06/03/29 第1回振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会議事録       第1回振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会議事録                   日時 平成18年3月29日(水)                           14:00〜                        場所 厚生労働省専用第17会議室 ○副主任中央労働衛生専門官   ただいまから振動障害等の防止に係る作業管理のあり方検討会を開催いたします。座 長が選出されるまでの間、事務局で司会進行をさせていただきます。申し遅れましたが、 私、厚生労働省労働衛生課の副主任中央労働衛生専門官をしている吉川と申します。よ ろしくお願い申し上げます。ここで本検討会の開催にあたりまして、労働基準局長から ご挨拶を申し上げるところですが、本日所用により出席することができませんので、安 全衛生部長の小野からご挨拶を申し上げます。なお、小野部長にはこの後、所用がござ いますので、ご挨拶の後に退席いたしますので、ご了承ください。よろしくお願いしま す。   ○安全衛生部長   安全衛生部長の小野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。皆様には日ご ろから私ども行政の運営に対しまして、いろいろな立場からご指導をいただいておりま すことに対しまして、改めて御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。  昨年の秋に特別国会が開かれまして、そこに労働安全衛生法等の改正法案を提出させ ていただきまして、いろいろな審議がございましたが、可決成立をして、この4月から 大部分が施行されるということになっております。この改正法案は安全対策、衛生対策、 化学物質対策全般にわたって、かなり大きな改正の内容になっております。その背景と してはいろいろな重大災害が増えている、あるいはメンタルヘルスの問題、家事労働の 問題等いろいろ行政をめぐる課題が非常に多様化をしてきたということがありまして、 そういった改正になったということです。  いま4月からの施行に向けて、何よりも事業者の方にしっかり周知し、内容を知って いただかなければいけないということで、いま最終の準備をしている段階です。  今日こういう形でお忙しい中をお集まりいただきましたが、後ほど具体的な検討をい ただく内容について説明があろうかと思いますが、林業のチェーンソーの振動障害の問 題は昭和40年代に非常に大きな社会問題になったということを契機にして、私ども行 政としても昭和50年に振動障害防止のための指針を策定しました。その指針に基づい てこの間ずっといろいろな形で指導をしてきて、一定の成果はあったのではないかと思 っております。ただ、委員の皆様方もご承知のように、近年になりまして国際的な動き、 あるいは学会等の動きを見ますと、いまの指針そのものは振動工具の操作時間を1日2 時間以下という形で一律に設定をするというものなのですが、そういう最近の動きを見 ていますと、操作時間に加えて振動レベル双方を考慮したような考え方が出てきており、 具体的な基準設定がなされているという動きがあります。こういった新しい動きを含め ていまの段階で、これからの振動障害の防止に向けて、どういった対応をしていけばい いのか、あるいはどういう基準の設定のあり方が望ましいのか、また作業管理の具体的 な対応策としてどういうものがあり得るのか、その辺りを皆様方にご意見をいただきご 指導いただいて、我々も行政としてこれを対策に活かしていきたいと考えておりますの で、大変お忙しい中で恐縮ですが、ひとつ忌憚のないご意見を頂戴したいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。  大変申し訳ありませんが、ここで中座させていただきますので、後をよろしくお願い いたします。 ○副主任中央労働衛生専門官   続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。最初に次第です。次に配付資料 一覧表です。座席表は一部変更がありますのでご了承ください。資料1−1「振動障害 等の防止に係る作業管理のあり方検討会開催要綱」、資料1−2「振動障害等の防止に係 る作業管理のあり方検討会参集者名簿」、資料1−3「会議の公開の取扱いについて(案)」、 資料1−4「労働災害防止計画(抄)」、資料1−5「振動障害・騒音性難聴における労 災補償状況」、資料1−6「振動に関する労働安全衛生関係法令」、資料1−7「振動障 害の予防対策」、資料1−8「騒音に関する労働安全衛生関係法令」、資料1−9「騒音 障害防止のためのガイドライン」、資料1−10「振動ばく露に関する国際基準等の概要」 です。次に参考1−1「チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について」、参考1 −2「チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害の予防について」、参考1 −3「手持動力工具(チエンソーを除く。)の工具振動レベル測定方法について」、参考 1−4、基発203「振動障害総合対策の推進について」、参考1−5「『危険性又は有害 性等の調査等に関する指針』に関する関係法令」、参考1−6、基発第0310001号「危 険性又は有害性等の調査等に関する指針について」。これは通達です。参考1−7「機械 の包括的安全基準に関する指針について」。以上ですが、お手元の資料はよろしいでしょ うか。  続きまして、委員、事務局の紹介を行います。初めに委員から五十音順で、名簿の順 番にご紹介いたします。  最初に北里大学医学部衛生学公衆衛生学教授の相澤委員です。岐阜大学大学院医学系 研究科産業衛生学分野助教授の井奈波委員です。株式会社マキタ技術研究部調査役の畝 山委員です。名古屋大学医学部保健学科教授の榊原委員です。財団法人鉄道総合技術研 究所人間科学研究部人間工学研究室長の鈴木委員です。独立行政法人産業医学総合研究 所人間工学特性研究部主任研究官の前田委員です。和歌山県立医科大学医学部衛生学講 座教授、宮下委員です。首都大学東京都市教養学部理工学系機械工学コース准教授、吉 村委員です。各委員の皆様の氏名、所属等に誤りはございませんでしょうか。また、変 更等があった場合には事務局のほうにご連絡いただきますようお願いします。よろしい でしょうか。  続きまして事務局の紹介をさせていただきます。先ほど安全衛生部長がご挨拶を申し 上げました。私の隣におりますのが阿部労働衛生課長です。端にいるのが古田主任中央 労働衛生専門官です。私、吉川です。よろしくお願いいたします。  続きまして、次第の2、座長選出に移ります。本検討会における座長の選出方法は、 委員の互選により選出をお願いしたいと思っております。皆さんいかがでございましょ うか。前田委員どうぞ。 ○前田委員   この座長は北里大学の相澤委員にお願いできればと思います。   ○副主任中央労働衛生専門官   ただいま前田委員から、座長として北里大学の相澤委員というご推薦がありましたが いかがでしょうか。                    (異議なし) ○副主任中央労働衛生専門官   特にご異論がないようですので、本検討会の座長は、北里大学教授の相澤委員にお願 いしたいと思います。よろしくお願いいたします。では相澤委員、座長席にお移りくだ さい。恐縮ですが、初めに座長として、一言簡単で結構ですので、ご挨拶をいただき、 その後の進行をよろしくお願い申し上げます。 ○相澤座長   先生方のご指名によりまして進行役を務めさせていただきます。北里大学の相澤でご ざいます。どうぞよろしくお願いします。いま外は桜が満開で、大変立派な花ですが、 この研究会も立派な審議ができることを願っております。先生方はご専門の立場からよ ろしくお願いいたします。簡単ですがご挨拶に代えさせていただきます。それでは資料 1−1に開催要綱がございますので、事務局からご説明をお願いいたします。 ○副主任中央労働衛生専門官   資料1−1「開催要綱」の説明をいたします。その前に資料1−4をご覧ください。 資料1−4「労働災害防止計画(抄)」ということで、労働安全衛生法第6条に基づき、 厚生労働大臣の策定が義務付けられているものです。大体5年に一遍ごと、新しいもの を作っております。これは第10次の平成15年から平成19年までの計画になっていま す。この中に労働災害防止推進の上での課題ということで、健康状況、職業性疾病の発 生状況の中で、騒音障害、振動障害についてまだまだ高い有所見率があります。  これらのことから騒音障害、振動障害の減少を図るためにということで見直しを行う ということと、特にその中でさく岩機、ピックハンマー等の建設作業用の機器により、 騒音障害、振動障害が多発する現状に鑑み、機器を使用する事業者が機器の購入に際し て低騒音・低振動のものを選択しやすくするため、騒音・振動発生機器について、製造 者による騒音・振動レベルの表示の導入を図るという計画があります。この計画に基づ いて本研究会は、これを具体化するための検討を行うという位置づけになっています。  そして資料1−1の開催要綱となります。表題として「振動障害等の防止に係る作業 管理のあり方検討会」という形になっています。趣旨としては、先ほどの資料1−4は、 古いデータを使っているのでそれからは少し減っていますが、まだ振動障害についても 約400人ぐらいの新たな労災認定患者がいます。我が国の振動障害の防止対策について は指針が示されています。これは振動レベルに関係なく、振動ばく露時間を原則として 2時間以下ということで決められているのですが、国際化の中でISO、EU、産衛学 会などという新しい知見に基づくものが出されている。また一方で、振動障害防止とい うのはいかにして低いレベルの機器を導入すれば、より振動障害防止の対策には非常に 効果的ということがあります。そういう意味で、低いレベルの開発をするような形での サゼッションができれば、振動障害防止につながることが考えられます。振動障害防止 に係る、振動レベル・振動ばく露時間の基準、振動工具への振動・騒音レベルの表示方 法について、検討を行うために厚生労働省の労働基準局長が召集する検討会を設置する ということです。一応今年度の秋ぐらいを目途に、一定の結論を出したいと考えている ものです。  いちばん上の表題にありますように、「振動障害等」の等というのは、そういう意味で はこういう振動障害のものは騒音が入りますので、それも含めているという形です。「作 業管理に係る」の作業管理とは、健康診断等の健康管理は今回のこの検討委員会の中に は含まれていない。作業管理の中で検討するという形での検討会ということです。  2のほうで検討内容として、振動レベル・振動ばく露時間の基準、いま言った振動・ 騒音レベルの測定、評価方法、振動工具への振動・騒音レベルの表示方法、その他とい うことでしたいということです。  その他として(1)で座長を置くこと。(2)参集者以外の方の参集を依頼することが できるということ。(3)関係者からヒアリングを行うことができる。(4)原則として 公開する。ただ特別の場合については非公開とするということです。事務局は私ども労 働衛生課が行うという形です。この(4)の非公開、公開について、資料1−3です。 会議の公開についてということで、事務局からの提案です。  「会議の公開について(案)」ということで、「会議、議事録及び資料を公開とする。 ただし、以下に該当する場合には、会議の決定をもって非公開とすることができる。(1)、 個人に関する情報を保護する必要がある。(2)、公開すると外部からの圧力や干渉等の影 響を受けること等により、率直な意見の交換または意志決定の中立性が不当に損われる おそれがある。(3)、公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や臆測 を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある。(4)、公開することにより、 特定の者に不当な利益を与え、または不利益を及ぼすおそれがある。このような場合に は非公開とすることができるということで、取り決めという形で提案させていただくと いうことです。 ○相澤座長  いまご説明いただきましたが、内容について何かご質問、あるいはコメントはござい ますでしょうか。資料1−1では開催要綱ということで、振動障害予防のための作業管 理を主にするということ、振動障害等というのは騒音もある程度検討するということで す。検討内容については2のところに上がっていますが、こういった内容でやりたいと いうことでよろしいでしょうか。                    (異議なし) ○相澤座長  それからいまご提案がありました会議の公開の取扱いについては、こういったことで よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○相澤座長   ありがとうございました。それでは(案)を取っていただいて、公開の取扱いについ ては、本検討会の合意事項とします。次に資料の説明を続けてお願いいたします。 ○副主任中央労働衛生専門官  議事次第の(2)振動障害等の発生状況等についてということで、資料1−5、現状 として振動障害・騒音における労災の認定状況を説明いたします。1枚目の表紙をめく ると、これが騒音と振動障害の経年的な新規の労災認定を受けた方の数です。青のほう が振動障害、赤のほうが騒音性難聴です。特に振動については過去は非常に多かったの ですが、現状減ってきているということが言えるかと思います。騒音についても全体的 には減ってきているかと思います。  次頁です。特に振動についての中身を、振動における新規受給者数を業種別にといっ ても林業と建設業ですが、いちばん多いものとよく言われているものを挙げてみました。 青のところの三角が林業です。林業も非常に減ってきているということが言えます。建 設業は一方で増えたり減ったりという状況です。最近ここ数年は減少傾向にあるという ことが言えると思います。いずれにしても最近では減少傾向にあるということが言える かもしれません。  次頁です。実際の細かい数字で、ここ5年ほどの状況を見たものです。上の表が振動 障害についてで、新規に支給決定を行った業種別の内訳です。平成12年度から16年度 までです。いちばん端を簡単に説明しますと、16年度で林業が115人です。全体が412 名ですから約4分の1ぐらい。鉱業が15名、採石業が5名、建設業が242名で約半分 ぐらい、あとは製造業、その他ということで、現在の認定状況で最新の統計では16年 度になっていますので、このような形になっています。  