06/03/22 第2回人材養成分野の国際協力のあり方に関する検討会議事録      人材養成分野の国際協力のあり方に関する検討会(第2回会合)                        日時 平成18年3月22日(水)                           14:30〜                        場所 厚生労働省共用第8会議室 ○釜石補佐 定刻になりましたので、ただ今より「人材養成分野の国際協力のあり方に 関する検討会(第2回会合)」を開催したいと思います。  まず本日初めて出席された方をご紹介いたします。代理でご出席いただいている中央 職業能力開発協会国際協力部国際協力課の秋本協力係長です。オブザーバーで国際協力 機構の人間開発部第二グループ技術教育チームの渡辺元治チーム長です。同じくオブザ ーバーで財団法人海外職業訓練協会国際交流部国際交流第1課の岩田協子係員です。事 務局では、海外訓練協力官の本多さんに山川さんの代理で出てもらっています。  続きまして配付資料の確認をしたいと思います。「議事次第」、「座席表」、「出席者リス ト」。資料1は前回第1回会合の議事要旨です。資料2は第1回検討会における指摘事項 と対応の方向案です。資料3は前回の検討会で時間がなくてできなかった、企業活動の 国際化とそれに対応した人材養成支援事業の実施状況です。資料4は前回資料7で出し た人材養成分野の海外協力の課題と対応の方向(案)です。その関連資料を資料5で付 けております。資料6は人材養成分野の問題系図等です。前回の検討会で出せなかった 最近の各種報告書を2つ用意しております。資料7−1が海外経済協力に関する検討会 の報告書で、資料7−2が大臣官房国際課で実施していた国際協力事業評価検討会の報 告書です。資料8は人材養成分野の国際協力の理念ということで、素案ですが、一応付 けております。以上につきまして不足がございましたらお知らせいたただければと思い ます。  それでは、今野先生に進行をお願いしたいと思います。 ○今野座長 それでは、まず第1回目でこちらからお願いした宿題がありましたので、 その関係について事務局から資料説明をお願いいたします。 ○釜石補佐 資料1、2、3が前回の宿題です。資料1はテープ起こしの議事録が間に 合いませんので、とりあえず事務局で聞いたと思える範囲を取りまとめております。事 前にお送りしてご意見もいただいて直しておりますので、前回の議事を確認するのに役 に立つということで付けております。後ほどテープ起こしを基にした議事録を作成いた しますので、それをご確認いただくというお手数をおかけすることになりますが、参考 ということでご理解いただければと思います。  資料2は、第1回の検討会における会員指摘事項と対応の方向の案です。順を追って ご説明いたしますと、野見山会員からご指摘のあったJICAを通じた協力ということで、 個別専門家による政策アドバイスはどのようなものを実施してきたのかというご質問が ありましたが、あまり多くなく、例として3つ挙げており、職業訓練政策(職業能力開 発行政)全般に係る助言、技能評価システムの構築に係る助言、失業保険受給者への効 果的・効率的職業訓練の実施に係る助言が実施されています。ほかは個別具体的な職業 訓練の技法、カリキュラムなどが多くありました。  協力の重点ですが、野見山会員から、貧困削減という位置付けは消極的で、成長を促 進するための人材の養成という積極的視点を入れるべきではないか、貧困撲滅だけでは なく、雇用政策と一体となった能力開発政策に係る協力が必要ではないかというご指摘 でした。  JICAを通じた協力というのは、人道的見地からも貧困削減という視点が入ると考え ておりますが、厚生労働省としては、どこに重点を置くかというと、持続的成長のため の人材育成に重点を置きたいと考えています。これは私のほうから前回お答えしました が、単にいい人を養成するだけではなく、その先の就職まで視野に置いた協力が大事で あろうということで、国内においては雇用関係部署との連携に十分留意したいと考えて おります。  3番目の協力期間後のフォローアップですが、野見山会員から、かつてプロジェクト 方式の技術協力を実施した職業訓練校において、外国の手法、ドイツのカリキュラムが 導入されていたという例を挙げて、その後の支援を対訓練校にするか、あるいは政府に するのかを明確にしてフォローしなければならないのではないかというご指摘だったか と思います。今まではプロジェクト終了後のフォローアップについては、自立発展性を プロジェクトの協力期間中に付与して、その後自立してもらおうということで、大きな 投入をしないということがあったのではないかと思っています。  政府への政策アドバイザーの派遣も政府ベースでやるので、うまく要請が出るか、そ のように仕組めるかという問題はあると思いますし、プロジェクト方式の技術協力のほ うに人材あるいはノウハウを提供した厚生労働省、あるいは雇用能力開発機構から予算 を措置して、フォローアップを実施することも可能だとは思いますが、予算もなかなか 厳しい状況でもありますし、本来ならプロジェクトの開始前にそういうことも含めて関 係者が協議を行い、中長期的な協力方針を策定してプロジェクトを開始することが望ま しいかと考えております。  協力の競合、重複の回避ですが、野見山会員から、整合性を保つことが大事だという ご指摘がありました。政府開発援助関係省庁連絡協議会があり、外務省が招集して、各 省庁から国際協力担当者が出席して意見交換をしているのですが、これに限らず関係省 庁との情報交換は密にして、連携も図っていかなければならないと考えております。  次の頁で、中央職業能力開発協会の川上課長からご指摘があった国際協力に必ず着地 点を設けなければならないのかということですが、これもなかなか難しい話で、協力期 間を限定したプロジェクトだと目標設定をしてプロジェクトに着手することが一般的だ と思いますが、期限を設定せずに、また具体的などこまで行かなければいけないという 達成目標を設定していないプロジェクトについては、このような問題も発生すると考え られます。そういうことを防ぐためには、事業としては期間を区切っていなくても便宜 的に実行上区切って、その国の目標を設定して達成度を評価し、次の期間はどうするか という目標設定をして取り組むことが必要になるのではないかと考えています。  これも川上課長からのご指摘で、何を伝達するかです。技術レベルの要望も来ている が、企業の協力が得られなくなるのではないかという話がありました。これについては、 我々はどこまでできるかという能力の問題があると思います。厚生労働省の国内行政は 基本的に技能者の育成を担当している関係で、技術者まで手を広げるのは難しい。国際 協力についても技能者育成を中心とすべきではないかと考えています。  次は、日本の国家検定という制度は売物になるかという話で、役立つのではないかと いう答えもあったということで書いています。  牛山専門会員から「米国政府から日本の情報が欲しいと言われた。日本の情報発信が 不足しているのではないか。」というご指摘がありました。それはまさに対応しなければ いけないと考えております。我が国の国際的なプレゼンスを高めるためにもモノによる 協力ではなく、能力開発に関する制度・施策・基準に関する積極的な発信を図ることが 必要であろうと考えています。  ノウハウの文書化で、ワークスタンダードを文章に残す必要があるのではないかとい う牛山専門会員からのご指摘があり、関係者と協議をして、何をどのように文書化する かを考えなければならないと思っています。検定を国際的に通用するものにして売り込 むべきではないかというご指摘についても、担当課と協議しつつ、我が国の技能評価の 価値を伝えていきたい。その際には、実際に能力開発に活用している企業の立場からの 助言、学識経験者からの助言なども得て、そのような連携を図ることが大事だと考えら れます。  開発途上国の発展段階に応じた協力を実施すべきではないかというご指摘についても、 そういうところをきちんとしていかなければならないと考えており、発展段階に応じて どのような協力ができるのかを検討するために、これまでの協力の実績を整理して、相 手国との協議において要請があったときに提示できるようにしていかなければならない と考えています。以上が資料2の説明です。 ○今野座長 それでは、今の点についてご質問なり、ご意見なり、あるいはこんなこと は言っていないとか、こんなことが入っていないというのがあればお願いいたします。 ○野見山会員 2点ほど。まず1点は、協力の重点の方向の2番目で、雇用関係部署と の連携についてで、いま、国内のと伺ったように思いますが、もちろん日本の雇用戦略 にODAというか、途上国の人材開発をどう結び付けていくかという視点は大事ですが、 同時に、被援助国というか受入れ側の雇用関係部局との連携。だから、国内外において それぞれ双方の雇用関係部門との連携が必要ではないかと思います。  もう1点はフォローアップですが、もちろん自立発展性を与えるというのが協力目標 の大前提であることはわかっています。ただ、計画期間が終わったら手放すのではなく、 自立発展的に動いていっているかどうかを見守っていくという意味のフォローアツプと いうか、大々的な事業をやるのではなく。そのためには長期の専門家が行くとか、そう いうことではなくて、タイムリーな見守りという意味で、短期の専門家などが、本当に うまく計画後機能しているかどうかをチェックしていく、あるいは必要なサポートやア ドバイスをしてあげるという意味のフォローアップは必要ではないかと思っています。 ○今野座長 ほかにございますか。 ○牛山専門会員 協力の重点に関しての対応の方向として、JICAを通じた協力で貧困 削減の視点が入るものもあるとしており、厚生労働省では、持続的成長のための人材育 成を重点としたいとあります。