06/03/08 国際協力事業評価検討会(第3回水道分野)議事録 1 日時 平成18年3月8日(水)10:00〜12:15 2 場所 厚労省共用第16会議室 3 出席者 【会員】  金近忠彦会員(横浜市)             北脇秀敏(東洋大学大学院)             国包章一会員(国立保健医療科学院)             眞柄泰基会員(北海道大学創成科学研究機構)             村元修一会員(日本水道協会)             山田淳会員(立命館大学理工学部)             山根亮太郎会員(日本水道工業団体連合会)       【専門会員】新田晃専門会員(厚生労働省健康局)             西村政洋専門会員(外務省)             安達一専門会員(国際協力機構)             山本陽一専門会員(国際協力銀行)       【事務局】 妹尾国際課長、金井国際協力室長、日置専門官 4 議事 ○日置専門官 おはようございます。定刻になりましたので、若干お見えになられてい ない専門会員の方がおられますが、「国際協力事業評価検討会(第3回水道分野)」を開 催させていただきたいと思います。初めに、妹尾課長から挨拶を申し上げます。 ○妹尾課長 おはようございます。本日は、お忙しい中ご参集いただきまして誠にあり がとうございます。国際協力事業評価検討会の水道分野に関する3回目の会合になるわ けです。ご承知かもしれませんが、我々国際課では、平成15年度から国際協力事業の 在り方につきまして検討会を開催してまいりました。当水道分野の研究を皆さんにお願 いしてきたわけですし、そのほかに保健医療分野、労働分野の全部で3つの分野につい て、厚生労働行政として実施しておりますODA事業の評価についての検討、政策立案 に対する検討をお願いをしてきたわけです。水道分野に関しましては、平成16年10月 に第1回の検討会が開催されたと聞いております。その後、人材確保・育成に関するW G、総合援助手法の検討に関するWGの2つのWG検討もお願いしております。各WG とも3回ずつの会合を開いていただいたと聞いております。  本日の会合で、水道分野に関します一応の取りまとめ、最終のご報告をお願いしたい と考えておるわけですが、本日まで各会員及び専門会員の先生方には非常に多大なご検 討、ご指導をいただきまして、厚く御礼を申し上げたいと存じます。ODA事業の在り 方全体については、私が申し上げるまでもなく、先生方がよくご存じだろうと思います が、政府全体の大きな課題としてどうあるべきかということが、いま取り沙汰されてお ります。そのために、政府内での体制の問題、国際協力に関します金融関係の在り方の 問題なども、一応の方向性が出されてきておるところですが、この水道分野のODAに 関しましても、今後日本の行う世界に対する貢献の1つの大きな分野として、重要性が ますます増していくものだろうと思っております。  水道分野のODAに関します新しいイニシアティブが、外務省を中心に取りまとめの 作業中と聞いております。近々まとめられるやにも聞いておりますが、その作業の状況 などを見ましても、国際的な水道分野のODA、日本のODAに対します期待が非常に 大きいということを感じるわけです。本日は水道分野検討会の最終回ですので、是非、 皆様方よろしく知恵をお貸しいただければと存じております。  なお、大変恐縮ですが、私は別件がございますので、20分ほどいたしましたら中座い たしますが、よろしくお願いいたします。以上で、簡単ではございますが挨拶とさせて いただきます。 ○日置専門官 続きまして、会員、専門会員各位の出欠状況について申し上げます。今 回、専門会員の野崎様、吉澤様が所用のためご欠席されるということです。西村様はご 出席されると聞いております。  次に配付資料の確認をいたします。「国際協力事業評価検討会(第3回水道分野)」の 議事次第及び出席者名簿、座席表があります。資料として用意しているものが4冊あり ます。「国際協力事業評価検討会(水道分野)報告書(案)」、別添1「水道分野国際協力 人材確保・育成WG報告書」、別添2「総合援助手法検討WG報告書」。「水道分野の国際 協力事業の実績の整理」が参考資料ということで用意しております。また、参考1とし て「総合援助手法検討WG」の議事概要が3回分あります。参考2として「国際協力事 業評価検討会の設置について」という趣旨のペーパーです。不足等がありましたらご連 絡いただければ対応いたしますが、いかがでしょうか。  それでは、眞柄座長、進行をよろしくお願いいたします。 ○眞柄座長 お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございました。ただい ま妹尾課長からご挨拶をいただきました。今月末にはメキシコで水フォーラムがあると いうことですが、そういう意味では本日の検討会ならびに来週行われる全体の会議で、 厚生労働省としてのある種のペーパーがまとまるのは大変タイミングが良いと思ってお ります。よろしくご協力をいただきたいと思います。  では、まず別添1「水道分野国際協力人材確保・育成WG報告書」について内容を紹 介していただきます。最初に別添のWGの報告書をいただいたあとで、全体の報告書に 入っていきたいと思います。 ○日置専門官 こちらは、去年の6月20日の第2回検討会で粗々の素案を提示して、 ご意見をいただきながら、そういったものを盛り込んで手直ししたものです。もう一度 概要をザッと説明しますと、本検討については村元会員を座長として、国際厚生事業団 と共催でWGを3回実施しました。我々が専門家を派遣する時なかなか見つからないと か、派遣する専門家に対する情報が不足しているといったニーズがありまして、それに 対してどのように対応していくのかというのが検討の趣旨です。  実施の内容は、アンケート調査をして、業界団体や専門家、水道事業体に対して人材 をプールする制度をどうしたらいいかといった意向調査を行ったものです。  その中で、10頁に(5)WG勧告と書いてありますが、こちらについては国際協力人 材確保の円滑化方策、人材確保を円滑に行うにはどうしたらいいのかについて、今やれ る範囲ではこんなことがあるのではないかということをまとめたものです。太字のゴシ ックの所が該当するものですが、人材確保のためには、少なくとも現在あるJICAの ほうで整理された国際協力人材登録制度やコンサルタント登録制度、日本水道協会のシ ニア専門家制度も活用するといったこと。  官人材、役所と水道事業体関係については、厚生労働省から情報を提供し、事業体の 中で十分な人選ができる時間が必要ではないかといったことを書いております。  さらに、国際的に活躍する能力や意欲を有する熟練/若手技術者が連携して人材を広 げていこうということから、次のような取組が必要ではないかということで、法人契約 型技術協力プロジェクトや官民の情報交換の場、多少退職を早めても国際協力に携わり たい人に対してアピールすることで人材を確保していくのが、いまやれることではない かということで取りまとめました。  専門家は決まったけれど行く先に関する情報がないとか、行ったあとに技術的な問題 があった時、どう対処したらいいかという情報のバックアップについて、いろいろ意向 調査をしながらまとめた結果が12、13頁に書いてあります。ここはWGの勧告となっ ておりますが、事前に必要な情報、生活情報や安全情報、案件情報、セクター基礎情報、 ODA、専門家業務の基礎知識といった観点から、いろいろな情報が欲しい、不足して いるということがありますので、黒ポツで箇条書きにしている項目を参考にやっていけ ないかということで書いております。赴任中については、住む家や安全情報、技術面で のバックアップ、業務をしていく上で専門的な知識をどのように入手するかについても、 黒ポツに箇条書きにしている項目について対応できるのではないかということが書いて あります。  5.人材育成についてであります。我が国の水道事業体なりでそういった人を育てる ことに対しても検討を行い、16頁にその勧告が書いてあります。そもそも白地の人に国 際協力に興味を持っていただくためには、JICAの専門家国際貢献に興味を持っても らう機会の創設が必要であるということです。帰国報告会で、成果発表や研修員の受入 れなどの身近に接していく機会を増やしていくことが適切ではないかということです。 また、外部研修制度がいろいろありますので、そういったものを活用して意識を高めて いくこともいいのではないかと。事例として、札幌市などが語学研修としてJICA地 域センターといろいろやっているという話もそこに書いております。こういった取組を やっていくことが人材確保・育成に必要なのではないかと、いまやれる範囲で取りまと めたものです。  そうは言いつつも、これで課題が解決するわけではありませんので、そういう観点か ら今後どういったことが必要かを、6月20日の検討会でいろいろいただきました。ま た、去年の9月に第3回WGを開いたときにも、いろいろ意見が出ました。この報告書 の中でそれぞれに対して答えを作るわけにはいかなかったものですから、こちらについ ては今後の課題ということで、より具体化するときに、やれるところからやっていって はどうかと、WGの報告にまとめました。それが、17頁の7の今後の課題です。  具体的には、○のゴシックで書いている項目についてご提案をいただきました。1つ 目です。本報告書では、主に水道事業体の職員の派遣を想定して検討を進め、国際貢献 で必要な人材の分類作業をした上で、ターゲットとする人材を限定して検討したという 共通認識を持つことが重要である、従って今後は相手国との援助内容の調整を円滑に進 める方法を確立し、相手国から要求される多様性を持ったニーズに対応すべく、例えば マネジメントの力を持った人を派遣するのか、個別技術を持った人を派遣するのかとい った、どういう質の人材、どういう分類の人材が必要とされるのか、そういう観点から も検討を深める必要がある。また、個人やNGO、NPOに属する人材の活用を検討す る場合においても、その活動の範囲と問題点をしっかり分析した上で具体的方策を取り まとめる必要がある。  2つ目です。水道事業体ごとに当該事業体の人材を登録すれば、国際協力活動にあた りその人の適性等の評価がしやすくなるというメリットについても考察する必要がある。  3つ目です。これからのODAプロジェクトをマネージするための若手人材を水道分 野でも育てる観点から検討する必要がある。  4つ目です。水道事業体の中で働いてきて、ある程度次世代に技能を繋げられるよう に、長期的にどう活用するか、その分野の高等教育とか職業訓練制度の中でそのような 技能職員をどのように育てていくかということも政府レベルで考える必要がある。  5つ目です。外国人の技能職員を我が国で教育して我が国の水道分野で働けるように し、その人が持っている出身国の言葉と文化を交えながらODAの枠組みの中で働いて いくような視点も必要である。  6つ目です。水道分野人材育成において、国際協力の対象国が東南アジアから中東、 中南米など英語が通じない地域へシフトしている実態を踏まえ、英語以外の語学研修の 実施についても検討する必要がある。  