06/03/24 第12回予防接種接種に関する検討会 議事録                         健康局結核感染症課予防接種係                                内線 2383                                  第12回予防接種に関する検討会 日時 平成18年3月24日(金) 10:00〜 場所 厚生労働省6階共用第8会議室 ○皆尾補佐 これより「第12回予防接種に関する検討会」を開催いたします。本日は ご多用のところ予防接種に関する検討会にご出席いただき、誠にありがとうございます。 最初に委員の出欠状況についてご報告いたします。宮崎委員からは欠席のご連絡をいた だいております。それでは、開会にあたり、塚原結核感染症課長より挨拶を申し上げま す。 ○塚原結核感染症課長 委員の皆様方にはご多用にもかかわりませず、検討会にご出席 をいただきましてありがとうございます。局長は国会の対応で遅れていますので、私の ほうからご挨拶をさせていただきます。予防接種の検討会の発足は、高齢者に対するイ ンフルエンザのワクチンの導入を定めました平成13年の予防接種法改正の附則におけ る5年後の検討を加えるという規定を踏まえますとともに、麻しん・風しんなどの個別 の予防接種につきまして今後どうするのかということをご議論いただいたところでござ います。本日は12回目を迎えるわけですが、第1回から第7回までは個別の予防接種 につきましてご議論いただき、第8回から第11回までは予防接種制度の横断的な課題 につきまして活発なご議論をいただいたところでございます。  中間報告として、すでに平成17年3月31日にまとめていただいたものにつきまし ては公表させていただき、その中間報告を踏まえまして必要な法制上の検討を加えまし て所用の措置を講じたところでございます。最終的なご意見を頂戴してから報告書をま とめていただきたいというように考えております。今回も委員の先生方から、是非、忌 憚のないご意見をいただきまして、活発なご議論をいただくということをお願いいたし まして開会のご挨拶とさせていただきます。今日はよろしくお願いいたします。 ○皆尾補佐 この後の議事の進行につきましては加藤座長にお願いいたします。 ○加藤座長 先ほど課長からご挨拶がありましたが、実は、本日が最終の取りまとめの 会ということでお集まりいただいたのですが、まだ今後煮詰めなければならないことが 2、3、生じてきたという判断をいたしましたし、また、局長もそのようなご意向と伺 っております。あと数回議論をしなければならないことになりましたのでご承知おきを いただきたいと思います。委員の先生方はお忙しいと思いますが、全員ご出席でお願い いたしたいと存じます。お手元の資料について、事務局からご確認をお願いいたします。 ○伯野予防接種専門官 資料の確認をさせていただきます。議事次第をめくりまして資 料1ですが、「予防接種に関する検討会中間報告」、昨年の3月31日の中間報告をそ のまま載せております。資料2ですが、頁数は16頁以降ですが、中間報告以後の検討 会でのご議論を踏まえまして、事務局でまとめました「予防接種制度横断的課題につい て」という資料でございます。資料の不足等がありましたら事務局にご連絡いただけれ ばと思います。 ○加藤座長 早速、討論に入りたいと考えます。最初に、個別疾患の予防接種のあり方 について、2頁ですが、ここのところから導入していきたいと思います。これはすでに 中間報告の段階でご議論いただきまして、これが基で政省令が4月1日から施行される 事情になっておりますが、もう一度反芻していただきまして、中間報告を受けて最終報 告の中でどのような方向でいくかということを事務局とも煮詰めておりませんが、中間 報告のままでいくのか、また、これに付則した付帯条項をこれから皆さんのご意見を聞 きながら加えていくかどうかということを考えていただきたいと存じます。  3頁目です。これは麻しん・風しんともに共通のことですが、すでにご議論がありま したとおり、国際的に日本では麻しんの排除が十分に行われていないという屈辱的な状 況にあるところから、麻しんに関しては排除する方向の政策をとるということが1点。 それから、風しんにつきましては、ここ3、4年、報告例が増えてまいりました先天性 風しん症候群の全廃を目標といたしまして、どのような方法をとるべきかということを この検討会で話合いがなされてまいりました。その結果、結論といたしまして、中間報 告で提言したのは、両ワクチンともに2回接種が妥当であろうということでした。その 1つの対策としてはプライマリーワクチンfailiureの対策としての2回接種、それから、 セカンダリーワクチンfailiureの対策としての2回接種、接種機会を確保するための2回 接種ということで、これらを柱として、これらの対策を可能にするためには麻しんと風 しんのワクチンの2回接種が妥当であろうということを中間報告としてまとめ上げたと ころです。  次の接種時期の考え方ですが、これもかなり長い間、討論がなされました。この(3) に書いてあるとおり、通常は2回接種を行いますが、1回目の接種時期は、現行どおり 1歳直後に接種するのが妥当であろうという考え方に到達いたしました。また、2回目 の接種については風しんのワクチンと麻しんのワクチンについては若干異なるという議 論もありましたが、抗体価が約5年を過ぎると徐々に下がり始めるということがあるこ と。それから、ワクチンが普及することによって自然のブースターがかかりにくくなる ということも勘案できること。それから、もう1点大切なことは、第2回の接種の機会 を設けても接種率が上がらなければ意味がないということが重大な点であるということ を考慮して、第2回目の接種は就学後よりも就学前が有効であろうというところから、 就学前に第2回の接種をすることを提言するということで中間報告がまとまったところ です。  4頁ですが、これは風しんのことに関しても全く同じでありまして、目的は先ほどお 話した先天性風しん症候群の撲滅です。目標としては3本柱の対策を全うすること。接 種時期に関しましては、いまお話したとおりの接種時期の意味合いというところから提 言をいたしました。その結果、その提言を受けて7月29日に感染症課長通知で予防接 種の施行令が公布されました。ご承知のとおり、第1期の接種といたしましては、従前 に麻しん・風しんに罹患していない者、また、ワクチンも当然接種していない者ですが、 それらに関して第1回目の接種は4月1日に1歳になった者から12カ月に至る者を予 防接種法の下において行う。それから、表現は若干難しいのですが、第2期目の接種は、 それまでに麻しん・風しんのいずれのワクチンも接種しておらず、また、いずれの疾病 にもかかっておらない者で今度の4月1日を迎えた者の中の5歳から7歳までの者、す なわち小学校入学前の1年間の者については予防接種法の下において第2回目の接種を 行うことを決めたところです。  そのほかに、仮に片方の予防接種をして、または片方の病気に罹患してしまっていて、 一方のワクチンが残ってしまっているような者が出てくる可能性もある。そういう可能 性がある者に関しましては、予防接種法の下において接種をするわけにはまいらないけ れども、地方自治体の配慮によって予防接種法並みに接種をしていただきたい。すなわ ち、砕けた言い方をすれば、無料で接種をしてあげてくださいということです。それは 年齢制限が加わっていて、一応、24カ月までに至るまでの者ということが書かれてお ります。しかし、それは予防接種法に基づくものではありませんので、そこでもし健康 被害が起きた場合においては国の救済制度ではなく、いわゆる医薬品機構での救済措置 をしていただきたいと、こういう連絡が地方自治体に行っております。  地方自治体におきましては、24カ月までとしている所もありますし、私がいろいろ な所でお話をしているところでは48カ月まで取っている所もありますし、90カ月ま で取っている地方自治体もあります。いろいろまちまちです。しかし、それは、いずれ にしても予防接種法の下ではないということがポイントです。あくまでもこの中間報告、 この検討会で定めた接種時期は学問的または一般的に結論を得たものでありまして、あ くまでも生後24カ月までの間に1期の接種を終了していただきたい。2期の接種をし ていただく者に関しては5歳から7歳の小学校入学前の1年間の間に接種をしていただ きたいということを強く要望いたしました。  その際に、当時のこの検討会ではまだ混合ワクチンがありませんでしたので、単抗原 ワクチンの接種を行うと都合4回接種を行うことになる。現場の方々はよくご理解でき ると思いますが、4回接種を行うということは、接種をする側に非常に負担がかかる、 接種を受ける側も4回通わなければいけないという極めて不都合な状態が生じる、また、 経済的な効果も十分に考慮しなければならないであろうという観点から、麻しん、風し んの2種混合ワクチンが今後導入されるのであれば、その際には2種混合ワクチンを接 種することを提言するということで中間報告がなされたところです。  それを受けまして、先ほどお話しましたように、課長通知をもちまして法で行う1期、 2期の麻しん・風しんの予防接種に関してはMR混合ワクチンの2種混合ワクチンが唯 一の法的なワクチンであるという決定がなされ、単抗原ワクチンで行った場合には法的 なワクチンではないということが通知されているのが4月1日から施行される予防接種 の法の実情であるということですが、各委員もその点についてはご了解いただいている ことと思います。  