05/12/14 児童自立支援施設のあり方に関する研究会第5回議事録        第5回児童自立支援施設のあり方に関する研究会 議事録 日時:2005年12月14日(水)13:00〜16:30 場所:厚生労働省13階 専用第16会議室 出席者:  委員   津崎座長、岩田委員、小木曽委員、瀬戸委員、野田委員   服部委員、藤岡委員、山内委員、吉岡委員  オブザーバー   杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長、   八並東京理科大学教授、今泉文部科学省初等中等教育局児童生徒課長補佐  事務局   白石審議官、清川家庭福祉課長、山本虐待防止対策室長、   相澤総務課長補佐、佐藤児童福祉専門官、   芝海家庭福祉課措置費係長      議事:  1. 開会  2. 議題    (1)施設機能について      1通所機能・一時保護機能・短期入所機能のあり方      2リービングケア・アフターケアのあり方      3保護者の指導・支援のあり方      4相談機能(児童家庭支援センターの附置等)のあり方      5被虐待児童やADHD等の発達障害を有する児童等への自立支援・援助のあり方    (2)関係機関等との連携について      1児童相談所・学校・民生児童委員・医療機関等関係機関との連携のあり方      2少年院・法務省との連携のあり方    (3)その他  3. 閉会 配付資料:  ・児童自立支援施設のあり方に関する研究会 第5回議事次第  ・座席表  ・資料1 児童自立支援施設のあり方に関する研究会検討課題  ・資料2 「あいち小児保健医療総合センター杉山心療科部長兼保健センター長から の提出資料」  ・資料3 「東京理科大学理学部第一部教養学科八並教授からの提出資料」  ・児童自立支援施設のあり方に関する研究会【参考資料】 ○芝海家庭福祉課係長  瀬戸委員及び野田委員が遅れているようですけれども、定刻となりましたので、ただ 今から第5回児童自立支援施設のあり方に関する研究会を開催させていただきます。  本日はご多忙のところ研究会にご参集いただきまして誠にありがとうございました。 私は本日の研究会の進行役を務めさせていただきます家庭福祉課の芝海と申します。よ ろしくお願いします。  本日の研究会の委員の方の出席状況のご報告ですけれども、ご都合をつけていただき まして、委員9名全員ご出席いただけると聞いております。それから小木曽委員は所用の ため14時以降に到着すると聞いております。また、本日は急遽30分延長させていただく というご連絡をしたために、藤岡委員は15時半過ぎに退室される予定と伺っております ので、ご承知置きください。  本日は、入所児童への治療的なかかわりや、医療機関との連携についてお話を伺うた めに、「あいち小児保健医療総合センター」の杉山心療科部長兼保健センター長に、そ れから、学校等の教育関係機関との連携についてお話を伺うため東京理科大学理学部第 一部教養学科の八並教授、それから文部科学省初等中等教育局児童生徒課の今泉課長補 佐においでいただいております。  それでは、議事に入りたいと思います。津崎座長、よろしくお願いします。 ○津崎座長  それでは、最初に本日の資料の確認及び内容の説明を事務局からお願いします。 ○芝海家庭福祉課係長  それでは、資料の確認をさせていただきたいと思います。上から順番に「第5回議事 次第」、「配付資料一覧」、「座席表」、資料1「児童自立支援施設のあり方に関する 研究会検討課題」、資料2「あいち小児保健医療総合センター杉山心療科部長兼保健セ ンター長からの提出資料」は18枚のつづりになっております。資料3「東京理科大学理 学部第一部教養学科教授の八並教授からの提出資料」ということで、こちらは2分冊に なっております。最後に「児童自立支援施設のあり方に関する研究会【参考資料】」と して16枚のものを付けております。  お手元に以上の資料がない場合はお知らせください。 ○津崎座長  それでは、資料の説明を佐藤児童福祉専門官よりお願いします。よろしくお願いしま す。 ○佐藤児童福祉専門官  本日の検討課題は、ご案内の通り「施設機能の充実・強化」と「関係機関との連携に ついて」です。事務局で用意した資料を説明させていただきます。  まず参考資料の1ページ目です。これは、「医療・心理スタッフの配置状況及び一時 保護委託受入状況」です。児童自立支援施設の入所児童の傾向として、発達障害や虐待 を受けた児童の増加が指摘されております。  本日は「あいち小児保健医療総合センター」の杉山先生から、発達障害や被虐待と行 為障害の関係、それからその対応について助言をいただくことになっています。  児童自立支援施設の職員スタッフの現状についてです。まず職員の配置状況ですが、 医師について見てみますと、内科・精神科・小児科と並んでいますが、精神科について は、下の網かけの合計欄ですが、51施設・約9割の施設に配置されております。このう ち常勤が4施設です。また心理士については、右側になりますけれども、常勤が12施設、 非常勤が16施設で合計28施設に配置されています。全施設の約5割に当たる施設に心理 士が配置されているということになります。No.33のところ、小さくて見えにくいので すけれども、この施設のように常勤の精神科医と7人の心理士が配置されている施設も あります。その他の医療スタッフについては、内科医は48施設に配置されております。 これは非常勤です。それから小児科医は7施設、歯科医は20施設です。その他看護師・ 保健師が配置されている施設は24施設で全体の41%です。  次に、右側に記載されております「児童自立支援施設の一時保護委託の受入実績」で す。これは37施設で実績があります。6割を超える施設で一時保護委託が行われている ということです。これは平成12〜16年の実績ということで313件ということになってい ます。  続きまして2ページ目以降ですけれども、一時保護委託受入ケースの概要がここに載 っております。9ページまで参考に掲載しておりますけれども、一時保護委託の典型的 な事例として2ページ目のNo.9を見ていただきたいと思います。これは児童相談所によ り児童自立支援施設への入所が適当と判断されたが保護者の同意が得られず児童福祉法 28条の申し立てを行ったケースで、一時保護の長期化が見込まれることから児童相談所 の一時保護は難しいという判断で児童自立支援施設に一時保護を委託したケース、うま く活用したケースです。それからあともう一つの一時保護の典型的なパターンとして は、子どもの粗暴行為等によって児童相談所の一時保護所での対応がハード・ソフト面 で難しいというような場合があります。  10ページをご覧ください。これは児童家庭支援センターの概要です。この児童家庭支 援センターは平成9年の児童福祉法の改正により創設された児童福祉施設です。児童家 庭支援センターは、ここに書いてありますように、地域に密着した相談・支援体制を強 化するため、虐待や非行などの問題について子どもや保護者等から相談を受け、助言や 支援を行うということです。この児童家庭支援センターは児童福祉施設に附置されるこ とが一つの設置条件となっております。本体施設との連携によって24時間・365日の相 談体制と、この本体施設機能を活用した緊急一時保護等が期待されているということで す。  6「職員配置」を見ますと、相談・支援を担当する職員が2名(常勤1名、非常勤1名)、 それから心理療法担当も1名、非常勤で配置されております。本年11月現在、実施箇所 は全国で58カ所です。  11ページをご覧ください。児童家庭支援センター一覧です。ここの上のほうに書いて ありますように、北海道が一番多くて8カ所設置されております。どのような児童福祉 施設が附置されているかということですけれども、施設種別のところを見ていただきま すと「養護」と書いてあります。これが児童養護施設ですが、53施設で全体の9割にな っております。乳児院が3施設、それから情緒障害児短期治療施設が2施設となっており ます。現在のところ児童自立支援施設はありません。  続きまして、12ページをお開き願います。これは全国児童家庭支援センターの相談内 容種別数で、平成16年度の実績です。相談総数は1万3,608人、一施設平均の相談者数は 266.8人です。相談内容別で見ますと、養護相談が全体の22%(58.7人)、続いて性格行 動が12%(33.3人)、しつけ相談が11%(29.9人)、虐待が7%(17.9人)、非行については 3%(7人)となっております。  非行相談については多いのか少ないのか明言はできませんけれども、仮に児童自立支 援施設が児童家庭支援センターを附置し相談を行った場合、専門性を生かした非行相談 が可能となって、他の児童福祉施設と異なる相談機能が発揮されるのではないかと思い ます。  13ページをお開き願います。後ほど、東京理科大学の八並先生から学校教育との連携 などについての話がありますけれども、これは現在の学校教育実施状況の一覧です。4 月現在、31施設で分教室・分校方式による学校教育を実施しているということです。一 番下の※印に書いていますけれども、58施設中1施設については義務教育終了後の児童 を対象としているため数には入っておりません。  続きまして、14ページです。これは自立援助ホームの概要です。ここにも書いてあり ますように、義務教育を終了した後児童養護施設等を退所し就職する児童等に対して、 自立援助ホームにおいて相談や生活指導・就業の支援を行い、また退所した児童につい ても相談・援助を行うというものです。利用している子どもには児童自立支援施設ある いは少年院を退院した子どもも多くおります。実施主体は都道府県・指定都市で本年11 月現在、実施箇所数が35カ所となっております。  その一覧が、次の15ページに出ております。東京都が10カ所それから鳥取県が3カ所 あとは2カ所ずつというところもありますが、全般的に都市部での設置が比較的多く見 られます。  続いて、16ページをお開き願います。これは国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員 養成所社会人入所案内です。研究会では養成所のあり方も検討していただいています。 今回、受験資格等においてご意見等を一部反映させていただいております。募集のPRも 兼ねて、後ほど養成所の所長である山内委員よりご案内しますのでよろしくお願いしま す。事務局の資料説明は以上です。  山内委員お願いします。 ○山内委員  それでは、お手元の資料の16ページの国立武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所 社会人入所案内について説明をさせていただきます。前にこの養成所について、委員の 方々からもいろいろなご意見をいただいているのですが、実は私ども以前に、この養成 所のあり方検討委員会というものを立ち上げて、今の時代のニーズに合った養成のあり 方についていろいろな角度からご議論をいただきました。その報告書が、前にもあり方 研究会のところの資料でも出させていただいたのですけれども、平成16年の1月にこの 検討会の報告をいただいております。その中で、特にこの養成所の養成部門のあり方に ついて、今のニーズに合った入所の対象の方々について検討すべきだというご指摘を受 けておりました。  3点ほどありまして、一つは、夫婦制の職員の人材確保に努める。夫婦単位での入所 のあり方について検討すべきであろうと。それから2点目が、今日出している社会人枠 の創設です。従来は養成所の入所枠ではない別枠で、いわゆる専科生として数カ月ある いは1年にわたって研修をしていただくということがあったのですけれども、そういっ た専科生として実績があった児童福祉等従事者の受け入れを社会人枠として設け、入所 試験も別に実施するべきである。これにより幅広い人材確保が可能となる。また夫婦単 位の入所や、既に児童福祉施設等で勤務していて新たに入所を希望する者などを対象と することが可能になる。正式な入所試験を行うことを前提に、卒業後は児童自立支援専 門員等の資格付与を行う。こういったことが指摘されていました。それから3点目が、 人所年齢の引き上げです。この当時は26歳未満が入所年齢要件だったのですけれども、 これからのニーズに合わせて、より社会経験のある者を活用すべきであるということ で、既に年齢を2歳引き上げ28歳未満としました。  今回16ページに載っているのは、今申し上げた2点目の社会人入所の枠を今までの従 来枠とは別に創設するということです。  16ページの養成期間は一般と同じで1年です。募集人員は今回も一般を25名募集させ ていただきました。社会人枠については、この内の5名程度とさせていただきました。  それから受験資格ですけれども、(1)・(2)のどちらかの条件を満たした方を入所対象 者とします。(1)は読んでいただければわかりますように、年齢が35歳までということ です。児童自立支援専門員の採用試験等を見ますと、年齢的には全国的に35歳から40歳 ぐらいまで採っていただいている所がありますので、そういった試験にも対応できるよ うに一応35歳までの方については幅広く応募していただこうと。つきましては、いわゆ る社会人として就職をしていた実績を出していただくということにしております。それ から(2)は実際に今各都道府県の職員でありながら、児童福祉法上の資格が十分ないと いう方を、今までは専科生として引き受けてきたのですけれども、その専科生の方々に ついて正式にこういう形で入所していただこうということです。この方々については、 入所時において22歳以上であること、当該の職員あるいはその職員でなくても児童自立 支援施設で非常勤として働いてきて、将来、児童自立支援施設の職員となるであろう方 を含めて都道府県ないしは政令指定都市の推薦を受けて、入所試験を受けていただこう ということです。この(1)・(2)どちらかの条件を満たす方に応募していただけるという ことで、かなり幅広い方々が応募できるようにしたわけです。  具体的には、「5.入所試験」にありますように、一次試験・二次試験それぞれ一般の 入所試験とさほど変わりはないのですが、学科については、一般の入所試験には国語・ 英語・数学などもありますけれども、社会人枠は一般教養のみにして、小論文での面接 をすることなどを重点にしております。  試験日は、平成18年2月8日の午前・午後です。出願期間は平成17年12月15日から平成 18年1月27日までとなっています。  願書は私どもの国立武蔵野学院に直接請求していただくか、あるいは私どもの方で各 都道府県、各都道府県の児童自立支援施設、各都道府県・政令指定都市の社会福祉協議 会に配布させていただきますので、そちらで受け取っていただきたいと考えています。  新しい試みですのでわからないところもあると思いますが、私ども国立武蔵野学院の 担当に電話・メール等でお知らせいただければ詳しく回答させていただきたいと思って います。  なお、私ども国立武蔵野学院のホームページ上でも、この社会人入所についての説明 を閲覧できますので、よろしくご理解をいただきたいと思います。 ○津崎座長  ただ今の、佐藤児童福祉専門官並びに山内委員からの説明について、何かご質問・ご 意見がありますでしょうか。特にありませんか。なければ、本日の議題の一つ目である 施設機能について、これから論議に入って行きたいと思いますが、その前に、いわゆる 被虐待児童やADHD等の発達障害を有する児童等への援助のあり方、あるいは二つ目 の議題になりますけれども、関係機関等との連携という観点から医療機関との連携とい う点も含めて、「あいち小児保健医療総合センター」の杉山心療科部長兼保健センター 長より説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  本日は、こういう席にお招きいただきありがとうございました。私自身の自立支援施 設とのかかわりは6年ほど愛知学園の嘱託をしていた時期があります。それから、この 「あいち小児保健医療センター」は2001年に開院した新しい子ども病院なのですが、こ こで虐待外来を持っていまして、そこで被虐待児と集中的にかかわるというか治療に携 わることになりました。あいち小児保健医療センターで治療を行った後や治療を行う前 の自立支援施設とのかかわりは非常に今密接になってきています。  この資料2をご覧いただきまして、このパワーポイントに沿って説明させていただき ます。一枚目の下の方は、あいち小児保健医療総合センターの紹介ですが、2001年11月 に開院した新しい子ども病院で、一番大きな特徴が院内に小児保健センターを持ってい ることです。ここに保健師が常駐していまして、外とのつなぎ役という窓口になってい ます。もう一つは心療科・児童精神科が大きな柱になっていることです。これは子ども 病院でも心療系というか児童精神科を持っていないところがあるのですが、この理由は なぜかと言いますと、大体こども病院というのは赤字になるのですが、児童精神科とい うのは赤字中の赤字なのです。ただ、平成16年の統計を出してみて驚いたのですが、あ いち小児保健医療総合センターの心療科・児童精神科は臨床科の中で収益がトップなの です。つまり、個々の単価は少ないのだけれども、それくらい患者が集中しているとい うことなのです。心療科常勤医師が4名、レジデントが1名、それから常勤の心理士が5 名、これでも足りなくて非常勤の心理士を3名雇っています。  それから心療系の病棟を持っています。次のページをめくってください。ここは火曜 日から土曜日という勤務体制になっていまして、我々の取った戦略というのは特殊外来 を4つ並べるというやり方です。火曜日が心身症、水曜日が不登校、木曜日が育児支援 という名前の虐待外来で、金曜日が発達相談です。この戦略を取った理由というのは、 これをしないと恐らく発達相談の子どもで全部占領されるだろうという予感があったか らです。実際にオープンしてみますと、案の定、金曜日が非常に込み合っています。