06/03/14 第18回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事録 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討 会 第18回 議事録(案) 厚生労働省医薬食品局審査管理課 化学物質安全対策室 第18回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会 議事次第 日 時:平成18年3月14日(火) 10:00 〜12:03 場 所:中央合同庁舎5号館7階                厚生労働省専用第15会議室 1.開 会 2.前回議事録の確認 3.平成17年度に行われた調査・研究成果について   (1)作用メカニズム   (2)試験スキーム   (3)疫学研究 4.厚生労働省内分泌かく乱化学物質ホームページについて 5.その他 6.閉 会 ○化学物質安全対策室長 定刻となりましたので、第18回「内分泌かく 乱化学物質の健康影響に関する検討会」を開催したいと思います。本日 は、御多忙のところを御出席いただきまして、誠にありがとうございま す。まず、事務局より事務的な連絡等をさせていただきます。 私、事務局でございます、化学物質安全対策室長の佐々木と申します。 よろしくお願いいたします。 本日の御出席の状況でございますが、井口先生、武谷先生、鈴木継美 先生、岩本先生の4名の委員から御欠席の御連絡をいただいております ので、計18名の委員の方々で検討会を進めさせていただきます。 また、本日の会合では、関連する厚生労働科学研究班から御発表いた だきますため、事前に座長とも相談させていただきまして、委員以外に 各研究班の研究者の皆様にも御出席をお願いいたしております。 それでは、開会に先立ちまして、医薬担当審議官の黒川より一言ごあ いさつ申し上げます。 ○医薬担当審議官 官房審議官の黒川でございます。おはようございま す。先生方におかれましては、日ごろより化学物質の安全対策に格別の 御高配を賜り、心からお礼を申し上げます。また、本日は年度末のお忙 しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 さて、前回平成17年3月でございますけれども、この検討会では試験 スキーム、採取・分析法、低用量問題、暴露疫学等調査などにつきまし て、各作業班から検討成果を御報告いただきました。そして、その結果 として中間報告書追補その2としてとりまとめが行われたところでござ います。 本日は、作用メカニズムの解明、試験スキーム開発、暴露疫学調査に おける平成17年度の研究成果につきまして、研究者の先生方より御発表 いただく予定でございます。 また、リスクコミュニケーションとして、化学物質安全対策室の内分 泌かく乱化学物質ホームページを、御紹介、御説明する予定となってお ります。 厚生労働省といたしましては、とりまとめいただいた報告書に沿って、 国民の健康的な生活を確保するため、各種の施策に着実につなげていく 所存でございますので、先生方には引き続き御協力、お力添えのほどよ ろしくお願い申し上げます。 今日はどうもありがとうございます。 ○化学物質安全対策室長 それでは、座長の櫻井先生、よろしくお願い いたします。 ○櫻井座長 座長を承りました、櫻井でございます。大変複雑な問題を はらんだ、内分泌かく乱化学物質問題について検討するこの会議の座長 を務めますこと、大変荷の重い仕事でございまして、前任の伊東先生の ようにはいかないと思いますが、進行役として適切に務めるよう努力す る所存でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 それでは、ただいまから第18回「内分泌かく乱化学物質の健康影響に 関する検討会」を開催いたします。 今日の主な課題は、厚生科学研究費によって現在進行中の研究班の中 間報告を伺って、来年の区切りに向けて疑問点とか要望事項を出してい ただき討議することであろうと思います。 また、その先を展望した議論も結構ではないかと思いますが、極めて 限定された時間の範囲内ではございますが、忌憚のない御発言をお願い したいと思います。 それでは、最初に事務局から配付資料の確認をお願いいたします。 ○化学物質安全対策室長 それでは、資料を確認させていただきます。 資料は、各委員並びに関係の先生方には、事前に郵送させていただいて おりますが、一部事前配付資料に含まれていない資料がございます。ま た、一部改定がありまして、それらにつきましては資料番号の最後に「改」 というふうに付けさせていただいております。 資料1−1が、配付資料のリストの2枚紙でございます。 資料1−2が、議事次第。 資料1−3が、委員等名簿。 資料1−4が、座席表。 資料2が「第17回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議 事録(案)」ということでございまして、これは委員の方々限りとさせ ていただいております。 資料3が「発表予定表」ということで、今日御発表いただく先生方の 順序等のリストでございます。 資料4−1、4−2、4−3、4−4、4−5、4−6、4−7と、 今日御発表いただの先生方のレジュメということで配付させていただい ております。 最後に、資料5改としで、厚生労働省内分泌かく乱化学物質ホームペ ージ(案)ということで、お手元に配付しております。 不備がございましたら、事務局にお申し付けいただきたいと思います。 以上でございます。 ○櫻井座長 特段不備もないようでございますので、次に今日の予定に つきまして事務局から説明してください。 ○化学物質安全対策室長 それでは、資料1−2の議事次第に従って進 めるということで、そちらをごらんいただきます。 2といたしまして「前回議事録の確認」ということでございます。 その後「3.平成17年度に行われた調査・研究成果について」といた しまして、これまでの研究成果などにつきまして、厚生労働科学研究の 研究者の先生方から御発表いただくこととしております。 次に議題4で、ホームページの改定につきまして、御検討をお願いい たしたいと思います。 その後「5.その他」でございます。 以上です。 ○櫻井座長 そういうことで進めさせていただきます。それでは、早速 議題2の「前回議事録の確認」でございますが、事務局から説明をお願 いいたます。 ○化学物質安全対策室長 それでは、資料2をごらんください。前回第 17回の検討会の議事録につきましては、速記録を基に作成いたしまして、 事前に委員の先生方には内容を御確認いただいているところでございま す。 特にこの問題がなければ、この内容で確定させていただいた上で、公 開の手続に入らせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。各委員におかれましては、既に内容を 確認していただいているということでございますので、この内容で前回 の議事録として確定したいと思います。よろしゅうございますか。 (「はい」と声あり) ○櫻井座長 ありがとうございます。それでは、この前回議事録につき ましては、この内容で確定とさせていただきます。 これはホームページに掲載するということでございましたね。 ○化学物質安全対策室長 そういうことでございます。 ○櫻井座長 それでは、次に進んでよろしいでしょうか。議題3に移り ます「平成17年度に行われた調査・研究成果について」ということでご ざいます。事務局から、説明をどうぞ。 ○化学物質安全対策室長 発表は御発表いただきます、先生方の御都合 等を勘案いたしまして、資料3の「発表予定表」の順に従ってお願いし たいと思います。 事前に作成いただきましたレジュメにつきましては、資料4−1〜4 −7ということでございます。 なお、事務局の方で時間についてお知らせのベルを用意しております ので、発表終了1分前に1回、終了時に2回ベルを鳴らしますので、よ ろしくお願いいたします。 ○櫻井座長 ただいまの御説明のとおり、資料3のように時間が割り振 ってありまして、2つの御発表が7分、7分、これをすべて一応割り振 って計算してみますと、議論する時間が10分ぐらいということになって しまいますが、延長は余りできませんね。 ○化学物質安全対策室長 議論につきましては、その内容を踏まえて臨 機応変に進めていただくということで、よろしくお願いいたします。 ○櫻井座長 そういうことで、かなりタイトでございますが、適切なコ メント等をいただければと思います。 それでは、早速発表を始めていただきたいと思います。 最初に、資料4−1の関係でございますが、井上先生、どうぞ。 ○井上委員 皆さんおはようございます。では、時間が限られておりま すので、早速始めさせていただきます。内分泌かく乱化学物質の生体影 響メカニズムにつきまして、総合研究の研究経過についての御報告をい たします。 (PP) 簡単に研究の背景について御紹介いたしますけれども、2002年、世界 保健機構の化学物質安全計画が内分泌かく乱化学物質問題を、個々の事 象について生物学的蓋然性に沿ってその検討をした結果、それまでの不 確定の事象としてではなく既存の事象として結論づけ、人々に注意を呼 びかけてから3年経過いたしました。 (PP) 本邦訳も厚生労働省関連のホームページに紹介されておりますが、成 体では影響を受けないようであると、胎生期と新生児期の性成熟過程で は、不可逆的な影響を及ぼす可能性がある、とまとめられたことは、御 承知のとおりであります。 (PP) この3年間の欧米での取組みを見ますと、EUの研究プロジェクトが 動き出しておりまして、その中では、例えばコルテンカンプ氏たちが、 複数の化学物質の複合効果を見て、相乗性ともかくとして相加性がある という結果は、実験的にいろいろ見られると報告しております。 ところで、今年はEUがWHO/IPCSとOECDに呼びかけて、三 者共催でWeybridge 会議を開催してちょうど10年目に当たります。E Uや各国の科学アカデミーでは、今年はこの10年の成果をまとめるワー クショップが各地で企画されているところでございます。 (PP) 他方、米国環境防護庁につきましては、ごらんのとおり2012年までの 10か年計画という大きな長期計画を立てて、研究体制はむしろ落ち着い た形でもって進行している状況であります。 (PP) 多くは申し述べませんけれども、さまざまな生物で起こり得ることを よりよく理解できるように基盤を整備するんだと言っておりまして、そ れがゆくゆくEPAのスクリーニングやテスティングのプログラムを支 えることになるんだということを本腰を入れてやろうとしているところ であります。 (PP) そこでは、既に発表論文でも確認されますけれども、ここにごらんい ただいているような低用量域における用量反応曲線は、U字型、あるい は逆U字型を取ることが、事象としては決してまれではない。