そこで、本日、多少ご議論していただきたいことが生じてまいりました。これは突然 の話で、私もこの検討会の座長として困惑しているところですが、本日のNHKのニュ ースをご覧になった方々はおわかりと思いますが、少し読ませていただきますと「麻し んと風しんの予防接種は現在7歳半までの間にそれぞれ1回ずつ接種することとなって おります。これについて、厚生労働省は1回の接種だけでは効果が十分でなく、別々に 行う現在の方法では片方のワクチンしか接種しない子どもが減らないとして来月から制 度を見直すことにしています。新しい制度では麻しんと風しんの2種類のワクチンを混 ぜて同時に接種する混合ワクチンを使い、1歳のときと小学校に入る前の2回接種する としています。しかし、いずれかの病気にかかったことがある子どもなどについては混 合ワクチンを接種することの安全性が確認されていないとして制度の対象から外されて います」。すなわち、いまの経過措置です。「その結果、こうした子どもは自ら費用を 負担して単独のワクチンを接種しなければならず」。この辺は見解が若干違うかもしれ ない。「医療関係者などから批判が出ておりました。こうした批判に応えて、厚生労働 省は」。これは厚生労働省と書いてありますが、厚生労働省のどなたかとは書いてあり ません。厚生労働大臣であるのか、または局長であるのか課長であるのか私には一向に わかりません。しかし、ニュースではこう書いてあります。「混合ワクチンを接種でき ない子どもについては単独でのワクチン接種を認め、費用も公費で負担する方針を固め たので、来月からの新しい制度のスタートの後に、できるだけ早い時期に実施できるよ う準備を急ぐことにしております」と、こういう報道がなされているのです。すなわち、 4月1日から施行される厚生省令が近い将来さらに改正されまして、先ほど来申し上げ ているように、片方のワクチンのみを接種して残ったものは接種されていない方、また は、片方の病気にかかってしまってMR混合ワクチンが接種されていない方に関しては、 本来は、課長通知でもって24カ月までの間では地方自治体が無料でやりますよというこ とが書かれているはずなのですが、なぜか、単抗原ワクチンを接種するような方向で政 省令をさらに変えるということを厚生労働省が公表しまして、この件についてはこの検 討会では全く検討しておりませんので、これにつきまして多少のご意見を伺いたいと思 いますが、お忙しいところをご出席いただいております健康局長から、是非、お言葉を いただきたいと思います。 ○健康局長 ただいま座長からお話がありました件ですが、私どもはこれまでこの検討 会でのご報告を受けまして所要の措置を講じてきたところですが、正直申しまして、い ろいろ現場のご意見等も伺うと、単抗原ワクチンについてはさまざまなご意見があると いうことがわかりました。したがいまして、私どもとしても4月にこのままの形でスタ ートさせることについていかがなものかという議論をいたしまして、この間、検討をし てきているという状況でございます。  ただいまご紹介がありましたNHKの記事につきましては、あくまでも取材に基づく どこまでの内容のものか私どもは必ずしも存じ上げない記事でございまして、厚生労働 省として正式にこういった方針を発表したという段階ではありません。あくまでも先生 方のご意見を伺って、然る後に然るべき処置をとりたいと考えているという状況でござ います。したがいまして、本日の会合におきましてもさまざまなご意見をいただければ 大変にありがたいというふうに考えている次第でございます。 ○加藤座長 ただいま局長からご説明がありましたとおり、必ずしも公式見解ではない ということではありますが、すでに報道がなされておりますので混乱が起きるかと思い ますが、この件に関しましてディスカッションをしていただきたいと考えております。 今日急なお話ですので頭の中が混乱している先生方も多いと思いますが、岡部委員、何 かご意見ありますか。 ○岡部委員 2回接種法を導入すること、それに伴ってMR混合ワクチンを導入すると いうことはこの検討会でも随分ディスカッションがなされて、それ自体は私は非常に歓 迎すべきものであると考えています。私がメンバーになっている小児科学会の感染症及 び予防接種委員会でも、これについては大変にいい方向に持っていっていただいている ということを出していると思います。ただ、制度の切替えあるいは考え方の問題から、 例えば定期接種をMR混合ワクチンというワクチンに決めたことに伴って、麻しんにか かった人は風しんワクチンを本来接種すべきところ、MR混合ワクチンという定期接種 になったのでその人はできない、あるいは逆の場合も生じ得るということ。それから、 極めて短期間での決定であったために、保護者の方が受けさせようと思ってもいろいろ な事情で期限内に受けそこねている、あるいは十分にそういうアナウンスが行きわたら ない。これはここでも検討があったと思うのですが、そのために接種しそこねている子 どもさんたちは、外れてしまったからいいや、定期接種外ということで対象外になって しまうからいいや、ということではなくて、麻しんのエリミネーション、ほかの国並み にゼロに近く持っていくということ、また、CRSで産まれる子どもを少しでも減らそ うということからは、そういうようなところにできるだけの方法を講じて免疫率を高め ることが個人的にもかなうことですし、公衆衛生対策としても非常に重要なことだろう と私はこの検討会でも申し上げていますので、そのような方策がこれからでも間に合う のであればできるだけ講じていただきたいという考えです。 ○竹本委員 日本小児科医会でも全国からいろいろな意見が出されているのですが、90 カ月まで現行のまま保障するという市町村もあれば、一切保障しないという地域もあり ます。これは大阪ですが、「MR混合ワクチン開始に伴って麻しん・風しんの単独接種 が費用は公費であるが任意接種となったため、接種する小児科医の負担が心理的、ある いは事故が起こったときの経済的負担が大変大きくなった。難しいことと思うが、定期 接種で行われるよう、もう一度厚生労働省にお願いしてほしい。また、市町村が負担す る事故に対しての保険の掛け方に関しての数以外も厚生労働省に要望してほしい。各市 町村が住民全体に保険を掛けるのではなくて対象となる年齢の子どもだけに限定できな いかという意味だと思いますけれども」ということで、大阪からもこういう投書が来て います。できれば、救済を含めて、できるだけ単抗原ワクチンを残していただきたいと 小児科医会では思っております。 ○澤委員 予防接種の移行の時期に接種される方も、こういう状況の中で少子化の時代 に随分やさしくない行政だなと私は思っていたのです。それで、いまお聞きして、これ でまた事務職は大変だなと一瞬思いましたけれども、それよりも何よりも、やさしい行 政がとても大事だなと思いますので、このような制度を是非導入していただいてできる だけ早い時期に行っていただけたらなと思っています。 ○加藤座長 少し誤解があるかもしれませんが、現行の方法でも可能なわけです。中間 報告を受けて4月1日から施行される予防接種法、これはMR混合ワクチンを接種する ことに決まりましたが、その中でも、法ではないけれども、片方の接種漏れ者に関して は24カ月以内であれば接種は可能です。単抗原ワクチンは接種可能なのです。そこのと ころの頭の整理をしていただかないと議論が進みません。もう1つは、単抗原ワクチン をあまり大々的に「できますよ」と言うことになると、かなりばらつきが生じてくる可 能性がありまして、後で議論していただきますが、接種年齢をどこにまで持っていくか ということも問題が出てまいります。従前、MMR混合ワクチンが導入されたときは、 風しんは中学生のみでしたが、麻しんの予防接種が可能な年齢の方に方してはMMR混 合ワクチンに取って代わって接種してもよろしいという、こういう通達が出されました。 その結果を見ていましたらば、ほとんどの方がMMR混合ワクチンをチョイスしたわけ です。実際に単抗原の麻しんのワクチンはほぼ消滅したという、こういう事実が過去に はあります。そういうことをひっくるめた上で、先ほど来の中間報告ではMR混合ワク チンができた場合にはMR混合ワクチンを導入していただきたいという中間報告をした と私は理解しておりますので、その辺を十分に含めた上で議論していただきたいのです が、片方のワクチンを接種していなくて片方が残ってしまったという例は今後なくなっ てくるはずなのです。いま1年間はあり得ます。しかし、ずっとMR混合ワクチンを接 種することを続けていくことによって、片方しか接種していなかったという方はなくな ってくるはずなのです。問題は最初の1年か、または1年ちょっとかもしれません。し かし、そのためには政省令から変えておく、変えなければいけない、という必要性があ るのかどうかということをこの検討会の中でご議論いただきたいと私は考えますが、雪 下委員、いかがですか。 ○雪下委員 いま座長が言われているように、移行措置でやっていたということが各自 治体も平均的に理解されないということと、それにかかわる先生方もなかなか理解して もらえない。もちろん、接種を受ける側も理解されない。ただ、実施主体は自治体とい うことなのだから、金がどこから払われるかは別にして、国はそういう方法をとるとい うことで自治体がやるとすればそれは公費でやることになるのと同じである、というこ とで市町村にもなるべく理解してもらうように、市町村の医師会からもよくそれを言っ て、その措置をやってほしいということを言ってきたわけですが、それでもいまだに自 治体が理解してくれないという医師会からの要望もありますし、先ほども少し出ていま したが、それを受けてくれたにしても期間の問題等で差があるというようなことがある。 