こ のパワーポイントの下の方に書いてありますが、待機患者が、心身症・不登校が1カ月、 育児支援これは虐待の子を待たせたら病院の存在意義を問われますから2週間以内に診 ています。発達が3年です。今申し込むと「2008年にいらっしゃい」という状況になっ ています。開き直ってはいけないのですが、1年を超える待機というのは、これは構造 的な問題ですからどうしようもありません。  バイパスをいっぱい作って、自分の首を絞めるようなことをいっぱいやっているので す。  子ども虐待のケースは、大体年間130人前後です。ここの一つの大きな特徴というの は、親子で並行して診ているということです。これについては後で申し上げます。  この389名というのは開院してから3年5カ月ぐらいのところで、こども虐待で受診し た子に関しての併存症というか精神医学的な診断をカウントしてみたのがこの表です。  まずこの外来をやってみて一番驚いたことの一つが、発達障害の診断の付く子どもが 非常に多いということです。広汎性発達障害だけで26%います。ADHD(注意欠陥多動性 障害)が23%、ただしこれは虐待系の多動性行動障害を含んでいます。この虐待系の多 動性行動障害とADHD(注意欠陥多動性障害)の鑑別については後にお話をさせていただ きます。それから反応性愛着障害これは当然多くて50%、それから解離性障害も非常に 多くて51%、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が32%、そして行為障害(非行)も30% です。こんな結果になったのですが、今日ここに呼ばれた一つの理由というのは、広汎 性発達障害の問題をお話しする事ではないかと考えていますので、広汎性発達障害とそ れに絡む触法の問題について、お話をしたいと思います。  次のページをご覧ください。広汎性発達障害というのは要するに自閉症症候群です。 「自閉症とは何か」というのは、社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の 障害、想像力の障害に結びつく行動の障害は一般的に「こだわり行動」と呼ばれていま すが、この3つを生まれつき持つ先天性の発達障害です。これはそれぞれ自閉症の社会 性の障害、自閉症のコミュニケーションの障害という具合に全部その独特の形をとって います。この3つは、俗に「Wingの3徴候」と呼ばれまして、三つが3点セットで一緒に 起きてくることが知られています。Wingというのは自閉症の研究者です。それプラス、 独特の知覚過敏性の問題であるとか、独自の認知構造と発達の道筋を持っているという ことが知られています。  下にあるのは、最近愛用している広汎性発達障害の概念の富士山の図です。実は、自 閉症症候群というのが世界的に急激な増加を見せていまして、罹病率のことは後で申し 上げますが、なぜかということの一つの理由に、昔の自閉症の概念というのは富士山の 山頂のような非常にピュアな自閉症に限定していたということがあります。理由はいろ いろあるのですが、70年代の罹病率研究を見ますと、研究の第一段階でひっかけた自閉 症を使って次の研究をやっているのです。そういうパターンでやりますと、なるべくピ ュアな自閉症に絞り込もうという力が働くのです。ところが臨床的に同じ問題を抱えた 子どもたちというのは臨床的ないろいろな裾野を持っていまして、知的な障害が重たい グループにも高いグループにも広い裾野を持っているということがわかってきました。  次を開けてください。1990年代の後半から1%前後の罹病率が出ていたのですが、2000 年代には特に日本から次々と1%を超える罹病率報告が相次いでいます。豊田の子ども 発達センターから1.7%、このうち高機能群(知的な遅れのないグループ)が1.1%。大 府市で通常学級の全小学生の調査をしたのですが、これは知的な障害のある子を除外し ていませんが、通常学級の中にPDD(広汎性発達障害)の診断基準を満たす子だけで1.8 %いました。横浜市の本多先生のところで1%以上、それから一番新しいデータが2005 年、名古屋市の西部地域療育センターで2.1%、うち高機能群が1.5%という結果が出て います。実は、同じ地域で10年前に出した同じ罹病率のデータは1/10です。そのままを 受け取りますと、10年間で10倍に増えたということです。これは概念の拡大ということ が非常に大きいのだと思いますが、それにしても確かに増えています。臨床的には今、 どのクラスにも一人いるというぐらいの感じが実感です。  高機能広汎性発達障害とはどういうグループかといいますと、知的な遅れのない広汎 性発達障害(自閉症症候群)です。IQが70以上のグループを我々は規定していまして、 その理由はIQ85以上ではなくて、教育がうまくいけば広汎性発達障害というのは知的な 能力が上がってくるからです。高機能自閉症とアスペルガー症候群と高機能の非定型自 閉症が含まれます。アスペルガー症候群というのは何かというと、これは自閉症マイナ ス言語障害です。言語コミュニケーションの障害がないわけではないのですが、軽いグ ループをアスペルガー症候群と呼んでいます。非定型自閉症というのは、自閉症症候群 の特徴を持っているけれども、全体として社会性の障害もコミュニケーションの障害も こだわりも軽いものが非定型自閉症という診断になります。  次をお願いします。先生方はご存知のように、今、社会問題化している高機能広汎性 発達障害の触法例です。これは例の神戸の榊原事件から始まりまして、毎年のように、 ずっと続いてしまっていて、憶測で言ってはいけませんが、「タリウム少女」もそうで はないかと。マスコミもこういう問題というのはこれに関連しているタイプのものと、 すぐに気づくようになりまして、すぐに電話がかかってくるのです。それから、それ以 外に強制わいせつ事件などの症例が多数出ています。  下の386という数字は高機能広汎性発達障害の子どもたち386人ということです。これ は全部事件例です。あいち小児保健医療総合センターは高機能広汎性発達障害の治療セ ンターとしても機能していまして、年間新患が約300人です。僕自身の新患だけで80〜 100人の勢いで毎年増えています。この386人というのは高機能広汎性発達障害で私が見 ているケースです。この中で、触法行為、非行あるいは罪を犯した者は18名いました。  次をめくってください。その18例の内訳をこの「その1」「その2」の二つの表にまと めていますが、診断的にはさまざまです。そこにはIQは書いておりませんが、IQもさま ざまです。IQ120代の子から70少しの子どもまでいます。備考のところをご覧いただき たいのですが、子ども虐待が結構多くて7人います。そして、不登校とか緘黙とか非常 に適応状態の悪い子が多いのです。  次に、対照群との比較をした表がありますが7ページ目をご覧ください。本来はパラ メトリック・ノンパラメトリック検定をやらないといけないのですが、非常に対象数が 多いものですから、少し安易なやり方をしました。対照群の選定方法としてはフォロー アップ症例の中から、同年齢、同性、同下位診断で、できるだけIQが近い者を同数選び ました。こういう選定の仕方をしておりますから、IQは下がりません。GAFと次に書い てあるのは、100点満点で現在の適応の状態をカウントする表です。アメリカの精神医 学会が作成した「精神疾患の診断と統計のためのマニュアル」の第5軸に現在適用状態 という評価表がありますが、それがこのGAFスケールです。ここが非常に触法行為群の 値が悪いです。それから早期診断を受けているものが3対14ということで、ここに統計 的な差が出まして、要するに触法例というのは適応水準が不良で、早期診断を受けてい ないということが出てきます。  触法行為に共通する要因としてはまず診断の遅れです。診断の遅れがあるために不適 切な対応をとられている。その不適切な対応の代表が迫害体験です。実は二つありまし て、一つは子ども虐待、もう一つが集団教育でのいじめです。それから、それに加えて 現在の極端に不良な適応状態です。こういう迫害体験にこの極端に不良な適応状態が加 算したときに触法行為が起きやすいということが浮かび上がってきます。  これは全部早期対応が可能な問題ではありません。早期診断・早期療育をうたってい て、新患を3年待たせているというのは、もうこれ以上ない自己矛盾なのですけれど、 これを解消するためには児童精神科医を増やすしかないのです。乳幼児健診も改善が必 要になってきます。それから教育におけるこういうグループへの理解と対応の促進が絶 対に必要になってきます。  次をめくってください。ここからが虐待に絡む問題でして8ページ目の上の方ですが、 あいち小児保健医療総合センターにおける虐待対応の新しい点というのは心療科に専門 外来を開設したこと、それから親子の平行治療を行っていること、それから小児科病棟 なのですが、小児科病棟の中に13床の閉鎖ユニットがありますので、閉鎖ユニットを持 った小児科病棟での入院治療が可能です。それから、院内の小児保健センターを中核と する虐待対応チームが作られていまして、医師、心理士、作業療法士、理学療法士、看 護師、保健師、ソーシャルワーカー等によってある種の包括的な治療を行なっていま す。  その下の表が開院以来、2005年の3月までに診療を行った子ども虐待の一覧でして、 この青で書いているのが親の側にカルテを作った例です。15%ぐらいは親です。総数453 人で年間を平均しますと130〜140名くらいの新患を扱っています。私は常々どういう問 題も100人以上診ないと見えてこないと思っています。この短期間に数百人を集中して 診る事ができまして、その結果、最初は発達障害が非常に目立つということに私自身は とらわれていました。  次の9ページをご覧ください。これは親の数を引いた子どもの総数389名の中で、実に 224名(57%)に発達障害の診断が可能でした。特に、IQ70以下の者が全部で32名しか いません。つまり大多数が知的な障害を伴わない軽度発達障害です。軽度発達障害が虐 待の高リスクになるということがこれからも浮かんでくるのですが、先ほど申し上げた ようにADHDの中には過覚醒による多動を含むわけです。これがなぜ問題なのかと言いま すと、過覚醒というのは解離があります。実は解離性障害というのはADHDの除外診断な のです。だからもし、厳密に機械的に診断基準を用いますと、解離を伴った過覚醒のあ る多動性障害というのはADHDの診断から除外されるのです。  子ども虐待に見られる発達障害と反応性愛着障害というのは実は非常に鑑別が難しい グループでして、第一が反応性愛着障害抑制型、抑制型というのは対人関係を避けてし まうグループです。これと高機能広汎性発達障害性というのは実は一番鑑別診断が難し い組合せであることが知られています。  有名な例はチャウチェスクベイビーの例なのです。これは先生方、ご存じですか。ル ーマニアのチャウチェスク政権下で多くのストリートチルドレンがいて、その中に非常 に自閉症が多くて、4〜5割近くいたのです。その一部がチャウチェスク政権の崩壊後に ヨーロッパに里子に行って、そうしましたら半分ぐらいが治ったという、つまり自閉症 をいうのは誤診であって反応性愛着障害だったという例です。  それから反応性愛着障害の脱抑制型、これはだれかれ構わずベタベタするグループと ADHDというのが、非常に診断が難しいグループです。特に、虐待は世代間連鎖の問題が あります。世代をまたぐと生物的な保因か環境因か全くわからなくなってしまうという 条件があります。  次をめくってください。時間の関係で、これは症例を読み上げることはいたしません が、10ページ目に書いた「その1」「その2」というのは、これは同じ年齢で同じ施設で 同じように反応性愛着障害と高機能広汎性発達障害が鑑別になったグループの二人で す。実は、たまたま同じ施設にこの組合せがあったもので持ってきたのですが、結局結 論だけ言いますと1年ぐらい治療していくうちに片方は反応性愛着障害だったことがわ かって、これは状態が著しく変わりました。下の方は、神様からの指示を受けるといい ますか、まるでそうではないような症状を出していたのですが、実はワンパターンの行 動が全然変化がなくてこちらの方は高機能自閉症だということが、1年くらいの治療経 過の中でわかってきました。  次の11ページ目をご覧ください。反応性愛着障害と広汎性発達障害の鑑別は比較的簡 単とは少し言い過ぎなのですが、治療を行いながらフォローアップすれば判別はできる わけで、反応性愛着障害が抑制型から脱抑制型に変化をするということや、対人的なひ ねくれ行動等の対人関係の持ち方が反応性愛着障害の方が敏感です。  問題はADHDです。11ページ目の下に反応性愛着障害とADHDの類似点をあげています。 まず、多動性行動障害があることは同じです。ハイテンションがあることも同じです。 不器用も同じです。スケジュールを立てることができないということも同じです。整理 整頓が苦手ということも同じです。喧嘩も非常に多いです。  12ページ目をご覧ください。鑑別点としてこんなことが出てきます。ADHDには不注意 優勢型、他動性-衝動性優勢型、混合型というのがあるのですが、これはADHDの診断基 準をよく読むと、なるほどと先生方はご理解いただけると思いますが、解離があります とこの不注意項目というのは大体陽性に出るのです。ですから反応性愛着障害の方に不 注意優勢型が多いのに対して、ADHDは混合型が多いという特徴があります。  それから、反応性愛着障害の多動のおき方というのは夕方からハイテンションになる という、ムラが非常にあるのです。不機嫌に黙り込むという時期があるかと思えば、と てもハイテンションになる。それに対してADHDは比較的一日中多動です。もちろん寝る 前に落ち着かなくなるというのはADHDの特徴でもあります。薬物療法は反応性愛着障害 には中枢刺激剤がほとんど効きません。対人関係のあり方が逆説的です。ODD(反抗挑 戦性障害)への移行が反応性愛着障害は非常に多いのに対して、ADHDが多いわけではあ りませんが、比較すると少ない。それから、何よりも解離が反応性愛着障害の場合、ほ ぼ必発をしてきます。それに対してADHDはみられません。もしあれば除外診断になるわ けです。  先ほどの2ページの下にある389人の子ども虐待の併存症を、年齢による発現の視点か ら見たものが12ページ下にあります。まず反応性愛着障害は5歳以下の76%と幼児に非 常に多いという特徴があります。それから解離性障害は逆に5歳以下に25%、6歳〜11歳 で62%、12歳以上になると78%という具合に増えていきます。性的虐待は特に解離が非 常に多くて、実に93%までが解離性障害を併発しています。非行も解離性障害と同じで 75%が12歳以上と、つまりこれも年齢が上がるにつれて多くなる傾向があります。これ は細かな数字は出しておりませんが、統計学的にきちんと優位差が出てきます。  13ページ目をご覧ください。私はこういう結果から、子ども虐待はやはり非常に明確 な臨床的な輪郭がはっきりした推移をするのだということに思い至りました。つまり、 幼児期は反応性愛着障害の臨床像を持ってきていて、それが学童期になりますと多動性 行動障害の型をとって、やがてPTSD症状の出現と解離症状が明確化をしてきて、青年期 になると解離性障害とand/orなのですが非行へと展開していきます。成人期には最終的 に複雑性トラウマの形をとってくるということです。  13ページ目の下に書いているのは、これはヘネシーさんというソーシャルワーカーの 方が反応性愛着障害の子どもに見られる症状としてまとめているものです。これは自立 支援施設で働いていらっしゃる先生はよくご存じの症状だと思います。激怒反応、これ は根底に恐怖と不安がある。欲求不満に自制が利かず反抗的・反社会的。共感・同情心 がないので友人ができない。自分や人生に否定的・消極的。見ず知らずの人に甘え、自 分を愛そうとする人に抵抗する。これが逆説的愛着です。食べ物に難点を示す。良心が 育っていない。これは反応性愛着障害と書いてありますが、明らかな発達(そだち)の障 害です。  次の14ページをご覧ください。それ以外に、この389人を見ていきますとこんな特徴 があることに気が付きます。第一に境界線知能が多い。虐待児で正常知能を出す子ども は稀です。その境界線知能でもその知能に見合った学力を得ることが非常に難しくて、 学習障害をほぼ皆必発のように併発しています。それからパースペクティブの困難で す。スケジュール管理、次に起きることの予想、持ち物の整理整頓ができない。それか ら衝動コントロールの困難。易刺激性、これは前頭前野の機能不全を示唆する症状で す。  下に書いているのはトラウマの長期的な影響なのですが、この2に刺激の弁別におけ る神経生理学的過程の変化というのがありまして、これは幾つかデータが出ています。  15ページ目をご覧ください。被虐待児の神経生理学的な研究なのですが、これは圧縮 したまとめが緑で書いてあるところです。つまりトラウマを単発で受ける場合には、そ れに対してそのトラウマの選択的なフラッシュバックが生じるのですが、継続的に繰り 返される反復性のトラウマの場合には、だんだんその選択性が消えていって、どういう 刺激に対しても即座に反応する傾向が生じてくる。つまり無差別的なフラッシュバック が起きてきて、汎化した過覚醒と覚醒調整困難が生じてくるわけで、これはADHDの臨床 像に重なってくるわけです。これは虐待系の多動性行動障害という具合に考えられま す。  次の16ページをご覧ください。被虐待児の脳画像研究はさまざまなものが行われてい ますが、大多数がサバイバーの研究です。これにはいろいろな理由があるのですが、子 どもの脳は小さいので測りにくいということもありますし、子どもに同意を得るのが難 しいということもあります。それから例えば脳機能研究で一番有効なペットのような放 射性同位元素を使う検査というのは、18歳以下の子どもには倫理的にできないというこ ともあります。唯一明確に出ているのがこの脳梁の研究です。脳梁がなぜ出るのかとい うと、脳梁が早く発達するということと、脳梁は非常に大きい組織なので測定がしやす いということがあります。要するに結論を言いますと、脳梁が小さくなります。