7つ目です。国際貢献の責務が国にある一方で、人材を派遣する義務は官にはなく、 また民の人材提供者に目立った利益が還元されないという現在の枠組みを改善する方策 を検討する必要がある。  こういった内容について意見が出てきまして、将来的に水道分野の人材確保・育成の 問題をやっていく上での課題を最後に整理して報告書をまとめました。以上です。 ○眞柄座長 ありがとうございました。このWGをまとめてくださったのは村元会員な ので、村元会員からさらにポイントや書き忘れたことがあったらおっしゃってください。 ○村元会員 いま日置専門官から報告があったとおりで、内容を見まして、私はよろし いかと考えております。特にポイントはありませんが、強いて挙げるとすると、課題が 非常に多いことが逆に見えたかと思います。一例を挙げれば、非常に活用しやすいと思 っていた民間のメンバーの活用が、逆に難しい。明るい方向とすれば、官の活用が法的 な制限から非常に難しいとされていますが、工夫によってはある程度活用できそうだと いうことも見えたというのがポイントかと思います。そのあたりを整理して、今後具体 的に進めるときには、その考えを踏まえて工夫していただければよろしいと思います。 以上です。 ○眞柄座長 ありがとうございました。山根会員、お願いします。 ○山根会員 人材関係に関しては、産業界としては法人契約型のプロジェクトを中心に 大いにやっていこうと、可能性としてもあるのですが、官民連携となると、官側の制約 等でなかなか難しい面もあるので一工夫が必要ではないかということで、OBなどを中 心に連携を深めていくなど、いろいろな工夫をしていけば何とか道が開けていくという ことです。 ○眞柄座長 官民連携が難しいというのはどういうことですか。 ○村元会員 いちばん大きいのは、官は法律的な制約があるために、民とある程度限定 して付き合うのは、仕事の進め方として非常に不鮮明であるということで、それをクリ アするのは難しいという官側からの要望がある。民側からは、言うならばそういう人材 が商売として成り立つようでないと、個人的には官は民のメンバーを派遣できないこと があって、1つの会社で人材を確保できない場合については、官民連携が不可欠という 中でやるプロジェクトしかないということで、民側からするとプロジェクトの実現性が あるかないかがいちばん大きな問題かと思います。もう一回言うと、官側からは法的な 制約、民側からは、官民連携ができないのではなくて、民が活用する場を最初に設定す ることが非常に難しいということかなと私は思います。 ○眞柄座長 でも、あるプロジェクトでチームを組んでいくときに、そのチームの中で は甲乙の関係なんかないでしょう。 ○村元会員 ありませんね。 ○眞柄座長 それが尾を引っ張っているということですか。 ○村元会員 甲乙の関係ではないですが、官のメンバーがある特定の民の仕事に協力す ることになると、具体的に言うと、国の施策として非常にクリーンな事業として捉えて いければいいのですが、民の側はそれは商売として参画しないと参画できないという意 見があるのです。そうすると、官は国の施策としては参加できるけれど、商売としては 参加できないことから、事業を推進するためには、官も民も人材という純粋な枠組みの 中で活動しないとできないということです。  具体的に言うと、どこかの事業体に所属する職員は事業体の職員として活動するので はなく、そこから派遣されて国の活動組織に所属して、どこかのAという会社の職員も Aという会社の職員ではなく、そこから派遣されて国のプロジェクトの職員として活動 する場合だと、いま座長がおっしゃったことが可能だと思いますが、いまはそういう枠 組みにはないということです。 ○眞柄座長 そうですか。基本計画でチームを組むときに、官の人間はコンサルのチー ムと一緒に動くではないですか。それは駄目なのですか。 ○安達専門会員 駄目ではなくて、いくつかの事例がありまして、例えばシリアで水資 源情報センターというプロジェクトをやっているのですが、これは国土交通省から専門 家が2人ほど出て、全体の水資源の政策分野の担当をしています。実際の情報システム を作っていく作業、人材の育成や地質の技術者を育てていくところについてはコンサル タントが受けて、要するに役割を2つに分けて、プロジェクトとしては1つ。プロジェ クトのリーダーは官ベースの人がなって、役割分担をしながら連携してやっているケー スもあります。  また、1つの可能性として検討しているのは水道分野ですが、自治体の公益法人と契 約をする形で、そこに何人かの民間企業の人を補強する形でプロジェクトを受けるとい うことも可能性を検討しています。その検討の過程で、契約で水道局そのものがJIC Aのプロジェクトを受けていく可能性があるのかどうかも検討しています。いまのとこ ろ、当初はそれ自体難しいということだったのですが、それぞれ水道局によって事情が 違うと思いますが、総務省等の見解では、独立した公益企業体なので、受託事業を行う ことについては法的制約はないようだという見解もあり、そこはひとえに水道局側の業 務として、本来の業務と受託業務との関係性を地元住民との関係でどう成立するかがあ る程度整理できれば、基本的には受託はできる。民間企業との関係も、村元会員が言わ れたことはなかり気になっているところで、ほかの案件でも、契約上一体的にやればい いではないかといっても、国内事業で甲乙になっていますので、民間の側も一緒にやる という意識ではなく、甲乙を意識してしまうということが、どうしても実態としてあり ます。 ○眞柄座長 水道ではなかったのですが、中国の環境センターは、非常に高度な分析機 器とそれを使いこなす技術を移転する担当の人は民間の会社なのです。都道府県の環境 センターの職員ではできないのです。あるいは、モニタリングのステーションがたくさ んあって、それのメンテは都道府県がやっているのではなく、実態としては国内では民 間の企業に委託で出しているでしょう。そういう部門は官ではできないのです。だから、 テーマ次第によってはそういうことがあってもいいのかなという気はしますが、いずれ にしても工夫が要ると思います。 ○金近会員 いま安達専門会員がおっしゃったように、水道事業体がどのように国際協 力事業に協力するかという姿勢によるところが、いまの話では相当大きいと思うのです。 しかし、1つだけあるのは、公務員倫理法が厳しすぎて、甲と乙の関係ではないのだけ れど、一緒の調査団で行く分にはいいのですが、長期派遣専門家などでいろいろなプロ ジェクトファインディングなどをやろうとすると、甲乙の関係に相当踏み込まないと物 にならないわけです。ところが、一方で一緒にお茶を飲んではいけないとか、一緒に食 事をしてはいけないというレベルでやっているわけだから、日本国内で直接契約してい る業者でないことは当然あるのでしょうが、そうでなくても民間の人と一緒にやっては いけないという話になると、情報は集まらないし仕事の仕掛けもできない。本当は、あ まり大きな声では言えませんが、そこがいちばん大きいのではないかと思います。海外 へ行くと、どうしても自分のできることは限られてしまいますので、やはり組織的にや っていかなければいけない。別に甲と乙の関係にあるわけではないのだから、官も民も 意識しないでやればいいのですが、海外に出ても、例えば横浜市の職員であれば、海外 に出ている期間中でも適用されてしまうわけです。その期間は派遣しているのだから、 関係ないということになればよろしいのですが、そこのところは法的にはクリアされて いないと私は思います。 ○金井室長 公務員法は結構厳しいのですが、お茶を一緒に飲んではいけないまでは厳 しくありません。 ○金近会員 それは言い過ぎですが。 ○金井室長 JICAに確認したいのですが、JICAから直接水道事業体と契約を結 ぶことになった場合は、専門家派遣は水道事業体が人選してやることになるのですか。 そうすると、入替えが割と融通が利くということなのでしょうか。コンサルタント会社 に委託した場合、コンサルタント会社が誰を派遣するか考えるわけですね。いまはJI CAが直接契約を結ぶから、JICAが全て、本人が適しているかどうか実に細かく適 切に調べていただいていますが、事業体が受けるのであれば、適宜交代させることが可 能な仕組みになるのですか。 ○安達専門会員 契約上は基本的に人が固定しますが、事情によって変更が必要になっ た場合、人事異動や途中で辞めてしまったとか、体調を壊すなどいろいろな事情で人を 交代しなければいけない場合には、いまは長期専門家でも1人行って、そういう状態に なるとまた選定し直すことになっていて、どういう人が出てくるかもわからない。よく 言われるのは、ある特定の都市の、給水に対して技術協力プロジェクトなどで育成の協 力をしている水道企業体からすれば、責任を持ってやりたいと、中途半端に誰がどう選 ばれて、どうなっていくかわからない人たちと一緒にやるのはかなり辛くて、やる以上 は自分たちで責任を持って対応したいという思いも他方あって、どうしてもキャパシテ ィーとの関係があるのですが、交代になる場合は水道事業体のほうで検討して、その中 で人が手配できなければ、ほかの所から人を呼んで対応していただく形になります。 ○金井室長 かなり融通が利く形になるわけですね。 ○眞柄座長 ありがとうございました。いまいろいろお話をいただきましたが、いくつ かの問題点が検討会で検討された上で浮かび上がってきたということかと思います。こ の問題について今後どう進めていくかについては、地方自治体と足並を揃えて問題の解 決のための努力をしていただきたいと思います。そういうことで、別添1は検討会とし てご了解をいただいたということにいたします。  続いて、別添2の総合援助手法について、日置専門官からご紹介ください。 ○日置専門官 「総合援助手法検討WG報告書」については、昨年の秋から国包会員を 座長に取りまとめをしたものです。「検討の趣旨」が1頁に書いてあります。我が国の水 道分野は、水供給及び衛生も含めてかなりのお金を投資して過去やってきたことがある のですが、それぞれの事業が連携してうまく遂行されていないといったこともあり、浄 水場を造ったけれど適切に運転されていないとか、求められる水質が確保されないとい った問題点も浮かび上がってきています。最近そうでもない雰囲気はあるのですが、財 政構造改革等の影響でODAの予算が一旦縮小されると、自由にいくらでも使えるわけ ではないというのは当然のことで、限られた予算を有効に使うためにも、各スキームを 連携したうまい援助のやり方はないだろうかと検討を始めたものです。  報告書の構成ですが、@頁です。2の「我が国の国際協力の枠組み」ということで、 いまやっているJICA、JBICの事業なりを整理しております。  続きまして、3の「我が国の国際協力施策の方向性」ということで、縦糸、横糸とい う表現をすれば、こちらは縦糸。各個別のテーマについてそれぞれの今後の在り方、ど うあるべきかをまとめております。技術協力の観点からどういった地域が適切なのか、 重点課題とは何か。継続性も大事ということです。ハード面、ソフト面をちゃんとして いかなければならない。