05/11/29 平成17年11月29日第7回船員保険制度の在り方に関する検討会の議事録について 第7回船員保険制度の在り方に関する検討会          日時:平成17年11月29日(火) 10:00〜12:00          場所:はあといん乃木坂 3階 312号室 ○事務局  おはようございます。事務局でございます。開会に先立ちまして資料の確認をさせて いただきたいと思います。本日お配りしております資料は、座席表、式次第、それから 資料番号が振っておりますものが資料1〜資料8までございます。資料7につきまして は、資料7−1、7−2、7−3と3種類に分かれてございます。お手元にお配りして おります資料を御確認いただきまして、不足がございましたら事務局の方にお申しつけ ください。よろしいでしょうか。  それでは、定刻でございますので、座長、よろしくお願いいたします。 ○岩村座長  それでは、第7回船員保険制度の在り方に関する検討会を開催いたします。議事に入 ります前に、本日の出欠状況について御報告いたします。まず本日は西村委員が御欠席 でございます。また保険局長、審議官につきましては、国会用務のため欠席との連絡を 受けております。また、松井委員が若干おくれて到着されるということでございます。  きょうの議事に入ります前に、一言申し上げたいと思います。この検討会も本日で7 回目ということになりまして、取りまとめの時期が参っております。残された時間も限 られておりまして、委員の皆様にはぜひ積極的、建設的な御議論をこの検討会でお願い したいと存じます。座長といたしましては、これまでの議論の中で必要な材料や論点と いうものは、おおむね出そろったのではないかというように考えております。ですので、 この検討会におきまして、船員保険制度の制度の見直しの方向性ということにつきまし て、皆様の合意が得られますよう、委員各位の御協力をお願いしたいと存じます。  それでは、早速議事に入りたいと存じます。 ○三尾委員  座長、ちょっと意見を一つ言わせていただいてよろしいですか。 ○岩村座長  まず、それはこの後に例えば資料の説明であるとか、それに基づく議論とか、あるい は取りまとめの方向に向けての議論というようなことがきょう予定されておりますが、 その議事進行そのものに関することでございますか。 ○三尾委員  そういうことです。 ○岩村委員  それでは、とりあえずまずお伺いしたいと思います。 ○三尾委員  どうもありがとうございます。ただいま座長の方で、今回が第7回でそろそろ取りま とめということでお話がありました。私どもも7回目だということで、そういう理解は しているつもりですが、現在私どもが感じていることをちょっと述べさせていただきた いと思います。  前回が第6回、これは8月26日ですから、きょうは3カ月置いて開催されたというこ とでございます。話が煮詰まってくれば煮詰まってくるほど、こういう検討会は頻繁に やるべきだと私どもは考えていますが、この間3カ月、私たちは当局からほったらかし にされたのではないかとすら感じております。前回の検討会で座長の方から、当事者で ある労使間でこの問題については十分話し合っていただきたいというお話がありました ので、私どもも何度か時間を調整して話し合いをしてきましたが、肝心の議論の前提と なる情報が決定的に不足している。こういう状態で十分な話し合いができたとはとても 言えません。それが実態です。  私たちはこの間に事務局に対して、会議のための資料ができたら、できるだけ早く私 たちに説明をしていただきたい、欲しいということを申し上げてきたのですが、検討会 の開催も聞くところによれば何回か先送りされたと。きょうは3カ月たっているわけで すから。そのため資料はできないというふうに言われてきました。座長が言われるよう に、労使の考えを調整しようとしても、そういった資料がない中で十分な意見調整はで きない、できなかったということを申し上げざるを得ないことを残念に思います。  会議に入る前にこういうことを申し上げたのは、労使の間にはこういう事情があると いうことを、まず知っていただきたいと思って申し上げました。したがいまして議事に これから入るわけですが、(1)今後の船員保険制度の在り方について、(2)その他 とありますけれども、特に(1)については十分時間を割いて議論を進めていただきた いということを申し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。確かに3カ月ぐらいあいてしまったということにつ いては、座長としても大変責任を感じるところではございますが、他方で私も社会保障 審議会の医療保険部会の委員をやっていたり、労災保険の部会の方の委員もやっていて、 ある程度の事情はわかっておりまして、この間とにかく医療保険の本体の方が非常に大 変な状況で、私も何回か部会の設定はあったのですが、実際上余りに回数が多くて出席 できないというような状況にもありました。それだけ事務局の方が作業に大変忙殺され ていたという事情があります。また、労災の方も御承知のようにアスベストの問題など がございまして、やはり忙殺されていたという事情があるということはぜひ御理解いた だければと思います。  何かそのほか事務局の方でございますか。 ○武田医療保険課長  医療保険課長でございます。御指摘の点について事務局の力が至らなかったことにつ きましては、委員の各位の先生方におわびを申し上げたいと思います。その中で、限ら れた時間ではございますが、ぜひ議論を尽くしていただきたいと思います。よろしくお 願いいたします。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、恐縮でございますが、議事の方に入らせていた だきたいと存じます。  まず、前回の検討会で委員の方々から御要望がございました資料につきまして、事務 局の方から御用意いただいたものが提出されております。そこで最初にそれらの資料に つきまして、事務局からの説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○事務局  事務局でございます。資料番号1、「船員保険職務上年金と労災長期給付の財政方式 の違いについて」というタイトルの資料をごらんください。前回も御議論いただきまし たが、船員保険の職務上年金部門と労災の長期給付の部分、これらの財政方式の違いに ついて簡単にまとめております。  1枚目の1.でございますが、船員保険の職務上年金の財政方式について記述してお ります。船員保険の職務上年金につきましては、その中にございますとおり、将来にわ たり積立金が枯渇しない程度の保険料率を設定し、財政運営を行うという方式でやって おります。具体的には、一定程度の積立金を保有し、現役の被保険者の方々からの保険 料と積立金の運用収入、これらで受給者の年金給付を賄っております。すなわち、賦課 方式的な要素と積立方式的な要素をあわせ持った財政方式となっております。  次に労災の長期給付でございますが、次のページをごらんください。その2としてお るところですが、労災の考え方は、労災事故を起こした責任は、事故を発生させた事業 主が負うべきであるという観点に立っております。将来にわたって年金を給付するのに 必要な費用は、事故を起こした時点の事業主集団から全額徴収するという、いわゆる充 足賦課方式と呼んでおる方式を採っております。この方式では、初年度の収入のうち最 初の年度の給付に要した分以外は積立金として保有し、その運用収入をもって将来の給 付を賄っていくという形になります。具体的なイメージはその下の図にございますが、 支出は年々減っていきますけれども、それに要する収入というものは最初の年度の保険 料で充てるという形になっております。  1枚目にお戻りいただけますでしょうか。3.のところですが、このような両者の財 政方式の違いによって積立不足が認識されることになります。○の3つ目をごらんくだ さい。船保の財政方式を労災の財政方式に移行していく場合には、移行時点における年 金受給者の将来給付の相当部分、これを積立金として保有しておく必要があります。こ れが現在保有している積立金と、保有していなければならない積立金との差額、すなわ ち積立不足として認識されていくというようなことになっております。  続きまして、資料2をごらんください。資料2は「労働福祉事業の例」を掲げており ます。ここでは主に3つの事業を掲げております。  1つ目でございますが、「建設業における労働災害防止対策」ということで、建設業 の労働災害の防止を図るために、工事現場における墜落防止策の普及、あるいは専門工 事業者の自立的な安全管理の促進等、こういった事業を行っております。具体的には建 設現場での手すりをつけるとか、そういった墜落防止策の普及などを行っているという ことでございます。建設業を対象とした労働福祉事業を設けている考え方としましては、 建設業については業種別の死亡災害の発生が全業種の4割弱を占めているということ で、災害防止の取り組みが特に重要だと考えられています。その結果、保険財政の好転 にも資するというような考えで、こういった事業が設けられているものでございます。  2つ目に「振動障害防止対策」がございます。これは林業における振動障害の予防対 策といたしまして、チェーンソー取扱作業指導員による現場の巡回指導、振動障害の防 止にかかる知識の普及、こういった事業を行っております。この考え方といたしまして は、振動障害をいう疾病に着目した事業であるということでございます。振動障害につ きましては療養が長期にわたること等から、予防対策を講ずるのが労災保険の立場から 有意義であるということで、こういった事業を行っております。  3つ目の事業でございます。「交通労働災害防止対策」でございます。過労運転、深 夜運転、睡眠の状況と安全な運転との関係につきまして調査を実施し、各種資料を作成 ・配布するといった事業でございます。この考え方といたしましては、交通労働災害に よる死亡災害は、主に陸上の貨物運送事業で発生しておりますが、その他商業、建設業 等幅広い業種で発生しております。こういったことで、交通災害防止対策は業種を問わ ず広く取り組む必要があるということで、特に過労運転、深夜運転などとの関係の調査 実施、資料作成・配布といったような事業が行われているということでございます。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、さらに引き続きまして、前回の検討会の最後の ところで、船舶所有者の側から御提案がございました、保険料率のシミュレーション結 果につきまして資料が出ておりますので、事務局から御説明をいただきたいと思います。 お願いいたします。 ○事務局  それでは資料番号3、「一般制度に統合した場合の保険料率について」という資料を ごらんください。まず1ページ目に試算の前提条件をまとめております。前回、第6回 の検討会において御提案いただきました前提条件をもとに試算しております。  まず1つ目ですが、職務外疾病部門につきましては健康保険に統合する。給付水準に つきましては、現行の健康保険制度での給付水準とするものと仮定しております。  次に、職務上部門でございますが、こちらは労災保険に統合することとしております。 業種区分につきましては、現行の船員保険のグループを一つの業種と仮定しております。 また、給付水準につきましては、こちらは現行の船員保険での給付を維持するという前 提でございます。したがいまして、下船後3月の給付、あるいは行方不明手当金といっ た一般制度と比較して独自の給付につきましては、これを行うものと仮定しております。  次に失業部門につきましては雇用保険に統合ということで、その水準につきましては 現行の雇用保険制度での給付水準と仮定しております。  最後に、福祉事業につきましては、それぞれの一般制度で用意されている福祉事業を 活用するものとしております。ただしということで※印をつけておりますが、無線医療 センターの運営や洋上救急医療の援護事業につきましては、別途、引き続き事業を実施 できるよう検討することが必要であると考えております。ただ、保険料率の計算上は、 一般の福祉事業を活用するという前提になっております。  2枚目をごらんください。その前提条件のもとで計算した保険料率でございます。真 ん中の縦の欄が一般制度に統合した場合の保険料率で、現時点で直ちに統合した場合の 保険料率ということでお考えください。一番右の欄が現行の保険料率です。この両方を 比較してごらんいただければと思います。  