虐待記 憶は右脳だというデータがいろいろあります。右と左の脳のこの連結がうまくいかない ということがこれから示唆される結果です。  17ページ目をご覧ください。これは同じグループが、対象者を増やして出したデータ です。この対象は性的虐待の子が多いのですが、こんな具合に脳梁の体積増加が少なく なるという結果が示されています。それ以外にも、脳梁・海馬・前頭前夜・前帯状回・ 上側頭回・眼窩前頭皮質・扁桃体等の異常がさまざまな研究で示されていまして、例え ば脳梁は解離症状に関係しますし、海馬はPTSD症状に関係しますし、前頭前夜は先ほど の実行機能(パースペクティブ)の障害に関係しますし、前帯状回は注意の障害ですし、 扁桃体等は社会性・コミュニケーションの障害に直結してきます。  最後のページです。つまり、数百人を集中して診た結果、結論というのがこれです。 これは厚生労働科学研究で3年間研究費を頂きまして、ありがとうございました。  子ども虐待というのは臨床的な輪郭が比較的明確な類似した臨床像を呈する。年齢に 従って類似した臨床的な経過があって、社会的適応上の困難をもたらす。少なくとも後 年には明確な器質的な変化が生じる。ここで注目を頂きたいのはADHDや自閉症でこれだ け明確な器質的な変化というのは認められていないということです。この発達障害とい うのはどういうニュアンスで受け取られるかわかりませんが、私自身は治療的な介入に よって軽快をして、恒常的な変化に修正が可能だというところに力点があります。  こういう視点から虐待の包括的なケアを考えてみますと、第一が虐待環境からの保 護、これは言うまでもありません。愛着を形成できる愛着対象者の提供。実はこのレベ ルで日本の児童養護施設が非常に困難な状態だということは、先生方ご存じの通りで す。  それから、薬物療法による衝動コントロール、刺激を減らした生活の構造化。これは 「すべての問題行動を抑え込む」という非常に強い姿勢で問題行動を抑えませんと、状 況依存的なフラッシュバックが生じてきて、何度も何度も同じパターンで同じ問題が起 こるということが繰り返されてきます。  それから解離に焦点を当てた精神療法で、これは先ほど申し上げた状況依存的な衝動 行為について内省を促すということです。それから過覚醒状態の統制ということ。これ は一般的な精神療法というよりも、リラクゼーションや脱感作を含めた非常に非定型的 なものが必要になってきます。  それから学習指導と内省促進。これはなぜ問題かといいますと、このグループが学習 障害や境界線児童が多いことは申し上げました。それが何をもたらすかといいますと、 国語力の不足が内省力の不足に直結をして、行動化傾向を促進するという悪循環が作ら れるのです。しかも、年齢に合った学習や学びができていませんから、本人に合わせた 学習が絶対に必要になってきます。これは通常学級では無理です。特別支援教育の対象 だと思います。  それから、運動・作業療法。作業療法士による実践があいち小児保健医療総合センタ ーであるのですが、OT(作業療法士)の方が、非常に面白い感想を述べていました。2年 にわたって性的虐待の子どもの感覚統合治療をお願いしたのです。その結果の彼女の感 想ですが、自閉症は感覚統合で連合野を刺激すると皮質の方につながって積み上げられ ていくというのです。でも被虐待児は、連合野を刺激しても皮質につながらないという のです。脳が幾つかのブロックに分かれていて、ばらばらに動いているのではないか と。これが作業療法士の感想で、僕は唸ってしまいました。  こういうことを考えますと、これらはすべて児童自立支援施設で可能です。発達障害 への最悪の対応は放置であるということを考えてみますと、私は児童自立支援施設とい うのはこれからもますます必要になってくるのではないかと考えます。 ○津崎座長  どうもありがとうございました。  ただ今の説明も踏まえまして今回の一つ目の議題ですが、「施設機能について」各委 員の方々の意見交換をお願いしたいと思います。議事次第の議題(1)「施設機能につい て」に五つの項目があります。(1)「通所機能・一時保護機能・短期入所機能のあり方 」、(2)「リービングケア・アフターケアのあり方」、(3)「保護者の指導・支援のあり 方」、(4)「相談機能(児童家庭支援センターの附置等)のあり方」、(5)「被虐待児童 やADHD等の発達障害を有する児童等への自立支援・援助のあり方」ということですが、 この点に関して各委員の方々から積極的なご意見をいただきたいと思います。いかがで すか。  今の説明で改めて児童自立支援施設運営の仕方の困難さが、より明確になったような 気もしますが、この意見を受け、実際に現在児童自立支援施設を運営なさっている立場 からご意見はいかかでしょう。 ○岩田委員  東京の児童自立支援施設ですが、実際に入所している子どもの中で、このような子ど もの割合が非常に増えてきているという印象は持っています。傾向としては、今までの 我々の施設に入ってきていた子どもとは少し違うタイプだなという印象もあります。我 々は専門的にやっているわけではないのですが、実際に入ってきてADHDの子ども達は集 団生活の中でいろいろな取り組みをします。そういうことをやっていく中で効果は上が っているということは間違いないのです。  ただ、現実には割合が非常に高くなると、今まで施設でしていたいろいろな取り組み を行うのが極めて難しいという状態が起こるのも事実です。場合によっては寮の運営が 崩壊してしまうような状態が出ることもあります。一定の割合の中で、ドクターとの連 携も取りながら、非常に激しい行動をする場合には入院などもお願いをしなければいけ ないということがありますが、そのような時にスムーズにそうすることが可能であれ ば、対応もできるのですが。ですから、支援をしていって効果があるということはそう ですが、それをできる条件というのはいろいろな配慮をし、条件の整備をしていく必要 があるのではないかという感じもしています。 ○津崎座長  他の児童自立支援施設の方はいかがでしょう。 ○山内委員  私ども国立武蔵野学院には、全国の児童自立支援施設から処遇困難な子どもたちが、 約6・7割来ます。その中でも今お話のあったような広汎性発達障害・ADHDの子どもたち がかなり多いというのは実感としてあります。  当学院には児童精神科医が常勤でおりますので、診断やそれに疑わしいという子ども を含めて診ていただいているのですが、当学院に入所している子どもの内、2・3割ぐ らいは、そういう子どもがいます。しかも問題なのは、佐藤専門官からお話がありまし たように、地方の児童自立支援施設では、なかなかきちんとした診断や、そういった場 合の医療的ケアが受けにくい体制にあるということです。しかも、非常勤なり、どこか の病院と連携をしていても、そこへ行くのが月に一回診てもらいに行くとか、一週間に 一回そういう相談に行くとか、そのような形でしか診ていただけない。これは、私ども の学院を宣伝するわけではないですが、生活場面を十分に見ていただかないとドクター もなかなかわかりづらいであろうと思います。杉山先生からお話があったように児童精 神科が非常に少ないのと、そこが非常に混んでいるということもあり、正確なきちんと した見立てをしてもらえない中で、ああではないか、こうではないかとかかわりを持た ざるを得ない状況が全国の児童自立支援施設の中であるのではないでしょうか。  ですから、私どもの所には、ドクターも一緒に寮を持ちながら常勤でおりますので生 活場面も見ることができます。その中で薬物療法を含め、いろいろな見立ての中で「こ れはADHDだな」あるいは「これは虐待からくるものなのではないかな」と、診断なり議 論ができます。しかも医療的ケアというのは児童自立支援施設の中でメインではないの で、こういった診断なり、的確ないろいろな見立てをしてもらった部分を、各寮あるい は寮舎の指導員あるいは児童自立支援施設の職員がわかりながら、どのように子どもた ちを見ていくか。こういった所に、引き続いてつながっていかなければなりません。こ こが、今の児童自立支援施設だけの責任ではなく、医療との結びつきをきちんとしたシ ステムとして取り込むような形で動くということをしないと難しいだろうと思います。 これは、私ども児童自立支援施設だけではなく、たぶん津崎座長がおっしゃるように児 童相談所もそういうところもあると思いますので、児童福祉全体を考えるとこういった 部分の仕組みというものがよりこれから必要になっていくのではないかという印象をも っております。 ○津崎座長  吉岡委員はどうですか ○吉岡委員  今、杉山先生のお話を聞いてショックを受けたというか、頭が少し混乱しています。 全てが児童自立支援施設で可能というご意見でした。今日は埼玉県立埼玉学園の統計資 料をもってきませんでしたが、当施設には約90名中ADHDの子どもが17名います。特に2 クラスある小学生クラスについては13名中7名がADHDで、あと被虐待児が75%くらいい ます。そのような中で非常に混乱しているのですが、またこういうことをすることにな ると、どうなるのかと思うのです。この会でも以前話しましたが、国立精神・神経セン ターの斉藤先生などの研究の通り、我々福祉と医療とがまだ連携できていないところが 非常にあり、それは私も実感していますが、それでは今後そういう所をどう整備してい くか。日本の児童精神科の医者が少ないということですので、そういう根本的な問題も あるかと思います。それを抜きにして今、我々は手探り状態でしていますから、しかも 伝統的に児童自立支援施設は訓練的要素が強かったのです。こういう子どもについて、 それよりもっと需要的要素をしなければいけないということで、集団指導と個別処遇と の兼ね合いが、非常に難しいバランスを取らなければいけないと思います。  お話したかも知れませんが小規模化といわれていますが当施設では夫婦小舎制で12名 の子どもがいるのですが、児童相談所からは13名にしてくださいという要望がでていま して、無理難題といったら語弊があるかもしれないですが、そのような状況の中では非 常に頭が痛い問題というのが正直な感想です。 ○津崎座長  他の方、意見はいかがでしょうか。 ○服部委員  今日の参考資料として「医療心理スタッフの配置状況及び一時保護委託受け入れ状況 」という表が配られています。先ほど説明がありました通り、数で見ますと、精神科医 の常勤が4施設、非常勤は50施設ということでかなりの施設に非常勤は配置されていま す。臨床心理士も常勤が24施設で半分くらいあります。しかし、精神科といってもさま ざまな分野・領域があって、今日お話していただいたような分野の精神科の先生がつく ということが一つ重要なポイントだと私も思うのですが、そのあたりの状況はいかがで しょうか。それから山内委員のお話と内容的に重複するのですが、非常勤で契約してい る場合に、例えば訪問の頻度や内容も含め、個々のケースに対して精神科の先生とどの ように連携していく必要があるのか。それから心理士も数はあるのですが、同じように いろいろな分野があるので、数ではなくもっと実質的に問題にきちんと対応できる体制 を作っていく上で、今必要なことは何かという点を是非お伺いしたいと思います。さら に、その上で寮担当の職員とどのような連携を組んでいく必要があるのか、杉山先生の お考えをお伺いしたいと思います。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  幾つかあるのですが、一つ問題提起をしたいのは、今年になってから、あいち小児保 健医療総合センターの虐待外来といいますか、子育て支援外来に性的虐待のケースがも のすごく増えているのです。今の日本の状況というのは80年代後半のアメリカの状況に 似てきていて性的虐待の問題が噴き出す直前ではないのかという感じがするのです。性 的虐待が噴き出してきますと、児童養護施設ではうまく対応ができません。里親もでき ません。今、私自身は近くにある児童養護施設に出入りで介入をしているのですが、定 員35人の児童養護施設で加虐・被虐がない子どもは2人だけです。全部のパターンがあ るのです。男から女・女から男・女から女・男から男と。これは実はどこでもそのよう な状況のようです。そのことを考えますと、それに対応できるのは、児童自立支援施設 だけではないかという感じがするのです。それでそのことを考えますと、多分ニート (Not in Employment, Education or Training)は、数年内に数倍に膨れ上がるのでは ないかという具合に思います。医療との連携ということを、先程先生がおっしゃってい ましたが、確かに児童精神科医は非常に少なく、厚生労働省で別の委員会が、どうやっ て子どもの心の問題に対応できる医者を増やすのかと動いています。これも今の感じで すと、ボトムアップをどうするかという議論で終わりそうです。このような一番対応が 困難な問題の一つと言われている高機能広汎性発達障害や子ども虐待に対応できるレベ ルの人というのは、全国で何人いるのでしょうか。非常に少ないことは疑いないと思い ます。むしろ逆の発想で言いますと、児童自立支援施設をフィールドとしてそういう方 を育ててもらえないかというのがこちら側からのお願いなのです。  それから心理士に関しては、児童養護施設と状況は同じです。つまり個人精神療法で はうまくいかないのです。施設心理士のような施設全体のグループダイナミックス(集 団力学)を見る心理士が必要なのです。全体に介入する人がいて、そして個人療法を別 の人間がやらないとだめだと思います。   それから今までの議論に目を通させてもらったのですが、その中で私が驚いたのは 「お客様にもっとサービスをしよう」とか「今までのこわもての顔をやめてソフトにし よう」などというところです。私はこれはマイナスに働くと思うのです。むしろ問題行 動を全部抑え込もうという強い枠と姿勢がないと、子どもたちの修正というのはうまく いかないのではないかと思うのです。今までせっかく優れた成果を上げてきているのを 逆に捨ててしまうのではないかという懸念がしてならないのです。むしろ子どもたちに きちんと枠を与えてあげないといけないというのが感想です。 ○藤岡委員  ありがとうございました。最後の枠というのは、非常に同感でした。反応性愛着障害 とか広汎性発達障害というと、とても難しい話になってしまうのですが、多分今までに も施設の中にはたくさんのそのような障害をもった子どもがいて、わけがわからないな がらにその子たちをどうするかという話でいろいろ工夫してきた積み上げというのは児 童自立支援施設にも少年院にもたくさんあると思うのです。  それともう一つ、杉山先生の話は非常にクリアなのですが、私にはまだわからないと ころが実はたくさん残っていて、わかればわかるほどにわからなくなっていくという気 がするのです。  杉山先生は「反応性愛着障害と広汎性発達障害の鑑別は難しくない。それは一年程治 療をすればわかる」とおっしゃっていてとても同感します。段々当たりが変わってきて 働きかけの反応が違いますから。ところがそれを見もせずに、治療経過をたどらないで 少しでも感情障害やコミュニケーションの障害があり少し変だというと、即「疑い」と いう一言をつけて発達障害という診断になります。その診断というのは働きかけの方法 がセットでついてこないとあまり意味がないと思うのですが、杉山先生の言い方だと、 軽快することや恒常的な変化に修正が可能ということを前提にお話をされているという のはわかるのですが、一般の理解の中では、脳の問題があってそう簡単には変わらない という話になってしまっていて、その辺が怖いと思っています。  それで広汎性発達障害でも反応性愛着障害でも、表に出てくる像はとても似ていると いうところまでは全くその通りです。きちんと予測可能な生活のリズムや枠組み、やっ ていい事とやってはいけない事をはっきりさせて、次には何が起こるという安定した生 活状況を提供して、その中でその子どもに不足しているところを行動にターゲットを置 いて一つ一つわかりやすく、かつ、したことの成果が治療者だけにではなく、本人もや ってみたら結構よかったと思うことができるような行動へのアプローチは共通している と思うので、施設のこれまでの処遇の方針を見直し、枠の作り方や行動の修正の方法を 積み上げていくという方向のほうが実りは多いのではないかと思いました。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  発達障害という意味がどこにあり、治療方法は何かというと、教育だということなの です。発達障害というのは医療が中心になって治療するということではなく、教育を中 心にしていくというのが発達障害ということから出てくる一番大きなポイントだと思い ます。 ○服部委員  先ほどの質問の中で非常勤の精神科医の方との連携がポイントになってくると思うと 言いましたが、状況はさまざまかもしれませんが、その辺りについてうまく対応してい くための注意点などお考えがあればお聞かせください。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  難しいです。つまり、対象としている子どもたちで特に薬を盛ったほうがいいという 子どもたちや医療の助けが必要な子どもたちは、かなり症状が重たい子どもだと思うの です。そこにあまり経験のない臨床の人間が下手に介入して大やけどをすると、「二度 とこんな所には来ない」ということになってしまいます。ケースを積み重ねていくに従 って臨床から学んでいくものですから、ある年齢をきちんとそこに通い続けてもらえれ ば、だんだん学んでくるというくらいしか言いようがないのです。あとは、研修の機会 を増やすことくらいです。むしろこの点に関しては山内委員にどうしたらよいのか聞き たいくらいです。 ○野田委員  多分先ほどから服部委員がおっしゃっているのは、施設の側として十全な精神科医療 のバックアップが得られないときに、ナショナルミニマムまではいきませんが最低限の ところで何を期待して、どうシェアしたらよいのかというその辺りが課題なのだろうと 思います。