維持管理に関するODAもこれから求められています。今後の 技術協力の具体的展開、無収水対策、水質管理、人材育成と、これは本文で説明します が、技術的なことまで含めて書いております。そういった内容を評価するときにはどう したらいいか、ODAプロジェクトの評価については(2)で書いております。  (3)として、目標設定の観点です。目標を持って援助を実施しなければならないの ではないかということで、こちらを縦糸と表現すると、4.「総合援助手法について」は 横糸になるかと思います。それぞれ3のようなことをいろいろな主体がやっているとい うことで、その主体をつないでいく考え方が必要ではないかということです。そこで、 (1)として、多様な形態による国際協力の展開。組織力向上、経営改善等を目標とし て掲げた政策支援型の協力です。これは、現地のローカルカンパニーとの連携や、水道 規模に応じて住民参加を取り入れた内容、これは住民との連携です。保健衛生・地域開 発等他セクターによる協力等の連携、我が国の中での地方自治体、大学、NGO等の連 携、官民の連携等が考えられるということです。  そういったことを総合して、総合援助手法の実施を3つの切口から求めています。援 助の主軸、援助のプログラム化、目標設定の評価が得られるということで、全体を構成 しております。全体はこのような感じになっておりますが、本文に入って個別に説明し ます。  時間の関係もありますので、2.はJICA、JBICの事業の整理ですので説明を 割愛します。  3頁です。「我が国の国際協力施策の方向性」ということで、(1)技術協力の観点か ら(1)地域重点的アプローチを整理しました。どういった地域にアプローチしていけばい いのかということです。こちらは4頁に書いてあり、水道分野の国際協力で政治的・経 済的側面から見た我が国の国益の確保、近隣諸国との有効関係の維持・発展、過去の実 績から見た国際協力の継続性の確保等を考慮して、今後、アジア近隣諸国、具体的に挙 げるとインド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、バングラデシュ、フィリピン、 ベトナム、ミャンマー、ラオス等に対して重点的に援助を行うことが重要ではないかと いうことです。また、中央アジアや東欧、中近東、中南米、西太平洋については、拠点 を確保しつつ、域内諸国全体を視野に置きながら援助すべき地域と位置付けることが適 当だということが書いてあります。  (2)重点課題への積極的対応です。水質に関しては、ヒ素やフッ素等有害元素の汚染の 対処。漏水の防止と有効率の向上などが中心的な考えではないかということです。  (3)継続性の確保、5頁です。諸外国の例では、分野を限定して長期に渡った援助など があるので、そういったメリットを配慮しつつ、継続性の確保という観点も援助に必要 ではないかということです。  (4)ハード面とソフト面の調和であります。施設整理も大事ですが、そのあとの維持管 理も大事であるということ、特に村落給水などですと、住民参加を促しながら、ソフト 面の援助が重要になるのではないかということです。  (5)維持管理に関するODA支援の強化です。(4)と若干関係するのですが、開発途上国 で井戸などを整備しても、そのまま修理ができずに使えなくなっている事例が多いとい ったことに対処して、JICAのほうでも技術協力プロジェクトの中で人材育成をしな がら、維持管理に関する能力を向上していこうという取組をされております。今後、そ ういった内容の技術協力が大事なのではないか、また、いままでのODAのスキームか ら一歩踏み出すぐらいの意気込みで取り組むべき課題ではないかということを書いてお ります。現地側で維持管理ができるようにすることを目標に、様々なサポートを実施す る必要があると考えます。  (6)今後の技術協力の具体的展開、6頁です。ここは技術的なことを書いております。 無収水対策とはどういったことがあるのか、現地の配管の施工なども大事だということ を書いております。水質管理については、都市水道ですと水質基準の援助なども必要で はないか。農村ですと、住民参加をしながら適切に管理していくことが大事ではないか。 ヒ素・フッ素などについても、データをしっかり取って対応していくべきではないか、 といったことが書かれております。  8頁、Bの人材育成という観点。これは先ほどの人材育成とは違い、現地のオペレー ターやスタッフに対する育成、啓発をしていく必要があるということを書いております。  続きまして、(2)評価の観点です。技術協力と相対して、評価していく視点も必要だ ということで、評価の観点から取りまとめております。(1)水道分野のODAプロジェク トです。プロジェクトの評価については、OECDのDACがPCM、PDMを提案し て以来、ずっとやってこられているのですが、水道のプロジェクトがどこまで適応でき るかについては、なかなか未知なところも多いということです。  9頁です。そういったことで、水道の評価においては、○まずベーシック・ヒューマ ン・ニーズとして飲料水の確保を考えるべきということ。○水を供給する地域が明確に 決まっていて、地域住民の大半が受益者であること。○供給水量の目標値は、代替を含 めた水源の状況、施設を建設し維持していく経済的技術的能力、社会的条件が見られる こと。○施設は水源から供給先まで直列につながっており、全てが機能しないと駄目で 維持管理も難しいこと。特に機械設備などは耐用年数が短いため、技術者の配置は不可 欠です。○水道施設の建設、維持管理は原則として利用者が負担すること。料金、経営 の観点から維持管理の重要性が高い分野であること。といった点について、考慮された 形での評価が必要ではないかということです。あとは、PCM、PDMをやる上で必要 なことを列記、整理しております。  11頁の(3)目標設定の観点からです。ここは少し新しい概念になるのですが、我が 国が水道分野の国際協力を戦略的かつ効率的に実施していくと、どの分野に重点化する のか、どの支援を次の段階にするのか、判断の拠り所になる目標があればいいという話 です。これらの設定については、先に示した技術協力の観点の中でどこまでやるか、こ ういったレベルまでと決めるのが適当ではないかという話です。いま具体的に数字で決 まっているものを挙げると、MDGsにある2015年までの水にアクセスできない人口 の半減や、3年前に出していただいた日本水協力イニシアティブで5年間で約1,000人 の人材育成を行う、2004年に厚生労働省が取りまとめた「水道ビジョン」も、人を600 人受け入れるとか、400人送り込むという話です。こういったものぐらいしかなく、特 にMDGsの目標については全世界的な目標でもあり、我が国が重点化すべき対象国、 アジアに対してどの程度やればいいのかなどについて考えておく必要があるのではない かということです。  もちろん、重点課題への積極的対応に関して、政府開発援助大綱や政府開発援助に関 する中期政策などの枠内で動くことを前提に、水質の改善、無収水対策について開発途 上国が達成すべき目標、我々としてここまでやりたい、ここまでやるべきだというもの について考えるべきだという話です。  さらにハード面とソフト面、維持管理の重点化に関しても、資金配分、案件配分につ いて目標を設定することを意識しながら援助をしていく必要があるのではないかという 話です。こういった目標値を作れば、評価についても応用が可能で、検討の意義は大き いのではないかということです。  4.「総合援助手法について」です。いままで縦糸ということで、それぞれ各主体がや っていく方向性について書きましたが、次はそれを横でどうつないでいくかについて、 どういった連携があるか、考えられるパターンを整理しております。  (1)多様な形態による国際協力の展開ということで、12頁の上に5つほど○があり ます。組織力向上、経営改善等を目標として掲げた政策支援型の協力。水道の規模に応 じて住民参加も取り入れた適切な内容の協力との連携。保健衛生・地域開発等の他セク ターによる協力との連携。地方自治体、NGO等の自発的協力主体による協力。官民の 連携の5つを挙げております。それぞれについて考察を書いております。(1)特に民間活 用といった現地企業の活用を視野に入れ、当該企業の人材を活用しつつ、持続発展的な 水道事業の経営に必要とされる新規の人材育成のニーズに対応するサポート体制の構築。 具体的には、現地の水道事業体を活用して、さらに別の水道事業体を指導していくため の事業援助といった、現地企業の人材との連携の話です。  (2)水道の規模に応じて住民参加も取り入れた適切な内容の協力との連携。これは地方 農村部、都市近郊の小規模な事業には、住民参加や適正技術が大事だという話をしてお ります。そういったコミュニティとの連携が大事ではないかということで挙げておりま す。  (3)保健衛生・地域開発等の他セクターによる協力との連携です。14頁になります。水 供給衛生協調会議(WSSCC)という団体が、村落の衛生問題やそういった所への普 及、啓発活動をやっていますので、そういった所と情報交換をするとか、我が国のO& Mネットワークの活動と連携するとか、世界保健機関との連携などを考えていきながら 援助をしていく必要があるのではないかということです。  (4)地方自治体、大学、NGO等の自発的協力主体による協力です。NGOなどの特質、 組織は小さくて脆弱ですが現地に入りこめるとか、適正な技術のノウハウを持っている ということから、連携していく価値のある主体であるということを書いています。  (5)官民の連携です。こちらについてはなかなか難しいところもあるのですが、15頁で 我が国にもいくつか水道業務実施会社がありますが、そういったもののノウハウを将来 的には活用して、それぞれの水道事業体と実施会社のメリットをお互いに活かし合った 援助をやっていけるのではないかということでまとめております。  (2)総合援助手法の実施に向けてです。いままでの検討を踏まえたWGの最後のま とめになります。これは議論を総括したものです。総合援助手法とは何かという話をす るときに、「施設整備の援助を実施する際に、その後の維持管理に係る事項まで十分に配 慮して組み込んだものにするなど、様々なスキームを適切に、しかも効率的、効果的に 組み合わせ、援助をより計画的、戦略的に実施する」と、キーワードを盛り込んでこう いった定義としました。そういう援助に対して、中心とする援助の主軸、援助のプログ ラム化、目標設定という3つの観点から在り方を示すと次のとおりとなります。  16頁です。(1)援助の主軸については、いままで申し上げたように、アジア近隣諸国の 都市水道を援助の対象として重視することが適当である。厚生労働省として、これまで パイプ給水、都市水道に対する援助を行ってきました。村落給水という話もあるのです が、厚生労働省としては、アジア近隣諸国の都市水道を中心に置くべきではないかとい うことで整理しました。そうは言いつつも、現在要請は増加傾向にあり、アフリカ地域 の援助や村落給水にかかる援助についても、我が国のODA大綱に則しつつ厚生労働省 のやれる範囲で適切に対処していくこととしております。  (2)援助のプログラム化です。