その下の表が振動障害における過去に認定されて、現在も療養を行っている方の数で す。総計で16年度は8,586人の方がまだ振動障害で療養をされています。若干ご覧い ただきますと、上と大体割合は同じような感じですが、建設業が半分近く、4分の1ぐ らいが林業という状況にあります。発生状況については簡単ですが以上です。 ○相澤座長   ありがとうございました。振動障害及び騒音性難聴の発生状況についてのデータです。 毎年400人くらいの発生があって、累積しますと、まだ8,500人とかなり多い数です。 建設業が半分で、林業が4分の1ぐらいということです。騒音性難聴は林業よりも製造 業のほうなのでしょうね。 ○副主任中央労働衛生専門官   そうですね。 ○相澤座長  いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。それでは続けてお願 いします。 ○副主任中央労働衛生専門官  それでは次第の(3)の振動・騒音障害防止対策等の現状についてということで説明 します。初めに資料1−6です。振動に関する労働安全衛生関係法令ということで、現 在法令的には振動についてはどのように規定されているかということを簡単に説明しま す。法では第22条に必要な措置を講じなければならない項目として、第2号に振動が 入っています。安全衛生規則では産業医の選任というところで、特別に第1項第2号に 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時500人以上の労 働者を使用するにあたっては、専属の産業医を選任しなければならないという形で、ヘ のところで振動を与える業務という形での規定があります。  特別教育を必要とするというのが36条にあります。要するに業務を行う前に、必ず 一定の教育を事業者は行わなければならないところの業務という形で、振動に係るとこ ろを抜き出しました。2つあり、要するに伐木です。木を切るときのものと、チェーン ソーを使う場合の作業の2つが教育規定の中で、振動業務、振動に係る教育を2時間そ れぞれ行わなければならないようになっています。  次頁です。原因の除去ということで、有害物の原因の中で、振動がその対応に入って います。チェーンソーの規格ということで、チェーンソーの振動についてだけは法令上 は構造規格が定められています。これは昭和52年にできているものです。ただ、すべ てのチェーンソーだけでなく、第13条第3項第29号の掲げるチェーンソーに限定され る。これはどういう中身かというと、内燃機関を内蔵するもので、排気量が40cc以上 のものに限っているのです。このチェーンソーの規格というのは40cc以上のものに限 ってこういう規定があるということです。加速度の最大値が29.4m/s^2以下でなけ ればならない。重量加速度9.8ですから、ちょうど3Gという形になっています。40cc 以上のものは逆に言えば3G以下でなければならないという形です。  あと、チェーンソーの表示ですが、見やすい箇所に表示する。今回も表示という言葉 がありましたが、この辺が現在チェーンソーについては、このようにすでに決められて います。製造者名、型式、製造年月日、排気量、重量、振動加速度、騒音レベルを表示 することが義務づけられています。  振動のほかの工具についてはこういう規定はいまはありません。第1表で振動加速度 はどうやって測定するかということで、振動加速度の測定方法等が次のところからずっ と書いてあります。細かいところの説明は省略しますが、3頁にも加工物等も含めて書 いてあります。これが振動に係る現在の主な法令関係です。  続いて資料1−7です。振動については法令というよりはどちらかというと通達レベ ルの指導レベルで行っているもので、指導レベルの通達等をまとめたものです。振動障 害の予防対策ということで、大きく2つに分けられています。1つがチェーンソーとチ ェーンソー以外ということで、指導基準が定められています。最初にチェーンソーにつ いて説明します。チェーンソーについては事業者、労働者の責務ということで整備等を してくださいというのが1つです。2番目としてチェーンソーの選定として防振機構内 蔵型ということで、できる限り振動・騒音の少ないものを選ぶということが求められて います。チェーンソーの3番は点検整備をしてくださいということも書いてあります。 4番目が要綱にもありました2時間という関係のものです。チェーンソーの操作時間及 び操作の方法ということで、(1)が伐倒、集材等を行うときにはチェーンソーを取扱わ ない日を設けるなど、1週間のチェーンソーの操作時間を短縮してくださいというのが 前提としてあって、(2)として、手鋸を用いて、できる限りチェーンソーを使わないよ うにということがあります。(3)として、チェーンソーを使わない他の作業と計画的に 組み合わせ、チェーンソーの操作時間は1日2時間以下とすることということで、よく チェーンソーが2時間以下というふうに規制されているというのは、ここのことを言っ ているものです。  (4)でチェーンソーの連続操作時間は長くとも10分以内とすることということで す。操作時間ですから、先ほどのところにもありましたが、労働時間ではありません。 あくまでも操作している時間です。大型の重いチェーンソーを用いる場合は1日の操作 時間及び一連続の操作時間をさらに短縮してくださいという形で書いています。  次頁です。5番で作業上の注意についてということで、(1)雨の中の作業等、身体を 冷やすことは避けること。(2)で防振、防寒に役立つ手袋を用いてくださいということ があります。(5)でエンジンをかけているときは耳栓を用いるなど、保護具の使用とい うのも規制されています。あとは体操の実施、通勤方法です。健康診断関係については 健康管理の話なので説明は省略します。  続いて1−8です。今度は騒音のほうです。振動障害の工具等に係るものはどうして も騒音は避けられないので、騒音の表示もするということで、騒音の関係もここで法令 関係を説明します。騒音に係る現在の労働安全衛生の法令関係については、第22条に 同じように振動の前に騒音というので、必要な措置を講じなければならないということ になっています。具体的なことが次に出てくるのですが、労働安全衛生法施行令では、 作業環境測定を行うべき作業場というのが定められていて、いくつかの作業環境の測定 をする項目があるのですが、その中に著しい騒音を発する屋内作業場で、厚生労働省令 で定めるものを後で説明します。  労働安全衛生規則で、先ほどの産業医の選任のところと同じように、ボイラー製造等 強烈な騒音を発する場合にはということで、専属の産業医を選任する義務が定められて います。有害原因の除去は先ほどと同じで、騒音というのがここに入っているというこ とです。  2頁です。騒音を発する場所の明示等ということで、特に強烈な騒音を発する屋内作 業場についてはということで、労働者が知るように標識によって明示するということが 義務づけられています。ここでの強烈な騒音というのは当該騒音レベルが90dB以上と いうことで、通達で定められています。あくまでも屋内作業場に関わる、要するに場の 管理という中での考え方です。  騒音の伝ぱの防止ということで、この辺はみんな屋内作業場という形での考え方でで きています。  