あるいは、日本医師会としましても小児科学会、小児科医会の意向をお聞きしながらそ れを決めてまいるわけですが、特に小児科医会からは、期間の問題で90カ月まで認めろ とか、措置ではなくてそのまま続けたほうがいいのではないかとか、いろいろな意見が ありまして、実は、混乱して困っていたところですが、結果的には、それが本当の意味 の国からの公的なものとして認められるということは皆さん方の要望にも応えられてい いのかなと考えているところです。ただ、3月31日で政省令が変わるということを公 にしているわけでありまして、それが切羽詰まってから変わるということ、また、それ が変わって政省令が公布されるまでの期間のずれがあって、その期間をどうするかとい う問題が発生してくると思っております。その辺のところをこれから十分に検討して、 皆さん方の意見を聞いて決めていただかないといけないと考えております。 ○加藤座長 非常に難しい話が出てきているところで、例えばNHKのニュースをその まま理解するとすれば、なるべく近い時期に公費負担をする方針を固めるということは 政省令を改正するというように読めますので、仮にこれが明らかになったとすると、5 月、6月に産まれた子はMR混合ワクチンをやめて、単抗原ワクチンを希望する人には 単抗原ワクチンをやりますよと、こういうことになるわけです。そういたしますと、中 間報告で先生方にご議論いただいた、MR混合ワクチンでやっていただく方向がよろし い、という議論がどこかへ飛ぶ可能性があるわけです。その辺のところで、例外的に接 種できなかった方に対しては国が法令で認めるというのは十分理解できるのですが、そ の裏には、したい方はばらばらの単抗原ワクチンでもいいですよということを言ってい ることになります。そうすると、私どもがお話していたいろいろな理由がありましたね。 ばらばらでやると、麻しんの予防接種率が80%だとすれば風しんの予防接種率は50%程 度でいつもその差が出てきているよと。だけど、2つの混合ワクチンで接種すれば必然 的に両方の予防接種率は並びますよと。こういう議論もなされていた。そういう理由も あって、混合ワクチンを推進していただきたいという中間報告にしたところなのですが、 そのようなこともくるめて忌憚のないご意見をいただきたいと思います。 ○岡部委員 できるだけ統一したワクチンで接種することが両方の疾病に対する接種率 を高め、免疫率を高めるということが前提でここで話合いをしたのはそのとおりだと思 います。それを受けた決定をしていただいたのが非常によかったと思いますが、そのと きは、私も含めて、あるいは先生方もおそらくそうだと思うのですが、予防接種法施行 令の中で、対象疾患にかかった者は定期接種から除く、という一項について十分認識を していなかった。また、その説明はなかった。そして、定期接種が入れられたために、 MR混合ワクチンになると片方のMを受けた人、あるいは片方のMにかかった人はRを 受けられないという、昭和20年代につくられた法律が最後になってもう一回持ち出され て、これについては私自身の知らなかったことですが、想定外であった。そうすると、 今後、それも数年かもしれませんが、本当は医学的な禁忌ではないのだけれども、法律 が決まっているが故に定期接種でなくなってしまう人がある一定の人数出てくるとなれ ば、それは何とかして接種すべき方向に行く。つまり、その人たちは単独でやるか、施 行令のほうについて何らかの改善をすることが必要だろうと思うわけです。いまの件は DPTにも当たるわけですが、今日はDPTの議論をするとこんがらがりますから、そ れはさておいて、しかしそれはDPTにも関連する問題であるということだけは指摘さ せていただきたいと思います。  もう1点は、いま法律の話が先行してしまいましたが、いまのままでMR混合ワクチ ンがきちんと実施されることになると、3月はちょっとわかりませんが、昨年辺りでは 2歳以上の麻しんのワクチンの接種率は大体90%を超えています。1歳代の方で75〜76 %ぐらいですから、この75〜76%の方は先ほどの経過措置で何とかできるかもしれな い。しかし、2歳以降で各年齢層で10%ずつぐらいの人口の方が免疫を受けないまま、 結局、機会を失してしまうということはかなりの感受性者が高まる可能性がある。風し んに至ると、確かに発生者数はここ何十年かで最低になっているのですが、予防接種率 から言えば1歳以上で75%程度に止どまっている。というと、4分の1ぐらいの方は免 疫を受けないまま、結局、その定期接種外であるということ等々から、外れていってし まう可能性がある。現在、風しんそのものも麻しんそのものも最低になっているので、 短かめで見れば非常にいいのですが、数年経つとそこの感受性者の塊りの中にウイルス が完全になくなっているわけではないですから、そこに発生する可能性はある。そうす ると、麻しんについては小さいアウトブレイクがあちこちで起きる状況、風しんに関し てはそういう状況からCRS、つまり大人ではまだ感受性者がたくさんいるわけで、子 どもの発生からCRSという現象が想像されるわけなのです。これは決まりは決まりと して尊重しなければいけないことだとは思うのですが、そこに何らかの工夫ができるの ならば是非やっていくことが、先ほどおっしゃった本当に子どもにやさしい対応になる のではないかと思います。ですから、テクニカルな面については十分にわからないとこ ろがあるわけですが、何らかの方策は是非変えていただければ大変ありがたいと思いま す。 ○加藤座長 2点ほど問題点が出ました。確かに、対象疾病にかかった方は、MR混合 ワクチンに関しては麻しんに罹患した方は風しんのワクチンを実際に予防接種法の中で 接種できない。法律上は24カ月まではできないということが今回の政省令では1つ入っ ている。それは、後で時間があったらやりますが、DPTでも同じことが問題になって おります。もう1点に関しては、接種年齢の上限の問題ですが、現行の予防接種法では 90カ月まで非常に幅が広い接種機会を得ているので、その機会に接種をしない方々が出 てくるのが当然ではなかろうかと。ただ、この検討会でも話合いがあったように、病気 の性格上、1歳を過ぎたらばなるべく早く接種をするような方向で接種時期を定めるの が望ましいということを提言したわけです。それを受けて、24カ月までという政省令が できたのが現実です。  それから、岡部委員がおっしゃったように、24カ月までに接種しきれなかった者がず っと接種機会を失ってしまうことになって危険だということです。これに関しては、若 干、政省令に問題が生じているかもしれませんが、今後の研究に待つということになっ て経過措置になっていますが、いちばん最初にこの検討会で検討された3本目の柱の1 本として、接種を忘れた方に対して機会をもう一回与えるということが入っております。 そういう接種機会の確保という意味で、小学校に入る前の1年間の間に2期の接種とい う機会を持っていただきたいということをこの検討会では提言したわけです。ですから、 あの提言と、実際に今回できた政省令との間に差異があることは間違いありません。あ のときは、どなたでも第2期の接種は受けられるであろうという想定の下に皆さんお話 し合いになっていたのではなかろうかと思う。でも、実際にできた政省令は、実際問題 として、法律上、4月1日からは麻しん・風しんに免疫がない方だけが第2期接種がで きるのですよと。そういう法律であることは間違いない。そういうことから考えると、 そういう接種機会を失った方に対して法律で守ってあげるという法律ではないというこ とです。これは今からお話してもしょうがないのですが、多少、先ほどお話したことと NHKで公表されたニュースは良い点もあるし混乱する点もあろうかというところで、 極めて重要な微妙なところですので、もう少しご意見を伺いたいと思います。 ○澤委員 東京都の23区では、あと1年間の間課長通知ということの文章でやっていく という23区の協定も結んできちんとできるようにはいたしましたが、まだまだきちんと できるのかという若干の不安がありましたので先ほどの賛成の意見を言わせていただい たところです。予防接種というのは、基本形は中間まとめで出したMR混合ワクチン2 回というのが絶対的基本だと思うのですが、外れた方も何らかの形で制度として救える 制度があればいいのではないかというのは、23区の協定というのは1年間ですから、そ ういう意味ではその後のことを考えるとそのような気持でいるというところでございま す。 ○竹本委員 暫定期間を設けてくれた市町村が多いのですが、半年から1年ぐらいの暫 定期間ということなのですが、結局、先ほどの話での24カ月以下ということがあります から、その人たちに対して1年ぐらいの猶予は持ちましょうということなので、24カ月 を過ぎてしまった子どもたちの救済はほとんどの都市がなされていないということで4 月1日から迎えてしまうことになる。ですから、できれば1年ぐらいの間、今までの90 カ月以下の人たちの救済という意味の政省令ができればありがたいと思います。 ○加藤座長 いろいろとご意見があると思いますが、ほかにいかがでしょうか。なかな か難しい問題がたくさん腹んでおりまして、一度に全部スパッと決めるわけにいきませ んが、接種年齢について基本的なラインが必要だと思いますので、そこのところだけを この検討会で再度確認しておきたいのです。