06/01/11 石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会 第3回議事録       石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会(第3回) 1 開催日時及び場所  開催日時:平成18年1月11日(水) 午後5時から午後7時まで  開催場所:中央合同庁舎第5号館専用第15会議室 2 出席者  医学専門家:審良正則、井内康輝、岸本卓巳、        神山宣彦、三浦溥太郎、森永謙二  厚生労働省:森山寛、明治俊平、只野祐、天野敬他  環 境 省:滝澤秀次郎、寺田達志、森谷賢、俵木登美子、天本健司他 3 議事内容 ○水・大気環境局総務課長補佐(天本)  定刻になりましたので、「第3回石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討 会」を開催させていただきます。本日は、大変お忙しい中お集まりいただきまして感謝 申し上げます。  当検討会は原則として公開といたしておりますが、傍聴される方々におかれましては、 別途配付しております留意事項をよくお読みの上、会議の間はこれらの事項を守って傍 聴いただきますようお願いを申し上げます。それでは座長、お願い申し上げます。 ○森永座長  本日の配付資料の確認を事務局からお願いします。 ○水・大気環境局総務課長補佐  本日の資料を事務局から説明させていただきます。まず表紙として議事次第がありま す。資料1は、「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会」検討事項。資料 2が「第2回検討会についてのメモ」です。資料3が、Environmental Health Criteria として、WHOが出している資料です。資料4もEnvironmental Health Criteriaで、 これもWHOが1998年に出している資料です。資料5がAfter Helsinkiと言いまして、 1997年から2004年にかけての石綿に係る文献をまとめた論文で、2004年に『Pathology』 という論文雑誌に掲載されたものです。資料6は胸膜プラークについてのHillerdalの 論文で、1994年に『CHEST』という雑誌に書かれたものです。机上に追加資料としてお 配りしましたのが、World Cancer Reportと言ってWHOが2003年に出版したものです。 本日の資料としては以上です。 ○森永座長   本日の資料について何か各委員の先生方からご質問等がございますか。なければ第2 回と同様に、前回議論をしたことのまとめを今回もしていきたいと思います。ただし前 回は肺がんの議論については全て持ち越しという形でしたので、今日は一応確認する意 味で一つひとつについて、もう一度委員の先生方にご意見があれば出していただくこと として、確認をしながら進めていきたいと思います。それでは資料2の説明を事務局か らお願いいたします。 ○保健業務室長(俵木)  資料2に従いまして前回の検討会についてのご議論のまとめを報告いたします。一つ ひとつご紹介していきます。  1つ目として石綿曝露と肺がんの発症リスクとの関係についてです。石綿の曝露量と 肺がんの発症率の間には直線的な量−反応関係があり、累積曝露量が増えれば肺がんの 発症リスクが上がるという関係にある。石綿の曝露濃度と曝露年数を掛けた値と肺がん の発症率との間には、比例関係があるとするモデルが世界的に認められている。 ○森永座長  その点について何か追加のご意見が委員の先生方、ございますか。世界的というのは、 これは我が国の産業衛生学会でも認めていますし、フィンランドで行われた国際会議で も認められているということです。よろしければ2番目をお願いします。 ○保健業務室長  2つ目として、肺がん発症における喫煙と石綿の役割について。肺がん発症において 喫煙と石綿は相乗的に作用すると考えられる。肺がんは石綿に特異的な疾患である中皮 腫とは異なり、喫煙をはじめとして石綿以外に発症原因が多く存在する疾患である。肺 がん発症において石綿はプロモーターの役割を果たしている。肺がん発症においては、 喫煙と石綿は相加作用よりも相乗的に作用すると考えられている。 ○森永座長  この点について委員の先生方、どうでしょうか。今回の資料2に資料5と記載されて いますが、これは、前回の資料5なのですか、今回の資料5なのですか。 ○保健業務室長  前回の資料5です。 ○森永座長  たしか今回の資料5でもそのところが書いてありますね。事務局から簡単に補足説明 をしてください。 ○職業病認定対策室長(只野)  今回の資料5の517頁になりますが、右側の真ん中より下、1の最初の4行ぐらいに は、中皮腫は特異的であるということが書かれています。そして、1の中段、whereas からの記述に、中皮腫は石綿原因と言ってもよいのですが、肺がんについては喫煙が最 も大きなリスクファクターであり、石綿曝露を受けた肺がんも多くは喫煙者であること から、中皮腫のように石綿と肺がんは特異的関係にあると言うことはできない、とあり ます。それ以降は石綿肺がんの見積りなどが書かれています。 ○森永座長  今日の追加資料にも書いてあると思うのですが、これも事務局から説明していただけ ますか。 ○職業病認定対策室長  追加資料のWorld Cancer Reportの182頁、最初のサマリーの部分で網掛けになって います上から2段落目をご覧ください。男性では80%以上、女性においてはそれより少 し低くて70%が喫煙由来の肺がんであるという記述が2003年のWHOの報告でなされて います。 ○森永座長  肺がんにつきましては、委員の先生方はもうご承知のことだとは思いますが、タバコ の問題がいちばん大きいのだということがあります。タバコが原因で発症した肺がんを 救うのが我々の今回の目的ではありませんので、そこのところが非常に難しい問題であ るわけです。やはり肺がんについては、これまでの知見から言いますと、タバコがいち ばんリスクが大きいと同時に中皮腫とは異なり、特異な関係にはないのだということで すので、中皮腫と同じような扱いはなかなか難しいのだという理解で話を進めてきてい るわけです。そこまでは委員の先生方にも合意を得ていると思うのですが、2番の点に ついては、ほかに何か追加がありますか。よろしければ3番をお願いします。 ○保健業務室長  石綿曝露による肺がんと判断するリスクの程度についてです。肺がんの原因はいまご 議論いただきましたように、石綿以外にも多くあるため、肺がんの発症リスクを2倍以 上に高める石綿曝露をもって、石綿に起因するものと見なすことが妥当ではないか。意 思決定に用いられる根拠のレベルとしては様々なものがあり得るが、判断の目的によっ て寄与危険度割合が50%(相対リスク2倍)以上を採用する場合や、80%(相対リスク 5倍)以上を採用する場合があり得る。証拠の優越を民事訴訟の基礎とする米国では、 寄与危険度割合50.1%を因果関係有無の峻別の境界値としている。また、イギリスの雇 用年金省の機関であるIIAC(労働傷害諮問会)においては、ある職業又は作用物質 が疾病発症の原因であるとするには、相対リスクが2以上を示す一貫性のある堅固な疫 学的証拠が必要だとしている。肺がん発症の相対リスク2倍となる曝露量をもって、石 綿曝露による肺がん発症であると見なす目安として考えるべきなのではないか、という ご議論でした。 ○森永座長  この点について委員の先生方いかがですか。寄与危険の割合が50%という話は疫学の 話でして、なかなかわかりにくい所なので私から少し補足説明させていただきます。お 手元に前回の資料をお持ちの方は、資料7の248頁の2)「どのぐらいの証拠を根拠とす るのか」の上から10行目をご覧ください。疫学的には寄与リスク率、今回の資料2では 寄与危険度割合と書いてあるのと同じ意味ですが、この寄与リスク率が50%以上、即ち 相対リスクが2以上の場合に、これを採用しましょうということなのですが、わかりま すか、わかりにくいですか。 ○岸本委員  わかります。 ○職業病認定対策室長  傍聴されている人もいますので、ちょっとわかりにくいと思います。 (森永座長、「寄与リスク率=相対リスクー1/相対リスク」と白板に書いて説明) ○森永座長  疫学の話ですが、(前回の)資料7には寄与リスク率ということが書いてあります。こ れは相対リスク、率にしますとここは100%掛けるわけですが、50%、即ち相対リスク が2以上の場合、あるいは80%(相対リスクが5以上)ということが書いてあります。 相対リスクが2の場合、寄与リスク率というのはこの式に従いますと、50%になり、相 対リスクが5の場合は80%になるわけです。  つまり、このことの意味は、相対リスクが2の場合ですと、肺がん患者が2人おられ たときに、1人の方はおそらくアスベストによって起きたと考えられますが、あとの1 人はアスベスト以外、肺がんの場合は主にタバコになるわけですが、タバコの可能性が あるということです。