今までいろいろ議論があって、最後にここまで行き着い たわけですが、読み上げます。先に述べた総合援助手法の定義にも示されているように、 今日我が国の水道分野の国際協力においては、施設整備と当該施設に応じた維持管理の 手当、援助における計画性や戦略性が求められており、これらの全てが適切に関連し合 うことで、開発途上国における持続発展が可能な水道の普及が効率的に行われることが 期待できる。そのためには、施設整備に対する援助や維持管理に対する援助を従来のよ うに個別に扱うのではなく、様々な援助主体の参画の下、計画的、戦略的なプログラム として相互に関連付けることが必要である。この総合援助手法をイメージ化すると別紙 のとおり、こちらは18頁にありますが、こういったイメージを整理しました。各スキ ームの連携が効率的に図られるよう計画段階の情報交換を十分に行うこと等を通じて、 中期的な観点での取組体制を確立することが重要である。  一般的に、我が国のODAでは、最初に開発調査によって援助対象国のマスタープラ ンが作成され、無償資金協力、技術協力、有償資金協力など、援助のためのスキームの 方向付けがなされている。総合援助手法では、このマスタープランに代表される援助の 全体像を長期的な視点で描き、目的の達成に向けて様々なスキームを位置付ける努力が 必要だと考えられる。  ここで位置付けるスキームとしては、無償資金協力または有償資金協力による水道施 設整備(この中にはパッケージ化された小規模で多数の給水施設なども入れる)があり、 維持管理に関しては今後の充実が期待される現地側で維持管理ができるようにする様々 なプロジェクト、従来の水道事業体のノウハウに加え、大学等の機関、O&Mネットワ ーク等のノウハウを移転するプロジェクトなどが想定されます。さらには、被援助国側 における一定の体制整備(水道料金制度、住民の組織化など)こういったものを前提と した援助、現地の青年海外協力隊やシニアボランティアを活用した援助、現地の優秀な 水道事業体など、現地企業の人材を活用しつつ、持続発展的な水道事業の経営に必要と される新規の人材育成のニーズに対応するサポート体制の構築に資する援助等が考えら れる。加えて、水道施設の整備には多くの資金が必要とされ、このような資金の全てを 我が国のODAによって手当することは困難である。このような現状に対応するために も、ODAが民間資金の呼び水となるよう、援助とビジネスがうまく役割分担できた官 民連携スキームについて、援助のプログラムに含めることが望ましい。その際、民間企 業の立場に立てば、当該企業が援助プログラムへ参画する際に負うであろうリスクにつ いても明らかにしていくことが求められる。このようなリスクの記述については、今後 の開発調査等に求められる課題と言えよう。このようにまとめました。  (3)目標設定と評価の在り方です。こちらについても、我が国の政府開発援助大綱や政 府開発援助に関する中期政策等とも調和を図りつつ、例えば5年後、10年後に援助対象 国の水道をどのようにするのかという長期プログラムとしての目標を明確に設定し、日 本の協力としてどこまで責任を持って関与するのか、我が国の戦略を決めていくことが 重要である。また、目標設定に当たっては、MDGsの達成に向けた世界的な取組との 調和についても十分に配慮しておかねばならない。  具体的には開発途上国の水道における水質の改善、無収水対策等について、当該開発 途上国が達成すべき目標、我が国としてここまで実施したい、あるいは実施すべきとす る目標の設定について検討すべきである。さらに、ハード面、ソフト面の維持管理に対 する重点化に関しても、資金配分、案件採択配分などに関する目標を設定することなど が考えられる。併せて課題に対する具体的な対応について、様々なスキームを組み合わ せた優先順位などのアクションプランを我が国の方針として明確に打ち出し、推進して いく姿勢も必要であろう。さらに、これらの総合的な援助の妥当性、有効性を評価する 手法についても準備しておくことが必要であり、また、援助の戦略性や計画性、事業間 の連携の有効性等を明らかにできる評価指標、評価方法についても検討する必要がある。 このように整理しました。  以上で述べた総合援助手法については、まだ確立しそうもないということで、最近の ODAの方向性も踏まえ、厚生労働省として考えられる望ましい援助のやり方について 情報を発信しつつ、施設整備、維持管理、官民連携事業の評価と、この報告書のまとめ た観点から関係省庁を含めた関係者間で研究を共有するなり検討を深めていくことが適 当であるということで、報告書をまとめております。  加えて、2月22日に、ワークショップをするという話もあったのですが、参考事例 の発表をWGが終わったあとに皆さんのご協力を得ながら開催しました。その概要につ いては20頁に書いてあります。「参考」として、「総合援助手法検討WG検討発表会に ついて」ということで書いてあります。  21頁にプログラムがあります。どういった方にご発表いただいたかですが、座長を務 めておられる国包会員から「総合援助手法について」ということで、この検討会の趣旨、 精神をお話していただき、カンボジアに対する北九州市水道局の取組について当該水道 事業体の木山様にお話いただいております。次に、水供給のODAプロジェクトの評価 について山田会員にご発表いただきました。無収水対策で非常な成功を収めたケニアの メルー市の無収水率低減対策について、JICA専門家として赴任された吉竹様。水と 衛生分野のODAについて、専門会員である外務省の西村様にご発表いただき、最後に 意見交換を踏まえて議論をいたしました。本WGについては以上です。 ○眞柄座長 ありがとうございました。それでは、このWGを取りまとめてくださった 国包会員からコメントをいただきたいと思います。 ○国包会員 リストにも出ておりますが、大勢の方にいろいろと貴重なご意見、ご協力 をいただきました。数年前に当国際課からJICWELSへの、委託事業ということで 水道分野のODAの在り方についての検討が実施されており、私はそのときに深く関わ ったのですが、そのときの報告書が出ております。かなりの部分はそれをベースに検討 を進めました。数年のことではありますが、だいぶ状況も変わってきておりますし、考 え方も変えなければいけないところも出てきておりますので、そういったことについて は極力議論もしながら、現時点でいちばん妥当だと思われる内容のものにまとめ上げま した。  いま日置専門官から詳しい説明がありましたので、内容については繰り返しませんが、 あえて一言要約すれば、今後は評価もより適切に行いながら、柔軟に、計画的、戦略的 に援助を実施していくべきだということです。ただ、いろいろ制約条件や外部条件があ る中でどれだけ効果的にやれるかに関しては、今後も引き続いて検討する必要があろう かと思います。もう少し具体的に申し上げますと、例えばMDGsや日本国としての援 助大綱等基本方針や関連の国際公約がある中で、水道分野でどこまでそれに沿った形で 頑張っていけるのかというあたりは、先ほどの人材のことなども絡んできますし、当然 予算のことも絡んできますので、また個々に具体的に議論しながら進めていく必要があ ろうかと思います。  前後しますが、これまでは、どちらかというと物をつくればいいのだということにな りがちだったのですが、むしろ今回はO&Mや維持管理といったことをより重要視した、 それを含めたものが総合援助手法の言葉の由来でもありますが、そういったやり方の援 助を通じて持続性や自立発展性を高めていくことに力点を置いております。  今後の課題については特に何も書いていないので、若干気になったのですが、先ほど 申し上げたように、きちんと目標設定をした上でそれに沿った援助ということにしてお ります。その目標たるやもう少し踏み込んでどうなのかについては、大いに議論になる だろうと思います。課題と言うのはおかしいかもしれませんが、現実的には目標によっ てずいぶん違ってくるだろうと思いますので、これは今日も含めていろいろご議論、ご 意見をいただければありがたいと思います。 ○眞柄座長 ありがとうございました。山田会員、お願いします。 ○山田会員 私は細かい所なのですが、外国にいて原稿を送っていただいて見落とした のですが、13頁の(2)に「NGOや住民」とあって、14頁の(4)のタイトルに「大学、N GO等」と書いてあるのです。たぶん違う意味だと思います。つまり、現地の人たちの NGOと日本のNGOを区別して書かないと意味がわかりにくいのではないか。  もう1つ、それに関して言えば、いまNGOよりNPOで、現地のNGOは実質は極 めてNPOです。法律的なNPOではありませんが、会社になる直前みたいなものです から、それを育てることも大事だと思います。ですから、NPOという言葉との関係は JICAやJBICで定義を決めているのかもしれませんが、何もなければNGO(N POとする)とか、NPOという言葉を入れていただきたいと思います。それだけの細 かい話です。 ○日置専門官 わかりました。 ○北脇会員 私のほうで強調したい点としては、16頁の援助のプログラム化です。水道、 特に7割ぐらいの人口が村落部にいるような所では、なかなか1つのプロジェクトとし てカバーし切れない。プログラムでなければいろいろなスキームを動員して、プログラ ムでなければなかなかいい成果が得られない、ということが1つ。  それから、6頁の上から4行から5行目にかけて「民間活力の導入も可能な新たなO DAのスキームの構築」というあたりもポイントだと思います。先ほどのプログラム化 も官側だけではなく、民間も含めたプログラム化ということで、いろいろなスキームを 組み合わせ、また新たなスキームを提案することが大事かと思います。つまり、公益性 があれば民間のほうが、例えばプロポーザルを出して通ればある程度の収益性のあるよ うなプロジェクトでも官側が応援できるスキームを作ってやらないと海外の水会社など に対応できない。この辺の官民の節度ある連携。それからプロポーザル制等によって民 業を応援できるようなシステムなども真剣に考える必要があるのではないかと思いまし た。 ○山根会員 私は産業界の立場からコメントをさせていただきます。総合援助手法とい うのは一口で言えば、先ほど座長からありましたようにO&Mを意識してということだ と思います。その場合の官民連携と言っても、技術協力と同じような問題を引きずって いるというのがまず1点です。  ただ総合援助手法というのは単なる技術援助と違って、そういうことをやる民間の会 社が育っているかどうか。それはまだまだ育っていないという状況ですので、一口に官 民連携と言っても、今後具体的にどうやるかというのは、この段階では全くそこまで突 っ込むことができなかった。ちょっと残念なのですが、いずれにしても現実が厳しいも のですから、今後それをますます時間をかけて試行錯誤を繰り返しながらやっていかな ければいけない問題だと思います。 ○眞柄座長 山本会員がおられるからあれですが、援助実績の後ろのほうに、有償資金 の実績表があって、59頁に昆明に209億入っています。最近、インターナショナルな 雑誌を見ていたら、昆明が、フランスと昆明市と香港の会社と共同で拡張事業を始める と書いてありました。