私どもが厚生労働省に提言をする場合は、 中間報告で提言しましたように、病気の性格上、1歳になったときになるべく早く接種 を行う。なるべく早くという上限を法律では24カ月と決めた。1歳を過ぎたらなるべく 早く接種をするということについては、この予防接種法ができた後でもご異論ありませ んね。  もう1つは、第2期目の接種の時期ですが、これも政省令とは別にその接種時期とい うことだけを考えてきた場合に、接種率とか抗体価の減少等、自然のブースターのかか りにくさということを勘案したときに、小学校入学前の大体1年ぐらいが妥当である。 こういうことでコンセンサスが得られて中間報告ができたわけですが、それについても 時期的にはご異論ありませんね。あえてそこまで法律をいじくって変える必要はなかろ うというご議論でよろしいですね。  そうすると、私個人の意見としては、1、2年経つと安定してきて接種漏れ者がだん だん減ってくるであろうと予想をしているのですが、当面のところをどうするか。いま 漏れ者に対して地方自治体がやっていることを国が責任をもってやりますよと、こうい うニュースですから、局長は正式なコメントではないというお話でしたが、国はわかり ませんから、いきなり厚生労働大臣が記者報道か何かでいまごろやっているかもしれま せん。大臣が言ってしまうと全部決定で、私が馬鹿なことを言っているみたいですが、 検討会の答申書は後々まで残りますので十分に審議をしていただきたいと考えておりま す。時期的なものについてはよろしいですね。 ○岡部委員 時期的なものについては、いまの制度で数年経って接種率が高まればかな り効果が出てくると思うのです。麻しんでたとえて言えば、1歳の接種率が90%以上ク リアーしたような地区、沖縄や宮崎、あるいは私は23区内の中の世田谷しかデータを持 っていないのですが、いくつかの区で麻しんゼロがすでに昨年達成されています。です から、1回接種をきちんとやればその程度までは行くのですが、残りになった10%の人 たちの蓄積を防ぐためには2回目の接種であり、90%の人たちから何人かは免疫が下が っていくということをやるのが2回接種の意味合いなので、先生がおっしゃるように、 やがて接種漏れ者も少なくなってくるということはあるのですが、問題は、1歳代で接 種漏れ者の人がいまの措置でやれるのが1年間です。しかし、積み残しの方はずっと積 み残しになってしまうので、ここのところにも光を当てておかないと本当の公衆衛生上 の麻しん・風しん対策ができないのであろうというところが私の意見でもあり、これを 取りまとめている者としての意見です。 ○加藤座長 後段の接種漏れ者の対応については、この検討会での中間報告はそのため に2期接種を導入するということだったですね。要するに、接種機会の確保ということ が書かれています。接種機会の確保の所を読んでいただくとわかりますが、1期目の接 種を忘れた方に対しての接種機会を与える、最低限度1回は接種できるような機会を与 えましょうということで、この検討会では2期接種を提言したということです。しかし、 実際問題としては厚生労働省令の中では2期接種が非常に限定されてきた。それから、 MとRを単独で接種した方に対する2期の接種に関しては、経過措置として現在のとこ ろは接種できませんというのが現状である。ということで、検討会で検討したことと実 際の法令との間には差異があるということは確認済みでよろしいですね。  もう1つ確認しておきますが、実際に接種する場合には、基本的には中間報告で出さ れたとおり、接種は麻しんと風しんの2種混合ワクチンを強く厚生労働省にお勧めする という原案なのですが、そこは異論ありませんね。わかりました。その2つのところを この検討会で再認識したということでまとめるというか、中間報告をやってしまいまし たのでどこでまとめるかはまた別なのですが、事務局とご相談をして、附帯事項等で再 度話し合われたことについての追加事項として記載させていただく予定です。ほかにM R混合ワクチンに関して何かご意見ありますか。 ○雪下委員 先ほど座長からの発言のところでMR混合ワクチンを開始することについ て、そのインセンティブというか、単抗原ワクチンを法的に認めるということでそれが 薄れるのではないかと。私もそこがいちばん問題ではないかと思っているのですが、今 までの接種も、特に麻しんにつきましては1歳になったらすぐ接種するというPRが利 いて接種率も上がったのと、実際の麻しんの罹患率も激減したということからその効果 を示したわけです。今度それを変えることによって、それが崩れてしまうということは また元に戻ってしまうということで大問題なので、それは外すことはできないだろうと 思っているのです。そこで、あくまでも、90カ月までの接種については3月31日まで 全部接種してくださいということは半年間ぐらいの間にいろいろな所でPRされたし、 国も努力されて各市町村への通知も出されたようで、実施していない所についてはまた 再度通知をされたことも聞いています。だから、90カ月というところに議論を戻すのは やめるようにして、移行措置として法的に認めるという形で24カ月までの単独ワクチン の接種。それを法的に移行措置というのはどうなのでしょうか。今までも移行措置は法 的だったですよね。移行措置になって市町村に下ろして、そこで独自にやってもらうと いうのはあまりなかったように思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。移行措置 として法的に認めるということになると、私が懸念している各市町村でのいろいろな差 とか、そこでの理解の不足とか、そういうものがなくなるので目的は達成されると私は 考えているのですが、その辺はどうなのでしょうか。 ○塚原結核感染症課長 移行措置というのは法律で決めるか法律以外で決めるかはとも かくとして、一時期のものですよという意味だと思います。仕事としては法律の中でや る場合と法律の外でやる場合とあると思います。 ○雪下委員 あくまでもMR混合ワクチンの接種が4月1日からということで、その残 った分の移行措置としてそれを法的なものとして24カ月までは認めるということにし てもらえば、座長が先ほどから心配されていたMR混合ワクチンのインセンティブとい うのが崩れずにいくのではないかと思います。 ○岡部委員 ここにおられる方はほとんど理解されているのではないかと思うのです が、MR混合ワクチンを導入することになったということが決まったところで、仮にそ のMとRの単独をもう1回認めるということになった場合に少し危惧するのは、MR混 合ワクチンについて問題があるからMとRに戻したのではないかという議論が別の所で 起きてくる可能性はあると思うのですが、私自身はそうではなくて、あくまでもそうい うものは接種しないままで感受性が残ってしまう方への対応であって、そのMR混合ワ クチンがいま何らかの問題が生じてきたので慌ててMとRを単独に残しておいたほうが いいのではないかということではないということを何らかの形でアナウンスしないと違 う形で理解されてしまうことがあるだろうという点を1つ危惧するところです。 ○加藤座長 お2人の意見は貴重なご意見です。またしつこく言うようでうるさいと言 われるかもしれませんが、ご承知のとおり、日本という国は非常に厳しい国でして、ほ かの薬もそうかもしれませんが、新しいワクチンが導入されることはありません。後で 時間があったらやりますが、非常に厳しいです。MMR混合ワクチンが導入されて以来、 今度のMR混合ワクチンが初めて認可されたワクチンであるというぐらい、ワクチンが 認可されるということはそれなりにかなり厳しい審査を受けて合格しないと認可されて いないわけです。その裏を見てみれば、それだけ厳しいために認可されないワクチンが かなりある。これは次回のためのイントロダクションとしてやらせていただきますが、 そういうワクチンがたくさんあるのです。したがって、いま岡部委員がお話になったこ とは特に重要なことでありまして、そういう誤解が生じないように先ほど私がご確認し ましたが、この検討会ではあくまでもMR混合ワクチンをご推奨するということで統一 的な意見が出ていると理解しますが、よろしいですね。雪下委員もそれでよろしいです ね。 ○蒲生委員 たとえばの話なのですが、今後、今度の4月1日以降に1歳になる方はM R混合ワクチンとすることをお母さんたちにはっきり知らせるためには例えば定期接種 の中で生年月日で受けられる定期接種を変えるというか、平成17年4月1日生れ以降の 方はMR混合ワクチンで、それより以前の方は麻しんか風しんかどちらか単独でも受け られるようにという。例えばですが、岡部委員がおっしゃっていましたが、特に2歳以 降の方は1歳になったら麻しんということを非常に言われてきているのでほとんどの方 が受けてしまっているとすると、その方たちは2回目のMR混合ワクチンも受けられま せんし、そういう意味で、MR混合ワクチンが基本で、あくまで受けそこねた方もしく は病気にかかった方が単独でできるのだというはっきりとした条件付きのような風しん と麻しんの単独定期接種というものができないのか検討していただけたらいいと思いま した。 ○加藤座長 その件に関して、疾病にかかった人は別として、4月1日以降、2歳以上 で接種漏れ者が出てくる可能性があるので、そうならないように厚生労働省、文部科学 省等が一致団結して、この法改正が行われる数カ月前から全力をあげてすべての全国の 各所属の部署に通達を出し、しかも念を押し、先ほど雪下委員と竹本委員がおっしゃっ ているように、接種漏れ者が出ないように努力していただきたいと。