治療計画装置ということ は、強度変調放射線治療に特化した治療計画装置で最適化計算ということですが、ちょっ と専門的ですけれど、今までは我々が例えばこういう線量分布を得たいといったときには、 例えば前から当てるとか、横から当てるとか、斜めから当てるとか、どうしたらいいかと いうことを頭の中で試行錯誤を繰り返して、それを治療計画用のコンピューターに入力し て、それで得られた線量分布を見て一番いい方法を選ぶわけですが、この強度変調放射線 治療の場合には、先に例えばCTなどの画像診断をもとにして治療計画をするわけで、そ のときに腫瘍の病巣にどれだけ線量を与えるか、あるいはその周囲に何か非常に重要な臓 器があって、そこを避けなければいけないというときに、そこの線量をどれだけ減らすと か、そういう照射条件を先に与えることによって、そのような線量分布を得るにはどうい う方向からどういう線量を当てたらいいかということを逆計算するというわけです。それ をInverse Planningと言っていますけれど、それがコンピューターでできるようになった というわけです。  そのように病巣だけに放射線を集中して照射することによって、従来の放射線治療と比 較して周囲の正常な組織への照射を最小限に抑えることが可能となり、そして、患者さん の身体的負担を軽くすることができる。ということで、とりもなおさず病巣部へは線量を 上げることで局所線量率を向上させることがきるというわけであります。  概要の方では、従来の放射線治療というのは、例えば複雑な場合では4門以上とか、あ るいは運動照射とか、あるいは原体照射という方法もありますが、そういう方法などで深 部の悪性腫瘍に高線量を投与できるようになり、根治性が向上してきました。  しかし、中等度以上の体積で広がりのある病巣とか、あるいは重要臓器を悪性腫瘍が取 り囲んで中央部がへこんだような凹型の分布が必要なときには、従来の方法ではそういう 形の線量がなかなか得られないということで、至適な線量を投与することができなかった わけです。  本治療法では、直線加速器(リニアック装置)による高エネルギーのエックス線を用い て最適化計算を利用し、そして正常臓器と悪性腫瘍病変が複雑に隣接する場合でも、その 病巣部のみに高い線量を当てることができます。基本的には、100門以上というと非常に多 数の門数ですが、そういうものを複雑に組み合わせて、複雑な形状をした照射野に対して もいろいろな方向から照射して、それで目的とする病巣部へ治療線量を投与するというこ とであります。  重要な臓器は避けれるということが非常にこの治療法のメリットでありまして、それに よって例えば脊髄の神経を避けなければいけないとか、あるいは重要な血管を避けなけれ ばいけないとか、あるいは頭頸部腫瘍の領域では唾液腺などは放射線によって組織がダメ ージを受けますと後々までに唾液腺の分泌障害などが起きて患者さんが苦しむわけですが、 そういうことに対しても対応できるということであります。  問題は、そのような高精度の線量計算をして治療をするわけですから、患者さんの位置 固定が大事であるということで、それが定位的にセットアップされる必要があります。具 体的には、検証期間として、ここには1〜2週間程度と書いてありますが、コンピュータ ーで計算した線量の中身が実際に行われるかというのを、模擬実験といいましょうか、人 体と同じような構造をしたファントムを用いて、それで線量の最適化を図って、それを検 証する必要があるというわけであります。  このために、高速の多段絞りと書いてありますが、ビームの照射中でも、リーフと言い ますが、照射口に取りつけた絞りが出たり入ったりするような、そういう非常に複雑な仕 組みを持ったマルチリーフコリメータのような周辺機器類が要ります。  このような治療をしますと、効果としては、周囲の正常な組織への照射を抑えることが できて、治療後の副作用が減少することになり、腫瘍の局所制御率の向上、生存率の向上 が期待できるというわけであります。  実際の先進医療に係る費用としては、この申請書では自己負担分が72万3,000円(一連) となっております。それから、特定療養費(保険給付分)が37万3,000円で、これは通院で 30日間ということであります。  以上が概要であります。  