たぶん、そのときに昆明市の出し分は円借のアセットがゲージに なっているのではないかと感じて、中国の案件ですから、いろいろ難しいのはあるので しょうが、これだけ円借を出して、そこで整備されたアセットがいい形なのかもしれま せんが、ほかの国が活用しているのです。その辺は総合援助手法の目標の設定あたりや、 援助のプログラム化ということで、例えば昆明にJBICを出すのはいいのですが、そ の資金を使って昆明がその次にどのように進んでいっているか、あるいはどう進ませる かというプログラムみたいなものを作るのにまで関与していかないと、有償だと言って も低利な融資ですから、やはり援助で、それをどう使うかは、今後考えていかなければ いけないし、幸いJBICもJICAと一緒になるとかならないとかという話があるの で、その辺は援助のプログラム化と総合的にどう進めるか、国策としてどう進めるかと いうのは、1つのポイントかなと思いました。  昨日の新聞で、バンコクで丸紅とリベンディが西岸に入るということですから、そう やって見ると、日本がバンコクでやったのを、どのように使って、誰がやっているとい うのが、最近特に目に見えてきたから、もったいないなということがあるかもしれませ ん。  これはこれでまとまったということにさせていただいて、最後ですが、報告書のほう をご紹介いただいて、これについてはほかの方々からも改めてご意見をいただくことに したいと思います。 ○日置専門官 本題の「国際協力事業評価検討会(水道分野)報告書(案)」の説明をい たします。こちらについては、参考2「国際協力事業評価検討会の設置について」があ り、この検討会の設置の趣旨が書いてあって、これに沿った形で報告書を作るというこ とでまとめたものです。  ポイントとしてはこの検討会は平成15年のODA大綱の改正を受けて、厚生労働省 として今まで行ってきた水道分野の国際協力事業の内容を一旦振り返り、今後あるべき 方向性を示すための議論を行おうというのが、この検討会の発足した趣旨で、その中で 優先的に検討する課題として、人材確保・育成WG、総合援助手法の検討WGを立ち上 げることが、一昨年の10月に決められました。それぞれ2つのテーマ、WGの報告を いただきました。これはそれらが乗る土台として考えていただければと思います。  @に目次があり、全体の構成を書いています。「はじめに」で検討の趣旨なり、いま申 し上げたようなことが書いてあります。続いて2の「水道分野の国際協力事業の整理」 で、厚生労働省としてお金を用意してやっている事業と、そうではない事業の2つを分 けて整理しました。  これらの課題の中で、優先課題はこれではないかということで3に「優先課題の選定」 があり、それぞれ優先課題として選定された人材確保・育成のテーマ、総合手法のテー マということで盛り込んでいます。最後にAの6に「今後の水道分野の国際協力の在り 方について」ということで、全体をまとめたポリシーペーパーということで整理しまし た。  まず最初に、「水道分野の国際協力事業の整理」から説明いたします。これについては 3頁から書いています。2は「水道分野の国際協力事業の実績の整理」です。厚生労働 省が実施する水道分野国際協力は、厚生労働省独自で予算措置を講じているものと、特 段の予算措置を講じることなく通常の行政事務の範囲で実施しているものとに大きく分 けられます。前者の事業については、社団法人の国際厚生事業団委託事業、WHOの水 道水質ガイドライン改定の作業への参画があります。後者に関しては、外務省・JIC Aが実施するODAへの協力などがあります。ここではこれまでの厚生労働省が実施し てきた国際協力事業について、過去の実績を整理し、それぞれの事業の今後の在り方に ついて検討することとしました。  なお、ここで整理の対象となる過去の事業については、実績の確定している平成16 年度より遡って、便宜的に10年とし、事業の詳細については参考資料がありますので、 そこに案件や具体の概要を整理しています。  まず、厚生労働省で予算措置を講じている事業です。東南アジア諸国等福祉医療協力 事業はJICWELSへの委託事業で、企画物、調査物、研修の3つがあります。企画 物については(@)水道環境事業検討・現地調査事業です。こちらについては開発途上 国への水道分野の援助について水道部会という会議を組織して、その中で今後の国際協 力のニーズなどを、現地調査も含めながら検討していくものです。  調査物については(A)の水道環境プロジェクト等形成調査事業です。こちらは今後 の無償資金協力の種になるような案件を見つけに行く調査で、JICWELSの会員企 業から提案を受けて優先順位を決め、優先順位の高いものから順番に出発し、調査をま とめていくものです。調査した結果については、よろしければ無償資金協力なりにつな げてくださいということで、外務省なりに報告していくというものです。  研修物は(B)の水道管理行政研修です。東南アジアの水道事業体の幹部を集めてい ろいろな研修を行っていく事業です。  5頁にその全体の事業の過去10年間にやったものがあります。まず企画物。水道環 境事業検討・現地調査事業では(1)から(7)まであり、それぞれ年度と実施項目が書いてあ ります。水道環境プロジェクト等形成調査事業は、調査の報告をした案件数を書いてあ ります。いちばん下の水道管理行政研修事業は実施年度が書いてあります。平成16年 度からの3年間ですが、これについてはJICAに予算を移して、JICAからの委託 事業という形で実施していただくということで、実質上、厚生労働省の事業の範疇外に あるということですが、今までの経緯を踏まえてこちらに整理しております。  6頁の今後の在り方についてです。企画物については、平成16年度で今までやって きたものがすべて終了することもあって、この報告書などの提言を受けて、今後やって いくことを決めていくべきではないかということで書いてあります。  水道環境プロジェクト等形成調査事業は、案件の発掘の調査ですが、実績表が7頁に 書いてあります。地域と年度が書いてあり、採択という欄が上と下にありますが、これ はその後調査が何らかの形でODAに結び付いたものです。これが多ければ多いほど調 査の意義が高いということになるのですが、最近はかなり減ってきているという状況で す。平成7年、8年、9年は5、4、3と採択されたのですが、最近は隔年で1件など となっています。ODA案件については、その国やその分野で優先順位などが出てきま すので、調査をしたからといってすぐに結果が現れてくるわけではなく、調査を行う対 象、今後期待するODAの内容が重要で、これからは無償ばかりを狙った調査だとあま りマッチしないので、方向性を変える必要があるのではないかということを書いていま す。  研修物の(B)水道管理行政研修事業ですが、これについてはJICAの事業という ことになり、来年度まではやれますが、平成19年度以降はその保証はないということ になっています。しかしながら、JICWELSがやってきた事業は、例えばWHOと も関係が深いとか、O&Mネットワークとも関係が深いといったJICAにはないコネ クションなどがあるので、そういうものを最大限活用した形で、なくなるにしても継続 するにしても、そういうものの良さを継承した形でやっていただきたいということを、 ここにまとめました。  続いて世界保健機関への拠出金です。こちらについてはWHOのWSH(Water Sanitation and Health)プログラムの中に飲料水水質ガイドライン見直し作業をやって おり、そこ向けに10万ドルを拠出してきたということです。こういう事業は大事なの で続けていくということです。今まではお金をあげてそれまでだったのですが、今後は、 そのお金をコントロールするための何らかの方策なりを考えていくべきではないかとい うことです。実は今年それがなくなりかけた経緯があって、人がいればちゃんとコント ロールしていけるので、こういった水質に対する我が国の取組は続けていけるのではな いかということです。  次に水供給衛生協調会議拠出金ですが、WSSCCという組織の行うO&Mネットワ ーク運営の活動に対して拠出するお金です。これについてもO&Mネットワークという のは総合援助手法でも申し上げたように、非常に重要な取組ですので、引き続き続けら れるようにやっていこうではないか。これは水道課のほうでいろいろ仕切っていただい ている話ですので、いろいろとやっていただくことが必要だと考えております。  WSSCCについては、最近水道に比べて対策が遅れている衛生分野の活動にシフト したいという情報もあって、O&Mネットワークを実施する受け皿を早急に整備する必 要があるという状況がありますが、この活動自体非常にいいものですので引き続き続け ていくことが大事だという話です。  10頁の研究事業です。これについてWHOの飲料水水質ガイドラインの改訂作業に資 する厚生労働科学研究、ヒ素の研究などをやっていますので、続けていく必要がありま す。  水道ビジョンについては厚生労働省の健康局で取りまとめられておりますので、それ を踏まえた対応も必要ということで、12頁に書いています。  続きまして厚生労働省において予算措置を講じていない事業です。これは基本的に外 務省・JICAの実施するODAの協力等とJBIC対する協力です。13頁にはそれぞ れの事業の内容を書いています。14頁には今後の事業の在り方というか、厚生労働省の 関わり方。我が国の水道分野の国際協力は、過去10年間に外務省・JICAに対して 厚生労働省が調べた限りで、いま219件の無償資金協力、34件の開発調査、5件の地 方自治体が実施する草の根技術協力事業の採択等に関与してきました。あと延べ56名 の長期派遣専門家、182名の短期派遣専門家を送り出してきたという実績があります。  特に水道分野の国際協力に関しては、我が国の水道事業体又は関係団体の職員が専門 家として派遣されるほか、これらの機関が研修の受入れ先となるなど、これらの機関及 びその職員の協力が非常に大きいといえます。水道事業体の中には専門家派遣、研修員 の受入れ体制を組織的に整備している所もあって、継続的な国際協力の貢献として非常 に高く評価されるべきと考えています。  過去10年間の外務省・JICAの実施する国際協力案件の傾向については、16頁以 降に書いてありますが、表2.3から表2.7にとりまとめています。無償資金協力につ いてはアフリカ、中東が中心で、専門家派遣実績は東南アジアに集中しており、開発調 査については東南アジア、アフリカという形で、援助の軸が東南アジアとアフリカに分 かれているように考えられます。  開発調査に関しては、被援助国のあるべき将来像をマスタープランとして描き、我が 国ODAの方向性を示す重要な事業で、昨今、開発途上国への援助において民間資金活 用の必要性も唱えられていますが、このような背景を受け、開発調査において民間資金 を導入するスキームを提案するときは、その導入の際のリスク等についても検討される ことが必要であるということです。  他方、専門家の要請内容に関しては、最近、単なる技術移転を求めるのに加え、政策 アドバイザー的な内容を求めるものが出てきています。