こういうキャンペ ーンは十分に行ったというふうに見なさざるを得ないと思うのです。そこで接種漏れを した方に関してまでも手厚くやってあげなければならないのかどうかということは、ま た別の議論ではなかろうかと私は考えます。いつもお話いたしますが、例外となったも のについてまで法律でカバーするということは非常に難しいのではないか。法律が出来 た場合には、その法律に則ってやっていただきたい。NHKのニュースによりますと、 場合によっては政省令を早急に実施できるようにと書いてありますが、あまり早急にや りますと、また拙速なことが起きます。厚生労働大臣か誰か、そのお気持は十分にわか りますが、この検討委員会としては、十分に検討していただいた上で、改正する場合に は改正していただきたいと私は考えています。 ○岡部委員 基本的には、決まった部分についてはきちんとやらなくてはいけない、と いうのは同じですけれども、そこに修正すべき点を見出して、それが結果的に国民の方 々、接種を受ける人たちの利益になるのであれば、それはやはり英断を持っていただい たほうがいいのではないかと思うのです。  先ほどから申し上げているように、個人個人の疾病予防と全体から見た公衆衛生対策 上必要なこと、あとテクニカルなことはあるでしょうから、そこは検討していただいて も、これはこういうことだから、今のまま決まってしまったのだからゴー、というよう な形にはならないことを是非お願いしたいと思います。加藤座長も、おそらく、そうい う気持でおっしゃっているのではないかと思うのですが、ちょっとお聞きしていると後 退しているように、私の印象として感じたので、是非、後退しないような形でおまとめ いただければと思います。 ○加藤座長 私が申し上げたいのは、予防接種法や政省令の改正が、まだ実際に実施さ れていないわけです。実施された段階で、岡部先生がおっしゃるようなことが出てくる。 はっきり申し上げて、この検討委員会としては、この4月1日から行われる政省令改正 について、全面的に賛成ではありません。小児科学会でも、小児保健協会の予防接種委 員会でも十分吟味いたしまして、これはちょっと予定外の法律であったという印象をぬ ぐえないことは確かです。しかし、これは決まったことですので、とりあえずやってい く。  誤解がないように言っておきますが、この委員会で決めたことと何が違うかと言うと、 全員が第2期接種の対象者にならなかったということだけです。そのことが、我々が検 討してきたことと全く違ったことです。すなわち、すでにMとRをやっている方、この 4月に小学校に入る1年前になった方が第2期接種を受けるとばかり思っていたのに、 それができない。そこがこの検討委員会で決められたことと違って、それが意外であっ たということをはっきり申し上げておきたいと思います。しかし、政省令で決まったこ とですので、とりあえず、これでやっていただく。国をあげて全力でやっていただいて、 直すべきところは直していく必要は十分にあろうかと思います。  時間が迫りますが、議論が白熱しております。まだ議題が山積しておりますが、今日 は局長がお忙しいところをお見えですので、問題点だけ、さらっとやらせていただきま す。  次は5頁のジフテリア、百日せき、破傷風の問題についてです。岡部先生、もう一度 法律と政省令との違いについて、また、実際の矛盾点等について説明していただきたい のですが。 ○岡部委員 従来、ジフテリア、破傷風、百日せきの予防に関しては、ジフテリア単独、 破傷風単独、百日せき単独、あるいはDT、DPTを用いるという形で書かれていたと 思います。実際にはその予防注射はほとんどないので、DPTかDTだけなわけですが、 対象者が仮に百日せきにかかった場合は、DTワクチンを使ってDとTの免疫を与える ということができていたわけです。しかし、今回の改正によって、定期接種はDPTで あるということが明確に出てきたために、これも想定外だったわけですが、極めて少数 ですが、百日せきにかかった方は定期接種であるDPTは接種できない、任意接種でD Tをやりましょうという形になるわけです。そうなると、折角ジフテリアと破傷風も対 象疾病であると言いながら、一方では、定期接種でジフテリアと破傷風の免疫が出来な くなるという想定外のことが出てきます。昭和20年代に出来た予防接種法施行令に基づ いた対象疾患は定期接種ではないということですが、それは禁忌を意味するものではな くて、そういう人はやらなくてもいいだろうという意味での法律だったのだろうと思い ます。しかし、ルールとして動いてしまった関係で、その病気にかかった人はDPTを やる必要がないのだ、誤解をすると、これは禁忌ではないかという考え方になってしま うので、この変が今のDPTの問題だろうと思います。  実際としては、百日せきにかかる人は今非常に少ないのですが、今後各国、例えば欧 米諸国でも成人の百日せきが問題になってきて、それが新生児あるいは免疫不十分の乳 幼児に感染するということが危惧されている段階で、そういう免疫から外れた人はもう いいのだということではなくて、できるだけの方策をとることが必要ではないかと思い ます。 ○加藤座長 百日せき罹患者が国の法律で定められたジフテリアと破傷風の防御を法律 の下で受けられない、ワクチンが受けられないという事態が実際に起きているというこ とですが、竹本委員、現場ではいかがでしょうか。あまり問題になっておりませんか。 ○竹本委員 問題になっております。百日せきは診断がはっきりつくことは少ないので、 DPTワクチンを接種しても構わない、と講演会で聞いたことがあるが、この方法をと ってもよいかどうかということで問い合わせが来ております。はっきり診断はつかない が、この咳の形から、検査はしないが百日せきだと言った場合に、ワクチン接種ができ るかどうかという問い合わせが来ておりますが、その辺はいかがいたしましょうか。 ○加藤座長 雪下委員、この辺のところについて、医師会ではどうなっていますか。 ○雪下委員 いま竹本委員が言われたのと同じことがかなり問題にされております。た だ、いま小児科学会、小児科医会の意向を聞かせていただくと、竹本委員もそういうふ うに言われているのかもしれませんが、百日せきについては、はっきりした診断方法が ないので、それにかかっている、いないにかかわらずDPTを打っていいのではないか、 今小児科の先生はそういう考え方でやっておられると聞いております。 ○加藤座長 実際に、予診票の今までかかった病気という所に百日せきと書かれている 人がDPT3種混合ワクチンを接種しに来たときに、今の厚生省令ですと、「あなたは 今日3種混合ワクチンの接種はできません」と言わざるを得ない状況です。したがって、 そういう方に対しては2種混合ワクチンを接種できるのかどうかということで調べたの ですが、今までの予防接種法や政省令の中に、DTワクチンを接種してもよろしいとい うことは歴史的に1項目もありません。DTワクチンは第2期予防接種としての定期接 種のみに認められていたワクチンで、この辺のところが実際は少し甘かったのかなとい うところで、また今後の話題にしていただきたいと思います。 ○岡部委員 ちょっと、すみません。予防接種法施行令でしたか、それはあくまで単独 の疾患に対して単独のワクチンと言ったころに出来たものであって、ずっとそのままで いくと、今後混合型のワクチンが世に出てくる可能性がある。例えばDPT、IPB、 欧米では既にDPT、IPB、が出来ているということで、もしそういうものを導入す ることになったときに、それぞれにかかった人あるいは予防接種を1種類だけやってい る人は他のものが全くできなくなる、というようなことがあるので、これは長期にわた ってきちんと検証し、今後改善を考えておいたほうがいいだろうと思います。  乱暴な話だと言われるかもしれませんが、アメリカでも韓国でも、ある病気をターゲ ットにして予防接種率を高めてそれに感染する人を減らそうという思いのときには、一 斉投与をするわけです。そのときには、予防接種をやった・やらない、罹患した・しな いということではなく、一定地域の住民に対して、子どもたちに一斉投与をするという 方策をとって、実際上何ら問題がない。ただ、その後のサーベイランス等々はきちんと やらなければいけないところがありますが、そういう方法を国際的にはとっている、と いう認識も必要ではないかと思います。 ○加藤座長 DPTに関してはいま指摘された問題点もございますので、また今後、機 会がありましたらば委員のご意見を伺いたいと思います。 ○雪下委員 Pに罹患している者に対してのDPT接種についてのエビデンスは、日本 ではどうなのでしょうか、ありますか。 ○加藤座長 百日せきに罹患した方に対してDPTワクチンを接種してしまった場合、 医学的に考えた場合には全く問題がなかろうかと思います。ただ、私が症例を集めて論 文を書いているかと申しますと、論文としてはまとめてありません。 ○雪下委員 現在その方針でやっておられる小児科の先生方については、一応そのまま 実施していただいていいと考えてよろしいでしょうか。 ○加藤座長 なかなか難しいので、そういうことを含めて、この検討会で今後検討させ ていただきたいと考えております。6頁目は大変大きな問題である日本脳炎です。ご承 知のとおり、厚生労働省の課長通知で、アデムが出現したことによって、現在、日本脳 炎の定期予防接種の積極的な接種の勧奨は差しひかえるという事態に陥っております。 これは都道府県の主管部長に宛てたものです。