それで、届け出の書類に基づきましていろいろ審査をさせていただきました。次のペー ジに事前評価のまとめがなされておりますが、先進技術としての適格性については、名称 は「強度変調放射線治療」でよろしいでしょうと。  そして、適応症も固形悪性腫瘍については妥当であると。  有効性はAで、従来の技術を用いるよりも大幅に有効であろうと。これは局所制御の向 上もそうですし、副作用の軽減ということも従来にない治療効果だと思います。  安全性は、Bとしました。これは余り問題なしとしましたけれど、では、全然副作用が ないかというと、対象となっている臓器によっては患者さんに少なからぬといいましょう か、例えば臓器の機能について急性ないし晩発性の合併症まで含めますと、多少は問題に なるかもしれません。しかし、Cほど問題があるような重篤な副作用はありませんので、 一応ランクとしてはBとしました。  技術的成熟度ですが、これはBのランクで、当該分野を専門として数多くの経験を積ん だ医師または医師の指導下であれば行えるというわけであります。今、放射線治療はほと んどの病院・施設では治療計画用のコンピューターを使っておりますので、それに習熟し ておれば、その上にこの「強度変調放射線治療」のことをつけ加えるということはそれほ ど困難ではないと思っております。  社会的妥当性(社会的倫理的問題等)についても、特別問題はないであろうと。  現時点での普及性は、罹患率、有病率から勘案して普及しておりません。一部の臨床的 なトライアルとして行われている数施設ぐらいであって、根治的な放射線治療を対象とす る疾患の発生率ということから考えますと、余り普及していないというランクになります。  効率性ですが、これは既に保険に導入されている医療技術に比較しまして、やや効率的 であろうと。この効率性ということは私もちょっと判断に迷ったのですが、例えば、従来 の放射線治療では、腫瘍は制御されて局所はよく治っているのだけれども、消化管の副作 用で悩んでいるとか、そういう場合にはそちらの医療費がかかるわけですが、そういうこ とはこの強度変調放射線治療を行うことによって軽減されれば、効率性についてはやや効 率的ということになるだろうと思っております。  保険収載の必要性ですけれど、将来的にこの技術が安全に行われて、有効性や効率性に ついても認知されれば、保険収載を行うことが妥当ではないかということで、総合判定は 「適」としました。  コメントとして、当該技術を行う施設は、線量分布などで治療効果を評価できる診療体 制が不可欠であるということで、これは次の品質管理のところにもかかわりますが、次に 進んでよろしいでしょうか。  最後のページですが、当該技術の医療機関の要件のところで、まず、Iの実施責任医師 の要件でありますけれど、診療科は放射線科という科が必要である。  資格は「要」で、どういう資格かというと、「日本医学放射線学会の専門医」というわ けであります。少し詳しく言いますと、この医学放射線学会の専門医は、現在は、2次試 験においては診断部門と治療部門とに分かれておりますが、名称は「医学放射線学会専門 医」でありますので、資格としては一応この資格が要るだろうということにさせていただ きました。  それから、診療科の経験年数は最低でも5年が必要であろうと。  当該技術の経験年数ですが、これはやはり1年ぐらい必要ではないかと思っております。  当該技術の経験症例数ですが、これは手術でいえば、術者と、あるいは助手との関係も あるのですけれど、放射線治療の場合には、治療計画を立てて、それで実際に治療をして フォローアップをしているというふうに、責任を持ってやっているということで、そうい う患者さんを10例以上はやっている必要があるのではないかと思っております。  IIの医療機関の要件ですが、実施診療科の医師数が放射線科で常勤の医師が2名以上要 るということで、「要」としました。  他の診療科の医師数は、特別これがないといけないという診療科はございませんので、 「不要」。  看護配置も、このために特別という意味では「不要」としたわけです。  その他医療従事者の配置ですが、これは放射線治療を行うには、診療放射線技師、特に 放射線治療の経験を5年以上有する常勤の診療放射線技師が2名以上要るということで、 「要」。  