まず初めに健康保険制度、職務外疾病部門に相当しますが、こちらにつきましては一 般制度に統合した場合、政府管掌健康保険に統合した場合ですと82‰、それぞれ労使折 半という考え方に立っております。  次に労災保険制度(職務上疾病・年金部門)でございます。こちらはその次のページ 以降に計算方式を載せておりますが、結果、合計で35‰が全額使用者側の負担によって 賄われるという形になります。これに対しまして現行の保険料は右に載せておりますが、 合計いたしまして72‰となっております。  次に雇用保険制度(失業部門)でございます。一般制度に統合した場合の保険料率は 19.5‰で、使用者側が11.5‰、被保険者側が8‰となっております。使用者側の11. 5‰の中には雇用保険三事業分の3.5‰を含んでおります。また注釈でございますが、 業種によっては労使双方に保険料率の上乗せがある場合がございます。これに対しまし て、現行の船員保険の保険料率は18‰労使折半となっております。  最後に福祉事業ですが、こちらは一般制度の場合はそれぞれの制度の保険料率の中に 既に含まれておりますので、ここでは別掲しておりません。  この結果、合計欄をごらんください。一般制度に統合した場合の保険料率を単純に足 し上げますと、136.5‰となります。うち使用者側が87.5‰、被保険者側が49‰とな っております。これに対しまして、現行の船員保険の保険料率は187‰、使用者側が132. 5‰、被保険者側が54.5‰となっております。すなわち、使用者側につきましては45 ‰の差がございます。被保険者側につきましては5.5‰の違いでございます。  それでは、先ほど御説明を飛ばしましたが、船員保険の35‰につきまして、その計算 の根拠が3ページ目、4ページ目にございますのでごらんください。ここでの試算の考 え方は、過去の実績に基づきまして保険給付費と賃金総額を推計し、料率を算出してお ります。すなわち、平成14年度から平成16年度までの過去3カ年間の平均値をとって おります。  「試算条件について」の(1)賃金総額のところをごらんください。平成14年度から 平成16年度までの保険料収入及び保険料率から、総報酬ベースでの標準報酬というのを 逆算しております。その3カ年平均を賃金総額というふうにここでは置いております。  また、(2)(3)でございますが、短期給付部分につきましては、船員保険の給付 実績をもとに、それぞれ労災保険の考え方に当てはめて短期給付、長期給付という割り 振りをしております。その結果、若干の移動が生じておりまして、短期給付の文章の3 行目をごらんいただければと思います。障害手当金、遺族一時金、年金差額一時金、そ れから4行目の行方不明手当金、これらにつきましては船員保険では職務上年金部門と いうふうに整理しておりますが、ここでは労災保険の考え方にのっとりまして、短期給 付というふうに整理をさせていただいております。  続きまして4ページをごらんください。(4)の通勤災害部分、福祉事業の部分、事 務費の部分、これらにつきましては全業種一律に賦課されておりますので、船員グルー プにつきましても同率を計上したということでございます。その試算結果が下の表にな っております。短期給付につきまして22.3‰、長期給付につきまして10.3‰、非業務 災害分(通勤災害部分)につきまして0.9‰、その他福祉事業、事務費につきまして1. 5‰、その結果合計35‰という形になっております。これが35‰の内訳でございます。  続きまして資料4、「職務上年金部門の積立不足の償却について(機械的試算)」と 題している資料をごらんください。職務上年金部門の積立不足の償却につきまして、一 定の償却期間の前提を仮に置きまして試算をしたものでございます。  基本的な枠組みといたしまして、2つ目の○にございますが、現時点での見通しのも とに、償却期間を通じて一定の保険料率を保てるような試算となっております。  2番にその前提を書いておりますが、平成17年度末の給付現価の見通しは法定給付 2,200億円程度と見込んでおります。前回までの検討会で御議論いただいておりました のは、この法定給付2,200億円というのを前提としておりますが、今回はそれに加えま して、特別支給金300億円程度を合計しております。特別支給金につきましては、法定 給付が給付される際に自動的に連動して給付されるものでございましたので、ここでは 一体のものとして扱っております。  そのほかの前提はこれまでと変わっておりませんが、平成17年度末の年金部門の積立 金の見込額として800億円程度、制度全体として1,100億円程度を見込んでおります。 また、被保険者数につきましては、平成27年度まで減少を続け、3.5万人、または3 万人で下げ止まるというような推計を置いております。年金スライド率、運用利回りに つきましては、労災保険と同様に1%、2%というように置いております。  この結果、2ページ目をごらんください。積立不足額の計算でございますが、年金部 門の積立金を償却に充てるという前提で、1,700億円程度と見込んでおります。また、 仮に制度全体の積立金を償却に充てた場合には、1,400億円程度になるものと考えてお ります。そういった前提で算出いたしました保険料率が真ん中の表でございます。積立 不足が1,700億円の場合、1,400億円の場合と場合分けしております。さらにその内訳と いたしまして、3.5万人で下げ止まる場合と3万人で下げ止まる場合がございます。ま た、償却期間につきましては15年、20年、25年という期間を仮置きしておりますが、 この結果12通りの料率を計算しております。この保険料率につきましては、使用者側の 全額負担で賄われている部分でございますが、先ほどの資料3の一般制度に統合した場 合の保険料率に、この償却のための保険料率を足していただきますと、一般制度に統合 した後の保険料率の全体のイメージになるかと思います。  参考情報といたしまして、一番下に労災の方式による積立不足償却のための保険料率 というものを載せております。この考え方につきましては、一番下の※印のところに書 いてありますが、労災保険におきましては利回りを勘案した上で、償却期間を通じて毎 月一定の金額を償却するという考え方に立って保険料率を設定しております。したがい まして、金額がベースでございますので、被保険者数が将来減少していった場合には、 保険料率を相対的に引き上げていく必要があるということでございます。このような関 係で、真ん中の表と下の表を比べていただきますと、下の表の方が若干料率が下がって おりますが、これは将来的には被保険者数の減少を見込む場合には引き上げていく必要 があるということで、我々としては真ん中の平準保険料率の方を主たるものとして掲げ させていただいております。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。きょうは取りまとめの議論ということもございますので、 それほど多くの時間はとれないとは思いますが、ただいま御説明のありました資料につ きまして、御質問などがございましたらお願いをいたしたいと思います。はい、山口委 員、どうぞ。 ○山口委員  今説明のあった部分についてですが、資料1でいわゆる制度の違いといいますか、船 員保険の労災についての財政の方式と一般制度の財政の方式が違うと。これはこういう 制度で今まで船員保険が運用されているという実態の紹介があったという理解はします が、その次の議論の方で積立不足があるということを、じゃ、どうするのかということ になるわけです。資料3で今御説明がありましたが、私の理解がまだ若干不足している ところがあるんですけれども、資料3で前提条件を示した上で、これは仮にということ で一般制度に統合した場合の料率というのが出ていますが、このもととなる、要するに 賃金といいますか、試算条件のところでも書いていますが、方式が違うわけですよね。 一般制度の場合は賃金総額に対してこの料率を掛ける。船員保険の場合は、ずっとこの 制度上、標準報酬月額というものに現行でこの率を掛けているということで、例えばの 話ですけれども、一番アッパーリミットのところで、現行の保険料率がかかって額が出 るわけですが、それとの対比というので何か参考になるようなものがあれば、検討の素 材としてわかりやすいのではないのかなと。  ただ、この料率だけを見ると、早とちりではないのですが、最後の合計の現在187‰ というのが、一般制度に統合すると136.5‰になると。これは相当下がるなというふう に、率だけで見ると、ここに出ている数字だけで見るととらえてしまうんですけれども、 そういう理解ではちょっと正しくないのではないかなというのも、もとになる額のとこ ろが違うというところで、もう少し理解が深まるような御説明をいただければなという のが一つです。  以上です。 ○岩村座長  今の点、いかがでしょうか。 ○事務局  お答えいたします。資料3の3ページをごらんいただきたいと思います。(1)の賃 金総額をどのように推計しているかというところでございますが、労災保険の考え方で とっておるような正確な意味での賃金総額というデータがございませんので、ここでは 総報酬ベースの標準報酬額というものを算出いたしまして、それを賃金総額というふう に仮定しております。したがいまして、今、山口委員の御指摘にありましたとおり、標 準報酬の上限を超えている場合には、賃金総額の方が大きいのではないかと。そのため 分母が少し大きくなっているのではないかという御指摘かと思いますが、ここでの試算 上はそういう意味では総報酬ベースという、標準報酬をベースにした推計になっており ますので、仮に標準報酬の上限額を超える方々が多数いらっしゃれば、賃金総額はもう 少し大きくなるものと、すなわち料率としては若干下がる要素に働くのではないかと考 えております。  それから、一般制度に統合した場合に、136.5‰で大幅に下がるのではないかという 御意見がございましたけれども、先ほども若干申し上げましたが、これはあくまで将来 に向かっての必要な給付を賄うための料率でございまして、過去債務部分の償却につき ましては、別途資料4の方で何パターンかの料率を載せております。一般制度に統合し た場合の最終的な保険料負担といたしましては、資料3の真ん中の欄の136.5‰に、資 料4で掲げております償却のために必要な料率、この数値を乗せて計算していただくの がよろしいかと思います。  以上でございます。 ○岩村座長  山口委員、よろしゅうございますか。 ○山口委員  そのもとになる賃金のベースの話ですけれども、これは仮定の話ですが、一般制度の 中に持ち込む、つまり賃金総額方式ということになると、現在の船員保険の標準報酬の 算定基礎になっているもの以外のものも、恐らく含まれてくるのではないかなと考えて いるのですが、その辺について何か御紹介いただければ。 ○岩村座長  事務局の方、いかがですか。 ○事務局  事務局からお答えさせていただきます。基本的には総報酬ベースのものと賃金総額の 違いにつきましては、標準報酬の等級表で決められておりますその上限を超えた場合の 金額が、反映されるかされないかというのが一番大きな違いかと思います。あとは、標 準報酬ということで、個々の賃金総額の違いを等級表に当てはめておりますので、その 辺の若干の差異というのがあるかもしれませんが、そこはプラスマイナス両方の効果が あり得ますので、途中の金額については基本的には相殺されるという考え方に立ってお ります。したがいまして、一番大きな違いとしましては上限額、一番上の等級を超えた 場合の報酬が反映されてくるかこないかというところかと思います。 ○岩村座長  端的に申しますと、高給取りの船員さんがいらっしゃるという数に応じて、どれだけ の方がいらっしゃるかということによって、その辺の差異が出てくるというふうに御理 解いただければと思います。どうぞ、小坂委員。 ○小坂委員  小坂です。資料3についてちょっと質問させていただきたいと思います。まず、前提 条件は十分理解しております。しかしながら、例えば1ページ目の一番上の○の職務外 疾病部門についてという部分につきましても、船員保険としての独自性の部分を外して ここではすべて、前提条件ですからそういうふうになっておるわけです。私どもが一番 知りたいのは、独自部分というか、例えば傷病手当金みたいなものがどれぐらいの比率 に、‰になるのか。それから一番下の○のところの無線医療センターの運営や洋上救急 という非常に重要な部分について、これについては経費は先ほどの試算の中に入ってお るのか。それとも別にこの経費が賦課されるのか。その辺が私どもとしてはかなり大き なところではないかと思うので、その辺の説明をいただきたいと思います。 ○岩村座長  それでは、事務局の方、お願いいたします。 ○事務局  お答えいたします。今回の資料3の試算につきましては、前回の検討会の最後に船舶 所有者側様から、4つの条件ということで提示いただいたものを前提に計算しておりま す。それで、今の御質問の中にありました無線医療センターの運営、洋上救急医療の援 護事業についてはどうなのかということですが、今回の試算の中では入っておりません。 これが、今の船員保険制度内でどのぐらいの料率を占めているかというのは、なかなか 算出が難しいわけですが、17年度予算をベースに考えますと約0.1‰に相当いたしま す。  そのほか、職務外疾病部門、あるいは失業部門についての船員の特殊性に基づく給付、 特殊性給付について加えた場合はどうかというお話かと思いますが、これらにつきまし ては、それぞれ別個に必要額が取り出せるものと取り出せないものがございますので、 一概にどのぐらいの費用がかかっているかということをお示しすることは難しいわけで すが、仮にそれらの給付についても、すべて現行の水準を維持したままで制度を統合し た場合はどうかということだとしますと、資料3の2ページ目にございます表のうち、 やはり健康保険制度につきましては現行91‰で運営されておりますので、恐らくそれに 近いような料率が必要になってこようかと思います。それから、雇用保険制度部門につ きましては、ここの部分は雇用保険三事業部分を除いて現行は9‰、それから一般制度 に統合した場合は8‰ということになっておりますので、そこはそれほど大きな違いは ないのかなと思います。それに加えまして、福祉事業で現在6‰をいただいております が、これがそれぞれの事業内容に応じて、各部門、各制度のところに割り振られてくる と思います。したがいまして、結果的には合計の保険料率はそれほど大きく変わらない のではないかと考えております。 ○小坂委員  説明は理解しました。そうすると今の話は端的に言うと、資料4で積立不足分と言わ れておる、ここの部分がまるきりふえていくという話ですね。確認だけしておきたい。 ○事務局  資料3の現行の保険料率の中の2つ目の箱、職務上年金44‰というところをごらんい ただきたいのですが、これにつきましては昨年の検討会の中で試算をしておりまして、 単純にここの部分を将来発生する事故に対する給付ということで、労災保険の方式で計 算いたしますと11.6‰という数字が出ております。したがいまして、それとの比較で 考えますと、この現在の44‰というところはそれより32‰上乗せでいただいています。 それが事実上労災との比較でいきますと、積立不足の償却に回っているというような実 態になっております。したがいまして、現行の保険料率を見ていただきますと、32‰の 償却料率が乗っているというふうに御理解いただければと思います。それと、資料4の 今回一定の償却期間で償却を終わらせるために必要な料率との比較部分、その差額が結 果的に保険料率の引き上げにつながるというふうにごらんいただければと思います。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。いろいろまだ御質問があろうかと思いますが、このシ ミュレーションの結果というものは、この後に行います取りまとめに向けた議論のこと とも密接にかかわりますので、もしまだ御質問があれば、それは取りまとめに向けた議 論の中で再度必要な御質問をいただければと思いますが、よろしゅうございましょうか。  それでは、先ほども申し上げましたが、きょうは取りまとめに向けた議論ということ をお願いしたいと考えております。そこで、その議論の素材というか、その議論のため に役立つようにということで、これまでの議論の中での主要な論点をまとめた資料とい うのを用意してございますので、それにつきまして事務局からまず御説明をいただきた いと思います。よろしくお願いいたします。 ○事務局  では資料番号5、「これまでの主な意見」をごらんいただきたいと思います。この資 料につきましては、第4回の中でもごらんいただきましたけれども、それの項目を若干 整理して再掲したものでございます。したがいまして、内容につきましては、以前ごら んいただきましたものと変わっておるものではございません。簡単に内容だけ御紹介さ せていただきます。  まず1つ目ですが、「船員保険制度の在り方の基本的な方向について」ということで、 船主側からは一般管理部門のコスト削減や保有資産の見直し等が第一に追求されるべ き、あるいは保険料率の引き上げや給付の引き下げ等による安易な制度の見直しを行う ことには反対、といった御意見をいただいております。また、被保険者側からは、各部 門をそれぞれの一般制度に統合することも一つの選択肢であるが、総合保険制度の特色 を生かしながらその存続を図る方策を講じることも考え得る、といった御意見をいただ いております。  次に、「一般制度に統合するに当たっての留意事項について」御意見をいただいてい る部分でございます。被保険者側からは、職務上部門の給付については、船員法、IL O条約との関係で、単純な給付の切り下げは困難である。また、職務外疾病部門につい て、一般制度並びの給付にそろえた場合には、ILO条約における実質的同等性の確保 を危うくする可能性がある、というような御意見をいただいております。また、「船員 の特殊性」は職務上部門の給付においても、職務外疾病部門の給付においても反映され るべきである、というような御意見が被保険者側からは出ております。  次に3番の、「保険料負担の在り方について」でございますが、こちらにつきまして は船主側から、現行の水準の範囲内で解消策を考えるべきである、といった御意見が出 ております。被保険者側からは、仮に一般制度と統合した場合には、保険料徴収が多元 化することも想定され、それに伴う収納率への影響や事務負担の増が懸念される、とい った御意見ですとか、あるいは職務上年金部門の積立不足については、リストラ等によ り被保険者数が減少してきたことが原因であるのではないか、といった御指摘がござい ました。また船主側からは、職務上年金部門以外の部門については、相当程度の積立金 を有していることから、財源構成は異なるものの活用することはできないか、あるいは 部門間における保険料率の調整も検討すべきではないか、といった御意見をいただいて おります。また、被保険者側からは、職務外疾病部門について、仮に統合により一般制 度並みの給付にそろえるのであれば、保険料負担は相当程度軽減されるべきである、あ るいは船員に対して都道府県単位での財政運営の適用には反対である、といった御意見 をいただいておるところでございます。  続きまして、4の「福祉事業の取り扱いについて」は、被保険者側から、福祉施設の 在り方については福祉の後退につながらないよう慎重に対応すべき、といった御意見を いただいております。また船主側は、財政悪化に対する対応策として、福祉事業の見直 しが行われるべきである、といった御意見もいただいておるところでございます。  3ページ目をごらんください。引き続き船主側の御意見ですが、福祉施設は船員保険 制度の施設としては廃止・売却することが原則であって、その資産については職務上年 金部門の積立不足に充てるべきである、という御意見をいただいておったところでござ います。また被保険者側からは、船員の雇用確保のための事業や、乗船中の傷病に対す る支援、これらにつきましては引き続き実施することが必要である、といった御意見を いただいております。  最後に「その他」といたしまして、被保険者側から、船員保険への未加入者、保険料 の徴収不足、不適正給付を一掃することが必要である、という御意見。一つ飛ばしまし て、失業部門の給付につきまして、被保険者期間の海陸通算は、一般制度への統合の有 無にかかわらず早急に実施すべき、という意見をいただいております。これに対しまし て船主側からは、船員保険事業の運営状況を広く開示し、透明性を確保するべきである、 こういった御意見をいただいていたところでございます。  続きまして資料6、「議論の取りまとめに向けた論点」という資料を御説明させてい ただきたいと思います。まず、「制度の現状」についてまとめさせていただいておりま す。被保険者数の減少が続いておりますが、このため現在の船員独自の保険制度を維持 したままでは、船舶所有者及び被保険者の保険料負担を過大なものとせずに将来にわた って安定した財政運営を維持していくことは困難となるおそれがある。特に年金部門に つきましては、平成10年度以降、単年度の赤字が続いておりまして、構造的な財政問題 を抱えております。したがいまして、船員保険制度の在り方の見直しは、先送りできな い課題となっているという現状にございます。  次に、被保険者数が平成27年度に3万人または3万5千人となるケースにつきまし て、機械的な財政推計を行ってまいりました。その結果、最も深刻なケースでは、平成 32年度に職務上年金部門の積立金が枯渇し、支払いが行われないという可能性も否定で きない試算結果となっております。したがいまして、保険集団として規模が縮小し続け た場合には、保険運営が大変厳しいものとなるということが示されたものと考えており ます。  次に、特別会計改革の議論の中で、船員保険制度につきまして財政制度等審議会から、 他の特別会計等で運営されている一般制度から独立した保険事業としての必要性が問わ れております。したがいまして、これに対して船員保険制度の在り方の基本的方向につ いて結論を得ることが急務となっている現状にあります。これは平成15年11月の指摘 でございまして、最新の指摘は(注)にございますが、「制度の安定的・効率的な運営 を図る観点から、船員保険特別会計について、船員保険事業のうち健康保険制度に相当 する部分については公法人化した政管健保を含め国以外の主体による運営を、また、労 災保険制度及び雇用保険制度に相当する部分については労働保険特別会計との統合を検 討すべきである」、こういった指摘が財政審においてなされているところでございます。  1ページ目の一番下の行でございます。現在船員保険の保険者として機能しておりま す社会保険庁につきましては、平成20年の秋に、公的年金の運営を担う国の新しい機関 と、政府管掌健康保険の運営を担う国以外の公法人に分離されることが現在検討されて おります。関連法案につきましては、平成18年の次期通常国会に提出される予定であり まして、この関係でも船員保険の運営組織の見直しが避けられない状況にあると考えて おります。  次に「基本的方向」でございます。以上のような現状を踏まえましてまとめさせてい ただいております。船員保険制度は、これまで船員及びその家族の生活の安定と福祉の 向上に大きな役割を果たしてきたところでございますが、上記のような制度を取り巻く 環境の変化を踏まえまして、将来にわたり保険事業の安定的な運営を確保するためには、 船員保険制度の各部門をそれぞれ一般制度に統合することを基本とした上で、船員労働 の特殊性にかんがみ、なお必要不可欠と考えられる給付については、引き続き給付でき る仕組みを検討すべきではないか、このような論点を設定させていただいております。  以降、その基本的方向を踏まえた上での各留意点でございます。まず職務上年金部門 の積立不足につきましては、年金受給者にかかる将来の給付に要する資金に相当するも のでございますので、船員保険制度として最終的に賄う必要があるものでございます。 こういったことを踏まえまして、一般制度と統合する場合には、これを償却していくこ とが必要であります。その償却に当たりましては、償却に必要となる保険料負担が過大 なものとならないように、ほかの部門の積立金などを活用することについてどう考える かという論点でございます。  それから、「船員労働の特殊性を踏まえた給付の取り扱い」についてでございます。 一般制度と統合する場合には、一般制度における給付内容との均衡を図っていくことを 基本としつつ、船員保険の独自給付について見直す必要があるのではないか。一方で、 独自給付の中には、船員法において災害補償の内容等が定められている給付があること や、ILO条約において国内法令が条約と実質的に同等であることを確認するとされて いることから、船員労働の特殊性にかんがみ、なお必要不可欠と考えられる給付につい ては、引き続き給付できる仕組みを検討すべきではないかということでございます。  次に3ページをごらんください。福祉事業につきましては、各種事業を開始した時点 から社会経済情勢が変化してきていることを踏まえまして、真に必要な事業を精査して 実施することが求められており、一般制度と統合した場合は、一般制度における福祉事 業の取り扱いとの整合を図っていくことを基本として実施するべきではないか。