実際の役所との取り決めによりますと、 宮崎等一部の九州地域では、従来どおり積極的にやっているようですが、ほとんどの地 方自治体は、日本脳炎ワクチンの接種を中断しているのが現状のようです。また、厚生 労働省としては、ひと通りその説明をして説明書を見せ、そして同意書を書いていただ いた場合においては、法的に日本脳炎ワクチンを接種してもよろしい、希望者には今ま でどおり接種ができるということになってはおりますが、しかし地方自治体自身がこれ を止めている可能性がある所が多い、そこが問題です。  さらに付け加えますと、厚生労働省の課長通知の中に、よりリスクの低い組織培養、 細胞培養によるワクチンの開発が進んでいるところなので、そのワクチンの使用可能性 が出てきた場合にはこの積極的勧奨の差しひかえを解く、ということが言明されている ところです。  現在2つの会社で日本脳炎ワクチンの申請がなされているところですが、これが遅々 として進まない。おそらく、今年の夏には間に合わない。そうしますと、多くの地方自 治体では2年続けて日本脳炎ワクチンの接種が行われないということになります。幸い 日本脳炎という病気が子どもたちの間に起きておりませんので、現在のところは問題に なってはおりませんが、豚を検査すると、まだまだ日本には日本脳炎ウイルスが存在し ているということも勘案して、日本脳炎ワクチンの継続的接種は十分に必要なのである、 ということは中間報告でも述べております。しかし、その中で第3期の接種に関しては 接種対象者も少ないし、その接種は必要ないのではないかということも言及しておりま して、これは予防接種法の中では取り外されています。  7頁の最後に、「なお、ワクチン製剤については、現行のマウス脳を使用する製法か ら、より安全性が高いと考えられる組織培養型ワクチンへの早期転換に向けて、関係者 の努力が必要である」と。この関係者というのは、ご承知のように、メーカー側と審査 する側という意味を含んでいるわけですが、これは進まないのが現状です。そうします と、日本脳炎のワクチンが、場合によっては数年間接種されなくなる可能性が出てまい りますが、地方の状況についてお尋ねいたします。澤委員、日本脳炎ワクチンの現状に ついて、いかがですか。 ○澤委員 墨田区では、説明を受けて承諾書を取れば、やっていいという状況でいま進 めていますが、全く上がってきません。 ○加藤座長 接種者はほとんどいないということですか。 ○澤委員 はい。 ○加藤座長 竹本委員、川崎市では、いかがですか。 ○竹本委員 やはり同意書を保健所に行ってもらわなければいけないのですが、お祖父 ちゃんが日本脳炎で亡くなったから、どうしてもやりたいのだと言うので、じゃあ保健 所へ行きなさいと言うと、まず人の話を聞いてと。それで、これはやめたほうがいいわ よ。こんな危険なものを、あなたは打つんですかという形で言われるので、みんな「じ ゃあ、やめます」と言って帰ってしまう。私は先生から言われたので、もらってきまし たけど、というのが現状のようで、厚労省の通知というのが保健所には非常に強くいっ ているような感じがします。ただ、川崎市では、保健所まで行かなくても、医療機関で 同意書を置いて、受けたいときにはその同意書を書けばできるという形に切り換わりま したので、少し指導が弱くなったのかなということで、少し安心感があります。  日本脳炎は私も1例経験があるのですが、それは私の世代ぐらいまでで、若い先生は ほとんど経験がないのではないかと思います。だから、その怖さというのを知らないの で、あまり声が上がってこないのだと思いますが、是非、これは早く復活していただき たいと思います。 ○雪下委員 私も、3期の廃止についてはまだ法的なあれはスタートしないのかと思っ ております。私も事務的なことは知りませんで、3期の子どもが見えたときには予診だ けしまして、あなたはやらなくてもいいということで市のほうへ出したら、もうこれは 廃止になっていますと。廃止することはもうピチッと決まっていて、金を払わないこと はすぐに実施しているのだと思っていましたが。  今年の6月か7月ごろには新しいワクチンが出来るであろうと、日本医師会として先 生方に広報しておりますが、いま座長が言われたように、それがずっと遅れるというこ とになると、かなり問題になってくるかと思っておりますが、いまのところは、特別そ れについてどうかという問い合わせは受けておりません。 ○加藤座長 かなり問題になるのではなかろうかというのが私の見解ですので、相当遅 れた場合の国の対応を。アデムの方が1人出たためにこういう事態になりましたが、ワ クチンを接種することを差し控えることによって、もし万が一、1人でも日本脳炎の患 者が出た場合のことを考えますと、この検討会の持つ意味合いは非常に重大でして、各 委員のご意見を伺いたいと思っております。ウイルスについてはそういう現状なのです が、岩本委員、いかがでしょうか。 ○岩本委員 今日の議論の中でずっと思っていたのです。私は内科出身ですが、医師と しては現場感覚もいちばんない人間だと思うのです。しかし、小児期に打つワクチンに 関して、現状がどうで、この検討会の議論がどうであって、現在の政令がどうなってい るという資料がなしで出てくるので、一つひとつについて頭の中の整理が難しいという ことを、まず申し上げたいと思うのです。  日本脳炎に関しては、実際に私が存じ上げているところでは、豚の間でのウイルスの 流行というのは以前と何ら変わっていない。ただ、日本が都市型の生活になって豚との 接触が減ったことや、蚊の駆除がうまくいっていることで減っているのであって、もし、 それに対して実際にワクチンが行われないのであれば、危険性について国民にどのよう に周知していくか、パブリック・コメントを求めるようなことも考えていいのではない かと思います。しかし、それとワクチンの開発をどうするかというのは別問題で、安全 なワクチンというものは常に用意する方向で開発は行われるべきだと思います。 ○加藤座長 要するに、ワクチン自身が必要であるかどうかというところのコンセンサ スをきちんと得ることが必要であろう、また、そういうこととワクチンの危険性とは別 であるというご意見です。この検討委員会では、各ワクチンの専門家にヒアリングをし ており、その結果に基づいてこの検討委員会の中間報告が出ております。日本脳炎ワク チンに関しましては、まだ継続的に接種が必要であろうということが中間報告では出さ れているのです。罹患者はたぶん高齢者だと思うのですが、岡部委員、疫学的にはいか がですか。 ○岡部委員 幸いなことに、2005年の状況で、日本脳炎が2004年に比べて増加したと いうことはないわけです。私たちは、そうであるならば、日本脳炎のサーベイランスの 強化が必要であると申し上げているのですが、それがないから、実態は今までの状況で いっている限りは増えていないということだと思います。  いくつかのレポートを拝見すれば、不顕性感染というのが日本脳炎であり得るわけで す。これは推測になりますが、不顕性感染者がいるということは、来年、不顕性感染者 が増加していく、再来年は不顕性感染者の中から発症者が出てくるというようなことが 危惧されるので、できるだけ早く日本脳炎の免疫保持者を増加させることが必要なこと であろうと思います。したがって、検討委員会としては、引き続きこれの実現を求める ということが正しいと思います。  日本脳炎に関連して1つ述べておきたいのですが、中間報告の最後に、「ワクチン製 剤について、現行のマウス脳を使用する製法から、より安全性が高いと考えられている 組織培養型ワクチンへの転換」とあります。この「より安全性が高い」という意味は、 先ほど座長がおっしゃった、アデムその他の理論的リスクが低いワクチンであるという 意味だと思うのです。「より安全性が高い」というところが独り歩きをして、例えば熱 も出ないとか、腫れない、つまり現行のワクチンよりそういうものの反応についてすべ て安全性が高いということが証明されないと、「安全性が高い」とは言えないのではな いか、ということが巷では問題になっているのです。  もう1つ、日本脳炎の場合、アデムの可能性は理論的に払拭されないわけですが、厳 密に言うと、ほかのワクチンでも、いまの症例定義を使う限りはあり得ることですから、 仮にベロ由来になったとしても、ゼロになるわけではないという認識も一方では必要だ ろうと思います。その上で、座長がおっしゃったような日本脳炎のリスクというものを 考えた場合のバランスで、必要なワクチンであるということではないかと思います。  いま日本脳炎ワクチンが勧奨差しひかえになっているわけですが、これも定期接種を 中止しているわけではないという理論から、現在勧奨を控えている方々が定期接種年齢 を超えたときに「それはやっていないから、やらなくてもいいのではないか」というよ うな回答がしばしば公的に見られます。この点は問題があるということを提起したいと 思います。 ○加藤座長 この問題に関しても、今日は時間がだいぶ過ぎましたので次に検討する機 会を持ちたいと思います。またやり直しになるかもしれませんが、岩本委員がおっしゃ るような科学的データが必要であるということであれば、またそれを用意させていただ いた上で議論をしたいと考えます。  時間がありませんので先に進めます。9頁、これは予防接種法で認められているワク チンでないワクチンに関して、検討会で行われたものであります。まず、水痘です。こ れもまた後程、今日の議論では十分ではありませんが、中間報告がこの水痘ワクチンの ヒアリングをしたときに比べると、若干トーンダウンされた形で書かれている可能性が 無きにしも非ずです。