先ほど藤岡委員もおっしゃられた枠の問題は私も同感で、この問題が、施設 の開放処遇であるとか、子どもの権利条約におけるその最善の利益、あるいは子どもの 意見表明みたいなことをどうやって使っていくのかという、その辺りが未整理なまま、 一方で自由さを担保させることが子どもの権利守っているのだというような大きな波の 中で、制度論的にも決着を見ないまま、どの辺に腰を落ち着けてよいのかを迷ってい る。今まで実は非常に役割を果たしていたし、意味があった制限そのものももしかする といけないことをしているのではないかというような形で悩みながら、非常に未整理な 課題の多い施設なのだろうと思います。  しかし今日ご指摘があったように、本当にある状況の子どもに対しては枠をきちんと してあげる、そこには相当パターナリスティックにかかわらなくてはいけない側面も出 てくると思うのですが、そういうこと読み込んだ対応が必要なのだということについて は非常に同感しますし、そのことを制度としてあるいは仕掛けとしてどんなふうに作っ ていくかというのは重要だと思います。もう一方で、実際には全国58カ所の児童自立支 援施設の内、今日のようなお話をきちんと認識してケアに当たっていただける小児精神 科医を見出せない所というのはかなり多いと思います。そういう場合に、これは国立武 蔵野学院の研修であるとか、今後の課題だと思いますが、仮に、究極の診断まではつい ていなくても最低限この基準は満たそうという中で出来る事というのは、現状と比較し てまだまだあると感じています。その辺りでは最低基準における5対1というようなこと が、寮舎の運営形態との関連で適切なのかとか、あるいはそうはいっても個別処遇が必 要な子どもがいる、あるいは行動化が激しくなった時にその子どもたちを一時期タイム アウトさせるための枠組みをどのように作っていけるのか等、先ほど条件が整わないと 無理だとおっしゃっていたその条件の部分を、今日教えていただいた知見をベースにし ながら考えるべきだと思います。今後性的虐待が増えてくると予測されるということは 解離が増えたり、いろいろな問題が起こってきたりするということでしょうから、そう いうことも読み込んだ制度として作り上げることが不可欠なのかなと思います。特にそ の中でも個別処遇というのは普通の学校の学級では無理なのだ、個別のことが必要なの だということは、非常に重篤症例を集める児童自立支援施設と、この後のテーマであり ますその学校との連携というところでも大切で、単に少人数ということと個別というこ とはだいぶ次元の違う話なので、個別の対応をどのように取り込むことができるのかと いう枠組みで考える必要があると強く感じました。 ○瀬戸委員  杉山先生ありがとうございました。それは研究会の考えることだとお答えがあるかも しれないと危惧して質問しますが、資料2の最後の所で「これら全てが児童自立支援施 設において可能」と書いてありますが、国立武蔵野学院ですとイメージが湧くのですけ れども、私たちが持っている普通の交代制の小舎でも夫婦制の小舎でもいいのですが、 そこでは前提が幾つかあるのではないかと思い、その前提を教えてほしいという質問で す。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  私自身は、一つモデルとしては古いですが、虹の松原学園のように都会化していな い、語弊のある言い方になりますが田舎の昔ながらの児童自立支援施設というのが非常 に愛着をきちんと提供していて、全然意識してないのだけれどもきちんと学習も運動も 作業もきちんとしている、あのような所が児童自立支援施設の原型だと思います。  それに今プラスアルファとして医療が必要な子どもも増えてきて、精神療法をきちん としないといけない子どもが増えてきたということで、そちらの方はオプションで必要 になってきたサービスという具合に考えてよいのではないか、そんな感じです。 ○津崎座長  藤岡委員に一つお聞きしたいのですが、少年院が発達障害を意識して取り組んでいる という話を聞きますが、その辺について具体的にどのような工夫をされているのか、知 っている範囲でご紹介いただくとありがたいのですが。 ○藤岡委員  私は、直接存じ上げないのですが、宇治少年院などで行っているものだと思います。 そこにはやはり、さまざまな知恵が入っていると思います。  京都大学の発達障害専門の十一教授、京都少年鑑別所におられる精神科医の定本先 生、それから小栗先生など心理技官もたくさん入っておられて、そして少年院の先生が その研究チームに入って、皆で意見を交換しながら少年院の教育とは発達障害などの治 療にどんな意味があったのだろうとか、今度はここをこうしようとか、ルールをはっき りさせるとか、行動をきちんとアセスメントするなどしています。  個別対応にはアセスメントもとても大事だと思うのですが、法務省だと、鑑別所の技 官のアセスメントと少年院での個別的処遇計画を作るときのアセスメントと教育計画を 合致させていく。例えば児童自立支援施設だと、児童相談所とのアセスメントと児童自 立支援施設のアセスメントとがあまりうまく連携がとれていないような感じがありま す。  一人一人できることとできないことの行動を鑑別所でアセスメントし、少年院に送っ て、その行動をターゲットにして一人一人の個所見を作っていくという形で、やってい ると思います。これで十分かどうかはわかりませんけれど。 ○津崎座長  基本的には、そうした個別プログラムを作って工夫しているという理解でよろしいで すか。 ○藤岡委員  いいえ、少年院も集団処遇が基本にありますので寮生活が基本ですが、一人一人には 個別的処遇計画というのがあります。  児童自立支援施設にもあると思うのですけれど、この子どもの何が問題で、どこをど う変えていくか、初期にはこうで、中間期にはこうで、出院準備期までにはこれができ るようになっていくという個別処遇計画に基づいて、処遇の成果を成績評価という形で 評価していくというシステムを作っていると思います。 ○津崎座長  そこに発達障害的な視点のアセスメントを個別にプログラムしているということです か。 ○藤岡委員  はい、必要な子どもに対してはそうです。 ○津崎座長  今、杉山先生から説明をお聞きしていますと、従来の自立支援施設のあり方の中に、 本来発達障害なり被虐待の子どもをケアする要素がうまく盛り込まれていると理解する のであれば、現状の児童自立支援施設でのあり方をもっとうまく分析し、「このやり方 であれば被虐待児あるいは発達障害児に推進していくほうがいいのだ、この部分につい ては場合によっていろいろな工夫を取り組むほうよいのだ」というような、今の児童自 立支援施設の具体的な処遇内容を踏まえた全般的なモデルというものを、場合によって は先生があげた知見をうまく活用させていただいて、児童自立支援施設側と合同で作る と、そういうものに沿って各施設の具体的な処遇のイメージが、作りやすいのではない かという気がします。  そういうモデル化というのは可能なのでしょうか。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  可能だと思います。時代に合わない問題や例えば夫婦小舎制のような非常に難しくな った問題などありますけれども、では他にどうやって愛着提供をすればいいのかという と、やはりそのやり方が非常に優れた成果をあげてきたということは見ないといけない と思います。いっぺんに全部捨ててしまうというのはとても愚昧なやり方だと思うので す。可能だと思います。 ○藤岡委員  もう一点だけ付け加えさせてください。こうやって広汎性発達障害だとか反応性愛着 障害のことをきちんと押さえおくということも必要なのですが、実を言うと、その子ど もたちの中で非行・犯罪をやるパーセントは全部ではないわけです。反応性愛着障害で 3割、広汎性発達障害で4.7%ぐらいの数字が出ていたと思います。まわるときには、多 分環境の問題や虐待の問題と発達障害とが絡んでさらに複雑な問題が生じていて、そこ にまたいじめの問題などが絡んで結果が出ていたと思うのですが、このまわるときに独 特の犯罪の合理化だとか、どうしてその犯罪行動をやるかというパターンがやはりある と思います。  私はこの広汎性発達障害の犯罪例の十例あがっている中の半分くらいは、鑑定だとか 鑑別だとかにかかわっているのですけれども、やはり発達障害は最初の基盤であって、 そこから大きい事件をやったり性犯罪をしたりするときはまた別の問題がたくさんある のです。そこのところも手を入れないと、結局は非行・犯罪行動は治まらない可能性も ないではないと思うのです。  今武蔵野学院で、発達障害があって大きな事件を起こしたある子どもに対して、ずっ と治療的な処遇を続けていると思うのですが、発達障害への手当てとその犯罪行動を支 える思考や感情への手当てとを並行しておこなっていくという枠も必要になってくると 思います。 ○津崎座長  施設機能の議題のテーマの中では保護者の指導・支援のあり方というのも一つの大き なテーマなのですが、今のそういう視点を踏まえたときに、保護者に対してはどういう 指導・支援がポイントになっていくのかを若干ご意見を頂戴できたらと思います。杉山 先生。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  保護者ということで言いますとトピックスがあります。自閉症協会からの下請けでや っている厚生労働科学研究で出てきたことなのですが、広汎性発達障害で虐待に至って 入院が必要になるような重たい問題行動をとっている場合、私たちは今まで、広汎性発 達障害の父親が同じ診断になるということは良く知っていました。ところが非常に高い 確率で母親もそうで子どももそうという母子例が、実は入院の例だけを引っ張ってくる と多いのです。そうしますとその視点でいっぺんに対応が広がるのです。そういう人な のだということで、発達障害の方への指導の仕方というのは非常にあいまいな言い方を 避けて、具体的な指示を出してという形になってくるものですから、それでスッと問題 が解けるという経験を何度もしまして、そういう親の側も同じ問題を抱えているかも知 れないということで見ていくと、すごくわかりやすいということが一つです。  それから虐待等の場合、サバイバーの方が多いです。そうすると結局、親の治療にな ってしまう。すると今度は親の親子関係を治療として扱っていかなくてはいけないとい う具合になってきますけれども、今我々はそういう平行治療を一生懸命やっています。 ○津崎座長  そうなってきますとかなりテーマが広がって、今の児童自立支援施設の機能で具体的 に可能かどうかということにもなってくるのですが。今の体制を踏まえるとどういう工 夫があり得ると思われますか。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  私は児童自立支援施設に入っていた子どもたちは今も昔もやはり虐待児はすごく多い と思います。ただそういう視点であまり考えていなかっただけだと思います。だから基 本的には、そんなに大きな変更は要らないのではないかと思います。全部が児童自立支 援施設でやれるわけがないでしょう。そうしますと、例えば児童相談所の方で虐待のき ちんとした判定があれば、親の側へのアプローチも当然そちらの方で少し受け持たなく てはいけないし、具体的な親子へのかかわりの仕方というのも児童自立支援施設の中で 子どもの生活の場で出来ます。そういうことを実際に今までやってきているわけです。 ○藤岡委員  親の巻き込み方なのですけれども、今、大阪の児童自立支援施設で性犯罪少年の治療 プログラムをやらせてもらっていまして、そのときに児童相談所や児童自立支援施設は 親の巻き込み方がすごく上手だなと感心しました。  少年院ももちろん保護会などに親を呼んでいるのですけれども、やはり年齢が上のせ いもあって少し脇に置いてやってもらう。けれどもプログラムを始める時に、児童自立 支援施設の先生の方から「これはまず親の同意を取らなくては」と言われて、私もそう 思い児童相談所と連絡を取るとケースワーカーが親に全部説明して同意を取ってくれ て、今度は園に来てもらい私と担当者の方からプログラムの説明をして、保護者の方か らも話を伺って「一緒にやっていくことが大事なのでお願いします」というようなこと を話すことが出来て、多分終わるときにもそのように話をすることが出来ると思いま す。そういう意味ではまた元に戻りますが、児童相談所ときちんと連携が出来れば、親 の巻き込み方や社会に帰ったときのその後のフォローの仕方など、すごい強みが児童自 立支援施設にはあると羨ましく思いました。 ○津崎座長  その延長で少しお聞きしたいのですが、リービングケア・アフターケアですが、この 辺は例えば少年院では具体的にどういう工夫をなさっているのか。藤岡委員、知ってい る範囲で教えていただきたい。 ○藤岡委員  このリービングとは施設を去っていく時という意味ですね。出院準備期という形で寮 は別になります。仮退院の審査がある時点で、寮は別になって外作業が中心になり社会 奉仕作業に行ったり髪の毛が蓄えられたりと、つまりリービングを前提に治療を行って いきます。それから職業の斡旋とか、もし贖罪が必要であれば外に出たときの被害者と の関係で親を間に挟んでどうするかなど、最後の3カ月という期間は、出るための教育 をすると思います。  アフターケアは法務省の方はまた微妙な問題で、保護と矯正とが分かれていますの で、もちろん保護局が一生懸命やってくださっているわけなのですが、書類は行くので すけれどもなかなか時々難しいこともないではない。その意味で言えば繰り返しになり ますが、児童相談所と児童自立支援施設は同じ所なのでという気がすごくします。 ○津崎座長  それでは現在の児童自立支援施設の例えばリービングケア、アフターケアは具体的に どうなされているのか教えていただければと思います。 ○岩田委員  リービングケアといっても、どういう年齢で出るかによって少し違うのですが、中学 を卒業している段階で卒業後もなお施設に残るという場合は、かなり就職のところに入 っていきますので、出る前に実際に仕事探しから一人での生活、これは自活棟のような 別の寮を持っていますので、そこで一人暮らしを実際に経験させるなどいろいろやっ て、本当の就職先を探して出していくというやり方です。中学3年生で卒業するときに 退園する場合は、基本的に皆同じ時期に大体卒業しますので、どちらかというと出てか らの心構えのようなことを指導していくということになろうかと思います。  アフターケアについては施設側の職員は指導という意識が非常に強かったように思い ます。指導ということではなくて、子どもたちは出た後非常に困難な状態に置かれる、 アフターケアというのはある意味で励ましと支援というような考え方をとるべきではな いか、施設の中で子どもたちが生活して、職員との関係を作っていくが、それをいかに 退所後に生かしていくか、出た後も生かしていくという考え方でやって、あらゆる手段 を使うという考え方にたつべきです。  具体的にご紹介したいと思いますけれども、私は今そこではないですが、東京都の誠 明学園の方はアフターケアの取組みというのは退所した子どもたちの自立に向けた励ま し、支え、援助、すべての取組みをアフターケアと位置づけるとしています。手紙や電 話などの通信によるやりとり、家庭訪問の取組み、来園してもらって面接をするという 取組み、場合によっては寮に来て泊まってもらうという取組み、仕事が失敗したときな ど住む場所がないという場合には自活棟に来て泊まってもらって支援をするというやり 方、それから様々な他機関と連携を取りながらのケア、こういうすべてをアフターケア だと位置づけて、この取組みは大事な取組みであるという位置づけでやっていこうとい う要項をつくってやっております。  それから私のところの萩山はそこまでいっておりませんけれども、具体的には通所と いう形で、施設を出た後、子どもたちのうち、本人に意志があれば定期的に、例えば月 に1回私たちの施設の方に来てもらうことをやっています。それは来て何か特別な指導 するというわけではないのですけれども、子どもたちがどういう生活をしていたのかと いうようなことを月に1回話を聞いて、少しアドバイスをする。そういう取組みをして いて、そのことによって子どもが学校等で自分をコントロールするという事を意識しな がら生活するということもやっていて、こうした取組みが非常に大事だと思っていま す。 ○津崎座長  そういう相談機能、あるいはアフターケア機能と絡んでくると思うのですが、ここの 議題の中に書いています児童家庭支援センターの附置の問題で、先ほどの資料では児童 自立支援施設に附置されている例はないということですが、こういう機能を新たに附置 しながら、今の児童自立支援施設の役割を強化するという考え方についてはいかが評価 されるのか、ご意見を賜りたいと思います。今の児童自立支援施設を運営されている立 場からいかがでしょうか。 ○吉岡委員  議題が多くてだんだん頭が痛くなってくるのですけれども、いろいろな一時保護機能 や相談機能など、これが本来の児童自立支援施設の役割なのかと私は思います。言葉は 悪いですが、他の所の役割を押し付けられているような、肩代わりしているような傾向 になりつつあると思います。全国の状況を見れば、できている所も少しはあると思いま すけれども、今までの本来の役割でもあまり十分にできていない施設もあるわけですか ら、これ以上機能が増えたらどうなるのかと、本末転倒になるのではないかと、それが 一つあります。  児童家庭支援センターを児童自立支援施設に附置した方がいいのではないかという意 見の方がおられるのであれば、その理由をまずお聞きしたいと思います。 ○津崎座長  今のように機能拡大し過ぎることはかえって運営を難しくするというご意見ですが、 むしろこういう機能を児童自立支援施設に附置することによって、より機能が強化でき るのではないかという見方もあると思うのですが、その辺でいかがですか。 ○服部委員  私は既にこのような提案をしている者の一人です。