ただし、 関連する法令の差異に留意しつつ、無線医療センターの運営や洋上救急医療の援護など、 特に船員労働の特殊性との関連が深い事業については、その特殊性を踏まえた検討が必 要ではないかとさせていただいております。  また、福祉施設については、特別会計改革における議論や、国が保有する公的施設の 在り方に関する議論において、廃止・民営化などの整理合理化措置を進めることとされ ている点を踏まえまして、国以外の主体による管理・運営の方法も視野に入れて検討す べきではないかということでございます。  次に、「一般制度間にまたがる可能性のある給付の取り扱い」についてまとめており ます。下船後3月の療養補償につきましては、職務外の負傷・疾病に対する給付であり、 船員法におきまして船舶所有者の災害補償責任として規定され、船舶所有者の全額負担 により賄われることとされております。一方、一般制度における職務外の給付といたし まして、健康保険制度においては一定の自己負担を組み合わせつつ、労使折半の保険料 により賄うこととされております。  一番下の○ですが、昭和61年度におきまして、従来船員保険で行っておりました職務 外年金につきましては、厚生年金に統合いたしまして、昭和61年4月1日以前の旧法に おける年金につきましては、職務上外あわせまして厚生年金から支給されることとなっ ております。この旧法年金のうち、職務上相当分につきましては、現在船員保険制度で 負担する保険料率をもって繰り入れて充てておるという取り扱いになっております。  このようなことを踏まえまして、次の4ページ目の一番上でございますが、これらの 給付は複数の一般制度にまたがる可能性のある性格を持つものでございますので、船員 保険制度の各部門を一般制度に統合する場合にあっても、単純に整理することが難しい。 こういうことを踏まえまして、引き続き給付のための仕組みを検討すべきではないかと いう論点でございます。  次に、「特別会計改革と運営主体の在り方」についてまとめております。財政審にお きましては、特別会計改革の関係で、次のような指摘がされております。「類似の事業 を行う複数の特別会計については、国民にとってのわかりやすさ、資金の流れの透明性 の確保、業務の効率化等の観点から意義が認められる場合には、これらの統合を行うべ きである」。また、「国でなければ遂行できない事業以外は、独立行政法人化、民営化 等を検討すべきである」、このような指摘がなされておりまして、船員保険制度の在り 方につきましても、それぞれの事業の性格に応じて一般制度に統合する場合のほか、国 以外の主体による運営についても検討が必要であるということです。  次の○でございますが、船員保険制度の各部門に対応する健康保険、労災保険、及び 雇用保険につきましては、いずれも強制適用の保険制度となっております。したがいま して、船員保険制度の各部門について、国以外の主体による運営を行うこととした場合 であっても、船員に対する保障の確保という観点から、適用や保険料徴収にかかる業務 については、ある程度公的な関与が必要ではないかという論点でございます。  その次は、船員保険にかかわる業務は、現在社会保険事務所等が地方運輸局との連携 のもとに行っているところでありますが、平成20年秋の政管健保の公法人化後における 当面の運営主体につきまして、円滑な移行を図る観点からどのように考えるのかという ような論点をつけさせていただいています。  最後に、「制度見直しの時期」ということでございます。被保険者数の減少が続く中、 将来にわたって安定した保険運営を確保できるよう、本検討会で今後の船員保険制度の 在り方の基本的方向を取りまとめた上で、これに沿って速やかに制度見直しを行うこと が適当である。「しかし」といたしまして留意点を掲げております。他の社会保障制度 や国際条約との関連に留意して、個々の給付についての整理が必要であること。また、 新たな船員保険の運営組織において、システム開発等の円滑な体制整備のために一定の 期間を要すること。積立不足の解消に向けた取り組みの円滑な進捗を見きわめる必要が あること。こういった留意点を踏まえまして、制度見直しに向けて一定の期間を定めた 上で、関係当事者間で今後さらに検討を深める必要があるのではないか、このような論 点を置いております。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、ただいま事務局から御説明をいただきました論 点を踏まえまして、議論の取りまとめに向けました被保険者側、船舶所有者側、それぞ れのお考えにつきまして御発言をいただきたいと存じます。恐縮ではございますが、私 の方から順番を指定させていただきますと、まず初めに被保険者側から御発言をいただ き、その後船舶所有者側から御発言をいただくということにしたいと存じます。  それでは早速ですが、被保険者側の方からお願いをいたします。 ○山口委員  今、「議論の取りまとめに向けた論点」ということの御説明がありましたが、これに ついて基本的な考え方ということで述べさせていただきます。また後ほど質問したいこ ともありますので、それはそれで別途お願いします。  まず、基本的な考え方です。前段で、労使間で意見調整をしようにも材料不足であっ たということも述べさせていただきました。思い返せば昨年の10月からこの検討会がス タートしていまして、12月の末、クリスマスの日には中間的な取りまとめを行うという ことで、それを、今回のまとめの中にも若干出ていますが、経済財政審に報告しながら 今後の方向性を引き続き論議していくということであったのですが、きょう出されてい ます「議論の取りまとめに向けた論点」の中身を見まして、正直言ってびっくりしてい ます。というのも、これまで論議をしてきていますが、その内容がかなり偏った形で表 現されているのではないかと、そういう受けとめ方をしています。  具体的に申しますと、保険財政の将来見通しの結果について、ある前提条件、かなり 厳しい前提条件を置いた中で、全く船員の労働行政の問題は抜きにした中で、一定の数 字を置いてシミュレーションしていただいたわけです。この中でいえば例えばある特定 の特殊なケースで──参考ケースBというやつです──試算をした結果、厳しいという 結果が出たことは事実ですが、そこだけを強調したようなもので、なおかつ他部門の財 政状況についてもあわせてシミュレーションしていただきましたが、独自の制度として 持続ができる可能性が十分あるなというふうに私どもとしては判断をしているわけです が、その点が全く抜きにされています。ということは、一般制度への統合というのがま ずあって、なおかつ統合するに当たってはいわゆる独自上乗せ給付といいますか、「船 員労働の特殊性にかんがみ、なお必要不可欠とされる給付」という表現があちこちに出 ていますけれども、そういったものについてはすべて捨ててしまって、頭を切るといい ますか足を切るといいますか、そういう中で一般制度に統合していく、バランスを保っ た上で統合していくというものを原則にしていますが、そういう考え方については受け 入れがたいということを申し上げさせていただきます。  いずれにしても、「船員労働の特殊性にかんがみ、なお必要不可欠と考えられる給付 等の検討」ということで、あちこちにいろいろ出てくるわけですが、この範囲が何を言 っているのかいまいちわからない。例えば国際条約に抵触しないとか、現行の船員法や 船員保険法に抵触しないと。まさか船員保険法、船員法を変えようということではない と思いますので、そこら辺についてよくわからない。仮にの話ですが、一般制度に統合 されるということであったとしても、現在の船員保険制度における保障内容といいます か、給付の内容については、基本的には包括承継されるべきだと考えております。  さらには、これまで論議してきていますけれども、なおかつ今後引き続き検討が必要 という表現もありますが、これまでの論議ではかなり未消化な部分が多いのではないか。 論点にこういう問題があるということについてはクローズアップされているわけです が、もう少し掘り下げてそれについてどうするのかというのが、具体性が全く見えない。 引き続き検討するだとか。では、検討してみてだめだったという表現は変ですけれども、 どうにもならないといった場合は、その部分についてどうするのか。そこら辺が全く欠 けているのではないかなと。そういう中で、今回一般制度への統合というのが「基本的 方向」というところに出ていますが、こういう方針は不適切だと言わざるを得ません。  「船員労働の特殊性にかんがみ、なお必要不可欠と考えられる給付」ということが各 所に見られていますが、ではどうするのと。例えばの話、先ほど若干お話がありました けれども、無線医療センターの問題であるとか洋上救急の問題であるとか、これは陸上 にない制度ですから、もともと統合のしようがないということで、ではこういったもの をどういう形で維持していくのか。具体的な対応策が全く示されていないということで、 今後検討すればいいじゃないかという、変な話投げ出したといいますか、今後の検討に すべてゆだねた状態で、一般制度への統合を基本に置いた取りまとめを行うことについ ては、同意ができないということを申し上げておきます。  以上です。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは引き続きまして、船舶所有者側の方から御意見を いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○小坂委員  船舶所有者側としては、この「議論の取りまとめに向けた論点」の部分の議論がある 程度終わった段階でというか、(1)の議題が終わった段階でこの辺の御披露をしよう かと思ってはおったのですが、組合の方から今意見が出されておりますので、私どもも かなり似通った部分がございますので、お手元に私どもの要望のコピーが配られている と思います。私どもとしてはこの要望を、今お手元の部分は保険局長あてになっており ますが、同じ文面で社会保険庁長官にもお出ししたいので、お二方を考えてつくってお ります。ここにお集まりの委員の皆様には、最後にこのコピーをお渡ししようというこ とで考えておったのですが、それでは早速私どもの要望を、組合とかなり似通っている 部分もございますけれども、まず簡単に読み上げさせていただくというか、内容をかい つまんで話をさせていただきたいと思います。  何度も話に出ておりますように、昨年の10月にスタートしてから1年余をかけて、中 断ばかりしながら進んできましたが、いまだ明確な方向を出すまでに至っておるとは、 私ども船主4団体は考えておりません。同制度の対象とする日本人船員の将来について、 明確な予測をつけることは、当然のことながら国土交通省も、それから漁業の水産庁の 当局も非常に難しいことであろうし、我々としても将来を明確に見据えるというのは、 非常に難しいということは十分承知をしております。  特にこの船員保険制度は、国際条約に対応する形で国が責任を持って定めている船員 保険法という法律に基づく制度でございます。船員法と相まって船員労働政策の重要な というか、2つしかない1つであるというふうに私どもは考えております。そういうこ とを考えると、「記」以下に書いてございます3点は、絶対外すことのないように制度 の方向性をつくっていくべきではないか。  具体的には、これは組合とまるきり一緒とは思いますが、国際条約に対応した形で制 度化されている給付水準については、継続維持が前提である。2つ目としては、一般保 険制度と統合していく場合においても、上述の給付水準は維持し、給付原資の相違は、 料率にて調整する等の措置を図りながら、この場合にあっても、当該料率は現行の船員 保険制度のトータルの料率を上回らないような形でやっていくこと。3つ目としては、 船員保険独自の給付部分については、これは言うまでもなく、船員の労働という姿の中 から生まれておる部分であって、何も上乗せなどというような部分ではない本来の姿で あると、私ども船主団体も思っております。公的保険制度と切り離して別制度を設ける ことになると、事業者、特に私どもの零細漁船、内航海運を初めとする事業の規模の極 めて小さいところにとっては、ものすごく大きな負担になる可能性があります。ひいて は、保険制度により救済されないような船員集団を発生させるおそれもあるのではない か。こういうことは絶対に回避していかなければいけない。そういうふうに私ども4団 体は考えております。  そういうことで、私ども4団体としては、ここに書いてあるような部分がやはり十分 に守られることが、この制度をどういう形で将来につなげていくかという大前提である と、そういうふうに考えております。