病床数は、このためには「不要」であります。  診療科は、これは放射線科が「必要」である。  当直体制は、特別に要らないであろう。  緊急手術という体制も特別には必要ないであろう。  他の医療機関との連携体制も「不要」。  院内検査についても、24時間でなくても、それは病院としては当然持っていると思いま すが、この先進医療技術としては「不要」であろうという意味であります。  医療機器の保守管理体制ですが、これは非常に大事なわけでして、精度管理をきちんと やっているということが必要である。  倫理委員会による審査体制も必要であろう。これは前のページでは倫理上では特に問題 ないと申し上げましたが、精度の高い非常に微妙な位置合わせを行いながらやっているわ けですので、それだけ時間もかかるということもありますし、患者さんの協力なしには行 えないような医療ですので、倫理委員会があった方がいいであろうと。  医療安全管理委員会ですが、リスクマネジメントについても、何かあったときのことを 考えますと、やはり最初からそういう委員会が設置されている必要があるであろう。  医療機関としての当該技術の実施症例数は、先ほどの実施責任医師のところにも書きま したけれど、10例以上は必要であろう。  その他として、この強度変調放射線治療を行うには、現在の保険診療の中では、「直線 加速器による定位放射線治療の届け出を行った保険医療機関」という届け出で初めて定位 放射線治療ができるという医療機関の要件がありますので、それを既に行っている施設で、 その上で初めてこの治療ができるのではないかということで、こういう要項を加えさせて いただきました。  IIIのその他の要件として、頻回の実績報告ですが、これはそれほど要らないのではない かということで「不要」ですが、ただし、年1回は実績報告が必要であろうとさせていた だきました。  以上です。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。  御丁寧に御説明いただきましたが、どなたか御質問はございますでしょうか。 ○田中(憲)構成員  対象疾患についてですが、「固形悪性腫瘍」というのは余りにも広い感じがいたします。 施設の倫理委員会による審査体制が必要となるのであれば、もう少し対象疾患を狭めた方 がよいような気がいたしますが、いかがでございましょうか。 ○猿田座長  いかがでしょうか。 ○田中(良)構成員  昨年、第1回目にこの「強度変調放射線治療」が出てきたときの届け出の内容には、 「固形悪性腫瘍(ただし、腫瘍制御線量が隣接臓器の耐容線量を超える場合)」というよ うな項目が上げてありました。どういうことかと言いますと、非常に重要な臓器が隣接し ている場合には、その耐容線量というものがあるために十分な腫瘍制御線量が照射できな いということがあるのですが、そういう場合にこそ、この「強度変調放射線治療」がいい という意味合いなんです。  そして、2回目のときには、結局その文言が落ちていたのですが。ですから、それを復 活させるかどうか、あるいは別なもう少しすっきりしたような適応症に関するネーミング ができれば、この専門家会議で議論していただいても結構なのですけれど。 ○猿田座長 そのあたりはいかがでしょうか。難しいところですけれど。今までもいろい ろな診断とかで、例えばDNAを使っているのを固形腫瘍の診断というのは高度先進医療 では通っているんですね。そして、具体的にどの腫瘍と書くとかかなりの数になってしま うんですね。そのあたり、事務局の方は何か御意見はございますか。今の固形腫瘍という ことで。 ○医療課企画官  特に現時点でこういう方向というのはないのでございますが、議論をできれば深めてい ただいて、そういう形の中でよりよい形にしていっていただければと思います。私ども事 務局としても、確かに「固形悪性腫瘍」ということですと随分漠然としているなという部 分も一方では感じつつ、実際、この医療機関の症例などを見てみますと、前立腺の腫瘍と か、それ以外に幾つかという形なのですが、頻繁にやられているような形で絞るのか、そ れとも、今、先生が御指摘されたように、要は、組織の耐容線量との関係の中で必然的に こういったものが必要であって意味があるということで、別の形で絞るのか。