ただそのとき頭にあるのは、中心 的な機能をしっかりさせた上で、1998年の児童福祉法改正によって児童居宅生活支援事 業、それから相談業務など可能性が広がっているわけですから、それはやはり目指すべ きだと思います。相談業務にしても今まで児童自立支援施設が教護院・感化院時代から 蓄積してきた子育てについてのいろいろな知恵があるわけですので、それは地域に還元 していく役割も負っているだろうと思います。  ただ中心の機能を確認しておく必要はあって、そこを放り出してこっちの業務だけを やるというのは本末転倒だと思います。  さらにその点で感じることは杉山先生のお話を聞きながら児童自立支援施設において 可能だというご指摘を深く受け止めたのですが、その上で、だからこそ大事にしていか なければいけない機能があると思います。  生活の枠組み、リズミカルな生活という面と子どもを受容していくという面の両面が ありますが、後者の面が、私は気をつけないとグラグラし始めているように思います。  非常に具体的なことで言えば、夜の子どもたちの生活をどう見ていくか、そこに学生 アルバイトなんかを入れるような、昼の生活を見ていないアルバイターが勤務体制の関 係で入ってくるということは、子どもの根本的な愛着障害を受け止めていく体制が緩ん でくる恐れがあるし、もっと具体的なことで言えば、食事の時間も大切にしていく必要 があると思います。その辺をしっかり固めて、その上でやはりできることは行っていく のが望ましいのではないかと考えています。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  この児童家庭支援センターの設置の仕方というのは、多分発想は逆で、今のこの日本 の状況ですと、理想論を言いますと自治体に一つぐらい児童精神科の医療的な拠点が必 要なのです。それは例えば県立病院に児童精神科セクションがあるとか県立の精神病院 の中に児童精神科病棟があるとか、そういう児童精神科の中心となる医療機関にこれが 併設されているというのが理想なのだと思うのです。これだけ独立してあっても何の仕 事もできないでしょう。県をどうやってカバーするのですか。そういう医療機関で児童 の問題が集中する所に、例えばあいち小児保健医療総合センターの保健センターみたい な形で、この保健部門を担当する外部との窓口や家族の支援の方に回るセンターがあれ ばそれで生きると思います。 ○山内委員  児童家庭支援センターとか一時保護機能、新たな機能強化ということで私は一時保護 機能とか短期入所機能等については児童自立支援施設もぜひ取組んでいくべきではない かと考えています。何かと言いますと先ほど吉岡委員からも話がありましたが、実際は こういう機能は別に外向きにやるだけではなくて、内部の子どもたちの処遇にも非常に 役に立つのではないかなと思っているわけなのです。それは例えば今の体制の中で今の 児童自立支援施設の中で、加えてこの一時保護機能だけを持ってきてやれというのは無 理だと思うのです。中の処遇も非常に難しくなる。ただしやはりきちんとした建物とか あるいは人員対応をきちんとして、そういった部分を持つということで、中の子どもた ちが時には先ほどいろいろ話がありましたように、集団の中でうまくいかない、あるい はタイムアウトする必要がある場合などに、利用できるような一時的な場所、そういっ たものを持つということは今の児童自立支援施設にとって非常に大事な部分だと思いま す。  そういったものを中の部分だけではなくて外の子どもたちにもうまく使えるようにす るという意味で、この一時保護機能とか短期入所機能とかを一緒にやっていくというよ うな体制ができれば。それからリービングケアやアフターケアの場合も、児童自立支援 施設の中では全児協(全国児童自立支援施設協議会)も高年児寮や自活寮など新たな体制 を作っていくべきだと言っています。  そういう意味で決して中の処遇と外の処遇を全く分けるのではなくて、一緒に活用で きる機能を強化できる、そういったものを整備していかないと総合的に子どもたちを支 援することはなかなかできないと思います。  先ほどから言われますように医療的ケアの問題もそうですが、我々はやはり処遇の中 では小集団であれ集団処遇をやっています。だから一人の子どもが発達障害で問題行動 が起きていると言っても集団の中で子どもたちを見ているわけですから、相談機能とか 一時保護機能とかいろんな機能を併せ持つことによって総合力をより発揮できるような 部分をもっていく必要があるのではないかと思っています。  ですからたとえ医療の問題でも非常勤のドクターが多くなっていますが、ぜひそうい ったドクターも中でその子だけを抽出して個別処遇をするのではなくて、集団の中で処 遇をどうされているのか、どういう問題点があるのかということを見ていただけるよう な医療のサポートがあれば、より児童自立の役割が発揮できるのですが、ただ今の形の 中ではその時だけ来てそこだけ見てアドバイスだけして帰っていってもらうようではな かなか難しい。そういう意味でもこういった機能を生かせるものを付けていかなけれ ば。その代わり、その体制だけは県なり何なりがきちんと作ってもらうということを前 提としてお願いできたら一番いいと思っております。 ○岩田委員  同じ施設の中で意見が違うところもあるので、ちょっと意見を申し上げたいのですけ れども、私は基本的なところをきちっとしていくということを抜きにして機能を拡大し ていくということについてはやはり非常に危惧をしているのです。  一時保護の機能にしても今一時保護委託という形で受けているのです。これはどうし てかというと、入所が前提になっていて手続き上裁判所の決定を待つのに時間がかかる という場合で、実質上は入所なのです。そういうケースについて寮舎の中に受け入れて いくということは、やってもそんなに混乱が起こるわけではないです。  ただ、実際に観察をするために一時保護をして、それを私たちの施設の寮舎の中でや るというのは不可能であって、どうしてもそういうことをやらないといけないというこ とであれば、寮舎とは別に観察寮なりを整備して、そしてそこで一時保護もするし観察 もするという新しい設備と人を配置してやっていくという区分けをきちっとしていかな いといけない。そうでないと施設の運営自体、基本のところが壊れてしまう可能性があ ると思うわけであります。  それから短期入所についても、私たちの施設が子どもたちを受け入れて何を一番大事 にしてやっていくかというと、要するに子どもと職員との人間関係の形成なのですね。 あらかじめこの子どもは短期でその関係づくりが計れるかどうかという判断をするとい うことは、非常に困難なわけです。もちろん子どもとの関係もよくて、子どもの状態も これは短期間で外に出しても大丈夫であるということであれば、結果として短期間の入 所でいい。だけどあらかじめこの子どもと職員との関係づくりが短期でできると判断し てやっていくというのは、極めて乱暴なやり方ではないでしょうか。  やはり我々の施設の基本のところは何なのか、そこを大事にしてやっていく、それを 壊していったら結局施設の中心の機能が壊れてしまう、そこを壊してはいけないと思う わけです。  それから通所の機能などもこれは法改正でそれができるようになりましたが、実際に はこれを実施するところはそうないわけです。本格的に実施するということであれば、 人を配置して一定の需要が継続的に見込めるという判断をした場合に、政策として実現 していくことになるわけですけれども、実際にはなかなか継続しての需要というのがど ういうケースがあるか判明しない。  そういう中で、設置主体の県も人を配置してまでそれをやっていくということになか なか踏み切れない。そうすると現実に通所機能なんか法改正されましたけれども、それ が機能できるというのはアフターケアのところなのです。そしてアフターケアの取組み は現実に施設の中で処遇をした人間関係、あるいは職員との関係を生かすという取組み ですから、新たに人を配置する必要は、本当に盛んになればそういうこともありますけ れども、比較的現状の体制の中でやれる、施設が努力をしていけばやっていけることで あって、そういう努力をもっと積み重ねていって、通所の本格的な展開が計れるかどう かという判断をしていけばいいのではないかなと感じています。 ○野田委員  かなり多様なところまで多分座長の意図を超えて範囲が広がっている気がするのです が、今話が出ておりますので、一時保護機能に関しては私の方でいろいろ調べたところ でもありまして、手続き待ちの形で入所前提というのが圧倒的に多いなと、先ほどの表 との関係で見ております。ただこれも一時保護所枠機能の有無、あるいは混合処遇とし てというような、一時保護所が持っている問題性を考えた棲み分けというか、逆に施設 が持っている条件というよりは今までのノウハウ等を生かした形で何か使っていく余地 はあるのかと思っていますが、これについては間違いなく入所待ちということでなけれ ば同じプログラムに載せるということは無理なので、例えばその学校教育が導入された ときに、その学校教育を受けさせていいのかどうかというところで現場レベルでは非常 に議論になるのです。  そのためには、制度枠等とともに条件も整備が必要なのだろうと思っています。同時 に同じ空間で、あのような密度の濃い処遇をするところでは、別のプログラム例えば短 期であるとかというのが入ってくることがもたらす処遇の困難化というのは、少年院で も確か昭和50年代の前半頃、さまざまな短期プログラムを入れていくときに現場の方か ら悲鳴に近いような声があがっていたと思うのです。それをクリアするようないろいろ な方法はあって、工夫の余地はあると思いますけれども、一時期短期プログラムを推進 されていた主には東北の施設が多かったかと思いますが、幾つかのプログラム実践が必 ずしも継続されていないという状況との関係で考えていく必要がある。一時保護法に関 しましてはいずれにしてもその33条でいう一時保護というのが緊急保護や行動観察や短 期の療育ということから見ると、この手続待ち型の一時保護というのをどう扱っていく かということについては制度面も含めて検討がいるところかと思っています。  リービングケア、アフターケアに関して、実はこの言葉が児童自立支援施設の職員に アンケート取らせてもらいましたが、ほとんど現場では使われない言葉なので「何それ 」というのがまず返ってきます。しかし内容説明しますとやはり今も話に出ていました 自立寮のような、通常の処遇以外のプログラムを独自に動かせる寮あるいは宿泊施設の 整備が不可欠でありますし、そこへの人の手当てであるとかプログラム的な手当てとい うことが併せて必要だろうと感じます。厚生労働省の方で先年予算をとっていただきま したファミリーソーシャルワーカーというか家庭支援の専門員などについても、この施 設が必ずしも充実してないというのは財政上の理由も大きいと思いますけれども、単純 に一つのプログラムをイメージしたときに、各施設のその子どもたちの出し方が違うと いう辺りも影響しているのかと思いますので、少し丁寧な区分けが必要なのかと思って います。それ以外の相談機能に関しましては、私自身は前回も言わせていただいたよう に児童自立支援施設を核にして子どもたちを入所させるあるいは生活させるという空間 を中心に置いた、公立の都道府県におけるセンター機能のようなものを、特に問題行 動、非行あるいは今日も話いただいたような処遇の難しい子どもたちに対して総合的な 対応ができるセンター化してほしいと願っておりますので、機能を広げられる余地があ るならば、そのことについてはできる規定のような形で置いていただくことは支障がな いと思います。一方でむしろ非行相談というところで言えば、58カ所の児童自立支援施 設よりは180数カ所あります児童相談所が本来あるべき機能をもっと拡充する、しかし その中で通所も併せてきちんと子どもを抱え込むことができるというか、直接子どもに 対して専門性高く働きかけることができる、そういう特色を持った機関として各県に1 カ所そういうところがあるのだという事は心強いのかと思いますが、児童養護施設でも この家庭支援センターが全施設にあるわけではないですし、あるいは都道府県によって もばらつきがあるということを見ましても、単純に現状のままでどこかから相談機能を 引っ張ってくるというような構造というのは、今期待されていることとは違う結果を招 来する可能性があると感じております。 ○服部委員  児童自立支援施設への一時保護委託についてですが、今野田委員がおっしゃったよう に客観的に入所の必要性がある、ただ手続的に時間が必要なので一次保護を委託すると いうケースもあると思うのですが、今日の資料の中に一時保護委託受け入れのケース概 要が全部で256ケース紹介されていますが、この中には虐待の小さな子と一緒に児童相 談所の一時保護所に入れられないので当面児童自立支援施設に置く、あるいは調査観察 を期待して置くという委託のケースが結構含まれているのではないかと思うのです。し かしそれは岩田委員がおっしゃったように、充分な対応はできないし望ましくないとい うことをきちんと確認をする必要があると思います。中規模な施設で一人二人の少年に 対し児童自立支援施設の職員が調査観察をしていく体制には今恐らくないと思うので す。また子どもの側から見ても非常に不安感があると思うのです。やはり児童自立支援 施設に入りたくないという思いもあるし、その同じ場所で一時保護することへの子ども たちの不安があると思うのです。こういうケースはやはり逃げると思います。現在は今 言ったような一時保護委託が行われていて、その点の問題点はしっかり確認をしておく 必要があると思います。 ○津崎座長  この問題ではだいぶん時間が過ぎて論議がされているわけですが、今の一時保護委託 の件で私の児童相談所の立場で言いますと、いわゆる社会的に何らかの形で保護・緊急 避難しなければいけない子どもたちの避難場所がないのです。  例えば一時保護所ということもいろいろお話が出てきますが、被虐待児でいっぱいな のにそこに非行の子どもも入るという混合処遇の極みの中で非常に混乱が起こってい る。そこに入れたらいいというふうには現状ではやはりなりがたいという要素、あるい は先ほど少し話が出ていましたが児童養護施設も、同じように非常に難しい子がたくさ ん入っていて、その中でもケアができない状態になってきている。そうなった時に、全 体が共倒れになるのか、そうではなくて、そういう子どもを緊急避難のできる場所をも っと社会的に何らかの形で確保しなければいけないのではないか。それが今のところ、 適切な場所がないということになるとその機能をどこに持つのかという論議が出てくる ということです。だから今の児童自立支援施設が何でもかんでも受ければいいというこ とではないのですが、そういう機能を持つとすれば、どういう条件整備をしっかりとす る中でそういう機能を持たせるのかということを踏まえた検討が要るのではないかとい うのが私の考え方です。今までのお話をお聞きしていましても、児童自立支援施設が本 来果たさなければいけない機能をしっかり評価し、それをしっかり根付けた体制を作る ということを前提にしつつも、社会のいろいろなニーズの中で、より幅広い機能も新た に要るのではないか。しかし機能だけを付ければいいというのではなくて、機能一つ一 つの社会的なニーズの評価、そしてそれに対してその機能を児童自立支援施設で実施す るのであれば、どういう条件整備が必要で、どういう条件整備の中であればそれが可能 なのかということをしっかりと定めて、そしてその機能の拡充の中で総合的な力をむし ろ強化していくという取組みが必要なのではないかと思うのですが、いかがでしょか。 ○服部委員  問題を確認した上で十歩譲って現実的にどういう条件を付ける必要があるかというこ とです。具体的に言えば、子どもへの説明を丁寧にすることと、その措置をとることに ついてチェックがかからないといけないと思います。そういう仕組みを伴わせることが 必要だろうと考えています。申し上げたかったのは児童自立支援施設への一時保護委託 というものが既成事実として行われてきているという問題点をまずはしっかり押さえて おく必要があるということです。 ○津崎座長  それでは次テーマに移ります。今日の議題の二つ目は関係機関等との連携いうことで すが、これに関しましては、東京理科大学理学部第一部教養学科の八並教授にお越しい ただいていますので、八並教授からまず説明をお願いしたいと思います。 ○八並東京理科大学教授  初めまして、東京理科大学の八並と申します。よろしくお願いします。  最初に申し上げますが、私自身は学校教育が専門です。その中でも生徒指導と呼ばれ るスクールカウンセリングを専門にずっとやってきました。理学部なのになぜここにと いう違和感があるかもしれませんけれども、いろいろな問題を抱えた子どもたちに対す る教育的な援助というのが私の専門です。ここでお話するのは主に二つです。今学校教 育の現場でこういう「関係機関との連携」ということが重要になっているという話。も う一点は、今から4年ぐらい前から児童自立支援施設の分校・分教室の全国の連絡会が あるのですが、そこでいろいろな話や現場の声も聞いています。そういう点では教育の 課題ということで、分校・分教室の今の教育の状況あるいはあり方についてお話したい と思います。児童福祉の専門家ではありませんから専門的な用語は使えませんが、私が やってきた事あるいはそこから思った事を中心にお話したいと思います。  今ずっと議論がなされていますけれども、施設機能に関しても2004年に小木曽先生が 「児童自立支援施設の可能性」という本を書かれています。その中で今の学校教育の問 題もそうなのですが、実は教育福祉問題なのです。学校現場というのは教育の問題のよ うに見えますが、教育・福祉・医療・警察(司法)関係の連携がなければ、非常に解決し 難い。あるいはここの部分がうまくいかないと子どもたちのいろいろな課題が解決でき ないという実情があります。その中で私自身も生徒指導(スクールカウンセリング)をし ていて、児童自立支援施設と必然的につながっていったということです。「関係機関と の連携」ということでお話しをすると、資料が二つあります。