よろしくお願いをいたします。  以上です。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。ただいま被保険者側、船舶所有者側、それぞれから お考えをいただきましたが、それをもとにきょうのこの取りまとめに向けた論点を検討 していくということになります。まず、先ほど御質問を伺っていないものですから、御 質問があれば御質問を、また、御意見等がさらに付加してあればお伺いをしたいと思い ますので、どうぞ御自由に御発言をいただきたいと思います。  それでは、まず松井委員から、その後、山口委員ということでお願いいたします。 ○松井委員  組合側からの指摘で、私の理解不足かもしれませんが、要するに現状維持でやらなく てはいけないということ、その現状維持も船員保険という全体が一つでなくてはいけな いと、そのように聞こえました。これはできたら公益の先生のお二方にお聞きしたいの ですが、ではそのやり方が社保庁改革の中で社保庁としてできなくなるという前提のと きに、何らかの公法人という形でやれば、それはそれでいいということになるものなの でしょうか。まずそこのスタートが違うと、維持できるというお話があったとしても、 法制上の仕組みとしてできるのかどうかが私はわからないので、その点の確認だけをし たいのですが、いかがでしょうか。事務局でも結構ですが。 ○岩村座長  それでは、多分社保庁改革との関係があるので、正確なところはむしろ事務局からお 答えいただいた方がよろしいかと思いますが。済みません、では医療保険課長、お願い いたします。 ○武田医療保険課長  社会保険庁改革の状況につきましては、この論点の中にも出てまいりますが、平成20 年度後半を考えておりまして、年金を主に担う新たな組織、それから政府管掌健康保険 を担う国以外の公法人ということで議論が進んでございます。これは年金制度につきま しては、すべての国民をカバーするものとして、やはり国が行うべき性格の事務である。 それから、医療保険につきましては、健康保険組合や共済組合の例もありますように、 国以外の主体が実施することも可能な事務であるというような整理がされております。  その上で、政府管掌健康保険は、そうは言いましても単に任意の団体という性格では なく、被用者保険の最後の受け皿でございますので、強制的に適用するということも必 要になってまいります。したがって、適用・徴収は国である新たな年金のための組織が、 年金と健康保険の保険料徴収が基本的には同じ対象だということに着目して、適用・徴 収は国が行うという、こういう整理になっているわけでございます。  社会保障制度は国でなければ実施できないか、または国以外の主体でも実施できるか というような制度それぞれの考え方がございますので、それに即して整理をしていかな ければいけないものだと基本的には考えております。船員保険制度が所管をしておりま すもの、厚生年金につきましては既に統合されておりますが、残るものとしては一般制 度でいえば雇用保険、労災保険、健康保険、それから各制度をまたがる可能性のある給 付というのが船員保険の中に包含されておりますが、これを一体として考えていくとい うのが、それぞれの制度のこれまでの整理からいいますと、なかなか難しい状況にある のも事実でございます。  政府管掌健康保険のような強制適用のものも含めて、公法人化というふうに医療では 考えられておりますし、雇用保険、労災保険は国の事務として現段階では整理をされて いるということでございます。なおかつ、従来のように社会保険庁が社会保険に関する さまざまな事務を行う組織ではなくなっていくということもございますので、ただいま の松井委員の御指摘に即して申し上げれば、一括して今までのまま維持するといった場 合に、その国のどこが運用するのかというのは、既存の社会保険庁が将来ともに引き続 きということは大変難しい状況にあるということでございます。  それから、特別会計の改革の中でも、これは論点の中で御紹介しておりますように、 制度の性格ごとに考えていくべきだろうということで、船員保険制度もその物差しで議 論を進めるべきだということを言われているような状況にございます。ただし、国でな い主体でといったときに、いろいろ御心配、御懸念もあろうかと思いますが、政府管掌 健康保険の例のように、強制的に担保しなければいけない事務につきましては国が行う ということも、政管の場合は整理をしておりますので、具体的制度設計につきましては 御意見をいただければ、それに沿って考える余地はあるのだろうと思います。ただ、そ の一括してということは大変難しいというようなことを申し上げたいと思います。 ○岩村座長  松井委員、よろしゅうございましょうか。 ○松井委員  もしお差し支えなければ、野川先生の御意見などがありましたら、お聞かせ願いたい のですが。 ○岩村座長  野川委員、いかがですか。 ○野川委員  船員保険の特殊性というのは、全部一体化しているところにもちろんあるのですが、 その理由が船員という職業がほかと違って、御承知のとおり船の上で生活をし、労働を し、そして職業形態としてもちょうど船員職業安定所があるように、職業紹介もほかと は違ってある一つの自己完結的なまとまりの中で行われているという、そういった実態 を反映しているわけです。したがって、保険の在り方について、その中身についてはも ちろん個別に、今医療保険課長がおっしゃったように、しかもきょうのシミュレーショ ンにもありましたとおり分けられますが、どうしても分けられない部分というのが出て くる。それが難しいのは、単に国内の制度の問題だけではなくて、船員は職業自体が昔 から大変国際的ですので、国際条約の縛りが恐らくほかの職業よりも直接的でかつきつ いというところがあると思います。しかし、国内情勢の中でこれから社保庁も恐らく全 く変わった形になっていく。そして、特別会計についてももうかなり厳しい見直しがす ぐそこまで迫っているということと、どう平仄を合わせながらやっていくかということ になるのだと思います。  そういうところで、先ほど船主団体及び組合両方から出ているような不安が、どうし ても払拭できないのではないかと思います。結局どうするかという将来的な展望につい ては、率直にやはりここで、国内的な対応としてここはもうどうしてもできないんだと いうことを出していただいて、そしてここはどうしてもできないんだとすれば、そので きないということと、しかし例えば国際条約の上ではこれはどうしても実現しなければ いけないんだということは、新しいこういうことで何とか実現し得るんだというのを、 やはりもう少し率直に出していただかなければまずいと思うんですね。  それで、松井委員が前からおっしゃっているような、健康保険組合の亜流みたいなも のはどうかという御意見がありましたが、そういったものがもし考えられるのであれば、 私もそういった形で、できないことについては新しい制度を設ける以外にはないのであ って、それは今後たとえそれにエネルギーや時間が費やされても、やっていかざるを得 ないと思っております。だから、その仕分けが一番大事なので、今さまざま改革の中で なかなか新しいことなんてやれないというのはそのとおりですが、船員保険に関しては、 もうどうしてもだめなんだけれどもやらざるを得ないという二律背反の部分が残ってし まうところについては、新しい対応をせざるを得ないと思います。そこをもうちょっと きちっとした形で出していただくというようになるのではないかと思います。  もう一点、私が今の議論で懸念しますのは、やはり確かに時間がかかって、その間中 断が多くて、組合がおっしゃっているように資料も十分に検討すべきものが出ないでは ないかという議論が出ております。これは理由としては、社保庁の方も社保庁という組 織自体がこれから大変な変革を迎える中で、やるべきことが多すぎて、それにどういう プライオリティーをつけて、どんなふうに時間的な制約の中でやっていくかということ、 これを対処していくのは大変難しいだろうと思います。また、先ほど岩村座長がおっし ゃったように、医療保険の全体の改革というのも大変シビアなものがございますので、 大変だったと思いますが、他方ではやはり今この船員保険をこういう形で、恐らく発足 以来の大改革を行う中では、今出ている懸念に対しては、それにやはり具体的に答える 形でこの検討会の最終的な報告を、あるいはまとめの内容をつくっていくべきだと思っ ております。  今後の議論として私は率直に申し上げて、やはり一般制度に統合できるものはこうい う形で統合します、でもできないものがこう出てきます、それはこういう新しい制度と なります、そういうふうにならざるを得ないと思いますが、それをしていくに当たって は、今まで出てきた懸念一つ一つに、こういう形にすればこの懸念にはこう答えること になります、こういうふうに統合すればこの懸念にはこういう形で対応することになり ますということを、やはりそういう書き方で報告書をつくるような方向を望みたいなと 思っております。  直接的なお答えになったかどうかわかりませんが、私の考えであります。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。それでは、山口委員、どうぞ。 ○山口委員  単純な質問です。去年の中間的な論議の整理というところにも出てきましたし、その 後6月1日に半年ぶりに再開された第4回のところでも、たしか事務局から説明があっ たと思いますが、今回の論点の中にも書いています特別会計論議のところですが、財政 制度等審議会から云々という下りがありますけれども、この船員保険制度の在り方の検 討会と財政制度等審議会との関係は、かかわりは何なんだろうかなと。  今までの御説明だと、当然この船員保険制度については、関係者が将来の方向性につ いて検討しているんだと。その検討結果を尊重するものになるだろうというような御説 明を伺っておったのですが、いきなり特別会計の廃止ということで、船員保険は廃止を して、陸上の制度に統合というのが一般紙に大々的に報道されているということですが、 これまでの間、この委員会を主催している厚生労働省と、これは財務省の方だと思うん ですけれども、そこら辺の関係といいますか説明がどうだったのか、ちょっと聞きたい のですが。 ○岩村座長  それでは、事務方の方でお願いできますか。 ○事務局  まず事実関係から御説明させていただきます。特別会計の見直しの議論は、確かに昨 今新聞紙上等でかなり取り上げられておりますが、もとを正しますと一昨年、平成15 年に当時の財務大臣からの御指摘もあり、議論が始まっております。  特別会計につきましては財務省が所管という形になっておりますので、したがいまし て財務省の関係審議会であります財政制度等審議会、こちらの方で主に議論がされてき ています。これは特別会計ということで、船員保険に限らず31特会すべてまとめた形で の議論が行われております。その中で、平成15年の11月にまず1度目の取りまとめが 行われておりまして、この中でいきますと論点の中の1ページ目の3つ目の○にござい ますが、一般制度から独立した保険事業としての必要性が問われている、ここの部分が まさにその平成15年11月の財政審の指摘であったわけです。これが出ましたことを踏 まえまして、この検討会で御議論をいただいていると。ですので、この検討会の最初の 設立の趣旨紙にも、その辺の指摘は盛り込ませていただいているところでございます。  そういった意味で、当初から特別会計改革等の議論も念頭に置きつつ議論が始まって おるわけでございますが、特に今の小泉改革の総仕上げ的な部分で、今、特別会計の見 直しというのがまさに急ピッチで動いているという部分でございます。  今、この11月18日の財政制度等審議会ということで、指摘の文章を抜粋しておりま すが、これにつきましては財政審のみならず、その後の政府与党それぞれでの議論も現 在並行して進んでいるところでございます。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。三尾委員、どうぞ。 ○三尾委員  今のお話に関連して、おっしゃったように財政審の方で特別会計について議論されて いると。これはお金の話だろうとは思いますが、多分にこの検討会で制度を含めて今後 どうするかということを議論すべきということで、現在も議論しているところですよね。 ところが新聞の方、いわゆるマスコミで報道される方が早くて、特別会計はもう統合す べきだと。船員保険特会は廃止すべきだと。なぜこういうのが出てくるのですか。私は 非常に納得いかないですよ。我々がこの制度をどうするかということを議論しているの に、なぜよそのところでそんな話が結論づけられてしまうのですか。  