つまり、半分はアスベストによって肺がんが発症したと考えてい いだろうという意味です。  ですから、ここに書いていますように「50.1%以上の確率」は、「50.1 percent or more probability 」あるいは「more likely than not」というのは、「あったということがな かったということよりも、よりありそうである」という意味で、どちらかといえば50% を超える寄与リスクがあるものを認めましょうということです。石綿による肺がんか、 それ以外による肺がんかは、フィフティ・フィフティですが、リスクが5倍ということ になりますと、5人に4人を拾うわけでより確実ですが、今回は2人に1人がアスベス トによるものだという確率で拾うのであればいいのではないかという議論です。どちら かというと5人に4人ぐらいで厳しくやるべきではないかという意見もあるかもわかり ませんが、幅広く救済するということから言えば、50%というところで拾う方がよいの ではないかと、そういう議論を前回にしたということです。そういう説明でよろしいの でしょうか。 ○岸本委員  よろしいと思います。 ○森永座長  もう少し補足をしたほうがいいですか。 ○職業病認定対策室長  50%で拾うということは、石綿とは関係ない人も拾われるということですね。 ○森永座長  関係ない人も拾ってしまうリスクが50%、相対リスクが2倍です。ですから半分も拾 うのかという議論もあるかもわかりませんが、半分アスベスト以外のものも含まれるこ とも仕方がないという判断で、相対リスク2を選びましょうという議論です。ほかに何 か委員の先生方、ご質問がございますか。ここのところは理解するのが難しいかもわか りませんが、2倍という考え方はこれでもういいという話で進めてよろしいですね。そ れでは4番をお願いします。 ○保健業務室長  肺がん発症リスクが2倍となる曝露量とその指標について。いまご確認がありました ように肺がん発症リスクが2倍となる曝露量をもって石綿に起因するものと見なすこと が妥当ということでしたので、では、肺がんの発症リスクが2倍になるのはどのぐらい の曝露量なのかというご議論が進んだと思います。  2倍になるのは、ここにありますように石綿に25本/ml×年の曝露量である。石綿 25本/ml×年の曝露量に相当する指標としては、乾燥肺1g当たりの石綿繊維では200 万本(5μm以上の長さ)。それから石綿小体であれば乾燥肺1g当たり5,000本、又は 気管支肺胞洗浄液(BALF)であれば1ml当たり石綿小体5本以上が国際的な会議でのコ ンセンサスであるとして報告されました。  石綿の健康影響の評価に関するヘルシンキ国際会議のコンセンサスレポートは、ヘル シンキクライテリアとして国際的によく知られており、25本/ml×年の石綿曝露が肺が ん発症に係る相対リスクを2倍にするとされています。25本/ml×年というのは、例え ば1ml当たり1本、従いましてリッター当たり1,000本ですが、その濃度環境下で25 年間働いた場合1本×25年で、25本/ml×年という単位の曝露量になるということだと お聞きしました。ヘルシンキクライテリアでは、石綿吹付業や断熱工事などの高濃度曝 露があった場合には、従事期間1年で肺がん発症リスクが2倍となり、造船業や建設業 などの中等度曝露では5年から10年で、この2倍に該当する25本/ml×年の曝露量に なると報告されているということでした。  石綿曝露量が何本/ml×年に相当するかどうかを算定するには、曝露濃度とその曝露 期間の情報が必要です。ドイツでは職業別、作業別に曝露濃度の程度を数値化しており ますが、日本においては曝露当時の曝露濃度についてのデータがないことから、職業別 に曝露濃度の程度を数値化することは難しいのではないかということでした。フランス ではアスベスト製造業、断熱作業、石綿除去作業、建築・造船業に10年従事することは、 発症した肺がんが職業病であると、石綿によると言えるとしているということです。  フィンランドにおける補償基準は、少なくとも1年間の高濃度曝露や10年の中等度曝 露が、肺がんリスクを2倍にする証拠であるとしている。また、ベルギーの補償基準で は、25本/ml×年の石綿曝露または乾燥肺1g当たりの石綿小体5,000本以上、肺胞洗 浄液(BALF)1ml当たり5本以上の検出、または10年の職業従事歴などを石綿による 肺がんであるとする条件として挙げているというご紹介をいただきました。 ○森永座長  このことについて委員の先生方、どうでしょうか。私から申し上げますと、この3番 目のドイツは、職業別、作業別、年代別に曝露濃度を推定しているのですね。ですから 年代別というのも、厳密には入れたほうがいいですね。日本では、曝露当時のデータが ないというのですが、いつごろのことを言って、曝露濃度がないということなのでしょ うか。神山委員、作業環境測定法が制定されたのはいつですか。 ○神山委員  昭和50年です。ですから昭和50年以前はないと言えるわけですね、ないことが多い わけです。 ○職業病認定対策室長  作業環境測定が義務付けられているのは、屋内作業場です。屋外作業場や移動現場な どのデータは現在、法律でも義務付けられていません。 ○森永座長  製造業については大体、昭和46〜7年に作業環境測定が始まったのでしょうか。 ○職業病認定対策室長  正確には、昭和46年に特定化学物質等障害予防規則(特化則)に石綿が入ったときは 粉じん対策として入れたのですが、昭和46年から作業環境測定の義務がありまして、昭 和50年からは石綿の発がん性に注目して、いわゆる発がん物質としての取扱いとして、 作業環境測定もやっているということです。 ○神山委員  ドイツでは逆にそういう測定値も含めて、曝露濃度の程度を数値化しているのですか。 現実の測定データ、あるいは大まかな水準ということで数値化しているのですか。 ○森永座長  実際に測定したデータもありますしいろいろで、その年代も考慮して推定しているみ たいですね。そうすると日本の場合は、将来的にはこういう方法はある程度は可能です か。 ○職業病認定対策室長  データをドイツのように整備すればということですけれども。屋内作業場のデータは これまでも各事業所でやっていると思いますから、その多くはあるかも知れませんが、 先ほど言いましたような法の規制がされていない部分については、そういったデータは 全くありませんので、ドイツのように例えば断熱材を巻き付ける作業はどれぐらいにな るのだとか、建材を切ったときはどれぐらいになるのだというデータの蓄積を図る必要 があると思います。 ○森永座長  わかりました。将来の話ですね。ほかにございませんか。  実は25本/ml×年という概念でいくと、一般環境曝露では普通はあまりそういうこと はないだろうという話が、いちばん最後のところで神山委員からお話がございました。 そのことについて、私のほうでWHO関係の資料を見たのですが、それが今回の資料の 3と4です。  資料3でいろいろ中皮腫のことが書いてあります。123頁の2段落目のIn summaryか らです。これは石綿の鉱山とか、石綿の工場ではその周辺に住んでいる方に胸膜プラー クや中皮腫のリスクが高くなるというデータがあるということですが、肺がんでは周辺 住民の方で肺がんのリスクが増加するという証拠は1986年のWHOの報告の時点では ないということです。  ただし、但し書き(However)が書いてありまして、昔は非常に良くなかった時代があ って、例えば雪が降るような、目に見えるような汚染があった場合というのは、非常に 曝露濃度も高かっただろうという記述になっています。そういう局所的な非常に高濃度 の近隣曝露がある場合においては、肺がんのリスクが高くなる可能性もあることは否定 はできないだろうけれども、一般的には普通はないのだというまとめが、1986年のWH OのEnvironmental Health Criteriaで書かれてあるということです。  資料4は1998年のものですが、クリソタイルだけのレビューです。143頁の9.3.2に 一般環境ということが簡単に書いてあります。内容は、1986年のEnvironmental Health Criteria(資料3)以降に、クリソタイルで新しい知見が特段なかったということです。 ですから一般環境曝露の周辺住民であっても、普通の程度であればこの25本/ml×年と いうのは、100年住むとしても2.5の曝露ですから、普通は想定しにくい。ただ、非常 に高濃度曝露のような、過去において環境に良くなかったような場合、あるいはクボタ の周辺の住民の皆さんも、あそこはいろいろな報告がありますが、異常な状況だと思い ますので、そういう所は別にして、一般的にはないだろうというような理解でいいと思 います。このまとめの所で、ほかに何かご意見がございますか。三浦委員、何かご意見 がありますか。 ○三浦委員  ここではないです。 ○森永座長  それでは5番をお願いします。 ○保健業務室長  石綿曝露所見の測定方法についてです。石綿小体などの測定においては、測定方法の 標準化を行うことが重要である。