しばしば 観察されるんだということを書いておりますし、またアールグレーたち のデータを引用いたしまして、用量反応相関が閾値を示唆する場合と、 そうでない場合といろいろあって単純ではないというようなことを書い ております。 (PP) 当研究班は、この問題では現象的なことも去ることながら、メカニズ ムがわからないと対応が難しくなるという当時の厚生省の施策に沿って、 内分泌系に対する作動物質、(ライガンドと呼んでいますが)これが働 く可能性がある程度知られていて、記憶装置を伴う高次生命系(すなわ ち神経・行動系、生殖・ステロイド、核内受容体系、免疫系、)を中心 にここにごらんいただいているような分担研究者の御協力を得て基盤研 究、それから、プラクティカルな課題への対応を、プロジェクト課題と して進めてまいりました。 (PP) プロジェクト課題中の低用量のプロジェクトとしては、ビスフェノー ルAを中心にした関連の文献検索を取り組んでまいりました。 (PP) 詳細は、厚生労働省のウェブサイトから見られるように準備中ですが、 胎生期、授乳期暴露による神経系への影響に関する報告が増えておりま す。 (PP) 特に選んだものではございませんけれども、低用量域での生体反応が 目立って認められることがおわかりいただけると思います。 (PP) ダイオキシン受容体のエストロジェン受容体との共役作用を『Nat ure』に発表したのは、私どもの班員の加藤グループによるものであ りますけれども、それだけにダイオキシン受容体のリガンドとして働く 天然の食品類、コーヒーだとか、いろいろあるんですけれども、これに 注目した松井さんたちは、慎重にこれらインドール系の物質をダイオキ シンやベンツパイレンとの違いを調べて、これらの食品類については速 やかに代謝される特徴があって問題ないということを突き止めておりま す。 (PP) 次に前立腺を研究している杉村班員は、詳細は申しませんけれども、 エストロジェン様作用物質が、マウスの前立腺に対しても不可逆性の変 化を引き起こす可能性があるということを見出しております。 (PP) 発がん性に関しましては、福島班員がいろいろな前がん性のバイオマ ーカーを使って、α−BHC(ベンゼンヘキサクロライド)のプロモー ター発がん過程では、低用量でバイオマーカーの発現がU字型の反応を 示すことがあると言っております。 (PP) より本質的なところでは、ここで御紹介する国環研の曽根さんたちの 仕事では、エストロジェンやTCDDの暴露でテロメラーゼの活性が上 がるので、これらには発がん性の蓋然性があるかもしれないということ を指摘しております。大変重要な報告だと思いますけれども、培養細胞 上のことですので、異なる個体レベルでの実験が期待されるところであ ります。 (PP) 生殖、核内受容体系については、井口班員はこのエストロジェンの腟 上皮に対する不可逆性の変化の分子背景を早くから世界に先駆けて明ら かにしておりますが、アンドロジェンもエストロジェン受容体を介して 腟上皮に不可逆性の変化を引き起こすことを明らかにしております。 (PP) 他方エストロジェンの腟上皮に対する不可逆性変化につきましても、 遺伝子の構成が明らかになってまいりました。 (PP) 免疫・感染防御系につきましては、T細胞系、B細胞系の双方での低 用量影響を示してまいりましたけれども、今回はマウスの株細胞マクロ ファージを用い、アルキルフェノール類では、マクロファージのTNF αの産生や遊走能などの機能に影響を与えるというユニークな結果が見 出されております。 (PP) 神経・行動系では、粟生班員が脳神経の性の分化に対する影響を示す、 世界をリードする研究をしてまいっておりますが、このほどはビスフェ ノールAが探索行動という指標で見るときに、雄と雌の差、性の分化の 差をなくす傾向があるということを見出しております。 (PP) 最後に「今後の課題」でありますが、内分泌かく乱化学物質について は、その新しい作用ゆえに、従来型の試験系で検出できない事柄がある ことがあるということがわかってまいりました。いろいろ工夫が必要だ ということであります。 他方、工夫して観察されたアドバースエフェクト(障害性影響)につ きましても、どういう意味があるのかがわからないということがありま した。しかし、性ホルモンやホルモン様物質による早期腟開口であると か、プリマチュレーション(早期成熟)であるとか、そういった現象は 実験動物学的には、早期の老化を引き起こし、エピジェネティック発が んの亢進につながる可能性が指摘されてまいったところでございまして、 今般培養細胞レベルとは申せ、テロメレースの活性化につながるという 事象が明らかになったことは注目されると思います。 なお、最後にヒトに対する影響につきましては、まだ言及できる段階 にないと判断しております。 以上でございます。 ○櫻井座長 ありがとうございました。 それでは、続きまして、江馬先生から御発表をお願いします。両方終 わりました後で、御議論をいただきたいと思います。 ○江馬先生 それでは、始めさせていただきます。 (PP) この研究班に先立ちまして、ここでは13年からのものを出しておりま すが、平成7年〜9年に黒川班でTDIの設定に関して、平成9年に菅 野班でライヤーの赤毛ザルの実験に関して、平成10年〜12年に金子班 で子宮内膜に関して、平成13年〜15年に現在スライドで写しておりま す金子班から私が引き継ぎました。 この13年からの研究班では、従来のTEFがダイオキシン、ダイベン ゾフラン、コプナラーPCBを対象物質として、共通な作用、単調な用 量作用関係、加算性を前提としてTEFが設定されておりますけれども、 対象物質では生理的リガンドが下がること、食品中の抑制物質の存在等、 物質ごとに異なった作用、低用量作用、非単調な用量作用関係、単純な 加算性が成り立たない可能性等から、メカニズムに基づいたTEFの設 定が要求されておりまして、これによりましてリスクアセスメントの信 頼性の向上がなされるということで、13年から研究をやってまいりまし た。 (PP) それに引き続きまして、16年から分子生物学的メカニズムの解明によ り、ダイオキシンを含む内分泌かく乱化学物質の毒性について、受容体 を介した毒性を考慮した考察をすることが重要となってきております。 このことは、従来のTEF及びTDIの妥当性を検討することにより、 リスクアセスメントの信頼性が高まることを示唆しております。 本研究では、13年〜16年の研究班の研究実績を基にしてダイオキシン 類を含む内分泌かく乱化学物質の胎児・新生児期暴露影響を明らかにす ることで、作用機序に関する基礎的な解析を推進することにより、ヒト でのより信頼性の高いリスクアセスメントに貢献することを目的として 研究を進めてまいりました。 方法としましては、受容体を介したダイオキシンによる胎児・新生児 期暴露影響、並びにメカニズムの解析。 受容体原性シグナルを介したエピジェネティック発がんの分子機能解 析。 障害性発現メカニズム解析と、それに基づくAhRに関する科学的な TEF及びTDIの妥当性の検討。 更に、TEF、TDIの継続的検討に関わるリスクコミュニケーショ ン・国際動向等調査に関する研究を行ってまいりました。 (PP) ここでは、これまでの研究の成果をお示しいたしております。 まず、奇形につきましては、マウス胚の口蓋におけるCyp1a1、 Cyp1b1、AhRR、未知のTCDD標的遺伝子発現の増加及び口 蓋裂に関連するMSX1の増加を含む遺伝子変化を確認しております。 マウスES細胞を用いた実験では、TCDDに反応するCyp1a1 がよく増加して、TCDDの初期胚毒性研究系として有用であることを 示しております。 また、サルを用いた実験では、母体経由でTCDDに暴露されたサル の子どもの歯及び腎臓異常がTDI設定の根拠となった毒性の3倍量の 体内負荷量で検出されておりまして、3分の1量では精巣及び精巣上体 の異常が検出されております。現在、これを解析中であります。 (PP) 発がんにつきましては、短期検出系モデルを作出しまして、腫瘍好発 系マウスを用いた短期TCDD投与実験を実施した結果、胸腺腫が有意 に増加することが確認されております。現在、これについても解析中で あります。 障害性メカニズム、TEF及びTDIの妥当性の検討につきましては、 がん細胞のin vitroの系で内分泌かく乱物質の細胞増殖阻害活性を調 べてデータベース化しております。また、各種化学物質のフィンガープ リントの解析を行ったところ、既知の内分泌かく乱化学物質と比較する ことにより、ヒトのがん細胞パネルが内分泌かく乱化学物質の分子メカ ニズム解析に有用であることを示しております。 (PP) 更にダイオキシンのレセプターでありますAhRのリガンドは、T細 胞のThR1への分化を促進して、IgEの産生を抑制することを示し ております。 また、このリセプターを欠失したマウスでは、皮膚の創傷から早く治 癒し、大腸にがん性の変化が見られ、またアロマターゼの発現に関与し て、生殖サイクルの制御に関与していることを明らかにしております。 また、ヒトの肝がん由来のHepG2細胞を用いた検討したところ、 多環芳香族炭化水素による脂肪肝にはAhRによるperoxisomeprolife rator-activated receptor シグナル伝達経路抑制が関与していること を見出しております。 マウス新生児の前立腺を用いた実験系では、アンドロジェン応答遺伝 子を同定し、エストロジェン、テストステロン、3−メチルコランスレ ンによる修飾作用を検討しております。 PCBによる血中T4低下作用にはAhRを介したTCDD様作用と AhRを介さない非TCDD様作用があり、T4低下にはT4の肝臓へ の移行が必要であり、輸送担体の関与が示唆されております。 (PP) 次に、受容体を介する毒性物質の有害性評価と国際動向の調査では、 ヒトの生命活動と密着した役割を果たしております受容体の機能の面か らの理解を深めることが、リスクコミュニケーションの科学的基盤にな るということを示唆しております。 また、海外におけるダイオキシンを含む内分泌かく乱化学物質研究の 最新情報を収集し、分担研究者に情報を提供しております。 (PP) 来年は最終年度になりますが、最終年度ではこれまでに得た基礎的研 究と応用的研究の成果を基に、信頼性の高いリスクアセスメントのため の基礎となるデータの集積を行い、従来のTEF及びTDIの妥当性の 検討を行いたいと思っております。 ありがとうございました。 ○櫻井座長 どうもありがとうございました。 それでは、ただいま御発表の2つのことにつきまして、御討議、御発 言がございましたら、どうぞ。 阿部先生、どうぞ。 ○阿部委員 この班の1つの大きな研究目的は、低用量で本当に作用が あるのかという点については、否定はできないというお話だったんでは ないかと思うんですが、そうすると今までと全く変わらないと思うんで すが、いかがでしょうか。 ○櫻井座長 井上先生、いかがでしょうか。 ○井上委員 阿部先生の端的な御指摘について申しますと、そういうこ とかと思いますけれども、ただこれまで蓋然性として理解していたにと どまると思うんです。こういう事象が報告されたとか、部分的、グロー バルアセスメントでは、立体的、地域的に局在した事象が把握されてい るけれどもということだったと思うんですけれども、それが実験室で普 通に実験をやっても、そうした低用量のデータが、どういう申し上げ方 をすればよろしいかわかりませんけれども、変化が出てきてしまうとい うことがありますので、そういう意味ではより一般化されつつあるとい うことはたしかかと思います。 問題は、いつも申し上げていることでありますけれども、ホメオステ ーシスの整った動物の場合には表に出てこない。それが内在的にいろい ろ体内では見えない形でもって、非常に大きな、ドラスティックな遺伝 子変化、プラスとマイナスの方向でホメオステーシスを起こしていると いうことがはっきりしてまいりましたので、そういう意味ではそれは問 題ないのか、それがずっと重なると問題があるのかとか、その辺の判断 はまだできる段階ではありませんけれども、そういう実態がよりはっき りわかってきたと、つまり阿部先生のお答えにつきましては、イエス& ノーというところだろうと思います。 ○阿部委員 ついでにもう一つ教えていただきたいんですが、例えばあ る物質があって、それがしかるべき濃度で効果があると。うんと低用量 になりますと、その効果が同じ効果ではなくて全く違うものが出てくる というふうに理解してよろしいんでしょうか。 ○井上委員 そこは、これもイエス&ノーなんですけれども、用量相関 性に変化する面と、その用量特有、低用量特有の変化もわかってきまし た。高用量からだんだん見えなくなっているところで、先ほど申しまし たようなホメオステーシスの中に隠れているけれども、恐らく生体作用 としては何らかの動きがあるであろうという、用量に沿って見えなくな っているそういう変化とその両方があるようであるということかと思っ ております。 ○櫻井座長 ほかに何かございますか。大変内容豊富な研究成果を短時 間で御発表いただきまして、議論すれば切りがないけれども、短い時間 でというとなかなか御質問も出にくいかと思います。 もしよければ、先へ進ませていただきまして、後ほどまた時間があり ましたら戻って何度も御質問をいただくということでよろしゅうござい ますか。 どうぞ。 ○井上委員 ただいまの阿部先生からの御質問は、本当に本質的な御質 問で追加してお答えしたかったところでございますので、感謝申し上げ ます。 ○櫻井座長 それでは、次に進めさせていただきます。 次は、菅野先生、御発表よろしくお願いいたします。 ○菅野委員 それでは、こちらに示しますとおり、3つの生体の作用点、 特に核内受容体及び関連転写因子群に着目した化学物質の毒性発現機構 の解明や毒性予測手法の開発を行う研究。これは、いわゆるハイスルー プット班として行ってきた研究であります。また、in vivo の試験系の 開発を目指すという小野先生が班長の小野班であります。もう一つ、子 ども班というのが、江馬班としてあります。この3つがこちらの検討会 で立ち上げていただいている試験スキームの構成の主たる要素になって おりまして、この(1)と(2)に関して私が発表させていただき、3番は再び 江馬先生に発表していただくということであります。 (PP) ここで、子ども問題と内分泌かく乱化学物質問題の関係をイントロと して御説明させていただきます。内分泌かく乱の方は受容体原性毒性と して、高次系を扱うということでありまして、現在の大きなテーマは低 用量問題。特に発生から発達に関わるところの不可逆的な影響の問題で あります。 子ども問題と言いますのは、子どもは小さな大人ではなくて、恒常性 維持機構の過渡特性に問題があって、あらゆる用量域で大人と違う反応 をするというところをカバーする研究であります。その場合、一般毒性 と受容体原性毒性あるいは低用量問題が両方絡むということであります。 (PP) 左側が内分泌かく乱化学物質問題だとすると、子ども問題というのは オーバーラップするところがあるけれども対応する範囲が若干ずれると いう立場でございます。 (PP) 試験法スキームに関しましては、国内的・国際的にいろいろなアプロ ーチがあった中で、身の周りにある数万種類の化学物質をスクリーニン グする立場からスタートするということであります。 (PP) こちらの検討会で御承認いただいている試験スキームというのは、化 学物資の優先リストをつくるに当たって必要なスクリーニング手法を確 立すると同時に、そこの優先リストで非常に重要であると思われるもの についての有害性を確定する詳細試験、または確定試験を開発するとい う2段階で進めるということであります。 (PP) こちらの青○のin silico のスクリーニング、in vitroのスクリーニ ングが、いわゆるハイスループット班の持ち分でありまして、in vivo のスクリーニングとin vivo の有害性を確定する試験に関しましての 守備範囲を持つのが、この小野班であります。 いずれも平成11年あるいは10年よりスタートして、この化学物質の 優先リストに関してはデータが着々と貯まっているということでありま す。 (PP) これは、OECDの内分泌かく乱化学物質に関するEDTAというと ころで定められたConceptual Frameworkであります。レベル1〜5まで あり、高木ハイスループット班はレベル2に相当しまして、小野班は3、 4、5のin vivo に関するアッセイ系及び試験法、有害性を検証する詳 細試験の開発をカバーする立場でございます。 (PP) 実際に、ここのin silico 、in vitro、それと新規に追加しようとし ているパスウェイスクリーニングでありまして、目的は各スクリーニン グ手法間の比較解析による精度の向上を更に進めるということです。 パスウェイスクリーニングを足していって、核内受容体及び関連転写 因子群に着目した化学物質の毒性発現機構の解明や毒性予測手法の開発 につなげていくこと。 同時に、この優先リストを充実させるとともに、詳細試験の方への情 報提供も行うというものであります。 (PP) これは、従来より実施している、ドッキングモデルによるin silico のスクリーニングでありまして、改良を重ねまして、ポジティブ、ネガ ティブに関しての情報を取っております。(PP) こちらは、Hela細胞をベースといたしましたレポーターアッセイ、 すなわちタンパク質を合成させる仕事を細胞にやらせて、それでエスト ロジェンの活性等々を見るものですが、こちらに関しましてもデータを 着々とためております。 (PP) こちらは、今、OECDでその手法がプレバリデーションとして成り 立つかどうか調査が始まったということで、これは電話会談のアジェン ダのコピーでございます。 (PP) パイウェイスクリーニングは、限られた動物を用いたマイクロアレイ による目こぼしのない、既知の生体影響のスクリーニングを実施するア イデアでございまして、これについても基礎データが取られております。 (PP) こちらが総まとめになりますが、ERα/β、アンドロジェン受容体、 甲状腺受容体につきまして、数百から数千化合物に近くなるデータの蓄 積がございます。 (PP) 続きまして、in vivo の小野班の方の現状と進捗を御説明いたします。 (PP) これは再度お示ししますが、標的は、胎児から成熟しつつある、神経、 内分泌、免疫からなる高次系への不可逆的な影響をいかに確認するか、 というものでありまして、研究班では試験スキームにのっとりまして、 確定試験を作って行くという具体的なゴールがございます。 (PP) この班の構成は、in vivo のスクリーニングに関してのグループと、 確定試験に関してのグループがございまして、本日は神経、行動に関す る部分からのマウスオペラント条件付けの評価法、免疫の方から免疫異 常に及ぼす影響の成果、内分泌に関しては、生殖系の老化に関わる影響、 神経系形成のメカニズムに基づいた作用点の検討、in vivo のスクリー ニングの方からは、外来性のエストロジェンの刺激の高感度検出系に関 する研究、最後に、子宮肥大試験及びハーシュバーガー試験を進めてき ました現状についてお示しします。 (PP) これは、オペラントシステムを、普通はラットでやるのでありますが、 これをマウスに適用して、受容体ノックアウトマウスなどを使えるよう にして、たとえば、学習障害等が本当にエストロジェン受容体を介して 起こるのかを見られるようにしようというものでありまして、これは宮 川班員のところで確立していただいたものであります。現在ビスフェノ ールAを胎生期から離乳まで低用量与えたマウスでの実験の準備に取り かかっている段階であります。 (PP) こちらは、神経幹細胞のin vitro系における解析で、エストラジオー ル、ビスフェノールA、ノニルフェノール、DES等が、この神経幹細 胞に対してさまざまな影響を低濃度で及ぼすというデータを得ておりま して、vitro とvivoをつなげていきたいと考えております。 (PP) 免疫系に関しましては、1つはここでお示しするSRBC、ヒツジ赤 血球に対する抗体産生能を見るとDESの比較的低用量暴露を受けた動 物では、それが下がるというデータが取れ始めております。(PP) こちらは、Local lymph node assayという既存のアッセイ法を、胎生 期暴露に拡張した系でございまして、この場合はDESを胎生期あるい は新生児期、離乳までに投与したマウスを大人にしまして、大人になっ たところでこのアッセイをやると、反応が増強して出てくることがわか ってまいりました。 (PP) こちらは、内分泌系の、特に性周期異常、老化と関わるものでござい ますが、妊娠6日目から分娩後20日目、離乳まで母親に対して経口的に ビスフェノールAを5μg/kg/dayから1g/kg/dayまで、低用量から高用 量まで広い範囲に投与しまして、性周期の乱れを観測したものです。赤 がエストラスで、正常では4日間周期の縞々になるわけですが、これが 7か月目でビスフェノールAの低用量から高用量まですべて異常が出て きたという実験の結果でございまして、現在これを追試確認中でござい ます。 (PP) こちらは、多卵性卵胞という現象が、やはり生後1日から5日目の新 生児にエストロジェンを投与すると誘発される現象でございますが、こ れに関しましても、DESの比較的低用量0.001 μg/kg皮下投与を行い ますと、有意差をもってこの多卵性卵胞が生じてくるという比較的低用 量のデータが出始めております。多卵性卵胞と早期の卵巣機能低下との 関連が示唆され、検討に入っております。 (PP) こちらは、子宮肥大試験及びハーシュバーガー試験での基礎的検討で ございまして、これは1例でございますが、ベンツピレンというのはエ ストロジェン受容体に結合しないので子宮肥大を起こさないのですが、 きれいにエチニルエストラジオールによる子宮肥大反応を抑制するとい うことで、子宮肥大試験上はベンツピレンがアンタゴニストのように働 くというデータが出ております。