例えば、JICAなどは貧困削減、持続的成長、人材育成 の3つが並行したファクターで流れています。これを整理するには、ここで言われてい る消極的ではないかということに関しての対応としては、もう一歩踏み込んだ対応が必 要ではないでしょうか。 ○今野座長 最後の消極的な、とおっしゃったのは意味がわからなかったのですが。 ○牛山専門会員 これは論点で、指摘事項で、消極的ではないかということに関して、 その対応が持続的成長のための人材育成を重点としたいというのは、もう少し対応を深 く、具体的なものがあればいいのではないか。いま実際にはどういうものがあるのかは わかりませんが。 ○今野座長 いずれにしてもその点もこれからですね。 ○牛山専門会員 そうです。 ○今野座長 そういう論点があるということだけにとどめていただいて。ほかにござい ますか。  それでは、こればかりをやっていると前回から前に行きませんので、次に前回積み残 した資料についてご説明いただきます。 ○釜石補佐 資料3です。これは直接的には政府開発援助事業にはならないのですが、 企業活動の国際化に対応した人材育成支援事業を実施しているということでご説明した いと思います。  資料3−1の1の「趣旨」にありますように、企業活動、経済活動のグローバル化に より、国際的な企業活動を支える人材育成が課題となっているということで、特にグロ ーバル化に対応できていない中小企業などを対象に、財団法人海外職業訓練協会に登録 する国際アドバイザーを最大限に活用して、グローバル化に対応した人材育成に関する 相談援助、指導、情報提供を国内外で行うということで、実践力のある国際人材の育成 を推進するというものです。  具体的な事業内容としては7点ほどあって、(1)は、国際アドバイザーの人材を用意 していくというものです。国際アドバイザーを登録して、どのように教えるかという指 導技法などを教える、それを育成と言っています。国際アドバイザーの人材を用意して いくというものです。(2)は国内、海外で国際アドバイザー等が講師になって企業の人 を対象に、グローバル化に対応した人材育成をテーマとするセミナーを開催するという 情報提供の一環です。(3)は相談援助事業で、これも国際アドバイザーが国内の中小企 業の経営者や労働者を対象に相談援助をするというもので、海外職業訓練協会の5つの 地方事務所で相談を受け、そこから企業の要望に応じて出張をし、指導・援助・助言を 行っています。  (4)は実際に海外において操業している日系企業で働いている日本人派遣者が困難 に遭遇したときに、国際アドバイザーを現地に派遣し、実地に指導・助言を行って、そ の能力を開発するもの。(5)は派遣される前に研修しようというもので、中小企業等の 海外派遣要員となることが予定されている者を対象に、派遣前の研修を実施するという ものです。(6)は諸外国の情報、特に雇用関係法令、人事、能力開発に関する情報、あ るいは海外へすでに進出した企業の事例を、インターネットを活用して企業に幅広く提 供していくというものです。  (7)は調査研究です。国際人材の育成をどのようにやっていくかという方策を検討 する有識者等による研究会を設置し、調査研究も行っています。こちらの事業は財団法 人海外職業訓練協会に厚生労働省が委託して事業を実施しています。実施状況が次の頁 に載っておりますので、詳しい説明を省略いたしますが、見ておいていただければと思 います。3頁にはそのフロー図を用意してありますので、こんなイメージだということ で見ていただければと思います。グローバル人材の育成のための支援は、国際アドバイ ザーがその中心になってセミナーの講師、相談援助の実施者、海外コンサルティングの 実施者として活躍するというものです。図の右上にあるOVTA(Overseas Vocational Training Association:財団法人海外職業訓練協会)の5つの地方事務所、タイ、インド ネシア、中国の3カ所にある海外事務所が海外における情報収集・報告、海外コンサル ティングに係る調整、セミナーの開催を実施しています。国内も地方での窓口相談業務 がいちばん大きいのですが、セミナーの開催調整を実施しています。以上です。 ○今野座長 何かご質問はございますか。これはODAのお金ではないのですか。 ○釜石補佐 ODAではありません、雇用保険です。 ○奈良課長 国内外で国際業務を担当する人間の能力開発に貢献しようということです。 ○今野座長 この中で何がいちばん売れ筋ですか。 ○鈴木会員 いわゆる中小企業の、喜んでいただいている、何でしょうか。 ○釜石補佐 相談援助はかなり相談が来ているということで、売れ筋といえば、それか と思います。海外セミナーや国内セミナーは計画数がありますので、それを粛々とやっ て、人がたくさん来ればいいというか、それが参加者の役に立てば良いということです。 ○今野座長 派遣前研修などはどうですか。 ○金丸課長 一生懸命やっているところで、ビジネスコミュニケーションですと、資料 3−2に出ていますが、任国事情とか、海外ビジネスの中の経営・管理、会計・税務、 指導法を含めてやっておりますが、会計・税務・法務辺りが企業には非常に人気があり ます。 ○今野座長 よろしいですか、それでは先にまいります。これからが今日の本題です。 議事次第の2の「人材養成分野の国際協力の理念」に入りたいと思います。まず事務局 から説明をお願いいたします。 ○釜石補佐 「最近の各種報告書の概要」ということで資料7−1から説明いたします。  「海外経済協力に関する検討会」報告書の概要ということで、3枚めくりますと、ど ういう経緯で始めたかが書いてあります。昨年11月の経済財政諮問会議で「政策金融 改革の基本方針」が決定され、国際協力銀行(JBIC)について検討するということで、 有識者からなる「海外経済協力に関する検討会」が設けられて、平成17年度中に、こ こにある3点について検討することになったと聞いております。  その会議の趣旨、メンバーについては、後ろから2枚目の「参考」に、海外経済協力 に関する検討会の開催についてということで、趣旨、構成、その他が書いてあります。 メンバーは各界から集まってもらい、議論しているということです。開催状況について は、12月16日に第1回会合が開かれ、第9回が2月28日に開催されて、報告書が取 りまとまっています。  資料は3枚程度が概要あるいは体制の話で、図などが書いてあります。報告書の本文 の3頁の第1の「基本的視点」です。今までのODAのあり方の議論と少し違った視点 が入っていると思います。特に(2)ですが、中国、インド、ブラジルといった新興途 上国の経済的な台頭という指摘があり、先進各国を巻き込んだ資源・エネルギー獲得、 あるいは大型商談獲得をめぐる国際競争を激化させる傾向を生み出しているということ で、我が国への影響が指摘されています。特に中国については、国際社会における発言 力、影響力を強化して、各国との新たな競争関係も生じさせるに至っているという指摘 もあります。  4頁です。(3)には、一方で依然としていろいろ苦しんでいる国があるということで、 (4)にありますように、2004年12月に国連事務総長に提出された「ハイレベル委員 会」の報告書では、貧困・感染症・環境悪化、国家間の紛争、国内紛争、大量破壊兵器、 テロ、国際組織犯罪等の脅威に今後数十年にわたって直面するという指摘もしており、 その中で「開発」が予防にとって重要な役割を果たすと指摘しています。米国も2001 年の同時多発テロ以降、援助を増やしているということも書いてあります。  5頁です。(8)には、IT技術が発展して、情報や知識が瞬時に共有され得る世界は、 自分の国の技術、規格・標準、制度、文化、学問、言語に至るまで「ソフトパワー」の 大競争の時代でもある、という指摘がなされています。そういう中で、我が国の優れた ソフトパワーを世界各国に伝授、普及させていくことは、世界における技術・文化の多 様性を涵養し新たな進歩の礎を提供するとともに、我が国の世界における発言力、影響 力を強化するということで、プレゼンスの強化という指摘があります。これは非常に大 事なのかと思います。ほかにもいろいろ大事なことが書いてあります。  6頁の2、「今、何のための海外経済協力か」です。人道主義かそうでないかという話 もありますが、(4)に、いかなる援助も国益との関連が曖昧に実施されれば、国民の支 持の基盤を失う。我が国の経済財政状況が厳しく、ODA予算が削減を余儀なくされてい る流れの中で、ODA大綱も国益を強く意識した形で目的が規定されていると書いてあり ます。その下には、相手国のためか、自国のためかという二者択一の認識でいいか疑問 であるということも書いてあります。  どのような協力をしていくべきかということについては、7頁の(8)に、貧困を削 減し、開発の成果を持続的なものとするためには、開発途上国の持続的な成長が不可欠 とあり、そのためにはインフラ投資が必要ということも書いてあります。8頁の上のほ うには、ODA及びOOF(Other Official Flows、その他の政府資金)によって、貿易・ 投資を含む民間セクターの活動を支援し、民間の活力を引き出し、我が国官民の優れた 技術やノウハウ、人材等のリソースを最大限に活かした包括的な協力を進めていくべき であるという指摘がされています。これも後段が特に大事かと思います。  11頁以降の「海外経済協力の政府内体制の在り方」では、1の「海外経済協力の司令 塔機能の強化」で、「海外経済協力会議(仮称)」を内閣に設けることを提案し、メンバ ーは総理大臣、官房長官、外務大臣、財務大臣及び経済産業大臣を常設のメンバーとす る。議題に応じて随時、特定分野の海外経済協力に関係する閣僚、実施機関の長等にも 参加を求めるということが書いてあります。  14頁の2は「海外経済協力の実施段階における関係機関の連携強化」です。