588条では先ほどの作業環境測定を行う屋内作業場として著しい騒音を発する屋内作 業場というものが、ここに8つ書かれています。あくまでも機器という形ではなくて、 そういう機械がある所の場の測定ということで、屋内作業場ということが定められてい ます。1から9までいずれもすべて場の測定の問題です。現在8まであり9はまだ定め られていませんので、実際には8までです。  騒音の測定ということで等価騒音レベルを測定しなければならないということで先ほ どの測定の仕方、場所等が定められています。  3頁です。保護具の着用、保護具の数、使用義務等が掲げられており、作業環境測定 基準が下のほうにあります。場の測定の基本的な考え方ですので、他の作業環境測定と 同じように6m間隔でということで、高さは120cm〜150cmのところでという形で出て います。一般的にはこのような形です。  4頁です。3、音源に近接する場所において作業が行われている場合ということで、 当該作業が行われている等価騒音レベルが最も大きな時間にということで、比較的音源 のところの測定は、一応ここでも掲げられています。チェーンソーについての規格の中 にこの騒音に係る部分もあります。騒音の係る分だけ抜き出したものです。チェーンソ ーの表示等に騒音レベルがあるので、騒音レベルの測定方法として書かれています。  無響室でやるとか、5頁には操作者の右耳の耳元の位置に、音源に向けてマイクロホ ンを取り付けることということで、操作者のそばのところという形での測定方法が法律 には定められているということです。  資料1−9です。騒音障害防止のためのガイドラインが平成4年10月にできていま す。本ガイドラインは騒音作業の別表1及び別表2に掲げる作業場所における業務をい うということで、別表1は先ほどの法令にありました8つの作業場です。それ以外に第 2表で52の作業場を定めています。それぞれ作業環境測定をしてくださいということ で、1頁の下のところに作業環境測定のことが書いてあり、基本的にはA測定、場の測 定を行う。B測定を音源に近接する場所でということで、B測定の作業場所が書かれて います。  その測定結果に基づき、2頁目に85dB、90dBをラインとして管理区分I、II、III という形で管理区分決定を行うという形になっています。これに基づいてできる限り管 理Iになるようにということが基本です。  場所については5頁に、先ほどの別表1が法令と同じように8つあり、6頁に別表2 でそれぞれ機械ごとにおける作業場としてのものがあります。インパクトレンチ、ナッ トランナー、電動ドライバーという振動工具等も含めてそれぞれいろいろな工具、また は機械における作業場としての騒音をどのように測るかという場所の指定がされていま す。大体いままでのものが騒音と振動に係るもので、法令と対策として行政で行われて いるものということです。 続いて1−10です。国際的な新しい知見によるものが出されているということでごく簡 単に説明したいと思います。国際的な機構としてISOの規定があり、2001年に出てい ます。今回のこの資料についてはできる限り簡便にしようと思い、振動レベルと時間に 関するところだけを抜き出しました。いろいろな計算式も全部取り払いまして、簡単に ポイントだけを説明します。各先生方には非常にお詳しい方もいらっしゃる中で恐縮で すが、簡単に説明させていただきます。  ISOの2001年に出された5349−1の中で、付属書Cの中に振動工具におけるばく 露年数と振動加速度の関係の表があります。あくまでも5349の本文そのものではあり ませんで、付属書です。ここで振動工具使用者の10%が白指症、要するにレイノー現象、 白蝋病を生じるであろうばく露量として、年数ごとに1年、2年、4年、8年の場合に A(8)ですが、1日8時間ばく露時の振動加速度(m/s^2)という形での加速度と しての数字が示されており、以下mで示すと、1年では26m、2年で14m、4年で7 m、8年で3.7mという数字が示されています。2番目として、日本ですが産衛学会が 許容基準を同じく2001年に出しています。これについては振動のばく露量について手 腕振動のレイノー現象の発症率が3%ということで、3%以下に抑えるために許容基準 を作ろうという形で出されていると書かれています。  1日のばく露量が2.8mに設定されてこのような計算式が作られています。ばく露量 としてはTがばく露時間(分)で、aが周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値、加 速度の補正した実効値をXYZ軸を3軸合成して、それを加速度値としてaを与えると いう形のものです。ただし、周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値は25mを超えて はならないということで、いちばん大きくても25m以下にしてくださいというのが前提 になっているものです。それが下の表で、25mがそのまま横棒になっています。  ばく露時間がTで横軸に、縦軸に3軸合成値で、その関係を示しています。これは指 数関数になっているので、グラフにすると対数表になるということでそれぞれ対数表に なっています。指数関数をログにすると関数になりますので、わかりづらいかもしれま せんが、そのようになります。これは日本産衛学会で2001年に出されているものです。  2頁です。2002年にEUから指令が出されており、いろいろなことが書いてあるので すが、このばく露量と振動加速度と時間との関係だけを抜き出しました。振動ばく露限 度値としてこれ以上ばく露してはならない値として、1日8時間として計算したもので 5mを示しています。ばく露対策値として2.5m以上は対策を講じてくださいというこ とです。逆に言えば2.5m以下は要らないということになります。ですから対策をする 所とやらない所が明確に分けられるということになろうかと思います。これも計算値に ついてはISOの計算式のやり方をそのまま踏襲しているので、計算式は書いていませ んが、要は産衛学会と同じように指数関数になっていて、対数表になっています。対数 表は両対数になっており、このような形での限度値をISOのばく露時間とばく露加速 度との関係で示すと、このような表になります。これも同じようにばく露時間に対して 横軸がばく露時間、縦軸が加速度値です。ここでEUがいまどのように見ているのかを 簡単に説明しますと、実際に法令が2005年にスタートしています。2002年に出ていま すが2005年から各国で法令化してスタートしています。ただ、2005年といっても5年 間の猶予期間があり、2010年までは高いレベルの機器について猶予期間が与えられてお り、必ずしもこれに従わなくてもいいようになっています。どのようになっているかと いうと、1のばく露時間のとこの次、先ほど説明したように2時間規制になっているの でそれとの比較を見たほうがわかりやすいと思いますので、2のところを見ていただく と、ばく露時間1の右隣の棒が2時間です。それを上に上げていただくと実線にぶつか ります。実線の左側にいくと振動加速度値ということで10となっています。つまり、 2時間だと10mのものであればいままでは使えますという意味です。10mの加速時のも のの工具であれば限度値ぎりぎりで2時間まで使えます。10mというのは先ほど9.8が 1GですからGでいえば1Gです。1Gのものは2時間までという形です。