それとも、 まずはこういう形で走って、そのかわりに、例えば報告などを頻繁にしていただいた中で 見直す機会を早目に持つというような形にするのか。そういったことも含めまして御議論 いただければと思います。 ○猿田座長  ありがとうございました。  どなたか、御意見はございませんでしょうか。 ○越智構成員  概要の文章の下から2〜3行のところを見ますと、この方法としましては、「病巣は定 位放射線治療に沿って定位され、専用の放射線治療計画装置により最適化計算され、1〜 2週間程度の検証作業のあと、高速多段絞り内蔵の直線加速器で照射される」と、かなり 微妙な調節が必要なのだろと。キーポイントは、治療計画用のコンピューター、ソフトを うまく使いこなして、ここに書いてあります100門以上の複雑な形状の照射などを調整する のだということで書かれていますが、これで放射線学会専門医と放射線技師2名というの でいいのかなと。  コンピューターの操作に非常にたけた臨床工学技士などが必要ではないのかなという気 がするのですが、通常の放射線技師2名と放射線科医師1名でできると考えていいのでし ょうか。 ○田中(良)構成員  越智先生から御指摘の点ですが、ここで私が最初にコメントを書いたときには、その辺 のところの品質管理や検証をきちんとするためには、例えば放射線治療の品質管理士とい うものが昨年度から制定されていますが、医学物理士ですけれど、そういう方が必要では ないかということで、医療機器の保守管理体制のところに私としては括弧書きで実は書い ておいたのですけれど。  事務局の方では、この放射線治療品質管理士というのが、日本医学放射線学会を始め、 日本放射線技師会も含めて、5つの団体で成っている品質管理機構というものがあり、そ こで制度化されたのであって、社会的にはまだ認知されていないということがあって削ら れたかもしれません。  ただし、昨年ですけれど、もう既に確か355名ぐらいの品質管理士の認定がなされており まして、これは急速に普及しておりますので、できたらそういう品質管理を行う専門の技 士のスタッフが必要であるということをここに書いていただいても結構ではないかと思っ ております。 ○猿田座長  ありがとうございました。  ほかに御意見はございますか。今のような形でそれを加えてみたらどうだろということ でございますが、越智先生、そのあたりはどうですか。 ○越智構成員  その方が確実かなという気がしまして。表現すれば簡単なように聞こえますが、実際上 はコンピューターできちっと的を絞るのはそんなに簡単ではないと思います。 ○猿田座長  ありがとうございました。  ほかに御意見はございますでしょうか。先ほどのところに戻りまして、固形腫瘍という 点ではどうでしょうか。今、高度先進医療では、固形腫瘍のDNA診断というのは通って いるんですね。それは固形腫瘍として、最初はいろいろ書いてあったのですが、固形腫瘍 のという形で通ってはおるんですね。ですから、それに合わせて……。 ○田中(良)構成員  適応で、余りにも広いということであれば、例えば根治性の高いといいましょうか、例 えば多数の転移を伴っているとか、非常に広範囲に進展しているとか、そういうのは、固 形腫瘍ではあるかもしれませんけれども、ちょっと適応にはならないだろうと。ですから、 ある領域にとどまっている、しかも患者さんの一般状態とか、いろいろなことを考えても、 きちんと局所を制御することによって、QOLもいいし、それから高い生存率といいまし ょうか、そういうことを期待できるというときにこれを適応するのであって、いわゆる姑 息的な放射線治療のときに使う技術ではないと思っています。 ○猿田座長  ありがとうございます。  ほかに御意見はございませんでしょうか。でも、なかなか難しいですね。境界域の絞り ですね。 ○吉田座長代理  同じ問題が前立腺がんにもございまして、例の密封小線源療法がそうですけれど、あの ときも申請は「限局性」という名前が出たんです。今、田中先生がおっしゃった意味は、 その「限局性」ということが入れば多分統一できるのかなと思うのですけれど。  それから、先ほどの技術士の問題ですけれど、密封小線源療法も非常に細かいコンピュ ーターを使うんです。けれど、実際に訓練してきた医師と放射線技師がいればほぼ簡単に できるんです。プレプランニングと言いますけれども。