相当以前に石綿曝露があった場合、石綿小体が肺の間 質に移行して、気管支肺胞洗浄液(BALF)では適切に採取できない場合がある。曝露量 の評価において確実性が高いのは石綿繊維、石綿小体、気管支肺胞洗浄(BAL)の順であ ろう。  以前は肺組織の湿重量5g当たりの石綿小体の数をもって、職業性曝露を評価してい ましたが、湿重量では肺組織の正確な重量を測定するのは難しいので、最近主流となっ ている1g乾燥肺の単位を用いる方法がよいだろう。肺組織を入手するには手術が必要 であるが、気管支肺胞洗浄(BAL)法は、気管支鏡で実施可能であり、また患者への侵襲 も少なくてよい。しかしながら、下葉で行うのは技術的に難しく、回収率の問題もある ので、中葉がよいとのご意見がありましたが、採取推奨部位など全国的に統一された技 術水準を設けるべきであろう。  また、ベルギーでは石綿繊維や石綿小体の本数などを数える際には、熟練した専門家 がやっている。石綿繊維の測定などの技術は精度管理が重要であり、精度管理がきちん とできる施設でないと、正確なデータは得られない。石綿小体は角閃石系石綿の曝露の 良い指標ですが、白石綿(クリソタイル)の場合に実際の曝露量とずれを生ずる可能性 がある。石綿曝露の証拠として、石綿小体の数を測定するのは、あくまでも便宜的なも のであって、電子顕微鏡で繊維数を測定するのが最も正確で望ましい。電子顕微鏡によ る測定は、高度な技術のために測定者によって、測定結果にばらつきがあることが多い が、位相差光学顕微鏡による測定は、トレーニングをすれば測定者によるばらつきがそ れほど大きくならないだろう。今後、全国のアスベスト疾患センターなどの技術的に標 準化された施設で、石綿小体数等の測定ができることになる予定だということをお聞き しました。 ○森永座長  5番の点についてどうでしょうか。 ○三浦委員  いちばん最初の2行目から3行目にかけてですが、石綿繊維、石綿小体、BALの順 との記載がありますが、順番にならない。 ○岸本委員  これは方向ですから。肺組織、定量が1番で2番目がBALだろうという話になると 思います。ですからBALでも石綿小体、石綿繊維を評価するわけですから。 ○森永座長  どういうように書き換えたほうがいいのですか。 ○岸本委員  肺組織が1番で、2番目がBAL中の石綿小体及び石綿繊維の評価という形で変える のがいいとは思います。実際、石綿繊維を測定することは臨床では非常に難しいので、 通常行うのは石綿小体の測定ですが、神山委員、この辺りはいかがでしょうか。 ○神山委員  現実問題としたら、現在の日本ではそれしかないでしょうね。石綿小体を組織中でも BAL中でも見るということだと思いますね。 ○三浦委員  確率が高いのは肺組織ですね。 ○岸本委員  そうですね。 ○森永座長  ここはしかし、or、orでいけばいいという議論がありましたよね。 ○神山委員  順序を強調するのは、それほど必要でもないかもしれないですね。 ○岸本委員  BALははっきり言って手技で変わってきますので、150cc入れてどれぐらい返って くるかの率が問題です。たくさん返ってくれば効率がいいから石綿小体もたくさん返っ てくる。ただ、きちんと押し込まれていなくて回収率が悪いと、必ずしも安定したデー タが出ない。それに比べて肺組織のほうが確かに安定したデータは出るということです かね。 ○三浦委員  ここはそういう安定した石綿小体、又は石綿繊維を測定する手段ということであれば、 やはり肺組織、BALという順番がいいのではないでしょうか。 ○神山委員  趣旨はそういう趣旨でしょうから。 ○森永座長  ここは誤解が生じかねないので、一応削除しておいたほうがいいですね。 ○神山委員  そうですね。 ○森永座長  実際としては、こういう石綿小体や、石綿繊維あるいはBALにより石綿小体の数を 調べるというのは、いちばん最後の手段の話ですからね。今まで労災の認定ではどうで すか。石綿小体があることで労災認定したという事例はたくさんあるのですか。 ○職業病認定対策室長  労災の認定では、まずは1型以上の石綿肺所見があるからとか、あるいは石綿ばく露 従事歴が10年以上で胸膜プラークがあるだとか、何個以上とは言っていませんが石綿小 体があるとか、そういったものが職業曝露を受けたであろうと思われる程度にある場合 には、労災認定が行われます。  それらの情報が全くなくて、石綿小体の数だけで認めたという例は、前回の労災認定 基準の見直しの検討会(平成15年)の時、平成11年度から平成13年度の肺がんの認定 事例を集め、何をもって認定したかを一つひとつ見ましたら、56例中1例だけありまし た。作業従事歴が10年の基準に満たず、それから胸膜プラークもなく、情報が少なかっ た方について、石綿小体の数だけ数えることができたものですから石綿小体で認めたと いう例がありました。したがって、他はほとんどが画像所見で認められているのが現実 です。何かこの議論をしますと、労災認定のために肺の組織を採取するというのはイメ ージ的にあまりよろしくないかなと思っていますが、現実的には画像所見で処理してい るのが大半です。 ○森永座長  そうですよね。私も前回の平成15年の検討会のときにあまりそういう例はなかった ように思います。前回は実際にどうしていったらいいかという話は抜きにして、25本/ ml×年という概念は、一体ほかの指標として、どういうものがあるかという議論をした だけなのです。実際には、こういう測定はいちばん最後の救う道としてあるのだと理解 していただかないと、その数字だけを見て誤解されるといけないのです。あとは測定方 法のきちんとしたマニュアルや、トレーニングが大事になるということですね。 ○職業病認定対策室長  5番のいちばん最後の項目で、これは私が紹介したことだったと思いますが、全国の アスベスト疾患センターなどで技術的に標準化された施設で、石綿小体の測定ができる ことになる予定であると申し上げました。これは「石綿小体等」となっていますが、石 綿繊維は電子顕微鏡でないと測定できません。つまり、22のアスベスト疾患センターに 電子顕微鏡を揃えるというのは、予算措置の面から難しいと思います。したがって、石 綿繊維の測定は、大学だとかそういった研究施設に持ち込まないと、これは実際問題で きないと思うのです。 ○森永座長  22のアスベスト疾患センターでは、石綿小体の測定はできるのでしょうね。 ○職業病認定対策室長  はい、22のアスベスト疾患センターでは光学顕微鏡で、そういったことに対応するこ とについては、いま検討しています。 ○森永座長  それでいいですね。 ○岸本委員  私の所でも石綿繊維を測定することはちょっと難しいと思いますので、石綿小体とい うことで、「等」を是非取っていただければと思います。 ○森永座長  次の6番をお願いします。 ○保健業務室長  環境曝露による肺がんの発症についてです。一般環境で肺がんの発症リスクを2倍に する曝露量があることは否定的である。過去の文献レビュー等では、肺がんについては 中皮腫と異なり、一般環境曝露のレベルでは職業曝露のレベルと比べて、無視できるレ ベルであるとされているが、最近の知見を収集する必要がある。現在の職場の濃度基準 は0.15本/mlである。1960年代のデータはないが、1980年代に全国400カ所で測定し たところ、既に0.1本/mlであったとの調査結果がある。環境省が設定している敷地境 界基準である10本/l、つまり0.01本/mlの濃度では、25本/ml×年に達するのは2,000 年以上の曝露期間が必要であり、実際的にはそれより更に低濃度である一般環境曝露の みによって、肺がんのリスクが2倍になることはまずないだろう。職業性曝露が確認で きない症例については、石綿繊維や石綿小体数の確認、石綿曝露の可能性の検討など、 慎重に評価すべきである。 ○森永座長  いちばん上の項目が今回の資料の3と4ということで理解をお願いします。それから 環境庁時代に境界敷地領域が0.01本/mlということを本日の資料3のサマリーの所だ ったと思うのですが、述べています。あれは63年でしたか、あの時には既に日本では青 石綿(クロシドライト)は扱っていないという情報がありまして、大体白石綿(クリソ タイル)でこうだろうという考えで決めたと思っているのですが、あれを吹付石綿のク ロシドライトの除去に援用するのは、神山委員、むしろ間違いですよね。 ○神山委員  そうですね。その当時の一般環境は、ほとんどクリソタイルを前提に10本/リッター が使われていますので、青石綿等はほとんど念頭になかったというのが正しいところで しょうね。 ○森永座長  私も神山委員も当時検討会にいましたので、その辺の事情はよくわかっています。境 界敷地領域は、クリソタイルを頭に入れて考ているのだということです。  もう1つ、私は6番を先にやってしまいましたが、労災のほうの認定基準は1型以上 の石綿肺の所見がある、あるいは胸膜プラークや石綿小体等の石綿ばく露を示す医学的 証拠があって、石綿作業は10年ということを平成15年度の認定基準の改定の際に、昭 和53年の認定基準をそのまま援用しているわけです。