逆に言えば 2時間でも、もっと下の数字ですと、5m以下のものについては点線にぶつかるので2 時間を上に上げますと、点線にぶつかるところは約5mのところですから、5m以下の 振動工具は別に対策も要らないということになります。この間で対策をしてください。 しかし5m以上では使っていけませんという規定になっているということです。これが EUの指令のものです。  もう1つ、4番目としてACGIH、アメリカの産業衛生専門家会議で1998年に出 されています。これも基本的に同じですが時間は階段状になっていて、4時間以上8時 間、2時間以上4時間、1時間以上2時間、1時間未満ということで加速度として3軸 について4、6、8、12という形です。右はただ重加速度で9.8で計算したものだけで すから、加速度値の4m、6m、8m、12mでご覧いただくのと同じようになっていま す。  資料については以上で、次は参考資料です。1−1です。チェーンソーについての通 達です。先ほどチェーンソーについて通達のまとめたものを説明しましたが、これがそ の基です。ほかに作業等も入っていますが省略します。参考1−2も同じようにチェー ンソー以外のものについての基通達なので省略します。参考1−3については振動工具 のレベル測定の方法です。先ほどチェーンソーについての振動レベルの測定方法が記載 されていましたが、チェーンソー以外の工具については通達で昭和63年に示しており、 すべての工具でなく22の工具について、このようなやり方で振動の測定をしてくださ いということで、どちらかというとメーカーに対して出した通達で、メーカーの人にこ れらのやり方でやって、できる限り低い振動の工具を作っていただくという趣旨で作ら れているものです。それがこの厚い資料で中身は省略します。  続いて参考1−4です。振動障害総合対策の推進についてということで、振動障害防 止についていろいろ各種の通達等、また指導基準等を各々出しています。それらをそれ ぞれまとめるなり、行政としての考え方なり指導のあり方等についてまとめているもの で、総合対策というものを出しています。すでに4次にわたって出しており、そういう 意味で恒久的なものとして平成5年に振動障害総合対策という要綱を出しています。振 動障害の予防対策と、労災の補償対策、振動障害者の社会復帰の対策ということで大き く3つに分けて書かれています。  参考1−5です。危険性、または有害性等の調査に関する指針に関する関係法令とい うことで、先ほど部長からもありましたように、労働安全衛生法が改正され、この4月 1日から施行されますが、今回の労働安全衛生法の改正によって新たに作られた条文と して、ここに書いてある第28条の2というのがあります。これは労働者を使用してい る事業者に対して建物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、または作業行動、 その他業務に起因する危険性または有害性を調査してくださいということで、通称リス クアセスメントと呼んでいますが、事業者にあらかじめ危険性、有害性についての調査 を努力義務として課している条文が作られました。この28条の2というのが今回新た に制定され、4月1日から施行になります。下の規則ですが、どのような時期にやるか ということで、規則第24条の11も新しく作られました。建物を設置したとき、設備を 新たにするとき、作業方法など、それぞれの節目にやってくださいということで、リス クアセスメントをし、有害性、危険性を評価してくださいという形になりました。  具体的には1−6です。どのような形か、これは通達です。指針は先のほうにあり、 11頁をご覧ください。別添2、「危険性又は有害性の調査に関する指針」ということで、 先ほどの新しくできた法律条項に基づいて作られた指針です。要するに先ほどのように 事前にチェックをしてみてください。危険性、有害性の調査、評価をするということで、 リスクアセスメントをしてくださいという形でできています。2番で適用ということで 先ほどの法律と同じことが書いてあります。労働者の就業に係るすべてのものを対象と してくださいという形で出ています。実施内容についてはそれぞれ調査など細かく書い てありますが、実施体制、実施時期ということで規定されています。  14頁ですが、振動にも少しだけ言葉で触れています。下から5行目、事業場の機械設 備、作業等の特性に応じ、次に掲げる負傷、疾病の類型ごとにリスクの見積りをしてく ださいという形の中で、エとして振動障害等の物理因子の有害性によるものという形で、 これについてもリスクアセスメントのリスク評価をしてくださいということになってい ます。そういう意味では3月に出ていますが、4月1日からの施行ですので、いちばん のホットニュースかもしれません。  最後に参考1−7です。少し古い通達で5年ぐらい前のもの、平成13年になってい ます。今回のこの検討会の中で、どちらかというと事業者というのはもちろん振動障害 の防止についてやっていただくのですが、工具メーカーにいろいろやっていただくこと もあろうかと思います。そういう部分が多いかもしれません。現在労働安全衛生法は基 本的には事業者に対する指導で、メーカーというのはゼロではありませんが、量として は少ないです。メーカーの規制も当然書いてはありますが、一部のものに限られていま す。基本的には事業者に対するものです。これは基本的にはメーカーに対して、安全な 機械等を設計したり、つくっていただくということをお願いする通達です。法令レベル ではありません。通達で、機械の包括的な安全基準に関する指針という形でこういうも のを出しているということで、メーカーに対して、安全なものの設計や製造に努めてく ださい、というものです。  指針の目的は、1頁の下に書いてありますが、「すべての機械に適用できる包括的な安 全方策等に関する基準」ということで、機械の設計、製造等を行う製造業者および機械 等利用者も含めてということですが、この指針に従って安全方策を行い、機械の安全化 を図ってくださいということです。  6頁からが指針で、その前は解説になっています。基本的には、製造者等に対して安 全な機械をおつくりいただくという形になっています。当然、安全な機械をつくるには リスク評価等もしていただくということがありまして、7頁目から、リスクアセスメン トの方法、安全方策の実施、具体的な方法等を掲載しています。振動等に関わることに ついては、15頁の別表第6「安全方策に係る留意事項」の中の12番に「騒音または振 動による健康障害を生ずるおそれのあるときは、発生する騒音または振動を低減するた めの措置を講じること」として、安全方策留意事項ということで項目が挙げられていま す。かなり飛ばして説明を申し上げましたが、以上です。 ○相澤座長  大変膨大な資料を手際よくまとめていただきまして、ありがとうございました。今回 は意見交換ということですので、ご自由にディスカッションをしていただければと思い ます。いま伺っていますと、主な論点としては、騒音の問題をどうするかということが 1つあって、振動工具の加速度と取扱時間との関係をどういう基準として持っていくか ということ、リスク評価は努力義務ですが、将来的にどうするかということ、それから 機器の整備の問題、この4つがありそうですが、いかがでしょうか。リスク評価をする ためには測らなければいけないという問題があると思いますが。振動工具を使っていて 騒音の障害になるという例はかなりあるのでしょうか。