この検討委員会で多く議論された中身としては、9頁の下から3 行目、「水痘は予防接種法の未対象者の中で、定期接種化が最も期待されているワクチ ンであるが、定期接種化に当たっては国民の理解と合意形成が前提となる。今後、水痘 ワクチンの接種を干渉する目的や必要性について、さらに整理するとともに、関係者は 予防接種法の対象疾患類型を再検討するに当たって、水痘ワクチンの位置づけについて も合わせて考慮すべきである」と書きました。  これは大きな問題で、また機会があったらこの話題も入ると思います。いわゆる、現 在の一類疾病と二類疾病の位置づけをどうするかということにも関与してくると思いま す。ここの文章の書きぶりよりも少し、水痘ワクチンに関しては定期接種化を進めてい ただきたいというご意見が強かったように記憶しています。竹本委員、現場で何かご意 見はありますか。 ○竹本委員 はしか、風しんが終わったあとに出来るだけ水痘、おたふくをやったほう がいいと言っていて、割と受ける人は多くなっています。保育園に入所する、あるいは 未認可保育園に入所する人もだんだん多くなっていますので、こういう疾患もできるだ け取り上げていただければ、働くお母さんたちにとっても朗報になるのではないかと思 います。 ○加藤座長 そういうことで、水痘ワクチンに関しても若干中間報告は少し控え目に書 いている部分があります。また、時間がありましたときにはもう少し定期接種化に向け た検討、委員会としての意見を付け加えてもよろしいかと思います。  10頁をご覧ください、「B型のインフルエンザワクチン」です。これも同じような書 きぶりで書いています。この委員会で討議され、または小児科学会、小児保険協会、小 児外来学会、小児科医会等がかなり強く、このインフルエンザB型Hibワクチンの導入 を要望しております。10頁の下から3行目、「また、Hibワクチンの予防接種法上の位 置づけの検討に当たっては、この疾患の重篤性、発性頻度を十分に勘案した上で、今後、 我が国においてさらに有効性、安全性、費用対効果等の治験を収集する必要がある」、 このような書きぶりにしてあるわけです。  ここに書かれている以上に、Hibワクチンの導入を要望する声が強かった。しかし、 このワクチン自身の承認がなされていませんので、こういう書きぶりにさせていただき ました。このワクチンが導入された暁には、もう少し書きぶりが変わってくるかと思い ます。ただ、これも先ほどお話しましたが、日本という国はそう簡単にワクチンを承認 しない国であります。いろいろな理由があるのでしょうが、この辺、健康局としても強 く要望をしていただきたいところです。各論については以上です。いろいろ、まだご審 議があることとは存じますが、また機会を作っていただけるということなので、後の機 会にまたご議論をいただきたいと思います。  残る時間で16頁、資料2をご覧ください。「予防接種制度の横断的課題」を総説的に お話いたしました。これは皆さん記憶が新しいと思いますので、厚生労働省から簡略に ご説明いただきたいと思います。 ○伯野予防接種専門官 16頁から、これまでの検討会のご議論を踏まえて、「予防接種 制度(横断的課題について)」という形でまとめました。  まず1番目、「副反応報告の活用について」です。予防接種後に重篤な副反応や、ま た頻度の急激な増加等が報告された場合に、予防接種を行う価値という観点から見て、 そのワクチンを用いた予防接種の干渉を継続すべきか、中止すべきかという判断が必要 となってくるところです。その際、こちらに(1)、(2)という形で報告及び調査が行われて いますので、これらを活用していく必要がある。  しかし、現行のこれらの報告、制度や調査においてはいくつか問題点が指摘されてい ます。1つは、これらの副反応報告等が必ずしもワクチンとの因果関係が証明されてい るものではなく、当然紛れ込み事例も含んでいる。2番目としては、副反応報告につい ては頻度が1年に1度、健康状況調査については1年に2度の検討及び報告が行われて いますが、頻度が不十分ではないか。3番目としては、逆にすべての副反応が報告され ているものではない。定期の予防接種に関しては通知で副反応報告を行っていますので、 すべて確実に報告されているものではない。4番目としては、報告書は作成しておりま すが広く周知されていないという指摘があります。  したがって、次のような対応を考慮するというように記載しています。(1)としては副 反応報告や健康状況調査の結果を定期的に、例えばWeb上で公開する。(2)としては、 因果関係が規定される紛れ込み事例等を可能な限り精査する。3番目ですが、先ほどの 「評価回数が少ない」というご指摘に関しては評価回数を増やす。4番目としては、関 係部局と適宜情報交換を行っていくということであります。これらの対応を行うことに よって予期せぬ重篤な副反応、あるいは予期せぬ頻度で副反応が生じた場合に早期かつ 正確に把握して、予防接種の継続、あるいは中止等に関して適切な対応を行うことが期 待されるという形でまとめています。  2番目ですが、「健康被害の救済制度について」です。定期の予防接種に関しては、 昭和51年の予防接種法及び結核予防法の改正において、予防接種による健康被害救済制 度が法律に基づく新しい制度として規定されています。さらに、平成6年に制度の充実 が図られているところです。今後については、過去の健康被害救済の認定事例や判例の 流れ等も踏まえ、引続き制度のあり方を慎重に検討していくことが重要であるという形 でまとめさせていただきました。  3番目、「接種率の正確な評価を行うための共通指標の構築について」です。定期の 予防接種の非接種者数の統計についてはより正確な、全国共通の標準的な接種率の算定 方法を示す必要が以前から言われてきておりました。  これを受けまして、平成16年以降の予防接種の実施報告においては年齢階級別に接種 者数を把握できるよう、報告制度を改正したところです。しかし、これらのデータが蓄 積されるまでに時間を要することから、引続き厚生労働科学研究等においても接種率の 調査を行う必要がある。  また、全数の把握には時間を要しますので、新しいワクチン、例えばMR混合ワクチ ンの導入の際には、これらの報告制度とは別に、短時間で把握が可能なサンプリング方 式等による接種率の調査を行うことも検討する必要がある。また、接種率の把握には台 帳の正確な登録が必須ですが、大都市等を中心に予防接種台帳を作成していない自治体 もあります。したがって、早急に予防接種台帳を作成・整備するよう、市町村に対して 指導することが重要であるとまとめています。  4番目、「対象疾病の類型化について」ですが、現在では一類疾病と二類疾病という 形で類型化が行われているところです。例えば、新しいワクチンを導入する際に類型化 を行ったり、現在の疾病の中でも類型化を見直す場合においては、最後の段落、「現在 の予防接種法の法体系及び各条項の規定に照らした上で、医学的治験に基づく当該ワク チンの有効性及び安全性に加えて、対象疾病の特性、流行状況を踏まえた上で検討する 形がある」とまとめています。これ以外にも今後、さらに三類や四類というような類型 化の話もあります。  5番目、「予防接種医師の知識・技能の向上について」をご覧ください。現在、定期 の予防接種においては、被接種者の通常の健康状態を十分に把握しているかかりつけ医 が個別接種を行うことが適当であると考えています。したがって、多くの医師が接種を 行うこととなりますので、それら多くの医師が予防接種に関する知識・技能を確保して いく必要があります。医師が安全に予防接種を行うための専門医制度という話もありま したが、これに関しては多くの医師が予防接種を実施する必要があるため、厳しい試験 による制度が現実的ではないか。専門医制度というよりは、研修会や講演等の充実を図 ることが重要であるというご意見をいただいています。  6番目、「都道府県の積極的な役割を求めることについて」です。現在、市町村を実 施主体としています。現行制度を変更する必要はありませんが、予防接種率の向上、個 別接種の推進及び学校をはじめ、関係機関との連携等の課題に広域的、総合的に対応す るためには、市町村では人材や情報の収集等の点で限界があるということが指摘されて います。したがって、都道府県は市町村に対してより適切な、定期の予防接種体制が整 えるよう、指導することが重要である。具体的には、市町村の圏域を越えた相互乗入れ 方式の導入によって、市町村の圏域を越えて予防接種を実施することができるよう、接 種体制を整えていくことが必要である。  別の問題ですが、昨年、予防接種による事故もいくつかありました。これらの未然防 止のための指導についても、安全で有効な予防接種の実施のため、積極的な役割を都道 府県が果たしていくことも重要であるとまとめています。  7番目、「個人の予防接種記録の活用推進について」です。ここはいろいろなご意見 をいただいているところです。20頁のいちばん上をご覧ください。「生涯を通じての予 防接種記録の保持というものは、国民1人1人が自らの予防接種歴を正確に把握して、 感染症から健康を守る観点から重要である」というご意見をいただいているところです。  ただし、目的や情報管理の手法、あるいは既存の手帳との関係の整備等、より具体的 な検討を重ねる必要があるという形でまとめています。  8番目、「医療従事者、社会福祉施設等の従事者への予防接種の干渉について」です。 