そこで質問ですが、財政審に対して当局側、厚生労働省かどこからか、今こういう保 険制度について、しかも制度の中身ですから、そういったことを御説明したり、あるい は何かそういう議論を、補助になるようなことはされたのですか。それだけちょっと質 問しておきたい。 ○岩村座長  それでは医療保険課長、お願いします。 ○武田医療保険課長  財政制度等審議会では各特別会計につきまして、全部やったかどうか承知しておりま せんが、私どももヒアリングに呼ばれまして、船員保険制度につきましては、こういう 検討会でこういうメンバーでこういう議論をしているということは申し上げてございま す。その際に、例えば船員保険の特殊性、ILO条約との関係といった難しい論点も含 まれているということも、あわせて説明はしております。 ○岩村座長  三尾委員のお怒りもわかりますが、そういう情報というのは多分厚生労働省側が流し ているのではなくて、厚生労働省の力の及ばないところから流れているんだということ だと思いますので、その辺はちょっと御理解をいただければと思います。  ほかはいかがでございましょうか。どうぞ、国土交通省。 ○後藤船員労働環境課長  一言だけ。今船舶所有者の団体、それから全日海から紙が出ておるわけでございます が、例えば全日海の方もこの文面を読ませていただきましても、一体として今後とも船 員保険をやってくれないと、それでないともう絶対反対だというようなことではないと 私は思っております。要は、今後が非常に不安で、かつそれがよく提示されないので不 満であると。したがって、そういうのを払拭してほしいということではないかと考えて おります。それから、船舶所有者の皆様方からの御意見も、やはりそういった不安があ ってのことであると聞いております。  国土交通省としてはこの制度に船員法という形で、あるいは条約という形でかかわっ ているわけでございますが、少なくとも2点だけは申し上げておきたいと思います。一 点は労災の件でございますが、ILO条約で要求されておりまして、また船員法にも規 定されております、いわゆる船員の労災の給付水準については、単なる船舶所有者の義 務という形で船員法で規定されるのみならず、今後とも今までどおり強制力のある公的 制度で担保していただきたいと考えております。それからもう一点は、福祉事業につい ても船員の特殊性という議論がございますが、その特殊性を十分に考慮して御配慮をい ただきたいということでございます。  いずれにしましても、事業者側、組合側とも今後の動向について大変不安であるとい うことを私どもにも言ってこられる方がおりますので、ぜひとも今後とも労使の意見を 尊重して検討を進めていただきたいと思っております。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、まず小坂委員で、その後、山口委員ということ でお願いできますでしょうか。 ○小坂委員  論点という形の中で、例えば私どもというか、特に私が気になる部分では、中身とし ては1ページ目の○の2つ目を見ていただきたいと思います。私ども組合と船主側が、 10年後に被保険者数が3万人と3万5千人というケースでシミュレーションしたわけ です。それで、ここに書いてあるのが、「財政破綻する可能性も否定できない」という ことで、多分あのシミュレーションの中のたくさん出てきたペーパーの1枚のことだけ を書いてあるわけです。それから、この2つ目の○の3行目のところに、「保険集団と して規模が縮小し続けた場合、保険運営が大変厳しいものになることが示された」と書 いてありますが、保険集団が規模として縮小し続けるというのは、社会保険庁がそうい うふうに考えておるのか、国土交通省がそういうふうに考えておるのか。少なくとも1 行目にあるように、船主団体と海員組合は10年後に3万人、もしくは3万5千人で下げ 止まるのではないかというのが我々の、傘下の意見は聞いていないにしても委員の意見 であって、考えもそこにあるわけです。そうすると、ここに書いてあることはまるっき り違うことだと。特にこの最後の3行目なんていうのは、だれがこんなことを考えたり 発言をしたのだろう。これは余りにもひどすぎるのではないか。というようなことがこ の後ろの方にもずっと幾つか出てくるような気がします。議論として全然上がっていな いことが、さもそれが議論であったように。  私どもはそういう水かけ論みたいな話をする気はなくて、先ほど要望書を出させてい ただきましたが、船主4団体としてはその3つの要件が最低限度クリアされるのであれ ば、現下の情勢と状況、それから特会がなくなっていくというようなことを考えた場合、 幾つかの選択をせざるを得ないというふうには考えております。だけど、余りにも事実 と違う部分がこういう形で出てくるという姿であるならば、これは非常に困ったものだ と思います。これは質問ではなくて意見ということで、一部には質問もありますが、だ れも答えられないでしょうから意見という形で申し上げておきます。 ○岩村座長  では、御意見として承るということでよろしゅうございましょうか。それでは山口委 員が先にまず手を挙げておられましたので、山口委員、お願いいたします。 ○山口委員  これは質問です。きょう出されたペーパーの「基本的方向」というので、先ほど基本 的考え方を述べましたが、いずれにしてもこの検討会ではたしかA案、B案、C案とい うのが素材として挙がったと思います。これははっきり言ってC案を結論づけていると いうふうにとらえているのですが、B案の可能性はもう全くないのか。A案については 現行維持の状態ですから、これは別の論議になると思いますので、A、B、Cのうちの Cを結論づけていると理解しているのですが、B案についての検討の可能性はないのか ということ。  それともう一つですが、2ページの「職務上年金部門の積立不足の取り扱い」という ところで、最後の行に「他部門の積立金などを活用する」という表現がありますが、こ の他部門というのは現在の船員保険制度の中のことを言っているのかどうか。それだけ です。 ○岩村座長  それでは医療保険課長、お願いいたします。 ○武田医療保険課長  今A案、B案、C案というふうに御質問がございましたが、前に提出させていただき ましたイメージでケースAといいますのが、現行の社会保険制度を維持ということでご ざいました。ケースBといいますのは参考までに申し上げますと、健康保険を船員保険 から切り離しまして、例えば政管健保で運営をさせる。残りの部分につきましては引き 続き船員保険として維持をするという案でございました。これにつきましては、まず実 施組織をどこでやるのかと。労働保険部分だけが残りますので、そこで実施できるのか どうか。それから、さらに大きな問題といたしまして職務上の疾病・年金部門、それか ら失業部門が残ったときに、そこで上乗せといいますか、独自給付をやっていくという ことにつきましてどういう整理ができるのか。いずれにいたしましても、ケースBとい うのは非常に中間的な形態とも考えられますし、最終的にどういう形を考えるかという ことでいきますと、とりあえず健康保険だけ出てというのは検討いたしましたが、現実 的には非常に難しい論点が多かったということでございます。 ○岩村座長  よろしゅうございますか。もう一点ですね。 ○武田医療保険課長  論点の中で他部門と書きましたのは、これは船員保険制度、船員保険特別会計におき ましては特に勘定区分されておりませんので、積立金は積立金なのですが、部門ごとに 積立金を計算しております。ここで言っておりますのは、失業部門や疾病部門といった 積立金が一応整理をされているわけですが、積立不足が職務上の年金部門で生じており ますので、その積立金を年金部門の積立金に充当して、またその年金部門の積立金とい うふうに考え直して、将来の償却負担を減らしてはどうかというような論点として提示 をさせていただいたものでございます。 ○岩村座長  山口委員、よろしいですか。ではどうぞ。 ○山口委員  他部門のというところで今説明があったのですが、ということは被保険者、つまり船 員側の積立分、保険料として支払った分がその中に含まれていると。それを、本来であ れば船主負担であるところの労災の方のファンドの足りない分に回すというのを検討し てみたいという理解ですね。 ○岩村座長  医療保険課長、どうぞ。 ○武田医療保険課長  論点としては一つそういう論点もあるのではないかということで、御提示をさせてい ただきました。 ○岩村座長  それでは三尾委員、どうぞ。 ○三尾委員  最初に発言しようと思ったこととちょっと。今のやりとりがあったので質問の方を先 にしたいと思います。  今の「職務上年金部門の積立不足の取り扱い」で、他部門の積立金活用ということで お話があったのですが、例えば他部門の積立金を積立金不足の方に移したとしますよね。 そうすると積立金が基本的にはなくなると。そういう状況で、医療改革も当然あるだろ うし、あるいは雇用情勢というのもどう変わるかわからない。この前も一応5年程度は ということで御説明いただきましたが、その後どう変わるかは、これは全くわからない ものだというお話がありました。そういった状況がもし変わるとした場合、我々が心配 しているのは状況が悪くなるという前提です。そのときには、当然給付の問題もあるか もしれないけれども、料率の問題も考えられる話だなと。といったときに料率の負担を、 例えば当然雇用保険も健康保険の医療部門も、ほとんど船主さんと我々と両方で出して いる形ですよね。積立金がゼロになってしまう。逆に言えば、我々が負担していたこと によっても積立金ができ上がっていた部分も持っていってしまうということになると、 状況が悪化したときに例えば料率でカバーするといったときに、我々の方のひがみじゃ ないけれども、持っていかれちゃったんだけれども、今度料率の負担をふやすときには、 被保険者の方は余計に負担していただくというようなことに、よくよく考えればなりま すよね。そう考えていいんですかね。いや、そんなことはないよということなんですか ね。持っていった分も含めて考えると。そこのところだけ、ちょっと細かい話だけれど も。 ○岩村座長  すいません。ちょっと前提としては、被保険者分も負担しなくてはいけないよという のは、それは労災の部分の話ですか。それ以外の部分の話ですか。 ○三尾委員  それ以外です。要するに医療部門と雇用保険の部門で、そこから持っていくわけです ね。持っていくというのは積立金が現在あるから。それは我々被保険者側も料率は出し ているわけですよね。それで積立金には多少貢献しているのではないかなと思いますが、 それを職務上の方へ持っていってしまうことになったときに、雇用状態なりあるいは医 療改革なりのところで料率負担を被保険者についても、これはやはりやっていただきま すよといったら、直感的に持っていかれちゃったものがもっと残っていれば、例えば被 保険者分だけでも残しておけば、それは負担として少しは使えるのではないかなという 思いがあるから聞いているわけです。 ○岩村座長  わかりました。 ○小坂委員  ちょっと待ってくださいね。理解ができないんですけれども、マイクを使って言うほ どの問題でもないですが、今の話は例えば縦に3つに割ったという前提に立っているの ですか。そうではないのですか。 ○三尾委員  ここに書かれていることを聞いているわけです。ここに書かれているのは分割して書 いているわけだから。 ○岩村座長  分割したことを仮に、もし分割したという立場に立ったときに。 ○三尾委員  そういう前提で書いているから。 ○小坂委員  そうするとこういうことですね。例えば他部門に移さなくてそのまま持っていったら、 それもどうなるのかということもセットになりますね。 ○岩村座長  そういうことになりますね。 ○小坂委員  そういうことですね。そこを聞いておかないと。 ○岩村座長  ですから、例えばの例としては被保険者分も入った部分について、つまり職務上年金 以外の部分の積立金を、健保部分と雇用年金部分に持っていくことがあるのかどうかと いうことと、あったとしてそれがどういう効果を持つのかということですね。 ○三尾委員  そういうことをこれは言っているわけでしょう、ここのところは。今問題提起された のは、そういうふうに私は理解したものだから。 ○岩村座長  いずれにしても職務上年金にかかる積立金だけを償却に回すといったときには、そう でない部分に相当する部分は残るので、その扱いをどうするかという話は当然出てくる のだろうとは思いますが、ただそれをどういう形で処理するかというところまでは、多 分まだ具体的なイメージとしてはないのだと思うんですね。