もしあるとすれば非常に重要な 問題ですが、実際にやっておられる宮下先生、どうでしょうか。 ○宮下委員  私は、振動作業にかかる騒音の実際的な事例というのはほとんど経験していないので すが、1つは、私が担当している対象が屋外作業の方が多いということもあろうかと思 います。振動作業でも、例えば建屋内の製造業などをしている方については、むしろメ インが騒音作業としての騒音障害という形で見られていると思います。私は、屋外の伐 木等の林業労働者の集団と、建屋内での製造業の集団を見ているのですが、これは振動 の問題と騒音の問題両方があって、むしろ複合ばく露という形のもので、工具からだけ の騒音ばく露ではないのですが、ある部分は振動工具に由来する騒音による影響もかな りの部分あると思いますし、従来の研究等では、騒音単独のばく露よりも振動と騒音の ばく露の相乗効果ということがわかっていますので、レベルの問題ではなくて複合ばく 露という問題もあると思います。 ○相澤座長  井奈波先生も現場をやっておられますが。 ○井奈波委員  建設業を調査させてもらっているくらいで、直接見ているわけではないのですが、耳 の悪い方も結構います。昔、フィンランドに留学したときに、林業の方で耳に障害があ る方も結構いまして、レイノー現象がある方のほうが耳の障害が大きいという話も結構 ありました。 ○相澤座長  榊原先生、いかがですか。 ○榊原委員  私も主に屋外で振動工具を使っている人を対象に調査しているのですが、振動工具も かなり騒音が同時に発生していますので、認定がどうなっているかはよく知らないので すが、かなり難聴ぎみの人が多いのではないかと思います。 ○相澤座長  前田先生、いかがですか。 ○前田委員  私も、実際に工具を使われる人について、工具の振動と耳の位置での音を同時に測っ て、そのときの振動レベルからの障害の予測と、外からの難聴の予測の式を比べたので すが、どちらからもそれなりのレベルが来ていますので、先ほどから出ている複合ばく 露的な影響がどちらにもあるような気がするのです。 ○相澤座長  振動自体の骨動で。 ○前田委員  工具を使いますから、そのときに工具自身からの振動と音の両方のばく露を受けて、 そのレベルが決して低くないといいますか、そういうデータは得られています。 ○相澤座長  やはり無視できないということですね。ほかの先生方はいかがでしょうか。よろしい ですか。それでは、騒音についてもきちんと取り上げなければいけないということで、 振動障害の方に騒音障害が両方あるかどうかというのは、労災の認定などは調べられる のでしょうか。 ○副主任中央労働衛生専門官  そこまでは私どもではちょっとわかりません。 ○相澤座長  わかりました。そこについてはよろしいですか。畝山先生、メーカーの立場から何か ありますか。 ○畝山委員  メーカーとしては、まず工具のほうからいきますと、実作業状態で高い騒音を発生す る工具というのは2つに分かれます。1つは、工具自身はそんなに振動を持っていない が、作業時の騒音が非常に大きいものです。例えば金属板をノコで切るときには、とん でもない音が出ます。一般的に振動の大きい工具、筆頭に挙げられるハンマー関係やイ ンパクトレンチは、振動も大きいし、出す騒音も大きい。我々も製品の測定のときは振 動と騒音を同時に測定しますが、これは切り離すわけにはいかないだろうと思っていま す。 ○相澤座長  鈴木先生、いかがですか。 ○鈴木委員  我々はちょっと特殊といいますか、分野が違うものですから、そういう事例で扱った ことはないのですが、主観評価で鉄道の作業環境などをやっていますと、騒音環境をい じることによって振動の主観評価自体が変わってくるという結果ははっきりとあります。 実際に障害というレベルであるのかどうかというのは私どもにはわからないのですが、 両者のリンクは決して無視できないという感じはします。 ○相澤座長  騒音の場合は、自律神経系の影響など両方あるのですね。吉村先生、いかがでしょう か。 ○吉村委員  私はどちらかというと機械系の分野なのですが、今のお話でいいますと、固体伝ぱ音 と空気伝ぱ音があって、工具を操作するときというのは、空気を介して伝わってくる騒 音と身体を伝わって伝ぱしていく振動成分とがありますので、そういうものの相乗効果 というのも物理的に見るとあるのではないか、と興味深く聞かせていただきました。 ○相澤座長  それでは、騒音についてはまたこれからご議論いただくということで、いままでは振 動の時間管理だけだったのですが、それと工具の加速度との組合せで決められてきてい るところが多いということで、資料1−10のような考え方があります。これはISOと ほかの基準との関係が少しわかりにくいと思うのですが、ISOの場合は時間は入って いないわけですね。白指症状が出るまで1日8時間ということになっていますが、前田 先生、簡単に書くとこういうことなのですか。 ○前田委員  1日8時間等価の値として考えたときに3.7、それを超さない程度に作業を進めたと きに、8年間同じようなばく露がされたとした場合に、集団の10%ぐらいが白指症状を 生じたと。そのときに、A(8)の考え方なのですが、この中で1日8時間等価と考え ていますので、工具自身にばく露される実際の値と実際の作業時間というのが中に隠れ ているのです。A(8)=工具のレベルahw×ルートの8時間分の実際の作業時間とい う値の式がありまして、それイコール3.7のときに押さえられるように、ばく露時間と 実際の工具の値の関係がありますので、レベルが高い工具ですと3.7に近付くときの作 業時間が短くなり、工具自身のレベルが低いと8時間まで作業をしても大丈夫になる。 この表と隠れている式の中に、時間と実際のレベルとの関係があるのです。  ISOは、ばく露の年数に応じてもこれが成り立つようなデータもありまして、年限 ごとに、1日8時間等価で値がいくら、その値に対して作業時間をどう考えるかという ことが隠れている状況になっています。産衛学会の基準と実際の8時間の値というのは、 戻しますと2.9と2.8ということで近くなるのですが、産衛学会のほうには年限でどれ ぐらいの症状になるかというデータがありません。産衛学会の場合は、この基準でいく と、10年間ばく露で被職業性レイノーが3%以下に押さえられるという話になっていま す。例えば8年とか4年になったときにこの式が適用できるかといいますと、それはま だちょっとわからない状況です。 ○相澤座長  これは次回からまた詳しくご議論いただくわけですが、よろしいでしょうか。そうし ますと、このISOのデータから、産衛学会とかEUとかACGIHのものが求められ てきているということですか。 ○前田委員  はい。 ○相澤座長  ISOの場合は10%の人が白指症状となっていますが、産衛学会の場合は3%という ことなのですね。これでよろしいわけなのですか。 ○榊原委員  ヨーロッパですと、北側の国々で林業などでレイノーになる患者さんが多かったので、 そういったデータが使われているのです。北欧のほうは使っていない人でもレイノーで とる率が高いということがあって、10%という数字が使われているのではないかと思い ます。日本では振動工具を使っていない人でも3%ぐらいレイノーの白指症状が出る人 があるということで、3%というのを基準にして作ってあると理解しています。 ○相澤座長  ありがとうございます。この資料1−10について何かコメントやご意見はありません か。よろしいでしょうか。