一つは「サポートチーム 等地域支援システムとの連携」もう一つは「児童自立支援施設と大学とのチームサポー トによる社会的自立プログラムの開発研究」です。最初にお話したいのは、今の学校現 場のいろいろな子どもたちの問題に対して、私はどちらかというと解決志向です。実際 に現場の中で、いじめ・不登校・暴力問題等、非常に課題性の高い子どもたちに対する いろいろな教育的なサポートを研究してきました。今学校教育の中でどういう問題があ るかというと、およそ四つだと思います。一つは問題行動です。特に暴力行為をはじめ 性非行・ドラッグ・摂食障害などいろいろな問題行動の子どもたちにどう対応するか。 これが一つです。  それからもう一点は不登校です。不登校の子どもたちに対応していくと、例えば「こ ういう子たちを不登校と言いますか」と聞くと大体現場の先生は不登校ではないと言う のです。つまり非常に荒れた非行系の子どもは学校には来ない、そうするとその子はや っぱり不登校なのです。そうするとここの不登校には、やはり文部科学省でいう遊び非 行型の不登校も入っています。そういう不登校の子どもたちにどう対応するか。  それからもう一点は特別支援教育です。杉山先生の話にも出ましたけれども、特に我 々が軽度発達障害の子どもたちにどう対応するかです。  もう一つはキャリア教育です。問題行動・不登校・特別支援教育・キャリア教育の四 つぐらいが、学校現場の中では焦点化されているわけです。その中で共通に今出てきて いることは何か、対応すべきことは何かというと、一つはやはり個別援助なのです。つ まり私がかかわっている子どもたちもそうですけれども、非常に特別な教育的なニーズ を持っている子どもたちにどういうふうに個別的にサポートできるか、その個別援助と いうものが求められているのだということです。それからもう一つやはりチームサポー トなのです。つまり今までのような一学校、一教師、一スクールカウンセラー、一機関 ではもう対応はできないのです。それぐらい難しい問題が出ています。例えば一つ例を あげれば、一人親の家庭で複雑なきょうだい・血縁関係を持っていて、生活保護など経 済的な破綻もあり、非合法集団とも付き合っている。あるいはその保護者なりが軽度発 達障害、あるいは本人も軽度発達障害だというケースの場合、どんな優秀な教師でも対 応できません。そうすると、どうしても学校・医療・福祉機関との連携が必要になって くるのです。そういう点ではチームでのサポートというのが今一つの鍵であろうと思い ます。  それからもう一点は、今リービングケア・アフターケアという言葉が出てきました が、やはりこういう子どもたちのキャリア達成をどうするか。この視点抜きには、学校 教育の対応ではないです。つまり英語でいえばschool to workなのです。つまり学校か ら社会にどうスムーズに移行させるか、これは全ての子どもたちに共通しています。そ ういう点では問題を持った子どもたちのそういう社会的な自立・キャリア達成をどう保 障していくかという点が非常に重要ではないかなと思っています。  それでは資料3をご覧ください。これは私が前任の国立大学にいた時に行ったもので すけれども、実はこの研究は二つからなっていて、一つは実際の児童自立支援施設の中 で行った教育です。それからもう一つは、こういう保護処分などに行く前に行かないよ うに何とかチームでの予防的な介入をやってくい止める、あるいは学校に復帰させると いう研究をやってきました。この後分校・分教室の課題と要望などもお話しますけれど も、私の立場としてはこういう子どもたちが本当に深刻な事態に陥らないような予防的 な介入システムというものを、学校や地域やあるいは関係機関も含めて、やっていかな くてはいけないと思います。このレポートは大学と関係機関、福祉協議会や児童相談所 の方、地域の方、あるいはその保護者の方を巻き込んだ大きなサポートチームを作っ て、いわゆる荒れた子どもを進路達成までやった研究です。そういう点では、予防的な 介入のところで、こういう関係機関含めたチームでサポートをやっていくと、ある程度 の成果が得られるということです。今現在教育、特に生徒指導の中ではこういうチーム サポート、あるいは文部科学省が学校と関係機関が連携したものをサポートチームと呼 んでいます。その中にはサポートチームを作って教育的な援助、心理的な援助、医療的 な援助、皆さんが専門家の方なのでケースをいろいろお持ちだと思うのですけれども、 やはり家庭環境に非常に重大な課題をもっていること多いです。やはり福祉的な対応が 必要になってきます。あるいは非合法集団とのつき合いだとかいろいろな介入がありま すから、警察機関等との連携が必要です。それからもう一点は、特に問題行動を持って いる子どもたちの教育の難しさは、地域の方の協力というのは簡単そうですが非常に受 けにくいです。だからそういう点では学校教育への復帰、あるいは社会的な達成の中 で、地域をどう巻き込んでいくか、それも課題かという気がしております。これは実際 やってきたものです。そういう点で、今学校教育の中では児童自立支援施設も含めてで すけれども、こういう非常に問題を抱えた子どもたちに対して、一学校だけではなくて 関係機関と呼ばれる機関も含めて、かなり広域のチームを編成して対応していくと。そ のときのポイントは、この後も話しますけども個別の教育計画です。それをもってキャ リア達成まで視野に入れたサポートをやっている。ただしその前提条件はこの後お話し ますけども、やはりアセスメントをしっかりやるということです。それが一点です。  それからもう一点は、ここ3・4年分校・分教室とずっとかかわってきました。その中 で、分校・分教室の先生方からの声それからこのレポートの中では実際にある児童自立 支援施設の分校に私たちが入って、その中で子どもたちにキャリア教育をやった成果も 載せています。手短にお話しますと一つは実際に分校・分教室あるいは分校での研究を やって思うのは、例えば今回の議題で施設の機能について書かれていますけれども、 1998年の法改正以降公教育の導入ということで、教育は一体どこに入っているのだろう と思いました。つまり今佐藤専門官の報告にあったように31施設が公教育を導入してい ます。ただその実態はどうなのだというところは考えなくてはいけないのではないかと いう気がするのです。それは子どもの人権ということもかかわってくるし、あるいは杉 山先生が言われたように私も何でこういうことやっているかというと、その一つはやは り教育は人を人にするということ。私は一分校ですけども、かかわってみた時に、やは り家庭環境や成育歴にはかなり厳しいものもあります。そうするとやはり人との出会い だとか、そこでの学習だとか体験というそういうもので変わっていく子どもがたくさん いるということです。そういう点では、いくつか分校・分教室の先生方の声も含めて、 教育機能での課題をお話すれば、一つやはり予算が本当に足らないという声がありま す。つまり実際にここにいらっしゃる先生方が分校・分教室の教育現場も見られている かもしれませんけれども、かなり多くの方がやはり非常に狭い教室、あるいは学校でい う備品なども通常の学校に比べると厳しいと。予算上の問題がスタッフの問題にも関わ ってきます。それからスタッフという点で言えば、先ほどから出ているように、どうい う教員をそこに配置していくのか、どういうサイクルで配置していくか。あるいはかな り軽度発達障害の子どもたちが増えているという声が全国的に多かったです。特別支援 教育もしくは特殊教育に関するライセンスを持った教員をどのくらい入れているかとい うとかなり少ないです。中学校現場でスクールカウンセラーを非常勤で入れていますけ れど、たまたま私が関わった分校ではスクールカウンセラーを非常勤で入れています。 この効果の一つは具体的には児童虐待などの場合に、非常に傷を負った小学生・中学生 がいます。あるいは保護者にもいろいろな困り事があります。スクールカウンセラーの カウンセリングを少し受けていくだけで、かなり違うという話も聞いています。予算の 問題、スタッフの問題これは今度専門性という問題になって、そうすると公教育導入を していくにもかかわらず、やはりそういう人あるいはその予算それから施設、この点で かなり苦しいのだということを言われています。  それからもう一点は、たまたま私が入った学校は文部科学省から研究指定を過去に受 けた所なのですけども、そこではきちんとアセスメントから始まって個別の学習プログ ラムという教育計画を立てて、実際の教育をやっていったのです。先ほど野田先生が言 われたように、小集団の学習と個別指導というか、個別教育はやはり違うのです。特に 今困難なのは先ほど言ったように、例えばその家裁の審判からくる子ども、あるいは児 童相談所からくる子ども、あるいはその中で軽度発達障害の子ども、そういう子が同じ ところに一緒になって学習するということは非常に無理があるだろうと思います。ある いは、そこの教員もそういう専門的な教育を受けていると必ずしも言えない。そういう 点では分校・分教室の教育プログラムを、どういう形で作製していくかということも課 題ではないかという気がします。それからもう一点は、先ほど言ったSTWの問題なの です。つまり学校から学校、例えばSTS、分校から例えばその元の学校に戻ってい く、あるいはその分校から今度は社会に出て行く、あるいは分校から元の学校に戻って 社会に出て行く、そういう学校から学校、学校から社会への移行というものをやはりし っかり作っていくことが、本当の教育保障かという気がしているのです。そういう点で は、そういう移行プログラムをしっかり作っていかないといけないのではないかなとい うことです。ただし入学というか入所が不定期であったり、期間が不定期なので、なか なか今言ったようなことは簡単には実現しないのですけども、やはり公教育の導入とい うこと考えた場合は改善が必要かなと思っています。  長くなりましたけれども、最後に申し上げたいのは、先ほど野田先生もあるいは杉山 先生も吉岡先生も言われましたけれども、特に今後の児童自立支援施設の、やはり何が できて何ができないのかとか、あるいはその誰に対して何をどこまでやるかという役割 を明確化にすることも大切だと思います。ただそれ以上に、先ほどお話したようにやは り学校現場から見ても、児童自立支援施設が一つの教育・福祉・医療の総合モデルセン ターというか、そういうところになるだろうという気はします。そういう点では今後の 課題として学校現場の方から、一つお願いはやはり児童自立支援施設での教育のあり方 をどう具体化していくのか。それからもう一点、今度は先ほど言った移行の問題で、移 行というものをどうスムーズに展開していくか。その中で、予算あるいは人、あるいは その施設、また地方自治体だとか国との関係になってくると思うのですけれども、そう いう点では教育機能の見直しというか、今度の新しい児童自立支援施設を構築していく 上でも、この教育という視点は外せないだろうと思っています。 ○津崎座長  どうもありがとうございました。補足がありますか。 ○今泉文部科学省初等中等教育局児童生徒課長補佐  文部科学省初等中等教育局児童生徒課の今泉と申します。このような貴重な会議にお 呼びいただきまして誠にありがとうございます。  私どもも児童自立支援施設と教育サイドとの連携のあり方については非常にやらなく てはいけない部分でありましたので、こういう機会を設けていただいたことに対して感 謝申し上げたいと思います。  私の方は八並先生の方からかなりの部分話が出ましたので、ダブって話をさせていた だく部分も多いかと思います。この話を受けたときに児童自立支援施設の抱えている市 町村教育委員会と都道府県教育委員会に問い合わせをしました。その中から出てきた課 題としては大きく三つの表層がありました。  一つはシステム面での課題、もう一つは現実的な課題、そして3番目が主観的な意識 の表層の部分での課題がありました。  システム面の課題で言えば、これは人の配置ともかかわる話なのですけれども各県一 カ所ずつぐらいの児童自立支援施設にはいろいろな所から人が集まって来るのだけれど も、分校・分教室はそこに校区を持っている学校に置かれている。そこにおいて行政間 の県レベルのものと市町村よりさらに小さい校区間でのレベル。そこのギャップがどう しても背後にあり、それがそのまま意識の差につながっている部分もあります。こうい う場では言いにくいのですが、「なぜうちの学校が」というのが無きにしも非ずな部分 があります。  2番目はこの物理的な問題のところですが、これは八並先生から話が既にありました が、人の配置をどうしていくのかがこれは予算の絡みとも十分かかわる話なのですが、 現在学力低下等を含めて学校現場における教員の配置においてもかなり無駄を省いてき ております。少人数指導に力を入れている反面、そこに割くためにいろいろな部分の無 駄を省いた人事の配置の仕方をしています。そういう中で、この分校・分教室における 人の配置の部分で言えば課題が幾つかあって、一つが中学校レベルの分校・分教室の教 科の問題があります。  教科をどうカバーしていくのかという問題、もう一つが教員の能力の問題がありま す。さらに能力の問題で言えば、これもまたこの場で言いにくいのですが、必ずしも本 当に学校にとって重要な教員がそういう場面に配置されるとは限らないということで す。  あとさらに先ほどから話に出ている個別指導が必要になってくるそういう場合に入所 時期が不定期でありまたかつ各子どもの障害あるなしも当然あると思いますけど、その 能力学習してきたアチーブメントの差も当然あります。そこでの対応が非常に困難であ るというところが指摘されています。ここはまさに現実的な問題でどうしていくのかと いうところですので、しかもその予算の限りがある中の話で言えばかなり解決について はこの厳しい財政状況の下だと困難がかなりあると思います。  3番目は教員と教育委員会の意識の問題です。  分校・分教室を持っている学校については偏見のようなものは無くなってきていると 言いつつも、教員中には抵抗感を示す教員もいるという話を伺っています。またこの児 童自立支援施設との連携の話についても教育委員会がどの辺まで関心を持って取り組ん でいるのかというと、正直言ってまたこれも疑問な部分があります。ここの部分の課題 がどうもあるみたいです。  ただこの課題の解決のためには教育サイドの努力も必要なのですけれども、併せて児 童福祉サイドからのアプローチも必要になってくる。どちらかが悪いという話ではなく て、お互いそれぞれ何ができるのか何かできないのか、それを出し合っていくことが本 当の連携だと思います。そういう意味で今課題に挙げたところは、まさに我々も課題と して取り組まなくてはならないのですけれども、ぜひこの場で申し上げれば実は武蔵野 学院には一度お伺いしたことがあります。武蔵野学院では分校・分教室を持っている学 校との交流活動を行ってらっしゃいましたけれども、そういうふうに既に児童自立支援 施設側の努力もされているとは思うのだけれども、やはり意識の部分での連携をさらに 深めるための取り組みというのが必要になってくるのではないか。そういう意味での連 携行事というのはこれからも進める必要があるのではないか。さらにシステム上どうし ても教員の配置は県単位で行うものですから県レベルでの福祉部局と教育委員会との連 携、特に人事交流も含めた連携のあり方というのが必要になってくるのではないか。  先ほど八並先生からもお話がありましたけれども、児童自立支援施設の教育のあり方 については1998年の法改正で学校教育・公教育を行う話にはなっているけれども、あり 方についてはもう一度この会議等を通じて考え直していく必要があるのではないか。さ らに連携のあり方で言えば連携、連携と言っても言葉だけでは進まないので、実際誰が 中心となってこの連携を進めていくのか、その観点だとこれも、教育サイドからの動き は期待できないので児童自立支援施設側の連携へのイニシアティブを考えていく必要が あるのではないかと思います。 ○津崎座長  どうもありがとうございました。  教育サイドから端的に問題点を指摘いただいたと思いますが、法改正以降、急速に分 校・分教室等の導入が進んできたと思いますが、導入するときにも賛否両論があったと 思います。実際導入されてどういう新たな課題が見えてきたかという実情を踏まえて自 立支援施設側から現状を紹介いただくとありがたいと思いますが、いかがでしょう。教 育との絡みの問題ですが。 ○吉岡委員  私の施設では連携ということで毎日朝会で打ち合わせをするとか一学期に一回学校と 寮との連絡会をするとか職員の親睦会は私どもの方に入ってもらって本校の方には入っ ていないとか、いろいろやっていますけれども、その中で細かい話は出てきますけれど も、そんなに大きな問題はうちの施設の中ではないような気がします。  ただ最近少し問題なのは埼玉県に限ったわけではなく他の県でも同じかもしれません が、県外に親が転居した場合の学籍前籍校のあり方というのが、最近上尾市の方で親が 変わったら新しい住所地また区域外就学願いをとるようにして例えば千葉なら千葉の学 校が前籍校になるという話が出てきまして、かなりの回数で親が転居するものですか ら、子どもの前籍校の問題が大きく浮上しているのが一点です。文部科学省の方が言わ れましたけれど教員の配置の問題を全県的に行うというお言葉でしたが、埼玉の場合は 最初の打ち合わせの時にはそうするつもりだったのですが、今は上尾市の方におんぶし ている状況になっていまして、具体的に申しますと上尾市さんから県全体でやって欲し いという要望が出てきています。大きな点ではそういうことです。 ○岩田委員  東京は平成13年に萩山実務学校で学校教育が開始し、平成14年に誠明学園で学校教育 が始まりました。  誠明学園は本校方式ですから独立した学校が設置されているという形になっていま す。学校教育が入る前にかなり市の教育委員会、東京都の教育庁、福祉局との間で、い ろいろな問題について詰めて入ったということがあります。