医療従事者が自ら感染源とならないため、日常の健康管理に気を使うことは当然ですが、 医療機関等が組織として、積極的な院内感染予防のための対策を行うことが重要である。 一方で、院内感染のための統一した医療従事者向けの「予防接種指針」がないことから、 積極的な対策が進まないというご意見もありました。国や自治体が対応すべき事項であ るか、また職業倫理という観点から各医療機関、教育機関、学会等が積極的に行うべき 事項であるかというのは、さらなる議論が必要であるという形でまとめています。  9番目、「予防接種勧奨について」です。これに関しては、厚生労働省や文部科学省 からの通知等で既に周知が行われているところです。定期の予防接種においては市町村 ごとに、接種対象者の人口格差や周知方法、接種体制が異なる等の地域事情により、接 種率に著しい格差が出ているところです。そのため、これらの数字が十分に周知されて いない市町村もあるというご指摘もあります。このことから、接種率の向上のためには 関係部局、関係団体が連携をより一層強化する必要がある。  10番目、「予防接種のガイドラインについて」です。最後の頁に関しては、医療従事 者向けとしては予防接種のガイドラインが作られています。被接種者向けとしては、「予 防接種と子供の健康」が作成されているところです。平成11年の検討会においてもより 平易な内容で、読者の理解を促す観点からの改正が必要ということが言われていますの で、そのような方向で改正が行われているところです。また、情報提供の内容、提供の 方法等の在り方についても、より一層の改善を図っていく必要があるという形でまとめ ました。  11番目、「海外渡航者に対する予防接種について」、海外渡航において必要なワクチ ンについては、現在、情報提供を積極的に行っているところではあります。ただ、やは り、海外渡航者が十分正確な情報を持たずに渡航しているという指摘もありますので、 より正確な情報提供を行う必要がある。また、黄熱ワクチンやA型肝炎等のトラベラー ズ・ワクチンの接種については、地域によっては接種できる医療機関等が限られていま すので、確実に接種できる体制づくりを検討していく必要があるという形でまとめさせ ていただきました。以上です。 ○加藤座長 どうもありがとうございました、「予防接種の横断的課題」についてご説 明いただきました。これはごく最近行われた討議ですので、皆さん、まだ心の中に残っ ていると思います。特に、何かご質問はありますか。このまとめでよろしいでしょうか。 ○廣田委員 これは昔からなのですが、副反応を考えるとき、ここでは「紛れ込み」と いう言葉も出てきています。逆に言えば、最初からこれを有害事象と考えればもっと広 汎に、いままで副反応と思っていなかった中にも副反応があるかもしれない。「副反応」 という言葉はそろそろ、「有害事象」という言葉に変えたほうがよろしいのではないで しょうか。もし、機会がありましたらお願いします。  もう1つ、先ほど加藤座長からもちょっと出ましたが、アデムが1例出たということ でこの制度そのものが動く。実際、因果性がどうなのか。その辺がほとんど、常に考慮 されていないということがあろうかと思います。よく言われるのは、1例だから本当は 因果性はないのではないかということが議論されることもあります。逆に言えば、今度 は分母に日本の人口を使って、片方は接種者を使って、これは問題ないという結論に早 々に近づくようなことがありますが、実際にはワクチンの副反応というのは時間から言 えば2カ月、8週間程度で起こっている。日本の1年間の患者数で行けば、55〜56週の 間に起こっている。インシデント・レートとして、きちんと頻度を取れば、ひょっとし たら関連があるものも「ない」と言っているのかもしれないし、関連がないものも「あ る」と言っているかもしれないということがあります。そこら辺の判断を科学的にきち んとするような動きがほしいと思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。私は健康被害認定部会の部会長、岡部委員が最終 的な分科会の会長で、いつも因果関係のところではもめるところでした。逆に言うと、 廣田委員がおっしゃったとおり、日本の疫学がいかにおそまつかの証しかと思います。 そういうことも引っくるめて、今後ワクチンと健康被害、廣田委員がおっしゃる「有害 事象」との因果関係について少しきちんとした、疫学的な検証をするような方向で是非、 健康局もお考えいただきたいと思います。 ○岩本委員 内科医の立場で、肝炎のことを申し上げます。ここにA型肝炎を「トラベ ラーズ・ワクチン」と位置づけられているのですが、個人的にはいまから5、6年前、 厚生労働省の依頼でアフリカで働く機会がありました。50歳だったので、A型肝炎抗体 は陽性だろうと思って測ってみたら陰性でした。私はトラベラーズ・ワクチンとして打 って出かけた経験があります。  日本国内でA型肝炎はまだ非常に多い病気ですし、食品を通じて国内流行が起こり得 るかもしれない。ここ20年、30年の公衆衛生的な施策によって、A型肝炎の抗体所有 者が非常に減ったという感染研の研究成果はありますが、それが必ずしも国民に周知さ れていない。抗体保有者の頻度が減ってきた病気に関するワクチンの考え方について、 方針があまり出ていないと思います。それをA型に関して、トラベラーズ・ワクチンと して位置づけてしまうには問題があるのではないかというのが1点目です。  2点目はB型肝炎です。母子感染は日本国民病、B型感染は国民病だったわけです。 母子感染対策は未だに問題ですが非常に良くなってきた。ところが、最近、よく新聞報 道されるように、大人の性感染症としてのB型肝炎が非常に多いわけです。感染経路、 あるいは国の対策の違いによるワクチン接種の方針の変化というのは、例えばインフル エンザでも現にあったわけです。小児から大人、高齢者の予防という考えもあった。そ の辺に関して流行状況なり、疾患の持つ意義が変わってきたときにはワクチン施策をど う変えるべきということを少し盛り込んでいただきたいと思います。 ○加藤座長 時代に即応してワクチン施策を変えていく必要があろう、というご意見か と思います。貴重なご意見、ありがとうございました。ほかにご意見はありますか、よ ろしいですか。いろいろ、ほかの事でも議論が尽きないと思います。 ○岡部委員 その他ということで発言します。検討会の最後にお話しようと思っていた のですが、いつが最後だかわからなくなってしまったのでいまのうちに言っておきます。  はしかの話に戻ります。はしかについては2012年を目標に、アジア・西太平洋地域か らエリミネーションということを目標にセッティングしているわけです。  幸いに、いろいろな方面の努力で、昨年のはしかの発生数というのは報告で600件を 切っています。全数で想像すると、おそらく1万を割っているだろうというところまで 来ています。その対策を進めるのが今回のMR混合ワクチン、2回接種導入なのですが、 2012年についてエリミネーションについてはどういう戦略を持っているかについて、き ちんとした方向性を立てなければいけないだろうと思います。ポリオの場合は「ポリオ 根絶」が目標になった時点で、我が国はもう0だったのです。それほどあわてる必要は ないのですが、2012年までにどうやったらいいかということは、この場で検討するのが いいのかはわかりませんが、いろいろな専門家も交えての対策会議が必要であろう。  その1つとして、この検討会でもお願いしていきたいのは、感染症法の中でいまのと ころ、はしかは定点報告になっています。ですから、先ほど、想像で「1万」と言って いたわけです。現在、感染症法の改正は国会に上呈されているので、もちろんいますぐ ということではないですが、いまから例えばはしかの全数報告できちんとしていくとい うことが2012年に向けての作業として必要ではないかと思います。それが1つありま す。  先週、中国に行ってきました。中国と日本でこの2012年のエリミネーションにおいて 非常に問題になっていたのは、両国とも多い国なのです。中国もサーベイランスの強化 をやって、委員会を立ち上げ、どういうサーベイランスをどういう件数でやったらいい か。それについて日本に援助を求めてきた。援助をする国がそれに対する対策が取れて いないということでは困りますので、是非、ご享受をいただきたいと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。政策としては、厚生労働省が出したワクチン政 策が出来ました。その効果を見るためには、岡部委員も以前からおっしゃっているよう に全数把握、日本でポリオの検査をしたときと同じように全数把握をやっていくことが 必要かと思います。それもまた、健康局でどのようなワクチンから攻める、疫学から攻 める、全数把握から攻める、いろいろな対策があると思います。おそらく、局長をはじ めとしてお考えになっていただけることと思います。ほかによろしいでしょうか。  まだまだたくさんお話はあると思いますが、時間となりました。本日は終了いたしま す。何かお気づきの点がありましたら、事務局にお伝えいただきたいと思います。事務 局から連絡事項があればよろしくお願いします。 ○伯野予防接種専門官 次回の検討会についてはまた日程調整をさせていただき、ご連 絡差し上げます。 ○加藤座長 本日は長時間に渡ってご議論いただきました。また、局長にはお忙しいと ころを出席いただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。どう もありがとうございました。 - 1 -