英語以外の語学の必要性を含め た語学能力や技術の専門性の観点から人材確保における新たな課題が生じている。この 課題については、人材確保・育成WGでも検討したとおりです。  また、これまで厚生労働省の水道分野国際協力は、東南アジア地域の都市水道を中心 に実施してきましたが、近年アフリカ地域を中心にパイプ給水によらない井戸による村 落給水案件の要請が増加してきており、我が国の水道事業体が都市水道の経営で培って きたノウハウを活かし切れない状況も生じてきているということです。  外務省・JICAが実施する国際協力案件は、我が国の援助を期待する開発途上国の 要請に基づくものでありますから、こういった要請内容の変化は我々が受け入れる前提 にならなければいけないと考えています。このため、今後、厚生労働省としてこのよう な状況にどう対応するのか、技術協力の観点、専門家として派遣する人材の確保・育成 の観点から、その在り方について検討する必要があると考えている次第です。  18頁は、JBICの実施するODAへの協力です。こちらについては19頁の表のと おりで全体で92件あります。その中の48件がアジアで実施されています。半分が東南 アジア、東アジアで実施されているということです。一方、厚生労働省としてJBIC の事業に関わるというのは、最近調べた限りでは2、3の作業監理委員会への専門家の 推薦しかなく、JICAとJBICでは全然事業が違うため、一概に比較はできないの ですが、今後厚生労働省としても関与を深めていく必要があるのではないかということ でまとめてあります。  以上が今まで10年間厚生労働省がやってきた国際協力をレビューして、その中から 優先課題の選定ということで、今まで専門家を派遣してきましたが、要請の内容、専門 家に求められる中身が変化してきたものに対応した検討がなされていない。加えて健康 局でまとめられた水道ビジョンの中でも、そういう人材の確保が必要だという話もあり ますので、「人材確保・育成」というテーマを1つ挙げましょうということで課題に設定 しています。  他方で我が国の水道分野の援助について、過去からの経緯を振り返ってみると、ここ でも施設は整備されたが、その後うまく使われていないという事実もある。加えて予算 も減ってきて、一層効率的なODAをやらなければならないということで連携した検討 が必要ではないかというニーズがあるということでまとめました。  ここで我が国の水道事業の国際援助の在り方については、JICWELSの水道事業 検討・現地調査の成果であるODA方針検討会報告書が拠り所だったのですが、それも 見直す必要があるのではないか、総合援助手法ということで1つWGを開いて検討を深 めていこうということで優先課題を2つ選定したと書きました。 ○眞柄座長 4と5は先ほどしましたので、飛ばして、最後の6をお願いします。 ○日置専門官 44頁です。先ほどWG1、WG2の人材確保と総合援助WGをやり、そ れら全体を含めてポリシーペーパーということでまとめたものが次の表です。これまで 厚生労働省における水道分野の国際協力事業の実績と整理、優先課題としての人材確 保・育成に係るテーマ及び総合援助手法に関するテーマの検討などを踏まえ、厚生労働 省が実施する水道分野の国際協力事業は次のとおり実施することが適当であるというこ とで、1つ目に都市水道に対する援助の重要性を書いています。図はタイの事例ですが、 タイに関しては厚生労働省が知る限り、1977年から2000年度までの間、長期専門家は 41名、86名を省庁推薦として送り出してきました。この期間はプロジェクトの水道訓 練技術協力プロジェクトのフェーズ2を中心に協力が行われ、無収水対策を含め、全体 的な技術移転が行われたということです。  そのときのタイのMWA(王国首都圏水道公社)の有収率と区域面積、給水件数、有 収率などを示したのが右側のグラフです。  図6.1は専門家の派遣を始めたころはどんどん有収率が減ってきましたが、専門家の 投入が終わるころにはだんだん上向きになってきて、2004年時点では7割まで上がって おり、これについては我が国が技術移転を頑張ってやった成果だと解釈できるのではな いかということです。  他方、給水件数の関係で見ますと、1990年から2004年までの15年、前半は給水件 数が伸びて、給水区域はさほど伸びておらず、既存の区域の中での給水の増加が見られ ます。  他方、後半に行きますと、給水区域面積が増えているということで新設の施設が多く なってきているということもあるので、ひょっとしたらその意味で有収率が上がってき ているのではないか。施設が新しければ漏水量も少ないということもありますので、そ ういう可能性はあるのですが、もしそうだとすれば、新設のない所についてはどうなっ ているかわからない。そこの漏水なり施設更新が問題になってくる。そういうところで も我が国の援助なりサポートが必要になるのではないか、そういう可能性はあるという ことでまとめたものです。  そうは言いつつも、この間に給水件数が66万件増加しています。これについては単 純に4掛けるだけでも240万とか数百万人ベースで水道の恩恵を受ける人が増えたこと になります。そういう都市水道に対する援助の収益効果の大きさがこれからもわかるか と思います。 ○眞柄座長 1999年と2千何年かに円借がかなり入っているのです。円借の効果は新し い給水区域に入れるために入っているのです。 ○日置専門官 それはぐっと伸びてきたことですね。 ○眞柄座長 そうです。バンコク水道は円借しか使っておらず、よそから金を借りてな いのです。世銀もアジ銀も使ってないのです。 ○日置専門官 わかりました。それは書いておきます。そういうタイの事例があります。  46頁はカンボジアの事例です。これは最近の事例ですが、1999年以降、省庁推薦の 専門家を派遣しております。いまやっているプロジェクトに対してですが、それについ ては専門家の派遣と普及率の関係が46頁の図6.3です。こちらも専門家が普及の向上 に寄与していることがわかると思います。  もう1つは、47頁の衛生水準についてのデータです。これについてはプノンペンに病 院があるのですが、そこに患者が来て、その中に下痢の人が何人いるかというデータで す。実際に下痢の患者のデータははっきりわからなくてカンボジア全体のデータはある ということでしたので、プノンペン市の人口比の案分で下痢患者を推定して、それに対 してカンボジアのプノンペンの病院の患者数の比をとったということで推測の域を出な いデータではありますが、関係を整理すると図6のようになります。普及率が上がって いくにしたがって下痢の人がどんどん減っており、水が良くなれば水に起因する最も顕 著な下痢みたいな話がなくなってくることが、これでわかるのではないかということで 出しております。  47頁からですが、このように飲料水供給分野における技術協力とその裨益効果を考え た場合、村落給水よりも都市水道への協力ははるかに高いことは明らかである。村落給 水施設の整備で住民の眼病や寄生虫への感染が防げるということはありますが、同様に 都市水道の整備で下痢症をはじめ、コレラ、赤痢などに対する重篤な水系感染を防ぐこ とは可能である。それぞれメリットはあるということです。さらにアジアに限らず、開 発途上国の都市部では人口の流入によって人口増加が激しく、増加する人口に対する水 道水の供給は都市部の水道事業者にとって大きな課題であるということも言えます。  我が国の水道分野のODAの方向性は、地域的にアジア地域から中東・アフリカ地域 へ、案件の内容としては都市水道が村落給水へと変化の兆しが見られますが、都市水道 への援助の重要性、裨益効果の大きさを認識し、厚生労働省としては支援を継続してい く必要があるということです。  また、水道水の供給に当たっては施設のみを整備すればよいのではなく、浄水処理に 係る薬品なども必要である。この薬品については、我が国の贈与としてのODA対象で はなくて、浄水施設が整備されたものの薬品が調達できずに、水道水の適切な供給が行 われないという事例も聞かれます。水道水の供給が滞れば料金収入も滞り、薬品の運転 管理費も一層困難となる。悪循環が程度を増して循環するということになります。こう いった状況を回避し、我が国のODAで整備された水道施設が途上国で十分機能するた めにも、都市水道への援助では、少なくとも運転初期段階に必要とされる薬品について は、何らかの形で手当てしてやらないと駄目なのではないかということを書いています。  続いて村落給水に対する配慮です。村落給水を全く無視するわけではなく、都市水道 の援助の重要性は先ほど述べたとおりですが、村落給水への配慮も必要です。村落給水 は基本的には井戸が水源ですが、井戸自体は従来汚染された溜まり水等の汚い水を使っ ていた住民にとっては、非常に衛生的な水が確保できるという利点はあります。しかし ながら、水の中にはヒ素、フッ素、硝酸性窒素といった体に悪いものも入っている可能 性もありますので、使用開始前の水質検査に加え、定期的に水質の安全性を確認するた めの取組が必要なのではないかという話です。  併せて村落給水事業は資金力のない住民に対して実施されます。整備された井戸につ いては、その後の水質管理にまで配慮が行き届かない場合も多く見られるので、地下水 は経年的に変化するという話もありますから、周囲の環境の変化を受けて汚染されるこ との重要性を認識するという住民啓発活動が必要ではないかということです。  また、中小規模の水道整備プロジェクトではその持続可能性に対する配慮が特に必要 で、自立経営、適正技術及び住民参加の3つの視点をより明確に意識してプロジェクト 形成を図ることが重要で、水道整備プロジェクトを評価する際にも、これらの項目に重 点を置くことが必要であるという話です。  6.3のモニタリングの重要性です。平成15年に改定された我が国のODA大綱は、 戦略性、機動性、透明性、効率性などが書かれていますが、これら我が国のODAにつ いて、国民に対する説明責任を果たす観点からも非常に重要な事項であります。その一 方で、これまで水道分野に限らず、多くの活動に対し、ODA予算を投入し、施設整備 や技術援助を行ってきましたが、どれだけちゃんと動いているのかはなかなか把握され ていません。どれだけの人口が施設の恩恵を受けるようになったかという点についても 不明であるということも挙げられています。  水道に関してはこれから開発援助国においてもコレラ、赤痢などの水系感染症の患者 数などを指標とするデータ収集・蓄積などをやっていく必要があるのではないかという 話です。こういった体制を構築できれば水道の普及や適切な運転維持管理の技術移転に よって、どれだけ衛生水準が改善されたか、そういった指標を用いた評価が可能となり ます。先ほど無理やりにですがカンボジアのプノンペンでやった評価がもっと適切にや れるのではないかという話です。  また水質基準に関しても、WHOの飲料水水質ガイドラインを参考に、それぞれ国は やっているわけですが、その基準作成に必要なデータすら存在しないものもありますの で、技術協力の成果による水質の改善状況の把握も行えないという問題があります。