このベンツピレンは、AhRのリガンド であるという点が考慮されますとエストロジェン受容体系とのクロスト ーク、或いは肝臓の代謝酵素誘導によるエチニルエストラジオールの分 解によるかもしれないという考察が成り立ちますが、このメカニズムに ついても検討しつつ、子宮肥大試験の使い方の1つとしての考察を進め ていきたいと思います。 ハーシュバーガーにつきましては、系統差と種差を検討したデータを お示ししますが、マウスの方としては、B6のICRよりも感度がいい という結果が出ます。 (PP) 子宮肥大とハーシュバーガー試験に関しては、OECDのVMG−ma mmalian という部門でのガイドライン作成作業に対して情報を提供して おります。 一生涯試験の方に関しましても、来月予定されておりますこの会議に おいて、米国のEPA側からは農薬に関する、ティアードアプローチ・ オブ・ライフステージ・テスティングという提案がございまして、我々 が提唱しているところの一生涯試験との協調が求められてきております。 4月4日〜5日のワシントンで行われるこの会議では、我々の班研究の 成果と、EPAが出してきたものとのディスカッションが行われる予定 になっております。 (PP) これが実際のアジェンダです。 (PP) 「まとめ」でございますが、ハイスループット班の方は、先ほどお示 ししたとおり、データを蓄積しつつ、メカニズムに対応した情報も取れ つつあるということであります。こちらの小野班の方に関しましては、 確定試験としてのげっ歯類一生涯試験の開発に必要な基礎的な実験の開 発を行っており、テストガイドラインを作るというのが究極の目的です ので、低用量影響を確認しつつ、どのようなプロトコールが現実的かと いうことを検討してまいっております。 これを支援するのに必要な基礎的な実験も開発するということで、こ ちらの方からの情報も一生涯試験の開発に寄与しております。OECDの方 のテストガイドライン化、あるいはそれを視野に入れた活動も行ってお ります。 (PP) 「今度の展開」ですが、一生涯試験については、プロトコールを整備 しなければいけませんが、今のところ低用量問題がきちっと見られるで あろうという数種類のプロトコールがありますので、それの一本化、あ るいは最小限のバッテリー化を目指して、Proof of Principleを念頭に 更に確認を続け、1つのものにまとめていきたいと考えております。以 上です。 ○櫻井座長 それでは、続きまして、江馬先生、再度お願いします。 ○江馬先生 今年度から始めております研究班の説明をさせていただき たいと思います。化学物質の管理体制に関する国内外の最近の関心は、 ヒトの健康影響に対する直接的な健康被害の防止から、よりよい生活環 境、よりよい地球環境の追及へとその視点を拡大しておりまして、将来 的には対応可能な化学物質の安全性、評価手法の高度化が望まれており まして、高度化の1つとして胎児期、新生児期、幼児期を含む、いわゆ る子どもの化学物質の暴露による健康影響評価系の確立が急務とされて おります。 本研究班では「子どもは小さな大人ではない」という観点に立ち、出 生、離乳、性成熟などの外的・内的な大変動を経て成人に至る過程で、 子どもが経験する脳神経系、免疫系、内分泌系などにおける高次恒常性 維持機構の過渡的アンバランスの特性を踏まえ、子どもにおける化学物 質の有害健康影響発現の特異性を解明し、リスク評価に役立てることを 目的としております。 (PP) 成人に比べた新生児の生理学的特徴といたしましては、体重を基準と した場合には、水分含量が多く、脂肪含量が少ない、心拍出量が多く、 呼吸率が高い、肝臓及び脳の割合が大きい、脳への血流量が多い、腎臓 への血流量が少ないという特徴があります。 薬物代謝機能、腎臓の機能、血液・脳関門が未成熟な状態であります。 すべての器官の発育が急激に起こっている状態で、特に器官重量の増 加や機能の成熟中の状態であります。脳におきましては、神経ネットワ ークが構築中の状態であります。 (PP) 本研究の必要性としましては、子どもの有害性研究は極めて少ない。 新薬、あるいは農薬の申請資料などで発生毒性試験が行われておりま すが、子どもへの直接投与実験は現在のところされておりません。 「子どもは小さな大人ではない」という観点に立って研究を進めてま いりたいと思います。 子どもの特性として、高次生体機能の恒常性維持機構がアンバランス な状態で、諸器官が発達途上の状態、化学物質等に影響に対して防御機 構が未成熟な状態、発達途上の悪影響は成長とともに顕在化する可能性 があるという特徴を持ちます。 脳神経系、免疫系、内分泌系の高次生体機能の恒常性維持機構に及ぼ す影響が、毒性発現の重要なポイントになると思われます。 大人に対する影響評価を子どもに外挿するための研究も必要でありま して、実験動物とヒトとを関連づける研究も重要であると考えられます。 (PP) これはシェーマにしたものですが、胎児期、胚胎児期、離乳、性成熟 に至るまでを子ども期と定義しまして、本研究の対象領域としておりま す。 従来の毒性の影響対象域は、いわゆる性成熟が終了した以降が対象と されまして、ここではデータの集積があるわけですが、理論的な外挿と その限界の把握を知る必要があります。 (PP) 研究成果に移りたいと思います。恒常性維持機構発達解析としまして、 発生発育では、紫外線吸収剤として使われております、略してDBHC Bを、通常の毒性試験では6週齢ぐらいから投与を始めると思いますが、 6週齢のラットに反復経口投与したときでは、雄では肝臓重量増加等の 肝臓に対する影響が認められますが、雌では全く影響が認められなかっ たというような雌雄差があります。しかしながら、離乳前の雌雄のラッ トに直接経口投与すると、雌雄差がなくなりまして、雌雄とも肝臓への 影響が認められるというような現象が見られました。 神経系につきましては、遺伝子毒性物質として知られております、B rdUをラットの妊娠9〜15日に投与したときに出生時に多動性の障 害が認めることがわかっておりますが、これを分割投与すると、妊娠9 〜10日の投与では多動性障害は見られませんが、投与が後期になるほど 多動性障害が顕著になるという現象が見つかっております。 神経幹細胞分化における作用及び作用機序の検討では、催奇形物質で あるレチノイン酸の添加は、マウスES細胞の早期アストロサイト分化 を誘導し、また抗痙攣剤であり自閉症を誘発するとされておりますバル プロ酸は、マウスの胚神経幹細胞からオリゴデンドロサイト分化を抑制 することを見出しております。 (PP) 免疫系につきましては、自然免疫系は多細胞生物に共通に保存された 免疫系でありまして、生体のホメオステーシスの維持に重要な役割を担 う免疫系であります。自然免疫系の活性を抑制するメカニズムを解析し ております。 内分泌系につきましては、マウスの新生児期、幼若期、成熟期のそれ ぞれにエストロジェン様化学物質としてDESの暴露を行ったところ、 マウス腟からRNAを調製し、DNAマイクロアレイによりその遺伝子 発現変化を現在解析しております。 (PP) 外挿問題解析、まず大人から子どもの外挿問題につきましては、ヒド ロキシクエン酸による精巣毒性は、ラット及びマウスにおいて若齢なほ ど毒性が強く発現することを見出しておりまして、成長段階の違いによ る毒性影響に差が出るメカニズムを、精巣恒常性維持機構発達と関連づ けて解析しております。 実験動物からヒトへの外挿問題につきましては、マウスのES細胞を 用いた試験法で薬物の評価を行っております。これらの抗がん剤は、強 毒性と評価されまして、バルプロ酸、抗痙攣剤のカルマバゼピンは弱毒 性と判定されました。これらは、動物を用いたvivoの実験結果と一致し ております。 動物を用いたときに、安全と考えられている抗うつ剤のパロキセチン については、EST法では強毒性という評価が得られております。 (PP) 今後の予定でありますが、まず1年目の成果に続きまして、神経・内 分泌・免疫系に関する知見を集積して、子ども期の特性の解析を進める 予定であります。 以上です。ありがとうございました。 ○櫻井座長 それでは、ただいま菅野先生、江馬先生の御発表の内容に ついて御討議をお願いします。忌憚のない御意見をいただきたいと思い ます。 どうぞ。 ○松尾委員 in silico に非常に興味を持っているものでありますけれ ども、今回何か改良されたとおっしゃったんですが、それをもう少し教 えてください。 ○菅野委員 改良と言いますのは、RBAを出すところの演算を少しよく したと聞いております。 それと、実は金属の入ったリガンドは受け付けないので、トリブチル 錫ぐらいは何とかならないかということで、少し検討を始めている段階 です。以上です。 ○松尾委員 何かプラスとマイナスをディスクリムネート(判別分析) したとか、そういうお話がありましたけれども。 ○菅野委員 このデータと、サーフェスプラズモンレゾナンスで、バイ ンディングアッセイに近いようなことも直接見ておりまして、そういう データと子宮肥大試験のデータとを合わせて、優先リストをつくるのが 目的であるので、偽陽性はさほど気にしない、偽陰性だけあってはいけ ないという立場で線引きあるいは閾値を求める作業をしております。幸 いにもin silicoスクリーニング段階で2,000ぐらいにとどまることが わかっております。 ○櫻井座長 ほかには何かございますでしょうか。どうぞ。 ○井上委員 ほかにコメントがないようですので、私、江馬先生の子ど もの班には関与しておりませんので、お話を伺ってのコメントを申し上 げます。 江馬先生自身は、勿論御専門として理解しておられるんだろうと思い ますけれども、子どもの問題のプレゼンテーションの中に、プログラム の問題が全く出てこなかった。高杉先生辺りからももっといいコメント があろうかと思いますけれども、先ほどのお話の中に小児の不安定なホ メオステーシスというのがありましたけれども、子どものホメオステー シスが不安定だということは必ずしもないんです。アメリカの化学工業 会なんかも主張しておりますように、非常に復元力が強いんです。ただ、 それはそういうホメオステーシスが子ども特有のホメオステーシスが働 いていて、プログラムされているということが重要で、そこから見えな いうちに逸脱することがあって、そこのところを我々は今わかる方法が 欠けているわけです。 したがって、不安定なホメオステーシスという認識と、プログラムに 対する深い突っ込みをやらなければならないということの問題点は、表 裏一体の問題だと思いますので、是非その辺のところを強調してこれか ら研究をお進めいただきたいように思います。 ○櫻井座長 江馬先生、何かございますか。 ○江馬先生 まだ、この研究班は、実は明日報告会があるという状況で、 まだ正式に1年経ってもそれほど進んでないんですが、今、井上先生の コメントがありましたようなことを踏まえながら進めていきたいと思い ます。