昭和53年の時の認定基準は石綿 ばく露作業従事歴が10年に満たない場合でも、石綿の吹付作業であるとか、石綿の紡織 とかいった高濃度曝露の作業の場合は、総合的に判断するために本省りん伺、平成15 年の認定基準の改正の時も本省協議により判断することとしていますが、それはそのま までいいのですね、どうでしょうか。 ○岸本委員   やはりエビデンス(根拠)があって、職業歴10年とかというのは、肺がんリスクを2 倍にするという1つのクライテリアですし、いま森永座長がおっしゃられたように、石 綿紡織とか断熱作業とか吹き付けだとか、高濃度曝露を来す場合は、やはり別途検討す るということでいいのではないでしょうか。 ○森永座長  神山委員、それでよろしいですか。一応の基準として10年だけども、吹付作業等の高 濃度曝露では職歴が短くても、当然25本/ml×年以上の累積曝露があり得るわけですか ら、今までもそういう例は本省協議ということにしていましたので、10年というのは一 応の目安であるという理解は、事務局もそれでよろしいのですね。 ○職業病認定対策室長  この委員会でそういう合意を得ていただければ、それはそれで現行認定基準を踏襲す ることになりますからよろしいかと思いますが、そういう合意でよろしいのですね。つ まりヘルシンキクライテリアでは、先ほどの高濃度曝露で1年だとか、中程度曝露で5 年から10年ということも書いてあるわけですよね。今回の議論の部分がヘルシンキクラ イテリアを尊重する形で議論が進んでいるのは、つまりそういう10年以下の部分は、従 来も私どもは本省協議で個別に認定して10年未満の者も認めて、業務外にしている例が むしろ数例しかないぐらいで、ほとんど業務上として認めてきているわけですから、こ れまでもそういうことで機能してきたとは思っているのです。ですから、今回そういう ことでよろしいというのなら、それはそういう判断を私どもではさせていただきたいと 思うのです。 ○森永座長  それはよろしいですよね。作業環境測定のデータがない時代はどうしても。 ○神山委員  そうですね。短い時間での相対リスク2倍を超える可能性はあったということを踏ま えれば、そういう結論になるでしょうね。そのほうが結論としては妥当だと思います。 ○職業病認定対策室長  例えば何々作業は何年、何々作業は何年と、個別に事細かく決める方法ももちろんあ るのかもしれませんが、原則10年ということにしてあとはこの議事録のまとめでもあり ますが、こういった作業は高濃度なのだよということを言われているわけですから、そ れを反映した形で実際の認定は進められるのかなと思います。 ○森永座長  実際、現場で一々個別の職業で高濃度、中濃度というのは、なかなか大変なのです。 逆にいうと作業でもどのような仕事をしたかによってかなり曝露量は変わってまいりま す。石綿セメント製造業でいえば、最終工程のところは曝露が低いわけですが、最初の 原料を投入する所は機械化されるまでは、非常に曝露が高いわけです。ある何々の製造 業と言っても、実際にやっている仕事によってかなり差がありますから、それを一概に 高濃度、中濃度、低濃度と分けるのは、特に過去の事例においては、非常に難しいわけ です。けれども作業環境測定のデータが出てきてからは、それはデータベース化すれば、 かなりのことは言えるようになるという考えだと思います。 ○神山委員  屋内のデータをデータベース化することはできると思いますが、法規制のない屋外の データをどこまでデータベース化できるかはわからないですね。いまの議論は職歴が1 年、2年でも、たまたま石綿小体等のデータがあって、それが非常に多ければ、当然、 業務上として認めていく方向にいくという話をしているわけですね。 ○森永座長   orで認めることになると思います。ほかにご意見がなければ7に行きたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○保健業務室長  7、胸膜プラーク所見と肺がん発症についてです。胸膜プラークのご議論が前回の会 議の最後でありましたが、最終的には途中で終わってしまったので、特に四角囲みでま とめていません。胸膜プラークがある場合は肺がんの発症リスクが高まると言えるが、 それだけをもってリスクが2倍になる曝露があったとは言えない。胸膜プラークがある 人の肺がんの発症リスクは、これまでの疫学調査では1.3倍から3.7倍と幅がある。胸 膜プラークは曝露開始から年数が経過することによって発生し、低濃度の曝露でも発生 することがあり、25本/ml×年以下でも起こると考えられるというところの話だけあり ました。 ○森永座長  それではこの7を引き続き、今から議論をしていきたいと思いますが、先ほどから6 番の所で、一般環境では肺がんのリスクを2倍にするような曝露量には、局所化、特別 な事情を除いて、普通の場合では考えられない。大体80%以上はタバコが原因というこ とで説明がつくのだから、やはりリスクを2倍のところで見ていくべきです。それでも 半分は石綿以外のものを拾うわけですが、一応2倍ということにしますと、今度はプラ クティカルなことから言うと、胸膜プラークというのは石綿の曝露にとって非常に重要 だということは、兼々いろいろな所で言われているわけです。そのことについて三浦委 員から資料を用意していただきましたので、資料6の説明をお願いします。 ○三浦委員  前回の資料12はHillerdalの1997年の論文なのですが、その基になっている論文が、 やはり1994年のHillerdalの論文です。これは、胸膜プラークと肺がんの発生のリスク、 中皮腫の肺がんの発生リスクについて述べたものです。  この中で、まずこの調査の対象となったのは、X線写真で明確な胸膜プラークが認め られる人です。この場では職業歴は一切関係ありませんで、住民健診で胸膜プラークが 見つかった人が対象になっています。その次に、一応ILOのじん肺所見に倣って、そ の胸膜プラークのある写真を間質の線維化の有無で分けています。ここでHillerdalは、 間質の線維化のある部分を、胸膜プラークがありますからasbestosis(石綿肺)と述べ ているのですが、実際には曝露歴がないというのではなくて、はっきりしない人も含ま れていると書いてあるので、一応これは肺の線維化がある人、所見が非常に軽いもので 1/0から1/2までなのですが、それをある人たちとそういう所見が全くない人と分けて 見ます。147頁で、間質の線維化がある人は2.3倍で、線維化のない人は1.4倍である という結果になっていますので、両方を合わせて1.6倍です。ですから単純に胸膜プラ ークの有無だけで分けますと1.6倍ですから、2倍には満たないけれども、胸膜プラー クがあってなおかつ間質の線維化所見があるというところを拾えば2.3倍ですから、先 ほどの2倍に達するだろうと、この論文は私は読みました。 ○森永座長  ありがとうございます。このことについて何かご議論がございませんか。岸本委員、 何かありますか。 ○岸本委員  いまの石綿肺がんの労災認定に際しても、PR1/0以上の石綿肺があることを要件に しており、地方じん肺診査医が線維化があると認めた場合に労災認定を行っているので、 現行のものといま三浦委員がおっしゃったものはコンセンサスがあるのではないかと思 います。いまHRCTまで見ることができるようになりましたから、通常石綿肺の有無 等は、胸部レントゲンの正面図を見て不整形陰影があるかないかを論ずるわけです。C Tを含めて肺の線維化所見があるかどうか、審良委員が専門ですが、それを全て認める のかどうかというところを議論していただければと思います。Hillerdalのころは、C Tはあまり使用されていなかった時代ですね。 ○三浦委員  これは疫学データですから、胸膜プラークそのものもきちんとした両側で、限局性で、 なおかつ厚さが5mmまたは石灰化の所見があるものが対象になっています。逆に胸膜の 癒着を伴ったような症例については、例えば良性石綿胸水などが背景にあると考えられ る症例を除いたものだけで検討しています。ですから、胸膜プラークだけがある。環境 曝露というか、一般の住民の場合には逆に言えば石綿曝露がはっきりしない。この Hillerdalの論文も一般の住民健診が胸膜プラークのある人を拾って、なおかつ胸膜プ ラークだけでは肺がんは1.4倍だけれども、それに加えて線維化所見があれば2.3倍に なると言っていますので、逆にいままでの職業的曝露のある人にもマッチしますし、職 業曝露がはっきりしない人たちにもマッチする、そのように使えるのではないかと私は 考えています。  ただ、あとはその線維化の所見をどうやって取るかという問題が残りますし、胸膜プ ラークをHillerdalの言ったようにクラシックな基準だけでいくのかというところは、 もう少しの余地はあります。胸膜プラーク+線維化ですけれど、これには誤解されがち なところが1つあります。石綿による肺がんは線維化をベースにして起きているもので はなく、石綿曝露によって起きてくるものなので、メカニズム的に混同しないようにす る必要があります。