(1)に は海外経済協力の実施に際しては、オールジャパンの原則に立ち、我が国の産官学が有 する優れた技術・ノウハウや人材等を最大限活かせるような包括的な協力を進めるべき であり、例えば我が国が得意とする分野において、相手国政府と共同で具体的なプロジ ェクトを含む中期的な計画を練り上げ、これを我が国の民間企業や援助専門家等の協力 を得つつ、海外経済協力のさまざまなツールを動員し、適切に組み合わせることで、よ り効果の高いものとすべきであるという指摘がなされています。これも非常に大事だと 思っています。すでに一部の国で見られますが、現地ODAタスクフォースの活用をさ らに強化すべきということが書いてあります。  (2)では省庁間、あるいは関係省庁と実施機関との間の情報共有、人事交流等を通 じた連携強化を図るということで、これも厚生労働省としてもきちんと対応していかな ければならないと考えます。第3以降はJICA、JBICの話になっていますので、省略い たします。大体このような指摘がなされているということをご紹介したいと思い、資料 を用意いたしました。  次に資料7−2の「国際協力事業評価検討会(労働分野)報告書」です。平成15年 度から平成17年度までの3年間にわたって、分野は労働だけではなく、保健医療、水 道と3つに分かれて検討し、労働分野は最後は2月に検討会があり、分野合同会合も3 月にあったばかりという状況で、これも取りまとまったばかりです。こちらには労働分 野の検討会の会員がお二方おられるので、詳しく説明するまでもないかと思いますが、 4に労働分野の協力方針の検討課題ということでいくつか指摘があります。PCM (Project Cycle Management)手法の事業評価への適用可能性、政策・プログラムの評 価などが載っております。  具体的には10頁の4の(1)ですが、「当面は、事業計画者や事業実施者が簡易に PDM(Project Design Matrix)を作成して議論を深めたり、既に実施している内部評 価に部分的に取り入れるなど、PCM手法の利点を生かしつつも、労働分野の国際協力 事業に利用可能な形で柔軟に取り入れて定着に努めることとし、評価に関する知見を数 多く集積させていくことが望ましい。」という指摘がありました。  (2)の目的については、PCM手法は、それにより個々の事業評価を行う場合にあ っては、事業実施活動に対する評価に的を絞って実施することが適当であろうというこ とが書かれています。  (3)の政策・プログラムの評価についてですが、政策評価は政策評価法に基づく政 策評価を実施しているので、それを基本とすべきということを書いています。  (4)では、「我が国ODA予算が年々削減されていく中で、労働分野における技術協 力を効果的かつ効率的に実施するためには、我が国が国際社会に貢献し得るノウハウを 有する分野、我が国に対する国際協力のニーズが大きい分野などを分析するとともに、 過去の協力経験を整理した上で、協力対象国・地域や協力分野に優先順位を定めて体系 的な協力方針を策定し、必要な事業への投入を確保することが不可欠である。」という指 摘がなされております。今後、協力方針の策定に向けて引き続き検討がなされることに なっていると言っております。そこで「協力対象国・地域、協力分野に係る考え方」が 別添11のとおり整理されているということで、別添11を見ます。  別添11で「労働分野の国際協力における課題と方向性の整理」ということで、1つ の案として提案されているのは、1が地域的配分です。東アジア地域への重点配分が書 かれています。2の分野別の留意点は、職業能力開発について特に言及があって、「職業 能力開発については、労働分野の国際協力に占める重要性を踏まえ、協力方針について 別途検討することが望ましい。特に、訓練カリキュラム、訓練実施、就職支援までの一 連の流れをシステム化した移転や、現在、開発段階に応じて様々な手法が用いられてい る協力手法の体系化、効率化にも留意すべきである。」という指摘で、そういう面では、 この検討会がまさにそのような位置付けになるかと思います。  次の頁は「労働各分野の課題と今後の方向性」です。上から2番目が職業能力開発で す。事業例として技術協力プロジェクト、民間人材育成、技能検定の標準化支援があり ます。対象者、手法・内容、課題、対応の方向の案ということで取りまとめられており ます。課題としては、予算の削減が予想される中、国際協力の効果を確保するために協 力の見直しを図る必要があるのではないか。開発段階の詳細な分析、それに対応した効 果的な支援の決定・投入、民間ベースの人材養成の支援が進む中で、政策的な支援への 期待も高まっており連携が必要であるという指摘があります。  対応の方向としては、開発段階に応じた分析を進めてリソースの整備と確保を図ると 書かれています。分析をして、それを踏まえて効果も検討して、優先度を決定していく。 政策的支援は、システム構築・改善への協力に重点を置き、相手各国のステークホルダ ーとの連携を図る。民間企業も含めて関係者との連携を図るといいうことが書かれてい ます。このような方向性の案が示されています。これが12頁の(4)です。  今説明したものもありますが、あとは(5)として発展段階等に応じた協力実績の分 析です。(6)で、様々な協力手段の連携、(7)で、被援助国及び被援助国の動向の把 握が指摘されております。  14頁の最後に「人材育成のための検討」ということで、今後、国際協力事業に携わる 人材の育成について、より掘り下げた検討が予定されています。当検討会の専門会員の 搆補佐が事務局として取りまとめられたので、補足があればお願いしたいと思います。 ○今野座長 資料は全部終わったのですか。 ○釜石補佐 7があります。いろいろ説明しましたが、これらを基に、人材養成分野の 問題はどのようなものがあるかということで、PCM手法のPDMを作る過程の問題系図 を資料6に作ってみましたので、ご参照いただければと思います。もともとは国際協力 事業評価検討会の雇用開発、PEP(Project on Employment Promotion)のプロジェク トの問題系図を基に、それを職業能力開発行政という観点から、その部分をピックアッ プして、さらに詳細に分けたものです。中心問題は人材の質が低いということから出発 しております。上のほうは直接結果、下が原因です。  まず人材の質が低いというのは教育が不十分であることと、職業能力開発が不十分で あるというのに分けて、教育のほうは所掌ではないのですが、職業能力開発が不十分で あるというのは、さらに2つに分けられて、能力開発が行われないということと、行わ れたと言っていても、企業ニーズに合った能力開発がなされていないというものに分け られます。  能力開発が行われないというのは、人々に参加の意欲がない、参加する機会がないと いうことになります。意欲がないほうが緑系統で、参加する機会がないのが黄土色系統 です。  企業ニーズに合った職業能力開発がなされないというのは、訓練内容がニーズに合わ ない、訓練分野が適切でない、訓練の質が低いの3つに分けております。ニーズに合わ ない、訓練分野が適切でないを青系統、質の問題を赤の薄い色で表しています。  ずっと下のほうの太い枠で書いてある所には、能力開発を強力に推進する施策がない、 職業訓練への平等なアクセスを確保するための対策が遅れている、職業訓練システムの 有効性・効率性を確保する仕組みが機能していない、職業訓練システム全般の質を確保 する仕組みが機能していない、と書いています。これらを全部集約すると、国が能力開 発のための明確な政策目標を有していない、能力開発関係予算が少ないという問題に収 斂するということにしております。これは日本に限った話ではなく、途上国にも通用す るようなイメージで作っています。  人材の質が低い、から上のほうについては、最終的には経済発展が困難となるという 形に収斂しております。これについてもいろいろご意見があるかと思いますが、今まで こういう整理はあまりしたことがないと思いますので、いろいろ議論をして良いものに していければと思います。  このような問題があって、上位の問題などがいろいろ出てきて、ODA大綱や中期政策 なども前回の検討会で俯瞰しましたが、それらを基に、とりあえず理念をそのような大 綱などに対応する形で整理したのが資料8です。これも素案ですが、「人材養成分野の協 力の理念」ということで、理念には目的、方針、重点があるとしております。目的は、 ODA大綱の目的とほとんど同じで、人材養成分野のODAの目的というのは、国際社会 の平和と国際社会経済の発展に貢献し、これを通じて我が国の繁栄の確保を図るという ことで、ODA大綱のほうには安全がありますが、これは除いております。  基本方針もODA大綱あるいは中期政策に載っているようなことで整理しております。 (1)の格差の是正のための協力。(2)の持続的成長につながる協力。(3)は開発途 上国の自助努力支援。(4)は我が国の経験と知見を活用する。(5)は国際社会におけ る協調と連携を図る、ということを書いております。 重点事項としては、雇用に結び 付く職業訓練、人材養成に係る法令の整備、行政の改善、日系企業による人材養成協力 活動の促進の3点を挙げています。重点地域はアジアです。  また、協力を行っていく上での留意事項を書いていますが、これも当然と思われるこ とばかりですが、相手国文化、慣習の尊重と相手国の政治、行政背景に基づく手法の選 択、透明性、公平性の確保、官民協力の促進、直接は関係ありませんが、環境問題への 配慮を入れています。  次の頁はいろいろな手法があるということで、いくつか分類してあります。1は協力 期間で、超長期な協力から短期な協力ということで、期間の区切りもこれでいいのかと いう議論はあるかと思いますが、とりあえずこのように書いております。2は協力対象 別の協力で、人材養成分野としては途上国の人を住民に限らず、直接訓練する。行政に 協力する。日系企業の現地労働者訓練も支援するというのも対象としてはあり得ます。 現地で外国人を訓練することを海外職業訓練として書いています。