どうもありがとうございます。 ○櫻井座長 高杉先生、何かコメントありますでしょうか。 ○高杉委員 特にございませんけれども、子どもと一概に言いましても、 いろんな段階がございまして、一般には子どもは適応力がむしろ大人よ りもあるという場合もございます。胎生期から乳児期という場合と、も っと5歳〜10歳ぐらいになる子どもの場合とは随分違ってくるんでは ないかと思います。 したがって、一概に子どもとひっくるめて言うんではなくて、幾つか 区分けして、もっと極めてプリミティブな発達途上から、ある程度発達 した子どもというふうに分けた方がいいんではないかと思います。 例えば、小学校ぐらいになりますと、意外に適応力はあると考えてお ります。 ○江馬先生 ありがとうございました。私のところの研究班では、一応 胎生期から性成熟までを子どもという広い定義で、先生おっしゃるよう にそこにはいろんな時期が生まれているということも認識しながら進め ていきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。 どうぞ。 ○菅野委員 子ども班の中で、不安定というよりはアンバランスな状態 というふうに考えて、大人のバランスの取れた恒常性維持機構とは違う、 大人から見てアンバランスな恒常性の機構が、発達・成長とともに過渡 的にどんどん変化していくという、とらえ方でよろしいでしょうか。 ○高杉委員 それで結構だと思いますけれども、ホメオステーシスがで きつつあるときと、でき上がったときと、まだホメオステーシス以前の 問題とでは、確かにアンバランスが違ってくると思います。 ○櫻井座長 ほかに、何かございますか。 菅野先生、先ほど伺ったことはたくさんあったので、なかなか大変な んですが、幼若動物で低用量で影響が出て、しかもそれが成獣に至って も何らかの悪影響を残しているものを幾つかおっしゃっておられました けれども、これは非常に重要なことだと思うんですが、その際の低用量 のレベルが、幼若動物における通常の方法による無毒性量とか、あるい は成獣における無毒性量と比べて、それより小さいんだろうと思います が、どの程度小さいのかなということが非常に気になりまして、今まで の情報の範囲内でどうなんでしょうか。 ○菅野委員 今、プレリミナリーでお示ししたビスフェノールAの影響 は、大体1けたμg/kg/dayなのです。ですから、今の規制に関わる数値 がmg/kgレベルだと思うので、1,000 分の1とか、そういうレベルにな ると思います。 ○櫻井座長 1,000 分の1ぐらいのレベルですね。現在、mg/kg/day 程 度の数十ミリぐらいとか、あるいは数ミリ、100 分の1か500 分の1ぐ らいの不確実性係数を使っていると思うんです。ぎりぎりになるのか、 それよりも更にという、そういう非常に具体的な懸念が出てくるわけで ございますが。 ○菅野委員 そういうことがございますので、低用量の問題については 追試、或いは再試験ですが、多少プロトコールを変えて、さらにノイズ が入らないようにしまして、それをやっております。 多卵性卵胞の方もかなり低用量で出そうでして、こちらに関してはプ ラスチックのケージから昔ながらのアルミニウムのケージに戻して、給 水ビンも当然ガラスのものに変えて、お水も水道水では危ないというこ とで蒸留したものに変えて、今、急遽追試をやっているところです。で すので、再現性が取れた段階でもう一度こちらにて御検討いただくとい うふうに考えております。 ○櫻井座長 どうぞよろしくお願いいたします。 ほかに何かございますか。今の段階ではないようですので、次に進め させていただきます。 資料4−5に関係するわけですが、津金先生、よろしくお願いいたし ます。 ○津金委員 私どもは日本人を対象として、内分泌かく乱化学物質とホ ルモン関連腫瘍との関連を疫学の方法論に基づいて研究するという研究 班であります。 お手元に資料を配付してありますが、幾つかの研究を併行して走らせ ています。 資料を収集するフェーズのものと、分析するフェーズと、解析してい るフェーズというものを幾つか併行して走らせながらやっているという 状況です。 まず一つ、コホート内症例対照研究なんですけれども、1990年当時2 万4,000 人の血液を提供した女性で144 人が乳がんということに対し て、1:2のマッチングをして、今、内因性のホルモンとイソフラボン 類の測定を終了しています。現在、DDEなどを測定中であります。こ れは1ccしか血漿はないという限られた生体指標を用いているという ことです。 前立腺がんに関しては、倫理審査が終わり、こういう内因性のホルモ ンとか、イソフラボンとか、DDEなどを測定しようということで、前 立腺がんは140 :1:2のマッチングで研究するというフェーズに入っ ています。 (PP) こちらは、コホート内ではなくて普通の症例対照研究で、血液は50cc ぐらい採れるわけで、ある程度の多くのものを分析できるということで す。 ただ、乳がんになってからの血液ということになってしまいますので、 そういうバイアスがかかる可能性を配慮しなければいけないということ ですが、症例406 、対照406 のペアが確定して、現在有機塩素系の農薬 類、PCB類の測定を現在行っている最中であります。 (PP) 前立腺がん、こちらもコホート内ではなくて前立腺がんの症例対照研 究として行っていますけれども、まず前立腺がんに関しては、いろいろ 疫学のレビューに応じまして、農薬との関係など幾つかポジティブなデ ータが出ているので、症例対照研究の手法で検証する必要があろうとい うことで、現在症例と対照の収集をしているというフェーズになってい ます。 (PP) 子宮内膜症は、もう古くからやっている研究で、一応症例としてステ ージ2−4を58人、対照としてステージ0−1を81人、この1を対照 から除くということも今しながらやっています。 これは、もう収集は終わっているので、いろんな分析をして、環境要 因の方の主なものは終了しておりますが、遺伝子との関係、個々作用に 関して今、検討しているという段階で、尿中ビスフェノールAを今、測 定しています。 それから、尿中フタル酸エステル類を測定しようということで、測定 法を確立する作業に入っております。 (PP) 子宮内膜症の結果をお話しますと、イソフラボン、ゲニステイン、こ れは尿中で測定しているんですが、尿中のレベルというのは食事からの レベルを反映するということを確認していますが、ゲニステイン、要は イソフラボンの摂取量が多いヒトほど子宮内膜症にはなりにくいという 統計的にも有意な傾向が得られております。 ERβの遺伝子多型なんですが、これ自体は関係ないんですが、イソ フラボンとこの多型を組み合わせて見てみますと、エストロジェンとの 親和性が高い多型を持っているグループにおいて、交互作用も統計的有 意に検出されていますけれども、そういうグループにおいて特にリスク が下がるということが認められていまして、ここで得られた研究結果を 補強するというか、メカニズム的にある程度を補強できるんではないか というデータとして、このような遺伝子環境相互作用が認められていま す。 (PP) ダイオキシンなんですけれども、これは基本的に、もう少し細かく4 分位で分析したものもあるんですが、基本的には関係がないということ で、血中のダイオキシン濃度が高いからといって子宮内膜症になりやす いわけではないと。 この血中のダイオキシン濃度に関しては、いわゆる東京で生活する普 通の女性のレベルということなんですけれども、それを規定する主な要 因は、魚をどのぐらい食べているかが一番規定する要因としては強くて、 ほとんど魚を食べてない人に比べて魚を毎日食べている人は、血中のダ イオキシン濃度が2倍ぐらい高いということがわかっています。ダイオ キシンというのは、総テックで計算しております。 ダイオキシンの代謝系に関係する1A1、チトクロームP4501A1の 遺伝子多型、このバリンを含む多型を持っていると、誘導活性能が高い と言われているんですが、この遺伝子多型自体では関連はなかったんで すけれども、このように遺伝子環境相互作用というか、インタラクショ ンを見てみると、いわゆる活性型のタイプを持っている人において、ダ イオキシンにおいて抑制されるというか、ダイオキシンが予防的に働い ているというようなことが認められているので、これもこの部分におい て統計的有意ではないんですが、もしかしたらこういう日常の普通の低 いレベルにおいてはダイオキシンが子宮内膜症を予防するということも あり得るのかなというようなことで、交互作用は統計的に有意ではない ですが、0.08ということで、実際タモキシフェンなんかを投与しても、 乳がんは予防するけれども、子宮体がんは促進的に働く、リスクになる というようなことがいろいろありますので、やはり内分泌かく乱という のはある意味でホルモン関連の病気に関して、ヒトの中においては2面 的な面を持つんではないかということを示す1つのヒトでのデータでは ないかと考えております。 以上です。 ○櫻井座長 続いて、岸先生、お願いします。 ○岸先生 それでは、発表させていただきます。私どもは、前向きコホ ート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリス ク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明ということで進めてお ります。 (PP) このパワーポイントは、全体の概要を示しております。国際的に見ま しても、尿道下裂、停留精巣など、先天異常につきましては、症例対照 研究では従来行われてきておりますが、前向きコホート研究の形で行わ れている研究はほとんどございません。また、特に今日少しお話いたし ます、遺伝的な感受性素因を入れまして、それも同時に検討している研 究はほとんど皆無でございます。 本研究は、こちらが時間軸でございます。妊娠の12週の器官形成期、 12週±6日ぐらいまでの間に、妊婦さんにインフォームドコンセントを いただきまして、調査票とこの時点での、いわゆる器官形成期の母体血 を10ml採集させていただきます。その後、妊娠後期8か月ころ、それか ら出産の時点で臍帯血を30mlいただきまして、その後生後4か月で妊娠 中後期の生活環境等について調査票で調べさせていただいております。 また、停留精巣は、特に自然に下降いたしますので、1歳児の調査票 で停留精巣につきまして、自然下降の有無等について確認をしておりま す。 また、2歳半の時点で発達とアレルギーについて現在追跡をしており ます。 主なアウトカムでございますが、生まれたての新生児につきましては 55種類のマーカー奇形につきましてマニュアルをつくりまして、産婦人 科でチェックをしていただいております。 また、低出生体重、妊娠期間、在胎週数、いわゆる子宮内発育遅延、 それから羊水異常につきまして、新生児について生まれたての時点でチ ェックをしております。 