ただ、それを果たして雇用 保険や健康保険といったような短期保険に持っていくのかどうか、そういう処理が何か 意味があるのかというのは、ちょっと私も直感的にはよくわからないのですが、事務方 の方でわかりますでしょうか。 ○武田医療保険課長  この積立金をどう考えるかというのは非常に難しい論点だと思っておりますが、国の お金を管理する側の意見としては、それは一たん国に入ってしまったものは、国庫は国 庫だというような立場の省庁もございまして、その一部門で足りないといっても全部で これだけあるならばみたいな議論になりがちですが、今御指摘がありましたようにそも そもの、だれの保険料でできた積立金かという話までさかのぼりますと、今のように本 来、将来財政が悪化したときに使えるはずのものがなくなった、その場合は後で足りな くなったといったときに、もう一遍労使折半で負担をするとなると不公平ではないかと いう論点があるというのは、確かに御指摘のとおりだと思います。  実際にどうなるのかという御指摘になりますと、具体的制度設計をどうするのかにも よりますので、ちょっと確たる御返事ができないのですが、そういう論点が出てきてし まうということと、それから一般制度に統合されますと、例えば雇用保険に統合された 場合につきましては、雇用保険一般のルールに従うことになるのではないかと思われま すので、やはり将来的に積立金なしで移管をした後、雇用情勢が逼迫すれば、労使折半 で料率引き上げという形になってくる可能性が高いと思いますが、具体的には制度設計 をどうするかによる可能性があります。 ○岩村座長  時間もあれですが、雇用保険の方、よろしいですか。ちょっと手短に。前にほかに統 合した例のことがあれば、それを。 ○田中雇用保険課課長補佐  このような例は特にないですが。 ○岩村座長  共済がつぶれたときに雇用保険にいっていますよね。 ○田中雇用保険課課長補佐  特に積立金を引き継ぐとか引き継がないとか、規模的にいうと余り影響がないのでは ないかなと思われます。 ○岩村座長  ありがとうございます。松井委員、どうぞ。 ○松井委員  船員関係ばかりの意見が出ていますので、私が出ているのは一般制度の立場もありま すので、ちょっとその点の意見だけ述べさせていただきたいと思います。  まず雇用保険も、恐らく船員の人数自体がそんなに大きくないので、影響が大きくな いという御回答だったと思いますが、資料3のところの現行の船員保険における保険料 率と、一般制度に統合した保険料率で見ますと、まず実態がどうなのかということをお 聞きしておきたいんですけれども、船員の方が失業給付を受けることが多いということ があるのか、ないのか。それは実態の把握が難しいかもしれませんが、そういう可能性 があるのかないのか。  さらに健康保険の部分につきましても、仮に船員という形での健保組合がつくられる とした場合、職務外疾病でも船員の方が多く病気にかかる、保険料が必要な状況になっ ているのかどうかということをお聞きしたいと思います。なぜならば、船員の労使の方 々はびた一文上げるのはならんとおっしゃっていますが、受け手の側としてはそれなり に過去勤務債務は持ってきてほしくないということを、恐らく今後仮に統合するという ことになった場合には、そういう意見も出てくると思いますので、まず実態がどうなっ ているのかということを教えていただけばと思います。可能性の範囲でも結構です。 ○岩村座長  保険課長、どうぞ。 ○今別府保険課長  具体的な数字、どこがどのように寄与しているかというデータを今持ち合わせており ませんが、定性的に申し上げれば、まず基本的に高齢化率の差異というのは一つ考えら れます。それから、もう一つは何回かお話に出ていますが、特に現金給付において船員 保険の方が、手厚い付加給付的な上乗せ給付をやっておりますので、その部分が定性的 には多い要素としては考えられる。ただ、どの程度どこが寄与しているかというところ までは、今手元にデータを持っておりません。 ○岩村座長  雇用保険の方、何か。お願いいたします。 ○田中雇用保険課課長補佐  船員以外の雇用保険に入っている方と船員との差異について、そこまでは細かくは見 ておりませんが、少なくとも今の船員の失業部門の収支状況等を見ていると、相当程度 収入の方が多い。つまり保険料で取っている方がかなり多いという状況になっているよ うな感じがするので、だから船員の失業給付がたくさん出てしまうというような感じで は、直感的にはそういうことはないのではないかと思います。 ○岩村座長  松井委員、どうぞ。 ○松井委員  そこに関連して、陸海通算になったらどうかということまでは入っておりますでしょ うか。そこら辺はどうでしょうか。 ○田中雇用保険課課長補佐  通算された場合というか、そのままの給付が出た場合という仮定で考えても、考える しかまだ今できないんですけれども、それで見ても相当程度保険料収入よりは上回って いるような感じを受けてはおりますけれども、これは社会情勢において変わってくると は思いますが、今のところ何かさほどの大きな違いがあるかというと、そういうわけで はないなと思っています。 ○岩村座長  龍井委員、どうぞ。 ○龍井委員  時間も迫っていますので、質問とちょっと要望だけまとめてお話をしておければと思 います。質問は今の雇用保険関係で、統合した場合どうなるのかということです。つま り、統合していった場合の船員の特殊性が負担と給付の問題だけでは、陸上部門への再 就職誘導というか促進というか、そういう結果になることへの懸念です。船員という一 つの職務で働き続けることを前提にした制度と、雇用保険となっていった場合には当然 給付要件になっていけば、再就職の道というのは優先されるわけで、それは当然陸上部 門に誘導されていくということが一般的には考えられるわけですが、そういう懸念があ るかどうか。  2つ目はちょっとまとめ的な要望ですが、さっき材料不足だという御指摘がありまし たが、私もこの間ずっと考えていたのは、業界自体がどうなっていくのかということと、 それから制度の持続可能性はどうかということです。途中でやはり決定的に変わったの は社保庁の問題で、制度上どういうふうになっていくのか。A、B、Cという考え方が あって、いろいろな可能性があるのだけれども、これは難しい、これは可能性あり、あ るいはこれは別制度というのが本当に制度として継続できるのか。様々に検討しなけれ ばいけない課題があるわけなので、さっき課長がBケースについて検討したけれども論 点が多かったといわれましたが、他のケースでも論点がめちゃくちゃ多いわけですよ。  ですから、できましたら事務局で大変お忙しい中やられたのでしょうけれども、Bケ ースの場合についてどういう論点とどういう可能性を検討されていて、それでこれがだ めだった、あるいはこういう問題があったということについては、ぜひ情報としてとい うか、論点として出していただいた方がいいのではないかと思います。それとの絡みで、 今出されている案の検討をしたらどうかという可能性があるかというその制度設計上の シミュレートをやはりしていただいて、だめなものでも出していただいて、それはこう いうことでだめなんだ、それでバツをつけていけばおのずからこの選択肢はここに残っ てくるので、ぜひそういう論議の仕方を、さっき座長がまとめの段階だとおっしゃった のですが、そうであるがゆえにそういうことの検討が効果的にできるような論点整理を 出していただければ。これは要望です。 ○岩村座長  ありがとうございました。時間の関係もあるのですが、質問はすぐお答えいただける かどうか。では雇用保険の方、お願いします。 ○田中雇用保険課課長補佐  雇用保険に関する御質問の件ですが、これは統合した場合という前提条件のもとです けれども、特に現段階で例えば船員の方が失業された場合に、無理やり陸上部門に紹介 していくというようなところまでは全く考えていないです。 ○龍井委員  いや、無理やりではなくて結果的にそうならないか。 ○田中雇用保険課課長補佐  結果的にいえば、それは本人の御希望に沿って紹介をすることになると思いますし、 実際に今でも船員は船員の職業安定所でやっていますので、恐らくそのような形になり ますから、御懸念のようなことにならないのではないかなと思います。 ○岩村座長  はい、小坂委員。 ○小坂委員  意見ですが、今、他部門の積立という部分でいろいろ議論があるんですけれども、私 どもはというか、私個人としてもどう考えるかではなくて、これは頭から国庫の中に入 っている金なのだから、もしそういうことになるのだったらそのまま移すべきであろう と。もしその例えば健康保険だ、雇用保険に担いでいったら、向こうへ行って取り上げ られるだけで、もし担いでいけるものなら担いでいってくださいと、こういう話に近い のではないかと思っております。それに対して組合側は当然のことながら意見があると いうのは、それは了解をしていますし理解もしています。ですから、例えばこういうと ころの整理という形で論点をまとめていくときであるならば、はっきり書かなければい けないんだと。これは議論を先送りしているだけで、このことについては何も議論して いない。  私以外の船主3団体の皆さんがここについてはどういう意見を持っているか、私はそ れは知らない。だけども、少なくとも私は国庫に入っている金で他部門に潤沢に──潤 沢にと言うとまたしかられる──お金があるのであれば、そういう制度が分割されて移 行していくというのであれば、有効に使う以外に金というものは使うべきでないし、有 効に使えばいいと、そういうふうに意見としては考えております。  以上。 ○岩村座長  ありがとうございました。先ほどの龍井委員の関係でいいますと、ケースBのところ のメリット・デメリットということについては、一応検討会のところで表は出ておりま す。特に例えばケースBでやりますと、職務上疾病・年金部門が失業部門と同じという 形で残りますので、結局一般制度に統合するよりは産業構造の変化に非常に弱いという 問題点というのは、現状と余り変わらないということがそこにも書かれているとおりだ と思いますので、そこはまた今御要望もあったところですから、事務局の方でも検討し て、資料が必要なものがあれば用意したいとは思います。 ○龍井委員  メリット・デメリットではないです。あくまで運営主体の問題と範囲の問題です。つ まり別出しの分について、どこがどのような形でおこなうのか。制度設計上のシミュレ ーションです。 ○岩村座長  ええ、それもありますし、難問としては恐らく一番大きいのはそこなのだと思います。  それから、これは私の全くの個人的な意見でありまして、座長としてどうのということ ではないのですが、先ほど来ちょっと問題になっていました償却分についての船員保険 の積立金の使用の部分で、被保険者部分をどうするかというお話もありましたが、他方 できょう出していただいた資料をごらんいただきますと、全体で平成17年度末で考えま すと、1,700億円ほどの償却不足が生じていると。済みません、資料4でございますね。 それで、資料4の2ページで年金部門の積立金のみ償却に充てる場合と、制度全体の積 立金を、つまり先ほど被保険者側からおっしゃっている被保険者分も入った積立金も含 めて償却に充てるということで、それぞれシミュレーションが出ているわけですが、ご らんいただくとおわかりのように、償却期間をどうとるにしても、積立金をどれだけ償 却に充てるかによって保険料率にかなりの差が出てくるということで、結局これが一般 制度に入れた場合にも労災の保険料率にはね返ってくるということになり、最終的には 結局労働コストにはね返るという話にもなります。もちろん労災だから事業主が全部負 担すべきだという理念の問題はあるにしても、今後の産業の行く末を考えたときに、保 険料率がポンとはね上がるということの問題をどう考えるか。被保険者側としてもどう 考えるかという問題も視野に入れて、お考えいただく必要があるかもしれないという気 はいたします。ですので、そこはまさに被保険者側、組合の側が、その辺をどのように お考えになるかということなのかなと思います。  かなりいろいろ御意見をちょうだいしましたが、既に予定した時間に達してしまって おります。恐縮ですが、今まで御発言いただいた中で事務局側では雇用保険と国土交通 省からはお話は出ているのですが、労災管理課の方は何かございますか。 ○中沖労災管理課長  いや、特にございません。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。そうしますときょう予定していたこの議題に……。松 井委員、どうぞ。 ○松井委員  労災管理課にちょっと質問したい点があります。 ○岩村座長  わかりました。