3は実施方式別とい うことで、対象者を日本に招く、日本人を派遣する、現地機関を使っての協力という3 つぐらいです。4の実施機関別はJICAを通じた二国間協力と国際機関を通じた多国間 の協力があり、これにはマルチ・バイ型の協力も含まれます。日系企業を通じた協力、 民間団体を通じた協力があります。これは協力の手法の整理をしたものです。 ○今野座長 資料4、5はいいのですか。 ○釜石補佐 4、5はそのあとと思っていたのですが。 ○今野座長 説明が続きましたので、これまでの範囲内で何かございますか。 ○野見山会員 まず理念のところで、基本方針の(1)で格差是正のための協力という のが出てきましたが、中身の説明がありませんでしたが、どういう狙いでここに持って こられたのですか。 ○釜石補佐 開発途上国のすべてが貧しいかというとそういうことではなくて、一部の 人に富が集中していて、その一方で大多数の国民が非常に貧しい状況であるということ で、それを是正するためにいろいろ協力をしてきています。 ○野見山会員 そうすると、特定の相手国の中で対象とするのは、恵まれた層はやらな いで貧困層というか、貧しい人を対象とする人材養成に力を入れる。それが格差是正に つながるということですか。 ○釜石補佐 そうです。 ○野見山会員 中小企業と大企業があった場合、中小企業をやるのだとか、あるいはそ の国のリーディングセクターに対する人材養成、より先端的な訓練に手を付けて、そこ を成長の拠点にするという考え方もあるでしょう。あるいは遅れた分野をもっぱらやろ うと、進んだ分野は極論を言えば放っておいてもいいと、そういう結果で格差是正にな っているのか。その辺の思想がはっきりしないのです。そこのところと、それが果たし て相手国のニーズ、要望に合うのかどうか、その辺のところが必ずしも理解できない面 がある。 ○釜石補佐 リーディングセクターへの協力というのは、持続的成長の方の関係で読め るというか、どっちかにやるということまでは割切りはできていないのですが、格差も いろいろあると思います。同じASEANの中でも遅れている国と進んでいる国があれば、 遅れている国は格差を是正するという観点から、協力をしっかりしましょうという視点 もあると思います。 ○野見山会員 経済を引っ張っていく部門のところに、しっかり置くと。例えば日系企 業がその国で雇用吸収力も増えている。そこを成長させると全体の所得水準を上げてい くひとつの機動力にもなるという考え方もあるでしょうし、だから、そういうところを やっていくということもひとつの考え方でしょうが、どうもここで格差是正というのは 国間の格差、アジアの中でも遅れた国を中心にやるという意味なのか、ある特定国の中 でも遅れた分野に梃入れし、人材養成に力を入れることによって、その国のバランスを とっていこうという狙いを持っているのか。そこのところがはっきり理解できないので す。 ○釜石補佐 両方です。 ○野見山会員 わかりました、そういう趣旨ですね。 ○釜石補佐 厚生労働省が独自事業で途上国に協力するという場合だけではないと、一 応、これを作成した時にはそういうふうに考えていて、厚生労働省が独自事業を実施す るときは持続的成長につながる協力ということで、先ほど資料2で説明したように、持 続的成長のための人材育成を重点とするということは考えていますが、それだけではな く書いているということです。 ○牛山専門会員 理念−目的、方針、重点の中だと思いますが、実施方式の中か実施機 関の欄かわかりませんが、いわゆる第三国研修とか第三国の専門家とか、現地のコンサ ルは現地機関という中に入ると思いますが、そういう第三国を通しての協力というのが、 ここには入っていないようです。これは重点的には今後ならないのですか。 ○釜石補佐 いろいろ抜けはありますので、そういうところは3番に入ることかと思い ますが、現地の人材を活用した協力ということになるかと思います。 ○牛山専門会員 例えば韓国の専門家を使うとか、当事国もしくは受益国ではないいわ ゆる第三国という場合もあり得ると思います。ですから現地機関を通しての協力のほか、 なおかつ第三国も利用するという形だと思います。 ○釜石補佐 (4)で、第三国の人材を活用した協力という形になるのかもしれません。 ○鈴木会員 現地の職業訓練センターは結構ありますね。先日、タイへ行ったらDSD (タイ労働省の技能開発局)などいろいろなところがあって、そこと日系進出企業との 連携がうまく取れると、もう少し何か新しい職業訓練ができるような気も実は先回して きたのです。存外、施設の割に訓練を受ける人が少なかったものですから、びっくりし たのです。立派な施設があるのですが受講者が少ないという感想を抱いたものですから、 それはどこの部分に入るのですか。2頁目の4ですか。実施機関別の協力ですかね。 ○釜石補佐 そうですね。 ○鈴木会員 そんな感じを非常に強く受けたのですが、それは、たまたまそこに私が行 って感じただけなのかもしれません。ほかを見ていないのでわかりませんが、そんな感 じを受けました。 ○釜石補佐 相手国の公的な職業訓練センターと、日系企業の連携というのは大事だと 思います。そういうのを促進するために、我々に何ができるのかというのも考えなけれ ばいけないという気がします。 ○鈴木会員 何かができるといいなと思っていたのです。 ○今野座長 これ、大綱もそうなのですが、この基本方針はレベルの違う項目が入って いて、例えば、これでいくと(1)と(2)が最終ターゲットですよね。つまり当該国 が持続的な成長につながること。2番目は単なる成長だけでなく中の所得配分を考えて 格差是正になっていること。これはターゲットで、そのターゲットを実現するために現 地国が持たなければいけない、一種の体制みたいなのがあって、それが(3)でしょう。 それに支援しましょうということ。(4)、(5)というのは、それ全体を実現するための 一種のハウツーの原則みたいなものです。こういうふうに構造化してくると、実はもう 日本は直接的には(3)でいくと。  そうすると、例えば極端なことを言うと、重点項目では(1)はしないとか、言って いる意味は分かっていただけますか。(1)だと直接的に左側の基本方針の(1)、(2) に手を付けることになるので、そうでなくて、基本方針の構造からしたら(3)を通し て(1)と(2)を実現するのだったら、(3)にターゲットを絞ると、重点項目の(1) はもうないとか。重点項目の(2)(3)はあるとか、本当は何かそういう構造的な関係 があるのだろうと思って、話を聞いていたのです。言いたいことは分かっていただけま したか。 ○奈良課長 わかります。 ○今野座長 だから、基本方針の(1)(2)(3)が並列的に書いてあるから、ODA でも直接、職業訓練にタッチするのもターゲットに入ってきそうだけれど、さっき言っ たように基本方針の(1)から(3)を構造化してしまうと、実は(1)(2)を実現す るために、(3)しかないのだということになるのです。そうすると(3)しかしないと いうことになると、重点事項の(1)はしなくて(2)でいくとか、たぶん、それはプ ライオリティの付け方です。いずれにしても大綱もそうだったけど、レベルの違うもの が並んでいるというのは何となく前から気持悪かったのです。特にお金もないし、なか ったら重点事項の(1)は金がかかるから、(2)でいくというのもありかもしれないと 思います。そう極端に言うのは駄目ですか。そういうのを議論するのが、今日のここの 1つの例です。 ○釜石補佐 そうです。 ○今野座長 それで先ほどから気になっているのは、資料4でそういうことの論点メモ が出てくるのかなというふうに思っているのです。だから資料4の説明をしてほしいな と何となく思っていたのですが、資料4はそういうことではないですか。 ○釜石補佐 そうです。 ○今野座長 資料4に入る前に、ほかに今までの説明についてご質問がありますか。 ○渡辺チーム長 資料8のところで、重点地域が「アジア」と書いてあるのですが、例 えばJICAを通した二国間協力ですと、こういった職業訓練分野でしたら、アジアより は中東やアフリカが最近はニーズが高くなっているところがあります。そこのところは 基本方針として、どこをターゲットにしていくかというところで、必然的に地域という のは決まってくるのかなとは思います。重点地域がアジアと言い切っていいのかなとい うところが、今後の現状のニーズ等を考えると、あるかなということをコメントさせて いただきます。 ○搆専門会員 今野座長が言われた資料8の構成に対する問題提起で、座長は問題提起 ということで言われたのでしょうけれども、雇用に結び付く訓練というのはもういいの かというお話、ちょっと気になったものですから、よくよく見てみたら、この重点事項 の(1)、(2)、(3)も、これは並列ではないのです。雇用に結び付く職業訓練に直に 手を付けるということであればそうなのですが、こういう体制を作り上げるのだとか、 いろいろ言葉が短く書いてあるので、いかようにも取れるのです。こういうような職業 訓練の仕組みを、雇用に結び付くような形で確立させるのだという観点に立つと、例え ば(3)が手段であって、雇用に結び付かないとしようがないから、日系企業とも連携 をして進めていきましょうとか、この辺は(1)と(3)も並列ではないので、基本方 針だけでなく重点のほうも複雑に絡み合っていますから、これをひとつの材料としても う少し加工していったほうがいいと思います。 ○今野座長 いずれにしても私が言ったのは、基本方針の構造化をどう考えているのか ということなのです。先ほど言ったのと違う言い方をすると、(4)、(5)を使って(3) をプロモーションして、(1)、(2)を実現するのだったら、直接のターゲットは(3) なのです。そういうふうに構造化しているのか、単に並列的に並んでいるのかという話 です。 ○奈良課長 これは厚生労働省の独自予算によるものと、いわゆるODAで、JICAベー ス、外務省ベースで進んでいるものを、全て包含したような格好で整理してしまってい ますので、先生が言われるように見にくいところがあります。