乳幼児〜学齢期に関しまして、アレルギーと発育・神経発達・行動障 害について見ていこうというのが、主なプロトコールでございます。 本研究で明らかになりますのは、器官形成期の化学物質(PCB、ダ イオキシン類、有機フッ素系化合物など)濃度と、先天異常、子宮内発 育遅延、アレルギー、神経発達との直接的な因果関係が、器官形成期に さかのぼってではなくて、前向きに既に資料があるということで明らか にすることができます。 また、葉酸ですとか喫煙などが先天的な異常が子宮内発育遅延などに 関係していることが既に言われておりますので、こういう交絡要因と発 達とアレルギーに関しましてもデータが出る予定でございます。 今回は、いわゆる分子生物学的な最近の知見を踏まえまして、化学物 質の代謝酵素、受容体などの遺伝子多型の解析によりまして、感受性素 因と先天異常、子宮内発育遅延等の関係についても明らかにしたいと考 えております。 (PP) この1月までに、9,000 人ほどの方がエントリーされていますが、そ のうち無事に出産が終わりました5,998 人に関しまして、先天異常の発 生率を北海道の約四十の病院、それから日本産婦人科医会の出生1万対 の数と比較しております。この横棒になっていますのは、日本産婦人科 医会ではデータがないものでございます。私どもは、かなり詳しく聞い ておりますので、こちらでございますが、先天性心疾患、ダウン症、口 唇口蓋裂、無脳症はほぼ同じような数字で若干北海道の方が高めなもの もございます。一方停留精巣は日本のデータが全くございませんので、 東洋人ということで韓国のデータを基にした数でございます。ですから、 これは正しいかどうか不明ですが、このような数であります。尿道下裂 については、このような数字がおおむね得られております。 (PP) 最初に、前向き研究から得られたデータにつきまして、特に葉酸につ いてお話いたします。葉酸は、生体内ではDNAの合成で、補酵素とし て非常に重要な役割を示すことが知られていますし、また欧米では神経 管欠損症や先天性奇形などで葉酸が予防的な効果があるということが言 われております。 我が国では、二分脊椎が比較的少なかったものですから、余り葉酸に ついて欧米ほど注目が十分ではなかったのですが、最近妊婦の食生活が かなり変わってきておりまして、二分脊椎が増加しているのではないか ということが言われております。これからは、葉酸について注目するこ とが大事だと思うのですが、私どものコホートから得られたデータにつ いて申し上げますと、日本の基準値であります、3.6 〜12.9の中にほぼ 98%ぐらいの妊婦さんが入っておりました。その基準内ではありますが、 ちょうど中央値のところの妊婦さんをレファレンスにいたしまして、低 い妊婦さんと少し高めの妊婦さんで比較しましたところ、これは在胎週 数等、いわゆる交絡要因はすべて調整しておりますが、4分位に分けて 最も低いところの妊婦さんで、児の出生時体重が有意に低いというデー タが得られました。 子宮内発育遅延につきましても、このように低い方の2分割したとこ ろで有意な差が見られております。 (PP) 喫煙と血清葉酸値の関連を上の図は見ております。下は、葉酸に関し ます感受性素因に関しての結果でございます。 喫煙に関しまして、非喫煙群と途中で禁煙した方、喫煙を続けた方で、 median、min 、max を示しておりますが、やはり非喫煙群に比べますと、 喫煙が葉酸を下げる大きな働きをしております。なおこれはすべての因 子を調整したデータでございます。こちらの方で、MTHFRの多型に ついて調べましたが、特にこちらの上の図のところで、C677T多型 で見ますと、野生型ホモ接合がヘテロ、それから変異型ホモ接合に比べ て明らかに下げる役割をしております。喫煙とこの多型は、すべて要因 を調整いたしましても、最も大きな要因として有意に残りました。 (PP) 時間が限られておりますので、これからスピードを上げまして、途中 経過でございますが、お話しいたします。これは、PCB・ダイオキシ ン類濃度と臍帯血IgEについて福岡の環境保健研究所で測定したいた だいたデータでございますが、2,3,7,8−TCDDにつきまして のみ、多く異生体の中で有意に臍帯血IgEを下げる方向で有意でござ いました。WHO−98でTEQ換算いたしますと、このようなデータに なりました。 アレルギーに対しまして、臍帯血IgEがどのような役割を果たして いるかについては、まだ結論が得られておりませんので、これのみで大 きなことは言えませんが、今後生後のアレルギーや感染症との関係を解 明していくことが重要であろうと思います。(PP) これは、血中のお母さんのPCB・ダイオキシン類濃度と6か月児の いわゆるベイリーのスケールという発達の指標で、これが精神発達、こ れが運動発達でございますが、PCB・ダイオキシン濃度は正規化する ためにlog(対数)変換いたしまして使用しております。在胎日数、 採血時期、妊娠中の喫煙の有無、カフェイン摂取量などを調整いたしま したが、精神発達と運動発達につきまして、幾つかの異生体で負の影響 が見られました。これは、詳しいダイオキシンの異生体レベルで測定し たものでは世界で初めての報告でございます。ただ、今後の課題といた しまして、乳児期に神経発達への影響があったとしましても、学齢期に は改善傾向を示します。これは、種々の栄養的な、あるいは良好な家庭 環境とが改善要因となる可能性が示唆されるからでございますが、本研 究でも今後継続的に発達評価を行っていく必要があると思っております。 (PP) 最後に、尿道下裂に戻りまして、尿道下裂の感受性等について少し結 果を発表いたします。母親の内因性エストロジェンとか、喫煙などと尿 道下裂の関連が疑われておりますが、エストロジェンの活性に影響を与 えると示唆されております、遺伝子多型との関係については、ほとんど 調べられておりませんでした。 それで、エストロジェン活性に影響されます幾つかの遺伝子の多型に ついて、母の側と、上は児の説明をしておりますが、児と母の両面から 検討をいたしました。 まず、児の方でございます。患児のCYP17A1Msp1、CYP19 A1R264 C遺伝子多型と尿道下裂の関係でございますが、CYP19A 1のところで、このように有意の関連が認められております。 下に説明を書いておりますが、ヘテロがA1型と比較いたしまして、 それぞれこのようにオッズ比が上昇することが見られました。尿道下裂 は、先ほど示しましたエストロジェンの代謝に関係いたしまして、CY P17の活性と正の相関を有している可能性が高いと思われます。 (PP) これは、母の方でございます。症例数がまだ少のうございますので、 まだ十分な結果ではございませんが、CYP1A1野生型と比較しまし て、変異型ヘテロ並びに変異型ヘテロとホモを合わせたもので、有意に 尿道下裂に対するオッズ比の上昇が見られました。CYP1A1による エストロジェンの代謝が尿道下裂の発生に何らかの関与をしている可能 性が示唆されました。早口で大変申し訳ありません。 (PP) 本研究は、前向き研究でございますけれども、妊婦の参加数はほぼ1 万に達しました。協力施設は、現時点では38施設でございます。本研究 のように、妊婦の胎生期から立ち上げまして、前向きに研究するという 形のコホート研究は、日本では大規模な研究としてはこれが唯一だと思 います。また、国際的に見ましても、分子生物学的なモレキュラーエピ デミオロジー(molecular epidemiology)の知見を考慮いたしました研究 は、ほとんど行われておりません。今後、研究に参加してくださった妊 婦さん、また子どもさんを大事にさせていただきながら、今後とも追跡 をいたしまして、日本人のデータで日本の食生活等を考慮に入れまして、 非常に低いレベルのバックグランドレベルで暴露している状態で、その ほかの今日お示ししましたような葉酸ですとか、個人の感受性素因です とかを加味しながらリスク評価を行っていきたいと考えております。 以上でございます。 ○櫻井座長 ありがとうございました。 それでは、最後になりますが、八重樫先生、どうぞ。 ○八重樫先生 私は、配付資料で御説明したいと思います。スライドは 用意しておりません。東北大学の八重樫と言いますと、もともと産婦人 科を専門にしておりますので、私は内分泌かく乱物質と子宮体がんの発 生リスクというものの症例対照研究を行っております。 名前は出てお りませんけれども、うちの公衆衛生の辻先生、坪野先生との共同研究で ありまして、今回のプロトコール作成、あるいは解析はそちらと一緒に やっておるという状況であります。 それでは、資料4−7に沿ってお話したいと思います。 まず「1.研究目的」ですが、内分泌かく乱物質、特に有機塩素化合 物、DDT、PCB、ダイオキシンなどですが、それの長期低濃度暴露 と子宮体がん発症との因果関係を明らかにするというのが主な目的であ ります。 また、付随的には(2)(3)(4)と書いてありますが、特に2番 目の日本人で子宮体がん発症危険因子や予防因子を明らかにするという ことを付随的な目的としております。4枚目をめくっていただきたいん ですが、一番最後のページで本研究の概略を示したポンチ図になってお ります。目的を達成するために、症例対照研究を立ち上げておりますけ れども、症例が1に対して対照が2、症例は当然子宮体がんということ になりますけれども、それで手術を施行した患者さん。対照は、その患 者さん1に対しまして、年齢居住地、あるいは職業などをマッチさせた 一般女性、特に農薬などをはかりますので、農村地域、あるいは農業従 事者というのを重視して、マッチの項目としております。 症例数は、3年間で125 例、対照がその倍の250 例、大体年間50例 と100 例ずつと考えております。 今年度は、症例が54例、対照が94例、今年2月末までのデータです けれども、症例は既に超えていますし、症例が出てから対照を登録する ということになりますので、対照の方は少し遅れていますけれども、今 年中にクリヤーはできるだろうと考えております。 実際に登録した症例対照に何をするかということなんですが、血液、 尿を採取いたします。PCB濃度、DDT濃度、ビタミン類、あるいは 血中エストロジェンの濃度、植物エストロジェン濃度をはかるというこ とです。 記述式の調査としましては、生活習慣のアンケート調査、食品項目の 摂取頻度調査などを行っております。 これは、その場で書かせますと、なかなか不十分なアンケート調査に なりますので、専門の看護師を一人トレーニングしまして、これに当て ております。 こういったことで、特にPCB濃度、DDT濃度などの結果が出まし て、それで対照と症例で比べるということが主な目的ですけれども、い ろいろな危険因子、あるいは予防因子、そういった交絡要因があります ので、最終的にそれらのバイアスを考慮しながら、内分泌かく乱物質の 暴露量と子宮体がんの罹患リスクについてのハザード比、オッズ比を算 出するということをやっております。 