ですから、専門の工学士はいなく ても、業者の技術者も居ますので。それから、ちょっと訓練を受ければ、多分自動的にワ ーッといっちゃうんです。これは多分立体照射ですので、ちょっと覚えれば、立体的にこ ういうのはあとどれぐらい照射を当てるとか決まるんです。ですから、前立腺も、この部 分には線量を2本入れるとか、ここに5本入れるとかというのはもう必然的に決まってし まうんです。ですから、そんな高度な物理士はいなくてもできるかなと思います。 ○猿田座長  ありがとうございました。  今の「限局性」というのをつけるかどうかというのは、どうでしょうか。そうすれば確 かにかなり限られたことになるんですね。事務局の方、そのあたりはどうですか。 ○医療課企画官  「限局性」ということでよろしいのではないかと思います。 ○猿田座長  つけてよろしいでしょうか。 ○医療課企画官  はい。 ○猿田座長  もしよろしければ、そうすると少しクリアになると思うのですけれど。  ほかにどうでしょうか。 ○竹中構成員  耳鼻科もよくお世話になるのですけれど、当然、粒子線治療とは違って、放射線感受性 があるということがつくのではないかなとは思うのですが、そこはいかがでしょうか。 ○田中(良)構成員  放射線治療の適応となりますと、組織レベルで見て感受性の中等度とか、あるいは少し 低いのではないかと思われるものにもやらざるを得ないわけですね。感受性で決まります と、どうでしょうか、その適応について、じゃあ、どうやってその感受性のよしあしを事 前にキャッチするかというのも……。 ○竹中構成員  しかし、例えばadenoid cystic carcinomaのように、もう効かないであろうとほぼ推測 されるようなものがございますよね。ああいうものはどうなのでしょうか。 ○田中(良)構成員  ただ、これの治療は、今までの一般的なやり方では余り効果は認められなかったけれど も、線量を上乗せすることができるようになったために、あるいは将来的に治療効果が 我々が予想しているよりも上回ったものが得られる可能性はあると思うのです。  例えば、皮膚科の悪性黒色腫なども非常に抵抗性なのですけれど、そういうものもある いはこれを行うことによって、例えば80 Gyとか、100 Gyとか、そういう線量が当てられる ようになると、それなりのコントロールも得られるかもしれません。 ○佐伯構成員  小児の立場から質問をしたいと思います。小児の悪性腫瘍、固形腫瘍は、いろいろなと ころに転移をして、その転移巣に対して放射線療法をするということもままあるわけです が、先ほどの「限局性」というのをつけてしまいますとその辺の適応がなくなっていくと 思うのですが、そこはいかがでしょうか。 ○田中(良)構成員  しかし、例えば腹腔内にdisseminationしているとか、骨盤腔内にdisseminationしてい るとか、そういうたぐいのものは確かにここから外れますけれど、例えば、neuroblastoma でparaaortaに沿って広がっているとか、そういうものはそこへ集中的に当てることによっ て腫瘍制御が得られるというふうなねらいであれば……。 ○佐伯構成員  例えば、今出ましたneuroblastomaで眼窩に転移している場合に、そこにかけますね。そ のような場合にも、こういう技術を使えれば、ほかの重要な機能が損なわれないで済むと いうことがあるので、そういうところも含めて適応にしていただければと思うのですけれ ども。 ○田中(良)構成員  それは概念としては、やはり「限局性」と見なされるのではないでしょうか。例えば眼 窩の裏に眼球をプロテクションしながら治療するという意味では。 ○佐伯構成員  わかりました。そういう解釈であれば、はい。 ○猿田座長  それから、もう一つちょっと気になるのは、これは結構値段が高いですよね。これはや むを得ないのでしょうか。 ○田中(良)構成員  これは申請書を見ますと、医療機器のたぐいと人件費と、それから品質保証といいまし ょうか、線量を検証するのにそれだけ時間がかかるということで。代表例で、分割照射で 30回治療した積算点数がそこに書いてあって、自己負担分が72万円ぐらいになるという計 算です。