これを仮に厚労省の予算 として独自に展開していく前提で、そこに絞った書き方をすると、必然的に中身が変わ って来ざるを得ないということになると考えています。  ただ、今、ここの中では我が国にODA大綱があって、それに基づく流れで最初は整 理してみようというので、全体的に取りまとめたものです。総花的だと言えば総花的な、 どうにでも読めるようなものになってしまって、特徴が出ていないということになろう かと思いますが、そういうような観点で、とりあえずは整理してみているものです。 ○今野座長 私としては、極端なことを言えばどちらでもいいのですが、この辺でウェ イトをはっきりしておかないと、自分たちの戦略のポジショニングができないので、ち ょっと言ってみたという感じです。 ○釜石補佐 我が国の経験と知見の活用とか、国際社会における協調と連携というのは 留意事項になるのかもしれません。 ○今野座長 これはハウツーの問題です。 ○釜石補佐 そういうふうなこととは思いつつ、ODA大綱にそう書いているから、あま りそちらに移すのもどうかなと思ったということ、あるいは重点地域もODA大綱のほ うではアジアが重点地域として、「ただし」と書き、その他の地域をあちこち書いている ので、ここではアジア以外はやりませんというイメージで書いているのではなくて、ア ジアが重点です、ただ、ニーズのある所については必要な支援はやりますということで す。 ○今野座長 ここは比較的自由に議論していいところです。大体、金がなくなっている のですから、どこか切らなければというのはありますよね。少なくなっているのだから どこか重点的にやろうと、そうするとアジアだけというのもいいかなと思います。 ○釜石補佐 厚生労働省の独自事業としては、アジアぐらいしか実績もないし、今後も アフリカへというのはなかなか難しいと思います。 ○今野座長 いくらでも資源があるのだったら、いろいろなことをやってもいいですけ れども。 ○野見山会員 資料8ですが、目標というのは何も人材養成に限らず、文字通りODA の目的それ自体、安全という言葉を外しただけのことだから、それはちょっと人材養成 の理念としては広過ぎるので、むしろ今野座長が言われるように(1)と(2)が、要 するに働く人たちの格差の是正というのと、経済の持続的成長による就労機会の増大あ るいは上質な労働機会の確保、それがむしろ目的であって、そのための手段として知見 の活用だとか何とか、そういうものが重点事項というのか、むしろ(1)、(2)が方針 というよりも、こぢんまりと言ったら何ですが、むしろ目的を絞ったほうが明確化する のではないか。そうしたほうが方針にしても重点事項にとっても絞りやすくなる。雇用 に結び付くというのは、エンプロイアビリティというのか、それは非常に重視されてい るのだから、重点事項としてエンプロイアビリティを重視するのだというのは、私は大 事だと思います。 ○今野座長 例えば、最初、ターゲットでエンプロイアビリティの向上とやったときに、 それを実現するドライバーとして教育訓練をするということですが、教育訓練すること に援助するのか、教育訓練をする仕掛けに援助するのか、そこも少し構造化がある。少 ない予算でやるわけだからプライオリティは十分に付けたい。少しそっちの方向に入っ てきましたので、資料4で論点を出していただき、少し議論したほうがいいと思います ので、お願いします。 ○釜石補佐 資料4の「人材養成分野における海外協力の課題と対応の方向(案)」です が、前回、第1回の資料7の論点整理メモに、対応の方向を書き込んだものをご参照く ださい。1頁に整理として大項目とそれぞれの事項を挙げています。【1】はJICAベー スの技術協力における問題・課題認識、【2】は国際機関等の枠組みでの国際協力におけ る問題・課題認識、【3】は企業活動の国際化に対応した国際協力・海外支援における問 題・課題認識、【4】は国際協力全般に共通する問題・課題認識、【5】は今後の国際協 力・海外支援戦略の柱です。  2頁の【1】の(1)で、近年のJICAベースの技術協力は、政府間協力の枠組内に 留まり云々というところですが、実態的にどうなっているかを見ると、能力開発分野で の協力の要請案件がそもそも減っている。それに伴って採択案件というのも減少してい る。従来の職業訓練センター設置型の協力というのは減少していて、代わって起業のた めの訓練、地域に根ざした訓練(CBT)など対応が難しい要請が出てきている。実態的 にアジア等日本と文化が似ていて、専門家の居住環境も良い国からの要請は減少してき て、文化が大きく異なっている遠い国、あるいは紛争国といった専門家の派遣自体が難 しい国からの要請が増えつつある。協力案件についても、昔はプロジェクト方式の協力 で大人数の専門家がどんどん行って協力していたのが、小規模化して1人の人が何役も こなさなければいけない。あるいは期間も柔軟になって5年間とか、それを延長してと いうのから、3年とか短くなってきている傾向が顕著にあるという状況です。  背景のところですが、東南アジアについては技術協力で既に3巡しているものがある。 これは資料5−1を見ていただければと思います。例えばマレーシアについて言うと、 1970年代に職業訓練センターの協力を2つやっていますけれども、その後、1980年代 に職業訓練指導員・上級技能者訓練センターの協力を長期間やっています。さらに1990 年代から2000年代にかけては、さらに高度な日本・マレイシア技術学院(JMTI)のプ ロジェクトを実施している。3巡と言えば3巡という状況になっています。  同じ国への協力を長期間継続というのはなかなかない。単なる職業訓練センターの設 置型の協力だと、相手国への政策への影響を含めて、国全体への広がりがないという指 摘があって、センターオブセンターにするという協力など、裨益の拡大に向けた努力は なされてきたということはあります。その段階で持続発展性を確保するために、日系企 業も含めた民間企業との連携もなされてきたということもあります。ただ、なかなか難 しいということで、相手国の財源に制約があり、協力終了後の自立発展性に困難がある。 そういうことで職業訓練の協力はうまくいかないという結論につながったこともあるの ではないかと思っています。自立発展性の確保のために、企業との連携をプロジェクト の中に組み込むことを、大々的には実施してこなかったのではないかという気がしてい ます。この資料2−1というのは、2でなく5の間違いです。JICAベースの技術協力 というのは、要請主義だということもありますし、厚生労働省としての関与が今まで難 しかったことはあるかと思います。  Cf.ということでマルチ・バイ・プロジェクトについて書いていますが、援助国が実施 したい援助を実施できるという我が国側の評価もあると聞いています。ODA予算が削減 され、また国民がODAに対して厳しい目を持っている中で、短期間に少ない人数で大 きな成果を上げなければならない。そういうことを求めるという動きにつながってきて いると思っているところです。  そういう背景があって、対応の方向として、ODA予算の削減が続く中で、社会基盤の 整備への効果的な協力を行うために、企業の人材開発ニーズに応え、なおかつ企業との 継続的な連携の下に運用され、活用される人材開発システムの移転というのを目指した プロジェクトの形成、効率的・効果的な技術協力の実施に努めるという提案です。  域内の工程分業化が進む東アジアを中心とする地域に対する協力については、地域全 体としての国際競争力の強化の観点から、能力開発あるいは評価の制度を適切に機能さ せるための運営・管理に関する政策助言、行政府の人材育成を重視するとしてはどうか ということです。  (2)ですが、技術協力の相手国で日本の体系と異なる職業資格制度が導入されたた めに、外国人専門家を活用しなければならなくなるケースなど、日本の訓練基準や評価 制度をベースとした協力を実施するだけでは、済まなくなってきているのではないかと いう問題提起については、背景の方に、アジア諸国に対する能力開発分野での技術協力 には、日本だけでなく韓国、オーストラリア、ドイツ等の国別の援助機関あるいは国際 機関等も入ってきているということで、競合とかも発生している状況にある。一方、近 年、労働力の国内外での移動圧力の高い国々において、National Qualification System, Skill Standards, Competency-base Trainingへの関心が高まっている。前回、牛山専門 会員からの指摘があったところでは、米国政府から日本の情報が欲しいと言われたこと もあるということです。  対応の方向の案としては、国内の訓練・評価システム又はこれまでの技術協力の成果 で、国際的な動きに適応できるものを整理し、開発途上国の各国との協議の場で活用で きるようにして、協議を担当する外務省、JICAの方に情報提供していくことができれ ばいいなということです。可能性があるというのは本当で5点ほど書いています。なお、 政府、職業能力開発関係の学識経験者、企業が協力しつつ、実現に向けた検討を行うこ とは大事であろうということです。  (1)から(5)までですが、(1)は伝統的な公共職業訓練施設の設置・運営に関す る協力、(2)は民間企業における職業訓練促進施策、(3)は技能検定制度等の評価制 度の協力、(4)は技能競技大会等の技能振興施策、(5)は協力ツール(PROTS、クド ゥバス、教材等)です。PROTSというのは進歩的指導員訓練システムということで、 Progressive Training System For Instructorの略です。昔、こういうのを開発して見直 しがなされていないのですが、そういうのがあるということです。  対応の方向の2番目として、各国における能力開発関係諸制度の企業による活用と、 将来にわたる維持という観点から、日本の制度の利点、ノウハウなどを積極的に発信す ることとしています。  