入る前の一番の大きな問題 は、当該市がどうして自分のところで学校を設置しなければいけないのか、つまり来る のは皆他の市の子どもではないか、どうして市立の中学を設置しなければならないのか というのが一番大きな問題でそれは財政負担の問題にも絡んできますのでその辺りにつ いては東京都がその問題について負担をするというような仕切りをきちんとして、全国 的に見れば多分一定のこういう形の仕切りをしているというのは大体決まっていると思 いますけれども、あとは本当に当該市を実際に引き受けてやっていこうという気持ちに させるかどうかという問題だろうと思います。  実際に学校教育が入ってからを見ますとやはり教育の面ではかなり丁寧な教育をして いただいていることはありがたいと思っています。誠明学園と萩山実務学校の場合誠明 学園は本校ですので学校の独立性というものが非常に強く、私たちもそのことを意識さ せられました。萩山実務学校の場合は施設がこれまでやってきたことを大事にしていこ うという意向で、教育に当たってくれているということがあります。そこさえ踏まえて くれると現場では教員と施設の職員というのは同じ子どもを見ていますから協力関係は わりあい取れるのかと思っています。  ただその時に学校教育だからという事で学習指導要領をあまり形式的に適用するとい う形になってくると施設がこれまでやってきたことがかなりできなくなってしまって、 結果としては学校のサイドもいろいろ困難な問題を抱えてしまうということになろうか と思っています。だからその辺りは学校教育ではあるけれども児童自立支援施設の中に ある学校という基本を押さえた上で学校経営に当たっていただければ協力関係はできる のではないかと思っています。  最近問題意識を持っているのは東京都の場合は平成13年と14年に学校教育を開始する ということでそこに配置をされる教員もかなり全都的な見地から生徒指導等について経 験をお持ちの、ある意味では優秀な教員を配置していただきました。しかし3年経って 新しい学校に転勤をされるということが出てきます。そうすると次にどういう先生が来 られるかというような問題が出てきてそれなりに児童自立支援施設の中にある学校とい うのを大事にしていくという見地から教員を配置するかどうか。場合によってはそこを おろそかにすると実際に配置をしたけれども教育にならなくて場合によってはつぶれて しまうということもあり得るのではないかと。私は児童自立支援施設の中の学校で教育 を行うというのは先生にとっても必ずプラスのことになっていくとそこでの経験という のはまた地域の中学に戻ったときにいかせると思っていますので、「あんな大変な学校 」と思わないでぜひ優秀な先生に来ていただきたいと思います。  そこを県全体で支えていくというような意識で配置をしていただければ協力関係も含 めてうまくやっていけるのではないかと思っています。 ○津崎座長  教育導入の問題に関しては当時服部委員がこの問題に関して主張されていたと思うの ですが、何かご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。 ○服部委員  これは一旦話し始めると止まらなくなるので発言しないでおこうと思っていたのです が、予想通りというところです。法制度の観点から言えば学籍の取扱いの点で「学校か ら学校への移行プログラム」は作りにくい状況が立ち現れているということです。ただ 国会を通りましたのでいい形で実施していくという以外にないと考えています。 ○津崎座長  他の方はいかがですか。 ○小木曽委員  先ほど八並先生の実践の報告ということで私は関心をして聞かせていただいていたの ですが、十数年前に当時教護院といわれていました児童自立支援施設の特に教育の所に いまして、私のいた施設は昭和40年代から学校の先生が一緒に入っていたという所で、 法律が変わっても特段変化はないような状況ではあったのですが、そこで特にその当時 の法律で「準ずる教育」とか就学猶予というところで先生方といろいろお話をするのは 決して準ずる教育はしていないといったところで、ある意味学校教育ではできない教護 院教育というものがあるのだというような感化教育につらなる、私も熱かったか若かっ たか知りませんが、結構いきがってそんなことを言ったり、やったりしていたような時 代があったと思います。ですから服部委員からもお話がありましたけれども、その当時 からやはり学校教育の導入よりも公教育の保障というのが現場の中で教育委員会等を含 めて地域の中で取り組んでいたということが一つあって、今回は服部委員がおっしゃっ たように法律で学校教育導入ということで何が保障されて、何が変わっていくかという 部分で言うと、私もある本をきっかけに幾つかの施設のお話を聞かせていただいたりし て、学校側が児童自立支援施設における分校・分教室の実践というのを知らずというこ とで言うと、逆に児童自立支援施設を実践というものをもっと学校教育の導入というと ころでいろいろな形の実践をある意味検証していくということが必要ではないかなと思 いまして、隣に野田委員がいらっしゃいますが、司法福祉学会の中で継続的にも毎年児 童自立支援施設の学校教育問題というものをいろいろな実践の報告や議論を含めて続け させていただいているということも、その30施設が多いか少ないか本当は全施設にそれ がおかれるべきではあると思いますが、いろいろなシステムや人の問題や予算の問題が あってまだ半分ぐらい施設がそういったことができていないという現状があるにして も、そういうことの積み重ねを児童自立支援施設の中で実践として報告をしたり、発表 をしたりすることで今の先生のところとかなり職種が一致するのではないかとそこをま たコラボレートしていくようなものが必要ではないかと思いました。 ○野田委員  八並先生の実践はこれまでもいろいろな機会に読ませていただきながら、特に児童自 立支援施設それからサポートチームの枠組みで動いていただいている部分というのは、 我々ソーシャルワークをベースにやっている者から見ても非常に参考になるというか役 立つ実践だと思いますし片方で、そこのところが十分にブリッジできてないというとこ ろが非常にもったいないと思っています。  大阪府は今年の春から小学校にスクールソーシャルワーカーを配置しました。これは 福祉と教育を現場レベルでつないでいこうということです。もっと言えばサポートチー ムあるいはサポート体制があるいはシステムが動き出すための呼び水的な、その人一人 がスタンドプレーをするという職種ではないわけですからその辺りが充実しつつあると 感じております。逆に児童自立支援施設に話を戻せば学校・施設機能・地域それから原 籍校というか先ほどのSTSでいう地域の学校そことどうつないでいくかという、もう少し 多様な仕掛けを意識する必要があるのだろうと思っています。  私の実感としましては、学校教育を入れた中で先生方とのコラボレートもうまくいっ て、共通課題に向けて一生懸命やっていただいている。あるいはそれを工夫するために 例えばお昼ごはんは必ず寮舎で食べるとか時々は夜泊まるとか、あるいは先ほどの懇親 会ベースででも非常に密接にやっている所もあれば、時間になればさっと帰ってそして お互いが集まると相手サイドの批判しかしないという非常に不幸なところもあります。  そんな中で何かの工夫あるいは八並先生は大学が入るという構造も書いていただいて いますが、こういうことも含めて入ったところに関しては何か仕掛けがあるといいのだ ろうと感じています。  一方で、いつも中国地区の話をして申しわけありませんが、興味深いのは例えば山口 育成学校などは数十年前から寮長のほとんどは学校教師が任用替えで入っておられま す。あるいは広島学園の場合でも直接処遇職員の2/3くらいが教諭から来られていると 思います。  そういうところが学校との連携でどうかというと、一言では言えませんが共通言語を 持っていても、一人の子どもをどういう枠組みで育て上げていこうかあるいは先ほどの 八並先生の言葉で言えばまさに人と成していこうかという辺りについての考え方は多様 なようです。そこで、相当に丁寧な協議が成立しているかどうかいうところが非常に重 要なのだと思います。もともとの属性であるとかということにも非常に引っ張られるの ですが、それ以外にも言われた条件の整備であるとか、あるいはそういった処遇につい ての考え方を擦り合わせるチャンスをどんなふうに作っていけるのか。また武蔵野学院 さんにはお願いばかりですが、この間学校の先生方への指導・枠組み等々のプログラム を組んでいただいていると聞いていますけれども、なお一層そういう専門性の積み上げ というものがあればいいと感じています。  欧米の幾つかの国ではこういう非行問題にきちんと対応できる教育というのはきちん と特殊教育の中にも位置づけられていてそれは広い意味では生活指導・生徒指導の一環 かもしれませんが、そのこと自体が教師としてのキャリアアップになっていきます。あ るいはそのスペシャルエデュケイションニーズに対応できるレベルの高い教師として評 価されていくというかこのような経験がキャリアアップにつながる、そして実際の実力 も上がっていくというものになればいいのかと日頃感じています。  もう一つ中国地区で言えば、岡山県立成徳学校というところは学校を導入していない かと思うのですが、副校長は教員が来ています。そこでは、学習面でも成果をあげてい ます。制度的に学校が入るかどうかということではなくて、本当に子どもたちの最善の 利益のためにはどのような社会資源あるいは仕組みを提供できるかというところが第一 番目で、この学校教育導入のきっかけになった話も無免許者が教えてどうするのだとい うようなことが片方にあったかと思いますが、それは子どもたちの状況に応じてむしろ 福祉あるいは生活指導を直接担当する方が教育の一端を担ってもらった方が効率のいい 部分ももしかしたらあるかもしれないし。あるいは本人の発達段階や課題等から見てむ しろ学校教育ということを強く意識した仕組みがそこに入った方が有効に働く場合もあ ると思いますので、片方では多様性が認められる、しかし前向きに学校教育を導入した いという話になったときには教育委員会をはじめ深いご理解と予算措置を伴った入り方 が実現していただけたらと感じています。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  分校を通常学校の分校にするからおかしくなるのです。養護学校の分校にすれば県単 位で対応できるし、人事もできますし、それから養護学校の規定ができますから4対1と か特別支援教育が対象の子どもばかりだから、そう思うのですけれども。 ○山内委員  武蔵野学院はまだ学校教育の導入ができていませんので、今いろいろと教育委員会と 話し合いをしているところなのですけれど、一点お願いをしたいのは、今も話がありま したようにかなり難しい子どもがたくさん児童自立支援施設の中にいます。だからそう いった子どもたちをうまく指導できる人材、あるいはそういった教員の方々が県レベル あるいは広域的なレベル中で来ていただくということは非常に大事ですのでぜひお願い したいと思います。それから、今、武蔵野学院ではそういった学科指導を担当する課長 を初め、そういう方々の全国の研修を実施しておりまして、今いろいろ話を聞く中で は、やはり児童自立支援施設のやり方が58カ所58通りあるのではないかと言われている ように、同じように学校教育の導入もそれぞれの施設あるいは県の教育委員会のやり方 でかなり違ってきているというのは事実だと思います。  やはり私ども児童自立支援施設あるいはそれぞれの県の児童福祉の主管課のところに いろいろと苦労をしていただいているのですが、なかなか学校の方とうまくいかない部 分についてはぜひ文部科学省の方で、せっかく今日も来ていただいているのですが、こ れまでもいろいろと教えていただいたり、あるいは努力していただいているのですが、 さらに今どういう形の連携がうまくいくのかあるいはよく聞くような学籍の問題である とか、人的な派遣の人数であるとか等を含めて、特別支援教育という事もありますけれ ども、ぜひ今まで以上のご理解とご協力あるいはご支援をぜひともお願いをしたい。も う一点は学校教育ではないのですが、実は中学校を卒業した子どもたちが何人かどこの 児童自立支援施設も出てくるのです。そういった中学校卒業後のプログラムがなかなか ないのでそこのプログラムをやはり、児童自立支援施設が作っていかなければならな い。ここの部分が厚生労働省の方に全自協(全国児童自立支援施設協議会)からもお願い していますけれども、なかなかその子どもたちに対応する費用が出てこないということ もあります。だからなかなかそういうプログラムもできないので、そういった子どもた ちを受けづらいということがあります。  ところが今児童相談所等いろいろなところから聞くと中学卒業後の子どもたちのニー ズもやはり高いという部分がありますので、中学校の所の公教育の導入の充実と併せ て、中学校卒業してからまたこれから実習へ行くとまた実習の費用がかかる、あるいは 危険物などのそういう学習もいると、あるいはもう1年勉強してから高校を受けたいと、 こういう子どもたちも含めた支援のプログラムがうまくできるように、こちらは福祉の 世界になりますけれども、そういったことも併せて今の子どもたちにうまく教育が進む ようにお願いしたいというのが今の感想です。 ○津崎座長  先ほどの教育サイドの話の中で、いわゆるチーム支援の重要性をいろいろ言われてい たのですが、これは教育のレベルだけではなくて福祉のレベルも、医療のレベルも、司 法のレベルもそうです。それぞれの独立した機関だけでは力は発揮できない。  そうすると、いろいろな機関がチームを組んで、どう課題に対して対処していくの か。それを施行するときに、先ほどの話にもありましたが、誰が具体的につなぐ役割を 果たすのか。先ほどの話で、教育がそれをするということは少し難しい面もあるという ご発言もあったように思うのですが、そのように機関をつなぎ合わせて、コーディネー トして、その力を束ねて援助して行くとなると、それこそまさにソーシャルワークの固 有の領域になってくると思うのです。  そういう考え方を進めていくと、教育にもスクールソーシャルワーカーの配置が必要 ではないかという考え方になって、先ほどご紹介があった大阪府はそれを先駆的にやら れた。  福祉サイドでも考えていくと、施設にもそういうソーシャルワーカーを配置しない と、地域あるいは他の機関との連携がうまくいかないという中で、児童養護等にはソー シャルワーカーの配置という考え方が出てきているのです。  そういう意味では、ソーシャルワーカーがつなぎ役としてそれぞれの部署にいて、う まく機能を併せ持つような形で調整できるというのが望ましいと思うのです。  教育サイドでスクールソーシャルワーカーを設定する方が良いのではないか。例え ば、今だとスクールカウンセラーです。スクールカウンセラーの話もいろいろ聞いてい ますと、活躍されている具体的な動きを見ているとカウンセリングではなくてソーシャ ルワーカーの動きをされています。結果的には学校で重要な機能を果たしておられると 見られるところが多いのです。  そうするとスクールカウンセラーよりもスクールソーシャルワーカーが、より今の状 況を踏まえたときには、必要なのではないかと思えるわけですが。  その辺の考え方は教育サイドではどうなのか教えていただければありがたいです。 ○八並東京理科大学教授  これは私の個人的な意見なのですけれども、実際の現場では、先ほど言ったように福 祉問題は外せないのです。そうなってくると、日本とアメリカを比較した場合に、平成 7年度に文部科学省がスクールカウンセラー活用事業を始めましたけれども、入り方に 疑問があったということなのです。それは、スクールカウンセラーとは一体どういう人 なのか、何をするのか。業務内容ですね。それからライセンス。それからそのスクール カウンセラー養成。そういうものがない状態で入ってしまった。  そういう点では、初期のころは、私も入ったことがありますけれども、いじめ・不登 校だったのです。そういう点では、かなり心理的なというかケアの部分で良かった。  ところが、実際の学校現場では、先ほど申し上げた、例えば大阪府もそうですけれど も、生活保護世帯もあります。あるいは非合法集団がかかわっています。そうなってい ると、やはりどうしても福祉的なものが必要だと。それからもう一つは、子どもの人権 を確保する意味でも、私はアメリカにも行きましたけれども、アドボカシーなのです。 子どもの権利を守れるかという発想が、スクールカウンセラーにあるかというと、個人 的にはあるのですけれども、そういうトレーニングを受けているわけでもないし、専門 職なのだが非常勤という非常にあやふやなところで来ているのです。  ではSSWはどうかと。日本のスクールソーシャルワーカーはどうかというと、まだ 専門職としては自立していない。ただし、そういうトレーニングのベース案はアメリカ をベースに一応やっているわけですが、では彼らが教育というものをどの程度熟知して いるかと。つまり、ある種教育的な知識・スキル、それからそういう福祉的な知識・ス キル、あるいはスクールカウンセラーにはある種心理職系の知識・スキル。  ただ、今言われたことは、ある意味ではそういう福祉的なこと、教育的なこと、心理 的というか医療的なものも含めたものを持った上で、しかも経験のある、しかも地域を ある程度まとめられるという、かなりスーパーマン的なのですけれども、そういうコー ディネーターでないとまとめられないのです。  それからサポートチームに関して言うと、法務省あるいは文部科学省でやっているわ けですが、一番の問題というのは権限関係なのです。つまり先ほど言われたように、誰 が召集をかけて、誰の指揮系統でやるかと。今、先生が言われたように、コーディネー トはどうするかと。基本的には、やはり教育委員会が窓口を持ち、その中で適切なコー ディネーターをセレクションしていくという方向しかないのではないかと思っていま す。  そういう点で、日本の場合は早くSSW、スクールソーシャルワーカーに関しても専 門職化というものがまず前提にないと、スクールカウンセラーと同じような状況下にな ると思います。