それでは、もう1つ、先ほどリスク評価ということが出てき ました。リスク評価の場合には両反応関係を見るということになりますので、将来的に はこういうことをやっていくということで、今すぐ何かするということではないと思う のですが、ばく露の評価をしなければならないということで、機器の場合には切る相手 とか、振動工具を使う相手によってだいぶ違ってくると思います。実際の加速度を図る ことはなかなかできないということで、機器の評価をしていくことになると思うのです が、その辺はいかがでしょうか。 ○畝山委員  現状ですと、手持工具の場合、ISOや、ヨーロッパでいうとEN規格で振動測定が 規定されています。それで、一定の条件の下に、これは実作業にできるだけ近いデータ を得るためにとなってはいますが、実作業は幅がありますから、その中の代表的なもの を代表するような値がとれるのだろうと考えています。ISOやENで規定している測 定方法は、むしろ同類の機械、例えば同じようなハンマーであれば、どちらがどうなの かという比較をするには非常に適したデータだと思うのですが、ものによってはうるさ い内容で、例えば試さく材を設定して、作業方法を設定して、ハンマーですと現実にコ ンクリートをはつるというケースもありますし、模擬的な治具を使って、その上で作業 をして振動を測るということもあります。  ISOにしろ、産衛学会にしろ、我々が社内的に振動評価をする場合にしろ、3軸合 成値を使います。現実には今3軸に変わりつつあるというところで、データを見ますと、 ISO8662にしても、EN50144という規格にしても、まだ3軸に変わっていない。と ころが、EUのディレクティブのほうは3軸だということで、実際にヨーロッパでも多 少の混乱が生じている面があります。そういったことも含めて、日本ではどういう方法 でどう測るかということをきちんと決めなければいけない。型式試験と、もう1つ実作 業でどう測るかという2本立てで進めていかないと、実際の作業状態での評価は型式試 験のデータだけでというのは難しい面が出てくると思います。その辺が難しいところだ と思っています。 ○相澤座長  その辺は、実際に測定された経験がおありですか。 ○前田委員  先ほど言われていたISOとかENの試験規則では測ったことがありません。見たこ とはあります。あと、フィールドではいろいろデータをとりました。相手がどうかとか、 作業者の熟練度等によってもレベルがだいぶ変動しますので、工具自身がどれぐらいの 振動を発生するのかというときに、現場でのデータをそのままそっくり使っていいかど うかということには、ちょっと疑問があると思います。  試験規則も、実際のフィールドのデータを再現できるような試験規則ということで考 えられているのですが、それ自身が、時代の流れの中でそれでいいかどうか、という議 論もあるのです。A、Bどちらの工具が振動をよく出すのか、というときには現状の評 価方法で使えると思うのですが、その値をそっくりそのまま実フィールドの作業者がば く露される量と同じように読み替えるには、まだちょっと問題があるかもしれません。 それは日本だけの問題ではなくて、ヨーロッパでも同じことが起こっています。その辺 をリンクさせるといいますか、試験規則の値から実フィールドを埋めるような形での規 格に、いま動きつつあります。それももう出つつありますので、メーカーさんでいまま で言われている試験規格でデータがいただければ、ある程度フィールドが予測できる状 況にはなると思います。私たちも、世界中でオープンにされているデータベースがスウ ェーデンのほうにありますので、そのデータに基づいて、試験規則とフィールドデータ を比較して、どこまで使えるのかという検証を、いま始めています。それは、こういう 状況ですので、また報告させてもらおうと思います。 ○相澤座長  それでは、また次回の委員会で報告していただければと思います。 ○榊原委員  EUのほうですと、昨年7月に先ほど紹介があったEUの振動指令が発令されて、8 時間で5m/s^2と、2.5m/s^2が対策値ということが施行されたものですから、ヨ ーロッパの場合は、振動工具を出したときに振動の値とその値をカタログに表示しなけ ればいけないことになっているのです。そういった対策に合わせて、ヨーロッパでは現 在、振動がより低い工具を工場や現場で購入しようという動きが強まっていますので、 そういった面で低振動の工具が普及されて、結果的に振動の対策が進んでいっているの ではないかと思っています。 ○相澤座長  EUのものは、機器表示なのでしょうか。 ○榊原委員  そうです。 ○相澤座長  実際に測るというのは大変ですよね。でも、それも検討したほうがいいというご意見 ですね。これは、世界的には機器表示でということですね。実際に測ってということで はないですね。 ○榊原委員  試験規則に基づいた形で各メーカーさんがデータを出して、それをそれぞれの機器に ラベリングという形で表示するという流れになっています。 ○相澤座長  ありがとうございます。これにつきましては、大事なことですので、これから委員会 でご議論いただきたいと思います。 ○鈴木委員  私自身はむしろ全身振動のほうが専門で、ここにある手腕振動の国際評価基準という のは知識として知っているという程度でしかないのですが、この種の物差しが出てくる 背景というのは、その国なりその文化において何か目的があって、必要性があったとい うことなのでしょうか。同じISOのルールを使っても、その国や地域によって基準が 作られていくという流れは一緒だと思うのです。そうしたときに、いま4つぐらいのも のが提案されているときに、この委員会では、この中のどれがふさわしいのかという形 になるのでしょうか。白紙の状態から、どういう考え方がいいのかということをこの4 つを参考に考えていくという形なのでしょうか。それとも、今の流れとして機器表示の ような流れがあるならば、そういう特定のものにある程度重点を置いて、それが日本で も同意していくのにふさわしいかどうかというスタンスでいくのでしょうか。この委員 会で進めていく方向づけはいかがなのでしょうか。 ○相澤座長  そうですね。厚生労働省としてはどういう考え方ですか。 ○副主任中央労働衛生専門官  基本的には、いま日本では、先ほど通達で示したように、2時間規制という形で、そ のレベルに関係なく行われています。もちろん、すべての機械ではなく、先ほど言った 一定の機械です。ほかにたくさんあればいろいろ出してみたかったのですが、大体この 4つがいま世界で出されているものだろうということで、例として挙げたものです。そ ういう振動のレベルとばく露時間の関係をかなり重視した考え方が出ていますので、そ ういう国際的な流れに対して日本がどうあるべきか、わが国としてはどういう規制なり 考え方なり対策に役立てるのか、という観点で考えていきたいと思っています。その中 で、第10次の労災防止計画の中にも、表示をすることによって低いレベルのものが使 われて、低振動レベルの工具の普及に役に立つだろうという考え方がありますので、そ ういうことも是非この中で検討し、具体的な考え方なりを示していけば、低振動なレベ ルの機械の開発なり普及に資するものになるのではないかと思っています。 ○労働衛生課長  基本的には、いまの振動障害の予防方法は一応、先ほどの現行の規制でやっていて、 私どもは告示や通知をたくさん出していますが、これらを全部総合して、振動障害はだ んだん新規の労災認定数が下がっています。