4頁で、【2】の国際機関等の枠組みでの国際協力における問題・課題認識ですが、主 要国として要請を受けて協力を始めるという外交的な取組みの視点以外に、厚生労働省 の職業能力開発局としての政策的意図を持った協力とする必要があるということです。 関係資料の方で首脳宣言等については5−2にあります。能開分野における課題と国内 施策の対応状況となっていますが、国内の協力施策の対応状況を書いています。上から APEC、次がASEAN、次がILO、次がSKILLS-APとなっています。  第7次職業能力開発基本計画期間中の取組実績ということで、平成13年度から平成 17年度までの間の取組状況ですが、前回の検討会でも説明したAPEC技能研修あるい はIT研修というのは、日系企業等の現地社会への貢献というものを実現していると思 います。日・ASEANの人材養成協力事業というのも、始めたばかりですけれども実施 しています。今回が初めてになるかと思いますが、SKILLS-APというのがあります。 ILOのアジア・太平洋諸国を加盟国とする、相互協力のネットワークというものが動き 始めようとしていますが、詳細については5ー5に仮訳で資料があります。  日本は、ILOの協力するプログラムである、アジア・太平洋地域技能開発計画 (APSDEP)にもう20年以上も協力してきていますが、いろいろ問題があって改善し てほしいという要望を日本からしていたのです。その結果、SKILLS-APという、アジ ア太平洋地域技能・就業能力プログラムという技能開発とエンプロイアビリティの向上 のためのプログラムが動こうとしている状況にあるという紹介です。  対応の方向ですが、日本のプレゼンスを高める視点からの対応として3点ほどあるの かなと思います。1点目は、ILO、APEC等の枠組みによる国際協力を通じて、我が国 の能力開発に関する制度・施策・基準と、その運用のノウハウを積極的に発信するとい うこと。2点目は、国際機関等の枠組みにおける各国とのコミュニケーションを通じて、 能力開発関係制度の運用・管理に関する政策助言や政府職員の能力育成について、二国 間協力への発展を図っていくということ。3点目は、APEC研修事業を通じ、日系企業 の人づくり面での社会貢献を誘導し、CSR的観点から日系企業のプレゼンスを高めると ともに、これら企業と各国政府とのコミュニケーションを促進することによって、日系 企業が各国の能力開発関係制度の発展に貢献できる素地をつくる。更には、日系企業に 期待される各国での人材育成面における社会貢献を促進するために、相手国の制度との 比較に役立つような日本の制度の情報等有用な情報を提供して、企業の負担を軽減して いきたいということです。  5頁で、(2)のSKILLS-AP(アジア太平洋地域技能・就業能力計画)の支援と活用で すが、アジア・太平洋地域においてはILOの影響が強いことから、APSDEPを発展さ せて、地域各国の主要な能力開発機関の間のネットワークで、さまざまな課題に対応し ようとするILO SKILLS-APという、域内相互協力の新しい枠組みの具体的な運用につ いて提案を行っていくとともに、各国の経済発展段階に応じた相互協力を引き出せるよ うに努めていくというものです。  (2)は、人材開発分野における最近の国際協力において、各国の関心の高いNational Qualification System、Quality Assurance等について、日本がシステムとして提供で きるものがあるかどうかです。各国の関心を踏まえて、SKILLS-APの方で取りまとめ た能力開発分野での現代的な課題と国内施策との対比表を、資料5−6にまとめていま す。  いちばん左がSKILLS-APの関心分野ということで、技能検定・能力評価、職業訓練 の体制・質の向上、情報の提供と共有、特定グループに対する職業訓練、インフォーマ ルセクターにおける職業訓練として、分野別の課題が次に書いてあり、対応する我が国 の国内施策というのもまとめています。いちばん右は我が国の施策との関連です。イン フォーマルセクターにおける職業訓練というのは我が国ではやっていないので、今後、 協力するのは難しいと思いますが、関心分野としては挙がっているということです。  対応の方向ですが、ILO、APEC等の枠組みによる国際協力を通じて、我が国の能力 開発に関する制度・施策・基準と、その運用のノウハウを積極的に発信する。これはす でに出ているところです。  各国制度の実行面で我が国の制度が移入されるよう、技能評価システム移転促進事業 の展開において、各国政府関係者と日系企業又は日系経済団体との協力関係を構築する。  オーストラリア、ニュージーランドといった先進各国の政策と、我が国の政策の対比 による実効性、コスト・パフォーマンス等に関する政策研究を行い、我が国の政策のア ドバンテージ、あるいはディスアドバンテージを明確にしていくことも必要ではないか ということで、先ほど説明した【1】の(2)の対応の方向の1つ目の◆と同じです。 ほかには(1)のキャリア形成支援、(2)のニート、フリーター対策というのも、一応、 あり得るのかなということで追加しています。  6頁で、【3】の企業活動の国際化に対応した国際協力・海外支援における問題・課題 認識ですが、ここは1点です。東アジア・南アジア地域における、National Qualification Systemの移転と、それによる日本企業への影響の問題ということで、移転の状況につ いては資料5−7をご覧ください。真ん中に技能検定のタイプというのがありますが、 スキルベースが韓国、(タイ)、(中国)です。コンピテンシーベースがマレーシア、イン ドネシア、シンガポールと書いてあり、その一覧表が次頁です。アジア諸国における職 業訓練政策の比較ということで、これは情報が完全にフィックスされているものではな いのですが、ASEAN各国、中国、韓国について書き、日本も参考に付けています。下 のほうに、スキルベースかコンピテンシーベースかのタイプを書いています。特にシン ガポールなどは(NVQ)と書いていますが、豪州あるいはニュージーランドが中心とな って、アジア太平洋地域にシステムの導入を進めています。ただ、その維持には相当の コストを要することも認めています。  東南アジア諸国では、国家資格制度の導入が政府の独り相撲によって進められている 感があり、企業の活用を伴っていない状況が見られるということ。一方、我が国の技能 検定というのは評価内容を見直しつつ、長年企業により活用されてきたという実績があ り、国の制度への企業の信頼と協力が得られるならば、技能職種についての実際的で、 評価の質が確保しやすく、かつ維持可能な能力評価手法として技能検定制度が、各国に おいて活用できるのではないかと考えられる、としています。  最近の取組みということで、平成14年度から技能評価システム移転促進事業が始ま っており、日系企業の協力を得つつ、生産現場において活用の価値がある技能評価シス テムをまず民間ベースで立ち上げて、最終的には各国の制度の中で、実効性のある技能 評価システムの導入を目指している最中であるということです。実績については前回も ご紹介しましたが、資料5−8に書いています。  対応の方向ですが、技能評価システム移転促進事業の展開において、各国政府関係者 と日系企業又は日系経済団体との協力関係を強化する。これは同じです。各国において 経済面、技術・技能面での影響力が大きい日系企業と連携する協力内容とすることによ り、効果的な協力を進めるとしています。アジア諸国で、National Qualification System の導入が最近の流れとなりつつあることに留意し、我が国の職業訓練、能力評価システ ム及びこれまでの技術協力の成果を同システムの考え方に沿って再整理し、提示してい く。そのための検討も要るのではないかということです。  7頁で、【4】の国際協力全般に共通する問題・課題認識ですが、職業能力開発局が行 う国際協力・海外支援全体を貫く行政としての基本方針が明確となっていない。これに ついて対応の方向としては、域内の工程分業化が進む東アジアを中心とする地域に対す る協力については、日系企業を含む現地企業の国際競争力の源泉となる人材育成・確保 に資するため、実際に継続的に機能する能力開発・評価に関する制度の確立に向け、運 用・管理面での政策助言や人材育成に重点を置くとともに、日系企業の活動のグローバ ル化に対応した能力開発行政の一環としての国際協力・海外支援を推進する、としてい ます。  JICAベースの技術協力については、我が国の政府開発援助の基本政策に基づき引き 続き協力を行っていくが、民間企業の人材開発ニーズに応え、かつ、これら企業との継 続的な連携の下に運用され、活用される人材開発システムの移転を目指したプロジェク トの形成と、効率的・効果的な技術協力の実施に努めるとしています。  (2)ですが、我が国の能力開発関係施策・制度・ツールについての英語による情報 発信が少ないことについては、積極的な発信が重要であるとして、これは前のほうにも 出ています。  (3)の国際協力関係予算が大きく削減されてきている、また、ODA一元化の動きが 急となってきていることへの対応の方向では、日系企業等、各国の民間企業との連携を 深めるなど、波及効果、影響力が大きいと考えられる実施手法を組み込むことにより、 効率的な協力を進めるとしています。我が国がこれまで技術協力を行ってきた国々との 連携や、ILO SKILL-APの枠組みを活用した各国の貢献の引き出しを進める。JICA、 JETRO等との連携を深め、効率的・効果的な実施を進める。海外進出企業の人材確保 を容易にするための、開発途上国における能力開発システム発展の支援、邦人従業員の 能力開発など、企業活動のグローバル化に対応した海外支援策を担うことを志向すると しています。  