それでは手短にお願いいたします。 ○松井委員  資料6の3ページで、下船後3月の療養補償の問題ですが、これは要するに船員保険 法上は労災でという取り扱いになっているのですが、一般の制度でいくと職務外疾病に なっているんですね。今の積立金の議論についていろいろお聞きしておりますと、私は 労災の方にここはついていった方がいいと思うのですが、そういうことは理論的に制度 上問題があるのか、ないのか。  それともう一つここの部分について、いわゆるメリット性も含めた考え方からすると、 ここはやはり船員保険法上労災と規定されているのなら、そこは貫徹した方がいいとは 思うのです。そうでないと健康保険での取扱いにしてしまうと、船員さんの保険料も含 めてやるということで、それで船員が納得するならまたそれは一つの考え方ですが、ど っちを本来とるべきなのでしょうか。 ○岩村座長  労災管理課長、お願いいたします。 ○中沖労災管理課長  これはなかなか難しい問題だと思います。一つには、私どもは今労災保険のシステム の中で、特定の職種なり業種に着目して保険給付を上乗せしているものはございません ので、そうした制度運営を今まで法律上やってきた以上、ここに船員だけ独自上乗せ給 付をするということになりますと、今船員の特殊性ということをおっしゃっていますが、 本当にそれだけで説明できるのかどうか。そこはなかなか難しい問題があると思ってお ります。  また、メリット性の問題はちょっといろいろ複雑な技術上の問題がありますので、検 討する必要があると思いますが、そういった点も論点になろうと考えております。 ○岩村座長  どうぞ、三尾委員。 ○三尾委員  いろいろな話が出ましたので。まず、船主サイドから保険料率の問題がありました。 我々としてもこれ以上保険料率が上がるのがいいなんて思っていません。まさに船主さ んが出した意見、そのことは十分理解しておりますし、被保険者側として保険料率が上 がればいいなんていう発想は持っていません。  それと、きょう最初に、あるいは山口の方から被保険者側としての意見も申し上げま したが、ここにも書いてありますように、要は先が見えない中で行け行けというのは、 我々は船乗りですから、ガスがかかっている中で前へ行け前へ行けといったってちょっ と難しいんですよ。レーダーもあって、そのレーダーでどこか安全なところがある、こ れを行けば大丈夫だというのがわかるならいいのだけれども、そういうものが見えない んですよ。そのことを一番言いたかったのです。  以上です。 ○岩村座長  それでは堀委員、どうぞ。 ○堀委員  先ほど来いろいろ割れますけれども、内航総連としてやはり4,200社の父ちゃん母ち ゃんの船から大きな会社までいろいろありますので、一言お願いをしておきます。  今まで総連の中で4,200社の会員に、どういうふうに保険制度が変わるんだという説 明は一回もできませんでした。というのは、具体的に保険料率はどうなるんだ、内容に ついてはどうなるんだというのが見えなかった。先ほど三尾さんがおっしゃったように、 もうガスがかかって見えなかった。それで、労使の話もしましたけれども、労使の協議 するといいますか、論議の内容すら出なかった。非常に暗中模索といいますか。先般保 険庁の方から説明いただいたときに、非常にかんかんがくがくこの内容について意見が 出ました。船主側の方も。それは先ほど野川先生がおっしゃったように不明な点があり、 労使が不安を払拭できないと。それともう一つ、社会保険庁がもっと率直にできるので きないのをどうピックアップして、どう制度を持っていくかという、まさに野川先生が おっしゃってくださいましたので、ぜひともそれはお願いしたいと。  ですから今後内航総連の方は、本日保険料率の具体的なものが出ましたので、全体的 にこの程度になりますよという、やっとそういうものが示せると。したがいまして次の 策として、今後の方向性というのはもちろんありますが、こういう形になっていくんだ と。私も不明な点がありますけれども、私以上にやはり中小の4,200社の付託というも のがありますので、ぜひともその点はよろしく今後もお願いしたいと思っております。  以上です。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは既に予定していた時刻を過ぎておりまして、私の 議事進行の不手際で申しわけございませんが、きょうの議題の(1)についてはここま でとさせていただきたいと思います。きょうさまざまな御意見、御指摘等がございまし たので、このきょうの議論をもとに、次回の検討会までに野川委員、西村委員とも御相 談させていただきながら、取りまとめの報告書の座長案というものを作成させていただ いて、次回はそれをもとに労使双方の委員の方々と、さらに取りまとめについての議論 をお願いしたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。もちろん、そこでの 議論の素材にとって必要な資料等は、またきょうの議論を踏まえて、お忙しい中申しわ けないですが、事務局の方には作成をお願いしたいと思いますし、なるべく検討会の前 に少し余裕を持って労使双方に提示できるように、御努力をお願いしたいというふうに はもちろん考えておりますが、いかがでございましょうか。 (「了解」の声あり)   ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。ただ、きょう議論もあり、労使双方ともちょっと御不 満が、ちょっとと言うと失礼ですが、かなり御不満もあって、これまで労使で議論をし ようとしてもたたき台もなく材料もなかったというお話もありましたが、例えばきょう 料率のシミュレーションも出ましたし、それから先ほど来議論になりました、積立金の 扱いによってどういう程度それが過去の積立不足の償却に影響するかというような資料 も出ましたので、まことに毎回お願いで恐縮ではございますが、労使間でその辺につい てもぜひ御議論をいただいて、実現性のある方向でのお考えというものを何とか労使で も知恵を出していただければと思います。また、できればその内容も報告書の案文の中 に反映させていきたいと考えておりますので、ぜひ労使双方でのお話し合いということ も、重ねて座長からはお願い申し上げたいと存じます。  恐縮ですが、時間が過ぎておりますけれども、この検討会の議論にも関係いたします 医療制度構造改革試案が先般公表されましたし、また第5回の検討会でも御相談しまし た健康管理手帳制度の創設についても資料をきょう用意してございますので、事務局か ら簡潔に御説明をいただきたいと思います。 ○事務局  時間も過ぎておりますので、ごくごくかいつまんで御説明させていただきます。  資料7−1、7−2をごらんください。先般、10月19日に厚生労働省から発表いた しました医療制度構造改革試案の概要と本編になっております。これにつきましては、 済みません、時間もございません、内容については後でお読みいただければと思います が、これに関連いたしまして船員保険の職務上疾病部門につきましても、制度改正の要 否を検討しなければならないような事項がございますので、ここで簡単に御紹介させて いただきたいと思います。  資料7−3をごらんいただきたいと思います。横の紙でございます。まず1ページ目 ですが、「高齢者の患者負担の見直し」というものが試案の中では掲げられております。 現役並みの所得を有する70歳以上の方々の患者負担を3割負担とすると。これを平成 18年10月目途に実施してはどうかという話。あるいは、平成20年4月に高齢者医療制 度が創設されることに伴いまして、後期高齢者あるいは前期高齢者の患者負担について、 それぞれ1割、2割というふうに変更していくといったようなことが試案の中で議論さ れております。  その次の○ですが、「保険給付の内容・範囲の見直し」ということで、療養病床に入 院されている70歳以上の方々について、食費あるいは居住費の負担を見直すといったこ とが予定されております。ここについては金額も明示しておりますが、これは現在精査 中ということになっております。  2ページ目でございます。高額療養費の自己負担限度額の水準の見直し、これにつき ましても予定されておりまして、総報酬を含む月収の25%程度ということで、枠内に掲 げておりますような見直し後の限度額が、今議論されているところでございます。  次のポツですが、人工透析患者の自己負担額の水準についても、負担能力を踏まえな がら検討するとされております。  傷病手当金、出産手当金、葬祭料につきましては、支給要件やその水準について平成 19年4月を目途に見直していくということが議論されておりまして、2ページ、3ペー ジ目の前半の部分について、現行と見直し後をそれぞれ例示させていただいておるとこ ろでございます。  また、3ページ目の中ほどにございますが、出産育児一時金の水準についても検討し ていくこととされております。  この関係で3ページ目の下に表を載せておりますが、現時点におきまして船員保険の 職務外疾病部門と健康保険制度の各現金給付につきまして、下記のような相違がござい ます。例えば傷病手当金ですと待期期間があるなし、支給期間が1年半か3年かという こと、あるいは報酬との調整規定があるのかないのかといった違いがございます。また 出産手当金につきましては支給開始の時点が違うということ、報酬との調整規定がある のかないのかという違いがございます。また葬祭料につきましては、健康保険の方は標 準報酬の1月分が本人について出ており、家族埋葬料は10万円となっておりますが、船 員保険の方は標準報酬の2月分、家族につきましては1.4月分となっています。このよ うな違いがあることも踏まえて、今回の医療保険制度改革とどう対応していくかという 議論があろうかと思います。  4ページ目には「保険料賦課の見直し」ということで、標準報酬月額の等級表の上下 限の見直し、あるいは標準賞与の賦課の仕方の見直しといったものが論点として挙げら れております。こういったことが今後医療保険制度改革、平成18年通常国会で予定され ておりますが、その中で船員保険にも影響があろうかと思われる部分でございます。  もう一枚、資料8の方でございますが、こちらは元船員の方々に対する健康管理手帳 制度の創設につきまして、前々回の検討会の最後にもお諮りいたしましたが、船員保険 特別会計の費用を使いながら実施していきたいということで、今月11月4日に通知させ ていただいたところでございます。制度の流れにつきましては、1枚目に書いておりま すが、健康管理手帳の交付・申請につきましては12月15日から、また無料の健康診断 につきましては来年度から実施ということを予定しております。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。時間も過ぎておりますが、どうしてもという何か御質問が あれば承りたいと思います。はい、三尾委員、どうぞ。 ○三尾委員  質問ではありません。最後に説明いただきました元船員の健康管理手帳制度が12月 15日から実施されるということで、我々の要望について早急に対応していただきまして どうもありがとうございました。社会保険庁、国土交通省ともに努力されたことに対し て感謝いたします。ありがとうございました。 ○岩村座長  ありがとうございました。松井委員、どうぞ。 ○松井委員  次回で結構ですが、今の船員保険と健康保険制度の特に違いというところの表がござ いましたが、ここは恐らくこれを変えるとなると船員法を変えなくてはいけなくなると 思うのですが、その場合ILO条約ではどこまで規定がされていて、船員法でどうなっ ているのかということの違いがわかるような形で、ぜひ資料を提出してもらえればと思 います。   ○岩村座長  今すぐにお答えできるのだと思います。 ○後藤船員労働環境課長  医療保険の分野については船員法で書いてございません。うちは労災だけです。です から、医療保険については厚生労働省さんの方の所管になります。  以上です。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。それでは、時間も大分過ぎてしまいまして、どうも不 手際で申しわけございませんが、本日の検討会はこれで閉会とさせていただきたいと思 います。次回の日程につきましては、追って事務局の方から皆様のもとに御連絡をさせ ていただくことになっておりますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもあり がとうございました。 <了> 照会先:厚生労働省保険局保険課企画法令第2係     (代)03−5253−1111(内線)3250