そのうえで、どこかで線を引くとしたらこの辺の線引きがいい。 Hillerdalもメカニズムとしては石綿による肺がんはじん肺をベースにして起こるもの ではないと言っていますので、その辺はもう1回、井内委員からお話をいただければと 思います。 ○井内委員  いまの点に関して三浦委員のご意見に付け加えさせていただきます。従来のアスベス ト曝露による肺がんの考え方は、asbestosis lung cancer theoryとよばれ、まずアス ベスト肺というじん肺が存在し、そのじん肺では肺の構造の改変があって、肺胞が壊わ れ細気管支の増生がある。その細胞が発がん因子にヒットされてがんが起こるという肺 の再構築ということを前提に起こるがんのことを言っていました。しかし、現在の考え 方は変わってきていて、the asbestos lung cancer theoryといい、アスベスト自体が 肺がんを起こすという考えです。肺の再構築は必須ではないということになっているわ けです。ですから、あまり線維化が必要だ、胸膜プラークだけでは駄目だということを 強調すると、科学的なエビデンスに逆行するように誤解されるという危惧を持ちます。 では、胸膜プラークだけでいいかということになると、胸膜プラークはあくまでも胸膜 疾患で、胸膜プラークがあっても全く肺に病変のない人はたくさんいます。では、そう した人を全て肺実質での石綿による障害ありと認定するのはいかがなものかと思います。 実際に石綿が大量に出てくる肺では、明らかに呼吸細気管支管周囲に線維化があるとい うことは我々も証明しているし、それは広く認めているところですから、線維化という ものが従来言われていたじん肺症としての線維化でないレベルであるということは非常 に重要です。肺がんを発生してくる石綿による呼吸器障害としては非常に重視すべき点 だろうと思います。  ですから、問題は石綿による肺実質の線維化をどのような方法で、どのようなレベル で診断をするかということだと思うのです。ここではレントゲン写真、あるいはCTで どのような所見があったら線維化を認めるかというのをきちんと決めていかないといけ ない。いちばんいいのは組織を採ることでしょうけれども、組織を採るという前提は最 後の手段としてするならば、じん肺診査のご経験のある先生方から見て、どの程度が線 維化を読める限界なのか。それは標準化の問題もあります。単純レントゲン写真でみる のか、CTでみやるのか、それともHRCTまで使うのかという問題もあるでしょうか ら、その辺も絡めて線維化の程度、質というものをもう少しきちんと決めておく必要が あるのではないかと私は思います。 ○森永座長  なかなか難しい問題です。いままでの議論で労災認定の際の肺がんの考え方は従来ど おりでいいのだという確認はとれたと思うわけです。今度はいわゆる労災の対象となら ない人、つまり一人親方のような方、あるいは特別管理されていないような方です。石 綿の使用されるいちばん多い例は建材なのでしょうけれども、そういうものを扱って肺 がんになられたという方は、今回の石綿新法でどのような医学的所見で救済をするのか という話で、いま井内委員からは、画像で何かないかというような提案がありましたが、 何かございませんか。 ○岸本委員  非常に難しいと思います。いま井内委員がおっしゃったように、細気管支の線維化は 必ずしもハニーカミングではないですから、その辺りということになると、石綿肺の初 期段階をどのように診断するか。審良委員が専門家ですので、是非ご意見を聞かせてい ただきたいと思います。 ○審良委員  石綿肺の早期所見を画像で調べるということですか。。 ○森永座長  石綿肺とは言えないのです。つまり職歴のほうがないですから、そのような情報なし でどこまで言えるかという問題ですね。このHillerdalの論文をなぜ検討会における資 料として出してきたかということを、三浦委員の話をもう少し補足しますと、このプラ ークのある人の肺がんのリスクというのは2倍以下であるけれども、1.4とか1.6と少 し高いわけです。なぜこれを取り上げたかというとこのデータがいちばん追跡調査とし ては観察数が多くて、観察期間も長いので、疫学調査としては最も信頼できます。それ からそのときの胸膜プラークの基準もきちんと書いてありますし、おそらくこの基準は 我々専門家が見ればみんなアグリー(同意)するような胸膜プラークだということです。 そういう例で線維化の所見があった人(後でフォローアップしていくと出てきた人)は、 2.3倍だったという意味です。 ○保健業務室長  Hillerdalの文献の中では線維化の定義はどのようになっているのですか。 ○三浦委員  これはじん肺と仮定して、要するにILOの石綿肺の写真と比べて、結局じん肺の診 断と全く同じような方法で専門家が読影しています。石綿曝露歴がはっきりしていませ んから、石綿肺とは言えません。Hillerdalの論文では胸膜プラークがあるから、 asbestosis(石綿肺)と一応言っていますが、曝露歴は100%わかっていませんから、 現実に労災認定の対象となる石綿肺と見なすことはできないです。ですけれども、一応 それはじん肺と仮定して、同じようなどの程度になるかということでは考えています。 それは一般的に日本でも同じようなことは可能です。間質の線維化のある写真をじん肺 の標準フィルムと比べ、これに近い、これに近いと診断することは可能です。 ○職業病認定対策室長  確認したいのですが、石綿肺と間質性肺炎とは原因が違うわけですね。これはよろし いですね。特発性間質性肺炎と石綿肺は原因が違いますね。それで、現場では石綿肺の 患者と特発性間質性肺炎の患者はどのくらいの割合でいらっしゃるのでしょうか。 ○岸本委員  いま現場で見ていますと、石綿肺症例は非常に少ない。慢性間質性肺炎は区分があり ますが、粉じん曝露でも起こってくるという非典型例と典型例という2つのパターンが あるのですが、こちらの側はいま増えてきています。ですから、asbestosis(石綿肺) という高濃度曝露で起こってくる石綿肺はむしろ減っている。ということになると、明 らかに慢性間質性肺炎が多くて、石綿肺というのが非常に少ないと言えるのではないか と思います。それがどの程度の比であるのかは、データがないので言えないのですが、 審良委員いかがでしょうか。 ○審良委員  特発性間質性肺炎と呼ばれるものは確かに非常に増えてきています。増えてきている ので職業歴のある人たちにもどのくらい出ているのかはわからないです。もともとその 中で職業歴を持っていたら、特発性間質性肺炎も石綿が入っている可能性が出るので実 際、特発性間質性肺炎自体が除外診断ですから、粉じん曝露がないということが診断基 準の1つに入っているので、実際に特発性間質性肺炎がどのくらいあるかというのは全 然わからないです。 ○三浦委員  私の臨床経験では、石綿肺を積極的に見つけようという心づもりで日常の診断をして います。特発性という意味は原因不明という意味なのですが、特発性ばかりではなく、 薬剤性間質性肺炎とか、リウマチによるものなどいろいろあり、石綿肺1に対してその 他が10以上という感じです。そういう間質性肺炎の所見があるから、詳しく石綿曝露歴 を聞くのですが、ない人のほうが多いというのが現実です。 ○神山委員  労災認定に関しての質問になるのですが、石綿肺がんで相当の人数を認定しているわ けですが、すべてについて胸膜プラークはあるのですか。 ○職業病認定対策室長  先ほど申し上げました例で言いますと、石綿肺や胸膜プラークがなく、石綿小体があ ること肺だけで業務上として認定したのは1件ありました。それ以外は石綿肺所見か、 胸膜プラークの所見はありました。 ○神山委員  石綿肺所見は、石綿曝露作業に従事した職歴がある場合でというわけですね。 ○職業病認定対策室長  もちろんそうです。要するにじん肺管理区分のついているものです。 ○神山委員  要するに胸膜プラークのないケースも結構あったということですか。 ○職業病認定対策室長  両方がセットであるというわけではなくて、胸膜プラークがなくて石綿肺所見だけの ものもありました。 ○神山委員  そうですか。 ○森永座長  石綿曝露従事者の方については健康管理の体制がありますから、そこで普通の胸部レ ントゲン写真を撮るわけです。つまり、CTは関係なく、レントゲン写真だけで判断し ているわけですね。 ○神山委員  現実問題として胸膜プラークがないものは認められないのではないのですか。 ○森永座長  いや、胸膜プラークがあるだけで認めることもあります。 ○神山委員  胸膜プラークのないasbestosis(石綿肺)というのもあるのですね。 ○森永座長  ええ、それは胸部レントゲン写真だけで判断していますから。 ○職業病認定対策室長  ほかの例で言いますが、胸膜プラークのみ認められての石綿肺所見のない方は、石綿 曝露作業に10年以上従事していた場合に業務上として労災認定されます。 ○井内委員  先ほどの話題に戻るのですが、病理学的にはその線維化の成り立ちが石綿による場合 と、一般に特発性間質性肺炎と言われている場合は違います。