ある所でうまくいっているというのは、弁護士それからスクールカウン セラー、ソーシャルワーカー、それから大学の教員あるいは医療関係者、それから教育 委員会の行政官、この辺りの7人〜8人のスタッフがまとまれば、かなりのことが出来る のです。実際は。  ただ、やはりその時は人であるし、先生が言われるように、実は今必要なのはスクー ルローヤーではないかという議論もあるのです。大阪府などでは。そうすると法的な対 応ができる、それから福祉的な対応もできる。医療関係・教育関係とその辺りで。スク ールソーシャルワーカーを今度そのサポートチームのある種コアと言うか、コアもしく はコーディネーターにというのは、個人的には昔からそれは必要だと思っています。そ れが実態です。   ○今泉文部科学省初等中等教育局児童生徒課長補佐  スクールカウンセラーがスクールソーシャルワーカーの役割を果たすというのは無理 だと思います。現在スクールカウンセラーは勤務が週8時間〜12時間で結局学校に来て いるのは1日もしくは2日程度にしか過ぎません。スクールソーシャルワーカー的な仕事 をするのであれば、子どもたちのことを、かなり日常的に見ることができる人材が必要 になってきますので。そうなると、このスクールカウンセラーは、能力的な面もさるこ とながら、勤務時間の関係からも少し厳しいのかなと思います。  ただ、スクールソーシャルワーカー的な役割が必要というのは、我々も重々承知して いて、でもそれを誰にやらせるのかという問題があって、香川県とか大阪府でやってい るのは我々も知っているのですが、あれもかなり人に、委ねられていると思います。  我が国においては、アメリカやカナダとは違ってスクールソーシャルワーカーを育て るような大学院の教員養成システムもなければ、彼らを雇用していくためのリクルーテ ィングシステムもない。そういう状況の中で新しく制度を設けるには、かなり養成の段 階から始まって、さらにリクルーティング、さらにトレーニング、その辺のトータルな システムを考えて行かなくてはならないのでかなり比重が大きいのかと。さらに現在の 財政状況を考えると新しく人の配置というのは厳しいと思います。  今やり得ることとしては、今各学校に生徒指導主事というのがいるので、彼らにスク ールソーシャルワーカー的な機能を委ねるというのが一番現実的なのかなと。ただ、そ のあり方についてはもう少し八並先生辺りの知恵を借りながら考えて行かなくてはいけ ないという感じがあると思います。  あと、先ほど発言した中で誤解を招いた部分があるとすれば、コーディネーター役で 児童自立支援施設にお願いしたいという話をしたのは、こういうことです。つまり児童 自立支援施設にいる子どもに関しての学校と教育サイドとの連携については、ぜひ児童 自立支援施設からお願いしたい。もちろん学校にいる子どもについての各サポートチー ムでのコーディネート役は、教育サイドがやるべきだと思っています。  先ほど杉山先生のお話で、養護学校に置いたらどうかという話があるのですが、必ず しも児童自立支援施設が養護学校のすぐ側にあるとは限らないので、即対応のことを考 えると校区内というのが現実的なのかなと。言われることは良いアイデアだと思うので すが。 ○杉山あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長  病弱療護などは、各病院に分教室を出しているでしょう。あれと同じアイデアだと思 うのですけれども。  私は今の職場に来る前は、教員養成の大学の教官をしていまして、特別支援教育の見 直しのためのワーキンググループの委員を、文部科学省にさせられていたものですか ら、この特別支援教育のコーディネーターのときに、私は専門職にしろと主張したので す。それまでは文部科学省はともかくお金をというか新しい人をつけたくないから、特 殊教育の教師にやらせろと言うのですが、特殊教育の教師というのは、通常学級を持た せられないから特殊教育をさせられているという人もいる。そういうことはまずいので すが、そういう例もあるくらいなのに、なぜコーディネーターができるのかと 今まで 学校でコーディネーターをやっていた職種は二つあるのですね。一つは教頭です。教頭 は教師とのコーディネートをやっていて、もう一つが養護教員。養護教員が医療機関と のコーディネートをやっていたのです。結局、コーディネートをやるためには、公務文 書の中で、ある程度の権限がなくてはいけないのです。私が主張したのは、特別支援教 育のコーディネーターというのは、完全に専門職として成り立つくらいの業務量がある のだから、必ず特別支援教育の担当は2人以上の複数にして、一人を特別支援教育の主 事にしろと。それでそちらの方にコーディネーターの役を任せたほうが良いのではない かというのがこちらの出したアイデアなのですが、しっかり蹴られました。 ○津崎座長  時間を超過しているのですが、議題の中では、より広く児童相談所・学校・民生児童 委員・医療機関等いろいろな機関、それに加えて少年院・法務省との連携も含めたあり 方ということで挙げられているのですが、ここからは問題を少し拡げて、児童自立支援 施設と今まで話題に出なかった機関との連携について何かご意見があれば伺いたいと思 いますが、いかがでしょうか。  法務省との関係では厚生労働省で勉強会をしておられるのですよね、確か。その辺を 少しご紹介ください。 ○佐藤児童福祉専門官  これまで5回にわたり実務者レベル、少年院の法務教官それから児童自立支援施設の 直接処遇職員の勉強会を持っています。その中で、まずはお互いのプログラムの紹介あ るいは見学というようなことを行っています。  もう一つは、私ども児童福祉分野に無い贖罪の考え方についてもご紹介をいただいて いるというようなことです。 ○津崎座長  児童自立支援施設サイドで、こういう機関とこういう連携があったら良いのではない かというご意見があれば披露いただけないかと思います。いかがでしょうか。 ○岩田委員  あったら良いというよりも、紹介をさせていただきたいと思うのですけれども。連携 と言ったときに、抽象的連携というのは、なかなか具体的に役立つ連携になって行かな いということがあります。東京都の場合は私たちの施設を退所した子どもたちが、なか なかその後こちら側が期待をしている状態になっていないという問題があって、地域の 中で、どうやって支えていく体制を作るかということで、民生児童委員さんが少しその ことにかかわる事業を考えたらどうかということで、実際にもう始まっているのですけ れども、私たちの施設に入っているときに、その子どもが暮らしていた地域の民生児童 委員さんに面会に来てもらったりして顔見知りになって、退所した後でその民生児童委 員が尋ねて行ったり、様子うかがいをしたり、場合によっては相談などにも乗りましょ うという制度を始めようということでサポート事業が発足したのです。  現実に、具体的な子どもの名前をあげていくとプライバシーの問題とか、いろいろな 問題があって、全部というわけにはいきませんけれども。子どもとその親の了解が得ら れたケースについて、そういう取組みをして行ったらどうだろうかと。  いろいろ難しい問題もあるけれども、そういう、地域で具体的に見守るような仕組み づくりをやっていく必要があると。これは別に東京都だけではなくて全国でもやってい けるのではないかと思っております。 ○津崎座長  ありがとうございました。 ○野田委員  福祉というのは基本的につながってなんぼのものと思っているのですが、その中で、 少し言い過ぎかもしれませんが、児童自立支援施設というのは、従来よそとつながると いうのが一番苦手などちらかと言えば内向きの所だったと思うのです。そうは言って も、とにかくまず地域の監視とのつながり、あるいは先ほどファミリーソーシャルワー カーの話もしましたけれども、この辺りも、そもそも児童相談所と施設とがどのように シェアするのかというところが大きな仕事で、もちろん子どもの心をしっかり掴んで、 いつまでも深いかかわりで子どもを引っ張れるという施設もたくさんあるわけですが、 基本的に先ほどの何でもということではなくて、必然的に地域に返していかなくてはい けないと思うのです。  やはりここのところのウエイトをどういう形で児童相談所とつないでいくのか。それ から入り口のところでは、藤岡委員も度々言われていた児童相談所がオーダーしたこと などを施設が何を分担しながらやっていくのか、あるいは保護者に対してもどう対応す るのかというところが非常に重要です。  そうしますと、関係機関の児童相談所、学校、民生委員、児童委員という並びで言う と、やはり児童相談所の所で軸をきちんと立てて、そこのところをどうつないでいくの かということが、後の報告その他のところで非常に重要なところだと感じています。  それから話題を戻してすみませんが、一言だけ。大阪のスクールソーシャルワーカー の導入にかかわっていますが、今、文部科学省の担当官が言われた通り、新たに新規事 業というのも、私自身もスクールカウンセラーを10年間スーパーバイザーも含めてやっ てきておりますので、難しい状況というのはわかりますが、スクールソーシャルワーク 的な業務と、スクールソーシャルワークということは本質的に相当違うものなので、少 なくともソーシャルワーカーとして時間が長いに越したことはないのですが、週8時間 なら8時間、週4時間なら4時間なりの動き方というのはスクールソーシャルワーカーと してもあり得ると考えています。この辺りは別に議論する場ではありませんので、ただ 見解だけ表明させていただきたいと思います。 ○津崎座長  時間がかなり押していますが、今、児童相談所との関係のあり方も非常に大切である というご指摘もありましたが、児童自立支援施設が今後他の機関と連携を取ったり、あ るいはまた、アフターケアのようなことについても力を入れていくとなると、現在の児 童自立支援施設は地理的に辺ぴな所にありますね。そうすると、かなりそれだけで難し いのではないかと思っています。  最近は、そういう必要性がありますので、児童自立支援施設の寮の職員と児童相談所 の職員が一緒に行って例えば学校と協議するとか、家庭訪問するという事例も散見され るのですが、寮を持たれている職員が出向くとなるとかなり労力が多いということにな ってきたときには、例えば議題の中に出ていた児童家庭支援センターの機能を、場合に よっては町中に持てないのかなと。町中に持って、出先機関として地域との連携の役割 をそこが担ったり、アフターケアの役割を担ったりする。  これは附置と書いてありますが、機能的に附置させると物理的には別に分かれていて も良いのではないかという新たな解釈もあり得るのではないかと。そうすると、出先機 関として地域のいろいろな機関との連絡・調整をして、むしろ本体の機能をバックアッ プするというような、新たなあり方というものも検討されても良いのではないかと思っ たりしていますので、そういう考え方もあり得るということをご紹介だけしておきたい と思います。  時間がかなり詰まっていますが、この際一言ということがあれば、どうぞ。 ○瀬戸委員  話が戻るのですが、児童自立支援施設と関係機関の連携というときに、やはり児童相 談所がもう少し頑張らなくてはいけないわけで、もともと言っている充実とか人気を高 めるためにどうしたら良いかということを議論したわけですが、その時に児童相談所が 非行問題にきちんとかかわっているということが、その地域の児童自立支援施設の強化 にもつながると私たちはそう思ったと思うのです。そこが非常に重要であって、東京都 でも、大阪府でも各地で非行問題も一生懸命やろうということで具体的な動きが始まっ ていて、大変良いことだと思うのですが、もっと全国的にきちんとやっていただかなけ れば、今まさに家庭条件が難しい中で打開できないのではないかと思いますので、問題 の立て方は児童相談所の非行問題への取組みをもっと強化してくれと、人員も含めて。 というような問いかけをもう一度確認したいというのが意見です。 ○津崎座長  他には。 ○服部委員  具体的な提案として、ケースカンファレンスをぜひ、もちろん秘密の厳守ということ はありますけれども、重ねていく必要があるだろうと思うのです。どういうケースでど ういう連携が必要だったのか。ケースによってさまざまで、抽象的に連携のあり方は定 めにくいところがありますので、こういうケースについては、医療と福祉との連携をこ んな形でやっていくのがいいとか、また別のケースでは、学校と福祉との連携をどのよ うにつくっていくのかということを、うまくできなかった部分も含めて検証していく。 私たちのような立場にある者も含めていろいろな部署の方々が議論をし、それを発信し ていくということを、ぜひお願いしたいと思うのです。それによって児童自立支援施設 の良さを伝えることができ、また今後に向けて課題を確認し、どういう仕組みを整えて いくべきか検討することをお願いしたいと思っています。 ○野田委員  今のことに関連して、要保護児童対策地域協議会との関係ですが、実は関係機関間の 連携という中でも優れて虐待はあるわ、発達障害はあるわ、それに非行が乗っていると いう非常にシビアな守秘がかかってくる問題を扱う、その地域基盤として、どのような 権限と同時にどの範囲まで情報を伝えて良いのかというのが個人情報保護のこと等もあ って、今現場では非常に難しいと思います。  学校の先生も連携と言われるけれども、その辺りをどう考えて良いのかというところ では非常に消極に解さざるを得ないという経験をお持ちの方はたくさんおられる。そん な中で、枠組みをどうするかというところは非常に大きな課題だと思っています。 ○津崎座長  他にご意見は。 ○八並東京理科大学教授  施設内の教育ですけれども、なぜこういう大学が入って行ったかというのは、一つは 先ほど言われたように予算だとかもちろんマンパワーも限界があります。子どもたちと 会ったときに、やはり学びたいと思っているのです。わかりたいとか。あるいは働くこ とだとか、あるいは大きく言えば、生きることだとかあるいは共に生きるとか。そうい う経験を提供したい。  だから、予算がない、人がいない、あるいは距離もある。でも大学は例えば出前授業 などをやっているわけです。無料で。そうすると、やはり大学などのマンパワーあるい は知識というものを少し活用しても良いのではないか。そういう意味では、ある種の連 携というのはこういう問題に対して機関連携ではなくて、むしろ日常の施設内の教育を 豊かにする。そのためには、先ほど物理的なものを言いましたけれども、場合によって は母親も来ない、先生も来てくれない、そういうところもあります。やはり人との出会 いを豊かにするというか、つくってあげることは非常に重要ではないかと思います。  私たちが行ったときも、最初はバトミントンをしたり、ギターの演奏会をしたり、授 業をしたりするのですが、普通の子と全く変わりないですよ。ある子は「先生、僕はゲ ームのクリエイターになりたいのだけど」と、他の子と全然変わりない。人と出会える チャンスを何とか大学とか他の機関と併せて作っていく。そういう意味での教育連携は できるのではないかという点では、大学なども地域を巻き込んでやれるのではないかと いう可能性は秘めていると思います。  それから、最後にもう1点、ある夫婦小舎制をとっている先生の言葉です。6年間そこ で過ごされたらしいのですが、「あの自立支援にいる子どもたちは不良少年ではないの ですよ」と言われたのです。「不遇少年ですよ」と。  つまり、恵まれない家庭環境とか地域の環境の中で起きた、もちろん発達障害みたい な障害、ディスオーダーもありますけれども、そういう点では、私たちの役割は、そう いう環境面の調整というか。そこで、お金が無い、人がいないというけれども、無料で 活用できる、例えば私たちもいます。あるいは地域の人もいます。もちろん守秘義務等 もありますけれども、子どもたちに、そういう出会いとか喜びとかいうものを体験させ てあげたい。  それはなぜかと言うと、退所した後にかなり戻って来たり同じことを繰り返してしま うのです。そういう意味では子どもたちに、どんな環境下にあっても、自分が選んだ正 しい道を歩めるような力をつけてあげなければいけないのではないかと思います。  大学はいつもあまり期待されないのですけれども、活用していただければと。そうい う実践です。 ○津崎座長  ありがとうございました。大変熱心な討議が続き、予定より30分ほどオーバーしてし まいました。申し訳ありませんでした。  一応これで今日の研究会は終了とさせていただきますが、次回の日程等について、事 務局から説明をお願いします。 ○清川家庭福祉課長  長時間にわたり熱心なご議論をいただきまして、どうもありがとうございました。次 回の研究会ですが、年末非常にあわただしいところですが、12月27日火曜日の15時〜17 時半の日程で開催させていただけたらと思っておりますので、よろしくお願いします。  なお、次回は当研究会の報告書の取りまとめに向けた議論ということをお願いしたい と思っておりますけれども、論点が非常に多岐にわたっておりますし、また論点によっ ては、さらに議論が必要ではないかというものもありますので、できれば12月の後、1 月にもさらに議論していただく場をいただければと思っておりますが、よろしいでしょ うか。  それでは、次回の12月については検討課題に沿って、これまでの議論を整理したもの を私どもで用意させていただき、それに基づいて全体的なご議論をいただければと思っ ております。  それを踏まえて、また年を越して1月から具体的な報告書の取りまとめの作業につい てお願いできればと思っておりますので、誠にお忙しいところではありますがよろしく お願いします。 ○瀬戸委員  事前にいただけるのでしょうか。資料などは。 ○清川家庭福祉課長  できるだけ事前にメールでお送りするようにしたいと思っております。 ○津崎座長  それでは、これをもちまして本日の研究会を終了します。長時間ありがとうございま した。                                     (了) 照会先  雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係(内7888)