こうした課題を踏まえ、【5】で今後の国際協力・海外支援戦略の柱と考えられるもの を、いくつか挙げています。1つ目は、我が国と経済関係が強い、あるいは強くなるで あろう東アジア及び南アジアを中心に、日系企業の参画・協力を得て、我が国と同等の 能力開発・評価に関するシステムが普及・持続される環境の整備を推進することにより、 現地国における人材育成及び質の高い労働力の確保に対する支援を強化する。それによ って人材養成分野における我が国のプレゼンスを高める。  2つ目は、企業活動のグローバル化に対応した人材育成に対する支援を強化するとと もに、日系企業の各国における人材開発分野での社会貢献を促進する。  3つ目は、JICAベースの技術協力においても、企業の人材開発ニーズに応え、かつ、 これら企業との継続的な連携の下に運用され、活用される人材開発システムの移転を目 指したプロジェクトの形成と、効率的・効果的な技術協力の実施に努める。  4つ目は、各国における能力開発関係諸制度の実際的な運用・管理が的確になされる という観点から、日本の制度の利点、ノウハウ等を積極的に発信する。また、各国の政 策と日本の政策の対比による実効性、コスト・パフォーマンス等に関する政策研究を行 い、我が国の政策のアドバンテージ、ディスアドバンテージを明確にしていく。  5つ目は、国際協力関係予算の削減が続く中で、効率的・効果的な事業の実施を進め るため、経済社会の発展状況に応じた貢献を各国に促す。例としてタイからラオスへの 協力というのを挙げていますが、それとともに国内における他省庁及び関係機関との協 力・連携を積極的に推進する。以上です。 ○今野座長 あまり時間がないのですが、いま、最後に論点を出していただきましたの で、それについて議論したいと思います。 ○野見山会員 主役が政府のですと、日系企業というか民間団体というのが即、出てく るのですが、NGOといったようなものはどういう位置付けになるのですか。例えば能 力開発に協力しているNGOというのは、いろいろな団体があるでしょうけれども、そ れは民間団体という位置付けに入れるのか。あるいはJICA協力の下請と言ったら何で すけれども、そういうふうに位置付けるのか。第三の道というのか、何かそういうよう なものはないのですか。先ほどの理念のところの実施機関別というのにも関連します。 ○釜石補佐 民間団体にはNGOも入るとは思っていますが、公益法人も入るというこ とで財団法人、社団法人も入ります。人材養成分野のNGOというのも途上国でいろい ろ活動していることは承知していますが、割合に極度の貧困な所で活動を展開している ということがあります。 ○野見山会員 力はそんなにない。 ○釜石補佐 評価の方では、プロジェクト支援ツールの開発委員会を開催して、NGO の方の参加も得て、人材養成分野の協力を行う、NGOの支援となるツールというのを 開発しているところではありますけれども、NGOにお金を出して事業を実施してもら うというのは、当省ではなかなか考えにくい。そういうのは、むしろJICAの方で「草 の根技協」というのをやっていますから、そういうことで貧困撲滅のための職業訓練と いう協力がなされていくのかなと思っています。だから、ここにはNGOにやっていた だくという視点が、あまり入ってはいないということです。 ○搆専門会員 補足させていただきますと、日本に限らず世界全体の国際協力の分野で ということですと、NGOはどちらかというと協力の手段として位置付けられているの で、それが政府の予算で出ても、実際の現場ではNGOの活動になります。こういうの はその政府の施策になりますし、民間の機関もNGOを通じて実施していますが、それ は民間の活動ということになるでしょうし、大学などはちょっと難しいですけど、そう いうものになっているはずで、我が国でも基本的にはそういうふうに分かれています。  ですから、もともとが日本のODAの予算で出ている活動というのは、国の施策とし て分類するのかなという感じで、ただ、必ずしも現場の出先ということでなくて、NGO でも大きな団体は独自に施策を持って進めている所もあります。そういう所は全体にイ ニシアチブを取って回すということであれば、おそらく民間の中に入れるのかなという ことです。 ○鈴木会員 先ほどの説明の技能評価システムの普及に関して、この事業への協力者の 立場から申し上げますと、実は本当に我々、海外の生産拠点でどんな技能者育成をやろ うかというときに事業が始まり、これにM社などとともに逸早く協力申し上げることに した。年々、この事業の活動が他にも伝達されていって、例えば事業が行われていない 国から自費で参加する。具体的には台湾の拠点から乗って来るとか、最近ではヨーロッ パのスペインでも競技会を始めたとかいうことで、大変いい事業かなというふうに思っ ています。  また、特に評価者講習に関しては、先回も少し申し上げましたように、競技会や検定 で技能評価者となることができるよう監督者レベルの者を日本に招聘して、6週間教育 できるというのは非常に有効な施策だと思っています。ある意味、自社だけでもそれを やりたかったぐらいで、いいきっかけを与えていただいて、今ではこの事業の対象国外 からも参加しているということを、お知らせしておきます。  一方、競技会や検定をやっていこうとしているのですが、競技会はもう既に3年やっ てきました。こちらの方は、いわゆる物づくりをしているワーカーというか作業者の方 たちのボトムアップ、特に先回申し上げたQCDのボトムアップには本当につながって いるなという感想を持っています。今後も是非、継続いただきたいと思っているところ です。  ASEANとかアジアの国から、なぜか技能五輪の選手派遣がされていない。例えば中 国のような国でも国際大会への派遣がされていないというのは、何か日本が支援できる 1つの施策かなという感じがしますけれども、この辺はいかがですか。 ○奈良課長 五輪の話ですが、ちなみに中国本土の方は、まだ国際技能五輪に加盟して いないはずなのです。 ○鈴木会員 そうですね。 ○奈良課長 台湾の方は、ずっとこれまで出てきていますけれども、中国が参加してい ないのにはそういう事情があります。 ○鈴木会員 そういう施策を国がやれば、物づくりに関する、ある意味で国際レベルへ の参加ということで、結構、レベルアップにつながるのではないかと私などは思ってい るのです。日本はもう40何年も全国大会をやっていますので、何かASEAN各国でも、 もう少し参加できるような支援をしてあげられないかなという感じはしています。 ○奈良課長 ASEANだけの技能競技大会は、これまで10回程なされてきています。国 によって少しずつ違うのですが、そこである程度の成績を取ると国際技能競技大会のほ うに送るとか、そういうようなシステムを有していることは聞いています。ただ、それ が実際にはお金がなくて出せないということもあるようです。またASEANの競技大会 の競技内容が、国際技能五輪でやっているのと大分違っている部分があるようです。そ こでやっているのは、要は金がかからない類のものが多く、国際技能五輪の予選には実 際上はなり得ない職種が結構あるようです。  JAVADの事業を通じて日系企業の皆様にも、特に静岡での開催となりますから、是非 協力いただけないかということで、これまでもお願いしてきている経緯があります。い くつかの国では、何かそういう気運が出てきているという話は伺っています。 ○今野座長 今言われたのは、資料4のいちばん最後の頁の【5】の一番最初の●と関 係しているところですね。 ○鈴木会員 そうですね。 ○今野座長 これは、今言われたように日系企業の中で少しずつ広がりつつあるようで すが、それを超えて広がりつつはあるのですか。つまりD社やT社やM社ではだんだん 広がったと。それを超えて、ここで言うと例えば当該国の普通のローカル企業の中でも 広がっていってほしいわけでしょう。 ○鈴木会員 ええ、そうですね。 ○今野座長 そこはどうなっているの。その関係と、先ほど言われたILOのSKILLS-AP との関係がね。 ○鈴木会員 確かに、今日系企業の拠点が中心なのですが、日系企業の拠点は各地域で 必ず仕入先から部品を調達しているわけです。そこを何とか参加させないと本物の良い ものはできてこないという意味で、次なるステップがそこで、いわゆるローカルの1次、 2次下請です。そこを抱き込むというのが次のステップかなと、これは非常に強く思っ ています。 ○今野座長 なるほど。例えばタイあたりでそれができたら、電気と自動車と繊維でで きたら、大体、製造業のかなりのところをカバーします。 ○田中室長 このシステム移転事業は、D社などのご協力で、確かにその部分はアジア 各国に広がりというのはできていますけれども、それ以外の所はほとんどなしに近い状 況です。ただ、我々は特に日系企業の方を核にして広げたいというのが1つありますが、 それは1つのツールであって、もし動いていただけるのだったら、まさにサプライヤー である現地の企業においても、そういうところが核となって評価制度なりを作り、導入 し、それが国に上がっていく仕組みというのは、あってほしいなと思っています。  ただ、それが難しい場合は、いま次善の策として考えているのは、例えばスリランカ がそうだったのですが、まずは技能振興の必要性を勉強なりしてもらって帰ってもらい、 国で技能振興大会を開いてもらう。それによって皆さんの意識が上がることにより、国 の中での政策が一歩前に進むということもありましたので、まずその辺からです。各国 には差がありますので、レベルによって徐々に評価制度というのが認識され、一歩でも 前に進んでいただければいいかなということで実施しています。まさにD社の動きとい うのは最先端を行っている形で、我々としては思わぬ展開でうれしい展開なのです。 ○今野座長 よくわからないのですが、技能資格制度を例えばD社でやられるときに3 級、2級、1級とかあって、これはこういう技能ですよという定義があり、それを養成 するためのテキストとか訓練コースなど、そういうドキュメントもあるわけですか。 ○鈴木会員 今は、そこまでいっていないです。それをやる一つのきっかけが実は競技 大会方式です。競技大会というのは競争ですので、結構、皆さんが勝った負けたで盛り 上がるのです。次の仕組みとしては技能検定まで本当に導入して、いわゆるボトムアッ プをしたいのですが、これがまたなかなか難しいのです。 ○今野座長 でも技能検定に関わる、例えば旋盤工なら旋盤工の訓練をどうしたらいい かということで、カリキュラムや能力要件というドキュメントは日本語ではあるわけで すね。 ○鈴木会員 あります。 ○今野座長 それをワンセットで翻訳して使えるようにすればいいわけですね。 ○鈴木会員 使えるようにしても、残念ながら先回、DSDで実施したのですが、技能訓 練というのはカリキュラム、教材、指導員の3つの要素を相当レベルを上げないと、検 定の2級、1級を普及するのは至難の業だなというのが正直な感想なのです。そういう 意味でタイですら、なかなか難しいところのレベルです。 ○田中室長 フィリピンでも競技大会というのは1、2度実施しているのですが、そこ でどういう評価をするかというときに、フィリピンとしての評価の仕方として国の独自 の見方があって、正確に覚えていませんが、例えば日本では1人で評価しますか。 ○鈴木会員 ある項目に関しては複数で、公平性を期するためにダブルチェックという のをやります。 ○田中室長 それを何かフィリピンは1人でいいとか、全然やり方が違ってきて、その やり方そのものを日本とすり合わせるために丸1日かかったとか、実際に動くときにプ ラクティカルな部分で非常に苦労したと聞いたことがあります。技能競技大会のレベル においても、定着させて動き出すのはなかなか難しいということがあります。  向こうで求めている職種が、日本で考えているものではなくて、例えばフィリピンで は電工、配管にすごく関心を持っていて、日本ではそこについては準備していなかった のが、向こうではえらく関心を持っていて、そこがフィリピンでは広がってきたという こともあります。我々が持っているものと向こうの ニーズが若干違っている部分があったりして、それに合わせるためにこちらが軌道修正 するとか、走りながら考えているのが今のシステムや事業の実態だと思っています。 ○鈴木会員 タイの場合、タイの国自体の施策として自動車産業に結構力を入れていま す。だから比較的国家検定のメリットがある。まだフィリピンはそこに至っていないと いうのは感じます。 ○高村 事業を担当している係の者ですが、先ほど今野座長が、現地国の企業が参加し ている例はないかと言われましたけれども、まさにフィリピンでしている競技大会に現 地の財閥系の企業も参加している例は、JAVADAからも報告いただいています。それが K社だったと思いますが、G社という現地の大きな企業と、政府も、TESDAも入り、 日系企業も入って一緒に競技大会を実施しました。まさに鈴木会員の方から言われたよ うに、地場産業に広げていくというのが、今後の目標かなとは考えているところです。 例として、こういう例がありましたというご報告です。 ○今野座長 何か遠い昔の話なのですが、経産省がやっているAOTSのOB会が各国に あります。タイにもあります。タイにあるAOTSのOB会がやっている訓練学校みたい なのがあって、遠い昔に行ったことがあります。そこはいろいろな授業をやっているの ですが、その中の1つの授業は、タイの中でいちばん大きい技術系の出版業者がやって いる。QCはこうやったほうがいいとか、そういう出版事業をやっていて全部日本から 翻訳でやっている。その当時の話ですけれど、つまりタイ語でいい教材がないというこ とです。確かに技能の問題とかありますけれど、カリキュラムとか教材自身がローカル で使える言葉であって、ワンセットでありますよと言っただけでも、かなり違うような 気がします。そんなことはないですか。日本得意の1品料理的に、ここのニーズに対し てこうしますという対応をしているのと、先ほど言った豪州みたいにワンセットでバッ と行っている戦略との明確な違いがあります。最初から作って「はい、どうぞ、これで。」 というのもあっていいのではないかという気がしたのです。そうすると、ワンセットで 全部翻訳しておいてあげるといい。 ○鈴木会員 たびたび先回の話になりますが、びっくりしたのは、DSDの旋盤の指導員 に技能検定で旋盤の2級をトライしてもらったのです。彼の作業ぶりを見たら、日本だ ったら指導員として失格ぐらいのレベルだったので驚きました。具体的には旋盤のネジ を切るのですが、ネジを切るのに旋盤の構造がこの人はわかっていないなとか、刃具の 良し悪しがわかっていないなとか、測定の基本ができていないなというぐらい、指導員 がそのレベルだということで正直びっくりしたのです。ですから、日本のレベルと現地 の職業訓練指導員のレベルに違いがあるということで、指導の資料だけでは駄目です。 できる人を育てていかないと、技能はなかなかうまく伝承できないというのが実感です。 ○奈良課長 そういう視点からしますと、先ほど鈴木会員が、向こうのDSDの訓練校 に日系企業が協力できるような何かないのかなと言われた、まさにそういうことから出 たことなのだろうと推察します。 ○今野座長 そのとおりだとしても、それが駄目だという基準は、誰が、どう出すかな のです。 ○奈良課長 そこが私は企業なのだと思います。企業が使えない訓練をやっても、それ は無駄金を使っているに過ぎないわけですから、そこで、それぞれの国の中で実際に企 業が使えるものはこういうものなのだということを、例えばアジア地域でしたら日系企 業から政府側にメッセージを発してもらう。我々だったらこのレベルのものがほしいの だ、それをやるために指導員としてはこういうレベルの人が必要なのだ。その養成のた めに協力の要請があるのだったら、それは企業としてもある程度までは協力しましょう と、理想的に言えば何かそういうような動きが出てくれば、非常にうれしいなという気 がします。 ○鈴木会員 日本の職業訓練ですと指導員の資格基準というのがあります。タイへ行っ てみて、どんな資格基準があるのかなとちょっと疑問に感じました。検定をやる場合は 必ず検定委員や、それを補佐する補佐員がいるのですが、そういう方たちのレベルを見 ても、ある基準があって、それを認定する制度すら必要ではないか。日本の場合は企業 が比較的それを補填しているのですが、本当にこれからだなという感じがしました。  もっとも、日本が検定を入れたのは40年ぐらい前ですので、40年の歴史があって初 めて今の日本があるわけですから、タイが今すぐそこのレベルに到達できるとは思えま せん。技能訓練の難しさ、技能伝承の難しさがそこにあると私は思います。 ○今野座長 システムの問題と、それを動かすための人材の問題と両方あるわけです。 ○鈴木会員 全くそうだと思います。 ○今野座長 システム自身も、例えばODAに上手に使えるようにドキュメント化され ているかというと、そうでもないということです。それがあったとしても、今度は人材 面の問題がある。だから両方です。 ○鈴木会員 おっしゃるとおりだと思います。 ○今野座長 いろいろな産業でやるのは大変だから、自動車産業でワンセット作ってし まう。 ○奈良課長 今、実際には経産省の予算で、タイやフィリピンなどで自動車の裾野産業 の人材育成を進めようというので、技能検定の導入とか技能検定に向けての教育をしま しょうとか、そういうことが進められています。それについてJAVADAも検定の試験問 題の提供という格好で、一部協力はしているのですが、仮にそれを実施したとしても、 いま鈴木会員が言われたように本当に根付いたものになるためには、これは日本と同じ なのですが、それを実際に使う側である企業が本当の意味でシステムを維持していこう という強い意識があって、継続的に協力していくということがないと、いくら政府機関 がやろうと言ったところで、現実に全然付いて行けないというか、維持することができ ないのは、これまでの東南アジア諸国での30年来の歴史が物語っているところです。  これからの、こういう能力開発分野の国際協力を考えた場合、政府がやるとか民がや るというレベルの話でなくて、国全体として我々が持っているものをまとめて持って行 き、現実に動かす中でそれを伝えていくというか、そういう格好の姿にしていかないと、 なかなか結果が出てこないのかなと思います。アジアのほうも、システムは作るけれど も中身が伴わないということがある。日本から行ってやっている段階では、もう現状か ら進歩しないと思います。現地企業の日本人が噛んでもいいし、現地企業のローカルの 課長、工場長が噛んでもいいのです。そこの国の産業から湧いてこないと難しいです。 そういうことをバックアップする施策が必要だと非常に強く感じています。一方向に話 がいってしまいました。 ○今野座長 いえ、ここは本当はそういう話をしようということです。大分時間も過ぎ たので今日はこの辺で終わりにしたいと思います。ほかに何かありますか。よろしいで すか。事務局にお願いなのですが、次回は資料はほとんどなしで論点整理みたいなペー パーだけでいいですから、少しゆっくり議論をさせていただきたいと思います。まとま らないとは思いますが、いろいろな意見が出てくると思いますから、あまり一生懸命資 料を作る苦労はしなくていいです。今日で言うと、いちばん最初のがいいです。その程 度で結構ですから、ゆっくり皆さんのアイデアをお聞きしたいと思います。その点だけ お願いします。次回の予告か何かありますか。 ○釜石補佐 次回は3月31日(金)、15時から5階の共用第7会議室において、第3回 目の検討会を開催させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○今野座長 それでは終わります。ありがとうございました。 【当文書の照会先:職業能力開発局海外協力課協力係(内線:5957)】 1