先ほど言いましたように、 石綿の場合は多く呼吸細気管支周囲から線維化が始まります。もし、その段階で所見を 見つけることができれば、石綿による障害としては特異的であるといえます。通常の間 質性肺炎は原因不明のものも含めて、胸膜から胸膜下の肥厚、あるいは肺胞壁の線維化 から始まってくる。こうした変化の違いは的確な時期に見れば、区別がつくのではない かという気持があります。かなり早い段階で、軽度な段階で線維化を見つける方法は何 かないのか、そういうものがあれば胸膜プラークに何かを加える形で肺がんと石綿曝露 を結び付けることが可能なのではないかと思うのです。  従来のようなじん肺症としての石綿肺というのは、先ほど臨床の先生がおっしゃった ように非常に頻度も低くなっているし、その程度も弱くなっているのではないかと思い ます。さらに、一般環境曝露ということになれば、それほど膨大な量の曝露はないわけ ですから、あるとしてもかなり軽微な線維化しかない。それをHillerdalはasbestosis (石綿肺)と言っているのですが、細かい内容は書いていないわけですから、どの程度 の線維化がどういうレベルで起こっているのかということの詳細な情報が伝わってきて いません。ですから、もし我々がこれを使うとすれば、どのようなレベルのどのような 段階の、どういう程度の線維化であるのかということを、何か明示できないかと考える のですが、それは臨床の先生には酷な話でしょうか。 ○三浦委員  石綿肺の初期の段階はもう審良委員が詳細に出していますし、多分審良委員が見れば 95%ぐらいわかると思います。しかし、実際にはデータがないのです。要するに肺がん のリスクが2倍になるというデータがまだないのです。ですから、結局肺がんのリスク が2倍になるというデータは、じん肺の所見を援用するしかないのではないかと思うの です。ただ、厳密な胸膜プラークというのは、単純写真では多く見積もっても30%から 50%ぐらいしかわかりません。そこはもう少し別の手段で、明らかな胸膜プラークにつ いては、CTであるかないかと悩むようなものは別にして、CTを撮れば明らかに胸膜 プラークであるというようなところを拾い、あとは線維化の度合いについては判断の基 準となるものがじん肺のX線フィルムとの対比しか、国際的にもデータはありませんか ら、これはそれを援用するしかないのかと私は考えます。 ○岸本委員  私もいま三浦委員がおっしゃったように、CTで判断できる胸膜プラークはかなりた くさんあるのですが、Hillerdalがこの論文で言っているようにレントゲンの正面像で 5mmの厚さのものが両側にある、もしくは石灰化がある例はそんなにたくさんあるわけ ではないと思います。ですから、レントゲン写真で、誰が見てもわかるような胸膜プラ ークを有する人というのは、1つの基準として入れていいのではないかと思います。胸 膜プラークありとするとCTで、もしくはHRCTで識別できるという種類のものと、 レントゲン写真の正面像、単純レントゲン写真でできるというのは区別化をするのは一 つの基準としていいと思います。ただ、井内委員がおっしゃられるように、線維化の初 期像を見ろというと、診断技術に長けた方でなければ見られない。これは一般的でない ので、三浦委員がおっしゃったようにじん肺、石綿肺もそうですが、やはりレントゲン 写真で不整形陰影として見えるという、その基準がいちばん普遍的ではないかと思いま す。 ○審良委員  私だけに見えるということではないのですが、やはりきちんと石綿肺を見ている放射 線科医が少ないです。それだけ一般の病気でないので、特殊な所でしか見ていない人た ちが多いですから。実際の区別は、きちんとレントゲン写真を読める人たちが特に見れ ばわかるのです。確かに早期病変というのは細気管支から始まります。病変の分布がH RCTは特に病理像に近いと言われています。病変の始まりは小葉中心が石綿肺で、特 発性間質性肺炎は小葉辺縁から始まります。始まる場所が別なので、その早期の肺の構 築で蜂窩肺までガチガチになる前の時期に画像で撮影されていればわかると思うのです。 その時期に撮られている写真がまた少なくて、あまり目につかないから、しっかりした 写真ばかりを見ていると、余計に区別がつかないと言っていることが多いと思います。 ○井内委員  それらのトレーニングをして、特有な線維化の所見を少し勉強してくださる専門家が 増えれば、ある程度のところまではレントゲン写真を読めるようになる可能性はありま すね。 ○審良委員  ただ、現時点では無理だと思うのです。 ○岸本委員  いま審良委員がおっしゃったように、石綿肺のグレード4になると臨床医もこれはお かしいから調べようということになるのですが、グレード3までの病変の場合に、普通 の放射線科医の先生も異常所見とはあまりとられない。臨床医としては症状もないし、 そういう人に軽々しく軽気管支肺生検をやろうという気にもならないというようなこと で、確かにそういう例を見ないということも事実です。今後、石綿肺があればだんだん 早期病変を呈する人は増えてくるでしょうか。審良委員どう思われますか。 ○審良委員  特発性間質性肺炎の方は、もうHRCTが診断に1つの指針というか、HRCTを撮 ってから患者診断を進める形をとっているので、HRCTがかなり重要な位置を占めて いると思うのです。組織までとれない人が多いので、特発性間質性肺炎(IPF)では クリニカルな診断はHRCTでつくということに胸部疾患学会ではもう決まっています ので、そちら側から見るとじん肺は遅れているのではないか。HRCTをもっと入れて いかないと駄目ではないかと思います。 ○岸本委員  胸膜プラークがはっきりあって肺野に異常陰影がある場合はもちろんのこと、ない場 合でもきちんとHRCTを撮れば、早期病変は識別できるのでしょうか。 ○審良委員  できると思います。 ○森永座長  要するにHRCTで線維化の所見があって、なおかつ明らかな胸膜プラークがあり、 これを全部石綿によるものだと解釈した場合、見誤るような例はあまりないと考えてい いですか。それでほぼ拾えると考えていいですか。 ○審良委員  特徴的な所見が撮られれば、何とかなると思います。 ○森永座長  そういうものが撮れない場合はどうでしょうか。 ○審良委員  特徴的な所見がない場合ですか。 ○森永座長  そういうのがよくわからないという場合は、よその臨床へ行けばわからないわけです よね。 ○審良委員  HRCTの像として特徴的所見が出ればわかります。 ○森永座長  把握できない場合でも線維化の所見で可能ですか。 ○審良委員  その線維化所見がいわゆる石綿の初期病変に近い場合でしたらわかります。 ○森永座長  そういうことがわからない人が見て、一方でCTでもレントゲンでもいいのですが明 らかな胸膜プラークがあると。その場合、fibrosisはアスベストのものと大方見なして も、別にそれほど大きな間違いではないのですか。 ○審良委員  いや、胸膜プラークがあって、線維化があれば大体見なしてもいいと思うのです。た だ石綿肺の場合はさらに小葉中心性の線維化なので、その所見が出るのです。 ○森永座長  よく見ればということですね。 ○審良委員  はい。 ○森永座長  ということになりますと、石綿の曝露歴がなくて、いわゆる医学的な所見だけで肺が んのリスクが2倍になる所見を考えるというのがこの検討会に与えられた議題なので、 そういうことについて言うと、どうなのでしょうか。X線で、ここはandかorかが難し いのですが、CTでもプラークがはっきりと見られるような人で、fibrosisの所見があ れば、これは大体ILOでいえば1/0以上だということで、肺がんのリスクが2倍にな って、そうした人たちを救済すればいいという話になりますかということです。 ○三浦委員  1つは胸膜プラークと肺の線維化とは分けて考えたほうがいいと思います。胸膜プラ ークのほうは単純レントゲン写真では高々30%から50%ぐらいしかわからない。実際に 胸膜プラークはアスベストの曝露量とはあまり関係しない所見ですから、石綿を吸った かどうかの所見であって、胸膜プラークが見えないから石綿の曝露量が少ないというこ とは言えないのです。ですから、胸膜プラークが見えなくても石綿の曝露量がいっぱい ある人も結構いるので、それはもう少し胸膜プラークのほうはCTで拾うことができて いいと思うのです。  一方、線維化のほうは肺がんを2倍にするデータは残念ながら、まだHRCTでは全 くないので、そうすると、データを基にして基準をつくるとなれば、じん肺の標準フィ ルムに一応倣って、それに相当する所見があるものということが、線維化の所見を判断 する材料となり、それも一応先ほど岸本委員が言ったように、例えばじん肺審査会のよ うな所で、公式に判断をしてもらうというのがいちばんいいのかなと。そうすれば、労 災のほうとの整合性も合うし、労災もCT所見だけではじん肺ありとはいま認めていま せんので、その辺が1つのいまあるデータとして。将来、例えば5年後にはHRCT所 見でいいデータが出てくるかもしれませんので、そういうときはまた変わるはずですか ら、いまあるデータはその辺でいくしかないと思っています。 ○森永座長  いまの三浦委員の意見は、私がorかandかと言った場合のorで広くとればいい、た だしCTでorだけれども明らかだ、というのは付けたほうがいいという解釈でよろしい ですね。 ○三浦委員  はい。 ○森永座長  私もそれがいまのところいちばん考えられる意味で妥当な案かとは思うのですが、岸 本委員どうですか。つまり、このHillerdalの論文は1970年当時の胸膜プラークで見つ けた人をコホートの対象にしているわけで、この当時はCTはなかったわけです。です から、CTで確認するようなことはないので、逆に非常に厳しい基準でコホートを設定 して追跡しているわけです。いまはCTまではかなり検査ができるようになっているわ けですから、それと同時に胸部X線写真で胸膜プラークと本当に誰でもが言えるという のは、これぐらいにきついものでないと言えないです。それでいくと、かなり幅を狭め てしまいます。 ○岸本委員  それはもう間違いないと思います。 ○森永座長  そうですよね。しかし、CTでも本当に胸膜プラークかどうかを確認できない場合な どいろいろありますから、そこのところはCTで明らかな胸膜プラークを確認した場合 です。明らかなプラークとは何ぞやということになると、またモデル的なフィルムが必 要になってくるかもわかりませんが、それは審良委員に尽力していただくなど考えて、 2つ以上の胸膜プラークがあるとか、そのような症例を集めれば、暫定的なものはでき ますね。 ○岸本委員  確実というか、明らかな胸膜プラークがCTで見えるという、その一言はやはり入れ るべきで、いま我々もアスベスト健診をやっていると非常に悩むような胸膜プラークが 出ています。ですから、誰が見てもわかるような胸膜プラーク+線維化病変でいいので はないかと思います。線維化の評価はどのようにするかというと、本当は三浦委員がお っしゃったように確立されたレントゲン写真で判断するという、いま現在の認定基準の ほうがどこの地方局でも診査ができるということで、よりよいのではないかと思います が、その辺りは非常に難しいので、是非ご議論していただければと思います。 ○森永座長  いま一応大体の案が出てきたと思います。私のほうでまとめますと、胸部X線写真ま たは胸部CT画像で明らかな胸膜のプラークがあって、なおかつ胸部レントゲンでIL O、あるいは日本のじん肺法でいうところの標準フィルムでの1/0以上の線維化の所見 のある人については、リスクが2倍以上に相当する、いわゆる25本/ml×年の曝露があ ったと考えて、石綿肺がんとして救済するという基準にすればいいのではないか。それ 以上の知見は画像で得られていないので、しかも患者が来て、職歴も聞けないというこ とになると、画像でまず判断をしなければならないわけですから、そういう基準かなと 思うのです。  そういう基準でいけば、かなり石綿小体は5,000本という話にまでいかなければなら ないような方というのは、実際的にはそれほど多くないのではないか。いまの肺がんの 患者で、レントゲン写真やCTを撮らない患者はまずないわけで、全員撮られると思う のです。まだ石綿小体の問題は若干クリソタイル(白石綿)などいろいろな問題はあり ますが、とりあえずはプラクティカルな面からいうと、画像が非常に重要になってきま す。大体そういう基準となるデータは、このHillerdalの論文が裏付けになるわけです が、それ以上のものは今のところ出ていないので、暫定的にはそういうものを使うのが いいのではないか。一応そのようにまとめさせていただきたいと思います。  また、肺がんについては石綿の種類の問題です。肺がんの問題もありますが、クロシ ドライト(青石綿)のほうが肺がんのリスクが高いという説もありますし、そうではな く、職種別に違うのだという話もあります。今日の資料5の527頁の図1は、横軸に繊 維/ml×年をとって、縦軸に肺がんのリスクをとっているわけです。いちばん上でいう と、石綿セメントでは肺がんのリスクが2倍になるものは21本/ml×年もあれば303 本/ml×年もある。2番目の表で、石綿の紡織は24もあれば132もある。石綿の断熱で いうと22もあれば50もあるということで、石綿の製造別にもこれだけの差がある。こ れとはまた別に、石綿の種類の問題もあるのですが、一応国際的には25が妥当だという ことです。疫学調査ですからいろいろな条件が違うので、ばらつきがあるのは仕方がな い話で、25を採用することは前回でも合意しているわけですが、改めて今日も資料5が 配られているので、もう一度説明させていただきました。  肺がんは今日の追加資料にあるようにWHOの報告では予後はいまのところ悪くて、 5年生存率は15%以下だということがサマリーのいちばん最後に書いてあります。です から、非常に早期で見つからない限り、やはり5年生存率が悪いというのは、臨床の先 生方、それでよろしいですね。 ○岸本委員、三浦委員  はい。 ○森永座長  非常に早期以外は悪いということですから、あとは潜伏期間の問題です。第1回のと きに一応30歳未満の中皮腫は潜伏期間を考えると、一応検討という話をしていました。 これは誤解があるといけないのでお話しますと、私どもが見た労災認定の事例は30歳と いうのがいちばん若く、これは高校生時代からの曝露で、潜伏期間は11.5年です。おそ らく0歳から曝露を受けると25歳、30歳で当然発症し得るわけです。これはクボタの 周辺については別だと思っていますので、そこのところは誤解のないようにしてほしい のです。アスベストについては前回の資料12にも大体書いてありますが、肺がんについ ては少なくとも潜伏期間は10年以上で、多くは30年以上と書いてあります。それは臨 床の岸本委員もそういう例をまとめていますが、それでよろしいですね。 ○岸本委員  そうだと思います。 ○森永座長  ほかに今日、肺がんのことについて議論をしなければならないのですが、神山委員、 クリソタイル(白石綿)の溶解性という話はデータが少ないので、いまのところはヘル シンキクライテリアで言っているor、orの概念でいいということでよろしいですね。 ○神山委員  それと今日配られている資料4が、クリソタイル(白石綿)の肺がん等についても非 常によくまとめてあったと思いますので、それについてはいまはきちんとレビューして きていませんが、参考になる資料だと思うのです。基本的には区別していなくて、アン フィボールだけが高いということではなくて、クリソタイル(白石綿)も肺がんを確か に作るという立場でのレポートだと思います。142頁の9.3.1.2に肺がんの例が出てい ますが、そのような話だったと思います。 ○森永座長  これはたしか石綿の紡織は肺がんのリスクが高いのですが、その原因についてはまだ 決着はついていないですね。ミネラルオイルの問題はどちらかというと否定的だったよ うに思うのですが、それでも紡織については非常に高い。しかもそれはクリソタイル(白 石綿)の曝露なのに高いという、その辺は絶えずいろいろ今まで議論になっていますが、 まだ決着はついていないということでよろしいですね。 ○神山委員  ええ、そうですね。 ○森永座長  ほかに肺がんについて、議論することはございますでしょうか。事務局のほうではど うでしょうか。 ○職業病認定対策室長  ちょっと確認ですが、ただいまの議論は、曝露歴の情報が得られない認定にあたって は、一義的には画像所見で決めるべきであろう。CTの胸膜プラーク所見やX線写真で のfibrosis(線維化)の所見ということでいいのですね。2番目はそれ以外の押さえと して、5,000本、あるいは200万本、あるいは5本という、そのor、or、orを押さえと して置くというのはよろしいわけですね。 ○森永座長  はい。 ○職業病認定対策室長  そして、最後にいま座長がおっしゃったクリソタイル(白石綿)はクリアランスの問 題とかいろいろあるのだけれども、それは5,000本で仕方ないという理解でよろしいの ですか。 ○森永座長  いや、いまのところはそれ以上のデータがないので、石綿の種類別に基準を作るのは できないと思います。我々もそれだけのデータにいろいろ当たってみましたが無いし、 ヘルシンキクライテリアのほうでもそこまではできていないわけです。我々だけが特別 なオリジナルなデータを作ることもできないので、これはヘルシンキクライテリアをそ のまま採用するしかないという判断です。そういうことでよろしいですね。  もしよろしければ、肺がんと中皮腫以外の疾患についても議論をしなければいけませ んので、次に石綿肺についての議論に入りたいと思います。石綿肺は高濃度曝露であれ ば起こるということと、レントゲン写真でいわゆる石綿肺に特有な不整形陰影は、曝露 から10年以上経過してはじめて大体わかるのだという理解は、臨床の先生方はよろしい ですね。もう1つ環境サイドの問題として、いわゆる普通の環境曝露で石綿肺が起こる のかどうかということなのですが、この点については先ほどのEnvironmental Health Criteriaでも、一般的にはないという話でした。三浦委員、何かコメントはありますか。 ○三浦委員  一般的にはもう石綿肺はない。ただ、本当に特殊例ではあると思うのです。 ○森永座長  特殊例とはどういうものですか。 ○三浦委員  私が昔経験したのは、趣味で焼き物をやっていて、炉にアスベストを詰めて、家で毎 日やっている方、お一人だけです。ただそれは本当に特殊な例です。 ○森永座長  文献的にも今回の資料のどこかに書いてあったと思うのですが、エリオナイトという 石綿に非常によく似た天然鉱物で、トルコの問題ですけれども、たしか住民の方で石綿 肺と同じような所見のある人が結構いたという論文はあるのです。それは家の漆喰にそ れを使うとか、道路にそのようなものが撒かれているなど、非常に特殊な例です。その ような場合については石綿肺もあり得るということだと思うのです。岸本委員、三浦委 員、いかがでしょうか。 ○岸本委員  私のほうでは若い間に、例えば4年間、5年間石綿の吹き付けをやったとか、造船で 艤装をやって、その後、20年、30年は全くそういう作業はしていないという方に発生し たPR3型の石綿肺を、最近2例ほど経験しました。やはり健診では肺がんに皆さん注 目されて、肺がんがあるかないかだけを見ていますので、間質性肺炎の石綿肺ですと、 健診を受けても異常なしという形で返されていまして、驚いた例があります。その方は お兄さんも同じような作業をしていて、60歳で特発性間質性肺炎で亡くなったとお聞き したのですが、多分、同じような状況だったと思います。いま石綿の吹付作業はほとん どないとは思うのですが、過去、そういう例がある。そういう例で70歳になって石綿肺 という診断をされた人もいますので、その辺りは過去の職業歴を聞いてみることは非常 に必要になってくるのではないかと思います。 ○森永座長  職業歴のある石綿肺については労働安全衛生法で管理区分は決まっていますので、そ ちらはあまり問題にしなくてもいいと思います。果たして石綿肺といっても1/0であれ ば、いま議論しているような1/0はそれほど自覚症状もないから、逆に診断されない。 ○三浦委員  その可能性は多いです。 ○森永座長  そうですよね。ですから、3型はまた別ですが、1型は肺機能がびどく悪くなって、 クォリティ・オブ・ライフが落ちて、何かサポートしなければならない病気ではないと いう理解でよろしいですね。 ○三浦委員  そうですね、ただ、一般環境の曝露では2型までは起きないと考えていいと思います。 ○岸本委員  石綿肺は職業歴を詳細に聞けば、例えば30年、40年前、あるいは数年間の高濃度曝 露でもあり得るということなので、ほとんどが労災で話ができるのではないかと思いま す。 ○森永座長  基本的には普通はレントゲン写真で早期に診断がつきますよね。3型でつくのはよほ どのことで、普通は1型で、1/1ぐらいでつきますよね。 ○岸本委員  私もクボタの神崎工場でasbestosis(石綿肺)という診断がついた方を3人診せてい ただいて、本当かどうかと思って診たのです。それはやはり石灰化胸膜プラークだけで あって、肺の線維化はCTで見てもなかったので、あれだけ近隣曝露があった所でも、 石綿肺というのはないのだということになると、三浦委員が言われたように傍家庭内曝 露はどうかわかりませんが、普通の環境曝露、近隣曝露等ではないと考えていいのでは ないかと思います。 ○森永座長  あっても重症の石綿肺ではないでしょうね。 ○三浦委員  ただあるとすれば昔経験した症例で、一人親方の大工さんが石綿肺があって肺がんに なったことがありました。ものすごいほこりで、軽カルボードを自宅の作業場で切って、 家族が「お父さん窓を開けてやりなさいよ」と言ったら「こんなほこりを隣近所にばら まけるか」と言って閉めていた。それで掃除も「お前ら近寄るな」と言ってご自身でや っていたというのです。そういう家族内曝露みたいな例はどこかにあると思うのです。 ただ、いまはそのような作業を自宅でやる方はほとんどないので、昔に遡ったことであ るかもしれません。それは高濃度曝露ですから、聞けば多分わかると思います。だから 皆無であるとは言えないけれども、極めて特殊な例で、聞けば大体臨床的にわかります。 ○岸本委員  そうですね、私もいま三浦委員がおっしゃったような症例は経験をしたことがありま す。一人親方で労災をかけていない、特別加入していない方で、asbestosis(石綿肺) で慢性呼吸不全を合併して亡くなられた人がおられましたが、労災保険で給付すること はできませんでした。これは、新法において、労災保険以外で補償する範疇に入るので はないかと思います。 ○森永座長  石綿管理区分があって、あるいは特別加入者であれば管理区分相当ということで健康 管理のシステムは一応できているわけですね。ですから、石綿肺で労災補償という場合 は、従事年数、曝露期間も特に問題にしていないです。だから、それはいまの労災の基 準で石綿肺については扱えばいいという判断でよろしいですね。 ○保健業務室長  労災曝露が確認できないような難しいケースの場合は、先ほどの業務にもありました が、肺線維症との区分で、これは健康管理手帳制度でずっと管理されてきて、経過の画 像もあるような方であれば、先ほどの初期画像も見られるということがあっても、そう いう制度に乗れなければ、画像的に診断することは難しいでしょう。 ○森永座長  だから、制度に乗れなければなかなか難しいでしょうね。だけど胸膜プラークがある 人については、石綿を吸ったことは間違いないわけですから。これは肺がんのリスクは トータルで1.6倍で、そういう労働者については今のところ健康管理手帳のシステムが あるわけです。ですから、そのルールにできるだけ乗せていくことをやればいいわけで、 環境のほうでそういうものも考えるかどうかだと思います。これはこの検討会で議論す る議題ではありませんので、それ以上私も触れませんが、課題は課題としてあるという ことぐらいでしょうね。今日は既に前回の肺がんの議論について、確認、まとめは冒頭 でやりましたので、改めて今日は私、座長からはまとめは行いません。一応の指針案と しては胸部レントゲン写真、またはCT画像で明らかな胸膜プラークがあって、なおか ついわゆるじん肺でいうところの1/0以上の相当の線維化の所見がある肺がんの患者に ついては、救済する対象にしたらいいのではないかという合意が、委員の間では得られ たというまとめて終わりたいと思います。  いまのところ特に重篤な石綿肺は、環境曝露で出てくることはあまりないので考えな くてもいいのではないかということです。今日はあまり時間がありませんでしたので、 肺がん、中皮腫以外の疾患については、議論を踏まえた上でまとめていくという作業を 次回にやりたいと思います。  報告書のほうも、中皮腫と肺がんのことについては議論が大体まとまりましたので、 それについて報告書を作っていく作業が要りますので、これは座長と事務局と委員の先 生方に相談して分担を決めて作業を始める段取りを進めていくということで、委員の先 生方にはお願いしたいと思います。  肺がん以外については次回に行うと、報告書の議論が4回ではできなくなるというこ とになりますので、もう1回やらなければならないなと私は思っています。その日程を 考えていただいたほうがいいと思うのですが、事務局のほうはよろしいですか。 ○職業病認定対策室長  後ろのほうのスケジュールがいろいろありますので、もう一度先生方とは調整させて いただきまして、なるべく早い時期にセットできるものならば、是非そういうことでお 願いしたいと思います。 ○森永座長  2月の上旬ということでよろしいでしょうか。 ○職業病認定対策室長  ええ、それぐらいだったら、私どもはよろしいですね。 ○環境保健部長(滝澤)  私どもも認定基準に関して関係審議会に最終的に諮問するのは2月10日をいま仮置 きにしています。したがって、その手前であれば、日程的にあるいは調整がつけばもう 1回というのは不可能ではないと思っています。 ○森永座長  どうしても間に合わなければ、最終的には持ち回りで仕方がないですが、できればこ ういう大事な問題ですので、全員が揃うことがなくても、かなりの先生が揃う日を設定 して、報告書の検討も含めてやるということで、時間がありませんので、事務局で日程 調整をお願いします。以上で今日の検討会は終わりましたので、事務局に司会をお返し します。 ○水・大気環境局総務課長補佐  次回、第4回の検討会の日程は、1月24日(火)の15時から開催の予定となってい ます。場所については追ってご連絡させていただきます。 ○森永座長  わかりました。次々回はいまから調整していただくということですね。 ○水・大気環境局総務課長補佐  本日はどうもありがとうございました。これをもちまして本日の検討会を終了させて いただきます。               【照会先】                労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室                職業病認定業務第二係                TEL03−5253−1111(内線5571)