また、資料の一番前の1ページ目に戻っていただいて、一番下のとこ ろにありますが、17年度からの研究では症例が54例、対照が94例です が、平成14年度の3年前から先行研究として行ってきましたので、それ での蓄積が100 例と181 例、ですから、現在、症例としては154 例、 対照275 例、併せて400 例ちょっとが登録されているという状況であり ます。2ページ目をめくっていただいて「2)血液検査及び尿検査」で すけれども、研究対象者から30mlの採血と10mlの再尿を行っています が、これを使いまして、PCB濃度、あるいは農薬などをはかっていく ということであります。 平成17年度、少し結果が遅れてくるんですけれども、とりあえず105 例のところまでのものが出ましたので、それで症例と対照で非常に単純 に平均値を比べてみたんですけれども、PCB関連の10項目の中で、T ri−PCBs、Tetra−PCBsの2群間で、統計学的な有意差 があるというのがわかりました。 ただ、これは単純に比べただけでは、それが関係することにはなりま せんので、症例を蓄積して、今後どうなるか注目しておるところであり ます。 血中DDT濃度、これは今のところは症例対照の2群間で有意差が見 られたものはありませんでした。ビタミン類、カルテノイド、ビタミン C、ビタミンE、エストロジェン濃度などについて、今のところβ−カ ロチンの濃度のみ症例群において有意な血中濃度低下というのがありま したけれども、これもバイアスを除くという操作が必要ですので、今の 段階では何も言えないというところであります。 「3)生活習慣等に関する記述式のアンケート調査」、登録された全 例にアンケート調査を行うということを目標にしておりますけれども、 この中で出てきましたのが、これは解析を行ったんですけれども、授乳 歴のある方には子宮体がんリスクが下がる。これは本邦では初めての結 果なんですが、こういった結果が出ております。 「4)植物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食品項目の摂取頻度調 査」、これも詳細な検討を行っておりますが、これは現在解析中であり ます。 3枚目の「3.今後の予定」としましては、登録を継続する。検体採 取、アンケート回収、検体測定の継続もする。尿中の植物エストロジェ ン濃度の測定をまだ行っておりませんので、それを行う。最終解析、こ れは平成19年度に行う予定でおりますけれども、内分泌かく乱物質の暴 露量と子宮体がん、罹患リスクの関連について比例ハザードモデルで解 析しハザード比を算出するということを考えております。 以上です。 ○櫻井座長 ありがとうございました。 以上ですべての御発表が終了いたしました。今の3人の先生方の御発 表について、何か御質問、御指摘、御議論がございましたらどうぞ。 ○菅野委員 津金先生にお伺いしたいのは、ERβのエンドメトリオー シスの関係ですけれども、ERβ自体は子宮内膜には発現していないの ではないかと思っていたんです。むしろ卵巣の方に出ていると思ってい たんですが、そういうことを考えると、卵巣経由の刺激というファクタ ーで考えていけるのでしょうかという御質問です。 ○津金委員 そこら辺ははっきりとはわかりませんけれども、産婦人科 の先生にお聞きするのが良いと思いますが、子宮内膜には発現しないで すか。 ○八重樫先生 私どもの検討では、発現をしているのもあります。それ から、周期によっても大分違いますけれども、ないということではない と思います。 ○津金委員 そういうようなことなので、ここでは検討してみたという ことです。 ○櫻井座長 ほかには、いかがですか。どうぞ。 ○菅野委員 岸先生にお伺いしたいんですけれども、スライドで、TC DFの方が影響が強いような数字が見えたと思うんですが、TCDFの 方がTEF値とは裏腹に、TCDDよりも影響が強く出るという項目は あったのでしょうか。 ○岸委員 少し御説明いたします。先生がおっしゃる、TCDFの方が ※が少し多かったのは、6か月児の子どものベイリーのスケールで運動 発達のTCDFの方が、測定した項目で3つ※が付いておりまして、た だしTCDDの方も1つは1,2,3,4,7,8の異生体では、Pが 0.01ですので、特にTCDFの方が強くて、TCDDの方が弱かったと いうわけではございません。 それと、運動発達の方に、このように異生体で見ると有意の結果がか なり多かったのですが、ここまで詳しくはかったのは世界的には今まで ないのですけれども、一般には運動発達の方がダイオキシン類の影響を 受けると言われておりますので、これまで言われていた知見とほぼ矛盾 してないと考えております。 ○櫻井座長 どうぞ。 ○酒井委員 私も岸先生にお伺いしたいんですが、資料の中で毛髪水銀 とダイオキシン、PCBとの関係について触れられているんですが、こ の両者の関係の要因等を考察されておられればお伺いしたいと思います。 それと、メチル水銀等の取組みはお考えになられているのかどうか。 水銀との関係が何か見えておられますかという辺りをお聞かせいただき たいと思います。 ○岸委員 お答えいたします。水銀に関しましては、資料4−6の方に のみ示しました。時間が7分ということで、こちらのパワーポイントで 詳しくお示ししないで申し訳ございません。かいつまんで申しますと、 水銀とPCB、ダイオキシン類の摂取の源が違うであろうと思われるの です。そういうことが結果として出てきました。 子どもの発達に関しましては、結論から申しますと、むしろ水銀濃度 に関しましては、発達を悪くしない方向で有意でありました。細かく異 生体レベルまで測定して水銀との関連を見ている研究というのは、これ も世界的に初めてなものですから、今回出させていただいたのですけれ ども、PCBの方は水銀とかなり一緒に動いておりましたが、TCDD、 TCDFの方は動きが少し別でして、水銀の濃度は生下時体重等で見て みた限りでは、むしろ体重を下げる方向ではなくて、逆向き、多分魚の プラスの効果が出ているんだと思います。水銀に関しましては、6か月 のところの発達との関係はまだ計算が終わっておりませんので御説明で きないんですが、少なくとも生下時体重に関する限りは、水銀レベルが やや高い方、これは非常に高濃度に汚染されているという方ではなくて、 日常的に魚を食べている方という意味なのですが、魚摂取量を反映して いると思われる水銀に関しては、むしろ生下時の指標はプラスの方向だ ったということです。 ○櫻井座長 どうぞ。 ○阿部委員 津金先生かほかの方でも結構ですが、いろんなものの血液 濃度をおはかりになっている。殊にホルモンの正常値は広いわけです。 これをはかって平均値を取って比較して高い・低いということで、果た してどこまで言えるのかということをお教えいただきたいんですが。 ○櫻井座長 これは、津金先生、ですか。 ○津金委員 内因性のホルモンという意味ですか。ホルモンが月経周期 との関連が大きいという意味も含まれてということですか。 ○阿部委員 はい。 ○津金委員 そういうすごい変動があるというものは、なかなか月経周 期のある時期とか、月経周期のいつを採血したかということを考慮に入 れながら解析していかなければいけないと思います。 そういう意味で、1:1の比較があって、集団として平均値に下がる かどうかということでまず見るということ。これは基本的には疫学研究 のやり方なんですけれども、そういう方向で検討するしかないと思いま す。 それでも下がるかどうかということですね。 ○阿部委員 甲状腺ホルモンでも、男性ホルモンでも、性周期に関係な しに、多くのヒトから血液を取れば非常に値が違うと思います。ですか ら、まず研究のスタディの最初からそういうことを比べることが意義あ りと考え方を先生はなさると思うんですが、本当に意義があるんでしょ うかというのが私の質問です。 ○津金委員 意義があると思ってやっているんですけれども、例えば、 がんになったヒトとがんにならなかったヒトで、そういうホルモンに差 があるかどうかということが、明らかな差があるかどうかということを 見ることは、非常に意義があるんではないかと思います。 ○八重樫先生 子宮体がんなどでは、どうしても閉経後の方が多いんで すが、そういう意味では閉経前と後で区切って、サブアナリシスみたい な形にしてみるのも面白いかなと思いました。 閉経後ですと、ほとんど普通はエストロジェンは出ないんですけれど も、ところが実際に子宮体がんになった方というのは、結構閉経後でも エストロジェンが高い方がいらっしゃいまして、そういう方が逆に言う と体がんになりやすいということを言われているんですが、そういうこ とも含めて今回解析してみたいと考えております。 ○阿部委員 その高いというのは、正常な日本人の平均値の中で高いと いう意味なんでしょうか。正常値より高いという意味なんでしょうか。 どちらなんでしょうか。 ○八重樫先生 閉経後のエストロジェン濃度というのは、ほとんど検出 以下になるはずなんです。ところが、どうしても肥満の方とかが多いで すから、E1なんかが出てくると思うんです。そうしますと、正常値と いうのはほとんど感度以下のはずなのに、体がんの方は実はディレクシ ョンできる濃度であるということもあり得ると思います。 それから、日本人の正常というのは、今回対照を取っておりますので、 その対照がある程度のコントロールになっていると。それに比べてどう かと。それは年齢も合わせていますので、そういうことが言えるのでは ないかと思います。 ○櫻井座長 ほかにはいかがですか。 ちょっと細かいんですけれども、津金先生の資料4−5の研究項目2 の「乳がんの症例対照研究」のところで、閉経前女性の割合が46%と3 5%というのは結構差が大きくて、ここにわざわざ書いてある。ちょっと 妙な現象のような気がします。 ○津金委員 乳がんの患者さんと対照です。乳がんの患者さんの方が、 恐らく閉経年齢が遅い方が多いと思います。基本的に乳がんのリスクフ ァクターとしては、いわゆる女性ホルモンがどれだけ分泌されている期 間があるかということが非常に重要で、そういう意味で閉経年齢が遅い ということがリスクファクターなんです。ですから、そういうところが 出ているんだと思います。 ○櫻井座長 わかりました。 ○津金委員 先ほどの阿部先生の問題で、例えば内因性のホルモンをは かった場合、閉経前の人と後の人とは同列で比較できないということで、 解析においてはそこら辺は注意しなければいけないことだと思います。 ○櫻井座長 どうぞ。 ○安田委員 岸先生にお尋ねなんですが、この研究の協力参加医には、 例えば奇形などについてはマニュアルを作成して教育なさっているとい うことですが、これから進んでいく子どもの検査に際しての小児科医に 対する教育というのは、どんなふうになされているのかお教えいただけ れば幸いです。 ○岸委員 ベンリーのスケールを測定しておりますのは、小児科医とい うよりも作業療法でADHD等の子どもさんたちを見ている研究科の方 々との共同研究でございます。 それから、更に今回の前向き研究は1万〜2万ぐらいの子どもさんが 入ると思いますので、その場合にこれからのもっと先のことになります と、現在研究協力でプロトコールを十分にしておりますのが、教育学研 究科のいろいろな発達障害について、私の大学にセンターがございまし て。そこのセンターの中の2人の医師と、一人の臨床心理の助教授と、 そちらの方の先生方と共同で、結局フォローアップして、まだ発達の段 階のOTの先生方がやっているところでは、マン・ツー・マンでお母さ んたちと接触がございますけれども、もしもこれから先、2歳半でコン セント(同意)の取り直しをさせていただいて、一応当初は1歳までと いう形でおりましたので、2歳半になりつつあるごくわずかな方に関し ては、インフォームドコンセントの取り直しをしまして、発達ですとか アレルギーに関しても、調査に御協力がいただけるかということで進め ておりますので、人数は少し減ると思われます。 更に先生が今、御質問されたところは、非常に重要なところだと思い ます。いろんな調査票でお調べさせていただいても、きちんとお母さん とお子さんとコンサルトができる関係がございませんと、かえって心配 をかけてしまうということになりますので、今、申しました教育学研究 科の中にあります発達等を見ておられる専門のセンターの方々と共同で 調査票を作成し、プロトコールそのものを検討しているところでござい ます。 ○櫻井座長 ありがとうございました。ほかには、いかがでしょうか。 私から八重樫先生にお伺いしたいのは、コントロールを選ぶ段階で、 これは年齢と居住地と職業をマッチさせた方、人間ドッグに来られた方、 順次聞いていって承諾を得るという方法だと思いますけれども、どの程 度拒否されて、その場でのセレクションが患者さんのセレクションより もいろいろ大きいだろうと思うんですけれども、どんなものなんでしょ うか。 ○八重樫先生 人間ドックの施設3か所と、契約ではないんですが話を しておりまして、前の日までに明日どういう方が来るというのはわかる んです。その方の中で、それにマッチしてそうな方をピックアップして いただいて、朝そこに直接行きまして、そこでお願いするという方法で す。 実際は、大抵7、8割の方には協力いただいております。今、一番困 っておりますのは、30cc採らなければいけないというのがなかなか大変 なところでして、もう少し微量でできるものができればいいと思います。 ○櫻井座長 7、8割も協力してくださっているなら、安心しました。 ○八重樫先生 かえって人間ドッグにいらっしゃる方は、健康意識が強 いのか、意外とこういうダイオキシンの関係の仕事だというと協力はし ていただけます。 ○櫻井座長 ただ、ドックに来る方というセレクションはあり得るわけ ですね。 ○八重樫先生 それは十分考慮しながらやっております。 ○櫻井座長 ほかに何かございますか。どうぞ。 ○津金委員 阿部委員の質問で、どうやって説明すればいいのかいろい ろ考えていて、なかなかうまく説明できないんですけれども、要するに 平均値を比較するということの意義づけなんですけれども、例えば乳が んに関して乳がんになった患者さんと、そうじゃない方、例えば閉経後 であれば、ある程度、乳がんの患者さんはエストロジェンのレベルが高 いということがわかっているんですけれども、それは閉経後であれば比 較的少数でも、ある人は何回はかっても大体いつも高い値を取るとか。 ある人は何回はかっても、いつも低い値を取るということがある程度あ るような値、閉経後の女性の場合は多分その場合だと思うんです。そう すれば、やはり乳がんの患者さんに高い人が多ければ、平均値として比 較すると乳がんの患者さんにエストロジェンが高い人が多いという結果 が出てくると思うんです。 ただ、閉経前だったら、どの時期にサンプルするかによって物すごく 変わってきて、乳がんの患者さんがたまたま性周期の始めの時期ばかり 採っていて、そうじゃない人が後ろの方ばかり採っていたということに なれば、これはもう間違いが出やすいですけれども、だけどいつも月経 直後の値をはかろうと決め事をして、それを何回もはかれば乳がんの患 者さんの方がエストロジェン濃度が高いという結果が出てくる可能性が あるということで、うまく説明できているかどうかわかりませんけれど も、平均値を比較するということの意味があるかということだと思うん ですけれども、そういう採り方を間違えたりとか、そういうような根本 的なバイアスがあれば、それで比較することは意味がないけれども、や はり無作為抽出で、ランダムサンプリングのような形できちっと比較で きれば、基本的に下がるということは検出できると思います。意味があ ることだと思います。 ○阿部委員 今、津金先生がそこまで気を使っていらっしゃるというこ とは非常に重要だと思います。殊に女性の場合はそうだと思うんですが、 男性の前立腺がんなどの場合、性周期というのはないですね。テストス テロンというのは結構平均値が広い範囲を持っていますね。そういう場 合どうするのか。 それから、同一時に、1回のポイントだけでその人の評価になるわけ ですね。これは何回か取らないで平均値を取らなくていいのかとか、い ろんな問題があると思いますので、津金先生のことだから十二分に考え て検討されると思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。 ○津金委員 ですから、個人内変動と個人間変動という問題で、個人内 変動がすごく大きいものは、なかなか比較することに間違い起こりやす いんですけれども、比較的男性の場合はある程度テストステロンの濃度 にしても、恐らく個人間変動はそれほど大きくはない。もし前立腺がん の患者さんとそうではない方で、個人間の変動が大きければということ が検出できればということですけれども、こういう説明です。 ○櫻井座長 いずれにしても、全体の分布は個人内変動と個人間変動の 両方を含んだものですね。全体の分布をいつも取り扱って統計学的に処 理されているんですか。 ○津金委員 それで集団間の比較をしているということです。 ○櫻井座長 ほかに何かございますか。 それでは、時間も予定の時間になっておりますので、これでこの議題 につきましては終了させていただきまして、次の議題はホームページの 件、説明をよろしくお願いいたします。 ○化学物質安全対策室長 それでは、資料5につきまして、簡単に御説 明をさせていただきます。私どもの化学物質安全対策室のホームページ ということで、内分泌かく乱物質に関してのリスクコミュニケーション の一環といたしまして作成しております。この中で具体的に申しますと、 4枚目以降につきましては、これまでの報告書の内容をかなり反映した 形、試験スキームの図、それから概要につきましては従来からの内容を 踏襲したものでございます。 その後のQ&Aにつきましても、基本的にこれまでホームページで御 紹介していた内容を、以後のリンク等も同じような形で、多少最新の情 報を載せるためにつくった部分がございます。 主としてごらんいただきたい部分としましては、最初の3枚というこ とでございまして、最初の部分はこの検討会の設置に至る経緯というこ とで、これまでもある程度この検討会の報告書をまとめさせていただく 中で書かせていただいていた内容を、まず1ページのところでは背景と して、この検討会設置の経緯を書かせていただいております。 2ページ目になりまして、この検討会の方法論として、そこに書いて ございます。簡単に御説明いたしますと、2枚目のところで、検討会で は優先順位づけを化学物質に関して付けていくことが1点目。 その中で、優先順位の高いものから順に詳細に検討するという2段階 でやりますという点で、その理由として3点書かせていただいておりま すけれども、これまでのところとして緊急に使用を禁止するようなもの はないということ。それから、詳細試験ということでやるんですけれど も、これまでの方法論でなかなか見つからなかったということがござい ますので、検討なりをしていく必要があるという視点からということ。 それから、詳細試験については、大規模になる可能性がありますので、 優先順位を付けてやっていかないと実際に進められないということで、 そういった理由として書かせていただいております。3枚目にまいりま して、厚生労働省としてこれまでどういう取組みをしたかということで ございますが、今日も御発表いただきましたように、厚生労働科学研究 費として研究費をいただいてきたということで、その内容を踏まえてス クリーニング手法に関してどういう流れでやっていたか。これまでの取 組みとして御検討いただいてお示ししてきた流れとして、詳細試験への 流れ、スクリーニング手法の開発の中、それから優先リストがどういう ものかということで書かせていただいた内容となっております。 簡単でございますが、そういった流れで今回ホームページを多少組み 替える方で詳細に直させていただくという方向でございます。 簡単ですが、説明としては以上とさせていただきます。 ○櫻井座長 ただいまの説明の内容、あるいはホームページについて、 何か御意見ございますか。 どうぞ。 ○津金委員 リンクのところで、私どもの研究班が行っている疫学研究 に関する情報提供に関してリンクを張っていただいて、大変光栄に思っ ておりますけれども、研究班として主任研究者が属している予防研究部 からのホームページから発信しているものですから、環境省とか経済産 業省とか、立派な機関として情報発信しているところよりはもうちょっ と下の方に置いていただければと考えているのが1点。 それから、予防研究部というところまで入れていただきたいというこ とです。うちの部のホームページの中で研究班のホームページを持って いて発信しているということでお願いできればと思います。 ○化学物質安全対策室長 わかりました。正確に載せさせていただきま す。大変失礼いたしました。ありがとうございます。 ○櫻井座長 ほかには何ございますか。特によろしゅうございますか。 それでは、今の御指摘の点だけ修正だと思いますが、そのようにお願 いいたしたいと思います。 議題5「その他」ですが、事務局から何かありますか。 ○化学物質安全対策室長 次回につきましては、改めて調整をさせてい ただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 以上でございます。 ○櫻井座長 それでは、今日の議題は以上でございます。長時間にわた りまして、どうもありがとうございました。あと1年の研究につきまし ては、できるだけはっきりした結論が得られるといいと思っております ので、御努力のほどお願いいたします。 それでは、今日の検討会を終了いたします。 (照会先) 厚生労働省医薬食品局審査管理課 化学物質安全対策室 担当 : 吉田、後藤 電話 : 03-5253-1111(内線:2910、2424)