これがもう少し普及して、汎用型といいましょうか、治療計画についてももう少 しスピードアップされて、検証するのも、恐らく症例数が重なってくると、そういう蓄積 されたデータで検証する手間暇が減ると思いますので、将来的にはもう少し下がると思う のですけれど。 ○猿田座長  ありがとうございました。  先ほどの「限局性」というのはそのように少し幅広くとっていただいて、ただ固形にし ようというだけよりは、その方がいいかなということです。  それから、先進医療にかかる費用としてはちょっと高いのですけれど、今のようなお話 で、この症例がもっと増してくればということです。  ほかにどなたかございませんでしょうか。 ○越智構成員  先ほど、非常に細かいコンピューター操作だろうから、コンピューターにたけた臨床工 学士などは要らないかという御質問をさせていただきましたが、吉田先生が「いや、放射 線技師でできるよ」ということを後で追加しておっしゃいましたけれど、もし普通の放射 線技師で操作できるぐらいシステムが開発されているのでしたら、先ほどの臨床工学士は 必要ではないかというのは取り消させていただきます。どんな機械かわからなかったので、 複雑なのじゃないかと思いましたので。 ○猿田座長  そこは検討させていただきたいと思います。  ほかにございませんでしょうか。大体そんなところでしょうか。少しでもこういった悪 性腫瘍に対する治療の方法というのが効果的なものであれば、できるだけ許可していくこ とが大切だと思いますので。今、特に問題としていただいたことはもう一回検討させてい ただいて、よろしければこれは許可する方向へ進めていこうと思いますけれど、よろしい でしょうか。  それでは、そういう方向でさせていただきたいと思います。どうもありがとうございま した。  先ほど御説明いただきましたように、後のものに関してはちょっと問題点があるので、 一部、少し書き方が悪いということで戻しているものがありますので、これはまた戻って くると思いますが、あとのものに関しては、先ほどお話しいただきました特に薬事法上の 適応外の使用に関しましては、事務局とまた検討させていただいて、どういう方向で行け ばいいかと。  要するに、非常に効果的に考えられた治療法であれば、できるだけそういうものは何と かうまく通して、患者さんのために少しでも役立つ方に持っていく方がいいものですから、 それをどのようにやったらいいかということも少し考えさせていただきたいと思いますが、 もしそういうことであれば、2月分は一部はまた出てくるということで、あとはこの形で 処理させていただくことで、よろしいでしょうか。  よろしければ、それでは、3月の受け付けの方を御説明いただけますでしょうか。 ○医療課企画官  それでは、お手元の資料の先−2をごらんいただきたいと思います。1枚紙でございま すが、3月受け付け分につきましての届け出状況でございますが、こちらにお示ししてご ざいます4件が今届けられているということでございます。事前のチェックなどの点につ きましては現在進行中という状況だと思いますので、また先生方の御協力や御支援をよろ しくお願いいたしたいと思います。  以上でございます。 ○猿田座長  ありがとうございました。  どなたか御意見はございますでしょうか。3月のものに関しては、ここにあるような4 件が出ているということで、今、先生方の方で審査をしていただいて評価をしていただい ていると思いますが、よろしいでしょうか。  もしございませんようでしたら、済みません、きょうもたくさん出していただきながら 議論できるところが余りなかったのですが、先ほど申し上げましたように、まだ出してく る施設の先生方がちょっとなれない部分がありまして、保険適用が通ってしまっているの が出てきていたり、あるいはいわゆる薬事法に問題になるものがひっかかってきたりとい うことでございますが、皆様方からかなり応募があるものですから、これからはだんだん 皆様方は忙しくなると思いますけれど、もし先生方から特に御意見がないようでしたら、 時間はかなり早いですけれど、これで第9回の委員会を終わらせていただきたいと思いま す。どうもありがとうございました。                                    −了−       【照会先】        厚生労働省保険局医療課医療係         代表 03−5253−1111(内線3276)