そ ういった水質基準の作成に係る技術移転についても、今後のデータの蓄積を見ながら取 組を図っていくべきではないかということでまとめています。  あとは水文学的なデータについてもきっちり取っていけば、水道の整備をすることに よって収奪的な表流水や地下水の開発を招くことが避けられる。バランスのとれた持続 可能な開発の実現が可能となることが期待されます。  6.4の総合的な援助の必要性です。これについては総合援助手法の検討でまとめたと おりです。様々なスキームを適切に効率的に組み合わせることによって、「援助をより計 画的、戦略的に実施する手法」として国際協力事業を実施していくことが適当であると いうことです。  6.5についても人材確保・育成の必要性ということで、別添1のWGの報告書の内 容をここに書いています。WGの報告書は、水道事業体の官側の立場から書いたもので、 50頁にありますが、民間企業の方々も国際協力にはある一定の役割を担って頑張ってい ただいており、そういった方々の活用も今後考えていかなければいけないのではないか ということで書きました。端折って、説明が不十分なところもあったかと思いますが、 報告書は以上です。 ○眞柄座長 それでは、一応この検討会の報告書ということですので、皆さんから一言 ずつご意見をいただきたいと思います。 ○安達専門会員 基本的には、日置専門官もかなりご苦労されて非常によくまとめてい ただいたと思います。特に総合援助手法でも述べられていましたが、私どもが今いちば ん大切にしていこうというこの検討会のいちばんの趣旨は、質をどう良くするかという ことに尽きるのだろうと思います。様々な援助の質を上げるためにアプローチの問題と 人材の問題をどのように変えていくのかということで、基本的な考え方はポジティブで ある。今までの協力の成果は成果として評価されるものがあって、日本の技術もあると いうこと。それをどうやって、さらに質を高めて戦略的に使っていくか、投入していく かといことだと思います。  その面では総合的な取組、我々のほうでもプログラム化というところで。今後も資金 協力と技術協力の一体化は、今回のODA改革のいちばんの目玉で、それによって質が 高められるようにということですので、援助の量が限られている中で、効率的にやって いくためには戦略性が必要です。戦略的に行っていくためには、1つ1つの投入を大切 にしましょうということだと思いますので、その辺では全体の基調としては、非常にう まくまとめていただいたかと思います。  結論の部分で、都市水道に関する援助の重要性は私も非常に痛感しており、東南アジ アに対する日本の今までの協力の実績は非常に高いものがあると思います。また最近、 エジプトの人材育成センターの状況を聞いているのですが、かなり独自で研修のプログ ラムを組んでおり、かなり活発にやっています。有料ではあるのですが、資金負担をし てでも水道局の人材育成の構想を持ってやっています。タイでもうまく活かされていま す。  ベトナムに関しても、ベトナム南部のセンターもプロジェクト協力が終わったあとも 自分たちで……をしているということで、それぞれがかなり根差しています。そういう 基本的な財産を使いながら、今後は資金協力の中でインパクトの大きいものをやりなが ら、きちんとサステナビリティを確保するために、具体的に目に見える成果を出してい くということかと思いますので、都市水道の重要性、インパクトの大きさというのは大 切にする必要があるかと思います。  タイの事例とか、カンボジアも下痢症の数字がどのぐらいか……かもしれませんが、 基本的に貢献していることは間違いないと思いますので、そこはきちんとアピールして いっていいとは思います。 ○西村専門会員 私も総合援助手法の検討会に参画させていただきました。全体がうま くまとめられており、水道分野に限らず、いろいろな分野に共通な話題がたくさんある ので、いろいろな所で参考にさせていただけるなという感じがします。  総合援助手法の議論では、援助の持続性であるとか、きめ細かなスキーム連携といっ たところがメインだったと思いますが、これらは他の分野にも共通の話で、昨年策定さ れたODAの中期政策でも、重点が置かれているのは、現地機能の強化です。東京では こういうきめ細かいことまで全てやっていけるわけではないので、現地タスクフォース で、JICAの現地オフィス、JBICの現地オフィスと大使館とがしっかりと連携を しながらスキーム間連携によるプログラム化などを目指していこうとしています。現地 機能の強化に向けて、今回まとめられた報告書の内容が、水道分野の専門家も入った現 地タスクフォースのサブグループなどをうまく活かして反映していけると、よりきめ細 かい効率的な援助になっていくのではないかという感じがいたしました。 ○金近会員 私もこの報告はよくまとまっていると思います。若干意見として言わせて いただくならば、最後の人材確保、あるいは育成の必要性のところですが、いま2007 年問題ということが言われていますが、水道事業体自体も技術力の確保、人材の確保自 体が団塊の世代を卒業して、新しい人をあまり採用してきておりませんから、それ自体 が大きな課題になっています。  その中で国際協力で我々も人材を多く出していますが、大体が40代後半から50代の 団塊の世代の人で、あと10年もすれば、みんないなくなってしまうのです。我々の水 道事業体そのものも技術力がどう確保できるかという問題を抱えていると思います。そ の中で海外に人を派遣する余裕がなくなってくるというか、人材がいなくなってくると いうことがあります。将来そこまで余裕が出てくるかどうかです。今は横浜なども国際 協力を非常に熱心にやっていますが、将来は熱心にできるかどうかという心配がありま す。  もう1つは、高齢化社会ですから、60歳はまだみんな元気なのです。折角ノウハウを 蓄えた人材をどれだけキープできるかというのもあって、実際に雇用するには具体的な 仕事がないといけないのですが、国際協力の仕事はいつ入ってくるかわからないし、見 通しがないから、そういう仕事で……というわけにいかないので、それこそメーター点 検とかの仕事で人材を確保しなければいけないということがあります。人材が散逸して しまい、力になってこないだろうと。実際にどういう人間が、どういうノウハウがあっ て、どういうことができるかというのは、今まで雇ってきた事業体の人事部門にそうい う情報が蓄積されているので、それをキープしていく仕組みを、人材バンクを、事業体 自身もそういうOBをこういう観点からキープしていく仕組みを我々も作らなければい けないのかと思います。  もう1つは総合的な援助の必要性です。最初の調査計画から建設、今は維持管理、運 営、料金まで含めた運営を総合的にやっていこうと。それに関わる人材も官民、いろい ろなセクターが人を出し合ってやっていこうと。その指令塔ですが、時間もかかります し、長期にわたるし、いろいろな分野の人を知っていなければいけない。それをまた継 続して責任を持って管理しなければいけない。それを管理する権限もないとなかなか人 を出してくれない。この人がここにふさわしいと思っても、なかなか出してくれないと いう問題もあると思います。そこの仕組みが要るのかと思います。  具体的な例で言うと、ここでカンボジアなどが出てくるのですが、北九州市が熱心に やっておられ、水質の効果があったと言います。水質の専門家は北九州市が自前ででき ないものですから、我々も派遣しているのですがその仕組みについて、私は北九州市の 管理者をよく知っているのですが、北九州市の管理者から「頼むよ、ちょっと出せない から」というのがあって、お互い様だからいいかという感じでやっています。しかし、 事業体の管理者もだんだん厳しい時代になって、議会からやいのやいのと言われる時代 になってくると、なかなか「ああ、いいよ」と言えなくなってくるところがあります。 ですから、そういうコントロールタワーが要るのかなと思います。 ○北脇会員 今回いろいろな新しい提言とか、こういうことをやるべきだという提言が 出たのですが、今後これをどのようにアクションプランを作って、実行のための検討を さらに進めていくかがいちばん問題だと思います。例えば、出てきた提言の中で、いま の体制、いまのスキームでできることと、体制、スキームを変えなければできないこと とかいろいろあるわけです。いまの状態でできることであれば、そのままかなり突っ走 って進めていくことが考えられます。また先ほどの民間との協力で、今後かなりスキー ムを変えたり、検討を重ねなければいけない点もあると思いますので、変える必要があ る点については、新スキームを考える場を作って、ディシジョンメーカーが納得するよ うな持っていき方を裏も表も含めて考える場を作る。この二本立てでできるだけこれが 活用されるような形でお願いできればと思います。 ○国包会員 2点あります。これまでかなりお話が出ている部分と若干重なる部分があ ります。1つは人材の問題です。今日は初めに民間活力の活用、あるいは官民の協力な どの話がありましたが、こと水道事業に関しては官の人材は欠かせないと思います。そ ういう場合に、今回もいろいろ検討されて、今後有効な手当が打たれると思いますが、 まだまだ層は薄いと言わざるを得ないのが現状だと思います。今後、格段に層を厚くで きる見込みがあるかというと、官に限ってはなかなかすぐには望めないのではないかと 思います。そういう中で、どれだけ頑張れるかを考えますと、ネットワークを強固にす るとか、連絡を密にするなどといったことをしっかり継続的にやっていくことが非常に 大事になると思います。  そうなりますと、厚生労働省国際課なり、私ども保健医療科学院、あるいはJICA も含めてということになるかもしれませんが、中央に近い所で頑張っていくしかないと 思いますので、私どもも含めて、そういう方向で何とかやっていきたいと思っています。  もう1点は、報告書の最後にあるモニタリングに関してです。これも先ほどお話があ りましたが、エジプトのカイロの水道のことをいま思い出しております。技術協力を5 年間やって、それが3年か4年ぐらい前に終わりました。私もいろいろ関わっていたの で、いま若干引っ掛かるものがまだあります。  どういうことかと言いますと、一応その成果を収めたので、これで技術協力を打ち切 ろうということにはしたのですが、細かいことですが、薬品とか消耗品の供給、ラボの 活用などの面で安定的に運営ができるかということに関して一抹の不安があります。現 状がどうなっているかわからないのですが、プロジェクトの評価とはまた違い、モニタ リングという言葉が出ていましたので、いま安達会員からいくつかまとめてお話が出ま したが、一旦援助をした所はかなりしつこく後々どうなっているかを見届けるようなこ とをしていかなければいけないのではないかと思います。 ○眞柄座長 ありがとうございました。生まれた子供には育ってもお小遣いをあげなけ ればいけないし、私の故郷の名古屋などでは孫まで面倒を見なければならないというこ とです。 ○村元会員 私は人材の担当だったのですが、総合援助手法というか総合援助という視 点で人材の話は考えていませんでした。具体的に言うと、49頁の6.4の最後になると 思いますが、新しいスキームというか、総合援助の中での人材を含めた体制整備という か、そんなことを考えていかなければいけないだろうと思います。 ○山田会員 時間がない中でおやりになって申し訳ないのですが、6というのは今まで 見たことがありませんでした。いちばん正直に感じたことは、タイとカンポジアの例を 出しておられるのですが、この図の意味するものはものすごく弱いと思います。テーマ が「今後の国際協力の在り方」まで書いてあるのに、事例を出し、私たちが研究レベル で見るときに曖昧なものがいっぱい入っています。これでどう読むのか。1例だけを言 いますと、派遣をこのようにして、有収率が一旦下がって、また上がってきたというと ころの意味づけが十分付いてない。当然この間には中間項として、資金が投じられて、 何が整備されたかとか、必ずしも専門家の派遣だけで上がった効果ではないわけです。 それを一面的にだけ捉えて出すのはいかがなものかと。特に派遣のところですが、普及 率が上がったとか、有収率がこう変わったとかというのが実態ですから、非常に説得力 があります。その辺でもっといい書き方があるのかなと。大都市だけだし、では中小都 市は今後どのように扱われるのか。今まで議論してきた村落給水にあまり我々は関係な いというまとめ方になっているので、その前までのかなり議論してきた制度に比べると、 この部分がやたら目立ちます。これが我々がまとめたということで。図も含めてもう少 し書き方の工夫をして、上と下とで同じ色で、同じように書いてありますが、意味は違 うとか。ギリギリの率も低いところから上がって、また下がってきてというのが推定と しては水道の整備の指導の効果だと思うのですが、別の人が見たら同じはないというこ とになるかもしれません。そうすると、これをあまり大きな図で載せるのではなく、さ さやかに載せて、事例としてこういう例もありましたと。これだけが正面切って走って しまうと、今までの議論が矮小化されるのではないかと思います。 ○眞柄座長 いやいや、そのとおりなので、少し工夫しなければいけないと思います。 ○山根会員 まとめるとこんなことになるのかなとは思います。ただ、最後のまとめで も、「厚生労働省の実施する水道分野の国際協力事業は次のとおりに実施する」と書いて あるのですが、この中には先のほうにまとめてあるように、厚生労働省が直接予算を措 置するもの、そうではないものと、わかりやすく言い換えれば、厚生労働省の影響力が どの程度及ぶかというのは、ものすごく幅があるわけですから、それが及ばない所をど のようにやっていくかというのは今後の課題で、話としてはこういうことなのです。そ こをやっておかないとそれだけの話になってしまうのではないかと心配します。いまの 山田会員の話もその延長線上にあるわけです。 ○山本専門会員 先ほど事務局の日置専門官から話が出ていましたが、JBICとの関 わりという話の中では、この報告書を読んで、実績とか、お金的にはJBICは大きい ことをいろいろやっていると思いますが、JBICという言葉自体はそんなに出てこな い中で、今後自分としても、いまは厚生労働省から派遣されてプロパー職員ではない中 で水道事業を担当しているという形で、今後JBICの中で厚生労働省、皆様との関係 というか、つながりを深めていくというのが1つの大きな役割かなと感じております。  その中で、最初に厚生労働省がやられていた事業の中で自分のほうも審査員としてや っている水道関係プロジェクト等の形成調査事業というのがあると思います。こちらは 基本的には無償資金援助を対象とした案件形成ということですが、折角水道事業に関し ての案件発掘という1つのスキームがある中で、JBICの中でも水道事業だけではな く、コンサルタントをお願いした案件発掘形成というスキームもあります。こちらも厚 生労働省の水道事業の中でやられていることとしては、今後自分だけではなく、各カン トリー・オフィサーにも参加できて、話を聞き、今後の有償資金の中での案件形成に結 び付ける方向で、厚生労働省の中でのスキームを活用できたらと思っています。 ○新田専門会員 まだ報告書にはいろいろご意見があるようですが、国際協力分野の中 での水道分野のやり方について、今回3年間の検討を踏まえてまとめられたということ は、政策ビジョンの中でも政策課題の1つとして国際協力を挙げていて、それを具体的 にどのようにしていくかを示す非常に良い事例になると思いますので、水道関係者にも すごく参考になり、良い報告書になったと思います。  中身で1点コメントを申し上げたいと思います。12頁の水道分野の政策ビジョンで付 け加えています、最後のパラグラフです。WHOで「水安全計画」を提唱して、先進国、 途上国とも世界各国で実施して、水質をちゃんと確保していきましょうという話や、I SOで水道事業の国際規格が策定されました。国際機関の中では水道事業のコアの部分 を示したようなもので、あとは各国で適合した形のガイドラインを作っていくことが、 いま途上国も含めた世界的な取組が叫ばれています。  日本も途上国への国際協力の中で、途上国で水安全計画の適用の……を支援をしたり、 水道事業のガイドラインを作っていくことを支援していく。日本の取組が世界の取組と 合致してやっているということをアピールすることにもなりますし、水安全計画や水道 事業の途上国版のガイドラインを作るということは、総合援助手法で維持管理や事業経 営に重点的に取り組んでいこうということで総合援助手法が今回検討されたと思うので すが、途上国では維持管理などのベースになるものですから、そういう分野に我が国も 貢献していくことは非常に重要なコアの部分かと思いますので、そういう分野へ是非取 り組んでほしいというか、重点的にやっていただきたいと思っています。 ○眞柄座長 ありがとうございました。いま新田専門会員が言われた水安全計画ですが、 日本の厚生労働省だけではできないのです。そういう意味では飲料水の水質ガイドライ ンと同じようにWHOのネットワークを使って水安全計画を作る。そのためのある意味 での拠出金と日本の人材をどう活用するかは、IPCSのエンバーライト・ヘルス・ク ライテリアと同じような意味で非常に重要な役割なのです。WHOのネットワークを使 えばマルチですが、ほかの国々というか、バイで関係を持つ。いい人材でどんどんネッ トワークができてきますので、厚生労働省のいい所は、やはりWHOのネットワークを 使えるということですから、それを積極的に使っていただくことは大事だろうと思いま す。  先ほどカンボジアのプノンペンの話がありましたが、プノンペンのマスタープランの 管理人は私がやっていたのです。マスタープランを持っていって誰と話をしたかと言っ たら、UNDPと世銀とアジ銀とWHOを呼んで、ここは日本、フランスとやったわけ です。それでポッとうまくいったのです。そのときに出てきた人はみんな知っている人 たちなのです。そういう意味でのネットワークづくりをWHOを通じてやるというのは、 ここには書いていないのですが、そういうことも厚生労働省としては考えていく。  もう1つは、本当にそうなのかどうかはわかりませんが、村落給水の地下水開発のと きに、ヒ素、フッ素、硝酸性窒素があるとわかったら、その地域から逃げ出しているこ とがしばしばあります。本当はそういう所に安全な水を供給しなければいけない。それ はコストの問題からどうしても逃げてしまうという話があるので、ミネラルゴールを含 めて、いわゆる目標を立てたら、安全な地下水がない所でもやり続けなければならない という意志の固さを持っていくと、相手カウンターパート側も、日本の村落給水という のは本当に信用できるのだということになると私は思います。ある国によっては私の村 か町の水はどこかの国のどこかの町の水だと言って、住民が馴染めるところもあるわけ です。そういうことも努力をしていかなければいけないなと思いました。  先ほどの下痢の話ですが、一昨年のCSDのときに、ユニセフのバンコク事務所にい るのが、タイの国内で便所の普及率と下痢症の患者のデータを30年間取取っているの です。そのぐらい取らないと物にならないのです。逆に言えば、そういうモニタリング は厚生労働省ができることなのです。ですから、WSSCCもユニセフとネットワーク を強める方向にあるようですから、いわゆるモニタリングのやり方も今後工夫をしてい く必要があるのではないかと思います。  予定は12時までですが、こういう形で検討会の報告書がまとまったことについて、 皆様方に感謝申し上げたいと思います。いろいろご指摘いただいたことは間に合う範囲 で全体の報告会までに修正をさせていただきますので、ご了解をいただきたいと思いま す。 ○日置専門官 どうもありがとうございました。今後のスケジュールですが、来週の15 日に国際協力事業評価検討会分野合同と言いまして、保健医療分野、労働分野、水道分 野全体の報告会のような最終回を実施させていただくことにしています。皆様にはご多 忙中のところを申し訳ございませんが、ご出席いただく先生方にはどうぞよろしくお願 いいたします。  また本日の議事録につきましては、作成後、皆様方に送付して確認・修正をさせてい ただきます。これについては今までの経緯からホームページに載せさせていただきます。 修正については頑張ってやれる範囲をやって、その他の部分については、議事録で対応 させていただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 ○金井室長 長期にわたりまして検討していただき、ありがとうございます。この報告 書を取りまとめて、今後の参考にさせていただきたいと思います。いみじくもいろいろ な会員からきついお言葉等をいただきましたが、非常に感謝しております。と言います のは、厚生労働省の及ぶ範囲というのが実に限られていたところがあり、このような検 討会で、各関係者が一堂に会して意見を取り交わし、また顔見知りになれる機会を持て るというのは、非常に有難いことです。昨今の経済協力の体制を変えるJICA、JB ICの関係がだいぶ近くなるというのは、こちらは非常に喜んでいます。と言いますの は、非常に規模の大きいJBICの案件に関して、ほとんど我々は関与してきていなか った。または我々に対して期待されていないのかもしれませんが、非常に悲しいものが ありまして、そのものに関わり、技術協力、無償資金協力、円借款が一貫した形で行え ると、すごく重復も避けられ、また有効な支援ができると思います。  また金近会員がおっしゃっていましたが、2007年問題でシニアの専門家がどんどん辞 められる。または高齢化していることに関しても、若手を育成するためにも経済協力の 場が使えるのではないかと思っております。言わずもがなかもしれませんが、日本で新 たな施設をつくることはほとんどないのに、途上国であれば新たなものを1から作れる、 または自分たちの作ってきたものを試せる場があるということですので、そういう場で もシニア、ジュニアが一緒になって途上国の現場で活躍することを期待しております。 どうも長期にわたり、ありがとうございました。感謝いたします。 ○眞柄座長 どうもありがとうございました。 (了) (照会先)  厚生労働省国際課国際協力室   国際協力専門官 日置   協力企画係長  吉村   03-5253-1111(内線7305)