なお振動障害を予防するために、世界の潮 流を見て、どのようなレベルで、どのような規制方法をとるのか、それから、規制方法 以外に推奨、あるいは政策誘導、メーカーに対する表示などを全部組み合わせて、今後 振動障害のレベルを総合的にどのようにすれば振動障害を最も少なくするためにいちば んいいかということを、基本的にはこちらで議論していただきたいのです。ただ単に現 在のレベルをどうするのか、EUをとるのか、ISOをとるのかという話ではなくて、 そこを参考にして日本ではこうするべきだと。例えば規制をするに当たってはどのよう な方法がいいかというところまで、いろいろご意見をいただきたいと思っているのです。 ○相澤座長  これはあくまでも例であって、何もないところから出発してもよろしいと。 ○労働衛生課長  それぞれがいろいろ考え方があると思うのです。現行の規制方法についても、ある考 え方でできている。それによって今わりと災害自体は少なくなっているということでは ありますが、さらにいい規制の方法やレベルが決定できれば、そのほうが遥かにいいわ けです。そこを評価していただきたいと思っているわけです。例えばEUや米国の振動 障害はどのような動向になっているのかという話も、相当参考になるのではないかと思 っています。 ○鈴木委員  いまのお話でよく理解できたのですが、例えば国際的な流れを踏まえて、こういう方 向がコンセプトとしていいだろうという話と、一方、いくつの値にするかという議論に なると、データを基に議論をしていかなければいけない側面もあるかと思うのですが、 それもこの検討会の中で期待されているのでしょうか。 ○労働衛生課長  データがあるものは持ち寄っていただきたいと。この検討会として今から新たにデー タを集めるということは考えてはいません。今あるものでベストのところを出していた だきたいと思っているのです。 ○相澤座長  少なくとも時間管理だけではちょっと寂しい感じがしますし、機器と時間との組合せ で出すという形になってくるのではないかと思います。機器については、参考資料1− 7にあるように、振動についてしかこういった規制はないということですが、畝山委員、 何かご意見がありますか。 ○畝山委員  振動測定ということでは、2001年にISO5349が改正されて、その振動補正係数を 加えた振動加速度実効値というのが、おそらく今いちばんリーズナブルなものであろう と思います。例えばアメリカでも、3軸のうちいちばん大きいもの、優先軸という考え 方をしているのですが、現状は、X、Y、Zの3軸のどれがどれだけの影響を及ぼすか は、まだつかめていない。とすれば、3軸同等に悪さをするだろうということを前提に 3軸合成値ということが考えられていますので、手腕振動補正を加えた3軸合成値、I SOの5349の考え方というのが、測定値としてはいちばん妥当なものかなと考えてい ます。  それから、基発第11号はJIS B4900をベースにしているのですが、実はこの4900 は廃止になりました。ISO5349のパート2を翻訳JISにしたJIS B7761−2と いうのが新しく制定されたときに廃止されています。5349とB4900というのは、基本 的なベースのとり方などいろいろ差異があります。補正係数のとり方もちょっと問題が あるので、いま世界的なスタンダードになっている5349、日本でいえばJIS B7761、 これはパート3がおそらく来年度中には制定されると思いますが、その辺を基準にして いけば国際的に整合性がとれるし、データでアメリカに持っていっても、ヨーロッパに 持っていっても、一応同等な比較ができるデータになると思います。そういった整合性 というものを考えた上で基準をとっていく必要があるだろうと考えています。  メーカーサイドの勝手なことを言いますと、ダブルスタンダード、トリプルスタンダ ードが出てくると、我々としては非常に困るのです。ISO8662とEN50144は非常に 類似しているのですが、微妙に違うところがあります。測定をそっくりやり替えなけれ ばいけない場合と、測定する軸のほうの設定を変えなければならない場合があるのです が、当然それをやると結果が変わってきます。まるっきり一緒のものを、まるっきり一 緒の条件で、まるっきり一緒の試験者が測定しても測定値が変わってくるなどというこ とは困ります。その意味で、インターナショナルスタンダードにそろえた形で日本も持 っていければ、ある意味で非常にリーズナブルだし、メーカーとしても非常にありがた いということになります。 ○相澤座長  この5349−1というのは古くなってしまうのですか。新しくできるのですか。 ○畝山委員  JIS B4900というのが、一昨年B7661−2というのが制定されまして、その時点 で廃止されています。JIS B7761−2というのが、ISO5349のパート2とまるっ きり同じものです。 ○相澤座長  これはパート1ですか。 ○畝山委員  パート1は、3月の頭に規格協会にJISの原案を出していまして、たぶん来年度中 にはJIS B7761−3としてJISに制定されるであろうと期待しています。その意 味で、使用振度計は、新しいJISが制定されればISOと6社整合したものになると いう方向で動いています。 ○相澤座長  ありがとうございました。そういう機器についてもこの委員会でご検討いただくこと になると思いますが、ほかに何かご意見がありましたら、お願いしたいと思います。 ○榊原委員  吉川さんのご説明のところで、チェーンソーの規格というもののご説明があったので すが、これは法律の中ではどういった位置づけになっているものなのですか。 ○副主任中央労働衛生専門官  告示という形で出ているのですが、これは要するに、守らなければならないというも のです。通達レベルではありませんので、強制的な意味を持っています。 ○榊原委員  法律というものではなくて、告示なのですか。 ○副主任中央労働衛生専門官  法律の下のほうのものです。法律、政令、省令がありますが、その中で出しているの は労働大臣告示です。ただ、元は法律で、つながっているので、通達というものとは全 く切り離されて、法的な拘束力はあるものです。 ○畝山委員  エンジン排気量であれば、40cc以上の場合は、私どもが新しい商品を出す場合は、持 ち込むのは林野庁ですね。 ○副主任中央労働衛生専門官  測定そのものですね。 ○畝山委員  はい。そこでステッカーをいただいて、貼らないと市販できないということになって います。 ○相澤座長  厳しいですね。 ○前田委員  はい。 ○相澤座長  よろしいですか。ほかに何かご意見ございますでしょうか。それでは今日はこのぐら いにして、次回から具体的なご検討をいただければと思います。次回は、振動障害の病 理について榊原先生にお願いします。それから、作業現場でのばく露状況等の調査結果、 国際規格の詳細について、前田先生にお願いします。次回は、榊原先生と前田先生を中 心に、現状について意見交換をさせていただければと思います。その他、事務局からあ りますか。 ○副主任中央労働衛生専門官  次回は、4月26日(水)の14時から16時になりました。開催場所については、追 ってご連絡します。 ○相澤座長  今日はどうもありがとうございました。また引き続き、よろしくお願いします。           照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課物理班(内線5496)